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細胞分離装置および細胞分離方法
説明

細胞分離装置および細胞分離方法

【課題】消化酵素液から脂分を十分に除去することで、脂肪由来細胞を高い収率で回収する。
【解決手段】脂肪組織からなる脂肪層と消化酵素液からなる水層とを静置状態で収容して脂肪層から水層に脂肪由来細胞を分離させる消化容器11と、消化酵素液を消化容器11に供給する酵素液供給部14と、脂肪組織の残渣からなる残渣層を消化容器11内から残渣回収容器15に回収する残渣層除去部15と、消化容器11から搬送されてきた水層から脂肪由来細胞を回収する細胞回収部20と、酵素液供給部14により消化容器11内に消化酵素液を供給させる酵素液供給処理と、脂肪層と水層を所定時間静置させる静置処理と、該静置処理後に水層を細胞回収部20に搬送する水層搬送処理と、該水層搬送処理後に残渣層除去部15によって残渣層を消化容器11内から除去させる残渣除去処理とを複数回繰り返させる制御部40とを備える細胞分離装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分離装置および細胞分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体内から採取した脂肪組織を消化酵素液によって分解することにより、脂肪組織に含まれていた幹細胞などの治療に有効な細胞を脂肪組織から分離させて抽出する装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−289076号公報
【特許文献2】国際公開第2005/012480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2では、脂肪組織を消化酵素液で処理することにより脂肪組織を分解している。したがって、消化酵素液には脂肪由来細胞の他に脂肪組織に含まれていた脂分が微粒子となって混入し、消化酵素液と脂分とのエマルションが生成される。このエマルションが細胞回収用や脂肪組織除去用のフィルタに通過させられたときに、フィルタに脂分が付着してフィルタが目詰まりを起こし、脂肪由来細胞の回収率が低下してしまうという問題がある。さらに、脂分によって脂肪由来細胞がフィルタや流路など装置内部に吸着されることによっても脂肪由来細胞の回収率が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、消化酵素液から脂分を十分に除去することで、脂肪由来細胞を高い収率で回収することができる細胞回収装置および細胞分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、脂肪組織からなる脂肪層と消化酵素液からなる水層とを静置させたまま収容して前記脂肪層から前記水層に脂肪由来細胞を分離させる消化容器と、前記消化酵素液を前記消化容器に供給する酵素液供給部と、前記消化酵素液によって分解された前記脂肪組織の残渣からなり前記脂肪層と前記水層との間に形成された残渣層を前記消化容器内から残渣回収容器に回収する残渣層除去部と、前記消化容器から搬送されてきた前記水層から前記脂肪由来細胞を回収する細胞回収部と、前記酵素液供給部により前記消化容器内に前記消化酵素液を供給させる酵素液供給処理と、前記脂肪層と前記水層とを所定時間静置させる静置処理と、該静置処理の後に前記水層を前記細胞回収部に搬送する水層搬送処理と、該水層搬送処理の後に前記残渣層除去部によって前記残渣層を前記消化容器内から除去させる残渣除去処理とを複数回繰り返させる制御部とを備える細胞分離装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、消化容器内において脂肪層から水層へ脂肪由来細胞が分離させられた後、水層中の脂肪由来細胞が細胞回収部によって回収される。このときに、制御部が、水層を消化容器から排出させた後に、残渣除去部によって残渣層を残渣回収容器内に除去させてから新しい消化酵素液を酵素液供給部によって消化容器内に供給させることにより、脂肪層が底部側から順番に水層と直接接触させられることとなり、脂肪層全体から脂肪由来細胞を分離して回収することができる。
【0008】
この場合に、消化容器内において脂肪層と水層とが撹拌されないので、水層に脂肪組織由来の脂分が微粒子となって混入することが防止される。これにより、脂分が十分に除去された消化酵素液を得ることができ、水層から残渣を除去するフィルタが備えられていても、該フィルタに脂分が付着することによるフィルタの目詰まりや脂肪由来細胞のフィルタや流路への吸着が防止され、脂肪由来細胞を高い収率で回収することができる。
【0009】
上記発明においては、前記消化容器内を保温するヒータを備えることとしてもよい。
このようにすることで、消化酵素液による脂肪組織の分解を促進することができる。
また、上記発明においては、前記細胞回収部が、前記水層に含まれる前記脂肪由来細胞を捕捉する細胞捕捉フィルタを備えることとしてもよい。
このようにすることで、水層を細胞捕捉フィルタに通過させるだけで脂肪由来細胞を水層から回収することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記細胞回収部が、前記水層に含まれる前記脂肪由来細胞を電気泳動特性によって分離する細胞分離手段を備えることとしてもよい。この細胞分離手段は、水層に配置される一対の電極と、該電極間に電圧を印加する電界制御部とを備える。
このようにすることで、脂肪由来細胞を水層から回収する際に脂肪由来細胞に与えるダメージを低減することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記細胞回収部が、前記水層に含まれる前記脂肪由来細胞を細胞表面特性によって分離する細胞分離手段を備えることとしてもよい。この細胞分離手段は、脂肪由来細胞の表面に特異的に発現している蛋白質などのマーカに特異的に結合し蛍光物質によって標識された抗体を検出するフローサイトメータ、または、水層が搬送される流路の途中位置や流路の内壁に設けられ脂肪由来細胞の表面と互いに吸着する吸着部を備える。
このようにすることで、脂肪由来細胞を水層から高精度に分離して回収することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記細胞回収部が、前記水層に含まれる前記脂肪由来細胞を光学特性によって分離する細胞分離手段を備えることとしてもよい。この細胞分離手段は、水層に対して検出光を照射する光源と、検出光の散乱光を検出する散乱光検出部とを備える。
このようにすることで、脂肪由来細胞を蛍光標識することなしに低侵襲に水層から回収することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記水層と前記残渣層との界面の位置を検出する界面センサを備え、前記制御部は、前記界面センサによって前記界面の位置が前記消化容器の底面近傍において検出されたときに、前記水層搬送処理から前記残渣除去処理に移行することとしてもよい。
このようにすることで、消化容器内から水層のみを選択的に排出することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記残渣回収容器に接続する前記消化容器の排出口に設けられ、前記脂肪残渣の通過を許容し前記脂肪組織の通過を禁止するフィルタを備えることとしてもよい。
このようにすることで、未消化の脂肪組織が残渣回収容器に排出されることを防ぎ、消化容器内に脂肪組織のみを残すことができ、未消化の脂肪組織を消化することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記細胞回収部によって回収された前記脂肪由来細胞を洗浄する洗浄手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、最終的に回収される脂肪由来細胞の純度をさらに向上することができる。
【0016】
また、本発明は、脂肪組織を収容する消化容器内に消化酵素液を供給する酵素液供給ステップと、前記脂肪組織からなる脂肪層と前記消化酵素液からなる水層とを静置することにより、前記脂肪層から前記水層に脂肪由来細胞を分離させる静置ステップと、該静置ステップの後に前記水層を回収する水層回収ステップと、前記静置ステップにおいて前記消化酵素液によって分解された前記脂肪組織の残渣からなり前記脂肪層と前記水層との間に形成された残渣層を前記水層回収ステップの後に前記消化容器内から除去する残渣除去ステップとを備え、前記酵素液供給ステップ、前記静置ステップ、前記水層回収ステップおよび前記残渣除去ステップを複数回繰り返す細胞分離方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、脂分による脂肪由来細胞の損失を低減し、脂肪由来細胞を高い収率で回収することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る細胞分離装置の全体構成図である。
【図2】図1の細胞分離装置による細胞分離方法を説明する図であり、(a)酵素液供給処理、(b)静置処理時、(c)水層搬送処理および(d)残渣除去処理における消化容器内を示す概略図である。
【図3】図1の細胞分離装置の変形例を示す図である。
【図4】図3の細胞分離装置による静置処理における消化容器内を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係る細胞分離装置1および細胞分離方法について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る細胞分離装置1は、図1に示されるように、脂肪組織を消化して脂肪由来細胞の細胞懸濁液を生成する分解処理部10と、該分解処理部10において生成された細胞懸濁液から脂肪由来細胞を回収する細胞回収部20と、分解処理部10および細胞回収部20に備えられる各容器11,13〜15,23〜25と排液容器17,26との間で液体を搬送する搬送経路30と、分解処理部10、細胞回収部20および搬送経路30の動作を制御する制御部40とを備えている。
【0020】
分解処理部10は、消化容器11と、該消化容器11内を保温するヒータ12と、洗浄液容器13と、酵素液容器(酵素液供給部)14と、残渣回収容器(残渣除去部)15とを備えている。
消化容器11は、生体内から吸引などの方法によって採取された脂肪組織を収容している。消化容器11は、残渣回収容器15(後述)に接続する排出口と、搬送経路30に接続される排出口とを底面に有している。残渣回収容器に接続する排出口には、残渣の通過を許容し脂肪組織の通過を禁止する残渣除去フィルタ(図示略)が設けられている。搬送経路30に接続された排出口から排出された排液は、消化容器11の下方に配置された排液容器17に搬送される。
【0021】
また、消化容器11には、該消化容器11内の水層A(後述)と脂肪層B(後述)と残渣層C(後述)との界面の位置を検出する界面センサ16が設けられている。界面センサ16は、光学式、超音波式、レーザ式、磁気式などが用いられる。また、消化容器11は、図示しない撹拌装置によって洗浄時に収容物が撹拌可能になっている。
【0022】
ヒータ12は、消化容器11内を、消化酵素液に含まれる消化酵素が活性化される温度、例えば、約37℃に保温する。
洗浄液容器13は、脂肪組織を洗浄する洗浄液として、生理食塩水やリン酸緩衝液などを収容している。
酵素液容器14は、脂肪組織を消化する消化酵素液を収容している。
【0023】
消化容器11が、脂肪組織と消化酵素液容器14から供給された消化酵素液とを収容した状態で静置されることにより、消化酵素液からなる水層Aと、消化酵素液の液面に浮いた脂肪組織からなる脂肪層Bとが形成される。この状態で消化容器11内をヒータ12で保温することにより、脂肪層Bが、水層Aと接している底面側から順番に分解され、脂肪組織に含まれていた脂肪由来細胞が水層A内に分離される。また、脂肪組織から分離された脂肪細胞やコラーゲン等の繊維組織からなる残渣によって、水層Aと脂肪層Bとの間に残渣層Cが形成される。
【0024】
細胞回収部20は、脂肪組織片除去フィルタ21と、細胞捕捉フィルタ22と、洗浄液容器(洗浄手段)23と、回収液容器24と、細胞回収容器25とを備え、これらは分解処理部10の下方に配置されている。
脂肪組織片除去フィルタ21は、消化容器11と細胞捕捉フィルタ22との間に設けられ、脂肪由来細胞を通過させて該脂肪由来細胞よりも大きい脂肪組織片の通過を禁止するフィルタであり、好ましくは120μm以上の孔径を有する。脂肪組織片除去フィルタ21によって比較的大きな脂肪組織片は捕捉されて細胞捕捉フィルタ22に搬送されることが防止される。
【0025】
細胞捕捉フィルタ22は、脂肪組織片除去フィルタ21の下方に設けられている。細胞捕捉フィルタ22は、脂肪由来細胞の通過を禁止し、脂肪由来細胞よりも小さい寸法の不純物を通過させる。例えば、細胞捕捉フィルタ22の濾材としては、繊維径20〜100μmの繊維からなる織布または不織布、もしくは、孔径20〜100μmの細孔を有する多孔質材料または膜が好適に用いられる。
【0026】
細胞捕捉フィルタ22の濾材の材料としては、成形性、滅菌性、低細胞毒性の点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等の合成高分子、アガロース、セルロース、酢酸セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸塩等の天然高分子、ヒドロキシアパタイト、ガラス、アルミナ、チタニア等の無機材料、または、ステンレス、チタン、アルミニム等の金属が好適である。
【0027】
洗浄液容器23は、分解処理部10に備えられる洗浄液容器13と同様の洗浄液を収容している。
回収液容器24は、回収液として、生理食塩水やリン酸緩衝液、培地などを収容している。
【0028】
洗浄液容器23および細胞回収容器25は細胞捕捉フィルタ22の上方に配置され、回収液容器24は細胞捕捉フィルタ22の下方に配置されている。これにより、洗浄液容器23からの洗浄液は細胞捕捉フィルタ22を上方から下方へ通過させられて排液容器26へ搬送されるようになっている。一方、回収液容器24からの回収液は細胞捕捉フィルタ22を下方から上方へ通過させられて、細胞回収容器25へ搬送されるようになっている。
【0029】
搬送経路30は、各容器11,13〜15,17,23〜26を接続するチューブ31と、該チューブ31の分岐地点または合流地点に設けられ液体の流路を切り替えるバルブV1〜V4と、各容器11,13〜15,17,23〜26の間で液体を搬送するポンプP1〜P3とを備えている。チューブ31は、少なくとも、消化容器11と細胞捕捉フィルタ22とを接続する部分においては、疎水性の内面を有するものが使用される。
【0030】
制御部40は、処理の手順に従って分解処理部10、細胞回収部20および搬送経路30の動作を制御するプログラムが記憶されている。
具体的には、制御部40は、バルブV1,V2によって洗浄液容器13から消化容器11への流路に切り替え、ポンプP1によって洗浄液を消化容器11内へ供給する。次に、制御部40は、撹拌装置を作動させることにより、消化容器11内で脂肪組織と洗浄液とを撹拌して脂肪組織を洗浄する。
【0031】
次に、制御部40は、消化容器11を静置させることにより水層Aと脂肪層Bとに層分離させてから、バルブV1によって消化容器11から排液容器17への流路に切り替え、消化容器11内の水層Aを排液容器17へ排出する。このときに、制御部40は、界面センサ16によって水層Aと脂肪層Bとの界面を検出させ、該界面の位置が消化容器11の底面近傍まで低下したときに排出を停止させることにより、水層Aのみを排出する。
【0032】
次に、制御部40は、バルブV1,V2によって酵素液容器14から消化容器11への流路に切り替え、ポンプP2の作動によって消化酵素液を消化容器11へ供給させる(酵素液供給処理、酵素液供給ステップ、図2(a)参照。)。次に、制御部40は、消化容器11を静置させたままヒータ12を作動させることにより、消化容器11内を保温して脂肪層Bを消化させる(静置処理、静置ステップ、図2(b)参照。)。
【0033】
次に、制御部40は、バルブV1,V3によって消化容器11から排液容器26への流路に切り替え、界面センサ16で水層Aと残渣層Cとの界面を検出しながらポンプ1,3の作動により消化容器11内の水層Aを排液容器26へ排出する(水層搬送処理、水層回収ステップ、図2(c)参照。)。このときに、水層A内に含まれる脂肪組織片が脂肪組織片除去フィルタ21において除去され、さらに、脂肪組織片除去フィルタ21を通過した微小な脂分がチューブ31の内面に吸着することにより除去される。これにより、細胞捕捉フィルタ22には十分に高純度の脂肪由来細胞が捕捉される。制御部40は、水層Aと残渣層Cとの界面が消化容器11の底面近傍まで低下したときに、排出を停止させる。
【0034】
次に、制御部40は、消化容器11内に残存している残渣層Cを、ポンプP1の作動によって残渣回収容器15に回収する(残渣除去処理、残渣除去ステップ、図2(d)参照。)。このときも、制御部40は、界面センサ16に脂肪層Bと残渣層Cとの界面を検出させることにより、残渣層Cのみを残渣回収容器15に排出する。
制御部40は、以上で説明した酵素液供給処理から残渣除去処理までを、消化容器11内の脂肪層Bが十分に減るまで、例えば、図示しない重量計によって測定される消化容器の重量が所定値を下回るまで繰り返す。
【0035】
次に、制御部40は、バルブV3,V4によって洗浄液容器23から排液容器26への流路に切り替え、ポンプP3を作動させることにより、細胞捕捉フィルタ22に洗浄液を通過させる。これにより、細胞捕捉フィルタ22に捕捉されている脂肪由来細胞が洗浄される。
【0036】
次に、制御部40は、バルブV3,V4によって回収液容器24から細胞回収容器25への流路に切り替え、ポンプP3を逆方向に作動させることにより、回収液を細胞捕捉フィルタ22に通過させる。このときに、細胞捕捉フィルタ22に補足されていた脂肪由来細胞は回収液とともに細胞回収容器25に搬送され該細胞回収容器25内に収容される。
【0037】
以上の処理により、脂肪由来細胞を最終生成物として高い収率で細胞回収容器25内に得ることができる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、脂肪組織と消化酵素液とが撹拌されることなく、脂肪組織が消化酵素液によって分解される。したがって、脂肪由来細胞を含む細胞懸濁液である水層Aに脂肪組織由来の脂分が微粒子となって分散することが防止される。これにより、各フィルタ21,22に脂分が付着することによりこれらのフィル21,22が目詰まりしたり脂分によって脂肪由来細胞がフィルタ21,22に吸着されたりすることが防止され、脂肪由来細胞を高い収率で回収することができる。
【0039】
また、このようにして脂肪組織と消化酵素液とを撹拌しない構成であっても、脂肪組織の分解によって生成される残渣層Cを繰り返し排出して脂肪層Bが水層Aに直接接触するようにすることで、脂肪組織の分解を十分に効率良く行うことができる。また、各容器を上下方向に配置することにより、水平方向の設置面積を縮小することができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、制御部40が消化酵素液の供給、水層Aの排出および残渣層Cの排出を繰り返すことにより脂肪組織の分解を促進することとしたが、これに代えて、図3に示されるように、収容された脂肪組織が形成する水平方向の面積よりも大きな水平方向の面積を有する消化容器11を使用することとしてもよい。
【0041】
例えば、脂肪組織を生体内から吸引する際、吸引を容易にするために、脂肪組織を約0.1cmの粒径の塊にほぐした状態で吸引する。このような場合には、消化容器11の底面積をS、脂肪組織の体積をVとしたときに、S≧10×Vを満たす消化容器11を使用する。
【0042】
このように構成された細胞分離装置1の作用は以下の通りである。
1回目の水層搬送処理までは上述した実施形態と同様である。ここで、静置処理においては、図4に示されるように、脂肪層Bが水層Aの液面に最小の厚みで広がった状態となる。これにより、脂肪組織全体が消化酵素液によって十分に消化されるので、水層搬送処理において搬送される水層Aには十分な量の脂肪由来細胞が含まれることとなり、水層搬送処理が一度で済む。この後は、上述した実施形態と同様に、細胞捕捉フィルタ22に補足された脂肪由来細胞は洗浄された後に細胞回収容器25に回収される。
【0043】
このような構成によっても、撹拌しなくても静置と保温のみで十分に効率良く脂肪組織を分解することができる。また、脂分の水層Aへの混入の防止し、脂肪由来細胞を高い収率で回収することができる。また、このように消化容器11の水平方向の面積を確保する必要がある構成であっても、上下方向に各容器11,13,14,17,23〜26を配置することにより、細胞分離装置1全体の水平方向の設置面積の増大を抑えることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 細胞分離装置
10 分解処理部
11 消化容器
12 ヒータ
13 洗浄液容器
14 酵素液容器(酵素液供給部)
15 残渣回収容器(残渣除去部)
16 界面センサ
17 排液容器
20 細胞回収部
21 脂肪組織片除去フィルタ
22 細胞捕捉フィルタ
23 洗浄液容器(洗浄手段)
24 回収液容器
25 細胞回収容器
26 排液容器
30 搬送経路
31 チューブ
40 制御部
P1〜P3 ポンプ
V1〜V4 バルブ
A 水層
B 脂肪層
C 残渣層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組織からなる脂肪層と消化酵素液からなる水層とを静置させたまま収容して前記脂肪層から前記水層に脂肪由来細胞を分離させる消化容器と、
前記消化酵素液を前記消化容器に供給する酵素液供給部と、
前記消化酵素液によって分解された前記脂肪組織の残渣からなり前記脂肪層と前記水層との間に形成された残渣層を前記消化容器内から残渣回収容器に回収する残渣層除去部と、
前記消化容器から搬送されてきた前記水層から前記脂肪由来細胞を回収する細胞回収部と、
前記酵素液供給部により前記消化容器内に前記消化酵素液を供給させる酵素液供給処理と、前記脂肪層と前記水層とを所定時間静置させる静置処理と、該静置処理の後に前記水層を前記細胞回収部に搬送する水層搬送処理と、該水層搬送処理の後に前記残渣層除去部によって前記残渣層を前記消化容器内から除去させる残渣除去処理とを複数回繰り返させる制御部とを備える細胞分離装置。
【請求項2】
前記消化容器内を保温するヒータを備える請求項1に記載の細胞分離装置。
【請求項3】
前記細胞回収部が、前記水層に含まれる前記脂肪由来細胞を捕捉する細胞捕捉フィルタを備える請求項1または請求項2に記載の細胞分離装置。
【請求項4】
前記細胞回収部が、前記水層に含まれる前記脂肪由来細胞を電気泳動特性によって分離する細胞分離手段を備える請求項1または請求項2に記載の細胞分離装置。
【請求項5】
前記細胞回収部が、前記水層に含まれる前記脂肪由来細胞を細胞表面特性によって分離する細胞分離手段を備える請求項1または請求項2に記載の細胞分離装置。
【請求項6】
前記細胞回収部が、前記水層に含まれる前記脂肪由来細胞を光学特性によって分離する細胞分離手段を備える請求項1または請求項2に記載の細胞分離装置。
【請求項7】
前記水層と前記残渣層との界面の位置を検出する界面センサを備え、
前記制御部は、前記界面センサによって前記界面の位置が前記消化容器の底面近傍において検出されたときに、前記水層搬送処理から前記残渣除去処理に移行する請求項1から請求項6のいずれかに記載の細胞分離装置。
【請求項8】
前記残渣と前記脂肪層との界面の位置を検出する界面センサを備え、
前記制御部は、前記界面センサによって前記界面の位置が前記消化容器の底面近傍において検出されたときに、前記残渣除去処理から再度前記酵素液供給処理に移行する請求項1から請求項7のいずれかに記載の細胞分離装置。
【請求項9】
前記残渣回収容器に接続する前記消化容器の排出口に設けられ、前記脂肪残渣の通過を許容し前記脂肪組織の通過を禁止するフィルタを備える請求項1から請求項8のいずれかに記載の細胞分離装置。
【請求項10】
前記細胞回収部によって回収された前記脂肪由来細胞を洗浄する洗浄手段を備える請求項1から請求項9のいずれかに記載の細胞分離装置。
【請求項11】
脂肪組織を収容する消化容器内に消化酵素液を供給する酵素液供給ステップと、
前記脂肪組織からなる脂肪層と前記消化酵素液からなる水層とを静置することにより、前記脂肪層から前記水層に脂肪由来細胞を分離させる静置ステップと、
該静置ステップの後に前記水層を回収する水層回収ステップと、
前記静置ステップにおいて前記消化酵素液によって分解された前記脂肪組織の残渣からなり前記脂肪層と前記水層との間に形成された残渣層を前記水層回収ステップの後に前記消化容器内から除去する残渣除去ステップとを備え、
前記酵素液供給ステップ、前記静置ステップ、前記水層回収ステップおよび前記残渣除去ステップを複数回繰り返す細胞分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−239458(P2012−239458A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115825(P2011−115825)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】