説明

細胞内ターゲティングエレメントを含んでなるナノ粒子、その調製および使用

本発明は、保健分野において使用することができる新規の活性可能な粒子に関する。より具体的には、本発明は、励起される場合応答を生じることができる細胞内ターゲティングエレメントを含んでなる複合ナノ粒子、および特に、ヒトの健康に関する保健分野におけるその使用に関する。本粒子は、少なくとも1つの無機化合物および場合により、1つもしくはそれ以上の他の有機化合物を含んでなり、細胞、組織または器官を標識または改変するためにインビボで活性化することができる核を含んでなる。本発明はまた、そのような粒子を製造するための方法、ならびに該粒子を含有する医薬組成物および診断用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保健分野において使用することができる新規の活性可能な粒子に関する。より具体的には、それは、励起される場合応答を生じることができる細胞内ターゲティングエレメントを含んでなる複合粒子、および特に、ヒトの健康に関する保健分野におけるその使用に関する。本粒子は、細胞、組織または器官を標識または改変するために活性化することができる少なくとも1つの無機または有機化合物を含んでなる核を含んでなる。本発明はまた、そのような粒子を製造するための方法、ならびに該粒子を含有する医薬組成物および診断用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去30年間にわたって、ヒト癌の診断および処置は大きく進歩している。同時に、バイオテクノロジーおよびナノテクノロジーは、開発の新たな道を開き、ヒトの病状の新規の処置を生み出している。実際に、化学療法は、幅広い範囲の癌を処置するための最も広範に使用される方法である。しかし、化学療法は、所定の制限およびその結果生じる欠点を有する。化学療法の主な欠点は、疑いもなく、患者の健康な細胞に対するその毒性であり、癌細胞を破壊するために使用することができる薬物の用量を劇的に制限する。癌細胞は、それらの表面に存在する分子によって標的細胞として認識されるため、研究は、より効率的な化学療法アプローチを提供する目的で、罹患細胞に対して特異的に標的化する化学療法薬に集中している(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
【0003】
1950年より、磁性粒子およびプローブは、癌を処置するための潜在的手段として同定されている。研究により、高周波磁場に結合された磁性粒子によって生じる温熱療法(非特許文献4、非特許文献5)は、癌処置における補助的手段として使用し得ることが示されている。温熱療法の活性(磁性材料の磁気緩和のエネルギーによって生成される熱)は、粒子またはプローブ付近の腫瘍組織を効率的に破壊することが見出されている。
【0004】
高い結晶性を伴う極めて小さな磁性粒子(磁性流体)の開発は、磁気誘導性温熱療法における次の段階である。粒子が直接組織に注入される場合、前記処置は、腫瘍容積の減少を誘導する。しかし、前記治療は、組織または細胞特異性を何ら実証していない。
【0005】
磁場を適用することによって活性化することができる粒子の使用に基づくアプローチについては、特許文献1に記載されている。
【0006】
光線力学療法(PDT)は、皮膚または食道の癌のような表在癌を処置するために使用される最近開発されたもう1つの処置方法(例えば、非特許文献6を参照のこと)である。この処置は、強力なUVまたはレーザー光への暴露中における光感受性分子によるフリーラジカルの生成に基づく。実際、活性化された分子は、周囲の酸素を、細胞において不可逆的損傷を生じる高反応種であるフリーラジカルに変換する。攻撃される主な細胞オルガネラは、ミトコンドリア、細胞および核膜、リソソームなどである。光感受性分子は、静脈内経路によって注入され、一般的に、腫瘍組織においてより高い濃度で蓄積する。このことは、所定の時間後に、健康な組織よりも処置すべき組織においてより高い濃度を有することを可能にする。前記分子が(適切は波長を有する)光に暴露される場合、それらは酸素からフリーラジカルを生成し、次いで、細胞の必須成分と反応する。
【0007】
それにもかかわらず、光線力学療法はいくつかの制限を有する。例えば、患者は、光感受性を発達し得、所定の個体における前記療法の施与の回数が制限される。さらに、光感受性分子を活性化するために使用される低波長の光は、かなり厚い組織への透過を排除し、他の組織に対して低い毒性を呈するという利点を有するが、表在癌(皮膚および皮下)への適応が制限される。光線力学療法の使用に固有の他の潜在的問題は、光感受性分子の毒性、および場合によって、処置しようとする組織に「負荷を掛ける」ために酸素を使用する必要性に関連する。
【0008】
TiO粒子を使用するもう1つのアプローチは、UV励起下で水および酸素分子からフリーラジカルを発生させることが可能であることを示している(非特許文献7)。このアプローチは、膀胱癌のインビトロおよびインビボモデルにおいて使用されている。
【0009】
NanoXRayと称され、X線またはUVによって活性化可能であり、活性化後、フリーラジカルまたは熱を発生することができる新規のクラスの粒子の使用に基づくアプローチについては、出願、特許文献2に記載されている。前記粒子は、インビボ、深部組織においてさえ治療または診断的応答を誘導することができる。
【特許文献1】米国特許第6,514,481号明細書
【特許文献2】FR第0405036号明細書
【非特許文献1】シャリー(Schally)ら、1999年、J.Endocrinol.、141:1
【非特許文献2】ナジ(Nagy)ら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:7269
【非特許文献3】エモンズ(Emons)ら、1993年、J.Clin.Endocrinol.Metab.、77:1458
【非特許文献4】グリットナー(Grittner)ら、1997年、Hybridoma、16:109
【非特許文献5】ハイグラー(Higler)ら、1997年、Invest.Radiol.、32:705
【非特許文献6】マコーハン,J.S.Jr.(McCaughan,J.S.Jr.)、Drugs and Aging.15:49−68(1999年)「Photodynamic Therapy:A Review」
【非特許文献7】シバタ(Shibata)ら、Bioscience Biotechnology and Biochemistry 62:2306−2311(1998年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような治療または診断用ナノ製品に対する改善を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
より具体的には、本発明の範囲内において、本発明者らは、新規の活性化可能なナノ粒子(即ち、低濃度であっても、インビボ、インビトロもしくはエクスビボで細胞、組織または器官を標識、改変または破壊し得る)を開発することによって、上記の先行技術において記載のような活性化において応答を生じ得るナノ粒子の潜在的毒性を最小限にするよう鋭意努力した。これらの目的は、細胞内分子または構造を特異的に認識する、特にヒトの治療および/または診断(例えば、画像化)において有用な新規の化合物の開発を介して達成した。本粒子は、あらゆる動物において、あらゆるタイプの組織(表在または深部)に適用可能である。
【0012】
従って、本発明の第1の局面は、以下を含んでなる生体適合性複合ナノ粒子に関する。
・励起によって活性化可能な少なくとも1つの無機または有機化合物を含んでなる核、
・場合により、生体適合性コーティング、および
・細胞内分子または構造に対する親和性を提示する、好ましくは粒子表面に露出された少なくとも1つのターゲティング分子(targeting molecule)。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、以下を含んでなる上記において規定されるようなナノ粒子を調製するための方法に関する。
・上記において規定されるような1つもしくはそれ以上の化合物を含んでなる格の形成、
・核の任意のコーティング、
・場合により、コーティングされたそのようにして形成される前記粒子の表面において細胞内分子または構造に対する親和性を提示する少なくとも1つのターゲティング分子のグラフト化および、場合により、
・生体細胞または組織を特異的に標的化することを可能にする少なくとも1つの表面ターゲティングエレメント(targeting element)のグラフト化(grafting)。
【0014】
別の局面に従えば、本発明は、上記において規定されるような、または上記の方法によって得ることができるナノ粒子を含んでなる医薬組成物または診断用組成物に基づく。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、インビトロ、エクスビボもしくはインビボ、および対応する方法で、細胞、組織または器官を標識、破壊(標的化された方法で)、検出または可視化するために、適切な励起源(例えば、光、放射線、外部場、超音波など)と組み合わされた上記において規定されるような組成物およびナノ粒子の使用に基づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の趣旨において、用語「複合ナノ粒子」は、一般的に、1000nm未満の小さなサイズの粒子またはナノ粒子集合体タイプの任意の合成複合体を指す。その形状は、例えば、円形、平面形、伸長形、球形、楕円形などに変更し得る。好ましくは、形状は本質的に球形である。形状は、製造方法によって決定または制御され得、所望されるアプリケーションに従って当業者によって適応され得る。
【0017】
粒子の形状は、その特性、特に、フリーラジカルもしくは熱生成の収量または放射振動の性質にそれほど影響を及ぼさない。しかし、形状は、粒子の「生体適合性」に影響し得る。従って、薬物動態的理由から、本質的に球形または円形を有するナノ粒子が好適である。また、完全に均質な形状を有するナノ粒子が好適である。
【0018】
好適な様式では、本発明に従うナノ粒子のサイズは、典型的に、約4〜1000nmの間に含まれる。対象のサイズは、理想的には、本質的に、マクロファージ(食作用)によって捕捉されず、かつ重大な閉塞を引き起こさずに、それらを身体(組織、細胞、血管など)に拡散させることが可能なほどに十分小さくなければならない。
【0019】
本発明に従うナノ粒子は生体適合性でなければならず、即ち、それらは、生物体、典型的に、哺乳動物に投与することが可能でなければならない。前記生体適合性は、例えば、粒子を構成する化合物の性質および/または任意のコーティングによって確実にされ得る。
【0020】

先に示したように、本粒子は、特定の特性を有し、場合により、コーティングで覆われた少なくとも1つのタイプの無機または有機化合物を含有する核を含んでなる。
【0021】
粒子核の組成に加入することができる化合物は、励起下で応答を生じることができる無機または有機化合物(または化合物の混合物)である。本発明に適応される化合物は、例えば、磁性特性を有することができ、この場合、粒子は、磁場の影響下で配向の変化を経験する。もう1つの適応される化合物は、X線、レーザー光またはUV光を吸収し、UV〜可視エネルギー、熱またはフリーラジカルのような応答を放射することができる。もう1つのタイプの適応される化合物は、超音波に感受性であり、熱もしくは特定の振動を放射することができるか、または交流磁場もしくはマイクロ波に感受性であり、熱などを発生することができる。前記無機または有機材料の主な機能は、刺激に反応して、前記刺激に応答するシグナルを発生することである。
【0022】
磁場に感受性な化合物
本粒子の核の組成に加入することができる磁場に感受性な化合物は、典型的に、無機化合物である。そのような化合物は、磁場の影響下で粒子の物理的回転を可能にする、例えば、非酸化金属、金属酸化物または混合型金属酸化物化合物である。それは、例えば、酸化鉄(II)もしくは酸化鉄(III)、酸化コバルトまたは混合型鉄/酸化コバルトであり得る。
【0023】
X線に感受性な化合物
本粒子の核の組成に加入することができるX線に感受性の化合物は、有利には、無機化合物である。前記化合物は、好ましくは、希土類元素よりなる群において選択されるドーピング剤で有利にドープ処理された、酸化物、水酸化物、スルホキシドまたは塩の形態である(FR第0405036号明細書に記載のとおり)。例えば、それらは、Y、(Y,Gd)、CaWO、GdOS、LaOBr、YTaO、BaFCl、GdS、GdGa12、RbLu(POおよびCsLu(POよりなる群において選択され得る。使用されるドーピング剤は、有利には、例えば、Gd、Eu、Tb、Er、Nb、PrおよびCeの中から選択される希土類元素である。
【0024】
金属化合物、特に非酸化型もまた、それらのX線吸収および熱放射特性に使用することができる。そのような特性を有する金属化合物は、例えば、Au、Pbまたは非結晶性材料および金属化合物の混合物である。
【0025】
X線に感受性である原子を含有する分子もまた使用することができる。
【0026】
他の無機化合物、金属、酸化物、水酸化物、スルホキシドまたは塩およびドーピング剤(doping agent)は、本粒子の核を形成するために、当業者に想定され得ることが理解されるべきである。いくらかの金属、酸化物、水酸化物、スルホキシドもしくは塩および/またはドーピング剤は、核あるいは該本粒子の核における混合物として使用することができることが理解されるべきである。
【0027】
UV〜可視IR光に感受性な化合物
本粒子の核の組成に加入することができるUV〜可視光に感受性な化合物は、有利には、本質的に無機であり、特に、TiO、ZnOおよび(これは制限的ではない)CdS、CdSe、CdTe、MnTeならびに混合溶液(例えば、CdZnSe、CdMnSeなど)のような半導体化合物よりなる群において選択され、場合により、希土類元素でドープ処理され得る(FR第0405036号明細書において記載のとおり)。使用するUV〜可視光に感受性な化合物はまた、UV光の影響下で熱またはフリーラジカルを生成し得る有機化合物/分子であり得る。
【0028】
レーザー光に感受性な化合物
本ナノ粒子の核の組成に加入することができるレーザー光に感受性な化合物は、好ましくは、化合物または光感受性化合物/有機もしくは無機性質の分子の混合物である。そのような化合物は、例えば、生物学的、化学的分子またはそれらの混合物であり得る。化合物は、場合により、希土類元素でドープ処理された半導体化合物または混合溶液であり得る。活性化された分子(レーザー光の影響下)は、周囲の酸素もしくは他の分子をフリーラジカルに変換するか、または熱を生成する。
【0029】
使用することができる分子の非制限的例は、ヘマトポリフィリン、mTHPC、塩素(chlorine)、モノ−L−アスパルチルクロリン(mono−L−aspartylchlorine)、フタロシアニン(phthalocyanin)などである。本発明の範囲において使用することができる他の有機化合物は、例えば、半導体(ZnO、TiOなど)、金属(Auなど)である。
【0030】
他のタイプの放射線に感受性な化合物
本ナノ粒子の核の組成に加入することができる他のタイプの放射線に感受性な化合物は、好ましくは、高周波、超音波、ラジオ波などのタイプの放射線の吸収またはそれらとの相互作用を可能にする有機もしくは無機性質の化合物あるいは化合物の混合物の中から選択される。
【0031】
そのような化合物は、例えば、半導体、磁性、絶縁材料またはそれらの混合物からなる。
【0032】
先に示したように、活性化された化合物は、例えば、熱または振動を発生することができる。
【0033】
一般的に、粒子の有効性または特性は、異なるタイプの化合物の相対量、化合物の放射および吸収スペクトル間の重複、材料の結晶構造、有機化合物と水との間の接触領域および/または化合物間の距離を変更することによって、当業者により適応させることができる。
【0034】
本粒子の核において、無機または有機化合物は、異なる方法で配列または組織化することができる。例えば、第1の化合物(好ましくは、無機)は、核のコアを形成し得、第2の化合物(無機または有機)は、コアの表面で外被またはナノ粒子を形成し得る。核を構成するいくらかの化合物はまた、複数の連続層において配列され得、第1の無機化合物は、好ましくは、内層(コア)を形成する。第1の無機化合物によって形成される核のコアは、典型的に、約5〜50nmの間、例えば、7〜40nmの間に含まれるサイズを有し、および/またはコアの表面において第2の化合物によって形成される外被は、典型的に、約1〜30nmの間、例えば、2〜25nmの間に含まれる厚さを有する。
【0035】
核の化合物はまた、ナノ粒子の混合物の形態で存在することができる。前記ナノ粒子は、多様なサイズおよび形状を有することができる。もう1つの変種の実施態様において、核の無機化合物は、相互に接触した少なくとも2つの核の形態で存在する。
【0036】
従って、当業者は、計画された用途(診断的、治療的など)に従って、例えば、上記のパラメータを変動することによって、粒子の特性を適応することができる。
【0037】
上記の異なるタイプの化合物に加えて、本粒子は、それらの安定性、特性、機能、特異性などを改善することを目的として、他の分子、化合物もしくは構造または表面材料を含んでなることができることが理解される。
【0038】
コーティング
先に示したように、本発明に従うナノ粒子は、コーティングをさらに含んでなることができる。有利なことに、そのようなコーティングは、インビボで粒子の完全性を保ち、その生体適合性を確実にするかまたは改善し、その官能基化(例えば、スペーサー分子、生体適合性ポリマー、ターゲット剤、タンパク質など)を容易にする。
【0039】
コーティングは、任意の無機もしくは有機、非結晶性または結晶構造から構成されうる。本粒子の活性を保つために、核の性質に従って、コーティングは小分子および/またはフリーラジカルの拡散を可能にすることが所望され得る。特に、コーティングが、水(またはO)の透過、およびナノ粒子がそれと反応することができる有機化合物を含んでなる場合、変換後のそのラジカル形態を可能にすることが重要である。このことは、多孔性である材料および/または低濃密度を有し、多孔性であるコーティング層を使用して、達成することができる。従って、例えば、典型的に、0.2〜10nmの間に含まれる多孔性を有するコーティングが用いられる。さらに、コーティングは、一般に、約0.1〜50nmの間、例えば、0.2〜40nmの間に含まれる濃密度を有する。
【0040】
一般に、コーティングは、非生分解性または生分解性であり得る。使用される非生分解性コーティングの例は、網目状もしくは網目状でない、修飾されたもしくは修飾されていない二酸化ケイ素、アガロース、アルミナ、飽和炭素ポリマーまたは無機ポリマー(例えば、ポリスチレン)よりなる群において選択される1つもしくはそれ以上の材料である。生分解性コーティングの例は、修飾されたもしくは修飾されていない天然または非天然の生物学的分子、天然の形状もしくは天然の形状ではない修飾されたまたは修飾されていない生物学的分子ポリマー、あるいは多硫酸化されたまたは多硫酸化されていない糖、オリゴ糖、多糖のような生物学的ポリマー、例えば、デキストランよりなる群において選択される1つもしくはそれ以上の材料である。上記の材料または化合物は、単独で、あるいは混合物または集成体(複合または複合ではない、共有結合性または共有結合性ではない)で、場合により、他の化合物との組み合わせで使用することができる。さらに、上記の任意の材料(天然または人工の水溶性もしくは脂溶性)を使用することも可能である。
【0041】
コーティングは、好ましくは、二酸化ケイ素(SiO)、アルミナ、金属(Auなど)、ポリエチレングリコール(PEG)またはデキストランよりなる群において選択される1つもしくはそれ以上の化合物を、場合により、混合して含んでなる。
【0042】
コーティングはまた、任意の目的の分子が粒子の表面に結合することを可能にする異なる官能基(またはスペーサーセグメント)を含有することができる。
【0043】
有用な官能基の例は、(CHCOOH(式中、nは1〜10の自然数である)である。ターゲティング分子および/または表面エレメントは、コーティングの官能基(CHCOOH(式中、nは1〜10の整数である)によって、コーティングに有利にグラフト化され得る。
【0044】
例えば、粒子の表面にグラフト化される分子は以下のものであり得る。
・生体組織または細胞に対する特異的標的化を可能にする表面ターゲット剤、
・生体適合性を確実もしくは改善する分子、または
・粒子が免疫系を免れる(および特に、マクロファージおよびSREとの相互作用を回避する)ことを可能にする分子。
【0045】
特定の実施態様では、本発明に従うナノ粒子は、好ましくは、スペーサーセグメントによって、細胞内ターゲティング分子および場合により、表面ターゲット成分がグラフト化されるコーティングを含んでなる。
【0046】
細胞内ターゲティングエレメント
先に示したように、本出願は、細胞内構造もしくは分子を特異的に認識するヒトあるいは動物の治療および/または診断において使用することができる新規の化合物を提供する。本ナノ粒子の認識特異性は、低濃度であっても、特に、インビボで、それらが、細胞、組織または器官を標識、改変、または破壊することを可能にする。従って、本発明に従う生成物は、先行技術の生成物よりも低い潜在的危険性の毒性を有する。
【0047】
本発明の1つの目的は、それが、ヒトまたは動物細胞に存在する分子に対する親和性を提示するターゲティング分子を含んでなることを特徴とする、上記において規定されるようなナノ粒子に関する。
【0048】
細胞内分子に対する親和性を提示するターゲティング分子は、生物学的または化学的分子であり得る。そのような1つの分子は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ヌクレオチド、脂質、代謝物などよりなる群において選択される。ターゲティング分子は、好ましくは、抗体、受容体リガンド、リガンド受容体またはそれらのフラグメントもしくは誘導体である。それはまた、ホルモン、糖、酵素、ビタミンなどであり得る。使用することができるターゲティング分子の特定の例は、ファロイジン、ホスファチジルイノシトール、ローダミンまたはHPPHなどである。選択される細胞内ターゲティング分子は、自発的に、または本ナノ粒子の他の成分とのその会合のいずれかにより、細胞膜を横切る。それは、標的細胞の細胞質または核において独占的もしくはほぼ独占的に存在する分子あるいは構造に対する好適な親和性を示す。「好適な結合親和性」は、表面または細胞外分子よりも細胞内分子または構造に対して実質的に高い結合親和性を意味すると理解されるべきである。
【0049】
本発明に関して標的である細胞内分子または構造は、生物学的または化学的構造、例えば、ゴルジ体、小胞体、細胞内小胞(エンドソーム、ペルオキシソームなど)のような細胞内膜または核膜などの分子、リソソーム、細胞骨格、細胞質分子、ミトコンドリア、酵素(例えば、DNA複製、修復、転写もしくは翻訳酵素、ミトコンドリア酵素)、核内受容体、核酸[例えば、preRNA、mRNA、tRNA(特に、それらのアンチコドンフラグメント)、rRNA、DNA]、転写もしくは翻訳因子、補因子(例えば、ATP、CoA、NAD、NADPHなど)、天然の基質(例えば、Oまたは他の基質もしくは反応産物)などの中から選択される生物学的構造であり得る。ターゲティング分子に対する親和性を提示する本発明の趣旨における標的細胞内分子または構造もまた、本性として化学物質であり得る。例えば、それは、標的細胞に人工的に注入される合成基質(Oまたは他の基質もしくは反応産物)であり得る。
【0050】
ターゲティング分子は、任意のコーティングまたは前記ナノ粒子の核、即ち、前記ナノ粒子を構成する無機または有機化合物にグラフト化される。分子は、好ましくは、表面に共有結合し、吸着される。前記グラフト化は、例えば、多様な長さの分子状の炭化水素鎖を介するが、しかしまた、多糖、ポリペプチド、DNAなどのような他のタイプの分子を介しても達成することができる。
【0051】
細胞内ターゲティングエレメントは、細胞内分子または構造、好ましくは、前記ナノ粒子が治療において使用される場合、細胞の必須成分、および対照的に、好ましくは、それらが診断において使用される場合、非必須成分を標的化することができるナノ粒子の開発を可能にする。好適な必須構造標的の例は、核、ミトコンドリア、基質(例えば、O)または細胞生存に必須な代謝経路の反応産物であり、目的は、例えば、反応平衡、従って、細胞全体の機能を凍結することである。実施例において示されるように、および先に検討したように、より低用量のナノ粒子を用いて、予想される結果、即ち、ナノ粒子が、表面ターゲティングエレメントのみではなく、代わりに、細胞内分子または構造の表面ターゲティングエレメントおよびターゲティング分子の両方を含んでなる場合、細胞の破壊を達成することができる(レーザーおよび磁場によって活性化されるナノ粒子にそれぞれ関する図3および4を参照のこと)。
【0052】
ローダミンは、本出願の実施例においてターゲティング分子として使用される。前記分子は、細胞内に自然に存在するミトコンドリアに対する親和性を提示する。ローダミンは、本ナノ粒子の細胞内ミトコンドリアへの標的化を可能にし、ミトコンドリアが前記細胞の必須成分である限り、活性化の供給源に暴露される場合、細胞破壊を促進する。
【0053】
表面ターゲティングエレメント
本発明に従うナノ粒子は、細胞内構造または分子に親和性を提示するターゲティング分子に加えて、生体組織または細胞を特異的に標的化するために表面エレメントを含んでなることができる。前記表面エレメントは、任意の手段、好ましくは、共有結合によって、場合により、スペーサーセグメントによって、粒子に結合され得る。それは、核、例えば、無機化合物、または以下に記載のように、任意のコーティングと会合し得る。
【0054】
表面ターゲティングエレメントは、ヒトまたは動物身体に存在する分子に対する親和性を提示する任意の生物学的または化学的構造であり得る。例えば、それは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、脂質などであり得る。例えば、それは、ホルモン、ビタミン、酵素など、および一般に、分子の任意のリガンド(例えば、受容体、マーカー、抗原など)であり得る。病的細胞によって発現される分子のリガンド、特に、例えば、腫瘍抗原、ホルモン受容体、サイトカイン受容体または増殖因子受容体のリガンドについては、例示的方法によって述べることができる。前記ターゲティングエレメントは、例えば、LHRH、EGF、葉酸、抗B−FN抗体、E−セレクチン/P−セクレチン、抗IL−2Rα抗体、GHRH、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、PSMA、タモキシフェン/トレミフェン、イマチニブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セトキシマブ、LDLよりなる群において選択され得る。
【0055】
存在する場合、表面ターゲティングエレメントは、目的の細胞、組織または器官における本粒子の認識および好適な蓄積を可能にし、それによって、これらの組織の作用を限定する。そのような標的化は、粒子が、例えば、深部組織のために全身経路によって投与される場合、特に有用である。
【0056】
生物学的細胞または組織に対する特異的標的化を可能にする表面ターゲティングエレメントは、任意のコーティングまたは前記ナノ粒子を構成する無機または有機化合物にグラフト化される。
【0057】
生体細胞または組織に対する特異的標的化を可能にする細胞内分子または構造および表面ターゲティングエレメントに対する親和性を提示するターゲティング分子の本ナノ粒子における組み合わされた存在は、それらの標的に対する前記ナノ粒子の認識の特異性を改善する。ナノ粒子のこのような増加された特異性は、低濃度であっても、特に、インビボで、それらが、細胞、組織または器官を標識、改変、または破壊することを可能にし、それによって、先に示したように、任意の医薬組成物または診断用組成物の使用に固有の潜在的毒性を減少する。
【0058】
LHRHは、本発明の実施態様において表面ターゲティングエレメントとして使用される。前記分子は、癌細胞の表面、特に、ホルモン依存的腫瘍に存在するLHRH受容体に対する親和性を提示する。例えば、LHRHは、乳、卵巣または前立腺腫瘍細胞の標的化を可能にする。癌細胞のミトコンドリアに対するLHRHおよびローダミンを介する本ナノ粒子の二重標的化は、励起化の供給源への暴露後の前記細胞の破壊を促進する。特に、実施例4において実証されるように、標的細胞を破壊するための本ナノ粒子の有効性は、二重標的化、即ち、細胞内分子または構造に対する親和性を提示するターゲティング分子のグラフト化および表面ターゲティングエレメントのグラフト化が使用される場合、増加する。
【0059】
製造方法
本発明に従うナノ粒子は、当該分野において任意の既知の方法によって製造することができる。
【0060】
本発明の目的は、以下を含んでなる上記において規定されるようなナノ粒子を調製するための方法に関する。
・上記において規定されるような1つもしくはそれ以上の化合物を含んでなる格の形成、
・核の任意のコーティング、
・場合により、コーティングされたそのようにして形成される前記粒子の表面において細胞内分子または構造に対する親和性を提示する少なくとも1つのターゲティング分子のグラフト化、および場合により、
・生体細胞または組織を特異的に標的化することを可能にする少なくとも1つの表面ターゲティングエレメントのグラフト化。
【0061】
本発明のナノ粒子を構成する材料は、当業者に既知の異なる技術によって製造することができる。方法は、用いる化合物の性質、およびナノ粒子におけるその配列に従って、当業者により適応することができる。本粒子の製造のために使用することができる材料を製造するための代替的方法については、例えば、ネルソン(Nelson)ら、Chem.Mater.2003年、15,688−693「Nanocrystalline Y2O3:Eu Phosphors Prepared by Alkalide Reduction」あるいはリュウ(Liu)ら、Journal of Magnetism and Magnetic Materials 270(2004年)16「Preparation and characterization of aminosilane modified superparamagnetic silica nanospheres」ならびに特許FR第0405036号明細書および米国特許第6,514,481号明細書において記載されている。
【0062】
ターゲティングエレメントをグラフト化するための方法は、例えば、L.レビ(L.Levy)ら、「Nanochemistry:Synthesis and Characterization of Multifunctional NanoBiodrugs for Biological Applications」(Chem.Mater.2002年、14(9),3715−3721)に記載の以下のプロトコルによって行うことができる。
【0063】
先に示したように、粒子の形状は、その特性、特に、フリーラジカルもしくは熱生成の収量または放射振動の性質にそれほど影響を及ぼさない。しかし、形状は粒子の「生体適合性」に影響を及ぼし得るため、本質的に球体または円形状および本質的に均質な形状が好適である。
【0064】
好適な様式では、先に示したように、本発明に従うナノ粒子のサイズは、典型的に、約4〜1000nmの間、好ましくは、300〜1000nmの間、さらにより好ましくは、4〜250nmの間に含まれる。ヒトまたは動物におけるインビボでのアプリケーションでは、4〜100nmの間、より好ましくは、4〜50nmの間に含まれるサイズを有するナノ粒子が特により好適である。対象のサイズは、理想的には、本質的に、マクロファージ(食作用)によって捕捉されず、かつ重大な閉塞を引き起こさずに、それらを身体(組織、細胞、血管など)に拡散させることが可能なほどに十分小さくなければならない。有利なことに、そのような効果は、ヒトにおいては、100nm未満、好ましくは、50nm未満のサイズを有する粒子で得ることができる。
【0065】
ナノ粒子の形状およびサイズは、本発明に従うナノ粒子調製方法を実行する当業者によって、容易に較正することができる。
【0066】
組成物
本発明のもう1つの目的は、上記において規定されるようなおよび/または上記の方法によって得ることができるナノ粒子を含んでなる任意の組成物に基づく。必ずしも必須ではないが、本組成物の粒子は、有利には、完全に均質なサイズおよび形状を有する。一般的に、組成物は、100mlあたり0.3〜3000mgの粒子を含んでなる。組成物は、固体、液体(懸濁液中の粒子)、ゲル、ペーストなどの形態であり得る。
【0067】
本発明の特定の目的は、上記において規定されるようなナノ粒子および場合により、医薬上許容される賦形剤またはビヒクルを含んでなる医薬組成物に関する。
【0068】
本発明のもう1つの特定の目的は、上記において規定されるようなナノ粒子および場合により、生理学的に許容可能な賦形剤またはビヒクルを含んでなる診断または画像化用組成物に関する。
【0069】
用いられる賦形剤またはビヒクルは、例えば、塩水、等張、滅菌、緩衝化溶液などのようなこのタイプのアプリケーションのための任意の古典的な支持体であり得る。本発明に従う組成物はまた、安定剤、甘味料、界面活性剤などを含んでなることができる。それらは、既知の技術の医薬処方を使用することによって、アンプル、瓶において、錠剤、カプセルとして処方することができる。
【0070】
用途
本発明の組成物、粒子および集合体は、多くの分野、特にヒトまたは獣医学において使用することができる。
【0071】
励起化の供給源への暴露の期間に依存して、粒子は、細胞または組織の破壊、または単に、可視化(画像化、診断)を可能にし得る。
【0072】
当業者は、細胞の破壊が所望されるかまたは細胞の可視化が所望されるかどうかに依存して、前記供給源の性質および強度に従って、励起化の供給源に対する本ナノ粒子の暴露時間を容易に適応することができる。治療用途に関して、本発明のナノ粒子は、通常、例えば、1秒間〜2時間の間、好ましくは、30分間〜1時間の間に含まれる期間、さらにより好ましくは、約30分間以下の期間、例えば、5、10もしくは15分間、励起化の供給源に暴露することができる。診断用途に関して、本ナノ粒子の暴露時間は、一般的に、1秒間〜約30分間、例えば、1分間〜約20分間、もしくは1秒間〜約5分間、またはさらに1〜約60秒間の範囲である。活性化の供給源に対して暴露される表面積が大きいほど、暴露時間が長いこと、および暴露時間は、励起化の供給源の強度に対して反比例することが理解されるべきである。
【0073】
本発明の特定の目的は、標的細胞を破壊することを目的とする医薬品を調製するための、ナノ粒子核に適応される励起化の供給源と組み合わされた上記において規定されるような組成物、またはナノ粒子の使用に基づく。
【0074】
本発明のもう1つの特定の目的は、ナノ粒子が標的細胞内を透過することを可能にするのに十分な期間、標的細胞と、上記において規定されるような1つもしくはそれ以上のナノ粒子とを接触させること、およびナノ粒子核に適応される活性化の供給源に細胞を暴露させることを含んでなり、前記暴露は前記標的細胞の溶解もしくは破壊を誘導または引き起こす、インビトロ、エクスビボもしくはインビボで標的細胞の溶解または破壊を誘導あるいは引き起こすための方法に基づく。
【0075】
標的細胞は、任意の病的細胞、即ち、発生病理に関与する細胞、例えば、腫瘍細胞、狭窄部の細胞(stenosing cell)(平滑筋細胞)、または免疫系細胞(病的細胞クローン)のような増殖性細胞であり得る。
【0076】
好適なアプリケーションは、癌細胞の処置(例えば、破壊または機能的変更)に基づく。これに関して、本発明の特定の目的は、癌を処置することを目的とする医薬品を調製するための(ナノ粒子核に適応される活性化の供給源と組み合わされた)上記において規定されるような組成物またはナノ粒子の使用に基づく。
【0077】
本発明のもう1つの目的は、癌を患う患者に、上記で規定されるような組成物またはナノ粒子を、ナノ粒子が癌細胞内に透過することを可能にする条件で投与すること、ならびに続いて、光、放射線または外部場、より詳細には、X線およびUV光、外部磁場、超音波などの中から選択することができるナノ粒子核に適応される励起化の供給源の存在下で患者を処置することを含んでなり、患者の癌細胞の変更、妨害または機能的破壊をもたらし、それによって、癌を処置する、癌処置の方法に関する。
【0078】
本発明は、任意のタイプの癌、特に、例えば、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳、頭頚部、脳、卵巣、前立腺、皮膚、腸、結腸、膵臓、眼などの癌よりなる群において選択される固形腫瘍(転移したまたは転移していない)を処置するために使用することができる。
【0079】
本発明はまた、例えば、アテローム性動脈硬化(athersclerosis)のような循環器系の病状を処置するためか、または例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症よりなる群において選択される神経変性の病状を処置するために使用することができる。従って、ナノ粒子のタイプ(およびその関連する治療効果)ならびに場合により存在し、生体細胞または組織への特異的標的化を可能にする細胞内ターゲティング分子および表面ターゲティング分子は、病的組織または細胞のタイプに従って選択することができる。
【0080】
刺激は、粒子の投与後任意の時間に、1回もしくはそれ以上の回数で、例えば、放射線療法またはラジオグラフィー(例えば、スキャナ)のシステムのような現在利用可能な任意のシステムを使用することによって、適用することができる。粒子は、異なる経路、好ましくは、全身もしくは局所注入によって、または経口的に投与することができる。必要であれば、反復注入または投与を付与することができる。
【0081】
所望される診断または治療用途に従うX線感受性化合物を含んでなる粒子を励起するために使用することができる放射線および放射線強度の例は、FR第0405036号明細書に示され、以下において検討されている。
【0082】
一般的および非制限的様式では、異なる場合において粒子を活性化するために、以下の放射線を適用することができる。
・表在X線(20〜50keV):表面付近のナノ粒子を活性化するため(数ミリメートルの貫通)。
・診断用X線(50〜150keV)。
・6cmの組織厚を貫通することができる200〜500keVのX線(常用電圧)
・1000keV〜25,000keVのX線(高電圧)。例えば、前立腺癌の処置のためのナノ粒子の励起は、15,000keVのエネルギーを伴う5つのフォーカスX線を介して行うことができる。
【0083】
上記のようなX線に対する暴露時間は、所望される値用または診断用途およびナノ粒子の性質に従って容易に決定することができる。
【0084】
例えば、1.5、4または5テスラの磁場ならびに5テスラを超える場はまた、磁場に感受性な化合物を含んでなる本ナノ粒子に適用することができる。当業者は、所望される治療または診断用途に従って、適用すべき磁場および暴露時間を選択することができる。同様に、当業者は、計画された用途および使用するナノ粒子の性質に従って、レーザー、UVまたは超音波への暴露の期間ならびに強度を容易に決定することができる。
【0085】
診断分野では、本粒子は、任意のタイプの組織を検出および/または可視化するための造影剤として使用することができる。それらはまた、反応平衡、従って、細胞機能を凍結するために使用することができる。
【0086】
従って、本発明の目的は、細胞、組織または器官の検出または可視化を目的とする組成物を製造するための適応される刺激(粒子の活性化の供給源)と組み合わされた上記において規定されるような組成物、またはナノ粒子である。
【0087】
活性化の適切な供給源は、先に示した供給源である。検出または可視化することができる標的細胞は、例えば、癌細胞である。
【0088】
用語「組み合わせで」は、本発明のナノ粒子を部分的に組み入れた目的の細胞、組織または器官が規定された供給源によって活性化される場合、求められている効果が得られることを示す。しかし、粒子および刺激を同時に投与する必要はなく、同じプロトコルに従う必要もない。
【0089】
用語「処置」は、特に、腫瘍または組織の病的領域のサイズもしくは増殖の減少、病的細胞または組織の抑制もしくは破壊、疾患の進行の遅延、転移の形成の減少、退行または完全寛解などのような病理学的徴候における任意の改善を示す。
【0090】
本粒子はまた、インビトロまたはエクスビボでも使用することができる。
【0091】
本発明の他の局面および利点は、例示の目的のためであって、制限的方法によるものではない以下の実施例において理解されよう。
【実施例】
【0092】
実施例1:プロトポルフィリンIXでドープ処理され、標的化された光感受性ナノ粒子の調製
以下のプロトコルに従って、プロトポルフィリンIXでドープ処理され(doped)、標的化された光感受性ナノ粒子を合成した。
a)0.5gのブタノールと混合した0.5gのAOTを、20mlの蒸留水に溶解した。
b)30マイクロリットルのDMFおよび15nMプロトポルフィリンIXを、工程a)で得られた上記の溶液に添加し、混合した。
c)トリエトキシビニルシラン(200マイクロリットル)および3−アミノプロピルトリエトキシシラン(10マイクロリットル)を、b)において得られた混合物に添加し、数時間撹拌した。
d)c)において得られた溶液を透析し、ろ過した。
e)3−(トリエトキシシラニルウプロピルカルバモイル)−酪酸分子を溶液d)のナノ粒子に添加し、DMFに分散させ、次いで、混合物を24時間、撹拌した。
f)L.レビ(L.Levy)ら、「Nanochemistry:Synthesis and Characterization of Multifunctional NanoBiodrugs for Biological Applications.」(Chem.Mater.2002年、14(9),3715−3721)に記載の方法を使用して、細胞内分子または構造に対する親和性を提示するターゲティングエレメント(ローダミン)および表面ターゲティングエレメント(LHRH)をe)において得られた混合物に添加した。次いで、
g)ナノ粒子を回収し、それらの完全性を確認した。
【0093】
実施例2:インビトロ実験のための3つのサンプルの調製
サンプルa)は、遊離のローダミンおよび遊離のLHRHの存在下で配置されたナノ粒子からなり、ナノ粒子、ローダミンおよびLHRHは等張液に分散された。
【0094】
サンプルb)は、遊離のLHRHの存在下で配置された細胞内分子または構造に対する親和性を伴うターゲティング分子(ローダミン)を含んでなるナノ粒子からなり、ナノ粒子およびLHRHは等張液に分散された。
【0095】
サンプルc)は、細胞内分子または構造に対する親和性を伴うターゲティング分子(ローダミン)および生体細胞または組織に対する特異的標的化を可能にする表面ターゲティングエレメント(LHRH)を含んでなるナノ粒子からなり、ナノ粒子は等張液に分散された。
【0096】
3つのサンプル(a、b、c)をMCF7細胞(ヒト乳癌細胞系統)に添加し、20時間、ペトリ皿あたり2μモルの粒子の濃度でインキュベートした。インキュベーション後、細胞を含有するサンプルaおよびbを、10分間、レーザー光源(650nm)に暴露させた。細胞生存率を、暴露の20分後に決定した。
【0097】
統計的に有意な結果を有するために、実験を4回反復した。図3のデータは、(二重標的化を伴う)サンプルc)のナノ粒子が最も大きな有効性(細胞破壊)を有したことを示す。
【0098】
実施例3:磁性ナノ粒子の調製
以下のプロトコルに従って、磁性ナノ粒子を合成した。
a)32gのFe(NOおよび8gのFe(Cl)を、水酸化ナトリウム(13g)により、70℃の温度で撹拌しながら共沈殿させた(1リットル反応器)。
b)a)で得られたナノ粒子を水(pH8)で濯ぎ、エタノール/水混合物(4:1)に分散させた。TEOSを、ある割合(質量TEOS=1.2質量粒子)で添加し、混合物を数時間、撹拌した。
c)3−(トリエトキシルシラニルプロピルカルバモイル)−酪酸分子を、DMF中に分散させたナノ粒子に添加し、24時間、撹拌した。
d)L.レビ(L.Levy)ら、「Nanochemistry:Synthesis and Characterization of Multifunctional NanoBiodrugs for Biological Applications.」(Chem.Mater.2002年、14(9),3715−3721)に記載の方法を使用して、細胞内分子または構造に対する親和性を提示するターゲティングエレメント(ローダミン)および表面ターゲティングエレメント(LHRH)を添加した。
【0099】
実施例4:インビトロ実験のための3つのサンプルの調製
サンプルa)は、遊離のローダミンおよび遊離のLHRHの存在下で配置されたナノ粒子から構成され、ナノ粒子、ローダミンおよびLHRHは等張液に分散された。
【0100】
サンプルb)は、遊離のLHRHの存在下で配置された細胞内分子または構造(ローダミン)に対する親和性を伴うターゲティング分子を含んでなるナノ粒子から構成され、ナノ粒子およびLHRHは等張液に分散された。
【0101】
サンプルc)は、細胞内分子または構造に対する親和性を伴うターゲティング分子(ローダミン)および生体細胞または組織に対する特異的標的化を可能にする表面ターゲティングエレメント(LHRH)を含んでなるナノ粒子から構成され、ナノ粒子は等張液に分散された。
【0102】
3つのサンプル(a、b、c)をMCF7細胞に添加し、20時間、ペトリ皿あたり0.5ピコグラムの粒子の濃度でインキュベートした。インキュベーション後、細胞を含有するサンプルb)およびc)を、10分間、一方向磁場(4.7テスラ)に暴露させた。細胞生存率を、暴露の20分後に決定した。
【0103】
統計的に有意な結果を有するために、実験を4回反復した。図4のデータは、(二重標的化を伴う)サンプルc)のナノ粒子が最も大きな有効性(細胞破壊)を有したことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】外部場により活性化可能なナノ粒子による二重標的化(モジュールA:処置しようとする生物体の細胞型、器官、生物学的組織の特異的認識を可能にする細胞外標的化、およびモジュールB:細胞内分子または構造の特異的認識を可能にする細胞内標的化)の原理を例示する。
【図2】は、治療または診断におけるナノ粒子の異なる作用機序を例示する。
【図3】は、本発明の光感受性ナノ粒子とのインキュベーションおよびレーザーへの暴露ありまたは暴露なし後のMCF7細胞(ヒト乳癌細胞系統)の生存率を示す。実験条件は以下のとおりであった。a)ナノ粒子を、等張液中に分散された遊離のローダミンおよび遊離のLHRHの存在下で配置した。細胞はレーザーに暴露させなかった。実験は、10分間、4連のペトリ皿において行った。b)遊離のLHRHの存在下で配置された細胞内分子または構造に対する親和性を伴うターゲティング分子、即ち、ローダミン(ミトコンドリアに対する親和性を提示するターゲティング分子)を含んでなるナノ粒子であって、ナノ粒子およびLHRHは等張液中に分散されている。細胞をレーザーに10分間暴露した。実験は、4連のペトリ皿において実施した。c)細胞内分子または構造に対する親和性を伴うターゲティング分子、即ち、ローダミン、および生体細胞または組織への特異的な標的化を可能にする表面ターゲティングエレメント、即ち、LHRH(癌細胞に対する親和性を提示する表面ターゲティングエレメント)を含んでなるナノ粒子。ナノ粒子を等張液中に分散させた。細胞をレーザーに10分間暴露した。実験は、4連のペトリ皿において実施した。
【図4】は、本発明の磁性ナノ粒子とのインキュベーションおよび磁場への暴露ありまたは暴露なし後のMCF7細胞の生存率を示す。実験条件は以下のとおりであった。a)ナノ粒子を、等張液中に分散された遊離のローダミンおよび遊離のLHRHの存在下で配置した。細胞は磁場に暴露させなかった。実験は、10分間、4連のペトリ皿において行った。b)遊離のLHRHの存在下で配置された細胞内分子または構造に対する親和性を伴うターゲティング分子、即ち、ローダミン(ミトコンドリアに対する親和性を提示するターゲティング分子)を含んでなるナノ粒子であって、ナノ粒子およびLHRHは等張液中に分散されている。細胞を磁場に10分間暴露した。実験は、4連のペトリ皿において実施した。c)細胞内分子または構造に対する親和性を伴うターゲティング分子、即ち、ローダミン、および生体組織または細胞への特異的な標的化を可能にする表面ターゲティングエレメント、即ち、LHRH(癌細胞に対する親和性を提示する表面ターゲティングエレメント)を含んでなるナノ粒子であって、ナノ粒子は等張液中に分散されている。細胞を磁場に10分間暴露した。実験は、4連のペトリ皿において実施した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・励起によって活性化可能な少なくとも1つの無機または有機化合物を含んでなる核、
・場合により、生体適合性コーティング、および
・細胞内分子または構造に対する親和性を提示する、粒子表面に露出された少なくとも1つのターゲティング分子、
を含んでなる、生体適合性複合ナノ粒子。
【請求項2】
核が、磁場の影響下で粒子の物理的回転を可能にする金属酸化物または非酸化金属を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
核が、レーザー光の影響下で熱またはフリーラジカルの生成を可能にする光感受性分子を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
核が、UVまたはレーザー光の影響下で熱またはフリーラジカルの生成を可能にする、場合により、希土類元素、または有機分子でドープ処理された半導体化合物あるいは混合溶液を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項5】
核が、X線の影響下で熱またはフリーラジカルの生成を可能にする、場合により、希土類元素、または非酸化金属でドープ処理された酸化物の形態の無機化合物、水酸化物、スルホキシド、それらの塩あるいは混合物を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項6】
場合により存在するコーティングが、無機もしくは有機構造、非結晶または結晶から構成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
ターゲティング分子が、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ヌクレオチド、脂質もしくは代謝物のようなヒトまたは動物細胞に存在する分子に対する親和性を提示する生物学的あるいは化学的分子であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
ターゲティング分子が、細胞内または核膜の分子、細胞骨格分子、細胞質分子またはミトコンドリアに対する親和性を提示することを特徴とする、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項9】
ターゲティング分子が、酵素、核内受容体、転写または翻訳因子、補因子または標的細胞に人工的に注入される天然もしくは合成基質に対する親和性を提示することを特徴とする、請求項7または8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
ターゲティング分子が、抗体、受容体リガンド、リガンド受容体またはそれらのフラグメントもしくは誘導体であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
ターゲティング分子が、任意のコーティングまたは前記粒子の核にグラフト化されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
該ナノ粒子が、生体細胞または組織を特異的に標的化することを可能にする表面エレメントをさらに含んでなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項13】
生体細胞または組織を特異的に標的化することを可能にする表面エレメントが、任意のコーティングまたは前記粒子の核にグラフト化されることを特徴とする、請求項12に記載のナノ粒子。
【請求項14】
ターゲティング分子および/または表面エレメントが、(CHCOOH官能基(式中、nは1〜10の整数である)を介してコーティングにグラフト化されることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項15】
該ナノ粒子が、4〜1000nmの間、好ましくは、300〜1000nmの間、さらにより好ましくは、4〜250nmの間、4〜100nmの間、または4〜50nmの間に含まれるサイズを有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項16】
該ナノ粒子が、本質的に球体の形状であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項17】
・請求項1〜15において規定されるような1つもしくはそれ以上の化合物を含んでなる核の形成、
・核の任意のコーティング、
・場合により、コーティングされたそのようにして形成される前記粒子の表面において細胞内分子または構造に対する親和性を提示する少なくとも1つのターゲティング分子のグラフト化、および場合により、
・生体細胞または組織を特異的に標的化することを可能にする少なくとも1つの表面ターゲティングエレメントのグラフト化、
を含んでなる請求項1〜16のいずれか1項に記載のナノ粒子を製造するための方法。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のナノ粒子を含んでなる医薬組成物または診断用組成物。
【請求項19】
標的細胞を破壊することを目的とする医薬品を調製するための、ナノ粒子核に適応される励起源と組み合わされた請求項1〜16のいずれか1項に記載のナノ粒子、または請求項18に記載の組成物の使用。
【請求項20】
細胞、組織または器官を検出もしくは可視化することを目的とする組成物を調製するための、ナノ粒子核に適応される励起源と組み合わされた請求項1〜16のいずれか1項に記載のナノ粒子、または請求項18に記載の組成物の使用。
【請求項21】
標的細胞が癌細胞であることを特徴とする、請求項19または20に記載の使用。
【請求項22】
励起源が光、放射線または外部場であることを特徴とする、請求項19または20に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−519014(P2008−519014A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539611(P2007−539611)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002758
【国際公開番号】WO2006/051198
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(506377178)
【氏名又は名称原語表記】NANOBIOTIX
【Fターム(参考)】