説明

細胞培養液中における感染性C型肝炎ウイルス粒子の産生

本発明は、細胞培養系において高レベルの感染性HCV遺伝子型1型ウイルス粒子を産生する新規方法を提供する。培養細胞中で完全なウイルスサイクルを受けることのできるHCV遺伝子型1型ウイルス(世界の大半の地域において肝疾患に主に関連している)を入手できることは、HCVの処置のための新規療法の発見および開発にとって有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養液中において感染性HCV遺伝子型1型ウイルスを産生する新規方法に関し、そして種々のHCV阻害剤をスクリーニング、試験および評価するのに有用である。
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)は世界中で主要な健康問題であり、慢性肝疾患の主要原因である。(Boyer, N. et al. J. Hepatol. 2000 32:98-112)。HCVに感染した患者は、肝硬変および続く肝細胞癌を発症するリスクがあり、従って、HCVは肝移植の主要な適応症である。
【0003】
世界保健機関によると、世界中に2億人を超える感染個体が存在し、毎年少なくとも300万人から400万人の人々が感染している。一旦感染すると、約20%の人がウイルスを排除するが、残りの人は生涯HCVを保有し得る。慢性感染個体の10〜20%が最終的に肝破壊性の硬変または肝癌を発症する。ウイルス疾患は、汚染した血液および血液製剤、汚染針、または性的に、並びに感染母体もしくはキャリアー母体からその子孫へと垂直的に、非経口的に伝染する。HCV感染のための現在の処置は、インターフェロン−α単独またはヌクレオシド類似体のリバビリンと組み合わせた免疫療法に限定され、これは特に遺伝子型1型に対して限定的な臨床的有益性しかない。慢性HCV感染を効果的に治す改良された治療剤が緊急に必要とされる。
【0004】
HCVは、フラビウイルス属、ペスチウイルス属、およびヘパシウイルス属(これはC型肝炎ウイルスを含む)を含む、フラビウイルス科のウイルスの一員として分類されている(Rice, C. M., Flaviviridae: The viruses and their replication, in: Fields Virology, Editors: Fields, B. N., Knipe, D. M., and Howley, P. M., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, Pa., Chapter 30, 931-959, 1996)。HCVは、約9.4kbのプラスのセンス鎖の一本鎖RNAゲノムを含むエンベロープを有するウイルスである。ウイルスゲノムは、5’非翻訳領域(UTR)、約3011アミノ酸のポリタンパク質前駆体をコードする長いオープンリーディングフレーム、および短い3’UTRからなる。5’UTRは、HCVゲノムの最も高度に保存された部分であり、そしてポリタンパク質の翻訳の開始および制御に重要である。
【0005】
HCVの遺伝子解析は、DNA配列の30%超の相違を示す6つの主要な遺伝子型を同定した。各遺伝子型は、ヌクレオチド配列の20〜25%の相違を示す、一連のより密接に関連したサブタイプを含む(Simmonds, P. 2004 J. Gen. Virol. 85:3173-88)。30を超えるサブタイプが識別されている。米国では感染個体の約70%が1a型および1b型の感染を有する。1b型はアジアで最も広まっているサブタイプである。(X. Forns and J. Bukh, Clinics in Liver Disease 1999 3:693-716; J. Bukh et al., Semin. Liv. Dis. 1995 15:41-63)。残念なことに、1型感染は、2型または3型の遺伝子型のいずれよりも現行の療法に対して応答性がより低い(N. N. Zein, Clin. Microbiol. Rev., 2000 13:223-235)。
【0006】
ペスチウイルスおよびヘパシウイルスのORFの非構造タンパク質部分の遺伝子構成およびポリタンパク質プロセシングは非常に類似している。これらのプラス鎖RNAウイルスは、ウイルス複製に必要な全てのウイルスタンパク質をコードする単一の大きなオープンリーディングフレーム(ORF)を有する。これらのタンパク質は、成熟なウイルスタンパク質を生じるために、細胞性プロテイナーゼおよびウイルスによりコードされるプロテイナーゼの両方によって翻訳と同時におよび翻訳後にプロセシングされる、ポリタンパク質として発現される。ウイルスゲノムRNAの複製に関与するウイルスタンパク質はカルボキシ末端の方に位置する。ORFの3分の2は非構造(NS)タンパク質と称される。ペスチウイルスおよびヘパシウイルスの両方について、成熟した非構造(NS)タンパク質は、非構造タンパク質コード領域のアミノ末端からORFのカルボキシ末端へと、順に、p7、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bからなる。
【0007】
ペスチウイルスおよびヘパシウイルスのNSタンパク質は、特異的なタンパク質の機能に特徴的である配列ドメインを共有する。例えば、両群のウイルスのNS3タンパク質は、セリンプロテイナーゼおよびヘリカーゼに特徴的なアミノ酸配列モチーフを有する(Gorbalenya et al. Nature 1988 333:22; Bazan and Fletterick Virology 1989 171:637-639; Gorbalenya et al. Nucleic Acid Res. 1989 17.3889-3897)。同様に、ペスチウイルスおよびヘパシウイルスのNS5Bタンパク質は、RNA指向性RNAポリメラーゼに特徴的なモチーフを有する(Koonin, E. V. and Dolja, V. V. Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol. 1993 28:375-430)。
【0008】
ウイルスの生活環におけるペスチウイルスおよびヘパシウイルスのNSタンパク質の実際の役割および機能は、直接的に類似している。どちらの場合においても、NS3セリンプロテイナーゼは、ORFのその位置の下流におけるポリタンパク質前駆体の全てのタンパク質分解プロセシングに関与している(Wiskerchen and Collett Virology 1991 184:341-350; Bartenschlager et al. J. Virol. 1993 67:3835-3844; Eckart et al. Biochem. Biophys. Res. Comm. 1993 192:399-406; Grakoui et al. J. Virol. 1993 67:2832-2843; Grakoui et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993 90:10583-10587; Ilijikata et al. J. Virol. 1993 67:4665-4675; Tome et al. J. Virol. 1993 67:4017-4026)。どちらの場合においてもNS4Aタンパク質は、NS3セリンプロテアーゼの補因子として作用する(Bartenschlager et al. J. Virol. 1994 68:5045-5055; Failla et al. J. Virol. 1994 68: 3753-3760; Xu et al. J Virol. 1997 71:53 12-5322)。両方のウイルスのNS3タンパク質もまたヘリカーゼとして作用する(Kim et al. Biochem. Biophys. Res. Comm. 1995 215: 160-166; Jin and Peterson Arch. Biochem. Biophys. 1995, 323:47-53; Warrener and Collett J. Virol. 1995 69:1720-1726)。最後に、ペスチウイルスおよびヘパシウイルスのNS5Bタンパク質は、予測されるRNA依存性RNAポリメラーゼ活性を有する(Behrens et al. EMBO 1996 15:12-22; Lechmann et al. J. Virol. 1997 71:8416-8428; Yuan et al. Biochem. Biophys. Res. Comm. 1997 232:231-235; Hagedorn, PCT WO 97/12033; Zhong et al. J. Virol. 1998 72:9365-9369)。
【0009】
現在、HCV感染の処置に現在利用できる認可されている療法の数は限られている。HCVの処置およびHCV NS5Bポリメラーゼの阻害に対する新規および既存の治療アプローチが概説されている:R. G. Gish, Sem. Liver. Dis., 1999 19:5; Di Besceglie, A. M. and Bacon, B. R., Scientific American, October: 1999 80-85; G. Lake-Bakaar, Current and Future Therapy for Chronic Hepatitis C Virus Liver Disease, Curr. Drug Targ. Infect Dis. 2003 3(3):247-253; P. Hoffmann et al., Recent patents on experimental therapy for hepatitis C virus infection (1999-2002), Exp. Opin. Ther. Patents 2003 13(11):1707-1723; F. F. Poordad et al. Developments in Hepatitis C therapy during 2000-2002, Exp. Opin. Emerging Drugs 2003 8(1):9-25; M. P. Walker et al., Promising Candidates for the treatment of chronic hepatitis C, Exp. Opin. Investig. Drugs 2003 12(8):1269-1280; S.-L. Tan et al., Hepatitis C Therapeutics: Current Status and Emerging Strategies, Nature Rev. Drug Discov. 2002 1:867-881; R. De Francesco et al. Approaching a new era for hepatitis C virus therapy: inhibitors of the NS3-4A serine protease and the NS5B RNA-dependent RNA polymerase, Antiviral Res. 2003 58:1-16; Q. M. Wang et al. Hepatitis C virus encoded proteins: targets for antiviral therapy, Drugs of the Future 2000 25(9):933-8-944; J. A. Wu and Z. Hong, Targeting NS5B-Dependent RNA Polymerase for Anti-HCV Chemotherapy Cur. Drug Targ.-Inf. Dis .2003 3:207-219。
【0010】
ウイルスのゲノム構成およびウイルスタンパク質の機能の解明の進歩にも関わらず、HCVの複製および病態形成の基本的な局面は依然として分かっていない。HCV複製に実験的なアクセスを得る際の主要な課題は、感染性ウイルス粒子の産生を可能とする効率的な細胞培養系がないことである。初代細胞培養および特定のヒト細胞系の感染は報告されているが、そうした系において産生されたウイルスの量およびHCV複製レベルは、詳細な分析を許容するには低すぎる。このことは、5つの細胞培養適応的突然変異の組合せを含むHCV RNAを使用した低いレベルの感染性遺伝子型1a型ウイルスの産生を詳述した近年の報告にも関わらず(Yi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2006 103(7):2310-2315)、遺伝子型1a型のHCVウイルス粒子については特に当てはまる。
【0011】
2つのグループが、Huh−7ヒト肝臓癌細胞の高度に許容的な亜系統を使用した遺伝子型1a型の複製系の作製を報告した。Blight et al. (J. Virol. 2003 77:3181-3190)は、サブゲノムCon1レプリコン(replicon)RNAを使用して選択された、G418耐性のサブゲノムCon1レプリコンRNAレプリコン樹立細胞系を、インターフェロン−αでの処置によって治療することによって作製された、超許容性のHuh−7の亜系統であるHuh−7.5において、遺伝子型1a型由来のサブゲノムレプリコンの複製を支持するG418耐性コロニーを選択することができた(Blight et al., J. Virol. 2002 76:13001-13014)。このような選択された細胞系の内側で複製しているHCV RNAの配列解析は、最も一般的な重要な突然変異が、NS3ヘリカーゼのドメインII内のNS3のアミノ酸470位(P1496L)、およびNS5A突然変異(S2204I)に位置することを示した。別の場合では、Grobler et al. (J. Biol. Chem. 2003 278:16741-16746)が体系的な突然変異アプローチを使用して、P1496LおよびS2204Iの両方の組合せが、独立しているがしかし類似している様式で選択された高度に許容性のHuh−7亜系統において遺伝子型1a型の複製を得るのに必要であったという同様の結論に達した。しかしながら、これらの2つの増強された突然変異を有する遺伝子型1a型RNAはHuh−7細胞系中では複製を受けず、このことはこの系の限定的な有用性を示唆する。
【0012】
本発明は、細胞培養系において感染性HCV遺伝子型1型ウイルス粒子の産生を向上させるためにヒト血清を使用する驚くべき効果に基づく。培養細胞中で完全なウイルスサイクルを受けることのできるHCV遺伝子型1型ウイルス(世界の大半の地域において肝疾患に主に関連している)を入手できることは、HCVの処置のための新規療法の発見および開発にとって有益である。
【0013】
従って、本発明は、適応的突然変異Q1067R、V1655I、K1691R、K2040R、S2204Iを含む複製能を有するHCV遺伝子型1型のポリヌクレオチドを用いて、培養細胞をトランスフェクションすること、2〜10%のヒト血清の存在下においてトランスフェクションされた培養細胞をインキュベーションすること、および感染性HCV遺伝子型1型ウイルス粒子を含むトランスフェクションされた培養細胞からの培地を回収することを含む、培養細胞中においてHCV遺伝子型1型ウイルス粒子の産生を増加させるための方法を提供する。本発明はさらに、適応的突然変異Q1067R、V1655I、K1691R、K2040R、S2204Iを含む複製能を有するHCV遺伝子型1型のポリヌクレオチドを用いて、培養細胞をトランスフェクションすること;2〜10%のヒト血清の存在下においてトランスフェクションされた培養細胞をインキュベーションすること;感染性HCV遺伝子型1型のウイルス粒子を含むトランスフェクションされた培養細胞からの培地を回収すること;HCV阻害活性についてスクリーニングされる分子の存在下または非存在下において、ネイティブな培養細胞を、感染性HCV遺伝子型1型ウイルス粒子を用いて感染させること;および前記分子の非存在下と比較して前記分子の存在下におけるHCVレベルの減少が、前記分子がHCV遺伝子型1型阻害剤であることを示す、感染培養細胞中に存在するHCVのレベルを測定することを含む、HCV遺伝子型1型阻害剤についてスクリーニングする方法を提供する。
【0014】
本発明の前記および他の利点並びに特徴、並びにそれが達成される方法は、例示的な態様を説明する添付の実施例と併せて本発明の以下の詳細な説明を考察すればより容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヒト血清はHCV複製を増強しない。Rof−400c細胞を、HCV H77S株または複製欠損突然変異体(GND)をコードするin vitroで転写されたRNAを用いてトランスフェクションした。トランスフェクション後の指定した時間に、細胞内RNAを精製し、その後これを使用してHCV RNAの量を決定した。
【図2】ヒト血清は感染性HCVの産生を増強する。Rof−400c細胞を、HCV H77S株または複製欠損突然変異体(GND)をコードするin vitroで転写されたRNAを用いてトランスフェクションした。トランスフェクション後の指定した時間に、培地を回収し、そしてこれを使用してナイーブ細胞を感染した。3日後、細胞内RNAを精製し、その後これを使用してHCV RNAの量を決定した。
【図3】免疫蛍光分析による感染細胞中のHCVコアタンパク質の検出。HCV H77S株をコードするin vitroで転写されたRNAを用いてトランスフェクションされた細胞から回収した培地を使用してナイーブ細胞を感染した。4日後、HCVコアタンパク質の発現を免疫蛍光によって分析した。
【図4】イムノペルオキシダーゼ分析による感染細胞中のHCVコアタンパク質の検出。HCV H77S株をコードするin vitroで転写されたRNAを用いてトランスフェクションされた細胞から回収した培地を使用してナイーブ細胞を感染した。4日後、HCVコアタンパク質の発現をイムノペルオキシダーゼ染色後に分析した。
【図5】H77SおよびH77S RO−51−5Bについての感染性ウイルス産生の動態。Rof−0c細胞を、HCV H77S株またはH77S RO−51−5Bキメラ株をコードするin vitroで転写されたRNAを用いてトランスフェクションした。指定した時点において、培地を回収し、そしてこれを使用してナイーブ細胞を感染し、感染細胞を含むウェルが50%となる終点希釈として測定した感染性ウイルス力価を決定した(組織培養感染量TCID50)。
【図6】GT1a感染性ウイルスに対するNS5B阻害剤およびHCVエントリー阻害剤の効力。Rof−0c細胞を、H77SまたはキメラH77S RO−51−5Bのいずれかを用いて感染させた。感染時において、細胞を、NS5B阻害剤のHCV−796またはHCVエントリー阻害剤のJS81のいずれかの連続希釈液を用いて処理した。3日後、細胞内RNAを精製し、そしてこれを使用してHCV RNAの量を決定した。
【0016】
本明細書において使用する「複製能を有するポリヌクレオチド」という用語は、細胞中に存在する場合に複製するポリヌクレオチドをいう。例えば、相補的ポリヌクレオチドが合成される。本明細書において使用する「in vitroで複製する」という用語は、ポリヌクレオチドが、培養液中で成長している細胞中で複製することを示す。培養細胞は、例えば、不死化細胞または形質転換細胞を含む、培養液中で成長するように選択されたものであり得る。あるいは、培養細胞は、動物から移植されたものであってもよい。「in vivoで複製する」とは、ポリヌクレオチドが、例えば、霊長類(チンパンジーを含む)またはヒトなどの動物の体内の細胞中で複製することを示す。本発明のいくつかの局面において、細胞中の複製は、「感染性」ウイルス粒子、すなわち、細胞に感染することができそしてより感染性の高いウイルス粒子の産生をもたらすウイルス粒子の産生を含み得る。
【0017】
複製能を有するポリヌクレオチドは、少なくとも1つの適応的突然変異を含む。本明細書において使用する「適応的突然変異」は、適応的突然変異を有さない複製能を有するポリヌクレオチドと比較して、複製能を有するポリヌクレオチドの複製能を向上させる、ポリタンパク質のアミノ酸配列の変化である。
【0018】
本発明において言及された、複製能を有するポリヌクレオチドが含む1つの適応的突然変異は、アミノ酸約1067位でのアルギニンであり、これはNS3のアミノ酸約41位である。最も臨床的なHCV単離株および分子的にクローニングされた実験用のHCV株は、この位置においてグルタミンを含み、従って、この突然変異はQ1067Rと称することができる。2つ目の適応的突然変異はアミノ酸約1655位におけるイソロイシンであり、これはNS3のアミノ酸約629位である。最も臨床的なHCV単離株および分子的にクローニングされた実験用のHCV株は、この位置においてバリンを含み、従って、この突然変異はV1655Iと称することができる。3つ目の適応的突然変異はアミノ酸約1691位におけるアルギニンであり、これはNS4Aのアミノ酸約34位である。最も臨床的なHCV単離株および分子的にクローニングされた実験用のHCV株は、この位置においてリジンを含み、従って、この突然変異はK1691Rと称することができる。4つ目の適応的突然変異はアミノ酸約2040位におけるアルギニンであり、これはNS5Aのアミノ酸約68位である。最も臨床的なHCV単離株および分子的にクローニングされた実験用のHCV株は、この位置においてリジンを含み、従って、この突然変異はK2040Rと称することができる。本発明において言及された、複製能を有するポリヌクレオチドが含む5つ目の適応的突然変異は、アミノ酸約2204位においてイソロイシンであり、これはNS5Aのアミノ酸約232位である。最も臨床的なHCV単離株および分子的にクローニングされた実験用のHCV株は、この位置においてセリンを含み、そしてこの突然変異は当技術分野においてS2204Iと称される。
【0019】
本明細書において使用する「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドの多量体形をいい、そして、二本鎖および一本鎖のDNAおよびRNAの両方を含む。ポリヌクレオチドは、例えば、コード配列、並びに非コード配列、例えば調節配列および/または非翻訳領域などを含む、異なる機能を有するヌクレオチド配列を含み得る。ポリヌクレオチドは天然源から直接的に得られても、または組換え技法、酵素的技法もしくは化学的技法の助けを得て調製してもよい。ポリヌクレオチドは、トポロジー的に直線状または環状であり得、そして例えば、発現ベクターまたはクローニングベクターなどのベクターの一部またはフラグメントであり得る。
【0020】
「コード領域」および「コード配列」という用語は、同義語として使用され、そして、ポリペプチドをコードし、そして適切な調節配列の制御下に配置された場合にコードポリペプチドを発現する、ポリヌクレオチド領域をいう。コード領域の境界は、一般に、その5’末端における翻訳開始コドンおよびその3’末端における翻訳終止コドンによって決定される。コード領域は、1つ以上のポリペプチドをコードすることができる。例えば、コード領域は、その後2つ以上のポリペプチドへとプロセシングされるポリペプチドをコードすることができる。調節配列または調節領域は、それが作動可能に連結されているコード領域の発現を調節するヌクレオチド配列である。調節配列の非限定的な例としては、プロモーター、転写開始部位、翻訳開始部位、配列内リボソーム進入部位、翻訳終止部位、および転写終結因子が挙げられる。「作動可能に連結」とは、こうして記載された構成因子が、その目的とする様式で機能することを許容する関係にある並列をいう。コード領域の発現が、調節配列と適合する条件下において達成されるように、調節配列が、接続されている場合、調節配列は、コード領域に「作動可能に連結」されている。
【0021】
本明細書において使用する「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーをいい、そしてアミノ酸のポリマーの具体的な長さには言及しない。従って、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、ポリタンパク質、プロテイナーゼ、および酵素という用語は、ポリペプチドの定義内に含まれる。この用語はまた、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などの、ポリペプチドの発現後の修飾も含む。「C型肝炎ウイルスポリタンパク質」は、翻訳後に切断されて1個を超えるポリペプチドを生じるポリペプチドをいう。
【0022】
「5’非翻訳RNA」、「5’非翻訳領域(non-translated region)」、「5’非翻訳領域(untranslated region)」および「5’非コード領域」という用語は同義語として使用され、そして当技術分野の用語である(Bukh et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 1992 89: 4942-4946を参照されたい)。この用語は、複製能を有するポリヌクレオチドの5’末端であるヌクレオチドをいう。
【0023】
「3’非翻訳RNA」、「3’ 非翻訳領域(non-translated region)」、「3’ 非翻訳領域(untranslated region)」という用語は同義語として使用され、そして当技術分野の用語である。この用語は、複製能を有するポリヌクレオチドの3’末端であるヌクレオチドをいう。
【0024】
細胞は、外来性または異種性のDNAまたはRNAが細胞内に導入された場合に、このようなDNAまたはRNAによって「形質転換」または「トランスフェクション」されている。形質転換またはトランスフェクションするDNAまたはRNAは、細胞のゲノムを作る染色体DNA中に組み込まれて(共有結合して)いてもいなくてもよい。例えば、原核細胞、酵母および哺乳動物細胞において、形質転換するDNAはプラスミドなどのエピソームエレメント上に維持されていてもよい。真核細胞に関しては、安定に形質転換された細胞とは、形質転換するDNAが、染色体の複製を通して娘細胞に遺伝されるように染色体中に組み込まれるようになったものである。この安定性は、形質転換するDNAを含む娘細胞の個体群を含む細胞系またはクローンを真核細胞が樹立できる能力によって実証されている。
【0025】
本明細書において使用する「被験体」という用語は、脊椎動物、特に哺乳動物種のメンバーをいい、そしてこれらは、げっ歯類、ウサギ、トガリネズミおよび霊長類(後者はヒトを含む)を含むがそれらに限定されない。
【0026】
「試料」という用語は、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚の外切片、呼吸器、腸管および泌尿生殖器、涙液、唾液、乳汁、血球、腫瘍、臓器を含むがそれらに限定されない、被験体から単離された組織または体液の試料、並びにまたin vitro細胞培養構成成分の試料(培養細胞、推定ウイルス感染細胞、組換え細胞の増殖物から得られた馴化培地および細胞成分を含むがそれらに限定されない)をいう。
【0027】
「HCV遺伝子型1型阻害剤」という用語は、HCV遺伝子型1型の任意の機能を阻害する分子をいい、そして最初の付着およびエントリーから放出までのウイルスの生活環におけるいかなる段階においても作用し得、そして付着阻害剤、エントリー阻害剤、融合阻害剤、輸送阻害剤、複製阻害剤、翻訳阻害剤、タンパク質プロセシング阻害剤、または放出阻害剤を含み得るがそれらに限定されない。前記分子は広範囲に由来し得、そして有機分子、ペプチド、ポリペプチド(例えば抗体)、ポリヌクレオチド(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、microRNA)、またはその組合せを含み得るがそれらに限定されない。
【0028】
実施例
以下の調製および実施例は、当業者が本発明をより明瞭に理解しそして実践できるように記載されている。それらは本発明の範囲を制限するものと捉えるべきではなく、単にその説明および代表例と捉えるべきである。
【0029】
材料および方法
細胞培養
Rof−0細胞は、Huh−7細胞系から誘導されたヒト肝細胞癌の細胞系である。Rof−0細胞は安定にHCV遺伝子型(GT)1b型レプリコンを維持する。400単位/mlのIFN−α2a(Roferon(登録商標), Hoffmann-LaRoche Inc.)並びにレプリコンの選択を維持するためのG418(ジェネティシン(登録商標)、Invitrogen)の存在下においてRof−0細胞を維持することによって、インターフェロン−αに対する応答性が消失した細胞系を作製した。得られた細胞系はRof−400と呼ばれる。Rof−0およびRof−400細胞を2’−C−メチルアデノシンの存在下において維持することによって前記細胞由来のHCVレプリコンを治療し、そしてRof−0cおよびRof−400c細胞系が得られた。細胞系を、Glutamax(商標)および100mg/mlのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)の補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。培地にさらに10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS、Invitrogen)および1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを補充する。
【0030】
プラスミド
5つの細胞培養適応的突然変異を有する完全長GT1aH77株をコードするプラスミドを以下のように操作した。TQ−1プラスミド(GT1aH77サブゲノムレプリコンをコードする)およびTX−2プラスミド(H77サブゲノムレプリコンもコードし、そしてNS5Bコード配列にフランキングするAsiSIおよびRsrII制限酵素部位をコードする)を、制限酵素のAgeIおよびNsiIを用いて消化した。消化から得られた6400塩基対のフラグメントを精製した。プラスミドHCV1aH77をAgeIおよびNsiIを用いて消化し、そして得られた5100塩基対のフラグメントを精製した。TQ−1およびTX−2の消化からの精製フラグメントを、別々にHCV1aH77消化産物とライゲーションして、プラスミドpUC HCV1aH77(これは3つの適応的突然変異(K1691R、K2040RおよびS2204I)を含む)およびpUC HCV1a−H77.AsiSIRsrII(これは同じ3つの適応的突然変異と、NS5B配列にカセットするためのAsiSIおよびRsrII制限酵素部位とを含む)を得る。2つの追加の適応的突然変異(Q1067RおよびV1655I)を、クイックチェンジ部位特異的突然変異誘発キットを使用して製造業者の指示(Stratagene)に従って、両方のベクター中に導入した。これにより、プラスミドpUC H77S(配列番号1)およびpUC H77S.AsiSIRsrII(配列番号2)が得られた。クイックチェンジ部位特異的突然変異誘発キットを使用して製造業者の指示(Stratagene)に従って、NS5B活性部位に突然変異(D2738N)を導入することによって複製欠損構築物を作製し、構築物pUC H77S GNDを得た。
【0031】
pUC H77S.AsiSIRsrIIおよび臨床単離株RO−51 NS5B配列についてのPCR産物をAsiSIおよびRsrIIを用いて消化することによって、臨床分離株由来のNS5B配列をコードするキメラH77Sウイルスを作製した。フラグメントを共にライゲーションして、プラスミドpUC H77S RO−51−5B(配列番号3)を得た。
【0032】
ウイルス産生
完全長HCVゲノムをコードするプラスミドを制限酵素SpeIを用いて直線化し、その後、マングビーンヌクレアーゼを用いて処理した。直線化した鋳型を、in vitroRNA転写反応においてT7Ribomax Expressキット(Promega)を使用して製造業者の指示に従って使用した。RNAトランスフェクションのために、400万個のRof−0cまたはRof−400c細胞に2〜10μgのin vitro転写RNAを用いて電気穿孔した。電気穿孔後、細胞を、5%(v/v)FBSまたは2%〜10%(v/v)ヒト血清(HS、Bioreclamation)のいずれかを含むDMEM中に再懸濁した。指定した時点において培地を回収し、3000RPMで遠心分離にかけ、そしてアリコート化して、感染性ウイルスの産生についてアッセイした。
【0033】
感染性ウイルスのアッセイ
トランスフェクションしたRof−0cまたはRof−400c細胞から回収した培地を、ナイーブRof−0cまたはRof−400cと共にインキュベーションすることによって感染性ウイルスについてアッセイした。ナイーブ細胞を72〜96時間インキュベーションした後、細胞性RNAを抽出してHCV RNAを定量するか、または細胞を固定してHCVタンパク質の発現について分析するかのいずれかを行なった。
【0034】
HCV RNAの存在を、全細胞性RNAの精製後に、製造業者の指示に従ってPerfectPure RNA 96細胞キット(5 Prime)を使用して調べた。HCV RNAの量を定量するために、cDNAを、Taqman Universal PCR mix (Applied Biosystems)またはTaqMan EZ RT-PCRキット(Applied Biosystems)のいずれかを使用して、5’非翻訳領域(UTR)内の領域に相補的な1セットのプライマーおよびプローブを用いて増幅した。プライマーおよびプローブの配列は、
【表1】


である。
【0035】
感染細胞中のHCVタンパク質の発現を、免疫蛍光アッセイまたはイムノペルオキシダーゼアッセイのいずれかによって検査および定量した。細胞を2%ホルムアルデヒド中で1時間室温でインキュベーションすることによって固定した。固定後、細胞に、0.2%TX−100および0.1%クエン酸ナトリウムを含むPBS中における5分間のインキュベーションによって透過処理を行なった。蛍光画像撮影のために、透過処理された細胞を、3%正常ヤギ血清および0.5%ウシ血清アルブミンを使用して30分間かけてブロックし、その後、HCVコアに特異的なマウスモノクローナル抗体(ab2740、Abcam)を用いて20分間かけて染色した。洗浄後、細胞を、二次抗体(A11032、Invitrogen)と共に20分間インキュベーションした。細胞を、1滴のPermafluor (Thermo Scientific)を使用してマウントし、そして画像撮影した。感染フォーカス数を計測して、フォーカス形成単位/mlで感染力価を決定した。
【0036】
感染力価はまた、イムノペルオキシダーゼアッセイを使用しても決定することができた。細胞を前記のように固定および透過処理した。その後、細胞を、ImmPRESS抗マウスIgペルオキシダーゼキット(MP−7402、Vector Labs)を使用して製造業者の指示に従ってブロックした。細胞を、ブロックしながら、HCVコアに特異的なマウスモノクローナル抗体(ab2740、Abcam)を用いて1時間かけて染色した。洗浄後、細胞を、ImmPRESSペルオキシダーゼ:抗マウスコンジュゲートと共に30分間インキュベーションした。染色した細胞を、ImmPACT DAB基質(SK−4105、Vector Labs)と共に10分間インキュベーションし、続いてDAB増強後(H−2200、Vector Labs)、可視化した。感染力価を、感染細胞を含むウェルが50%となる終点希釈として決定した(組織培養感染量TCID50)。
【0037】
HCV感染性ウイルスのEC50の決定
抗ウイルス剤に対する感染性HCVの感度を、遺伝子型1a型H77S株またはH77S RO−51−5B株を使用して決定した。完全長ゲノムをRof−0c細胞中にトランスフェクションし、前記細胞を2〜10%HSを含むDMEM中で培養し、そしてトランスフェクションの7日後に培地を回収することによってウイルスストックを作製した。EC50の決定のために、Rof−0c細胞を、1ウェルあたり10,000個の細胞で、96ウェルのポリ−D−リジンでコーティングされたプレート(BD Biosciences)中に蒔いた。蒔いてから24時間後、培地を除去し、そして1ウェルあたり90μlのウイルスストックを加えた。その後、3倍連続希釈の阻害剤を加えた。感染から3日後、HCV RNAを前記のように定量した。EC50値を、定量RT−PCRによって決定したところHCV RNAのレベルの50%の減少が観察された濃度として定義した。
【0038】
結果
ヒト血清はHCV RNAの複製に影響を及ぼさない。in vitroにおける感染性GT1a株の複製の研究は、産生される低いウイルス力価のために現在制限されている。感染性ウイルスの産生を向上させるために、ヒト血清の効果を調べた。治療されたHuh−7細胞系であるRof−400cを、完全長GT1aウイルス株H77Sを用いてトランスフェクションし、そして細胞を、10%FBSまたは10%HSのいずれかを含む培地中で培養した。細胞内HCV RNAの量を5日間にわたり決定した。HS中またはFBS中のいずれかで培養した細胞は、試験した全ての時点を通して同様の量のHCV RNAを含んでいた(図1)。トランスフェクション細胞へのHSの添加は、HCV RNAの複製を増加させないようである。
【0039】
ヒト血清は感染性HCVの産生を増加させる。前記した同じ実験において、感染性HCV粒子の産生に対するヒト血清の効果を調べた。培地をトランスフェクション後24時間毎に5日間除去し、その後、ナイーブ細胞上に接種して、感染性ウイルスの産生を測定した。感染性ウイルスの存在を、指定した時点に回収した上清の存在下において72時間インキュベーションした後にナイーブ細胞内の細胞内HCV RNAの量を定量することによって決定した。感染ナイーブ細胞において検出された細胞内HCV RNAの量は、H77Sまたは複製欠損突然変異体のいずれかでトランスフェクションしそしてFBS中で培養された細胞から回収した上清を用いて感染させた細胞間で等価であった(図2)。このことは、FBS中で培養した細胞から放出された感染性HCVの量は、トランスフェクションから取り残された残存HCV HCVとは区別できなかったことを示す。しかしながら、HSと共に培養したトランスフェクション細胞からの培地を用いて接種された感染ナイーブ細胞から回収した細胞内HCV RNAの量は増加していた(図2)。HS中で培養されたトランスフェクション細胞は感染性HCVを放出し、そしてその量は5日間のアッセイを通して増加した。これらの実験は、HSはHCV RNAの複製を増加させないが、感染性ウイルスの産生は増加させることを実証する。
【0040】
感染性粒子が、HS中で培養されたトランスフェクション細胞から放出されたことを確証するために、ナイーブ細胞に種々の時点において回収した上清を用いて接種し、その後、HCVコアタンパク質の発現について分析した。HCVコアタンパク質の存在が、免疫蛍光およびイムノペルオキシダーゼ分析について染色された細胞中で確認された(図3および図4)。これらの結果は、HSと共に培養したトランスフェクション細胞からの培地を用いて感染させたナイーブ細胞において検出されたHCV RNAの増加は(図2)、産生性HCV感染の結果であることを実証した。
【0041】
感染性HCVのピークにおける産生。前記の実験は、HS中で培養されたトランスフェクション細胞が、5日間の期間にわたって感染性粒子を放出したことを実証した。ウイルス産生についてのピークの時点を決定するために、トランスフェクション細胞を11日間までの間、HS中で培養した。培地をトランスフェクション細胞から回収し、そしてこれを使用してナイーブ細胞を接種した。感染性粒子の存在を、TCID50/mlを決定する終点希釈アッセイによって定量した。Rof−0c細胞をH77Sを用いてトランスフェクションし、そしてトランスフェクションから7日後に、感染力価は約6000TCID50/mlでピークに達した(図5)。HS中で培養したトランスフェクション細胞から得られたピークのHCV感染力価は、FBS中で培養した細胞について以前に報告されたものよりも60倍高かった(Yi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2006 103(7):2310-2315)。
【0042】
NS5Bキメラウイルスの作製。NS5Bカセットシステムが、あらゆるNS5B配列のクローニングおよび分析を容易にするHCVレプリコンを使用して確立されている(Le Pogam et al., J. Antimicrob. Chemother. 2008 61:1205-1216)。NS5Bカセットは、種々の非ヌクレオシド阻害剤およびヌクレオシド阻害剤に対する、NS5B単離株のパネルからの表現型応答を分析するのに使用されている。NS5B配列のクローニングに使用されるAsiSIおよびRsrII制限酵素部位を、完全長H77Sゲノムにクローニングした。H77カセットレプリコン内で複製することが知られる臨床単離株からの共通配列をH77S NS5Bカセットにクローニングし、キメラウイルスH77S RO−51−5Bを得た。H77S RO−51−5Bトランスフェクション細胞からの感染性ウイルスの産生を調べた。H77Sと同様に、感染性ウイルスの産生についてのピークの時点は7日目であったが、H77S RO−51−5Bの力価はH77Sと比較して3倍減少した(図5)。このデータは、NS5Bカセットシステムを使用してキメラ感染性ウイルスを作製することができることを実証する。
【0043】
GT1aウイルスに対するHCV阻害剤の効力。HSの存在下において培養した細胞からトランスフェクションの7日後に培地を回収することによってウイルスストックを作製した。HCVストックを分析して、それらがHCV阻害剤の効力を測定するのに十分であるかどうかを決定した。Rof−0c細胞を96ウェルプレートに蒔き、H77SまたはH77S RO−51−5Bのいずれかで感染させ、その後、既知の非ヌクレオシド阻害剤(HCV−796)または既知のエントリー阻害剤(JS81)のいずれかを用いて処理した。感染性H77Sに対するHCV−796の効力は32±4nMであり、これは報告されていたものと同様である(図6)。H77S RO−51−5Bに対するJS81の効力は139±23ng/mlであり、これもまた報告されたデータと同様である(図6)。これらの実験は、HSの存在下において成長したGT1a感染性ウイルスを使用して、HCV阻害剤の効力を測定できるという証拠を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応的突然変異Q1067R、V1655I、K1691R、K2040R、S2204Iを含む複製能を有するHCV遺伝子型1型のポリヌクレオチドを用いて、培養細胞をトランスフェクションすること;
2〜10%のヒト血清の存在下においてトランスフェクションされた培養細胞をインキュベーションすること;
感染性HCV遺伝子型1型ウイルス粒子を含むトランスフェクションされた培養細胞からの培地を回収すること
を含む、培養細胞中の感染性HCV遺伝子型1型ウイルス粒子の産生を増加させるための方法。
【請求項2】
トランスフェクションされた培養細胞が、Huh−7細胞系に由来する、請求項1の方法。
【請求項3】
トランスフェクションされた培養細胞を10%ヒト血清の存在下においてインキュベーションする、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
適応的突然変異Q1067R、V1655I、K1691R、K2040R、S2204Iを含み、そしてHCV遺伝子型1型の感染被験体の試料に由来するNS5Bポリヌクレオチド配列をさらに含む、複製能を有するHCV遺伝子型1型ポリヌクレオチドを用いて、培養細胞をトランスフェクションすること;
2〜10%のヒト血清の存在下においてトランスフェクションされた培養細胞をインキュベーションすること;
感染性HCV遺伝子型1型ウイルス粒子を含むトランスフェクションされた培養細胞からの培地を回収すること
を含む、培養細胞中の感染性HCV遺伝子型1型ウイルス粒子の産生を増加させるための方法。
【請求項5】
トランスフェクションされた培養細胞が、Huh−7細胞系に由来する、請求項4の方法。
【請求項6】
トランスフェクションされた培養細胞を10%ヒト血清の存在下においてインキュベーションする、請求項4または請求項5の方法。
【請求項7】
適応的突然変異Q1067R、V1655I、K1691R、K2040R、S2204Iを含む複製能を有するHCV遺伝子型1a型のポリヌクレオチドを用いて、培養細胞をトランスフェクションすること;
2〜10%のヒト血清の存在下においてトランスフェクションされた培養細胞をインキュベーションすること;
感染性HCV遺伝子型1型のウイルス粒子を含むトランスフェクションされた培養細胞からの培地を回収すること;
HCV阻害活性についてスクリーニングされる分子の存在下または非存在下において、ネイティブな培養細胞を、感染性HCV遺伝子型1型ウイルス粒子を用いて感染させること;および
前記分子の非存在下と比較して前記分子の存在下におけるHCVレベルの減少が、前記分子がHCV遺伝子型1型阻害剤であることを示す、感染培養細胞中に存在するHCVのレベルを測定すること
を含む、HCV遺伝子型1型阻害剤についてのスクリーニング方法。
【請求項8】
複製能を有するHCV遺伝子型1型のポリヌクレオチドが、さらに、HCV遺伝子型1型感染被験体の試料に由来するNS5B配列を含む、請求項7の方法。
【請求項9】
トランスフェクションされた培養細胞および感染培養細胞が、Huh−7細胞系に由来する、請求項7または請求項8の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−501664(P2012−501664A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526468(P2011−526468)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061363
【国際公開番号】WO2010/028999
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】