説明

細胞を透過処理して安定化する試薬及びその使用方法

細胞の透過処理と安定化のための試薬及びその使用方法を開示する。当該試薬は、N−アシルサルコシン又はその塩;前記試薬のpHを約4〜約6の範囲に調節するpH調節剤;及び水性媒体を含み;前記試薬は9.0mS/cm未満の導電率によって定義される低イオン強度を有している。当該試薬は更にウシ血清アルブミン及びグリセロールを含む。当該試薬は更に、アルキル硫酸塩の界面活性剤を含むことがある。細胞を前記試薬とインキュベートする際、当該試薬は細胞膜を透過処理して細胞内マーカーの浸透を可能にし、細胞膜内での細胞内タンパク質の凝集を引き起こし、更に、フローサイトメトリーによるその後の解析のための細胞マーカーとの結合のために細胞構成要素を保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞構成要素の解析のために細胞含有試料を調製するために、細胞を透過処理して安定化する試薬及びその使用方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内部の分子レベルでの解析は関心の高まりを見せている問題である。日常的にだけでなく研究で使用され、そして細胞内構造を対象とする複数のプローブと抗体が近年登場している。これらのプローブと抗体は、それらの高分子の特徴により、それら自身では細胞膜を通過して細胞内に透過することができない。従って、細胞膜を透過性にするのには細胞の処理が必要である(透過段階)。この処理は、外側の脂質膜に重大な変更をもたらし、そして、使用する方法によっては、細胞の形態の損失、また、場合によっては細胞全体の損失を招くことがある。
【0003】
標準的な透過処理方法は、顕微鏡のスライド上で、又は懸濁液中で、希釈したアルコールを用い、低温(−20℃)で細胞を処理することから成る。この方法は、分子構造及び細胞内の標的の抗原をよく保存するという利点を有する。しかしながら、複雑な手順、及び使用する温度が低いことに加え、細胞の形態は処理の終わりには実質的に変更する。
【0004】
複数の透過処理方法が、脂肪族アルデヒドを用いたタンパク質の化学修飾による細胞の固定を使用しており、その結果当該タンパク質は架橋及び凝集される。透過処理は、アルコール又は界面活性剤を用いた処理により達成される。脂肪族アルデヒドによる固定は、透過処理後の細胞の形態が良好に保持されることが特に知られている。しかしながら、タンパク質分子のレベルでは、多くの抗原部位が固定化法によって破壊される。
【0005】
細胞を透過処理する試薬は、有機溶媒、アルコール、弱塩基及び弱酸の群においてより一般的に見られる。これらの試薬は、細胞膜を透過処理するが、それらは概して細胞の形態を安定化しない。
【0006】
従って、透過処理後も細胞の形態を保護し、そして細胞の内側及び外側にある抗原部位を修飾しない細胞透過処理試薬が望ましい。
【0007】
本発明の要約
1つの態様において、本発明は、細胞の透過処理と安定化のための試薬であって、以下の分子構造:R1−CO−N(CH3)CH2COOX1(ここで、R1は、8〜18個の炭素原子を有するアルキル又はアルキレンであり、そしてX1はH、Na+、又はK+である)によって表されるN−アシルサルコシン又はその塩;前記試薬のpHを7未満に調節するpH調節剤;及び水性媒体を含んで成る試薬に関する。当該試薬は、9.0mS/cm未満の導電率によって定義される低イオン強度を有している。好ましくは、N−アシルサルコシンはN−ラウリルサルコシン又はその塩であり、前記試薬のpHは約4〜6の範囲内であり、そして導電率は1.2mS/cm未満である。
【0008】
好ましくは、前記透過処理安定化試薬は、細胞膜の透過性を増大させ、そして界面活性剤を安定化するために、ウシ血清アルブミン及びグリセロールを更に含んで成る。
【0009】
任意に、前記透過処理安定化試薬は、以下の分子構造:R2−O−SO32(ここで、R2は8〜18個の炭素原子を有するアルキル又はアルキレン基であり;そしてX2はNa+、K+、NH4+又はNH2C(CH2OH)3である)によって表される陰イオン性界面活性剤を更に含んで成ってもよい。
【0010】
追加の態様において、本発明は、フローサイトメトリー解析のために細胞膜を透過処理し、そして細胞構成要素を保存する方法に関する。当該方法は、細胞含有試料と、前記細胞透過処理安定化試薬とを混合して、試料混合物を形成させ;そして、細胞膜を透過処理して、細胞膜内で細胞内タンパク質の凝集が生じさせ、同時に、細胞マーカーと結合するための細胞構成要素を保存するのに十分な時間前記試料混合物をインキュベートし;;細胞マーカーを前記試料混合物に添加し、そして、当該細胞マーカーが保存された細胞構成要素と結合するのに可能な追加の時間前記試料混合物をインキュベートする、段階を含んで成る。当該方法は更に、細胞マーカーが試料混合物中の細胞構成要素と結合した後、細胞を固定する段階を更に含んで成ることがある。試料混合物は、フローサイトメトリー機器上で光散乱及び蛍光解析により解析することができる。
【0011】
本発明の詳細な説明
1つの態様において、本発明はフローサイトメトリー解析のために細胞を準備するための細胞透過処理安定化試薬を提供する。当該細胞透過処理安定化試薬は:
(a)以下の分子構造:
1−CO−N(CH3)CH2COOX1
(ここで、R1は8〜18個の炭素原子を有するアルキル又はアルキレンであり、そしてX1はH、Na+、又はK+である)によって表されるN−アシルサルコシン又はその塩;
(b)前記試薬のpHを7未満に調節するpH調節剤;及び
(c)水性媒体、
を含んで成る。
【0012】
前記試薬は、9.0mS/cm未満の導電率によって定義される低イオン強度を有している。
【0013】
前記透過処理安定化試薬は、好ましくは弱酸性であり、約4〜6の範囲内のpHを有する。更に好ましくは、前記試薬のpHは、約4.6〜約5.6である。好ましくは、pH調節剤は強塩基又は酸であり、そのため、少量の化学物質を使用することで、所望の範囲内にpHを調節することができる。1つの好ましい態様において、N−アシルサルコシン遊離酸が使用され、そして有機強塩基であるピロリジン、又は無機強塩基であるNaOHを使用することでpHが4〜6の間に調節される。N−アシルサルコシン塩を使用する場合、強酸、例えばHClを使用することでpHを調節することができる。
【0014】
細胞を透過処理安定化試薬に曝露する際、透過処理後の細胞の完全性を保存するのに必要な、細胞膜内での細胞内タンパク質の凝集は、低イオン強度のもとでより有効であることがわかっている。本発明のために、水性試薬組成物のイオン強度は、試薬の導電率によって定義される。イオン強度が高すぎる場合、例えば、試薬の導電率が9mS/cm超の場合、当該試薬はもはや細胞内タンパク質を凝集させることができず、そして細胞はその完全性を失う。好ましくは、透過処理安定化試薬は、1.2mS/cm未満の導電率を有する。イオン化合物、例えば塩は、前記試薬のイオン強度の主要原因であるため、前記試薬中では低塩濃度であることが好ましい。
【0015】
好ましくは、細胞透過処理安定化試薬は、更に、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びグリセロールを更に含んで成ることがある。ウシ血清アルブミンは、水溶液中の界面活性剤の溶解度を増強し、それ故に、試薬を長期間使用し、そして保存するのに有益である。ウシ血清アルブミンとグリセロールの組み合わせは、試薬による細胞膜の透過性を更に増強することが分かっている。
【0016】
N−アシルサルコシンは、遊離酸形態で、そしてその塩で、市販されている。金属イオンを試薬中に導入しない遊離酸形態で使用するのが好ましい。遊離酸形態のN−アシルサルコシンは、水溶性ではない。これはエタノール溶液中で予め溶解することができ、そしてその後水溶液中に加えられる。試薬のpHはpH調節試薬によって4〜6の間に調節されるので、N−アシルサルコシンは溶液中でアニオンの形態にある。
【0017】
N−アシルサルコシンの好適な例として、N−オレオイルサルコシン、N−ステアロイルサルコシン、N−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン、N−ココイルサルコシン、及びそれらの塩が含まれる。好ましくは、R1のアルキル又はアルキレン基は、12個の炭素原子を有する。好ましい態様において、N−ラウロイルサルコシンが用いられる。
【0018】
更なる態様において、細胞透過処理安定化試薬は、以下の分子構造:
2−O−SO32
(ここで、R2は8〜18個の炭素原子を有するアルキル又はアルキレン基であり;そしてX2はNa+、K+、NH4+又はNH2C(CH2OH)3である)によって表される陰イオン性界面活性剤(すなわち、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン)を更に含んで成ることがある。
【0019】
好ましくは、陰イオン性界面活性剤のR2のアルキル又はアルキレンは、12個の炭素原子を有する。好適な例には、ナトリウム、カリウム、アンモニウム及びラウリル硫酸トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが含まれる。好ましい態様において、ラウリル硫酸トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが用いられ、これは以後トリスラウリル硫酸塩と称する。
【0020】
N−アシルサルコシン又はその塩、あるいはアルキル硫酸塩又はアルキレン硫酸塩の界面活性剤とのその組み合わせは、前記試薬が、細胞内マーカーの浸透のために細胞の細胞膜を透過処理するのを可能にし、同時に、フローサイトメトリーによるそれらの細胞マーカーとの特異的な結合のために、細胞膜及び細胞構成要素を実質的に保存するのを可能にする十分な量で存在する。両方の界面活性剤の濃度は、約0.01mM〜100mM、好ましくは0.1mM〜10mM、更に好ましくは1mM〜5mMの範囲内にあってもよいことが明らかとなっている。1つの例示的な態様において、2.3mMのN−ラウロイルサルコシンを使用した。別の態様において、0.5mMのトリスラウリル硫酸塩と2.2mMのN−ラウロイルサルコシンを使用した。
【0021】
任意に、透過処理安定化試薬は更に、有機性のモル浸透圧濃度(somolarity)調節剤を更に含んで成ることがある。モル浸透圧濃度調節剤の好適な例には、限定しないが、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、糖類、又はグリセロールが含まれる。好ましくは、糖類又はグリセロールが用いられる。糖類は多糖、例えば二糖、又は単糖でもよい。好ましくは、単糖、例えば(D+)グルコースが用いられる。
【0022】
更に、透過処理安定化試薬は、更に1又は複数の保存剤を含んで成ることがある。好適な例には、試薬の保存寿命を延長するための、抗菌剤及び抗酸化剤が含まれる。保存剤は、試薬の機能を妨害しない量で存在しうる。
【0023】
実施例1は、本発明の3つの例示的な試薬組成物を示す。
【0024】
細胞と混合した場合、本発明の細胞透過処理安定化試薬は細胞膜を効果的に透過処理し、これにより細胞内マーカーは細胞解析のための細胞内に浸透することが可能となり;そして当該試薬はまた、細胞膜内で細胞内タンパク質の沈殿又は凝集をもたらす。しかしながら、同時に、試薬は細胞内構成要素、例えば細胞内の及び細胞表面の抗原部位、DNA及びRNA分子、並びに細胞骨格因子を保存する。
【0025】
本発明において、用語「細胞構成要素」には、細胞膜の内側の細胞成分、そして細胞膜の外側の細胞成分、例えば細胞表面抗原部位が含まれる。用語「細胞内構成要素」は細胞膜の内側の細胞成分を指し、これには、限定しないが、細胞内タンパク質、例えば赤血球の内側にあるヘモグロビン及びヘモグロビン変異体、細胞骨格因子、並びにDNA及びRNAが含まれる。細胞骨格因子には、限定しないが、チューブリン及びスペクトリンが含まれる。
【0026】
上記濃度の界面活性剤は、弱酸性のpHでポリペプチド及びタンパク質の凝集を引き起こす特性を有する一方で、細胞内抗原部位を変性させず、そして細胞膜を破壊しない。浸透及び抗体と抗原の反応を生じさせるためには、pHを上げつつ抗体を導入するのが好ましい。細胞を細胞透過処理安定化試薬で処理した後、細胞構成要素は、細胞を固定剤で固定する前に、抗体を細胞内抗原と反応させるために塩含有緩衝媒体を添加するのを可能にする十分な期間安定であることが分かっている。これらの特性については、後述する実施例において詳細に例示する。
【0027】
本発明の細胞透過処理安定化試薬中の界面活性剤によって生じる効果は、血液試料を調製するのに典型的に使用される界面活性剤によって生じる、細胞溶解を引き起こす効果とは実質的に異なると解されるべきである。これらの条件下では、赤血球の細胞膜は、ヘモグロビンの測定のために、又は白血球の測定のために、ヘモグロビンを放出するために破壊される。
【0028】
追加の態様において、本発明は、フローサイトメトリー機器上での細胞構成要素の解析のために、本発明の試薬を用いて、細胞膜を透過処理して細胞の細胞構成要素を安定化する方法を提供する。
【0029】
更に具体的には、当該方法は、細胞含有試料と本発明の細胞透過処理安定化試薬とを混合して試料混合物を形成し;そして、細胞膜を透過処理し、前記細胞膜内の細胞内タンパク質の凝集を引き起こし、そして細胞マーカーと結合するための細胞構成要素を保存するのに十分な期間前記試料混合物をインキュベートする、段階を含んで成る。当該方法は更に、細胞マーカーを前記試料混合物に添加し、そして、細胞マーカーを保存した細胞構成要素と結合させるための第二の期間当該試料混合物をインキュベートする段階、を含んで成る。任意に、当該方法は、固定剤を試料混合物に添加して細胞を固定させる段階を、細胞マーカーが細胞構成要素と結合した後に更に含んで成ることもある。試料混合物は、注目の細胞構成要素の解析のために、フローサイトメトリー機器に導入することができる。
【0030】
本明細書で使用する「細胞マーカー」という用語は、限定しないが、細胞内タンパク質の抗原部位、細胞表面抗原部位、又は細胞骨格因子に特異的な抗体;DNA又はRNA分子に特異的な核酸色素及び核酸プローブ、例えばオリゴヌクレオチドプローブ、が含まれる。好ましくは、細胞マーカーは、蛍光色素で標識される。更に、細胞内構成要素に特異的な細胞マーカーは、細胞内マーカーとも称される。
【0031】
試料と細胞透過処理安定化試薬とのインキュベーションは、室温で5秒から、好ましくは約5分間でなされうることが明らかとなっている。細胞マーカー添加後の第二のインキュベーションは、約2分から、好ましくは約15分間でありうる。
【0032】
本発明の細胞透過処理安定化試薬を用いて解析される細胞は、顕微鏡用スライド上の組織細胞、又は培養中の細胞系に由来するか、又は体液、特に血球、具体的には赤血球及び白血球中に存在する細胞、であってもよい。解析される細胞は、ヒト組織中、顕微鏡用スライド上、又は懸濁液中に存在することがある。
【0033】
更に具体的には、本発明の細胞透過処理安定化試薬は、赤血球の細胞構成要素の解析のために、血液学の分野で使用することができる。更に具体的には、当該試薬は異なる以上な形態のヘモグロビンに関連する疾患、例えば、胎児ヘモグロビンの存在による妊娠女性における胎児の出血、又はグリコールヘモグロビンの存在による糖尿病、の研究及び診断に使用することができる。これは、赤血球の感染物質、例えばマラリアの検出にも場合によって使用することができる。
【0034】
実施例2〜4は、実施例1の組成物Cによる、透過処理安定化試薬におけるpH及び界面活性剤の効果を例示する。
【0035】
図1は、実施例2に記載の、血清成分、可溶性細胞画分(サイトゾル)及び膜調製物の沈殿に対する実施例1の組成物CにおけるpH及び界面活性剤の効果を示している。ウシ血清アルブミンを除き、各調製物において、タンパク質凝集に関して酸性pHと界面活性剤との間の相乗作用が証明された。サイトゾル試料の当該相乗作用は、ヘモグロビンの存在のために非常に強力であり、そして透過処理試薬との反応で強力な凝集及び沈殿を伴う。膜画分のかかる相乗作用はやや強力なようであるが、この結果は、界面活性剤による膜の脂質部分の溶解によってマスキングされており、これによりカラム4のOD650値が過小評価される。
【0036】
図2Aから図2Jは、細胞の形態保存及び抗体による赤血球の透過に対する、実施例1の組成物CにおけるpH及び界面活性剤の存在の効果を示す。
【0037】
pHが7.0で、界面活性剤が不在のもと、赤血球は図2Aの上方の集団として現れ、これは下方の集団における血小板及び残骸からよく分離されている。図2Bは、赤血球が抗チューブリン−フルオレセインN−イソチオシアネート(FITC)抗体に対し透過性がないことを示している。
【0038】
pHが5.0で、界面活性剤が不在のもと(図2C及び2D)、形態及び透過性は前述の条件とほぼ同じである。他方、図2E及び2Fは、pH7.0で界面活性剤の存在下赤血球が破壊されることを示している。
【0039】
図2G及び2Hは、実施例1の組成物と一緒に血液をインキュベーションした後、赤血球がよく保存されたことを示す。図2Hで示されている細胞のクラスターは、細胞と抗チューブリン−FITC抗体との結合をはっきりと示しており、そして赤血球が抗チューブリン−FITC抗体に対し透過処理されたことを例示している。図2I及び2Jは、実施例1の組成物Cで処理したが、FITCと接合したイソ型のコントロール抗体であって、既知の細胞構成要素のいずれについても非特異的なものとインキュベートした赤血球を示す。図2Jは、細胞と当該コントロール抗体との結合が非常にわずかであるか、又は全くないことを示しており、これにより、抗チューブリン−FITC抗体反応の特異性が確認される。
【0040】
図3Aから図3Jは、白血球の保存及び透過性に対するpHと界面活性剤の効果を示す。赤血球及び顆粒球の分離後、抹消単核球を、pH7.0の界面活性剤を含まない透過処理試薬と混合した。図3Aは、四角内にリンパ球群を示す。下方の集団は、血小板と残骸である。上記条件下で、リンパ球は、図3Bに示す通り、抗チューブリン抗体に対し透過性ではない。
【0041】
図3C及び3Dは、pH5.0の界面活性剤を含まない透過処理試薬を用いて得られた結果を示し、これは図3A及び3Bにおいて観察されたものと類似している。図3E及び3Fについては、透過処理試薬はpH7.0で界面活性剤の存在下用いられる。リンパ球の破壊が観察された。
【0042】
図3G及び3Hについては、界面活性剤を含みpH5.0の実施例1の組成物Cを使用した。図3Hで示す細胞は、抗チューブリン−FITC抗体によるリンパ球の透過をはっきりと例示している。図3I及び3Jは、非特異的なイソ型コントロール抗体を用いて得られた結果を示す。図3Jは、細胞とコントロール抗体との結合が極めて少ないか、又は全くないことを示しており、これにより抗チューブリン−FITC抗体反応の特異性が確認される。
【0043】
実施例5は、胎児ヘモグロビンの解析のための細胞透過処理安定化試薬を用いた方法を例示する。
【0044】
図4から図4Fは、抗HbF−FITCによる細胞内マーキング及び抗iフィコエリトリン(PE)による細胞外マーキングによる胎児赤血球の同定を示す。更に具体的には、個々の散乱図は以下の通りである:
図4A、4B及び4C:カルシウム不在下でのマーキング。
図4D、4E及び4F:1mMのカルシウムの存在下でのマーキング。
図4A及び4D:血液構成要素の散乱図。血小板及び残骸は閾値を設けることで散乱図から除外した。
【0045】
図4B及び4E:FL4におけるCD45−PC5による白血球の排除後に枠内に入れられた赤血球の集団。
【0046】
図4C及び4Fは、Quadrant3(左下)に成体の赤血球(HbF−、i+)を、Quadrant2(右上)に胎児赤血球(HbF+、i+)を、そしてQuadrant4(右下)にF細胞(HbF+、i−)を示す。
【0047】
実施例6は、本発明の細胞透過処理安定化試薬を用いた、フローサイトメトリー上での蛍光によるアルファチューブリン及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)の検出を例示する。
【0048】
本発明の透過処理試薬は、細胞膜を透過処理し、細胞内タンパク質の沈殿を引き起こし、そして更に、光散乱及び蛍光を用いたフローサイトメトリー解析のための細胞マーカーに対する特異的結合のために細胞構成要素を保存すること、が可能である。
【0049】
以下の実施例は本発明の例示であり、特許請求の範囲で定義するような本発明の範囲を限定するものと決して解されるべきではない。前述の開示に従い、種々の他の成分及び比率が採用されうることが理解されよう。
【実施例】
【0050】
実施例1:透過処理試薬組成物
組成物A
以下の透過処理安定化試薬組成物を調製した。
【表1】

【0051】
更に具体的には、N−ラウロイルサルコシンのストック溶液を最初に作った。1.0gのN−ラウロイルサルコシン(Fluka)を1.5mlのエタノール(96%)に予め溶解した。180μlのピロリジン(Aldrich)を95mlの脱イオン水に添加した。続いて、N−ラウロイルサルコシン/エタノール溶液をピロリジン溶液に添加し;pHをピロリジン又はHClで5.6に調節し、そして容積を脱イオン水で100mlに調節してストック溶液を形成した。試薬の全容積を脱イオン水で100mlに調節した。透過処理安定化試薬は、6.25mlのストック溶液を脱イオン水で100mlに希釈し、そしてpHをピロリジン又はHClで5.3に調節することによって調製した。組成物Aは0.1mS/cmの導電率を有していた。
【0052】
組成物B
以下の透過試薬組成物は、各化合物を脱イオン水に溶解することで調製した。
【表2】

【0053】
当該試薬組成物は、0.25mS/cmの導電率を有していた。N−ラウロイルサルコシンを上述のようにストック溶液として添加した。
【0054】
組成物C
以下の透過試薬組成物は、各化合物を脱イオン水に溶解することで調製した。
【表3】

【0055】
当該試薬組成物は、0.5mS/cmの導電率を有していた。N−ラウロイルサルコシンを上述のようにストック溶液として添加した。
【0056】
実施例2:赤血球の異なる成分の沈殿に対する、pH、界面活性剤及びpHと界面活性剤の組み合わせの効果
0.7mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を抗凝固剤として用いて処理した大量の血液を使用することで血清を調製した。別の大量のEDAT処理済みの血液をリン酸緩衝液(PBS)で洗浄し、9倍量の水で希釈して細胞可溶化物を取得した。細胞可溶化物を200gの遠心に15分間かけて、可溶性の細胞画分と膜画分とを分離した。ペレット含有膜画分を、可溶性細胞画分を体積当たり5%含むように大量の水と混合した。
【0057】
血清、可溶性細胞画分、膜画分、並びにコントロールとしてのウシ血清アルブミンを、実施例1の組成物Cと、そして以下の修飾試薬との混合後にモニタリングした:
1.修飾試薬1:界面活性剤(トリスラウリル硫酸塩及びN−ラウリルサルコシン)無添加で、pH7.0の実施例1の組成物C。
2.修飾試薬2:界面活性剤(トリスラウリル硫酸塩及びN−ラウリルサルコシン)無添加で、pH5.0の実施例1の組成物C。
3.修飾試薬3:pH7.0の実施例1の組成物C。
4.透過処理試薬4:上述の(pH5.0の)実施例1の組成物C。
【0058】
試料混合物は、2mlの上述の特定の試薬を以下の4つの成分のうちの1つと混合することで生成した:
−0.01mlの血清(A)、
−0.01mlの15%重量/体積のウシアルブミン調製物(B)、
−0.1mlの膜画分(D)。
【0059】
タンパク質の沈殿を測定するために、試料混合物の1時間後に、試料混合物の光学密度を、前記画分の主要構成要素であるヘモグロビンが吸収しない650nmの波長で測定した。
【0060】
図1は、血清;15%重量/体積のウシ血清アルブミン(BSA)の調製物;可溶性細胞画分(サイトゾル);及び膜画分、における細胞成分の沈殿に対する前記試薬におけるpH及び界面活性剤の効果を示す。上文で言及した細胞成分のそれぞれについての棒グラフは、左から右へ、修飾試薬1〜3及び透過処理試薬4を用いて得られた結果を示す。
【0061】
図1は、上述の通り、低pHで界面活性剤を含む透過処理試薬4のみがタンパク質の凝集及び沈殿をもたらしたことを示している。
【0062】
実施例3:赤血球内への抗体の浸透に対する、pH、界面活性剤、及び酸性pHと界面活性剤の組み合わせの効果
0.01mlの全血を100μlの生理食塩水と混合し、続いて2mlの実施例2に記載の各透過処理試薬の変形版と混合した。5分間インキュベーションした後、50μlの各混合物を、0.2%(w/v)のウシ血清アルブミン及び、FITCと接合した、アルファチューブリンに対するモノクローナル抗体(Beckman Coulter Inc.米国マイアミ)を含む50μlのPBS溶液に添加した。アルファチューブリンは、専ら細胞の内側で発現する分子である。15分間のインキュベーション後、混合物は、0.5%ホルムアルデヒドを含む1mlのPBSと混合することで反応を停止させ、そして細胞を固定し、これにより解析用の試料混合物を形成させた。
【0063】
試料混合物をXLフローサイトメーター(Beckman Coulter Inc.米国マイアミ)上で解析した。細胞の完全性は、前方散乱及び側方散乱によって解析した。細胞の透過性は、FITC抗体の蛍光によって解析した。結果を図2A〜2Jに示す。更に具体的には、個々の散乱図は以下の通りである:
図2A及び2B:血液と修飾試薬1とのプレインキュベーション。
図2C及び2D:血液と修飾試薬2とのプレインキュベーション。
図2E及び2F:血液と修飾試薬3とのプレインキュベーション。
図2G及び2H:血液と透過処理試薬4とのプレインキュベーション。
【0064】
図2I及び2J:透過処理試薬4とのプレインキュベーションであって、FITCと接合したイソ型コントロール抗体と反応させるもの。
【0065】
ここで、FSは前方光散乱であり;SSは側方光散乱であり;FL1、FL2及びFL4は、それぞれ525nm、575nm、及び675nmで測定した蛍光シグナルである。
【0066】
コントロール抗体は、FITCと接合したイソ型抗体であり、これは既知の細胞構成要素のいずれにも特異的ではない。
【0067】
界面活性剤を含み、且つpHが低い透過処理試薬4のみが、赤血球の透過及び保存に効果を有していたことが観察された。
【0068】
実施例4:白血球内への抗体の浸透に対する、pH、界面活性剤、及びpHと界面活性剤の組み合わせの効果
単核白血球は、EDTAの存在下、フィコールを用い、A. Boyem (1968, Scand. J. Clin. Lab. Invest., 21 Suppl. 97)の方法に従い抹消血から調製した。1000万の細胞を100μlの生理食塩水と混合し、続いて2mlの実施例2に記載の各透過処理試薬の変形版と混合した。細胞のインキュベーションと抗チューブリンFITC抗体による細胞内マーキングを実施例3に記載のように実施した。結果を図3Aから3Jに示す。更に具体的には、個々の散乱図は以下の通りである:
図3A、3B:細胞と修飾試薬1とのプレインキュベーション。
図3C、3D:細胞と修飾試薬2とのプレインキュベーション。
図3E、3F:細胞と修飾試薬3とのプレインキュベーション。
図3G、3H:細胞と透過処理試薬4とのプレインキュベーション。
図3I、3J:細胞と透過処理試薬4とのプレインキュベーション、FITCと接合したイソ型コントロール抗体との反応。
【0069】
界面活性剤を含み、且つpHが低い透過処理試薬4のみが、白血球の透過及び保存に効果を有していたことが観察された。
【0070】
実施例5:細胞の内側及び表面にある胎児抗原に基づく胎児赤血球の検出のための透過処理試薬の使用
99%(v/v)の正常な血液及び1%(v/v)の臍帯血の混合物を胎児赤血球の検出に使用した。100μlの生理食塩水、続いて1mlの組成物Cを5μlの血液混合物に添加した。10分間のインキュベーション後、50μlの試料混合物を、以下のものを含む2つのチューブに添加した:
−チューブAには、0.2%(w/v)のウシ血清アルブミンと以下の抗体混合物:
−FITCと接合した抗胎児ヘモグロビン(HbF)モノクローナル抗体(フランス国特許第98 09006号);
−フィコエリトリンと接合した抗胎児血液群iモノクローナル抗体(フランス国特許第98 09006号);及び
−抗CD45−PC5モノクローナル抗体(Beckman Coulter Inc.フランス国マルセーユ)、
を含む50μlのPBS溶液を含めた。
【0071】
−チューブBには、チューブAと同内容のものを含め、更に10μlの10mMCaCl2を添加した。
【0072】
チューブAは、HbFとの反応のネガティブコントロールとしての役割を果たし、これは、当該反応がカルシウム(Ca2+)イオンの存在に依存するためである。
【0073】
前記混合物をXLフローサイトメーター(Beckman Coulter Inc.米国マイアミ)上で解析した。細胞の完全性は、前方散乱及び側方散乱によって解析した。CD45を使用して、この解析から白血球を排除した。胎児赤血球は、抗体の蛍光によって検出した。結果を図4A〜4Fに示す。図4A〜4Cは、チューブAから得られた結果を示し、図4D〜4EはチューブBから得られた結果を示す。
【0074】
図4C及び4Fにおいて、Quadrant3(左下)に成体の赤血球(HbF−、i+)が配置され、Quadrant2(右上)に胎児赤血球(HbF+、i+)が配置され、そしてQuadrant4(右下)にF細胞(HbF+、i−)が配置されていたことが観察された。
【0075】
注目すべきは、カルシウムイオンの不在下では、図4CのQuadrant2には胎児赤血球が見られなかったことである。従って、赤血球は接合した抗体に対し透過性ではなく、そしてHbF抗原と抗HbF抗体との反応がカルシウムイオンに依存する。一見、HbF抗原はその天然の状態で保存され、これは、赤血球と本発明の透過処理試薬とのインキュベーション後の、HbFと抗体との間の相互作用のカルシウム依存性の保存によって確認された。
【0076】
実施例6:赤血球におけるアルファチューブリン及びHbA1Cの検出
0.01mlの全血を100μlの生理食塩水、続いて2mlの実施例1の組成物Bと混合した。5分間のインキュベーション後、50μlの混合物を、FITCと接合した、アルファチューブリンに対するモノクローナル抗体(Beckman Coulter Inc.米国マイアミ)を含むか、あるいはHbA1Cに対する、FITCと接合したモノクローナル抗体(抗HbA1c−FITC抗体)であって、米国特許第4,727,036号に記載のKnowles et alの方法に従い調製したものを含む50μlのPBS溶液に添加した。15分間のインキュベーション後、混合物は、0.5%ホルムアルデヒドを含む1mlのPBSと混合することで反応を停止させ、そして細胞を固定し、これにより解析用の試料混合物を形成させた。
【0077】
試料混合物をXLフローサイトメーター(Beckman Coulter Inc.米国マイアミ)上で解析した。細胞の完全性は、前方散乱及び側方散乱によって解析した。細胞の透過性は、FITC抗体の蛍光によって解析した。結果を図5A〜5Fに示す。更に具体的には、個々の散乱図は以下の通りである:
図5A及び5B:抗チューブリン−FITC抗体との反応。
図5B及び5D:抗HbA1c−FITC抗体との反応。
図5E及び5F:FITCと接合したイソ型コントロール抗体との反応。
【0078】
前記コントロール抗体は、FITCTと接合したイソ型抗体であり、これは既知の細胞構成要素のいずれについても非特異的である。
【0079】
図示したように、赤血球は抗チューブリン−FITC抗体、及び抗HbA1c−FITC抗体の両方に透過性があり、これにより、フローサイトメーターによる赤血球中のアルファチューブリン及びHbA1cの検出が可能となった。
【0080】
本発明を詳細に説明し、そして添付図面において絵を用いて本発明を示したが、これらは本発明の範囲を限定するものとしてみなされるべきではなく、むしろそれらの好ましい態様の例示としてみなされるべきである。しかしながら、種々の修飾及び変更が本明細書に記載され、そして特許請求の範囲で定義された発明及びその均等物の精神及び範囲内で行われうることは自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は血液の異なる画分中でのタンパク質の沈殿に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す:左上、血清;右上、ウシ血清アルブミン;左下、可溶性細胞画分及び右下、膜画分。
【図2A】図2Aは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図2B】図2Bは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図2C】図2Cは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図2D】図2Dは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図2E】図2Eは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図2F】図2Fは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図2G】図2Gは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図2H】図2Hは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図2I】図2Iは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図2J】図2Jは、赤血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図3A】図3Aは、白血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図3B】図3Bは、白血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図3C】図3Cは、白血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図3D】図3Dは、白血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図3E】図3Eは、白血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図3F】図3Fは、白血球の保存及び透過処理に対するpH及び界面活性剤の使用の効果を示す。
【図4A】図4Aは、胎児ヘモグロビン抗原(HbF)及びiの使用による血中のF細胞及び胎児細胞の検出結果を示す。
【図4B】図4Bは、胎児ヘモグロビン抗原(HbF)及びiの使用による血中のF細胞及び胎児細胞の検出結果を示す。
【図4C】図4Cは、胎児ヘモグロビン抗原(HbF)及びiの使用による血中のF細胞及び胎児細胞の検出結果を示す。
【図4D】図4Dは、胎児ヘモグロビン抗原(HbF)及びiの使用による血中のF細胞及び胎児細胞の検出結果を示す。
【図4E】図4Eは、胎児ヘモグロビン抗原(HbF)及びiの使用による血中のF細胞及び胎児細胞の検出結果を示す。
【図4F】図4Fは、胎児ヘモグロビン抗原(HbF)及びiの使用による血中のF細胞及び胎児細胞の検出結果を示す。
【図5A】図5Aは、アルファチューブリン及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)抗原の使用による、血中のアルファチューブリン及びHbA1cの検出結果を示す。
【図5B】図5Bは、アルファチューブリン及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)抗原の使用による、血中のアルファチューブリン及びHbA1cの検出結果を示す。
【図5C】図5Cは、アルファチューブリン及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)抗原の使用による、血中のアルファチューブリン及びHbA1cの検出結果を示す。
【図5D】図5Dは、アルファチューブリン及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)抗原の使用による、血中のアルファチューブリン及びHbA1cの検出結果を示す。
【図5E】図5Eは、アルファチューブリン及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)抗原の使用による、血中のアルファチューブリン及びHbA1cの検出結果を示す。
【図5F】図5Fは、アルファチューブリン及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)抗原の使用による、血中のアルファチューブリン及びHbA1cの検出結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を透過処理して安定化する試薬であって:
(a)以下の分子構造:
1−CO−N(CH3)CH2COOX1
(ここで、R1は8〜18個の炭素原子を有するアルキル又はアルキレンであり、そしてX1はH、Na+、又はK+である)によって表されるN−アシルサルコシン又はその塩;
(b)前記試薬のpHを7未満に調節するpH調節剤;及び
(c)水性媒体、
を含んで成り、
9.0mS/cm未満の導電率によって定義される低イオン強度を有している、試薬。
【請求項2】
以下の分子構造:R2−O−SO32
(ここで、R2は8〜18個の炭素原子を有するアルキル又はアルキレン基であり;そしてX2はNa+、K+、NH4+又はNH2C(CH2OH)3である)
によって表される陰イオン性界面活性剤を更に含んで成る、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
ウシ血清アルブミンを更に含んで成る、請求項1又は2に記載の試薬。
【請求項4】
グリセロールを更に含んで成る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項5】
前記pHが約4〜約6の範囲内にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項6】
前記導電率が1.2mS/cm未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項7】
前記N−アシルサルコシンがN−ラウロイルサルコシンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項8】
前記N−アシルサルコシンが約0.1mM〜約10mMの濃度範囲内にある、請求項7に記載の試薬。
【請求項9】
前記陰イオン性界面活性剤がラウリル硫酸トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項10】
前記陰イオン性界面活性剤が約0.1mM〜約10mMの濃度範囲内にある、請求項9に記載の試薬。
【請求項11】
フローサイトメトリー解析のために細胞膜を透過処理し、そして細胞構成要素を保存する方法であって:
(a)細胞含有試料と、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞を透過処理して安定化する試薬とを混合して、試料混合物を形成させるステップ;
(b)細胞膜を透過処理し、細胞膜内で細胞内タンパク質の凝集が生じさせ、そして細胞マーカーと結合するための細胞構成要素を保存するのに十分な時間、前記試料混合物をインキュベートするステップ;及び
(c)前記細胞マーカーを前記試料混合物に添加し、そして、当該細胞マーカーがステップ(b)で保存された細胞構成要素と結合するのに可能な追加の時間、その後のフローサイトメトリーによる解析のために、前記試料混合物をインキュベートするステップ、
を含んで成る方法。
【請求項12】
前記細胞構成要素が、細胞内抗原部位又は細胞表面抗原部位、DNA、RNA、又は細胞骨格因子である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞内抗原部位がヘモグロビン又はヘモグロビン変異体の抗原部位である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞骨格因子がチューブリン及びスペクトリンを含んで成る、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞マーカーが前記細胞内抗原部位と特異的な抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞マーカーが前記DNA又はRNA分子と特異的な核酸プローブである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞マーカーが前記細胞表面抗原部位と特異的な抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞マーカーが前記試料混合物中の前記細胞構成要素と結合した後に、前記細胞を固定することを更に含んで成る、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【公表番号】特表2008−530526(P2008−530526A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554139(P2007−554139)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/002612
【国際公開番号】WO2006/086157
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(505275295)ベックマン コールター,インコーポレイティド (25)
【Fターム(参考)】