細胞損傷及び炎症疾患の治療または予防用薬学組成物
【課題】細胞損傷と炎症疾患の治療または予防に有用な薬学組成物、及びこれを用いる細胞損傷と炎症疾患の治療または予防方法の提供。
【解決手段】2‐ヒドロキシ‐5‐フェネチルアミノ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(3‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、5‐[2‐(3,5‐ビス‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(2‐ニトロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、5‐[2‐(4‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸などの2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩。
【解決手段】2‐ヒドロキシ‐5‐フェネチルアミノ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(3‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、5‐[2‐(3,5‐ビス‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(2‐ニトロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、5‐[2‐(4‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸などの2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、胃炎、胃潰瘍、膵臓炎、大腸炎、関節炎、糖尿病、動脈硬化、腎臓炎、肝炎、アルツハイマー性痴呆、パーキンソン病、ルーゲーリック病などの炎症性疾患で現われる炎症と細胞損傷の治療または予防に有用な薬学組成物、及びこのような薬学組成物を用いる治療または予防方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
炎症は、損傷を受けた細胞から由来する損傷因子と外来物質に対する血管反応及び細胞反応である。炎症反応を媒介する物質としては、1)アラキドン酸(arachidonic acid)の代謝物質であるプロスタグランジン(prostaglandin)、ロイコトリエン(leukotriene)及びリポキシン(lipoxins)、2)血小板活性化因子(platelet activation factor)、3)腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor−alpha)、インターロイキン‐1(IL‐1)などのサイトカイン(cytokines)とmonocyte chemoattractant protein(MCP‐1)、macrophage inflammatory protein‐1alpha(MCP‐1alpha)などのケモカイン(chemokines)、4)一酸化窒素(NO)、5)活性酸素、6)ヒスタミン(histamine)、セロトニンなどのような血管拡張因子などが知られている。炎症反応の主な目的は、外来物質及び損傷を受けた細胞と組織を除去することであるが、炎症反応はリューマチ性関節炎及び動脈硬化のような慢性疾患を誘発する原因になる。
【0003】
炎症損傷の程度が小さく制限的且つ一時的な場合、炎症反応の完了と共に損傷因子が除去され、組織は正常に戻ってくる。損傷の程度が大きく再生力が不十分な組織における炎症反応は、かなりの組織損傷が伴われると、機能の障害を引き起し得る。炎症反応が長期間に亘って慢性的に続くと、リューマチ性関節炎、動脈硬化、結核、慢性肺疾患で致命的な組織損傷の原因になる(Pathological Basis of Disease、pp.47−86、7th edition)。
【0004】
また、炎症が退行性脳疾患の病態生理に重要な役割を占めるという結果が続々と報告されている。脳に存在するミクログリア(microglia)は、アルツハイマー性痴呆、パーキンソン病、ルーゲーリック病において神経損傷が起きる部位で活性化される(Liu B及びHong JS.J Pharmacol Exp Ther.2003;304(1):1−7;Orr CF et al.、Prog Neurobiol.2002;68(5):325−40;及びHenkel JS et al.、Ann Neurol.2004;55(2):221−35)。活性化されたミクログリアはプロスタグランジン、サイトカイン、ケモカイン、活性酸素、NOなどを生成し、脳における炎症反応を開始する(Minghetti L.Curr Opin Neurol.2005;18(3):315−21;Gao HM、Trends Pharmacol Sci.2003;24(8):395−401;Weydt P and Moller T.Neuroreport.2005;16(6):527−31;及びJ.J.M.Hoozemans Int.J.Devl Neuroscience.2006;24:157−165)。したがって、炎症を抑制する薬物の投与は、アルツハイマー性痴呆の動物モデルでベータアミロイドとプラークの生成を抑制し(Townsend KP and Pratico D.FASEB J.2005;18:315−21)、パーキンソン病動物モデルでドーパミン神経細胞を保護し(Ferger B et al.、Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol.1999;360(3):256−61;及びTeismann P、Ferger B.Synapse.2001;39(2):167−74)、ルーゲーリック病モデルで脊髄運動神経細胞の死滅を防止し且つグリア(glia)活性を減らすと報告された(Kiaei M et al.、J Neurochem.2005;93(2):403‐11)。実際、打撲傷など脳に炎症反応を伴う病歴を持つ患者からADの発病率が高く(Breitner et al.、1994)、非ステロイド性消炎剤(nonsteroidal anti−inflammatory drug、NSAID)を長期服用するリューマチ性関節炎患者のAD発病率が低いと報告された(McGeer and Rogers、1990)。NSAIDの服用が、ADの予防はもちろん認知機能損傷の進行を遅らせるという研究結果も発表された(Rich et al.、1995 Neurology;Andersen et al.、1995 Neurology;及びBreitner et al.、1994 Neurology)。このような結果は、炎症反応を抑制する薬物が退行性脳疾患の予防と治療に用いられ得ることを提示する。
【0005】
プロスタグランジンの生成に関与するシクロオキシゲナーゼの作用を抑制する薬物であるNSAIDが開発されて痛症を含む炎症疾患の症状を緩和するために広く使われているが、その副作用により使用に大きい障害となっている。特に、消化不良、胃炎、潰瘍、出血、穿孔などの胃腸管障害は、NSAIDの服用後、頻繁に現われる副作用である。実際、NSAIDの副作用で、米国だけで年間107,000人が入院し、16,500人が死亡すると報告されている。胃腸管損傷の副作用が小さい選択的COX‐2(cyclooxygenase‐2)酵素抑制薬物であるCoxibとしてcelecoxibとrofecoxibが開発され、関節炎と痛症の治療に使われてきた。2005年米国FDAは、celecoxib、rofecoxibまたはvaldecoxibの長期服用は心臓疾患を誘発すると報告し、関節炎治療剤としてのCoxib薬物の使用が制限された。さらに、celecoxibとrofecoxibの痴呆臨床研究が安全性の理由から中断された。
【0006】
また、炎症疾患において、好中球、マクロファージ、モノサイトなどによって生成される活性酸素は、炎症反応を媒介して組織損傷を誘発する主な原因として知られている。実際、活性酸素を除去する薬物の投与が、炎症疾患で現われる胃損傷(Matthews GM et al.及びHelicobacter.2005;10(4):298−306)、膵臓損傷(Shi C et al.、Pancreatology.2005;5(4−5):492−500)、動脈硬化(Tardif JC.Curr Atheroscler Rep.2005;7(1):71−7)、大腸損傷(Oz HS et al.、J Nutr Biochem.2005;16(5):297−304)、関節損傷(Henrotin Y E et al.、Osteoarthritis Cartilage.2003;11(10):747−55)、腎臓損傷(Tian N et al.、Hypertension.2005;45(5):934−9)、肝損傷(Loguercio C et al.、Free Radic Biol Med.2003;34(1):1−10)、心血管損傷(Haidara MA et al.、Curr Vasc Pharmacol.2006;4(3):215−27)などに効果があるという結果が提示されている。さらに、非ステロイド性抗炎症薬物の投与は、活性酸素の生成を誘発して胃粘膜損傷との副作用を起こし、このような胃損傷は抗酸化物質の投与によって減少することが報告されている(Graziani G et al.、Gut.2005;54(2):193−200)。
【0007】
炎症は消火器、呼吸器、神経系疾患の病態生理に重要な役割を占めるが、現在使われている薬物は副作用のために使用が制限されている。抗炎症薬物であるアスピリン(acetylsalicylic acid)がNF‐kBとc‐Jun N‐terminal kinaseの作用を抑制し(Ko HW et al.、J Neurochem.1998;71(4):1390−5)、スルファサラジンが抗酸化作用で細胞を保護することが知られている(Ryu BR et al.、J Pharmacol Exp Ther.2003;305(1):48−56)。しかし、アスピリンとスルファサラジンの細胞保護作用は、高濃度で現われるとの限界が問題として提起された。
【0008】
〔発明の開示〕
したがって、本発明の技術的課題は、胃損傷、心血管障害などの副作用がなく安全であって炎症疾患の治療または予防に優れる薬学組成物、このような薬学組成物の炎症疾患治療または予防用途、及びこのような薬学組成物を投与することを含む炎症疾患治療または予防方法を提供することである。
【0009】
上記の技術的課題を達成するために、本発明は有効成分として下記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする炎症疾患の治療または予防用薬学組成物を提供する。
【0010】
[化学式1]
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1において、
nは2ないし5の整数であり、
R1は水素またはアルキルであり、
R2は水素、アルキルまたはアルカノイルであり、
R3は水素またはアセトキシであり、
Xは相互独立的に、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはハロアルコキシである。
【0013】
より望ましくは、本発明は前記炎症疾患が胃炎、大腸炎、関節炎、糖尿病炎症、動脈硬化、腎臓炎、肝炎、アルツハイマー性痴呆、パーキンソン病、及びルーゲーリック病からなる群より選択されたいずれか1つであることを特徴とする炎症疾患の治療または予防用薬学組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は炎症疾患で苦む患者または動物に前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩の治療的に有効な量を投与することを含む炎症疾患の治療または予防方法を提供する。
【0015】
本発明者等は、様々な化合物を製造して評価したところ、前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩が安全であるだけでなく炎症疾患の治療または予防に非常に有用であることを見つけ、本発明の完成に至った。
【0016】
以下、本発明の炎症疾患治療または予防用薬学組成物、及び炎症疾患の治療または予防方法についてより具体的に説明する。
【0017】
本発明は、下記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩の新たな用途、すなわち炎症疾患の治療または予防用途を提供し、また下記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を用いて炎症疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0018】
[化学式1]
【0019】
【化2】
【0020】
前記化学式1において、
nは2ないし5の整数であり、
R1は水素またはアルキルであり、
R2は水素、アルキルまたはアルカノイルであり、
R3は水素またはアセトキシであり、
Xは相互独立的に、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはハロアルコキシである。
【0021】
前記化学式1において、アルキル(ハロアルキルのアルキルを含む)は炭素数1ないし5のアルキルであることが望ましく、炭素数1または3のアルキルであることがさらに望ましい。具体的に、前記アルキルとしてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec‐ブチル及びtert‐ブチル基が望ましいが、これに限定されることはない。アルコキシ(ハロアルコキシのアルコキシを含む)は、炭素数1ないし5のアルコキシであることが望ましく、炭素数1または3のアルコキシであることがさらに望ましい。具体的に、前記アルコキシとしてはメトキシ、エトキシ及びプロトキシ基が望ましいが、これに限定されることはない。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨードであることが望ましいが、これに限定されることはない。アルカノイルは炭素数2ないし10のアルカノイルであることが望ましく、炭素数3または5であることがさらに望ましい。具体的に、前記アルカノイルとしてはエタノイル、プロパノイル、及びシクロヘキサンカルボニルが望ましいが、これに限定されることはない。
【0022】
前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の望ましい例には、2‐ヒドロキシ‐5‐フェネチルアミノ‐安息香酸(化合物1)、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(3‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物3)、5‐[2‐(3,5‐ビス‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物4)、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(2‐ニトロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物5)、5‐[2‐(4‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物6)、5‐[2‐(3,4‐ジフルオロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物7)、5‐[2‐(3,4‐ジクロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物8)、5‐[2‐(4‐フルオロ‐2‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物9)、5‐[2‐(2‐フルオロ‐4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物10)、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐メトキシ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物11)、2‐ヒドロキシ‐5‐(2‐o‐トリル‐エチルアミノ)‐安息香酸(化合物12)、2‐ヒドロキシ‐5‐(3‐フェニル‐プロピルアミノ)‐安息香酸(化合物13)、2‐ヒドロキシ‐5‐[3‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐安息香酸(化合物14)、5‐[3‐(4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物15)、5‐[3‐(3,4‐ジクロロ‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物16)、2‐ヒドロキシ‐5‐(3‐p‐トリル‐プロピルアミノ)‐安息香酸(化合物17)、2‐アセトキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物18)、及び5‐[2‐(2‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物19)が含まれるが、これに限定されることはない。
【0023】
前述した望ましい化合物のうち、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)及び2‐アセトキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物18)は、炎症疾患治療用活性物質として他の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体に比べてさらに望ましい。
【0024】
前述した望ましい化合物のうち、化合物2は、特に退行性脳疾患の細胞損傷及び炎症の治療において他の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体に比べてさらに望ましい。化合物2は、抗炎症効果の観点から、類似の構造を持つ幾つかの化合物に比べて非常に優れた効果を示し、またベータアミロイド生成抑制効果に対する観点からも、類似の構造を持つ幾つかの化合物に比べて優れた効果を示した。勿論、NO生成抑制効果など1つの実験結果のみに基づく場合には、化合物2よりさらに優れた効果を示す化合物が存在するが、退行性脳疾患治療剤としての他の評価実験で相対的に良くない結果を示し退行性脳疾患治療剤として好適ではなかった(例えば、幾つかの化合物はNO生成抑制効果が化合物2より優れたが、退行性脳疾患の治療において非常に重要なベータアミロイド生成抑制効果が非常に微弱であった)。また、幾つかの化合物は薬効評価実験で優れた結果を示したが、後述する毒性評価実験で化合物2に比べて望ましくなかった。
【0025】
同様に、前述した望ましい化合物のうちの化合物18は、炎症疾患の治療において、他の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体に比べてさらに望ましい。化合物18は、抗炎症効果の観点から類似の構造を持つ幾つかの化合物に比べて非常に優れた効果を示したが、また後述する毒性評価実験で化合物2に比べては効果が落ちた。
【0026】
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、以下のような反応式によって製造することができるが、これに限定されることはない。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、本発明が属した分野で公知の合成法を用いて製造することができる。
【0027】
<反応式1>
【0028】
【化3】
【0029】
反応条件:トリエチルアミン、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、N,N‐ジメチルホルムアミド、常温、3時間。
【0030】
<反応式2>
【0031】
【化4】
【0032】
反応条件:(a)エタノール、H2SO4、還流、6時間;(b)無水酢酸、メタノール、0℃、30分;(c)無水酢酸、H2SO4、0℃、30分
また、本発明の望ましい一実施例である2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)は、以下のような反応式3によって製造することができるが、これに限定されることはない。
【0033】
<反応式3>
【0034】
【化5】
【0035】
反応条件:(a)4‐(トリフルオロメチル)ヒドロ桂皮酸、PCl5、キシレン、還流、12時間;(b)塩化アセチル、DMF/K2CO3、室温、2時間;(c)NaBH4、酢酸/1,4‐ジオキサン、約95℃、50分;(d)HCl/H2O、酢酸。
【0036】
本発明において「薬学的に許容可能な塩」とは、毒性がないか又は少ない酸または塩基から製造された塩を言う。本発明の化合物が相対的に酸性である場合、塩基(base)付加塩は十分な量の所望の塩基と本発明の化合物とを適当な不活性溶媒で接触させ、中性形態を得ることができる。薬学的に許容可能な塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウムまたは有機アミノからなる塩を含むが、これに限定されることはない。本発明の化合物が相対的に塩基性である場合、酸(acid)付加塩は十分な量の所望の酸と本発明の化合物とを適当な不活性溶媒で接触させ、中性形態を得ることができる。薬学的に許容可能な酸付加塩は、プロピオン酸、イソブチル酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、塩酸、臭素酸、窒酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素、亜リン酸などから形成された塩を含むが、これに限定されることはない。また、アルジネートのようなアミノ酸の塩、及びグルクロン酸またはガラクツロン酸(galactunoric acid)のような有機酸の類似体を含むが、これに限定されることはない。
【0037】
例えば、本発明の望ましい一実施例である2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)の薬学的に許容可能な塩は、以下のような反応式4によって製造することができるが、これに限定されることはない。
【0038】
<反応式4>
【0039】
【化6】
【0040】
反応式4において、Mはジエチルアミン、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの薬学的に許容される金属または塩基性有機化合物を指す。
【0041】
より具体的に、ジエチルアミン塩はアルコールに化合物を溶解してから、ジエチルアミンを滴加し撹拌した後、減圧蒸留し残渣にエーテルを添加して結晶化させて得る。アルカリ金属塩を製造する方法としては、アルコール、アセトン、アセトニトリルなどのような溶媒下でアルカリ金属を提供し得る水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機試薬を用いて目的とする塩形態化合物を製造し、凍結乾燥させて得ることができる。また、類似の方法を用いて、リチウム塩はリチウムアセテートを使用し、ナトリウム塩はナトリウム2‐ヘキサン酸エチルまたはナトリウムアセテートを使用し、カリウム塩はカリウムアセテートを使用して目的とする塩を製造することができる。
【0042】
本発明の一部化合物は、水和物形態を含み、溶媒和された形態だけでなく非溶媒和された形態で存在することもできる。本発明の一部化合物は、結晶形または無晶形で存在することができ、このようなすべての物理的形態は本発明の範囲に含まれる。また、本発明の一部化合物は、光学中心である非対称炭素原子または二重結合を有することがあり、ラセミ化合物、鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体(きかいせいたい)などが存在することができ、これらも本発明の範囲に含まれる。
【0043】
さらに、本発明は前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩と、薬剤学的に許容される賦形剤または添加剤とを含む薬学組成物を提供する。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩は、単独であるいは如何なる便利な担体、賦形剤などと共に混合して投与でき、そのような投与剤形は単回投与または反復投与剤形であり得る。
【0044】
本発明の薬学組成物は固形製剤または液状製剤であり得る。固形製剤としては、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、坐剤などがあるが、これに限定されることはない。固形製剤には、賦形剤、着香剤、結合剤、防腐剤、崩解剤、滑沢剤、充填剤などがさらに含まれるが、これに限定されることはない。液状製剤としては、水、プロピレングリコール溶液のような溶液剤、懸濁液剤、乳剤などがあるが、これに限定されることはなく、適当な着色剤、着香剤、安定化剤、粘性化剤などを添加して製造することができる。
【0045】
例えば、散剤は、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物と乳糖、澱粉、微結晶セルロースなど薬剤学的に許容される適当な賦形剤を単純混合することで製造することができる。顆粒剤は、本発明の化合物またはこれの薬学的に許容できる塩;薬剤学的に許容される適当な賦形剤;及びポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの薬剤学的に許容される適当な結合剤を混合した後、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶媒を用いた湿式顆粒法または圧縮力を用いた乾式顆粒法を用いて製造することができる。また、錠剤は前記顆粒剤をステアリン酸マグネシウムなどの薬剤学的に許容される適当な滑沢剤と混合した後、打錠機を用いて打錠することで製造することができる。
【0046】
本発明の薬学組成物は、治療する疾患及び個体の状態に応じて経口剤、注射剤(例えば、筋肉注射、腹腔走査、静脈注射、注入、皮下注射、イムプラント)、吸入剤、鼻腔投与剤、膣剤、直腸投与剤、舌下剤、経皮剤、局所剤などに投与することができるが、これに限定されることはない。投与経路により、通常用いられて非毒性であり、且つ薬剤学的に許容される担体、添加剤、ビヒクルを含む適当な投与ユニット剤形に製剤化することができる。一定時間薬物を持続的に放出できるデポー(depot)剤形も本発明の範囲に含まれる。
【0047】
さらに、本発明は前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩の炎症疾患治療または予防用途、すなわち前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする炎症疾患の治療または予防用組成物を提供する。より具体的に、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩は胃炎、胃潰瘍、膵臓炎、大腸炎、関節炎、糖尿病、動脈硬化、腎臓炎、肝炎などの炎症疾患、及びアルツハイマー性痴呆、パーキンソン病、ルーゲーリック病などの退行性脳疾患で現われる炎症と細胞損傷の治療または予防のために用いることができるが、本発明による2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体及びこれの塩の用途は前述した具体的な疾患名に限定されることはない。
【0048】
炎症疾患の治療のための使用にあたって、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は毎日約0.01mg/kgないし約100g/kg投与することができ、約0.1mg/kgないし約10g/kgの1日投与量が望ましい。しかし、前述した投与量は、患者の状態(年齢、性別、体重など)、治療している状態の深刻性、使われた化合物などによって多様である。必要に応じて、1日の総投与量を分け、一日数回に渡って投与することができる。
【0049】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、化合物2が胃の粘膜損傷を誘発せず安全であることを示す実験結果である。胃粘膜の損傷程度を確認するために、直接薬物を容量別に経口投与した。比較群としてアスピリンを使用した。
【0050】
図2は、胃粘膜の損傷程度を確認するために試料を表示された容量どおり経口投与した結果である。化合物18は高容量を投与したにもかかわらず胃粘膜の損傷を誘発しなかった。比較群としてインドメタシン、イブプロフェン及びセレコキシブを使用した。
【0051】
図3は、ヘリコバクターによって誘導される胃粘膜の損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS(human gastric cancer)細胞にヘリコバクター(43504、5×108cfu/ml)を単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に添加した。添加して24時間後に、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【0052】
図4は、NSAIDであるスリンダク(sulindac)によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に100uMスリンダクを単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に添加した。添加して16時間後に、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【0053】
図5は、酸化ストレスであるH2O2によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に100uMのH2O2を単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に8時間処理した後、培養液でさらに洗滌した。24時間後にMTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【0054】
図6は、アルコール(エタノール)によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に25mMのエタノールを単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に24時間処理した。その後、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【0055】
図7は、TNF‐α mRNAの発現程度を示した写真である。培養されたAGS細胞に25mMのエタノールを単独でまたは標識された濃度の化合物2と共に24時間処理した。その後、mRNAを抽出してRT−PCR法によって評価した。
【0056】
図8は、アルコール/塩酸(EtOH/HCl)によって誘導される胃腸管出血を用いた化合物2の保護効果を評価した結果である。Aは正常マウスの胃の写真である。Bは200〜250gのマウスを24時間絶食させた後、60% EtOH/150mM HClを経口投与して胃腸管出血を誘導した写真である。Cはアルコール/塩酸を投与する30分前に化合物2で前処理し、胃腸管出血を起こして90分後に胃を摘出して観察した写真である。Dは胃損傷の程度を観察するために損傷された面積を定量したグラフである。
【0057】
図9は、アルコール性胃炎に対する化合物2の保護作用を評価した結果である。Aは正常マウスの胃の写真である。Bは250gのマウスを24時間絶食させた後、エタノール(4ml/kg)を経口投与して胃腸管出血を誘導した写真である。Cは化合物2を胃腸管出血誘導の1時間前に前処理した後、胃腸管出血を起こして90分後に胃を摘出して観察した写真である。Dは胃損傷の程度を観察して定量したグラフである。
【0058】
図10は、NSAID誘導胃炎に対する化合物2の保護作用を示す写真である。250gのマウスを24時間絶食させた後、インドメタシンを経口投与(A及びC)すれば胃腸管出血が起きる。化合物2を1時間前に処理(B及びD)し、胃腸管出血を起こして6時間(A及びB)または12時間(C及びD)後に胃を摘出した写真である。
【0059】
図11は、関節炎動物モデルの1つであるカラゲナン(Carrageenan)によって誘導される温熱性痛覚過敏症(thermal hyperalgesia)を用いた化合物2の効果評価の結果である。2%カラゲナンをマウスの足部に皮内注射して温熱性痛覚過敏症を誘導した。化合物2は経口投与し、イブプロフェンを比較群として使用した。
【0060】
図12は、関節炎動物モデルの1つであるザイモサン(zymosan)によって誘導されるTNF‐αの量を用いた化合物2の効果評価の結果である。1%ザイモサンをエアパウチで注入し、投与1時間の前に化合物2を容量別に単回経口投与した。4時間後に、エアパウチ滲出物からTNF‐αの量をELISA法で測定した。
【0061】
図13は、関節炎動物モデルのうちの1つであるザイモサンによって誘導されるIL‐1αの量を化合物2が減少させる程度を示すグラフである。1%ザイモサンをエアパウチで注入し、投与1時間の前に化合物2を容量別に単回経口投与した。4時間後に、エアパウチ滲出物からIL‐1αの量をELISA法で測定した。
【0062】
図14は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた効果評価の結果であり、コラーゲンによる足の浮腫を示す。
Sham:正常マウス
Collagen:コラーゲンを注射したマウス
化合物18:25mg/kgの化合物18を腹腔注射したマウス
図15は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた効果評価の結果である。コラーゲン投与後、25mg/kgの化合物2、3または18及び対照群であるメトトレキサート(MTX、1mg/kg/week)を腹腔注射した。その後、4週間目視で観察した結果を関節炎指数として評価した。
【0063】
図16は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた化合物6及び11の効果評価の結果である。コラーゲンを2週間隔で2回皮内注射し、1週間後に化合物6、化合物11、及び対照群であるメトトレキサートを腹腔注射した。その後、2〜3週間毎日観察した結果を関節炎指数として評価した。
【0064】
図17は、炎症性腸疾患動物モデルである5%デキストラン硫酸ナトリウム(Dextran sulfate sodium、DSS)モデルを用いた効果評価の結果である。DSSを処理した後、10%ビヒクルに懸濁して10、25、50mg/kgの化合物18を経口投与した。Shamは正常マウスの大腸であり、DSSは5%DSSを処理したマウスの大腸である。その他は各容量の化合物18を投与したマウスの大腸写真である。
【0065】
図18及び19は、図17の結果を定量化したグラフである。図18は大腸の長さであり、図19は大腸の広さである。
【0066】
図20は、DSSを用いた化合物18の効果評価の結果である。DSSを処理した後、10%ビヒクルに懸濁して化合物18(25mg/kg)を経口投与した。その後、大腸の損傷による血便、下痢、及び汚ない程度を点数に換算して示した。
【0067】
図21は、セルレイン(cerulein)によって誘導される急性膵臓炎モデルを用いた効果評価の結果である。50μg/kgのセルレインを投与して2時間が経過した後、LPSを投与して浮腫を誘発した。A−Cは写真結果であり、Dは膵臓の重さを測定して示したグラフである。
A:正常マウス
B:セルレインを投与したマウス
C:化合物18(25mg/kg)を投与したマウス
図22は、セルレインによって誘導される急性膵臓炎モデルを用いた効果評価の結果である。50μg/kgのセルレインを投与して2時間が経過した後、LPSを投与して浮腫を誘発した。25mg/kgの化合物18を投与し、膵臓消化酵素であるアミラーゼとリパーゼの変化を定量化して示した。
【0068】
図23及び図24は、セルレインによって誘導される膵臓炎モデルを用いた評価結果である。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が炎症マーカーであるTNF‐α、IL‐1β及びPGE2に及ぼす影響を評価した。
【0069】
図25は、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス(Tg+)の脳でELISA法を用いてTNF‐α、IL‐1βまたはIL−6の量を測定したグラフである。3ヶ月から7ヶ月の間、化合物2(25mg/kg/day)あるいはイブプロフェン(62.5mg/kg/day)を飼料に混合して長期投与した。
【0070】
図26は、脳血管障壁に対する化合物2の保護効果を示す写真(低倍率と高配率)である。
A:正常マウス
B/F:APP/PS1痴呆マウス
C/G:化合物2(25mg/kg/day)投与
D/H:イブプロフェン(62.5mg/kg/day)投与
図27は、10.5ヶ月齢の正常マウス(A)、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス(B、Tg+)、3.5ヶ月から7ヶ月間化合物2(25mg/kg/d、C)あるいはイブプロフェン(62.5mg/kg/d、D)を飼料に混合して長期投与したAPP/PS1痴呆マウスの脳で生成されたアミロイドプラークを測定した写真である。チオフラビン(Thioflavin‐S)で免疫染色した。EはA−Dの結果を定量化したグラフである。
【0071】
図28は、10.5ヶ月齢の正常マウス、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス、3.5ヶ月から7ヶ月間化合物2(25mg/kg/d)を飼料に混合して長期投与した10.5ヶ月齢のAPP/PS1マウスを用いて高架式十字迷路テストを行った結果である。それぞれの実験動物がopen armに留まる時間で効果を評価した。
【0072】
図29は、G93Aマウスで炎症のマーカーであるミクログリア活性を示す写真である。TOMATOレクチンで免疫染色した。
A:正常マウス
B:G93Aマウス
C:5mg/kg/day化合物2投与群
図30は、G93Aマウスで炎症の一マーカーである炎症性サイトカイン(TNF‐αとIL‐1β)のmRNAレベルを示す結果である。RT−PCR(Reverse Transcription−Polymerase Chain Reaction)が使用された。
【0073】
図31は、パーキンソン病の動物モデルで炎症に対する化合物2の抑制効果を示した写真である。CD11bで免疫染色した。
A:MPTPを投与したマウス
B:50mg/kg/dの化合物2投与群
図32は、本発明による幾つかの2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物の単回投与毒性実験の結果である。
【0074】
〔発明を実施するための最良の形態〕
以下、本発明をより具体的に説明するために実施例などを挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、本発明の具体的理解を助けるために例示的に提供されるものである。
【0075】
<合成例1>2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)の製造
5‐アミノサリチル酸(0.51g、3.90mmol)を常温窒素気流下でN,N‐ジメチルホルムアミド(20.0ml)に入れて撹拌させた。トリエチルアミン(0.50ml)とヨウ化テトラブチルアンモニウム(10.1mg)を入れた後、30分間撹拌した。その後、1‐(2‐(ブロモエチル)‐4‐トリフルオロメチル)ベンゼンを添加し、常温で3時間撹拌した。反応を終結するために反応容器に氷を添加した。生成された結晶を濾過してアセトンとヘクサンを用いて撹拌させた後、再び濾過した。濾過された固体をエチルアセテートに溶かした後、0.5N塩酸と塩水で洗滌した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧蒸留して2‐ヒドロキシ‐5‐(4‐(トリフルオロメチル)ペニルエチルアミノ)安息香酸0.54g(21%収率)を得た。
1H NMR(DMSO‐d6):7.62(d,2H)、7.48(d,2H)、6.98(d,1H)、6.88(q,1H)、6.76(d,1H)、3.24(t,2H)、2.91(t,2H)
<合成例2>2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸カリウム塩の製造
前記合成例1で製造した2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(10g、30.7mmol)を無水エタノール(100ml)に加えて50℃まで加温して完全に溶解させた。その後、溶液を0℃に冷却した。85%水酸化カリウム(2.03g、30.7mmol)と無水エタノール(20ml)溶液を使ってpHを6.8〜7.0に調節した後、室温で2時間撹拌した。沈殿した結晶を濾過及び乾燥して目的とする化合物である2‐ヒドロキシ‐5‐(4‐(トリフルオロメチル)ペニルエチルアミノ)安息香酸カリウム塩(10.4g)を93%の収率で得た。
【0076】
1H NMR(DMSO‐d6):7.62(d,2H)、7.48(d,2H)、6.98(d,1H)、6.90(q,1H)、6.84(d,1H)、3.24(t,2H)、2.91(t,2H)
<合成例3>2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐ニトロペニル)エチルアミノ]‐安息香酸の製造
5‐アミノサリチル酸(500mg、3.26mmol)及び4‐ニトロペニルエチルブロマイド(900mg、3.92mmol)を使って合成例1と同様の方法によって、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐ニトロペニル)エチルアミノ]‐安息香酸890mg(50%収率)を淡い黄色固体相で得た。融点234〜236℃。
【0077】
C15H14N2O5の元素分析
【0078】
【表1】
【0079】
<合成例4>2‐ヒドロキシ‐5‐[3‐(4‐ニトロペニル)‐n‐プロピルアミノ]‐安息香酸の製造
5‐アミノサリチル酸(500mg、3.26mmol)及び3‐(4‐ニトロペニル)プロピルブロマイド(950mg、3.92mmol)を使って合成例1と同様の方法により、2‐ヒドロキシ‐5‐[3‐(4‐ニトロペニル)‐n‐プロピルアミノ]‐安息香酸520mg(50%収率)を淡い黄色固体相で得た。融点229〜231℃。
C16H16N2O5の元素分析
【0080】
【表2】
【0081】
<合成例5>
他の化合物も前記合成例1と同様の方法で製造し、分析結果を下記表3にまとめて示した。
【0082】
【表3】
【0083】
<合成例6>2‐アセトキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物18)の製造
化合物18を下記反応式によって製造した。
【0084】
<反応式5>
【0085】
【化7】
【0086】
化合物a:化合物2(50.0g、154mmol)の200mL H2O:1,4‐ジオキサン(1:1)混合溶液にNa2CO3(32.6g、307mmol)とジ‐tert‐ブチルジカボネイト(40.3g、185mmol)を室温で添加した。8時間撹拌した後、ジ‐tert‐ブチルジカボネイト(16.8g、76.9mmol)をさらに添加した。室温で8時間再び撹拌した後、反応混合物は2N HClで中和(pH 〜6)した。生成混合物はエチルアセテート(200mL、2回)で抽出した。有機相を混合し、塩水(100mL)で洗滌してMgSO4で乾燥した後、濾過した。結果として、黄色い泡沫状の濃縮物である化合物21を得、追加精製なく粗化合物aが後続する反応に使われた。
【0087】
1H NMR(400MHz,CDCl3)10.52(1H,br S)、7.53(d,2H,J=8Hz)、7.53(br,1H)、7.28(d,2H,J=8Hz)、7.26(br,1H)、6.94(d,1H,J=8.8Hz)、3.85(t,2H,J=7.2Hz)、2.94(t,2H,J=7.2Hz)、1.43(br s,9H)
化合物b:化合物aのジクロロメタン(200mL)溶液にN,N‐ジイソプロピルエチルアミン(80.3mL、461mmol)と塩化アセチル(21.9mL、307mmol)を0℃で添加した。反応混合物は室温まで加温し、5時間撹拌した。1N HCl(100mL)水溶液を反応混合物に添加した。反応物は層に分離され、水層はジクロロメタン(100mL)で抽出した。有機相を混合して塩水(100mL)で洗滌し、MgSO4で乾燥して濾過した後、濃縮した。粗生成物をジエチルエーテルで再結晶して白い固体相の化合物22(51.5g、71.7%)を生成した。
【0088】
1H NMR(400MHz、CDCl3)7.82(br s,1H)、7.54(d,2H,J=8Hz)、7.38−7.24(m,1H)、7.28(d,1H,J=8Hz)、7.08(d,1H,J=7.6Hz)、3.91(t,2H,J=7.2Hz)、2.98(t,2H,J=7.2Hz)、2.34(s,3H)、1.42(br s,9H)
化合物18:化合物b(51.5g、110mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液を0℃で4N HClの1,4‐ジオキサン溶液(200mL)で処理した。反応混合物は室温まで加温された。5時間撹拌した後、懸濁液は濃縮した。残渣はジエチルエーテル(500mL)で粉砕(triturate)した。ジクロロメタン(500mL)とジエチルエーテル(500mL)を用いて濾過及び洗滌し、白い固体相の化合物18(46.0g、82.5mmol、92.3%)を得た。
【0089】
1H NMR(400MHz、DMSO‐d6)7.66(d,2H,J=7.6Hz)、7.52(d,2H,J=7.6Hz)、7.15(s,1H)、6.91(d,1H,J=8.6Hz)、6.85(d,1H,J=8.6Hz)、3.32(t,2H,J=7Hz)、2.95(t,2H,J=7Hz)、2.18(s,3H));LCMS calc.for C18H16F3NO4(M+H+):368、found 368.
<実施例1>細胞における抗炎症効果の評価
1−1.NO生成阻害効果
炎症反応に関与する炎症性因子であるNOに対する本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の阻害効果を評価した。BV2 ミクログリア細胞株にバクテリアトキシン炎症誘発物質であるリポ多糖体(LPS)と本発明の化合物をそれぞれ10uM、30uM、または100uMずつ同時に処理して24時間培養した。その後、培養液50ulを96ウェルプレートに採り、グリーズ試薬(Griess reagent)を50ulずつ加えて10分間室温で反応させた。その後、ELISAリーダーで540nmにおける吸光度を測定した。各化合物のBV2細胞株から出たIC50の結果は、下記表4に「NO in BV」の欄に示した。
【0090】
下記表4の結果から分かるように、「NO in BV」のうち化合物9のIC50は1.79uMであり、化合物14のIC50は6.7uMであって最も高い水準のIC50値を示した。NO生成に対する減少効果をIC50値で示したとき、大半の化合物が100uMより小さい値を持つことを確認することができた。このように本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、炎症反応に関与するNO活性を効果的に阻害するため、抗炎症剤として非常に有効である。
【0091】
1−2.遺伝子発現抑制効果
BV2細胞株で2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の濃度別iNOS遺伝子の発現を観察した。BV2細胞株を1×106個になるように100mmディッシュに接種し、炎症誘導物質であるLPSと2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体をそれぞれ1〜100uM濃度範囲で一定濃度間隔で同時に処理した。24時間培養した後、RNAを抽出した。抽出したRNAは逆転写酵素反応(reverse transcription)及び重合酵素反応(polymerase chain reaction)を行った後、TNF‐α、IL‐1β、及びiNOS遺伝子の発現様相を比べた。その結果を下記表4にまとめて示した。
【0092】
下記表4に示されたように、炎症性サイトカインの遺伝子発現様相を対照群(LPS処理群)と比べた結果、TNF‐α遺伝子の発現は化合物2が63.24%減少させ、化合物8が77.05%減少させ、化合物9が61.67%減少させた。また、IL‐1β遺伝子の発現は化合物2が75.1%、化合物5が67.7%、化合物8、9、10、及び14がそれぞれ50%以上減少させる様相を確認した。さらに、化合物2、5、8、10、15、及び17はiNOS遺伝子の発現を50%以上抑制した。
【0093】
【表4】
【0094】
前記表4において、「ND」は測定されなかった(not determined)ことを意味する。
【0095】
1‐3.サイトカインの生成抑制効果
BV2細胞株で2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体のサイトカイン生成の抑制効果を観察した。BV2細胞株を1×106個になるように24ウェルプレートに接種し、炎症誘導物質であるLPSとそれぞれ100uMの2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体または比較薬物とを同時に処理した。24時間培養した後、培養液を採った。培養液はELISA法により、サイトカインであるTNF‐αとIL‐6の量を測定した。その結果を下記表5にまとめて示した。
【0096】
下記表5に示されたように、LPSによって生成されたTNF‐αの量を対照群(LPS処理群)と比べた結果、化合物2が62.26%減少させ、化合物3が31.90%減少させ、化合物14が62.6%減少させる様相を確認した。また、比較薬物として使ったイブプロフェンとアスピリンは同じ濃度で減少効果を示さなかった。同様に、IL‐6の量も化合物2は明らかな減少効果を見せたが、比較群であるイブプロフェンとアスピリンはほとんど減少効果を見せなかった。
【0097】
【表5】
【0098】
前記表5において、「ND」は測定されなかった(not determined)ことを意味する。
【0099】
<実施例2>基礎毒性評価
2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物の単回毒性を評価し、その結果を図32に示した。
【0100】
図32に示されたように、本発明の望ましい化合物2及び18のLD50は3g/kg以上と安全性が良好であると示された。しかし、化合物19のLD50は0.5〜1g/kgと相対的に安全性が落ちている。また、化合物4は、抗炎症などの効果評価においては卓越な効果を見せたが、毒性実験の結果、3g/kgで急に動物群が死亡して濃度依存的な結果が得られなかった。さらに、化合物3及び14は、化合物2と類似の構造を持ち抗炎症効果が類似したものの、毒性実験の結果、濃度依存的ではないか又は毒性が強く治療剤としては相対的に望ましくなかった。
【0101】
<実施例3>胃粘膜損傷の誘発可否に対する安全性評価
従来のNSAID系消炎剤は胃粘膜損傷を起こす副作用があったため、抗炎症効果のある化合物2も胃粘膜損傷を誘発するか否かを実験した。比較群として30、100、及び300mg/kgのアスピリンを経口投与したときに発生する胃粘膜損傷を用いた。本発明による一実施例である化合物2は、かなり多い容量である1000mg/kgの経口投与群でも胃粘膜損傷を誘発せず、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は非常に安全であることが分かった(図1)。
【0102】
また、他のNSAID系消炎剤であるインドメタシンとイブプロフェン、及び選択的COX‐2抑制剤であるセレコキシブを対照群として経口投与し、化合物18の安全性を比較実験した。化合物18を高容量で経口投与したが、胃粘膜損傷を誘発しなかった(図2)。
【0103】
<実施例4>細胞保護効果の評価
本発明による一実施例である2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の細胞保護効果を評価した。AGS細胞株(human gastric cancer cells)を96ウェルプレートに1×105個接種した。その後、それぞれにヘリコバクターを24時間処理(図3)、スリンダク(sulindoc)を16時間処理(図4)、H2O2を8時間処理(図5)、またはエタノールを24時間処理(図6)して胃粘膜細胞の死滅を誘導した。また、一部AGS細胞株には、本発明の一実施例である化合物2をそれぞれ10uM、30uM、または100uMずつ同時に処理して24時間培養した。MTT溶液をそれぞれのウェルに添加した後、4時間37℃で反応させた。その後、ELISAリーダーで540nmにおける吸光度を測定し、胃粘膜細胞の生存率を計算した。その結果、1uM及び10uMの化合物2では50%以上の細胞保護効果を見せ、100uMの化合物2は大半の細胞死滅モデルで70%以上の細胞保護効果を見せた。
【0104】
また、炎症の一マーカーとして、サイトカインの1つであるTNF‐αのmRNAの発現程度をRT−PCR法を用いて評価した。エタノールを24時間処理したサンプルを用いて評価した。1〜100uMの化合物2は、TNF‐αのmRNA発現をほとんど完全に抑制した(図7)。
【0105】
このような結果から、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が炎症疾患、特にさまざまな原因による胃炎で細胞保護及び炎症抑制に有効であることを確認することができる。特に、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、炎症疾患治療剤として知られたムコスタ(mucosta)及びPPIより優れた効果を示した。
【0106】
<実施例5>胃腸管出血の防御効果
5−1.アルコール及び塩酸誘導胃炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体がアルコール及び塩酸誘導胃炎に及ぶ効果を評価した。200〜250gの雄SDマウスを24時間絶食させた後、60% EtOH/150mM HClを経口投与して胃腸管出血を誘導した。胃腸管出血の30分前に容量別に化合物2を経口投与し、胃腸管出血の90分後に胃を摘出して胃損傷の程度を観察した。その結果、本発明による一実施例である化合物2は胃腸管出血を防御し、毒性もなかった。その結果を図8にまとめて示した。
【0107】
5‐2.アルコール性胃炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体がアルコール性胃炎に及ぼす効果を評価した。250gのマウスを24時間絶食させた後、アルコールを経口投与すれば胃腸管出血が起きるが(B)、化合物2を1時間前に前処理する場合(C)胃の出血が著しく減少した。その結果を図9のDに数値化して示した。このような結果から、本発明の化合物2はアルコール性胃炎に強力な保護作用を示すと言える。
【0108】
アルコール性胃炎は胃酸分泌抑制剤や胃防御因子増強剤でも予防及び治療効果が容易には現れないため、アルコール性胃炎は他の原因による胃炎より治療効果を期待し難い。これは、アルコールが直接的毒性及び炎症媒介、出血誘導などの形態で病気を誘発するためである。本発明による一実施例である化合物2が、このようなアルコールの直接的毒性を著しく減少させると考えられる。
【0109】
5‐3.NSAID誘導胃炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が、NSAID誘導胃炎に及ぼす効果を評価した。NSAIDであるインドメタシンを6時間投与し胃損傷を弱く誘発させたモデル(図10のA)、及びインドメタシンを12時間投与してかなりの胃損傷を誘発させたモデル(図10のC)で、化合物2は卓越な胃保護効能を見せた(図10のB及びD)。
【0110】
<実施例6>関節炎動物モデルにおける薬効評価
6−1.カラゲナン誘導炎症モデル:鎮痛効果の評価
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の一例である化合物2が持つ関節炎モデルにおける鎮痛効能を評価した。2%カラゲナンを白いマウスの左側足部に注射した後、3〜300mg/kgの化合物2を経口投与してカラゲナンによって誘導される関節炎モデルにおける温熱性痛覚過敏症に及ぼす化合物2の影響を観察した。その結果を図10に示した。
【0111】
化合物2は濃度依存的に温熱性痛覚過敏症を減少させた。300mg/kgの化合物2は温熱性痛覚過敏症を90%以上減少させた。また、抗炎症剤として知られているイブプロフェン50mg/kgと同じ程度の抑制効果を化合物2を100mg投与した群で観察することができた。
【0112】
6−2.ザイモサン誘導炎症モデル:サイトカイン評価
ザイモサンを用いて本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の一例である化合物2が持つ関節炎モデルにおける抗炎症効能を評価した。1%ザイモサン0.5mlをエアパウチ内に注入し、ザイモサン投与の1時間前に3〜300mg/kgの化合物2を単回投与した。4時間後に関節炎の主な症状である浮腫と病因であるサイトカインの濃度を観察した。その結果、化合物2は30mg/kgから対照群に比べてTNF‐αの量を減少させる効果を示し、300mg/kgまで濃度依存的に減少させた。比較群として炎症疾患治療剤で知られているイブプロフェン(50mg/kg)を使った(図12)。IL‐1αも同様に濃度依存的に減少した(図13)。このような結果から本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、炎症疾患、特に関節炎に効果があることを把握することができる。
【0113】
6−3.コラーゲン誘導関節炎動物モデルの評価
本発明による一実施例である2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の有効性を評価するために、リュウマチ性関節炎動物モデルであるコラーゲン誘導関節炎モデルを使った。Bovine type IIコラーゲンをcomplete Freund’s adjuvantと混ぜて乳剤を製造した。8〜10週のDBA/1LacJマウスのしっぽの基始部に前記乳剤を皮内注射した。2週後に同様の方法で皮内注射した。2次コラーゲン皮内注射の1週間後、腹腔に化合物2、3、及び18を25mg/kg/day、比較群としてメトトレキサート1mg/kg/weekを注射し、対照群として10%ビヒクルを注射した(図15)。図14に、正常マウス(sham)、コラーゲンを投与したマウス(collagen)、及び化合物18を投与したマウス(化合物18、化合物18を25mg/kg/day注射)の足浮腫を撮影した写真を示した。
【0114】
また、腹腔に2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体のうち化合物6と化合物11を50mg/kg/day、比較群としてメトトレキサート5mg/kg/2dayを注射した。対照群としてリン酸緩衝生理食塩水を注射した(図16)。2〜3週間関節炎の発生程度を毎日観察し、その結果を浮腫による下記関節炎指数(arthritic index)で評価した。関節炎指数で評価した結果、化合物2、3、18、及び化合物6、11は明らかな減少効果を見せた(図15及び16)。
【0115】
−関節炎指数−
4本の足を0〜4点で評価、総16点
0点−正常
1点−足根骨に限られた軽い浮腫と発赤
2点−足首関節から足根骨にわたる軽い浮腫と発赤
3点−足首関節から中足骨にわたる中程度の浮腫と発赤
4点−足首関節から足指全体にわたる浮腫と発赤
<実施例7>炎症性腸疾患動物モデルにおける薬効の評価
炎症性腸疾患モデルとして5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)モデルを使用した。5%DSSを飲み水に混ぜて経口投与した。5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)モデルは上皮細胞に損傷を誘発し、主に左側大腸の潰瘍と大腸長さの縮小などが観察される。このようなモデルは投与容量に応じて一定程度の炎症が誘発される比較的簡単且つ再現性の高いモデルである。したがって、新しい薬剤の効能評価に多く使用される。
【0116】
DSSを飲み水ボトルに刺しておき、攝取させ続けた。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物は10%ビヒクルで懸濁して経口投与した。
【0117】
DSSを処理した結果、大腸の長さと幅が変化した。化合物18を処理した群では有意義に大腸の長さと幅が変化した(図17、18及び19)。この結果は、大腸炎モデルにおける本発明の化合物が防御効果を奏することを示す。
【0118】
また、排泄物状態として血便、肛門の汚ない程度、及び下痢を毎日測定した。スルファサラジンと化合物18の両方ともDSS処理群に比べ、排泄物スコアが有意義に減少した(図20)。
【0119】
<実施例8>急性膵臓炎動物モデルにおける薬効の評価
急性膵臓炎モデルとして、セルレイン誘導膵臓炎モデルを使用した。セルレインはコレシストキニンの類似体であって、膵臓で膵臓消化酵素の分泌を誘発するホルモンである。腹腔注射でセルレイン(50μg/kg)を投与することで膵臓に消化酵素を過度に分泌させた。2時間が経過した後、LPSを投与することで浮腫を誘発させた。セルレイン投与時、脾臓を基準にして全体的に浮腫が過度に起きたことが観察された。また、25mg/kgの化合物18を投与したとき、その浮腫を減少させることを確認することができた(図21)。図21のDは、このような浮腫によって増加する膵臓の重さを測定した結果である。化合物18の投与群は、膵臓の重さを有意義に減少させることを確認することができる。
【0120】
図22は、膵臓消化酵素であるアミラーゼとリパーゼの血漿内の濃度を測定したものである。上記のモデルでは、消化酵素が過度に増加して血液に放出される。結局、血液内の消化酵素の増加を抑制させるということは膵臓炎を低減させたことの間接的な証拠になる。図22は、アミラーゼとリパーゼが前記膵臓炎動物モデルにおける血漿で増加し、また25mg/kgの化合物18を投与したとき、このような増加を有意義に減少させたことを示す。
【0121】
炎症の防御効果を確認するために、炎症性サイトカインであるTNF‐αとIL‐1βの量を測定した。炎症酵素であるCOX‐2の生成物であるPGE2をELISA法を用いて測定した。膵臓炎モデルで炎症マーカーとして使用したTNF‐α、IL‐1β、及びPGE2が全て過度に増加したことを確認することができ、化合物18がこのような炎症マーカーを有意義に減少させることを確認することができた(図23及び24)。
【0122】
<実施例9>APPswe/PS1deltaE9二重遺伝子組み換え痴呆マウスにおける化合物2の薬効評価
9−1.ELISA分析によるサイトカインの減少効果
3.5ヶ月から10.5ヶ月までのAPP/PS1痴呆マウスに、化合物2を25mg/kg/dayあるいはイブプロフェン62.5mg/kg/dayを飼料に混合して長期投与した。総7ヶ月間薬物を投与した後、ELISAを通じてTNF‐α、IL‐1β、及びIL‐6の量を定量的に分析した(mean±SEM、n=3−5)。図25において「*」は、Student−Newman−Keuls testによる一元変量分析(One−way ANOVA)時、一般飼料のみを供給したAPP/PS1痴呆マウスに比べてp<0.05の有意差を見せることを示す。
【0123】
実験結果、化合物2の投与群はAPP/PS1痴呆マウスに比べてTNF‐α、IL‐1β、及びIL‐6の量全てが有意義に減少した(図25)。
【0124】
9−2.脳血管障壁に対する化合物2の保護効果
アルツハイマー病で脳血管損傷が発生することは広く知られている。脳血管障壁の損傷に対する化合物2と比較群であるイブプロフェンの効果を評価した。5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウスに2% Evans blue dye 3ml/gを血管に注入した。薬物は、生後2ヶ月から5ヶ月まで化合物2(25mg/kg/day)または比較薬物であるイブプロフェン(62.5mg/kg/day)を飼料に混合して投与した。その結果、図26のBと図26のFのように、正常マウスに比べてcortex、hippocampus、及びthalamusでEvans blue dyeの透過度が増加することを確認することができた。また、図26に示されたように、化合物2の投与群(図26のC及びG)及びイブプロフェンの投与群(図26のD及びH)で脳血管障壁の保護効果を確認することができた。
【0125】
9−3.チオフラビン色素染色法(Thioflavin‐S stain)を用いた化合物2のアミロイドプラーク減少効果
チオフラビン色素染色法を用いて本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が痴呆に及ぼす影響を評価した。総7ヶ月間(3.5〜10.5ヶ月齢APP/PS1)化合物2を25mg/kg/dayずつ投与した。化合物2の投与群は一般飼料のみを供給したAPP/PS1痴呆マウスに比べてアミロイドプラークの量が約53%減少した(図27)。また、総4ヶ月間(8.5〜12.5ヶ月齢APP/PS1)化合物1を25mg/kg/day投与した群は、一般飼料のみを供給したAPP/PS1痴呆マウスに比べてアミロイドプラークの量が約49.3%減少した。
【0126】
9−4.高架式十字迷路の遂行能力評価による化合物2の行動改善効果
3.5ヶ月から10.5ヶ月までのAPP/PS1痴呆マウスに化合物2を25mg/kg/day飼料に混合して長期投与した。総7ヶ月間薬物を投与した後、行動改善効果を検証するために高架式十字迷路テストを行った。高架式十字迷路は2つのopen arms(30cm×6cm×0.5cm)と2つのclosed arms(30cm×6cm×15cm)で構成され、6cm×6cmのcenter platformがある。高架式十字迷路テストにおいて、中央地点にopen armsに向かって慎重にマウスをおいた後、5分間実験動物がopen armに留まる時間を測定して分析した(mean±SEM、n=3−5)。図28において「*」は、Student−Newman−Keuls testによる一元変量分析時、APP/PS1痴呆マウスに比べてp<0.05の有意差を見せることを示す。
【0127】
その結果、7ヶ月間薬物を投与した後、10.5ヶ月齢の一般飼料のみを提供したAPP/PS1痴呆マウスと比べたところ、化合物2の投与群はopen armに留まる時間がさらに短いことが確認できた(図28)。
【0128】
<実施例10>G93A ALS動物モデルにおける化合物2の薬効評価
10−1.ミクログリア活性化の減少効果
退行性脳疾患の1つであるALS(amyotrophic lateral sclerosis)における薬物効果を測定するために、実際患者と類似の病理的特徴を持つ形質組み替え動物モデルG93A(Glycine⇒Alanine)マウスを用いた。
【0129】
TOMATO Lectin dye染色を通じてG93Aマウスの脊髄前角内に発現されるミクログリア(脳疾患モデルにおける炎症の1つのマーカー)の活性化程度を確認した。G93Aマウスは正常マウスに比べて観察されるミクログリアの活性化程度が著しく増加した。また、5mg/kg/dayの化合物2を投与したとき、活性化されたミクログリアを減少させることが確認できた(図29)。
【0130】
10−2.サイトカインの発現減少効果
一般飼料のみを提供した16週齢のG93Aマウス及び5mg/kg/dの化合物2投与群の脊髄部位を摘出した。RNAを分離した後、RT−PCRを通じて炎症性サイトカインであるTNF‐α及びIL‐1β mRNAの発現程度を確認した。その結果、化合物2の投与群は炎症性サイトカインを有効に減らすことが観察できた(図30)。
【0131】
<実施例12>パーキンソン病動物モデルにおける化合物2の薬効評価
C57/BL6マウス(雄/8週齢)にMPTP(40mg/kg)のみを皮下注射するか、またはMPTPを注射する30分前から化合物2を50mg/kgずつ毎日腹腔注射した。2日後に脳組織を摘出した。脳組織をCD11b免疫染色し、反応させた後、DAB(diaminobenzidine)で発色させた。光学顕微鏡でミクログリア(脳疾患モデルにおける炎症の1つのマーカー)の活性化程度を観察した(図31)。
【0132】
その結果、MPTPによって誘導されるミクログリアの活性が化合物2の投与によって減少することが分かった。
【0133】
以下、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩が適用され得る炎症疾患の具体的な例についてより詳細に説明する。下記の適用例は、本発明を例示するものにすぎず、本発明の範囲が下記の適用例に限定されることはない。本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、多様な炎症疾患の治療または予防に有効に使用することができる。
【0134】
<適用例1>胃炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、細胞培養実験によってアルコール誘導、ヘリコバクター・ピロリ誘導、NSAID誘導、及びH2O2誘導された細胞の死滅を効果的に防止した。本発明の化合物の効果は従来の胃炎などの細胞防御効果を持つ薬物であるムコスタまたはPPIに比べて卓越であった。また、本発明の化合物は動物モデルにおける実験結果から、アルコール誘導による胃炎などの治療に優れた効果を示し、消炎鎮痛剤として使われているNSAIDによる胃炎を緩和した。アスピリンと比較実験した結果、アスピリンよりさらに高容量を投与したマウスの胃で出血を誘導せず、安全性が確保された。したがって、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は胃炎の治療及び予防に非常に有効である。
【0135】
<適用例2>大腸炎(Inflammatory Bowl Disease、IBD)
シクロオキシゲナーゼ(COX)の産物であるプロスタグランジンとリポオキシゲナーゼの産物であるロイコトリエン(LTB4)は、潰瘍性大腸炎のような炎症性疾患の炎症反応で重要な役割を占めると知られている。5‐リポオキシゲナーゼ(5‐LOX)の抑制剤であるジレウトン(zileuton)とNSAIDであるスルファサラジンは、腸損傷動物モデルにおける炎症の程度を現わす指標として使われるMPO(myeloperoxidase)の活性を減少させた(Singh VP et al.、Indian J Exp Biol.2004;42(7):667−73)。また、COX‐2選択的抑制剤であるニメスリド(nimesulide)は、2つの異なる(酢酸誘導及びLTB4誘導IBD)腸損傷動物モデルにおいて保護効果を見せた。ニメスリドは炎症反応においてMPO活性を著しく抑制した(Singh VP et al.、Prostaglandins Other Lipid Mediat.2003;71(3−4):163−75)。したがって、抗炎症効果のある本発明の化合物は大腸炎の治療に非常に有効に利用することができる。
【0136】
<適用例3>リュウマチ性関節炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、コラーゲン誘導関節炎モデルにおいて従来関節炎治療剤として処方されているが副作用のあるメトトレキサートに比べ、ほぼ同じかまたは多少優れた効果を見せた。また、本発明の化合物はカラゲナン誘導痛覚過敏症に対する鎮痛緩和効果及びザイモサン誘導炎症性サイトカインの生成を抑制した。したがって、本発明の化合物は従来の炎症治療剤として使われる薬物と同等の効能を持ちながらも、安全性が確保されたリュウマチ性関節炎治療剤として使用することができる。
【0137】
<適用例4>膵臓炎
急性膵臓炎は、膵液の消化酵素または胆石症による胆汁が膵臓内に逆流して膵臓組織を自己消化して生じる炎症である。少しの浮腫からひどい出血まで多様な症状を現わし、これにより膵臓のさまざまな損傷をもたらす。膵臓炎は炎症と関連があるという報告が数多くあり、COX抑制剤による膵臓炎モデルの保護効果、及び炎症マーカーであるTNF‐α及びプロスタグランジン生成の抑制効果が報告された(Song AM et al.、Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2002;283(5):G1166−74)。本発明の化合物は膵臓炎の治療に非常に有効に利用することができる。
【0138】
<適用例5>糖尿病性炎症及び痛症
第2型糖尿病で抗炎症及び鎮痛の役割が重要視されている。さらに、抗炎症効果を持っている多くの治療剤が、第2型糖尿病の兆候を減少させるか又は発病時点を遅らせるという証拠が報告されている(Deans KA et al.、Diabetes Technol Ther.2006;8(1):18−27)。抗炎症化合物であるリソフィリン(lisofylline)は、ストレプトゾトシン投与マウスにおいてIFN‐γとTNF‐αを抑制することで糖尿の症状を50%以上減少させた(Yang Z et al.、Pancreas.2003;26(4):e99−104)。したがって、抗炎症効果のある本発明の化合物は糖尿病性炎症及び痛症の治療及び/または予防に非常に有効に利用することができる。
【0139】
<適用例6>動脈硬化
アポリポタンパク質E‐欠乏(apoE(−/−))マウスの初期アテローム性動脈硬化症(atherosclerotic lesion)において、選択的なCOX‐2抑制剤(例えば、ロフェコキシブ及びNS‐398)と非選択的なCOX抑制剤(例えば、インドメタシン)はアテローム性動脈硬化症をそれぞれ約35〜38%及び約38〜51%減少させた(Burleigh ME J Mol Cell Cardiol.2005 Sep;39(3):443−52)。したがって、抗炎症効果のある本発明の化合物は、動脈硬化の治療に有効に利用することができる。
【0140】
<適用例7>アルツハイマー性痴呆
アルツハイマー性痴呆は痴呆の原因のうち最も一般的な形態である。病理組織学的には、神経繊維のもつれ、アミロイドプラーク、深刻な神経細胞の死滅などがアルツハイマー性痴呆の特徴である。
近年、アルツハイマー性痴呆が炎症と関連があるという論文が数多く報告されている。痴呆動物モデルでミクログリア及び炎症性サイトカインの生成が増加するという報告が多い(Minghetti L.Current Opinion in Neurology 2005、18:315−321)。また、炎症を抑制する薬物の投与はアルツハイマー性痴呆動物モデルで保護効果を奏し得ると知られている(Townsend KP and Pratico D.FASEB J.2005;19(12):1592−601)。
【0141】
したがって、細胞保護効果及び抗炎症効果を示す本発明の化合物はアルツハイマー性痴呆の治療剤として有効に利用することができる。
【0142】
<適用例8>ALS
ルーゲーリック病は、筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)、運動(うんどう)ニューロン疾患(MND:motor neuron disease)などと呼ばれる病気であり、運動神経細胞が退行性変化によって漸次損傷することがこの疾患の特徴である。
また、ALSが炎症と関連があるという論文が数多く報告されているが、ALS動物モデルであるG93Aマウスでミクログリア及び炎症性サイトカインの生成が増加するという報告が多く(Weydt P and Moller T.Neuroreport.2005、25;16(6):527−31)、炎症を抑制する薬物の投与はALS動物モデルにおける保護効果を奏し得ることも知られている(West M et al.、J Neurochem.2004;91(1):133−43)。
したがって、本発明の化合物はルーゲーリック病の治療に有効に利用することができる。
【0143】
<適用例9>パーキンソン病
パーキンソン病は、黒質に存在するドーパミン神経細胞の死滅が伴われ、振戦、筋肉硬直、非正常的姿勢、運動不能などの多様な症状を現わす退行性神経系疾患である。
パーキンソン病が炎症と関連があるという論文が数多く報告されている。パーキンソン病でミクログリア及び炎症性サイトカインの生成が増加するという報告が多く(Gao HM、Trends Pharmacol Sci.2003;24(8):395−401;Minghetti L.Curr Opin Neurol.2005;18(3):315−21)、炎症を抑制する薬物の投与はパーキンソン病動物モデルにおける保護効果を奏すると知られている(Gao HM、Trends Pharmacol Sci.2003;24(8):395−401)。
【0144】
したがって、細胞保護効果及び抗炎症効果を持つ本発明の化合物はパーキンソン病の治療に非常に有効に利用することができる。
【0145】
〔産業上の利用可能性〕
本発明は、炎症疾患の治療または予防に有用な前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする薬学組成物、及びこのような薬学組成物を用いる炎症疾患の治療または予防方法を提供する。本発明による薬学組成物は、胃炎、大腸炎、関節炎、糖尿病炎症、膵臓炎、動脈硬化、腎臓炎、肝炎、アルツハイマー性痴呆、ルーゲーリック病、パーキンソン病などのような炎症疾患の治療または予防に非常に有効であるだけでなく、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、化合物2が胃の粘膜損傷を誘発せず安全であることを示す実験結果である。胃粘膜の損傷程度を確認するために、直接薬物を容量別に経口投与した。比較群としてアスピリンを使用した。
【図2】図2は、胃粘膜の損傷程度を確認するために試料を表示された容量どおり経口投与した結果である。化合物18は高容量を投与したにもかかわらず胃粘膜の損傷を誘発しなかった。比較群としてインドメタシン、イブプロフェン及びセレコキシブを使用した。
【図3】図3は、ヘリコバクターによって誘導される胃粘膜の損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS(human gastric cancer)細胞にヘリコバクター(43504、5×108cfu/ml)を単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に添加した。添加して24時間後に、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【図4】図4は、NSAIDであるスリンダク(sulindac)によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に100uMスリンダクを単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に添加した。添加して16時間後に、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【図5】図5は、酸化ストレスであるH2O2によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に100uMのH2O2を単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に8時間処理した後、培養液でさらに洗滌した。24時間後にMTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【図6】図6は、アルコール(エタノール)によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に25mMのエタノールを単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に24時間処理した。その後、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【図7】図7は、TNF‐α mRNAの発現程度を示した写真である。培養されたAGS細胞に25mMのエタノールを単独でまたは標識された濃度の化合物2と共に24時間処理した。その後、mRNAを抽出してRT−PCR法によって評価した。
【図8】図8は、アルコール/塩酸(EtOH/HCl)によって誘導される胃腸管出血を用いた化合物2の保護効果を評価した結果である。Aは正常マウスの胃の写真である。Bは200〜250gのマウスを24時間絶食させた後、60% EtOH/150mM HClを経口投与して胃腸管出血を誘導した写真である。Cはアルコール/塩酸を投与する30分前に化合物2で前処理し、胃腸管出血を起こして90分後に胃を摘出して観察した写真である。Dは胃損傷の程度を観察するために損傷された面積を定量したグラフである。
【図9】図9は、アルコール性胃炎に対する化合物2の保護作用を評価した結果である。Aは正常マウスの胃の写真である。Bは250gのマウスを24時間絶食させた後、エタノール(4ml/kg)を経口投与して胃腸管出血を誘導した写真である。Cは化合物2を胃腸管出血誘導の1時間前に前処理した後、胃腸管出血を起こして90分後に胃を摘出して観察した写真である。Dは胃損傷の程度を観察して定量したグラフである。
【図10】図10は、NSAID誘導胃炎に対する化合物2の保護作用を示す写真である。250gのマウスを24時間絶食させた後、インドメタシンを経口投与(A及びC)すれば胃腸管出血が起きる。化合物2を1時間前に処理(B及びD)し、胃腸管出血を起こして6時間(A及びB)または12時間(C及びD)後に胃を摘出した写真である。
【図11】図11は、関節炎動物モデルの1つであるカラゲナン(Carrageenan)によって誘導される温熱性痛覚過敏症(thermal hyperalgesia)を用いた化合物2の効果評価の結果である。2%カラゲナンをマウスの足部に皮内注射して温熱性痛覚過敏症を誘導した。化合物2は経口投与し、イブプロフェンを比較群として使用した。
【図12】図12は、関節炎動物モデルの1つであるザイモサン(zymosan)によって誘導されるTNF‐αの量を用いた化合物2の効果評価の結果である。1%ザイモサンをエアパウチで注入し、投与1時間の前に化合物2を容量別に単回経口投与した。4時間後に、エアパウチ滲出物からTNF‐αの量をELISA法で測定した。
【図13】図13は、関節炎動物モデルのうちの1つであるザイモサンによって誘導されるIL‐1αの量を化合物2が減少させる程度を示すグラフである。1%ザイモサンをエアパウチで注入し、投与1時間の前に化合物2を容量別に単回経口投与した。4時間後に、エアパウチ滲出物からIL‐1αの量をELISA法で測定した。
【図14】図14は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた効果評価の結果であり、コラーゲンによる足の浮腫を示す。Sham:正常マウスCollagen:コラーゲンを注射したマウス化合物18:25mg/kgの化合物18を腹腔注射したマウス
【図15】図15は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた効果評価の結果である。コラーゲン投与後、25mg/kgの化合物2、3または18及び対照群であるメトトレキサート(MTX、1mg/kg/week)を腹腔注射した。その後、4週間目視で観察した結果を関節炎指数として評価した。
【図16】図16は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた化合物6及び11の効果評価の結果である。コラーゲンを2週間隔で2回皮内注射し、1週間後に化合物6、化合物11、及び対照群であるメトトレキサートを腹腔注射した。その後、2〜3週間毎日観察した結果を関節炎指数として評価した。
【図17】図17は、炎症性腸疾患動物モデルである5%デキストラン硫酸ナトリウム(Dextran sulfate sodium、DSS)モデルを用いた効果評価の結果である。DSSを処理した後、10%ビヒクルに懸濁して10、25、50mg/kgの化合物18を経口投与した。Shamは正常マウスの大腸であり、DSSは5%DSSを処理したマウスの大腸である。その他は各容量の化合物18を投与したマウスの大腸写真である。
【図18】図18及び19は、図17の結果を定量化したグラフである。図18は大腸の長さであり、図19は大腸の広さである。
【図19】図18及び19は、図17の結果を定量化したグラフである。図18は大腸の長さであり、図19は大腸の広さである。
【図20】図20は、DSSを用いた化合物18の効果評価の結果である。DSSを処理した後、10%ビヒクルに懸濁して化合物18(25mg/kg)を経口投与した。その後、大腸の損傷による血便、下痢、及び汚ない程度を点数に換算して示した。
【図21】図21は、セルレイン(cerulein)によって誘導される急性膵臓炎モデルを用いた効果評価の結果である。50μg/kgのセルレインを投与して2時間が経過した後、LPSを投与して浮腫を誘発した。A−Cは写真結果であり、Dは膵臓の重さを測定して示したグラフである。A:正常マウスB:セルレインを投与したマウスC:化合物18(25mg/kg)を投与したマウス
【図22】図22は、セルレインによって誘導される急性膵臓炎モデルを用いた効果評価の結果である。50μg/kgのセルレインを投与して2時間が経過した後、LPSを投与して浮腫を誘発した。25mg/kgの化合物18を投与し、膵臓消化酵素であるアミラーゼとリパーゼの変化を定量化して示した。
【図23】図23及び図24は、セルレインによって誘導される膵臓炎モデルを用いた評価結果である。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が炎症マーカーであるTNF‐α、IL‐1β及びPGE2に及ぼす影響を評価した。
【図24】図23及び図24は、セルレインによって誘導される膵臓炎モデルを用いた評価結果である。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が炎症マーカーであるTNF‐α、IL‐1β及びPGE2に及ぼす影響を評価した。
【図25】図25は、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス(Tg+)の脳でELISA法を用いてTNF‐α、IL‐1βまたはIL−6の量を測定したグラフである。3ヶ月から7ヶ月の間、化合物2(25mg/kg/day)あるいはイブプロフェン(62.5mg/kg/day)を飼料に混合して長期投与した。
【図26】図26は、脳血管障壁に対する化合物2の保護効果を示す写真(低倍率と高配率)である。A:正常マウスB/F:APP/PS1痴呆マウスC/G:化合物2(25mg/kg/day)投与D/H:イブプロフェン(62.5mg/kg/day)投与
【図27】図27は、10.5ヶ月齢の正常マウス(A)、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス(B、Tg+)、3.5ヶ月から7ヶ月間化合物2(25mg/kg/d、C)あるいはイブプロフェン(62.5mg/kg/d、D)を飼料に混合して長期投与したAPP/PS1痴呆マウスの脳で生成されたアミロイドプラークを測定した写真である。チオフラビン(Thioflavin‐S)で免疫染色した。EはA−Dの結果を定量化したグラフである。
【図28】図28は、10.5ヶ月齢の正常マウス、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス、3.5ヶ月から7ヶ月間化合物2(25mg/kg/d)を飼料に混合して長期投与した10.5ヶ月齢のAPP/PS1マウスを用いて高架式十字迷路テストを行った結果である。それぞれの実験動物がopen armに留まる時間で効果を評価した。
【図29】図29は、G93Aマウスで炎症のマーカーであるミクログリア活性を示す写真である。TOMATOレクチンで免疫染色した。A:正常マウスB:G93AマウスC:5mg/kg/day化合物2投与群
【図30】図30は、G93Aマウスで炎症の一マーカーである炎症性サイトカイン(TNF‐αとIL‐1β)のmRNAレベルを示す結果である。RT−PCR(Reverse Transcription−Polymerase Chain Reaction)が使用された。
【図31】図31は、パーキンソン病の動物モデルで炎症に対する化合物2の抑制効果を示した写真である。CD11bで免疫染色した。A:MPTPを投与したマウスB:50mg/kg/dの化合物2投与群
【図32】図32は、本発明による幾つかの2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物の単回投与毒性実験の結果である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、胃炎、胃潰瘍、膵臓炎、大腸炎、関節炎、糖尿病、動脈硬化、腎臓炎、肝炎、アルツハイマー性痴呆、パーキンソン病、ルーゲーリック病などの炎症性疾患で現われる炎症と細胞損傷の治療または予防に有用な薬学組成物、及びこのような薬学組成物を用いる治療または予防方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
炎症は、損傷を受けた細胞から由来する損傷因子と外来物質に対する血管反応及び細胞反応である。炎症反応を媒介する物質としては、1)アラキドン酸(arachidonic acid)の代謝物質であるプロスタグランジン(prostaglandin)、ロイコトリエン(leukotriene)及びリポキシン(lipoxins)、2)血小板活性化因子(platelet activation factor)、3)腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor−alpha)、インターロイキン‐1(IL‐1)などのサイトカイン(cytokines)とmonocyte chemoattractant protein(MCP‐1)、macrophage inflammatory protein‐1alpha(MCP‐1alpha)などのケモカイン(chemokines)、4)一酸化窒素(NO)、5)活性酸素、6)ヒスタミン(histamine)、セロトニンなどのような血管拡張因子などが知られている。炎症反応の主な目的は、外来物質及び損傷を受けた細胞と組織を除去することであるが、炎症反応はリューマチ性関節炎及び動脈硬化のような慢性疾患を誘発する原因になる。
【0003】
炎症損傷の程度が小さく制限的且つ一時的な場合、炎症反応の完了と共に損傷因子が除去され、組織は正常に戻ってくる。損傷の程度が大きく再生力が不十分な組織における炎症反応は、かなりの組織損傷が伴われると、機能の障害を引き起し得る。炎症反応が長期間に亘って慢性的に続くと、リューマチ性関節炎、動脈硬化、結核、慢性肺疾患で致命的な組織損傷の原因になる(Pathological Basis of Disease、pp.47−86、7th edition)。
【0004】
また、炎症が退行性脳疾患の病態生理に重要な役割を占めるという結果が続々と報告されている。脳に存在するミクログリア(microglia)は、アルツハイマー性痴呆、パーキンソン病、ルーゲーリック病において神経損傷が起きる部位で活性化される(Liu B及びHong JS.J Pharmacol Exp Ther.2003;304(1):1−7;Orr CF et al.、Prog Neurobiol.2002;68(5):325−40;及びHenkel JS et al.、Ann Neurol.2004;55(2):221−35)。活性化されたミクログリアはプロスタグランジン、サイトカイン、ケモカイン、活性酸素、NOなどを生成し、脳における炎症反応を開始する(Minghetti L.Curr Opin Neurol.2005;18(3):315−21;Gao HM、Trends Pharmacol Sci.2003;24(8):395−401;Weydt P and Moller T.Neuroreport.2005;16(6):527−31;及びJ.J.M.Hoozemans Int.J.Devl Neuroscience.2006;24:157−165)。したがって、炎症を抑制する薬物の投与は、アルツハイマー性痴呆の動物モデルでベータアミロイドとプラークの生成を抑制し(Townsend KP and Pratico D.FASEB J.2005;18:315−21)、パーキンソン病動物モデルでドーパミン神経細胞を保護し(Ferger B et al.、Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol.1999;360(3):256−61;及びTeismann P、Ferger B.Synapse.2001;39(2):167−74)、ルーゲーリック病モデルで脊髄運動神経細胞の死滅を防止し且つグリア(glia)活性を減らすと報告された(Kiaei M et al.、J Neurochem.2005;93(2):403‐11)。実際、打撲傷など脳に炎症反応を伴う病歴を持つ患者からADの発病率が高く(Breitner et al.、1994)、非ステロイド性消炎剤(nonsteroidal anti−inflammatory drug、NSAID)を長期服用するリューマチ性関節炎患者のAD発病率が低いと報告された(McGeer and Rogers、1990)。NSAIDの服用が、ADの予防はもちろん認知機能損傷の進行を遅らせるという研究結果も発表された(Rich et al.、1995 Neurology;Andersen et al.、1995 Neurology;及びBreitner et al.、1994 Neurology)。このような結果は、炎症反応を抑制する薬物が退行性脳疾患の予防と治療に用いられ得ることを提示する。
【0005】
プロスタグランジンの生成に関与するシクロオキシゲナーゼの作用を抑制する薬物であるNSAIDが開発されて痛症を含む炎症疾患の症状を緩和するために広く使われているが、その副作用により使用に大きい障害となっている。特に、消化不良、胃炎、潰瘍、出血、穿孔などの胃腸管障害は、NSAIDの服用後、頻繁に現われる副作用である。実際、NSAIDの副作用で、米国だけで年間107,000人が入院し、16,500人が死亡すると報告されている。胃腸管損傷の副作用が小さい選択的COX‐2(cyclooxygenase‐2)酵素抑制薬物であるCoxibとしてcelecoxibとrofecoxibが開発され、関節炎と痛症の治療に使われてきた。2005年米国FDAは、celecoxib、rofecoxibまたはvaldecoxibの長期服用は心臓疾患を誘発すると報告し、関節炎治療剤としてのCoxib薬物の使用が制限された。さらに、celecoxibとrofecoxibの痴呆臨床研究が安全性の理由から中断された。
【0006】
また、炎症疾患において、好中球、マクロファージ、モノサイトなどによって生成される活性酸素は、炎症反応を媒介して組織損傷を誘発する主な原因として知られている。実際、活性酸素を除去する薬物の投与が、炎症疾患で現われる胃損傷(Matthews GM et al.及びHelicobacter.2005;10(4):298−306)、膵臓損傷(Shi C et al.、Pancreatology.2005;5(4−5):492−500)、動脈硬化(Tardif JC.Curr Atheroscler Rep.2005;7(1):71−7)、大腸損傷(Oz HS et al.、J Nutr Biochem.2005;16(5):297−304)、関節損傷(Henrotin Y E et al.、Osteoarthritis Cartilage.2003;11(10):747−55)、腎臓損傷(Tian N et al.、Hypertension.2005;45(5):934−9)、肝損傷(Loguercio C et al.、Free Radic Biol Med.2003;34(1):1−10)、心血管損傷(Haidara MA et al.、Curr Vasc Pharmacol.2006;4(3):215−27)などに効果があるという結果が提示されている。さらに、非ステロイド性抗炎症薬物の投与は、活性酸素の生成を誘発して胃粘膜損傷との副作用を起こし、このような胃損傷は抗酸化物質の投与によって減少することが報告されている(Graziani G et al.、Gut.2005;54(2):193−200)。
【0007】
炎症は消火器、呼吸器、神経系疾患の病態生理に重要な役割を占めるが、現在使われている薬物は副作用のために使用が制限されている。抗炎症薬物であるアスピリン(acetylsalicylic acid)がNF‐kBとc‐Jun N‐terminal kinaseの作用を抑制し(Ko HW et al.、J Neurochem.1998;71(4):1390−5)、スルファサラジンが抗酸化作用で細胞を保護することが知られている(Ryu BR et al.、J Pharmacol Exp Ther.2003;305(1):48−56)。しかし、アスピリンとスルファサラジンの細胞保護作用は、高濃度で現われるとの限界が問題として提起された。
【0008】
〔発明の開示〕
したがって、本発明の技術的課題は、胃損傷、心血管障害などの副作用がなく安全であって炎症疾患の治療または予防に優れる薬学組成物、このような薬学組成物の炎症疾患治療または予防用途、及びこのような薬学組成物を投与することを含む炎症疾患治療または予防方法を提供することである。
【0009】
上記の技術的課題を達成するために、本発明は有効成分として下記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする炎症疾患の治療または予防用薬学組成物を提供する。
【0010】
[化学式1]
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1において、
nは2ないし5の整数であり、
R1は水素またはアルキルであり、
R2は水素、アルキルまたはアルカノイルであり、
R3は水素またはアセトキシであり、
Xは相互独立的に、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはハロアルコキシである。
【0013】
より望ましくは、本発明は前記炎症疾患が胃炎、大腸炎、関節炎、糖尿病炎症、動脈硬化、腎臓炎、肝炎、アルツハイマー性痴呆、パーキンソン病、及びルーゲーリック病からなる群より選択されたいずれか1つであることを特徴とする炎症疾患の治療または予防用薬学組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は炎症疾患で苦む患者または動物に前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩の治療的に有効な量を投与することを含む炎症疾患の治療または予防方法を提供する。
【0015】
本発明者等は、様々な化合物を製造して評価したところ、前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩が安全であるだけでなく炎症疾患の治療または予防に非常に有用であることを見つけ、本発明の完成に至った。
【0016】
以下、本発明の炎症疾患治療または予防用薬学組成物、及び炎症疾患の治療または予防方法についてより具体的に説明する。
【0017】
本発明は、下記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩の新たな用途、すなわち炎症疾患の治療または予防用途を提供し、また下記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を用いて炎症疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0018】
[化学式1]
【0019】
【化2】
【0020】
前記化学式1において、
nは2ないし5の整数であり、
R1は水素またはアルキルであり、
R2は水素、アルキルまたはアルカノイルであり、
R3は水素またはアセトキシであり、
Xは相互独立的に、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはハロアルコキシである。
【0021】
前記化学式1において、アルキル(ハロアルキルのアルキルを含む)は炭素数1ないし5のアルキルであることが望ましく、炭素数1または3のアルキルであることがさらに望ましい。具体的に、前記アルキルとしてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec‐ブチル及びtert‐ブチル基が望ましいが、これに限定されることはない。アルコキシ(ハロアルコキシのアルコキシを含む)は、炭素数1ないし5のアルコキシであることが望ましく、炭素数1または3のアルコキシであることがさらに望ましい。具体的に、前記アルコキシとしてはメトキシ、エトキシ及びプロトキシ基が望ましいが、これに限定されることはない。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及びヨードであることが望ましいが、これに限定されることはない。アルカノイルは炭素数2ないし10のアルカノイルであることが望ましく、炭素数3または5であることがさらに望ましい。具体的に、前記アルカノイルとしてはエタノイル、プロパノイル、及びシクロヘキサンカルボニルが望ましいが、これに限定されることはない。
【0022】
前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の望ましい例には、2‐ヒドロキシ‐5‐フェネチルアミノ‐安息香酸(化合物1)、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(3‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物3)、5‐[2‐(3,5‐ビス‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物4)、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(2‐ニトロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物5)、5‐[2‐(4‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物6)、5‐[2‐(3,4‐ジフルオロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物7)、5‐[2‐(3,4‐ジクロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物8)、5‐[2‐(4‐フルオロ‐2‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物9)、5‐[2‐(2‐フルオロ‐4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物10)、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐メトキシ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物11)、2‐ヒドロキシ‐5‐(2‐o‐トリル‐エチルアミノ)‐安息香酸(化合物12)、2‐ヒドロキシ‐5‐(3‐フェニル‐プロピルアミノ)‐安息香酸(化合物13)、2‐ヒドロキシ‐5‐[3‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐安息香酸(化合物14)、5‐[3‐(4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物15)、5‐[3‐(3,4‐ジクロロ‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物16)、2‐ヒドロキシ‐5‐(3‐p‐トリル‐プロピルアミノ)‐安息香酸(化合物17)、2‐アセトキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物18)、及び5‐[2‐(2‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸(化合物19)が含まれるが、これに限定されることはない。
【0023】
前述した望ましい化合物のうち、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)及び2‐アセトキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物18)は、炎症疾患治療用活性物質として他の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体に比べてさらに望ましい。
【0024】
前述した望ましい化合物のうち、化合物2は、特に退行性脳疾患の細胞損傷及び炎症の治療において他の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体に比べてさらに望ましい。化合物2は、抗炎症効果の観点から、類似の構造を持つ幾つかの化合物に比べて非常に優れた効果を示し、またベータアミロイド生成抑制効果に対する観点からも、類似の構造を持つ幾つかの化合物に比べて優れた効果を示した。勿論、NO生成抑制効果など1つの実験結果のみに基づく場合には、化合物2よりさらに優れた効果を示す化合物が存在するが、退行性脳疾患治療剤としての他の評価実験で相対的に良くない結果を示し退行性脳疾患治療剤として好適ではなかった(例えば、幾つかの化合物はNO生成抑制効果が化合物2より優れたが、退行性脳疾患の治療において非常に重要なベータアミロイド生成抑制効果が非常に微弱であった)。また、幾つかの化合物は薬効評価実験で優れた結果を示したが、後述する毒性評価実験で化合物2に比べて望ましくなかった。
【0025】
同様に、前述した望ましい化合物のうちの化合物18は、炎症疾患の治療において、他の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体に比べてさらに望ましい。化合物18は、抗炎症効果の観点から類似の構造を持つ幾つかの化合物に比べて非常に優れた効果を示したが、また後述する毒性評価実験で化合物2に比べては効果が落ちた。
【0026】
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、以下のような反応式によって製造することができるが、これに限定されることはない。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、本発明が属した分野で公知の合成法を用いて製造することができる。
【0027】
<反応式1>
【0028】
【化3】
【0029】
反応条件:トリエチルアミン、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、N,N‐ジメチルホルムアミド、常温、3時間。
【0030】
<反応式2>
【0031】
【化4】
【0032】
反応条件:(a)エタノール、H2SO4、還流、6時間;(b)無水酢酸、メタノール、0℃、30分;(c)無水酢酸、H2SO4、0℃、30分
また、本発明の望ましい一実施例である2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)は、以下のような反応式3によって製造することができるが、これに限定されることはない。
【0033】
<反応式3>
【0034】
【化5】
【0035】
反応条件:(a)4‐(トリフルオロメチル)ヒドロ桂皮酸、PCl5、キシレン、還流、12時間;(b)塩化アセチル、DMF/K2CO3、室温、2時間;(c)NaBH4、酢酸/1,4‐ジオキサン、約95℃、50分;(d)HCl/H2O、酢酸。
【0036】
本発明において「薬学的に許容可能な塩」とは、毒性がないか又は少ない酸または塩基から製造された塩を言う。本発明の化合物が相対的に酸性である場合、塩基(base)付加塩は十分な量の所望の塩基と本発明の化合物とを適当な不活性溶媒で接触させ、中性形態を得ることができる。薬学的に許容可能な塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウムまたは有機アミノからなる塩を含むが、これに限定されることはない。本発明の化合物が相対的に塩基性である場合、酸(acid)付加塩は十分な量の所望の酸と本発明の化合物とを適当な不活性溶媒で接触させ、中性形態を得ることができる。薬学的に許容可能な酸付加塩は、プロピオン酸、イソブチル酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、塩酸、臭素酸、窒酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素、亜リン酸などから形成された塩を含むが、これに限定されることはない。また、アルジネートのようなアミノ酸の塩、及びグルクロン酸またはガラクツロン酸(galactunoric acid)のような有機酸の類似体を含むが、これに限定されることはない。
【0037】
例えば、本発明の望ましい一実施例である2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)の薬学的に許容可能な塩は、以下のような反応式4によって製造することができるが、これに限定されることはない。
【0038】
<反応式4>
【0039】
【化6】
【0040】
反応式4において、Mはジエチルアミン、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの薬学的に許容される金属または塩基性有機化合物を指す。
【0041】
より具体的に、ジエチルアミン塩はアルコールに化合物を溶解してから、ジエチルアミンを滴加し撹拌した後、減圧蒸留し残渣にエーテルを添加して結晶化させて得る。アルカリ金属塩を製造する方法としては、アルコール、アセトン、アセトニトリルなどのような溶媒下でアルカリ金属を提供し得る水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機試薬を用いて目的とする塩形態化合物を製造し、凍結乾燥させて得ることができる。また、類似の方法を用いて、リチウム塩はリチウムアセテートを使用し、ナトリウム塩はナトリウム2‐ヘキサン酸エチルまたはナトリウムアセテートを使用し、カリウム塩はカリウムアセテートを使用して目的とする塩を製造することができる。
【0042】
本発明の一部化合物は、水和物形態を含み、溶媒和された形態だけでなく非溶媒和された形態で存在することもできる。本発明の一部化合物は、結晶形または無晶形で存在することができ、このようなすべての物理的形態は本発明の範囲に含まれる。また、本発明の一部化合物は、光学中心である非対称炭素原子または二重結合を有することがあり、ラセミ化合物、鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体(きかいせいたい)などが存在することができ、これらも本発明の範囲に含まれる。
【0043】
さらに、本発明は前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩と、薬剤学的に許容される賦形剤または添加剤とを含む薬学組成物を提供する。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩は、単独であるいは如何なる便利な担体、賦形剤などと共に混合して投与でき、そのような投与剤形は単回投与または反復投与剤形であり得る。
【0044】
本発明の薬学組成物は固形製剤または液状製剤であり得る。固形製剤としては、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、坐剤などがあるが、これに限定されることはない。固形製剤には、賦形剤、着香剤、結合剤、防腐剤、崩解剤、滑沢剤、充填剤などがさらに含まれるが、これに限定されることはない。液状製剤としては、水、プロピレングリコール溶液のような溶液剤、懸濁液剤、乳剤などがあるが、これに限定されることはなく、適当な着色剤、着香剤、安定化剤、粘性化剤などを添加して製造することができる。
【0045】
例えば、散剤は、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物と乳糖、澱粉、微結晶セルロースなど薬剤学的に許容される適当な賦形剤を単純混合することで製造することができる。顆粒剤は、本発明の化合物またはこれの薬学的に許容できる塩;薬剤学的に許容される適当な賦形剤;及びポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの薬剤学的に許容される適当な結合剤を混合した後、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶媒を用いた湿式顆粒法または圧縮力を用いた乾式顆粒法を用いて製造することができる。また、錠剤は前記顆粒剤をステアリン酸マグネシウムなどの薬剤学的に許容される適当な滑沢剤と混合した後、打錠機を用いて打錠することで製造することができる。
【0046】
本発明の薬学組成物は、治療する疾患及び個体の状態に応じて経口剤、注射剤(例えば、筋肉注射、腹腔走査、静脈注射、注入、皮下注射、イムプラント)、吸入剤、鼻腔投与剤、膣剤、直腸投与剤、舌下剤、経皮剤、局所剤などに投与することができるが、これに限定されることはない。投与経路により、通常用いられて非毒性であり、且つ薬剤学的に許容される担体、添加剤、ビヒクルを含む適当な投与ユニット剤形に製剤化することができる。一定時間薬物を持続的に放出できるデポー(depot)剤形も本発明の範囲に含まれる。
【0047】
さらに、本発明は前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩の炎症疾患治療または予防用途、すなわち前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする炎症疾患の治療または予防用組成物を提供する。より具体的に、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩は胃炎、胃潰瘍、膵臓炎、大腸炎、関節炎、糖尿病、動脈硬化、腎臓炎、肝炎などの炎症疾患、及びアルツハイマー性痴呆、パーキンソン病、ルーゲーリック病などの退行性脳疾患で現われる炎症と細胞損傷の治療または予防のために用いることができるが、本発明による2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体及びこれの塩の用途は前述した具体的な疾患名に限定されることはない。
【0048】
炎症疾患の治療のための使用にあたって、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は毎日約0.01mg/kgないし約100g/kg投与することができ、約0.1mg/kgないし約10g/kgの1日投与量が望ましい。しかし、前述した投与量は、患者の状態(年齢、性別、体重など)、治療している状態の深刻性、使われた化合物などによって多様である。必要に応じて、1日の総投与量を分け、一日数回に渡って投与することができる。
【0049】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、化合物2が胃の粘膜損傷を誘発せず安全であることを示す実験結果である。胃粘膜の損傷程度を確認するために、直接薬物を容量別に経口投与した。比較群としてアスピリンを使用した。
【0050】
図2は、胃粘膜の損傷程度を確認するために試料を表示された容量どおり経口投与した結果である。化合物18は高容量を投与したにもかかわらず胃粘膜の損傷を誘発しなかった。比較群としてインドメタシン、イブプロフェン及びセレコキシブを使用した。
【0051】
図3は、ヘリコバクターによって誘導される胃粘膜の損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS(human gastric cancer)細胞にヘリコバクター(43504、5×108cfu/ml)を単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に添加した。添加して24時間後に、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【0052】
図4は、NSAIDであるスリンダク(sulindac)によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に100uMスリンダクを単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に添加した。添加して16時間後に、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【0053】
図5は、酸化ストレスであるH2O2によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に100uMのH2O2を単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に8時間処理した後、培養液でさらに洗滌した。24時間後にMTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【0054】
図6は、アルコール(エタノール)によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に25mMのエタノールを単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に24時間処理した。その後、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【0055】
図7は、TNF‐α mRNAの発現程度を示した写真である。培養されたAGS細胞に25mMのエタノールを単独でまたは標識された濃度の化合物2と共に24時間処理した。その後、mRNAを抽出してRT−PCR法によって評価した。
【0056】
図8は、アルコール/塩酸(EtOH/HCl)によって誘導される胃腸管出血を用いた化合物2の保護効果を評価した結果である。Aは正常マウスの胃の写真である。Bは200〜250gのマウスを24時間絶食させた後、60% EtOH/150mM HClを経口投与して胃腸管出血を誘導した写真である。Cはアルコール/塩酸を投与する30分前に化合物2で前処理し、胃腸管出血を起こして90分後に胃を摘出して観察した写真である。Dは胃損傷の程度を観察するために損傷された面積を定量したグラフである。
【0057】
図9は、アルコール性胃炎に対する化合物2の保護作用を評価した結果である。Aは正常マウスの胃の写真である。Bは250gのマウスを24時間絶食させた後、エタノール(4ml/kg)を経口投与して胃腸管出血を誘導した写真である。Cは化合物2を胃腸管出血誘導の1時間前に前処理した後、胃腸管出血を起こして90分後に胃を摘出して観察した写真である。Dは胃損傷の程度を観察して定量したグラフである。
【0058】
図10は、NSAID誘導胃炎に対する化合物2の保護作用を示す写真である。250gのマウスを24時間絶食させた後、インドメタシンを経口投与(A及びC)すれば胃腸管出血が起きる。化合物2を1時間前に処理(B及びD)し、胃腸管出血を起こして6時間(A及びB)または12時間(C及びD)後に胃を摘出した写真である。
【0059】
図11は、関節炎動物モデルの1つであるカラゲナン(Carrageenan)によって誘導される温熱性痛覚過敏症(thermal hyperalgesia)を用いた化合物2の効果評価の結果である。2%カラゲナンをマウスの足部に皮内注射して温熱性痛覚過敏症を誘導した。化合物2は経口投与し、イブプロフェンを比較群として使用した。
【0060】
図12は、関節炎動物モデルの1つであるザイモサン(zymosan)によって誘導されるTNF‐αの量を用いた化合物2の効果評価の結果である。1%ザイモサンをエアパウチで注入し、投与1時間の前に化合物2を容量別に単回経口投与した。4時間後に、エアパウチ滲出物からTNF‐αの量をELISA法で測定した。
【0061】
図13は、関節炎動物モデルのうちの1つであるザイモサンによって誘導されるIL‐1αの量を化合物2が減少させる程度を示すグラフである。1%ザイモサンをエアパウチで注入し、投与1時間の前に化合物2を容量別に単回経口投与した。4時間後に、エアパウチ滲出物からIL‐1αの量をELISA法で測定した。
【0062】
図14は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた効果評価の結果であり、コラーゲンによる足の浮腫を示す。
Sham:正常マウス
Collagen:コラーゲンを注射したマウス
化合物18:25mg/kgの化合物18を腹腔注射したマウス
図15は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた効果評価の結果である。コラーゲン投与後、25mg/kgの化合物2、3または18及び対照群であるメトトレキサート(MTX、1mg/kg/week)を腹腔注射した。その後、4週間目視で観察した結果を関節炎指数として評価した。
【0063】
図16は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた化合物6及び11の効果評価の結果である。コラーゲンを2週間隔で2回皮内注射し、1週間後に化合物6、化合物11、及び対照群であるメトトレキサートを腹腔注射した。その後、2〜3週間毎日観察した結果を関節炎指数として評価した。
【0064】
図17は、炎症性腸疾患動物モデルである5%デキストラン硫酸ナトリウム(Dextran sulfate sodium、DSS)モデルを用いた効果評価の結果である。DSSを処理した後、10%ビヒクルに懸濁して10、25、50mg/kgの化合物18を経口投与した。Shamは正常マウスの大腸であり、DSSは5%DSSを処理したマウスの大腸である。その他は各容量の化合物18を投与したマウスの大腸写真である。
【0065】
図18及び19は、図17の結果を定量化したグラフである。図18は大腸の長さであり、図19は大腸の広さである。
【0066】
図20は、DSSを用いた化合物18の効果評価の結果である。DSSを処理した後、10%ビヒクルに懸濁して化合物18(25mg/kg)を経口投与した。その後、大腸の損傷による血便、下痢、及び汚ない程度を点数に換算して示した。
【0067】
図21は、セルレイン(cerulein)によって誘導される急性膵臓炎モデルを用いた効果評価の結果である。50μg/kgのセルレインを投与して2時間が経過した後、LPSを投与して浮腫を誘発した。A−Cは写真結果であり、Dは膵臓の重さを測定して示したグラフである。
A:正常マウス
B:セルレインを投与したマウス
C:化合物18(25mg/kg)を投与したマウス
図22は、セルレインによって誘導される急性膵臓炎モデルを用いた効果評価の結果である。50μg/kgのセルレインを投与して2時間が経過した後、LPSを投与して浮腫を誘発した。25mg/kgの化合物18を投与し、膵臓消化酵素であるアミラーゼとリパーゼの変化を定量化して示した。
【0068】
図23及び図24は、セルレインによって誘導される膵臓炎モデルを用いた評価結果である。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が炎症マーカーであるTNF‐α、IL‐1β及びPGE2に及ぼす影響を評価した。
【0069】
図25は、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス(Tg+)の脳でELISA法を用いてTNF‐α、IL‐1βまたはIL−6の量を測定したグラフである。3ヶ月から7ヶ月の間、化合物2(25mg/kg/day)あるいはイブプロフェン(62.5mg/kg/day)を飼料に混合して長期投与した。
【0070】
図26は、脳血管障壁に対する化合物2の保護効果を示す写真(低倍率と高配率)である。
A:正常マウス
B/F:APP/PS1痴呆マウス
C/G:化合物2(25mg/kg/day)投与
D/H:イブプロフェン(62.5mg/kg/day)投与
図27は、10.5ヶ月齢の正常マウス(A)、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス(B、Tg+)、3.5ヶ月から7ヶ月間化合物2(25mg/kg/d、C)あるいはイブプロフェン(62.5mg/kg/d、D)を飼料に混合して長期投与したAPP/PS1痴呆マウスの脳で生成されたアミロイドプラークを測定した写真である。チオフラビン(Thioflavin‐S)で免疫染色した。EはA−Dの結果を定量化したグラフである。
【0071】
図28は、10.5ヶ月齢の正常マウス、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス、3.5ヶ月から7ヶ月間化合物2(25mg/kg/d)を飼料に混合して長期投与した10.5ヶ月齢のAPP/PS1マウスを用いて高架式十字迷路テストを行った結果である。それぞれの実験動物がopen armに留まる時間で効果を評価した。
【0072】
図29は、G93Aマウスで炎症のマーカーであるミクログリア活性を示す写真である。TOMATOレクチンで免疫染色した。
A:正常マウス
B:G93Aマウス
C:5mg/kg/day化合物2投与群
図30は、G93Aマウスで炎症の一マーカーである炎症性サイトカイン(TNF‐αとIL‐1β)のmRNAレベルを示す結果である。RT−PCR(Reverse Transcription−Polymerase Chain Reaction)が使用された。
【0073】
図31は、パーキンソン病の動物モデルで炎症に対する化合物2の抑制効果を示した写真である。CD11bで免疫染色した。
A:MPTPを投与したマウス
B:50mg/kg/dの化合物2投与群
図32は、本発明による幾つかの2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物の単回投与毒性実験の結果である。
【0074】
〔発明を実施するための最良の形態〕
以下、本発明をより具体的に説明するために実施例などを挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、本発明の具体的理解を助けるために例示的に提供されるものである。
【0075】
<合成例1>2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物2)の製造
5‐アミノサリチル酸(0.51g、3.90mmol)を常温窒素気流下でN,N‐ジメチルホルムアミド(20.0ml)に入れて撹拌させた。トリエチルアミン(0.50ml)とヨウ化テトラブチルアンモニウム(10.1mg)を入れた後、30分間撹拌した。その後、1‐(2‐(ブロモエチル)‐4‐トリフルオロメチル)ベンゼンを添加し、常温で3時間撹拌した。反応を終結するために反応容器に氷を添加した。生成された結晶を濾過してアセトンとヘクサンを用いて撹拌させた後、再び濾過した。濾過された固体をエチルアセテートに溶かした後、0.5N塩酸と塩水で洗滌した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧蒸留して2‐ヒドロキシ‐5‐(4‐(トリフルオロメチル)ペニルエチルアミノ)安息香酸0.54g(21%収率)を得た。
1H NMR(DMSO‐d6):7.62(d,2H)、7.48(d,2H)、6.98(d,1H)、6.88(q,1H)、6.76(d,1H)、3.24(t,2H)、2.91(t,2H)
<合成例2>2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸カリウム塩の製造
前記合成例1で製造した2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(10g、30.7mmol)を無水エタノール(100ml)に加えて50℃まで加温して完全に溶解させた。その後、溶液を0℃に冷却した。85%水酸化カリウム(2.03g、30.7mmol)と無水エタノール(20ml)溶液を使ってpHを6.8〜7.0に調節した後、室温で2時間撹拌した。沈殿した結晶を濾過及び乾燥して目的とする化合物である2‐ヒドロキシ‐5‐(4‐(トリフルオロメチル)ペニルエチルアミノ)安息香酸カリウム塩(10.4g)を93%の収率で得た。
【0076】
1H NMR(DMSO‐d6):7.62(d,2H)、7.48(d,2H)、6.98(d,1H)、6.90(q,1H)、6.84(d,1H)、3.24(t,2H)、2.91(t,2H)
<合成例3>2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐ニトロペニル)エチルアミノ]‐安息香酸の製造
5‐アミノサリチル酸(500mg、3.26mmol)及び4‐ニトロペニルエチルブロマイド(900mg、3.92mmol)を使って合成例1と同様の方法によって、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐ニトロペニル)エチルアミノ]‐安息香酸890mg(50%収率)を淡い黄色固体相で得た。融点234〜236℃。
【0077】
C15H14N2O5の元素分析
【0078】
【表1】
【0079】
<合成例4>2‐ヒドロキシ‐5‐[3‐(4‐ニトロペニル)‐n‐プロピルアミノ]‐安息香酸の製造
5‐アミノサリチル酸(500mg、3.26mmol)及び3‐(4‐ニトロペニル)プロピルブロマイド(950mg、3.92mmol)を使って合成例1と同様の方法により、2‐ヒドロキシ‐5‐[3‐(4‐ニトロペニル)‐n‐プロピルアミノ]‐安息香酸520mg(50%収率)を淡い黄色固体相で得た。融点229〜231℃。
C16H16N2O5の元素分析
【0080】
【表2】
【0081】
<合成例5>
他の化合物も前記合成例1と同様の方法で製造し、分析結果を下記表3にまとめて示した。
【0082】
【表3】
【0083】
<合成例6>2‐アセトキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸(化合物18)の製造
化合物18を下記反応式によって製造した。
【0084】
<反応式5>
【0085】
【化7】
【0086】
化合物a:化合物2(50.0g、154mmol)の200mL H2O:1,4‐ジオキサン(1:1)混合溶液にNa2CO3(32.6g、307mmol)とジ‐tert‐ブチルジカボネイト(40.3g、185mmol)を室温で添加した。8時間撹拌した後、ジ‐tert‐ブチルジカボネイト(16.8g、76.9mmol)をさらに添加した。室温で8時間再び撹拌した後、反応混合物は2N HClで中和(pH 〜6)した。生成混合物はエチルアセテート(200mL、2回)で抽出した。有機相を混合し、塩水(100mL)で洗滌してMgSO4で乾燥した後、濾過した。結果として、黄色い泡沫状の濃縮物である化合物21を得、追加精製なく粗化合物aが後続する反応に使われた。
【0087】
1H NMR(400MHz,CDCl3)10.52(1H,br S)、7.53(d,2H,J=8Hz)、7.53(br,1H)、7.28(d,2H,J=8Hz)、7.26(br,1H)、6.94(d,1H,J=8.8Hz)、3.85(t,2H,J=7.2Hz)、2.94(t,2H,J=7.2Hz)、1.43(br s,9H)
化合物b:化合物aのジクロロメタン(200mL)溶液にN,N‐ジイソプロピルエチルアミン(80.3mL、461mmol)と塩化アセチル(21.9mL、307mmol)を0℃で添加した。反応混合物は室温まで加温し、5時間撹拌した。1N HCl(100mL)水溶液を反応混合物に添加した。反応物は層に分離され、水層はジクロロメタン(100mL)で抽出した。有機相を混合して塩水(100mL)で洗滌し、MgSO4で乾燥して濾過した後、濃縮した。粗生成物をジエチルエーテルで再結晶して白い固体相の化合物22(51.5g、71.7%)を生成した。
【0088】
1H NMR(400MHz、CDCl3)7.82(br s,1H)、7.54(d,2H,J=8Hz)、7.38−7.24(m,1H)、7.28(d,1H,J=8Hz)、7.08(d,1H,J=7.6Hz)、3.91(t,2H,J=7.2Hz)、2.98(t,2H,J=7.2Hz)、2.34(s,3H)、1.42(br s,9H)
化合物18:化合物b(51.5g、110mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液を0℃で4N HClの1,4‐ジオキサン溶液(200mL)で処理した。反応混合物は室温まで加温された。5時間撹拌した後、懸濁液は濃縮した。残渣はジエチルエーテル(500mL)で粉砕(triturate)した。ジクロロメタン(500mL)とジエチルエーテル(500mL)を用いて濾過及び洗滌し、白い固体相の化合物18(46.0g、82.5mmol、92.3%)を得た。
【0089】
1H NMR(400MHz、DMSO‐d6)7.66(d,2H,J=7.6Hz)、7.52(d,2H,J=7.6Hz)、7.15(s,1H)、6.91(d,1H,J=8.6Hz)、6.85(d,1H,J=8.6Hz)、3.32(t,2H,J=7Hz)、2.95(t,2H,J=7Hz)、2.18(s,3H));LCMS calc.for C18H16F3NO4(M+H+):368、found 368.
<実施例1>細胞における抗炎症効果の評価
1−1.NO生成阻害効果
炎症反応に関与する炎症性因子であるNOに対する本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の阻害効果を評価した。BV2 ミクログリア細胞株にバクテリアトキシン炎症誘発物質であるリポ多糖体(LPS)と本発明の化合物をそれぞれ10uM、30uM、または100uMずつ同時に処理して24時間培養した。その後、培養液50ulを96ウェルプレートに採り、グリーズ試薬(Griess reagent)を50ulずつ加えて10分間室温で反応させた。その後、ELISAリーダーで540nmにおける吸光度を測定した。各化合物のBV2細胞株から出たIC50の結果は、下記表4に「NO in BV」の欄に示した。
【0090】
下記表4の結果から分かるように、「NO in BV」のうち化合物9のIC50は1.79uMであり、化合物14のIC50は6.7uMであって最も高い水準のIC50値を示した。NO生成に対する減少効果をIC50値で示したとき、大半の化合物が100uMより小さい値を持つことを確認することができた。このように本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、炎症反応に関与するNO活性を効果的に阻害するため、抗炎症剤として非常に有効である。
【0091】
1−2.遺伝子発現抑制効果
BV2細胞株で2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の濃度別iNOS遺伝子の発現を観察した。BV2細胞株を1×106個になるように100mmディッシュに接種し、炎症誘導物質であるLPSと2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体をそれぞれ1〜100uM濃度範囲で一定濃度間隔で同時に処理した。24時間培養した後、RNAを抽出した。抽出したRNAは逆転写酵素反応(reverse transcription)及び重合酵素反応(polymerase chain reaction)を行った後、TNF‐α、IL‐1β、及びiNOS遺伝子の発現様相を比べた。その結果を下記表4にまとめて示した。
【0092】
下記表4に示されたように、炎症性サイトカインの遺伝子発現様相を対照群(LPS処理群)と比べた結果、TNF‐α遺伝子の発現は化合物2が63.24%減少させ、化合物8が77.05%減少させ、化合物9が61.67%減少させた。また、IL‐1β遺伝子の発現は化合物2が75.1%、化合物5が67.7%、化合物8、9、10、及び14がそれぞれ50%以上減少させる様相を確認した。さらに、化合物2、5、8、10、15、及び17はiNOS遺伝子の発現を50%以上抑制した。
【0093】
【表4】
【0094】
前記表4において、「ND」は測定されなかった(not determined)ことを意味する。
【0095】
1‐3.サイトカインの生成抑制効果
BV2細胞株で2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体のサイトカイン生成の抑制効果を観察した。BV2細胞株を1×106個になるように24ウェルプレートに接種し、炎症誘導物質であるLPSとそれぞれ100uMの2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体または比較薬物とを同時に処理した。24時間培養した後、培養液を採った。培養液はELISA法により、サイトカインであるTNF‐αとIL‐6の量を測定した。その結果を下記表5にまとめて示した。
【0096】
下記表5に示されたように、LPSによって生成されたTNF‐αの量を対照群(LPS処理群)と比べた結果、化合物2が62.26%減少させ、化合物3が31.90%減少させ、化合物14が62.6%減少させる様相を確認した。また、比較薬物として使ったイブプロフェンとアスピリンは同じ濃度で減少効果を示さなかった。同様に、IL‐6の量も化合物2は明らかな減少効果を見せたが、比較群であるイブプロフェンとアスピリンはほとんど減少効果を見せなかった。
【0097】
【表5】
【0098】
前記表5において、「ND」は測定されなかった(not determined)ことを意味する。
【0099】
<実施例2>基礎毒性評価
2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物の単回毒性を評価し、その結果を図32に示した。
【0100】
図32に示されたように、本発明の望ましい化合物2及び18のLD50は3g/kg以上と安全性が良好であると示された。しかし、化合物19のLD50は0.5〜1g/kgと相対的に安全性が落ちている。また、化合物4は、抗炎症などの効果評価においては卓越な効果を見せたが、毒性実験の結果、3g/kgで急に動物群が死亡して濃度依存的な結果が得られなかった。さらに、化合物3及び14は、化合物2と類似の構造を持ち抗炎症効果が類似したものの、毒性実験の結果、濃度依存的ではないか又は毒性が強く治療剤としては相対的に望ましくなかった。
【0101】
<実施例3>胃粘膜損傷の誘発可否に対する安全性評価
従来のNSAID系消炎剤は胃粘膜損傷を起こす副作用があったため、抗炎症効果のある化合物2も胃粘膜損傷を誘発するか否かを実験した。比較群として30、100、及び300mg/kgのアスピリンを経口投与したときに発生する胃粘膜損傷を用いた。本発明による一実施例である化合物2は、かなり多い容量である1000mg/kgの経口投与群でも胃粘膜損傷を誘発せず、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は非常に安全であることが分かった(図1)。
【0102】
また、他のNSAID系消炎剤であるインドメタシンとイブプロフェン、及び選択的COX‐2抑制剤であるセレコキシブを対照群として経口投与し、化合物18の安全性を比較実験した。化合物18を高容量で経口投与したが、胃粘膜損傷を誘発しなかった(図2)。
【0103】
<実施例4>細胞保護効果の評価
本発明による一実施例である2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の細胞保護効果を評価した。AGS細胞株(human gastric cancer cells)を96ウェルプレートに1×105個接種した。その後、それぞれにヘリコバクターを24時間処理(図3)、スリンダク(sulindoc)を16時間処理(図4)、H2O2を8時間処理(図5)、またはエタノールを24時間処理(図6)して胃粘膜細胞の死滅を誘導した。また、一部AGS細胞株には、本発明の一実施例である化合物2をそれぞれ10uM、30uM、または100uMずつ同時に処理して24時間培養した。MTT溶液をそれぞれのウェルに添加した後、4時間37℃で反応させた。その後、ELISAリーダーで540nmにおける吸光度を測定し、胃粘膜細胞の生存率を計算した。その結果、1uM及び10uMの化合物2では50%以上の細胞保護効果を見せ、100uMの化合物2は大半の細胞死滅モデルで70%以上の細胞保護効果を見せた。
【0104】
また、炎症の一マーカーとして、サイトカインの1つであるTNF‐αのmRNAの発現程度をRT−PCR法を用いて評価した。エタノールを24時間処理したサンプルを用いて評価した。1〜100uMの化合物2は、TNF‐αのmRNA発現をほとんど完全に抑制した(図7)。
【0105】
このような結果から、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が炎症疾患、特にさまざまな原因による胃炎で細胞保護及び炎症抑制に有効であることを確認することができる。特に、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、炎症疾患治療剤として知られたムコスタ(mucosta)及びPPIより優れた効果を示した。
【0106】
<実施例5>胃腸管出血の防御効果
5−1.アルコール及び塩酸誘導胃炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体がアルコール及び塩酸誘導胃炎に及ぶ効果を評価した。200〜250gの雄SDマウスを24時間絶食させた後、60% EtOH/150mM HClを経口投与して胃腸管出血を誘導した。胃腸管出血の30分前に容量別に化合物2を経口投与し、胃腸管出血の90分後に胃を摘出して胃損傷の程度を観察した。その結果、本発明による一実施例である化合物2は胃腸管出血を防御し、毒性もなかった。その結果を図8にまとめて示した。
【0107】
5‐2.アルコール性胃炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体がアルコール性胃炎に及ぼす効果を評価した。250gのマウスを24時間絶食させた後、アルコールを経口投与すれば胃腸管出血が起きるが(B)、化合物2を1時間前に前処理する場合(C)胃の出血が著しく減少した。その結果を図9のDに数値化して示した。このような結果から、本発明の化合物2はアルコール性胃炎に強力な保護作用を示すと言える。
【0108】
アルコール性胃炎は胃酸分泌抑制剤や胃防御因子増強剤でも予防及び治療効果が容易には現れないため、アルコール性胃炎は他の原因による胃炎より治療効果を期待し難い。これは、アルコールが直接的毒性及び炎症媒介、出血誘導などの形態で病気を誘発するためである。本発明による一実施例である化合物2が、このようなアルコールの直接的毒性を著しく減少させると考えられる。
【0109】
5‐3.NSAID誘導胃炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が、NSAID誘導胃炎に及ぼす効果を評価した。NSAIDであるインドメタシンを6時間投与し胃損傷を弱く誘発させたモデル(図10のA)、及びインドメタシンを12時間投与してかなりの胃損傷を誘発させたモデル(図10のC)で、化合物2は卓越な胃保護効能を見せた(図10のB及びD)。
【0110】
<実施例6>関節炎動物モデルにおける薬効評価
6−1.カラゲナン誘導炎症モデル:鎮痛効果の評価
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の一例である化合物2が持つ関節炎モデルにおける鎮痛効能を評価した。2%カラゲナンを白いマウスの左側足部に注射した後、3〜300mg/kgの化合物2を経口投与してカラゲナンによって誘導される関節炎モデルにおける温熱性痛覚過敏症に及ぼす化合物2の影響を観察した。その結果を図10に示した。
【0111】
化合物2は濃度依存的に温熱性痛覚過敏症を減少させた。300mg/kgの化合物2は温熱性痛覚過敏症を90%以上減少させた。また、抗炎症剤として知られているイブプロフェン50mg/kgと同じ程度の抑制効果を化合物2を100mg投与した群で観察することができた。
【0112】
6−2.ザイモサン誘導炎症モデル:サイトカイン評価
ザイモサンを用いて本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の一例である化合物2が持つ関節炎モデルにおける抗炎症効能を評価した。1%ザイモサン0.5mlをエアパウチ内に注入し、ザイモサン投与の1時間前に3〜300mg/kgの化合物2を単回投与した。4時間後に関節炎の主な症状である浮腫と病因であるサイトカインの濃度を観察した。その結果、化合物2は30mg/kgから対照群に比べてTNF‐αの量を減少させる効果を示し、300mg/kgまで濃度依存的に減少させた。比較群として炎症疾患治療剤で知られているイブプロフェン(50mg/kg)を使った(図12)。IL‐1αも同様に濃度依存的に減少した(図13)。このような結果から本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、炎症疾患、特に関節炎に効果があることを把握することができる。
【0113】
6−3.コラーゲン誘導関節炎動物モデルの評価
本発明による一実施例である2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体の有効性を評価するために、リュウマチ性関節炎動物モデルであるコラーゲン誘導関節炎モデルを使った。Bovine type IIコラーゲンをcomplete Freund’s adjuvantと混ぜて乳剤を製造した。8〜10週のDBA/1LacJマウスのしっぽの基始部に前記乳剤を皮内注射した。2週後に同様の方法で皮内注射した。2次コラーゲン皮内注射の1週間後、腹腔に化合物2、3、及び18を25mg/kg/day、比較群としてメトトレキサート1mg/kg/weekを注射し、対照群として10%ビヒクルを注射した(図15)。図14に、正常マウス(sham)、コラーゲンを投与したマウス(collagen)、及び化合物18を投与したマウス(化合物18、化合物18を25mg/kg/day注射)の足浮腫を撮影した写真を示した。
【0114】
また、腹腔に2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体のうち化合物6と化合物11を50mg/kg/day、比較群としてメトトレキサート5mg/kg/2dayを注射した。対照群としてリン酸緩衝生理食塩水を注射した(図16)。2〜3週間関節炎の発生程度を毎日観察し、その結果を浮腫による下記関節炎指数(arthritic index)で評価した。関節炎指数で評価した結果、化合物2、3、18、及び化合物6、11は明らかな減少効果を見せた(図15及び16)。
【0115】
−関節炎指数−
4本の足を0〜4点で評価、総16点
0点−正常
1点−足根骨に限られた軽い浮腫と発赤
2点−足首関節から足根骨にわたる軽い浮腫と発赤
3点−足首関節から中足骨にわたる中程度の浮腫と発赤
4点−足首関節から足指全体にわたる浮腫と発赤
<実施例7>炎症性腸疾患動物モデルにおける薬効の評価
炎症性腸疾患モデルとして5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)モデルを使用した。5%DSSを飲み水に混ぜて経口投与した。5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)モデルは上皮細胞に損傷を誘発し、主に左側大腸の潰瘍と大腸長さの縮小などが観察される。このようなモデルは投与容量に応じて一定程度の炎症が誘発される比較的簡単且つ再現性の高いモデルである。したがって、新しい薬剤の効能評価に多く使用される。
【0116】
DSSを飲み水ボトルに刺しておき、攝取させ続けた。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物は10%ビヒクルで懸濁して経口投与した。
【0117】
DSSを処理した結果、大腸の長さと幅が変化した。化合物18を処理した群では有意義に大腸の長さと幅が変化した(図17、18及び19)。この結果は、大腸炎モデルにおける本発明の化合物が防御効果を奏することを示す。
【0118】
また、排泄物状態として血便、肛門の汚ない程度、及び下痢を毎日測定した。スルファサラジンと化合物18の両方ともDSS処理群に比べ、排泄物スコアが有意義に減少した(図20)。
【0119】
<実施例8>急性膵臓炎動物モデルにおける薬効の評価
急性膵臓炎モデルとして、セルレイン誘導膵臓炎モデルを使用した。セルレインはコレシストキニンの類似体であって、膵臓で膵臓消化酵素の分泌を誘発するホルモンである。腹腔注射でセルレイン(50μg/kg)を投与することで膵臓に消化酵素を過度に分泌させた。2時間が経過した後、LPSを投与することで浮腫を誘発させた。セルレイン投与時、脾臓を基準にして全体的に浮腫が過度に起きたことが観察された。また、25mg/kgの化合物18を投与したとき、その浮腫を減少させることを確認することができた(図21)。図21のDは、このような浮腫によって増加する膵臓の重さを測定した結果である。化合物18の投与群は、膵臓の重さを有意義に減少させることを確認することができる。
【0120】
図22は、膵臓消化酵素であるアミラーゼとリパーゼの血漿内の濃度を測定したものである。上記のモデルでは、消化酵素が過度に増加して血液に放出される。結局、血液内の消化酵素の増加を抑制させるということは膵臓炎を低減させたことの間接的な証拠になる。図22は、アミラーゼとリパーゼが前記膵臓炎動物モデルにおける血漿で増加し、また25mg/kgの化合物18を投与したとき、このような増加を有意義に減少させたことを示す。
【0121】
炎症の防御効果を確認するために、炎症性サイトカインであるTNF‐αとIL‐1βの量を測定した。炎症酵素であるCOX‐2の生成物であるPGE2をELISA法を用いて測定した。膵臓炎モデルで炎症マーカーとして使用したTNF‐α、IL‐1β、及びPGE2が全て過度に増加したことを確認することができ、化合物18がこのような炎症マーカーを有意義に減少させることを確認することができた(図23及び24)。
【0122】
<実施例9>APPswe/PS1deltaE9二重遺伝子組み換え痴呆マウスにおける化合物2の薬効評価
9−1.ELISA分析によるサイトカインの減少効果
3.5ヶ月から10.5ヶ月までのAPP/PS1痴呆マウスに、化合物2を25mg/kg/dayあるいはイブプロフェン62.5mg/kg/dayを飼料に混合して長期投与した。総7ヶ月間薬物を投与した後、ELISAを通じてTNF‐α、IL‐1β、及びIL‐6の量を定量的に分析した(mean±SEM、n=3−5)。図25において「*」は、Student−Newman−Keuls testによる一元変量分析(One−way ANOVA)時、一般飼料のみを供給したAPP/PS1痴呆マウスに比べてp<0.05の有意差を見せることを示す。
【0123】
実験結果、化合物2の投与群はAPP/PS1痴呆マウスに比べてTNF‐α、IL‐1β、及びIL‐6の量全てが有意義に減少した(図25)。
【0124】
9−2.脳血管障壁に対する化合物2の保護効果
アルツハイマー病で脳血管損傷が発生することは広く知られている。脳血管障壁の損傷に対する化合物2と比較群であるイブプロフェンの効果を評価した。5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウスに2% Evans blue dye 3ml/gを血管に注入した。薬物は、生後2ヶ月から5ヶ月まで化合物2(25mg/kg/day)または比較薬物であるイブプロフェン(62.5mg/kg/day)を飼料に混合して投与した。その結果、図26のBと図26のFのように、正常マウスに比べてcortex、hippocampus、及びthalamusでEvans blue dyeの透過度が増加することを確認することができた。また、図26に示されたように、化合物2の投与群(図26のC及びG)及びイブプロフェンの投与群(図26のD及びH)で脳血管障壁の保護効果を確認することができた。
【0125】
9−3.チオフラビン色素染色法(Thioflavin‐S stain)を用いた化合物2のアミロイドプラーク減少効果
チオフラビン色素染色法を用いて本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が痴呆に及ぼす影響を評価した。総7ヶ月間(3.5〜10.5ヶ月齢APP/PS1)化合物2を25mg/kg/dayずつ投与した。化合物2の投与群は一般飼料のみを供給したAPP/PS1痴呆マウスに比べてアミロイドプラークの量が約53%減少した(図27)。また、総4ヶ月間(8.5〜12.5ヶ月齢APP/PS1)化合物1を25mg/kg/day投与した群は、一般飼料のみを供給したAPP/PS1痴呆マウスに比べてアミロイドプラークの量が約49.3%減少した。
【0126】
9−4.高架式十字迷路の遂行能力評価による化合物2の行動改善効果
3.5ヶ月から10.5ヶ月までのAPP/PS1痴呆マウスに化合物2を25mg/kg/day飼料に混合して長期投与した。総7ヶ月間薬物を投与した後、行動改善効果を検証するために高架式十字迷路テストを行った。高架式十字迷路は2つのopen arms(30cm×6cm×0.5cm)と2つのclosed arms(30cm×6cm×15cm)で構成され、6cm×6cmのcenter platformがある。高架式十字迷路テストにおいて、中央地点にopen armsに向かって慎重にマウスをおいた後、5分間実験動物がopen armに留まる時間を測定して分析した(mean±SEM、n=3−5)。図28において「*」は、Student−Newman−Keuls testによる一元変量分析時、APP/PS1痴呆マウスに比べてp<0.05の有意差を見せることを示す。
【0127】
その結果、7ヶ月間薬物を投与した後、10.5ヶ月齢の一般飼料のみを提供したAPP/PS1痴呆マウスと比べたところ、化合物2の投与群はopen armに留まる時間がさらに短いことが確認できた(図28)。
【0128】
<実施例10>G93A ALS動物モデルにおける化合物2の薬効評価
10−1.ミクログリア活性化の減少効果
退行性脳疾患の1つであるALS(amyotrophic lateral sclerosis)における薬物効果を測定するために、実際患者と類似の病理的特徴を持つ形質組み替え動物モデルG93A(Glycine⇒Alanine)マウスを用いた。
【0129】
TOMATO Lectin dye染色を通じてG93Aマウスの脊髄前角内に発現されるミクログリア(脳疾患モデルにおける炎症の1つのマーカー)の活性化程度を確認した。G93Aマウスは正常マウスに比べて観察されるミクログリアの活性化程度が著しく増加した。また、5mg/kg/dayの化合物2を投与したとき、活性化されたミクログリアを減少させることが確認できた(図29)。
【0130】
10−2.サイトカインの発現減少効果
一般飼料のみを提供した16週齢のG93Aマウス及び5mg/kg/dの化合物2投与群の脊髄部位を摘出した。RNAを分離した後、RT−PCRを通じて炎症性サイトカインであるTNF‐α及びIL‐1β mRNAの発現程度を確認した。その結果、化合物2の投与群は炎症性サイトカインを有効に減らすことが観察できた(図30)。
【0131】
<実施例12>パーキンソン病動物モデルにおける化合物2の薬効評価
C57/BL6マウス(雄/8週齢)にMPTP(40mg/kg)のみを皮下注射するか、またはMPTPを注射する30分前から化合物2を50mg/kgずつ毎日腹腔注射した。2日後に脳組織を摘出した。脳組織をCD11b免疫染色し、反応させた後、DAB(diaminobenzidine)で発色させた。光学顕微鏡でミクログリア(脳疾患モデルにおける炎症の1つのマーカー)の活性化程度を観察した(図31)。
【0132】
その結果、MPTPによって誘導されるミクログリアの活性が化合物2の投与によって減少することが分かった。
【0133】
以下、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩が適用され得る炎症疾患の具体的な例についてより詳細に説明する。下記の適用例は、本発明を例示するものにすぎず、本発明の範囲が下記の適用例に限定されることはない。本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、多様な炎症疾患の治療または予防に有効に使用することができる。
【0134】
<適用例1>胃炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、細胞培養実験によってアルコール誘導、ヘリコバクター・ピロリ誘導、NSAID誘導、及びH2O2誘導された細胞の死滅を効果的に防止した。本発明の化合物の効果は従来の胃炎などの細胞防御効果を持つ薬物であるムコスタまたはPPIに比べて卓越であった。また、本発明の化合物は動物モデルにおける実験結果から、アルコール誘導による胃炎などの治療に優れた効果を示し、消炎鎮痛剤として使われているNSAIDによる胃炎を緩和した。アスピリンと比較実験した結果、アスピリンよりさらに高容量を投与したマウスの胃で出血を誘導せず、安全性が確保された。したがって、本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は胃炎の治療及び予防に非常に有効である。
【0135】
<適用例2>大腸炎(Inflammatory Bowl Disease、IBD)
シクロオキシゲナーゼ(COX)の産物であるプロスタグランジンとリポオキシゲナーゼの産物であるロイコトリエン(LTB4)は、潰瘍性大腸炎のような炎症性疾患の炎症反応で重要な役割を占めると知られている。5‐リポオキシゲナーゼ(5‐LOX)の抑制剤であるジレウトン(zileuton)とNSAIDであるスルファサラジンは、腸損傷動物モデルにおける炎症の程度を現わす指標として使われるMPO(myeloperoxidase)の活性を減少させた(Singh VP et al.、Indian J Exp Biol.2004;42(7):667−73)。また、COX‐2選択的抑制剤であるニメスリド(nimesulide)は、2つの異なる(酢酸誘導及びLTB4誘導IBD)腸損傷動物モデルにおいて保護効果を見せた。ニメスリドは炎症反応においてMPO活性を著しく抑制した(Singh VP et al.、Prostaglandins Other Lipid Mediat.2003;71(3−4):163−75)。したがって、抗炎症効果のある本発明の化合物は大腸炎の治療に非常に有効に利用することができる。
【0136】
<適用例3>リュウマチ性関節炎
本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、コラーゲン誘導関節炎モデルにおいて従来関節炎治療剤として処方されているが副作用のあるメトトレキサートに比べ、ほぼ同じかまたは多少優れた効果を見せた。また、本発明の化合物はカラゲナン誘導痛覚過敏症に対する鎮痛緩和効果及びザイモサン誘導炎症性サイトカインの生成を抑制した。したがって、本発明の化合物は従来の炎症治療剤として使われる薬物と同等の効能を持ちながらも、安全性が確保されたリュウマチ性関節炎治療剤として使用することができる。
【0137】
<適用例4>膵臓炎
急性膵臓炎は、膵液の消化酵素または胆石症による胆汁が膵臓内に逆流して膵臓組織を自己消化して生じる炎症である。少しの浮腫からひどい出血まで多様な症状を現わし、これにより膵臓のさまざまな損傷をもたらす。膵臓炎は炎症と関連があるという報告が数多くあり、COX抑制剤による膵臓炎モデルの保護効果、及び炎症マーカーであるTNF‐α及びプロスタグランジン生成の抑制効果が報告された(Song AM et al.、Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2002;283(5):G1166−74)。本発明の化合物は膵臓炎の治療に非常に有効に利用することができる。
【0138】
<適用例5>糖尿病性炎症及び痛症
第2型糖尿病で抗炎症及び鎮痛の役割が重要視されている。さらに、抗炎症効果を持っている多くの治療剤が、第2型糖尿病の兆候を減少させるか又は発病時点を遅らせるという証拠が報告されている(Deans KA et al.、Diabetes Technol Ther.2006;8(1):18−27)。抗炎症化合物であるリソフィリン(lisofylline)は、ストレプトゾトシン投与マウスにおいてIFN‐γとTNF‐αを抑制することで糖尿の症状を50%以上減少させた(Yang Z et al.、Pancreas.2003;26(4):e99−104)。したがって、抗炎症効果のある本発明の化合物は糖尿病性炎症及び痛症の治療及び/または予防に非常に有効に利用することができる。
【0139】
<適用例6>動脈硬化
アポリポタンパク質E‐欠乏(apoE(−/−))マウスの初期アテローム性動脈硬化症(atherosclerotic lesion)において、選択的なCOX‐2抑制剤(例えば、ロフェコキシブ及びNS‐398)と非選択的なCOX抑制剤(例えば、インドメタシン)はアテローム性動脈硬化症をそれぞれ約35〜38%及び約38〜51%減少させた(Burleigh ME J Mol Cell Cardiol.2005 Sep;39(3):443−52)。したがって、抗炎症効果のある本発明の化合物は、動脈硬化の治療に有効に利用することができる。
【0140】
<適用例7>アルツハイマー性痴呆
アルツハイマー性痴呆は痴呆の原因のうち最も一般的な形態である。病理組織学的には、神経繊維のもつれ、アミロイドプラーク、深刻な神経細胞の死滅などがアルツハイマー性痴呆の特徴である。
近年、アルツハイマー性痴呆が炎症と関連があるという論文が数多く報告されている。痴呆動物モデルでミクログリア及び炎症性サイトカインの生成が増加するという報告が多い(Minghetti L.Current Opinion in Neurology 2005、18:315−321)。また、炎症を抑制する薬物の投与はアルツハイマー性痴呆動物モデルで保護効果を奏し得ると知られている(Townsend KP and Pratico D.FASEB J.2005;19(12):1592−601)。
【0141】
したがって、細胞保護効果及び抗炎症効果を示す本発明の化合物はアルツハイマー性痴呆の治療剤として有効に利用することができる。
【0142】
<適用例8>ALS
ルーゲーリック病は、筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)、運動(うんどう)ニューロン疾患(MND:motor neuron disease)などと呼ばれる病気であり、運動神経細胞が退行性変化によって漸次損傷することがこの疾患の特徴である。
また、ALSが炎症と関連があるという論文が数多く報告されているが、ALS動物モデルであるG93Aマウスでミクログリア及び炎症性サイトカインの生成が増加するという報告が多く(Weydt P and Moller T.Neuroreport.2005、25;16(6):527−31)、炎症を抑制する薬物の投与はALS動物モデルにおける保護効果を奏し得ることも知られている(West M et al.、J Neurochem.2004;91(1):133−43)。
したがって、本発明の化合物はルーゲーリック病の治療に有効に利用することができる。
【0143】
<適用例9>パーキンソン病
パーキンソン病は、黒質に存在するドーパミン神経細胞の死滅が伴われ、振戦、筋肉硬直、非正常的姿勢、運動不能などの多様な症状を現わす退行性神経系疾患である。
パーキンソン病が炎症と関連があるという論文が数多く報告されている。パーキンソン病でミクログリア及び炎症性サイトカインの生成が増加するという報告が多く(Gao HM、Trends Pharmacol Sci.2003;24(8):395−401;Minghetti L.Curr Opin Neurol.2005;18(3):315−21)、炎症を抑制する薬物の投与はパーキンソン病動物モデルにおける保護効果を奏すると知られている(Gao HM、Trends Pharmacol Sci.2003;24(8):395−401)。
【0144】
したがって、細胞保護効果及び抗炎症効果を持つ本発明の化合物はパーキンソン病の治療に非常に有効に利用することができる。
【0145】
〔産業上の利用可能性〕
本発明は、炎症疾患の治療または予防に有用な前記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を含むことを特徴とする薬学組成物、及びこのような薬学組成物を用いる炎症疾患の治療または予防方法を提供する。本発明による薬学組成物は、胃炎、大腸炎、関節炎、糖尿病炎症、膵臓炎、動脈硬化、腎臓炎、肝炎、アルツハイマー性痴呆、ルーゲーリック病、パーキンソン病などのような炎症疾患の治療または予防に非常に有効であるだけでなく、安全性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、化合物2が胃の粘膜損傷を誘発せず安全であることを示す実験結果である。胃粘膜の損傷程度を確認するために、直接薬物を容量別に経口投与した。比較群としてアスピリンを使用した。
【図2】図2は、胃粘膜の損傷程度を確認するために試料を表示された容量どおり経口投与した結果である。化合物18は高容量を投与したにもかかわらず胃粘膜の損傷を誘発しなかった。比較群としてインドメタシン、イブプロフェン及びセレコキシブを使用した。
【図3】図3は、ヘリコバクターによって誘導される胃粘膜の損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS(human gastric cancer)細胞にヘリコバクター(43504、5×108cfu/ml)を単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に添加した。添加して24時間後に、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【図4】図4は、NSAIDであるスリンダク(sulindac)によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に100uMスリンダクを単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に添加した。添加して16時間後に、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【図5】図5は、酸化ストレスであるH2O2によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に100uMのH2O2を単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に8時間処理した後、培養液でさらに洗滌した。24時間後にMTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【図6】図6は、アルコール(エタノール)によって誘導される胃粘膜損傷を用いた化合物2の細胞保護効果の評価結果である。培養されたAGS細胞に25mMのエタノールを単独でまたは標識された濃度のサンプルと共に24時間処理した。その後、MTT分析方法を用いて胃粘膜細胞の生存率を測定した。
【図7】図7は、TNF‐α mRNAの発現程度を示した写真である。培養されたAGS細胞に25mMのエタノールを単独でまたは標識された濃度の化合物2と共に24時間処理した。その後、mRNAを抽出してRT−PCR法によって評価した。
【図8】図8は、アルコール/塩酸(EtOH/HCl)によって誘導される胃腸管出血を用いた化合物2の保護効果を評価した結果である。Aは正常マウスの胃の写真である。Bは200〜250gのマウスを24時間絶食させた後、60% EtOH/150mM HClを経口投与して胃腸管出血を誘導した写真である。Cはアルコール/塩酸を投与する30分前に化合物2で前処理し、胃腸管出血を起こして90分後に胃を摘出して観察した写真である。Dは胃損傷の程度を観察するために損傷された面積を定量したグラフである。
【図9】図9は、アルコール性胃炎に対する化合物2の保護作用を評価した結果である。Aは正常マウスの胃の写真である。Bは250gのマウスを24時間絶食させた後、エタノール(4ml/kg)を経口投与して胃腸管出血を誘導した写真である。Cは化合物2を胃腸管出血誘導の1時間前に前処理した後、胃腸管出血を起こして90分後に胃を摘出して観察した写真である。Dは胃損傷の程度を観察して定量したグラフである。
【図10】図10は、NSAID誘導胃炎に対する化合物2の保護作用を示す写真である。250gのマウスを24時間絶食させた後、インドメタシンを経口投与(A及びC)すれば胃腸管出血が起きる。化合物2を1時間前に処理(B及びD)し、胃腸管出血を起こして6時間(A及びB)または12時間(C及びD)後に胃を摘出した写真である。
【図11】図11は、関節炎動物モデルの1つであるカラゲナン(Carrageenan)によって誘導される温熱性痛覚過敏症(thermal hyperalgesia)を用いた化合物2の効果評価の結果である。2%カラゲナンをマウスの足部に皮内注射して温熱性痛覚過敏症を誘導した。化合物2は経口投与し、イブプロフェンを比較群として使用した。
【図12】図12は、関節炎動物モデルの1つであるザイモサン(zymosan)によって誘導されるTNF‐αの量を用いた化合物2の効果評価の結果である。1%ザイモサンをエアパウチで注入し、投与1時間の前に化合物2を容量別に単回経口投与した。4時間後に、エアパウチ滲出物からTNF‐αの量をELISA法で測定した。
【図13】図13は、関節炎動物モデルのうちの1つであるザイモサンによって誘導されるIL‐1αの量を化合物2が減少させる程度を示すグラフである。1%ザイモサンをエアパウチで注入し、投与1時間の前に化合物2を容量別に単回経口投与した。4時間後に、エアパウチ滲出物からIL‐1αの量をELISA法で測定した。
【図14】図14は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた効果評価の結果であり、コラーゲンによる足の浮腫を示す。Sham:正常マウスCollagen:コラーゲンを注射したマウス化合物18:25mg/kgの化合物18を腹腔注射したマウス
【図15】図15は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた効果評価の結果である。コラーゲン投与後、25mg/kgの化合物2、3または18及び対照群であるメトトレキサート(MTX、1mg/kg/week)を腹腔注射した。その後、4週間目視で観察した結果を関節炎指数として評価した。
【図16】図16は、コラーゲンによって誘導される関節炎動物モデルを用いた化合物6及び11の効果評価の結果である。コラーゲンを2週間隔で2回皮内注射し、1週間後に化合物6、化合物11、及び対照群であるメトトレキサートを腹腔注射した。その後、2〜3週間毎日観察した結果を関節炎指数として評価した。
【図17】図17は、炎症性腸疾患動物モデルである5%デキストラン硫酸ナトリウム(Dextran sulfate sodium、DSS)モデルを用いた効果評価の結果である。DSSを処理した後、10%ビヒクルに懸濁して10、25、50mg/kgの化合物18を経口投与した。Shamは正常マウスの大腸であり、DSSは5%DSSを処理したマウスの大腸である。その他は各容量の化合物18を投与したマウスの大腸写真である。
【図18】図18及び19は、図17の結果を定量化したグラフである。図18は大腸の長さであり、図19は大腸の広さである。
【図19】図18及び19は、図17の結果を定量化したグラフである。図18は大腸の長さであり、図19は大腸の広さである。
【図20】図20は、DSSを用いた化合物18の効果評価の結果である。DSSを処理した後、10%ビヒクルに懸濁して化合物18(25mg/kg)を経口投与した。その後、大腸の損傷による血便、下痢、及び汚ない程度を点数に換算して示した。
【図21】図21は、セルレイン(cerulein)によって誘導される急性膵臓炎モデルを用いた効果評価の結果である。50μg/kgのセルレインを投与して2時間が経過した後、LPSを投与して浮腫を誘発した。A−Cは写真結果であり、Dは膵臓の重さを測定して示したグラフである。A:正常マウスB:セルレインを投与したマウスC:化合物18(25mg/kg)を投与したマウス
【図22】図22は、セルレインによって誘導される急性膵臓炎モデルを用いた効果評価の結果である。50μg/kgのセルレインを投与して2時間が経過した後、LPSを投与して浮腫を誘発した。25mg/kgの化合物18を投与し、膵臓消化酵素であるアミラーゼとリパーゼの変化を定量化して示した。
【図23】図23及び図24は、セルレインによって誘導される膵臓炎モデルを用いた評価結果である。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が炎症マーカーであるTNF‐α、IL‐1β及びPGE2に及ぼす影響を評価した。
【図24】図23及び図24は、セルレインによって誘導される膵臓炎モデルを用いた評価結果である。本発明の2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体が炎症マーカーであるTNF‐α、IL‐1β及びPGE2に及ぼす影響を評価した。
【図25】図25は、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス(Tg+)の脳でELISA法を用いてTNF‐α、IL‐1βまたはIL−6の量を測定したグラフである。3ヶ月から7ヶ月の間、化合物2(25mg/kg/day)あるいはイブプロフェン(62.5mg/kg/day)を飼料に混合して長期投与した。
【図26】図26は、脳血管障壁に対する化合物2の保護効果を示す写真(低倍率と高配率)である。A:正常マウスB/F:APP/PS1痴呆マウスC/G:化合物2(25mg/kg/day)投与D/H:イブプロフェン(62.5mg/kg/day)投与
【図27】図27は、10.5ヶ月齢の正常マウス(A)、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス(B、Tg+)、3.5ヶ月から7ヶ月間化合物2(25mg/kg/d、C)あるいはイブプロフェン(62.5mg/kg/d、D)を飼料に混合して長期投与したAPP/PS1痴呆マウスの脳で生成されたアミロイドプラークを測定した写真である。チオフラビン(Thioflavin‐S)で免疫染色した。EはA−Dの結果を定量化したグラフである。
【図28】図28は、10.5ヶ月齢の正常マウス、10.5ヶ月齢のAPP/PS1痴呆マウス、3.5ヶ月から7ヶ月間化合物2(25mg/kg/d)を飼料に混合して長期投与した10.5ヶ月齢のAPP/PS1マウスを用いて高架式十字迷路テストを行った結果である。それぞれの実験動物がopen armに留まる時間で効果を評価した。
【図29】図29は、G93Aマウスで炎症のマーカーであるミクログリア活性を示す写真である。TOMATOレクチンで免疫染色した。A:正常マウスB:G93AマウスC:5mg/kg/day化合物2投与群
【図30】図30は、G93Aマウスで炎症の一マーカーである炎症性サイトカイン(TNF‐αとIL‐1β)のmRNAレベルを示す結果である。RT−PCR(Reverse Transcription−Polymerase Chain Reaction)が使用された。
【図31】図31は、パーキンソン病の動物モデルで炎症に対する化合物2の抑制効果を示した写真である。CD11bで免疫染色した。A:MPTPを投与したマウスB:50mg/kg/dの化合物2投与群
【図32】図32は、本発明による幾つかの2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体化合物の単回投与毒性実験の結果である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含むことを特徴とする痛症の治療または予防用薬学組成物:
<化学式1>
【化1】
前記化学式1において、
nは2ないし5の整数であり、
R1は水素またはアルキルであり、
R2は水素、アルキルまたはアルカノイルであり、
R3は水素またはアセトキシであり、
Xは相互独立的に、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、またはハロアルコキシである。
【請求項2】
前記2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、2‐ヒドロキシ‐5‐フェネチルアミノ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(3‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、5‐[2‐(3,5‐ビス‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(2‐ニトロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、5‐[2‐(4‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[2‐(3,4‐ジフルオロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[2‐(3,4‐ジクロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[2‐(4‐フルオロ‐2‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[2‐(2‐フルオロ‐4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐メトキシ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐(2‐o‐トリル‐エチルアミノ)‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐(3‐フェニル‐プロピルアミノ)‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[3‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐安息香酸、5‐[3‐(4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[3‐(3,4‐ジクロロ‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐(3‐p‐トリル‐プロピルアミノ)‐安息香酸、2‐アセトキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、及び5‐[2‐(2‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸からなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の炎症疾患の治療または予防用薬学組成物。
【請求項1】
下記化学式1で表れる2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体又はこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含むことを特徴とする痛症の治療または予防用薬学組成物:
<化学式1>
【化1】
前記化学式1において、
nは2ないし5の整数であり、
R1は水素またはアルキルであり、
R2は水素、アルキルまたはアルカノイルであり、
R3は水素またはアセトキシであり、
Xは相互独立的に、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、またはハロアルコキシである。
【請求項2】
前記2‐ヒドロキシ安息香酸誘導体は、2‐ヒドロキシ‐5‐フェネチルアミノ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(3‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、5‐[2‐(3,5‐ビス‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(2‐ニトロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、5‐[2‐(4‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[2‐(3,4‐ジフルオロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[2‐(3,4‐ジクロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[2‐(4‐フルオロ‐2‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[2‐(2‐フルオロ‐4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[2‐(4‐メトキシ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐(2‐o‐トリル‐エチルアミノ)‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐(3‐フェニル‐プロピルアミノ)‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐[3‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐安息香酸、5‐[3‐(4‐フルオロ‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、5‐[3‐(3,4‐ジクロロ‐フェニル)‐プロピルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸、2‐ヒドロキシ‐5‐(3‐p‐トリル‐プロピルアミノ)‐安息香酸、2‐アセトキシ‐5‐[2‐(4‐トリフルオロメチル‐フェニル)‐エチルアミノ]‐安息香酸、及び5‐[2‐(2‐クロロ‐フェニル)‐エチルアミノ]‐2‐ヒドロキシ‐安息香酸からなる群より選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の炎症疾患の治療または予防用薬学組成物。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図28】
【図32】
【図1】
【図2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図17】
【図21】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図31】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図28】
【図32】
【図1】
【図2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図17】
【図21】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2012−153704(P2012−153704A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77974(P2012−77974)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【分割の表示】特願2009−505303(P2009−505303)の分割
【原出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(505274379)ニューロテック ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【分割の表示】特願2009−505303(P2009−505303)の分割
【原出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(505274379)ニューロテック ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】
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