説明

細胞への物質送達の遠隔検出

本発明は、エンドサイトーシス感受性プローブの開発、および細胞性エンドサイトーシスの遠隔測定法を提供する。これらのプローブは、低い水透過性のナノ粒子またはリポソーム送達系、およびエンドサイトーシスによるバリアーの完全性の内生の分解性または崩壊性に基づく。本発明はまた、1つの態様にて、既にイメージング剤を封入しているリポソームへの両親媒性の治療基剤のローディングのための電気化学的勾配を作るために陰イオンキレーターを用いる方法によるイオン的に結合した診断薬および治療薬の共封入により、治療的および診断的利用性を合わせて有するリポソームを提供する。本発明は、遠隔検出リポーター分子をリポソーム脂質層へ固定するリポポリマーを挿入することによる治療リポソームのイメージング法を提供する。本発明は、疾患組織における分子指紋のイメージング、処置、および処置モニタリングを可能とする統合型の送達系を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発
国立衛生研究所により授与された助成金番号N01−CO−27176の条件により規定されているように、米国政府は、本発明に関し無償の実施権を有し、かつ一定の状況下において合理的な期間、特許権者に対して他の者に実施許諾を与えるように要求する権利を有する。
【0002】
他の出願の相互参照
本出願は、2003年7月9日出願の米国仮特許出願第60/486,080号に優先権を主張し、その仮特許出願の内容全体を参照により本明細書に含む。
【0003】
序論
発明の分野
本発明は、エンドサイトーシス感受性プローブの開発、および細胞エンドサイトーシスの遠隔測定のための方法を提供する。本発明はまた、治療的および診断的有用性を合わせて有するリポソームを提供する。本発明は、治療リポソームのイメージング法をさらに提供する。さらに、本発明は、疾患組織における分子指紋のイメージング、処置、および処置モニタリングを可能とする総合型送達系を可能とする。
【0004】
発明の背景
常磁性イオンを含むリポソームは、磁気共鳴(MR)イメージングのための造影剤として研究されてきた。初めの頃の結果は、常磁性イオンの封入効率の悪さ、リポソームの不安定性、特定の封入剤の毒性、および緩和能の悪さなどの障害により妨げられていた(Caride, et al., Magn Reson Imaging, 2: 107−112, 1984; Magin et al., Magn Reson Med, 3: 440−447, 1986; Navon et al., Magn Reson Med, 3: 876−880, 1986; Unger et al., Invest Radiol, 20: 693−700, 1985)。緩和能とは、MR造影剤が、それが作用する物質の緩和時間を変える特性である。MRイメージングに通常用いられる濃度にて、T1緩和に主に作用するMR造影剤の効果は、MR造影剤の濃度に比例して初期緩和率を高める。結果として、T10が初期T1緩和時間であり、r1が緩和能である場合、前記薬剤の存在におけるT1緩和時間は、(1/T1)=(1/T10)+r1C[式中、CはMR造影剤の濃度である]である。改善された緩和能は、MRイメージング技術により得られた画像のコントラストを改善する結果となる。
【0005】
使用された最初の方法の1つは、リポソームの水性空間内へのフェライト粒子または常磁性化合物などのMR造影剤の封入であった。封入の利点は、フェライト粒子または遊離マンガンなどのMR造影剤の毒性の低減である。臨床的に承認された造影剤であるガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸(GdDTPA)を封入しているリポソームの初期のインビトロMR研究は、周囲の水からの常磁性中心の遮蔽により、遊離薬剤と比較して緩和能の減少を示した(Unger et al., Invest Radiol, 23: 928−932, 1988)。しかしながら、直径<100nmのリポソームが、より大きな直径のリポソームよりも大きな緩和能を示すことも明らかにされた(Unger et al., MR imaging. Radiology, 171: 81−85, 1989)。これは、より小さなリポソームのより大きな表面積:容積率によって起こり得る、より多くの水のリポソーム膜の通過のためである。小さな単層リポソームに封入されたGd−DTPAの緩和能は、1/r(ここで、rは、リポソーム膜の半径である)で変化することが発見されている(Tilcock et al., Biochim Biophys Acta, 1022: 181−186, 1990)。しかしながら、次第に小さな直径を有するリポソームを用いる限界は、封入される薬剤の量が二層中の脂質の量と比べて減少することである。コレステロール含有リポソームは、コレステロールなしのリポソームよりも低い緩和能を有することも示された。他の方法は、リポソームの表面への常磁性物質の結合である。常磁性重合リポソーム(PPL)は、紫外線を照射したとき架橋する親水性の頭部基としてガドペンテト酸ジメグルミンの誘導体および疎水性アシル鎖のジアセチレン基を有する重合可能な脂質分子の型から合成されていた(Storrs et al., J Magn Reson Imaging, 5: 719−724, 1995)。PPL(0.015mmol/kg Gd3+)を注射したLewisラットのMR研究は、従来型のリポソームと比較して延長された血中半減期と整合して腎臓および肝臓における増大を示した。このことは、19時間の血液プール半減期が測定された111In標識PPLの研究で確認された。より最近の研究では、PPLをανβ(腫瘍悪性度と相関を示した内皮細胞インテグリン)に対するビオチン化抗体と結合させた。これらの免疫リポソームを腫瘍担持ラットに注射し、それは注射後24時間で得られた画像の増強された腫瘍視覚化を示した。いくつかの画像にて、腫瘍血管形成の「ホットスポット」を検出することができた(Sipkins et al., Nat Med,4: 623−626,1998)。
【0006】
発明の概要
本発明の1つの態様は、非侵襲的な方法(MRI、放射性核種、生体内光学的イメージング)により疾患の診断に有用な、例えば、病理細胞によるエンドサイトーシスの遠隔検出のためのリポソームを提供する。そのリポソームは、そのシグナルが目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節される検出可能マーカー、例えば、常磁性金属(例えば、ガドリニウム)キレートと結合したリポポリマーを含み得る。好ましい態様にて、低い水透過性の膜内に封入されたガドリニウムDTPA−BMA、ガドリニウムDTPA、またはガドリニウムHP−DO3A複合体を含むリポソームは、プロトン緩和能への影響が少ない。エンドサイトーシスにより、前記リポソームは分解され、キレートが放出され、同時に、MRI法により遠隔検出されるプロトン緩和能への影響が増加する。あるいは、リポソームは、蛍光消光剤の存在下にまたは自己消光濃度にて封入された蛍光マーカーを伴い作製される。エンドサイトーシスおよび結果として生じたリポソームのリソソーム分解は、レーザーイメージング法により生体内で検出される蛍光の増加を伴う前記マーカーの放出を引き起こす。その検出を、マーカーに特異的な抗体などの細胞内在化可能リガンドの組み込みにより細胞表面マーカー分子を含む細胞に特異的に行う。エンドサイトーシス特異的なシグナル調節を改善するため、前記リポソームを、例えばpH感受性リポポリマーの組み込みにより、低いpHなどの細胞内状態に感作性にする。
【0007】
本発明はまた、(a)細胞を、そのシグナルがエンドサイトーシスが起こり得る条件下での目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節される検出可能マーカーと結合させたリポポリマーを含むリポソームと接触させること、そして(b)エンドサイトーシス後の検出可能マーカーのシグナルを検出することを含む、リポソームのエンドサイトーシスの遠隔検出のための方法を提供する。好ましくは、検出可能マーカーは、ガドリニウムDTPA−BMA、ガドリニウムDTPA、またはガドリニウムHP−DO3Aを含む常磁性ガドリニウムキレートである。本発明の好ましい態様は、レーザーイメージング法を用いて、蛍光マーカーおよび蛍光消光剤を封入するリポソームのエンドサイトーシスを検出することを含む。
【0008】
本発明の他の態様は、治療薬および遠隔検出可能マーカーを組合せたリポソームを提供する。リポソームは、好ましくは治療薬およびリポポリマーと結合された遠隔検出可能マーカーを含む。前記治療薬を、リポポリマー−マーカー結合体とリポソームが安定に結合する条件下で結合したリポポリマーと一緒にインキュベートする。好ましい態様には、例えばジステアロイルアミノ−PEG−(Lys−Gd−DOTA)などのリポポリマー結合体のキレートが含まれる。薬剤を充填したリポソームとのインキュベーションにより、前記リポポリマーはリポソーム膜にそれ自身固定され、患者の身体におけるリポソーム薬剤の非侵襲的なモニタリングを提供する。好ましい態様にて、前記治療薬はドキソルビシンなどの抗ガン剤である。
【0009】
さらなる他の態様にて、本発明は、治療薬および遠隔検出可能マーカーを共に封入している改善されたリポソームを提供する。前記治療薬および検出可能マーカーは、イオン結合対のメンバーであり、すなわち、一方が陰イオンである場合、他方は陽イオンであり、またその逆もある。前記対のメンバーは、高効率の「遠隔ローディング」法により他のメンバーの封入を増強する、膜貫通のためのイオン性、化学的または電気的勾配を与える形態でリポソーム中に封入される。要すれば、2つのメンバーは、薬剤封入安定性および/または薬剤有効性も改善する安定なイオン複合体、または塩を形成する。態様の1つの例には、封入された陰イオン性MRIマーカーであるGd−DTPAを、ジアンモニウム塩の形態で有するリポソームが含まれる。リポソーム外のマーカーの除去により、アンモニウムイオンの膜貫通勾配は、同じリポソームにて、ドキソルビシンなどの陽イオン性抗ガン剤の高効率(例えば、>95%である)の共ローディングを可能とするように作られる。得られた二重ローディングされたリポソームは、患者における治療薬の非侵襲的なモニタリングを可能とする。
【0010】
本発明のもう1つの局面は、患者の身体におけるリポソーム薬剤の非侵襲的なモニタリングのための方法である。前記方法には、(a)(i)目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節されるシグナルを有する遠隔検出可能マーカー(ここで、該遠隔検出可能マーカーが、リポポリマーと結合されている)、および(ii)治療薬、を含むリポソームを投与すること、そして(b)遠隔検出可能マーカーのシグナルを検出すること、が含まれる。
【0011】
本発明の他の局面は、以下の明細書および特許請求の範囲を読むことにより当業者に明らかとなるであろう。
【0012】
図面の簡単な説明
図1は、リポソーム膜を通過する水の交換がいかに膜を構成する脂質の相転移に非常に敏感であることを示す。
【0013】
図2は、リポソーム膜の崩壊後のGd3+造影剤の放出を示す。キレートの放出、またはより迅速な水の交換に関する膜バリアーの容易な崩壊が、薬剤についての緩和能(R)の劇的な増加をもたらす。
【0014】
図3は、その4つのエステル結合のうちの1つの加水分解によりリン脂質を分解するためのホスホリパーゼの作用を示す;ホスホリパーゼA2は、sn−2位を切断し、ホスホリパーゼCは、リン酸塩のグリセロール側を切断し、そしてホスホリパーゼDは、リン酸エステルの頭部基側を切断する。
【0015】
図4は、ポリ(NIPAM−co−MAA−co−DODA)の化学的構造を示す。
【0016】
図5は、NIPAMのコポリマーによるpH誘発放出のメカニズムのスキーム図を提供する。
【0017】
図6は、グルクロン酸消光Gd3+MRI剤の酵素感受性を説明するスキームを提供する(スキーム1)。
【0018】
図7は、酸加水分解性シトラコニルリンカーを用いたGd3+についてのpH感受性DOTAキレーターの合成スキームを提供する(スキーム2)。
【0019】
図8は、様々なpHで放出されるリポソーム内容物の成形工程中、DSPC/Chol/PEG−DSPE(3:2:0.015)リポソームへのDODA−ポリ(NIPA−co−MAA)の組込みの効果を示す。リポソームを、様々なpHにて37℃で5分間インキュベートし、その後、316nmで励起後に520nmでHPTSについて蛍光光度計で分析した。
【0020】
図9は、異なるpHで放出されるリポソーム内容物の挿入による、DSPC/Chol/PEG−DSPE(3:2:0.015)リポソームへのDODA−ポリ(NIPA−co−MAA)の組込みの効果を示す。リポソームを、様々なpHにて37℃で5分間インキュベートし、その後、316nmで励起後に520nmでHPTSについて蛍光光度計で分析した。
【0021】
図10は、ビス−カルボキシメチル−PEG モノ−(N,N−ジオクタデシル)アミドテトラ(カルボベンゾキシ−L−リシン)結合(DSA−PEG−(Z−Lys))の合成スキームを提供する(スキーム3)。
【0022】
図11は、N−DOTA−ポリ(エチレングリコール)−ジオクタデシルアミンの合成スキームを提供する(スキーム4)。
【0023】
図12は、コレステロール ヘミスクシナチル(hemisuccinatyl)−ポリ(エチレン)グリコールの合成スキームを提供する(スキーム5)。
【0024】
図13は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノール−N−アミノグルタル酸の合成スキームを提供する(スキーム6)。
【0025】
図14は、O−グルタリール−ジオクタデシルグリセロール(グルタリール−DOG)の合成スキームを提供する(スキーム7)。
【0026】
図15は、マウスにおけるガドリニウムキレート(Gd−DTPA−BMA)を含むリポソームの静脈投与後の、BT−474異種移植腫瘍におけるMRIシグナル強度の変化を図示したものである。IL80は、「水透過性」DOPC/Chol/PEG−DPSE(3:1:1)抗HER2標的免疫リポソームであり、サイズは80nmである;IL50は、「水透過性」DOPC/Chol/PEG−DPSE(3:1:1)抗HER2標的免疫リポソームであり、サイズは50nmである;IMPLf5は、「水不透過性」DSPC/DPPC/Chol/PEG−DPSE(2.2:0.3:2:0.3)抗HER2標的免疫リポソームであり、サイズは約75nmである;IMPLntは、「水透過性」DSPC/DPPC/Chol/PEG−DPSE(2.2:0.3:2:0.3)非標的免疫リポソームであり、サイズは約75nmである。
【0027】
図16は、HER2過剰発現SKBR3細胞に対する、遊離ドキソルビシン(“DOX”)、F5scFv−標的免疫リポソーム ドキソルビシン、またはGd−DTPAと共封入された非標的リポソーム ドキソルビシンのインビトロ細胞毒性を図説する。
【0028】
図17は、薬剤のローディングを補助する勾配を形成するための成分としてTEA−Gd−DTPAを用いて充填されたリポソームにおけるドキソルビシン封入の血漿安定性を図示する。ドキソルビシン対リン脂質割合の変化が、リポソームからのドキソルビシンの喪失を示す。そのリポソーム試料を、37℃における微量透析分析にて50%ヒト血漿と一緒にインキュベートする。
【0029】
図18は、薬剤のローディングを補助する勾配を形成する成分としてTEA−Gd−DTPAを用いて充填されたリポソームにおけるガドリニウム封入の血漿安定性を図示する。Gdの量は、界面活性剤(トライトンX−100)によるリポソームの分離後のプロトン緩和能の測定により計測される。Gd対リン脂質割合の変化は、リポソームからのGdの喪失を示す。前記リポソーム試料を、37℃における微量透析分析にて50%ヒト血漿と一緒にインキュベートする。
【0030】
詳細な説明
例えば、常磁性または超磁性MRIプローブなどの遠隔検出可能なプローブは、腫瘍細胞結合および内在化によりシグナル生成(“オン”)を可能とするように、非シグナリング(“オフ”)構造でリポソーム内部に封入され得る。内在化は、非特異的または特異的な受容体仲介エンドサイトーシスの結果であり得る。リガンド受容体認識および腫瘍細胞内在化に基づく標的プローブ送達は、ガン細胞の主要かつ機能的分子特性を検出するための強力な方法を提供する。これらの修飾は、表面結合放射性核種および内部封入MRI剤の両方を有する多機能の免疫リポソームリポーター内に容易に結合され得る。この免疫リポソームリポーターは免疫リポソーム薬剤と同じモジュール構造およびターゲティング技術に基づくため、その2つを、イメージング、処置、および処置モニタリングのための密接に統合された方法における使用のために共に開発することができる。
【0031】
本発明は、標的細胞における内在化および放出により遠隔シグナリングを可能とする診断リポソームを提供する。この方法は、例えば、患者の身体内の細胞における病理学的マーカーの存在に依存するエンドサイトーシスの遠隔検出を可能とし、その目的のために、エンドサイトーシスによって誘発される検出可能シグナルを有するリポソームを、リガンド依存性の細胞内送達のための標的と結合する。本方法は、非侵襲的な方法で身体の疾患状態を検出するのに有用である。
【0032】
本発明はまた、治療的および診断的有用性を合わせて有するリポソームを提供する。1つの好ましい態様にて、リポソームを治療薬と一緒に充填する。次に、前記リポソームを、リポソームと安定な結合となるようにリポポリマーが結合するのを可能とする条件下で、遠隔検出可能な官能基と結合したリポポリマーと接触させる。治療薬の一例は、細胞毒性の抗ガン剤または遺伝子であり、診断化合物は、ガドリニウム(III)などの常磁性イオン、またはガリウム67もしくはインジウム111などの放射活性イオンと結合した脂質−ポリ(エチレングリコール)−キレーター結合複合体などの遠隔検出可能なリポポリマー複合体である。故に、かかるリポソームの例は、非侵襲的な放射活性走査または磁気共鳴イメージング(MRI)により患者の腫瘍への処置剤の送達を医者がモニタリングするのを可能とし、その結果、それぞれの患者のための治療法を最適化することができるであろう。好ましくは、遠隔検出特性を有する前記診断化合物、および治療化合物が、イオン的に結合する一対のメンバーであり、すなわち、一方が陰イオンであるとき、他方が陽イオンであり、またはその逆である。かかるイオン的に結合する対の1つのメンバーを、その後の“活性ローディング”法による第二のメンバーのローディングを補助し得る膜貫通イオンまたは電気化学勾配を生じるような方法で、まず初めにリポソームに充填する。例えば、MRI造影特性を有する遠隔検出化合物は、ジアンモニウムガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸(NHGd−DTPAであり得る。リポソームに封入され、さらにリポソーム外媒体から除去されるとき、この化合物はまた、Gd−DTPAとイオン対を形成する陽イオン性抗ガン剤であるドキソルビシンの高効率(事実上定量的)共ローディングをもたらすアンモニウムイオン勾配を提供する。驚いたことに、この方法にて、高充填治療薬および高充填遠隔マーカーを有するリポソームを効率よく作製することができることが発見された。これらの二重に充填したリポソームを、自己報告(self−reporting)として、遠隔検出可能な薬剤自体、またはリガンド特異的に病理細胞を標的とした組合せに用いることができる。
【0033】
細胞内在化に感受性を有する遠隔検出可能なプローブを封入するリポソーム
上記のように、本発明の1つの局面は、目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節されるシグナルを有する検出可能マーカーを含む、エンドサイトーシスの遠隔検出のためのリポソームである。好ましくは、前記検出可能マーカーは、常磁性金属キレートであるかまたはガドリニウムDTPA−BMA、ガドリニウムDTPA、またはガドリニウムHP−DO3Aなどのリポポリマーと結合した常磁性金属キレートである。前記リポソームは低い水透過性の膜を含み得、前記検出可能マーカーは蛍光マーカーであり得る。前記検出可能マーカーが蛍光マーカーであるとき、それは自己消光濃度で存在し得るかまたはリポソームが蛍光消光剤をさらに含む。好ましくは、前記リポソームは、pH感受性リポポリマーを含む。
【0034】
多数の研究により、蛍光プローブおよび治療薬の細胞内放出を増大するためのpH感受性または還元依存性リポソームの開発に至った(Chu et al., Pharm. Res. 7, 824−834, 1990; Drummond et al., Biophys. J. 64, A72, 1993; Drummond et al., Biophys. J. 72, A13, 1997; Drummond et al., Progress in Lipid Research 39, 409−60, 2000; Dauzgaunes et al., Biochemistry 24, 3091−3098, 1985; Dauzgaunes et al., (1991) in Membrane Fusion (Wilschut, J. and Hoekstra, D., eds.), pp. 713−730, Marcel Dekker, Inc., New York; Kirpotin et al., FEBS Lett. 388, 115−118、1996; Leroux et al., J. Controlled Rel. 72, 71−84, 2000; Meyer et al., FEBS Lett. 421, 61−64, 1998; Straubinger et al., FEBS Lett。179、148−154, 1985; & Zignani et al., Biophys. Acta 1463, 383−394, 2000)。これらの研究は、インビボにおける好ましい薬物動態学的特性を維持しながらの、細胞内放出についての重要な方法に関する手引きを提供する。これまでにpH感受性リポソームおよびエンドサイトーシス感受性リポソームの設計には、リポソーム表面の多数の修飾が必要とされ、結果として静脈内投与による急速な除去が起こり、故に利用可能性が制限されていた。しかしながら、本発明は、膜表面の大幅な修飾を必要とすることなく全体の薬剤をpHまたは酵素感受性にし、よってリポソーム担体がその好ましい薬物動態学的特性を維持することを可能とするためのいくつかの方法を提供する。本発明は、結果として造影剤、すなわち検出可能マーカーの漏出をもたらすか、もしくは水の透過性を単に増大するリポソーム膜自体の酵素感受性か、またはリポソームの内部で保護された消光剤の酵素またはpH感受性に依存する。これらの方法は、プローブが治療薬としてのいくつかの薬物動態学的特性を有することを可能とし、故にこの薬剤による処置の適切性が事実上予測される。
【0035】
コレステロールおよび高い相転移の脂質からなるGd3+含有リポソームは、これらの膜を通過する水のゆっくりした拡散のために、Gd3+の比較的低い緩和能を示す。しかしながら、コレステロールおよび低い相転移のリン脂質(それらは理論的には37℃で液晶相である)からなるリポソームは、高い緩和能およびMRIにより容易に検出可能なシグナルを示す。2つの調製物間のT1の差違は、約12倍であった。実際には、単一の生体内分布および腫瘍局在の目的に関して、これらのリポソームは、それらの増大したシグナル強度のために好適である。しかしながら、効率的に消光されるシグナルは、高い相転移のリポソームの場合、プローブがリポソーム担体から放出されるまで検出可能シグナルを“囲う”ための特異な機会を提供する。図1を参照、これは、37℃で一般的にゲル相であるリン脂質からなるリポソームはリポソーム膜を通過する水の比較的ゆっくりとした拡散を有し、結果として非常に低下した緩和能を生じ、故に効率よくGd3+プローブを消光することを記載する。しかしながら、一般に、液晶相(より液体状態)であるリン脂質からなるリポソームは、リポソーム膜を通過する水の流速の著しい増加、およびそれ故の増強された緩和能を有する。
【0036】
本発明の1つの態様にて、このことは、受容体過剰発現ガン細胞およびエンドサイトーシスによるリガンド標的リポソームの認識に一致する。エンドサイトーシスにより、脂質膜はリソソーム中で分解され、効率的にマーカー、すなわち、MRIプローブを“囲いから出し”、結果として検出可能なシグナルのかなりの増加となり得る。実際には、リポソーム担体は、Gd3+キレートが担体内から漏出し得る程度まで分解される必要はないが、膜を通過する水のより迅速な交換を可能とする程度まで分解される必要がある(図2)。故に、リポソームを結合し、かつ内在化する細胞のみが、この技術を用いて効果的にイメージングされ得る。
【0037】
多くの研究が、マクロファージ、繊維芽細胞、内皮細胞、および腫瘍細胞による内在化後の、脂質、および封入または結合タンパク質どちらかの両方の分解を証明している(Straubinger et al., 1983; Dijkstra et al., Exp. Cell Res. 150, 161−176, 1984; Jett et al., Cancer Res. 45, 4810−4815, 1985; Storm et al., Biochim. Biophys. Acta 965, 136−145, 1988; Derksen et al., Biochim. Biophys. Acta 971, 127−136, 1988; Trubetskaya et al., FEBS Lett. 228, 131−134, 1988; Chu et al., Pharm. Res. 7, 824−834, 1990)。リポソームからのドキソルビシンの増大された放出は、腹腔マクロファージの取り込み後に見られ、集められた上清は、かなりの増殖阻害活性を有することが示された(Storm et al., Biochim. Biophys. Acta 965, 136−145, 1988)。分解率はリポソームの脂質組成に依存して変化し、高い相転移リン脂質(遅い放出)を含むリポソームは、低い相転移リン脂質を含むリポソームよりもゆっくりと分解された(rapid−release; Storm et al., Biochim. Biophys. Acta 965, 136−145, 1988)。
【0038】
本発明のもう1つの態様は、pH感受性コポリマーで修飾された低下した透過性のリポソームを提供する。pH応答性コポリマーは、それらが、ほとんどすべての組成物のリポソームの製造に用いられ得るために、薬物動態学における修飾および内容物漏出の影響を低下させる点で、pH感受性リポソームを作製するための多くの他の方法よりも有利である。酸滴定の結果、ポリマー構造の修飾およびリポソーム膜とのその結合が起こり、結果としてその不安定化および内容物漏出をもたらす(図5)。N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)およびメチルアクリル酸(MAA)のコポリマーは、pH感受性コポリマーの一例として用いられている。これらのコポリマーは、オクタデシルアクリレート(ODA)などの疎水性アンカーを用いてリポソーム膜に固定され得る。これらのコポリマーであるポリ(NIPAM)co−MAA−co−ODAの1つの例を、図4に示す。pH感受性コポリマーの他の例には、スクシニル化ポリ(グリシドール)、ポリ(アクリル酸)誘導体、およびポリ(ヒスチジン)が含まれる。
【0039】
酵素的に囲われた常磁性キレート
本発明の他の態様にて、pHまたは酵素感受性遮蔽基を、キレート化イオンの常磁性特性を“囲う”ために用いることができる。低いpH、またはリソソームもしくは後期エンドソームなどの細胞内オルガネラにある酵素への曝露による遮蔽基の細胞内への放出は、水分子の緩和能に変化をもたらすであろう。ミード(Meade)と同僚は、最近、MRIを用いて非侵襲的にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の発現を検出するために用いられたβ−ガラクトシダーゼ感受性Gd3+キレーターについて記載している(Moats et al., Angew Chem. Intl. Edn. Engl., 726−728, 1997; Louie et al., Nature Biotechnology 18, 321−5, 2000)。この化合物において、ガラクトピラノース分子は、前記キレーターにGd3+の最後の配位部位を水から遮蔽するように結合され、かつ配置され、故に3つまでの因子による緩和能を効果的に低下させる。ガラクトピラノース分子の加水分解は、この最後の配位部位の利用可能性および緩和能の増加をもたらす。グルクロニダーゼにより切断され得る同じシリーズの化合物が合成され、それらは緩和能に同じく効果があることが証明された。グルクロニダーゼは、リソソームおよびおそらく細胞の後期エンドソームに存在し(Dutton, (1966) Glucuronic acid, free and combined, Academic Press, New York; Fishman, (1970) Metabolic conjugation and metabolic hydrolysis ,Academic Press、New York)、故に、エンドサイトーシスが起こったことを示す有効なトリガーとなり得る。それはまた、腫瘍から放出され;その後、腫瘍間質にあることが示された。しかしながら、細胞外に誘導されたグルクロニダーゼを利用するのではなく、リソソーム酵素を利用するリポソーム内部への結合キレーターの封入は、酵素がその基質に近づくために脂質バリアーの破壊を必要とするため、エンドサイトーシスによりシグナルを増幅するだろう。
【0040】
pHにより囲われた常磁性キレート
最後に、陽電子放射断層撮影(PET)、電子常磁性共鳴(EPR)イメージング、およびMRIによる非侵襲的なイメージングのためのpH感受性プローブが、記載されている(Helpern et al., Magnetic Resonance in Medicine 5, 302−5, 1987; Morikawa et al., Investigative Radiology 29, 217−23, 1994; Mehta et al., Bioconjugate Chemistry 7, 536−40, 1996; Khramtsov et al., Cellular & Molecular Biology 46, 1361−74, 2000; Mikawa et al., Journal of Biomedical Materials Research 49, 390−5, 2000; Witt et al., Biomaterials 21, 931−8, 2000)。水素イオンに対して半透性膜のリポソームへのこれらの薬剤の封入(Biegel et al., Biochemistry 20, 3474−3479, 1981; Clement et al., Biochemistry 20, 1534−1538, 1981)は、インビボでのエンドサイトーシスの非侵襲的な検出を可能とするだろう。カルセインおよびピラニンを含むpH感受性蛍光プローブは、蛍光顕微鏡により定性的にかまたは蛍光比イメージングにより定量的にエンドサイトーシスを観察するために細胞培養にて従来から用いられている(Daleke et a., Biochim. Biophys. Acta 1024, 352−366, 1990; Straubinger et al., Biochemistry 29, 4929−4939, 1990; Lee et al., Biochemistry 32, 889−899, 1993; Kirpotin et al., Biochemistry 36, 66−75, 1997)。しかしながら、リポソームのエンドサイトーシスの非侵襲的なインビボモニタリングは、困難な問題を有している。本発明は、既述の酵素感受性リンカーと同様の方法でGd3+−DTPAキレートを可逆的に“囲う”ための、pH感受性シトラコニル(citraconyl)−(スキーム2、図7記載)またはヒドラジドまたはリンカーを記載する。
【0041】
シトラコニルと結合した結合体の合成に関して、N−ブロモスクシンイミドを等モル量の無水シトラコン酸と合わせ、その後、四塩化炭素中の触媒量のベンゾイルペルオキシド(反応開始剤)を加えた。混合物を加熱台の上に移し、反応物を一晩還流し、2−無水ブロモシトラコン酸(II)を形成させた。精製した産物を減圧蒸留後に回収し、最終収量が60%であった。1,4,7,10−テトラシクロドデカン−1,4,7−トリス(酢酸t−ブチルエステル)(I, Macrocyclics; Dallas, TX)を、精製した2−無水ブロモシトラコン酸(II)で誘導体化し、中間体IIIを形成させることができた。その後、シトラコン酸の官能基を、取り込まれたグルコサミンおよびガドリニウムと反応させ、pH感受性Gd−DOTA造影剤(IV)を形成させ得る。リソソームまたは後期エンドソームに見られるような酸性条件下、シトラコン酸リンカーを分子内反応に付し、その結果消光剤(グルコサミン)および遊離Gd−DOTAキレートの放出を生じる。
【0042】
ガドリニウムのポリアミノポリカルボキシルキレートの非キレート基は、結合した水分子の交換可能性に実質的な影響を有しており、この現象をpH応答性のガドリニウムプローブの構築に用いることができることが示されている(Zhang et al. Invest. Radiol. 36:82−86, 2001)。Gd−DOPA複合体のカルボキシル基と結合したポリオール(ガラクトース)が、常磁性コアへの水の到達を阻害することにより緩和能を低下し、そしてこれらのポリオール基の除去によりGd−DOTA複合体の高い緩和能が回復することが示されているミードの基(Louie、et al.、Nature Biotechnology 18、321−5、2000). Willner, et al. (Bioconj. Chem. 4 ,521−527 ,1993)は、中性pHで比較的安定であって、エンドソームおよびリソソームに一般的なpH5.0−5.5で分離するヒドラゾン結合を用いる生体結合体で示されている。生体分子の“pH囲い込み(caging)”法は、一般に証明されている(Drummond, 2001)。本発明は、エンドサイトーシス検出プローブ(その緩和能は、エンドソームおよび/またはリソソームの酸性環境にて不可逆的にかつ極めて増大する)を作製する“pHで囲われた”常磁性キレートを提供する。そのため、DTPAモノ−およびビス−ヒドラジドを、無水エタノール中でDTPA環状無水物(DTPA−ca)と1または2当量のヒドラジンを反応させることにより合成する。モノおよびポリ置換DOTAヒドラジドを、ジオキサン/ジメトキシエタン中DCCの存在下で調製したDOTAのNHS−エステルへのヒドラジンの作用により合成することができる。これらのヒドラジドキレーターを、常套的な方法でガドリニウムに結合させることができる。異なるカルボニル反応基を有するポリオール基を担持するカルボニルを、DMF中トリエチルアミンの存在下にてケト酸(レブリン酸、アセト酢酸、またはピルビン酸)のNHSエステルとアミノ糖(グルコサミン、ガラクトサミン)を反応させることにより調製することができる。“囲われた”結合体を、アルコール中、糖ケトアシルアミドのケト酸基とヒドラジドキレートのヒドラジド基間にヒドラゾン結合を形成することにより製造することができる。
【0043】
遮蔽方法は、非内在化リポソームからの基準シグナルを抑制するのに十分であり得る。しかしながら、シグナルの増加がpHまたは酵素感受性MRIプローブを含む非遮蔽リポソームを用いて2〜4倍しか達成されないならば、この相違のみでは標的細胞における十分なシグナル調節をもたらすことはできない。とりわけ見込みがあると思われる方法は、上記の比較的不透過性のリポソーム(“IL”)膜の内在化により誘発されるエンドソーム分解を伴う。本研究者らの初期の研究は、内在化対非内在化ILを区別するための実質的な能力を提供する本方法のシグナルの少なくとも20倍の増加を示唆する。この増加は、標的部位特異的に活性化されたイメージング剤を用いる他の方法で報告されるよりも数倍大きい。組合せた方法が、とりわけ強力であり得る:記載したリポソーム遮蔽方法を、同様に本質的に活性化可能な封入プローブと併用することができ、結果として可能性のある添加剤またはシグナル強度における相乗効果をもたらす。
【0044】
蛍光マーカーとは、本発明のリポソームに用いるために好適な遠隔検出可能マーカーのもう1つの群である。遠赤色光または光スペクトルの赤外領域に最大励起を有するマーカーが、当技術分野で公知の生体の赤外線レーザーイメージング系を用いることができる組織を通る励起および発光放射線のより深部への侵入のためにとりわけ好適である。インドカルボシアニン緑などのカルボシアニン色素(血管イメージングおよび心血管診断に用いられる蛍光色素)が、とりわけ好適である。2mM以上の濃度でリポソームに内包されるとき、これらの色素は、リポソームからの放出による蛍光の増大が驚くほど大きい。特定の作用機序に制約されることなく、この現象はリポソームに封入される色素の自己消光により理論的に説明され得る。目的の細胞によるエンドサイトーシスにより、かかるポソームは分解され、色素が放出され、そして細胞のかかる取り込みの存在を示す蛍光が経時的に増加する。
【0045】
細胞特異的イメージングおよび薬剤送達のための放射性核種またはMRI剤結合リポソーム
あるリガンドを取り込むための細胞の能力は、これらの細胞の病理学的性質を決定するのに役立ち、故に、疾患の診断および/または処置を改善するのに役立つ。本発明により、エンドサイトーシス感受性リポソームプローブを、ガン細胞に特異的なリガンドへの付着によりガン細胞などの特定の型の細胞に特異的で、かつ好ましくは、エンドサイトーシスも高効率で誘導するように作製する。細胞特異的リガンドおよびそれらの認識分子の種類は、当技術分野でよく知られている。1つの好ましい場合にて、かかるリガンドは、抗体および抗体断片である。抗体または抗体断片と結合したリポソームを、免疫リポソームと称す。
【0046】
効率的な結合方法は、比較的非反応性のリポソームを標的細胞内在化可能免疫リポソームに形質転換するために必須である。抗体および抗体断片などの標的基とリポソームの結合は、いかなる公知の方法または当技術分野で公知となる方法によっても達成され得る。例えば、前もって成形した薬剤を充填したリポソームに、抗体断片などのタンパク質の結合を2工程で行うミセル取り込み法が、既述[米国特許番号第6,210,707号(それは、参照により本明細書に含まれる)、およびKirpotin et al., 1999の図2cを参照のこと]である。本方法によれば、Fab’またはscFvなどの断片をまず、溶液中、末端に誘導体化されたPEG−ホスファチジルエタノールアミンリンカーと共有結合させ、ミセル形成免疫結合体を生じさせる。次に、前記結合体を、薬剤を充填したリポソーム中に共インキュベーションにより組み込み、PEG鎖の末端に共有結合したMAb断片を生じさせ、リポソーム表面にそれらの脂質基を介して固定した。本方法により産される抗HER2 IL−ドキソルビシンは、結合、内在化、および前記の方法により産される抗HER2 IL−ドキソルビシンに対するインビボ効果にて同等であって、ここでMAb断片は、官能基部位を含む特別に構築されたリポソームと結合された(Park et al., J. Control.Release (suppl.), 74: 95−113, 2001)。同様の“ミセル挿入”法を、ペプチドおよびオリゴ糖(oligisaccharide)などのより小さな標的リガンドのリポソーム付着に適用することができる(Zalipsky et al., 1998)。
【0047】
本発明は驚くべきことに、例えば、ポリアルキルエーテル、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG化脂質)で誘導体化される脂質などの異なるリポポリマーと共有結合されたキレート化イメージング剤が、そのイメージング能の損失のなく、かつリポソーム封入薬剤の損失なく、前もって成形したリポソームまたは他の脂質に基づく微粒子に結合することを証明する。かかるリポポリマー結合遠隔検出プローブとの共インキュベーションは、標的もしくは非標的リポソームまたはリポソーム治療薬を、様々な分子事象、一般的には生体内分布、または治療有効性を報告し得るイメージング剤へ効率よく変換する。これは、イメージング剤へのリポソーム送達系の変換に新規かつ有効な方法である。リポポリマーに固定されたキレート剤系には、様々な脂質アンカーおよび連結基が含まれる。例えば、ジステアリールアミド(C18)基などのジ(C12−C20)アルキルアミド、コレステロールなどのステロール、およびジステアロイルホスホコリンなどのジ(C12−C20)−アシルグリセロール誘導体は、好適な脂質アンカーである;ポリ(エチレングリコール)などのポリ(アルキルエーテル)は親水性ポリマーに適し、NTA、EDTA、DTPA、DO3AまたはDOTA、ならびにそれらの類似体(例えば、ホスホン酸類似体)および誘導体は放射性核種または常磁性金属イオンのためのキレート基に適する。
【0048】
上記のように、本発明の他の局面は、(a)遠隔検出可能マーカー、および(b)治療薬を含むリポソームである。リポソームは上記のように構成され、検出可能マーカーが、目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節されるシグナルを有する検出可能マーカーであり、治療薬が抗ガン剤である。1つの態様にて、治療薬および検出可能マーカーはイオン結合対のメンバーであり、すなわち、リポソーム内部にて、一方が陰イオンの形である場合、他方は陽イオンの形であり、またはその逆である。前記一対のメンバーはまず、高効率の“遠隔ローディング”法により他のメンバーの封入を増大する膜貫通のためのイオン、化学、または電気化学勾配を提供する形態でリポソームに封入される。要すれば、2つのメンバーは、安定な、例えば、沈殿またはゲル様のイオン複合体、または塩を形成し、薬剤封入の安定性および/または薬剤有効性も改善する。驚くべきことに、治療薬、例えば抗ガン剤とのかかるイオン対のメンバーとして、マーカー、例えばGd−ポリアミノポリカルボキシル酸常磁性キレートが、その検出能力を大部分保持していることが発見された。多様な陰イオン性常磁性キレートが、薬剤−マーカーイオン対のメンバーとして適する。例えば、ポリアミノポリカルボン酸(ニトリロ三酢酸(nitrilotroacetate)、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸)の常磁性金属複合体、その陰イオン誘導体およびホスホン酸類似体が適する。一般に、陰イオン性常磁性複合体の溶液、例えば、遊離酸の形態、緩衝(例えば、アルカリで部分的に中和された)酸溶液、またはアンモニウムもしくは置換アンモニウム塩の形態のキレートが、リポソームへの封入に最初に用いられる。陰イオン性常磁性複合体溶液の濃度は、一般に、少なくとも0.01Mであるが、少なくとも0.05M、0.1M、または0.2Mであって良く、そして上限は常磁性複合体の溶解性により変わるが、通常、1.0Mまたは2.0Mまでであり、一般に3.0M未満である。陰イオン性常磁性金属複合体は、いずれかの適した方法により、例えばこの溶液中への脂質の水和によりリポソームに封入され、続いて、機械的な剪断または膜排出により微粉化される。その後、リポソーム外のキレートを通常、例えば、透析またはゲルろ過により除去し、リポソームを、薬剤が共封入されるために十分な時間の間、緩衝または非緩衝水溶液中でインキュベートする。一般に、約5分から約2時間のインキュベート時間で、かつ周囲温度(約20℃)から約80℃が、薬剤の共封入を効率的にするために適する。リポソーム系と混合可能ないずれかの治療薬が有用である場合、電離により陽イオン電荷を達成し得る薬剤、例えばドキソルビシンなどが好ましいことが発見されている。本発明に適する他の治療薬は、例えば、“Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,” Tenth Edition, edited by Hardman and Limbirdに記載されている。1381−1460頁の抗ガン剤が有用である。これらの頁は参照により本明細書に含まれる。本質的に両性の治療薬が特に有用である。
【0049】
本発明に有用な抗ガン剤には、以下に列記するものが含まれる。
構造に基づく群:フルオロピリミジン−5−FU、フルオロデオキシウリジン、フトラフール、5’−デオキシフルオロウリジン、UFT、s−1カペシタビン;ピリミジンヌクレオシド−デオキシシチジン、シトシンアラビノシド、5−アザシトシン、ゲムシタビン、5−アザシトシン−アラビノシド;プリン−6−メルカプトプリン、チオグアニン、アザチオプリン、アロプリノール、クラドリビン、フルダラビン、ペントスタチン、2−クロロアデノシン;プラチナ類似体−シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、テトラプラチン、プラチナ−DACH、オルマプラチン、CI−973、JM−216;アントラサイクリン/アントラセンジオンおよび誘導体−エピルビシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ピラルビシン、ルビドマイシン、カルシノマイシン、n−アセチルアドリアシン、ルビダゾン、5−イミドダウノマイシン、n−アセチルダウノマイシン、ダウノリリン(daunoryline)、マイトキサントロン;エピポドフィロトキシン−エトポシド、テニポシド;カンプトテシンおよび誘導体−イリノテカン、トポテカン、ルウトテカン(lurtotecan)、シラテカン(silatecan)、9−アミノカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、TAS 103、7−(4−メチル−ピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(2−N−イソプロピルアミノ)エチル)−20(S)−カンプトテシン、7−エチルカンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−アミノ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−クロロ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、(7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(2−n−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトテシン;ホルモンおよびホルモン類似体−ジエチルスチルベストロール、タモキシフェン、トレメフィン(toremefine)、トルムデックス(tolmudex)、チミタック(thymitaq)、フルタミド、ビカルタミド、フィナステリド、エストラジオ−ル、トリオキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲステロール、アミノグルテチミド、テストラクトンおよびその他;酵素、タンパク質および抗体−アスパラギナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、ロイプロイド、ペグアスパルガーゼ、およびその他;ビンカアルカノイド−ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン;タキサン−パクリタキセル、ドセタキセル。
【0050】
作用に基づく群:抗ホルモン剤−ホルモンおよびホルモン類似体の分類を参照のこと、アナストロゾール;葉酸拮抗剤−メトトレキサート、アミノプテリン、トリメトレキサート、トリメトプリム、ピリトレキシム、ピリメタミン、エダトレキセート、mdam;抗微小管剤−タキサンおよびビンカアルカノイドおよび誘導体;アルキル化剤(古典的および非−古典的)−窒素マスタード(メクロルエタミン、クロラムブシル、メルファラン、ウラシルマスタード)、オキサザホスホリン(イホスファミド、シクロホスファミド、ペルホスファミド、トロホスファミド)、アルキルスルホン酸(ブスルファン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、チオテパ、ダカルバジンおよびその他;代謝拮抗薬−プリン、ピリミジンおよびヌクレオシド(上述);抗生物質−アンスラサイクリン/アントラセンジオン、ブロマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、ペントスタチン、ストレプトゾシン;トポイソメラーゼ阻害剤−カンプトテシンおよび誘導体(トポI)、エピポドフィロトキシン、m−AMSA、エリプチシンおよび誘導体(トポII)、エリプチシン、6−3−アミノプロピル−エリプチシン、2−ジエチルアミノエチル−エリプチシニウムおよびその塩、ダテリプチウム(datelliptium)、レテリプチン(retelliptine);抗ウイルス薬−AZT、ザルシタビン、ゲムシタビン、ジダノシン、およびその他;多様な細胞毒性薬−ヒドロキシ尿素、ミトタン、融合トキシン、PZA、ブリオスタチン、レチノイド、酪酸および誘導体、ペントサン、フマジリン、およびその他。
【0051】
上記に加え、抗ガン剤には、任意のトポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカノイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンフルニン、およびビンポセチン、微小管脱重合剤または不安定化剤、微小管安定化剤、例えば、タキサン、パクリタキセルまたはドセタキセルのアミノアルキルまたはアミノアシル類似体、例えば、2’−[3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピオニル]パクリタキセル、7−(N,N−ジメチルグリシル)パクリタキセル、および7−L−アラニルパクリタキセル、アルキル化剤、受容体−結合剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、酵素阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド(polynicleotide)、およびファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤が含まれるが、それらに限定されない。
本発明のリポソーム組成物に含まれる他の治療薬には、ワートマニン(wortmannin)、その類似体および誘導体、またはオーロラキナーゼ阻害タンパク質を有するピラゾロピリミジン化合物が含まれる。
【0052】
上位局面にて、本発明のリポソームの使用に適する治療薬には、いくつかの以下:抗ヒスタミンエチレンジアミン誘導体(ブロムフェニファミン、ジフェンヒドラミン);抗原虫薬:キノロン(ヨードキノール);アミジン(ペンタミジン);駆虫薬(ピランテル);抗−住血吸虫薬(oxaminiquine);抗菌剤トリアゾール誘導体(fliconazole、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール);抗菌性セファロスポリン(セファゾリン、セフォニシド、セフォタキシム、セフォタジミド(ceftazimide)、セフォキシム(cefuoxime));抗菌性ベータ−ラクタム誘導体(アズトレパム、セフメタゾール、セフォキシチン);エリスロマイシン群の抗菌剤(エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、オレアンドマイシン);ペニシリン(ベンジルペニシリン、フェノキシメチルペニシリン、クロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、カルベニシリン);テトラサイクリン;他の抗菌性抗生物質、ノボビオシン、スペクチノマイシン、バンコマイシン;抗抗酸菌薬:アミノサリチル酸(salicyclc acid)、カプレオマイシン、エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファブチン、リファンピン、クロファジメ(clofazime);抗ウイルス性アダマンタン:アマンタジン、リマンタジン;キニジン誘導体:クロロキン、ヒドロキシクロロキン、プロマキネ(promaquine)、キノン(qionone);抗菌剤キノロン(qionolone):シプロフロキサシン、エノキサシン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン;スルホンアミド;尿路抗菌薬:メテナミン、ニトロフラントイン、トリメトプリム;ニトロイミダゾール:メトロニダソール;コリン作用性 第4級アンモニウム化合物(アンベチニウム(ambethinium)、ネオスチグミン、フィゾスチグミン);抗アルツハイマー薬 アミノアクリジン(タクリン);抗パーキンソン病薬(ベンズトロピン、ビペリデン、プロサイクリジン、トリヘキシルヘニジル);抗ムスカリン作用薬(アトロピン、ヒオスシアミン、スコポラミン、プロパンテリン);アドレナリン作用性ドーパミン(アルブテロール、ドブタミン、エフェドリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、イソプロテレノール、メタプロペノール(metaproperenol)、サルメトロール(salmetrol)、テルブタリン);エルゴタミン誘導体;筋弛緩剤またはクラネ(curane)シリーズ;中枢作用筋弛緩剤;筋弛緩剤(baclophen)、シクロベンゼピン(cyclobenzepine)、デントロレン(dentrolene);ニコチン;ベータ−アドレナリン受容体ブロッカー(acebutil、アミオダロン);ベンゾジアゼピン(ジチアゼム);抗不整脈薬(ジイソピラミド、エンカイジン(encaidine)、局部麻酔薬シリーズ−プロカイン、プロカインアミド、リドカイン、フレカイミド(flecaimide))、キニジン;ACE阻害剤:カプトプリル、エネラプリラット(enelaprilat)、フォシノプロール(fosinoprol)、キナプリル、ラミプリル;抗高脂血症薬:フルバスタチン、ジェミフィブロシル(gemfibrosil)、HMG−coA阻害剤(プラバスタチン);血圧降下薬:クロニジン、グアナベンズ、プラゾシン、グアネチジン、グラナドリル(granadril)、ヒドララジン;および、非冠拡張薬:ジピリダモールが含まれるが、それらに限定されない。
【0053】
態様の例には、アンモニウムまたは置換アンモニウムの形態、例えばトリエチルアンモニウム塩の形態で封入された陰イオン性MRIマーカーであるGd−DTPAを含むリポソームが含まれる。リポソーム外のマーカーの除去により、アンモニウムイオンの膜貫通勾配を、同じリポソームにて、例えばドキソルビシンなどの陽イオン性抗ガン剤の共ローディングを高い効率(例えば、>95%)で可能とするように作る。得られた二重充填リポソームは、インビボでの薬剤および常磁性マーカーの両方の漏出に対して安定であり、抗体結合薬剤マーカーを共充填したリポソームによる抗原発現腫瘍細胞を標的とした細胞死により証明されるような薬剤の細胞毒性特性を保持しており、そしてその磁性緩和能により、患者における治療薬の非侵襲的なモニタリングを可能とする。
【0054】
本発明の方法
本発明の他の局面は、以下:(a)(i)リポポリマーと結合されたそのシグナルが目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節される遠隔検出可能マーカー、および(ii)治療薬を含むリポソームを投与すること、そして(b)遠隔検出可能マーカーのシグナルを検出することを含む、患者の身体におけるリポソーム薬剤の非侵襲的なモニタリングのための方法である。上記のリポソームは特に本方法に有用である。
【0055】
本発明の他の局面は、リポソームのエンドサイトーシスの遠隔検出のための方法である。本方法には、(a)細胞を、そのシグナルがエンドサイトーシスが起こる条件下で目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節される検出可能マーカーと結合したリポポリマーを含むリポソームと接触させること、そして(b)エンドサイトーシス後に検出可能マーカーのシグナルを検出することが含まれる。本方法は特によく用いられており、ここで検出可能マーカーは、ガドリニウムDTPA−BMAおよびガドリニウムHP−DO3Aを含む常磁性ガドリニウムキレートであり、リポソームは低い水透過性の膜を含む。前記方法の検出工程は、MRI法によるプロトン緩和能の増強を有利に用いる。検出可能マーカーは、好ましくは蛍光マーカーであり、リポソームは蛍光消光剤をさらに含む。故に、増加した蛍光活性はレーザーイメージング法により検出される。あるいは、検出可能マーカーは蛍光マーカーであり、自己消光濃度で存在する。増大された蛍光活性は、レーザーイメージング法により検出される。その方法は、リポソームが細胞内在化可能リガンドを含むときに特に有用である。
【0056】
実施例
以下の実施例は、本発明の一部として包含される代表的化合物を提供するために供される。実施例はまた、前記化合物の有用性を決定するのに役立つ、インビトロおよびインビボ分析の説明を供する。
【0057】
実施例1
囲われたリポソーム担体の製造
低透過性Gdリポソームの多数の剤形を製造した。Gdキレートの多数のリポソーム剤形を製造した。これらのリポソームは、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール、およびN−ポリ(エチレングリコール)−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG2000−DSPE)またはDSPC、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、およびコレステロールの混合物(リン脂質:コレステロール(3:2))を含んでなる。DPPCを、エンドソームに達するまでの拡散速度を増加させるために低モル比で加えた。しかしながら、DPPCはDSPCよりも低い相転移を有し、リポソーム膜を通過する水分子の拡散速度を増加させるであろう。どの程度までこの修飾が封入による緩和能に変化を有し得るかは不明である。これは現在研究されており、脂質の分解および水透過性の速度を最適化しようとする様々な脂質組成物の他のリポソームと比較されるだろう。最後に、コレステロールおよび低い相転移のリン脂質、例えば卵細胞由来ホスファチジルコリンまたはジオレイオイルホスファチジルコリンを含む対照リポソームを製造した。
【0058】
それらの製造方法には、前もって形成したリポソームを市販されているガドリニウムキレートであるオムニスキャン(造影剤)(Amersham Health; Princeton, NJ)で水和すること、そして規定の孔サイズ(0.05−0.1μm)のポリカーボネートフィルターを通して得られた脂質懸濁物を成形することが含まれる。得られたリポソームのサイズは、用いた前記フィルターの孔サイズにより79−115nmの間で変わる。非封入造影剤を、ゲルろ過クロマトグラフィーと透析を組み合わせて除去した。抗HER2 scFv(F5)−PEG−DSPEを、既述の(Kirpotin et al., Biochemistry 36, 66−75, 1997, Nielsen et al., Biochimica et Biophysica Acta 1591:109−118, 2002)のとおりに製造し、ミセル結合によりこれらのリポソームに挿入した。簡単には、その結合体を、リポソーム造影剤と混合し、その後、ミセルからリポソーム膜の外側単層中への結合の自然な転移を可能とするため60℃で30分間インキュベートした。その後、結合物質を含むリポソームを、セファロース4Bサイズ排除カラムで精製し、すべての非挿入結合または遊離scFvを除去した。
【0059】
重要な修飾を、ガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸ビスメチルアミド(Gd−DTPA−BMA)(OMNISCAN, Amersham Health)をGd−10−(2−ヒドロキシ−プロピル)−1,4,7,19−テトラアザシクロドデカン−1,4−7−トリアセテート(HP−DO3A)(PROHANCE, Bracco Diagnostics)で置換することにより行った。OMNISCANと比較してPROHANCEのカルシウム含有量の5倍の減少に伴うイオン特性の変化は、脂質1つに対し2倍以上のリポソームガドリニウム剤形の製造を可能とする。より正確には、NMRにより測定されるリン脂質対Gd比は、OMNISCANについて約4、PROHANCEについて1.7−1.8であった。
【0060】
リポソームPROHANCEを、DSPC/Chol/PEG−DSPE(3:2:0.015、mol:mol:mol)脂質組成物および希釈されていないPROHANCE(279.3mg/ml ガドテリドール、0.23mg/ml カルテリドール、1.21mg/ml トロメチルアミン、640mモル浸透圧、pH7.4)を用いて形成し、得られた脂質懸濁液を規定の孔サイズ(0.05−0.1μm)のポリカーボネートフィルターを通して成形した。得られたリポソームのサイズは、用いたフィルターの穴サイズに依存して79−115nmの間で変わる。非封入造影剤をHepes緩衝食塩水(pH6.5)で溶出しながらセファデックスG−75を用いてゲルろ過クロマトグラフィーにより除去した。抗HER2 scFv(F5)−PEG−DSPEを、必要であれば60℃で30分間、ミセル結合によりこれらのリポソームに挿入した。その後、結合した物質を含むリポソームをセファロース4Bサイズ溶出カラムで精製し、非挿入結合体または遊離のscFvを除去した。
【0061】
エンドソームまたはリソソームルーメンの酸性化によりそれらの成分の迅速な放出が可能となるいくつかのpH感受性リポソーム剤形もまた製造した。これらの剤形は、リポソーム剤形へのpH感受性コポリマーであるポリ(NIPAM−co−MAA−co−DODA)(図6)の0.05−0.3(w/w コポリマー:全脂質)の割合での組み込みを必要とした。ジオクタデシルアクリル酸は、脂質膜へのpH感受性コポリマーの固定を補助した。合成されたDODA−ポリ(NIPA−co−MAA)は、メチルアクリル酸(MAA)を5%有し、分子量は約15,000であった。
【0062】
コポリマーには、リポソーム膜の両方の単層を通過したか、または60℃で30分間のインキュベートによるリポソーム形成後にリポソーム外小葉に挿入された、リポソーム調製物中のどちらもが含まれた。リポソーム調製の間の封入のために、コポリマーを直接プロハンスに溶解し、プロハンス溶液のpHを約7.4に維持した。リポソーム形成後の挿入のため、コポリマーを、Hepes緩衝デキストロース(5mM Hepes、5%デキストロース、pH7.4)に溶解した。前記概念は、酸性pHにて、メチルアクリル酸がプロトン化され、コポリマーが膜の保全を破壊し混乱させ(図7)、それは、緩和能の迅速な変化の正味の効果を有し、リポソーム内容物または一般には単に水の膜の透過性を増加させるという考えによる。
【0063】
インビボ放出特性
上記図2に説明したように、リポソームからの放出による緩和能における大きな変化が予期される。いくつかの研究にて、細胞内放出条件(初めは低いpH)がリポソームからのGd放出に効果があるものを検討した。初め、常時NMRによりGdを測定するなら感受性および処理量がかなり大きいであろうから、消光蛍光色素を充填したリポソームをインビトロ放出のスクリーニングに用いた。故に、多くの条件を効率的にスクリーニングすることが可能であり、特性化のためには本研究の磁気共鳴が最もよく選択されている。封入された蛍光プローブの放出は、封入されたイメージング剤のそれと同様であると予期される。蛍光分析にて、水溶性ピラニンス(pyranince)(またはHPTS)は、水溶性消光剤であるp−キシレン−ビス−臭化ピリジニウム(DPX)と一緒に共封入されている。消光の程度は距離に依存するため、リポソームからの放出およびプローブの希釈により、蛍光の大幅な増加がある。
【0064】
pHは、様々な比のコポリマー対脂質(0.05−3w/w;図8および9)にてpH感受性コポリマーで修飾されたリポソームからのHPTSの放出に効果を有し得る。DODA−ポリ(NIPA−co−MAA)。両図にて、非修飾DSPC/CholリポソームがいかなるpHにおいても非常に安定であることが明らかとなる。これらのインキュベーションは短時間であるが、8時間もの長い間のインキュベーションは、これらのリポソームからの微々たる漏出しかもたらさない。しかしながら、コポリマーでのリポソームの修飾は、コポリマー対脂質の比が0.15−0.3(w/w)にてHPTSの迅速かつ大量の放出をもたらした。pH4.5での放出の範囲は、コポリマーの存在下におけるリポソーム製造について約73−78%であり(図8)、コポリマーがリポソーム形成後に挿入された場合のリポソーム製造について40−45%であった(図9)。中性pHでの放出は、両場合にて微々たるものであり、安定性を示すpH値にて、腫瘍に達し、かつエンドサイトーシスされるより前の血漿に移動する間に封入され得る。
【0065】
その後、コポリマー修飾リポソームを、DSPC/Chol/PEG−DSPE リポソーム(3:2:0.015)からのGdの放出におけるその効果ごとに特徴付けた。この場合に、リポソーム試料を30分間37℃でインキュベートし、その後、NMRにより特徴付けた。インキュベートした試料における緩和能の最初の測定後、リポソームをトライトン−X100の付加により可溶化し、そして緩和能を再び測定後、70℃で5分間インキュベーションした。結果を以下に示す。非修飾リポソームのこの期間の放出は少しもないことが容易に明らかとされ得る。Gd放出量または増大した水透過性は、コポリマーが成形の間に組み込まれたリポソーム、および組み込まれるコポリマーの量が増大するとき、コポリマーが挿入により組み込まれたリポソームの両方で増加するようことが明らかである。pH5.0における変化の程度は、挿入の間に組み込まれたリポソームよりも成形の間に組み込まれたコポリマーを有するリポソームで顕著に大きかった。しかしながら、コポリマーが成形の間に組み込まれたリポソームについて、pH7.4でも顕著な漏出または増加した透過性となることが明らかにされた。ヒト血漿中により長い期間安定に存在するものを探すより包括的な研究は、中性pHでの安定性とpH感受性の間の妥協点を発見するための研究でもある。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例2
ビス−カルボキシメチル−PEG600−モノ(N,N−ジオクタデシル)アミド(DSA−PEG−COOH)の合成
3.039gのビス−カルボキシメチル−ポリ(エチレングリコール)(分子量600; Aldrich p/n 40,703−8)を、20mLのクロロホルムに溶解し、250mgのDCCと一緒に室温で1時間撹拌した。沈殿した尿素を、ガラス繊維フィルターを用いてろ過により除去し、ろ液を氷浴中で冷却し、1mLの無水トリエチルアミン、および520mgのジオクタデシルアミン(Fluka p/n 42358)と混合した。反応混合物を、全てのアミンがアルゴン下で溶解するまで撹拌しながら40−45℃にし、そして室温で一晩撹拌する。沈殿したさらなる量のDCUをフィルターで除去し、ろ液を20mLのクロロホルムで希釈し、次に100mLの水(3回)、100mLの飽和NaHCO(1回)、そして100mLの水(3回)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、そしてさらに1−2mmHgで50℃で30分間乾燥した。粗産物の収量は886mgであった。この産物は、TLC(シリカ、クロロホルム−メタノール 80:20;ヨウ素蒸気により作製)により2つのスポットを示した(主、Rf=0.34;副、Rf=0.74)。この産物を5mlのクロロホルムに溶解し、クロロホルム−メタノール 80:20(量にして)中に20gのセレクトシリカを含むカラムに用い、同じ混合液で溶出した。10mlの画分を集めた。画分3−6に現れる産物は、Rf0.74成分を含んでいた。クロマトグラフィーにより精製された産物を含む画分7−19を合わせ、乾燥させ、そして減圧乾燥し、317.5mgの産物を得た。この物質を、3.1mLのクロロホルムに溶解し、100mg/mL溶液を得、0.2−μmPTFEフィルターを通して、−20℃で保存した。
【0068】
実施例3
ビス−カルボキシメチル−PEGモノ−(N,N−ジオクタデシル)アミドテトラ(カルボベンズオキシ−L−リシン)結合(DSA−PEG−(Z−Lys))の合成(図10)
0.55mLのクロロホルム中55mgのDSA−PEG−COOHを、7.9mgのN−ヒドロキシスクシンイミドのクロロホルム溶液0.5mLと合わせた。室温で撹拌し、0.3mLのクロロホルム中13.1mgのDCCをこの溶液に滴下し、2時間撹拌した。ジシクロヘキシル尿素の沈殿を、GF/cガラス繊維フィルターを通してろ過により分離した。ろ液を、50mgのポリ(N−カルボベンゾキシ−L−リシン)(分子量1,000(Sigma))の無水ジメチルホルムアミド(DMF)溶液0.5mLと混合した。クロロホルムを真空下で除去し、さらに1mLのDMFを残渣に加えた。0.042mlのトリエチルアミンをこの溶液に加え、アルゴン下で一晩撹拌した。溶媒を、50℃にて真空下(1−2mmHg)で除去した。残渣を、カルボベンゾキシ基の除去のため、氷酢酸中、4M HBrで処理した。
【0069】
IIIの脱保護を、室温で8時間撹拌しながら酢酸中30wt%HBr(4M)(Aldrich)4ml中で行った。溶媒を真空下で除去し、その後、4mlの水を加え、1M NaOHでpH7に合わせた。前記物質を45℃で15分間加熱しながら溶解し、遠心(10,000RPMで5分間)により精製した。上清を115ml セファデックスG75カラムでクロマトグラフィーし、4mlの画分に集めた。250nmでの分光光度測定による強度の分散により決定した試料を含む画分を合わせ、溶媒を真空下で除去し、71.6mgの脱保護された物質を得た。
【0070】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカノン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸モノ(N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)を、Macrocyclics社(Dallas, TX)から入手した。119mgのDOTA−NHS(238μmol、50%過剰量)および2.14mmolのトリエチルアミンを、無水DMF中71.6mgのN−ポリ(リシン)−ポリ(エチレングリコール)−ジオクタデシルアミンに加えた。反応混合物を、45℃で6時間温めた。DMFをロータリーエバポレーターで除去後、IVを4mlの水に溶解し、NaOHでpH7に滴定し、その後、45℃で15分間加熱した。溶液を遠心(10,000RPMで5分間)により分離した。上清を115mlセファデックスG75カラムでクロマトグラフィーし、4mlの画分を集めた。試料を含む画分を、250nmの分光光度法による測定による強度の分散およびTLCにより決定した。溶媒を除去し、152mgの淡黄色の薄片状の物質を得た。産物の純度をTLCを用いて確認した。クロマトグラフィー条件:EtOH/HO(4:1)移動相、Rf=0.31、EtOH/HO(1:1)移動相、Rf=0.91を用いたC−18逆相シリカ。産物は、完全な1級アミン官能基を示すフルオレサミン色素に負の応答を示した。
【0071】
実施例4
N−DOTA−ポリ(エチレングリコール)−ジオクタデシルアミンの合成(図11)
1.6gの粉砕した無水コハク酸を、20mLの無水ピリジンに溶解した。2.62gのジオクタデシルアミンをアルゴン下で加え、アミンが溶解するまで40−45℃まで温め、室温で一晩撹拌した。ピリジンをロータリーエバポレーターを用いて50℃にて減圧(1−2mmHg)下で除去し、乾燥残渣を50mLの二塩化メチレンに溶解した。その溶液を、100mLの1M 重炭酸トリエチルアミンで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、固形の物質を減圧(0.4mmHg)下で室温にて一晩乾燥した。前記産物は、TLCにて1つのスポットを示した(シリカ、クロロホルム−メタノール 90:10)、Rf=0.82;同じ系にてN,N−ジオクタデシルアミン、Rf=0.64。収量 2.709g(理論値の87%)。分析データ:1H−NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.88 (t ,6H, CH2−CH3), 1.26 (s, 60H, CH2), 1.56 (q, 4H, OC−N(CH2−CH2−CH2)2), 2.69 (s, 4H, CO−CH2−CH2−CO), 3.23 (t, 2H, OC−N(CH2−CH2−CH2)2), 3.32 (t, 2H, OC−N(CH2’−CH2−CH2)2), 11.9 (br, 1H, COOH)。
【0072】
36.5mg(177μmol、10%過剰量)ジシクロヘキシルカルボジイミド(99%Aldrich, Milwaukee, WI)を、無水CHCl/エチレングリコール ジメチルエーテル(3:1)に溶解した100mgのコハク酸ジオクタデシル(161μmol)および20.3mg(177μmol、10%過剰量)N−ヒドロキシスクシンイミド(97%Aldrich, Milwaukee, WI)に加えた。室温で12時間撹拌後、混合物は、白色沈殿(ジシクロヘキシル尿素(DCU))を含む無色の溶液を形成した。反応混合物を、368mg(242μmol、50%過剰量)のビス(3−アミノプロピル)末端ポリ(エチレングリコール)(Aldrich, Milwaukee, WI)を含む無水CHCl/エチレングリコール ジメチルエーテル(3:1)溶液に直接フィルター処理して加えた。12時間撹拌後、溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。得られた物質を3mlの水に溶解し、100mlセファデックスG75カラムでクロマトグラフィーし、そして4mlの画分で集めた。TLCにより決定した画分を含む試料を合わせ、そして溶媒を真空下で除去し、82.5mgの白色薄片産物(アミノポリ(エチレングリコール)ジオクタデシルアミン)を得た。23.9mgの1,4,7,10−テトラアザシクロドデカノン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸モノ(N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)(47.6μmol、20%過剰量)および443μmolのトリエチルアミンを、無水DMF中82.5mgのアミノポリ(エチレングリコール)ジオクタデシルアミンに加えた。12時間室温で撹拌後、溶媒を真空下で除去し、淡褐色のケイクを得た。4mlの水を固形のケイクに加え、NaOHでpH7に滴定し、45℃で10分間加熱した。溶液を遠心(10,000RPMで5分間)により分け、淡黄色の上清を100mlセファデックスG75カラムでクロマトグラフィーし、4mlの画分を集めた。TLCを、産物を含む画分を決定するために用い、それらを合わせ、溶媒を真空下で除去し、29.9mgの白色の薄片状の物質として得た。産物の純度を、TLCを用いて確認した。クロマトグラフィー条件:CHCl/MeOH(4:1)移動相、Rf=0.91を用いたC−18逆相シリカ。産物は、完全な1級アミン官能基を示すフルオレサミン色素に負の応答を示した。
【0073】
実施例5
コレステロール ヘミスクシナチル(hemisuccinatyl)−ポリ(エチレン)グリコールの合成(図12)
100mg(205μmol)のコレステロール ヘミコハク酸塩(CHEMS)(Sigma, St. Louis, MO)を、CHCl/エチレングリコールジメチルエーテル(3:1)に溶解し、そこへ26mgの(226μmol、10%過剰量)N−ヒドロキシスクシンイミド(97% Aldrich)(NHS)および46.5mgの(226μmol、10%過剰量)ジシクロヘキシルカルボジイミド(99% Aldrich)(DCC)を加え、室温で6時間撹拌し、白色沈殿を含む無色の溶液を得た。反応混合物を、468mg(307μmol、50%過剰量)のビス(3−アミノプロピル)末端ポリ(エチレングリコール)(Aldrich)を含むCHCl/エチレングリコール ジメチルエーテル(3:1)溶液に直接フィルター処理し、室温で12時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーター処理で除去し、淡黄色のケイクを得た。産物をさらなる精製なしにTLCで確認した。クロマトグラフィー条件:順相のシリカおよびCHCl3/MeOH(4:1)からなる移動相を用いた、産物Rf=0.59。アミノ−ポリ(エチレングリコール)−コレステロールを、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカノン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸モノ(N−ヒドロキシスクシニミジルエステル)で修飾し、DOTA−PEG−Chol誘導体を得る。その後、ガドリニウムを、pH7−8にて一晩95℃で酸化ガドリニウムと一緒に合わせてインキュベートすることによりキレートに挿入する。その後、遊離ガドリニウムをセファデックスG−75カラムで除去した。
【0074】
実施例6
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノール−N−アミノグルタル酸の合成(図13)
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)を、Sygenaから購入した。グルタル酸無水物(97%)およびトリエチルアミン(99.5%)をAldrichから購入した。すべての試薬をさらなる精製なしに用いた。3倍モル過剰量のグルタル酸無水物(465mg、4.08mmol)および4倍モル過剰量のトリエチルアミン(5.44mmol)を無水クロロホルム中DSPE(1.02g、1.36mmol)に加え、得られた混合物をアルゴン下で室温にて12時間撹拌した。反応混合物を0.1%酢酸(2)および水(2)で洗浄し、pH9 NaHCO CHCl画分を、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を用いてシリカカラムでクロマトグラフした。溶媒を真空下で除去し、白色ケイクを得た(460mg、理論値の39.3%)。産物の純度を、TLCおよびH−NMRにより確認した。産物は、完全な1級アミン官能基を示すフルオレサミン色素に負の応答を示した。分析データ:TLC移動相 ヘキサン/酢酸エチル(2:1) Rf=0.45、1H−NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.883 (t, 3H, CH2−CH3), 1.26 (s, 56H, CH2), 1.61 (br, 4H, O−OC−CH2−CH2), 1.95 (q, 2H, CO−CH2−CH2−CH2−CO), 2.30 (m, 4H, CO−CH2−CH2−CH2−CO, 4H, O−OC−CH2−CH2), 3.37 (q, 4H, P−O−CH2−COH2), 4.16 (q, 1H, CO−O−CH2−CHOCH2), 4.38 (q, 1H, CO−O−CH2’−CHOCH2), 5.23 (br, 1H, CO−O−CH2−CHOCH2)。
【0075】
Glu−DSPE誘導体は、NHS/DCCで活性化され得、ビス(3−アミノプロピル)末端ポリ(エチレングリコール)(Aldrich, Milwaukee, WI)で修飾され得る。アミノ−ポリ(エチレングリコール)−DSPEは、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカノン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸モノ(N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)で修飾され得、DOTA−PEG−DSPE誘導体を得る。その後、ガドリニウムを、ガドリニウムオキシドと一緒に合わせて95℃で一晩pH7−8にてインキュベートすることによりキレートに挿入した。その後、遊離ガドリニウムをセファデックスG−75カラムで除去した。
【0076】
実施例7
O−グルタリール−ジオクタデシルグリセロール(グルタリール−DOG)の合成(図14)
1,2−O−ジオクタデシル−sn−グリセロール(99+%)をBACHEM(King of Prussia,PA)から購入した。グルタル酸無水物(97%)および4−ジメチルアミノピリジン(99+%)を、Aldrich(Milwaukee, WI)から購入した。すべての試薬をさらなる精製なしに用いた。2倍モル過剰量のグルタル酸無水物(76.4mg、0.76mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(81.8mg、0.76mmol)を、無水クロロホルム中1,2−O−ジオクタデシル−sn−グリセロール(0.2g、0.335mmol)に加え、得られた混合物を室温で12時間アルゴン下にて撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーター処理で除去し、産物を、シリカカラムにてヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶出することにより精製した。産物を含む画分を合わせ、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、115mg(0.162mmol、理論値の48.4%)のO−グルタリール−ジオクタデシルグリセロールを得た。産物の純度を、TLCおよびH−NMRにより確認した。分析データ:TLC 移動相 ヘキサン/酢酸エチル(2:1) Rf=0.45、1H−NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.866 (t, 3H, CH2−CH3), 1.26 (s, 60H, CH2), 1.55 (q, 4H, O−CH2−CH2−CH2), 1.95 (q, 2H, CO−CH2−CH2−CH2−CO), 2.40 (s, 4H, CO−CH2−CH2−CH2−CO), 3.47 (q, 4H, O−CH2−CH2), 3.57 (t, 2H, CHO−CH2−O), 3.64 (q, 1H、O−CH(CH2)−O), 4.10 (q, 1H, CO−O−CH2−CHOCH2), 4.23 (q, 1H, CO−O−CH2’−CHOCH2), 7.39 (s, 1H, COOH)。
【0077】
Glu−DOG誘導体を、NHS/DCCで活性化し、ビス(3−アミノプロピル)末端ポリ(エチレングリコール)(Aldrich, Milwaukee, WI)で修飾することができる。アミノ−ポリ(エチレングリコール)−DOGを、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカノン−1,4,7−トリス(酢酸−t−ブチルエステル)−10−酢酸モノ(N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)で修飾し、DOTA−PEG−DOG誘導体を与えることができる。その後、ガドリニウムを、pH7−8にて95℃で一晩ガドリニウムオキシドと一緒にインキュベートすることによりキレートに挿入することができる。その後、遊離ガドリニウムをセファデックスG−75カラムで除去する。
【0078】
実施例8
イメージング能を有する治療リポソーム:免疫リポソームへのイメージング剤および治療薬の共封入
リポソームをエタノール注入により形成させ、その後0.1μm ポリカーボネートフィルターを通して繰り返し成形した。簡単には、乾燥させた脂質(DSPC/Chol/PEG−DSPE、3:2:0.015、mol:mol:mol)を、60℃で加熱しながら0.5mlのエタノールに溶解した。ジエチレントリアミンペント酢酸、ガドリニウム(III)(Gd−DTPA)およびクエン酸アンモニウム鉄(III)をAldrich(Milwaukee, WI)から購入した。Gd−DTPAのジアンモニウム塩を、Gd−DTPA水溶液を水酸化アンモニウムで滴定することにより形成させた。リポソームを、500mM ジアンモニウム−ジ−Gd−DTPAまたは250mM クエン酸アンモニウム鉄(III)の存在下で水和し、当技術分野で公知のイオン勾配遠隔ローディング法を用いてローディングした(Lasic et al., 1992; Haran et al., 1993)。しかしながら、我々の知識では、これはGd(III)またはFe(III)キレーターおよび薬剤トラップ剤の二役でキレート化剤を用いる最初の例であり、本方法の使用は、薬剤およびイメージング剤の両方をインビボ治療およびその同時モニタリングのために必要な濃度で効率よく封入することを可能にする。
【0079】
500mM アンモニウム−Gd−DTPAまたは250mM クエン酸アンモニウム鉄(III)溶液(4.5ml)を60℃まで加熱し、その後、エタノール性の脂質溶液(0.5ml、300μmol PL)に速やかに注入し、水和した脂質溶液を形成させた。その後、エタノールをロータリーエバポレーターで除去し、脂質懸濁液を、2枚重ねのポリカーボネートフィルター(0.1μm)を15回通して押し出し成形した。成形後に、非封入アンモニウム−Gd−DTPAまたはクエン酸アンモニウム鉄(III)を、Hepes緩衝食塩水(pH6.5)で溶出したセファデックスG−75カラムで除去した。その後、リン脂質(PL)含有量をリン酸塩分析(Bartlett, 1959)により決定し、ドキソルビンを1μmol PLに対して150μgの薬剤の割合で加えた。薬剤を、薬剤とリポソームを60℃で30分間インキュベートすることにより充填し、その後15分間氷上で反応をクエンチした。非封入薬剤を、第二のセファデックスG−75ゲルろ過カラムで除去し、またHepes緩衝食塩水、pH6.5で溶出した。精製したリポソーム試料中の薬剤の量を、酸イソプロパノール(90% イソプロパノール、10% 1N HCl)中に薬剤を充填したリポソームを溶解後、吸光測定(λex=490nm、λem=550nm)にて鉄(III)の干渉による蛍光により定量し、そしてリン脂質含有量を標準的なリン酸塩分析(Bartlett, 1959)により決定した。薬剤充填効率を、1μmolのリン脂質に対して1μgの薬剤を発現する絶対量、および加えた初期量の薬剤と比較して充填された1%の薬剤を発現する相対量を両方とも測定した。ドキソルビシンのローディング効率は、1μmolのリン脂質に対して150μgの薬剤を最初に加えたとき、92−100%の範囲であった。リポソームサイズを光子相関分光法により決定し、それは105−120nmの範囲であった。以下のドキソルビシン封入効率を得た:
【0080】
【表2】

【0081】
その後、これらのリポソームを、可溶化による緩和能の変化、または薬剤およびイメージング剤の両方の完全な放出を決定するためにNMRにより特徴付けた。磁性GdまたはFe(III)が薬剤沈殿を起こした場合、これはDSPC/Chol リポソームの低下した水透過性の影響によると見られるよりもさらに大きな程度で緩和能に作用し得るという仮説をたてた。しかしながら、以下の表に見られるように、無傷(int)リポソームと可溶化(sol)リポソームのτ緩和能(ΔR1)の割合、ΔR1sol/ΔR1intは、薬剤を充填していないリポソーム(Ls−Gd−HP−DO3A)について上記で観察されるのと同様であった。故に、前記リポソームは、1個の抗ガン剤の高封入と遠隔エンドサイトーシス検出特性を兼ね備えている。
【0082】
【表3】

【0083】
実施例9
GdDTPA−BMA封入 抗−HER2免疫リポソームの改善されたMR検出能および腫瘍MRシグナル強度の変化を標的とした抗体の貢献度の検出
本研究の目的(als)は、MR腫瘍シグナル強度(SI)のより大きな増加を達成するために抗HER2免疫リポソーム組成物を修飾すること、腫瘍シグナル強度を増すために抗HER2標的の貢献度を測定すること、およびシグナル強度と測定されたT1の変化の関係を決定することである。腫瘍SIのかなりの増加が、従前の剤形と比較して新規のリポソームリン脂質組成物にて観察されたが、しかしながらリポソーム直径の減少は、腫瘍SIに大きな影響は与えなかった。標的の付加は、非標的リポソームと比較して腫瘍SIで増加するという結果となった。シグナル強度は、測定されたT1と相関することが発見された。
【0084】
ハーセプチンおよび抗HER2免疫リポソームなどの腫瘍標的治療剤は、ガンの選択的処置に重要な役割を果たす可能性を有する。標的剤の分布を非侵襲的に測定する能力は、新規の標的治療剤の開発および評価を助長し得る。現在の研究にて、腫瘍の「透過性」ILのMR検出能/可視度を改善する方法が検討されており、リポソーム注入後に見られた腫瘍SIの増大への抗体標的化の貢献を評価するために「不透過性」リポソームを利用する。本研究にて、直径(80nmおよび50nm)の新規の組成物の透過性(P)GdDTPA−BMA封入抗HER2免疫リポソーム(IL)を、ヒト乳ガンのマウスモデルにおける標的(IL)および非標的(NTL)水−不透過性(IMP)リポソームの両方で測定し比較した。
【0085】
GdDTPA−BMA封入リポソームの4つの型を合成した:「透過性」DOPC/Chol/PEG−DPSE(3:1:1)抗HER2標的免疫リポソーム(IL)の2つのサイズ(平均直径80および50nm)、および「不透過性」DSPC/DPPC/Chol/PEG−DPSE(2.2:0.3:2:0.3)リポソーム(ILおよび非標的、平均直径〜75nm)。ILは、viaおよびF5 scFv抗体を標的とした。ヌードマウスに、HER2/neuを過剰に発現するヒト乳ガン系BT474を移植した。腫瘍の容量を合わせ、マウスを2匹1組で、Gd−リポソーム組成物(0.05mmol GdDTPA−BMA/kg)の1種を静脈内注射前および注射後156時間までイメージングした。イメージングの間、マウスを1.5%イソフルランで麻酔した。イメージングを常套的な腕輪および特注の動物ホルダーを用いて1.5T GE Signa スキャナ(General Electric Medical Systems、Milwaukee、WI)で行った。高い解像度の冠状3DFGREイメージがそれぞれの時間点で得られ(TR/TE17/4.2ms、FOV 8cm、マトリックス 512×256、4NEX)、T1もまた、3D可変フリップ角 高速勾配エコー技術を用いて測定した。シグナル強度を、全腫瘍容量および血中に及ぶ目的の領域(ROIS)について測定した。T1もまた、腫瘍ROIについて測定した。MR腫瘍容量は、3Dイメージの連続した薄片で腫瘍を描くことにより測定される。
【0086】
結果:POPCのDOPCへの置換は、POPC剤形で24時間にて見られる+8%の増加と比較して、24時間で+31%(n=5)の平均腫瘍SI変化という著しい増加を生じた。80から50nmへのリポソーム直径の減少は、24時間で腫瘍SIの大きな相違を生じなかった(31%対28%)。IMP−lLおよびIMP−NTL(n=4)は共に、「透過性」lLの血中SI(245%)と比較して注射後5分で同じくらい増加した(平均115%)。IMP−NTL(+12%)と比較したIMP−IL(+17%)の24時間での腫瘍SIの平均の変化の相違は、有意である(p=0.05)。
【0087】
考察:改善された増加が、POPCよりも水透過性であるDOPC層を有するリポソーム組成物に見られる腫瘍シグナル強度で発見された。50nm P−ILおよび80nm P−ILが腫瘍イメージングに関して等しく有効であった事実は、70−80nmがリポソームのGd封入、緩解および生体内分布特性に関与する、イメージングの最適サイズであることを示し得る。P−ILからのシグナル強度の変化は、DOPCと比較して、水に対するDSPC リン脂質二重層の低下した透過性によると予期され得るように、IMP−ILよりも血液および腫瘍の両方で比例的に高かった。驚くべきことに、血中SIの変化はIMP−ILおよびIMP−ヌルで両方とも同じであったが、IMP−ILは腫瘍にてより大きなSI増加を生じ、それは、細胞へのILのエンドサイトーシスにより誘発されるマーカーの放出を示し得る。
【0088】
実施例10
ドキソルビシンおよび常磁性マーカーであるGd−DTPA−(ビス)トリエチルアンモニウムまたはクエン酸アンモニウム鉄のリポソームへの共ローディング、および得られる薬剤とマーカーを共ローディングしたリポソームの特性
リポソームをエタノール注入により形成させ、次に0.1μm ポリカーボネートフィルターを通して繰り返し押し出し成形した。簡単には、乾燥させた脂質(DSPC/Chol/PEG−DSPE、モル比 3:2:0.015)を、60℃に加熱することにより0.5mlのエタノールに溶解した。Gd−DTPA(TEA−Gd−DTPA)のトリエチルアンモニウム塩を、Gd−DTPA二塩基酸の水溶液(Alrdich Corp., Milwakee, USA)とトリエチルアミン原液でpH5.0−5.4に滴定することにより形成させた。リポソームを、500mM TEA−Gd−DTPAの存在下にて水和した。
【0089】
500mM TEA−Gd−DTPA(4.5ml)を60℃に加熱し、その後、すばやくエタノール性脂質溶液(0.5ml、300μmol PL)に注入し、水和した脂質溶液を形成させた。その後エタノールをロータリーエバポレーターで除去し、脂質懸濁液を、2枚重ねのポリカーボネートフィルター(0.1μm)を15回通して押し出し成形した。成形後、非封入TEA−Gd−DTPAまたはクエン酸アンモニウム鉄(III)をHEPES緩衝食塩水(pH6.5)で溶出したセファデックスG−75カラムで除去した。その後、リン脂質(PL)含有量を、リン酸塩の分光学的分析により決定し、次に酸消化し(Bartlett GR. 1959. J. Biol. Chem. 234: 466−468)、ドキソルビシン塩化水素を、1μmol PLに対して150μg 薬剤の割合でリポソームに加えた。薬剤を、薬剤とリポソームを60℃で30分間インキュベートすることによりローディングし、その後、氷上で15分間で反応をクエンチした。非封入薬剤を、第二のセファデックスG−75ゲルろ過カラムで除去し、Hepes緩衝食塩水、pH6.5で溶出した。精製したリポソーム試料中の薬剤の量を、酸イソプロパノール(90% イソプロパノール、10% 1N HCl)中への薬剤ローディングリポソームの溶解後に蛍光(λex=490nm、λem=550nm)により定量し、リン脂質含有量をBartlett(1959)による方法により決定した。薬剤ローディング効率を、1μmolのリン脂質に対して1μgの薬剤が発現されたときの絶対量、および加えた最初の量の薬剤と比較してローディングした1%の薬剤が発現されたときの相対量の両方を測定した。1μmolのリン脂質に対して150μgの薬剤を最初に加えたとき、ドキソルビシンのローディング効率は、92−100%の範囲であった。リポソームサイズを、光子相関分光法により決定し、それは105−120nmであった。
【0090】
Gd−DTPA/ドキソルビシンをどちらも含む前記の間に構築されたリポソームを、保存の間安定にモニタリングした。3ヶ月後、Gd−DTPA/ドキソルビシンリポソームは、それらが製造されたときと同じサイズであった(123.9±23.8 対 121.0±20.7nm)。
【0091】
Gd−DPTA/ドキソルビシンをまた、HER2過剰発現SKBR3細胞を用いたインビトロ細胞毒性分析にて特徴付けた。結果を図16に示す。HER2標的免疫リポソームを封入するGd−DTPA/ドキソルビシンは、遊離薬剤と同じくらい活性であって、非標的リポソーム剤形よりも100倍ほど活性であった。この活性は、常套的なHER2標的硫酸アンモニウムを充填したドキソルビシンリポソームで見られるのと同程度であり、その活性および安定性の両方を維持したGd3+を含むリポソームを示す。
【0092】
血漿安定性の研究は、微量透析分析を用いて37℃で50%ヒト血漿の存在下で行った。50%血漿中のリポソーム試料を、30nm ポリカーボネート膜を有する32mL 主チャンバーから分け、Spectra/Por Microdialyzer(Spectrum Labs; Gardena, CA)の試料ウェル(各0.4ml)に入れた。そのチャンバーを、50%(v/v)のヒト血漿(HEPES緩衝生理食塩水で希釈)で無菌的に満たした。血漿タンパク質、遊離(非封入)薬剤、および遊離イメージング剤は膜を自由に通過し、かつ一番低いチャンバーに蓄積する。前記透析器を、37℃で振とうしながらインキュベートした。所定の時間点で、各ウェル由来の試料のアリコートを取り出し、サイズ除去クロマトグラフィーにより精製し、漏出または遊離薬剤からのリポソーム薬剤またはイメージング剤をさらに分離する。単離されたリポソームを、リン脂質(PL)、ドキソルビシン(DOX)、およびGd3+について分析し、初期試料からのDox−対−PLまたはGd3+−対−PLの変化を、リポソームから漏出する薬剤および/または検出可能マーカーの測定として計測した。ドキソルビシンを、70% 酸イソプロパノール中498nmで分光学的分析により決定し、リン脂質を、Bartlettの方法(1959)の変法を用いてリン酸分析により決定した。Gd濃度を、界面活性剤(1%トライトンX−100)の存在下60℃で5分間リポソームの溶解後、プロトン緩和能におけるGdの効果に基づくNMRにより決定した。以前観察された結果と同様に、ドキソルビシン封入の安定性は非常に良く、48時間後にリポソームと結合して残っているドキソルビシンは80%以上であった(図17を参照のこと)。図は、薬剤をトラップする物質としてGd−DTPAまたはクエン酸Fe(III)をどちらも用いてローディングされたリポソーム中におけるドキソルビシン封入の血漿安定性を示す。ドキソルビシン対リン脂質比の変化は、リポソームからのドキソルビシンの喪失に直接関係する。リポソーム試料を、上記のように37℃で微量透析分析において50%ヒト血漿とインキュベートした。
【0093】
Gd−対−リン脂質の変化は、時間が経つにつれて同様の傾向がみられた。72時間インキュベーション後に封入されて残ったGdの量は、ドキソルビシンのそれと近かった(75% 保有)。故に、本発明の二重薬剤−常磁性マーカーを共ローディングしたリポソームは、両成分に関して活性であるのみでなく、ヒト血漿の存在下でリポソームからの成分の漏出に対して安定でもあった。
【0094】
図18は、ドキソルビシンをトラップするための物質としてGd−DTPAを用いてローディングされたリポソームにおけるガドリニウム封入の血漿安定性を示す。Gd−対−リン脂質の割合の変化は、リポソームからのGdの喪失と直接関係し得る。リポソーム試料を、37℃における微量透析分析にて50%ヒト血漿と一緒にインキュベートした。
【0095】
本明細書中、上記のすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に含まれる。記載した方法の様々な改良法および変法、ならびに本発明の系は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者に理解されるだろう。本発明は、特定の好ましい態様について記載されているが、本発明の請求の範囲はかかる特定の態様に限定されると不当に介されるべきでないことが理解されるべきである。実際、当業者に明らかな本発明を実行するための記載した方法の様々な改良法が、上記の特許請求の範囲内に意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、リポソーム膜を通過する水の交換がいかに膜を構成する脂質の相転移に非常に敏感であることを示す。
【図2】図2は、リポソーム膜の崩壊後のGd3+造影剤の放出を示す。キレートの放出、またはより迅速な水の交換に関する膜バリアーの容易な崩壊が、薬剤についての緩和能(R)の劇的な増加をもたらす。
【図3】図3は、その4つのエステル結合のうちの1つの加水分解によりリン脂質を分解するためのホスホリパーゼの作用を示す;ホスホリパーゼA2は、sn−2位を切断し、ホスホリパーゼCは、リン酸塩のグリセロール側を切断し、そしてホスホリパーゼDは、リン酸エステルの頭部基側を切断する。
【図4】図4は、ポリ(NIPAM−co−MAA−co−DODA)の化学的構造を示す。
【図5】図5は、NIPAMのコポリマーによるpH誘発放出のメカニズムのスキーム図を提供する。
【図6】図6は、グルクロン酸消光Gd3+MRI剤の酵素感受性を説明するスキームを提供する(スキーム1)
【図7】図7は、酸加水分解性シトラコニルリンカーを用いたGd3+についてのpH感受性DOTAキレーターの合成スキームを提供する(スキーム2)。
【図8】図8は、様々なpHで放出されるリポソーム内容物の成形工程中、DSPC/Chol/PEG−DSPE(3:2:0.015)リポソームへのDODA−ポリ(NIPA−co−MAA)の組込みの効果を示す。リポソームを、様々なpHにて37℃で5分間インキュベートし、その後、316nmで励起後に520nmでHPTSについて蛍光光度計で分析した。
【図9】図9は、異なるpHで放出されるリポソーム内容物の挿入による、DSPC/Chol/PEG−DSPE(3:2:0.015)リポソームへのDODA−ポリ(NIPA−co−MAA)の組込みの効果を示す。リポソームを、様々なpHにて37℃で5分間インキュベートし、その後、316nmで励起後に520nmでHPTSについて蛍光光度計で分析した。
【図10】図10は、ビス−カルボキシメチル−PEG モノ−(N,N−ジオクタデシル)アミドテトラ(カルボベンゾキシ−L−リシン)結合(DSA−PEG−(Z−Lys))の合成スキームを提供する(スキーム3)。
【図11】図11は、N−DOTA−ポリ(エチレングリコール)−ジオクタデシルアミンの合成スキームを提供する(スキーム4)。
【図12】図12は、コレステロール ヘミスクシナチル(hemisuccinatyl)−ポリ(エチレン)グリコールの合成スキームを提供する(スキーム5)。
【図13】図13は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノール−N−アミノグルタル酸の合成スキームを提供する(スキーム6)。
【図14】図14は、O−グルタリール−ジオクタデシルグリセロール(グルタリール−DOG)の合成スキームを提供する(スキーム7)。
【図15】図15は、マウスにおけるガドリニウムキレート(Gd−DTPA−BMA)を含むリポソームの静脈投与後の、BT−474異種移植腫瘍におけるMRIシグナル強度の変化を図示したものである。IL80は、「水透過性」DOPC/Chol/PEG−DPSE(3:1:1)抗HER2標的免疫リポソームであり、サイズは80nmである;IL50は、「水透過性」DOPC/Chol/PEG−DPSE(3:1:1)抗HER2標的免疫リポソームであり、サイズは50nmである;IMPLf5は、「水不透過性」DSPC/DPPC/Chol/PEG−DPSE(2.2:0.3:2:0.3)抗HER2標的免疫リポソームであり、サイズは約75nmである;IMPLntは、「水透過性」DSPC/DPPC/Chol/PEG−DPSE(2.2:0.3:2:0.3)非標的免疫リポソームであり、サイズは約75nmである。
【図16】図16は、HER2過剰発現SKBR3細胞に対する、遊離ドキソルビシン(“DOX”)、F5scFv−標的免疫リポソーム ドキソルビシン、またはGd−DTPAと共封入された非標的リポソーム ドキソルビシンのインビトロ細胞毒性を図説する。
【図17】図17は、薬剤のローディングを補助する勾配を形成するための成分としてTEA−Gd−DTPAを用いて充填されたリポソームにおけるドキソルビシン封入の血漿安定性を図示する。ドキソルビシン対リン脂質割合の変化が、リポソームからのドキソルビシンの喪失を示す。そのリポソーム試料を、37℃における微量透析分析にて50%ヒト血漿と一緒にインキュベートする。
【図18】図18は、薬剤のローディングを補助する勾配を形成する成分としてTEA−Gd−DTPAを用いて充填されたリポソームにおけるガドリニウム封入の血漿安定性を図示する。Gdの量は、界面活性剤(トライトンX−100)によるリポソームの分離後のプロトン緩和能の測定により計測される。Gd対リン脂質割合の変化は、リポソームからのGdの喪失を示す。前記リポソーム試料を、37℃における微量透析分析にて50%ヒト血漿と一緒にインキュベートする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節されるシグナルを有する検出可能マーカーを含む、エンドサイトーシスの遠隔検出のためのリポソーム。
【請求項2】
前記検出可能マーカーが、常磁性金属キレートであるかまたはリポポリマーと結合した常磁性金属キレートである、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
前記検出可能マーカーが、ガドリニウムDTPA−BMA、ガドリニウムDTPAおよびガドリニウムHP−DO3Aからなる群から選択される、請求項2に記載のリポソーム。
【請求項4】
前記リポソームが低い水透過性の膜を含んでなる、請求項2に記載のリポソーム。
【請求項5】
前記検出可能マーカーが蛍光マーカーであり、前記リポソームが蛍光消光剤をさらに含む、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項6】
前記検出可能マーカーが蛍光マーカーであり、そして自己消光濃度で存在する、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項7】
細胞内在化可能リガンドをさらに含んでなる、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項8】
該細胞内在化可能リガンドが抗体断片である、請求項7に記載のリポソーム。
【請求項9】
該リポソームが、末端に誘導体化されたPEG−ホスファチジルエタノールアミンリンカーと共有結合した抗体を含んでなる、請求項8に記載のリポソーム。
【請求項10】
前記検出可能マーカーがリポポリマーと結合している、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項11】
前記リポソームがpH感受性リポポリマーを含んでなる、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項12】
(a)エンドサイトーシスが起こり得る条件下で、細胞をそのシグナルが目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節される検出可能マーカーを含むリポソームと接触させること、そして
(b)エンドサイトーシス後に検出可能マーカーのシグナルを検出すること
を含む、リポソームのエンドサイトーシスの遠隔検出のための方法。
【請求項13】
前記検出可能マーカーが、ガドリニウムDTPA−BMA、ガドリニウムDTPAおよびガドリニウムHP−DO3Aからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リポソームが低い水透過性の膜を含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
該検出工程が、MRI法によるプロトン緩和能の増強を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記検出可能マーカーが蛍光マーカーであり、前記リポソームが蛍光消光剤をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
該検出工程が、レーザーイメージング法による増強された蛍光活性の検出を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検出可能マーカーが蛍光マーカーであり、かつ自己消光濃度で存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
該検出工程が、レーザーイメージング法による増強された蛍光活性の検出を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記リポソームが細胞内在化可能リガンドを含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記検出可能マーカーがリポポリマーと結合している、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
(a)遠隔検出可能マーカー;および
(b)治療薬
を含む、リポソーム。
【請求項23】
該遠隔検出可能マーカーが、目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節されるシグナルを有する検出可能マーカーである、請求項22に記載のリポソーム。
【請求項24】
前記遠隔検出可能マーカーがリポポリマーと結合している、請求項22に記載のリポソーム。
【請求項25】
該結合された検出可能マーカーが、ジステアロイルアミノ−PEG−(Lys−Gd−DOTA)である、請求項24に記載のリポソーム。
【請求項26】
該治療薬が抗ガン剤である、請求項22に記載のリポソーム。
【請求項27】
該抗ガン剤がドキソルビシンである、請求項26に記載のリポソーム。
【請求項28】
該治療薬および該遠隔検出可能マーカーが一緒になって一対のイオン結合対である、請求項22に記載のリポソーム。
【請求項29】
該治療薬が陽イオンであり、該遠隔検出可能マーカーが陰イオンである、請求項28に記載のリポソーム。
【請求項30】
該治療薬が陰イオンであり、該遠隔検出可能マーカーが陽イオンである、請求項28に記載のリポソーム。
【請求項31】
細胞内在化可能リガンドをさらに含む、請求項22に記載のリポソーム。
【請求項32】
該細胞内在化可能リガンドが抗体断片である、請求項31に記載のリポソーム。
【請求項33】
該リポソームが、末端に誘導体化されたPEG−ホスファチジルエタノールアミンリンカーと共有結合した抗体断片を含んでなる、請求項32に記載のリポソーム。
【請求項34】
該抗体断片が抗HER2抗体断片であり、前記治療薬がドキソルビシンである、請求項32に記載のリポソーム。
【請求項35】
(a)(i)目的の細胞へのリポソームのエンドサイトーシスにより調節されるシグナルを有する遠隔検出可能マーカー、および
(ii)治療薬
を含むリポソームを投与すること、そして
(b)遠隔検出可能マーカーのシグナルを検出すること
を含む、患者の身体におけるリポソーム薬剤の非侵襲的なモニタリングのための方法。
【請求項36】
前記検出可能マーカーが、ガドリニウムDTPA−BMAおよびガドリニウムHP−DO3Aを含む常磁性ガドリニウムキレートである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記リポソームが低い水透過性の膜を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
該検出工程が、MRI法によるプロトン緩和能の増強を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記検出可能マーカーが蛍光マーカーであり、前記リポソームが蛍光消光剤をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
該検出工程が、レーザーイメージング法による増強された蛍光活性の検出を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記検出可能マーカーが蛍光マーカーであり、かつ自己消光濃度で存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
該検出工程が、レーザーイメージング法による増強された蛍光活性の検出を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記リポソームが細胞内在化可能リガンドを含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
該治療薬および該遠隔検出可能マーカーが一緒になって一対のイオン結合対である、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
該治療薬が陽イオンであり、該遠隔検出可能マーカーが陰イオンである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
該治療薬が陰イオンであり、該遠隔検出可能マーカーが陽イオンである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
該治療薬が抗ガン剤である、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
該抗ガン剤がドキソルビシンである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
該遠隔検出可能マーカーがリポポリマーと結合している、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−528854(P2007−528854A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518944(P2006−518944)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/022133
【国際公開番号】WO2005/016141
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(503316949)カリフォルニア パシフィック メディカル センター (7)
【Fターム(参考)】