説明

細胞分離装置

【課題】メッシュを用いた細胞分離装置であって、従来よりも使い易く、かつ、耐久性に優れた細胞分離装置に関する技術を提供する。
【解決手段】細胞集合体を破砕して該細胞集合体から回収細胞を分離するメッシュ状の分離部であって、該細胞集合体を破砕するのに十分な強度を有する分離部と、前記細胞集合体を破砕して該細胞集合体から回収細胞を分離する際の前記分離部の変形を抑制する、該分離部の外縁部を保持する保持部と、前記保持部と接続され、使用者に把持される把持部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野で行われる研究・開発では、臓器から細胞を調製することが日々行われている。臓器から細胞を調製する際に行われる、臓器の破砕や臓器からの白血球の単離には、従来、いわゆる茶漉しを代用したり、また、ステンレス製メッシュを適当な大きさに切断したものを用いたり、あるいはナイロン製のメッシュを用いていた。なお、細胞集団から特定の細胞を分離する技術としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。
【特許文献1】特開2001−178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
臓器の破砕や臓器からの白血球などの細胞の単離には、従来、いわゆる茶漉し、ステンレス製メッシュ、或いはナイロン製のメッシュが用いられていた。いわゆる茶漉しは、代用品であり、もともと臓器を破砕するためのものではないことから、完全かつ高生存率を保った白血球を分離するには不適である。また、茶漉しは、オートクレーブ処理に耐える構造になっていないことから、腐食のため、長期間繰り返し使用するには不適である。ステンレス製メッシュは、使い捨てであり、その都度メッシュを切断し、受け皿に取り付ける必要があることから、簡易な方法であるとはいい難く、肝臓のような大きな臓器を破砕するためには不適である。また、ナイロン製のメッシュは、一般に広く用いられているが、再使用ができず、また、耐久性に欠け、肝臓のような大きな臓器は破砕できない。従って、耐久性にも優れた、例えば肝臓のような比較的大きな臓器も破砕可能な細胞破砕装置の開発が望まれている。一方、近年、“地球に優しいもの”への関心が高まり、医療分野においても、医療廃棄物となるディスポーザブル製品は徐々に再利用可能なものに取って代わろうとしており、環境性にも優れた細胞分離装置が必要とされている。
【0004】
本発明では、上記した背景に鑑み、メッシュを用いた細胞分離装置であって、従来よりも使い易く、かつ、耐久性に優れた細胞分離装置に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、上述した課題を解決するため、以下の手段を採用した。すなわち、本発明に係る細胞分離装置は細胞集合体を破砕して該細胞集合体から回収細胞を分離するメッシュ状の分離部であって、該細胞集合体を破砕するのに十分な強度を有する分離部と、前記細胞集合体を破砕して該細胞集合体から回収細胞を分離する際の前記分離部の変形を抑制する、該分離部の外縁部と接続され、該分離部を保持する保持部と、前記保持部と接続され、使用者に把持される把持部と、を備える。
【0006】
本発明によれば、分離部が細胞集合体を破砕するのに十分な強度を有し、また、このような分離部が保持部によって保持されていることから、耐久性に優れた細胞分離装置を提供することが可能である。また、本発明に係る細胞分離装置は、保持部に把持部が接続されており、使い勝手にも優れている。
【0007】
分離部は、細胞集合体を破砕して回収細胞を分離する。細胞集合体は、研究・開発の目的に応じて適宜選択される、ヒト、マウス、ラット等の各種臓器が例示される。回収細胞は、臓器などの細胞集合体から分離される細胞であり、白血球、肝細胞等が例示される。
回収細胞も、研究・開発の目的に応じて適宜選択され、メッシュの大きさを研究・開発の目的に応じて適宜変えることで、所望の回収細胞を分離することができる。また、本発明に係る分離部は、細胞集合体を破砕するのに十分な強度を有しており、従来、代用品として用いられていたいわゆる茶漉し等では破砕できない臓器等の破砕も可能である。分離部の材質は特に限定されるものではないが、例えば金属製とすることで、細胞集合体を破砕するのに必要とされる強度を確保することができる。
【0008】
ここで、細胞集合体を破砕する際には、該細胞集合体がメッシュを有する分離部の表面と略直交する方向に押し付けられる。つまり、細胞集合体を破砕する際、メッシュには、所定の力が加えられる。そして、細胞集合体が押し付けられた際に分離部が変形してしまうと、細胞集合体を効果的に破砕することができない虞がある。そこで、本発明に係る細胞分離装置では、保持部によって、分離部の外縁部を保持することとした。これにより、細胞集合体を破砕して該細胞集合体から回収細胞を分離す際に起こりうる分離部の変形が抑制される。すなわち、分離部の外縁部が保持部と接続されることで、分離部に細胞集合体が押し付けられた際、分離部には引張力が作用し、撓みが低減される。その結果、細胞集合体の分離をより確実に行うことが可能となる。なお、従来技術では、ステンレス製メッシュをその都度切断し、受け皿に取り付ける必要があり、煩わしい作業が必要とされ、また、受け皿への取り付け状態が不十分であると、破砕を確実に行えないといったことも懸念されていた。一方、本発明に係る細胞分離装置によれば、このような問題も解消することができる。
【0009】
把持部は、保持部に接続され、使用者(細胞分離装置を使用する者)に把持される。把持部の形状は、特に限定されないが、使用者が安定的に把持できる長さを有することが好ましく、安定的に把持可能な長さとすることで操作性をより向上させることができる。また、把持部にある程度の幅や厚みを持たせることで、より把持しやすい把持部とすることができる。なお、従来のその都度切断するステンレス製のメッシュやナイロン製のメッシュには把持部が設けられていないため、直接分離部を把持しなければならず、操作性が悪い。また、このような従来態様では空気中に存在する微生物が混入してしまうことも懸念される。これに対し、本発明に係る細胞分離装置は、ある程度の長さを有する把持部を備えることで、分離部と使用者が把持する部分までの距離を確保することができる。その結果、細胞集合体の破砕を、回収細胞に空気中の微生物等が混入しないように分離部の周囲を外部から隔離した状態で行うことが可能となる。つまり、集合細胞体を無菌的に取り扱うことが可能となる。従って、本発明に係る把持部は、その長さを空気中に存在する微生物の混入を抑制可能な長さに設計してもよい。
【0010】
ここで、上述した細胞分離装置において、前記細胞集合体を破砕して該細胞集合体から回収細胞を分離する際の該回収細胞の損傷を抑制するように、メッシュを構成する複数の線部材の夫々が面取り構造を有することが好ましい。これにより、本発明に係る細胞分離装置によれば、回収細胞を分離する際の回収細胞の損傷を防止することが可能となる。その結果、例えば、回収細胞として白血球を調製する場合では、非常に生存率の高い白血球を調製することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明に係る細胞分離装置において、前記分離部は、外縁部が折り曲げられ、前記保持部は、前記把持部が接続される第一リング部材と、該第一リング部材の内径より僅かに小さい外径の第二リング部材と、を有し、第一リング部材の内側面と第二リング部材の外側面との間に前記折り曲げられた外縁部を挟持することで、前記分離部を保持するようにしてもよい。このような構成とすることで、分離部を安定的に保持することが可能となる。
【0012】
なお、上述した本発明に係る細胞分離装置の各構成、すなわち、前記分離部、前記保持
部、及び前記把持部は、オートクレーブ処理に耐え得る金属製部材によって構成することが好ましい。また、前記分離部、前記保持部、及び前記把持部は、ステンレス製とすることがより好ましい。金属製とすることで、従来のナイロン製のメッシュに比べて耐久性を向上させることができる。また、オートクレーブ処理により、再利用が可能となり、環境性にも優れた細胞分離装置を提供することができる。また、本発明に係る細胞分離装置は、種々の消毒薬に対して殆ど腐食することも無く、火炎滅菌を施すことも可能となる。更に、本発明に係る細胞分離装置によれば、十分な強度と耐久性を有することから、脾臓などの比較的小さい臓器のみならず、肝臓のように比較的大きい臓器も短時間で破砕することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メッシュを用いた細胞分離装置であって、従来よりも使い易く、かつ、耐久性に優れた細胞分離装置に関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る細胞分離装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
<構成>
図1は、実施形態に係る細胞分離装置の平面図を示し、図2は、実施形態に係る細胞分離装置の側面図を示す。また、図3は、実施形態に係る細胞分離装置の分解斜視図を示す。これらの図に示すように、実施形態に係る細胞分離装置100は、メッシュ1、第一リング2、第二リング3、把持部4によって構成されている。以下、各構成について説明する。
【0016】
メッシュ1は、本発明の分離部に相当し、ヒト、マウス、ラット等の各種臓器といった細胞集合体を破砕して回収細胞(例えば、白血球)を分離する。細胞集合体及び回収細胞は、研究・開発の目的に応じて適宜選択されることから、メッシュの大きさやメッシュの種類も研究・開発の目的に基づいて調製すればよい。本実施形態のメッシュ1は、細胞集合体を分離する底部11と、第一リング2と第二リング3によって狭持される接続部12(図3参照)によって構成されている。本実施形態の底部11は、円形であり、また、細胞集合体を挿入する方向に湾曲しており、破砕・分離がより確実に行えるよう工夫されている。また、接続部12は、底部11の外縁部を上方に折り曲げることで形成されており、接続部12と底部11は一体的に形成されている。
【0017】
なお、本実施形態では、メッシュ1をステンレス製としたが、材質、メッシュを構成する線径、目合は、破砕する臓器や回収する細胞に応じて適宜選択すればよい。例えば、材質には、ステンレスの他、ニッケル、モネル、黄銅、丹銅、燐青銅、銅、鉄、亜鉛引鉄線、鋼、アルミニウム、チタン、ニクロム、ハステロイ、インコネル等を用いることができる。また、ステンレスには、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS430、SUS310S等が例示される。
【0018】
線径は、織金網として通常使用される0.02mmから2.00mmとすることが好ましい。
目合とは、メッシュ(一辺における25.4mm間の目数)或いは、開き目(空間)である。開き目(mm)は、式1により、空間率(%)は、式2により算出される。
開き目=25.4/メッシュ−線径・・・式1
空間率=(開き目)2/(開き目+線径)2×100・・・式2
目合は細胞の種類に応じて選択すればよいが、50〜80メッシュが好ましい。
【0019】
メッシュは金属の薄板に小孔をプレスして形成されるものでもよいが、ステンレスなど
の金属線を織って作製されたものであることが好ましい。織方には、平織(PLAIN WEAVE)、綾織(TWILLED WEAVE)、撚線織(STAND WEAVE)、杉綾織(HERRINGBONE TWILLED WEAVE)、繻子織(SATIN WEAVE)、平畳織(PLAIN DUTCH WEAVE)、綾畳織(TWILLED DUTCH
WEAVE)、逆畳織(REVERSE DUTCH WEAVE)、延織(STRAND TWILLED WEAVE)、鎖状縦三本織(TRIPLE WARP WEAVE)、スダレ織(TIRE FABRIC WEAVE)が例示される。
【0020】
ここで、図4は、メッシュ1を平織とした場合のメッシュ1の拡大図を示す。また、図5は、メッシュ1を綾織とした場合のメッシュ1の拡大図を示す。平織は、織金網の標準的な織方であり、縦線と横線とが一定の間隔をあけて配置されており、一本ずつ相互に交わるように構成されている。また、綾織は、平織では織り難い様な比較的ハイメッシュや網目の割りに線径が太い金網を織る場合に用いられる。綾織では、縦線と横線とが一定の間隔をあけて配置され、相互に二本以上ずつ乗り越して交わっている。また、本実施形態では、メッシュを構成する縦線、横線が面取りされている。これにより、回収細胞を分離する際の回収細胞の損傷を防止することが可能となる。その結果、例えば、回収細胞として白血球を調製する場合では、非常に生存率の高い白血球を調製することが可能となる。
【0021】
第一リング2と第二リング3は、本発明の保持部に相当する。第一リング2は、環状のステンレス製部材によって構成されており、外側面に把持部4が接続されている。第二リング3も、環状のステンレス製部材によって構成されている。第二リング3の外径は、第一リング2の内径より僅かに小さく設計され、第一リング2の内側面と第二リング3の外側面との間にメッシュ1の接続部12が挟持される。このようにメッシュ1の接続部12が第一リング2と第二リング3によって保持されることで、細胞集合体が押し付けられた際、メッシュ1には引張力が作用し、撓みが低減され、その結果、細胞集合体の分離をより確実に行うことが可能となる。第一リング2と第二リング3は、分解可能な構成としてもよく、また、既存の接着剤等によって固定するようにしてもよい。前者によれば、メッシュ1の着脱が可能となり、後者によれば、より安定的にメッシュ1を保持することが可能となる。
【0022】
把持部4は、棒状のステンレス製部材からなり、第一リング2の外側面に接続されている。本実施形態の把持部4は、一本のステンレス製の棒状部材が略中央で折り返すように折り曲げられ、折り返された自由端部41から接続端部42に向かって、並行する棒状部材の間隔が徐々に広くなるように設計されている。そして、並行する棒状部材の夫々の自由端部42が、第一リング2の外側面に溶接接続されている。また、自由端部41の近傍には、折曲部43が設けられている。この折曲部43を基点として、自由端部41が斜め下方向を指すように把持部4の自由端部41側が折り曲げられることで、本実施形態の細胞分離装置100は、より把持しやいように工夫されている。また、把持部4は、使用者が安定的に把持できる長さ(本実施形態では、メッシュ1の中央から把持部4の自由端部41までの長さが約140mm)に設計されている。更に、把持部4が十分な長さを有することで、本実施形態の細胞分離装置100によれば、破壊・分離する細胞集合体を無菌的に取り扱うことも可能である。
【0023】
<実施例>
次に上述した実施形態の細胞分離装置100を用いた実施例について説明する。なお、以下に説明する実施例では、細胞分離装置100に平織のメッシュ(図4参照。)を用いた。また、メッシュ1の材質には、SUS304を採用し、メッシュ1の底部11の径を50mmとした。
【0024】
(施設・設備)
場所:群馬大学医学部保健学科中央棟5階、感染・免疫系演習室、感染・免疫系実験室、感染・免疫・血液系実習室
設備:クリーンベンチ(日立・CCV-1301EC)、安全キャビネット(昭和科学・SEC2A-1300V)、遠心機(ベックマン・Allegra-GKR)
場所:群馬大学医学部臨床研究棟4階 臓器病態制御系病態腫瘍制御学講座腫瘍放射線学
設備:フローサイトメーター(FACSCallibur) (BD Biosciences)
【0025】
(抗体)
FITC標識CD3ε・(145-2C11)、ビオチン標識NK1.1 (PK136)、並びにFcγ・receptor (R)
(2.4G2) に対するモノクローナル抗体 (mAb)はBD PharMingen (Hamburg, Germany) より購入したものを実験に供した。
【0026】
(試薬)
牛胎児血清 (FCS) はTrace Biosciences (Castle Hill, HSW, Australia)、Percoll (比重:1.124g/ml) はBiochrom (Berlin, Germany)、RPMI 1640はNISSUI PHAMACEUTICAL CO., LTD (Tokyo, Japan)、HEPESはDOJINDO LABORATORIES (Kumamoto, Japan)、L-glutamine及びpenicillin / streptomycinはInvitrogen (Carlsbad, CA, USA) より、2-mercaptoethanol、sodium hydrogen carbonate、ammonium chloride、TRIS及びsodium azideはWako Pure Chemical Industries, Ltd. (Osaka, Japan) より、Bovine serum albmin (BSA) はThermo (Hamilton, New Zealand)より、streptavidin (SA) 標識Cy5はBD PharMingenより、paraformaldehyde (PFA) はMerck (Darmstadt, Germany) より購入したものを実験に供した。
【0027】
(肝内白血球の調製)
日本チャールズリバー(横浜)より購入し、群馬大学医学部附属動物実験施設においてspecific pathogen-free環境下で飼育・交配したC57BL/6マウス(8〜12週齢の雄または雌)を頚椎脱臼もしくはジエチルエーテルにより安楽死させた後、肝臓を摘出した。肝臓はcomplete medium (CM: 20 mM HEPES・10% sodium hydrogen carbonate・L-glutamine (293μg/ml)・penicillin (100U/ml)・streptomycin (100μg/ml)・FCS (10%)・2-mercaptoetanol (50mM)含有RPMI 1640培地)にて潅流後、上述した実施形態の細胞分離装置100(平織メッシュ、SUS304)で分離し、細胞浮遊液を500 rpm・20秒間遠心分離した。上清を1500 rpm・5分間遠心分離後、沈渣に40 % percoll(CMで希釈)を加え、70 % percoll(CMで希釈)に重層した。1800 rpm・23分間遠心分離した後、40 % 並びに70 % percollの中間層を回収した。Lysis buffer (蒸留水にNH4Cl 8.3 mgを溶解し0.17 M Tris buffer (pH 7.65) 111 mlを加えたもの) により溶血後、CMにて洗浄し1 × 106 /mlとなるように細胞をCMに浮遊した。
【0028】
(フローサイトメトリー)
抗体の非特異的結合を防ぐため、細胞を抗FcγR (2.4G2) mAbと4℃・15分間反応させた後、FITC・Biotin標識mAbと4℃・15分間反応させた。Biotin標識抗体はSA-標識Cy5(BD ParMingen)にて視覚化した。染色後、細胞を1 % PFA含有PBS (-) で固定後、FACSCalibur (BD PharMingen)により取り込み、CellQuest software(BD PharMingen)により解析した。
【0029】
(効果)
ここで、表1は、従来のナイロンメッシュと本実施例における回収細胞数の比較表を示す。図6は、本実施例によるフローサイトメーターの結果を示す。また、表2は、従来のナイロンメッシュと本実施例の細胞分離装置の比較表を示す。表1に示すように、本実施例における回収細胞数は、従来のナイロンメッシュによる回収細胞数を上回っている。また、図6に示すように、T細胞、NKT細胞、NK細胞が、上記細胞分離装置100を用いることにより、非常に効率よく分離されていることがわかる。また、表2に示すように、実施例の細胞分離装置は、従来のナイロンメッシュと比較して、大きさ、再利用性、耐久性、使い易さ、細胞回収率の点で優れた効果を奏する。なお、経済性(コスト)についても、
本実施例の細胞分離装置は、再利用可能であることから、ランニングコストを低減することが可能である。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
以上説明した実施形態の細胞分離装置100によれば、利便性、作業性、耐久性を向上することができる。より詳細には、従来のナイロン製のメッシュに比べて耐久性を向上させることができる。また、オートクレーブ処理をかけることで、再利用が可能となり、環境性にも優れた細胞分離装置を提供することができる。また、上記細胞分離装置100は、種々の消毒薬に対して殆ど腐食することも無く、火炎滅菌を施すことも可能となる。更に、上記細胞分離装置100は十分な強度と耐久性を有することから、脾臓などの比較的小さい臓器のみならず、肝臓のように比較的大きい臓器も短時間で破砕することができる。
【0033】
また、実施形態の細胞分離装置は、微生物混入の危険性を最小限に留め、臓器を簡易かつ効率よく破砕し、生存率の高い細胞を回収するための簡易ツールとして多くの施設で利用することができる。また、研究機関を含む医療分野においては、臓器から細胞を調製す
ることなく、研究・開発を進めることは困難である。そのため、上記細胞分離装置は、病院等の診療施設、臨床検査受託センター、医療系大学及び研究機関並びに製薬会社等の企業において、広く使用することができる。
【0034】
なお、以上本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る細胞分離装置はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係る細胞分離装置の平面図を示す。
【図2】実施形態に係る細胞分離装置の側面図を示す。
【図3】実施形態に係る細胞分離装置の分解斜視図を示す。
【図4】メッシュを平織とした場合のメッシュの拡大図を示す。
【図5】メッシュを綾織とした場合のメッシュの拡大図を示す。
【図6】本実施例によるフローサイトメトリーの結果を示す。
【符号の説明】
【0036】
1・・・メッシュ
2・・・第一リング
3・・・第二リング
4・・・把持部
11・・・底部
12・・・接続部
41・・・自由端部
42・・・接続端部
43・・・折曲部
100・・・細胞分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞集合体を破砕して該細胞集合体から回収細胞を分離するメッシュ状の分離部であって、該細胞集合体を破砕するのに十分な強度を有する分離部と、
前記細胞集合体を破砕して該細胞集合体から回収細胞を分離する際の前記分離部の変形を抑制する、該分離部の外縁部を保持する保持部と、
前記保持部と接続され、使用者に把持される把持部と、
を備える細胞分離装置。
【請求項2】
前記分離部は、前記細胞集合体を破砕して該細胞集合体から回収細胞を分離する際の該回収細胞の損傷を抑制するように、メッシュ状の分離部を構成する複数の線部材の夫々が面取り構造を有する請求項1に記載の細胞分離装置。
【請求項3】
前記分離部は、外縁部が折り曲げられ、
前記保持部は、前記把持部が接続される第一リング部材と、該第一リング部材の内径より僅かに小さい外径の第二リング部材と、を有し、第一リング部材の内側面と第二リング部材の外側面との間に前記折り曲げられた外縁部を挟持することで前記分離部を保持する請求項1又は請求項2に記載の細胞分離装置。
【請求項4】
前記分離部、前記保持部、及び前記把持部は、オートクレーブ処理に耐え得る金属製部材からなる請求項1から請求項3の何れか一に記載の細胞分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−261329(P2009−261329A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115590(P2008−115590)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】