説明

細胞外コウジカビポリペプチド

本発明は、Aspergillus fumigatusの細胞外ポリペプチドに、これらのポリペプチドの断片に、そのようなポリペプチドおよび断片を含む組成物ならびにこれらのポリペプチドの露出ドメインおよびエピトープに関するものである。本発明は、抗体の免疫付与および産生へのこれらのポリペプチドおよび断片の使用に、そしてポリペプチドを認識および結合する抗体に関する。さらに本発明は、結合パートナーおよび阻害物質を同定する方法に、そしてコウジカビ感染を防止、処置および診断する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、2003年6月11日に提出されたU.S.provisional applications Serial No.60/477,355および2003年6月26日に提出されたSerial No.60/482,451の本出願である。
【0002】
本出願に引用されたすべての特許および非特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、Aspergillus fumigatusの細胞外ポリペプチドに、これらのポリペプチドの断片に、そのようなポリペプチドおよび断片を含む組成物ならびにこれらのポリペプチドの露出ドメインおよびエピトープに関するものである。本発明は、抗体の免疫付与および産生へのこれらのポリペプチドおよび断片の使用に、そしてポリペプチドを認識および結合する抗体に関する。さらに本発明は、結合パートナーおよび阻害物質を同定する方法に、そしてコウジカビ感染を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
免疫系を攻撃する疾患、例えばAIDSの発生、および免疫系を抑制する医療処置、例えば癌化学療法または臓器移植は、真菌感染によって引き起こされた死亡率の上昇をもたらした。1980年代半ばから、真菌病原体は多くの各種の医療施設にて、その細菌相対物と拮抗し始めた。アスペルギルスファミリーの種は、これらの真菌感染の相当な数を占め、特にAspergillus fumigatusは実質的にすべての主要な医療センターにおける院内感染のよくある理由として、世界的に出現してきた。ほぼ30年間に渡って、アンホテリシンBは、著しい腎臓毒性にもかかわらず重篤な真菌感染を処置するために承認された唯一の薬剤であった。アゾールは真菌感染の約50%の原因である最も一般的な真菌病原体、Candida albicansを処置するために、1980年代に採り入れられた。アゾールの広範囲におよぶ使用は、この薬剤に対する耐性菌株の発生を促した。運の悪いことに、ごく最近発売されたアゾールは、真菌疾患の最も重篤な形、例えばアスペルギルスによって引き起こされた感染に対して概して無効である。真菌病原体の薬剤耐性菌株の増加はさらに、新しい抗菌処置への要求を強調する。
【0005】
Aspergillus fumigatusは、環境、特に土壌中および水中で遍在的に見出される腐生細菌であり、乾草、穀物および腐りかけている有機物に非常に多くの数がただちに見出される。Aspergillus fumigatusは、環境中の炭素および窒素をリサイクルするのに不可欠な役割を果たす。病院の貯水槽および他の施設は、未濾過の空気、換気システム、建設工事中の汚染ダスト、カーペット類、食物、観賞用植物ならびに水および給水システムを含む。一般に、アスペルギルス症は胞子の外因性獲得の結果として発生すると考えられている;それらは吸入時に肺胞に達するのに十分な小ささ(2.5〜3.0μm)であり、媒介物中で長期間に渡って生存するのに十分な耐久性である。これはおそらく宿主の免疫状態によって変わるであろうが、どれくらいのサイズの感染性接種原が必要であるか不明なままである。約600の認識された種があるが、少数のみが病原性であるとして同定されている。この中で80%を超えるヒト感染を引き起こすA.fumigatusは、アスペルギルス種によって生じた。A.fumigatusは日和見病原体であり、正常な個体は大量の胞子の吸入後を除いて、疾患に感染しにくい。アスペルギルスは、少なくとも3つの方法:喘息におけるアレルギー性反応(アレルギー性アスペルギルス症);瘢痕化肺組織でのコロニー形成(アスペルギルス腫);および心臓、肺、脳および腎臓に影響を及ぼしうる肺炎による侵襲性感染(侵襲性アスペルギルス症)で疾病を引き起こすことができる。
【0006】
(アレルギー性アスペルギルス症)
第1のタイプのアスペルギルス症疾病において、アレルギー性喘息または遺伝性素因を持つ人々は、アスペルギルス種に感作されるようになるとこの形の喘息を発症することがある。喘息患者は、A.fumigatusへの暴露時にその喘息状態がさらに悪化することを見出す。一部の人々は、アスペルギルス胞子が発芽して、これに伴う菌糸の増殖が潜在的に気管支を閉塞させうるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を発症する。患者は、菌糸の小型褐色栓を喀出することがある。組織の侵襲はない。しかしながら患者は肺線維症を被り、時間が経つにつれて他の肺疾患にさらに罹患しやすくなる。現在、ABPAは、アスペルギルス種によって引き起こされる最も重篤なアレルギー性肺合併症である。それはアトピー性喘息または嚢胞性線維症を被っている患者に発生する。免疫介在性であるためだけでABPAに関連する別の疾患実体である、過敏性肺炎(外因性アレルギー性肺胞炎とも呼ばれる)は、特定された−−多くは職業上の−−高レベルの抗原源への反復暴露に関連していることが多い。
【0007】
(アスペルギルス腫)
普通は「真菌球」と呼ばれるアスペルギルス腫は、結核、サルコイドーシスによって引き起こされた前から存在する肺空洞、または他の水疱性肺障害および慢性副鼻腔閉塞にて発生する。
【0008】
(侵襲性アスペルギルス症(IA))
侵襲性アスペルギルス症(IA)は、正常な免疫系が他の深刻な疾患、例えば白血病、リンパ腫、癌腫、結核、気腫、糖尿病、HIV/AIDSによって、または免疫抑制薬(臓器または骨髄移植手術に関連して使用されることが多い)の使用によって;または高用量のコルチコステロイドに脅かされた人々に見られる。IAでは、肺組織または皮膚の実際の侵襲がある。感染は多くの臓器または組織、例えば心臓、肝臓、目、鼻、耳および骨格筋でも発生しうる。病的な侵襲性感染は、最終的に隣接構造への血流転移または接触蔓延につながる、下にある組織の明らかな侵襲を示す。IAの予後は、深刻な疾病および死亡である。
【0009】
過去12年間において、IAの4倍の増加が観察された。1992年にIAは、癌で死亡する患者における約30%の真菌感染に関与しており、IAはすべての白血病患者の10〜25%で発生することが推定され、その死亡率は処置されても80〜90%である。IAの平均発病率は、急性白血病患者の5〜25%、同種骨髄移植(BMT)後の5〜10%、そして血液疾患の細胞傷害処置または自家BMT後の0.5〜5%であると推定される。固形臓器移植に続くIAは、心肺移植患者で最も一般的であり(19〜26%)、減少順に肝臓、心臓、肺、および腎臓レシピエントに見出される(1〜10%)(Patel and Paya,1997,Clin.Microbiol.Rev.10:86−124)。IAは非造血性基礎症状を持つ患者でも発生する;それは近年、AIDS患者において1〜12%と報告されており)(Denning et al.,1991,N.Engl.J.Med.324:654−662)、慢性肉芽腫性疾患の一般的な感染性合併症でもある(25〜40%)4つのタイプのIAが説明されている(Denning,1998,Clin,Infect.Dis.26:781−805):(i)IAの最も一般的な形である、急性または慢性肺アスペルギルス症;(ii)主にAIDS患者に見られる、粘膜および軟骨の各種の侵襲度はもちろんのこと、偽膜形成も伴う気管気管支炎および閉塞性気管支疾患;(iii)急性侵襲性鼻副鼻腔炎;および(iv)一般に脳(BMT患者において10〜40%)および他の臓器(例えば皮膚、腎臓、心臓、および目)を含む播種性疾患。
【0010】
(コウジカビ感染の診断)
細菌感染とは異なり、血液または脳脊髄液または他の無菌体液からの培養物は−心内膜炎および播種性疾患の患者においても、アスペルギルス種について陽性であることはめったにない。胞子の遍在的性質を考えると、気道の培養物からのアスペルギルスの回収は、真の感染、コロニー形成または汚染を識別しない。多数の臨床所見は、侵襲性アスペルギルス症、例えば広範囲に渡る抗生物質に反応しない好中球減少性熱、胸部X線での新しい肺浸潤物の出現および侵襲性真菌症を示唆する臨床的症状(例えば胸膜炎性胸痛、喀血など)の存在の診断のきっかけとなる。運の悪いことに、これらのきっかけの大半は、低い予測値を有する。したがって精密な早期診断に達する唯一の方法は、培養および組織病理学検査(生検または針吸引による)のための検体を収集するために極度の努力をすることである。しかしながらこの標準手法は、血球減少によって、または患者の危機状態によって妨げられることが多い集中的な手順(開胸的肺生検、脳生検など)を含む。それゆえ最終的な診断は、真菌増殖が不可抗力的となる前にめったに行われず、治療はもはや成功しない。
【0011】
抗アスペルギルス抗体の検出は、これらの個体群が十分な抗体反応を起こすことができないため、好中球減少性患者および造血幹細胞移植レシピエントでのアスペルギルス症の診断に入る余地がない。現在使用されている診断ツールは、ガラクトマンナン検出(増殖中に放出される主要な細胞壁構成要素)、高解像度肺CTスキャン法およびアスペルギルスDNAの検出である。高い感度および高い選択性の両方を得ることは問題のままであり、新規な信頼性の高い診断マーカーへの要求がある。
【0012】
(現在利用できる抗アスペルギルス剤)
侵襲性アスペルギルス症の処置で現在利用できる抗真菌への装備は、数に限りがある。それは:
1.ポリエンマクロリド、アンホテリシンBおよびその脂質ベース調合物;
2.トリアゾール、イトラコナゾール;
3.フッ素化ピリミジン、5−フルオロシトシン;および
4.アリルアミン、テルビナフィン;
を含む。
他の真核細胞に存在しない高い選択性の真菌標的の欠如は、新しい薬剤の開発を長期に渡って妨げてきた。5−フルオロシトシンを除いて、利用できるすべての薬剤は、物理的阻害によって、あるいは膜ステロール生合成の遮断のどちらかによって、真菌原形質膜の構造的および機能的完全性を妨害することによって作用する。この方法は、治療標的の非選択的性質が哺乳類細胞での同時に生じる交互阻害(または毒性)をもたらすため、理想とは程遠いままである。
【0013】
抗真菌薬、例えばアンホテリシンBおよび/またはイトラコナゾールにより処置は、多くの問題点を含んでいる。アンホテリシンB、フルシトシンおよびイトラコナゾールは、低い成功率と関連しており、深刻な輸液または薬剤関連毒性によって、危険な薬剤間相互作用によって、薬物動態学的問題によって、そして耐性の発現によって阻害される。アンホテリシンBは、静脈により高用量で投与する必要がある。一部の患者では、腎臓および他の臓器を損傷することがある。IAのアンホテリシンB治療の全体の成功率は34%である。加えて、大半のIA症例は、抗菌剤に非反応性の熱に対応したアンホテリシンBの経験的投与にも関わらず発生する。イトラコナゾールは概して経口投与され(また高用量、例えば1日に少なくとも400mgで)、処置として長年使用されているが、それでも死亡率はなお85%の高さである。
【0014】
(ワクチン接種)
ワクチン接種は、コウジカビ感染と戦う別の手法である。上で説明したように、IAは、その後天的免疫反応すべてを失い、本質的に記憶力のない免疫不全患者、特に好中球減少性患者には深刻な問題であり、コウジカビ感染は大半の症例で致命的である。免疫抑制前のこれらの患者へのワクチン接種は、実行可能な方法でないように思われる。しかしながら骨髄ドナーのワクチン接種は、提供後感染のクリアランスを補助できる。免疫グロブリンによる受動免疫付与も選択肢である。現在までに、特異的免疫グロブリンの有効性に関する広範囲に渡る前臨床および/または臨床データは利用できない。しかしながら活性ワクチン接種がその死亡率に影響を及ぼした、マウスの侵襲性アスペルギルス症試験による報告がある(Ito and Lyons(2002)J.Infect.Dis.186,869−871)。
【0015】
(標的)
A.fumigatusはヒトの主要な真菌病原体になりつつあるため、A.fumigatusにおける適切な生化学標的の同定に対する、そしてそのような生化学標的に対して活性である新しい有効な抗真菌剤の発見および開発に対する差し迫った要求がある。近年、A.fumigatusゲノムがランダムショットガンDNA配列決定によって解析された。生存のために不可欠であることが既知のCandida albicans遺伝子との配列比較により、多数の潜在的に不可欠なA.fumigatus遺伝子が同定された(WO 02/086090)。そのような遺伝子は潜在的に興味のある薬剤標的であるかもしれないが、大半のコード化遺伝子産物の構造、機能または細胞内局在はまだ利用できない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
主な態様において、本出願はA.fumigatusの細胞外ポリペプチドに関する。本出願の文脈では、「細胞外ポリペプチド」は、真菌細胞の原形質膜の外側に全体的または部分的に(すなわちポリペプチド鎖の部分またはポリペプチド分子の個体群の一部)局在するポリペプチドとして定義される。細胞外ポリペプチドは、細胞外部分を有する原形質膜ポリペプチド、細胞壁ポリペプチド、周辺質ポリペプチド、分泌ポリペプチドおよび原形質膜外側の空間に十分にまたは部分的に暴露または放出された他のすべてのポリペプチドを含む。細胞外ポリペプチドはさらに、本明細書で述べるように単離された細胞壁−、細胞表面露出−および透析物画分に見出せるすべてのポリペプチドまたはポリペプチド断片を含む。
【0017】
細胞外ポリペプチドは、抗真菌治療および/または診断にとって魅力的な標的である。そのようなポリペプチドの細胞外空間への暴露は、これらのペプチドと相互作用する化合物(例えば真菌感染を防止、処置または診断するために使用される化合物)が有効となるためにしばしば原形質膜を通過する必要がないことを意味する。原形質膜は大半のタイプの化合物の主要な障壁を構成するため、このことは相当な利点である。
【0018】
真菌タンパク質の細胞外局在は通常は、そのアミノ酸配列から予測できない。分泌経路へのタンパク質の侵入に介在するシグナル配列の存在は、高度の確実性で予測できるが、そのような配列を持つ多くのタンパク質は、細胞内でコンパートメント、例えば小胞体、ゴルジ複合体、エンドソームおよびリソソーム内に残存している。A.fumigatusにおける局在化シグナルについては、ほとんど知られてない。
【0019】
原則として、A.fumigatusタンパク質の局在は、A.fumigatusよりもはるかに良好に特徴付けられている他の真菌、例えばSaccharomyces cerevisiaeまたは病原性酵母Candida albicansにおける、相同タンパク質の既知の局在から推測できる。しかしながら実際には、そのような推測は、非常に不確実性である。近年実施された推定上の輸送C.albicansタンパク質に関する遺伝子スクリーニングは、その最も近い相同体が細胞内タンパク質である、多数のそのようなタンパク質を同定した(Monteoliva et al.(2002)Eukaryotic Cell 1,514−525)。それゆえ利用できるA.fumigatusのゲノム配列を用いても、細胞外に見出せるポリペプチドを予測することは容易ではない。
【0020】
発明者らは、A.fumigatusの細胞壁−、細胞表面露出−および透析物画分を単離および解析して、それゆえ以下のポリペプチドの細胞外局在を決定した:
1.配列番号1で示されたポリペプチド。このポリペプチドは、ヌクレオチド配列に基づいて推定上の遺伝子産物として以前に提唱されただけであるため、以前はA.fumigatus内で検出されなかった。本明細書では、分生子表面および分泌タンパク質(Conidial Surface and Secreted protein)Iにちなんで、このポリペプチドをCssIと命名することを提唱する。
2.ハイドロフォビン(配列番号2)。Parta et al.(1994)Infect.Immun.62,4389−4395で以前に述べられた。
3.GAPDH−B、グリセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(配列番号3)。この配列の172アミノ酸断片は、NCBIデータベースに受託番号AAL25819(配列番号35)で述べられている。しかしながら全長ポリペプチドは、以前に述べられていない。
4.エノラーゼ(配列番号4)。NCBIデータベースに受託番号AAK49451で述べられた。
5.カタラーゼB(配列番号5)。NCBIデータベースに受託番号AAB71223で、およびCalera et al.(1997)Infect.Immun.65,4718−4724で述べられた。
6.カタラーゼA(配列番号6)。NCBIデータベースに受託番号U87630で述べられている。
7.イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(IMDH B)(配列番号36)。このA.fumigatusポリペプチドは、以前に述べられていない。
【0021】
これらのポリペプチドのいくつかでは、局在は以前には知られていなかった。すべてのポリペプチドで、発明者らによってコウジカビ感染の防止、治療または診断に有用である新規なポリペプチド断片が同定された。これらの断片のいくつかは、細胞外空間から比較的アクセス可能であるか、細胞外空間に放出される。
【0022】
第1の主要な態様において、本発明は、断片が配列番号35で示された配列より成らないという条件で、配列番号3で示されたポリペプチドならびにその変異体および断片に関する。
【0023】
別の主要な態様において、本発明は、配列番号36で示されたポリペプチドならびにその変異体および断片に関する。
【0024】
さらなる主要な態様において、本発明は、配列番号1−6および36で示されたポリペプチドに由来して、配列番号7−34および37で示された配列からの1つ以上のアミノ酸残基を含むポリペプチド断片に関する。本発明は、これらのポリペプチド断片の変異体にも関する。
【0025】
本発明は、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド断片の部分に含まれる、または部分を含む、露出されたドメインおよびエピトープにも関する。
【0026】
さらに本発明は、本発明の1つ以上の細胞外アスペルギルスポリペプチドまたはポリペプチド断片を含む組成物に関する。
【0027】
各種の細胞壁−、細胞表面露出−および/または透析物画分におけるポリペプチドの同定において発明者らによって使用された技法は、高度に発現されたタンパク質の同定に好都合である。それゆえ識別されたポリペプチドは比較的豊富である。これは、それらが細胞の細胞外環境に露出されるという決定に加えて、それらを生化学標的または診断マーカーとして高度に適切にした。それゆえ発明者によるこれらの画分中のこれらのポリペプチドの同定は、コウジカビ感染の防止、処置および/または診断を目的とする方法の開発のための基礎を作成した。
【0028】
したがって主要な態様において、本発明は、医薬を生成するための本発明のポリペプチドまたは断片の使用に関する。好ましくは、好ましくは保護免疫反応を生成するための、哺乳類、好ましくはヒトの免疫付与またはワクチン接種に使用できる医薬。
【0029】
さらに別の主要な態様において、本発明は、ヒト以外の哺乳類において、これらのポリペプチドまたはその断片に対して抗体を産生させる方法に関する。
【0030】
本発明はまた、さらなる主要な態様において、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH−B(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)からなる群より選択された細胞外Aspergillus fumigatusポリペプチドを結合できる抗体に関する。アスペルギルスによる感染の処置または予防用の医薬を製造するための、そのような抗体の使用も、本発明の態様である。それゆえ本発明は、本発明の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物にも関する。
【0031】
その上、本発明は、Aspergillus fumigatus感染および/または他の真菌感染を処置または防止する方法であって、本発明の抗体をその必要のある個体に投与するステップを含む方法に関する。
【0032】
さらに本発明は、これらの細胞外ポリペプチドの結合パートナーおよび/または阻害物質をスクリーニングする方法に、抗真菌剤をスクリーニングする方法に、およびコウジカビ感染の診断を目的とする方法に関する。
【0033】
(発明の詳細な説明)
(定義)
「断片」または「ポリペプチド断片」は、ポリペプチドの非全長部分として定義される。断片の長さは、2アミノ酸残基から全長ポリペプチド−1アミノ酸残基まで変化する。断片は好ましくは、長さが例えば50未満のアミノ酸などの100未満のアミノ酸、例えば30未満のアミノ酸などの40未満のアミノ酸、例えば20未満のアミノ酸などの25未満のアミノ酸である。それゆえ、例えば断片は長さが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のアミノ酸でありうる。さらなる実施形態において、断片は、9を超えるアミノ酸などの5を超えるアミノ酸、例えば15を超えるアミノ酸などの10を超えるアミノ酸、例えば30を超えるアミノ酸などの20を超えるアミノ酸を含む。別の方法で表現すると、断片は、全長ポリペプチドと比較して長さが100%未満であるアミノ酸配列の部分より成る。断片の長さは、全長ポリペプチドの長さの25%未満など、10%未満など、50%未満でもよい。他の実施形態において、断片の長さは、全長ポリペプチドの長さの10%を超えるなど、25%を超えるなど、5%を超えてもよい。
【0034】
所与のポリペプチドまたは断片の「変異体」は、前記ポリペプチドまたは断片に対するある程度の配列同一性を示すポリペプチドまたはペプチドである。変異体は好ましくは、所与のポリペプチドまたは断片と、少なくとも75%の配列同一性、例えば少なくとも85%の配列同一性などの少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも91%の配列同一性などの、少なくとも92%の配列同一性などの少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも94%の配列同一性などの少なくとも93%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性などの少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも98%の配列同一性などの少なくとも97%の配列同一性、例えば99%の配列同一性を有する。配列同一性は、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0のアルゴリズムGAP、BESTFIT、またはFASTAのいずれかによって、デフォルトギャップ重み付けを使用して決定される。
【0035】
所与のポリペプチドまたは断片の好ましい変異体は、変異体と所与のポリペプチドまたは断片との間のすべてのアミノ酸置換が保存的置換である変異体である。保存的アミノ酸置換は、同様の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンである;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンである;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンである;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンである;そして硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0036】
ポリペプチドまたはその断片の変異体は、1つ以上のアミノ酸が削除または挿入されたポリペプチドまたは断片の形も含む。好ましくは4未満などの5未満の、例えば2未満などの3未満の、例えば1個のみのアミノ酸が挿入または削除されている。ポリペプチドまたはその断片の「変異体」は、アミノ酸配列の翻訳後修飾によって修飾されたこれらのポリペプチドまたは断片の形も含む。所与のポリペプチドまたはその断片が(遺伝子レベルで、または翻訳後に)別のペプチドまたはポリペプチドに融合された、融合タンパク質も含まれる。
【0037】
「露出ドメイン」は、外部環境に露出されたポリペプチドの部分として定義される。細胞結合されていないポリペプチドの分泌または放出部分は、露出ドメインの例である。露出ドメインは、細胞結合されたポリペプチドにも見出すことができる。これは例えば、本明細書の実施例で述べたようにプロテアーゼ処理によって決定できる。すなわちポリペプチドの露出ドメインは、同じポリペプチドの他の部分よりも、プロテアーゼにより接近しやすい、トリプシンまたはキモトリプシンなどのポリペプチドの部分であり、細胞の完全性を混乱させることなく、プロテアーゼ処理によって細胞結合から放出可能である。ドメインの表面露出も、例えばSanjuan et al.(1996)Microbiology 142,2255−2262によって述べられたような間接免疫蛍光解析を使用して決定できる。原形質膜結合ポリペプチドの露出ドメインは、膜貫通領域に直接隣接して位置し、原形質膜の細胞外側に位置する、そのようなポリペプチドの一部である。露出ドメインは、膜貫通領域の両方に、または片側のみに隣接できる。膜貫通領域は、Moller et al.(2001)Bioinformatics 17,646−653で検討された各種の方法によって予測できる。好ましい実施形態において、原形質膜結合ポリペプチドの露出ドメインは、原形質膜の細胞外側に位置するポリペプチドの一部であり、TMHMM program 2.0(Krogh et al.(2001)J.Mol.Biol.305,567−580によって予測される膜貫通領域(膜貫通らせん)に直接隣接している。
【0038】
「エピトープ」はこの文脈で、抗体またはその機能的同等物によって認識可能なポリペプチドのすべての部分を含む。エピトープは、連続アミノ酸残基の、またはポリペプチドの非連続部分の伸展より成る。通例、エピトープは、3〜10のアミノ酸などの2〜20のアミノ酸、好ましくは3、4、5、6、7または8のアミノ酸などの3〜8のアミノ酸より成る。
【0039】
「発現ベクター」は、ポリヌクレオチド配列からポリペプチドを生成するためのプラスミドまたはファージまたはウィルスを指す。発現ベクターは、(1)遺伝子発現においてレギュレータの役割を有する1個または複数の遺伝子要素、例えばプロモータまたはエンハンサと、(2)mRNA内に転写され、タンパク質へ翻訳される、そして(1)の要素に動作可能に接続される、構造またはコード化配列と;(3)適切な転写開始および終結配列とのアセンブリを含む、発現コンストラクトを含む。
【0040】
「ワクチン」は、ヒトまたは動物における微生物に対して保護免疫反応誘発できる組成物を示すのに使用する。
【0041】
「保護免疫反応」は、生物に記憶を誘起して、一次反応よりもむしろ二次反応によって処理される感染因子を生じさせて、それゆえ宿主生物へのその影響を低減する免疫反応(液性/抗体および/または細胞)を示すのに使用される。
【0042】
ポリペプチドの「結合パートナー」は、前記ポリペプチドに結合可能な分子を指す。そのような結合は、別の分子を通じて間接的であることも可能であるが、好ましくは直接である。結合パートナーは、どのタイプの分子でも、例えば小型疎水性分子あるいは例えばタンパク質、炭水化物または核酸などの細胞または細胞外巨大分子でもよい。好ましいタイプの結合パートナーは、抗体、リガンドまたは阻害物質を含む。
【0043】
「複数」という用語は、1を超える、好ましくは10を超えることを指す。
【0044】
「分泌された」は本文脈において、細胞結合しておらず、それゆえ原則として周囲の溶媒に自由に拡散する可溶性ポリペプチドまたはその断片を指す。これは、例えばタンパク質分解によって、細胞結合から放出されたポリペプチドの断片を含む。
【0045】
「インジケータ部分」という用語は、検出可能であるか、検出可能な信号を生成する分子または分子の複合体を含む。好ましくは、インジケータ部分は抗体であるか、抗体分子を含む。それゆえ好ましいインジケータ部分は、検出可能な物質に結合された抗体である。検出可能な物質はある実施形態では、第2の抗体を含むことができる。
【0046】
「宿主由来分子」または「宿主分子」は、A.fumigatusによって感染可能な宿主生物に通常見出される分子を指す。宿主由来分子は好ましくは、宿主ポリペプチド、好ましくはヒトポリペプチドである。病原性菌類と相互作用する宿主由来分子の例は、血清アルブミンおよびトランスフェリン、フィブリノゲン、補体断片C3d、補体断片iC3b、ラミニン、フィブロネクチン、エンタクチン、ビトロネクチン、マンナンアドヘシン、上皮結合レクチン様タンパク質、およびアグルチニン様タンパク質である。
【0047】
「抗体」という用語は本明細書で使用する場合、抗体はもちろんのこと、その機能的同等物を含むものとする。それゆえこれは、ポリクローナル抗体、これに限定されるわけではないがマウス、ラット、ハムスター、ウサギおよびラマ、ヒトを含むいずれかの種に由来するモノクローナル抗体(mAbs))、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、およびFab断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリによって作成された断片、抗イディオタイプ抗体、抗体断片を含むハイブリッド、ならびにこれらのいずれかのエピトープ結合断片も含む。用語は、モノクローナル抗体の混合物も含む。
【0048】
本明細書で開示したポリペプチドおよびポリヌクレオチドに関連して使用される「単離された」は、同定および分離されたおよび/またはその自然環境の成分から回収されたものを指す。その自然環境の汚染物質成分は、通例、ポリペプチドのための診断および治療用途を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含む。
【0049】
(本発明のポリペプチド)
(細胞外アスペルギルスポリペプチドの断片)
発明者らが実施した3つの異なるアスペルギルス画分(透析物、細胞表面露出および細胞壁)の解析は、同じポリペプチドから画分のそれぞれについて、異なるタイプおよび数の断片の同定に至った。例えば実施例1で述べるように、5つのCssIペプチドが細胞壁画分で同定されたが、これに対して透析物および細胞表面露出画分では1つのみ同定された。この相違は、タンパク質の構造的特徴を示す。特定の理論に制限されることなく、これに関しての考えられる説明は、CssIの部分が細胞壁から開裂可能であり、タンパク質の一部が周囲環境に放出されて、同時にタンパク質の残りが細胞壁に埋め込まれたままであるということである。同様に他の説明が可能であるが、1つのペプチドのみが細胞表面画分で検出されたという事実は、そのペプチドを含むタンパク質のエリアが露出されており、これに対してタンパク質の残りが露出されていないことを示唆する。細胞壁などの他の細胞構造に埋め込まれていないポリペプチドの領域さえ、他の部分よりもさらに接近しやすい部分をなお含有している。例えばポリペプチドの表面は、第3級タンパク質構造内に埋められたポリペプチドの部分よりも接近しやすい。プロテアーゼ処理も、そのようなタンパク質表面領域を同定する。それゆえ発明者は、特に興味のあるタンパク質領域を同定した。露出ドメインはその接近のしやすさにより、診断のために、または抗真菌処置のために特に魅力的な標的である。その上、露出ポリペプチド断片またはドメインはエピトープに寄与しやすく、またはエピトープを含みやすく、それゆえ抗体認識に非常に適切である。以下で述べる用途の多くでは、発明者によって同定された断片よりも大きい断片で作業することが好都合である。このことは、場合によっては小さい断片ではうまくいかない、結合パートナーを同定する方法および免疫付与などの抗体を産生させる方法に特に当てはまる。
【0050】
主要な態様において、本発明は、露出ドメインおよび/またはエピトープを含む、細胞外アスペルギルスポリペプチドの断片に関する。本発明は、全長GAPDH−Bポリペプチド(配列番号3)に、そして全長イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素Bポリペプチド(配列番号36)にも関する。
【0051】
したがって主要な態様において、本発明は、アスペルギルスポリペプチドであって
配列番号7、8、17、26、28、29および/または30で示したアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが200未満などの259未満の、好ましくは100未満などの150未満のアミノ酸残基、例えば長さが25未満などの50未満のアミノ酸残基の、配列番号1の断片および前記断片の変異体;
配列番号9、10、18および/または19で示したアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが例えば75未満などの106未満のアミノ酸残基、好ましくは長さ25未満などの50未満の残基の、配列番号2の断片および前記断片の変異体;
ポリペプチドが配列番号3の断片ならば、この断片が配列番号35に示した断片であるという条件で、配列番号3、その断片およびその変異体を含むポリペプチド;
配列番号13、14、23、24および/または25で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが200未満などの437未満の、好ましくは75未満のなどの100未満などのアミノ酸残基、長さが例えば25未満などの、50未満のアミノ酸残基の、配列番号4の断片および前記断片の変異体;
配列番号15、16および/または27に示されたアミノ酸配列を含む、長さが727未満の、例えば200未満などの400未満の、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基、例えば長さが25未満などの50未満のアミノ酸残基の、配列番号5の断片および前記断片の変異体;
配列番号34で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが748未満の、例えば200未満などの400未満の、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基、例えば長さが25未満などの50未満のアミノ酸残基の、配列番号6の断片および前記断片の変異体;
および
配列番号36、その断片およびその変異体を含むポリペプチド;
からなる群より選択されるアスペルギルスポリペプチドに関する。
【0052】
好ましい実施形態において、上の断片は配列番号7−27および37で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む。さらに好ましい実施形態において、断片は、配列番号7−16で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む。別のさらに好ましい実施形態において、断片は配列番号17−25および/または配列番号14で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む。なお別のさらに好ましい実施形態において、断片は配列番号18、19、26、27、および/または37で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む。
【0053】
さらに好ましいポリペプチドは、配列番号7で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号7、8、17、26、28、29および/または30で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号17で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号8に示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号28で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号26で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号30で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号29で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが200未満のなどの259未満の、好ましくは100未満などの150未満のアミノ酸残基の、例えば長さが25未満などの50未満のアミノ酸残基の配列番号1の断片である。
【0054】
さらに好ましいポリペプチドは、配列番号9で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号9、10、18および/または19で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号18で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号10で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号19で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが75未満などの106未満のアミノ酸残基の、好ましくは長さが25未満などの50未満の残基の配列番号2の断片である。
【0055】
好ましいポリペプチドは、ポリペプチドが配列番号3の断片ならば、この断片が配列番号35で示された断片でないという条件で、配列番号3の断片を含む。好ましいのは、配列番号11で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号11、12、20、21、22、31、32および/または33で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号20で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号12で示されたアミノ酸の1つ以上の残基、例えば配列番号22で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号21で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号32で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号31で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号33で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが150未満などの171未満の、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸の、例えば長さが25未満などの50未満のアミノ酸残基の配列番号3の断片である。配列番号3の他の好ましい断片は、配列番号11、12、20、21および/または22で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが173残基〜317残基の断片または前記断片の変異体である。
【0056】
さらに好ましいポリペプチドは、配列番号13で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号13、14、23、24および/または25で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号23で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号14で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号25で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号24で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが200未満などの437未満の、好ましく75未満などの100未満のアミノ酸残基の、例えば長さが25未満などの50未満のアミノ酸残基の配列番号4の断片である。
【0057】
さらに好ましいポリペプチドは、配列番号15で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号15、16および/または27で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基、例えば配列番号27に示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基などの配列番号16に示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが727未満の、例えば200未満などの400未満の、好ましく75未満などの100未満のアミノ酸残基の、例えば長さが25未満などの50未満のアミノ酸残基の配列番号5の断片である。
【0058】
さらに好ましいポリペプチドは、配列番号34で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが748未満の、例えば200未満などの400未満の、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基の、例えば長さが25未満などの50未満のアミノ酸残基の配列番号6の断片である。
【0059】
好ましいポリペプチドは、配列番号36を含む、または配列番号36より成るポリペプチドを含む。さらに好ましいのは、配列番号37で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、長さが200未満などの367未満の、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基、例えば長さが25未満などの50未満のアミノ酸残基の配列番号36の断片である。1つの実施形態において、配列番号36および配列番号37におけるXはセリンである。別の実施形態において、配列番号36および配列番号37におけるXはアラニンである。さらなる実施形態において、配列番号36および配列番号37におけるXはロイシンである。別の実施形態において、配列番号36および配列番号37のXはイソロイシンである。それゆえ配列番号37および配列番号36の同等部分の異なる配列実施形態は、LAAELALR、LSAELALR、LAAEIALR、LSAEIALRを含む。
【0060】
好ましくは、配列番号の1−6および36の上で定義したポリペプチド断片は、規定されたアミノ酸配列の2、3、4、5、6、7、8または9残基などの、規定されたアミノ酸配列の1つを超える残基を含む。そのような好ましい断片の非制限的な例は、配列番号7で示されたアミノ酸配列の9残基を含む、配列番号1の断片である。最も好ましくは、上のポリペプチド断片は、規定されたアミノ酸配列のすべての残基を含む。最も好ましい断片の非制限的な例は、配列番号7で示されたアミノ酸配列の16残基すべてを含む配列番号1の断片である。
【0061】
1つの実施形態において、本発明のポリペプチドは好ましくは、配列番号7−34および37の群、好ましくは配列番号7−27および37の群、さらに好ましくは配列番号17−27、配列番号14および配列番号37の群より選択されるアミノ酸配列を含むドメインなどの露出ドメイン、またはその変異体より成る。露出ドメインは、定義の節で上述したように決定される。
【0062】
さらに好ましいポリペプチドは、配列番号7−27および37の群より選択されるペプチドからの少なくとも1つのアミノ酸を含む、配列番号1−6および36の群より選択されるポリペプチドのエピトープ、および前記エピトープの断片または変異体より成る。1つの好ましい実施形態において、エピトープのアミノ酸残基は、ポリペプチドの連続残基である。別の好ましい実施形態において、エピトープのアミノ酸残基は、ポリペプチドからの非連続残基である。さらに好ましい実施形態は、2を超えるなどの1を超える、好ましくは4を超えるなどの3を超える、配列番号7−27および37の配列の連続または非連続アミノ酸を含む。本発明は、本発明の方法のいずれかまたは好ましい方法における、そのようなエピトープの使用にも関する。
【0063】
(配列番号7−34および37の群より選択されるアミノ酸配列より成る、または本質的に成る断片)
本発明の好ましいポリペプチドは、配列番号7−34および37で示された断片の1つより本質的に成る、配列番号1−6および36で示されたポリペプチドの1つの断片である。「本質的に成る」は、断片が配列番号7−34および37からなる群より選択されるアミノ酸配列の実質的な部分を含み、それに加えてより小さい断片の片側または両側(N末端および/またはC末端)にあるポリペプチドからの10以下の隣接残基を含有することを示すものである。「実質的な部分」は本明細書では、配列番号7−34および37で示されたアミノ酸配列のいずれかの、少なくとも5などの少なくとも2のアミノ酸を意味する。それゆえそのような断片は、配列番号7−34および37の群より選択される対応する断片と重複する。好ましくは、配列番号7−34および37で示されたアミノ酸配列のいずれかより本質的に成る断片は、その配列のアミノ酸配列全体を含む。それゆえ本発明の好ましい断片は、配列番号7−34および37で示された断片の1つを含み、それより本質的に成る、配列番号1−6および36で示されたポリペプチドの1つの断片である。それゆえそのような断片は、配列番号7−34および37の群より選択される対応する断片よりも大きい。「含み、本質的に成る」は、より大きい断片が配列番号7−34および37の群より選択されるより小さいペプチドを含み、それに加えて小さい断片の片側または両側(N末端および/またはC末端)にあるポリペプチドからの10以下の隣接残基を含有することを示すものである。好ましくは、より大きい断片は、より小さい断片の片側または両側に、6未満などの8未満の、例えば4未満、例えば2またはわずか1などの3未満の残基を含有する。
【0064】
本発明の最も好ましいポリペプチドは、配列番号7−34および37の群より選択される断片である。それゆえそのような最も好ましいポリペプチドは、配列番号7で示された断片、または配列番号8で示された断片、または配列番号9で示された断片、または配列番号10で示された断片、または配列番号11で示された断片、または配列番号12で示された断片、配列番号13で示された断片、または配列番号14で示された断片、または配列番号15で示された断片、または配列番号16で示された断片、または配列番号17で示された断片、または配列番号18で示された断片、または配列番号19で示された断片、または配列番号20で示された断片、または配列番号21で示された断片、または配列番号22で示された断片、または配列番号23で示された断片、または配列番号24で示された断片、または配列番号25で示された断片、または配列番号26で示された断片、または配列番号27で示された断片、または配列番号28で示された断片、または配列番号29で示された断片、または配列番号30で示された断片、または配列番号31で示された断片、または配列番号32で示された断片、または配列番号33で示された断片、または配列番号34で示された断片、または配列番号37で示された断片などの、配列番号7−34および37で示された断片の群からの断片のいずれかを含む。本発明は、上の断片または本明細書で述べる他の断片のいずれかの変異体にも関する。
【0065】
好ましくは、断片は、配列番号7で示された断片、または配列番号8で示された断片、または配列番号9で示された断片、または配列番号10で示された断片、または配列番号11で示された断片、または配列番号12で示された断片、または配列番号13で示された断片、または配列番号14で示された断片、または配列番号15で示された断片、または配列番号16で示された断片、または配列番号37などの配列番号7−16および37で示された断片の群、あるいはこれらの断片のいずれかの変異体より選択される。
【0066】
(本発明の組成物)
本発明の1つ以上のポリペプチドを含む本発明の組成物は、各種の方法で、下で述べるような各種の用途に使用できる。1を超える本発明のポリペプチドをそのような組成物に含めると、重要な利点を備えることができる。例えば免疫付与またはワクチン接種は、複数のポリペプチドまたは断片が同時に導入されるときにさらに有効である。それゆえ主要な態様において、本発明は、本発明の1つ以上の細胞外アスペルギルスポリペプチドまたはポリペプチド断片を含む組成物に関する。本発明の好ましい組成物は、本発明の1つ以上の好ましいポリペプチド、すなわち上述のポリペプチドを含む組成物である。それゆえ本発明のいずれの好ましいポリペプチドも、本発明の好ましい組成物を生成するために使用できる。本発明の好ましい組成物は、本発明の1つ以上のポリペプチドおよび/または1つ以上のポリペプチド断片および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物である。
【0067】
(CssI、イソプロピルマレートデヒドロギナーゼBおよびGAPDH−B)
発明者によって同定された3つの細胞外ポリペプチド、すなわちCssI、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B、およびGAPDH−Bは特に興味深い。
【0068】
(CssI)
本文書は、CssI、新規な細胞表面露出/分泌タンパク質の最初の同定を示すデータを紹介する。このタンパク質は以前に、遺伝子予測プログラムの出力に基づいて仮定されていた。しかしながら発明者の研究は、このタンパク質の存在を確認し、表面に露出され、同時に周囲環境に分泌/放出も行われる分生子細胞壁結合タンパク質であることを明らかにした。このタンパク質の機能はまだ決定されていない。しかしながら透析物内でのその位置は、免疫反応を抑制する透析物の記録された能力の観点から興味深い(Hobson RP(2000)Med.Mycol.38,133−141)。この抑制活性に関与するタンパク質を同定する試みは現在までに成功していない。特定の理論に制限されることなく、CssIがこれらの機能に関与すると考えられたが、Aspergillus fumigatusにおける分子生物学研究を実施する基本的な問題点のために、これらの機能がCssIに帰するとは考えられなかった。タンパク質がLANA、すなわちヘルペスウィルスの転写レギュレータに相同性を示すことに注目するのは興味深い(以下実施例で参照)。再び特定の理論への制限なしに、CssIが同様の機能を所有する可能性が存在する。そうであるならば、CssIが真菌の内部にシグナルを送信する細胞外センサとして機能すると考えられる。あるいは、このタンパク質は宿主細胞への摂取時に活性となり、そこでその転写活性を利用して、真菌の利益のために宿主プロセスを妨害する。このタンパク質の他の考えられる機能は、宿主タンパク質の接着、侵襲、分生子細胞壁処理または酵素消化における役割を含む。
【0069】
(イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B)
イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(IMDH B)は、ロイシンの生合成に関与する酵素である。それは以前に、他の微生物にて細胞内で発見された。発明者は今や、A.fumigatusの細胞表面画分中でこのタンパク質を同定した。酵素の一次配列は、これまでのシグナル配列を明らかにせず、それゆえ酵素が細胞表面に輸送される方法に関して疑問が生じる。特定の理論に制限されることなく、タンパク質熱ショックタンパク質と相互作用することと、熱ショックタンパク質が膜でのIMDH Bの転位置を仲介することが考えられる。同様の機構がYoung et al.(2003)Cell 112:41−50で他のタンパク質について述べられている。
【0070】
(GAPDH−B)
発明者は、GAPDH−B、すなわち配列番号3のポリペプチドを最初に同定した。1つの態様において、本発明は配列番号3で示された配列、およびその変異体に関する。さらに本発明は、本発明の方法または好ましい方法のいずれかにおける配列番号3で示されたポリペプチドの使用に関する。
【0071】
GAPDHは、解糖で機能することが記録されている。特定の理論に制限されることなく、GAPDH−Bの細胞表面局在は、発芽の開始におけるこのタンパク質の役割を示唆しうる。環境条件が種の成長および繁殖とってさらに好ましくなったときに、休眠中の分生子がより発芽しやすいと仮定することは、論理的に見える。成長の1つの要求事項は、炭素源、例えばグルコースである。しかしながら休眠中の分生子は、その低代謝活性状態中に、外部環境条件を検知するある方法を持つ必要がある。細胞表面での解糖酵素の存在が細胞に外部環境が種の繁殖を支持するのに十分な状態であることを知らせるグルコース副生成物の生成を引き起こせることが考えられる。代わりに、または加えてタンパク質は、接着、侵襲、細胞内運動または細胞内生存などの他のプロセスで機能する。GAPDHタンパク質が細胞骨格成分に結合する能力を有することに注目するのも興味深い(例えばTisdale(2002)J.Biol.Chem.277,3334−3341を参照)。この機能は、基底膜に到達して、侵襲性疾患を引き起こすために、分生子に宿主細胞を横断できる機構を提供する。
【0072】
(ポリペプチドおよび断片の生成)
本発明のポリペプチドおよび断片は、当業界で既知の従来技法によって合成によって生成できる。あるいはそれらは異種宿主細胞で組換えによって生成できる。それゆえ本発明は、本発明のポリペプチドおよび断片をコード化するポリヌクレオチド配列、そのようなポリヌクレオチド発現ベクター、およびそのようなポリヌクレオチドまたは発現ベクターによって形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞も含む。本発明のポリヌクレオチドの包括的な例は、配列番号38および配列番号39のポリヌクレオチドである。適切な宿主細胞は哺乳類細胞、例えばCHO、COSまたはHEK293細胞でありうる。あるいは、昆虫細胞、細菌細胞または真菌細胞を使用できる。好ましい実施形態において、酵母細胞またはA.fumigatus以外の他のアスペルギルス種による細胞が使用される。上に挙げた細胞タイプでのポリヌクレオチド配列の異種発現および続いての生成ポリペプチドの精製の方法は、当業者に周知である。
【0073】
好ましくは、本発明のポリペプチド、断片およびポリヌクレオチドが単離される。
【0074】
(ワクチン接種)
真菌ポリペプチドまたはその断片の細胞外スペースへの露出は、宿主生物の免疫系によって検出されるようにすることが多い。さらにそのようなポリペプチドが本発明の細胞外ポリペプチドの場合などのように、比較的大きいコピー数を有する場合、そのようなポリペプチドまたはその断片は、抗体への標的として特に適切となる。
【0075】
重要な態様において、本発明は、医薬、好ましくはワクチンの製造について本明細書で定義したポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物のいずれか1つ以上に関する。そのような医薬は好ましくは、哺乳類におけるコウジカビ感染の防止(すなわち予防処置)に使用できる。そのような使用において、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物は、活性免疫付与またはワクチン接種に使用される。したがって本発明は、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物を活性成分として含む、コウジカビ感染を処置するための医薬にも関する。
【0076】
それゆえ本発明は、薬学的に受容可能なキャリアと
−配列番号1−6の細胞外Aspergillus fumigatus配列の群から選択される配列を含むポリペプチド、または前記配列のいずれかの抗原断片、あるいは
−前記ポリペプチドまたは断片をコード化する配列を含むポリヌクレオチド
を含むワクチンに関する。
【0077】
さらに本発明は、個体に本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物のいずれかの製薬的有効量を投与するステップを含む、処置の方法に関する。好ましくは、処置は、保護免疫反応を生成する。好ましくは、医薬はヒトの処置または予防処置に使用される。好ましい実施形態は、前記医薬の前記製造または処置の前記方法のための、配列番号1、2、3または36で示されたポリペプチドまたはこれらのポリペプチドの断片のいずれかの使用を含む。好ましくは本明細書で定義した好ましいポリペプチド断片のすべてを含む。
【0078】
本方法の好ましい実施形態において、前記ポリペプチドは配列番号1、2、3、5、6、および36の群より選択される。さらに好ましい実施形態において、提供されるポリペプチドは、CssI(配列番号1)またはその断片、好ましくは配列番号7、8、17、26、28、29および/または30で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。別のさらに好ましい実施形態において、提供されるポリペプチドはハイドロフォビン(配列番号2)またはその断片、好ましくは配列番号9、10、18および/または19で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。よりさらに好ましい実施形態において、GAPDH−B(配列番号3)またはその断片、好ましくは配列番号11、12、20、21、22、31、32および/または33で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む断片、あるいはGAPDH−3の変異体または断片が提供される。なおよりさらに好ましい実施形態において、提供されるポリペプチドは、カタラーゼA(配列番号6)またはその断片、好ましくは配列番号34で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。よりさらに好ましい実施形態において、提供されるポリペプチドは、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)あるいはその変異体または断片、好ましくは配列番号37で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む断片である。
【0079】
他の好ましい実施形態において、配列番号7で示された断片、または配列番号8で示された断片、または配列番号9で示された断片、または配列番号10で示された断片、または配列番号11で示された断片、または配列番号12で示された断片、または配列番号13で示された断片、または配列番号14で示された断片、または配列番号15で示された断片、または配列番号16で示された断片などの、配列番号7−34および37の群から選択される断片、好ましくは配列番号7−16の群から選択される断片が提供される。
【0080】
活性免疫付与またはワクチン接種は、DNA免疫付与技法を使用して間接的に、またはポリペプチドまたはその断片を使用して直接的に抗タンパク質抗体を産生することなどの、各種の方法で行われる。ポリペプチドは、前記哺乳類に2回などの1回超、例えば3〜5回などの3回、例えば10〜20回などの5〜10回、例えば50回超などの20〜50回投与される。各種のポリペプチドまたは断片は、同じ哺乳類に同時に、あるいは任意の順序で連続して投与することも考えられる。投与はいずれの方法によっても、例えば非経口的に、経口的にまたは局所的に行われる。好ましくは、しかしながらそれは注射、例えば筋肉内、皮内、静脈内または皮下注射によって、さらに好ましくは皮下または静脈内注射によって投与される。
【0081】
投薬量の決定、アジュバントおよび/または薬学的に受容可能なキャリアの使用などの、活性免疫付与のための適切なプロトコルを決定するための方法は、当業者に既知である。これに限定されるわけではないが、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、リゾレシチンなどの界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメットゲラン菌)およびCorynebacterium parvumなどの潜在的に有用なヒトアジュバントを含む各種のアジュバントを使用して、宿主種に応じて免疫反応を向上させることができる。
【0082】
(抗体)
別の主要な態様において、本発明は、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH−B(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)から選択される細胞外Aspergillus fumigatusポリペプチドを結合できる単離抗体に関する。
【0083】
好ましい実施形態において、抗体は、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)およびカタラーゼA(配列番号6)からなる群より選択されるポリペプチドを結合できる。さらに好ましくは、抗体は、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)およびCssI(配列番号1)からなる群より選択されるポリペプチドを結合できる。最も好ましくは、抗体はイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)を結合できる。
【0084】
抗体の標的ポリペプチドへの結合の好ましい親和性は、10−4M未満などの5×10−4M未満の、例えば10−5M未満などの5×10−5Mの、例えば10−6M未満などの5×10−6M未満の、例えば10−7M未満などの5×10−7M未満の、例えば10−8M未満などの5×10−8M未満の、例えば10−9M未満などの5×10−9M未満の、例えば10−10M未満などの5×10−10M未満の、例えば10−11M未満などの5×10−11M未満の、例えば10−12M未満などの5×10−12M未満の、例えば10−13M未満などの5×10−13M未満の、例えば10−14M未満などの5×10−14M未満の、例えば5×10−15M未満、または10−15M未満の、解離定数またはKdを持つものを含む。結合定数は、ELISA(例えばOrosz and Ovadi(2002)J.Immunol.Methods 270:155−162に述べられているような)または表面プラスモン共鳴解析などの、当業界で周知の方法を使用して決定できる。
【0085】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、インタクトなAspergillus fumigatus細胞を結合できる、すなわちその構造完全性を維持した生きたまたは死んだアスペルギルス細胞、好ましくは原形質膜の完全性を維持する(すなわち原形質膜が膜透過されていない)細胞を結合できる。抗体のインタクトな細胞への結合は例えば、本明細書の実施例で述べるように試験できる。
【0086】
さらなる好ましい実施形態において、本発明の抗体または少なくともそのFab断片は、本明細書の実施例で述べたようなインビトロアッセイ構成において、Aspergillus fumigatus分生子の肺上皮への接着を低減でき、好ましくは前記接着を少なくとも40%などの少なくとも20%、例えば少なくとも60%または少なくとも80%低減させる。
【0087】
さらに、本発明の抗体、または少なくともそのFab断片は、本明細書の実施例で述べたようなインビトロアッセイ構成において、Aspergillus fumigatus分生子の発芽を低減できることが好ましく、好ましくは前記接着を少なくとも40%などの少なくとも20%、例えば少なくとも60%または少なくとも80%低減させる。
【0088】
本発明の抗体は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号6および配列番号36の群より選択されるAspergillus fumigatus標的ポリペプチドを特異的に認識および結合できる。「特異的に」はこの文脈において、絶対特異性を意味するものではない。それゆえ「種特異的な」は、他の真菌からの相同ポリペプチドに結合できないことを示すときに使用される。
【0089】
ある実施形態において、本発明の抗体はAspergillus fumigatusポリペプチドを結合できることに加えて、別の真菌からの相同ポリペプチドを結合できる。例えばこれらの実施形態において、本発明の抗体はさらに相同ポリペプチドを結合可能であり、ここで相同ポリペプチドは、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH−B(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)からなる群より選択されるポリペプチドに対する42%以上などの39%以上の、例えば68%以上などの48%以上の、例えば90%以上などの80%以上を有する。好ましいのは、以下の種の1つを起源とする相同ポリペプチドを結合できる抗体である:
−Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、またはAspergillus oryzeaなどのコウジカビ種、
−Neurospora crassa、
−Saccharomyces cerevisiae、
−Candida albicansなどのカンジダ種、
−Coccidioides posadasii、またはCoccidioides immitisなどのCoccidioides種、
−Cryptococcus neoformans var.neoformansなどのCryptococcus種、
−Fusarium種、
−Pneumocystis種、
−アオカビ種、
−Histoplasma capsulatum。
さらに好ましくは、相同ポリペプチドは
−Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Aspergillus nigerまたはAspergillus oryzeaなどのコウジカビ種、
−Candida albicans、
−Coccidioides posadasii
または
−Cryptococcus neoformans var.neoformans
を起源とする。
【0090】
1つの詳細な実施形態において、本発明の抗体はさらに、配列番号41のポリペプチドなどのAspergillus fumigatusも起源とする相同ポリペプチドを認識する。
【0091】
上述の実施形態のタイプの好ましい実施例において、前記相同ポリペプチドは細胞外でもある。それゆえAspergillus fumigatusポリペプチドと相同ポリペプチドの両者に結合できる抗体は、相同ポリペプチドが発生する種のいずれか1つ以上のインタクトな細胞、すなわち:
−Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、またはAspergillus oryzeaなどの、Aspergillus fumigatus以外のコウジカビ種、
−Neurospora crassa、
−Saccharomyces cerevisiae、
−Candida albicansなどのカンジダ種
−Coccidioides posadasii、またはCoccidioides immitisなどのCoccidioides種、
−Cryptococcus neoformans var.neoformansなどのCryptococcus種、
−Fusarium種
−Pneumocystis種、
−アオカビ種、
および
−Histoplasma capsulatum
の1つを結合することができる。
【0092】
本発明の抗体の、相同ポリペプチドおよび/または他の真菌の他のインタクトな細胞への結合は、本明細書で実施例に述べた方法によって、または当業界で既知の他の標準方法によって試験できる。
【0093】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、4、5、6、7、8以上の連続アミノ酸の相同ポリペプチドとの同一性を有する配列番号36の領域などの、他の真菌からの相同ポリペプチドに対して著しい同一性を有する配列番号36の領域内に含まれる1つ以上のアミノ酸残基を結合できる。最も好ましくは、本発明の抗体は、完全に配列番号36のこれらの領域の1つに含まれる残基より成るエピトープを含む。特に以下の領域が好ましい:Ser67−Leu71、Ala74−Trp80、Ser191−Arg205、Leu268−Leu273、His292−Pro296、Glu355−Ile360、Asp193−Glu209、Asp193−Ala199、Ile15−Val19、Val75−Trp80、およびPro11−Glu18。さらに好ましいのは、配列番号37の1つ以上の残基を含む−配列番号36のエピトープに結合する抗体である。エピトープマッピングの方法は、当業界で周知である。
【0094】
実施形態の別のセットにおいて、本発明の抗体は1つ以上の別の真菌からのインタクトな細胞を結合できない。例えば1つのそのような実施形態において、抗体は
−Neurospora crassa、
−Saccharomyces cerevisiae、
−Candida albicans、
−Coccidioides posadasii、またはCoccidioides immitis、
−Cryptococcus neoformans var.neoformans、または
−Histoplasma capsulatum
のいずれのインタクトな細胞も結合できない。
さらに好ましくは、本発明の抗体は
−Aspergillus nidulans
−Aspergillus niger
−Aspergillus oryzea、
−Neurospora crassa、
−Saccharomyces cerevisiae、
−Candida albicans、
−Coccidioides posadasii、またはCoccidioides immitis、
−Cryptococcus neoformans var.neoformans、
または
−Histoplasma capsulatum
のいずれのインタクトな細胞も結合できない。
1つの詳細な実施形態において、本発明の抗体は、種特異的である、すなわちAspergillus fumigatus以外の他の真菌からの相同ポリペプチドまたはインタクトな細胞を結合できない。
【0095】
本発明は、本発明の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物にも関する。
【0096】
(抗体および機能的同等物の産生)
別の態様において、本発明は、非ヒト動物での配列番号1−6および36で示されたポリペプチドの群より選択されるポリペプチドに対する特異的抗体を産生する方法であって、
a.配列番号1−6および36で示されたポリペプチドの群より選択されるポリペプチドまたは本出願で定義したポリペプチド断片の群より選択されるポリペプチド、あるいはこれらのポリペプチドのいずれかを発現する細胞を提供するステップと、
b.前記ポリペプチドまたは前記細胞を含む組成物を前記動物に導入するステップと、
c.前記動物において抗体を産生するステップと、
d.抗体を単離して、場合により精製するステップと、
を含む方法に関する。
【0097】
上の方法の1つの実施形態において、提供されるポリペプチドはCssI(配列番号1)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。上の方法の別の実施形態において、提供されるポリペプチドは、ハイドロフォビン(配列番号2)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。上の方法のなお別の実施形態において、提供されるポリペプチドはGAPDH−B(配列番号3)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。上の方法のなおさらなる実施形態において、提供されるポリペプチドはカタラーゼA(配列番号6)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。そして上の方法のよりさらなる実施形態において、提供されるポリペプチドはイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)またはその断片、または前記ポリペプチドの変異体である。
【0098】
抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、およびFab断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリによって作成された断片、抗イディオタイプ抗体、抗体断片を含むハイブリッド、ならびにこれらのいずれかのエピトープ結合断片も含む。用語は、モノクローナル抗体の混合物も含む。
【0099】
ある実施形態において、本発明の抗体はポリクローナルである。ポリクローナル抗体は、発明者によって同定された細胞外ポリペプチドの1つ、あるいはその断片、エピトープまたは変異体などの、抗原によって免疫付与された動物の血清に由来する抗体分子の非相同的個体群である。ポリクローナル抗体の生成では、宿主動物はアジュバントを添加したポリペプチドを用いた注射によって免疫付与できる。免疫付与動物の抗体力価は、固定化ポリペプチドを使用したELISAなどの標準技法によって経時的に監視できる。所望ならば、抗体分子はIgG画分を得るために、動物から、例えば血液から単離して、タンパク質Aクロマトグラフィーなどの周知の技法によってさらに精製できる。
【0100】
それゆえ好ましい実施形態において、免疫反応を産生する上述の方法は、前記免疫反応で産生された抗体を単離および精製するステップdを含む。
【0101】
他の実施形態において、本発明の抗体はモノクローナルである。特定のエピトープに対する抗体の非相同性個体群であるモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞系による抗体分子の生成を規定するどの技法によっても得られる。これらは、これに限定されるわけではないが、Kohler およびMilsteinのハイブリドーマ技法((1975) Nature 256,495−497;およびU.S.4,376,110)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosbor et al.,1983,Immunology Today 4,72;Cole et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80,2026−2030)、およびEBV−ハイブリドーマ技法(Cole et al.,1985,Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)を含む。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそのすべてのサブクラスを含むいずれの免疫グロブリンクラスの抗体でもよい。好ましいクラスは、IgG1である。本発明のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマは、試験管内または生体内で培養できる。
【0102】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを作成する代わりに、本発明のポリペプチドに対して作られたモノクローナル抗体は、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリ(例えば抗体ファージディスプレイライブラリ)を興味のあるポリペプチドまたはその断片によりスクリーニングすることによって、同定および単離できる。ファージディスプレイライブラリを産生およびスクリーニングするためのキットが市販されている(例えばPharmacia Recombinant Phage Antibody System,Catalog No.27−9400−01;およびStratagene SurfZAPTM Pharge Display Kit,Catalog No.240612)。加えて、抗体ディスプレイライブラリの産生およびスクリーニングでの使用に特に適した方法および試薬の例は例えばU.S.5,223,409;WO 92/18619;WO 91/17271;WO 92/20791;WO 92/15679;WO 93/01288;WO 92/01047;WO 92/09690;WO 90/02809;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3,81−85;Huse et al.(1989)Science 246,1275−1281;およびGriffiths et al.(1993)EMBO J.12,725−734に見出せる。
【0103】
加えて、標準組換えDNA技法を使用して作成できる、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含むキメラおよびヒト化モノクローナル抗体などの組換え抗体は、本発明の範囲内である。
【0104】
キメラ抗体は、マウスmAbに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子などの、異なる部分が異なる動物種に由来する分子である(例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられているU.S.4,816,567;およびU.S.4,816,397を参照)。ヒト化抗体は、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する非ヒト種からの抗体分子である(例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられているU.S.5,585,089を参照)。そのようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、例えばWO 87/02671;European Patent Application 184,187;European Patent Application 171,496;European Patent Application 173,494;WO 86/01533;U.S.4,816,567;European Patent Application 125,023.Better et al.(1988)Science 240:1041−1043;Liu et al.(1987)Proc.Nitl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liu et al.(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sun et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nashimura et al.(1987)Cancer Res.47:999−1005;Wood et al.(1985)Nature 314:446−449;およびShaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559);Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oi et al.(1986)Bio/Techniques 4:214;U.S.Pat.No.5,225,539;Jones et al.(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534−1536;Beidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053−4060;and Westin Kwon et al.(2002)Clin.Diagn.Lab.Immunol.9,201−204に述べられている方法を使用して、当業界で既知の組換えDNA技法によって生成できる。
【0105】
非常に好ましい実施形態において、本発明の抗体はヒト抗体である。完全ヒト抗体は、ヒト患者の治療処置に特に望ましい。そのような抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖遺伝子を発現できないが、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを使用して生成できる。トランスジェニックマウスは、選択した抗原、例えば本発明のポリペプチドのすべてまたは断片によって、通常の方法で免疫付与される。抗原に対して作られたモノクローナル抗体は、例えば従来のハイブリドーマ技術を使用して得られる。トランスジェニックマウスによって内包されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子はB細胞分化中に転位し、続いてクラス転換および体細胞変異を受ける。それゆえそのような技法を使用すると、治療上有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を生成することが可能である。ヒト抗体を生成するこの技術の概要については、Lonberg and Huszar(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93)を参照。
【0106】
ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するこの技術ならびにそのような抗体を生成するプロトコルの詳細な議論については、例えばWO 02/43478;U.S.5,625,126;U.S.5,633,425;U.S.5,569,825;U.S.5,661,016;およびU.S.5,545,806を参照。選択したエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択」と呼ばれる技法を使用して産生できる。この手法では、選択した非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespers et al.(1994) Bio/Technology 12,899−903を参照)。
【0107】
ヒトモノクローナル抗体の生成に非常に適切な方法は、WO 04/035607(Genmab)およびWO 04/043989(Medarex)に述べられている。さらに同様の方法がWO 03/017935(Genmab)、WO 02/100348(Genmab)、WO02/064634(Medarex)およびWO 03/040169(Medarex)に述べられている。
【0108】
特異的エピトープを認識する抗体断片は、既知の技法によって産生できる。例えばそのような断片は、これに限定されるわけではないが:抗体分子のペプシン消化によって生成できるF(ab’)断片およびF(ab’)断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成できるFab断片を含む。あるいはFab発現ライブラリを作成すると(Huse et al.(1989)Science 246,1275−1281)、所望の特異性を備えたモノクローナルFab断片の迅速で容易な同定が可能となる。
【0109】
本発明の抗体は、2つの結合特異性を有する二重特異性抗体も含み、その少なくとも1つは、配列番号1−6および36の群より選択される、好ましくは配列番号1−4および36の群より選択されるポリペプチドに対する特異性である。
【0110】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は精製される。
【0111】
(抗体処置)
抗体は、哺乳類、好ましくはヒト、さらに好ましくは免疫不全患者の受動免疫付与に使用できる。抗体による処置は、コウジカビ感染を治療または防止するために行える。それゆえ本発明は、医薬、好ましくは真菌感染の処置または、好ましくはAspergillus fumigatus感染などのコウジカビ感染の予防処置(防止)のための医薬の製造への本明細書で定義した抗体の使用に関する。真菌感染の例は、侵襲性アスペルギルス症、アスペルギルス腫、およびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症などのアレルギー性アスペルギルス症である。
【0112】
別の方法で表現すると、本発明は、医薬として使用するための本明細書で定義したような抗体および本明細書で定義したような組成物に関する。本発明は、個体に本明細書で定義したような本発明の抗体の製薬的有効量を投与するステップを含む方法、および本発明の抗体を活性成分として含む、コウジカビ感染を処置するための医薬に関する。
【0113】
本発明の抗体は、以下の好ましい群に機械的に分割される:
1.抗真菌剤として作用する機能抑制抗体(すなわち真菌の生存度に影響を及ぼし、殺真菌および静真菌効果の両方を含む)。そのような抗体は、患者の免疫状態に関わらず有効なはずである。抗体のこのカテゴリは、疾患に必要なタンパク質を遮断する病原抑制抗体(接着/侵襲)、および発芽および/または胞子形成に必要なタンパク質を遮断する成長抑制抗体を含む。
2.食細胞殺菌を向上させるために設計されたオプソナイズ化抗体。そのような抗体の有効性は、患者の免疫状態によって変わるが、易感染性患者においてさえ食細胞殺菌を向上させることが確実に可能である。オプソナイズ化抗体は、補体および食菌を介した免疫系による排除を向上させる抗体も含む。
3.真菌表面成分に対して作られた、毒素または殺真菌剤などの治療部分、例えばリシンまたは放射性同位体に結合した抗体。治療部分を抗体に結合する技法は周知であり、例えばThorpe et al.(1982)Immunol.Rev.62,119−158を参照。これらの抗体も、患者の免疫状態に関わらず有効なはずである。
【0114】
標的および抗体のバリデーションは、当業界で既知の以下の方法によって行える:
−侵襲アッセイ−肺細胞中へのアスペルギルスの侵襲が防止されるかどうかを試験
−接着アッセイ−肺細胞への接着および肺細胞のコロニー形成が防止されるかどうかを試験
−発芽アッセイ−成長および発芽が防止されるかどうかを試験
−オプソナイズ化アッセイ−機能が阻害されるかどうか、そして排除が容易になるかどうかを試験
−凝集アッセイ−クランピングが防止されるかどうか、そして排除が容易になるかどうかを試験
−侵襲性疾患動物モデル−疾患が防止されるかどうかを試験
別の態様において、本発明は、抗体、例えば本発明のヒトモノクローナル抗体を含む組成物、例えば薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤はもちろんのこと、その他の既知のアジュバントおよび賦形剤を用いて、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995に開示されている方法などの従来技法に従って調合できる。
【0115】
薬学的組成物は、いずれの適切な経路および方式によっても投与できる。当業者によって認識されるように、投与の経路および/または方式は、所望の結果によって変化するであろう。本発明の薬学的組成物は、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、経直腸、経膣および/または非経口投与に適切な薬学的組成物を含む。経膣投与に適切な本発明の剤形は、当業界で適切であることが既知であるそのようなキャリアを含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー剤形である。本発明の組成物の局所または経皮投与のための投薬形は、粉剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、液剤、パッチおよび吸入薬を含む。
【0116】
薬学的組成物は好ましくは、非経口的に投与される。「非経口投与」および経口的に投与される」という表現は本明細書で使用するように、経腸および局所投与を除く、通常は注射による投与方式を意味し、制限なく静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および輸液を含む。1つの実施形態において、薬学的組成物は静脈内または皮下注射または輸液によって投与される。1つの実施形態において、本発明の抗体は、皮下注射によって結晶形で投与される、Yang et al.(2003)PNAS,100(12):6934−6939を参照。
【0117】
選択した投与経路に関わらず、薬学的に受容可能な塩の形または適切な水和形で使用される本発明の化合物、および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に既知の従来方法によって薬学的に受容可能な投薬形に処方される。
【0118】
本明細書で使用されるように、「薬学的に受容可能なキャリア」は、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤、抗酸化剤および吸収遅延剤、生理的に適合するそのようなものを含む。薬学的に受容可能なキャリアは、無菌注射液剤または分散剤を即時に調製するための、無菌水溶液または分散物および無菌粉末を含む。製薬的活性物質のためのそのような溶媒または薬剤の使用は、当業界で既知である。従来の溶媒または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の薬学的組成物でのその使用が考慮される。好ましくは、キャリアは非経口投与、例えば静脈内または皮下注射または輸液に適切である。薬学的組成物は通例、製造および保管条件下で滅菌および安定でなければならない。組成物は、液剤、マイクロエマルジョン、リポソームまたは高薬剤濃度に適した他の秩序構造として処方できる。本発明の薬学的組成物で利用される適切な水性または非水性キャリアの例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにエチルオレアートなどの注射用有機エステルを含む。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング材料の使用により、分散物の場合には必要な粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持できる。薬学的組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含有する。微生物の存在の防止は、滅菌手順と、各種の抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの包含との両方によって確実になる。糖、マンニトール、ソルビトール、グリセロールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含むことも望ましい。薬学的に受容可能な抗酸化剤、例えば(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システインヒドロクロライド、ナトリウムビサルフェート、ナトリウムメタビスルファイト、ナトリウムスルファイトなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えばアスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガラート、アルファトコフェロールなど;(3)金属キレート化剤、例えばクエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸なども含まれる。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアレート塩およびゼラチンを含めることによって引き起こすことができる。無菌注射溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて例えば上に挙げたような成分の1つまたは組合せと共に適切な溶媒に包含させることと、それに続く滅菌精密濾過によって調製できる。一般に、分散物は、塩基性分散媒および例えば上に挙げたものからの必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに活性化合物を包含させることによって調製である。無菌注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、前に滅菌濾過したその溶液から活性成分および追加の所望の成分の粉末を与える、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0119】
適切な場合、抗体は、適切な水和形または薬学的に受容可能な塩の形で使用される。「薬学的に受容可能な塩」は、親化合物の所望の生物活性を保持して、望ましくない毒性効果を一切付与しない塩を指す(例えばBerge,S.M.,et al.(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。そのような塩の例は、酸添加塩および塩基添加塩を含む。酸添加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの非毒性無機酸はもちろんのこと、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸に由来するものもを含む。塩基添加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属はもちろんのこと、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどのアミンに由来するものも含む。
【0120】
投与経路によって、活性化合物、すなわち抗体、および二重特異性/多重特異性分子は、化合物を不活性化する酸または他の自然条件から化合物を保護する物質内にコーティングできる。例えば化合物は、適切なキャリア、例えばリポソーム内で対象に投与できる。リポソームは、従来のリポソームと同様に、water−in−oil−in−water CGF乳濁剤も含む(Strejan et al.(1984)J.Neuroimmunol.7:27)。活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化システムを含む制御放出剤形などの、急速放出から化合物を保護するキャリアを用いて調製できる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーが使用できる。そのような剤形の調製方法は概して、当業者に既知である。例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J. R. Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照。
【0121】
薬学的組成物は、当業界で既知の医療器具を用いて投与できる。例えば好ましい実施形態において、本発明の治療用組成物はUS 5,399,163、US 5,383,851、US 5,312,335、US 5,064,413、US 4,941,880、US 4,790,824、またはUS 4,596,556で開示された器具などの皮下注射器具の必要なしに投与できる。本発明で有用な周知のインプラントおよびモジュールの例は:制御された速度で医薬を投薬するためのインプラント型マイクロ輸液ポンプを開示する、US 4,487,603;皮膚を通じて医薬を投与するための治療器具を開示する、US 4,486,194;正確な輸液速度にて医薬を送達するための医薬輸液ポンプを開示する、US 4,447,233;連続薬剤送達のための可変流インプラント型輸液装置を開示する、US 4,447,224;多室コンパートメントを有する浸透圧薬剤送達システムを開示する、US 4,439,196;および浸透圧薬剤送達システムを開示する、US 4,475,196を含む。多くの他のそのようなインプラント、送達システム、およびモジュールは当業者に既知である。
【0122】
ある実施形態において、本発明の抗体は生体内での適正な分布を確実にするように処方できる。例えば血液脳関門(BBB)は、多くの高度親水性化合物を排除する。本発明の治療用化合物に(所望ならば)BBBを通過させるために、それらは例えばリポソーム中に処方することができる。リポソームを製造する方法については、例えばUS 4,522,811;US 5,374,548;およびUS 5,399,331を参照。リポソームは、特異性細胞または器官内に選択的に送達される1つ以上の部分を含み、それゆえ標的化薬剤送達を向上させる(例えばV.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685)。標的部分の例は、葉酸塩またはビオチン(例えばLow et alへのUS 5,416,016を参照);マンノシド(Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038);抗体(P.G.Bloeman et al.(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180);表面活性剤タンパク質Aレセプタ(Briscoe et al.(1995)Am.J.Physiol.1233:134)、本発明の分子の成分と同様に、本発明の調合物を含む異なる種;p120(Schreier et al.(1994)J.Biol.Chem.269:9090)を含む;K Keinanen;M.L.Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;J.J.Killion;I.J.Fidler(1994)Immunomethods 4:273も参照。本発明の1つの実施形態において、本発明の治療化合物はリポソーム中で処方される;さらに好ましい実施形態において、リポソームは標的部分を含む。最も好ましい実施形態において、リポソーム内の治療化合物は、ボーラス注射によって所望のエリアに隣接した部位、例えば感染部位に送達される。組成物は容易な注射可能性が存在する程度まで流動性でなければならない。製造および保管の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されねばならない。
【0123】
さらなる実施形態において、本発明の抗体は、胎盤を介したその輸送を防止または低減するために処方できる。これは当業界で既知の方法によって、例えば抗体のPEG化によってまたはF(ab’)2断片の使用によって行える。さらなる参照は「Cunningham−Rundles」 C, Zhuo Z,Griffith B,Keenan J.(1992) Biological activities of polyethylene−glycol immunoglobulin conjugates. Resistance to enzymatic degradation.J Immunol Methods.152:177−190;およびLandor M.(1995)Maternal−fetal transfer of immunoglobulins,Ann Allergy Asthma Immunol 74:279−283に行える。
【0124】
投薬計画は、最適な所望の反応(例えば治療反応)を提供するように調整される。例えばシングルボーラスが投与され、複数に分割された用量が経時的に投与されるか、または用量は治療状況の要求によって指示されるように比例的に削減または増加される。投与の容易さおよび投薬の均一性のために、非経口組成物を投薬単位形で処方することが特に好都合である。本明細書で使用するように投薬単位形は、処置される対象の1回投薬量に適した物理的に別個の単位を指す;各単位は、要求された製薬的キャリアと共に要求された治療効果を生成するように計算された活性化合物の規定量を含有する。本発明の投薬単位形についての明細は、(a)活性化合物の独自の特徴および達成される特定の治療効果、ならびに(b)そのような活性化合物を個体の感受性の処置のために調合する業界において固有の制限によって指示されるか、直接それらに依存する。本発明の薬学的組成物における実際の投薬レベルは、患者に対して毒性とならずに、特定の患者、組成物、および投与方式に関して要求された治療反応を達成するために有効な活性成分の量を得るため変更できる。選択した投薬レベルは、利用される本発明の特定の組成物、あるいはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、利用される特定の化合物の排出速度、利用される特定の組成物と併せて使用される処置、他の薬剤化合物および/または物質の持続時間、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般健康状態および以前の病歴、ならびに医療界で周知の同様の因子を含む、各種の薬物動態学的因子に依存するであろう。当業界の医師または獣医師は、要求された薬学的組成物の有効量をただちに決定および処方できる。例えば医師または獣医師は、薬学的組成物中で利用される本発明の化合物の用量を、要求された治療効果を達成するために要求された用量よりも低いレベルで開始して、要求された効果が達成されるまでその投薬量を徐々に増加することができる。一般に、本発明の組成物の適切な1日用量は、治療効果を生成するのに有効である最も少ない用量である化合物のその量となるであろう。そのような有効な用量は概して、上述の因子に依存するであろう。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下であることが好ましく、好ましくは標的部位に隣接して投与される。所望ならば、治療組成物の有効な1日用量は、その日の間に適切な間隔で個別に投与される2、3、4、5または6回以上のサブ用量として、場合により単位投薬形で投与できる。本発明の化合物は単独で投与することが可能であるが、化合物を製薬剤形(組成物)として投与することが好ましい。
【0125】
1つの実施形態において、本発明による抗体は、200〜400mg/m2などの10〜500mg/m2の1週または1日投薬量で輸液によって投与できる。そのような投与は、例えば3〜5回などの1〜8回反復できる。投与は、2〜12時間などの2〜24時間の期間に渡る連続輸液によって実施できる。別の実施形態において、毒性副作用を低減するために、ヒトモノクローナル抗体を低速の連続輸液によって、24時間超などの長期間に渡って投与できる。なお別の実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、例えば300mg、500mg、700mg、1000mg、1500mgまたは2000mgなどの250mg〜2000mgの1週用量で、4〜6回などの最大8回に渡って投与できる。投与は、2〜12時間などの2〜24時間の期間に渡って、連続輸液によって実施される。そのような投与計画は、例えば6ヶ月または12ヶ月後に1回以上反復される。まだ別の実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は維持療法によって、6ヶ月以上の期間に渡って例えば週1回などで投与できる。
【0126】
(併用処置)
本発明の薬学的組成物は、本発明の抗体の1つまたは組合せを含有する。それゆえさらなる実施形態において、薬学的組成物は、異なる機構で作用する本発明の複数の(例えば2つ以上の)単離された抗体の組合せを含む。
【0127】
本明細書で定義する抗真菌感染の処置、例えば本明細書で定義する細胞外アスペルギルスポリペプチドを特異的に認識および結合する抗体による受動免疫付与も、他のタイプの療法、例えば他の抗真菌療法と併用できる。それゆえそれに結合した治療部分を持つまたは持たない抗体は、単独でまたは抗真菌化学療法薬または他の治療剤と組合せて投与される治療薬として使用できる。例えば本明細書で定義する抗体を用いた処置は、アゾール(例えばフルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール)、アンホテリシンB、フルシトシンなどの抗真菌化合物、またはカスポファンギンなどのエキノカンジンを用いた処置と併用できる。あるいはまたは加えて、本明細書で定義する抗体を用いた処置は、他の抗真菌抗体、例えばMycograbなどのHSP90に対して作られた抗体を用いた処置と併用できる(Matthews et al.(2003) Antimicr.Agents and Chemotherapy 47:2208−2216)。
【0128】
併用療法はある状況においては、単一成分療法よりも効果的でありうる。併用療法は、複数の真菌種による感染に苦しむ患者、例えばCandidaおよびコウジカビ感染の両方を有する患者にとって特に有用でありうる。
【0129】
(細胞外ポリペプチドの結合パートナーおよび阻害物質)
抗体に加えて、細胞外ポリペプチドに対する他のタイプの結合パートナーを同定することが興味深い。病原性真菌の細胞外ポリペプチドは、宿主生物と相互作用することが多い。細胞外ポリペプチドの結合パートナーはいずれのタイプも宿主−病原菌相互作用を妨害する。それゆえ結合パートナーは、真菌の病原性をアンタゴナイズする。
【0130】
配列番号1−6および36で示された細胞外ポリペプチド、またはその断片の結合パートナーの同定は、本発明の別の主要な態様である。これは生化学的または細胞ベースの方法を使用して行われる。
【0131】
(生化学的方法)
主要な態様において、本発明は、本発明のポリペプチドおよび/または配列番号1−6および36の群より選択されるポリペプチドの結合パートナーを同定する方法であって、
a.本発明で定義した本発明のポリペプチドまたは配列番号1−6および36の群より選択されるポリペプチドを提供するステップと、
b.前記ポリペプチドを推定上の結合パートナーに接触させるステップと、
c.前記推定上の結合パートナーが前記ポリペプチドに結合できるかどうかを判定するステップと
を含む方法に関する。
【0132】
それゆえ上の方法の1つの実施形態において、提供されるポリペプチドはCssI(配列番号1)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。別の実施形態において、提供されるポリペプチドはハイドロフォビン(配列番号2)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。別の実施形態において、提供されるポリペプチドはGAPDH−B(配列番号3)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。なお他の実施形態において、提供されるポリペプチドはカタラーゼB(配列番号5)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。さらなる実施形態において、提供されるポリペプチドはカタラーゼA(配列番号6)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。よりさらなる実施形態において、提供されるポリペプチドはイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)またはその断片、あるいは前記ポリペプチドの変異体である。
【0133】
本発明の本方法の好ましい実施形態において、前記ポリペプチドは、配列番号1で示されたポリペプチド、または配列番号2で示されたポリペプチド、または配列番号3で示されたポリペプチド、または配列番号5で示されたポリペプチド、または配列番号6で示されたポリペプチド、または配列番号36で示されたポリペプチドなどの、配列番号1,2、3、5、6、および36の群より選択される。他の好ましい実施形態において、配列番号7−34および37で示された配列の1つ以上のアミノ酸残基を含む配列番号1−6および36で示されたポリペプチドの1つの露出ドメイン、エピトープまたは断片がステップaで提供される。さらなる好ましい実施形態において、配列番号7−34および37の群より選択される断片、好ましくは配列番号7−27および37の群から選択される断片、または配列番号7−27および37で示されたアミノ酸配列のいずれかの断片の変異体が提供される。
【0134】
本方法の好ましい実施形態において、例えばカラムまたはマイクロタイタープレートなどの固体担体に固定化されたポリペプチドまたはその断片が提供され、接触ステップの後に、推定上の結合パートナーが固体担体に結合されたかどうかが判定される。ポリペプチドまたはその断片の固定化は、固体担体への直接結合によるか、または例えば特異的抗体を使用した間接結合による。検出の特異性を改善するために、好ましい実施形態において、接触ステップと判定ステップの間に洗浄ステップが実施される。さらなる好ましい実施形態において、推定上の結合パートナーが標識される。推定上のパートナーは、接触が行われる前に標識できる。あるいは標識は接触ステップの後にも実施できる。さらに本方法のある実施形態において、ポリペプチドまたはその断片が結合パートナーに結合された後に、固定化が実施される。好ましい実施形態において、方法は複数の推定上の結合パートナーについて反復される。推定上の結合パートナーは宿主由来分子を含む。
【0135】
あるいは本発明のポリペプチドまたは配列番号1、2、4、5、6および36の群より選択されるポリペプチドの結合パートナーは、以下のように同定される:精製された宿主膜は電気泳動によって分離され、膜へブロットされて、興味のあるポリペプチドまたはその断片を用いて培養される。次に結合は、興味のあるポリペプチドまたはその断片に特異的な抗体を使用して検出できる。ポリペプチドまたはその断片が結合した宿主結合パートナーは続いて、ブロットからの溶離および質量分析法による、または当業界で既知の他の技法による続いての解析によって同定できる。
【0136】
病原性生物の細胞外ポリペプチドの結合パートナーが宿主由来分子である場合、細胞外ポリペプチドと宿主とのそのような相互作用は真菌の病原性にとって重要である。それゆえ細胞外ポリペプチドと宿主結合パートナーとの相互作用を妨害する化合物は、真菌感染の防止または処置に適切である。したがって本発明の別の方法は、配列番号1−6および36の群より選択される細胞外アスペルギルスポリペプチドまたはその断片と宿主結合パートナーとの相互作用のインヒビターを同定する方法であって:
a.配列番号1−6および36の群より選択されるポリペプチド、またはその断片を提供するステップと、
b.前記ポリペプチドの宿主由来結合パートナーを提供するステップと、
c.前記相互作用の推定上のインヒビターの非存在下で、前記ポリペプチドを前記宿主由来結合パートナーと接触させるステップと、
d.前記推定上のインヒビターの存在下で前記ポリペプチドを前記宿主由来結合パートナーと接触させるステップと、
e.ステップdから発生した前記ポリペプチドの前記宿主由来結合パートナーへの結合強度が、ステップcから生じた結合強度と比較して低下したかどうかを判定するステップと、
を含む方法に関する。
【0137】
ある実施形態において、ステップcおよびdは、2つの異なるサンプルコンパートメントにて実施される。他の実施形態において、ステップdは、推定上のインヒビターをステップcの混合物を添加することによって実施される。好ましい実施形態において、配列番号7−34および37の群より選択される断片は、ステップaにおいて提供される。他の好ましい実施形態において、配列番号1、2、3、5、6、または36のポリペプチドが提供される。さらなる好ましい実施形態において、方法は複数の推定上の阻害物質について反復される。さらに特に興味深いのは、細胞外ポリペプチドの活性を阻害する結合パートナーである。そのような活性は、酵素活性、輸送活性、またはいずれかのタイプの他の生化学または細胞活性、好ましくは酵素活性である。IMDH B、GAPDH、エノラーゼまたはカタラーゼの阻害物質は、CALBIOCHEM,cat.no.219263のカタラーゼアッセイキットなどの酵素の既知の生化学アッセイ、そして例えばPirrung et al.(1996)J Org Chem 61,4527−4531;Bartolini et al.(2003)J.Chromatogr.987,331−340;Lai et al.(1991)Plant Mol.Biol.16,787−795;Machida et al.(1996)Biosci Biotechnol Biochem 60,161−163;およびMaitra and Lobo(1971)J Biol Chem 246,475−88に述べられているアッセイを使用してスクリーニングされる。
【0138】
(細胞ベースの方法)
それに対する構造遺伝子の削除または破壊による、または遺伝子発現のダウンレギュレーション(以下を参照)による細胞外ポリペプチドのレベルの低下は、真菌細胞に影響を及ぼす。細胞は、細胞傷害性化合物に対してより感受性になる。細胞外ポリペプチドでは特に、そのレベルの低下は、原形質膜または細胞壁などの細胞の外部の部分が細胞への化合物の侵入を防止する機能に影響を及ぼす。それゆえ細胞外ポリペプチドのレベルの低下は、各種の化合物に対して細胞をさらに浸透性にすることができる。
【0139】
本発明の態様は、抗Aspergillus fumigatus活性を備えた化合物を同定する方法であって、
a.配列番号1−6および36の群より選択されたポリペプチドの低下したレベルを有する感作細胞を提供するステップと、
b.推定上のインヒビターに対する前記細胞の感受性を例えば増殖アッセイによって判定するステップと、
を含む方法に関する。
【0140】
好ましい実施形態において、配列番号1、2、3、5、6、および36の群より選択されるポリペプチドの低下したレベルを有する感作細胞は、ステップaで提供される。本方法のなおさらに好ましい実施形態において、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH(配列番号3)、カタラーゼA(配列番号6)、またはイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)の低下したレベルを有する感作細胞が提供される。
【0141】
本手法に隠れた原理は、より低いレベルの細胞外ポリペプチドを備えた細胞が細胞傷害性化合物に対する感受性の上昇を示して、本アッセイに野生種細胞を使用したときに見落とされる低い有効性を備えた抗真菌化合物の同定を可能にするということである。本方法により同定された化合物は、有効性を改善するために修飾する必要があることが多い。これは、化学修飾によって行える。好ましい実施形態において、方法は複数の推定上の結合パートナーについて反復される。
【0142】
細胞外ポリペプチドの活性の阻害は、真菌の生存度(すなわち生存、成長および/または増殖)に影響を及ぼす。特に興味深いのは、A.fumigatusの生存度に不可欠である細胞外ポリペプチドの阻害である。アスペルギルス遺伝子の不可欠性は、例えば、WO 02/086090に述べられているような調節可能な発現を使用して調査できる。必須細胞外ポリペプチドの阻害物質は、その生存度に影響を及ぼせるようになるために、真菌細胞に侵入する必要はない。それゆえ抗真菌剤として有効となるために、概して細胞内標的のインヒビターよりも少ない要求事項が、必須細胞外標的ポリペプチドのインヒビターの構造に負わされる。
【0143】
それゆえ本発明は、配列番号1−6および36の群より選択される細胞外Aspergillus fumigatusポリペプチドのインヒビターを同定する方法であって、
a.配列番号1−6および36の群より選択されるポリペプチドのレベルが異なる2つの細胞を提供するステップと、
b.推定上のインヒビターに対する前記細胞の感受性を例えば増殖アッセイによって判定するステップと、
c.前記2つの細胞が前記推定上のインヒビターの存在下によって受ける影響が異なるかどうかを判定するステップと、
を含む方法に関する。
本手法に隠れた原理は、必須ポリペプチドの活性がより低い細胞の生存度は、より高いレベルを備えた細胞の生存度よりも、ポリペプチドのインヒビターによって影響されるであろうということである。2つの細胞が異なる影響を受ける場合、これはインヒビターが標的に対して、または同じ生化学経路で作用する表れである。本方法の好ましい実施形態において、前記ポリペプチドはCssI(配列番号1)、GAPDH(配列番号3)、カタラーゼA(配列番号6)、またはイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)である。
【0144】
本方法のある実施形態において、興味のあるポリペプチドの異なる活性を備えた2つの細胞は、野生種細胞(興味のある遺伝子の野生種活性を備えた他の細胞)および興味のあるポリペプチドの低下した活性を備えた感作細胞である。ある実施形態において、感作細胞中の異なるまたは低下したレベルは、(ポリペプチドの異なるまたは減少したコピー数を生じる)興味のある遺伝子の異なるまたは低下した発現レベルでありうる。これは、遺伝子を調節可能なプロモータの制御下に置くことによって、または必須ポリペプチドをコード化するmRNAの翻訳を阻害するアンチセンスRNAによる調節可能な発現によって実施できる。他の実施形態において、異なるまたは低下した活性は、例えば温度感受性変異などの変異のために、興味のあるポリペプチドの異なるまたは低下した活性でありうる。好ましい実施形態において、方法は複数の推定上の結合パートナーについて反復される。
【0145】
感作細胞を産生する、および阻害物質のスクリーニングでのこれらを使用する適切な方法は、WO 02/086090に述べられている。感作細胞は、真菌生存度に必要な遺伝子産物のレベルを供給するインデューサまたはリプレッサの濃度の存在下で、その機能の存在または非存在が生存度の速度決定ステップとなるように条件発現A.fumigatus突然変異株を成長させることによって得られる。アスペルギルスのそのような条件発現突然変異体を作成するための多数の適切な調節可能なプロモータが、WO 02/086090、76ページ34行〜85ページ4行に述べられている。例えば調節可能なプロモータがテトラサイクリンによって抑圧される場合、条件発現Aspergillus fumigatus突然変異株は、テトラサイクリンの部分的に抑制された濃度の存在下で成長する。インデューサまたはリプレッサの致死量未満の濃度は、アッセイの目的とする使用と一致するいずれの濃度でもよい。例えばインデューサまたはリプレッサの致死量未満の濃度は、成長阻害が、少なくとも約25%などの少なくとも約10%、例えば少なくとも約75%などの少なくとも約50%、例えば少なくとも95%などの少なくとも90%であるようになる。
【0146】
同様に、毒性または病原性に必要とされる遺伝子産物の速度制限量を発現する候補化合物に暴露された細胞の毒性または病原性は、毒性または病原性に必要とされる遺伝子産物の発現のレベルが速度制限的でない候補化合物に暴露された細胞の毒性または病原性に比較される。そのような方法において、試験動物は、条件発現A.fumigatus突然変異株を用いて攻撃され、テトラサイクリンおよび候補化合物の要求された量を含有する食餌を与えられる。それゆえ試験動物を感染させる条件発現突然変異株は、毒性または病原性に必要とされる遺伝子産物の速度制限量を発現する(すなわち試験動物中の条件発現突然変異細胞は感作される)。対照動物は、条件発現突然変異株によって攻撃され、候補化合物を含有するが、テトラサイクリンが欠如した食餌を与えられる。試験動物中の条件発現A.fumigatus突然変異株の毒性または病原性は、対照動物と比較される。例えば成長の著しい相違が感作された条件発現突然変異細胞(すなわち食餌がテトラサイクリンを含んでいた動物中の細胞)と非感作細胞(すなわち食餌がテトラサイクリンを含んでいなかった動物中の条件発現突然変異細胞)との間で見られる場合、候補化合物を使用して生物の毒性または病原性を阻害できるか、またはさらに最適化して生物の毒性または病原性を阻害するなおさらに優れた能力を有する化合物を同定できる。毒性または病原性は、当業界で既知の技法を使用して測定される。
【0147】
本発明の細胞ベースのアッセイの別の実施形態において、感作細胞は、ポリペプチドにおける温度感受性変異などの変異を使用して、真菌生存度に必要とされるポリペプチドのレベル活性を低下させることによって得られる。そのような細胞を許容温度と制限温度との間の中間温度で成長させることは、遺伝子産物の低下した活性を備えた細胞を生成する。上の方法は、真菌生存度に必要とされる遺伝子産物の活性またはレベルを低下させるが、排除しないいずれの変異によっても実施されることが認識されるであろう。本手法は、条件発現手法と併用してもよい。本併用手法において、興味のある遺伝子において温度感受性変異があり、この遺伝子も条件的に発現される細胞が作成される。
【0148】
必須ポリペプチドの阻害物質をスクリーニングするときに、成長阻害を実験サンプルにおける未播種成長培地に対する培養物の光学密度によって測定された成長の量を、対照サンプルと直接比較することによって測定される。細胞増殖をアッセイする代わりの方法は、緑色蛍光タンパク質(GFP)リポーターコンストラクト発光の測定、各種の酵素活性アッセイ、および当業界で周知の他の方法を含む。生存度を測定するために使用される他のパラメータは例えば、コロニー形成単位を含む。上の方法は固相、液相、2つの先行する培地の併用、または生体内で実施される。複数の化合物を寒天プレートに移動して、自動および半自動機器を使用して同時に試験できる。
【0149】
本発明の細胞ベースのアッセイが、興味のある標的分子に対する低いまたは中程度の有効性を示す化合物を検出できるのは、そのような化合物が非感作細胞に対してよりも感作細胞に対して実質的により有効であるからである。感作細胞に対して試験したときに非感作細胞と比較して、効果は、試験化合物は2〜数倍強力であり、例えば少なくとも20倍強力であるなどの少なくとも10倍強力であり、例えば少なくとも100倍強力であるなどの少なくとも50倍強力であり、例えば少なくとも1000倍強力であり、なお1000倍を超えて強力であるような効果である。
【0150】
細胞外ポリペプチドを過剰発現するA.fumigatus突然変異株は、そのようなポリペプチドを阻害する化合物を同定するのにも使用できる。化合物が細胞傷害性である場合、標的ポリペプチドの過剰発現は、細胞をさらに耐性にすることができる。それゆえ本発明は、配列番号1−6および36の群より選択される細胞外アスペルギルスポリペプチドのインヒビターを同定する方法であって、
a.配列番号1−6および36の群より選択されるポリペプチドの活性が異なる2つの細胞であって、一方の細胞が前記ポリペプチドの実質的に野生種コピー数を含有し、もう一方の細胞が前記ポリペプチドの野生種活性より大きい数を含有する、2つの細胞を提供するステップと、
b.推定上のインヒビターに対する前記細胞の感受性を、例えば増殖アッセイによって判定するステップと、
c.前記2つの細胞が前記推定上のインヒビターの存在によって異なる影響を受けるかどうかを判定するステップと;
を含む方法にも関する。
【0151】
好ましくは2つの細胞は、配列番号1のポリペプチド、配列番号2のポリペプチド、または配列番号3のポリペプチド、または配列番号5のポリペプチド、または配列番号6のポリペプチドまたは配列番号36のポリペプチドなどの、配列番号1、2、3、5、6、および36の群より選択されるポリペプチドの活性が異なる。
【0152】
インヒビターの細胞標的でないポリペプチドの過剰発現もインヒビターに対する細胞耐性を生成できるため、前記インヒビターによる興味のある標的ポリペプチドの阻害は、例えば生化学アッセイなどの他の手段によって検証する必要がある。
【0153】
過剰発現は、強力なプロモータ、例えばA.niger Pgla Aプロモータ、A.nidulansプロモータalcA(p)、または構成プロモータPGK−(ホスホグリセロ−キナーゼ)、GPD−(グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)またはENO(エノラーゼ)プロモータあるいはADH2、PHO5、GAL1、GAL10、CUP1またはHSP70などの調節プロモータを使用して実施できる。他の有用なプロモータは、Adams et al.(1998) Microbiol.Mol.Biol.Rev.62,35−54 ; Adams et al.(1988)Cell 54,353−362 ;Andrianopoulos and Timberlake(1991)Plant Cell 3,747−748;Gwynne et al.(1987)Gene 51:205−216;Lockington et al.(1985)Gene 33:137−149に述べられているものを含む。
【0154】
細胞外ポリペプチドの生化学または他の細胞活性の阻害物質に加えて、上述の細胞方法は、例えば遺伝子調節を妨害することによって標的の発現レベル、それによりそのコピー数を低減する化合物を同定する。
【0155】
結合パートナーまたは阻害物質を同定する細胞ベースまたは生化学的方法のいずれの好ましい実施形態においても、方法は複数の候補化合物について反復される。
【0156】
さらなる態様において、本発明は、細胞外ポリペプチドをコード化する遺伝子が異種調節可能なプロモータの制御下に置かれた菌株、細胞外ポリペプチドの温度感受性の対立遺伝子を持つ菌株、および細胞外ポリペプチドを過剰発現する菌株などの、本明細書で述べた細胞ベースの方法で使用されるA.fumigatus突然変異株に関する。
【0157】
必須細胞外ポリペプチドを標的化することによって真菌成長を妨害する他の方法は、アンチセンスRNAまたはDNAなどの特異的アンチセンス分子を使用する、および必須細胞外ポリペプチドをコード化するmRNAに対して特異的なリボザイム分子を使用する、遺伝子発現の抑制を含む。
【0158】
(診断)
さらなる主要な態様において、本発明は、コウジカビ感染を診断する方法であって、
a.個体からのサンプルを提供するステップと、
b.前記サンプルに本明細書で述べた本発明のポリペプチドに特異的な、またはCssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH(配列番号3)、カタラーゼA(配列番号6)およびイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)の群より選択されるポリペプチドに特異的なインジケータ部分を接触させるステップと、
c.シグナルがインジケータ部分によって発生されたかどうかを判定するステップと、
を含む方法に関する。
【0159】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1のポリペプチド、または配列番号2のポリペプチド、または配列番号3のポリペプチド、または配列番号5のポリペプチド、または配列番号6のポリペプチド、または配列番号36のポリペプチドなどの配列番号1、2、3、5、6および36の群より選択されるポリペプチドである。本方法の他の好ましい実施形態において、インジケータ部分は、配列番号7−34および37で示された断片の群より選択される断片に特異的である。
【0160】
インジケータ部分は、興味のある標的ポリペプチドに結合することができる。好ましい実施形態において、前記インジケータ部分は抗体であるか、抗体を含む。各種の環境条件下にて、異なる形態的形式(菌糸体、酵母、胞子)および生物のライフサイクルの段階でのポリペプチドの発現の豊富さおよびパターンを評価するために、標的細胞外ポリペプチドまたはその断片に対して作られた抗体を使用して、ポリペプチドを検出できる。
【0161】
好ましくは、しかしながら、標的ポリペプチドまたはその断片に対して作られた抗体は、例えば患者をコウジカビ感染に関して診断するために、または所与の処置計画の有効性を判定するために、臨床試験手順の一部として感染した宿主の組織において標的遺伝子産物のレベルを監視するために診断的に使用できる。特にCssIは、診断目的でかなり興味深い。免疫学的または配列ベースの手順の使用によってタンパク質に対する重要な相同体がなお検出されていないため、そのタンパク質はA.fumigatusに対して独特であるように思われる。さらにタンパク質の細胞表面および分泌性質も、ヒト体液中でタンパク質を検出する観点から好都合な特徴である。
【0162】
抗体を使用する検出は、抗体を検出可能な物質に結合させることによって促進できる。検出可能な物質の例は、各種の酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質を含む。適切な酵素の例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む;適切な補欠分子団複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含む;適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライドまたはフィコエリトリンを含む;発光物質の例はルミノールを含む;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み、そして適切な放射性物質の例は、125I、131I、35SまたはHである。
【0163】
上のインジケータ部分を利用する各種の診断アッセイは、アスペルギルスのサンプルを試験するために調整できる。アッセイの例は、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988で詳細に述べられている。そのようなアッセイの代表的な例は:向流免疫電気泳動(CIEP)、放射免疫アッセイ、放射免疫沈澱、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ドットブロットアッセイ、阻害または競合アッセイ、およびサンドイッチアッセイ、イムノスティック(ディップスティック)アッセイ、同時免疫アッセイ、免疫クロマトグラフアッセイ、免疫濾過アッセイ、ラテックスビーズ凝集アッセイ、免疫蛍光アッセイ、バイオセンサアッセイ、微光検出アッセイを含む(U.S.Pat.Nos.4,376,110および4,486,530を参照;Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988.も参照。
【実施例】
【0164】
(実施例1 A.fumigatusの抽出物中でのペプチドの同定)
多数のタンパク質精製手順を使用して、分泌、細胞表面露出、または細胞壁結合されるA.fumigatusタンパク質の同定を促進した。タンパク質は次に、質量分析技法によってこれらの抽出物から同定された。
【0165】
A.fumigatusの培養。菌株NCPF 2140またはATCC 46640のA.fumigatus分生子(AfC)は、麦芽寒天プレートへのAfCの播種およびそれに続く30℃での10日間の増殖によって、規定どおりに調製した。
【0166】
A.fumigatus分生子からの拡散性抽出物の調製。A.fumigatus透析物(AfD)は次のように規定どおりに調製した。AfC(2x10)をプロテアーゼ阻害物質(Roche,cat.no.1 697 498)を含有する水(0.5ml)に添加して、混合物をボルテックスにかけ、次に超音波処理してAfCを溶解させて得られた溶液を振とうしながら37℃にて1時間インキュベートした。次に0.2μmフィルタへの通過により、または洗浄胞子の遠心分離(3000xg)および0.2μmフィルタへのAfDの通過により、AfDを洗浄した胞子から分離した。
【0167】
A.fumigatus分生子からの表面露出タンパク質抽出物の調製。洗浄したAfC(2.0x1010)を、還元剤(10mM トリス2−カルボキシエチルホスフィン(TCEP))を含有するPBS(0.01M リン酸緩衝液、0.0027M 塩化カリウム、0.137M 塩化ナトリウム、pH7.4)1ml中に再懸濁させ、室温にて20分間インキュベートした。AfCを遠心分離(20000xg、30分)によってペレット化して、PBS中で洗浄し、TCEPを除去してから、トリプシン溶液(配列決定用修飾ブタトリプシン、Promega cat.no.V5111,20μg/ml PBS)中で再懸濁させて、室温にて30分間インキュベートした。次にAfCを遠心分離および濾過によって除去した。上澄み中の分生子をすべて除去するために、上澄みはYM−10カラム(Milliporeより、cat.no.4206、5000xg、4℃にて30分間)を使用して精製し、上澄みを40rpmで振とうしながら37℃にて一晩インキュベートした。SpeedVac濃縮装置を用いて上澄みを濃縮し、1μlを5%ギ酸 6μlに添加して、得られた溶液を質量分析法により解析した。
【0168】
A.fumigatus分生子からの細胞壁抽出物の調製。AfC溶液(20ml;1.8x108分生子/ml)は、PYG(C豊富)(ペプトン−酵母抽出物およびグルコース:0.1% ペプトン、0.1% g 酵母抽出物および0.3% グルコース)およびHBSS(C不十分)(Gibco、InvitrogenによるHANKS 1X(cat.no.24020−083))培地の両方で調製した。これらの溶液を3分間ボルテックスにかけ、5分間超音波処理して、次に振とう(160rpm)しながら37℃にて4時間インキュベートした。AfCを遠心分離(6000xg、30分)によってペレット化し、HBSSインキュベーションからの上澄みを収集して、0.2μmフィルタを通過させた。PYGからの上澄みは廃棄した。どちらのAfCペレットもHBSS 5mlで洗浄して、前と同様にペレット化した。各ペレットに溶解緩衝液(2% トリトン、1% SDS、10mM Tris(pH=2)、1mM EDTA、100mM NaCl、プロテイナーゼインヒビター錠剤1(Roche,cat.no.1 697 498)およびガラスビーズ(200〜300ミクロン)約500μlを添加した。得られた溶液を次に水浴超音波処理装置で40分間インキュベートし、30分間ボルテックスにかけ、氷上で5分間冷却して、最後にさらに30分間ボルテックスにかけた。次にガラスビーズをサンプルから除去して、分生子壁を1200xgでの10分間の遠心分離によって沈殿させた。上澄みを除去して、後で使用するために貯蔵した。
【0169】
分生子壁濃厚ペレットを冷蒸留水 1mlで3回洗浄し、2%(w/v)SDS、1%(w/v)2−メルカプトエタノール溶液 250μlに再懸濁させて、5分間沸騰させた。得られた溶液を遠心分離(10,000xgで15分間)にかけ、上澄みを新しい管に移して、氷冷アセトン 1mlに添加してから、−30℃にて一晩インキュベートした。沈殿したタンパク質をペレット化して(20,810xgで45分間)、SpeedVacで15分間乾燥させて、残留アセトンを除去した。ペレットをddH2O中で再懸濁させ、タンパク質を標準手順に従ってSDS−PAGE上で分離した。得られたゲルを次に、銀染色によって描出した。
【0170】
A.fumigatusタンパク質抽出物の質量分析法による解析。SDS−PAGEによって分離したA.fumigatusタンパク質の解析は以下のように実施した。特異的タンパク質バンドに相当するSDS−PAGEゲルの断片を抽出して、重炭酸ナトリウム溶液(50mM NHHCO)に入れた。これらのゲル栓を次に50% エタノール中の50mM NHHCOで30分間に渡って2回洗浄して、96% エタノールでの10分間のインキュベーションによって脱水した。還元およびアルキル化は、56℃にて還元溶液(50mM DTT、50mM NHHCO)で45分間でのインキュベーションと、それに続く暗所におけるアルキル化溶液(55mM ヨードアセトアミド、50mM NHHCO)中の室温での30分間のインキュベーションによって実施した。次に洗浄および脱水の2サイクルを実施してから、トリプシン溶液(50m MNHHCO中の12.5ng/μl トリプシン(配列決定用修飾ブタトリプシン、Promega batch no.V511X 14755007))10μlを添加した。15分後、追加の重炭酸ナトリウム溶液20μlを添加して、消化物を37℃にて一晩インキュベートした。次にサンプルを、20%トリフルオロ酢酸 3μl、ならびにアセトニトリル(10%)およびトリフルオロ酢酸(1%)を含有する溶液 20μl中での、30分間の振とうしながらのインキュベーションによって2回抽出した。両方の抽出物をためて、吸引乾燥して、5%ギ酸の9%に再懸濁させてから、LC−MSによって解析した。
【0171】
ペプチドおよび断片の質量公差はそれぞれ200ppmおよび0.5Daに設定した。サーチパラメータを、Metの酸化、Cysへのポリアクリルアミド基のアルキルの添加を含むように調整し、トリプシンにはペプチド当たり1個の開裂部位を失わせた。
【0172】
細胞表面ペプチド断片の解析のサーチパラメータを、Metの酸化を含むように調整し、トリプシンには各ペプチドの1個の開裂部位を失わせた;そしてペプチドおよび断片の質量公差はそれぞれ100ppmおよび0.3Daに設定した。
【0173】
ペプチド配列の同定の後に、TBLASTNをパブリックドメインにおけるA.fumigatusショットガン配列に対して実施した。これは、ペプチド断片をコード化できるすべてのショットガン配列を同定した。次にこれらのショットガン配列を使用して、90%もの同一性で少なくとも長さ40bpの相同性の領域を共有する、他のすべてのショットガン配列を抽出した。次にすべての適切なショットガン配列は、Seqmanを使用してコンティグ配列に形成した。得られたコンティグをトウモロコシ、シロイヌナズナ、およびヒトパラメータを使用してGenScanサーチに送信した。潜在的にさらに正確なタンパク質配列の予測を容易にするために、出力された予測タンパク質配列を次に、コード化ヌクレオチド配列と、そしてタンパク質相同体の配列と比較した。得られた予測ヌクレオチドおよびペプチド配列を次に適切な組織内データベースに入力して、次にこれらの新たに予測されたタンパク質を含有するデータベースに対してMASCOTサーチを再実行した。イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素Bでは、ペプチド配列決定によって見出されたペプチドとデータベース内のヌクレオチド配列から予測された対応するポリペプチドとの間にミスマッチが見出された。ミスマッチは、変異による、または配列決定エラーによる菌株間の相違による。さらにMS機器は、ロイシンとイソロイシンとを識別しない。この領域における変異は、Thermusthermophilusからの相同性酵素について述べられているように、重要な構造的な意味を有し、酵素の熱安定性を変化させる(Qu et al.1997 Protein Eng.10,45−52)。
【0174】
透析物、細胞表面露出、および細胞壁画分中で同定されたペプチドを表1に示す。対応する予測タンパク質配列を図1に与える。配列番号38および配列番号39は、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素Bをコード化するポリヌクレオチド配列(配列番号36)を予測した。
【0175】
ハイドロフォビンおよび機能未知タンパク質の両方からのペプチドは、3つすべての画分中で同定され、両者がAfCの表面に露出されている細胞壁結合タンパク質であることと、同時に周囲環境に分泌/放出されていることも示している。これらのデータに基づいて、我々は新たに同定された、以前は機能未知のタンパク質を分生子表面および分泌タンパク質I(Condial Surface and Secreted Protein I)CssIと命名することを提案する。AfDおよび細胞壁中のGAPDHの;AFD中のエノラーゼの;細胞表面露出画分中の、および位置する細胞壁のIMDH Bの、ならびにカタラーゼの表面露出変異体の存在に注目することも興味深い。これらのペプチドを精製および同定するために使用した手順は非常に豊富なタンパク質に偏っているため、それらが比較的多いコピー数で発現すると結論付けることもできる。
【0176】
(実施例2 バイオインフォマティック解析)
シグナルP予測は、真核タンパク質に推奨されるパラメータを使用して実施したが、抗原性指数研究は、DNAStarによって決定されたデフォルトパラメータを使用して実施した。BLASTサーチは、デフォルトパラメータを使用して実施した。
【0177】
シグナルペプチドの存在についてのCssIの解析。元の機能未知配列を報告したグループは、24残基のN末端シグナルペプチドを予測した(NCBI entry CAD29600。タンパク質AfA35G10.07)。しかしながらシグナルPプログラムをデフォルトパラメータと共に使用するこれらの研究の反復(Nielsen et al.(1997)Protein Engineering 10,1−6)は、A47とR48との間に予測シグナル開裂のある47残基シグナルペプチドの存在を示している。
【0178】
(CssIの予測タンパク質配列の解析)
このタンパク質の配列の簡単な概要は、2つの最も豊富な残基が、タンパク質中の残基すべてのそれぞれ9.62%および8.64%を構成するEおよびQであることを明らかにする。より精密な解析は、荷電残基(D、E、K、R)の67%がタンパク質のC末端側半分に位置し(表2を参照)、疎水性残基(A、I、L、F、W、V)の62%がN末端側半分に位置することを明らかにした。
【0179】
CssIの配列は、JamesonおよびWolf(1988)の抗原性指数プログラムによって解析した。このプログラムは、タンパク質のC末端側半分が最も抗原性であることを予測した(図2を参照)。
【0180】
CssIのBLAST解析は、高い相同性のタンパク質の非存在を明らかにした。しかしながら多数のタンパク質は、低いが、なお重要なレベルの相同性を示した。1つのそのようなタンパク質、ヒトヘルペスウィルス8のORF73は、カポジ肉腫のマーカーとして使用される潜伏期関連核抗原(LAN/LANA)である。それはCssIのC末端側半分に対して26%の同一性および46%の類似性を示す。LANAのこの領域は、QおよびE反復において豊富であり、タンパク質の中間に位置する。酸性反復の類似領域はウィルスおよび細胞転写因子中の転写活性化にしばしば機能することが示唆されている(Struhl,1995,Annu.Rev.Genet.29,651−674)。LANAは、ウィルスおよび細胞遺伝子発現の両方を調節できることが示されている(Renne et al.,2001,J.Virol.75,458−468)。
【0181】
GAPDH配列。このタンパク質の遺伝子配列を作成する試みは、GAPDH関連タンパク質を発現できるAspergillus fumigatus中の少なくとも3つの遺伝子の存在を明らかにした。これらの予測されたタンパク質は、標識化GAPDH−A、GAPDH−B、およびGAPDH−Cであった。これらの2つのタンパク質間に多数の相違が存在する(図3を参照)。しかしながら、今日までにGAPDH−Bのみが同定されていると結論付けることが可能である。今日までにGAPDH−Aまたは−Cを同定できないことは、多数の理由、例えば実験室条件下での発現の失敗;またはデータベース内に適切な予測タンパク質配列が存在しないことによる。GAPDH−Bのみが細胞壁および分泌調製物中で同定されたという事実は、この種類のタンパク質がおそらく主に細胞壁変異体であり、そしてことによるとGAPDH−Aおよび−Cが細胞質変異体であることを示している。
【0182】
GAPDH−AおよびGAPDH−Bは、269残基のストレッチに関して73%の同一性および85%の類似性を共有している。さらに相違するGAPDH−Cは、GAPDH−AおよびGAPDH−Bの両方とわずか43%の同一性を共有している。InterProScanによる3つすべての配列の解析は、3つすべてがGAPDH配列であることを明らかにした。しかしながらタンパク質AおよびBのみが活性部位モチーフ([ASV]−S−C−[NT]−T−x(2)−[LIM])に一致する配列を有していた。このことは、真のGAPDHタンパク質として機能しないことを示唆しうる。配列のより精密な解析により、Cがモチーフ内の最後の位置に、[LIM]の代わりにV残基を含有することが明らかである。V、L、M、およびIがすべて疎水性残基であることを考慮すると、相違が非機能性GAPDH活性部位を生じることはありそうもない。
【0183】
(イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B配列)
予測イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素配列の最も近い相同体は、A.niger(NCBIデータベースでの受託番号P87257(363aaについて77%の同一性))およびA.oryzae(NCBIデータベースでの受託番号BAC55906(367aaについて52%の同一性))からの以前に述べた酵素であった。
【0184】
ヒトタンパク質に対する相同性およびA.fumigatusに対する必須性。上述のタンパク質のうち、CssI、IMDH Bまたはハイドロフォビンも重要なヒト相同体を持っていない。これに対してエノラーゼ(61%同一、77%類似)およびGAPDH(77%同一/83%類似)はどちらも、タンパク質全長に渡るヒト相同体を有する。しかしながら所与のエピトープの小さいサイズのために、そして一般に抗体の特異性のために、適切な抗体を見出して、A.fumigatusの種類をヒトの種類から識別できる見込みがある。
【0185】
(抗体生成用のペプチド)
質量分析で見出されたペプチドを抗体生成に使用した。その一部は予測または既知配列からの隣接配列によって伸長させた。
【0186】
(実施例3 抗AfMおよび抗IMDH抗体の産生および特性)
(方法)
(リン酸緩衝生理食塩水)
PBS錠剤(Sigma)を使用して、25℃にてpH7.4の、0.01M リン酸緩衝液、0.0027M KClおよび0.137NaClの最終溶液を作成した。
【0187】
(抗Aspergillus fumigatus菌糸(抗AfM)抗体の産生)
AfMが豊富な調製物を以下のように成長させた:10E5 AfCをRPMI 10mlに添加して、37℃にて約10時間インキュベートした。次にAfMを遠心分離によって収集し、PBSで2回洗浄した。これらの調製物を3% ホルムアルデヒド中での室温にて30分間のインキュベーションによって固定して、100μgの量を以下のプロトコルに従ってウサギに注射した。
【0188】
ニュージーランド白色メスウサギ(4〜6月齢、約3kg)からヌル血清を、100μgのAfMおよびフロイント完全アジュバントでの免疫付与の前に採取した。ブースターは、第14日にフロイント不完全アジュバントと併せて、そして第28日に再度投与した。第1および第2の出血を第42日および第72日にそれぞれ収集してから、第93日に最終出血を採取した。免疫蛍光顕微鏡法およびウェスタンブロッティングによる続いての分析は、ウサギがAfMに対するAbベースの免疫反応を産生することを証明した。
【0189】
(IgG精製)
次にMabTrap kit(Amersham)を製造者の説明書に従って使用して、この血清からIgGを精製した。Fab断片はIgGからImmunopure Fab kit(Pierce)によって、再度製造者の説明に従って精製した。
【0190】
(接着アッセイプロトコル)
A549細胞(1x10)(DeHart et al.(1997)J.Infect Dis.175(1):146−150)をLab−Tek II 8ウェルチャンバスライド(Nalge Nunc International)に播種して、一晩培養した。AfC(1x10/ml)の溶液をRPMI培地中で調製し、10分間ボルテックスにかけ、10秒間超音波処理して、AfCを懸濁させた(施設内での研究は、99%を超えるAfCがこのステップの後に実行可能であることを証明した)。次にAfC個体群を等分して、適切な場合にはIgG調製物を添加し、サンプルを振とうしながら37℃にて30分間インキュベートした。F12K培地 400μlで3回洗浄することによって、A549細胞を調製した。必要ならば、精製したタンパク質をA549細胞によって37℃にて30分間プレインキュベートしてから、細胞をF12K培地 400μlで3回洗浄した。最後に、F12K 190μlを各ウェルに添加してから、適切なAfC溶液 10μl(1x10AfC)を添加した。次にサンプルを37℃にて60分間インキュベートした。F12K培地で4回洗浄することによって未結合AfCを除去して、トリプシンEDTA 400μlを使用してA549細胞を分離した。分離の後、溶液をウェルから除去して、エッペンドルフに保管して、中程度の強度で10秒間超音波処理をして、哺乳類細胞を溶解させた。最後に、0.03% Triton−X−100を各溶液に添加して、AfCが単細胞形で存在するようにした。次に各サンプル中のAfCの量を、血球計算器を使用して決定した。すべてのアッセイは3通り実施した。
【0191】
(抗AfM抗体を用いたIPによる抗原同定)
得られたIgG調製物をAffigel kit(Biorad)と併せて使用して、抗AfM親和性カラムを調製した。これは製造者の説明書に従って実施した。それゆえ抗AfM IgG 20mgをAffigel 200μlに結合させて、得られたカラムをPBS中で調製した全AfM溶解物 100mgと共に一晩回転させた。IgGを含まないAffigel 200μlを含有するカラムも同じ方法で処理した。次に上澄みを除去して、ゲルを0.5M NaClに調整したPBS 0.5mlで2回洗浄した。次に0.25M NaClに調整したPBS 0.5mlで洗浄を実施し、サンプルを0.2M グリシン−HCl 100μl、pH2.5で溶出させた。氷上での5分間の保管の後、サンプルを1M Tris−HCl 24μl、pH8.5の添加によって中和し、SDS−PAGEによって分離した。
【0192】
(IMDH BのcDNAコピーの増幅およびクローニング)
全RNAは、製造者の説明に従ってRNAEasy Kit(Qiagen)を使用して1x10 AfCから精製した。cDNAの増幅を補助するオリゴヌクレオチドプライマーを設計するために、IMDH Bの配列を多数の生物情報ステップを使用して予測した。最初にLCMSによって同定したペプチドを、A.fumigatusショットガンデータベースに対してBLASTを行った。次にペプチドに一致するすべての配列を整列させて大型のコンティグ配列を生成し、次にこれを遺伝子予測プログラムGenscanに入力した。これは多数の予測遺伝子配列を生成し、LCMSによって同定されたペプチドをコード化することが予測された配列をさらなる研究のために選択した。最も有望な停止および開始コドンの選択を補助するために、A.fumigatus配列に相同性を示した他の生物からのIMDH B遺伝子も使用した。それゆえ18−merオリゴ(F:5’−ATGGTAACTACTTACAAC−3’(配列番号44);R:5’−TGAACTACCCTGCAACGC−3’(配列番号45))を設計し、InvitrogenによるSuperscript One Stepキットを製造者の説明に従って使用して、Af IMDH B遺伝子のcDNAコピーを増幅するのに用いた。増幅の後、生成物はTOPO TAクローニングキット(Invitrogen)を使用してpBAD内にクローニングして、配列決定を使用してインサートの配列および向きを確認した。
【0193】
(配列決定)
配列反応は、BigDye terminatorv3.1 (Applied Biosystems)キットを製造者の説明書に従って使用して実施した。
【0194】
(異種タンパク質の発現)
要求された配列を含有するクローンの同定時に、異種タンパク質にとって最適な発現条件を識別するために多数の実験を実施した。これらは0.02% アラビノースを用いて4時間に渡って誘発したときに最適発現を明らかにした。次にタンパク質をBADコード化hisタグ配列の利用によって精製した。
【0195】
(細菌溶解物の調製)
E coli培養物の各リットルは0.02% アラビノースを用いて4時間に渡って誘発させ、細菌細胞を遠心分離(5000rpm、15分間)によって収集した。次に細菌ペレットを冷未変性緩衝液25ml(20mM NaPO、500mM NaCl、25mM イミダゾール、pH7.4)に再懸濁させて、溶液にプロテアーゼインヒビター錠剤2個(ROCHE、完全無EDTAプロテアーゼ阻害物質)およびリゾチーム 625μl(25μg/μl)を添加してから、氷上で1時間インキュベートした。次に溶液4分間超音波処理して、凍結融解サイクルを受けさせ、ベンゾナーゼ 7.5μl(362単位/μl)を添加してから、氷上で20分間インキュベートした。不溶性成分の除去を補助するために、溶液を5000xgで20分間遠心分離して、上澄みを収集した。このステップをさらに2回繰り返して、次に透明な溶解物をSDS−PAGEによって解析した。
【0196】
(hisタグタンパク質精製用のニッケルセファロースカラムの調製)
組換えタンパク質の精製は、Probond樹脂(Invitrogen)、すなわち異種発現組換えタンパク質に対してpBADコード化hisタグを利用するニッケルセファロースベースの樹脂を使用して実施した。すべての遠心分離ステップは、800xgにて2分間実施した。容器を転倒させ、静かにたたくことによって樹脂を再懸濁させ、平衡のために樹脂のスラリー 2mlをEcono−Pac Chromatography Columns(BioRad,Cat.No.732−1010)に添加した。カラムを遠心分離にかけ、上澄みを廃棄した。次に樹脂を無菌水 10mlで洗浄して、遠心分離の後、上澄みを再度廃棄した。次に樹脂を未変性緩衝液 10ml(20mM NaPO4、500mM NaCl、25mM イミダゾール、pH7.4)に再懸濁させ、遠心分離にかけて、上澄みを廃棄した。この工程を2回反復した。最後に樹脂を未変性緩衝液 1mlに懸濁させて、最終体積 2mlを得た。
【0197】
(溶解物の利用、精製タンパク質の洗浄および溶出)
組換えタンパク質を含有する細菌溶解物を、平衡させた樹脂を含有するカラムに添加して、混合物をローラー上で4℃にて100分間インキュベートした。次に混合物を800xgで2分間遠心分離にかけ、上澄みを流出させて保管した。次に樹脂を沈降させて、カラム栓を除去して、液体を貫流させた。このステップ、そして続くすべてのステップによる流出物をSDS−PAGE解析用に収集した。次にカラムを未変性緩衝液 20ml(20mM NaPO、500mM NaCl、25mM イミダゾール、pH7.4)を用いて合計5回洗浄して、未変性溶出緩衝液 20ml(20mM NaPO、500mM NaCl、250mM イミダゾール、pH7.4)を利用することによってタンパク質を溶出させ、2mlの分割量10個を収集した。SDS−PAGE解析を実施して、手順の結果を判定した。
【0198】
(ニッケルセファロース精製IMDH Bのゲル濾過精製)
Probond精製IMDH BをPBS中での透析によって最初に脱塩した(透析チュービング12−14000ダルトン、Visking)。ゲル濾過は、HiPrep 16/60 Sephacryl S−200高分解能カラム(Amersham Biosciences)を使用して実施した。カラムの調製、平衡、および洗浄は、製造者の説明書に従って完了した。タンパク質精製は、Trisランニング緩衝液(10mM Tris+0.15M NaCl、pH8)を用いて、0.25ml/分の適切な流速で実施した。hisタグタンパク質(10〜20mg)のバッチをカラムに添加して、ランニング緩衝液80mlを使用して放出させ、約40mlの無効体積を計算して、18x2mlの画分を収集した。
【0199】
(抗IMDH B抗血清の産生)
Probond精製タンパク質を使用して、ニュージーランド白色メスウサギ(4〜6月齢、3kg)に免疫付与した。免疫前血清は、フロイント完全アジュバントの存在下でのタンパク質100μgによる免疫付与の前に、第1日に免疫前血清を収集した。さらなる免疫付与も、フロイント不完全アジュバントの存在下で第28日および第49日に実施した。血液サンプルは、第28日、第42日、第69日、最後に第87日に採取した。IgGおよびFab断片は前述したように調製した。
【0200】
(免疫蛍光顕微鏡法)
免疫蛍光顕微鏡スライドは、洗剤溶液中で最初に洗浄し、蒸留水ですすいだ。次にスライドをコーティング溶液(0.1% ゼラチン[w/v]、0.01%[w/v]クロムミョウバン)中でインキュベートして、室温にて乾燥させた。収集したAfC胞子を処理した免疫蛍光顕微鏡スライドのウェル上に置き、スライドをPBSによって3回洗浄して、未結合AfCを除去した。AfMが必要な場合、RPMI 30μlをウェルの表面に添加し、スライドを37℃にて12〜14時間インキュベートしてから、PBSによって洗浄した。次にIgG(30μl、PBSの1:500希釈物)を各ウェルに添加し、湿潤環境内で37℃にて30分間インキュベートした。ウェルをPBSによって3回洗浄してから、Alexa Fluor 488ヤギ抗ラビットIgG(PBSで調製した1:400希釈物の30μl)を各ウェルに添加した。再びスライドを湿潤環境内で37℃にて30分間インキュベートし、PBSで3回洗浄して、次に3% ホルムアルデヒド中で室温にて30分間固定した。スライドをPBS中で3回洗浄して、乾燥させ、次にSigmaオイル1滴を表面に添加して、カバースリップを当てた。これをマニキュア液で密封し、スライドを使用するまで暗所で4℃にて保管した。すべてのウェルは、明野および蛍光野の両方で走査した。
【0201】
(IgGが分生子発芽を阻害する能力の判定)
AfCをRPMI培地に再懸濁させ、濃度を調整して、1x10 AfC mlを含有する溶液を得た。次にこの溶液の0.5mlをエッペンドルフに添加し、各IgG/血清サンプル 10μlをAfCの3つの分割量に添加した。正常な新しいラビット血清を1つの分割量に、熱不活性化(60℃で30分間)血清を第2に、そしてPBS 10μlを第3に添加した。次にサンプルを200rpmで7時間インキュベートした。次に細胞の総数をカウントし、発芽した、または発芽管を生成し始めた分生子の数を決定した。フィラメント化パーセントは、細胞の総数で割った発芽管を持つ細胞の数に等しい。
【0202】
(標的タンパク質の予測抗原ペプチドに対する血清の産生)
標的タンパク質の解析は、各標的配列内で多数の抗原ペプチドを同定する目的で実施した。選択したペプチド(以下の表3を参照)は、表面露出ペプチド(表1を参照)を同定するために使用された質量分析手順中に同定されたペプチドおよび最も抗原性であると予測されたペプチドと一致する(Jameson,B.A.& Wolf,H(1988)Comput Appl Biosci 4,181−186)。
【0203】
ペプチドおよび抗血清は、Sigmaの標準カスタムペプチド合成およびウサギ免疫付与プロトコルに従って産生された。ペプチドはその複数の抗原ペプチド(MAP)サービスの一部として産生された。使用した免疫付与プロトコルは以下の通りである:第0日に免疫前血清をニュージーランド白色ウサギから収集し、次に完全フロイントアジュバント(CFA)中のMAPの200μgによって免疫付与した。2回目の免疫付与は、不完全フロイントアジュバント(IFA)中の100μgを用いて第14日に実施した。この免疫付与は第28日、第42日、第56日および第70日に反復した。出血は第35日、第49日、第63日、最後に第77日に採取した。
【0204】
(MS解析)
(ゲル内消化)
ゲルバンドを25mM NHHCO/50% エタノールによって2回洗浄する。システイン残基を還元(DTT)およびアルキル化(ヨードアセトアミド)して、ゲルバンドの洗浄および脱水を2サイクル続ける。洗浄緩衝液は50mM NHHCOであり、脱水剤はエタノールである。最後の脱水ステップの後、プロテアーゼの添加によって消化を開始し、適切な消化緩衝液中に溶解させる。デフォルトの酵素は、50mM NHHCO/10% アセトニトリル消化緩衝液が使用されるトリプシンである。消化は37℃にて一晩実施する。得られたペプチドプールはTFAおよびギ酸によって抽出し、質量分析法によって解析する。すべてのサンプルの取扱いは、ケラチン汚染を回避するために手での取扱いを最小限にして、無じん環境にて行う。
【0205】
(MALDI−TOFサンプル調製および解析)
ゲル内消化後に抽出したペプチド混合物は、Ultraflex Bruker MALDI−TOF質量分析装置での完全自動化手順によって解析する。ペプチドマスフィンガープリントを記録して、各スペクトルには注釈を付け、トリプシン自動消化ピークを使用して内部的に校正する。サンプル調製:
1.96チップロボットを使用して、ニトロセルロース/□−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(HCCA)マトリクスを備えたBruker 384研磨スチール標的を調製する。
2.約5%のサンプルをマトリクスに添加する(1,5□l)。
3.サンプルが完全に乾燥したら、0.1% TFAで洗浄し、これで、Bruker質量分析装置で解析する準備が整う。
【0206】
(データベース検索)
Mascotソフトウェア(MATRIX SCIENCE)を用いて実施されるデータベース検索では、得られたピークリストを使用する。データベースは、NCBIからのデータに基づく非冗長性データベース(NRDB)である。
【0207】
(結果)
(抗AfM抗体を用いたIPによる抗原同定)
抗AfM IgGより成る親和性カラムを使用して、AfM溶解物から最も抗原性のタンパク質を免疫沈澱させた。溶出されたサンプルをSDS−PAGEによって分離し、次にLC MSMS解析によって解析して、このことは3−イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(IMDH B)が抗AfM抗体の主標的であることを明らかにし、IMDH BがAfMの主抗原であることを示唆した(図4)。
【0208】
(ヌル血清よりもかなり高いシグナルを与えるAfMの表面に結合する抗AfM抗体)
IFM研究により、AfMおよびAfCの両方に結合した抗AfM抗体がヌル血清によって観察されたよりも高いシグナルを与えることを明らかにした。これは再度、IMDH Bが分生子および菌糸の両方の主要な表面抗原であることを示唆する(図5)。
【0209】
(A549細胞に接着するAfCの割合を低下させる抗AfM Fab断片)
IMDH BがAfCおよびAfMの両方の主表面抗原であることが立証されて、(抗AfM抗血清の形の)抗IMDH B抗体がAfCの病原性を妨害する潜在的能力を分析することが決定された。それゆえは、IgG中でプレインキュベートされたAfCが肺上皮に結合する能力が測定される接着アッセイを実施した。これらの研究は、Fab断片の形の抗体が実際に、肺上皮への生物の接着を低減できることを示した(図6)。理論に縛られることなく、接着因子を結合して、その機能を防止すること、あるいはAfC表面へ結合して、基礎を成す接着因子の機能を立体的に阻害することのどちらかによって、Fabsがレセプタとそのリガンドとの間の相互作用を妨害することによって肺上皮への接着を低減する能力を所有することが考えられる。IgG分子もそのような特性を所有するが、Fc領域は、哺乳類細胞の表面上のFcレセプタを結合可能であり、AfCの接着を向上させる可能性を有する現象である。
【0210】
(組換えIMDH Bのクローニング、発現および精製)
IMDH Bをコード化するcDNAのコピーは、pBAD内に正しくクローニングされ、インサートの配列が確認された(配列番号46および配列番号47を参照)。タンパク質は、0.02% アラビノースによる4時間の誘発後に発現され、ニッケルセファロースおよびゲル濾過カラムを使用して高度の純度まで精製した(図7)。ニッケルセファロース精製画分を使用してウサギに免疫付与し、この手順は抗IMDH B抗体の産生において成功であった(図8)。IFM解析は、抗IMDH B IgGがAfCおよびAfMの表面に結合されたことも確認し(図9)、それゆえIMDH Bの表面局在を確認した。
【0211】
(臨床アイソレートのIFM解析)
表面発現IMDH Bの存在または非存在を確認するために、多数の臨床アイソレートに対してIFM解析を実施した。すべての臨床アイソレートは、Belgian Co−ordinated Collections of Micro−organisms(BCCMTM)から購入した。それらの特徴および抗IMDH B IgGに対する反応性を表4に示す。
【0212】
(翻訳後修飾)
組換えIMDH Bタンパク質における翻訳後修飾の存在を確認する目的で、多数の研究が実施した。これらの研究は、多数の形式を取った。最初に、タンパク質の予測トリプシン断片のすべてを確認する目的で、MALDI解析を実施した。それゆえタンパク質をトリプシンによって消化し、MSで解析した。この方法を使用して、84%配列被覆度を得ることが可能である:(配列番号47(ベクトル由来配列はイタリック体、MALDI解析によって同定された配列は下線))。
【0213】
【化1】

予測44233Daタンパク質のSDS−PAGEおよび飛行時間解析は、それぞれ45000Daおよび44235Daの見かけの質量を明らかにした。全体として、これらの研究は、翻訳後修飾の存在を示す証拠を一切与えなかった。
【0214】
(接着アッセイの結果)
多数の研究は、IMDH Bが接着因子として作用する理論を裏付けている。それゆえ抗IMDH BFab断片を用いたAfCのプレインキュベーションは、免疫前血清から単離されたFab断片の存在下でプレインキュベートされたAfCと比較して、接着性AfCの数の減少を引き起こした(図10を参照)。さらに組換えIMDH Bの可変量を用いたA549上皮のプレインキュベーションと、それに続く未結合タンパク質を除去するための洗浄は、タンパク質がA549細胞の表面のレセプタを封鎖し、それゆえAfCの接着を防止したことを示唆した(図11を参照)。
【0215】
(発芽阻害実験)
抗IMDH B抗体が正常または熱不活性化ウサギ血清の存在下でAfCの発芽を低下させる能力を判定するために、多数の実験を実施した。これらの実験は、新しいウサギ血清の存在下の抗IMDH B熱不活性化血清のみが、AfCの発芽速度を低下させる能力を明らかにした(図12を参照)。さらなる研究は、正常ウサギ血清の存在下の精製抗IMDH B IgGも、ヌルIgGと比較してAfCの発芽を低減する能力を所有していることを明らかにした(図13を参照)。
【0216】
(IMDH Bの第2のコピーの同定)
さらなる生物情報解析は、IMDH B遺伝子に対する相同性を示し、IMDH B1に対して50%同一および63%類似であるタンパク質をコード化することが予測されるAfゲノムの第2の領域の存在を明らかにした(配列比較については、図14)。各遺伝子およびタンパク質の配列は、BLAST解析によって予測された。このタンパク質の特徴を以下に示す。
【0217】
【化2】

IMDH B2は最終予測ORF配列(配列番号40)を含有する:
【0218】
【化3】

これは以下のタンパク質をコード化する(配列番号41):
【0219】
【化4】

(実施例4 追加のACE標的に行った研究)
(標的タンパク質の予測抗原ペプチドに対する血清の産生)
AfC表面上の多数の新規なタンパク質の同定の後、新規な分子の多重抗原ペプチド(MAP)に対して産生された抗血清の生成を通じてこれらの研究を進めることを決定した。それゆえ各選択された標的からの2つのペプチドを選択して(以下の表を参照)、その情報は、そのカスタムペプチド合成およびウサギ免疫付与プロトコルに従ってペプチドおよび抗血清を生成したSigmaに伝えた。選択したペプチド(表3を参照)は、質量分析手段中に同定されたもの(表1を参照)およびSigmaによって提供された指針を使用して最も抗原性であることが予測されたものに対応する。
【0220】
(MAP分子に対して産生された血清を用いたIFM解析)
MAPおよび対応する抗血清の生成の後、IgGを精製して、各種の標的分子の表面発現の確認にて補助するために、IFM実験で使用した。これらのIFM実験の結果を表3にまとめ、図15でGAP−B−2について例示した。GAPDH2のGAP−B−2分子に対して産生された血清は、多数の臨床アイソレートに対しても試験した。臨床アイソレートの表面に対するこの血清の反応性(図16に例示、他は示さず)は、ATCC 46640以外のアイソレート内でのGAPDH2の表面局在を裏付けている。
【0221】
(組換えエノラーゼのクローニング、発現および精製;ならびに未変性エノラーゼの検出)
A.fumigatusのエノラーゼ遺伝子をクローニングして、タンパク質をIMDH Bについて詳説したのと同じプロトコルを使用して発現させたが、唯一の相違はフォワード(5’−ATGCCTATCTCCAAGATC−3’(配列番号42))およびリバースプライマー(5’−CAGGTTGACGGCAGT−3’(配列番号43))の配列であった。クローニングされたcDNA分子の配列は、標準手段を使用して確認した)(配列番号48および配列番号49)。組換えタンパク質の発現は、抗his抗体(図17(A))を使用して確認した。さらにタンパク質がENO−2に対して産生された抗MAP血清と反応することが示された(図17(A))。抗MAP血清が組換えエノラーゼと結合することを確認して、AfCからの単離膜および壁画分に対する血清を試験することを決定した。これらの研究は、タンパク質がAfCの細胞膜中に存在することを明らかにした(図17(B))。
【0222】
(実施例5 Aspergillus fumigatus IMDH Bと他の真菌からの相同ポリペプチドとの配列比較)
高い配列同一性のエリアを発見するために、Aspergillus fumigatus IMDH Bの配列(配列番号36)を他の真菌からの相同性配列と比較した。図18−25は、配列番号36の相同ポリペプチドとの配列結果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1A】表1は、AfC画分にて同定されたペプチドの配列を示す。ポリペプチド(CssI、ハイドロフォビン、GAPDH、エノラーゼ、カタラーゼ(A+B)およびイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B)それぞれについて、3つの異なる画分(透析物、細胞表面露出、および細胞壁)中で同定されたペプチド、そして抗体産生に使用されたペプチドの配列を示す。Xはセリンまたはアラニンであり、Xはロイシンまたはイソロイシンである。
【図1B】表2は、全長CssIポリペプチドの、そしてそのN末端およびそのC末端半分のある生化学的特徴を示す。「MW」は分子量を示す。「残基」は残基の数を示す。
【図1C】選択した標的タンパク質に対する多重抗原ペプチドおよび抗血清の産生のために選択されたペプチドの配列。
【図1D】抗IMDH B IgGが臨床アイソレートの表面に結合する能力の解析。
【図1】図1は、CssI(A)(配列番号1)、ハイドロフォビン(B)(配列番号2)、GAPDH−B(C)(配列番号3)、エノラーゼ(D)(配列番号4)、カタラーゼB(E)(配列番号5)、カタラーゼA(F)(配列番号6)、およびイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(G)(配列番号36)の予測全長ポリペプチド配列を示す。
【図2】図2は、Jameson and Wolf(1988)によって予測された、CssI(A)およびハイドロフォビン(B)残基の予測抗原性指数を示す。
【図3】Aspergillus fumigatusからのGAPDH−A(AfA)、GAPDH−B(AfB)、およびGAPDH−C(AfC)の予測タンパク質配列の配列比較。3つすべてのタンパク質において同一である残基は、黒い背景上に示す。MSによって同定されたGAPDH−Bのペプチドには下線が付けてある。
【図4】抗AfM IgGを用いて(レーン2−5)または用いずに(レーン6−10)調製した、Affigel免疫親和カラムに添加されたAfM溶解物サンプル(レーン2および7)の銀染色SDS−PAGE。レーン1および6は、徹底的な洗浄ステップの後にこれらのカラムから溶出したサンプルを示す(レーン3−5および8−10)。97、64および51のおおよその重量にて溶出されるタンパク質は、質量分析法によって、すべてIMDH Bとして同定された。
【図5】抗AfM血清(C)によって、そして二次抗体のみ(D)によって標識されたAfMの位相差(A)および免疫蛍光顕微鏡写真(B)。
【図6】抗AfM Fab断片がAfCのA549細胞への接着を低減する能力を示す、肺上皮へのAfCの接着。
【図7】IMDH Bの精製に含まれるステップを示す、銀染色SDS−PAGE。レーン1、MW標準;レーン2、ニッケルセファロースカラムによって精製された組換えIMDH B;レーン3、S200ゲル濾過カラムによる精製後の組換えタンパク質;レーン4、レーン4と同様であるが、10倍の量のタンパク質を添加する。
【図8】ウサギを免疫付与するのに使用したニッケルセファロース精製組換えIMDH B(1);免疫前血清の反応性(2)、ウェスタンブロッティングによって検出された組換えタンパク質に対する免疫後第1出血(3)および免疫後第2出血を示す、クマシーブルー染色SDS−PAGE。
【図9】IMDH Bによって免疫付与されたウサギから単離した免疫前または免疫後IgGを用いて染色したATCC 46640からのAfCおよびAfMの免疫蛍光顕微鏡写真。
【図10】抗IMDH B反応性免疫後Fab断片を用いたAfCのプレインキュベーションは、A549細胞へのAfC接着を低下させる。
【図11】A549細胞を用いたrIMDH Bのプレインキュベーションと、それに続く洗浄は、線形的な方法でAfCの続いての接着を低下させる。
【図12】抗IMDH B血清および通常補体(サンプル2)の存在下でのAfCのインキュベーションは、免疫前または無関係な血清(それぞれサンプル5および8)の存在下でインキュベートされたサンプルと比較して発芽の低減を引き起こす。
【図13】抗IMDH B IgGおよび通常補体の存在下でのAfCのインキュベーションは、免疫前または抗KLH IgGの存在下でインキュベートされたサンプルと比較して発芽の低減を引き起こす。
【図14】IMDH B1対IMDH B2の配列比較。
【図15】MAP分子に対して産生された抗血清を用いて実施されたA.fumigatus ATCC 46640の免疫蛍光顕微鏡解析。AfCおよびAfMは、免疫前および免疫後血清を用いて染色した。
【図16】GAP−B−2に対して産生された抗血清を使用して、臨床アイソレートを用いて実施された免疫蛍光顕微鏡解析。AfCは、免疫前および免疫後血清の両方を用いて染色した。
【図17】(A)抗his(レーン1)および抗エノラーゼ(レーン3;ENO−2、表3を参照)抗体を用いたが、抗エノラーゼ血清を生成するために使用した動物からの免疫前血清を用いない、(レーン4)組換えエノラーゼ;(B)抗エノラーゼ(ENO−2、表3を参照)抗体によるAfCの細胞膜中の未変性エノラーゼ(レーン6)の検出を示す、ウェスタンブロット実験。
【図18】配列番号36の一部と、広く入手できるヌクレオチド配列(Ca−アセンブリ19.コンティグ中のコンティグ19−10262)に由来する、Candida albicansからの相同配列との配列比較。
【図19】配列番号36の一部と、Aspergillus nidulans相同体(ACCESSION:AnrP4374925−DESCRIPTION:LE3B ASPNG 3−イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(ベータ−IPMデヒドロゲナーゼB)(IMDH B)(3−IPM−DH B)[Aspergillus nidulans FGSC A4]DBXREF:gi|40744045|gb|EAA63227.1)との配列比較。
【図20】配列番号36の一部と、Aspergillus oryzae相同体(ACCESSION:AnrP3711474−DESCRIPTION:機能未知タンパク質[Aspergillus oryzae]DBXREF:gi|27901558|dbj|BAC55906.1)との配列比較。
【図21】配列番号36の一部と、Aspergillus nidulans相同体(ACCESSION:AnrP4379986−DESCRIPTION 保存機能未知タンパク質[Aspergillus nidulansFGSCA4]DBXREF:gi|40741202|gb|EAA60392.1)との配列比較。
【図22】配列番号36の一部と、Coccidioides posadasii相同体:TIGR 222929/コンティグ1772 C.posadasii C735との配列比較。
【図23】配列番号36の一部とCryptococcus相同体Ref.nr.:chr01b.b3501.031220.c11.との配列比較。
【図24】図18−22からのIMDH B相同体のClustalW。
【図25】図24の続き。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH−B(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)からなる群より選択される細胞外Aspergillus fumigatusポリペプチドを結合し得る、単離抗体。
【請求項2】
前記抗体が、前記ポリペプチドを、10−7M未満の、例えば10−8M未満などの5×10−8M未満の、例えば10−9M未満などの5×10−9M未満の、例えば10−10M未満などの5×10−10M未満の、例えば10−11M未満などの5×10−11M未満の、例えば10−12M未満などの5×10−12M未満の、例えば10−13M未満などの5×10−13M未満の、例えば10−14M未満などの5×10−14M未満の、例えば10−15M未満などの5×10−15M未満の解離定数で結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、IgG、IgA、IgE、IgMおよびIgDからなる群より選択され、IgGが好ましくはIgG1である、請求項1または2のいずれかに記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、インタクトなAspergillus fumigatus細胞を結合し得る、請求項1〜3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体または少なくともそのFab断片が、インビトロアッセイにおいてAspergillus fumigatus分生子の肺上皮への接着を、好ましくは少なくとも20%、例えば少なくとも40%、または少なくとも60%低減させ得る、請求項1〜4のいずれかに記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体または少なくともそのFab断片が、インビトロアッセイにおいてAspergillus fumigatus分生子の発芽を、好ましくは少なくとも20%、例えば少なくとも40%、または少なくとも60%低減させ得る、請求項1〜5のいずれかに記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体がポリクローナルである、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体がモノクローナルである、請求項1〜6のいずれかに記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体がヒト抗体である、請求項8に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体が精製されている、請求項1〜10のいずれかに記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体がさらに相同ポリペプチドを結合し得、該相同ポリペプチドが、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH−B(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)からなる群より選択されるポリペプチドに対して、42%以上などの39%以上の、例えば68%以上などの48%以上の、例えば90%以上などの80%以上の配列同一性を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項13】
前記相同ポリペプチドが、
−Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、またはAspergillus oryzeaなどのコウジカビ種、
−Neurospora crassa、
−Saccharomyces cerevisiae、
−Candida albicansなどのカンジダ種、
−Coccidioides posadasii、またはCoccidioides immitisなどのCoccidioides種、
−Cryptococcus neoformans var.neoformansなどのCryptococcus種、
−Fusarium種、
−Pneumocystis種、
−アオカビ種、
または
−Histoplasma capsulatum
を起源とする、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
前記相同ポリペプチドが、
−Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、またはAspergillus oryzeaなどのコウジカビ種、
−Candida albicans、
−Coccidioides posadasii、
または
−Cryptococcus neoformans var.neoformans
を起源とする、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
前記相同ポリペプチドが、Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、またはAspergillus oryzeaなどのコウジカビ種を起源とする、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
前記相同ポリペプチドが、Aspergillus fumigatusを起源とする、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
前記相同ポリペプチドが、配列番号41のポリペプチドである、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
前記相同ポリペプチドが細胞外である、請求項12〜17のいずれかに記載の抗体。
【請求項19】
前記抗体が、さらに、
−Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、またはAspergillus oryzeaなどのAspergillus fumigatus以外のコウジカビ種、
−Neurospora crassa、
−Saccharomyces cerevisiae、
−Candida albicansなどのカンジダ種、
−Coccidioides posadasii、またはCoccidioides immitisなどのCoccidioides種、
−Cryptococcus neoformans var.neoformansなどのCryptococcus種、
−Fusarium種、
−Pneumocystis種、
−アオカビ種、
または
−Histoplasma capsulatum
のいずれか1種以上のインタクトな細胞を結合し得る、請求項1〜18のいずれかに記載の抗体。
【請求項20】
前記抗体が、
−Neurospora crassa、
−Saccharomyces cerevisiae、
−Candida albicans、
−Coccidioides posadasii、またはCoccidioides immitis、
−Cryptococcus neoformans var.neoformans、または
−Histoplasma capsulatum
のいずれかのインタクトな細胞を結合し得ない、請求項1〜11のいずれかに記載の抗体。
【請求項21】
前記抗体が、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)およびカタラーゼA(配列番号6)からなる群より選択されるポリペプチドを結合し得る、請求項1〜20のいずれかに記載の抗体。
【請求項22】
前記抗体が、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)およびCssI(配列番号1)からなる群より選択されるポリペプチドを結合し得る、請求項1〜21のいずれかに記載の抗体。
【請求項23】
前記抗体が、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)を結合し得る、請求項1〜22のいずれかに記載の抗体。
【請求項24】
前記抗体が、以下:Ser67−Leu71、Ala74−Trp80、Ser191−Arg205、Leu268−Leu273、His292−Pro296、Glu355−Ile360、Aspl93−Glu209、Asp193−Ala199、Ile15−Val19、Val75−Trp80、Pro11−Glu18からなる群より選択される配列番号36の領域および配列番号37によって定義される領域の残基の1つ以上を含むエピトープ、好ましくは該領域内に含まれる残基から完全になるエピトープを結合し得る、請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに定義される抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項26】
医薬として使用するための、請求項1〜24のいずれかに定義される抗体、または請求項25に定義される組成物。
【請求項27】
真菌感染の処置または予防用の医薬の製造のための、請求項1〜24のいずれかに定義される抗体、または請求項25に定義される組成物の使用。
【請求項28】
前記医薬が、コウジカビ感染、好ましくはAspergillus fumigatus感染の処置または予防用の医薬である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記医薬が:侵襲性アスペルギルス症、アスペルギルス腫、およびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症などのアレルギー性アスペルギルス症からなる群より選択される真菌疾患の処置または予防用の医薬である、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
以下の群:
配列番号36を含むポリペプチド、それらの断片およびそれらの改変体、
配列番号7、8、17、26、28、29および/または30で示したアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、例えば200未満などの259未満のアミノ酸残基長、好ましくは100未満などの150未満のアミノ酸残基長、例えば25未満などの50未満のアミノ酸残基長の、配列番号1の断片および該断片の改変体;
配列番号9、10、18および/または19で示したアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、例えば75未満などの106未満のアミノ酸残基長、好ましくは25未満などの50未満のアミノ酸残基長の、配列番号2の断片および該断片の改変体;
配列番号3を含むポリペプチド、それらの断片およびそれらの改変体であって、但し、該ポリペプチドが配列番号3の断片である場合、この断片は、配列番号35に示した断片ではない、ポリペプチド、それらの断片およびそれらの改変体;
配列番号13、14、23、24および/または25で示されるアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、例えば200未満などの437未満のアミノ酸残基長、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基長、例えば25未満などの、50未満のアミノ酸残基長の、配列番号4の断片および該断片の改変体;
配列番号15、16および/または27に示されるアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、727未満の、例えば200未満などの400未満のアミノ酸残基長、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基長、例えば25未満などの50未満のアミノ酸残基の、配列番号5の断片および該断片の改変体;
ならびに、
配列番号34で示されるアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、748未満の、例えば200未満などの400未満のアミノ酸残基長、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基長、例えば25未満などの50未満のアミノ酸残基の、配列番号6の断片および該断片の改変体;
より選択される1種以上のAspergillus fumigatusポリペプチドを含有する、組成物。
【請求項31】
以下の群:
配列番号36を含むポリペプチド、それらの断片およびそれらの改変体、
配列番号7、8、17、26、28、29および/または30で示したアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、例えば200未満などの259未満のアミノ酸残基長、好ましくは100未満などの150未満のアミノ酸残基長、例えば25未満などの50未満のアミノ酸残基長の、配列番号1の断片および該断片の改変体;
配列番号9、10、18および/または19で示したアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、例えば75未満などの106未満のアミノ酸残基長、好ましくは25未満などの50未満の残基長の、配列番号2の断片および該断片の改変体;
配列番号3を含むポリペプチド、それらの断片およびそれらの改変体であって、但し、該ポリペプチドが配列番号3の断片である場合、この断片は、配列番号35に示した断片ではない、ポリペプチド、それらの断片およびそれらの改変体;
配列番号13、14、23、24および/または25で示されるアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、例えば200未満などの437未満のアミノ酸残基長、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基長、例えば25未満などの、50未満のアミノ酸残基長の、配列番号4の断片および該断片の改変体;
配列番号15、16および/または27に示されるアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、727未満の、例えば200未満などの400未満のアミノ酸残基長、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基長、例えば25未満などの50未満のアミノ酸残基の、配列番号5の断片および該断片の改変体;
ならびに、
配列番号34で示されるアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む、748未満の、例えば200未満などの400未満のアミノ酸残基長、好ましくは75未満などの100未満のアミノ酸残基長、例えば25未満などの50未満のアミノ酸残基の、配列番号6の断片および該断片の改変体;
より選択される、Aspergillus fumigatusポリペプチド。
【請求項32】
前記ポリペプチドが、配列番号7〜27および/または37で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む断片、または該断片の改変体である、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記ポリペプチドが、配列番号7〜16で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む断片、または該断片の改変体である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
前記ポリペプチドが、配列番号17〜25および/または配列番号14で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む断片、または該断片の改変体である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項35】
前記ポリペプチドが、配列番号18、19、26、27、および/または37で示されたアミノ酸配列の1つ以上の残基を含む断片、または該断片の改変体である、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項36】
請求項31〜35のいずれかに定義されるポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項37】
請求項36に定義されるポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項38】
請求項36に定義されるポリヌクレオチドおよび/または請求項37に定義される発現ベクターによって形質転換またはトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項39】
請求項31〜35のいずれかに定義されるポリペプチドまたは請求項36に定義されるポリヌクレオチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項40】
医薬として使用するための、請求項31〜35のいずれかに定義されるポリペプチド、または請求項36に定義されるポリヌクレオチド。
【請求項41】
真菌感染に対する哺乳動物の免疫化用の医薬製造のための、請求項31〜35のいずれかに定義されるポリペプチド、請求項36に定義されるポリヌクレオチドの使用。
【請求項42】
前記哺乳動物がヒトである、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
非ヒト哺乳類における配列番号1、2、3、6および36で示されたポリペプチドの群より選択されるポリペプチドに対する特異的抗体を惹起するための方法であって、以下、
a.イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)、または請求項31〜35のいずれかに定義されるポリペプチドの群より選択されたポリペプチド、またはこれらのポリペプチドのいずれかを発現する細胞を提供する工程、
b.該ポリペプチドまたは該細胞を含有する組成物を動物に導入する工程、
c.該動物において抗体を惹起する工程、ならびに
d.該抗体を単離して、必要に応じて精製する工程、
を包含する、方法。
【請求項44】
前記抗体を惹起する工程が、ヒト抗体を生成し得るトランスジェニック動物において行われる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記提供されるポリペプチドが、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)もしくはその断片、または該ポリペプチドの改変体である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記提供されるポリペプチドが、CssI(配列番号1)もしくはその断片、または該ポリペプチドの改変体である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項47】
前記提供されるポリペプチドが、ハイドロフォビン(配列番号2)もしくはその断片、または該ポリペプチドの改変体である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項48】
前記提供されるポリペプチドが、GAPDH−B(配列番号3)もしくはその断片、または該ポリペプチドの改変体である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項49】
前記提供されるポリペプチドが、カタラーゼA(配列番号6)もしくはその断片、または該ポリペプチドの改変体である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項50】
イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH−B(配列番号3)、エノラーゼ(配列番号4)、カタラーゼB(配列番号5)およびカタラーゼA(配列番号6)の群より選択されるポリペプチドの結合パートナーを同定するための方法であって、以下:
a.請求項31〜35のいずれかに定義されるポリペプチドまたはイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH−B(配列番号3)、カタラーゼB(配列番号5)、およびカタラーゼA(配列番号6)の群より選択されるポリペプチドを提供する工程、
b.該ポリペプチドを推定上の結合パートナーに接触させる工程、ならびに
c.該推定上の結合パートナーが該ポリペプチドに結合し得るか否かを決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項51】
前記推定上の結合パートナーが宿主由来分子である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記方法が複数の推定上の結合パートナーについて繰り返される、請求項50〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
抗真菌活性を備える化合物を同定するための方法であって、以下:
a.低下したレベルの、配列番号1、2、3、5、6、および36の群より選択されるポリペプチドを有する感作細胞を提供する工程、ならびに、
b.推定上の抗真菌化合物に対する該細胞の感受性を、例えば増殖アッセイによって決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項54】
イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、GAPDH(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)の群より選択される細胞外コウジカビポリペプチドのインヒビターを同定するための方法であって、以下:
a.イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、GAPDH(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)の群より選択されるポリペプチドのレベルが異なる2つの細胞を提供する工程、
b.推定上のインヒビターに対する該細胞の感受性を、例えば増殖アッセイによって決定する工程、ならびに、
c.該2つの細胞が該推定上のインヒビターの存在によって異なる影響を受けるか否かを決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項55】
前記2つの細胞は、前記ポリペプチドのコピー数が異なる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記2つの細胞は、前記ポリペプチドの活性が異なる、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
真菌感染、好ましくはAspergillus fumigatus感染を診断する方法であって、以下:
a.個体からのサンプルを提供する工程、
b.該サンプルを、イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH−B(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)の群より選択されるポリペプチドを特異的に認識および結合し得るインジケータ部分に接触させる工程、ならびに、
c.シグナルが該インジケータ部分によって産生されたか否かを決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項58】
前記インジケータ部分が、請求項1〜24のいずれかに定義される抗体などの抗体であるか、それらの抗体を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
生物学的サンプルにおいて真菌物質、好ましくはインタクトな真菌細胞、最も好ましくはインタクトなAspergillus fumigatus細胞を検出するためのキットであって、以下:
a.イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素B(配列番号36)、CssI(配列番号1)、ハイドロフォビン(配列番号2)、GAPDH−B(配列番号3)、およびカタラーゼA(配列番号6)の群より選択されるポリペプチドを特異的に認識および結合し得るインジケータ部分、ならびに
b.該インジケータ部分の真菌物質への結合を促進するための緩衝液;検出可能なシグナルを発生するための試薬;ユーザに対する記載された説明書の1つ以上;
を備える、キット。
【請求項60】
前記インジケータが、請求項1〜24のいずれかに定義される抗体などの抗体であるか、またはそれらの抗体を含む、請求項59に記載のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2007−535897(P2007−535897A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515711(P2006−515711)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000407
【国際公開番号】WO2004/108765
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505457190)
【Fターム(参考)】