説明

細胞の検出のための化合物および方法

本発明は、細胞死を経験している細胞(「死にかけている細胞」)、たとえば、アポトーシスを受けている細胞の生体内での検出のためのエステル基を含む化合物に関する。これらの化合物は、正常細胞に比べて死にかけている細胞において選択的に保持される。従って、細胞死の過程によって明らかにされる臨床症状の検出、診断および治療に該化合物を使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、死の過程を経験している生体細胞、たとえば、アポトーシスを受けている細胞の中で保持される、エステル基を含む化合物に関する。本発明はさらに、診断目的および治療目的での医療行為において該化合物を利用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスは、あらゆる真核細胞に本来備わっている細胞の自己破壊又は「自殺」の内在するプログラムである。きっかけとなる刺激に反応して細胞は、細胞の萎縮、細胞膜のブレブ形成、クロマチンの濃縮および断片化、膜に結合した粒子(アポトーシス小体)の集団への細胞の変換で完結し、その後、それらがマクロファージによって貪食される、高度に特徴的な次々と起こる出来事を経験する。今や、アポトーシスは、疾病の原因又は病態形成のいずれかで多数の医学的障害において役割を有することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
臨床診療では、細胞死の過程を経験している細胞の中で、又はその細胞によって選択的に保持されることが可能な化合物を有することは非常に望ましい。たとえば、画像化用のマーカーに結合されれば、そのような化合物は、分子の画像化のための有用なツールとして役立ち、疾病の早期の検出を可能にし、又は種々の医学的障害の治療有効性の評価を可能にしてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある態様では、生細胞では早期に洗い出され、保持されることは少ないが、死の過程を経験している細胞において、又はその細胞によって選択的に保持される式I〜VIで示される構造によって表されるエステル系化合物が提供される。本発明の一部の実施形態では、該細胞は、神経変性過程を経験している神経細胞又はアポトーシスを受けている細胞である。本発明はさらに、これらの化合物を用いることによって死にかけている細胞を検出する方法に関する。
【0005】
用語「死にかけている細胞」は本明細書では、死の過程を経験している細胞を言う。そのような細胞は、アポトーシス過程を経験している細胞、又は神経変性を受けている神経細胞によって例示されてもよい。
【0006】
用語「正常細胞」は、以下、正常な原形質膜の潜在能力を有する細胞を言う。
用語「死にかけている細胞が保持する化合物」(DCRC)は、正常細胞とは異なる、死にかけている細胞において選択的に保持される化合物を言う。本発明によれば、DCRCの死にかけている細胞への結合又は保持は、正常細胞への結合よりも少なくとも30%高くすべきである。DCRCの測定は、正常細胞、生細胞からのDCRCの洗い出し時間を考慮に入れるべきであることが留意される。測定は、洗い出し過程が開始した後、又はその後の任意のそのほかの時間の後でよい。本発明の実施形態では、洗い出し時間は10分以内である。別の実施形態では、洗い出し時間は1時間以内である。別の実施形態では、洗い出し時間は5時間以下である。別の実施形態では、洗い出し時間は12時間以下である。別の実施形態では、正常細胞又はアポトーシス過程を経験していない細胞からの洗い出し時間は24時間である。DCRCの結合又は保持を測定する最適な時間の決定は、当業者が算出することができ、以下「特定の時間」と定義される。
【0007】
用語「選択的保持」は、本発明では、正常細胞からのDCRCの洗い出し過程に続いて
量が測定されることを考慮に入れて、死にかけている細胞における化合物の選択的保持、すなわち、正常細胞における保持よりも少なくとも30%を超える程度まで多い、死にかけている細胞における保持を言う。
【0008】
用語「診断用DCRC」は、死にかけている細胞での選択的保持が可能である化合物を言い、その際、該化合物は画像化用のマーカーを含むか、又はそれに連結され、該マーカーは当業者に既知の手段によって検出可能である。
【0009】
用語「治療用DCRC」は、疾病の治療に有用である薬剤を含む、上記で定義されたようなDCRCを言う。
用語「DCRC−PET前駆体」は、ある部分を含む又はそれに連結される、本明細書で定義されるような式I〜VIのDCRCを言う。前駆体の該部分は、放射性標識の際、18F放射性同位元素によって置換されるべきであり、それによって18F標識のDCRC化合物を生成し、それは、陽電子放射型断層撮影(PET)画像診断によって検出可能である。
【0010】
本発明の実施形態に従って、死にかけている細胞における選択的保持のための作用剤の調製にDCRCを使用してもよい。
態様の1つでは、本発明は、死にかけている細胞の中で、又はその細胞によって選択的に保持される、式(I)で示される構造によって表される化合物(すなわち、DCRC)、又は式(I)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、並びに該塩の溶媒和物および水和物を提供する:
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、R基およびR’基はそれぞれ独立して、水素、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1若しくは2の環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせから個別に選択され、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−又は−S−から選択され、xおよびzはそれぞれ独立して0、1又は2の整数であり、xおよびzは同一であっても異なってい
てもよく、yは0、1又は2の整数であり、その際、y=2の場合、置換基R’は各発生で同一であっても異なっていてもよく、Dは、診断用マーカー、水素、ヒドロキシル又は薬剤であり、その際、診断用マーカーは、たとえば、18F又は放射性標識された金属キレートのような画像化用マーカーから選択され、画像化用マーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、たとえば、単光子放出断層撮影(SPECT)若しくは陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出されてもよい。)或いは、Dは死にかけている細胞に向けられる薬剤である。該薬剤は、特定の疾病の予防、改善又は治療に対して医学的に有用な作用剤であってもよく、たとえば、限定されることなく、アポトーシスの阻害剤(たとえば、カスパーゼ阻害剤、抗酸化剤、Bcl−2系の調節剤)又は細胞死の活性化剤(たとえば、抗癌剤)であってもよい。本発明の実施形態では、自然に又は治療に反応してのいずれかで腫瘍内で生じるアポトーシスの病巣に、本発明の化合物を採用している薬剤を向けることを介して抗癌剤を腫瘍に向けることによって抗癌療法を改善する方法が提供される。
【0013】
本発明の別の実施形態では、死にかけている細胞の中で、又はその細胞によって選択的に保持される、式(II)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩水和物、溶媒和物および金属キレート、並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(II)で示される構造によって表される化合物が提供される。
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、Rは、水素、又はC、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1若しくは2の環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせから選択され、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−、−S−および−N(U)から選択され、その際、Uは、存在しない、水素、C、C、C又はCのアルキルを表し、Dは、水素又は診断用マーカーである。)診断用マーカーは、本発明の実施形態では、画像化用マーカーであり、たとえば、Fが18F若しくは19FであってもよいF又は標識された金属キレートであり、画像化用マーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、たとえば、単光子放出断層撮影(SPECT)若しくは陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出されてもよい。或いは、Dは、上記と同義の、死にかけている細胞に向けられる薬剤である。
【0016】
本発明の別の実施形態では、式(III)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(III)で示される構造によって表される化合物が提供される:
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R18F、19F又はヒドロキシルであり、Rは、水素、C、C、C、C、C、C、C、C、C若しくはC10の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであり、kは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択される整数であり、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキルから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキルから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外である。)好ましい実施形態では、YおよびYはそれぞれエチル基である。
【0019】
本発明の別の実施形態では、式(IV)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(IV)で示される構造によって表される化合物が提供される:
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Jは、−18F、−19F、−OH又は蛍光基であり、rは1、2、3、4、5、6、7、8、9および10の整数を表し、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外である。)好ましい実施形
態では、YおよびYはそれぞれエチル基である。別の好ましい実施形態では、Jはダンシル基である。
【0022】
Jがダンシル基であり、r=5、YおよびYがそれぞれメチル基である場合、化合物は、NST−ML−Mと表される。
本発明のさらに別の実施形態では、式(V)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(V)で示される構造によって表される化合物が提供される:
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、Fは、18F又は19Fのいずれかである。)
本発明のさらに別の実施形態では、式(VI)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(VI)で示される構造によって表される化合物が提供される:
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、Fは、18F、19Fのいずれかである。)
本発明の別の態様では、患者において死にかけている細胞に薬剤を向けるための医薬組成物が提供され、その際、該患者はヒト又は非ヒト哺乳類であり、該組成物は式I、II、III、IV、V又はVIで示される構造に係る化合物を含み、該化合物は薬剤を含むか、又は薬剤に連結される。
【0027】
本発明の態様では、細胞の集団の中で死にかけている細胞に医学的に有用な化合物を選択的に向ける方法が提供され、該方法は、細胞集団を、式I、II、III、IV、V又はVIのいずれか1つで示される構造によって表される化合物に接触させ、それによって細胞の集団の中で死にかけている細胞に医学的に有用な化合物を選択的に向けることを含む。
【0028】
本発明の別の態様では、細胞集団の中で死にかけている細胞を検出する方法が提供され、該方法は、(i)診断用マーカー、又は式I、II、III、IV、V若しくはVIのいずれか1つで示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、金属キレート、溶媒和物および水和物並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式I、II、III、IV、V若しくはVIのいずれか1つで示される構造によって表される化合物に細胞集団を接触させること、並びに(ii)特定の時間の後、細胞に結合した化合物の量を決定することを含み、その際、細胞に結合した有意な量の化合物は、該細胞が死にかけている細胞であることを示す。
【0029】
本発明の別の態様では、患者又は動物において死にかけている細胞を検出する方法が提供され、該方法は、(i)画像化マーカー、又は式I、II、III、IV、V若しくはVIのいずれか1つで示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、金属キレート、溶媒和物および水和物並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式I、II、III、IV、V若しくはVIのいずれか1つで示される構造によって表される化合物を患者又は動物に投与すること、並びに(ii)特定の時間の後、細胞に結合した化合物の量を決定できるように調べた患者又は動物を画像化することを含み、その際、細胞に結合した有意な量の化合物は、該細胞が死にかけている細胞であることを示す。
【0030】
本発明の別の態様では、患者又は動物において死にかけている細胞の病巣、たとえば、腫瘍の病巣に薬剤を向けるための医薬組成物が提供され、該医薬組成物は、式I、II、
III、IV、V又はVIで示される構造に係る化合物を含み、該化合物は、薬剤を含む、又は薬剤に連結される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】化学療法剤、サイクロホスファミドおよびタキソールによって誘導されたアポトーシスを受けている腫瘍細胞(70mg/kgのNST−ML−Mの静脈内(I.V.)投与)におけるNST−ML−Mの選択的蓄積を示す蛍光顕微鏡写真。
【図1B】化学療法剤、サイクロホスファミドおよびタキソールによって誘導されたアポトーシスを受けている腫瘍細胞(140mg/kgのNST−ML−Mの静脈内(I.V.)投与)におけるNST−ML−Mの選択的蓄積を示す蛍光顕微鏡写真。
【図1C】化学療法剤、サイクロホスファミドおよびタキソールによって誘導されたアポトーシスを受けている小腸上皮の細胞(70mg/kgのNST−ML−MのI.V.)におけるNST−ML−Mの選択的蓄積を示す蛍光顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0032】
さらに十分に理解できるように以下の説明的な図を参照して、特定の好ましい実施形態と関連させて本発明を説明する。
図を参照して、詳細に示される細目は、例証としてのものであり、単に本発明の好ましい実施形態の説明的考察を目的として、最も有用であると考えられるものおよび本発明の原理および概念的態様の容易に理解される説明を提供するために提示されるということを強調する。この点で、本発明の基本的理解に必要とされるよりさらに詳細に本発明の構造的詳細を示す試みを行わない。図面と共に解釈される説明により、本発明の幾つかの形態が実際にはどのように具現化されるかを当業者に明らかになる。
【0033】
詳細な説明において、本発明の十分な理解を提供するために、多数の具体的詳細を説明する。しかしながら、これらは特定の実施形態であり、本発明は、本明細書で記載され、請求されるような本発明の特徴的特性を具現化する異なった様式でも実践してもよいことが当業者によって理解されるであろう。
【0034】
本発明は、死にかけている細胞の中で選択的に保持されることが可能である化合物(DCRC)に関するものであり、該化合物は、死にかけている細胞からに比べて正常細胞から速く洗い出される。死にかけている細胞は、死の過程を経験している細胞である。本発明の実施形態の1つでは、そのような細胞は、アポトーシスを受けている細胞、又は神経変性を受けている細胞である。本発明はさらに、画像化用マーカーを含む又はそれに連結される化合物を用いて、死にかけている細胞を検出し、画像化する方法に関する。
【0035】
参照によって本明細書に組み入れるPCT特許公開、WO2005/067388は、たとえば、アポトーシスによる死の過程を経験している細胞に選択的に結合することが可能である新規の部類の化合物を開示している。本発明は、PCT特許公開、WO2005/067388で開示された化合物の特定のエステル−プロドラッグに関係があり、死にかけている細胞の検出におけるそれらに使用に関係がある。死にかけている細胞の中に選択的に入り、そこで保持されるが、生細胞および/又は健常細胞からは排除される、PCT特許公開、WO2005/067388で開示された化合物とは違って、本発明で開示されるエステルプロドラッグは、無処置の血液脳関門(BBB)の通過を含めて健常又は病気のあらゆる細胞の中に自由に拡散する疎水性の化合物である。その性能は、細胞からの差次的洗い出しに基づき、すなわち、健常/生細胞において顕著に速い洗い出しおよび少ない保持を示す一方での、死にかけている細胞における相対的な保持である。この差次的洗い出しは、エステルプロドラッグ自体又は任意でそれぞれの一酸若しくは二酸のいずれかのものである。細胞のエステラーゼによるエステル結合の切断によってこれらの一酸又は二酸の遊離の形態が細胞内で生じる可能性があってもよい。
【0036】
PCT特許公開、WO2005/067388で開示された化合物に比べて、本発明のエステル化合物の潜在的利点は、とりわけ、電荷を持たないことである。荷電したその類縁体に比べて無電荷の部分は無処置の血液脳関門(BBB)に侵入し易いことは周知のことなので、本発明のエステルプロドラッグは、無処置のBBBへの侵入の促進を示すことが期待される。このことは、BBBの完全性が維持されている医学的障害において中枢神経系(CNS)内での死にかけている細胞の検出剤としてのこれら化合物の性能に対して有益な効果を有してもよい。本発明のエステル化合物の別の利点は、たとえば、18F放射性同位元素のような放射性追跡子の結合にある。18F放射性同位元素の短い半減期および画像化用分子へのその結合条件のために、できるだけ短く、単純な製造経路を有することが望ましい。18Fの結合ステップは、エステル化によるカルボキシル基の保護を必要とするので、PCT特許公開、WO2005/067388で記載されたような遊離の酸の形態への次の合成には、エステル基の取り外しおよび遊離の酸の形態への変換を含む追加の合成ステップが必要である。
【0037】
本発明のエステル化合物の合成には、この脱保護ステップは必要とされないので、エステル化合物に対する放射性標識の化学反応が顕著にさらに単純に、且つ迅速になる。
本発明の化合物は、相対的に低分子量を特徴とする利点および潜在的に好都合の薬物動態特性を有する。本発明の化合物の重要な利点は、無処置の血液脳関門(BBB)を横断する能力であり、そのために中枢神経系(CNS)内での死にかけている細胞を画像化するのに有用である可能性がある。
【0038】
態様の1つでは、本発明は、死にかけている細胞の中で選択的に保持される、式(I)で示される構造によって表される化合物(すなわち、DCRC)、又は式(I)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、並びに該塩の溶媒和物および水和物を提供する。
【0039】
【化7】

【0040】
(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、R基およびR’基はそれぞれ独立して各発生にて、水素、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1若しくは2の
環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせから選択され、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−又は−S−から選択され、xおよびzはそれぞれ独立して0、1又は2の整数であり、xおよびzは同一であっても異なっていてもよく、yは0、1又は2の整数であり、その際、y=2の場合、置換基R’は各発生で同一であっても異なっていてもよく、Dは、診断用マーカー、水素、ヒドロキシル又は薬剤であり、その際、診断用マーカーは、18F又は放射性標識された金属キレートのような画像化用マーカーから選択され、画像化用マーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同意元素スキャン、たとえば、単光子放出断層撮影(SPECT)若しくは陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出されてもよい。)或いは、Dは死にかけている細胞に向けられる薬剤である。
【0041】
該薬剤は、特定の疾病の予防、改善又は治療に対して医学的に有用な作用剤であってもよく、たとえば、限定されることなく、アポトーシスの阻害剤(たとえば、カスパーゼ阻害剤、抗酸化剤、Bcl−2系の調節剤)又は細胞死の活性化剤(たとえば、抗癌剤)であってもよい。本発明の実施形態では、自然に又は治療に反応してのいずれかで腫瘍内にて生じるアポトーシスの病巣に、本発明の化合物を用いて薬剤を向けることを介して抗癌剤を腫瘍に向けることによって抗癌療法を改善する方法が提供される。
【0042】
本発明の別の実施形態では、死にかけている細胞の中で選択的に保持される、式(II)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート、並びに該塩の溶媒和物および水和物を含めて、式(II)で示される構造によって表される化合物が提供される。
【0043】
【化8】

【0044】
(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、Rは、水素又はC、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1若しくは2の環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせから選択され、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−、−S−および−N(U)から選択され、その際、Uは、存在しない、水素、C、C、C又はCのアルキルを表し、Dは、水素又は診断用マーカーである。)診断用マーカーは、本発明の実施形態では、画像化用マーカーであり、たとえば、Fが18F若しくは19FであってもよいF又は標識された金属キレートであり、画像化用マ
ーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、たとえば、単光子放出断層撮影(SPECT)若しくは陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出されてもよい。或いは、Dは、上記と同義の、死にかけている細胞に向けられる薬剤である。
【0045】
本発明の別の実施形態では、式(III)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含めて、式(III)で示される構造によって表される化合物が提供される。
【0046】
【化9】

【0047】
(式中、R18F、19F又はヒドロキシルであり、Rは、水素、C、C、C、C、C、C、C、C、C又はC10の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであり、kは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10から選択される整数であり、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキルから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキルから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外である。)好ましい実施形態では、YおよびYはそれぞれエチル基である。
【0048】
本発明の別の実施形態では、式(IV)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含めて、式(IV)で示される構造によって表される化合物が提供される。
【0049】
【化10】

【0050】
(式中、Jは、−18F、−19F、−OH又は蛍光基であり、rは1、2、3、4、5、6、7、8、9および10の整数を表し、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しく
はヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外である。)好ましい実施形態では、YおよびYはそれぞれエチル基である。別の実施形態では、Jはダンシル基である。Jがダンシル基であり、r=5、YおよびYがそれぞれメチル基である場合、化合物は、NST−ML−Mと表される。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態では、式(V)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含めて、式(V)で示される構造によって表される化合物が提供される。
【0052】
【化11】

【0053】
(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、Fは、18F又は19Fのいずれかである。)
本発明のさらに別の実施形態では、式(VI)で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含めて、式(VI)で示される構造によって表される化合物が提供される。
【0054】
【化12】

【0055】
(式中、Fは、18F、19Fのいずれかである。)
本発明の別の実施形態では、式I、II、III、IV、V又はVIによって表される
化合物はそれぞれ、診断用マーカー、たとえば、限定されることなく、Tc、Tc=O、In、Cu、Ga、Xe、Tl、ReおよびRe=O、1231、131I、Gd(III)、Fe(III)、Fe、Fe、Mn(II)、18F、15O、18O、11C、13C、124I、13N、75Br、Tc−99m又はIn−111を含んでもよく、又はそれに連結されてもよい。
【0056】
本発明の別の実施形態では、細胞集団の中で死にかけている細胞を検出する方法が提供されるが、該方法は、(i)式I、II、III、IV、V又はVIで示される構造のいずれか1つによって表される化合物又は式I、II、III、IV、V又はVIで示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、金属キレート、溶媒和物および水和物並びに該塩の溶媒和物および水和物に細胞集団を接触させること、および(ii)細胞に結合した化合物の量を決定することを含み、その際、特定の時間の後、細胞内で保持される有意な量の化合物は、細胞が死にかけている細胞であることを示す。
【0057】
用語「細胞に結合する化合物の有意な量」は、本発明によれば、上記で定義されたように、特定の時間の後、正常細胞に結合した量よりも少なくとも30%多い量で死にかけている細胞に結合した、診断用マーカーを含む又はそれに連結される本発明の化合物の量を言う。別の実施形態では、量は50%多い。本発明の別の実施形態では、量は75%多い。別の実施形態では、量は150%多い。別の実施形態では、量は約2倍多い。別の実施形態では、量は少なくとも2倍より多い。別の実施形態では、量は少なくとも5倍より多い。別の実施形態では、量は少なくとも10倍より多い。
【0058】
本発明の実施形態では、PET又はSPECTによる放射性核種画像診断を介して患者において死の過程を経験している細胞の画像を得るために本発明の化合物を使用することに関して、死の過程を負わされた組織から得られるシグナルの振幅又は強度を死の過程を負わされていない臓器又は組織から得られる振幅/強度と比べることによって、正常細胞に結合した化合物の量に対する死にかけている細胞に結合した化合物の量の比の計算を行ってもよい。
【0059】
本発明の別の態様によれば、患者又は動物において死にかけている細胞を検出する方法が提供されるが、該方法は、(i)画像化用マーカー、たとえば、限定しないで18Fを含む、式I、II、III、IV、V又はVIで示される構造によって表される化合物、又は式I、II、III、IV、V又はVIで示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、金属キレート、溶媒和物および水和物並びに該塩の溶媒和物および水和物を患者又は動物に投与すること、および(ii)細胞に結合した化合物の量を決定できるように調べた患者又は動物を画像化することを含み、その際、細胞に結合した有意な量の化合物の特定の時間後の検出は、これらの細胞が死にかけている細胞であることを示す。
【0060】
非限定的仮説では、死にかけている細胞の中での保持における本発明の化合物の作用機序は、少なくとも部分的には以下のステップが含まれる可能性がある。
(i)化合物の疎水性で無電荷の構造による細胞膜の通過、
(ii)分子の分画の1つがエステル化されたままである一方で別の分画は部分的な又は全体的なエステル部分の切断を受け、生理的な条件で1又は2の負の電荷を有するそれぞれ遊離の一酸又は二酸の形態を形成する。二酸の形態において単一のプロトンを捕捉する際、対称の水素結合が形成され、プロトンは、マロネート部分の2つのカルボン酸基の間で「共有され」、負の電荷は4つのカルボキシレート酸素原子にわたって均一に分布したままである。従って、電荷分散が生じ、イオン半径が有意に大きくなる。
(iii)死にかけている細胞の中で化合物が保持される一方で生細胞からは化合物が一掃される。完全にエステル化された分子の疎水性の性質によって、又は荷電した種の負の
電荷の分散によって移動は促進される。この移動は、膜電位マップ(MPM)によって、および原形質膜の完全性によって決定される。生細胞では、細胞外で正である膜電位が、本発明のエステル化化合物の極性種又はそれぞれの負に荷電した両親媒性の遊離酸のいずれかの細胞からの外への移動を引き起こす。崩壊した膜を持つ細胞では、化合物は膜の欠陥を介して細胞を出る。対照的に、アポトーシスを受けている細胞では、膜の連続性の維持が、膜電位の喪失と共に、死にかけている細胞の中での化合物の保持を増強するように作用する。
【0061】
限定しないで本発明の2つのアプローチのうち1つを採用して、死にかけている細胞を含む組織および臓器に対する医薬的に有用な作用剤の選択的ターゲティングに本発明の化合物を用いてもよい。
(i)以後、「検出アプローチ」と呼ばれる第1のアプローチによれば、死にかけている細胞を画像化するためのマーカーを標的とするために選択的な保持又は結合を利用してもよい。臨床診療では、本明細書の以下で説明されるような、細胞が出現する疾病の診断のために生体内で、生体外で又は試験管内でこれを使用してもよい。
(ii)以後、「治療アプローチ」と呼ばれる第2のアプローチによれば、死にかけている細胞を含む生体の臓器および組織、たとえば、細胞死又は神経変性の領域への治療剤の選択的ターゲティングに選択的な保持又は結合の特性を使用する。
【0062】
検出アプローチによれば、本発明は、試験管内、生体外又は生体内のいずれかで死にかけている細胞を検出するための、画像化用マーカーを含む又はそれに連結される、有効成分としてDCRCを含む組成物に関係する。そのようなDCRCは以後、「診断用DCRC」と表す。診断用DCRCは、測定される試料に存在する、死にかけている細胞の中での選択的保持又はその細胞への結合を実施することが可能である。その後、当該技術で既知の手段によって保持又は結合が同定されてもよい。本発明の診断用DCRCは、選択的様式で、死にかけている細胞へのマーカーのDCRCによるターゲティングを可能にする。その後、当該技術で既知の様式によって、および使用される具体的な標識、たとえば、蛍光、放射活性の放出、発色、MRI、X線などに従って検出可能な標識を検出することができる。実施形態の1つでは、診断用DCRCは、共有結合又は非共有(たとえば、静電)結合によって検出可能な標識に連結される。
【0063】
本発明の実施形態では、検出可能な標識は、金属イオン、Tc、oxo−Tc、In、Cu、Ga、Xe、Tl、Re、oxo−Re又は共有結合した原子のそれぞれの放射性同位元素のいずれであってもよく:たとえば、SPECTのような放射性同位元素スキャンには、123Iおよび131I、MRIには、Tc、Gd(III)、Fe(III)又はMn(II)、および陽電子放射型断層撮影(PET)スキャンには、18F、15O、18O、11C、13C、124I、13N又は75Brであってもよい。
【0064】
本発明の実施形態では、本発明のDCRCは、PETスキャンを介したアポトーシスの臨床的画像化向けであり、DCRCは18F原子を含む。
たとえば、18Fのような画像化用マーカーとして使用される特定の放射性同位元素の半減期が短いために、臨床PET画像化を目的としたそのようなマーカーの連結は、患者への診断用化合物の投与の直前に行われる。従って、患者に投与する前にたとえば、18Fのような放射性同位元素によって置換される部分を含むDCRC−PET前駆体を合成することが有用である可能性がある。実施形態の1つでは、18Fによって置き換えられる部分は、ヒドロキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子、又はたとえば、メシレート、トシレート若しくはトリフレートのような任意で置換されたスルホネート基から選択される。そのようなDCRC−前駆体又はDCRC−PET前駆体も本発明の範囲に含まれる。
【0065】
PET画像化のために18Fによって、上述の構造のDCRCのいずれかであってもよ
いDCRCを標識する方法は、18F原子をDCRCに連結し、それによってPET画像化用の18FによりDCRCを放射性標識するステップを含む。任意で、18F原子を連結するステップに先立って適当な保護基によってDCRCの官能基を保護してもよい。その後、保護基は、18F原子を連結するステップの後、任意で取り外される。保護された官能基を有するそのようなDCRCも本発明の範囲に含まれる。
【0066】
マーカーが金属原子(たとえば、MRI用又はSPECT用にそれぞれ、Gd、99mTc又はoxo−99mTc)である場合、DCRCは金属キレート剤を含んでもよい。キレート剤の金属を配位する原子は、窒素原子、イオウ原子又は酸素原子であってもよい。本発明の実施形態では、キレート剤は、たとえば、ジアミンジチオール、モノアミン−モノアミドビスチオール(MAMA)、トリアミド−モノチオール又はモノアミン−ジアミド−モノチオールであってもよい。そのような場合、金属原子との錯体化の前にキレート剤に連結された又はそれを含むDCRCであるDCRCキレート前駆体と金属原子を含む錯体の双方は、本発明の範囲に含まれる。
【0067】
蛍光検出については、診断用DCRCは、当該技術で既知の蛍光プローブから選択される蛍光基を含んでもよい。そのようなプローブの例は、5−(ジメチルアミノ)ナフタレン−1−スルホニルアミド(ダンシル−アミド)およびフルオレセインである。
【0068】
本発明の化合物は、死にかけている細胞を特徴とする多種多様な医学症状の検出および診断に使用されてもよい。
死にかけている細胞を特徴とする医学症状の例は以下のとおりである。
【0069】
過剰なアポトーシスの発生を特徴とする疾病、たとえば、変性障害、神経変性障害(たとえば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病)、AIDS、運動ニューロン疾患、たとえば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、プリオン病(たとえば、クロイツフェルト・ヤコブ病)、骨髄異形成症候群、虚血性又は毒性の発作、移植の拒絶における移植細胞の喪失、腫瘍および特に高度に悪性/攻撃的な腫瘍もまた過剰な組織の増殖に加えてアポトーシスの増大を特徴とすることが多い。
【0070】
血管障害、たとえば、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、鎌状赤血球病、サラセミア、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデス。
【0071】
炎症性障害および/又は免疫が介在する病因又は病態形成に関係する疾病:自己免疫障害、たとえば、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデス、結合組織の障害、たとえば、関節リウマチ、強皮症、甲状腺炎、皮膚障害、たとえば、天疱瘡又は結節性紅斑、自己免疫性血液疾患、自己免疫性神経疾患、たとえば、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性大腸疾患、たとえば、潰瘍性大腸炎および血管炎。
【0072】
アテローム斑および特に不安定で、脆弱で且つ崩壊傾向にある斑もまた、死にかけている細胞、たとえば、アポトーシス性マクロファージ、アポトーシス性平滑筋細胞又はアポトーシス性内皮細胞を特徴とする。
【0073】
本発明の方法を用いて、ヒト患者又は動物の対象における1以上の前述の臨床症状を検出してもよく、および/又は診断してもよい。さらに、すでに疾病を有することが知られているヒトにおいて疾病の重症度を評価する目的で、又は疾病の経過および/又は種々の治療法に対する反応をモニターするために検出が行われてもよい。そのようなモニターの非限定例は、抗癌療法に対する反応の評価である。たとえば、化学療法や放射線療法のような抗腫瘍治療はほとんどアポトーシスの誘導によってその効果を発揮するので、治療が
誘導した腫瘍細胞のアポトーシスの診断用DCRCによる検出は、抗腫瘍剤に対する腫瘍の感受性の程度について教示しているかもしれない。このことが、抗癌治療の投与の時間とその有効性の適切な評価の時間との間のズレ時間を実質的に短くする可能性がある。
【0074】
さらに、検出を用いて抗癌治療の有害効果をモニターしてもよい。そのような有害効果の大部分は、正常でさらに感受性のある細胞、たとえば、消化管上皮又は骨髄造血系の細胞における不都合な治療が誘導したアポトーシスによる。
【0075】
さらに、検出は、腫瘍の攻撃性のレベルと相関することが多い腫瘍内での固有のアポトーシス負荷の性状分析を目的としてもよく、転移で生じることが多い固有のアポトーシスの検出を介して転移の検出に役立つ可能性がある。
【0076】
同様に、移植片拒絶の最中の細胞の喪失ではアポトーシスが主な役割を担うので、本発明の診断用DCRCが、臓器移植後の移植片の生き残りをモニターすることにおいて有用であってもよい。
【0077】
さらに、検出が細胞保護処理に対する反応をモニターすることを目的としてもよいので、細胞死の評価の測定を可能にすることによって種々の疾病(たとえば、上記で列挙されたもの)における細胞の喪失を阻害することが可能である薬剤のスクリーニングおよび開発に役立てることも可能である。
【0078】
脆弱で、崩壊傾向にするアテローム斑の不安定化、血栓および塞栓は、アポトーシス性細胞(アポトーシス性マクロファージ、アポトーシス性平滑筋細胞および内皮細胞)を含む、幾つかの型の死にかけている細胞の関与を特徴とするので、検出は、アテローム斑の検出に有用である可能性がある。
【0079】
このアプローチによれば、本発明は、生体全体、臓器、組織又は組織培養に由来する細胞集団において死にかけている細胞を検出する方法を開示するものであり、該方法は、(i)本発明の実施形態のいずれかに係る診断用DCRCに細胞集団を接触させること、および(ii)特定の時間の後、細胞集団に結合したDCRCの量を決定することを含み、その際、特定の時間の後、細胞集団内の細胞に結合した有意な量の化合物の検出は細胞が死にかけている細胞であることを示す。
【0080】
別の実施形態では、本発明はさらに、患者又は動物において生体内で死にかけている細胞を検出する方法に関するものであり、該方法は、(i)検査を受ける患者又は動物に診断用DCRCを投与すること、および(ii)特定の時間の後で、当該技術で既知の方法(たとえば、PETスキャン、SPECT、MRI)のいずれかによって検査を受ける患者又は動物を画像化し、細胞に結合した診断用DCRCの量を検出し、測定することを含むが、その際、投与は当該技術で既知の手段、たとえば、非経口(たとえば、静脈内)投与又は経口投与によって行われ、細胞に結合した有意な量の化合物は細胞が死にかけている細胞であることを示す。
【0081】
別の実施形態では、本発明は、組織又は細胞の培養試料にて試験管内又は生体外で死にかけている細胞を検出する方法に関するものであり、該方法は、(i)死にかけている細胞の生体膜への診断用DCRCの結合を可能にする条件下で、本発明に記載されるDCRC化合物のいずれかであってもよい診断用DCRCに試料を接触させること、および(ii)特定の時間の後、細胞に結合した診断用DCRCの量を測定することを含み、その際、有意な量の結合した診断用化合物の存在は組織又は細胞の培養におけるが死にかけている細胞の存在を示す。
【0082】
試験管内又は生体外の試験における検出のステップは、たとえば、本発明の蛍光標識された化合物の場合、限定しないで、広く市販されている装置を利用して細胞の視覚化を可能にするフローサイトメトリー解析を用いることによって行ってもよい。
【0083】
本発明に係る用語「有意な量」は、特定の時間の後で、死にかけではない細胞に結合した量よりも、死にかけている細胞に保持された又は結合したDCRCの量が少なくとも30%多いことを意味する。実際の量は、利用された画像化方法および装置によって、および調べた臓器又は組織によって変化する可能性がある。別の実施形態では、死にかけではない細胞に結合した量よりも、死にかけている細胞に保持された又は結合したDCRCの量が少なくとも50%多い。別の実施形態では、死にかけではない細胞に結合した量よりも、死にかけている細胞に結合したDCRCの量が少なくとも75%多い。別の実施形態では、死にかけている細胞に結合したDCRCの量が死にかけではない細胞に結合した量の少なくとも2倍である。別の実施形態では、死にかけている細胞に結合したDCRCの量が死にかけではない細胞に結合した量の少なくとも4倍である。別の実施形態では、死にかけている細胞に結合したDCRCの量が死にかけではない細胞に結合した量の少なくとも6倍である。別の実施形態では、死にかけている細胞に結合したDCRCの量が死にかけではない細胞に結合した量の少なくとも8倍である。別の実施形態では、死にかけている細胞に結合したDCRCの量が死にかけではない細胞に結合した量の少なくとも10倍である。
【0084】
本発明の方法はまた、疾病又は医学的症状の治療に使用された種々の治療法の効果をモニターするのに、或いは上記で説明したような基礎科学研究の目的で使用されてもよい。
「治療アプローチ」と呼ばれる本発明の第2のアプローチによれば、本発明は、有効薬剤又はプロドラッグを死にかけている細胞に向けるのに使用されるDCRCを含む医薬組成物に関係する。
【0085】
本発明に係る「治療用DCRC」は、薬剤を含むDCRC又は医学的に有用な作用剤に抱合させたDCRCを意味する。用語「抱合」は、当該技術で既知の手段によって2つの分子が一緒に接合されることを意味する。
【0086】
薬剤が治療用DCRCに含まれる又は連結される医学的に有用な薬剤とDCRCの間の会合は、共有結合による、非共有結合(たとえば、静電力)による、又は薬剤を含み、死にかけている細胞に抱合体を向けるDCRCをその表面に有するキャリア粒子(たとえば、リポソーム)の形成によるものであってもよい。いったん薬剤が標的に達すると、DCRC−抱合体の一部のままで、又はDCRC単位から外れた後で(たとえば、切断、破壊など、天然の酵素の活性)、その膜上でDCRCを有する薬剤含有のリポソームの貪食によって、又は他の既知のメカニズムによって、薬剤は、その生理活性を発揮できるはずである。
【0087】
薬剤は、組成物が意図される具体的な疾病に従って選択されるべきである。
本発明の診断用組成物と同様に治療用の医薬組成物は、既知の経路、とりわけ、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、舌下、眼内、鼻内、又は局所の投与、又は脳内の投与のいずれかによって投与してもよい。キャリアは、所望の投与様式に従って選択されるべきであり、既知の成分、たとえば、溶媒、乳化剤、賦形剤、タルク、香味剤、色剤などが挙げられる。医薬組成物は、必要に応じて、疾病を治療するために、副作用を排除するために又は有効成分の活性を増強するために使用されるほかの薬学上活性のある化合物を含んでもよい。
【0088】
治療アプローチによれば、本発明はその上さらに、そのような治療を必要とする個体に有効量の治療用DCRCを投与することを含む、死にかけている細胞を明示する疾病を治
療する方法に関係するものであり、該治療用DCRCは、疾病の治療として活性のある薬剤、又は通常、標的とされる領域にて生体内で活性のある薬剤の変換されるプロドラッグを含む。治療用DCRCは、死にかけている細胞を含む組織への薬剤の選択的ターゲティングを可能にするので、その局所濃度を高め、標的部位にて治療効果を高める可能性がある。そのような医学的障害は、上記で定義されたような障害である可能性がある。
【0089】
別の実施形態では、式I、II、III、IV、V、又はVIで示された化合物のいずれか1つと細胞傷害剤を含む治療用DCRCを投与し、それによって癌細胞を殺傷することによって、腫瘍内でのアポトーシス細胞を標的とするステップを含む、腫瘍における癌細胞を殺傷する方法を提供する。
【0090】
用語、治療用DCRCの「有効量」は、疾病の少なくとも1つの有害な徴候を測定可能なレベルに低下させることが可能である量を言い、使用薬剤、投与様式、患者の年齢および体重、疾病の重症度などに従って選択されるべきである。
【0091】
別の実施形態では、本発明の治療用DCRCは、治療効果を有する放射性同位元素を含む、又はそれに連結される。そのような放射性同位元素の非限定例は、イットリウム90、ヨウ素131、レニウム188、ホルミウム166、インジウム111、リューチチウム177、又は治療目的に有用なそのほかの放射線を放つ放射性同位元素である。
(実施例)
本発明を理解し、実際にそれをどのように実行すればよいのかを理解するために、以下の実施例:本発明の化合物の合成を目的とする実施例およびアポトーシスを受けている細胞への選択的結合における本発明の化合物の性能を目的とする実施例を記載する。本発明の化合物の検出を可能にするために、蛍光基、すなわち、ダンシルアミドへの連結によってそれらを標識し、蛍光顕微鏡によって検出した。式(IV)に係るNST−ML−Mによる結果を提示する。ダンシル基の固有の蛍光特性を利用して蛍光顕微鏡によって検出を行った。アポトーシス細胞への化合物の結合の選択性は、癌腫のマウスモデルにて生体内で調べた。
【0092】
実施例1
2−メチル−2(3−フルオロブチル)−マロネート(NST−ML−10E、スキーム1)の合成
135mLのCHCl中の1.5当量の3,4−ジヒドロ−2H−ピランおよび0.1当量のピリジニウムパラトルエンスルホネート(PPTS)によって3gの4−ブロモ−1−ブタノール(1)を処理した。後処理および精製の後、1.45g(33%)の生成物(2)を得た。1当量のNaHで1.0当量のジエチルメチルマロネートを脱プロトン化し、50℃にて触媒量のKIと共に1当量の臭化物(2)を加えた。10時間後、完全な変換が認められ、90%の収量が得られた。55℃でのエタノール中のPPTSによるテトラヒドロピラン(THP)の脱保護は円滑に進んだ。後処理の後、定量的収量のアルコール(4)が得られ、そのままメシル化反応に使用した。メシレート(5)を手にして、クリプトフィックス介在性のフッ素化を行った。収率68%で化合物(6)が得られた。
【0093】
【化13】

【0094】
実施例2
抗癌剤による処理によって誘導されたアポトーシスを受けている細胞におけるNST−ML−Mの選択的蓄積
多数の化学療法剤は、腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導を介してその抗癌効果を発揮する。腫瘍細胞に対するこの所望のアポトーシス誘導効果に加えて、これら化学療法剤投与の有害効果は、小腸上皮のような正常組織におけるアポトーシスの誘導に関連付けられる。従って、我々は、静脈内投与されたNST−ML−Mが、腫瘍細胞および小腸組織において、この化学療法によって誘導されたアポトーシスを検出することができるかどうかを調べた。
【0095】
8〜10週令のメスの胸腺欠損ヌードマウス(エルサレムのハーラン・ラボラトリーズ)を使用した。ヒト結腸腺癌(Colo−205)細胞を皮下に接種した。100μLのHBS中の10個の生細胞の脇腹への注射に続いて、単発性の腫瘍が生成された。腫瘍が直径8mmまで増殖したときに、サイクロホスファミドおよびタキソールを腹腔内に入れてマウスを処理した。処理については、サイクロホスファミド(シグマ(Sigma)[イスラエル所在])を生理食塩水に溶解し、体重当たり300mg/kgの用量で注射した。タキソール(ミード・ジョンソン(Mead Johnson)[米国所在])は生理食塩水で希釈し、体重当たり20mg/kgの用量で注射した。
【0096】
化学療法の投与の翌日、体重当たり70mg/kg又は140mg/kgのNST−ML−M(剤は10%クレモフォア&NaPPi緩衝液0.1M、pH7.4に溶解した)を静脈内にてマウスに注射した。60分後、マウスを屠殺し、腫瘍と小腸切片を摘出し、液体窒素で凍結し、次いで凍結切片の調製および蛍光顕微鏡に供し、ダンシル基の固有の蛍光特性の検出を介して標的部位におけるNST−ML−Mの保持を検出した。
実験結果
図1A,図1Bに示されるように、化学療法処理を行ったマウスに対する静脈内投与に続いて、NST−ML−Mは、腫瘍の中で、アポトーシスのDNA断片化を染色するTUNELによって細胞死を経験している細胞としてさらに同定された特定の細胞の中で選択的に保持された。それに対して、化合物は生細胞では保持されなかった。この現象は、7
0mg/kgおよび140mg/kgの双方の用量で明白だった。腫瘍における保持に加えて、化合物の選択的保持は、化学療法の全身性投与に反応して小腸上皮の陰窩にてアポトーシスを受けている細胞でも認められた。アポトーシス細胞としてのこれら細胞の同一性も、TUNEL染色によっても確認された。それに対して、化合物は隣接する生細胞では保持されなかった(図1C)。腫瘍および化学療法処理された動物の腸の双方からのこれらの結果は、生体内でのアポトーシスの選択的検出のためのプローブとして役立つNST−ML−Mの能力を示す。
【0097】
本発明は、本明細書に含まれる又は図面で説明される記載で示される詳細への適用に限定されないことが理解されるべきである。本発明は他の実施形態が可能であり、および/又は種々の方法で実践され、実行されることが可能である。当業者は、添付のクレームの中でおよびそれによって定義されるようなその範囲を逸脱することなく、種々の改変および変更を、上文で記載されたような本発明の実施形態に適用できることを容易に十分に理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞集団において細胞死の過程を経験している細胞(死にかけている細胞)に化合物を投与するための方法であって、
(i)死にかけている細胞を含む細胞集団を化合物又は前記化合物を含む抱合体に接触させるステップであって、
前記化合物は、式(I):
【化1】

(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、R基およびR’基はそれぞれ独立して、水素、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1若しくは2の環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせから選択され、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−又は−S−から選択され、xおよびzはそれぞれ独立して0、1又は2の整数であり、xおよびzは同一であっても異なっていてもよく、yは0、1又は2の整数であり、その際、y=2の場合、置換基R’は同一であっても異なっていてもよく、Dは、診断用マーカー、水素、ヒドロキシル又は薬剤であり、その際、診断用マーカーは、18F又は放射性標識された金属キレートのような画像化用マーカーから選択され、画像化用マーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、単光子放出断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出される。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(I)で示される構造によって表されるステップと、
(ii)それによって細胞集団の中での死にかけている細胞に前記化合物を向けるステップとを備える方法。
【請求項2】
Mが存在しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)死にかけている細胞を含む細胞集団を化合物又は前記化合物を含む抱合体に接触させるステップであって、
前記化合物は、式(II):
【化2】

(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、Rは、水素又はC、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1又は2の環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせを表し、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−、−S−および−N(U)から選択され、その際、Uは、存在しない、水素、C、C、C又はCのアルキルを表し、Dは、水素又は診断用マーカー又は薬剤であり、診断用マーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、単光子放出断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出可能である画像化用マーカーである。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(II)で示される構造によって表されるステップと、
(ii)それによって前記細胞集団の中での前記死にかけている細胞に前記化合物を投与するステップとを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Mが存在しない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(II):
【化3】

(式中、Rは、C、C、C、C、C、C、C、C、C又はC10の直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル又は直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキ
ルであり、Mは存在せず、Dは水素である。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(II)で示される構造によって表される化合物。
【請求項6】
式(III):
【化4】

(式中、R18F、19F又はヒドロキシルであり、Rは、水素、C、C、C、C、C、C、C、C、C又はC10の直鎖若しくは分枝鎖のアルキルであり、kは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10から選択される整数であり、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキルから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキルから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外である。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(III)で示される構造によって表される化合物。
【請求項7】
およびYがそれぞれ独立してメチル基又はエチル基から選択される請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式(IV):
【化5】

(式中、Jは、−18F、−19F、−OH又は蛍光基であり、rは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の整数を表し、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキルから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキルから選択され、Y又はYの少
なくとも一方は水素以外である。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(IV)で示される構造によって表される化合物。
【請求項9】
およびYがそれぞれ独立してメチル基又はエチル基から選択される請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Jが18F放射性同位元素およびダンシル基から選択される請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
式(V):
【化6】

(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、又は任意で置換されたアリール若しくはヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、Fは、18F又は19Fのいずれかである。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(V)で示される構造によって表される化合物。
【請求項12】
式(VI):
【化7】

(式中、Fは、−18F放射性同位元素および−19Fのいずれかである。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(VI)で示される構造によって表される化合物。
【請求項13】
画像化用マーカーを含む、又はそれに連結される請求項5〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
前記画像化用マーカーが、Tc、Tc=O、In、Cu、Ga、Xe、Tl、ReおよびRe=O、123I、131I、Gd(III)、Fe(III)、Fe、Fe、Mn(II)、18F、15O、18O、11C、13C、124I、13N、75Br、Tc−99m又はIn−111である請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記画像化用マーカーが、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、単光子放出断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)の検出器によって検出可能である請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
有効成分としての有効量の請求項5〜12のいずれか1項に記載の化合物および薬学上又は診断上許容可能なキャリアを含む医薬又は診断組成物。
【請求項17】
死にかけている細胞に化合物を向ける方法であって、
a)請求項5〜12のいずれか1項に記載の化合物又は前記化合物を含む医薬組成物に、死にかけている細胞を含む細胞集団を接触させるステップと、
b)前記細胞集団内の前記死にかけている細胞に前記化合物を投与するステップとを備える方法。
【請求項18】
前記死にかけている細胞が、神経変性過程を経験している細胞である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記死にかけている細胞が、アポトーシスを受けている細胞である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
細胞集団内で死にかけている細胞を検出するための方法であって、
a)化合物が請求項5〜12のいずれか1項に記載である前記化合物又は前記化合物を含む医薬組成物に、細胞集団を接触させるステップと、
b)前記死にかけている細胞に結合した前記化合物の量を測定するステップとを備え、細胞によって保持された有意量の前記化合物を特定の時間の後に検出することによって、前記細胞が死にかけている細胞であることを示す、方法。
【請求項21】
ヒト又は動物の対象において死にかけている細胞を画像化する方法であって、
a)請求項5〜12のいずれか1項に記載の化合物であり、画像化用マーカーを含む又はそれに連結される前記化合物又は前記化合物を含む医薬組成物をヒト又は動物の対象に投与するステップ、および
b)細胞に結合した前記医薬組成物又は前記化合物の量を検出できるようにヒト又は動物の対象を画像化するステップを含み、
特定の時間の後に検出された有意量によって、細胞が死にかけている細胞であることを示す、方法。
【請求項22】
死にかけている細胞を特徴とする疾病を判定するための請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記死にかけている細胞が、前記ヒト又は動物の対象の中枢神経系の中にある請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記死にかけている細胞が、アポトーシスによる細胞死を経験している細胞又は神経変性を受けている細胞から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項25】
DCRC−PET前駆体であって、18F標識されたPET化合物を生成するように放射性標識の際、18F放射性同位元素で置換されるように適合させた部分を含む、又はそれに連結される請求項5〜12のいずれか1項に記載の化合物を含むDCRC−PET前駆体。
【請求項26】
前記部分が、スルホネート、ニトロ、ハロゲン又はヒドロキシル基である請求項25に記載のDCRC−PET前駆体。
【請求項27】
前記スルホネートが、メシレート、トシレートおよびトリフレートから選択される請求項26に記載のDCRC−PET前駆体。
【請求項28】
細胞集団において細胞死の過程を経験している細胞(死にかけている細胞)を検出するための方法であって、
(i)死にかけている細胞を含む細胞集団を化合物又は前記化合物を含む抱合体に接触させるステップであって、
前記化合物は、式(I):
【化8】

(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、R基およびR’基はそれぞれ独立して、水素、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1若しくは2の環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせから選択され、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−又は−S−から選択され、xおよびzはそれぞれ独立して0、1又は2の整数であり、xおよびzは同一であっても異なっていてもよく、yは0、1又は2の整数であり、その際、y=2の場合、置換基R’は同一であっても異なっていてもよく、Dは、診断用マーカー、水素、ヒドロキシル又は薬剤であり、その際、診断用マーカーは、たとえば、18F又は放射性標識された金属キレートのような画像化用マーカーから選択され、画像化用マーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、単光子放出断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出される。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(I)で示される構造によって表されるステップ、および
(ii)前記死にかけている細胞に結合した前記化合物の量を測定するステップであって、
特定の時間の後での、細胞によって保持された有意量の前記化合物の検出によって、前記細胞が死にかけている細胞であることを示すステップを備える、方法。
【請求項29】
Mが存在しない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(i)死にかけている細胞を含む細胞集団を化合物又は前記化合物を含む抱合体に接触させるステップであって、
前記化合物は、式(II):
【化9】

(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、Rは、水素、又はC、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1若しくは2の環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせを表し、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−、−S−および−N(U)から選択され、その際、Uは、存在しない、水素、C、C、C又はCのアルキルを表し、Dは、水素又は診断用マーカー又は薬剤であり、診断用マーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、単光子放出断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出可能である画像化用マーカーである。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含めて、式(II)で示される構造によって表されるステップ、および
(ii)前記死にかけている細胞に結合した前記化合物の量を決定するステップを備え、
特定の時間の後での、細胞によって保持された有意量の前記化合物の検出によって、前記細胞が死にかけている細胞であることを示す、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
Mが存在しない、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ヒト又は動物の対象において死にかけている細胞を画像化する方法であって、
a)化合物又は前記化合物を含む医薬組成物をヒト又は動物の対象に投与するステップであって、
前記化合物は、式(I)
【化10】

(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、R基およびR’基はそれぞれ独立して、水素、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1若しくは2の環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせから選択され、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−又は−S−から選択され、xおよびzはそれぞれ独立して0、1又は2の整数であり、xおよびzは同一であっても異なっていてもよく、yは0、1又は2の整数であり、その際、y=2の場合、置換基R’は同一であっても異なっていてもよく、Dは、診断用マーカー、水素、ヒドロキシル若しくは薬剤であり、その際、診断用マーカーは、たとえば、18F又は放射性標識された金属キレートのような画像化用マーカーから選択され、画像化用マーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、単光子放出断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出される。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含めて、式(I)で示される構造によって表されるステップ、および
細胞に結合した前記医薬組成物又は前記化合物の量を検出できるようにヒト又は動物の対象を画像化するステップを備え、
特定の時間の後での有意量の検出によって、前記細胞が死にかけている細胞であることを示す、方法。
【請求項33】
Mが存在しない請求項32に記載の方法。
【請求項34】
(i)化合物又は前記化合物を含む医薬組成物をヒト又は動物の対象に投与するステップであって、
前記化合物は、式(II):
【化11】

(式中、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Yは、水素、C、C、C、C、CおよびCの直鎖又は分枝鎖のアルキル又はアリール又はヘテロアリールから選択され、Y又はYの少なくとも一方は水素以外であり、Rは、水素、又はC、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、直鎖若しくは分枝鎖のヒドロキシ−アルキル、直鎖若しくは分枝鎖のフルオロ−アルキル、1若しくは2の環から構成されるアリール若しくはヘテロアリール、又はその組み合わせから選択され、nおよびmはそれぞれ0、1、2、3又は4の整数を表し、nおよびmは同一であっても異なっていてもよく、Mは、存在しない、水素、−O−、−S−および−N(U)から選択され、その際、Uは、存在しない、水素、C、C、C又はCのアルキルを表し、Dは、水素又は診断用マーカー又は薬剤であり、診断用マーカーは、色合い、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像診断(MRI)、又は放射性同位元素スキャン、単光子放出断層撮影(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影(PET)によって検出可能である画像化用マーカーである。)
で示される構造によって表される化合物の薬学上許容可能な塩、水和物、溶媒和物および金属キレート並びに該塩の溶媒和物および水和物を含む、式(II)で示される構造によって表されるステップ、および
細胞に結合した前記医薬組成物又は前記化合物の量を検出できるようにヒト又は動物の対象を画像化するステップを備え、
特定の時間の後での有意量の検出は、前記細胞が死にかけている細胞であることを示す、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
Mが存在しない、請求項34に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【公表番号】特表2010−517939(P2010−517939A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544488(P2009−544488)
【出願日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000014
【国際公開番号】WO2008/081447
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505467867)アポセンス リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】APOSENSE LTD.
【Fターム(参考)】