細胞接着の予防のための水生生物起源の組成物、及びこれを使用する方法
水生生物由来の抽出物を含む組成物が開示される。この組成物は、細胞と表面との接着を予防することができ、且つ細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない。これを含む医療装置、及びこれを使用して病理感染を予防又は治療する方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物の抽出物、より具体的には細胞接着の予防のための水生生物の抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物は、(プランクトンとして)環境中で自由に泳動する個々の細胞として生存及び増殖することができるか、又は表面及び界面に密接に結び付いて、自己産生ポリマーマトリクス中に包含された、高度に組織化された多細胞コミュニティとして成長することができる。後者の微生物ライフスタイルはバイオフィルムと呼ばれる。バイオフィルム形成は、厳しい環境で微生物を生存させ、また微生物が分散し、且つ新たなニッチにコロニーを形成するのを可能にする、保護された経時的な成長状態を示す[Hall-Stoodley et al., Nat Rev Microbiol. (2004) 2(2):95-108]。
【0003】
バイオフィルムの組成は複雑であり、異なる微生物種間で、及びさらには同じ微生物種であっても異なる環境条件下で変化する。それにもかかわらず、バイオフィルム形成は、環境中での微生物の正常なライフスタイルを示し、また全ての微生物がバイオフィルムを作製する可能性がある。これまでの研究により、細菌性のバイオフィルム形成が、タンパク質プロファイルが異なる複数の発生段階で進行することが明らかになり[Sauer et al., J Bacteriol. (2002) 184(4):1140-54]、これは表面との付着から始まり、その後の移動(immigration)及び分裂により微小コロニーを形成し、最終的にはマトリクスポリマーの発現を伴う成熟へと続く。各バイオフィルム段階での細菌は、浮遊状態で(planktonically)成長する同じ群のものとは顕著に異なる表現型を提示し、また顕著に異なる性質を有している[Sauer et al., J Bacteriol. (2004) 186(21):7312-26]。
【0004】
バイオフィルムは、ヒトにおける全身感染(例えば院内感染)の主な原因である。体内で、バイオフィルムは組織(例えば内耳、歯、歯茎、肺、心臓弁及び尿生殖路)と結び付く可能性がある。実際、ヒトにおける細菌感染のおよそ65%はバイオフィルムによるものである。さらに、バイオフィルムが形成された後、微生物は、時に劇的にその特性を変える傾向があり、このため、生物が付着しているか又は集塊状のバイオフィルム形態である場合、通常懸濁培養液中の生物を破壊する抗生物質の用量では同じ微生物に対してほとんど効果がない(米国特許第7189351号明細書)。
【0005】
身体に導入される製品(例えばコンタクトレンズ、中心静脈カテーテル、機械心臓弁及びペースメーカー)、又は身体に経路を与える製品に関する主な懸念事項の1つは、微生物感染及び不可避なバイオフィルムの形成である。これらの感染は抗生物質による治療が困難であるので、度々装置の取り外しを余儀なくされ、このことが患者への外傷となり、医療費が増大する。したがって、当該技術分野において、かかる医療機器に関して、これらの医療機器及び装置を抗菌性にする手段及び方法が念願となっている。
【0006】
海洋環境において、海綿動物[Amade et al., Mar. Biol. (1987) 94: 271-275、Wilsanand et al., Ind. J. Mar. Sci (1999) 28:274-279]、ホヤ[Wahl et al., Mar. Ecol. Prog. Ser (1994) 110:45-57]、及びソフトサンゴ[Aceret et al., Comp. Biochem. Phys (1998) 120: 121-126、Kelman et al., Mar. Ecol. Prog. Ser (1998) 169:87-95]等の多くの軟体海洋無脊椎動物は、抗菌活性及び抗真菌活性を示す二次代謝産物を産生することがこれまでに報告されている[Harder et al., FEMS Microbiology Ecology (2003) 43(3):337-347]。さらに、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキナ(Actinia equina:ウメボシイソギンチャク))は、イクイナトキシン(equinatoxins)と呼ばれる、アクチノポリンファミリーに属する毒性の孔形成ペプチドを産生することが分かっている[Kristan et al., J Biol. Chem. (2004) 279(45):46509-17]。イクイナトキシン(すなわち、イクイナトキシン1、2及び3)は、イソギンチャク(アクチニア・エキネ(Actinia equine:ウメボシイソギンチャク))の触手及び身体からのアセトン沈殿、Sephadex G−50、CM−セルロース及びCM−Sephadexカラムクロマトグラフィによって精製されている[Macek P and Lebez D., Toxicon. (1988) 26(5):441-51]。これらの毒性タンパク質は、他の小抗菌ペプチドと同じように、標的細胞膜においてドーナッツ型のタンパク質−脂質孔を形成することによって真核細胞を溶解及び破壊させる[Anderluh et al., J. Biol. Chem. (2003) 278(46):45216-45223]。
【0007】
海洋水生植物及び動物は、バイオフィルム形態で多種多様且つ多量の潜在的に有害な微生物に継続的に曝されており、海洋生物が抗菌ペプチドを産生することが知られているので、海洋生物にもバイオフィルム形成を妨げる広範な自然因子が存在する可能性がある。
【0008】
米国特許出願公開第20070098745号明細書は、礁魚の微生物叢の使用によって、バイオフィルム形成を予防する手段を開示している。この発明は、健常なサンゴ礁魚(例えばスパリソーマ・ニニダエ(Sparisoma ninidae)及びルジャヌス・プルプレウス(Lutjanus purpureus:ミナミバラフエダイ))の粘膜上皮表面から単離された細菌から得られるバイオフィルム形成阻害物質を記載している。細菌分離株はバイオフィルム形成を予防するシグナル又は毒素を生じる。
【0009】
バイオフィルムの顕著な勢力及びその有害作用のために、新規のバイオフィルム形成阻害剤に対する必要性が広く認識されており、また新規のバイオフィルム形成阻害剤を同定するのには強い利点がある。
【発明の概要】
【0010】
一態様によれば、水生生物由来の活性因子を含む組成物であって、生物と表面との接着を予防又は低減し、且つ細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない、組成物が提供される。
【0011】
以下に記載の本発明の実施の形態におけるさらなる特徴によれば、活性因子が実質的に水生生物全体を含む。
【0012】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が水生生物のホモジネートを含む。
【0013】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が水生生物から得られる単離抽出物を含む。
【0014】
またさらなる特徴によれば、単離抽出物が粗抽出物を含む。
【0015】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単離抽出物が極性抽出物を含む。
【0016】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物の極性溶媒がアセトニトリルを含む。
【0017】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が少なくとも1つのポリペプチドを含む。
【0018】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、ポリペプチドが、19863Da、9926Da、8261Da及び3655Daから成る群から選択されるピーク質量を特徴とする。
【0019】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が少なくとも1つの多糖を含む。
【0020】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子の活性が凍結乾燥の後で保存される。
【0021】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物が固着生物を含む。
【0022】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物が魚を含む。
【0023】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、魚がウナギ及びナマズから成る群から選択される。
【0024】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着生物が固着刺胞動物を含む。
【0025】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がサンゴ、イソギンチャク、ウミエラ、水生幼虫、ハナギンチャク(tube dwelling anemones)及びヒドロ虫から成る群から選択される。
【0026】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がイソギンチャクを含む。
【0027】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む。
【0028】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアイプタシア・プルケラ(Aiptasia pulchella、セイタカイソギンチャク)を含む。
【0029】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がヒドロ虫を含む。
【0030】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、ヒドロ虫がクロロヒドラ・ヴィリディシマ(Chlorohydra viridissima)及びヒドラ・ブルガリス(Hydra vulgaris)から成る群から選択される。
【0031】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物が、イソギンチャクの触手組織又はアクロラジ(acrorhageal)組織由来である。
【0032】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアクチニア・エキネである。
【0033】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、アクチニア・エキネ由来の極性抽出物が、全組成物の約1%(v/v)〜約10%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む。
【0034】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、アクチニア・エキネ由来の極性抽出物が、全組成物の約40%(v/v)〜約60%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む。
【0035】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、アクチニア・エキネ由来の極性抽出物が、全組成物の約40%(v/v)〜約60%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む。
【0036】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物がアイプタシア・プルケラ由来である。
【0037】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、アイプタシア・プルケラ由来の極性抽出物が、約8%〜12%のアセトニトリル、約16%〜20%のアセトニトリル、約22%〜26%のアセトニトリル、及び約26%〜30%のアセトニトリルから成る群から選択される。
【0038】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物が単細胞生物である。
【0039】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組成物がさらに細胞の凝集を阻害することができる。
【0040】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単細胞生物がバイオフィルムに含まれる。
【0041】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単細胞生物が、細菌、真菌、原生動物及び古細菌から成る群から選択される。
【0042】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、真菌が酵母を含む。
【0043】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、表面が、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属及びプラスチックから成る群から選択される。
【0044】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、表面が生物組織を含む。
【0045】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物組織が哺乳動物組織を含む。
【0046】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、哺乳動物組織が皮膚を含む。
【0047】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、対象の組成物の剤形が、噴霧剤、ゲル、塗布剤及びクリームから成る群から選択される。
【0048】
別の態様によれば、単細胞生物と表面との接着を予防する方法であって、単細胞生物と表面との接着を予防することができる、水生生物由来の活性因子を含む組成物に単細胞生物を接触させることを含む、方法が提供される。
【0049】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子は細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない。
【0050】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が粗抽出物を含む。
【0051】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が極性抽出物を含む。
【0052】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が実質的に水生生物全体を含む。
【0053】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物が少なくとも1つの単離ポリペプチドを含む。
【0054】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単離ポリペプチドがイクイナトキシンを含む。
【0055】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物が少なくとも1つの単離多糖を含む。
【0056】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物の接着予防がin vitroで起こる。
【0057】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物の接着予防がex vivoで起こる。
【0058】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物の接着予防がin vivoで起こる。
【0059】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物が単細胞生物である。
【0060】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単細胞生物がバイオフィルムに含まれる。
【0061】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単細胞生物が、細菌、真菌、原生動物及び古細菌から成る群から選択される。
【0062】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、真菌が酵母を含む。
【0063】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、表面が、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属及びプラスチックから成る群から選択される。
【0064】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、表面が組織である。
【0065】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組織が哺乳動物組織を含む。
【0066】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、哺乳動物組織が皮膚を含む。
【0067】
さらに別の態様によれば、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と、水生生物由来の活性因子とを含む医薬品組成物であって、単細胞生物と表面との接着を予防することができる、医薬品組成物が提供される。
【0068】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子は細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない。
【0069】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組成物の剤形が、噴霧剤、クリーム及びゲルから成る群から選択される。
【0070】
さらに別の態様によれば、それを必要とする被験体において病原体感染を予防又は治療する方法であって、医薬品組成物を治療的に有効な量、被験体に投与することにより病原体感染を治療又は予防することを含む、方法が提供される。
【0071】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、治療をin vivoで行う。
【0072】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、治療をex vivoで行う。
【0073】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、病原体感染の病原生物がバイオフィルム内又はバイオフィルム上で成長することができる。
【0074】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、病原体感染が細菌感染を含む。
【0075】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、感染細菌がグラム陽性細菌を含む。
【0076】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である。
【0077】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、感染細菌がグラム陰性細菌を含む。
【0078】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、グラム陰性細菌が、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び大腸菌(Escherichia coli)から成る群から選択される。
【0079】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、病原体感染の病原生物が抗生物質耐性である。
【0080】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、病原体感染が、真菌感染、原生動物感染、細菌感染及び古細菌感染から成る群から選択される。
【0081】
さらなる態様によれば、バイオフィルム形成阻害組成物を同定する方法であって、水生生物由来の複数の組成物をバイオフィルム形成細菌に接触させること、複数の組成物の存在下でバイオフィルム形成細菌のバイオフィルム活性を化学分析すること、及び複数の組成物から、規定の閾値を超えたバイオフィルム形成阻害活性を有する少なくとも1つの組成物を同定することにより、バイオフィルム形成阻害組成物を同定することを含む。
【0082】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物が固着生物を含む。
【0083】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物が魚を含む。
【0084】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、魚がウナギ及びナマズから成る群から選択される。
【0085】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着生物が固着刺胞動物を含む。
【0086】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がサンゴ、イソギンチャク、ウミエラ、水生幼虫、ハナギンチャク及びヒドロ虫から成る群から選択される。
【0087】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がイソギンチャクを含む。
【0088】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む。
【0089】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアイプタシア・プルケラを含む。
【0090】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がヒドロ虫を含む。
【0091】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、ヒドロ虫がクロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリスから成る群から選択される。
【0092】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物の複数の組成物が粗抽出物を含む。
【0093】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、粗抽出物が触手組織由来である。
【0094】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、粗抽出物がアクロラジ組織由来である。
【0095】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物の複数の組成物が極性抽出物を含む。
【0096】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物が触手組織由来である。
【0097】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、触手組織がアクチニア・エキネ由来である。
【0098】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、バイオフィルム形成細菌がグラム陽性細菌を含む。
【0099】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌である。
【0100】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、バイオフィルム形成細菌がグラム陰性細菌を含む。
【0101】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、グラム陰性細菌がアシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び大腸菌から成る群から選択される。
【0102】
またさらなる態様によれば、本明細書中に記載の組成物のいずれかを含む医療装置が提供される。
【0103】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、医療装置が体内装置である。
【0104】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、医療装置が体外装置である。
【0105】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組成物を装置の表面上にコーティングする。
【0106】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組成物を医療装置のポリマーマトリクスに組み込む。
【0107】
またさらなる態様によれば、埋め込み型医療装置との細胞接着を予防するための、本発明の組成物の使用が提供される。
【0108】
またさらなる態様によれば、医療機器との細胞接着を予防するための、本発明の組成物の使用が提供される。
【0109】
またさらなる態様によれば、バイオフィルム形成又は水中の表面の汚染を予防又は低減する方法であって、水を本明細書中に記載の組成物のいずれかで処理することを含む、方法が提供される。
【0110】
またさらなる態様によれば、バイオフィルム形成又は水中の表面の汚染を予防又は低減する方法であって、表面を本明細書中に記載の組成物のいずれかでコーティングすることを含む、方法が提供される。
【0111】
本発明は、固着性の水生生物の対象の組成物を提供することによって、現在知られている、単細胞生物の接着及びバイオフィルム形成の欠点に対処することに成功している。さらに本発明は、医薬品組成物と、バイオフィルム形成阻害組成物を同定する方法と、病理学的感染を予防又は治療する方法と、医療装置に付着した水生生物由来のバイオフィルム形成阻害組成物を含む医療装置とを提供する。
【0112】
他に規定のない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術を有する者(当業者)により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載のものと同様又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料を以下で説明する。抵触の場合には、定義を含む本明細書により抵触の調整が行われる。さらに、材料、方法及び実施例は例示的なものにすぎず、限定を意図しない。
【0113】
本明細書中で使用される、「含む」という用語又はその文法的変化形は、決まった特徴、整数値、工程又は構成要素を明記するものとされるが、1つ又は複数のさらなる特徴、整数値、工程、構成要素又はそれらの群の付加を排除するものではない。この用語は、「から成る」及び「から本質的に成る」という用語を包含する。
【0114】
本明細書中で使用される場合、「から本質的に成る」という語句又はその文法的変化形は、決まった特徴、整数値、工程又は構成要素を明記するものとされるが、1つ又は複数のさらなる特徴、整数値、工程、構成要素又はそれらの群が、特許請求される組成物、装置又は方法の基礎となる新規の特性を大きく変えない場合に限れば、このさらなる特徴、整数値、工程、構成要素又はそれらの群の付加を排除するものではない。
【0115】
「方法」という用語は、与えられた仕事を達成するための様式、手段、技法及び手順を表し、化学的、生物学的及び生物物理的分野の実践者にとって既知の、又は化学的、生物学的及び生物物理的分野の実践者によって知られる様式、手段、技法及び手順から容易に開発される様式、手段、技法及び手順を含むが、これらに限定されない。
【0116】
「活性因子」という用語は、接着阻害効果がある、水生生物から得られる任意の作用因子を表し、生きている生物全体、それらの一部、それらのホモジネート、又は抽出物(例えば粗抽出物若しくは極性抽出物)を含む。
【0117】
本発明は、添付の図面を参照して、ほんの一例として本明細書中で説明される。これより、特に図面を詳細に参照するが、示される詳細は、一例であり、本発明の好ましい実施形態の例示的な考察を目的とするものにすぎず、本発明の原理及び概念的側面の最も有用で且つ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されることを強調する。このため、本発明の根本的理解に必要とされる以上に詳細には、本発明の構造細部、すなわち本発明の幾つかの形態を実際に具現することができる方法を当業者に明らかにする図面に伴う記述を示そうとはしていない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1A】イソギンチャク(アクチニア・エキナ)を示す図であり、全体像を示し、アクロラジ(縄張り型攻撃器官)が広がっており、大きさは、高さが約5cm〜6cmである。
【図1B】アクチニアの概略図であり、様々な器官が強調されている。
【図2】魚及び刺胞動物の粗抽出物の接着阻害効果を示すグラフである。魚(ウナギ、ナマズ)から回収される表面粘膜から得られる試料、及び固着性刺胞動物(2種類のヒドラ及びイソギンチャク)のホモジネートを、有毒な臨床細菌株であるアシネトバクター・バウマンニと共にインキュベートさせ、細菌の接着をクリスタルバイオレットアッセイを使用して調べた。結果を、3つの異なる試料希釈液(PBS中)で100%陽性対照と比較して細菌接着の百分率で表す。
【図3A】アクチニア・エキネ由来の接着阻害画分のクロマトグラフ分離及び特性評価を示すグラフであって、RP−HPLC C−8カラム上でのアクロラジ組織抽出物のクロマトグラフ分離を示す(溶出パターンを215nmでモニタリングした)。
【図3B】アクチニア・エキネ由来の接着阻害画分のクロマトグラフ分離及び特性評価を示すグラフであって、RP−HPLC C−8カラム上での触手組織抽出物のクロマトグラフ分離を示す(溶出パターンを215nmでモニタリングした)。
【図3C】アクチニア・エキネ由来の接着阻害画分のクロマトグラフ分離及び特性評価を示すグラフであり、アシネトバクター・バウマンニの選択触手画分の接着阻害効果を示す(PBSを陽性対照とする。アクチニアの触手組織(その接着阻害効果)のクロマトグラフ分離で得られた画分それぞれを50倍希釈した。また、単離触手から最も活性の高い画分(13〜14、17〜20、45〜46)(20%未満の接着)を赤色の丸で印を付け(図3Bを参照されたい)、さらなる特性評価のために選択した。同様の効果が印を付けた(矢印)アクロラジ画分で得られた(図3Aを参照されたい、データは図示せず))。
【図3D】アクチニア・エキネ由来の接着阻害画分のクロマトグラフ分離及び特性評価を示すグラフであり、選択画分でのタンパク質のゲル電気泳動を示す(実施例2で詳細に説明するが、活性画分を15%変性SDS−PAGEゲル上で分離し、その後銀染色を行った。画分45及び画分46は多くのタンパク質バンドを示したが、他の画分はほとんどの場合で、分子量がおよそ60kDaのタンパク質対を示した。また、およそ8kDaよりも短いペプチドは観察することができなかった)。
【図4】接着阻害活性の熱不安定性を示す棒グラフであって、アシネトバクター・バウマンニ(A. Baumannii)とポリスチレンマイクロプレートとの接着を、単離触手由来の画分17を添加して、又は組み換えイクイナトキシンを用いて、両方とも熱不活性化して及び熱不活性化せずに化学分析したものであり、化合物は両方とも100倍希釈で調べ、結果を対照PBS(100%)に対する接着の百分率で示した。
【図5】異なるグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌に対する画分13の接着阻害活性を示す棒グラフであって、マイクロプレート接着バイオアッセイを、100倍希釈で単離触手由来の画分13を使用して、アシネトバクター・バウマンニ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌(Pseudomonas aurigenose)及び大腸菌(E. coli)の4つの臨床分離株で実験を行ったものであり、細菌接着(青色)をPBS対照(100%接着、赤色)の百分率で表しており、黄色ブドウ球菌(S. aureus)はグラム陽性細菌であり、残りはグラム陰性細菌である。
【図6A】細菌接着に関する3つの相補アッセイを示す図であって、ハイスループットポリスチレンマイクロプレートアッセイを示す(実施例3で詳細に説明するが、黄色ブドウ球菌(ATCC25923)を96ウェル丸底ポリスチレンプレートで成長させ、クリスタルバイオレット溶液で染色した。付着細胞の定量のために、ウェルに残ったクリスタルバイオレット溶液を1% SDS 250μl中で可溶化し、光学密度を595nmで読み出した。陽性対照(PBSと共にインキュベートした細菌)と比較して、アクチニア・エキナ(A. equina)触手の粗材料の接着阻害効果を10倍、100倍及び1000倍の3つの希釈液で三連で確認した。結果は分光測定に基づいている(図6Aの底図))。
【図6B】細菌接着に関する3つの相補アッセイを示す図であって、定性的観察を示す(黄色ブドウ球菌(ATCC25923)を5ml容のポリスチレン試験管中の培地2mlで成長させ、クリスタルバイオレット溶液で染色した(さらに実施例3で説明する)。また、異なる希釈率の粗材料を添加することにより、付着細菌の低減を観察することができる)。
【図6C】細菌接着に関する3つの相補アッセイを示す図であって、スライドガラス上のバイオフィルム形成に関する蛍光顕微鏡アッセイを示す(緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現のためにプラスミドを含有する大腸菌(DH5−α株U85)を、アクチニア・エキナ触手抽出物、すなわちこの抽出物由来の2つのクロマトグラフ画分(14、17)、又は組み換えイクイナトキシンと共にスライドガラス(glass cover slide)に載せた。接着細菌を倒立落射蛍光顕微鏡IX2−81(Olympus, USA)を用いて、1時間、7時間及び22時間後に視覚化した。また、細菌をアクチニア・エキナ触手抽出物、すなわちこの抽出物由来の2つのクロマトグラフ画分(14、17)、又は組み換えイクイナトキシンと共にインキュベートすることにより、細菌接着が剥離される。これらの結果は、バイオフィルム形成の予防が付着の初期段階で起こることを示している)。
【図7A】活性ピークの選択及びMS解析を示すグラフであって、RP−HPLC(T−18)によってこれまでに(図3A〜Dで)得られた活性材料を示し、この材料を同じカラム上で再びクロマトグラフにかけ、ピークを回収した(活性ピーク75(赤色の矢印)をマトリクスとしてシナピン酸を使用するMALDI−TOFで測定した)。
【図7B】活性ピークの選択及びMS解析を示すグラフであって、19863Da、9926Da、8261Da、3655Daの質量で幾つかのピークが存在するスペクトルが得られたことを示しており、これはタンパク質であると推測され、また、これらのデータは、関連物質を単離し、化学的に特徴付ける能力を示しており、イクイナトキシン(Eq)の活性は顕著である。
【図8】アイプタシア・プルケラ粗抽出物の分離を示すグラフであるって、図はSephadex G−10での粗抽出物のクロマトグラフィを示し、2つの画分が得られ、これは両方とも接着阻害活性/バイオフィルム形成阻害活性を示している。
【図9】Sephadex G−75でのSephadex G−10由来の高分子画分の再クロマトグラフィを示すグラフであり、高分子画分と低分子画分とを示す2つの主なピークが得られる。
【図10】c−18カラムによるRP−HPLCを使用した、G−75カラム由来の低分子画分の分離を示す棒グラフであり、この分離により、活性画分(画分2及び画分3、赤色の丸で印付ける)を含む幾つかの画分が得られ、これはMS解析後に多糖と同定された。
【図11A】大きさに応じた、多糖の分離プロファイルを示す図であって、画分2のHPLC解析を示し、異なるピークに数字を付けており、主なピーク(ピーク番号1)はジグルコースを表す(丸で印付ける)。
【図11B】大きさに応じた、多糖の分離プロファイルを示す図であって、画分3のHPLC解析を示し、異なるピークに数字を付けており、主なピーク(ピーク番号1)はジグルコースを表す(丸で印付ける)。
【図11C】デキストランラダーを示し、すなわちグルコースオリゴマーの平均ラダーを意味している。
【図12】G−75由来の高分子画分のRP−HPLC分離を示す図である。この分離により、高い接着阻害活性を有する少なくとも3つの画分(13、18及び20)が得られる。MS解析及びゲル電気泳動により、活性画分がペプチドであることが示された。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本発明は、細胞接着の予防のための水生生物から抽出された組成物、及びこれを使用する方法に関する。
【0120】
本発明の原理及び動作は、図面及び添付の記述を参照してより良好に理解され得る。
【0121】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用に関して以下の記述に記載される、又は実施例によって例示される詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、すなわち様々な方法で実行又は実施することができる。また、本明細書中で用いられる表現及び用語は説明を目的とするものであり、限定するものとは見なされないことを理解されたい。
【0122】
医学における主な懸念事項の1つが微生物バイオフィルムの形成である。ヒトにおいて、バイオフィルムは全身感染(例えば院内感染)の原因であり、製品(例えばコンタクトレンズ、中心静脈カテーテル、機械心臓弁及びペースメーカー)を身体に導入する際の主な懸念事項である。またバイオフィルムは、食品産業、医薬産業、塗装産業、水道産業、海運業及びエンジニアリング産業を含む多くの産業において、広範な負の効果の中でも、産業システムにおける腐食の促進、油の酸性化及び生物接着を引き起こすという問題がある。バイオフィルムは、その中で成長する微生物が高度に組織化され、高温及び抗菌剤(例えば抗生物質)等の厳しい環境に耐えることができるので、微生物を取り除くことが非常に困難である。
【0123】
海洋生物(例えば海綿動物)が抗菌活性及び抗真菌活性を示す二次代謝産物を産生することがこれまでに報告されている[Amade et al.、同上]。さらに、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキナ)は毒性の孔形成ペプチド(すなわちイクイナトキシン)を産生し、このペプチドは、他の小抗菌ペプチドと同じように真核細胞を溶解及び破壊させることが分かっている[Anderluh et al.、同上]。
【0124】
本発明を還元し実行に移し、本発明者らは、水生固着生物がバイオフィルム形成阻害特性を含むことを発見した。
【0125】
本明細書中の以下に、及び以下の実施例の項で示されるように、本発明者らは、本発明の教示に従って抽出された魚(ウナギ、ナマズ)及び固着刺胞動物(ヒドロ虫及びイソギンチャク)の粗抽出物が表面との細菌接着を予防することを示している(図2)。これらの抽出物は、殺菌性ではなく、細菌成長には影響を与えなかった(以下の表1、実施例2)。さらに細菌の接着阻害効果が、アクチニア・エキナ触手の単離画分、及びアクチニア・エキナアクロラジ組織で実証された(図3A〜図3D)。単離画分の接着阻害効果はグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌で同じように効果的であり(図5)、細菌の接着、及び結果としてバイオフィルムの形成を阻害した(図6C)。アクチニア・エキナ画分における活性因子がポリペプチドとして同定された(図7B)。さらに、アイプタシア・プルケラの粗抽出物により、接着阻害活性/バイオフィルム形成阻害活性が明らかになった(図10)。アイプタシア・プルケラにおける活性因子が多糖及びポリペプチドとして同定された(図10〜図12)。
【0126】
アクチニア・エキネ由来の活性タンパク質は、イクイナトキシン−2、イクイナトキシン−2前駆体(イクイナトキシンII)(EqT II)(EqTII)である。Genbankアクセッション番号P61914:
MSRLIIVFIVVTMICSATALPSKKIIDEDEEDEKRSADVAGAVIDGASLSFDILKTVLEALGNVKRKIAVGVDNESGKTWTALNTYFRSGTSDIVLPHKVPHGKALLYNGQKDRGPVATGAVGVLAYLMSDGNTLAVLFSVPYDYNWYSNWWNVRIYKGKRRADQRMYEELYYNLSPFRGDNGWHTRNLGYGLKSRGFMNSSGHAILEIHVSKA(配列番号1)。
【0127】
本発明の教示をまとめると、水生固着生物、特に固着刺胞動物から得られる、広範な新規の接着阻害因子を表している。微生物バイオフィルム形成の初期の影響を受けやすい段階に影響を与える能力と共に、これらの作用因子の広範な接着阻害効果(例えばグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌の接着阻害)により、これらの作用因子がバイオフィルム形成阻害因子の有力候補となる。その上、本明細書中に記載の接着阻害因子はクローン可能であり、それらを改良及び大量生産することができる。さらにその安定性(すなわち環境条件に対する耐性)により、これらの作用因子が数々の用途に好適となる。
【0128】
このため、本発明の一態様によれば、細胞と表面との接着を予防する方法であって、細胞と表面との接着を予防することができる、水生生物由来の対象の組成物に細胞を接触させることにより細胞と表面との接着を予防することを含む、方法が提供される。
【0129】
任意で、細胞は単細胞生物を含み得る。本明細書中で使用される「単細胞生物」という語句は、微生物とも呼ばれる単細胞の生物を表す。本発明の単細胞生物は、真核性の単細胞生物(例えば原生動物又は真菌、例えば酵母)又は原核性の単細胞生物(例えば細菌又は古細菌)であり得る。本発明の単細胞生物は、単離細胞又は細胞懸濁液として、例えばバイオフィルム内のような任意の細胞環境にあり得る。
【0130】
本明細書中で使用される「バイオフィルム」という用語は、その中で微生物が分散し、及び/又はコロニーを形成する細胞外マトリクスを表す。バイオフィルムは典型的には、多糖及び他の巨大分子で構成されている。
【0131】
接着が本発明の方法に従って予防され得る細菌細胞の例としては、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌が挙げられる。
【0132】
本明細書中で使用される「グラム陽性細菌」という用語は、それらの細胞壁構造の一部としてペプチドグリカンと、多糖及び/又はテイコ酸とを有することを特徴とし、且つグラム染色法におけるそれらの青紫色の反応物を特徴とする細菌を表す。代表的なグラム陽性細菌としては、アクチノミセス属、バシラス・アントラシス(Bacillus anthracis:炭疽菌)、ビフィドバクテリウム属、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum:ボツリヌス菌)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens:ウェルシュ菌)、クロストリジウム属、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani:破傷風菌)、コリネバクテリウム・ジフテリアエ(Corynebacterium diphtheriae:ジフテリア菌)、コリネバクテリウム・ジャイカム(Corynebacterium jeikeium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis:大便連鎖球菌)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エリシペロトリックス・ルシオパチエ(Erysipelothrix rhusiopathiae:ブタ丹毒菌)、ユーバクテリウム属、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis:ガードネレラ菌)、ゲメラ・モルビロルム(Gemella morbillorum)、ロイコノストック属、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)、複合マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・ケロネー(Mycobacterium chelonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)、マイコバクテリウム・ヘモフィルム(Mycobacterium haemophilium)、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae:ハンセン菌)、マイコバクテリウム・マリナム(Mycobacterium marinum)、マイコバクテリウム・スクロフラセウム(Mycobacterium scrofulaceum)、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis:スメグマ菌)、マイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis:結核菌)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、ノカルディア属、ペプトコッカス・ニガー(Peptococcus niger)、ペプトストレプトコッカス属、プロプリオニバクテリウム属、サルシナ・ルテア(Sarcina lutea)、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・エピデルミヂス(Staphylococcus epidermidis:表皮ブドウ球菌)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・ルグダネンシス(Staphylococcus lugdanensis)、スタフィロコッカス・サッカロリチクス(Staphylococcus saccharolyticus)、スタフィロコッカス・サプロフィチクス(Staphylococcus saprophytics)、スタフィロコッカス・シュライフェリ(Staphylococcus schleiferi)、スタフィロコッカス・シミランス(Staphylococcus similans)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis:ウシ連鎖球菌)、ストレプトコッカス・カニス(Streptococcus canis)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi:腺疫菌)、ストレプトコッカス・ミレリ(Streptococcus milleri)、ストレプトコッカス・ミチオール(Streptococcus mitior)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans:ミュータンス菌)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae:肺炎連鎖球菌)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes:化膿レンサ球菌)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis:サンギス菌)が挙げられる。
【0133】
本明細書中で使用される「グラム陰性細菌」という用語は、それぞれの細菌細胞を囲む二重膜の存在を特徴とする細菌を表す。代表的なグラム陰性細菌としては、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アシネトバクター・バウマンニ、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、エロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アルカリジェネス・キシロソキシダンス(Alcaligenes xylosoxidans)、バクテロイド属、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、バルトネラ・バシリホルミス(Bartonella bacilliformis)、ボルデテラ属、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ブランハメラ・カタラリス(Branhamella catarrhalis:カタル球菌)、ブルセラ属、カンピロバクター属、カルミヂア・ニューモニエ(Chalmydia pneumoniae)、クラミジア・シッタシ(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)、シトロバクター属、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、大腸菌、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)、フソバクテリウム属、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィリス属、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:ピロリ菌)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae:肺炎桿菌)、クレブシエラ属、レジオネラ属、レプトスピラ属、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis:カタル球菌)、プロテウス・モルガニイ(Morganella morganii)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis:髄膜炎菌)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プレボテラ属、プロテウス属、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)、緑膿菌、シュードモナス属、リケッチア・プロワゼキイ(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、ロシャメリア属、サルモネラ属、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi:チフス菌)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、シゲラ属、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei:ソンネ菌)、トレポネーマ・カラテウム(Treponema carateum)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、トレポネーマ・パリダム亜種エンデミカム(Treponema pallidum endemicum)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、ベイヨネラ属、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae:コレラ菌)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis:ペスト菌)が挙げられる。
【0134】
本明細書中で使用される「真菌」という用語は、キチン質細胞壁の存在と、大部分の種における多細胞菌糸としての糸状成長とを特徴とする従属栄養生物を表す。接着が本発明の方法に従って予防され得る代表的な真菌としては、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプローシス(Candida parapsilosis)及びカンジダ・ドゥブリニエンシス(Candida dubliniensis)が挙げられる。
【0135】
本明細書中で使用される「接着の予防」という語句は、(例えば表面上での成長速度を低減することによる)表面との細胞付着の低減又は排除を表す。好ましくは、本発明の組成物は、細胞接着アッセイによって測定される場合、細胞接着を10%、より好ましくは20%、より好ましくは30%、より好ましくは40%、より好ましくは50%、より好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%及び最も好ましくは100%予防する。細胞接着アッセイの例が本明細書中の以下に、及び続く実施例の項に記載されている。本発明の組成物は、細胞凝集を予防することもできる(すなわち表面に細胞凝集しない)と理解される。
【0136】
本発明は、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属、プラスチック、ポリマー等を含む、多種多様の表面との細胞接着の予防を意図する。
【0137】
一実施形態によれば、表面は、バイオフィルム形成しやすい装置に含まれる。その表面が本発明で意図されている装置の例としては、船体、自動車表面、飛行機表面、膜、フィルター及び工業設備が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
また表面は、医療装置、医療機器及びインプラントに含まれ得る。かかる医療装置、医療機器及びインプラントの例としては、ヒト等の哺乳生物に一時的に又は永久的に埋め込むことができる任意の物体が挙げられる。本発明に従って使用され得る、代表的な医療装置、医療機器及びインプラントとしては例えば、中心静脈カテーテル、導尿カテーテル、気管内チューブ、機械心臓弁、ペースメーカー、血管グラフト、ステント及び人工関節が挙げられる。医療装置との細胞付着を予防する方法及びそれらのさらなる例は本明細書中の以下に記載されている。
【0139】
別の実施形態によれば、表面は例えば哺乳動物組織、例えば皮膚等の生物組織に含まれる。
【0140】
言及されるように、本発明の方法は、細胞と表面との接着を予防することができる、水生生物由来の組成物に細胞を接触させることによって達成される。
【0141】
本明細書中で使用される「接触」という用語は、本発明の組成物の中に含まれる活性因子が細胞と表面との接着を予防することができるような方法で、本発明の組成物を接着細胞と直接又は間接的に接触させるように配置させることを表す。したがって本発明は、本発明の組成物を所望の表面に適用すること及び/又は接着細胞に直接適用することの両方を意図する。
【0142】
接触は、in vivo(すなわち哺乳動物身体内)、ex vivo(すなわち身体から取り出された細胞内)及び/又はin vitro(すなわち哺乳動物身体外)で達成され得る。
【0143】
組成物の表面への接触は、噴霧、散布、湿潤、浸潤、浸漬、塗工、超音波溶接、溶接、接合又は接着を含む、当該技術分野で既知の方法のいずれかを使用して達成することができる。本発明の組成物を単層又は多層で付着させてもよい。
【0144】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、生きている水生生物全体に含まれ得る。例えば本発明は、生きている水生生物が、表面(例えば水中パイプ、船体)及び/又は表面に接着する細胞と接触することができるように、生きている水生生物を水中環境に加えることを意図し、これにより表面への微生物接着を予防する。活性因子は水生生物から分泌され得ると理解される。この場合、水生生物を表面又は微生物細胞と直接接触させる必要はないが、活性因子がその作用部位に広がることができるように十分接近している必要がある。このため、本発明の組成物を水中に分散させてもよく、また例えば海水又は汽水の脱塩等の水精製処理に使用してもよい。
【0145】
本明細書中で使用される「水生生物」という語句は、例えば魚又は固着水生生物等の水環境(海水又は淡水)中で生存する生物を表す。
【0146】
本明細書中で使用される「固着水生生物」という語句は、そのライフサイクルの少なくとも幾つかの段階で自由に動けない水生生物を表す。水生固着生物は通常、基板との物理的固定により、又は任意の他の理由のため、岩石又は船舶の船体等の幾つかの種類の固体基板に永久的に付着している(例えばオニダルマオコゼ)。
【0147】
固着生物の例としては、サンゴ、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキネ及びアイプタシア・プルケラ)、ウミエラ等の固着刺胞動物、水生固着幼虫(例えばクラゲ幼虫)、ハナギンチャク及びヒドロ虫(例えばクロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
本発明のこの態様に従って使用され得る魚の例は、浅水に居住する、又は海洋の最下層、場合によっては穴又は洞窟に潜むものが好ましい。かかる魚としてはウナギ及びナマズが挙げられる。
【0149】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は水生生物から単離され得る。
【0150】
本明細書中で使用される「単離」という用語は、組成物がそのin vivo位置(例えば水生生物)から取り出されていることを表す。好ましくは、本発明の単離組成物はそのin vivo位置に存在する他の物質(例えば接着阻害効果を含まない他のタンパク質)を実質的に含まない(すなわち精製又は半精製されている)。
【0151】
したがって、本発明のこの態様の一実施形態によれば、本発明の組成物は粗抽出物又は極性抽出物であり得る。
【0152】
本明細書中で使用される「粗抽出物」という語句は、未処理の細胞抽出物、又は水生生物起源の組織を表す。粗抽出物を得る方法が、当該技術分野で既知であり、細胞又は組織の回収、細胞又は組織の解離、及び溶解物の均質化を含む。
【0153】
本明細書中で使用される「極性抽出物」という語句は、極性溶媒の使用によってさらに精製された粗抽出物を表す。アセトニトリル、水又はアンモニア等の極性溶媒が当該技術分野で既知であり、単離画分を得るのに使用することができる。極性分子から成る極性溶媒は、極性抽出物中でイオン化するイオン性化合物又は共有結合化合物を溶解することができ、これにより単離画分が得られる。本発明の極性抽出物は、例えば1%〜10%の極性溶媒、10%〜20%の極性溶媒、20%〜30%の極性溶媒、30%〜40%の極性溶媒、40%〜50%の極性溶媒、50%〜60%の極性溶媒、70%〜80%の極性溶媒、80%〜90%の極性溶媒及び90%〜100%の極性溶媒を含む、任意の割合の極性溶媒を含有し得る。
【0154】
本発明のこの態様の一実施形態によれば、極性抽出物は、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキネ)の触手組織又はアクロラジ組織から得られる。アクチニア・エキネから得られる例示的な極性抽出物は、約1%〜10%のアセトニトリル、約40%〜60%のアセトニトリル又は約70%〜90%のアセトニトリル(v/全組成物のv)を含み得る。さらに、本発明の極性抽出物はアイプタシア・プルケラ由来であり得る。アイプタシア・プルケラ由来の極性抽出物は、約8%〜12%のアセトニトリル、約16%〜20%のアセトニトリル、約22%〜26%のアセトニトリル又は約26%〜30%のアセトニトリル(v/全組成物のv)を含み得る。
【0155】
一実施形態によれば、本発明の組成物における活性因子はポリペプチドである。例えば、本発明者らは、アクチニア・エキナ画分及びアイプタシア・プルケラ画分における活性因子がポリペプチドであることを示している(アクチニア・エキナに関しては図7B、及びアイプタシア・プルケラに関してはデータを示していない)。非限定的な例は配列番号1である。このため、本発明の組成物における活性因子として役立ち得る例示的なポリペプチド作用因子は、ピーク質量が19863Da、9926Da、8261Da又は3655Daであることを特徴とするものである。タンパク質ピーク質量は、当業者に既知の任意の機器、例えばマトリクスとしてシナピン酸を使用するMALDI−TOF(Voyager−DE STR、Applied Biosystems)等のMS解析によって測定される。
【0156】
本発明の組成物は、遺伝子組み換え法を使用して(例えばトランスジェニック水生固着生物を使用して)in vivoで発現させてもよい。
【0157】
細胞接着を予防するのに使用され得る水生生物から得られる例示的なポリペプチド作用物質はイクイナトキシンである。イクイナトキシン(すなわちイクイナトキシン1、イクイナトキシン2及びイクイナトキシン3)は、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキナ)で見られる孔形成毒素として当該技術分野で知られている。イクイナトキシンは、イソギンチャク細胞に含まれ得るか、又はそれから単離され得る。任意のイクイナトキシンを、表面との細胞接着を阻害するために、本発明の教示に従って使用してもよい。
【0158】
別の実施形態によれば、本発明の組成物における活性因子は多糖である。例えば、本発明者らは、アイプタシア・プルケラにおける活性因子が多糖であることを示している(図10、図11A〜図11C)。このため、本発明の組成物における活性因子として役立ち得る例示的な多糖作用因子はサイズ排除HPLCによって特性評価が行われるものである。多糖の特性評価は、当業者にとって既知の任意の方法、例えばPACE(炭水化物ゲル電気泳動を使用する多糖の解析)によって達成することができる。
【0159】
本発明のこの態様の一実施形態によれば、本発明の組成物は細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではなく、例えば殺菌性又は静菌性ではない。
【0160】
本発明のこの態様の別の実施形態によれば、本発明の組成物の活性因子の活性は凍結乾燥後も保存される。
【0161】
これまでに示されたように、本発明の組成物をin vivoでバイオフィルム形成を予防するのに使用することができる。したがって、本発明は、身体での感染を予防又は治療するのに使用され得る医薬品組成物を意図する。
【0162】
本明細書中で使用される「医薬品組成物」という用語は、生理学的に好適な担体及び賦形剤等の他の化学的構成要素との、本明細書中に記載される、活性成分の1つ又は複数の調製物を表す。医薬品組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0163】
本明細書中で使用される「活性成分」という用語は、意図された生物学的効果に関与する水生生物組成物(及びそれから精製される作用因子)を表す。
【0164】
以下、交換して使用することができる「生理学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能な担体」という語句は、生物に対する有意な炎症を引き起こさず、また投与化合物の生物学的活性及び性質を失わせない担体又は希釈剤を表す。アジュバントはこれらの語句に含まれる。
【0165】
本明細書中で、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬品組成物に添加される不活性物質を表す。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及び様々な種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
薬剤を配合及び投与する技法は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co., Easton, PA)(参照により本明細書中に完全に援用される)の最新版に見ることができ、本明細書中の以下でさらに記載される。
【0167】
言及されるように、本発明の医薬品組成物は、病原体感染を予防又は治療するために、それを必要とする被験体に投与することができる。
【0168】
本明細書中で使用される「それを必要とする被験体」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒト被験体を表す。
【0169】
本明細書中で使用される「治療」という用語は、病原体感染の有害効果の治癒、反転、軽減、緩和、最小化、抑制又は停止を表す。
【0170】
本明細書中で使用される「病原体感染」という語句は、病原生物によって引き起こされる任意の医学的状態を表す。病原体感染の例としては、慢性感染性疾患、亜急性感染性疾患、急性感染性疾患、ウイルス疾患、細菌疾患、原生動物疾患、寄生性疾患、真菌疾患、マイコプラズマ疾患、古細菌性疾患及びプリオン病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
一実施形態によれば、病原体感染はバイオフィルム内で又はバイオフィルム上で成長することができる生物によって引き起こされる。
【0172】
微生物バイオフィルムによって引き起こされる病原体感染の例としては、自然弁心内膜炎(NVE)、中耳炎(OM)、慢性細菌性前立腺炎、嚢胞性線維症(CF)及び歯周炎が挙げられる。バイオフィルムに特異的に起因しないさらなる病原体感染としては、尿路感染、女性生殖管感染及び肺炎が挙げられるが、これらに限定されない。医療装置の埋め込みによる感染としては、血管カテーテル感染、人工動脈感染、人工心臓弁の感染、人工関節感染、中枢神経系シャントの感染、整形外科的インプラント感染、ペースメーカー及び除細動器感染、血液透析及び腹膜透析感染、眼感染、尿路感染、女性生殖管の感染、気管内挿管及び気管切開に関連する感染、並びに歯感染が挙げられる。
【0173】
本明細書中で使用される「病原生物」という語句は、疾患を引き起こす可能性がある任意の単細胞生物、特に細菌又は真菌等の生きている微生物を表す。好ましくは、病原生物はバイオフィルム内で又はバイオフィルム上で成長することができる。多くの一般的な病原生物がバイオフィルムとして哺乳動物(例えばヒト)に存在し、疾患を引き起こす。これらとしては、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica:ヘモリチカ菌)及びパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)(肺炎の原因となる)、フソバクテリウム・ネクロフォールム(Fusobacterium necrophorum)(肝膿瘍の原因となる)、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌(創傷感染の原因となる)、大腸菌及びサルモネラ属(腸炎の原因となる)、黄色ブドウ球菌及びスタフィロコッカス・エピデルミヂス(OMの原因となる)、並びにストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、カンジダ属及びアスペルギルス属(NVEの原因となる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
本発明による感染性疾患の治療を当該技術分野で既知の他の治療法と組み合わせてもよい(すなわち併用療法)ことが理解される。これらとしては、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、アミノグリコシド、マクロリド、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール及びグリセオフルビン等の抗菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
好適な投与経路には例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸、又は非経口送達(筋肉内、皮下及び髄内注射、並びに髄腔内、直接脳腔内、静脈内、腹腔内、鼻内又は眼内注射を含む)が含まれ得る。
【0176】
代替的に、例えば患者の組織域への医薬品組成物の直接注射によって全身ではなく局所的に医薬品組成物を投与してもよい。
【0177】
本発明の医薬品組成物は、当該技術分野で既知のプロセス、例えば従来の混合、溶解、粒状化、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造され得る。
【0178】
このため、本発明に従って使用される医薬品組成物を、賦形剤及び助剤を含む、1つ又は複数の生理学的に許容可能な担体を使用して従来通り配合してもよく、これにより活性成分を薬学的に使用することができる製剤に加工するのが容易になる。適切な剤形は、選択される投与経路によって変わる。
【0179】
注射のために、医薬品組成物の活性成分を、水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液又は生理食塩緩衝液等の生理学的に相溶性の緩衝液中で配合してもよい。経粘膜投与のために、障壁を浸透させるのに適した浸透剤を製剤に使用する。かかる浸透剤は当該技術分野で一般的に知られている。
【0180】
局所投与のために、本発明の組成物を、ゲル、クリーム、洗浄液、リンス又は噴霧剤として配合してもよい。
【0181】
経口投与のために、活性化合物を当該技術分野で既知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることによって、医薬品組成物を容易に配合することができる。かかる担体は、患者による経口摂取のために、医薬品組成物を、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として配合することを可能にする。固形賦形剤を使用して、任意で得られる混合物を粉砕し、所望に応じて好適な助剤を添加した後、顆粒混合物を処理して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることで、経口使用のための医薬製剤を作製することができる。好適な賦形剤は、特にラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖等の充填剤;例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース及びカルボメチルセルロースナトリウム等のセルロース製剤;及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)等の生理学的に許容可能なポリマーである。所望に応じて、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩を添加してもよい。
【0182】
糖衣錠コアに好適なコーティングを与える。この目的のために、任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液及び好適な有機溶媒、又は溶媒混合物を含有し得る濃縮糖溶液を使用してもよい。染料又は顔料を、識別するため又は異なる組合せの活性のある化合物の用量を特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0183】
経口で使用することができる医薬品組成物としては、ゼラチンでできている押し込み型カプセル、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールでできている軟封入カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウム等の滑剤、及び任意で安定剤と混合して、活性成分を含有し得る。軟カプセルでは、活性成分が好適な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁し得る。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のための剤形は全て、選択された投与経路に適した投与量である必要がある。
【0184】
口腔投与のため、組成物は、従来通り配合された錠剤又はロゼンジの形態をとってもよい。
【0185】
鼻吸入による投与のため、本発明による使用のための活性成分は、好適な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素の使用によって加圧パック又はネブライザからエアロゾル噴霧放出形態で従来通り送達される。加圧エアロゾルの場合、一定量を送達するために弁を提供することによって投与量を決定し得る。例えばディスペンサにおける使用のためのゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物の混合粉末及び好適な粉末基剤、例えばラクトース又はデンプンを含有して配合し得る。
【0186】
本明細書中に記載の医薬品組成物は、例えばボーラス注射又は持続注入による非経口投与のために配合してもよい。注射のための剤形は、単位投与形態、例えば任意で保存料を添加したアンプル又は複用量の容器内に与えられ得る。組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションであってもよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤等の処方剤を含有してもよい。
【0187】
非経口投与のための医薬品組成物は、水溶性形態での活性製剤の水溶液を含む。さらに、活性成分の懸濁液は、適切な油性又は水性の注射懸濁液として調製され得る。好適な脂溶性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド若しくはリポソーム等の合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストラン等の懸濁液の粘度を増大させる物質を含有し得る。また任意で、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、好適な安定剤又は活性成分の可溶性を増大させる作用因子を含有し得る。
【0188】
代替的に、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば滅菌性の発熱物質無含有の水溶液との構成のために粉末形態であり得る。
【0189】
また本発明の医薬品組成物は、例えばココアバター又は他のグリセリド等の従来の座剤基剤を使用して、座剤又は停留浣腸剤等の直腸組成物に配合され得る。
【0190】
本発明に関連して使用するのに適した医薬品組成物としては、活性成分を本来の目的を達成するのに効果的な量含有している組成物が挙げられる。より具体的には、「治療的に効果的な量」は病原体感染の症状(例えば発熱)を予防、軽減又は改善するのに、又は治療する被験体の生存期間を延長するのに効果的な活性成分(例えば水生成分組成物)の量を意味する。
【0191】
特に本明細書中に与えられる詳細な開示を考慮すると、治療的に効果的な量の決定は、十分に当業者の能力内である。
【0192】
本発明の方法に使用される任意の製剤のために、初めに投与量又は治療的に効果的な量をin vitroアッセイ及び細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、所望の濃度又は力価を達成するために、用量を動物モデルで配合することができる。かかる情報をヒトに有用な用量をより正確に決定するのに使用することができる。
【0193】
本明細書中に記載の活性成分の毒性及び治療的有効性を、in vitroで標準的な薬学的処置により、細胞培養液又は実験動物で決定することができる。これらのin vitroアッセイ及び細胞培養液アッセイ、並びに動物試験から得られたデータを、ヒトで使用するために様々な投与量を配合する際に使用することができる。投与量は、用いられる投薬形態及び用いられる投与経路に応じて変わり得る。正確な剤形、投与経路及び投与量を、患者の状態を鑑みて医師個人が選択することができる(例えばFingl, E. et al. (1975), "The Pharmacological Basis of Therapeutics," Ch. 1, p.l .を参照されたい)。
【0194】
生物学的効果を誘導又は抑制するのに十分な血漿又は脳レベルの活性成分(すなわち最小有効濃度、MEC)が提供されるように、投与量及び投与間隔を個々で調整してもよい。MECは各製剤で変わるが、in vitroデータから推測することができる。MECを達成するのに必要な投与量は個々の特性及び投与経路に応じて変わる。検出アッセイを、血漿濃度を求めるのに使用することができる。
【0195】
治療される状態の重症度及び反応性に応じて、投薬は単回又は複数回の投与で行い、治療過程は、数日から数週間、すなわち治癒が達成されるまで、又は疾患状態が縮小されるまで継続する。
【0196】
当然のことながら、組成物の投与量は治療される被験体、病気の重症度、投与様式、処方医師の判断等によって変わる。
【0197】
所望であれば、本発明の組成物は、活性成分を含有する、1つ又は複数の単位投薬形態を含有し得るパック又はディスペンサ装置、例えばFDA認可キット内で与えられてもよい。パックは例えば、金属又はプラスチックホイル、例えばブリスターパックを含み得る。パック又はディスペンサ装置は投与のための機器を伴い得る。またパック又はディスペンサ装置は、調合薬の製造、使用又は販売を規制する行政機関によって規定された形での表示を伴う場合があり、この表示は、ヒト又は動物投与のための組成物形態の機関による認可を反映する。かかる表示には例えば、処方薬に関して米国食品薬品局で認可された、又は認可された商品の説明のラベルが含まれ得る。また薬学的に許容可能な担体中で配合される本発明の製剤を含む組成物を調製し、適切な容器に入れ、さらに上記で詳述されたように、指定の状態の治療のためにラベルを付ける場合がある。
【0198】
言及されるように、医療装置及びインプラントは一般的に、埋め込み装置の取り外しが必要になる場合もある、日和見感染細菌及び他の感染性微生物(例えば真菌)に感染する。かかる感染が、病気、長い入院生活又はさらには致死をもたらす可能性もある。それゆえに、バイオフィルム形成、及び医療装置の感染の予防が強く望まれている。
【0199】
このため本発明は、上記の組成物を付着させた医療装置も意図する。
【0200】
本明細書中で使用される「医療装置」という用語は、任意のインプラント、機器、器具、道具、機械、装置、又は任意の他の類似若しくは関連の物体(任意の構成要素又はアクセサリを含む)を表し、これは疾患又は他の状態の診断、治療、治癒又は予防における使用を目的とする。かかる医療装置は、ヒト又は他の動物での使用を目的とし、身体の構造又は任意の機能に影響を与えることが期待される。かかる医療装置は、化学的作用を通じては、その主となる本来の目的を達成せず、またその主となる本来の目的の達成のために代謝が必要という訳ではない。
【0201】
本明細書中に使用される「インプラント」という用語は、生きている組織ではない、ヒトの身体での配置を目的とする任意の物体を表す。インプラントは一時的又は永久的なものであり得る。インプラントは、人工構成要素を含む物品、例えばカテーテル又はペースメーカーであり得る。インプラントは、それらの生きている組織が失活されるように処理されている天然由来の物体も含み得る。例えば、生きている細胞を取り除く(脱細胞化する)が、宿主由来の骨の内部成長のために鋳型として役立つようにそれらの形状を保持するように処理されている骨移植片が挙げられる。別の例としては、天然のサンゴを処理して、或る特定の整形外科療法及び歯科療法のために身体に適用することができるヒドロキシアパタイト製剤を得ることができる。
【0202】
したがって本発明は、移植の後に起こることが知られる、起こり得る任意の細胞凝集及びバイオフィルム形成を低減/排除するように、医療装置との細胞接着を予防するために、医療装置を本発明の組成物でコーティングすることを想定している。装置関連の感染は通常、装置の挿入若しくは埋め込み処置の間の微生物、主に細菌の導入、又は血液伝播性の生物と新たに挿入される装置との付着、及びその後の表面上での生物の増殖により起こる。それにより本発明の組成物による医療装置のコーティングが、1つ又は複数の微生物種のバイオフィルム形成を阻害し、医療装置関連の感染を予防し、結果として抗生物質による治療又は被験体から医療装置を取り外す必要性が減る。
【0203】
本発明の教示に従ってコーティングされ得る医療装置としては、人工血管、カテーテル及び流体の除去又は患者への流体の送達のための他の装置、人工心臓、人工腎臓、整形外科用のピン、人工関節、プレート及びインプラント;カテーテル及び他のチューブ(泌尿器チューブ及び胆管チューブ、気管内チューブ、末梢部に挿入可能な中枢神経カテーテル、透析カテーテル、長期間トンネル型中枢神経カテーテル、末梢静脈内カテーテル、短期間中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、肺動脈カテーテル、スワン−ガンツカテーテル、導尿カテーテル、腹膜カテーテルを含む)、尿道装置(長期間尿道装置、組織結合尿道装置、人工尿道括約筋、尿道拡張器を含む)、シャント(心室シャント又は動静脈シャントを含む);プロテーゼ(胸部インプラント、陰茎プロテーゼ、血管移植プロテーゼ、動脈瘤修復装置、機械心臓弁、人工関節、人工喉頭、耳鼻科インプラントを含む)、吻合装置、血管カテーテルポート、血管ステント、クランプ、塞栓装置、創傷ドレインチューブ、接眼レンズ、歯科インプラント、水頭症シャント、ペースメーカー及び埋め込み型除細動器、無針コネクタ、声帯プロテーゼ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0204】
本発明の水生生物組成物の別の可能性のある用途は、医学的及び歯科的環境で見られる表面のコーティングである。かかる表面には、使い捨てか、又は反復使用目的であるかにかかわらず、様々な機器及び装置の内面及び外面が含まれる。かかる表面は、医学的使用に適合した物品の全範囲を含み、この物品としては外科用メス、針、ハサミ、及び侵襲性の外科的、治療的又は診断的処置に使用される他の装置;血液フィルタが挙げられるが、これらに限定されない。他の例がこれらの当該技術分野における実践者には容易に明らかである。
【0205】
医学的環境に見られる表面には、医療の場で職員が着用する又は職員によって運ばれる医療ギアである医療設備の部品の内面及び外面も含まれる。かかる表面には、医療の場において感染性生物に対する生物学的障壁として意図される表面、例えばグローブ、エプロン及びマスクが含まれ得る。生物学的障壁に一般的に使用される材料は、ポリエチレン、ダクロン、ナイロン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ラテックス、シリコーン及びビニル等の熱可塑性材料又は高分子材料である。他の表面には、医療的処置、又は呼吸器治療(酸素、ネブライザにおける可溶化薬剤及び麻酔薬の投与を含む)に使用される医療機器、医療チューブ及び医療キャニスタを準備するのに使用される領域におけるカウンタトップ及び固定具が含まれ得る。他のかかる表面には、無菌であることを意図しない医療設備又は歯科用設備用のハンドル及びケーブルが含まれ得る。さらにかかる表面には、血液若しくは体液又は他の有害な生体材料が共通して接する領域で見出されるチューブ及び他の機器の非無菌の外面が含まれ得る。
【0206】
本発明の水生生物組成物は、微生物コロニー形成に対する長期間保護を与えるのに、及び装置関連の感染の発生率を低減するのに、これらの医療装置の表面上又はこれらの医療装置内で使用することができる。これらの組成物を、抗菌剤(例えば抗生物質剤)と組合せて医療装置のためのコーティングに組み込むこともできる。かかる組合せは、この物質が装置−微生物界面に阻止濃度で与えられていれば、初期のコロニー形成細菌を破壊又は阻害させ、且つ装置関連の感染を予防するのに十分である。
【0207】
本発明の水生組成物を、ポリマー合成段階又は装置製造段階で、医療装置のポリマーマトリクスに直接組み込むことができる。水生組成物を医療装置ポリマーに共有結合させることもできる。医療装置をコーティングするこれらの及び多くの他の方法は当業者には明らかである。
【0208】
本発明の教示に従って処理することができるさらなる表面には、水精製、水貯蔵及び水送達に関与する物品、並びに食品加工に関与する物品の内面及び外面が含まれる。このため本発明は、その内容物の保存期間を延長するために、食品又は飲料容器の固体表面をコーティングすることを想定している。
【0209】
また健康に関連する表面としては、栄養摂取、公衆衛生又は疾患予防の提供に関与する家庭用品の内面及び外面が挙げられ得る。このため、本発明の水生組成物は、外面からの微生物の除去に使用することができる。これらとして例えば、家庭用食品加工設備、育児用材料、タンポン、石鹸、洗剤、健康製品及びスキンケア製品、家庭用クリーナー並びに便器が挙げられる。
【0210】
表面は、研究用品であってもよく、顕微鏡スライドガラス、培養フード、ペトリ皿、又は当該技術分野で既知の任意の他の好適な種類の組織培養器又は容器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0211】
本願の発明者等は、防汚剤としての本発明の水生生物組成物の使用も想定している。
【0212】
本明細書中で使用される「防汚剤」という用語は、単細胞生物の付着から水中の表面を保護するのに使用される化合物を表す。これらの単細胞生物としては、細菌及び真菌等の微生物が挙げられる。
【0213】
これらの水中の表面は任意の浸水表面を含み、これには船/ボートの船体(すなわち船又はボートのボディ又はフレーム)、潜水艇、航行援助施設、スクリーン、網、構造物、浮遊する又は据え付けられた海上プラットフォーム(例えばドック)、ブイ、信号設備、及び海水又は塩水に接する物品が含まれる。他の水中の表面は海水に曝された構造体を含み、これには杭、海洋マーカー、ケーブル及びパイプのような海中伝導装置、漁網、バルクヘッド、冷却塔並びに水中で動作する任意の装置又は構造体が含まれる。
【0214】
本発明の水生生物組成物を、不要な海洋汚染を制限するのに海洋コーティングに組み込むことができる。このため、本発明の防汚剤を、毒性材料(例えば重金属)を含有せず、且つそれらの有効性を保持するように配合することができる。本発明の防汚塗布剤はさらに、結合剤(複数可)、顔料(複数可)、溶媒(複数可)及び添加剤(複数可)を含有していてもよい。
【0215】
使用され得る溶媒の例としては、キシレン及びトルエン等の芳香族炭化水素;ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル;N−メチルピロリドン及びN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;イソプロピルアルコール及びブチルアルコール等のアルコール;ジオキサン、THF及びジエチルエーテル等のエーテル;並びにメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びメチルイソアミルケトン等のケトンが挙げられる。溶媒を単独又はそれらを組み合わせて使用してもよい。
【0216】
使用され得る結合剤の例としては、アルキド樹脂、アクリル又はビニルエマルション、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル樹脂、無機ケイ酸系樹脂、ビニル樹脂、特に塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー及びロジンが挙げられる。
【0217】
使用され得る顔料の例としては、二酸化チタン、酸化第一銅、酸化鉄、タルク、アルミニウムフレーク、マイカフレーク、酸化第二鉄、チオシアン酸第一銅、酸化亜鉛、酢酸メタヒ酸第二銅、クロム酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛及びジエチルジチオカルバミン酸亜鉛が挙げられる。
【0218】
コーティング組成物に組み込まれ得る添加剤の例としては、除湿剤、湿潤/分散剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、乾燥/硬化剤、損傷防止剤、並びに安定剤及び消泡剤としてコーティング組成物に通常用いられる添加剤が挙げられる。さらに、海水に比較的不溶性である任意の抗生物質を防汚海洋塗布剤と共に使用することができる。
【0219】
海洋防汚塗布剤を調製する方法は、米国特許第4,678,512号明細書、米国特許第4,286,988号明細書、米国特許第4,675,051号明細書、米国特許第4,865,909号明細書、及び米国特許第5,143,545号明細書で詳細に説明される。
【0220】
本発明は、バイオフィルム形成阻害活性を含む作用因子を同定することを含む多種多様な用途を有すると理解される。
【0221】
このため、本発明の別の態様によれば、バイオフィルム形成阻害組成物を同定する方法であって、水生生物由来の複数の組成物をバイオフィルム形成細菌と接触させること、複数の組成物の存在下でバイオフィルム形成細菌のバイオフィルム活性を化学分析すること、及び複数の組成物から規定の閾値を超えるバイオフィルム形成阻害活性を有する組成物を少なくとも1つ同定することにより、バイオフィルム形成阻害組成物を同定することを含む、方法が提供される。
【0222】
本明細書中で使用される「バイオフィルム形成細菌」という語句は、バイオフィルムを形成することができる、及び/又はバイオフィルム内で生存することができる任意の細菌を表す。かかる細菌としては、本明細書中の上記にさらに記載されたグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌が挙げられる。
【0223】
本発明者らによって示されるように(実施例3)、バイオフィルム形成細菌のバイオフィルム活性の化学分析は、細菌接着バイオアッセイによって達成され得る。当該技術分野で既知の任意の細菌接着バイオアッセイを使用することができる。かかる方法の例としては、ハイスループットポリスチレンマイクロプレートアッセイ、定量的細菌接着アッセイ、又はスライドガラス上のバイオフィルム形成に関する蛍光顕微鏡アッセイが挙げられる。
【0224】
本明細書中で使用される「規定の閾値」という語句は、表面に接着する細菌の数の閾値を表す。好ましくは、バイオフィルム形成阻害組成物は、バイオフィルム形成を10%、より好ましくは20%、より好ましくは30%、より好ましくは40%、より好ましくは50%、より好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%及び最も好ましくは100%低減することができる。
【0225】
本明細書中で使用される「約」という用語は±10%を表す。
【0226】
本発明のさらなる目的、利点及び新規の特徴は、限定を意図しない以下の実施例の説明で当業者に明らかになる。さらに、上記に記載され、且つ添付の特許請求の範囲の項で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様のそれぞれは、以下の実施例における実験的裏づけを見出している。
【実施例】
【0227】
これより、以下の実施例を参照して、上述の記載と共に、非限定的に本発明を説明する。
【0228】
一般的に、本明細書中で使用される命名法及び本発明で用いられる検査法としては、分子学的技法、生化学的技法、微生物学的技法及び組み換えDNA技法が挙げられる。かかる技法は以下の文献で完全に説明される。例えば、"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989)、"Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994)、Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988)、Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York、Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)、米国特許第4,666,828号明細書、同第4,683,202号明細書、同第4,801,531号明細書、同第5,192,659号明細書、及び同第5,272,057号明細書に記載される方法、"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994)、"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)、Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)、Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照されたい。利用可能なイムノアッセイが特許文献及び科学文献で広範に記載されており、例えば米国特許第3,791,932号明細書、同第3,839,153号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,850,578号明細書、同第3,853,987号明細書、同第3,867,517号明細書、同第3,879,262号明細書、同第3,901,654号明細書、同第3,935,074号明細書、同第3,984,533号明細書、同第3,996,345号明細書、同第4,034,074号明細書、同第4,098,876号明細書、同第4,879,219号明細書、同第5,011,771号明細書、及び同第5,281,521号明細書、"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984)、"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)、"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1984)、"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986)、"Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986)、"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984)及び"Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press、"PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990)、Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996)(それらは全て、本明細書中で完全に説明されるように参照により援用される)を参照されたい。他の一般的な参考文献が本明細書を通して与えられる。それらの文献中の処置は、当該技術分野で既知であると考えられ、読者の都合に合わせて読まれるものである。それらの文献に含まれる全ての情報は参照により本明細書中に援用される。
【0229】
実施例1
魚及び刺胞動物の粗抽出物が接着を阻害するように作用する
材料及び実験手順
刺胞動物及び他の実験生物
刺胞動物と、イソギンチャク(アクチニア・エキナ及びアイプタシア・プルケラ)、並びにヒドロ虫(クロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリス)を含む他の実験生物とを研究所で成長させ維持し、又はそれらの自然生息地から直接回収した。
【0230】
試料回収
試料を魚(ウナギ、ナマズ)の表面粘膜、及び固着刺胞動物(2種類のヒドラ及びイソギンチャク由来)のホモジネートから回収した。簡潔には、湿重量300mgのイソギンチャク(anemone)組織を解剖し、蒸留水(DDW)で洗い流し、容量300μlのDDW中でホモジネートし(全容量約500μl)、遠心分離を行い(3分、14000×g)、前置フィルターにかけた(0.2μl)。
【0231】
細菌成長
全ての細菌株を、個々の実験において三連で成長させた。アシネトバクター・バウマンニ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌をカゼインTrypto Soya Broth(TSB)+0.25% D−グルコース中で成長させ、GFPを発現する大腸菌株U85を50μg/mlのカナマイシンを有するLuria−Bertani(LB)中で成長させた。
【0232】
細菌接着バイオアッセイ
バイオフィルムを96ウェルの丸底ポリスチレンプレートで成長させた。上記のように回収した試料をPBSで希釈し、有毒な臨床細菌株アシネトバクター・バウマンニと共にインキュベートした。
【0233】
簡潔には、一晩成長させたアシネトバクター・バウマンニ培養液180μlに適切な試料(PBSで希釈)20μlを補充した。37℃での24時間のインキュベーション後、ウェルを水で洗浄し、クリスタルバイオレット溶液250μlで染色した。染料を水で洗浄することで完全に取り除いた。付着細胞の定量のために、クリスタルバイオレットを1% SDS 250μlに可溶化させ、吸光度を595nmで測定した。
【0234】
結果
魚(ウナギ、ナマズ)及び固着刺胞動物(2種類のヒドラ及びイソギンチャク)から回収された表面粘膜の試料である身体ホモジネートから得られる粗抽出物により、細菌アシネトバクター・バウマンニの有毒な臨床分離株の接着を予防する基本的能力が明らかになった。図2から明らかなように、最も高い有効性は、イソギンチャク(アクチニア・エキナ)(図1A及び図1Bに図示)触手の抽出物によって示された。
【0235】
実施例2
アクチニア・エキナ抽出物は接着阻害剤として機能するが、殺菌剤としては機能しない
材料及び実験手順
アクチニア・エキナ
イソギンチャク(アクチニア・エキナ)を研究所で成長させ維持した。
【0236】
試料回収
固着刺胞動物(アクチニア・エキナ)のホモジネートを回収した。簡潔には、湿重量300mgのイソギンチャク組織を解剖し、蒸留水で洗い流し、容量300μlのDDW中でホモジネートし(全容量約500μl)、遠心分離を行い(3分、14000×g)、前置フィルターにかけた(0.2μl)。
【0237】
カラムクロマトグラフィ及びタンパク質化学
試料(100μl)を、DDW+0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)における直線勾配のアセトニトリルで溶出し(3%→80%、5分〜75分)、分析用C8(Thermo-Hypersil, Keystone)又はC−18(Vydac)カラム上で分離した。溶出パターンを215nmでモニタリングした。
【0238】
細菌成長
実施例1に記載された方法で行った。
【0239】
細菌接着バイオアッセイ
実施例1に記載された方法で行った。
【0240】
細菌破壊/成長阻害
アクチニア・エキネ(A. equine)触手の粗抽出物と、単離画分(以下の図4を参照されたい)とを細菌アシネトバクター・バウマンニ(A. baumanni)の液体培養液に添加した。細菌の一晩成長を、600nmでの培養液の光学密度の測定によって記録した。
【0241】
タンパク質ゲル電気泳動
活性画分100μlを氷冷アセトンによって沈殿させ、SDS及びβ−メルカプトエタノールを含有する泳動緩衝液中で再懸濁して、3分間煮沸し、15%変性SDS−PAGEゲル上で分離した。電気泳動後、ゲルを銀染色した。
【0242】
試料の熱変性
試料を30分間100℃までPCR熱サイクルにかけることによって、熱変性を実施した。
【0243】
結果
アシネトバクター・バウマンニに対する細菌の接着阻害効果が、アクチニアのアクロラジ組織(図3A)及びアクチニアの触手組織(図3B)のクロマトグラフ分離から得られた画分によって明らかになった。注目すべきことに、有機溶媒の存在下でHPLC系における分析用の逆相(RP)カラム上で分離を行ったが、これには凍結乾燥が要求される(除去のため)。これにより、得られた活性画分が有機溶媒及び凍結乾燥物に対して安定し、且つ耐性のあることが示された。さらに、図3Dは、活性構成要素の分子量及びそれらの均質度を大まかに示す(電気泳動図で示される)。
【0244】
注目すべきことに、接着バイオアッセイにより、人工表面との細菌接着がモニタリングされる。この接着バイオアッセイは細菌破壊又はさらには細菌成長阻害を示していない。さらに、回避(破壊又は成長阻害の欠如)が、抽出物との24時間のインキュベーション後の処理対対照試料の測定のOD600nmの相補的測定(粒子密度の測定)によって確認された。結果(本明細書中の以下の表1で示される)は、接着阻害物質であるアクチニア・エキナ触手の粗抽出物及び単離画分(図2及び図3A〜図3D)が、PBSの存在下で成長する細菌(陽性対照)と比較して、アシネトバクター・バウマンニに対する殺菌効果又は成長阻害効果を全く明らかにしなかったことを示している。
【0245】
【表1】
【0246】
触手画分17と、広範な微生物に対してバイオフィルム形成阻害及び接着阻害活性を示す孔形成ペプチドであるイクイナトキシン(図4)と、粗抽出物及びアクロラジ画分である画分13、画分14(データ図示せず)とが、熱変性後、及びプロテイナーゼKによる治療によって(データ図示せず)それらの細菌の接着阻害活性を失うことが示された。まとめると、この情報により、活性因子がポリペプチドであることが示唆される。
【0247】
触手画分の接着阻害効果が、4つの異なる群の細菌、すなわちアシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌、大腸菌(全て、異なるファミリーの細菌に属するグラム陰性細菌)及び黄色ブドウ球菌(グラム陽性細菌)でさらに実証された。大腸菌は動物の腸管で生存する腸内細菌科に属するが、緑膿菌(P. aeruginosa)及びアシネトバクター・バウマンニは、シュードモナス目に属する一方、科が異なる、土壌及び水中における自由生活生物である。図5から明らかなように、触手画分13は、4つの群全ての細菌に対して接着阻害効果を示した。
【0248】
実施例3
アクチニア・エキネ粗抽出物は初期段階のバイオフィルム形成に作用する
材料及び実験手順
アクチニア・エキナ
イソギンチャク(アクチニア・エキナ)を研究所で成長させ維持した。
【0249】
試料回収
固着刺胞動物(アクチニア・エキナ)のホモジネートを回収した。簡潔には、湿重量300mgのイソギンチャク組織を解剖し、蒸留水で洗い流し、容量300μlのDDW中でホモジネートし(全容量約500μl)、遠心分離を行い(3分、14000×g)、前置フィルターにかけた(0.2μl)。
【0250】
細菌成長
実施例1に記載された方法で行った。
【0251】
ハイスループットポリスチレンマイクロプレートアッセイ
様々な細菌(例えば黄色ブドウ球菌ATCC25923)を96ウェル丸底ポリスチレンプレートで成長させた。37℃での24時間のインキュベーション後、各ウェルを水で洗浄し、クリスタルバイオレット溶液250μlで染色した。染料を水で洗浄することで完全に取り除いた。付着細胞の定量化のために、ウェルに残ったクリスタルバイオレットを1% SDS 250μlに可溶化させ、光学密度を595nmで読み取った。アクチニア・エキナ触手の粗材料を、時間0で10倍、100倍、及び1000倍の3つの希釈率でプレートに三重で添加した。陽性対照として細菌をPBS単独と共にインキュベートした。
【0252】
定量的な細菌接着アッセイ
黄色ブドウ球菌ATCC25923を、5ml容のポリスチレン試験管中の培地2mlで成長させた。37℃での24時間のインキュベーション後、各試験管を水で洗浄し、クリスタルバイオレット溶液250μlで染色した。染料を水で洗浄することで完全に取り除いた。付着細胞の定量化のために、ウェルに残ったクリスタルバイオレットを1% SDS 250μlに可溶化させ、光学密度を595nmで読み取った。アクチニア・エキナ触手の粗材料を、時間0で10倍、100倍、1000倍の3つの希釈率でプレートに三重で添加した。陽性対照として細菌をPBS単独と共にインキュベートした。
【0253】
スライドガラス上のバイオフィルム形成に関する蛍光顕微鏡アッセイ
緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現のためのプラスミドを含有する大腸菌DH5−α株U85を、LB培地2mlでスライドガラスと共にインキュベートし、接着細菌を倒立落射蛍光顕微鏡IX2−81(Olympus, USA)を用いて視覚化した。時間0で粗物質及び画分を添加し、バイオフィルム形成を1時間、7時間及び22時間後に確認した。
【0254】
結果
バイオフィルム形成に対するアクチニア・エキナ触手の粗材料の添加による付着細菌の減少が明らかである(図6A及び図6B)。その上、図6Cで示されるように、細菌接着は、PBSとのインキュベーションの1時間後には既にはっきりと見て取れ、22時間後には細菌の密集マット(dense mat)が観察された。これに対して、細菌と、アクチニア・エキナ触手抽出物、この抽出物由来の2つのクロマトグラフ画分(14、17)、又は組み換えイクイナトキシンとのインキュベーションにより、細菌接着の減衰が起こった。このため、これらの結果により、バイオフィルム形成の予防が付着の初期段階で起こることが示されている。
【0255】
実施例4
アクチニア・エキネ活性材料を単離することができる
材料及び実験手順
アクチニア・エキナ
イソギンチャク(アクチニア・エキナ)を研究所で成長させ維持した。
【0256】
試料回収
固着刺胞動物(アクチニア・エキナ)のホモジネートを回収した。簡潔には、湿重量300mgのイソギンチャク組織を解剖し、蒸留水で洗い流し、容量300μlのDDW中でホモジネートし(全容量約500μl)、遠心分離を行い(3分、14000×g)、前置フィルターにかけた(0.2μl)。
【0257】
カラムクロマトグラフィ及びタンパク質化学
実施例2に記載されるように行った。
【0258】
活性ピークの選択及びMS解析
RP−HPLC(T−18)でこれまでに得られた活性材料を、同じカラム上で再びクロマトグラフィにかけ、ピークを回収し、凍結乾燥して、標準容量のPBS中に溶解した。容量20μlを細菌の接着阻害活性に関して化学分析した。
【0259】
さらに、凍結乾燥試料(活性ピーク75)を、50%メタノール−0.5%ギ酸中に溶解し、マトリクスとしてシナピン酸を使用するMALDI−TOF(Voyager−DE STR、Applied Biosystems)で測定した。正の直線で測定を行った。
【0260】
細菌成長
実施例1に記載された方法で行った。
【0261】
細菌接着バイオアッセイ
実施例1に記載された方法で行った。
【0262】
結果
再びクロマトグラフィにかけた活性画分T−18(図7A)から活性画分75、79及び106I(図7A)を得た。画分75のMS解析(赤色の矢印で印付けられた)は、19863Da、9926Da、8261Da及び3655Daの質量の幾つかのピークを示しており、これはタンパク質であると推測される(図7B)。これらのデータにより、関連物質を単離し、化学的に特徴付ける能力が明らかになる。
【0263】
実施例5
アイプタシア・プルケラ抽出物は接着阻害活性を含む
材料及び実験手順
アイプタシア・プルケラ由来の粗材料の分離
アイプタシア・プルケラ由来の活性画分の分離を、G−10及びG−75ゲル濾過カラム(GE Healthcare, Sweden)を使用して確立した。ゲル濾過分離による回収材料のC−18カラムを用いたRP−HPLCが、高分解能の分離を与えた。活性画分をMSで解析した。
【0264】
高分子画分を、Sephadex G−75上で再びクロマトグラフィにかけ2つの画分を得た。両方とも接着阻害活性/バイオフィルム形成阻害活性を示していた。得られた画分のそれぞれを、c−18カラムを用いたRP−HPLCを使用して分離した。この分離により幾つかの画分が得られた。
【0265】
結果
Sephadex G−10カラム上で分離したアイプタシア・プルケラ(生物全体)の粗抽出物により2つの画分を得た。両方とも接着阻害活性/バイオフィルム形成阻害活性を示していた(図8)。
【0266】
Sephadex G−75上でのSephadex G−10由来の高分子画分の再クロマトグラフィにより、高分子画分及び低分子画分を示す2つの主なピークが得られた(図9)。
【0267】
G−75カラム由来の低分子画分のc−18カラムを用いたRP−HPLC分離により、活性画分(画分2及び画分3、図10)を含む幾つかの画分が得られ、これらはHPLC解析の後、多糖として同定された(図11A〜図11C)。画分2及び画分3のHPLC解析は、各画分に対して異なる組合せの単糖を開示していた(図11A及び図11B)。しかしながら、画分2及び画分3の両方における主なピーク(ピーク番号1)は、画分2の全グリカンの45.5%を構成し、画分3の全グリカンのおよそ91%を構成するジグルコースを表す(表2)。
【0268】
【表2】
【0269】
G−75由来の高分子画分のC−18カラムを用いたRP−HPLC分離により、高い接着阻害活性を有する、少なくとも3つの画分(13、18及び20、図12)を得た。MS解析及びゲル電気泳動により、活性画分がペプチドであることが示された(データ図示せず)。
【0270】
配列表
配列番号1:
MSRLIIVFIVVTMICSATALPSKKIIDEDEEDEKRSADVAGAVIDGASLSFDILKTVLEALGNVKRKIAVGVDNESGKTWTALNTYFRSGTSDIVLPHKVPHGKALLYNGQKDRGPVATGAVGVLAYLMSDGNTLAVLFSVPYDYNWYSNWWNVRIYKGKRRADQRMYEELYYNLSPFRGDNGWHTRNLGYGLKSRGFMNSSGHAILEIHVSKA
【0271】
明瞭性のために別々の実施形態に関して記載された、本発明の或る特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて与えてもよいことが理解される。逆に、簡潔性のために単一の実施形態に関して記載された、本発明の様々な特徴は、別々に又は任意の好適なサブコンビネーションにおいて与えてもよい。
【0272】
本発明をその特定の実施形態と結び付けて記載しているが、多くの代替、修正及び変更が当業者にとって明らかであることは明白である。したがって本発明は、かかる代替、修正及び変更の全てを包含するように意図され、これらは添付の特許請求の範囲の精神及び広範な範囲内にある。本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願、並びにGenBankアクセッション番号は、それぞれ個々の刊行物、特許若しくは特許出願、又はGenBankアクセッション番号が参照により本明細書中に援用されるように具体的に且つ個々に示されるのと同じ程度まで、その全体が参照により本明細書中に援用される。さらに、本願における任意の参考文献の引用又は特定は、かかる参考文献が本発明の従来技術として利用可能であることを承認するものとは解釈されない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物の抽出物、より具体的には細胞接着の予防のための水生生物の抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物は、(プランクトンとして)環境中で自由に泳動する個々の細胞として生存及び増殖することができるか、又は表面及び界面に密接に結び付いて、自己産生ポリマーマトリクス中に包含された、高度に組織化された多細胞コミュニティとして成長することができる。後者の微生物ライフスタイルはバイオフィルムと呼ばれる。バイオフィルム形成は、厳しい環境で微生物を生存させ、また微生物が分散し、且つ新たなニッチにコロニーを形成するのを可能にする、保護された経時的な成長状態を示す[Hall-Stoodley et al., Nat Rev Microbiol. (2004) 2(2):95-108]。
【0003】
バイオフィルムの組成は複雑であり、異なる微生物種間で、及びさらには同じ微生物種であっても異なる環境条件下で変化する。それにもかかわらず、バイオフィルム形成は、環境中での微生物の正常なライフスタイルを示し、また全ての微生物がバイオフィルムを作製する可能性がある。これまでの研究により、細菌性のバイオフィルム形成が、タンパク質プロファイルが異なる複数の発生段階で進行することが明らかになり[Sauer et al., J Bacteriol. (2002) 184(4):1140-54]、これは表面との付着から始まり、その後の移動(immigration)及び分裂により微小コロニーを形成し、最終的にはマトリクスポリマーの発現を伴う成熟へと続く。各バイオフィルム段階での細菌は、浮遊状態で(planktonically)成長する同じ群のものとは顕著に異なる表現型を提示し、また顕著に異なる性質を有している[Sauer et al., J Bacteriol. (2004) 186(21):7312-26]。
【0004】
バイオフィルムは、ヒトにおける全身感染(例えば院内感染)の主な原因である。体内で、バイオフィルムは組織(例えば内耳、歯、歯茎、肺、心臓弁及び尿生殖路)と結び付く可能性がある。実際、ヒトにおける細菌感染のおよそ65%はバイオフィルムによるものである。さらに、バイオフィルムが形成された後、微生物は、時に劇的にその特性を変える傾向があり、このため、生物が付着しているか又は集塊状のバイオフィルム形態である場合、通常懸濁培養液中の生物を破壊する抗生物質の用量では同じ微生物に対してほとんど効果がない(米国特許第7189351号明細書)。
【0005】
身体に導入される製品(例えばコンタクトレンズ、中心静脈カテーテル、機械心臓弁及びペースメーカー)、又は身体に経路を与える製品に関する主な懸念事項の1つは、微生物感染及び不可避なバイオフィルムの形成である。これらの感染は抗生物質による治療が困難であるので、度々装置の取り外しを余儀なくされ、このことが患者への外傷となり、医療費が増大する。したがって、当該技術分野において、かかる医療機器に関して、これらの医療機器及び装置を抗菌性にする手段及び方法が念願となっている。
【0006】
海洋環境において、海綿動物[Amade et al., Mar. Biol. (1987) 94: 271-275、Wilsanand et al., Ind. J. Mar. Sci (1999) 28:274-279]、ホヤ[Wahl et al., Mar. Ecol. Prog. Ser (1994) 110:45-57]、及びソフトサンゴ[Aceret et al., Comp. Biochem. Phys (1998) 120: 121-126、Kelman et al., Mar. Ecol. Prog. Ser (1998) 169:87-95]等の多くの軟体海洋無脊椎動物は、抗菌活性及び抗真菌活性を示す二次代謝産物を産生することがこれまでに報告されている[Harder et al., FEMS Microbiology Ecology (2003) 43(3):337-347]。さらに、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキナ(Actinia equina:ウメボシイソギンチャク))は、イクイナトキシン(equinatoxins)と呼ばれる、アクチノポリンファミリーに属する毒性の孔形成ペプチドを産生することが分かっている[Kristan et al., J Biol. Chem. (2004) 279(45):46509-17]。イクイナトキシン(すなわち、イクイナトキシン1、2及び3)は、イソギンチャク(アクチニア・エキネ(Actinia equine:ウメボシイソギンチャク))の触手及び身体からのアセトン沈殿、Sephadex G−50、CM−セルロース及びCM−Sephadexカラムクロマトグラフィによって精製されている[Macek P and Lebez D., Toxicon. (1988) 26(5):441-51]。これらの毒性タンパク質は、他の小抗菌ペプチドと同じように、標的細胞膜においてドーナッツ型のタンパク質−脂質孔を形成することによって真核細胞を溶解及び破壊させる[Anderluh et al., J. Biol. Chem. (2003) 278(46):45216-45223]。
【0007】
海洋水生植物及び動物は、バイオフィルム形態で多種多様且つ多量の潜在的に有害な微生物に継続的に曝されており、海洋生物が抗菌ペプチドを産生することが知られているので、海洋生物にもバイオフィルム形成を妨げる広範な自然因子が存在する可能性がある。
【0008】
米国特許出願公開第20070098745号明細書は、礁魚の微生物叢の使用によって、バイオフィルム形成を予防する手段を開示している。この発明は、健常なサンゴ礁魚(例えばスパリソーマ・ニニダエ(Sparisoma ninidae)及びルジャヌス・プルプレウス(Lutjanus purpureus:ミナミバラフエダイ))の粘膜上皮表面から単離された細菌から得られるバイオフィルム形成阻害物質を記載している。細菌分離株はバイオフィルム形成を予防するシグナル又は毒素を生じる。
【0009】
バイオフィルムの顕著な勢力及びその有害作用のために、新規のバイオフィルム形成阻害剤に対する必要性が広く認識されており、また新規のバイオフィルム形成阻害剤を同定するのには強い利点がある。
【発明の概要】
【0010】
一態様によれば、水生生物由来の活性因子を含む組成物であって、生物と表面との接着を予防又は低減し、且つ細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない、組成物が提供される。
【0011】
以下に記載の本発明の実施の形態におけるさらなる特徴によれば、活性因子が実質的に水生生物全体を含む。
【0012】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が水生生物のホモジネートを含む。
【0013】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が水生生物から得られる単離抽出物を含む。
【0014】
またさらなる特徴によれば、単離抽出物が粗抽出物を含む。
【0015】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単離抽出物が極性抽出物を含む。
【0016】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物の極性溶媒がアセトニトリルを含む。
【0017】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が少なくとも1つのポリペプチドを含む。
【0018】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、ポリペプチドが、19863Da、9926Da、8261Da及び3655Daから成る群から選択されるピーク質量を特徴とする。
【0019】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が少なくとも1つの多糖を含む。
【0020】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子の活性が凍結乾燥の後で保存される。
【0021】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物が固着生物を含む。
【0022】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物が魚を含む。
【0023】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、魚がウナギ及びナマズから成る群から選択される。
【0024】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着生物が固着刺胞動物を含む。
【0025】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がサンゴ、イソギンチャク、ウミエラ、水生幼虫、ハナギンチャク(tube dwelling anemones)及びヒドロ虫から成る群から選択される。
【0026】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がイソギンチャクを含む。
【0027】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む。
【0028】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアイプタシア・プルケラ(Aiptasia pulchella、セイタカイソギンチャク)を含む。
【0029】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がヒドロ虫を含む。
【0030】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、ヒドロ虫がクロロヒドラ・ヴィリディシマ(Chlorohydra viridissima)及びヒドラ・ブルガリス(Hydra vulgaris)から成る群から選択される。
【0031】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物が、イソギンチャクの触手組織又はアクロラジ(acrorhageal)組織由来である。
【0032】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアクチニア・エキネである。
【0033】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、アクチニア・エキネ由来の極性抽出物が、全組成物の約1%(v/v)〜約10%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む。
【0034】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、アクチニア・エキネ由来の極性抽出物が、全組成物の約40%(v/v)〜約60%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む。
【0035】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、アクチニア・エキネ由来の極性抽出物が、全組成物の約40%(v/v)〜約60%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む。
【0036】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物がアイプタシア・プルケラ由来である。
【0037】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、アイプタシア・プルケラ由来の極性抽出物が、約8%〜12%のアセトニトリル、約16%〜20%のアセトニトリル、約22%〜26%のアセトニトリル、及び約26%〜30%のアセトニトリルから成る群から選択される。
【0038】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物が単細胞生物である。
【0039】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組成物がさらに細胞の凝集を阻害することができる。
【0040】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単細胞生物がバイオフィルムに含まれる。
【0041】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単細胞生物が、細菌、真菌、原生動物及び古細菌から成る群から選択される。
【0042】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、真菌が酵母を含む。
【0043】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、表面が、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属及びプラスチックから成る群から選択される。
【0044】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、表面が生物組織を含む。
【0045】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物組織が哺乳動物組織を含む。
【0046】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、哺乳動物組織が皮膚を含む。
【0047】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、対象の組成物の剤形が、噴霧剤、ゲル、塗布剤及びクリームから成る群から選択される。
【0048】
別の態様によれば、単細胞生物と表面との接着を予防する方法であって、単細胞生物と表面との接着を予防することができる、水生生物由来の活性因子を含む組成物に単細胞生物を接触させることを含む、方法が提供される。
【0049】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子は細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない。
【0050】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が粗抽出物を含む。
【0051】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が極性抽出物を含む。
【0052】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子が実質的に水生生物全体を含む。
【0053】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物が少なくとも1つの単離ポリペプチドを含む。
【0054】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単離ポリペプチドがイクイナトキシンを含む。
【0055】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物が少なくとも1つの単離多糖を含む。
【0056】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物の接着予防がin vitroで起こる。
【0057】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物の接着予防がex vivoで起こる。
【0058】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物の接着予防がin vivoで起こる。
【0059】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、生物が単細胞生物である。
【0060】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単細胞生物がバイオフィルムに含まれる。
【0061】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、単細胞生物が、細菌、真菌、原生動物及び古細菌から成る群から選択される。
【0062】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、真菌が酵母を含む。
【0063】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、表面が、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属及びプラスチックから成る群から選択される。
【0064】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、表面が組織である。
【0065】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組織が哺乳動物組織を含む。
【0066】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、哺乳動物組織が皮膚を含む。
【0067】
さらに別の態様によれば、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と、水生生物由来の活性因子とを含む医薬品組成物であって、単細胞生物と表面との接着を予防することができる、医薬品組成物が提供される。
【0068】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、活性因子は細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない。
【0069】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組成物の剤形が、噴霧剤、クリーム及びゲルから成る群から選択される。
【0070】
さらに別の態様によれば、それを必要とする被験体において病原体感染を予防又は治療する方法であって、医薬品組成物を治療的に有効な量、被験体に投与することにより病原体感染を治療又は予防することを含む、方法が提供される。
【0071】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、治療をin vivoで行う。
【0072】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、治療をex vivoで行う。
【0073】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、病原体感染の病原生物がバイオフィルム内又はバイオフィルム上で成長することができる。
【0074】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、病原体感染が細菌感染を含む。
【0075】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、感染細菌がグラム陽性細菌を含む。
【0076】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である。
【0077】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、感染細菌がグラム陰性細菌を含む。
【0078】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、グラム陰性細菌が、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び大腸菌(Escherichia coli)から成る群から選択される。
【0079】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、病原体感染の病原生物が抗生物質耐性である。
【0080】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、病原体感染が、真菌感染、原生動物感染、細菌感染及び古細菌感染から成る群から選択される。
【0081】
さらなる態様によれば、バイオフィルム形成阻害組成物を同定する方法であって、水生生物由来の複数の組成物をバイオフィルム形成細菌に接触させること、複数の組成物の存在下でバイオフィルム形成細菌のバイオフィルム活性を化学分析すること、及び複数の組成物から、規定の閾値を超えたバイオフィルム形成阻害活性を有する少なくとも1つの組成物を同定することにより、バイオフィルム形成阻害組成物を同定することを含む。
【0082】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物が固着生物を含む。
【0083】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物が魚を含む。
【0084】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、魚がウナギ及びナマズから成る群から選択される。
【0085】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着生物が固着刺胞動物を含む。
【0086】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がサンゴ、イソギンチャク、ウミエラ、水生幼虫、ハナギンチャク及びヒドロ虫から成る群から選択される。
【0087】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がイソギンチャクを含む。
【0088】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む。
【0089】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、イソギンチャクがアイプタシア・プルケラを含む。
【0090】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、固着刺胞動物がヒドロ虫を含む。
【0091】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、ヒドロ虫がクロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリスから成る群から選択される。
【0092】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物の複数の組成物が粗抽出物を含む。
【0093】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、粗抽出物が触手組織由来である。
【0094】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、粗抽出物がアクロラジ組織由来である。
【0095】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、水生生物の複数の組成物が極性抽出物を含む。
【0096】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、極性抽出物が触手組織由来である。
【0097】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、触手組織がアクチニア・エキネ由来である。
【0098】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、バイオフィルム形成細菌がグラム陽性細菌を含む。
【0099】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌である。
【0100】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、バイオフィルム形成細菌がグラム陰性細菌を含む。
【0101】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、グラム陰性細菌がアシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び大腸菌から成る群から選択される。
【0102】
またさらなる態様によれば、本明細書中に記載の組成物のいずれかを含む医療装置が提供される。
【0103】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、医療装置が体内装置である。
【0104】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、医療装置が体外装置である。
【0105】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組成物を装置の表面上にコーティングする。
【0106】
記載の実施の形態におけるまたさらなる特徴によれば、組成物を医療装置のポリマーマトリクスに組み込む。
【0107】
またさらなる態様によれば、埋め込み型医療装置との細胞接着を予防するための、本発明の組成物の使用が提供される。
【0108】
またさらなる態様によれば、医療機器との細胞接着を予防するための、本発明の組成物の使用が提供される。
【0109】
またさらなる態様によれば、バイオフィルム形成又は水中の表面の汚染を予防又は低減する方法であって、水を本明細書中に記載の組成物のいずれかで処理することを含む、方法が提供される。
【0110】
またさらなる態様によれば、バイオフィルム形成又は水中の表面の汚染を予防又は低減する方法であって、表面を本明細書中に記載の組成物のいずれかでコーティングすることを含む、方法が提供される。
【0111】
本発明は、固着性の水生生物の対象の組成物を提供することによって、現在知られている、単細胞生物の接着及びバイオフィルム形成の欠点に対処することに成功している。さらに本発明は、医薬品組成物と、バイオフィルム形成阻害組成物を同定する方法と、病理学的感染を予防又は治療する方法と、医療装置に付着した水生生物由来のバイオフィルム形成阻害組成物を含む医療装置とを提供する。
【0112】
他に規定のない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術を有する者(当業者)により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載のものと同様又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料を以下で説明する。抵触の場合には、定義を含む本明細書により抵触の調整が行われる。さらに、材料、方法及び実施例は例示的なものにすぎず、限定を意図しない。
【0113】
本明細書中で使用される、「含む」という用語又はその文法的変化形は、決まった特徴、整数値、工程又は構成要素を明記するものとされるが、1つ又は複数のさらなる特徴、整数値、工程、構成要素又はそれらの群の付加を排除するものではない。この用語は、「から成る」及び「から本質的に成る」という用語を包含する。
【0114】
本明細書中で使用される場合、「から本質的に成る」という語句又はその文法的変化形は、決まった特徴、整数値、工程又は構成要素を明記するものとされるが、1つ又は複数のさらなる特徴、整数値、工程、構成要素又はそれらの群が、特許請求される組成物、装置又は方法の基礎となる新規の特性を大きく変えない場合に限れば、このさらなる特徴、整数値、工程、構成要素又はそれらの群の付加を排除するものではない。
【0115】
「方法」という用語は、与えられた仕事を達成するための様式、手段、技法及び手順を表し、化学的、生物学的及び生物物理的分野の実践者にとって既知の、又は化学的、生物学的及び生物物理的分野の実践者によって知られる様式、手段、技法及び手順から容易に開発される様式、手段、技法及び手順を含むが、これらに限定されない。
【0116】
「活性因子」という用語は、接着阻害効果がある、水生生物から得られる任意の作用因子を表し、生きている生物全体、それらの一部、それらのホモジネート、又は抽出物(例えば粗抽出物若しくは極性抽出物)を含む。
【0117】
本発明は、添付の図面を参照して、ほんの一例として本明細書中で説明される。これより、特に図面を詳細に参照するが、示される詳細は、一例であり、本発明の好ましい実施形態の例示的な考察を目的とするものにすぎず、本発明の原理及び概念的側面の最も有用で且つ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されることを強調する。このため、本発明の根本的理解に必要とされる以上に詳細には、本発明の構造細部、すなわち本発明の幾つかの形態を実際に具現することができる方法を当業者に明らかにする図面に伴う記述を示そうとはしていない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1A】イソギンチャク(アクチニア・エキナ)を示す図であり、全体像を示し、アクロラジ(縄張り型攻撃器官)が広がっており、大きさは、高さが約5cm〜6cmである。
【図1B】アクチニアの概略図であり、様々な器官が強調されている。
【図2】魚及び刺胞動物の粗抽出物の接着阻害効果を示すグラフである。魚(ウナギ、ナマズ)から回収される表面粘膜から得られる試料、及び固着性刺胞動物(2種類のヒドラ及びイソギンチャク)のホモジネートを、有毒な臨床細菌株であるアシネトバクター・バウマンニと共にインキュベートさせ、細菌の接着をクリスタルバイオレットアッセイを使用して調べた。結果を、3つの異なる試料希釈液(PBS中)で100%陽性対照と比較して細菌接着の百分率で表す。
【図3A】アクチニア・エキネ由来の接着阻害画分のクロマトグラフ分離及び特性評価を示すグラフであって、RP−HPLC C−8カラム上でのアクロラジ組織抽出物のクロマトグラフ分離を示す(溶出パターンを215nmでモニタリングした)。
【図3B】アクチニア・エキネ由来の接着阻害画分のクロマトグラフ分離及び特性評価を示すグラフであって、RP−HPLC C−8カラム上での触手組織抽出物のクロマトグラフ分離を示す(溶出パターンを215nmでモニタリングした)。
【図3C】アクチニア・エキネ由来の接着阻害画分のクロマトグラフ分離及び特性評価を示すグラフであり、アシネトバクター・バウマンニの選択触手画分の接着阻害効果を示す(PBSを陽性対照とする。アクチニアの触手組織(その接着阻害効果)のクロマトグラフ分離で得られた画分それぞれを50倍希釈した。また、単離触手から最も活性の高い画分(13〜14、17〜20、45〜46)(20%未満の接着)を赤色の丸で印を付け(図3Bを参照されたい)、さらなる特性評価のために選択した。同様の効果が印を付けた(矢印)アクロラジ画分で得られた(図3Aを参照されたい、データは図示せず))。
【図3D】アクチニア・エキネ由来の接着阻害画分のクロマトグラフ分離及び特性評価を示すグラフであり、選択画分でのタンパク質のゲル電気泳動を示す(実施例2で詳細に説明するが、活性画分を15%変性SDS−PAGEゲル上で分離し、その後銀染色を行った。画分45及び画分46は多くのタンパク質バンドを示したが、他の画分はほとんどの場合で、分子量がおよそ60kDaのタンパク質対を示した。また、およそ8kDaよりも短いペプチドは観察することができなかった)。
【図4】接着阻害活性の熱不安定性を示す棒グラフであって、アシネトバクター・バウマンニ(A. Baumannii)とポリスチレンマイクロプレートとの接着を、単離触手由来の画分17を添加して、又は組み換えイクイナトキシンを用いて、両方とも熱不活性化して及び熱不活性化せずに化学分析したものであり、化合物は両方とも100倍希釈で調べ、結果を対照PBS(100%)に対する接着の百分率で示した。
【図5】異なるグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌に対する画分13の接着阻害活性を示す棒グラフであって、マイクロプレート接着バイオアッセイを、100倍希釈で単離触手由来の画分13を使用して、アシネトバクター・バウマンニ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌(Pseudomonas aurigenose)及び大腸菌(E. coli)の4つの臨床分離株で実験を行ったものであり、細菌接着(青色)をPBS対照(100%接着、赤色)の百分率で表しており、黄色ブドウ球菌(S. aureus)はグラム陽性細菌であり、残りはグラム陰性細菌である。
【図6A】細菌接着に関する3つの相補アッセイを示す図であって、ハイスループットポリスチレンマイクロプレートアッセイを示す(実施例3で詳細に説明するが、黄色ブドウ球菌(ATCC25923)を96ウェル丸底ポリスチレンプレートで成長させ、クリスタルバイオレット溶液で染色した。付着細胞の定量のために、ウェルに残ったクリスタルバイオレット溶液を1% SDS 250μl中で可溶化し、光学密度を595nmで読み出した。陽性対照(PBSと共にインキュベートした細菌)と比較して、アクチニア・エキナ(A. equina)触手の粗材料の接着阻害効果を10倍、100倍及び1000倍の3つの希釈液で三連で確認した。結果は分光測定に基づいている(図6Aの底図))。
【図6B】細菌接着に関する3つの相補アッセイを示す図であって、定性的観察を示す(黄色ブドウ球菌(ATCC25923)を5ml容のポリスチレン試験管中の培地2mlで成長させ、クリスタルバイオレット溶液で染色した(さらに実施例3で説明する)。また、異なる希釈率の粗材料を添加することにより、付着細菌の低減を観察することができる)。
【図6C】細菌接着に関する3つの相補アッセイを示す図であって、スライドガラス上のバイオフィルム形成に関する蛍光顕微鏡アッセイを示す(緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現のためにプラスミドを含有する大腸菌(DH5−α株U85)を、アクチニア・エキナ触手抽出物、すなわちこの抽出物由来の2つのクロマトグラフ画分(14、17)、又は組み換えイクイナトキシンと共にスライドガラス(glass cover slide)に載せた。接着細菌を倒立落射蛍光顕微鏡IX2−81(Olympus, USA)を用いて、1時間、7時間及び22時間後に視覚化した。また、細菌をアクチニア・エキナ触手抽出物、すなわちこの抽出物由来の2つのクロマトグラフ画分(14、17)、又は組み換えイクイナトキシンと共にインキュベートすることにより、細菌接着が剥離される。これらの結果は、バイオフィルム形成の予防が付着の初期段階で起こることを示している)。
【図7A】活性ピークの選択及びMS解析を示すグラフであって、RP−HPLC(T−18)によってこれまでに(図3A〜Dで)得られた活性材料を示し、この材料を同じカラム上で再びクロマトグラフにかけ、ピークを回収した(活性ピーク75(赤色の矢印)をマトリクスとしてシナピン酸を使用するMALDI−TOFで測定した)。
【図7B】活性ピークの選択及びMS解析を示すグラフであって、19863Da、9926Da、8261Da、3655Daの質量で幾つかのピークが存在するスペクトルが得られたことを示しており、これはタンパク質であると推測され、また、これらのデータは、関連物質を単離し、化学的に特徴付ける能力を示しており、イクイナトキシン(Eq)の活性は顕著である。
【図8】アイプタシア・プルケラ粗抽出物の分離を示すグラフであるって、図はSephadex G−10での粗抽出物のクロマトグラフィを示し、2つの画分が得られ、これは両方とも接着阻害活性/バイオフィルム形成阻害活性を示している。
【図9】Sephadex G−75でのSephadex G−10由来の高分子画分の再クロマトグラフィを示すグラフであり、高分子画分と低分子画分とを示す2つの主なピークが得られる。
【図10】c−18カラムによるRP−HPLCを使用した、G−75カラム由来の低分子画分の分離を示す棒グラフであり、この分離により、活性画分(画分2及び画分3、赤色の丸で印付ける)を含む幾つかの画分が得られ、これはMS解析後に多糖と同定された。
【図11A】大きさに応じた、多糖の分離プロファイルを示す図であって、画分2のHPLC解析を示し、異なるピークに数字を付けており、主なピーク(ピーク番号1)はジグルコースを表す(丸で印付ける)。
【図11B】大きさに応じた、多糖の分離プロファイルを示す図であって、画分3のHPLC解析を示し、異なるピークに数字を付けており、主なピーク(ピーク番号1)はジグルコースを表す(丸で印付ける)。
【図11C】デキストランラダーを示し、すなわちグルコースオリゴマーの平均ラダーを意味している。
【図12】G−75由来の高分子画分のRP−HPLC分離を示す図である。この分離により、高い接着阻害活性を有する少なくとも3つの画分(13、18及び20)が得られる。MS解析及びゲル電気泳動により、活性画分がペプチドであることが示された。
【発明を実施するための形態】
【0119】
本発明は、細胞接着の予防のための水生生物から抽出された組成物、及びこれを使用する方法に関する。
【0120】
本発明の原理及び動作は、図面及び添付の記述を参照してより良好に理解され得る。
【0121】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用に関して以下の記述に記載される、又は実施例によって例示される詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、すなわち様々な方法で実行又は実施することができる。また、本明細書中で用いられる表現及び用語は説明を目的とするものであり、限定するものとは見なされないことを理解されたい。
【0122】
医学における主な懸念事項の1つが微生物バイオフィルムの形成である。ヒトにおいて、バイオフィルムは全身感染(例えば院内感染)の原因であり、製品(例えばコンタクトレンズ、中心静脈カテーテル、機械心臓弁及びペースメーカー)を身体に導入する際の主な懸念事項である。またバイオフィルムは、食品産業、医薬産業、塗装産業、水道産業、海運業及びエンジニアリング産業を含む多くの産業において、広範な負の効果の中でも、産業システムにおける腐食の促進、油の酸性化及び生物接着を引き起こすという問題がある。バイオフィルムは、その中で成長する微生物が高度に組織化され、高温及び抗菌剤(例えば抗生物質)等の厳しい環境に耐えることができるので、微生物を取り除くことが非常に困難である。
【0123】
海洋生物(例えば海綿動物)が抗菌活性及び抗真菌活性を示す二次代謝産物を産生することがこれまでに報告されている[Amade et al.、同上]。さらに、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキナ)は毒性の孔形成ペプチド(すなわちイクイナトキシン)を産生し、このペプチドは、他の小抗菌ペプチドと同じように真核細胞を溶解及び破壊させることが分かっている[Anderluh et al.、同上]。
【0124】
本発明を還元し実行に移し、本発明者らは、水生固着生物がバイオフィルム形成阻害特性を含むことを発見した。
【0125】
本明細書中の以下に、及び以下の実施例の項で示されるように、本発明者らは、本発明の教示に従って抽出された魚(ウナギ、ナマズ)及び固着刺胞動物(ヒドロ虫及びイソギンチャク)の粗抽出物が表面との細菌接着を予防することを示している(図2)。これらの抽出物は、殺菌性ではなく、細菌成長には影響を与えなかった(以下の表1、実施例2)。さらに細菌の接着阻害効果が、アクチニア・エキナ触手の単離画分、及びアクチニア・エキナアクロラジ組織で実証された(図3A〜図3D)。単離画分の接着阻害効果はグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌で同じように効果的であり(図5)、細菌の接着、及び結果としてバイオフィルムの形成を阻害した(図6C)。アクチニア・エキナ画分における活性因子がポリペプチドとして同定された(図7B)。さらに、アイプタシア・プルケラの粗抽出物により、接着阻害活性/バイオフィルム形成阻害活性が明らかになった(図10)。アイプタシア・プルケラにおける活性因子が多糖及びポリペプチドとして同定された(図10〜図12)。
【0126】
アクチニア・エキネ由来の活性タンパク質は、イクイナトキシン−2、イクイナトキシン−2前駆体(イクイナトキシンII)(EqT II)(EqTII)である。Genbankアクセッション番号P61914:
MSRLIIVFIVVTMICSATALPSKKIIDEDEEDEKRSADVAGAVIDGASLSFDILKTVLEALGNVKRKIAVGVDNESGKTWTALNTYFRSGTSDIVLPHKVPHGKALLYNGQKDRGPVATGAVGVLAYLMSDGNTLAVLFSVPYDYNWYSNWWNVRIYKGKRRADQRMYEELYYNLSPFRGDNGWHTRNLGYGLKSRGFMNSSGHAILEIHVSKA(配列番号1)。
【0127】
本発明の教示をまとめると、水生固着生物、特に固着刺胞動物から得られる、広範な新規の接着阻害因子を表している。微生物バイオフィルム形成の初期の影響を受けやすい段階に影響を与える能力と共に、これらの作用因子の広範な接着阻害効果(例えばグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌の接着阻害)により、これらの作用因子がバイオフィルム形成阻害因子の有力候補となる。その上、本明細書中に記載の接着阻害因子はクローン可能であり、それらを改良及び大量生産することができる。さらにその安定性(すなわち環境条件に対する耐性)により、これらの作用因子が数々の用途に好適となる。
【0128】
このため、本発明の一態様によれば、細胞と表面との接着を予防する方法であって、細胞と表面との接着を予防することができる、水生生物由来の対象の組成物に細胞を接触させることにより細胞と表面との接着を予防することを含む、方法が提供される。
【0129】
任意で、細胞は単細胞生物を含み得る。本明細書中で使用される「単細胞生物」という語句は、微生物とも呼ばれる単細胞の生物を表す。本発明の単細胞生物は、真核性の単細胞生物(例えば原生動物又は真菌、例えば酵母)又は原核性の単細胞生物(例えば細菌又は古細菌)であり得る。本発明の単細胞生物は、単離細胞又は細胞懸濁液として、例えばバイオフィルム内のような任意の細胞環境にあり得る。
【0130】
本明細書中で使用される「バイオフィルム」という用語は、その中で微生物が分散し、及び/又はコロニーを形成する細胞外マトリクスを表す。バイオフィルムは典型的には、多糖及び他の巨大分子で構成されている。
【0131】
接着が本発明の方法に従って予防され得る細菌細胞の例としては、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌が挙げられる。
【0132】
本明細書中で使用される「グラム陽性細菌」という用語は、それらの細胞壁構造の一部としてペプチドグリカンと、多糖及び/又はテイコ酸とを有することを特徴とし、且つグラム染色法におけるそれらの青紫色の反応物を特徴とする細菌を表す。代表的なグラム陽性細菌としては、アクチノミセス属、バシラス・アントラシス(Bacillus anthracis:炭疽菌)、ビフィドバクテリウム属、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum:ボツリヌス菌)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens:ウェルシュ菌)、クロストリジウム属、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani:破傷風菌)、コリネバクテリウム・ジフテリアエ(Corynebacterium diphtheriae:ジフテリア菌)、コリネバクテリウム・ジャイカム(Corynebacterium jeikeium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis:大便連鎖球菌)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エリシペロトリックス・ルシオパチエ(Erysipelothrix rhusiopathiae:ブタ丹毒菌)、ユーバクテリウム属、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis:ガードネレラ菌)、ゲメラ・モルビロルム(Gemella morbillorum)、ロイコノストック属、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)、複合マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・ケロネー(Mycobacterium chelonae)、マイコバクテリウム・フォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)、マイコバクテリウム・ヘモフィルム(Mycobacterium haemophilium)、マイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae:ハンセン菌)、マイコバクテリウム・マリナム(Mycobacterium marinum)、マイコバクテリウム・スクロフラセウム(Mycobacterium scrofulaceum)、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis:スメグマ菌)、マイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)、マイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis:結核菌)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、ノカルディア属、ペプトコッカス・ニガー(Peptococcus niger)、ペプトストレプトコッカス属、プロプリオニバクテリウム属、サルシナ・ルテア(Sarcina lutea)、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス・アウリクラリス(Staphylococcus auricularis)、スタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・コーニイ(Staphylococcus cohnii)、スタフィロコッカス・エピデルミヂス(Staphylococcus epidermidis:表皮ブドウ球菌)、スタフィロコッカス・ヘモリチカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・ルグダネンシス(Staphylococcus lugdanensis)、スタフィロコッカス・サッカロリチクス(Staphylococcus saccharolyticus)、スタフィロコッカス・サプロフィチクス(Staphylococcus saprophytics)、スタフィロコッカス・シュライフェリ(Staphylococcus schleiferi)、スタフィロコッカス・シミランス(Staphylococcus similans)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis:ウシ連鎖球菌)、ストレプトコッカス・カニス(Streptococcus canis)、ストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi:腺疫菌)、ストレプトコッカス・ミレリ(Streptococcus milleri)、ストレプトコッカス・ミチオール(Streptococcus mitior)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans:ミュータンス菌)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae:肺炎連鎖球菌)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes:化膿レンサ球菌)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis:サンギス菌)が挙げられる。
【0133】
本明細書中で使用される「グラム陰性細菌」という用語は、それぞれの細菌細胞を囲む二重膜の存在を特徴とする細菌を表す。代表的なグラム陰性細菌としては、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アシネトバクター・バウマンニ、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、エロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アルカリジェネス・キシロソキシダンス(Alcaligenes xylosoxidans)、バクテロイド属、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、バルトネラ・バシリホルミス(Bartonella bacilliformis)、ボルデテラ属、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ブランハメラ・カタラリス(Branhamella catarrhalis:カタル球菌)、ブルセラ属、カンピロバクター属、カルミヂア・ニューモニエ(Chalmydia pneumoniae)、クラミジア・シッタシ(Chlamydia psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)、シトロバクター属、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、大腸菌、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)、フソバクテリウム属、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)、ヘモフィリス属、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:ピロリ菌)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae:肺炎桿菌)、クレブシエラ属、レジオネラ属、レプトスピラ属、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis:カタル球菌)、プロテウス・モルガニイ(Morganella morganii)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis:髄膜炎菌)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プレボテラ属、プロテウス属、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)、緑膿菌、シュードモナス属、リケッチア・プロワゼキイ(Rickettsia prowazekii)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、ロシャメリア属、サルモネラ属、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi:チフス菌)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、シゲラ属、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei:ソンネ菌)、トレポネーマ・カラテウム(Treponema carateum)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、トレポネーマ・パリダム亜種エンデミカム(Treponema pallidum endemicum)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、ベイヨネラ属、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae:コレラ菌)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis:ペスト菌)が挙げられる。
【0134】
本明細書中で使用される「真菌」という用語は、キチン質細胞壁の存在と、大部分の種における多細胞菌糸としての糸状成長とを特徴とする従属栄養生物を表す。接着が本発明の方法に従って予防され得る代表的な真菌としては、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・パラプローシス(Candida parapsilosis)及びカンジダ・ドゥブリニエンシス(Candida dubliniensis)が挙げられる。
【0135】
本明細書中で使用される「接着の予防」という語句は、(例えば表面上での成長速度を低減することによる)表面との細胞付着の低減又は排除を表す。好ましくは、本発明の組成物は、細胞接着アッセイによって測定される場合、細胞接着を10%、より好ましくは20%、より好ましくは30%、より好ましくは40%、より好ましくは50%、より好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%及び最も好ましくは100%予防する。細胞接着アッセイの例が本明細書中の以下に、及び続く実施例の項に記載されている。本発明の組成物は、細胞凝集を予防することもできる(すなわち表面に細胞凝集しない)と理解される。
【0136】
本発明は、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属、プラスチック、ポリマー等を含む、多種多様の表面との細胞接着の予防を意図する。
【0137】
一実施形態によれば、表面は、バイオフィルム形成しやすい装置に含まれる。その表面が本発明で意図されている装置の例としては、船体、自動車表面、飛行機表面、膜、フィルター及び工業設備が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
また表面は、医療装置、医療機器及びインプラントに含まれ得る。かかる医療装置、医療機器及びインプラントの例としては、ヒト等の哺乳生物に一時的に又は永久的に埋め込むことができる任意の物体が挙げられる。本発明に従って使用され得る、代表的な医療装置、医療機器及びインプラントとしては例えば、中心静脈カテーテル、導尿カテーテル、気管内チューブ、機械心臓弁、ペースメーカー、血管グラフト、ステント及び人工関節が挙げられる。医療装置との細胞付着を予防する方法及びそれらのさらなる例は本明細書中の以下に記載されている。
【0139】
別の実施形態によれば、表面は例えば哺乳動物組織、例えば皮膚等の生物組織に含まれる。
【0140】
言及されるように、本発明の方法は、細胞と表面との接着を予防することができる、水生生物由来の組成物に細胞を接触させることによって達成される。
【0141】
本明細書中で使用される「接触」という用語は、本発明の組成物の中に含まれる活性因子が細胞と表面との接着を予防することができるような方法で、本発明の組成物を接着細胞と直接又は間接的に接触させるように配置させることを表す。したがって本発明は、本発明の組成物を所望の表面に適用すること及び/又は接着細胞に直接適用することの両方を意図する。
【0142】
接触は、in vivo(すなわち哺乳動物身体内)、ex vivo(すなわち身体から取り出された細胞内)及び/又はin vitro(すなわち哺乳動物身体外)で達成され得る。
【0143】
組成物の表面への接触は、噴霧、散布、湿潤、浸潤、浸漬、塗工、超音波溶接、溶接、接合又は接着を含む、当該技術分野で既知の方法のいずれかを使用して達成することができる。本発明の組成物を単層又は多層で付着させてもよい。
【0144】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、生きている水生生物全体に含まれ得る。例えば本発明は、生きている水生生物が、表面(例えば水中パイプ、船体)及び/又は表面に接着する細胞と接触することができるように、生きている水生生物を水中環境に加えることを意図し、これにより表面への微生物接着を予防する。活性因子は水生生物から分泌され得ると理解される。この場合、水生生物を表面又は微生物細胞と直接接触させる必要はないが、活性因子がその作用部位に広がることができるように十分接近している必要がある。このため、本発明の組成物を水中に分散させてもよく、また例えば海水又は汽水の脱塩等の水精製処理に使用してもよい。
【0145】
本明細書中で使用される「水生生物」という語句は、例えば魚又は固着水生生物等の水環境(海水又は淡水)中で生存する生物を表す。
【0146】
本明細書中で使用される「固着水生生物」という語句は、そのライフサイクルの少なくとも幾つかの段階で自由に動けない水生生物を表す。水生固着生物は通常、基板との物理的固定により、又は任意の他の理由のため、岩石又は船舶の船体等の幾つかの種類の固体基板に永久的に付着している(例えばオニダルマオコゼ)。
【0147】
固着生物の例としては、サンゴ、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキネ及びアイプタシア・プルケラ)、ウミエラ等の固着刺胞動物、水生固着幼虫(例えばクラゲ幼虫)、ハナギンチャク及びヒドロ虫(例えばクロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
本発明のこの態様に従って使用され得る魚の例は、浅水に居住する、又は海洋の最下層、場合によっては穴又は洞窟に潜むものが好ましい。かかる魚としてはウナギ及びナマズが挙げられる。
【0149】
別の実施形態によれば、本発明の組成物は水生生物から単離され得る。
【0150】
本明細書中で使用される「単離」という用語は、組成物がそのin vivo位置(例えば水生生物)から取り出されていることを表す。好ましくは、本発明の単離組成物はそのin vivo位置に存在する他の物質(例えば接着阻害効果を含まない他のタンパク質)を実質的に含まない(すなわち精製又は半精製されている)。
【0151】
したがって、本発明のこの態様の一実施形態によれば、本発明の組成物は粗抽出物又は極性抽出物であり得る。
【0152】
本明細書中で使用される「粗抽出物」という語句は、未処理の細胞抽出物、又は水生生物起源の組織を表す。粗抽出物を得る方法が、当該技術分野で既知であり、細胞又は組織の回収、細胞又は組織の解離、及び溶解物の均質化を含む。
【0153】
本明細書中で使用される「極性抽出物」という語句は、極性溶媒の使用によってさらに精製された粗抽出物を表す。アセトニトリル、水又はアンモニア等の極性溶媒が当該技術分野で既知であり、単離画分を得るのに使用することができる。極性分子から成る極性溶媒は、極性抽出物中でイオン化するイオン性化合物又は共有結合化合物を溶解することができ、これにより単離画分が得られる。本発明の極性抽出物は、例えば1%〜10%の極性溶媒、10%〜20%の極性溶媒、20%〜30%の極性溶媒、30%〜40%の極性溶媒、40%〜50%の極性溶媒、50%〜60%の極性溶媒、70%〜80%の極性溶媒、80%〜90%の極性溶媒及び90%〜100%の極性溶媒を含む、任意の割合の極性溶媒を含有し得る。
【0154】
本発明のこの態様の一実施形態によれば、極性抽出物は、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキネ)の触手組織又はアクロラジ組織から得られる。アクチニア・エキネから得られる例示的な極性抽出物は、約1%〜10%のアセトニトリル、約40%〜60%のアセトニトリル又は約70%〜90%のアセトニトリル(v/全組成物のv)を含み得る。さらに、本発明の極性抽出物はアイプタシア・プルケラ由来であり得る。アイプタシア・プルケラ由来の極性抽出物は、約8%〜12%のアセトニトリル、約16%〜20%のアセトニトリル、約22%〜26%のアセトニトリル又は約26%〜30%のアセトニトリル(v/全組成物のv)を含み得る。
【0155】
一実施形態によれば、本発明の組成物における活性因子はポリペプチドである。例えば、本発明者らは、アクチニア・エキナ画分及びアイプタシア・プルケラ画分における活性因子がポリペプチドであることを示している(アクチニア・エキナに関しては図7B、及びアイプタシア・プルケラに関してはデータを示していない)。非限定的な例は配列番号1である。このため、本発明の組成物における活性因子として役立ち得る例示的なポリペプチド作用因子は、ピーク質量が19863Da、9926Da、8261Da又は3655Daであることを特徴とするものである。タンパク質ピーク質量は、当業者に既知の任意の機器、例えばマトリクスとしてシナピン酸を使用するMALDI−TOF(Voyager−DE STR、Applied Biosystems)等のMS解析によって測定される。
【0156】
本発明の組成物は、遺伝子組み換え法を使用して(例えばトランスジェニック水生固着生物を使用して)in vivoで発現させてもよい。
【0157】
細胞接着を予防するのに使用され得る水生生物から得られる例示的なポリペプチド作用物質はイクイナトキシンである。イクイナトキシン(すなわちイクイナトキシン1、イクイナトキシン2及びイクイナトキシン3)は、イソギンチャク(例えばアクチニア・エキナ)で見られる孔形成毒素として当該技術分野で知られている。イクイナトキシンは、イソギンチャク細胞に含まれ得るか、又はそれから単離され得る。任意のイクイナトキシンを、表面との細胞接着を阻害するために、本発明の教示に従って使用してもよい。
【0158】
別の実施形態によれば、本発明の組成物における活性因子は多糖である。例えば、本発明者らは、アイプタシア・プルケラにおける活性因子が多糖であることを示している(図10、図11A〜図11C)。このため、本発明の組成物における活性因子として役立ち得る例示的な多糖作用因子はサイズ排除HPLCによって特性評価が行われるものである。多糖の特性評価は、当業者にとって既知の任意の方法、例えばPACE(炭水化物ゲル電気泳動を使用する多糖の解析)によって達成することができる。
【0159】
本発明のこの態様の一実施形態によれば、本発明の組成物は細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではなく、例えば殺菌性又は静菌性ではない。
【0160】
本発明のこの態様の別の実施形態によれば、本発明の組成物の活性因子の活性は凍結乾燥後も保存される。
【0161】
これまでに示されたように、本発明の組成物をin vivoでバイオフィルム形成を予防するのに使用することができる。したがって、本発明は、身体での感染を予防又は治療するのに使用され得る医薬品組成物を意図する。
【0162】
本明細書中で使用される「医薬品組成物」という用語は、生理学的に好適な担体及び賦形剤等の他の化学的構成要素との、本明細書中に記載される、活性成分の1つ又は複数の調製物を表す。医薬品組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0163】
本明細書中で使用される「活性成分」という用語は、意図された生物学的効果に関与する水生生物組成物(及びそれから精製される作用因子)を表す。
【0164】
以下、交換して使用することができる「生理学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能な担体」という語句は、生物に対する有意な炎症を引き起こさず、また投与化合物の生物学的活性及び性質を失わせない担体又は希釈剤を表す。アジュバントはこれらの語句に含まれる。
【0165】
本明細書中で、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬品組成物に添加される不活性物質を表す。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及び様々な種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
薬剤を配合及び投与する技法は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co., Easton, PA)(参照により本明細書中に完全に援用される)の最新版に見ることができ、本明細書中の以下でさらに記載される。
【0167】
言及されるように、本発明の医薬品組成物は、病原体感染を予防又は治療するために、それを必要とする被験体に投与することができる。
【0168】
本明細書中で使用される「それを必要とする被験体」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒト被験体を表す。
【0169】
本明細書中で使用される「治療」という用語は、病原体感染の有害効果の治癒、反転、軽減、緩和、最小化、抑制又は停止を表す。
【0170】
本明細書中で使用される「病原体感染」という語句は、病原生物によって引き起こされる任意の医学的状態を表す。病原体感染の例としては、慢性感染性疾患、亜急性感染性疾患、急性感染性疾患、ウイルス疾患、細菌疾患、原生動物疾患、寄生性疾患、真菌疾患、マイコプラズマ疾患、古細菌性疾患及びプリオン病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
一実施形態によれば、病原体感染はバイオフィルム内で又はバイオフィルム上で成長することができる生物によって引き起こされる。
【0172】
微生物バイオフィルムによって引き起こされる病原体感染の例としては、自然弁心内膜炎(NVE)、中耳炎(OM)、慢性細菌性前立腺炎、嚢胞性線維症(CF)及び歯周炎が挙げられる。バイオフィルムに特異的に起因しないさらなる病原体感染としては、尿路感染、女性生殖管感染及び肺炎が挙げられるが、これらに限定されない。医療装置の埋め込みによる感染としては、血管カテーテル感染、人工動脈感染、人工心臓弁の感染、人工関節感染、中枢神経系シャントの感染、整形外科的インプラント感染、ペースメーカー及び除細動器感染、血液透析及び腹膜透析感染、眼感染、尿路感染、女性生殖管の感染、気管内挿管及び気管切開に関連する感染、並びに歯感染が挙げられる。
【0173】
本明細書中で使用される「病原生物」という語句は、疾患を引き起こす可能性がある任意の単細胞生物、特に細菌又は真菌等の生きている微生物を表す。好ましくは、病原生物はバイオフィルム内で又はバイオフィルム上で成長することができる。多くの一般的な病原生物がバイオフィルムとして哺乳動物(例えばヒト)に存在し、疾患を引き起こす。これらとしては、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica:ヘモリチカ菌)及びパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)(肺炎の原因となる)、フソバクテリウム・ネクロフォールム(Fusobacterium necrophorum)(肝膿瘍の原因となる)、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌(創傷感染の原因となる)、大腸菌及びサルモネラ属(腸炎の原因となる)、黄色ブドウ球菌及びスタフィロコッカス・エピデルミヂス(OMの原因となる)、並びにストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、カンジダ属及びアスペルギルス属(NVEの原因となる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
本発明による感染性疾患の治療を当該技術分野で既知の他の治療法と組み合わせてもよい(すなわち併用療法)ことが理解される。これらとしては、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、アミノグリコシド、マクロリド、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール及びグリセオフルビン等の抗菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
好適な投与経路には例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸、又は非経口送達(筋肉内、皮下及び髄内注射、並びに髄腔内、直接脳腔内、静脈内、腹腔内、鼻内又は眼内注射を含む)が含まれ得る。
【0176】
代替的に、例えば患者の組織域への医薬品組成物の直接注射によって全身ではなく局所的に医薬品組成物を投与してもよい。
【0177】
本発明の医薬品組成物は、当該技術分野で既知のプロセス、例えば従来の混合、溶解、粒状化、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造され得る。
【0178】
このため、本発明に従って使用される医薬品組成物を、賦形剤及び助剤を含む、1つ又は複数の生理学的に許容可能な担体を使用して従来通り配合してもよく、これにより活性成分を薬学的に使用することができる製剤に加工するのが容易になる。適切な剤形は、選択される投与経路によって変わる。
【0179】
注射のために、医薬品組成物の活性成分を、水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液又は生理食塩緩衝液等の生理学的に相溶性の緩衝液中で配合してもよい。経粘膜投与のために、障壁を浸透させるのに適した浸透剤を製剤に使用する。かかる浸透剤は当該技術分野で一般的に知られている。
【0180】
局所投与のために、本発明の組成物を、ゲル、クリーム、洗浄液、リンス又は噴霧剤として配合してもよい。
【0181】
経口投与のために、活性化合物を当該技術分野で既知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることによって、医薬品組成物を容易に配合することができる。かかる担体は、患者による経口摂取のために、医薬品組成物を、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として配合することを可能にする。固形賦形剤を使用して、任意で得られる混合物を粉砕し、所望に応じて好適な助剤を添加した後、顆粒混合物を処理して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることで、経口使用のための医薬製剤を作製することができる。好適な賦形剤は、特にラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖等の充填剤;例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース及びカルボメチルセルロースナトリウム等のセルロース製剤;及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)等の生理学的に許容可能なポリマーである。所望に応じて、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩を添加してもよい。
【0182】
糖衣錠コアに好適なコーティングを与える。この目的のために、任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液及び好適な有機溶媒、又は溶媒混合物を含有し得る濃縮糖溶液を使用してもよい。染料又は顔料を、識別するため又は異なる組合せの活性のある化合物の用量を特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0183】
経口で使用することができる医薬品組成物としては、ゼラチンでできている押し込み型カプセル、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールでできている軟封入カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウム等の滑剤、及び任意で安定剤と混合して、活性成分を含有し得る。軟カプセルでは、活性成分が好適な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁し得る。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のための剤形は全て、選択された投与経路に適した投与量である必要がある。
【0184】
口腔投与のため、組成物は、従来通り配合された錠剤又はロゼンジの形態をとってもよい。
【0185】
鼻吸入による投与のため、本発明による使用のための活性成分は、好適な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素の使用によって加圧パック又はネブライザからエアロゾル噴霧放出形態で従来通り送達される。加圧エアロゾルの場合、一定量を送達するために弁を提供することによって投与量を決定し得る。例えばディスペンサにおける使用のためのゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物の混合粉末及び好適な粉末基剤、例えばラクトース又はデンプンを含有して配合し得る。
【0186】
本明細書中に記載の医薬品組成物は、例えばボーラス注射又は持続注入による非経口投与のために配合してもよい。注射のための剤形は、単位投与形態、例えば任意で保存料を添加したアンプル又は複用量の容器内に与えられ得る。組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションであってもよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤等の処方剤を含有してもよい。
【0187】
非経口投与のための医薬品組成物は、水溶性形態での活性製剤の水溶液を含む。さらに、活性成分の懸濁液は、適切な油性又は水性の注射懸濁液として調製され得る。好適な脂溶性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド若しくはリポソーム等の合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストラン等の懸濁液の粘度を増大させる物質を含有し得る。また任意で、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、好適な安定剤又は活性成分の可溶性を増大させる作用因子を含有し得る。
【0188】
代替的に、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば滅菌性の発熱物質無含有の水溶液との構成のために粉末形態であり得る。
【0189】
また本発明の医薬品組成物は、例えばココアバター又は他のグリセリド等の従来の座剤基剤を使用して、座剤又は停留浣腸剤等の直腸組成物に配合され得る。
【0190】
本発明に関連して使用するのに適した医薬品組成物としては、活性成分を本来の目的を達成するのに効果的な量含有している組成物が挙げられる。より具体的には、「治療的に効果的な量」は病原体感染の症状(例えば発熱)を予防、軽減又は改善するのに、又は治療する被験体の生存期間を延長するのに効果的な活性成分(例えば水生成分組成物)の量を意味する。
【0191】
特に本明細書中に与えられる詳細な開示を考慮すると、治療的に効果的な量の決定は、十分に当業者の能力内である。
【0192】
本発明の方法に使用される任意の製剤のために、初めに投与量又は治療的に効果的な量をin vitroアッセイ及び細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、所望の濃度又は力価を達成するために、用量を動物モデルで配合することができる。かかる情報をヒトに有用な用量をより正確に決定するのに使用することができる。
【0193】
本明細書中に記載の活性成分の毒性及び治療的有効性を、in vitroで標準的な薬学的処置により、細胞培養液又は実験動物で決定することができる。これらのin vitroアッセイ及び細胞培養液アッセイ、並びに動物試験から得られたデータを、ヒトで使用するために様々な投与量を配合する際に使用することができる。投与量は、用いられる投薬形態及び用いられる投与経路に応じて変わり得る。正確な剤形、投与経路及び投与量を、患者の状態を鑑みて医師個人が選択することができる(例えばFingl, E. et al. (1975), "The Pharmacological Basis of Therapeutics," Ch. 1, p.l .を参照されたい)。
【0194】
生物学的効果を誘導又は抑制するのに十分な血漿又は脳レベルの活性成分(すなわち最小有効濃度、MEC)が提供されるように、投与量及び投与間隔を個々で調整してもよい。MECは各製剤で変わるが、in vitroデータから推測することができる。MECを達成するのに必要な投与量は個々の特性及び投与経路に応じて変わる。検出アッセイを、血漿濃度を求めるのに使用することができる。
【0195】
治療される状態の重症度及び反応性に応じて、投薬は単回又は複数回の投与で行い、治療過程は、数日から数週間、すなわち治癒が達成されるまで、又は疾患状態が縮小されるまで継続する。
【0196】
当然のことながら、組成物の投与量は治療される被験体、病気の重症度、投与様式、処方医師の判断等によって変わる。
【0197】
所望であれば、本発明の組成物は、活性成分を含有する、1つ又は複数の単位投薬形態を含有し得るパック又はディスペンサ装置、例えばFDA認可キット内で与えられてもよい。パックは例えば、金属又はプラスチックホイル、例えばブリスターパックを含み得る。パック又はディスペンサ装置は投与のための機器を伴い得る。またパック又はディスペンサ装置は、調合薬の製造、使用又は販売を規制する行政機関によって規定された形での表示を伴う場合があり、この表示は、ヒト又は動物投与のための組成物形態の機関による認可を反映する。かかる表示には例えば、処方薬に関して米国食品薬品局で認可された、又は認可された商品の説明のラベルが含まれ得る。また薬学的に許容可能な担体中で配合される本発明の製剤を含む組成物を調製し、適切な容器に入れ、さらに上記で詳述されたように、指定の状態の治療のためにラベルを付ける場合がある。
【0198】
言及されるように、医療装置及びインプラントは一般的に、埋め込み装置の取り外しが必要になる場合もある、日和見感染細菌及び他の感染性微生物(例えば真菌)に感染する。かかる感染が、病気、長い入院生活又はさらには致死をもたらす可能性もある。それゆえに、バイオフィルム形成、及び医療装置の感染の予防が強く望まれている。
【0199】
このため本発明は、上記の組成物を付着させた医療装置も意図する。
【0200】
本明細書中で使用される「医療装置」という用語は、任意のインプラント、機器、器具、道具、機械、装置、又は任意の他の類似若しくは関連の物体(任意の構成要素又はアクセサリを含む)を表し、これは疾患又は他の状態の診断、治療、治癒又は予防における使用を目的とする。かかる医療装置は、ヒト又は他の動物での使用を目的とし、身体の構造又は任意の機能に影響を与えることが期待される。かかる医療装置は、化学的作用を通じては、その主となる本来の目的を達成せず、またその主となる本来の目的の達成のために代謝が必要という訳ではない。
【0201】
本明細書中に使用される「インプラント」という用語は、生きている組織ではない、ヒトの身体での配置を目的とする任意の物体を表す。インプラントは一時的又は永久的なものであり得る。インプラントは、人工構成要素を含む物品、例えばカテーテル又はペースメーカーであり得る。インプラントは、それらの生きている組織が失活されるように処理されている天然由来の物体も含み得る。例えば、生きている細胞を取り除く(脱細胞化する)が、宿主由来の骨の内部成長のために鋳型として役立つようにそれらの形状を保持するように処理されている骨移植片が挙げられる。別の例としては、天然のサンゴを処理して、或る特定の整形外科療法及び歯科療法のために身体に適用することができるヒドロキシアパタイト製剤を得ることができる。
【0202】
したがって本発明は、移植の後に起こることが知られる、起こり得る任意の細胞凝集及びバイオフィルム形成を低減/排除するように、医療装置との細胞接着を予防するために、医療装置を本発明の組成物でコーティングすることを想定している。装置関連の感染は通常、装置の挿入若しくは埋め込み処置の間の微生物、主に細菌の導入、又は血液伝播性の生物と新たに挿入される装置との付着、及びその後の表面上での生物の増殖により起こる。それにより本発明の組成物による医療装置のコーティングが、1つ又は複数の微生物種のバイオフィルム形成を阻害し、医療装置関連の感染を予防し、結果として抗生物質による治療又は被験体から医療装置を取り外す必要性が減る。
【0203】
本発明の教示に従ってコーティングされ得る医療装置としては、人工血管、カテーテル及び流体の除去又は患者への流体の送達のための他の装置、人工心臓、人工腎臓、整形外科用のピン、人工関節、プレート及びインプラント;カテーテル及び他のチューブ(泌尿器チューブ及び胆管チューブ、気管内チューブ、末梢部に挿入可能な中枢神経カテーテル、透析カテーテル、長期間トンネル型中枢神経カテーテル、末梢静脈内カテーテル、短期間中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、肺動脈カテーテル、スワン−ガンツカテーテル、導尿カテーテル、腹膜カテーテルを含む)、尿道装置(長期間尿道装置、組織結合尿道装置、人工尿道括約筋、尿道拡張器を含む)、シャント(心室シャント又は動静脈シャントを含む);プロテーゼ(胸部インプラント、陰茎プロテーゼ、血管移植プロテーゼ、動脈瘤修復装置、機械心臓弁、人工関節、人工喉頭、耳鼻科インプラントを含む)、吻合装置、血管カテーテルポート、血管ステント、クランプ、塞栓装置、創傷ドレインチューブ、接眼レンズ、歯科インプラント、水頭症シャント、ペースメーカー及び埋め込み型除細動器、無針コネクタ、声帯プロテーゼ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0204】
本発明の水生生物組成物の別の可能性のある用途は、医学的及び歯科的環境で見られる表面のコーティングである。かかる表面には、使い捨てか、又は反復使用目的であるかにかかわらず、様々な機器及び装置の内面及び外面が含まれる。かかる表面は、医学的使用に適合した物品の全範囲を含み、この物品としては外科用メス、針、ハサミ、及び侵襲性の外科的、治療的又は診断的処置に使用される他の装置;血液フィルタが挙げられるが、これらに限定されない。他の例がこれらの当該技術分野における実践者には容易に明らかである。
【0205】
医学的環境に見られる表面には、医療の場で職員が着用する又は職員によって運ばれる医療ギアである医療設備の部品の内面及び外面も含まれる。かかる表面には、医療の場において感染性生物に対する生物学的障壁として意図される表面、例えばグローブ、エプロン及びマスクが含まれ得る。生物学的障壁に一般的に使用される材料は、ポリエチレン、ダクロン、ナイロン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ラテックス、シリコーン及びビニル等の熱可塑性材料又は高分子材料である。他の表面には、医療的処置、又は呼吸器治療(酸素、ネブライザにおける可溶化薬剤及び麻酔薬の投与を含む)に使用される医療機器、医療チューブ及び医療キャニスタを準備するのに使用される領域におけるカウンタトップ及び固定具が含まれ得る。他のかかる表面には、無菌であることを意図しない医療設備又は歯科用設備用のハンドル及びケーブルが含まれ得る。さらにかかる表面には、血液若しくは体液又は他の有害な生体材料が共通して接する領域で見出されるチューブ及び他の機器の非無菌の外面が含まれ得る。
【0206】
本発明の水生生物組成物は、微生物コロニー形成に対する長期間保護を与えるのに、及び装置関連の感染の発生率を低減するのに、これらの医療装置の表面上又はこれらの医療装置内で使用することができる。これらの組成物を、抗菌剤(例えば抗生物質剤)と組合せて医療装置のためのコーティングに組み込むこともできる。かかる組合せは、この物質が装置−微生物界面に阻止濃度で与えられていれば、初期のコロニー形成細菌を破壊又は阻害させ、且つ装置関連の感染を予防するのに十分である。
【0207】
本発明の水生組成物を、ポリマー合成段階又は装置製造段階で、医療装置のポリマーマトリクスに直接組み込むことができる。水生組成物を医療装置ポリマーに共有結合させることもできる。医療装置をコーティングするこれらの及び多くの他の方法は当業者には明らかである。
【0208】
本発明の教示に従って処理することができるさらなる表面には、水精製、水貯蔵及び水送達に関与する物品、並びに食品加工に関与する物品の内面及び外面が含まれる。このため本発明は、その内容物の保存期間を延長するために、食品又は飲料容器の固体表面をコーティングすることを想定している。
【0209】
また健康に関連する表面としては、栄養摂取、公衆衛生又は疾患予防の提供に関与する家庭用品の内面及び外面が挙げられ得る。このため、本発明の水生組成物は、外面からの微生物の除去に使用することができる。これらとして例えば、家庭用食品加工設備、育児用材料、タンポン、石鹸、洗剤、健康製品及びスキンケア製品、家庭用クリーナー並びに便器が挙げられる。
【0210】
表面は、研究用品であってもよく、顕微鏡スライドガラス、培養フード、ペトリ皿、又は当該技術分野で既知の任意の他の好適な種類の組織培養器又は容器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0211】
本願の発明者等は、防汚剤としての本発明の水生生物組成物の使用も想定している。
【0212】
本明細書中で使用される「防汚剤」という用語は、単細胞生物の付着から水中の表面を保護するのに使用される化合物を表す。これらの単細胞生物としては、細菌及び真菌等の微生物が挙げられる。
【0213】
これらの水中の表面は任意の浸水表面を含み、これには船/ボートの船体(すなわち船又はボートのボディ又はフレーム)、潜水艇、航行援助施設、スクリーン、網、構造物、浮遊する又は据え付けられた海上プラットフォーム(例えばドック)、ブイ、信号設備、及び海水又は塩水に接する物品が含まれる。他の水中の表面は海水に曝された構造体を含み、これには杭、海洋マーカー、ケーブル及びパイプのような海中伝導装置、漁網、バルクヘッド、冷却塔並びに水中で動作する任意の装置又は構造体が含まれる。
【0214】
本発明の水生生物組成物を、不要な海洋汚染を制限するのに海洋コーティングに組み込むことができる。このため、本発明の防汚剤を、毒性材料(例えば重金属)を含有せず、且つそれらの有効性を保持するように配合することができる。本発明の防汚塗布剤はさらに、結合剤(複数可)、顔料(複数可)、溶媒(複数可)及び添加剤(複数可)を含有していてもよい。
【0215】
使用され得る溶媒の例としては、キシレン及びトルエン等の芳香族炭化水素;ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル;N−メチルピロリドン及びN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;イソプロピルアルコール及びブチルアルコール等のアルコール;ジオキサン、THF及びジエチルエーテル等のエーテル;並びにメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びメチルイソアミルケトン等のケトンが挙げられる。溶媒を単独又はそれらを組み合わせて使用してもよい。
【0216】
使用され得る結合剤の例としては、アルキド樹脂、アクリル又はビニルエマルション、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル樹脂、無機ケイ酸系樹脂、ビニル樹脂、特に塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー及びロジンが挙げられる。
【0217】
使用され得る顔料の例としては、二酸化チタン、酸化第一銅、酸化鉄、タルク、アルミニウムフレーク、マイカフレーク、酸化第二鉄、チオシアン酸第一銅、酸化亜鉛、酢酸メタヒ酸第二銅、クロム酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛及びジエチルジチオカルバミン酸亜鉛が挙げられる。
【0218】
コーティング組成物に組み込まれ得る添加剤の例としては、除湿剤、湿潤/分散剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、乾燥/硬化剤、損傷防止剤、並びに安定剤及び消泡剤としてコーティング組成物に通常用いられる添加剤が挙げられる。さらに、海水に比較的不溶性である任意の抗生物質を防汚海洋塗布剤と共に使用することができる。
【0219】
海洋防汚塗布剤を調製する方法は、米国特許第4,678,512号明細書、米国特許第4,286,988号明細書、米国特許第4,675,051号明細書、米国特許第4,865,909号明細書、及び米国特許第5,143,545号明細書で詳細に説明される。
【0220】
本発明は、バイオフィルム形成阻害活性を含む作用因子を同定することを含む多種多様な用途を有すると理解される。
【0221】
このため、本発明の別の態様によれば、バイオフィルム形成阻害組成物を同定する方法であって、水生生物由来の複数の組成物をバイオフィルム形成細菌と接触させること、複数の組成物の存在下でバイオフィルム形成細菌のバイオフィルム活性を化学分析すること、及び複数の組成物から規定の閾値を超えるバイオフィルム形成阻害活性を有する組成物を少なくとも1つ同定することにより、バイオフィルム形成阻害組成物を同定することを含む、方法が提供される。
【0222】
本明細書中で使用される「バイオフィルム形成細菌」という語句は、バイオフィルムを形成することができる、及び/又はバイオフィルム内で生存することができる任意の細菌を表す。かかる細菌としては、本明細書中の上記にさらに記載されたグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌が挙げられる。
【0223】
本発明者らによって示されるように(実施例3)、バイオフィルム形成細菌のバイオフィルム活性の化学分析は、細菌接着バイオアッセイによって達成され得る。当該技術分野で既知の任意の細菌接着バイオアッセイを使用することができる。かかる方法の例としては、ハイスループットポリスチレンマイクロプレートアッセイ、定量的細菌接着アッセイ、又はスライドガラス上のバイオフィルム形成に関する蛍光顕微鏡アッセイが挙げられる。
【0224】
本明細書中で使用される「規定の閾値」という語句は、表面に接着する細菌の数の閾値を表す。好ましくは、バイオフィルム形成阻害組成物は、バイオフィルム形成を10%、より好ましくは20%、より好ましくは30%、より好ましくは40%、より好ましくは50%、より好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%及び最も好ましくは100%低減することができる。
【0225】
本明細書中で使用される「約」という用語は±10%を表す。
【0226】
本発明のさらなる目的、利点及び新規の特徴は、限定を意図しない以下の実施例の説明で当業者に明らかになる。さらに、上記に記載され、且つ添付の特許請求の範囲の項で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様のそれぞれは、以下の実施例における実験的裏づけを見出している。
【実施例】
【0227】
これより、以下の実施例を参照して、上述の記載と共に、非限定的に本発明を説明する。
【0228】
一般的に、本明細書中で使用される命名法及び本発明で用いられる検査法としては、分子学的技法、生化学的技法、微生物学的技法及び組み換えDNA技法が挙げられる。かかる技法は以下の文献で完全に説明される。例えば、"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989)、"Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994)、Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988)、Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York、Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)、米国特許第4,666,828号明細書、同第4,683,202号明細書、同第4,801,531号明細書、同第5,192,659号明細書、及び同第5,272,057号明細書に記載される方法、"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994)、"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)、Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)、Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照されたい。利用可能なイムノアッセイが特許文献及び科学文献で広範に記載されており、例えば米国特許第3,791,932号明細書、同第3,839,153号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,850,578号明細書、同第3,853,987号明細書、同第3,867,517号明細書、同第3,879,262号明細書、同第3,901,654号明細書、同第3,935,074号明細書、同第3,984,533号明細書、同第3,996,345号明細書、同第4,034,074号明細書、同第4,098,876号明細書、同第4,879,219号明細書、同第5,011,771号明細書、及び同第5,281,521号明細書、"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984)、"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)、"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1984)、"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986)、"Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986)、"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984)及び"Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press、"PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990)、Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996)(それらは全て、本明細書中で完全に説明されるように参照により援用される)を参照されたい。他の一般的な参考文献が本明細書を通して与えられる。それらの文献中の処置は、当該技術分野で既知であると考えられ、読者の都合に合わせて読まれるものである。それらの文献に含まれる全ての情報は参照により本明細書中に援用される。
【0229】
実施例1
魚及び刺胞動物の粗抽出物が接着を阻害するように作用する
材料及び実験手順
刺胞動物及び他の実験生物
刺胞動物と、イソギンチャク(アクチニア・エキナ及びアイプタシア・プルケラ)、並びにヒドロ虫(クロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリス)を含む他の実験生物とを研究所で成長させ維持し、又はそれらの自然生息地から直接回収した。
【0230】
試料回収
試料を魚(ウナギ、ナマズ)の表面粘膜、及び固着刺胞動物(2種類のヒドラ及びイソギンチャク由来)のホモジネートから回収した。簡潔には、湿重量300mgのイソギンチャク(anemone)組織を解剖し、蒸留水(DDW)で洗い流し、容量300μlのDDW中でホモジネートし(全容量約500μl)、遠心分離を行い(3分、14000×g)、前置フィルターにかけた(0.2μl)。
【0231】
細菌成長
全ての細菌株を、個々の実験において三連で成長させた。アシネトバクター・バウマンニ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌をカゼインTrypto Soya Broth(TSB)+0.25% D−グルコース中で成長させ、GFPを発現する大腸菌株U85を50μg/mlのカナマイシンを有するLuria−Bertani(LB)中で成長させた。
【0232】
細菌接着バイオアッセイ
バイオフィルムを96ウェルの丸底ポリスチレンプレートで成長させた。上記のように回収した試料をPBSで希釈し、有毒な臨床細菌株アシネトバクター・バウマンニと共にインキュベートした。
【0233】
簡潔には、一晩成長させたアシネトバクター・バウマンニ培養液180μlに適切な試料(PBSで希釈)20μlを補充した。37℃での24時間のインキュベーション後、ウェルを水で洗浄し、クリスタルバイオレット溶液250μlで染色した。染料を水で洗浄することで完全に取り除いた。付着細胞の定量のために、クリスタルバイオレットを1% SDS 250μlに可溶化させ、吸光度を595nmで測定した。
【0234】
結果
魚(ウナギ、ナマズ)及び固着刺胞動物(2種類のヒドラ及びイソギンチャク)から回収された表面粘膜の試料である身体ホモジネートから得られる粗抽出物により、細菌アシネトバクター・バウマンニの有毒な臨床分離株の接着を予防する基本的能力が明らかになった。図2から明らかなように、最も高い有効性は、イソギンチャク(アクチニア・エキナ)(図1A及び図1Bに図示)触手の抽出物によって示された。
【0235】
実施例2
アクチニア・エキナ抽出物は接着阻害剤として機能するが、殺菌剤としては機能しない
材料及び実験手順
アクチニア・エキナ
イソギンチャク(アクチニア・エキナ)を研究所で成長させ維持した。
【0236】
試料回収
固着刺胞動物(アクチニア・エキナ)のホモジネートを回収した。簡潔には、湿重量300mgのイソギンチャク組織を解剖し、蒸留水で洗い流し、容量300μlのDDW中でホモジネートし(全容量約500μl)、遠心分離を行い(3分、14000×g)、前置フィルターにかけた(0.2μl)。
【0237】
カラムクロマトグラフィ及びタンパク質化学
試料(100μl)を、DDW+0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)における直線勾配のアセトニトリルで溶出し(3%→80%、5分〜75分)、分析用C8(Thermo-Hypersil, Keystone)又はC−18(Vydac)カラム上で分離した。溶出パターンを215nmでモニタリングした。
【0238】
細菌成長
実施例1に記載された方法で行った。
【0239】
細菌接着バイオアッセイ
実施例1に記載された方法で行った。
【0240】
細菌破壊/成長阻害
アクチニア・エキネ(A. equine)触手の粗抽出物と、単離画分(以下の図4を参照されたい)とを細菌アシネトバクター・バウマンニ(A. baumanni)の液体培養液に添加した。細菌の一晩成長を、600nmでの培養液の光学密度の測定によって記録した。
【0241】
タンパク質ゲル電気泳動
活性画分100μlを氷冷アセトンによって沈殿させ、SDS及びβ−メルカプトエタノールを含有する泳動緩衝液中で再懸濁して、3分間煮沸し、15%変性SDS−PAGEゲル上で分離した。電気泳動後、ゲルを銀染色した。
【0242】
試料の熱変性
試料を30分間100℃までPCR熱サイクルにかけることによって、熱変性を実施した。
【0243】
結果
アシネトバクター・バウマンニに対する細菌の接着阻害効果が、アクチニアのアクロラジ組織(図3A)及びアクチニアの触手組織(図3B)のクロマトグラフ分離から得られた画分によって明らかになった。注目すべきことに、有機溶媒の存在下でHPLC系における分析用の逆相(RP)カラム上で分離を行ったが、これには凍結乾燥が要求される(除去のため)。これにより、得られた活性画分が有機溶媒及び凍結乾燥物に対して安定し、且つ耐性のあることが示された。さらに、図3Dは、活性構成要素の分子量及びそれらの均質度を大まかに示す(電気泳動図で示される)。
【0244】
注目すべきことに、接着バイオアッセイにより、人工表面との細菌接着がモニタリングされる。この接着バイオアッセイは細菌破壊又はさらには細菌成長阻害を示していない。さらに、回避(破壊又は成長阻害の欠如)が、抽出物との24時間のインキュベーション後の処理対対照試料の測定のOD600nmの相補的測定(粒子密度の測定)によって確認された。結果(本明細書中の以下の表1で示される)は、接着阻害物質であるアクチニア・エキナ触手の粗抽出物及び単離画分(図2及び図3A〜図3D)が、PBSの存在下で成長する細菌(陽性対照)と比較して、アシネトバクター・バウマンニに対する殺菌効果又は成長阻害効果を全く明らかにしなかったことを示している。
【0245】
【表1】
【0246】
触手画分17と、広範な微生物に対してバイオフィルム形成阻害及び接着阻害活性を示す孔形成ペプチドであるイクイナトキシン(図4)と、粗抽出物及びアクロラジ画分である画分13、画分14(データ図示せず)とが、熱変性後、及びプロテイナーゼKによる治療によって(データ図示せず)それらの細菌の接着阻害活性を失うことが示された。まとめると、この情報により、活性因子がポリペプチドであることが示唆される。
【0247】
触手画分の接着阻害効果が、4つの異なる群の細菌、すなわちアシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌、大腸菌(全て、異なるファミリーの細菌に属するグラム陰性細菌)及び黄色ブドウ球菌(グラム陽性細菌)でさらに実証された。大腸菌は動物の腸管で生存する腸内細菌科に属するが、緑膿菌(P. aeruginosa)及びアシネトバクター・バウマンニは、シュードモナス目に属する一方、科が異なる、土壌及び水中における自由生活生物である。図5から明らかなように、触手画分13は、4つの群全ての細菌に対して接着阻害効果を示した。
【0248】
実施例3
アクチニア・エキネ粗抽出物は初期段階のバイオフィルム形成に作用する
材料及び実験手順
アクチニア・エキナ
イソギンチャク(アクチニア・エキナ)を研究所で成長させ維持した。
【0249】
試料回収
固着刺胞動物(アクチニア・エキナ)のホモジネートを回収した。簡潔には、湿重量300mgのイソギンチャク組織を解剖し、蒸留水で洗い流し、容量300μlのDDW中でホモジネートし(全容量約500μl)、遠心分離を行い(3分、14000×g)、前置フィルターにかけた(0.2μl)。
【0250】
細菌成長
実施例1に記載された方法で行った。
【0251】
ハイスループットポリスチレンマイクロプレートアッセイ
様々な細菌(例えば黄色ブドウ球菌ATCC25923)を96ウェル丸底ポリスチレンプレートで成長させた。37℃での24時間のインキュベーション後、各ウェルを水で洗浄し、クリスタルバイオレット溶液250μlで染色した。染料を水で洗浄することで完全に取り除いた。付着細胞の定量化のために、ウェルに残ったクリスタルバイオレットを1% SDS 250μlに可溶化させ、光学密度を595nmで読み取った。アクチニア・エキナ触手の粗材料を、時間0で10倍、100倍、及び1000倍の3つの希釈率でプレートに三重で添加した。陽性対照として細菌をPBS単独と共にインキュベートした。
【0252】
定量的な細菌接着アッセイ
黄色ブドウ球菌ATCC25923を、5ml容のポリスチレン試験管中の培地2mlで成長させた。37℃での24時間のインキュベーション後、各試験管を水で洗浄し、クリスタルバイオレット溶液250μlで染色した。染料を水で洗浄することで完全に取り除いた。付着細胞の定量化のために、ウェルに残ったクリスタルバイオレットを1% SDS 250μlに可溶化させ、光学密度を595nmで読み取った。アクチニア・エキナ触手の粗材料を、時間0で10倍、100倍、1000倍の3つの希釈率でプレートに三重で添加した。陽性対照として細菌をPBS単独と共にインキュベートした。
【0253】
スライドガラス上のバイオフィルム形成に関する蛍光顕微鏡アッセイ
緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現のためのプラスミドを含有する大腸菌DH5−α株U85を、LB培地2mlでスライドガラスと共にインキュベートし、接着細菌を倒立落射蛍光顕微鏡IX2−81(Olympus, USA)を用いて視覚化した。時間0で粗物質及び画分を添加し、バイオフィルム形成を1時間、7時間及び22時間後に確認した。
【0254】
結果
バイオフィルム形成に対するアクチニア・エキナ触手の粗材料の添加による付着細菌の減少が明らかである(図6A及び図6B)。その上、図6Cで示されるように、細菌接着は、PBSとのインキュベーションの1時間後には既にはっきりと見て取れ、22時間後には細菌の密集マット(dense mat)が観察された。これに対して、細菌と、アクチニア・エキナ触手抽出物、この抽出物由来の2つのクロマトグラフ画分(14、17)、又は組み換えイクイナトキシンとのインキュベーションにより、細菌接着の減衰が起こった。このため、これらの結果により、バイオフィルム形成の予防が付着の初期段階で起こることが示されている。
【0255】
実施例4
アクチニア・エキネ活性材料を単離することができる
材料及び実験手順
アクチニア・エキナ
イソギンチャク(アクチニア・エキナ)を研究所で成長させ維持した。
【0256】
試料回収
固着刺胞動物(アクチニア・エキナ)のホモジネートを回収した。簡潔には、湿重量300mgのイソギンチャク組織を解剖し、蒸留水で洗い流し、容量300μlのDDW中でホモジネートし(全容量約500μl)、遠心分離を行い(3分、14000×g)、前置フィルターにかけた(0.2μl)。
【0257】
カラムクロマトグラフィ及びタンパク質化学
実施例2に記載されるように行った。
【0258】
活性ピークの選択及びMS解析
RP−HPLC(T−18)でこれまでに得られた活性材料を、同じカラム上で再びクロマトグラフィにかけ、ピークを回収し、凍結乾燥して、標準容量のPBS中に溶解した。容量20μlを細菌の接着阻害活性に関して化学分析した。
【0259】
さらに、凍結乾燥試料(活性ピーク75)を、50%メタノール−0.5%ギ酸中に溶解し、マトリクスとしてシナピン酸を使用するMALDI−TOF(Voyager−DE STR、Applied Biosystems)で測定した。正の直線で測定を行った。
【0260】
細菌成長
実施例1に記載された方法で行った。
【0261】
細菌接着バイオアッセイ
実施例1に記載された方法で行った。
【0262】
結果
再びクロマトグラフィにかけた活性画分T−18(図7A)から活性画分75、79及び106I(図7A)を得た。画分75のMS解析(赤色の矢印で印付けられた)は、19863Da、9926Da、8261Da及び3655Daの質量の幾つかのピークを示しており、これはタンパク質であると推測される(図7B)。これらのデータにより、関連物質を単離し、化学的に特徴付ける能力が明らかになる。
【0263】
実施例5
アイプタシア・プルケラ抽出物は接着阻害活性を含む
材料及び実験手順
アイプタシア・プルケラ由来の粗材料の分離
アイプタシア・プルケラ由来の活性画分の分離を、G−10及びG−75ゲル濾過カラム(GE Healthcare, Sweden)を使用して確立した。ゲル濾過分離による回収材料のC−18カラムを用いたRP−HPLCが、高分解能の分離を与えた。活性画分をMSで解析した。
【0264】
高分子画分を、Sephadex G−75上で再びクロマトグラフィにかけ2つの画分を得た。両方とも接着阻害活性/バイオフィルム形成阻害活性を示していた。得られた画分のそれぞれを、c−18カラムを用いたRP−HPLCを使用して分離した。この分離により幾つかの画分が得られた。
【0265】
結果
Sephadex G−10カラム上で分離したアイプタシア・プルケラ(生物全体)の粗抽出物により2つの画分を得た。両方とも接着阻害活性/バイオフィルム形成阻害活性を示していた(図8)。
【0266】
Sephadex G−75上でのSephadex G−10由来の高分子画分の再クロマトグラフィにより、高分子画分及び低分子画分を示す2つの主なピークが得られた(図9)。
【0267】
G−75カラム由来の低分子画分のc−18カラムを用いたRP−HPLC分離により、活性画分(画分2及び画分3、図10)を含む幾つかの画分が得られ、これらはHPLC解析の後、多糖として同定された(図11A〜図11C)。画分2及び画分3のHPLC解析は、各画分に対して異なる組合せの単糖を開示していた(図11A及び図11B)。しかしながら、画分2及び画分3の両方における主なピーク(ピーク番号1)は、画分2の全グリカンの45.5%を構成し、画分3の全グリカンのおよそ91%を構成するジグルコースを表す(表2)。
【0268】
【表2】
【0269】
G−75由来の高分子画分のC−18カラムを用いたRP−HPLC分離により、高い接着阻害活性を有する、少なくとも3つの画分(13、18及び20、図12)を得た。MS解析及びゲル電気泳動により、活性画分がペプチドであることが示された(データ図示せず)。
【0270】
配列表
配列番号1:
MSRLIIVFIVVTMICSATALPSKKIIDEDEEDEKRSADVAGAVIDGASLSFDILKTVLEALGNVKRKIAVGVDNESGKTWTALNTYFRSGTSDIVLPHKVPHGKALLYNGQKDRGPVATGAVGVLAYLMSDGNTLAVLFSVPYDYNWYSNWWNVRIYKGKRRADQRMYEELYYNLSPFRGDNGWHTRNLGYGLKSRGFMNSSGHAILEIHVSKA
【0271】
明瞭性のために別々の実施形態に関して記載された、本発明の或る特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて与えてもよいことが理解される。逆に、簡潔性のために単一の実施形態に関して記載された、本発明の様々な特徴は、別々に又は任意の好適なサブコンビネーションにおいて与えてもよい。
【0272】
本発明をその特定の実施形態と結び付けて記載しているが、多くの代替、修正及び変更が当業者にとって明らかであることは明白である。したがって本発明は、かかる代替、修正及び変更の全てを包含するように意図され、これらは添付の特許請求の範囲の精神及び広範な範囲内にある。本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願、並びにGenBankアクセッション番号は、それぞれ個々の刊行物、特許若しくは特許出願、又はGenBankアクセッション番号が参照により本明細書中に援用されるように具体的に且つ個々に示されるのと同じ程度まで、その全体が参照により本明細書中に援用される。さらに、本願における任意の参考文献の引用又は特定は、かかる参考文献が本発明の従来技術として利用可能であることを承認するものとは解釈されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物由来の活性因子を含む組成物であって、生物と表面との接着を予防又は低減し、細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない、組成物。
【請求項2】
前記活性因子が実質的に水生生物全体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性因子が水生生物のホモジネートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性因子が前記水生生物から得られる単離抽出物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記単離抽出物が粗抽出物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記単離抽出物が極性抽出物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記極性抽出物の極性溶媒がアセトニトリルを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのポリペプチドを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、19863Da、9926Da、8261Da及び3655Daから成る群から選択されるピーク質量を特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが配列番号1を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの多糖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記活性因子の活性が凍結乾燥の後で保存される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記水生生物が固着生物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記水生生物が魚を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記魚がウナギ及びナマズから成る群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記固着生物が固着刺胞動物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記固着刺胞動物がサンゴ、イソギンチャク、ウミエラ、水生幼虫、ハナギンチャク及びヒドロ虫から成る群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記固着刺胞動物がイソギンチャクを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記イソギンチャクがアイプタシア・プルケラを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記固着刺胞動物がヒドロ虫を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
前記ヒドロ虫がクロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリスから成る群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記極性抽出物が、イソギンチャクの触手組織又はアクロラジ組織から得られる、請求項6に記載の組成物。
【請求項24】
前記イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記アクチニア・エキネ由来の前記極性抽出物が、全組成物の約1%(v/v)〜約10%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記アクチニア・エキネから得られる前記極性抽出物が、全組成物の約40%(v/v)〜約60%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記アクチニア・エキネ由来の前記極性抽出物が、全組成物の約70%(v/v)〜約90%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記極性抽出物がアイプタシア・プルケラ由来である、請求項6に記載の組成物。
【請求項29】
前記アイプタシア・プルケラ由来の前記極性抽出物が、約8%〜12%のアセトニトリル、約16%〜20%のアセトニトリル、約22%〜26%のアセトニトリル、及び約26%〜30%のアセトニトリル(v/全組成物のv)から成る群から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記生物が単細胞生物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
さらに前記単細胞生物の凝集を阻害することができる、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記単細胞生物がバイオフィルムに含まれる、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
前記単細胞生物が、細菌、真菌、原生動物及び古細菌から成る群から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
前記真菌が酵母を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記表面が、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属及びプラスチックから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
前記表面が生物組織を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
前記生物組織が哺乳動物組織を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記哺乳動物組織が皮膚を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
対象の組成物の剤形が、噴霧剤、ゲル、塗布剤及びクリームから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項40】
生物と表面との接着を予防する方法であって、該生物と該表面との接着を予防することができる、水生生物由来の活性因子を含む組成物に該生物を接触させることを含む、方法。
【請求項41】
前記活性因子が細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記活性因子が前記水生生物の粗抽出物を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物の活性因子が前記水生生物の極性抽出物を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記活性因子が実質的に水生生物全体を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
極性抽出物が少なくとも1つの単離ポリペプチドを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記単離ポリペプチドがイクイナトキシンを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記極性抽出物が少なくとも1つの単離多糖を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記生物の接着予防がin vitroで起こる、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記生物の接着予防がex vivoで起こる、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
前記生物の接着予防がin vivoで起こる、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
前記生物が単細胞生物である、請求項42〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記単細胞生物がバイオフィルムに含まれる、請求項42に記載の方法。
【請求項53】
前記単細胞生物が、細菌、真菌、原生動物及び古細菌から成る群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記真菌が酵母を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記表面が、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属及びプラスチックから成る群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項56】
前記表面が組織である、請求項42に記載の方法。
【請求項57】
前記組織が哺乳動物組織を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記哺乳動物組織が皮膚を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と、水生生物由来の活性因子とを含む医薬品組成物であって、生物と表面との接着を予防することができる、医薬品組成物。
【請求項60】
細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない、請求項59に記載の医薬品組成物。
【請求項61】
前記組成物の剤形が、噴霧剤、クリーム及びゲルから成る群から選択される、請求項59に記載の医薬品組成物。
【請求項62】
それを必要とする被験体において病原体感染を予防又は治療する方法であって、請求項59に記載の医薬品組成物を治療的に有効な量、該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項63】
前記治療をin vivoで行う、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記治療をex vivoで行う、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記病原体感染の病原生物がバイオフィルム内又はバイオフィルム上で成長することができる、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記病原体感染が細菌感染を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記感染細菌がグラム陽性細菌を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記感染細菌がグラム陰性細菌を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記グラム陰性細菌が、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び大腸菌から成る群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記病原体感染の病原生物が抗生物質耐性である、請求項62に記載の方法。
【請求項72】
前記病原体感染が、真菌感染、原生動物感染、細菌感染及び古細菌感染から成る群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項73】
バイオフィルム形成阻害組成物を同定する方法であって、
(a)水生生物由来の複数の組成物をバイオフィルム形成細菌に接触させること、
(b)前記複数の組成物の存在下で前記バイオフィルム形成細菌のバイオフィルム活性を化学分析すること、及び、
(c)前記複数の組成物から、規定の閾値を超えた前記バイオフィルム形成阻害活性を有する少なくとも1つの組成物を同定することによって前記バイオフィルム形成阻害組成物を同定すること、
を含む、方法。
【請求項74】
前記水生生物が固着生物を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記水生生物が魚を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記魚がウナギ及びナマズから成る群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記固着生物が固着刺胞動物を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記固着刺胞動物がサンゴ、イソギンチャク、ウミエラ、水生幼虫、ハナギンチャク及びヒドロ虫から成る群から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記固着刺胞動物がイソギンチャクを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記イソギンチャクがアイプタシア・プルケラを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記固着刺胞動物がヒドロ虫を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
前記ヒドロ虫がクロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリスから成る群から選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記水生生物の前記複数の組成物が粗抽出物を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項85】
前記粗抽出物が触手組織由来である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記粗抽出物がアクロラジ組織由来である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記水生生物の前記複数の組成物が極性抽出物を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項88】
前記極性抽出物が触手組織由来である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記触手組織がアクチニア・エキネ由来である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記バイオフィルム形成細菌がグラム陽性細菌を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項91】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記バイオフィルム形成細菌がグラム陰性細菌を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項93】
前記グラム陰性細菌がアシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び大腸菌から成る群から選択される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物を含む医療装置。
【請求項95】
前記医療装置が体内装置である、請求項94に記載の医療装置。
【請求項96】
前記医療装置が体外装置である、請求項94に記載の医療装置。
【請求項97】
前記組成物を前記装置の表面上にコーティングする、請求項94に記載の医療装置。
【請求項98】
前記組成物を前記医療装置のポリマーマトリクスに組み込む、請求項94に記載の医療装置。
【請求項99】
埋め込み型医療装置との細胞接着を予防するための、請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項100】
医療機器との細胞接着を予防するための、請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項101】
バイオフィルム形成又は水中の表面の汚染を予防又は低減する方法であって、該水を請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物で処理することを含む、方法。
【請求項102】
バイオフィルム形成又は水中の表面の汚染を予防又は低減する方法であって、該表面を請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物でコーティングすることを含む、方法。
【請求項1】
水生生物由来の活性因子を含む組成物であって、生物と表面との接着を予防又は低減し、細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない、組成物。
【請求項2】
前記活性因子が実質的に水生生物全体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性因子が水生生物のホモジネートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性因子が前記水生生物から得られる単離抽出物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記単離抽出物が粗抽出物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記単離抽出物が極性抽出物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記極性抽出物の極性溶媒がアセトニトリルを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのポリペプチドを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、19863Da、9926Da、8261Da及び3655Daから成る群から選択されるピーク質量を特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが配列番号1を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの多糖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記活性因子の活性が凍結乾燥の後で保存される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記水生生物が固着生物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記水生生物が魚を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記魚がウナギ及びナマズから成る群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記固着生物が固着刺胞動物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記固着刺胞動物がサンゴ、イソギンチャク、ウミエラ、水生幼虫、ハナギンチャク及びヒドロ虫から成る群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記固着刺胞動物がイソギンチャクを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記イソギンチャクがアイプタシア・プルケラを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記固着刺胞動物がヒドロ虫を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
前記ヒドロ虫がクロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリスから成る群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記極性抽出物が、イソギンチャクの触手組織又はアクロラジ組織から得られる、請求項6に記載の組成物。
【請求項24】
前記イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記アクチニア・エキネ由来の前記極性抽出物が、全組成物の約1%(v/v)〜約10%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記アクチニア・エキネから得られる前記極性抽出物が、全組成物の約40%(v/v)〜約60%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記アクチニア・エキネ由来の前記極性抽出物が、全組成物の約70%(v/v)〜約90%(v/v)の範囲でアセトニトリルを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記極性抽出物がアイプタシア・プルケラ由来である、請求項6に記載の組成物。
【請求項29】
前記アイプタシア・プルケラ由来の前記極性抽出物が、約8%〜12%のアセトニトリル、約16%〜20%のアセトニトリル、約22%〜26%のアセトニトリル、及び約26%〜30%のアセトニトリル(v/全組成物のv)から成る群から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記生物が単細胞生物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
さらに前記単細胞生物の凝集を阻害することができる、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記単細胞生物がバイオフィルムに含まれる、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
前記単細胞生物が、細菌、真菌、原生動物及び古細菌から成る群から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
前記真菌が酵母を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記表面が、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属及びプラスチックから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
前記表面が生物組織を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
前記生物組織が哺乳動物組織を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記哺乳動物組織が皮膚を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
対象の組成物の剤形が、噴霧剤、ゲル、塗布剤及びクリームから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項40】
生物と表面との接着を予防する方法であって、該生物と該表面との接着を予防することができる、水生生物由来の活性因子を含む組成物に該生物を接触させることを含む、方法。
【請求項41】
前記活性因子が細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記活性因子が前記水生生物の粗抽出物を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物の活性因子が前記水生生物の極性抽出物を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記活性因子が実質的に水生生物全体を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
極性抽出物が少なくとも1つの単離ポリペプチドを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記単離ポリペプチドがイクイナトキシンを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記極性抽出物が少なくとも1つの単離多糖を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記生物の接着予防がin vitroで起こる、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記生物の接着予防がex vivoで起こる、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
前記生物の接着予防がin vivoで起こる、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
前記生物が単細胞生物である、請求項42〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記単細胞生物がバイオフィルムに含まれる、請求項42に記載の方法。
【請求項53】
前記単細胞生物が、細菌、真菌、原生動物及び古細菌から成る群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記真菌が酵母を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記表面が、布、繊維、発泡体、フィルム、コンクリート、レンガ、ガラス、金属及びプラスチックから成る群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項56】
前記表面が組織である、請求項42に記載の方法。
【請求項57】
前記組織が哺乳動物組織を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記哺乳動物組織が皮膚を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と、水生生物由来の活性因子とを含む医薬品組成物であって、生物と表面との接着を予防することができる、医薬品組成物。
【請求項60】
細胞毒性又は細胞増殖抑制性ではない、請求項59に記載の医薬品組成物。
【請求項61】
前記組成物の剤形が、噴霧剤、クリーム及びゲルから成る群から選択される、請求項59に記載の医薬品組成物。
【請求項62】
それを必要とする被験体において病原体感染を予防又は治療する方法であって、請求項59に記載の医薬品組成物を治療的に有効な量、該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項63】
前記治療をin vivoで行う、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記治療をex vivoで行う、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記病原体感染の病原生物がバイオフィルム内又はバイオフィルム上で成長することができる、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記病原体感染が細菌感染を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記感染細菌がグラム陽性細菌を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記感染細菌がグラム陰性細菌を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記グラム陰性細菌が、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び大腸菌から成る群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記病原体感染の病原生物が抗生物質耐性である、請求項62に記載の方法。
【請求項72】
前記病原体感染が、真菌感染、原生動物感染、細菌感染及び古細菌感染から成る群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項73】
バイオフィルム形成阻害組成物を同定する方法であって、
(a)水生生物由来の複数の組成物をバイオフィルム形成細菌に接触させること、
(b)前記複数の組成物の存在下で前記バイオフィルム形成細菌のバイオフィルム活性を化学分析すること、及び、
(c)前記複数の組成物から、規定の閾値を超えた前記バイオフィルム形成阻害活性を有する少なくとも1つの組成物を同定することによって前記バイオフィルム形成阻害組成物を同定すること、
を含む、方法。
【請求項74】
前記水生生物が固着生物を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記水生生物が魚を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記魚がウナギ及びナマズから成る群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記固着生物が固着刺胞動物を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記固着刺胞動物がサンゴ、イソギンチャク、ウミエラ、水生幼虫、ハナギンチャク及びヒドロ虫から成る群から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記固着刺胞動物がイソギンチャクを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記イソギンチャクがアクチニア・エキネを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記イソギンチャクがアイプタシア・プルケラを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記固着刺胞動物がヒドロ虫を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
前記ヒドロ虫がクロロヒドラ・ヴィリディシマ及びヒドラ・ブルガリスから成る群から選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記水生生物の前記複数の組成物が粗抽出物を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項85】
前記粗抽出物が触手組織由来である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記粗抽出物がアクロラジ組織由来である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記水生生物の前記複数の組成物が極性抽出物を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項88】
前記極性抽出物が触手組織由来である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記触手組織がアクチニア・エキネ由来である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記バイオフィルム形成細菌がグラム陽性細菌を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項91】
前記グラム陽性細菌が黄色ブドウ球菌である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記バイオフィルム形成細菌がグラム陰性細菌を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項93】
前記グラム陰性細菌がアシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び大腸菌から成る群から選択される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物を含む医療装置。
【請求項95】
前記医療装置が体内装置である、請求項94に記載の医療装置。
【請求項96】
前記医療装置が体外装置である、請求項94に記載の医療装置。
【請求項97】
前記組成物を前記装置の表面上にコーティングする、請求項94に記載の医療装置。
【請求項98】
前記組成物を前記医療装置のポリマーマトリクスに組み込む、請求項94に記載の医療装置。
【請求項99】
埋め込み型医療装置との細胞接着を予防するための、請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項100】
医療機器との細胞接着を予防するための、請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項101】
バイオフィルム形成又は水中の表面の汚染を予防又は低減する方法であって、該水を請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物で処理することを含む、方法。
【請求項102】
バイオフィルム形成又は水中の表面の汚染を予防又は低減する方法であって、該表面を請求項1〜39のいずれか一項に記載の組成物でコーティングすることを含む、方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【公表番号】特表2010−540431(P2010−540431A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525496(P2010−525496)
【出願日】平成20年9月21日(2008.9.21)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001264
【国際公開番号】WO2009/037714
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510077842)テル ハショメール メディカル リサーチ インフラストラクチャ アンド サービシーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月21日(2008.9.21)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001264
【国際公開番号】WO2009/037714
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510077842)テル ハショメール メディカル リサーチ インフラストラクチャ アンド サービシーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]