説明

細胞培養制御方法、細胞培養制御装置及びこれを備える細胞培養装置

【課題】計測機器で測定した観測パラメータの精度を上げ、これを利用することで最適な細胞培養を可能とする方法と装置の提供。
【解決手段】細胞を培養している系から所定の観測パラメータを測定する工程と、上記工程で測定した観測パラメータ、及び細胞内代謝フラックスの値と代謝反応式とから推定観測パラメータを算出する工程とを含む細胞培養制御方法。また、細胞を培養するための培養槽1から所定の観測パラメータを測定する計測機器2と、上記計測機器にて測定した観測パラメータ、及び細胞内代謝フラックスの値と代謝反応式とから推定観測パラメータを算出する解析装置3とを備える、細胞培養制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養中の培地から所定の観測パラメータを測定し、測定値を細胞培養に利用する細胞培養制御方法、細胞培養制御装置及びこれを備える細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物、微生物、動物細胞等の細胞培養を利用した有用物質の生産は、醸造、食品、化学、医薬品生産などの産業分野で広く利用されている。例えば、抗体医薬をはじめとする医薬品では、動物細胞が産生する物質を主成分する場合が多い。また、その物資の製造は、動物細胞を培養し、培養液中に分泌された当該物質を分離・精製するといったプロセスを含む。
【0003】
細胞の培養方法は、回分培養、連続培養(灌流培養)、流加培養(半回分培養)に分類される。回分培養は、一回毎に新たな培地を用意し、そこへ細胞株を植えて収穫まで培地を加えない方法である。回分培養では、個々の培養の品質はバラつくが、コンタミネーションのリスクを分散・低減できるといった特徴がある。連続培養は、一定の速度で培養系に培地を供給し、同時に同量の培養液を抜き取る培養法である。連続培養では、培養環境を常に一定に保ちやすく、生産性が安定するという特徴がある。その反面、連続培養では、一度コンタミネーションが起きると汚染も持続するといった欠点である。流加培養は、培養中に、培地自体や培地中の特定の成分を添加し、培養終了時までその生成物を抜き取らない培養方法である。流加培養は、細胞密度を調節することによって増殖性を最適化し、培養中に蓄積した有害物質を希釈して生産性を維持するなどの目的で行われる。
【0004】
細胞の増殖速度や代謝産物の生成速度や収率が、ある特定の培地成分(基質)の濃度に大きく影響される場合、培養液中の基質濃度を制御する流加培養を行うことが回分培養より生産効率がよい。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)では培養液中のグルタミン濃度が高いと細胞の生育を阻害するアンモニアの分泌速度が高いため、グルタミンを低濃度に維持することで細胞数密度を高めることができる。
【0005】
流加培養では、培養液中の基質濃度を制御するため、添加基質の流加制御が重要となる。流加制御に必要な基礎式は以下に示すように、細胞増殖式及び微分物質収支式である。
【0006】
【数1】

【0007】
【数2】

【0008】
【数3】

【0009】
ただし、Vx:生細胞数、μ:比増殖速度、Vs(i):添加成分iの培養液中の量、fsin(i):添加成分iの添加量、Y*x/si:添加成分iに関する比消費速度、m:添加成分iに関する細胞維持に必要な1細胞あたりの消費量、V:培養液の体積、α:流加による体積増加係数、f:アルカリ液等を含む全添加液速度
【0010】
上記(1)から(3)式を基礎式として、流加制御を行うことができる。例えば、特許文献1には、細胞を培養する際に各種成分のモニタリング精度が問題となること、モニタリング精度を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010-187594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述したような如何なる流加培養に代表されるように、最適な細胞培養を実現するには各種成分の測定精度が非常に重要となる。しかし、培養液での測定は標準液に比べバラツキが大きく、測定精度が低くなる。特に、流加培養では、特定の成分を低濃度に維持することで物質の生産性を向上させるが、栄養の枯渇若しくは過剰な栄養供給により生産効率を下げるといった問題があった。これも栄養成分などの測定精度が低いことに起因している。また、流加培養に限らず、培養中に測定計測機器に不具合があると、培養制御を正しく制御を行えなくなる虞もある。
【0013】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、計測機器で測定した観測パラメータの精度を上げ、これを利用することで最適な細胞培養を可能とする細胞培養制御方法、細胞培養制御装置及びこれを備える細胞培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成した本発明は以下を包含する。
(1)細胞を培養している系から所定の観測パラメータを測定する工程と、上記工程で測定した観測パラメータ、及び細胞内代謝フラックスの値と代謝反応式とから推定観測パラメータを算出する工程とを含む、細胞培養制御方法。
(2)上記推定観測パラメータを算出する工程では、細胞内代謝フラックスの値を格納したデータベースから上記細胞内代謝フラックスの値を参照することを特徴とする(1)記載の細胞培養制御方法。
(3)算出した推定観測パラメータに基づいて、培養中の培地に対する添加培地の供給を決定することを特徴とする(1)に記載の細胞培養制御方法。
(4)算出した推定観測パラメータの誤差と予め設定した基準値とを比較する工程を更に備えることを特徴とする(1)記載の細胞培養制御方法。
(5)上記基準値と比較する工程において、誤差が基準値を超える推定観測パラメータが検出された場合、その推定観測パラメータに対応する観測パラメータを除いた観測パラメータについて推定観測パラメータを算出することを特徴とする(4)記載の細胞培養制御方法。
(6)上記基準値は、上記所定の観測パラメータを測定する計測機器の誤差とすることを特徴とする(4)記載の細胞培養制御方法。
(7)上記基準値は、制御パラメータの設定値と制御パラメータが培養状態に影響を与え始める値との差分の絶対値とすることを特徴とする(4)記載の細胞培養制御方法。
(8)推定観測パラメータの誤差に基づいて、細胞内代謝異常及び/又は計測機器異常を判断する工程を含む(1)記載の細胞培養制御方法。
(9)計測機器異常の発生確率を基準に細胞内代謝異常と計測機器異常を識別することを特徴とする(8)記載の細胞培養制御方法。
(10)細胞を培養するための培養槽から所定の観測パラメータを測定する計測機器と、上記計測機器にて測定した観測パラメータ、及び細胞内代謝フラックスの値と代謝反応式とから推定観測パラメータを算出する解析装置とを備える、細胞培養制御装置。
(11)細胞内代謝フラックスの値を格納したデータベースを更に備え、上記解析装置は上記データベースに格納された上記細胞内代謝フラックスの値を参照して推定観測パラメータを算出することを特徴とする(10)記載の細胞培養制御装置。
(12)上記解析装置で算出した推定観測パラメータに基づいて、培養中の培地に対する添加培地の供給を決定する制御装置を更に備えることを特徴とする(10)記載の細胞培養制御装置。
(13)上記解析装置は、算出した推定観測パラメータの誤差と予め設定した基準値とを比較することを特徴とする(10)記載の細胞培養制御装置。
(14)上記解析装置は、上記誤差が上記基準値を超える推定観測パラメータが検出された場合、その推定観測パラメータに対応する観測パラメータを除いた観測パラメータについて推定観測パラメータを算出することを特徴とする(13)記載の細胞培養制御装置。
(15)上記基準値は上記所定の観測パラメータを測定する計測機器の誤差とすることを特徴とする(13)記載の細胞培養制御装置。
(16)上記基準値は、制御パラメータの設定値と制御パラメータが培養状態に影響を与え始める値との差分の絶対値とすることを特徴とする(13)記載の細胞培養制御装置。
(17)上記解析装置は、推定観測パラメータの誤差に基づいて、細胞内代謝異常及び/又は計測機器異常を判断することを特徴とする(10)記載の細胞培養制御装置。
(18)上記解析装置は、計測機器異常の発生確率を基準に細胞内代謝異常と計測機器異常を識別することを特徴とする(17)記載の細胞培養制御装置。
(19)上記制御装置は、添加培地槽、ポンプ及び液面測定センサーにより構成される添加培地供給装置の動作を制御することを特徴とする(12)記載の細胞培養制御装置。
(20)上記解析装置が細胞内代謝異常及び/又は計測機器異常と判断したときに、これら異常を示すアラート装置を更に備えることを特徴とする(17)又は(18)記載の細胞培養制御装置。
(21)上記計測機器で測定した観測パラメータ、上記解析装置で算出した推定観測パラメータ、上記解析装置で判断した計測機器異常の有無及び細胞代謝異常の有無からなる群から選ばれる情報を記録する記録装置を更に備えることを特徴とする(10)乃至(20)いずれか記載の細胞培養制御装置。
(22)細胞を培養するための培養槽と、(10)乃至(21)いずれか記載の細胞培養制御装置とを備える、細胞培養装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る細胞培養制御方法、細胞培養制御装置及びこれを備える細胞培養装置によれば、培地に含まれる測定対象の観測パラメータをより高精度な推定観測パラメータとして算出できる。したがって、本発明に係る細胞培養制御方法、細胞培養制御装置及びこれを備える細胞培養装置では、算出した推定観測パラメータを利用して最適な細胞培養を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した細胞培養装置の構成を示した図である。
【図2】本発明を適用した細胞培養装置における機能的な構成を示した図である。
【図3】動物細胞の代表的な代謝反応経路を示す図である。
【図4】細胞内代謝フラックスの推定方法の概念図である。
【図5】本発明を適用した細胞培養装置における機能的な構成を示した図である。
【図6】許容観測パラメータ値の概念を示す図である。
【図7】生細胞数の増殖曲線を示す図である。
【図8】グルタミン消費量と生細胞数の時間積分との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る細胞培養制御方法、細胞培養制御装置及びこれを備える細胞培養装置を詳細に説明する。本発明を適用した細胞培養装置は、図1に示すように、細胞を培養するための培養槽1、培養槽1内の培地に含まれる観測パラメータを測定する計測機器2、計測機器2にて測定した観測パラメータから推定観測パラメータを算出する解析装置3とから構成されている。なお、本発明において、細胞培養制御装置とは、図1に示す細胞培養装置において、計測機器2及び解析装置3からなる装置を意味する。
【0018】
なお、図1に示した細胞培養装置は、解析装置3にて算出した推定観測パラメータを利用して、添加培地の培養槽1への供給を制御する制御装置4と、制御装置4に制御され、培養槽1に対して添加培地を供給する添加培地槽9とを有している。しかし、本発明に係る細胞培養装置は、制御装置4や添加培地槽9を有しない構成であってもよい。すなわち、本発明に係る細胞培養装置は、培養槽1に対して添加培地や流加培地を添加しない、所謂、回分培養法を適用するものであってもよい。
【0019】
なお、図1に示した細胞培養装置は、複数の添加培地槽9と、ポンプ7と、それぞれの添加培地槽9に取り付けられたバルブ8とを有しており、これら複数の添加培地槽9からそれぞれ異なる組成の添加培地を培養槽1に供給できるようになっている。具体的には、制御装置4がポンプ7及びバルブ8の動作を制御することで、複数の添加培地槽9から所望のタイミング及び量となるように、所望の添加培地を培養槽1に供給する。
【0020】
また、図1に示した細胞培養装置は、解析装置3にて算出した推定観測パラメータに基づいて解析装置3が細胞内代謝異常及び/又は計測機器異常と判断したときに、これら異常を示すアラート装置12と、計測機器2で測定した観測パラメータ、解析装置3で算出した推定観測パラメータ、解析装置3で判断した計測機器異常の有無及び細胞代謝異常の有無からなる群から選ばれる情報を記録する記録装置11とを備えている。しかし、本発明に係る細胞培養装置は、これらアラート装置12及び記録装置11のいずれか一方のみを有する構成でもよいし、これらアラート装置12及び記録装置11のいずれも有しない構成であってもよい。
【0021】
以下、培養槽1、計測機器2及び解析装置3について詳細に説明する。
<培養槽1>
培養槽1は、特に限定されないが、例えば図1に示すように、培地を所定の速度で撹拌できる攪拌翼6と、培地に対してエアーを供給できる焼結金属製液中通気散気管(焼結スパージャー)5とを有するものを使用できる。しかし、培養槽1の構成は特に限定されず、更に加温用ヒータや温度測定電極、pH電極、DO電極を有していても良い。
【0022】
すなわち、培養槽1は、温度測定電極により培地の温度をモニターし、加温用ヒータを制御することで培地を目的の温度に制御できる。また、培養槽1は、pH電極により培地のpHをモニターし、培養槽1に張り込まれた培地上部の気相部に供給するガスの炭酸ガス濃度を調節することで培地のpHを所定の値に制御できる。また、培地のpH制御は、細胞が増殖して細胞数密度が高くなると培地は酸性となり、炭酸ガスの調整だけでは所望のpHに制御できなくなるため、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を適量添加することでpHの制御を行う。よって、培養槽1は、培地のpHを調節するためのアルカリ溶液供給装置を有していても良い。
【0023】
さらに、培養槽1は、DO電極により培養液中の溶存酸素濃度をモニターし、焼結スパージャー5から培地に供給するガスを調節することで、培養中に消費した酸素を適量補うことができる。具体的に、溶存酸素の調節は、酸素含有ガスを培地に供給することで溶存酸素濃度を上げることができ、また酸素含有ガスに代えて窒素含有ガスを培地に供給することで溶存酸素濃度を下げることができる。
【0024】
なお、培養槽1は、医薬品等の主原料となる物質を生産する細胞の培養に適用できるものを使用することができる。本発明において、生産対象の物質としては、例えば抗体や酵素等のタンパク質、低分子化合物及び高分子化合物等の生理活性物質を挙げることができる。また、培養対象の細胞としては、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、細菌、酵母、真菌及び藻類等を挙げることができる。特に、抗体や酵素等のタンパク質を生産する動物細胞を培養対象とすることが好ましい。
【0025】
<計測機器2>
計測機器2は、細胞を培養している培地に含まれる成分、当該培地の状態を示すパラメータを測定する機器である。本発明において、計測機器2で測定するパラメータを「観測パラメータ」と称する。観測パラメータとしては、特に限定されないが、例えば、生細胞数、グルコース、グルタミン等のアミノ酸、乳酸、アンモニア、生成タンパク(抗体等)、pH、酸素、二酸化炭素、温度及び浸透圧といった細胞の代謝に関与する因子を挙げることができる。
【0026】
計測機器2は、培養槽1内に張り込まれた培養液中に浸漬するように配設されたセンサーでも良いし、培養槽1内に張り込まれた培養液の一部を無菌的にサンプリングした後に計測するタイプのセンサーでも良い。培養液をサンプリングして計測を行う場合、サンプリングノズルは、三方弁となっており、培養槽1内の培養液を吸引する際、バルブを開け、必要量取り出した後、バルブを閉める。この後、弁を切り替え、スチームを流し込み、121度、20分滅菌を行う。その後、配管内を乾燥させる。これにより、培養槽1内の培養液を無菌的にサンプリングすることができる。
【0027】
また、計測機器2としては、測定対象の観測パラメータに応じて従来公知の分析機器を使用することができる。分析機器としては何ら限定されるものではない。特に、本細胞培養装置では、複数の観測パラメータを計測機器2で測定することが好ましい。例えば、培養液中の、グルコース、グルタミン、乳酸、アンモニア、産生抗体の濃度を観測パラメータとして測定することが好ましい。
【0028】
より具体的に、一例としてグルタミンを検出するセンサーとしては、グルタミンを基質として反応しうる酵素が固定された電極膜と、白金を有する電極とを備えるセンサーを例示することができる。電極膜には、グルタミナーゼ及びグルタミン酸オキシダーゼが固定されている。グルタミンを含有する溶液と電極膜とを接触させると、電極膜に固定されたグルタミナーゼにより以下の反抗が進行する。
グルタミン+HO→グルタミン酸+NH
【0029】
また、溶液にグルタミン酸が存在すると、電極膜に固定されたグルタミン酸オキシダーゼにより以下の反応式に従って過酸化水素が発生する。
グルタミン酸+O→ケトグルタレート+NH+H
【0030】
白金を含有する電極において、以下の反応により電流が生じる。
→2H+O+2e
【0031】
電極に生じた電流の大きさは過酸化水素の発生量と比例するため、電極に生じた電流値から溶液に含まれるグルタミン濃度を測定することができる。なお、溶液にグルタミンとグルタミン酸が存在している場合には、グルタミンとグルタミン酸の合計量しか測定することができない。このため、溶液にグルタミンとグルタミン酸が存在している場合には、グルタミン酸オキシダーゼが固定された電極膜を有するセンサによって、溶液に含まれるグルタミン酸濃度のみを測定し、グルタミン及びグルタミン酸の合計の濃度からグルタミン酸濃度を差し引くことで、溶液に含まれるグルタミン濃度を測定することができる。
【0032】
また、一例としてグルコースを検出するセンサーとしては、グルコースオキシダーゼを固定した電極膜を備えるセンサーを使用することができる。グルコースオキシダーゼによればグルコースを基質としてグルコノラクトン及び過酸化水素が生成される。すなわち、上述したグルタミンを検出する場合と同様に、生成した過酸化水素からと溶液に含まれるグルコース濃度を測定することができる。
【0033】
なお、上記<培養槽1>の項目で説明した温度測定電極、pH電極及びDO電極は、本項目で説明する計測機器2の一形態である。
【0034】
<解析装置3>
解析装置3は、上述した計測機器2にて測定した観測パラメータを、細胞内代謝フラックスの値と代謝反応式とから推定観測パラメータとして算出する処理を実行するものである。解析装置3は、図示しないが、計測機器2から出力された観測パラメータの値を入力する入力部と、入力部で入力した観測パラメータに基づいて推定観測パラメータを演算処理する演算処理部と、演算処理部で算出した推定観測パラメータを出力する出力部とを備える。解析装置3としては、特に限定されないが、入力部及び/又は出力部として機能するI/Oインターフェース、演算処理部として機能しうる中央演算処理装置(CPU)、各種データを格納しうるメモリー等を備えるコンピュータを使用することができる。
【0035】
解析装置3は、計測機器2にて測定したN個の観測量(観測パラメータ)を次の手順により推定観測量(推定観測パラメータ)として計算する。なお、算出した推定観測パラメータは、例えば、添加培地の添加タイミングや添加量を決定する際に使用することができる。ただし、推定観測パラメータは、これに限定されず、酸素含有ガスや窒素含有ガスの供給量や供給タイミング、撹拌翼の回転数などの各種培養条件を決定する際に使用することもできる。
【0036】
以下の説明においては、図2を参照して、観測パラメータの計測から培地添加までの流れを示す。計測機器2で観測したN個の観測パラメータは、解析装置3にて代謝反応式における冗長な束縛条件を用いて精度の高い推定観測パラメータに変換される(計算方法は下記3-2を参照)。なお、観測パラメータの推定を行う際、例えばグルタミンの消費量等、観測値の時間変化の値を必要とする場合、事前に時間変化での値を計算しておく。観測値の時間変化の値は単に経時変化での差分をとってもよいし、カルマンフィルター等の処理にて経時変化でのデータ間の誤差を減少させる方法をとってもよい。そして、推定観測パラメータが求まると下記3-4に示すように、添加培地の添加量を決定し、流加培養制御を行う。
【0037】
ここで、推定観測パラメータは細胞内代謝フラックスの値と細胞内代謝反応式を組み合わせることで実現する。
【0038】
培養細胞は細胞内代謝反応経路に従って基質を消費し、代謝物を生成する。図3には動物細胞での代表的な代謝反応経路を示す。なお、図3中、物質は略称として記載されている。略称と物質名とを以下に示す。
AcCoA:Acetyl-CoA(アセチルコエンザイムエー)
AKG:α-Ketoglutarate(α-ケトグルタル酸)
Ala:Alanine(アラニン)
Asp:Aspartic acid(アスパラギン酸)
Cit:Citric acid(クエン酸)
DHAP:Dihydroxyacetone phosphate(ジヒドロキシアセトンリン酸)
E4P:Erythrose-4-phosphate(エリトロース-4-リン酸)
Fum:Fumarate(フマル酸)
F6P:Fructose-6-phosphate(フルクトース-6-リン酸)
GAP:Glyceraldehyde-3-phosphate(グリセルアルデヒド-3-リン酸)
Gln:Glutamine(グルタミン)
Glnext:Extracellular Glutamine(細胞外グルタミン)
Gluc:Glucose(グルコース)
Glucext:Extracellular Glucose(細胞外グルコース)
Glu:Glutamic acid(グルタミン酸)
Gly:Glycine(グリシン)
G6P:Glucose-6-phosphate(グルコース-6-リン酸)
Lac:Lactic acid(乳酸)
Lacext:Extracellular Lactic acid(細胞外乳酸)
Mal:Malate(リンゴ酸)
Oac:Oxaloacetate(オキサロ酢酸)
PEP:Phosphoenolpyruvic acid(ホスホエノールピルビン酸)
Pyr:Pyruvate(ピルビン酸)
R5P:Ribose-5-phosphate(リボース-5-リン酸)
Ser:Serine(セリン)
Suc:Succinate(コハク酸)
SucCoA:Succinyl-CoA(サクシニルCoA)
S7P:Sedoheptulose-7-phosphate(セドヘプツロース-7-リン酸)
Thr:Threonine(トレオニン)
3PG:3-phosphoglycerate(3-ホスホグリセリン酸)
また、図3中、各代謝反応経路にはR1〜R29の符号を付した。これら代謝反応経路R1〜R29を下記表にまとめる。
【0039】
【表1】

【0040】
図3に示す代謝反応経路において、炭素源、窒素源はこの代謝反応式の束縛条件の下、目的物質や乳酸、アンモニアなどの副生成物を分泌するが、上記表に示す代謝反応経路では反応速度が決まってないため、束縛条件を求めるための方程式が成立しない。そこで各代謝反応経路における反応速度を求めるため、細胞内代謝解析によって細胞内代謝フラックスとして反応速度を求める。解析結果として求めた細胞内代謝フラックスの値は、データベースに格納しておき、以下に説明する推定観測パラメータの算出、計測機器異常の有無、細胞代謝異常の有無の判断に利用する。具体的には、まず標準の培養プロセスで細胞内代謝フラックスの経時変化もしくは細胞の状態に応じた細胞内代謝フラックス(例えば増殖期、生産期)を解析し、これらの値を細胞内代謝フラックスの値としてデータベースに格納する。
【0041】
<3-1細胞内フラックスの決定>
細胞内代謝フラックスの値を決定するには、シミュレーションと培養実験による細胞内代謝物測定を行う。シミュレーションでは、解析対象となる細胞の細胞内代謝経路を想定する必要がある。例えば、抗体医薬などバイオ医薬品の製造でよく使用されるChinese Hamster Ovary (CHO)細胞ではProvost(Bioprocess Biosyst Eng, 2006, 29:349-366)の研究に示される代謝経路を用いてもよいし、KEGGデータベースで公開されている代謝経路マップの情報を利用してもよい。細胞内代謝フラックスの推定方法の概念を図4に示す。シミュレーションでは、最初にランダムな代謝フラックスの値(図4中R1からR8)を与え、代謝経路モデルを基に、定常状態での細胞内の各代謝物質に含まれる同位体炭素の数の比を計算する。この計算値と実験で測定した細胞内代謝物質の同位体炭素数比との比較を行い、統計学的に有意に差がある場合(異なっている場合)は、シミュレーションによる代謝物質中の同位体数炭素比の値を実験による代謝物質中の同位体炭素数比の値との平均自乗誤差が最小となるようにシミュレーションによる代謝フラックスの値を修正し、同位体炭素比を計算する。そして、統計学的な有意差がなくなるまで、以上のような実験による代謝物質中の同位体炭素数比の値を比較するという操作を繰り返す。通常は2〜3回の繰り返し計算で推定できるが、何度繰り返しても統計学的な有意差が生じる場合は、代謝経路モデルが間違っているか、実験データが適切に測定されていないと判断する。
【0042】
また、Antoniewiezの方法(Metabolic Engineering, 8(2006) 324-337)では、統計学的な考え方より推定値の信頼区間も求めることが出来る。まず、推定代謝フラックスを求め、その推定代謝フラックス(R1からR8)の内1つの代謝フラックス(例えばR3)に着目し、少しずつその代謝フラックスの値を大きくしていく。そして、実験値との比較で統計学的に有意差が出たところで、その代謝フラックスの上限値となる。下限は推定フラックスの値から少しずつ値を下げていき、統計学的に有意差が出たところで下限値となる。順次この操作を他の代謝フラックスに行うことで、すべての代謝フラックスで信頼区間を求めることが出来る。
【0043】
なお、上述したように、シミュレーションでは、培養実験により細胞内の各代謝物質の同位体炭素数比及び細胞外代謝フラックスの値を必要とする。これは、同位体標識をした栄養基質(例えばグルコース)を培養細胞に取り込ませ、GC-MS等で細胞内代謝物(例えばグルコース、グリセロール、アセテート、シトレート、ピルビン酸等)の分析を行うことで定量的に測定することができる。
【0044】
<3-2 推定観測パラメータの計算>
解析装置3は、以下の手順に従って観測パラメータから推定観測パラメータを算出する。以下の説明では、複数の観測パラメータ(観測値)を得た場合に推定観測パラメータ(推定観測値)を算出する手順を説明する。先ず、細胞内代謝フラックスにより、代謝反応方程式が成立し、式(4)に示す形式で表現することができる。
【0045】
【数4】

【0046】
ただし、上記式において、E:元素バランス行列、Ec:観測値に対応する列を集めた行列、rc:測定しない変数ベクトル、Em:観測されていない速度に対応する行列、rm:測定変数ベクトルである。代謝反応式よりEc、Emは既知であるため、Ecランク>測定値の数の場合、rmを測定することで、式(5)より観測していない変数を求めることができる。
【0047】
【数5】

【0048】
ただし、
【数6】

(擬似逆行列)
【0049】
一方、観測値には計測機器等の計測誤差が含まれるため、測定による観測ベクトル
【数7】

は真の観測ベクトルrmと計測誤差δで式(6)のように記載できる。
【0050】
【数8】

【0051】
残差εは
【数9】

【0052】
ただし、
【数10】

【0053】
ここで、
【数11】

を満たす独立な行に限定された冗長性行列である。
【0054】
残差を最小化した推定値が最良の観測パラメータ(推定観測パラメータ)であると考えられる。誤差ベクトルは平均値0で正規分布すると仮定すると、式(8)、式(9)が成立し、
【0055】
【数12】

【0056】
【数13】

【0057】
分散-共分散行列Pは式(10)のように表せる。
【0058】
【数14】

【0059】
誤差ベクトルδの最小分散推定は、個々の測定値における確度に対して規格化された二乗誤差の和を最小化することで、式(11)の解
【数15】

を求めることである。
【0060】
【数16】

【0061】
式(11)の解は式(12)で表せられる。
【0062】
【数17】

【0063】
よって、式(12)を用いて推定観測値
【数18】

は式(13)となる。
【0064】
【数19】

【0065】
上記計算を行うことで、推定観測パラメータを求めることができる。観測値に対する推定値は、観測値での標準偏差より推定値の標準偏差の方が小さいことが知られているため(Wagn and Stephanopoulos 1983)、推定値の方が計測機器の生データよりも信頼性が高くなる。
【0066】
<3-3 計測機器の異常や培養状態の異常の判定>
また、解析装置3は、前節3-2で説明した推定観測パラメータに基づいて、計測機器2の異常や培養状態の異常を判定することができる。これらの判断を実行する場合、解析装置3は図5に示すブロック図のように構成される。
【0067】
すなわち、例えば、推定観測パラメータを計算する際、前節3-2に示すようにN個の観測パラメータ内のi番目の推定観測パラメータの誤差を求めることができる。この誤差が予め定めた値より小さい場合、誤差は十分小さいとして推定観測パラメータiは適切な推定値と判断する。一方、観測パラメータiによる推定観測パラメータの誤差が定めた値を超えた場合、推定観測パラメータiに異常があると判断し、その観測値を除いた観測パラメータ群で再度、観測値の推定計算を行うことができる。制御に必要な最低限の数以上の推定観測パラメータが予め定めた値以下になっていれば、制御に必要な計算を実行し、培養制御を行う。
【0068】
N個の推定観測パラメータの内h個が推定観測パラメータの誤差が定めた値を超えた場合、N個の計測機器のうちh個が故障、もしくはセンサーの値がドリフトする確立をPni、培養プロセスにおいて細胞内代謝が異常を示す確率をPcとしたとき、
Pni>Pc の場合は計測機器の異常
Pni<Pc の場合は細胞内代謝異常
と判別することができる。
【0069】
推定観測パラメータの誤差の評価基準は次のような基準を選ぶことができる。ただし、これらの基準に限定するものではない。
【0070】
I.計測機器が持つ誤差を基準とする場合
直接計測機器で測定することで生じる誤差、すなわちサンプルを3回以上測定した際に生じる実験誤差を基準とする。このように、計測機器が持つ誤差を基準として設定することができる。
【0071】
II.許容観測パラメータ値
生産のための培養プロセスでは細胞の状態あるいは生成物の品質が当初想定されている通りに培養制御されなければならない。制御値が許容範囲を超えると細胞もしくは生成物に影響を及ぼすことがある。図6にその概念を示す。一例として、制御パラメータとして培養液中のグルタミン濃度、影響を受けるパラメータとしてタンパクの糖鎖修飾パターンを挙げる。ただし、これに限定するものではない。
【0072】
グルタミン濃度はある濃度範囲を超えると糖鎖の付加パターンが変わることが知られている。この範囲に収まるように制御する必要があるが、観測パラメータには必ず誤差が含まれ、観測パラメータが濃度範囲に含まれていたとしても、誤差を考慮した場合、真の値が許容濃度範囲に含まれている保証はない。そのため、誤差を含めて制御パラメータが許容濃度範囲に含まれる必要がある。
【0073】
推定観測パラメータの誤差δiは3-2節での計算より制御パラメータへの誤差の伝播が計算でき、それをΔiとすると、図6に示すように、
【数20】

【数21】

を満たす必要がある。式(14)、式(15)の内、小さい値が満たすべきΔiとなり、この値より、許容されるδiを逆計算することができる。このように、制御パラメータに許容される数値範囲を誤差の基準として設定することもできる。
【0074】
以上のように、解析装置3によれば、計測機器2の不具合や細胞内代謝の異常を判断することができ、目的生産物を優れた収率で生産することができる。
【0075】
<3-4培地添加量の算出>
特に、解析装置3は、前節3-2で説明した推定観測パラメータに基づいて、培養槽に対する培地添加量を算出する。本例では、観測パラメータとして生細胞数を測定し、3-2節で説明したように推定観測パラメータを算出する。そして、算出した推定観測パラメータ(推定された生細胞数)に基づいて、以下の手順に従って添加培地量を決定する。なお、細胞の増殖は式(1)に従う。
【0076】
【数22】

【0077】
培養槽内の生細胞数の経時変化を測定し、これに基づいて推定の生細胞数の変化を算出し、サンプリング時における生細胞数の増殖速度を、式(1)を利用した式(20)を用いて算出する。この増殖速度の値を用いて、次のサンプリングまでの細胞の増殖の経時変化を予測する(図7)。
【0078】
【数23】

【0079】
【数24】

Xv(t):時刻tでの生細胞数
Xvn:n回目のサンプリングでの生細胞数
μn:n回目のサンプリングから求めた生細胞の比増殖速度
tn:n回目のサンプリングにおける時刻
【0080】
グルタミン消費量と生細胞数の時間積分の関係を図8に示す。図8中、傾きkは培養時間により変化するが、サンプリング間隔が1時間程度の場合、傾きkの時間変化は小さく、その値の変化は無視できる(図中の各プロットの時間間隔は12時間である。)。その為、各サンプリング時における培養液の分析値より生細胞数の時間積分とグルタミン消費量の関係を算出し、このkの値と予測した生細胞数の時間積分値を用いて、次のサンプリングまでに消費するグルタミン濃度を予測し、添加すべき培地量を決定することができる。添加培地量は上述した式(1)、下記式(2)及び(3)を用いることで決定することができる。
【0081】
【数25】

【0082】
【数26】

【0083】
ただし、Vx:生細胞数、μ:比増殖速度、Vs(i):添加成分iの培養液中の量、fsin(i):添加成分iの添加量、Y*x/si:添加成分iに関する比消費速度、m:添加成分iに関する細胞維持に必要な1細胞あたりの消費量、V:培養液の体積、α:流加による体積増加係数、f:アルカリ液等を含む全添加液速度
【0084】
上記は生細胞数を観測パラメータとし、これに基づいて算出した推定観測パラメータ(推定された生細胞数)により、添加すべき培地量を決定した場合であるが、間接的に溶存酸素を観測パラメータとすることもできる。培養液中の溶存酸素を測定し、酸素量の時間変動量を導く。酸素消費速度と生細胞数は非常に高い相関関係を有するため、測定した酸素量の時間変動量と、相関式より、生細胞数を導出することができる。生細胞数が求まれば、その後、上記の方法をとることで添加すべき培地量を予測することができる。以上のように、解析装置3によれば、培養液中の各栄養成分濃度の制御を適切に行うことができ、目的生産物を優れた収率で生産することができる。
【0085】
<4.制御装置>
制御装置4は、上述のように、解析装置3にて決定した培地添加量に基づいて、培地の添加動作を制御する。具体的に制御装置4は、添加培地槽9、ポンプ7、液面測定センサーから構成される添加培地供給システムを記載している。添加培地の供給槽に液面測定センサーが取り付けてあり、添加量を測定することができる。制御装置4はポンプ7及びバルブ8の動作を制御することで、複数の添加培地槽9から所望のタイミング及び量となるように、所望の添加培地を培養槽1に供給する。
【符号の説明】
【0086】
1…培養槽、2…計測装置、3…解析装置、4…制御装置、5…焼結金属製液中通気散気管、6…攪拌翼、7…ポンプ、8…バルブ、9…添加培地槽、10…細胞内代謝フラックスデータベース、11…記録装置、12…アラート装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養している系から所定の観測パラメータを測定する工程と、
上記工程で測定した観測パラメータ、及び細胞内代謝フラックスの値と代謝反応式とから推定観測パラメータを算出する工程とを含む、細胞培養制御方法。
【請求項2】
上記推定観測パラメータを算出する工程では、細胞内代謝フラックスの値を格納したデータベースから上記細胞内代謝フラックスの値を参照することを特徴とする請求項1記載の細胞培養制御方法。
【請求項3】
算出した推定観測パラメータに基づいて、培養中の培地に対する添加培地の供給を決定することを特徴とする請求項1に記載の細胞培養制御方法。
【請求項4】
算出した推定観測パラメータの誤差と予め設定した基準値とを比較する工程を更に備えることを特徴とする請求項1記載の細胞培養制御方法。
【請求項5】
上記基準値と比較する工程において、誤差が基準値を超える推定観測パラメータが検出された場合、その推定観測パラメータに対応する観測パラメータを除いた観測パラメータについて推定観測パラメータを算出することを特徴とする請求項4記載の細胞培養制御方法。
【請求項6】
上記基準値は、上記所定の観測パラメータを測定する計測機器の誤差とすることを特徴とする請求項4記載の細胞培養制御方法。
【請求項7】
上記基準値は、制御パラメータの設定値と制御パラメータが培養状態に影響を与え始める値との差分の絶対値とすることを特徴とする請求項4記載の細胞培養制御方法。
【請求項8】
推定観測パラメータの誤差に基づいて、細胞内代謝異常及び/又は計測機器異常を判断する工程を含む請求項1記載の細胞培養制御方法。
【請求項9】
計測機器異常の発生確率を基準に細胞内代謝異常と計測機器異常を識別することを特徴とする請求項8記載の細胞培養制御方法。
【請求項10】
細胞を培養するための培養槽から所定の観測パラメータを測定する計測機器と、
上記計測機器にて測定した観測パラメータ、及び細胞内代謝フラックスの値と代謝反応式とから推定観測パラメータを算出する解析装置とを備える、細胞培養制御装置。
【請求項11】
細胞内代謝フラックスの値を格納したデータベースを更に備え、上記解析装置は上記データベースに格納された上記細胞内代謝フラックスの値を参照して推定観測パラメータを算出することを特徴とする請求項10記載の細胞培養制御装置。
【請求項12】
上記解析装置で算出した推定観測パラメータに基づいて、培養中の培地に対する添加培地の供給を決定する制御装置を更に備えることを特徴とする請求項10記載の細胞培養制御装置。
【請求項13】
上記解析装置は、算出した推定観測パラメータの誤差と予め設定した基準値とを比較することを特徴とする請求項10記載の細胞培養制御装置。
【請求項14】
上記解析装置は、上記誤差が上記基準値を超える推定観測パラメータが検出された場合、その推定観測パラメータに対応する観測パラメータを除いた観測パラメータについて推定観測パラメータを算出することを特徴とする請求項13記載の細胞培養制御装置。
【請求項15】
上記基準値は上記所定の観測パラメータを測定する計測機器の誤差とすることを特徴とする請求項13記載の細胞培養制御装置。
【請求項16】
上記基準値は、制御パラメータの設定値と制御パラメータが培養状態に影響を与え始める値との差分の絶対値とすることを特徴とする請求項13記載の細胞培養制御装置。
【請求項17】
上記解析装置は、推定観測パラメータの誤差に基づいて、細胞内代謝異常及び/又は計測機器異常を判断することを特徴とする請求項10記載の細胞培養制御装置。
【請求項18】
上記解析装置は、計測機器異常の発生確率を基準に細胞内代謝異常と計測機器異常を識別することを特徴とする請求項17記載の細胞培養制御装置。
【請求項19】
上記制御装置は、添加培地槽、ポンプ及び液面測定センサーにより構成される添加培地供給装置の動作を制御することを特徴とする請求項12記載の細胞培養制御装置。
【請求項20】
上記解析装置が細胞内代謝異常及び/又は計測機器異常と判断したときに、これら異常を示すアラート装置を更に備えることを特徴とする請求項17又は18記載の細胞培養制御装置。
【請求項21】
上記計測機器で測定した観測パラメータ、上記解析装置で算出した推定観測パラメータ、上記解析装置で判断した計測機器異常の有無及び細胞代謝異常の有無からなる群から選ばれる情報を記録する記録装置を更に備えることを特徴とする請求項10乃至20いずれか一項記載の細胞培養制御装置。
【請求項22】
細胞を培養するための培養槽と、請求項10乃至21いずれか一項記載の細胞培養制御装置とを備える、細胞培養装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85516(P2013−85516A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229215(P2011−229215)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】