細胞殺滅組成物及び細胞殺滅方法
【課題】多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法を提供する。
【解決手段】標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする。この方法は真核性細胞及び原核細胞のいずれにも殺滅効果がある。これに係わる医薬組成物および装置も提案する。
【解決手段】標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする。この方法は真核性細胞及び原核細胞のいずれにも殺滅効果がある。これに係わる医薬組成物および装置も提案する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形緩衝剤を用いて滴定によって細胞を殺滅させる組成物及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人に有害で潜在的に致死に至らしめる様々な細胞物質が知られている。たとえば、米国において癌細胞は、心臓病の次に死亡率の高い疾病をもたらす因子である(ボーリング等著「CA臨床医学者のための癌ジャーナル」第43巻第7号(1993)参照)。細胞微生物も様々な疾病の原因因子である。細胞殺滅及び標的細胞殺滅(たとえば、癌死滅)はバイオテクノロジー産業において高度な研究がなされている。
【0003】
癌は、無制限に成長する可能性のある悪性腫瘍であり、特に、人体において見られる様々な細胞の病原性の複製因子(正常な調整制御機能の喪失)である。斯かる疾患の初期治療としては、外科手術、放射線療法、あるいは、これら療法の併用が施されるが、限局的には再発及び転移性疾患が頻発する。ある種の癌には化学療法薬が有効であるが、長期に亘って回復することは殆どないので、多くの場合治療にはならない。一般に、腫瘍とその転移は、多剤耐性の亢進として知られているように化学療法が効かず、多くの場合、腫瘍はある種の化学療法薬に対して本質的に耐性がある。加えて、斯かる療法は非癌性細胞を脅かす上に、人体に負担をかけ、しかも、多様な副作用を誘発する。こうしたことから、癌細胞を標的にする改良薬が必要である。微生物は宿主組織に侵入して増殖し、重症疾患を引き起こすことがある。病原菌は、たとえば、結核、コレラ、百日咳、伝染病等々の様々な衰弱性疾患あるいは致命的疾病の真因として確認されている。重症感染症の治療には、病原菌を殺滅させる抗生物質などの薬剤が投与されるが、病原菌は通常、抗生物質に対する耐性を持つようになるので、微生物による感染症の蔓延を防止するために新たな開発薬が必要となる。
【0004】
人体に適用導入する製品に関する主な懸念は細菌感染である。細菌は、病原菌を排除する人の免疫システムを阻害する生体膜に進化するので、埋め込み型医療機器を適用している場合には前記細菌による感染症を防止することが重要な課題になる。これらの感染症を抗生物質で治療するのが難しいので、埋め込み型装置を取り外さざるを得なくなり、結果的には、患者に身体的な苦痛と負担を強いると共に医療費も嵩む。こうしたことから、この種の医療装置に抗菌効果を持たせて滅菌できる技術が長い間切望されていた。
【0005】
当該技術において医療器具の表面を抗菌性の被膜でコートすることが一般的な方法であったが、大抵の殺菌剤が部分的に水溶性であったり、あるいは、有効な抗菌作用を得るために少なくとも十分な可溶化が必要であるので、殺菌剤を単純にコートするだけでは信頼性に欠けることが分かっている。このため、殺菌剤を医療器具に練り込むか、あるいは、少なくとも安定した抗菌コートを形成するなどの試みがある。
【0006】
別の方法として、抗生物質、第4級アンモニウム化合物、銀イオン、ヨウ素などの抗菌剤を含浸させ、長期に亘って抗菌剤を徐々に周囲に放出することで細菌を殺滅させることもできる。こうした方法は細菌を含む水溶液で抗菌効果が確認されているが、液体培地でなく空中浮遊菌に対して効果は期待できず、特に、抗菌剤が溶出し尽くされて効果が無力になった抗菌基材についてこのことが当てはまる。医療環境における生体膜形成を弱めるために用いる薬剤は利用者に安全でなければならない。また、生体膜を抑制するのに十分な量の殺菌剤は宿主組織をも損傷させることになる。局部組織領域に適用した抗生物質によって、特定の抗生物質に対する抵抗力をもつ浮遊微生物を含む生体膜集合体を形成する耐性細菌を生み出すことになるが、抗生体膜または防汚剤は医療装置の健全性を阻害することはない。そこで、抗菌効果を得るために添加する薬剤では補えないような扱いやすさ、柔軟性、防水性、強度、耐久性、特性などの特徴を有する材料を選択することになる。食品は細菌感染源でもあり、食品保護して、風味の低下や中毒の原因になるような栄養素の劣化や食感変質を抑制あるいは防止するためには食品の保存が最も重要である。食品の保存には様々な方法があり、保存性のある食品の物理的処理としては、たとえば、冷凍、冷蔵、加熱調理、レトルト、低温殺菌、乾燥、真空パック、無酸素パックなどがある。これらのいくつかの試みは食品加工処理の一部であり、滅菌食品をつくることと所期の品質の食品を生産することの安全性のバランスをとるように食品加工処理を選択することが好ましい。
【0007】
医療装置の製作、食品の梱包や取り扱いのために高分子材料の使用が増加しており、抗菌性ポリマの利用が最適と考えられる。この技術分野でも抗菌性ポリマは利用されているが、更に優れた抗菌性を持ち、長期使用に際して細胞体に接しても抗菌剤が溶出しないで永久的に抗菌効果を保持しながらも安価、且つ、容易に適用できるよう改良された抗菌性被覆材料の要望がある。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0271780号公報に、食品保存用に用いる第四アンモニウム塩などのイオン交換材料に結合している殺菌性ポリマ・マトリックスが開示されている。このポリマ・マトリックスは、内部に練り込まれた殺菌剤(たとえば、第四アンモニウム塩)の作用によって細菌を殺滅させる。殺菌剤の正電荷は、この正電荷と負に帯電した細胞壁との間の静電気引力に作用する。ところが、上記公報には緩衝性能を有する固体緩衝剤の使用は記載されていない。
【0009】
米国特許出願公開第2005/0249695号公報は、表面殺菌性を持たせるために固体表面に共有結合する第四アンモニウム塩または第四ホスホニウム塩(陽イオン正荷電体)などの抗菌性微粒子の固定化技術を開示している。当該公報に開示のポリマは、アミノ基の作用によって固体表面に付着し、付着したポリマは単に、固体表面に単分子層を形成することだけの効果を持つ。
【0010】
米国特許出願公開第2005/0003163号公報には、抗菌・帯電防止特性を有する基板が示されている。これらの特性は、陽イオン荷電ポリマ化合物で被覆層を形成することで実現する。米国特許出願公開第2005/0271780号、同第2005/0249695号、同第2005/0003163号公報に記載されたようなポリマの効果は、細胞膜に殺菌材料が直接接触している場合に発揮され、また、毒性の程度は殺菌成分の表面濃度に大きく依存する。露出した陽イオン物質はイオン交換反応で急速に含浸するので前記要件には大きな制約が生じる。
【0011】
更に、前記引用の米国特許出願のいずれにも、真核細胞を殺滅させる思想はなく、真核性細胞あるいは原核細胞タイプに対する細胞毒性薬としてのポリマの生体内使用も示されていない。しかも、上記米国特許出願には、ある種の細胞を選択的に殺滅させるポリマ構造の提案もない。
【0012】
よって、真核性細胞及び原核細胞の両方に対する細胞毒性作用を持たせた薬剤はかなり有用であり、開発の要望がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一実施例において、多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法、および、真核性細胞及び原核細胞のいずれにも殺滅効果がある医薬組成物およびそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法は、次のとおりである。
【0015】
本発明による多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法は、標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする。
【0016】
本発明の他の実施例において、多細胞生物における標的細胞を殺滅させる方法を提供することを目的とし、本発明によるこの方法は、標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞を殺滅させることを特徴とする。
【0017】
本発明の更に他の実施例において、標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法を提供することを目的とし、本発明によるこの方法は、標的細胞を陰イオン固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする。
【0018】
本発明の更に他の実施例において、標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法を提供することを目的とし、本発明によるこの方法は、緩衝層と当該緩衝層の外面に設けられた透水層とからなる固形緩衝剤に標的細胞を接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする。
【0019】
本発明の更なる実施例による細胞を殺滅させる方法は、50mM H+/l.pH以上でpH8以上かpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有する固形緩衝剤に標的細胞を接触させて、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする。
【0020】
本発明の更なる実施例による細胞を殺滅可能な固形緩衝剤を選択する方法は、50mM H+/l.pH以上でpH8以上かpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有する細胞を殺滅可能な固形緩衝剤を選択することを特徴とする。
【0021】
本発明の更なる実施例による対象細胞の部分母集団を殺滅させる方法は、特に対象細胞の部分母集団を殺滅させるように選ばれた緩衝容量及びpH値を有する固形緩衝剤に、対象細胞の部分母集団よりなる試料を接触させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする。
【0022】
本発明の他の実施例によって、
(i)担体と、
(ii)前記担体の表面の少なくとも一部に接合した固形緩衝剤とからなり、前記固形緩衝剤が緩衝層と前記緩衝層に設けられたイオン透過層よりなることを特徴とする製品を提供する。
【0023】
本発明のその他の実施例によって、
(i)担体と、
(ii)前記担体の表面の少なくとも一部に接合した固形緩衝剤とからなり、
前記固形緩衝剤が陰イオン性であることを特徴とする製品を提供する。本発明の更に他の実施例では、病的細胞集団に関係する病状を治療する薬剤の製造用の固形緩衝剤の使用方法を提供する。
【0024】
本発明のその他の実施例によって、有効成分として固形緩衝剤と、医薬として許容される担体または希釈剤とからなる医薬組成物を提供する。
【0025】
本発明の更にその他の実施例によって、対象細胞を殺滅するための最適な固形緩衝剤を選択する分析方法であって、
(i)複数の細胞を複数の固形緩衝剤に接触させ、
(ii)複数の細胞中の1細胞を殺滅可能な複数の固形緩衝剤のうちの対象細胞を殺滅するための最適な1固形緩衝剤を特定することからなる分析方法を提供する。
【0026】
本発明の更にその他の実施例によって、病的細胞集団に関係する病状を治療する方法であって、必要に応じて被験者に治療効果のある量の固形緩衝剤を投与して少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって病的細胞集団に関係する病状を治療する方法を提供する。後述する本発明の好適な実施例における更なる特徴によって、結果的に細胞を殺滅させる変化を生み出す。
【0027】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、多細胞生物が高等植物であることを特徴とする。
【0028】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、多細胞生物が哺乳動物であることを特徴とする。
【0029】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記接触を生体内で行うことを特徴とする。
【0030】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記接触を生体外で行うことを特徴とする。上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記接触を試験管内で行うことを特徴とする。
【0031】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤の少なくとも一部にpH勾配を有することを特徴とする。
【0032】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が標的細胞に吸収させたことを特徴とする。
【0033】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を親和性部分に付着させたことを特徴とする。
【0034】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記親和性部分を、免疫体、受容体リガンド、炭水化物とからなる群から選択したことを特徴とする。
【0035】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤の少なくとも一部を選択的バリアで覆ったことを特徴とする。
【0036】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記選択的バリアが物理的バリアであることを特徴とする。
【0037】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が緩衝層と、前記緩衝層の外面に設けられた透水層とからなることを特徴とする。
【0038】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記透水層が空孔ポリマであることを特徴とする。
【0039】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記空孔ポリマを、PVOH、セルロース、ポリウレタンからなる群から選択したことを特徴とする。
【0040】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする。
【0041】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を噴霧調製したことを特徴とする。
【0042】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする。また、上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする。
【0043】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする。
【0044】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陰イオン交換材料であることを特徴とする。
【0045】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料であることを特徴とする。
【0046】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料と陰イオン交換材料とからなることを特徴とする。上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記陽イオン交換材料が、スルホン酸とその誘導体、ホスホン酸とその誘導体、カルボン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、フェノールとその誘導体、アルソン酸とその誘導体、セレン酸とその誘導体からなる群から選択したことを特徴とする。
【0047】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記陰イオン交換材料が、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミンからなる群から選択したことを特徴とする。
【0048】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤がポリマであることを特徴とする。
【0049】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が、内在的イオン伝導性基材よりなることを特徴とする。
【0050】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤がアイオノマであることを特徴とする。上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記アイオノマがスルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)及びその誘導体であることを特徴とする。
【0051】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が20mM H+/l.pH以上の緩衝容量を有することを特徴とする。上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤がpH8以上のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする。
【0052】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤がpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする。
【0053】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記細胞が罹患細胞であることを特徴とする。
【0054】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が担体面に付着していることを特徴とする。
【0055】
標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞を殺滅させることを特徴とする多細胞生物における標的細胞を殺滅させる方法。
【0056】
標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞を殺滅させることを特徴とする多細胞生物における標的細胞を殺滅させる方法。
【0057】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、対象細胞の部分母集団及び細胞の第2の部分母集団が異なる血漿緩衝能を示すことを特徴とする。
【0058】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記処理を生体外で行うことを特徴とする。
【0059】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記処理を生体内で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0060】
上記した本発明の更なる好適な実施例における当該製品が、包装材料、医療装置、布材料、骨組、フィルタ、殺菌装置のいずれかの一部を形成することができる。
【0061】
細胞を固形緩衝剤に接触させることで細胞変化をもたらす本発明の新規な方法を提供することによって、現在知られている形態の不都合を解消することができる。
【0062】
なお、特に言及しない限り、ここでの技術用語及び学術用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術者が理解する同じ定義を意味するものとする。また、ここでの記載内容と同様もしくは等価な方法及び材料は本発明の実施もしくは試行に際して適用可能であるが、以下に最適な方法及び材料について説明する。ここに記載の全ての文献公報、特許出願、特許、及び、他の文献は単なる参考であり、説明に矛盾が生じる場合は、本件明細書に記載の定義に基づいて解釈すべきであり、且つ、材料、方法、例示事項等は単に説明のために記載したもので、発明の限定要件ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明を添付の図面を参考にして以下に説明する。特に図面を参考にして本発明の好ましい実施例を単に図解例示する目的だけであり、最良の実施形態と考えられる態様を提案するが、あくまでも本発明の原理及び概念を示しているだけであることを理解すべきである。また、ここでは本発明を基本的に理解するのに必要な説明以上に本発明の構造を詳細に示さず、当該技術分野の技術者が添付の図面を参考に本発明の様々な態様を実施できるよう説明する。
【0064】
本発明は、細胞殺滅組成物及び細胞殺滅方法に関し、特に、固形緩衝剤を用いた細胞過程に作用する方法に関するもので、癌性細胞などのような身体における異常細胞を殺滅させることから環境中の有害な原核細胞の殺滅に至る数々の応用に供することができる。本発明の原理及び作用は添付の図面を参考にすることで更に詳しく理解できよう。
【0065】
本発明の一実施例を詳細に説明するに先立って、以下の例示説明において説明する適用例のみに限定するものでなく、様々な手法で本発明の実施例を実施、実現可能である。また、ここで用いる技術用語及び表現は単に説明のために用いるものであり、本発明を限定すべきではない。本発明の技術は本件発明者らによって新たに発見発明した成果である。本件発明者らによって、生体分子(たとえば、タンパク質)は一般に、pH勾配に沿う空間分布を決定するpH特性を有することを明らかにし(実施例1参照)、更に、生体膜を通して再分布を起こすことができることを実験によって証明した(実施例3及び図4A〜4C参照)。
【0066】
本発明の着想に際して本件発明者らは、細胞内の過程を、その細胞に接触する固形緩衝剤の細胞外pHを変化させることによって操作することができることを明らかにした。よって、本発明の発明者らは、細胞内成分のpHから異なったpHを持つ固形緩衝剤に細胞を接触させることによって細胞のpHホメオスタシスの崩壊を可能にしたことを示した。接触は結果的に細胞質の細胞内pHの滴定を可能にし、通常、細胞過程において変化をもたらす。緩衝剤料のpH値が特定細胞のpHの生存範囲を超えると細胞死が起こる。
【0067】
米国特許出願公開第20050271780号、同第20050249695号、同第20050003163号公報には殺菌性ポリマが開示されている。前記公報に開示されているポリマは、ポリマの重合体構造に組み込まれるかその表面に固定されたカチオン性分子の介在によって殺菌作用が生まれるので、細胞膜に接触させることが必要となる。毒性の程度は殺菌成分の表面濃度に大きく依存する。露出した陽イオン物質はイオン交換反応で急速に含浸するので前記要件には大きな制約が生じる。
【0068】
本発明の新規なところは細胞膜を分離させるために陽性基の浸透に頼るのではなく、全体的なバルク緩衝効果に頼るため、ここに開示する固形緩衝剤はカチオン性ポリマだけでなく陰イオン緩衝剤にも限定されない。また、その細胞毒性がそれらの表面特性でなくバルク特性から生み出されるので、殺菌成分の表面濃度によって制限されない。本発明の実施を絞り込んで、本発明の発明者らは、固形緩衝剤が、たとえば、酵母細胞(実施例4及び表2)、哺乳類Jurkat細胞(実施例5及び表3)、細菌性細胞(実施例11及び表5)、真菌細胞(実施例12)などの全ての種類の細胞に細胞毒性の影響が及ぶことを明らかにした。
【0069】
更に本発明の発明者らは、細胞死亡率が細胞に接触する固形緩衝剤のpH値を選択することで制御可能であり、細胞死亡率は細胞に接触する固形緩衝剤のpH値を適切に修正することによって緻密に調整できることを証明した(一例として実施例4及び表2を参照)。
【0070】
pHに起因する細胞毒性には細胞が固形緩衝剤に直接接触することが必要であることを明らかにした。よって、pHホメオスタシスが特定サイズの細胞だけのために崩壊(変態)するように、特定の空孔サイズの物理的バリアを固形緩衝剤に付着させることができる。この方法で、特定の大きさの細胞だけが標的にされて他の細胞は変化しなくなる(実施例8参照)。
【0071】
更に、本発明の発明者らは、緩衝層の外面に設けた透水層がイオンの再分布を許し、これによって固形緩衝剤の全てのバルク効果を低下させないので、透水層によって更に固形緩衝剤が細胞作用を働かせるようになることを明らかにした。実施例14に示すように、固形緩衝剤が空孔ポリマに覆われて、それでも細胞毒性効果を発揮することになる。
【0072】
そこで、本発明の一実施例において、多細胞生物の標的細胞の細胞過程に変化を生み出す方法を提供することを目的とし、本発明によるこの方法は、標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする。本発明における細胞は、たとえば、単離細胞、細胞懸濁液、細胞培養などの細胞環境における細胞、または、組織内の細胞、または、有機的組織体における細胞であってもよい。これら細胞は、正常細胞、異常細胞(たとえば、癌細胞)、あるいは、それらの混合細胞であってもよい。
【0073】
ここでの用語「細胞過程の変化」とは、細胞過程における発現低下もしくは発現上昇を意味する。本発明の一実施例によって変化させる典型的な細胞過程では、細胞死(細胞自然死または細胞壊死)、細胞分化、細胞シグナリング、細胞成長、細胞分裂、細胞増殖、腫瘍増殖、腫瘍血管新生、腫瘍転移、腫瘍変移、腫瘍移動、細胞移動、細胞小器官機能(仮足形成、鞭毛運動等を含むが限定しない)、各種細胞の細胞内膜−細胞室間分子輸送などを含むがこれらに限定するものではない。
【0074】
本発明の一実施例において特に好ましい実施例によれば、結果として細胞過程の変化によって細胞が殺滅される。細胞毒性作用が働く固定緩衝剤の定量標準化について以下説明する。
【0075】
ここでの用語「多細胞生物」とは、細胞を1つ以上含む有機組織を意味する。典型的な多細胞生物には真核生物(哺乳類など)及び高等植物が含まれる。
【0076】
本発明の固形緩衝剤は、たとえば、菌類、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌などの原核細胞の細胞過程に作用する。
【0077】
ここでの用語「グラム陽性細菌」とは、細胞壁構造の一部としてペプチドグリカンだけでなく、多糖類ないしテイコ酸を有することを特徴とした細菌を意味し、グラム染色法における青紫色反応を特徴とする。
【0078】
代表的なグラム陽性細菌には、アクチノミセス属放線菌類、炭疽菌、ビフィドバクテリウム類、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、クロストリジウム菌類、破傷風菌、ジフテリア菌、コリネバクテリウム・ジェイケイウム、大便連鎖球菌、腸球菌、ブタ丹毒菌、真正細菌類、ガルドネレラ属膣桿菌、双子菌属、リューコノストック菌類、マイコバクテリウム・アブセサス、トリ結核菌錯体、マイコバクテリウム・チェロネ、マイコバクテリウム・フォルツイタム、マイコバクテリウム・ヘモフィリム、マイコバクテリウム・カンサシイ、ハンセン菌、マイコバクテリウム・マリナム、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、マイコバクテリウム・スメグマチス、マイコバクテリウム・テラ、マイコバクテリウム・ツバキュロシス、マイコバクテリウム・ウルセランス、ノカルジア菌類、ペプトコッカス・ニガー、ペプトストレプトコッカス菌類、プロピオニバクテリア菌類、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌オーリクラリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニー、スタフィロコッカス・エピデルミディス、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・オミニス、スタフィロコッカス・ラグダネシス、スタフィロコッカス・サッカロリティカ、腐性ブドウ球菌、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミランス、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・キシロサス、ストレプトコッカス・アガラクシア(B群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アンジノサス、ストレプトコッカス・ボヴィス、ストレプトコッカス・カニス、ストレプトコッカス・エクイ、ストレプトコッカス・ミレリ、ストレプトコッカス・ミショア、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サリバリウム、ストレプトコッカス・サンガイスなどが含まれる。
【0079】
ここで用いる用語「グラム陰性細菌」とは、各細菌性細胞を囲む二重膜の存在によって特徴づけられる細菌を意味する。代表的なグラム陰性細菌には、アシネトバクター・カルコアセティクス、アクチノバシラス・アクチノミセタムコミタンス、アエロモナス細菌、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス、バクテロイデス菌類、バクテロイデス・フラジリス、バルトネラ・バシリフォーミス、ボルデテラ菌類、ライム病ボレリア、ブランハメラ・カタラーリス、ブルセラ菌類、カンピロバクター菌類、肺炎クラミジア、オウム病クラミジア、クラミジア・トラコマチス、クロモバクテリア・ビオラセウム、シトロバクター菌類、歯周病原性細菌、エンテロバクター・アエロゲネス、大腸菌、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム、フゾバクテリウム菌類、レジオネラ菌類、レプトスピラ菌類、モラクセラ・カタラーリス、モルガネラ・モルガニ、肺炎マイコプラズマ、淋菌、髄膜炎菌、パスツレラ皮膚壊死毒素、プレシオモナス・シゲロイデス、プレボテラ菌類、プロテウス菌類、プロビデンシア・レットゲリ、緑膿菌、シュードモナス菌類、発疹チフス・リケッチア、ロッキー山紅斑熱リケッチア、ロシャリメア菌類、サルモネラ菌類、チフス菌、霊菌、赤痢菌類、トレポネーマ・カラテウム、トレポネーマ・パリダム、地域流行性梅毒トレポネーマ、熱帯苺腫トレポネーマ、ベイヨネラ菌類、コレラ菌、ビブリオ・バルニフィカス、腸炎エルシニア、ペスト菌などが含まれる。
【0080】
ここでの用語「固形緩衝剤」とは、緩衝能を有する固形の物質である。緩衝能は、酸や塩基を緩衝剤(滴定)に添加された時にpHの変化に耐える能力として定義されるもので、緩衝系の1pH単位の変化に作用する単位体積当たりに添加される水素陽イオン濃度によって決まる。緩衝系の緩衝能は通常、水素陽イオンを一定に供給することができる解離性及び非解離性の化合物が系において共存することから生み出される。よって、イオン伝導マトリックスまたは水/イオン透過マトリックスに取り込まれた酸性物質または塩基性物質(たとえば、イオン交換材料)を固形緩衝剤として分類することができる。固形物質の緩衝能は通常、水素陽イオンを放出または結合できる複数の官能基の存在から生じ、これらの物質の飽和度、つまり、これら全ての官能基が影響し合う濃度によって決まる。典型的な陽イオン交換物質としては、非限定的であるが、スルホン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、カルボン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、フェノールとその誘導体、ヒ酸とその誘導体、セレン酸とその誘導体などが含まれる。
【0081】
典型的な陰イオン交換物質としては、非限定的であるが、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミン、第4級アミンなどからなる化合物を挙げることができる。
【0082】
典型的な透水性基材としては、非限定的であるが、空孔ポリマ、空孔セラミックス、空孔ゲルなどを挙げることができる。
【0083】
典型的な空孔ポリマとしては、非限定的であるが、PVOH、cellulose、ポリウレタンなどを挙げることができる。
【0084】
別の態様では、固形緩衝剤を、固有のイオン伝導性の基材よりなる。固有のイオン伝導性の固形緩衝剤の例としては、非限定的であるが、アイオノマー及びポリカチオン性物質を挙げることができる。
【0085】
市販されているアイオノマーとしては、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(米国デラウェア州ウィルミントン市)から供給されるナフィオンR(商標)のペルフルオロ・スルホン酸膜及び同デュポン社から供給されるサーリンR(商標)の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0086】
固形緩衝剤は通常、ポリマである。本発明の実施例に適用できる固形緩衝剤として極めて多種多様のポリマが知られている。斯かるポリマを以下に列挙するがこれらに限定する物ではない。
【0087】
ポリ(4−ビニル−N−臭化アルキルピリジニウム)、ポリ(臭化メタクリロイルオキシドデシルピリジニウム)、N−アルキル化ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(ビニル−N−ヘキシルピリジニウム)、ポリ(N−アルキルビニルピリジン)、ポリ(N−アルキルエチレンイミン)、ポリ(4−ビニル−N−臭化アルキルピリジニウム)、ポリ(4−ビニル−N−臭化ヘキシルピリジニウム)、ポリ(1−(クロロメチル)4ービニールベンゼン)、ポリ(ジメチルオクチル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジメチルドデシル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジメチルテトラデシル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、50/50ポリ(1−クロロメチル)−4−ビニルベンゼン):ポリ(ジメチルドデシル[4−ビニルーフェニルメチルアンモニウムクロライド)、50/50ポリ(1−クロロメチル)−4−ビニルベンゼン):ポリ(ジメチルオクチル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、50/50ポリ(ジメチルオクチル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド):ポリ(ジメチルオクチル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、ポリ(トリブチル−[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、ポリ(トリオクチル−[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)などである。
【0088】
本発明による固形緩衝剤は、適当な緩衝剤(たとえば、イモビリン(商標)アクリルアミド緩衝剤など)が適切に含まれていたポリアクリルアミド、アガロースゲル基材などのゲル基材よりなる。特定のpHのゲルを生成するイモビリンpK緩衝剤の量は後述の実施例における表1に示している。本発明の固形緩衝剤としては、イオン交換ビーズ、ポリマ被覆イオン交換ビーズ、イオン透過マトリックスのいずれかでよい。
【0089】
ここでの用語「接触」とは、固形緩衝剤に対する細胞の位置を意味し、細胞に固形緩衝剤を接触させる、あるいはその逆で接触させる必要性によって限定される。
【0090】
本発明の一実施例において細胞と固形緩衝剤は互いに物理的接触をしている。たとえば、固形緩衝剤を細胞の外側に接触させてもよく、あるいは、細胞の外側に付着させてもよい。あるいは、細胞外物質を内在させる既知の方法で固形緩衝剤を細胞に内包させてもよいが、細胞のファゴサイトーシス、エンドサイトーシス、受容体を介した飲食作用、クラスリン被覆ピット、小嚢結合内在化処理、トランスファーインフェクション法等々に限定しない。
【0091】
本発明の他の実施例における固形緩衝剤は透水層で細胞から分離している。前記透水層は、固形緩衝剤の緩衝作用によって緩衝剤と細胞との間のイオンの流れを妨げないようにイオンの流れを許す効果がある。典型的な透水層としては、PVOH、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリアクリルアミド、親水性添加物の有無を問わない微小孔性マトリックスなどがある。接触は体内接触、体外接触(たとえば、体内から摘出された細胞)、管内接触(たとえば、細胞株内)のいずれでもよい。
【0092】
上記したように、本発明の固形緩衝剤は特定細胞過程における変化をもたらすために定式化したものであり、特に、固形緩衝剤の3つの特性を操作して固形緩衝剤をpH、緩衝能、イオン伝導度などに影響する細胞過程に作用させることができる。
【0093】
以下に、細胞死の過程に影響する(細胞死を増加させる)ために固形緩衝剤を選ぶ例を開示する。
【0094】
(1)固形緩衝剤のpH値を細胞の生存能力範囲外にする。この範囲は細胞及び細菌の種類に応じて特化する。たとえば、固形緩衝剤のpH値を4未満または8を超える数値にすることで細胞のpH安定性に影響を及ぼす。
【0095】
固形緩衝剤にpH勾配を持たせるように調製することも可能である。勾配は細胞への固形緩衝剤の生物学的効果を段階的に変化させるのに有効である。たとえば、固形緩衝剤に勾配をつけることによって、固形緩衝剤の一部に細胞への細胞静止作用を持たせ、固形緩衝剤の他の部分に細胞毒性効果を持たせることも可能である。
【0096】
固形緩衝剤の基材におけるイオン交換材料を適当に制御することによって前記勾配の種類、強さ、位置、全体の形態を変化させ得ることは当該技術の基本認識の範疇であり、本発明の範囲に含まれるものとする。後述する実施例のように、勾配を有する緩衝剤を上記したイモビリン(商標)と合成することも可能である。
【0097】
更に、本発明の固形緩衝剤を、陽イオン交換材料と陰イオン交換材料を組み合わせ、細胞殺滅に適した形態に配列して形成することも可能であり、これによる固形緩衝剤を、たとえば、陰イオンビーズと陽イオンビーズのマトリックスに構成してもよい。前記ビーズは標的細胞の位置に合わせて同じ大きさにしてもよく、あるいは、大きさを異ならせてもよい。
【0098】
(2)細胞質ゾルと他の大半の細胞成分の一般的に許容される緩衝能値は概ね20mM H+/リットルのpH値で細胞質ゾルが滴定されるので、固形緩衝剤の緩衝能をこの値より高くすべきである。ほとんどの種類の細胞を殺滅できる固形緩衝剤の一般的な緩衝能は100mM H+/リットル以上のpH値である。
【0099】
(3)固形緩衝剤のイオン伝導度(プロトン伝導度)の変化は、細胞を殺滅させ得る固形緩衝剤の速度に影響する。特に、透水性固形緩衝剤におけるイオン移動度は水の陽子の拡散運動によって決まり、拡散定数が毎秒約10―8m2程度であり、これは毎秒0.1mmの流動速度に相当する。前記固形緩衝剤によって、数秒の内に接触細胞を死に至らしめることになる。このように、細胞を殺滅させる典型的方法は、細胞を滴定可能なpH値である約50mM H+/リットルの緩衝能を持つ固形緩衝剤に細胞を接触させ、これによって細胞を死に至らしめる方法である。前記pH値は通常、pH8以上かpH4.5以下である。pH値を測定して緩衝能を決定する方法は当該分野において公知である。
【0100】
細胞のプラズマ緩衝能とpH値は細胞タイプの特異型であり、そのためにこれらのパラメータの操作によって特定の種類の細胞を標的にできることになる。たとえば、腫瘍細胞は、正常細胞よりアルカリ度が高いので、固形緩衝剤が腫瘍細胞の最適細胞毒性のみに作用し、他の種類の細胞には殆ど(または、全く)作用しないようにすることができ、更には、夫々の種類の細胞には特定の膜透過性があるので、本質的に本発明の固形緩衝剤に多少なりとも影響を受けやすくなる。
【0101】
更なる例として、細菌の緩衝能は哺乳類のものより大きいが、細菌における数多くの緩衝培地は哺乳類細胞より約3桁以上小さいので、緩衝剤による細菌の滴定に対する脆弱性は高くなる。このことは、緩衝能が低い固形緩衝剤を用いて、哺乳類細胞を殺さずに細菌だけを殺滅可能であることを意味する。
【0102】
固形緩衝剤のpH値及び緩衝能を変化させる一方法として、水溶(イオン透過性)マトリックス中のイオン交換材料の濃度を変化させることがある。他の方法として、イオン交換材料の濃度を一定に維持してイオン交換材料を変える方法がある。対象とする細胞を殺滅させる最適な固形緩衝剤は、対象とする細胞を含む混合細胞に関して異なったpH値と緩衝能を持つ複数の固形緩衝剤を試験することによって選別する。その上で、対象とする細胞を分析して最適な固形緩衝剤を決定する。対象とする細胞を分析する方法としては、当該技術分野で公知の顕微鏡検査、免疫組織化学検査、生物学的検定技術などがある。
【0103】
本発明では固形緩衝剤を用いて疾病(たとえば、病理細胞集団に関連する疾患)を治療する目的もあり、この固形緩衝剤を主に管内もしくは生体外で身体に適用することによって、固形緩衝剤が特定の種類の細胞を選択的に狙って作用できることは極めて重要である。
【0104】
よって、本発明の一実施例によれば、固形緩衝剤を抗体、受容体リガンド、炭水化物などの親近部に付着させることができる。本発明の実施例で適用できる抗体の例としては、限定的ではないが、腫瘍抗体、抗CD20抗体、抗IL−2Rアルファ抗体などを含む。典型的な受容体としては、限定的ではないが、葉酸受容体、EGF受容体がある。本発明の一実施例で適用可能な炭水化物の典型としては、レクチンがある。
【0105】
上記親近部は、何らかの連結方法もしくは結合方法を用いて、あるいは、当該技術分野において公知の適当な化学的リンカーを用いて固形緩衝剤に共有結合または非共有結合させることができ、好ましくは、架橋剤または架橋方法の種類及び化学的特性を、用いる類縁集団の種類と固形緩衝剤の特性に適応させる。アフィニティー標識と類縁集団を結合または吸収または連結させる方法は当該分野において公知である。
【0106】
本発明の好適な一実施例における標的細胞は、同定可能な表面マーカーを意味する転移癌細胞であってもよい。接触する細胞を殺滅させるよう固定緩衝剤のpH値と緩衝能を選択すれば、悪性細胞によって表された特定のマーカーに対抗する1以上の抗体が前記親近部であってもよい。
【0107】
特定の種類の細胞(たとえば、原核細胞であって真核細胞でない細胞)を標的にするための本発明における別の方法は、固定緩衝剤と特定の種類の細胞との物理的接触を選択的に阻止することを基本にしている。本発明のもう一つの実施例では、固定緩衝剤を少なくとも部分的に選択的なバリアで覆っている。たとえば、固定緩衝剤の表面を、調整された空孔サイズ(限定的ではないが、たとえば、選択された空孔サイズを有するナイロンフィルタなどのフィルタ、あるいは、選択された開口サイズを有するメッシュ等々)の物理的バリアで覆うか、または、保護した場合、あるサイズ以上の細胞を固形緩衝剤と接触または付着させずに、小さいサイズの細胞だけ空孔に進入させたり、あるいは、物理的バリアに透通させ、固形緩衝剤と接触させることが可能になる。
【0108】
本発明による固形緩衝剤を標的にする方法は、「受動的」ターゲッティング方法を用いることで実現でき、侵漏脈管及びリンパ排液漏のために腫瘍組織中の粒子の浸透性促進と鬱滞を利用する。200〜600ナノメートルの大きさの腫瘍の選択性は健常組織に対して10〜100倍である。この特殊なタイプの受動的ターゲッティングには、認識グループもしくは認識部分によって官能化されない粒子を利用できる。
【0109】
本発明の固形緩衝剤を有機的組織体そのもの、もしくは、適当な担体または賦形剤と組み合わせた医薬組成物に適用することができる。
【0110】
ここでの用語「医薬組成物」とは、生理学的に適した担体及び賦形剤のような他の化学成分と共に1以上の有効成分の製剤を意味する。医薬組成物の目的は、有機的組織体への適用を容易にすることである。
【0111】
ここでの用語「有効成分」とは、意図する生物学的効果をもたらす固形緩衝剤を意味する。
【0112】
以後用いる用語「生理学的に許容される担体」及び「医薬として許容される担体」は互いに置換可能であるが、有機的組織体に重大な炎症等を起こさず、適用成分の生物活性や生物特性を無効にすることのない希釈剤または担体を意味する。この用語には補助剤も含まれる。
【0113】
ここでの用語「賦形剤」とは、有効成分の投与を更に容易にするために医薬組成物に添加する不活性物質を意味する。賦形剤の例として、限定的ではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖類、デンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物性油脂、ポリエチレン・グリコールなどがある。
【0114】
薬剤の調製技術が記載された参考文献として、マック出版社(米国ペンシルベニア州イーストン)「レミントン薬学」の最新版を挙げる。
【0115】
本発明の固形緩衝剤は粒子状またはビーズ状に調製することができ、数ナノメートルから数ミリ以上の平均サイズで製造することができる。
【0116】
固形緩衝剤を粒子面に付着させてもよく、また、粒子内に封入してもよい。固形緩衝剤を粒子内に保持した場合、封入粒子は、イオンが固形緩衝剤と細胞との間を流れるようにイオン伝導性材料で作る必要がある。典型的な粒子としては、限定的ではないが、ポリマー粒子、マイクロカプセルリポソーム、高分子微粒子、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノ微粒子などがある。本発明の固形緩衝剤は、選択性を向上させ、且つ、活性作用を防止するために分解性のコーティングで被覆してもよい。
【0117】
分解性コーティングとしては、ポリエチレンイミン(PEI)コーティング、ポリエチレングリコール(PEG)コーティング、修飾ゼラチンコーティング、または、その他の適当なコーティング材料を用いることができる。適切な投与手段としては、たとえば、経口投与、直腸投与、経粘膜的投与、特に、経鼻投与、腸内吸収投与の他に、筋内注射、皮下注射、髄内注射などの非経口投与、更には、髄腔内投与、直接心室内投与、静脈内投与、腹膜吸収投与、経鼻投与、眼内注射などがある。別の方法として、浸透方法でなく、たとえば、患者の組織域に直接医薬組成物を注入するような局所的に医薬組成物を投与してもよい。
【0118】
本発明の医薬組成物は当技術分野において公知の方法で製造でき、たとえば、混合処理、溶解処理、整粒処理、糖衣処理、粉末処理、乳化処理、カプセル化処理、封入処理、凍結乾燥処理などの従来の方法で調製できる。
【0119】
本発明において用いる医薬組成物は、有効成分を調製剤に容易に加工するために医薬として用いることができる賦形剤と助剤よりなる生理学的に許容される1以上の担体を用いた従来の方法で調製できる。適した調製方法は、薬剤の投与方法によって異なる。
【0120】
注射用の医薬組成物の有効成分は、水溶液、好ましくは、ハンクス溶液、リンガー溶液、生理食塩水などの生理活性適合緩衝溶液として調製できる。経粘膜投与剤としては、浸透させる緩衝剤に適した浸透剤を調製に用いる。この浸透剤は当技術分野において公知である。
【0121】
局所性投与用として、本発明の固形緩衝剤をゲル、クリーム、洗剤、洗浄液、噴霧液の形態で調製できる。この態様は固形緩衝剤を被験者に局所的に投与したり、あるいは、個体表面に用いる場合に適用できる。
【0122】
経口投与用として、当技術分野で公知の医薬として許容される担体と活性化合物を混合することによって容易に調製できる。この担体によって、患者が経口摂取できるように医薬組成物を、タブレット、錠剤、糖衣錠、カプセル、溶液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等々の形態で調製できる。経口用の薬理調製は、固形賦形剤を用い、結果的に得られる混合物を随意に粉砕し、必要な適当な助剤を加えた上で顆粒状の混合物を加工してタブレットや糖衣錠に仕上げる。
【0123】
適切な賦形剤としては特に、糖質などの溶加剤があり、これには乳糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトールなどがあり、他に、たとえば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、カルボメチル・セルロース・ナトリウム等があり、更に、ポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマがある。必要に応じて、交差結合ポリビニルピロリドン、寒天、あるいは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩などの崩壊剤を添加してもよい。
【0124】
糖衣錠には適当なコーティングを施せばよい。たとえば、ゴム糊、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポル・ゲル剤、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー液、適当な有機溶剤、溶媒混合液などを選択的に含む濃縮砂糖液を用いることができる。活性化合薬剤の識別、あるいは、組み合わせを特徴的に区別する目的で染料または顔料をタブレットや糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0125】
系統投与用の医薬組成物には、ゼラチンからなる押合カプセルや、ゼラチン、及び、グリセロールやソルビトールなどの可塑剤からなる柔軟な密封カプセルを用いることができ、押合わせカプセルには、乳糖などの溶加剤、澱粉などの結合剤、滑石やステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、更には任意に安定剤等を混合した有効成分を含ませることができる。柔軟なカプセルは、脂肪油、流動パラフィン、液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体に有効成分を溶解または懸濁させて調製でき、更に、安定剤を加えてもよい。選択した投与方法に適した用量で経口投与用に調製する。
【0126】
口腔投与用には、調製剤を従来の方法でタブレットやトローチ状に形成してもよい。
【0127】
鼻孔吸入投与用には、本発明による有効成分を、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭酸ガスなどの適当な加圧噴霧剤を用いた加圧パックや噴霧器からエアゾール噴霧して簡便に利用できるようにする。加圧エアゾール式を用いた場合、適量を供給できる弁手段を用いて投薬量を決めるようにするとよい。
【0128】
たとえば、投薬機に用いるゼラチンのカプセルや薬剤容器に、乳糖や澱粉などの適当な調製剤との混合粉体を入れて調製する。
【0129】
上記した医薬組成物を、たとえば、静脈内ボーラス注入法または持続注入法によって非経口的投与用に適用できる。注射用の調製は、単位用量投薬形態、たとえば、アンプルや反復投与容器などの形態で準備し、任意で保存料等を添加する。調製成分は、油性または水性媒体を主体にした懸濁液、溶液剤、乳剤などであってもよく、懸濁化剤、安定剤、分散剤などの調合剤を入れてもよい。
【0130】
非経口的投与用の医薬組成物には、水溶性の有効調製水溶液を入れている。また、有効成分の懸濁液は、適当な油性または水性の注射用懸濁液として調製することができる。親油性溶剤または媒質には、胡麻油あるいはオレイン酸エチル、トリグリセリド、リポソームなどの合成脂肪酸エステルを含ませる。水溶液注入懸濁液に、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの懸濁粘度を高める成分を入れてもよい。また、懸濁液に、有効成分の溶解性を高める適当な安定剤を適宜に入れて、高い濃溶液を調製できるようにしてもよい。
【0131】
本発明の医薬組成物は、たとえば、ココアバターやグリセリンなどのような従来の坐基剤を用いた座薬または浣腸などの形態で調製することもできる。本発明が提案する使用目的に適した医薬組成物に、本来の用途を達成するのに効果的な量の有効成分を含める。更に詳しくは、「治療有効量」とは、疾患症状(虚血など)を予防、緩和、改善したり、あるいは、治療を受けた被験者を延命させるのに効果的な有効成分(核酸成分など)の量である。治療有効量は当該技術分野における知識に基づいて適宜決定でき、特に、ここに開示の詳細説明を参考に決めればよい。
【0132】
本発明の方法で用いる調製剤に関する投薬量または治療有効量は、最初に生体外での細胞培養試験により推定判断する。たとえば、投薬量は、動物モデルを用いて定式化して、所期の濃度乃至滴定量を決めることができ、そうして得られた情報データに基づいてヒトへの有効投薬量を正確に決定する。
【0133】
ここに開示の有効成分の毒性及び治療効力は、生体外試験管内で、あるいは、細胞培地で、あるいは、動物実験で行う標準的な製剤方法によって測定する。生体外試験管、細胞培地、動物実験のいずれかで得られたデータに基づいてヒトへの適用投薬量を定式化できる。投薬量は、適用した投薬量判定方法と適用した投与手段に大きく依存する。投与の正確な製剤処方と手段、及び、投薬量は患者の状態を踏まえて各医師が決定する。(例として、E.フィングル等(1975)「治療学の薬理学的基礎」第1頁第1章参照)
【0134】
投薬量と投与間隔は、有効成分の血漿中濃度および脳中濃度を十分に保ち、生物学的効果(最小有効濃度(MEC)など)を誘起または抑制するように個別に調製すればよく、前記MECは各調製剤によって変化するが、生体外データで予測できる。MECを達成するのに必要な投薬量は個々の投薬の特徴と方法によって異なり、検出分析を用いて血漿濃度を測定する。
【0135】
治療すべき症状の重症度および反応性に応じて、投薬の回数を、数日から数週間に至る治療経過中、あるいは、回復までまたは病状の改善が見られるまでに1回または複数回投与する。
【0136】
言うまでもなく、投与する調製剤量は、治療する対象者の苦痛の程度などの状態、投与方法、担当医師の判断によって変化する。
【0137】
本発明の調製剤は、必要に応じて、包装パックに入れたり、あるいは、有効成分を含む1以上の単位用量に分けてFDAなどの認可キットなどの薬ケースに装填して供与するなどの方法をとることができる。包装パックとしては、たとえば、金属ホイルや、あるいは、ブリスター包装などのプラスチック包装などがある。包装パックまたは薬ケースには投薬指示を添付するとよい。また、包装パックまたは薬ケースには、薬剤の製造、使用、販売に係わる政府機関の規則の警告を添付するとよく、警告文にはヒトや動物に投与する薬剤成分について政府機関が認可する旨の内容を含める。前記警告には、たとえば、米国食品医薬品局の許可の基に処方例または認可製品を記入したラベルを添付するとよい。医薬として許容される担体の形態で定式化した本発明の調製薬の組成成分表示も適当な容器に付けておくとよく、上記したような治療の方法指定も付記しておくとよい。本発明による固形緩衝剤成分で固体表面または材料をコーティングする方法も本発明の範疇であることは当然である。ここでの「表面」とは、ガラス、プラスチック、金属、ポリマ等々を含む各種材料の面を意味し、被覆面を持つ1以上の材料から構成された面を含む。固形緩衝剤を、噴霧、湿潤、浸透、浸漬、塗布、超音波溶着、溶融、結合、付着などの当該技術分野で公知の方法、あるいは、他の任意の方法によって目的表面に付着させることができる。本発明の固形緩衝剤は、単層、多層のいずれにも形成できる。本発明の固形緩衝剤をコーティングできる固体表面として、体内または体外医療器具またはインプラント機器も含まれる。
【0138】
ここでの「インプラント」とは、生体組織でない人体に設ける目的の対象を意味する。このインプラントは一時的もしくは恒久的なものであり、生体組織が失活するよう処理された天然由来の対象も含まれる。たとえば、生体細胞が除去(無細胞化)されなららも、ホストからの骨片が成長するためのテンプレート片として働くよう形態を維持する目的で骨移植治療される場合を挙げることができる。他の例としては、自然に起こる白化現象にも適用でき、整形外科治療や歯科治療のために身体に適用するヒドロキシアパタイト製剤を作り出すことも可能である。インプラントは、人工的要素からなる加工品でもある。
【0139】
したがって、たとえば、本発明による固形緩衝剤で血管ステントを覆う技術も本発明の範疇に入る。本発明の固形緩衝剤の表面に接触する内皮細胞の細胞周期に影響して、固形緩衝剤が細胞中の特定タンパク質に反発もしくは吸着して、動脈再狭窄を軽減または阻止することも可能であり、また、本発明の方法で被覆した一般的なインプラントに影響してインプラントと組織の融合に顕著な効果を発揮することもある。
【0140】
本発明の固形緩衝剤の他の適用例としては、医療および歯科環境で見られる特定対象面へのコーティングである。医療環境における対象面としては、使い捨て形態か再使用形態かに拘わらず各種機器および装置の内面および外面がある。
【0141】
例として、医療用途に適用する多種多様の物品があり、メス・針・鋏を含む侵襲的外科治療・治療処置・診断処置に用いる機器、血液フィルタ、人工血管・カテーテルなどを含む埋め込み医療素子・機器、輸血機器装置、人工心臓、人工腎臓、整形外科用ピン・プレート・インプラント素子、カテーテルおよび他の医療管類(泌尿器管、胆管、気管内チューブ、周辺刺通中心静脈カテーテル、透析カテーテル、長期刺通中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、短期中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、肺カテーテル、スワンガンツカテーテル、導尿カテーテル、腹膜カテーテルなどを含む)、泌尿器系医療機器(長期使用泌尿機器、組織結合泌尿機器、人工括約筋、泌尿器拡張器)、バイパス機器(心室シャント、動静脈シャント)、人工器官(豊胸インプラント、人工陰茎、移植血管、動脈瘤修復機器、心臓弁、人工関節、人工喉頭、耳鼻インプラント)、吻合機器、血管カテーテル部品、鉗子、塞栓治療機器、創傷排液管、脳水腫シャント、ペースメーカーおよび植え込み型除細動器等々を挙げることができる。他にも多様に適用可能であり、当業者には用意の範疇であろう。
【0142】
医学的環境で見られる面には、医療機器および健康医療環境における担当者が身につける医療器具等の各部の内側面および外側面を含み、医療処置の領域範囲における備品やカウンターの上面、呼吸器官治療における酸素投与および噴霧器および麻酔薬における可溶化剤供給のための管類や容器類の表面などが含まれる。更に、医療機関における感染性微生物に対する生物学的バリアである手袋、エプロン、マスク等々の表面も含まれる。生物学的バリアとして通常用いられる素材には、ラテックスと非ラテックス系がある。通常、非ラテックス製の手術用手袋の材料としてビニールが用いられる。また、特に消毒の必要のない医療用機器または歯科装置におけるハンドルやケーブル類もここでの対象面として含まれる。更には、血液または体液あるいは他の危険性のある医用生体材料に遭遇する領域に見られる管類や他の装置の非消毒外面も対象面である。
【0143】
他に健康に関連する表面として、浄水、水貯蔵、給水などに伴う機器および食品加工用具などの内面および外面もある。本発明では食品および飲料容器の固体表面を被覆する状況も想定し、斯かる対象の内容物を維持保管する用途もある。
【0144】
また、健康に関連する表面としては、栄養摂取、衛生設備、病気予防等を目的とした家庭用品の内面および外面も含まれる。一例として、家庭用食品加工機器、保育用品、タンポン、便器などの対象も含まれる。
【0145】
実施例15に示すように、本発明の固形緩衝剤は、創傷包帯の抗菌性を高めるためにも利用できる。同様に、本発明の固形緩衝剤は、縫合糸、クロス、布地、傷軟膏などの抗菌作用を高めるためにも利用できる。
【0146】
本発明による他の実施例における固体表面として、顕微鏡スライドガラス、培養フード、シャーレ、あるいは、当該分野で公知の他の組織培養皿または培養容器なども含まれる。
【0147】
ここでの用語「約」とはプラスマイナス10%範囲を意味する。本発明の他の目的、特長、新規な特徴は、当業者であれば、限定的ではないが以下の実施例の説明から明らかになるであろう。更に、上記した本発明の多様な実施例の夫々は以下の実施例で示す実験的裏付けで明らかにする。
【実施例】
【0148】
上記説明を踏まえて以下の実施例を非限定的に例示する。
【0149】
ここで用いる学術用語および本発明で用いる検査法には通常、分子技術、生化学技術、微生物学的技術、遺伝子組み換え技術が含まれ、こうした技術は、たとえば下記の文献など明確に紹介されている。
【0150】
「分子クローニング:実験室マニュアル」サンバロック等著(1989)、「分子生物学における現在の慣習」第I〜III巻・R.オウスベル編(1994)、R.オウスベル等著「分子生物学における現在の慣習」ジョン・ウィリー・アンド・サン刊(米国メリーランド州バルチモア(1989))、パーベル著「分子クローニングの解説書」ジョン・ウィリー・アンド・サン刊(米国メリーランド州バルチモア(1988))、ワトソン等著「組み換えDNA」サイエンティフィック・アメリカ(ニューヨーク)、ビレン等編「ゲノム分析;実験室マニュアル集」第1〜4巻コールド・スプリング・ハーバー研究所刊(ニューヨーク(1998))、米国特許第4666828号/同第4683202号/同第4801531号/同第5192659号/同第5272057号に記載の方法論、「細胞生物学:実験室ハンドブック」第I〜III巻J.E.チェリス編(1994)、「動物細胞の培養:基礎技術マニュアル」フレネー・ウィリーリス刊(ニューヨーク(1994))第三版、「免疫学の現在の慣習」第1〜3巻J.E.コリガン編(1994)、スティテス等編「基礎臨床免疫学」第8版アップルトン・ラング社刊(米国コネチカット州ノーウォーク(1994))、ミッシェルとシーギ編「細胞免疫学の選択的方法」W.H.フリーマン社刊(ニューヨーク(1980))、米国特許第3791932号/同第3839153号/同第3850752号/同第3850578号/同第3853987号/同第3867517号/同第3879262号/同第3901654号/同第3935074号/同第3984533号/同第3996345号/同第4034074号/同第4098876号/同第4879219号/同第5011771号/同第5281521号に記載の適用可能な免疫学技術、「オリゴヌクレオチド合成」M.J.ゲイト編(1984)、「核酸雑種形成」B.D.ハメスとS.J.ヒギンス編(1985)、「複製と転移」B.D.ハメスとS.J.ヒギンス編(1984)、「動物細胞培養」R.L,フレシュニー編(1986)、「固定化細胞と酵素」IRLプレス社刊(1986)、「分子クローニング解説書」B.パーバル著(1984)、「酵素学における手法」第1〜317巻アカデミック・プレス社刊、「PCRプロトコル:方法と応用ガイド」アカデミック・プレス社(米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990))、マーシャク等著「タンパク質精製と特徴付けのための方法・実習コースマニュアル」CSHLプレス社刊(1996)
【0151】
上記の全てを参考文献としてここに採用する。他にも一般参考として採用できる文献があり、当該技術分野の技術者には公知の方法であり、ここでの技術理解の参考までに列挙した。
【0152】
実施例1:pH勾配におけるタンパク質分布
タンパク質が固有のpH特性を有するか否かを確認するために下記の実験を実施した。
【0153】
実験素材と方法:ゲル製剤:長さ約7センチメートルのイモビリンゲル細条を4つ用いた。各細条を、当該技術分野では公知である4〜9%のpH勾配を有する(ポリアクリルアミドを4%とビスアクリルアミド架橋剤を5%含む)アクリルアミドゲルを含むアンフォラインから切離した。
【0154】
タンパク溶液製剤:4種の異なったタンパク溶液を調製した。
【0155】
第1溶液はミオグロビン(米国シグマ社から市販/カタログ番号M−0630)を精製水で1.0mg/mL含む。第2溶液は、タンパク質変性に尿素8Mの最終濃度のミオグロビンを精製水で1.0mg/mL含む。第3溶液はフィコシアニン(米国シグマ社から市販/カタログ番号P−2172)を精製水で1.0mg/mL含む。第4溶液は、タンパク質変性に尿素8Mの最終濃度のフィコシアニンを精製水で1.0mg/mL含む。タンパク質溶液は全て、pHが約7.0であった。
【0156】
実験方法:上記タンパク質溶液を夫々10mリットル、シャーレに入れ、そこにゲル片を浸した。シャーレを蓋して、室温で3〜5日間保存した。保存期間の最後にゲル片をシャーレから取り出し、余分な水分を入念に拭き取り、エプソン製の平面走査スキャナで走査した。
【0157】
結果: 図1A、1Bおよび図2A、2Bに示したように、タンパク質は、ゲル片の異なった領域のpH値によってゲル片の異なった領域に別々に吸収された。ミオグロビンはpI〜6であり、フィコシアニンはpI〜4.2であった。天然タンパク質と変性タンパク質の間のミオグロビン空間分布(および、ペーハー依存分布)の変位はかなり小さいが(図2A、2B)、タンパク質フィコシアニンの相当広い範囲でかなり大きい変位(ゲル片にpH機能としての吸収度の空間分布の差)が観察された(図1A、1B)。
【0158】
結論: pH勾配中のタンパク質分布は、各試料タンパク質の固有の特性であることを表しており、タンパク質のpH特性として考えることができる。
【0159】
実施例2:pH特性によるゲル膜を通るタンパク質の再分布
実験素材と方法: ゲル製剤:図3A、3Bに示すように、矩形の試験容器内に、厚さ2mmのポリアクリルアミドゲル板状に形成した2つのゲル膜を配置することで3つの区画を形成した。イモビリン(アマシャム社の商標)10μリットルと、過硫酸アンモニウム(APS)0.5μリットルと、TEMED(1:10)0.25μリットルと、ポリカリルアミド10%と、ビスアクリルアミド5%を加えてゲルを調製した。1つのゲル膜は、pH4に調製し(酸性、イモビリンを有するポリアクリルアミド)、もう一つのゲル膜はpH6に調製した(塩基性、イモビリンを有するポリアクリルアミド)。
【0160】
タンパク溶液製剤:ミオグロビンとフィコシアニンを、夫々が0.1グラム/リットル(g/L)の濃度になるように精製水(DDW)中に溶解して調製した。
【0161】
実験方法:タンパク質溶液を夫々300μリットルずつ、試験容器内を2枚の膜で仕切って形成した中央区画に入れ、酸性側の区画室をグルタミン酸(pH=3.8)の緩衝液1mMで満たし、塩基側の区画室をTPJS(pH=8.3)の溶液1mMで満たし、その状態で区画室を室温に保った。数日後に各区画室を目視観察し、デジタルカメラで撮影した(平面撮影)。
【0162】
結果: 実験の最初で、上記した複数区画室を有する試験容器内の中央区画室2の溶液は、ミオグロビンとフィコシアニンの混合吸収度によって暗色を呈していたが、酸性緩衝剤(グルタミン酸1mM、pH=3.8)と塩基緩衝剤(TRIS溶液1mM、pH=8.3)を入れた番号1、3の区画室は殆ど色を視認できなかった(図3A)。
【0163】
図3Bのように、実験の最後までには、上記した複数区画室を有する試験容器内の中央区画室2は、残っていたオグロビンとフィコシアニンの相当低い濃度の混合吸収度によって、かなり淡い赤紫色になっていた。ミオグロビンの大部分が変移した酸性緩衝剤(グルタミン酸1mM、pH=3.8)を入れた番号1の区画室は濃い赤みを帯びた色になっていた。フィコシアニンの大部分が変移した塩基緩衝剤(TRIS溶液1mM、pH=8.3)を入れた番号3の区画室は濃い青みがかかった色になっていた。
【0164】
結論: 2色になったタンパク質は、イモビリン(商標)膜によって分離された区画室内の異なったpH値に支配されて、ほぼ完全に再分布および分離した。
【0165】
実施例3
生体機能細胞内の細胞質タンパク質の細胞内分布に影響する可能性を実証するために以下の実験を行った。
【0166】
実験素材と方法: 細胞質ゾル内のGFPを表すヒーラ細胞に核酸導入した。溶解に続いて抽出タンパク質をテストし、上記実施例1で記載したGFPタンパク質の最大蓄積量のpH範囲を計測した。GFPタンパク質の最大蓄積量の範囲(走査ゲル片の最高蛍光発光点を見つけて判定)が約pH9であることが分かった。
【0167】
市販されている約50ミクロンの平均径のポリアクリルアミドビーズ(米国バイオラッド社製バイオゲルP10、カタログ番号1504140)を、ポリアクリルアミド共重合体とイモビリンよりなるpH9の溶液(上記実施例2に詳細説明あり)に浸漬した。イモビリン(商標)ポリアクリルアミド溶液を化学的に重合させ、GFPを表すヒーラ細胞の細胞培地に、結果的に得られるビーズの水性懸濁液を加えた。細胞の一部がビーズに付着した。アガロース溶液(摂氏約36度の溶融点を有する米国バイオラッド社製低溶融アガロース、カタログ番号1620019)を細胞とビーズに流し込み、アガロースを摂氏約25度に冷却することによって細胞とビーズの混合体を固相化した。ビーズに接触した細胞が蛍光顕微鏡(ドイツ国ツァイス社製Axioscope2型蛍光顕微鏡)によって観察し、GFP分布の変化を視覚的に確認し、且つ、30分以上写真モニタした。
【0168】
結果: 図4A〜4Cに示すように、細胞がビーズに付着した点の蛍光強度は、実験開始時に測定した細胞の初期発光強度に比べて初期付着から30分後には約50倍になっていた。この測定強度は細胞のGFPのほんの一部の影響でしかない。ビーズに付着した細胞のいくつかの例において同様の現象が見られた。
【0169】
pH7のコーティングが施された同様のビーズ(図示せず)を用いた対照実験では、ビーズに付着した細胞のGFPの分布パターンになんの変化も見られなかった。
【0170】
結論: 上記実験の観察によって、pH分割に基づくタンパク質(GFP)の局所的蓄積および再分布のメカニズムが生体細胞で起こることと、表面pH値が制御されている対象または要素と接触する細胞内タンパク質の濃度勾配または局所濃度を生み出す可能性のあることを明確に実証している。
【0171】
実施例4: 酵母細胞の細胞毒性に関するpH効果
この実験は酵母細胞のpH変性面の細胞毒性をテストするために行った。
【0172】
実験素材と方法: 9枚のプラスチックシャーレの底を、イモビリン(アクリルアミド緩衝剤)を含む厚さ0.5ミリのポリアクリルアミドゲルでコーティングした。ここでの各ゲルは約1pH単位ずつ異なったpH値を有する。第1シャーレのコーティングはpH3のアクリルアミド・イモビリン(商標)緩衝ゲルであり、第2シャーレのコーティングはpH4のアクリルアミド・イモビリン(商標)緩衝ゲルであり、第3シャーレのコーティングはpH5のアクリルアミド・イモビリン(商標)緩衝ゲルであり、順次第9シャーレまで増えて、最後の第9シャーレのコーティングはpH11のアクリルアミド・イモビリン(商標)緩衝ゲルである。
【0173】
コーティングは当該技術分野で知られている標準的な重合法によって施された。イモビリンの成分を下記の表1に列挙する。
【0174】
【表1】
【0175】
表1の数字は、精製水添加によるpH液10mLを作るために出発原料(100mMの濃度を有する)のμLで示している。
【0176】
組織培養基(ロズウェル・パークメモリアル組織培養基RPMI1640・ダッチMOD01−1−7−1)に懸濁した100〜200万の酵母細胞サッシャロミクス(市販されているパン酵母)を夫々、シャーレに入れた。細胞は、シャーレの底に沈殿してポリアクリルアミド面に接触したまま、下記の表2に示した設定時間放置した。指定の接触時間の後、細胞をトリパンブルー染色法によって着色し、各シャーレに死細胞の数を計測した。
【0177】
結果: 下の表2に、指定pH値で指定時間における細胞の死亡率データ(総細胞に対する割合%)を示している。
【0178】
【表2】
【0179】
表2から分かるように、pH極値(pH3、pH4、pH10、pH11)で、pH調整物質との比較的短い接触時間のうちに細胞は死滅した。pH7およびpH8では長時間後でも顕著な細胞毒性は見られなかった。pH中間値(pH5〜9)では、経時的に毒性が顕れるのが観察できた。
【0180】
結論: ゲルに変化を唯一のパラメータはアクリルアミド緩衝剤の成分であった。ゲルは水性浸漬においてかなり安定しており、細胞培養への毒性物質が作り出される様子はなかった。よって、観察された細胞毒性は、実験で用いたpH調整用のアクリルアミドゲルの表面に接触する細胞中のイオン(荷電タンパク質、水素イオン、カリウムイオン、他の細胞内イオンなど)の再分布による原因が濃厚である。この仮説は更に、その成分をpH3、4、5、6で観察されるような毒性と比較しても、高い酸性成分は殆ど一定であるが毒性変化は著しく大きいことからも裏付けられる。同様に、殆どの主要成分はpH11、10、9、8で僅かに変化するだけであるが毒性は著しく変化することも基本的側面として考察できる。この考察によって、毒性が、従来技術において権利主張されているような高い陰イオン種または陽イオン種の結合の結果でなく、バルクpH特性の結果であることが分かる。
【0181】
この実験の結果によって、細胞に接触するpH調整物質またはpH調整基材におけるpH値を選択することで細胞死亡率(毒性遅発効果)を制御できること、および、細胞に接触する面または基材のpH値を適切に変更することによって斯かる効果(細胞死亡率)を微調整できることを明らかにした。
【0182】
実施例5: Jurkat細胞のpH誘発細胞毒性の効果
実験素材と方法: L−グルタミン10mMと、HEPES10mMと、ピルビン酸ナトリウム10mMと、PBS10%を補完したRPMI1640においてJurkat細胞「クローンE6−1」を成長させた。上記した酵母細胞(実施例4)で適用した可変pH面に細胞を曝した。
【0183】
結果: 下の表3に、指定pH値で指定時間における細胞の死亡率データ(総細胞に対する割合%)を示している。
【0184】
【表3】
【0185】
実施例6: 黄色蛍光タンパク質(YFP)の吸収特性
実験素材と方法: 黄色蛍光タンパク質(供給元:フィアラジュウムSP「SL−2003」)を示すH1299肺癌細胞1μグラムを溶解した。
【0186】
抽出タンパク質をテストして、IPG片(アマシャム生命科学「イモビリン(商標)」乾燥片=pH3〜10)におけるYFPの最大蓄積量のpH範囲を計測した。IPG片を溶液に22時間浸漬し、その後にツァイス社製「Axiscope2プラス紫外線顕微鏡」の紫外線スキャナを用いて走査処理した。
【0187】
結果: 図5に示すように、pH9.5〜10の範囲で最も大きいYFP蓄積量が認められた。
【0188】
実施例7: 物理的バリアによってpH誘発細胞毒性を防止する。
pH誘発細胞毒性にとって細胞がpH調整物質の表面に直接接触する必要があるのか否かを確認するために以下の実験を設定した。
【0189】
実験素材と方法: pH3のイモビリン・ポリアクリルアミドゲルを0.5mm厚の層状にシャーレの底に形成した。平均空孔サイズが2μmで厚さ10μmのナイロンフィルタ(米国ナルジェ社から市販)をIPG層の表面に緊密に接触させて配置した。組織培養基(ロズウェル・パークメモリアル組織培養基RPMI1640・ダッチMOD01−1−7−1)に懸濁した酵母細胞20万個体をシャーレに入れ、6時間放置して沈殿させた。沈殿6時間経過後に、細胞をトリパンブルー染色法によって着色した。
【0190】
結果: 計測した脂肪細胞の数は細胞総数の約5%であった。
【0191】
結論: 細胞とpH調整物質との間に介在するナイロンフィルタがpH誘発細胞毒性を阻止した。
【0192】
実施例8: 特異的細胞毒性装置
pH誘発細胞毒性には細胞とpH調整物質との直接接触が必要であることを更に立証するために、細菌体をpH調整物質に接触させるが酵母細胞は接触させないフィルタを以下のように用いた。
【0193】
実験素材と方法: pH3のイモビリン・ポリアクリルアミドゲル(IPG)を0.5mm厚の層状にシャーレの底に形成した。実施例6で用いた平均空孔サイズが2μmで厚さ10μmのナイロンフィルタをIPG層の表面に緊密に接触させて配置した。0.5ミリリットルの細胞培養液に懸濁した大腸菌(100単位/マイクロリットル)と酵母細胞(100万個体/mL)の混合物をナイロンフィルタのシャーレに入れ、シャーレを摂氏37度で12時間培養した。培養期間後に、マクコンキー寒天上の細菌集落分析のために培地をサンプリングし、死細胞を計測するために酵母細胞をトリパンブルー染色法によって着色した。
【0194】
結果: 細菌集落は検出されず、顕著な酵母細胞死が見られなかった。
【0195】
結論: 実験の結果、細胞毒性薬に接触していた細菌性細胞は殺滅したが、細胞毒性薬に非接触の酵母細胞は生存したことを実証し、更に、この実験の結果から、pH調整物質の細菌素特性が明らかになった。
【0196】
実施例9: Jurkat細胞におけるpH誘発細胞毒性
実験素材と方法: 約1ミクロンの平均粒径を有するポリアクリルアミドビーズの懸濁液を、pH9.0のポリアクリルアミドとイモビリン(商標)の混合液から調製した。細胞に対するビーズの比率がJurkat細胞に対してビーズ20個になるように、1mLの組織培養基に懸濁するJurkat細胞100万個体にビーズを加えた。ビーズを細胞懸濁液に加えてから0.5時間、1時間、2時間後にアリコートを抽出し、細胞をトリパンブルー染色法によって着色して死細胞の数と総細胞数を計測した。
【0197】
結果:
ビーズを加えてから0.5時間経過後の死細胞割合は5%であった。
ビーズを加えてから1時間経過後の死細胞割合は10%であった。
ビーズを加えてから2時間経過後の死細胞割合は27%であった。
【0198】
実施例10: ナフィオンの細胞毒性効果
スルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)は酸性物質(陰イオン電荷)生物活性ポリマであり、強い緩衝性能と高い緩衝能を有する。この種のフィルムは、基材(ポリメチルアクリレート、ナイロン、ポリエステル等)と、活性層としてのスルホン化ポリマとからなる。ナフィオンの細胞毒性または殺菌性は確認されておらず、燃料電池用途におけるイオン導電性電極として一般に用いられている。ナフィオンが細胞に対して毒性を持つのか否かを確認するために下記の毒性試験を実施した。
【0199】
実験素材と方法: PBS緩衝剤中にある100万固体のJurkat細胞を、市販のナフィオン膜(シグマ社製「ナフィオン117」ペルフルオロ化合物274674−IEA)を1cm角にした膜体上に堆積させた。生細胞と死細胞とを識別するために、膜体を1μg/μLのヨウ化プロピジウムを1μL用いた着色法か、トリパンブルー染色法で着色した。
【0200】
結果: 図6A〜6Bに示すように、ナフィオンに10分間曝した後、95%以上の細胞が死滅した。
【0201】
実施例11: ラミネート層の細菌毒性および細胞毒性
実験素材と方法: ラミネート層サンプル: 110μm厚のポリエステル基材上に形成したフィルムよりなるラミネート層サンプルを使用
活性化担体「BIOACT13、15、16」シリーズ
「BIOACT16」110μm厚のポリエステルベース+アクリル変性ポリウレタン下塗層
「BIOACT13」110μm厚のポリエステルベース+アクリル変性ポリウレタン下塗層+サブミクロン厚の「活性」陽イオンシリカを含むPVOHバインダ(W/W比=4:1)、総コーティング重量=0.97g/m2、コーティングpH=4.06
「BIOACT15」110μm厚のポリエステルベース+アクリル変性ポリウレタン下塗層+サブミクロン厚の「活性」陽イオンシリカを含むPVOHバインダ(W/W比=4:1)、総コーティング重量=0.76g/m2、コーティングpH=4
コーティングしていないサンプルを比較対象として用いた。
【0202】
MVC/HT/56シリーズA、B、C: このラミネート層は、コーティングの活性成分としてポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)のp−トルエンスルホン酸塩(pH3)の混和物を基にしている。
「MVC/HT/56A」110μm厚のポリエステルベース+PVOH+p−トルエンスルホン酸塩。乾燥コーティング総重量が0.9グラム(〜0.9ミクロン)のうち、活性成分の重量は0.6グラム。
「MVC/HT/56B」MVC/HT/56Aと同一であるが、処理が異なる。
「MVC/HT/56C」110μm厚のポリエステルベース+PVOH+p−トルエンスルホン酸塩。乾燥コーティング総重量が0.58グラム(〜0.5ミクロン)のうち、活性成分の重量は0.24グラム。
「MVC/HT/56D」MVC/HT/56Aと同一であるが、処理が異なる。
【0203】
生細菌および死細菌の懸濁溶液の調製:10mLの大腸菌DH5をLB培地で後期対数期まで成長させた。培地1mLを、5000rpmで5分間遠心分離にかけて濃縮した。沈殿物を更に、0.85%NaClの100μL溶液中に再懸濁させ、懸濁物50μLを0.85%NaClの950μL溶液(生細菌用)と70%の2−プロパノール(死細菌用)中に加えた。両サンプルをRTで1時間培養し、その上で、5000rpmで5分間遠心分離にかけてペレット状にした。こうして得られたペレットを0.85%NaClの500μL溶液中に再懸濁させて、再度遠心分離処理した。最後に、両ペレットを0.85%NaClの50μL溶液中に再度懸濁させた。
【0204】
生細菌および死細菌の着色:細菌生存キット「LIVE/DEAD BacLight(商標)」(モレキュラ・プルーブ社製)を用いて着色処理した。SYTO9とヨウ化プロピジウム染色液の混合液によって、無傷細胞膜を含む細菌を蛍光緑色に着色し、損傷膜の細菌を蛍光赤色に着色した。基本的には、SYTO9染料と、1.67mMのヨウ化プロピジウムと、1.67mMの成分Aの溶液2μLを、1.67mMのヨウ化プロピジウムと18.3mMの成分Bの溶液2μLと混合した。染料0.15μLを細菌懸濁液50μLに加え、着色細菌2.5μLをスライドと蓋部材との間に捕捉させ、生細胞と殺滅細胞を蛍光顕微鏡で観察した。
【0205】
フィルムの抗菌性テスト: 非活性フィルムとIMーNaCl溶液中で20分間処理したフィルムを用いて2種類のテストを行った。いずれの場合も、生物活性フィルムに堆積させたサンプルを蛍光顕微鏡で観察し、着色した生細菌および死細菌の数を計測して抗菌作用を推定評価した。
【0206】
フィルムの細胞毒性テスト: 次の方法によって生物活性フィルムに適用した上で生Jurkat細胞および死Jurkat細胞を計測した。Jurkat細胞が100万固体入った50μLのPBS中に色素混合液0.15μLを加え、着色細胞2.5μLを活性フイルムと蓋部材の間に捕捉させた。その状態で、生細胞と死細胞を、蛍光顕微鏡を用いて観察した。
【0207】
結果: MVC/HT/56A、B、C、Dの抗菌性テスト: 上記ラミネート層を用いたJurkat細胞を30分培養した後、生細胞(運動細胞)を対照MVC/HT/56/BフィルムとMVC/HT/56/Dフィルムで観察したところ、グリーンフィルタ(5−2)の元で緑または赤みを帯びた色を呈した。対称的に、MVC/HT/56/AおよびCのラミネートでの培養の1分後には全ての細胞が付着し、グリーンフィルタの元で赤色を呈した。
【0208】
MVCーHT56A、B、C、Dの細胞毒性テスト: 図7および表4から分かるように、Jurkat細胞の56/Aおよび56/Cフィルムとの相互作用は56/Bおよび56/Dフィルムのものとは異なる。
【0209】
【表4】
【0210】
BIOACT13、15、16の抗菌性テスト: BIOACT13で45分培養した後、50−70%の大腸菌細胞が死滅した。同時に、大腸菌の20〜40%がBIOACT15での培養後に死滅した。大腸菌はBIOACT16には付着しなかった。BIOACT15での培養後20〜30分後に殆どの大腸菌が死滅した。これら細胞の付着の評価は、暗雑音が高いため困難であった。
【0211】
BIOACT13、15、16の細胞毒性テスト: 異なる3種の実験結果を表5に示す。同表に、緑/赤のJurkat細胞の数及び緑色全体の割合を表している。
【0212】
【表5】
【0213】
下表6に3種類の実験結果として赤色細胞の割合をまとめている。
【0214】
図8A〜8DにはJurkat細胞をBioact13に曝した代表的な実験を示している。
【0215】
【表6】
【0216】
結論: 56/Aおよび56/Cフィルムにおける大腸菌とJurkat細胞の相互作用は56/Bおよび56/Dのものとは異なる。BIOACT13、15、16シリーズにおいては、BIOACT13が最も高い細胞毒性と抗菌性を現した。
【0217】
実施例12: ナフィオンおよびポリアクリルアミドpHゲル
ナフィオンと他のフィルムが細菌に対して毒性を持つのか否かを確かめるために以下の毒性試験を行った。
【0218】
実験素材と方法: 殺菌効果を確認するために6種類のプラスチックフィルムをテストした。
1.ナフィオン(デュポン製品)
2.ナフィオン(デュポン製品)
3.ポリエステルベースpH10に形成したイモビリンを有する500ミクロン厚のポリアクリルアミド
4.上記3と同じでpHが9の素材
5.ポリウレタンフィルム(市販品)
6.ポリエステルpH5に500ミクロン厚ポリアクリルアミドを形成した対照ポリエステルフィルム
【0219】
黄色ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌属、A群β溶血性連鎖球菌、G群β溶血性連鎖球菌: これら細菌の生存能力を、「播種」方法を用いて血液寒天培地で実験した。基本的に、微生物培養液0.01mLを特殊な細菌ループを用いて血液寒天培地に拡散した。6枚のプラスチックフィルム(10mm×10mm)を、活性側を下に向けて試験板上に載せた。摂氏37度で一晩培養した後、菌集落の数を評価し、実験群と対照群を比較した。
【0220】
総微生物剤と真菌剤のテスト: 上記フィルムの総抗菌効果および抗真菌効果を「沈殿」法を用いてサブロー寒天培地で行った。サブロー寒天培地を入れた試験板を覆いをせずに8時間放置した後、6枚のプラスチックフィルム(10mm×10mm)を夫々、活性側を下に向けて試験板上に載せた。摂氏37度で一晩培養した後、菌集落の数を評価し、実験群と対照群を比較した。
【0221】
結果: 本発明によるシートの黄色ブドウ球菌の成長への効果を表7にまとめている。本発明によるシートのブドウ球菌属の成長への効果を表8にまとめている。本発明によるシートのA群β溶血性連鎖球菌の成長への効果を表9にまとめている。本発明によるシートのG群β溶血性連鎖球菌の成長への効果を表10にまとめている。本発明によるシートの総微生物剤および真菌剤への効果を表11にまとめている。
【0222】
【表7】
【0223】
【表8】
【0224】
【表9】
【0225】
【表10】
【0226】
【表11】
【0227】
結論: ナフィオンおよびシート番号3(ポリエステルベースpH10に形成したイモビリンを有する500ミクロン厚のポリアクリルアミド)の双方が、高い抗菌性および総抗菌活性と抗真菌活性を示した。
【0228】
実施例13: 牛乳の保存期限
本発明のフィルムを牛乳の保存期間への効果についてテストした。
【0229】
実験素材と方法: 本発明のフィルムを用いて牛乳の安定性を検証するために殺菌均質牛乳を用いた。2つの実験で牛乳を紫外線で処理した。
【0230】
テスト1: 35mm径の7つの空のシャーレを新鮮な牛乳で満杯にした。6つのシャーレを、本発明のフィルムで覆い、牛乳が空気に触れずにフィルムの活性側が触れるようにした。7番目のシャーレは対照用である。シャーレをテーブルに置いたまま室温の状態で6日間放置した。蒸発を補うために無菌の精製水を毎日補充した。補充した精製水の総量を総牛乳量の5%以下にしたので、pH活性動態に影響を及ぼさないはずである。実験を2回繰り返した。
【0231】
テスト2(ナフィオンを用いた14日間テスト): このテストは活性剤(層)として市販のナフィオンを用いて行った。殺菌均質牛乳(抗生物質を含まない)を用いて牛乳の安定性をテストした。35mm径の3つの空のシャーレを新鮮な牛乳で満杯にし、2つのシャーレを、ナフィオンで覆い、牛乳が空気に触れずにナフィオンの活性側が触れるようにした。3番目のシャーレは対照用である。
【0232】
シャーレをテーブルに置いたまま室温の状態で14日間放置し、毎日シャーレのpHを測定した。蒸発を補うために無菌の精製水を毎日補充した。補充した精製水の総量を総牛乳量の5%以下にしたので、pH活性動態に影響を及ぼさないはずである。
【0233】
総微生物剤および真菌剤のテスト: このテストは「沈殿」法を用いてサブロー寒天培地に対して行った。サブロー寒天培地を入れたシャーレを蓋をせずに8時間放置した後、プラスチックフィルム(10mm×10mm)を、活性側を下に向けて試験板上に載せた。摂氏37度で一晩培養した後、菌集落の数を評価し、実験群と対照群を比較した。
【0234】
結果: テスト1による牛乳のpH結果を下表12に示す。
【0235】
【表12】
【0236】
牛乳(テスト1の繰り返し実験)のpH結果を下表13に示す。
【0237】
【表13】
【0238】
14日間テスト(テスト2)のpH結果を下表14に示す。
【0239】
【表14】
【0240】
微生物剤および真菌剤のテスト結果を下表15に示す。
【0241】
【表15】
【0242】
実施例14: 第2ラミネート層の細胞毒性テスト
2番目の態様のポリエステルベースのラミネート層を熱可塑性層形成方法によって準備した。ラミネート層は、PVOHマトリックス中の活性陰イオン成分からなり、いくつかのサンプルでは、活性層をPVOH層で保護した。
【0243】
ラミネート層の成分および構成は下表16に示している。
【0244】
【表16】
【0245】
上表16において、「T」はグラム/平方メートルで表した合計厚み、「R」活性成分とPVOHバインダの比率、「T1」ミクロンで表した概略厚み、「T2」ミクロンで表したPVOH保護層の厚みである。
【0246】
実験素材と方法:
pHの決定: 水中でフィルムを湿潤させた後、pH−Fix0−14(マッハライ・ナーゲル社製)を用いてpHを測定した。
細胞毒性テスト: 上記実施例12、13で説明した細胞毒性テストを行った。
【0247】
結果: pHの測定結果を下表17に示した。
【0248】
【表17】
【0249】
細胞毒性の結果を下表18に示した。細胞毒性効果はPI着色細胞(死細胞)の割合%として測定した。20分後、対照サンプル(フィルムなし)では約80%の細胞が緑色になった。
【0250】
【表18】
【0251】
(注:サンプル3、4、7には中性PVOH保護層を設けており、高い細胞毒性を残した。)
【0252】
実施例15: 抗菌性繊維
本発明の材料を用いると細胞壊死を防止できるか否かを確かめるために、イオン交換樹脂ビーズを木綿繊維に組み込んで、2日間、壊死組織に接触させた。
【0253】
実験素材と方法: 初期材料: バイオ・ラッド社製イオン交換樹脂AG501−X8(D)(カタログ番号N142−6425)
【0254】
木綿繊維の1平方cm当たり約100個のビーズを含ませた。
【0255】
結果: 図9A〜9Cに示すように、バイオ・ラッド・イオン交換樹脂よりなる木綿には抗壊死効果が現れた。
【0256】
結論: 緩衝特性を有するイオン交換樹脂よりなる材料は壊死を防止するのに有効である。本発明の様々な実施例を通して明らかにした本発明の複数の特徴を一つの形態に組み合わせて実施することも可能である。反対に、個々に概略説明した本発明の様々な特徴を別々に単独適用してもよく、また、二次的に適当に組み合わせて実施することも可能である。
【0257】
以上のことから明らかなように、本発明によって標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことができるので、真核性細胞及び原核細胞のいずれにも殺滅効果があり、優れた抗菌性を発揮することができ、長期使用に際して細胞体に接しても抗菌剤が溶出しないで永久的に抗菌効果を保持しながらも安価、且つ、容易に適用できる固形緩衝剤を用いて滴定によって細胞を殺滅させる組成物及び方法が実現した。
【0258】
本発明を特定の実施例を参考に説明したが、当該技術分野の技術者であれば様々に置換、改変、変更が可能であることは自明である。よって、斯かる置換、改変、変更は本発明の権利範囲に包括されるものとし、特定の個々の公報、特許および特許出願が参照された場合に本発明の一部と見なすように当該明細書の記載に基づく全ての公報、特許および特許出願は本発明に同等に包括される。更に、当該明細書で参考までに引用した内容は本発明に先行する技術として有効な文献であると認めた訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】pH勾配を有するポリアクリルアミド細条ゲルを含む天然尿素変性形態の細条タンパク質フィコシアニンの空間分布を示すグラフであり、(A)のグラフは天然(非変性)フィコシアニンの走査結果を示し、(B)のグラフは8M尿素変性フィコシアニンの走査結果を示し、同図において縦軸はOD単位で表した吸収度であり、横軸はpH単位で表したゲル片の走査位置を示す。
【図2】pH勾配を有するポリアクリルアミドゲルを含む天然尿素変性形態の細条タンパク質ミオグロビンの空間分布を示すグラフであり、(A)のグラフは天然(非変性)ミオグロビンの走査結果を示し、(B)のグラフは8M尿素変性ミオグロビンの走査結果を示し、同図において縦軸はOD単位で表した吸収度であり、横軸はpH単位で表したゲル片の走査位置を示す。
【図3】2つの異なったタンパク質ミオグロビン及びフィコシアニンのpH依存分離と再分布を実証する2つの異なった実験結果を示す写真であり、(A)はミミオグロビンとフィコシアニンの混合物を中央区画2に配置した直後の試験容器の平面であり、(B)はミオグロビンとフィコシアニンの混合物を配置した7日後に撮った同一試験容器の平面である。
【図4】pH変性ビーズに細胞を付着させた後のGFP分布の時間的変化を示しており、(A)は基点時間(細胞のビーズへの付着時)におけるビーズ6に付着した細胞8を示し、(B)は左側の写真の撮影から10分後に撮ったビーズ6に付着した細胞8を示し、(C)は左側の写真の撮影から30分後に撮ったビーズ6に付着した細胞8を示している。白い矢印で指した蛍光点は、ビーズ6と細胞8との接点で移動蓄積するGFPの蛍光発光である。
【図5】pH勾配を有するアクリルアミドゲルを含む細条イモビリン上の黄色蛍光タンパク質(YFP)の空間分布を示すグラフであり、図において縦軸は光学密度であり、横軸はpH単位で示す帯状IPGに沿う位置を表す。
【図6】Jurkat細胞上のナフィオンの細胞毒性効果を表す顕微鏡写真であり、(A)は非ナフィオン面上のJurkat細胞を示しており、(B)はナフィオン面上のJurkat細胞を示す。
【図7】本発明による4枚のMVC/HT/56A膜、同B膜、同C膜、同D膜との接触後のJurkat死細胞(赤)の割合を示すグラフ。
【図8】「LIVE/DEAD(登録商標)BacLight(商標)」Bacterial Viability Kit(米国モレキュラー・プルーブ社製)を利用して撮影したJurkat細胞上のBIOACT13膜、同15膜、同16膜、同110膜の細胞毒性効果を表す顕微鏡写真であり、蛍光顕微鏡下で死細胞が赤色に発色し、生細胞が緑色に発色しており、(A)は1分後の対照Jurkat細胞(生体膜と非接触)を示し、(B)は1分後に加えたBIOACT13膜を有するJurkat細胞を示し、(C)は10分後の対照Jurkat細胞(生体膜と非接触)を示し、(D)は10分後に加えたBIOACT13膜を有するJurkat細胞を示す。
【図9】イオン交換樹脂ビーズの抗壊死作用を示す写真であり、(A)はイオン交換樹脂ビーズの投与前の壊死細胞の写真であり、(B)はイオン交換ビーズの投与から2日後の同細胞の写真であり、(C)はイオン交換ビーズを適用した布地の写真である。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形緩衝剤を用いて滴定によって細胞を殺滅させる組成物及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人に有害で潜在的に致死に至らしめる様々な細胞物質が知られている。たとえば、米国において癌細胞は、心臓病の次に死亡率の高い疾病をもたらす因子である(ボーリング等著「CA臨床医学者のための癌ジャーナル」第43巻第7号(1993)参照)。細胞微生物も様々な疾病の原因因子である。細胞殺滅及び標的細胞殺滅(たとえば、癌死滅)はバイオテクノロジー産業において高度な研究がなされている。
【0003】
癌は、無制限に成長する可能性のある悪性腫瘍であり、特に、人体において見られる様々な細胞の病原性の複製因子(正常な調整制御機能の喪失)である。斯かる疾患の初期治療としては、外科手術、放射線療法、あるいは、これら療法の併用が施されるが、限局的には再発及び転移性疾患が頻発する。ある種の癌には化学療法薬が有効であるが、長期に亘って回復することは殆どないので、多くの場合治療にはならない。一般に、腫瘍とその転移は、多剤耐性の亢進として知られているように化学療法が効かず、多くの場合、腫瘍はある種の化学療法薬に対して本質的に耐性がある。加えて、斯かる療法は非癌性細胞を脅かす上に、人体に負担をかけ、しかも、多様な副作用を誘発する。こうしたことから、癌細胞を標的にする改良薬が必要である。微生物は宿主組織に侵入して増殖し、重症疾患を引き起こすことがある。病原菌は、たとえば、結核、コレラ、百日咳、伝染病等々の様々な衰弱性疾患あるいは致命的疾病の真因として確認されている。重症感染症の治療には、病原菌を殺滅させる抗生物質などの薬剤が投与されるが、病原菌は通常、抗生物質に対する耐性を持つようになるので、微生物による感染症の蔓延を防止するために新たな開発薬が必要となる。
【0004】
人体に適用導入する製品に関する主な懸念は細菌感染である。細菌は、病原菌を排除する人の免疫システムを阻害する生体膜に進化するので、埋め込み型医療機器を適用している場合には前記細菌による感染症を防止することが重要な課題になる。これらの感染症を抗生物質で治療するのが難しいので、埋め込み型装置を取り外さざるを得なくなり、結果的には、患者に身体的な苦痛と負担を強いると共に医療費も嵩む。こうしたことから、この種の医療装置に抗菌効果を持たせて滅菌できる技術が長い間切望されていた。
【0005】
当該技術において医療器具の表面を抗菌性の被膜でコートすることが一般的な方法であったが、大抵の殺菌剤が部分的に水溶性であったり、あるいは、有効な抗菌作用を得るために少なくとも十分な可溶化が必要であるので、殺菌剤を単純にコートするだけでは信頼性に欠けることが分かっている。このため、殺菌剤を医療器具に練り込むか、あるいは、少なくとも安定した抗菌コートを形成するなどの試みがある。
【0006】
別の方法として、抗生物質、第4級アンモニウム化合物、銀イオン、ヨウ素などの抗菌剤を含浸させ、長期に亘って抗菌剤を徐々に周囲に放出することで細菌を殺滅させることもできる。こうした方法は細菌を含む水溶液で抗菌効果が確認されているが、液体培地でなく空中浮遊菌に対して効果は期待できず、特に、抗菌剤が溶出し尽くされて効果が無力になった抗菌基材についてこのことが当てはまる。医療環境における生体膜形成を弱めるために用いる薬剤は利用者に安全でなければならない。また、生体膜を抑制するのに十分な量の殺菌剤は宿主組織をも損傷させることになる。局部組織領域に適用した抗生物質によって、特定の抗生物質に対する抵抗力をもつ浮遊微生物を含む生体膜集合体を形成する耐性細菌を生み出すことになるが、抗生体膜または防汚剤は医療装置の健全性を阻害することはない。そこで、抗菌効果を得るために添加する薬剤では補えないような扱いやすさ、柔軟性、防水性、強度、耐久性、特性などの特徴を有する材料を選択することになる。食品は細菌感染源でもあり、食品保護して、風味の低下や中毒の原因になるような栄養素の劣化や食感変質を抑制あるいは防止するためには食品の保存が最も重要である。食品の保存には様々な方法があり、保存性のある食品の物理的処理としては、たとえば、冷凍、冷蔵、加熱調理、レトルト、低温殺菌、乾燥、真空パック、無酸素パックなどがある。これらのいくつかの試みは食品加工処理の一部であり、滅菌食品をつくることと所期の品質の食品を生産することの安全性のバランスをとるように食品加工処理を選択することが好ましい。
【0007】
医療装置の製作、食品の梱包や取り扱いのために高分子材料の使用が増加しており、抗菌性ポリマの利用が最適と考えられる。この技術分野でも抗菌性ポリマは利用されているが、更に優れた抗菌性を持ち、長期使用に際して細胞体に接しても抗菌剤が溶出しないで永久的に抗菌効果を保持しながらも安価、且つ、容易に適用できるよう改良された抗菌性被覆材料の要望がある。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0271780号公報に、食品保存用に用いる第四アンモニウム塩などのイオン交換材料に結合している殺菌性ポリマ・マトリックスが開示されている。このポリマ・マトリックスは、内部に練り込まれた殺菌剤(たとえば、第四アンモニウム塩)の作用によって細菌を殺滅させる。殺菌剤の正電荷は、この正電荷と負に帯電した細胞壁との間の静電気引力に作用する。ところが、上記公報には緩衝性能を有する固体緩衝剤の使用は記載されていない。
【0009】
米国特許出願公開第2005/0249695号公報は、表面殺菌性を持たせるために固体表面に共有結合する第四アンモニウム塩または第四ホスホニウム塩(陽イオン正荷電体)などの抗菌性微粒子の固定化技術を開示している。当該公報に開示のポリマは、アミノ基の作用によって固体表面に付着し、付着したポリマは単に、固体表面に単分子層を形成することだけの効果を持つ。
【0010】
米国特許出願公開第2005/0003163号公報には、抗菌・帯電防止特性を有する基板が示されている。これらの特性は、陽イオン荷電ポリマ化合物で被覆層を形成することで実現する。米国特許出願公開第2005/0271780号、同第2005/0249695号、同第2005/0003163号公報に記載されたようなポリマの効果は、細胞膜に殺菌材料が直接接触している場合に発揮され、また、毒性の程度は殺菌成分の表面濃度に大きく依存する。露出した陽イオン物質はイオン交換反応で急速に含浸するので前記要件には大きな制約が生じる。
【0011】
更に、前記引用の米国特許出願のいずれにも、真核細胞を殺滅させる思想はなく、真核性細胞あるいは原核細胞タイプに対する細胞毒性薬としてのポリマの生体内使用も示されていない。しかも、上記米国特許出願には、ある種の細胞を選択的に殺滅させるポリマ構造の提案もない。
【0012】
よって、真核性細胞及び原核細胞の両方に対する細胞毒性作用を持たせた薬剤はかなり有用であり、開発の要望がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一実施例において、多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法、および、真核性細胞及び原核細胞のいずれにも殺滅効果がある医薬組成物およびそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法は、次のとおりである。
【0015】
本発明による多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法は、標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする。
【0016】
本発明の他の実施例において、多細胞生物における標的細胞を殺滅させる方法を提供することを目的とし、本発明によるこの方法は、標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞を殺滅させることを特徴とする。
【0017】
本発明の更に他の実施例において、標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法を提供することを目的とし、本発明によるこの方法は、標的細胞を陰イオン固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする。
【0018】
本発明の更に他の実施例において、標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法を提供することを目的とし、本発明によるこの方法は、緩衝層と当該緩衝層の外面に設けられた透水層とからなる固形緩衝剤に標的細胞を接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする。
【0019】
本発明の更なる実施例による細胞を殺滅させる方法は、50mM H+/l.pH以上でpH8以上かpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有する固形緩衝剤に標的細胞を接触させて、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする。
【0020】
本発明の更なる実施例による細胞を殺滅可能な固形緩衝剤を選択する方法は、50mM H+/l.pH以上でpH8以上かpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有する細胞を殺滅可能な固形緩衝剤を選択することを特徴とする。
【0021】
本発明の更なる実施例による対象細胞の部分母集団を殺滅させる方法は、特に対象細胞の部分母集団を殺滅させるように選ばれた緩衝容量及びpH値を有する固形緩衝剤に、対象細胞の部分母集団よりなる試料を接触させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする。
【0022】
本発明の他の実施例によって、
(i)担体と、
(ii)前記担体の表面の少なくとも一部に接合した固形緩衝剤とからなり、前記固形緩衝剤が緩衝層と前記緩衝層に設けられたイオン透過層よりなることを特徴とする製品を提供する。
【0023】
本発明のその他の実施例によって、
(i)担体と、
(ii)前記担体の表面の少なくとも一部に接合した固形緩衝剤とからなり、
前記固形緩衝剤が陰イオン性であることを特徴とする製品を提供する。本発明の更に他の実施例では、病的細胞集団に関係する病状を治療する薬剤の製造用の固形緩衝剤の使用方法を提供する。
【0024】
本発明のその他の実施例によって、有効成分として固形緩衝剤と、医薬として許容される担体または希釈剤とからなる医薬組成物を提供する。
【0025】
本発明の更にその他の実施例によって、対象細胞を殺滅するための最適な固形緩衝剤を選択する分析方法であって、
(i)複数の細胞を複数の固形緩衝剤に接触させ、
(ii)複数の細胞中の1細胞を殺滅可能な複数の固形緩衝剤のうちの対象細胞を殺滅するための最適な1固形緩衝剤を特定することからなる分析方法を提供する。
【0026】
本発明の更にその他の実施例によって、病的細胞集団に関係する病状を治療する方法であって、必要に応じて被験者に治療効果のある量の固形緩衝剤を投与して少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって病的細胞集団に関係する病状を治療する方法を提供する。後述する本発明の好適な実施例における更なる特徴によって、結果的に細胞を殺滅させる変化を生み出す。
【0027】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、多細胞生物が高等植物であることを特徴とする。
【0028】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、多細胞生物が哺乳動物であることを特徴とする。
【0029】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記接触を生体内で行うことを特徴とする。
【0030】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記接触を生体外で行うことを特徴とする。上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記接触を試験管内で行うことを特徴とする。
【0031】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤の少なくとも一部にpH勾配を有することを特徴とする。
【0032】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が標的細胞に吸収させたことを特徴とする。
【0033】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を親和性部分に付着させたことを特徴とする。
【0034】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記親和性部分を、免疫体、受容体リガンド、炭水化物とからなる群から選択したことを特徴とする。
【0035】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤の少なくとも一部を選択的バリアで覆ったことを特徴とする。
【0036】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記選択的バリアが物理的バリアであることを特徴とする。
【0037】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が緩衝層と、前記緩衝層の外面に設けられた透水層とからなることを特徴とする。
【0038】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記透水層が空孔ポリマであることを特徴とする。
【0039】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記空孔ポリマを、PVOH、セルロース、ポリウレタンからなる群から選択したことを特徴とする。
【0040】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする。
【0041】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を噴霧調製したことを特徴とする。
【0042】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする。また、上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする。
【0043】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする。
【0044】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陰イオン交換材料であることを特徴とする。
【0045】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料であることを特徴とする。
【0046】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料と陰イオン交換材料とからなることを特徴とする。上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記陽イオン交換材料が、スルホン酸とその誘導体、ホスホン酸とその誘導体、カルボン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、フェノールとその誘導体、アルソン酸とその誘導体、セレン酸とその誘導体からなる群から選択したことを特徴とする。
【0047】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記陰イオン交換材料が、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミンからなる群から選択したことを特徴とする。
【0048】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤がポリマであることを特徴とする。
【0049】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が、内在的イオン伝導性基材よりなることを特徴とする。
【0050】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤がアイオノマであることを特徴とする。上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記アイオノマがスルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)及びその誘導体であることを特徴とする。
【0051】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が20mM H+/l.pH以上の緩衝容量を有することを特徴とする。上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤がpH8以上のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする。
【0052】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤がpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする。
【0053】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記細胞が罹患細胞であることを特徴とする。
【0054】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記固形緩衝剤が担体面に付着していることを特徴とする。
【0055】
標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞を殺滅させることを特徴とする多細胞生物における標的細胞を殺滅させる方法。
【0056】
標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞を殺滅させることを特徴とする多細胞生物における標的細胞を殺滅させる方法。
【0057】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、対象細胞の部分母集団及び細胞の第2の部分母集団が異なる血漿緩衝能を示すことを特徴とする。
【0058】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記処理を生体外で行うことを特徴とする。
【0059】
上記した本発明の更なる好適な実施例において、前記処理を生体内で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0060】
上記した本発明の更なる好適な実施例における当該製品が、包装材料、医療装置、布材料、骨組、フィルタ、殺菌装置のいずれかの一部を形成することができる。
【0061】
細胞を固形緩衝剤に接触させることで細胞変化をもたらす本発明の新規な方法を提供することによって、現在知られている形態の不都合を解消することができる。
【0062】
なお、特に言及しない限り、ここでの技術用語及び学術用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術者が理解する同じ定義を意味するものとする。また、ここでの記載内容と同様もしくは等価な方法及び材料は本発明の実施もしくは試行に際して適用可能であるが、以下に最適な方法及び材料について説明する。ここに記載の全ての文献公報、特許出願、特許、及び、他の文献は単なる参考であり、説明に矛盾が生じる場合は、本件明細書に記載の定義に基づいて解釈すべきであり、且つ、材料、方法、例示事項等は単に説明のために記載したもので、発明の限定要件ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明を添付の図面を参考にして以下に説明する。特に図面を参考にして本発明の好ましい実施例を単に図解例示する目的だけであり、最良の実施形態と考えられる態様を提案するが、あくまでも本発明の原理及び概念を示しているだけであることを理解すべきである。また、ここでは本発明を基本的に理解するのに必要な説明以上に本発明の構造を詳細に示さず、当該技術分野の技術者が添付の図面を参考に本発明の様々な態様を実施できるよう説明する。
【0064】
本発明は、細胞殺滅組成物及び細胞殺滅方法に関し、特に、固形緩衝剤を用いた細胞過程に作用する方法に関するもので、癌性細胞などのような身体における異常細胞を殺滅させることから環境中の有害な原核細胞の殺滅に至る数々の応用に供することができる。本発明の原理及び作用は添付の図面を参考にすることで更に詳しく理解できよう。
【0065】
本発明の一実施例を詳細に説明するに先立って、以下の例示説明において説明する適用例のみに限定するものでなく、様々な手法で本発明の実施例を実施、実現可能である。また、ここで用いる技術用語及び表現は単に説明のために用いるものであり、本発明を限定すべきではない。本発明の技術は本件発明者らによって新たに発見発明した成果である。本件発明者らによって、生体分子(たとえば、タンパク質)は一般に、pH勾配に沿う空間分布を決定するpH特性を有することを明らかにし(実施例1参照)、更に、生体膜を通して再分布を起こすことができることを実験によって証明した(実施例3及び図4A〜4C参照)。
【0066】
本発明の着想に際して本件発明者らは、細胞内の過程を、その細胞に接触する固形緩衝剤の細胞外pHを変化させることによって操作することができることを明らかにした。よって、本発明の発明者らは、細胞内成分のpHから異なったpHを持つ固形緩衝剤に細胞を接触させることによって細胞のpHホメオスタシスの崩壊を可能にしたことを示した。接触は結果的に細胞質の細胞内pHの滴定を可能にし、通常、細胞過程において変化をもたらす。緩衝剤料のpH値が特定細胞のpHの生存範囲を超えると細胞死が起こる。
【0067】
米国特許出願公開第20050271780号、同第20050249695号、同第20050003163号公報には殺菌性ポリマが開示されている。前記公報に開示されているポリマは、ポリマの重合体構造に組み込まれるかその表面に固定されたカチオン性分子の介在によって殺菌作用が生まれるので、細胞膜に接触させることが必要となる。毒性の程度は殺菌成分の表面濃度に大きく依存する。露出した陽イオン物質はイオン交換反応で急速に含浸するので前記要件には大きな制約が生じる。
【0068】
本発明の新規なところは細胞膜を分離させるために陽性基の浸透に頼るのではなく、全体的なバルク緩衝効果に頼るため、ここに開示する固形緩衝剤はカチオン性ポリマだけでなく陰イオン緩衝剤にも限定されない。また、その細胞毒性がそれらの表面特性でなくバルク特性から生み出されるので、殺菌成分の表面濃度によって制限されない。本発明の実施を絞り込んで、本発明の発明者らは、固形緩衝剤が、たとえば、酵母細胞(実施例4及び表2)、哺乳類Jurkat細胞(実施例5及び表3)、細菌性細胞(実施例11及び表5)、真菌細胞(実施例12)などの全ての種類の細胞に細胞毒性の影響が及ぶことを明らかにした。
【0069】
更に本発明の発明者らは、細胞死亡率が細胞に接触する固形緩衝剤のpH値を選択することで制御可能であり、細胞死亡率は細胞に接触する固形緩衝剤のpH値を適切に修正することによって緻密に調整できることを証明した(一例として実施例4及び表2を参照)。
【0070】
pHに起因する細胞毒性には細胞が固形緩衝剤に直接接触することが必要であることを明らかにした。よって、pHホメオスタシスが特定サイズの細胞だけのために崩壊(変態)するように、特定の空孔サイズの物理的バリアを固形緩衝剤に付着させることができる。この方法で、特定の大きさの細胞だけが標的にされて他の細胞は変化しなくなる(実施例8参照)。
【0071】
更に、本発明の発明者らは、緩衝層の外面に設けた透水層がイオンの再分布を許し、これによって固形緩衝剤の全てのバルク効果を低下させないので、透水層によって更に固形緩衝剤が細胞作用を働かせるようになることを明らかにした。実施例14に示すように、固形緩衝剤が空孔ポリマに覆われて、それでも細胞毒性効果を発揮することになる。
【0072】
そこで、本発明の一実施例において、多細胞生物の標的細胞の細胞過程に変化を生み出す方法を提供することを目的とし、本発明によるこの方法は、標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする。本発明における細胞は、たとえば、単離細胞、細胞懸濁液、細胞培養などの細胞環境における細胞、または、組織内の細胞、または、有機的組織体における細胞であってもよい。これら細胞は、正常細胞、異常細胞(たとえば、癌細胞)、あるいは、それらの混合細胞であってもよい。
【0073】
ここでの用語「細胞過程の変化」とは、細胞過程における発現低下もしくは発現上昇を意味する。本発明の一実施例によって変化させる典型的な細胞過程では、細胞死(細胞自然死または細胞壊死)、細胞分化、細胞シグナリング、細胞成長、細胞分裂、細胞増殖、腫瘍増殖、腫瘍血管新生、腫瘍転移、腫瘍変移、腫瘍移動、細胞移動、細胞小器官機能(仮足形成、鞭毛運動等を含むが限定しない)、各種細胞の細胞内膜−細胞室間分子輸送などを含むがこれらに限定するものではない。
【0074】
本発明の一実施例において特に好ましい実施例によれば、結果として細胞過程の変化によって細胞が殺滅される。細胞毒性作用が働く固定緩衝剤の定量標準化について以下説明する。
【0075】
ここでの用語「多細胞生物」とは、細胞を1つ以上含む有機組織を意味する。典型的な多細胞生物には真核生物(哺乳類など)及び高等植物が含まれる。
【0076】
本発明の固形緩衝剤は、たとえば、菌類、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌などの原核細胞の細胞過程に作用する。
【0077】
ここでの用語「グラム陽性細菌」とは、細胞壁構造の一部としてペプチドグリカンだけでなく、多糖類ないしテイコ酸を有することを特徴とした細菌を意味し、グラム染色法における青紫色反応を特徴とする。
【0078】
代表的なグラム陽性細菌には、アクチノミセス属放線菌類、炭疽菌、ビフィドバクテリウム類、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、クロストリジウム菌類、破傷風菌、ジフテリア菌、コリネバクテリウム・ジェイケイウム、大便連鎖球菌、腸球菌、ブタ丹毒菌、真正細菌類、ガルドネレラ属膣桿菌、双子菌属、リューコノストック菌類、マイコバクテリウム・アブセサス、トリ結核菌錯体、マイコバクテリウム・チェロネ、マイコバクテリウム・フォルツイタム、マイコバクテリウム・ヘモフィリム、マイコバクテリウム・カンサシイ、ハンセン菌、マイコバクテリウム・マリナム、マイコバクテリウム・スクロフラセウム、マイコバクテリウム・スメグマチス、マイコバクテリウム・テラ、マイコバクテリウム・ツバキュロシス、マイコバクテリウム・ウルセランス、ノカルジア菌類、ペプトコッカス・ニガー、ペプトストレプトコッカス菌類、プロピオニバクテリア菌類、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌オーリクラリス、スタフィロコッカス・カピティス、スタフィロコッカス・コーニー、スタフィロコッカス・エピデルミディス、表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・オミニス、スタフィロコッカス・ラグダネシス、スタフィロコッカス・サッカロリティカ、腐性ブドウ球菌、スタフィロコッカス・シュライフェリ、スタフィロコッカス・シミランス、スタフィロコッカス・ワーネリ、スタフィロコッカス・キシロサス、ストレプトコッカス・アガラクシア(B群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アンジノサス、ストレプトコッカス・ボヴィス、ストレプトコッカス・カニス、ストレプトコッカス・エクイ、ストレプトコッカス・ミレリ、ストレプトコッカス・ミショア、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・サリバリウム、ストレプトコッカス・サンガイスなどが含まれる。
【0079】
ここで用いる用語「グラム陰性細菌」とは、各細菌性細胞を囲む二重膜の存在によって特徴づけられる細菌を意味する。代表的なグラム陰性細菌には、アシネトバクター・カルコアセティクス、アクチノバシラス・アクチノミセタムコミタンス、アエロモナス細菌、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス、バクテロイデス菌類、バクテロイデス・フラジリス、バルトネラ・バシリフォーミス、ボルデテラ菌類、ライム病ボレリア、ブランハメラ・カタラーリス、ブルセラ菌類、カンピロバクター菌類、肺炎クラミジア、オウム病クラミジア、クラミジア・トラコマチス、クロモバクテリア・ビオラセウム、シトロバクター菌類、歯周病原性細菌、エンテロバクター・アエロゲネス、大腸菌、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム、フゾバクテリウム菌類、レジオネラ菌類、レプトスピラ菌類、モラクセラ・カタラーリス、モルガネラ・モルガニ、肺炎マイコプラズマ、淋菌、髄膜炎菌、パスツレラ皮膚壊死毒素、プレシオモナス・シゲロイデス、プレボテラ菌類、プロテウス菌類、プロビデンシア・レットゲリ、緑膿菌、シュードモナス菌類、発疹チフス・リケッチア、ロッキー山紅斑熱リケッチア、ロシャリメア菌類、サルモネラ菌類、チフス菌、霊菌、赤痢菌類、トレポネーマ・カラテウム、トレポネーマ・パリダム、地域流行性梅毒トレポネーマ、熱帯苺腫トレポネーマ、ベイヨネラ菌類、コレラ菌、ビブリオ・バルニフィカス、腸炎エルシニア、ペスト菌などが含まれる。
【0080】
ここでの用語「固形緩衝剤」とは、緩衝能を有する固形の物質である。緩衝能は、酸や塩基を緩衝剤(滴定)に添加された時にpHの変化に耐える能力として定義されるもので、緩衝系の1pH単位の変化に作用する単位体積当たりに添加される水素陽イオン濃度によって決まる。緩衝系の緩衝能は通常、水素陽イオンを一定に供給することができる解離性及び非解離性の化合物が系において共存することから生み出される。よって、イオン伝導マトリックスまたは水/イオン透過マトリックスに取り込まれた酸性物質または塩基性物質(たとえば、イオン交換材料)を固形緩衝剤として分類することができる。固形物質の緩衝能は通常、水素陽イオンを放出または結合できる複数の官能基の存在から生じ、これらの物質の飽和度、つまり、これら全ての官能基が影響し合う濃度によって決まる。典型的な陽イオン交換物質としては、非限定的であるが、スルホン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、カルボン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、フェノールとその誘導体、ヒ酸とその誘導体、セレン酸とその誘導体などが含まれる。
【0081】
典型的な陰イオン交換物質としては、非限定的であるが、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミン、第4級アミンなどからなる化合物を挙げることができる。
【0082】
典型的な透水性基材としては、非限定的であるが、空孔ポリマ、空孔セラミックス、空孔ゲルなどを挙げることができる。
【0083】
典型的な空孔ポリマとしては、非限定的であるが、PVOH、cellulose、ポリウレタンなどを挙げることができる。
【0084】
別の態様では、固形緩衝剤を、固有のイオン伝導性の基材よりなる。固有のイオン伝導性の固形緩衝剤の例としては、非限定的であるが、アイオノマー及びポリカチオン性物質を挙げることができる。
【0085】
市販されているアイオノマーとしては、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(米国デラウェア州ウィルミントン市)から供給されるナフィオンR(商標)のペルフルオロ・スルホン酸膜及び同デュポン社から供給されるサーリンR(商標)の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0086】
固形緩衝剤は通常、ポリマである。本発明の実施例に適用できる固形緩衝剤として極めて多種多様のポリマが知られている。斯かるポリマを以下に列挙するがこれらに限定する物ではない。
【0087】
ポリ(4−ビニル−N−臭化アルキルピリジニウム)、ポリ(臭化メタクリロイルオキシドデシルピリジニウム)、N−アルキル化ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(ビニル−N−ヘキシルピリジニウム)、ポリ(N−アルキルビニルピリジン)、ポリ(N−アルキルエチレンイミン)、ポリ(4−ビニル−N−臭化アルキルピリジニウム)、ポリ(4−ビニル−N−臭化ヘキシルピリジニウム)、ポリ(1−(クロロメチル)4ービニールベンゼン)、ポリ(ジメチルオクチル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジメチルドデシル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジメチルテトラデシル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、50/50ポリ(1−クロロメチル)−4−ビニルベンゼン):ポリ(ジメチルドデシル[4−ビニルーフェニルメチルアンモニウムクロライド)、50/50ポリ(1−クロロメチル)−4−ビニルベンゼン):ポリ(ジメチルオクチル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、50/50ポリ(ジメチルオクチル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド):ポリ(ジメチルオクチル[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、ポリ(トリブチル−[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)、ポリ(トリオクチル−[4−ビニルフェニル]メチルアンモニウムクロライド)などである。
【0088】
本発明による固形緩衝剤は、適当な緩衝剤(たとえば、イモビリン(商標)アクリルアミド緩衝剤など)が適切に含まれていたポリアクリルアミド、アガロースゲル基材などのゲル基材よりなる。特定のpHのゲルを生成するイモビリンpK緩衝剤の量は後述の実施例における表1に示している。本発明の固形緩衝剤としては、イオン交換ビーズ、ポリマ被覆イオン交換ビーズ、イオン透過マトリックスのいずれかでよい。
【0089】
ここでの用語「接触」とは、固形緩衝剤に対する細胞の位置を意味し、細胞に固形緩衝剤を接触させる、あるいはその逆で接触させる必要性によって限定される。
【0090】
本発明の一実施例において細胞と固形緩衝剤は互いに物理的接触をしている。たとえば、固形緩衝剤を細胞の外側に接触させてもよく、あるいは、細胞の外側に付着させてもよい。あるいは、細胞外物質を内在させる既知の方法で固形緩衝剤を細胞に内包させてもよいが、細胞のファゴサイトーシス、エンドサイトーシス、受容体を介した飲食作用、クラスリン被覆ピット、小嚢結合内在化処理、トランスファーインフェクション法等々に限定しない。
【0091】
本発明の他の実施例における固形緩衝剤は透水層で細胞から分離している。前記透水層は、固形緩衝剤の緩衝作用によって緩衝剤と細胞との間のイオンの流れを妨げないようにイオンの流れを許す効果がある。典型的な透水層としては、PVOH、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリアクリルアミド、親水性添加物の有無を問わない微小孔性マトリックスなどがある。接触は体内接触、体外接触(たとえば、体内から摘出された細胞)、管内接触(たとえば、細胞株内)のいずれでもよい。
【0092】
上記したように、本発明の固形緩衝剤は特定細胞過程における変化をもたらすために定式化したものであり、特に、固形緩衝剤の3つの特性を操作して固形緩衝剤をpH、緩衝能、イオン伝導度などに影響する細胞過程に作用させることができる。
【0093】
以下に、細胞死の過程に影響する(細胞死を増加させる)ために固形緩衝剤を選ぶ例を開示する。
【0094】
(1)固形緩衝剤のpH値を細胞の生存能力範囲外にする。この範囲は細胞及び細菌の種類に応じて特化する。たとえば、固形緩衝剤のpH値を4未満または8を超える数値にすることで細胞のpH安定性に影響を及ぼす。
【0095】
固形緩衝剤にpH勾配を持たせるように調製することも可能である。勾配は細胞への固形緩衝剤の生物学的効果を段階的に変化させるのに有効である。たとえば、固形緩衝剤に勾配をつけることによって、固形緩衝剤の一部に細胞への細胞静止作用を持たせ、固形緩衝剤の他の部分に細胞毒性効果を持たせることも可能である。
【0096】
固形緩衝剤の基材におけるイオン交換材料を適当に制御することによって前記勾配の種類、強さ、位置、全体の形態を変化させ得ることは当該技術の基本認識の範疇であり、本発明の範囲に含まれるものとする。後述する実施例のように、勾配を有する緩衝剤を上記したイモビリン(商標)と合成することも可能である。
【0097】
更に、本発明の固形緩衝剤を、陽イオン交換材料と陰イオン交換材料を組み合わせ、細胞殺滅に適した形態に配列して形成することも可能であり、これによる固形緩衝剤を、たとえば、陰イオンビーズと陽イオンビーズのマトリックスに構成してもよい。前記ビーズは標的細胞の位置に合わせて同じ大きさにしてもよく、あるいは、大きさを異ならせてもよい。
【0098】
(2)細胞質ゾルと他の大半の細胞成分の一般的に許容される緩衝能値は概ね20mM H+/リットルのpH値で細胞質ゾルが滴定されるので、固形緩衝剤の緩衝能をこの値より高くすべきである。ほとんどの種類の細胞を殺滅できる固形緩衝剤の一般的な緩衝能は100mM H+/リットル以上のpH値である。
【0099】
(3)固形緩衝剤のイオン伝導度(プロトン伝導度)の変化は、細胞を殺滅させ得る固形緩衝剤の速度に影響する。特に、透水性固形緩衝剤におけるイオン移動度は水の陽子の拡散運動によって決まり、拡散定数が毎秒約10―8m2程度であり、これは毎秒0.1mmの流動速度に相当する。前記固形緩衝剤によって、数秒の内に接触細胞を死に至らしめることになる。このように、細胞を殺滅させる典型的方法は、細胞を滴定可能なpH値である約50mM H+/リットルの緩衝能を持つ固形緩衝剤に細胞を接触させ、これによって細胞を死に至らしめる方法である。前記pH値は通常、pH8以上かpH4.5以下である。pH値を測定して緩衝能を決定する方法は当該分野において公知である。
【0100】
細胞のプラズマ緩衝能とpH値は細胞タイプの特異型であり、そのためにこれらのパラメータの操作によって特定の種類の細胞を標的にできることになる。たとえば、腫瘍細胞は、正常細胞よりアルカリ度が高いので、固形緩衝剤が腫瘍細胞の最適細胞毒性のみに作用し、他の種類の細胞には殆ど(または、全く)作用しないようにすることができ、更には、夫々の種類の細胞には特定の膜透過性があるので、本質的に本発明の固形緩衝剤に多少なりとも影響を受けやすくなる。
【0101】
更なる例として、細菌の緩衝能は哺乳類のものより大きいが、細菌における数多くの緩衝培地は哺乳類細胞より約3桁以上小さいので、緩衝剤による細菌の滴定に対する脆弱性は高くなる。このことは、緩衝能が低い固形緩衝剤を用いて、哺乳類細胞を殺さずに細菌だけを殺滅可能であることを意味する。
【0102】
固形緩衝剤のpH値及び緩衝能を変化させる一方法として、水溶(イオン透過性)マトリックス中のイオン交換材料の濃度を変化させることがある。他の方法として、イオン交換材料の濃度を一定に維持してイオン交換材料を変える方法がある。対象とする細胞を殺滅させる最適な固形緩衝剤は、対象とする細胞を含む混合細胞に関して異なったpH値と緩衝能を持つ複数の固形緩衝剤を試験することによって選別する。その上で、対象とする細胞を分析して最適な固形緩衝剤を決定する。対象とする細胞を分析する方法としては、当該技術分野で公知の顕微鏡検査、免疫組織化学検査、生物学的検定技術などがある。
【0103】
本発明では固形緩衝剤を用いて疾病(たとえば、病理細胞集団に関連する疾患)を治療する目的もあり、この固形緩衝剤を主に管内もしくは生体外で身体に適用することによって、固形緩衝剤が特定の種類の細胞を選択的に狙って作用できることは極めて重要である。
【0104】
よって、本発明の一実施例によれば、固形緩衝剤を抗体、受容体リガンド、炭水化物などの親近部に付着させることができる。本発明の実施例で適用できる抗体の例としては、限定的ではないが、腫瘍抗体、抗CD20抗体、抗IL−2Rアルファ抗体などを含む。典型的な受容体としては、限定的ではないが、葉酸受容体、EGF受容体がある。本発明の一実施例で適用可能な炭水化物の典型としては、レクチンがある。
【0105】
上記親近部は、何らかの連結方法もしくは結合方法を用いて、あるいは、当該技術分野において公知の適当な化学的リンカーを用いて固形緩衝剤に共有結合または非共有結合させることができ、好ましくは、架橋剤または架橋方法の種類及び化学的特性を、用いる類縁集団の種類と固形緩衝剤の特性に適応させる。アフィニティー標識と類縁集団を結合または吸収または連結させる方法は当該分野において公知である。
【0106】
本発明の好適な一実施例における標的細胞は、同定可能な表面マーカーを意味する転移癌細胞であってもよい。接触する細胞を殺滅させるよう固定緩衝剤のpH値と緩衝能を選択すれば、悪性細胞によって表された特定のマーカーに対抗する1以上の抗体が前記親近部であってもよい。
【0107】
特定の種類の細胞(たとえば、原核細胞であって真核細胞でない細胞)を標的にするための本発明における別の方法は、固定緩衝剤と特定の種類の細胞との物理的接触を選択的に阻止することを基本にしている。本発明のもう一つの実施例では、固定緩衝剤を少なくとも部分的に選択的なバリアで覆っている。たとえば、固定緩衝剤の表面を、調整された空孔サイズ(限定的ではないが、たとえば、選択された空孔サイズを有するナイロンフィルタなどのフィルタ、あるいは、選択された開口サイズを有するメッシュ等々)の物理的バリアで覆うか、または、保護した場合、あるサイズ以上の細胞を固形緩衝剤と接触または付着させずに、小さいサイズの細胞だけ空孔に進入させたり、あるいは、物理的バリアに透通させ、固形緩衝剤と接触させることが可能になる。
【0108】
本発明による固形緩衝剤を標的にする方法は、「受動的」ターゲッティング方法を用いることで実現でき、侵漏脈管及びリンパ排液漏のために腫瘍組織中の粒子の浸透性促進と鬱滞を利用する。200〜600ナノメートルの大きさの腫瘍の選択性は健常組織に対して10〜100倍である。この特殊なタイプの受動的ターゲッティングには、認識グループもしくは認識部分によって官能化されない粒子を利用できる。
【0109】
本発明の固形緩衝剤を有機的組織体そのもの、もしくは、適当な担体または賦形剤と組み合わせた医薬組成物に適用することができる。
【0110】
ここでの用語「医薬組成物」とは、生理学的に適した担体及び賦形剤のような他の化学成分と共に1以上の有効成分の製剤を意味する。医薬組成物の目的は、有機的組織体への適用を容易にすることである。
【0111】
ここでの用語「有効成分」とは、意図する生物学的効果をもたらす固形緩衝剤を意味する。
【0112】
以後用いる用語「生理学的に許容される担体」及び「医薬として許容される担体」は互いに置換可能であるが、有機的組織体に重大な炎症等を起こさず、適用成分の生物活性や生物特性を無効にすることのない希釈剤または担体を意味する。この用語には補助剤も含まれる。
【0113】
ここでの用語「賦形剤」とは、有効成分の投与を更に容易にするために医薬組成物に添加する不活性物質を意味する。賦形剤の例として、限定的ではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖類、デンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物性油脂、ポリエチレン・グリコールなどがある。
【0114】
薬剤の調製技術が記載された参考文献として、マック出版社(米国ペンシルベニア州イーストン)「レミントン薬学」の最新版を挙げる。
【0115】
本発明の固形緩衝剤は粒子状またはビーズ状に調製することができ、数ナノメートルから数ミリ以上の平均サイズで製造することができる。
【0116】
固形緩衝剤を粒子面に付着させてもよく、また、粒子内に封入してもよい。固形緩衝剤を粒子内に保持した場合、封入粒子は、イオンが固形緩衝剤と細胞との間を流れるようにイオン伝導性材料で作る必要がある。典型的な粒子としては、限定的ではないが、ポリマー粒子、マイクロカプセルリポソーム、高分子微粒子、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノ微粒子などがある。本発明の固形緩衝剤は、選択性を向上させ、且つ、活性作用を防止するために分解性のコーティングで被覆してもよい。
【0117】
分解性コーティングとしては、ポリエチレンイミン(PEI)コーティング、ポリエチレングリコール(PEG)コーティング、修飾ゼラチンコーティング、または、その他の適当なコーティング材料を用いることができる。適切な投与手段としては、たとえば、経口投与、直腸投与、経粘膜的投与、特に、経鼻投与、腸内吸収投与の他に、筋内注射、皮下注射、髄内注射などの非経口投与、更には、髄腔内投与、直接心室内投与、静脈内投与、腹膜吸収投与、経鼻投与、眼内注射などがある。別の方法として、浸透方法でなく、たとえば、患者の組織域に直接医薬組成物を注入するような局所的に医薬組成物を投与してもよい。
【0118】
本発明の医薬組成物は当技術分野において公知の方法で製造でき、たとえば、混合処理、溶解処理、整粒処理、糖衣処理、粉末処理、乳化処理、カプセル化処理、封入処理、凍結乾燥処理などの従来の方法で調製できる。
【0119】
本発明において用いる医薬組成物は、有効成分を調製剤に容易に加工するために医薬として用いることができる賦形剤と助剤よりなる生理学的に許容される1以上の担体を用いた従来の方法で調製できる。適した調製方法は、薬剤の投与方法によって異なる。
【0120】
注射用の医薬組成物の有効成分は、水溶液、好ましくは、ハンクス溶液、リンガー溶液、生理食塩水などの生理活性適合緩衝溶液として調製できる。経粘膜投与剤としては、浸透させる緩衝剤に適した浸透剤を調製に用いる。この浸透剤は当技術分野において公知である。
【0121】
局所性投与用として、本発明の固形緩衝剤をゲル、クリーム、洗剤、洗浄液、噴霧液の形態で調製できる。この態様は固形緩衝剤を被験者に局所的に投与したり、あるいは、個体表面に用いる場合に適用できる。
【0122】
経口投与用として、当技術分野で公知の医薬として許容される担体と活性化合物を混合することによって容易に調製できる。この担体によって、患者が経口摂取できるように医薬組成物を、タブレット、錠剤、糖衣錠、カプセル、溶液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等々の形態で調製できる。経口用の薬理調製は、固形賦形剤を用い、結果的に得られる混合物を随意に粉砕し、必要な適当な助剤を加えた上で顆粒状の混合物を加工してタブレットや糖衣錠に仕上げる。
【0123】
適切な賦形剤としては特に、糖質などの溶加剤があり、これには乳糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトールなどがあり、他に、たとえば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、カルボメチル・セルロース・ナトリウム等があり、更に、ポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマがある。必要に応じて、交差結合ポリビニルピロリドン、寒天、あるいは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩などの崩壊剤を添加してもよい。
【0124】
糖衣錠には適当なコーティングを施せばよい。たとえば、ゴム糊、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポル・ゲル剤、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー液、適当な有機溶剤、溶媒混合液などを選択的に含む濃縮砂糖液を用いることができる。活性化合薬剤の識別、あるいは、組み合わせを特徴的に区別する目的で染料または顔料をタブレットや糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0125】
系統投与用の医薬組成物には、ゼラチンからなる押合カプセルや、ゼラチン、及び、グリセロールやソルビトールなどの可塑剤からなる柔軟な密封カプセルを用いることができ、押合わせカプセルには、乳糖などの溶加剤、澱粉などの結合剤、滑石やステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、更には任意に安定剤等を混合した有効成分を含ませることができる。柔軟なカプセルは、脂肪油、流動パラフィン、液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体に有効成分を溶解または懸濁させて調製でき、更に、安定剤を加えてもよい。選択した投与方法に適した用量で経口投与用に調製する。
【0126】
口腔投与用には、調製剤を従来の方法でタブレットやトローチ状に形成してもよい。
【0127】
鼻孔吸入投与用には、本発明による有効成分を、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭酸ガスなどの適当な加圧噴霧剤を用いた加圧パックや噴霧器からエアゾール噴霧して簡便に利用できるようにする。加圧エアゾール式を用いた場合、適量を供給できる弁手段を用いて投薬量を決めるようにするとよい。
【0128】
たとえば、投薬機に用いるゼラチンのカプセルや薬剤容器に、乳糖や澱粉などの適当な調製剤との混合粉体を入れて調製する。
【0129】
上記した医薬組成物を、たとえば、静脈内ボーラス注入法または持続注入法によって非経口的投与用に適用できる。注射用の調製は、単位用量投薬形態、たとえば、アンプルや反復投与容器などの形態で準備し、任意で保存料等を添加する。調製成分は、油性または水性媒体を主体にした懸濁液、溶液剤、乳剤などであってもよく、懸濁化剤、安定剤、分散剤などの調合剤を入れてもよい。
【0130】
非経口的投与用の医薬組成物には、水溶性の有効調製水溶液を入れている。また、有効成分の懸濁液は、適当な油性または水性の注射用懸濁液として調製することができる。親油性溶剤または媒質には、胡麻油あるいはオレイン酸エチル、トリグリセリド、リポソームなどの合成脂肪酸エステルを含ませる。水溶液注入懸濁液に、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの懸濁粘度を高める成分を入れてもよい。また、懸濁液に、有効成分の溶解性を高める適当な安定剤を適宜に入れて、高い濃溶液を調製できるようにしてもよい。
【0131】
本発明の医薬組成物は、たとえば、ココアバターやグリセリンなどのような従来の坐基剤を用いた座薬または浣腸などの形態で調製することもできる。本発明が提案する使用目的に適した医薬組成物に、本来の用途を達成するのに効果的な量の有効成分を含める。更に詳しくは、「治療有効量」とは、疾患症状(虚血など)を予防、緩和、改善したり、あるいは、治療を受けた被験者を延命させるのに効果的な有効成分(核酸成分など)の量である。治療有効量は当該技術分野における知識に基づいて適宜決定でき、特に、ここに開示の詳細説明を参考に決めればよい。
【0132】
本発明の方法で用いる調製剤に関する投薬量または治療有効量は、最初に生体外での細胞培養試験により推定判断する。たとえば、投薬量は、動物モデルを用いて定式化して、所期の濃度乃至滴定量を決めることができ、そうして得られた情報データに基づいてヒトへの有効投薬量を正確に決定する。
【0133】
ここに開示の有効成分の毒性及び治療効力は、生体外試験管内で、あるいは、細胞培地で、あるいは、動物実験で行う標準的な製剤方法によって測定する。生体外試験管、細胞培地、動物実験のいずれかで得られたデータに基づいてヒトへの適用投薬量を定式化できる。投薬量は、適用した投薬量判定方法と適用した投与手段に大きく依存する。投与の正確な製剤処方と手段、及び、投薬量は患者の状態を踏まえて各医師が決定する。(例として、E.フィングル等(1975)「治療学の薬理学的基礎」第1頁第1章参照)
【0134】
投薬量と投与間隔は、有効成分の血漿中濃度および脳中濃度を十分に保ち、生物学的効果(最小有効濃度(MEC)など)を誘起または抑制するように個別に調製すればよく、前記MECは各調製剤によって変化するが、生体外データで予測できる。MECを達成するのに必要な投薬量は個々の投薬の特徴と方法によって異なり、検出分析を用いて血漿濃度を測定する。
【0135】
治療すべき症状の重症度および反応性に応じて、投薬の回数を、数日から数週間に至る治療経過中、あるいは、回復までまたは病状の改善が見られるまでに1回または複数回投与する。
【0136】
言うまでもなく、投与する調製剤量は、治療する対象者の苦痛の程度などの状態、投与方法、担当医師の判断によって変化する。
【0137】
本発明の調製剤は、必要に応じて、包装パックに入れたり、あるいは、有効成分を含む1以上の単位用量に分けてFDAなどの認可キットなどの薬ケースに装填して供与するなどの方法をとることができる。包装パックとしては、たとえば、金属ホイルや、あるいは、ブリスター包装などのプラスチック包装などがある。包装パックまたは薬ケースには投薬指示を添付するとよい。また、包装パックまたは薬ケースには、薬剤の製造、使用、販売に係わる政府機関の規則の警告を添付するとよく、警告文にはヒトや動物に投与する薬剤成分について政府機関が認可する旨の内容を含める。前記警告には、たとえば、米国食品医薬品局の許可の基に処方例または認可製品を記入したラベルを添付するとよい。医薬として許容される担体の形態で定式化した本発明の調製薬の組成成分表示も適当な容器に付けておくとよく、上記したような治療の方法指定も付記しておくとよい。本発明による固形緩衝剤成分で固体表面または材料をコーティングする方法も本発明の範疇であることは当然である。ここでの「表面」とは、ガラス、プラスチック、金属、ポリマ等々を含む各種材料の面を意味し、被覆面を持つ1以上の材料から構成された面を含む。固形緩衝剤を、噴霧、湿潤、浸透、浸漬、塗布、超音波溶着、溶融、結合、付着などの当該技術分野で公知の方法、あるいは、他の任意の方法によって目的表面に付着させることができる。本発明の固形緩衝剤は、単層、多層のいずれにも形成できる。本発明の固形緩衝剤をコーティングできる固体表面として、体内または体外医療器具またはインプラント機器も含まれる。
【0138】
ここでの「インプラント」とは、生体組織でない人体に設ける目的の対象を意味する。このインプラントは一時的もしくは恒久的なものであり、生体組織が失活するよう処理された天然由来の対象も含まれる。たとえば、生体細胞が除去(無細胞化)されなららも、ホストからの骨片が成長するためのテンプレート片として働くよう形態を維持する目的で骨移植治療される場合を挙げることができる。他の例としては、自然に起こる白化現象にも適用でき、整形外科治療や歯科治療のために身体に適用するヒドロキシアパタイト製剤を作り出すことも可能である。インプラントは、人工的要素からなる加工品でもある。
【0139】
したがって、たとえば、本発明による固形緩衝剤で血管ステントを覆う技術も本発明の範疇に入る。本発明の固形緩衝剤の表面に接触する内皮細胞の細胞周期に影響して、固形緩衝剤が細胞中の特定タンパク質に反発もしくは吸着して、動脈再狭窄を軽減または阻止することも可能であり、また、本発明の方法で被覆した一般的なインプラントに影響してインプラントと組織の融合に顕著な効果を発揮することもある。
【0140】
本発明の固形緩衝剤の他の適用例としては、医療および歯科環境で見られる特定対象面へのコーティングである。医療環境における対象面としては、使い捨て形態か再使用形態かに拘わらず各種機器および装置の内面および外面がある。
【0141】
例として、医療用途に適用する多種多様の物品があり、メス・針・鋏を含む侵襲的外科治療・治療処置・診断処置に用いる機器、血液フィルタ、人工血管・カテーテルなどを含む埋め込み医療素子・機器、輸血機器装置、人工心臓、人工腎臓、整形外科用ピン・プレート・インプラント素子、カテーテルおよび他の医療管類(泌尿器管、胆管、気管内チューブ、周辺刺通中心静脈カテーテル、透析カテーテル、長期刺通中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、短期中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、肺カテーテル、スワンガンツカテーテル、導尿カテーテル、腹膜カテーテルなどを含む)、泌尿器系医療機器(長期使用泌尿機器、組織結合泌尿機器、人工括約筋、泌尿器拡張器)、バイパス機器(心室シャント、動静脈シャント)、人工器官(豊胸インプラント、人工陰茎、移植血管、動脈瘤修復機器、心臓弁、人工関節、人工喉頭、耳鼻インプラント)、吻合機器、血管カテーテル部品、鉗子、塞栓治療機器、創傷排液管、脳水腫シャント、ペースメーカーおよび植え込み型除細動器等々を挙げることができる。他にも多様に適用可能であり、当業者には用意の範疇であろう。
【0142】
医学的環境で見られる面には、医療機器および健康医療環境における担当者が身につける医療器具等の各部の内側面および外側面を含み、医療処置の領域範囲における備品やカウンターの上面、呼吸器官治療における酸素投与および噴霧器および麻酔薬における可溶化剤供給のための管類や容器類の表面などが含まれる。更に、医療機関における感染性微生物に対する生物学的バリアである手袋、エプロン、マスク等々の表面も含まれる。生物学的バリアとして通常用いられる素材には、ラテックスと非ラテックス系がある。通常、非ラテックス製の手術用手袋の材料としてビニールが用いられる。また、特に消毒の必要のない医療用機器または歯科装置におけるハンドルやケーブル類もここでの対象面として含まれる。更には、血液または体液あるいは他の危険性のある医用生体材料に遭遇する領域に見られる管類や他の装置の非消毒外面も対象面である。
【0143】
他に健康に関連する表面として、浄水、水貯蔵、給水などに伴う機器および食品加工用具などの内面および外面もある。本発明では食品および飲料容器の固体表面を被覆する状況も想定し、斯かる対象の内容物を維持保管する用途もある。
【0144】
また、健康に関連する表面としては、栄養摂取、衛生設備、病気予防等を目的とした家庭用品の内面および外面も含まれる。一例として、家庭用食品加工機器、保育用品、タンポン、便器などの対象も含まれる。
【0145】
実施例15に示すように、本発明の固形緩衝剤は、創傷包帯の抗菌性を高めるためにも利用できる。同様に、本発明の固形緩衝剤は、縫合糸、クロス、布地、傷軟膏などの抗菌作用を高めるためにも利用できる。
【0146】
本発明による他の実施例における固体表面として、顕微鏡スライドガラス、培養フード、シャーレ、あるいは、当該分野で公知の他の組織培養皿または培養容器なども含まれる。
【0147】
ここでの用語「約」とはプラスマイナス10%範囲を意味する。本発明の他の目的、特長、新規な特徴は、当業者であれば、限定的ではないが以下の実施例の説明から明らかになるであろう。更に、上記した本発明の多様な実施例の夫々は以下の実施例で示す実験的裏付けで明らかにする。
【実施例】
【0148】
上記説明を踏まえて以下の実施例を非限定的に例示する。
【0149】
ここで用いる学術用語および本発明で用いる検査法には通常、分子技術、生化学技術、微生物学的技術、遺伝子組み換え技術が含まれ、こうした技術は、たとえば下記の文献など明確に紹介されている。
【0150】
「分子クローニング:実験室マニュアル」サンバロック等著(1989)、「分子生物学における現在の慣習」第I〜III巻・R.オウスベル編(1994)、R.オウスベル等著「分子生物学における現在の慣習」ジョン・ウィリー・アンド・サン刊(米国メリーランド州バルチモア(1989))、パーベル著「分子クローニングの解説書」ジョン・ウィリー・アンド・サン刊(米国メリーランド州バルチモア(1988))、ワトソン等著「組み換えDNA」サイエンティフィック・アメリカ(ニューヨーク)、ビレン等編「ゲノム分析;実験室マニュアル集」第1〜4巻コールド・スプリング・ハーバー研究所刊(ニューヨーク(1998))、米国特許第4666828号/同第4683202号/同第4801531号/同第5192659号/同第5272057号に記載の方法論、「細胞生物学:実験室ハンドブック」第I〜III巻J.E.チェリス編(1994)、「動物細胞の培養:基礎技術マニュアル」フレネー・ウィリーリス刊(ニューヨーク(1994))第三版、「免疫学の現在の慣習」第1〜3巻J.E.コリガン編(1994)、スティテス等編「基礎臨床免疫学」第8版アップルトン・ラング社刊(米国コネチカット州ノーウォーク(1994))、ミッシェルとシーギ編「細胞免疫学の選択的方法」W.H.フリーマン社刊(ニューヨーク(1980))、米国特許第3791932号/同第3839153号/同第3850752号/同第3850578号/同第3853987号/同第3867517号/同第3879262号/同第3901654号/同第3935074号/同第3984533号/同第3996345号/同第4034074号/同第4098876号/同第4879219号/同第5011771号/同第5281521号に記載の適用可能な免疫学技術、「オリゴヌクレオチド合成」M.J.ゲイト編(1984)、「核酸雑種形成」B.D.ハメスとS.J.ヒギンス編(1985)、「複製と転移」B.D.ハメスとS.J.ヒギンス編(1984)、「動物細胞培養」R.L,フレシュニー編(1986)、「固定化細胞と酵素」IRLプレス社刊(1986)、「分子クローニング解説書」B.パーバル著(1984)、「酵素学における手法」第1〜317巻アカデミック・プレス社刊、「PCRプロトコル:方法と応用ガイド」アカデミック・プレス社(米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990))、マーシャク等著「タンパク質精製と特徴付けのための方法・実習コースマニュアル」CSHLプレス社刊(1996)
【0151】
上記の全てを参考文献としてここに採用する。他にも一般参考として採用できる文献があり、当該技術分野の技術者には公知の方法であり、ここでの技術理解の参考までに列挙した。
【0152】
実施例1:pH勾配におけるタンパク質分布
タンパク質が固有のpH特性を有するか否かを確認するために下記の実験を実施した。
【0153】
実験素材と方法:ゲル製剤:長さ約7センチメートルのイモビリンゲル細条を4つ用いた。各細条を、当該技術分野では公知である4〜9%のpH勾配を有する(ポリアクリルアミドを4%とビスアクリルアミド架橋剤を5%含む)アクリルアミドゲルを含むアンフォラインから切離した。
【0154】
タンパク溶液製剤:4種の異なったタンパク溶液を調製した。
【0155】
第1溶液はミオグロビン(米国シグマ社から市販/カタログ番号M−0630)を精製水で1.0mg/mL含む。第2溶液は、タンパク質変性に尿素8Mの最終濃度のミオグロビンを精製水で1.0mg/mL含む。第3溶液はフィコシアニン(米国シグマ社から市販/カタログ番号P−2172)を精製水で1.0mg/mL含む。第4溶液は、タンパク質変性に尿素8Mの最終濃度のフィコシアニンを精製水で1.0mg/mL含む。タンパク質溶液は全て、pHが約7.0であった。
【0156】
実験方法:上記タンパク質溶液を夫々10mリットル、シャーレに入れ、そこにゲル片を浸した。シャーレを蓋して、室温で3〜5日間保存した。保存期間の最後にゲル片をシャーレから取り出し、余分な水分を入念に拭き取り、エプソン製の平面走査スキャナで走査した。
【0157】
結果: 図1A、1Bおよび図2A、2Bに示したように、タンパク質は、ゲル片の異なった領域のpH値によってゲル片の異なった領域に別々に吸収された。ミオグロビンはpI〜6であり、フィコシアニンはpI〜4.2であった。天然タンパク質と変性タンパク質の間のミオグロビン空間分布(および、ペーハー依存分布)の変位はかなり小さいが(図2A、2B)、タンパク質フィコシアニンの相当広い範囲でかなり大きい変位(ゲル片にpH機能としての吸収度の空間分布の差)が観察された(図1A、1B)。
【0158】
結論: pH勾配中のタンパク質分布は、各試料タンパク質の固有の特性であることを表しており、タンパク質のpH特性として考えることができる。
【0159】
実施例2:pH特性によるゲル膜を通るタンパク質の再分布
実験素材と方法: ゲル製剤:図3A、3Bに示すように、矩形の試験容器内に、厚さ2mmのポリアクリルアミドゲル板状に形成した2つのゲル膜を配置することで3つの区画を形成した。イモビリン(アマシャム社の商標)10μリットルと、過硫酸アンモニウム(APS)0.5μリットルと、TEMED(1:10)0.25μリットルと、ポリカリルアミド10%と、ビスアクリルアミド5%を加えてゲルを調製した。1つのゲル膜は、pH4に調製し(酸性、イモビリンを有するポリアクリルアミド)、もう一つのゲル膜はpH6に調製した(塩基性、イモビリンを有するポリアクリルアミド)。
【0160】
タンパク溶液製剤:ミオグロビンとフィコシアニンを、夫々が0.1グラム/リットル(g/L)の濃度になるように精製水(DDW)中に溶解して調製した。
【0161】
実験方法:タンパク質溶液を夫々300μリットルずつ、試験容器内を2枚の膜で仕切って形成した中央区画に入れ、酸性側の区画室をグルタミン酸(pH=3.8)の緩衝液1mMで満たし、塩基側の区画室をTPJS(pH=8.3)の溶液1mMで満たし、その状態で区画室を室温に保った。数日後に各区画室を目視観察し、デジタルカメラで撮影した(平面撮影)。
【0162】
結果: 実験の最初で、上記した複数区画室を有する試験容器内の中央区画室2の溶液は、ミオグロビンとフィコシアニンの混合吸収度によって暗色を呈していたが、酸性緩衝剤(グルタミン酸1mM、pH=3.8)と塩基緩衝剤(TRIS溶液1mM、pH=8.3)を入れた番号1、3の区画室は殆ど色を視認できなかった(図3A)。
【0163】
図3Bのように、実験の最後までには、上記した複数区画室を有する試験容器内の中央区画室2は、残っていたオグロビンとフィコシアニンの相当低い濃度の混合吸収度によって、かなり淡い赤紫色になっていた。ミオグロビンの大部分が変移した酸性緩衝剤(グルタミン酸1mM、pH=3.8)を入れた番号1の区画室は濃い赤みを帯びた色になっていた。フィコシアニンの大部分が変移した塩基緩衝剤(TRIS溶液1mM、pH=8.3)を入れた番号3の区画室は濃い青みがかかった色になっていた。
【0164】
結論: 2色になったタンパク質は、イモビリン(商標)膜によって分離された区画室内の異なったpH値に支配されて、ほぼ完全に再分布および分離した。
【0165】
実施例3
生体機能細胞内の細胞質タンパク質の細胞内分布に影響する可能性を実証するために以下の実験を行った。
【0166】
実験素材と方法: 細胞質ゾル内のGFPを表すヒーラ細胞に核酸導入した。溶解に続いて抽出タンパク質をテストし、上記実施例1で記載したGFPタンパク質の最大蓄積量のpH範囲を計測した。GFPタンパク質の最大蓄積量の範囲(走査ゲル片の最高蛍光発光点を見つけて判定)が約pH9であることが分かった。
【0167】
市販されている約50ミクロンの平均径のポリアクリルアミドビーズ(米国バイオラッド社製バイオゲルP10、カタログ番号1504140)を、ポリアクリルアミド共重合体とイモビリンよりなるpH9の溶液(上記実施例2に詳細説明あり)に浸漬した。イモビリン(商標)ポリアクリルアミド溶液を化学的に重合させ、GFPを表すヒーラ細胞の細胞培地に、結果的に得られるビーズの水性懸濁液を加えた。細胞の一部がビーズに付着した。アガロース溶液(摂氏約36度の溶融点を有する米国バイオラッド社製低溶融アガロース、カタログ番号1620019)を細胞とビーズに流し込み、アガロースを摂氏約25度に冷却することによって細胞とビーズの混合体を固相化した。ビーズに接触した細胞が蛍光顕微鏡(ドイツ国ツァイス社製Axioscope2型蛍光顕微鏡)によって観察し、GFP分布の変化を視覚的に確認し、且つ、30分以上写真モニタした。
【0168】
結果: 図4A〜4Cに示すように、細胞がビーズに付着した点の蛍光強度は、実験開始時に測定した細胞の初期発光強度に比べて初期付着から30分後には約50倍になっていた。この測定強度は細胞のGFPのほんの一部の影響でしかない。ビーズに付着した細胞のいくつかの例において同様の現象が見られた。
【0169】
pH7のコーティングが施された同様のビーズ(図示せず)を用いた対照実験では、ビーズに付着した細胞のGFPの分布パターンになんの変化も見られなかった。
【0170】
結論: 上記実験の観察によって、pH分割に基づくタンパク質(GFP)の局所的蓄積および再分布のメカニズムが生体細胞で起こることと、表面pH値が制御されている対象または要素と接触する細胞内タンパク質の濃度勾配または局所濃度を生み出す可能性のあることを明確に実証している。
【0171】
実施例4: 酵母細胞の細胞毒性に関するpH効果
この実験は酵母細胞のpH変性面の細胞毒性をテストするために行った。
【0172】
実験素材と方法: 9枚のプラスチックシャーレの底を、イモビリン(アクリルアミド緩衝剤)を含む厚さ0.5ミリのポリアクリルアミドゲルでコーティングした。ここでの各ゲルは約1pH単位ずつ異なったpH値を有する。第1シャーレのコーティングはpH3のアクリルアミド・イモビリン(商標)緩衝ゲルであり、第2シャーレのコーティングはpH4のアクリルアミド・イモビリン(商標)緩衝ゲルであり、第3シャーレのコーティングはpH5のアクリルアミド・イモビリン(商標)緩衝ゲルであり、順次第9シャーレまで増えて、最後の第9シャーレのコーティングはpH11のアクリルアミド・イモビリン(商標)緩衝ゲルである。
【0173】
コーティングは当該技術分野で知られている標準的な重合法によって施された。イモビリンの成分を下記の表1に列挙する。
【0174】
【表1】
【0175】
表1の数字は、精製水添加によるpH液10mLを作るために出発原料(100mMの濃度を有する)のμLで示している。
【0176】
組織培養基(ロズウェル・パークメモリアル組織培養基RPMI1640・ダッチMOD01−1−7−1)に懸濁した100〜200万の酵母細胞サッシャロミクス(市販されているパン酵母)を夫々、シャーレに入れた。細胞は、シャーレの底に沈殿してポリアクリルアミド面に接触したまま、下記の表2に示した設定時間放置した。指定の接触時間の後、細胞をトリパンブルー染色法によって着色し、各シャーレに死細胞の数を計測した。
【0177】
結果: 下の表2に、指定pH値で指定時間における細胞の死亡率データ(総細胞に対する割合%)を示している。
【0178】
【表2】
【0179】
表2から分かるように、pH極値(pH3、pH4、pH10、pH11)で、pH調整物質との比較的短い接触時間のうちに細胞は死滅した。pH7およびpH8では長時間後でも顕著な細胞毒性は見られなかった。pH中間値(pH5〜9)では、経時的に毒性が顕れるのが観察できた。
【0180】
結論: ゲルに変化を唯一のパラメータはアクリルアミド緩衝剤の成分であった。ゲルは水性浸漬においてかなり安定しており、細胞培養への毒性物質が作り出される様子はなかった。よって、観察された細胞毒性は、実験で用いたpH調整用のアクリルアミドゲルの表面に接触する細胞中のイオン(荷電タンパク質、水素イオン、カリウムイオン、他の細胞内イオンなど)の再分布による原因が濃厚である。この仮説は更に、その成分をpH3、4、5、6で観察されるような毒性と比較しても、高い酸性成分は殆ど一定であるが毒性変化は著しく大きいことからも裏付けられる。同様に、殆どの主要成分はpH11、10、9、8で僅かに変化するだけであるが毒性は著しく変化することも基本的側面として考察できる。この考察によって、毒性が、従来技術において権利主張されているような高い陰イオン種または陽イオン種の結合の結果でなく、バルクpH特性の結果であることが分かる。
【0181】
この実験の結果によって、細胞に接触するpH調整物質またはpH調整基材におけるpH値を選択することで細胞死亡率(毒性遅発効果)を制御できること、および、細胞に接触する面または基材のpH値を適切に変更することによって斯かる効果(細胞死亡率)を微調整できることを明らかにした。
【0182】
実施例5: Jurkat細胞のpH誘発細胞毒性の効果
実験素材と方法: L−グルタミン10mMと、HEPES10mMと、ピルビン酸ナトリウム10mMと、PBS10%を補完したRPMI1640においてJurkat細胞「クローンE6−1」を成長させた。上記した酵母細胞(実施例4)で適用した可変pH面に細胞を曝した。
【0183】
結果: 下の表3に、指定pH値で指定時間における細胞の死亡率データ(総細胞に対する割合%)を示している。
【0184】
【表3】
【0185】
実施例6: 黄色蛍光タンパク質(YFP)の吸収特性
実験素材と方法: 黄色蛍光タンパク質(供給元:フィアラジュウムSP「SL−2003」)を示すH1299肺癌細胞1μグラムを溶解した。
【0186】
抽出タンパク質をテストして、IPG片(アマシャム生命科学「イモビリン(商標)」乾燥片=pH3〜10)におけるYFPの最大蓄積量のpH範囲を計測した。IPG片を溶液に22時間浸漬し、その後にツァイス社製「Axiscope2プラス紫外線顕微鏡」の紫外線スキャナを用いて走査処理した。
【0187】
結果: 図5に示すように、pH9.5〜10の範囲で最も大きいYFP蓄積量が認められた。
【0188】
実施例7: 物理的バリアによってpH誘発細胞毒性を防止する。
pH誘発細胞毒性にとって細胞がpH調整物質の表面に直接接触する必要があるのか否かを確認するために以下の実験を設定した。
【0189】
実験素材と方法: pH3のイモビリン・ポリアクリルアミドゲルを0.5mm厚の層状にシャーレの底に形成した。平均空孔サイズが2μmで厚さ10μmのナイロンフィルタ(米国ナルジェ社から市販)をIPG層の表面に緊密に接触させて配置した。組織培養基(ロズウェル・パークメモリアル組織培養基RPMI1640・ダッチMOD01−1−7−1)に懸濁した酵母細胞20万個体をシャーレに入れ、6時間放置して沈殿させた。沈殿6時間経過後に、細胞をトリパンブルー染色法によって着色した。
【0190】
結果: 計測した脂肪細胞の数は細胞総数の約5%であった。
【0191】
結論: 細胞とpH調整物質との間に介在するナイロンフィルタがpH誘発細胞毒性を阻止した。
【0192】
実施例8: 特異的細胞毒性装置
pH誘発細胞毒性には細胞とpH調整物質との直接接触が必要であることを更に立証するために、細菌体をpH調整物質に接触させるが酵母細胞は接触させないフィルタを以下のように用いた。
【0193】
実験素材と方法: pH3のイモビリン・ポリアクリルアミドゲル(IPG)を0.5mm厚の層状にシャーレの底に形成した。実施例6で用いた平均空孔サイズが2μmで厚さ10μmのナイロンフィルタをIPG層の表面に緊密に接触させて配置した。0.5ミリリットルの細胞培養液に懸濁した大腸菌(100単位/マイクロリットル)と酵母細胞(100万個体/mL)の混合物をナイロンフィルタのシャーレに入れ、シャーレを摂氏37度で12時間培養した。培養期間後に、マクコンキー寒天上の細菌集落分析のために培地をサンプリングし、死細胞を計測するために酵母細胞をトリパンブルー染色法によって着色した。
【0194】
結果: 細菌集落は検出されず、顕著な酵母細胞死が見られなかった。
【0195】
結論: 実験の結果、細胞毒性薬に接触していた細菌性細胞は殺滅したが、細胞毒性薬に非接触の酵母細胞は生存したことを実証し、更に、この実験の結果から、pH調整物質の細菌素特性が明らかになった。
【0196】
実施例9: Jurkat細胞におけるpH誘発細胞毒性
実験素材と方法: 約1ミクロンの平均粒径を有するポリアクリルアミドビーズの懸濁液を、pH9.0のポリアクリルアミドとイモビリン(商標)の混合液から調製した。細胞に対するビーズの比率がJurkat細胞に対してビーズ20個になるように、1mLの組織培養基に懸濁するJurkat細胞100万個体にビーズを加えた。ビーズを細胞懸濁液に加えてから0.5時間、1時間、2時間後にアリコートを抽出し、細胞をトリパンブルー染色法によって着色して死細胞の数と総細胞数を計測した。
【0197】
結果:
ビーズを加えてから0.5時間経過後の死細胞割合は5%であった。
ビーズを加えてから1時間経過後の死細胞割合は10%であった。
ビーズを加えてから2時間経過後の死細胞割合は27%であった。
【0198】
実施例10: ナフィオンの細胞毒性効果
スルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)は酸性物質(陰イオン電荷)生物活性ポリマであり、強い緩衝性能と高い緩衝能を有する。この種のフィルムは、基材(ポリメチルアクリレート、ナイロン、ポリエステル等)と、活性層としてのスルホン化ポリマとからなる。ナフィオンの細胞毒性または殺菌性は確認されておらず、燃料電池用途におけるイオン導電性電極として一般に用いられている。ナフィオンが細胞に対して毒性を持つのか否かを確認するために下記の毒性試験を実施した。
【0199】
実験素材と方法: PBS緩衝剤中にある100万固体のJurkat細胞を、市販のナフィオン膜(シグマ社製「ナフィオン117」ペルフルオロ化合物274674−IEA)を1cm角にした膜体上に堆積させた。生細胞と死細胞とを識別するために、膜体を1μg/μLのヨウ化プロピジウムを1μL用いた着色法か、トリパンブルー染色法で着色した。
【0200】
結果: 図6A〜6Bに示すように、ナフィオンに10分間曝した後、95%以上の細胞が死滅した。
【0201】
実施例11: ラミネート層の細菌毒性および細胞毒性
実験素材と方法: ラミネート層サンプル: 110μm厚のポリエステル基材上に形成したフィルムよりなるラミネート層サンプルを使用
活性化担体「BIOACT13、15、16」シリーズ
「BIOACT16」110μm厚のポリエステルベース+アクリル変性ポリウレタン下塗層
「BIOACT13」110μm厚のポリエステルベース+アクリル変性ポリウレタン下塗層+サブミクロン厚の「活性」陽イオンシリカを含むPVOHバインダ(W/W比=4:1)、総コーティング重量=0.97g/m2、コーティングpH=4.06
「BIOACT15」110μm厚のポリエステルベース+アクリル変性ポリウレタン下塗層+サブミクロン厚の「活性」陽イオンシリカを含むPVOHバインダ(W/W比=4:1)、総コーティング重量=0.76g/m2、コーティングpH=4
コーティングしていないサンプルを比較対象として用いた。
【0202】
MVC/HT/56シリーズA、B、C: このラミネート層は、コーティングの活性成分としてポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)のp−トルエンスルホン酸塩(pH3)の混和物を基にしている。
「MVC/HT/56A」110μm厚のポリエステルベース+PVOH+p−トルエンスルホン酸塩。乾燥コーティング総重量が0.9グラム(〜0.9ミクロン)のうち、活性成分の重量は0.6グラム。
「MVC/HT/56B」MVC/HT/56Aと同一であるが、処理が異なる。
「MVC/HT/56C」110μm厚のポリエステルベース+PVOH+p−トルエンスルホン酸塩。乾燥コーティング総重量が0.58グラム(〜0.5ミクロン)のうち、活性成分の重量は0.24グラム。
「MVC/HT/56D」MVC/HT/56Aと同一であるが、処理が異なる。
【0203】
生細菌および死細菌の懸濁溶液の調製:10mLの大腸菌DH5をLB培地で後期対数期まで成長させた。培地1mLを、5000rpmで5分間遠心分離にかけて濃縮した。沈殿物を更に、0.85%NaClの100μL溶液中に再懸濁させ、懸濁物50μLを0.85%NaClの950μL溶液(生細菌用)と70%の2−プロパノール(死細菌用)中に加えた。両サンプルをRTで1時間培養し、その上で、5000rpmで5分間遠心分離にかけてペレット状にした。こうして得られたペレットを0.85%NaClの500μL溶液中に再懸濁させて、再度遠心分離処理した。最後に、両ペレットを0.85%NaClの50μL溶液中に再度懸濁させた。
【0204】
生細菌および死細菌の着色:細菌生存キット「LIVE/DEAD BacLight(商標)」(モレキュラ・プルーブ社製)を用いて着色処理した。SYTO9とヨウ化プロピジウム染色液の混合液によって、無傷細胞膜を含む細菌を蛍光緑色に着色し、損傷膜の細菌を蛍光赤色に着色した。基本的には、SYTO9染料と、1.67mMのヨウ化プロピジウムと、1.67mMの成分Aの溶液2μLを、1.67mMのヨウ化プロピジウムと18.3mMの成分Bの溶液2μLと混合した。染料0.15μLを細菌懸濁液50μLに加え、着色細菌2.5μLをスライドと蓋部材との間に捕捉させ、生細胞と殺滅細胞を蛍光顕微鏡で観察した。
【0205】
フィルムの抗菌性テスト: 非活性フィルムとIMーNaCl溶液中で20分間処理したフィルムを用いて2種類のテストを行った。いずれの場合も、生物活性フィルムに堆積させたサンプルを蛍光顕微鏡で観察し、着色した生細菌および死細菌の数を計測して抗菌作用を推定評価した。
【0206】
フィルムの細胞毒性テスト: 次の方法によって生物活性フィルムに適用した上で生Jurkat細胞および死Jurkat細胞を計測した。Jurkat細胞が100万固体入った50μLのPBS中に色素混合液0.15μLを加え、着色細胞2.5μLを活性フイルムと蓋部材の間に捕捉させた。その状態で、生細胞と死細胞を、蛍光顕微鏡を用いて観察した。
【0207】
結果: MVC/HT/56A、B、C、Dの抗菌性テスト: 上記ラミネート層を用いたJurkat細胞を30分培養した後、生細胞(運動細胞)を対照MVC/HT/56/BフィルムとMVC/HT/56/Dフィルムで観察したところ、グリーンフィルタ(5−2)の元で緑または赤みを帯びた色を呈した。対称的に、MVC/HT/56/AおよびCのラミネートでの培養の1分後には全ての細胞が付着し、グリーンフィルタの元で赤色を呈した。
【0208】
MVCーHT56A、B、C、Dの細胞毒性テスト: 図7および表4から分かるように、Jurkat細胞の56/Aおよび56/Cフィルムとの相互作用は56/Bおよび56/Dフィルムのものとは異なる。
【0209】
【表4】
【0210】
BIOACT13、15、16の抗菌性テスト: BIOACT13で45分培養した後、50−70%の大腸菌細胞が死滅した。同時に、大腸菌の20〜40%がBIOACT15での培養後に死滅した。大腸菌はBIOACT16には付着しなかった。BIOACT15での培養後20〜30分後に殆どの大腸菌が死滅した。これら細胞の付着の評価は、暗雑音が高いため困難であった。
【0211】
BIOACT13、15、16の細胞毒性テスト: 異なる3種の実験結果を表5に示す。同表に、緑/赤のJurkat細胞の数及び緑色全体の割合を表している。
【0212】
【表5】
【0213】
下表6に3種類の実験結果として赤色細胞の割合をまとめている。
【0214】
図8A〜8DにはJurkat細胞をBioact13に曝した代表的な実験を示している。
【0215】
【表6】
【0216】
結論: 56/Aおよび56/Cフィルムにおける大腸菌とJurkat細胞の相互作用は56/Bおよび56/Dのものとは異なる。BIOACT13、15、16シリーズにおいては、BIOACT13が最も高い細胞毒性と抗菌性を現した。
【0217】
実施例12: ナフィオンおよびポリアクリルアミドpHゲル
ナフィオンと他のフィルムが細菌に対して毒性を持つのか否かを確かめるために以下の毒性試験を行った。
【0218】
実験素材と方法: 殺菌効果を確認するために6種類のプラスチックフィルムをテストした。
1.ナフィオン(デュポン製品)
2.ナフィオン(デュポン製品)
3.ポリエステルベースpH10に形成したイモビリンを有する500ミクロン厚のポリアクリルアミド
4.上記3と同じでpHが9の素材
5.ポリウレタンフィルム(市販品)
6.ポリエステルpH5に500ミクロン厚ポリアクリルアミドを形成した対照ポリエステルフィルム
【0219】
黄色ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌属、A群β溶血性連鎖球菌、G群β溶血性連鎖球菌: これら細菌の生存能力を、「播種」方法を用いて血液寒天培地で実験した。基本的に、微生物培養液0.01mLを特殊な細菌ループを用いて血液寒天培地に拡散した。6枚のプラスチックフィルム(10mm×10mm)を、活性側を下に向けて試験板上に載せた。摂氏37度で一晩培養した後、菌集落の数を評価し、実験群と対照群を比較した。
【0220】
総微生物剤と真菌剤のテスト: 上記フィルムの総抗菌効果および抗真菌効果を「沈殿」法を用いてサブロー寒天培地で行った。サブロー寒天培地を入れた試験板を覆いをせずに8時間放置した後、6枚のプラスチックフィルム(10mm×10mm)を夫々、活性側を下に向けて試験板上に載せた。摂氏37度で一晩培養した後、菌集落の数を評価し、実験群と対照群を比較した。
【0221】
結果: 本発明によるシートの黄色ブドウ球菌の成長への効果を表7にまとめている。本発明によるシートのブドウ球菌属の成長への効果を表8にまとめている。本発明によるシートのA群β溶血性連鎖球菌の成長への効果を表9にまとめている。本発明によるシートのG群β溶血性連鎖球菌の成長への効果を表10にまとめている。本発明によるシートの総微生物剤および真菌剤への効果を表11にまとめている。
【0222】
【表7】
【0223】
【表8】
【0224】
【表9】
【0225】
【表10】
【0226】
【表11】
【0227】
結論: ナフィオンおよびシート番号3(ポリエステルベースpH10に形成したイモビリンを有する500ミクロン厚のポリアクリルアミド)の双方が、高い抗菌性および総抗菌活性と抗真菌活性を示した。
【0228】
実施例13: 牛乳の保存期限
本発明のフィルムを牛乳の保存期間への効果についてテストした。
【0229】
実験素材と方法: 本発明のフィルムを用いて牛乳の安定性を検証するために殺菌均質牛乳を用いた。2つの実験で牛乳を紫外線で処理した。
【0230】
テスト1: 35mm径の7つの空のシャーレを新鮮な牛乳で満杯にした。6つのシャーレを、本発明のフィルムで覆い、牛乳が空気に触れずにフィルムの活性側が触れるようにした。7番目のシャーレは対照用である。シャーレをテーブルに置いたまま室温の状態で6日間放置した。蒸発を補うために無菌の精製水を毎日補充した。補充した精製水の総量を総牛乳量の5%以下にしたので、pH活性動態に影響を及ぼさないはずである。実験を2回繰り返した。
【0231】
テスト2(ナフィオンを用いた14日間テスト): このテストは活性剤(層)として市販のナフィオンを用いて行った。殺菌均質牛乳(抗生物質を含まない)を用いて牛乳の安定性をテストした。35mm径の3つの空のシャーレを新鮮な牛乳で満杯にし、2つのシャーレを、ナフィオンで覆い、牛乳が空気に触れずにナフィオンの活性側が触れるようにした。3番目のシャーレは対照用である。
【0232】
シャーレをテーブルに置いたまま室温の状態で14日間放置し、毎日シャーレのpHを測定した。蒸発を補うために無菌の精製水を毎日補充した。補充した精製水の総量を総牛乳量の5%以下にしたので、pH活性動態に影響を及ぼさないはずである。
【0233】
総微生物剤および真菌剤のテスト: このテストは「沈殿」法を用いてサブロー寒天培地に対して行った。サブロー寒天培地を入れたシャーレを蓋をせずに8時間放置した後、プラスチックフィルム(10mm×10mm)を、活性側を下に向けて試験板上に載せた。摂氏37度で一晩培養した後、菌集落の数を評価し、実験群と対照群を比較した。
【0234】
結果: テスト1による牛乳のpH結果を下表12に示す。
【0235】
【表12】
【0236】
牛乳(テスト1の繰り返し実験)のpH結果を下表13に示す。
【0237】
【表13】
【0238】
14日間テスト(テスト2)のpH結果を下表14に示す。
【0239】
【表14】
【0240】
微生物剤および真菌剤のテスト結果を下表15に示す。
【0241】
【表15】
【0242】
実施例14: 第2ラミネート層の細胞毒性テスト
2番目の態様のポリエステルベースのラミネート層を熱可塑性層形成方法によって準備した。ラミネート層は、PVOHマトリックス中の活性陰イオン成分からなり、いくつかのサンプルでは、活性層をPVOH層で保護した。
【0243】
ラミネート層の成分および構成は下表16に示している。
【0244】
【表16】
【0245】
上表16において、「T」はグラム/平方メートルで表した合計厚み、「R」活性成分とPVOHバインダの比率、「T1」ミクロンで表した概略厚み、「T2」ミクロンで表したPVOH保護層の厚みである。
【0246】
実験素材と方法:
pHの決定: 水中でフィルムを湿潤させた後、pH−Fix0−14(マッハライ・ナーゲル社製)を用いてpHを測定した。
細胞毒性テスト: 上記実施例12、13で説明した細胞毒性テストを行った。
【0247】
結果: pHの測定結果を下表17に示した。
【0248】
【表17】
【0249】
細胞毒性の結果を下表18に示した。細胞毒性効果はPI着色細胞(死細胞)の割合%として測定した。20分後、対照サンプル(フィルムなし)では約80%の細胞が緑色になった。
【0250】
【表18】
【0251】
(注:サンプル3、4、7には中性PVOH保護層を設けており、高い細胞毒性を残した。)
【0252】
実施例15: 抗菌性繊維
本発明の材料を用いると細胞壊死を防止できるか否かを確かめるために、イオン交換樹脂ビーズを木綿繊維に組み込んで、2日間、壊死組織に接触させた。
【0253】
実験素材と方法: 初期材料: バイオ・ラッド社製イオン交換樹脂AG501−X8(D)(カタログ番号N142−6425)
【0254】
木綿繊維の1平方cm当たり約100個のビーズを含ませた。
【0255】
結果: 図9A〜9Cに示すように、バイオ・ラッド・イオン交換樹脂よりなる木綿には抗壊死効果が現れた。
【0256】
結論: 緩衝特性を有するイオン交換樹脂よりなる材料は壊死を防止するのに有効である。本発明の様々な実施例を通して明らかにした本発明の複数の特徴を一つの形態に組み合わせて実施することも可能である。反対に、個々に概略説明した本発明の様々な特徴を別々に単独適用してもよく、また、二次的に適当に組み合わせて実施することも可能である。
【0257】
以上のことから明らかなように、本発明によって標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことができるので、真核性細胞及び原核細胞のいずれにも殺滅効果があり、優れた抗菌性を発揮することができ、長期使用に際して細胞体に接しても抗菌剤が溶出しないで永久的に抗菌効果を保持しながらも安価、且つ、容易に適用できる固形緩衝剤を用いて滴定によって細胞を殺滅させる組成物及び方法が実現した。
【0258】
本発明を特定の実施例を参考に説明したが、当該技術分野の技術者であれば様々に置換、改変、変更が可能であることは自明である。よって、斯かる置換、改変、変更は本発明の権利範囲に包括されるものとし、特定の個々の公報、特許および特許出願が参照された場合に本発明の一部と見なすように当該明細書の記載に基づく全ての公報、特許および特許出願は本発明に同等に包括される。更に、当該明細書で参考までに引用した内容は本発明に先行する技術として有効な文献であると認めた訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】pH勾配を有するポリアクリルアミド細条ゲルを含む天然尿素変性形態の細条タンパク質フィコシアニンの空間分布を示すグラフであり、(A)のグラフは天然(非変性)フィコシアニンの走査結果を示し、(B)のグラフは8M尿素変性フィコシアニンの走査結果を示し、同図において縦軸はOD単位で表した吸収度であり、横軸はpH単位で表したゲル片の走査位置を示す。
【図2】pH勾配を有するポリアクリルアミドゲルを含む天然尿素変性形態の細条タンパク質ミオグロビンの空間分布を示すグラフであり、(A)のグラフは天然(非変性)ミオグロビンの走査結果を示し、(B)のグラフは8M尿素変性ミオグロビンの走査結果を示し、同図において縦軸はOD単位で表した吸収度であり、横軸はpH単位で表したゲル片の走査位置を示す。
【図3】2つの異なったタンパク質ミオグロビン及びフィコシアニンのpH依存分離と再分布を実証する2つの異なった実験結果を示す写真であり、(A)はミミオグロビンとフィコシアニンの混合物を中央区画2に配置した直後の試験容器の平面であり、(B)はミオグロビンとフィコシアニンの混合物を配置した7日後に撮った同一試験容器の平面である。
【図4】pH変性ビーズに細胞を付着させた後のGFP分布の時間的変化を示しており、(A)は基点時間(細胞のビーズへの付着時)におけるビーズ6に付着した細胞8を示し、(B)は左側の写真の撮影から10分後に撮ったビーズ6に付着した細胞8を示し、(C)は左側の写真の撮影から30分後に撮ったビーズ6に付着した細胞8を示している。白い矢印で指した蛍光点は、ビーズ6と細胞8との接点で移動蓄積するGFPの蛍光発光である。
【図5】pH勾配を有するアクリルアミドゲルを含む細条イモビリン上の黄色蛍光タンパク質(YFP)の空間分布を示すグラフであり、図において縦軸は光学密度であり、横軸はpH単位で示す帯状IPGに沿う位置を表す。
【図6】Jurkat細胞上のナフィオンの細胞毒性効果を表す顕微鏡写真であり、(A)は非ナフィオン面上のJurkat細胞を示しており、(B)はナフィオン面上のJurkat細胞を示す。
【図7】本発明による4枚のMVC/HT/56A膜、同B膜、同C膜、同D膜との接触後のJurkat死細胞(赤)の割合を示すグラフ。
【図8】「LIVE/DEAD(登録商標)BacLight(商標)」Bacterial Viability Kit(米国モレキュラー・プルーブ社製)を利用して撮影したJurkat細胞上のBIOACT13膜、同15膜、同16膜、同110膜の細胞毒性効果を表す顕微鏡写真であり、蛍光顕微鏡下で死細胞が赤色に発色し、生細胞が緑色に発色しており、(A)は1分後の対照Jurkat細胞(生体膜と非接触)を示し、(B)は1分後に加えたBIOACT13膜を有するJurkat細胞を示し、(C)は10分後の対照Jurkat細胞(生体膜と非接触)を示し、(D)は10分後に加えたBIOACT13膜を有するJurkat細胞を示す。
【図9】イオン交換樹脂ビーズの抗壊死作用を示す写真であり、(A)はイオン交換樹脂ビーズの投与前の壊死細胞の写真であり、(B)はイオン交換ビーズの投与から2日後の同細胞の写真であり、(C)はイオン交換ビーズを適用した布地の写真である。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法。
【請求項2】
結果的に細胞を殺滅させる変化を生み出すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多細胞生物が高等植物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
多細胞生物が哺乳動物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触を生体内で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接触を生体外で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接触を試験管内で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部にpH勾配を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記固形緩衝剤が標的細胞に吸収させたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記固形緩衝剤を親和性部分に付着させたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記親和性部分を、免疫体、受容体リガンド、炭水化物とからなる群から選択したことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部を選択的バリアで覆ったことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記選択的バリアが物理的バリアであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記固形緩衝剤が緩衝層と、前記緩衝層の外面に設けられた透水層とからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記透水層が空孔ポリマであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記空孔ポリマを、PVOH、セルロース、ポリウレタンからなる群から選択したことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記固形緩衝剤を噴霧調製したことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陰イオン交換材料であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料と陰イオン交換材料とからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記陽イオン交換材料が、スルホン酸とその誘導体、ホスホン酸とその誘導体、カルボン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、フェノールとその誘導体、アルソン酸とその誘導体、セレン酸とその誘導体からなる群から選択したことを特徴とする請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記陰イオン交換材料が、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミンからなる群から選択したことを特徴とする請求項22または請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記固形緩衝剤がポリマであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記固形緩衝剤が、内在的イオン伝導性基材よりなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記固形緩衝剤がアイオノマであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アイオノマがスルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)及びその誘導体であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記固形緩衝剤が20−100mM H+/l.pHの緩衝容量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記固形緩衝剤がpH8以上のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記固形緩衝剤がpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞が罹患細胞であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項35】
前記固形緩衝剤が担体面に付着していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項36】
標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞を殺滅させることを特徴とする多細胞生物における標的細胞を殺滅させる方法。
【請求項37】
標的細胞を陰イオン固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法。
【請求項38】
結果的に細胞を殺滅させる変化を生み出すことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記標的細胞が真核細胞であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記標的細胞が原核細胞であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記接触を生体内で行うことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記接触を生体外で行うことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記接触を試験管内で行うことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部にpH勾配を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記固形緩衝剤が標的細胞に吸収させたことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記固形緩衝剤を親和性部分に付着させたことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記親和性部分を、免疫体、受容体リガンド、炭水化物とからなる群から選択したことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部を選択的バリアで覆ったことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記選択的バリアが物理的バリアであることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記固形緩衝剤が緩衝層と、前記緩衝層の外面に設けられた透水層とからなることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項51】
前記透水層が空孔ポリマであることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記空孔ポリマを、PVOH、セルロース、ポリウレタンからなる群から選択したことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項54】
前記固形緩衝剤を噴霧調製したことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項55】
前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陰イオン交換材料であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項59】
前記陰イオン交換材料が、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミンからなる群から選択したことを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記固形緩衝剤がポリマであることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項61】
前記固形緩衝剤が、内在的イオン伝導性基材よりなることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項62】
前記固形緩衝剤がアイオノマであることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記アイオノマがスルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)及びその誘導体であることを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記固形緩衝剤が20mM H+/ml/pH以上の緩衝容量を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項65】
前記固形緩衝剤がpH8以上のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項66】
前記固形緩衝剤がpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞が罹患細胞であることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項68】
前記固形緩衝剤が担体面に付着していることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項69】
緩衝層と当該緩衝層の外面に設けられた透水層とからなる固形緩衝剤に標的細胞を接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法。
【請求項70】
結果的に細胞を殺滅させる変化を生み出すことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記標的細胞が真核細胞であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記標的細胞が原核細胞であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記接触を生体内で行うことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記接触を生体外で行うことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項75】
前記接触を試験管内で行うことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項76】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部にpH勾配を有することを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項77】
前記固形緩衝剤が標的細胞に吸収させたことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項78】
前記固形緩衝剤を親和性部分に付着させたことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項79】
前記親和性部分を、免疫体、受容体リガンド、炭水化物とからなる群から選択したことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部を選択的バリアで覆ったことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項81】
前記選択的バリアが物理的バリアであることを特徴とする請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記透水層が空孔ポリマであることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項83】
前記空孔ポリマを、PVOH、セルロース、ポリウレタンからなる群から選択したことを特徴とする請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項85】
前記固形緩衝剤を噴霧調製したことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項86】
前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項87】
前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項89】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陰イオン交換材料であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項90】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項91】
前記固形緩衝剤が、陰イオン交換材料と陽イオン交換材料であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項92】
前記陽イオン交換材料が、スルホン酸とその誘導体、ホスホン酸とその誘導体、カルボン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、フェノールとその誘導体、アルソン酸とその誘導体、セレン酸とその誘導体からなる群から選択したことを特徴とする請求項90または請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記陰イオン交換材料が、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミンからなる群から選択したことを特徴とする請求項89または請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記固形緩衝剤がポリマであることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項95】
前記固形緩衝剤が、内在的イオン伝導性基材よりなることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項96】
前記固形緩衝剤がアイオノマであることを特徴とする請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記アイオノマがスルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)及びその誘導体であることを特徴とする請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記固形緩衝剤が20mM H+/ml/pH以上の緩衝容量を有することを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項99】
前記固形緩衝剤がpH8以上のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項100】
前記固形緩衝剤がpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項101】
前記細胞が罹患細胞であることを特徴とする請求項70に記載の方法。
【請求項102】
前記固形緩衝剤が担体面に付着していることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項103】
50mM H+/l.pH以上でpH8以上かpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有する固形緩衝剤に標的細胞を接触させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする細胞を殺滅させる方法。
【請求項104】
50mM H+/l.pH以上でpH8以上かpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有する細胞を殺滅可能な固形緩衝剤を選択することを特徴とする細胞を殺滅可能な固形緩衝剤を選択する方法。
【請求項105】
対象細胞の部分母集団を殺滅させるように選ばれた緩衝容量及びpH値を有する固形緩衝剤に、対象細胞の部分母集団よりなる試料を接触させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする対象細胞の部分母集団を殺滅させる方法。
【請求項106】
対象細胞の部分母集団及び細胞の第2の部分母集団が異なる血漿緩衝能を示すことを特徴とする請求項105に記載の方法。
【請求項107】
対象細胞を殺滅するための最適な固形緩衝剤を選択する分析方法であって、
(i)複数の細胞を複数の固形緩衝剤に接触させ、
(ii)複数の細胞中の1細胞を殺滅可能な複数の固形緩衝剤のうちの対象細胞を殺滅するための最適な1固形緩衝剤を特定することからなる分析方法。
【請求項108】
病的細胞集団に関係する病状を治療する方法であって、必要に応じて被験者に治療効果のある量の固形緩衝剤を投与して少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって病的細胞集団に関係する病状を治療することを特徴とする方法。
【請求項109】
前記処理を生体外で行うことを特徴とする請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記処理を生体内で行うことを特徴とする請求項108に記載の方法。
【請求項111】
有効成分として固形緩衝剤と、医薬として許容される担体または希釈剤とからなる医薬組成物。
【請求項112】
前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする請求項111に記載の医薬組成物。
【請求項113】
前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする請求項112に記載の医薬組成物。
【請求項114】
前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする請求項112に記載の医薬組成物。
【請求項115】
前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする請求項112に記載の医薬組成物。
【請求項116】
(i)担体と、
(ii)前記担体の表面の少なくとも一部に接合した固形緩衝剤とからなり、
前記固形緩衝剤が緩衝層と前記緩衝層に設けられたイオン透過層よりなることを特徴とする製品。
【請求項117】
前記製品が、包装材料、医療装置、布材料、骨組、フィルタ、殺菌装置のいずれかの一部を形成することを特徴とする請求項116に記載の製品。
【請求項118】
(i)担体と、
(ii)前記担体の表面の少なくとも一部に接合した固形緩衝剤とからなり、
前記固形緩衝剤が陰イオン性であることを特徴とする製品。
【請求項119】
前記製品が、包装材料、医療装置、布材料、骨組、フィルタ、殺菌装置のいずれかの一部を形成することを特徴とする請求項118に記載の製品。
【請求項120】
病的細胞集団に関係する病状を治療する薬剤の製造用の固形緩衝剤の使用方法。
【請求項1】
標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする多細胞生物における標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法。
【請求項2】
結果的に細胞を殺滅させる変化を生み出すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多細胞生物が高等植物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
多細胞生物が哺乳動物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触を生体内で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接触を生体外で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接触を試験管内で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部にpH勾配を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記固形緩衝剤が標的細胞に吸収させたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記固形緩衝剤を親和性部分に付着させたことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記親和性部分を、免疫体、受容体リガンド、炭水化物とからなる群から選択したことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部を選択的バリアで覆ったことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記選択的バリアが物理的バリアであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記固形緩衝剤が緩衝層と、前記緩衝層の外面に設けられた透水層とからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記透水層が空孔ポリマであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記空孔ポリマを、PVOH、セルロース、ポリウレタンからなる群から選択したことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記固形緩衝剤を噴霧調製したことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陰イオン交換材料であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料と陰イオン交換材料とからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記陽イオン交換材料が、スルホン酸とその誘導体、ホスホン酸とその誘導体、カルボン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、フェノールとその誘導体、アルソン酸とその誘導体、セレン酸とその誘導体からなる群から選択したことを特徴とする請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記陰イオン交換材料が、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミンからなる群から選択したことを特徴とする請求項22または請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記固形緩衝剤がポリマであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記固形緩衝剤が、内在的イオン伝導性基材よりなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記固形緩衝剤がアイオノマであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アイオノマがスルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)及びその誘導体であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記固形緩衝剤が20−100mM H+/l.pHの緩衝容量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記固形緩衝剤がpH8以上のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記固形緩衝剤がpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞が罹患細胞であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項35】
前記固形緩衝剤が担体面に付着していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項36】
標的細胞を固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞を殺滅させることを特徴とする多細胞生物における標的細胞を殺滅させる方法。
【請求項37】
標的細胞を陰イオン固形緩衝剤に接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって標的細胞の細胞過程の変化を生み出すことを特徴とする標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法。
【請求項38】
結果的に細胞を殺滅させる変化を生み出すことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記標的細胞が真核細胞であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記標的細胞が原核細胞であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記接触を生体内で行うことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記接触を生体外で行うことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記接触を試験管内で行うことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部にpH勾配を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記固形緩衝剤が標的細胞に吸収させたことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記固形緩衝剤を親和性部分に付着させたことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記親和性部分を、免疫体、受容体リガンド、炭水化物とからなる群から選択したことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部を選択的バリアで覆ったことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記選択的バリアが物理的バリアであることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記固形緩衝剤が緩衝層と、前記緩衝層の外面に設けられた透水層とからなることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項51】
前記透水層が空孔ポリマであることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記空孔ポリマを、PVOH、セルロース、ポリウレタンからなる群から選択したことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項54】
前記固形緩衝剤を噴霧調製したことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項55】
前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陰イオン交換材料であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項59】
前記陰イオン交換材料が、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミンからなる群から選択したことを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記固形緩衝剤がポリマであることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項61】
前記固形緩衝剤が、内在的イオン伝導性基材よりなることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項62】
前記固形緩衝剤がアイオノマであることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記アイオノマがスルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)及びその誘導体であることを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記固形緩衝剤が20mM H+/ml/pH以上の緩衝容量を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項65】
前記固形緩衝剤がpH8以上のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項66】
前記固形緩衝剤がpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞が罹患細胞であることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項68】
前記固形緩衝剤が担体面に付着していることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項69】
緩衝層と当該緩衝層の外面に設けられた透水層とからなる固形緩衝剤に標的細胞を接触させて少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする標的細胞の細胞過程の変化を生み出す方法。
【請求項70】
結果的に細胞を殺滅させる変化を生み出すことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記標的細胞が真核細胞であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記標的細胞が原核細胞であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記接触を生体内で行うことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記接触を生体外で行うことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項75】
前記接触を試験管内で行うことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項76】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部にpH勾配を有することを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項77】
前記固形緩衝剤が標的細胞に吸収させたことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項78】
前記固形緩衝剤を親和性部分に付着させたことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項79】
前記親和性部分を、免疫体、受容体リガンド、炭水化物とからなる群から選択したことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記固形緩衝剤の少なくとも一部を選択的バリアで覆ったことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項81】
前記選択的バリアが物理的バリアであることを特徴とする請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記透水層が空孔ポリマであることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項83】
前記空孔ポリマを、PVOH、セルロース、ポリウレタンからなる群から選択したことを特徴とする請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項85】
前記固形緩衝剤を噴霧調製したことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項86】
前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項87】
前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項89】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陰イオン交換材料であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項90】
前記固形緩衝剤が、透水ポリマ基材に取り込まれた陽イオン交換材料であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項91】
前記固形緩衝剤が、陰イオン交換材料と陽イオン交換材料であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項92】
前記陽イオン交換材料が、スルホン酸とその誘導体、ホスホン酸とその誘導体、カルボン酸とその誘導体、ホスフィン酸とその誘導体、フェノールとその誘導体、アルソン酸とその誘導体、セレン酸とその誘導体からなる群から選択したことを特徴とする請求項90または請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記陰イオン交換材料が、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、第1級アミンからなる群から選択したことを特徴とする請求項89または請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記固形緩衝剤がポリマであることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項95】
前記固形緩衝剤が、内在的イオン伝導性基材よりなることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項96】
前記固形緩衝剤がアイオノマであることを特徴とする請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記アイオノマがスルホン化テトラフルオロエチレン共重合体(ナフィオン)及びその誘導体であることを特徴とする請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記固形緩衝剤が20mM H+/ml/pH以上の緩衝容量を有することを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項99】
前記固形緩衝剤がpH8以上のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項100】
前記固形緩衝剤がpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有することを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項101】
前記細胞が罹患細胞であることを特徴とする請求項70に記載の方法。
【請求項102】
前記固形緩衝剤が担体面に付着していることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項103】
50mM H+/l.pH以上でpH8以上かpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有する固形緩衝剤に標的細胞を接触させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする細胞を殺滅させる方法。
【請求項104】
50mM H+/l.pH以上でpH8以上かpH4.5以下のpH値の緩衝容量を有する細胞を殺滅可能な固形緩衝剤を選択することを特徴とする細胞を殺滅可能な固形緩衝剤を選択する方法。
【請求項105】
対象細胞の部分母集団を殺滅させるように選ばれた緩衝容量及びpH値を有する固形緩衝剤に、対象細胞の部分母集団よりなる試料を接触させ、これによって細胞を殺滅させることを特徴とする対象細胞の部分母集団を殺滅させる方法。
【請求項106】
対象細胞の部分母集団及び細胞の第2の部分母集団が異なる血漿緩衝能を示すことを特徴とする請求項105に記載の方法。
【請求項107】
対象細胞を殺滅するための最適な固形緩衝剤を選択する分析方法であって、
(i)複数の細胞を複数の固形緩衝剤に接触させ、
(ii)複数の細胞中の1細胞を殺滅可能な複数の固形緩衝剤のうちの対象細胞を殺滅するための最適な1固形緩衝剤を特定することからなる分析方法。
【請求項108】
病的細胞集団に関係する病状を治療する方法であって、必要に応じて被験者に治療効果のある量の固形緩衝剤を投与して少なくとも細胞の一部の細胞内pH値を変化させ、これによって病的細胞集団に関係する病状を治療することを特徴とする方法。
【請求項109】
前記処理を生体外で行うことを特徴とする請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記処理を生体内で行うことを特徴とする請求項108に記載の方法。
【請求項111】
有効成分として固形緩衝剤と、医薬として許容される担体または希釈剤とからなる医薬組成物。
【請求項112】
前記固形緩衝剤を粒状に調製したことを特徴とする請求項111に記載の医薬組成物。
【請求項113】
前記固形緩衝剤を粒子内に封入したことを特徴とする請求項112に記載の医薬組成物。
【請求項114】
前記固形緩衝剤を粒子面に付着させたことを特徴とする請求項112に記載の医薬組成物。
【請求項115】
前記粒子を、ポリマー粒子と、マイクロカプセル、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフェアからなる群から選択したことを特徴とする請求項112に記載の医薬組成物。
【請求項116】
(i)担体と、
(ii)前記担体の表面の少なくとも一部に接合した固形緩衝剤とからなり、
前記固形緩衝剤が緩衝層と前記緩衝層に設けられたイオン透過層よりなることを特徴とする製品。
【請求項117】
前記製品が、包装材料、医療装置、布材料、骨組、フィルタ、殺菌装置のいずれかの一部を形成することを特徴とする請求項116に記載の製品。
【請求項118】
(i)担体と、
(ii)前記担体の表面の少なくとも一部に接合した固形緩衝剤とからなり、
前記固形緩衝剤が陰イオン性であることを特徴とする製品。
【請求項119】
前記製品が、包装材料、医療装置、布材料、骨組、フィルタ、殺菌装置のいずれかの一部を形成することを特徴とする請求項118に記載の製品。
【請求項120】
病的細胞集団に関係する病状を治療する薬剤の製造用の固形緩衝剤の使用方法。
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【公表番号】特表2009−514852(P2009−514852A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538495(P2008−538495)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001263
【国際公開番号】WO2007/052270
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508135541)シュアー インターナショナル ベンチャーズ ビー.ヴィ. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001263
【国際公開番号】WO2007/052270
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508135541)シュアー インターナショナル ベンチャーズ ビー.ヴィ. (1)
【Fターム(参考)】
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