説明

細胞の葉酸ビタミン受容体の定量化による癌予後診断法

本発明は、癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量することによって癌の予後を決定するための方法に関する。本法は、癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量する工程、および、癌の予後を決定する工程を含む。本発明はまた、ビタミン受容体標的法を利用する治療法によって治療すべき患者の選択、および、そのような患者のための治療処方の作製を可能とするように、癌細胞におけるビタミン受容体の存在を定量するための方法およびキットに関する。本発明はさらに前記方法を実施するためのキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌細胞におけるビタミン受容体の発現レベルを定量することによって、癌の予後診断を獲得し、管理を導き、該癌の効果的治療を開発するための方法およびキットに関する。本発明はまた、癌細胞上のビタミン受容体の存在を定量し、ビタミン受容体標的法を利用する治療法によって治療すべき患者を選択するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
癌に対する効果的な治療処方は、多くの場合、その癌に関する信頼度の高い予後診断を獲得できるかどうかに依存する。なぜなら、その場合、その患者のためにもっとも効果的な治療処方の開発が可能となるからである。臨床的に優先される重要事項として、癌に対する予後能力の改善、および、患者の管理および治療を改善するための分子に基づく治療法の開発がある。癌と診断された患者が、どの予後グループに属するのかを決めることは、最適治療処方の決定において最重要課題であり、従って、患者の生存を左右する。
【0003】
例えば、乳癌は、北米では、もっとも一般的に診断される、生命を脅かす悪性腫瘍である。乳癌は、合衆国における30〜50歳の女性の、主要な死亡原因であり、合衆国では毎年20万以上の新たな症例が出現している。結果を予測するために、腫瘍等級、核等級、組織型、DNA倍数、およびホルモン受容体状態も使用されるけれども、腫瘍のサイズおよびリンパ節の状態が、やはりもっとも信頼度の高い方法である。乳癌についてはほんの小数の腫瘍マーカーしか特定されておらず、それらの多くは、予後診断アッセイに使用するのに十分なほどの信頼度を持たない。従って、乳癌、および、その他の癌についても、さらに優れた予後診断アッセイの開発が最重要課題として求められている。
【0004】
さらに、ある特定の治療法によって処置すべき患者の選択は、腫瘍表面における腫瘍マーカーの存在を検出できるかどうかに依存しうる。なぜなら、それによって、腫瘍マーカーを標的とする治療法が正当化されるかどうかを決めることが可能となるからである。例えば、約25%の乳癌患者において、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)の過剰発現が見られる。乳癌治療法として、HER2タンパクに対するモノクローナル抗体であるHerceptin(登録商標)(Genentech, Inc.,サンフランシスコ、カリフォルニア州)が開発された。しかしながら、Herceptinは、乳癌患者のHER2状態が確定されるまでは、乳癌患者には投与されない。その乳癌患者がHER2陽性であるならば、Herceptin(登録商標)治療は正当化される。
【0005】
ビタミン受容体は、癌細胞において過剰発現される。例えば、高親和性葉酸受容体は、胎盤および栄養膜細胞において、モノクローナル抗体決定の抗原として特定される、膜結合糖タンパクである。この、高親和性葉酸受容体は、多くの正常細胞ではめったに発現されないか、または全く検出されない。しかしながら、この受容体は、上皮性の癌では過剰に、または優勢に発現される。これは恐らく、そうすることによってそれらの悪性細胞の増殖に有利に作用するためであろう。葉酸受容体の高レベルの発現は、90%を越える卵巣癌において検出され、陽性の度合いはより低いものの、子宮内膜、乳房、腎臓、肺、脳、子宮、膵臓、膀胱、睾丸、および結腸直腸の癌、および、リンパ腫、およびその他の頭部および頸部の癌にも検出される。
【0006】
例えば、乳癌における葉酸受容体発現の研究からは、使用する技術および分析される組織に応じて様々な結果が得られている。Ross等は、葉酸受容体のmRNAを測定し、正常な乳房標本に比べ、5名の癌例においてレベルが上昇していることを見出した。しかしながら、上昇の程度は、卵巣癌で見られたものに比べ約10倍低かった(Ross et al., Cancer 73:2432-2443(1994))。Garin-Chesa等は、種々の新鮮凍結癌における葉酸受容体の発現を評価するためにマウスモノクローナル抗体を用いた。調べた53個の乳癌のうち、2個は均一なLK26染色を示したが、別の9個の癌は、斑点状の染色像を示した(Garin-Chesa et al., Am. J. Pathol. 142(2):557-67(1993))。
【発明の開示】
【0007】
本出願人等は、癌に対する予後診断を得て、患者管理の手引きとしたり、患者のために効果的な治療処方を開発するために、癌細胞上のビタミン受容体をアッセイに用いる方法を検討してきた。この方法は、癌細胞におけるビタミン受容体の過剰発現の定量を用いる。本出願人等はまた、ビタミン受容体標的法を利用する治療法によって治療すべき患者を選ぶために、癌細胞においてビタミン受容体の存在を決定する方法の使用についても検討した。
【0008】
本発明の例示の一実施態様では、癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量することによって癌の予後を決定する方法が提供される。この方法は、癌細胞におけるビタミン受容体を定量する工程、および、該癌の予後を決定する工程を含む。もう一つの例示の実施態様では、ビタミン受容体は、葉酸受容体であってもよい。さらにもう一つの実施態様では、癌細胞は乳癌細胞であってもよく、あるいは癌細胞は、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれてもよい。癌細胞が乳癌細胞である実施態様において、乳癌は、リンパ節陰性疾患を含んでもよいが、ただし、本発明は、リンパ節陰性疾患に限定されない。本法はさらに、癌のための治療処方を決める工程を含んでもよい。
【0009】
もう一つの例示の実施態様では、定量する工程は、抗体による免疫組織化学的染色を含んでもよい。この実施態様では、抗体は、ポリクローナル抗体、またはその混合物、あるいは、モノクローナル抗体、またはその混合物、あるいは、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の組み合わせであってもよい。それとは別に、またはそれに加えてさらに、定量する工程は、インサイチュハイブリダイゼーション、または、放射性標識リガンドを用いる放射性受容体アッセイによる受容体の定量化を含んでもよい。
【0010】
本発明のもう一つの実施態様では、癌の予後を決定するための免疫組織化学的方法が提供される。この方法は、ビタミン受容体に対する抗体に癌細胞を接触させる工程、該癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量する工程、および、該癌の予後を決定する工程、を含む。例示の一実施態様では、ビタミン受容体は葉酸受容体であってもよい。もう一つの実施態様では、癌細胞は、乳癌細胞であってもよい。この実施態様では、乳癌は、リンパ節陰性疾患であってもよいが、ただし本発明は、リンパ節陰性疾患に限定されない。さらにもう一つの実施態様では、癌細胞は、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれてもよい。
【0011】
別の例示の実施態様では、抗体は、ポリクローナル抗体、またはその混合物、あるいは、モノクローナル抗体、またはその混合物、あるいは、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の組み合わせであってもよい。
【0012】
もう一つの実施態様では、ビタミン受容体標的法を利用する治療法による治療のために選ばれた癌患者の、治療処方を決めるための方法が提供される。この方法は、ビタミン受容体に対する抗体に、該患者から得られた癌細胞を接触させる工程、該癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量する工程、および、該患者の治療処方を決定する工程を含む。
【0013】
本発明のもう一つの例示の実施態様では、癌の予後を決定するためのインサイチュハイブリダイゼーション法が提供される。この方法は、核酸プローブに癌細胞を接触させ、それによって、核酸プローブを、ビタミン受容体をコードする核酸にハイブリダイズさせるか、または、ビタミン受容体をコードする核酸に対して相補的な核酸にハイブリダイズさせる工程、癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量する工程、および、癌の予後を決定する工程を含む。
【0014】
例示の一工程では、ビタミン受容体は葉酸受容体であってもよい。もう一つの例示の実施態様では、癌細胞は乳癌細胞であってもよい。この実施態様では、乳癌は、リンパ節陰性疾患を含んでもよいが、ただし本発明は、リンパ節陰性疾患に限定されない。さらにもう一つの実施態様では、癌細胞は、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれてもよい。
【0015】
本発明のもう一つの例示の実施態様では、癌の予後を決定する方法が提供される。この方法は、放射性標識されたビタミン受容体結合性リガンド、またはその類縁体に、癌細胞を接触させる工程、癌細胞におけるビタミン受容体の数を定量する工程、および、癌の予後を決定する工程を含む。
【0016】
例示の一実施態様では、ビタミン受容体は葉酸受容体であってもよい。もう一つの例示の実施態様では、癌細胞は乳癌細胞であってもよい。この実施態様では、乳癌は、リンパ節陰性疾患を含んでもよいが、ただし本発明は、リンパ節陰性疾患に限定されない。さらにもう一つの実施態様では、癌細胞は、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれてもよい。もう一つの例示の実施態様では、放射性標識リガンドは、放射性標識された葉酸塩、またはその類縁体であってもよい。
【0017】
本発明のもう一つの例示の実施態様では、免疫組織化学的染色アッセイを実行する際に使用されるキットが提供される。このキットは、ビタミン受容体に対する抗体によって染色された癌組織から得られた、較正顕微鏡写真を含む。例示の一実施態様では、キットはさらに、ビタミン受容体に対する抗体を含んでもよい。もう一つの実施態様では、キットはさらに、免疫組織化学染色の試薬を含んでもよい。もう一つの実施態様では、キットは、較正顕微鏡写真の使用、および、免疫組織化学的染色アッセイ実施のための説明書を含んでもよい。
【0018】
本発明のさらにもう一つの実施態様では、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションアッセイを実行するためのキットが提供される。この例示の実施態様では、キットは、癌組織由来の核酸が、蛍光標識核酸プローブとインサイチュでハイブリダイズしている癌組織から得られた、較正顕微鏡写真を含む。核酸プローブは、ビタミン受容体をコードする核酸にハイブリダイズするか、あるいは、該プローブは、ビタミン受容体をコードする核酸に対して相補的な核酸にハイブリダイズする。もう一つの実施態様では、キットはさらに、蛍光標識核酸プローブを含んでもよい。もう一つの実施態様では、キットは、インサイチュハイブリダイゼーション用の試薬を含んでもよい。さらにもう一つの実施態様では、キットは、較正顕微鏡写真の使用、および、インサイチュハイブリダイゼーションアッセイ実施のための説明書を含んでもよい。
【0019】
もう一つの例示の実施態様では、ビタミン受容体結合アッセイを実行するためのキットが提供される。この例示の実施態様では、キットは、癌細胞におけるビタミン受容体の数の範囲に関し、癌について良好結果対不良結果と相関する範囲を特定する較正表を含む。もう一つの例示の実施態様では、キットはさらに、放射性標識された受容体結合性リガンド、またはその類縁体を含んでもよい。もう一つの例示の実施態様では、キットはさらに、ビタミン受容体結合アッセイを実行するための試薬を含む。もう一つの例示の実施態様では、キットはさらに、ビタミン受容体結合アッセイを実行するための説明書を含む。
〔関連出願に対する相互参照〕
本出願は、米国特許法第119(e)条に基づき、2005年3月30日出願の米国仮出願第60/666,430号の優先権を主張する。なお、この特許出願を参照することにより本出願に含める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量することによって、癌の予後診断を獲得し、管理の手引きとし、該癌の効果的治療を開発するための、方法およびキットが提供される。さらに、ビタミン受容体標的法を利用する治療法によって治療すべき患者を選択するために、癌細胞におけるビタミン受容体の存在を定量する(すなわち、ビタミン受容体を検出する)方法およびキットが提供される。例示の実施態様では、ビタミン受容体は、葉酸受容体であってもよく、癌細胞は、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれてもよい。本法において使用される癌組織は、患者から外科的に取り出されたものであってもよい。癌細胞が乳癌細胞である実施態様では、乳癌は、リンパ節陰性疾患を含んでもよいが、ただし本発明は、リンパ節陰性疾患に限定されない。本法は、一次悪性腫瘍塊に対して実行でき、転移疾患の予後にも価値を有しうる。
【0021】
他の例示の実施態様では、ビタミン受容体の発現は、免疫組織化学的染色法、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法、サザンブロッティング、ドットブロットハイブリダイゼーション、放射線標識リガンドによる放射性受容体アッセイ、等の技術を用いて、定量または検出が可能である。免疫組織化学的染色法が用いられる実施態様では、使用される抗体は、ポリクローナル抗体、またはその混合物、あるいは、モノクローナル抗体、またはその混合物、あるいは、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の組み合わせであってもよい。
【0022】
さらに別の例示の実施態様では、免疫組織化学的染色法もしくはインサイチュハイブリダイゼーション法、または、前述の特質のうちの任意のものを有する放射性標識リガンドを使用する放射性受容体アッセイが提供される。
【0023】
本発明のもう一つの例示の実施態様では、免疫組織化学的染色アッセイを実行するためのキットが提供される。このキットは、ビタミン受容体に対する抗体によって染色された癌組織から得られた較正顕微鏡写真を含む。例示の一実施態様では、キットはさらに、ビタミン受容体に対する抗体を含んでもよい。もう一つの実施態様では、キットはさらに、免疫組織化学染色の試薬を含んでもよい。もう一つの実施態様では、キットは、較正顕微鏡写真の使用、および/または、免疫組織化学的染色アッセイ実施のための、説明書を含んでもよい。
【0024】
本発明のさらにもう一つの実施態様では、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションアッセイを実行するためのキットが提供される。この例示の実施態様では、キットは、癌組織の核酸が蛍光標識核酸プローブとインサイチュでハイブリダイズしている癌組織由来の、較正顕微鏡写真を含む。核酸プローブは、ビタミン受容体をコードする核酸にハイブリダイズするか、あるいは、該プローブは、ビタミン受容体をコードする核酸に対して相補的な核酸にハイブリダイズする。もう一つの実施態様では、キットはさらに、蛍光標識核酸プローブを含んでもよい。もう一つの実施態様では、キットは、インサイチュハイブリダイゼーション用の試薬を含んでもよい。さらにもう一つの実施態様では、キットは、較正顕微鏡写真の使用、および/または、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションアッセイの実施のための、説明書を含んでもよい。
【0025】
もう一つの例示の実施態様では、ビタミン受容体結合アッセイを実行するためのキットが提供される。この例示の実施態様では、キットは、癌細胞におけるビタミン受容体の数の範囲に関し、癌について良好結果対不良結果と相関する範囲を特定する較正表を含む。もう一つの例示の実施態様では、キットはさらに、放射性標識された受容体結合性リガンド、またはその類縁体を含んでもよい。もう一つの例示の実施態様では、キットはさらに、ビタミン受容体結合アッセイを実行するための試薬を含んでもよい。もう一つの例示の実施態様では、キットはさらに、較正表を使用するための、および/または、ビタミン受容体結合アッセイを実行するための説明書を含んでもよい。
【0026】
本発明によれば、本明細書で用いる「定量化」または「定量する」とは、癌細胞におけるビタミン受容体の数を定量すること、または、癌細胞におけるビタミン受容体の発現レベルを直接または間接に定量すること、を意味する。本明細書で用いる「定量化」または「定量する」という用語の意味の実例は、免疫組織化学的染色(実施例5、8、および9)において、1+、2+、または3+という染色の強度が割り当てられる、実施例5、8、9、および10において見ることができる。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)では、ビタミン受容体遺伝子の増幅は、ビタミン受容体遺伝子の存在を表す核内の信号をカウントし、ビタミン受容体遺伝子の信号の数を、増幅されない遺伝子の信号の数と比較し、非増幅信号に対する増幅信号の比を求めることによって、定量される(実施例10)。このような方法は、HER-2/neu遺伝子の増幅の定量化に関して、従来技術において既知である。「定量化」または「定量する」とはまた、例えば、放射性標識リガンドを用いるビタミン受容体結合アッセイ(実施例11)によって、癌細胞におけるビタミン受容体について、より絶対数に近い数を定量することを意味してもよい。
【0027】
本明細書に記載される種類の「定量化」には、医師が、免疫組織化学的染色の強度または蛍光の強度、あるいは、ビタミン受容体結合アッセイによって求めた受容体の数に基づいて、患者を、グループ別に、例えば、「良好結果」または「不良結果」グループに分類し、それによって、患者に対してもっとも効果的な治療処方を決定できるようにすることが求められる。高い(例えば、2+または3+の)免疫化学的染色強度または蛍光強度は、不良結果と相関するので、そのような患者は、強力な治療処方を受けるべきである。
【0028】
本発明の方法およびキットは、ヒトの臨床医学および獣医学応用の両方のために使用することが可能である。本明細書に記載される方法およびキットは、単独で用いてもよいし、あるいは、他の予後診断法や(本明細書に記載されるもののような)予後指標、または、癌に対する予後診断のキットまたは効果的治療法を開発するためのキットと共に、あるいは、癌細胞におけるビタミン受容体の存在を定量し、ビタミン受容体標的法を利用する治療法によって治療すべき患者を選択するための、方法またはキットと共に用いてもよい。別の予後指標を使わず、ビタミン受容体の発現だけを用いて予後を決定する場合、ビタミン受容体の発現は、独立した予後診断因子と見なされる。
【0029】
癌細胞は、良性腫瘍および悪性(例えば、転移性)腫瘍を含む、腫瘍形成性の癌細胞集団であってもよいし、あるいは癌細胞は、非腫瘍形成性であってもよい。癌細胞集団は、自発的に生じてもよいし、あるいは、宿主動物の生殖系列に存在する突然変異、または体細胞突然変異のような過程によって生じたものであってもよく、あるいは、癌細胞集団は、化学的に、ウィルスによって、または放射線によって誘発されたものであってもよい。本発明は、癌、例えば、上皮癌、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、メラノーマ、中皮種、バーキットリンパ腫、鼻咽頭癌、白血病、および骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)のような癌の予後診断を獲得するために、あるいは、癌におけるビタミン受容体の検出のために使用されてもよい。癌細胞としては、脳、口内、甲状腺、内分泌腺、皮膚、胃、食道、子宮内膜、喉頭、他の頭部および頸部、すい臓、結腸、結腸直腸、膀胱、骨、卵巣(例えば、漿膜性、類内膜性、および粘膜性)、子宮頸部、子宮、乳房、睾丸、前立腺、直腸、腎臓、肝臓、および肺の癌(例えば、腺癌および中皮種)、または、ビタミン受容体を過剰に発現する、他の任意の癌が挙げられる。
【0030】
上記パラグラフに記載された癌のタイプのうち多くのものは、例えば、ビタミン受容体について陽性であることが知られる(Ross et al., Cancer 73:2432-2443(1994)、Garin-Chesa et al., Am. J. Pathol. 142(2):557-67(1993)、Franklin et al., Int. J. Cancer Suppl. 8:89-95(1994)、Li et al., J. Nuc. Med. 37:665-672(1996)、Toffoli, Int. J. Cancer 74:193-198(1997)、Veggian, Tumor 75:510-513(1989)、Weitman, et al., Cancer Research 52:3396-3401、および、Bueno et al., J. Thor. Card. Sur. Feb. 121:225-233(2001)を参照されたい)。
【0031】
癌の予後診断を獲得することによって開発される治療処方としては、例えば、米国特許出願US-2001-0031252-A1、 US-2003-0086900-A1、 US-2003-0198643-A1、 US-2005-0002942-A1、 または、PCT国際公報WO03/097647に記載される、ビタミン受容体標的治療法、およびそれらの組み合わせが挙げられる。これらの公報のそれぞれを、引用することにより本明細書に含める。開発される治療処方としてはさらに、放射線療法、化学療法、免疫療法、または、患者が不良結果グループに分類された場合は、侵襲的監視、またはこれらの療法の組み合わせが挙げられる。
【0032】
それとは別に、良好結果グループに入る患者に対しては、比較的侵襲度の低い対処法を用いてもよい。本明細書に記載される方法を用いて、例えば、強度の染色または蛍光(例えば、2+または3+)が観察された場合、あるいは、FISHアッセイまたはビタミン受容体結合アッセイによって、それぞれ、閾値数の受容体または増幅された遺伝子が、癌細胞の中に、またはその上に定量された場合には、より侵襲的な治療が必要とされる。
【0033】
例示の一実施態様では、癌細胞は、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞、または、ビタミン受容体を過剰発現する他の任意の癌から成るグループから選ばれてもよい。癌細胞が乳癌細胞である実施態様では、乳癌は、リンパ節陰性疾患を含んでもよいが、ただし本発明は、リンパ節陰性疾患に限定されない。
【0034】
本明細書に記載される免疫組織化学的染色アッセイの方法およびキットに使用される抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体(例えば、PU17またはmAb343)であってもよい。例示の実施態様では、ポリクローナル抗体の混合物、またはモノクローナル抗体の混合物、またはポリクローナルおよびモノクローナル抗体の混合物を用いることが可能である。他の例示の実施態様では、抗体は、抗体の指向する受容体の過剰発現によって癌細胞に優勢に結合することの可能な抗体の、Fab断片、またはscFv断片(すなわち、直接標識抗体の、Fab断片、または単一鎖可変領域)、またはそれらの混合物であってもよい。本明細書に記載される抗体のタイプのうちの任意のものを組み合わせて使用することが可能である。従来技術で既知の、任意の抗ビタミン受容体抗体、例えば、Ross et al., Cancer 73:2432-2443(1994)、 Garin-Chesa et al., Am. J. Pathol. 142(2):557-67 (1993)、 Franklin, et al., Int. J. Cancer Suppl. 8:89-95 (1994)(すなわち、モノクローナル抗体146、343、458、および741)、Li et al., J. Nuc. Med. 37:665-672 (1996)、 Toffoli, Int. J. Cancer 74:193-198(1997)、 Veggian, Tumor 75:510-513 (1989)、 Weitman, et al., Cancer Research 52:3396-3401、 Bueno et al., J. Thor. Card. Sur. Feb. 121:225-233 (2001)、およびConey, et al., Cancer Research 51:6125-6132 (1991)(すなわち、MOv18およびMOv19)に記載される抗体を使用してもよい。なお、これら各論文を引用することにより本明細書に含める。
【0035】
本明細書に記載される免疫組織化学的な方法およびキットに使用される抗体のいずれも、免疫組織化学的染色法において該抗体が直接検出されるよう、当業者で既知の試薬(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、化学的発光化合物等)によって直接標識することが可能である。それとは別に、抗ビタミン受容体抗体に結合する標識二次抗体を、この免疫組織化学的染色法に使用することも可能である。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、抗体は、高い親和性をもって、癌細胞または他のタイプの細胞上の受容体に結合する。高い親和性をもつ結合は、抗体に本来備わっているものであってもよく、あるいは、結合の親和性は、化学的に修飾された抗体を用いることによって増強してもよい。
【0037】
本明細書に記載される免疫組織化学的方法およびキットにおいて使用される抗体集団のいずれも、タンパクの精製に使用される標準法によって精製することが可能である。抗体精製については種々の方法が当業者にはよく知られる。通常、ポリクローナル抗体は、抗原を注入した動物の血清から採取され、モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞の培養液から、または、ハイブリドーマ細胞を注入した動物の腹水から採取される。血清または培養液から精製するためには、抗体に対し、当業者に既知の精製または画分技術を実施してよい。通例の精製または画分技術としては、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-セファロースカラムクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、溶媒−溶媒抽出、限外ろ過、FPLC、およびHPLCが挙げられる。精製抗体は、例えば、限外ろ過、接線フローろ過のような技術によって、濃縮することが可能である。血清、培養液、または腹水から抗体を精製するための上述の精製法は、これらに限定されるものではなく、精製抗体を得るために必要であれば、当業者に既知の任意の精製技術を抗体の精製のために使用してもよいことを理解しなければならない。
【0038】
本明細書に記載される免疫組織化学的染色アッセイにおいて使用される抗体は、一つの実施態様では、有効量の抗体を含む、予後診断用の組成物を処方するために使用される。使用が可能な組成物の例は、抗体の水溶液、例えば、リン酸バッファー生食液、または他の従来技術で既知のバッファー液、5%グルコース、または、その他の既知の組成物、例えば、アルコール類、グリコール類、エステル類、およびアミド類を含む生食液に溶解した抗体の溶液、が挙げられる。他のタンパク(例えば、ウシ血清アルブミン、ゼラチン等)、または化学薬剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、EDTA、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロテアーゼ阻害剤、還元剤、アルデヒド等)を添加することによって、抗体を安定化することが可能である。キットの中の抗体組成物はまた、抗体を含む、再構成可能な凍結乾燥体であってもよい。
【0039】
抗体の結合部位は、癌細胞の表面または内部において優勢に発現/提示される任意の受容体であってよい。抗体の結合部位はまた、活性化マクロファージ、または他の刺激された免疫細胞の表面に存在していてもよい。これらの細胞によって選択的に発現される表面顕在タンパクは、正常細胞の上には全く存在しないか、またはごく低濃度でしか存在せず、これらの細胞に対する抗体の選択的な結合のための手段となる受容体である。従って、これらの細胞において正常細胞に比べて発現の上昇する抗体、または正常細胞の表面では発現/提示されない受容体、または、正常細胞の表面では確かな量としては発現されない受容体は、それがどのようなものであれ、定量化のために使用することが可能である。一つの実施態様では、抗体に結合する部位は、ビタミン受容体、例えば、葉酸受容体である。
【0040】
本発明の例示の実施態様では、ビタミン受容体は、直接的に(例えば、免疫組織化学によって)、または間接的に(例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションアッセイによって)定量されるか、または、本明細書に記載される方法またはキットによって検出される実体を構成する。本明細書に記載される方法およびキットによって定量または検出が可能な、受容可能なビタミン受容体としては、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12、および、脂溶性ビタミンA、D、E、およびK、に対する受容体が挙げられる。
【0041】
例示の一実施態様では、葉酸受容体が定量されてもよい。葉酸およびその還元された同類体は、ヌクレオチド塩基、アミノ酸、およびその他のメチル化化合物の生合成において使用される、炭素転移反応に必要とされ、従って、葉酸および還元同類体は、増殖細胞によって、より大量に要求される。葉酸は、低親和性の還元葉酸担体(Km = 10-5M)、または高親和性の葉酸受容体(Kd = 10-10M)のいずれかによって、細胞内に輸送される。還元葉酸担体は普遍的に発現され、多くの正常細胞において唯一の葉酸塩取り込み経路を構成する。腎臓および胎盤を例外として、正常組織は、高親和性葉酸受容体については、低レベルか、検出不能レベルでしか発現しない。一方、悪性組織を含む多くの腫瘍組織、例えば、卵巣、乳房、子宮、腎臓、子宮内膜、気管支、結腸、肺、および脳の癌、およびメラノーマ、リンパ腫、および骨髄腫は、有意に高レベルの高親和性葉酸受容体を発現する。事実、全ての卵巣癌のうちの90%が、この受容体を過剰発現すると推定されている。さらに、最近、葉酸受容体の非上皮性のアイソフォームである葉酸受容体βが、活性化された滑膜のマクロファージには発現されるが、安静な滑膜マクロファージでは発現されないことが報告されている。このようにして、本出願人等は、ビタミン受容体の過剰発現が定量可能な様々な癌について、その予後診断を獲得することが可能であることを見出した。
【0042】
本明細書に記載される免疫組織化学的アッセイは、本従来技術で既知の、任意の免疫組織化学的染色アッセイプロトコール、例えば、米国特許第5,846,739、および5,989,838号に記載されるプロトコールによって実施されてもよい。なお、この特許文書を引用することにより本明細書に含める。一般に、例示の一実施態様では、パラフィン包埋組織切片を、脱パラし、再度水和し、ブロックすることが可能である。組織切片は、免疫組織化学的アッセイの前に、従来技術で既知の任意の固定剤、例えば、フォルマリンによって固定し、および/または、染色前に熱いオーブンで乾してもよい。抗原回収工程も実行することが可能である。次に、切片は、一次抗体とインキュベートされ、未結合抗体を除去するために洗浄され、二次抗体、例えば、酵素結合抗体とインキュベートされてもよい。抗体複合体は、不溶性の色素原とインキュベートされて、着色された不溶の沈殿を生じてもよい。次に、切片は、光学顕微鏡による検査のために、対比染色されてもよい。
【0043】
例示のもう一つの実施態様では、凍結組織切片を使用してもよく、凍結切片はエタノールで固定してもよい。この組織切片は、例えば、メタノールに溶解したペルオキシダーゼでブロックされ、Powerblock(商標)試薬(Biogenics, San Ramon、カリフォルニア州)によってブロックされてもよい。次に、抗体染色を、DAKO LSAB(商標)-HRPシステム(DAKO, Carpinteria、カリフォルニア州)を用いて行ってもよい。
【0044】
本明細書に記載される方法では、免疫組織化学染色に関して従来技術で既知の任意の試薬を用いてよい。例示の実施態様では、組織は、染色の前に、従来技術で既知の任意の固定剤、例えば、エタノール、アセトン、またはフォルマリンによって固定されてもよい。別の例示の実施態様では、免疫組織化学的染色アッセイを実行するための試薬としては、脱パラのためのキシレン、段階的なアルコール洗浄液(例えば、100%、95%、および70%エタノール溶液)、および水和のための水、リン酸バッファー生食液、または他のバッファー液、ペルオキシダーゼ、ブロッキングのためのCAS Block(商標)(DAKO, Carpinteria、カリフォルニア州)、またはPowerblock(商標)(Biogenics, San Ramon、カリフォルニア州)、抗原回収のためのBorg Decloaker Buffer(商標)(Biocare Medical Walnut Creeak、カリフォルニア州)、対比染色のためのヘマトキシリン(Sigma, St. Louis, ミズリー州)、ビタミン受容体に対するポリクローナル抗体、ビタミン受容体に対するモノクローナル抗体、および、抗体染色のための基質としてジアミノベンジジンを用いる、ビオチン-アビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ法による、EnVision(商標)HRP/DAB+検出キット(DAKO Cytomation, Carpenteria, カリフォルニア州)、またはDAKO LSAB(商標)-HRP検出キット(DAKO, Carpinteria、カリフォルニア州)、が挙げられる。本明細書に記載される方法では、免疫組織化学染色法に関して従来技術で既知の、他の任意の試薬、例えば、従来技術で既知の、他の任意の抗体染色キットの使用が可能である。
【0045】
本法に使用されるキットは、下記にさらに詳細に述べる較正顕微鏡写真を含み、さらに、免疫組織化学染色アッセイを実行するのに使用される前述の試薬のうちの任意の一つ以上を含んでもよい。キットには、免疫組織化学染色アッセイを実行するのに使用される従来技術で既知の、他の、任意の試薬が含まれてもよい。キットはさらに、キット試薬を使用するための、および/または、癌の予後を決定するために較正顕微鏡写真を使用するための説明書を含んでもよい。
【0046】
較正顕微鏡写真(すなわち、対照スライド)は、対照組織の切片から、および癌組織から、試験サンプルを染色するのに使用されるものと同じ免疫組織化学染色アッセイプロトコールを用いて調製される。任意の癌組織の使用が可能であり、例えば、弱く微細な顆粒状の染色(1+染色)を持つスライド、荒い顆粒状の染色(2+染色)を持つスライド、および、強力で、強い明瞭な荒い顆粒状の染色(3+染色)を持つスライドが含まれてもよい。
【0047】
1)癌細胞におけるビタミン受容体の発現レベルを定量して(すなわち、後述する蛍光インサイチュハイブリダイゼーションアッセイの目的のためには、「ビタミン受容体の発現を定量する」とは、ビタミン受容体遺伝子増幅の定量による、間接的な定量を意味する)、癌に関する予後診断を獲得し、その患者のために効果的治療処方を開発するため、または、2)癌細胞におけるビタミン受容体の存在を定量し、ビタミン受容体標的法を利用する治療法によって治療すべき患者を選択するため、に使用が可能なもう一つの方法は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法(FISH)である。FISH技術は、ビタミン受容体、例えば、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12、および、脂溶性ビタミンA、D、E、およびKに対する受容体、を過剰発現する癌細胞において、その受容体をコードする遺伝子の増幅を検出するために使用される。FISHは、標本の中の僅か数個の細胞が癌性である場合に、局所的な増幅を検出することができる点で有利である。
【0048】
FISHアッセイは、米国特許第6,358,682、および6,218,529号に詳述される。なお、これらの特許文書を引用することにより本明細書に含める。通常、FISHアッセイは、フォルマリン固定され、パラフィン包埋された癌組織、例えば、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれる癌組織を利用する。フォルマリン固定され、パラフィン包埋された癌組織は、化学的におよび/または酵素的に、タンパク質を消化するために処理されてもよく、DNAを2本鎖DNAから1本鎖DNAに変換するために、例えば、加熱および/または高い塩濃度によって処理されてもよく、。次にDNAは、固定剤、例えば、フォルムアミドによって1本鎖として固定されてもよい。
【0049】
次に、この1本鎖になり固定されたDNAを、蛍光標識DNAプローブを含むハイブリダイゼーション液に接触させてもよい。プローブは、ビタミン受容体をコードする核酸に対して相補的であるか、あるいは、プローブは、ビタミン受容体をコードする核酸に対して相補的な核酸に対して相補的であってもよい。次に、切片は、ハイブリダイゼーションに好適であることが従来技術で知られる任意の条件下でインキュベートされ、ハイブリダイゼーション洗浄液において洗浄されてもよい。ハイブリダイゼーションのための、ハイブリダイゼーション液および洗浄液は、Sambrook and Russell編集、「分子クローニング(Molecular Cloning)」、第3版、2001に記載されている。なお、この文献を引用することにより本明細書に含める。
【0050】
このプローブは、DNAプローブにビオチンを結合させる、蛍光標識リガンド(例えば、フルオレセイン標識アビジン)を用いて蛍光標識することが可能である。あるいは、プローブは、例えば、フルオレセイン、またはローダミンによって直接的に蛍光標識することが可能である。核DNAを、例えば、介在性蛍光染料(例えば、Antifadeに溶解した4’,6-ジアミド-2-フェニリドール(DAPI))によって対比染色してもよい。蛍光の検出には落射蛍光顕微鏡を用いてもよい。例えば、フルオレセインによって標識されたプローブからは緑色光が放出され、DAPIによって標識される核DNAからは青色光が放出される。この例では、組織切片の核について、青い背景に対して緑色の信号の数がスコアとして数えられる。このプロトコールは、米国特許第6,358,682号にさらに詳細に記述される。なお、この文献を引用することにより本明細書に含める。
【0051】
FISHを実行するためのキットは、蛍光標識核酸プローブ、インサイチュハイブリダイゼーションのための試薬、較正顕微鏡写真(すなわち、対照スライド)、および、較正顕微鏡写真またはキットの使用説明書、または、これらの任意の組み合わせを含んでもよい。分析される標的の集団は、例えば、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞、または、ビタミン受容体を過剰発現する、他の任意の癌細胞、であってもよい。
【0052】
キット中の蛍光標識プローブは、従来技術においてFISHに有用であることが知られる任意の蛍光化合物、例えば、フルオレセイン、ローダミン等によって、直接的に標識されてもよい。それとは別に、キット中のプローブは、間接的に標識されてもよい。例えば、ビオチンがプローブに接合され、その蛍光プローブが、アビジン-蛍光標識結合体とのインキュベーションによって、間接的に蛍光標識されてもよい。インサイチュハイブリダイゼーションのための、キット試薬の一つは、背景の核DNAを染色するための対比染色用試薬(例えば、DAPI)であってもよい。
【0053】
較正顕微鏡写真(すなわち、対照スライド)は、腫瘍から得られた組織切片、または細胞系統から調製されてもよい。細胞系統は、スライドの上に均等に広げられてもよい。細胞系統は、細胞の均一性の点で有利である可能性がある。ビタミン受容体遺伝子の正常なコピー数を有するスライド、ビタミン受容体遺伝子の高いコピー数を有するスライド、および、ビタミン受容体遺伝子の低いコピー数を有するスライド、を用いてもよい。
【0054】
例示の一実施態様では、癌の同じ組織に由来する細胞系統が使用される。例示のもう一つの実施態様では、細胞系統は腫瘍細胞系統ではない。対照スライドは、例えば、不動化材料、例えば、アガロース、ゼラチン、ペクチン、アルギネート、カラゲナン、モノマー、ポリマー等の中で、細胞を不動化することによって調製されてもよい。不動化材料は、冷却、イオンの添加、重合剤の添加、架橋剤の添加等によって形成することができる。例示のもう一つの実施態様では、細胞は、血漿内で凝固され、フォルマリンで固定され、パラフィンに包埋されてもよい。次に、パラフィンは薄切され、パラフィンブロックの切片はスライドの上に設置されてもよい。従来技術で既知の他の固定剤も使用が可能である。このような技術は、「診断分子病理学(Diagnostic Molecular Pathology)」、1巻、IRL Press、ニューヨーク州、に記載される。なお、この文献を引用することにより本明細書に含める。
【0055】
市販されている、Oncor INFORM HER-2/neu遺伝子検出システム(Ventana Medical Systems, Gaithersburg, メリーランド州)およびAbbott Path Vysion(商標)キットと類似のキットを、ビタミン受容体遺伝子の増幅のために使用することが可能である。Oncor INFORMキットおよびAbbott Path Vysion(商標)キットの取り扱い説明書を、引用することにより明示的に本明細書に含める。
【0056】
本発明のもう一つの例示の実施態様において、癌の予後を決定するためのビタミン受容体アッセイが提供される。この方法は、放射性標識された、ビタミン受容体結合性リガンドまたはその類縁体に、癌細胞を接触させる工程、癌細胞におけるビタミン受容体の数を定量する工程、および、癌の予後を決定する工程、を含む。
【0057】
例示の一実施態様では、ビタミン受容体は葉酸受容体であってもよい。もう一つの例示の実施態様では、癌細胞は乳癌細胞であってもよい。この実施態様では、乳癌は、リンパ節陰性疾患を含んでもよいが、ただし本発明は、リンパ節陰性疾患に限定されない。さらにもう一つの実施態様では、癌細胞は、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれてもよく、あるいは、ビタミン受容体を過剰発現する、他の任意の癌細胞であってもよい。もう一つの例示の実施態様では、放射性標識リガンドは、放射性標識された葉酸塩、またはその類縁体であってもよい。
【0058】
葉酸塩の類縁体としては、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、および、葉酸受容体結合性のプテリジン、例えば、テトラヒドロプテリン、ジヒドロ葉酸塩類、テトラヒドロ葉酸塩類、ならびに、それらのデアザおよびジデアザ類縁体、が挙げられる。「デアザ」および「ジデアザ」類縁体という用語は、天然の葉酸構造において、1つ以上の窒素原子を置換した炭素原子を有する、従来技術で認知済みの類縁体を指す。例えば、デアザ類縁体としては、1-デアザ、3-デアザ、5-デアザ、8-デアザ、および10-デアザ類縁体が挙げられる。ジデアザ類縁体としては、例えば、1,5ジデアザ、5,10-ジデアザ、8,10-ジデアザ、8,10-ジデアザ、および5,8-ジデアザ類縁体が挙げられる。上記葉酸類縁体は、通常、「葉酸塩類」と呼ばれるが、このことは、それら類縁体が、葉酸受容体に結合可能であることを反映している。他の葉酸受容体結合性類縁体としては、アミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキセート)、N10-メチルフォレート、2-デアミノ-ヒドロキシフォレート1-デアザメトプテリンまたは3-デアザメトプテリンのようなデアザ類縁体、および、3’5’-ジクロロ-4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキセート)、が挙げられる。
【0059】
従来技術で既知の、任意のビタミン受容体結合アッセイ(すなわち、放射性受容体アッセイ)、例えば、Parker et al., Anal. Biochem. (2005)に記載される、可溶性ビタミン受容体を定量するためのアッセイ(実施例11を参照)を用いてもよい。ビタミン受容体結合アッセイを実行するのに有用であると従来技術で既知の、任意の試薬、例えば、放射性標識されたビタミン受容体結合性リガンド、またはその類縁体を用いてもよい。
【0060】
これらの試薬、例えば、放射性標識されたビタミン受容体結合性リガンド、またはその類縁体のうちの任意のものを、癌の予後を決定するために使用されるキットに組み込んでもよい。キットはさらに、癌細胞におけるビタミン受容体の数の範囲に関し、癌について良好結果対不良結果と相関する範囲を特定する較正表を含んでもよい。キットはさらに、キット試薬の使用のための、および/または、癌の予後を決定するために較正表を使用するための説明書を含んでもよい。
【0061】
ビタミン受容体標的法を利用する治療法によって治療すべき患者を選択するための、癌細胞におけるビタミン受容体の存在を定量する(すなわち、ビタミン受容体を検出する)方法およびキットも提供される。例示の実施態様では、ビタミン受容体は、葉酸受容体であってもよく、癌細胞は、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれてもよく、あるいは、ビタミン受容体を過剰発現する、他の任意の癌細胞であってもよい。この方法において使用される癌組織は、患者から外科的に取り出されたものであってもよい。癌細胞が乳癌細胞である実施態様では、乳癌は、リンパ節陰性疾患を含んでもよいが、ただし本発明は、リンパ節陰性疾患に限定されない。ビタミン受容体は、免疫組織化学染色アッセイ、FISHアッセイ、および、放射性標識リガンドを用いるビタミン受容体結合アッセイを含む、本明細書に記載される方法のうちから選ばれる任意の方法によって検出されてもよい。
【0062】
ビタミン受容体標的法を利用する治療法としては、例えば、米国特許出願公報US-2001-0031252-A1、US-2003-0086900-A1、US-2003-0198643-A1、および、US-2005-0002942-A1、またはPCT国際特許公報WO 03/097647に記載されるものと同様の治療法、またはそれらの組み合わせであってもよい。なお、これらの各出願を引用することにより本明細書に含める。
【実施例】
【0063】
〔実施例1〕
組織サンプル
多様な臨床結果を有する女性から選択された侵襲的乳癌に関する組織マイクロアレイが構築された。具体的に言うと、集められた67のサンプルのうち34は、診断から少なくとも7年間は再発の無かった女性から得られたものである。他の33個の標本は、診断後3.5年未満に再発した女性から得られた。リンパ節陰性疾患に関するマーカーを見出すために、本セットにはリンパ節陰性のサンプルが多くなるようにした。全ての癌は1984〜1985年に診断されており、これによって、良好結果グループについての十分な追跡調査が確保された。
【0064】
患者および腫瘍の特徴を表1に示す。サンプルのセットを、早期再発・対・再発無し(または後期再発)の女性がほぼ等しい数となるように構築した。前述したように、リンパ節陰性疾患における鑑別マーカーを見つけ出すために、リンパ節陰性のサンプルを主力とした。リンパ節陰性疾患を有する女性は52名であった。リンパ節陽性疾患を有する女性は15名であった。T1腫瘍は34例、T2腫瘍は33例であった(T1は2 cm以下;T2は2.1から5 cm)。70%の癌はエストロゲン受容体陽性であり、24%の癌がエストロゲン受容体陰性であった。6%の癌は、エストロゲン受容体の陽性または陰性に関して不明であった。補助的化学療法を受けた女性は僅かに10名で、3名が、タモキシフェン治療を受けた。81%の癌が高い等級のものであった。
【0065】
33名の女性が、診断から3.5年以内に再発した、不良結果グループであった。再発までの期間の中央値は1.9年であった。34名は、診断後少なくとも7年間は再発が無かった。この良好結果グループのうち、32名では、中央値が13.7年の追跡期間には、再発が見られなかった。他の2名は両方とも、診断から14年後に再発した。生存患者・対・死亡患者の百分比は、不良結果グループでは、15%対85%であった。良好結果グループでは、76%が生存し、24%が死亡した。
【0066】
表1 患者および腫瘍の特徴

【0067】
〔実施例2〕
抗血清の調製
葉酸受容体に対するポリクローナル抗血清(PU-17)は、Endocyte, Inc.から入手した。手短に言うと、ウシミルク葉酸結合タンパクを、Sigma Chemical Co.から購入し、葉酸固定化カラムでアフィニティー精製して、フロインドのアジュバントで乳化し、次にこれを、確立された手順に従いニュージーランド白ウサギに接種した。フロインドの不完全アジュバントとの同時投与による第2回ブーストの2週間後、血液を採取し、抗血清を収集した。
【0068】
〔実施例3〕
<抗体精製>
試薬調製
1. 収集バッファー:1Mリン酸塩、pH8
約450 mLの脱イオン水に、67.2 gのNa2HPO4 および0.367 gのNaH2PO4.H2Oを加えた。この混合物を溶解するまで攪拌し、1N HClまたはNaOHでpH8.0に調整した。脱イオン水で最終容量を500 mLとし、Nalgene 500 mL 0.22μmフィルターユニットでろ過した。
【0069】
2. 洗浄バッファー:10 mMリン酸塩、pH8
5 mLの1Mリン酸バッファー, pH8を約450 mLの脱イオン水で希釈した。HClでこのpHを6.8に調整し、脱イオン水で最終容量を500 mLとした。溶液をNalgene 500 mL 0.22μmフィルターユニットでろ過した。
【0070】
3. 溶出バッファー:0.1M グリシン、pH2.5
約450 mLの脱イオン水に、3.75 gのグリシンを加えた。溶解するまでこの溶液を攪拌し、HClでpHを2.5に調整した。脱イオン水で最終容量を500 mLとし、Nalgene 500 mL 0.22μmフィルターユニットでろ過した。
【0071】
4. リン酸バッファー生食液(PBS)、pH7.4
100 mLのGibco 10X PBSを、約850 mLの脱イオン水に加え、攪拌した。HClでpHを7.4に調整し、脱イオン水で最終容量を1 Lに増した。溶液をNalgene 1L 0.22μmフィルターユニットでろ過した。
【0072】
5. 100X BSA/アジド液:
100 mg/mL のBSA、および10%のアジ化ナトリウム(w/v)を、PBS, pH7.4に溶解した。1 g のBSA および1 gのアジ化ナトリウムを、10 mLの1X PBS, pH7.4に加えた。全てのBSAが溶解するまでこの溶液をよく混ぜ合わせた。溶液を、0.22μmの注射筒駆動フィルターユニットでろ過した。
【0073】
FPLC精製
FBP結合HiTrap(登録商標)アフィニティーカラムを室温に温め、カラムを、20 mLの洗浄バッファーpH6.8を流速5 mL/分で流して洗浄し、平衡化した。精製過程の洗浄および溶出工程にはFPLCシステムを用いた。15 mLのPU-17のサンプルを、洗浄バッファー, pH6.8と1:1比で混合した。希釈した抗血清を、25 mm MCE注射筒駆動フィルターユニット, 0.45 μmと10 mLツベルクリン注射筒を用いてろ過した。抗血清を、5 mLのツベルクリン注射筒によって注入した。
【0074】
抗血清を、室温で約10分放置してカラムに結合させた。このインキュベーション期間後、さらに5 mLの抗血清をカラムに加えた。抗血清添加後、10 mLの洗浄バッファー、pH6.8を、10 mLのツベルクリン注射筒を用いてカラムに加えた。
【0075】
カラムへの抗血清の5 mL注入を2回行った後、カラムをFPLCシステムに吊るした。カラムを、約10 mLの洗浄バッファー(バッファーA)によって流速5 mL/分で洗浄した。洗浄液に物質が検出されなくなってから溶出を開始した。5 mL/分の流速を用い、100%溶出バッファー(バッファーB)になるまで濃度勾配を加えた。この時点で、1 mLずつの分画を収集した。A280を監視し、溶出抗体を含む分画をプールし、保存した(通常、5〜10分画)。
【0076】
分画をプールした後、溶出された抗体を、約400 μLの収集バッファーpH8を添加することによって中和した。サンプルに収集バッファーをゆっくり加え、pHを、pHydrion 6-8 pHペーパーによって監視した。pHがpH6.4-7.0に達した時、抗体サンプルは十分に中和された。
【0077】
全ての抗体がカラムから溶出された後、勾配を切り替えてバッファーA(0%バッファーB)に戻した。カラムを再び、約20 mLの洗浄バッファー(バッファーA)によって平衡化した。カラムを平衡化させた後、カラムをFPLCシステムから切り離し、5 mLの抗血清液の注入をさらに2回行ってカラムに結合させてから、溶出させた。前述の工程を繰り返し、最終的に、全ての抗血清をカラムに通した。
【0078】
第1抗体濃縮工程
全ての血清が精製され、溶出抗体が中和され、プールされた後、この精製抗体を、Millipore Ultrafree(登録商標)-4 Biomax 10K NMWL遠心濃縮器に投入した。この濃縮器を、最終的に総容量が約2 mLに達するまで、3200 x g、4℃で遠心した。
【0079】
バッファー交換および第2抗体濃縮工程
PBS, pH7.4で平衡化した、平衡PD-10カラム(BioRad Econo-Pac(登録商標) 10 DGディスポーザブルクロマトグラフィーカラム)を用いて、バッファーを交換した。約2 mLのサンプルをカラム貯留槽に入れた。全てのサンプルをカラムの基質に進入させた。この時点で、カラムから1 mLずつの分画を収集した。カラム貯留槽の頂上にPBSを注ぎ、抗体を溶出した。各分画について、石英UVキュベットと分光光度計(分光光度計をゼロにするにはPBSを用いた)を用いて280nmでの吸収によりタンパク含量を確認した。タンパクを有する全ての分画をプールした。
【0080】
プールされた抗体液は、Millipore Ultrafree(登録商標)-4 Biomax 10K NMWL遠心濃縮器に投入し、最終容量が約1-2 mLの精製抗体が得られるまで前述のように濃縮した。
【0081】
〔実施例4〕
組織マイクロアレイの構築
216コア収容レシピエントブロックの中に0.6 mmの組織コアを配列させるように、特注装置を用いて組織マイクロアレイを構築した。各患者の腫瘍ブロックから得られた複数のコアを、基準マーカーとして、かつ、免疫組織化学反応の対照として作用する肝臓のコアと共に、レシピエントブロックに組み込んだ。帯電スライドの上に登載した、この組織マイクロアレイ切片上で、免疫組織化学検査を実施した。
【0082】
〔実施例5〕
免疫組織化学
下記のアッセイによって免疫組織化学(IHC)を行った。IHCは、Fisher社のSuperFrost帯電スライドの上で、5ミクロンに薄切した、フォルマリンで固定し、パラフィンに包埋した切片について行った。各スライドを、染色に先だって、65℃オーブンで30〜40分間加温した。フォルマリン固定・パラフィン包埋サンプルを、3回のキシレン交換で脱パラし、一連のエタノール洗浄(100%、95%、次に70%エタノール)と流れる蒸留水にて再水和した。脱脂後、スライドを、Biocare Decloakerユニット(Biocare Medical, Walnut Creek、カリフォルニア州)中でBORG Decloakerバッファーに入れた。冷却後、切片を、流れる蒸留水中で十分に濯いだ。DAKO自動染色器によって(室温で)以下の手順で可視化を完了した。切片を、エタノールに溶解した3%H2O2とインキュベートし、内因性のペルオキシダーゼを不活性化した。次に、切片を、1:200 PU-17ウサギ一次抗体(Endocyte, Inc.,から入手)と30分インキュベートした。切片を、TBST洗浄バッファーで濯いだ。標識されたポリマーウサギEnVision+, HRP/DAB+検出(DAKO Cytomation, Carpinteria、カリフォルニア州)を添加し、15分インキュベートした。スライドをTBST洗浄バッファーで濯いだ。次に、切片をジアミノベンジジン(DAB+)液(DAKO Cytomation, Carpinteria、カリフォルニア州)中で5分インキュベートし、シュミットのヘマトキシリン改変版で5分間対比染色し、流れる水道水に3分置いて青色とし、封入し、カバーグラスで覆った。
【0083】
〔実施例6〕
ディジタル画像記録
スライドはヘマトキシリンで対比染色した。ディジタル画像記録は、コンピュータインターフェイスによる電子制御標本台、および高解像度3CCDビデオカメラを備えるZeiss Axioplan顕微鏡から成る、Blissの「バーチャル顕微鏡」およびコンピュータシステム(Bacus Laboratories, Lombard,イリノイ州)を用いて行い、関連組織コア情報を含むMicrosoft Access(登録商標)データベースと連結した、コア画像を持つバーチャルスライドを得た。画像およびデータファイルを、サーバーの共有スペースに保存することによって、免疫組織化学的計測結果のスコアを得るために、遠隔的にディジタル画像を参照することが可能になった。
【0084】
〔実施例7〕
等級および染色強度の定義、および統計学
用いた等級評価システムは、構造的なパターン、核異常の程度、および細胞分裂の頻度(Broders, A.C., JAMA 74:656-664(1920)および(Broders, A.C., Surg. Clin. North America 21:947-62(1941))を評価する。等級1の腫瘍は、主に腺または乳頭状の増殖パターンと、僅かに核多形を有する。等級4の腫瘍は、主に固相の増殖パターンと、著明な核多形を有する。等級2の腫瘍は、主に腺または乳頭状のパターンと、中等度の核多形を有する。等級3の腫瘍は、腺状および固相の混在した増殖と、中等度の核多形を有する。
【0085】
葉酸受容体発現の染色は、0から3までのスコアで評価した。識別可能な染色が見られないものはスコア0とした。スコア1は、弱い、微細な顆粒状の染色を表した。スコア2は、より荒い顆粒状の染色を反映し、スコア3は、強く明瞭な、荒い顆粒状の染色であった。陽性の染色は、存在する場合、通常、腫瘍全体に広がっていた。スコアが1+、2+、および3+の染色の代表的なサンプルを、図1〜3に示す。
【0086】
大多数の患者サンプルから複数のコアが得られた(4%が6個のコアを持ち、74%が3個のコアを持ち、16%が2個のコアを持ち、6%が1個のコアを持っていた)。全てのコアを染め、読み取りをした。次に、強度値を平均し、集計スコアを得た。全てのスコアが負であるサンプルは無かった。染色強度についての3種類の集計スコアを、下記のように定義した。すなわち、1 = 0.3 〜 1.3; 2 = 1.5 〜 2.3; 3 = 2.5 〜 3とした。
【0087】
患者および腫瘍の特徴については、中央値および度数を含む、記述的統計学を用いた。再発無し生存率は、Coxの比例危険度単一変量および多変量モデルを用いて評価した。
【0088】
〔実施例8〕
受容体染色強度
葉酸受容体の平均染色強度は、11サンプル(17%)において1+、17サンプル(25%)において2+、および39サンプル(58%)において3+であった。全てのコアが負であったサンプルは無かった。染色強度が1+である11名の女性のいずれも再発を経験しなかった。2+の染色サンプルを持つ17名の女性のうち、5名(29.4%)が再発した。染色強度が3+であるグループでは、39名のうち28名(71.8%)が再発し、その中央値は2.5年であった。染色強度1+および2+のグループにおける再発までの期間の中央値は、図4に示すように、4年を超えている。図1〜3は、1+、2+、および3+の染色強度の例を示す。正常組織対照においては、葉酸受容体の染色は陰性であった。
【0089】
腫瘍のサイズ、リンパ節の状態、等級、およびエストロゲン受容体の状態で区分した、葉酸受容体染色強度のパターンを、表2に示す。葉酸受容体の過剰発現と、腫瘍のサイズ、リンパ節の状態、またはエストロゲンの状態との間には相関は無かった。高い等級と、強力な葉酸受容体の発現との間には相関があった(p=0.036)。
【0090】
各種の病理的特徴と再発率とを、二分変数(すなわち、良好結果・対・不良結果)として比較すると、強力な3+の葉酸受容体陽性は、早期の再発と相関した(危険度比6.0;(95% CI 2.3−15.7)、p<0.001、表3を参照)。このサンプルのセットでは、良好結果グループと不良結果グループに、ほぼ等しい数のリンパ節陽性およびリンパ節陰性サンプルが存在した。同様に、T1腫瘍・対・T2腫瘍の割合、およびエストロゲン受容体陽性サンプル・対・エストロゲン受容体陰性サンプルの割合も、二つの結果グループの間で、比較的均一に分布していた。
【0091】
結論として、腫瘍サイズ、リンパ節の状態、エストロゲン受容体の状態、補助的治療、腫瘍の等級、および組織検査に関して調整した後も、依然として葉酸受容体の3+染色強度は、不良結果と有意に相関した(p<0.001)。この乳癌患者コホートにおいて、葉酸受容体の強力な陽性は、もっとも有意義な予後診断の因子であった。従って、葉酸受容体の過剰発現と、乳癌の早期再発の間には強い相関がある。本明細書に記載されるアッセイは、癌患者の予後を決定し、かつ、その予後に基づいて治療処方を決定するのに用いてもよい。
【0092】
表2

*全てのp値はFisherの正確確率検定を経て得られた。
【0093】
表3 病理的特徴と結果

* 別様に指示しない限り全てのp-値はカイ二乗である。
** Fisherの正確確率検定による。
【0094】
〔実施例9〕
<免疫組織化学>
この免疫組織化学染色アッセイは、従来技術で既知の、任意の免疫組織化学的染色法によって実行することが可能である。例示のもう一つの方法を後述する。
【0095】
スライドを、三つの連続するキシレン浴に、各浴3分入れる。過剰な液を切り、スライドを、三つの連続する100%エタノール浴に、各浴15回漬け込みする。過剰な液を切り、スライドを、三つの連続する95%エタノール浴に、各浴15回漬け込みする。過剰な液を切り、スライドを、脱イオン水に入れ、各30秒間、3回交換する。
【0096】
熱誘発エピトープ回収(HIER)による前処理
スライドを、250 mLのBORG Decloaker試薬で満たした、染色皿に入れた。染色皿を、約17-25 psiの圧力下で、約120℃の温度に維持されたDecloakingチェンバー(BioCare Medical, Walnut Creek, カリフォルニア州)に3分間入れた。スライドを10分冷却した。
【0097】
ペルオキシダーゼブロッキング
スライドを、DI水中で手短に濯いだ。過剰な水を吸取紙で取った。再びスライドを1分DI水で濯ぎ、過剰な水を吸取紙上で切った。標本を覆うのに十分な量の、DAKO EnvisonPlusキット中の、調製済みペルオキシダーゼブロック剤を添加した。スライドを室温で5±1分インキュベートした。溶液をスライドから流下させた。スライドを、PBS浴にて、3回、各回3分±30秒洗浄した。
【0098】
CASブロッキング
過剰なバッファーを吸取紙の上で切った。十分な量の調製済みCASブロックを加えて標本を覆った。スライドを室温で10±1分インキュベートした。溶液をスライドから流下させ、過剰な液を吸取紙の上で切った。
【0099】
標本を覆うのに十分な量の、希釈した(5 μg/mL)一次抗体(PU-17)、または陰性対照試薬(ウサギIgG)を加えた。標本を、高湿度のチェンバー内で室温で30±1分インキュベートした。スライドを、重複型対照から試験品に向かって流れるPBSでそっと濯いだ。スライドを、PBS浴にて、3回、各回3分±30秒洗浄した。
【0100】
ペルオキシダーゼ標識ポリマー
過剰なバッファーを吸取紙の上で切った。十分な量の、DAKO EnvisonPlusキットの中の調製済みHRP-標識ポリマー二次抗体を加えて、標本を覆った。溶液をスライドから流下させた。スライドを、PBS浴にて、3回、各回3分±30秒洗浄した。
【0101】
基質-クロモゲン
過剰なバッファーを吸取紙の上で切った。十分な量の、調製済み液体DAB基質-クロモゲン液(包装内に挿入された説明書に従って調製)を加えて標本を覆った。標本を室温で5±1分インキュベートした。溶液をスライドから流下させた。スライドを、脱イオン水にて、3回、各回30秒濯いだ。
【0102】
対比染色および脱水
過剰な水を切った。スライドを、ハリスのヘマトキシリン浴に1分間入れた。スライドを、流れる脱イオン水に15秒、または、濯ぎ水が透明になるまで入れた。スライドを、0.5%の酸性アルコールに1回短時間漬け、流れるDI水にて30秒濯いだ。次に、スライドを、0.2%アンモニアに40秒漬け、流れるDI水にて15秒濯いだ。スライドを、三つの連続する95%エタノール浴に、各浴15回漬け込みした。スライドを、三つの連続する100%エタノール浴に、各浴15回漬け込みした。スライドを、三つの連続するキシレン(またた、等価な透徹剤)浴に、各浴1分漬けた。スライドを、封入剤によって封入した。
【0103】
<スライドの解釈>
陽性対照
全ての試薬が適正に機能していることを確かめるために、先ず陽性対照組織を調べてみるべきである。標的抗原部位に褐色の最終産物が存在することが、陽性反応を示す。陽性対照組織が陽性染色を示すことができなかった場合、試験標本に関する結果は不当なものと見なさなければならない。
【0104】
陰性対照
陽性対照組織の後で、一次抗体によって標的抗原が特異的に標識されることを確かめるために、陰性対照を調べてみるべきである。陰性対照組織において特異的染色が見られないことによって、細胞/細胞成分に対する、抗体の交差反応性がないことが確認される。もしも陰性対照組織において特異的染色が見られるならば、試験標本に関する結果は不当なものと見なさなければならない。
【0105】
非特異的染色は、もし存在する場合は、散在する外観を呈する。過度にフォルマリン固定された組織から得られた切片では、結合組織の、散発的な明色染色が観察されることがある。壊死または変性した細胞は、非特異的に染まることがよくある。
【0106】
試験組織
一次抗体によって染められた試験標本は最後に調べるべきである。陽性染色強度は、陰性対照試薬の非特異的な背景染色を考慮に入れて評価しなければならない。特異的な陽性染色反応が無い場合は、検出抗原無しと解釈してもよい。
【0107】
十分な量の組織が提示されているかどうか、指定の組織が適切に表されているかどうかを決めるために、スライドにおいて組織の形態的検査を実行しなければならない。上記基準に合致しないサンプルは、分析から排除される。
【0108】
染色強度
試験品の染色強度は、陰性対照抗体によって染められた隣接切片を含む対照スライドの強度に対する相対値として判断される。陰性試薬対照によって標識される切片の染色強度は「背景」と見なした。
「0」は、同基準標本の背景染色に対し、染色を示さない。
「1+」は、弱い、または軽度の褐色染色として見える弱い反応性を示す。1+染色は、通常、低倍率の顕微鏡検査では見えない。
「2+」は、中間濃度(強度)の褐色染色の色調を呈する中等度の反応性を示す。2+染色は、低倍率の顕微鏡検査でも見えるが、著明ではない。
「3+」は、暗褐色から黒色の染色を呈する、強力な反応性を示す。3+染色は、低倍率の顕微鏡検査でも明白な陽性染色として簡単に認めることが可能である。高倍率では、細胞内部分(膜、細胞原形質、および核)に強調点が認められる。
【0109】
染色強度の解釈

【0110】
〔実施例10〕
FISHアッセイ
癌組織のフォルマリン固定、パラフィン包埋切片が調製され、タンパクを消化するため化学的および酵素的に処理される。次に、この切片は、20X SSCおよびフォルムアミドの存在下に75℃に加熱され、DNAを、2本鎖DNAから1本鎖DNAに変換する。次に切片は、蛍光標識DNAプローブを含むハイブリダイゼーション液に接触させされる。このプローブは、ビタミン受容体をコードする核酸に対して、あるいは、ビタミン受容体をコードする核酸に対して相補的な核酸に対して、相補的である。次に切片は、ハイブリダイゼーションに好適な条件下でインキュベートされる。切片は、20X SSCおよびフォルムアミドの混合液において洗浄される。
【0111】
ハイブリダイズしたプローブは、蛍光標識リガンド(例えば、蛍光標識アビジン)を用いて検出される。このリガンドは、DNAプローブに連結したビオチンと結合する。核DNAを、介在性蛍光染料(例えば、Antifadeに溶解したDAPI)によって対比染色する。蛍光の検出には落射蛍光顕微鏡が用いられ、緑色(フルオレセイン)および青色光(DAPI)が放出される。この組織切片における核は、青い背景における緑色の信号の数がスコアとして数えられる。このプロトコールは、米国特許第6,358,682号にさらに詳細に記述される。なお、この文献を、引用することにより本明細書に含める。
【0112】
〔実施例11〕
ビタミン受容体結合アッセイ
癌患者(例えば、卵巣癌患者または乳癌患者)から組織標本が得られる。サンプル調製手順は全て4℃で行われ、公表された手順によって行われる(Parker et al., Anal. Biochem. (2005))。なお、この文献を引用することにより本明細書に含める。
【0113】
葉酸受容体アッセイ
本文献に記載される例示のプロトコールは、葉酸受容体定量のために、下記のように実施された。組織サンプルは、PowerGen 125ホモジェナイザー(Fisher Scientific)を用い、ホモジェナイゼーションバッファー(10 mM Tris, pH8.0, ロイペプチンおよびアプロチニンそれぞれ0.02 mg/ml;組織50 mg当たり1 mlバッファー)中で均一化した。大きな塵は、穏やかな遠心(3000 x g、15分)によって除去した。膜のペレットを、40,000 x g、60分の遠心によって収集し、可溶化バッファー(50 mM Tris, pH7.4, 150 mM NaCl, 2 mM n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、5 mM EDTA、および0.02%のアジ化ナトリウム)に再縣濁した。不溶性物質を、再度の4,0000 x g, 60分の遠心によって除去し、上清の総タンパク濃度を、ビシンコニン酸(BCA)法(Pierce Chemical)によって定量した。次に、各サンプルを、可溶化バッファーにて0.25 mg/mlに希釈し、100 μlを、二つのMicrocon-30マイクロ濃縮器(30,000-MWカットオフ、Millipore)のそれぞれに投入した。次に、サンプルを、室温で14,000 x gで10分遠心して、液体成分は全て膜を通過させ、可溶化した受容体をマイクロ濃縮器の膜表面に保持した。その後の遠心工程は全て同じパラメータを用いた。
【0114】
各マイクロ濃縮器に酢酸バッファー(30 mMの酢酸55 μl, pH3.0, 150 mM NaCl)を加え、次いで遠心工程を行った。次に、55 μlのリン酸バッファー生食液(PBS)を各マイクロ濃縮器に投下し、次いでもう一度遠心した。次に、50 μlの[3H]-葉酸結合試薬(500 mM NaCl, 2.7 mM KCl および25 mM n-オクチル-β-D-グルコピラノシドを含む10 mM Na2PO4, 1.8 mM KH2PO4, pH7.4に溶解した120 nM [3H]-葉酸(Amersham))、または、50 μLの競合試薬(結合試薬プラス120 μM未標識葉酸)を、適宜、相当する濃縮器に加えた。室温で20分のインキュベーション後、各濃縮器を、PBSに溶解した50 mM n-オクチル-β-D-グルコピラノシド, 0.7 M NaCl, pH7.4の75 μLで3回洗浄/遠心した。最後の洗浄後、4% Triton-X100(登録商標)を含む100 μLのPBSでマイクロ濃縮器の膜表面を2回濯ぐことによって、可溶化した葉酸受容体を含む濃縮液を回収した。次に、このサンプルについて、液体シンチレーションカウンター(Packard Bioscience Co.)においてカウントした。CPM値を、既知標準のCPMに基づいて葉酸受容体のピコモルに換算し、最終結果を、サンプルのタンパク含量に対して正規化した。
【0115】
アッセイの濃度依存性および直線性
上に概略した葉酸受容体アッセイ過程を、二三の修正を加えてそのまま用いた。濃度依存性アッセイについては、葉酸受容体の増大レベルを発現することが知られるヒトB細胞リンパ腫組織を、分析のために選び、1つのマイクロ濃縮器当たり50 μgの膜由来全タンパクを定量した。[3H]-葉酸結合試薬について5種類の濃度(5, 15, 30, 60, および120 nM)を、1000倍過剰な未標識葉酸の存在下、および不在下に試験した。このアッセイにおいて飽和が達成された。葉酸受容体結合部位の飽和を実証するために、組織サンプルとして45 μgの転移性卵巣腺癌を用い、10, 100, 120, 130, および140 nMの[3H]-葉酸結合試薬の濃度を分析した(±1000倍過剰な未標識葉酸)。
【0116】
このアッセイもまた、直線性を示すことが明らかにされた。直線性アッセイのために、ヒトの卵巣乳頭漿膜嚢腺癌組織標本から得られた膜由来全タンパクの14, 24, 34, および45 μgを、120 nMの[3H]-葉酸結合試薬液を用いて分析した。タンパク濃度は、BCAタンパクアッセイ(Pierce)によって定量した。
【0117】
〔実施例12〕
癌細胞におけるビタミン受容体の発現
Fisher社のSuperFrost帯電スライド上で、5ミクロンに薄切した、フォルマリンで固定しパラフィン包埋した、結腸、肺、卵巣、および子宮内膜腫瘍の切片の免疫組織化学検査を行った(各タイプの腫瘍組織について30-50枚の組織切片を調べた)。スライドを、染色に先だって65℃オーブンで30-40分加温した。フォルマリン固定・パラフィン包埋したサンプルを、3回のキシレン交換で脱パラし、段階的なエタノール洗浄(100%、95%、次に70%エタノール)と流れる蒸留水で再水和した。脱脂後、スライドを、99℃水浴中の、あらかじめ加熱したDAKO標的回収バッファーに入れた。20分冷却後、切片を、流れる蒸留水中で十分に濯いだ。DAKO自動染色器によって(室温で)以下の手順で可視化を完了した。切片を、エタノールに溶解した3%H2O2とインキュベートし、内因性のペルオキシダーゼを不活性化した。次に、切片を、DAKO背景抑制希釈液中に1:100希釈したモノクローナル抗体343を含む一次抗体希釈液中で30分インキュベートした。モノクローナル抗体343は、コロラド大学のWilbur Franklin博士の恵与によるものである(Franklin, et al., Int. J. Cancer Suppl., vol. 8: 89-95(1994))。切片を、TBST洗浄バッファーで濯いだ。CSAIIビオチン不含有Tyramide信号増幅システム(DAKO Cytomation, Carpinteria, カリフォルニア州)を添加し、15分インキュベートした。スライドをTBST洗浄バッファーで濯いだ。次に、切片をジアミノベンジジン(DAB+)液(DAKO Cytomation, Carpinteria、カリフォルニア州)中で5分インキュベートし、シュミットのヘマトキシリン改変版で5分対比染色し、流れる水道水に3分置いて青色とし、封入し、カバーグラスで覆った。葉酸受容体アルファに対する343モノクローナル抗体によって免疫標識すると、侵襲的な結腸、肺、卵巣、および子宮内膜の腫瘍の大部分は、中等度(2+)から強度(3+)の陽性であった。
【0118】
〔実施例13〕
癌細胞におけるビタミン受容体の発現
免疫組織化学検査を、フォルマリン固定・パラフィン包埋切片に対して行った。サンプルを、3回のキシレン交換で脱パラし、エタノールの漸減シリーズ(99% x 2, 90% x 2)で再水和し、流れる蒸留水で濯いだ。次に、スライドを、99℃の標準的な実験用水浴中で、DAKO標的回収バッファー(DAKO Cytomation, カタログ番号S1699)に40分入れ、50 mM Tris HCl, 300 mM NaCl, 0.1% Tween-20, pH7.6 (TBST)に20分おいて室温に冷却し、さらに、TBSTで2回5分濯いだ。
【0119】
次に、切片を、ペルオキシダーゼブロック試薬と5分インキュベートし、次いで、タンパクブロック試薬と5分インキュベートした。両試薬とも、CSAIIキット(DAKO Cytomation, カタログ番号K1497)に含まれるものである。切片を、背景抑制希釈液(DAKO Cytomation、カタログ番号S3022)で希釈したマウス343モノクローナル抗体(10 μg/ml)と30分インキュベートした。陰性対照切片は、10 μg/mlの非免疫マウスIgG1(DAKO Cytomation, カタログ番号X0931)と、または、背景抑制希釈液(「一次抗体無添加」対照)とインキュベートした。
【0120】
一次抗体とのインキュベーション後、切片を、TBSTで濯ぎ(3 x 5分)、抗マウス免疫グロブリン-HRPと15分インキュベートし、TBSTで濯ぎ(3 x 5分)、次に、暗黒中で、室温で、増幅試薬(フルオレシル-チラミド/HRP)と15分インキュベートした。この増幅工程の後、切片をTBSTで濯ぎ(3 x 5分)、室温で、抗フルオレセイン-HRPと15分インキュベートした。最後の一連のTBST洗浄(3 x 5分)の後、切片を、ジアミノベンジジンと3分インキュベートした。抗体増幅および可視化工程の際に使用された試薬は全て、CSA IIキットの一部として支給されたものであった。
【0121】
発色後、切片をヘマトキシリンで対比染色し、漸増シリーズのエタノール(90-99-100%)で脱水し、キシレンの2回の交換によって透徹し、DePeXの下でカバーグラスを載せた。Olmpus DP12ディジタルカメラと組み合わせたOlympus BX51顕微鏡を用いて顕微鏡写真を得た。図5〜7に示すように(パネルA、B、およびC)、すい臓、子宮内膜、および子宮頸部癌組織は、葉酸受容体アルファに対するモノクローナル抗体であるmAb 343によって、陽性に染色された。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、乳癌細胞における葉酸受容体の、強度1+の免疫組織化学的染色の例を示す。本例は、弱い、微細な顆粒状の染色を含む。
【図2】図2は、乳癌細胞における葉酸受容体の、強度2+の免疫組織化学的染色の例を示す。本例は、荒い顆粒状の染色を含む。
【図3】図3は、乳癌細胞における葉酸受容体の、強度3+の免疫組織化学的染色の例を示す。本例は、強く明瞭な、荒い顆粒状の染色を含む。
【図4】図4は、疾病再発に対する葉酸受容体染色の平均強度の例を示す。
【図5】図5は、葉酸受容体アルファに対するモノクローナル抗体(mAb 343;パネルAおよびB)による、すい臓腺癌の免疫組織化学染色の例を示す。パネルAおよびBは、柱状細胞の頂上面の膜染色を示し(白抜き矢印)、パネルBは、柱状細胞の原形質の顆粒状染色を示す(黒塗り矢印)。パネルCは、非免疫mIgG1とインキュベートした切片を示す。
【図6】図6は、葉酸受容体アルファに対するモノクローナル抗体(mAb 343;パネルAおよびB)による、子宮内膜癌の免疫組織化学染色の例を示す。パネルAおよびBは、腺上皮細胞の原形質、および頂上膜の強力な染色を示す(白抜き矢印)。腺の間の支質には染色が見られない(パネルBの黒塗り矢印)。パネルCは、非免疫mIgG1とインキュベートした切片を示す。
【図7】図7は、葉酸受容体アルファに対するモノクローナル抗体(mAb 343;パネルAおよびB)による、子宮頸部の扁平上皮癌の免疫組織化学染色の例を示す。扁平上皮の原形質において限局した強い染色が見られた(パネルBの白抜き矢印)。パネルCは、非免疫mIgG1とインキュベートした切片を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量することによって、癌の予後を決定する方法であって、
該癌細胞におけるビタミン受容体をインビトロで定量する工程、および、
該癌の予後を決定する工程、
を含む方法。
【請求項2】
ビタミン受容体が葉酸受容体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
癌細胞が乳癌細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
乳癌がリンパ節陰性疾患を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
癌細胞が、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
定量する工程が、抗体による免疫組織化学的染色を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
抗体がポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
癌のための治療処方を決める工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
癌の予後を決定するための免疫組織化学的方法であって、
ビタミン受容体に対する抗体に、癌細胞をインビトロで接触させる工程、
該癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量する工程、および、
該癌の予後を決定する工程、
を含む方法。
【請求項11】
ビタミン受容体が葉酸受容体であることを特徴とする、請求項10に記載の免疫組織化学的アッセイ方法。
【請求項12】
癌細胞が乳癌細胞であることを特徴とする、請求項10に記載の免疫組織化学的アッセイ方法。
【請求項13】
乳癌がリンパ節陰性疾患を含むことを特徴とする、請求項12に記載の免疫組織化学的アッセイ方法。
【請求項14】
癌細胞が、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の免疫組織化学的アッセイ方法。
【請求項15】
抗体がポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項10に記載の免疫組織化学的アッセイ方法。
【請求項16】
抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項10に記載の免疫組織化学的アッセイ方法。
【請求項17】
ビタミン受容体標的法を利用する治療法によって治療すべき患者を選ぶために、癌細胞におけるビタミン受容体の存在を定量する方法であって、
ビタミン受容体に対する抗体に、癌細胞をインビトロで接触させる工程、
該癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量する工程、および、
ビタミン受容体標的法を利用する治療法によって治療する患者を選択する工程、
を含む方法。
【請求項18】
ビタミン受容体が葉酸受容体であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
癌細胞が乳癌細胞であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
乳癌がリンパ節陰性疾患を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
癌細胞が、卵巣癌細胞、子宮癌細胞、子宮内膜癌細胞、結腸直腸癌細胞、脳癌細胞、腎臓癌細胞、メラノーマ細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、および肺癌細胞から成るグループから選ばれることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
ビタミン受容体に対する抗体によって染色された癌組織から得られた較正顕微鏡写真を含むキット。
【請求項23】
ビタミン受容体に対する抗体をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
免疫組織化学染色の試薬をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のキット。
【請求項25】
免疫組織化学染色の試薬をさらに含むことを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項26】
較正顕微鏡写真の使用のための説明書をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のキット。
【請求項27】
較正顕微鏡写真の使用のための説明書をさらに含むことを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項28】
較正顕微鏡写真の使用のための説明書をさらに含むことを特徴とする、請求項24に記載のキット。
【請求項29】
較正顕微鏡写真の使用のための説明書をさらに含むことを特徴とする、請求項25に記載のキット。
【請求項30】
抗体がポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項31】
抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項32】
較正顕微鏡写真が、癌の予後と相関する染色強度を有することを特徴とする、請求項22に記載のキット。
【請求項33】
較正顕微鏡写真が、ビタミン標的治療に対する患者の反応と相関する染色強度を有することを特徴とする、請求項22に記載のキット。
【請求項34】
ビタミン受容体標的法を利用する治療法による治療のために選ばれた癌患者用の、治療処方を決めるための方法であって、
ビタミン受容体に対する抗体に、該患者から得られた癌細胞をインビトロで接触させる工程、
該癌細胞におけるビタミン受容体の発現を定量する工程、および、
該患者の治療処方を決定する工程、
を含む方法。
【請求項35】
ビタミン受容体が葉酸受容体であることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
癌細胞が乳癌細胞であることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
乳癌がリンパ節陰性疾患を含むことを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
癌が、卵巣癌、子宮癌、子宮内膜癌、結腸直腸癌、脳癌、腎臓癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、リンパ腫、および肺癌から成るグループから選ばれることを特徴とする、請求項34に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate


【公表番号】特表2008−537778(P2008−537778A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504275(P2008−504275)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/011376
【国際公開番号】WO2006/105141
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【出願人】(504389588)エンドサイト,インコーポレイテッド (16)
【出願人】(507325921)マヨ ファンデーション フォー メディカル エデュケーション アンド リサーチ (1)
【氏名又は名称原語表記】MAYO FOUNDATION FOR MEDICAL EDUCATION AND RESEARCH
【住所又は居所原語表記】200 First Street Southwest,Rochester, Minnesota 55905
【Fターム(参考)】