説明

細胞培養からのタンパク質収量の増加において使用するための細胞株

本発明は、産生タンパク質およびペプチドにおいて有用な細胞株を提供する。この細胞株は組換え発現構築物を含有する。組換え発現構築物は、Cyタンパク質モチーフおよび/またはアンキリン結合タンパク質モチーフから成るSTPをコードする。各組換え発現構築物は、老化誘発因子(STP)の条件付き発現のために有する誘導転写調節要素をも含有する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その開示が本明細書で参照することにより明示的に援用される、2003年12月11出願の米国特許出願第60/528,929号明細書および2004年9月7日出願の米国特許出願第60/608,059号明細書に関する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、商業的利益の細胞タンパク質、特に抗体の産生において有用な細胞株に関する。本発明の細胞株は、老化誘発ペプチド(STP)の発現を制御する転写調節系を含有するように改変されており、治療用タンパク質を含む組換えタンパク質を産生するための宿主細胞株として、または、とりわけ、抗原刺激リンパ球からのモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの産生のための融合パートナーとして使用されうる。
【背景技術】
【0003】
組換えタンパク質産生
遺伝子工学技術および組換えDNA技術は、培養細胞における所望のタンパク質を産生する能力を提供し、それによって有用な量で以前入手可能でないタンパク質の産生を可能にする。エリトロポエチン、組織プラスミノゲン活性化因子、インスリン、および特に明確な特異性の抗体(モノクローナル抗体)が、タンパク質を天然に作る細胞と異種の培養細胞におけるタンパク質産生によって得ることができる。
【0004】
しかし、培養細胞が異種タンパク質を産生する能力は、有用であるタンパク質の十分な量の産生と適合されなければならない。従来技術では、予期せぬ高い産生株(producer)のスクリーニング外の異種タンパク質産生を増加させるための限定された方法のみが認められ、これらの方法は、細胞型特異的プロモータ、エンハンサおよびcisで遺伝子作用する他の調節配列、およびそれらの同種trans作用調節活性化因子との一部のcis作用因子の組合せを含めて、異種タンパク質の有用な産生レベルの達成における高度の予測不可能性を保持した。これは特に、培養培地へモノクローナル抗体を分泌する前記細胞の利点が、有用である十分に高い抗体産生レベルを有する特定の細胞クローンを識別する困難さおよび予測不可能性によって相殺されたという点で、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株で問題であった。
【0005】
また、インビトロ細胞培養の条件は、(好ましくは)細胞増殖を減少させ、異種タンパク質産生を劇的に増加させる前に細胞培養が適切な数の細胞を増殖させるのを有利に可能にした。このようにして、最大数の細胞は各々高レベルの異種タンパク質を産生することが可能であり、それによって培養の全体的収量を最大にするであろう。これらの方法を完全にすることにおける一部の成功は原核細胞を使用することにより当技術分野で周知であるが、それらの方法は真核細胞(これらは一般に、とりわけ、真核生物特異的翻訳後修飾、分泌、および他の所望の特性により異種タンパク質産生により適切である)を使用すると同等の成功で適用されていなかった
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当技術分野において、細胞、特にモノクローナル抗体を作るハイブリドーマ細胞を含む真核細胞における異種タンパク質産生を増加させるための方法および試薬を特定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、培養真核細胞、好ましくは、哺乳類細胞における異種タンパク質産生を増加させるための試薬および方法を提供する。本発明は、細胞増殖を阻害し、かつ異種タンパク質産生を同時に増加させる老化誘発ペプチド(STP)をコードする組換え発現構築物を提供する。好ましい実施形態において、前記組換え発現構築物によるSTPの発現は、STSの発現を制御する発現制御要素がそれに対して反応性である誘導因子と細胞を接触させることによって細胞において誘導される。
【0008】
1つの態様において、本発明は、最も詳しくは、前記細胞へ導入される組換え発現構築物を組換えることによってコードされる老化誘発ペプチド(STP)を含んで成る細胞株を提供する。一部の実施形態においては、細胞株はモノクローナル抗体を産生するために有用な融合パートナー細胞株である。具体的に提供される実施形態において、細胞株は組換え発現構築物を含有し、ここで組換え発現構築物はSTPを有利にコードする。各組換え発現構築物は好ましくは、誘導転写調節要素をも含有し、STPの発現の条件付き制御を可能にする。
【0009】
特定の実施形態において、細胞株はSp2/0−Ag14マウスB細胞骨髄腫(CRL−1581)、YB2/0ラットBリンパ芽球(登録番号CRL−1662)、K6H6/B5ヒトBリンパ腫/マウス骨髄腫(CRL−1823)、NS1ヒトリンパ芽球(CRL−8644)、FOマウス骨髄腫(CRL−1646)、Y3−Ag1.2.3ラット骨髄腫(CRL−1631)、またはP3X63−Ag8−653骨髄腫細胞株(CRL−1580、すべてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、Manassas、バージニア州(VA)から得た)、またはハイブリドーマを産生するために適切な融合パートナー細胞株である。
【0010】
一部の実施形態において、STPはCyモチーフを含有する。一部の他の実施形態において、STPはアンキリン結合モチーフを含んで成る。別の実施形態において、本発明は、アンキリン結合とCyモチーフの両方を含んで成るSTPの組合せを提供する。
【0011】
さらに他の実施形態において、本発明は、選択可能なマーカーを含有する組換え発現構築物、およびポリアデニル化シグナルによってフランキングされる多重クローニング部位を提供する。誘導転写調節要素およびポリアデニル化部位は、発現されるSTPへの操作可能な方向に位置付けられる。一部の実施形態において、誘導転写調節要素は、SV40または同様のウイルスプロモータ、および細菌lacレプレッサオペレータなどの機能的オペレータ配列を含有する。
【0012】
本発明の他の態様は、マウス脾細胞とのハイドリドーマ(hydridoma)融合パートナー細胞株の細胞を融合するステップを含んで成るハイドリドーマ細胞を産生する方法を提供する。
【0013】
したがって、本発明は、前記細胞におけるSTPを発現することによって、異種タンパク質産生、特にハイブリドーマにおけるモノクローナル抗体産生を増加させるための方法を提供する。
【0014】
本発明の特に好ましい実施形態は、一部の好ましい実施形態および特許請求の範囲の以下のより詳しい説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、タンパク質およびペプチド、特に異種タンパク質およびペプチドを産生するために有用な細胞株に関する。本明細書で使用される「異種」という語は、細胞において天然には作られない、またはそれの天然の染色体DNAにおいてコードされないタンパク質を意味することが意図されている。具体的には、この語は、細胞へ導入された外因性組換え発現構築物によってコードされるタンパク質を意味することが意図されている。この語は、骨髄腫細胞、または当技術分野で周知の他の適切な融合パートナーとの抗体産生細胞の融合によって産生されるハイブリドーマ細胞によるモノクローナル抗体の産生を包含することも意図されている。一部の実施形態において、かかる細胞株は、タンパク質合成が延長される複製状態から生産状態へ交換されうる。本明細書に開示されているように、前記生産状態は早期老化状態である。好ましい実施形態においては、細胞株はハイブリドーマ細胞株である。
【0016】
老化は、細胞分裂における永久的な停止と定義されている。Campisi, 2000, In Vivo 14: 183-8。複製または細胞老化は、40年以上前に細胞レベルでの加齢のモデルとして観察され提案された。Hayflick, 1965, Exp. Cell Res. 37: 614-36; Hayflick & Moorhead, 1961, Exp. Cell Res. 25: 585-621。正常な細胞が連続的に培養されると、それらは一般的に増殖中に複数の細胞分裂を受けるが、それらが培養中で加齢すると、細胞は分割する能力を失う。この現象は、アポトーシス、すなわちプログラム細胞死とは異なり、老化細胞は実際にプログラム細胞死に耐性を示す。確かに、一部の老化細胞は3年もの長い間それらの非分割状態が維持されている。Smith & Pereira-Smith, 1996, Science 273: 63-7。これらの細胞は、きわめて元気であり代謝的に活性であるが、それらが分割することはない。この非分割状態は、生物、化学、またはウイルス性因子によって不可逆的であることがわかっている。この最終的な非分割の段階では、遺伝子発現によって、細胞はそれらの若い対照物と比べ広範囲の変化を受けたことが示されている。遺伝子発現と細胞老化の変化間の関係は明確に証明されておらず、変化のいずれかまたはすべてが老化を引き起こすかどうか、老化の結果として遺伝子発現が生じるかどうかは知られていない。潜在的に老化を誘発しうる遺伝子発現の変化としては、細胞増殖誘発転写因子の抑制が挙げられる。Dimri & Campisi, 1994, Exp. Cell Res. 212: 132-40。しかし、増殖誘導因子のこの抑制とともに、細胞周期の活性化が阻害剤、p21およびp16であり、これらは細胞老化を誘発するために作用し、かつ実際に細胞を老化に至らせる遺伝子プログラムの最終生成物である。Smith & Pereira-Smith, 1996、同上。
【0017】
2つの別個の経路が早期老化を介在する(図1)。細胞タンパク質p53およびRbの発現は、テロメアの短縮化、DNA損傷の一部の形態、およびp14ARF発現(次には腫瘍遺伝子活性化に由来する)を含むさまざまな刺激によって活性化される。p53発現の増加は、増殖抑止のp21依存形態を引き起こす。p21の発現はRbファミリーのリン酸化を阻害し、結果として老化を促進するE2F活性の抑制をもたらす。p161INK4aの発現は、MAPキナーゼなどのテロメア非依存シグナルによって増加する。p161INK4aを誘発する(またはその抑制を阻害する)他の刺激は完全には特性決定されていない。p161INK4aの発現は同様に老化の付随誘導とともにRbリン酸化を阻害する。
【0018】
これらの経路の1つのみを活性化することによって老化を誘発する試みは、長期細胞培養に不十分な結果をもたらした。p16のみの発現は、細胞周期抑止後の老化(senescence)(区別のために当技術分野では静止(quiescence)と呼ばれる)と同様の可逆的な表現型を産生することが示されている。Dimri et al., 2000, Molec. Cell Biol. 20: 273-85、Uhrbom et al., 1997, Oncogen 15: 505-14、Vlach et al., 1996, EMBO J. 15: 6595-604。これらの細胞は、細胞周期抑制を克服し、7−10日で増殖を開始する。細胞周期阻害のこの逆転には3つの潜在的な理由がある。すなわち、1)細胞はp16を産生するのを停止し、2)p16が不活性化され、3)p16が分解される。その発現は強力な真核プロモータによって推進されるため、これらの細胞がp16の合成を停止させた可能性は低い。
【0019】
他の可能性を参照すると、当業者であれば、CKIのINK4ファミリーが4つの構造タンパク質(p15、p16、p18、およびp19)を含み、その各々が4つのアンキリン繰り返しを含有することを理解するであろう。Hirai et al., 1995, Molec. Cell Biol. 15: 2672-81。INK4タンパク質は、表1に示されているように、これらのアンキリン繰り返しモチーフによりモノマーCDK4/6サブユニットに結合し(Sheaff & Roberts, 1995, Curr Biol. 5: 28-31、Serrano et al., 1993, Nature 366: 704-7; Kamb, 1994, Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 59: 39-47)、それらのD型サイクリンとの結合を阻止し、かつINK4タンパク質もサイクリンD−CDK4/6複合体の活性を阻害しうる。
Hirai et al., 1995, Molec. Cell Biol. 15: 2672-81、Quelle et al., 1995, Oncogene 11: 635-45。p16に耐性を示すことになる細胞は、CDK4またはCDK6のそれらのレベルを上昇させ、したがって、産生されるp16を有効に滴定しうる。あるいは、INK4タンパク質は細胞培養において約20分の半減期を有する。Baldin et al., 1993, Genes Develop. 7: 812-21、Quelle et al., 1993, Genes Develop. 7: 1559-71。
【0020】
【表1】


(ここでp16アンキリン配列は配列番号22によって識別され、p19アンキリン配列は配列番号23によって識別され、p18アンキリン配列は配列番号24によって識別され、かつp15アンキリン配列は配列番号25によって識別される)。コンセンサスアンキリン配列は、Xaa−Xaa−Xaa−His−Asp−Ala−Ala−Arg−Xaa−Gly−Phe−Leu−Asp−Thr−Leu−Xaa−Xaa−Leu(配列番号5)である。
【0021】
p21のみの発現はp16のみの発現よりも安定した老化様表現型を産生する(Chang et al., 1999, Oncogen 18: 4808-18、Noda et al., 1994, Exp. Cell Res. 211: 90-8)が、しかし、p21の発現は有糸分裂の結末、アポトーシスと同様の細胞死の緩徐型につながる。Tsao et al., 1999, J. Virol. 73: 4983-90。p21は2つの機能的ドメイン、N末端CDK結合領域と、PCNAと結合するカルボキシ末端領域、DNAポリメラーゼデルタのプロセシング因子を有する。Flores-Rozas et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 8655-9、Harris et al., 1995, J. Clin. Immunol. 15: 232-41、Waga et al., 1994, Nature 369: 574-8。CDK阻害剤のCIP/KIPファミリーのサイクリン結合Cyモチーフを含むN末端領域(Chen et al., 1996, Molec. Cell Biol. 16: 4673-82)は、CDK2無関係にサイクリンと相互作用しうることが提案されている。p21のサイクリン結合モチーフは、インビトロでのサイクリンCDKキナーゼの最適な阻害、およびインビボでの増殖抑制に必要とされている。
【0022】
ユビキチン標的プロテオソームの阻害剤、MG132を使用するこれらタンパク質の代謝回転の阻害(Hunt et al., 1999, Biochim. Biophys. Acta 1444: 315-25)は、INK4タンパク質のレベルを持続し、それによって早期老化によって生じる細胞周期抑止を増強する。
【0023】
あるいは、プロテアソーム標的配列において不十分なCip/KipおよびINK4タンパク質の断片が、プロテアソーム分解に耐性であることによって細胞において安定していることが論争されている。
【0024】
p16およびp21の完全長cDNAを発現させる別の方法が、サイクリンCDKの結合によってユビキチン標的または不活性化による分解の可能性を削減しうるこれらの遺伝子の断片を発現することである。例えば、CDK阻害剤のCIP/KIPファミリーのサイクリン結合モチーフCyモチーフ(Chen et al., 1996, Molec. Cell Biol. 16: 4673-82)は、CDK2と無関係にサイクリンと相互作用しうる。p21のサイクリン結合モチーフは、インビトロでのサイクリンCDKキナーゼの最適な阻害、およびインビボでの増殖抑制に必要とされている。p21のN末端またはC末端のみを含有するペプチドは部分的にインビトロでのサイクリンCDKキナーゼ活性、および阻害し、アフリカツメガエル卵抽出物におけるDNA複製を阻害する。Cyモチーフが、触媒ドメインから離れているCdc25AのN末端近くで見つかっている。Saha et al., 1997, Molec. Cell Biol. 17: 4338-45。このモチーフにおける突然変異が、インビトロおよびインビボでのCdc25AのサイクリンE−またはサイクリンA−CDK2の結合を崩壊させ、選択的にサイクリンE−CDK2の脱リン酸化に干渉する。p21の配列のCyモチーフに基づくペプチドが、Cdc25AのサイクリンCDKとの結合を競合的に崩壊させ、かつキナーゼの脱リン酸化を阻害する。p21は、Cdc25A−サイクリン−CDK2結合およびCDK2の脱リン酸化を阻害する。逆に、Cdc25AはサイクリンCDKと結合し、これをp21による阻害から保護する。Cdc25Aは、アフリカツメガエル卵抽出物におけるDNA複製をp21による阻害からも保護する。したがって、cdc25Aおよびp21は、サイクリンCDK複合体との結合に競合する。Cyモチーフ配列は、細胞周期力学に関与する多くのタンパク質で見つかっており、cdc25A、p21、サイクリン、およびCDKの結合は、部分的に、Cyモチーフによって介在される。Cyモチーフの配置が表2に示されている。
【0025】
【表2】


(ここで、E2F1 Cyモチーフは配列番号6によって識別され、E2F2 Cyモチーフは配列番号7によって識別され、E2F3 Cyモチーフは配列番号8によって識別され、p107 Cyモチーフは配列番号9によって識別され、p130 Cyモチーフは配列番号10によって識別され、Cdc6 Cyモチーフは配列番号11によって識別され、Myt1 Cyモチーフは配列番号12によって識別され、Cd25a Cyモチーフは配列番号13によって識別され、p57 Cyモチーフは配列番号14によって識別され、p27 Cyモチーフは配列番号15によって識別され、p21(N)Cyモチーフは配列番号16によって識別され、p21(C)Cyモチーフは配列番号17によって識別され、HPV18E1 Cyモチーフは配列番号18によって識別され、SSeCKS(1)Cyモチーフは配列番号19によって識別され、SSeCKS(2)Cyモチーフは配列番号20によって識別され、かつb3−エンドネキシンCyモチーフは配列番号21によって識別される)。コンセンサスCyモチーフは、(Lys/Arg)−Xaa−Leuとして識別される。
【0026】
p16(アミノ酸1−60)の領域と同様であり、かつp21(アミノ酸1−81)のCyモチーフと同様である老化誘発アンキリン繰り返しのコンセンサスDNA配列は、大腸菌L7/L12リボソームタンパク質(登録番号PO2392)のアミノ酸1−40によって産生されるアルファへリックスをコードする核酸へ別個にクローン化された。Bocharov et al., 1996, FEBS Lett. 379: 291-4。このペプチド−アルファへリックス配列は、同様に、レトロウイルス組換え発現構築物へクローン化されたが、ここで核酸をコードするSTPはドキシサイクリン誘導プロモータの転写制御下にあり、その構築物は水泡性口内炎ウイルスDNAでウイルスパッケージング細胞へ従来のリン酸カルシウム利用法を使用してトランスフェクトされた。Baldin et al., 1993, Genes Develop. 7: 812-21。便利なマーカータンパク質プラスミノゲン活性化因子阻害剤−1(PAI−1、 Kang et al., 1998, Int. J. Cancer 77: 620-5、Wileman et al., 2000, Br. J. Ophthalmol. 84: 417-22)を活発に産生するHT1080E−14細胞への感染後、STPを持つ細胞を選択剤を細胞培養培地へ含めることによって選択した。本実施例において、STPの発現はドキシサイクリン(テトラサイクリンの安定した誘導体)を培地へ添加することによって誘導された。誘導後、細胞を計算することによってモニタリングされた細胞増殖は、24時間以内に停止されることがわかり、かつ細胞の増殖は30日もの長い間、遮断されたままであった(図2)。
【0027】
老化は、2つの重要な方法で静止など増殖抑止の他の形態と異なる。第一に、体細胞における老化は不可逆性であると考えられており、したがって最終分化の特殊な形態を示す。第二に、老化は、特徴的な形態変化などの一部の表現型変化、および老化関連βガラクトシダーゼ(SA−β−Gal)活性の発現を包含する。最近、老化は、個別の核焦点(SA−ヘテロクロマチン焦点(SAHF)と呼ばれる)に存在するヘテロクロマチンの異常な形態の確立と相関することが示されている。(Dimri et al., 2000, Molec.Cell Biol. 20: 273-85)。全体として、これらのデータは、老化が増殖と関連したプロモータの耐久性の抑制に由来することを示す。この抑制は安定したヘテロクロマチン様複合体の構成によって強化され、その形成は部分的に低リン酸化Rbによってもたらされる。
【0028】
早期老化の開始は、SA−β−gal活性に対する細胞の染色によって観察された。Dimri et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 9363-7。細胞はこの表現型を30日間維持した。空のレトロウイルスベクターを感染させた細胞はSA−β−galを発現することはなく、ドキシサイクリンで処理されたSTPを有する細胞と同一の表現型を示した。ドキシサイクリンに曝露された細胞は、大きな扁平の外観を生じ、かつSA−β−gal活性、図3に示された老化表現型(Campisi, 2000, In Vivo 14: 183-8)と関連したすべての特徴を示す。PAI−1の量は、各時点で凍結された誘導遺伝子の有無による細胞からの細胞培養上清におけるELISAアッセイによってモニタリングされた。PAI濃度は、0.01−5mg/mlの範囲の標準曲線から得られた。分泌PAIタンパク質レベルは、図4に示されているドキシサイクリンで誘導されていない細胞に関して培養の8日後の30倍も増加した。これらの結果は、STPが哺乳類細胞において長期の早期老化を誘発することを示す。同様の結果は、Sp20マウス骨髄腫細胞から産生されたCHOおよびハイブリドーマ細胞を含む他の細胞株において得られている。
【0029】
増殖培養において、老化は細胞がタンパク質産生の最適な密度に達したのちに起こる必要がある。早期老化の絶好の時機は、早期老化状態を発現した後に産生を最大にするために必須である。絶好の時機は、誘導プロモータの調節下にSTPを発現させることによって達成されうる。この要件を満たすために、修飾TetR系を有するレトロウイルスベクターが開発された。Bucciarelli et al., 2003, 米国特許第6,635,448号明細書。使用されたこのレプレッサ系でも他のレプレッサ系でも、培養が最適な細胞密度まで増殖するまでSTPの発現を抑制する必要がある。
【0030】
細胞株
一部の実施形態において、本発明の細部株は、細胞周期の既知の遮断薬を条件付きで発現することによって細胞分裂を抑止する。誘導プロモータの制御下に細胞周期阻害剤遺伝子またはかかる遺伝子の断片の完全長コード領域の安定した導入は、細胞分裂を停止しただけではなく、老化様状態への分化を誘発した。これらの細胞株で観察されたように、老化は、細胞量の増加、扁平な形態、およびタンパク質合成の増加によって特性決定された。かかる細胞は寿命が長く、低いpH、血清因子の喪失、浸透圧変化、および増殖集団における細胞死を誘発する他のインピーダンスなどの環境ストレスに実質的により耐性を示した。この表現型の安定性の結果として、高濃度の分泌産物が得られた。結果として、複合培地または培地の繰り返し交換が回避された。本明細書で開示されているのは、本発明の組換え発現構築物によってコードされ、細胞を複製から早期老化状態(本明細書で「RPシフト」と呼ばれる)を産生するタンパク質に変換する、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞および細胞周期阻害剤を発現するように改変されているハイブリドーマを作り出すための融合パートナーとして一般的に使用される細胞株を含む哺乳類細胞である。
【0031】
一部の実施形態において、細胞はモノクローナル抗体発現の融合段階で使用され、促進されたモノクローナル抗体産生が製造段階でRPシフトを誘発することによって引き起こされうるようになっている。本発明は、mAbの有効性の初期調査と同時の連邦規制検証を可能にするという点で有用である。
【0032】
SP2/0およびNS1(表3)などの融合パートナー細胞株は、RPシフト調節系の制御下にSTPを含有するように改変されている。次いで、これらの細胞は、当業者には周知の標準のハイブリドーマ技術を使用してマウス脾細胞と融合される。結果として生じるハイブリドーマ細胞は、1)目的とする標的抗原に結合し、かつ2)予測される生物学的機能に影響を及ぼすモノクローナル抗体の産生についてスクリーニングされる。所望の免疫特異性、親和性、および他の機能的特性を有するモノクローナル抗体(mAb)を特定するハイブリドーマ融合クローンのコホートの一次測定後、RPシフトを使用し、その後の調査および商品化のためにmAbの十分な量を産生することができる。有利に、本発明の組換え発現構築物によってコードされたSTPは、STPの発現を制御する調節発現要素が反応性である、ドキシサイクリンなどの誘導因子が細胞培養培地に添加されるまで前記細胞において発現されない。誘導時点で、細胞分裂は遮断され、それらは老化様状態に入る。この状態の間、細胞は予想される増加量のmAbを産生する。前駆細胞株へのRPシフトの改変の利点は、これらの前駆細胞株からその後に生じるすべての細胞株が、機能、増殖特性、およびRPシフト能力の範囲における明らかな類似を維持することである。
【0033】
【表3】

【0034】
モノクローナル抗体の産生
本発明の一部の実施形態においては、融合パートナー細胞株がモノクローナル抗体の産生において使用される。モノクローナル抗体の産生は、動物を免疫化するステップと、動物の脾から免疫細胞を得るステップと、免疫細胞を骨髄腫からの細胞など癌細胞融合パートナーと融合し、それらを不死化するステップとを必要とする。通常使用される動物はマウスであるが、しかし、他の哺乳類も使用されうる。ハイブリドーマと呼ばれる融合細胞は、モノクローナル抗体を分泌する。モノクローナル抗体を産生するために使用される典型的な手順が図5に示されている。
【0035】
特定の疾患状態と関連した特定のタンパク質または他の分子を標的にしたいと思う研究者は、そのタンパク質または分子と強く反応するモノクローナル抗体を分泌する細胞株を生成する。モノクローナル抗体を産生する細胞株を製造する1つの方法は、融合パートナーとして知られる不死化骨髄腫細胞株(表3を参照)とマウスリンパ球を融合し、ハイブリドーマを有するモノクローナル抗体を産生することである。しかし、モノクローナル抗体の大規模な産生を達成するためには、ハイブリドーマ細胞は成長して増殖し、所望のモノクローナル抗体を産生するクローンを形成する必要がある。工業規模では、これらの細胞を成長させるために選択できる方法は、細胞培養培地を含有する大きなバイオリアクターである。この方法は、多少の専門的知識を必要とし、特殊な培地を必要とし、かつ費用と時間がかかりうる。ハイブリドーマを成長させるためのインビトロ方法に関する相当な調査が行われており、これら新しい方法は高価ではなく、迅速であり、かつ過去における場合よりも高濃度の抗体を産生する。
【0036】
モノクローナル抗体の産生におけるトランスジェニック動物の使用
本発明の他の実施形態において、モノクローナル抗体を産生するために使用されるトランスジェニック動物。実験動物および家畜の遺伝子組換えは、とりわけ、治療用タンパク質および抗体など有用なタンパク質の産生のためのバイオリアクターとしてトランスジェニック動物を作り出す多大な可能性を有する。トランスジェニック動物(例えば、マウス)は最初に外来DNA遺伝子による受精卵のインビトロマイクロインジェクション、偽妊娠乳母ヘの着床、およびトランスジェニック子孫の特定(例えば、PCRによって)によって生成された。マウスにおいて、胚幹細胞技術の開発は、これらの培養細胞が容易にトランスフェクトされ、インビトロで操作され、次いで多細胞胚盤胞へ移植され、トランスジェニック動物をもたらしうるという点で初期ステップを簡略化した。同型子孫は、これらのトランスジェニック動物から産生されるキメラ個体の交配から生成されうる。
【0037】
一般的な病原体を中和化することが可能な組換え抗体または抗体断片を構成的に産生する動物を作り出す、組換え免疫グロブリンの分野においてトランスジェニックマウス技術を適用する多くの例がある。動物の遺伝子組換えは、生殖細胞系構成においてヒト可変および不変の遺伝子断片を有するマウスを作り出すためにも使用されうる。これらの動物はそれらのB細胞における再構成ヒト抗体を産生し、かつ従来の免疫化法後にヒト抗体を産生する。Glockshuber et al., 1990, Biochemistry 29: 1362-7、Mendez et al., 1997, Nature Gnet. 15: 146-56、Neuberger & Bruggemann, 1997, Nature 38: 25-6、Yang et al., 1999, Cancer Res. 59: 1236-43。従来のハイブリドーマ技術を使用してヒト抗原を含む抗原による免疫化後の高親和性ヒトモノクローナル抗体を産生するトランスジェニックマウス株は、重または軽鎖遺伝子を含有する大きなサイズ(メガベース)のヒトゲノムDNA断片がマウス胚幹細胞へ導入された場合に得られる。次いで、これらの細胞は未分化胚芽細胞注入のために使用される。結果として生じるトランスジェニックマウスは、破壊された内因性の重および軽(k)鎖遺伝子座を有するマウスと交配され、ヒト抗体鎖コード遺伝子を有するマウスを産生する。
【0038】
これらのトランスジェニックマウスは、比較的高い血清濃度でIgMおよびIgG抗体を産生する。抗体は大部分ヒトk(マウスkではない)から成り、重および軽鎖V、D、およびJ胚遺伝子の用法/パターンは、ヒト末梢血リンパ球に存在するものと同様である。CDR3の長さおよびN−添加は特徴的にヒトである。Abgenix(Freemont、カリフォルニア州(CA))(異種マウス(Xenomouse)およびMedarex(Princeton、ニュージャージー州(NJ))(HuMAb−マウス)は、従来のハイブリドーマ技術を使用して抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を産生するトランスジェニックマウス株を開発した。このようにして開発されたハイブリドーマは安定しており、大量の高親和性(10−9Mで一定に分離)抗体を分泌する。
【0039】
これらのマウスによって産生される抗体は、しかし、それらがマウス特異的グリコシル化パターン発現する(Borrebaeck, 1999, Nature Biotechnol. 17: 621)という制限を有し、これはこれらの「ヒト」抗体を治療用に使用する潜在的なリスクを有する。したがって、ヒト細胞のものとより類似したグリコシル化のパターンを有するCHO細胞は、組換え「ヒト化」抗体産生に好ましいこともある。
【0040】
治療用抗体の種類
本発明のさまざまな実施形態は、キメラハイブリッド免疫グロブリン、ヒト化ハイブリッド免疫グロブリン、および組換え抗体免疫グロブリン断片が有用収量で産生されることを可能にする組換え細胞を提供する。キメラハイブリッド免疫グロブリンは、最初のマウス可変領域を保持し、不変領域はヒト抗体のものに切り替えられ、HAMAを削減し、ヒトエフェクター機能を得ようとする。これらの抗体は、エフェクターおよび他のFc関連機能や特性が必要である場合に治療において使用される。ヒト化ハイブリッド免疫グロブリンは、領域を決定する特異的相補性抗体に従うマウス残基を有し、かつ可能な構造的関連性のその他はヒト抗体フレームワークに「翻訳される」。ここから、対応する領域および残基は除去され、HAMAを無効にし、ヒトエフェクター機能を得ようとする。これらの抗体は、エフェクターおよび他のFc関連機能や特性が必要である場合に治療において使用される。
【0041】
組換え免疫グロブリン断片としては、細菌または酵母においても産生されうる。これらの断片にはFab、断片Fvおよび改変Fv(scFv、dsfv)、それらの変異ミニ抗体、CRAb、多機能および多特異的二重抗体、三重抗体、四重抗体)、および融合構築物(免疫薬、免疫毒素、BRM)が挙げられる。組換え抗体断片は、インビボ放射免疫検出およびインサイツ放射線治療、薬剤、毒素、およびBRM標的送達、薬剤および毒素の解毒化、ウイルスおよび微生物の直接または間接の中和、均質診断アッセイ、および触媒のために使用されている。これらの抗体断片も本明細書で提供された細胞を使用して有利に産生される。
【0042】
組換え抗体の抗体V領域遺伝子のクローニング
他の実施形態において、本発明の細胞株は組換え抗体を産生するために使用される。抗体改変が進行するためにクローン化され、操作される重要な免疫グロブリンDNA配列は、抗原結合部位の完全な機能的構造を決定する重(H)および軽(L)鎖の可変(V)ドメイン遺伝子である。免疫グロブリン遺伝子の初期クローニングには、ドナー細胞(ハイブリドーマ、Bリンパ球、またはB腫瘍細胞株)からのゲノムDNAのライブラリーの構成が含まれた(Morrison, 1985, Science 229: 1202-7)。この方法は、再配置された完全な抗体遺伝子を含有するクローンを特定することが必要であるため遅くて退屈である。シグナルペプチド、V、および不変(C)ドメインコード配列間に存在するイントロンが、追加の技術的困難を課した。
【0043】
ポリメラダーゼ連鎖反応(PCR、Mullis et al., 1986, Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 51: 263-73)の開発、およびその分野への適用(Larrick et al., 1988, Prog. Clin. Biol. Res. 272: 383-93、Larrick et al., 1989, Biochem. Biophys. Res. Commun. 160: 1250-6、Orlandi et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-7)は、V領域遺伝子のクローン化を大幅に簡略化し、抗体改変における異常な進展の段階を示した。PCRによるVLおよびVH免疫グロブリン領域を増幅するために、cDNAがハイブリドーマまたはBリンパ球から抽出されたRNAからの逆転写によって製造される。所望の成熟V領域遺伝子の増幅により、このステップは完全に再配置遺伝子およびイントロンによる干渉を完全に回避する。PCRプライマーセットは、VHおよびVL遺伝子の最初(V領域におけるFR1に対応)、JHまたはJL断片の最後(再配置V領域におけるFR4)、およびCLまたはCH1不変領域近くに存在する保存フランキング塩基配列に基づき設計されている。Larrick et al., 1989、同上。
【0044】
異なるVおよびJ胚遺伝子はおそらく単一の前駆体から発達し、強い配列類似性―プライマーにおいて縮重位置を導入する可能性と結合―を有するため、所定のV領域の5’および3’末端でプライムするために必要とされる合成オリゴヌクレオチド対の数は最小限に削減されうる。V領域のPCRクローニングのためのプライマーセットの多くの例が、文献を検索することによって確認されうる。抗体コンビナトリアルライブラリー技術の開発はこれらの努力を後押しするとともに、マウスおよびヒトV領域のPCRプライマーのいくつかの確実なセットを生んだ。de Haard et al., 1999, J. Biol. Chem. 274: 18218-30、Kettleborough et al., 1993, Eur. J. Immunol. 23: 206-11。抗体PCRプライマーを設計する際に、念頭におくべき他の特徴としては、特定の制限酵素部位およびタグ、発現方法および特異的ベクター、かつ検出および精製方法が挙げられる。マウスハイブリドーマの場合、合成オリゴヌクレオチドを設計する際には、これらの細胞の多くに存在し、大部分の骨髄腫融合パートナーが由来する最初のMOPC−21腫瘍から継承される異常なカッパRNA転写の増幅を回避するように特別の注意を払う必要がある。Carroll et al., 1988, J. Exp. Med. 168: 1607-20。
【0045】
有効な抗体PCRの条件は、最初の報告以来、大いに改善した。新たに入手可能なのは、RNA抽出およびcDNAキット、エラーのない耐熱性DNAポリメラーゼ、デザイナー反応バッファー組成物、および高性能のサーモサイクラーからカスタム反応チューブに至るまでの他のPCR用品である。また、新しい抗体配列に関する大量の蓄積情報が決定的にこの単純で強力な技術の爆発的な使用に寄与した。
【0046】
キメラおよびヒト化組換え抗体
さらに別の実施形態において、本発明の細胞株はキメラおよびヒト化組換え抗体を産生するために使用される。1980年代の初めに、いくつかのグループが、現在、抗体遺伝子工学として周知であるものの基礎を開発した。Gillies et al., 1983, Cell 33: 717-28、Neuberger, 1983, EMBO J. 2: 1373-8、Oi et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 825-9、Sharon et al., 1984, Nature 309: 364-7、Wood et al., 1985, Nature 314: 446-9。マウスMAb処理後のHAMA反応の差し迫った問題および所望のエフェクター機能の欠如により、最初の組換え治療用抗体がヒト起源の同様のものによるマウス不変ドメインの単純な置換で調製されたことは意外ではなく(Boulianne et al., 1984, Nature 312: 643-6、Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-5、Neuberger et al., 1984, Nature 312: 604-8)、この内容は参照することにより援用される。これらのキメラ抗体を製造するために、治療用マウス抗体のV領域はPCRによってクローン化され、かつヒトガンマおよびカッパ(またはラムダ)不変ドメインを有するベクターへ挿入されうる。これらのベクターは、タンデム発現のための両方の鎖を含むように調製され、またはそれらは重および軽鎖の別個のプラスミドとして産生されうる。異なる宿主細胞株は、エレクトロポレーション、リポソーム融合、または塩化カルシウム法を使用して、これらのキメラ遺伝子構築物でトランスフェクトされている。レシピエント細胞としては、骨髄腫細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、および昆虫細胞が挙げられる。トランスフェクトーマのみが成長する選択培地における播種後、培養は従来のハイブリドーマと同様のやり方でスクリーニングされ、クローン化される。宿主細胞の中ではCHO細胞が好ましいが、それはそれらのよりヒト様にグリコシル化パターンおよび高密度の適応性、血清およびタンパク質を含まない培地における大規模な培養、産生のための重要な態様のためであり(Reff, 1993, Curr. Opin. Biotechnol. 4: 573-6)、この内容は参照することにより援用される。ハイブリドーマと比べ、トランスフェクトーマは、はるかに低い量の抗体を分泌し、多くの場合、抗体分泌を喪失する。この問題を解決する1つの方法は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、Hendricks et al., 1988, Gene 64: 43-51)
、この内容は参照することにより援用され、多コピー統合およびはるかに高い抗体発現を確実にするベクターの一環としての選択および増幅系の使用である。
【0047】
この選択はCHO細胞において有効であるが、その使用は内因性DHFR活性のため骨髄腫細胞においてより複雑となる。骨髄起源の細胞における組換え抗体の高い発現のための別のベクター系が、選択可能なマーカーとしてグルタミン合成酵素、およびインビトロ増殖のための外因性グルタミンに対する骨髄腫およびハイブリドーマのほぼ絶対的な依存性に基づき開発されており(Bebbington et al., 1992, Biotechnology (NY) 10: 169-75)、この内容は参照することにより援用される。キメラ抗体は、親マウス抗体の同一の特異性および親和性を示し、かつADCC、抗体依存マクロファージ細胞毒性(ADMC)、およびヒト文脈における補体結合を有効に介在する能力がある。一般に、ヒトのものによるマウス不変領域の置換がインビボの生物学的半減期を増加させる。
【0048】
潜在的な治療用マウス抗体の多くのキメラ種類が臨床試験において評価されており(Khazaeli et al., 1994, J. Immunother. 15: 42-52)、この内容は参照することにより援用される。これらの試験から、一部の場合にはキメラ化がHAMA反応の完全な消失を引き起こしたが、多くのキメラ抗体はマウスV領域の存在の結果として免疫原性のままであったことが明らかとなった。マウスV領域の免疫原性を削減する別の方法が、マテオら(Mateo et al.)によって報告され(1997, Immunotechnology 3: 71-81)、この内容は参照することにより援用される。これらの著者らは、マウスV領域T細胞エピトープを相同ヒト配列に突然変異させ、相補性決定領域(CDR)およびバニエ(Vanier)ゾーンをそのままにした。霊長類における抗マウス反応は、改造マウスV領域をヒト不変ドメインへ結合することによって生じるキメラ抗体によって無効にされた。
【0049】
最初に完全にヒト化された(再形成された)抗体(CAMPATH−1H)は、リーヒマン(Riechmann et al.)(1988, Nature 332: 323-7、この内容は参照することにより援用される)によって、抗CD52 CAMPATH−1ラット抗体を標的として使用し、かつウィンター(Winter)らによって最初に提案されたCDRグラフト法(Verhoeyen et al., 1988, Science 239: 1534-6)を使用して産生された。CDRグラフトは、適合性ヒトフレームワーク(FR)配列と結合されたマウス治療用抗体からのCDRによる配列情報を使用する完全に人工的なV領域の合成を含む。新しいヒト化V領域は完全は免疫グロブリンの発現の適切なヒト不変領域に結合されている。その方法において、ウィンター(Winter)らは、必要なフレームワークのために同一のヒトV領域を使用することを提案した。マウスCDRのグラフトにより結合親和性が削減または無効にされた場合は、新しい構築物が調製され、最初の結合特性が記録されるまでCDRの近くに追加のマウス残基を組込む。Graham et al., 1995, J. Chem. Technol. Biotechnol. 63: 279-89。この研究は間もなく、やはりCDRグラフトに基づいたタンパク質設計研究所グループ(Protein Design Labs group)(Fremont、カリフォルニア州(CA)、米国)の研究によって続行された。Co et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 2869-73。しかし、親マウスV領域配列は最初に利用可能なデータベースを使用して最も類似したヒトの配列にマッチされる。次いで、コンピュータモデル化が使用され、CDRとの重要な接触をなすわずかのマウス残基を特定する。次いで、これらの位置での齧歯類アミノ酸は、CDRそのものとともにヒトフレームワークへ導入される。これらの改変抗体分子は完全とみなされないが、ヒト化免疫グロブリンは、そのキメラ姉妹と比べ臨床試験において明らかによりはるかに少ないHAMA反応を示した。Rebello et al., 1999, Trans植物ation 68: 1417-20、Woodle et al., 1999, Trans植物ation 68: 608-16。それらは現在、進行中の臨床試験における免疫グロブリン産物の実質的な割合を占めている。
【0050】
免疫原性エピトープは依然として体細胞突然変異の結果として再形成V領域に存在しうる。バイオベーション(Biovation)は、必要に応じて、CDRからも免疫原性エピトープを除去する、いわゆる「脱免疫化(DeImmunisation)」技術を提供している。Forster et al., 1994, Molec. Biotechnol. 1: 251-263。
【0051】
他の抗体構築物
他の実施形態において、抗体は、毒素、薬剤、酵素、および他の官能基との遺伝子融合タンパク質として産生され、かつその不変ドメインで修飾され、抗体分子の最初のエフェクター機序および特性を変化させる。かかる修飾抗体は従来のハイドリドーマ技術を使用して産生されている。Harvill et al., 1996, J. Immunol.157: 3165-70、Penichet et al., 1999, J. Immunol. 163: 4421-6、Sensel et al., 1997, Chem. Immunol. 65: 129-58 免疫付着因子(Immunoadhesins) (Chamow & Ashkenazi, 1996, Trends Biotechnol. 14: 52-60)は、抗体のヒンジおよびFc領域をリガンド特異的細胞表面受容体のドメインと結合する融合タンパク質である。これらの分子は、研究室の実験用器具として、かつ医学における有望な用途として利点を有する。抗原化抗体(Xiong et al., 1997, Nature Biotechnol. 15: 882-6)は、免疫グロブリンのCDRループの代わりに免疫グロブリンと異なる抗原由来のペプチドエピトープを移植することによって作られる。V領域フレームワークおよび不変抗体ドメインの特徴を使用する短い外来ペプチドの配座固定された曝露により、免疫学的予防または免疫治療の有望な組合せが作り出される。それらはペプチドホルモン分野および新薬の合理的設計にも拡大されうる。最後に、ルンデら(Lunde et al.)(1999, Nature Biotechnol. 17: 670-5)は最近、不変領域へ挿入されたT細胞エピトープで抗IgD抗体を改変した。これは、抗原を提示し、特異的T細胞を刺激するB細胞の効率を改善し、新しいワクチンの生成において有用でありうる方法である。
【0052】
抗体断片
他の実施形態においては、抗体断片が産生される。抗体断片は親抗体分子と同一の特異性および親和性を有する。それらは同様もしくは増大した結合活性(多価断片)または全抗体分子の半分の結合活性(一価断片)で産生されうる。抗体断片(Fab、F(ab)、およびFv)は、それらの小さなサイズおよび潜在的に良好な組織透過性およびクリアランスのため多くの治療用途の全抗体に対して潜在的な利点を有する。Dall'Acqua & Carter, 1998, Curr. Opin. Struct. Biol. 8: 443-50。Fab(約50kDa)およびFv(約25kDa)抗体断片は稀にグリコシル化され、このことは酵母におけるそれらの発現に有利である。酵母における組換え抗体断片の産生に関する調査は、それらの特性および潜在的な用途によって、また酵素的手段による断片の制御された大規模生産における困難により刺激された。酵母において産生された抗体断片の最初の報告は10年以上前に現れた。Horwitz et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 8678-82。この研究には、いわゆる単鎖Fv断片(scFv)、個々の重および軽鎖V領域が、VH−VLヘテロ二量体の疎水性界面のパッキングに干渉しないアミノ酸でできた短い親水性および柔軟性のポリペプチドリンカー(10−20残基、Horwitz et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 85:8678-82)を使用する単一のタンパク質へ結合される人工構築物が含まれた。ScFvは37℃で安定しており、最初のFv(約27kDa)の特異性および親和性を保持し、2つの別個のタンパク質が発現され、折り畳まれる必要がある組換えFabと比べると発現しやすい。また、scFv遺伝子はPCRによっても容易に産生されうる。Davis et al., 1991, Biotechnology (N Y) 9: 165-9。
【0053】
抗体断片は、菌類(Davis et al., 1991, Biotechnology (N Y) 9: 165-9)、哺乳類細胞(Riechmann et al., 1988, J. Molec. Biol. 203: 825-8)、および昆虫細胞(Kretzschmar et al., 1996, J. Immunol. Methods 195: 93-101)においても発現されている。酵母細胞からの抗体断片の産生(Romanos et al., 1992, 酵母 8: 423-88)は言及に値する。抗体断片は、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)(Kotula & Curtis, 1991, Biotechnology (NY) 9: 1386-9)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Scizosaccharomyces pombe)(Kotula & Curtis, 1991, Biotechnology (NY) 9: 1386-9)、およびごく最近ではピキア・パストリス(Pichia pastoris)において発現されている。Eldin et al., 1997, J. Immunol. Methods 201: 67-75、Ridder, 1995, Biotechnology (NY) 13: 255-60。最後のものは、優れた産生特性を有する系であると思われ、高容量の分泌抗体断片発現の一般的特徴を培地における迅速増殖および低レベルの汚染タンパク質と組合わせる。Ridder, 1995, Biotechnology (NY) 13: 255-60。組換え抗体断片の分野はおそらく、想像力が潜在的な産物の範囲を最も拡大した分野である。多くの異なる型の一価および多価断片、単一または二重特異性結合活性、他のタンパク質および官能基への遺伝子結合、およびごく最近では、異なる種起源の単一ドメイン抗体が、これまでに試験された構築物の中にある。Hudson & Kortt, 1999, J. Immunol. Methods 231: 177-89、Hudson, 1999, Curr. Opin. Immunol. 11: 548-57、Riechmann & Muyldermans, 1999, J. Immunol. Methods 231: 25-38。抗体断片はインビボ放射免疫検出およびインサイツ放射線治療(Kettleborough et al., 1993, Eur. J. Immunol. 23: 206-11、Adams & Schier, 1999, J. Immunol. Methods 231: 249-60、Mayer et al., 1999, J. Immunol. Methods 231: 261-73、薬剤(Huennekens, 1994, Trends Biotechnol. 12: 234-9)、毒素(Kreitman et al., 1999, Blood 94: 3340-8、Pastan & Kreitman, 1998, Adv. Drug Deliv. Rev. 31: 53-88)、および生物反応修飾物質(BRM)標的送達のために開発されている。Melani et al., 1998, Cancer Res. 58: 4146-54。
【0054】
早期老化に適したRPシフト細胞株の調製
組換えタンパク質、特に抗体、より詳しくは、モノクローナル抗体、かつ特に治療用抗体、もしくは抗体様タンパク質、または表1の融合パートナーとして示されているものなどのポリペプチド、CHO、NSO、または他の真核細胞株が、STPを活発に増殖する細胞へ収容するベクターのトランスフェクションまたは感染によって調製されうる。
【0055】
STPを発現させるための組換え発現構築物
本発明は、コードされたポリペプチドまたはSTPの厳しい転写調節を可能にする組換え発現構築物を提供する。かかる構築物は、その構築物でトランスフェクトされ、トランスフォームされ、または感染された細胞における早期老化を引き起こす方法において有用である。
【0056】
一部の実施形態において、細胞における早期老化状態の誘導に寄与する1つもしくはそれ以上のタンパク質をコードする1つもしくはそれ以上の組換え発現構築物を含有する細胞が産生または維持される。
【0057】
一部の実施形態においては、細胞株は、1つもしくは複数のCyタンパク質モチーフ、または1つもしくは複数のアンキリン結合タンパク質モチーフ、または複数のCyタンパク質モチーフおよびアンキリン結合モチーフをコードする組換え発現構築物を含有する。
【0058】
組換え発現構築物は、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、またはファージの形でありうる。適切な核酸配列は、さまざまな手順によって挿入されうる。一般に、DNAは当技術分野で周知の技術を使用して適切な制限酵素部位へ挿入される。ベクター成分としては一般に、1つもしくはそれ以上のシグナル配列、複製の起点、1つもしくはそれ以上のマーカー遺伝子、エンハンサ要素、プロモータ、および転写終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。1つもしくはそれ以上のこれら成分を含有する適切なベクターの構成では、当業者に周知である従来のライゲーション技術が使用される。
【0059】
組換え発現構築物は、ベクターが1つもしくはそれ以上の選択された宿主細胞において複製することを可能にする核酸配列を含有しうる。かかる配列は、さまざまな細菌、酵母、およびウイルスで公知である。プラスミドpBR3222からの複製の起点は大部分のグラム陰性細菌に適切であり、2ミクロンプラスミド起源は酵母に適切であり、さまざまなウイルス起源(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、またはBPV)は哺乳類細胞におけるクローニングベクターに有用である。しかし、哺乳類系において、構築物はゲノムへ組込まれ、それによって複製の宿主に依存することになることが好ましい。したがって、一部の実施形態において、構築物はレトロウイルスベースのベクターを含んで成る。
【0060】
組換え発現構築物は、一般的に、選択可能なマーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有する。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンに抵抗性を与え、(b)栄養要求性欠乏を補完し、(c)複合培地から入手不可能な必須栄養素、例えば、バチルス(Bacilli)に対するDアラニンラセマーゼをコードする遺伝子を供給するタンパク質をコードする。
【0061】
組換え発現構築物は通常、mRNA合成を方向づける核酸配列をコードするポリペプチドに操作可能な状態で結合するプロモータを含有する。さまざまな潜在的な宿主細胞によって認識されるプロモータが公知である。原核細胞宿主との使用に適したプロモータとしては、β−ラクタマーゼおよび乳糖プロモータ系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモータ系、およびtacプロモータなどのハイブリッドプロモータが挙げられる。細菌系において使用するためのプロモータは、ポリペプチドコード領域に操作可能な状態で結合されるシャイン・ダルガノ(Shine−Dalgarno)(S.D.)をも含有する。
【0062】
酵母宿主との使用に適切な促進配列の例としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルキトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどの他の糖分解酵素のプロモータが挙げられる。
【0063】
増殖条件によって制御される転写の追加の利点を有する誘導プロモータである他の酵母プロモータは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝と関連した分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、およびマルトースやガラクトース利用に関与する酵素のプロモータ領域である。酵母発現において使用するための適切なベクターおよびプロモータはさらにEP73,657号明細書に記載されている。
【0064】
哺乳類宿主細胞における組換え発現構築物からの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎Bウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから、異種哺乳類プロモータ、例えば、アクチンプロモータまたは免疫グロブリンプロモータから、および熱ショックプロモータから得られるプロモータによって制御されるが、かかるプロモータが宿主細胞系と適合性であることを条件とする。
【0065】
高等真核生物における転写は、エンハンサまたはレプレッサ配列を構築物へ挿入することによって増大されうる。エンンハンサおよびレプレッサは、通常、約10〜300bpであり、プロモータに作用してその転写を増加させるDNAのcis作用要素である。多くのエンハンサ配列が現在、哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインスリン)から周知である。しかし、一般的には、真核細胞ウイルスからのエンハンサが使用される。例としては、複製起点(bp100−270)の遅延側でのSV40エンハンサ、サイトメガロウイルス早期プロモータエンハンサ、複製起点の遅延側でのポリオーマエンハンサ、およびアデノウイルスエンハンサが挙げられる。
【0066】
一部の実施形態において、本発明の組換え発現構築物は老化反応性要素を含有し、組換えタンパク質の産生を増加させる。所望の組換えタンパク質の追加の増幅は、老化反応性要素をCMVプロモータなどのウイルスプロモータの上流のベクターへ改変することによって達成される。老化反応性要素は、ヒトコラゲナーゼ遺伝子の−89〜−66配列(5’−AGGATGTTATAAAGCATGAGTCA−3’(配列番号2))で規定されている。STPの発現による老化表現型の展開は老化特異的転写因子を活性化し、それによって、さらに目的とする組換えタンパク質の転写を加速する。一部の実施形態において、老化反応性要素は、別個に、または両方とも調節プロモータから転写された所望の組換え産物とIRES推進細胞周期阻害剤の組合せを含んで成る2シストロン構築物に操作可能な状態で接続されうる。かかる2シストロン性設計は、標的タンパク質および細胞周期調節因子の同時の調節発現を提供する。
【0067】
一部の実施形態において、本発明の組換え発現構築物は、遺伝子発現の厳しい調節を可能にする要素を含有する。例えば、組換え発現構築物は、ベクターのプロモータ領域において1つもしくはそれ以上のテトラサイクリンレプレッサ結合部位(テトラサイクリンオペレータ)を含有しうる。一部の実施形態においては、構築物は、TATA配列を含んで成る多重テトラサイクリンオペレータおよび最小限のプロモータを含んで成る。好ましくは、テトラサイクリンオペレータはプロモータの厳しい調節を提供するように配置されている。かかる配置としては、TATA配列からの下流の2つの段階的なテトラサイクリンオペレータ21塩基対およびTATA配列からの上流の2つの段階的なテトラサイクリンオペレータ11塩基対が挙げられる。
【0068】
テトラサイクリンレプレッサ結合部位を含んで成る構築物が使用される場合、テトラサイクリンレプレッサを生物薬剤製造のために選択された細胞へ送達することが必要である。テトラサイクリンレプレッサは、IRES含有単一転写ベクターを使用するレトロウイルス形質導入によってこれらの産生株細胞へ導入されうる。これらの産生株細胞がテトラサイクリンレプレッサを発現するように修飾された後、CKIを含有するテトラサイクリン調節構築物は、レトロウイルス感染によって産生株細胞のゲノムへ組込まれる。安定した形質導入株としてRPシフトベクターを収容する細胞が、抗生物質G418への耐性によって選択されうる。次いで、送達CKIまたは他の細胞周期阻害剤の発現は。ドキシサイクリン(テトラサイクリンの安定した誘導体)を培地へ添加することによって誘発されうる。
【0069】
真核宿主細胞(酵母、菌類、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物からの有核細胞)において使用される組換え発現構築物は、転写の終結およびmRNAを安定化するために必要な配列をも含有する。かかる配列は一般的に真核もしくはウイルスDNAまたはcDNAの5’、および場合により3’、非翻訳部位から入手可能である。これらの領域は、ポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分におけるポリアデニル化断片として転写されたヌクレオチド断片を含有する。
【0070】
STPを発現するために有用なRPシフト構築物は、米国特許第6,635,448号明細書に記載されており、その内容は本文献ですべての目的のために完全に援用される。組換え発現構築物は、(1)厳しく調節され、オフ位置にある場合に強力な細胞増殖を可能にし、(2)安価でFDA承認のリガンドによって高度に誘導性であり、かつ(3)きわめて不規則であり、さまざまな細胞における効率的な組込みおよびその後の発現を可能にする必要がある。これらのために、テトラサイクリン調節レトロウイルスベクターは選択可能な系である。このベクターは、いくつかの修飾を含むT−RExプラスミドベクター(インビトロジェン(Invitrogen))から構成された。その最終形態は、ウイルスの長い末端繰り返し(LTR)から発現された(1)選択マーカー(2)および多重クローニング部位(3)を含有し、これらはポリアデニル化シグナル(4)および調節プロモータ(5)によってフランキングされている。
【0071】
センス方向でのCKIのcDNA、または細胞周期の他の阻害剤(次節を参照)は、調節プロモータ(5)から発現される多重クローニング部位(NCS)へクローン化される。調節プロモータおよびポリアデニル化部位はLTRと逆方向に位置してLTRからのリードスルーを阻止し、それによってLTR開始発現の漏れを除去する。同時に、ポリアデニル化シグナルの逆方向はパッケージング細胞におけるゲノムRNA転写に干渉することはない。
【0072】
T−RExベクターの有利な修飾としては、CVMプロモータ内のTATA部位からの下流の2つの段階的なテトラサイクリンオペレータ21bpおよびTATA配列からの上流の2つの段階的なテトラサイクリンオペレータ11bpの挿入が挙げられる。この構成は、TF−IID接触部位の最前部および正確に転写の開始部位での2つの二量化tet−レプレッサのタイトなタンパク質クランプを位置付ける。さらに、二量化テトラサイクリンレプレッサの結合は二重らせんにおける重要なねじれを誘発し、さらに偶発的転写の可能性を削減する。
【0073】
この系の第2の成分は、核局在シグナルを組込むように修飾されたテトラサイクリンレプレッサである。STPの発現による老化表現型の誘発は、まだ不確定の老化特異的転写因子として活性化し、それによって目的とする組換えタンパク質の転写を加速する。別個にまたは両方とも調節プロモータから転写された、所望の組換え産物とIRES推進細胞周期阻害剤の組合せを含む調節カセットのいくつかの修飾を試験する実験。かかる2シストロン性設計は、標的タンパク質および細胞周期調節因子の同時の調節発現を提供する。
【0074】
誘導STPを含有するハイブリドーマ細胞の調製
mAbの産生は、精製されたCAPの2週間間隔での3回の腹腔内注射によるBALB/cマウスの免疫化によって行われる。精製CAPは、最初の注射のために同一量の完全フロインドアジュバントおよび次の2回の追加免疫注射のために不完全フロインドアジュバントで乳化する。最後に、融合実験の3日前に、抗原はアジュバントなしに静脈内注射される。マウス脾細胞および骨髄腫細胞(例えば、P3X63−Ag8−653、ATCC CRL1580、表1を参照)の融合は記載されているように行われる(Kohler, et al, 1978, Eur J Immunol, 8: 82-8)。
【0075】
手短に言えば、免疫化マウスは絶命され、脾は無菌で除去される。次いで、脾細胞は5:1の比で対数期で成長する骨髄腫細胞と混合された。細胞は0.5%ポリエチレングリコール(PEG1500、ベーリンガー・マンハイム・ゲーエムベーハー(Boehringer Mannheim GmbH)、Mannheim、ドイツ)の存在下に融合されるが、37℃水浴中で維持される。融合産物は、10%ウシ胎仔血清を含有する完全ダルベッコ変法イーグル(Dulbecco’s Modified Eagle)培地40ml中に希釈し、4つの96ウェルプレートにおけるウェル当たり100μlでプレーティングされる。24時間のインキュベーション後、ヒポキサチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT)を含有する選択培地100μlが各ウェルに添加される。さらに2回のHAT変更が3日おきに行われる。この後、細胞はヒポキサチンおよびチミジン培地でさらに2週間、同一培地を頻繁に変更して成長される。ハイブリドーマが成長するウェルからの培地のアリコートが酵素免疫吸着法(ELISA)によってCAPに対する抗体の産生についてスクリーニングされる。陽性ハイブリッドは、96ウェルプレート中で限界希釈によってクローン化され、ハイブリドーマがその後の試験および産性のために選択される。
【0076】
選択されたハイブリドーマ細胞株の試料が、誘導因子ドキシサイクリン2μMを添加することにより誘発老化関連ベータガラクトシダーゼ活性によって試験される(Dimri, G.P., et al., 1995, Proc Natl Acad Sci U S A,. 92: p. 9363-7)。細胞株は、標準のサンドイッチELISA法を使用してmAb産生について検査される。
【0077】
本発明は特定の実施形態に関して説明されているが、さまざまな適合および修正が本発明の精神および範囲を逸脱することなくなされうることが理解される。本発明は、添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0078】
実施例1 早期老化はハイブリドーマ細胞株におけるタンパク質分泌を強化する
実験を計画し、低、中、および高mAb産性細胞株における早期老化方法のロバスト性を決定した。mAb開発への重要な関心は、十分にmAbを産生し、前臨床および早期臨床試験を完了することである。しばしば、高親和性mAbを分泌するハイブリドーマは低力価のmAbを産性する。これらのハイブリドーマ細胞株は、試験を完了するために必要なmAbの欠乏のため、さらなる製品開発から一般的に除外される。早期老化はこれらの低mAb産生株の産生能を強化しうるため、これらのより有効な抗体は治療用開発において継続しうる。したがって、これらの実現可能性調査において使用されるハイブリドーマ標的細胞は、L1CAMに対してIgGを産性するL5G3、ロドプシンに対してIgGを産生するMH70、およびCD24に対してIgGを産生するCH450であった。これらのハイブリドーマ細胞株は、それらの異なるレベルのmAb産生、LG53(20μg/ml)、MH70(100μg/ml)、およびCH450(500μg/ml)に対して選択された。すべてのハイブリドーマ細胞株は、イスコブ変法イーグル(Iscove’s modified Eagle’s)培地中で増殖させた。老化コンピテント細胞株を設計するには、テトラサイクリンレプレッサ(TetR)または他の適切な調節系を生物薬剤製造のために選択された細胞へ送達することが必要である。本明細書で詳しく開示されているように、TetRは、単一転写ベクターを含有するIRESを使用するレトロウイルストランスダクションによってこれらの産生株細胞へ導入された(Levenson, V.V., et al., 1998,. Hum Gene Ther,. 9: p. 1233-6)。完全長テトラサイクリンレプレッサは、ピューロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ、LXIPをEcoRI/XbaI部位で発現するレトロウイルスベクターへクローン化された。レトロウイルス構築物を含有するIRESを天然のTetRを送達するために使用し、核局在シグナルを含むように加工した。このTetRは、細胞株の増殖および調製中に誘導因子の非存在下、老化誘発因子の発現を阻止することが必要とされた。
【0079】
汎親和性系を使用し、レトロウイルスDNAを細胞へ送達した。汎親和性系では、脂質結合および血漿膜を通じて細胞へのウイルス侵入を介在する、エンベロープ糖タンパク質であるVSV−Gが使用される(Burns, J.C., et al.,. 1993, Proc Natl Acad Sci U S A,. 90: 8033-7 Emi, et al., 1991 J Virol, 65: p. 1202-7 Yee, et al., 1994, Proc Natl Acad Sci U S A, 91: p. 9564-8)。この系は特異的細胞表面受容体に依存することがないため、汎親和性系は活発に分裂する細胞のトランスダクションを可能にする。感染性汎親和レトロウイルス粒子を得るために、目的とする遺伝子を有するベクターを標準のCa−リン酸法を使用してGP2−293細胞へトランスフェクトした(Pear, W.S., et al.,1993, Proc Natl Acad Sci U S A, 90: 8392-6)トランスフェクションの24時間後、感染性ビリオンを有する培養培地を収集し、0.45μmフィルタを通じてろ過し、散在するパッケージング細胞を除去し、ポリブレン(Polybrene)(商標)(4μg/ml)を補充し、かつ250,000標的細胞に添加した。24時間後、細胞をトリプシン処理し、再プレーティングした。すなわち、2つの60mmプレートに各々500の細胞を播種すると同時に、残りの細胞をプレート当たり10細胞の密度で150mmプレートへプレーティングした。TetRを含有する細胞の集団を55%の感染率でピューロマイシンで選択した。ピューロマイシン選択細胞は、高度機能トリRT−PCRキット(シグマ(Sigma)、St Louis、ミズーリ州(MO))およびTetRの領域2360−2575をフランキングするプライマー(TR1:5’−GGAGGGCAT−GGATGCTAAGTCAC−3’ (配列番号3)、TR2:5’−TCTCCCTTCTCCAACCGGAGGATCAC−3’ (配列番号4))を使用する逆転写PCRによってTetRを発現することが確認された。
【0080】
ハイブリドーマ細胞がTetRを発現するように修飾された後、老化誘発因子およびG418に対する選択可能なマーカーを含有する誘導テトラサイクリン調節プロモータを有するレトロウイルスベクターを以下のように調製した。p16のアンキリンIII領域(表1)およびp21のN末端Cy領域(表2)由来の老化誘発因子を相補的オリゴヌクレオチドとして合成し、大腸菌(Escherichia coli)からのリボソームタンパク質L17(配列番号1)のN末端20アミノ酸をコードするDNAへ平滑末端クローン化し、上述したレトロウイルスベクターのEcoRI/XbaI部位へクローン化した。標的細胞の集団(60mm皿中250,000細胞)に繰り返し(4回)上述したようにGP−293細胞からのウイルス上清4mlを感染させた。具体的に誘導STPを収容するRPシフトベクターを含有する細胞を0.7mg/ml G418で選択した。
【0081】
細胞の早期老化を受ける能力を誘導因子ドキシサイクリンの培養への添加によって標的細胞の集団において検査した。細胞の相対的増殖を、培地(対照)または誘導因子を含有する培地(処置)の添加後の時間間隔で血球計における顕微鏡(20倍位相差)下に細胞を直接計算することによって測定した。細胞をウェル当たり25,000細胞で12ウェルプレートへ播種した。48時間後、ドキシサイクリンを添加し、細胞をトリプシン処理し、3通りのウェルから3週間毎日除去した。培地を8日目に対照および処理培養に変更し、ドキシサイクリン処理細胞の生存を維持した。誘導因子で処理したハイブリドーマ細胞の増殖を遮断し、培養の最初の週の間に死んだ対照細胞とは反対に、細胞の生存を3週間にわたって無傷のままにした、図2。
【0082】
老化コンピテントハイブリドーマ細胞株を限界希釈によって単離し、個別に免疫グロブリンの産性増加について試験した。限界希釈は、平均1.6の細胞96ウェルプレートの各ウェルへ播種されるようにハイブリドーマ細胞培養の集団を希釈することによって行われる。単一コロニーがプレートの大部分のウェルで成長することが予想された。各単一コロニーをプレートから回収し、細胞株として別個に成長させた。各細胞株を2つの同一の96ウェルプレートの各々の単一ウェルへ播種した(1つは対照、1つはドキシサイクリン処理)。誘導因子を1つのプレート(処置)のウェルに2μlの濃度になるまで添加し、1週間成長させた。各培養からのIgGの産性を抗IgGホースラディシュ・ペルオキシダーゼを使用し、バイオコート(BioCoat)キット(べクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)において測定した。このキットは、細胞培養培地中のIgGがプレート上にコーティングされた抗IgGに結合するという点で抗体捕捉アッセイを含んで成る。培地を含有するIgGの100μlアリコートを各ウェルに1時間、25℃下に添加した。トリス(Tris)緩衝食塩水による洗浄後、抗IgGホースラディシュ・ペルオキシダーゼを添加し、1時間25℃下にインキュベートした。洗浄後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質100μlを添加し、8分間25℃下にインキュベートした。次いで、停止溶液(1Mリン酸50μl)を添加し、450nmでの吸光度を30分以内にプレートリーダーで測定した。各ウェルの結合能は0.6μg IgGであり、誘導細胞株からの試料は希釈される必要がありうる。濃度は、市販の精製IgG(シグマ(Sigma))の標準曲線(0.05−5μg/ml)から測定される。誘導因子を有さない培養からの抗体の量はわずかに増加したが、ドキシサイクリン誘導因子を有する培養からの抗体力価は3週間にわたって劇的に(10倍ほども)増加した、図3。
【0083】
実施例2 早期老化はCHO細胞株におけるタンパク質分泌を強化する
CHO細胞株における誘導早期老化の効果を調査したが、それはそれらが単鎖抗体および免疫グロブリン断片の商業生産において広く使用されているためである。CHO細胞を選択したのは、それらが老化を受けることが証明されているためでもある。選択可能なアルカリホスファターゼ組換え発現構築物(SEAP、クロンテック(Clontech))を安定してCHO細胞へ導入し、強化されたタンパク質発現をモニタリングした。核局在シグナルを含めるように改変された天然のTetRの送達のためにレトロウイルス構築物を含有するIRESを使用した。汎親和性系(クロンテック(Clontech))を使用し、レトロウイルスDNAを実施例1に記載されている細胞へ送達した。TetRを含有する細胞を実施例1に記載されているように選択した。Cip/KipおよびINK4Aタンパク質からの老化誘発断片を実施例1に記載されているようにCHO細胞へ導入した。老化コンピテントCHO細胞を実施例1に記載されているようにイスコブ変法イーグル(Iscove’s modified Eagle’s)を含有するネオマイシンで成長中で選択した。早期老化の誘導は、50,000細胞を6ウェルプレートへプレーティングすることによって測定し、これらの細胞におけるSA−β−Galの発現は、誘導因子を欠く培養(対照)または含有する培養(処置)において測定した。8日間2日ごとに、細胞をグルタルアルデヒド/ホルムアルデヒド(2%/4%)溶液で固定した。固定細胞をPBSで固定し、次いで、37℃下に一夜、pH6.0でX−Gal基質によりインキュベートした(Dimri, G.P., et al., 1995, Proc Natl Acad Sci U S A,. 92: p. 9363-7)。老化細胞の数は、培地(対照)または誘導因子を含有する培地(処置)の添加後の時間間隔で顕微鏡(20倍で約10フィールド)下に細胞を計算することによって測定した。85%を超える高率の細胞がSA−β−Galに対する染色を示すことが予想された(図5を参照)。CHO細胞株を限界希釈によって単離し、個別にSEAPの産性増加について試験した。
【0084】
対照CHO細胞からのSEAPの発現を、細胞培養上清からの強化されたアルカリホスファターゼ活性として基質としてリン酸p−ニトロフェノールを使用し、420nmでの吸光度を5分間にわたりBioMekプレートリーダーでモニタリングすることによってモニタリングした。RPシフト下にCHO細胞からのSEAPの分泌増加を2mMの存在下(誘発)または非存在下(対照)に1週間にわたって測定した。誘導因子を有さない培養から測定されたSEAPの量は1週間にわたってわずかに増加したが、ドキシサイクリン誘導因子を有する培養からのものはほんの数日で30倍にも増加した。空のベクターを収容するCHO細胞は、誘導因子ドキシサイクリンに曝露されずに老化誘発因子を含有する細胞のものと同様のSEAP活性を示した。
【0085】
当技術分野では、本明細書で証明されているように非造血細胞における抗体関連タンパク質が、培養真核細胞においてかかる異種タンパク質の異種タンパク質産生を増加させる請求された試薬および方法の一般性を示すことが理解されるであろう。
【0086】
前述の開示は、本発明の一部の具体的な実施形態を強調するものであり、それのすべての変更および代替等価物が添付の特許請求の範囲に記載された本発明の精神および範囲内であることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】老化を介在するp53およびRb経路を示す図である。
【図2】老化誘発ペプチド(STP)の誘導後の細胞増殖を遮断する時間的経過を示す図である。
【図3】STPの誘導後のハイブリドーマ細胞から分泌されたモノクローナル抗体の産生増加を示す図である。
【図4】STPの誘導後のチャイニーズハムスター卵巣細胞から分泌したアルカリホスファターゼの産生増加を示す図である。
【図5】モノクローナル抗体を産生する過程を示す図である。
【図6】多重クローニング部位(MCS)および調節プロモータを有する本発明の組換え発現構築物(LNtCtX)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え発現構築物を含んで成る細胞株であって、前記組換え発現構築物が1つもしくは複数のCyモチーフまたは1つもしくは複数のアンキリン繰り返しモチーフをコードする核酸を含んで成り、かつ前記組換え発現構築物が少なくとも2つのテトラサイクリンオペレータ要素を含んで成る誘導転写調節要素をさらに含んで成り、前記細胞株がハイドリドーマ融合パートナー細胞株である細胞株。
【請求項2】
前記細胞株が骨髄腫細胞株、またはハイブリドーマを発生するマウス脾細胞との融合に適した細胞株である、請求項1に記載の細胞株。
【請求項3】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列(Lys/Arg)−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する1つもしくは多数のCyモチーフをコードする、請求項1に記載の細胞株。
【請求項4】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列(Lys/Arg)−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する1つもしくは多数のCyモチーフをコードする、請求項2に記載の細胞株。
【請求項5】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列(Lys/Arg)−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する多数のCyモチーフをコードし、前記多数のCyモチーフが前記モチーフのペプチド多量体として発現される、請求項3または4に記載の細胞株。
【請求項6】
前記Cyモチーフが配列番号6〜21によって識別されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする、請求項5に記載の細胞株。
【請求項7】
前記組換え発現構築物が同一または異なるアミノ酸配列を有する多数のCyモチーフをコードする、請求項6に記載の細胞株。
【請求項8】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列Xaa−Xaa−Xaa−His−Asp−Ala−Ala−Arg−Xaa−Gly−Phe−Leu−Asp−Thr−Leu−Xaa−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する1つもしくは多数のアンキリン繰り返しモチーフをコードする、請求項1に記載の細胞株。
【請求項9】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列Xaa−Xaa−Xaa−His−Asp−Ala−Ala−Arg−Xaa−Gly−Phe−Leu−Asp−Thr−Leu−Xaa−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する1つもしくは多数のアンキリン繰り返しモチーフをコードする、請求項2に記載の細胞株。
【請求項10】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列Xaa−Xaa−Xaa−His−Asp−Ala−Ala−Arg−Xaa−Gly−Phe−Leu−Asp−Thr−Leu−Xaa−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する多数のアンキリン繰り返しモチーフをコードし、前記多数のアンキリン繰り返しモチーフが前記モチーフのペプチド多量体として発現される、請求項8または9に記載の細胞株。
【請求項11】
真核細胞培養からのタンパク質の収量を増加させる方法であって、
(a)テトラサイクリンオペレータ要素を含んで成る誘導転写調節要素を含む化合物と請求項1に記載の細胞培養を接触させるステップと、
(b)前記細胞培養からタンパク質分画を収集するステップと、
を含んで成る方法。
【請求項12】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列(Lys/Arg)−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する1つもしくは多数のCyモチーフをコードする、請求項11に記載の細胞株。
【請求項13】
前記組換え発現構築物が、アミン酸配列(Lys/Arg)−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する多数のCyモチーフをコードし、前記多数のCyモチーフが前記モチーフのペプチド多量体として発現される、請求項11に記載の細胞株。
【請求項14】
前記Cyモチーフが、配列番号6〜21によって識別されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする、請求項11または12に記載の細胞株。
【請求項15】
前記組換え発現構築物が、同一または異なるアミノ酸配列を有する多数のCyモチーフをコードする、請求項14に記載の細胞株。
【請求項16】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列Xaa−Xaa−Xaa−His−Asp−Ala−Ala−Arg−Xaa−Gly−Phe−Leu−Asp−Thr−Leu−Xaa−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する1つもしくは多数のアンキリン繰り返しモチーフをコードする、請求項11に記載の細胞株。
【請求項17】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列Xaa−Xaa−Xaa−His−Asp−Ala−Ala−Arg−Xaa−Gly−Phe−Leu−Asp−Thr−Leu−Xaa−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する多数のアンキリン繰り返しモチーフをコードし、前記多数のアンキリン繰り返しモチーフが前記モチーフのペプチド多量体として発現される、請求項16に記載の細胞株。
【請求項18】
(a)TATA配列を含んで成る最小のプロモータと、(b)前記TATA配列から下流の2つの段階的オペレータと、(c)前記TATA配列の上流の2つの段階的オペレータと、を含んで成る組換え発現構築物。
【請求項19】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列(Lys/Arg)−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する1つもしくは多数のCyモチーフをコードする、請求項18に記載の組換え発現構築物。
【請求項20】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列(Lys/Arg)−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する多数のCyモチーフをコードし、前記多数のCyモチーフが前記モチーフのペプチド多量体として発現される、請求項19に記載の組換え発現構築物。
【請求項21】
前記Cyモチーフが、配列番号6〜21によって識別されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする、請求項19または20に記載の組換え発現構築物。
【請求項22】
前記組換え構築物が、同一または異なるアミノ酸配列を有する多数のCyモチーフをコードする、請求項20に記載の細胞株。
【請求項23】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列Xaa−Xaa−Xaa−His−Asp−Ala−Ala−Arg−Xaa−Gly−Phe−Leu−Asp−Thr−Leu−Xaa−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する1つもしくは多数のアンキリン繰り返しモチーフをコードする、請求項18に記載の組換え発現構築物。
【請求項24】
前記組換え発現構築物が、アミノ酸配列Xaa−Xaa−Xaa−His−Asp−Ala−Ala−Arg−Xaa−Gly−Phe−Leu−Asp−Thr−Leu−Xaa−Xaa−Leu(Xaaは任意のアミノ酸である)を有する多数のアンキリン繰り返しモチーフをコードし、前記多数のアンキリン繰り返しモチーフが、アミノ酸配列Xaa−Xaa−Xaa−His−Asp−Ala−Ala−Arg−Xaa−Gly−Phe−Leu−Asp−Thr−Leu−Xaa−Xaa−Leu(Xaaは前記モチーフのペプチド多量体として発現される任意のアミノ酸である)を有する、請求項23に記載の組換え発現構築物。
【請求項25】
前記ハイドリドーマ融合パートナー細胞株が、Sp2/0−Ag14マウスB細胞骨髄腫、YB2/0ラットBリンパ芽球;K6H6/B5ヒトBリンパ腫/マウス骨髄腫、NS1ヒトリンパ芽球、FOマウス骨髄腫、Y3−Ag1.2.3ラット骨髄腫、またはP3X63−Ag8−653ヒト骨髄腫である、請求項1に記載の細胞株。
【請求項26】
前記細胞株がCHO細胞株である、請求項1に記載の細胞株。
【請求項27】
前記細胞株がNS0細胞株である、請求項1に記載の細胞株。
【請求項28】
抗体産生マウス脾細胞と請求項1のハイドリドーマ融合パートナー細胞株の細胞を融合するステップを含んで成るハイドリドーマ細胞を産生する方法。
【請求項29】
前記ハイドリドーマ細胞が抗体を産生する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アンキリン繰り返しモチーフが、配列番号22〜25によって識別されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする、請求項8または9に記載の細胞株。
【請求項31】
前記アンキリン繰り返しモチーフが、配列番号22〜25によって識別されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする、請求項10に記載の細胞株。
【請求項32】
前記アンキリン繰り返しモチーフが、配列番号22〜25によって識別されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする、請求項16または17に記載の細胞株。
【請求項33】
前記アンキリン繰り返しモチーフが、配列番号22〜25によって識別されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする、請求項23または24に記載の細胞株。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−521832(P2007−521832A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553115(P2006−553115)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/041742
【国際公開番号】WO2006/028480
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(506198366)クロネックス・ディベロップメント・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CLONEX DEVELOPMENT, INC.
【Fターム(参考)】