説明

細胞培養処理システム

【課題】多様な細胞培養プロセスが実施できる専用装置は大型で複雑化してしまい、また、コストが高くなる。
【解決手段】細胞・組織に応じて、必要な工程を担う処理装置を準備し、各々の処理装置は、滅菌または除染可能な密閉空間を着脱手段により連結することで、必要な処理装置を取捨選択して組み合わせて密閉性と無菌性を保ちつつ連結可能できる細胞培養処理システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、生物学、創薬、薬学等の分野において最適な細胞等の培養装置に関するものである。特に、再生医療または、バイオ医薬生産のために細胞増殖、細胞による組織化を行う細胞、組織、臓器等(以下、細胞組織等という。)の細胞培養処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトや動物の細胞を用いて、失われた、または機能低下を起こした組織や臓器を修復する再生医療へ期待が高まり、体性細胞、体性幹細胞の増殖や組織化の研究開発が進展し、更にES細胞の研究やiPS細胞を作成、増殖する技術開発が進展している。
【0003】
これら治療に用いられる細胞、組織、臓器を体外で培養し、さらに組織化するには、安全性や高品質化、ハイスループット性、トータル製造コスト低減等の問題を解決した細胞培養処理システムが望まれている。
【0004】
再生医療のように、ヒトや動物の体内に移植して治療を行う目的で、細胞の増殖や組織化を行う場合、増殖や分化あるいは組織化を有効に効率的に行わなければならない。その上、ヒトや動物の体内に移植して治療するのであるから、安全性の確保が重要となる。
この安全性の一つには、異物、粉塵の侵入を防ぐとともに、雑菌の侵入を防ぎ無菌性を維持することが必要である。二つ目としては、特に患者本人の細胞を培養(自家培養)する場合、他人や他種の細胞、自家以外の細胞やその細胞由来のウィルス、バクテリアなどが混入することを防がなければならない。
安全性の維持のためには、設備費や維持費が非常に大きい設備であるクリーンルームが使われているが、これでは、培養した、細胞、組織のコストも大幅に上昇してしまう。
更に、培養を自動化する細胞培養装置にあっては、人の作業によって培養するのと同様にGMPにより、定められた作業手順や作業内容を遂行し、実際に行われていることを確認し、それを記録、保存する必要があり、機械装置の特質を生かして、これらを行えば、より効率的かつ確実に培養及びその保証を行うことができる。
一方、培養には、採取した組織からの細胞の分離、分離した細胞から目的の細胞を単離、細胞の初代培養、増幅培養・継代培養、組織化、細胞・組織の包装、などの工程が考えられるが、培養しようとする細胞や組織によっては、それら工程の1部は必要がない場合があり、また、それらの工程は順序が入れ替わったり、一部が必要なかったり、工程を戻って何度か繰り返したりする場合がある。
また、各工程を遂行するに要する時間は、工程によって差異を生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-054690
【特許文献2】特開2004-350640
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、多様な細胞培養プロセスが実施できる専用装置は大型で複雑化してしまい、また、コストが高くなる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の細胞培養処理システムは、第一処理装置と第二処理装置を含む複数の処理装置を、着脱手段を介して互いに着脱可能に接続する細胞培養処理システムであって、前記第一処理装置は、基台と、前記基台上に備える培養プレート等を搬送するロボットと、前記ロボットの可動雰囲気を外気から遮断する筺体と、前記筺体の内外で培養プレート等を受け渡しする開口部を開閉する開閉扉と、除染ガスを供給する除染装置と、前記第2の処理装置と接続する着脱手段と、を備え、前記第二処理装置は、下部に移動手段を備えることを特徴とする細胞培養処理システム。
【0008】
このような細胞培養処理システムは、培養プロセスの種類やスループット、生産量に応じて処理装置を増減することが容易となる。
【0009】
本発明の細胞培養処理システムは、前記着脱手段により前記第二処理装置が前記第一処理装置の前記筺体に接続されたときに、該着脱手段を介して前記第一処理装置の前記除染装置から前記第二処理装置に対して除染ガスを供給する配管が接続されることを特徴とする。
【0010】
これにより、着脱手段により離脱される処理装置においても、搬送装置の基台と接続しているときには第二処理装置内部にも除染ガスを供給することができる。処理装置内部の細胞培養に悪影響を及ぼす菌や異物・他の細胞の混入を防止することができる。
【0011】
本発明の細胞培養処理システムは、前記着脱手段を複数備えており、該着脱手段を介して、複数の前記第二処理装置を前記第一処理装置の前記匡体に選択的に着脱可能であることを特徴とする。
【0012】
これにより、着脱手段を介して第二処理装置を増減することで各処理装置の組み合わせを変えることができ、多くの種類の細胞、組織等の培養プロセスに対応できる。また、処理装置にはそれぞれが識別可能な固有のIDを持っていて、着脱手段の何れのポートに着脱しても動作できて、その動作ログや通信ログ測定結果は、それぞれが識別可能な固有のIDとともに統合制御装置へ電気信号として送受信することで検体である細胞等が他の細胞と混ざることがないように管理することができる。
【0013】
本発明の細胞培養処理システムは、前記第一処理装置を複数備えていることを特徴とする。
【0014】
前記開閉扉の外側に前記除染装置からのガス供給口備えることで、開閉扉の外側の除染することを特徴とする請求項2記載の細胞培養処理システム。第二処理装置と搬送装置の筺体が連結した後であって、細胞培養の動作を行う前において、連結前に外部雰囲気にさらされた異物混入の可能性のある箇所について除染・除菌をすることができる。このため、各処理装置内に異物を持ち込む危険性が軽減される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の細胞培養処理システムは、着脱手段を介して処理装置を増減することで各処理装置の組み合わせを変えることができ、多くの種類の細胞、組織等の培養プロセスに対応できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は細胞培養処理システムを示した平面図である。
【図2】図2は図1の実施例と異なる細胞培養処理システムを示した平面図である。
【図3】図3は、本発明の搬送装置11の一部切り欠き斜視図である。
【図4】図4は、搬送ロボット22を示した斜視図である。
【図5】図5は、開閉扉51を示した斜視図である。
【図6】図6は、開口部24が連通動作を説明するための説明図である。
【図7】図7は、着脱手段16を示した斜視図である。
【図8】図8は、着脱手段16の接続動作を説明するための説明図である。
【図9】図9は、細胞培養処理システムの制御ブロック図である。
【図10】図10は、培養プレート等を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
多種類の培養プロセスに用いられる搬送装置と処理装置等からなる細胞培養処理システムを、最小の床専有面積で、省処理時間で実現した。
【0018】
図1は、本発明の細胞培養処理システムの実施例の平面図である。また、1aは細胞培養処理システムであり、11は第一処理装置(搬送装置)であり、12は分注装置であり、13は恒温装置であり、14は細胞シート積層化装置であり、15は培養プレート等の搬出入装置であり(第二処理装置12〜15)、16は着脱手段である。図面中央の6角形の搬送装置11の側面に着脱手段16を備えている。着脱手段16は細胞培養装置と、分注装置12、恒温装置13、細胞シート積層化装置14、並びに培養プレート等の搬出入装置(12〜15に示す装置を処理装置とよぶ。)と、を着脱可能に接続するものである。搬送装置と各処理装置は、外界と遮断する密閉空間(筺体)を備え、搬送装置と各処理装置が接続後は、連続した一つの密閉空間となる。各処理装置には、搬送装置と接続したときに、除染・除菌ガス導入可能な除染・除菌ガス供給口も接続されることで、各処理装置内に除染ガスが供給される。これにより細胞積層化システム1aの内部のすみずみまで除染・除菌が可能となっている。
【0019】
このような細胞培養処理システム1aは、各処理装置を筺体で覆っており、筺体上部にHEPAフィルタとファン等を組み合わせた(図示しない)ファン・フィルタ・ユニットを備えることで清浄雰囲気(クラス100以下)としてもよい。
【0020】
細胞培養処理システム1aは、着脱手段16を介して処理装置を接続できるので、接続できる数量範囲で装置台数を増減することができる。このため、多くの種類の細胞、組織等の培養プロセスに対応できるように各処理装置の組み合わせを変えることができる。用途により使い分けられるという利点がある。たとえば、細胞懸濁液の入庫、培養プレートへの細胞播種、培地交換、細胞シートの積層化、積層化細胞組織の出庫などである。
【0021】
図2に示す細胞培養処理システム1bは図1に示すものとは別の実施例である。この細胞培養処理システム1bは、搬送装置11aの外周に各種処理装置を接続して、搬送装置11aの左側に着脱手段16を介して受渡装置17を備えて、その受渡装置17のさらに左側に着脱手段16を介して別の搬送装置11bを接続している。このような細胞培養処理システム1bによれば、1つの搬送装置に取り付け可能な着脱手段16の数量に限られることなく、処理装置を増設することができる。このため、培養プロセスの進歩や変更による処理装置のレイアウト変更も容易にでき、プロセスの進歩や複雑化、生産量の増加にともなう処理装置の増設も容易にできる。ここで、受渡装置17とは、たとえば、培養プレート等の載置台と、内部を除染、除菌ガスを供給する除染ガス供給口等を筺体に備えており、筺体は、内部を密閉空間とできるよう培養プレート等の受け渡しのための開口部を密閉・開放できる開閉扉を備える。これにより、培養プレート等を異物が混入することがなく培養プレート等を搬送することができる。
【0022】
また、このような細胞培養処理システム1によれば、同機能の複数の処理装置を組み合わせたり、同時並行的に処理装置単独で運転したり同時並行的に処理装置単独で運転したりすることができるため、ハイスループットで効率的な生産ができる。
【0023】
細胞培養処理システム1は、細胞、組織等の培養等のプロセスに応じて、処理装置を組み合わせて構成されるものである。各処理装置にはモータなどのアクチュエータを動作させるコマンドを搭載し、環境モニタなどの各種センサからの信号、測定情報、動作ログなどの電気的信号を送受信及び記録する制御装置を備える。また、細胞培養処理システム1には、処理装置間の動作の連係をとり、培養処理プロセスを実行した処理装置のID情報と環境情報を含めた測定結果(動作ログ及び環境等のログ)および細胞組織等の検体情報とを関連付けした情報等を記憶管理する統合制御装置を備える。処理装置のID情報と関連付けて制御装置から統合制御装置へ電気的信号を送受信することで、搬送装置から1の処理装置を離脱して別の処理装置に付け替えたときでもどの処理装置と電気的信号をやり取りしたのか、統合制御装置が認識することができるのである。これにより、様々な培養プロセスに対応可能で、省力化ができ、効率的に細胞、組織を生産でき、製造コストが低減できる。
【0024】
培養処理に必要な機能をすべて搭載した一体型の上記大型システムは一人の患者由来の細胞を処理している間は他の患者由来の細胞の処理を割り込ませることは難しく装置の占有時間が長いのに対し、本システムは必要に応じて処理装置を着脱できるので装置占有時間の調整が容易である。処理装置の一部が故障した際には、その部分だけ切り離して修理対応ができるので、システム全体への影響を最小限にとどめることができる。これらの特徴は、不定期かつ患者ごとに処理スケジュールが異なり、不具合に対して迅速な対応が求められる医療分野では有効である。
【0025】
細胞組織の培養処理手順の管理を行う機能を持つとともに、培養の経過や培養環境の計測結果を送信する通信手段を持ち、各処理装置へ培養処理プロセス実行を指示するとともにデータの整理と保存をする機能を持つ制御装置をもつため、GMP(Good Manufacturing Practice:製剤の製造・品質基準)に準拠した生産が可能となる。
【0026】
図3は、本発明の第一処理装置(搬送装置11)の一部切り欠き斜視図である。
21は、平面視したときに六角形である基台であり、22は、基台21の上部中央に備える搬送ロボットであり、23は、スカラ型搬送ロボット22を外部雰囲気から遮断する(筺体の側壁23aと筺体の天井部23bとからなる)筺体であり、24は、筺体23の外部と筺体内部との間で被搬送物を搬出入するための開口部であり、25a、25bは開口部24を密閉・解放する開閉扉である。また、16は、基台の側面に取り付けられた搬送装置11と他の分注装置12等とを着脱する着脱手段である。このため、着脱手段16によって搬送装置11に密閉性と無菌性を保って結合及び離脱できる。このため、内部の細胞、組織は、雑菌や、他の細胞等に汚染されることなく、安全性が確保される。なお、本実施例において、より一層処理装置の装置内部をダスト量が最小となるように保つために、ヘパフィルタ27などによる空気清浄装置28を備える構成としてもよい。
【0027】
また、搬送装置11の天井部23bの上部にあるファン29に、除染・除菌装置からの除染・除菌ガス供給配管35(除染・除菌ガス供給口36)を備え、筺体内部に筺体内部のから除染・除菌ガスを排気回収して除染・除菌装置へ送る除染・除菌ガス排気回収配管37(除染・除菌ガス供給口38)を備えている。除染・除菌は、処理装置の密閉空間内や導入された密閉容器の外部に付着した雑菌や細胞を死滅させるために、処理装置の密閉空間内部へ細胞を導入する前に行われる。さらに、密閉空間内のダストもヘパフィルタなどのフィルタによって除去される。除染・除菌装置には、過酸化水素の蒸気や、オゾン等種々な除染手段が考えられるが、有効でかつ安全性が確保され、除染・除菌のバリデーションが確立できるものを採用する。この除染・除菌は、単独の処理装置でも複数台接続した場合でも可能であり、また、処理装置同士の結合の際、外部に暴露されており、接続した際に面で囲まれ密閉された小空間でも除染・除菌を可能にしている。
【0028】
筺体23は、スカラ型搬送ロボット22の稼働範囲より少し内部容積を大きく備える。スカラ型搬送ロボット22やアームスライダ型搬送ロボットである場合は、筺体の内部空間形状は円柱形状となり、多関節型搬送ロボットである場合には、半球形状とすることで、内部容積を最小限にすることができる。また、筺体上部には、除染のガスを筺体内に供するためのガス供給口及び排気口を備える。これにより、筺体は、その内部を除染するために最小限の過酸化水素ガスを供給することで、短時間で所定濃度のガス雰囲気に到達し、所定の除染・除菌強度を維持し、短時間で除染・除菌工程を終えることができる。
【0029】
筺体内部の素材は、過酸化水素ガス等の除染剤による劣化が少ない部材を使用し、かつ部材の接合部には適切なコーキングを施し所定の密閉度を維持する。たとえば、筺体内部の金属はステンレスなどであり、可動部分やコーキング材はシリコーンゴムなどである。過酸化水素ガスによる経年劣化する部材を使用する際には、取り換え容易な構造とする。ガスによる劣化を最小限として、長期的に使用できる装置とすることができる。
【0030】
各処理装置は、クリーンルームの様に作業者が入室することはなく、また、必要最小限の大きさの空間であるために、除染・除菌時間を短縮し無菌性を保ちやすく、安価に製造できる。しかも必要に応じて組み合わせが可能であるために、第一処理装置(搬送装置)及び第二処理装置(各処理装置)を組み合わせたシステム全体としても安価となる。そのため生産する細胞、組織のコストも低減できる。
【0031】
図4に示すスカラ型搬送ロボット22は、筺体23に覆われた室内であって、基台21の上部中央に設置されている。これにより、スカラ型搬送ロボット22の(図中には1点鎖線で示す)旋回中心線31から開閉扉までの距離及び筺体内部壁面までの(最短)距離Rが一定となる。
【0032】
スカラ型搬送ロボット22は、稼働範囲を最小にすることができることから筺体23の内部体積を最小とすることができる。このため、除染のためガス供給する際には、最少量のガスを供給することで所定の除染・除菌強度へ短時間で到達することができる。また、筺体23内部体積が大きいと筺体23内部にガスがいきわたらず、また、構造が複雑となり除染しきれない箇所が生じるが、このような課題に対してもその体積を小さくすることで防止することができる。
【0033】
スカラ型搬送ロボット22は、ロボット基台41が基台21にフランジ42を介して取り付けられている。ロボット基台41の上部にはスカラ型搬送ロボット22を昇降動作させるための昇降手段43を備えている。昇降手段43は、ボールねじ軸をモータの作動により回転させることで(図示しない)可動部材を図中のZ方向の直線移動可能とするものである。昇降手段43の可動部材上部にはスカラ型搬送ロボット22を水平面内で図中のθで示す方向に旋回動作させるための旋回手段45を備える。旋回手段45は、ベアリング等の軸受部材とモータ等と旋回軸部材45とからなり、旋回軸部材の(図中には1点鎖線で示す)旋回中心線31は鉛直方向に向いている。旋回軸部材45の端部には、第二アーム46が備えられ、また、第二アーム46上部には旋回中心線31と平行する回転軸を有する第2アーム47が備えられ、さらに、第2アーム47上部に旋回中心線31と平行する回転軸を有して、被搬送物であるマイクロプレート48を上部に載置するエンドエフェクタが備えられている。このスカラ型搬送ロボット22は、第二アーム46と第二アーム48の回転軸に取り付けられたプーリとゴムベルトもしくはスチールベルトにより第二アームと第二アーム47とエンドエフェクタ48とが同期動作して直進動作もしくは所望する曲線動作することができる。なお、スカラ型搬送ロボット22に備えられた各種アクチュエータは、(図中太枠で示す)制御装置50からの電気的信号に基づいて作動されるものである。これにより、スカラ型搬送ロボット22は、筺体23に覆われた除染・除菌雰囲気内部でマイクロプレート、ボトル、又は分注装置のディスポチップ(各種装置に供給する消耗品)等を搬送することができる。
【0034】
このようなスカラ型搬送ロボットにより、第二アーム47、第二アーム48を水平面内で回動することで被搬送物を搬送する動作を行うため、搬送動作時における高さ方向の可動範囲を最小に抑えることができる。
【0035】
スカラ型搬送ロボット22の回動箇所には、フッ素系樹脂等のOリングやシール部材が取り付けられている。これにより、除染のためのガスがスカラ型搬送ロボット22の内部に流入して内部部材が腐食するのを防止している。
【0036】
スカラ型搬送ロボット22のロボット基台41の周囲と、昇降手段43の可動部材の周囲との間に樹脂製の蛇腹シール44を取り付けている。このためスカラ型搬送ロボット22が昇降動作した時も、除染・除菌のためのガスがスカラ型搬送ロボット22の内部に流入して内部部材が腐食するのを防止している。
【0037】
エンドエフェクタは平板形状をしており、培養プレート等をその上部に載置することができる。エンドエフェクタ上部であって載置された培養プレート等の外周には、円錐形の突起49もしくは、ほぼ直方体の培養プレートであればその4隅又は、側面をガイドする案内部材を備える構成とすることができる。
【0038】
スカラ型搬送ロボットの他、搬送手段として産業用多関節ロボットや、スライダロボット等を用いてもよい。
【0039】
図5に示す開閉扉25aは、基台上に駆動手段を備えて、駆動手段55の可動部材55aに扉部材56を取り付けている。扉駆動手段55は、エアシリンダであり、上下動させることで扉を開閉することができる。基台21上の駆動手段55が取り付けられている周囲に蛇腹シール57の一端を取り付けて、他端を可動部に取り付けている。これにより、除染・除菌のためのガスが扉駆動手段の内部に流入して内部部材が腐食するのを防止している。図5(A)は、扉駆動手段55の作動により扉部材56が降下して開口部24が筺体23外部と連通となっている状態を示している。図5(B)は、同様に扉部材56が上昇して開口部24が閉じられており、筺体23内部が密閉された状態を示している。扉部材56と筺体23(開口部24周辺)と接触部分にはシリコーンシール57を(扉側もしくは筺体側に)取り付けている。このシリコーンシールはチューブ状となっていて、チューブ内部に圧縮気体を注入することで膨らみ筺体と扉部材56の間をシールするものであってもよく、開閉扉の開閉による押圧でシールを押しつぶしてシールするものであってもよい。
【0040】
図3に示す開閉扉25bは筺体23壁面23aに平行な回転軸を有する回転扉である。扉部材56と筺体23(開口部24周辺)と接触部分にはシリコーンシールを(扉側もしくは筺体側に)取り付けている。このような扉では、回転軸にモータもしくはシリンダとリンク部材を取り付けることにより扉を回転駆動させる構成とすることができる。このような扉では、回転力によりシリコーンシールを扉と筺体内部の壁面との間で均等に押しつぶすことでシールができる。回転駆動する箇所にはフッ素系の樹脂材料のOリングもしくはフッ素系のVシールなどを使用することで除染・除菌のためのガスが回転手段の内部に流入して内部部材が腐食するのを防止している。
【0041】
図6は、第一処理装置(搬送装置)と第二処理装置とが接続するときの状態を説明する説明図である。23aは、第一処理装置の筺体23の壁面23aである。開閉扉56の図面右側(図中→Aで示す領域)は筺体内部で左側(図中Cで示す領域)は第一処理装置(搬送装置)11の筺体外部である。第二処理装置の扉部材56より左側(図中→Bで示す領域は、第二処理装置の筺体23cの内部である。Dで示す領域は、第一処理装置と第二処理装置の外部であるが、第一処理装置と第二処理装置の開口部24、24aが連通となったときは、筺体内部となる領域である。
【0042】
図6(A)は、第一処理装置と第二処理装置とを接続する前の状態を示している。図6(B)は、図6(A)の状態から第二処理装置(図中左側)を、シール部材58cとシール受け58bとが当接直前位置まで図中右側に移動させた状態を示している。図6(C)は、内部がチューブ状となっているシール部材58cに気体を流入させて膨らませることでシール受け58bとシール部材58cとが当接して開口部24、24aの周囲を外部から遮断した(内部を密閉した)状態を示している。図中Dで示す領域は図6(C)の状態で外気からも筺体内部からも隔離された領域となっている。その時、この領域Dに除染・除菌ガスを除染・除菌ガス供給口35aから領域Dに供給して(場合によっては、図示しない除染・除菌ガス排気回収口を設けて)、領域Dを除染・除菌する。これにり、開口部が連通したときに、筺体内部に細胞培養に悪影響を与える異物混入を防止できる。図6(D)では、第一処理装置の筺体23aに備えて内部がチューブ状となっているシール部材58aから気体を流入させて膨らませて扉部材56に当接している状態から、その気体を抜いて筺体23a内部の領域Aと領域Dとを連通させた状態を示している。それとともに、第二処理装置の筺体23cに備えて内部がチューブ状となっているシール部材58dから気体を流入させて膨らませて扉部材56aに当接している状態から、その気体を抜いて筺体23c内部の領域Bと領域Dとを連通させた状態を示している。これにより、シール部材58と扉部材56との間に隙間を設けることになり、開閉扉の開閉動作によってシールが摩耗することを防止できる。
【0043】
図7に示す着脱手段26は、基台21の側面下部に備えられており、位置決めピンと61と、側面に対して垂直方向に突出して備えるL字形状の鍵部材62と、鍵部材を水平直線方向に進退動作及び回転動作させる鍵駆動手段と、着脱手段26の作動により搬送装置と分注装置等を接続したこと、もしくは離間したことを検知する着脱検出センサ64を備える。65は、コネクタであり、統合制御装置と処理装置との電気信号の送受信を行うコネクタ、第二処理装置に電力を供給するコネクタ、並びに第二処理装置に圧縮気体や真空その他気体(二酸化炭素、窒素)液体を供給するコネクタ等のコネクタである。66は、除染・除菌装置から配管を介して除染ガスを供給する配管コネクタである。67は、処理装置の筺体内部から排気させる除染・除菌ガスの排気を回収する配管コネクタであり、除染・除菌ガス排気回収口は除染・除菌装置に配管されている。
【0044】
この実施例において着脱手段26は、鍵駆動手段26aを作動して、鍵部材を接続する装置(図7Aに示す矢印方向)に向けて進行動作した後、鍵部材を(図7Bに示す回転方向に)回転した後、鍵部材を(図7Cに示す矢印方向に)後退動作する。このとき、基台の壁面に突出して備える位置決めピン61は、接続する第二処理装置(分注装置等)の基台の側面であって位置決めピン取り付け位置に対応する位置に取り付けられて位置決めピン案内部材(凹部を有して位置決めピンの外形より少し大きな穴部を有する部材)と嵌合する。これにより、搬送装置が分注装置を引き込んで所定の位置に連結することができる。壁面に突出して備えるセンサ64は処理装置が接続したときに検知して搬送装置と処理装置が接続したことを制御装置又は統合管理処理装置に電気信号を送信する。また、この連結により通信線のコネクタも連通となり(無線LANにより接続している場合には、センサ等の電気信号などを受けて)第二処理装置の制御装置から接続した処理装置自体のID情報を統合制御装置へ電気信号を送ることで、統合制御装置は第一処理装置にどの第二処理装置が連結したかを認識することができる。
【0045】
センサによりピンが挿入されたことを検知して、引き込み動作を開始することで、着脱支援をする構成とすることができる。図8を参照して引き込み動作の説明をする。図8(A)は、第一処理装置の着脱手段16と、第二処理装置の着脱手段受け16aとは離間していて接続していない状態を示している。図8(B)は、第二処理装置を図中右側に移動して、センサ64とセンサ受け64aとが当接下状態を示している。位置決めピン61先端は位置決めピン受け61aの凹部に挿入されている。これにより、第一処理装置と第二処理装置が着脱動作時に位置ずれを起こすことなくスムーズに接続することができる。また、センサ64からの接続動作開始の電気信号は制御装置50に送られる。これにより、鍵部材62を着脱手段受け16aに向けて進行させる動作を行う(図8(B)に示す状態)。その後、鍵部材62の鍵駆動手段62aの作動により鍵部材は回転して、鍵部材受け62aと嵌合する(図8(C)で示す状態)。その後、鍵駆動手段の作動により鍵部材を後退させることで、着脱手段16は着脱手段受け16aを第一処理装置側に引き込むことができ、また、第二処理装置が動かないように第一処理装置に固定することができる。
【0046】
これにより、搬送装置に着脱手段を介して処理装置を増減することで各装置処理装置の組み合わせを変えることができ、多くの種類の細胞、組織等の培養プロセスに対応できる。
【0047】
搬送装置に着脱手段を備える同機能の複数の処理装置を組み合わせたり、同時並行的に処理装置単独で運転したり同時並行的に処理装置単独で運転したりすることができるため、工程に要する時間の差を吸収して、効率的な生産ができる。
【0048】
なお、着脱手段16は、処理装置と細胞培養装置11の基台21との間に備えるものであって、その機構はどちら側に備えてもその機能を発揮することができる。装置設計の便宜上、処理装置と搬送装置に(たとえば、処理装置の基台もしくは搬送装置の基台)のどちら側にもうけてもよい。また、着脱手段16の他の実施例として、たとえば、床に部材上面に凹部を有するブロック部材を備えて上部からピンを挿入することで位置決めでき、着脱動作によりコネクタが連結、離脱するように上下方向にコネクタが向いて取り付けられている着脱手段でであってもよい。
【0049】
本実施例の搬送装置11は、制御装置と配線を介して接続されることで制御装置からの電気信号等を受けて各種アクチュエータを動作することができ、除染・除菌ガスを供給する除染・除菌装置と配管を介して接続されていることから制御装置からの電気信号を直接又は間接に受けてアクチュエータもしくは除染・除菌装置を動作することができる。また、圧縮気体もしくは真空ポンプ装置と配管を介して接続されていることから制御装置からの電気信号を直接又は間接に受けてアクチュエータもしくは圧縮ポンプ装置及び真空ポンプ装置を動作することができる。また、電源手段と配線を介して接続されていることから電力が供給されている。この実施例においては、着脱手段に、制御装置からの電気信号等を送受信する配線のコネクタと、除染・除菌装置からの除染・除菌ガスを供給及び排気する配管のコネクタと、電源コネクタとを備える構成としてもよく。接続しようとする第二処理装置(分注装置等)の各コネクタと対応する位置にコネクタを配置して取り付けることで連結により制御装置からの電気信号等を送受信する構成とすることができる。
【0050】
上記第二処理装置(分注装置等)には、搬送装置とは別に真空ポンプ、コンプレッサ、バッテリ、無線LANによる電気信号受信機、処理装置制御装置を備える構成とすることができる。搬送装置の筺体に連結することで処理装置制御装置に電源が投入されもしくは統合制御装置との間において通信開始の信号を送受信することで処理装置を作動(使用可能状態と)する構成としてもよい。
【0051】
処理装置は、搬送装置、搬出入装置、単離初代培養装置、継代培養装置、恒温装置、チューブ連結ロボット、自動倉庫装置、搬送用レーン装置、その他培養・分注・搬送・測定(計量)・分析(観察)装置及び、物品(たとえば、マイクロプレート、チューブラック、ディスポチップ、ボトル、試薬チューブ・その他付属品)の貯蔵装置、計測装置、プレート等の搬出入装置、並びに除染・除菌装置等をいう。
さらに、上記処置装置の他に培養対象となる細胞や組織、臓器に応じて、各種の処理装置が使われる。たとえば、三次元スキャフォルドを用いて三次元新生組織を形成する三次元組織化装置、種々のバイオリアクタや圧力、引っ張り、圧縮などのストレス・ストレインを与える装置、輸送のためのパッケージングを行う包装装置などを含むものである。
【0052】
第一処理装置(搬送装置)は、基台と、基台上に備える培養プレート等を搬送するロボットと、ロボットの可動雰囲気を外気から遮断する(装置の側部と天井部を覆い、除染・除菌がガスをその内部に充満させて外部に漏れるのを防止する)筺体と、筺体内外で培養プレート等を受け渡しする開口部を開閉する開閉扉と、筺体内部に除染ガスを供給する除染装置と、着脱手段と、を備える構成とすることができる。また、別の構成として、第一処理装置の下部に移動手段を備える構成とすることができる。
【0053】
第二処理装置(搬出入装置、細胞単離初代培養装置、継代培養装置、恒温装置、チューブ連結ロボット、自動倉庫装置、搬送用レーン装置、細胞播種装置、培地分注装置、細胞シート積層化装置、その他培養・分注・搬送・測定(計量)・分析(観察)装置及び、物品(たとえば、マイクロプレート、チューブラック、ディスポチップ、ボトル、試薬チューブ・その他付属品)の貯蔵装置、計測装置、プレート等の搬出入装置、並びに除染装置等)は、基台と、基台の上部に備えて装置の側部と天井部を覆い、除染・除菌がガスをその内部に充満させて外部に漏れるのを防止する筺体と、筺体内外で培養プレート等を受け渡すための開口部と、開口部を開け閉めすることができる開閉扉と、基台下部にはコロもしくは車等の移動手段を備える分注装置、搬出入装置、単離初代培養装置、継代培養装置、恒温装置、チューブ連結ロボット、自動倉庫装置、搬送用レーン装置である。
【0054】
第二処理装置について以下に詳細説明する。
搬出入装置は、機材搬入用のドアを備え、培養に必要な細胞や培養液、薬剤、培養皿や遠沈管などの機材は、このドアから搬出入装置に導入される。
搬出入装置には、作業者が搬出入装置の外側から機材の移動や開封、開栓などを行うための、エラストマでできた、操作用グローブが備えられていて、導入した機材を培養処理装置付近まで移動できるようになっている。作業者の代わりに、ベルトコンベヤやロボットを内部に備えて、これを使用して、移動を行ってもよい。
【0055】
〈単離初代培養装置〉
単離初代培養装置は、搬出入装置から培養処理装置の搬送ロボットによって、導入された組織片を細分化するための細分化装置を備える。搬送ロボットによって、導入されるものは、組織片の他、遠沈管やシャーレ、培養液などが導入される。細分化の手段は限定しないが、細胞に与えるダメージを最小に押さえる方法をとる。また、細胞を取り出すための細胞分離装置を備える。細胞分離装置は、細分化された組織片の細胞外組織を酵素で分解し、(分解しつつ)回転させ、細胞を単離する。更に細胞の接着性や、細胞の大きさ形などの違いを利用して、目的の細胞を取り出すことができる。
【0056】
単離初代培養装置は、細胞片を細分化するための細分化装置としてミキサと、細胞片を収容する容器(たとえば、ボトル、または、プレート)からミキサに細胞片を入れる移動手段8(たとえば分注手段)を備える構成とすることができる。
【0057】
また、取り出された細胞を更に増やすための初代培養装置を備える。初代培養装置は適切なガス濃度を維持可能な恒温装置を備え、ここで細胞は、培養液中で、適切な環境下で次の継代培養が可能となる細胞数になるまで増殖する。
【0058】
単離初代培養装置は、細分化された細胞片をミキサから取り出す細分化された細胞片に培地を供給する培地供給手段と、細胞を37℃に保ちながら振とう動作する恒温振とう手段等を備える構成とすることができる。
【0059】
本実施例では、生体から摘出した組織の細分化装置、細胞分離装置、初代培養がひとまとめになって単離初代培養処理装置を形成しているが、細分化処理装置、細胞分離処理装置、初代培養処理装置とそれぞれを別々の処理装置としてもよい。
【0060】
〈継代培養装置〉
継代培養装置は、初代培養後の細胞の数を更に増やして、治療に足るだけの細胞数まで、増殖させる装置である。
本実施例では、細胞は、閉鎖形の密閉容器の中で培養される。細胞を大量に培養することにより、大きな装置となるため直接培養処理装置への結合はせず、閉鎖形の密閉容器と単離初代培養処理装置でできた細胞懸濁液は、チューブの結合によって、初代培養処理装置内の閉鎖形の密閉容器に搬送される。むろん処理装置同士を結合して、搬送ロボットによる移送を行ってもよい。必要に応じて、同じ処理装置を複数台連結して培養してもよい。
継代培養装置が備える恒温装置の中で、適切な環境下で、定期的な培養液の交換を行い、増殖させることができる。
【0061】
〈分注装置〉
分注装置は、大量に増幅した細胞の懸濁液を所定の枚数の温度応答性培養皿に均一かつ正確に播種し、必要に応じて培養皿の培地を取り除き、所定の量の新鮮な培地を添加する装置である。
継代培養装置からチューブで搬送された細胞懸濁液は、積層処理装置内に貯蔵されそこから複数の温度応答性培養皿に播種されるか、ダイレクトに複数の皿に播種される。播種された懸濁液内の細胞は、温度応答性培養皿に均一に接着する。
【0062】
〈細胞シート積層化装置〉
細胞シート積層化装置は、シート状になった細胞シートを複数枚重ね合わせ、細胞密度の非常に高い、移植用新生組織を作成する装置である。
温度応答性培養皿の細胞接着面上に形成した薄いシート状の細胞は、温度を変える(低下させる)ことによって皿から離れるため、培養皿の温度をクーラ(ペルチェ)等によって低下させ、細胞装置を取り出し、これを、ロボットやアクチュエータによって複数枚を重ね合わせる。重ね合わされた細胞シートは、一体化し、細胞密度の非常に高い新生組織となる。
この様に、細胞シート積層化装置は、細胞の播種、細胞シート化、細胞シートの剥離、を経て複数の細胞シートを積層化して、移植可能な新生組織を作る工程を担っている。
【0063】
〈恒温装置〉
恒温装置(インキュベータ)は、細胞を増殖させたり、新生組織を移植までの間、保存したりするための、ガス濃度、温度、湿度を適切に維持するためにある。
【0064】
〈チューブ連結ロボット〉
閉鎖形培養部内の細胞懸濁液等を他の処理装置の閉鎖形または無菌密閉空間に移動するために移動先の処理装置にチューブを連結または離脱させるためのもの。ソケット(接続部又は接続コネクタ)の連結または離脱時も無菌性、密閉性を維持する。なお、このような装置は、チューブにより処理装置間等で懸濁液を輸送する場合に使用することができる。
【0065】
〈自動倉庫装置〉
自動倉庫装置は、培養する細胞や組織に必要な、培養液(培地)、グロースファクター、薬剤、細胞、容器等を保管し、培養する細胞や組織に応じて、自動的に出庫し、搬出入装置や各処理装置の機器搬入様ドア部から各処理装置に供給する。
自動的な供給をしない場合は、自動倉庫の代わりに各機材を搬入するためのパスボックスが設置される。
【0066】
〈搬送用レーン装置〉
搬送用レーン装置は、各処理装置の密閉空間やチューブ連結装置のチューブを結合させるために所定の場所に誘導するためのガイドとなるもので、金属性のテープあるいは、レール、ガイドポストなどが使われる。なお、このような装置は、自動でチューブを接続する場合に使用することができる。
【0067】
〈その他装置〉
上記の処理装置の他に培養対象となる細胞や組織、臓器に応じて、各種の処理装置が使われる。たとえば、三次元スキャフォルドを用いて三次元新生組織を形成する三次元化装置処理装置、種々のバイオリアクタや圧力、引っ張り、圧縮などのストレス・ストレインを与える装置、輸送のためのパッケージングを行う包装装置などを付加する場合がある。
【0068】
本実施例の筺体23の開口部24外側と、接続する各処理装置(分注装置等)の開口部外側とが接続により接触する箇所には、双方又はいずれか一方に開口部内部を密閉するためのシリコーンシール部材が取り付けられている。これにより、装置同士が接続後にも内部の密閉性を保つことができ、また、除染ガスを筺体内に供給した際にも接続個所からガスが漏れることがない。
【0069】
〈統合制御装置〉
本実施例の搬送装置は、搬送装置との間で電気信号を送受信する制御装置を備える。また、制御装置は、統合制御装置との間で電気信号を送受信することができる。
統合制御装置は、各処理装置の動作の連係をとり(プレグラムに従って、個別の処理装置に電気的な命令を送受信して動作させ)もしくは、培養の経過や環境状態の変化を記録し、データベースを管理する(各処理装置の制御装置からの情報を収集して管理する)。さらに統合制御装置は、前記データを、外部のプリンタやコンピュータ、記憶装置にユーザの要求に応じて出力する。
【0070】
統合制御装置は、各処理装置とデータの共有、信号の授受を行うための通信手段を備える。通信手段は、RS23C iEEE、あるいは、有線、無線でも、セキュリティー上の問題を解決しておけばよい。更に、培養の条件設定や、細胞または患者のIDなどを入力し、運転開始、培養状況やデータベース閲覧などを行うための指示をおこなう入力装置を備える。さらに、培養の条件設定や、細胞または患者のID、培養状況などを表示する表示装置を備える。
【0071】
統合制御装置は、各処理装置の動作の連係をとる制御装置と、培養の経過や環境状態の変化を記録し、データベースを管理するデータベース管理装置に分離してもよい。
【0072】
図9は、細胞培養処理システムの制御ブロック図である。
各処理装置は、単独で使用できるよう、入力装置や表示装置を備えることがある。
【0073】
細胞培養処理システム1aでは、統合制御装置70aとデータ管理装置70bを備えている。50は搬送装置11の制御装置である。71aは、分注装置12の制御装置であり、71bは、恒温装置13の制御装置であり、71cは、細胞シート積層化装置14の制御装置であり、71dは、培養プレート等の搬出入装置15の制御装置である。
統合制御装置70aには、培養条件の設定や培養する細胞の情報等の入力と、培養処理プロセスを開始する指示を行う入力装置と、培養条件や細胞の情報、運転状況等を表示する表示装置、各処理装置からの情報を受けて、指示信号を発信すると共に、各処理装置から送られてくるデータをデータ管理装置に送る通信手段と各処理装置を制御する制御装置を備えている。
各処理装置は、単独で運転可能であるが、各処理装置間の通信を行い、培養処理プロセスを実行し、各処理装置を連係した全自動運転を行うための統合制御装置70によって、あらかじめ定められた自動運転が行われる。各処理装置と統合制御装置70とは、ランケーブルや無線ラン、その他の通信手段によって、通信が行われる。各処理装置から統合制御装置70には、運転の工程の経過情報、培養環境データ、培養工程の合否判定などのデータが送られる。統合制御装置から各処理装置には、各処理装置の除染・除菌プロセスや培養プロセスの開始指示が行われる。
【0074】
データ管理装置70bは、データの取り出しや保存先などの指示を入力する入力装置、送られてきたデータを整理しデータベース化するデータベース管理装置、指示内容や結果を表示する表示装置、データを別な記憶装置やプリンタなどにデータ出力する出力装置を備えている。
【0075】
除菌・除菌装置によって除染・除菌された各処理装置の密閉空間が、必要に応じて結合され、結合された密閉空間は無菌性を保ち、その中で生体から摘出されて密閉空間に導入された組織は、細分化され、酵素で分解され、細胞が分離され、単離される。その後、初代培養、増幅培養、組織化が行われ、無菌状態を保った移植可能な細胞懸濁液や、新生組織となる。細胞懸濁液や、新生組織は、検査され、包装され、出荷され、培養工程における諸データは、保存される。
【0076】
各工程の処理装置の制御装置と統合制御装置との役割分担を示している一例を示している。A1〜A16までの役割分担は以下のようになる。
A1.先ず統合制御装置の入力装置は操作者の使用権限をIDおよびパスワードで管理し、操作者の権限によって可能な操作内容を区別する。この入力装置から患者ID、培養条件、等の必要な項目を入力する。
これによって、統合制御装置内の制御装置では、組み込まれた種々の運転手順のプログラムの中から、適切な運転手順のプログラムが選択される。
A2.入力完了後、運転に使われる処理装置の運転準備が完了した信号を各処理装置から統合制御装置に発信する。
A3.統合制御装置は運転に関与する各処理装置からの運転完了信号を確認する
A4.確認ができたら、統合制御装置は、処理装置の接続指令を各処理装置に出す。
A5.接続した処理装置は、確実に接続をしたことをセンサ等でチェックする。
A6.確実に接続の完了をしたことを確認したら各々の処理装置から統合制御装置に発信する。
A7.統合制御装置は、処理装置と除染装置に除染工程開始の指示を出す。
A8.除染・除菌装置が接続された処理装置に、除染が実行される。
A9.除染が完了すると除染装置および除染された処理装置から統合制御装置に除染完了信号が発信される。(単独で運転をする処理装置がある場合は、その処理装置に対しても除染する。各処理装置の除染状態(除染済みか未除染か)は処理装置IDとともに統合制御装置に記憶される。
A7.除染・除菌完了の信号を受けた統合制御装置は、最初に運転する処理装置に最適なプログラムによる運転の指令を与える。
A8.運転指令を受けた処理装置は、指示されたプログラムで運転する。
A9.運転中の処理装置は、動作の時刻、環境データ、チェックポイントの確認結果など、あらかじめ定められた項目のデータを定期的に統合制御装置に送る。これらのデータは、各処理装置でも保存してもよい。
A10.統合制御装置は送られてきたデータをデータベースに保存する。
A11.処理装置の運転中に不具合や異常が発生したことが検知された場合、このデータは統合制御装置に発信される。この内容によっては、処理装置内部で復旧作業が自動で行われる。復旧した場合は、そのデータ(内容や時刻など)を統合制御装置に発信する。
A12.統合制御装置は、異常データや修復データをデータベースに保存する。
A13.処理装置内のプログラムが終了したら、終了信号を統合制御装置に発信する。
A14.統合制御装置は、処理装置を分離する必要があるときは分離指令を発信し、処理装置を結合する必要があるときは分離指令を発信する。途中で結合するときは、新たに結合する処理装置の装置IDから除染・除菌状態を確認してから実施する。
A15.以下、次の各処理装置の運転をA2〜A14まで繰り返す。
A16.全て終了したら、各処理装置から送られた各種データを検体ごとの一連のデータとして保存し、必要に応じて、他の記憶装置やプリンタなどに出力させる。
【0077】
培養プレート等とは、図10(A)に示す培養プレート、図10(B)に示す試薬ボトル81、試薬ボトルブラケット82、細胞シート積層化装置のシート細胞保持部材用プレートなどである。
試薬ボトル81を搬送するための試薬ボトルブラケット82には、試薬ボトル81を立てた状態で搬送できるように試薬ボトルブラケット82上にガイド部材82aを取り付けている。
【0078】
本実施例の除染・除菌装置は、過酸化水素液を供給する液供給手段と、過酸化水素液を気化させる気化手段と、各装置にガスを供給するガス供給手段と、各装置とガス供給手段との間をつなぐガス配管と、各装置からの排気を回収する配管と、回収されたガスは触媒を通して無害化されて排気される排気配管とからなる。
【0079】
除染・除菌装置により発生させた過酸化水素ガスを各装置筺体内部に流入することで、筺体23内部(搬送装置等の装置内に備えるアクチュエータ、センサ、容器の外装等を含む)に存在する雑菌を死滅させることができる。除染装置は、過酸化水素ガスに換えてオゾン等を発生させる装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
このシステムを既存の限られたスペース、たとえば病院のような場所に設置して使用することができ、このような場所での使用においてもGMPに対応した治療用の細胞、組織を用意することができる。
また、複数システムを設置して、各病院から持ち込まれる組織を引き受けて培養する、細胞、組織の培養ビジネスの創出にも寄与する。
【符号の説明】
【0081】
1 細胞培養処理システム
11 搬送装置
12 分注装置
13 恒温装置
14 細胞シート積層化装置
15 培養プレート等の搬出入装置
16 着脱手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の処理装置と第2の処理装置を含む複数の処理装置を、着脱手段を介して互いに着脱可能に接続する細胞培養処理システムであって、
前記第一処理装置は、
基台と、
前記基台上に備える培養プレート等を搬送するロボットと、
前記ロボットの可動雰囲気を外気から遮断する筺体と、
前記筺体の内外で培養プレート等を受け渡しする開口部を開閉する開閉扉と、
除染ガスを供給する除染装置と、
前記第2の処理装置と接続する着脱手段と、を備え、
前記第二処理装置は、下部に移動手段を備えることを特徴とする細胞培養処理システム。
【請求項2】
前記着脱手段により前記第二処理装置が前記第一処理装置の前記筺体に接続されたときに、該着脱手段を介して前記第一処理装置の前記除染装置から前記第二処理装置に対して除染ガスを供給する配管が接続されることを特徴とする請求項1記載の細胞培養処理システム。
【請求項3】
前記着脱手段を複数備えており、該着脱手段を介して、複数の前記第二処理装置を前記第一処理装置の前記匡体に選択的に着脱可能であることを特徴とする請求項1記載の細胞培養処理システム。
【請求項4】
前記第一処理装置を複数備えていることを特徴とする請求項3に記載の細胞培養処理システム。
【請求項5】
前記開閉扉の外側に前記除染装置からのガス供給口備えることで、開閉扉の外側の除染することを特徴とする請求項2記載の細胞培養処理システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−147685(P2012−147685A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6733(P2011−6733)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(591173198)学校法人東京女子医科大学 (48)
【Fターム(参考)】