説明

細胞性免疫活性化剤及びその利用

【課題】新規な細胞性免疫活性化剤、並びに細胞性免疫を活性化するための豚用飼料を提供すること。
【解決手段】少なくとも1種の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を有効成分として含む、細胞性免疫活性化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を有効成分とする、細胞性免疫活性化剤、並びに細胞性免疫を活性化するための豚用飼料に関する。さらに、本発明は、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を有効成分とする、細胞性免疫を活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の疾患を予防及び治療するための、飼料に添加する抗菌剤などの添加物がこれまでに知られている。例えば、特許文献1においては、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸のトリグリセライド、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸、該脂肪酸のモノグリセライド及び該脂肪酸のジグリセライドの少なくとも1種を混合した添加物が家畜のコクシジウム症を予防及び治療できることが記載されている(特許文献1)。また、特許文献2においては、少なくとも1種の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩が、抗PRRSウイルス(豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス)剤として有効であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3034678号公報
【特許文献2】特開2010−138162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩が、細胞性免疫に及ぼす影響についてはこれまで報告されていない。本発明の目的は、新規な細胞性免疫活性化剤、並びに細胞性免疫を活性化するための豚用飼料を提供することにある。さらに本発明の目的は、上記細胞性免疫活性化剤に含まれている有効成分によって細胞性免疫を活性化する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、豚用飼料に炭素数8の中鎖脂肪酸及び炭素数10の中鎖脂肪酸を混合して、又は炭素数6の中鎖脂肪酸、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を混合して添加することにより、豚の細胞性免疫の活性化に対して優れた効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明によれば、少なくとも1種の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を有効成分として含む、細胞性免疫活性化剤が提供される。
本発明によればさらに、少なくとも1種の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を有効成分として含む、細胞性免疫を活性化するための豚用飼料が提供される。豚用飼料においては、好ましくは、飼料の全質量に対して、0.025〜0.25質量%の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を含む。
本発明によればさらに、豚に、少なくとも1種の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を給与することを含む、細胞性免疫を活性化する方法が提供される。
本発明において好ましくは、中鎖脂肪酸として、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を使用することができる。本発明において好ましくは、中鎖脂肪酸として、炭素数6の中鎖脂肪酸、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を使用することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の細胞性免疫活性化剤を飼料に添加して豚に給与すれば、又は本発明の豚用飼料を豚に給与すれば、副作用を引き起こすことなく、豚の細胞性免疫を活性化しつつ豚を飼養することができる。本発明の細胞性免疫活性化剤の有効成分である炭素数6、8及び10の中鎖脂肪酸は豚にとって発育を促進する栄養素である。したがって、本発明によれば、細胞性免疫を活性化しつつ発育を促進することにより、豚の飼養成績や生産性を向上させることも期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、少なくとも1種の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を有効成分として含む、細胞性免疫活性化剤に関する。
【0009】
細胞性免疫は、T細胞によって担われ、主に細胞障害性T細胞 (CTL)、1型ヘルパーT細胞(Th1細胞)、マクロファージなどの免疫細胞が体内の異物を排除する。Th1細胞はインターフェロン-γやインターロイキン-2(IL-2)の刺激を受けることによりナイーブT細胞と称されるT細胞からの分化が誘導される。T細胞をはじめとした免疫系の細胞はサイトカイン産生能を有しているがTh1細胞により産生されるインターフェロン-γ(IFN-γ)などのサイトカインは特にTh1サイトカインと呼ばれ、マクロファージや細胞障害性T細胞(CTL)などの細胞を活性化してウイルスや細胞内抗原の除去、自己免疫疾患の発症、抗腫瘍免疫を担う細胞性免疫などに関与している。本発明においては、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩の投与により、特にIFN−γの発現量が増加したことによって細胞性免疫を活性化することができる。即ち、本発明の細胞性免疫活性化剤は、IFN−γ発現増強剤として使用することができる。
【0010】
本発明の細胞性免疫活性化剤を給与する対象は、特に限定されないが、例えば豚、牛などの家畜が好ましく、特に豚が好ましい。本発明の細胞性免疫活性化剤及び飼料を給与する対象としては、例えば、子豚〜肥育豚、妊娠前及び妊娠中の母豚がより好ましい。
【0011】
本発明の細胞性免疫活性化剤は、有効成分として、1種又は2種以上の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸(Medium Chain Fatty Acid;MCFA)及び/又はその塩、好ましくは中鎖脂肪酸として炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸、より好ましくは中鎖脂肪酸として炭素数6の中鎖脂肪酸、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を混合して含む。したがって、本発明の細胞性免疫活性化剤は、これらの中鎖脂肪酸及び/又はその塩を含むことにより、細胞性免疫を活性化することができる。
【0012】
本発明の細胞性免疫活性化剤の好ましい態様において、炭素数6の中鎖脂肪酸及び/又はその塩(a)、炭素数8の中鎖脂肪酸及び/又はその塩(b)、並びに炭素数10の中鎖脂肪酸及び/又はその塩(c)の比率は任意に選べるが、例えば、(a)〜(c)の合計100質量%に対して、0〜20:50〜70:20〜50(質量%)であることが好ましい。
【0013】
炭素数6の中鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数6の分岐型及び直鎖型の飽和並びに不飽和脂肪酸を挙げることができるが、好ましくは炭素数6の直鎖型の飽和及び不飽和脂肪酸であり、より好ましくはカプロン酸などの炭素数6の直鎖型の飽和脂肪酸である。炭素数8の中鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8の分岐型及び直鎖型の飽和並びに不飽和脂肪酸を挙げることができるが、好ましくは炭素数8の直鎖型の飽和及び不飽和脂肪酸であり、より好ましくはカプリル酸などの直鎖型の飽和脂肪酸である。炭素数10の中鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数10の分岐型及び直鎖型の飽和並びに不飽和脂肪酸を挙げることができるが、好ましくは炭素数10の直鎖型の飽和及び不飽和脂肪酸であり、より好ましくはカプリン酸などの直鎖型の飽和脂肪酸である。その他の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸としては、例えば、エナント酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸などの直鎖型の炭素数6〜12の飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0014】
中鎖脂肪酸の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などを挙げることができる。これらの中鎖脂肪酸は、アルキル基や糖鎖などにより修飾されていてもよい。
【0015】
炭素数6、8及び10の中鎖脂肪酸並びにそれらの塩は、それぞれ従来知られている方法により化学合成したものでも、従来知られている方法で抽出された天然物由来のものでもいずれでもよいが、好ましくは天然物由来であり、より好ましくは植物油由来であり、さらに好ましくはヤシ油由来である。
【0016】
天然物から炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を抽出する方法としては、従来知られている方法を制限なく用いることができるが、例えば、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出等の溶媒抽出や、超臨界抽出などを挙げることができる。溶媒抽出を行うための溶媒としては、n−ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及び水等を使用することができる。なお、これらの溶媒は1種のみを用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。抽出用の水の種類は、特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水、深層水等を使用することができる。抽出された中鎖脂肪酸の中から炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を分離するためには、例えば、各脂肪酸の沸点の違いによって分留する方法などを用いることが好ましい。
【0017】
本発明の細胞性免疫活性化剤は、例えば、手動又は従来知られている機器を用いて混合することにより液体物として得ることができる。この液体物には、中鎖脂肪酸のエステル体、例えば、中鎖脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドなどが含まれる場合もある。上記液体物において、炭素数6、8及び10の中鎖脂肪酸を含む場合、これらの中鎖脂肪酸及び/又はそれらの塩(分母)に対する中鎖脂肪酸のエステル体(分子)の存在比は、例えば、20/80が好ましく、10/90がより好ましく、5/95がさらに好ましく、実質的に0/100であることがなおさらに好ましい。
【0018】
本発明の細胞性免疫活性化剤を固体物として得たい場合には、例えば、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を混合する前・中・後の任意の時期に、二酸化ケイ素などの吸着基材;小麦粉などの賦形剤;着香料などの基材を適宜加えることが好ましい。本発明の細胞性免疫活性化剤において、液体成分と固体成分とのおおよその質量比は、添加先の飼料の種類や含水率によって適宜変更され得るが、好ましくは70:30、より好ましくは60:40、さらに好ましくは50:50である。
【0019】
本発明の別の側面によれば、1種又は2種以上の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を有効成分として含む、細胞性免疫を活性化するための豚用飼料が提供される。
【0020】
本発明の豚用飼料において、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はそれらの塩の混合物は、例えば、飼料の全質量(100質量%)に対して、0.025〜0.25質量%、好ましくは0.03〜0.1質量%で配合される。上記混合物の配合量は、給与対象の状態、例えば、子豚・肥育豚の場合は離乳期、子豚期、肥育前期、肥育後期;母豚の場合は妊娠期、授乳期などによって適宜変更され得る。
【0021】
本発明の豚用飼料は、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はそれらの塩を従来知られている豚用飼料組成、例えば、とうもろこし、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類、米ぬか、ふすま、麦ぬか等のぬか類、大豆油粕、コーングルテンミール、糖蜜等の製造粕類、魚粉、脱脂粉乳、ホエー、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類、ビタミン類、無機質等の栄養素材などに添加して構成されるが、豚用飼料組成としてはこれらに限定されない。さらに、本発明の豚用飼料は、本発明の細胞性免疫活性化剤を上記豚用飼料組成に添加して製造することもできる。この場合において、本発明の細胞性免疫活性化剤の添加量は、本発明の細胞性免疫活性化剤に含まれる中鎖脂肪酸及び/又はそれらの塩の含有量(質量%)に応じて、適宜調整される。
【0022】
本発明の豚用飼料の組成の具体例としては、とうもろこし 20〜80質量%、マイロ 0〜40質量%、大麦 0〜30質量%、ふすま 0〜20質量%、大豆油粕 0〜10質量%、魚粉 0〜10質量%、脱脂米ぬか 0〜15質量%、アルファルファミール 0〜10質量%、糖みつ 0〜10質量%、ミネラル 0〜3質量%、ビタミン 0〜3質量%、炭素数6の中鎖脂肪酸 0〜0.03質量%、炭素数8の中鎖脂肪酸 0.075〜0.105質量%、及び炭素数10の中鎖脂肪酸 0.03〜0.075質量%を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明の別の側面によれば、豚に、1種又は2種以上の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を給与することを含む、細胞性免疫を活性化する方法が提供される。
【0024】
本発明の方法において、給与の方法は、経口でも非経口でもどちらも制限なく用いることができるが、例えば、経口給与を行う場合に、1種又は2種以上の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を、本発明の細胞性免疫活性化剤又は豚用飼料として用いることができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
(試験材料及び方法)
1.被験物質
名称:アロマビオティック
種類:炭素数6から10の遊離中鎖脂肪酸を含む混合飼料
製造業者:ベルギー ビタメックス社
輸入販売業者:物産バイオテック株式会社
含有する飼料添加物:着香料
原材料名:ヤシ油中鎖脂肪酸、二酸化ケイ素、小麦粉
【0027】
なお、上記のアロマビオティック(以下、組成物Aとも称する)は、以下の方法で得られたものである。
(1)ヤシ油からの炭素数6、8及び10の中鎖脂肪酸の分離方法
中鎖脂肪酸トリグリセリドを高圧水蒸気で加水分解し、炭素数6の中鎖脂肪酸(沸点:約205℃)、炭素数8の中鎖脂肪酸(沸点:約235℃)、及び炭素数10の中鎖脂肪酸(約150℃)を沸点の違いによって分留した。
(2)細胞性免疫活性化剤(組成物A)の製造方法
アブラヤシを圧搾してヤシ油を得て、上記1の方法によってヤシ油中の中鎖脂肪酸を分留した。分留して得た炭素数6、8及び10の中鎖脂肪酸を混合し、さらにこの中鎖脂肪酸混合物と二酸化珪素、小麦粉及び着香料とを混合した。この混合物を篩別して、組成物Aを得た。
【0028】
2.供試動物
分娩予定30日前の母豚6頭とその産子を供試した。
【0029】
3.試験区分
【表1】

【0030】
4.飼育管理
妊娠期はコンクリート床の単飼ストール及び授乳期はスノコ床の緋トールに収容した。ブリードBC[中部飼料(株)社製]を1日2回制限給餌で与えた。飲水は、自家水道水を自由摂取させた。飼育管理は試験実施農場の慣行に従った。
【0031】
【表2】

【0032】
5.試験日程
母豚
【表3】

【0033】
子豚
【表4】

【0034】
6.観察項目
1)母豚
(1)採血
アロマビオティック投与前(アロマビオティック投与群n=3,無投与対照群n=1),分娩時(アロマビオティック投与群n=3,無投与対照群n=1)及び離乳時(n=3×2群)に採血を行った。全血を約20 mL採取後、ヘパリン処理をした試験管で冷蔵保存し,株式会社栄養・病理学研究所 宇治田原研究所に24時間以内に搬送した。
(2)一般状態の観察
母豚の一般状態を投与開始時から離乳時まで観察した。
(3)分娩状況の確認
分娩産子数、死産、奇形、虚弱等の産子の状態及び難産,早産等の分娩状況を記録した。
【0035】
2)産子の観察及び採血
離乳時に無作為に各群全供試豚から15頭選抜し耳標を装着後、観察を続けた。離乳時には各腹1頭、その後各群6頭いずれも重篤な症状を示す個体からヘパリン処理した採血管で全血を約10mL採取した。
【0036】
7.白血球層(PBMC)の調製及び培養
全血10 mLをPercoll 5 mL(比重,1.084;GE Healthcare)に重層し,遠心分離(1,500 r.p.m.× 30分)を行って白血球層を分離した。回収した白血球層をPBSで洗浄し、遠心分離(1,500 r.p.m.× 2分,4℃)を行った後、上清を廃棄した。ACK lysis buffer l.5 mLを加えて混合後、室温で5分間静置し、遠心分離(1,500 r.p.m.× 2分,4℃ )を行った後、上清を除去した(赤血球の溶血及び除去)。そこへPBSを加えて再度洗浄し、遠心分離(1,500 r.p.m.× 2分,4℃)を行った後、上清を除去した。白血球数を1×106個/wellになるように培地(10%FBS,0.0004% 2-メルカプトエタノール及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液添加RPMI 1640 medium; 日研生物医学研究所)で調製し、24well細胞培養プレートヘl mLずつ分注した。
【0037】
37℃、5%C02下で4時間培養後、培養細胞を回収し,QuickGene 810 system及びQuickGeneRNA tissue kit S II(Fuji Film)を用いてtotal RNAを抽出した。方法は添付の取扱説明書に準拠した。抽出したtotal RNAから逆転写酵素(PrimeScript RT regent Kit; Takara Bio)を用いてcDNAを作成した。また方法は添付の取扱説明書に準拠した。IFN−γ、IL-2のmRNA発現量をtaqman real-time PCRを用いて解析し、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHで補正した。反応系は10μ Lとし、5μLのPremix Ex taq(Perfect Real Time;Takara Bio)、0.2μL 10pmol/Lプライマー及び0.lμ Lプローブ [IFN-γ (forward primer: 5'-TTCAGCTTTGCGTGACTTTG-3'(配列番号1) ;reverse primer: 5'-TGCATTAAAATAGTCCTTTAGGATCG-3'(配列番号2); probe taqman probe library #129,Roche),IL-2 (forward primer 5'- AAAGAACACAAAGAAACAACTGGA 3'(配列番号3) ;reverse primer: 5'-TCTTAACTTCCTTCAAAAGCAACTG-3' (配列番号4): probe taqman probe Library #120,Roche)]、蒸留水2.5μL及び2μLテンプレートを混合してRotor-Gene 6200(Qiagen)で解析した。GAPDHはTsukahara et al (2010) J.Vet.Med.Sci. 72:547-553記載の方法で解析した。各mRNA発現の解析法はYoshikawa et al.(2009)Biosci.Biotechnol.Biochem,73:1439-1442に準処し、ΔΔCt法を採用した。
【0038】
(試験結果)
1.一般状態の観察及び分娩状況
母豚の分娩状況を表5に示した。
試験期間中,アロマビオティック投与群及び無投与対照群とも異常は認められなかった。平均産子数もアロマビオティック投与群及び無投与対照群とも11.3頭であつた。
【0039】
【表5】

【0040】
2.母豚から採取した白血球層培養結果
母豚から採取した白血球層培養結果を表6に示す。
投与前母豚から採取した白血球層(PBMC)を用いて培養した時のアロマビオティック投与群の平均IFN−γmRNA発現量は0.68、平均IL-2 mRNA発現量は0.99であった。
分娩時母豚から採取した白血球層を用いて培養した時のアロマビオティック投与群の平均IFN−γmRNA発現量は2.59、平均IL-2 mRNA発現量は3.10であった。
離乳時母豚から採取した白血球層を用いて培養した時のアロマビオティック投与群及び無投与対照群の平均IFN−γmRNA発現量は、アロマビオティック投与群は2.25、無投与対照群は1.56であった。平均IL-2 mRNA発現量は、アロマビオティック投与群は2.06,無投与対照群は2.32であった。
【0041】
3.産子から採取した白血球層培養結果
産子から採取した白血球層培養結果を表6及び表7に示した。
離乳時子豚から採取した白血球層を用いて培養した時のアロマビオティック投与群及び無投与対照群の平均IFN−γmRNA発現量は、アロマビオティック投与群は1.13、無投与対照群は1.31であった。平均IL-2 mRNA発現量は、アロマビオティック投与群は1.17、無投与対照群は0.82であった。
【0042】
離乳子豚は60日齢前後でPRRSを疑う症状が認められ、症状が重篤な各群3頭を採血・検査したところPRRSVが高値を示したため、その10日後に各群6頭の採血を実施した。
PRRSV感染極期時に子豚から採取した白血球層を用いて培養した時のアロマビオティック投与群及び無投与対照群の平均IFN−γmRNA発現量は、アロマビオティック投与群は1.32、無投与対照群は1.07であった。平均IL-2 mRNA発現量は、アロマビオティック投与群は0.49、無投与対照群は1.01であった。
【0043】
【表6】

【0044】
【表7】

【0045】
(まとめ)
上記の結果から、母豚では各群とも一般状態の異常は認められず、離乳時母豚ではアロマビオティック投与によってIFN−γ発現が高値を示す傾向にあった。また産子では、離乳時にはアロマビオティック投与によってIL-2発現が高値を示す傾向にあつたが、PRRSV感染極期の産子では,特にIFN−γ発現がアロマビオティック投与で高値を示す傾向にあつた。以上の結果から、アロマビオティック投与を分娩予定前30日間及び哺乳期間の母豚に投与することによってIFN−γの発現量が増加し、その傾向は産子でも認められた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の細胞性免疫活性化剤は細胞性免疫を活性化することができ、市販の豚用飼料に添加して利用できる。本発明の細胞性免疫活性化剤の有効成分及び該細胞性免疫活性化剤自体を含む豚用飼料は本発明に包含され、特に子豚、育成・肥育豚、母豚用の飼料に資する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を有効成分として含む、細胞性免疫活性化剤。
【請求項2】
中鎖脂肪酸として、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を含む、請求項1に記載の細胞性免疫活性化剤。
【請求項3】
中鎖脂肪酸として、炭素数6の中鎖脂肪酸、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を含む、請求項1に記載の細胞性免疫活性化剤。
【請求項4】
少なくとも1種の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を有効成分として含む、細胞性免疫を活性化するための豚用飼料。
【請求項5】
飼料の全質量に対して、0.025〜0.25質量%の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を含む、請求項4に記載の豚用飼料。
【請求項6】
中鎖脂肪酸として、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を含む、請求項4又は5に記載の豚用飼料。
【請求項7】
中鎖脂肪酸として、炭素数6の中鎖脂肪酸、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を含む、請求項4又は5に記載の豚用飼料。
【請求項8】
豚に、少なくとも1種の炭素数6〜12の中鎖脂肪酸及び/又はその塩を給与することを含む、細胞性免疫を活性化する方法。
【請求項9】
中鎖脂肪酸として、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を給与する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
中鎖脂肪酸として、炭素数6の中鎖脂肪酸、炭素数8の中鎖脂肪酸、及び炭素数10の中鎖脂肪酸を給与する、請求項8に記載の方法。

【公開番号】特開2012−131741(P2012−131741A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285424(P2010−285424)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(500514074)物産バイオテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】