説明

細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズ

【課題】増殖した細胞を変性させることなくそのまま剥離・回収できる細胞培養用樹脂ビーズを提供する。
【解決手段】温度−吸水率曲線において変曲点を有する架橋ポリマー(A)を含有してなることを特徴とする細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズで、変曲点に対応する温度は0〜80℃であり、(A)は、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーを必須構成単量体としてなる架橋ビニルポリマー(A1)、架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)、架橋メチルセルロース(A3)、並びに架橋ポリビニルアルコール部分ケン化物(A4)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。さらに細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(P)を含有してなり、さらに微粒子(b)を含有してなる該細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養用ビーズとしては、吸水することにより膨潤するデキストランビーズ(特許文献1、非特許文献1)が知られている。このビーズで培養・増殖させた細胞は、タンパク分解酵素(例えばトリプシン)やキレート剤(例えばEDTA)等により処理してビーズ表面から剥離・回収されている(非特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開昭57−195701号公報
【非特許文献1】Microcarrier cell culture principles & methods(ファルマシアバイオテク(株)、1996年10月10日発行)27〜29頁等
【非特許文献2】Microcarrier cell culture principles & methods(ファルマシアバイオテク(株)、1996年10月10日発行)74〜77頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような処理を施して、増殖した細胞を剥離・回収する場合、増殖した細胞が上記処理により変性し、細胞本来の機能が損なわれるという問題がある。本発明の目的は、増殖した細胞を変性させることなくそのまま剥離・回収できる細胞培養用樹脂ビーズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズの特徴は、温度−吸水率曲線において変曲点を有する架橋ポリマー(A)を含有してなる点を要旨とする。
また、本発明の感温性樹脂ビーズの製造方法は、温度−吸水率曲線において変曲点を有する架橋ポリマー(A)を含有してなる細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズの製造方法であって、
カルバモイル基及び/若しくはポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物を疎水性溶媒(W)中に滴下すると同時に分散しながら重合反応させて架橋ビニルポリマー(A1)を得る工程(1)、
アルキレンオキシドポリマーと架橋剤(c2)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散し架橋反応させて架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)を得る工程(2)、
メチルセルロースと架橋剤(c3)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散し架橋反応させて架橋メチルセルロース(A3)を得る工程(3)、
並びに/又はポリビニルアルコール部分ケン化物と架橋剤(c4)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散し架橋反応させて架橋ポリビニルアルコール部分ケン化物(A4)を得る工程(4)を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズは、細胞培養後の細胞剥離・回収工程において、タンパク分解酵素やキレート剤による処理を必要としないため、極めて簡便に細胞を剥離・回収できる。したがって、細胞本来の機能が損なわれるという問題がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
温度−吸水率曲線とは、架橋ポリマー(A)の吸水率と測定温度とをプロットした曲線である。
吸水率は、JIS Z8801−1:2000に準拠した目開き53μmのナイロン製網で作成したティーバッグ(縦10cm、横5cm)に、架橋ポリマー試料1.00gを入れ、一定温度に調整しておいた脱イオン水500mlに浸漬し、一定温度で3日間放置した後、ティーバックを15分間吊して水切りしてから、架橋ポリマー試料の重量(AG)を測定し、次式から吸水率を算出する。
【0008】
【数1】

なお、測定温度は、0〜95℃の範囲で少なくとも5点、好ましくは10点、さらに好ましくは25点、特に好ましくは50点、最も好ましくは95点の温度を選択することである。
【0009】
変曲点とは、関数f(x)が2回微分可能であり、x=aの前後で曲線y=f(x)の凹凸が変わるときの点(a,f(a))を意味する。すなわち、曲線が上に凸の状態から上に凹の状態に、または上に凹の状態から上に凸の状態に、変わる点を意味する。
この変曲点付近において、架橋ポリマー(A)の吸水率の変化が最大となる。
【0010】
架橋ポリマー(A)の変曲点に対応する温度(℃)は、0〜80が好ましく、さらに好ましくは5〜70、特に好ましくは10〜50、最も好ましくは15〜40である。なお、通常の細胞は熱に弱いため、この温度(℃)は、より好ましくは5〜40、次に好ましくは10〜38、一番好ましいのは15〜35である。この範囲であると、細胞の剥離・回収処理が更に良好となる。
【0011】
このような変曲点を有する架橋ポリマー(A)としては、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーを必須構成単量体としてなる架橋ビニルポリマー(A1)、架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)、架橋メチルセルロース(A3)、並びに架橋ポリビニルアルコール部分ケン化物(A4)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく例示できる。これらの架橋ポリマーは1種又は2種以上の混合物でもよい。
【0012】
架橋ビニルポリマー(A1)は、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーを必須構成単量体としてなればよいが、架橋剤(c1)を構成単位として含むことが好ましい。
カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーとしては、(イ)N−アルキル−又はN−アルコキシアルキル−(メタ)アクリル酸アミド、(ロ)N,N−ジアルキル−、N,N−ジ(アルコキシアルキル)−又はN,N−アルキレン−(メタ)アクリル酸アミド、(ハ)ポリイミノエチレン基(重合度2〜50)を有する(メタ)アクリル酸アミド、(ニ)3級アミノ基(炭素数5〜50)を有する(メタ)アクリル酸アミド、(ホ)アルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレン(重合度3〜40)モノオール若しくはジオールの(メタ)アクリル酸モノエステル、(ヘ)アルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレン(重合度3〜40)モノオール若しくはジオールのモノビニルフェニルエーテル、(ト)一般式(1)で表されるビニルモノマー及び(チ)一般式(2)で表されるビニルモノマー等が含まれ、これらの他に(メタ)アクリルアミドも使用できる。
なお、(メタ)アクリル・・とは、アクリル・・及び/又はメタクリル・・を意味する。
【0013】
(イ)N−アルキル−又はN−アルコキシアルキル−(メタ)アクリル酸アミドとしては、炭素数4〜10のN−モノ置換(メタ)アクリル酸アミド等が使用でき、N−メチル(メタ)アクリル酸アミド、N−エチル(メタ)アクリル酸アミド、N−プロピル(メタ)アクリル酸アミド、N−イソプロピル(メタ)アクリル酸アミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリル酸アミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリル酸アミド及びN−エトキシエチル(メタ)アクリル酸アミド等が挙げられる。
【0014】
(ロ)N,N−ジアルキル−、N,N−ジ(アルコキシアルキル)−又はN,N−アルキレン−(メタ)アクリル酸アミドとしては、炭素数5〜12のN,N−ニ置換(メタ)アクリル酸アミド等が使用でき、N,N−ジエチル(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメトキシプロピル(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリロイルピペリジン及びN−(メタ)アクリロイルピロリジン等が挙げられる。
【0015】
(ハ)ポリイミノエチレン基(重合度2〜50)を有する(メタ)アクリル酸アミドとしては、テトラエチレンイミンモノ(メタ)アクリル酸アミド、トリエチレンイミンモノ(メタ)アクリル酸アミド等が挙げられる。
【0016】
(ニ)3級アミノ基(炭素数5〜50)を有する(メタ)アクリル酸アミドとしては、N−モルホリノエチル(メタ)アクリル酸アミド、N−モルホリノプロピル(メタ)アクリル酸アミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリル酸アミド及びジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸アミド等が挙げられる。
【0017】
(ホ)アルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレン(重合度3〜40)モノオール若しくはジオールの(メタ)アクリル酸モノエステルとしては、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリオキシプロピレンテトラオキシエチレン(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールのエチレンオキシド6モル付加物の(メタ)アクリル酸モノエステル及びブタノールのエチレオオンキシド20モル・プロピレンオキシド20モルブロック付加物の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0018】
(ヘ)アルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレン(重合度3〜40)モノオール若しくはジオールのモノビニルフェニルエーテルとしては、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルモノビニルフェニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノエチルエーテルモノビニルフェニルエーテル、メトキシペンタオキシプロピレンテトラオキシエチレンビニルフェニルエーテル及びテトラプロピレングリコールのエチレンオキシド8モル付加物のモノビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0019】
(ト)一般式(1)で表されるビニルモノマーについて説明する。
【化1】

OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは1〜200の整数、Xは−CO2H、−CO23、−CO2M、−CO2NR34、−CONR32又は−CNで表される基、Mは金属原子、R1は水素原子又はメチル基、R2及びR3は水素原子又は炭素数1〜6の有機基を示す。
【0020】
一般式(1)において、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレンが挙げられる。
これらのうち、製造しやすさの観点等から、オキシエチレン及びオキシプロピレンが好ましく、さらに好ましくはオキシエチレンである。
これらのオキシアルキレン基は、1種類でも2種類以上の混合でもよい。2種類以上の混合のとき、結合様式はブロック、ランダム及びこれらの組合せのいずれでもよい(ブロック及びこれらの組合せが好ましい)。
また、nは、1〜200の整数が好ましいが、この範囲を超えてもよい。
【0021】
2のうち、炭素数1〜6の有機基としては、アルキル、アルケニル及びアシル等が含まれる。
アルキルとしては、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル及びn−ヘキシル等が挙げられる。
アルケニルとしては、ビニル、1−プロペニル、2−ブテニル及び2,2−ジメチル−3−ブテニル等が挙げられる。
アシルとしては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル及びプロピオロイル等が挙げられる。
2のうち、製造しやすさの観点等からは、水素原子及びアシルが好ましいが、加水分解性の観点等からは、水素原子、アルキル及びアルケニルが好ましく、さらに好ましくは水素原子及びアルキルである。
【0022】
3のうち、炭素数1〜6の有機基としては、アルキル及びアルケニル等が含まれる。
3のうち、水素原子及びアルキルが好ましく、さらに好ましくは加水分解性の観点等から水素原子である。
M(金属原子)としてはカルボン酸金属を形成し得るものでれば制限がないが、塩を形成し得る金属{アルカリ金属(リチウム、カリウム及びナトリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)及び遷移金属(銅及び亜鉛等)}等が好ましい。
Xのうち、−CO2H、−CO23、−CONR32で表される基が好ましく、さらに好ましくは−CONR32で表される基である。
【0023】
一般式(1)で表されるビニルモノマーとしては、以下の、(1)カルボン酸(Xが−CO2H)、(2)カルボン酸エステル(Xが−CO23)、(3)カルボン酸金属塩(Xが−CO2M)、(4)カルボン酸アンモニウム塩(Xが−CO2NR34)、(5)アミド(Xが−CONR32)及び(6)カルボン酸ニトリル(Xが−CN)等が好ましく例示される。
【0024】
(1)カルボン酸(Xが−CO2H)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシプロピルオキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチルオキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、α−(ヒドロキシエチルオキシプロピルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸等。
【0025】
(2)カルボン酸エステル(Xが−CO23
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシプロピルオキシエチルオキシメチル)アクリル酸メチル及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸メチル等。
【0026】
(3)カルボン酸金属塩(Xが−CO2M)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸ナトリウム塩、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸カリウム塩、及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸ナトリウム塩等。
【0027】
(4)カルボン酸アンモニウム塩(Xが−CO2NR34
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩、α−(ヒドロキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸テトラメチルアンモニウム塩等。
【0028】
(5)アミド(Xが−CONR32
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、N−メチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、N−プロピル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、N−メトキシプロピル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジエチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシプロピルオキシエチルオキシメチル)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アミド、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アミド及びN,N−ジメチル−α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸アミド等。
【0029】
(6)カルボン酸ニトリル(Xが−CN)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸ニトリル、α−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル及びα−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)アクリル酸ニトリル等。
【0030】
一般式(1)で表されるビニルモノマーは、以下の公知の製造方法等を組み合わせて得ることができる。
(1)α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドの製造
アクリル酸エステル、アクリロニトリル又はN,N−ジアルキルアクリルアミドとホルムアルデヒドとを三級アミンの存在下に反応させることにより、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドを得る(たとえば、特開昭61−134353号、USP4654432号、特開平5−70408号)。
【0031】
(2)α−ヒドロキシメチル基へオキシアルキレン基の導入
α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドと、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド等)とを反応させる(公知の反応触媒等が使用できる)。
または、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドと、脂肪族アルコールアルキレンオキシド付加体とをアルカリ存在下で反応させる(ウイリアムソン合成法)。
脂肪族アルコールとしては、アルカノール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール及びn−ヘキサノール等)及びアルケノール(プロペノール、ブテノール及び2,2−ジメチル−3−ブテノール等)等が挙げられる。
【0032】
(3)必要により加水分解により、カルボン酸(Xが−CO2H)、カルボン酸金属塩(Xが−CO2M)、カルボン酸アンモニウム塩(Xが−CO2NR34)へ誘導
α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ニトリル又はN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドにオキシアルキレン基を導入したオキシアルキレン化合物を、加水分解しカルボン酸、カルボン酸金属塩又はカルボン酸アンモニウム塩とする(たとえば、第4版実験化学講座22、有機合成IV−酸・アミノ酸・ペプチド−、平成4年11月30日、(財)日本化学会編、丸善株式会社発行)。
また、カルボン酸ニトリル(Xが−CN)から、アミド(Xが−CONR32)へ加水分解することもできる(たとえば、上記の実験化学講座22、151〜156頁)。
また、カルボン酸エステル(Xが−CO23)から、アミド(Xが−CONR32)へ変換することもできる(たとえば、上記の実験化学講座22、148〜151頁)。
また、カルボン酸ニトリル(Xが−CN)から、カルボン酸エステル(Xが−CO23)へ変換することができる(たとえば、上記の実験化学講座22、53頁)。
【0033】
(チ)一般式(2)で表されるビニルモノマーについて説明する。
【化2】

【0034】
一般式(2)において、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり一般式(1)のOAと同様、mは1〜200の整数であり一般式(1)のnと同様、R4は水素原子又はメチル基であり、R5は水素原子又は炭素数1〜6の有機基であり一般式(1)のR2と同様である。
【0035】
一般式(2)で表されるビニルモノマーとしては、N−(ヒドロキシエチルオキシメチル)(メタ)アクリル酸アミド、N−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル)(メタ)アクリル酸アミド、N−(ヒドロキシプロピルオキシメチル)(メタ)アクリル酸アミド、N−(ヒドロキシプロピルオキシエチルオキシメチル)(メタ)アクリル酸アミド、N−(ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル)(メタ)アクリル酸アミド及びN−(メトキシエチルオキシメチル)(メタ)アクリル酸アミド、等。
【0036】
一般式(2)で表されるビニルモノマーは、一般式(1)で表されるビニルモノマーの場合と同様にして、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリル酸アミドのヒドロキシメチル基にオキシアルキレン基を導入することにより得れる。なお、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドは、市場から入手できるものを用いてもよいし、公知の方法{たとえば、(メタ)アクリルアミドとホルマリンとを塩基性触媒の存在下で反応させる}等により得てもよい。
【0037】
カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーのうち、細胞の剥離・回収の容易さの観点等から(イ)N−アルキル−又はN−アルコキシアルキル−(メタ)アクリル酸アミド、(ロ)N,N−ジアルキル−、N,N−ジ(アルコキシアルキル)−又はN,N−アルキレン−(メタ)アクリル酸アミド、(ハ)ポリイミノエチレン基(重合度2〜50)を有する(メタ)アクリル酸アミド、(ニ)3級アミノ基(炭素数5〜50)を有する(メタ)アクリル酸アミド、(ト)一般式(1)で表されるビニルモノマー及び(チ)一般式(2)で表されるビニルモノマーが好ましく、さらに好ましくは(イ)及び(ロ)、特に好ましくはN−メチル(メタ)アクリル酸アミド、N−エチル(メタ)アクリル酸アミド、N−プロピル(メタ)アクリル酸アミド、N−イソプロピル(メタ)アクリル酸アミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリル酸アミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリル酸アミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメトキシプロピル(メタ)アクリル酸アミド及びN−(メタ)アクリロイルピロリジン、最も好ましくはN−イソプロピルアクリル酸アミド、N,N−ジエチルアクリル酸アミドである。
【0038】
架橋剤(c1)としては、ビニル基を少なくとも2個有するモノマー(c11)、エポキシ基を少なくとも2個有する化合物(c12)、イソシアネート基を少なくとも2個有する化合物(c13)、エポキシ基を有するビニルモノマー(c14)及びイソシアネート基を有するビニルモノマー(c15)等が含まれる。
【0039】
ビニル基を2個以上有するモノマー(c11)としては、特開2002−284803号公報、特開2002−20468号公報又は特開平9−143897号公報に記載のモノマー等が使用できる。これらの中でも、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリセリントリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0040】
エポキシ基を少なくとも2個有する化合物(c12)としては、特開2002−284803号公報又は特開2004−263147号公報に記載のエポキシ基を少なくとも2個有する化合物等が使用でき、次の化合物が好ましい。
(1)エポキシ基を少なくとも2個有する芳香族化合物:ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジル、テトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル、カテキンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ピロガロールトリグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタリンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、フェノールまたはクレゾールノボラック樹脂のポリ(グリシジルエーテル)、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルとの反応から得られるジグリシジルエーテル、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド、またはホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリ(グリシジルエーテル)、及びレゾルシンとアセトンとの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリ(グリシジルエーテル)等。
【0041】
(2)エポキシ基を少なくとも2個有する複素環式化合物:トリスグリシジルメラミン、トリスエポキシプロピルイソシアヌレート、2,5−ジヒドロキシー1,4−ジチアンジグリシジルエーテル、シトラジン酸ジグリシジルエーテル等。
【0042】
(3)エポキシ基を少なくとも2個有する脂環式化合物:ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエール、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン等。
【0043】
(4)エポキシ基を少なくとも2個有する脂肪族化合物:多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル及びグリシジル脂肪族アミン等。
多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル:エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等。
多価脂肪酸のポリグリシジルエステル:ジグリシジルアジペート、コハク酸ジグリシジルエステル、シュウ酸ジグリシジルエステル、酒石酸ジグリシジルエステル、マロン酸ジグリシジルエステル等。
グリシジル脂肪族アミン:N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルエチレンジアミン,N,N,N’,N’−テトラグリシジルトリメチレンジアミン、N,N,ジグリシジルブチルアミン等。
【0044】
イソシアネート基を少なくとも2個有する化合物(c13)としては、特開2002−284803号公報又は特開2004−263147号公報に記載のイソシアネート基を少なくとも2個有する化合物等が使用でき、次の化合物が好ましい。
(1)脂肪族ジイソシアネート:エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等。
【0045】
(2)脂環式ジイソシアネート:イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン等。
【0046】
(3)芳香族ジイソシアネート:1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、粗製MDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート等。
【0047】
(4)芳香脂肪族ジイソシアネート:m−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等。
【0048】
(5)これらのジイソシアネネートの変性物:HDIイソシアヌレート、HDIビューレット、IPDIイソシアヌレート、IPDIビューレット等。
【0049】
エポキシ基を有するビニルモノマー(c14)としては、エポキシ基とビニル基を分子内に含有する化合物であれば特に限定されず、不飽和カルボン酸グリシジルエステル{(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−4,5−エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル及び(メタ)アクリル酸−2,3−エポキシプロピル等}、及び不飽和グリシジルエーテル{p−グリシジルオキシスチレン、2,3−ジ(グリシジルオキシ)スチレン、4−ビニル−1−シクロヘキセン−1,2−エポキシド、3,4−ジグリシジルオキシスチレン、2,4−ジグリシジルオキシスチレン、3,5−ジグリシジルオキシスチレン、2,6−ジグリシジルオキシスチレン、2,3−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、3,4−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,4−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、3,5−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,6−ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,4−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,4,6−トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、1,2,3−トリグリシジルオキシ−5−ビニルベンゼン及び1,2,3−トリグリシジルオキシ−4−ビニルベンゼン等}等が挙げられる。
【0050】
イソシアネート基を有するビニルモノマー(c15)としては、イソシアネート基とビニル基を分子内に含有する化合物であれば特に限定されず、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、イソシアナトヘキシル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート及び3−エチレニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
架橋剤(c1)のうち、扱いやすさの観点から、ビニル基を少なくとも2個有するモノマー(c11)が好ましく、さらに好ましくはエチレングリコールジメタクリレートである。
【0051】
架橋剤を構成単位として含む場合、架橋剤単位の含有量(重量%)は、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーの重量に基づいて、0.001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.005〜7、特に好ましくは0.01〜5である。この範囲であると、細胞の剥離・回収がさらに容易となる。
【0052】
架橋ビニルポリマー(A1)には、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマー及び架橋剤(c1)の他に、他のビニルモノマーを共重合させてもよい。
他のビニルモノマーとしては、上記のカルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと共重合できるビニルモノマーであれば、特に制限なく、次のビニルモノマー等が使用できる。
【0053】
脂環式ビニルモノマー:シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン等。
芳香族ビニルモノマー:スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン等。
脂肪族ビニルモノマー:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチレン、プロピレン等。
ハロゲン元素含有ビニルモノマー:塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン等。
カルボキシ基含有ビニルモノマー及びそのアルカリ金属塩やアンモニウム塩:(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等及びそのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等。
ヒドロキシ基含有ビニルモノマー:ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等。
【0054】
他のビニルモノマーを構成単位として含む場合、他のビニルモノマー単位の含有量(重量%)は、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーの重量に基づいて、0.005〜50が好ましく、さらに好ましくは0.01〜30、特に好ましくは0.1〜20である。この範囲であると、細胞の剥離・回収がさらに容易となる。
【0055】
架橋ビニルポリマー(A1)は、次の方法(1)〜(4)等により製造できる。
(1)カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物を疎水性溶媒(W)中に滴下すると同時に分散しながら重合反応させて架橋ビニルポリマー(A1)を得る工程(1)(逆相懸濁重合法)を含む方法。
(2)カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散してから重合反応させて架橋ビニルポリマー(A1)を得る工程(5)(逆相懸濁重合法)を含む方法。
(3)カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物に疎水性溶媒(W)を滴下しながら分散し、転相させてから重合反応させて架橋ビニルポリマー(A1)を得る工程(6)(逆相懸濁重合法)を含む方法。
(4)カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)とを混合し、必要により反応溶媒を用いて、重合することにより架橋ビニルポリマー(A1)を得る工程(7)(塊状重合法又は溶液重合法)を含む方法。
これらの方法のうち、製造効率(微粒子を直接製造できる)の観点等から、方法(1)、(2)及び(3)が好ましく、さらに好ましくは方法(1)である。
【0056】
工程(1)を含む方法(1)について、さらに詳細に説明する。
カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物は必要により、親水性溶媒(U)に溶解させることが好ましい。
親水性溶媒(U)としては、水(脱イオン水等)を必須構成成分とする液体であれば制限なく使用でき、水、又は極性溶媒を含む水溶液等を用いることができる。
親水性溶媒(U)とは、疎水性溶媒(W)に対応する用語であって、疎水性溶媒(W)と溶解しがたい溶媒を意味し、疎水性溶媒(W)と共に用いて逆相懸濁重合するための溶媒である。
極性溶媒としては、公知の有機溶剤(例えば、特開2002−284881号公報に記載の溶剤)等が使用でき、アルコール(メタノール、エタノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド(ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等)等を挙げられる。
極性溶媒を含有する場合、この含有量(重量%)は、親水性溶媒(U)の重量に基づいて、1〜80が好ましく、さらに好ましくは2〜70、特に好ましくは3〜30である。この範囲であると、樹脂ビーズをさらに容易に調製できる。
親水性溶媒(U)を使用する場合、(U)の使用量(重量%)は、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマー及び架橋剤(c1)の混合物の重量に基づいて、1〜2000が好ましく、さらに好ましくは10〜1000、特に好ましくは20〜500である。この範囲であると、樹脂ビーズをさらに容易に調製できる。
【0057】
疎水性溶媒(W)としては、水に溶け難く、重合反応に不活性であれば制限なく使用でき、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素等が含まれる。
脂肪族炭化水素としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン及びn−オクタン等が挙げられる。
脂環式炭化水素としては、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン及びキシレン等が挙げられる。
疎水性溶媒は、水の沸点より低い沸点をもち水と共沸混合物を形成するものが好ましい。このような疎水性溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン及びベンゼン等が挙げられる。
疎水性溶媒(W)の使用量(重量%)は、架橋ビニルポリマー及び必要により極性溶媒の重量に基づいて、100〜2000が好ましく、さらに好ましくは300〜1700、特に好ましくは500〜1500である。この範囲未満であると、重合反応の際に樹脂ビーズ同士の合一が生じやすいため、樹脂ビーズの粒子径が大きく成りすぎる傾向があり、一方、この範囲を超えると経済性(反応装置の大きさ、エネルギー消費量等に基づく経済性)が低下する。
【0058】
疎水性溶媒(W)及び/又は親水性溶媒(U)には、必要により界面活性剤(S)を含有することが好ましい。
界面活性剤(S)としては、公知の界面活性剤(たとえば、特開2004−124059号公報、特開特開2002−284803号公報等に記載の界面活性剤)等が使用でき、アニオン界面活性剤(S1)、カチオン界面活性剤(S2)、両性界面活性剤(S3)及び非イオン界面活性剤(S4)が含まれる。
アニオン界面活性剤(S1)としては、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム塩、ラウリルアルコールエチレンオキサイド2モル付加物硫酸エステルナトリウム塩及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤(S2)としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド及びジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
両性界面活性剤(S3)としては、ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノ酢酸ナトリウム及びステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
非イオン界面活性剤(S4)としては、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレート、オレイン酸ソルビタンエステルエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及びN,N−ジヒドロキシエチルラウリルアミド等が挙げられる。
これらのうち、非イオン界面活性剤(S4)又は非イオン界面活性剤(S4)と他のイオン性界面活性剤との併用が好ましい。
界面活性剤(S)を使用する場合、この使用量(重量%)は、疎水性溶剤(W)の重量に基づいて、0.001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.005〜5、特に好ましくは0.01〜3である。この範囲であると、樹脂ビーズの粒子径等をさらに容易に調整できる。
【0059】
重合反応において、必要により、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、特に制限はないが、(1)パーオキサイド重合開始剤及び(2)アゾ重合開始剤等が含まれる。又、(1)パーオキサイド重合開始剤と還元剤とを組み合わせて(3)レドックス重合開始剤を形成してもよい。更には、(1)〜(3)のうちから2種以上を併用してもよい。
(1)パーオキサイド重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、過酸化水素及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
(2)アゾ重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド及びアゾビスアミジノプロパン塩酸塩]等が挙げられる。
(3)レドックス重合開始剤としては、過酸化水素又はヒドロペルオキシド等の過酸化物と、還元剤(2価鉄塩、亜硫酸水素ナトリウム、アルコール、ポリアミン等)との組合せ等が挙げられる。
【0060】
重合開始剤を使用する場合、この使用量(重量%)は、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物の重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.02〜4.5、特に好ましくは0.03〜4である。この範囲であると、樹脂ビーズの粒子径等をさらに容易に調整できる。
【0061】
疎水性溶媒中でカルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物を分散する際に使用できる分散装置としては、ホモミキサー、プロペラ攪拌機、ディスパーサー、アンカー型ミキサー、パドルミキサー、ウルトラミキサー、パイプラインミキサー等が挙げられる。
【0062】
重合反応の温度(℃)は特に制限はないが、10〜95が好ましく、さらに好ましくは20〜90、特に好ましくは30〜80である。この範囲であると、樹脂ビーズの粒子径等をさらに容易に調整できる。
重合反応時間(時間)は特に制限はないが、0.1〜50が好ましく、さらに好ましくは1〜30、特に好ましくは、2〜20である。
【0063】
ビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物を滴下する時間(単位:時間)は、0.5〜20が好ましく、さらに好ましくは0.7〜15、特に好ましくは1〜10である。この範囲であると、樹脂ビーズの粒子径等をさらに容易に調整できる。
【0064】
カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散してから重合反応させて架橋ビニルポリマー(A1)を得る工程(5)を含む方法(2)について、疎水性溶媒、必要により使用する親水性溶媒(U)、界面活性剤(S)、重合開始剤、重合反応の温度、時間及びこれらの好ましい範囲については、方法(1)の場合と同様である。
【0065】
カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物に疎水性溶媒(W)を滴下しながら分散し、転相させてから重合反応させて架橋ビニルポリマー(A1)を得る工程(6)を含む方法(3)について、疎水性溶媒、必要により使用する親水性溶媒(U)、界面活性剤(S)、重合開始剤、重合反応の温度、時間及びこれらの好ましい範囲については、方法(1)の場合と同様である。
【0066】
次に、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)とを混合し、必要により反応溶媒を用いて、重合することにより架橋ビニルポリマー(A1)を得る工程(7)を含む方法(4)について、さらに詳細に説明する。
必要により使用する反応溶媒としては、親水性溶媒(U)等が使用できる。
重合反応には、方法(1)と同様の重合開始剤等を使用してもよい。
重合反応の温度、時間及びこれらの好ましい範囲については、方法(1)の場合と同様である。
【0067】
架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)としては、架橋構造を有するアルキレンオキシドポリマーであれば制限ないが、アルキレンオキシドポリマーと架橋剤(c2)とからなる架橋構造を有することが好ましい。
アルキレンオキシドポリマーとしては、公知のアルキレンオキシドポリマー等が使用できる。
アルキレンオキシドポリマー中のオキシアルキレン基(OA基)としては特に制限はないが、細胞の剥離・回収の観点等から、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
OA基中には、2種以上のオキシアルキレン基を含むことができ、2種以上のオキシアルキレン基を含む場合、オキシエチレン基を含むことが好ましい。
この場合(オキシエチレン基を含む場合)、オキシエチレン基の含有量(重量%)は、OA基の重量に基づいて、10〜99が好ましく、さらに好ましくは20〜95、特に好ましくは40〜90である。この範囲であると、細胞の剥離・回収がさらに容易となる。
アルキレンオキシドポリマーの数平均分子量は、200〜200000が好ましく、さらに好ましくは300〜100000、特に好ましくは400〜50000である。この範囲であると、細胞の剥離・回収がさらに容易となる。
なお、アルキレンオキシドポリマーの数平均分子量は、標準物質としてポリオキシエチレングリコールを用いて、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。
【0068】
アルキレンオキシドポリマーとしては、「アルキレンオキシド重合体」(平成2年11月20日発行、海文堂出版(株)製)に記載されたアルキレンオキシドポリマー等が使用でき、(1)ポリアルキレングリコール、(2)アルコールアルキレンオキシド付加体、(3)フェノールアルキレンオキシド付加体及び(4)カルボン酸アルキレンオキシド付加体等が含まれる。
【0069】
(1)ポリアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール(たとえば数平均分子量2000)、ポリオキシプロピレングリコール(たとえば数平均分子量1000)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(たとえばオキシエチレン/オキシプロピレン:重量比90/10、ブロック、数平均分子量4000)及びポリオキシエチレンポリオキシブチレングリコール(たとえばオキシエチレン/オキシブチレン:重量比50/50、ランダム、数平均分子量2000)等が挙げられる。
【0070】
(2)アルコールアルキレンオキシド付加体としては、メタノールテトラエチレンオキシド付加体、メタノールトリプロピレンオキシド付加体、エタノールポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシド付加体(たとえばオキシエチレン/オキシプロピレン:重量比90/10、数平均分子量4000、ランダム)及びグリセリンポリエチレンオキシド付加体(たとえば数平均分子量2000)等が挙げられる。
【0071】
(3)フェノールアルキレンオキシド付加体としては、フェノールポリエチレンオキシド付加体(たとえば数平均分子量3000)、フェノールポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシド付加体(たとえばオキシエチレン/オキシプロピレン:重量比80/20、数平均分子量4000、ランダム)及びビスフェノールポリエチレンポリプロピレンオキシドオキシド付加体(たとえばオキシエチレン/オキシプロピレン:重量比90/10、数平均分子量6000、ランダム)等が挙げられる。
【0072】
(4)カルボン酸アルキレンオキシド付加体としては、ラウリル酸ポリエチレンオキシド付加体(たとえば数平均分子量8000)、ステアリン酸ポリプロピレンオキシド付加体(たとえば数平均分子量3000)、オレイン酸ポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシド付加体(たとえばオキシエチレン/オキシプロピレン:重量比85/15、数平均分子量4000、ランダム)等が挙げられる。
アルキレンオキシドポリマーのうち、扱いやすさの観点等から、ポリアルキレングリコールが好ましく、さらに好ましくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである。
【0073】
架橋剤(c2)としては、アルキレンオキシドポリマーのヒドロキシル基と反応しうる官能基(イソシアナト及びエポキシ等)を少なくとも2個有する化合物であれば特に制限はなく、公知の架橋剤(例えば、特開2002−284803号公報又は特開2004−263147号公報に記載)等が使用できる。これらのうち、架橋剤(c12)及び架橋剤(c13)が好ましく、さらに好ましくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、HDIイソシアヌレート、HDIビューレット及びIPDIイソシアヌレートである。
架橋剤を構成単位として含む場合、架橋剤(c2)単位の含有量(重量%)は、0.001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.005〜7、特に好ましくは0.01〜5である。
【0074】
架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)は、次の方法(5)〜(8)等により製造できる。
(5)アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物を疎水性溶媒(W)中に分散し架橋反応させて架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)を得る工程(2)を含む方法。
(6)アルキレンオキシドポリマーを疎水性溶媒(W)中に分散してから架橋剤(c2)を加えて、架橋反応させて架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)を得る工程(8)を含む方法。
(7)アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物を疎水性溶媒(W)中に滴下すると同時に分散しながら架橋反応させて架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)を得る工程(9)を含むする方法。
(8)アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)を混合してそのまま架橋反応させて架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)を得る工程(10)を含む方法。
【0075】
工程(2)を含む方法(5)について説明する。
アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物は、分散する際に液状となっていることが好ましい(固状のものを液状にしながら分散させてもよい)。
アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物が固状である場合、親水性溶媒(U)に溶解させること及び/又は加熱により溶融させること等により、液状にすることができる。
液状とは、粘度(mPa・s)が、1〜100000であることが好ましく、さらに好ましくは10〜80000、特に好ましく20〜50000である。この範囲であると、樹脂ビーズの粒子径等をさらに容易に調整できる。
本発明において、粘度は、JIS K7117−1:1999「プラスチック−液状,乳濁状又は分散状の樹脂−ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」に準拠して、回転粘度計(東京計器製作所製B型粘度計等)を用いて、測定される。
【0076】
方法(5)において、必要により触媒(K)を使用することができる。
触媒(K)としては特に制限はないが、アミン触媒{ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロオクタン及び1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7等}、酸触媒{リン酸及びp−トルエンスルホン酸等}及び金属触媒{ジブチル錫ジラウレート及びオクチル酸ジルコニウム等}が挙げられる。
触媒(K)を使用する場合、(K)の使用量(重量%)としては、アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物の重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.02〜4.5、特に好ましくは0.03〜4である。
【0077】
アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物を疎水性溶媒(W)中に分散させる分散装置、疎水性溶媒(W)の種類、必要により使用する界面活性剤(s)及びこれらの好ましい範囲については、架橋ビニルポリマーの製造方法(1)の場合と同様である。
【0078】
架橋反応の温度(℃)は特に制限はないが、10〜80が好ましく、さらに好ましくは15〜70、特に好ましくは20〜50である。この範囲であると、樹脂ビーズの粒子径をさらに容易に調整できる。
架橋反応時間(時間)は特に制限はないが、0.01〜20が好ましく、さらに好ましくは0.1〜15、特に好ましくは、0.2〜10である。
【0079】
次に、アルキレンオキシドポリマーを疎水性溶媒(W)中に分散してから架橋剤(c2)を加えて、架橋反応させて架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)を得る工程(8)を含む方法(6)について説明する。
アルキレンオキシドポリマーは、分散する際に液状となっていることが好ましい(固状のものを液状にしながら分散させてもよい)。
アルキレンオキシドポリマーが固状である場合、親水性溶媒(U)に溶解させること及び/又は加熱により溶融させること等により、液状にすることができる。
必要により触媒(K)を使用することができることは、方法(5)と同様である。
アルキレンオキシドポリマーを疎水性溶媒(W)中に分散させる分散装置、疎水性溶媒(W)の種類、必要により使用する界面活性剤(s)及びこれらの好ましい範囲は、架橋ビニルポリマーの製造方法(1)の場合と同様である。また、架橋反応の温度及び時間については方法(5)と同様である。
【0080】
次に、アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物を疎水性溶媒(W)中に滴下すると同時に分散しながら架橋反応させて架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)を得る工程(9)を含むする方法(7)について説明する。
アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物は、分散する際に液状となっていることが好ましい(固状のものを液状にしながら分散させてもよい)。
アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物が固状である場合、親水性溶媒(U)に溶解させること及び/又は加熱により溶融させること等により、液状にすることができる。
必要により触媒(K)を使用することができることは、方法(5)と同様である。
アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物を疎水性溶媒(W)中に分散させる分散装置、疎水性溶媒(W)の種類、必要により使用する界面活性剤(s)及びこれらの好ましい範囲は、架橋ビニルポリマーの製造方法(1)の場合と同様である。また、架橋反応の温度及び時間については方法(5)と同様である。
【0081】
次に、アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)を混合してそのまま架橋反応させて架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)を得る工程(10)を含む方法(8)について説明する。
アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物は、液状であることが好ましい。
アルキレンオキシドポリマー及び架橋剤(c2)の混合物が固状である場合、必要により反応溶媒に溶解させること及び/又は加熱により溶融させること等により、液状にすることができる。
必要により使用する反応溶媒としては、親水性溶媒(U)が挙げられる。
必要により触媒(K)を使用することができることは、方法(5)と同様である。
架橋反応の温度及び時間については方法(5)と同様である。
【0082】
架橋メチルセルロース(A3)としては、架橋構造を有するメチルセルロースであれば制限ないが、メチルセルロースと架橋剤(c3)とからなる架橋構造を有することが好ましい。
メチルセルロースとしては、公知のメチルセルロース{例えば「高分子実験学第8巻 天然高分子」(昭和59年8月15日発行、共立出版(株)製;たとえば、メチルセルロース(メチル化率38.6%)、メチルセルロース(メチル化率29.2%)、メチルセルロース(メチル化率41.9%)等}等が使用できる。
メチルセルロースの重量平均分子量は、200〜20000が好ましく、さらに好ましくは300〜15000、特に好ましくは400〜10000である。この範囲であると、細胞の剥離・回収がさらに容易となる。
なお、メチルセルロースの重量平均分子量は、標準物質としてポリオキシエチレングリコールを用いて、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により求められる{たとえば、高分子論文集vol39,No.4、293頁(1982)}。
メチルセルロースのメチル化率(個数%)(メチル化前のヒドロキシル基に対するメチル化後のメトキシ基の個数の割合)は、10〜60が好ましく、さらに好ましくは20〜55、特に好ましくは30〜50である。この範囲であると、細胞の剥離・回収がさらに容易となる。
なお、メチル化率は、JIS K0070:1992「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」の7.3ピリジン−塩化アセチル化法に準拠して、メチル化前後の水酸基価を測定して、次式から求められる。
【数2】

【0083】
架橋剤(c3)としては、架橋剤(c2)と同様の架橋剤等が使用でき、好ましい範囲も同様である。
架橋剤を構成単位として含む場合、架橋剤(c3)単位の含有量は、架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)の場合と同様である。
【0084】
架橋メチルセルロース(A3)は、アルキレンオキシドポリマーの代わりにメチルセルロースを使用する以外、架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)の場合と同様にして製造できる。これらの製造方法のうち、メチルセルロースと架橋剤(c3)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散し架橋反応させて架橋メチルセルロース(A3)を得る工程(3)を含む製造方法が好ましい。
【0085】
架橋ポリビニルアルコール部分ケン化物(A4)としては、架橋構造を有するポリビニルアルコール部分ケン化物であれば制限ないが、ポリビニルアルコール部分ケン化物と架橋材(c4)とからなる架橋構造を有することが好ましい。
ポリビニルアルコール部分ケン化物としては、公知のポリビニルアルコール部分ケン化物等が使用できる。
ポリビニルアルコール部分ケン化物の重量平均分子量は、200〜20000が好ましく、さらに好ましくは300〜15000、特に好ましくは400〜10000である。この範囲であると、細胞の剥離・回収がさらに容易となる。
なお、ポリビニルアルコール部分ケン化物の重量平均分子量は、標準物質としてポリオキシエチレングリコールを用いて、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(GPC)により求められる
ポリビニルアルコール部分ケン化物のケン化価(モル%)は、10〜98が好ましく、さらに好ましくは30〜97、特に好ましくは50〜95である。この範囲であると、細胞の剥離・回収がさらに容易となる。
なお、ケン化価は、JIS K0070:1992「化学製品の酸価,けん化価,エステル価,よう素価,水酸基価及び不けん化物の試験方法」の4.1中和滴定法に準拠して測定される。
架橋剤(c4)としては、架橋剤(c2)と同様の架橋剤が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
架橋剤を構成単位として含む場合、架橋剤(c4)単位の含有量は架橋ポリアルキレンオキシドポリマー(A2)の場合と同様である。
【0086】
架橋ポリビニルアルコール部分ケン化物(A4)は、アルキレンオキシドポリマーの代わりにポリビニルアルコール部分ケン化物を使用する以外、架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)の場合と同様にして製造できる。これらの製造方法のうち、ポリビニルアルコール部分ケン化物と架橋剤(c4)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散し架橋反応させて架橋ポリビニルアルコール部分ケン化物(A4)を得る工程(4)を含む製造方法が好ましい。
【0087】
これらの架橋ポリマー(A1)〜(A4)のうち、細胞の剥離・回収の容易さの観点等から、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーを必須構成単量体としてなる架橋ビニルポリマー(A1)が好ましい。
【0088】
架橋ポリマー(A)の製造方法として逆相懸濁重合法を適用すると、架橋ポリマー(A)を製造することにより、そのまま、本発明の感温膨潤性樹脂ビーズが得られる。一方、架橋ポリマー(A)の製造方法として塊状重合法や溶液重合法を適用すると、得られる架橋ポリマー(A)を粉砕する必要がある。
【0089】
逆相懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法のいずれにおいても、本発明の感温膨潤性樹脂ビーズの大きさ{「生理食塩水に浸析した後の浸析樹脂ビーズ」の体積平均粒子径(μm:ra)}は、細胞培養の効率の観点等から、20〜3000が好ましく、さらに好ましくは40〜2000、特に好ましくは50〜1200である。
なお、本発明の樹脂ビーズを「生理食塩水に浸析した後の浸析樹脂ビーズ」(以下、浸析樹脂ビーズという)は、樹脂ビーズ1重量部を生理食塩水(0.9重量%)10重量部中に、架橋ポリマー(A)の変曲点より10℃高い温度で30分間浸析させることにより調整される。
そして、体積平均粒子径は、JIS Z8825−1:2001に準拠して、レーザー式粒度分布測定装置、たとえば、堀場製作所製LA−920(分散媒:イオン交換水、測定温度:架橋ポリマー(A)の変曲点より10℃高い温度)等により測定される。
塊状重合法又は溶液重合法を適用した場合、架橋ポリマー(A)を破砕又は粉砕するための破砕機としては、コロイドミル、ハンマーミル及びボールミル等が挙げられる。
破砕又は粉砕するときの温度(℃)としては、−20〜150が好ましく、さらに好ましくは−10〜130、特に好ましくは−5〜80である。この範囲であると、樹脂ビーズをさらに容易に調製できる(さらに容易に破砕又は粉砕できる)。
破砕又は粉砕後、必要により分級することができる。分級としては、分級装置(乾式振動篩い機、湿式振動篩い機、風力分級機等)によりふるい分けする方法等が適用できる。
【0090】
架橋ポリマー(A)を得る際に疎水性溶媒(W)、親水性溶媒(U)及び/又は界面活性剤(S)を使用した場合、これらが細胞増殖性に悪影響を与える恐れがあるため、これらを除去することが好ましい。疎水性溶媒(W)、親水性溶媒(U)及び/又は界面活性剤(S)を除去する方法としては、固液分離法(遠心分離器、スパクラフィルター及び/又はフィルタープレス等)により樹脂ビーズを分離した後、水洗する方法等が適用できる。
【0091】
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズには、微粒子(b)を含有してもよい。
微粒子(b)としては、微粒子状であれば特に限定されない。また、微粒子(b)は、微粒子全体が均一に構成されている均一微粒子でもよく、微粒子の一部に空隙を有していてもよい。
また、微粒子の一部に空隙を有している場合、空隙がほぼ均一に分布してなる多孔質微粒子や微粒子の中心に中空部分を含んでなる中空微粒子等のいずれでもよいが、中空微粒子が好ましい。
微粒子(b)の外形状は、球状、針状、扁平(楕円)状、薄片状、不定形破砕状及び繊維状のいずれでもよいが、樹脂ビーズの表面平滑性の観点等から、球状、扁平(楕円)状及び薄片状が好ましく、さらに好ましくは球状及び扁平(楕円)状、特に好ましくは球状である。
【0092】
微粒子(b)の大きさは、微粒子(b)の体積平均粒子径(rb)と浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径(ra)との比(rb/ra)が、0.0015〜0.3となる大きさが好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.25、特に好ましくは0.015〜0.2となる大きさである。この範囲であると、浸析樹脂ビーズの平均表面積がさらに良好となる(大きくなる)。
【0093】
微粒子(b)の材質としては特に限定されないが、有機物及び無機物等が含まれる。
有機物としては、公知の樹脂(たとえば、特開2002−284881号公報及びWO99/43758パンフレット)等が使用でき、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等が用いられる。
熱硬化性樹脂としては、架橋ビニル樹脂、架橋ウレタン樹脂、架橋エポキシ樹脂、架橋エステル樹脂、架橋フェノール樹脂及び架橋ウレア樹脂等が含まれる。
熱可塑性樹脂としては、ビニル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂及びカーボネート樹脂等が含まれる。
これらの樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
無機物としては、ガラス、シラス、アルミナ及びカーボン等が含まれる。
【0094】
これらのうち、浸析樹脂ビーズの見掛け比重や平均表面積の観点等から、架橋ビニル樹脂、ビニル樹脂、オレフィン樹脂及びガラスが好ましく、さらに好ましくは架橋ビニル樹脂、オレフィン樹脂及びガラス、特に好ましくはオレフィン樹脂である。
【0095】
微粒子(b)は、公知の方法(たとえば、特開2002−284881号公報やWO99/43758パンフレットに記載された製造方法等)により製造することができる。また、微粒子(b)は、市場から容易に入手でき、たとえば、以下の商品が好ましく例示できる。かっこ内は順に見掛け比重及び体積平均粒子径である。
なお、見掛け比重はK0061:2001「化学製品の密度及び比重測定方法」の8.2.1ルシャテリエ比重瓶法に準拠して測定される。
【0096】
<均一有機微粒子>
住友精化(株)製「フロービーズCLシリーズ」(0.94、1〜40μm)、「フローセンUFシリーズ」(0.94、25μm);三井化学(株)製「ミペロンXM221U」(0.94、25μm)、「ミペロンXM220」(0.94、30μm);東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製「トレフィルE−500」(0.97、3μm)
【0097】
<中空有機微粒子>
松本油脂製薬(株)製「マツモトマイクロスフェアMFL80GCA」(0.20、20μm);エクスパンセル(株)製「エクスパンセル551DE40d42」(0.04、40μm);巴工業(株)製「APM PHENOSET BJO−0840」(0.30、70μ);JSR(株)製「SX866(a)」(0.76、0.3μm)
【0098】
<中空無機微粒子>
住友スリーエム(株)製「スコッチライトグラスバブルズS60HS」(0.60、27μm)、スコッチライトグラスバブルズK46」(0.46、40μm);巴工業(株)製「Ceramics BALOON AR−190」(0.60、43μm)
【0099】
<多孔質無機微粒子>
旭硝子(株)製「サンスフィアH−31」(2.2、3μm)、「サンスフィアH−33」(2.2、3μm)、林化成(株)製「エスカロンシリーズ」(2.5、1.2〜3.9μm)、「SCPシリーズ」(2.5、1.4〜3.9μm)、「カルシーFシリーズ」(2.5、3.5〜6.0μm)
これらの微粒子は2種以上を混合して使用してもよい。
【0100】
樹脂ビーズ中に微粒子(b)を含有させる方法について説明する。
カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーを必須構成単量体としてなる架橋ビニルポリマー(A1)からなる樹脂ビーズ中に微粒子(b)を含有させる方法としては、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマー{必要に応じて、このビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物}に微粒子(b)を混合しておく方法等が適用できる。
また、架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)からなる樹脂ビーズ中に微粒子(b)を含有させる方法としては、アルキレンオキシドポリマー{必要に応じて、このポリマーと架橋剤(c2)との混合物}に微粒子(b)を混合しておく方法等が適用できる。
また、架橋メチルセルロース(A3)からなる樹脂ビーズ中に微粒子(b)を含有させる方法、又は架橋ポリビニルアルコール部分ケン化物(A4)からなる樹脂ビーズ中に微粒子(b)を含有させる方法としては、架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)からなる樹脂ビーズ中に微粒子(b)を含有させる方法と同様である。
【0101】
樹脂ビーズ中に微粒子(b)を含有する場合、微粒子(b)の含有量(重量%)は、架橋ポリマー(A)の重量に基づいて、0.01〜50が好ましく、さらに好ましくは0.05〜45、特に好ましくは0.10〜40である。この範囲であると、浸析樹脂ビーズの見掛け比重や平均表面積の調整等がさらに容易となる。
【0102】
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズを生理食塩水に浸析した後の浸析樹脂ビーズの見掛け比重(d)は、1.000〜1.050が好ましく、さらに好ましくは1.005〜1.045、特に好ましくは1.010〜1.040である。この範囲であると、樹脂ビーズが培地中で偏ることなく、さらに良好に細胞を培養することができる。浸析樹脂ビーズの見かけ比重をこの範囲に調整する方法としては、微粒子を用いて調整する方法、樹脂ビーズ自身をマイクロカプセル化(中空ビーズ等)する方法、及び樹脂ビーズを膨潤させる方法(親水性の強いモノマーの使用量を増加させる等のモノマー組成を調整する方法)等が挙げられる。
【0103】
ここで、浸析樹脂ビーズの見掛け比重(d)の測定方法を説明する。
樹脂ビーズ10gを生理食塩水(0.9重量%)100g中に、架橋ポリマー(A)の変曲点より10℃高い温度で30分間浸析させて浸析樹脂ビーズを得る。ついで、0〜15重量%食塩水(架橋ポリマー(A)の変曲点より10℃高い温度、1重量%ずつ濃度を変化させた16種類)のそれぞれに、浸析樹脂ビーズを投入して架橋ポリマー(A)の変曲点より10℃高い温度で30分間静置し、浸析樹脂ビーズが沈降しているか否かを目視で判定する。
浸析樹脂ビーズが沈降した食塩水の比重とこの食塩水より濃度が1重量%濃い食塩水の比重との算術平均値(dav)を求め、同操作を3回繰り返して、3回の算術平均値(dav)の算術平均値を見掛け比重(d)とする。なお、各濃度の食塩水の比重をJIS K0061:2001「化学製品の密度及び比重測定方法」の7.1浮ひょう法に準拠して測定する。
【0104】
本発明の樹脂ビーズの水分含有量(重量%)は、樹脂ビーズの重量に基づいて、1以下が好ましく、さらに好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.1以下である。水分含有量(重量%)は、樹脂ビーズ1gを105℃の順風乾燥機中で1時間乾燥させ、その前後の重量減少量(g)から算出される。
【0105】
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズの形状としては、紡錘状、球状、板状、直方体状及び針状等が挙げられるが、細胞が接着できる表面積が大きくなるという点で、紡錘状、球状及び板状が好ましく、さらに好ましくは紡錘状及び球状、特に好ましくは球状である。
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズには、表面積を増大させる目的で、リブ(畝)等を持っていてもよい。細胞回収のしやすさの観点等から、リブを持たないことが好ましい。
【0106】
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズには、細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(P)を含有することが好ましい。ポリペプチド(P)を含有すると、細胞が接着しやすくなり、さらに効率の高い細胞培養が実現できる。
ここで、「細胞接着性最小アミノ酸配列」とは、細胞のインテグリンレセプターに認識され細胞が基材に接着しやすくなる性質を有する最小アミノ酸配列を意味する。
ポリペプチド(P)中の細胞接着性最小アミノ酸配列(X)の含有個数(個)は、細胞接着性の観点等から、(P)1分子中、1〜50が好ましく、さらに好ましくは3〜30、特に好ましくは4〜20である。
【0107】
細胞接着性最小アミノ酸配列(X)としては、接着シグナルとして働くものであればいずれも使用でき、例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7、1990年、527頁に記載されているもの等が使用できる。これらのうち、接着しやすい細胞の種類が多いという観点等から、Arg Gly Asp配列、Leu Asp Val配列、Leu Arg Glu配列、His Ala Val配列、及び配列番号(1)〜(8)で表される配列が好ましく、さらに好ましくはArg Gly Asp配列、His Ala Val配列及び配列番号(7)で表される配列であり、特に好ましくはArg Gly Asp配列である。
【0108】
ポリペプチド(P)は、細胞接着性最小アミノ酸配列(X)以外に、(P)の熱安定性向上の観点等から、補助アミノ酸配列(Y)を有することが好ましい。
補助アミノ酸配列(Y)としては、最小アミノ酸配列(X)以外のアミノ酸配列が使用でき、ポリペプチド(P)の耐熱性向上の観点等から、Gly 及び/又はAlaを有する配列が好ましい。
補助アミノ酸配列(Y)としては、(Gly Ala)a 配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Tyr)c配列、(Gly Ala Gly Val Gly Tyr)d配列、(Gly Ala Gly Tyr Gly Val)e配列、{Asp Gly Gly (Ala)f Gly Gly Ala}g配列、(Gly Val Pro Gly Val)h配列、(Gly)i配列、(Ala)j配列、(Gly Gly Ala)k配列、(Gly Val Gly Val Pro)m配列、(Gly Pro Pro)n配列、(Gly Ala Gln Gly Pro Ala Gly Pro Gly)o配列、(Gly Ala Pro Gly Ala Pro Gly Ser Gln Gly Ala Pro Gly Leu Gln)p配列及び/又は(Gly Ala Pro Gly Thr Pro Gly Pro Gln Gly Leu Pro Gly Ser Pro)q配列を有する配列等が含まれる。これらのうち、(Gly Ala)a配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列、(Gly Ala Gly Ala Gly Tyr)c配列、(Gly Ala Gly Val Gly Tyr)d配列、(Gly Ala Gly Tyr Gly Val)e、{Asp Gly Gly (Ala)f Gly Gly Ala}g配列、(Gly Val Pro Gly Val)h配列、(Gly Val Gly Val Pro)m配列及び/又は(Gly Pro Pro)n配列を有するものが好ましく、さらに好ましくは(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列、(Gly Val Pro Gly Val)h配列、(Gly Val Gly Val Pro)m配列及び/又は(Gly Pro Pro)n配列を有するもの、特に好ましくは(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列を有するものである。
なお、aは5〜100の整数、b、c、d及びeは2〜33の整数、fは1〜194の整数、gは{1}〜{200/(6+f)}の小数点以下を切り捨てした整数、hは2〜40の整数、i及びjは10〜200の整数、kは3〜66の整数、mは2〜40の整数、nは3〜66の整数、oは1〜22の整数、p及びqは1〜13の整数である。
【0109】
補助アミノ酸配列(Y)は、グリシン(Gly)及び/又はアラニン(Ala)を含むことが好ましい。グリシン(Gly)及びアラニン(Ala)を含む場合、これらの合計含有割合(%)は、補助アミノ酸配列(Y)の全アミノ酸個数に基づいて、10〜100が好ましく、さらに好ましくは20〜95、特に好ましくは30〜90、最も好ましくは40〜85である。この範囲であると、耐熱性がさらに良好となる。
グリシン(Gly)及びアラニン(Ala)の両方を含む場合、これらの含有個数割合(Gly/Ala)は、0.03〜40が好ましく、さらに好ましくは0.08〜13、特に好ましくは0.2〜5である。この範囲であると、耐熱性がさらに良好となる。
【0110】
ポリペプチド(P)中の補助アミノ酸配列(Y)の含有個数は、耐熱性向上の観点等から、(P)1分子中、2〜51が好ましく、さらに好ましくは3〜35、特に好ましくは4〜20である。また、ポリペプチド(P)は、2種以上の補助アミノ酸配列(Y)を含んでもよい。
【0111】
(Gly Ala)a配列を有する補助与アミノ酸配列としては、配列番号(9)〜(11)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)b配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(12)〜(14)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Ala Gly Tyr)c配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(15)〜(17)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Val Gly Tyr)d配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(18)〜(20)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gly Tyr Gly Val)e配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(21)〜(23)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
{Asp Gly Gly (Ala)f Gly Gly Ala}g配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(24)〜(26)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Val Pro Gly Val)h配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(27)〜(30)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly)i配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(31)〜(33)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Ala)j配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(34)〜(36)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Gly Ala)k配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(37)〜(39)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Val Gly Val Pro)m配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(40)〜(42)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Pro Pro)n配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(43)〜(45)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Gln Gly Pro Ala Gly Pro Gly)o配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(46)〜(48)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Pro Gly Ala Pro Gly Ser Gln Gly Ala Pro Gly Leu Gln)p配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(49)〜(51)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
(Gly Ala Pro Gly Thr Pro Gly Pro Gln Gly Leu Pro Gly Ser Pro)q配列を有する補助アミノ酸配列としては、配列番号(52)〜(54)で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
【0112】
これらのアミノ酸配列のうち、配列番号(9)、(10)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(18)、(19)、(21)、(22)、(24)、(25)、(26)、(27)、(28)、(30)、(31)、(32)、(34)、(35)、(37)、(38)、(40)、(41)、(43)、(44)、(46)、(47)、(49)、(50)、(52)又は(53)で表されるアミノ酸配列が好ましく、さらに好ましくは配列番号(10)、(12)、(13)、(14)、(16)、(19)、(22)、(26)、(27)、(28)、(29)、(30)、(32)、(35)、(38)、(41)、(44)、(47)、(50)又は(53)で表されるアミノ酸配列、特に好ましくは配列番号(12)、(13)又は(30)で表されるアミノ酸配列である。
【0113】
ポリペプチド(P)は、分岐鎖を含んでいてもよく、一部が架橋されていてもよく、環状構造を含んでいてもよい。しかし、ポリペプチド(P)は、架橋されていないことが好ましく、さらに好ましくは架橋されていない直鎖構造、特に好ましくは環状構造を持たず架橋されていない直鎖構造である。なお、直鎖構造には、β構造(直鎖状ペプチドが折れ曲がってこの部分同士が平行に並び、その間に水素結合が作られる二次構造)も含まれる。
【0114】
ポリペプチド(P)は、細胞接着性及び耐熱性の観点等から、最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)とが交互に化学結合してなる構造であることが好ましい。この場合、最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)との繰り返し単位(X−Y)の数(個)は、細胞接着性の観点等から、1〜50が好ましく、さらに好ましくは2〜40、特に好ましくは3〜30、最も好ましくは4〜20である。
また、最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)との含有個数は同じでも異なっていてもよい。異なっている場合は、いずれかの含有個数が他方の含有個数より1個少ないことが好ましい{この場合、補助アミノ酸配列(Y)が少ないことが好ましい}。ポリペプチド(P)中の最小アミノ酸配列(X)と補助アミノ酸配列(Y)との含有個数割合(X/Y)は、0.66〜1.5が好ましく、さらに好ましくは0.9〜1.4、特に好ましくは1〜1.3である。
また、細胞接着性ポリペプチド(P)の末端部分(最小アミノ酸配列(X)又は補助アミノ酸配列(Y)からペプチド末端まで)に他のアミノ酸を含んでもよい。他のアミノ酸を含む場合、その含有量は、細胞接着性ポリペプチド1個当たり、1〜1000個が好ましく、さらに好ましくは3〜300、特に好ましくは10〜100である。
【0115】
ポリペプチド(P)の数平均分子量(Mn)は、1,000〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは2,000〜700,000、特に好ましくは3,000〜400,000、最も好ましくは4,000〜200,000である。
なお、ポリペプチドの数平均分子量(Mn)は、SDS−PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)法により、測定サンプル{ポリペプチド等}を分離し、泳動距離を標準物質と比較する方法等の公知の方法によって求められる(以下、同じ)。
【0116】
好ましい細胞接着性ポリペプチド(P)の一部を以下に例示する。
(1)最小アミノ酸配列(X)がArg Gly Asp配列(x1)の場合
(x1)の13個と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)9配列(13)(y1)の13個とを有し、これらが交互に化学結合してなる構造を有するMn約11万のポリペプチド(「プロネクチンF」、プロネクチンは三洋化成工業(株)の登録商標(日本及び米国)、三洋化成工業(株)製<以下同じ>);
(x1)の5個と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)3配列(12)(y2)の5個とを有しこれらが交互に化学結合してなる構造を有するMn約2万のポリペプチド(「プロネクチンF2」);
(x1)の3個と(Gly Val Pro Gly Val)2 Gly Gly (Gly Ala Gly Ala Gly Ser)3配列(30)(y3)の3個とを有しこれらが交互に化学結合してなる構造を有するMn約1万のポリペプチド(「プロネクチンF3」)等。
【0117】
(2)最小アミノ酸配列(X)がIle Lys Val Ala Val配列(x2)の場合
プロネクチンF、プロネクチンF2又はプロネクチンF3のArg Gly Asp配列(x1)をIle Lys Val Ala Val配列(7)(x2)に変更した「プロネクチンL」、「プロネクチンL2」、又は「プロネクチンL3」等。
【0118】
(3)最小アミノ酸配列(X)がTyr Ile Gly Ser Arg配列(x3)の場合
プロネクチンF、プロネクチンF2又はプロネクチンF3のArg Gly Asp配列(x1)をTyr Ile Gly Ser Arg配列(x3)に変更した「プロネクチンY」、「プロネクチンY2」、又は「プロネクチンY3」等。
【0119】
また、(1)〜(3)のポリペプチドの他、宝酒造(株)製RetroNectin(リコンビナントヒトフィブロネクチンCH−296){最小アミノ酸配列(X)としてArg Gly Asp配列(x1)及びLeu Asp Val配列を含有するMn約6万のポリペプチド}、同RGDS−Protein A{最小アミノ酸配列(X)としてArg Gly Asp配列(x1)を含有するMn約3万のポリペプチド}も好ましく使用できる{ただし、これらのポリペプチドは天然に由来し、補助アミノ酸配列(Y)が含まれていない。よって、耐熱性等が上記の(1)〜(3)よりも劣る(オートクレーブ滅菌等ができない)。また、これらのポリペプチドのアミノ酸配列は特開平2−311498号に開示されている。}。
【0120】
ポリペプチド(P)の製造方法は特に制限されず、ペプチドを合成する従来既知の方法と同様にして製造することができ、例えば、有機合成法(固相合成法、液相合成法等)及び生化学的合成法[遺伝子組換微生物(酵母、細菌、大腸菌等)]等によって合成することができる。有機合成法に関しては、例えば、日本生化学学会編「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)」第641〜694頁(昭和62年5月20日;株式会社東京化学同人発行)に記載されている方法等が用いられる。生化学的合成法に関しては、例えば、特表平3−502935号公報に記載されている方法等が用いられる。高分子量のポリペプチド(P)を容易に合成できる点で、遺伝子組換微生物による生化学的合成法が好ましく、特に好ましくは遺伝子組換大腸菌を用いて合成する方法である。
【0121】
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズにポリペプチド(P)を含有する場合、(P)は、樹脂ビーズの表面に含有していればよく、(P)は化学結合(イオン結合、水素結合及び/又は共有結合等)及び/又は物理吸着(ファンデルワールス力による吸着)によって、樹脂ビーズの表面に結合されている。これらのうち、化学結合が好ましく、さらに好ましくは共有結合である。
【0122】
細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズにポリペプチド(P)を共有結合させる反応は公知の方法で行うことができる。例えば、「ペプチド合成の基礎と実験、平成9年10月5日、丸善株式会社発行」に記載の方法等が挙げられ、具体的には、以下の(1)〜(3)の通りである。
(1)ポリペプチドのうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものとポリペプチド(P)を含有しない樹脂ビーズ(以下、P未含有樹脂ビーズ)のうちカルボキシル基を有するものとを反応させる場合、P未含有樹脂ビーズのカルボキシル基を予めカルボジイミド化合物と反応させ、アシルイソ尿素{R’−N=C(OCOR)−NH−R’(−OCORが樹脂ビーズに由来する部分)}を得た後、ポリペプチドのうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものをこのアシルイソ尿素に加えることによって、P未含有樹脂ビーズとポリペプチドとをアミド結合できる。
カルボジイミド化合物としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。
【0123】
(2)ポリペプチドのうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものとP未含有樹脂ビーズのうちヒドロキシル基を有するものとを反応させる場合、P未含有樹脂ビーズのヒドロキシル基を予めカルボニルジイミダゾール化合物と反応させ、イミダゾール誘導体{R−Im、Imはイミダゾリン環、Rが樹脂ビーズに由来}を得た後、ポリペプチドのうち1級アミノ基又は2級アミノ基を有するものをこのイミダゾール誘導体に加えることによって、P未含有樹脂ビーズとポリペプチドとをN−C結合できる。
カルボニルジイミダゾール化合物としては、N,N’−カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
【0124】
(3)ポリペプチドのうちヒドロキシル基を有するものとP未含有樹脂ビーズのうちカルボキシル基を有するものとを反応させる場合、P未含有樹脂ビーズのカルボキシル基を予めカルボジイミド化合物と反応させ、アシルイソ尿素を得た後、ポリペプチドのうちヒドロキシル基を有するものをこのアシルイソ尿素に加えることによって、P未含有樹脂ビーズとポリペプチドとをエステル結合できる。
【0125】
ポリペプチドをP未含有樹脂ビーズに、物理吸着、イオン結合及び/又は水素結合させる方法としては、溶媒等にポリペプチドとP未含有樹脂ビーズとを投入し、混合して作製する方法等が挙げられる。溶媒としては特に制限はないが、無機塩、有機酸塩、酸及び/又は塩基を0.001〜50重量%(好ましくは0.005〜30重量%、さらに好ましくは0.01〜10重量%)含有する水溶液等(例えば特開2003−189848等に記載)が使用できる。
これらの溶媒の中で、無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液、並びに水が好ましく、さらに好ましくは無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液、並びにイオン交換蒸留水、特に好ましくは無機塩、酸及び/又は塩基を含有する水溶液である。
【0126】
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズにポリペプチド(P)を含有する場合、ポリペプチド(P)の含有量(μg/cm2)は、本発明の樹脂ビーズを生理食塩水に浸析した後の浸析樹脂ビーズの平均表面積1cm2当り、0.0001〜100000が好ましく、さらに好ましくは0.001〜10000、特に好ましくは0.01〜1000である。この範囲であると、細胞培養の効率がさらに高くなる。
【0127】
ポリペプチド(P)の含有量は、次のようにして求められる。
(1)本発明の樹脂ビーズを生理食塩水に浸析した後の浸析樹脂ビーズの単位重量当たりのポリペプチド(P)の含有量(μg/g)を、例えば免疫学的測定法(特開2004−049921等に記載)により定量する。
具体的には、浸析樹脂ビーズと、ポリペプチド(P)と結合する抗体に酵素を標識したもの(以下、酵素標識抗体1)とを反応させ、この反応した酵素標識抗体1の酵素量を測定することにより、単位重量あたりのポリペプチド(P)の含有量を測定する。
【0128】
(2)次に、表面形状測定顕微鏡{共焦点原理を利用した3D形状測定顕微鏡、たとえばキーエンス(株)製VK−9500}を用いて、浸析樹脂ビーズをスライドガラスに接着剤等で固定化したもの(以下、固定化樹脂ビーズ)の上部の表面(例えば、20μm×20μm)について、表面形状の3次元データ得る。そして、この3次元データから細孔(直径1μm未満)部分を一律に除外して(平坦な表面として補正して)、リブ(畝)等を有する浸析樹脂ビーズの部分表面積(A)を求める。また、表面形状の3次元データから、細孔(直径1μm未満)及びリブ(畝)等を一律に除外して(平坦な表面として補正して)、表面がフラットな浸析樹脂ビーズの部分表面積(B)を求める。さらに浸析樹脂ビーズの9個について3次元データを同様にして測定し、浸析樹脂ビーズの部分表面積(A)及び浸析樹脂ビーズの部分表面積(B)を求める。そして、浸析樹脂ビーズ10個についての平均部分表面積(HA)及び平均部分表面積(HB)を算出した後、式{単位重量当たりの平均表面積(cm2/g)=[4×π×(ra/2/10000)2]/[4/3×π×(ra/2/10000)3×d]×[(HA)/(HB)]}から、浸析樹脂ビーズの単位重量当たりの平均表面積を算出する。
【0129】
(3)そして、単位重量当たりのポリペプチド(P)の含有量(μg/g)を、単位重量当たりの平均表面積(cm2/g)で除して、本発明の樹脂ビーズを生理食塩水に浸析した後の浸析樹脂ビーズの平均表面積1cm2当たりの含有量(μg/cm2)を算出する。
【0130】
なお、浸析樹脂ビーズの平均表面積は、樹脂ビーズの表面のうち、培養される細胞が接着し得る表面の表面積を意味し、細胞が入り込まないような細孔(直径1μm未満)は平坦な表面として取扱うが、表面積を高める目的でリブ(畝)等が設けてあるものについてはそのリブ(畝)等の表面積を樹脂ビーズの表面積に含める。
【0131】
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズは、必要により乾燥することができる。乾燥は、必要により減圧下で行う。
乾燥機としては、例えば、流動層式乾燥機、減圧乾燥機及び循風乾燥機が用いられる。
なお、乾燥しない場合は、樹脂ビーズを生理食塩水やリン酸バッファー水溶液に浸析しておくことが好ましい。
【0132】
次に感温膨潤性樹脂ビーズを用いて細胞培養をする工程を説明する。
本発明の細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズを細胞培養に使用する前に必要に応じて滅菌処理を施してもよい。滅菌方法は特に制限は無く、例えば、放射線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、オートクレーブ滅菌及び乾熱滅菌等が挙げられる。
【0133】
本発明の樹脂ビーズに接着できる細胞(CE)としては細胞であれば制限がないが、本発明の樹脂ビーズを用いると増殖した細胞を変性させずに剥離・回収できるため、医薬品等の有用物質生産や治療等に用いられる哺乳動物由来の正常細胞、哺乳動物由来の株化細胞及び昆虫細胞が適している。
哺乳動物由来の正常細胞としては、皮膚に関与する細胞(上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞等)、血管に関与する細胞(血管内皮細胞、平滑筋細胞及び線維芽細胞等)、筋肉に関与する細胞(筋肉細胞等)、脂肪に関与する細胞(脂肪細胞等)、神経に関与する細胞(神経細胞等)、肝臓に関与する細胞(肝実質細胞等)、膵臓に関与する細胞(膵ラ島細胞等)、腎臓に関与する細胞(腎上皮細胞、近位尿細管上皮細胞及びメサンギウム細胞等)、肺・気管支に関与する細胞(上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞等)、目に関与する細胞(視細胞、角膜上皮細胞及び角膜内皮細胞等)、前立腺に関与する細胞(上皮細胞、間質細胞及び平滑筋細胞等)、骨に関与する細胞(骨芽細胞、骨細胞及び破骨細胞等)、軟骨に関与する細胞(軟骨芽細胞及び軟骨細胞等)、歯に関与する細胞(歯根膜細胞及び骨芽細胞等)、血液に関与する細胞(白血球及び赤血球等)、及び幹細胞{例えば、骨髄未分化間葉系幹細胞、骨格筋幹細胞、造血系幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞(oval cell、small hepatocyte等)、脂肪組織幹細胞、胚性幹(ES)細胞、表皮幹細胞、腸管幹細胞、精子幹細胞、胚生殖幹(EG)細胞、膵臓幹細胞(膵管上皮幹細胞等)、白血球系幹細胞、リンパ球系幹細胞、角膜系幹細胞、前駆細胞(脂肪前駆細胞、血管内皮前駆細胞、軟骨前駆細胞、リンパ球系前駆細胞、NK前駆細胞等)等}等が挙げられる。
【0134】
哺乳動物由来の株化細胞としては、3T3細胞、A549細胞、AH130細胞、B95−8細胞、BHK細胞、BOSC23細胞、BS−C−1細胞、C3H10T1/2細胞、C−6細胞、CHO細胞、COS細胞、CV−1細胞、F9細胞、FL細胞、FL5−1細胞、FM3A細胞、G−361細胞、GP+E−86細胞、GP+envAm12細胞、H4−II−E細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、HEp−2細胞、HL−60細胞、HTC細胞、HUVEC細胞、IMR−32細胞、IMR−90細胞、K562細胞、KB細胞、L細胞、L5178Y細胞、L−929細胞、MA104細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MIA PaCa−2細胞、N18細胞、Namalwa細胞、NG108−15細胞、NRK細胞、OC10細胞、OTT6050細胞、P388細胞、PA12細胞、PA317細胞、PC−12細胞、PG13細胞、QGH細胞、Raji細胞、RPMI−1788細胞、SGE1細胞、Sp2/O−Ag14細胞、ST2細胞、THP−1細胞、U−937細胞、V79細胞、VERO細胞、WI−38細胞、ψ2細胞、及びψCRE細胞等が挙げられる{細胞培養の技術(日本組織培養学会編集、株式会社朝倉書店発行、1999年)}。
【0135】
昆虫細胞としては、カイコ細胞(BmN細胞及びBoMo細胞等)、クワコ細胞、サクサン細胞、シンジュサン細胞、ヨトウガ細胞(Sf9細胞及びSf21細胞等)、クワゴマダラヒトリ細胞、ハマキムシ細胞、ショウジョウバエ細胞、センチニクバエ細胞、ヒトスジシマカ細胞、アゲハチョウ細胞、ワモンゴキブリ細胞及びイラクサキンウワバ細胞(Tn−5細胞、HIGH FIVE細胞及びMG1細胞等)等が挙げられる{昆虫バイオ工場(木村滋 編著、株式会社工業調査会 発行、2000年)。
【0136】
本発明の樹脂ビーズを用いる細胞培養方法に用いる培地(ME)としては、無血清培地(Grace培地、IPL−41培地、Schneider’s培地、OPTIPROTMSFM培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、CD−CHO培地、CHO−S−SFMII培地、FreeStyleTM293培地、CD−CHO ATGTM培地及びこれらの混合培地等);一般の培地(RPMI培地、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMEM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地、ASF103培地、ASF104培地、ASF301培地、TC−100培地、Sf−900II培地、Ex−cell405培地、Express−Five培地、Drosophila培地及びこれらの混合培地);及びこれらの混合培地が挙げられる。
これらのうち、ヒトへの感染の可能性がある物質(血清に由来するウイルス等)の混入防止の観点等から、無血清培地が好ましく、さらに好ましくはOPTIPROTMSFM培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、CD−CHO培地、CHO−S−SFMII培地、FreeStyleTM293培地、CD−CHO ATGTM培地及びこれらの混合培地、特に好ましくはOPTIPROTMSFM培地、VP−SFM培地、CD293培地、293SFMII培地、FreeStyleTM293培地及びこれらの混合培地である。
【0137】
また、これらの培地には、血清を添加することができるが、ヒトへの感染の可能性がある物質(血清に由来するウイルス等)の混入防止の観点等から、血清を添加しないことが好ましい。
血清としては、ヒト血清、及び動物血清(ウシ血清、ウマ血清、ヤギ血清、ヒツジ血清、ブタ血清、ウサギ血清、ニワトリ血清、ラット血清、及びマウス血清等)が含まれる。
血清を添加する場合、これらのうち、ヒト血清、ウシ血清、及びウマ血清が好ましい。また、動物血清の由来は、成体由来の血清、仔由来の血清、新生由来の血清、及び胎児由来の血清等が挙げられる。血清を添加する場合、これらのうち、仔由来の血清、新生由来の血清、及び胎児由来の血清が好ましく、さらに好ましくは新生由来の血清、及び胎児由来の血清、特に好ましくは胎児由来の血清である。血清を添加する場合、さらに血清は、非働化処理や、抗体の除去処理等を行ってもよい。
血清を使用する場合、血清の使用量(重量%)は、培地の重量に基づいて、0.1〜50が好ましく、さらに好ましくは0.3〜30、特に好ましくは1〜20である。
【0138】
培地中には、必要に応じて、細胞増殖因子を含有させることができる。細胞増殖因子を含有させることにより、細胞の増殖速度を高めたり、細胞活性を高めたりすることができる。
細胞増殖因子としては、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、上皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インスリン様増殖因子、血管内皮増殖因子、神経成長因子、幹細胞因子、白血病阻害因子、骨形成因子、ヘパリン結合上皮細胞増殖因子、神経栄養因子、結合組織成長因子、アンジオポエチン、サイトカイン、インターロイキン、アドレナモジュリン及びナトリウム利尿ペプチド等の生理活性ペプチドが含まれる。これらのうち、適用できる細胞の範囲が広く、治癒期間がより短縮できるという観点から、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、インシュリン様増殖因子及び骨形成因子が好ましく、さらに好ましくは線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子及びインシュリン様増殖因子である。
細胞増殖因子を使用する場合、細胞増殖因子の含有量(重量%)は細胞増殖因子の種類によって異なるが、培地の重量に基づいて、10-16〜10-3が好ましく、さらに好ましくは10-14〜10-5、特に好ましくは10-12〜10-7である。
【0139】
これらの培地には、さらに抗菌剤(アンホテリシンB、ゲンタマイシン、ペニシリン及びストレプトマイシン等)を含有させることができる。抗菌剤を含有させる場合、この含有量(重量%)は抗菌剤の種類によって異なるが、培地の重量に基づいて、10-4〜10が好ましく、さらに好ましくは10-5〜1、特に好ましくは10-6〜0.1である。
【0140】
細胞の播取量(個/cm2)は、使用する細胞の種類等によって異なるが、浸析樹脂ビーズの平均表面積1cm2当り、10〜1000万が好ましく、さらに好ましくは100〜100万、特に好ましくは1000〜30万である。
細胞の播取量は、細胞核数をウィーゼル(Wezel)によるクリスタルバイオレットを用いた細胞核計数法で計数することのより測定することができる。
また、培地に分散させる細胞の濃度(個/mL)としては特に制限はないが、培地1mL当たり、100〜1億が好ましく、さらに好ましくは1000〜1千万、特に好ましくは1万〜100万である。
また、本発明の樹脂ビーズの使用量(g)は、培養する細胞の種類等によって適宜決定できるが、培地1mL当たり、0.0001〜1が好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.8、特に好ましくは0.005〜0.5である。
【0141】
培養条件としては、特に制限は無く、二酸化炭素(CO2)濃度1〜20体積%、5〜45℃で1時間〜100日間、必要に応じて1〜10日毎に培地交換しなら培養する条件等が適用できる。好ましい条件としては、CO2濃度3〜10体積%、30〜40℃、1〜20日間、2〜3日毎に培地交換しなら培養する条件である。
【0142】
培養後に本発明の樹脂ビーズから、細胞を剥離して回収する工程を説明する。
本発明の樹脂ビーズを使用して細胞を培養した場合、樹脂ビーズの周囲を冷却する方法(樹脂ビーズを培地と共に低温環境に移動する方法や、培地を低温の培地に交換する方法等)により、培養した細胞を簡便に剥離・回収することができる。
細胞を剥離・回収する際の温度(℃)としては、温度−吸水率曲線における変曲点に対応する温度より低ければ制限がないが、増殖した細胞を変性させずに効率よく剥離・回収するという観点等から、培養温度より5〜30低い温度が好ましく、さらに好ましくは10〜27、特に好ましくは15〜25低い温度である。
なお、公知の剥離・回収方法{キレート剤(EDTA等)及び/若しくは非動物由来の蛋白質分解酵素{植物由来の蛋白質分解酵素(パパイン等)};キレート剤(EDTA等)及び/若しくは遺伝子組み換えによる合成酵素(商品名:TrypLE Select、インビトロジェン(株)製等);キレート剤(EDTA等)及び動物由来の蛋白質分解酵素(トリプシンやコラゲナーゼ等);又は動物由来の蛋白質分解酵素で処理して剥離・回収する方法等}を併用してもよい。
【0143】
本発明の樹脂ビーズを用いる細胞培養で得られる細胞(CE2)としては、本発明の樹脂ビーズに接着できる細胞(CE)と同じもの等が挙げられる。なお、細胞(CE)が分化して、元の細胞(CE)とは異なる細胞(CE2)が得られる場合がある。例えば、元の細胞(CE)が骨髄未分化間葉系幹細胞であって、細胞(CE2)が骨芽細胞、軟骨細胞又は脂肪細胞等の場合である(ティッシュ・エンジニアリング、上田実 編、財団法人名古屋大学出版会、1999年10月10日)。
以上の通り、本発明の細胞の生産方法としては、細胞を感温膨潤性樹脂ビーズを用いて細胞培養をする工程及び細胞培養温度よりも5〜30℃低い温度にして細胞を剥離・回収する工程を含むことが好ましい。
【実施例】
【0144】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
<実施例1>
N−イソプロピルアクリル酸アミド(商品名NIPAM、興人(株)製)100部、アクリル酸1部、エチレングリコールジメタクリレート1部及びイオン交換水50部の混合液を室温(20〜25℃)で十分に窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)した後、この混合液にアゾビスアミジノプロパン塩酸塩の5%水溶液2.7部を加えて均一なモノマー水溶液とした。
別に攪拌機、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に界面活性剤(ソルビタンモノステアレート)4部、シクロヘキサン1300部を仕込み、撹拌下(回転数250rpm)、系内を窒素ガスで置換(気相酸素濃度10ppm以下)し、57℃に昇温した。
57℃に到達後、この反応容器内に、前述のモノマー水溶液を2時間かけて滴下した。引き続き、1時間57℃で撹拌を継続した後、析出した粗樹脂ビーズをろ過により分離し、50℃、4時間(順風得乾燥機内)乾燥して、粗樹脂ビーズを得た。
次いで、この粗樹脂ビーズを目開き250μm及び150μmのふるい(JIS Z8801−1:2000)を用いて分級し(150μmのふるいを通過し250μmのふるいを通過しない粒子を得た)、イオン交換水100mlで4回洗浄し、リン酸バッファー液(PBS)100部中で121℃で20分間オートクレーブ滅菌後、PBSから樹脂ビーズを取り出し、25℃、20%RHで1時間UV照射することにより、本発明の樹脂ビーズ(1)を得た。なお、樹脂ビーズ(1)は32℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(1)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0145】
<実施例2>
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりにN,N−ジエチルアクリル酸アミド(商品名DEAA、興人(株)製)100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(2)を得た。なお、樹脂ビーズ(2)は32℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(2)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0146】
<実施例3>
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりに、特開2000−273074号公報中の実施例記載の方法に準じて得たN−n−プロピルアクリル酸アミド100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(3)を得た。なお、樹脂ビーズ(3)は21℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(3)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0147】
<実施例4>
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりに、特開2000−273074号公報中の実施例記載の方法に準じて得たN−n−プロピルメタクリル酸アミド100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(4)を得た。なお、樹脂ビーズ(4)は27℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(4)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0148】
<実施例5>
N,N−ジエチルアクリル酸アミド99部(1モル部)、37%ホルムアルデヒド水溶液(メタノール含有量7%)122部(1.5モル部)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)7部(63ミリモル部)、メトキシハイドロキノン0.03部及びアセトニトリル100部を均一混合した後、80〜82℃で1時間反応させた。この反応液を40℃に冷却し、濃塩酸でpH5.0に調整した後、トルエン200部で抽出した。ついで、抽出物からトルエンを留去して、N,N−ジエチル−α−ヒドロキシメチルアクリル酸アミド(HMAA)の粗生成体を得た。
MHAAの粗生成体30部を水150部に溶解した後、石油エーテル60部を用いて不純物を3回抽出除去した。ついで、MHAA水溶液に食塩を飽和になるまで溶解させた後、トルエン抽出し、MHAAを精製した(純度98.5%)。
MHAA116部(1モル部)及び水酸化カリウム2部を混合し、100℃に調整した後、100℃でエチエンオキシド44部(1モル部)を滴下して反応させることにより、N,N−ジエチル−α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アミドを得た。
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりにN,N−ジエチル−α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アミド100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(5)を得た。樹脂ビーズ(5)は30℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(5)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0149】
<実施例6>
N−ヒドロキシエチルアクリル酸アミド(商品名HEAA、興人(株)製)115部(1モル部)及びTHF200部を混合し、5℃に調整した後、5℃で三臭化リン135部(0.5モル部)を滴下して反応させることにより、N−臭化エチルアクリル酸アミドを得た。
エタノール46部(1モル部)及び水酸化カリウム112部(2モル部)を混合し、75℃に調整した後、上記で得たN−臭化エチルアクリル酸アミドを滴下して反応させて、反応生成物を得た。その後、反応生成物を塩酸で中和し、析出した塩化カリウムを濾別することにより、N−エトキシエチルアクリル酸アミドを得た。
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりにN−エトキシエチルアクリル酸アミド100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(6)を得た。樹脂ビーズ(6)は35℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(6)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0150】
<実施例7>
ポリオキシエチレンポリオキシブチレングリコール(オキシエチレン/オキシブチレン:重量比50/50、ランダム、数平均分子量2000)100部及びHDIイソシアヌレート7部を60℃で加熱・混合し、この混合物をデカン1000部及び界面活性剤(ソルビタンモノステアレート)4部の混合物に添加した後、分散機(TKホモミキサーMARKII20:特殊機化(株)){80℃、回転数5000rpm}で3分間混合して分散液を得た。
その後、この分散液を撹拌棒及び温度計をセットした別の反応容器に投入し、60℃で10時間反応させた後、析出した粗樹脂ビーズをろ過により分離し、50℃、4時間(順風乾燥機内)乾燥して、粗樹脂ビーズを得た。
次いで、この粗樹脂ビーズを目開き250μm及び150μmのふるい(JIS Z8801−1:2000)を用いて分級し、イオン交換水100mlで4回洗浄し、PBS100部中で121℃で20分間オートクレーブ滅菌後、PBSから樹脂ビーズを取り出し、25℃、20%RHで1時間UV照射することにより、本発明の樹脂ビーズ(7)を得た。なお、樹脂ビーズ(7)は、30℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(7)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0151】
<実施例8>
ポリオキシエチレンポリオキシブチレングリコール100部及びHDIイソシアヌレート7部を加熱・混合する代わりに、メチルセルロース(メチル化率38.6%、重量平均分子量1000)100部、及びHDIイソシアヌレート5部を混合する以外は実施例7と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(8)を得た。なお、樹脂ビーズ(8)は32℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(8)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0152】
<実施例9>
ポリオキシエチレンポリオキシブチレングリコール100部及びHDIイソシアヌレート7部を加熱・混合する代わりに、ポリビニルアルコール部分ケン化物(ケン化価60モル%、重量平均分子量1000)100部、及びHDIイソシアヌレート5部を混合する以外は実施例7と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(9)を得た。なお、樹脂ビーズ(9)は30℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(9)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0153】
<実施例10>
特表平3−502935号公報中の実施例記載の方法に準じて、(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)9配列とArg Gly Asp配列とを各13個含むMn約11万のポリペプチド(プロネクチンF)を得た。次いで、プロネクチンFの4.5規定の過塩素酸リチウム水溶液(プロネクチンFの濃度;1mg/ml)をリン酸バッファー液(PBS)でプロネクチンFの濃度が300μg/mlとなるように希釈し、プロネクチンF溶液を作製した。
水溶性カルボジイミド溶液{1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ハイドロクロリド、ドジンド(株)製、300mM水溶液)10mlに、実施例1と同様にして得た樹脂ビーズ(1)5gを加え、ポリフッ化エチレン樹脂(テフロン(登録商標))製撹拌子で2時間撹拌した後、これにリン酸緩衝液(PH=7.2)10mlを添加し溶液を吸引除去する操作を5回行うことにより(洗浄)カルボジイミド結合ビーズ(1)を得た。
引き続きこのカルボジイミド結合ビーズ(1)をプロネクチンF溶液10mlに浸積して2時間撹拌し、リン酸緩衝液(PH=7.2)10mlを添加し溶液を吸引除去する操作を3回行った(洗浄)後、アンモニア水溶液(300mM、10ml)中で2時間撹拌した。その後、イオン交換水10mlを添加し溶液を吸引除去する操作を3回行い(洗浄)、次いで振盪器上にセットしたステンレス製バットに移し、100℃の熱風を吹きつけながら、30分間振盪乾燥して乾燥ビーズ(1)を得た。
この乾燥ビーズ(1)をPBS50mlで2回洗浄し、PBS中で121℃で20分間オートクレーブ滅菌後、PBSから樹脂ビーズを取り出し、25℃、20%RHで1時間UV照射することにより、本発明の樹脂ビーズ(10)を得た。なお、樹脂ビーズ(10)は32℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズから調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見掛け比重は1.05であった。
【0154】
樹脂ビーズ(10)について、プロネクチンFの含有量を、以下の手順で測定した。
(1)樹脂ビーズ(10)0.1gに、牛血清アルブミンを1重量%で含有するPBS(PH7.4)10mlを加え、室温(25℃)で2時間静置した。その後、アスピレーターを用いて溶液を除去して、牛血清アルブミン処理樹脂ビーズを得た。
(2)次いで牛血清アルブミン処理樹脂ビーズに、ペルオキシダーゼ標識抗プロネクチンF抗体を0.001重量%、牛血清アルブミンを1重量%及びTween20を0.2重量%で含有するPBS(PH7.4)10mlを加え、37℃で2時間反応した。反応後、Tween20を0.2重量%で含有するPBS(PH7.4)10mlで、3回洗浄して溶液を除去して、反応樹脂ビーズを得た。
尚、ペルオキシダーゼ標識抗プロネクチンF抗体の調製は、ポリクローナル抗体作製法(エンザイムイムノアッセイ、石川榮治訳、株式会社東京化学同人、1989年)にしたがってウサギにプロネクチンFを免役して抗プロネクチンF抗体を得て、その抗プロネクチンF抗体とペルオキシダーゼ(東洋紡績(株)製)とをマレイミド法(エンザイムイムノアッセイ、石川榮治訳、株式会社東京化学同人、1989年)によって結合させることにより、ペルオキシダーゼ標識抗プロネクチンF抗体を得た。
(3)次いで得られた反応樹脂ビーズに、OLYDAS専用発色液セット(三洋化成工業(株)製)を20重量%で及びイオン交換水を80重量%で含有する混合液10mlをそれぞれ加え、37℃で1時間反応した。反応後、380nmの波長で吸光度を測定した。
(4)樹脂ビーズ(10)の調製と同様にして、標準樹脂ビーズ1〜5を調製した。標準樹脂ビーズ1〜5のプロネクチンFの含有量1〜5は、プロネクチンF付着処理後のプロネクチンF溶液を透析(透析膜商品名:Spectra/Por131204(Spectrum(株)製)、分画分子量5,000、イオン交換水使用、4回実施))し、凍結乾燥(−20℃、130Pa、24時間)して、未付着のプロネクチンFの重量を求め、付着前のプロネクチンFの重量から未付着のプロネクチンFの重量を差し引くことにより求めた。
標準樹脂ビーズ1〜5について、上記と同様にして吸光度1〜5を測定し、得られた吸光度1〜5とプロネクチンFの含有量1〜5とを用いて検量線を作成した。
この検量線と樹脂ビーズ(10)についての吸光度とから、樹脂ビーズ(10)の単位重量当たりのプロネクチンFの含有量(118μg/g)を得た。
この含有量(118μg/g)と単位重量当たりの平均表面積(294cm2/g)とから、樹脂ビーズ(10)の平均表面積1cm2当たりのプロネクチンFの含有量(μg/cm2)は0.4μg/cm2と算出された(以下においても同様にしてプロネクチンF又はF2の含有量を求めた)。
【0155】
<実施例11>
樹脂ビーズ(1)の代わりに、実施例2と同様にして得た樹脂ビーズ(2)を用いること以外は実施例10と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(11)を得た。なお、樹脂ビーズ(11)は、32℃の変曲点、0.4μg/m2のプロネクチンFの含有量を持っていた。また樹脂ビーズ(11)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見掛け比重は1.05であった。
【0156】
<実施例12>
特表平3−502935号公報中の実施例記載の方法に準じて、Arg Gly Asp配列5個と(Gly Ala Gly Ala Gly Ser)3配列5個とを含むMn約2万のポリペプチド(プロネクチンF2)を得た。次いで、プロネクチンF2の4.5規定の過塩素酸リチウム水溶液(プロネクチンF2の濃度;1mg/ml)をリン酸バッファー液(PBS)でプロネクチンF2の濃度が300μg/mlとなるように希釈し、プロネクチンF2溶液を作製した。
プロネクチンFの代わりにプロネクチンF2を用いること以外は実施例10と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(12)を得た。なお、樹脂ビーズ(12)は、32℃の変曲点、0.4μg/m2のプロネクチンF2の含有量を持っていた。また樹脂ビーズ(12)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見掛け比重は1.05であった。
【0157】
<実施例13>
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部をN−イソプロピルアクリル酸アミド100部及びポリエチレン微粒子(ミペロンXM221U:三井化学(株)、見掛け比重0.94、体積平均粒子径20μm)10部の混合物に変更する以外は実施例1と同様にして本発明の樹脂ビーズ(13)を得た。なお、樹脂ビーズ(13)は32℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(13)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見掛け比重は1.03であった。
【0158】
<実施例14>
反応容器にアクリル酸メチル86部及びジメチルアミン43部を仕込み35℃で5時間反応させた後、ピペリジン85部及びソディウムメトキシド0.5部を仕込み50℃で8時間反応させた。得られた反応物を減圧蒸留(4Pa、約110℃)してアクリロイルピペリジンを得た。
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりにアクリロイルピペリジン100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(14)を得た。なお、樹脂ビーズ(14)は5℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(14)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0159】
<実施例15>
反応容器にアクリル酸メチル86部及びジメチルアミン43部を仕込み35℃で5時間反応させた後、ジプロピルアミン102部及びソディウムメトキシド0.5部を仕込み50℃で8時間反応させた。得られた反応物を減圧蒸留(4Pa、約160℃)してN,N−ジプロピルアクリルアミドを得た。
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりにN,N−ジプロピルアクリルアミド100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(15)を得た。なお、樹脂ビーズ(15)は12℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(15)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0160】
<実施例16>
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりに、特開2000−273074号公報中の実施例記載の方法に準じて得たN−3−モルホリノプロピルアクリルアミド100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(16)を得た。なお、樹脂ビーズ(16)は17℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(16)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0161】
<実施例17>
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりに、特開2000−273074号公報中の実施例記載の方法に準じて得たN−エチルアクリルアミド100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(17)を得た。なお、樹脂ビーズ(17)は40℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(17)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0162】
<実施例18>
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりに、N−イソプロピルアクリル酸アミド70部及び特開2000−273074号公報中の実施例記載の方法に準じて得たN−エチルアクリルアミド30部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(18)を得た。なお、樹脂ビーズ(18)は38℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(18)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0163】
<実施例19>
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりに、N−イソプロピルアクリル酸アミド50部及び特開2000−273074号公報中の実施例記載の方法に準じて得たN−エチルアクリルアミド50部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(19)を得た。なお、樹脂ビーズ(19)は35℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(19)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0164】
<実施例20>
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりに、N−イソプロピルアクリル酸アミド50部及びN,N−ジプロピルアクリルアミド50部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(20)を得た。なお、樹脂ビーズ(20)は25℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(20)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0165】
<実施例21>
反応容器にメタクリル酸メチル100部及びジメチルアミン43部を仕込み35℃で5時間反応させた後、ジエチルアミン73部及びソディウムメトキシド0.5部を仕込み50℃で8時間反応させた。得られた反応物を減圧蒸留(4Pa、約100℃)してN,N−ジエチルメタクリル酸アミドを得た。
N−イソプロピルアクリル酸アミド100部の代わりにN,N−ジエチルメタクリル酸アミド100部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(21)を得た。なお、樹脂ビーズ(21)は25℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(21)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0166】
<実施例22>
エチレングリコールジアクリレート1部の代わりにペンタエリスリトールテトラアクリレート0.01部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(22)を得た。樹脂ビーズ(22)は32℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(22)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0167】
<実施例23>
エチレングリコールジアクリレート1部の代わりにエチレングリコールジアクリレート5部を使用する以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(23)を得た。樹脂ビーズ(23)は32℃の変曲点を有していた。また樹脂ビーズ(23)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見かけ比重は1.05であった。
【0168】
<実施例24>
プロネクチンF溶液の濃度を30μg/m2、水溶性カルボジイミド溶液を30mM水溶液にする以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(24)を得た。なお、樹脂ビーズ(24)は、32℃の変曲点、0.01μg/m2のプロネクチンFの含有量を持っていた。また樹脂ビーズ(24)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見掛け比重は1.05であった。
【0169】
<実施例25>
プロネクチンF溶液の濃度を30000μg/m2、水溶性カルボジイミド溶液を30000mM水溶液にする以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂ビーズ(25)を得た。なお、樹脂ビーズ(25)は、32℃の変曲点、1000μg/m2のプロネクチンFの含有量を持っていた。また樹脂ビーズ(25)から調整された浸析樹脂ビーズの体積平均粒子径は200μm、浸析樹脂ビーズの見掛け比重は1.05であった。
【0170】
<比較例1>
攪拌機、滴下ロート、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器を備えた反応容器に界面活性剤(PVA235、クラレ(株)製:ケン価度87〜89mol%、重合度3500)4部、イオン交換水200部、重合開始剤(ナイパーBW、日本油脂(株)製)0.45部、重合開始剤(カヤエステルHTP−65W、化薬アクゾ(株)製)0.15部、連鎖移動剤(ドデシルメルカプタン)0.26部、及び塩化ナトリウム20部を仕込み、撹拌下、系内を窒素ガスで置換し、30℃に昇温した。
次いで、この反応容器内に、ジビニルベンゼン3部及びスチレン97部の混合物を30℃を保ちながら1時間かけて滴下した後、82℃に昇温し82℃でさらに5時間反応させた。次いで、92℃に昇温し、92℃でさらに1時間反応させた後、ろ過により水性媒体(イオン交換水等)を除去し、80℃の減圧乾燥機(圧力100Pa)中で12時間乾燥して粗樹脂ビーズを得た。
次いで、この粗樹脂ビーズを目開き250μm及び150μmのふるい(JIS Z8801−1:2000)を用いて分級し、イオン交換水100mlで4回洗浄し、PBS中で121℃で20分間オートクレーブ滅菌後、PBSから樹脂ビーズを取り出し、25℃、20%RHで1時間UV照射することにより、比較用の樹脂ビーズ(26)(ポリスチレンビーズ)を得た。なお、樹脂ビーズ(26)は、200μmの体積平均粒子径、1.055の見掛け比重を持っていた。
【0171】
<比較例2>
樹脂ビーズ(1)5gの代わりに、比較例1と同様にして得た樹脂ビーズ(26)5gを用いること以外は実施例10と同様にして、比較用の樹脂ビーズ(27)を得た。なお、樹脂ビーズ(27)は、200μmの体積平均粒子径、1.06の見掛け比重、0.4μmのプロネクチンFの含有量を持っていた。
【0172】
<比較例3>
市販されている細胞培養用ビーズ{CytodexI:ファルマシアバイオテク(株)製(デキストランビーズ、浸析樹脂ビーズの調整と同様にして37℃で生理食塩水に浸析して膨潤させた後の体積平均粒子径は180μm、同様に膨潤後の比重は1.03であった)}をそのまま比較用の樹脂ビーズ(28)とした。
【0173】
<比較例4>
市販されている細胞培養用ビーズ{CytodexIII:ファルマシアバイオテク(株)製(コラーゲン結合デキストランビーズ、浸析樹脂ビーズの調整と同様にして37℃で生理食塩水に浸析して膨潤させた後の体積平均粒子径は175μm、同様に膨潤後の比重は1.04であった)}をそのまま比較用の樹脂ビーズ(29)とした。
【0174】
<細胞培養評価>
20ml容量スピナーフラスコ29個に、それぞれ、樹脂ビーズ{樹脂ビーズ1〜15については0.6g/フラスコ、樹脂ビーズ28、29については0.06g/フラスコ(なお、樹脂ビーズ28、29は水を吸収膨張して体積が約10倍になるため、細胞培養する表面積を同程度にするため1/10とした)}及びVP−SFM(インビトロジェン(株)製の無血清培地)を10mL/フラスコで加え、37℃に温度調整した後、Vero細胞[大日本製薬(株)製](細胞1)を細胞濃度:2.0×106個/mLで上記培地に分散したものの1mlを加え、撹拌(60rpm、和研薬(株)製、4-POSITION MAGNETIC STIRRER MODEL1104)しながら、二酸化炭素と空気の混合物(二酸化炭素/空気=5/95体積比)中、37℃で6日間培養 を行なった。尚、培養3日目、4日目および5日目に培地交換した。
6日目に撹拌を停止することなくビーズ懸濁液からサンプリングし、単位体積当たりの細胞核数をウィーゼル(Wezel)によるクリスタルバイオレットを用いた細胞核計数法により計数し、計数結果を表1に示した。
【0175】
<細胞の剥離・回収評価>
細胞培養評価の後、樹脂ビーズ1〜25(実施例1〜25)を使用したビーズ懸濁液は20ml容量スピナーフラスコを15℃に温度調整し、遠心分離により樹脂ビーズを除去し、細胞懸濁液を得た。
一方、樹脂ビーズ26〜29(比較例1〜4)を使用したビーズ懸濁液は培地を除去した後、PBS(PH7.4)10mL/フラスコを加え、軽く撹拌し、PBSを除去し、タンパク質分解酵素−EDTA溶液(TrypLE Select、インビトロジェン(株)製)を10mL/フラスコで加え、37℃で10分間撹拌(60rpm)した。その後、遠心分離により樹脂ビーズを除去し、細胞懸濁液を得た。
次いでこれらの細胞懸濁液を一部採りトリパンブルーで処理し、1ml当りの死んでいる細胞を発色させた後、発色した死細胞数と総細胞数とを血球盤を用いて顕微鏡下目視により数え、下式に従って細胞生存率を求めた。これらの結果を表1に示した。
【数3】

【0176】
【表1】

【0177】
次に、VP−SFMの代わりに、血清培地(FBS5%含有DMEM)を用いたこと以外、上記の細胞培養と同様にして細胞培養を行い同様に評価した。これらの結果を表2に示した。
【0178】
【表2】

【0179】
次に、樹脂ビーズ(1)、(10)、(26)、(27)、(28)、(29)を用いて、Vero細胞[大日本製薬(株)製](細胞1)の代わりに、正常ヒト皮膚毛細血管内皮細胞[大日本製薬(株)製](細胞2)又はSf9昆虫細胞[インビトロジェン(株)製](細胞3)を用いたこと以外、上記のVP−SFM培地を使用した細胞培養と同様にして細胞培養を行い同様に評価した。これらの結果を表3に示した。
【0180】
【表3】

【0181】
次に樹脂ビーズ(1)、(10)、(26)、(27)、(28)、(29)を用いて細胞回収時の温度15℃を、22℃又は12℃にしたこと以外、上記のVP−SFM培地を使用した細胞培養と同様にして細胞1を用いて細胞培養を行い同様に評価した。これら結果を表4に示した。
【0182】
【表4】

【0183】
以上の評価結果から、無血清培地による細胞培養及び血清培地による細胞培養のいずれにおいても、本発明の樹脂ビースは、比較用の樹脂ビーズに比較して、極めて簡単に(温度を下げるだけで)、培養細胞を剥離・回収でき、しかも、著しく高い細胞生存率で細胞を剥離・回収することができた。なお、細胞増殖性については問題はなかった。
さらに、ポリペプチド(P)を用いた本発明の樹脂ビーズ(10)、(11)、(12)、(24)、(25)は無血清培地による細胞培養において、ポリペプチドを用いていないものに比較して細胞増殖性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の細胞培養用ビーズは、増殖した細胞を変性させることなくそのまま剥離・回収できるため、細胞が関係する、研究開発、有用物質生産及び治療等に極めて有用である。
研究開発用としては、動物実験(毒性試験、刺激性試験及び代謝機能試験等)の代替用細胞の培養、遺伝子導入用細胞の培養等に利用できる。
有用物質生産用としては、サイトカイン、血栓溶解剤、血液凝固因子製剤、ワクチン、ホルモン、抗生物質、抗体及び増殖因子等の生産用細胞の培養に利用できる。
治療用としては、皮膚、頭蓋骨、筋肉、皮膚組織、骨、軟骨、血管、神経、腱、靭帯、毛胞組織、粘膜組織、歯周組織、象牙質、骨髄、網膜、漿膜、胃腸管及び脂肪等の組織、並びに肺、肝、膵及び腎等の臓器の細胞培養に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度−吸水率曲線において変曲点を有する架橋ポリマー(A)を含有してなることを特徴とする細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズ。
【請求項2】
変曲点に対応する温度が0〜80℃である請求項1に記載の感温膨潤性樹脂ビーズ。
【請求項3】
架橋ポリマー(A)が、カルバモイル基及び/又はポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーを必須構成単量体としてなる架橋ビニルポリマー(A1)、架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)、架橋メチルセルロース(A3)、並びに架橋ポリビニルアルコール部分ケン化物(A4)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の感温膨潤性樹脂ビーズ。
【請求項4】
さらに細胞接着性最小アミノ酸配列(X)を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド(P)を含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の感温膨潤性樹脂ビーズ。
【請求項5】
さらに微粒子(b)を含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載の感温膨潤性樹脂ビーズ。
【請求項6】
温度−吸水率曲線において変曲点を有する架橋ポリマー(A)を含有してなる細胞培養用感温膨潤性樹脂ビーズの製造方法であって、
カルバモイル基及び/若しくはポリオキシアルキレン基を含有するビニルモノマーと架橋剤(c1)との混合物を疎水性溶媒(W)中に滴下すると同時に分散しながら重合反応させて架橋ビニルポリマー(A1)を得る工程(1)、
アルキレンオキシドポリマーと架橋剤(c2)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散し架橋反応させて架橋アルキレンオキシドポリマー(A2)を得る工程(2)、
メチルセルロースと架橋剤(c3)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散し架橋反応させて架橋メチルセルロース(A3)を得る工程(3)、
並びに/又はポリビニルアルコール部分ケン化物と架橋剤(c4)との混合物を疎水性溶媒(W)中に分散し架橋反応させて架橋ポリビニルアルコール部分ケン化物(A4)を得る工程(4)を含むことを特徴とする感温性樹脂ビーズの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の感温膨潤性樹脂ビーズを用いて細胞培養する工程及び細胞培養温度よりも5〜30℃低い温度にして細胞を剥離・回収する工程を含むことを特徴とする細胞の生産方法。
【請求項8】
培養される細胞が哺乳動物由来の正常細胞、哺乳動物由来の株化細胞又は昆虫細胞である請求項7に記載の細胞の生産方法。

【公開番号】特開2006−174826(P2006−174826A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321741(P2005−321741)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】