説明

細胞外マトリクスの分解の阻害

本出願は、島ベータ細胞に関連する細胞外マトリクスの分解を阻害する方法であって、該細胞外マトリクスをヘパラナーゼ阻害剤の有効量と接触させる段階を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体として参照により本明細書に組み入れられる2006年10月20日に出願されたオーストラリア特許仮出願第2006905854号の恩典を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、膵島炎または自己免疫性1型糖尿病などの細胞外マトリクス分解に関連する病態の処置におけるヘパラナーゼ阻害剤の使用に関する。特に、本発明は、膵島炎または1型糖尿病の処置に対する移植術帰結の改善に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
1型糖尿病(T1D)は、膵島のインシュリン産生ベータ細胞が破壊される自己免疫性疾患である。ヒトにおいて、この疾患は、ライフスタイルに対して甚大な影響を有し、外因性インシュリン治療による高血糖症の不完全な制御は、必然的に微小血管疾患をもたらす。この合併症は、最終的に、腎臓疾患、心疾患、失明、および神経障害を引き起し、壊疽および四肢の切断をもたらす可能性がある。膵島の臨床的移植術は、インシュリンが体がそれを必要とする時に生理学的に送達され得るので、T1Dに対する改善された処置を潜在的に提供する。加えて、このアプローチは、膵臓移植術に関連する外科的合併症を回避する。T1Dに対する処置としての臨床的島移植術(Clinical islet transplantation)は、Edmontonプロトコールの実施にともない、近年かなり進歩した。この進歩にもかかわらず、この島移植の拒絶を予防するのに必要とされる免疫抑制性薬物の大量使用は、その適用を、糖尿病を制御するのが困難である成体被験体のみに厳しく限定した。さらに、長期的には、結局は島機能が失われ、インシュリン治療が再度必要とされる。この移植片不全は、移植の免疫学的拒絶を予防するために使用される免疫抑制性薬物の毒性および/または自己免疫性疾患の再発による可能性が最も高い。それ故に、毒性免疫抑制性薬物に対する必要性を排除し、したがって被験体の健康状態および移植の完全性を保つために、より良い抗移植片拒絶/破壊戦略が開発されることが必須である。
【0004】
NOD(非肥満性糖尿病性)マウスは、膵臓の島に存在するインシュリン産生ベータ細胞の自己免疫性破壊により、糖尿病を自然に発生する。自己免疫性応答の病状は、初めは、島の周辺のT細胞およびマクロファージなどの非浸潤性MNC(単核細胞)の蓄積に関与する。この良性または非破壊性膵島炎病状は、メスNODマウスが年を取るにつれて、浸潤性膵島炎(すなわち、破壊性自己免疫)にスイッチするが、この変換を調節する因子は不明である(1)。形態計測的研究は、宿主膵臓における島の>50%が浸潤性膵島炎を有する場合に、ベータ細胞破壊が生じ、膵臓のインシュリン含有量が正常マウスの<10%に達する場合に、糖尿病が見られることを示した。
【0005】
クリーンなNODマウスコロニーにおいて、糖尿病の発症率は、メスマウスにおいて80%、オスマウスにおいて20%に達する場合がある(1)。NODマウスにおける島周囲膵島炎の発生およびその後の糖尿病の発症は、T細胞依存性プロセスであり、養子免疫伝達研究は、CD4+およびCD8+ T細胞の両方が必要とされることを実証した。この自己免疫性T細胞応答は、Th1-バイアスサイトカインプロフィールに関連し、初めは限定された数の自己抗原に対して生成されると考えられているが、分子内および分子間拡散を介して進行し、結局は複数のベータ細胞自己抗原、すなわち、プロインシュリン/インシュリン、GAD 65、IA-2、および熱ショックタンパク質65(HSP65)に関与する。エフェクターT細胞の集団と調節性T細胞の集団との間の不均衡に起因する免疫調節における機能停止は、破壊性自己免疫の発症に貢献する主要な因子として同定されている。
【0006】
本発明は、良性または非破壊性膵島炎フェーズの間に免疫学的バリアとして作用し、島内白血球浸潤を予防する、膵臓における島を囲む基底膜の発見に関する。これに関して、破壊性MNC浸透の発症は、活性化MNC由来ヘパラナーゼによる島BM(基底膜)ペルレカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカン)の局所ダメージと相関する。さらに、本発明は、アロ反応性および自己反応性T細胞によって産生されるヘパラナーゼが、それぞれ拒絶および疾患再発による島移植の免疫学的破壊において重大な役割を果たすという発見に関する。本発明者らは、さらに、ベータ細胞を健康に維持することにおいて機能し得るヘパラン硫酸が島内細胞外マトリクス(ECM)において豊富であるという重要な発見をした。島内の破壊性膵島炎およびMNC浸透の進行は、ECMにおける島内ヘパラン硫酸の分解と相関する。それ故に、島内ヘパラン硫酸は、ベータ細胞生存に対して必要とされるように見える。
【0007】
結果として、ヘパラナーゼによる島BM/ECM(基底膜/細胞外マトリクス)ヘパラン硫酸の機能停止と闘うための処置に対する必要性がある。さらに、1型糖尿病を患っている被験体における移植拒絶を予防するための改善された戦略に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第一の局面に従って、島ベータ細胞に関連する細胞外マトリクスの分解を阻害する方法であって、該細胞外マトリクスをヘパラナーゼ阻害剤の有効量と接触させる段階を含む方法が提供される。
【0009】
一つの態様において、細胞外マトリクスは、基底膜、島周囲被膜、島内細胞外マトリクス、またはその任意の組み合わせを含む群より選択され得る。
【0010】
本発明の第二の局面に従って、島ベータ細胞に関連する細胞外マトリクスにおけるヘパラン硫酸プロテオグリカンの分解を阻害する方法であって、該細胞外マトリクスをヘパラナーゼ阻害剤の有効量と接触させる段階を含む方法が提供される。
【0011】
一つの態様において、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、ペルレカン、XVIII型コラーゲン、またはアグリンであり得る。
【0012】
本発明の第三の局面に従って、被験体における自己免疫病態の処置の方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法が提供される。
【0013】
一つの態様において、病態は、膵島炎、1型糖尿病、膵島移植の拒絶、またはその任意の組み合わせを含む群より選択され得る。
【0014】
本発明の第四の局面に従って、被験体における膵島炎の処置の方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法が提供される。
【0015】
本発明の第五の局面に従って、被験体における移植の拒絶を処置または予防する方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法が提供される。
【0016】
一つの態様において、移植は、膵島移植術である。
【0017】
本発明の第六の局面に従って、移植術に関連する免疫抑制性治療のレベルを低下させるための方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法が提供される。
【0018】
一つの態様において、移植術は、膵島移植術である。
【0019】
本発明の第七の局面に従って、被験体における糖尿病に対する処置の方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法が提供される。
【0020】
一つの態様において、糖尿病は、発症して間もない1型糖尿病である。
【0021】
本発明の第八の局面に従って、ヘパラナーゼ阻害剤を薬学的に許容される担体と混和する段階を含む薬学的組成物の製造のためのプロセスが提供される。
【0022】
本発明の第九の局面に従って、膵島炎の処置のための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用が提供される。
【0023】
本発明の第十の局面に従って、糖尿病の処置のための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用が提供される。
【0024】
一つの局面において、糖尿病は、発症して間もない1型糖尿病である。
【0025】
本発明の第十一の局面に従って、移植拒絶の処置のための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用が提供される。
【0026】
一つの局面において、移植術は、膵島移植術である。
【0027】
本発明の第十二の局面に従って、島細胞外マトリクスにおけるヘパラン硫酸の分解を阻害するための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用が提供される。
【0028】
本発明の第十三の局面に従って、ヘパラン硫酸プロテオグリカンの分解を阻害するための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用が提供される。
【0029】
本発明の第十四の局面に従って、被験体における移植の拒絶を阻害するための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用が提供される。
【0030】
本発明の第十五の局面に従って、移植術に関連する免疫抑制性治療のレベルを低下させるための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用が提供される。
【0031】
第一、第二、または第十二の局面のいずれかの一つの態様において、細胞外マトリクスは、基底膜、島内細胞外マトリクス、島周囲被膜、またはその任意の組み合わせを含む群より選択され得る。
【0032】
第四〜第七の局面のいずれかの一つの態様において、ヘパラナーゼ阻害剤の投与は、全身的または局部的であり得る。投与は、非経口、腔内、膀胱内、筋内、動脈内、静脈内、皮下、局部、または経口であり得る。
【0033】
ヘパラナーゼ阻害剤は、一つまたは複数の薬学的に許容される担体、アジュバント、または希釈剤と一緒に組成物の形式で投与され得る。
【0034】
本発明の第十六の局面に従って、細胞外マトリクス分解に関連する病態の処置または予防に対して使用される場合の組成物であって、一つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、またはアジュバントと一緒にヘパラナーゼ阻害剤を含む組成物が提供される。
【0035】
本発明の第十七の局面に従って、細胞外マトリクス分解に関連する病態の処置または予防に対して使用される場合の組成物であって、少なくとも一つのその他の免疫抑制剤または抗炎症剤および任意で一つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、またはアジュバントと一緒にヘパラナーゼ阻害剤を含む組成物が提供される。
【0036】
抗炎症剤は、ステロイド、コルチコステロイド、COX-2阻害剤、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、アスピリン、またはその任意の組み合わせを含む群より選択され得る。
【0037】
一つの態様において、非ステロイド抗炎症剤は、イブプロフェン、ナプロキセン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、チアプロフェン酸、アザプロパゾン、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、インドメタシン、ケトロラク、ロルノキシカム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、セレコキシブ、スリンダク、テノキシカム、トルフェナム酸、またはその任意の組み合わせを含む群より選択され得る。
【0038】
免疫抑制剤は、アレムツズマブ、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、レフルノミド、メトトレキサート、マイコフェノレートモフェチル、リツキシマブ、スルファサラジンタクロリムス、シロリムス、またはその任意の組み合わせを含む群より選択され得る。
【0039】
上述の局面のいずれか一つに従って、ヘパラナーゼ阻害剤は、硫酸化多糖類、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド、非炭水化物ヘパリン模倣ポリマー、硫酸化マルトオリゴ糖類、ホスホスルホマンナン、硫酸化間隔(spaced)オリゴ糖類、硫酸化連結シクリトール、グリカミノ酸(glycamino acids)の硫酸化オリゴマー、偽二糖類、シアスタチンB誘導体、ウロン酸型Gem-ジアミン1-N-イミノ糖類、スラミンおよびスラミン類似体、菌代謝物、ジフェニルエーテル、カルバゾール、インドール、ベンズ-1,3-アゾール誘導体、2,3-ジヒドロ-1,3-1H-イソインドール-5-カルボン酸誘導体、フラニル-1,3-チアゾール-2-イル、ベンゾキサゾール-5-イル酢酸、ポリ(N-アクリルアミノ酸)、その代謝物、誘導体、もしくは類似体、またはその任意の組み合わせを含む群より選択され得る。ヘパラナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体であり得る。ヘパラナーゼ阻害剤は、PI-88であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
ここで、添付の図面に関連して、ほんの一例として、本発明の好ましい態様が記載される。
【0041】
【図1】(a)新生児NOD/Lt島および(b)成体前糖尿病性NOD/ Lt島の細胞外マトリクスにおけるヘパラン硫酸のアルシアンブルー染色。(a)における島基底膜におけるヘパラン硫酸のアルシアンブルー染色に注目されたい。
【図2】(a)ウサギ抗マウスナイドジェン-1および(b)ウサギ抗マウスペルレカンでの免疫蛍光染色は、破壊性膵島炎の非存在下でのNOD島の基底膜(白い指標線を参照されたい)における(a)ナイドジェンおよび(b)ペルレカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカンまたはHSPG)の存在を示す。
【図3】PI-88処置は、NOD/Ltマウスにおける自己免疫性糖尿病の発生を予防する。ヘパラナーゼ阻害剤PI-88(10mg/kg/日 i.p.;生理食塩水における250μg/0.2ml/日 i.p.)での10.5週齢からの前糖尿病性成体メスNOD/Ltマウスの処置(n=23)は、生理食塩水(0.2ml/日 i.p.)で処置された対照マウス(n=25)と比較して、臨床的糖尿病の発症を予防し、PI-88が破壊性膵島炎を予防することを示唆する。本発明者らの保持メスNOD/Ltマウスコロニーにおける糖尿病の発症率は、60%である。
【図4】(a)基底膜(BM)により定義された境界を示す正常BALB/c島。*は、基底膜を示す。(b)正常BALB/cマウスにおける膵管を介する10μgの精製ヒト血小板由来ヘパラナーゼ/0.5ml PBSのインビボ投与は、送達の24〜48時間後に(インサイチューで)基底膜(*)を欠く島の組織学的証拠を引き起こし、それ故に、正常島形態が、インビボでヘパラナーゼによって乱される可能性があることを示す。
【図5】(a)膵管を介するインビボ注射後のBALB/c膵臓における島の周辺でかつ膵管に関連する精製ヒト血小板由来ヘパラナーゼ(H)の免疫組織学的局在化;ウサギ抗ヒトヘパラナーゼポリクローナル抗体。(b)一次抗ヘパラナーゼ抗体の非存在下ならびにリン酸緩衝生理食塩水(希釈剤)およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ウサギIgの存在下での(a)からのBALB/c膵臓におけるバックグラウンド染色。
【図6】(a)10%CO2、90%大気における24時間の培養後の対照BALB/c島の顕微鏡像。(b)ヒト血小板由来ヘパラナーゼ(20μg/ml)をともなう24時間の培養後のBALB/c島の像。対照島と異なり、インビトロでのヘパラナーゼ処置は、島への周辺ダメージおよびいくつかのケースで島分解を引き起こした(c)。
【図7】(a)前糖尿病性NOD/Ltメス膵臓のヘマトキシリンエオジン染色は、無傷島(i)ならびに非破壊性膵島炎(ii)および破壊性膵島炎(iii)を有する島の証拠を示す。(b)アルシアンブルー/0.65M塩化マグネシウム/pH 5.8での同じ膵臓標本の組織学的染色は、無傷島(i)ならびに島基底膜および細胞外マトリクス(ii)においてヘパラン硫酸を検出する;残っている島細胞塊(iii)においてブロークンブルー染色によって示されるように、破壊性膵島炎の島細胞塊への進行の間、ECMのHS構成要素は乱されるようになる。
【図8】(a)PI-88治療は、島同系移植片における疾患再発を予防する。糖尿病性NOD/Ltメスマウスの腎臓被膜下に移植された450〜500メスNODscid島の同系移植片は、非空腹時血糖レベルを正常範囲に戻す(陰影領域が正常範囲を定義する)。対照レシピエント(丸)においてさらなる処置をともなわないと、高血糖症は3日目から戻った。対照的に、NODscid島同系移植片は、3日目からPI-88(10mg/kg/日 i.p.)で処置された糖尿病性NODマウスにおいて14日間まで正常血糖を維持する(四角)。採取の時に、対照同系移植片(b)は、侵襲性自己免疫性破壊(単核細胞浸潤物)および島残部(*)を示したが、PI-88処置マウスからのヘマトキシリンエオジン染色同系移植片(c)は、MNCの島周囲蓄積(*)をともなう再血管新生島(†)を示した。
【図9】免疫蛍光法によって確認されるように、単細胞へ分散された単離島は、主にインシュリン産生ベータ細胞である。2日の培養期間にわたって無傷のままであった対照島細胞とは対照的に、バクテリアヘパリチナーゼ(ヘパリナーゼ)(I+II+III;0.25U/ml)で1時間処置されたベータ細胞は死んだ(a)。(細胞系によってインビトロで産生された)ECM上の処置細胞の配置は、ヘパリチナーゼ誘発細胞死からベータ細胞を大いに救うことができた(a)。これらの所見は、島ベータ細胞が、生存するために細胞結合HSを必要とすることを示した。この考えの支持において、バクテリアヘパリナーゼ処置ベータ細胞は、ヘパラン硫酸の高度に硫酸化された型である5〜50μg/mlヘパリンを培養に提供することによって効率的に救われた(*P<0.0001)(b)。
【図10】移植の7日後のPI-88処置レシピエントCBA/H(H-2k)マウスからのBALB/c(H-2d)島同種移植片は、移植の7日後により進んだ島破壊(†)を示す対応する対照島同種移植片(b)と比較して、島の周辺の単核細胞の蓄積(*)を示す(a)。それ故に、宿主のPI-88処置は、移植同種島のより良い保存を引き起こした。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義
以下のように規定される意味を有する特定の用語が、本明細書において使用される。
【0043】
本明細書において使用されるように、「含む(comprising)」という用語は、「主として含むが、必ずしもそれだけではない」を意味する。さらに、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの「含む(comprising)」という語のバリエーションは、相当に様々な意味を有する。
【0044】
本明細書において使用されるように、「処置する」および「処置」という用語は、病態もしくは症状を治療する、病態もしくは疾患の確立を予防する、またはそうでなければ病態もしくは疾患もしくはどんなものであれ任意の方式におけるその他の望ましくない症状の進行を予防する、妨害する、遅らせる、もしくは逆転させる任意のおよびすべての使用を指す。
【0045】
本明細書において使用されるように、「有効量」という用語は、望ましい効果を提供するための薬剤または化合物の無毒性であるが十分な量をその意味内に含む。必要とされる正確な量は、処置される種、被験体の年齢および一般的な病態、処置される病態の重症度、投与される特定の薬剤、ならびに投与のモードなどの因子に応じて、被験体間で変化すると考えられる。したがって、正確な「有効量」を特定することは可能ではない。しかしながら、任意の与えられたケースに対して、適当な「有効量」が、日常的な実験のみを使用して当業者によって決定され得る。
【0046】
本明細書において使用されるように、「島ベータ細胞に関連する細胞外マトリクス」という用語は、島ベータ細胞または島それ自体を囲むまたは実質的に囲むが必ずしも接触はしていない任意の細胞外構成要素を指す。これらの構成要素は、ヘパラン硫酸および/または例えば、ペルレカン、XVIII型コラーゲン、もしくはアグリンなどのヘパラン硫酸プロテオグリカンをさらに含む。「細胞外マトリクス」という用語は、基底膜をその意味に含む。
【0047】
本明細書において使用されるように、「アルキル」という用語は、1〜10の炭素原子を有する一価(「アルキル」)および二価(「アルキレン」)直鎖または分岐鎖飽和脂肪族基をその意味内に含む。アルキル基は、C1-6アルキルであり得る。アルキル基は、C1-4アルキルであり得る。アルキル基は、C1-3アルキルであり得る。したがって、例えば、アルキルという用語は、メチル、エチル、1-プロピル、イソプロピル、1-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、および同様のものを含むが、それらに限定されない。
【0048】
本明細書において使用されるような「アリール」という用語は、6〜14の炭素原子を有する芳香族炭化水素の一価(「アリール」)および二価(「アリーレン」)単、多核、結合および融合残基を指す。芳香族基は、C6-10芳香族であり得る。芳香族基の例は、フェニル、ナフチル、フェナントレニル、および同様のものを含む。アリール基は、例えば、メチル、エチル、ハロ、CF3、CH2OH、OH、O-メチル、およびO-エチルより独立に選択される一つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0049】
好ましい態様の詳細な説明
最初に、本明細書において提供される図および例が、例示するためであり、本発明およびその様々な態様を限定しないことが理解されるべきである。
【0050】
本発明に従って、細胞外マトリクス分解の阻害のために、組成物、方法、およびキットが提供される。方法は、概して、少なくとも一つのヘパラナーゼ阻害剤を含む組成物の使用を含む。
【0051】
細胞外マトリクス(ECM)は、組織における細胞外空間を満たす巨大分子のネットワークから成り、異なる器官内で細胞に対する分子足場を提供する(3)。ECMは、構造タンパク質(例えば、コラーゲン)、特殊タンパク質(例えば、ラミニン)、およびプロテオグリカン(例えば、ペルレカン、XVIII型コラーゲン、またはアグリンを含むヘパラン硫酸プロテオグリカン(2))から成る。概して、基底膜(BM)は、細胞の群を囲み、それによって細胞移動に対する物理的支持および主要なバリアを提供し得る細胞外マトリクス(ECM)の薄シートである(3)。典型的には、それらは、タンパク質および多糖類構成要素からなる。ヘパラン硫酸グリコサミノグリカンは、BMの主要な多糖類構成要素を示す(4,5)。本発明者らは、ヘパラン硫酸が島内ECMにおいて豊富であること(図1を参照されたい)および膵島を囲むBMが、ペルレカンを含むこと(図2(b)を参照されたい)を同定した。
【0052】
従って、本発明者らは、鍵となるBM構成要素として、かつヘパラナーゼによるMNC媒介分解に対する初めの標的として、ペルレカンに焦点を当てた。ペルレカンは、多糖類(グリコサミノグリカン)、ヘパラン硫酸(HS)の3つの付着分子を有するコアタンパク質(400〜470kDa)からなるヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)である(6)。HSPG/ペルレカンは、IV型コラーゲンおよびラミニンと相互作用し、それによって、BM構造全体を安定化させる。血管のBMにおいて、ペルレカンは、膜のアニオン電荷(負に帯電した硫酸基による)および選択的透過性に大いに貢献する(6)。
【0053】
エンドグリコシダーゼ(エンド-ベータ-グルクロニダーゼ)、ヘパラナーゼ(ヘパリナーゼとしても公知)は、HSPGのヘパラン硫酸(HS)(ヘパリン硫酸としても公知)鎖を開裂し得る唯一の公知の哺乳類酵素である。ヘパラナーゼは、およそ65kDaのプロ酵素として産生され、活性酵素の形成のために二つのより小さなポリペプチド(8kDaおよび50kDa)へのタンパク質分解開裂を必要とする(7,8)。少なくともT細胞に対して、ヘパラナーゼ発現は、炎症促進性サイトカインによって調節されるように見え、酵素は、最終的にリン酸マンノース受容体によって細胞表面に結合し得る(3)。ヘパラナーゼは、特に転移腫瘍および腫瘍関連血管形成において、ECMを分解するために浸潤細胞によって必要とされる武器において、肝要な役割を果たすことが見出されている(3)。
【0054】
ヘパラナーゼによる島ヘパラン硫酸の分解およびベータ細胞破壊におけるその役割
本発明者らは、島周囲被膜が、ペルレカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカンまたはHSPG)を含む基底版または基底膜(BM)のものと一致する特性を有することを見出した。さらに、島内浸透は、基底膜の主要な崩壊を伴った。腫瘍転移の研究は、腫瘍細胞浸潤が、ヘパラナーゼなどの分解性酵素による下層BMおよび/または細胞外マトリクスの機能停止によって生じることを示した(3)。同様に、NOD/Lt膵臓における島を囲むBMは、非破壊性膵島炎フェーズの間、免疫学的バリアとして作用し、島内白血球浸潤を予防する。破壊性MNC浸透の発症は、活性化MNC由来ヘパラナーゼによる島基底膜の局所ダメージと相関する。基底膜バリアが越えられると、本発明者らは、破壊性膵島炎の進行が、ヘパラナーゼによる島内細胞外マトリクスにおけるヘパラン硫酸の崩壊およびベータ細胞消滅と相関するというユニークな発見をした。インビボ(図4および5)およびインビトロでの島のヘパラナーゼ処置は、島ダメージ、およびいくつかのケースで完全な島破壊を引き起こす(図6)。それ故に、ベータ細胞生存は、無傷島ECM-ベータ細胞連合だけではなく無傷BMおよび島内ECMヘパラン硫酸の維持に依存している。
【0055】
腎臓被膜下に移植された島のケースで、移植片は、腎実質における宿主血管に由来する宿主由来毛細血管ネットワークによって再血管新生される。島移植片拒絶および自己免疫性破壊の間に活性化白血球によってとられる経路は、新しく形成された移植片内血管からまたは移植下の腎臓組織における近くの既存の腎血管からの移動に関与する。炎症の部位への白血球の動員は、活性化T細胞が近くの部位で血管内皮を越え、内皮下BMを介して隣接組織へ移動することを必要とする。血管内皮細胞への白血球結合および白血球のローリング、内皮細胞結合ケモカインとの相互作用に続いて、それらは、内皮細胞間の血管内皮を越え、次いで、MMPおよびヘパラナーゼなどの様々な酵素の分解性機能の手段によって内皮下BMを介して移動する(9)。ヘパラン硫酸は、血管接着リガンド、ケモカインの結合剤/イモビライザー/トランスポーターとして、および内皮下BMにおける白血球移動に対するバリアとして作用する。ヘパラナーゼによるBMヘパラン硫酸の分解は、白血球移動に対して重大でかつ必須なプロセスである。活性化T細胞/白血球は、島内毛細血管から移動しないが、その代りに島を囲む移植片内部位から、島BMを越えて、島細胞塊へ移動する。そのようなMNC移動は、BM HSPGのヘパラナーゼ媒介分解を必要とする。活性化白血球、炎症促進性サイトカイン誘導内皮細胞、および血小板は、ヘパラナーゼを産生する(10,11)。ヘパラナーゼ活性の発現は、げっ歯類における中枢神経系において、血管BMを越えるT細胞の管外遊出および炎症の発生に関連することが見出されている(12)。同様に、げっ歯類におけるリポ多糖類(LPS)誘発炎症は、ヘパラナーゼ阻害剤PI-88でのインビボ処置によって予防されている。生体顕微鏡検査は、白血球ローリングおよび血管BMへの付着を実証したが、管外遊出を実証しなかった。これらの所見は、PI-88が、島移植片への活性化MNCの通過を阻害する可能性もあることを示唆する。
【0056】
自己免疫性疾患の再発に対する島移植の感受性
NODマウスにおける膵島炎および糖尿病発症の発生は、CD4+およびCD8+ T細胞の両方を必要とするT細胞依存性プロセスであるが、NODならびに糖尿病性NODマウスに移植されたNODscid島同系移植片における疾患の再発は、CD4+ T細胞によって媒介され、枯渇または非枯渇抗CD4 mAb治療によって予防される。島ベータ細胞は、クラスII腫瘍組織適合複合体(MHC)-veであるので、糖尿病関連ベータ細胞特異的自己抗原が、一つまたは複数の移植片内抗原提示細胞(APC)集団によって宿主MHCクラスIIに関連して処理されかつ提示され、それによって、自己反応性CD4 T細胞による認識および島ベータ細胞への間接的なダメージをもたらすように見える。抗CD4 mAb治療とは対照的に、抗CD154mAbプロトコールでの共刺激性阻止は、島同系移植片における疾患再発を予防しなかった、または遅延させただけだった。骨髄非破壊的コンディショニングで処置された糖尿病性NODマウスにおける混合造血キメラの誘発が、自己免疫性ダメージからNOD島移植片を保護したが、この実験的アプローチは、臨床的島移植術には適していない。概して、島移植における疾患再発の予防は、厄介な障害であり、現在の臨床的島移植術トライアルに対する主要な懸案事項のままである。
【0057】
移植された同系島の基底膜を越えるおよび島内ECMを介する移植部位への自己反応性T細胞の浸潤も、ヘパラナーゼ依存性プロセスである。
【0058】
従って、本発明は、PI-88などのヘパラナーゼ阻害剤による移植された同系島の基底膜を越える移植部位への自己反応性T細胞の浸潤の予防に関する。
【0059】
島の同種移植術
膵島同種移植片の拒絶は、移植において受動的に運ばれたドナー型パッセンジャー白血球による抗ドナー反応性T細胞の直接的な活性化に起因する(13)。拒絶プロセスへのCD4+およびCD8+ T細胞の貢献は、ドナー/レシピエント株組み合わせ、島組織分化の状態、および島移植内のクラスII MHC+ve管上皮の存在/非存在によって影響されるように見える。
【0060】
研究により、高酸素でのインビトロでの島組織の前処置または抗CD8 mAbもしくは抗CD4 + 抗CD8 mAbでのレシピエントマウスの短期処置、ネズミCTLA4- Fcまたはドナー特異的輸血をともなう抗CD154 mAbまたは抗ICOSmAbと組み合わせられた抗CD154mAbを使用する共刺激性阻止に続く、しばしば耐性誘発を伴う島同種移植片の延長された生存が実証された。
【0061】
単独でまたはその他の薬剤との組み合わせにおいて免疫抑制性薬物を使用するその他の研究により、安定な島同種移植片生存の誘発が実証された。多くのこれらのモデルにおいて、耐性が宿主調節性CD4+CD25+ T細胞に依存していることが示されており、免疫調節の活性プロセスを示す。しかしながら、自己免疫性誘発糖尿病を有する同種宿主の状況において、通常飼育の(conventional)非自己免疫性マウスにおける同種移植片拒絶を予防することにおいて有効な免疫治療は、大抵失敗したか、良くても拒絶を遅延させた(14-16)。この問題は、自己免疫性攻撃も受けやすい島同種移植片(17)、故に、破壊の二つの独立のメカニズム:拒絶および自己免疫性疾患の再発を標的にする必要性による。
【0062】
これらのバリアは、大量の免疫抑制性プロトコールまたはドナー特異的造血キメラを使用してNODマウスにおいて克服されているが、そのようなアプローチは、問題がある(例えば、有害な副作用)、または臨床的島移植術に対して非現実的である。この理由のために、BMを越える白血球移動および島内ヘパラン硫酸の破壊のヘパラナーゼ依存性メカニズムは、それが島移植における島同種移植片拒絶および自己免疫性疾患の再発の両方に対して一般的な経路であるので、介入治療のために標的にされている。実際、ある程度の抗ヘパラナーゼ活性を示すヘパリンでのマウスの処置は、マウスのおいて皮膚同種移植片生存を延長した。
【0063】
本発明は、ヘパラナーゼが、島同種移植片拒絶において役割を果たすという驚くべき発見に関する。さらに、本発明者らは、PI-88などのヘパラナーゼ阻害剤が、通常飼育のマウスにおける島同種移植片の免疫性破壊を遅延させ、自己免疫性糖尿病性NOD宿主における島同系移植片を保護し得ることを見出した。したがって、ヘパラナーゼ阻害剤は、臨床的島移植術に対する新しい治療薬を構成する可能性があり、有害な免疫抑制性薬物に対する必要性を最小にするまたは予防する可能性がある。
【0064】
ヘパラナーゼ阻害剤
ヘパラナーゼは、細胞表面上でかつ細胞を囲む細胞外マトリクスおよび基底膜の主要な構成要素として見出されているプロテオグリカンのヘパラン硫酸側鎖を開裂するエンド-β-グルクロニダーゼである。ヘパリンおよび修飾ヘパリン誘導体、様々な天然および合成ポリアニオンポリマー、ならびに遷移状態類似体として作用することが推定されるより小さな分子を含むいくつかのヘパラナーゼ阻害剤が単離または合成されている。分子の様々なクラスおよびその具体的な例は、次のとおりである。
【0065】
本発明に従うヘパラナーゼ阻害剤は、硫酸化多糖類、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド、非炭水化物ヘパリン模倣ポリマー、硫酸化マルト-オリゴ糖類、ホスホスルホマンナン、硫酸化間隔オリゴ糖類、硫酸化連結シクリトール、グリカミノ酸の硫酸化オリゴマー、偽二糖類、シアスタチンB誘導体、ウロン酸型Gem-ジアミン1-N-イミノ糖類、スラミンおよびスラミン類似体、菌代謝物、ジフェニルエーテル、カルバゾール、インドール、ならびにベンズ-1,3-アゾール誘導体を含む群より選択される。ヘパラナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体を含んでもよい。
【0066】
硫酸化多糖類は、ヘパリン、λ-カラギーナン、κ-カラギーナン、フコイダン、ペントサンポリ硫酸、6-O-カルボキシメチルキチンIII、ラミナリン硫酸、カルシウムスピルラン、および硫酸デキストランを含む群より選択される。
【0067】
非炭水化物ヘパリン模倣ポリマーの例は、以下に示される式1〜式7の化合物より選択される。

【0068】
式1〜7において、nは、60以下である。
【0069】
硫酸化マルト-オリゴ糖類の例は、以下に示される式8〜式11の化合物を含む群より選択される。

【0070】
式8〜11において、Xは、SO3NaまたはHであり得る。
【0071】
ホスホスルホマンナンの例は、以下に示される式12および13の化合物を含む群より選択される。そのような化合物の例は、化合物13(PI-88)である。

【0072】
式12および13において、Xは、SO3NaまたはHであり得る。
【0073】
本発明は、以下に示されるようにPI-88の類似体を含み、式中、R=SO3NaまたはHである。PI-88は、上記の式13によって示され、その類似体は、以下の式13a〜13jによって示される。

式13a〜13dにおいて、Rは、SO3NaまたはHであり得る。

【0074】
硫酸化「間隔(spaced)」オリゴ糖類の例は、以下に示されるような一般式16によって示される。

【0075】
式16において、Xは、SO3NaまたはHであり得る。加えて、式16において、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、またはアルキルアリールアリールであり得る。
【0076】
硫酸化「間隔」オリゴ糖類のその他の例は、以下に示される一般式14および式15の化合物によって示される。

【0077】
式14および15において、Xは、SO3NaまたはHであり得る。
【0078】
硫酸化連結シクリトールの例は、式17および19によって示される化合物より選択され得る。式18によって示される化合物は、シクリトールを作るための開始試薬である。

【0079】
式17および19において、Xは、SO3NaまたはHであり得る。
【0080】
グリカミノ酸の硫酸化オリゴマーの例は、以下に示される式20、21、および22の化合物を含む群より選択される。

【0081】
式20〜22において、Xは、SO3NaまたはHであり得る。
【0082】
偽二糖類の例は、以下に示される式23および24の化合物ならびにその塩より選択され得る。

【0083】
シアスタチンB誘導体の例は、以下に示される式25、26、27、および28の化合物より選択され得る。

【0084】
ウロン酸型Gem-ジアミン1-N-イミノ糖類の例は、以下に示される式29、30、および31の化合物ならびにその塩より選択され得る。

【0085】
スラミンおよびスラミン類似体の例は、以下に示される式32、33、34、および35の化合物より選択され得る。式32および35は、同じ化合物の代わりの表示である。


【0086】
菌代謝物の例は、以下に示される式36、37、および38の化合物より選択され得る。

【0087】
ジフェニルエーテル、カルバゾール、インドール、およびベンズ-1,3-アゾール誘導体の例は、以下に示される式39、39a、40、41、および42の化合物ならびにその塩より選択され得る。

【0088】
ヘパラナーゼ阻害剤は、以下の化合物より選択されてもよい。

【0089】
組成物および処置の方法
本発明における使用のための化合物は、治療的にまたは予防的に組成物として投与され得る。治療的適用において、組成物は、疾患およびその合併症を治すまたは少なくとも部分的に阻むのに十分な量において、すでに疾患を患っている(例えば、疾患発症後早期)被験体に投与される。組成物は、被験体を効果的に処置するのに十分な化合物または薬剤の分量を提供するべきである。
【0090】
概して、適した組成物は、当業者に公知である方法に従って調製され得、従って、薬学的に許容される担体、希釈剤、および/またはアジュバントを含み得る。
【0091】
投与可能な組成物を調製するための方法は、当業者にとって明白であり、例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa.においてより詳細に記載されている。
【0092】
本発明における使用のための組成物は、局部製剤を含み得、一つまたは複数の許容される担体、希釈剤、賦形剤、および/またはアジュバント、ならびに任意で任意のその他の治療的成分と一緒に活性成分を含み得る。局部投与に適した製剤は、塗布薬、ローション、クリーム、軟膏またはペースト、および目、耳、または鼻への投与に適した液滴などの、処置が必要とされる部位への皮膚を介する透過に適した液体または半液体調製を含む。
【0093】
本発明における使用のための液滴は、滅菌の水性または油性の溶液または懸濁液を含み得る。これらは、活性成分を殺菌および/もしくは殺真菌薬剤ならびに/または任意のその他の適した保存剤の水性溶液に溶解することによって調製され得、任意で表面活性剤を含む。次いで、結果として生じた溶液は、濾過によって浄化され、適した容器に移され、滅菌され得る。滅菌は、オートクレーブもしくは30分間90℃〜100℃で維持することによって、または無菌技術による容器への移送が続く濾過によって、達成され得る。液滴における含有に適した殺菌および殺真菌薬剤の例は、硝酸または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)、および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。油性溶液の調製に適した溶剤は、グリセロール、希釈アルコール、およびプロピレングリコールを含む。
【0094】
本発明における使用のためのローションは、皮膚または目への適用に適したものを含む。目ローションは、任意で殺菌剤を含む滅菌水性溶液を含み得、液滴の調製に関して上で記載されているものと同様の方法によって調製され得る。皮膚への適用のためのローションまたは塗布薬は、アルコールもしくはアセトンなどの乾燥を速めかつ皮膚を冷やすための薬剤、および/またはグリセロールまたはヒマシ油もしくはラッカセイ油などの油などの保湿剤を含んでもよい。
【0095】
本発明における使用のためのクリーム、軟膏、またはペーストは、外部適用のための活性成分の半固体製剤である。それらは、単独でまたは水性もしくは非水性液における溶液もしくは懸濁液において微粉化または粉末化形式での活性成分を、脂肪性または非脂肪性基礎原料と混合することによって作られ得る。基礎原料は、硬、軟、または液体パラフィン、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸などの炭化水素;粘液;アーモンド、コーン、ラッカセイ、ヒマシ、またはオリーブ油などの天然起源の油;羊毛脂もしくはその誘導体、またはプロピレングリコールもしくはマクロゴールなどのアルコールと一緒にステアリン酸もしくはオレイン酸などの脂肪酸を含み得る。
【0096】
組成物は、ソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体などの陰イオン性、陽イオン性、または非イオン性界面活性剤などの任意の適した界面活性剤を組み入れ得る。天然ゴム、セルロース誘導体などの懸濁化剤、またはシリカ性シリカなどの無機材料、およびラノリンなどのその他の成分が含まれてもよい。
【0097】
組成物は、リポソームの形式で投与されてもよい。リポソームは、概して、リン脂質またはその他の脂質物質に由来し、水性媒質に分散している単-または多-層状水和液晶によって形成される。リポソームを形成することが可能な任意の無毒性の生理学的に許容されかつ代謝可能な脂質が使用され得る。リポソーム形式での組成物は、安定化剤、保存剤、賦形剤、および同様のものを含み得る。好ましい脂質は、天然および合成の両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成するための方法は、当技術分野において公知であり、これに関して、具体的な参照が、Prescott, Ed., Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y. (1976), p. 33 et seq.に対してなされ、その内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0098】
組成物は、鼻内吸入または経口吸入などによる吸入による投与に適した(液体または粉末などの)エアロゾル形式で投与されてもよい。
【0099】
併用レジメン
治療的利点は、併用レジメンを介して実現され得る。当業者は、本明細書において開示されるヘパラナーゼ阻害剤が、膵島炎および/または1型糖尿病の処置に対する組み合わせ治療アプローチの一部として投与され得ることを評価すると考えられる。組み合わせ治療において、それぞれの薬剤は、同時にまたは任意の順序で順次投与され得る。順次投与される場合、構成要素が同じルートで投与されることが好ましい場合がある。
【0100】
あるいは、構成要素は、組み合わせ産物として単一の投薬量単位において一緒に製剤され得る。本発明の組成物との組み合わせにおいて使用され得る適した薬剤は、当業者に公知であると考えられる。
【0101】
本発明に従う処置の方法は、従来的な治療とともに適用され得る。従来的な治療は、移植術の前の島の(例えば、高酸素での)処置を含み得る。従来的な治療は、抗炎症治療、免疫抑制治療、手術、または医学的介入のその他の形式も含み得る。
【0102】
抗炎症剤の例は、ステロイド、コルチコステロイド、COX-2阻害剤、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、アスピリン、またはその任意の組み合わせを含む。非ステロイド抗炎症剤は、イブプロフェン、ナプロキセン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、チアプロフェン酸、アザプロパゾン、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、インドメタシン、ケトロラク、ロルノキシカム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、セレコキシブ、スリンダク、テノキシカム、トルフェナム酸、またはその任意の組み合わせを含む群より選択され得る。
【0103】
免疫抑制性薬剤の例は、アレムツズマブ、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、レフルノミド、メトトレキサート、マイコフェノレートモフェチル、リツキシマブ、スルファサラジンタクロリムス、シロリムス、またはその任意の組み合わせを含む。
【0104】
本明細書において開示される化合物および組成物は、治療的にまたは予防的に投与され得る。治療的適用において、化合物および組成物は、病態ならびにその症状および/または合併症を治すまたは少なくとも部分的に阻むのに十分な量において、すでに病態を患っている患者に投与される。化合物または組成物は、患者を効果的に処置するのに十分な活性化合物の分量を提供するべきである。
【0105】
投薬量
任意の特定の被験体に対する治療的有効用量レベルは、処置される疾病および疾病の重症度;採用される化合物または薬剤の活性;採用される組成物;被験体の年齢、体重、全般的な健康、性別、および食生活;投与の時間;投与のルート;薬剤または化合物の捕捉の速度;処置の持続期間;医学において周知のその他の関連因子と一緒に、処置との組み合わせにおいてまたは処置と同時に使用される薬物を含む様々な因子に依存すると考えられる。
【0106】
当業者は、日常的な実験によって、適用症を処置するのに必要とされると考えられる薬剤または化合物の有効な無毒性量を決定することができると考えられる。概して、有効投薬量は、24時間あたりkg体重あたり約0.01mg〜約100mg;典型的には、24時間あたりkg体重あたり約0.02mg〜約90mg;24時間あたりkg体重あたり約0.03mg〜約80mg;24時間あたりkg体重あたり約0.04mg〜約70mg;24時間あたりkg体重あたり約0.05mg〜約60mg;24時間あたりkg体重あたり約0.06mg〜約50mgの範囲であることが予期される。より典型的には、有効用量範囲は、24時間あたりkg体重あたり約0.07mg〜約40mg;24時間あたりkg体重あたり約0.08mg〜約30mg;24時間あたりkg体重あたり約0.09mg〜約25mg;24時間あたりkg体重あたり約0.1mg〜約20mgの範囲であることが予期される。
【0107】
あるいは、有効投薬量は、約500mg/m2までであり得る。概して、有効投薬量は、約25〜約500mg/m2、好ましくは約25〜約350mg/m2、より好ましくは約25〜約300mg/m2、さらにより好ましくは約25〜約250mg/m2、さらにより好ましくは約50〜約250mg/m2、さらにさらにより好ましくは約75〜約150mg/m2の範囲であることが予期される。
【0108】
典型的には、治療的適用において、処置は、疾患状態の持続期間に対するものであると考えられる。
【0109】
さらに、個々の投薬量の最適な分量および間隔が、処置される疾患状態の性質および程度、投与の形式、ルート、および部位、ならびに処置される特定の個体の性質によって決定されることが、当業者にとって明白であると考えられる。同様に、そのような最適条件は、慣用技術によって決定され得る。
【0110】
定義された日数に対して1日あたりに与えられる組成物の用量の数などの処置の最適なコースが、処置決定テストの従来型のコースを使用して当業者によって確定され得ることも、当業者にとって明白であると考えられる。
【0111】
投与のルート
本発明の組成物は、注射による投与に適した形式、経口摂取に適した製剤の形式(例えば、カプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤など)、局部投与に適した軟膏、クリーム、またはローションの形式、点眼薬としての送達に適した形式、鼻内吸入または経口吸入などによる肺を介する吸入による投与に適した(液体または粉末などの)エアロゾル形式、非経口(例えば、静脈内、髄腔内、皮下、または筋内)投与、すなわち、皮下、筋内、または静脈内注射に適した形式であり得る。
【0112】
担体、希釈剤、賦形剤、およびアジュバント
担体、希釈剤、賦形剤、およびアジュバントは、組成物のその他の成分と適合性があるという点で「許容され」なければならなず、そのレシピエントに対して有害であってはならない。そのような担体、希釈剤、賦形剤、およびアジュバントは、本発明の組成物の完全性および半減期を強化するために使用され得る。これらは、本発明の組成物の生物学的活性を強化または保護するために使用されてもよい。
【0113】
薬学的に許容される担体または希釈剤の例は、脱塩または蒸留水;生理食塩水溶液;ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ラッカセイ油、またはココナッツ油などの植物に基づく油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、およびメチルフェニルポリソルポキサン(polysolpoxane)などのポリシロキサンを含むシリコン油;揮発性シリコン;液体パラフィン、軟パラフィン、またはスクアレンなどのミネラルオイル;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;例えばエタノールまたはイソ-プロパノールなどの低級アルカノール;低級アラルカノール;例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、またはグリセリンなどの低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、またはオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル;ポリビニルピロリドン;アガー;トラガカントゴムまたはアカシアゴム、ならびにワセリンである。典型的には、担体または複数の担体は、組成物の重さの10%〜99.9%を形成すると考えられる。
【0114】
担体は、本発明の化合物に共有結合している融合タンパク質または化学的化合物を含んでもよい。そのような生物学的および化学的担体は、標的への化合物の送達を強化するためにまたは化合物の治療的活性を強化するために使用され得る。融合タンパク質の産生のための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、Ausubel et al (In: Current Protocols in Molecular Biology. Wiley Interscience, ISBN 047 150338, 1987)およびSambrook et al (In: Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Third Edition 2001)において記載されている。
【0115】
本発明の組成物は、注射による投与に適した形式、経口摂取に適した製剤の形式(例えば、カプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤など)、局部投与に適した軟膏、クリーム、またはローションの形式、点眼薬としての送達に適した形式、鼻内吸入または経口吸入などによる吸入による投与に適したエアロゾル形式、非経口投与、すなわち、皮下、筋内、または静脈内注射に適した形式であってもよい。
【0116】
注射可能な溶液または懸濁液としての投与に対して、無毒性の非経口で許容される希釈剤または担体は、リンガー溶液、等張生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、および1,2プロピレングリコールを含み得る。
【0117】
経口使用に適した担体、希釈剤、賦形剤、および/またはアジュバントのいくつかの例は、ピーナッツ油、液体パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アカシアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、およびレシチンを含む。加えて、これらの経口製剤は、適した香味剤および着色剤を含み得る。カプセル形式で使用される場合、カプセルは、壊変を遅延させるモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの化合物でコーティングされ得る。
【0118】
経口投与に対する固体形式は、ヒトおよび家畜の薬学的実施法において許容される結合剤、甘味剤、崩壊剤、希釈剤、香味料、コーティング剤、保存剤、潤滑剤、および/または時間遅延剤を含み得る。適した結合剤は、アカシアゴム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、またはポリエチレングリコールを含む。適した甘味剤は、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、またはサッカリンを含む。適した崩壊剤は、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、またはアガーを含む。適した希釈剤は、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、またはリン酸二カルシウムを含む。適した香味剤は、ペパーミント油、ウィンターグリーン油、サクランボ、オレンジ、またはラズベリー香味料を含む。適したコーティング剤は、アクリル酸および/もしくはメタクリル酸および/もしくはそれらのエステルのポリマーもしくはコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、シェラック、またはグルテンを含む。適した保存剤は、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファ-トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、または亜硫酸水素ナトリウムを含む。適した潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、またはタルクを含む。適した時間遅延剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを含む。
【0119】
経口投与のための液体形式は、上記の薬剤に加えて、液体担体を含み得る。適した液体担体は、水、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ラッカセイ油、ココナッツ油などの油、液体パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド、またはその混合物を含む。
【0120】
経口投与のための懸濁液は、分散剤および/または懸濁化剤をさらに含み得る。適した懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ポリ-ビニル-ピロリドン、アルギン酸ナトリウム、またはアセチルアルコールを含む。適した分散剤は、レシチン、ステアリン酸、モノ-またはジ-オレイン酸、-ステアリン酸、またはラウリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノ-またはジ-オレイン酸、-ステアリン酸、またはラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどの脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、および同様のものを含む。
【0121】
経口投与のための乳液は、一つまたは複数の乳化剤をさらに含み得る。適した乳化剤は、上で例示されるような分散剤またはグアーガム、アカシアゴム、もしくはトラガカントゴムなどの天然ゴムを含む。
【0122】
治療のタイミング
当業者は、組成物が、診断の時にまたは続いてその後に、膵島炎および/または1型糖尿病などの自己免疫性疾患の処置に対する単一の薬剤としてまたは組み合わせ治療アプローチの一部として、例えば、そのような疾患に対して現在利用可能な治療を補完するものとしてのフォローアップ処置または合同治療として、投与され得ることを評価すると考えられる。組成物は、遺伝的にまたは環境的にそのような疾患を発生しやすい被験体に対する予防的治療として使用されてもよい。
【0123】
ここで、本発明は、以下の具体的な実施例への参照によりより詳しくさらに記載され、それらは、決して本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0124】
実施例
実施例1
破壊性膵島炎および臨床的糖尿病の開始におけるヘパラナーゼの役割
本発明者らによって実施された研究は、ヘパラナーゼ転写産物が、新生児NODマウスと比較して、前糖尿病性および糖尿病発症NODマウスにおいて7倍増加することを示し;バックグラウンドレベルのみが、正常CBA/Hマウスにおいて検出された(表1を参照されたい)。これらの結果は、ヘパラナーゼ阻害剤PI-88での10〜11週齢のNOD/Ltメスマウスの処置(9)が、24週齢までのマウスにおいて臨床的糖尿病の発症を予防するという実証によって強められた(図3を参照されたい)。さらに、本発明者らは、インビボでの膵管を介する通常飼育の(非自己免疫性)マウスへの精製ヒト血小板由来ヘパラナーゼの送達が、インサイチューで島BMおよび島内HSの崩壊を引き起こす可能性があることを見出した(図4を参照されたい)。これらの所見は、NODマウスにおける破壊性膵島炎の開始におけるヘパラナーゼに対する役割と一致し、臨床的糖尿病の発症からNODマウスを保護するPI-88の能力を実証する。
【0125】
(表1)リアルタイムRT-PCR解析は、メスNOD/Lt新生児から単離された島(参照試料)と比較して、メス前糖尿病性NOD/Ltマウスおよび糖尿病発症時のメスNOD/Ltマウスからの島におけるヘパラナーゼmRNAの7倍上方調節を示す。

・通常飼育の(conventional)CBA/Hマウスからの島が、陰性対照として使用された。データは、試料の3つの個々のシリーズに対する平均±SEを示す。
【0126】
実施例2
糖尿病性NODマウスにおいて自己免疫性破壊を受けている島同系移植片におけるヘパラナーゼmRNAの移植片内発現の動態
通常、前糖尿病性NODメス膵臓および糖尿病性NODマウスに移植された同系島の自己免疫性破壊の組織学は、自己反応性T細胞およびその他のMNCの島への進入が、島内血管系を介して生じないことを示す。その代わりに、浸潤白血球が、島BM界面で活性化白血球によって局所的に産生されるヘパラナーゼなどの破壊性酵素による島BMの機能停止の後に、島周囲位置から島細胞塊へ移動する。その後、MNC浸潤物の進行が、島内ECMヘパラン硫酸の分解および島破壊を引き起こす。
【0127】
白血球浸潤のこの酵素依存性メカニズムが、糖尿病性NODマウスにおける島同系移植片の自己免疫性破壊において役割を果たすかどうかの調査は、移植後の様々な時間に採取された島同系移植片におけるヘパラナーゼ転写産物の移植片内発現の検査などの典型的な実験を含む。本発明者らは、管内コラゲナーゼ注入法を使用して、コラゲナーゼ消化によって6〜8週齢のNODscidメスマウスの膵臓からドナー島を単離した(4〜5ドナーマウス/島単離)。新鮮に単離されたNODscid島を、50〜100島/凝血塊でレシピエントNOD/Lt株血液塊において糖尿病性NOD/Ltメスマウスの腎臓被膜下に移植した(250島/移植片)(22)。若いNOD/Ltメスマウスの代わりに島を調製するために免疫不全NODscidドナーマウスを使用することによって、ドナー膵島炎由来MNCまたはドナー膵島炎によってすでにダメージを受けている島を移植部位に受動的に引き継ぐ可能性は排除された。故に、宿主由来免疫応答のみが、その後の解析のために移植片部位で生成される。腎臓被膜下に移植された胎児NODscid皮膚(17日妊娠期間胎児ドナー由来)またはNODscid成体甲状腺の同系移植片は、無傷対照移植片(自己免疫性ダメージを受けにくい)としての役目を果たし、単離NODscid島および正常NOD/Lt腎臓組織は、付加的な陰性対照としての役目を果たした。
【0128】
移植片を、移植の3、4、5、6、8、10、および14日後に採取し;各々の移植片の大部分を、その後のRNA抽出のために液体窒素において凍結し、残りを、免疫組織化学のために液体フレオンにおいて凍結した、または組織学のために10%中性緩衝ホルマリンにおいて固定した。グアニジンイソチオシアネート/塩化セシウム法を使用してRNAを抽出した。比較のためのすべての試料を、オリゴdTプライミングを有する同じ反応ミックスを使用して逆転写した。認証プライマー/プローブセット(Applied Biosystems)を使用して、リアルタイムRT-PCRを行った。組織試料におけるヘパラナーゼmRNAの発現は、定量的に解析された。
【0129】
本発明者らの研究室において確立されたリアルタイムRT-PCR法は、PCR産物測定のためのTaqman蛍光プローブ(標的遺伝子および内因性参照遺伝子(ユビキチン結合酵素E2D1(UBC))に対する6-FAMを使用する。標的遺伝子転写産物の相対量は、(テスト遺伝子およびUBCに対するCT値を使用して)標準的な手順に従って計算される。各々のプライマー/プローブセットに対する増幅の効率は、第一に、インプットcDNAの標準的な量でプライマー/プローブ濃度の限定された範囲をテストすることによって最適化される。次いで、PCR効率および増幅プロットに対する最良適合の線に対する相関係数を計算するために、LinRegPCRプログラムに組み入れられた直線回帰分析が使用される;この情報は、最適なプライマー/プローブ濃度を同定するために使用される。これらの条件を使用して、テストcDNAにおいて同じ効率でハウスキーピング遺伝子(UBC)および標的遺伝子を増幅する。これは、比較CT法を使用して、インプットcDNAにおける異なる量に対する補正および試料間のテストPCR産物の相対定量を可能にする。
【0130】
本発明者らの予備研究は、ヘパラナーゼmRNA発現が、NODscid島同系移植片の自己免疫性破壊の間に、ピーク発現の間に(移植の5〜6日後に)およそ4倍上方調節されることを示す(以下の表2を参照されたい)。
【0131】
(表2)リアルタイムRT-PCR解析は、糖尿病性NOD/Ltマウスにおいて自己免疫性破壊を受けているNODscid島同系移植片におけるヘパラナーゼmRNAにおける上方調節を示す*

*胎児NODscid皮膚同系移植片(自己免疫性疾患にかかりにくい)を、無傷バックグラウンド対照同系移植片として、糖尿病性NOD/Ltメスマウスの腎臓被膜下に移植した。
**これらのデータは、同系移植片試料の二つの独立のシリーズを代表する。
【0132】
実施例3
インサイチューでのNOD島におけるヘパラン硫酸(HS)の発現および破壊性膵島炎の進行の間の島内HSの分解
島BMにおけるペルレカン/HSの存在に加えて、HSPGも、より幅広く分布したECMの構成要素である。ECMは、組織における細胞外空間を満たすことによってかつ浸潤白血球が移動し得る特定の組織の細胞に対する足場を提供することによって機能する、巨大分子のネットワークからなる(3)。実際、ベータ細胞生存および機能は、島内ECMとのそれらの相互作用の保存に依存することが示されている(23,24)。それ故に、ヘパラナーゼは、島BMを越える活性化MNCの進入を促進するだけではなく、島内ECMを分解し、それによって、近くのベータ細胞の生存率を低下させ、かつ浸潤MNCの移動を促進する可能性がある。
【0133】
島完全性に対する島関連ヘパラン硫酸およびヘパラナーゼの関係を確認するための典型的な実験は、10%中性緩衝ホルマリンにおける固定のために、新生児、前糖尿病性(±PI-88処置)、糖尿病発症および糖尿病性(発症の2〜4週後)NOD/Ltマウスから膵臓を採取する段階ならびに糖尿病性NODマウス(±PI-88処置)からNODscid島およびNodscid島同系移植片を採取する段階を含む。ヘパラン硫酸(HS)は、アルシアンブルー/0.65M塩化マグネシウム/pH 5.8(HS特異性を定義する条件)での組織学的染色によってホルマリン固定切片おいて特定される(25)(19ページ、図7を参照されたい)。この解析は、HSが、島BMに制限され、島内ECMに分布し、自己免疫性傷害の間にダメージを受けることを確定した。
【0134】
実施例4
外因性ヘパラナーゼによって誘発される島ダメージおよびPI-88治療の効果
ヘパラナーゼは、ヒト血小板から精製され得(26,27);血小板由来ヘパラナーゼは、内皮細胞からヘパラン硫酸(HS)を素早く開裂することが示されており、この活性は、pH依存性である(26)。本発明者らによって実施された研究は、BALB/cマウスの膵管を介する精製ヒト血小板ヘパラナーゼのインビボ送達が、正常島形態の損失を引き起こす可能性があることを示した(図4および図5を参照されたい)。ヘパラナーゼ単独が、BALB/c島またはNODscid島にダメージを誘発する可能性があるかどうかを確定する典型的な実験は、精製ヒト血小板由来ヘパラナーゼ(10〜20μg/ml;図6を参照されたい)をともなうオーバーナイトでの単離島のインキュベーションを含む。対照島は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で処置された。その後、島を、ヘパラナーゼ誘発島ダメージ/破壊を示すために、顕微鏡的に/組織学的に検査した。
【0135】
実施例5
島同種移植片拒絶の間のヘパラナーゼmRNAおよびタンパク質の発現
本発明者らによって実施された研究が、ヘパラナーゼが、インサイチューでおよび移植術後に島の自己免疫性ダメージにおいて重要な役割を果たすことを示唆するので、ヘパラナーゼが、移植片部位への白血球移動/動員および島同種移植片の拒絶の間の島内浸潤において機能するかどうかを調査することが必要であった。島同種移植片が腎臓被膜下にインプラントされる状況において、ヘパラナーゼは、(i)島細胞塊への島BMを越える同種反応性T細胞の浸透(ii)腎血管およびおそらくある宿主由来移植片内血管系からの活性化白血球の管外遊出ならびに(iii)島内ヘパラン硫酸の破壊において本質的な役割を果たし得る。典型的な実験は、CBA/H(H-2k)レシピエントマウスへの移植の3〜14日後に採取されたBALB/c(H-2d)島同種移植片からのヘパラナーゼ転写産物の移植片内発現の解析を含む(表3を参照されたい)。ヘパラナーゼmRNA発現は、島同種移植片拒絶の間に、ピーク発現の間に(移植の5〜7日後に)およそ3〜4倍上方調節された(以下の表3を参照されたい)。
【0136】
(表3)リアルタイムRT-PCR解析は、CBA/H(H-2k)マウスにおいて拒絶を受けているBALB/c(H-2d)島同種移植片におけるヘパラナーゼmRNAの2〜8倍上方調節を示す。

*無傷CBA/H島同系移植片は、バックグラウンド対照としての役目を果たす。
【0137】
実施例6
糖尿病性NODマウスにおける島同系移植片生存/機能に対するPI-88でのヘパラナーゼ阻害の効果
前糖尿病性NODマウスのPI-88処置が、臨床的糖尿病の発症、故に破壊性膵島炎を予防する(図3を参照されたい)という所見は、ヘパラナーゼ活性の阻害が、インサイチューで島に対して免疫保護性であることを強く示す。結果として、PI-88での移植マウスのインビボ処置は、島同種移植片拒絶、島同系移植片における疾患再発を予防するはずであり(図8を参照されたい)、糖尿病性NOD/Ltマウスにおける島同種移植片の生存および機能を促進するはずである。PI-88治療が、移植片保護性であるかどうかを査定するために、NODscid島を、400〜500島/移植片で自己免疫性糖尿病性NODマウスに移植した。移植の3日後(移植片再血管新生後)からi.p.でPI-88(10mg/kg/day)でマウスを処置した。対照移植マウスを、生理食塩水で処置した。移植片機能を、2〜3x/週に空腹時血糖レベルの測定によってモニターした(グルコメーター(MediSense 2)を使用して)。レシピエントマウスのPI-88処置は、移植の2週後まで島同系移植片における疾患の再発を予防し、これらの移植が正常血糖を維持することを可能にした。対照的に、対照移植片は、侵襲性自己免疫性破壊を受け、レシピエント動物における血糖レベルは、2週間で糖尿病性範囲に戻った。
【0138】
本発明者らによって実施された研究は、インサイチューで膵島を囲む基底膜(BM)の存在を確認し、ペルレカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカン)が島BM構成要素であることを同定し、前糖尿病性および糖尿病発症NODマウスからの島におけるヘパラナーゼ転写産物における7倍上方調節を明らかにし、かつPI-88を使用するヘパラナーゼ阻害(3)が、NODマウスにおいてT1Dを予防することを見出した。したがって、活性化膵島炎MNCによって産生されるヘパラナーゼは、島BMおよび島内ECMにダメージを与え、それによってベータ細胞ダメージおよびT1Dを誘発することによって、非破壊性膵島炎を破壊性膵島炎に変換することにおいて肝要な役割を果たすように見える。同様に、島同系移植片は、ヘパラナーゼ誘発免疫ダメージを受けやすい;NODscid島同系移植片は、PI-88でのインビボ処置によって糖尿病性NODレシピエントマウスにおいて疾患再発から保護される。
【0139】
実施例7
インビトロでの島ベータ細胞生存は、ヘパラン硫酸に依存している
HSPGは、インサイチューで膵島のBMおよびECMの構成要素である。前の実施例は、ヘパラナーゼが、島BMを越える活性化MNCの侵入を促進し、島内ECMを分解することを示した。そのような活性は、島への浸潤MNCの移動を促進するように見えるだけでなく、ベータ細胞がそれらの生存率を持続するためにECMヘパラン硫酸に依存しているように見えるので、近くのベータ細胞の生存率を低下させる。
【0140】
この概念をさらに認証するために、インビトロ研究が行われた。Dispase(1mg/ml)を使用して単細胞へ分散された単離BALB/c島は、免疫蛍光法によって確認されるように、主にインシュリン産生ベータ細胞からなる。2日間の培養期間にわたって無傷のままであった対照島ベータ細胞とは対照的に、島ECMおよび細胞表面に関連するHSを完全に破壊すると考えられるプロセスであるバクテリアヘパリチナーゼ(ヘパリナーゼ)で(I+II+III;0.25 U/mlで各々のヘパリチナーゼで)1時間処置されたベータ細胞は、生存しなかった(図9(a))。(細胞系によってインビトロで産生された)ECM上の処置細胞の配置は、ヘパリチナーゼ誘発細胞死からベータ細胞を大いに救うことができた(P<0.0001)(図9(a))。これらの所見は、島ベータ細胞が、生存するために細胞関連HSを必要とすることを示す。この考えを支持することとして、バクテリアヘパリチナーゼ処置ベータ細胞は、ヘパラン硫酸の高度に硫酸化された形式である5〜50μg/mlのヘパリンをともなう培養を提供することによって効率的に救われた(*P<0.0001)(図9(b))。それ故に、島ベータ細胞は、生存能力がありかつ健全なままであるために細胞関連HSを必要とする。これらのデータは、細胞レベルで、島ベータ細胞が、ヘパラナーゼによる直接的なダメージを受けやすいという見解を支持する。
【0141】
実施例8
CBA/HマウスにおけるBALB/c島同種移植片生存に対するPI-88でのヘパラナーゼ阻害の効果
HSは、島および島ベータ細胞の完全性および生存を維持することにおいて重大な役割を果たす。ヘパラナーゼは、NODマウスにおける島の自己免疫性破壊において主要な役割を果たすことが示されており、外因性ヒトヘパラナーゼは、インビトロで(通常飼育のマウスからの)正常島にダメージを与える可能性がある(前の実施例を参照されたい)。PI-88によるヘパラナーゼ活性の阻害は、糖尿病性NOD/Ltマウスにおける島同系移植片の侵襲性自己免疫性破壊を一時的に延長する。それ故に、ヘパラナーゼは、(自己免疫性攻撃の非存在下でさえも)島同種移植片の免疫学的破壊においても重要な役割を果たす可能性がある。移植の7日後のPI-88処置レシピエントCBA/H(H-2k)マウスからのBALB/c(H-2d)島同種移植片は、移植の7日後により進んだ島破壊を示した対応する対照島同種移植片(図10(b))と比較して、島の周辺での単核細胞の蓄積を示した(図10(a))。それ故に、宿主のPI-88処置は、移植同種島のより良い保存を引き起こした。それ故に、ヘパラナーゼ阻害剤は、同種宿主における島移植に対する抗拒絶戦略を示し、同種免疫性および自己免疫性攻撃の両方からの移植島を保護する能力を有する。
【0142】
実施例9
処置のための組成物
本明細書において提供される本発明を行う最良のモードに従って、具体的な好ましい組成物が、以下で概説される。以下は、単に組成物の実例的な例として解釈されるべきであり、決して本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【0143】
実施例9(A):非経口投与のための組成物
非経口注射のための組成物は、10 ml〜2リットルの1%カルボキシメチルセルロースにおいて本明細書において開示されるような0.05 mg〜5 gの適した薬剤または化合物を含むように調製され得ると考えられる。
【0144】
同様に、静脈内注入のための組成物は、250 mlの滅菌リンガー溶液および本明細書において開示されるような0.05 mg〜5 gの適した薬剤または化合物を含み得る。
【0145】
実施例9(B):経口投与のための組成物
カプセルの形式での適した薬剤または化合物の組成物は、粉末形式における500 mgの薬剤または化合物、100 mgのラクトース、35 mgのタルク、および10 mgのステアリン酸マグネシウムで標準的なツーピース硬ゼラチンカプセルを満たすことによって調製され得る。
【0146】
参考文献



【特許請求の範囲】
【請求項1】
島ベータ細胞に関連する細胞外マトリクスの分解を阻害する方法であって、該細胞外マトリクスをヘパラナーゼ阻害剤の有効量と接触させる段階を含む方法。
【請求項2】
島ベータ細胞に関連する細胞外マトリクスにおけるヘパラン硫酸プロテオグリカンの分解を阻害する方法であって、該細胞外マトリクスをヘパラナーゼの有効量と接触させる段階を含む方法。
【請求項3】
ヘパラン硫酸プロテオグリカンが、ペルレカン、XVIII型コラーゲン、またはアグリンである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
被験体における自己免疫性病態の処置の方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項5】
自己免疫性病態が、膵島炎、1型糖尿病、島移植の拒絶、またはその任意の組み合わせを含む群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
被験体における膵島炎の処置の方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項7】
被験体における移植の拒絶を処置または予防する方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項8】
移植が、膵島移植である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
移植術に関連する免疫抑制性治療のレベルを低下させるための方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項10】
移植術が、膵島移植術である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
被験体における糖尿病のための処置の方法であって、被験体にヘパラナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与する段階を含む方法。
【請求項12】
糖尿病が、発症して間もない1型糖尿病である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ヘパラナーゼ阻害剤を薬学的に許容される担体と混和する段階を含む薬学的組成物の製造のためのプロセス。
【請求項14】
膵島炎の処置のための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用。
【請求項15】
糖尿病の処置のための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用。
【請求項16】
糖尿病が、発症して間もない1型糖尿病である、請求項15記載の使用。
【請求項17】
移植拒絶の処置のための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用。
【請求項18】
移植術が、膵島移植術である、請求項17記載の使用。
【請求項19】
基底膜、島内細胞外マトリクス、島周囲被膜、またはその任意の組み合わせにおけるヘパラン硫酸の分解を阻害するための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用。
【請求項20】
ヘパラン硫酸プロテオグリカンの分解を阻害するための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用。
【請求項21】
被験体における移植の拒絶を阻害するための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用。
【請求項22】
移植術に関連する免疫抑制性治療のレベルを低下させるための医薬の調製における、ヘパラナーゼ阻害剤の使用。
【請求項23】
併用レジメンとともに使用される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
従来的な治療が、島のインビトロ処置、単独もしくはその他の薬剤との組み合わせにおける免疫抑制性薬物、または免疫抑制性治療を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ヘパラナーゼ阻害剤が、硫酸化多糖類、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド、非炭水化物ヘパリン模倣ポリマー、硫酸化マルト-オリゴ糖類、ホスホスルホマンナン、硫酸化間隔(spaced)オリゴ糖類、硫酸化連結シクリトール、グリカミノ酸(glycamino acids)の硫酸化オリゴマー、偽二糖類、シアスタチンB誘導体、ウロン酸型Gem-ジアミン1-N-イミノ糖類、スラミンおよびスラミン類似体、菌代謝物、ジフェニルエーテル、カルバゾール、インドール、ならびにベンズ-1,3-アゾール誘導体である、請求項1〜12または請求項23もしくは24のいずれか一項記載の方法、請求項13記載のプロセス、または請求項14〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項26】
ヘパラナーゼ阻害剤が、PI-88である、請求項25記載の方法、プロセス、または使用。
【請求項27】
ヘパラナーゼ阻害剤が、モノクローナル抗体である、請求項1〜12または請求項23もしくは24のいずれか一項記載の方法、請求項13記載のプロセス、または請求項14〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項28】
ヘパラナーゼ阻害剤の投与が、全身的または局部的である、請求項4、6、9、または11のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
ヘパラナーゼ阻害剤の投与が、非経口、腔内、膀胱内、筋内、動脈内、静脈内、皮下、局部、または経口である、請求項4、6、9、または11のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
細胞外マトリクス分解に関連する病態の処置または予防に対して使用される場合の組成物であって、一つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、またはアジュバントと一緒にヘパラナーゼ阻害剤を含む組成物。
【請求項31】
細胞外マトリクス分解に関連する病態の処置または予防に対して使用される場合の組成物であって、少なくとも一つのその他の免疫抑制剤または抗炎症剤および任意で一つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、またはアジュバントと一緒にヘパラナーゼ阻害剤を含む組成物。
【請求項32】
抗炎症剤が、ステロイド、コルチコステロイド、COX-2阻害剤、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、アスピリン、またはその任意の組み合わせを含む群より選択される、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
非ステロイド抗炎症剤が、イブプロフェン、ナプロキセン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、チアプロフェン酸、アザプロパゾン、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、インドメタシン、ケトロラク、ロルノキシカム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、セレコキシブ、スリンダク、テノキシカム、トルフェナム酸、またはその任意の組み合わせを含む群より選択される、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
免疫抑制剤が、アレムツズマブ、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミド、レフルノミド、メトトレキサート、マイコフェノレートモフェチル、リツキシマブ、スルファサラジンタクロリムス、シロリムス、またはその任意の組み合わせを含む群より選択される、請求項31記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−506858(P2010−506858A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532649(P2009−532649)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001603
【国際公開番号】WO2008/046162
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509111928)ジ オーストラリアン ナショナル ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】