説明

細胞内代謝促進用組成物、その組成物を含有する糖代謝又は脂質代謝疾患の予防及び/又は治療用医薬製剤、機能性食品及び健康食品

【課題】
脂質の蓄積を抑制しつつ、脂肪細胞及び筋細胞への血糖の取り込みを増加させる。
【解決手段】
PPARγのアゴニスト、その生理学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有するものを有効成分として含有する、細胞内代謝促進用組成物、TNF−α活性抑制剤、その組成物を有効成分とする医薬製剤、健康食品及び機能性食品を提供する。
【効果】
本願発明の組成物は、脂質蓄積を予防しつつ血糖値を改善することができる。また、TNF−α活性を抑制することにより、糖代謝を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンドとして機能する化合物、並びに当該化合物を含有する、糖代謝又は脂質代謝系疾患の予防及び/又は治療用組成物、その組成物を有効成分として含有する医薬製剤、機能性食品、及び健康食品に関する。より詳細には、本発明は、グルコースホメオスタシス、過血糖症を含む高血糖の予防及び/又は治療用組成物、その組成物を有効成分として含有する医薬製剤、機能性食品、及び健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロポリスは、西洋ミツバチが種々の植物から集めた成分の樹脂様の混合物であり、西洋ミツバチはプロポリスを巣の穴を塞ぐ材料に用いて、巣門の防御にも利用している。一方、プロポリスは、幅広い生理活性を有するため、西洋では、伝統的民間薬として紀元前から使用されてきている。
近年になって、プロポリスは極めて多様であり、その化学組成及び生理活性もそれぞれまったく異なる可能性があることが指摘されている(ミツバチ科学 27(2):63-70 Honeybee Science (2006)参照)。例えば、ブルガリアとブラジルから集められたプロポリスのサンプルを比較してみると、全く別種の2つの植物抽出物を比較するのと同様の相違がある。
【0003】
プロポリス抽出物の有する生理活性としては、エンドセリン拮抗作用、グルココルチコイド様作用又は一酸化窒素合成酵素阻害作用を有すること(特開2004−161664号公報参照、以下、「従来技術1」という。)、及び、アディポネクチン産生増強作用、ペルオキシソーム増殖剤応答性核内受容体γ(以下、PPARγと略記する場合がある。)活性化作用(アゴニスト作用)、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化誘導作用、インスリン抵抗性の改善作用、TNF-αによる前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化の抑制を改善する作用(特開2010−37221号公報参照、以下、「従来技術2」という)等が知られている。
【0004】
また、プロポリスには、産地によって、桂皮酸誘導体であるアルテピリンC(artepillin C、以下、「ARC」ということがある)、フラボノイド、ポリフェノールの一種であるカフェイン酸フェネチルエステル(CAPE)等を含有するものがあることが知られている。さらに、ARCを始めとするプレニル桂皮酸の誘導体には、TNF-αによるアディポネクチン発現低下の抑制作用のあることが知られている(特開2010−150161号公報、以下「従来技術3」という)。ARCの構造式を下記式(I)に示す。
【0005】
【化1】

【0006】
以上のような作用を有するプロポリスは食品にも配合されており、例えば、グミキャンディー、チューインガム、和菓子、バターケーキ等(特開平9−141002号公報参照、以下、「従来技術4」という。)等が知られている。
【0007】
また、PPARγは自己フィードバックする転写因子であるが、プロポリス抽出物は、PPARγを始めとする脂質合成関連遺伝子の発現を抑制し、脂質合成を阻害すること(特開2010−53122号公報、以下、「従来技術5」という。)が知られている。
これに対し、PPARγのアゴニストとしても知られるロシグリタゾン(Rosiglitazone、以下、「RSG」と略すことがある。)は、インスリン抵抗性の改善作用や前脂肪細胞から脂肪細胞への分化の抑制を改善する作用を有することが知られている。また、別のPPARγのアンタゴニストとして、下記式(II)に示すGW9662が知られている。RSGが脂肪細胞の分化と成長とを促進するのに対し、GW9662はこれらを抑制する。
【0008】
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−161664
【特許文献2】特開2010−37221
【特許文献3】特開2010−150161
【特許文献4】特開平9−141002
【特許文献5】特開2010−53122号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ミツバチ科学 27(2):63-70 Honeybee Science (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来技術には、プロポリス抽出物が産地によって組成が異なり、また、多様な生理活性を有することが示されている。
従来技術1はブラジル産プロポリスと中国産プロポリスの含水エタノール抽出物が、主要な成分を特定している。従来技術1及び2は、プロポリス抽出物がPPARγアゴニストを含有することを明らかにし、これらを種々の医薬品として使用できることを見出したという点では優れたものである。しかし、従来技術1及び2で使用されているのはプロポリス抽出物であり、その有効成分は特定されていない。
【0012】
また、従来技術3では、ブラジル産プロポリスに含まれるARCがTNF-αによるアディポネクチンの発現の低下を抑えることを確認しており、糖尿病・肥満の治療又は予防に使用できる可能性があることを示した点では優れた発明である。
しかし、従来例3では、in vitroの実験しか行われておらず、動物を用いたin vivoの実験でも同様の結果が得られる保証がないという問題がある。in vivoで得られる結果が、in vitroの実験結果と必ずしも相関しないことは、当業者には周知である。
また、従来技術4では、プロポリス抽出物のpHを5.5〜7.0に高めることによって水溶性を向上させ、飲食物、ウイルス性疾患、細菌性疾患、外傷性疾患その他の感受性疾患に対する薬剤、美肌剤等の化粧品に使用しやすくしたという点では優れたものである。しかし、従来技術4では、上記のようなpHで抽出したプロポリス抽出物が、実際に抗ウイルス効果、抗菌効果等を示すか否かについては、記載されていない。
したがって、各種成分が混じった状態のプロポリス抽出物をそのまま高血糖又はインスリン抵抗性の改善に用いても、その有効成分の効果を十分に発揮させることが出来るという保証はない。
逆に、PPARγ活性アゴニストを、プロポリス抽出物より特定することができれば、高血糖やインスリン抵抗性が大きく改善される可能性がある。
【0013】
また、非常に強いPPARγアゴニストであるRSGは、高血糖又はインスリン抵抗性の改善に有用である。しかし、RSGの使用には、心筋虚血というリスクが存在する。また、PPARγに誘導される脂肪細胞の遺伝子の発現は、RSGにより強く活性化されるため肥満というリスクもある。
一方で、GW9662その他のPPARγアンタゴニストは、PPARγのインスリン抵抗性の改善に繋がるアディポネクチン等の遺伝子の発現を抑制するが、直接的には糖尿病の治療効果や高血糖の改善効果は発揮しない。
【0014】
副作用を伴わずにインスリン抵抗性や高血糖を改善する上では、アゴニスト又はアンタゴニストの作用の強弱を適宜制御してPPARγの活性を制御することが非常に有用である。そして、糖尿病患者及びその予備軍の数を考えると、そのような複合的な作用を有する組成物又はそのような組成物を利用した複合的な治療/予防法に対する高い社会的要請がある。
一方、医薬製剤による治療が必要にはなっていないが、過血糖症や高血糖になる危険性が高い、いわゆる過血糖や高血糖の予備群と言われる人達は、食品を摂取することによってこうした状態を改善すべきであり、そのような要請も大きい。そして、機能性食品又は健康食品として上述したような効果を発揮する化合物をうまく摂取することができれば、病気の予防をすることが可能となる。さらに、年々増加する医療費が膨大な額に上っているという点からも、社会的な要請は強い。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様は、下記式(I)で表されるPPARγのアゴニスト、その生理学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有するものを有効成分として含有する、細胞内代謝促進用組成物である。
【0016】
【化3】

【0017】
前記細胞内代謝は細胞における糖代謝であることが好ましく、脂肪細胞又は筋管細胞への糖の取り込みの促進であることがさらに好ましい。
また、前記細胞内代謝は細胞における脂質代謝であることが好ましく、脂肪細胞の分化の促進であることがさらに好ましい。
前記組成物は、PPARγのアンタゴニスト、その生理学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有するものをさらに含むものであることが好ましい。そして、前記アンタゴニストは、下記式(II)で表される化合物並びにこれらの生理学的に許容される塩及び水和物からなる群から選ばれるものであることが好ましい。
【0018】
【化4】

【0019】
ここで、前記アゴニストと前記アンタゴニストの組成比は1:10〜100:1であることが好ましく、1:1〜10:1であることがさらに好ましい。
本発明の第2の態様は、上記の組成物を有効成分とし、所定の用量で投与されることを特徴とする糖代謝疾患の予防及び/又は治療用医薬製剤である。
また、本発明の第3の態様は、前記の組成物を有効成分とし、所定の用量で投与されることを特徴とする脂質代謝疾患の予防及び/又は治療用医薬製剤である。
本発明の第4の態様は、下記式(I)で表わされるリガンド、その生理学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有する、TNF-α活性抑制剤である。
【0020】
【化5】

【0021】
本発明の第5の態様は、前記TNF-α活性の抑制剤を有効成分とし、所定の用量で投与されることを特徴とする、糖代謝活性促進用医薬製剤である。
本発明の第6及び第7の態様は、少なくとも、前記式(I)で表わされる化合物(アゴニスト)と、前記化合物に対するアンタゴニストとを含有する、機能性食品又は健康食品である。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の組成物及びこれらの組成物を含有する医薬製剤の摂取により、脂肪細胞及び筋管細胞のいずれにおいても糖代謝を改善するとともに、脂質蓄積を抑制することが可能となる。そして、これらの作用によって、血糖値を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、被験物質であるARC及び陽性対照物質15-デオキシ-デルタ-12,14-プロスタグランジンJ2(15d-PGJ2)のTR-FRET値(520nm/495nm比)を表すグラフである。溶媒(対照)を以下、「C」と略す。
【図2】図2は、被験物質存在下でのPPARγ標的遺伝子aP2のタンパク質発現量を表すSDS-PAGE・免疫ブロット像である。RSGはロシグリタゾンを示す。GAPDHはグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素を示し、発現量の標準とする。
【図3】図3は、被験物質存在下でのPPARγ標的遺伝子aP2のmRNA発現量比を表すグラフである。溶媒添加群を陰性対照群とし、そのmRNA量を1とする。
【図4】図4は、染色細胞から抽出したオイルレッドOの量で蓄積脂質量比を求めて得られたグラフである。対照としてインスリン非添加群と比較した。Cは誘導物質を除いて、いずれの被験物質等も添加されていない溶媒を投与した陰性対照群での実験結果を表し、RSGはRSGを表す。Cについては特別の記載のない限り以下同様とする。
【0024】
【図5】図5は、インスリン存在下で、被験物質及びPPARγアンタゴニストによる分化誘導したときの、脂肪細胞特異的遺伝子のmRNA発現量比を、GW9662の溶媒添加群Cを1として表したグラフである。
【図6】図6は、インスリン存在下で、被験物質及びPPARγアンタゴニストによる分化誘導したときの、脂肪細胞特異的遺伝子のタンパク質発現量を表すSDS-PAGE・免疫ブロット像である。A10は10μMのARC、A30は30μMのARC、R1は1μMのRSGを表すものとし、以下特別の記載の無い限り同様とする。
【図7】図7は、分化した3T3-L1細胞にRSG(1μM、Rと示す。)又は被験物質を、インスリン存在下/非存在下で添加したときの、ブドウ糖消費量を表すグラフである。また、PI3キナーゼ阻害剤ボルトマニン(wortmannin)存在下で被験物質である30μMのARCまたはRSG(1μM、R)を添加したときのブドウ糖消費量も同時に示したグラフである。
【0025】
【図8】図8は、分化した3T3-L1細胞に被験物質またはRSGを添加したときの糖輸送体遺伝子のmRNA発現量比を、溶媒添加群Cを1として、表したグラフである。
【図9】図9は、分化した3T3-L1細胞に被験物質またはRSGを添加したときの、全細胞の糖輸送体遺伝子のタンパク質発現量を表すSDS-PAGE・免疫ブロット像である。
【図10】図10は、分化した3T3-L1細胞に、インスリン及び被験物質を添加したときの、細胞内に取り込まれたブドウ糖アナログ2-NBDGの蛍光観察像である。インスリンもARCも添加されていない陰性対照群をCとした。
【図11】図11は、分化した3T3-L1細胞に被験物質またはRSGを添加したときの、膜に局在する糖輸送体遺伝子のタンパク質発現量を表すSDS-PAGE・免疫ブロット像である。
【0026】
【図12】図12は、インスリンに応答してリン酸化されるタンパク質の、リン酸化状態を表すSDS-PAGE・免疫ブロット像である。インスリン存在下/非存在下で、A30は30μMのARCを、R1は1μMのRSGをそれぞれ、分化した3T3-L1細胞に添加したことを表す。
【図13】図13は、TNF-αの存在下で分化誘導した際に、被験物質を添加した3T3-L1細胞の脂質蓄積量を表すグラフである。各グラフの数字は濃度を(μM)を表す。
【図14】図14は、脂肪細胞分化誘導を行った後、TNF-αの存在下/非存在下での脂肪細胞特異的サイトカインMCP-1の遺伝子のmRNA発現量比を、TNF-α非存在下の陰性対照群Cを1として表したものである。Ar10は10μMの、Ar30は30μMのARCの、R10は10μMのRSGのそれぞれ分化誘導後の添加を表す。
【図15】図15は、図14と同様にIL-6遺伝子についてmRNA発現量比を表したものである。
【0027】
【図16】図16は、TNF-αの存在下/非存在下で分化誘導した後の脂肪細胞グリセロール放出量比を、TNF-α非存在下((-)TNFalpha)で測定した結果を表すグラフである。分化誘導時に添加した被験物質はそれぞれ、溶媒のみ(C)、10μMのRSG、10μMのN-アセチルシステイン(NAC)、10μMのジフェニレンヨードニウム(diphenyleneiodonium;DPI)、1〜30μMのARC、40μMのPD98059(PD)、10μMのSB202190(SB)、20μMのSP600125(SP)である。
【図17】図17は、L6筋管細胞を被験物質存在下で、5mMのブドウ糖を含有する培地にて培養した際の培地中のブドウ糖の消費量を表すグラフである。グラフはそれぞれ、溶媒のみの陰性対照群(C)、RSG(R)、カフェイン酸フェネチルエステル(CAPE)、3〜200μMのARCを表す。
【図18】図18は、25mMのブドウ糖を含有する培地を用いて図17と同様の実験を行った結果を表すグラフである。
【図19】図19は、糖尿病モデルマウスに対し溶媒(対照)のみ、被験物質を20mg/kg/日(A20)又は50mg/kg/日(A50)を与えた場合のブドウ糖の血漿レベル変化を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本明細書中、「患者」にはヒト及びヒト以外の脊椎動物であって罹患している動物が含まれる。また、「潜在的な患者」とは、特に代謝性の要因により将来罹患のおそれのある「患者」を指し、「潜在的な患者」には「ヒトの潜在的な患者」が常に含まれるものとする。
また、本明細書中、「細胞内代謝」とは、細胞内で行われる種々の代謝を意味する。
リガンドは、選択的または特異的な高い親和性を有し、特定の部位で受容体と結合する物質をいう。本明細書中、「リガンド」は、受容体に結合し、受容体の立体配座の変化を生じさせることにより、生体応答反応生体内物質と同様の細胞内情報伝達系を作動させるアゴニストを含むものとする。
【0029】
本明細書中、「アゴニスト」は、生体内物質と同様に完全な活性を発揮するアゴニストのみならず、部分的な活性しか示さない部分アゴニストをも含む。「アンタゴニスト」は、受容体に結合はするが、生体物質と異なって生体反応を起こさず、またその結合によって本来結合すべき生体内物質と受容体の結合を阻害し、生体応答反応を起こさない薬物をいう。
本明細書において「機能性食品」とは、その食品自体が本来含有している栄養素によって、その食品を摂取した者に供与できる以上の利益を与え得る成分を含有する食品をいう。また、「健康食品」とは、健康の維持・増進に役立つ成分を抽出し、製造した粗生成物又は精製物を主成分とする粉末、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等としたものをいい、日頃不足しがちな栄養成分の摂取を補助するサプリメントも含むものとする。
【0030】
本発明は、下記式(I)で表されるPPARγのアゴニスト(ARC)、その生理学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有するものを有効成分として含有する、細胞内代謝促進用組成物である。
ここで、前記細胞内代謝は、細胞における糖代謝であることが好ましく、脂肪細胞又は筋管細胞への糖の取り込みの促進であることがさらに好ましい。また、これらを含有することにより、インスリンへの依存性が低く、インスリン投与下/非投与下のいずれにおいても、血糖値を制御する効果が高くなることによる。
【0031】
【化6】

【0032】
また、前記細胞内代謝は細胞における脂質代謝であることが好ましく、脂肪細胞の分化の促進であることがさらに好ましい。そして、PPARγのアンタゴニスト、その生理学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有するものをさらに含むことが好ましい。
前記PPARγのアンタゴニストは、下記式(II)で表される化合物並びにこれらの生理学的に許容される塩及び水和物からなる群から選ばれるものであることが好ましい。
【0033】
【化7】

【0034】
ここで、アンタゴニストとARCと併用することによって、ARCの作用をうまく制御することができる。そして、前記アゴニストと前記アンタゴニストの組成比は、1:10〜100:1であることが好ましく、1:1〜10:1であることがさらに好ましい。この組成比で配合することにより、脂肪細胞の分化促進効果が高いことによる。
本発明はまた、上記の組成物を有効成分とし、所定の用量で投与されることを特徴とする糖代謝疾患の予防及び/又は治療用医薬製剤である。
本発明はさらにまた、上記の組成物を有効成分とし、所定の用量で投与されることを特徴とする脂質代謝疾患の予防及び/又は治療用医薬製剤である。
【0035】
本発明はまた、上記式(I)で表される化合物(ARC)、並びにこれらの生理学的に許容される塩及び水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有する、TNF-α活性抑制剤である。TNF-αによって惹起される炎症反応を抑制することができ、その結果、糖代謝を改善することができる。
上述した、式(I)又は(II)で表される化合物の生理学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩等を挙げることができる。また、水和物としては、一水和物、二水和物等を挙げることができる。
上述した、式(I)〜(II)で表される化合物、並びにこれらの生理学的に許容される塩及び水和物、並びにこれらの混合物は、公知の方法又はそれに準ずる方法によって製造し、入手してもよく、市販品を購入して使用してもよい。
【0036】
本発明で使用する化合物は、プロポリス原塊を、水や有機溶媒を用いて抽出して得ることもでき、超臨界抽出、ミセル化抽出等によって得ることもできる。メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコールを使用することが、ARCを、容易かつ多量に抽出できることから好ましい。また、アセトンや酢酸エチル等を使用することもできる。
水、含水アルコールその他の上記のような有機溶媒を用いて得た抽出物を、通常の手順に従ってカラムにかけ、精製を行うことによって、ARCを得ることができる。
また、アゴニストとして使用するRSGは、発売元である三共(株)又はグラクソ・スミスクライン(株)より購入することができる。
【0037】
本発明の別の態様は、上述した組成物を有効成分として含有する、糖代謝疾患の予防及び/又は治療用医薬製剤である。さらに別の態様は、脂質代謝の予防及び/又は治療用医薬製剤である。また別の態様は、糖代謝活性促進用医薬製剤である。
こうした医薬製剤としては、注射剤、坐剤、エアゾール剤、経皮吸収剤その他の非経口剤、錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、液剤その他の種々の剤形の製剤を挙げることができる。ここで、上記の錠剤には、糖衣錠、コーティング錠、バッカル錠が含まれ、カプセル剤には、硬カプセル剤、軟カプセル剤の双方が含まれる。また、顆粒剤には、コーティングされた顆粒剤も含まれる。さらに、上記の液剤には、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等が含まれ、シロップ剤にはドライシロップも含まれる。
【0038】
その他の剤形の製剤には、上記の組成物を液状にし、これをアガロースビーズに含浸させたゲル剤等も含まれる。なお、上述した各製剤には、徐放化されていないもの、徐放化されたものの双方が含まれる。
こうした製剤は、公知の製剤学的製法に従い、製剤の製造に際して薬理学的に許容され得る日本薬局方に記載の担体、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤等を用いて製造することができる。
上記の製剤で使用する担体や賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等を挙げることができる。
【0039】
結合剤としては、例えば、デンプン、トラガントゴム、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。
崩壊剤としては、例えば、デンプン、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムなど、滑沢剤としては例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール等を使用することができる。
着色剤は、医薬品に添加することが許容されているものであれば使用することができ、特に限定されない。また、これら以外に、矯味剤、矯臭剤等も、必要に応じて適宜使用することができる。
【0040】
錠剤又は顆粒剤とする場合には、必要に応じて、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート、メタアクリル酸重合体等を用いてコーティングしても良く、複数層でコーティングすることもできる。
さらに、顆粒剤や粉剤をエチルセルロースやゼラチンのようなカプセルに詰めてカプセル剤とすることもできる。
上記の化合物、又はそれらの生理学的に許容される塩、若しくは水和物を用いて、注射剤を調製する場合は、必要に応じて、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤などを添加することもできる。
【0041】
例えば、式(I)〜(II)で表される化合物、並びにこれらの生理学的に許容される塩及び水和物、並びにこれらの混合物と上述したアンタゴニストとを、1:10〜100:1の間の所望の配合比で混合して組成物とし、上述した賦形剤を加え、常法に従ってさらに混合し、打錠機にかけて打錠することによって、錠剤を製造することができる。
例えば、配合比を1:1とした上記組成物1mgに、上述した賦形剤200mgを加え、常法に従ってさらに混合し、打錠機にかけて打錠することによって、錠剤を製造することができる。
また、上記の組成物を、常法に従って顆粒剤とし、所定の量、例えば、100mgをソフトカプセルに詰めることにより、カプセル剤を製造することができる。
【0042】
上記医薬製剤を前記糖代謝疾患の患者に投与する場合には、その投与量は、患者の症状の重篤さ、年齢、体重、及び健康状態等の諸条件によって異なる。一般的には、成人1日当たり1mg/kg〜2,000mg/kg、好ましくは1mg/kg〜1,000mg/kg程度を、経口又は非経口的に、1日1回若しくはそれ以上の回数にわたって投与すればよい。上記のような諸条件に応じて、投与の回数及び量を適宜増減すればよい。
有効成分である上記式(I)で表わされる化合物等の含有量が下限値未満では血糖降下作用又はインスリン抵抗性の改善作用が十分に発揮されず、逆に上限値を越えて添加しても、添加量に見合う効果が発揮されないからである。
【0043】
上記医薬製剤を脂質代謝疾患の患者に投与する場合及び糖代謝活性促進等医薬製剤の場合にも、その投与量は、上記の糖代謝疾患の場合と同様である。糖代謝疾患と脂質代謝疾患とが合併している患者に投与する場合には、症状の重篤さ、年齢、体重、及び健康状態等の諸条件に応じて、いずれかの疾患単独の場合よりも増量すればよい。
【0044】
本発明はまた、上記組成物を含有する、機能性食品又は健康食品である。
上記組成物は、例えば、パン、クッキー及びビスケット、米飯添加用麦及び雑穀、うどん、そば、パスタその他の麺類、乳、乳代用品、クリーム、バター、バターミルク、チーズ、ホエー、ヨーグルトその他の乳製品、マーガリン、ショートニング、ジャム、マヨネーズ、味噌、醤油その他の大豆製品、茶、コーヒー及びココア、清涼飲料、果実飲料その他の非アルコール性飲料、薬用酒その他のアルコール性飲料、キャンディー、チョコレートその他のスナック菓子、チューインガム、氷菓子、アイスクリーム、せんべい、羊羹その他の大豆を原料とする糖菓又は菓子等に、0.1〜15重量部添加して、調製品とし機能性食品とすることができる。
また、例えば、カムート小麦若葉の搾汁、赤ピーマン、にんじん、りんご等の野菜や果物を凍結乾燥した粉末に、後述する量で添加しサプリメントとすることもできる。
なお、上記のヨーグルト、醤油、飲料等に添加する場合には、これらの中で本発明の組成物が結晶化して沈殿しないようにするために、溶解助剤や安定化剤を適宜加えることもできる。
また、本発明の組成物を単独で、又は2種以上を混合し、常法に従って、例えば、上記の野菜や果物を凍結乾燥した粉末に後述する量で添加して、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤とすることにより、健康食品とすることができる。
【0045】
ここで、本発明の組成物を粉末とするためには、生成過程で得られた抽出物を濃縮し、凍結乾燥、スプレードライ、真空乾燥等の方法を用いて乾燥させ、サンプルミル、ブレンダー、ミキサー等によって乾燥固体を粉砕すればよい。また、必要に応じて、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、牡蠣殻粉末などを添加してもよい。
また、上記のようにして得た粉末に、適宜、上述した結合剤を加えて打錠し、錠剤とすることもできる。錠剤とした後に、上述した白糖又はゼラチン等のコーティング剤を用いて、糖衣錠としてもよく、他のコーティング剤を用いて腸溶剤等にすることもできる。
【0046】
さらに、上述のようにして得た粉末を常法に従って顆粒とし、顆粒剤を製造することもできる。また、上記の粉末や顆粒を上述したカプセルに適当量充填することによって、カプセル剤とすることもできる。
また、前記組成物の含有量は、上記食品中に1〜1,000mg/100gであることがより好ましい。
糖代謝疾患等の患者が上記それぞれの食品を、所定の期間、所定の回数、所定の分量を摂取することで、糖代謝疾患等の進行の予防及び/又は糖代謝疾患等の治療を行うことができる。糖代謝疾患等の潜在的な患者が上記同様に実施することで糖代謝疾患等の発症の予防を行うことができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
(実施例1) PPARγリガンドの結合試験
(1)統計解析
全ての定性データは独立して3回以上の実験を行った上で、代表的なものを示した。定量値は、Origin 6.0ソフトウェアを用いて、平均値±標準誤差で表し、分散分析(ANOVA)にて比較した。危険率p<0.05で統計学的に有意と判断した。
(2)細胞培養
マウス前駆脂肪細胞3T3-L1((独)理化学研究所バイオリソースセンター)は、10%ウシ血清、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンを含む10%ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(以上の試薬は、いずれもギブコBRL社製)を用いて、37℃にて、加湿、5%CO2の条件下に培養した。特に記載しない限り、培養の条件は以下の実験でも同様である。
【0048】
(3)脂肪細胞分化
3T3-L1細胞を培養し、コンフルエントになった日から2日後を0日目として、2日間培養を行い、前駆脂肪細胞3T3-L1を分化させた。培地は、0.5mMのIBMX(3-isobutylmethylxanthine;和光純薬工業(株)製)、10μg/mLのインスリン(INS;Sigma-Aldrich社製)、0.25μMのDEX(dexamethasone;和光純薬工業(株)製)及び10%ウシ胎児血清(FBS;Biosource, Inc.製)を含むDMEM(MDI diferenciation media社製)を用いた。
2日後、上記の培地を10μg/mLのインスリン及び10%FBSを含むDMEMに置換し、さらに2日間培養し、その後、10%FBSを含むDMEMに交換した。
分化開始から6〜8日経過した脂肪細胞を、以下の試験に使用した。特に記載しない限り、以下の実験で行う分化誘導条件は同様である。
【0049】
(4)PPARγリガンド結合試験
PPARγリガンド結合活性は、Lanthascreen TR-FRET Peroxisome Proliferator Activated Receptor γ Coactivator Assay Kit(Invitrogen社製)を用いて、添付された手順に従って測定した。反応液には、溶媒のみ、0.1〜100μMのARC(ARC)、10μMの15-Deoxy-Delta-12,14-prostaglandin J2(15d-PGJ2;SIGMA社製)、1μMのRSG(RSG; Alexis Biochemicals社製)のいずれかを添加した。
その後、520nm/495nmのTR-FRET比を、励起波長340nm、発光波長520nm及び495nmで、EnVisionTMマルチリーダー(Perkin-Elmer. Inc.製)を用いて測定し、得られた値から求めた。
【0050】
1μMのRSG及び10μMの15d-PGJ2は、有意に高いTR-FRET値(520nm/495nm比)を示した。
一方、ARCは濃度依存的にTR-FRET値が上昇し、1μM及び100μMで有意に高い値を示した(表1及び図1)。以上の結果から、ARCがPPARγのリガンドとしての構造を有し、PPARγのアゴニスト又はパーシャルアゴニストとして作用することが示された。
【0051】
【表1】

溶媒に対し*P<0.05
【0052】
(5)PPARγ標的遺伝子のタンパク質発現量測定
PPARγ標的遺伝子のタンパク質発現量は、免疫ブロットにより測定した。免疫ブロット試験で使用した細胞溶解液の組成は、以下の通りである。
・150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1%トリトンX-100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)
・一次抗体:抗aP2ポリクローナル抗体(cell signaling Technology Inc.社製)
・二次抗体:HRP-linked anti-rabbit IgG(GE Healthcare社製)
【0053】
完全に分化した3T3-L1細胞を10〜30μMのARC、又は1μMのRSGの存在下で48時間培養し、PBSで洗浄し、Totalたんぱく質を調製した。
50 mM Tris-HCl pH 7.4, 150 mM NaCl, 1 mM EDTA, 1% Triton X-100, 1% sodium deoxycholate, 0.1% SDS, 1 mM PMSFを含むlysis bufferを加えて細胞をはがし、氷上で30分間置いた後、遠心(12000xg)を行って上澄みを回収し、タンパク質を得た。
このタンパク質20μgを、10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にて分離し、これをフッ化ポリビニリデン(PVDF)膜に転写した。0.1%ツイーン20及びスキムミルクを溶解したトリス緩衝生理食塩水(TBS)からなるブロッキング緩衝液を用いて、前記PVDF膜をブロッキングし、一次抗体である抗aP2ポリクローナル抗体及び二次抗体であるHRP-linked anti-rabbit IgGでブロットした。抗原と抗体の複合物はchemiluminescence(GE Healthcare社製)で検出した。
結果を図2に示す。ARCの濃度に依存してaP2の発現量が多くなっていることが確認された(図2)。
【0054】
(6)PPARγ標的遺伝子のmRNA発現量測定
完全に分化した3T3-L1細胞を10〜30μMのARC存在下で48時間培養し、当該細胞より全RNAを抽出した。RNA抽出は以下のように行った。ISOGEN((株)ニッポンジーン製)を用いて、細胞から全RNAを抽出した。各試料及び対照から抽出した1μgの全RNAに基づいて、oligo d(T)及びReverse Transcript System(Promega Corp.製)を用いて逆転写を行い、cDNAを得た。
定量リアルタイムPCRは以下のように行った。得られたcDNAを用いて、ABI Prism 7300装置(Applied Biosystems社製)によってリアルタイムPCRを行い、遺伝子の発現量を定量した。反応液はSYBR(登録商標)Green reaction buffer(Roche社製)より作成した。内部標準はβ-actin遺伝子を利用した。
PCRのサイクル条件は、50℃2分、95℃10分というサイクルを1サイクルとし、その後95℃15秒、60℃1分のサイクルとし、40サイクル繰り返した。定量はtriplicate(n=3)で各3回行った。
【0055】
プライマー配列は以下の通りである。
aP2 primer1[配列番号1:5'-CAACCTGTGTGATGCCTTTGTG-3']
aP2 primer2[配列番号2:5'-CTCTTCCTTTGGCTCATGCC-3']
β-actin primer1[配列番号3:5'-TGTTACCAACTGGGACGACA-3']
β-actin primer2[配列番号4:5'-CTCTCAGCTGTGGTGGTGAA-3']
【0056】
この全RNAを用いて合成したcDNAに対して、定量リアルタイムPCR試験を行った。結果を表2及び図3に示す。ARCの濃度に依存してaP2のシグナルが強くなることが示された。以上より、ARCが、アゴニストとして脂肪細胞中のPPARγを活性化したことで、PPARγの標的遺伝子aP2の発現が向上したことが示された。
【0057】
【表2】

【実施例2】
【0058】
(実施例2) 脂肪細胞の分化促進剤についての試験
(1)分化誘導培養
10%ウシ血清を含むDMEMで培養した前駆脂肪細胞3T3-L1を、10%FBSを含有するDMEM中に、表3に示す濃度のARC又はGW9662(シグマ・アルドリッチ社製)を添加した各培地、及びさらに1μg/mLのインスリンを添加した培地中で、24ウェルプレートを用いて、37℃にて、9日間培養した。培養期間中、3日ごとに、新鮮な培地に交換した。
【0059】
(2)オイルレッドO染色
オイルレッドO(シグマ・アルドリッチ社製)は、60%イソプロパノールに0.5%となるように溶解し、ろ過して、オイルレッドO染色液を調製した。
上記のように9日間培養を行って細胞を分化させた後、培地を除去し、固定液(10%ホルマリンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS; phosphate-buffered saline))を用いて、室温で1時間細胞を固定した。固定液を捨て、PBSで3回洗浄した後、オイルレッドO染色液にて、室温にて、30分間、細胞を染色した。
その後、オイルレッドO染色液を捨て、蒸留水にて細胞を3回洗浄し、その後、顕微鏡下で観察を行った。また、脂肪とオイルレッドOとをイソプロパノールで抽出し、分光光度計にて、波長520nmの吸光度を測定した。
(3)分化誘導された細胞の観察
1〜30μLのARC又は1μMのRSG存在下で、上述の通り前駆脂肪細胞3T3-L1をインスリンにより分化誘導し、オイルレッドO染色を行った。吸光度測定の結果は、表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
インスリンの非存在下で実験を行った場合には、10μMのARCにおける脂質の蓄積量が大きく増加していたが、30μMでは減少していた。
これに対し、インスリン存在下では、いずれの化合物を添加した群でも、脂質蓄積量は増加していたが、特に、RSGの増加量が大きくなっていた。ARCの添加量が3μM及び10μMの場合よりも、1μM及び30μMのときの蓄積量が低くなっていた。
以上によって、ARCはRSGよりも弱い脂肪細胞分化促進作用を有することが示された。このことは、ARCを医薬組成物とした場合に、脂肪蓄積という副作用が小さいことを示している。
【実施例3】
【0062】
(実施例3) PPARγアゴニスト並存時の脂肪細胞の分化試験
PPARγアゴニストを並存させたときの脂肪細胞の分化試験を、以下の通りに行った。特に記載のない実験条件は、実施例2と同様である。
(1)細胞分化の促進
10μMのARC又は1μMのRSGと、10μMのGW9662とを使用して、インスリンの存在下及び非存在下に細胞の分化を誘導した。
ARCのみ、ARCとGW9662との並存時、RSGのみ、RSGとGW9662との並存時の分化誘導後の細胞を、オイルレッドO染色を行った。
また、下記表4及び図4には、GW9662の濃度を変化させたときの脂質蓄積量比、吸光度測定で求めた結果を示した。
【0063】
【表4】

インスリン(INS)添加の溶媒(C)添加群に対し*P<0.05
インスリン添加の10μMARC添加群に対し#P<0.05
インスリン添加の1μMのRSG添加群に対して$P<0.05
【0064】
ARCによる脂肪蓄積量は、GW9662の濃度にほぼ依存して低下し、GW9662の濃度がARCと同じ10μMに達したときに、完全に抑制された。このため、このときに作用が拮抗していると考えられた。
1μMのRSG存在下で培養すると、GW9662の濃度を10μMとした場合でも脂肪蓄積の増加は完全には抑制されなかった。
以上より、RSGと異なり、ARCはPPARγアンタゴニストによって、その脂肪細胞分化促進作用を容易に制御できること、ならびにARCに、PPARγアンタゴニストを添加した組成物の脂肪細胞分化促進作用はその添加割合によって容易に制御できることが示された。
【0065】
(2)細胞特異的遺伝子の発現促進
上記(1)と同様に、ARC及びGW9662の存在下で、インスリンにより分化誘導を行った。得られた脂肪細胞を用いて、RNA抽出及び定量リアルタイムPCR及び免疫ブロット試験を実施例1と同様に行った。
以下の配列を有するプライマーを使用した。
adiponectin primer1[配列番号5:5'-GTTGC AAGCT CTCCT GTTCC-3']
adiponectin primer2[配列番号6:5'-CTTGC CAGTG CTGTT GTCAT-3']
GLUT4 primer1[配列番号7:5'-CCCCG ATACC TCTAC ATCAT C-3']
GLUT4 primer2[配列番号8:5'-GCATC AGACA CATCA GCCCA G-3']
PPARγ2 primer1[配列番号9:5'-GCTGT TATGG GTGAA ACTCT G-3']
PPARγ2 primer2[配列番号10:5'-ATAAG GTGGA GATGC AGGTT C-3']
【0066】
一次抗体として、抗Glut4又は抗PPARγのポリクローナル抗体(cell signaling Technology Inc.社製)を使用した。結果を表5及び図5に示す。
脂肪細胞特異的遺伝子のmRNA発現は、10〜30μMのARC存在下で分化した脂肪細胞中で増加しており、そのレベルは1μMのRSG存在下の場合と同等であった。GW9662の影響下では、全体的にその発現レベルが低下するが、10〜30μMのARC存在下では、RSG存在下と同等のレベルで、その発現が増加していた。
【0067】
【表5】

【0068】
図6に示すように、脂肪細胞特異的遺伝子のタンパク質発現は、mRNAの場合と同様、10〜30μMのARC存在下で分化した脂肪細胞中で活性化した。GW9662の影響下でも同様であった。
以上の結果より、ARCをアゴニストと並存させると、脂肪細胞中の脂肪蓄積を過剰亢進させることなく、善玉サイトカインであるアディポネクチン遺伝子(adiponectin)や糖輸送体遺伝子(GLUT4)等の脂肪細胞特異的遺伝子の発現を促進することが示された。一方、RSGには、こうした効果は見られなかった。
このことは、ARCとアゴニストとを組み合わせると、肥満を過剰に亢進するという副作用がなく、インスリン抵抗性を改善することを示す。さらに、前記脂肪細胞特異的遺伝子の発現を促進しつつ、脂肪の蓄積の副作用をさらに抑制できることも示された。RSGにはこのような効果は見られなかった。
【実施例4】
【0069】
(実施例4) 脂肪細胞の糖取り込み試験
(1)分化後の脂肪細胞の糖取り込み
分化後の脂肪細胞の糖取り込みを、以下の通りのグルコース消費試験で検討した。
118 mM塩化ナトリウム、4.7mM塩化カリウム、2.5mM塩化カルシウム、1.2mM硫酸マグネシウム、25mMリン酸水素ナトリウム、1.2mMリン酸二水素カリウム、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mMグルコース、10mM Hepes及び2mMピルビン酸ナトリウムからなる、pH 7.4のKHH(Krebs Henseleit Hepes)緩衝液を調製した。
【0070】
96ウエルのプレート上で成育し、完全に分化した脂肪細胞3T3-L1を、後述する濃度のARCを含む培地で48時間培養した。48時間後に細胞を無血清のDMEMにて2回洗浄し、さらに3時間培養した。3時間後、100nMのインスリンを含むか又は含まないKHH緩衝液に後述の濃度のARCを溶解させてこれを加え、さらに1時間、培養を継続した。
緩衝液中のブドウ糖濃度は、グルコースオキシダーゼ(和光純薬工業(株)製)を用いたグルコースオキシダーゼ法で決定した。細胞を培養していない、培地のみが入ったウエルの全グルコース量から被験ウエルの培地中グルコース量を差し引いて、細胞内に取り込まれたグルコース量を求めた。
【0071】
(+)インスリンの溶媒(C)添加群を100としたときの、各群のブドウ糖消費量(mmol/L)の比を、下記の表6に示す。
3〜30μMのARC存在下で培養した分化後の脂肪細胞のグルコース取り込み量は、ARCの濃度に依存して上昇した。30μMのARCは、1μMのRSGと同等のグルコースの取り込み活性化作用を示した。
表6及び図7に示すように、インスリンの存在下では、30μMのARC存在下で、グルコース取り込み量が大きく上昇したが、1〜10μMではグルコースの取り込み量はそれほど大きな上昇は見られなかった。
【0072】
【表6】

(-)インスリン:インスリン非存在下の溶媒(C)に対し、#P<0.05
(+)インスリン:インスリンン存在下の溶媒(C)に対し、*P<0.05。
【0073】
上記実施結果より、ARCは、RSGとは異なってインスリン依存性の弱いことを示しており、インスリンを同時添加したときに生じる急激な血糖降下という副作用を回避できることが示された。
(2)分化後の脂肪細胞の糖輸送体遺伝子発現
上記と同様に、分化させた3T3-L1細胞を10〜30μMのARC又は1μMのRSG存在下で48時間培養し、同様に、細胞から全RNA又はタンパク質を抽出し、遺伝子発現産物の定量を行った。ここでは、以下の配列を有するプライマーを使用した。
【0074】
GLUT1 primer1[配列番号11:5'-GAGGA GCTCT TCCAC CCTCT-3']
GLUT1 primer2[配列番号12:5'-TCTGG AGCCA TCAAA GTCCT-3']
表7及び図8に示すように、糖輸送体遺伝子のmRNA発現は、10〜30μMのARC存在下で培養した脂肪細胞中で増加していた。また、図9に示すように、糖輸送体遺伝子のタンパク質発現も、mRNAと同様に増加していた。
【0075】
【表7】

GLUT1:溶媒(C)に対し#P<0.05
GLUT4:溶媒(C)に対し*P<0.05。
【0076】
上記実施結果より、ARCは分化後の脂肪細胞で糖輸送体遺伝子の発現を増加させることが確認され、糖の取り込みを促進することが示唆された。
【0077】
(3)蛍光付糖による取り込まれた糖の観察
分化後の脂肪細胞に、インスリン存在下で、グルコース誘導体2-(N-(7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol-4-yl)amino)-2-deoxyglucose (2-NBDG)(Invitrogen社製)を取り込ませ、被験物質の取り込み促進作用を観察した。
図10に示すように、10〜30μMのARC及び1μMのRSG存在下で、細胞内に取り込まれた2-NBDGのシグナルは増加していた。この結果より、ARCが糖の取り込みを促進することが示された。
(4)細胞膜に局在する糖輸送体タンパク質量の変化
分化後の脂肪細胞の細胞膜画分に局在する糖輸送体タンパク質量を、免疫ブロット試験により検出した。図11に示すように、30μMのARC又は1μMのRSG存在下では、GLUT4の局在量が増加していた。また、インスリン存在下でも同様であった。この実験結果から、ARCは、細胞膜に局在する糖輸送体を増加させることが示された。
【0078】
(5)インスリン応答性のリン酸化シグナルの変化
分化後の脂肪細胞中でインスリンに応答してリン酸化されるIRS-1及びAktのリン酸化状態を免疫ブロット試験にて検出した。一次抗体として抗IRS-1、抗phospho-IRS-1(Tyr612)、抗phosphor-Akt(Ser473/T308)及び抗Aktポリクローナル抗体(cell signaling Technology Inc.社製)を用いた。
図12に示すように、インスリン非存在下、又は存在下のいずれの場合でも、ARCはIRS-1及びAktのリン酸化状態に影響を与えなかった。このことは、ARCがインスリン経路に影響を与えることなく、糖の取り込みを向上させることが示された。このことはARCを含有する医薬製剤は、インスリン抵抗性の細胞に対しても効果的に作用することが可能であり、それによって血糖をコントロールできることを示している。そして、インスリンとの併用やインスリンの代用となる血糖降下剤として使用できることも示している。
【実施例5】
【0079】
(実施例5) ARCの抗TNF-α活性抑制作用の検討
(1)脂肪の蓄積
実施例2と同様に、ARC存在下で3T3-L1細胞の分化を誘導した。本実施例では、0〜30μMのアルテピリンに加えて、5ng/mLのTNF-αを添加した。
図13に示すように、TNF-αの影響により、脂肪の蓄積量は約50%低下するが、10〜30μMのARCを添加することで回復した。
【0080】
(2)アディポサイトカインの発現
TNF-α存在下で培養した分化済みの3T3-L1中のアディポサイトカイン遺伝子のmRNA発現量を上記同様に測定した。
表8、図14及び図15に示すように、10ng/mLのTNF-α存在下で10〜30μMのARCまたは10μMのRSGはMCP-1及びIL-6の発現量を抑制した。
【0081】
【表8】

溶媒(C)添加群に対し、#P<0.05。
10ng/mlのTNF-α添加群に対し、*P<0.05。
(3)グリセロールの放出
TNF-α存在下で培養した、分化済みの3T3-L1から分泌されるグリセロール量を測定した。結果を表9に、TNF-α及び被験物質無添加のグリセロール放出量を100としたときの、各被験物質存在下のグルセロール分泌量を比として示した。
図16に示すように、10μMのRSG、10μMのNAC(N-acetyl-cysteine)、10μMのDPI(diphenyleneiodorium)、1〜30μMのARC、及び40μMのPD(PD98059)の存在下では、いずれも有意に分泌グリセロール量が低下した。
【0082】
【表9】

TNF-α非存在下の溶媒(C)添加群に対し、#P<0.05、###P<0.001。
TNF-α存在下の溶媒(C)に対し、*P<0.05、***P<0.001。
【0083】
以上の結果より、ARCが、TNF-αに誘導される脂質分解と脂質分泌とを抑制することが示された。
【実施例6】
【0084】
(実施例6) 筋管細胞に対する糖取り込み作用
L6筋管細胞を、100μMのRSG、30μMのカフェイン酸フェネチルエステル(CAPE)又は3〜200μMのARCの存在下、24ウェルプレートを用いて37℃で24時間培養した。
その後、5mM又は25mMのブドウ糖を含む新鮮な培地と交換し、1時間培養した。培養上清中のブドウ糖消費量は、市販のキット、グルコースCII−テストワコー(和光純薬工業(株))を用いて、キットに添付されたプロトコールに従い、測定した。
低濃度培地(ブドウ糖濃度5mM)及び高濃度培地(25mM)のいずれを使用した場合でも、RSG、カフェイン酸フェネチルエステルを添加した場合、インスリン存在下と非存在下とでブドウ糖消費量には、ほとんど差はみられなかった。200μMのARCを添加すると、インスリン存在下でのブドウ糖消費量は、インスリン非存在下に比べて低下していた。
これに対し、3μM〜100μMのARCを添加した場合には、インスリン存在下でのブドウ糖消費量が、非存在下の場合の1.5倍以上に増加していた(表10、図17及び18)。
上記実施結果よりARCには筋細胞の糖の取り込みを促進する作用のあることが示された。
【0085】
【表10】

*1: 溶媒(C)を1としたときのブドウ糖消費量
*2: インスリン非存在下に、各薬剤を添加したときのブドウ糖消費量を1としたときのブドウ糖消費量
【実施例7】
【0086】
(1)材料と方法
生後7週目のC57BL/6マウス及び生後7週齢のC57BL/6J-ob/obマウス(以下、「ob/ob」と略すことがある。)は、日本チャールス・リバー(株)より購入した。
通常のマウス餌(標準食)としてオリエンタル酵母工業(株)CRF-1を購入した。予備飼育として標準食で1週間、馴化飼育を行った後、3週間実験を行った。各群のマウスは8匹/ケージで、恒温(23±5℃)、12/12時間の明暗サイクルを維持して、自由に摂食させながら飼育した。
【0087】
(2)II型糖尿病モデルマウスob/obにおけるARCの抗糖尿病効果の測定
精製したARCを、溶媒5%ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と略することがある。)と5%tween80とを含む水溶液に溶解し、予備飼育した7週齢の雄性ob/obマウスに、20mg/kg/日又は50mg/kg/日のARCを、3週間、腹腔内投与した。
本投与群を、図19及び以下の文中において、A20またはA50と称する。また、陰性対照群には、前記溶媒とした5%DMSOと5%tween80とを含む水溶液を上記同じ条件で投与した。図19及び以下の文中において、対照又は対照群と称する。
また、対照群、A20及び、それぞれマウスから採血し、市販のキット、グルコースCII−テストワコー(和光純薬工業(株))を用いて、キットに添付されたプロトコールに従い、測定した。測定結果を表11及び図19に示す。
【0088】
【表11】

データの表記は平均値±標準誤差(母集団のnは8)。Student t検定において、対照群に対して*はp<0.05である。
【0089】
(3)糖尿病モデルマウスにおいてARC摂取が健康状態に与える影響の測定
マウスの摂食量測定は上記の通りに行った。3週間の投与期間中の、各群の摂食量を測定したところ、A20、A50、及び対照の各群の間には体重変化量に有意な差は見られなかった。以上より、上記の濃度のARCを摂取しても、糖尿病モデルマウスの摂食量には影響のないことが示された。
【0090】
【表12】

【0091】
ARC投与群(A20及びA50)と対照群との間には、体重変化量に有意な差は見られず、上記の濃度のARCを摂取しても糖尿病モデルマウスの体重増加には影響のないことが示された。
【0092】
[配合例]
ARC及びGW9662とを1:1で混合した本発明の組成物を用いた食品の配合例を以下に示す。各配合例は、機能性食品、健康食品のいずれとすることもできる。
配合例1:チューインガム
【0093】
【表13】

配合例2:グミ
【0094】
【表14】

配合例3:キャンディー
【0095】
【表15】

配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト)
【0096】
【表16】

配合例5:ソフトカプセル
【0097】
【表17】

配合例6:コーヒー飲料
【0098】
【表18】

配合例7:コーヒー飲料(粉末)
【0099】
【表19】

配合例8:清涼飲料
【0100】
【表20】

配合例9:錠菓
【0101】
【表21】

【0102】
(製剤例)
次に、本発明の組成物を含有する製剤例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(製剤例1 錠剤)
【0103】
【表22】

【0104】
上記の成分をそれぞれ秤量し、均一に混合した後に圧縮打錠して重量300mgの錠剤を製造することができる。
(製剤例2 硬カプセル剤)
【0105】
【表23】

【0106】
上記の成分をそれぞれ秤量し、均一に混合した後、硬カプセルに300mgずつ充填することにより、硬カプセル剤を製造することができる。ここで、組成物1は、ARCとGW9662と乳糖とを1:1:1で混合したものである。なお、製剤例3〜6で使用する組成物1は上記と同じものである。
(製剤例3 軟カプセル剤)
【0107】
【表24】

【0108】
上記の成分をそれぞれ秤量し、均一に混合した後、軟カプセルに100mgずつ充填することにより、軟カプセル剤を製造することができる。
(製剤例4 顆粒剤)
【0109】
【表25】

【0110】
上記の成分をそれぞれ秤量し、均一に混合した後、常法に従って顆粒剤を製造することができる。
(製剤例5 シロップ剤)
【0111】
【表26】

【0112】
上記の成分をそれぞれ秤量し、糖及びサッカリンを注射用蒸留水60mLに溶解した後、グリセリン及びエタノールに溶解された組成物2及び調味料の溶液を加える。この混合物に精製水を加えて、最終容量を100mLにすることにより、経口投与用のシロップ剤を製造することができる。
(製剤例6 顆粒剤)
【0113】
【表27】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、糖代謝疾患の医薬製剤、機能性食品、健康食品等の製造及び開発の分野で有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0115】
aP2 primer1
aP2 primer2
beta-actin primer1
beta-actin primer2
adiponectin primer1
adiponectin primer2
GLUT4 primer1
GLUT4 primer2
PPAR-gamma2 primer1
PPAR-gamma2 primer2
GLUT1 primer1
GLUT1 primer2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるPPARγのアゴニスト、その生理学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有するものを有効成分として含有する、細胞内代謝促進用組成物。
【化1】

【請求項2】
前記細胞内代謝は、細胞における糖代謝である、ことを特徴とする請求項1に記載の細胞内代謝促進用組成物。
【請求項3】
前記糖代謝が、脂肪細胞又は筋管細胞への糖の取り込みの促進であることを特徴とする、請求項2に記載の細胞内代謝促進用組成物。
【請求項4】
前記細胞内代謝は、細胞における脂質代謝である、ことを特徴とする請求項1に記載の細胞内代謝促進用組成物。
【請求項5】
前記脂質代謝が、脂肪細胞の分化の促進であることを特徴とする、請求項4に記載の細胞内代謝促進用組成物。
【請求項6】
PPARγのアンタゴニスト、その生理学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有するものをさらに含む、ことを特徴とする、請求項5に記載の細胞内代謝促進用組成物。
【請求項7】
前記アンタゴニストは、下記式(II)で表される化合物並びにこれらの生理学的に許容される塩及び水和物からなる群から選ばれるものである請求項6に記載の細胞内代謝促進用組成物。
【化2】

【請求項8】
前記アゴニストと前記アンタゴニストの組成比は1:10〜100:1である請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記アゴニストと前記アンタゴニストの組成比は1:1〜10:1である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を有効成分とし、所定の用量で投与されることを特徴とする糖代謝疾患の予防及び/又は治療用医薬製剤。
【請求項11】
請求項1及び4〜9のいずれかに記載の組成物を有効成分とし、所定の用量で投与されることを特徴とする脂質代謝疾患の予防及び/又は治療用医薬製剤。
【請求項12】
下記式(I)で表わされるリガンド、その生理学的に許容される塩及びそれらの水和物からなる群から選ばれるものを少なくとも1種以上含有する、TNF-α活性抑制剤。
【化3】

【請求項13】
請求項12に記載のTNF-α活性の抑制剤を有効成分とし、所定の用量で投与されることを特徴とする、糖代謝活性促進用医薬製剤。
【請求項14】
少なくとも、下記式(I)で表わされるPPARγのアゴニストと、前記PPARγに対するアンタゴニストとを含有する、機能性食品。
【化4】

【請求項15】
前記アンタゴニストは、下記式(II)で表される化合物並びにこれらの生理学的に許容される塩及び水和物からなる群から選ばれるものである請求項14に記載の機能性食品。
【化5】

【請求項16】
少なくとも、下記式(I)で表わされるPPARγのアゴニストと、前記PPARγに対するアンタゴニストとを含有する、健康食品。
【化6】

【請求項17】
前記アンタゴニストは、下記式(II)で表される化合物並びにこれらの生理学的に許容される塩及び水和物からなる群から選ばれるものである請求項15に記載の健康食品。
【化7】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−72136(P2012−72136A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192974(P2011−192974)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年3月29日 開催の「日本農芸化学会2010年度(平成22年度)大会」において文書をもって発表
【出願人】(399056255)株式会社エリナ (2)
【Fターム(参考)】