説明

細胞ベースの治療に関する材料及び方法

本発明は、特に細胞の損傷部位への移植によって、老化及び疾患を治療するために使用され得る成体由来の新規の多能性細胞集団を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織再生のための細胞ベースの治療の提供、細胞変性または年齢関連性組織変化にともなう老化及び病状の処置に関する。この治療は、移植に使用され得る成体由来の細胞を具体化する。本発明はさらに、細胞及び臓器の損傷を軽減するための移植及び組織再生に使用するための調製物、並びに移植のための細胞ベースの治療剤の適合性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、培養下で長期間増殖する能力を有し、且つ特殊化した細胞種になるように誘導され得る未分化の細胞である。幹細胞は胚または成体から主に単離され得るが、これらは異なる性質及び機能を有すると考えられる。
【0003】
多くの哺乳類の種の胚(胚幹細胞/胚性幹細胞−ESC)から幹細胞が単離されている。マウス由来のものは、20年以上にわたる集中的な研究の対象であり、1998年以来、単離され取り組まれているヒトESCの単離のために道を開いた(1, 2)。
【0004】
ESCは、典型的に、in vivoにおいてその後のすべての発生上の細胞種をもたらし続ける胚盤胞に由来する。一方、成体幹細胞(ASC)は、それらにより、損傷、または損耗及び裂傷によって失われた細胞の置換が可能となる多くの組織中に存在する。
【0005】
これらの細胞は、特定の病状を引き起こす細胞消失及び損傷のある糖尿病及びパーキンソン病等の疾患の処置のための細胞ベースの治療を提供する可能性を有する。それらはさらに、薬剤のスクリーニング、毒物学的調査、発生プログラムの研究、年齢関連性の組織欠損及び変性の治療に対して大きな可能性を有する。それらはさらに、外科的切除、損傷の後または美容外科手術の一部として、組織再生の可能性を有する。
【0006】
現在、臨床的使用における幹細胞治療に基づく治療法はごく限られている。任意の前記ES細胞ベースの治療または非造血性ASC治療の変換を制限している複雑な要因の一つは、幹細胞の分化を決定的に制御して単一細胞種を産生すること及びそのような細胞供給源の使用による新生組織形成の危険を制御することができないことである。ASCに対する後者の妥当性は不確定である。
【0007】
幹細胞は、体内の他の細胞とそれらを区別する3つの一般的な性質を有する。
(i)それらは特殊化しておらず、且つ明らかな特異的発生上の作用を有しない。
(ii)老化したまたは静止状態を経た他の初代細胞種と異なり、それらは培養下で長期間自己増殖し得る。しかし、幹細胞はそれ自身で再生し得る。
(iii)それらは特異的機能を備える特殊化した細胞種(例えば、神経細胞、β細胞、心筋細胞)をもたらし得る。
【0008】
胚幹細胞は、典型的に、卵割腔の一方の端における約30個の細胞の集団である受精胚の胚盤胞の内細胞塊に由来する。このことが、ヒト胚に由来する前記細胞の使用を取り巻く主要な道徳的且つ倫理的論議を引き起こしている。ESCは、典型的に、げっ歯類のケラチノサイト支持細胞層の存在下で、適切な培養培地に内細胞塊を移行することによって単離される。結果として得られた培養物をその後数ヶ月間連続的に継代し、細胞株を確立する。そのように培養されたESCは、典型的に、分化せずに培養下で6ヶ月以上後に、多能性細胞株と見なされる。
【0009】
ESC等の細胞を明白に特徴づけするための明確な標準試験が存在しない。典型的な特徴づけは、培養下で分化しない長期間の増殖、及び自己再生特性の維持に必要とされる多様な表面マーカー(表1を参照)と組み合わせたOct 4と呼ばれるマーカーの発現に依存している。これは、当該細胞の全体的な遺伝的一貫性を保証するための核型分析と、当該細胞が凍結融解サイクル後に再培養し得るかどうかの判定とに相関している。
【0010】
さらなる相関関係は、in vitroにおける多能性の判定と免疫抑制マウスに注入後の奇形腫を形成する能力である。奇形腫は、通常多様な細胞種を含む良性腫瘍であり、それゆえ、ESCが多様な細胞種に分化し得ることを示している(1, 2)。
【0011】
未分化のESC増殖の制御は、当業者に対して十分に確立されている。明確な培養条件下で、当該ESCが胚様体を形成し得る場合、それらは自然発生的に分化し、多様な細胞種を形成する。これは、細胞ベースの治療のための、不純物のない明確な細胞種集団の産生を危うくする可能性がある。
【0012】
特定の培養培地における増殖を利用することにより、特定種の細胞用にESCの方向性のある分化を向上させることができる。例が示されている(3, 4)。この手順によって得られた不純物のない細胞集団は、糖尿病、パーキンソン病、脊髄損傷、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、心臓疾患、失明、及び他の多くの病気に対する可能性のある治療である。
【0013】
しかし、造血系はASCに実例を提供している。これに基づき、ASCはin vitroでは柔軟性(plasticity)を示すが(5, 6)、それらが存在する組織の細胞種を産生していると典型的に考えられている。造血系幹細胞(HSC)は、例えば、神経細胞及び心筋細胞をもたらすこと、及び多臓器、多系統移植を示すことが立証されている(7)。このことにより、ASCが細胞ベースの治療の刺激的な標的となっている。本明細書で使用される用語の柔軟性は、一つの組織から他の組織の分化した細胞種を産生する幹細胞の能力を表す。これはまた、当該分野における文献中で、「変則的な分化(unorthodox differentiation)」(8)または「分化転換(transdifferentiation)」(9, 10)とも呼ばれている。
【0014】
ASCは成体の組織または臓器中の分化した細胞の中に見られる未分化細胞であり、それらは特殊化しておらず、且つそれ自身で自己再生し得、分化する能力を維持し、組織または臓器の主要な細胞種を産生する。ASCは、組織修復を維持し且つもたらすと考えられている。成熟組織中の成体幹細胞の由来は不明であり、それらの柔軟性の程度は依然として解明されていない。移植におけるそれらの使用は広く知られている。骨髄由来のASCは、30年間、移植片において使用されている。成体非HSCの使用、それらの有効性、柔軟性、及び長期の追跡調査の安全性は依然として立証されていない。神経幹細胞は現在確立され、真正のASC種として受け入れられているが、非間質ASCについての報告は当該分野で依然として議論されている。当該分野についての詳細な概説に(6)を参照。
【0015】
任意の組織中のASCの数は限られているようである。前記細胞の特徴づけは、当業者の間で依然として不明確である。典型的に、これは他のアッセイで補足された、ESC用に使用されるものに類似した試験によって達成される。これらは、生きた組織中において細胞を分子量マーカーで標識し、次いでそれらがどの細胞種を産生するかを決定し(30)、または当該細胞を採取しそれらをex vivoで標識し、且つ第二の動物への移植後のそれらの運命を追跡することを含む。あるいは、当該ASCを、それらがどのような分化細胞種をもたらし得るかを決定するために、in vitroで培養させることができる。In vivoにおいて損傷のある組織を治療する場合、移植後のクローン単離及び個々の細胞の増殖も使用して、当該細胞種の多分化能の状態を測定する(11)。
【0016】
ASCの分化に関する現代の仮説は、ASCが多分化能及び柔軟性を示し得ることを前提としている。正確な増殖条件下で増殖した場合、それらは、それらが通常位置する臓器の細胞及び組織を産生する。
【0017】
このことは:
(i)すべての血液細胞種をもたらす造血系幹細胞;
(ii)骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、及び腱におけるもの等の他の種類の結合組織細胞をもたらす骨髄間質細胞;
(iii)神経細胞、星状膠細胞、及び乏突起膠細胞をもたらす神経幹細胞;
(iv)腸陰窩における吸収細胞、杯細胞、パネート細胞、及び腸内分泌細胞を産生する腸上皮幹細胞;
(v)ケラチノサイト、毛嚢、及び表皮を産生する皮膚幹細胞;
によって例証され得る。
【特許文献1】Mummery C. Stem cell research: immortality or a healthy old age? Eur J Endocrinol. 2004 Nov; 151 Suppl 3: U7-12
【特許文献2】Landry DW, Zucker HA. Embryonic death and the creation of human embryonic stem cells. J Clin Invest. 2004 Nov; 114 (9): 1184-6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ASCはさらに、それらが存在するところから離れた組織由来の細胞に分化転換すると仮定されている(10, 11)。分化転換の例は、HSC由来の神経細胞種、並びに心筋細胞及び肝細胞の産生を含む。心筋細胞はまた骨髄間質細胞にも由来し、一方、神経幹細胞は血液及び骨格筋細胞を産生するために使用されている。分化転換のメカニズム及びそれを誘発する要因は依然として解明されていない。このことは、当該分野において依然として答えが出ていないいくつかの重要な疑問の一つである。そのような柔軟性が正常であるのか、あるいは実験場の操作の人為的結果であるのかどうかは、依然として解明されていない。さらに、1つ以上の前記ASC種が実際にin vivoにおいて存在するのかどうかについては、当該分野において依然として議論の的である。ASCの数と種類、それらはどこに存在するのか、それらはESCの上に残されているのかどうか、分化した組織中でどのように自己増殖を維持するのか、並びにそれらは最終的にどのように分化するのかについては、依然として取り組む必要がある。
【0019】
ESCの証明された多能性特性及びそれらを大量に増殖する能力により、それらは細胞ベースの治療の魅力的な候補となっている。これは、そのような細胞は稀であると見なし、それらの増殖条件は可能性のある治療のために十分な数の適切な細胞を産生するのに十分には確定されていないとするこの文脈において、ASCの使用の厳しい制限である。
【0020】
しかし、ASCは「それ自身」に由来し得、それゆえ患者は彼ら自身の細胞を受け、ガンの危険性が有意に増大することを含む拒絶反応を防ぐための免疫抑制の有害な副作用に苦しむ必要がないという点において、決定的に有利である。限られた能力/柔軟性はまた、異常な細胞分化が制限され、且つ新生組織形成の危険性が低下するという点において、改良された安全因子であると考えられる。
【0021】
I型糖尿病、神経変性疾患(パーキンソン病及びアルツハイマー病を含む)、心臓血管疾患、及び骨粗しょう症等の病気を治療するために、ASCベースの治療が提案されている。しかし、多くの障害が依然として残る。これらは、移植に十分な量の細胞を産生する能力、及びこれらを所望の細胞種に分化させる能力を含む。これらはさらに、移植後のレシピエント内で一体化し且つ存続することが示される必要がある。さらに、任意の細胞ベースの治療の移植後の長期の有効性、及び安全性の心配がないことが示される必要がある。さらに、移植片拒絶及び細胞損傷(移植の前及び後の)にともなう問題について、依然として取り組む必要がある。
【0022】
疾患と闘うための細胞移植片の使用は、糖尿病及びパーキンソン病等の病気の治療に対して大きな展望を与える。この展望にかかわらず、適切な細胞をどこから単離するのか、どの種類の細胞を実際に使用し得るのか、及びこれらの細胞は実際に何をするのかについての多くの論争が存在する。発癌性の可能性を有する多能性細胞を使用した細胞移植片の安全性に関連する問題が依然として存在する。
【0023】
胚幹細胞及び胎児幹細胞の使用は、例えば、倫理的及び道徳的見地によって批判されるが、それでも幹細胞特性及び可能性のある利用についての豊富な情報を何とか提供している(1, 2)。
【0024】
成体由来の細胞は、前記倫理的問題を回避し、且つ移植のための「自己」由来の細胞の可能性を与える代替的アプローチを提供する。
【0025】
前記細胞は、前駆細胞または幹細胞(3)と称され、ES幹細胞に対して定義される多くの特性を示す。これらの細胞は、特殊化した細胞種に分化せずに、無期限に培養下で自己再生し得る。さらに、適切な成長因子またはモルフォゲンを有する適切な培地中で増殖させた場合、特殊化した細胞種を得るために使用され得る。成体幹細胞はほとんどの組織から単離されているが、これらの細胞が示す発生上の柔軟性の程度は議論の余地がある(3)。
【課題を解決するための手段】
【0026】
膵臓におけるインシュリンは、インシュリン分泌β細胞によって作られる。置換細胞の由来に関する議論はあるものの、in vivoにおいてβ細胞の代謝回転は一生を通じて起こっていると考えられている。Meltonら(30)は、β細胞が実際に自己再生を受けていることを示すデータを提供している。動物モデル及びin vitro実験における観察により、膵管細胞は、インシュリンを産生し且つ島様クラスターを生じ得るという点においてβ細胞に類似した細胞の供給源をさらに提供し得ることが示されている(4)。これらの細胞は神経幹細胞マーカーのネスチン(nestin)を発現するという証拠もある(4, 12)。
【0027】
本発明者は、成体膵臓由来の細胞の集団がASCの様に機能し得ることを見出した。従って、その最も一般的には、本発明は、パスファインダー細胞(Pathfinder Cell:PC)と呼ばれる新規の多能性成体細胞集団を用いた細胞ベース治療に基づいた、疾患及び老化状態を治療するための材料及び方法を提供する。これは、糖尿病及びパーキンソン病等の神経変性疾患等の疾患に対する細胞ベースの治療を初めて提供するものである。
【0028】
成体ラット膵臓由来のPCは、1977年のブダペスト条約に従って、細胞培養物の欧州コレクション(The European Collection of Cell Cultures, Porton Down, Salisbury Wiltshire, UK, SP4 0JG)に、2005年5月12日、グラスゴー大学の大学役員会(The University Court)によってECACC番号Q6203の下で寄託されている。
【0029】
本発明者は、ヒト乳房及びヒト腎臓由来の細胞の類似集団も得ている。さらに、本発明者は、げっ歯類骨髄由来の細胞の機能的に類似した集団の存在を立証している。
【0030】
本発明者は、驚くべきことに、インシュリン産生細胞が、糖尿病患者への移植に使用され得る多能性成体細胞集団から得られることを見出した。前記細胞集団は、RT-PCRによって分析した場合、ネスチンを発現しており、且つそれらは、細胞外マトリックスの非存在下、例えばマトリゲル(登録商標)フリー培養系で、成長培地中に血清の存在下で増殖し得る。
【0031】
本発明者はさらに、移植後、前記PCは宿主細胞が損傷した膵臓組織を再生するように誘導し得ることを見出した。従って、この新規の細胞集団はインシュリン産生細胞に成熟し得るだけでなく、宿主細胞を刺激して再生させ得ると考えられる。この発見は、細胞ベースの治療の分野においてかなりの重要性を有する。
【0032】
本発明の第一の特徴点において、成体組織に由来する単離細胞集団(幹細胞または前駆体細胞様の)が提供され、前記細胞はネスチン陽性であり(ラット:NP_037119.1 GI:6981262;ヒト:NP_006608.1 GI:38176300)(例えばPCRによって)、好ましくは、PDX-1陰性であり(ヒト:NP_000200.1 GI:4557673;ラット:NP_074043.3 GI:50838802)、成長培地中に血清の存在するマトリゲルフリー培養系において増殖し得る。
【0033】
当該集団中のネスチン陽性細胞のパーセンテージは、フローサイトメトリー分析によって測定されるように50%未満であってよい。それにもかかわらず、それらは、例えばPCRによってネスチン陽性細胞として区別され得る。
【0034】
当該細胞集団はまた、例えばフローサイトメトリーによってCD90陽性である(ラット:位置:P01830 GI:135832;NP_006279 GI:19923362)。CD90陽性細胞のパーセンテージは、50%未満であってよい。
【0035】
当該成体膵臓組織は好ましくはヒトのものである。しかし、それは他の哺乳動物種、例えばラット、マウス、霊長類、ブタ等に由来してもよい。
【0036】
当該成体組織は好ましくは膵臓組織であるが、他の臓器、例えば乳房、骨髄、心臓、肝臓、または腎臓に由来してもよい。
【0037】
好ましくは、当該細胞集団は2005年5月12日にECACCにおいて登録番号Q6203の下で寄託された細胞を含む。
【0038】
製薬上許容し得るキャリアとともに、本発明に係る細胞集団を含む製薬組成物がさらに提供される。
【0039】
本発明の第二の特徴点において、成体哺乳動物組織由来の多能性細胞集団を単離する方法が提供され、前記方法は:成体臓器から組織を得る工程;前記組織を培養する工程;及び出現した細胞集団単層を単離する工程を含む。
【0040】
好ましくは、当該組織は膵臓のものであり、且つ当該成体臓器は膵臓である(例えば、成体膵管)。しかし、本発明者は、乳房組織及び腎臓組織における類似の細胞集団を見出した。従って、当該成体臓器及び得られた組織は、乳房、肝臓、または腎臓由来であってもよい。
【0041】
好ましくは、当該組織は商業的に入手可能なCMRL-1066培地(Sigma社;C-0422)中で培養される。しかし、他の培地も当業者に既知であろう。
【0042】
成体膵管から得られた組織は管全体を含んでよく、またはより好ましくは、当該培養工程で役立つように細かく刻まれた管組織を含む。
【0043】
本発明はさらに、前記方法によって産生可能な成体細胞集団を提供する。
【0044】
本発明の第三の特徴点において、PC抽出物を獲得する方法が提供され、前記方法は、適切な培地中で本発明の第一の特徴点のPC細胞を増殖させる工程、及びPC抽出物を含む前記培地を回収する工程を含む。
【0045】
前記PC抽出物は、好ましくは、分泌された細胞因子、細胞抽出物、またはそれらの組合せを含む。
【0046】
従って、本発明はさらに、PC集団が増殖している培地からなる調製物を提供する。前記培地を、関心のある活性化学物質/化合物を取り除くために処理してよい。さらに、当該PCを直接に処理してよく、前記調製物を作製する際にそれらの抽出物を使用してよい。
【0047】
この実施態様によれば、細胞の消失または変性にともなう疾患または老化状態を治療するための、及び疾患または美容手術にともなう組織再生のための、前記調製物または培地を用いる方法がさらに提供される。
【0048】
当該培地、調製物、得られたPC因子または抽出物、あるいはそれらの組合せを、個体に直接投与することによる治療方法(美容外科手術を含む)に使用することができる。
【0049】
本発明はさらに、当該成長培地から細胞因子、抽出物等を獲得する方法、並びに細胞の増殖及び分化を制御し得る因子を決定するためにそれらの因子を調査する方法を提供する。
【0050】
本発明の第四の特徴点において、細胞の消失または変性にともなう病状または老化状態を治療する方法が提供され、前記方法は、前記疾患を有する患者に第一の特徴点による細胞集団(または細胞から分泌された因子、細胞抽出物、あるいはそれらの組合せ)を投与する工程を含む。
【0051】
前記細胞等を好ましくは静脈内に投与し、またはそれらを当該疾患部位に移植することができる。
【0052】
好ましくは、当該疾患は膵臓細胞、神経細胞、心臓血管細胞(例えば、心筋細胞)、上皮細胞、肝臓細胞、または腎臓細胞の変性に関連する。
【0053】
治療されるべき病状は、糖尿病(I及びII型)、肝臓疾患、腎臓疾患、眼疾患、パーキンソン病、及び心臓血管疾患、並びに身体の臓器及び組織の年齢関連性の変性状態を含んでよい。本発明のこの特徴点は、美容外科手術の形態、例えば組織用及び老化の外見を防ぐための細胞再生として使用されてもよい。
【0054】
本発明の好ましい実施態様は、当該細胞のドナーおよびレシピエントが同一種であり、理想的にはヒトである場合であると解されるであろう。しかし、本発明者は驚くべきことに、当該細胞が、ほとんどまたは全くの免疫学的問題なく、種の壁を越えて働くことを見出した。従って、本発明の実施態様は、ヒト患者の治療におけるラットPCの使用を含む。
【0055】
本発明の第五の特徴点において、特定の分化した細胞集団を産生する方法が提供され、前記方法は:PC集団を準備する工程;任意的に、表3に示された1つ以上のマーカーまたは本明細書に例示された他のものを用いたPC細胞亜集団を選択する工程;及び細胞分化をもたらす環境下で細胞の前記亜集団を培養する工程を含む。
【0056】
前記方法はさらに、得られたPC細胞、並びにそれに由来する移植用の分化及び未分化の細胞集団について移植のための適合性を評価する工程を含み、前記工程は前記細胞集団において表4に示された1つ以上のマーカーの存在を検出することを含む。
【0057】
本発明はさらに、美容外科手術を含む医療処置の方法における使用のための、本発明の第一の特徴点による細胞集団を提供する。
【0058】
細胞の消失または変性にともなう病状または老化状態、例えば糖尿病及びパーキンソン病を治療するための医薬の調製における、本発明に係る細胞集団の使用がさらに提供される。
【0059】
本発明の特徴点及び実施態様は、ここで添付の図面を参照して例として説明される。さらなる特徴点及び実施態様は、当業者に明らかであろう。本明細書中で挙げられたすべての文献を、参照により本明細書に組み込む。
【実施例】
【0060】
<実施例1:げっ歯類異種移植片モデルにおける、成体膵臓由来のパスファインダー細胞によるSTZ誘発性糖尿病の軽減>
[はじめに]
世界中で1億5000万人の人々が糖尿病に罹患している。インシュリン治療にもかかわらず、網膜症、腎症、及びニューロパチー等の晩期合併症は稀ではない。死体からの島の移植はI型糖尿病の問題を処理する一つの手段を提供するが、これは入手できる臓器の不足により危ういものである。幹細胞治療はこれらの問題に取り組むための可能性のある手段を提供する。この技術が十分に機能的なβ細胞を産生し得るかどうかは、依然として明らかではない。
【0061】
β細胞の産生を容易にするための一つのアプローチは、β細胞系統に密接に関連し、且つ多能性幹細胞の使用に関連する議論及び技術的問題を回避するであろう成体ヒト膵臓前駆体細胞の増殖及び分化を含む(13)。成体膵臓における幹細胞の状態は不明であるが、幹細胞が膵管に存在するという証拠が、膵臓再生のげっ歯類モデルによって提供されている(14, 15, 16)。
【0062】
In vitroにおいて、マウスの導管細胞は膵臓前駆体の供給源を提供することが示されている(17, 18)。ヒト膵管細胞のために豊富にされた培養物中での、内分泌腺分化も報告されている(19)。
【0063】
任意の膵臓前駆体/幹細胞の正確な性質は、依然として議論の余地がある。神経幹細胞マーカーのネスチンの発現、並びに既知の島及び導管細胞マーカーの欠如に基づいて、管上皮細胞に加えて、さらなる候補島前駆体細胞が記載されている(12, 20)。
【0064】
そのようなネスチン陽性細胞は、in vitroにおいて、膵臓内分泌腺、外分泌腺、及び肝臓の表現型に分化することが報告されている(12)。マウスESC由来のインシュリン産生細胞の分化は、ネスチンを発現する中間細胞種を含むとも記載されている(21)。これは、島分化における任意のネスチン発現細胞の役割を排除した、マウス及びヒトの膵臓発生についての確立された記述的分析に反している(22)。
【0065】
より伝統的に受け入れられている見解は、膵臓内分泌腺前駆体/幹細胞が、インシュリン産生細胞に対する既知のマーカーであるPDX-1を発現しているというものである(19)。そのような細胞種は、in vitro操作の影響を受けやすく、且つ線維芽細胞成長因子-7(FGF-7)の存在下で増殖させた場合に導管細胞の増殖を刺激することが立証されている。ニコチンアミド(NIC)を補充したマトリゲル上でのさらなる増殖は、内分泌腺分化を誘発し且つ刺激することが報告されている(23-25)。
【0066】
このデータは、類似のヒト細胞集団の同定によって支持されている。これらの細胞は、無血清の増殖条件及び絶対的に不可欠な要素としてマトリゲルの使用を必要とすることが報告されている。それらは、in vitroにおいて、グルコース刺激に応答してインシュリンを産生する島様構造物を産生するように誘発される。批判的には、ネスチン陽性幹細胞由来の内分泌細胞の発生の証拠は見出されていない(26)。
【0067】
本発明者は、そこから移植に使用され得るインシュリン産生細胞を得るために、膵臓由来の多能性成体幹細胞を単離した。胚及び胎児の細胞種にともなう倫理的且つ道徳的ジレンマを回避するために、成体細胞が探求された。決定的には、本発明者は、ネスチン陽性細胞の使用、及び成長培地中に血清の存在するマトリゲルフリー培養系における増殖の存在によってこれが達成され得ることを立証することを追及している。
【0068】
この実験系の重要な特徴は、任意の組織再生に関して、移植された細胞の運命を評価するように設計されている点である。
【0069】
従って、宿主細胞が損傷した膵臓組織を再生するように当該PCが誘導するかどうか、またはそれら自身が増殖し当該組織を再生するかどうか、あるいはそれは両方の組合せであるのかどうかが評価される。宿主組織が別の種由来の細胞の刺激を介して再生され得ること、または実際に両種の細胞の組合せが組織修復に影響を及ぼし得ることが、当該分野で明白であると見なされていないように、このことは本出願の決定的な特徴点である。
【0070】
[材料及び方法]
膵管を12月齢のアルビノスイス(Albino Swiss)ラットから単離し、CMRL培地中に播種する前に細かく刻んだ。培養下で約5週間後に、コンフルエントの単層としてパスファインダー細胞が出現した。その後、これらを回収しPBSで洗浄した。
【0071】
[PCの維持]
0.2μmフィルターキャップ付きのT75培養フラスコ(Corning社, UK)中に、10%ウシ胎児血清(Sigma社, Poole, UK)、2 mMグルタマックス、1.25μg/mLアムホテリシンB、及び100μ/mL/100μg/mLペニシリン/ストレプトマイシン(すべてInvitrogen社, Paisley, UK)を補充した20 mLのCMRL 1066培地(Invitrogen社, Paisley, UK)中で、37℃で5% CO2大気中での培養下で、PCを維持する。
【0072】
ピペットで培養培地をすべて除去し、10 mLのカルシウム及びマグネシウム不含のハンクス平衡塩溶液(HBSS)(Cambrex Bio-Science社, Wokingham, UK)を当該フラスコに室温で5分間添加することによって付着細胞を洗浄することによって、ほぼコンフルエントの培養物を継代する。前記フラスコからHBSSをピペットで除去後、2 mLのトリプシン−ベルセン溶液(200 mg/Lベルセン、500 mg/Lトリプシン)を当該フラスコに添加する。当該細胞の単層の解離が確認され得るまで当該フラスコを周期的に観察する。次いで、細胞をピペットで取り出し、20 mLの新しい培養培地の添加によって所望どおり1/5〜1/10の密度を超えるようにして再培養する。当該培地を、1週間に2回、20 mLの新しい培地で置換するべきである。数回の継代後、当該細胞集団を確立するために、0.2μmフィルターキャップ付きのT75またはT160フラスコ中に、5%ウシ胎児血清(Sigma社, Poole, UK)、2 mMグルタマックス、1.25μg/mLアムホテリシンB、及び100μ/mLペニシリン/ストレプトマイシン(すべてInvitrogen社, Paisley)を補充した20 mLのCMRL 1066培地(Invitrogen社, Paisley, UK)中で、37℃で5% CO2大気中で、当該PCを維持する。
【0073】
[フローサイトメトリー]
前述のように、培養された細胞を洗浄しトリプシン処理する。次いで、それらを1000×rpmで10分間遠心分離し、生じた細胞ペレットをPBS中に再懸濁する。次いで、トリパンブルー(Invitrogen社, Paisley, UK)生存率カウントを行い、次いで、100,000〜1,000,000細胞/mLを、暗所4℃で45分間、0.2% BSA/PBS中の1/75希釈のマウス抗ラットCD90抗体(Serotec社, Kidlington, UK)100μLで標識する。次いで、それらを0.2% BSA/PBS中で1000×rpmで3回洗浄及び遠心分離した後、暗所4℃で45分間、5%ブロッキング血清を補充した0.2% BSA中の1/15希釈のFITC接合ウサギ抗マウス免疫グロブリンの(Fab)2断片(Dako Cytomation社, Ely, UK)100μLの添加によって標識する。二次抗体のみのコントロールも用意する。前述のように洗浄及び遠心分離した後、生じた細胞ペレットを1 mLのPBSに再懸濁し、Beckman Coulter XLフローサイトメトリー(Beckman Coulter社, High Wycombe, UK)を用いて陽性細胞のパーセンテージを確認する。
【0074】
[移植シリーズ1]
0日目にC57BL/6マウス(n=5)をStreptotozocin(STZ:250 mg/kg)の注入によって糖尿病にした。3日目に当該尾静脈中に750,000個のPCを注入した。コントロール動物には生理食塩水または同じ数のC57BL/6の骨髄細胞を注入する。3日おきに血中グルコースをモニターした。
【0075】
[移植シリーズ2]
0日目にC57BL/6マウス(n=4)をStreptotozocin(STZ:250 mg/kg)の注入によって糖尿病にした。血中グルコース。
【0076】
[リポフスチン発現の測定]
細胞のリポフスチン含有量を、560-590 nm領域で青色発光するフローサイトメトリーを用いて評価した。当該発光ピークの平均値として読み取り値を算出し、任意の単位で表した。
【0077】
[WSTアッセイの手順]
下記のようにパスファインダー細胞を過酸化物質の侵襲にさらし、メーカーの指示に従って、WSTアッセイ(Roche社, Switzerland)によって増殖能を評価した。
【0078】
[LDHアッセイ]
メーカーの忠告に従って、細胞毒性検出キット(Cytotoxicity Detection Kit:Roche社, Nonnenwald, Germany)を用いてLDH細胞毒性アッセイを実施した。
【0079】
[ヒト乳房組織培養]
乳房縮小術を受けた患者由来の1 cm断片の乳房組織のサンプルを、10%ウシ胎児血清(Sigma社, Poole, UK)、2 mMグルタマックス、1.25μg/mLアムホテリシンB、及び100μ/mLペニシリン/ストレプトマイシン(すべてInvitrogen社, Paisley, UK)を補充した5 mLのCMRL 1066培地中に移した。当該組織を無菌条件下で手術用メスの刃を用いて細かく刻み、次いでコラゲナーゼIV(10 mL HBSS中に0.05 g)で5-12時間処理した。これらを16ゲージのニードルを用いて採取し、37℃で5% CO2大気中で、T25組織培養フラスコ中の前記培地中で平板培養した。
【0080】
[分化実験及び培地]
細胞を1つのT75あたり0.25及び0.5×106細胞、並びに0.1×105細胞で平板培養した。
肝細胞培地:
10 ng/mL線維芽細胞成長因子4(Sigma社)、1×ITS(Gibco社)、100μ/mLペニシリン/ストレプトマイシン、及び0.2%ウシ血清アルブミンを補充したDMEM:F12。
【0081】
[細胞選別]
一次抗体−マウス抗ラットCD90(Serotec社)
ダイナビーズ・ヤギ抗マウスIgG(Dynal Biotech社)
バッファー1:PBS(Ca2+及びMg2+不含/0.1% BSA及び2 mM EDTA pH 7.4)
メーカープロトコールによると要するに、ダイナビーズ洗浄手順:所望の量の再懸濁したダイナビーズをエッペンドルフに移し、等量または少なくとも1 mLのバッファー1を添加する。チューブを磁気中に1分間放置し、上清を除く。磁気からはずし、元の容量のバッファー1中に再懸濁する。106個の標的細胞あたり1μgの一次抗体を添加する。2-8℃で10分間インキュベーションする。1×107細胞あたり2mLのバッファー1を添加することによって細胞を洗浄し、8分間300×gで遠心分離する。上清を除く。1×107細胞/mLでバッファー1中に当該細胞を再懸濁する。
【0082】
[単離手順]
1×107細胞/mLのサンプルあたりダイナビーズを25μL添加する。穏やかな傾斜をつけ且つ回転させながら2-8℃で20分間インキュベーションする。結合していない細胞の補足を制限するために、バッファー1で当該容量を倍加する。当該チューブを磁気中に2分間放置する。
上清を除き、以下の手順:1)1×107ダイナビーズあたり1 mLのバッファー1を添加し;2)チューブを磁気中に1分間放置し、上清を除く;を用いてビーズに結合した細胞を穏やかに4回洗浄する。
維持用培養培地中に細胞を再懸濁し、組織培養フラスコ中で平板培養する。
【0083】
[消尽手順]
1×107細胞/mLのサンプルあたりダイナビーズを50μL添加する。穏やかな傾斜をつけ且つ回転させながら2-8℃で30分間インキュベーションする。結合していない細胞の補足を制限するために、バッファー1で当該容量を倍加する。当該チューブを磁気中に2分間放置する。
結合していない細胞を含む上清を新しいチューブに移す。磁気中にさらに1分間再び放置する。結合していない細胞を含む上清を移し、維持用培養培地へ添加し、組織培養フラスコ中で平板培養する。
実験における使用前に、それぞれの選別された集団について2回MACsを実施した。実験における使用前に、すべての選別された集団を蛍光活性化フローサイトメトリーで調べた。
【0084】
[老化関連βガラクトシダーゼアッセイ]
105細胞/ウェルの密度で6ウェルプレート上で細胞を増殖させた。播種後約72-96時間の時点で(コンフルエントになった時点で)、細胞をPBS中で洗浄し、1 mLの2%ホルムアルデヒド/0.2%グルタルアルデヒド中で、室温で10分間、固定する。無菌PBSで2回すすぎ、37℃(CO2なし)でインキュベーションし、新しいSAβGal染色液の脱水を防ぐためにパラフィルムで包み、以下のように(終濃度を表す)準備する。
溶液1 mLあたり
・1 mg X-gal
・5 mM フェリシアン化カリウム
・5 mM フェロシアン化カリウム
・2 mM MgCl2
・150 mM NaCl
・40 mMクエン酸及びリン酸ナトリウムpH 6(当該6ウェルのうちの1つにおいて、染色の有効性を保証するためのポジティブコントロールとしてpH 4を用いた。)
【0085】
最大限の染色を達成するために、当該細胞上に前記溶液を4日間までのせたままにし、最終的に顕微鏡分析は当該コントロール細胞内に青色の沈殿物を示した。完了次第、染色液を除去し、細胞をPBS中で洗浄し、3 mLの70%グリセロールを用いて4℃で保存した。
【0086】
倍率によりカウント用の全領域が観察された。陽性及び陰性細胞の両方について、接眼レンズの目盛板の下の領域をカウントした。陽性である老化細胞を全細胞数のパーセンテージとして表した。これを、ランダムに割り当てられた6つの領域で繰り返した。前記6つの独立した領域に対して得られた値から、それぞれの過酸化水素処理に対するSAβGal発現の平均値を算出した。
【0087】
[分光光度法によるRNAの定量化]
RNA用の初期設定後、GeneQuantキャピラリー分光光度計(Pharmacia Biotech社)を用いてRNAを定量化した。濃度を260 nmで測定し、純度を吸光度260/280 nm比率として見積もった。
【0088】
[cDNA合成(全RNAの逆転写)]
リアルタイムPCR(Taqman社)用の一本鎖cDNA合成を、SuperScriptTM一本鎖合成システム(Invitrogen社)を用いて実施した。
【0089】
[定量的リアルタイムPCR(Taqman社)]
関心のある遺伝子のmRNA発現パターンをモニターするために、cDNA定量化分析に相対的定量的リアルタイムPCRを用いた。ABIプリズム(登録商標)7700シークエンス検出システムを用いて、当該分析を実施した。すべての場合において、18S RNA遺伝子コントロールと比較して老化関連遺伝子発現を測定した。
【0090】
プライマーエクスプレスソフトウェアを用いて、TaqManTMプライマー及びFAM-TAMRA接合プローブを設計し、Biosource UK社により作製された。
【0091】
[ラットRT-PCT配列]
プライマー及びプローブ配列(5’ -3’)
18s:
正方向プライマー acctggttgatcctgccagtag
逆方向プライマー agccattcgcagtttcactgtac
プローブ: FAM-tcaaagattaagccatgcatgtctaagtacgcac-TAMRA
【0092】
XRCC5:
正方向プライマー tttcagcggttgtaccagtgtct
逆方向プライマー catattcaaaatgtgctgctgaatt
プローブ: FAM-ctccaggagcggctgcccc-TAMRA
【0093】
p21:
正方向プライマー gagccacaggcaccatgtc
逆方向プライマー cggcatactttgctcctgtgt
プローブ: FAM-cctggtgatgtccgacct-TAMRA
【0094】
SIRT2-sim:
正方向プライマー tccctcatcagcaaggca
逆方向プライマー gatccgtctggcctgtctt
プローブ: FAM-tagccaccccacgactgc-TAMRA
【0095】
[静的インシュリン分泌試験(SIST:STATIC INSULIN SECRETION TEST)]
In vitorモデルとして静的刺激試験を用いて、グルコースの種々の濃度に応答してインシュリンを分泌する島様クラスターの能力を調べた。
【0096】
(試薬調製)
当該実験には4つのストック溶液が必要とされた。ストック溶液1を、脱イオン水500 mL中に13.44 gの塩化ナトリウム(ANALR BDH社)を溶解することによって作製した。ストック溶液2を、脱イオン水500 mL中に4.03 gの重炭酸ナトリウム(SIGMA社)、0.75 gの塩化カリウム(SIGMA社)、及び0.41 gの塩化マグネシウム(SIGMA社)を溶解することによって作製した。ストック溶液3を、脱イオン水500 mL中に0.74 gの塩化カルシウム(SIGMA社)を溶解することによって作製した。ストック溶液4を、脱イオン水500 mL中に59.5 gのHEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)(SIGMA社)を溶解することによって作製し、当該pHをpH 7.4に補正した。
【0097】
800 mLの使用液A(KRB G0)を作製するのに必要となるまで、前記4つのストック溶液をすべて4℃で保存した。KRB G0使用液を作製するために、200 mLのストック溶液1、2、及び3、40 mLのストック溶液4、並びに160 mLの脱イオン水を一緒に混合した。800 mgのウシ血清アルブミン(SIGMA社)を添加し、溶液をpH 7.4に調整した。KRB G0に種々の量のグルコースを添加して、それぞれG3、G10、及びG20と称される0.003 M、0.01 M、及び0.02 Mグルコース溶液を作製した。
【0098】
(手順)
37℃で5% CO2、95%大気インキュベーターからプレートを取り出し、培地を除去し、G3(カルバコール不含)を用いて3回洗浄した。すべての群の細胞間で同程度のレベルの代謝活性を引き起こすために、すべてのウェルに2 mLのG3を添加し、当該プレートを5% CO2及び95%大気の条件下で、37℃で60分間、インキュベーションした。次いで、前記G3溶液を除去し、2 mLのG3、G10、及びG20グルコース濃度物を適切なウェルに二重反復で(in duplicate)添加した。
【0099】
当該プレートを5% CO2及び95%大気インキュベーター中で、37℃で2時間、インキュベーションした。その後、各ウェルから上清を除去し、生化学分析のために前記プレートとともに-70℃で保存した。
【0100】
[ラットインシュリンELISA]
ラットインシュリンELISAキット(Mercodia社)を用いて、当該上清中のインシュリン濃度を測定した。当該キットは、固相の、2つのモノクローナル抗体がインシュリン分子上の別々の抗原決定基に対して向けられている二部位酵素直接サンドイッチ免疫アッセイ技術である。メーカーの忠告に従って、当該アッセイを実施した。
【0101】
[データ分析]
各ウェル中の上清中に放出されたインシュリンの量は、各ウェル中に存在する細胞の量に依存する。各ウェル中に放出されたインシュリンを標準化するために、当該上清インシュリン濃度を各ウェルに対するタンパク質濃度で割った。次いで、インシュリン濃度を1分間あたりタンパク質1 mgあたりに放出されるインシュリンの量(pg)として表した。
【0102】
[結果]
CMRL中で5週間培養された細かく刻まれた管は、PC単層の形成をもたらした。これらの細胞の細胞形態を、図1に示される光学顕微鏡写真によって判定し得る。これらの細胞を、免疫細胞化学(ICC)及びRT-PCRによって特徴づけした。
【0103】
当該PCは、ICC(図2.1)及びRT-PCRによって神経細胞マーカーのネスチン及びGFAPに対して、並びにNCAM、cMet、Oct 4、及びネスチン(図2.2)に対して陽性に染色された。それらは、RT-PCRによって、インシュリン転写因子PDX-1、並びにインシュリン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、及びグルカゴンの発現に対して陰性であると考えられた(表1)。当該PCは、特殊化していない状況と一致して、例えばEX2、CYCc、MBPF、AA3、及びGTX等の分化神経細胞マーカーを発現しているとは考えられない。成体マウス膵臓に対して、類似しているが同一ではない細胞集団が記載されている(27)。
【0104】
これらの細胞及び単一細胞分離株は、その後、増殖停止の徴候または表現型の明らかな変化なく、18及び24ヶ月間、培養下で継続的に増殖した。それらについて、テロメアリピート増幅プロトコール(TRAP)アッセイを実施し、当該培養物がテロメラーゼ陽性であることを示している(図3)。従来的に、想定される幹細胞は、テロメラーゼ陰性であり、且つ増殖の間テロメラーゼを再活性化させるだけであると考えられている。本発明者の観察結果は、この見解と一致する。
【0105】
ラット膵臓由来の星細胞の単離に関する先行研究では、テロメラーゼ陰性培養物が産生された(28)。
【0106】
12ヶ月を超える間培養下で増殖したPCは、適切な成長培地中で増殖させた場合、他の細胞種に分化する能力を依然として保持している。これも幹細胞に特有の性質である。
【0107】
ネスチン発現培養物の単離は、大量の細胞を獲得するために使用され得、且つ利用可能な細胞数によって以前は制限されていた移植研究の進歩を容易にする。
【0108】
本発明者は、種の壁を越えた任意の機能的に有効な細胞を追跡することを目的として、げっ歯類適合異種移植片モデルにおいて、streptotozocin(STZ)誘発性糖尿病と闘うためにPCの投与を使用した。0日目にC57BL/6マウスをSTZの注入によって糖尿病にし、さらに、3日目に処理された動物の尾静脈中に750,000個のPCを注入した。コントロール動物には生理食塩水または同じ数のC57BL/6の骨髄細胞を注入する。3日おきに血中グルコースをモニターした。追加のコントロールとしての自己由来骨髄(BM)の選択は、移植時にBM由来の細胞がSTZで処理された動物においてインシュリン産生をもたらし得ることを示した以前の観察結果(4)を評価するためであった。
【0109】
コントロール群とは異なり、PCで処理された動物はSTZ処理を耐え抜いた(図4)。STZの投与後、すべての群における血中グルコースは平均7から45 mM/Lまで上昇した。この状況は、血中グルコースレベルが50 mM/Lで頂点に達し、19日目まで生存できないことを示す生理食塩水で処理されたコントロールで継続した。BMコントロール群は、血中グルコースレベルが生存力を邪魔する前の21日目まで生き残った。PCで処理された動物は、このタイムコースの間中、33日目を超えて生き残り、この時点で当該動物を動物ライセンス規定に従って犠牲にする必要があった。
【0110】
当該PC処理動物の生存率はきわめて有意である(表2)。正常な血糖には達しなかったものの、血中グルコースレベルは6日目までに平均値20 mM/Lで安定化した。BM処理動物は、生理食塩水コントロールに対して有意な延命効果を示した(表2)。この観察結果は、骨髄由来の細胞が移植時にインシュリン産生を引き起こす能力を有することを示す報告と一致している。
【0111】
正常な血糖の欠乏は免疫攻撃による細胞消失に起因するのか、またはIVによって送達された不十分な数に起因するのかどうかを立証するために、シクロスポリン(CsA)処理の存在及び非存在下での、STZ注入処理後10日目における1,500,000個または750,000個のPCの反復注入を用いた反復移植実験を実施した。この特有のプロトコールによる結果を図5に示す。
【0112】
CsA処理は血中グルコースレベルに影響を及ぼさないように見えることから、当該PCが免疫原性でないことを示している。これは、ヒトネスチン島前駆体細胞(NIP)に関する観察結果(12)と一致している。PCの細胞数を倍化させることは、個々の動物は12 mM/Lに達したものの、血中グルコースレベルをほぼ正常な血糖まで有意には改善せず(図5)、平均〜20 mM/Lの血中グルコースに達した。
【0113】
10日目における1,500,000個の細胞を用いた反復注入は、33日目までに〜15 mM/Lまで平均血中グルコースレベルを改善し、この時点で当該実験を終了した。これは、増大する細胞数がSTZの効果を軽減するのにより有効であることを示している。最適な移植細胞数を決定する必要がある。同様に、最適な投与のタイミング及び形態(regime)の決定に取り組む必要がある。
【0114】
それぞれの処理された動物及びコントロール群の死後分析は、PC処理が膵臓β細胞を再生することを示している(図6)。膵臓β細胞構造はSTZ処理コントロールにおいて破壊されるが、一方、それは当該細胞移植マウスにおいて実質的に回復される。このことは、糖尿病を治療するための細胞治療を用いた任意の将来的ストラテジーの開発に大きく影響する。これらのマウスの生存は、インシュリン産生の実質的な回復が達成されたことを示している。このことは、当該再生された膵臓がインシュリン及びグルカゴンを産生することを示すICCによって裏づけられている(図7)。
【0115】
重要なことに、当該PCは免疫原性でないと考えられ、このことが、正確なI型糖尿病への前記細胞のこの容易なIV投与の幅広い使用を魅力的な提案にしている。
【0116】
当該処理動物のRT-PCT及びICC分析は、PC処理によってもたらされるインシュリン産生が由来はラット及びマウスの両方のものであることを示している。ラットIns II(配列番号5)に対するPCRは、Hinf Iを用いた消化で、ラットに対し105 bp及び103 bp断片を(図8A)、マウスに対し191 bp及び17 bp断片を生じる共通の208 bp増幅産物を産生する。重要なことに、マウスインシュリン由来の胚型も産生される(図8B)。RT-PCR-RFLPは、我々が、PC処理動物においてIns 1遺伝子産物(Uとラベルされた)に相当する成熟ラットインシュリン転写物(図8A及び8Bの両方においてrとラベルされた)、成熟マウス(mとラベルされた)、及び胚型を検出し得ることを示している。このことは、関連断片のシークエンシング及びクローニングによって確認されている。243 bpのラット増幅産物は、Hinf Iで消化すると140 bp及び103 bp断片を生じ得る。同じラットIns IIプライマーで産生されたマウスにおける相当する増幅産物は、消化により191 bp及び52 bpバンドを生じる(図8Bにおいてm1及びm2とラベルされた)。PCを受けたSTZ糖尿病動物は、サイズが消化されない増幅産物に相当するさらなるバンド(図8BにおいてUとラベルされた)も有する。これはIns I転写物に相当し、典型的に胚発生の間に観察される。成体におけるその存在についての報告は不確かである。
【0117】
これは依然として特有の観察結果であり、当該PC細胞の作用メカニズムへの洞察を提供する。両転写物の存在は、当該PCがインシュリン産生細胞を産生するように分化しており、げっ歯類組織が同様に行うように刺激していることを示している。機能的に類似したげっ歯類PCが刺激されるかどうかは不確定である。Ins I及びII転写物の存在は、げっ歯類ES様細胞の集団が成体内で生き残り、当該PC動物において刺激されたということを正式には排除できないが、げっ歯類組織中で発生の再プログラミングが起こっていることを示唆している。これに対する証拠はこれまで観察されていない。実際、Meltonら(30)は、外傷後でさえのβ細胞再生の唯一の供給源は生存するβ細胞であり、損傷後のマウス膵臓の再生に関与するげっ歯類幹細胞は存在しないことを示すデータを提供している。我々のデータはこの観察結果と完全に一致しないわけではない。実際、それらは損傷した組織を再生するための基質として働く損傷していない組織の刺激と一致する。
【0118】
処理マウスの膵臓についての調査によって、このシナリオはさらに支持される。ポリクローナル抗ラット血清を用いたこれらのマウス由来の膵臓切片の染色は、何の細胞表面ラット抗原も検出しない。コントロールラット切片は鮮やかに染まるが、一方、コントロールマウス及び処理糖尿病マウスはラット抗原の存在に対して陰性である。これらの観察結果は、内在性のげっ歯類膵臓は再生し、且つこれはラットパスファインダー細胞との広範囲に及ぶ細胞融合の結果ではないという観察結果を支持する。
【0119】
しかし、ラット第10染色体及びラットY染色体に関するin situハイブリダイゼーションは、当該処理動物の膵臓中のラット染色体の存在を検出している。これらはめったに検出されないが、当該処理動物における膵島細胞の1%未満を含む。それらの存在は、当該処理動物中のラットインシュリンの検出を支持する。ラットY染色体及びげっ歯類シグナルを含む細胞は検出されない。2倍体マウスに対する3倍のシグナル及びラット第10染色体を含む細胞も低いレベル(< 1%)で検出された。このことは、移植後の幹細胞融合事象についての以前の報告と一致する。
【0120】
<実施例2:PC由来の島の誘導>
適切な培地中での増殖により、PCを培養してin vitroにおいて島を産生し得る。当該フラスコからピペットによってCMRL培地を完全に除去すること及び任意の過剰な血清を取り除くために室温で5分間、10 mLのHBSS(前記参照)を添加することによって、PC細胞は分化する。前記HBSSの除去後、ペニシリン/ストレプトマイシン(前記参照)、アムホテリシン(前記参照)、0.2% BSA、10 mMナイアシンアミド、10 ng/mLケラチノサイト成長因子(すべてSigma社, Poole, UK)、及びITS-X:−(インシュリン10 mg/L、トランスフェリン5.5 mg/L、亜セレン酸ナトリウム6.7μg/L)(Invitrogen社, Paisley, UK)を補充したDMEM/F12培地(Invitrogen社, Paisley, UK)20 mLを前記T75培養フラスコに添加する。次いで、当該細胞をCO2インキュベーター内で37℃で維持し、当該培養培地を20 mLの新しい培地で1週間に2回置換した。これらは、血清の存在または非存在下で島クラスター(図8.1)または神経細胞を産生する。
【0121】
前述のようにして得られた島クラスターは、インシュリンの存在に対して陽性に染まり(図8.2A)、且つインシュリン含有小胞に特有の電子の半透明光輪(halo)を有する高密度コア小胞を含む(図8.2B)。当該クラスターは、RT-PCR分析によって判定されるように、インシュリン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、及びグルカゴンの存在に対して陽性である。決定的には、それらはまた、RT-PCRによって判定されるようにPDX-1(表1)、並びにインシュリン及びグルカゴン(図10)を発現している。配列IDを付録で一覧表にする。
【0122】
ラットマーカーThy-1を用いることによって当該PCを選別し、このマーカーの発現の存在または非存在に基づいた2つの異なる集団を作ることができる(図11)。
【0123】
培養下での長期増殖は、培養物における老化の発症を示す老化関連βガラクトシダーゼ(SAβGal)の蓄積をもたらす。これは典型的に細胞損傷の蓄積を反映する。ES細胞は典型的に長期培養に関するこのマーカーの蓄積が無効であるように(29)、このことは新規の発見である。酸化的損傷の確立したマーカーであるリポフスチンに関して、継代の増加にともなうそのような蓄積は観察されなかった。このことは、推定される癌幹細胞の解明及び移植実験または他の再生医学ストラテジー、例えば乳房再建等に使用される場合の損傷細胞の安全性に関わる分野において意味を有する。
【0124】
<実施例3:パスファインダー細胞は幹細胞特性を示すが、酸化的侵襲に対するそれらの応答に差異を示す。>
[PCの増殖特性]
パスファインダー細胞は指数関数的増殖を示し、集団倍増時間の増加を示さず、且つ増殖停滞期の非存在を示す(図12)。
【0125】
このことは、ES細胞に関して、これらの細胞がin vitroにおいて長期間分化しないままであり得ることを示した観察結果と一致する。図12は、老化せずに172日間培養下で連続的に継代されたラットPCの2つの個々の培養物(A及びB)を示す。最初の単離から前記172日の時点までに得られた細胞の総数は、ほぼ1×1034程度である。これは、移植に適切な細胞数を産生することにおける、これらの細胞の有効性を示している。
【0126】
[連続的に継代されたPC中のリポフスチン含有量の測定]
リポフスチンは、複製細胞のリソソーム中に年齢とともに次第に蓄積する非分解性の自己蛍光色素である。その蓄積は、増大した酸化的侵襲の条件下で加速されることが報告されている。上昇したリポフスチン含有量を有するより大きな細胞は、典型的に老化現象を示す(図13)。当該パスファインダー集団中の平均リポフスチン含有量は、連続的継代とともに低下を示す。しかし、一貫した細胞集団をサイズによって選択する際にFACsげーティングプロトコールを使用した場合、リポフスチン含有量に有意な変化はなかった。これらのデータは、高いリポフスチン含有量を有し且つ老化細胞のサイズ特性を示す明らかなPCの亜集団が存在することを示している。残りの細胞は培養下で長期にわたりリポフスチン含有量に変化を示さないが、この亜集団は連続的継代とともに消滅する。
【0127】
[上昇した酸化ストレスレベルの存在下でのPCの増殖]
ES細胞と異なり(31)、パスファインダー細胞は、WSTアッセイで測定されたように、酸化的侵襲に対する感受性を示す。前記WSTアッセイは、細胞のミトコンドリアデヒドロゲナーゼによるテトラゾリウム塩のホルマザンへの切断に基づいている。生存細胞数の増大は、当該サンプル中のミトコンドリアデヒドロゲナーゼの全体的な活性の増加をもたらす。酵素活性の増強は、形成されるホルマザン色素の量の増加をもたらす。生存細胞によって産生されたホルマザン色素を、当該色素溶液の吸光度を440 nmで測定することによってマルチウェル分光光度計により定量化した。
【0128】
これらの分析からのデータを図14に示す。100μMの濃度は、PC増殖を50%まで低下させるのに十分である。
【0129】
[SAβGalアッセイ]
SAβGalは、哺乳類細胞中の酸化ストレスに対する古典的バイオマーカーであり、増大する酸化的損傷とともに蓄積する。それは、生物学的老化に対するバイオマーカーとして提案されており、且つ増加する生活年齢にともなってヒト組織中で増大することが観察されている。本発明者は、培養下での増加する継代にともなうPC中のSAβGal発現の増加を観察した(図15)。このSAβGal発現パーセンテージは、長期の連続継代とともに有意に減少した(図15)。さらに、継代16回以降、SAβGalを発現する細胞のパーセンテージは10%より低いままであった(図15)。これは、非老化細胞または優れた抗酸化防御力を有するものに特有の性質である。
【0130】
反対に、パスファインダー細胞は急性酸化ストレスに対する感受性を示す。過酸化水素濃度の増加とともにSAβGal発現の有意な増加が観察された(図16)。これは、WSTアッセイにおける過酸化物質負荷後の観察結果と一致している。
【0131】
本発明者によって得られたデータは、典型的な幹細胞と異なり、パスファインダー細胞が酸化ストレスに対して差異的な感受性を呈することを示している。MSCと異なり、それらは複製老化を示さないと考えられ、且つ培養下で長期間(年)増殖し得る。その結果として、リポフスチン及びSAβGal発現はこれらの細胞の継代後期で減少する。リポフスチン分析により、パスファインダーの継代初期は、老化の特徴を示す細胞の亜集団を含むことが示されている(図13)。このことは、継代後期細胞のごく一部(< 10%)がSAβGalを発現するという証拠を有するSAβGal分析によって支持される。これは、老化している初期のパスファインダー単離株の亜集団と一致しているが、一方で、生存細胞は増殖している。得られた細胞集団は、ES細胞と異なり、過酸化物質感受性の表現型を発現する。
【0132】
同様に、ES細胞と異なり、この状況は過酸化水素を用いた酸化的侵襲後に逆転させ得る。穏やかな濃度(25μM)の過酸化水素を負荷された細胞は、SAβGal発現の上昇を示す。さらに、SAβGal発現レベルは、当該細胞が培養下で過ごした時間に関連して上昇する。これを図17に示す。
【0133】
PCは、11.25または25μM H2O2のいずれかを用いた負荷に応答して、SAβGal発現の用量依存的上昇を示す。8回の細胞分裂の差に相当する2つの継代物(NP 27及びNP 28)は、致死量以下の過酸化物質負荷後に(WSTアッセイによって測定されるように)、有意により高いSAβGal発現を有した(p< 0.001)(図17)。当該細胞は穏やかな過酸化物質負荷を受けたにもかかわらず、それらは依然として、細胞の40%までがSAβGal発現を示す実質的な過酸化物質感受性を示した。
【0134】
[LDH細胞毒性アッセイ]
当該LDHアッセイは、損傷した細胞から放出される乳酸脱水素酵素(LDH)の活性の測定に基づいて細胞毒性を定量化する方法を提供する。LDHは、乳酸とピルビン酸の相互変換を触媒する酸化還元酵素である。それは安定であり、且つすべての細胞中に存在する細胞質酵素である。細胞原形質膜への損傷は、細胞培養上清中へのLDHの急速な放出をもたらす。当該アッセイは、NADH連結酵素反応におけるテトラゾリウム塩INTのホルマザンへの還元に基づくものであり、それは水溶性であり且つ492 nmで最大の吸収を示す。生成された赤色の強度は、増大したLDH活性の存在下で増加する。図18は、0-300μMの範囲にわたるH2O2の増加する濃度による負荷後の、PC中のLDH活性の平均レベルを示している。
【0135】
当該データ(図18)は、H2O2負荷が、30%近くの毒性をもたらす25μMの濃度での低いレベルでさえ、細胞毒性作用をもたらすことを示している。これらの観察結果は当該WST及びSAβGalデータを支持し、幹細胞と異なり急性の過酸化物質負荷に対するこれらの細胞の感受性を示している。より高いH2O2濃度におけるLDH活性の明らかな低下は、これらの培養物中の細胞消失を反映している。
【0136】
[急性酸化ストレス下のPCにおける、老化関連遺伝子の分析]
25μM H2O2で処理されたPCの分子解析は、当該WST、LDH、SAβGal、及びリポフスチン試験を支持するデータを提供する。
【0137】
本発明者によって得られたデータは、典型的な幹細胞と異なり、パスファインダー細胞が酸化ストレスに対して差異的な感受性を呈することを示している。MSCと異なり、それらは複製老化を示さないと考えられ、且つ培養下で長期間(年)増殖し得る。しかし、リポフスチン及びSAβGal発現は、過酸化水素を用いた酸化的侵襲後のパスファインダー細胞において増加する。当該細胞は、WSTアッセイによって測定されるように、穏やかな過酸化物質負荷を受けたにもかかわらず、それらは依然として、細胞の〜30%がSAβGal発現を示す実質的な過酸化物質感受性を示した。
【0138】
これらの観察結果は、老化関連遺伝子発現によって支持された。定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を用いて、老化関連候補遺伝子に相当するmRNAレベルを評価した。これらは、急性の細胞損傷応答マーカーとしてのp21、細胞サイクルの調節因子としてのSIRT 2、及びDNA損傷マーカーとしてのXRCC5を含んだ。相対的ストレス及び老化関連遺伝子発現の評価は、H2O2での処理後の3つすべての遺伝子において統計的に有意な(p< 0.001)減少を示した(図19)。このことは、酸化的損傷後のp53損傷応答の発生及びアポトーシスの最終的な刺激を示唆している。p21の活性化は、サイクリンA−Cdk2、サイクリンE−Cdk2、及びサイクリンD1−cdk4複合体によるpRbのリン酸化を促進し、複製老化線維芽細胞及び酸化ストレス誘発性の早期老化した細胞において、過剰に発現していることが見出されている。XRCC5において観察された減少は、その生成物が急性侵襲後の損傷した細胞または老化細胞中で下方制御していることが示されているように、ストレス誘発性の老化と一致している。サーチュイン2(Sirtuin 2:SIRT 2)は、サイレント・インフォメーション・レギュレーター遺伝子ファミリーのメンバーであり、テロメア生物学をミトコンドリア作用及びリボソーム産生に結びつける重要な細胞作用に関与している。SIRT2は細胞内酸化還元変化に応答する細胞サイクル調節因子である。それは、微小管のαチューブリンサブユニットと相互作用し且つ脱アセチル化することが示されており、細胞質分裂の間の正確な染色体分離を保証するための後期有糸分裂チェックポイントに参加していると考えられている。
【0139】
<実施例4>
ネスチン(RT-PCRによって測定されるような)及び多数の他のマーカー(表3及び4)の発現に基づいて、PCを同定及び特徴づけした。しかし、フローサイトメトリーによって評価される場合、ネスチンの発現状態のパスファインダー集団をネスチン陰性の細胞の50%までと混合する。以下のマーカーのプロファイルは、ネスチン及び表1に記載される他のマーカーの存在または非存在という状況で得られるように提供される。
【0140】
選別されなかったPCを、細胞表面マーカーの発現に基づいて別の亜集団に再分割することができる。この細胞表面マーカーパネルの組成は、培養下で過ごした時間とともに変化する。
【0141】
選別されなかった細胞の継代初期は、継代4回の細胞によって示されるように、以下のマーカープロファイルを示す。
CD90 〜50%+
CD49f 〜90%+
CD24 低い
CD147 〜90%+
CD45 陰性
CD44 低い
CD71 陰性
CD31 陰性
CD117 (a.k.a c-Kit)陰性
ビメンチン 非常に低い
ABCG2 陰性
CK 19 陰性
低い=5%以下の細胞がマーカーを発現している。
非常に低い=2.5%以下がマーカーを発現している。
【0142】
同じ集団の継代後期は、継代28回の細胞(培養下で200日以下、200回の集団倍増)によって示されるように、以下のプロファイルを示す。
CD90 〜15%+
CD49f 〜95%+
CD24 〜60%+
CD147 〜90%+
CD45 陰性
CD44 低い
CD71 低い
CD31 陰性
CD117 陰性
ABCG2 低い
CK 19 非常に低い
【0143】
個々の継代物を、FACsによってCD90+及びCD90−集団に選別することができる。これらは光学顕微鏡観察下で形態学的に異なって見える。
【0144】
<実施例5>
当該選別されなかった集団から連続希釈によって単離された細胞を、神経前駆体細胞を含む多くの他の細胞種を産生するために使用することができる。このことは、成体膵臓由来の細胞に対して驚くべきことである。これを、神経前駆体細胞の不純物のない細胞集団の産生を示している図20に示す。
【0145】
<実施例6>
パスファインダー細胞は、肝細胞分化培地中で増殖させ得る。確立した肝細胞分化培地(材料及び方法を参照)中で増殖させた場合、CD90+及びCD90−の両方の細胞は形態変化を示し(図21)、且つRT-PCRによって評価されるように、肝胆汁マーカーのサイトケラチン19を発現する。分化培地中で増殖させたCD90−細胞の形態は、典型的に肝臓のものである。
【0146】
前記CD90−細胞集団は、以下の細胞表面マーカープロファイルを示す。
CD90 陰性
CD49f 〜95%+
CD24 〜80%+
CD147 〜80%+
CD45 陰性
CD44 〜60%+
CD71 低い
CD31 陰性
【0147】
前記CD90+細胞集団は、以下の細胞表面マーカープロファイルを示す。
CD90 +
CD49f 〜95%+
CD24 陰性
CD147 〜90%+
CD45 陰性
CD44 〜85%+
CD71 低い
CD31 陰性
C-KIT 陰性
【0148】
これら両方のマーカープロファイルは、ネスチン及び表1に挙げられたマーカーのすべての可能な組合せで表現され得ると考えられる。
【0149】
島を産生するための確立された培地中における選別された細胞集団の増殖は(実施例2を参照)、CD90+細胞のみが島構造を産生する能力を有することを示している。これを、PCから発達した島クラスターがパネルBに示されている図22に示す。
【0150】
CD90+細胞は確立した成長培地中で蓄積して島構造を産生し、一方、CD90−細胞は光学顕微鏡下で観察した場合に変化しないままである。
【0151】
<実施例7>
ラット膵臓の処理に用いたものと同じ通常の手順によって(材料及び方法を参照)、多くのヒト組織を処理してPCを単離した。これを、成人ヒト乳房由来の細胞の単離によって例示することができる。
【0152】
ヒトPCを、同じ手順を用いることによって、細かく刻まれたヒト腎皮質生検からも単離した。当該乳房PCを図23に示す。
【0153】
<実施例8>
適切な分化培地中で増殖させた場合(材料及び方法を参照)、PCを島に分化させることができる。産生された島は、in vitroにおいてそうするように刺激された場合、グルコースへの暴露によってインシュリンを放出する。図24は、増大するグルコース濃度(3-20 mM)の存在下での、前記島のインシュリン放出プロファイルを示す。当該データは、未分化細胞と比べて、前記島からの統計的により高レベルなインシュリン放出を示す(p< 0.001)。
【0154】
[材料の寄託]
以下の材料を、細胞培養物の欧州コレクション(Porton Down, Salisbury Wiltshire, UK, SP4 0JG)に寄託した。
材料:成体ラットPC
ECACC番号:Q6203
寄託日:2005年5月12日
【0155】
この寄託は、特許手続き及びその下での規制のための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約の規定により実施された(ブダペスト条約)。これは、寄託日から30年間、当該寄託の生存した培養物の維持を保証する。当該寄託物は、ブダペスト条約の条件下で、及びグラスゴー大学の大学役員会とECACCとの間の合意を条件として、ECACCによって入手可能になり、それは、いずれも何よりも優先である、適切な特許の発行に関して、または国民への任意の特許出願の公開に関して、国民への当該寄託の生物材料の永久的且つ制限されない利用可能性を保証し、且つR. 28(4)EPCまたは他の権限において同等のものに従って、それぞれの特許庁によって権利を与えられることが決定されたものへの生物材料の利用可能性を保証する。
【0156】
この点において、本出願者は、本明細書によって、R. 28(4)EPCまたは他の権限において同等の規則の下で、前記及び本明細書で言及された生物材料の利用可能性は専門家へのサンプルの支給によってのみ生じるであろうと宣言する。
【0157】
本出願の出願者は、寄託した材料の培養物が適切な条件下で培養された場合に死滅した、消失した、または破壊された場合には、通知時に前記材料を同一もので迅速に差し替えることに同意している。当該寄託された材料の利用可能性は、任意の政府機関の権限の下でその特許法に従って付与された権利に違反して、本発明を実施する許可と見なされるべきではない。
【0158】
[付録]
<配列ID>
【数1】


【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
【表3】


【0162】
【表4】

【0163】
(参考文献)






【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】CMRL中で増殖したPCの光学顕微鏡写真。
【図2】PCのマーカーの特徴づけ。図2.2:PCのRT-PCRによる特徴づけ。
【図3】PC用のTRAPアッセイ。
【図4】生理食塩水、自己由来骨髄(BM)、及び幹細胞で処理したSTZ糖尿病マウスにおける、血中グルコースレベル及び生存率。
【図5.1】シクロスポリン(CsA)処理の存在及び非存在下での、STZ処理動物における1,500,000個または750,000個のPCの反復注入を用いた反復移植実験。
【図5.2】シクロスポリン(CsA)処理の存在及び非存在下での、STZ処理動物における1,500,000個または750,000個のPCの反復注入後の血中グルコースレベル。
【図6】PC処理されたSTZ糖尿病マウスの死後分析。
【図7】PC処理されたSTZ糖尿病マウスにおける、インシュリン及びグルカゴンに対する免疫組織化学染色。
【図8A】インシュリンに対するHinf I PCR RFLP。
【図8B】インシュリンに対するHinf I RFLP。
【図8.1】PC由来の島。
【図8.2】PC由来の神経様細胞。
【図8.2A】PC由来の島様クラスターのICH染色。
【図8.2B】PC由来の島クラスターのTEM。電子の半透明光輪を有する高密度コア小胞の例に矢印をつける。
【図9】連続的に継代されたPC培養物のSAβGal分析。
【図10】島マーカーのRT-PCR分析。Ins:インシュリン、Glu:グルカゴン。
【図11】Thy-1発現に対するPCのFACs分析。
【図12】培養下のPC増殖の特性。
【図13】連続的に継代されたPC中のリポフスチン含有量の測定。
【図14】増大する過酸化物質の侵襲に関する、パスファインダー細胞のWST分析。
【図15】連続継代に関する、PC中のSAβGal発現パーセンテージ。
【図16】過酸化水素を用いた処理後のPC中のSAβGal発現パーセンテージ。
【図17】急性の過酸化物質負荷に関する、連続継代にわたったPC中のSAβGal発現パーセンテージ。
【図18】H2O2による負荷下でのPCに対するLDH細胞毒性アッセイ。
【図19】25μM過酸化水素処理後のPC中のp21、SIRT2、及びXRCC5の相対的発現。
【図20】神経前駆体細胞を産生するための、PCの分化したクローン単離体の光学顕微鏡写真(×100)。
【図21】確立された肝細胞分化におけるPC増殖。CD90+(パネルA)、CD90−(パネルB)、及び未分化細胞(パネルC)。
【図22】島クラスターを形成する過程の(矢印で示す)分化しているCD90+細胞。
【図23】ヒト乳房由来のパスファインダー細胞(×100)。
【図24】3(G3)、10(G10)、及び20(G20)mMグルコースで刺激された未分化PC(UD)及びPC由来の島(DIFF)における、タンパク質1mgあたりのインシュリン分泌(pg)/分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞がネスチン陽性であり且つ血清の存在下でマトリゲルフリー培養系において増殖し得る、成体組織に由来する単離細胞集団。
【請求項2】
前記細胞がPDX-1陰性である、請求項1に記載の単離細胞集団。
【請求項3】
前記成体組織が膵臓、骨髄、心臓、乳房、肝臓、または腎臓組織である、請求項1または2に記載の単離細胞集団。
【請求項4】
前記成体組織がヒトのものである、請求項3に記載の単離細胞集団。
【請求項5】
前記成体組織が膵臓のものである、請求項4に記載の単離細胞集団。
【請求項6】
2005年5月12日にECACCにおいて登録番号Q6203の下で寄託された細胞を含む、請求項5に記載の単離細胞集団。
【請求項7】
製薬上許容し得るキャリアとともに、請求項1から6のいずれか一項に記載の単離細胞集団を含む製薬組成物。
【請求項8】
成体哺乳動物組織を培養する工程及び出現した細胞集団単層を単離する工程を含む、成体哺乳動物組織由来の多能性幹細胞集団の単離方法。
【請求項9】
前記成体哺乳動物組織が膵臓、乳房、肝臓、及び腎臓からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組織がヒトのものである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞集団が請求項1から6のいずれか一項に記載の単離細胞集団である、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組織がCMRL-1066培地(Sigma社;C-0422)中で培養される、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組織が管全体を含む成体膵管に由来する、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記管組織が当該培養工程で役立つように細かく刻まれている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項8から14のいずれか一項に記載の方法によって産生可能な成体細胞集団。
【請求項16】
細胞変性または年齢関連性の組織変化に関連する疾患状態の治療方法であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の細胞集団または請求項7に記載の製薬組成物を、前記疾患または年齢関連性疾患を有する患者へ投与する工程を含む方法。
【請求項17】
前記細胞を前記患者へ静脈内投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞を当該疾患部位または年齢関連性の変性部位へ移植する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患が膵臓細胞、神経細胞、心臓血管細胞、上皮細胞、肝臓細胞、筋細胞、網膜細胞、毛嚢、または腎臓細胞の変性に関連する、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患が糖尿病(I及びII型)、パーキンソン病、アルツハイマー病、腎臓疾患、眼疾患、肝臓疾患、または心臓血管疾患である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞のドナー及び前記患者が同一種である、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞のドナーがラットであり、且つ前記患者がヒトである、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
PC集団を準備する工程、任意的に表3に示された1つ以上のマーカーを用いたPC細胞亜集団を選択する工程、及び細胞分化をもたらす環境下で細胞の前記亜集団を培養する工程を含む、特定の分化した細胞集団の産生方法。
【請求項25】
得られたPC細胞、並びにそれに由来する移植のための分化及び未分化の細胞の集団について移植のための適合性を評価する工程をさらに含み、前記工程が前記細胞集団において表4に示された1つ以上のマーカーの存在を検出することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
医療的または美容的処置の方法における使用のための、請求項1から6のいずれか一項に規定される単離幹細胞集団。
【請求項27】
細胞変性に関連する疾患状態を治療するための医薬の調製における、請求項1から6のいずれか一項に規定される単離幹細胞集団の使用。
【請求項28】
前記疾患が糖尿病、肝臓疾患、腎臓疾患、眼疾患、心臓血管疾患、またはパーキンソン病である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
請求項1から6のいずれか一項に記載の細胞集団または請求項7に記載の製薬組成物を、美容的な組織増強を必要とする患者へ投与する工程を含む美容的な組織増強方法。
【請求項30】
前記美容的な組織増強が細胞変性または年齢関連性の組織変化に関連する状態を治療することである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記組織増強が四肢または臓器の再生または交換である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞を前記患者へ静脈内投与する、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞を年齢関連性の変性細胞の部位または侵襲部位へ移植する、請求項30または31に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞のドナー及び前記患者が同一種である、請求項29から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記患者がヒトである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞のドナーがラットであり、且つ前記患者がヒトである、請求項29から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
美容的な組織増強のための治療の準備における、請求項1から6のいずれか一項に記載の単離細胞集団の使用。
【請求項38】
請求項1から6のいずれか一項に記載の細胞集団の分泌された細胞因子の獲得方法であって、適切な培地中で前記細胞集団を培養する工程及び前記培地から前記因子を単離する工程を含む方法。
【請求項39】
細胞変性に関連する疾患状態を治療するための医薬の調製における、請求項1から6のいずれか一項に記載の細胞集団から得られる細胞因子の使用。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5】
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【図6】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8.1】
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【図8.2】
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【図8.2A】
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【図8.2B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図2】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−545376(P2008−545376A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510646(P2008−510646)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001789
【国際公開番号】WO2006/120476
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(503392976)ザ・ユニヴァーシティ・コート・オブ・ザ・ユニヴァーシティ・オブ・グラスゴー (7)
【Fターム(参考)】