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細胞増殖または新生物性障害に関してスクリーニングする方法
説明

細胞増殖または新生物性障害に関してスクリーニングする方法

【課題】新生物性増殖もしくは細胞増殖または新生物性障害を有するか、または有する素因がある被験体を同定するための方法および組成物を提供する。
【解決手段】分化細胞集団および未分化細胞集団の比の改変が、細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクに関する早期指標として使用可能であるという発見に基づいて、被験体から血液または腸組織由来などの生物学的試料を得て、同一または異なる組織における細胞分化レベルを決定することによって、被験体が癌などの細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクを決定する方法を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、新生物性障害のリスクまたは存在に関してスクリーニングすることに関し、より具体的には、被験体から得られる生物学的試料に存在するバイオマーカーであって、新生物性(例えば良性または悪性)または細胞増殖性障害に関する素因の指標となるバイオマーカーに関してスクリーニングすることに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C.§119(e)に基づいて、2004年6月3日に出願された米国特許出願第60/576,566号、2005年1月24日に出願された米国特許出願第60/646,296号、および2005年2月24日に出願された米国特許出願第60/656,470号に優先権の恩典を主張し、その内容は全体として、参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
政府が出資した研究に関する言及
本発明は、National Institutes of Healthによって授与されたR01CA65145およびK08CA106610のもとに、米国政府の支援で行われた。米国政府は、本発明にある程度の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景情報
各哺乳動物細胞は、母から遺伝したもの(母性染色体上)および父から遺伝したもの(父性染色体上)の2コピーの各遺伝子を所持する。したがって、大部分の常染色体遺伝子および女性のX連鎖遺伝子は、両アレル性、すなわち遺伝子の父性アレルおよび母性アレルが両方発現され、タンパク質合成において両コピーの情報が活発に用いられる。しかし、ヒトおよび他の哺乳動物において、両アレル遺伝子の単一アレル発現が立証されてきている。アレル排除は、2つの異なる機構から生じる可能性がある。第一の機構は親起源とは無関係である。第二の機構はゲノム・インプリンティングと呼ばれ、配偶子または接合体中の特定の親染色体のエピジェネティックな修飾であり、この修飾が、子孫の体細胞において遺伝子の2アレルの単一アレル発現または差次発現を導く。インプリンティングは、細胞間シグナル伝達、RNAプロセシング、細胞周期制御、ならびに細胞分裂および増殖の促進または阻害を含めて、多様な本質的な細胞プロセスおよび発生プロセスに影響を及ぼす。
【0005】
インプリンティングされた遺伝子は、いくつかの組織において単一アレル発現を、他の組織において両アレル発現を示し得る。例えば、インスリン様増殖因子II遺伝子(IGF2)は、大部分の組織でインプリンティングされているが、脳では両アレル性に、肝臓では単一アレル性に発現される。IGF2遺伝子のインプリンティングの喪失(LOI)、または通常はサイレントである母性遺伝アレルの活性化が、多くの一般的な癌で生じる(Feinberg, A., Semin. Cancer Biol. 14, 427 (2004))(非特許文献1)。用語LOIは、単純に、優先的な親起源特異的遺伝子発現の喪失を意味し、両アレル発現を導く、通常はサイレントであるアレルの異常な発現、または遺伝子座のエピジェネティックなサイレンシングを導く、通常は発現されているアレルのサイレンシングのいずれを伴うこともあり得る。人口の約10%がIGF2のLOIを示し、この分子特質は、結腸直腸新形成の個人歴および/または家族歴と関連する(Cui et al., Science 299, 1753 (2003); Woodson et al., J. Natl. Cancer. Inst. 96, 407 (2004))(非特許文献2、3)。IGF2のインプリンティングは、近傍の翻訳されないH19遺伝子上流の差次メチル化領域(DMR)によって制御される。DMRの欠失は、母性遺伝した場合、子孫においてIGF2の両アレル発現を導く(LOI)(Leighton, et al., Nature 375, 34 (1995); Ripoche, et al., Genes Dev. 11, 1596 (1997))(非特許文献4、5)。このように、癌における異常なインプリンティングは、増殖促進性遺伝子の、通常はサイレントであるアレルの活性化を導き得る。
【0006】
現在、LOIと関連する疾患および/または未制御細胞増殖もしくは新生物性障害(例えば良性および癌)を発症するリスクがある被験体を、信頼性を持って同定する単一の生化学マーカー、または複数の生化学マーカーはない。したがって、細胞分化情報を利用して、細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクがある個体を同定することが可能な診断法および組成物に関する必要性が存在する。こうした情報を、任意で、被験体ゲノムにおけるエピジェネティックな改変から生じる異常な遺伝子発現と相関させることも可能である。予防的療法の早期実施および定期的スクリーニングが、こうした障害の予防を導き得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Feinberg, A., Semin. Cancer Biol. 14, 427 (2004)
【非特許文献2】Cui et al., Science 299, 1753 (2003)
【非特許文献3】Woodson et al., J. Natl. Cancer. Inst. 96, 407 (2004)
【非特許文献4】Leighton, et al., Nature 375, 34 (1995)
【非特許文献5】Ripoche, et al., Genes Dev. 11, 1596 (1997)
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明は、分化細胞集団および未分化細胞集団の比の改変が、細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクに関する早期指標として使用可能であるという発見に基づく。本発明は全般的に、被験体から血液または腸組織由来などの生物学的試料を得て、同一または異なる組織における細胞分化レベルを決定することによって、被験体が癌などの細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクを決定する方法を特徴とする。任意で、この情報を、ターゲット遺伝子の発現における改変と相関させてもよい。ターゲット遺伝子の発現の改変は、ターゲット遺伝子のインプリンティングの喪失から直接または間接的に生じ得る。
【0009】
1つの態様において、被験体が細胞増殖または新生物性障害を発症する素因を決定する方法を提供する。この方法には、被験体由来の正常生物学的試料において、未分化細胞対分化細胞の比を決定する工程が含まれる。未分化細胞対分化細胞の比は、参照比と比較した際、細胞増殖または新生物性障害を発症する素因の指標となる。任意で、この方法にはさらに、被験体由来の同一または異なる生物学的試料において、少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常な発現を示す細胞を同定する工程がさらに含まれる。ターゲット遺伝子には、その発現がインプリンティングの喪失によって影響を受ける、いかなる遺伝子も含まれる。例えばH19遺伝子またはIGF2遺伝子の発現は、そのインプリンティング状態に直接影響を受ける。しかしIGF2関連遺伝子、例えばIgf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、またはMAPK遺伝子の発現は、H19および/またはIGF2のインプリンティング状態によって間接的に影響を受ける。したがって、IGF2関連遺伝子の発現は、例えばIGF2遺伝子のインプリンティングの喪失によって刺激される可能性もある。全般的に本発明の方法には、インプリンティングの喪失と直接または間接的に関連するターゲット遺伝子の発現の変化またはその多型性に関して、生物学的試料を分析する工程が含まれる。インプリンティングの喪失は、例えば遺伝子のメチル化状態の変化から生じ得る。メチル化状態の変化は、例えばH19遺伝子の差次メチル化領域(DMR)および/またはIGF2遺伝子のDMRの低メチル化であってもよい。続いて、H19遺伝子およびIGF2遺伝子の少なくとも1つの正常なインプリンティングを示す細胞が含まれる、被験体から得られる組織から、参照比を生成することが可能である。
【0010】
別の態様において、試料において、未分化細胞対分化細胞の比を決定する工程には、分化細胞または未分化細胞と関連するバイオマーカーを同定する工程が含まれる。バイオマーカーには、限定されるわけではないが、Shh (ソニック・ヘッジホッグ)、Tcf4、Lef1、Twist、EphB2、EphB3、Hes1、Notch1、Hoxa9、Dkk1、Tle6、Tcf3、Bmi1、Kit、Musashi1(Msi1)、Cdx 1、Hes5、Oct4、Ki-67、β-カテニン、Noggin、BMP4、PTEN (リン酸化PTEN)、Akt (リン酸化Akt)、Villin、アミノペプチダーゼN (anpep)、スクラーゼ・イソマルターゼ (SI)、Ephrin-B1 (EfnB1)、Cdx2、Crip、Apoa1、Aldh1b1、Calb3、Dgat1、Dgat2、Clu、Hephaestin、Gas1、Ihh (インディアン・ヘッジホッグ)、内因子B12受容体、IFABP、またはKLF4が含まれうる。
【0011】
別の態様において、試料において、未分化細胞対分化細胞の比を決定する工程には:a)分化細胞集団または未分化細胞集団と特異的に関連するバイオマーカー分子の免疫組織化学的同定を用いて、試料を画像化する工程;b)標準的顕微鏡観察を用いて試料を画像化し、形態学的測定値を用いて未分化細胞から分化細胞を識別する工程;c)増殖抗原および結腸腺窩内のこの抗原の分布の免疫組織化学的同定を用いて、試料を画像化する工程;またはd)分化細胞集団または未分化細胞集団と関連するバイオマーカーに特異的な分子の免疫蛍光同定を用いて、試料を画像化する工程が含まれてもよい。核酸分析、例えばe)RNAレベルを測定する工程;f)遺伝子発現を測定する工程;g)全ゲノム発現分析;またはアレル特異的発現を行ってもよい。
【0012】
いくつかの態様において、細胞は、例えば直腸「Pap」検査(例えば擦過試料)から得られる上皮細胞であってもよい。別の態様において、上皮細胞を、例えば結腸などの腸組織から得てもよい。他の態様において、細胞を腸組織の管腔から得てもよい。他の態様において、細胞を管腔の腺窩から得てもよい。細胞増殖または新生物性障害は、例えば腺腫などの固形腫瘍と関連してもよい。
【0013】
本発明の方法は、結腸の新生物などの細胞増殖または新生物性障害を有することがあらかじめ公知ではない被験体由来の組織をスクリーニングする工程を含む。例えば、本明細書に提供する方法の結果を、被験体の家族遺伝歴と相関させることも可能である。さらに、限定されるわけではないが、胸部X線、結腸直腸検査、内視鏡検査、MRI、CATスキャン、ガリウム・スキャン、およびバリウム画像化を含むさらなる検査に、被験体を供してもよい。
【0014】
他の態様において、被験体に細胞増殖または新生物性障害を発症する素因があるかどうかを決定する方法には、被験体から生物学的試料を得る工程、およびこの試料を、分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーと特異的に相互作用する固定化生体分子のアレイと接触させる工程が含まれる。この方法にはさらに、試料における分化細胞対未分化細胞の比の指標となる、生体分子の修飾を検出することによって、被験体プロフィールを得る工程が含まれる。この被験体プロフィールを、1つまたは複数の値を含む参照プロフィールと比較してもよく、各値は、ターゲット遺伝子の正常なインプリンティングを示す、1つまたは複数の参照被験体から得られる参照試料中のバイオマーカーレベルに相当する。いくつかの態様において、生体分子はタンパク質、例えば抗体(例えばモノクローナル抗体)であってもよい。他の態様において、生体分子は、抗原または受容体であってもよい。任意で、この方法にはさらに、被験体由来の同一または異なる生物学的試料において、少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常な発現を示す細胞を同定する工程が含まれる。
【0015】
別の態様において、細胞増殖もしくは新生物性障害、または細胞増殖もしくは新生物性障害に対する素因を検出するための診断キットを提供する。こうしたキットには、被験体から得られる試料において、分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーを検出するためのアレイが含まれうる。アレイには、複数のアドレスを有する基板(substrate)が含まれてもよく、各アドレスはアドレス上に配置された固定化生体分子を有し、各生体分子は個々に、分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーを検出する。任意で、キットには、生物学的試料において、少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常なインプリンティングを同定するための手段が含まれてもよい。
【0016】
別の態様において、療法措置が細胞増殖または新生物性障害を予防するかまたは阻害するのに有効であるかどうかを決定する方法を提供する。こうした方法には、細胞増殖または新生物性障害を発症する素因がある被験体を同定する工程、および被験体のターゲット組織における未分化細胞数の増加を阻害するかまたは予防する療法を、被験体に施行する工程が含まれる。この方法にはさらに、被験体由来の非新生物性細胞を含む生物学的試料を、分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーと特異的に相互作用する固定化生体分子のアレイと接触させる工程、および生体分子の修飾を検出することによって、被験体プロフィールを得る工程が含まれ、ここで修飾は、試料における分化細胞対未分化細胞の比の指標である。被験体プロフィールを、1つまたは複数の値を含む参照プロフィールと比較してもよく、各値は、ターゲット遺伝子の正常なインプリンティングを示す、1つまたは複数の参照被験体から得られる参照試料中のバイオマーカーレベルに相当する。こうしたセラノスティクス(theranostic)法には、決定を治療提供者(caregiver)に提供する工程、および決定に基づいて療法を改変する工程が含まれてもよい。
【0017】
他の態様において、未分化細胞を調製する方法を提供する。こうした方法には、より拘束された(committed)細胞を脱分化させて未分化細胞にする原因となる薬剤と、より拘束された細胞を接触させる工程が含まれ、ここでこの薬剤は、H19遺伝子およびIGF2遺伝子の少なくとも1つのインプリンティングに影響を及ぼす。拘束された細胞は、正常細胞または癌細胞であってもよい。いくつかの態様において、拘束された細胞は分化した細胞である。
【0018】
他の態様において、より分化した細胞に再拘束されることが可能な未分化細胞を含む、改変された細胞集団を産生する方法を提供する。こうした方法には、拘束された細胞を含む最初の細胞集団を、上皮組織由来の細胞におけるターゲット遺伝子のインプリンティング状態を調節する薬剤と接触させる工程、細胞を培養する工程、および細胞を未分化細胞と同定する工程、または改変された細胞集団から未分化細胞を回収する工程が含まれる。こうした細胞は、本明細書に記載するようなバイオマーカーによって回収可能である。
【0019】
別に定義しない限り、本明細書において用いられるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の通常の技能を有する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料が、本発明の実施または試験に使用可能であるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書に言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。矛盾する場合は、定義を含めて、本明細書が支配するであろう。さらに、材料、方法、および実施例は例示のみであり、限定することを意図しない。
【0020】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】パネルA〜Fは、120日齢のLOI(-)マウスおよびLOI(+)マウスにおけるvillinおよびmusashi1の免疫組織化学分析を示す。
【図2】パネルA〜Hは、マウスH19 DMR突然変異モデルにおける、およびLOIの結腸内視鏡外来患者における、より分化していない結腸上皮へのシフトを示す。
【図3】パネルA〜Cは、H19欠失およびDMR突然変異のマウスモデルを示す。
【図4】パネルAおよびBは、Igf2 mRNAおよびタンパク質レベルを示す。
【図5】パネルAおよびBは、LOI(-)マウス(パネルA)対LOI(+)マウス(パネルB)における小腸粘膜の組織形態を示す。
【図6】パネルA〜Dは、42日齢マウスにおける、villinおよびephrin-B1に関する免疫組織化学を示す。
【図7】パネルA〜Fは、42日齢マウスにおける、musashi1およびtwistに関する免疫組織化学を示す。
【図8】パネルA〜Fは、H19 DMRに突然変異を持つマウス腸(142*マウス)における、Igf2 mRNAレベルのインサイチュー・ハイブリダイゼーション分析を示す。
【図9】パネルA〜Fは、H19 DMRに突然変異を持つE16.5マウス胚における、H19 mRNAレベルのインサイチュー・ハイブリダイゼーション分析を示す。
【図10】パネルAおよびBは、LOIを伴わない結腸内視鏡患者およびLOIを伴う患者の正常結腸のmusashi1免疫染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
被験体由来の生物学的試料において、分化細胞および未分化細胞の比の修飾を検出するための方法および組成物を提供する。こうした修飾は、1)正常組織をより未分化な状態にシフトさせるか;2)続く遺伝子改変のためのターゲット細胞集団を増加させるか;または3)腫瘍イニシエーションにおいて独立に作動する、エピジェネティックな改変から生じる可能性がある。したがって、本発明の方法は、試料において、未分化細胞対分化細胞の平衡または比の変化を決定する工程を可能にする。
【0023】
本発明は多くの態様を有し、当業者に公知の詳説に関しては、多くの特許、出願、および他の参考文献に依存する。したがって、特許、出願、または他の参考文献が以下に引用されるかまたは反復される場合、それは、すべての目的のため、ならびに言及されている命題のために、その全体が参照により組み入れられることが理解されるべきである。例えば、癌を発症するリスク増加の指標となるインプリンティングの喪失(LOI)を検出するための方法および組成物が、米国特許出願公報第20040219559号(出願第10/629,318号)、米国特許出願公報第20040002082号(出願第10/336,552号)、および米国特許出願公報第20010007749号(出願第10/759,917号)に開示され、これらの各々もまた、すべての目的のため、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0024】
本出願において、単数形、「a」、「an」、および「the」には、文脈が明らかに別なふうに指示しない限り、複数の言及が含まれる。例えば、用語「薬剤(an agent)」には、その混合物を含む、複数の薬剤が含まれる。
【0025】
本発明の実施は、別なふうに示さない限り、当技術分野の技術範囲内にある、有機化学、ポリマー技術、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、および免疫学の慣用的技術および説明を使用してもよい。こうした慣用的技術には、ポリマー・アレイ合成、ハイブリダイゼーション、連結、および標識を用いたハイブリダイゼーションの検出が含まれる。適切な技術の具体的な例示は、本明細書の以下の実施例を参照することによって、得られ得る。しかし、もちろん、他の同等の慣用法も使用可能である。こうした慣用的技術および説明は、Genome Analysis: A Laboratory Manual Series (Vols. I-IV)、Using Antibodies: A Laboratory Manual、Cells: A Laboratory Manual、PCR Primer: A Laboratory Manual、およびMolecular Cloning: A Laboratory Manual (すべてCold Spring Harbor Laboratory Press)、Stryer, L. (1995) Biochemistry (4th Ed.) Freeman, New York、Gait, “Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach” 1984, IRL Press, London、Nelson and Cox (2000)、Lehninger, Principles of Biochemistry 3rd Ed. , W.H. Freeman Pub., New York, N. Y. およびBerg et al. (2002) Biochemistry, 5th Ed., W.H. Freeman Pub., New York, N. Y.などの標準的実験室マニュアルに見出され、これらはすべて、すべての目的のため、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0026】
リスクがある被験体を同定するための使用に加えて、結腸癌または膵臓癌などの癌の家族遺伝歴を有し得る被験体に関する、ルーチンのスクリーニングまたは「プレ・スクリーニング」として、新規方法を用いてもよい。この方法はまた、現在、癌を発症するリスクがない被験体を同定し、こうしてさらなる試験の必要性を回避することも可能である。
【0027】
「ゲノム・インプリンティング」または「親起源によるアレル排除」は、遺伝子の親コピーの一方のみが発現される遺伝子制御機構である。父性インプリンティングとは、父親から遺伝したアレルが子孫で発現されないことを意味する。母性インプリンティングとは、母親から遺伝したアレルが子孫で発現されないことを意味する。インプリンティングされた遺伝子とは、親アレルの1つが抑制される一方、他方が転写され、かつ発現される遺伝子である。インプリンティングされた遺伝子の発現は、異なる組織において、または異なる発生段階で、さまざまである可能性がある。インプリンティングされた遺伝子は、筋肉、肝臓、脾臓、肺、中枢神経系、腎臓、精巣、卵巣、膵臓、胎盤、皮膚、副腎、副甲状腺、膀胱、乳房、下垂体、腸、唾液腺、血球、リンパ節、および当技術分野で公知の他のものなどの多様な組織または細胞種で発現され得る。例えば、IGF2インプリンティングは、脳、成体肝臓、および軟骨細胞を除く大部分の組織において、母由来アレルの抑制を生じる(Vu T. H. and Hoffman A. R. (1994) Nature, 371:714-717)。
【0028】
ゲノム・インプリンティングは、癌などの細胞増殖または新生物性障害に関連付けられてきている。例えば、小児期ウィルムス腫瘍(WT)において、ヘテロ接合性の喪失(LOH)が第11番染色体で起こる。ウィルムス腫瘍由来のRNAを検査すると、ウィルムス腫瘍の70%で、一方だけでなく両方のIGF2アレルが発現されるという発見に至った。さらに、症例の30%で、H19の両方のアレルが発現されていた。対照的に、正常組織由来のRNAを検査すると、IGF2およびH19の一方のアレルの発現を伴う、正常なインプリンティングが示される。この新規遺伝子改変のための用語が、インプリンティングの喪失(LOI)であって、この用語は単純に、優先的な親起源特異的遺伝子発現の喪失を意味し、両アレル発現を導く、通常はサイレントであるアレルの異常な発現、または遺伝子座のエピジェネティックなサイレンシングを導く、通常は発現されているアレルのサイレンシングのいずれかを伴いうる。したがって、癌における異常なインプリンティングは、増殖促進性遺伝子の、通常はサイレントであるアレルの活性化を導きうる。
【0029】
DNAメチル化は、ゲノム・インプリンティングの制御において役割を果たす。第一に、マウスにおけるH19などのいくつかのインプリンティングされた遺伝子は、CpGアイランドの親起源特異的組織独立性メチル化を示す。このメチル化は、父性染色体上のインプリンティングを表しており、遺伝子発現の変化から派生するものではない。第二に、DNAメチルトランスフェラーゼが欠損し、かつ広範囲に及ぶゲノム低メチル化を示すノックアウトマウスは、H19 CpGアイランドのアレル特異的メチル化を示さず、H19の両アレル発現およびIGF2の発現喪失を示す。類似の親起源特異的メチル化が、IGF2受容体遺伝子(IGF2R)の発現される母性遺伝アレルの第一イントロンのCpGアイランドでも観察されている。メチルトランスフェラーゼ欠損ノックアウトマウスは、IGF2Rのメチル化喪失およびこの遺伝子のエピジェネティックなサイレンシングを示す。
【0030】
ヒト腫瘍におけるDNAメチル化の広範囲に及ぶ改変が数年前に発見され(Feinberg, A P. (1993) Nature Genet. 4: 110-113)、これは依然として、ヒト癌で最も一般的に見られる改変である。これらの改変は、良性および悪性新生物の両方に偏在性である。メチル化減少および増加の両方が、腫瘍の特定の部位で見られており、DNAメチル化量は全体に減少している(Feinberg et al. (1988) Cancer Res.48:1159-1161; Feinberg, A. P. (1988) Prog. Clin. Biol. Res. 79:309-317)。
【0031】
ヒトでは、マウスにおけるように、H19遺伝子およびそのプロモーターにおけるCpGアイランドの父性アレルは通常メチル化されており、母性アレルはメチル化されていない。IGF2のLOIを伴う腫瘍はH19発現減少を示すため、H19のメチル化パターンがLOIを伴う腫瘍で調べられている。IGF2のLOIを示すすべての場合で、H19プロモーターは、母性遺伝アレル上の通常はメチル化されていない部位で、90%〜100%のメチル化を示す。このように、母性アレルは、メチル化の父性パターンを獲得しており、これは、これらの腫瘍において同じ母由来染色体上で観察されるIGF2の発現と一致する。対照的に、IGF2のLOIを伴わない腫瘍は、H19のメチル化の変化をまったく示さず、これらの変化が、異常なインプリンティングに関連し、かつそれ自体が悪性ではないことを示す。H19の母性アレルのメチル化における同じ改変が、IGF2のLOIを有するBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)の患者で見られる。BWSは、出生前の過剰増殖および癌の障害であり、常染色体優性形質として伝達されるか、または散発的に生じる。
【0032】
LOIが作用しうる別の機構は、第15番染色体のBWS/AS領域に関して最近記載されたのと類似の、第11番染色体上のインプリンティング制御センターの破壊を伴う(Dittrich et al. (1996) Nat. Genet. 14: 163-170)。したがって、この領域に渡る遺伝子の破壊は、少なくとも生殖系列を通じて遺伝した場合は、異常なインプリンティング、ならびにBWSおよび/または癌を引き起こし得る。
【0033】
LOIの別の機構は、ゲノム・インプリンティングの正常なパターンを確立し、かつこうしたパターンが一旦生殖系列で確立されたならば、これを維持することが可能な、トランス作用因子の喪失を伴う。導入遺伝子のインプリンティングは宿主株依存性であるため、インプリンティングのトランス作用修飾因子が存在する可能性が高い。したがって、こうした遺伝子は、ヒトおよび他の種において、腫瘍サプレッサー遺伝子として作用し得る。
【0034】
癌において破壊され得る、インプリンティングのさらに別の機構は、哺乳動物においてはX染色体不活化に、かつ酵母においてはテロメア・サイレンシングに関連する、ヒストン脱アセチル化を伴う。ヒストン・アセチラーゼおよびヒストン脱アセチラーゼの両方の遺伝子が、最近単離されている(Brownell et al. (1996) Cell 84: 843-851 Taunton et al. (1996) Science 272: 408-411)。さらに、酵母におけるテロメア・サイレンシングはまた、特定の遺伝子、例えばSIR1〜SIR4の作用も伴い、これらの遺伝子のいくつかは、哺乳動物において相同体を有する(Brachmann et al. (1995) Genes Develop. 9: 2888-2902)。同様に、哺乳動物における遺伝子サイレンシングのいくつかの例は、位置に依存するエピジェネティックなサイレンシングの1つの型である、ショウジョウバエ(Drosophila)における位置効果バリエーションと似ている可能性もある(Walters et al. (1996) Genes Develop. 10:185-195)。最後に、母性染色体および父性染色体上のインプリンティングされた遺伝子座は、DNA複製の間に、相互作用する可能性もある。インプリンティングされた遺伝子を有する染色体領域は、複製およびタイミングの非同調性を示す(Kitsberg et al. (1993) Nature 364: 459-463)。さらに、いくつかのインプリンティングされた遺伝子の2つの親相同体は、S期後期にランダムでない近接性を示し(LaSalle. J. M. and Lalande, M. (1996) Science 272: 725-728)、ショウジョウバエにおけるエピジェネティックなサイレンシングに関して観察されたような染色体クロストークの1つの型を示す(Tartoff, K. D. and Henikoff, S.(1991) Cell 65: 201-203)。ヒトIGF2およびH19遺伝子は、通常インプリンティングされており、すなわち、特定の親アレルの優先的発現を示す。いくつかの腫瘍は、癌において、インプリンティングの喪失(LOI)と共に、1つまたは複数の以下:IGF2の両アレル発現、H19のエピジェネティックなサイレンシング;および/または父性H19アレルの異常発現、を経験し、かつこの観察は、非常に多様な小児期および成人悪性腫瘍に拡大されてきている。LOIが通常はメチル化されていない母性H19アレルの異常なメチル化と関連するため、正常なインプリンティングは、部分的に、H19のアレル特異的組織独立性メチル化によって、維持されている可能性もある。
【0035】
リスクがある被験体を同定する方法
1つの態様において、被験体が細胞増殖または新生物性障害を発症する素因を決定する方法を提供する。一般的に、被験体はヒトである。この方法には、被験体から得られる試料において未分化細胞対分化細胞の比を決定する工程、および被験体プロフィールを生成する工程が含まれる。参照比または参照プロフィールと比較した未分化細胞対分化細胞の比が、細胞増殖または新生物性障害を発症する素因の指標となる。任意で、この方法には、被験体由来の正常生物学的試料において、少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常なインプリンティングを示す細胞、またはIGF2遺伝子発現のレベル増加を示す細胞を同定する工程が含まれる。
【0036】
本明細書において、「ターゲット遺伝子」には、発現が、ゲノム・インプリンティングによって直接または間接的に改変される、任意のゲノム配列が含まれる。ゲノム・インプリンティングの変化には、インプリンティングの喪失が含まれうる。例えば、H19遺伝子またはIGF2遺伝子の発現は、そのインプリンティング状態によって、直接影響を受ける。しかし、Igf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、またはMAPK遺伝子などのIGF2関連遺伝子の発現は、H19および/またはIGF2のインプリンティング状態によって、間接的に影響を受ける。したがって、IGF2関連遺伝子の発現は、例えばIGF2遺伝子のインプリンティングの喪失によって、刺激され得る。一般的に、本発明の方法には、インプリンティングの喪失と直接または間接的に関連するターゲット遺伝子の発現の変化、またはその多型性に関して、生物学的試料を分析する工程が含まれる。インプリンティングの喪失は、例えば、遺伝子のメチル化状態の変化から生じ得る。メチル化状態の変化は、例えばH19遺伝子のDMRおよび/またはIGF2遺伝子のDMRの低メチル化であってもよい。続いて、H19遺伝子およびIGF2遺伝子の少なくとも1つの正常なインプリンティングを示す細胞が含まれる、被験体から得られる組織から、参照比を生成することも可能である。
【0037】
本明細書に提供する方法には、ターゲット遺伝子のメチル化の変化、またはその多型性に関して、生物学的試料を分析する工程が含まれることも可能である。メチル化の変化は、例えばH19遺伝子のDMRおよびIGF2遺伝子のDMRの低メチル化であってもよい。しかし、DNAメチル化、限定されるわけではないが、アセチル化、メチル化、リン酸化などのヒストン修飾のいかなる変化、またはアレル特異的遺伝子発現のいかなる変化も、ターゲット遺伝子の過剰発現または過少発現を生じる可能性があり、それによって、組織中の細胞または細胞群の分化状態に影響を及ぼす可能性もあることが理解される。さらに、前駆細胞分画の指標である遺伝子、例えばmusashiおよびtwistの発現のいかなる変化もまた、本明細書に提供する方法に含まれる。
【0038】
本明細書に提供する方法には、試料由来のゲノムDNAを分析する工程、および例えばIGF2またはH19遺伝子のインプリンティングの喪失(LOI)改変から直接または間接的に生じる、ターゲット遺伝子の発現改変を検出する工程が含まれることも可能である。LOIがターゲット遺伝子の発現に直接または間接的に影響を及ぼし得ることが理解される。例えば、IGF2関連遺伝子、例えばIgf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、またはMAPKの発現は、IGF2のインプリンティング状態によって影響を受ける。DNAメチル化を検出する例示的な方法には、サザン・ブロッティング、重亜硫酸配列決定、メチル化特異的PCR(MSP)、リアルタイムMSP、インサイチューMSP、免疫蛍光染色、およびHPLCが含まれる。ヒストン修飾を検出する例示的な方法には、ChIP分析が含まれる。mRNAを検出するための例示的な方法には、リアルタイムRT-PCR、ノーザン・ブロッティングおよびインサイチュー・ハイブリダイゼーションが含まれる。タンパク質を検出するための例示的な方法には、免疫組織化学染色、免疫蛍光染色およびウェスタン・ブロッティングが含まれる。
【0039】
本明細書に提供する方法には、例えばH19遺伝子および/またはIGF2遺伝子などのターゲット遺伝子の正常な発現を示す細胞が含まれる、被験体から得られる組織から、比または「被験体プロフィール」を生成する工程がさらに含まれてもよい。「被験体プロフィール」は、本明細書において、単純に、試験被験体由来の所与の試料における未分化細胞および分化細胞の比を同定することを意味する。比は、例えば腸組織から採取した試料から生成可能である。被験体プロフィールを、分化細胞から未分化細胞を識別する特定の同定可能なバイオマーカーのアレイ「サイン」または「パターン」として表してもよい。アレイ・サインは、容易な視覚的同定またはコンピュータが補助する同定のため、色分けされていてもよい。サインはまた、アレイによって同定されるバイオマーカーに起因する値に対応する数(単数または複数)として記載することも可能である。「アレイ分析」は、本明細書において、因子分析または主成分分析(PCA)などの統計的計算を用いた、アレイからの情報を推定するプロセスである。サインとして表されるのに加えて、参照比を「閾」値として、または一連の閾値として表すことも可能である。例えば、特定の試料において、特定のバイオマーカーまたは一連のバイオマーカーのレベルに関して、単一の閾値を決定してもよい。閾値は、単一の値でも、また各値が、分化細胞または未分化細胞の存在の指標となる特定のバイオマーカーまたは特定の一連のバイオマーカーのレベルに相当する、複数の値でもよい。
【0040】
被験体プロフィールを構成する比を、「参照比」または「参照プロフィール」に比較してもよい。一般的に、参照プロフィールは、一連の異なる被験体および組織から生成される。参照プロフィールは、試験されている被験体および/または組織種に関して、被験体プロフィールにおいて提供される比が、正常であるかまた異常であるかを決定するためのベースラインとして用いられる。「被験体プロフィール」および「参照プロフィール」を以下に論じる。
【0041】
参照比を生成するのに用いる生物学的試料は、ターゲット遺伝子の異常なインプリンティングを同定するのに用いる試料と同一でも、異なってもよい。本明細書において、生物学的試料には、任意の組織試料、例えば腸組織、血液、または血清が含まれる。本発明の方法が有用であるために、試料を得る被験体は、細胞増殖または新生物性障害、例えば結腸癌または膵臓癌を有する必要はないことが理解される。実際、本発明は、細胞増殖または新生物性障害を発症する素因がある被験体を同定するため、正常(すなわち非新生物性)組織の使用を意図する。生物学的試料には、例えば直腸Pap試験から得られる上皮細胞が含まれてもよい。生物学的試料には、腸組織、例えば結腸または膵臓から得られる細胞が含まれてもよい。より具体的には、腸組織の管腔から細胞を得てもよい。こうした細胞は、例えば、腸組織の管腔の腺窩から得られる上皮細胞であってもよい。細胞増殖または新生物性障害は、例えば腺腫などの固形腫瘍と関連してもよい。細胞増殖または新生物性障害を発症する素因に関するスクリーニングの結果を、被験体の家族遺伝歴と相関させることも可能である。続いて、被験体が、胸部X線、結腸直腸検査、内視鏡検査、MRI、CATスキャン、ガリウム・スキャン、およびバリウム画像化を含む、さらなる診断検査を経てもよい。
【0042】
他の態様において、顕微鏡観察および免疫組織化学同定などの、より慣用的な手段によって、細胞分化を決定してもよい。例えば、分化細胞集団または未分化細胞集団と特異的に関連するバイオマーカーの免疫組織化学同定を用いて、試料を画像化してもよい。さらに、形態学的測定値を用いて未分化細胞から分化細胞を識別するために、標準的顕微鏡観察を用いてもよい。さらに、増殖抗原、および例えば結腸腺窩内のこの抗原の分布の免疫組織化学的同定を用いて、未分化細胞から分化細胞を識別してもよい。最後に、分化細胞集団または未分化細胞集団と関連するバイオマーカーに特異的な分子の免疫蛍光同定を用いて、試料を画像化することも可能である。
【0043】
さらに、被験体から得られる「正常」(すなわち非癌性)組織を、癌などの細胞増殖または新生物性障害を発症する素因の指標となる他の特性に関して、検査することも可能である。こうした特性には、特定のニッチ(および特定のサイズのニッチ)または特定の組織の区画と関連する遺伝子の発現またはタンパク質の発現の変化が含まれ得る。やはり含まれるのは、正常組織からの、ニッチまたは区画内の細胞分布の変化である。やはり含まれるのは、こうした組織中の前駆細胞の分布および数の変化である。やはり含まれるのは、組織中の幹細胞および/または癌前駆細胞の数の増加である。さらに、癌様の特徴を示す細胞数の増加を、癌を発症するリスクの増加の指標として用いることも可能である。同様に、別の点では正常な細胞の成熟の改変は、細胞増殖または新生物性障害の指標となり得る。
【0044】
「バイオマーカー」は、未分化細胞から分化細胞を識別する分子であることも可能である。こうしたバイオマーカーには、限定されるわけではないが、未分化細胞を同定するための、Shh (ソニック・ヘッジホッグ)、Tcf4、Lef1、Twist、EphB2、EphB3、Hes1、Notch1、Hoxa9、Dkk1、Tle6、Tcf3、Bmi1、Kit、Musashi1(Msi1)、Cdx 1、Hes5、Oct4、Ki-67、β-カテニン、Noggin、BMP4、PTEN (リン酸化PTEN)、およびAkt (リン酸化Akt)が含まれる。分化細胞を同定するのに有用なバイオマーカーには、限定されるわけではないが、Villin、アミノペプチダーゼN (anpep)、スクラーゼ・イソマルターゼ (SI)、Ephrin-B1 (EfnB1)、Cdx2、Crip、Apoa1、Aldh1b1、Calb3、Dgat1、Dgat2、Clu、Hephaestin、Gas1、Ihh (インディアン・ヘッジホッグ)、内因子B12受容体、IFABP、およびKLF4が含まれる。バイオマーカーはさらに、オリゴ糖、多糖、オリゴペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドを含むことも可能である。オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドには、例えばアプタマーの形の例えばDNAおよびRNAが含まれる。バイオマーカーにはまた、有機化合物、有機金属化合物、有機化合物および有機金属化合物の塩、糖類、アミノ酸、およびヌクレオチド、脂質、炭水化物、薬物、ステロイド、レクチン、ビタミン、ミネラル、代謝産物、補因子、および補酵素が含まれてもよい。
【0045】
未分化細胞および分化細胞には、多様な抗原が関連する。用語「関連する」は、本明細書において、細胞が、各抗原(単数または複数)を発現するかもしくは発現可能であるか、または提示するかもしくは提示するよう誘導されることが可能であるか、または含むことを意味する。未分化細胞または分化細胞と関連する特定の抗原各々は、バイオマーカーとして作用可能である。したがって、関連する特定の抗原(単数または複数)に基づいて、または関連する抗原の特定の組み合わせに基づいて、異なる種類の細胞を互いに識別することも可能である。
【0046】
本明細書に提供する方法は、部分的に、分化を経た細胞から、より分化していない細胞を識別するための多様な手段を利用してもよい。細胞分化は、細胞の構造および機能が次第に拘束されて、より特殊化された細胞を生じるプロセスである。したがって、細胞は、より拘束されてくるにつれて、より特殊化されてくる。哺乳動物細胞種の大部分において、細胞分化は、一方向プロセスであり、最終的に最終分化細胞を生じる。しかし、いくつかの細胞種は、分裂することも置換されることもなく、一生を通じて存続するが、多くの細胞種は、生物の一生の間中、分裂を続け、かつ再生を経る。これは、単純な分裂(例えば肝細胞)による可能性もあるし、または造血細胞および上皮細胞などの細胞の場合のように、比較的未分化な幹細胞が分裂して、その後、娘細胞の1つが、それに続く不可逆的分化のプログラムに拘束されることによる可能性もある。しかし、これらのプロセスはすべて、共通の1つの特徴を有する:細胞は、分化状態を維持するか、またはより分化するようになるかの、いずれかである。細胞は、未分化になることもないし、また、より未分化になることさえない。
【0047】
本明細書に提供する方法はまた、「脱分化」を経た可能性もある細胞の同定も含むことも可能である。脱分化は、細胞の構造および機能が次第に変化して、より特殊化されていない細胞を生じるプロセスである。いくつかの細胞は天然に、インビボで、組織損傷に反応して、限定された逆分化(脱分化)を経る。例えば、肝細胞は、肝臓再生中に、胎児酵素パターンに似た酵素発現パターンに復帰することが観察されている(Curtin and Snell, 1983, Br. J. Cancer, Vol 48; 495-505)。ゲノム上にコードされる全情報を保持しつつ、逆分化を経る細胞は、細胞質構造の自己欠失のプロセスおよび遺伝子発現のより若年型のパターンへの遷移によって、形態学的および機能的複雑性を失う。この結果、元来は別個であった細胞表現型が次第に均一化し、かつ成体細胞において機能可能な制御シグナルに対する応答性が減少する。
【0048】
別の態様において、被験体に、細胞増殖または新生物性障害を発症する素因があるかどうかを決定する方法には、例えばIGF2遺伝子発現のレベル増加を示す細胞を含む被験体を同定する工程が含まれてもよい。これに続いて、またはこれと平行して、被験体由来の同一または異なる試料における未分化細胞対分化細胞の比を決定してもよい。例えばIGF2遺伝子発現のレベル増加の決定には、IGF2 mRNAおよび/またはIGF2ポリペプチドのレベル増加の検出が含まれることも可能である。試料においてmRNAおよび/またはポリペプチドを検出する方法が、分子生物学の当業者に周知である。ターゲット遺伝子発現のレベル増加には、ターゲット遺伝子mRNAのレベル増加、および/またはターゲット遺伝子、例えばH19、IGF2、Igf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、もしくはMAPK遺伝子にコードされるポリペプチドのレベル増加が含まれることが理解される。
【0049】
別の態様において、被験体に、細胞増殖または新生物性障害を発症する素因があるかどうかを決定する方法を提供する。この方法には、被験体由来の正常生物学的試料を、分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーと特異的に相互作用する固定化生体分子のアレイと接触させる工程が含まれることも可能である。この方法にはさらに、生体分子の修飾を検出することによって、被験体のプロフィールを得る工程が含まれることも可能である。生体分子の修飾は、試料における分化細胞対未分化細胞の比の指標となり得る。「生体分子」には、本明細書において、タンパク質、例えばモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が含まれる。生体分子にはまた、抗原または受容体も含まれる。修飾には、本明細書において、Shh、Tcf4、Lef1、Twist、EphB2、EphB3、Hes1、Notch1、Hoxa9、Dkk1、Tle6、Tcf3、Bmi1、Kit、Musashi1(Msi1)、Cdx 1、Hes5、Oct4、Ki-67、□-カテニン、Noggin、BMP4、PTEN (リン酸化PTEN)、Akt (リン酸化Akt)、Villin、アミノペプチダーゼN (anpep)、スクラーゼ・イソマルターゼ (SI)、Ephrin-B1 (EfnB1)、Cdx2、Crip、Apoa1、Aldh1b1、Calb3、Dgat1、Dgat2、Clu、Hephaestin、Gas1、Ihh (インディアン・ヘッジホッグ)、内因子B12受容体、IFABP、またはKLF4の、生体分子への結合が含まれることも可能である。
【0050】
続いて、被験体プロフィールを、1つまたは複数の値を含む参照プロフィールと比較してもよい。各値は、細胞増殖または新生物性障害を発症する素因がない、1つまたは複数の参照被験体から得られる参照試料中のバイオマーカーレベルに相当し得る。この方法にはさらに、被験体から得られる、同一または異なる生物学的試料において、少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常な発現を同定する工程が含まれてもよい。例示的なターゲット遺伝子には、H19、IGF2、Igf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、またはMAPK遺伝子が含まれる。ターゲット遺伝子の異常な発現は、インプリンティングの喪失に、直接または間接的に関連することも可能である。
【0051】
LOIを引き起こすかまたはLOIの結果である、任意の条件、状態、または現象を調べることによって、LOIの存在または非存在を検出することも可能である。こうした条件、状態、および現象には、限定されるわけではないが、1) LOIの原因、例えばDNAメチル化の細胞性機構の状態または条件、第11番染色体上のインプリンティング制御領域の状態、インプリンティングのトランス作用修飾因子の存在、ヒストン脱アセチル化の度合いまたは存在;2) LOIが評価中である複数または単数の遺伝子と関連するゲノムDNAの状態、例えばDNAメチル化の度合い;および3) LOIの効果、例えば:a) LOIが評価中である複数または単数の遺伝子の2つのアレルの相対的転写;b) LOIが評価中である複数または単数の遺伝子の2つのアレルの差次発現と関連する転写後効果;c) LOIが評価中である複数または単数の遺伝子の2つのアレルの相対的翻訳;d) LOIが評価中である複数または単数の遺伝子の2つのアレルの差次発現と関連する翻訳後効果;e) LOIの他の下流効果、例えばRNAレベル、スプライシング・レベル、またはタンパク質レベルもしくは翻訳後レベルで測定される遺伝子発現改変(すなわち、インプリンティングされた遺伝子の多様な巨大分子への発現の1つまたは複数のこれらの特性を測定する);例えば細胞周期、シグナル伝達、イオンチャネル、膜電位、細胞分裂、または他のもの(すなわち、正常にまたは正常でなくインプリンティングされている、特定のインプリンティングされた遺伝子の生物学的結果(例えば心臓のQT間隔)を測定する)に関与し得る機能の変化が含まれる。ヒストン・アセチル化、ヒストン脱アセチル化、またはRNAスプライシングなどの関連プロセスには、別の群の巨大分子変化がある可能性もある。
【0052】
これらの条件、状態、または現象の任意の1つに依存することによってLOIの存在または非存在を検出する場合、いくつかの異なる特定の分析技術を用いることが可能である。特に、当技術分野に公知の、インプリンティングのパターンを決定するための任意の方法を用いることが可能である。方法は、分析しようとする遺伝子に応じて、多様であり得ることが認識される。
【0053】
LOIを引き起こすことが可能であり、かつLOIの存在または非存在を評価するために調べることが可能である、条件、状態、および現象には:DNAメチル化の細胞性機構の状態または条件、第11番染色体上のインプリンティング制御領域の状態、インプリンティングのトランス作用修飾因子の存在、ヒストン脱アセチル化またはヒストン脱アセチル化の度合いまたは存在、インプリンティング制御センター、トランス作用調節因子、polycomb様タンパク質、trithorax様タンパク質、ショウジョウバエにおけるSu(var)タンパク質、酵母におけるSIRタンパク質、酵母における接合型サイレンシング、哺乳動物におけるXIST様遺伝子などの、他の種においてクロマチンに影響を及ぼす他のタンパク質のヒト相同体によって引き起こされるクロマチンの変化が含まれる。
【0054】
LOIの存在または非存在が評価中である単数または複数の遺伝子と関連するDNAを調べることによって、LOIを検出することもまた可能である。用語「LOIの存在または非存在が評価中である単数または複数の遺伝子と関連するDNA」は、遺伝子、遺伝子近傍のDNA、または遺伝子からある程度離れたDNA(メガベース以上離れたもの、すなわちメチル化変化は、クロマチン上で長い距離に渡って作用するため、遠く離れていてもよい)を意味する。こうしたアプローチには、LOIの存在または非存在が評価中である単数または複数の遺伝子と関連するDNAにおけるメチル化の度合いを測定する工程が含まれる。DNA配列自体に対する変化に加えて、DNA関連タンパク質に対する修飾、例えばヒストン・アセチル化およびヒストン脱アセチル化;バンド・シフト、保護アッセイ、または他のアッセイによって検出される結合タンパク質に対する変化を調べることによって、LOIを検出することもまた可能である。
【0055】
LOIの存在または非存在が評価中である単数または複数の遺伝子と関連するDNAにおけるメチル化の度合いは、いくつかの分析技術によって測定可能である。例えば、“Current Protocols in Molecular Biology”(Asubel et al., Wiley Interscience, 1998)に記載されるような、慣用的DNA配列決定技術を用いて、LOIの存在または非存在が評価中である単数または複数の遺伝子と関連するDNAの配列を決定することも可能である。この場合、生物学的試料は、配列決定を可能にするのに十分なDNAを含有する任意のものであろう。
【0056】
さらに、LOIの存在または非存在が評価中である遺伝子と関連するゲノムDNAであって、異なる度合いのDNAメチル化を示すゲノムDNAを同定し、かつこれらのDNA間を識別するプローブによる、蛍光インサイチュー・ハイブリダイゼーション(FISH)によって、LOIの存在または非存在が評価中である単数または複数の遺伝子と関連するDNAにおけるメチル化の度合いを測定することも可能である。この場合、生物学的試料は、典型的には、短期培養を行うのに十分な全細胞または核を含有する任意のものであろう。通常、試料は、10〜10,000、好ましくは100〜10,000の体細胞全体を含有する組織試料であろう。
【0057】
典型的には、2つのアレルの差次転写に依存して、アレル特異的遺伝子発現をアッセイするための方法において、逆転写酵素でRNAを逆転写し、次いで、その部位が多型である(すなわち集団において、通常多様である)エクソン内の部位に渡るPCRプライマーを用いてPCRを行い、多型に関してヘテロ接合性である(すなわち情報を提供する)個体に対して、この分析を行う。次いで、数ある検出スキームのうち任意のものを用いて、一方または両方のアレルが発現されているかどうかを決定する。RNAを逆転写し、ネステッドPCRではなく単一ラウンドを可能にする新規プライマーを用いたPCRによってcDNAを増幅する工程による、IGF2およびH19のアレル特異的発現の評価を教示する、Rainier et al. (1993) Nature 362:747-749; p.57.sup.KIP2における転写された多型の同定を教示する、Matsuoka et al. (1996) Proc. Natl. Acad Sci USA 93:3026-3030; p.57.sup.KIP2のアレル特異的発現のRPAおよびRT-PCR分析による、mRNAレベルの決定を教示する、Thompson et al. (1996) Cancer Research 56:5723-5727;および2つの多型部位のRT-PCR SSCP分析を教示する、Lee et al. (1997) Nature Genet. 15: 181 185も参照されたい。こうした開示は、参照により本明細書に組み入れられる。この場合、生物学的試料は、増幅、およびそれに続く逆転写、その後のポリメラーゼ連鎖反応を可能にするのに十分なRNAを含有する任意のものであろう。典型的には、生物学的試料は、1〜10,000,000、好ましくは1000〜10,000,000、より好ましくは1,000,000〜10,000,000の体細胞を含有する組織試料であろう。
【0058】
2つのアレルの差次転写に依存することによって、アレル特異的RNA関連インサイチュー・ハイブリダイゼーション(ASISH)を利用して、LOIの存在または非存在を検出することもまた可能である。ASISHでは、2つのアレルから転写されたmRNAを同定し、かつこれらのmRNA間を識別するプローブによって、2つのアレルに関する転写されたmRNAの相対的存在量を評価する。典型的には、高感度でかつ容易に定量化可能な結果を生じる蛍光標識を、プローブにタグ付けする。ASISHは、Adam et al. (1996) “Allele-specific in situ hybridization (ASISH) analysis: a novel technique which resolves differential allelic usage of H19 within the same cell lineage during human placental development,” Development 122: 83-47に記載され、この文献は、参照により本明細書に組み入れられる。この場合、生物学的試料は、典型的には、組織学的切片化およびインサイチュー・ハイブリダイゼーションを実行するのに十分な全細胞または核を含有する任意のものであろう。通常、試料は、10〜100,000、好ましくは100〜1000の体細胞全体を含有する組織試料であろう。
【0059】
したがって、どのアレルが転写されたかに応じる選択的スプライシングのようなアレル特異的転写後効果(すなわち転写後かつ翻訳前の効果)の検査、およびRNAの二次構造の検出によって、LOIを検出することも可能である。
【0060】
LOIの存在または非存在が判定中である単数または複数の遺伝子の2つのアレルの相対的翻訳を調べることによって、LOIを検出することも可能である。この場合、2つのアレルの発現から生じる2つのポリペプチドの存在または相対的存在量を直接測定する。このアプローチは、生物学的試料におけるポリペプチドの存在を検出するかまたは定量化するための任意の公知の技術によって、達成可能である。例えば、各アレルに特異的な抗体を用いて、2つのアレルによって発現されたタンパク質(転写され、翻訳された多型)を定量化することによって、アレル特異的翻訳効果を調べることも可能である。こうした効果は、ウェスタン・ブロッティングなどの分析技術、またはELISAアッセイの使用によって、測定および/または検出可能である。この場合、生物学的試料は、LOIの存在または非存在が判定中である遺伝子(単数または複数)にコードされるポリペプチド(単数または複数)の十分な量を含有する任意のものであろう。
【0061】
グリコシル化またはリン酸化のような、一方のアレルに特異的な二次修飾などの、翻訳後効果を調べることによって、LOIを検出することもまた可能である。例えば、リン酸化またはグリコシル化によって一方のアレルが修飾され、もう一方が修飾されないことがあり得る。多型は、認識モチーフをコードするため、ポリペプチドまたはタンパク質の別の移動を検出するウェスタン・ブロット;修飾型に特異的な抗体の使用;ホスホリル基もしくはグリコシル基または他の修飾の放射能取り込み(すなわち、生存細胞における取り込み、その後、多様な位置のバンドを検出する)によって、相違を容易に識別可能である。
【0062】
他のアレル特異的下流効果に依存することによって、LOIを検出することもまた可能である。例えば、インプリンティングされた遺伝子の産物が位置する代謝経路に応じて;相違は、一方のアレルに特異的な産物、したがって機能または機能のバリエーションの、2X対1X(またはその間の何らかの数)であろう。例えば、IGF2に関しては、IGFI受容体での分裂促進性シグナル伝達の増加、IGF1受容体占有増加、IGF2異化受容体での活性増加、IGF2の用量によるアポトーシス減少;KvLQT1に関しては、タンパク質の量およびアイソフォームに応じたQT間隔の長さの変化、または電位の変化、またはRNAを抽出してゼノパス(Xenopus)卵母細胞に導入した際の活性の変化。
【0063】
遺伝子にLOIの傾向がある人々を同定する、関連ハロタイプ(halotype)、すなわち連鎖多型を検出することによって、LOIを検出することもまた可能である。したがって、多型、すなわち2つのアレル間の遺伝子相違に依存することによって、LOIを検出することも可能である。しかし、上記の技術の多くは、LOIの存在または非存在が判定中である単数または複数の遺伝子の2つのアレル中に多型がない場合であっても、LOIを検出するのに使用可能であることが認識されるであろう。例えば、アレル特異的DNAメチル化(多型独立性);ヒストン・アセチル化;DNAに対する他の修飾;またはインプリンティングされたアレルが「複製タイミングの非同調性」を示す、すなわち2つのアレルが異なる時点で複製する場合の、複製タイミングの改変に依存することによって、LOIを検出してもよい。2つのアレルが同時に複製する場合、FISHによってLOIを検出してもよい。インプリンティングされたアレルは、S期後期に対形成するため、FISHによって観察されるように、S期後期にこうした対形成が存在しないことによって、LOIを検出することも可能である。
【0064】
他方、LOIの存在または非存在が判定中である単数または複数の2つのアレルに多型がある場合、特定の技術がより好適に用いられる。例えば、多型に依存する場合には、RT-PCR後のSSCP(一本鎖高次構造多型)分析;制限酵素消化分析後の電気泳動もしくはサザン・ハイブリダイゼーション;または放射性同位体PCR;PCR;アレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション;手動の、もしくは自動化配列決定装置を用いた直接配列決定;変性勾配ゲル電気泳動(DGGE);および多くの他の分析技術を用いて、LOIを検出可能である。
【0065】
通常はインプリンティングを示すことが公知である任意の単数または複数の遺伝子に関して、LOIの存在または非存在を決定することも可能である。現在、通常インプリンティングされることが公知の約22の遺伝子がある(参照により本明細書に組み入れられる、Feinberg, The Genetic Basis of Human Cancer, B Vogelstein & K Kinzler, Eds., McGraw Hill, 1997を参照されたい)。こうした遺伝子の例には、限定されるわけではないが、IGF2、H19、p57KIP2、KvLQT1、TSSC3、TSSCS、およびASCL2が含まれる。しかし、通常インプリンティングを示す、さらなる遺伝子が将来発見されるであろうし、かつこうした遺伝子のLOIは、本方法のターゲットとなる可能性があり、したがって、こうした遺伝子が本発明に含まれると予期される。
【0066】
インプリンティングされる新規の遺伝子を同定する直接アプローチには、限定されるわけではないが、インプリンティングされる他の公知の遺伝子近傍で、インプリンティングされる遺伝子を同定することを目的としたポジショナル・クローニングの試み(Barlow et al. (1991) Nature 349: 84-87);正常胚に対して、単為発生胚における遺伝子発現を比較する技術(Kuroiwa et al. (1996) Nat. Genet. 12: 186-190)および制限ランドマーク・ゲノム・スキャン(Nagai et al. (1995) Biochem. Biophys. Res. Commun. 213:258-265)が含まれる。
【0067】
本明細書記載の方法は、被験体から得られる組織試料における、非癌性未分化細胞対非癌性分化細胞の比を決定することによって、被験体が細胞増殖または新生物性障害を発症する素因を同定することを含む。癌に罹るリスクを評価する本方法には、1つまたは複数のあらかじめ決定された閾値に対して上述の比を比較して、この比が所与の閾値よりも低いならば、被験体を、細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクが低い集団に割り当てるようにする工程が含まれることも可能であることが理解されなければならない。あるいは、非癌性未分化細胞対非癌性分化細胞の比に関して、明確な数値を生じないが、その代わり、比が閾値より低い場合には第一の種類のシグナルのみを、かつ/または比が閾値より高い場合には第二の種類のシグナルのみを生じるように、分析技術を設計してもよい。組織試料の免疫組織化学分析で遭遇する範囲の色などの、数値でないスペクトルにより比を示す試験によって、本方法を実行することもまた可能である。本方法には、任意で、組織中のLOIを検出する工程が含まれてもよい。
【0068】
細胞増殖性障害を発症するリスクを評価する本方法を、全体としての集団から選択した任意の被験体に対して、適切に行うことも可能である。しかし、特定の種類の癌に対する素因に関してスクリーニングする場合には、この方法を、一般的な集団の特定の選択されたグループに対して実行することが好ましい可能性もある。好ましくは、本方法を用いて、問題の特定の種類の癌に罹るリスクが増加していることが既知である、選択されたグループをスクリーニングする。
【0069】
本明細書記載の方法は、被験体から得られた組織試料において、非癌性未分化細胞対非癌性分化細胞の比を決定することによる、被験体が細胞増殖または新生物性障害を発症する素因の同定を含む。これらの方法には、任意で、例えばLOIを検出中の特定のターゲット遺伝子(単数または複数)と関連するゲノムDNAのメチル化の度合いを決定することによって、組織中のLOIを検出する工程が含まれる。
【0070】
ヒト癌における例示的なエピジェネティックな改変には、全体的なDNA低メチル化、遺伝子低メチル化、およびプロモーター過剰メチル化、ならびにインスリン様増殖因子II遺伝子(IGF2)のインプリンティングの喪失(LOI)が含まれる。LOIの1つの機構は、IGF2の通常はサイレントである母性アレルの活性化を可能にする、例えばH19遺伝子の上流の差次メチル化領域(DMR)の過剰メチル化である。LOIの別の機構には、結腸直腸癌における、H19 DMR、ならびにIGF2のエクソン3上流のDMRの低メチル化が含まれる。この低メチル化は、同一患者由来の結腸直腸癌および正常粘膜の両方で、また、DNAメチルトランスフェラーゼDNMT1およびDNMT3Bの体細胞ノックアウトを持つ細胞株で、同定されてきている。このように、過剰メチル化および低メチル化がLOIの機構である。例えば、IGF2遺伝子およびH19遺伝子両方の低メチル化を、IGF2遺伝子のインプリンティングの喪失と相関させることも可能であり、IGF2のLOIを、癌、例えば結腸直腸癌を発症するリスクの存在および増加と相関させることも可能である。
【0071】
本発明の方法には、任意で、IGF2遺伝子またはH19遺伝子の低メチル化を分析することによって例えばIGF2遺伝子のLOIを分析して、被験体において癌が発症するリスクの増加を同定する工程が含まれることも可能である。この情報を、同じ被験体から得られる細胞分化/未分化のデータと相関させることも可能である。この方法には、H19遺伝子および/またはIGF2遺伝子の差次メチル化領域(DMR)の低メチル化、またはH19 DMRおよび/もしくはIGF2 DMRの多型および/もしくは断片に関して、被験体由来の生物学的試料を分析する工程が含まれてもよい。H19 DMR、またはその断片には、CTCF結合部位、例えばCTCF結合部位1またはCTCF結合部位6が含まれてもよい。
【0072】
特定の局面において、被験体は、見かけ上、正常な被験体である。H19 DMRに対応するDNA領域において、低メチル化を分析することも可能である。IGF2 DMR配列をGenBankヌクレオチド631〜859(アクセッション番号Y13633)に対応させてもよい。1つの例示的なIGF2 DMRは、IGF2のエクソン3に比較して、-566bp〜-311bpの位に対応する(すなわち、GenBankアクセッション番号Y13633のヌクレオチド661〜916)。H19の別のDMRは、全体として参照により本明細書に組み入れられる、Genbankアクセッション番号AF087017のヌクレオチド2057〜8070に対応し;これは、変異体型中、AF125183のヌクレオチド3829〜9842に対応する。特定の局面において、この方法は、H19 DMRの領域内の位置の低メチル化に関して生物学的試料を分析する工程を含み、ネステッド・プライマー対である配列番号:21および22、その後、配列番号:23および24を用いて、この位置を分析する。さらに、特定の局面において、IGF2 DMRに対応するDNA領域において、低メチル化を分析する。特定の局面において、この方法は、IGF2 DMRの領域内の位置の低メチル化に関して生物学的試料を分析する工程を含み、ネステッド・プライマー対である配列番号:1および2、その後、配列番号:3および4を用いて、この位置を分析するか、またはプライマー対である配列番号:29および30、その後、配列番号:27および28を用いて、この領域を分析する。
【0073】
したがって、本発明の方法を実行するためのキットには、未分化細胞から分化細胞を識別するための装置および試薬が含まれるのに加えて、DMRの重亜硫酸前処理を伴い、または伴わずに、IGF2またはH19のDMRに結合可能な、複数のオリゴヌクレオチド・プローブ、プライマー、もしくはプライマー対、またはその組み合わせがさらに含まれてもよい。このキットには、重亜硫酸処理後にのみDMRのすべてまたは一部にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、オリゴヌクレオチド・プライマー対が含まれてもよい。このキットにはまた、キット構成要素を用いて、癌を発症するリスクの増加を同定することに関する使用説明書が含まれてもよい。特定の態様において、使用説明書は、一般的な集団の被験体に向けられる。キットには、例えば、プライマー対である配列番号:21および配列番号:22、ならびにプライマー対である配列番号:23および配列番号:24に対応するプライマー対の一方または両方が含まれる。別の局面において、キットには、例えば、プライマー対である配列番号:25および配列番号:26、ならびにプライマー対である配列番号:27および配列番号:28に対応するプライマー対の一方または両方が含まれる。
【0074】
DMRの低メチル化は、DMRのメチル化の測定可能な減少が存在する場合に存在する。メチル化状態を決定するための方法を本明細書に提供する。例えば、H19 DMR内の25を超えるメチル化部位のすべてのうち、10未満、5未満、または3未満の部位がメチル化されている場合、H19 DMRが低メチル化されていると決定可能である。あるいは、本明細書に提供する実施例に例示するように、分析したメチル化部位の50%未満または75%未満がメチル化されていない場合、H19 DMRの低メチル化を同定可能である。DMR内のすべてのメチル化部位より少ない部位を分析することによって、これらのDMRに関して、メチル化状態を分析することも可能である。特定の局面において、メチル化部位は、ネステッド・プライマー対である配列番号:1および配列番号:2、その後、配列番号:3および配列番号:4、または配列番号:25および配列番号:26、その後、配列番号:27および配列番号:28によって増幅される断片内に位置するIGF2の部位である。H19に関しては、特定の局面において、本発明の断片のメチル化部位は、ネステッド・プライマー対である配列番号:21および配列番号:22、その後、配列番号:23および配列番号:24内で見られるものである。
【0075】
H19 DMRまたはIGF2 DMRの断片は、配列番号:1〜4および5〜32に対応するプライマーによって増幅される、および/またはこうしたプライマーが隣接する、H19 DMRまたはIGF2 DMRの領域であってもよい。例えば、H19 DMRの断片は、配列番号:21および22に列挙されるプライマー対、もしくは配列番号:23および24に列挙されるプライマー対によって、または配列番号:21および22、その後、配列番号:23および24のネスティングによって、増幅されるH19 DMRの領域であってもよい。別の例として、IGF2 DMRの断片は、配列番号:25および26に列挙されるプライマー対、もしくは配列番号:27および28に列挙されるプライマー対によって、または配列番号:25および26、その後、配列番号:27および28のネスティングによって、増幅されるIGF2 DMRの領域であってもよい。別の例として、IGF2 DMRの断片は、配列番号:1および2に列挙されるプライマー対、もしくは配列番号:3および4に列挙されるプライマー対によって、または配列番号:1および2、その後、配列番号:3および4のネスティングによって、増幅されるIGF2 DMRの領域であってもよい。例示的なプライマーの配列を以下に列挙する:

【0076】
本発明の態様は、試料における未分化細胞対分化細胞の比の変化の間の関連の発見に基づく。この変化を、任意で、IGF2遺伝子のインプリンティングの喪失(LOI)および結腸直腸癌(CRC)の家族歴と相関させることも可能である。したがって、本発明は、被験体において、癌を発症するリスクの増加を同定するための方法に関する。この方法には、試料における未分化細胞対分化細胞の比の変化に関して、被験体由来の生物学的試料を分析する工程が含まれる。こうした変化は、癌を発症するリスク増加の指標となり得る。本発明の特定の態様には、IGF2遺伝子またはH19遺伝子のメチル化改変に関して、ゲノムDNAを分析する工程がさらに含まれてもよい。この方法には、例えば、IGF2遺伝子またはH19遺伝子の低メチル化に関して、試料由来のゲノムDNAを分析する工程が含まれる。
【0077】
本発明記載の方法を、癌などの見かけ上のまたは疑わしい新生物がない被験体に対して、ルーチンの臨床ケア中に、例えば定期的総合検査の一部として、行うことも可能である。したがって、本発明は、特定の態様において、一般的な集団のためのスクリーニング法を提供する。本発明の方法を、現在の癌スクリーニングアッセイよりも若い年齢で行うことも可能であるし、例えばこの場合、この方法を、65、55、50、40、35、30、25、または20歳未満の被験体に行うことも可能である。
【0078】
問題の被験体の生物学的試料が、参照比に比較した際、被験体由来の同一または異なる試料において、未分化細胞対分化細胞の比の変化を示すことが見出された場合には、被験体が癌を有する可能性が増加していると同定される。これらの態様において、癌が被験体に存在する可能性に関して探査するため、さらなる診断試験を行ってもよい。こうしたさらなる診断試験の例には、限定されるわけではないが、胸部X線、癌胎児性抗原(CEA)もしくは前立腺特異的抗原(PSA)レベル測定、結腸直腸検査、内視鏡検査、MRI、CATスキャン、またはガリウム・スキャン、およびバリウム画像化などの他の画像化が含まれる。さらに、本発明の方法は、被験体のルーチンのS状結腸鏡検査/結腸内視鏡検査と同時に行ってもよい。この方法は、結腸直腸試料を得るため、非常に細い管、またはデジタル検査の使用を伴ってもよい。特定の遺伝子のLOIに関して、さらなる診断試験を行ってもよい。
【0079】
本発明にしたがうと、癌に感受性である任意の組織から生物学的試料または組織試料を抜き取ってもよい。例えば、組織を、手術、生検、スワブ、糞便、または他の収集法によって、得ることも可能である。本発明の方法のための生物学的試料は、例えば、結腸直腸組織由来の試料であってもよく、または特定の態様において、血液試料、もしくは末梢血リンパ球(PBL)分画などの血液試料分画であってもよい。全血からPBLを単離するための方法は当技術分野において周知である。こうした方法の例を、本明細書の実施例セクションに提供する。さらに、当技術分野に公知の方法を用い、血液試料を用いて、かつ関心対象の組織、例えば結腸、乳房等に由来する少量の循環細胞を濃縮することが可能である。
【0080】
結腸癌に対する素因に関して被験体をスクリーニングする例示的な方法には、Papスメアのために細胞を得るのに用いる技術と類似の、スパチュラを用いた大腸関連領域の擦過が含まれることも可能である。次いで、擦過細胞をスライド上に塗布し、分化細胞から未分化細胞を識別するのに適した化合物で固定し、続いて顕微鏡下で分析することも可能である。このプロセスを完全に自動化することが可能な画像分析技術が開発されている。
【0081】
あるいは、細胞を溶液中に維持しつつ、細胞の未分化/分化状態と関連するバイオマーカーの検出を可能にするのに適した特性を有する液体ベースの輸送媒体中に、擦過検体から得られた細胞を導入してもよい。例えば、輸送媒体には、以下の任意の組み合わせが含まれてもよい:1)細胞形態を保持するのを補助し、かつバイオマーカーに関して分子法によって分析される能力を細胞が保持するのを可能にする、固定剤;2)細胞容積完全性を維持する、等張浸透圧媒体;3)粘膜を破壊する粘膜溶解剤;4)塩化アンモニウムまたは酸性酸(acidic acid)などの血液溶解剤;5)細胞保存剤;6)細胞を個々に分析可能にするような、例えば結腸細胞のグループを分散させる、細胞性イオン剤;7)ヘパリン・ナトリウムなどの抗凝血剤;および/または8)細胞検出を可能にする染色剤。
【0082】
一旦検体を調製し、かつ分化細胞から未分化細胞を識別するのを容易にするバイオマーカー(単数または複数)を検出するのに適した化合物と接触させたならば、フローサイトメトリー技術を介して、検体を分析してもよい。フローサイトメトリーは、細胞が流体流を1つずつ通過するプロセスである。これを達成する正確な方法は多様であり得る。細胞を等張流体媒体中に懸濁し、小さい出口直径を持つノズル型のチャンバー内にこれを導入することによって、達成してもよい。未分化細胞対分化細胞の比を、例えば上述のような閾値に対して比較してもよい。分化細胞から未分化細胞を識別するのに使用可能なバイオマーカーを、本開示の別の箇所で論じる。この方法を、任意で、被験体から得られる組織におけるLOIの検出とカップリングしてもよい。
【0083】
一般的な集団に対して本発明を実行して、疾患の存在またはリスクを評価してもよいことが理解される。本発明の別の態様において、特定の種類の疾患、例えば結腸癌を検出するため、ターゲット患者を検査してもよい。さらに、本発明にしたがって、例えば弱い家族歴など、既に何らかのリスク増加があると考えられる患者の亜群を試験してもよい。
【0084】
一般的に、本発明の例示的なキットは、細胞の分化状態と関連するバイオマーカー(単数または複数)を検出するのに適した化合物を含有するであろう。バイオマーカーには、限定されるわけではないが、Shh (ソニック・ヘッジホッグ)、Tcf4、Lef1、Twist、EphB2、EphB3、Hes1、Notch1、Hoxa9、Dkk1、Tle6、Tcf3、Bmi1、Kit、Musashi1(Msi1)、Cdx 1、Hes5、Oct4、Ki-67、β-カテニン、Noggin、BMP4、PTEN (リン酸化PTEN)、Akt (リン酸化Akt)、Villin、アミノペプチダーゼN (anpep)、スクラーゼ・イソマルターゼ (SI)、Ephrin-B1 (EfnB1)、Cdx2、Crip、Apoa1、Aldh1b1、Calb3、Dgat1、Dgat2、Clu、Hephaestin、Gas1、Ihh (インディアン・ヘッジホッグ)、内因子B12受容体、IFABP、またはKLF4が含まれることも可能である。以下に論じるように、プロテオミクスおよびマイクロアレイ技術を用いて、バイオマーカーを検出してもよい。細胞分化関連バイオマーカーを検出するのに必要な設備、使用説明書および試薬が、本発明のキットに含まれてもよい。
【0085】
上に論じるように、キットには、任意で、インプリンティングされた特定の遺伝子または遺伝子群を同定することが可能な、1つまたは複数のプローブまたはプライマーが含まれることも可能である。典型的には、こうしたプローブは、核酸またはモノクローナル抗体であろうし、かつ例えば蛍光標識に連結されているであろう。2つの多型アレルの転写の差次率に依存することによってLOIを検出する場合、キットは、問題の遺伝子の2つの多型アレルに対応するmRNAの増幅のための手段を含むことも可能である。こうした手段の例には、問題の遺伝子の2つの多型アレルに対応するmRNAのPCR増幅に適したDNAプライマーが含まれる。こうした手段の特定の例には、通常はインプリンティングされており、かつ多型が存在する、任意の遺伝子にアニーリングし、かつこの遺伝子を増幅するであろうDNAプライマーの任意の対が含まれる。このキットにはさらに、問題の遺伝子の2つの多型アレルに対応するmRNAの増幅産物を同定するための手段が含まれることも可能である。こうした手段には、限定されるわけではないが、問題の遺伝子の2つの多型アレルに対応するmRNA増幅産物の一方を特異的に切断する制限酵素が含まれる。こうした酵素の具体例には、限定されるわけではないが、IGF2遺伝子の場合、Apa Iが含まれる。以下に記載するように、本発明のキットには、任意で、プロテオミクスおよびマイクロアレイ技術を用いた試料の試験のための装置、試薬および/または使用説明書が含まれることも可能である。
【0086】
プロテオミクスおよびマイクロアレイ
プロテオミクスは、被験体において新生物性組織が同定されるより十分に前に、被験体において細胞増殖または新生物性障害が発症するリスクの増加を予測するための方法を提供する。プロテオミクスは、ヒト組織の小さな試料を用いて、広大なタンパク質アレイの微小な量の存在に関して試験することが可能な発展中の技術である。プロテオミクス・ツールを用いて、腸組織、尿または血清などの生物学的試料における特定のタンパク質のレベル増加または減少を確かめることも可能である。さらに、数学的アルゴリズムを用いて、複雑なプロテオームまたは「フィンガープリント」を得ることも可能である。先に言及されているように、こうしたアルゴリズムには、「因子分析」および「主成分分析(PCA)」が含まれる。プロテオームは、結腸癌または膵臓癌と関連するものなど、細胞増殖または新生物性障害を発症するリスク増加の指標となる、あるものは通常より濃度が増加し、かつ他のものは濃度が減少する、タンパク質群からなることも可能である。
【0087】
したがって、別の態様において、プロテオミクスおよび/またはマイクロアレイ技術を用いて、被験体に、細胞増殖または新生物性障害を発症する素因があるかどうかを決定する方法を提供する。この方法には、被験体から生物学的試料を得る工程、および分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーと特異的に相互作用する固定化生体分子のアレイと試料を接触させる工程が含まれることも可能である。この方法にはさらに、試料における分化細胞対未分化細胞の比の指標となる生体分子の修飾を検出することによって被験体プロフィールを得る工程、および参照プロフィールと被験体プロフィールを比較する工程が含まれることも可能である。一般的に、参照プロフィールには、1つまたは複数の値が含まれ、各値は、ターゲット遺伝子の正常なインプリンティングを示す1つまたは複数の参照被験体から得られる参照試料におけるバイオマーカーのレベルに相当する。任意で、この方法には、同一または異なる試料において、被験体由来の正常生物学的試料における少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常発現を示す細胞を同定する工程が含まれる。
【0088】
「被験体」プロフィールは、一般的に「試験」プロフィールと記載される。被験体プロフィールは、被験体が細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクを同定するために、被験体から採取された試料から生成可能である。したがって、「被験体」プロフィールは、こうした障害に対する素因に関して、試験中である被験体から生成される。被験体プロフィールには、例えば、試料における分化細胞および未分化細胞を同定することから得られた、先に論じる比が含まれることも可能である。一般的に、「参照」プロフィールは、「対照」プロフィールと記載可能である。正常な個体、または一連の個体、または細胞増殖もしくは新生物性障害を有する個体の特定の組織から採取された試料から、参照プロフィールを生成することが可能である。参照プロフィール、または複数の参照プロフィールを用いて、レベル、例えば腸管腔の腺窩から得られる上皮細胞と関連するものなど、特定の組織試料中のバイオマーカーの特定のレベルに関して、閾値を確立することも可能である。「参照」プロフィールには、正常被験体から生成されるプロフィール、または細胞増殖性障害を有する被験体から生成されるプロフィールが含まれることも可能である。先に言及したように、被験体プロフィールおよび参照プロフィールを、特定の同定可能なバイオマーカーのアレイ「サイン」または「パターン」として表してもよい。アレイ・サインは、容易な視覚的同定またはコンピュータが補助する同定のためなどのように、色分けされていてもよい。サインはまた、アレイによって同定されるバイオマーカーに起因する値に対応する数(単数または複数)として記載することも可能である。
【0089】
本発明は、生物学的試料における特定の単数または複数の分子の検出を促進する固定化生体分子を含むアレイ(すなわち「バイオチップ」または「マイクロアレイ」)を提供する。細胞増殖または新生物性障害の素因がある被験体を検出するためのカスタム・アレイ中に、上述のバイオマーカー(例えば未分化細胞から分化細胞を識別するバイオマーカー)を同定する生体分子が含まれてもよい。例えば、カスタム・アレイには、villinまたはtwistを同定する生体分子が含まれていてもよい。選択されたバイオマーカーを特異的に同定する生体分子を含むアレイを用いて、本明細書に提供されるデータを用いた情報のデータベースを開発することも可能である。本発明のカスタム・アレイにおいて、多変数予測モデル(例えばロジスティック回帰、判別分析、または回帰ツリーモデル)中で改善されたクロス確認(cross-validated)エラー率を導く、細胞分化に関する因子を同定するさらなる生体分子を含むことも可能である。
【0090】
用語「アレイ」は、本明細書において、一般的に、結合性アイランド、生体分子のあらかじめ決定された空間配置、または結合性アイランドもしくは生体分子の空間配置を指す。表面上に固定された生体分子を含む、本発明にしたがったアレイは、「生体分子アレイ」と称されることもある。表面への生体分子の結合を促進するため、活性化、適応、準備、または修飾された表面を含む、本発明にしたがったアレイはまた、「結合性アレイ」と称されることがある。さらに、用語「アレイ」は、本明細書において、表面が多コピーのアレイを所持する場合のように、表面上に配置された多数のアレイを指すよう、用いられることもあり得る。多数のアレイを所持するこうした表面は、「マルチ・アレイ(multiple array)」または「反復アレイ」と称されることもある。用語「アレイ」の使用は、本明細書において、生体分子アレイ、結合性アレイ、マルチ・アレイ、およびその任意の組み合わせを含むことも可能であり;適切な意味は、文脈から明らかであろう。アレイには、未分化細胞から分化細胞を識別する生体分子が含まれてもよい。生物学的試料には、尿などの排出液を含む、体の任意の組織由来の液体または固形試料が含まれることも可能である。
【0091】
本発明のアレイは、基板を含む。「基板」または「固体支持体」または他の文法的同等物は、本明細書において、生体分子の付着に適しており、かつ少なくとも1つの検出法に受け入れられる任意の材料を意味する。当業者に認識されるであろうように、可能な基板の数は非常に巨大である。可能な基板には、限定されるわけではないが、ガラスおよび修飾または官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、ならびにスチレンおよび他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン等を含む)、多糖、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、シリコンおよび修飾シリコンを含むシリカまたはシリカに基づく材料、カーボン、金属、無機ガラス、プラスチック、セラミック、ならびに多様な他のポリマーが含まれる。さらに、当技術分野に公知であるように、デキストラン、アクリルアミド、ゼラチンまたはアガロースなどのポリマーを含む、任意の数の材料で、基板をコーティングしてもよい。こうしたコーティングは、尿または血清由来の生物学的試料を用いたアレイの使用を容易にし得る。
【0092】
本発明の平面アレイは、一般的に、アレイ形式における生体分子のアドレス可能な位置(例えば「パッド」、「アドレス」または「微小位置(micro-location)」)を含有するであろう。アレイ・サイズは、アレイの組成および最終用途に応じるであろう。約2の異なる生体分子〜何千も含有するアレイを作成してもよい。一般的に、アレイは、アレイの最終用途に応じて、2〜100,000ほどもの、またはそれより多くを含むであろう。本発明のマイクロアレイは、一般的に、生物学的試料に存在する、例えばvillin、ephrin-B1、musashi1、もしくはtwist、またはそのアンタゴニストなどのバイオマーカーを同定するかまたは「捕捉する」、少なくとも1つの生体分子を含むであろう。いくつかの態様において、本発明の組成物は、アレイ形式でなくてもよく;すなわちいくつかの態様に関しては、単一の生体分子を含む組成物を作成してもよい。さらに、いくつかのアレイでは、異なるまたは同一の組成いずれかの、多数の基板を使用してもよい。したがって、例えば、巨大平面アレイは、複数のより小さい基板を含んでもよい。
【0093】
マルチパラメータ・イムノアッセイを行うため、平面アレイの代わりとして、フローサイトメトリーと組み合わせた、ビーズに基づくアッセイが開発されてきている。ビーズに基づくアッセイ系では、生体分子をアドレス可能な微小球体上に固定させてもよい。各個々のイムノアッセイに関して、各生体分子を、別個の種類の微小球体(すなわち「微小ビーズ」)にカップリングし、微小球体の表面上でイムノアッセイ反応を行う。別個の蛍光強度を持つ染色された微小球体を、適切な生体分子と共に、別個に装填する。異なる捕捉プローブを所持する異なるビーズセットを必要に応じてプールして、カスタム・ビーズ・アレイを生成することも可能である。次いで、単一の反応容器中で、試料と一緒にビーズ・アレイをインキュベーションして、イムノアッセイを行う。
【0094】
蛍光に基づくリポーター系を用いて、固定化捕捉生体分子とバイオマーカーの産物形成を検出することが可能である。バイオマーカーは、蛍光発生原(fluorogen)で直接標識されることも、第二の蛍光標識捕捉生体分子によって検出されることも可能である。捕捉されたバイオマーカーに由来するシグナル強度を、フローサイトメーター中で測定する。フローサイトメーターは、まず、個々の色コードによって各微小球体を同定する。次に、結合したターゲットに特異的な第二の色蛍光によって、各個々のビーズ上に捕捉されたバイオマーカーの量を測定する。これによって、同じ実験内で、単一試料からの、多数のターゲットの多重定量化が可能になる。感度、信頼性および正確さは、標準的マイクロタイターELISA法に匹敵する。ビーズに基づくイムノアッセイ系を用いて、生物学的試料から、サイトカインを同時に定量化可能である。ビーズに基づく系の利点は、捕捉生体分子を別個の微小球体に個々にカップリングできることである。
【0095】
したがって、微小ビーズ・アレイ技術を用い、複数の微小ビーズを用いて、特定の生体分子に結合した、細胞分化マーカーを選別することも可能であり、微小ビーズは各々、微小ビーズ表面上に、特定の抗タグ生体分子の約100,000の同一分子を所持することも可能である。一旦捕捉されたら、バイオマーカーは、流体として取り扱い可能であり、本明細書において「流体マイクロアレイ」と称される。
【0096】
本発明のアレイは、細胞分化マーカーなどのバイオマーカー分子、またはそのアンタゴニストを検出するための任意の手段を含む。例えば、マイクロアレイは、認識分子(例えば抗体)の高密度固定化アレイを提供するバイオチップであってもよく、この場合、バイオマーカー結合は、間接的に(例えば蛍光を介して)監視される。さらに、アレイは、質量分析(MS)による直接検出とカップリングした、生化学的または分子間相互作用による、タンパク質捕捉を伴う形式であってもよい。
【0097】
本明細書記載のバイオマーカーを検出するための新規方法で使用可能なアレイおよびマイクロアレイを、全体として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,329,209号;第6,365,418号;第6,406,921号;第6,475,808号;および第6,475,809号、ならびに米国特許出願第10/884269号に記載される方法にしたがって作成してもよい。これらの特許に記載される方法を用いて、本明細書記載のバイオマーカーのセットの特異的選択を検出するための新規アレイも作成可能である。
【0098】
多くの態様において、固定された生体分子、または固定されようとする生体分子は、タンパク質である。1つまたは複数の種類のタンパク質を表面上に固定してもよい。特定の態様において、タンパク質の変性を最小限にするか、タンパク質の活性改変を最小限にするか、またはタンパク質とタンパク質が固定される表面との間の相互作用を最小限にする、方法および材料を用いて、タンパク質を固定する。
【0099】
本発明にしたがって有用な表面は、任意の所望の形(型)およびサイズであってもよい。表面の非限定的な例には、チップ、連続表面、曲面、柔軟な表面、フィルム、プレート、シート、チューブ等が含まれる。表面は、好ましくは、およそ1平方ミクロンからおよそ500cm2までの範囲の面積を有する。本発明にしたがった表面の面積、長さ、および幅は、行おうとするアッセイの必要条件に応じて多様であり得る。考慮には、例えば、取り扱いの容易さ、表面が形成される材料(単数または複数)の限界、検出系の必要条件、沈着系(例えばアレイヤー)の必要条件等が含まれうる。
【0100】
特定の態様において、結合性アイランドまたは固定化生体分子のグループまたはアレイを分離するための物理的手段を使用することが望ましく:こうした物理的分離は、異なるグループまたはアレイを、関心対象の様々な溶液に曝露するのを容易にする。したがって、特定の態様において、アレイを96、384、1536、または3456マイクロウェルプレートのウェル内に配置する。こうした態様において、ウェルの底をアレイ形成のための表面として役立ててもよく、アレイを他の表面上で形成してからウェル内に入れてもよい。ウェルを含まない表面を用いる場合のような特定の態様においては、結合性アイランドを形成してもよいし、またはアイランドに対応するように空間的に配置された穴を有する表面およびガスケット上に生体分子を固定してもよいし、または表面上に生体分子を配置してもよい。こうしたガスケットは好ましくは液密性である。ガスケットをアレイ作成プロセス中の任意の時点で表面上に置いてもよく、かつグループまたはアレイの分離がもはや必要でなくなったら取り除いてもよい。
【0101】
固定化生体分子は、固定化生体分子に重層された生物学的試料中に存在する分子に結合可能である。あるいは、固定化生体分子は、固定化生体分子に重層された生物学的試料中に存在する分子を修飾するか、またはこうした分子に修飾される。例えば、生物学的試料中に存在する細胞分化マーカーを、固定化生体分子に接触させて結合させ、それによってマーカーの検出を容易にすることも可能である。あるいは、細胞分化マーカーまたはそのアンタゴニストを、一過性方式で固体表面上に固定された生体分子と接触させて反応を開始し、生体分子に対するマーカーの安定な結合が存在しないマーカーの検出を生じることも可能である。
【0102】
当技術分野に公知の検出技術を用いて、溶液中のまたはアレイ上に固定化された生体分子の修飾または結合を検出してもよい。こうした技術の例には、競合的結合アッセイおよびサンドイッチアッセイなどの免疫学的技術;共焦点スキャナ、共焦点顕微鏡、またはCCDに基づく系などの機器、および蛍光、蛍光偏光(FP)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、全内部反射蛍光(TIRF)、蛍光相関分光法(FCS)などの技術を用いた蛍光検出;比色/分光技術;表面に吸着された物質の質量の変化を測定可能である表面プラズモン共鳴;慣用的放射性同位体結合およびこれをアッセイするシンチレーション近接アッセイ(SPA)を含む、放射性同位体を用いる技術;マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI)およびMALDI飛行時間(TOF)質量分析などの質量分析;タンパク質フィルムの厚さを測定する光学的方法である楕円偏光法;表面に吸着する物質の質量を測定するための非常に高感度の方法である、水晶振動子マイクロバランス法(QCM);AFMおよびSEMなどの走査型プローブ顕微鏡法;ならびに電気化学的、インピーダンス、音波、マイクロ波、およびIR/ラマン検出などの技術が含まれる。例えば、Mere L, et al., “Miniaturized FRET assays and microfluidics: key components for ultra-high-throughput screening,” Drug Discovery Today 4 (8):363-369 (1999)およびこの文献に引用される文献; Lakowicz J R, Principles of Fluorescence Spectroscopy, 2nd Edition, Plenum Press (1999)を参照されたい。
【0103】
細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクの増加を同定するのに適した本発明のアレイが、キットに含まれてもよい。こうしたキットにはまた、非限定的な例として、アレイの結合性アイランドまたは領域上に固定するために生体分子を調製するのに有用な試薬、固定化生体分子に対する修飾を検出するのに有用な試薬、または固定化生体分子に対する関心対象の溶液からの生体分子の結合を検出するのに有用な試薬、および使用のための使用説明書が含まれてもよい。したがって、別の態様において、細胞増殖もしくは新生物性障害、または細胞増殖もしくは新生物性障害に対する素因を検出するための診断キットを提供する。こうしたキットには、少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常なインプリンティングを示す細胞を含む被験体を同定するための手段、および分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーを検出するためのアレイが含まれてもよく、アレイは複数のアドレスを有する基板を含み、各アドレスはそのアドレス上に配置された固定化生体分子を有する。各生体分子は、個々に、分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーを検出可能である。以下に論じるように、新生物性障害を発症する素因がある被験体を同定するのに加えて、本明細書に提供する方法を用いて、こうした障害のため治療を受けている被験体の進展を追跡することも可能である。
【0104】
セラノスティクス
本発明は、細胞増殖または新生物性障害に対する素因を同定するための組成物および方法を提供して、セラノスティクス・アプローチをとり、こうした個体を試験して、特定の治療的介入(薬学的または非薬学的)の有効性を決定し、かつ介入を改変して、1)不都合な結果を発症するリスクを減少させ、かつ2)介入の有効性を増強することが可能であるようにする。したがって、妊娠性障害の存在またはリスクを診断または確認するのに加えて、本発明の方法および組成物はまた、こうした障害を有する被験体の治療を最適にする手段も提供する。本発明は、例えばIGF2遺伝子のLOIを有する被験体のリアルタイム治療を改善するために、診断法および療法を統合することによって、細胞増殖または新生物性障害を治療するセラノスティクス・アプローチを提供する。事実上、これは、どの患者が特定の療法に最も適しているかを同定可能な試験を生成し、かつ薬物がどのくらいよく働いているかに関してフィードバックを提供して、治療措置を最適化することを意味する。細胞増殖または新生物性障害と関連する疾患の領域において、セラノスティクスは、経時的に、重要なパラメータにおける変化(例えば組織試料における分化細胞対未分化細胞の比の増加または減少)を柔軟に監視可能である。例えば、未分化細胞から分化細胞を識別するものなど、診断的に適切な一連の分子に特異的なセラノスティクス・マルチパラメータ・イムノアッセイを用いて、結腸癌の予防のための治療を受けている被験体の進展を追跡することも可能である。
【0105】
臨床試験設定内で、本発明のセラノスティクス法または組成物は、試験設計を最適化し、有効性を監視し、かつ薬物安全性を増強するのに重要な情報を提供可能である。例えば、「試験設計」セラノスティクスを、患者の層別化、患者適格性の決定(包含/排除)、均質な処置群の生成、および一般的な集団の代表である患者試料の選択に用いることが可能である。したがって、こうしたセラノスティクス試験は、患者有効性濃縮のための手段を提供し、それによって試験募集(recruitment)に必要な個体の数を最小限にすることも可能である。「有効性」セラノスティクスは、療法を監視し、かつ有効性基準を評価するのに有効である。最後に、「安全性」セラノスティクスを用いて、不都合な薬物反応を防止するか、または投薬エラーを回避することも可能である。
【0106】
統計分析
本明細書に提示するデータは、細胞増殖または新生物性障害を診断するのに関連する情報のデータベースを提供する。クロス確認に基づいて、予測規則を選択し、かつ別個のコホートに対して選択した規則を確認することも可能である。判別分析、ロジスティック回帰、および回帰ツリーを含む、多様なアプローチを用い、本明細書に提供する細胞分化マーカーレベルに基づいて、細胞増殖または新生物性障害を予測するデータを生成してもよい。
【0107】
判別分析は、マーカー・データの多変数空間中に平面を見出し、できる限り、症例がこの平面の一方の側に現れ、かつ対照が他方に現れるようにすることを試みる。この平面を決定する係数は、分類規則:閾値と比較されるマーカー値の一次関数を制定する。ベイズ式分類法において、データが得られる前に公知であった、被験体が症例である(すなわち細胞増殖もしくは新生物性障害を有する、またはこれらを有する素因がある被験体)確率に関する情報を使用してもよい。例えば、症例である事前確率を約0.5に設定可能であり;一般的な集団に適用されるスクリーニング試験では、対応する確率は、およそ0.05であろう。被験体は、対応する事後確率(すなわち、データを用いてアップデートした事前確率)が0.5を超える場合、合併症(すなわち細胞増殖または新生物性障害)を有する、または有するリスクがあると分類される。
【0108】
さらなる患者情報(例えばLOIおよび/または家族歴)を、本明細書に提供する細胞分化マーカーと組み合わせることも可能である。これらのデータを、本バイオマーカー・データを補完する、傾向を同定する情報を分析するデータベースにおいて組み合わせてもよい。結果を電子形式で保存してもよい。
【0109】
さらなる分析を行って、結腸癌または膵臓癌などの細胞増殖または新生物性障害に関するリスクがある被験体を同定することも可能である。こうした分析には、一次曝露各々の二変量分析、結果と強い関係(生物学的および統計学的)を持つ変数を含む多変量モデル、因子分析を用いた変数減少を含む多数の重大な曝露を考慮する方法、および予測モデルが含まれる。
【0110】
二変量分析に関しては、適切なように、2標本t検定またはWilcoxon順位和検定を用いて、症例および対照間の各一次曝露の平均レベルを導いてもよい。関連が線形であるようならば、Mantel Haenszel検定を用いて、傾向を分析してもよい。対照の分布を用いて、より細かいカテゴリー(例えば三分位)にデータを集合させ、かつこれらを多変量分析における指標変数として調べてもよい。
【0111】
多変量分析のため、一方はマッチし、かつ他方はマッチしない、2つの対照群間でデータを相関させてもよい。マッチおよび非マッチ分析両方において、ロジスティック回帰(マッチ分析における条件付きモデルとともに)モデルを用いて、関心対象の一次曝露すべての独立の効果を調べてもよい。特定の予測因子の主な効果を試験するため、モデルには、最少数の共変数が含まれてもよい。
【0112】
データベース、およびデータを分析するコンピュータによる方法
本明細書に提供する方法から生成されるデータベースおよび上述の分析を、被験体が細胞増殖または新生物性障害を有するか、または有する素因があるかどうかを決定するためのコンピュータシステムに含めるか、または関連させてもよい。データベースには、複数のデジタルコード化された「参照」(または「対照」)プロフィールが含まれてもよい。複数の参照プロフィールは各々、複数の値を有することも可能であり、各値は、試料におけるバイオマーカーのレベルに相当する。あるいは、参照プロフィールは、正常である個体に由来してもよい。両方の種類のプロフィールが、被験体プロフィールと連続してまたは同時に比較するため、データベース中に含まれていてもよい。コンピュータシステムには、被験体のプロフィールを受信し、かつデータベースから、被験体プロフィールに診断上適切であるマッチ参照プロフィールを同定するための、コンピュータ実行可能コードを含有するサーバーが含まれてもよい。診断またはさらなる分析のため、同定されたプロフィールを、治療提供者に供給してもよい。
【0113】
したがって、上述の本発明の多様な技術、方法、および局面を、部分的に、または全体的に、コンピュータに基づくシステムおよび方法を用いて実行してもよい。さらに、コンピュータに基づくシステムおよび方法を用いて、上述の機能性を増大するかまたは増強し、機能を実行可能であるスピードを増加させ、かつ本文書の別の箇所に記載する本発明のものの一部として、またはこれに加えて、さらなる特徴および局面を提供してもよい。上述の技術にしたがった、コンピュータに基づく多様なシステム、方法および実施を以下に提示する。
【0114】
プロセッサに基づくシステムには、主記憶装置、好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM)が含まれてよく、かつ二次メモリが含まれてもよい。二次メモリには、例えば、ハードディスクドライブ、および/またはフロッピーディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブなどに相当するリムーバブル記憶ドライブが含まれてもよい。リムーバブル記憶ドライブは、リムーバブル記憶媒体から読み取り、かつ/またはこうした媒体に書き込む。リムーバブル記憶媒体は、フロッピーディスク、磁気テープ、光ディスク等を指し、これらは、リムーバブル記憶ドライブによって読み取られ、かつ書き込まれる。認識されるであろうように、リムーバブル記憶媒体は、コンピュータソフトウェアおよび/またはデータを含むことも可能である。
【0115】
別の態様において、二次メモリには、コンピュータプログラムまたは他の命令が、コンピュータシステムにロードされるのを可能にするための、他の類似の手段が含まれてもよい。こうした手段には、例えば、リムーバブル記憶装置およびインターフェースが含まれてもよい。こうしたものの例には、プログラム・カートリッジおよびカートリッジ・インターフェース(ビデオゲーム装置に見られるようなもの)、リムーバブル記憶チップ(EPROMまたはPROMなど)および関連するソケット、ならびに、ソフトウェアおよびデータがリムーバブル記憶装置からコンピュータシステムに転送されるのを可能にする、他のリムーバブル記憶装置およびインターフェースが含まれてもよい。
【0116】
コンピュータシステムにはまた、通信インターフェースが含まれてもよい。通信インターフェースは、ソフトウェアおよびデータがコンピュータシステムと外部装置との間で転送されることを可能にする。通信インターフェースの例には、モデム、ネットワーク・インターフェース(例えばEthernetカードなど)、通信ポート、PCMCIAスロットおよびカード等が含まれてもよい。通信インターフェースを介して転送されるソフトウェアおよびデータは、シグナルの形であり、これは、通信インターフェースに受信されることが可能な、電子、電磁気、光学、または他のシグナルであってもよい。これらのシグナルを、シグナルを伝えることが可能なチャネルを介して通信インターフェースに提供し、かつワイヤレス媒体、ワイヤもしくはケーブル、光ファイバーまたは他の通信媒体を用いて導入してもよい。チャネルのいくつかの例には、電話回線、携帯電話リンク、RFリンク、ネットワーク・インターフェース、および他の通信チャネルが含まれてもよい。
【0117】
本文書において、用語「コンピュータプログラム媒体」および「コンピュータ使用可能媒体」は概して、リムーバブル記憶装置、ディスクドライブにインストール可能なディスク、およびチャネル上のシグナルなどの媒体を指すよう用いられる。これらのコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステムにソフトウェアまたはプログラム命令を提供するための手段である。
【0118】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御論理とも呼ばれる)は、主記憶装置および/または二次メモリに記憶される。通信インターフェースを介して、コンピュータプログラムを受信することもまた可能である。こうしたコンピュータプログラムは、実行された際、コンピュータシステムが本明細書に論じるような本発明の特徴を実行するのを可能にする。特に、コンピュータプログラムは、実行された際、プロセッサが本発明の特徴を実行するのを可能にする。したがって、こうしたコンピュータプログラムは、コンピュータシステムの制御装置に相当する。
【0119】
ソフトウェアを用いて要素を実行する態様において、ソフトウェアは、コンピュータプログラム製品に記憶されるか、またはこれを介して伝達され、かつリムーバブル記憶ドライブ、ハードドライブまたは通信インターフェースを用いて、コンピュータシステムにロードされうる。制御論理(ソフトウェア)は、プロセッサによって実行された際、プロセッサが本明細書に記載するような本発明の機能を実行するようにする。
【0120】
別の態様において、要素は、例えばPAL、特定用途向け集積回路(ASIC)または他のハードウェア・コンポーネントなどのハードウェア・コンポーネントを用いて、主にハードウェア中で実行される。本明細書記載の機能を実行するためのハードウェア状態機械の実行は、相当する技術分野(単数または複数)の当業者に明らかであろう。さらに別の態様において、ハードウェアおよびソフトウェア両方の組み合わせを用いて、要素を挿入する。
【0121】
別の態様において、ウェブページを介して本発明の方法へのアクセスを提供することによって、ワールドワイドウェブ上で、コンピュータに基づく方法にアクセスさせるかまたはこれを実行してもよい。したがって、ウェブページは、ユニバーサルリソースロケーター(URL)によって同定される。URLは、サーバー機械およびその機械上の特定のファイルまたはページの両方を指す。この態様において、消費者またはクライアントのコンピュータシステムがブラウザと相互作用して、特定のURLを選択して、次にこのURLが、URLに同定されたサーバーに、ブラウザがそのURLまたはページに関するリクエストを送信するようにさせることが想定される。典型的には、サーバーは、リクエストされたページを取り出して、かつリクエスト中のクライアントのコンピュータシステムにそのページに関するデータを送り返すことによって、リクエストに応答する(クライアント/サーバー相互作用は、典型的には、ハイパーテキスト転送プロトコール(「HTTP」)にしたがって行われる)。次いで、選択されたページが、クライアントのディスプレースクリーン上で、ユーザーに示される。次いで、クライアントは、本発明のコンピュータプログラムを含有するサーバーに、アプリケーションを開始させて、例えば本発明にしたがった分析を行わせることも可能である。
【0122】
本発明は、例示するためであるが、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない、以下の実施例にさらに記載される。
【実施例】
【0123】
実施例
IGF2のLOIが腸腫瘍発生に寄与する機構を調べるため、マウスモデルを生成した。他のグループによるマウスモデルの先の分析によって、SV40ラージT抗原によって誘導される膵臓腫瘍において、Igf2が25倍より高く活性化されること(Christofori, et al. , Nat. Genet. 10, 196 (1995))、およびIgf2の過剰発現を強いると、腸腫瘍形成および腺窩上皮の過剰増殖が引き起こされること(Hassan and Howell, Cancer Res. 60, 1070 (2000); Bennett, et al., Development 130, 1079 (2003))が示された。本明細書に提供するモデルは、LOIがIGF2発現の穏やかな増加しか引き起こさない、ヒトの状況を模倣するように設計された。Igf2のインプリンティングは、近傍の翻訳されないH19遺伝子上流の差次メチル化領域(DMR)によって制御される。DMRの欠失は、母性遺伝した場合には、子孫においてIgf2の両アレル発現(LOI)を導く(図3)。腸新生物をモデリングするため、本発明者らは、Apc突然変異を持つMinマウスを用いた(Su et al., Science 256, 668 (1992))。本発明者らは、雌H19+/-と雄Apc+/Minを交配させて、母性遺伝H19欠失を持つまたは持たない、したがってLOIを持つまたは持たない、Apc突然変異を有する同腹仔を比較した。H19+/+ [以後、LOI (-) マウスと称する]と比較すると、H19-/+突然変異体マウス[以後、LOI(+)マウスと称する] は、およそ二倍のIgf2 mRNAレベルを示し、これは年齢またはMinの状態によっては変化しなかった(図4)。これは、LOI(+)である正常ヒト結腸粘膜またはウィルムス腫瘍におけるIgf2 mRNAレベルの2〜3倍の増加と一致する(Ravenel et al. , J. Natl. Cancer Inst. 93, 1698 (2001))。LOI(+)マウスの腸では、Igf2タンパク質のレベルもまた倍増した(図4)。LOI(+)マウスは、小腸および結腸の両方で、LOI(-)マウスが発症するよりも約2倍多い腺腫を発症し、この相違は統計的に有意であった(表1)。LOIのマウスはまた、より長い腸腺窩も有し、腺窩は、上皮幹細胞再生部位であった(Sell and Pierce, Lab. Invest. 70, 6 (1994))(図5)。長さのこの増加は、腺窩に特異的であり、経時的に進行し[42日齢のマウスにおいて1.2倍の増加(P<0.01)、および120日齢のマウスにおいて1.5倍の増加(P<0.0001)]、かつApcの状態とは無関係であった。LOI(+)およびLOI(-)Minマウスの間で増殖細胞核抗原標識指数には統計的に有意な変化がなく(それぞれ3.8±0.9対3.1±1.5)、また腺窩内の増殖性細胞の分布(Lipkin and Deschner, Cancer Res 36, 2665 (1976))にも相違がなかった(それぞれ0.39±0.04対0.38±0.03、P=N. S.)ため、腺窩長の増加は、細胞増殖の相違によるものではなかった。LOI(+)およびLOI(-)マウスは、組織形態学的に、かつインサイチューTUNELアッセイによって評価されるように、腺窩アポトーシス率の相違を示さず;どちらの遺伝子型も、20腺窩あたり、平均1つのアポトーシス細胞を有した。腸腺窩の分岐率にも相違はなく;LOI(+)およびLOI(-)マウスはどちらも、腸表面下に、総数1〜2の分岐腺窩を有した。
【0124】
小腸の腺窩長の増加は、粘膜における未分化上皮細胞対分化上皮細胞の比のシフトと相関する。4つの抗原を免疫染色して、未分化上皮細胞対分化上皮細胞発達を識別した:胃腸管上皮の刷子縁細胞骨格の構造構成要素であるvillin(West et al. , Gastroenterol. 94, 343 (1988));腸上皮において、腺窩−絨毛軸内で上皮細胞を配置するのに役割を果たすEphB2/EphB3受容体のリガンドである、ephrin-B1 (Batlle et al., Cell 111, 251 (2002));神経および腸の前駆細胞で選択的に発現され、かつ幹細胞状態を維持する鍵であるRNA結合性タンパク質、musashi 1 (Kaneko et al. , Dev. Neurosci. 22, 139 (2000) ; Potten et al., Differentiation 71, 28 (2003));および元来、中胚葉性前駆細胞マーカーとして同定され(Borkowski, et al., Development 121, 4183(1995))、上皮細胞の分化喪失にも関与する(Howe, et al., Cancer Res. 63, 1906 (2003) ; Thiery and Morgan, Nat. Med. 10, 777 (2004))、ベーシック・ヘリックス・ループ・ヘリックス・ファミリーの転写因子であるtwist。
【0125】
図1は、120日齢のLOI(-)マウスおよびLOI(+)マウスのvillinおよびmusashi1の免疫組織化学分析を示す。パネルAは、LOI(-)マウスにおいて、腸絨毛を裏打ちする分化した腸細胞全体の細胞質分布および腺窩−絨毛接触面内で、villinタンパク質発現が見られることを示す。パネルBは、LOI(+)マウスにおいて、villin発現が顕著に減少していることを示す。パネルCは、LOI(-)マウスにおいて、musashi1発現が、腸腺窩内の細胞の細胞質および核内でまれにしか検出されない(矢印)ことを示し、この場所は、腸幹細胞および未分化上皮細胞区画の場所である。パネルDは、パネルCと対照的に、musashi1細胞質および核標識が、LOI(+)マウスの腸腺窩全体で検出されることを示す。パネルEは、LOI(-)マウスにおいて、musashi1陽性細胞が、分化上皮区画に相当する重層腸絨毛内でまれにしか検出されないことを示す。パネルFは、LOI(+)マウスにおいて、腸絨毛を裏打ちする腸細胞内で、musashi1の強度の細胞質および核発現が検出されることを示す。スケールバーは、10μmに相当する。
【0126】
分化腸細胞における生物学的役割と一致して、LOI(-)マウスにおいて、小腸の絨毛を裏打ちする腸細胞の細胞質内で、および絨毛−腺窩接触面内で、villinおよびephrin-B1両方に関する免疫染色が検出された(図1、パネルA)(図6)。対照的に、LOI(+)マウスは、より低いレベルのvillinおよびephrin-B1、ならびに分化上皮細胞区画の縮小を示した(図1、パネルB)(図6)。
【0127】
前駆細胞マーカーmusashi1の発現は、LOI(-)マウスの腸腺窩の下半分内に散在する細胞内で観察され(図1、パネルC)、一方、LOI(+)マウスの腸腺窩内では、多くのmusashi1陽性細胞が同定された(図1、パネルD)。LOI(+)マウスはまた、LOI(-)マウスに比較して、腸絨毛を裏打ちする腸細胞内で、強度の染色も示した(図1、パネルE〜F)。半定量的分析によって、LOI(+)マウスにおけるmusashi1染色の増加が確認され、これはApc状態とは無関係であった(表2)。twistに関する免疫染色もまた、LOI(+)マウスの腺窩における陽性染色細胞の数および強度の顕著な増加を明らかにした(図7)。これらの変化は、経時的に進行性であった(例えば図1、6および7を参照されたい)。
【0128】
このシフトは正常粘膜に影響を及ぼすため、この脱分化モデルの1つの予測は、腺腫の数の増加が、腫瘍進行の増加であるより、腫瘍イニシエーションの増加であるためであるというものである。このアイディアを支持することに、120日齢のLOI(+)Minマウス(36微小腺腫/27巨大腺腫)とLOI(-)Minマウス(16微小腺腫/14巨大腺腫)との間の、微小腺腫[各<5腺窩 (Torrance et al., Nat. Med. 6, 1024 (2000))]対巨大腺腫(各≧5腺窩)の比には、相違がなかった。H19 DMR内の4つのCCCTC結合性因子(CTCF)ターゲット部位(Pant et al., Genes Dev. 17, 586 (2003))のうち3つに、点突然変異を導入した、LOIの独立のマウスモデル(図3および8)もまた、免疫染色によって調べた。このモデルの別の利点は、欠失モデルと異なり、DMR突然変異モデルでは、H19発現が無傷であることである(図9)。トランスでのmRNA翻訳に対するH19の公知の役割を考慮すると、H19の喪失は、独立の効果を有し得る。にもかかわらず、分化細胞対未分化細胞の比のシフトが、これらのLOI(+)マウスの正常上皮でもまた見られた。例えば、図2、パネルA〜Hは、マウスH19 DMR突然変異モデルにおける、およびLOIを伴う結腸内視鏡外来患者における、より分化していない結腸上皮へのシフトを示す。LOI(-)マウスにおけるmusashi1免疫染色は、結腸上皮全体で、細胞質および核パターン両方での異常なmusashi1染色を示すLOI(+)マウス(パネルB)と比較して、細胞質標識を持つ腺窩上皮細胞がまれであることを示す(パネルA)。パネルCは、LOI(-)マウスにおけるvillin免疫染色が、刷子縁を含む細胞質標識を示すことを示す。対照的に、LOI(+)マウスにおいて(パネルD)、表面上皮細胞上の刷子縁のvillin染色は存在しない。パネルEは、LOIを伴わない12人の結腸内視鏡患者において、腺窩上皮細胞中、musashi1陽性細胞がまれにしか検出されないことを示す(矢印)。低出力視野が図10で得られる。対照的に、パネルFは、LOIを伴う結腸内視鏡患者において、musashi1標識が、結腸腺窩全体に存在し、表面上皮に拡大していることを示す(図10もまた参照されたい)。LOIを伴わない結腸内視鏡患者では、twistに関して弱い標識しか検出されない(パネルGを参照されたい)。LOIを伴う結腸内視鏡患者では、まだらではあるが強いtwist標識が、腺窩および表面上皮に存在する(パネルHを参照されたい)。スケールバーは10μmに対応する。
【0129】
図3、パネルA〜Cは、H19欠失およびDMR突然変異のマウスモデルを示す。パネルAは、H19欠失モデルの図解である。H19遺伝子および上流領域中のそのDMRを含む13kbをneoと置き換えた。この欠失が母から遺伝すると、H19発現は失われ、かつ、示すように、通常はサイレントであるIgf2アレルが活性化される。雌H19+/-と雄Apc+/Minマウスとの間で実験交配を行って、示す4つの遺伝子型を得た。パネルBは、H19 DMR突然変異モデルの図解である。H19 DMRの4つのCTCF結合部位のうち3つを突然変異させた(塗りつぶしたボックス)。この突然変異が母から遺伝すると、通常はサイレントであるIgf2アレルが活性化され、H19発現は維持される(図8も参照されたい)。DMR突然変異体(142*)雌または雄マウスを、野生型SD7と交配して、それぞれIgf2のLOIを伴うマウスおよび正常なインプリンティングを伴うマウスを得た。パネルCは各モデルを用いて実行した実験の表である。
【0130】
図4、パネルAおよびBは、Igf2 mRNAおよびタンパク質レベルを示す。パネルAは、相対的Igf2 mRNAレベルを示す。Igf2 mRNAレベルを、リアルタイムRT-PCRによって分析し、β-アクチンのものに対して標準化して、42日齢の野生型LOI(-)マウスの小腸に比較して示す。Igf2 mRNAは、42日齢では、LOI(-)マウスの腸におけるより、LOI(+)マウスの腸の非腫瘍領域において、2.0倍高く(P=0.002)、120日齢では2.1倍高かった(P=0.04)。120日齢のLOI(+)Minマウスでは、Igf2 mRNAは、LOI(-)Minマウスと比較して、非腫瘍領域において2.2倍の増加(P=0.03)および腫瘍領域において2.3倍の増加(P=0.003)を示した。所与の遺伝子型内で、Igf2の発現は正常より腫瘍で増加せず、腫瘍形成におけるLOIの初期の役割と一致する。N、非腫瘍領域。T、腫瘍領域。各比較に関して、P値を、T検定によって計算した。パネルBは、Igf2タンパク質のウェスタンブロット分析を示す。シグナルは、2つの別個の抗体(表示)を用いて、15kDa、17kDaで、かつ弱く18kDaで検出され、強度は、総タンパク質に対して標準化すると、LOI(+)マウスの小腸で、1.7〜2.1倍(Upstate)および1.5〜2.1倍(Abcam)増加した。これらのより高分子量の型は、哺乳動物でよく記載され、かつIgf2の完全にプロセシングされた型よりも、Igf1受容体(Igf2のシグナル伝達ターゲット)のより効率的な活性化因子である。
【0131】
図5、パネルAおよびBは、LOI(-)マウス(パネルA)対LOI(+)マウス(パネルB)における小腸粘膜の組織形態を示す。小腸、結腸、および腸外組織の詳細な組織病理検査を、42日齢および120日齢(表示)両方のマウスで行った。LOI状態に関連して、構造上の相違は見られなかったが、LOI(+)マウスの小腸の腺窩長は、野生型同腹仔に比較して、統計的に有意な増加を示した:42日齢では1.2倍の増加(15.3±1.9μm対13.1±1.8μm、P<0.01);および120日齢では1.5倍の増加(19.6±2.0μm対13.0±2.0μm、P<0.0001)。
【0132】
図6、パネルA〜Dは、42日齢マウスにおける、villinおよびephrin-B1に関する免疫組織化学を示す。パネルAは、LOI(-)マウスにおいて、腸絨毛を裏打ちする分化した腸細胞全体で細胞質にvillinが分布して見られ、発現が推移帯および表面の腺窩に拡大していることを示す。パネルBは、LOI(+)マウスにおいて、villinが主に、腸絨毛を裏打ちする腸細胞に限定され、推移帯または表面の腺窩内では発現が見られず(矢印で示す)、分化細胞区画の縮小と一致することを示す。パネルCに示すように、ephrin-B1タンパク質発現はvilllnに関して記載したものと類似のパターンを示し、LOI(-)マウスにおいて、腸絨毛を裏打ちする分化した腸細胞の細胞質標識として見られた。対照的に、パネルDは、ephrin-B1に関する免疫染色が、LOI(+)マウスの腸絨毛で顕著に減少していることを示す。
【0133】
図7、パネルA〜Fは、42日齢マウスにおける、musashi1およびtwistに関する免疫組織化学を示す。パネルAは、LOI(-)マウスにおいて、musashi1発現が、腸腺窩内の細胞の細胞質および核内で、まれにしか検出可能でないことを示す(代表として、矢印で示す)。パネルBは、LOI(+)マウスにおいて、musashi1細胞質および核標識が、腸腺窩全体で検出可能であることを示す。パネルCは、LOI(-)マウスにおいて、musashi1発現が重層腸絨毛内でまったく検出されないことを示す。パネルDは、LOI(+)マウスにおいて、腸絨毛を裏打ちする腸細胞中で、異所性の細胞質および核発現が見られることを示す。パネルEは、LOI(-)マウスの腸腺窩内の細胞で、弱い細胞質twist発現がまれにしか検出可能でないことを示す。パネルFは、LOI(+)マウスの腸腺窩内で、twistが非常に増加していることを示す。
【0134】
図8、パネルA〜Fは、H19 DMRに突然変異を持つマウス腸(142*マウス)における、Igf2 mRNAレベルのインサイチュー・ハイブリダイゼーション分析を示す。合成明視野および暗視野画像は、以下を示す:パネルAは、142*xSD7交配における胎児(E16.5)腸、アンチセンスIgf2リボプローブを示す。パネルBは、胎児腸、142*xSD7交配、センスプローブを示す。パネルCは、成体(153日齢)腸、142*xSD7交配、アンチセンスプローブを示す。パネルDは、胎児腸、SD7x142*交配、アンチセンスプローブを示す。パネルEは、胎児腸、SD7x142*交配、センスプローブを示す。パネルFは、成体腸、SD7x142*交配、アンチセンスプローブを示す。
【0135】
図9、パネルA〜Fは、H19 DMRに突然変異を持つE16.5マウス胚における、H19 mRNAレベルのインサイチュー・ハイブリダイゼーション分析を示す。パネルAは、アンチセンスIgf2リボプローブを用いた、142*xSD7胎児における腸の明視野図を示す。パネルBは、暗視野図、142*xSD7胎児、アンチセンスプローブを示す。パネルCは、明視野図、SD7x142*胎児、アンチセンスプローブを示す。パネルDは、暗視野図、SD7x142*胎児、アンチセンスプローブを示す。パネルEは、明視野図、SD7x142*、センスプローブを示す。パネルFは、暗視野図、SD7x142*胎児、センスプローブを示す。
【0136】
図10は、LOIを伴わない結腸内視鏡患者およびLOIを伴う患者の正常結腸のmusashi1免疫染色を示す。パネルAは、musashi1陽性細胞が、LOIを伴わない患者の結腸腺窩でまれにしか観察されず、かつ表面染色はまったくなかったことを示す。アステリスクで示す腺窩のより高出力の図が図2、パネルEで得られる。対照的に、図10のパネルBは、LOIを伴う患者において、異常なmusashi1タンパク質発現が、結腸腺窩全体で検出可能であり、表面上皮に拡大していることを示す(表面を矢印で示す)。腺窩のより高出力の図が、図2、パネルFで得られる。
【0137】
LOI状態があらかじめ決定されている、結腸内視鏡スクリーニング中に生検が必要な患者の正常粘膜の比較を行った。慣用的顕微鏡観察では、形態学的な相違は指摘されなかった。しかし、LOIを伴わない患者では15人のうち5人だったのに比較して、LOIを伴う11人の患者のうち10人で、結腸においてmusashi1染色の増加が示され、結腸腺窩の上半分および/または表面上皮に拡大していることが示された(P=0.004、Fisher直接確率法)(図2、パネルE〜F)(図10)。結腸上皮成熟の改変もまた、LOIを伴わない患者に比較して、LOIを伴う4人の患者すべてで結腸に限定されて(P=0.03)、かつLOIを伴う7人の患者のうち6人で末梢血リンパ球および結腸の両方で(P=0.03)見られた。
【0138】
musashi1染色を第二のマーカー、twistと組み合わせると、感度は減少したが特異性が増加した:LOIを伴わない14人の患者のうち1人であったのに比較して、LOIを伴う11人の患者のうち6人で、染色増加が見られた(P=0.02、Fisher直接確率法)(図2、パネルG〜H)。twist染色のみでは統計的な有意性は達成されなかった(P=0.07)が、2つのマーカーは重複せず、LOIの下流効果が不均質であることが示唆された。
【0139】
正常細胞のエピジェネティックな改変が癌のリスクに影響を与える細胞機構を本明細書で論ずる。この機構は分化細胞および未分化細胞の平衡を効果的に改変する。正常組織における、より未分化な状態にエピジェネティックに仲介されるシフトは、本明細書に記載するように、続く遺伝子改変のターゲット細胞集団を増加させ得るし、または腫瘍イニシエーションにおいて単独で作用し得る。まれな障害、Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)のLOIが仲介するウィルムス腫瘍において、腫瘍は、腎原性前駆細胞集団が拡大されるために生じる(Beckwith, et al., Peatr. Pathol. 10, 1 (1990))。興味深いことに、本発明者らは、LOI(+)Minマウスにおいて、BWSの特徴である膵島細胞過形成を観察し(データ示さず)、これは、LOIが、他の腫瘍タイプを発症する素因でもあり得ることを示唆する。細胞分化を改変し、かつ/または腺窩構造を破壊する、遺伝子機構が記載されてきている(Haramis et al., Science 303, 1684 (2004) ; van de Wetering et al., Cell 111, 241 (2002); Yang, et al., Cancer Res. 63, 4990 (2003) ; Velcich et al., Science 295, 1726 (2002))が、これらの機構は、正常なヒト組織では一般的ではない。
【0140】
マウスおよび遺伝子型決定:構造H19遺伝子(3kb)および5’隣接配列の10kbに欠失を所持する、C57BL/6JバックグラウンドのH19突然変異体マウスを得た。雌の野生型C57BL/6Jおよび雄H19+/-を交配させることによって、LOI表現型を持たない、父性H19ヘテロ接合体を維持した。雌H19+/-と雄Apc+/Min(C57BL/6J)との間で実験交配を行った。DNeasy Tissueキット(Qiagen、Valencia、CA)で、尾から抽出したDNAを用いて、以下のようにマウスの遺伝子型を決定した。H19では、2つの順方向プライマーおよび1つの共通逆方向プライマーを用いてPCRを行い、野生型アレルに関する847bp産物および突然変異体アレルに関する1,000bp産物を得た。プライマー配列およびアニーリング温度は:

;66℃であった。Apcでは、以下のプライマー:

;55℃を用いて、PCRおよび直接配列決定を行った。腫瘍定量化、組織学、および免疫染色のため、マウスを42日および120日に屠殺し、腸全体および他の臓器を収集した。さらに、記載するように、H19インプリンティング制御領域内の4つのCTCFターゲット部位のうち3つで、GTGGからATATへの配列変化のノックイン・アレルを所持する、150日齢のH19突然変異体マウスをあらかじめ確立し、SD7マウスと交配させた。本発明者らは、同じスライド上で行う免疫染色を用いて、母性伝達アレル(LOI)に父性伝達突然変異体アレル(非LOI)を比較した。すべての動物実験は大学指針にしたがって行われた。
【0141】
腫瘍分析および免疫染色:腫瘍の数およびサイズを分析するため、腸全体を冷PBSで洗い流し、縦方向に開いた。半分はさらなる分子分析のために凍結させた。残りの半分を10%ホルマリンで固定して0.03%メチレンブルーで染色し、遺伝子型に関してはブラインドで、光学顕微鏡下、腫瘍の数およびサイズを測定した。
【0142】
組織病理学的分析のため、腸全体および他の臓器を4%パラホルムアルデヒドで、その後、70%エタノール中で固定し、パラフィンに包埋した。H&E染色、ならびにmusashil(Chemicon、AB5977、1:200希釈)、twist (Santa Cruz Biotechnology、SC-15393、1:100希釈)、villin(Chemicon、MAB1671、1:100希釈)、ephrin-B1(R&D Systems、AF473、1:25希釈)およびPCNA(Transduction、P56720、1:200希釈)に対する免疫組織化学を行って、小腸の全長に渡って各群4匹のマウスを比較し、基本的形態、未分化区画対分化区画の平衡、増殖指数、および増殖性細胞の分布を分析した。腸腺窩の付け根から腸絨毛の付け根までの腺窩長を測定した。腺窩長の測定は、遺伝子型をブラインドして行い、かつ2つの異なる各組織切片(10切片離れている)上、よく配向された腸の切片の少なくとも5回の個々の無作為な測定に基づき、この切片は、腸管腔の長軸に垂直な、少なくとも3つの隣接絨毛および関連する腺窩カットを持つ領域と規定される。腸の長軸に対して垂直に配向された、マウスあたり10の個々の腺窩において、血球計算板を用いてMusashi1陽性細胞を計数した。ACIS II自動化画像分析系(Chromavision、San Juan Capistrano、CA)を用いて、PCNA標識の定量的画像分析を行い、腸の長軸に対して垂直に配向された、マウスあたり10の個々の腺窩において、陽性標識細胞のパーセントおよび強度両方を測定した。Lipkinらによって記載される方法の修飾法を用い、血球計算板を用いて増殖性細胞の分布を決定し、やはりマウスあたり10の個々の腺窩の間で、腸腺窩内の最も高いPCNA陽性細胞の高さを同じ腺窩の全体の高さで割ったものを測定した。測定値を比として表し、LOI(+)およびLOI(-)マウスに関する平均の比を決定した。アポトーシス率の決定のため、TUNELアポトーシス検出キット(Upstate、Lake Placid、NY)を用いて、マウスあたり総数20の腸腺窩内で、陽性標識細胞の数に関して、小腸の切片を評価した。
【0143】
LOIを伴うおよび伴わない結腸内視鏡外来患者の正常な結腸粘膜を、musashi1およびtwistの免疫染色で分析した。腸腺窩の下半分、腸腺窩の上半分および表面上皮内で、musashi1およびtwist免疫標識を独立にかつブラインドで評価した。上皮細胞において、細胞質染色を伴うまたは伴わない核染色として、陽性標識をスコア付けした。RNAおよびタンパク質分析:DNアーゼI処理を伴うRNeasyキット(Qiagen)を用いて、凍結腸の腫瘍領域および非腫瘍領域から総RNAを抽出し、SuperScript II(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて逆転写した。SYBR Green PCR Core試薬およびABI Prism 7700配列検出系(Applied Biosystems、San Jose、CA)を用いたリアルタイムRT-PCRによって、Igf2の発現レベルを定量化し、β-アクチンのものに対して標準化した。プライマーおよびアニーリング温度は以下のとおりである。

、60℃。
【0144】
42日齢のマウス小腸のホモジナイズした試料を、1M酢酸で酸性化して凍結乾燥した後、NuPAGE LDS緩衝液(Invitrogen)を用いて、SDS-ポリアクリルアミドゲル(16%)電気泳動に適用した。ゲルをImmune-Blot PVDF膜(BioRad、Hercules、CA)上にトランスファーし、膜をブロッキング緩衝液(TBS中の5%脱脂粉乳、0.1% Tween-20)で、4℃で一晩ブロッキングし、1:500希釈のIgf2抗体(Upstate、Lake Placid、NY)または1:1000希釈のIgf2抗体(Abcam、Cambridge、MA)と、室温で1時間インキュベーションした。HRP結合二次抗体およびECL検出試薬(Amersham、Piscataway、NJ)で処理し、X線フィルムに曝露した後、走査型密度計を用いてシグナル強度を測定した。ゲルをSimplyBlue SafeStain(Invitrogen)で染色し、走査型密度計を用いて染色強度を測定して、シグナル強度を補正した。
【0145】
(表1)LOI(+)Minマウスにおける腺腫数および表面積増加
腺腫数、ならびに腸表面積のみに関して補正した数、または腸表面積および腺腫表面積両方に関して補正した数を示す。平均±標準誤差(SE);P値をt検定によって計算した。

【0146】
(表2)腸腺窩におけるmusashi1染色の半定量的分析
Musashi1陽性細胞の数をLOI(-)MinマウスおよびLOI(+)Minマウスで分析し、≧6および<6のMusashi1陽性細胞を含有する腺窩数を示す。P値をFisher直接確率法によって計算した。

【0147】
他の態様
本発明をその詳細な説明と組み合わせて記載してきたが、前述の説明は例示を意図し、付随する特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるものとする。他の局面、利点、および修飾が、特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体が新生物性または細胞増殖障害を発症する素因を決定する方法であって、被験体由来の同一または異なる試料における未分化細胞対分化細胞の比を決定する工程を含み、ここで参照比に比較した際の未分化細胞対分化細胞の比が、新生物性または細胞増殖障害を発症する素因の指標となる、方法。
【請求項2】
インプリンティングの喪失から直接または間接的に生じるターゲット遺伝子の異常発現を示す細胞を同定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ターゲット遺伝子がH19またはIGF2から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ターゲット遺伝子が、Igf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、およびMAPK遺伝子からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
ターゲット遺伝子のメチル化状態の変化またはその多型性に関して、生物学的試料を分析する工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
メチル化の変化が低メチル化である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
H19遺伝子のDMRおよびIGF2遺伝子のDMRの両方の低メチル化に関して、生物学的試料を分析する工程を含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
参照比が、H19遺伝子およびIGF2遺伝子の少なくとも1つの正常なインプリンティングを示す細胞を含む被験体から得られる組織から生成される、請求項3記載の方法。
【請求項9】
試料中の未分化細胞対分化細胞の平衡または比の変化を決定する工程が、分化細胞または未分化細胞と関連するバイオマーカーを同定する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
バイオマーカーが、Shh (ソニック・ヘッジホッグ)、Tcf4、Lef1、Twist、EphB2、EphB3、Hes1、Notch1、Hoxa9、Dkk1、Tle6、Tcf3、Bmi1、Kit、Musashi1(Msi1)、Cdx 1、Hes5、Oct4、Ki-67、β-カテニン、Noggin、BMP4、PTEN (リン酸化PTEN)、Akt (リン酸化Akt)、Villin、アミノペプチダーゼN (anpep)、スクラーゼ・イソマルターゼ (SI)、Ephrin-B1 (EfnB1)、Cdx2、Crip、Apoa1、Aldh1b1、Calb3、Dgat1、Dgat2、Clu、Hephaestin、Gas1、Ihh (インディアン・ヘッジホッグ)、内因子B12受容体、IFABP、およびKLF4からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
試料中の未分化細胞対分化細胞の比を決定する工程が以下の工程を含む、請求項1記載の方法:
a)分化細胞集団または未分化細胞集団と特異的に関連するバイオマーカー分子の免疫組織化学的同定を用いて、試料を画像化する工程;
b)標準的顕微鏡観察を用いて試料を画像化し、形態学的測定値を用いて未分化細胞から分化細胞を識別する工程;
c)増殖抗原および結腸腺窩内のこの抗原の分布の免疫組織化学的同定を用いて、試料を画像化する工程;
d)分化細胞集団または未分化細胞集団と関連するバイオマーカーに特異的な分子の免疫蛍光同定を用いて、試料を画像化する工程;
e)RNAレベルを測定する工程;
f)遺伝子発現を測定する工程;
g)全ゲノム発現分析;または
h)アレル特異的発現。
【請求項12】
細胞が上皮細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
上皮細胞が直腸Pap検査から得られる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
上皮細胞が腸組織から得られる、請求項12記載の方法。
【請求項15】
腸組織が結腸から得られる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
上皮細胞が腸組織の管腔から得られる、請求項14記載の方法。
【請求項17】
上皮細胞が管腔の腺窩から得られる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
細胞増殖または新生物性障害が固形腫瘍に関連する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
固形腫瘍が腺腫である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
腺腫が結腸直腸癌である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
被験体が結腸直腸新生物を有することがあらかじめ公知ではない、請求項20記載の方法。
【請求項22】
被験体から得られる比を被験体の家族遺伝歴と相関させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
被験体が、胸部X線、結腸直腸検査、内視鏡検査、MRI、CATスキャン、ガリウム・スキャン、およびバリウム画像化からなる群より選択されるさらなる検査に供される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
被験体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項25】
被験体に細胞増殖または新生物性障害を発症する素因があるかどうかを決定する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)ターゲット遺伝子発現のレベル増加を示す細胞を含む被験体を同定する工程;および
b)被験体由来の同一または異なる試料における未分化細胞対分化細胞の比を決定する工程、
ここで参照比に比較した際の未分化細胞対分化細胞の比が、被験体が細胞増殖または新生物性障害を発症する素因の指標となる。
【請求項26】
ターゲット遺伝子発現のレベル増加に、ターゲット遺伝子mRNAのレベル増加および/またはターゲット遺伝子にコードされるポリペプチドのレベル増加が含まれる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ターゲット遺伝子がH19またはIGF2から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
ターゲット遺伝子が、Igf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、およびMAPK遺伝子からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項29】
IGF2遺伝子発現のレベル増加に、IGF2 mRNAおよび/またはIGF2ポリペプチドのレベル増加が含まれる、請求項27記載の方法。
【請求項30】
被験体に細胞増殖または新生物性障害を発症する素因があるかどうかを決定する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)被験体由来の正常生物学的試料を、分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーと特異的に相互作用する固定化生体分子のアレイと接触させる工程;
b)生体分子の修飾を検出することによって、被験体プロフィールを得る工程、ここで修飾は、試料における分化細胞対未分化細胞の比の指標となる;および
c)被験体プロフィールを参照プロフィールと比較する工程、ここで参照プロフィールは1つまたは複数の値を含み、各値は、細胞増殖または新生物性障害を発症する素因がない1つまたは複数の参照被験体から得られる参照試料中のバイオマーカーレベルに相当する。
【請求項31】
被験体由来の同一または異なる生物学的試料における少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常発現を同定する工程をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
ターゲット遺伝子の異常発現がインプリンティングの喪失に直接または間接的に関連する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ターゲット遺伝子がH19またはIGF2遺伝子から選択される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
ターゲット遺伝子が、Igf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、およびMAPK遺伝子からなる群より選択される、請求項32記載の方法。
【請求項35】
生体分子がタンパク質である、請求項30記載の方法。
【請求項36】
タンパク質が抗体である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
生体分子が抗原である、請求項30記載の方法。
【請求項39】
生体分子が受容体である、請求項30記載の方法。
【請求項40】
修飾が、Shh、Tcf4、Lef1、Twist、EphB2、EphB3、Hes1、Notch1、Hoxa9、Dkk1、Tle6、Tcf3、Bmi1、Kit、Musashi1(Msi1)、Cdx 1、Hes5、Oct4、Ki-67、β-カテニン、Noggin、BMP4、PTEN (リン酸化PTEN)、Akt (リン酸化Akt)、Villin、アミノペプチダーゼN (anpep)、スクラーゼ・イソマルターゼ (SI)、Ephrin-B1 (EfnB1)、Cdx2、Crip、Apoa1、Aldh1b1、Calb3、Dgat1、Dgat2、Clu、Hephaestin、Gas1、Ihh (インディアン・ヘッジホッグ)、内因子B12受容体、IFABP、またはKLF4の、生体分子への結合である、請求項30記載の方法。
【請求項41】
細胞増殖もしくは新生物性障害、または細胞増殖もしくは新生物性障害に対する素因を検出するための診断キットであって、分化細胞対未分化細胞の指標となるバイオマーカーを検出するためのアレイであって、このアレイが複数のアドレスを有する基板(substrate)を含み、各アドレスがアドレス上に配置された固定化生体分子を有し、各生体分子が個々に、分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーを検出する、アレイと、任意で、このアレイを用いるための使用説明書とを含む、キット。
【請求項42】
少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常発現を示す細胞を含む被験体を同定するための手段をさらに含む、請求項41記載のキット。
【請求項43】
ターゲット遺伝子の異常発現がインプリンティングの喪失に直接または間接的に関連する、請求項41記載のキット。
【請求項44】
ターゲット遺伝子がH19またはIGF2遺伝子から選択される、請求項42記載のキット。
【請求項45】
ターゲット遺伝子が、Igf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、およびMAPK遺伝子からなる群より選択される、請求項42記載のキット。
【請求項46】
療法措置が細胞増殖または新生物性障害を予防するかまたは阻害するのに有効であるかどうかを決定する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクがある被験体を同定する工程;
b)被験体のターゲット組織における未分化細胞数の増加を阻害するかまたは予防する療法を、被験体に施行する工程;
c)被験体由来の非新生物性細胞を含む生物学的試料を、分化細胞または未分化細胞の指標となるバイオマーカーと特異的に相互作用する固定化生体分子のアレイと接触させる工程;
d)生体分子の修飾を検出することによって、被験体プロフィールを得る工程、ここで修飾は、試料における分化細胞対未分化細胞の比の指標である;および
e)被験体プロフィールを参照プロフィールと比較する工程、ここで参照プロフィールは1つまたは複数の値を含み、各値は、細胞増殖または新生物性障害を示さない1つまたは複数の参照被験体から得られる参照試料中のバイオマーカーレベルに相当する。
【請求項47】
細胞増殖または新生物性障害を発症するリスクがある被験体を同定する工程が、被験体から生物学的試料を得る工程、および少なくとも1つのターゲット遺伝子の異常発現を示す細胞を同定する工程を含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
ターゲット遺伝子の異常発現がインプリンティングの喪失に直接または間接的に関連する、請求項47記載の方法。
【請求項49】
ターゲット遺伝子がH19またはIGF2遺伝子から選択される、請求項47記載の方法。
【請求項50】
ターゲット遺伝子が、Igf1R、IRS-1、IRS-2、PI3K、Akt、p70S6キナーゼ、FOXO、GSK3、MDM2、mTOR、サイクリンD1、c-Myc、Shc、Grb2、SOS、Ras、Raf、MEK、Erk、およびMAPK遺伝子からなる群より選択される、請求項47記載の方法。
【請求項51】
決定を治療提供者(caregiver)に提供する工程をさらに含む、請求項46記載の方法。
【請求項52】
決定に基づいて療法を改変する工程をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
未分化細胞を調製する方法であって、より拘束された細胞を、より拘束された細胞を脱分化させて未分化細胞にする原因となる薬剤と接触させる工程を含み、ここでこの薬剤がH19遺伝子およびIGF2遺伝子の少なくとも1つのインプリンティングに影響を及ぼす、方法。
【請求項54】
拘束された細胞が非癌細胞である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
拘束された細胞が分化した細胞である、請求項53記載の方法。
【請求項56】
より分化した細胞に再拘束されることが可能な未分化細胞を含む、改変された細胞集団を産生する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)拘束された細胞を含む最初の細胞集団を、上皮組織由来の細胞におけるターゲット遺伝子のインプリンティング状態を調節する薬剤と接触させる工程;
b)細胞を培養する工程;および
c)細胞を未分化細胞と同定する工程、または改変された細胞集団から未分化細胞を回収する工程。
【請求項57】
ターゲット遺伝子がH19遺伝子およびIGF2遺伝子から選択される、請求項57記載の方法。
【請求項58】
未分化細胞を同定する工程、または改変された細胞集団から未分化細胞を回収する工程が、バイオマーカーを用いる工程を含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
バイオマーカーが、Shh (ソニック・ヘッジホッグ)、Tcf4、Lef1、Twist、EphB2、EphB3、Hes1、Notch1、Hoxa9、Dkk1、Tle6、Tcf3、Bmi1、Kit、Musashi1(Msi1)、Cdx 1、Hes5、Oct4、Ki-67、β-カテニン、Noggin、BMP4、PTEN (リン酸化PTEN)、Akt (リン酸化Akt)、Villin、アミノペプチダーゼN (anpep)、スクラーゼ・イソマルターゼ (SI)、Ephrin-B1 (EfnB1)、Cdx2、Crip、Apoa1、Aldh1b1、Calb3、Dgat1、Dgat2、Clu、Hephaestin、Gas1、Ihh (インディアン・ヘッジホッグ)、内因子B12受容体、IFABP、およびKLF4からなる群より選択される、請求項58記載の方法。
【請求項60】
癌が膵臓癌である、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−5799(P2013−5799A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160341(P2012−160341)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【分割の表示】特願2007−515664(P2007−515664)の分割
【原出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.フロッピー
3.ETHERNET
【出願人】(301059640)ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ (34)
【出願人】(506402458)ナショナル インティテュート オブ ヘルス (2)
【Fターム(参考)】