細胞性免疫応答を測定するためのアッセイ
本発明は、一般に、免疫学に基づく診断アッセイの分野に関する。より具体的には、本発明は、細胞性免疫応答を測定するための方法を考慮したものである。本発明はさらに、病態、治療薬及び環境汚染物質の免疫抑制効果の測定を可能にする。また、本発明の分析アッセイは、病理学のアーキテクチャに統合することも可能であり、その結果、診断報告システムを提供し、さらにポイント・オブ・ケア臨床管理(point of care clinical management)を促進する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願データ
本出願は、2009年12月23日に出願された、「アッセイ(An Assay)」と言うタイトルの米国仮特許出願番号第61/289,880号に関連し、同出願に基づいて優先権を主張するが、同出願の内容全体は、本明細書において援用される。
【0002】
本発明は、一般に、免疫学に基づく診断アッセイの分野に関する。より具体的には、本発明は、細胞性免疫応答を測定するための方法を考慮したものである。本発明はさらに、病態、治療薬及び環境汚染物質の免疫抑制効果の測定を可能にする。また、本発明のアッセイは、病理学のアーキテクチャに統合することも可能であり、その結果、診断報告システムを提供し、さらにポイント・オブ・ケア臨床管理(point of care clinical management)を促進する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において著者が言及した刊行物の文献詳細は、本明細書の最後にアルファベット順に纏められている。
【0004】
本明細書における任意の先行技術への言及は、その先行技術が任意の国において一般常識の一部を形成していることの認容又は何らかの形態の示唆でも無ければ、そのように解釈されてはならない。
【0005】
免疫学に基づく診断は、多様な病態を検出する上で重要なツールを提供する。このことは、特に、免疫系内の成分の特異性を前提としたものである。この特異性にもかかわらず、免疫学に基づく診断は、軽度の感染症に対する応答や、持続的な低レベルの感染の存在下、又は免疫不全若しくは何らかの形態の免疫抑制を呈している対象などにおいて、低レベルの適応免疫活性及び/又は先天性免疫活性を検出するには、必ずしも常に十分な感度がある訳ではない。適応免疫及び先天性免疫の潜在能に起因する細胞性免疫応答に関して、感度を高めた診断アッセイを開発する必要がある。特に、対象が、免疫抑制を誘導するか、或いは免疫抑制に関連する病態並びに物質に曝されている、又は呈している場合にそのような診断アッセイを開発する必要がある。
【0006】
免疫学に基づく診断アッセイの1つの形態は、単離された細胞培養物又は全血培養物のいずれかにおいて抗原又はマイトジェンでT細胞を刺激し、その後、活性化T細胞(エフェクターT細胞とも言う)によって産生されたサイトカイン等のエフェクター分子を検出することを含む。エフェクター分子は、一般に、酵素免疫測定法、マルチプレックスビーズ分析(multiplex bead analysis)、エリスポット法(ELISpot)及びフローサイトメトリ等の技術を用いて検出される。このようなアッセイは、疾患特異的T細胞応答を検出するのに有用である。
【0007】
対象の細胞性免疫応答を評価する能力は、免疫不全及び免疫抑制を管理する上で特に重要である。免疫不全は、免疫応答を有効に備える能力が減じられていることを特徴とする。この応答の障害又は欠如は、原発性又は後天性(二次性)免疫不全により生じ得る。
【0008】
原発性免疫不全(Primary immunodeficiencies;PID)は、遺伝性のものであり、かつ適応免疫系又は先天性免疫系に特有の成分の欠損を特徴とする(フ(Hu)及びガッティ(Gatti)、カレント・オピニオン・イン・アラジー・アンド・クリニカル・イミュノロジー(Curr Opin Allergy Clin Immunol.) 8(6):540-546頁, 2008年)。とはいえ、殆どの免疫不全は後天性(二次性)であり、HIV感染に伴い発症するように病原体によって誘導され得るし、臓器移植後の免疫抑制治療のように薬剤により誘導され得るし、癌(例えば、白血病、リンパ腫)において発症し得るように病態よって誘導され得るし、或いは環境汚染物質及び公害汚染物質により誘導され得る。
【0009】
免疫不全の分子的機序は多様であるが、細胞性免疫は、観察される臨床兆候の多くを媒介するに当たり重要な役割を有する。現在、免疫不全症候群は、病原体に応じて、その場限りの方法で診断及び管理されている。
【0010】
例えば、HIV感染の主要な特徴は、CD4+T細胞の進行性喪失、及び、サイトメガロウイルス(CMV)及びB型肝炎ウィルス(HBV)等の病原体に対する抗原特異的な適応免疫応答の障害を含む、広範囲の免疫機能の障害である[ドウエク(Douek)ら、アニュアル・レビュー・オブ・メディスン(Annu. Rev. Med.)60:471-84頁、2009年、及びチャン(Chang)ら、ジャーナル・オブ・ビロロジー(J. Virol)83:7649-58頁、2009年]。従って、CD4+T細胞数及びウィルス量は、なおもHIV感染の鍵となる代理マーカーとなっており、進行性感染症を伴う免疫機能不全、並びに予防後の免疫再構成の両者を予測することが広く立証されている(ヘンゲル(Hengel)及びコバクス(Kovacs)、ジャーナル・オブ・インフェクシャス・ディジーズ(J. Infect. Dis.)188(12):1791-3頁、2003年)。しかし、特に日和見感染症が正常のCD4+T細胞数及び低ウィルス量で発症する場合、臨床疾患が、これらの代理マーカーによって予測されるような免疫機能のレベルとは相関しない、多数の事例が存在する(ソロモン(Solomon)ら、ジャーナル・オブ・インフェクシャス・ディジーズ(J. Infect. Dis.)187:1915-23頁, 2003年)。
【0011】
同様に、固形臓器移植(solid organ transplants;SOT)を受けており、抗拒絶反応手段として、免疫系を抑制するために薬物療法(免疫抑制剤)を受けている患者について、細胞性免疫不全の状態をモニターすることも、その場限りの方法で管理されている。典型的には、患者の免疫抑制剤のレベルが、通常の血球数、並びに、移植片、院内感染又は地域感染からの感染症の発生と同様にモニターされる(シュレム(Schrem)ら、ドウチェ・アルツテブラット・インターナショナル(Dtsch Arztebl Int.)106(9):148-156頁, 2009年)
【0012】
病態に関連する免疫不全をモニター及び定義するために現在用いられているマーカーの多くに関係した特有の問題は、細胞性免疫の欠如である。フィトヘマグルチニン(phytohemagglutinin;PHA)、ヤマゴボウマイトジェン(pokeweed mitogen)及びコンカナバリンA(concanavalin A;ConA)等のマイトジェンに対するリンパ球増殖反応を測定する、多数のT細胞機能試験が開発されている。しかし、これらは、細胞性免疫に関連する細胞の一部であるT細胞の機能的能力を測定するだけである。重要なことは、先天性免疫メカニズムは、単独の作用によるか、或いは特異的T細胞反応を増強することによって、宿主防衛に多大な貢献をすることが、ますます明らかになってきている(クーパー(Cooper)ら、ヘマトロジー(Hematology): 314-30、2003年)。従って、先天性(ナチュラルキラー[NK]細胞)及び適応(T細胞)免疫細胞の機能的反応が組み合わさって、細胞性免疫のより包括的な解析を形成する。
【0013】
細胞性免疫を評価する能力は、臨床的に重要である。例えば、3300万人を超える成人及び小児がHIVに感染しており(2008、レポート・オン・ザ・グローバル・エイズ・エピデミック(Report on the Global AIDS Epidemic)、UNAIDS; ISBN 978 92 9 173711 6)、また、現在、世界中で年間におよそ100,000例の固形臓器移植が実施されている(マテサンズ(Matesanz)ら、トランスプランテーション・プロシーディングス(Transplant Proc.) 41(6):2297-301頁, 2009年)。
【0014】
TLR−7/8アゴニスト化合物(イミダゾキノリン化合物(imidazoquinoline compound)、R848)に対する先天性免疫応答のモニタリングについて記載された全血IFN−γアッセイにより、先天性免疫の調節異常がHIV感染に関与しているとされている[ノウロオザリザデ(Nowroozalizadeh)ら、サイトカイン(Cytokine)46: 325−31頁、2009年]。さらに、機能性T細胞応答を測定する診断装置(サイレックス・イムノウ(Cylex ImmuKnow)(登録商標)、米国特許出願公開公報第2003/0199006 A1号に記載)により、PHAで刺激したCD4+細胞からのATP産生が測定される(コワルスキ(Kowalski)ら、ジャーナル・オブ・イミュノトキシコロジー(J Immunotoxicol.)4(3):225-32頁, 2007年)。具体的には、サイレックス分析は、SOTの状況において臨床的有用性が実証されており、感染及び拒絶反応を含む有害事象を適当に管理し得る。
【0015】
対象において、先天性細胞性免疫免疫応答並びに適応細胞性免疫応答の複合機能状態を評価し得るアッセイを開発し、免疫抑制を引き起こす病態及び作用物質を決定する必要性がある。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、対象ににおいて細胞性免疫の状態及び潜在力を評価するための方法を提供する。本明細書において検討される方法は、一つには適応免疫応答及び先天性免疫応答の共刺激を基礎とする。これにより、標的対象における任意の免疫抑制の程度を含む、細胞性免疫の潜在力の予測評価基準が提供される。一の実施形態では、全血又はその画分中の細胞を、リンパ球において適応免疫応答及び先天性免疫応答の両者を刺激する1以上の作用物質と接触させる。細胞性免疫応答のレベルが、免疫細胞によって産生されるエフェクター分子の存在又はレベルを測定することによって決定される。特定の実施形態では、全血又はその画分はT細胞及びNK細胞を含む。1以上の作用物質は、T細胞を介して適応免疫応答を、また、NK細胞を介して先天性免疫を刺激又は増強する。従って、本アッセイは、複合した適応及び先天性の細胞性免疫の潜在力を測定する。
【0017】
複合免疫応答は、単独で測定した適応免疫反応性又は先天性免疫反応性と比較して、細胞性免疫反応性のよりすぐれた評価基準を提供する。さらに、本アッセイは、1μLから1000μLのような小容量の血液を用いて実施され得るので、本アッセイは指の刺創による採血及び毛細管採血に適している。5mL、10mL及び20mLの容量を含む、1.5mLから200mLのような大容量のアッセイもまた、本発明において考慮される。
【0018】
複合した適応及び先天性免疫を評価する能力は、例えば、より大きなリスクである二次感染を招き得る免疫抑制を引き起こす、病態、並びに治療剤及び環境作用物質を同定するのに重要である。
【0019】
よって、本発明の一態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞によって産生される免疫エフェクター分子のレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性免疫応答のレベルを示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0020】
本発明の別の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定する方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性免疫応答のレベルを示し、免疫応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、毒物への暴露、治療剤への暴露、及び免疫不全を含むリストから選択される疾患又は病態の存在、非存在、レベル、又は段階を示す、を含む、上記方法を提供する。
【0021】
本発明のさらなる別の態様は、対象において疾患又は病態の存在、非存在、レベル又は段階を検出するためのアッセイであって、該方法は、対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは疾患又は病態を示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0022】
本発明のさらなる別の態様は、対象において疾患又は病態のための治療プロトコルに対する応答をモニターするための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、治療プロトコルにおいて用いる物質と接触させる工程、並びに適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の分子の存在下において、免疫細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは治療プロトコルの効率を示する、を含む、上記方法を提供する。
【0023】
本発明はさらに、対象において物質が免疫抑制を誘導するか否かを決定するための方法であって、該方法は、物質に暴露した後の対象に由来するリンパ球の試ソースを、適応免疫及び先天性免疫を刺激する1以上の増強剤と接触させる工程、並びにリンパ球由来のエフェクター分子の存在及びレベルを測定する工程、但し、エフェクター分子のレベルは上記物質によって誘導された免疫抑制のレベルを決定する、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0024】
一の実施形態では、血液試料は、TLRアゴニストとTLRアゴニストとで共刺激される。
【0025】
この態様に従うと、物質は、薬剤又は環境毒物であってもよい。
【0026】
本発明の方法は、「アッセイ」とも呼ばれ得る。本発明においけるアッセイは、とりわけ、対象の一般的免疫応答を評価するのに有用であり、或いは、自己免疫疾患、セリアック病、癌、病原生物若しくは病原体による感染症、毒性物質若しくは薬剤への暴露、及び病態によって引き起こされるもの等の免疫不全若しくは免疫抑制等の特定の病態に対する免疫応答を検出するのに有用である。リンパ球のソースは、便宜上、全血であるが、本発明では、リンパ球を含む分画試料、並びに細胞単離及び/又は細胞枯渇を受けた試料を含む、リンパ球の如何なるソースの使用も考慮される。穿刺及び毛細管法などに由来する血液の微量試料も、本発明の一部を形成する。試料は、少なくともT細胞(Tリンパ球)及びNK細胞(NKリンパ球)を含む。「免疫細胞」との表現はT細胞を含む。
【0027】
任意に、デキストロース又はグルコース等の単糖を反応混合物に添加する。「全血」との表現は、希釈されていない全血、並びに、全試料アッセイ容量(即ち反応混合物)の約10%から約100%の容量(約50%から約100%及び80%から約100%の容量を含む)でアッセイに用いられる全血を含む。アッセイ容量は、1μLから1000μL超(1.5mLから200mL、例えば5mLから20mLを含む)の範囲であってもよい。
【0028】
一種類の作用物質を用いて、適応免疫及び先天性免疫を増強してもよいし、或いは2種類以上の作用物質を一緒に用いてもよい。例としては、TCRアゴニストとTLRアゴニストとによる共刺激が挙げられる。また、リンパ球を特定の抗原に暴露し、対象の抗原誘導性の適応及び先天性の複合免疫応答の能力を測定してもよい。
【0029】
対象は、ヒト又は非ヒト動物であってもよい。従って、本発明は、ヒト医学的、獣医学的及び畜産的アプリケーションを有する。ヒトは、本発明の実施において、特に有用な対象である。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、対象において病態が免疫抑制を誘導しているか否かを検出する方法であって、該方法は、病態を有する対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びにリンパ球由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは上記病態によって誘導されるか、又は上記病態に関連する免疫抑制の程度を示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0031】
キット及び皮膚試験も、本発明の一部を形成する。
【0032】
一の実施形態では、試料は、作用物質を含有する採取チューブに採取される全血であるか、又はインキュベーションのために作用物質が添加される全血である。一般に、血液はヘパリンの存在下で維持される。ヘパリンは、血液を添加する際にチューブにあってもよいし、又はその後に添加されてもよい。採血チューブの使用は、標準的な自動化実験システムに適合しており、これらシステムは大規模及びランダムアクセス・サンプリングにおける解析に適している。また、採血チューブにより取扱費用が最小限になり、全血及び血漿への実験室暴露を減らせるため、実験室員が、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、B型肝炎ウィルス(HBV)又はC型肝炎ウィルス(HCV)等の病原体に接触するリスクが減少する。さらに、採取チューブを使用してインキュベーションを実施することにより、以前に使用されていた24穴培養ウェルプレートよりもアッセイの感度が上がる。
【0033】
従って、本発明は、一実施形態において、採取チューブ、任意にデキストロース等の単糖の使用、並びに適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質を用いたインキュベーション工程を含む、改良された細胞性免疫アッセイを提供する。インキュベーション工程は、一般に約5時間から約50時間であり、例えば24時間である。抗原もまた任意に添加されてもよい。
【0034】
免疫エフェクター分子は、一般には、IFN−γ、インターロイキン(例えばIL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12又はIL−13)、形質転換成長因子β(TGFβ)、又は顆粒球コロニー刺激因子若しくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(それぞれG−CSF及びGM−CSF)等のサイトカインであるが、これらに限定されない。その他エフェクター分子は表6に列挙されている。免疫エフェクター分子の存在又はレベルは、その分子自体のレベルについて、又はその分子をコードする遺伝子が発現されている程度について測定されてもよい。
【0035】
また、本発明のアッセイは、治療プロトコルの管理におけるオーダーメイド医療のアプローチにおいて、及び/又は、病理学のアーキテクチャのプラットフォームの一部として用いられてもよい。このようなプラットフォームは、ウェブベースであっても、非ウェブベースであってもよい。従って、血液が可搬型チューブに採取され後、所定の場所で細胞性免疫応答を解析し、その後、その結果を電気通信的レポートの形態で、適切なアーキテクチャを介して臨床ケア提供者に送る、ビジネス方法も提供される。
【0036】
加えて、本アッセイが小容量の血液で実施され得る能力は、小児集団、高齢者集団及び衰弱した集団に有用である。
【0037】
いくつかの図はカラーの表示及び要素を含む。カラー写真は、必要に応じて特許権者から、又は適宜の特許庁から入手可能である。特許庁から入手する場合、課金されるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】図1Aは、単一の刺激物質による全血培養物由来のIFN−γの応答を示す、グラフ表示である。TCR刺激物質であるマイトジェン(A)、及び抗CD3抗体(B)又はTLR刺激物質R848(C)を使用した、健常人ドナー集団分布。
【図1B】図1Bは、単一の刺激物質による全血培養物由来のIFN−γの応答を示す、グラフ表示である。TCR刺激物質であるマイトジェン(A)、及び抗CD3抗体(B)又はTLR刺激物質R848(C)を使用した、健常人ドナー集団分布。
【図1C】図1Cは、単一の刺激物質による全血培養物由来のIFN−γの応答を示す、グラフ表示である。TCR刺激物質であるマイトジェン(A)、及び抗CD3抗体(B)又はTLR刺激物質R848(C)を使用した、健常人ドナー集団分布。
【図2A】図2Aは、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)の、種々のTLRアゴニストとの相乗効果を示す、グラフ表示である。(A)TLR−2;Pam3CSK4及びリポマンナン、(B)TLR−4;LPS(リポ多糖類)、及び(C)TLR−7/8;R848(イミダゾキノリン)化合物。グラフの上方の数字は、抗CD3抗体のみで刺激した培養物に対する、TLR/抗CD3抗体で共刺激した培養物のIFN−γ応答の倍増数を示す。
【図2B】図2Bは、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)の、種々のTLRアゴニストとの相乗効果を示す、グラフ表示である。(A)TLR−2;Pam3CSK4及びリポマンナン、(B)TLR−4;LPS(リポ多糖類)、及び(C)TLR−7/8;R848(イミダゾキノリン)化合物。グラフの上方の数字は、抗CD3抗体のみで刺激した培養物に対する、TLR/抗CD3抗体で共刺激した培養物のIFN−γ応答の倍増数を示す。
【図2C】図2Cは、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)の、種々のTLRアゴニストとの相乗効果を示す、グラフ表示である。(A)TLR−2;Pam3CSK4及びリポマンナン、(B)TLR−4;LPS(リポ多糖類)、及び(C)TLR−7/8;R848(イミダゾキノリン)化合物。グラフの上方の数字は、抗CD3抗体のみで刺激した培養物に対する、TLR/抗CD3抗体で共刺激した培養物のIFN−γ応答の倍増数を示す。
【図3】図3は、健常人において、TCR/TLR共刺激の相乗効果を使用して、カットオフ(閾値)IFN−γ応答を設定することについてのグラフ表示である。これにより、健康な集団の参照範囲を設定することが可能となり、その結果、免疫不全患者のIFN−γ応答の降下を観察することができる。従って、応答が健常集団の閾値(カットオフ)より低い場合は、薬物治療又は疾患に起因する免疫抑制の目安が推測され得る。
【図4】図4は、処理(TCR+TLRアゴニスト)及び未処理(NIL)の全血由来のヒト血漿における多数の分析物の検出を示す、グラフ表示である。ヒト全血を、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)とTLR−7/8アゴニスト;R848(イミダゾキノリン)との組合せで刺激することによって処理した。いくつかのケモカイン、サイトカイン及び細胞外シグナル分子は、TCRアゴニスト及びTLRアゴニストで同時に刺激した全血の血漿のみで見られる(青色バー;TCR+TLR)。いくつかのその他分子は、未処理の全血(赤色バー;NIL)と比較して、上方制御されている。
【図5】図5は、HIV感染群及び健常群において、TCRアゴニスト又はTLRアゴニストのいずれか単独を用いた全血刺激と比較した、全血培養物に対する二重の刺激物質(TCR+TLR)によるIFN−γ応答の間で観察される相乗効果のグラフ表示である。試験集団は、(i)未処置HIV陽性(南アフリカより供給);及び(ii)健常人ドナー(オーストラリアより供給)を含む。母集団中央値を表7に示す。
【図6】図6は、HIV感染群について、複合アゴニスト(TCR+TLR)で刺激した全血において観察された、IFN−γ応答レベルとCD4 T細胞数との間で見られる相関関係のグラフ表示である。
【図7】図7は、所定のドナーにおいて免疫抑制剤阻害濃度の測定が可能になるTCRアゴニストとTLRアゴニストとの組合せを用いた全血刺激を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書において、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という語又は「含む(構成する)(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変形は、記載された要素若しくは整数、又は要素若しくは整数の群を含むことを意味するが、如何なるその他要素若しくは整数、又は要素若しくは整数の群を除外するものでは無いと解される。
【0040】
本明細書において用いられる通り、"a" 、"an" 及び "the" の単数形は、文脈において別段の定めが無い限り、複数の態様を包含する。従って、「T細胞("a T-cell")」との表記は、1つのT細胞並びに2つ以上のT細胞を包含し、「作用物質(物質)("an agent")」との表記は、一種の物質、並びに2種以上の物質を包含し、「発明("the invention")」との表記は、発明の1又は複数の態様を包含する等、例が挙げられる。「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は、本発明において同義で用いられる。「免疫細胞」は、T細胞、及びNK細胞等の先天性免疫系の細胞を包含する。
【0041】
「作用物質(物質)("agent")」、「試薬」、「分子」及び「化合物」の表記は、単一の構成要素、及び2以上のこのような構成要素の組合せを包含する。また、「組合せ」は、2成分組成物等、複数成分を含み、ここで、作用物質(物質)は、別々に提供され、別々に使用若しくは調剤されるか、又は調剤の前に混合する。例えば、複数成分のアッセイパックは、適応免疫及び先天性免疫を増強する2以上の作用物質であって、それぞれ別々に保持された該作用物質を有していていてもよい。一の実施形態では、2つの作用物質はTCRアゴニスト及びTLRアゴニストである。従って、本発明のこの態様には、乾燥された物質であって、アッセイパックにおいて区画の壁又は固体支持体に対して遊離しているか、又は固定されている物質が含まれる。「組合せ」としては、適応免疫刺激剤及び先天性免疫刺激剤を含む、融合又はキメラ分子も含む。適応免疫刺激剤は、T細胞依存性又は非依存性の手段で、適応免疫を調節してもよい。TCRアゴニストの一例は抗CD3抗体である。TLRアゴニストとしては、R848(イミダゾキノリン)等のTLR−7/8アゴニストが含まれる。
【0042】
本発明は、一部において、適応免疫及び先天性免疫の増強に暴露されたリンパ球からのエフェクター分子の産生が増大することを基礎としている。このことにより、より高感度の分析が可能となり、対象の細胞性免疫応答を評価できる。従って、本発明は、適応免疫及び先天性免疫の増強剤によって刺激されたT細胞由来のエフェクター分子の存在又はレベルを測定することによって、対象において細胞性応答を検出、評価又はモニターするための分析法を提供する。リンパ球は、適応免疫及び先天性免疫を増強する作用物質に接触させる。一般に、少なくとも2つの作用物質が用いられ、少なくとも1つは適応免疫を増強し(T細胞による)、少なくとも1つは先天性免疫を増強する(例えばNK細胞による)。代替法では、適応免疫刺激剤及び先天性免疫刺激剤を含むキメラ分子が用いられる。適応免疫刺激剤は、T細胞受容体依存性又は非依存性手段によるものでもよい。従って、本発明は、対象において細胞性免疫の応答性を測定する手段を提供し、さらに、病態若しくは物質が免疫抑制を誘導するか否か、又は病態若しくは物質が免疫抑制に関連するか否かを判定する手段を提供する。また、該方法により、感染性疾患、病的状態の診断、免疫能力のレベルの測定、並びに内因性又は外因性の物質に対する適応免疫及び先天性免疫細胞応答の評価、及び、ベリリウム又はその他毒性物質等の毒物への暴露の評価も可能になる。
【0043】
従って、本発明の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞によって産生される免疫エフェクター分子のレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性免疫応答のレベルを示す、を含む上記方法を考慮したものである。
【0044】
本発明の別の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、対象の細胞性応答のレベルを示し、応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0045】
本発明のさらなる別の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、細胞性応答のレベルを示し、かつ病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を示す、を含む、上記方法を提供する。
【0046】
本発明のなおさらなる態様は、対象において疾患又は病態の存在、非存在、レベル又は段階を検出するためのアッセイであって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、疾患又は病態を示す、を含む上記方法を考慮したものである。
【0047】
本発明は、さらに、対象において物質が免疫抑制を誘導するか否かを決定するための方法であって、該方法は、物質に暴露した後の対象に由来するリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を刺激する1以上の増強物質と接触させる工程、並びにリンパ球由来のエフェクター分子の存在及びレベルを測定する工程、但し、エフェクター分子のレベルは、物質によって誘導された免疫抑制のレベルを決定する、を含む上記方法を考慮したものである。
【0048】
この態様に従うと、該物質は薬剤又は環境毒物であってもよい。
【0049】
一実施形態では、血液試料は、TCRアゴニスト(例えば抗CD3抗体)及びTLRアゴニスト(例えばTLR−7/8アゴニスト、イミダゾキノリン[R848])で共刺激される。
【0050】
従って、本発明は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、TCRアゴニスト及びTLRアゴニストと接触させ、適応免疫及び先天性免疫を増強する工程、並びに免疫細胞によって産生される免疫エフェクター分子のレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、対象の細胞性免疫応答のレベルを示す、を含む上記方法を考慮する。
【0051】
本発明の別の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強するTCRアゴニスト及びTLRアゴニストと接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性応答のレベルを示し、応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0052】
また、リンパ球を適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の分子と共にインキュベートし、エフェクター分子の存在又は上昇を検出する方法による、細胞性免疫応答の診断アッセイの製造における、適応免疫及び先天性免疫を増強するTCRアゴニスト及びTLRアゴニストの使用も提供される。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、対象において病態が免疫抑制を誘導しているか否かを検出するための方法であって、該方法は、病態を有する対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びにリンパ球由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、病態にによって誘導されるか、又は病態に関連する免疫抑制の程度を示す、を含む上記方法を考慮する。
【0054】
また、リンパ球を適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の分子と共にインキュベートし、エフェクター分子の存在又は上昇を検出する方法による、細胞性免疫応答の診断アッセイの製造における、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質の使用も提供される。
【0055】
この使用には、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症性症状、及び/又は薬剤若しくはベリリウム等の毒物又はその他環境毒物への暴露等の疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を検出又はモニターするための使用が含まれる。「免疫エフェクター分子」を測定することには、1以上の異なる種類の分子を測定することが含まれる。
【0056】
適応免疫及び先天性免疫の増強の表記は、T細胞受容体依存性及び/又は非依存性免疫、並びにNK細胞によって媒介されるもの等のトール様受容体(TLR)依存性免疫を刺激することを含む。「免疫細胞」は、「T細胞」を含むことを意味する。また、さらなる作用物質を添加して、制御性T細胞(T−reg細胞)活性を調節してもよい。後者は、T−reg細胞のサプレッサー機能を阻害することを包含する。本発明に包含されるT−reg細胞を調節する作用物質としては、CD25リガンド、JAK1又はTYK2をコードする遺伝物質に対するセンスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスオリゴヌクレオチド、中和抗体、CpG含有オリゴヌクレオチド、TLR調節剤として作用するオリゴヌクレオチド、及びその他のTLR調節剤が含まれる。
【0057】
特定の実施形態においては、T−reg細胞は、活性が阻害された免疫応答サプレッサー細胞である。
【0058】
従って、本発明は、さらに、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来の制御性T細胞のソースを、(i)サプレッサー制御性T細胞の阻害剤、及び(ii)免疫増強細胞又はその一部の活性化剤から選択される作用物質と接触させる工程;並びに、T細胞を適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質とさらに接触させ、免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、対象の細胞性応答のレベルを示す、を含む上記方法に関する。
【0059】
T−reg機能の阻害剤又は調節剤の例としては、CD25リガンドが含まれ、限定されるものでは無いが、例えば、CD25に対するポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、CD25に対するヒト化若しくは脱免疫化(deimmunized)したポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体、又はそれらポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体の組み換え型又は合成型等が挙げられる。作用物質の他の例としては、ヤヌス・チロシンキナーゼ(Janus Tyrosine Kinase 1;JAK1)若しくはチロシンキナーゼ2(Tyrosine Kinase 2;TYK2)をコードするmRNA若しくはDNAに対するセンス又はアンチセンス核酸分子、或いはJAK1タンパク質若しくはTYK2タンパク質の小分子阻害剤が含まれる。「小分子」との表記は、国際出願公開公報第WO2005/118629号に記載されているような免疫グロブリン新規抗原受容体(immunoglobulin new antigen receptor;IgNAR)を含む。好適な作用物質のさらなる例は、トール様受容体(TLR)及び/又はその他メカニズムによって作用する、CpG分子等の刺激剤である。従って、CpG含有オリゴヌクレオチド、及びTLR調節剤として作用するオリゴヌクレオチドもまた、本発明の一部を形成する。
【0060】
1種の作用物質を用い、或いは2種類以上の作用物質を用いてT−reg細胞を調節してもよい。例えば、アッセイは、CD25リガンド及びJAK1/TYK2のセンスオリゴヌクレオチド若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド;CD25リガンド及びTLR調節剤;JAK1/TYK2のセンスオリゴヌクレオチド若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド及びTLR調節剤;又はCD25リガンド、JAK1/TYK2のセンスオリゴヌクレオチド若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド及びTLR調節剤を用いて実施してもよい。或いは、1種だけの作用物質を使用する。別の代替法では、CpG含有オリゴヌクレオチド及びTLR調節剤が用いられる。
【0061】
本発明の種々の態様に従って、リンパ球/免疫細胞もまた、抗原に暴露し、抗原誘導性適応免疫及び先天性免疫の応答を測定してもよい。
【0062】
「対象」との表記は、ヒト、又はヒト以外の種を含み、ヒト以外の種としては、霊長類、家畜動物(例えばヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ、ロバ、ヤギ)、実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター)、コンパニオン・アニマル(例えばイヌ、ネコ)、鳥類(例えば家禽、飼鳥園のトリ)、爬虫類、及び両生類が含まれる。従って、本発明はヒトの医薬において利用可能性を有すると同時に、家畜、獣医学及び野生動物におけるアプリケーションを有し、そのようなアプリケーションとしては、ウマ、イヌ、及びラクダのレース産業が含まれる。例えば、本発明のアッセイは、激しい運動(レース等)の前及び/又は後のウマに対して日常的に実施し、運動によって引き起こされる肺出血(EIPH)の兆候をスクリーニングしてもよい。全てのウマは、運動の間、ある形態のEIPHをある程度呈する。しかし、不顕性のEIPHは検出が困難となり得る。
【0063】
ヒトとの表記は、小児集団、高齢者集団及び衰弱者集団等の特定の集団、並びに特定の民族の特定の群又は集団を含む。
【0064】
別の実施形態では、対象はヒトであり、細胞性免疫応答アッセイは、病原性微生物、すウイルス及び寄生生物に対する応答性のスクリーニング、自己免疫状態、セリアック病の発症の可能性のスクリーニング又はモニタリング、腫瘍学的チャレンジ対する対象の応答のモニタリング、及び任意の免疫不全又は免疫抑制の存在の決定に用いられる。後者は、例えば、種々の化学療法剤を含む特定の薬剤に起因して、或いは、環境毒物及び汚染物質への暴露にに起因して生じ得る。
【0065】
免疫エフェクター分子は、抗原による細胞活性化又は細胞刺激に応答して産生される、如何なる範囲の分子であってもよい。インターフェロン(IFN)-γ等のIFNは、特に有用な免疫エフェクター分子であるが、その他のものとしては、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12又はIL−13などのインターロイキン(IL)、腫瘍壊死因子α(Tumor Necrosis Factor;TNF-α)、形質転換増殖因子β(Transforming Growth Factor beta;TGF-β)、顆粒球-コロニー刺激因子(Granulocyte-Colony Stimulating FactorG−CSF)又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte Macrophage-Colony Stimulating Factor;GM-CSF)等のコロニー刺激因子(Colony Stimulating Factor ;CSF)等の様々なサイトカイン、その他、補体経路における補体又は成分等の多くのものが含まれる。プロファイルされ得るその他エフェクター分子としては表6に列挙されたものが含まれる。
【0066】
T細胞受容体アゴニストの例としては、PHA、ブドウ球菌エンテロトキシンB(staphylococcal enterotoxin B;SEB)、CpGオリゴヌクレオチド、T細胞受容体複合体に対する抗体、及び抗CD3抗体が含まれる。T細胞受容体非依存性適応免疫の刺激剤の例としては、PMA及びConAが含まれる。TLRアゴニストとしては、Pam3CSK4(TLR-2リガンド)、リポマンナン(TLR-2リガンド)、ポリ(I:C)-(TLR-3リガンド)、リポ多糖類(TLR-4リガンド)、R848(TLR-7/8リガンド)等のイミダゾキノリン化合物、及びCpGオリゴデオキシヌクレオチド(TLR-9リガンド)が含まれる。TLRアゴニストを選択することに関して、多いものから順に、アゴニストはTLR-7/8>TLR-4>TLR-3>TLR-2のアゴニストから選択される。
【0067】
「CpG分子」とは、CpG配列又はモチーフを含むオリゴヌクレオチドを意味する。本発明は、トール様受容体(TLR)機能又は免疫系のその他の側面の任意の調節剤に及ぶ。
【0068】
また、本発明は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、TLRアゴニスト及び適応免疫刺激剤と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性応答のレベルを示す、を含む上記方法も提供する。
【0069】
本発明のアッセイにより、対象における疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階の検出が可能になり、疾患又は病態としては、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症性物質への暴露、薬剤への暴露、ベリリウム若しくはその他毒性物質等の毒物又は汚染物質への暴露、並びに病態によって誘導される等の免疫不全又は免疫抑制が挙げられる。
【0070】
適応免疫及び先天性免疫の作用物質は、反応容器において遊離した状態でもよいし、或いはビーズ等の固体支持体、又は反応器の側面若しくは底部に固定化されてもよい。また、作用物質は、使用前又は使用中に再構成される、乾燥形態であってもよい。同様に、抗原が含まれる場合、抗原は、反応容器において遊離した状態でもよいし、或いは反応容器において、反応容器自体に、又はビーズ若しくはその他個体支持体等に固定化されてもよい。
【0071】
一実施形態では、対象から採取される試料は、一般に、採血チューブ中に入れられる。採血チューブとしては、血液吸引チューブ(blood draw tube)又はその他類似の容器が含まれる。便利なものとして、試料が全血の場合は、採血チューブはヘパリン処理される。あるいは、血液を採取した後で、ヘパリンをチューブに添加する。全血が特に考慮され、最も便利な試料であるが、本発明は、免疫細胞を含有するその他試料にも及び、その他試料としては、リンパ液、脳脊髄液、組織液、及び鼻液及び肺液を含む呼吸器液、並びに細胞枯渇を受けた試料も挙げられる。「全血」との表記は、組織培養液、培地、試薬、賦形剤等で希釈されていない全体血液を含む。一実施形態では、「全血」という用語は、全血を少なくとも10容量%含むアッセイ試料(即ち反応混合物)を含む。「少なくとも10容量%」という用語は、反応混合物の全アッセイ容量の、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100容量%の血液容量を包含する。「全血」を含む試料から逸脱することなく、培地、酵素、賦形剤、抗原等のさらなる物質を添加してもよい。
【0072】
また、1μLから1000μL等の小さい血液容量を用いてもよい。例えば、5μL、10μL、20μL、50μL、100μL及び500μL、並びにそれらの間の量が含まれる。従って、試料容量としては、約1μLから約200mLを含み、1mL、5mL、10mL及び20mLが含まれる。
【0073】
採血チューブの使用は、標準的な自動化実験システムに適合しており、これらシステムは大規模及びランダムアクセス・サンプリングにおける解析に適している。また、採血チューブにより取扱費用が最小限になり、全血及び血漿への実験室暴露を減らせるため、実験室員が、HIV、B型肝炎ウィルス(HBV)又はC型肝炎ウィルス(HCV)等の病原体に接触するリスクが減少する。
【0074】
インキュベーション工程を採血チューブと組合せることは、特に効率的であり、アッセイの感度を高めるが、これは、デキストロース又はグルコース等の単糖の存在下で細胞をインキュベートする、任意の特徴を実施するためである。
【0075】
細胞性免疫系の細胞は、対象からの採血に続いて長期間経過の後には、全血において免疫応答を呈する能力を失い、介入がない場合の応答は、採血24時間後には大幅に減少するか、或いは喪失していることが多い。面倒な作業並びに特殊なプラスチック製品の必要性が減じられることで、診療所、クリニック、外来患者用施設、及び動物病院等、ポイントオブ・ケア(point of care)を行う場所で、又は農場で、抗原による細胞性免疫刺激を実施することが可能になる。抗原刺激が完了すると、新鮮及び活性細胞の必要性はもはや存在しない。IFN−γ及びその他サイトカイン又は免疫エフェクター分子は血漿中で安定であるから、試料は、特別な条件又は迅速な時間の必要性も無く、貯蔵又は輸送し得る。
【0076】
インキュベーション工程は、1から50時間であってもよく、例えば1から40時間、8から24時間又はそれらの間の期間であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50時間が含まれる。24時間の期間が、特に好都合である。
【0077】
細胞性免疫を測定する能力は、対象が、微生物、ウィルス又は寄生生物等の病原体による感染症に応答し、自己免疫性糖尿病等における自己免疫応答を呈し、或いは癌若しくはその他腫瘍状態から保護し、或いは炎症状態を検出し、或いはベリリウム等の毒物に対する、対象の暴露又は感受性を検出する能力を評価するのに重要である。また、本明細書に記載されるアッセイは、免疫抑制に繋がる病態、又は薬剤によって誘導される免疫抑制を検出することが可能になる。結果として、「対象において細胞性免疫応答を測定する工程」との表記は、感染性疾患及び自己免疫疾患、免疫能力のマーカー、並びに炎症性疾患、癌及び毒物のマーカーの免疫診断を含み、包含する。重要なことには、複合した適応免疫応答及び先天性免疫応答が測定される。さらには、小さい血液容量が使用し得る能力により、例えば、小児集団、高齢者集団及び衰弱者集団に対してアッセイを容易に実施することが可能になる。
【0078】
一実施形態では、免疫抑制に繋がる病態としては、慢性炎症及び癌が含まれる。免疫抑制に繋がり得る薬剤としては、関節リウマチ、癌及び炎症性大腸疾患を治療するために用いられるものが含まれる。
【0079】
病原体又は感染因子としては、細菌、寄生生物及びウィルスが含まれる。細菌の例としては、グラム陽性及びグラム陰性菌が含まれ、例えば、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、サルモネラ(Salmonella)種、クロストリジウム(Clostridium)種、シゲラ(Shigella)種、プロテウス(Proteus)種、バチラス(Bacillus)種、ヘモフィラス(Hemophilus)種、ボレリア(Borrelia)種等が挙げられる。マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterim tuberculosis)、並びに結核症(TB)等、マイコバクテリウム・ツベルクローシスにおる感染から生じる状態は特に有用な標的である。ウイルスの例としては、肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルス)、ヘルペスウイルス、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)、並びにそれらから生じる疾患が含まれる。寄生生物としては、プラスモディウム(Plasmodium)種、白癬、肝寄生生物等が含まれる。その他病原体としては、酵母及び菌類等の真核細胞が含まれる。
【0080】
本発明において検出が考慮される自己免疫疾患としては、とりわけ、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、多発性硬化症、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎及び自己免疫性精巣炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック病皮膚炎、慢性疲労症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性、慢性炎症性多発性ニューロパシー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、クローン病、疱疹状皮膚炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、突発性肺線維症、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病(タイプ1)、扁平苔癬、狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、及び白斑が含まれる。
【0081】
上記それら感染体に暴露された対象において潜在的又は実際の細胞性応答を評価することは一般に重要である。また、本発明の方法は、上記それらの状態の存在又は非存在、並びに、疾患過程のレベル又は段階を検出するためにも用いられ得る。
【0082】
免疫抑制に繋がり得るその他病態としては、炎症性の病態が含まれる。
【0083】
本発明に考慮される炎症性の病態の例としては、限定されるものではないが、赤み、腫脹、疼痛の反応、並びに外傷又は疾病によって影響を受けた組織を保護しようとすることを意味する、特定領域における熱感を生じる疾患及び障害が含まれる。本発明の方法を用いて治療され得る炎症性疾患としては、限定されないが、ニキビ、アンギナ、関節炎、誤嚥性肺炎、疾患、蓄膿症、胃腸炎、炎症、腸感冒、NEC、壊死性腸炎、骨盤内炎症性疾患、咽頭炎、PID、胸膜炎、咽喉痛、赤み、発赤、咽頭炎、ウィルス性胃腸炎及び尿路感染症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害が含まれる。ヒト以外の適用に関しては、本発明は、ウマにおけるEIPH、並びにタスマニアンデビルにおける顔面腫瘍疾患等の、動物における様々な状態を検出することに及ぶ。
【0084】
癌療法もまた、細胞性免疫に多少なりとも左右され、癌自体又は癌の治療に用いられる薬物は免疫抑制に繋がり得る。本発明において考慮される癌としては、無制御な細胞増殖(例えば腫瘍の形成)であって、それら細胞が特殊な別の細胞に分化しないことを特徴とする疾患及び障害の群が含まれる。この様な疾患及び障害としては、ABL1プロトオンコジーン、エイズに関連する癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、突発性骨髄化生、脱毛症、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹グリオーマ、脳腫瘍及び中枢神経系腫瘍、乳癌、中枢神経系腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼球メラノーマ、網膜芽腫、卵管癌、ファンコニ貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液悪性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト・パピローマウィルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球増加症、咽頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ癌症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、腎臓の悪性桿状腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、口腔癌、多発性内分泌腺腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、希な癌及びその関連疾患、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロスモンド・トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎盂/尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍が含まれる。
【0085】
上記に示した通り、リンパ球免疫細胞もまた、抗原に暴露されて、抗原誘導性の適応及び先天性の複合免疫を測定してもよい。
【0086】
免疫エフェクター分子の検出は、タンパク質又は核酸レベルで測定してもよい。結果として、免疫エフェクター分子の「存在又はレベル」との表記は、直接的及び間接的データを含む。例えば、サイトカインmRNAの高レベルは、サイトカインのレベル上昇を示す、間接的データである。
【0087】
免疫エフェクターに対するリガンドは、これらの分子の検出及び/又は定量に特に有用である。免疫エフェクターに対する抗体は特に有用である。本発明において考慮されるアッセイのための手法は、当該分野において知られており、例えば、ラジオイムノアッセイ、サンドイッチアッセイ、ELISA及びELISpotが含まれる。「抗体」との表記は、抗体の一部、哺乳類化(例えばヒト化)抗体、脱免疫化(deimmunized)抗体、組換え抗体又は合成抗体、並びにハイブリッド抗体及び一本鎖抗体を含む。本発明では、ヒトにおける皮膚試験については、エフェクター分子を検出するために、ヒト化抗体又は脱免疫化(deimmunized)抗体が特に考慮される。
【0088】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は両者とも、免疫エフェクター分子又はその抗原性断片を用いた免疫化によって取得可能であり、何れのタイプも免疫アッセイに利用可能である。両タイプの血清を得る方法は、当該分野でよく知られている。ポリクローナル血清は、それ程好ましいものでも無いが、適当な実験動物に有効量の免疫エフェクター又はその抗原性部分を注射し、動物から血清を採取し、何れかの既知の免疫吸着技術によって特異的血清を単離することによって、比較的容易に調製される。この方法によって製造される抗体は、実質的にあらゆるタイプの免疫アッセイに利用可能であるが、該製品は潜在的に不均質であることから、一般にはそれほど好ましくものでは無い。
【0089】
免疫アッセイにおけるモノクローナル抗体の使用は、それらが大量に製造可能であること、並びに該製品は均一であることから、特に有用である。モノクローナル抗体製造のためのハイブリドーマ細胞株の調製は、不死細胞株と、免疫原性調製物に対して感作されたリンパ球とを融合させることによって誘導されるが、これは、当業者によく知られた手法によって実施され得る。
【0090】
従って、本発明の別の態様は、対象由来のリンパ球を含む試料において免疫エフェクター分子を検出するための方法であって、該方法は、試料又は試料のアリコートを、免疫エフェクター分子又はその免疫原性断片に特異的な抗体と、抗体−エフェクター複合体を形成するのに十分な時間及び条件で接触させる工程、並びに、次いで、該複合体を検出する工程を含み、免疫エフェクター分子は、リンパ球を、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質と共にインキュベーションした後に産生される、上記方法を考慮する。
【0091】
「試料」としては、全血又はリンパ球を含むその画分が含まれる。本方法には、平面状又は球状の固体支持体上におけるマイクロアレイ、マクロアレイ及びナノアレイが含まれる。マイクロアレイ又はマクロアレイが有用である。また、「試料」は、約1μL〜1000μLまで、例えば5μL、10μL、20μL、50μL及び100μLの小容量試料を含む。
【0092】
米国特許第4,016,043号、第4,424,279号及び第4,018,653号の引用文献に見られるように、広範な免疫アッセイの手法が利用可能である。
【0093】
以下は、1つのタイプのアッセイの説明である。非標識抗体を固体支持体上に固定し、免疫エフェクター分子(例えばサイトカイン)について試験される試料を、当該結合分子と接触させる。抗体−免疫エフェクター分子複合体を形成し得る充分な時間である、適当なインキュベーション時間の後、検出可能なシグナルを生成し得るレポーター分子で標識された、エフェクター分子に特異的な二次抗体を添加し、抗体−エフェクター標識抗体の別の複合体の形成に充分な時間、インキュベートする。全ての未反応物質を洗い流し、レポーター分子が生成するシグナルを観察することによって、エフェクター分子の存在を判定する。結果は、可視的シグナルの単純な観察による定性的なものであってもよく、或いは、既知量の抗原を含有する対照試料と比較することによって定量的なものであってもよい。この一般化された手法は当業者に周知であり、多数のバリエーションのいずれであってもよい。
【0094】
これらのアッセイにおいて、本免疫エフェクターに対する特異性を有する一次抗体は、共有結合で、又は受動的に固体表面に結合されている。固体表面は、典型的にはガラス又はポリマーであり、最も普通に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、球、マイクロプレートのディスク、又は免疫アッセイを実施するために適当なその他表面の形状であってよい。結合プロセスは当該分野で周知であり、一般的には、架橋結合、共有結合又は物理吸着よりなり、ポリマー・抗体複合体は、試験試料の調製において洗浄される。次いで、試験される試料のアリコートを固相複合体に添加し、充分な時間(例えば2から120分、又はより都合のよい場合には一晩)及び適当な条件下で(例えば約20℃から約40℃)インキュベートし、抗体中に存在するあらゆるサブユニットの結合を可能にする。インキュベーション時間の後、抗体サブユニットの固相を洗浄及び乾燥し、エフェクター分子の一部に特異的な二次抗体と共にインキュベートする。二次抗体は、エフェクター分子への二次抗体の結合を示すために用いられるレポーター分子に結合されている
【0095】
このアッセイには多数のバリエーションがある。1つの特に有用なバリエーションは、全て又は多数の成分を実質的に同時に混合する、同時アッセイである。さらに、サイトカインへの抗体の結合は、最初に述べた抗体に対する標識抗体の結合によって判定してもよい。
【0096】
本明細書において用いられる「レポーター分子」は、その化学的性質によって抗原結合抗体の検出を可能にする、分析的に特定可能なシグナルを提供する分子を意味する。検出は、定性的でも定量的であってもよい。このタイプのアッセイにおいて最も普通に使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロフォア又は放射性核種含有分子(即ちラジオアイソトープ)及び化学発光分子である。好適なフルオロフォアの例を表1に挙げる。酵素免疫測定法の場合、酵素は、一般にグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって二次抗体に結合する。しかし、容易に認識される通り、多種多様の異なる結合手法が存在し、これらは当業者には容易に利用可能である。通常使用される酵素としては、とりわけ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ及びアルカリフォスファターゼが含まれる。特異的酵素と共に使用される基質としては、一般に、対応する酵素による加水分解に際して、検出可能な色の変化を起こすものを選択する。好適な酵素の例としては、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼが含まれる。また、蛍光基質も適用することが可能であり、これは上記の発色性基質とは異なり蛍光生成物を生成する。全ての場合で、酵素標識抗体を一次抗体・抗原複合体に添加して結合させ、その後過剰な試薬を洗い流す。次に、適宜の基質を含有する溶液を、抗体・抗原・抗体の複合体に添加する。基質は、二次抗体に結合する酵素と反応して、定性的な可視シグナルを呈するが、この可視シグナルは、通常分光光度法によりさらに定量し、試料中に存在した抗原の量を示してもよい。繰り返すが、本発明は実質的同時アッセイに及ぶ。
【0097】
或いは、フルオレスセイン及びローダミン等の蛍光化合物を、抗体の結合能力を変化させることなく、抗体に化学的に結合させてもよい。特定波長の光の照射で活性化際に、蛍光色素標識抗体は、光エネルギーを吸収し、分子の励起状態を誘導し、その後、光学顕微鏡で可視的に検出可能な特徴的な色で発光する。蛍光標識抗体は、一次抗体・抗原複合体に結合させる。非結合試薬を洗い流した後、残存する三成分複合体を適宜の波長の光に暴露すると、観察される蛍光は、目的の抗原の存在を指示する。免疫蛍光法及び酵素免疫測定法の手法は、両者とも、当該分野において高度に確立されており、本発明の方法に特に好ましい。しかし、ラジオアイソトープ、化学発光又は生物発光分子等の、その他レポーター分子を使用してもよい。
【0098】
コロイド金を含む、利用し得るその他広範な検出システムがあり、全てのそのような検出システムが本発明に包含される。
【0099】
また、本発明は、免疫エフェクターをコードする遺伝子配列のRNA発現産物を検出するPCR解析を伴うもの等、遺伝子アッセイも考慮する。
【0100】
一実施形態では、PCRはプライマー対を用いて実施され、プライマー対の一方又は両方は一般に、区別可能なシグナルを与え得る、同一又は異なるレポーター分子で標識される。本発明の実施において、フルオロフォアの使用は特に有用である。好適なフルオロフォアの例は、表1に示したリストから選択してもよい。その他の標識としては、発光及びリン光並びに赤外色素が含まれる。これらの色素又はフルオロフォアも、抗体のレポーター分子として使用してもよい。
【0101】
【表1】
【0102】
蛍光発光を解析するあらゆる好適な方法が本発明に包含される。この点で、本発明は、以下を含む技術を考慮するが、これらに限定されない:例えば、ラコビクツ(Lakowicz)らBiophys. J. 72:567頁, 1997年に開示された、二光子又は三光子時間分解蛍光分光法(2-photon and 3-photon time resolved fluorescence spectroscopy)、例えばエリクソン(Eriksson)らによってBiophys. J. 2:64頁, 1993年に開示された、蛍光ライフタイム・イメージング(fluorescence lifetime imaging)、及び、例えばヨウヴァン(Youvan)らによってBiotechnology et elia 3:1-18頁, 1997年に開示された、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer)。
【0103】
当該分野で知られる通り、発光及びリン光は、それぞれ、適当な発光性又はリン光性の標識から生じ得る。この点で、このような標識を特定するあらゆる光学的手段を使用してもよい。
【0104】
赤外線放射は、適当な赤外色素から生じ得る。本発明において使用してもよい赤外色素の例としては、限定されないが、ルイス(Lewis)らのDyes Pigm. 42(2):197頁, 1999年、タワ(Tawa)らのMater. Res. Soc. Symp. Proc.488[有機固体物質の電気的、光学的及び磁気的特性IV(Electrical, Optical and Magnetic Properties of Organic Solid-State Materials IV)]885-890頁、ダネシュヴァル(Daneshvar)らのJ. Immunol. Methods 226(1-2):119-128頁, 1999年、ラパポート(Rapaport)らのAppl. Phys. Lett. 74(3):329-331頁, 1999年及びデュリグ(Durig)らのJ. Raman Spectrosc. 24(5):281-285頁, 1993年に開示されたものが含まれる。赤外色素を調べるために、任意の適当な赤外分光法を使用してもよい。この点で、例えばラーマン(Rahman)ら、J. Org. Chem. 63:6196頁, 1998年に記載される、フーリエ変換赤外分光法(fourier transform infrared spectroscopy)を例えば使用してもよい。
【0105】
好適には、電磁散乱が、光及びX線を含む、入射電磁放射線の回折、反射、偏光又は屈折から生じてもよい。このような散乱は、mRNAのレベル又はタンパク質のレベルを定量するために使用し得る。
【0106】
フローサイトメトリーは、フルオロフォア発光の解析に特に有用である。
【0107】
当該分野において知られているように、フローサイトメトリーは、粒子(例えば標識mRNA、DNA又はタンパク質)が流体中に懸濁されつつ、1以上のレーザー光線のコースを通過する際に、粒子の物理的及び化学的特長を迅速に解析することを伴う、ハイスループットな手法である。各粒子はレーザー光線を妨害するため、各細胞又は粒子によって発光された散乱光及び蛍光が、例えば以下に記載する任意の適当な追跡アルゴリズムを用いて、検出及び記録される。
【0108】
現在のフローサイトメーターは、これらのタスクを100,000細胞・粒子/秒で実施することができる。フィルター及びダイクロイックミラーの光学アレイを使用することによって、種々の波長の蛍光が分離され、同時に検出され得る。加えて、種々の励起波長を有する多数のレーザーを使用してもよい。従って、様々なフルオロフォアを使用して、例えば、試料内の種々の免疫エフェクター、又は複数の対象由来の免疫エフェクターを標的とし、試験し得る。
【0109】
本発明の方法に使用してもよい好適なフローサイトメーターとしては、単一の励起レーザーであって、通常は15mWで488nmのスペクトル線で操作するアルゴンイオン空冷レーザーを用いて、5〜9の光学パラメーター(表2参照)を測定するものが含まれる。より進歩したフローサイトメーターは、アルゴンイオンレーザー(488又は514nm)に加えて、HeNeレーザー(633nm)又はHeCdレーザー(325nm)等の、複数の励起レーザーを使用することができる。
【0110】
【表2】
【0111】
例えば、ビッグス(Biggs)ら、サイトメトリー(Cytometry) 36:36-45頁, 1999年は、3つの励起レーザーを用いる、11のパラメーターのフローサイトメーターを構築しており、粒子の免疫表現型判定(即ち分類する)目的で、前方及び側方の散乱測定に加えて、9つの区別できるフルオロフォアの使用を示した。適切に使用し得るパラメーターの選択は、吸光係数、量子収量及び全てのフルオロフォアの間のスペクトルの重複量(spectral overlap)に大きく依存する(マレメド(Malemed)ら、「フローサイトメトリー及びソーティング(Flow cytometry and sorting)」、第2版、ニューヨーク、ウィリー-リス(Wiley-Liss), 1990年)。本発明は、いずれかの特定のフローサイトメーター又はいずれかの特定のパラメーターセットにも限定されないことが解されるであろう。この点で、本発明は、従来のフローサイトメーターの代わりに、例えばフ(Fu)ら、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology) 17:1109-1111頁, 1999年に開示された、微細加工フローサイトメーター(microfabricated flow cytometer)の使用も考慮する。
【0112】
本発明のアッセイは、ハイスループットスクリーニングのために、又は1つの対象由来の多数の免疫エフェクターをスクリーニングするために、自動化又は半自動化されてもよい。自動化はコンピュータソフトウェアによって簡便に制御される。
【0113】
従って、本発明はさらに、ウェブベース及び非ウェブベースのシステムであって、対象の細胞性免疫応答についてのデータが、クライアント・サーバー又は他のアーキテクチャ・プラットフォームによって中央処理装置に提供され、該中央処理装置は、解析を行い、対照と比較し、任意に他の情報、例えば患者の年齢、性別、体重及び他の医学的状態を考慮し、その後、例えば、疾患の重症度、疾患の進行若しくは疾患の状態の危険因子、又は疾患発症の確率指数等のレポートを提供する、上記システムを考慮する。従って、血液が可搬型のチューブに集められた後、所定の場所で細胞性免疫応答を解析し、その結果を電気通信レポートの形態で、クライアント・サーバー又はその他のアーキテクチャ・プラットフォームを通して臨床ケア提供者に送る、ビジネス方法も提供される。
【0114】
従って、情報ベースのコンピュータソフトウェア及びハードウェアもまた、本発明の一部を形成する。これにより、感染症、癌又は炎症を含む病態又は医薬品又は毒物が免疫抑制を誘導しているか否か、或いはそれらが免疫抑制に関連しているか否かを確認する、臨床ケアが容易になる。
【0115】
特に、本発明のアッセイは、病理学的サービスに関連する、既存の、又は新たに開発される情報ベースのアーキテクチャ又はプラットフォームに用いてもよい。例えば、アッセイから得られた結果は、通信ネットワーク(例えばインターネット)又は電話接続を介して処理システムに伝達され、該処理システムにはアルゴリズムが保存されており、かつ該アルゴリズムは、予測される事後確率値を得るために用いられるものであり、この事後確立値は、細胞性免疫応答又は免疫抑制の指標に変換された後、診断又は予測レポートの形態でエンドユーザーに転送される。このレポートは、臨床ケア管理及びオーダーメイド医療の基本を形成し得る。
【0116】
従って、アッセイは、キット又はコンピューターに基づくシステムの形態であってもよく、該キット又はコンピューターに基づくシステムは、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質へのリンパ球の暴露に続く、免疫エフェクター分子濃度の検出に必要な試薬、及び、臨床医へのレポートの決定及び送信を容易にするコンピュータハードウェア及び/又はソフトウェアを含む。
【0117】
例えば、本発明は、ユーザーが対象の細胞性免疫応答の状態を判定することを可能にする方法であって、
該方法は以下の工程を含む、上記方法を考慮する:
(a) 通信ネットワークを介して、ユーザーから、免疫エフェクター分子のレベル又は濃度の形態のデータを受信する工程であって、該データは、対照に対する、細胞性免疫応答の状態に関する相関関係を提供し、該免疫エフェクター分子は、リンパ球を適応免疫応答及び先天性免疫応答を増強する1以上の作用物質に暴露した後に測定される、上記工程;
(b) 対象データを単変量解析又は多変量解析を介して処理して、免疫応答値を提供する工程;
(c) 所定の値と比較した、免疫応答値の結果に従って、対象の状態を判定する工程;
(d) 通信ネットワークを介して、対象の状態の指示をユーザーに送信する工程。
【0118】
「単変量」又は「多変量」解析との表記は、単変量又は多変量の解析機能を実行するアルゴリズムを含む。
【0119】
好都合な場合としては、本発明の方法は、一般に、さらに以下の工程を含む:
(a) ユーザーに、遠隔エンドステーションを用いてデータを判定させる工程;及び
(b) 通信ネットワークを介して、エンドステーションからベースステーションにデータを伝達する工程。
【0120】
ベースステーションは第一処理システム及び第二処理システムを含み得るが、この場合、当該方法は、以下の工程を含み得る:
(a) 第一処理システムにデータを伝達する工程;
(b) 第二処理システムにデータを伝達する工程;及び
(c) 第一処理システムに、単変量解析機能又は多変量解析機能を実行させ、細胞性免疫応答値を生成する工程。
【0121】
また、本方法は、以下の工程を含んでもよい:
(a) 第一処理システムに単変量解析機能又は多変量解析機能の結果を伝達する工程;及び
(b) 第一処理システムに対象の状態を判定させる工程。
【0122】
この場合、当該方法は、以下の少なくとも1つの工程も含む:
(a) 第一ファイアウォールを介して、通信ネットワークと第一処理システムとの間においてデータを伝達する工程;及び
(b) 第二ファイアウォールを介して、第一処理システムと第二処理システムとの間においてデータを伝達する工程。
【0123】
第二処理システムは、所定のデータ及び/又は単変量解析機能又は多変量解析機能を保存し得るように適合されたデータベースに接続してもよく、該方法は以下の工程を含む:
(a) データベースに問い合わせて、少なくとも選択された所定のデータを取得するか、又はデータベースから単変量解析機能又は多変量解析機能にアクセスする工程;及び
(b) 選択された所定のデータを対象のデータと比較するか、又は、細胞性免疫応答又は免疫抑制のレベルの予測される確率指数を生成する工程。
【0124】
第二処理システムは、データベースに接続し得、当該方法は、データベースにデータを保存する工程を含む。
【0125】
また、当該方法は、ユーザーに、安全なアレイを用いてデータを判定させる工程を含み、要素を有する安全なアレイは、免疫エフェクター分子のレベルを判定することが可能であり、かつ各コード上の各位置にそれぞれ配置された多数の機能を有する。この場合、当該方法は、典型的には、ベースステーションに以下を実行させる工程を含む:
(a) データからコードを決定すること;
(b) アレイ上の各機能の位置を示すレイアウトを決定すること;並びに
(c) 決定されたレイアウトに従ってパラメータ値を決定すること、及びデータを決定すること。
【0126】
また、該方法は、ベースステーションに以下を実行させる工程も含み得る:
(a) 決済情報を決定することであって、該決済情報は、ユーザーによる支払の提供を表す;及び
(b) 決済情報の決定に対応して、比較を実行すること。
【0127】
また、本発明は、細胞性免疫応答又は免疫抑制に関して対象の状態を判定するためのベースステーションも提供するが、該ベースステーションは、以下を含む:
(a) 保存された方法;
(b) 処理システム、但し、該処理システムは、以下を行うように適合されている:
(c) 通信ネットワークを介して、ユーザーから対象データを受信すること、但し、該データは免疫エフェクター分子のレベルを含み、該エフェクター分子のレベルは、対照に対する、細胞性免疫応答の状態に関する相関関係を提供し、該免疫エフェクター分子は、リンパ球を適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質に暴露した後に測定されるものである;
(d) 所定のデータと上記データとを比較することを含む、アルゴリズム機能を実行すること;
(e) 比較を含む、アルゴリズム機能の結果に従って、対象の状態を判定すること;並びに
(c) 通信ネットワークを介して、ユーザーに対象の状態の表示を出力すること。
【0128】
処理システムは、データを判定し得るように適合された遠隔エンドステーションからデータを受信し得るように適合され得る。
【0129】
処理システムは、以下を含んでもよい:
(a) 以下を実行し得るように適合された第一処理システム:
(i) データを受信すること;及び
(ii) データを比較することを含む、単変量解析機能又は多変量解析機能の結果に従って、対象の状態を判定すること;並びに
(b) 以下を実行し得るように適合された第二処理システム:
(i) 処理システムからデータを受信すること;
(ii) 比較を含む、単変量解析機能又は多変量解析機能を実行すること;及び
(iii) 結果を第一処理システムに伝達すること。
【0130】
ベースステーションは、典型的には、以下を含む:
(a) 第一処理システムを通信ネットワークに接続するための第一ファイアウォール;及び
(b) 第一処理システムと第二処理システムとを接続するための第二ファイアウォール。
【0131】
処理システムは、データベースに接続してもよく、処理システムは、データベースにデータを保存し得るように適合され得る。
【0132】
この実施形態に従うと、免疫エフェクター分子のレベルは、単独でスクリーニングされてもよく、或いはその他バイオマーカー又は疾患指標と組合せてスクリーニングされてもよい。「変化した(altered)」レベルとは、免疫エフェクター分子の濃度における増加又は上昇又は減少又は低下を意味する。
【0133】
免疫エフェクター分子の濃度又はレベルの測定により、対照に対する濃度に基づく診断規則を確立することができる。あるいは、診断規則は、統計学及び機械学習に基づくアルゴリズムの適用に基づくものである。このようなアルゴリズムは、エフェクター分子と、(既知の疾患状態又は細胞性免疫応答を有する)トレーニングデータにおいて観察される疾患状態との間の関係を用い、未知の状態である対象の状態を予測するために後に用いられる関係を推定する。対象が特定レベルの細胞性免疫応答及び/又は病態を有することについての確率の指数を提供するアルゴリズムが利用され得る。アルゴリズムは、単変量解析機能又は多変量解析機能を実行する。
【0134】
従って、本発明は、統計学及び機械学習に基づくアルゴリズムの適用に基づく診断規則を提供する。このようなアルゴリズムは、免疫エフェクター分子と、(既知の免疫状態を有する)トレーニングデータにおいて観察される細胞性免疫応答又は免疫抑制のレベルとの間の関係を用い、未知の免疫状態である患者の状態を予測するために後に用いられる関係を推定する。データ解析の分野における当業者は、本発明を実質的に変化させることなく、トレーニングデータにおいて関係を推定する多数の異なる形態が用いられ得ることを認識する。
【0135】
本発明は、さらに、アルゴリズムを得るための、細胞性免疫応答レベルが既知である対象由来の免疫エフェクター分子のレベルを含む、トレーニングデータの情報基盤の使用であって、該アルゴリズムは、免疫応答レベルが未知である対象由来の同一免疫エフェクター分子のレベルを含むデータの第二情報基盤を入力した場合に、細胞性免疫応答の性質を予測する確率指数を提供する、上記使用を考慮する。
【0136】
「トレーニングデータ」という用語は、対照と比較した免疫エフェクター分子のレベルの情報を含むが、ここで、免疫エフェクター分子は、リンパ球を適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質に暴露した後に測定されるものである。「対照」は、「通常の」免疫応答性を有する対象中の免疫エフェクター分子のレベルとの比較を含み、又は、試験に基基づいて統計学的に決定したレベルであってもよい。
【0137】
従って、「トレーニングデータ」という用語は、免疫エフェクター分子のレベルを含む。
【0138】
免疫エフェクター分子のレベル又は濃度は、本発明において「第二情報基盤のデータ(second knowledge base of data)」と称される入力試験データを提供する。第二情報基盤のデータは、対照と比較して検討されるか、或いは免疫状態が既知である対象の免疫エフェクターのレベルの情報を含む、「第一情報基盤のデータ(first knowledge base of data)」によって生成されるアルゴリズム中に送り込まれる。第二情報基盤のデータは、細胞性免疫応答に関して、未知の状態の対象由来のものである。アルゴリズムの出力又は対照との比較は、本発明では「確立指数(an index of probability)」と称される、特定レベルの免疫応答性又は免疫抑制を有する対象の確率又は危険因子である。
【0139】
免疫エフェクター分子のレベルから生成されるデータは入力データである。免疫エフェクターレベルを含むデータの入力は、対照と比較されるか、或いは対象が例えば免疫抑制状態を有する可能性のリスク値を提供する、アルゴリズムに取り込まれる。治療計画もまた、あらゆる免疫抑制の存在を確認するためにモニターし得る。免疫抑制のレベルは、(例えば、癌療法又は病原性感染の治療の間に)二次感染に罹っているか、或いは再発を有する対象のリスクを増すことがある。
【0140】
上述の通り、免疫エフェクター分子のレベルを介して対象が適応免疫及び先天性免疫の応答を呈し得る程度を測定することによって、免疫応答性又は免疫抑制状態を診断する方法は、第一情報基盤データ、又は免疫状態が既知である対象における同一エフェクター分子のレベルを用いて生成されるアルゴリズムにおいて第二情報基盤データを提供する。また、対象の試料において適応免疫系及び先天性免疫系を刺激した後に続いて、免疫エフェクター分子の存在を判定及び/又は速度を測定する工程を含む、免疫応答を検出する方法も提供される。「速度」とは、対象の試料中のエフェクター分子の経時的濃度変化を意味する。
【0141】
上記に示した通り、本発明において用いられる「試料」という用語は、適応免疫及び先天性免疫のプロセスを刺激した後の、エフェクター分子を含有する任意の試料を意味し、試料としては、限定されないが、体液(全血、血漿、血清、腹水を含む)、組織抽出物、採取したての細胞、及び細胞培養物中でインキュベートされていた細胞の溶解物が含まれる。
【0142】
本発明の方法は、疾病の診断及び病期分類に使用してもよい。また、本発明は、状態の進行をモニターするため、及び特定の治療が有効であるか否かをモニターするために使用してもよい。特に、該方法は、手術、癌療法等、又は薬物治療又は毒物への暴露の後の、免疫抑制をモニターするために使用し得る。
【0143】
一実施形態では、本発明は、対象において免疫抑制をモニターするための方法であって、以下の工程を含む、上記方法を考慮する:
(a) 対象由来の試料を提供する工程;
(b) 適応免疫及び先天性免疫プロセスを刺激した後の免疫エフェクター分子のレベルを測定し、上記レベルをアルゴリズムに付して、特定レベルの免疫応答性を有する対象の確率指数を提供する工程、
但し、対照に対する免疫エフェクターのレベルは細胞性免疫応答の状態に対する相関関係を提供する;並びに
(c) 後の時点で工程(a)及び(b)を繰り返し、工程(b)の結果を工程(c)の結果と比較する工程、但し、確率指数における差は、対象における状態の進行を示す。
【0144】
上記で概説した「アルゴリズム」又は「アルゴリズム機能」との表記は、単変量解析機能又は多変量解析機能の実行を含む。広範な種々のアーキテクチャ及びプラットフォームが、上述のものに加えて実施されてもよい。本発明を実施するのに好適なあらゆる形態のアーキテクチャを使用してもよいことが理解されるであろう。しかし、1つの有益な手法は、分散アーキテクチャの使用である。特に、多数のエンドステーションが各地理的位置に提供され得る。この事は、データ帯域幅のコスト及び要件を削減することによってシステムの効率を上げることを可能とし、さらには、1つのベースステーションが過密になったり、或いは不具合が発生した場合に、他のエンドステーションがその役割を果たし得ることを確実にすることによってシステムの効率を上げることを可能にする。また、これにより、負荷分割等が可能になり、システムへのアクセスが常に利用可能であることを確実にする。
【0145】
この場合、ベースステーションが、異なるエンドステーションを用いることができるように、ベースステーションが同一の情報及び署名を含有していることを確保する必要があるであろう。
【0146】
一例では、エンドステーションが、PDA、携帯電話等の携帯機器であり得ることも理解されるであろうが、これらは、対象データを、インターネット等の通信ネットワークを介して、ベースステーションに送信し、かつレポートを受信し得るものである。
【0147】
上記の態様では、「データ」という用語は、適応免疫及び先天性免疫のプロセスを増強した後の、免疫エフェクターのレベル又は濃度を意味する。「通信ネットワーク」としては、インターネット及び携帯電話網及び固定電話回線が含まれる。サーバーを使用する場合、一般にはクライアント・サーバーであり、より具体的にはシンプル・オブジェクト・アプリケーション・プロトコル(SOAP)である。
【0148】
本願の一態様には、特定の先天性免疫及び適応免疫の刺激物質に対する応答性を測定することによって、対象の細胞性免疫応答を示す実験が含まれる。一の実施形態では、末梢血試料、血液の白血球濃縮画分試料、又は気管支肺胞洗浄液等の1以上の試料が、特定の疾患(例えば自己免疫疾患、病原体への感染症又はベリリウムへの暴露)を発症しているか、或いはその発症が疑われる対象から取得されてもよく、また、免疫応答性は、エフェクターT細胞(例えばCD4+T細胞)由来のエフェクター分子の測定によって測定されてもよい。アッセイは、適応免疫応答及び先天性免疫応答を増強する、1以上の作用物質の存在下で実施される。
【0149】
免疫結合法としては、試料において反応成分の量を検出又は定量する方法が含まれるが、該方法は、結合プロセスの間に形成される、あらゆる免疫複合体の検出又は定量を要する。ここで、適応免疫及び先天性免疫プロセスの共刺激した後にサイトカインを含有するものと疑われる試料を入手し、試料を抗体と接触させ、その後、特異的条件下で形成された免疫複合体の量を検出又は定量するであろう。
【0150】
免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするのに有効な条件下かつ充分な時間で、選択された生物学的試料と抗体とを接触させることは、一般に、組成物を試料に添加し、抗体が、存在する任意の抗原との免疫複合体を形成するのに、つまり該抗体が抗原に結合するのに充分に長い時間で当該混合物をインキュベートすることの問題である。この時間の後、組織断片、ELISAプレート、ELISpot、ドットブロット又はウェスタンブロット等の、試料・抗体組成物は、通常、洗浄してあらゆる非特異的結合抗体種を除去して、一時免疫複合体中で特異的に結合した抗体のみが検出され得るようにする。
【0151】
特定の実施形態では、本発明は、ヒト対象において疾患又は病態の存在、非存在、レベル又は段階を検出するための方法であって、該方法は、反応混合物において全容量の少なくとも10%を構成する全血と、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質とを接触させる工程、並びにT細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは疾患又は病状を示す、を含む上記方法を考慮する。
【0152】
さらなる実施形態では、本発明は、上述の方法と共に用いるためのキットに関する。一実施形態では、免疫検出キットが考慮される。別の実施形態では、金属又は化学物質誘発疾患を発症しているか、或いは該疾患の発症が疑われる対象由来の試料を解析するためのキットが考慮される。より詳細な実施形態では、疾患を発症しているか、或いは疾患の発症が疑われる対象由来の試料を解析するためのキットが考慮される。より詳細な実施形態では、病態が発症する前又は後に、或いは対象が薬剤投与を受けるか又は毒物若しくは汚染物質に暴露される前又は後に、対象の細胞性免疫応答を評価するためのキットが考慮される。抗原も利用される場合、キットは特定の抗原も含んでもよい。
【0153】
キットの免疫検出試薬は、種々の形態の何れを採用してもよく、それら形態には、所定の抗体又は抗原に会合するか、又はそれらに結合されている検出可能な標識、並びに二次的結合リガンドに会合するか、又はそれらに結合されている検出可能な標識が含まれる。二次的リガンドの例は、一次抗体又は抗原に対する結合親和性を有する二次抗体、並びにヒト抗体に結合親和性を有する二次抗体である。
【0154】
本発明のキットに用いるための、さらに適当な免疫検出試薬としては、一次抗体又は抗原に対する結合親和性を有する二次抗体と、二次抗体に対する結合親和性を有する三次抗体であって、検出可能な標識に結合されている三次抗体とを含む、二成分試薬が含まれる。
【0155】
該キットは、標識されているか、或いは標識されていない、抗原又はエフェクター分子の適切に分割された組成物をさらに含んでもよく、該組成物は検出アッセイのための標準曲線を作成するために用いてもよい。
【0156】
該キットは、完全に複合した形態で、若しくは中間物の形態で、又はキットのユーザーによって複合される別々の物として、抗体標識複合体を含有してもよい。キットの成分は、水性媒体中に含まれてもよいし、或いは凍結乾燥形態で含まれてもよい。
【0157】
何れのキットの容器手段としては、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ又はその他の容器手段を含む、その中に、試薬、抗体又は抗原を配置し得、好ましくは、適宜に分割されてもよい。二次若しくは三次結合リガンド、又はさらなる成分が提供される場合、キットは、一般に、第二、第三又はその他追加的容器を含有し、その中に、このリガンド又は成分が配置されてもよい。本発明のキットは、通常は、商業販売を目的として密閉状態で、抗体、抗原、及びその他任意の試薬容器をを収容するための手段も含む。そのための容器としては、射出又はブロー成形のプラスチック容器が含まれ得、その中に所望のバイアルが保持される。
【0158】
本発明は、さらに、対象において細胞性免疫応答又はそのレベルを検出するための、改良されたアッセイ、該アッセイは、対象由来のリンパ球ソースをインキュベートする工程、並びにエフェクター分子の存在又は上昇を検出する工程を含み、改良点(improvement)は、リンパ球を、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質と共にさらにインキュベートすることを含む、上記アッセイを考慮する。
【0159】
本発明は、さらに、病源性感染症、自己免疫疾患若しくは癌に罹患しているか、又はこれらの病態若しくは疾患を発症する傾向がある対象の治療方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球ソースを、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、及びT細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは対象の細胞性応答のレベルをを示し、該細胞性応答は、病態若しくは疾患の、存在、非存在、レベル又は状態を示す、並びに当該病態又は疾患を次いで治療する工程を含む、上記方法を提供する。
【0160】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0161】
実施例1
アッセイの開発
ヘパリン処理した血液試料を、Li-Hepバキュエッテ(Vacuette)[登録商標]チューブ(グライナー・バイオワン(Greiner Bio-one)、ドイツ)中に採集した。
【0162】
血液試料のアリコートを、種々の濃度のT細胞受容体アゴニスト:フィトヘマグルチニン(セリスティス・リミテッド(Cellistis Limited)、オーストラリア)抗ヒトCD3ε抗体(マウスIgG1クローンUCHT1;イーバイオサイエンス(eBioscience)、サンディエゴ)、及びT細胞受容体複合体に対する抗体;並びにトール様受容体アゴニスト:リポマンナンTLR−2リガンド(インビボジェン(InvivoGen)、サンディエゴ)、Pam3CSK4 TLR−2リガンド(インビボジェン、サンディエゴ)、ポリ(I:C)TLR−3リガンド(インビボジェン、サンディエゴ)、リポ多糖TLR−4リガンド(シグマ(Sigma)、オーストラリア)、イミダゾキノリン化合物−TLR−7/8リガンド、R848(インビボジェン、サンディエゴ)、及びCpGオリゴデオキシヌクレオチドTLR−9リガンド(ハイクルト・バイオテクノロジー(Hycult Biotechnology)、オランダ)又は生理食塩水対照と共に、ヒト・クアンティフェロン(Quantiferon)[登録商標]試験(セレスティス・リミテッド、オーストラリア)の製造元が推薦する、多数の異なるサイズの採血チューブでインキュベートした。T細胞受容体非依存性刺激物質としては、ホルボールミリスチン酸アセテート(phorbol myristate acetate;PMA)、コンカナバリンA(ConA)及びヤマゴボウマイトジェン(pokeweed mitogen)を含む。アリコートは、1μL〜1000μL等の小容量であってもよく、又は1.5mL〜200mL等のより大容量であってもよい。
【0163】
いくつかの実験では、インキュベートの開始前に、血液に種々の濃度のグルコースを添加した。その他の実験では、少なくとも1つのTCR刺激物質及び少なくとも1つのTLR刺激物質からなる、2以上の刺激物質を組合せて、血液に添加した。
【0164】
刺激した血液試料を37℃で1〜48時間インキュベートし、その後、上記の沈殿した血液細胞から血漿を採取した。次に、各血漿試料中に存在するIFN−γの量を、クアンティフェロン(Quantiferon)-TB[登録商標]ELISA(セリスティス・リミテッド(Cellistis Limited)、オーストラリア)を用い、製造元の取扱説明書の通り定量した。あるいは、試料のIFN−γは、より感度の高いクアンティフェロン-TBゴールド(Quantiferon-TB Gold)[登録商標]ELISA(セリスティス・リミテッド、オーストラリア)を用い、製造元の取扱説明書の通り定量した。
【0165】
各ELISAプレート上で行われたIFN−γ標準に対するELISA光学濃度値を用いて標準曲線を作成し、この標準曲線から、各試験血漿試料中に存在するIFN−γの量をIU/mLの値に変換した。
【0166】
実施例2
T細胞受容体(TCR)依存性アゴニストとトール様受容体(TLR)アゴニストとの組合せ
実施例1のアッセイで用いられるTCR及びTLRアゴニストの可能な組合せを表3に示す。
【0167】
【表3】
【0168】
実施例3
T細胞受容体(TCR)非依存性アゴニストとトール様受容体(TLR)アゴニストとの組合せ
実施例1のアッセイで用いたTCR非依存性アゴニストとTLRアゴニストとの可能な組合せを表4に示す。
【0169】
【表4】
【0170】
実施例4
アッセイの評価
本アッセイは、T細胞受容体(TCR)及びトール様受容体(TLR)の共刺激を伴うことにより、対象個人の複合した機能的先天性及び適応免疫を評価する。単独のTCR又はTLRに対する単一の刺激剤を用いた、インビトロにおける全血刺激によれば、ある健常者個人において非常に高いIFN−γレベルから検出不可能なレベルまで、全健常人ドナーにわたって、多様な応答が生じる(図1)。健常人参照範囲を設定し、免疫不全による機能の低下を観察する目的により、先天性免疫応答及び適応免疫応答を組合せた際に起こる、相乗効果が見られた(図2)。二重の刺激は、健常集団の平均を上げる応答を増強し、カットオフ値の決定を可能にする(図3)。また、健常集団の平均の上昇により、免疫不全患者由来のIFN−γ応答の低下を観察することが可能になる。従って、応答が、健常人集団の閾値(カットオフ)未満に下落する場合に、薬理学的処置又は疾病による免疫抑制の指標が想定され得る。
【0171】
実施例5
T細胞受容体アゴニストの使用
本実施例は、免疫細胞の共刺激のため、トール様受容体(TLR)アゴニスト(NK細胞に特異的である、イミダゾキノリン化合物R848)及びT細胞受容体(TCR)アゴニストを用いた、インビトロにおいて、複合した先天性免疫及び適応免疫を評価する方法を提供する。このインビトロ診断は、全血、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)、及びフィーダー層を伴う精製細胞集団と共に用いるためのものである。しかし、免疫系の別の細胞種に特異的な、その他TLRアゴニストも含まれ得る。
【0172】
QFNイン・チューブ・テクノロジー(セレスティス(Cellestis))は、特定の免疫細胞を特異的に活性化する刺激剤の組合せを用いて全血を刺激した後に、細胞性免疫(cell mediated immunity;CMI)を測定するための方法を提供する。当該刺激は、加湿せずに37℃で24時間インキュベートされる密閉容器内で実施される。全血から血漿を採取し、IFN−γをワンステップELISAを用いて検出し、標的細胞機能の測定値を提供する。具体的には、本アッセイは、組合せの先天性(NK細胞)及び適応的(T細胞)免疫応答を評価することにより、個人の機能的免疫状態を測定する。試験は、インビトロの診断アプリケーション及び予測アプリケーションのために、個人の一般的な免疫状態をモニターするために用いられる。
【0173】
装置は、同時に供給された2つの刺激物質の組合せに応答して産生された、全INF−γアウトプットを測定する。結果として得られる「値」は、所定の時点における個人の純機能的免疫状態を表す。これにより、免疫状態の縦及び横の比較が可能になる。
【0174】
データは、臨床的有用性を有する診断アッセイを開発することを目的として、TLRクラスのアゴニストを抗CD3抗体(TCRアゴニスト)と組合せて用いた場合に、TLR−7/8>TLR−4>TLR−3>TLR−2と言う順序で、相乗反応を奏するTLRクラスのアゴニストの有効性が低下することを示す。従って、本実施例においては、イミダゾキノリン化合物(R848)等のTLR−7/8アゴニストを用い、最大の相乗反応を得る。しかし、別のアプリケーションでは、最大下相乗効果の使用、又は抗CD3抗体又はマイトジェン(フィトヘマグルチニン;PHA)等のTCRアゴニストとTLRクラスとの2以上の組合せの使用が実際は必要となるかもしれない。診断アッセイにおいて、マイトジェンは、T細胞上に位置するTCRを介してその機能を働かせる。このことは、両刺激物質を組合せて用いた場合に、マイトジェンの応答を無効化する抗CD3抗体の能力によって証明されている。
【0175】
実施例6
薬剤を投与されている対象における免疫抑制の測定
本アッセイは、化学療法剤、又は、関節リウマチ、癌若しくは炎症性腸疾患を治療するために用いられる薬剤に暴露された対象に対して実施される。免疫抑制が確認される対象においては、二次感染を回避するために注意が払われる。例えば、抗生物質又は免疫刺激物質が投与されてもよい。
【0176】
実施例7
TCRアゴニスト及びTLRアゴニストによる全血の刺激
全血を、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)とTLR-7/8アゴニストであるR848(イミダゾキノリン)の組合せで刺激した。γインターフェロンによって誘導されたモノカイン(MIG;CXCL9)及びIFN−γの観測されたレベルを表5に示す。値は、対応するバックグラウンド・コントロールを差し引いて(NIL)示されている。データは、MIG及びIFN−γが刺激の指標に対応することを示している。
【0177】
【表5】
【0178】
また、全血は、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)とTLR−7/8アゴニストであるR848(イミダゾキノリン)の組合せを用いて、又はこの組合せを用いずに刺激した。得られた血漿を用いて、既知のサイトカイン、ケモカイン及び細胞外シグナル分子をプロファイルした。検出された標的は、単一で、又は他のエフェクターと組合せて、レポーター分子として用いられ得る。これは、多重化に特に有用である。検出された標的を表6に示す。
【0179】
【表6】
【0180】
【表7】
【0181】
サイトカイン、ケモカイン及び細胞外シグナル分子の得られたプロファイルを、図4にグラフで表す。いくつかのサイトカイン、ケモカイン及び細胞外シグナル分子は、TCR及びTLRアゴニストで同時に刺激した全血の血漿中にのみ見られた(青色バー、TCR+TLR)。他のもののいくつかは、未処理の全血と比較して、上昇していた(赤色バー、NIL)。
【0182】
全血培養物からのIFN−γ応答に対する、TCR及びTLRアゴニストを用いた二重刺激の間に観察される相乗効果を、TCRアゴニスト又はTLRアゴニストのいずれか単独での全血の刺激と比較して、図5に示す。
【0183】
試験した集団は、HIV感染群及び健常群であった。調査対象集団は、(i)未処置HIV陽性(南アフリカ由来のソース);及び(ii)健常ドナー(オーストラリア由来のソース)を含む。母集団中央値は表7に示されている。
【0184】
TCR+TLR共刺激の後の、IFN−γ応答レベルとCD4 T細胞数との間における相関関係を図6に示す。HIV感染群からの全血を刺激した。
【0185】
TCRアゴニスト及びTLRアゴニストの組合せを用いた全血の刺激によっても、所与のドナーにおいて、免疫抑制剤の阻害濃度を測定が可能となる(図7)。
【0186】
当業者は、本明細書において記載される発明が、具体的に記載されたもの以外の変形及び修正を受け得ること、並びに広範な作用物質がT細胞受容体依存性及び非依存性の増強、及びトール様受容体の増強又は両者の組合せに影響することが理解する。本発明はこのような全ての作用物質を包含することが理解されるべきである。また、本発明は、本明細書において言及又は示唆された、工程、特徴、組成物及び化合物の全てを、個々に又は集合的に包含し、当該工程又は特徴の何れか2以上の、任意及び全ての組合せも包含する。
【0187】
参考文献目録
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【技術分野】
【0001】
出願データ
本出願は、2009年12月23日に出願された、「アッセイ(An Assay)」と言うタイトルの米国仮特許出願番号第61/289,880号に関連し、同出願に基づいて優先権を主張するが、同出願の内容全体は、本明細書において援用される。
【0002】
本発明は、一般に、免疫学に基づく診断アッセイの分野に関する。より具体的には、本発明は、細胞性免疫応答を測定するための方法を考慮したものである。本発明はさらに、病態、治療薬及び環境汚染物質の免疫抑制効果の測定を可能にする。また、本発明のアッセイは、病理学のアーキテクチャに統合することも可能であり、その結果、診断報告システムを提供し、さらにポイント・オブ・ケア臨床管理(point of care clinical management)を促進する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において著者が言及した刊行物の文献詳細は、本明細書の最後にアルファベット順に纏められている。
【0004】
本明細書における任意の先行技術への言及は、その先行技術が任意の国において一般常識の一部を形成していることの認容又は何らかの形態の示唆でも無ければ、そのように解釈されてはならない。
【0005】
免疫学に基づく診断は、多様な病態を検出する上で重要なツールを提供する。このことは、特に、免疫系内の成分の特異性を前提としたものである。この特異性にもかかわらず、免疫学に基づく診断は、軽度の感染症に対する応答や、持続的な低レベルの感染の存在下、又は免疫不全若しくは何らかの形態の免疫抑制を呈している対象などにおいて、低レベルの適応免疫活性及び/又は先天性免疫活性を検出するには、必ずしも常に十分な感度がある訳ではない。適応免疫及び先天性免疫の潜在能に起因する細胞性免疫応答に関して、感度を高めた診断アッセイを開発する必要がある。特に、対象が、免疫抑制を誘導するか、或いは免疫抑制に関連する病態並びに物質に曝されている、又は呈している場合にそのような診断アッセイを開発する必要がある。
【0006】
免疫学に基づく診断アッセイの1つの形態は、単離された細胞培養物又は全血培養物のいずれかにおいて抗原又はマイトジェンでT細胞を刺激し、その後、活性化T細胞(エフェクターT細胞とも言う)によって産生されたサイトカイン等のエフェクター分子を検出することを含む。エフェクター分子は、一般に、酵素免疫測定法、マルチプレックスビーズ分析(multiplex bead analysis)、エリスポット法(ELISpot)及びフローサイトメトリ等の技術を用いて検出される。このようなアッセイは、疾患特異的T細胞応答を検出するのに有用である。
【0007】
対象の細胞性免疫応答を評価する能力は、免疫不全及び免疫抑制を管理する上で特に重要である。免疫不全は、免疫応答を有効に備える能力が減じられていることを特徴とする。この応答の障害又は欠如は、原発性又は後天性(二次性)免疫不全により生じ得る。
【0008】
原発性免疫不全(Primary immunodeficiencies;PID)は、遺伝性のものであり、かつ適応免疫系又は先天性免疫系に特有の成分の欠損を特徴とする(フ(Hu)及びガッティ(Gatti)、カレント・オピニオン・イン・アラジー・アンド・クリニカル・イミュノロジー(Curr Opin Allergy Clin Immunol.) 8(6):540-546頁, 2008年)。とはいえ、殆どの免疫不全は後天性(二次性)であり、HIV感染に伴い発症するように病原体によって誘導され得るし、臓器移植後の免疫抑制治療のように薬剤により誘導され得るし、癌(例えば、白血病、リンパ腫)において発症し得るように病態よって誘導され得るし、或いは環境汚染物質及び公害汚染物質により誘導され得る。
【0009】
免疫不全の分子的機序は多様であるが、細胞性免疫は、観察される臨床兆候の多くを媒介するに当たり重要な役割を有する。現在、免疫不全症候群は、病原体に応じて、その場限りの方法で診断及び管理されている。
【0010】
例えば、HIV感染の主要な特徴は、CD4+T細胞の進行性喪失、及び、サイトメガロウイルス(CMV)及びB型肝炎ウィルス(HBV)等の病原体に対する抗原特異的な適応免疫応答の障害を含む、広範囲の免疫機能の障害である[ドウエク(Douek)ら、アニュアル・レビュー・オブ・メディスン(Annu. Rev. Med.)60:471-84頁、2009年、及びチャン(Chang)ら、ジャーナル・オブ・ビロロジー(J. Virol)83:7649-58頁、2009年]。従って、CD4+T細胞数及びウィルス量は、なおもHIV感染の鍵となる代理マーカーとなっており、進行性感染症を伴う免疫機能不全、並びに予防後の免疫再構成の両者を予測することが広く立証されている(ヘンゲル(Hengel)及びコバクス(Kovacs)、ジャーナル・オブ・インフェクシャス・ディジーズ(J. Infect. Dis.)188(12):1791-3頁、2003年)。しかし、特に日和見感染症が正常のCD4+T細胞数及び低ウィルス量で発症する場合、臨床疾患が、これらの代理マーカーによって予測されるような免疫機能のレベルとは相関しない、多数の事例が存在する(ソロモン(Solomon)ら、ジャーナル・オブ・インフェクシャス・ディジーズ(J. Infect. Dis.)187:1915-23頁, 2003年)。
【0011】
同様に、固形臓器移植(solid organ transplants;SOT)を受けており、抗拒絶反応手段として、免疫系を抑制するために薬物療法(免疫抑制剤)を受けている患者について、細胞性免疫不全の状態をモニターすることも、その場限りの方法で管理されている。典型的には、患者の免疫抑制剤のレベルが、通常の血球数、並びに、移植片、院内感染又は地域感染からの感染症の発生と同様にモニターされる(シュレム(Schrem)ら、ドウチェ・アルツテブラット・インターナショナル(Dtsch Arztebl Int.)106(9):148-156頁, 2009年)
【0012】
病態に関連する免疫不全をモニター及び定義するために現在用いられているマーカーの多くに関係した特有の問題は、細胞性免疫の欠如である。フィトヘマグルチニン(phytohemagglutinin;PHA)、ヤマゴボウマイトジェン(pokeweed mitogen)及びコンカナバリンA(concanavalin A;ConA)等のマイトジェンに対するリンパ球増殖反応を測定する、多数のT細胞機能試験が開発されている。しかし、これらは、細胞性免疫に関連する細胞の一部であるT細胞の機能的能力を測定するだけである。重要なことは、先天性免疫メカニズムは、単独の作用によるか、或いは特異的T細胞反応を増強することによって、宿主防衛に多大な貢献をすることが、ますます明らかになってきている(クーパー(Cooper)ら、ヘマトロジー(Hematology): 314-30、2003年)。従って、先天性(ナチュラルキラー[NK]細胞)及び適応(T細胞)免疫細胞の機能的反応が組み合わさって、細胞性免疫のより包括的な解析を形成する。
【0013】
細胞性免疫を評価する能力は、臨床的に重要である。例えば、3300万人を超える成人及び小児がHIVに感染しており(2008、レポート・オン・ザ・グローバル・エイズ・エピデミック(Report on the Global AIDS Epidemic)、UNAIDS; ISBN 978 92 9 173711 6)、また、現在、世界中で年間におよそ100,000例の固形臓器移植が実施されている(マテサンズ(Matesanz)ら、トランスプランテーション・プロシーディングス(Transplant Proc.) 41(6):2297-301頁, 2009年)。
【0014】
TLR−7/8アゴニスト化合物(イミダゾキノリン化合物(imidazoquinoline compound)、R848)に対する先天性免疫応答のモニタリングについて記載された全血IFN−γアッセイにより、先天性免疫の調節異常がHIV感染に関与しているとされている[ノウロオザリザデ(Nowroozalizadeh)ら、サイトカイン(Cytokine)46: 325−31頁、2009年]。さらに、機能性T細胞応答を測定する診断装置(サイレックス・イムノウ(Cylex ImmuKnow)(登録商標)、米国特許出願公開公報第2003/0199006 A1号に記載)により、PHAで刺激したCD4+細胞からのATP産生が測定される(コワルスキ(Kowalski)ら、ジャーナル・オブ・イミュノトキシコロジー(J Immunotoxicol.)4(3):225-32頁, 2007年)。具体的には、サイレックス分析は、SOTの状況において臨床的有用性が実証されており、感染及び拒絶反応を含む有害事象を適当に管理し得る。
【0015】
対象において、先天性細胞性免疫免疫応答並びに適応細胞性免疫応答の複合機能状態を評価し得るアッセイを開発し、免疫抑制を引き起こす病態及び作用物質を決定する必要性がある。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、対象ににおいて細胞性免疫の状態及び潜在力を評価するための方法を提供する。本明細書において検討される方法は、一つには適応免疫応答及び先天性免疫応答の共刺激を基礎とする。これにより、標的対象における任意の免疫抑制の程度を含む、細胞性免疫の潜在力の予測評価基準が提供される。一の実施形態では、全血又はその画分中の細胞を、リンパ球において適応免疫応答及び先天性免疫応答の両者を刺激する1以上の作用物質と接触させる。細胞性免疫応答のレベルが、免疫細胞によって産生されるエフェクター分子の存在又はレベルを測定することによって決定される。特定の実施形態では、全血又はその画分はT細胞及びNK細胞を含む。1以上の作用物質は、T細胞を介して適応免疫応答を、また、NK細胞を介して先天性免疫を刺激又は増強する。従って、本アッセイは、複合した適応及び先天性の細胞性免疫の潜在力を測定する。
【0017】
複合免疫応答は、単独で測定した適応免疫反応性又は先天性免疫反応性と比較して、細胞性免疫反応性のよりすぐれた評価基準を提供する。さらに、本アッセイは、1μLから1000μLのような小容量の血液を用いて実施され得るので、本アッセイは指の刺創による採血及び毛細管採血に適している。5mL、10mL及び20mLの容量を含む、1.5mLから200mLのような大容量のアッセイもまた、本発明において考慮される。
【0018】
複合した適応及び先天性免疫を評価する能力は、例えば、より大きなリスクである二次感染を招き得る免疫抑制を引き起こす、病態、並びに治療剤及び環境作用物質を同定するのに重要である。
【0019】
よって、本発明の一態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞によって産生される免疫エフェクター分子のレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性免疫応答のレベルを示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0020】
本発明の別の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定する方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性免疫応答のレベルを示し、免疫応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、毒物への暴露、治療剤への暴露、及び免疫不全を含むリストから選択される疾患又は病態の存在、非存在、レベル、又は段階を示す、を含む、上記方法を提供する。
【0021】
本発明のさらなる別の態様は、対象において疾患又は病態の存在、非存在、レベル又は段階を検出するためのアッセイであって、該方法は、対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは疾患又は病態を示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0022】
本発明のさらなる別の態様は、対象において疾患又は病態のための治療プロトコルに対する応答をモニターするための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、治療プロトコルにおいて用いる物質と接触させる工程、並びに適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の分子の存在下において、免疫細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは治療プロトコルの効率を示する、を含む、上記方法を提供する。
【0023】
本発明はさらに、対象において物質が免疫抑制を誘導するか否かを決定するための方法であって、該方法は、物質に暴露した後の対象に由来するリンパ球の試ソースを、適応免疫及び先天性免疫を刺激する1以上の増強剤と接触させる工程、並びにリンパ球由来のエフェクター分子の存在及びレベルを測定する工程、但し、エフェクター分子のレベルは上記物質によって誘導された免疫抑制のレベルを決定する、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0024】
一の実施形態では、血液試料は、TLRアゴニストとTLRアゴニストとで共刺激される。
【0025】
この態様に従うと、物質は、薬剤又は環境毒物であってもよい。
【0026】
本発明の方法は、「アッセイ」とも呼ばれ得る。本発明においけるアッセイは、とりわけ、対象の一般的免疫応答を評価するのに有用であり、或いは、自己免疫疾患、セリアック病、癌、病原生物若しくは病原体による感染症、毒性物質若しくは薬剤への暴露、及び病態によって引き起こされるもの等の免疫不全若しくは免疫抑制等の特定の病態に対する免疫応答を検出するのに有用である。リンパ球のソースは、便宜上、全血であるが、本発明では、リンパ球を含む分画試料、並びに細胞単離及び/又は細胞枯渇を受けた試料を含む、リンパ球の如何なるソースの使用も考慮される。穿刺及び毛細管法などに由来する血液の微量試料も、本発明の一部を形成する。試料は、少なくともT細胞(Tリンパ球)及びNK細胞(NKリンパ球)を含む。「免疫細胞」との表現はT細胞を含む。
【0027】
任意に、デキストロース又はグルコース等の単糖を反応混合物に添加する。「全血」との表現は、希釈されていない全血、並びに、全試料アッセイ容量(即ち反応混合物)の約10%から約100%の容量(約50%から約100%及び80%から約100%の容量を含む)でアッセイに用いられる全血を含む。アッセイ容量は、1μLから1000μL超(1.5mLから200mL、例えば5mLから20mLを含む)の範囲であってもよい。
【0028】
一種類の作用物質を用いて、適応免疫及び先天性免疫を増強してもよいし、或いは2種類以上の作用物質を一緒に用いてもよい。例としては、TCRアゴニストとTLRアゴニストとによる共刺激が挙げられる。また、リンパ球を特定の抗原に暴露し、対象の抗原誘導性の適応及び先天性の複合免疫応答の能力を測定してもよい。
【0029】
対象は、ヒト又は非ヒト動物であってもよい。従って、本発明は、ヒト医学的、獣医学的及び畜産的アプリケーションを有する。ヒトは、本発明の実施において、特に有用な対象である。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、対象において病態が免疫抑制を誘導しているか否かを検出する方法であって、該方法は、病態を有する対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びにリンパ球由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは上記病態によって誘導されるか、又は上記病態に関連する免疫抑制の程度を示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0031】
キット及び皮膚試験も、本発明の一部を形成する。
【0032】
一の実施形態では、試料は、作用物質を含有する採取チューブに採取される全血であるか、又はインキュベーションのために作用物質が添加される全血である。一般に、血液はヘパリンの存在下で維持される。ヘパリンは、血液を添加する際にチューブにあってもよいし、又はその後に添加されてもよい。採血チューブの使用は、標準的な自動化実験システムに適合しており、これらシステムは大規模及びランダムアクセス・サンプリングにおける解析に適している。また、採血チューブにより取扱費用が最小限になり、全血及び血漿への実験室暴露を減らせるため、実験室員が、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、B型肝炎ウィルス(HBV)又はC型肝炎ウィルス(HCV)等の病原体に接触するリスクが減少する。さらに、採取チューブを使用してインキュベーションを実施することにより、以前に使用されていた24穴培養ウェルプレートよりもアッセイの感度が上がる。
【0033】
従って、本発明は、一実施形態において、採取チューブ、任意にデキストロース等の単糖の使用、並びに適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質を用いたインキュベーション工程を含む、改良された細胞性免疫アッセイを提供する。インキュベーション工程は、一般に約5時間から約50時間であり、例えば24時間である。抗原もまた任意に添加されてもよい。
【0034】
免疫エフェクター分子は、一般には、IFN−γ、インターロイキン(例えばIL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12又はIL−13)、形質転換成長因子β(TGFβ)、又は顆粒球コロニー刺激因子若しくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(それぞれG−CSF及びGM−CSF)等のサイトカインであるが、これらに限定されない。その他エフェクター分子は表6に列挙されている。免疫エフェクター分子の存在又はレベルは、その分子自体のレベルについて、又はその分子をコードする遺伝子が発現されている程度について測定されてもよい。
【0035】
また、本発明のアッセイは、治療プロトコルの管理におけるオーダーメイド医療のアプローチにおいて、及び/又は、病理学のアーキテクチャのプラットフォームの一部として用いられてもよい。このようなプラットフォームは、ウェブベースであっても、非ウェブベースであってもよい。従って、血液が可搬型チューブに採取され後、所定の場所で細胞性免疫応答を解析し、その後、その結果を電気通信的レポートの形態で、適切なアーキテクチャを介して臨床ケア提供者に送る、ビジネス方法も提供される。
【0036】
加えて、本アッセイが小容量の血液で実施され得る能力は、小児集団、高齢者集団及び衰弱した集団に有用である。
【0037】
いくつかの図はカラーの表示及び要素を含む。カラー写真は、必要に応じて特許権者から、又は適宜の特許庁から入手可能である。特許庁から入手する場合、課金されるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】図1Aは、単一の刺激物質による全血培養物由来のIFN−γの応答を示す、グラフ表示である。TCR刺激物質であるマイトジェン(A)、及び抗CD3抗体(B)又はTLR刺激物質R848(C)を使用した、健常人ドナー集団分布。
【図1B】図1Bは、単一の刺激物質による全血培養物由来のIFN−γの応答を示す、グラフ表示である。TCR刺激物質であるマイトジェン(A)、及び抗CD3抗体(B)又はTLR刺激物質R848(C)を使用した、健常人ドナー集団分布。
【図1C】図1Cは、単一の刺激物質による全血培養物由来のIFN−γの応答を示す、グラフ表示である。TCR刺激物質であるマイトジェン(A)、及び抗CD3抗体(B)又はTLR刺激物質R848(C)を使用した、健常人ドナー集団分布。
【図2A】図2Aは、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)の、種々のTLRアゴニストとの相乗効果を示す、グラフ表示である。(A)TLR−2;Pam3CSK4及びリポマンナン、(B)TLR−4;LPS(リポ多糖類)、及び(C)TLR−7/8;R848(イミダゾキノリン)化合物。グラフの上方の数字は、抗CD3抗体のみで刺激した培養物に対する、TLR/抗CD3抗体で共刺激した培養物のIFN−γ応答の倍増数を示す。
【図2B】図2Bは、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)の、種々のTLRアゴニストとの相乗効果を示す、グラフ表示である。(A)TLR−2;Pam3CSK4及びリポマンナン、(B)TLR−4;LPS(リポ多糖類)、及び(C)TLR−7/8;R848(イミダゾキノリン)化合物。グラフの上方の数字は、抗CD3抗体のみで刺激した培養物に対する、TLR/抗CD3抗体で共刺激した培養物のIFN−γ応答の倍増数を示す。
【図2C】図2Cは、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)の、種々のTLRアゴニストとの相乗効果を示す、グラフ表示である。(A)TLR−2;Pam3CSK4及びリポマンナン、(B)TLR−4;LPS(リポ多糖類)、及び(C)TLR−7/8;R848(イミダゾキノリン)化合物。グラフの上方の数字は、抗CD3抗体のみで刺激した培養物に対する、TLR/抗CD3抗体で共刺激した培養物のIFN−γ応答の倍増数を示す。
【図3】図3は、健常人において、TCR/TLR共刺激の相乗効果を使用して、カットオフ(閾値)IFN−γ応答を設定することについてのグラフ表示である。これにより、健康な集団の参照範囲を設定することが可能となり、その結果、免疫不全患者のIFN−γ応答の降下を観察することができる。従って、応答が健常集団の閾値(カットオフ)より低い場合は、薬物治療又は疾患に起因する免疫抑制の目安が推測され得る。
【図4】図4は、処理(TCR+TLRアゴニスト)及び未処理(NIL)の全血由来のヒト血漿における多数の分析物の検出を示す、グラフ表示である。ヒト全血を、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)とTLR−7/8アゴニスト;R848(イミダゾキノリン)との組合せで刺激することによって処理した。いくつかのケモカイン、サイトカイン及び細胞外シグナル分子は、TCRアゴニスト及びTLRアゴニストで同時に刺激した全血の血漿のみで見られる(青色バー;TCR+TLR)。いくつかのその他分子は、未処理の全血(赤色バー;NIL)と比較して、上方制御されている。
【図5】図5は、HIV感染群及び健常群において、TCRアゴニスト又はTLRアゴニストのいずれか単独を用いた全血刺激と比較した、全血培養物に対する二重の刺激物質(TCR+TLR)によるIFN−γ応答の間で観察される相乗効果のグラフ表示である。試験集団は、(i)未処置HIV陽性(南アフリカより供給);及び(ii)健常人ドナー(オーストラリアより供給)を含む。母集団中央値を表7に示す。
【図6】図6は、HIV感染群について、複合アゴニスト(TCR+TLR)で刺激した全血において観察された、IFN−γ応答レベルとCD4 T細胞数との間で見られる相関関係のグラフ表示である。
【図7】図7は、所定のドナーにおいて免疫抑制剤阻害濃度の測定が可能になるTCRアゴニストとTLRアゴニストとの組合せを用いた全血刺激を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書において、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という語又は「含む(構成する)(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変形は、記載された要素若しくは整数、又は要素若しくは整数の群を含むことを意味するが、如何なるその他要素若しくは整数、又は要素若しくは整数の群を除外するものでは無いと解される。
【0040】
本明細書において用いられる通り、"a" 、"an" 及び "the" の単数形は、文脈において別段の定めが無い限り、複数の態様を包含する。従って、「T細胞("a T-cell")」との表記は、1つのT細胞並びに2つ以上のT細胞を包含し、「作用物質(物質)("an agent")」との表記は、一種の物質、並びに2種以上の物質を包含し、「発明("the invention")」との表記は、発明の1又は複数の態様を包含する等、例が挙げられる。「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は、本発明において同義で用いられる。「免疫細胞」は、T細胞、及びNK細胞等の先天性免疫系の細胞を包含する。
【0041】
「作用物質(物質)("agent")」、「試薬」、「分子」及び「化合物」の表記は、単一の構成要素、及び2以上のこのような構成要素の組合せを包含する。また、「組合せ」は、2成分組成物等、複数成分を含み、ここで、作用物質(物質)は、別々に提供され、別々に使用若しくは調剤されるか、又は調剤の前に混合する。例えば、複数成分のアッセイパックは、適応免疫及び先天性免疫を増強する2以上の作用物質であって、それぞれ別々に保持された該作用物質を有していていてもよい。一の実施形態では、2つの作用物質はTCRアゴニスト及びTLRアゴニストである。従って、本発明のこの態様には、乾燥された物質であって、アッセイパックにおいて区画の壁又は固体支持体に対して遊離しているか、又は固定されている物質が含まれる。「組合せ」としては、適応免疫刺激剤及び先天性免疫刺激剤を含む、融合又はキメラ分子も含む。適応免疫刺激剤は、T細胞依存性又は非依存性の手段で、適応免疫を調節してもよい。TCRアゴニストの一例は抗CD3抗体である。TLRアゴニストとしては、R848(イミダゾキノリン)等のTLR−7/8アゴニストが含まれる。
【0042】
本発明は、一部において、適応免疫及び先天性免疫の増強に暴露されたリンパ球からのエフェクター分子の産生が増大することを基礎としている。このことにより、より高感度の分析が可能となり、対象の細胞性免疫応答を評価できる。従って、本発明は、適応免疫及び先天性免疫の増強剤によって刺激されたT細胞由来のエフェクター分子の存在又はレベルを測定することによって、対象において細胞性応答を検出、評価又はモニターするための分析法を提供する。リンパ球は、適応免疫及び先天性免疫を増強する作用物質に接触させる。一般に、少なくとも2つの作用物質が用いられ、少なくとも1つは適応免疫を増強し(T細胞による)、少なくとも1つは先天性免疫を増強する(例えばNK細胞による)。代替法では、適応免疫刺激剤及び先天性免疫刺激剤を含むキメラ分子が用いられる。適応免疫刺激剤は、T細胞受容体依存性又は非依存性手段によるものでもよい。従って、本発明は、対象において細胞性免疫の応答性を測定する手段を提供し、さらに、病態若しくは物質が免疫抑制を誘導するか否か、又は病態若しくは物質が免疫抑制に関連するか否かを判定する手段を提供する。また、該方法により、感染性疾患、病的状態の診断、免疫能力のレベルの測定、並びに内因性又は外因性の物質に対する適応免疫及び先天性免疫細胞応答の評価、及び、ベリリウム又はその他毒性物質等の毒物への暴露の評価も可能になる。
【0043】
従って、本発明の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞によって産生される免疫エフェクター分子のレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性免疫応答のレベルを示す、を含む上記方法を考慮したものである。
【0044】
本発明の別の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、対象の細胞性応答のレベルを示し、応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0045】
本発明のさらなる別の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、細胞性応答のレベルを示し、かつ病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を示す、を含む、上記方法を提供する。
【0046】
本発明のなおさらなる態様は、対象において疾患又は病態の存在、非存在、レベル又は段階を検出するためのアッセイであって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、疾患又は病態を示す、を含む上記方法を考慮したものである。
【0047】
本発明は、さらに、対象において物質が免疫抑制を誘導するか否かを決定するための方法であって、該方法は、物質に暴露した後の対象に由来するリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を刺激する1以上の増強物質と接触させる工程、並びにリンパ球由来のエフェクター分子の存在及びレベルを測定する工程、但し、エフェクター分子のレベルは、物質によって誘導された免疫抑制のレベルを決定する、を含む上記方法を考慮したものである。
【0048】
この態様に従うと、該物質は薬剤又は環境毒物であってもよい。
【0049】
一実施形態では、血液試料は、TCRアゴニスト(例えば抗CD3抗体)及びTLRアゴニスト(例えばTLR−7/8アゴニスト、イミダゾキノリン[R848])で共刺激される。
【0050】
従って、本発明は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、TCRアゴニスト及びTLRアゴニストと接触させ、適応免疫及び先天性免疫を増強する工程、並びに免疫細胞によって産生される免疫エフェクター分子のレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、対象の細胞性免疫応答のレベルを示す、を含む上記方法を考慮する。
【0051】
本発明の別の態様は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強するTCRアゴニスト及びTLRアゴニストと接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性応答のレベルを示し、応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を示す、を含む、上記方法を考慮したものである。
【0052】
また、リンパ球を適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の分子と共にインキュベートし、エフェクター分子の存在又は上昇を検出する方法による、細胞性免疫応答の診断アッセイの製造における、適応免疫及び先天性免疫を増強するTCRアゴニスト及びTLRアゴニストの使用も提供される。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、対象において病態が免疫抑制を誘導しているか否かを検出するための方法であって、該方法は、病態を有する対象由来のリンパ球のソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びにリンパ球由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、病態にによって誘導されるか、又は病態に関連する免疫抑制の程度を示す、を含む上記方法を考慮する。
【0054】
また、リンパ球を適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の分子と共にインキュベートし、エフェクター分子の存在又は上昇を検出する方法による、細胞性免疫応答の診断アッセイの製造における、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質の使用も提供される。
【0055】
この使用には、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症性症状、及び/又は薬剤若しくはベリリウム等の毒物又はその他環境毒物への暴露等の疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を検出又はモニターするための使用が含まれる。「免疫エフェクター分子」を測定することには、1以上の異なる種類の分子を測定することが含まれる。
【0056】
適応免疫及び先天性免疫の増強の表記は、T細胞受容体依存性及び/又は非依存性免疫、並びにNK細胞によって媒介されるもの等のトール様受容体(TLR)依存性免疫を刺激することを含む。「免疫細胞」は、「T細胞」を含むことを意味する。また、さらなる作用物質を添加して、制御性T細胞(T−reg細胞)活性を調節してもよい。後者は、T−reg細胞のサプレッサー機能を阻害することを包含する。本発明に包含されるT−reg細胞を調節する作用物質としては、CD25リガンド、JAK1又はTYK2をコードする遺伝物質に対するセンスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスオリゴヌクレオチド、中和抗体、CpG含有オリゴヌクレオチド、TLR調節剤として作用するオリゴヌクレオチド、及びその他のTLR調節剤が含まれる。
【0057】
特定の実施形態においては、T−reg細胞は、活性が阻害された免疫応答サプレッサー細胞である。
【0058】
従って、本発明は、さらに、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来の制御性T細胞のソースを、(i)サプレッサー制御性T細胞の阻害剤、及び(ii)免疫増強細胞又はその一部の活性化剤から選択される作用物質と接触させる工程;並びに、T細胞を適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質とさらに接触させ、免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは、対象の細胞性応答のレベルを示す、を含む上記方法に関する。
【0059】
T−reg機能の阻害剤又は調節剤の例としては、CD25リガンドが含まれ、限定されるものでは無いが、例えば、CD25に対するポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、CD25に対するヒト化若しくは脱免疫化(deimmunized)したポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体、又はそれらポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体の組み換え型又は合成型等が挙げられる。作用物質の他の例としては、ヤヌス・チロシンキナーゼ(Janus Tyrosine Kinase 1;JAK1)若しくはチロシンキナーゼ2(Tyrosine Kinase 2;TYK2)をコードするmRNA若しくはDNAに対するセンス又はアンチセンス核酸分子、或いはJAK1タンパク質若しくはTYK2タンパク質の小分子阻害剤が含まれる。「小分子」との表記は、国際出願公開公報第WO2005/118629号に記載されているような免疫グロブリン新規抗原受容体(immunoglobulin new antigen receptor;IgNAR)を含む。好適な作用物質のさらなる例は、トール様受容体(TLR)及び/又はその他メカニズムによって作用する、CpG分子等の刺激剤である。従って、CpG含有オリゴヌクレオチド、及びTLR調節剤として作用するオリゴヌクレオチドもまた、本発明の一部を形成する。
【0060】
1種の作用物質を用い、或いは2種類以上の作用物質を用いてT−reg細胞を調節してもよい。例えば、アッセイは、CD25リガンド及びJAK1/TYK2のセンスオリゴヌクレオチド若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド;CD25リガンド及びTLR調節剤;JAK1/TYK2のセンスオリゴヌクレオチド若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド及びTLR調節剤;又はCD25リガンド、JAK1/TYK2のセンスオリゴヌクレオチド若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド及びTLR調節剤を用いて実施してもよい。或いは、1種だけの作用物質を使用する。別の代替法では、CpG含有オリゴヌクレオチド及びTLR調節剤が用いられる。
【0061】
本発明の種々の態様に従って、リンパ球/免疫細胞もまた、抗原に暴露し、抗原誘導性適応免疫及び先天性免疫の応答を測定してもよい。
【0062】
「対象」との表記は、ヒト、又はヒト以外の種を含み、ヒト以外の種としては、霊長類、家畜動物(例えばヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ、ロバ、ヤギ)、実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター)、コンパニオン・アニマル(例えばイヌ、ネコ)、鳥類(例えば家禽、飼鳥園のトリ)、爬虫類、及び両生類が含まれる。従って、本発明はヒトの医薬において利用可能性を有すると同時に、家畜、獣医学及び野生動物におけるアプリケーションを有し、そのようなアプリケーションとしては、ウマ、イヌ、及びラクダのレース産業が含まれる。例えば、本発明のアッセイは、激しい運動(レース等)の前及び/又は後のウマに対して日常的に実施し、運動によって引き起こされる肺出血(EIPH)の兆候をスクリーニングしてもよい。全てのウマは、運動の間、ある形態のEIPHをある程度呈する。しかし、不顕性のEIPHは検出が困難となり得る。
【0063】
ヒトとの表記は、小児集団、高齢者集団及び衰弱者集団等の特定の集団、並びに特定の民族の特定の群又は集団を含む。
【0064】
別の実施形態では、対象はヒトであり、細胞性免疫応答アッセイは、病原性微生物、すウイルス及び寄生生物に対する応答性のスクリーニング、自己免疫状態、セリアック病の発症の可能性のスクリーニング又はモニタリング、腫瘍学的チャレンジ対する対象の応答のモニタリング、及び任意の免疫不全又は免疫抑制の存在の決定に用いられる。後者は、例えば、種々の化学療法剤を含む特定の薬剤に起因して、或いは、環境毒物及び汚染物質への暴露にに起因して生じ得る。
【0065】
免疫エフェクター分子は、抗原による細胞活性化又は細胞刺激に応答して産生される、如何なる範囲の分子であってもよい。インターフェロン(IFN)-γ等のIFNは、特に有用な免疫エフェクター分子であるが、その他のものとしては、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12又はIL−13などのインターロイキン(IL)、腫瘍壊死因子α(Tumor Necrosis Factor;TNF-α)、形質転換増殖因子β(Transforming Growth Factor beta;TGF-β)、顆粒球-コロニー刺激因子(Granulocyte-Colony Stimulating FactorG−CSF)又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte Macrophage-Colony Stimulating Factor;GM-CSF)等のコロニー刺激因子(Colony Stimulating Factor ;CSF)等の様々なサイトカイン、その他、補体経路における補体又は成分等の多くのものが含まれる。プロファイルされ得るその他エフェクター分子としては表6に列挙されたものが含まれる。
【0066】
T細胞受容体アゴニストの例としては、PHA、ブドウ球菌エンテロトキシンB(staphylococcal enterotoxin B;SEB)、CpGオリゴヌクレオチド、T細胞受容体複合体に対する抗体、及び抗CD3抗体が含まれる。T細胞受容体非依存性適応免疫の刺激剤の例としては、PMA及びConAが含まれる。TLRアゴニストとしては、Pam3CSK4(TLR-2リガンド)、リポマンナン(TLR-2リガンド)、ポリ(I:C)-(TLR-3リガンド)、リポ多糖類(TLR-4リガンド)、R848(TLR-7/8リガンド)等のイミダゾキノリン化合物、及びCpGオリゴデオキシヌクレオチド(TLR-9リガンド)が含まれる。TLRアゴニストを選択することに関して、多いものから順に、アゴニストはTLR-7/8>TLR-4>TLR-3>TLR-2のアゴニストから選択される。
【0067】
「CpG分子」とは、CpG配列又はモチーフを含むオリゴヌクレオチドを意味する。本発明は、トール様受容体(TLR)機能又は免疫系のその他の側面の任意の調節剤に及ぶ。
【0068】
また、本発明は、対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球のソースを、TLRアゴニスト及び適応免疫刺激剤と接触させる工程、並びに免疫細胞由来の免疫エフェクター分子のレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは対象の細胞性応答のレベルを示す、を含む上記方法も提供する。
【0069】
本発明のアッセイにより、対象における疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階の検出が可能になり、疾患又は病態としては、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症性物質への暴露、薬剤への暴露、ベリリウム若しくはその他毒性物質等の毒物又は汚染物質への暴露、並びに病態によって誘導される等の免疫不全又は免疫抑制が挙げられる。
【0070】
適応免疫及び先天性免疫の作用物質は、反応容器において遊離した状態でもよいし、或いはビーズ等の固体支持体、又は反応器の側面若しくは底部に固定化されてもよい。また、作用物質は、使用前又は使用中に再構成される、乾燥形態であってもよい。同様に、抗原が含まれる場合、抗原は、反応容器において遊離した状態でもよいし、或いは反応容器において、反応容器自体に、又はビーズ若しくはその他個体支持体等に固定化されてもよい。
【0071】
一実施形態では、対象から採取される試料は、一般に、採血チューブ中に入れられる。採血チューブとしては、血液吸引チューブ(blood draw tube)又はその他類似の容器が含まれる。便利なものとして、試料が全血の場合は、採血チューブはヘパリン処理される。あるいは、血液を採取した後で、ヘパリンをチューブに添加する。全血が特に考慮され、最も便利な試料であるが、本発明は、免疫細胞を含有するその他試料にも及び、その他試料としては、リンパ液、脳脊髄液、組織液、及び鼻液及び肺液を含む呼吸器液、並びに細胞枯渇を受けた試料も挙げられる。「全血」との表記は、組織培養液、培地、試薬、賦形剤等で希釈されていない全体血液を含む。一実施形態では、「全血」という用語は、全血を少なくとも10容量%含むアッセイ試料(即ち反応混合物)を含む。「少なくとも10容量%」という用語は、反応混合物の全アッセイ容量の、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100容量%の血液容量を包含する。「全血」を含む試料から逸脱することなく、培地、酵素、賦形剤、抗原等のさらなる物質を添加してもよい。
【0072】
また、1μLから1000μL等の小さい血液容量を用いてもよい。例えば、5μL、10μL、20μL、50μL、100μL及び500μL、並びにそれらの間の量が含まれる。従って、試料容量としては、約1μLから約200mLを含み、1mL、5mL、10mL及び20mLが含まれる。
【0073】
採血チューブの使用は、標準的な自動化実験システムに適合しており、これらシステムは大規模及びランダムアクセス・サンプリングにおける解析に適している。また、採血チューブにより取扱費用が最小限になり、全血及び血漿への実験室暴露を減らせるため、実験室員が、HIV、B型肝炎ウィルス(HBV)又はC型肝炎ウィルス(HCV)等の病原体に接触するリスクが減少する。
【0074】
インキュベーション工程を採血チューブと組合せることは、特に効率的であり、アッセイの感度を高めるが、これは、デキストロース又はグルコース等の単糖の存在下で細胞をインキュベートする、任意の特徴を実施するためである。
【0075】
細胞性免疫系の細胞は、対象からの採血に続いて長期間経過の後には、全血において免疫応答を呈する能力を失い、介入がない場合の応答は、採血24時間後には大幅に減少するか、或いは喪失していることが多い。面倒な作業並びに特殊なプラスチック製品の必要性が減じられることで、診療所、クリニック、外来患者用施設、及び動物病院等、ポイントオブ・ケア(point of care)を行う場所で、又は農場で、抗原による細胞性免疫刺激を実施することが可能になる。抗原刺激が完了すると、新鮮及び活性細胞の必要性はもはや存在しない。IFN−γ及びその他サイトカイン又は免疫エフェクター分子は血漿中で安定であるから、試料は、特別な条件又は迅速な時間の必要性も無く、貯蔵又は輸送し得る。
【0076】
インキュベーション工程は、1から50時間であってもよく、例えば1から40時間、8から24時間又はそれらの間の期間であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50時間が含まれる。24時間の期間が、特に好都合である。
【0077】
細胞性免疫を測定する能力は、対象が、微生物、ウィルス又は寄生生物等の病原体による感染症に応答し、自己免疫性糖尿病等における自己免疫応答を呈し、或いは癌若しくはその他腫瘍状態から保護し、或いは炎症状態を検出し、或いはベリリウム等の毒物に対する、対象の暴露又は感受性を検出する能力を評価するのに重要である。また、本明細書に記載されるアッセイは、免疫抑制に繋がる病態、又は薬剤によって誘導される免疫抑制を検出することが可能になる。結果として、「対象において細胞性免疫応答を測定する工程」との表記は、感染性疾患及び自己免疫疾患、免疫能力のマーカー、並びに炎症性疾患、癌及び毒物のマーカーの免疫診断を含み、包含する。重要なことには、複合した適応免疫応答及び先天性免疫応答が測定される。さらには、小さい血液容量が使用し得る能力により、例えば、小児集団、高齢者集団及び衰弱者集団に対してアッセイを容易に実施することが可能になる。
【0078】
一実施形態では、免疫抑制に繋がる病態としては、慢性炎症及び癌が含まれる。免疫抑制に繋がり得る薬剤としては、関節リウマチ、癌及び炎症性大腸疾患を治療するために用いられるものが含まれる。
【0079】
病原体又は感染因子としては、細菌、寄生生物及びウィルスが含まれる。細菌の例としては、グラム陽性及びグラム陰性菌が含まれ、例えば、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、サルモネラ(Salmonella)種、クロストリジウム(Clostridium)種、シゲラ(Shigella)種、プロテウス(Proteus)種、バチラス(Bacillus)種、ヘモフィラス(Hemophilus)種、ボレリア(Borrelia)種等が挙げられる。マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterim tuberculosis)、並びに結核症(TB)等、マイコバクテリウム・ツベルクローシスにおる感染から生じる状態は特に有用な標的である。ウイルスの例としては、肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルス)、ヘルペスウイルス、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)、並びにそれらから生じる疾患が含まれる。寄生生物としては、プラスモディウム(Plasmodium)種、白癬、肝寄生生物等が含まれる。その他病原体としては、酵母及び菌類等の真核細胞が含まれる。
【0080】
本発明において検出が考慮される自己免疫疾患としては、とりわけ、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、多発性硬化症、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎及び自己免疫性精巣炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック病皮膚炎、慢性疲労症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性、慢性炎症性多発性ニューロパシー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、クローン病、疱疹状皮膚炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、突発性肺線維症、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病(タイプ1)、扁平苔癬、狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、及び白斑が含まれる。
【0081】
上記それら感染体に暴露された対象において潜在的又は実際の細胞性応答を評価することは一般に重要である。また、本発明の方法は、上記それらの状態の存在又は非存在、並びに、疾患過程のレベル又は段階を検出するためにも用いられ得る。
【0082】
免疫抑制に繋がり得るその他病態としては、炎症性の病態が含まれる。
【0083】
本発明に考慮される炎症性の病態の例としては、限定されるものではないが、赤み、腫脹、疼痛の反応、並びに外傷又は疾病によって影響を受けた組織を保護しようとすることを意味する、特定領域における熱感を生じる疾患及び障害が含まれる。本発明の方法を用いて治療され得る炎症性疾患としては、限定されないが、ニキビ、アンギナ、関節炎、誤嚥性肺炎、疾患、蓄膿症、胃腸炎、炎症、腸感冒、NEC、壊死性腸炎、骨盤内炎症性疾患、咽頭炎、PID、胸膜炎、咽喉痛、赤み、発赤、咽頭炎、ウィルス性胃腸炎及び尿路感染症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害が含まれる。ヒト以外の適用に関しては、本発明は、ウマにおけるEIPH、並びにタスマニアンデビルにおける顔面腫瘍疾患等の、動物における様々な状態を検出することに及ぶ。
【0084】
癌療法もまた、細胞性免疫に多少なりとも左右され、癌自体又は癌の治療に用いられる薬物は免疫抑制に繋がり得る。本発明において考慮される癌としては、無制御な細胞増殖(例えば腫瘍の形成)であって、それら細胞が特殊な別の細胞に分化しないことを特徴とする疾患及び障害の群が含まれる。この様な疾患及び障害としては、ABL1プロトオンコジーン、エイズに関連する癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、突発性骨髄化生、脱毛症、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹グリオーマ、脳腫瘍及び中枢神経系腫瘍、乳癌、中枢神経系腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼球メラノーマ、網膜芽腫、卵管癌、ファンコニ貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液悪性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト・パピローマウィルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球増加症、咽頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ癌症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、腎臓の悪性桿状腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、口腔癌、多発性内分泌腺腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、希な癌及びその関連疾患、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロスモンド・トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎盂/尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍が含まれる。
【0085】
上記に示した通り、リンパ球免疫細胞もまた、抗原に暴露されて、抗原誘導性の適応及び先天性の複合免疫を測定してもよい。
【0086】
免疫エフェクター分子の検出は、タンパク質又は核酸レベルで測定してもよい。結果として、免疫エフェクター分子の「存在又はレベル」との表記は、直接的及び間接的データを含む。例えば、サイトカインmRNAの高レベルは、サイトカインのレベル上昇を示す、間接的データである。
【0087】
免疫エフェクターに対するリガンドは、これらの分子の検出及び/又は定量に特に有用である。免疫エフェクターに対する抗体は特に有用である。本発明において考慮されるアッセイのための手法は、当該分野において知られており、例えば、ラジオイムノアッセイ、サンドイッチアッセイ、ELISA及びELISpotが含まれる。「抗体」との表記は、抗体の一部、哺乳類化(例えばヒト化)抗体、脱免疫化(deimmunized)抗体、組換え抗体又は合成抗体、並びにハイブリッド抗体及び一本鎖抗体を含む。本発明では、ヒトにおける皮膚試験については、エフェクター分子を検出するために、ヒト化抗体又は脱免疫化(deimmunized)抗体が特に考慮される。
【0088】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は両者とも、免疫エフェクター分子又はその抗原性断片を用いた免疫化によって取得可能であり、何れのタイプも免疫アッセイに利用可能である。両タイプの血清を得る方法は、当該分野でよく知られている。ポリクローナル血清は、それ程好ましいものでも無いが、適当な実験動物に有効量の免疫エフェクター又はその抗原性部分を注射し、動物から血清を採取し、何れかの既知の免疫吸着技術によって特異的血清を単離することによって、比較的容易に調製される。この方法によって製造される抗体は、実質的にあらゆるタイプの免疫アッセイに利用可能であるが、該製品は潜在的に不均質であることから、一般にはそれほど好ましくものでは無い。
【0089】
免疫アッセイにおけるモノクローナル抗体の使用は、それらが大量に製造可能であること、並びに該製品は均一であることから、特に有用である。モノクローナル抗体製造のためのハイブリドーマ細胞株の調製は、不死細胞株と、免疫原性調製物に対して感作されたリンパ球とを融合させることによって誘導されるが、これは、当業者によく知られた手法によって実施され得る。
【0090】
従って、本発明の別の態様は、対象由来のリンパ球を含む試料において免疫エフェクター分子を検出するための方法であって、該方法は、試料又は試料のアリコートを、免疫エフェクター分子又はその免疫原性断片に特異的な抗体と、抗体−エフェクター複合体を形成するのに十分な時間及び条件で接触させる工程、並びに、次いで、該複合体を検出する工程を含み、免疫エフェクター分子は、リンパ球を、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質と共にインキュベーションした後に産生される、上記方法を考慮する。
【0091】
「試料」としては、全血又はリンパ球を含むその画分が含まれる。本方法には、平面状又は球状の固体支持体上におけるマイクロアレイ、マクロアレイ及びナノアレイが含まれる。マイクロアレイ又はマクロアレイが有用である。また、「試料」は、約1μL〜1000μLまで、例えば5μL、10μL、20μL、50μL及び100μLの小容量試料を含む。
【0092】
米国特許第4,016,043号、第4,424,279号及び第4,018,653号の引用文献に見られるように、広範な免疫アッセイの手法が利用可能である。
【0093】
以下は、1つのタイプのアッセイの説明である。非標識抗体を固体支持体上に固定し、免疫エフェクター分子(例えばサイトカイン)について試験される試料を、当該結合分子と接触させる。抗体−免疫エフェクター分子複合体を形成し得る充分な時間である、適当なインキュベーション時間の後、検出可能なシグナルを生成し得るレポーター分子で標識された、エフェクター分子に特異的な二次抗体を添加し、抗体−エフェクター標識抗体の別の複合体の形成に充分な時間、インキュベートする。全ての未反応物質を洗い流し、レポーター分子が生成するシグナルを観察することによって、エフェクター分子の存在を判定する。結果は、可視的シグナルの単純な観察による定性的なものであってもよく、或いは、既知量の抗原を含有する対照試料と比較することによって定量的なものであってもよい。この一般化された手法は当業者に周知であり、多数のバリエーションのいずれであってもよい。
【0094】
これらのアッセイにおいて、本免疫エフェクターに対する特異性を有する一次抗体は、共有結合で、又は受動的に固体表面に結合されている。固体表面は、典型的にはガラス又はポリマーであり、最も普通に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、球、マイクロプレートのディスク、又は免疫アッセイを実施するために適当なその他表面の形状であってよい。結合プロセスは当該分野で周知であり、一般的には、架橋結合、共有結合又は物理吸着よりなり、ポリマー・抗体複合体は、試験試料の調製において洗浄される。次いで、試験される試料のアリコートを固相複合体に添加し、充分な時間(例えば2から120分、又はより都合のよい場合には一晩)及び適当な条件下で(例えば約20℃から約40℃)インキュベートし、抗体中に存在するあらゆるサブユニットの結合を可能にする。インキュベーション時間の後、抗体サブユニットの固相を洗浄及び乾燥し、エフェクター分子の一部に特異的な二次抗体と共にインキュベートする。二次抗体は、エフェクター分子への二次抗体の結合を示すために用いられるレポーター分子に結合されている
【0095】
このアッセイには多数のバリエーションがある。1つの特に有用なバリエーションは、全て又は多数の成分を実質的に同時に混合する、同時アッセイである。さらに、サイトカインへの抗体の結合は、最初に述べた抗体に対する標識抗体の結合によって判定してもよい。
【0096】
本明細書において用いられる「レポーター分子」は、その化学的性質によって抗原結合抗体の検出を可能にする、分析的に特定可能なシグナルを提供する分子を意味する。検出は、定性的でも定量的であってもよい。このタイプのアッセイにおいて最も普通に使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロフォア又は放射性核種含有分子(即ちラジオアイソトープ)及び化学発光分子である。好適なフルオロフォアの例を表1に挙げる。酵素免疫測定法の場合、酵素は、一般にグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって二次抗体に結合する。しかし、容易に認識される通り、多種多様の異なる結合手法が存在し、これらは当業者には容易に利用可能である。通常使用される酵素としては、とりわけ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ及びアルカリフォスファターゼが含まれる。特異的酵素と共に使用される基質としては、一般に、対応する酵素による加水分解に際して、検出可能な色の変化を起こすものを選択する。好適な酵素の例としては、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼが含まれる。また、蛍光基質も適用することが可能であり、これは上記の発色性基質とは異なり蛍光生成物を生成する。全ての場合で、酵素標識抗体を一次抗体・抗原複合体に添加して結合させ、その後過剰な試薬を洗い流す。次に、適宜の基質を含有する溶液を、抗体・抗原・抗体の複合体に添加する。基質は、二次抗体に結合する酵素と反応して、定性的な可視シグナルを呈するが、この可視シグナルは、通常分光光度法によりさらに定量し、試料中に存在した抗原の量を示してもよい。繰り返すが、本発明は実質的同時アッセイに及ぶ。
【0097】
或いは、フルオレスセイン及びローダミン等の蛍光化合物を、抗体の結合能力を変化させることなく、抗体に化学的に結合させてもよい。特定波長の光の照射で活性化際に、蛍光色素標識抗体は、光エネルギーを吸収し、分子の励起状態を誘導し、その後、光学顕微鏡で可視的に検出可能な特徴的な色で発光する。蛍光標識抗体は、一次抗体・抗原複合体に結合させる。非結合試薬を洗い流した後、残存する三成分複合体を適宜の波長の光に暴露すると、観察される蛍光は、目的の抗原の存在を指示する。免疫蛍光法及び酵素免疫測定法の手法は、両者とも、当該分野において高度に確立されており、本発明の方法に特に好ましい。しかし、ラジオアイソトープ、化学発光又は生物発光分子等の、その他レポーター分子を使用してもよい。
【0098】
コロイド金を含む、利用し得るその他広範な検出システムがあり、全てのそのような検出システムが本発明に包含される。
【0099】
また、本発明は、免疫エフェクターをコードする遺伝子配列のRNA発現産物を検出するPCR解析を伴うもの等、遺伝子アッセイも考慮する。
【0100】
一実施形態では、PCRはプライマー対を用いて実施され、プライマー対の一方又は両方は一般に、区別可能なシグナルを与え得る、同一又は異なるレポーター分子で標識される。本発明の実施において、フルオロフォアの使用は特に有用である。好適なフルオロフォアの例は、表1に示したリストから選択してもよい。その他の標識としては、発光及びリン光並びに赤外色素が含まれる。これらの色素又はフルオロフォアも、抗体のレポーター分子として使用してもよい。
【0101】
【表1】
【0102】
蛍光発光を解析するあらゆる好適な方法が本発明に包含される。この点で、本発明は、以下を含む技術を考慮するが、これらに限定されない:例えば、ラコビクツ(Lakowicz)らBiophys. J. 72:567頁, 1997年に開示された、二光子又は三光子時間分解蛍光分光法(2-photon and 3-photon time resolved fluorescence spectroscopy)、例えばエリクソン(Eriksson)らによってBiophys. J. 2:64頁, 1993年に開示された、蛍光ライフタイム・イメージング(fluorescence lifetime imaging)、及び、例えばヨウヴァン(Youvan)らによってBiotechnology et elia 3:1-18頁, 1997年に開示された、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer)。
【0103】
当該分野で知られる通り、発光及びリン光は、それぞれ、適当な発光性又はリン光性の標識から生じ得る。この点で、このような標識を特定するあらゆる光学的手段を使用してもよい。
【0104】
赤外線放射は、適当な赤外色素から生じ得る。本発明において使用してもよい赤外色素の例としては、限定されないが、ルイス(Lewis)らのDyes Pigm. 42(2):197頁, 1999年、タワ(Tawa)らのMater. Res. Soc. Symp. Proc.488[有機固体物質の電気的、光学的及び磁気的特性IV(Electrical, Optical and Magnetic Properties of Organic Solid-State Materials IV)]885-890頁、ダネシュヴァル(Daneshvar)らのJ. Immunol. Methods 226(1-2):119-128頁, 1999年、ラパポート(Rapaport)らのAppl. Phys. Lett. 74(3):329-331頁, 1999年及びデュリグ(Durig)らのJ. Raman Spectrosc. 24(5):281-285頁, 1993年に開示されたものが含まれる。赤外色素を調べるために、任意の適当な赤外分光法を使用してもよい。この点で、例えばラーマン(Rahman)ら、J. Org. Chem. 63:6196頁, 1998年に記載される、フーリエ変換赤外分光法(fourier transform infrared spectroscopy)を例えば使用してもよい。
【0105】
好適には、電磁散乱が、光及びX線を含む、入射電磁放射線の回折、反射、偏光又は屈折から生じてもよい。このような散乱は、mRNAのレベル又はタンパク質のレベルを定量するために使用し得る。
【0106】
フローサイトメトリーは、フルオロフォア発光の解析に特に有用である。
【0107】
当該分野において知られているように、フローサイトメトリーは、粒子(例えば標識mRNA、DNA又はタンパク質)が流体中に懸濁されつつ、1以上のレーザー光線のコースを通過する際に、粒子の物理的及び化学的特長を迅速に解析することを伴う、ハイスループットな手法である。各粒子はレーザー光線を妨害するため、各細胞又は粒子によって発光された散乱光及び蛍光が、例えば以下に記載する任意の適当な追跡アルゴリズムを用いて、検出及び記録される。
【0108】
現在のフローサイトメーターは、これらのタスクを100,000細胞・粒子/秒で実施することができる。フィルター及びダイクロイックミラーの光学アレイを使用することによって、種々の波長の蛍光が分離され、同時に検出され得る。加えて、種々の励起波長を有する多数のレーザーを使用してもよい。従って、様々なフルオロフォアを使用して、例えば、試料内の種々の免疫エフェクター、又は複数の対象由来の免疫エフェクターを標的とし、試験し得る。
【0109】
本発明の方法に使用してもよい好適なフローサイトメーターとしては、単一の励起レーザーであって、通常は15mWで488nmのスペクトル線で操作するアルゴンイオン空冷レーザーを用いて、5〜9の光学パラメーター(表2参照)を測定するものが含まれる。より進歩したフローサイトメーターは、アルゴンイオンレーザー(488又は514nm)に加えて、HeNeレーザー(633nm)又はHeCdレーザー(325nm)等の、複数の励起レーザーを使用することができる。
【0110】
【表2】
【0111】
例えば、ビッグス(Biggs)ら、サイトメトリー(Cytometry) 36:36-45頁, 1999年は、3つの励起レーザーを用いる、11のパラメーターのフローサイトメーターを構築しており、粒子の免疫表現型判定(即ち分類する)目的で、前方及び側方の散乱測定に加えて、9つの区別できるフルオロフォアの使用を示した。適切に使用し得るパラメーターの選択は、吸光係数、量子収量及び全てのフルオロフォアの間のスペクトルの重複量(spectral overlap)に大きく依存する(マレメド(Malemed)ら、「フローサイトメトリー及びソーティング(Flow cytometry and sorting)」、第2版、ニューヨーク、ウィリー-リス(Wiley-Liss), 1990年)。本発明は、いずれかの特定のフローサイトメーター又はいずれかの特定のパラメーターセットにも限定されないことが解されるであろう。この点で、本発明は、従来のフローサイトメーターの代わりに、例えばフ(Fu)ら、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology) 17:1109-1111頁, 1999年に開示された、微細加工フローサイトメーター(microfabricated flow cytometer)の使用も考慮する。
【0112】
本発明のアッセイは、ハイスループットスクリーニングのために、又は1つの対象由来の多数の免疫エフェクターをスクリーニングするために、自動化又は半自動化されてもよい。自動化はコンピュータソフトウェアによって簡便に制御される。
【0113】
従って、本発明はさらに、ウェブベース及び非ウェブベースのシステムであって、対象の細胞性免疫応答についてのデータが、クライアント・サーバー又は他のアーキテクチャ・プラットフォームによって中央処理装置に提供され、該中央処理装置は、解析を行い、対照と比較し、任意に他の情報、例えば患者の年齢、性別、体重及び他の医学的状態を考慮し、その後、例えば、疾患の重症度、疾患の進行若しくは疾患の状態の危険因子、又は疾患発症の確率指数等のレポートを提供する、上記システムを考慮する。従って、血液が可搬型のチューブに集められた後、所定の場所で細胞性免疫応答を解析し、その結果を電気通信レポートの形態で、クライアント・サーバー又はその他のアーキテクチャ・プラットフォームを通して臨床ケア提供者に送る、ビジネス方法も提供される。
【0114】
従って、情報ベースのコンピュータソフトウェア及びハードウェアもまた、本発明の一部を形成する。これにより、感染症、癌又は炎症を含む病態又は医薬品又は毒物が免疫抑制を誘導しているか否か、或いはそれらが免疫抑制に関連しているか否かを確認する、臨床ケアが容易になる。
【0115】
特に、本発明のアッセイは、病理学的サービスに関連する、既存の、又は新たに開発される情報ベースのアーキテクチャ又はプラットフォームに用いてもよい。例えば、アッセイから得られた結果は、通信ネットワーク(例えばインターネット)又は電話接続を介して処理システムに伝達され、該処理システムにはアルゴリズムが保存されており、かつ該アルゴリズムは、予測される事後確率値を得るために用いられるものであり、この事後確立値は、細胞性免疫応答又は免疫抑制の指標に変換された後、診断又は予測レポートの形態でエンドユーザーに転送される。このレポートは、臨床ケア管理及びオーダーメイド医療の基本を形成し得る。
【0116】
従って、アッセイは、キット又はコンピューターに基づくシステムの形態であってもよく、該キット又はコンピューターに基づくシステムは、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質へのリンパ球の暴露に続く、免疫エフェクター分子濃度の検出に必要な試薬、及び、臨床医へのレポートの決定及び送信を容易にするコンピュータハードウェア及び/又はソフトウェアを含む。
【0117】
例えば、本発明は、ユーザーが対象の細胞性免疫応答の状態を判定することを可能にする方法であって、
該方法は以下の工程を含む、上記方法を考慮する:
(a) 通信ネットワークを介して、ユーザーから、免疫エフェクター分子のレベル又は濃度の形態のデータを受信する工程であって、該データは、対照に対する、細胞性免疫応答の状態に関する相関関係を提供し、該免疫エフェクター分子は、リンパ球を適応免疫応答及び先天性免疫応答を増強する1以上の作用物質に暴露した後に測定される、上記工程;
(b) 対象データを単変量解析又は多変量解析を介して処理して、免疫応答値を提供する工程;
(c) 所定の値と比較した、免疫応答値の結果に従って、対象の状態を判定する工程;
(d) 通信ネットワークを介して、対象の状態の指示をユーザーに送信する工程。
【0118】
「単変量」又は「多変量」解析との表記は、単変量又は多変量の解析機能を実行するアルゴリズムを含む。
【0119】
好都合な場合としては、本発明の方法は、一般に、さらに以下の工程を含む:
(a) ユーザーに、遠隔エンドステーションを用いてデータを判定させる工程;及び
(b) 通信ネットワークを介して、エンドステーションからベースステーションにデータを伝達する工程。
【0120】
ベースステーションは第一処理システム及び第二処理システムを含み得るが、この場合、当該方法は、以下の工程を含み得る:
(a) 第一処理システムにデータを伝達する工程;
(b) 第二処理システムにデータを伝達する工程;及び
(c) 第一処理システムに、単変量解析機能又は多変量解析機能を実行させ、細胞性免疫応答値を生成する工程。
【0121】
また、本方法は、以下の工程を含んでもよい:
(a) 第一処理システムに単変量解析機能又は多変量解析機能の結果を伝達する工程;及び
(b) 第一処理システムに対象の状態を判定させる工程。
【0122】
この場合、当該方法は、以下の少なくとも1つの工程も含む:
(a) 第一ファイアウォールを介して、通信ネットワークと第一処理システムとの間においてデータを伝達する工程;及び
(b) 第二ファイアウォールを介して、第一処理システムと第二処理システムとの間においてデータを伝達する工程。
【0123】
第二処理システムは、所定のデータ及び/又は単変量解析機能又は多変量解析機能を保存し得るように適合されたデータベースに接続してもよく、該方法は以下の工程を含む:
(a) データベースに問い合わせて、少なくとも選択された所定のデータを取得するか、又はデータベースから単変量解析機能又は多変量解析機能にアクセスする工程;及び
(b) 選択された所定のデータを対象のデータと比較するか、又は、細胞性免疫応答又は免疫抑制のレベルの予測される確率指数を生成する工程。
【0124】
第二処理システムは、データベースに接続し得、当該方法は、データベースにデータを保存する工程を含む。
【0125】
また、当該方法は、ユーザーに、安全なアレイを用いてデータを判定させる工程を含み、要素を有する安全なアレイは、免疫エフェクター分子のレベルを判定することが可能であり、かつ各コード上の各位置にそれぞれ配置された多数の機能を有する。この場合、当該方法は、典型的には、ベースステーションに以下を実行させる工程を含む:
(a) データからコードを決定すること;
(b) アレイ上の各機能の位置を示すレイアウトを決定すること;並びに
(c) 決定されたレイアウトに従ってパラメータ値を決定すること、及びデータを決定すること。
【0126】
また、該方法は、ベースステーションに以下を実行させる工程も含み得る:
(a) 決済情報を決定することであって、該決済情報は、ユーザーによる支払の提供を表す;及び
(b) 決済情報の決定に対応して、比較を実行すること。
【0127】
また、本発明は、細胞性免疫応答又は免疫抑制に関して対象の状態を判定するためのベースステーションも提供するが、該ベースステーションは、以下を含む:
(a) 保存された方法;
(b) 処理システム、但し、該処理システムは、以下を行うように適合されている:
(c) 通信ネットワークを介して、ユーザーから対象データを受信すること、但し、該データは免疫エフェクター分子のレベルを含み、該エフェクター分子のレベルは、対照に対する、細胞性免疫応答の状態に関する相関関係を提供し、該免疫エフェクター分子は、リンパ球を適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質に暴露した後に測定されるものである;
(d) 所定のデータと上記データとを比較することを含む、アルゴリズム機能を実行すること;
(e) 比較を含む、アルゴリズム機能の結果に従って、対象の状態を判定すること;並びに
(c) 通信ネットワークを介して、ユーザーに対象の状態の表示を出力すること。
【0128】
処理システムは、データを判定し得るように適合された遠隔エンドステーションからデータを受信し得るように適合され得る。
【0129】
処理システムは、以下を含んでもよい:
(a) 以下を実行し得るように適合された第一処理システム:
(i) データを受信すること;及び
(ii) データを比較することを含む、単変量解析機能又は多変量解析機能の結果に従って、対象の状態を判定すること;並びに
(b) 以下を実行し得るように適合された第二処理システム:
(i) 処理システムからデータを受信すること;
(ii) 比較を含む、単変量解析機能又は多変量解析機能を実行すること;及び
(iii) 結果を第一処理システムに伝達すること。
【0130】
ベースステーションは、典型的には、以下を含む:
(a) 第一処理システムを通信ネットワークに接続するための第一ファイアウォール;及び
(b) 第一処理システムと第二処理システムとを接続するための第二ファイアウォール。
【0131】
処理システムは、データベースに接続してもよく、処理システムは、データベースにデータを保存し得るように適合され得る。
【0132】
この実施形態に従うと、免疫エフェクター分子のレベルは、単独でスクリーニングされてもよく、或いはその他バイオマーカー又は疾患指標と組合せてスクリーニングされてもよい。「変化した(altered)」レベルとは、免疫エフェクター分子の濃度における増加又は上昇又は減少又は低下を意味する。
【0133】
免疫エフェクター分子の濃度又はレベルの測定により、対照に対する濃度に基づく診断規則を確立することができる。あるいは、診断規則は、統計学及び機械学習に基づくアルゴリズムの適用に基づくものである。このようなアルゴリズムは、エフェクター分子と、(既知の疾患状態又は細胞性免疫応答を有する)トレーニングデータにおいて観察される疾患状態との間の関係を用い、未知の状態である対象の状態を予測するために後に用いられる関係を推定する。対象が特定レベルの細胞性免疫応答及び/又は病態を有することについての確率の指数を提供するアルゴリズムが利用され得る。アルゴリズムは、単変量解析機能又は多変量解析機能を実行する。
【0134】
従って、本発明は、統計学及び機械学習に基づくアルゴリズムの適用に基づく診断規則を提供する。このようなアルゴリズムは、免疫エフェクター分子と、(既知の免疫状態を有する)トレーニングデータにおいて観察される細胞性免疫応答又は免疫抑制のレベルとの間の関係を用い、未知の免疫状態である患者の状態を予測するために後に用いられる関係を推定する。データ解析の分野における当業者は、本発明を実質的に変化させることなく、トレーニングデータにおいて関係を推定する多数の異なる形態が用いられ得ることを認識する。
【0135】
本発明は、さらに、アルゴリズムを得るための、細胞性免疫応答レベルが既知である対象由来の免疫エフェクター分子のレベルを含む、トレーニングデータの情報基盤の使用であって、該アルゴリズムは、免疫応答レベルが未知である対象由来の同一免疫エフェクター分子のレベルを含むデータの第二情報基盤を入力した場合に、細胞性免疫応答の性質を予測する確率指数を提供する、上記使用を考慮する。
【0136】
「トレーニングデータ」という用語は、対照と比較した免疫エフェクター分子のレベルの情報を含むが、ここで、免疫エフェクター分子は、リンパ球を適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質に暴露した後に測定されるものである。「対照」は、「通常の」免疫応答性を有する対象中の免疫エフェクター分子のレベルとの比較を含み、又は、試験に基基づいて統計学的に決定したレベルであってもよい。
【0137】
従って、「トレーニングデータ」という用語は、免疫エフェクター分子のレベルを含む。
【0138】
免疫エフェクター分子のレベル又は濃度は、本発明において「第二情報基盤のデータ(second knowledge base of data)」と称される入力試験データを提供する。第二情報基盤のデータは、対照と比較して検討されるか、或いは免疫状態が既知である対象の免疫エフェクターのレベルの情報を含む、「第一情報基盤のデータ(first knowledge base of data)」によって生成されるアルゴリズム中に送り込まれる。第二情報基盤のデータは、細胞性免疫応答に関して、未知の状態の対象由来のものである。アルゴリズムの出力又は対照との比較は、本発明では「確立指数(an index of probability)」と称される、特定レベルの免疫応答性又は免疫抑制を有する対象の確率又は危険因子である。
【0139】
免疫エフェクター分子のレベルから生成されるデータは入力データである。免疫エフェクターレベルを含むデータの入力は、対照と比較されるか、或いは対象が例えば免疫抑制状態を有する可能性のリスク値を提供する、アルゴリズムに取り込まれる。治療計画もまた、あらゆる免疫抑制の存在を確認するためにモニターし得る。免疫抑制のレベルは、(例えば、癌療法又は病原性感染の治療の間に)二次感染に罹っているか、或いは再発を有する対象のリスクを増すことがある。
【0140】
上述の通り、免疫エフェクター分子のレベルを介して対象が適応免疫及び先天性免疫の応答を呈し得る程度を測定することによって、免疫応答性又は免疫抑制状態を診断する方法は、第一情報基盤データ、又は免疫状態が既知である対象における同一エフェクター分子のレベルを用いて生成されるアルゴリズムにおいて第二情報基盤データを提供する。また、対象の試料において適応免疫系及び先天性免疫系を刺激した後に続いて、免疫エフェクター分子の存在を判定及び/又は速度を測定する工程を含む、免疫応答を検出する方法も提供される。「速度」とは、対象の試料中のエフェクター分子の経時的濃度変化を意味する。
【0141】
上記に示した通り、本発明において用いられる「試料」という用語は、適応免疫及び先天性免疫のプロセスを刺激した後の、エフェクター分子を含有する任意の試料を意味し、試料としては、限定されないが、体液(全血、血漿、血清、腹水を含む)、組織抽出物、採取したての細胞、及び細胞培養物中でインキュベートされていた細胞の溶解物が含まれる。
【0142】
本発明の方法は、疾病の診断及び病期分類に使用してもよい。また、本発明は、状態の進行をモニターするため、及び特定の治療が有効であるか否かをモニターするために使用してもよい。特に、該方法は、手術、癌療法等、又は薬物治療又は毒物への暴露の後の、免疫抑制をモニターするために使用し得る。
【0143】
一実施形態では、本発明は、対象において免疫抑制をモニターするための方法であって、以下の工程を含む、上記方法を考慮する:
(a) 対象由来の試料を提供する工程;
(b) 適応免疫及び先天性免疫プロセスを刺激した後の免疫エフェクター分子のレベルを測定し、上記レベルをアルゴリズムに付して、特定レベルの免疫応答性を有する対象の確率指数を提供する工程、
但し、対照に対する免疫エフェクターのレベルは細胞性免疫応答の状態に対する相関関係を提供する;並びに
(c) 後の時点で工程(a)及び(b)を繰り返し、工程(b)の結果を工程(c)の結果と比較する工程、但し、確率指数における差は、対象における状態の進行を示す。
【0144】
上記で概説した「アルゴリズム」又は「アルゴリズム機能」との表記は、単変量解析機能又は多変量解析機能の実行を含む。広範な種々のアーキテクチャ及びプラットフォームが、上述のものに加えて実施されてもよい。本発明を実施するのに好適なあらゆる形態のアーキテクチャを使用してもよいことが理解されるであろう。しかし、1つの有益な手法は、分散アーキテクチャの使用である。特に、多数のエンドステーションが各地理的位置に提供され得る。この事は、データ帯域幅のコスト及び要件を削減することによってシステムの効率を上げることを可能とし、さらには、1つのベースステーションが過密になったり、或いは不具合が発生した場合に、他のエンドステーションがその役割を果たし得ることを確実にすることによってシステムの効率を上げることを可能にする。また、これにより、負荷分割等が可能になり、システムへのアクセスが常に利用可能であることを確実にする。
【0145】
この場合、ベースステーションが、異なるエンドステーションを用いることができるように、ベースステーションが同一の情報及び署名を含有していることを確保する必要があるであろう。
【0146】
一例では、エンドステーションが、PDA、携帯電話等の携帯機器であり得ることも理解されるであろうが、これらは、対象データを、インターネット等の通信ネットワークを介して、ベースステーションに送信し、かつレポートを受信し得るものである。
【0147】
上記の態様では、「データ」という用語は、適応免疫及び先天性免疫のプロセスを増強した後の、免疫エフェクターのレベル又は濃度を意味する。「通信ネットワーク」としては、インターネット及び携帯電話網及び固定電話回線が含まれる。サーバーを使用する場合、一般にはクライアント・サーバーであり、より具体的にはシンプル・オブジェクト・アプリケーション・プロトコル(SOAP)である。
【0148】
本願の一態様には、特定の先天性免疫及び適応免疫の刺激物質に対する応答性を測定することによって、対象の細胞性免疫応答を示す実験が含まれる。一の実施形態では、末梢血試料、血液の白血球濃縮画分試料、又は気管支肺胞洗浄液等の1以上の試料が、特定の疾患(例えば自己免疫疾患、病原体への感染症又はベリリウムへの暴露)を発症しているか、或いはその発症が疑われる対象から取得されてもよく、また、免疫応答性は、エフェクターT細胞(例えばCD4+T細胞)由来のエフェクター分子の測定によって測定されてもよい。アッセイは、適応免疫応答及び先天性免疫応答を増強する、1以上の作用物質の存在下で実施される。
【0149】
免疫結合法としては、試料において反応成分の量を検出又は定量する方法が含まれるが、該方法は、結合プロセスの間に形成される、あらゆる免疫複合体の検出又は定量を要する。ここで、適応免疫及び先天性免疫プロセスの共刺激した後にサイトカインを含有するものと疑われる試料を入手し、試料を抗体と接触させ、その後、特異的条件下で形成された免疫複合体の量を検出又は定量するであろう。
【0150】
免疫複合体(一次免疫複合体)の形成を可能にするのに有効な条件下かつ充分な時間で、選択された生物学的試料と抗体とを接触させることは、一般に、組成物を試料に添加し、抗体が、存在する任意の抗原との免疫複合体を形成するのに、つまり該抗体が抗原に結合するのに充分に長い時間で当該混合物をインキュベートすることの問題である。この時間の後、組織断片、ELISAプレート、ELISpot、ドットブロット又はウェスタンブロット等の、試料・抗体組成物は、通常、洗浄してあらゆる非特異的結合抗体種を除去して、一時免疫複合体中で特異的に結合した抗体のみが検出され得るようにする。
【0151】
特定の実施形態では、本発明は、ヒト対象において疾患又は病態の存在、非存在、レベル又は段階を検出するための方法であって、該方法は、反応混合物において全容量の少なくとも10%を構成する全血と、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質とを接触させる工程、並びにT細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは疾患又は病状を示す、を含む上記方法を考慮する。
【0152】
さらなる実施形態では、本発明は、上述の方法と共に用いるためのキットに関する。一実施形態では、免疫検出キットが考慮される。別の実施形態では、金属又は化学物質誘発疾患を発症しているか、或いは該疾患の発症が疑われる対象由来の試料を解析するためのキットが考慮される。より詳細な実施形態では、疾患を発症しているか、或いは疾患の発症が疑われる対象由来の試料を解析するためのキットが考慮される。より詳細な実施形態では、病態が発症する前又は後に、或いは対象が薬剤投与を受けるか又は毒物若しくは汚染物質に暴露される前又は後に、対象の細胞性免疫応答を評価するためのキットが考慮される。抗原も利用される場合、キットは特定の抗原も含んでもよい。
【0153】
キットの免疫検出試薬は、種々の形態の何れを採用してもよく、それら形態には、所定の抗体又は抗原に会合するか、又はそれらに結合されている検出可能な標識、並びに二次的結合リガンドに会合するか、又はそれらに結合されている検出可能な標識が含まれる。二次的リガンドの例は、一次抗体又は抗原に対する結合親和性を有する二次抗体、並びにヒト抗体に結合親和性を有する二次抗体である。
【0154】
本発明のキットに用いるための、さらに適当な免疫検出試薬としては、一次抗体又は抗原に対する結合親和性を有する二次抗体と、二次抗体に対する結合親和性を有する三次抗体であって、検出可能な標識に結合されている三次抗体とを含む、二成分試薬が含まれる。
【0155】
該キットは、標識されているか、或いは標識されていない、抗原又はエフェクター分子の適切に分割された組成物をさらに含んでもよく、該組成物は検出アッセイのための標準曲線を作成するために用いてもよい。
【0156】
該キットは、完全に複合した形態で、若しくは中間物の形態で、又はキットのユーザーによって複合される別々の物として、抗体標識複合体を含有してもよい。キットの成分は、水性媒体中に含まれてもよいし、或いは凍結乾燥形態で含まれてもよい。
【0157】
何れのキットの容器手段としては、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ又はその他の容器手段を含む、その中に、試薬、抗体又は抗原を配置し得、好ましくは、適宜に分割されてもよい。二次若しくは三次結合リガンド、又はさらなる成分が提供される場合、キットは、一般に、第二、第三又はその他追加的容器を含有し、その中に、このリガンド又は成分が配置されてもよい。本発明のキットは、通常は、商業販売を目的として密閉状態で、抗体、抗原、及びその他任意の試薬容器をを収容するための手段も含む。そのための容器としては、射出又はブロー成形のプラスチック容器が含まれ得、その中に所望のバイアルが保持される。
【0158】
本発明は、さらに、対象において細胞性免疫応答又はそのレベルを検出するための、改良されたアッセイ、該アッセイは、対象由来のリンパ球ソースをインキュベートする工程、並びにエフェクター分子の存在又は上昇を検出する工程を含み、改良点(improvement)は、リンパ球を、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質と共にさらにインキュベートすることを含む、上記アッセイを考慮する。
【0159】
本発明は、さらに、病源性感染症、自己免疫疾患若しくは癌に罹患しているか、又はこれらの病態若しくは疾患を発症する傾向がある対象の治療方法であって、該方法は、対象由来のリンパ球ソースを、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、及びT細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは対象の細胞性応答のレベルをを示し、該細胞性応答は、病態若しくは疾患の、存在、非存在、レベル又は状態を示す、並びに当該病態又は疾患を次いで治療する工程を含む、上記方法を提供する。
【0160】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0161】
実施例1
アッセイの開発
ヘパリン処理した血液試料を、Li-Hepバキュエッテ(Vacuette)[登録商標]チューブ(グライナー・バイオワン(Greiner Bio-one)、ドイツ)中に採集した。
【0162】
血液試料のアリコートを、種々の濃度のT細胞受容体アゴニスト:フィトヘマグルチニン(セリスティス・リミテッド(Cellistis Limited)、オーストラリア)抗ヒトCD3ε抗体(マウスIgG1クローンUCHT1;イーバイオサイエンス(eBioscience)、サンディエゴ)、及びT細胞受容体複合体に対する抗体;並びにトール様受容体アゴニスト:リポマンナンTLR−2リガンド(インビボジェン(InvivoGen)、サンディエゴ)、Pam3CSK4 TLR−2リガンド(インビボジェン、サンディエゴ)、ポリ(I:C)TLR−3リガンド(インビボジェン、サンディエゴ)、リポ多糖TLR−4リガンド(シグマ(Sigma)、オーストラリア)、イミダゾキノリン化合物−TLR−7/8リガンド、R848(インビボジェン、サンディエゴ)、及びCpGオリゴデオキシヌクレオチドTLR−9リガンド(ハイクルト・バイオテクノロジー(Hycult Biotechnology)、オランダ)又は生理食塩水対照と共に、ヒト・クアンティフェロン(Quantiferon)[登録商標]試験(セレスティス・リミテッド、オーストラリア)の製造元が推薦する、多数の異なるサイズの採血チューブでインキュベートした。T細胞受容体非依存性刺激物質としては、ホルボールミリスチン酸アセテート(phorbol myristate acetate;PMA)、コンカナバリンA(ConA)及びヤマゴボウマイトジェン(pokeweed mitogen)を含む。アリコートは、1μL〜1000μL等の小容量であってもよく、又は1.5mL〜200mL等のより大容量であってもよい。
【0163】
いくつかの実験では、インキュベートの開始前に、血液に種々の濃度のグルコースを添加した。その他の実験では、少なくとも1つのTCR刺激物質及び少なくとも1つのTLR刺激物質からなる、2以上の刺激物質を組合せて、血液に添加した。
【0164】
刺激した血液試料を37℃で1〜48時間インキュベートし、その後、上記の沈殿した血液細胞から血漿を採取した。次に、各血漿試料中に存在するIFN−γの量を、クアンティフェロン(Quantiferon)-TB[登録商標]ELISA(セリスティス・リミテッド(Cellistis Limited)、オーストラリア)を用い、製造元の取扱説明書の通り定量した。あるいは、試料のIFN−γは、より感度の高いクアンティフェロン-TBゴールド(Quantiferon-TB Gold)[登録商標]ELISA(セリスティス・リミテッド、オーストラリア)を用い、製造元の取扱説明書の通り定量した。
【0165】
各ELISAプレート上で行われたIFN−γ標準に対するELISA光学濃度値を用いて標準曲線を作成し、この標準曲線から、各試験血漿試料中に存在するIFN−γの量をIU/mLの値に変換した。
【0166】
実施例2
T細胞受容体(TCR)依存性アゴニストとトール様受容体(TLR)アゴニストとの組合せ
実施例1のアッセイで用いられるTCR及びTLRアゴニストの可能な組合せを表3に示す。
【0167】
【表3】
【0168】
実施例3
T細胞受容体(TCR)非依存性アゴニストとトール様受容体(TLR)アゴニストとの組合せ
実施例1のアッセイで用いたTCR非依存性アゴニストとTLRアゴニストとの可能な組合せを表4に示す。
【0169】
【表4】
【0170】
実施例4
アッセイの評価
本アッセイは、T細胞受容体(TCR)及びトール様受容体(TLR)の共刺激を伴うことにより、対象個人の複合した機能的先天性及び適応免疫を評価する。単独のTCR又はTLRに対する単一の刺激剤を用いた、インビトロにおける全血刺激によれば、ある健常者個人において非常に高いIFN−γレベルから検出不可能なレベルまで、全健常人ドナーにわたって、多様な応答が生じる(図1)。健常人参照範囲を設定し、免疫不全による機能の低下を観察する目的により、先天性免疫応答及び適応免疫応答を組合せた際に起こる、相乗効果が見られた(図2)。二重の刺激は、健常集団の平均を上げる応答を増強し、カットオフ値の決定を可能にする(図3)。また、健常集団の平均の上昇により、免疫不全患者由来のIFN−γ応答の低下を観察することが可能になる。従って、応答が、健常人集団の閾値(カットオフ)未満に下落する場合に、薬理学的処置又は疾病による免疫抑制の指標が想定され得る。
【0171】
実施例5
T細胞受容体アゴニストの使用
本実施例は、免疫細胞の共刺激のため、トール様受容体(TLR)アゴニスト(NK細胞に特異的である、イミダゾキノリン化合物R848)及びT細胞受容体(TCR)アゴニストを用いた、インビトロにおいて、複合した先天性免疫及び適応免疫を評価する方法を提供する。このインビトロ診断は、全血、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)、及びフィーダー層を伴う精製細胞集団と共に用いるためのものである。しかし、免疫系の別の細胞種に特異的な、その他TLRアゴニストも含まれ得る。
【0172】
QFNイン・チューブ・テクノロジー(セレスティス(Cellestis))は、特定の免疫細胞を特異的に活性化する刺激剤の組合せを用いて全血を刺激した後に、細胞性免疫(cell mediated immunity;CMI)を測定するための方法を提供する。当該刺激は、加湿せずに37℃で24時間インキュベートされる密閉容器内で実施される。全血から血漿を採取し、IFN−γをワンステップELISAを用いて検出し、標的細胞機能の測定値を提供する。具体的には、本アッセイは、組合せの先天性(NK細胞)及び適応的(T細胞)免疫応答を評価することにより、個人の機能的免疫状態を測定する。試験は、インビトロの診断アプリケーション及び予測アプリケーションのために、個人の一般的な免疫状態をモニターするために用いられる。
【0173】
装置は、同時に供給された2つの刺激物質の組合せに応答して産生された、全INF−γアウトプットを測定する。結果として得られる「値」は、所定の時点における個人の純機能的免疫状態を表す。これにより、免疫状態の縦及び横の比較が可能になる。
【0174】
データは、臨床的有用性を有する診断アッセイを開発することを目的として、TLRクラスのアゴニストを抗CD3抗体(TCRアゴニスト)と組合せて用いた場合に、TLR−7/8>TLR−4>TLR−3>TLR−2と言う順序で、相乗反応を奏するTLRクラスのアゴニストの有効性が低下することを示す。従って、本実施例においては、イミダゾキノリン化合物(R848)等のTLR−7/8アゴニストを用い、最大の相乗反応を得る。しかし、別のアプリケーションでは、最大下相乗効果の使用、又は抗CD3抗体又はマイトジェン(フィトヘマグルチニン;PHA)等のTCRアゴニストとTLRクラスとの2以上の組合せの使用が実際は必要となるかもしれない。診断アッセイにおいて、マイトジェンは、T細胞上に位置するTCRを介してその機能を働かせる。このことは、両刺激物質を組合せて用いた場合に、マイトジェンの応答を無効化する抗CD3抗体の能力によって証明されている。
【0175】
実施例6
薬剤を投与されている対象における免疫抑制の測定
本アッセイは、化学療法剤、又は、関節リウマチ、癌若しくは炎症性腸疾患を治療するために用いられる薬剤に暴露された対象に対して実施される。免疫抑制が確認される対象においては、二次感染を回避するために注意が払われる。例えば、抗生物質又は免疫刺激物質が投与されてもよい。
【0176】
実施例7
TCRアゴニスト及びTLRアゴニストによる全血の刺激
全血を、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)とTLR-7/8アゴニストであるR848(イミダゾキノリン)の組合せで刺激した。γインターフェロンによって誘導されたモノカイン(MIG;CXCL9)及びIFN−γの観測されたレベルを表5に示す。値は、対応するバックグラウンド・コントロールを差し引いて(NIL)示されている。データは、MIG及びIFN−γが刺激の指標に対応することを示している。
【0177】
【表5】
【0178】
また、全血は、抗CD3抗体(TCRアゴニスト)とTLR−7/8アゴニストであるR848(イミダゾキノリン)の組合せを用いて、又はこの組合せを用いずに刺激した。得られた血漿を用いて、既知のサイトカイン、ケモカイン及び細胞外シグナル分子をプロファイルした。検出された標的は、単一で、又は他のエフェクターと組合せて、レポーター分子として用いられ得る。これは、多重化に特に有用である。検出された標的を表6に示す。
【0179】
【表6】
【0180】
【表7】
【0181】
サイトカイン、ケモカイン及び細胞外シグナル分子の得られたプロファイルを、図4にグラフで表す。いくつかのサイトカイン、ケモカイン及び細胞外シグナル分子は、TCR及びTLRアゴニストで同時に刺激した全血の血漿中にのみ見られた(青色バー、TCR+TLR)。他のもののいくつかは、未処理の全血と比較して、上昇していた(赤色バー、NIL)。
【0182】
全血培養物からのIFN−γ応答に対する、TCR及びTLRアゴニストを用いた二重刺激の間に観察される相乗効果を、TCRアゴニスト又はTLRアゴニストのいずれか単独での全血の刺激と比較して、図5に示す。
【0183】
試験した集団は、HIV感染群及び健常群であった。調査対象集団は、(i)未処置HIV陽性(南アフリカ由来のソース);及び(ii)健常ドナー(オーストラリア由来のソース)を含む。母集団中央値は表7に示されている。
【0184】
TCR+TLR共刺激の後の、IFN−γ応答レベルとCD4 T細胞数との間における相関関係を図6に示す。HIV感染群からの全血を刺激した。
【0185】
TCRアゴニスト及びTLRアゴニストの組合せを用いた全血の刺激によっても、所与のドナーにおいて、免疫抑制剤の阻害濃度を測定が可能となる(図7)。
【0186】
当業者は、本明細書において記載される発明が、具体的に記載されたもの以外の変形及び修正を受け得ること、並びに広範な作用物質がT細胞受容体依存性及び非依存性の増強、及びトール様受容体の増強又は両者の組合せに影響することが理解する。本発明はこのような全ての作用物質を包含することが理解されるべきである。また、本発明は、本明細書において言及又は示唆された、工程、特徴、組成物及び化合物の全てを、個々に又は集合的に包含し、当該工程又は特徴の何れか2以上の、任意及び全ての組合せも包含する。
【0187】
参考文献目録
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、
該方法は、
対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに
免疫細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは対象の細胞性応答のレベルを示す、
を含む、上記方法。
【請求項2】
対象において物質が免疫抑制を誘導するか否かを決定するための方法であって、
該方法は、
物質に暴露した後の対象に由来するリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を刺激する1以上の増強剤と接触させる工程、並びに
リンパ球由来のエフェクター分子の存在及びレベルを測定する工程、但し、エフェクター分子のレベルは上記物質によって誘導された免疫抑制のレベルを決定する、
を含む、上記方法。
【請求項3】
対象において病態が免疫抑制を誘導しているか否かを検出するための方法であって、
該方法は、
病態を有する対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに
リンパ球由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは上記病態によって誘導されるか、又は上記病態に関連する免疫抑制の程度を示す、
を含む、上記方法。
【請求項4】
対象がヒトである、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
試料が、希釈されていない全血である、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項6】
試料が、アッセイされる試料の約10〜100容量%を構成する全血である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
全血が、アッセイされる試料の約50〜100容量%を構成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
全血が、アッセイされる試料の約80〜100容量%を構成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
試料が、1μlから1000μlの、少量の血液量である、請求項1、2又は6に記載の方法。
【請求項10】
全血が、抗原とさらにインキュベートされる、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項11】
全血が、ヘパリンを含むチューブに採取される、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項12】
適応免疫応答を増強する作用物質が、T細胞受容体アゴニストである、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項13】
上記作用物質が、CpGオリゴヌクレオチド、T細胞受容体複合体に対する抗体、フィトヘマグルチニン及び抗CD3抗体から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
先天性免疫系を増強する作用物質が、トール様受容体(TLR)アゴニストである、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項15】
TLRアゴニストが、TLR−7/8、TLR−4、TLR−3又はTLR−2を介して刺激する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アゴニストが、TLRリガンド、リポマンナン、ポリ(I:C)−、及びイミダゾキノリンであるR848から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
適応免疫系を増強する作用物質が、T細胞受容体非依存性手段を介して刺激する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項18】
作用物質が、コンカナバリンA、ヤマゴボウマイトジェン及びホルボールミリスチン酸アセテート(PMA)から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
免疫エフェクター分子がサイトカインである、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項20】
サイトカインがIFN−γである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
免疫エフェクターが、当該免疫エフェクター分子に特異的な抗体を用いて検出される、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項22】
免疫エフェクターが、ELISAを用いて検出される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
免疫エフェクターが、ELISpotを用いて検出される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象が、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、ボレリア(Borrelia)種、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、サルモネラ(Salmonella)種、クロストリジウム(Clostridium)種、シゲラ(Shigella)種、プロテウス(Proteus)種、バチラス(Bacillus)種、ヘルペスウィルス、B型若しくはC型肝炎ウィルス、及びヒト免疫不全ウィルス(HIV)から選択される病原体による感染症、又はその感染症から生じた疾患を有する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項25】
病態が、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterim tuberculosis)による感染症又は結核症(TB)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
病態が、肝炎ウイルス又はHIVによる感染症である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
対象が、
円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、多発性硬化症、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎及び自己免疫性精巣炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック病皮膚炎、慢性疲労症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性、慢性炎症性多発性ニューロパシー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、クローン病、疱疹状皮膚炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、突発性肺線維症、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病(タイプ1)、扁平苔癬、狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑並びに炎症性腸疾患から選択される病態を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
疾患が、セリアック病である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
疾患が、自己免疫性糖尿病である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
対象が、
ABL1プロトオンコジーン、エイズに関連する癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、突発性骨髄化生、脱毛症、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹グリオーマ、脳腫瘍及び中枢神経系腫瘍、乳癌、中枢神経系腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼球メラノーマ、網膜芽腫、卵管癌、ファンコニ貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液悪性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト・パピローマウィルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球増加症、咽頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ癌症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、腎臓の悪性桿状腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、口腔癌、多発性内分泌腺腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、希な癌及びその関連疾患、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロスモンド・トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎盂/尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍から選択される癌を有する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項31】
対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、
該方法は、
対象由来のリンパ球のソースを、T細胞受容体アゴニスト及びトール様受容体アゴニストと接触させる工程、並びに
T細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、
但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは対象の細胞性応答のレベルを示し、
応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル、又は段階を示す、
を含む、上記方法。
【請求項32】
対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、
該方法は、
対象由来のリンパ球のソースを、T細胞受容体非依存性手段を介して適応免疫系を増強する作用物質、及びトール様受容体アゴニストと接触させる工程、並びに
T細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、
但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは対象の細胞性応答のレベルを示し、
応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を示す、
を含む、上記方法。
【請求項33】
先天性及び適応刺激物質をT細胞及びNK細胞を含むソースと共にインキュベートし、エフェクター分子の存在又は上昇を検出する方法による、細胞性免疫応答の診断アッセイの製造における、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質の使用。
【請求項34】
TCRアゴニスト及びTLRアゴニストである、2つの作用物質が用いられる、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
ユーザーが対象の細胞性免疫応答の状態を判定することを可能にする方法であって、
該方法は以下の工程を含む、上記方法:
(a) 通信ネットワークを介して、ユーザーから、免疫エフェクター分子のレベル又は濃度の形態のデータを受信する工程であって、該データは、対照に対する細胞性免疫応答の状態に関する相関関係を提供し、該免疫エフェクター分子は、リンパ球を適応免疫応答及び先天性免疫応答を増強する1以上の作用物質に暴露した後に測定される、上記工程;
(b) 対象データを単変量解析又は多変量解析を介して処理して、免疫応答値を提供する工程;
(c) 所定の値と比較した、免疫応答値の結果に従って、対象の状態を判定する工程;
(d) 通信ネットワークを介して、対象の状態の指示をユーザーに送信する工程。
【請求項1】
対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、
該方法は、
対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに
免疫細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは対象の細胞性応答のレベルを示す、
を含む、上記方法。
【請求項2】
対象において物質が免疫抑制を誘導するか否かを決定するための方法であって、
該方法は、
物質に暴露した後の対象に由来するリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を刺激する1以上の増強剤と接触させる工程、並びに
リンパ球由来のエフェクター分子の存在及びレベルを測定する工程、但し、エフェクター分子のレベルは上記物質によって誘導された免疫抑制のレベルを決定する、
を含む、上記方法。
【請求項3】
対象において病態が免疫抑制を誘導しているか否かを検出するための方法であって、
該方法は、
病態を有する対象由来のリンパ球の試料ソースを、適応免疫及び先天性免疫を増強する1以上の作用物質と接触させる工程、並びに
リンパ球由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベルを測定する工程、但し、免疫エフェクター分子のレベルは上記病態によって誘導されるか、又は上記病態に関連する免疫抑制の程度を示す、
を含む、上記方法。
【請求項4】
対象がヒトである、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
試料が、希釈されていない全血である、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項6】
試料が、アッセイされる試料の約10〜100容量%を構成する全血である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
全血が、アッセイされる試料の約50〜100容量%を構成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
全血が、アッセイされる試料の約80〜100容量%を構成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
試料が、1μlから1000μlの、少量の血液量である、請求項1、2又は6に記載の方法。
【請求項10】
全血が、抗原とさらにインキュベートされる、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項11】
全血が、ヘパリンを含むチューブに採取される、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項12】
適応免疫応答を増強する作用物質が、T細胞受容体アゴニストである、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項13】
上記作用物質が、CpGオリゴヌクレオチド、T細胞受容体複合体に対する抗体、フィトヘマグルチニン及び抗CD3抗体から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
先天性免疫系を増強する作用物質が、トール様受容体(TLR)アゴニストである、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項15】
TLRアゴニストが、TLR−7/8、TLR−4、TLR−3又はTLR−2を介して刺激する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アゴニストが、TLRリガンド、リポマンナン、ポリ(I:C)−、及びイミダゾキノリンであるR848から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
適応免疫系を増強する作用物質が、T細胞受容体非依存性手段を介して刺激する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項18】
作用物質が、コンカナバリンA、ヤマゴボウマイトジェン及びホルボールミリスチン酸アセテート(PMA)から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
免疫エフェクター分子がサイトカインである、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項20】
サイトカインがIFN−γである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
免疫エフェクターが、当該免疫エフェクター分子に特異的な抗体を用いて検出される、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項22】
免疫エフェクターが、ELISAを用いて検出される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
免疫エフェクターが、ELISpotを用いて検出される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象が、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、ボレリア(Borrelia)種、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、サルモネラ(Salmonella)種、クロストリジウム(Clostridium)種、シゲラ(Shigella)種、プロテウス(Proteus)種、バチラス(Bacillus)種、ヘルペスウィルス、B型若しくはC型肝炎ウィルス、及びヒト免疫不全ウィルス(HIV)から選択される病原体による感染症、又はその感染症から生じた疾患を有する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項25】
病態が、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterim tuberculosis)による感染症又は結核症(TB)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
病態が、肝炎ウイルス又はHIVによる感染症である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
対象が、
円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、多発性硬化症、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎及び自己免疫性精巣炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック病皮膚炎、慢性疲労症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性、慢性炎症性多発性ニューロパシー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、クレスト症候群、寒冷凝集素症、クローン病、疱疹状皮膚炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、突発性肺線維症、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病(タイプ1)、扁平苔癬、狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋炎、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑並びに炎症性腸疾患から選択される病態を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
疾患が、セリアック病である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
疾患が、自己免疫性糖尿病である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
対象が、
ABL1プロトオンコジーン、エイズに関連する癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、突発性骨髄化生、脱毛症、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹グリオーマ、脳腫瘍及び中枢神経系腫瘍、乳癌、中枢神経系腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼球メラノーマ、網膜芽腫、卵管癌、ファンコニ貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液悪性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト・パピローマウィルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球増加症、咽頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ癌症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、腎臓の悪性桿状腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、口腔癌、多発性内分泌腺腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、希な癌及びその関連疾患、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロスモンド・トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎盂/尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、並びにウィルムス腫瘍から選択される癌を有する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項31】
対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、
該方法は、
対象由来のリンパ球のソースを、T細胞受容体アゴニスト及びトール様受容体アゴニストと接触させる工程、並びに
T細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、
但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは対象の細胞性応答のレベルを示し、
応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル、又は段階を示す、
を含む、上記方法。
【請求項32】
対象において細胞性免疫応答活性を測定するための方法であって、
該方法は、
対象由来のリンパ球のソースを、T細胞受容体非依存性手段を介して適応免疫系を増強する作用物質、及びトール様受容体アゴニストと接触させる工程、並びに
T細胞由来の免疫エフェクター分子の存在又はレベル上昇を測定する工程、
但し、免疫エフェクター分子の存在又はレベルは対象の細胞性応答のレベルを示し、
応答のレベルは、病原体による感染症、自己免疫疾患、癌、炎症状態、及び毒物への暴露を含むリストから選択される疾患又は状態の存在、非存在、レベル又は段階を示す、
を含む、上記方法。
【請求項33】
先天性及び適応刺激物質をT細胞及びNK細胞を含むソースと共にインキュベートし、エフェクター分子の存在又は上昇を検出する方法による、細胞性免疫応答の診断アッセイの製造における、適応免疫系及び先天性免疫系を増強する1以上の作用物質の使用。
【請求項34】
TCRアゴニスト及びTLRアゴニストである、2つの作用物質が用いられる、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
ユーザーが対象の細胞性免疫応答の状態を判定することを可能にする方法であって、
該方法は以下の工程を含む、上記方法:
(a) 通信ネットワークを介して、ユーザーから、免疫エフェクター分子のレベル又は濃度の形態のデータを受信する工程であって、該データは、対照に対する細胞性免疫応答の状態に関する相関関係を提供し、該免疫エフェクター分子は、リンパ球を適応免疫応答及び先天性免疫応答を増強する1以上の作用物質に暴露した後に測定される、上記工程;
(b) 対象データを単変量解析又は多変量解析を介して処理して、免疫応答値を提供する工程;
(c) 所定の値と比較した、免疫応答値の結果に従って、対象の状態を判定する工程;
(d) 通信ネットワークを介して、対象の状態の指示をユーザーに送信する工程。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2013−515245(P2013−515245A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545014(P2012−545014)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001717
【国際公開番号】WO2011/075773
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(505167598)セレスティス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001717
【国際公開番号】WO2011/075773
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(505167598)セレスティス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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