説明

細胞学用培地に固定された組織サンプルから核酸またはタンパク質を回収するための組成物および方法

本発明は、固定された生物学的サンプルからの核酸またはタンパク質の回収を改善するための組成物および方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第61/242,258号(2009年9月14日出願)および米国仮特許出願第61/253,300号(2009年10月20日出願)からの優先権を主張し、これらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている。「Compositions And Methods For Recovery Of Nucleic Acids Or Proteins From Tissue Samples Fixed In Cytology Media」を表題とする米国非仮特許出願(2010年9月14日に本願と同時に出願)もまた、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
固定された生物学的サンプルからの核酸またはタンパク質の回収を改善する組成物、方法およびキットについて記載する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
組織学、病理学および細胞生物学の分野において、固定は、生物学的サンプルを変質から保護する化学的処理である。固定は、進行中の任意の生化学的反応を停止させ、かつ、処置サンプルの機械的強度または安定性をも増大させ得る。固定の目的は、生物学的物質のサンプルを可能な限り自然に近い状態で保存することである。固定されたサンプルは、試験または分析に使用される。
【0004】
固定剤は、架橋固定剤または沈降固定剤に分類することができる。
【0005】
架橋固定剤は、組織内のタンパク質間に共有化学結合を形成させることによって作用する。これにより可溶性タンパク質が細胞骨格に係留され、組織にさらなる剛性が貸与される。アルデヒドは、突出して最も広く使用されている架橋固定剤である。アルデヒド固定された生物学的サンプルは、組織学的、病理学的および細胞生物学的用途に有用であるが、それらは保存されたサンプルの分子分析においてはいくつかの問題を引き起こす。例えば、アルデヒドによる固定は、タンパク質・タンパク質、DNA・タンパク質およびRNA・タンパク質の架橋を形成させ、これは、タンパク質および核酸の抽出および精製能力を妨害する。さらに、架橋の逆反応は、多くの場合、サンプル中に遊離のアルデヒドを生じ、これは、機能的タンパク質(例えば、酵素または抗体)、核酸プローブ、樹脂、または、サンプルの処理および分析に使用されるアミノ基を有する任意のその他の機能的試薬を妨害し得る。
【0006】
そのため、アルデヒドベースの細胞学用培地に固定された生物学的サンプルから様々な成分(例えば、核酸、タンパク質およびオルガネラ)を単離する効果を高める方法および組成物が必要とされている。
【0007】
沈降固定剤は、タンパク質分子の溶解性を低下させ、疎水性相互作用を破壊することによって作用する。この処理は架橋固定とは大きく異なっているため、沈降固定剤で固定された生物学的サンプルは、多くの場合、架橋固定剤と共に使用されるのとは異なる試薬および方法で処理されなければならない。アルコールは広く使用されている沈降固定剤である。アルコールベースの細胞学用培地に固定された生物学的サンプルから様々な成分(例えば、核酸、タンパク質およびオルガネラ)を単離する効果を高める方法および組成物が必要とされている。
【0008】
したがって、使用される固定剤のタイプによらず、固定された生物学的サンプルから様々な成分(例えば、核酸、タンパク質およびオルガネラ)を抽出するのに有用な方法および試薬が必要とされている。特に、架橋ベース、沈降ベースまたはその両方の細胞学用培地に固定された生物学的サンプルに使用できる溶解液が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
発明の要旨
本願は、細胞学用培地に固定された生物学的サンプルを溶解させるのに使用できる溶解組成物を提供する。細胞学用培地は、沈降固定剤もしくは架橋固定剤のいずれかまたはその両方を含み得る。
【0010】
本願はまた、固定された生物学的サンプルを分析用に調製する方法であって、バッファー組成物の存在下で固定された生物学的サンプルを溶解させる工程を含む方法を提供する。この溶解処理は溶解産物を生じ、この溶解産物から成分を単離することができる。単離された成分は分析に供することができる。
【0011】
本願で開示される方法および組成物は、細胞学用培地において使用される固定剤によらず、生物学的サンプルの抽出を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1Aおよび1Bは、150 mM Trisを含む溶解液を用いるアルデヒド固定された臨床頸部サンプルからのDNA抽出に対する様々なアミン含有化合物の影響を示す。カラムは平均相対発光量(RLU)を表し、エラーバーは試験した8つの複製物の標準偏差を表す。各溶解液のpHも表示されている。略語:LB v2=(1)3% (v/v) Brij-58および(2)150 mM Tris-HClの溶解液;DEA=ジエタノールアミン;TEA=トリエタノールアミン;TEA HCl=トリエタノールアミン塩酸塩;HMTA=ヘキサメチレン−テトラミン;EA=エタノールアミン;EDA=エチレンジアミン;DETA=ジエチレントリアミン;DEA HCl=ジエタノールアミン塩酸塩。典型的には、1.5 mLのサンプルを、25μlのプロテイナーゼK(10 mg/mlストック)および60μlの1.5% (v/v) AxpH(商標) DNA親和性磁性ビーズと共に、1 mLの溶解バッファーに加える。
【図2】図2は、300 mMジエタノールアミンを含む溶解液の効果に対するTris-HCl濃度の変化の影響を示す。グラフのx軸の標識は、各サンプルにおけるTris-HClの濃度を示す。カラムは平均相対発光量(RLU)を表し、エラーバーは試験した8つの複製物の標準偏差を表す。
【図3】図3は、150 mM Trisおよび300 mMジエタノールアミンを含む溶解液を用いてアルデヒド固定された頸部サンプルから単離したDNAにおけるHPV DNA検出に対するpHの影響を示す。グラフのx軸の標識は、使用した溶解液のpHを示す。カラムは平均相対発光量(RLU)を表し、エラーバーは試験した8つの複製物の標準偏差を表す。
【図4】図4は、150 mM Trisを含む溶解液を用いてアルデヒド固定された頸部サンプルから単離したDNAにおけるHPV DNA検出に対するジエタノールアミン濃度の変化の影響を示す。上の表は、試験した各溶解液の各複製物の生データを示す。下の表は、試験した溶解液ごとに合算したデータを示し、それが下部の棒グラフに視覚的に表示されている。グラフのx軸の標識は、使用した溶解液のpHを示す。カラムは平均相対発光量(RLU)を表し、エラーバーは試験した8つの複製物の標準偏差を表す。各溶解液のpHもグラフに表示されている。対照条件は、ジエタノールアミンを使用しない試験条件と同じである。
【図5】図5は、アルデヒド固定された頸部サンプルにおけるHPV DNAの抽出および検出に対する界面活性剤、Trisおよびジエタノールアミンの影響を示す。上の表は、試験した各溶解液の各複製物の生データを示す。下の表は、試験した溶解液ごとに合算したデータを示し、それが下部の棒グラフに視覚的に表示されている。グラフのx軸の標識は、使用した溶解液のpHを示す。カラムは平均相対発光量(RLU)を表し、エラーバーは試験した8つの複製物の標準偏差を表す。各溶解液のpHもグラフに表示されている。
【図6】図6は、アルコールベースまたはアルデヒドベースのいずれかの溶解バッファーからの核酸の手作業による抽出および自動抽出において溶解液の有用性を決定するのに使用したプロトコルを示すフローチャートである。フローチャートの分岐左側は手作業による方法を、分岐右側は磁性ビーズを用いる自動化方法を示す。
【図7】図7は、2タイプの溶解液を用いる核酸抽出の有効性を示す。「MC」は、液体ベースの細胞学用サンプルを用いて行う、図6に示されている手作業によるサンプルの変換操作を示す。「PAC」は、分析準備化学操作を示す。「PC陰性臨床プール」は、PRESERVCYT液体細胞学用保存培地で固定されたHPV陰性頸部臨床サンプルを示す。「PC陽性臨床プール」は、HPV陽性SiHa細胞でスパイクされ、PRESERVCYT液体細胞学用保存培地で固定されたHPV陰性頸部臨床サンプルを示す。「SP陰性臨床プール」は、SUREPATH液体細胞学用保存培地で固定されたHPV陰性頸部臨床サンプルを示す。「SP陽性臨床プール」は、HPV陽性SiHa細胞でスパイクされ、SUREPATH液体細胞学用保存培地で固定されたHPV陰性頸部臨床サンプルを示す。Digene Collection Mediumのみを含む陰性対照およびDigene Collection Medium中に懸濁されたHPV 16プラスミドを含む陽性対照も試験した。
【図8】図8A〜8Dは、PRESERVCYTまたはSUREPATHで保存されたサンプルにおけるHPV DNAの抽出および検出に対する界面活性剤の変化の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本願は、様々な固定物質で固定された生物学的サンプルから様々な成分を抽出する共通プロトコルにおいて有用でありかつ高スループットの自動化に適した試薬および方法に関する。
【0014】
特に、本願は、固定された生物学的サンプルおよび溶解液を含み、溶解液が少なくとも2つのアミンを含む組成物を提供する。
【0015】
本願で使用する場合、用語「固定された生物学的サンプル」は、固定剤を用いて保存された任意の生物学的物質を意味し、パラフィン包埋組織または器官、液体細胞学用保存培地中に貯蔵された組織サンプルおよび液体細胞学用保存物質中に貯蔵された頸部または婦人科スワブを含むがこれらに限定されない。固定剤は、架橋固定剤または沈降固定剤であり得る。架橋固定剤には、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド)、四酸化オスミウム、二クロム酸カリウム、クロム酸ならびに過マンガン酸カリウムが含まれるがこれらに限定されない。沈降固定液には、アルコール(例えば、エタノールおよびメタノール)ならびに酢酸が含まれるがこれらに限定されない。
【0016】
アルコールベースの細胞学用培地の例は、PRESERVCYT(登録商標)である。アルデヒドベースの細胞学用培地の例は、SUREPATH(登録商標)である。
【0017】
本願で使用する場合、用語「溶解」および「溶解する」は、細胞壁;細胞膜;または小胞体、ゴルジ装置、リソソーム、ミトコンドリア、核、液胞および小胞を含むがこれらに限定されない脂質膜によって規定されるオルガネラの統合性を破壊する作用を意味する。例示的な溶解方法には、機械的溶解、例えば、超音波処理または細胞溶解によるもの;ならびに界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij-58として販売されている)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPSとして販売されている)、Nonidet P-40(Igepal CA-630、tert-オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノールとしても公知である)、デオキシコール酸塩、Triton X-100、ドデシル硫酸ナトリウム(SDSとして販売されている)および/またはポリソルベートサーファクタント(TWEENとして販売されている)の使用を含む化学的溶解が含まれる。
【0018】
本願で使用する場合、「溶解液」は、細胞を溶解させるのに有用な任意の溶液を意味する。例示的な溶解液には、低張溶解液、ならびに、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(Brij-58として販売されている)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPSとして販売されている)、Nonidet P-40(Igepal CA-630、tert-オクチルフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノールとしても公知である)、デオキシコール酸塩、Triton X-100、ドデシル硫酸ナトリウム(SDSとして販売されている)および/またはポリソルベートサーファクタント(TWEENとして販売されている)を含む溶解液を含むがこれらに限定されない界面活性剤ベースの溶解液が含まれるがこれらに限定されない。的確な溶解液のタイプおよび配合は、サンプルのタイプ、溶解方法、関心対象の分析物および使用する分析方法に基づき当業者が容易に決定できることである。
【0019】
アミンは、アンモニアの誘導体であり、有機基で置換されたアンモニア上の水素の数に従い分類される。第一級アミンは、(RNH2)の式を有する化合物であり、式中、Rは有機基である。第二級アミンは、(R2NH)の式を有する化合物であり、式中、Rは有機基である。第三級アミンは、(R3N)の式を有する化合物であり、式中、Rは有機基である。第二級および第三級アミンは、アミン基の窒素原子が環構造と一体化している環状分子である場合もある。アミンの例には、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ヒドロキシルアミン(HA)、トリメチルアミン(trimethlylamine)、トリエチルアミン、モノエタノールアミン(EA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)またはヘキサメチレンテトラミン(HMTA)、アニリンおよびアミノ酸が含まれる。アミンの他の例は当業者に容易に明らかとなろう。本願で開示する組成物および方法では任意のアミンが使用され得る。
【0020】
一つの態様において、溶解液中の各アミンの量は:約25 mMもしくはそれ以上、約50 mMもしくはそれ以上、約100 mMもしくはそれ以上、約150 mMもしくはそれ以上、約200 mMもしくはそれ以上、250 mMもしくはそれ以上、約260 mMもしくはそれ以上、約270 mMもしくはそれ以上、約280 mMもしくはそれ以上、約290 mMもしくはそれ以上、約300 mMもしくはそれ以上、約310 mMもしくはそれ以上、約320 mMもしくはそれ以上、約330 mMもしくはそれ以上、約340 mMもしくはそれ以上、約350 mMもしくはそれ以上、約400 mMもしくはそれ以上、約450 mMもしくはそれ以上、約500 mMもしくはそれ以上、約25 mM〜約100 mM、約25 mM〜約150 mM、約25 mM〜約200 mM、約25 mM〜約250 mM、約25 mM〜約260 mM、約25 mM〜約270 mM、約25 mM〜約280 mM、約25 mM〜約290 mM、約25 mM〜約300 mM、約25 mM〜約310 mM、約25 mM〜約320 mM、約25 mM〜約330 mM、約25 mM〜約340 mM、約25 mM〜約350 mM、約25 mM〜約400 mM、約25 mM〜約450 mM、約25 mM〜約500 mM、約50 mM〜約100 mM、約50 mM〜約150 mM、約50 mM〜約200 mM、約50 mM〜約250 mM、約50 mM〜約260 mM、約50 mM〜約270 mM、約50 mM〜約280 mM、約50 mM〜約290 mM、約50 mM〜約300 mM、約50 mM〜約310 mM、約50 mM〜約320 mM、約50 mM〜約330 mM、約50 mM〜約340 mM、約50 mM〜約350 mM、約50 mM〜約400 mM、約50 mM〜約450 mM、約50 mM〜約500 mM、約100 mM〜約150 mM、約100 mM〜約200 mM、約100 mM〜約250 mM、約100 mM〜約260 mM、約100 mM〜約270 mM、約100 mM〜約280 mM、約100 mM〜約290 mM、約100 mM〜約300 mM、約100 mM〜約310 mM、約100 mM〜約320 mM、約100 mM〜約330 mM、約100 mM〜約340 mM、約100 mM〜約350 mM、約100 mM〜約400 mM、約100 mM〜約450 mM、約100 mM〜約500 mM、約150 mM〜約200 mM、約150 mM〜約250 mM、約150 mM〜約260 mM、約150 mM〜約270 mM、約150 mM〜約280 mM、約150 mM〜約290 mM、約150 mM〜約300 mM、約150 mM〜約310 mM、約150 mM〜約320 mM、約150 mM〜約330 mM、約150 mM〜約340 mM、約150 mM〜約350 mM、約150 mM〜約400 mM、約150 mM〜約450 mM、約150 mM〜約500 mM、約200 mM〜約250 mM、約200 mM〜約260 mM、約200 mM〜約270 mM、約200 mM〜約280 mM、約200 mM〜約290 mM、約200 mM〜約300 mM、約200 mM〜約310 mM、約200 mM〜約320 mM、約200 mM〜約330 mM、約200 mM〜約340 mM、約200 mM〜約350 mM、約200 mM〜約400 mM、約200 mM〜約450 mM、約200 mM〜約500 mM、約250 mM〜約260 mM、約250 mM〜約270 mM、約250 mM〜約280 mM、約250 mM〜約290 mM、約250 mM〜約300 mM、約250 mM〜約310 mM、約250 mM〜約320 mM、約250 mM〜約330 mM、約250 mM〜約340 mM、約250 mM〜約350 mM、約250 mM〜約400 mM、約250 mM〜約450 mM、約250 mM〜約500 mM、約260 mM〜約270 mM、約260 mM〜約280 mM、約260 mM〜約290 mM、約260 mM〜約300 mM、約260 mM〜約310 mM、約260 mM〜約320 mM、約260 mM〜約330 mM、約260 mM〜約340 mM、約260 mM〜約350 mM、約260 mM〜約400 mM、約260 mM〜約450 mM、約260 mM〜約500 mM、約270 mM〜約280 mM、約270 mM〜約290 mM、約270 mM〜約300 mM、約270 mM〜約310 mM、約270 mM〜約320 mM、約270 mM〜約330 mM、約270 mM〜約340 mM、約270 mM〜約350 mM、約270 mM〜約400 mM、約270 mM〜約450 mM、約270 mM〜約500 mM、約280 mM〜約290 mM、約280 mM〜約300 mM、約280 mM〜約310 mM、約280 mM〜約320 mM、約280 mM〜約330 mM、約280 mM〜約340 mM、約280 mM〜約350 mM、約280 mM〜約400 mM、約280 mM〜約450 mM、約280 mM〜約500 mM、約290 mM〜約300 mM、約290 mM〜約310 mM、約290 mM〜約320 mM、約290 mM〜約330 mM、約290 mM〜約340 mM、約290 mM〜約350 mM、約290 mM〜約400 mM、約290 mM〜約450 mM、約290 mM〜約500 mM、約300 mM〜約310 mM、約300 mM〜約320 mM、約300 mM〜約330 mM、約300 mM〜約340 mM、約300 mM〜約350 mM、約300 mM〜約400 mM、約300 mM〜約450 mM、約300 mM〜約500 mM、約310 mM〜約320 mM、約310 mM〜約330 mM、約310 mM〜約340 mM、約310 mM〜約350 mM、約310 mM〜約400 mM、約310 mM〜約450 mM、約310 mM〜約500 mM、約320 mM〜約330 mM、約320 mM〜約340 mM、約320 mM〜約350 mM、約320 mM〜約400 mM、約320 mM〜約450 mM、約320 mM〜約500 mM、約330 mM〜約340 mM、約330 mM〜約350 mM、約330 mM〜約400 mM、約330 mM〜約450 mM、約330 mM〜約500 mM、約340 mM〜約350 mM、約340 mM〜約400 mM、約340 mM〜約450 mM、約340 mM〜約500 mM、約350 mM〜約400 mM、約350 mM〜約450 mM、約350 mM〜約500 mM、約400 mM〜約450 mM、約400 mM〜約500 mM、約450 mM〜約500 mM、約100 mM、または約150 mM、または約200 mM、または約250 mM、または約260 mM、または約270 mM、または約280 mM、または約290 mM、または約300 mM、または約310 mM、または約320 mM、または約330 mM、または約340 mM、または約350 mM、または約400 mM、または約450 mM、または約500 mMからなる群より選択される。
【0021】
一つの態様において、溶解液中の各アミンの量は:約0.1% (w/v)〜約0.2% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約0.3% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約0.4% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約0.5% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約0.6% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約0.7% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約0.8% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約0.9% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約1.0% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約3% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約5% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約7% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約9% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約11% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約13% (w/v)、約0.1% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約0.3% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約0.4% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約0.5% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約0.6% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約0.7% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約0.8% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約0.9% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約1.0% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約3% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約5% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約7% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約9% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約11% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約13% (w/v)、約0.2% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約0.4% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約0.5% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約0.6% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約0.7% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約0.8% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約0.9% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約1.0% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約3% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約5% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約7% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約9% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約11% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約13% (w/v)、約0.3% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約0.5% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約0.6% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約0.7% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約0.8% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約0.9% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約1.0% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約3% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約5% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約7% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約9% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約11% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約13% (w/v)、約0.4% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約0.6% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約0.7% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約0.8% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約0.9% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約1.0% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約3% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約5% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約7% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約9% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約11% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約13% (w/v)、約0.5% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約0.7% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約0.8% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約0.9% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約1.0% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約3% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約5% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約7% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約9% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約11% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約13% (w/v)、約0.6% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約0.8% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約0.9% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約1.0% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約3% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約5% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約7% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約9% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約11% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約13% (w/v)、約0.7% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約0.9% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約1.0% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約3% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約5% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約7% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約9% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約11% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約13% (w/v)、約0.8% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約1.0% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約3% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約4% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約5% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約7% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約9% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約11% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約13% (w/v)、約0.9% (w/v)〜約15% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約1.5% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約3% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約4% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約5% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約7% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約9% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約11% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約13% (w/v)、約1.0% (w/v)〜約15% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約2.0% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約3% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約4% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約5% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約7% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約9% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約11% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約13% (w/v)、約1.5% (w/v)〜約15% (w/v)、約2.0% (w/v)〜約2.5% (w/v)、約2.0% (w/v)〜約3% (w/v)、約2.0% (w/v)〜約4% (w/v)、約2.0% (w/v)〜約5% (w/v)、約2.0% (w/v)〜約7% (w/v)、約2.0% (w/v)〜約9% (w/v)、約2.0% (w/v)〜約11% (w/v)、約2.0% (w/v)〜約13% (w/v)、約2.0% (w/v)〜約15% (w/v)、約2.5% (w/v)〜約3% (w/v)、約2.5% (w/v)〜約4% (w/v)、約2.5% (w/v)〜約5% (w/v)、約2.5% (w/v)〜約7% (w/v)、約2.5% (w/v)〜約9% (w/v)、約2.5% (w/v)〜約11% (w/v)、約2.5% (w/v)〜約13% (w/v)、約2.5% (w/v)〜約15% (w/v)、約3% (w/v)〜約4% (w/v)、約3% (w/v)〜約5% (w/v)、約3% (w/v)〜約7% (w/v)、約3% (w/v)〜約9% (w/v)、約3% (w/v)〜約11% (w/v)、約3% (w/v)〜約13% (w/v)、約3% (w/v)〜約15% (w/v)、約4% (w/v)〜約5% (w/v)、約4% (w/v)〜約7% (w/v)、約4% (w/v)〜約9% (w/v)、約4% (w/v)〜約11% (w/v)、約4% (w/v)〜約13% (w/v)、約4% (w/v)〜約15% (w/v)、約5% (w/v)〜約7% (w/v)、約5% (w/v)〜約9% (w/v)、約5% (w/v)〜約11% (w/v)、約5% (w/v)〜約13% (w/v)、約5% (w/v)〜約15% (w/v)、約7% (w/v)〜約9% (w/v)、約7% (w/v)〜約11% (w/v)、約7% (w/v)〜約13% (w/v)、約7% (w/v)〜約15% (w/v)、約9% (w/v)〜約11% (w/v)、約9% (w/v)〜約13% (w/v)、約9% (w/v)〜約15% (w/v)、約11% (w/v)〜約13% (w/v)、約11% (w/v)〜約15% (w/v)、約13% (w/v)〜約15% (w/v)、約0.1% (w/v)、約0.2% (w/v)、約0.3% (w/v)、約0.4% (w/v)、約0.5% (w/v)、約0.6% (w/v)、約0.7% (w/v)、約0.8% (w/v)、約0.9% (w/v)、約1.0% (w/v)、約1.5% (w/v)、約2.0% (w/v)、約2.5% (w/v)、約3% (w/v)、約4% (w/v)、約5% (w/v)、約7% (w/v)、約9% (w/v)、約11% (w/v)、約13% (w/v)、および約15% (w/v)からなる群より選択される。
【0022】
本願で開示する組成物はさらに、バッファー剤を含み得る。バッファー剤は、アミン化合物であっても非アミン化合物であってもよい。いくつかの態様において、バッファー剤は:およそ7.0〜およそ9.0、およそ7.5〜およそ9.0、およそ8.0〜およそ9.0、およそ8.5〜およそ9.0、およそ7.0〜およそ8.5、およそ7.5〜およそ8.5、およそ8.0〜およそ8.5、およそ7.0〜およそ8.0、およそ7.5〜およそ8.0、およそ7.0〜およそ7.5、7.0またはそれ以上、7.5またはそれ以上、8.0またはそれ以上、8.5またはそれ以上、9.0またはそれ以上、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、および9.9からなる群より選択される少なくとも1つのpKaを有する。
【0023】
一つの態様において、溶解液中のバッファー剤の量は:約25 mM〜約50 mM、約25 mM〜約75 mM、約25 mM〜約100 mM、約25 mM〜約125 mM、約25 mM〜約130 mM、約25 mM〜約135 mM、約25 mM〜約140 mM、約25 mM〜約145 mM、約25 mM〜約150 mM、約25 mM〜約155 mM、約25 mM〜約160 mM、約25 mM〜約165 mM、約25 mM〜約170 mM、約25 mM〜約175 mM、約25 mM〜約200 mM、約25 mM〜約225 mM、約25 mM〜約250 mM、約50 mM〜約75 mM、約50 mM〜約100 mM、約50 mM〜約125 mM、約50 mM〜約130 mM、約50 mM〜約135 mM、約50 mM〜約140 mM、約50 mM〜約145 mM、約50 mM〜約150 mM、約50 mM〜約155 mM、約50 mM〜約160 mM、約50 mM〜約165 mM、約50 mM〜約170 mM、約50 mM〜約175 mM、約50 mM〜約200 mM、約50 mM〜約225 mM、約50 mM〜約250 mM、約75 mM〜約100 mM、約75 mM〜約125 mM、約75 mM〜約130 mM、約75 mM〜約135 mM、約75 mM〜約140 mM、約75 mM〜約145 mM、約75 mM〜約150 mM、約75 mM〜約155 mM、約75 mM〜約160 mM、約75 mM〜約165 mM、約75 mM〜約170 mM、約75 mM〜約175 mM、約75 mM〜約200 mM、約75 mM〜約225 mM、約75 mM〜約250 mM、約100 mM〜約125 mM、約100 mM〜約130 mM、約100 mM〜約135 mM、約100 mM〜約140 mM、約100 mM〜約145 mM、約100 mM〜約150 mM、約100 mM〜約155 mM、約100 mM〜約160 mM、約100 mM〜約165 mM、約100 mM〜約170 mM、約100 mM〜約175 mM、約100 mM〜約200 mM、約100 mM〜約225 mM、約100 mM〜約250 mM、約125 mM〜約130 mM、約125 mM〜約135 mM、約125 mM〜約140 mM、約125 mM〜約145 mM、約125 mM〜約150 mM、約125 mM〜約155 mM、約125 mM〜約160 mM、約125 mM〜約165 mM、約125 mM〜約170 mM、約125 mM〜約175 mM、約125 mM〜約200 mM、約125 mM〜約225 mM、約125 mM〜約250 mM、約130 mM〜約135 mM、約130 mM〜約140 mM、約130 mM〜約145 mM、約130 mM〜約150 mM、約130 mM〜約155 mM、約130 mM〜約160 mM、約130 mM〜約165 mM、約130 mM〜約170 mM、約130 mM〜約175 mM、約130 mM〜約200 mM、約130 mM〜約225 mM、約130 mM〜約250 mM、約135 mM〜約140 mM、約135 mM〜約145 mM、約135 mM〜約150 mM、約135 mM〜約155 mM、約135 mM〜約160 mM、約135 mM〜約165 mM、約135 mM〜約170 mM、約135 mM〜約175 mM、約135 mM〜約200 mM、約135 mM〜約225 mM、約135 mM〜約250 mM、約140 mM〜約145 mM、約140 mM〜約150 mM、約140 mM〜約155 mM、約140 mM〜約160 mM、約140 mM〜約165 mM、約140 mM〜約170 mM、約140 mM〜約175 mM、約140 mM〜約200 mM、約140 mM〜約225 mM、約140 mM〜約250 mM、約145 mM〜約150 mM、約145 mM〜約155 mM、約145 mM〜約160 mM、約145 mM〜約165 mM、約145 mM〜約170 mM、約145 mM〜約175 mM、約145 mM〜約200 mM、約145 mM〜約225 mM、約145 mM〜約250 mM、約150 mM〜約155 mM、約150 mM〜約160 mM、約150 mM〜約165 mM、約150 mM〜約170 mM、約150 mM〜約175 mM、約150 mM〜約200 mM、約150 mM〜約225 mM、約150 mM〜約250 mM、約155 mM〜約160 mM、約155 mM〜約165 mM、約155 mM〜約170 mM、約155 mM〜約175 mM、約155 mM〜約200 mM、約155 mM〜約225 mM、約155 mM〜約250 mM、約160 mM〜約165 mM、約160 mM〜約170 mM、約160 mM〜約175 mM、約160 mM〜約200 mM、約160 mM〜約225 mM、約160 mM〜約250 mM、約165 mM〜約170 mM、約165 mM〜約175 mM、約165 mM〜約200 mM、約165 mM〜約225 mM、約165 mM〜約250 mM、約170 mM〜約175 mM、約170 mM〜約200 mM、約170 mM〜約225 mM、約170 mM〜約250 mM、約175 mM〜約200 mM、約175 mM〜約225 mM、約175 mM〜約250 mM、約200 mM〜約225 mM、約200 mM〜約250 mM、約225 mM〜約250 mM、約25 mM、約50 mM、約75 mM、約100 mM、約125 mM、約130 mM、約135 mM、約140 mM、約145 mM、約150 mM、約155 mM、約160 mM、約165 mM、約170 mM、約175 mM、約200 mM、約225 mM、および約250 mM、からなる群より選択される。
【0024】
例示的なバッファー剤には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「TRIS」)およびその誘導体、例えば、N-トリス-(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(「TAPS」)、3-[N-トリス-(ヒドロキシメチル)-メチル-アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(「TAPSO」);N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(「TES」);N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-グリシン(「TRICINE」);ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス-(ヒドロキシメチル)メタン(「bis-TRIS」);1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(「bis-TRIS PROPANE」);炭酸塩・重炭酸塩;グリシン;リン酸塩;4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(「HEPES」);N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(「Bicine」);3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(「MOPS」);およびその他の適当なバッファーが含まれるがこれらに限定されない。
【0025】
いくつかの態様において、溶解液は:およそ7.5〜およそ10、およそ7.5〜およそ9.5、およそ8.0〜およそ9.5、およそ8.5〜およそ9.5、およそ9.0〜およそ9.5、およそ7.5〜およそ9.0、およそ8.0〜およそ9.0、およそ8.5〜およそ9.0、およそ7.0〜およそ8.5、およそ7.5〜およそ8.5、およそ8.0〜およそ8.5、およそ7.0〜およそ8.0、およそ7.5〜およそ8.0、およそ7.0〜およそ7.5、7.0またはそれ以上、7.5またはそれ以上、8.0またはそれ以上、8.5またはそれ以上、9.0またはそれ以上、9.5またはそれ以上、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、および10.0からなる群より選択されるpHを有する。
【0026】
別の態様において、組成物はさらに、タンパク質消化酵素を含む。非限定的な例として、タンパク質消化酵素は、プロテイナーゼK、トリプシン、ペプシン、サーモリシン、トロンビン、第Xa因子およびそれらの組み合わせであり得る。
【0027】
別の態様において、溶解液は、防腐剤を含む。適当な防腐剤には、アジ化ナトリウム、ゲンタマイシン(gentomycin)、ならびに、3種のイソチアゾロン:2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンを含む組成物であるProClin(登録商標)が含まれる。一つの態様において、溶解液中の防腐剤の量は、約0.01 %、または約0.02 %、または約0.03 %、または約0.04 %、または約0.05 %、または約0.06 %、または約0.07 %、または約0.08 %、または約0.09 %、または約0.10 %、または約0.11 %、または約0.12 %、または約0.13 %、または約0.14 %、または約0.15 %、または約0.16 %、または約0.17 %、または約0.18 %、または約0.19 %、または約0.20 %であり得る。
【0028】
別の態様において、組成物はさらに、核酸を単離するための少なくとも1つの試薬を含む。非限定的な例として、核酸を単離するための試薬は、核酸に特異的に結合するよう修飾された磁性ビーズであり得る。
【0029】
本願はさらに、固定された生物学的サンプルを分子分析用に調製する方法であって、少なくとも2つのアミンを含む組成物の存在下で固定された生物学的サンプルを溶解させて溶解産物を形成する工程;および溶解産物の成分を単離する工程を含む方法を提供する。
【0030】
本願で開示する方法では:機械的溶解、例えば、超音波処理または細胞溶解によるもの;ならびに界面活性剤、例えば、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPSとして販売されている)、Nonidet P-40(Igepal CA-630としても公知である)、デオキシコール酸塩、Triton X-100、ドデシル硫酸ナトリウム(SDSとして販売されている)および/またはポリソルベートサーファクタント(TWEENとして販売されている)の使用を含む化学的溶解を含むがこれらに限定されない、任意の固定された生物学的サンプルの溶解法が使用できる。
【0031】
さらなる態様において、本願で開示する方法の溶解工程は、熱の存在下で行われる。
【0032】
さらなる態様において、少なくとも2つのアミンを含む組成物は、塩基性のpH値を有する。さらなる態様において、pH値は、7.5より高い。さらなる態様において、pH値は、8より高い。さらなる態様において、pH値は、8.5より高い。さらなる態様において、pH値は、9より高い。さらなる態様において、pH値は、およそ8.0〜およそ10の間である。さらなる態様において、pH値は、およそ9〜およそ10の間である。さらなる態様において、pH値は、およそ8.5〜およそ9.5の間である。さらなる態様において、pH値は、およそ9〜およそ9.5の間である。
【0033】
さらなる態様において、溶解工程は、タンパク質消化酵素の存在下で行われる。例示的なタンパク質消化酵素には、プロテイナーゼK、トリプシン、ペプシン、サーモリシン、トロンビン、第Xa因子およびそれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
【0034】
一つの態様において、単離される溶解産物の成分は、オルガネラである。単離され得る例示的なオルガネラには、核、リボソーム、細胞膜、小胞体、ミトコンドリア、ゴルジ装置、リソソーム、液胞および小胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0035】
一つの態様において、単離される溶解産物の成分は、核酸である。本願で開示する方法および試薬を用いることで、核DNA、ミトコンドリアDNA、mRNA、クロマチン、染色体DNA、外因性プラスミド、ウイルスDNA、ウイルスRNA、細菌DNAおよび細菌RNAを含むがこれらに限定されない任意の種類の核酸を回収することができる。
【0036】
核酸の回収方法には:シリカまたはガラス吸着、イオン交換クロマトグラフィー、親和性精製、スピンカラムクロマトグラフィーおよびゲルろ過を含むがこれらに限定されないクロマトグラフィー;溶媒抽出および沈降;ならびに遠心分離、が含まれるがこれらに限定されない。核酸の回収方法には、硫酸アンモニウム沈降、溶解度差、ショ糖勾配遠心分離およびクロマトグラフィーが含まれるがこれらに限定されない。非限定的な例として、核酸は、核酸に特異的に結合するよう修飾された磁性ビーズを用いて単離され得る。
【0037】
別の態様において、特定配列を含む核酸は、その核酸をその特定配列に相補的な核酸プローブとハイブリダイズさせることによって単離され得る。一つの態様において、核酸プローブは、固相に結合されているか、または、固相に結合させるのに適したものである。別の態様において、核酸プローブと核酸分子とのハイブリダイゼーションは、そのプローブと核酸分子の間のDNA:RNAハイブリッドをもたらす。得られるハイブリッドは、次いで、DNA:RNAハイブリッドに特異的に結合することが既知の抗体(「DNA:RNA結合抗体」)に結合され得、この抗体は、固相に結合されているかまたは固相に結合させるのに適したものであり得る。いずれかの場合において、プローブと核酸のハイブリダイゼーションは核酸を固相に会合させ、次いでこれが、機械的手段を用いて溶解産物から分離され得る。非限定的な例として、そのような方法は、米国特許第6,228,578号および米国特許出願第12/695,071号に記載されており、これらの内容は、その全体が参照により組み入れられている。例示的なDNA:RNA結合抗体には、その内容が全体的に参照により本明細書に組み入れられている米国特許第4,732,847号および同第4,865,980号に開示される抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
非限定的な例として、適当な固相には:シリカ、ホウケイ酸塩、ケイ酸塩、無機ガラス、有機ポリマー、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリスチレン、アガロース、多糖、例えば、セルロース、金属酸化物、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび酸化ジルコニウム、金属、例えば、金または白金、アガロース、セファデックス、セファロース、ポリアクリルアミド、ジビニルベンゼンポリマー、スチレンジビニルベンゼンポリマー、デキストラン、およびそれらの誘導体、ならびに/またはシリカゲル、ビーズ、メンブレン、および樹脂;ガラスまたはシリカ表面、例えば、ビーズ、プレートおよびキャピラリーチューブ;磁性材料が組み込まれたまたは会合されているポリスチレン、アガロース、ポリアクリルアミド、デキストランおよび/またはシリカ材料を含むがこれらに限定されない、磁化性または磁性(例えば、常磁性、超常磁性、強磁性またはフェリ磁性)粒子が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの例示の態様において、核酸プローブまたは抗体は、処理用容器、例えばマイクロチューブ、マイクロプレートのウェル、またはキャピラリー、の表面に連結させることができ、これらの表面を使用して核酸をマイクロスケールで単離することができる。ビオチニル化核酸プローブまたは抗体が提供される場合、固相は、ビオチン部分に結合できる物質、例えば、アビジン、ストレプトアビジンおよび/またはニュートラアビジンでコートされ得る。別の態様において、固相は、DNA:RNAハイブリッドに特異的な抗体でコートされるか、またはコートするのに適したものであり得る。
【0039】
本願で開示する方法および組成物を用いて得られる核酸は、ゲル電気泳動、逆転写酵素PCRおよびリアルタイムPCRを含むPCR関連技術、配列決定、サブクローニング手順、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、蛍光インサイチューハイブリダイゼーションならびにハイブリッド捕捉および多項目分析を含む様々な変異分析を含むがこれらに限定されない、その後の分子分析法において使用され得る。
【0040】
一つの態様において、単離される溶解産物の成分は、タンパク質である。タンパク質の回収方法には、硫酸アンモニウム沈降、溶解度差、ショ糖勾配遠心分離およびクロマトグラフィーが含まれるがこれらに限定されない。クロマトグラフィー系のタンパク質単離方法には、サイズ排除、イオン交換、疎水性相互作用、親和性、免疫親和性および金属結合クロマトグラフィーが含まれるがこれらに限定されない。
【0041】
本願で開示する方法および組成物により得られるタンパク質は、配列決定、免疫沈降、ウェスタンブロット、ELISAアッセイ、ドットブロットおよび酵素アッセイを含むがこれらに限定されない、その後の分子分析法において使用され得る。
【0042】
本願に記載する方法はまた、細菌、真菌、酵母、原虫、プリオンおよびウイルスを含むがこれらに限定されない病原体を単離するのにも使用することができる。
【0043】
本願に記載する方法および組成物は、容易かつ迅速に、架橋固定剤または沈降固定剤のいずれかで保存される検体に最適化される。
【0044】
本願に記載する方法および組成物はまた、すべての生物学的流体に適合させることができ、かつ、例えば、検体のキャップ取り外しおよび取り付けを含めて完全な自動化を提供し人間工学的な動作を必要としない抽出・分析用自動サンプル処理装置であるQIAensemble(登録商標)Next Gen(商標)Sample Processorを含む高スループットの自動化操作との適合性が示される簡単なプロトコルを提供する。したがって、これらは、柔軟なインプットボリューム、危険性の低い液体材料の消費、限定的な固形物の消費および室温で保存され得る試薬を許容することにより、超高スループットかつ人間工学的に優れたサンプル処理を提供する。
【実施例】
【0045】
実施例1
この下記実施例は、アルデヒド固定された臨床頸部サンプルから単離したHPV DNAの収量およびシグナル感度に対する様々な溶解液の影響を示す。
【0046】
臨床頸部サンプルを採取し、SUREPATH固定剤で固定した。次いで、固定したサンプルを洗浄し、(1)3% (v/v) Brij-58および(2)150 mM Tris-HClの溶解液(「LB」)に懸濁した。以下の群から選択される追加のアミンを200 mMの濃度となるよう試験サンプルに追加した:ジエタノールアミン(「DEA」)、トリエタノールアミン(「TEA」)、TEA-HCl、トリエチルアミン(「TE」)、DEAおよび塩化インジウム(III)(「IC」)、ジシアンジアミド(「DC」)、DEAおよび過塩素酸マグネシウム(「Mg(ClO4)2」);ヘキサメチレンテトラミン(「HMTA」)、DEAおよび酢酸パラジウム(II)(「PA」)、ジエチレントリアミン(「DETA」)、エチレンジアミン(「EDA」)、グリシン、ヒドロキシルアミン(「HA」)、ならびに塩化アンモニウム。典型的には、1.5 mLのサンプルを、25μlのプロテイナーゼK(10 mg/mlストック)および60μlの1.5% (v/v) AxpH(商標) DNA親和性磁性ビーズと共に、1 mLの溶解バッファーに加え、溶解させる。磁場をチューブに印加し、溶解産物を取り除き、磁性ビーズのみを残した。このビーズからDNAを溶出させ、HPV DNAの存在を、その内容が全体的に参照により組み入れられている米国特許第6,228,578号に記載のハイブリッド捕捉法を用いて測定した。結果を表1および2ならびに図1Aおよび1Bに示す。表1および2における網掛けのセルは、RLU/COが1.00より大きい複製物を示している。
【0047】
表1および2は、各複製物の生データ(RLU/CO)および試験した溶解液ごとに合算したデータを示している。合算データセットは、図1Aおよび1Bに視覚的に表示されている。示されるように、Tris緩衝溶解液へのアミン含有化合物の添加は、頸部サンプルにおけるHPV DNAの検出感度を向上させた。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
さらに、表3は、26の個々の臨床頸部サンプルに対する200 mMジエタノールアミンの添加の影響を示している。各例において、ジエタノールアミンの添加は、1.01倍増加から13.46倍増加の範囲の感度増加をもたらした。
【0051】
【表3】

【0052】
実施例2
この実施例は、Trisおよびジエタノールアミンの両方を含む溶解液の高い効果に対するTris濃度の変化の影響を示す。
【0053】
分析は、実施例1と実質的に同じように行ったが、ただし、溶解液は、(1)3% (v/v) Brij-58;(2)300 mMジエタノールアミン;および(3)50 mM、100 mM、150 mM、200 mM、250 mM、300 mM、350 mM、400 mMおよび450 mMから選択される濃度のTrisを含むものとした。典型的には、1.5 mLのサンプルを、25μlのプロテイナーゼK(10 mg/mlストック)および60μlの1.5% (v/v) AxpH(商標) DNA親和性磁性ビーズと共に、1 mLの溶解バッファーに加え、溶解させる。50 mM TRISを含む溶解液を分析のベースラインとして選択した。結果を図2および以下の表4に示す。表4における網掛けのセルは、110以上のRLU/COを有する複製物を示している。
【0054】
【表4】

【0055】
実施例3
この実施例は、TRISおよびジエタノールアミンの両方を含む溶解液中の核酸に対する感度・効果に対するpHの変化の影響を示す。
【0056】
分析は、実施例1と実質的に同じように行ったが、ただし、溶解液は、(1)3% (v/v) Brij-58;(2)300 mMジエタノールアミン;および(3)150 mM Trisを含むものとした。典型的には、1.5 mLのサンプルを、25μlのプロテイナーゼK(10 mg/mlストック)および60μlの1.5% (v/v) AxpH(商標) DNA親和性磁性ビーズと共に、1 mLの溶解バッファーに加え、溶解させる。溶解液のpHは、7.077、7.397、8.113、8.492、9.021、9.265および9.443の値に調整した。結果を図3および表5に示す。表5における網掛けのセルは、2.00以上のRLU/COを有する各複製物を示している。示されるように、溶解のpH値の上昇は、HPV DNA検出の感度を増加させた。
【0057】
【表5】

【0058】
実施例4
この実施例は、Trisおよびジエタノールアミンの両方を含む溶解液を用いた核酸の単離の感度および効果に対するアミン濃度の変化の影響を示す。
【0059】
分析は、実施例1と実質的に同じように行ったが、ただし、溶解液は、(1)3% (v/v) Brij-58;(2)150 mM Tris;および(3)0 mM、39 mM、78 mM、156 mM、312.5 mM、625 mM、1250 mMおよび2500 mMから選択される濃度のジエタノールアミンを含むものとした。対照(CTL)は、バッファーのみを含むものとした。典型的には、1.5 mLのサンプルを、25μlのプロテイナーゼK(10 mg/mlストック)および60μlの1.5% (v/v) AxpH(商標) DNA親和性磁性ビーズと共に、1 mLの溶解バッファーに加え、溶解させる。結果を図4および表6に示す。
【0060】
【表6】

【0061】
実施例5
この実施例は、界面活性剤および各アミンの相対的な寄与を示す。分析は、実施例1と実質的に同じように行ったが、ただし、溶解液は、(1)3% (v/v) Brij-58;(2)150 mM Tris-HCl;(3)150 mMジエタノールアミン;(4)Brij-58および150 mM Tris-HCl;(5)Brij-58および150 mMジエタノールアミン;(6)150 mM Trisおよび150 mMジエタノールアミン;ならびに(7)Brij-58および150 mM Trisおよび150 mMジエタノールアミン、を使用した。対照(CTL)は、バッファーのみを含むものとした。典型的には、1.5 mLのサンプルを、25μlのプロテイナーゼK(10 mg/mlストック)および60μlの1.5% (v/v) AxpH(商標) DNA親和性磁性ビーズと共に、1 mLの溶解バッファーに加え、溶解させる。結果を図5および表7に示す。表7における網掛けのセルは、1.00より大きいRLU/COを有する複製物を示している。
【0062】
【表7】

【0063】
実施例6
この実施例は、本願で開示する組成物および方法が、架橋固定剤または沈降固定剤のいずれを用いて保存された生物学的サンプルに対して使用できることを示す。
【0064】
2つのタイプの液体細胞学用保存培地が、臨床頸部サンプルを保存するのに一般に使用される。SUREPATHはアルデヒドベースの固定剤であり、PRESERVCYTはメタノールベースの固定剤である。このようなサンプルを、その存在が活動性HPV感染の指標となるHPV DNAについて試験するための方法を開発した。これまで、SUREPATHおよびPRESERVCYTで固定された臨床頸部サンプルの両方に対して有用な統一的な方法は開発されていなかった。
【0065】
本願で開示する方法および組成物を、SUREPATHまたはPRESERVCYTのいずれかで固定されたサンプルにおいてHPV DNAを検出する上でのそれらの有用性について試験した。
【0066】
SiHa細胞は、グレードII頸部腫瘍を有する患者から樹立された扁平上皮癌細胞株である。SiHa細胞は、組み込まれたHPV 16型ゲノムを有し、したがって、HPV DNAの抽出および検出における有用な陽性対照を提供することが示されている。
【0067】
SiHa細胞でHPV陰性臨床検体プールをスパイクし、SUREPATHまたはPRESERVCYTのいずれかで保存した。SiHa細胞を含まない等量のHPV陰性臨床検体プールを対照として使用した。各サンプルを遠心分離によりペレット化し、その上清をデカントした。
【0068】
次に、各サンプルの一のセットについて、塩酸グアニジンを含む50μLのSpecimen Transport MediumおよびNaOHを含む25μLのDenaturation Reagentに細胞ペレットを懸濁し、次いで、65℃で90分間溶解させる市販品を利用する方法を用いて抽出を行った。
【0069】
各サンプルの第二のセットは脱イオン水に再懸濁した。この懸濁物に、3% (v/v) Brij-58、150 mM Tris、150 mMジエタノールアミン、DNA結合磁性ビーズおよびプロテイナーゼKを添加し、その後、サンプルを68.5℃で7.5分間、次いで60℃で12.5分間溶解させた。磁場を印加してビーズを溶液から分離し、次いで、ビーズを洗浄し、DNAを溶出させた。
【0070】
次に、両方の方法によって得たDNA溶出物を、ハイブリッド捕捉法により並列で試験した。回収量は、各方法からのシグナルアウトプットにより測定した。この2つの方法のアウトラインを示すフローチャートは図6で確認できる。結果は図7で確認できる。PRESERVCYTサンプルでは、両方の回収方法で、同程度のDNA回収量が示された。他方、SUREPATHサンプルでは、Brij-58/Tris/ジエタノールアミン溶解液の使用により、標準的な溶解液と比較してシグナルが3.5倍増加した。
【0071】
また、これらの方法において、様々な界面活性剤を試験した。SiHa細胞でHPV陰性臨床検体プールをスパイクし、SUREPATHまたはPRESERVCYTのいずれかで保存した。SiHa細胞を含まない等量のHPV陰性臨床検体プールを対照として使用した。各サンプルを遠心分離によりペレット化し、その上清をデカントした。次に、この細胞ペレットを1.5 mLの脱イオン水に再懸濁させた。150 mM Tris、150 mMジエタノールアミン、ならびに、3% (v/v) Brij-58、Tween-20およびTriton X-100から選択される界面活性剤を含む溶解液を使用した。典型的には、1.5 mLのサンプルを、25μlのプロテイナーゼK(10 mg/mlストック)および60μlの1.5% (v/v) AxpH(商標)DNA親和性磁性ビーズと共に、1 mLの溶解バッファーに加え、溶解させる。次に、このサンプルを、68.5℃で7.5分間、その後、60℃で12.5分間溶解させた。磁場を印加してビーズを溶液から分離し、ビーズを洗浄し、DNAを溶出させた。
【0072】
結果を図8A〜8Dに示す。示されるように、回収されたDNAの量に、界面活性剤の種類に基づく有意差はない。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのアミンを含む、固定された生物学的サンプルを溶解するための組成物。
【請求項2】
アミンの少なくとも1つが、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ヘキサメチレンテトラミン、アニリンおよびアミノ酸からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アミンの少なくとも1つがバッファー剤である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
バッファー剤が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「TRIS」)、N-トリス-(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(「TAPS」)、3-[N-トリス-(ヒドロキシメチル)-メチル-アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(「TAPSO」);N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(「TES」);N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-グリシン(「TRICINE」);ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス-(ヒドロキシメチル)メタン(「bis-TRIS」);および1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(「bis-TRIS PROPANE」)からなる群より選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
バッファー剤がTRISである、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
アミンの少なくとも1つがジアゾアミンである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤が、ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、Nonidet P-40、Igepal CA-630、デオキシコール酸塩、Triton X-100、ドデシル硫酸ナトリウムおよびポリソルベートサーファクタントからなる群より選択される、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
pHが7以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのDNA結合磁性ビーズをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
150 mM Tris-HCl;
300 mM ジエタノールアミン;
3% Brij-58;
0.09%アジ化ナトリウム;
を含み、およそ9.4のpHを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
界面活性剤、アミンおよびバッファー剤を含む、固定された生物学的サンプルを溶解するための組成物。
【請求項13】
界面活性剤が、ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、Nonidet P-40、Igepal CA-630、デオキシコール酸塩、Triton X-100、ドデシル硫酸ナトリウムおよびポリソルベートサーファクタントからなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
界面活性剤がTriton X-100である、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
アミンが、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ヘキサメチレンテトラミン、アニリンおよびアミノ酸からなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項16】
アミンがジエタノールアミンである、請求項12記載の組成物。
【請求項17】
バッファー剤が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「TRIS」)、N-トリス-(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(「TAPS」)、3-[N-トリス-(ヒドロキシメチル)-メチル-アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(「TAPSO」);N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(「TES」);N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-グリシン(「TRICINE」);ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス-(ヒドロキシメチル)メタン(「bis-TRIS」);1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(「bis-TRIS PROPANE」);炭酸塩・重炭酸塩;グリシン;リン酸塩;4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(「HEPES」);N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(「Bicine」);および3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(「MOPS」)からなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項18】
バッファー剤がTRISである、請求項12記載の組成物。
【請求項19】
防腐剤をさらに含む、請求項12記載の組成物。
【請求項20】
防腐剤が、アジ化ナトリウム、ゲンタマイシン(gentomycin)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンからなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項21】
防腐剤がアジ化ナトリウムである、請求項12記載の組成物。
【請求項22】
pHが7以上である、請求項12記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1つのDNA結合磁性ビーズをさらに含む、請求項12記載の組成物。
【請求項24】
150 mM Tris-HCl;
300 mM ジエタノールアミン;
3% Brij-58;
0.09%アジ化ナトリウム;
を含み、およそpH9.4のpHを有する、請求項12記載の組成物。
【請求項25】
固定された生物学的サンプルを請求項1〜24のいずれか記載の組成物を用いて処置する工程を含む、固定された生物学的サンプルを溶解させる方法。
【請求項26】
固定された生物学的サンプルが架橋固定剤で固定されている、請求項25記載の方法。
【請求項27】
架橋固定剤がアルデヒドを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
アルデヒドが、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドからなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
固定された生物学的サンプルが、アルコールを含む固定剤で固定されている、請求項25記載の方法。
【請求項30】
アルコールが、メタノールおよびエタノールからなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
固定剤が、SUREPATHおよびPRESERVECYTからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項32】
固定された生物学的サンプルが頸部サンプルである、請求項25〜請求項31のいずれか記載の方法。
【請求項33】
固定された生物学的サンプルの成分を単離する方法であって:
a.請求項24〜請求項32のいずれか記載の方法により、固定された生物学的サンプルを溶解させる工程;および
b.溶解産物から成分を単離する工程、
を含む、前記方法。
【請求項34】
成分が核酸分子である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
核酸分子が特定配列を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
核酸分子が、該核酸分子の特定配列に核酸プローブをハイブリダイズさせる工程を含む方法により単離される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
核酸プローブが、固相に結合させるのに適したものであるかまたは固相に結合されている、請求項36記載の方法。
【請求項38】
固相が磁性ビーズである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
核酸分子の特定配列に核酸プローブをハイブリダイズさせることにより、該核酸分子と該核酸プローブの間でDNA:RNAハイブリッドが形成される、請求項36記載の方法。
【請求項40】
DNA:RNAハイブリッドがDNA:RNAハイブリッド結合抗体に結合される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
DNA:RNAハイブリッド結合抗体が、固相に結合されているかまたは固相に結合させるのに適したものである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
固相が磁性ビーズである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
核酸分子がウイルス核酸分子である、請求項34〜請求項42のいずれか記載の方法。
【請求項44】
固定された生物学的サンプルを溶解させるための、請求項1〜請求項24のいずれか記載の組成物の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−504330(P2013−504330A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528961(P2012−528961)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/048714
【国際公開番号】WO2011/032124
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(510069559)キアジェン ゲイサーズバーグ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】