細胞小器官トランスフェクションのための改質ベクター
【課題】 本開示は、生細胞内の細胞小器官DNAを直接的にトランスフェクションするための組成物、及び方法を提供する。さらに、本開示は、該標的とする細胞小器官に対して特異的な局在化シグナルを含むウイルスベクターの使用に基づく。
【解決手段】
一実施態様において、タンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官局在化シグナルを、その表面上に発現するように改質されているウイルスベクターを提供する。所望の組換えDNA構築物を含むウイルスベクターを、細胞培養液内に導入する、又は生物体内に注射する。該ウイルスベクターは、そのタンパク質形質導入ドメインを介して、該細胞膜を通過して形質導入され、かつ該細胞小器官の内部に該組換えDNAを導入する該細胞小器官局在化/標的化シグナルを経由して、該細胞小器官に局在化する。
【解決手段】
一実施態様において、タンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官局在化シグナルを、その表面上に発現するように改質されているウイルスベクターを提供する。所望の組換えDNA構築物を含むウイルスベクターを、細胞培養液内に導入する、又は生物体内に注射する。該ウイルスベクターは、そのタンパク質形質導入ドメインを介して、該細胞膜を通過して形質導入され、かつ該細胞小器官の内部に該組換えDNAを導入する該細胞小器官局在化/標的化シグナルを経由して、該細胞小器官に局在化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年6月25日に出願された米国仮特許出願番号60/482,603号に対して優先権を主張する。該出願は、全体として引用により本明細書中に引用により取り込まれている。
(引用による取り込み)
本出願は、その全体において、コンパクトディスクに添付した配列表を、引用により取り込む。該配列表のファイル名は、120701-8010.ST25.txtであり、2004年6月23日に作成され、かつ約772KBである。
【0002】
(1.開示の分野)
本開示は、一般的に、細胞、及び細胞小器官のトランスフェクション用組成物、及び方法、特に、ミトコンドリア、及び葉緑体をトランスフェクションするための改質ウイルスベクターに向けられたものである。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術)
ミトコンドリアは、すべての真核細胞における、唯一のエネルギー産生細胞小器官であり、従って、適切な細胞生体エネルギー学、ホメオスタティス水準、及び細胞のライフサイクルの維持に重大な役割を担う。類似して、葉緑体も、有効なATP-産生組織であり、エネルギー源として、糖、又は脂肪酸よりもむしろ光を使用する。ミトコンドリア、及び葉緑体、双方は、細胞小器官内で複製され、かつ転写される細胞小器官DNAの複数のコピーを含む。哺乳類において、ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、環状であり、約16.5キロ塩基対であり、かつイントロンを含まないゲノムであり、13個の電子伝達系(ETC)タンパク質、2個のリボソームRNA、及び22個のtRNAをコードしている。葉緑体ゲノムのサイズは、40〜150キロ塩基対の範囲である。ミトコンドリア遺伝学の多くの洞察は、バイオリスティック形質転換(biolistic transformation)によりミトコンドリアレプリコン(mitochondrial レプリコン)の工学技術が可能である、酵母におけるものである。しかし、酵母において、哺乳類のミトコンドリア遺伝子発現、及び呼吸鎖生物発生における多くの特徴は、再現性がない。
【0004】
哺乳類において、細胞質の融合、及び微量注入法を用いて、ドナーミトコンドリア(donor mitochondria)を導入したが、これらの技術は、mtDNAの直接的な操作機序を提供することに失敗した。さらに、タンパク質移入経路を含む、ミトコンドリア内への外来性DNAの取り込みは、2つの研究室から報告されている。Vestweber、及びSchatz((1989) Nature (London) 338:170-172)は、24-bpの一本、及び二本鎖オリゴヌクレオチド、双方を、改良マウスのジヒドロ葉酸還元酵素と融合させた該酵母シトクロムcオキシダーゼサブユニットIVプレ配列からなる前駆体タンパク質と、該オリゴヌクレオチドの5'末端との結合により、酵母のミトコンドリア内に取り込むことを成し遂げた。さらに近年、Seibelら((1995) Nucleic Acids Research 23:10-17)は、ラットのカルバミル転移酵素のアミノ-末端リーダーペプチドに結合した二本鎖DNAのミトコンドリアマトリックス内への移入を報告した。しかし、これらの研究は、両方とも、単離ミトコンドリアを処置しており、どのようにしてオリゴヌクレトチド-ペプチド結合が、細胞質ゾル膜を通過し、かつミトコンドリア接近(mitochondrial proximity)に達するのであろうかという問題を解決していない。
【0005】
米国特許第6,171,863号は、DNAを細胞内部に、及び潜在的に該ミトコンドリア内に運ぶための媒体として、デクアリニウム-DNA複合体の使用を開示している。該DNAはデクアリニウムに付随しているために、該得られる複合体は、負電荷区画を有する。該正電荷複合体は、負電荷区画に引き寄せられる。従って、米国特許第6,171,863号は、負電荷区画へのDNAの輸送を開示している。実際、特定の細胞小器官、例えば葉緑体、又はミトコンドリアを標的とした、レセプタ-非依存性機序を用いる核酸輸送のための技術は開示されていない。
【0006】
従って、該葉緑体、及びミトコンドリアゲノムの特異的処置ができないことは、葉緑体、及びmtDNAの複製、転写、並びに翻訳プロセスを完全に理解するための研究者の取り組みを妨害している。mtDNAを特異的に処置し、かつ生細胞内に導入する能力は、個々の葉緑体/ミトコンドリア遺伝子機能、及び全体的な葉緑体/ミトコンドリア遺伝子機能を完全に調査するための研究者の能力を、大いに向上させるであろう。
【0007】
さらに、該ミトコンドリアゲノムを処置する能力は、ミトコンドリア機能の障害に関連した疾患の新規な治療方法を提供する。加齢に伴い、ミトコンドリアの機能は、顕著な変異の増加、及びmtDNAの大きな欠損とともに低下する。特に、酸化傷害は、加齢とともに増加し、多くの場合、高い割合でmtDNAの変異を生じる。公知のmtDNA変異に加えて、幾つかの癌形成、及び神経変性が、mtDNAの変異に関連している。例えば、ミトコンドリアDNAの変異は、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び成人-発症糖尿病を含む、多くの変性神経疾患の原因であると推測されている。これらの変異は、フリーラジカル傷害(老化)による電子伝達系能の低下、及びmtDNA欠損の増加で生じる。
【0008】
さらに、葉緑体の生体エネルギー機能を考慮すると、外来性遺伝子を導入する能力、又はそうでなければ、該葉緑体遺伝子を操作する能力は、農作物、及び他の植物の生命力、及び収穫量に多大な影響を有し得る。例えば、葉緑体を遺伝子に導入することにより、他の厳しい環境下で生命力が強く、かつ光合成の効率の高い植物とすることができる。さらに、該葉緑体内での外来性遺伝子の発現は、該細胞の核内に導入された外来性遺伝子の発現と比較して、葉緑体が極めて効率的になると考えられている。従って、葉緑体のトランスフェクションは、商業用化合物のための効率的な生合成方法を可能にし得る。
【0009】
細胞小器官機能障害に関連する多くの病状の点において、前記病状を治療する方法、及び組成物が必要である。従って、特定の細胞小器官内にポリヌクレオチドを導入する方法、及び組成物も必要である。
また、機能障害細胞小器官、又は細胞を標的とするポリヌクレオチドを含む、細胞小器官機能障害に関連する疾患の治療方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、一般的に、真核細胞のような細胞、又は細胞の細胞小器官内にポリヌクレオチドを導入するための組成物、方法、及びシステムに向けられたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(本開示の要旨)
本開示は、一般的に、真核細胞のような細胞、又は細胞の細胞小器官内にポリヌクレオチドを導入するための組成物、方法、及びシステムに向けられたものである。本開示の一態様は、特定の細胞小器官に核酸を運ぶための核酸構築物、及び方法を提供する。ポリヌクレオチドの特定の細胞小器官への標的は、レセプタを介した局在化技術を使用することなく達成することができる。レセプタを介した局在化技術は、該ポリヌクレオチド構築物が、特定の細胞小器官上のその補体により認識されるリガンド、又はレセプタを示す技術を意味する。本開示の特定の態様は、ベクター、例えばウイルスベクターに、細胞小器官局在化/標的化シグナルと組み合わせてタンパク質形質導入ドメイン(protein transduction domain)(PTD)を組み込むことにより、細胞小器官をトランスフェクションする方法、及び組成物を提供する。本開示の一態様において、標的化シグナルは、レセプタ:リガンド相互作用を介して作用しない。通常、該改質ウイルスは、タンパク質形質導入ドメイン、及び特定の細胞小器官に関連し得る細胞小器官局在化/標的化シグナル、両方を発現する。適切なウイルスベクターは、制限されないが、バクテリオファージラムダのようなウイルスベクターがある。例証的なPTDは、制限されないが、HIV TAT YGRKKRRQRRR (配列番号:3)、又はRKKRRQRRR (配列番号:4); 11アルギニン残基、或いは、8〜15残基、好ましくは9〜11残基を有する正電荷ポリペプチド、又はポリヌクレオチドがある。例証的な細胞小器官局在化シグナルは、制限されないが、表1、及び2に挙げたものがある。
【0012】
本開示の他の態様は、組換えベクターを含有した無処置生存細胞、又は生物を含むシステムを提供する。該組換えベクターは、該生物、又は細胞の形質膜を通過し、かつ特定の細胞小器官に局在化/標的とし得る。さらに、該細胞、又は生物は、該組換えベクターにより改質されたゲノムを含有する。
本開示の他の態様は、特定の細胞小器官、又は区画を標的とした核酸の輸送により、遺伝性ポリヌクレオチド欠損又は獲得したポリヌクレオチド欠損を含むポリヌクレオチド欠損を補正し、特定の核酸の発現を増強し、特定の核酸の発現を妨げ、細胞小器官機能を修復又は増強し、特定の核酸及びこれらの対応するタンパク質の生合成を増加する方法を提供する。また、本開示の他の態様は、特定の細胞小器官をトランスフェクションすることにより、疾患の進行を最小化、又は減少させ、症状を緩和し、かつ細胞代謝を調節することに対応する。特定の態様は、複製、転写、又は翻訳成分、或いは、これらの組合せを含む細胞小器官、例えばミトコンドリア、又は葉緑体を標的とする核酸の輸送に対応する。
本開示の他の態様は、ミトコンドリアDNAが減少した細胞株を製造するための組成物、及び方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(1.定義)
本開示の明細書、及びクレームにおいて、次の用語は、下記の定義に従って使用される。
本明細書中で用いる該用語"精製"、及び類似用語は、自然環境下で分子、又は化合物に通常付随する他の成分から実質的にフリー(少なくとも60%フリー、好ましくは70%フリー、さらに好ましくは90%フリー)になるように、分子、又は化合物の単離に関連するものである。
本明細書中で用いる用語"医薬として許容し得るキャリア"は、すべての標準的医薬キャリアを含み、例えば、リン酸緩衝塩液、水、及びオイル/水、又は水/オイルエマルションのようなエマルション、並びに種々の湿潤剤がある。
【0014】
本明細書中で用いる用語"治療"は、特定の障害、又は状態に関係した症状を緩和すること、及び/又は前記症状を予防、又は解消することを含む。
"機能的に結合"は、該成分が、それらの通常の機能を果たすように構成された近接部分に関するものである。例えば、コード化配列に機能的に結合したコントロール配列、又はプロモーターは、該コード化配列の発現を効率的にすることができ、かつタンパク質に機能的に結合した細胞小器官局在化配列は、該特定の細胞小器官で局在化される該結合タンパク質に対応するであろう。
【0015】
"細胞小器官局在化シグナル"、又は"細胞小器官標的化シグナル"は、同義的に使用され、かつ分子を特定の細胞小器官に方向付けるシグナルに関するものである。該シグナルを、所望の細胞小器官に付着する分子の方向付けに十分な、ポリヌクレオチド、又はポリペプチドシグナルとすることができ、若しくは、有機、又は無機化合物とすることができる。例証的な細胞小器官局在化シグナルを、表1、及び2に提供し、かつEmanuelsonらが、"N-末端アミノ酸配列をベースとしたタンパク質の、予想される非細胞局在化" Journal of Molecular Biology. 300(4):1005-16, 2000 Jul 21に、並びにCline、及びHenryが、"葉緑体タンパク質をコードしている核の移入、及び経路" Annual Review of Cell & Developmental Biology. 12:1-26, 1996に記載している。これらの文献は、その全体として引用により本明細書中に取り込まれている。表1、及び2に示す全配列が含まれる必要はなく、かつ、これらの配列の切断部を含む改質が、結合分子を特定の細胞小器官へ方向付けるように操作した配列を提供する本開示の範囲内であることは、理解されるであろう。本開示の細胞小器官局在化シグナルは、表1、及び2の配列と80〜100%の相同性を有し得る。適切な細胞小器官局在化シグナルは、レセプタ:リガンド機序において、該標的とされる細胞小器官と作用しないものを含む。例えば、細胞小器官局在化シグナルは、正電荷のように、正味電荷有する、又は与えるシグナルを含む。正電荷シグナルは、負電荷細胞小器官、例えばミトコンドリアを標的とするように使用され得る。負電荷シグナルは、正電荷細胞小器官を標的とするように使用することができる。
【0016】
"タンパク質形質導入ドメイン"、又はPTDは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、若しくは有機、又は無機化合物に関連し、脂質二重層、ミセル、細胞膜、細胞小器官膜、又は小胞膜の通過を促進するものである。他の分子に結合したPTDは、該分子の膜通過、例えば細胞外空間から細胞内空間、又は細胞質ゾルから細胞小器官内への進行を促進する。例証的なPTDは、制限されないが、HIV TAT YGRKKRRQRRR (配列番号:3)、又はRKKRRQRRR (配列番号:4); 11アルギニン残基、又は8〜15残基、好ましくは9〜11残基正電荷ポリペプチド、又はポリヌクレオチドを含む。
本開示で使用される用語"外来性DNA"、又は"外来性核酸配列"は、外部供給源から細胞、又は細胞小器官内に導入される核酸配列に関するものである。通常、導入される外来性配列は、組換え配列である。
【0017】
本明細書中で用いる用語"トランスフェクション"は、該細胞の細胞質ゾル内への、並びにミトコンドリア、核、又は葉緑体の内部空間への該核酸配列の導入を含む、生細胞空間を囲む膜内部への核酸配列の導入のことを意味する。該核酸を、様々なタンパク質に関連する裸DNA、又はRNAの形態とすることができ、又は該核酸を、ベクター内に組み入れることができる。
本明細書中で用いる用語"ベクター"は、細胞内への核酸配列の導入に使用される媒体に関して用いられる。ウイルスベクターは、組換えDNA配列を宿主細胞、又は細胞小器官内に導入することを可能にするように改質されている。
【0018】
本明細書中で用いる用語"細胞小器官"は、該葉緑体、ミトコンドリア、及び核のような細胞膜境界構造を意味する。該用語"細胞小器官"は、天然、及び合成細胞小器官を含む。
本明細書中で用いる用語"非核細胞小器官"は、核を除き、細胞中に存在する全ての細胞膜境界構造を意味する。
本明細書中で用いる用語"ポリヌクレオチド"は、一般的に、ポリリボヌクレオチド、又はポリデオキソリボヌクレオチドを意味し、未改質RNA、又はDNA、若しくは改質RNA、又はDNAであり得る。例えば、本開示に使用されるポリヌクレオチドは、とりわけ、1本及び2本鎖DNA、1本及び2本鎖領域の混合物であるDNA、1本及び2本鎖RNA、及び1本及び2本鎖領域の混合物であるRNA、1本又は一般に2本鎖、若しくは1本及び2本鎖領域であり得るDNA、及びRNAを含むハイブリッド分子に関するものである。また、該用語"核酸"、又は"核酸配列"は、上記で規定したポリヌクレオチドを含む。
【0019】
さらに、本明細書中で用いるポリヌクレオチドは、RNA、又はDNA、若しくはRNAとDNAと両方を含む三本鎖領域を意味する。前記領域の該鎖は、同一分子由来、又は異なる分子由来であってもよい。該領域は、1以上の該分子の全てを含み得る。しかし一般的に、該分子の幾つかの領域のみを含む。3重らせん領域の分子の1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。
本明細書中で用いる用語ポリヌクレオチドは、1以上の改質塩基を含む、前述のDNA、又はRNAを含む。従って、安定性のため、又は他の理由から改質された基幹を有するDNA、又はRNAは、その用語が本開示で意図されるような"ポリヌクレオチド"である。さらに、イノシン、又はトリチル化塩基などの改質塩基のような異常な塩基を含むDNA、又はRNAは、本明細書中で使用される
【0020】
当業者に公知である多くの有用な目的に役立つDNA、及びRNAに対して、多様な改質が行われることが認識されるであろう。本明細書中で用いる該用語ポリヌクレオチドは、化学的に、酵素的に、又は代謝的に改質された形態のポリヌクレオチド、並びに、とりわけ単純、及び複雑な細胞を含むウイルス、及び細胞のDNA、及びRNA特徴の化学的形態を含む。
オリゴヌクレオチドは、比較的短いポリヌクレオチドを意味する。多くの場合、該用語は、1本鎖デオキシリボヌクレオチドを意味する。しかし、とりわけ、1本又は2本鎖リボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、及び2本鎖DNAを意味する。
【0021】
本明細書中で用いる用語"ベクター"は、ウイルス、プラスミド、又は高等生物の細胞由来のポリヌクレオチド分子を意味する。適切なサイズの他のポリヌクレオチド断片は、自己複製のためのベクター許容量の損失なく統合される。ベクターは、異質、又は外来性DNAを、宿主細胞ないに導入し、そこで、大量に複製され得る。例を挙げると、プラスミド、コスミド、ラムダファージ ベクター、P1 バクテリオファージ ベクター、酵母人工染色体、及び哺乳類人工染色体がある。ベクターは、多くの場合、幾つかの源からヌクレオチド配列を含む組換え分子である。
【0022】
(2.トランスフェクション組成物)
提供される組成物は、タンパク質形質導入ドメイン、及び標的化シグナルに機能的に結合したポリヌクレオチドベクターである。一実施態様は、該標的化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインをコードしているポリヌクレオチドを有するベクターを提供する。該標的化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインは、該ベクターの外部表面に提示される。該開示される組成物、及び方法は、真核細胞、及び細胞小器官、特に哺乳類細胞、および細胞小器官のトランスフェクションに有用である。細胞小器官は、細胞、及びそれらの宿主のライフサイクルに有意な役割を有する。例えば、ミトコンドリア、及び葉緑体は、動物、および植物細胞の"発電所"である。細胞周期、及び生体エネルギーを維持するこれらの臨界活性のために、これらは、細胞機能、及び細胞死において重要な役割を担う。これらは、これら自身の唯一のゲノム-今まで不適当な操作を残したものを有する。従って、本開示の幾つかの実施態様は、特定の細胞小器官、例えばミトコンドリア、および葉緑体へポリヌクレオチドを輸送するための組成物、及び方法を提供する。輸送されたポリヌクレオチドは、該細胞小器官に発現され得る機能ポリペプチドをコードし得る。該細胞小器官中の該ポリペプチドの発現は、該細胞小器官の機能を調節し、かつ従って、細胞小器官機能障害に関連した疾患の症状を緩和することができる。一実施態様において、該ミトコンドリアゲノム (配列番号:5) の全体、又は一部を、細胞小器官内にトランスフェクションすることができる。他の実施態様において、該ポリヌクレオチドは、制限されないが、アンチ-センスポリヌクレオチド、若しくはDNAザイム、又はリボザイムを含む酵素ポリヌクレオチドをコードすることができる。
【0023】
(2.1 細胞小器官)
本開示の他の実施態様は、細胞区画、又は細胞小器官にポリヌクレオチドを特異的に運ぶことに向けられたものである。該ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードし、又は異なるポリヌクレオチドの発現を干渉し得る。真核細胞は、膜境界構造、又は細胞小器官を含む。細胞小器官は、単一、又は多層膜を有し、かつ植物、及び動物細胞内に存在する。該細胞小器官の機能に依存して、該細胞小器官は、タンパク質、及び補助因子のような特定の成分からなり得る。該細胞小器官に運ばれるポリヌクレオチドは、該細胞小器官の機能を向上する、又は起因し得るポリペプチドをコードし得る。ミトコンドリア、及び葉緑体のような、幾つかの細胞小器官は、それら自身のゲノムを含む。これらの細胞小器官内で核酸を複製し、転写し、かつ翻訳する。タンパク質が移入され、かつ該代謝産物が移出される。従って、細胞小器官の膜を通して物質交換される。幾つかの実施態様において、ミトコンドリアポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドは、ミトコンドリアに特異的に運ばれる。
例証的な細胞小器官は、該核、ミトコンドリア、葉緑体、リソソーム、ペルオキシソーム、ゴルジ、小胞体、及び核小体がある。合成細胞小器官を、脂質から形成することができ、かつ該脂質膜内に特定のタンパク質を含み得る。さらに、合成細胞小器官の内容物は、核酸の翻訳のための成分を含有するように操作され得る。
【0024】
(2.1.1 ミトコンドリア)
本開示の他の実施態様において、改質ベクターは、ポリヌクレオチドをミトコンドリアに特異的に運ぶものとして開示する。ミトコンドリアは、グルコース分解からアデノシン三リン酸 (ATP)へのエネルギー変換の分子機構を含む。次いで、ATPの高エネルギーのリン酸結合で貯蔵される該エネルギーは、細胞機能力に利用できる。ミトコンドリアは、大部分タンパク質であるが、幾つかの脂質、DNA、及びRNAが存在する。一般的に、これらの球形の細胞小器官は、内膜を囲う外膜を有し、酸化的リン酸化、及び電子伝達酵素の足場に(クリスタ)を折畳んでいる。多くのミトコンドリアは、平面シェル様クリスタを有する。しかし、ステロイド分泌細胞内のクリスタは、管状クリスタを有し得る。該ミトコンドリアマトリックスは、クエン酸回路、脂肪酸酸化、及びミトコンドリア核酸の酵素を含む。
【0025】
ミトコンドリアDNAは、二本鎖であり、かつ環状である。ミトコンドリアRNAは、3つの標準種:リボソーム、メッセンジャー、及びトランスファーの形がある。しかし、各々は、該ミトコンドリアに特異的である。幾つかのタンパク質合成が、細胞質内のリボソームとは異なる、該ミトコンドリア内のミトコンドリアリボソーム上で行われる。他のミトコンドリアタンパク質は、該ミトコンドリアに向かう単一ペプチドとともに、細胞質内リボソームで作られる。該細胞の代謝活性は、クリスタの数、および細胞内のミトコンドリアの数が関連している。心筋のような高代謝活性を有する細胞は、多くの非常に発達したミトコンドリアを有する。新しいミトコンドリアは、既存のミトコンドリアが成長、分裂して作られる。
ミトコンドリア内膜は、該膜を通過して様々な代謝産物の輸送に関連した配列、及び構造のタンパク質ファミリーを含む。これらのアミノ酸配列は、3つの部分の構造を有し、3つの関連した配列約100アミノ酸長さで構成されている。1つのキャリアの反復は、他のものに存在するものに関連しており、かつ幾つかの特徴的配列の特性は、該ファミリーを通して保存される。
【0026】
(2.1.2 葉緑体)
他の実施態様において、本開示の改質ベクターは、特異的にポリヌクレオチドを葉緑体に運ぶ。該葉緑体は、二重に囲まれた膜を有する真核生物の光合成細胞小器官である。該二重-膜内側の体液は、ストロマと呼ばれている。該葉緑体は、その環状の裸DNAを収容する核様態領域を有する。また、該ストロマは、カルビン回路の部位である。該カルビン回路は、一連の酵素触媒的化学反応であり、二酸化炭素から糖質、および他の化合物を製造する。
該ストロマ内に、チラコイドと呼ばれる小さな膜嚢がある。該嚢は、集団で積み重なっている。各集団は、グラナと呼ばれる。各葉緑体内に多くのグラナがある。該チラコイド膜は、光合成光反応の部位である。該チラコイドは、特殊な補欠分子族を有するいくつかの内因性、及び外因性タンパク質を有し、電子をタンパク質複合体からタンパク質複合体に移動させることを可能にする。これらのタンパク質は、以前Z−スキームとして公知の電子伝達系を構成する。
【0027】
2つの臨界膜タンパク質(critical membrane proteins)(P680、及びP700)に対する補欠分子族は、クロロフィルであり、色素分子である。これらのクロロフィル-結合タンパク質は、チラコイドを強い緑色にする。葉緑体中の多くのチラコイドは、該葉緑体を緑色にする。葉肉細胞中の多くの葉緑体は、細胞を緑色にする。該クロロフィル分子は、光エネルギーを吸収し、かつ電子を、マグネシウムイオンに囲まれた共鳴化学構造内の電子雲内に押し上げる。この励起電子は、該膜内の該囲んでいる電子伝達タンパク質により除去される。最終的に、これらの電子移動、及び付随タンパク質は、ATPのリン酸結合のエネルギーのトラッピングを生じる。
従って、該チラコイドは、光吸収、およびATP合成のためにある。該ストロマは、該ATPを使用し、糖質の炭素-炭素結合のトラップしたエネルギーを貯蔵する。幾つかの葉緑体は、デンプン粒の発生を示す。これらは、長期間貯蔵用の糖質複合体ポリマーである。
【0028】
ヒト疾患、細胞増殖、細胞死、及び老化のミトコンドリアの重要性をかんがみて、本開示の実施態様は、該ミトコンドリアゲノムの操作を含み、公知のミトコンドリア疾患(LHON, MELAS, など)、及び推定ミトコンドリア疾患(老化、アルツハイマー、パーキンソン、糖尿病、心疾患)を治療することができる方法を提供する。葉緑体の生体エネルギー機能をかんがみて、外来性遺伝子を導入する能力は、植物に対して、他の不利な環境下での生存度の増加、及び光合成の効率増加を可能にし得る。さらに、該葉緑体内での外来性遺伝子の発現は、葉緑体において、該細胞の核内に導入された外来性遺伝子の発現と比較して有意に効率的になると考えられる。
本開示以前に、外来性核酸、例えばレセプタ-非依存性を用いてミトコンドリア、又は葉緑体内にコードするDNA、及び遺伝子を導入する有効な技術は存在しない。統計発生学的に、ミトコンドリア、及び葉緑体は、初期バクテリアに似ている。本開示の一実施態様は、ウイルスベクターを利用するシステム、好ましくは細菌ウイルスを、葉緑体、及びミトコンドリアを含む細胞小器官にトランスフェクションするシステムに対応する。この唯一の分子は、置換、増加へのアプローチ、又は、そうでなければ、葉緑体、及びミトコンドリアゲノムの改質は、葉緑体、及びミトコンドリア遺伝学の重大な問題の探究、並びにミトコンドリア、及び葉緑体関連疾患の新規治療の開発を初めて可能にする。
【0029】
(2.2 タンパク質形質導入ドメイン)
また、他の実施態様において、細胞、及び細胞小器官へのトランスフェクション用の組成物は、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)に該組成物を機能的に結合させることにより、細胞、又は細胞小器官の外側から該細胞、又は細胞小器官に運ばれ得る。タンパク質のこれらの小さい領域は、レセプタ-非依存性機序において、該細胞膜を通過することができる。これらのPTDの幾つかは、文献に示されているが、最も一般的に使用される2つのPTDは、HIVのTAT(Frankel、及びPaboの文献, 1988)タンパク質、及びDrosphila由来のアンテナペディア転写因子から運ばれる。これらのPTDは、ぺネトラティン(Penetratin)として知られている(Derossiらの文献, 1994)。
【0030】
該アンテナペディアホメオドメインは、68アミノ酸残基長さであり、4つのアルファらせん体(配列番号:1)を含む。ぺネトラティンは、第三らせんのアンテナペディア(Fentonらの文献, 1998)から誘導された16アミノ酸配列からなるタンパク質の活性ドメインである。TATタンパク質(配列番号:2)は、86 アミノ酸からなり、かつHIV-1の複製に関与する。該TAT PTDは、取り込み限界であるように見える該親タンパク質の11アミノ酸配列ドメイン(残基47〜57; YGRKKRRQRRR (配列番号:3))からなる(Vives らの文献, 1997)。さらに、基本的ドメインTat(49-57)、又はRKKRRQRRR (配列番号:4 ) (Wender らの文献 2000)は、PTDであることを示している。現在の文献において、TATは、細胞移入する対象のタンパク質への融合に有利である。グルタミンからアラニン、すなわちQ→Aの置換を含む、TATの幾つかの改質は、哺乳類において、どこでも90%から(Wender らの文献 2000)、33倍までの細胞取り込み増加を証明している。改質タンパク質の最も効率的な取り込みは、TAT-PTDの突然変異誘発実験で示した。11個のアルギニンの伸長は、細胞間輸送媒体として桁違いに効率的であることを示している。
【0031】
(2.2.1 TAT-PTDの特徴)
(2.2.1.1 高効率的取り込み)
TAT-PTD融合を伴った様々な治療的タンパク質の細胞内輸送は、非常に効果的になることが証明されている。近年、この種の融合タンパク質は、生物学的活性のある熱ショックタンパク質 70 (HSP70)をHSF -/- 細胞内に輸送することに利用され、かつ熱ストレス、及び高酸素症に対して細胞保護作用を与える能力のために、組換えHSP7の輸送と比較されている。免疫細胞化学により、該TAT-PTD融合で処置された、ほぼ100%の細胞において、細胞内HSP70の蓄積が証明された。一方、組換えHSP70で処置された細胞は、組換えHSP70タンパク質の細胞内蓄積がないことが証明されている(D.S. Wheeler らの文献, 2003)。また、スーパーオキシド ジスムターゼ (SOD)、及びカタラーゼのような他の抗酸化酵素は、細胞内の輸送のためにTATと融合している。Tat-SOD、及びTat-CATの導入とともに、HeLa細胞は、コントロールと比較して、細胞生存度の約90%増加を経験した(Jin らの文献, 2001)。
【0032】
また、TAT-PTD抗-アポトーシスタンパク質融合の腹腔内(i.p.)注入は、有意な取り込み、及び神経細胞の有効性を示した。1〜2時間以内のPTD-HA-Bcl-xLのマウスへの腹腔内注入は、該血液脳関門を通過する融合タンパク質の能力を証明した。該タンパク質融合は、脳虚血の開始時に脳梗塞を40%まで低下することができる(Cao, らの文献. 2002)。類似した研究は、スタウロスポリン-誘発アポトーシス、及びグルタミン酸-誘発興奮毒性に曝された場合に、インビトロにおいてSH-SY5Y神経芽細胞腫を保護するように、抗-アポトーシス活性の増加を有するBcl-x mutant (FNK)を利用したものである。また、このTat-FNK融合を、スナネズミのi.p.に注入し、かつ海馬において、一過性完全虚血(transient global ischemia)により生じる遅延神経細胞死が防止された(Asohの文献, 2002)。
【0033】
(2.2.1.2 Tat-PTD融合の速度論)
Tat-PTDの取り込みの速度論研究は、全細胞集団が、30秒から5分の暴露(Ho et al, 2001)で、該Tat-PTDの最大取り込みに達し得ることを示した。Tat-PTD融合タンパク質は、組織特異的様式における取り込みの点で異なり、かつ、また、該融合タンパク質の構造、及びサイズに依存する。培養HeLa細胞内への形質導入融合タンパク質の安定性は、約2時間のインキュベーションで最大濃度を示し、72時間後まで定常の低下を示した(Jin らの文献 2001)。また、Tat-PTDを、リポソーム被包性HPTSに結合させ、細胞内へのリポソーム薬剤の取り込みを促進するTat-PTDの能力を評価した。速度論研究は、時間依存性方法において、蓄積を示した。約24時間で最大濃度に達し、かつ該Tat-PTDリポソーム融合は、取り込みにおいてぺネトラティン-PTDリポソーム融合と比較して、4倍増加を示した(Tseng らの文献, 2002)。また、Tat-PTDを、アンギオテンシンII型レセプタ(AT1R)に融合させ、神経細胞におけるTat-PTD融合の形質導入の有効性、及び機能性を調査した。生まれて一日のウィスター-京都ラット(Wistar-Kyoto rats)(WKY)の視床下部、及び脳幹から単離した神経細胞培養を、300ug/MLの該組換えタンパク質とともにインキュベートし、かつ最大蛍光を、初期蛍光の記録後のインキュベートの30分後に記録した(Vazquez らの文献 2002)。下図は、Tat-ptd融合の取り込みが、融合の種類、並びに取り込まれる細胞標的に基づくことを示した。
【0034】
(2.2.1.3 細胞毒性)
TAT-HIV-1タンパク質(配列番号:2)であるTat-PTDの親タンパク質は、幾つかの細胞型において、炎症反応を誘発する。Tatに曝された脳微小血管内非細胞(BMEC)は、細胞酸化ストレス水準の顕著な増加、細胞内グルタチオン水準の低下、並びにDNA結合活性化、及びNF-kappaBとAP-1とのトランス活性化を示した(Toborek らの文献 2003)。該親タンパク質の毒性の記録において、Tat-PTDを細胞培養、又は動物モデルに導入した場合に、類似の細胞毒性を示し得る恐れがある。しかし、今日までの文献は、該Tat-PTDが、対象のタンパク質を、ほぼ100%、細胞毒性を示さない細胞集団に形質導入し得ることを示している。骨細胞の初代培養液を、対象のタンパク質で形質導入することの困難性を克服するために、Tat-PTDを、血球凝集素、及びカルシニューリンに融合させ、形質導入の有効性を評価した。初代培養液中の造骨細胞、及び破骨細胞、双方への暴露は、該融合タンパク質のほぼ99%の形質導入を導き、5日までの間、約50%の細胞内に保持されていた。該Tat-PTD融合で処置した時に、細胞毒性はないことが報告されている(Svetlana らの文献 2002)。また、Tat-PTD融合は、膵島の形質導入において有効である。Tat-PTD融合が、島において機能的であるかどうか試験するために、Tat-PTDを、β-ガラクトシダーゼに融合させ、かつインスリノーマβTC-3細胞内に導入した。ほぼ100%の全ての細胞が、3時間インキュベーション後に形質導入された。Tat-PTD融合を用いた全ての治療的介在の重要な要求は、正常細胞生理機能、又は作用における不利な変化はなかった。インスリンの適切な分泌を行うために、島を、Tat-PTD-Bcl-XLで形質導入した。該融合は、付随毒性のないコントロール島として、同時枠を有する糖尿病ヌードマウスにおいて、高血糖症を無効にすることを示した。従って、潜在的な治療的介在としてTat-PTD融合タンパク質の有望な使用を確認した(Embury らの文献 2001)。
【0035】
(2.3 細胞小器官標的化シグナル:ミトコンドリア、及び葉緑体)
また、他の実施態様において、特定のポリヌクレオチドの細胞小器官への標的化は、特定の細胞小器官標的化配列、シグナル、又はドメインを発現する改質ベクターにより達成することができる。これらの配列は、特定の細胞小器官を標的とする。しかし、幾つかの実施態様において、該細胞小器官と標的化配列との相互作用は、従来のレセプタ:リガンド相互作用を介して生じない。該真核細胞は、多くの分散した膜結合区画、又は細胞小器官を含む。各細胞小器官の構造、及び機能は、成分ポリペプチドのその唯一の補体により大部分決定される。しかし、これらのポリペプチドの大部分は、細胞質内で、その合成を開始する。従って、細胞小器官生物発生、及び維持は、新たに合成されたタンパク質が、これらの適切な区画に的確に標的化され得る必要がある。多くの場合、これは、アミノ-末端シグナル配列、並びに翻訳後修飾、及び二次構造により達成される。ミトコンドリア、及び葉緑体にとって、幾つかのアミノ-末端標的化配列が推定され、かつ表1、及び2に部分的に含まれる。
【0036】
一実施態様において、該細胞小器官標的化配列は、少なくとも2つ、好ましくは5〜15個、さらに好ましくは約11個の荷電基含み得る。それにより、正味の対電荷を有する細胞小器官に引きつけられる標的化配列となる。他の実施態様において、該標的化配列は、電磁気ポテンシャル勾配に対して、又はその下で、細胞小器官内に移送される標的化配列を生じる、一連の荷電基を含み得る。適切な荷電基は、細胞内条件下で荷電する基であり、例えば、荷電官能基を有するアミノ酸、アミノ基、及び核酸などがある。一般に、ミトコンドリア局在化/標的化シグナルは、高度に正に荷電したアミノ酸のリーダー配列からなる。これは、高度に負に荷電したミトコンドリアを標的とするタンパク質となる。該レセプタへの接近が、確率的なブラウン運動に依存するレセプタ:リガンド接近とは異なり、該ミトコンドリア局在化シグナルは、電荷でミトコンドリアに引きつけられる。
【0037】
該ミトコンドリアに入るために、一般的に、タンパク質は、Tim、及びTom複合体(内部/外部ミトコンドリア膜の転移酵素)からなる該ミトコンドリア移入機構と相互作用しなければならない。該ミトコンドリア標的化配列に関して、該正電荷は、該結合タンパク質を該複合体に引きつけ、かつ該タンパク質を、該ミトコンドリア内に引きつけ続ける。該Tim、及びTom複合体は、該タンパク質の膜通過を可能にする。従って、本開示の一実施態様は、正電荷標的化配列、及び該ミトコンドリア移入機構を利用して、本開示の組成物を、該内部ミトコンドリア空間に運ぶものである。
【0038】
また他の実施態様において、本開示の組成物は、細胞小器官標的化配列、例えば、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア標的化配列を含む。該標的化シグナルを、上述のように、正に荷電した配列とすることができ、かつ一般的に、従来のレセプタ:リガンド機構を介して作用するものではない。該PTDドメインは、細胞小器官膜、又は形質膜のような脂質二重層の通過において、該組成物を補助するHIV TAT配列になり得る。
【0039】
(2.4 ウイルス頭部(Viral Heads)上のタンパク質発現:ファージの提示)
本開示の適切なベクターは、制限されないが、バクテリオファージのようなウイルスベクターである。バクテリオファージラムダは、一般に使用されている繊維状ファージにペプチド、及びタンパク質を表面提示するための代わりの媒体として挙げている。ラムダが、多量体タンパク質を提示する能力、該提示された融合タンパク質の分泌の不必要性、及び該表示された融合タンパク質の価数を変える方法を含む、誘因性提示媒体になる多くの唯一の特徴がある。タンパク質D(gpD)は、ファージ提示のために確立された融合パートナーであり、そのN-、又はC-末端で融合される(Sternberg、及びHoess, PNAS 92, 1609 (1995); Mikawaらの論文, JMB 262, 21 (1996))。タンパク質Dは、小さい主要キャプシドタンパク質(109 aa)であり、三量体突出を形成する該ファージ頭部の安定化に寄与する。タンパク質Dは、可溶性非相同タンパク質の細胞質内高水準発現にとって、非常に有効な融合パートナーである(Forrer、及びJaussiの論文, Gene 224, 24 (1998))。
【0040】
(2.5 改質細胞、及びベクター)
一実施態様は、タンパク質形質導入ドメインをコードしている配列に機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルを含む組換えDNA配列を含むベクターを提供する。この実施態様において、該組換えウイルスベクターは、細胞膜を通過する該ウイルスベクターを形質導入するために選択したタンパク質形質導入ドメインを含むように操作される。従って、前記改質ベクターの使用は、該細胞内部に該ウイルスベクターを導入するトランスフェクション方法に要求されるウイルスベクターのために必要なものを排除する。例えば、該ウイルスベクターが、ラムダバクテリオファージである場合、該ウイルスキャプシドタンパク質は、該ウイルス表面上にPTD、及び細胞小器官標的化シグナルを発現するように改質される。
【0041】
他の実施態様に従って、PTD、及びミトコンドリア標的化配列を発現する組換えバクテリオファージを提供し、これを、細胞小器官トランスフェクション、例えばミトコンドリアトランスフェクションのために使用することができ、かつ、さらに好ましくは、ラムダバクテリオファージを、哺乳類ミトコンドリア内に外来性核酸配列を導入するように使用することができる。このアプローチは、該細胞ミトコンドリアに感染するバクテリオファージラムダの特性に依存する高い-複製数で、mtDNAの直接操作、及び該環状ゲノムの導入を可能にする。特に、50キロ塩基のバクテリオファージラムダゲノムは、大きい挿入部分(>10 キロ塩基)で設計し、かつ活性ラムダファージを形成するように包まれる。一実施態様において、該ベクター内に含まれる唯一のラムダ配列は、対象の核酸配列に利用可能な約50 kbまで離れているラムダ粒子に包まれる直線断片の5'、及び3'末端にある2つのcos部位(各12 bp)である。また、該組換え配列は、バクテリア内での複製を可能にする複製起点(通常ColE1)、及び選択性マーカーをコードしている遺伝子を含み得る。
他の実施態様は、タンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官標的化シグナルを提示する組換えラムダ粒子を提供する。また、該ラムダ粒子は、細胞と該ラムダ粒子とを接触することによりトランスフェクションされ得る。該ラムダ粒子は、該タンパク質形質導入ドメインを介して該細胞形質膜を通過して転移し、かつ該標的化シグナルを介して該細胞小器官を標的化する。
【0042】
最小のミトコンドリアレプリコンは知られていないため、該完全ヒトミトコンドリアゲノム、又はその部分断片を、ラムダ内に挿入することができる。一実施態様において、この方法は、mtDNAの操作、又は交換に使用される。他の実施態様において、該全ヒトミトコンドリアゲノム(配列番号:6)を、導入された配列により置換することができる。例えば、Rho0細胞を、内在性mtDNAを除去し、続いてミトコンドリアトランスフェクションするために最初に生成することができ、置換された細胞の全ミトコンドリアゲノムを生じる。または、ミトコンドリアを、Rho0細胞の生成で最初に処置することなく、トランスフェクションすることができる。この場合、該導入核酸は、該mtDNA配列の操作を生じる既存の内在性mtDNA配列と合併される(再結合される)。どちらかの方法を、損傷ミトコンドリアの全機能修復に使用することができる。
また、他の実施態様において、ラムダファージベクターを使用する。該バクテリオファージの構造キャプシドタンパク質が、PTDを用いて、該バクテリオファージの細胞膜通過を可能にし、かつミトコンドリア標的化シグナルを用いて、該ミトコンドリアを標的化するように改質される。好ましくは、該改質ファージベクタータンパク質は、PTD、及び細胞小器官標的化シグナルのようなタンパク質部位の発現を可能にするものである。野生型ラムダファージは、そのキャプシド、又は頭部にgpDを発現する。該ウイルスキャプシドは、該gpDタンパク質を含む、幾つかタンパク質から構成されており、かつ、このタンパク質は、細胞膜を特異的に通過し、かつ細胞小器官を標的化できる、特定のバクテリオファージを生じるように改質され得る。
適切なミトコンドリア局在化配列は、当業者に公知であり(表1参照)、かつヒト シトクロム オキシダーゼのサブユニットVIIIのミトコンドリア局在化シグナルを含む、酵母シトクロム c オキシダーゼ サブユニット IVシグナルペプチド、及びラットオルニチン-カルバミル転移酵素のアミノ末端リーダーペプチドを含む。一実施態様において、該導入された配列は、該ウイルスキャプシド頭部に発現される。該組換えウイルスベクターの発現時に、該ミトコンドリア局在化シグナルは、該ミトコンドリアに局在化される該ウイルスベクターを生じる。適切なウイルスベクターを有する、この宿主細胞のトランスフェクションは、該ベクターが該ミトコンドリアを標的とするであろう。
ベクターのタンパク質をコードしている核酸、例えばウイルスベクターに対するウイルスキャプシドタンパク質は、細胞小器官標的化配列、例えば該ミトコンドリア内にタンパク質を移入するように使用されるアミノ酸に機能的に結合し得る。このハイブリッドタンパク質は、核酸が該細胞小器官を標的とするように使用され得る。該細胞小器官内に入ると、該核酸は、該細胞小器官のゲノムに入り得る。従って、本開示の実施態様は、少なくとも一部分のウイルスキャプシドタンパク質配列、及び細胞小器官標的化配列、例えば、表1、又は表2の標的化配列を含むポリペプチドに対応する。該ハイブリッドポリペプチドは、独立に発現され得る。又はウイルスベクターの一部分として発現され得る。
【0043】
他の実施態様は、2つの成分を含むように提供される、トランスフェクションシステムを提供する。該ウイルスベクターは、対象の該核酸、例えばRNA、DNA、又はこれらの組み合わせを、該細胞内部、及び細胞小器官標的化シグナルに運ぶPTDを発現するように改質される。該構築物は、ウイルスベクターに特異的なウイルス表面タンパク質に機能的に結合した細胞小器官局在化配列をコードしている核酸配列を含む。該PTD、及び該細胞小器官標的化配列は、該ウイルスベクターの表面上に、別個のポリペプチドとして、又は該ウイルスベクターの表面上に、単一ポリペプチド配列、融合タンパク質において発現され得る。また、該核酸構築物は、該融合タンパク質の発現に適切なプロモーター、並びに、該融合タンパク質の発現に必要な他の調節成分を任意に含む。前記調節成分は、当業者にとって公知であり、該融合タンパク質発現システムに基づき変わるであろう。本開示の使用に適したウイルスベクターの1つは、バクテリオファージラムダである。バクテリオファージラムダを、該トランスフェクション ベクターとして使用する場合、該トランスフェクションシステムの成分は、該細胞小器官局在化配列、及びタンパク質形質導入ドメインに機能的に結合した該ラムダキャプシドタンパク質(gpD)をコードしている核酸配列を含む。
【0044】
ウイルス表面上に発現する改質細胞小器官標的化配列を含む組換えウイルスベクターを、標準的分子生物学技術を用いて調製することができる。一般的に、宿主細胞を、該ウイルス表面タンパク質、例えばウイルスキャプシドタンパク質をコードしている配列に機能的に結合した細胞小器官局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインをコードしている配列を含む組換えウイルス構築物でトランスフェクションする。該細胞小器官局在化配列は、該局在化配列(すなわち、融合タンパク質)に結合したタンパク質を、該標的とする細胞小器官に運ぶ。本開示の一実施態様に従って、ウイルスベクターが、選択された細胞小器官、例えばミトコンドリア、又は葉緑体を標的とするように、かつ従って、該細胞小器官を標的とする導入ベクターの一部を提供するように、該局在化配列を使用する。該ベクターを、そのタンパク質形質導入ドメインを介して、該細胞の細胞質ゾル内に導入し、次いで、該ベクターに特異的な細胞小器官に結合する。該ベクター内の対象の該核酸は、動物、又は植物の標的とする細胞小器官内に運ばれる。
【0045】
細胞小器官局在化シグナルは、当業者にとって公知である。そのシグナルの幾つかは、該ウイルスベクターが、本開示の使用に適した該標的細胞小器官局在化シグナルを標的とするように使用され得る。Emanuelsonらの論文,"N-末端アミノ酸配列をベースとしたタンパク質の、予想される非細胞局在化" Journal of Molecular Biology. 300(4):1005-16, 2000 Jul 21に、及びCline、及びHenryの論文,"葉緑体タンパク質をコードしている核の移入、及び経路" Annual Review of Cell & Developmental Biology. 12:1-26, 1996に記載しされている。これらの論文は、全体として本開示中に引用により取り込まれている。さらに、結合タンパク質、又は核酸が、該ミトコンドリアを標的とするミトコンドリア局在化シグナルの一覧は、表1に示した。結合タンパク質、又は核酸が、該葉緑体を標的とする葉緑体局在化シグナルの一覧は、表2に示した。一実施態様において、該ミトコンドリア、又は葉緑体局在化シグナルは、ウイルス表面タンパク質に機能的に結合している。表1、及び2に示した該配列の一部、又は全てが、細胞小器官標的化配列として使用できることは理解されるであろう。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
結合タンパク質の葉緑体、又はミトコンドリア内への転移に必要な特定配列の同定は、http://www.mips.biochem.mpg.de/cgi-bin/proj/medgen/mitofilterにある手段を含む、当業者に公知であるプレディクティブソフトウェア(predictive software)を使って決定することができる。
他の実施態様において、タンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官局在化シグナルを含むベクターをコードする核酸を、宿主、初代培養液、又は細胞株から、細胞小器官内に導入することができる。例えば、該核酸配列が該細胞株の該細胞小器官ゲノム内に安定に組み込まれるように、細胞小器官標的化配列と機能的に結合したウイルスベクターを使用して、真核細胞株をトランスフェクションすることができる。該細胞株を、無期限に細胞培養液中に保持され得る形質転換細胞株とすることができ、又は該細胞株を、初代培養細胞でとすることができる。例証的な細胞株は、引用により本開示に取り込まれる植物細胞株を含む、American Type Culture Collectionから入手可能なものである。該トランスフェクションされた細胞株の細胞の核内で、該核酸を複製し、かつ転写することができる。該ベクターを、標的とする細胞小器官に、自由に保つことができるように、必要に応じて、該標的化配列を、酵素的に開裂することができる。
【0049】
全ての真核細胞は、特定の核酸、例えば、代謝遺伝子を発現する細胞小器官を生じるように、トランスフェクションされ得る。これらは、初代細胞、並びに株化細胞を含む。適切な細胞種は、制限はないが、幹細胞、全能細胞、多能性細胞、胚幹細胞、内部大量細胞(inner mass cell)、成熟幹細胞、骨髄細胞、臍帯血由来の細胞、及び外胚葉、中胚葉、又は内胚葉から誘導される細胞を含む、未分化、又は部分的に分化した細胞がある。適切な分化細胞は、体細胞、神経細胞、骨格筋、平滑筋、膵臓細胞、肝細胞、及び心臓細胞がある。適切な植物細胞を、単子葉植物、及び双子葉植物から選択することができ、かつトウモロコシ、大豆、マメ科植物、及びイネ及びコムギのような穀物植物を含む。
【0050】
標的化される該細胞小器官が、葉緑体である場合、該宿主細胞を、公知である真核光合成細胞から選択することができる。トランスフェクションされる該細胞小器官が、該ミトコンドリアである場合、例えばヒト細胞のような哺乳類細胞を含む、全ての真核細胞を使用することができる。該外来性核酸を過渡的に、又は安定に発現するように、該細胞をトランスフェクションする。一実施態様において、レポーター遺伝子をコードしているDNA構築物を、細胞の該ミトコンドリアゲノム内に組み込み、所望のレポーター遺伝子を発現する細胞小器官を含む安定なトランスジェニック細胞株を製造する。
他の実施態様において、siRNA、又はアンチセンスポリヌクレオチド(mtDNA 関連タンパク質に対応するsiRNA、又はアンチセンスポリヌクレオチドを含む。)を、本開示に記載した組成物を用いて、細胞小器官内にトランスフェクションすることができる。
【0051】
本開示の他の実施態様は、改質細胞小器官を有する細胞を提供する。該改質細胞小器官は、外来的に導入された核酸を含む。外来性核酸は、該細胞小器官に必然的に関連しない、又は該細胞小器官の内部にない核酸を意味する。該細胞小器官内で発現される核酸は、該細胞小器官内で転写、及び/又は翻訳され得る。さらに、該核酸、及びそれにより生じたタンパク質は、必要ならば、その機能を促進するように翻訳後修飾を受けることができる。改質ウイルスベクターの特定細胞小器官への輸送は、標的化配列、例えば表1の該標的化配列を用いて達成され得る。
【0052】
核酸は、制限されないが、ポリヌクレオチド、アンチ-センス核酸、ペプチド核酸、天然又は合成核酸、化学的に修飾された塩基を有する核酸、RNA、DNA、RNA-DNAハイブリッド、リボザイム及びDNAザイムのような酵素核酸、野生型/内在性遺伝子及び非野生型/外来性遺伝子、及びこれらの断片又は組み合わせを含み、宿主細胞の細胞小器官、特に、核酸を、ミトコンドリア及び葉緑体のようなタンパク質に転写及び/又は翻訳できる細胞小器官内に導入され得る。本開示の一実施態様において、該ミトコンドリア、又は葉緑体ゲノムの全て、又は一部を、細胞小器官内に導入することができる。該核酸は、該ベクターが、タンパク質形質導入ドメインを介して該細胞小器官膜を通過することができる場合に、該ベクターを用いて該細胞小器官内に導入され得る。
【0053】
(3 方法)
本開示に従って、細胞小器官、例えば該ミトコンドリア、及び葉緑体のような非-核細胞小器官をトランスフェクションするための1つの例証的方法は、細胞と、組換えベクター、例えばウイルスベクターとを接触させる段階を含む。該ベクターは、その表面上にあるタンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官標的化シグナルを含む。適切な細胞は、トランスフェクション可能な細胞、例えば真核細胞である。本開示の細胞小器官標的化シグナルは、正味の正電荷を有するポリペプチド、及び表1、及び2に示したものを含む。適切なPTDは、制限されないが、HIV TAT YGRKKRRQRRR (配列番号:3)、又はRKKRRQRRR (配列番号:4);11個のアルギニン残基、又は8〜15個の残基、好ましくは9〜11個の残基を有する正電荷ポリペプチド又はポリヌクレオチドがある。該用語、非-核細胞小器官は、該核以外の全ての細胞小器官を含むことが意図される。該ウイルスベクターが、該細胞小器官、一般的に正味の負電荷、又は負電荷領域を有する細胞小器官に付随するベクターとなるように、細胞小器官標的化シグナルを発現することが理解されるであろう。一実施態様において、該細胞小器官と該標的化シグナルとの付随は、レセプタ:リガンド相互作用を通して起こらない。該細胞小器官とベクターとの付随は、イオン的、非共有、共有、可逆、又は不可逆であり得る。例証的なベクター:細胞小器官の付随は、制限されないが、タンパク質-タンパク質、タンパク質-糖質、タンパク質-核酸、核酸-核酸、タンパク質-脂質、脂質-糖質、抗体-抗原、又はアビジン-ビオチンがある。該ベクター表面上の該細胞小器官標的化シグナルは、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体断片、脂質、糖質、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、化学基、又は他のリガンドとすることができ、該細胞小器官とベクターとの間の特異的付随、好ましくは、反対の荷電部位の間の電磁的付随を生じる。
【0054】
該導入されたベクターとその標的とする細胞小器官との間の特異的相互作用は、少なくとも2つの方法で達成され得る。1つの例証的方法において、通常、組換えウイルスベクターは、例えば、該標的化シグナルが、自由に標的化該細胞小器官と相互作用できるように、該ベクターの外部で発現するポリペプチド成分のような標的化シグナルを発現するように設計され得る。好ましくは、該ベクターは、該標的とする細胞小器官に特異的である表面ポリペプチドを発現する。もう1つの方法において、該ベクターを、細胞小器官が結合する外来性標的化タンパク質を組み込んで改質する。あるいは、ベクターを、例えば、特定の細胞小器官のエピトープに結合し得る抗体断片を発現することにより、所望の細胞小器官と特異的に相互作用するように改質することができる。該ベクターが、該修飾剤に依存して正味の正電荷、又は負電荷を有するように、化学的に修飾され得ることは、当業者により理解されるであろう。例えば、ベクターを、ポリリシン、又は一級アミノ酸を含む薬剤で被覆することができる。さらに、アミノ基を、該ベクターと結合することができ、又はアミノ基を含む化合物を、該ベクターと結合することができる。該結合は、可逆又は不可逆、共有又は非共有結合であり得る。化合物に電荷を与えるための他の荷電基は、当業者において公知である。
【0055】
本開示の他の実施態様に従って、改質、又は変異ラムダバクテリオファージを、組換えウイルスベクターとして使用する。ラムダファージは、幾つかのキャプシド(頭部)タンパク質を有する。gpD (遺伝子産物D) (配列番号:5)は、ラムダファージ頭部タンパク質であり、その未変性構造(native conformation)において、遊離のアミノ、及びカルボキシ末端を有する。そのようなものとして、タンパク質相互作用を調査するために該ラムダ頭部でcDNAライブラリーを発現することが一般的である。該発現されたcDNAは、該アミノ、又はカルボキシ末端でgpDに拘束され、かつ該ウイルス頭部表面に現れる。細胞小器官輸送媒体としてラムダファージを利用するために、gpDの遊離末端は、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合した細胞小器官標的化シグナルを含むように改質される。従って、一実施態様において、ラムダバクテリオファージベクターは、輸送媒体として選択される。ラムダバクテリオファージは、該ウイルスキャプシド上にある細胞小器官標的化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を特異的に発現する。該標的化シグナルは、細胞小器官と特異的に相互作用するシグナル配列となり得る。また、該PTDは、該ウイルスベクターが細胞膜を通過できるシグナル配列となり得る。該PTDは、該細胞小器官内に入った後、該融合タンパク質内に位置することができ、該PTDドメインは、該細胞小器官内に捕捉されたままの該ベクターを生じる該ベクターの表面から開裂される。あるいは、該ポリペプチドの所望の領域が該細胞内で開裂され得るように、例えば、該ベクターが、該細胞小器官内に局在化してすぐに、PTDを開裂するように、切断部位を、該発現ポリペプチド内に設計することができる。また、該細胞小器官標的化シグナルを、該ベクター表面上から開裂することができる。好ましい実施態様において、該PTD配列の後に該細胞小器官標的化配列が続く。該シグナル配列を、タンパク質、脂質、糖質のような糖類、又はこれらの組み合わせの全て、又は一部とすることができる。この実施態様において、該ラムダベクターは、該細胞外空間に導入され、かつ細胞を接触させ、該ベクターは、該細胞膜を通過して形質導入され、かつ該発現されたシグナル配列を介して、その標的とする細胞小器官に結合し、そして、該ベクター内にあるポリヌクレオチドが、該細胞小器官内に導入される。該標的とする細胞小器官が、細胞外に、又は細胞内にトランスフェクションされ得ることは、当業者により理解されるであろう。該標的とする細胞小器官が、細胞外にトランスフェクションされる場合、当業者に公知である、融合、電気穿孔法、微量注入、衝撃破壊(ballistic bombardment)、又はリポソームのような公知技術を用いて細胞に導入され得る。
【0056】
他の実施態様は、標的化シグナルを有するウイルスを提供することにより、細胞小器官、例えば、真核細胞小器官を、トランスフェクションする方法を提供する。該標的化シグナルは、改質又は未改質、該標的とする細胞小器官に特異的に付随できる該ウイルスの表面上に提示されたポリペプチドとすることができる。例証的な標的化シグナルは、表1に示された該標的化シグナル、及び正味の正電荷を有する他のシグナルを含むミトコンドリア標的化シグナルを含む。無処置機能性ベクターとして、前記細胞の該細胞質ゾル内に該ベクターを導入する方法において、細胞と、該組換えベクター、例えばウイルスベクターとを接触させる。次いで、該ベクターは、その特定の標的とする細胞小器官に付随され、かつ該組換えDNAが、該細胞小器官内に導入される。該組換えDNAの該細胞小器官への導入は、該ベクターの表面上に発現されるタンパク質形質導入ドメインを介して、細胞小器官膜を通過する該ベクターを形質導入することにより達成され得る。
【0057】
無処置機能形態において、該真核細胞の細胞質ゾル内へのベクターの導入は、当業者に公知である標準的技術を用いて、又はタンパク質形質導入ドメインを有する該組換えベクターの改質を介して達成され得る。前記トランスフェクション手順は、制限はないが、微量注入、電気穿孔法、塩化カルシウム透過化処理、ポリエチレングリコール透過化処理、プロトプラスト融合、又は陽イオン性脂質透過化処理がある。一実施態様において、ウイルスベクターは、タンパク質形質導入ドメインを含むように改質され、ベクター全体が、細胞膜、細胞小器官膜、又は形質膜を含む脂質二重層を通過して形質導入され得る。適切なPTDは、制限されないが、11個のアルギニンPTD、又はTat-PTD (配列番号:3、又は4)がある。
【0058】
一実施態様に従って、哺乳類細胞のミトコンドリア内に、外来性核酸配列を導入する方法を提供する。全てのミトコンドリアトランスフェクション技術は、該核酸が、3つの膜(該形質膜、並びに、外部、及び内部ミトコンドリア膜)を通過し、mtDNA分子の高度な複製を扱い、かつ最小の細胞ミトコンドリアレプリコンを利用することを保障しなくてはならない。本開示の一実施態様において、組換えバクテリオファージを、細胞小器官、例えば該ミトコンドリア内に核酸配列を導入するための輸送媒体として使用する。該ベクターは、該ミトコンドリア表面上に発現されるラムダファージレセプタに結合しない。むしろ、該ラムダファージベクターは、該ミトコンドリア標的化配列、例えば、表1の標的化配列を介して、該ミトコンドリアを付随する。
【0059】
(3.1 植物のトランスフェクション)
植物トランスフェクション技術は、当業者に公知である。例えば、アグロバクテリウム チュメファシエンス、及びアグロバクテリウム発根(アグロバクテリウム rhizogenes)、双方は、これらのDNAの一部を、植物のゲノムに運ぶ能力を有し、かつ植物細胞をトランスフェクトすることができる。これらがDNAを運ぶ機序は、同じである。しかし、生じる表現型の違いは、アグロバクテリウム チュメファシエンスのTi プラスミド、及びアグロバクテリウム発根のRi プラスミドの存在に起因する。該Ti プラスミド DNAは、腫瘍塊を増殖する宿主細胞を生じる。一方、該Ri プラスミド DNAは、根の大量増殖へと導く。アグロバクテリウム チュメファシエンスは、ほぼ全ての植物組織を感染することができる。一方、アグロバクテリウム発根は、根にのみ感染し得る。
【0060】
アグロバクテリウムのTi プラスミドは、大きく、約200kbの環状二本鎖DNA分子(T-DNA)であり、自律的な複製単位として存在する。該プラスミドは、該バクテリア内、及び特定の領域内(T-領域)にのみに保存されており、約20 kbは、該バクテリアから該宿主に移動され得る。この移動を達成するために、該Ti プラスミドは、自己複製、該プラスミドからの切除、該宿主細胞への移動、該宿主ゲノム内への組み込み、及び腫瘍形成の誘発に相当する一連の遺伝子を含む。
アグロバクテリウムは、該傷害植物から漏れる化学的シグナルの検出を介して、検出し、かつ注入された植物細胞の方に移動する。この検出法は、走化性を参照している。アグロバクテリウムは、該バクテリアの毒性を誘発するアセトシリンゴン、シナピン酸、コニフェリルアルコール、コーヒー酸、及びメチルシリンガ酸のような、植物化合物を認識することができる。感染プロセスを始めるために、アグロバクテリウムは、該宿主細胞と結合させなければならない。この結合は、バクテリア染色体内にある一群の遺伝子により達成される。該バクテリアは、該セルロース原線維の産生により、損傷部位で固定され得る。該原線維は、該植物宿主の細胞表面に固定され、かつ該細胞表面上の他のバクテリアの集積化を促進する。この集積化は、T-DNAの首尾よい移動の手助けとなり得ると考えられている。該宿主への結合後すぐに、該バクテリアは、自由に、該T-領域の処置、及び移動を始めることができる。本開示の一実施態様は、アグロバクテリウムを用いた植物細胞へのトランスフェクションを提供する。該アグロバクテリウムは、植物細胞小器官、例えば葉緑体に結合するように改質されている。さらに、アグロバクテリウムは、該細胞小器官内に発現するための対象の核酸をコードするように改質され得る。該細胞小器官に結合時に、該アグロバクテリウムは、該標的とする核酸を該葉緑体内に運び得る。
【0061】
該Ti プラスミドのT-領域を、該宿主細胞 細胞小器官に移動するために、該T-領域を、該プラスミドから切除し、かつ該細胞小器官に方向付けるように処理しなければならない。適切にパッケージしてすぐに、該T-複合体移動を、幾つかのタンパク質により媒介させる、これは、バクテリア接合と類似していると考えられる。該植物細胞、又は細胞小器官の内側に入り、該T-複合体は、該膜を通過して取り込まれる。
【0062】
(4. 研究手段)
一実施態様において、本開示は、mtDNA発現、異形成機序、mtDNA 複製、及び遺伝形質、並びに閾値効果の細胞の影響を調査するための手段として使用される。ミトコンドリア変異マウスを、このアプローチを用いて発生させることができ、研究者は、現実にわかっていないmtDNA変異を研究することができる。さらに、該技術は、同じ遺伝子型、又は変化する異形成の程度を有するミトコンドリアを含む細胞を発生させるように使用され得る。同種形成性細胞を調製するために、最初に、Rho0細胞(mtDNA欠如)を、RNA干渉(RNAi)を用いて調製する。例えば、Rho0細胞は、該ヒト ミトコンドリアDNAポリメラーゼに対してRNAiを使用して製造され得る。例証的なRho0細胞株は、mtDNA保存に関与するミトコンドリアタンパク質にRNAiを用いて製造される。これらのRho0細胞を、ピルビン酸含有支持培地に保存し、かつ繁殖させ、次いで機能性ミトコンドリアゲノムでトランスフェクトする。代謝選択後、支持培地からピルビン酸を除去することにより、首尾よくトランスフェクトされたミトコンドリアを含む細胞のみが、残るであろう。従って、全て同一のミトコンドリアゲノムを有する細胞集団が発生する。
次に、変化する異形成の程度を有する細胞株は、制御された方法において、サイブリッドを発生するように2以上の同種細胞株を融合することにより発生され得る。受容細胞内に細胞小器官を導入するための全ての公知技術を用いて、サイブリッドを発生することができる。該技術は、制限はないが、ポリエチレングリコール(PEG)媒介細胞膜融合、細胞膜透過化処理、細胞-細胞原形質融合、ウイルス媒介膜融合、リポソーム媒介融合、微量注入、又は他の当業者に公知の方法がある。
【0063】
(5. トランスジェニック 非-ヒト動物)
また、本開示に記載された技術を、トランスジェニック 非-ヒト動物を発生するように使用することができる。とくに、胚幹(ES)細胞サイブリッドの接合体微量注入、核移植、割球電気融合、及び胚盤葉注入は、それぞれ、ミトフェクト細胞株(mitofected cell lines) (すなわち、トランスフェクトされたミトコンドリアを含む細胞)由来のmtDNAを含む異質-、及び同種マウスを作るための適した方法を提供する。一実施態様において、キメラマウス発生方法として、胚幹(ES)細胞をミトフェクトし、かつ哺乳類胚の胚盤葉内に注入する。他の実施態様において、胚幹(ES)細胞サイブリッド(ミトフェクト細胞、及びES細胞rhos由来、又は2つの別のミトフェクト細胞由来)を、最初に調製し、続いて胚盤葉を、図3に示す胚に注入する。特異的にミトフェクトされた、対象のmtDNAを運ぶ細胞の使用により、該ミトフェクトDNAに対して異種形成、又は同種形成であるトランスミトコンドリアマウス(transmitochondrial mice)の作成が可能である。理論的には、この技術は、培養ミトフェクト細胞から得ることができる全ての変異mtDNAを、全ての生物モデル内に移動できることを提供する。
【0064】
mtDNA トランスフェクションのためのラムダの使用は、老化、糖尿病及び神経変性疾患で発見された多型、及びmtDNA相補体の動態とともに蓄積される5000 bpの割合変化の効果、"共通の欠損"のような問題の調査を可能にするであろう。また、このアプローチの潜在的な治療的使用がある。該正常のミトコンドリアゲノムの標的化導入は、mtDNAに基づくミトコンドリア機能障害に関連している典型的なmtDNA-疾患、並びに神経変性脳症状、及び成人-発症糖尿病のような老化による疾患、双方の治療を提供する。
【0065】
(6. キット)
また、本開示は、真核細胞小器官のトランスフェクションを行うために必要な成分を供給するキット、又はパックに対応する。一実施態様に従って、提供されるキットは、細胞小器官局在化シグナル、及びラムダ表面タンパク質に機能的に結合したタンパク質形質導入ドメイン、並びに、組換えラムダベクターを調製するためのラムダ凝集成分をコードしているタンパク質構築物を含む。また、該キットは、対象のDNA配列を挿入するための該ラムダDNA配列(該ベクター"腕")を含み、かつ続く、組換えラムダファージ ベクターの発生に使用する。一実施態様において、該キットとともに提供されるタンパク質構築物は、表1、及び2に部分的に示した、該細胞小器官の標的化において公知であるものから選択されたミトコンドリア、又は葉緑体局在化シグナルを含む。さらに、一実施態様において、該タンパク質構築物は、11個のアルギニン伸長、続いて該バクテリオファージファージラムダgpD頭部タンパク質に機能的に結合したヒト シトクロム オキシダーゼのサブユニット VIIIのミトコンドリア局在化シグナルをコードしている配列を含む。
【0066】
一実施態様に従って、提供されるキットは、外来性核酸を発現するミトコンドリア、又は葉緑体細胞小器官、どちらかを含む細胞を含む。さらなる実施態様において、提供されるキットは、該組換えPTD-細胞小器官標的化シグナル表面タンパク質、及び組換え構築物を調製するためのウイルスDNAを含むウイルスベクター用凝集成分を含む。一実施態様において、キットは、PTD-細胞小器官標的化シグナルラムダ表面タンパク質、ラムダバクテリオファージパッケージング抽出物、及びラムダDNAとともに提供される。該キットの個々の成分を、様々な容器、例えばバイアル、チューブ、マイクロタイターウェルプレート、及びボトルなどの中にパッケージ化することができる。他の試薬を、別々の容器内に含ませ、かつ該キットとともに提供され得る;例えば、陽性のコントロール試料、陰性のコントロール試料、緩衝液、及び細胞培養液などがある。好ましくは、該キットは、使用説明書も含む。
【0067】
(7. 治療方法)
細胞小器官機能障害は、例えば、ヒト宿主、又は植物宿主のような宿主の疾患を生じ得る。特に、ミトコンドリア、又は葉緑体の問題は、疾患を生じ得ることである。ミトコンドリア疾患は、該ミトコンドリアの障害から生じる。分化した区画は、赤血球細胞を除き、体の全細胞内に存在する。細胞傷害、及び細胞死は、ミトコンドリア障害から生じる。このプロセスが、体中で繰り返された場合、全体の系の障害が始まり、かつ、それを生じた該ヒトの生命が危険に曝される。該疾患は、例えば、18歳未満、通常、12歳未満の子供、又は18歳以上の成人でなり得る。従って、本開示の実施態様は、宿主細胞内にベクターを導入することにより、細胞小器官関連疾患、特にミトコンドリア疾患と診断された該宿主の治療に対応する。該ベクターは、該細胞小器官に特異的に結合し、かつ該ベクターは、ミトコンドリアタンパク質、又はペプチドをコードしている核酸を含む。本開示は、ミトコンドリア遺伝子欠損、又は異常により生じる疾患を治療するために、該哺乳類細胞のミトコンドリアゲノムの一部を操作し、増大し、かつ置換することを含む。
【0068】
例証的なミトコンドリア疾患は、制限されないが、下記のものがある:アルパーズ病; バース症候群; β-酸化異常; カルニチン-アシル-カルニチン欠損症; カルニチン欠損症; 補酵素Q10欠乏症; 複合体 I 欠損症; 複合体 II 欠損症; 複合体 III 欠損症; 複合体 IV 欠損症; 複合体 V 欠損症; シトクロム c オキシダーゼ (COX) 欠損症; 慢性進行性外眼筋麻痺症 (CPEO); CPT I 欠損症; CPT II 欠損症; グルタル酸尿症II型; 乳酸アシドーシス; 長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (LCAD); LCHAD; ミトコンドリア性細胞障害; ミトコンドリアDNA減少; ミトコンドリア脳症; ミトコンドリアミオパシー; 乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作を伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS); 赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん (MERRF); 母性遺伝のリー症候群 (MILS); ミオガストロインテスティナル脳筋症 (Myogastrointestinal encephalomyopathy)(MNGIE); 神経障害、運動失調、及び色素性網膜炎 (NARP); レーベル病(Leber's hereditary optic neuropathy)(LHON); 進行性外眼筋麻痺 (PEO); ピアソン症候群; キーンズ-セイアー症候群 (KSS); リー症候群; 間欠性自律神経障害; ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症; ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症; 呼吸鎖変異、及び欠失; 単鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (SCAD); SCHAD; and 超長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (VLCAD)である。
【0069】
幾つかのミトコンドリア疾患は、ミトコンドリアの該呼吸鎖の問題を生じる。該呼吸鎖は、4つの大きなタンパク質複合体からなる:I, II, III, 及びIV (シトクロム c オキシダーゼ, 又はCOX)、ATPシンターゼ、及び電子を持った2つの小さい分子、補酵素Q10、及びシトクロムcである。該呼吸鎖は、ミトコンドリアにおけるエネルギー-製造プロセスの最終段階であり、そこで、多くのATPが製造される。1以上の特定の呼吸鎖複合体の欠損より生じ得るミトコンドリア脳筋症は、MELAS, MERFF, リー症候群, KSS, ピアソン症候群, PEO, NARP, MILS, 及びMNGIEを含む。
該ミトコンドリア呼吸鎖は、核、及びmtDNA、双方由来のタンパク質で構成されている。おおよそ100個の呼吸鎖タンパク質の13個のみが、該mtDNA由来であり、これらの13個のタンパク質は、複合体IIを除いた該呼吸鎖全体に寄与する。従って、核遺伝子、又は37個のミトコンドリア遺伝子の1つの欠損は、呼吸鎖破壊を起こし得る。本開示の範囲は、ミトコンドリア機能に関与している、少なくとも1つの遺伝子、又は1つの遺伝子の一部、特に、該呼吸鎖機能を修復し、かつ増強させる、該37個のミトコンドリア遺伝子の少なくとも1つ、又は一部でトランスフェクトされたミトコンドリアを含む。ミトコンドリアゲノムの全て、又は一部、例えば、ヒトミトコンドリアゲノム配列番号:6を、本開示中に記載した方法を用いて、宿主ミトコンドリア内に導入することができる。
【0070】
該ミトコンドリア疾患は、脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓、及び内分泌及び呼吸器系の細胞に最も多く障害を起こすようである。従って、特定の核酸を有する、これらの細胞、及び組織中のミトコンドリアのトランスフェクション、特に、核-コード化タンパク質よりもむしろ、ミトコンドリア-コード化タンパク質をコードしている核酸を有するミトコンドリアのトランスフェクションは、本開示の範囲内である。該ミトコンドリアが、該ミトコンドリア内に自然に存在する、又は存在しない、若しくはmtDNA、又は核DNAにより自然にコード化されている全てのタンパク質を発現するようにトランスフェクトされ得ることが理解されるであろう。細胞が影響を受けることに依存して、症状は、運動制御、筋衰弱及び苦痛、胃腸疾患及び嚥下障害、乏しい成長、心疾患、肝疾患、糖尿病、呼吸器合併症、発作、視覚/聴覚疾患、乳酸アシドーシス、発育遅延、及び感染受容性の損失を含み得る。
【0071】
本開示により扱われる例証的mtDNA変異は、制限されないが:tRNAleu- A3243G, A3251G, A3303G, T3250C, T3271C, 及びT3394C; tRNALys- A8344G, G11778A, G8363A, T8356C; ND1- G3460A; ND4- A10750G, G14459A; ND6-T14484A; 12S rRNA-A1555G; MTTS2-C12258A; ATPアーゼ6-T8993G, T8993C; tRNASer(UCN)-T7511C; 11778, 及び14484, LHON変異、並びにND2, ND3, ND5, シトクロム b, シトクロム オキシダーゼ I-III, 及びATPアーゼ8の変異、又は欠損がある。
本開示の一実施態様は、該宿主細胞への導入ベクターを含む、宿主細胞の呼吸鎖機能を修復する、又は増強する方法を提供する。該ベクターは、該ミトコンドリアに特異的に結合し、かつ呼吸鎖タンパク質、又はペプチドをコードしている核酸を含む。該ベクターが、該ミトコンドリアを標的とする場合、例えば、該ベクターが、バクテリオファージラムダであり、かつ該ウイルス表面タンパク質が、タンパク質形質導入ドメイン、及びミトコンドリア局在化シグナルに機能的に結合したgpDである場合、該ベクターの核酸を、該ミトコンドリア内部に注入、又は運ぶことができる。
【0072】
本開示の他の実施態様は、細胞、例えば骨格筋細胞内に、トランスフェクトされたミトコンドリアを含む宿主のシトクロム オキシダーゼ活性を修復する、又は増強する方法を提供する。該ベクターは、シトクロム オキシダーゼ、又はその機能性成分をコードしている核酸を含む。機能性成分とは、独立して、若しくは他のタンパク質、断片、又はサブユニットと組み合わせて、生物学的に機能するタンパク質、又はタンパク質複合体、又はサブユニットを意味する。
また、本開示の他の実施態様は、β-酸化らせん、及びカルニチン輸送に関与するタンパク質をコードしている核酸を含むベクターを導入した宿主から得られる細胞を含む該宿主において、β-酸化を増強する、又は修復する方法を提供する。該ベクターは、該細胞小器官と特異的に結合している。及び、該宿主に戻って該宿主のトランスフェクとされた細胞を導入する方法を提供する。
【0073】
本開示の他の実施態様は、点変異、又は欠損の結果として失われる、又は減少するミトコンドリア機能を修復する方法に対応する。例えば、KSS, PEO, 及びピアソン症候群は、欠損と呼ばれるmtDNA変異(該DNAの特定部位が欠ける)、又はmtDNA減少(mtDNAの全体的な不足)の型から生じる3つの疾患である。従って、KSS, PEO, 及びピアソン症候群、又は類似した疾患と診断された宿主由来の細胞は、該組換えウイルスベクターでトランスフェクトした、これらのミトコンドリアを有し得る。病的状態を起こす該mtDNAの欠損に対応する核酸を含むベクターを、該細胞内に導入することができる。該ベクターは、該細胞小器官に結合し、かつ該ミトコンドリアの内部に該核酸を運び、そこで該核酸が発現されるであろう。該発現産物は、該ミトコンドリア内に組み込まれ、かつミトコンドリア機能を増強する、又は修復することができる。該トランスフェクト細胞は、該宿主内に再導入され得る。該宿主の細胞、又は他の細胞を、本開示中に記載したようにトランスフェクトし、かつ機能障害細胞小器官、特にミトコンドリアを有する宿主内に導入することができることが理解されるであろう。
【0074】
本開示が、核酸を別々に、又は組み合わせて、mtDNA、又は核DNAにより自然にコード化されている該ミトコンドリア内に運ぶことを含むことは、当業者により理解されるであろう。
また、本開示は、トランスフェクトされた、及びトランスフェクトされていないミトコンドリアを有する細胞を作ることにより、ミトコンドリア疾患の症状を緩和することを意図する。あるいは、細胞中の全てのミトコンドリアは、トランスフェクト、又は置換され得る。
【0075】
一実施態様は、宿主内のmtDNA変異を補償する方法を提供する。該方法は、mtDNA変異を有する宿主を同定すること、前記宿主から前記mtDNA変異を含む細胞を得ること、該宿主細胞のミトコンドリアをトランスフェクトすること、該細胞小器官に特異的に結合するベクターを該宿主細胞内に導入することを含み、ここで該ベクターは、該mtDNA変異に対応する機能性産物をコードしている核酸を含み、トランスフェクトされた細胞内に該宿主を導入する。該mtDNA変異に対応する機能性産物をコードしている核酸は、該対応する変異のないタンパク質を生じる配列を意味する。例えば、宿主細胞が、ND4- A10750G変異を有する場合、該トランスフェクトされた核酸は、該ND4遺伝子の野生型産物をコードするであろう。該ウイルスベクターは、該宿主に、例えば静脈内に導入され得る。
【0076】
(8. 細胞小器官-特異的ポリヌクレオチドの減少)
他の実施態様は、細胞小器官ポリヌクレオチド、例えば、ミトコンドリア、又は葉緑体ポリヌクレオチドを減少する方法を提供する。該方法は、細胞と、少なくとも1つの阻害性核酸、例えば、細胞小器官特異的ポリメラーゼのようなポリメラーゼに特異的なsiRNAとを接触させることを含む。1つの例証的ポリメラーゼは、POLγである。該阻害性核酸は、表3に示した配列、又は表3に示した配列と80〜100%の相同性を有する配列から選択される。該阻害性核酸は、本開示に記載された組成物を用いて、又は従来のトランスフェクション技術を用いて、対象の該細胞小器官に運ばれ得る。
【0077】
また、他の実施態様は、細胞内のmtDNAを減少する方法を提供し、該方法は、該細胞と、mtDNA 複製、又は転写の阻害剤とを接触させることができる。mtDNA 複製の阻害剤を、アンチセンスポリヌクレオチド、又はsiRNA、若しくはこれらの組み合わせとすることができる。該阻害剤が、DNA、RNA、又はこれらの組み合わせとなり得ることは、理解されるであろう。例証的な阻害剤は、表3から選択される。
幾つかの実施態様において、該阻害剤は、ミトコンドリアDNA転写、又は複製に関与する遺伝子に特異的である。例証的な遺伝子は、制限されないが、POLγ, TFAM A及びB, 及びmtSSBがある。一般的に、ミトコンドリア、又は葉緑体ポリメラーゼをコードしている遺伝子を使用することができる。
他の実施態様は、ミトコンドリアポリメラーゼをコードしているポリヌクレオチドに特異的に結合した阻害性ポリヌクレオチドを有する細胞を提供する。該細胞は、ミトコンドリアポリメラーゼ、例えばPOLγに特異的なsiRNA、又は該阻害性ポリヌクレオチドを発現するベクターを含む。
【0078】
(9. 投与)
本開示で提供される該組成物を、宿主に対して生理的に許容し得るキャリアによって投与してもよい。投与の好ましい方法は、細胞に、全身的、又は直接的投与を含む。該組成物を、細胞、又は患者に投与することができる。遺伝子治療応用技術として一般的に知られている。遺伝子治療応用において、細胞小器官をトランスフェクトするために、該組成物を細胞内に導入する。"遺伝子治療"は、単独治療により永続効果が達成される従来の遺伝子治療、及び遺伝子治療薬の投与、両方を含み、治療的に有効なDNA、又はRNAの1回、又は繰り返し投与により達成される。
【0079】
該改質ベクター組成物は、医薬として許容し得るキャリア媒体と混合して組み合わせることができる。貯蔵のために、所望の程度の純度を有する該主成分と、任意に、生理的に許容し得るキャリア、賦形剤、又は安定化剤とを混合して、治療製剤を、凍結乾燥製剤、又は水溶液の形態で調製することができる(レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences) 第16版, Osol, A. Ed. (1980))。許容し得るキャリア、賦形剤、又は安定化剤は、無毒であり、使用される投与量、及び濃度で受け入れられ、かつリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量ポリペプチド(約10残基未満);血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー、グリシン, グルタミン, アスパラギン, アルギニン, 又はリシンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の糖質;EDTAのようなキレート剤;マンニトール、又はソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;及び/又はTween, Pluronics, 又はPEGのような非イオン性界面活性剤がある。
【0080】
本開示の組成物を、非経口で投与することができる。本開示で使用される"非経口投与"は、患者組織の物理的切れ目を通して、医薬組成物を投与することにより特徴化される。非経口投与は、外科的切開を通して、又は組織-貫通非外科創傷などを通して、注射により投与することを含む。特に、非経口投与は、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、層内注射、及び腎臓透析注入技術がある。
【0081】
非経口製剤は、滅菌水、又は滅菌等張食塩水のような医薬として許容し得るキャリアと組み合わせた主成分を含み得る。前記製剤を、ボーラス投与、又は継続投与に適した形態に調製し、包装し、又は販売することができる。注射可能な製剤を、保存料を含むアンプル、又は多投与量容器の単位投与量形態に調整し、包装し、又は販売することができる。非経口投与製剤は、懸濁液、溶液、オイル又は水媒体のエマルション、ペースト、レコンシチュテーブルドライ(reconsitutable dry)(すなわち、粉末、又は顆粒)製剤、及び移植可能な除放性、又は生分解性製剤を含む。また、前記製剤は、懸濁化剤、安定化剤、又は分散剤を含む、1以上の添加成分を含む。非経口製剤を、注射可能な無菌水、若しくはオイル懸濁液、又は溶液の形態に調製、包装、又は販売することができる。また、非経口製剤は、本開示で記載した分散剤、湿潤剤、又は懸濁化剤を含む。製剤のこれらの型を調製する方法は、公知である。注射可能な無菌製剤を、水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液、及び合成モノグリセリド、又はジグリセリドなどの固定油のような無毒性の非経口的に許容し得る希釈剤、又は溶媒を用いて調製することができる。他の非経口的に投与可能な製剤は、微結晶性形態、リポソーム製剤、及び生分解性ポリマー系がある。持続除放、又は移植用の組成物は、エマルション、イオン交換樹脂、低溶解性ポリマー、及び低溶解性塩のような医薬として許容し得るポリマー、又は疎水性物質がある。
【0082】
医薬組成物を、頬側製剤に調製、包装、又は販売することができる。前記製剤は、公知の方法を用いて製造される錠剤、粉末、エアロゾル、微粒化溶液、懸濁液、又は潤滑剤とすることができ、かつ経口溶解性又は分解性組成物、及び/又は本開示に記載した1以上の添加成分を含む該製剤の均衡とともに約0.1%〜約20%(w/w)の主成分を含み得る。好ましくは、粉末、又はエアロゾル製剤は、分散した場合、約0.1ナノメートルから約200ナノメートルの範囲の平均粒径、又は液滴直径を有する。
本開示で使用した"添加成分"は、下記のものを1以上含む:賦形剤、界面活性化剤、分散剤、不活性希釈剤、顆粒化剤、崩壊剤、結合剤、平滑剤、甘味剤、香料、着色剤、保存料、生理的分解性組成物(例えば、ゼラチン)、水性媒体、油性媒体及びオイル溶媒、懸濁化剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、抗生物質、抗真菌剤、安定化剤、及び医薬として許容し得るポリマ、又は疎水性物質である。該医薬組成物に含まれ得る、他の"添加成分"は、公知のものである。適切な添加成分は、レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Genaro, ed., Easton, Pa. (1985))に記載されている。
【0083】
本開示の医薬組成物において、本開示に記載した改質ベクターの投与量、及び所望濃度は、想定される特定の用途に強く依存し得る。適切な投与量、又は投与経路の決定は、通常の医師の技能の範囲内である。動物実験は、ヒト治療用の有効量を決定するための確かな指標を提供する。種間における有効量のスケールは、Mordenti, J. 及びChappell, W.らにより貼り込まれた"毒物動態学における種間のスケールの用途" 毒物動態学、及び新しい薬剤開発, Yacobiらの文献, Eds., Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96に記載された方針で行う。
【実施例】
【0084】
(実施例1)
(バクテリオファージラムダ頭部タンパク質Dの改質)
gpD (遺伝子産物D)を、それぞれ、ラムダゲノム(NEB)からの開始遺伝子ホットスタートヘルクラーゼ(Stratagene Hotstart Herculase) PCR ポリメラーゼ、並びに、BglIIとNotI末端とを含むように設計されたフォワード、及びリバースプライマーを用いてPCR増幅した。注目点として、該リバースオリゴヌクレオチド内の終止コドンを除去した。該cDNAを、BglII、及びNotI(NEB)で消化し、かつpThioHisA (Stratagene)の該BglII、及びNotI部位にクローン化した。該得られたベクターをpThio-gpDと命名した。フォワードオリゴヌクレオチドを含む開始メチオニン、及び次の11個のアルギニンを、pDsRed2-Mito (Clontech)からの該ミトコンドリア局在化ディスコソーマ赤蛍光性タンパク質(Discosoma Red Fluorescent Protein)(RFP)のPCR増幅のために設計した。また、該フォワードオリゴヌクレオチドは、5' KpnI部位を有する。該リバースオリゴヌクレオチドは、該ミトコンドリア局在化RFPから、終止コドンを除去するように設計し、かつ5' BglII部位を導入した。PCR増幅は、ホットスタートヘルクラーゼ(Hotstart Herculase)を用いた。
【0085】
PCR ポリメラーゼを、該フォワード、及びリバースプライマーを用いて、pDsRed2-Mito上で行い、5' KpnI部位、続いて、開始メチオニンコドン、11個のアルギニンのコドン、3' BglII部位をコードしている該ミトコンドリア局在化RFP用cDNAを含むcDNAを生じた。該cDNA構築物を、KpnI、及びBglIIで消化し、かつKpnI、及びBglIIで消化したpThio-gpDにクローン化した。該得られたプラスミドを、pEXP-TMRDと命名した(ミトコンドリア赤蛍光性タンパク質を形質導入するための発現プラスミド)(図1C)。
【0086】
pEXP-TMRDを用いて、DH5A細胞を形質転換した。コロニーを単離し、かつ適切なプラスミドを配列決定した。適当な構築物を含むコロニーを、光学密度値が.5になるまで、10ミリリットル培養液内で増殖させた。該TMRDタンパク質の発現を誘発するように、IPTGを1mMに加えた。該培養液を、4時間、37℃振盪インキュベーターで、保温した。該バクテリア培養液を、遠心し、かつ該得られたペレットを、-80℃で一晩凍結した。該ペレットを、5ml BPER溶解試薬(Pierce)中に再懸濁させた。10mg/mlの原液(Pierce)の100ul,リゾチームを、最終濃度が200 ug/mlになるように、該懸濁液に加えた。該得られた混合液を室温で5分間インキュベートした。1:10希釈化BPER試薬15mlを、該懸濁液に加え、かつボルテックスで混合した。該TMRDタンパク質を含む、該封入体を収集するために、27,000 gで、15分間遠心した。該ペレットを、1:10希釈化BPER試薬20mlに再懸濁化した。該遠心、及びペレット再懸濁化段階を、2回以上繰り返した。該封入体を、7M尿素、1mM DTT、50mMトリス・HCl (pH 8.0)、及び150 mM NaClで可溶化させた。該可溶化封入体を、33% PBS含有生理食塩水に対して、一晩透析した。さらに、精製を、製造指示の後に、該HisPatch Thiofusion S.N.A.P.精製カラム(Invitrogen)を用いて行った。該得られたタンパク質濃縮物を、エンテロキナーゼ1mg/mlとともに、一晩室温でインキュベートした。タンパク質濃度を、Lowryアッセイ(Biorad)を用いて測定した。精製TMRDを、最終濃度が.5 mg/mlになるように、該GigaPack Goldパッケージング抽出物中に導入した。TMRDを含む該最終ラムダパッケージング抽出物を、すぐに使用した。
【0087】
(実施例2)
(生細胞中のミトコンドリアのトランスフェクション、及び組換え遺伝子構築物の発現)
PCRを通して、Sy5y細胞の全体のミトコンドリアゲノムを増幅するように設定したプライマーを用いて、全長ミトコンドリアゲノムを製造した。該全長mtDNAを、BglII、及びNotIで消化した。消化後すぐに、NotI, BglII 消化 GFPを、mtDNA単位複製配列に結合した。この大きな分子に、該Cos部位を結合し、パッケージ可能な構築物を製造した。該クローニング手順を、次に示す。
全長mtDNA PCR単位複製配列を、それぞれBglII、及びNotI部位を内部に含む、センス、及びアンチ-センスプライマーを用いて生成し、かつBglII、及びNotIで消化した(図2A)。GFP DNAは、そのベクター, BglII、及びNotI を用いて、pEGFP-1から切除されるであろう。このGFP構築物は、PCRにより製造され、かつ消化した該mtDNA単位複製配列に結合されるであろう。該得られた分子は、5'、及び3'センスGFP、双方を含み得る(図2B)。
【0088】
ミトコンドリア中でのみ発現される、変異させたGFPを使用した。簡潔に、該GFP mRNAの第60番目のコドンは、該核、及びミトコンドリア翻訳装置、双方により、トリプトファンとして読まれるUGGである。このコドンをUGAに変異することにより、該核で翻訳された場合に停止となる。しかし、該ミトコンドリアにおいて、トリプトファンとして翻訳される。この手順は、該ERにおいて翻訳された場合、削除した非-蛍光性タンパク質を産生し、そうでなければ、該ミトコンドリア内で全長GFPを産生する、ミトコンドリアと核コドンとの間の違いを利用している。このGFP構築物を、該全長mtDNA単位複製配列に結合した(図3)。
図3に図示した該構築物を、該組換えPTD-細胞小器官 標的化シグナル キャプシドタンパク質を含むパッケージング抽出物でパッケージし、該活性ファージ粒子を、RNAiでmtDNAを欠損させた細胞の細胞外媒体中に導入した。該組換えキャプシドタンパク質は、レポーター遺伝子RFPを含むので、共焦点顕微鏡写真を使用し、続いて、該組換えウイルスベクターの位置を確認した(図4)。該40-分の顕微鏡写真は、ミトコンドリアに特異的な色素であるミトトラッカー緑(Mitotracker Green) (Molecular Probes)を含み、ミトコンドリア局在化を確認した。
【0089】
さらに、ミトコンドリア標的化を、RFP (Clontech)、及びシトクロム C (Pharmingen)に対する抗体を用いて、特定の時点で生じたミトコンドリア断片のウエスタンブロッティングで確認した(図5)。ミトコンドリア断片を、該改質バクテリオファージラムダウイルスベクターを導入した後に、幾つかの時点で、培養液中のSy5y細胞から調製し、かつ抗- RFP抗体で免疫ブロットした(Clontech)。抗- RFPシグナルを含む、該同じミトコンドリア断片を、内在性ミトコンドリアマトリックスタンパク質であるシトクロム Cに対する抗体で調査した。RFP免疫ブロット提示は、(コントロール)TMRD、及び該改質ラムダウイルスベクターを該細胞媒体に導入した後、0, 10, 20, 25, 30, 及び35分で単離した。これらのブロットは、該ウイルスベクターが、該細胞、及びミトコンドリア膜を通過でき、該ミトコンドリア内部マトリックスに到達していることを示している。シトクロムCは、 RFP に対して陽性である、10, 20, 25, 30, 及び35分のミトコンドリア断片から免疫ブロットする。
図6Aは、ミトコンドリアを標的とするラムダファージの導入の成功を示した。図6Aは、ミトコンドリア中のGFPメッセージを示す(RT-PCRで示された)。このアプローチにより、図6dの該相関図により示されたミトコンドリアの非常に有効なGFP発現を生じた。従って、rho0 SY5Y細胞内に無処置ミトコンドリアゲノムを再導入する該技術の能力を首尾よく示した。図6Bは、(a) RFP組換えファージでトランスフェクションした24時間後のρ0細胞の出現;(b) 緑蛍光下、SuperCos-1/mtDNA/GFP組換えファージ構築物でトランスフェクトした24時間後のρ0細胞の出現;(c)ミトコンドリア位置を示すように(c)をミトトラッカー赤で染色したコンパニオンイメージである。パネル(d)は、ミトトラッカー赤ミトコンドリアクラスター、及びGFPレポーター遺伝子発現の間の蛍光強度の比較するための標的を定めなかったものである。
【0090】
(実施例3)
(POLγのsiRNAノックダウン)
RNA干渉(RNAi)は、複製、及び外来性二本鎖RNAの発現を抑制するように、進化的に保存される機序に基づく。最初に植物において記載するが、今日、RNAiは、真核細胞、脊椎動物、及び哺乳類細胞において記載されている。該基礎的機序は、21-23ヌクレオチド長さ、及び各末端で2〜3ヌクレオチド突出を有する小RNA二本鎖の発生に依存する。外来性RNAウイルスで感染した細胞において、これらの小阻害性RNA(siRNA)は、" ダイサー(dicer)" として知られているRNAアーゼ複合体の作用により産生される。従って、産生された(外来性二本鎖として供給される、又はベクターから内部的に産生される)siRNAは、RNA-誘発サイレンシング複合体(RISC)を形成し、これは、該特定のmRNA遺伝子産物にハイブリダイズするように、該アンチセンスRNA鎖を利用する。次に、RISCは、ダイサー、又はおそらくRISC自身が分解され得る新しいRNA二本鎖を作成し得る。
【0091】
ミトコンドリアポリメラーゼPOLγのRNAサイレンシングは、3日以内に生じた。mtDNAの遅い突然変異生成、及び減少を提供するように、Rho0細胞株を、突然変異原臭化エチジウムを用いて、該変異長期インキュベーションすることにより作成した。さらに有用な細胞株を開発するために、該PolG遺伝子サイレンシングための分子RNA阻害アプローチを利用し、かつ初めて本開示に記載した。この実験の結果を、図7に示す。該POLG遺伝子のRNAサイレンシング(上)。POL-γmRNAの唯一の配列の位置を、RNA二本鎖構成に対して選択した。3つの異なる二本鎖を合成し、かつ試験した(下)。RNA二本鎖の脂肪線維(lipofection)後72時間で、GFP蛍光を完全に失った。間接的にPOLGのサイレンシングを示した。
【0092】
該POLG遺伝子(配列番号:195)を試験し、かつ幾つかの明らかに独特な配列を、適切なsiRNA二本鎖を作成するように規定した。例証的な標的配列、及びsiRNA配列を表3に示した。代表的なsiRNAを、脂肪親和性アミンにより、該組換えラムダベクターでトランスフェクトした細胞内に導入した。mtDNA合成、及び転写は、密接に関連しているため、GFPシグナルの損失が、POLG活性の損失に対するマーカーとして生じた。
【0093】
【表3】
【0094】
(図面の簡単な説明)
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1A】図1Aは、改質バクテリオファージラムダの図であり、タンパク質形質導入ドメイン、細胞小器官標的化シグナル、及びレポータータンパク質(赤蛍光性タンパク質)頭部タンパク質gpDの融合タンパク質を発現する。
【図1B】図1Bは、1185 ヌクレオチド構築物PTD-MLR-gpDの図であり、遺伝子産物Dとともに、タンパク質形質導入ドメイン、ミトコンドリア標的化シグナル、赤蛍光性タンパク質融合を発現する。
【図1C】図1Cは、プラスミド pEXP-TMRDの図である。
【図2A】図2Aは、それぞれ、内部にBglII、及びNotI部位を含むセンス、及びアンチセンスプライマーを用いて生成した、全長mtDNA PCR単位複製配列の図である。
【図2B】図2Bは、緑蛍光性タンパク質(GFP)DNAに結合した、全長mtDNA PCR単位複製配列の図である。
【図3】図3は、SuperCos-1に結合した全長mtDNA/GFPの図である。
【図4】図4は、赤蛍光性タンパク質を用いてミトコンドリア標的化シグナル、及び40分時点での培養液中のSy5y細胞内のミトコンドリアで共局在化したバクテリオファージラムダを含むタンパク質形質導入ドメインを示した、共焦点蛍光顕微鏡写真のパネルである。該40-分での顕微鏡写真は、ミトコンドリア局在化を確認するためのミトコンドリア特異的色素、ミトトラッカー緑(Molecular Probes)を含む。
【図5】図5A、及び5Bは、赤蛍光性タンパク質(RFP)に対する抗体を用いて、特定の時点で生成したトランスフェクト細胞のウエスタンブロット ミトコンドリア断片である。
【図6A】図6Aは、ミトコンドリア断片に検出されたGFPメッセージを示すゲルである。
【図6B】図6Bは、パネル(a)-(d)を集めた図である。パネル(a)-(c)は、rho0細胞の共焦点蛍光顕微鏡写真である。(a) RFP組換えファージでトランスフェクションした24時間後のρ0細胞の出現;(b) 最初、pMLS-LambdaR (RFPなし)でトランスフェクトし、続いてSuperCos-1/mtDNA/GFPコスミドでトランスフェクトした;(c)ミトコンドリア位置を示すように(c)をミトトラッカー赤で染色したコンパニオンイメージである。パネル(d)は、ミトトラッカー赤ミトコンドリアクラスター、及びGFPレポーター遺伝子発現の間の蛍光強度の比較するための標的を定めなかったものである。
【図7】図7は、POLGのdsRNA ノックダウンを示すヒストグラムである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年6月25日に出願された米国仮特許出願番号60/482,603号に対して優先権を主張する。該出願は、全体として引用により本明細書中に引用により取り込まれている。
(引用による取り込み)
本出願は、その全体において、コンパクトディスクに添付した配列表を、引用により取り込む。該配列表のファイル名は、120701-8010.ST25.txtであり、2004年6月23日に作成され、かつ約772KBである。
【0002】
(1.開示の分野)
本開示は、一般的に、細胞、及び細胞小器官のトランスフェクション用組成物、及び方法、特に、ミトコンドリア、及び葉緑体をトランスフェクションするための改質ウイルスベクターに向けられたものである。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術)
ミトコンドリアは、すべての真核細胞における、唯一のエネルギー産生細胞小器官であり、従って、適切な細胞生体エネルギー学、ホメオスタティス水準、及び細胞のライフサイクルの維持に重大な役割を担う。類似して、葉緑体も、有効なATP-産生組織であり、エネルギー源として、糖、又は脂肪酸よりもむしろ光を使用する。ミトコンドリア、及び葉緑体、双方は、細胞小器官内で複製され、かつ転写される細胞小器官DNAの複数のコピーを含む。哺乳類において、ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、環状であり、約16.5キロ塩基対であり、かつイントロンを含まないゲノムであり、13個の電子伝達系(ETC)タンパク質、2個のリボソームRNA、及び22個のtRNAをコードしている。葉緑体ゲノムのサイズは、40〜150キロ塩基対の範囲である。ミトコンドリア遺伝学の多くの洞察は、バイオリスティック形質転換(biolistic transformation)によりミトコンドリアレプリコン(mitochondrial レプリコン)の工学技術が可能である、酵母におけるものである。しかし、酵母において、哺乳類のミトコンドリア遺伝子発現、及び呼吸鎖生物発生における多くの特徴は、再現性がない。
【0004】
哺乳類において、細胞質の融合、及び微量注入法を用いて、ドナーミトコンドリア(donor mitochondria)を導入したが、これらの技術は、mtDNAの直接的な操作機序を提供することに失敗した。さらに、タンパク質移入経路を含む、ミトコンドリア内への外来性DNAの取り込みは、2つの研究室から報告されている。Vestweber、及びSchatz((1989) Nature (London) 338:170-172)は、24-bpの一本、及び二本鎖オリゴヌクレオチド、双方を、改良マウスのジヒドロ葉酸還元酵素と融合させた該酵母シトクロムcオキシダーゼサブユニットIVプレ配列からなる前駆体タンパク質と、該オリゴヌクレオチドの5'末端との結合により、酵母のミトコンドリア内に取り込むことを成し遂げた。さらに近年、Seibelら((1995) Nucleic Acids Research 23:10-17)は、ラットのカルバミル転移酵素のアミノ-末端リーダーペプチドに結合した二本鎖DNAのミトコンドリアマトリックス内への移入を報告した。しかし、これらの研究は、両方とも、単離ミトコンドリアを処置しており、どのようにしてオリゴヌクレトチド-ペプチド結合が、細胞質ゾル膜を通過し、かつミトコンドリア接近(mitochondrial proximity)に達するのであろうかという問題を解決していない。
【0005】
米国特許第6,171,863号は、DNAを細胞内部に、及び潜在的に該ミトコンドリア内に運ぶための媒体として、デクアリニウム-DNA複合体の使用を開示している。該DNAはデクアリニウムに付随しているために、該得られる複合体は、負電荷区画を有する。該正電荷複合体は、負電荷区画に引き寄せられる。従って、米国特許第6,171,863号は、負電荷区画へのDNAの輸送を開示している。実際、特定の細胞小器官、例えば葉緑体、又はミトコンドリアを標的とした、レセプタ-非依存性機序を用いる核酸輸送のための技術は開示されていない。
【0006】
従って、該葉緑体、及びミトコンドリアゲノムの特異的処置ができないことは、葉緑体、及びmtDNAの複製、転写、並びに翻訳プロセスを完全に理解するための研究者の取り組みを妨害している。mtDNAを特異的に処置し、かつ生細胞内に導入する能力は、個々の葉緑体/ミトコンドリア遺伝子機能、及び全体的な葉緑体/ミトコンドリア遺伝子機能を完全に調査するための研究者の能力を、大いに向上させるであろう。
【0007】
さらに、該ミトコンドリアゲノムを処置する能力は、ミトコンドリア機能の障害に関連した疾患の新規な治療方法を提供する。加齢に伴い、ミトコンドリアの機能は、顕著な変異の増加、及びmtDNAの大きな欠損とともに低下する。特に、酸化傷害は、加齢とともに増加し、多くの場合、高い割合でmtDNAの変異を生じる。公知のmtDNA変異に加えて、幾つかの癌形成、及び神経変性が、mtDNAの変異に関連している。例えば、ミトコンドリアDNAの変異は、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び成人-発症糖尿病を含む、多くの変性神経疾患の原因であると推測されている。これらの変異は、フリーラジカル傷害(老化)による電子伝達系能の低下、及びmtDNA欠損の増加で生じる。
【0008】
さらに、葉緑体の生体エネルギー機能を考慮すると、外来性遺伝子を導入する能力、又はそうでなければ、該葉緑体遺伝子を操作する能力は、農作物、及び他の植物の生命力、及び収穫量に多大な影響を有し得る。例えば、葉緑体を遺伝子に導入することにより、他の厳しい環境下で生命力が強く、かつ光合成の効率の高い植物とすることができる。さらに、該葉緑体内での外来性遺伝子の発現は、該細胞の核内に導入された外来性遺伝子の発現と比較して、葉緑体が極めて効率的になると考えられている。従って、葉緑体のトランスフェクションは、商業用化合物のための効率的な生合成方法を可能にし得る。
【0009】
細胞小器官機能障害に関連する多くの病状の点において、前記病状を治療する方法、及び組成物が必要である。従って、特定の細胞小器官内にポリヌクレオチドを導入する方法、及び組成物も必要である。
また、機能障害細胞小器官、又は細胞を標的とするポリヌクレオチドを含む、細胞小器官機能障害に関連する疾患の治療方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、一般的に、真核細胞のような細胞、又は細胞の細胞小器官内にポリヌクレオチドを導入するための組成物、方法、及びシステムに向けられたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(本開示の要旨)
本開示は、一般的に、真核細胞のような細胞、又は細胞の細胞小器官内にポリヌクレオチドを導入するための組成物、方法、及びシステムに向けられたものである。本開示の一態様は、特定の細胞小器官に核酸を運ぶための核酸構築物、及び方法を提供する。ポリヌクレオチドの特定の細胞小器官への標的は、レセプタを介した局在化技術を使用することなく達成することができる。レセプタを介した局在化技術は、該ポリヌクレオチド構築物が、特定の細胞小器官上のその補体により認識されるリガンド、又はレセプタを示す技術を意味する。本開示の特定の態様は、ベクター、例えばウイルスベクターに、細胞小器官局在化/標的化シグナルと組み合わせてタンパク質形質導入ドメイン(protein transduction domain)(PTD)を組み込むことにより、細胞小器官をトランスフェクションする方法、及び組成物を提供する。本開示の一態様において、標的化シグナルは、レセプタ:リガンド相互作用を介して作用しない。通常、該改質ウイルスは、タンパク質形質導入ドメイン、及び特定の細胞小器官に関連し得る細胞小器官局在化/標的化シグナル、両方を発現する。適切なウイルスベクターは、制限されないが、バクテリオファージラムダのようなウイルスベクターがある。例証的なPTDは、制限されないが、HIV TAT YGRKKRRQRRR (配列番号:3)、又はRKKRRQRRR (配列番号:4); 11アルギニン残基、或いは、8〜15残基、好ましくは9〜11残基を有する正電荷ポリペプチド、又はポリヌクレオチドがある。例証的な細胞小器官局在化シグナルは、制限されないが、表1、及び2に挙げたものがある。
【0012】
本開示の他の態様は、組換えベクターを含有した無処置生存細胞、又は生物を含むシステムを提供する。該組換えベクターは、該生物、又は細胞の形質膜を通過し、かつ特定の細胞小器官に局在化/標的とし得る。さらに、該細胞、又は生物は、該組換えベクターにより改質されたゲノムを含有する。
本開示の他の態様は、特定の細胞小器官、又は区画を標的とした核酸の輸送により、遺伝性ポリヌクレオチド欠損又は獲得したポリヌクレオチド欠損を含むポリヌクレオチド欠損を補正し、特定の核酸の発現を増強し、特定の核酸の発現を妨げ、細胞小器官機能を修復又は増強し、特定の核酸及びこれらの対応するタンパク質の生合成を増加する方法を提供する。また、本開示の他の態様は、特定の細胞小器官をトランスフェクションすることにより、疾患の進行を最小化、又は減少させ、症状を緩和し、かつ細胞代謝を調節することに対応する。特定の態様は、複製、転写、又は翻訳成分、或いは、これらの組合せを含む細胞小器官、例えばミトコンドリア、又は葉緑体を標的とする核酸の輸送に対応する。
本開示の他の態様は、ミトコンドリアDNAが減少した細胞株を製造するための組成物、及び方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(1.定義)
本開示の明細書、及びクレームにおいて、次の用語は、下記の定義に従って使用される。
本明細書中で用いる該用語"精製"、及び類似用語は、自然環境下で分子、又は化合物に通常付随する他の成分から実質的にフリー(少なくとも60%フリー、好ましくは70%フリー、さらに好ましくは90%フリー)になるように、分子、又は化合物の単離に関連するものである。
本明細書中で用いる用語"医薬として許容し得るキャリア"は、すべての標準的医薬キャリアを含み、例えば、リン酸緩衝塩液、水、及びオイル/水、又は水/オイルエマルションのようなエマルション、並びに種々の湿潤剤がある。
【0014】
本明細書中で用いる用語"治療"は、特定の障害、又は状態に関係した症状を緩和すること、及び/又は前記症状を予防、又は解消することを含む。
"機能的に結合"は、該成分が、それらの通常の機能を果たすように構成された近接部分に関するものである。例えば、コード化配列に機能的に結合したコントロール配列、又はプロモーターは、該コード化配列の発現を効率的にすることができ、かつタンパク質に機能的に結合した細胞小器官局在化配列は、該特定の細胞小器官で局在化される該結合タンパク質に対応するであろう。
【0015】
"細胞小器官局在化シグナル"、又は"細胞小器官標的化シグナル"は、同義的に使用され、かつ分子を特定の細胞小器官に方向付けるシグナルに関するものである。該シグナルを、所望の細胞小器官に付着する分子の方向付けに十分な、ポリヌクレオチド、又はポリペプチドシグナルとすることができ、若しくは、有機、又は無機化合物とすることができる。例証的な細胞小器官局在化シグナルを、表1、及び2に提供し、かつEmanuelsonらが、"N-末端アミノ酸配列をベースとしたタンパク質の、予想される非細胞局在化" Journal of Molecular Biology. 300(4):1005-16, 2000 Jul 21に、並びにCline、及びHenryが、"葉緑体タンパク質をコードしている核の移入、及び経路" Annual Review of Cell & Developmental Biology. 12:1-26, 1996に記載している。これらの文献は、その全体として引用により本明細書中に取り込まれている。表1、及び2に示す全配列が含まれる必要はなく、かつ、これらの配列の切断部を含む改質が、結合分子を特定の細胞小器官へ方向付けるように操作した配列を提供する本開示の範囲内であることは、理解されるであろう。本開示の細胞小器官局在化シグナルは、表1、及び2の配列と80〜100%の相同性を有し得る。適切な細胞小器官局在化シグナルは、レセプタ:リガンド機序において、該標的とされる細胞小器官と作用しないものを含む。例えば、細胞小器官局在化シグナルは、正電荷のように、正味電荷有する、又は与えるシグナルを含む。正電荷シグナルは、負電荷細胞小器官、例えばミトコンドリアを標的とするように使用され得る。負電荷シグナルは、正電荷細胞小器官を標的とするように使用することができる。
【0016】
"タンパク質形質導入ドメイン"、又はPTDは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、若しくは有機、又は無機化合物に関連し、脂質二重層、ミセル、細胞膜、細胞小器官膜、又は小胞膜の通過を促進するものである。他の分子に結合したPTDは、該分子の膜通過、例えば細胞外空間から細胞内空間、又は細胞質ゾルから細胞小器官内への進行を促進する。例証的なPTDは、制限されないが、HIV TAT YGRKKRRQRRR (配列番号:3)、又はRKKRRQRRR (配列番号:4); 11アルギニン残基、又は8〜15残基、好ましくは9〜11残基正電荷ポリペプチド、又はポリヌクレオチドを含む。
本開示で使用される用語"外来性DNA"、又は"外来性核酸配列"は、外部供給源から細胞、又は細胞小器官内に導入される核酸配列に関するものである。通常、導入される外来性配列は、組換え配列である。
【0017】
本明細書中で用いる用語"トランスフェクション"は、該細胞の細胞質ゾル内への、並びにミトコンドリア、核、又は葉緑体の内部空間への該核酸配列の導入を含む、生細胞空間を囲む膜内部への核酸配列の導入のことを意味する。該核酸を、様々なタンパク質に関連する裸DNA、又はRNAの形態とすることができ、又は該核酸を、ベクター内に組み入れることができる。
本明細書中で用いる用語"ベクター"は、細胞内への核酸配列の導入に使用される媒体に関して用いられる。ウイルスベクターは、組換えDNA配列を宿主細胞、又は細胞小器官内に導入することを可能にするように改質されている。
【0018】
本明細書中で用いる用語"細胞小器官"は、該葉緑体、ミトコンドリア、及び核のような細胞膜境界構造を意味する。該用語"細胞小器官"は、天然、及び合成細胞小器官を含む。
本明細書中で用いる用語"非核細胞小器官"は、核を除き、細胞中に存在する全ての細胞膜境界構造を意味する。
本明細書中で用いる用語"ポリヌクレオチド"は、一般的に、ポリリボヌクレオチド、又はポリデオキソリボヌクレオチドを意味し、未改質RNA、又はDNA、若しくは改質RNA、又はDNAであり得る。例えば、本開示に使用されるポリヌクレオチドは、とりわけ、1本及び2本鎖DNA、1本及び2本鎖領域の混合物であるDNA、1本及び2本鎖RNA、及び1本及び2本鎖領域の混合物であるRNA、1本又は一般に2本鎖、若しくは1本及び2本鎖領域であり得るDNA、及びRNAを含むハイブリッド分子に関するものである。また、該用語"核酸"、又は"核酸配列"は、上記で規定したポリヌクレオチドを含む。
【0019】
さらに、本明細書中で用いるポリヌクレオチドは、RNA、又はDNA、若しくはRNAとDNAと両方を含む三本鎖領域を意味する。前記領域の該鎖は、同一分子由来、又は異なる分子由来であってもよい。該領域は、1以上の該分子の全てを含み得る。しかし一般的に、該分子の幾つかの領域のみを含む。3重らせん領域の分子の1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。
本明細書中で用いる用語ポリヌクレオチドは、1以上の改質塩基を含む、前述のDNA、又はRNAを含む。従って、安定性のため、又は他の理由から改質された基幹を有するDNA、又はRNAは、その用語が本開示で意図されるような"ポリヌクレオチド"である。さらに、イノシン、又はトリチル化塩基などの改質塩基のような異常な塩基を含むDNA、又はRNAは、本明細書中で使用される
【0020】
当業者に公知である多くの有用な目的に役立つDNA、及びRNAに対して、多様な改質が行われることが認識されるであろう。本明細書中で用いる該用語ポリヌクレオチドは、化学的に、酵素的に、又は代謝的に改質された形態のポリヌクレオチド、並びに、とりわけ単純、及び複雑な細胞を含むウイルス、及び細胞のDNA、及びRNA特徴の化学的形態を含む。
オリゴヌクレオチドは、比較的短いポリヌクレオチドを意味する。多くの場合、該用語は、1本鎖デオキシリボヌクレオチドを意味する。しかし、とりわけ、1本又は2本鎖リボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、及び2本鎖DNAを意味する。
【0021】
本明細書中で用いる用語"ベクター"は、ウイルス、プラスミド、又は高等生物の細胞由来のポリヌクレオチド分子を意味する。適切なサイズの他のポリヌクレオチド断片は、自己複製のためのベクター許容量の損失なく統合される。ベクターは、異質、又は外来性DNAを、宿主細胞ないに導入し、そこで、大量に複製され得る。例を挙げると、プラスミド、コスミド、ラムダファージ ベクター、P1 バクテリオファージ ベクター、酵母人工染色体、及び哺乳類人工染色体がある。ベクターは、多くの場合、幾つかの源からヌクレオチド配列を含む組換え分子である。
【0022】
(2.トランスフェクション組成物)
提供される組成物は、タンパク質形質導入ドメイン、及び標的化シグナルに機能的に結合したポリヌクレオチドベクターである。一実施態様は、該標的化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインをコードしているポリヌクレオチドを有するベクターを提供する。該標的化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインは、該ベクターの外部表面に提示される。該開示される組成物、及び方法は、真核細胞、及び細胞小器官、特に哺乳類細胞、および細胞小器官のトランスフェクションに有用である。細胞小器官は、細胞、及びそれらの宿主のライフサイクルに有意な役割を有する。例えば、ミトコンドリア、及び葉緑体は、動物、および植物細胞の"発電所"である。細胞周期、及び生体エネルギーを維持するこれらの臨界活性のために、これらは、細胞機能、及び細胞死において重要な役割を担う。これらは、これら自身の唯一のゲノム-今まで不適当な操作を残したものを有する。従って、本開示の幾つかの実施態様は、特定の細胞小器官、例えばミトコンドリア、および葉緑体へポリヌクレオチドを輸送するための組成物、及び方法を提供する。輸送されたポリヌクレオチドは、該細胞小器官に発現され得る機能ポリペプチドをコードし得る。該細胞小器官中の該ポリペプチドの発現は、該細胞小器官の機能を調節し、かつ従って、細胞小器官機能障害に関連した疾患の症状を緩和することができる。一実施態様において、該ミトコンドリアゲノム (配列番号:5) の全体、又は一部を、細胞小器官内にトランスフェクションすることができる。他の実施態様において、該ポリヌクレオチドは、制限されないが、アンチ-センスポリヌクレオチド、若しくはDNAザイム、又はリボザイムを含む酵素ポリヌクレオチドをコードすることができる。
【0023】
(2.1 細胞小器官)
本開示の他の実施態様は、細胞区画、又は細胞小器官にポリヌクレオチドを特異的に運ぶことに向けられたものである。該ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードし、又は異なるポリヌクレオチドの発現を干渉し得る。真核細胞は、膜境界構造、又は細胞小器官を含む。細胞小器官は、単一、又は多層膜を有し、かつ植物、及び動物細胞内に存在する。該細胞小器官の機能に依存して、該細胞小器官は、タンパク質、及び補助因子のような特定の成分からなり得る。該細胞小器官に運ばれるポリヌクレオチドは、該細胞小器官の機能を向上する、又は起因し得るポリペプチドをコードし得る。ミトコンドリア、及び葉緑体のような、幾つかの細胞小器官は、それら自身のゲノムを含む。これらの細胞小器官内で核酸を複製し、転写し、かつ翻訳する。タンパク質が移入され、かつ該代謝産物が移出される。従って、細胞小器官の膜を通して物質交換される。幾つかの実施態様において、ミトコンドリアポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドは、ミトコンドリアに特異的に運ばれる。
例証的な細胞小器官は、該核、ミトコンドリア、葉緑体、リソソーム、ペルオキシソーム、ゴルジ、小胞体、及び核小体がある。合成細胞小器官を、脂質から形成することができ、かつ該脂質膜内に特定のタンパク質を含み得る。さらに、合成細胞小器官の内容物は、核酸の翻訳のための成分を含有するように操作され得る。
【0024】
(2.1.1 ミトコンドリア)
本開示の他の実施態様において、改質ベクターは、ポリヌクレオチドをミトコンドリアに特異的に運ぶものとして開示する。ミトコンドリアは、グルコース分解からアデノシン三リン酸 (ATP)へのエネルギー変換の分子機構を含む。次いで、ATPの高エネルギーのリン酸結合で貯蔵される該エネルギーは、細胞機能力に利用できる。ミトコンドリアは、大部分タンパク質であるが、幾つかの脂質、DNA、及びRNAが存在する。一般的に、これらの球形の細胞小器官は、内膜を囲う外膜を有し、酸化的リン酸化、及び電子伝達酵素の足場に(クリスタ)を折畳んでいる。多くのミトコンドリアは、平面シェル様クリスタを有する。しかし、ステロイド分泌細胞内のクリスタは、管状クリスタを有し得る。該ミトコンドリアマトリックスは、クエン酸回路、脂肪酸酸化、及びミトコンドリア核酸の酵素を含む。
【0025】
ミトコンドリアDNAは、二本鎖であり、かつ環状である。ミトコンドリアRNAは、3つの標準種:リボソーム、メッセンジャー、及びトランスファーの形がある。しかし、各々は、該ミトコンドリアに特異的である。幾つかのタンパク質合成が、細胞質内のリボソームとは異なる、該ミトコンドリア内のミトコンドリアリボソーム上で行われる。他のミトコンドリアタンパク質は、該ミトコンドリアに向かう単一ペプチドとともに、細胞質内リボソームで作られる。該細胞の代謝活性は、クリスタの数、および細胞内のミトコンドリアの数が関連している。心筋のような高代謝活性を有する細胞は、多くの非常に発達したミトコンドリアを有する。新しいミトコンドリアは、既存のミトコンドリアが成長、分裂して作られる。
ミトコンドリア内膜は、該膜を通過して様々な代謝産物の輸送に関連した配列、及び構造のタンパク質ファミリーを含む。これらのアミノ酸配列は、3つの部分の構造を有し、3つの関連した配列約100アミノ酸長さで構成されている。1つのキャリアの反復は、他のものに存在するものに関連しており、かつ幾つかの特徴的配列の特性は、該ファミリーを通して保存される。
【0026】
(2.1.2 葉緑体)
他の実施態様において、本開示の改質ベクターは、特異的にポリヌクレオチドを葉緑体に運ぶ。該葉緑体は、二重に囲まれた膜を有する真核生物の光合成細胞小器官である。該二重-膜内側の体液は、ストロマと呼ばれている。該葉緑体は、その環状の裸DNAを収容する核様態領域を有する。また、該ストロマは、カルビン回路の部位である。該カルビン回路は、一連の酵素触媒的化学反応であり、二酸化炭素から糖質、および他の化合物を製造する。
該ストロマ内に、チラコイドと呼ばれる小さな膜嚢がある。該嚢は、集団で積み重なっている。各集団は、グラナと呼ばれる。各葉緑体内に多くのグラナがある。該チラコイド膜は、光合成光反応の部位である。該チラコイドは、特殊な補欠分子族を有するいくつかの内因性、及び外因性タンパク質を有し、電子をタンパク質複合体からタンパク質複合体に移動させることを可能にする。これらのタンパク質は、以前Z−スキームとして公知の電子伝達系を構成する。
【0027】
2つの臨界膜タンパク質(critical membrane proteins)(P680、及びP700)に対する補欠分子族は、クロロフィルであり、色素分子である。これらのクロロフィル-結合タンパク質は、チラコイドを強い緑色にする。葉緑体中の多くのチラコイドは、該葉緑体を緑色にする。葉肉細胞中の多くの葉緑体は、細胞を緑色にする。該クロロフィル分子は、光エネルギーを吸収し、かつ電子を、マグネシウムイオンに囲まれた共鳴化学構造内の電子雲内に押し上げる。この励起電子は、該膜内の該囲んでいる電子伝達タンパク質により除去される。最終的に、これらの電子移動、及び付随タンパク質は、ATPのリン酸結合のエネルギーのトラッピングを生じる。
従って、該チラコイドは、光吸収、およびATP合成のためにある。該ストロマは、該ATPを使用し、糖質の炭素-炭素結合のトラップしたエネルギーを貯蔵する。幾つかの葉緑体は、デンプン粒の発生を示す。これらは、長期間貯蔵用の糖質複合体ポリマーである。
【0028】
ヒト疾患、細胞増殖、細胞死、及び老化のミトコンドリアの重要性をかんがみて、本開示の実施態様は、該ミトコンドリアゲノムの操作を含み、公知のミトコンドリア疾患(LHON, MELAS, など)、及び推定ミトコンドリア疾患(老化、アルツハイマー、パーキンソン、糖尿病、心疾患)を治療することができる方法を提供する。葉緑体の生体エネルギー機能をかんがみて、外来性遺伝子を導入する能力は、植物に対して、他の不利な環境下での生存度の増加、及び光合成の効率増加を可能にし得る。さらに、該葉緑体内での外来性遺伝子の発現は、葉緑体において、該細胞の核内に導入された外来性遺伝子の発現と比較して有意に効率的になると考えられる。
本開示以前に、外来性核酸、例えばレセプタ-非依存性を用いてミトコンドリア、又は葉緑体内にコードするDNA、及び遺伝子を導入する有効な技術は存在しない。統計発生学的に、ミトコンドリア、及び葉緑体は、初期バクテリアに似ている。本開示の一実施態様は、ウイルスベクターを利用するシステム、好ましくは細菌ウイルスを、葉緑体、及びミトコンドリアを含む細胞小器官にトランスフェクションするシステムに対応する。この唯一の分子は、置換、増加へのアプローチ、又は、そうでなければ、葉緑体、及びミトコンドリアゲノムの改質は、葉緑体、及びミトコンドリア遺伝学の重大な問題の探究、並びにミトコンドリア、及び葉緑体関連疾患の新規治療の開発を初めて可能にする。
【0029】
(2.2 タンパク質形質導入ドメイン)
また、他の実施態様において、細胞、及び細胞小器官へのトランスフェクション用の組成物は、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)に該組成物を機能的に結合させることにより、細胞、又は細胞小器官の外側から該細胞、又は細胞小器官に運ばれ得る。タンパク質のこれらの小さい領域は、レセプタ-非依存性機序において、該細胞膜を通過することができる。これらのPTDの幾つかは、文献に示されているが、最も一般的に使用される2つのPTDは、HIVのTAT(Frankel、及びPaboの文献, 1988)タンパク質、及びDrosphila由来のアンテナペディア転写因子から運ばれる。これらのPTDは、ぺネトラティン(Penetratin)として知られている(Derossiらの文献, 1994)。
【0030】
該アンテナペディアホメオドメインは、68アミノ酸残基長さであり、4つのアルファらせん体(配列番号:1)を含む。ぺネトラティンは、第三らせんのアンテナペディア(Fentonらの文献, 1998)から誘導された16アミノ酸配列からなるタンパク質の活性ドメインである。TATタンパク質(配列番号:2)は、86 アミノ酸からなり、かつHIV-1の複製に関与する。該TAT PTDは、取り込み限界であるように見える該親タンパク質の11アミノ酸配列ドメイン(残基47〜57; YGRKKRRQRRR (配列番号:3))からなる(Vives らの文献, 1997)。さらに、基本的ドメインTat(49-57)、又はRKKRRQRRR (配列番号:4 ) (Wender らの文献 2000)は、PTDであることを示している。現在の文献において、TATは、細胞移入する対象のタンパク質への融合に有利である。グルタミンからアラニン、すなわちQ→Aの置換を含む、TATの幾つかの改質は、哺乳類において、どこでも90%から(Wender らの文献 2000)、33倍までの細胞取り込み増加を証明している。改質タンパク質の最も効率的な取り込みは、TAT-PTDの突然変異誘発実験で示した。11個のアルギニンの伸長は、細胞間輸送媒体として桁違いに効率的であることを示している。
【0031】
(2.2.1 TAT-PTDの特徴)
(2.2.1.1 高効率的取り込み)
TAT-PTD融合を伴った様々な治療的タンパク質の細胞内輸送は、非常に効果的になることが証明されている。近年、この種の融合タンパク質は、生物学的活性のある熱ショックタンパク質 70 (HSP70)をHSF -/- 細胞内に輸送することに利用され、かつ熱ストレス、及び高酸素症に対して細胞保護作用を与える能力のために、組換えHSP7の輸送と比較されている。免疫細胞化学により、該TAT-PTD融合で処置された、ほぼ100%の細胞において、細胞内HSP70の蓄積が証明された。一方、組換えHSP70で処置された細胞は、組換えHSP70タンパク質の細胞内蓄積がないことが証明されている(D.S. Wheeler らの文献, 2003)。また、スーパーオキシド ジスムターゼ (SOD)、及びカタラーゼのような他の抗酸化酵素は、細胞内の輸送のためにTATと融合している。Tat-SOD、及びTat-CATの導入とともに、HeLa細胞は、コントロールと比較して、細胞生存度の約90%増加を経験した(Jin らの文献, 2001)。
【0032】
また、TAT-PTD抗-アポトーシスタンパク質融合の腹腔内(i.p.)注入は、有意な取り込み、及び神経細胞の有効性を示した。1〜2時間以内のPTD-HA-Bcl-xLのマウスへの腹腔内注入は、該血液脳関門を通過する融合タンパク質の能力を証明した。該タンパク質融合は、脳虚血の開始時に脳梗塞を40%まで低下することができる(Cao, らの文献. 2002)。類似した研究は、スタウロスポリン-誘発アポトーシス、及びグルタミン酸-誘発興奮毒性に曝された場合に、インビトロにおいてSH-SY5Y神経芽細胞腫を保護するように、抗-アポトーシス活性の増加を有するBcl-x mutant (FNK)を利用したものである。また、このTat-FNK融合を、スナネズミのi.p.に注入し、かつ海馬において、一過性完全虚血(transient global ischemia)により生じる遅延神経細胞死が防止された(Asohの文献, 2002)。
【0033】
(2.2.1.2 Tat-PTD融合の速度論)
Tat-PTDの取り込みの速度論研究は、全細胞集団が、30秒から5分の暴露(Ho et al, 2001)で、該Tat-PTDの最大取り込みに達し得ることを示した。Tat-PTD融合タンパク質は、組織特異的様式における取り込みの点で異なり、かつ、また、該融合タンパク質の構造、及びサイズに依存する。培養HeLa細胞内への形質導入融合タンパク質の安定性は、約2時間のインキュベーションで最大濃度を示し、72時間後まで定常の低下を示した(Jin らの文献 2001)。また、Tat-PTDを、リポソーム被包性HPTSに結合させ、細胞内へのリポソーム薬剤の取り込みを促進するTat-PTDの能力を評価した。速度論研究は、時間依存性方法において、蓄積を示した。約24時間で最大濃度に達し、かつ該Tat-PTDリポソーム融合は、取り込みにおいてぺネトラティン-PTDリポソーム融合と比較して、4倍増加を示した(Tseng らの文献, 2002)。また、Tat-PTDを、アンギオテンシンII型レセプタ(AT1R)に融合させ、神経細胞におけるTat-PTD融合の形質導入の有効性、及び機能性を調査した。生まれて一日のウィスター-京都ラット(Wistar-Kyoto rats)(WKY)の視床下部、及び脳幹から単離した神経細胞培養を、300ug/MLの該組換えタンパク質とともにインキュベートし、かつ最大蛍光を、初期蛍光の記録後のインキュベートの30分後に記録した(Vazquez らの文献 2002)。下図は、Tat-ptd融合の取り込みが、融合の種類、並びに取り込まれる細胞標的に基づくことを示した。
【0034】
(2.2.1.3 細胞毒性)
TAT-HIV-1タンパク質(配列番号:2)であるTat-PTDの親タンパク質は、幾つかの細胞型において、炎症反応を誘発する。Tatに曝された脳微小血管内非細胞(BMEC)は、細胞酸化ストレス水準の顕著な増加、細胞内グルタチオン水準の低下、並びにDNA結合活性化、及びNF-kappaBとAP-1とのトランス活性化を示した(Toborek らの文献 2003)。該親タンパク質の毒性の記録において、Tat-PTDを細胞培養、又は動物モデルに導入した場合に、類似の細胞毒性を示し得る恐れがある。しかし、今日までの文献は、該Tat-PTDが、対象のタンパク質を、ほぼ100%、細胞毒性を示さない細胞集団に形質導入し得ることを示している。骨細胞の初代培養液を、対象のタンパク質で形質導入することの困難性を克服するために、Tat-PTDを、血球凝集素、及びカルシニューリンに融合させ、形質導入の有効性を評価した。初代培養液中の造骨細胞、及び破骨細胞、双方への暴露は、該融合タンパク質のほぼ99%の形質導入を導き、5日までの間、約50%の細胞内に保持されていた。該Tat-PTD融合で処置した時に、細胞毒性はないことが報告されている(Svetlana らの文献 2002)。また、Tat-PTD融合は、膵島の形質導入において有効である。Tat-PTD融合が、島において機能的であるかどうか試験するために、Tat-PTDを、β-ガラクトシダーゼに融合させ、かつインスリノーマβTC-3細胞内に導入した。ほぼ100%の全ての細胞が、3時間インキュベーション後に形質導入された。Tat-PTD融合を用いた全ての治療的介在の重要な要求は、正常細胞生理機能、又は作用における不利な変化はなかった。インスリンの適切な分泌を行うために、島を、Tat-PTD-Bcl-XLで形質導入した。該融合は、付随毒性のないコントロール島として、同時枠を有する糖尿病ヌードマウスにおいて、高血糖症を無効にすることを示した。従って、潜在的な治療的介在としてTat-PTD融合タンパク質の有望な使用を確認した(Embury らの文献 2001)。
【0035】
(2.3 細胞小器官標的化シグナル:ミトコンドリア、及び葉緑体)
また、他の実施態様において、特定のポリヌクレオチドの細胞小器官への標的化は、特定の細胞小器官標的化配列、シグナル、又はドメインを発現する改質ベクターにより達成することができる。これらの配列は、特定の細胞小器官を標的とする。しかし、幾つかの実施態様において、該細胞小器官と標的化配列との相互作用は、従来のレセプタ:リガンド相互作用を介して生じない。該真核細胞は、多くの分散した膜結合区画、又は細胞小器官を含む。各細胞小器官の構造、及び機能は、成分ポリペプチドのその唯一の補体により大部分決定される。しかし、これらのポリペプチドの大部分は、細胞質内で、その合成を開始する。従って、細胞小器官生物発生、及び維持は、新たに合成されたタンパク質が、これらの適切な区画に的確に標的化され得る必要がある。多くの場合、これは、アミノ-末端シグナル配列、並びに翻訳後修飾、及び二次構造により達成される。ミトコンドリア、及び葉緑体にとって、幾つかのアミノ-末端標的化配列が推定され、かつ表1、及び2に部分的に含まれる。
【0036】
一実施態様において、該細胞小器官標的化配列は、少なくとも2つ、好ましくは5〜15個、さらに好ましくは約11個の荷電基含み得る。それにより、正味の対電荷を有する細胞小器官に引きつけられる標的化配列となる。他の実施態様において、該標的化配列は、電磁気ポテンシャル勾配に対して、又はその下で、細胞小器官内に移送される標的化配列を生じる、一連の荷電基を含み得る。適切な荷電基は、細胞内条件下で荷電する基であり、例えば、荷電官能基を有するアミノ酸、アミノ基、及び核酸などがある。一般に、ミトコンドリア局在化/標的化シグナルは、高度に正に荷電したアミノ酸のリーダー配列からなる。これは、高度に負に荷電したミトコンドリアを標的とするタンパク質となる。該レセプタへの接近が、確率的なブラウン運動に依存するレセプタ:リガンド接近とは異なり、該ミトコンドリア局在化シグナルは、電荷でミトコンドリアに引きつけられる。
【0037】
該ミトコンドリアに入るために、一般的に、タンパク質は、Tim、及びTom複合体(内部/外部ミトコンドリア膜の転移酵素)からなる該ミトコンドリア移入機構と相互作用しなければならない。該ミトコンドリア標的化配列に関して、該正電荷は、該結合タンパク質を該複合体に引きつけ、かつ該タンパク質を、該ミトコンドリア内に引きつけ続ける。該Tim、及びTom複合体は、該タンパク質の膜通過を可能にする。従って、本開示の一実施態様は、正電荷標的化配列、及び該ミトコンドリア移入機構を利用して、本開示の組成物を、該内部ミトコンドリア空間に運ぶものである。
【0038】
また他の実施態様において、本開示の組成物は、細胞小器官標的化配列、例えば、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア標的化配列を含む。該標的化シグナルを、上述のように、正に荷電した配列とすることができ、かつ一般的に、従来のレセプタ:リガンド機構を介して作用するものではない。該PTDドメインは、細胞小器官膜、又は形質膜のような脂質二重層の通過において、該組成物を補助するHIV TAT配列になり得る。
【0039】
(2.4 ウイルス頭部(Viral Heads)上のタンパク質発現:ファージの提示)
本開示の適切なベクターは、制限されないが、バクテリオファージのようなウイルスベクターである。バクテリオファージラムダは、一般に使用されている繊維状ファージにペプチド、及びタンパク質を表面提示するための代わりの媒体として挙げている。ラムダが、多量体タンパク質を提示する能力、該提示された融合タンパク質の分泌の不必要性、及び該表示された融合タンパク質の価数を変える方法を含む、誘因性提示媒体になる多くの唯一の特徴がある。タンパク質D(gpD)は、ファージ提示のために確立された融合パートナーであり、そのN-、又はC-末端で融合される(Sternberg、及びHoess, PNAS 92, 1609 (1995); Mikawaらの論文, JMB 262, 21 (1996))。タンパク質Dは、小さい主要キャプシドタンパク質(109 aa)であり、三量体突出を形成する該ファージ頭部の安定化に寄与する。タンパク質Dは、可溶性非相同タンパク質の細胞質内高水準発現にとって、非常に有効な融合パートナーである(Forrer、及びJaussiの論文, Gene 224, 24 (1998))。
【0040】
(2.5 改質細胞、及びベクター)
一実施態様は、タンパク質形質導入ドメインをコードしている配列に機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルを含む組換えDNA配列を含むベクターを提供する。この実施態様において、該組換えウイルスベクターは、細胞膜を通過する該ウイルスベクターを形質導入するために選択したタンパク質形質導入ドメインを含むように操作される。従って、前記改質ベクターの使用は、該細胞内部に該ウイルスベクターを導入するトランスフェクション方法に要求されるウイルスベクターのために必要なものを排除する。例えば、該ウイルスベクターが、ラムダバクテリオファージである場合、該ウイルスキャプシドタンパク質は、該ウイルス表面上にPTD、及び細胞小器官標的化シグナルを発現するように改質される。
【0041】
他の実施態様に従って、PTD、及びミトコンドリア標的化配列を発現する組換えバクテリオファージを提供し、これを、細胞小器官トランスフェクション、例えばミトコンドリアトランスフェクションのために使用することができ、かつ、さらに好ましくは、ラムダバクテリオファージを、哺乳類ミトコンドリア内に外来性核酸配列を導入するように使用することができる。このアプローチは、該細胞ミトコンドリアに感染するバクテリオファージラムダの特性に依存する高い-複製数で、mtDNAの直接操作、及び該環状ゲノムの導入を可能にする。特に、50キロ塩基のバクテリオファージラムダゲノムは、大きい挿入部分(>10 キロ塩基)で設計し、かつ活性ラムダファージを形成するように包まれる。一実施態様において、該ベクター内に含まれる唯一のラムダ配列は、対象の核酸配列に利用可能な約50 kbまで離れているラムダ粒子に包まれる直線断片の5'、及び3'末端にある2つのcos部位(各12 bp)である。また、該組換え配列は、バクテリア内での複製を可能にする複製起点(通常ColE1)、及び選択性マーカーをコードしている遺伝子を含み得る。
他の実施態様は、タンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官標的化シグナルを提示する組換えラムダ粒子を提供する。また、該ラムダ粒子は、細胞と該ラムダ粒子とを接触することによりトランスフェクションされ得る。該ラムダ粒子は、該タンパク質形質導入ドメインを介して該細胞形質膜を通過して転移し、かつ該標的化シグナルを介して該細胞小器官を標的化する。
【0042】
最小のミトコンドリアレプリコンは知られていないため、該完全ヒトミトコンドリアゲノム、又はその部分断片を、ラムダ内に挿入することができる。一実施態様において、この方法は、mtDNAの操作、又は交換に使用される。他の実施態様において、該全ヒトミトコンドリアゲノム(配列番号:6)を、導入された配列により置換することができる。例えば、Rho0細胞を、内在性mtDNAを除去し、続いてミトコンドリアトランスフェクションするために最初に生成することができ、置換された細胞の全ミトコンドリアゲノムを生じる。または、ミトコンドリアを、Rho0細胞の生成で最初に処置することなく、トランスフェクションすることができる。この場合、該導入核酸は、該mtDNA配列の操作を生じる既存の内在性mtDNA配列と合併される(再結合される)。どちらかの方法を、損傷ミトコンドリアの全機能修復に使用することができる。
また、他の実施態様において、ラムダファージベクターを使用する。該バクテリオファージの構造キャプシドタンパク質が、PTDを用いて、該バクテリオファージの細胞膜通過を可能にし、かつミトコンドリア標的化シグナルを用いて、該ミトコンドリアを標的化するように改質される。好ましくは、該改質ファージベクタータンパク質は、PTD、及び細胞小器官標的化シグナルのようなタンパク質部位の発現を可能にするものである。野生型ラムダファージは、そのキャプシド、又は頭部にgpDを発現する。該ウイルスキャプシドは、該gpDタンパク質を含む、幾つかタンパク質から構成されており、かつ、このタンパク質は、細胞膜を特異的に通過し、かつ細胞小器官を標的化できる、特定のバクテリオファージを生じるように改質され得る。
適切なミトコンドリア局在化配列は、当業者に公知であり(表1参照)、かつヒト シトクロム オキシダーゼのサブユニットVIIIのミトコンドリア局在化シグナルを含む、酵母シトクロム c オキシダーゼ サブユニット IVシグナルペプチド、及びラットオルニチン-カルバミル転移酵素のアミノ末端リーダーペプチドを含む。一実施態様において、該導入された配列は、該ウイルスキャプシド頭部に発現される。該組換えウイルスベクターの発現時に、該ミトコンドリア局在化シグナルは、該ミトコンドリアに局在化される該ウイルスベクターを生じる。適切なウイルスベクターを有する、この宿主細胞のトランスフェクションは、該ベクターが該ミトコンドリアを標的とするであろう。
ベクターのタンパク質をコードしている核酸、例えばウイルスベクターに対するウイルスキャプシドタンパク質は、細胞小器官標的化配列、例えば該ミトコンドリア内にタンパク質を移入するように使用されるアミノ酸に機能的に結合し得る。このハイブリッドタンパク質は、核酸が該細胞小器官を標的とするように使用され得る。該細胞小器官内に入ると、該核酸は、該細胞小器官のゲノムに入り得る。従って、本開示の実施態様は、少なくとも一部分のウイルスキャプシドタンパク質配列、及び細胞小器官標的化配列、例えば、表1、又は表2の標的化配列を含むポリペプチドに対応する。該ハイブリッドポリペプチドは、独立に発現され得る。又はウイルスベクターの一部分として発現され得る。
【0043】
他の実施態様は、2つの成分を含むように提供される、トランスフェクションシステムを提供する。該ウイルスベクターは、対象の該核酸、例えばRNA、DNA、又はこれらの組み合わせを、該細胞内部、及び細胞小器官標的化シグナルに運ぶPTDを発現するように改質される。該構築物は、ウイルスベクターに特異的なウイルス表面タンパク質に機能的に結合した細胞小器官局在化配列をコードしている核酸配列を含む。該PTD、及び該細胞小器官標的化配列は、該ウイルスベクターの表面上に、別個のポリペプチドとして、又は該ウイルスベクターの表面上に、単一ポリペプチド配列、融合タンパク質において発現され得る。また、該核酸構築物は、該融合タンパク質の発現に適切なプロモーター、並びに、該融合タンパク質の発現に必要な他の調節成分を任意に含む。前記調節成分は、当業者にとって公知であり、該融合タンパク質発現システムに基づき変わるであろう。本開示の使用に適したウイルスベクターの1つは、バクテリオファージラムダである。バクテリオファージラムダを、該トランスフェクション ベクターとして使用する場合、該トランスフェクションシステムの成分は、該細胞小器官局在化配列、及びタンパク質形質導入ドメインに機能的に結合した該ラムダキャプシドタンパク質(gpD)をコードしている核酸配列を含む。
【0044】
ウイルス表面上に発現する改質細胞小器官標的化配列を含む組換えウイルスベクターを、標準的分子生物学技術を用いて調製することができる。一般的に、宿主細胞を、該ウイルス表面タンパク質、例えばウイルスキャプシドタンパク質をコードしている配列に機能的に結合した細胞小器官局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインをコードしている配列を含む組換えウイルス構築物でトランスフェクションする。該細胞小器官局在化配列は、該局在化配列(すなわち、融合タンパク質)に結合したタンパク質を、該標的とする細胞小器官に運ぶ。本開示の一実施態様に従って、ウイルスベクターが、選択された細胞小器官、例えばミトコンドリア、又は葉緑体を標的とするように、かつ従って、該細胞小器官を標的とする導入ベクターの一部を提供するように、該局在化配列を使用する。該ベクターを、そのタンパク質形質導入ドメインを介して、該細胞の細胞質ゾル内に導入し、次いで、該ベクターに特異的な細胞小器官に結合する。該ベクター内の対象の該核酸は、動物、又は植物の標的とする細胞小器官内に運ばれる。
【0045】
細胞小器官局在化シグナルは、当業者にとって公知である。そのシグナルの幾つかは、該ウイルスベクターが、本開示の使用に適した該標的細胞小器官局在化シグナルを標的とするように使用され得る。Emanuelsonらの論文,"N-末端アミノ酸配列をベースとしたタンパク質の、予想される非細胞局在化" Journal of Molecular Biology. 300(4):1005-16, 2000 Jul 21に、及びCline、及びHenryの論文,"葉緑体タンパク質をコードしている核の移入、及び経路" Annual Review of Cell & Developmental Biology. 12:1-26, 1996に記載しされている。これらの論文は、全体として本開示中に引用により取り込まれている。さらに、結合タンパク質、又は核酸が、該ミトコンドリアを標的とするミトコンドリア局在化シグナルの一覧は、表1に示した。結合タンパク質、又は核酸が、該葉緑体を標的とする葉緑体局在化シグナルの一覧は、表2に示した。一実施態様において、該ミトコンドリア、又は葉緑体局在化シグナルは、ウイルス表面タンパク質に機能的に結合している。表1、及び2に示した該配列の一部、又は全てが、細胞小器官標的化配列として使用できることは理解されるであろう。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
結合タンパク質の葉緑体、又はミトコンドリア内への転移に必要な特定配列の同定は、http://www.mips.biochem.mpg.de/cgi-bin/proj/medgen/mitofilterにある手段を含む、当業者に公知であるプレディクティブソフトウェア(predictive software)を使って決定することができる。
他の実施態様において、タンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官局在化シグナルを含むベクターをコードする核酸を、宿主、初代培養液、又は細胞株から、細胞小器官内に導入することができる。例えば、該核酸配列が該細胞株の該細胞小器官ゲノム内に安定に組み込まれるように、細胞小器官標的化配列と機能的に結合したウイルスベクターを使用して、真核細胞株をトランスフェクションすることができる。該細胞株を、無期限に細胞培養液中に保持され得る形質転換細胞株とすることができ、又は該細胞株を、初代培養細胞でとすることができる。例証的な細胞株は、引用により本開示に取り込まれる植物細胞株を含む、American Type Culture Collectionから入手可能なものである。該トランスフェクションされた細胞株の細胞の核内で、該核酸を複製し、かつ転写することができる。該ベクターを、標的とする細胞小器官に、自由に保つことができるように、必要に応じて、該標的化配列を、酵素的に開裂することができる。
【0049】
全ての真核細胞は、特定の核酸、例えば、代謝遺伝子を発現する細胞小器官を生じるように、トランスフェクションされ得る。これらは、初代細胞、並びに株化細胞を含む。適切な細胞種は、制限はないが、幹細胞、全能細胞、多能性細胞、胚幹細胞、内部大量細胞(inner mass cell)、成熟幹細胞、骨髄細胞、臍帯血由来の細胞、及び外胚葉、中胚葉、又は内胚葉から誘導される細胞を含む、未分化、又は部分的に分化した細胞がある。適切な分化細胞は、体細胞、神経細胞、骨格筋、平滑筋、膵臓細胞、肝細胞、及び心臓細胞がある。適切な植物細胞を、単子葉植物、及び双子葉植物から選択することができ、かつトウモロコシ、大豆、マメ科植物、及びイネ及びコムギのような穀物植物を含む。
【0050】
標的化される該細胞小器官が、葉緑体である場合、該宿主細胞を、公知である真核光合成細胞から選択することができる。トランスフェクションされる該細胞小器官が、該ミトコンドリアである場合、例えばヒト細胞のような哺乳類細胞を含む、全ての真核細胞を使用することができる。該外来性核酸を過渡的に、又は安定に発現するように、該細胞をトランスフェクションする。一実施態様において、レポーター遺伝子をコードしているDNA構築物を、細胞の該ミトコンドリアゲノム内に組み込み、所望のレポーター遺伝子を発現する細胞小器官を含む安定なトランスジェニック細胞株を製造する。
他の実施態様において、siRNA、又はアンチセンスポリヌクレオチド(mtDNA 関連タンパク質に対応するsiRNA、又はアンチセンスポリヌクレオチドを含む。)を、本開示に記載した組成物を用いて、細胞小器官内にトランスフェクションすることができる。
【0051】
本開示の他の実施態様は、改質細胞小器官を有する細胞を提供する。該改質細胞小器官は、外来的に導入された核酸を含む。外来性核酸は、該細胞小器官に必然的に関連しない、又は該細胞小器官の内部にない核酸を意味する。該細胞小器官内で発現される核酸は、該細胞小器官内で転写、及び/又は翻訳され得る。さらに、該核酸、及びそれにより生じたタンパク質は、必要ならば、その機能を促進するように翻訳後修飾を受けることができる。改質ウイルスベクターの特定細胞小器官への輸送は、標的化配列、例えば表1の該標的化配列を用いて達成され得る。
【0052】
核酸は、制限されないが、ポリヌクレオチド、アンチ-センス核酸、ペプチド核酸、天然又は合成核酸、化学的に修飾された塩基を有する核酸、RNA、DNA、RNA-DNAハイブリッド、リボザイム及びDNAザイムのような酵素核酸、野生型/内在性遺伝子及び非野生型/外来性遺伝子、及びこれらの断片又は組み合わせを含み、宿主細胞の細胞小器官、特に、核酸を、ミトコンドリア及び葉緑体のようなタンパク質に転写及び/又は翻訳できる細胞小器官内に導入され得る。本開示の一実施態様において、該ミトコンドリア、又は葉緑体ゲノムの全て、又は一部を、細胞小器官内に導入することができる。該核酸は、該ベクターが、タンパク質形質導入ドメインを介して該細胞小器官膜を通過することができる場合に、該ベクターを用いて該細胞小器官内に導入され得る。
【0053】
(3 方法)
本開示に従って、細胞小器官、例えば該ミトコンドリア、及び葉緑体のような非-核細胞小器官をトランスフェクションするための1つの例証的方法は、細胞と、組換えベクター、例えばウイルスベクターとを接触させる段階を含む。該ベクターは、その表面上にあるタンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官標的化シグナルを含む。適切な細胞は、トランスフェクション可能な細胞、例えば真核細胞である。本開示の細胞小器官標的化シグナルは、正味の正電荷を有するポリペプチド、及び表1、及び2に示したものを含む。適切なPTDは、制限されないが、HIV TAT YGRKKRRQRRR (配列番号:3)、又はRKKRRQRRR (配列番号:4);11個のアルギニン残基、又は8〜15個の残基、好ましくは9〜11個の残基を有する正電荷ポリペプチド又はポリヌクレオチドがある。該用語、非-核細胞小器官は、該核以外の全ての細胞小器官を含むことが意図される。該ウイルスベクターが、該細胞小器官、一般的に正味の負電荷、又は負電荷領域を有する細胞小器官に付随するベクターとなるように、細胞小器官標的化シグナルを発現することが理解されるであろう。一実施態様において、該細胞小器官と該標的化シグナルとの付随は、レセプタ:リガンド相互作用を通して起こらない。該細胞小器官とベクターとの付随は、イオン的、非共有、共有、可逆、又は不可逆であり得る。例証的なベクター:細胞小器官の付随は、制限されないが、タンパク質-タンパク質、タンパク質-糖質、タンパク質-核酸、核酸-核酸、タンパク質-脂質、脂質-糖質、抗体-抗原、又はアビジン-ビオチンがある。該ベクター表面上の該細胞小器官標的化シグナルは、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体断片、脂質、糖質、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、化学基、又は他のリガンドとすることができ、該細胞小器官とベクターとの間の特異的付随、好ましくは、反対の荷電部位の間の電磁的付随を生じる。
【0054】
該導入されたベクターとその標的とする細胞小器官との間の特異的相互作用は、少なくとも2つの方法で達成され得る。1つの例証的方法において、通常、組換えウイルスベクターは、例えば、該標的化シグナルが、自由に標的化該細胞小器官と相互作用できるように、該ベクターの外部で発現するポリペプチド成分のような標的化シグナルを発現するように設計され得る。好ましくは、該ベクターは、該標的とする細胞小器官に特異的である表面ポリペプチドを発現する。もう1つの方法において、該ベクターを、細胞小器官が結合する外来性標的化タンパク質を組み込んで改質する。あるいは、ベクターを、例えば、特定の細胞小器官のエピトープに結合し得る抗体断片を発現することにより、所望の細胞小器官と特異的に相互作用するように改質することができる。該ベクターが、該修飾剤に依存して正味の正電荷、又は負電荷を有するように、化学的に修飾され得ることは、当業者により理解されるであろう。例えば、ベクターを、ポリリシン、又は一級アミノ酸を含む薬剤で被覆することができる。さらに、アミノ基を、該ベクターと結合することができ、又はアミノ基を含む化合物を、該ベクターと結合することができる。該結合は、可逆又は不可逆、共有又は非共有結合であり得る。化合物に電荷を与えるための他の荷電基は、当業者において公知である。
【0055】
本開示の他の実施態様に従って、改質、又は変異ラムダバクテリオファージを、組換えウイルスベクターとして使用する。ラムダファージは、幾つかのキャプシド(頭部)タンパク質を有する。gpD (遺伝子産物D) (配列番号:5)は、ラムダファージ頭部タンパク質であり、その未変性構造(native conformation)において、遊離のアミノ、及びカルボキシ末端を有する。そのようなものとして、タンパク質相互作用を調査するために該ラムダ頭部でcDNAライブラリーを発現することが一般的である。該発現されたcDNAは、該アミノ、又はカルボキシ末端でgpDに拘束され、かつ該ウイルス頭部表面に現れる。細胞小器官輸送媒体としてラムダファージを利用するために、gpDの遊離末端は、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合した細胞小器官標的化シグナルを含むように改質される。従って、一実施態様において、ラムダバクテリオファージベクターは、輸送媒体として選択される。ラムダバクテリオファージは、該ウイルスキャプシド上にある細胞小器官標的化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を特異的に発現する。該標的化シグナルは、細胞小器官と特異的に相互作用するシグナル配列となり得る。また、該PTDは、該ウイルスベクターが細胞膜を通過できるシグナル配列となり得る。該PTDは、該細胞小器官内に入った後、該融合タンパク質内に位置することができ、該PTDドメインは、該細胞小器官内に捕捉されたままの該ベクターを生じる該ベクターの表面から開裂される。あるいは、該ポリペプチドの所望の領域が該細胞内で開裂され得るように、例えば、該ベクターが、該細胞小器官内に局在化してすぐに、PTDを開裂するように、切断部位を、該発現ポリペプチド内に設計することができる。また、該細胞小器官標的化シグナルを、該ベクター表面上から開裂することができる。好ましい実施態様において、該PTD配列の後に該細胞小器官標的化配列が続く。該シグナル配列を、タンパク質、脂質、糖質のような糖類、又はこれらの組み合わせの全て、又は一部とすることができる。この実施態様において、該ラムダベクターは、該細胞外空間に導入され、かつ細胞を接触させ、該ベクターは、該細胞膜を通過して形質導入され、かつ該発現されたシグナル配列を介して、その標的とする細胞小器官に結合し、そして、該ベクター内にあるポリヌクレオチドが、該細胞小器官内に導入される。該標的とする細胞小器官が、細胞外に、又は細胞内にトランスフェクションされ得ることは、当業者により理解されるであろう。該標的とする細胞小器官が、細胞外にトランスフェクションされる場合、当業者に公知である、融合、電気穿孔法、微量注入、衝撃破壊(ballistic bombardment)、又はリポソームのような公知技術を用いて細胞に導入され得る。
【0056】
他の実施態様は、標的化シグナルを有するウイルスを提供することにより、細胞小器官、例えば、真核細胞小器官を、トランスフェクションする方法を提供する。該標的化シグナルは、改質又は未改質、該標的とする細胞小器官に特異的に付随できる該ウイルスの表面上に提示されたポリペプチドとすることができる。例証的な標的化シグナルは、表1に示された該標的化シグナル、及び正味の正電荷を有する他のシグナルを含むミトコンドリア標的化シグナルを含む。無処置機能性ベクターとして、前記細胞の該細胞質ゾル内に該ベクターを導入する方法において、細胞と、該組換えベクター、例えばウイルスベクターとを接触させる。次いで、該ベクターは、その特定の標的とする細胞小器官に付随され、かつ該組換えDNAが、該細胞小器官内に導入される。該組換えDNAの該細胞小器官への導入は、該ベクターの表面上に発現されるタンパク質形質導入ドメインを介して、細胞小器官膜を通過する該ベクターを形質導入することにより達成され得る。
【0057】
無処置機能形態において、該真核細胞の細胞質ゾル内へのベクターの導入は、当業者に公知である標準的技術を用いて、又はタンパク質形質導入ドメインを有する該組換えベクターの改質を介して達成され得る。前記トランスフェクション手順は、制限はないが、微量注入、電気穿孔法、塩化カルシウム透過化処理、ポリエチレングリコール透過化処理、プロトプラスト融合、又は陽イオン性脂質透過化処理がある。一実施態様において、ウイルスベクターは、タンパク質形質導入ドメインを含むように改質され、ベクター全体が、細胞膜、細胞小器官膜、又は形質膜を含む脂質二重層を通過して形質導入され得る。適切なPTDは、制限されないが、11個のアルギニンPTD、又はTat-PTD (配列番号:3、又は4)がある。
【0058】
一実施態様に従って、哺乳類細胞のミトコンドリア内に、外来性核酸配列を導入する方法を提供する。全てのミトコンドリアトランスフェクション技術は、該核酸が、3つの膜(該形質膜、並びに、外部、及び内部ミトコンドリア膜)を通過し、mtDNA分子の高度な複製を扱い、かつ最小の細胞ミトコンドリアレプリコンを利用することを保障しなくてはならない。本開示の一実施態様において、組換えバクテリオファージを、細胞小器官、例えば該ミトコンドリア内に核酸配列を導入するための輸送媒体として使用する。該ベクターは、該ミトコンドリア表面上に発現されるラムダファージレセプタに結合しない。むしろ、該ラムダファージベクターは、該ミトコンドリア標的化配列、例えば、表1の標的化配列を介して、該ミトコンドリアを付随する。
【0059】
(3.1 植物のトランスフェクション)
植物トランスフェクション技術は、当業者に公知である。例えば、アグロバクテリウム チュメファシエンス、及びアグロバクテリウム発根(アグロバクテリウム rhizogenes)、双方は、これらのDNAの一部を、植物のゲノムに運ぶ能力を有し、かつ植物細胞をトランスフェクトすることができる。これらがDNAを運ぶ機序は、同じである。しかし、生じる表現型の違いは、アグロバクテリウム チュメファシエンスのTi プラスミド、及びアグロバクテリウム発根のRi プラスミドの存在に起因する。該Ti プラスミド DNAは、腫瘍塊を増殖する宿主細胞を生じる。一方、該Ri プラスミド DNAは、根の大量増殖へと導く。アグロバクテリウム チュメファシエンスは、ほぼ全ての植物組織を感染することができる。一方、アグロバクテリウム発根は、根にのみ感染し得る。
【0060】
アグロバクテリウムのTi プラスミドは、大きく、約200kbの環状二本鎖DNA分子(T-DNA)であり、自律的な複製単位として存在する。該プラスミドは、該バクテリア内、及び特定の領域内(T-領域)にのみに保存されており、約20 kbは、該バクテリアから該宿主に移動され得る。この移動を達成するために、該Ti プラスミドは、自己複製、該プラスミドからの切除、該宿主細胞への移動、該宿主ゲノム内への組み込み、及び腫瘍形成の誘発に相当する一連の遺伝子を含む。
アグロバクテリウムは、該傷害植物から漏れる化学的シグナルの検出を介して、検出し、かつ注入された植物細胞の方に移動する。この検出法は、走化性を参照している。アグロバクテリウムは、該バクテリアの毒性を誘発するアセトシリンゴン、シナピン酸、コニフェリルアルコール、コーヒー酸、及びメチルシリンガ酸のような、植物化合物を認識することができる。感染プロセスを始めるために、アグロバクテリウムは、該宿主細胞と結合させなければならない。この結合は、バクテリア染色体内にある一群の遺伝子により達成される。該バクテリアは、該セルロース原線維の産生により、損傷部位で固定され得る。該原線維は、該植物宿主の細胞表面に固定され、かつ該細胞表面上の他のバクテリアの集積化を促進する。この集積化は、T-DNAの首尾よい移動の手助けとなり得ると考えられている。該宿主への結合後すぐに、該バクテリアは、自由に、該T-領域の処置、及び移動を始めることができる。本開示の一実施態様は、アグロバクテリウムを用いた植物細胞へのトランスフェクションを提供する。該アグロバクテリウムは、植物細胞小器官、例えば葉緑体に結合するように改質されている。さらに、アグロバクテリウムは、該細胞小器官内に発現するための対象の核酸をコードするように改質され得る。該細胞小器官に結合時に、該アグロバクテリウムは、該標的とする核酸を該葉緑体内に運び得る。
【0061】
該Ti プラスミドのT-領域を、該宿主細胞 細胞小器官に移動するために、該T-領域を、該プラスミドから切除し、かつ該細胞小器官に方向付けるように処理しなければならない。適切にパッケージしてすぐに、該T-複合体移動を、幾つかのタンパク質により媒介させる、これは、バクテリア接合と類似していると考えられる。該植物細胞、又は細胞小器官の内側に入り、該T-複合体は、該膜を通過して取り込まれる。
【0062】
(4. 研究手段)
一実施態様において、本開示は、mtDNA発現、異形成機序、mtDNA 複製、及び遺伝形質、並びに閾値効果の細胞の影響を調査するための手段として使用される。ミトコンドリア変異マウスを、このアプローチを用いて発生させることができ、研究者は、現実にわかっていないmtDNA変異を研究することができる。さらに、該技術は、同じ遺伝子型、又は変化する異形成の程度を有するミトコンドリアを含む細胞を発生させるように使用され得る。同種形成性細胞を調製するために、最初に、Rho0細胞(mtDNA欠如)を、RNA干渉(RNAi)を用いて調製する。例えば、Rho0細胞は、該ヒト ミトコンドリアDNAポリメラーゼに対してRNAiを使用して製造され得る。例証的なRho0細胞株は、mtDNA保存に関与するミトコンドリアタンパク質にRNAiを用いて製造される。これらのRho0細胞を、ピルビン酸含有支持培地に保存し、かつ繁殖させ、次いで機能性ミトコンドリアゲノムでトランスフェクトする。代謝選択後、支持培地からピルビン酸を除去することにより、首尾よくトランスフェクトされたミトコンドリアを含む細胞のみが、残るであろう。従って、全て同一のミトコンドリアゲノムを有する細胞集団が発生する。
次に、変化する異形成の程度を有する細胞株は、制御された方法において、サイブリッドを発生するように2以上の同種細胞株を融合することにより発生され得る。受容細胞内に細胞小器官を導入するための全ての公知技術を用いて、サイブリッドを発生することができる。該技術は、制限はないが、ポリエチレングリコール(PEG)媒介細胞膜融合、細胞膜透過化処理、細胞-細胞原形質融合、ウイルス媒介膜融合、リポソーム媒介融合、微量注入、又は他の当業者に公知の方法がある。
【0063】
(5. トランスジェニック 非-ヒト動物)
また、本開示に記載された技術を、トランスジェニック 非-ヒト動物を発生するように使用することができる。とくに、胚幹(ES)細胞サイブリッドの接合体微量注入、核移植、割球電気融合、及び胚盤葉注入は、それぞれ、ミトフェクト細胞株(mitofected cell lines) (すなわち、トランスフェクトされたミトコンドリアを含む細胞)由来のmtDNAを含む異質-、及び同種マウスを作るための適した方法を提供する。一実施態様において、キメラマウス発生方法として、胚幹(ES)細胞をミトフェクトし、かつ哺乳類胚の胚盤葉内に注入する。他の実施態様において、胚幹(ES)細胞サイブリッド(ミトフェクト細胞、及びES細胞rhos由来、又は2つの別のミトフェクト細胞由来)を、最初に調製し、続いて胚盤葉を、図3に示す胚に注入する。特異的にミトフェクトされた、対象のmtDNAを運ぶ細胞の使用により、該ミトフェクトDNAに対して異種形成、又は同種形成であるトランスミトコンドリアマウス(transmitochondrial mice)の作成が可能である。理論的には、この技術は、培養ミトフェクト細胞から得ることができる全ての変異mtDNAを、全ての生物モデル内に移動できることを提供する。
【0064】
mtDNA トランスフェクションのためのラムダの使用は、老化、糖尿病及び神経変性疾患で発見された多型、及びmtDNA相補体の動態とともに蓄積される5000 bpの割合変化の効果、"共通の欠損"のような問題の調査を可能にするであろう。また、このアプローチの潜在的な治療的使用がある。該正常のミトコンドリアゲノムの標的化導入は、mtDNAに基づくミトコンドリア機能障害に関連している典型的なmtDNA-疾患、並びに神経変性脳症状、及び成人-発症糖尿病のような老化による疾患、双方の治療を提供する。
【0065】
(6. キット)
また、本開示は、真核細胞小器官のトランスフェクションを行うために必要な成分を供給するキット、又はパックに対応する。一実施態様に従って、提供されるキットは、細胞小器官局在化シグナル、及びラムダ表面タンパク質に機能的に結合したタンパク質形質導入ドメイン、並びに、組換えラムダベクターを調製するためのラムダ凝集成分をコードしているタンパク質構築物を含む。また、該キットは、対象のDNA配列を挿入するための該ラムダDNA配列(該ベクター"腕")を含み、かつ続く、組換えラムダファージ ベクターの発生に使用する。一実施態様において、該キットとともに提供されるタンパク質構築物は、表1、及び2に部分的に示した、該細胞小器官の標的化において公知であるものから選択されたミトコンドリア、又は葉緑体局在化シグナルを含む。さらに、一実施態様において、該タンパク質構築物は、11個のアルギニン伸長、続いて該バクテリオファージファージラムダgpD頭部タンパク質に機能的に結合したヒト シトクロム オキシダーゼのサブユニット VIIIのミトコンドリア局在化シグナルをコードしている配列を含む。
【0066】
一実施態様に従って、提供されるキットは、外来性核酸を発現するミトコンドリア、又は葉緑体細胞小器官、どちらかを含む細胞を含む。さらなる実施態様において、提供されるキットは、該組換えPTD-細胞小器官標的化シグナル表面タンパク質、及び組換え構築物を調製するためのウイルスDNAを含むウイルスベクター用凝集成分を含む。一実施態様において、キットは、PTD-細胞小器官標的化シグナルラムダ表面タンパク質、ラムダバクテリオファージパッケージング抽出物、及びラムダDNAとともに提供される。該キットの個々の成分を、様々な容器、例えばバイアル、チューブ、マイクロタイターウェルプレート、及びボトルなどの中にパッケージ化することができる。他の試薬を、別々の容器内に含ませ、かつ該キットとともに提供され得る;例えば、陽性のコントロール試料、陰性のコントロール試料、緩衝液、及び細胞培養液などがある。好ましくは、該キットは、使用説明書も含む。
【0067】
(7. 治療方法)
細胞小器官機能障害は、例えば、ヒト宿主、又は植物宿主のような宿主の疾患を生じ得る。特に、ミトコンドリア、又は葉緑体の問題は、疾患を生じ得ることである。ミトコンドリア疾患は、該ミトコンドリアの障害から生じる。分化した区画は、赤血球細胞を除き、体の全細胞内に存在する。細胞傷害、及び細胞死は、ミトコンドリア障害から生じる。このプロセスが、体中で繰り返された場合、全体の系の障害が始まり、かつ、それを生じた該ヒトの生命が危険に曝される。該疾患は、例えば、18歳未満、通常、12歳未満の子供、又は18歳以上の成人でなり得る。従って、本開示の実施態様は、宿主細胞内にベクターを導入することにより、細胞小器官関連疾患、特にミトコンドリア疾患と診断された該宿主の治療に対応する。該ベクターは、該細胞小器官に特異的に結合し、かつ該ベクターは、ミトコンドリアタンパク質、又はペプチドをコードしている核酸を含む。本開示は、ミトコンドリア遺伝子欠損、又は異常により生じる疾患を治療するために、該哺乳類細胞のミトコンドリアゲノムの一部を操作し、増大し、かつ置換することを含む。
【0068】
例証的なミトコンドリア疾患は、制限されないが、下記のものがある:アルパーズ病; バース症候群; β-酸化異常; カルニチン-アシル-カルニチン欠損症; カルニチン欠損症; 補酵素Q10欠乏症; 複合体 I 欠損症; 複合体 II 欠損症; 複合体 III 欠損症; 複合体 IV 欠損症; 複合体 V 欠損症; シトクロム c オキシダーゼ (COX) 欠損症; 慢性進行性外眼筋麻痺症 (CPEO); CPT I 欠損症; CPT II 欠損症; グルタル酸尿症II型; 乳酸アシドーシス; 長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (LCAD); LCHAD; ミトコンドリア性細胞障害; ミトコンドリアDNA減少; ミトコンドリア脳症; ミトコンドリアミオパシー; 乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作を伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS); 赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん (MERRF); 母性遺伝のリー症候群 (MILS); ミオガストロインテスティナル脳筋症 (Myogastrointestinal encephalomyopathy)(MNGIE); 神経障害、運動失調、及び色素性網膜炎 (NARP); レーベル病(Leber's hereditary optic neuropathy)(LHON); 進行性外眼筋麻痺 (PEO); ピアソン症候群; キーンズ-セイアー症候群 (KSS); リー症候群; 間欠性自律神経障害; ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症; ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症; 呼吸鎖変異、及び欠失; 単鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (SCAD); SCHAD; and 超長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (VLCAD)である。
【0069】
幾つかのミトコンドリア疾患は、ミトコンドリアの該呼吸鎖の問題を生じる。該呼吸鎖は、4つの大きなタンパク質複合体からなる:I, II, III, 及びIV (シトクロム c オキシダーゼ, 又はCOX)、ATPシンターゼ、及び電子を持った2つの小さい分子、補酵素Q10、及びシトクロムcである。該呼吸鎖は、ミトコンドリアにおけるエネルギー-製造プロセスの最終段階であり、そこで、多くのATPが製造される。1以上の特定の呼吸鎖複合体の欠損より生じ得るミトコンドリア脳筋症は、MELAS, MERFF, リー症候群, KSS, ピアソン症候群, PEO, NARP, MILS, 及びMNGIEを含む。
該ミトコンドリア呼吸鎖は、核、及びmtDNA、双方由来のタンパク質で構成されている。おおよそ100個の呼吸鎖タンパク質の13個のみが、該mtDNA由来であり、これらの13個のタンパク質は、複合体IIを除いた該呼吸鎖全体に寄与する。従って、核遺伝子、又は37個のミトコンドリア遺伝子の1つの欠損は、呼吸鎖破壊を起こし得る。本開示の範囲は、ミトコンドリア機能に関与している、少なくとも1つの遺伝子、又は1つの遺伝子の一部、特に、該呼吸鎖機能を修復し、かつ増強させる、該37個のミトコンドリア遺伝子の少なくとも1つ、又は一部でトランスフェクトされたミトコンドリアを含む。ミトコンドリアゲノムの全て、又は一部、例えば、ヒトミトコンドリアゲノム配列番号:6を、本開示中に記載した方法を用いて、宿主ミトコンドリア内に導入することができる。
【0070】
該ミトコンドリア疾患は、脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓、及び内分泌及び呼吸器系の細胞に最も多く障害を起こすようである。従って、特定の核酸を有する、これらの細胞、及び組織中のミトコンドリアのトランスフェクション、特に、核-コード化タンパク質よりもむしろ、ミトコンドリア-コード化タンパク質をコードしている核酸を有するミトコンドリアのトランスフェクションは、本開示の範囲内である。該ミトコンドリアが、該ミトコンドリア内に自然に存在する、又は存在しない、若しくはmtDNA、又は核DNAにより自然にコード化されている全てのタンパク質を発現するようにトランスフェクトされ得ることが理解されるであろう。細胞が影響を受けることに依存して、症状は、運動制御、筋衰弱及び苦痛、胃腸疾患及び嚥下障害、乏しい成長、心疾患、肝疾患、糖尿病、呼吸器合併症、発作、視覚/聴覚疾患、乳酸アシドーシス、発育遅延、及び感染受容性の損失を含み得る。
【0071】
本開示により扱われる例証的mtDNA変異は、制限されないが:tRNAleu- A3243G, A3251G, A3303G, T3250C, T3271C, 及びT3394C; tRNALys- A8344G, G11778A, G8363A, T8356C; ND1- G3460A; ND4- A10750G, G14459A; ND6-T14484A; 12S rRNA-A1555G; MTTS2-C12258A; ATPアーゼ6-T8993G, T8993C; tRNASer(UCN)-T7511C; 11778, 及び14484, LHON変異、並びにND2, ND3, ND5, シトクロム b, シトクロム オキシダーゼ I-III, 及びATPアーゼ8の変異、又は欠損がある。
本開示の一実施態様は、該宿主細胞への導入ベクターを含む、宿主細胞の呼吸鎖機能を修復する、又は増強する方法を提供する。該ベクターは、該ミトコンドリアに特異的に結合し、かつ呼吸鎖タンパク質、又はペプチドをコードしている核酸を含む。該ベクターが、該ミトコンドリアを標的とする場合、例えば、該ベクターが、バクテリオファージラムダであり、かつ該ウイルス表面タンパク質が、タンパク質形質導入ドメイン、及びミトコンドリア局在化シグナルに機能的に結合したgpDである場合、該ベクターの核酸を、該ミトコンドリア内部に注入、又は運ぶことができる。
【0072】
本開示の他の実施態様は、細胞、例えば骨格筋細胞内に、トランスフェクトされたミトコンドリアを含む宿主のシトクロム オキシダーゼ活性を修復する、又は増強する方法を提供する。該ベクターは、シトクロム オキシダーゼ、又はその機能性成分をコードしている核酸を含む。機能性成分とは、独立して、若しくは他のタンパク質、断片、又はサブユニットと組み合わせて、生物学的に機能するタンパク質、又はタンパク質複合体、又はサブユニットを意味する。
また、本開示の他の実施態様は、β-酸化らせん、及びカルニチン輸送に関与するタンパク質をコードしている核酸を含むベクターを導入した宿主から得られる細胞を含む該宿主において、β-酸化を増強する、又は修復する方法を提供する。該ベクターは、該細胞小器官と特異的に結合している。及び、該宿主に戻って該宿主のトランスフェクとされた細胞を導入する方法を提供する。
【0073】
本開示の他の実施態様は、点変異、又は欠損の結果として失われる、又は減少するミトコンドリア機能を修復する方法に対応する。例えば、KSS, PEO, 及びピアソン症候群は、欠損と呼ばれるmtDNA変異(該DNAの特定部位が欠ける)、又はmtDNA減少(mtDNAの全体的な不足)の型から生じる3つの疾患である。従って、KSS, PEO, 及びピアソン症候群、又は類似した疾患と診断された宿主由来の細胞は、該組換えウイルスベクターでトランスフェクトした、これらのミトコンドリアを有し得る。病的状態を起こす該mtDNAの欠損に対応する核酸を含むベクターを、該細胞内に導入することができる。該ベクターは、該細胞小器官に結合し、かつ該ミトコンドリアの内部に該核酸を運び、そこで該核酸が発現されるであろう。該発現産物は、該ミトコンドリア内に組み込まれ、かつミトコンドリア機能を増強する、又は修復することができる。該トランスフェクト細胞は、該宿主内に再導入され得る。該宿主の細胞、又は他の細胞を、本開示中に記載したようにトランスフェクトし、かつ機能障害細胞小器官、特にミトコンドリアを有する宿主内に導入することができることが理解されるであろう。
【0074】
本開示が、核酸を別々に、又は組み合わせて、mtDNA、又は核DNAにより自然にコード化されている該ミトコンドリア内に運ぶことを含むことは、当業者により理解されるであろう。
また、本開示は、トランスフェクトされた、及びトランスフェクトされていないミトコンドリアを有する細胞を作ることにより、ミトコンドリア疾患の症状を緩和することを意図する。あるいは、細胞中の全てのミトコンドリアは、トランスフェクト、又は置換され得る。
【0075】
一実施態様は、宿主内のmtDNA変異を補償する方法を提供する。該方法は、mtDNA変異を有する宿主を同定すること、前記宿主から前記mtDNA変異を含む細胞を得ること、該宿主細胞のミトコンドリアをトランスフェクトすること、該細胞小器官に特異的に結合するベクターを該宿主細胞内に導入することを含み、ここで該ベクターは、該mtDNA変異に対応する機能性産物をコードしている核酸を含み、トランスフェクトされた細胞内に該宿主を導入する。該mtDNA変異に対応する機能性産物をコードしている核酸は、該対応する変異のないタンパク質を生じる配列を意味する。例えば、宿主細胞が、ND4- A10750G変異を有する場合、該トランスフェクトされた核酸は、該ND4遺伝子の野生型産物をコードするであろう。該ウイルスベクターは、該宿主に、例えば静脈内に導入され得る。
【0076】
(8. 細胞小器官-特異的ポリヌクレオチドの減少)
他の実施態様は、細胞小器官ポリヌクレオチド、例えば、ミトコンドリア、又は葉緑体ポリヌクレオチドを減少する方法を提供する。該方法は、細胞と、少なくとも1つの阻害性核酸、例えば、細胞小器官特異的ポリメラーゼのようなポリメラーゼに特異的なsiRNAとを接触させることを含む。1つの例証的ポリメラーゼは、POLγである。該阻害性核酸は、表3に示した配列、又は表3に示した配列と80〜100%の相同性を有する配列から選択される。該阻害性核酸は、本開示に記載された組成物を用いて、又は従来のトランスフェクション技術を用いて、対象の該細胞小器官に運ばれ得る。
【0077】
また、他の実施態様は、細胞内のmtDNAを減少する方法を提供し、該方法は、該細胞と、mtDNA 複製、又は転写の阻害剤とを接触させることができる。mtDNA 複製の阻害剤を、アンチセンスポリヌクレオチド、又はsiRNA、若しくはこれらの組み合わせとすることができる。該阻害剤が、DNA、RNA、又はこれらの組み合わせとなり得ることは、理解されるであろう。例証的な阻害剤は、表3から選択される。
幾つかの実施態様において、該阻害剤は、ミトコンドリアDNA転写、又は複製に関与する遺伝子に特異的である。例証的な遺伝子は、制限されないが、POLγ, TFAM A及びB, 及びmtSSBがある。一般的に、ミトコンドリア、又は葉緑体ポリメラーゼをコードしている遺伝子を使用することができる。
他の実施態様は、ミトコンドリアポリメラーゼをコードしているポリヌクレオチドに特異的に結合した阻害性ポリヌクレオチドを有する細胞を提供する。該細胞は、ミトコンドリアポリメラーゼ、例えばPOLγに特異的なsiRNA、又は該阻害性ポリヌクレオチドを発現するベクターを含む。
【0078】
(9. 投与)
本開示で提供される該組成物を、宿主に対して生理的に許容し得るキャリアによって投与してもよい。投与の好ましい方法は、細胞に、全身的、又は直接的投与を含む。該組成物を、細胞、又は患者に投与することができる。遺伝子治療応用技術として一般的に知られている。遺伝子治療応用において、細胞小器官をトランスフェクトするために、該組成物を細胞内に導入する。"遺伝子治療"は、単独治療により永続効果が達成される従来の遺伝子治療、及び遺伝子治療薬の投与、両方を含み、治療的に有効なDNA、又はRNAの1回、又は繰り返し投与により達成される。
【0079】
該改質ベクター組成物は、医薬として許容し得るキャリア媒体と混合して組み合わせることができる。貯蔵のために、所望の程度の純度を有する該主成分と、任意に、生理的に許容し得るキャリア、賦形剤、又は安定化剤とを混合して、治療製剤を、凍結乾燥製剤、又は水溶液の形態で調製することができる(レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences) 第16版, Osol, A. Ed. (1980))。許容し得るキャリア、賦形剤、又は安定化剤は、無毒であり、使用される投与量、及び濃度で受け入れられ、かつリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量ポリペプチド(約10残基未満);血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー、グリシン, グルタミン, アスパラギン, アルギニン, 又はリシンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の糖質;EDTAのようなキレート剤;マンニトール、又はソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;及び/又はTween, Pluronics, 又はPEGのような非イオン性界面活性剤がある。
【0080】
本開示の組成物を、非経口で投与することができる。本開示で使用される"非経口投与"は、患者組織の物理的切れ目を通して、医薬組成物を投与することにより特徴化される。非経口投与は、外科的切開を通して、又は組織-貫通非外科創傷などを通して、注射により投与することを含む。特に、非経口投与は、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、層内注射、及び腎臓透析注入技術がある。
【0081】
非経口製剤は、滅菌水、又は滅菌等張食塩水のような医薬として許容し得るキャリアと組み合わせた主成分を含み得る。前記製剤を、ボーラス投与、又は継続投与に適した形態に調製し、包装し、又は販売することができる。注射可能な製剤を、保存料を含むアンプル、又は多投与量容器の単位投与量形態に調整し、包装し、又は販売することができる。非経口投与製剤は、懸濁液、溶液、オイル又は水媒体のエマルション、ペースト、レコンシチュテーブルドライ(reconsitutable dry)(すなわち、粉末、又は顆粒)製剤、及び移植可能な除放性、又は生分解性製剤を含む。また、前記製剤は、懸濁化剤、安定化剤、又は分散剤を含む、1以上の添加成分を含む。非経口製剤を、注射可能な無菌水、若しくはオイル懸濁液、又は溶液の形態に調製、包装、又は販売することができる。また、非経口製剤は、本開示で記載した分散剤、湿潤剤、又は懸濁化剤を含む。製剤のこれらの型を調製する方法は、公知である。注射可能な無菌製剤を、水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液、及び合成モノグリセリド、又はジグリセリドなどの固定油のような無毒性の非経口的に許容し得る希釈剤、又は溶媒を用いて調製することができる。他の非経口的に投与可能な製剤は、微結晶性形態、リポソーム製剤、及び生分解性ポリマー系がある。持続除放、又は移植用の組成物は、エマルション、イオン交換樹脂、低溶解性ポリマー、及び低溶解性塩のような医薬として許容し得るポリマー、又は疎水性物質がある。
【0082】
医薬組成物を、頬側製剤に調製、包装、又は販売することができる。前記製剤は、公知の方法を用いて製造される錠剤、粉末、エアロゾル、微粒化溶液、懸濁液、又は潤滑剤とすることができ、かつ経口溶解性又は分解性組成物、及び/又は本開示に記載した1以上の添加成分を含む該製剤の均衡とともに約0.1%〜約20%(w/w)の主成分を含み得る。好ましくは、粉末、又はエアロゾル製剤は、分散した場合、約0.1ナノメートルから約200ナノメートルの範囲の平均粒径、又は液滴直径を有する。
本開示で使用した"添加成分"は、下記のものを1以上含む:賦形剤、界面活性化剤、分散剤、不活性希釈剤、顆粒化剤、崩壊剤、結合剤、平滑剤、甘味剤、香料、着色剤、保存料、生理的分解性組成物(例えば、ゼラチン)、水性媒体、油性媒体及びオイル溶媒、懸濁化剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、抗生物質、抗真菌剤、安定化剤、及び医薬として許容し得るポリマ、又は疎水性物質である。該医薬組成物に含まれ得る、他の"添加成分"は、公知のものである。適切な添加成分は、レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Genaro, ed., Easton, Pa. (1985))に記載されている。
【0083】
本開示の医薬組成物において、本開示に記載した改質ベクターの投与量、及び所望濃度は、想定される特定の用途に強く依存し得る。適切な投与量、又は投与経路の決定は、通常の医師の技能の範囲内である。動物実験は、ヒト治療用の有効量を決定するための確かな指標を提供する。種間における有効量のスケールは、Mordenti, J. 及びChappell, W.らにより貼り込まれた"毒物動態学における種間のスケールの用途" 毒物動態学、及び新しい薬剤開発, Yacobiらの文献, Eds., Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96に記載された方針で行う。
【実施例】
【0084】
(実施例1)
(バクテリオファージラムダ頭部タンパク質Dの改質)
gpD (遺伝子産物D)を、それぞれ、ラムダゲノム(NEB)からの開始遺伝子ホットスタートヘルクラーゼ(Stratagene Hotstart Herculase) PCR ポリメラーゼ、並びに、BglIIとNotI末端とを含むように設計されたフォワード、及びリバースプライマーを用いてPCR増幅した。注目点として、該リバースオリゴヌクレオチド内の終止コドンを除去した。該cDNAを、BglII、及びNotI(NEB)で消化し、かつpThioHisA (Stratagene)の該BglII、及びNotI部位にクローン化した。該得られたベクターをpThio-gpDと命名した。フォワードオリゴヌクレオチドを含む開始メチオニン、及び次の11個のアルギニンを、pDsRed2-Mito (Clontech)からの該ミトコンドリア局在化ディスコソーマ赤蛍光性タンパク質(Discosoma Red Fluorescent Protein)(RFP)のPCR増幅のために設計した。また、該フォワードオリゴヌクレオチドは、5' KpnI部位を有する。該リバースオリゴヌクレオチドは、該ミトコンドリア局在化RFPから、終止コドンを除去するように設計し、かつ5' BglII部位を導入した。PCR増幅は、ホットスタートヘルクラーゼ(Hotstart Herculase)を用いた。
【0085】
PCR ポリメラーゼを、該フォワード、及びリバースプライマーを用いて、pDsRed2-Mito上で行い、5' KpnI部位、続いて、開始メチオニンコドン、11個のアルギニンのコドン、3' BglII部位をコードしている該ミトコンドリア局在化RFP用cDNAを含むcDNAを生じた。該cDNA構築物を、KpnI、及びBglIIで消化し、かつKpnI、及びBglIIで消化したpThio-gpDにクローン化した。該得られたプラスミドを、pEXP-TMRDと命名した(ミトコンドリア赤蛍光性タンパク質を形質導入するための発現プラスミド)(図1C)。
【0086】
pEXP-TMRDを用いて、DH5A細胞を形質転換した。コロニーを単離し、かつ適切なプラスミドを配列決定した。適当な構築物を含むコロニーを、光学密度値が.5になるまで、10ミリリットル培養液内で増殖させた。該TMRDタンパク質の発現を誘発するように、IPTGを1mMに加えた。該培養液を、4時間、37℃振盪インキュベーターで、保温した。該バクテリア培養液を、遠心し、かつ該得られたペレットを、-80℃で一晩凍結した。該ペレットを、5ml BPER溶解試薬(Pierce)中に再懸濁させた。10mg/mlの原液(Pierce)の100ul,リゾチームを、最終濃度が200 ug/mlになるように、該懸濁液に加えた。該得られた混合液を室温で5分間インキュベートした。1:10希釈化BPER試薬15mlを、該懸濁液に加え、かつボルテックスで混合した。該TMRDタンパク質を含む、該封入体を収集するために、27,000 gで、15分間遠心した。該ペレットを、1:10希釈化BPER試薬20mlに再懸濁化した。該遠心、及びペレット再懸濁化段階を、2回以上繰り返した。該封入体を、7M尿素、1mM DTT、50mMトリス・HCl (pH 8.0)、及び150 mM NaClで可溶化させた。該可溶化封入体を、33% PBS含有生理食塩水に対して、一晩透析した。さらに、精製を、製造指示の後に、該HisPatch Thiofusion S.N.A.P.精製カラム(Invitrogen)を用いて行った。該得られたタンパク質濃縮物を、エンテロキナーゼ1mg/mlとともに、一晩室温でインキュベートした。タンパク質濃度を、Lowryアッセイ(Biorad)を用いて測定した。精製TMRDを、最終濃度が.5 mg/mlになるように、該GigaPack Goldパッケージング抽出物中に導入した。TMRDを含む該最終ラムダパッケージング抽出物を、すぐに使用した。
【0087】
(実施例2)
(生細胞中のミトコンドリアのトランスフェクション、及び組換え遺伝子構築物の発現)
PCRを通して、Sy5y細胞の全体のミトコンドリアゲノムを増幅するように設定したプライマーを用いて、全長ミトコンドリアゲノムを製造した。該全長mtDNAを、BglII、及びNotIで消化した。消化後すぐに、NotI, BglII 消化 GFPを、mtDNA単位複製配列に結合した。この大きな分子に、該Cos部位を結合し、パッケージ可能な構築物を製造した。該クローニング手順を、次に示す。
全長mtDNA PCR単位複製配列を、それぞれBglII、及びNotI部位を内部に含む、センス、及びアンチ-センスプライマーを用いて生成し、かつBglII、及びNotIで消化した(図2A)。GFP DNAは、そのベクター, BglII、及びNotI を用いて、pEGFP-1から切除されるであろう。このGFP構築物は、PCRにより製造され、かつ消化した該mtDNA単位複製配列に結合されるであろう。該得られた分子は、5'、及び3'センスGFP、双方を含み得る(図2B)。
【0088】
ミトコンドリア中でのみ発現される、変異させたGFPを使用した。簡潔に、該GFP mRNAの第60番目のコドンは、該核、及びミトコンドリア翻訳装置、双方により、トリプトファンとして読まれるUGGである。このコドンをUGAに変異することにより、該核で翻訳された場合に停止となる。しかし、該ミトコンドリアにおいて、トリプトファンとして翻訳される。この手順は、該ERにおいて翻訳された場合、削除した非-蛍光性タンパク質を産生し、そうでなければ、該ミトコンドリア内で全長GFPを産生する、ミトコンドリアと核コドンとの間の違いを利用している。このGFP構築物を、該全長mtDNA単位複製配列に結合した(図3)。
図3に図示した該構築物を、該組換えPTD-細胞小器官 標的化シグナル キャプシドタンパク質を含むパッケージング抽出物でパッケージし、該活性ファージ粒子を、RNAiでmtDNAを欠損させた細胞の細胞外媒体中に導入した。該組換えキャプシドタンパク質は、レポーター遺伝子RFPを含むので、共焦点顕微鏡写真を使用し、続いて、該組換えウイルスベクターの位置を確認した(図4)。該40-分の顕微鏡写真は、ミトコンドリアに特異的な色素であるミトトラッカー緑(Mitotracker Green) (Molecular Probes)を含み、ミトコンドリア局在化を確認した。
【0089】
さらに、ミトコンドリア標的化を、RFP (Clontech)、及びシトクロム C (Pharmingen)に対する抗体を用いて、特定の時点で生じたミトコンドリア断片のウエスタンブロッティングで確認した(図5)。ミトコンドリア断片を、該改質バクテリオファージラムダウイルスベクターを導入した後に、幾つかの時点で、培養液中のSy5y細胞から調製し、かつ抗- RFP抗体で免疫ブロットした(Clontech)。抗- RFPシグナルを含む、該同じミトコンドリア断片を、内在性ミトコンドリアマトリックスタンパク質であるシトクロム Cに対する抗体で調査した。RFP免疫ブロット提示は、(コントロール)TMRD、及び該改質ラムダウイルスベクターを該細胞媒体に導入した後、0, 10, 20, 25, 30, 及び35分で単離した。これらのブロットは、該ウイルスベクターが、該細胞、及びミトコンドリア膜を通過でき、該ミトコンドリア内部マトリックスに到達していることを示している。シトクロムCは、 RFP に対して陽性である、10, 20, 25, 30, 及び35分のミトコンドリア断片から免疫ブロットする。
図6Aは、ミトコンドリアを標的とするラムダファージの導入の成功を示した。図6Aは、ミトコンドリア中のGFPメッセージを示す(RT-PCRで示された)。このアプローチにより、図6dの該相関図により示されたミトコンドリアの非常に有効なGFP発現を生じた。従って、rho0 SY5Y細胞内に無処置ミトコンドリアゲノムを再導入する該技術の能力を首尾よく示した。図6Bは、(a) RFP組換えファージでトランスフェクションした24時間後のρ0細胞の出現;(b) 緑蛍光下、SuperCos-1/mtDNA/GFP組換えファージ構築物でトランスフェクトした24時間後のρ0細胞の出現;(c)ミトコンドリア位置を示すように(c)をミトトラッカー赤で染色したコンパニオンイメージである。パネル(d)は、ミトトラッカー赤ミトコンドリアクラスター、及びGFPレポーター遺伝子発現の間の蛍光強度の比較するための標的を定めなかったものである。
【0090】
(実施例3)
(POLγのsiRNAノックダウン)
RNA干渉(RNAi)は、複製、及び外来性二本鎖RNAの発現を抑制するように、進化的に保存される機序に基づく。最初に植物において記載するが、今日、RNAiは、真核細胞、脊椎動物、及び哺乳類細胞において記載されている。該基礎的機序は、21-23ヌクレオチド長さ、及び各末端で2〜3ヌクレオチド突出を有する小RNA二本鎖の発生に依存する。外来性RNAウイルスで感染した細胞において、これらの小阻害性RNA(siRNA)は、" ダイサー(dicer)" として知られているRNAアーゼ複合体の作用により産生される。従って、産生された(外来性二本鎖として供給される、又はベクターから内部的に産生される)siRNAは、RNA-誘発サイレンシング複合体(RISC)を形成し、これは、該特定のmRNA遺伝子産物にハイブリダイズするように、該アンチセンスRNA鎖を利用する。次に、RISCは、ダイサー、又はおそらくRISC自身が分解され得る新しいRNA二本鎖を作成し得る。
【0091】
ミトコンドリアポリメラーゼPOLγのRNAサイレンシングは、3日以内に生じた。mtDNAの遅い突然変異生成、及び減少を提供するように、Rho0細胞株を、突然変異原臭化エチジウムを用いて、該変異長期インキュベーションすることにより作成した。さらに有用な細胞株を開発するために、該PolG遺伝子サイレンシングための分子RNA阻害アプローチを利用し、かつ初めて本開示に記載した。この実験の結果を、図7に示す。該POLG遺伝子のRNAサイレンシング(上)。POL-γmRNAの唯一の配列の位置を、RNA二本鎖構成に対して選択した。3つの異なる二本鎖を合成し、かつ試験した(下)。RNA二本鎖の脂肪線維(lipofection)後72時間で、GFP蛍光を完全に失った。間接的にPOLGのサイレンシングを示した。
【0092】
該POLG遺伝子(配列番号:195)を試験し、かつ幾つかの明らかに独特な配列を、適切なsiRNA二本鎖を作成するように規定した。例証的な標的配列、及びsiRNA配列を表3に示した。代表的なsiRNAを、脂肪親和性アミンにより、該組換えラムダベクターでトランスフェクトした細胞内に導入した。mtDNA合成、及び転写は、密接に関連しているため、GFPシグナルの損失が、POLG活性の損失に対するマーカーとして生じた。
【0093】
【表3】
【0094】
(図面の簡単な説明)
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1A】図1Aは、改質バクテリオファージラムダの図であり、タンパク質形質導入ドメイン、細胞小器官標的化シグナル、及びレポータータンパク質(赤蛍光性タンパク質)頭部タンパク質gpDの融合タンパク質を発現する。
【図1B】図1Bは、1185 ヌクレオチド構築物PTD-MLR-gpDの図であり、遺伝子産物Dとともに、タンパク質形質導入ドメイン、ミトコンドリア標的化シグナル、赤蛍光性タンパク質融合を発現する。
【図1C】図1Cは、プラスミド pEXP-TMRDの図である。
【図2A】図2Aは、それぞれ、内部にBglII、及びNotI部位を含むセンス、及びアンチセンスプライマーを用いて生成した、全長mtDNA PCR単位複製配列の図である。
【図2B】図2Bは、緑蛍光性タンパク質(GFP)DNAに結合した、全長mtDNA PCR単位複製配列の図である。
【図3】図3は、SuperCos-1に結合した全長mtDNA/GFPの図である。
【図4】図4は、赤蛍光性タンパク質を用いてミトコンドリア標的化シグナル、及び40分時点での培養液中のSy5y細胞内のミトコンドリアで共局在化したバクテリオファージラムダを含むタンパク質形質導入ドメインを示した、共焦点蛍光顕微鏡写真のパネルである。該40-分での顕微鏡写真は、ミトコンドリア局在化を確認するためのミトコンドリア特異的色素、ミトトラッカー緑(Molecular Probes)を含む。
【図5】図5A、及び5Bは、赤蛍光性タンパク質(RFP)に対する抗体を用いて、特定の時点で生成したトランスフェクト細胞のウエスタンブロット ミトコンドリア断片である。
【図6A】図6Aは、ミトコンドリア断片に検出されたGFPメッセージを示すゲルである。
【図6B】図6Bは、パネル(a)-(d)を集めた図である。パネル(a)-(c)は、rho0細胞の共焦点蛍光顕微鏡写真である。(a) RFP組換えファージでトランスフェクションした24時間後のρ0細胞の出現;(b) 最初、pMLS-LambdaR (RFPなし)でトランスフェクトし、続いてSuperCos-1/mtDNA/GFPコスミドでトランスフェクトした;(c)ミトコンドリア位置を示すように(c)をミトトラッカー赤で染色したコンパニオンイメージである。パネル(d)は、ミトトラッカー赤ミトコンドリアクラスター、及びGFPレポーター遺伝子発現の間の蛍光強度の比較するための標的を定めなかったものである。
【図7】図7は、POLGのdsRNA ノックダウンを示すヒストグラムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞小器官局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインを含む組換えポリペプチドをコードしている、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
該細胞小器官局在化シグナルが、該タンパク質形質導入ドメインと機能的に結合している、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
該組換えポリペプチドが、該タンパク質形質導入ドメインを除去するための切断部位を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
該タンパク質形質導入ドメインが、標的とされる細胞小器官内で切断される該組換えポリペプチド内に位置している、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
該組換えポリペプチドが、ウイルスポリペプチドである、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
該ウイルスポリペプチドが、ウイルス表面ポリペプチドである、請求項5記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
該ウイルス表面ポリペプチドが、バクテリオファージ表面ポリペプチドである、請求項6記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
該バクテリオファージ表面ポリペプチドが、バクテリオファージラムダ表面ポリペプチドである、請求項7記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
該ウイルス表面ポリペプチドが、キャプシド、及び尾部タンパク質からなる群から選択される、請求項7記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
s至急
該ウイルス表面ペプチドが、gpD (配列番号:5)と80〜100%の相同性である、請求項6記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
該細胞小器官局在化シグナルが、ミトコンドリア局在化シグナルである、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
該ミトコンドリア局在化シグナルが、下記からなる群から選択されたミトコンドリア局在化シグナルと80〜100%の相同性を有する配列を含む、請求項11記載のポリヌクレオチド:ヘキソキナーゼ I、アミンオキシダーゼ (フラビン-含有) A、ヘキソキナーゼ IV、膵臓ベータ細胞形態、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ-関連タンパク質、メタキシン2、推定ミトコンドリア外膜タンパク質移入レセプタ(hTOM)、グルタチオントランスフェラーゼ;電位-依存性アニオンチャネル2(外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ヘキソキナーゼ IV、シトクロム b5、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ、生殖細胞キナーゼアンカーS-AKAP84、Aキナーゼアンカータンパク質、カルニチン O-パルミトイルトランスフェラーゼ I 前駆体、ヘキソキナーゼ II、アミンオキシダーゼ(フラビン-含有)B、長鎖-脂肪酸--CoA リガーゼ 2、長鎖-脂肪酸--CoA リガーゼ 1 (パルミトイル-CoA リガーゼ)、電位-依存性アニオンチャネル 1、メタキシン 1、ヒト推定 外部ミトコンドリア膜 34 kDa 転移酵素 hTOM34、電位-依存性アニオンチャネル 4 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、シトクロム-b5 レダクターゼ、電位-依存性アニオンチャネル 3 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ミトコンドリア移入レセプタサブユニットTOM20相同体(ミトコンドリア20 kD外膜タンパク質) (外部ミトコンドリア膜 レセプタ TOM20)、腫瘍性成虫原基相同体の前駆体(HTID-1)、及び配列番号:7〜177である。
【請求項13】
該タンパク質形質導入ドメインが、生理的条件下で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を複数個含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
該タンパク質形質導入ドメインが、8〜15個のアミノ酸残基を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
該タンパク質形質導入ドメインが、11個のアルギニン残基を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
該タンパク質形質導入ドメインが、RKKRRQRRR (配列番号:4)を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
細胞小器官局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインを含む、組換えポリペプチド。
【請求項18】
該細胞小器官局在化シグナルが、該タンパク質形質導入ドメインと機能的に結合している、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項19】
該タンパク質形質導入ドメインを除去するための切断部位を含む、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項20】
該タンパク質形質導入ドメインが、標的とされた細胞小器官内で切断される該組換えポリペプチド内に位置している、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項21】
ベクターに機能的に結合している、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項22】
該ベクターが、ウイルスベクターである、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項23】
該ウイルスベクターが、バクテリオファージ ベクターである、請求項22記載の組換えポリペプチド。
【請求項24】
該バクテリオファージ ベクターが、ラムダバクテリオファージ ベクターである、請求項23記載の組換えポリペプチド。
【請求項25】
該ベクターの表面上にある、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項26】
該タンパク質形質導入ドメインが、該組換えポリペプチドの細胞膜通過を可能にする、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項27】
該細胞小器官局在化シグナルが、該組換えポリペプチドを、特定の細胞小器官へ方向付ける、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項28】
葉緑体局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインを含む組換えポリペプチドをコードしている、ポリヌクレオチド。
【請求項29】
該細胞小器官局在化シグナルが、該タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合している、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
該組換えポリペプチドが、該タンパク質形質導入ドメインを除去するための切断部位を含む、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
該タンパク質形質導入ドメインが、標的とされた細胞小器官内で切断される該組換えポリペプチド内に位置している、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
該組換えポリペプチドが、ウイルスポリペプチドである、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
該ウイルスポリペプチドが、ウイルス表面ポリペプチドである、請求項32記載のポリヌクレオチド。
【請求項34】
該ウイルス表面ポリペプチドが、バクテリオファージ表面ポリペプチドである、請求項33記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
該バクテリオファージ表面ポリペプチドが、バクテリオファージラムダ表面ポリペプチドである、請求項34記載のポリヌクレオチド。
【請求項36】
該葉緑体局在化シグナルが、下記からなる群から選択された葉緑体局在化シグナルと80〜100%の相同性を有する、請求項28記載のポリヌクレオチド:アピコブラスト リボソームタンパク質 S9の輸送ペプチドドメイン、エンドウ豆グルタチオンレダクターゼ(GR)シグナルペプチド、推定グアノシン 3',5'-ビスピロリン酸 (ppGpp) シンターゼ-デグラダーゼをコードしているCr-RSH のNH2-末端、14-3-3タンパク質、cpSRP54, cpSRP43 サブユニット,又はこれらの断片を含む葉緑体シグナル認識粒子、膜貫通領域(TMD),及びそのC-末端に隣接している7-アミノ酸領域を含む葉緑体輸送ペプチド、THI1 N-末端 葉緑体輸送ペプチド、及び配列番号:178〜194である。
【請求項37】
該ウイルス表面ポリペプチドが、gpD (配列番号:5)と80〜100%の相同性を有するポリペプチドを含む、請求項33記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
該タンパク質形質導入ドメインが、生理的条件下で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を複数個含む、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
該タンパク質形質導入ドメインが、8〜15個のアミノ酸残基を含む、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
該タンパク質形質導入ドメインが、11個のアルギニン残基を含む、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
請求項1記載のポリヌクレオチドを含む、組換えウイルスベクター。
【請求項42】
該ベクターが、バクテリオファージ ベクターである、請求項41記載の組換えウイルスベクター。
【請求項43】
該ベクターが、ラムダバクテリオファージ ベクターである、請求項42記載の組換えウイルスベクター。
【請求項44】
バクテリオファージを含有した改質細胞小器官を含む、細胞。
【請求項45】
該細胞小器官が、ミトコンドリア、及び葉緑体からなる群から選択される、請求項44記載の細胞。
【請求項46】
真核細胞をである、請求項44記載の細胞。
【請求項47】
該バクテリオファージが、ラムダバクテリオファージである、請求項44記載の細胞。
【請求項48】
該バクテリオファージが、組換えバクテリオファージである、請求項44記載の細胞。
【請求項49】
該バクテリオファージが、ミトコンドリア局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインをコードしているポリヌクレオチドを含む、請求項44記載の細胞。
【請求項50】
該バクテリオファージが、葉緑体局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインをコードしているポリヌクレオチドを含む、請求項44記載の細胞。
【請求項51】
該葉緑体局在化シグナルが、下記からなる群から選択された葉緑体局在化シグナルと80〜100%の相同性を有する、請求項44記載の細胞:アピコブラスト リボソームタンパク質 S9の輸送ペプチドドメイン、エンドウ豆グルタチオンレダクターゼ(GR)シグナルペプチド、推定グアノシン 3',5'-ビスピロリン酸 (ppGpp) シンターゼ-デグラダーゼをコードしているCr-RSH のNH2-末端、14-3-3タンパク質、cpSRP54, cpSRP43 サブユニット,又はこれらの断片を含む葉緑体シグナル認識粒子、膜貫通領域 (TMD),及びそのC-末端に隣接している7-アミノ酸領域を含む葉緑体輸送ペプチドAtOEP7、THI1 N-末端 葉緑体輸送ペプチド、及び配列番号:178〜194である。
【請求項52】
該タンパク質形質導入ドメインが、生理的条件下で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を複数個含む、請求項49記載の細胞。
【請求項53】
該タンパク質形質導入ドメインが、8〜15個のアミノ酸残基を含む、請求項49記載の細胞。
【請求項54】
該タンパク質形質導入ドメインが、11個のアルギニン残基を含む、請求項49記載の細胞。
【請求項55】
細胞と、ポリペプチドに機能的に結合したベクターとを接触させる段階を含む、該細胞へのトランスフェクション方法であって、該ポリペプチドは、タンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官標的化シグナルを含む、前記方法。
【請求項56】
該ベクターが、その表面上に該ポリペプチドを発現する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
該ベクターが、該タンパク質形質導入ドメインを介して、細胞外膜を通過する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記細胞小器官標的化シグナルが、該ベクターを特定の細胞小器官へ方向付ける、請求項57記載の方法。
【請求項59】
該ベクターが、該特定の細胞小器官の膜を通過する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
該細胞小器官標的化シグナルが、ミトコンドリア、又は葉緑体に対して特異的である、請求項55記載の方法。
【請求項61】
該ベクターが、ウイルスベクターである、請求項55記載の方法。
【請求項62】
該ウイルスベクターが、バクテリオファージ ベクターである、請求項61記載の方法。
【請求項63】
該バクテリオファージ ベクターが、ラムダバクテリオファージ ベクターである、請求項62記載の方法。
【請求項64】
該細胞小器官標的化シグナルが、下記からなる群から選択される細胞小器官標的化シグナルと80〜100%の相同性を有する、請求項55記載の方法:ヘキソキナーゼ I、アミンオキシダーゼ (フラビン-含有)A、ヘキソキナーゼIV、膵臓ベータ細胞形態、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ-関連タンパク質、メタキシン2、推定ミトコンドリア外膜タンパク質移入レセプタ(hTOM)、グルタチオントランスフェラーゼ; 電位-依存性アニオンチャネル 2 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ヘキソキナーゼIV、シトクロムb5、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ、生殖細胞キナーゼアンカーS-AKAP84、Aキナーゼアンカータンパク質、カルニチンO-パルミトイルトランスフェラーゼ I 前駆体、ヘキソキナーゼII、アミンオキシダーゼ(フラビン-含有) B、長鎖-脂肪酸--CoAリガーゼ2、長鎖-脂肪酸--CoAリガーゼ1(パルミトイル-CoAリガーゼ)、電位-依存性アニオンチャネル1、メタキシン1、ヒト推定 外部ミトコンドリア膜 34 kDa 転移酵素 hTOM34、電位-依存性アニオンチャネル4 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、シトクロム-b5 レダクターゼ、電位-依存性アニオンチャネル3 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ミトコンドリア移入レセプタ サブユニットTOM20相同体 (ミトコンドリア20 kd 外膜タンパク質) (外部ミトコンドリア膜 レセプタ TOM20), 腫瘍性成虫原基 相同体の前駆体 (HTID-1), アピコブラストリボソームタンパク質 S9の輸送ペプチドドメイン、エンドウ豆グルタチオンレダクターゼ(GR)シグナルペプチド、推定グアノシン 3',5'-ビスピロリン酸 (ppGpp) シンターゼ-デグラダーゼをコードしているCr-RSH のNH2-末端、14-3-3 タンパク質、cpSRP54, cpSRP43 サブユニット,又はこれらの断片を含む葉緑体シグナル認識粒子、膜貫通領域 (TMD),及びそのC-末端に隣接している7-アミノ酸領域を含む葉緑体輸送ペプチドAtOEP7、THI1 N-末端 葉緑体輸送ペプチド、及び配列番号:7〜194である。
【請求項65】
該タンパク質形質導入ドメインが、生理的条件下で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を複数個含む、請求項55記載の方法。
【請求項66】
該タンパク質形質導入ドメインが、8〜15個のアミノ酸残基を含む、請求項55記載の方法。
【請求項67】
該タンパク質形質導入ドメインが、11個のアルギニン残基を含む、請求項55記載の方法。
【請求項66】
組換えラムダファージを、細胞にトランスフェクトする段階を含む、細胞小器官の改質方法であって、該組換えラムダファージは、バクテリオファージラムダ表面タンパク質に機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルをコードしているポリヌクレオチドを含み;
該細胞小器官局在化シグナルが、該組換えラムダファージの表面上に提示され、かつ該組換えラムダファージを該細胞小器官へ方向付けし;かつ
該組換えラムダファージが、該細胞小器官内にポリヌクレオチドを導入する、前記方法。
【請求項67】
該細胞小器官がミトコンドリアであり、かつ該細胞小器官局在化シグナルが、ヒト シトクロム オキシダーゼのサブユニットVIIIの断片を少なくとも1つ含む、請求項66記載の方法。
【請求項68】
バクテリオファージラムダ表面ポリペプチドに機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルをコードしているポリヌクレオチド;及び組換えラムダベクター調製用のバクテリオファージラムダ凝集成分を含む、細胞小器官へのトランスフェクション用キット。
【請求項69】
該局在化シグナルが、葉緑体局在化シグナルである、請求項68記載のキット。
【請求項70】
該局在化シグナルが、ミトコンドリア局在化シグナルである、請求項68記載のキット。
【請求項71】
該局在化シグナルが、ヒト シトクロム オキシダーゼのサブユニットVIIIの断片を少なくとも1つ含む、請求項68記載のキット。
【請求項72】
バクテリオファージ表面ポリペプチドに機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルペプチドをコードしているポリヌクレオチド;及び組換えバクテリオファージ ベクターを含む、細胞小器官へのトランスフェクションシステム。
【請求項73】
組換えウイルスベクターを、細胞の細胞質ゾル内に導入する段階を含む、細胞小器官へのトランスフェクション方法であって、該組換えウイルスベクターが、その表面上に細胞小器官局在化シグナルを提示し、該ベクターを、トランスフェクトされる細胞小器官へ方向付ける、前記方法。
【請求項74】
該組換えウイルスベクターが、ラムダバクテリオファージであり、かつ前記細胞小器官局在化シグナルが、下記からなる群から選択される細胞小器官局在化シグナルと80〜100%の相同性を有する、請求項73記載の方法:ヘキソキナーゼ I、アミンオキシダーゼ (フラビン-含有)A、ヘキソキナーゼIV、膵臓ベータ細胞形態、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ-関連タンパク質、メタキシン2、推定ミトコンドリア外膜タンパク質移入レセプタ(hTOM)、グルタチオントランスフェラーゼ; 電位-依存性アニオンチャネル 2 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ヘキソキナーゼIV、シトクロムb5、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ、生殖細胞キナーゼアンカーS-AKAP84、Aキナーゼアンカータンパク質、カルニチンO-パルミトイルトランスフェラーゼ I 前駆体、ヘキソキナーゼII、アミンオキシダーゼ(フラビン-含有) B、長鎖-脂肪酸--CoAリガーゼ2、長鎖-脂肪酸--CoAリガーゼ1(パルミトイル-CoAリガーゼ)、電位-依存性アニオンチャネル1、メタキシン1、ヒト推定 外部ミトコンドリア膜 34 kDa 転移酵素 hTOM34、電位-依存性アニオンチャネル4 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、シトクロム-b5 レダクターゼ、電位-依存性アニオンチャネル3 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ミトコンドリア移入レセプタ サブユニットTOM20相同体 (ミトコンドリア 20 kd 外膜タンパク質) (外部ミトコンドリア膜 レセプタ TOM20), 腫瘍性成虫原基 相同体の前駆体 (HTID-1), アピコブラストリボソームタンパク質 S9の輸送ペプチドドメイン、エンドウ豆グルタチオンレダクターゼ(GR)シグナルペプチド、推定グアノシン 3',5'-ビスピロリン酸 (ppGpp) シンターゼ-デグラダーゼをコードしているCr-RSH のNH2-末端、14-3-3 タンパク質、cpSRP54, cpSRP43 サブユニット,又はこれらの断片を含む葉緑体シグナル認識粒子、膜貫通領域 (TMD),及びそのC-末端に隣接している7-アミノ酸領域を含む葉緑体輸送ペプチドAtOEP7、THI1 N-末端 葉緑体輸送ペプチド、及び配列番号:7〜194である。
【請求項75】
タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルを含む組み換えポリペプチドを含む組成物であって、該組換えポリペプチドは、ポリヌクレオチドに機能的に結合する、前記組成物。
【請求項76】
細胞と、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア局在化シグナルを含む組換えポリペプチドを提示する組換えベクターとを接触させることを含む、該細胞の代謝を改質する方法であって: 該組換えベクターは、機能性呼吸鎖成分をコードしているポリヌクレオチドを含み、該機能性呼吸鎖成分が、該細胞により発現された場合に、少なくとも1つの不完全な呼吸鎖成分を補償する、前記方法。
【請求項77】
該機能性呼吸鎖成分が、該細胞の少なくとも1つのミトコンドリア中で発現される、請求項76記載の方法。
【請求項78】
該ベクターが、その表面上に提示される該組換えポリペプチドをコードしている、請求項76記載の方法。
【請求項79】
該ベクターが、該タンパク質形質導入ドメインを介して、細胞の外膜を通過する、請求項78記載の方法。
【請求項80】
該細胞が、真核細胞である、請求項76記載の方法。
【請求項81】
細胞と、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア局在化シグナルを含む組換えポリペプチドを提示する組換えベクターとを接触させることを含む、該細胞中のシトクロム オキシダーゼ活性の改質方法であって:該組換えベクターは、機能性シトクロム オキシダーゼ サブユニットをコードしており、該機能性シトクロム オキシダーゼ サブユニットが、該細胞のシトクロム オキシダーゼ活性を改質する、前記方法。
【請求項82】
該機能性シトクロム オキシダーゼ サブユニットが、該細胞の少なくとも1つのミトコンドリア内で発現される、請求項81記載の方法。
【請求項83】
該ベクターが、その表面上に提示される該組換えポリペプチドをコードしている、請求項81記載の方法。
【請求項84】
該ベクターが、該タンパク質形質導入ドメインを介して、細胞の外膜を通過する、請求項81記載の方法。
【請求項85】
mtDNA変異を有する宿主細胞と、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア局在化シグナルを含む組換えポリペプチドを発現する組換えベクターとを接触させる段階を含む、宿主内のmtDNA変異を補償する方法であって:該組換えベクターは、該mtDNA変異に対応する機能性産物をもコードしている、前記方法。
【請求項86】
該接触段階を、インビトロ、又はインビボで行う、請求項84記載の方法。
【請求項87】
該ベクターが、その表面上に該組換えポリペプチドを発現する、請求項84記載の方法。
【請求項88】
該ベクターが、該タンパク質形質導入ドメインを介して、該細胞の外膜を通過する、請求項84記載の方法。
【請求項89】
改質した表面ポリペプチドを含む、組換えバクテリオファージであって、該改質した表面ポリペプチドが、タンパク質形質導入ドメインを含む、前記バクテリオファージ。
【請求項90】
改質した表面ポリペプチドを含む、組換えバクテリオファージであって、該改質した表面ポリペプチドが、細胞小器官局在化シグナルを含む、前記バクテリオファージ。
【請求項91】
改質した表面ポリペプチドを含む、組換えバクテリオファージであって、該改質した表面ポリペプチドが、細胞小器官局在化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインを含む、前記バクテリオファージ。
【請求項92】
宿主細胞と、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア局在化シグナルを含む組換えポリペプチドを提示する組換えベクターとを接触させることを含む、宿主のミトコンドリア疾患の治療方法であって:該組換えベクターは、機能性ミトコンドリア ポリペプチドをコードしており、該組換えベクターを、宿主のミトコンドリアの少なくとも1つにトランスフェクトすることで、該宿主細胞が、該少なくとも1つのトランスフェクションされたミトコンドリア内で、該機能性ミトコンドリア ポリペプチドの発現を可能にする、前記方法。
【請求項93】
該接触を、インビトロ、又はインビボで行う、請求項84記載の方法。
【請求項94】
該ミトコンドリア疾患が、下記からなる群から選択される、請求項91記載の方法:アルパーズ病; バース症候群; β-酸化異常; カルニチン-アシル-カルニチン欠損症; カルニチン欠損症; 補酵素Q10欠乏症; 複合体 I 欠損症; 複合体 II 欠損症; 複合体 III 欠損症; 複合体 IV 欠損症; 複合体 V 欠損症; シトクロム c オキシダーゼ (COX) 欠損症; 慢性進行性外眼筋麻痺症 (CPEO); CPT I 欠損症; CPT II 欠損症; グルタル酸尿症II型; 乳酸アシドーシス; 長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (LCAD); LCHAD; ミトコンドリア性細胞障害; ミトコンドリアDNA減少; ミトコンドリア脳症; ミトコンドリアミオパシー; 乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作を伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS); 赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん (MERRF); 母性遺伝のリー症候群 (MILS); ミオガストロインテスティナル脳筋症 (MNGIE); 神経障害、運動失調、及び色素性網膜炎 (NARP); レーベル病 (LHON); 進行性外眼筋麻痺 (PEO); ピアソン症候群; キーンズ-セイアー症候群 (KSS); リー症候群; 間欠性自律神経障害; ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症; ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症; 呼吸鎖変異、及び欠失; 単鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (SCAD); SCHAD;及び超長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (VLCAD)である。
【請求項95】
細胞と、POLγ に対応する少なくとも1つのsiRNAとを接触させることを含む、mtDNA減少細胞の製造方法。
【請求項96】
該siRNAが、表3に示したsiRNA、若しくは表3、又は配列番号195〜574に示されたsiRNAsと80〜100%の相同性を有する配列から選択されたものである、請求項95記載の方法。
【請求項97】
POLγ RNA阻害の標的配列が、表3のPOLγ 標的配列から選択されたものである、請求項95記載の方法。
【請求項98】
細胞と、mtDNA複製、又は転写の阻害剤とを接触させることを含む、該細胞中のmtDNAを減少する方法。
【請求項99】
該mtDNA複製の阻害剤が、アンチセンスポリヌクレオチド、又はsiRNAを含む、請求項98記載の方法。
【請求項100】
該阻害剤が、DNA、RNA、又はこれらの組み合わせを含む、請求項98記載の方法。
【請求項101】
該阻害剤が、表3から選択されたものである、請求項98記載の方法。
【請求項102】
該阻害剤が、ミトコンドリアDNA転写、又は複製に関与する遺伝子に特異的である、請求項98記載の方法。
【請求項103】
該遺伝子が、POLγ、TFAM A及びB、及びmtSSBからなる群から選択されたものである、請求項102記載の方法。
【請求項104】
該遺伝子が、ミトコンドリアポリメラーゼをコードしている、請求項102記載の方法。
【請求項105】
ミトコンドリアポリメラーゼをコードしているポリヌクレオチドと特異的に結合する阻害性ポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項106】
ミトコンドリアポリメラーゼに特異的なsiRNAを含む、細胞。
【請求項107】
該ミトコンドリアポリメラーゼが、POLγである、請求項106記載の細胞。
【請求項108】
該siRNAが、表3に示したsiRNAから選択されたものである、請求項106記載の細胞。
【請求項109】
該阻害性ポリヌクレオチドが、アンチセンス ポリヌクレオチドを含む、請求項105記載の細胞。
【請求項110】
該細胞が、該阻害性ポリヌクレオチドを発現するベクターを含む、請求項105記載の細胞。
【請求項111】
ミトコンドリアポリメラーゼと特異的に結合し、かつ該ミトコンドリアポリメラーゼを阻害する阻害性ポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項112】
(a)該ウイルス粒子の表面に機能的に結合されたタンパク質形質導入ドメイン;(b)該ウイルス粒子の表面に機能的に結合された標的化シグナル;及び(c)ポリヌクレオチドを含む、ウイルス粒子。
【請求項113】
標的化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインをコードしているポリヌクレオチドを含むベクターであって、該標的化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインを、該ベクターの外部表面上に発現する、前記ベクター。
【請求項1】
細胞小器官局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインを含む組換えポリペプチドをコードしている、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
該細胞小器官局在化シグナルが、該タンパク質形質導入ドメインと機能的に結合している、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
該組換えポリペプチドが、該タンパク質形質導入ドメインを除去するための切断部位を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
該タンパク質形質導入ドメインが、標的とされる細胞小器官内で切断される該組換えポリペプチド内に位置している、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
該組換えポリペプチドが、ウイルスポリペプチドである、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
該ウイルスポリペプチドが、ウイルス表面ポリペプチドである、請求項5記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
該ウイルス表面ポリペプチドが、バクテリオファージ表面ポリペプチドである、請求項6記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
該バクテリオファージ表面ポリペプチドが、バクテリオファージラムダ表面ポリペプチドである、請求項7記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
該ウイルス表面ポリペプチドが、キャプシド、及び尾部タンパク質からなる群から選択される、請求項7記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
s至急
該ウイルス表面ペプチドが、gpD (配列番号:5)と80〜100%の相同性である、請求項6記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
該細胞小器官局在化シグナルが、ミトコンドリア局在化シグナルである、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
該ミトコンドリア局在化シグナルが、下記からなる群から選択されたミトコンドリア局在化シグナルと80〜100%の相同性を有する配列を含む、請求項11記載のポリヌクレオチド:ヘキソキナーゼ I、アミンオキシダーゼ (フラビン-含有) A、ヘキソキナーゼ IV、膵臓ベータ細胞形態、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ-関連タンパク質、メタキシン2、推定ミトコンドリア外膜タンパク質移入レセプタ(hTOM)、グルタチオントランスフェラーゼ;電位-依存性アニオンチャネル2(外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ヘキソキナーゼ IV、シトクロム b5、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ、生殖細胞キナーゼアンカーS-AKAP84、Aキナーゼアンカータンパク質、カルニチン O-パルミトイルトランスフェラーゼ I 前駆体、ヘキソキナーゼ II、アミンオキシダーゼ(フラビン-含有)B、長鎖-脂肪酸--CoA リガーゼ 2、長鎖-脂肪酸--CoA リガーゼ 1 (パルミトイル-CoA リガーゼ)、電位-依存性アニオンチャネル 1、メタキシン 1、ヒト推定 外部ミトコンドリア膜 34 kDa 転移酵素 hTOM34、電位-依存性アニオンチャネル 4 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、シトクロム-b5 レダクターゼ、電位-依存性アニオンチャネル 3 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ミトコンドリア移入レセプタサブユニットTOM20相同体(ミトコンドリア20 kD外膜タンパク質) (外部ミトコンドリア膜 レセプタ TOM20)、腫瘍性成虫原基相同体の前駆体(HTID-1)、及び配列番号:7〜177である。
【請求項13】
該タンパク質形質導入ドメインが、生理的条件下で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を複数個含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
該タンパク質形質導入ドメインが、8〜15個のアミノ酸残基を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
該タンパク質形質導入ドメインが、11個のアルギニン残基を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
該タンパク質形質導入ドメインが、RKKRRQRRR (配列番号:4)を含む、請求項1記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
細胞小器官局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインを含む、組換えポリペプチド。
【請求項18】
該細胞小器官局在化シグナルが、該タンパク質形質導入ドメインと機能的に結合している、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項19】
該タンパク質形質導入ドメインを除去するための切断部位を含む、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項20】
該タンパク質形質導入ドメインが、標的とされた細胞小器官内で切断される該組換えポリペプチド内に位置している、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項21】
ベクターに機能的に結合している、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項22】
該ベクターが、ウイルスベクターである、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項23】
該ウイルスベクターが、バクテリオファージ ベクターである、請求項22記載の組換えポリペプチド。
【請求項24】
該バクテリオファージ ベクターが、ラムダバクテリオファージ ベクターである、請求項23記載の組換えポリペプチド。
【請求項25】
該ベクターの表面上にある、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項26】
該タンパク質形質導入ドメインが、該組換えポリペプチドの細胞膜通過を可能にする、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項27】
該細胞小器官局在化シグナルが、該組換えポリペプチドを、特定の細胞小器官へ方向付ける、請求項17記載の組換えポリペプチド。
【請求項28】
葉緑体局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインを含む組換えポリペプチドをコードしている、ポリヌクレオチド。
【請求項29】
該細胞小器官局在化シグナルが、該タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合している、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
該組換えポリペプチドが、該タンパク質形質導入ドメインを除去するための切断部位を含む、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
該タンパク質形質導入ドメインが、標的とされた細胞小器官内で切断される該組換えポリペプチド内に位置している、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
該組換えポリペプチドが、ウイルスポリペプチドである、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
該ウイルスポリペプチドが、ウイルス表面ポリペプチドである、請求項32記載のポリヌクレオチド。
【請求項34】
該ウイルス表面ポリペプチドが、バクテリオファージ表面ポリペプチドである、請求項33記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
該バクテリオファージ表面ポリペプチドが、バクテリオファージラムダ表面ポリペプチドである、請求項34記載のポリヌクレオチド。
【請求項36】
該葉緑体局在化シグナルが、下記からなる群から選択された葉緑体局在化シグナルと80〜100%の相同性を有する、請求項28記載のポリヌクレオチド:アピコブラスト リボソームタンパク質 S9の輸送ペプチドドメイン、エンドウ豆グルタチオンレダクターゼ(GR)シグナルペプチド、推定グアノシン 3',5'-ビスピロリン酸 (ppGpp) シンターゼ-デグラダーゼをコードしているCr-RSH のNH2-末端、14-3-3タンパク質、cpSRP54, cpSRP43 サブユニット,又はこれらの断片を含む葉緑体シグナル認識粒子、膜貫通領域(TMD),及びそのC-末端に隣接している7-アミノ酸領域を含む葉緑体輸送ペプチド、THI1 N-末端 葉緑体輸送ペプチド、及び配列番号:178〜194である。
【請求項37】
該ウイルス表面ポリペプチドが、gpD (配列番号:5)と80〜100%の相同性を有するポリペプチドを含む、請求項33記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
該タンパク質形質導入ドメインが、生理的条件下で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を複数個含む、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
該タンパク質形質導入ドメインが、8〜15個のアミノ酸残基を含む、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
該タンパク質形質導入ドメインが、11個のアルギニン残基を含む、請求項28記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
請求項1記載のポリヌクレオチドを含む、組換えウイルスベクター。
【請求項42】
該ベクターが、バクテリオファージ ベクターである、請求項41記載の組換えウイルスベクター。
【請求項43】
該ベクターが、ラムダバクテリオファージ ベクターである、請求項42記載の組換えウイルスベクター。
【請求項44】
バクテリオファージを含有した改質細胞小器官を含む、細胞。
【請求項45】
該細胞小器官が、ミトコンドリア、及び葉緑体からなる群から選択される、請求項44記載の細胞。
【請求項46】
真核細胞をである、請求項44記載の細胞。
【請求項47】
該バクテリオファージが、ラムダバクテリオファージである、請求項44記載の細胞。
【請求項48】
該バクテリオファージが、組換えバクテリオファージである、請求項44記載の細胞。
【請求項49】
該バクテリオファージが、ミトコンドリア局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインをコードしているポリヌクレオチドを含む、請求項44記載の細胞。
【請求項50】
該バクテリオファージが、葉緑体局在化シグナル、及びタンパク質形質導入ドメインをコードしているポリヌクレオチドを含む、請求項44記載の細胞。
【請求項51】
該葉緑体局在化シグナルが、下記からなる群から選択された葉緑体局在化シグナルと80〜100%の相同性を有する、請求項44記載の細胞:アピコブラスト リボソームタンパク質 S9の輸送ペプチドドメイン、エンドウ豆グルタチオンレダクターゼ(GR)シグナルペプチド、推定グアノシン 3',5'-ビスピロリン酸 (ppGpp) シンターゼ-デグラダーゼをコードしているCr-RSH のNH2-末端、14-3-3タンパク質、cpSRP54, cpSRP43 サブユニット,又はこれらの断片を含む葉緑体シグナル認識粒子、膜貫通領域 (TMD),及びそのC-末端に隣接している7-アミノ酸領域を含む葉緑体輸送ペプチドAtOEP7、THI1 N-末端 葉緑体輸送ペプチド、及び配列番号:178〜194である。
【請求項52】
該タンパク質形質導入ドメインが、生理的条件下で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を複数個含む、請求項49記載の細胞。
【請求項53】
該タンパク質形質導入ドメインが、8〜15個のアミノ酸残基を含む、請求項49記載の細胞。
【請求項54】
該タンパク質形質導入ドメインが、11個のアルギニン残基を含む、請求項49記載の細胞。
【請求項55】
細胞と、ポリペプチドに機能的に結合したベクターとを接触させる段階を含む、該細胞へのトランスフェクション方法であって、該ポリペプチドは、タンパク質形質導入ドメイン、及び細胞小器官標的化シグナルを含む、前記方法。
【請求項56】
該ベクターが、その表面上に該ポリペプチドを発現する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
該ベクターが、該タンパク質形質導入ドメインを介して、細胞外膜を通過する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記細胞小器官標的化シグナルが、該ベクターを特定の細胞小器官へ方向付ける、請求項57記載の方法。
【請求項59】
該ベクターが、該特定の細胞小器官の膜を通過する、請求項58記載の方法。
【請求項60】
該細胞小器官標的化シグナルが、ミトコンドリア、又は葉緑体に対して特異的である、請求項55記載の方法。
【請求項61】
該ベクターが、ウイルスベクターである、請求項55記載の方法。
【請求項62】
該ウイルスベクターが、バクテリオファージ ベクターである、請求項61記載の方法。
【請求項63】
該バクテリオファージ ベクターが、ラムダバクテリオファージ ベクターである、請求項62記載の方法。
【請求項64】
該細胞小器官標的化シグナルが、下記からなる群から選択される細胞小器官標的化シグナルと80〜100%の相同性を有する、請求項55記載の方法:ヘキソキナーゼ I、アミンオキシダーゼ (フラビン-含有)A、ヘキソキナーゼIV、膵臓ベータ細胞形態、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ-関連タンパク質、メタキシン2、推定ミトコンドリア外膜タンパク質移入レセプタ(hTOM)、グルタチオントランスフェラーゼ; 電位-依存性アニオンチャネル 2 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ヘキソキナーゼIV、シトクロムb5、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ、生殖細胞キナーゼアンカーS-AKAP84、Aキナーゼアンカータンパク質、カルニチンO-パルミトイルトランスフェラーゼ I 前駆体、ヘキソキナーゼII、アミンオキシダーゼ(フラビン-含有) B、長鎖-脂肪酸--CoAリガーゼ2、長鎖-脂肪酸--CoAリガーゼ1(パルミトイル-CoAリガーゼ)、電位-依存性アニオンチャネル1、メタキシン1、ヒト推定 外部ミトコンドリア膜 34 kDa 転移酵素 hTOM34、電位-依存性アニオンチャネル4 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、シトクロム-b5 レダクターゼ、電位-依存性アニオンチャネル3 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ミトコンドリア移入レセプタ サブユニットTOM20相同体 (ミトコンドリア20 kd 外膜タンパク質) (外部ミトコンドリア膜 レセプタ TOM20), 腫瘍性成虫原基 相同体の前駆体 (HTID-1), アピコブラストリボソームタンパク質 S9の輸送ペプチドドメイン、エンドウ豆グルタチオンレダクターゼ(GR)シグナルペプチド、推定グアノシン 3',5'-ビスピロリン酸 (ppGpp) シンターゼ-デグラダーゼをコードしているCr-RSH のNH2-末端、14-3-3 タンパク質、cpSRP54, cpSRP43 サブユニット,又はこれらの断片を含む葉緑体シグナル認識粒子、膜貫通領域 (TMD),及びそのC-末端に隣接している7-アミノ酸領域を含む葉緑体輸送ペプチドAtOEP7、THI1 N-末端 葉緑体輸送ペプチド、及び配列番号:7〜194である。
【請求項65】
該タンパク質形質導入ドメインが、生理的条件下で正味の正電荷を有するアミノ酸残基を複数個含む、請求項55記載の方法。
【請求項66】
該タンパク質形質導入ドメインが、8〜15個のアミノ酸残基を含む、請求項55記載の方法。
【請求項67】
該タンパク質形質導入ドメインが、11個のアルギニン残基を含む、請求項55記載の方法。
【請求項66】
組換えラムダファージを、細胞にトランスフェクトする段階を含む、細胞小器官の改質方法であって、該組換えラムダファージは、バクテリオファージラムダ表面タンパク質に機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルをコードしているポリヌクレオチドを含み;
該細胞小器官局在化シグナルが、該組換えラムダファージの表面上に提示され、かつ該組換えラムダファージを該細胞小器官へ方向付けし;かつ
該組換えラムダファージが、該細胞小器官内にポリヌクレオチドを導入する、前記方法。
【請求項67】
該細胞小器官がミトコンドリアであり、かつ該細胞小器官局在化シグナルが、ヒト シトクロム オキシダーゼのサブユニットVIIIの断片を少なくとも1つ含む、請求項66記載の方法。
【請求項68】
バクテリオファージラムダ表面ポリペプチドに機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルをコードしているポリヌクレオチド;及び組換えラムダベクター調製用のバクテリオファージラムダ凝集成分を含む、細胞小器官へのトランスフェクション用キット。
【請求項69】
該局在化シグナルが、葉緑体局在化シグナルである、請求項68記載のキット。
【請求項70】
該局在化シグナルが、ミトコンドリア局在化シグナルである、請求項68記載のキット。
【請求項71】
該局在化シグナルが、ヒト シトクロム オキシダーゼのサブユニットVIIIの断片を少なくとも1つ含む、請求項68記載のキット。
【請求項72】
バクテリオファージ表面ポリペプチドに機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルペプチドをコードしているポリヌクレオチド;及び組換えバクテリオファージ ベクターを含む、細胞小器官へのトランスフェクションシステム。
【請求項73】
組換えウイルスベクターを、細胞の細胞質ゾル内に導入する段階を含む、細胞小器官へのトランスフェクション方法であって、該組換えウイルスベクターが、その表面上に細胞小器官局在化シグナルを提示し、該ベクターを、トランスフェクトされる細胞小器官へ方向付ける、前記方法。
【請求項74】
該組換えウイルスベクターが、ラムダバクテリオファージであり、かつ前記細胞小器官局在化シグナルが、下記からなる群から選択される細胞小器官局在化シグナルと80〜100%の相同性を有する、請求項73記載の方法:ヘキソキナーゼ I、アミンオキシダーゼ (フラビン-含有)A、ヘキソキナーゼIV、膵臓ベータ細胞形態、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ-関連タンパク質、メタキシン2、推定ミトコンドリア外膜タンパク質移入レセプタ(hTOM)、グルタチオントランスフェラーゼ; 電位-依存性アニオンチャネル 2 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ヘキソキナーゼIV、シトクロムb5、末梢ベンゾジアゼピンレセプタ、生殖細胞キナーゼアンカーS-AKAP84、Aキナーゼアンカータンパク質、カルニチンO-パルミトイルトランスフェラーゼ I 前駆体、ヘキソキナーゼII、アミンオキシダーゼ(フラビン-含有) B、長鎖-脂肪酸--CoAリガーゼ2、長鎖-脂肪酸--CoAリガーゼ1(パルミトイル-CoAリガーゼ)、電位-依存性アニオンチャネル1、メタキシン1、ヒト推定 外部ミトコンドリア膜 34 kDa 転移酵素 hTOM34、電位-依存性アニオンチャネル4 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、シトクロム-b5 レダクターゼ、電位-依存性アニオンチャネル3 (外部ミトコンドリア膜タンパク質ポーリン)、ミトコンドリア移入レセプタ サブユニットTOM20相同体 (ミトコンドリア 20 kd 外膜タンパク質) (外部ミトコンドリア膜 レセプタ TOM20), 腫瘍性成虫原基 相同体の前駆体 (HTID-1), アピコブラストリボソームタンパク質 S9の輸送ペプチドドメイン、エンドウ豆グルタチオンレダクターゼ(GR)シグナルペプチド、推定グアノシン 3',5'-ビスピロリン酸 (ppGpp) シンターゼ-デグラダーゼをコードしているCr-RSH のNH2-末端、14-3-3 タンパク質、cpSRP54, cpSRP43 サブユニット,又はこれらの断片を含む葉緑体シグナル認識粒子、膜貫通領域 (TMD),及びそのC-末端に隣接している7-アミノ酸領域を含む葉緑体輸送ペプチドAtOEP7、THI1 N-末端 葉緑体輸送ペプチド、及び配列番号:7〜194である。
【請求項75】
タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合した細胞小器官局在化シグナルを含む組み換えポリペプチドを含む組成物であって、該組換えポリペプチドは、ポリヌクレオチドに機能的に結合する、前記組成物。
【請求項76】
細胞と、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア局在化シグナルを含む組換えポリペプチドを提示する組換えベクターとを接触させることを含む、該細胞の代謝を改質する方法であって: 該組換えベクターは、機能性呼吸鎖成分をコードしているポリヌクレオチドを含み、該機能性呼吸鎖成分が、該細胞により発現された場合に、少なくとも1つの不完全な呼吸鎖成分を補償する、前記方法。
【請求項77】
該機能性呼吸鎖成分が、該細胞の少なくとも1つのミトコンドリア中で発現される、請求項76記載の方法。
【請求項78】
該ベクターが、その表面上に提示される該組換えポリペプチドをコードしている、請求項76記載の方法。
【請求項79】
該ベクターが、該タンパク質形質導入ドメインを介して、細胞の外膜を通過する、請求項78記載の方法。
【請求項80】
該細胞が、真核細胞である、請求項76記載の方法。
【請求項81】
細胞と、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア局在化シグナルを含む組換えポリペプチドを提示する組換えベクターとを接触させることを含む、該細胞中のシトクロム オキシダーゼ活性の改質方法であって:該組換えベクターは、機能性シトクロム オキシダーゼ サブユニットをコードしており、該機能性シトクロム オキシダーゼ サブユニットが、該細胞のシトクロム オキシダーゼ活性を改質する、前記方法。
【請求項82】
該機能性シトクロム オキシダーゼ サブユニットが、該細胞の少なくとも1つのミトコンドリア内で発現される、請求項81記載の方法。
【請求項83】
該ベクターが、その表面上に提示される該組換えポリペプチドをコードしている、請求項81記載の方法。
【請求項84】
該ベクターが、該タンパク質形質導入ドメインを介して、細胞の外膜を通過する、請求項81記載の方法。
【請求項85】
mtDNA変異を有する宿主細胞と、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア局在化シグナルを含む組換えポリペプチドを発現する組換えベクターとを接触させる段階を含む、宿主内のmtDNA変異を補償する方法であって:該組換えベクターは、該mtDNA変異に対応する機能性産物をもコードしている、前記方法。
【請求項86】
該接触段階を、インビトロ、又はインビボで行う、請求項84記載の方法。
【請求項87】
該ベクターが、その表面上に該組換えポリペプチドを発現する、請求項84記載の方法。
【請求項88】
該ベクターが、該タンパク質形質導入ドメインを介して、該細胞の外膜を通過する、請求項84記載の方法。
【請求項89】
改質した表面ポリペプチドを含む、組換えバクテリオファージであって、該改質した表面ポリペプチドが、タンパク質形質導入ドメインを含む、前記バクテリオファージ。
【請求項90】
改質した表面ポリペプチドを含む、組換えバクテリオファージであって、該改質した表面ポリペプチドが、細胞小器官局在化シグナルを含む、前記バクテリオファージ。
【請求項91】
改質した表面ポリペプチドを含む、組換えバクテリオファージであって、該改質した表面ポリペプチドが、細胞小器官局在化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインを含む、前記バクテリオファージ。
【請求項92】
宿主細胞と、タンパク質形質導入ドメインに機能的に結合したミトコンドリア局在化シグナルを含む組換えポリペプチドを提示する組換えベクターとを接触させることを含む、宿主のミトコンドリア疾患の治療方法であって:該組換えベクターは、機能性ミトコンドリア ポリペプチドをコードしており、該組換えベクターを、宿主のミトコンドリアの少なくとも1つにトランスフェクトすることで、該宿主細胞が、該少なくとも1つのトランスフェクションされたミトコンドリア内で、該機能性ミトコンドリア ポリペプチドの発現を可能にする、前記方法。
【請求項93】
該接触を、インビトロ、又はインビボで行う、請求項84記載の方法。
【請求項94】
該ミトコンドリア疾患が、下記からなる群から選択される、請求項91記載の方法:アルパーズ病; バース症候群; β-酸化異常; カルニチン-アシル-カルニチン欠損症; カルニチン欠損症; 補酵素Q10欠乏症; 複合体 I 欠損症; 複合体 II 欠損症; 複合体 III 欠損症; 複合体 IV 欠損症; 複合体 V 欠損症; シトクロム c オキシダーゼ (COX) 欠損症; 慢性進行性外眼筋麻痺症 (CPEO); CPT I 欠損症; CPT II 欠損症; グルタル酸尿症II型; 乳酸アシドーシス; 長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (LCAD); LCHAD; ミトコンドリア性細胞障害; ミトコンドリアDNA減少; ミトコンドリア脳症; ミトコンドリアミオパシー; 乳酸アシドーシス、及び脳卒中様発作を伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS); 赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん (MERRF); 母性遺伝のリー症候群 (MILS); ミオガストロインテスティナル脳筋症 (MNGIE); 神経障害、運動失調、及び色素性網膜炎 (NARP); レーベル病 (LHON); 進行性外眼筋麻痺 (PEO); ピアソン症候群; キーンズ-セイアー症候群 (KSS); リー症候群; 間欠性自律神経障害; ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症; ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症; 呼吸鎖変異、及び欠失; 単鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (SCAD); SCHAD;及び超長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症 (VLCAD)である。
【請求項95】
細胞と、POLγ に対応する少なくとも1つのsiRNAとを接触させることを含む、mtDNA減少細胞の製造方法。
【請求項96】
該siRNAが、表3に示したsiRNA、若しくは表3、又は配列番号195〜574に示されたsiRNAsと80〜100%の相同性を有する配列から選択されたものである、請求項95記載の方法。
【請求項97】
POLγ RNA阻害の標的配列が、表3のPOLγ 標的配列から選択されたものである、請求項95記載の方法。
【請求項98】
細胞と、mtDNA複製、又は転写の阻害剤とを接触させることを含む、該細胞中のmtDNAを減少する方法。
【請求項99】
該mtDNA複製の阻害剤が、アンチセンスポリヌクレオチド、又はsiRNAを含む、請求項98記載の方法。
【請求項100】
該阻害剤が、DNA、RNA、又はこれらの組み合わせを含む、請求項98記載の方法。
【請求項101】
該阻害剤が、表3から選択されたものである、請求項98記載の方法。
【請求項102】
該阻害剤が、ミトコンドリアDNA転写、又は複製に関与する遺伝子に特異的である、請求項98記載の方法。
【請求項103】
該遺伝子が、POLγ、TFAM A及びB、及びmtSSBからなる群から選択されたものである、請求項102記載の方法。
【請求項104】
該遺伝子が、ミトコンドリアポリメラーゼをコードしている、請求項102記載の方法。
【請求項105】
ミトコンドリアポリメラーゼをコードしているポリヌクレオチドと特異的に結合する阻害性ポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項106】
ミトコンドリアポリメラーゼに特異的なsiRNAを含む、細胞。
【請求項107】
該ミトコンドリアポリメラーゼが、POLγである、請求項106記載の細胞。
【請求項108】
該siRNAが、表3に示したsiRNAから選択されたものである、請求項106記載の細胞。
【請求項109】
該阻害性ポリヌクレオチドが、アンチセンス ポリヌクレオチドを含む、請求項105記載の細胞。
【請求項110】
該細胞が、該阻害性ポリヌクレオチドを発現するベクターを含む、請求項105記載の細胞。
【請求項111】
ミトコンドリアポリメラーゼと特異的に結合し、かつ該ミトコンドリアポリメラーゼを阻害する阻害性ポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項112】
(a)該ウイルス粒子の表面に機能的に結合されたタンパク質形質導入ドメイン;(b)該ウイルス粒子の表面に機能的に結合された標的化シグナル;及び(c)ポリヌクレオチドを含む、ウイルス粒子。
【請求項113】
標的化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインをコードしているポリヌクレオチドを含むベクターであって、該標的化シグナルに機能的に結合したタンパク質形質導入ドメインを、該ベクターの外部表面上に発現する、前記ベクター。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【公表番号】特表2007−524392(P2007−524392A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517673(P2006−517673)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/020454
【国際公開番号】WO2005/001062
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505247281)ゲンシア コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/020454
【国際公開番号】WO2005/001062
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505247281)ゲンシア コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】
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