説明

細胞周期阻害物質の非晶質形態

【課題】腫瘍を治療する、生体利用率の高い化合物の提供。
【解決手段】結晶化合物を実質的に伴わない、式(I)の非晶質形態化合物及び製法と医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化合物を実質的に伴わない式I
【化1】

の化合物の非晶質の、医薬活性形態を供する。この化合物は、3−(1−メチル−3−インドリル)−4−(1−メチル−6−ニトロ−3−インドリル)−1−H−ピロール−2,5,−ジオンとしても公知である。本発明は、式Iの化合物の非晶質形態、並びにかかる化合物を含有する医薬組成物を製造する為の方法も供する。
【背景技術】
【0002】
式Iの化合物の結晶形態は公知である。米国特許再発行第36,736号を参照のこと。この結晶形態は約285℃の融点を持つ(第22欄,5〜6行を確認のこと)。この化合物は、特に非小細胞肺ガン、乳ガン及び結腸直腸ガンのような充実性腫瘍対する有力な抗ガン治療作用を有する細胞周期阻害物質及びアポトーシス誘導物質の新規分類に属する。米国特許第6,048,887号及びヨーロッパ特許0 988,863号等を参照のこと。式Iの化合物は従来公知となっている結晶形態において生理的pH(1.5〜8.0の範囲)で比較的低い水溶性(<10μg/mL)を有し、それ故に至適生体利用効率を下まわる(イヌにおいて5%未満)。これは治療的作用を有する化合物であるので、従って、溶解/溶出速度及び生体利用効率が向上した式Iの化合物の形態を得ることは望ましい。
【0003】
治療的作用を有する化合物の生体利用効率は一般に、(i)化合物の溶解/溶出速度、及び(ii)対象者の胃腸膜を介する化合物の分配/透過係数によって決定される。治療的作用化合物の生体利用効率が低い主原因は通常、前記化合物の溶解/溶出速度が低いからである。生体利用効率が低いことによって、極度の血圧の変化が伴われ、そして患者による薬剤の異常吸収が原因の予測不可能な投与量/治療的効果も往々にして伴われる。
【0004】
比較的低い水溶性を有する治療的作用化合物の生体利用効率を向上させる為にいくつかの技術を用いることができる。これらの技術はヨーロッパ特許第0988,863号の背景の段落で論じられている。ヨーロッパ特許第0988,863号中の記載は、比較的に低い水溶性を有する治療的作用化合物が、イオン性ポリマー中に組み込まれるか又は分散されることによって、更なる生体利用効率を持ちうることによる新規方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある方法を用いて比較的低い水溶性を有する治療的作用化合物をイオン性のポリマー中に分散させる又は組み込むことは、これらの化合物の生体利用効率を高めうる一方で、これらの方法は面倒であり且つ時間を消費する。かかる方法では治療的作用を化合物が、通常有利でない又は望ましくないポリマーとの組み合わせにおいて患者へと届けられる必要もある。従って、式Iの化合物をポリマー中で分散させる必要がないその非晶質形態において当該化合物を製造する為の方法を開発することは望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は結晶形態を実質的に伴わない式Iの化合物の非晶質形態に関連する。式Iの化合物のこの非晶質(「高エネルギー」とも言及する)形態は、当該化合物の従来公知の結晶形態よりも速い溶出速度を示し、且つ優れた生体利用効率を示す。本発明の化合物の非晶質形態の生体利用効率は、当該化合物の結晶形態よりも有意に高く、従って当該化合物の非晶質形態をガン性の腫瘍の治療又は療法において用いることを可能にする。
【0007】
本発明の他の観点は、式Iの安定な、非晶質化合物に関連する。それはイオン性ポリマーのような形態安定化剤がなくとも前記化合物が適度な棚寿命(例えば、室温で2年)を持つことが可能な時間に渡り安定な非晶質形態を保つ。
【0008】
本発明の他の観点は、式Iの高エネルギー非晶質化合物を製造する方法である。
【0009】
本発明の他の観点は、治療的に有効な量の非晶質形態にある式Iの化合物を含む医薬組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の公知の方法により調製した式Iの化合物の粉末X線回折パターンであり、当該化合物の著しい結晶性を示している。
【図2】本発明により調製した式Iの化合物の粉末X線回折パターンであり、当該化合物の非晶質特性を示している。
【図3】従来の公知の方法により調製した式Iの化合物の示差走査熱量測定熱像であり、当該化合物は結晶形態にあることを裏づける前記化合物の明らかな吸熱を示す。
【図4】本発明に従い調製した式Iの化合物の示差走査熱量測定熱像であり、当該化合物は非晶質形態にあることを裏づける約112℃のガラス転移温度を示す。
【図5】本発明により調製した式Iの化合物の粉末X線回折パターンであり、当該化合物は促進保存条件(40℃/75%RH、6ヶ月に渡るガラスバイアルでの保存)にさらされた場合でさえも、安定化剤を伴わずにその非晶質形態を保つことを示す。
【図6】従来公知の方法により生産した式Iの化合物(実施例IIIA )を含有する製剤及び本発明により生産した化合物(実施例IIA)を含有する製剤の溶出特性である。この図では、本発明の化合物(非晶質形態)は従来入手可能な結晶形態の化合物よりもより一層可溶性であることを示す。
【0011】
本発明は式Iの化合物の、高エネルギー、非晶質性、医薬活性形態を供する。
【化2】

【0012】
本発明に従い調製した場合、式Iの化合物の非晶質形態は結晶形態と比較した場合非常に高い(約15倍超の)生体利用効率を有するので、当該化合物を医薬製品中で用いることが可能になる。前記化合物の非晶質形態は、結晶形態とは対象的に優れた溶出速度及び生体利用効率を示すのみならず、その高いガラス転移温度約112℃によって、形態安定化剤がなくともその非晶質特性を維持する。
【0013】
本発明の式Iの化合物の非晶質形態は、その結晶形態においては比較的低い水溶性及び低い生体利用効率を有する医薬活性化合物の、患者への輸送を有意に促す。
【0014】
本明細書中で用いた場合、下記の用語は以下の意味を持つ。
【0015】
「非晶質化合物」とは、示差走査熱量測定熱像における典型的な吸熱を示さず、そして粉末X線解析パターンにおける独特のピークを示さないものをいう。化合物のこの形態を当該化合物の「高エネルギー形態」としても言及する。
【0016】
「溶出速度」とは特定の溶出媒体中に溶ける特定の化合物が持つ速度である。
【0017】
「形態安定化剤」とはイオン性ポリマーであり、それは化合物を特定の物理形態(非晶質形態等)に固定化して、当該化合物を環境要因(例えば熱、湿気等)から保護するのに用いることができる。
【0018】
「患者」とはヒトの対象者を指す。
【0019】
「比較的低い水溶性」とは、約10μg/mL未満の水溶性を有する特定の化合物又はその形態である。
【0020】
「結晶化合物を実質的に伴わない」とは、結晶形態の化合物が約20%を超えず、好ましくは結晶形態の化合物が約10%を超えないことである。
【0021】
式Iの非晶質化合物の調製方法
式Iの化合物の高エネルギー又は非晶質形態は、以下の方法によって調製されうる。
a)噴霧乾燥又は凍結乾燥:結晶形態の式Iの化合物が、有機溶媒に溶かされる。この方法の為の適切な有機溶媒としては、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチルエーテル、グリコフラル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられる。次いで、前記溶媒は噴霧乾燥又は凍結乾燥によって除去され、式Iの非晶質化合物が生じる。
【0022】
b)溶媒調節沈澱(Solvent Controlled Precipitation):本発明の好適な実施態様において、式Iの結晶化合物が有機溶媒中に溶かされる。この方法の為の適切な有機溶媒は、上記a)において列挙したものが挙げられる。次いで、好ましくは水溶液中で、そして好ましくは化合物が溶解しないpHで、当該化合物は沈澱する。生じる沈澱物は式Iの非晶質化合物であり、そして当業者に公知の手順、例えばろ過、遠心及び洗浄等によって回収される。次いで、回収された沈澱物は(大気、オーブン、又は真空において)乾燥され、そして当業界で公知の手段、例えば、破砕、微粉砕又は微粉化によって生ずる固体は更に加工され微粉にされる。
【0023】
c)超臨界流体:式Iの結晶化合物は、超臨界流体、例えば液体窒素又は液体二酸化炭素に(超臨界温度及び超臨界圧力下で)溶かされる。次いで超臨界流体は蒸発によって除去され、非晶質形態において沈澱した化合物が残る。代わりに、式Iの化合物が、上記a)に記載の有機溶媒中に溶かされる。超臨界流体は、有機溶媒の抽出の為の抗溶媒として用いられ、有機溶媒から化合物を非晶質形態において沈澱させる。
【0024】
d)熱溶解抽出:様々な温度変化度にセットされる温度調節押出し機に対して式Iの結晶化合物が漸進的に送り込まれる。特に、結晶化合物は熱融解押出し機において押出されて融解され、その後、急速に室温へと冷却され、そして当該化合物は固体化する又は非晶質形態において沈澱する。次いで、生じる押出物は粉砕され微粉になる。
【0025】
次いで、本発明に従い調製された式Iの化合物の非晶質形態は、適切な医薬的に許容できる賦形剤と組み合わされ、患者に対して投与される医薬製剤が生み出される。これらの賦形剤には、限定ではないが、無機又は有機担体、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、防腐剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香料添加剤、浸透圧を変える為の塩、緩衝剤、被覆剤、酸化防止剤及び放出調節剤(control release agents)が挙げられ、その全ては当業界で公知である。
【0026】
上記a)〜d)の方法より生ずる製品は、医薬製剤に組み込む為の当業界で公知の方法によって更に加工される。
【0027】
本発明は、治療上有効な量の式Iの化合物を非晶質形態において含む医薬製剤をも熟考する。治療上有効な量とは、所望の治療成果を遂げるのに必要な、投与量及び時間による量である。更に、かかる量は、全般的に治療上有利な作用が全ての毒性又は望ましくはない副作用に勝るものでなければならない。化合物の治療上有効な量は、治療を受ける患者の病期、年齢及び体重により往々にして変化する。従って、投薬計画は各特定の場合において各々の必要量に一般的に調節され、それらは当業界で知られている。
【0028】
体重約70kgのヒトの成人に対する非晶質形態にある式Iの化合物を経口投与する為の適切な日々の投与量は、約100mg〜約1,500mg、好ましくは、約400mg〜約800mgであるが、上限は指示された場合は超えても良い。日々の経口投与量は、単回投与もしくは分割投与として投与されて良く、又は非経口投与の為に持続注入(continuous infusion)として与えられて良い。
【0029】
本発明は、化合物をイオン性のポリマー中で分散させることなく式Iの非晶質化合物を調製する方法をも熟考する。
【0030】
本発明は、式Iの化合物を調製する方法を熟考する。この方法において(a)式Iの結晶化合物が有機溶媒中に溶かされ、そして(b)段階(a)の溶液から式Iの所望の非晶質化合物が沈澱される。
【0031】
上記方法において用いられる有機溶媒は、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジエチレングリコールエチルエーテル、グリコフラル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群から選択されるのが好ましい。前記溶媒はジメチルアセトアミドであるのが一層好ましい。
【0032】
沈澱は、段階(a)の溶液が冷却された水溶液に添加されることによって行われるのが好ましい。
【0033】
本発明の上記方法において、水溶液の温度は約2℃〜約10℃であり且つそのpHは、非晶質形態の式Iの化合物が溶解しないpHである。前記水溶液のpHは約2〜約7であるのが好ましい。
【0034】
本発明は、式Iの化合物を調製する他の方法も熟考する。この方法において、結晶形態の式Iの化合物が有機溶媒中に溶かされ;そして当該有機溶媒は除去される。前記有機溶媒は噴霧乾燥又は凍結乾燥によって除去されて良い。
【0035】
有機溶媒は、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジエチレングリコールエチルエーテル、グリコフラル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群から選択されるのが好ましい。前記有機溶媒は除去されるのが一層好ましい。
【0036】
本発明は式Iの化合物を調製する方法にも関連する。この方法において、式Iの結晶化合物が超臨界流体中に溶かされ;そして当該超臨界流体は除去される。
【0037】
前記超臨界流体は液体窒素又は液体二酸化炭素であるのが好ましい。
【0038】
本発明は、式Iの化合物を調製する方法にも関連する。この方法において、式Iの結晶化合物は有機溶媒中に溶かされ;そして当該有機溶媒は、液体窒素又は液体二酸化炭素のような超臨界流体により当該溶液から抽出される。
【0039】
本発明は、式Iの化合物を調製する方法にも関連する。この方法において、式Iの結晶化合物は、様々な温度変化度にセットされる温度調節押出し機(temperature−controlled extruder)(熱融解押出し機(hot melt extruder))に連続的に掛けられ、そして押出し物は急冷される。
【0040】
本発明は、腫瘍を治療する為の式(I)の化合物及び医薬担体を含んで成る医薬組成物をも供給する。この医薬組成物は安定化剤を伴わないのが好ましい。
【0041】
この医薬組成物はイオン性のポリマーを伴わないのが好ましい。
【0042】
本発明は腫瘍を治療する方法をも供する。この方法において、式(I)の化合物がヒト又は動物に対して投与される。
【0043】
最後に、本発明は、腫瘍の治療の為の薬剤を製造する為の式Iの化合物の使用を供する。
【0044】
以下の例は、本発明の非晶質化合物並びに前記非晶質化合物を組み込む医薬製剤を製造する方法を説明する。これらの例は本発明を説明し、そして限定することを意図しない。
【0045】
実施例
実施例I:非晶質化合物の一般的な調製
式Iの結晶化合物をジメチルアセトアミド中に溶かした。次いで、生じる溶液をpH2〜7の冷却した(2°〜10℃)水溶液に加えた。これにより生じた化合物を、非晶質化合物として沈澱させた。沈澱を残留ジメチルアセトアミドが0.3%未満になる迄冷水(2°〜10℃)で数回洗浄した。沈澱を乾かし、そして粉砕して所望の粒度にした。
【0046】
実施例II:式Iの非晶質化合物を含有する医薬製剤の調製
次いで、実施例Iに従い調製した非晶質化合物の粉末形態を様々な医薬賦形剤と混ぜ合わせ、以下の医薬製剤を生産した。
【0047】
実施例IIA
製剤 %(w/w)
式Iの非晶質化合物 50
無水ラクトース 50
【0048】
製剤の調製方法
1.実施例Iに従い調製した(レーザー光線散乱装置によって特定された8ミクロンの平均粒度を有する)式Iの非晶質化合物を、無水ラクトースと共にミキサー中で10分に渡り混合した。
2.段階1の由来の粉末混合物をカプセル中に封入した。
【0049】
実施例IIB
製剤 %(w/w)
式Iの非晶質化合物 50
メトセル(Methocel)K100LV 40
微結晶性セルロース 7
タルク 2
ステアリン酸マグネシウム 1
【0050】
製剤の調製方法:
1.実施例Iに従い調製した(レーザー光線散乱装置によって特定された8ミクロンの平均粒度を有する)式Iの非晶質化合物をメトセルK100LV(ヒドロキシプロピルメチルセルロース;Dow Chemicals, MI )と共にミキサー中で10分に渡り混合した。
2.段階1由来の粉末混合物を均一な顆粒が得られる迄純水により粒状化した。
3.段階2由来の顆粒を90℃で操作した乾燥装置による損失により特定した場合、含水率が2%未満になる迄50℃のオーブンで乾かした。
4.段階3由来の乾燥顆粒を粉砕して微粉にした。
5.段階4由来の粉砕した顆粒を微結晶性セルロース、タルク及びステアリン酸マグネシウムと共に5分に渡り混合した。
6.段階5由来の粉末混合物をタブレット成形機を用いて圧縮して錠剤にした。
【0051】
実施例IIC
製剤 %(w/w)
式Iの非晶質化合物 50
トウモロコシデンプン 10
ラクトース 39
タルク 1
【0052】
製剤の調製方法:
1.実施例1に従い調製した(レーザー光線散乱装置によって特定された8ミクロンの平均粒度を有する)式Iの非晶質化合物を、トウモロコシデンプン、ラクトース及びタルクと共にミキサー中で10分に渡り混合した。
2.段階Iの由来の粉末混合物をカプセル中に封入した。
【0053】
実施例IID
製剤 %(w/w)
式Iの非晶質化合物 50
クルセル(Klucel)LF 45
タルクカム(Talcum) 3
ステアリン酸マグネシウム 2
【0054】
製剤の調製方法
1.実施例Iに従い調製した(レーザー光線散乱装置によって特定された8ミクロンの平均粒度を有する)式Iの非晶質化合物クルセルLF(ヒドロキシプロピルセルロース;Hercules Inc., NJ )と共にミキサー中で10分に渡り混合した。
2.段階1由来の粉末混合物を均一な顆粒が得られる迄純水により粒状化した。
3.段階2由来の顆粒を90℃で操作した乾燥装置による損失により特定した場合含水率が2%未満になる迄50℃のオーブンで乾かした。
4.段階3由来の乾燥顆粒を粉砕して微粉にした。
5.段階4由来の粉砕した顆粒をタルク及びステアリン酸マグネシウムと共に5分に渡り混合した。
6.段階5由来の粉末混合物をタブレット成形機を用いて圧縮して錠剤にした。
【0055】
実施例III:式Iの結晶化合物を含有する医薬製剤の調製
実施例IIIA
製剤 %(w/w)
式Iの結晶化合物 50
無水ラクトース 50
【0056】
製剤の調製方法:
1.米国特許再発行第36,736号に教示された方法により調製した(レーザー光線散乱装置によって特定された9ミクロンの平均粒度を有する)式Iの結晶化合物を無水ラクトースと共にミキサー中で10分に渡り混合した。
【0057】
実施例IIIB
製剤 %(w/w)
式Iの結晶化合物(微粉) 4
メトセル(Methocel)K3 4
純水 92
【0058】
製剤の調製方法:
1.メトセルK3(ヒドロキシプロピルメチルセルロース;Dow Chemicals, MI )を20%(w/w)の濃度で純水に少量ずつ加え、そして均一な分散が得られる迄十分混合した。
2.(米国特許再発行第36,736号に教示された方法により調製し、そして5ミクロンの平均粒度を有した)式Iの結晶化合物を段階1由来の分散に加えそして均一な懸濁が得られる迄十分に混合した。
3.残りの純水を段階2由来の懸濁に添加し、そして十分に混合した。
【0059】
実施例IIIC
製剤 %(w/w)
式Iの結晶化合物(ナノサイズ) 4
メトセルK3 4
純水 92
【0060】
製剤の調製方法:
1.メトセルK3(ヒドロキシプロピルメチルセルロース;Dow Chemicals, MI )を20%(w/w)の濃度で純水中に分散させ、そして均一な分散が得られる迄十分混合した。
2.(米国特許再発行第36,736号に教示された方法により調製し、そして5ミクロンの平均粒度を有した)式Iの結晶化合物を段階1由来の分散に加え、そして均一な懸濁が得られる迄十分に混合した。
3.粉砕媒体として(平均直径0.2〜0.5mmの)ガラスビースを含有するDYNOMILに段階2由来の懸濁を通して、式Iの化合物を300〜400nmの範囲の平均粒度において獲得した。
【0061】
実施例IV:式Iの非晶質及び結晶化合物の物理特性の比較
様々な試験を行い、米国特許再発行第36,736号に教示された方法により調製した式Iの結晶化合物と本発明の式Iの非晶質化合物との比較を行った。比較したパラメーターは、結晶性、ガラス転移温度、溶出速度及び生体利用効率が挙げられる。比較の結果を下に記載し、そして添付の図に描いている。
【0062】
図1における粉末X線回折パターンによって示されるように、米国特許再発行第36,736号に教示された方法により調製した式Iの化合物は、著しい結晶性を示した。
【0063】
図2における粉末X線回折パターンによって示されるように、本明細書中で教示した方法により調製した式Iの化合物は、明らかに非晶質性である。
【0064】
図3における示差走査熱量測定熱像によって示されるように、米国特許再発行第36,736号において教示された方法により調製した式Iの化合物は、287℃の温度で明らかな吸熱を持ち、そして結晶性である。
【0065】
図4における示差走査熱量測定熱像によって示されるように、本明細書中で教示した方法により調製した式Iの化合物は、約112℃のガラス転移温度を有し、そして非晶質性である。
【0066】
図5における粉末X線解折パターンによって示されるように、本明細書中で教示した方法により調製した式Iの非晶質化合物は、促進条件下での保存でさえもその非晶質特性を維持した。このことは、本発明により調製した化合物は安定でありそして医薬製剤中への組み込みに適切であることを意図する。
【0067】
式Iの結晶化合物を含有する実施例IIIA の製剤(実施例IIIA )及び式Iの非晶質化合物を含有する製剤(実施例IIIA )を、二段階(2つの溶出媒体)溶出法(touo-stuge dissolution method )によって溶出度を評価した。段階Iでは、75rpm のパドルを用いることで37°±0.5℃の300mLの脱イオン水を使用した。段階IIでは、0.015Mのリン酸バッファー中6%(w/w)のラウリル硫酸ナトリウム600ml、pH6.8、37℃±0.5℃で平衡を、段階Iの解離が始まった25分後に、溶出が起こる容器に慎重に添加した。等量の試料を様々な時間で採取してUV分光測光法によって分析した。
【0068】
図6に示されるように、上記溶出評価の結果によって明らかに示されることは、式Iの非晶質化合物を含有する製剤(実施例IIA)の溶出特性は、式Iの結晶化合物を含有する製剤(実施例IIIA )よりも速く且つ完全なものであるということだ。
【0069】
加えて、式Iの結晶化合物を含有する製剤(実施例IIIB及びIIIC)並びに式Iの非晶質化合物(実施例IIA)を含有する製剤の生体利用効率を体重約10kgのビーグル犬において評価した。各イヌには式Iの化合物90mgを含有する製剤を与えた。投与の前(0時間)及び投与の0.5、1、2、4、6、8、12、24、36及び48時間後に各イヌから血液試料を回収した。EDTAを抗凝血剤として用いた。各血しょう試料を冷遠心(cold centrifugation )後分離し、そして分析する前に、琥珀色のバイアル中で最低の−60℃で凍らせた。式Iの化合物を血しょうから抽出し、そして式Iの化合物の濃度を陽イオンTurbuIonspray LC−MS/MSアッセイ〔HP1100LC系、Hewlet-Packard Inc. を用いるHPLC(Agilent Technologies, Wilminton, DE)及び PE-Sciex API-3+(Perkin-Zlmer Instruments, Wilton CT)、イオン化モード:Turbulonspray, 500C、陽イオンを用いる質量分析計〕を用いて決定した。100μlの血しょう試料を用いての校正の幅は1〜1,000ng/mLだった。
【0070】
見積もった関連する薬物動態学パラメーターは、式Iの化合物に関する最大血しょう濃度(Cmax)、Cmax に至る時間(Tmax)、時間0−∞の血しょう濃度時間曲線下の領域(AUC0-∞)、投与量(mg/kg)、正規化Cmax(Cmax/投与量)及び投与量正規化AUC(AUC/投与量)であった。観察されたCmax及びTmaxは各動物の濃度−時間特性から直接得られた。AUC0-∞をWin Nouline(登録商標)(Professional Zdition version 1.5, Pharsight Corporation, Mountain View, CA)による一次台形公式(linear trapezoidal rule)を用いて計算した。
【0071】
この生体利用効率の結果を下の表Iに示している。非晶質形態の式Iの化合物(実施例IIA)のイヌにおける生体利用効率は、化合物の結晶形態(実施例IIIB及びIIIC)が常用の投与形態(微粉及びナノ化懸濁等)において動物に対して投与される場合よりも高ことが表Iにおいて報告したデータにより示される。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に結晶化合物を伴わない、非晶質形態における式
【化1】

の化合物。
【請求項2】
結晶形態の化合物が20%を超えない、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
結晶形態の化合物が10%を超えない、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
請求項1記載の化合物を調製する方法であって、
(a)式Iの結晶化合物を有機溶媒中に溶かし;そして
(b)段階(a)の溶液から式Iの所望の非晶質化合物を沈殿させる;
ことを含んで成る方法。
【請求項5】
段階(a)において用いられる有機溶媒が、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジエチレングリコールエチルエーテル、グリコフラル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群から選択されている請求項4記載の方法。
【請求項6】
段階(a)において用いられる有機溶媒が、ジメチルアセトアミドである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
段階(a)の溶液を、冷却した水溶液に加えることによって段階(b)における沈殿が行われる、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記水溶液の温度が2℃〜10℃である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液のpHが、非晶質形態にある式Iの化合物が溶解しないものである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記水溶液のpHが2〜7である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
請求項1記載の化合物を調製する方法であって、
(a)結晶形態にある式Iの化合物を有機溶媒中に溶かし;そして、
(b)前記有機溶媒を除去する;
ことを含んで成る方法。
【請求項12】
前記有機溶媒が、エタノール、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジエチレングリコールエチルエーテル、グリコフラル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群から選択されている、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒が、噴霧乾燥によって除去される請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒が、凍結乾燥によって除去される請求項11記載の方法。
【請求項15】
請求項1記載の化合物を調製する方法であって、
(a)式Iの結晶化合物を超臨界流体中に溶かし;そして
(b)前記超臨界流体を除去する;
ことを含んで成る方法。
【請求項16】
前記超臨界流体が液体窒素又は液体二酸化炭素である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1記載の化合物を調製する方法であって、
(a)式Iの結晶化合物を有機溶媒中に溶かし;そして
(b)段階(a)において生じた溶液から超臨界流体により有機溶媒を抽出する;
ことを含んで成る、請求項16記載の方法。
【請求項18】
超臨界流体が液体窒素又は液体二酸化炭素である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1記載の化合物を調製する方法であって、
(a)式Iの結晶化合物を、様々な温度にセットされる温度調節押出し機(temperature−controlled extruder)(熱融解押出し機)に連続的に掛け;そして
(b)段階(a)由来の押出し物を急速に冷却する;
ことを含んで成る方法。
【請求項20】
請求項1記載の化合物及び医薬担体を含んで成る、医薬組成物。
【請求項21】
形態安定化剤を伴なわない請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
イオン性ポリマーを伴なわない請求項20記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項4〜19のいずれか1項記載の方法により製造される、請求項1記載の化合物。
【請求項24】
腫瘍を治療する方法であって、請求項1記載の化合物をヒト以外の動物に対して投与することを含んで成る方法。
【請求項25】
請求項1記載の化合物を含む薬剤。
【請求項26】
腫瘍の治療の為の、請求項25に記載の薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136534(P2012−136534A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32566(P2012−32566)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【分割の表示】特願2007−218828(P2007−218828)の分割
【原出願日】平成13年9月26日(2001.9.26)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】