説明

細胞溶解剤を使用せずに試料からDNAを迅速に効率よく捕捉する方法

【課題】生物学的試料におけるK−ras変異を検出するためのキットを提供する。
【解決手段】特定の配列の任意の組み合わせからなる群より選択された診断用K−rasプライマーおよび前記プライマーを含んで成るキット。生物学的試料からのDNA、例えば膵癌と診断された個体の血清からのβ−アクチンDNA、は弱塩基性ホモポリマーを利用することによって捕捉及び選択的解離され、本方法によって増幅可能な目標DNAの収率が改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は検出を目的とした、核酸の捕捉及び選択的解離による試料を調製するための方法に関する。具体的には、増幅の様な後続処理に適した核酸の捕捉及び解離のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
微量の核酸を検出する技術はポリメラーゼチェインリアクション(PCR)の様な高度に精巧化された増幅技術を含め、過去20年間に急激な進歩をとげた。研究者は、ヒト又は動物試験検体注の疾患及び遺伝的特性を示す核酸を検出するこれら方法の価値を容易に認める。これら技術でのプローブ及びプライマーの使用は、相補性の概念、即ち相補的ヌクレオチド間の水素結合(ヌクレオチドペアとしても知られる)による核酸2本鎖の結合の概念に基づく。
【0003】
PCRは当分野の大きな進歩であり、極少量の標的核酸の検出を可能にする。PCRの詳細は例えば米国特許第4,683,195号(Mullisら)、米国特許第4,683,202号(Mullis)及び米国特許第4,965,188号(Mullisら)に記載されているが、本分野に於ける文献量は急激に増加し続けている。
【0004】
標的核酸を効率的に増幅及び検出するためには、通常は細胞及びその他検体分解物からその核酸を単離する必要がある。凍結、プロテアーゼ(例えばプロテアーゼK)の様な消化酵素による処理、煮沸、及び各種界面活性剤(例えばHiguchiにより1988年4月6日に出願された米国連続番号178,202、及び1991年、6月22日に公開されたEP-A-0 428 197号を参照)の使用、溶媒沈殿及び加熱法を含む各種溶解法が知られている。
【0005】
血液中のDNAは血清及び血漿中に検出されている。正常被験者ではナノグラム量が検出され(Steinman, C.R., J Clin. Invest. 56;512-515, 1975及びRaptis, L.,ら、J. Clin. Invest.66:1391-1399, 1980)、慢性自己免疫疾患(Leon, S. A., ら、Cancer Res., 37; 646-680, 1977)及び癌患者(Stroun, M.,ら、Eur. J. Cancer Clin. Oncol. 28: 707-712, 1987; Maebo, A., Jpn. J. Thorac. Dis. 28: 1085-1091, 1990; Fournie, G. J., ら、Cancer Lett., 91: 221-227, 1995; Lin, A., ら、BioTechniques 24:(6)) 937-940, 1998;及びSorenoson, G. D.,ら、Cancer Epidemiology, Biomarkers and Prevention 3:67-71., 1994)ではレベル増加が検出されている。最近遊離型細胞外DNAが血清中に存在すること、及び血漿が遺伝子型分析(Lin. A.,ら、BioTechniques 24(6) 937-940, 1998)や癌の検出(Mulcahy, H. E.,ら、Clin. Cancer Res. 4:271-275, 1998)に使用できること、及び母体血清中のDNAが出生前診断に利用できる可能性があること(Lo Dennis, ら、Am. J. Human Genet. 62;768-775, 1998)が明らかになった。原発性腫瘍中に存在する突然変異は血漿または血清DNA由来DNAを利用し検出できることが多い(Sorenson, , G. D.,ら, Cancer Epidemiology, Biomarkers and Prevention 3:67-71., 1994; Vasyukhin, V.,ら, In Challenges of Modern Medicine, Vol. 5, Biotechnology Today, R. Verna及びShamoo編集, 141-150, Aera-Serono Symposia Publications, Rome; Mulcahy, H. E.,ら、上記;Kopreski, M. S.,ら、Brit. J. Cancer 76:1293-1299, 1997; Chen, X.,ら、Nature Medicine 2: 1033-1035, 1996; Vasioukin, V.,ら., Brit. J. Haematology 86: 774-779, 1994;及びTada, M.,ら、Cancer Res. 53: 2472-2474)。即ち、血清及び血漿中に存在するDNAは、ガン診断、予防及び治療に関する情報の、侵襲性が最も小さい情報源である。
【0006】
標的核酸を効率的に増幅し検出するために、通常は問題の試料中に存在する妨害物質から核酸を分離する必要がある。血清または血漿からのDNAの濃縮及び精製には各種方法が利用されている。これら方法の多くはフェノール、エーテル、及びクロロホルム処理、透析、多糖類除去のためのコンカナバリンA-セファロースカラムの通過、及び塩化セシウム勾配中での遠心分離(Vasyukhin, V.,ら、上記)を含む多くの段階を含んでいる。最近、キアゲン社(Qiagen)はスピンカラム法に基づくDAN濃縮及び精製に関するシステムを商品化した。キアゲン法は複雑で、シリカスピンカラムの遠心分離段階以外に合計8段階が含まれており、プロテアーゼによる処理、70℃でのインキュベーションを含み、また最低3種類の緩衝液を必要とする。
【0007】
最近Goeckeら(WO 97/34018)は核酸増幅アッセイを利用した血漿及び血清中の細胞外腫瘍関連核酸の検出を報告した。かれらの好適方法では、DNAはゼラチンによる初期の共沈殿、続く溶媒処理及び遠心分離を含む多段階法を利用し、血漿及び血清から共沈殿される。ガラスビーズ、シリカ粒子又は珪藻土の使用を含む時間のかかる、複雑なその他方法も記載されている。
【0008】
核酸の捕捉及び選択的解離に関する弱塩基性ポリマーの使用は米国特許第5,622,822号(Ekezeら)、米国特許第5,582,988号(Backusら)、及び米国特許第5,434,270号(Ponticelloら)に記載されている。上記特許記載の方法は、細胞溶解剤又は細胞溶解段階の使用に依存する。細胞溶解剤として界面活性剤がしばしば利用される。界面活性剤及びその他溶解剤の使用は、細胞からの核酸及び細胞成分の血液中への解離をもたらす;これがバックグランドDNAの強い濃縮を招く。
【発明の概要】
【0009】
従来法に於ける溶解剤又は溶解段階の使用に関係する問題は本発明の方法により克服される。
【0010】
本発明の方法は、捕捉及びポリマーからの捕捉核酸の選択的解離を目的とするが、しかし従来方法を利用し実施される場合の様な溶解段階又は溶解剤を使用しない上記米国特許記載の弱塩基性ポリマーの使用を包含する。
【0011】
発明の観点の一つによれば、血清及び血漿からDNAを回収するための単純化され使用が簡便な方法が提供される。方法は血清又は血漿の様な試料からDNAを結合することを目的とする弱塩基性ポリマーの使用を包含する。DNA結合後、ポリマーは不溶性となる。ポリマー結合DNAは次に不所望の不溶性物質を含む混合液より分離される。次にDNAはアルカリ付加によりポリマーから解離される。即ち本発明の方法は3段階:(a)試料と緩衝液との接触、(b)段階(a)にて形成された混合液と弱塩基性ポリマーとの接触及びインキュベーション、及び(c)アルカリ接触による段階(b)のポリマー結合DNAの解離、のみを必要とする。方法はアルコール又はその他溶媒及びフェノール又はクロロホルムの様な有毒物質による抽出を排除し、また溶解剤を使用しない。方法はDNA回収を簡便化するだけでなく、増幅可能な目標DNAの収率も改善する。方法は好ましくは試料として血清及び血液と共に使用されるが、もとよりこれらに限定されないが尿、胆汁、髄液、気管支洗浄液(BAL)、結腸洗浄液、及び便を含むその他体液にも応用できる。更に、動物、ヒト、環境及び微生物試料から採取されたこれらのものを含むいかなるタイプの試料も利用できる。
【0012】
別の観点では、本発明は上記記載のDNA回収法を利用した目標DNAの増幅と検出に関する。
【0013】
本発明の発明方法は次の段階を含み:
A) pH7未満にて核酸を含むと思われる試料を、試料中に存在する全ての核酸が弱塩基性ポリマーと水不溶性沈殿を形成するのに十分な量の水溶性、弱塩基性ポリマーと接触せしめる段階、
B) 試料から水不溶性沈殿を分離する段階、及び
C) 沈殿を塩基と接触せしめ、溶液のpHを7より高くし、それにより弱塩基性ポリマーから核酸を解離させる段階、
弱塩基性ポリマーは酸性pHにてプロトン化できるアミン基を有する1又はそれ以上のエチレン飽和な重合性モノマーの付加重合により誘導された反復単位を含む。
【0014】
本発明はまた以下を含む標的核酸の増幅及び検出に関する方法も提供する:
I) 次の段階を利用して標的核酸を提供すること:
A) pH7未満にて核酸を含むと思われる試料を、試料中に存在する全ての核酸が弱塩基性ポリマーと水不溶性沈殿を形成するのに十分な量の水溶性、弱塩基性ポリマーと接触せしめる段階、
B) 試料から水不溶性沈殿を分離する段階、及び
C) 沈殿を塩基と接触せしめ、溶液のpHを7より高くし、それにより弱塩基性ポリマーから核酸を解離させる段階、
弱塩基性ポリマーは酸性pHにてプロトン化できるアミン基を有する1又はそれ以上のエチレン不飽和な重合性モノマーの付加重合により誘導された反復単位を含む。
II) 解離された核酸中に存在する標的核酸を増幅すること、及び
III) 増幅された核酸を検出すること。
【0015】
標的核酸の増幅に関する試験キットは以下の個別梱包を含む:
a) 1またはそれ以上の増幅試薬を含む増幅反応混合物、及び
b) 酸性pHにてプロトン化できるアミン基を有する1又はそれ以上のエチレン不飽和な重合性モノマーの付加重合により誘導された反復単位を含む弱塩基性ポリマー。
【0016】
本発明は、ハイブリダイゼーションアッセイ又は増幅法の様なその他処理に適した核酸を選択に単離し、提供するための迅速、単純且つ効果的な方法を提供する。本発明は、ポリエチレンアミンの使用を含む通常の単離手段に関連する上記問題を解決する。更に、フッ素化リン酸エステル界面活性剤と組合せたポリエチレンアミン使用により生ずる問題も、界面活性剤を必要としないことから回避される。本発明の試料調製方法は時間がかからず、最小段階のみを必要とするため、より容易に自動化できる。通常は約15分以内に実施できる(好ましくは10分以内)。
【0017】
これら利点はポリエチレンアミンに替わって酸性pHでは陽イオン性かつ水溶性であるが、ポリマーのpKaより有意に高い塩基性pHでは脱プロトン化される“弱塩基性”ポリマーを使用することで提供される。“弱塩基性”とはポリマーのpKaが7未満、より好適には6.5未満であることを意味する。即ちポリマーは、陽イオン性ポリマーと陰イオン性の核酸リン酸骨格とのイオン性相互作用により、低pHにて核酸沈殿に使用できる。
【0018】
非複合体化物質を除いた後、pHを塩基性条件に調節することで核酸は沈殿の弱塩基性ポリマーより解離し(又は脱複合体化し)、増幅の様なその他処理に利用できる。増幅方法は塩基性条件下に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】40回のPCRサイクルを利用したβアクチン遺伝子のTaqMan増幅により評価した、DNAに関する標準曲線を例示する。
【図2】実施例7によるREMS-PCR後のゲル電気泳動により決定されたK-12ras突然変異に関する分析結果を例示する。発明の詳細な説明 本発明は動物、ヒト、環境又は微生物検体からの採集された何れかのタイプの試料中に存在する1またはそれ以上の標的核酸の抽出及び検出に特に適している。得られた核酸は、それらを通常の当分野で良く知られている方法であるハイブリダイゼーションアッセイ(例えば米国特許第4,994,373号、ハイブリダイゼーション技術に関し参照されここに取り込まれている)にかけることで更に処理できる。
【0020】
しかし、簡潔のために、その他考察は核酸が増幅法、特にPCRにかけられる好適実施態様にて論じられるだろう。しかし、その他増幅法(例えばLCR)も利用できることから、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0021】
ポリメラーゼチェインリアクションを用いた核酸の増幅及び検出に関する一般原理及び条件は良く知られており、その詳細は米国特許第4,683,195号(Mullisら)、米国特許第4,683,202号(Mullis)、米国特許第4,965,188号(Mullisら)及びWO-A-91/12342号を含む数多くの参考資料に提供されている。上記米国特許は参照されここに取り込まれている。当分野の教示及びここに備えられた具体的教示の見解では、当業者は本発明の準備法をポリメラーゼチェインリアクション法、又はその他当分野既知の増幅法と組合せ本発明を実施することに困難はない。
【0022】
本発明の実施に使用できるその他増幅法にはEP-A-0 320 308号(1987年12月公開)及びEP-A-0 439 182号(1990年1月公開)のリガーゼチェインリアクション法が含まれるが、これに限定されない。
【0023】
試験検体(“試料”)には体液又は遺伝子DNA又はRNAを含むその他材料が含まれる。標的核酸は好適なヒト、動物、微生物、ウイルス又は植物の供給源より抽出できる。
【0024】
ここに開示される進歩は、ここに規定の弱塩基性ポリマーとの接触前に試料からの核酸の抽出が必要ないこと目的とする。一方、従来技術は当分野既知の各種溶解法を教示する(The Lancet, pp.538-540(Sep. 3, 1988)のLaureら、Maniatisら、Molecular Cloning; A Laboratory Manual, pp. 280-281 (1982)、Gross-Sellandら、 in Eur. J. Biochem., 36, 32 (1973)及び米国特許第4,965,188号(上記)記載の方法を含む)。全血又はその成分からのDNA抽出は、例えばEP-A-0 393 744(1990年10月24日公開)、米国特許第5,231,015号(Gumminsら)及び米国特許第5,334,499号(Burdickら);に記載されている;溶解法は核酸供給源として使用される検体のタイプに依存する;好ましい溶解法は好適非イオン性界面活性剤存在下での試料の加熱を含み、多くのものが当分野で良く知られている。その他有益な溶解法は米国連続番号09/063 169(Ekeze及びKerschnerにより1993年、5月18日出願)に記載されており、そこでは全血試料が緩衝化塩化アンモニウム液と混合され、続いて塩化アンモニウムとの第2混合を含む追加段階が実施されるものであり、当該発明方法は溶解段階を実施しない。
【0025】
試料はまず希釈され、約7.0より低いpHの緩衝液と混合されてから試料中の全核酸と複合体を形成し、水不溶性沈殿を形成するのに十分な量の弱塩基性ポリマー(以下規定の)と混合される。このポリマーは酸性pHでは水溶性である。一般に存在するポリマーの量は少なくとも0.01重量%であり、約0.05ないし約0.5重量%が好ましい。もちろん当業者は核酸量に適応するポリマー量を調節する方法を知っているだろう。混合は好適手段により好適温度(一般には15°ないし35℃)にて30分まで(一般には5分未満)実施できるだろう。
【0026】
試料との混合に好適な緩衝液には、pK6.1のMES(2-N-[モルホリノ]エタンスルホン酸)、pK6.5のビス-トリス(ビス[2-ヒドロキシエチル]イミノトリス[ヒドロキシメチル]メタン;pK6.6のADA(N-[2-アセトアミド]-2-イミノ二酢酸)[ヒドロキシメチル]-1,3-プロパンジオール);N-[カルバモイルメチル]イミノ二酢酸;pK6.8のACES(N-[カルバモイルメチル]-2-アミノエタンスルホン酸;N-[2-アセトアミド]--2-アミノエタンスルホン酸);pK6.8のPIPES(ピペラジン-N,n’-ビス[2-エタンスルフィド];1,4-ピペラジン時エタンスルホン酸);pK6.9のMOPSO(3-[N-モルホリノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸);pK6.8のビス-トリスプロパン(1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン)、PBS(リン酸緩衝化食塩水)及びトリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)を含む、pKaが7未満である、より好ましくはpKaが6.5未満である緩衝液が含まれ、弱塩基性ポリマーはその水溶性遊離形状で使用でき、またはアフィニティーカラムの様な水不溶性基質に結合でき、あるいはポリマー性、ガラス又はその他無機微粒子に結合することができる。即ち、ポリマーは通常の手段(例えば吸着、共有結合又は特異的結合反応)を利用しガラス、ポリマー性又は磁性ビーズ、フィルター又はフィルムを含む好適基質に結合することができる。弱塩基性ポリマーが塩基性pHに於いてもまだ水不溶性である場合には、それは核酸分離後に濾過、遠心分離又はその他通常の方法によって取り除くことができる。
【0027】
しかし弱塩基性ポリマーへ結合している間、核酸は有用ではない。大量の細胞分解物と過剰のポリマーを含むであろう試料の残余から、水不溶性沈殿を分離する必要がある。この分離は、遠心分離または濾過してリガンドを廃棄することを含む各種通常の方法を使用し達成できる。本発明の実施では遠心分離が好ましく、約1,000×gより大きい、1分ないし5分間の操作で実施できる。
【0028】
分離段階後、沈殿を加熱あり又はなしにて塩基と接触させることで、核酸は弱塩基性ポリマーから脱複合体化又は解離できる。強塩基は加熱することなく利用できる、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、第3級アミン(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及びルチジンの様な)、トリシン、ビシン又はその当業者に容易に明らかである他有機又は無機塩基を含むが、これらに限定されない。有益なより弱い塩基にはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(又はその酸付加塩)N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-グリシン及びその他当分野に良く知られている様な塩基性緩衝液が含まれるだろう。弱塩基を使用する場合には加熱が必要だろう。
【0029】
この様な加熱は、好適圧の持ち、少なくとも約50℃、好ましくは約95℃ないし約125℃である温度にて15分間(一般には5分未満)実施できるだろう。本関連で使用する場合、“約”とは+/-5℃を表す。
【0030】
好適実施態様では、弱塩基は沈殿から核酸を解離するために加熱と共に利用できる。これによりその他処理なしに増幅に利用可能な核酸を含む溶液が提供される。この様な弱塩基はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩の様な緩衝液であることができる。
【0031】
幾つかの実施態様では、これら実施態様に使用されるポリマーは塩基性pHにても水不溶性である様なポリマー(以下規定)である。この様なポリマーは必要に応じ核酸分離後、増幅前にシステムより取り除くことができる。
【0032】
こうして得た分離核酸を含む液は塩基性のpHを有する。幾つかの例では、核酸は更に追加のpH調節なしに処理することができる。強塩基を使用する他実施態様では、液のpHはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、N,N-ビス(2-ヒドロキシメチル)グリシン、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン及び当業者に容易に明らかになるであろうその他の様な好適な酸又は緩衝液を用い、約6ないし約9(好ましくは約7.5ないし約9)に調節されるだろう。所望pHを達成するのに必要なこれら物質の量は当業者にとって容易に明らかになるだろう。
【0033】
塩基性pHでは、核酸の捕捉に使用されるポリマーは水溶性又は水不溶性のいずれでもよく、これら特性の提供に必要なモノマーは以下に記載される。
【0034】
本発明の核酸を捕捉し、解離する記載の方法は典型的には約20分以内、好ましくは約10分以内に実施される。
【0035】
ここで使用する場合、特記ない限り修飾語“約”は表記値の110%の偏差を表す。pH値に使用する場合、“約”は+/-0.5pH単位を表す。
【0036】
本発明の好適実施態様では、標的核酸の増幅及び検出に関する方法は次を含む:
I) 標的核酸を含むと思われる試料を提供すること、
II) 次の段階に標的核酸をかけること:
A) 7未満のpHにて標的核酸を、弱塩基性ポリマーと試料中の標的核酸を含む全核酸との水不溶性沈殿の形成に十分な量の水溶性の弱塩ポリマーとを接触せしめる段階、
B) 水不溶性沈殿を試料から分離する段階、及び
C) 沈殿を塩基と接触せしめ、溶液のpHを7より高くし、それにより弱塩性ポリマーから核酸を解離させる段階、
弱塩基性ポリマーは酸性pHにてプロトン化できるアミン基を有する1又はそれ以上のエチレン不飽和な重合性モノマーの付加重合により誘導された反復単位を含む。
III) pHの更なる調節なしに解離された標的核酸を増幅すること、及び
IV) 増幅された標的核酸を検出すること。
【0037】
前記方法に於いて、弱塩基性ポリマーは塩基性pHにて水不溶性であること、及び方法が目標核酸の分離後であるがその増幅前に水不溶性ポリマーを分離する段階を含むことが更に好ましい。
【0038】
本発明の実施に使用される弱塩基性ポリマーは1またはそれ以上のエチレン不飽和な重合性モノマーにあって、少なくともその一つが酸性pHにてプロトン化できるアミン基を有するものである重合性モノマーより調整される。即ち、酸性pHでは、ポリマーはプロトン化されアミンの酸付加塩を形成する。塩基性pHでは、ポリマーは遊離塩基として存在する。
【0039】
本発明にて有用な重合性モノマーの一部となり得る具体的“弱塩基性基”には酸性pHにてプロトン化できる環状アミン基、又は第1、第2又は第3アミノアルキル基が含まれるが、これに限定されない。有益な環状アミンにはイミダゾリル、イソキサゾリル、ピリジル、ピペリジル、ピペラジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、キノリニル及びキナゾリニル基が含まれるが、これらに限定されるものではない。好適基は芳香族である環状基であり、イミダゾリル基が最適である。有用なアミノアリルキル又は環状アミン基は、アルキレン、アミド又はエステル基を含む通常の結合基を使用してモノマーのビニル基に結合され、そして複数のアルキレン基はイミノ、オキシ、アミド、カルボニル又はエステル基と共に結合することができる。
【0040】
一般に核酸捕捉に有用なポリマーは、以下の付加重合により誘導される反復単位を含む;
a) 酸性pHにてプロトン化できる基であり、アミノアルキル、イミダゾリル、イソキサゾリル、ピリジル、ピペリジル、ピペラジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、キノリニル及びキナゾリニルより成るグループから選択される基を少なくとも1持つ、約15ないし100重量%の水溶性、弱塩基性のエチレン不飽和な重合モノマー、
b) 0ないし約35重量%の非イオン性、親水性エチレン不飽和重合性モノマー
c) 0ないし約85重量%の非イオン性、疎水性エチレン不飽和重合性モノマー。
【0041】
好ましくは、弱塩基性ポリマーは約20ないし約100重量%のa)、0ないし約25重量%のb)及び0ないし約80重量%のc)の反復単位を含む。
【0042】
上記a)に有用なモノマーのより具体的な分類は、構造(I)により表される分類にあって、
【0043】
【化1】

【0044】
式中のR3が水素又はメチルであり、Xがオキシ又イミノである分類である。更に、R4は鎖中に1ないし8個の炭素及びヘテロ原子を有し、1またはそれ以上のアルキレン基(メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン及びn-ペンチレン)を含み、2以上のアルキレン基が存在するときには、R4において、1またはそれ以上のカルボニル、オキシ、イミノ、エステル又はアミド基によって実施可能な組合せにおいて結合される2価炭化水素結合基である。“実施可能な組合せ”とは、これら基が化学的に可能な配置にアルキレン基と組み合わさることができること、及び化学的に可能な様式(オキシカルボニル、カルボンアミド及びその他当業者に容易に明らかになるもの)にて組合せて利用できることを意味する。R4がカルボニル、オキシ、イミノ、エステル又はアミノ基で終止できるとも理解できる。
【0045】
R5は環状アミン又は上記の第1、第2又は第3アミノアルキル基であり、酸性pHにてプロトン化できる。
【0046】
有用なタイプa)モノマーの例には1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-ビニルピリジン、1-ヒドロキシ-6-ビニル-1H-ベンゾトリアゾール、メタクリル酸2-アミノエチル塩酸塩、アクリル酸2-アミノエチル塩酸塩、N-(3アミノプロピル)メタクリアミド、2-ビニルキノリン、N-(3イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N-(2-イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N-(3-イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-N-イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N-(イミダゾリルメチル)アクリルアミド、1-ビニルピロリジノン、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート及び上記遊離塩基の酸付加塩。
【0047】
本発明のタイプa)の新規モノマーの分類はホモポリマー又はコポリマーのいずれの調製にも利用できる。これらモノマーは構造(II)により定義されるものであって;
【0048】
【化2】

【0049】
式中のRが水素又はメチルであるものである。好ましくはRはメチルである。更に、R1は1ないし3個の炭素原子を持つ分岐状又は直鎖状のアルキレンである(メチレン、エチレン、トリメチレン又はプロピレンの様な)。R1は2または3個の炭素原子を持つアルキレンである。より好ましくはR1はトリメチレンである。
【0050】
構造(II)を有する特に有用なモノマーは、N-(3-イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド、N-(2-イミダゾリルエチル)メタクリルアミド、N-(3-イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-N-イミダゾリルプロピル)アクリルアミド、N-(イミダゾリルメチル)アクリルアミド、及びその酸付加塩を含むが、これらに限定されない。ここに記載の新規モノマーのうち、第1の化合物が最適である。
【0051】
好ましいタイプa)モノマーには1-ビニルイミダゾール及びN-2-メチル-1-ビニルイミダゾールが含まれる。
【0052】
タイプa)のモノマーが低水溶性を示すか、又は全く水溶性を示さない場合にはそれらは酸付加塩の形(塩酸塩又は臭化水素酸塩の様な)に重合することもできる。
【0053】
タイプb)とされるモノマーは、ここで“親水性”と規定されるモノマーであり、ホモポリマー化する時pH7以上で水溶性であるホモポリマーを提供するモノマーを意味する。一般に、この様なモノマーはヒドロキシ、アミン(第1、第2、第3及び環状)、アミド、スルホンアミド及びポリエチレンオキシ基の様な親水性基を有するが、当該ホモポリマーが水溶性パラメーターに合致しているのであればこれら基を含む必要なない。
【0054】
タイプb)の代表的モノマーにはアクリルアミド、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリ(エチレンオキシ)エチルメタクリレート(2ないし10個のエチレンオキシ基を有する)及びN,N-ジメチルアクリルアミドを含むが、これらに限定されない。好適なモノマーはアクリルアミドである。
【0055】
タイプc)モノマーとされるモノマーは、ここでは“疎水性”と規定されるモノマーであり、それらが側鎖を持つ場合にはその種類に関係なく、ホモポリマー化する時pH7以上で水不溶性であるホモポリマーを提供するモノマーを意味する。
【0056】
タイプc)の代表的モノマーにはメタクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-t-ブチルメタクリルアミド、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メチルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン及びその他ビニル芳香族体、及び当業者に容易に明らかになるその他のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。好適モノマーは2-ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0057】
新規でないタイプa)、b)及びc)のモノマーは一般には市販供給源より入手可能であるか、又は通常の方法及び材料を使い調整できる。
【0058】
構造(II)の新規モノマーは一般には当業者に容易に明らかになる適当な条件を用い、1-(アミノアルキル)イミダゾールと塩化(メタ)アクリロイルとを重合することで調整できる。好適モノマーの代表的調整法は下記実施例中に提供されている。これらモノマーに関するより詳細は、“弱塩基性重合性モノマー及びそれより調製されたポリマー”と名称が付けられたPonticelloらの周知の米国特許第5,434,270号より得ることができる。
【0059】
ここに記載のホモポリマー及びコポリマーは、以下実施例に提供される調製方法に例示される特定の好適条件はあるものの、当業者に良く知られている通常の液重合技術を利用し調製できる。各種モノマーの比は当業者既知の如くに調節でき、塩基性pHでは水溶性または水不溶性であるが、酸性pHでは水溶性を維持する様なポリマーを提供することができる。
【0060】
溶液重合は一般には、好適フリーラジカル開始体存在下に好適溶媒(水又は各種水混和性有機溶媒)中にモノマーを溶解し、混合することを含む。生じたポリマーは酸性pHにて水溶性であるため、その後の使用に備えアセトンの様な溶媒を用い沈殿され、精製され、再度水に溶解される。
【0061】
特に有用なここに記載のポリマーは、ポリ[N-(3-イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド塩酸塩-コ-アクリルアミド]、ポリ[N-(3-イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド塩酸塩-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート]、ポリ(1-ビニルイミダゾール)、ポリ(2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(1-ビニルイミダゾール塩酸塩-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ[N-(1,1-ジメチル-3-イミダゾリルプロピル)アクリルアミド]ポリ(N-2-メチル-1-ビニルイミダゾール)及び遊離塩基ポリマーの酸付加塩を含むが、これらに限定されない。
【0062】
好適実施態様では、使用ポリマーは塩基性pHでは水不溶性である。これらポリマーはタイプa)モノマー及びタイプc)モノマーを利用し調製されるが、塩基性pHでのポリマーの可溶化を防ぐために少量(15重量%未満のタイプb)のモノマと共に使用される。このタイプの代表的ポリマーにはポリ[N-(3-イミダゾリルプロピル)-メタクリルアミド塩酸塩-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート]、ポリ(1-ビニルイミダゾール)、ポリ(2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート)及びポリ(1-ビニルイミダゾール塩酸塩-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート)を含むが、これらに限定されない。
【0063】
本発明はまた上記の如く解離された1またはそれ以上の標的核酸中に存在する1又はそれ以上の特異的核酸配列の増幅又は検出を目的とする。更に各特異的核酸に適したプライマー及び検出法の対応するセットを利用することで、複数の標的核酸を同時に増幅し、検出することができる。同一核酸配列中の複数配列も増幅し、検出することができる。
【0064】
“PCR試薬”とはPCRでの使用に一般的に有効であると考えられている試薬、即ち各目標核酸に適したプライマーのセット、DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ補助因子、及び2またはそれ以上のデオキシリボヌクレシド-5’-3リン酸(dNTP’s)を表す。
【0065】
ここにてプライマー又はプローブを表す場合に使用される場合、用語“オリゴヌクレオチド”は4またはそれ以上の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む分子を表す。その正確な大きさは重要ではないが、オリゴヌクレオチドの最終的利用または機能を含む多くの要素に依存している。オリゴヌクレオチドは当分野既知の方法により演繹されるだろう。
【0066】
用語“プライマー”は天然に生じた、又は合成され生成されたものであり、核酸鎖(即ち鋳型)に相補的であるプライマー延長産物の合成が誘導される条件の下に置かれた時に、合成の開始点として機能することができるオリゴヌクレオチドを意味する。この様な条件にはヌクレオチド(4種類の標準的デオキシリボヌクレオチド-5’-3リン酸の様な)、DNAポリメラーゼ及びDNAポリメラーゼ補助因子の存在、及び好適温度やpHが含まれる。通常これら条件は、非特異的増幅が最小化される“高厳密”条件として当分野で知られる条件である。プライマーはDNAポリメラーゼ存在下に延長産物の合成を開始するのに十分な長さでなければならない。各プライマーの正確な長さは使用目的、目標配列の複雑さ、反応温度及びプライマーの起源に依存し変わるだろう。一般に本発明に使用されるプライマーは10ないし60ヌクレオチドであろう。
【0067】
ここで有用なプライマーは数多くの供給源より得ることができ、または既知技術及び装置、例えばABI DNA合成装置(アプライドバイオシステム社(Applied Biosystems)より販売されてる)又はバイオサーチ8600シリーズ又は8800(ミリジェン-バイオサーチ社(Milligen-Biosearch,Inc)より販売)及びそれらの使用に関する既知方法(例えば米国特許第4,965,188号に記載の様な)を使用し調整することができる。生物供給源より単離された天然発生プライマーもまた有用である(制限エンドヌクレアーゼ消化の様な)。ここで使用される場合、用語“プライマー”はプライマーの混合体も表す。即ち、特定標的核酸に関するプライマーの各セットは各向きあった鎖に関する2またはそれ以上のプライマーを含むだろう。
【0068】
1方または両方のプライマーは増幅産物の検出または捕捉に適した同一、又は異なる標識体で標識することができる。標識体を結合させる方法及びプライマーを調整する方法は当分野で良く知られており、例えばAgrawalら、Nucleic Acid Res., 14. pp.6627-45 (1986)、ビオチン標識体に関する米国特許第4,962,210号(Levensonら)、及びここに記した参考資料に記載されている。有用な標識体は放射性同位元素、電子密度試薬、色素原、蛍光原、燐光成分、フェリチン及びその他磁性粒子(Owenらの米国特許第4,795,698号及びPoyntonらの米国特許第4,920,061号を参照)、化学発光成分(ルミノールの様な)及びその他特異的結合種(アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、糖又はレクチン)も包含する。好適標識体は酵素、放射性同位元素及び特異的結合種(ビオチンの様な)である。有用な酵素はグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼ、アルカリホスファターゼ及びその当分野既知の酵素を包含し、既知方法を用いオリゴヌクレオチドに結合できる。これらの酵素により発色または化学発光シグナルを提供する試薬は良く知られている。
【0069】
標識体がペルオキシダーゼの様な酵素の場合、アッセイに幾つかの点にて過酸化水素及び好適色素形成組成体が加えられ、検出可能な色素がもたらされる。例えば色素提供試薬には、テトラメチルベンジジン及びその誘導体、及び水不溶性トリアリルイミダゾールロイコ色素(Bruschino米国特許第4,099,747号に記載の様な)の様なロイコ色素、またはペルオキシダーゼ及び過酸化水素存在下に反応し色素を提供するその他化合物を含む。特に有用な色素提供組成体はEP-A-0 308 236号(1989年、3月22日公開)に記載されている。ペルオキシダーゼとの反応に於ける化学発光シグナルは、適当な試薬を利用しても生成することができる。
【0070】
もし一方又は両方のプライマーがビオチン化されている場合、増幅核酸は検出可能に標識されたアビジンまたはその等価物(ストレプトアビジンの様な)を利用し、検出できる。例えばアビジンは既知方法により酵素標識でき、又は放射性同位元素を持つことができる。増幅産物上のビオチンはアビジンと複合体を形成し、放射活性、発色、または化学発光シグナルを検出するための適当な検出技術が利用される。
【0071】
ここで用いる捕捉“プローブ”は、標的核酸の1またはそれ以上の鎖の核酸配列に実質相補的であるオリゴヌクレオチドであり、増幅核酸の不溶性化に利用される。プローブオリゴヌクレオチドは一般に、ポリマービーズ又はガラスビーズ、マイクロタイタープレートウエル、薄層ポリマーフィルム又は薄層セルロースフィルム、あるいは当業者に容易に明らかになるその他材料の様な好適水不溶性基質に結合される。オリゴヌクレオチドは一般に12ないし約40ヌクレオチド長であるが、その長さは重要ではない。
【0072】
DNAポリメラーゼはプライマー及び鋳型複合体中にあるプライマーの3+-ヒドロキシ末端にデオキシヌクレオシド1リン酸分子を付加する酵素であるが、この付加は鋳型依存的な様式(即ち、鋳型中の特異的ヌクレオチドに依存して)におこなわれる。多くの有用なDNAポリメラーゼが当分野で知られている。好ましくはポリメラーゼは“熱安定型”であり、これは熱、特にDNA鎖の変性に際し使用される高温に対し安定であることを意味している。より具体的には、熱安定型DNAポリメラーゼはここに記載のPCRで使用される高温により実質的に不活性化されない。
【0073】
参照されここに取り込まれている米国特許第4,965,199号(上記)及び米国特許第4,889,818号(Gelfandら)に記載のものを含め、数多くの熱安定型DNAポリメラーゼが当分野で報告されている。特に有用なポリメラーゼは、Therums aquaticus, Thermus thermophilus, Thermus filiformis又はThermusf lavusの様な各種Thermus属細菌種から得られたものである。その他有用な熱安定型DNAポリメラーゼはThermococcus literalis, Pyrococcus furiosus, Thermotoga sp. を含む各種その他微生物供給源より得られ、またWO-A-89/06691(1989年6月27日公開)に記載のものである。幾つかの有益ポリメラーゼが市販されている。生物体より天然に生ずるポリメラーゼを単離するための方法、及び組換え体技術を使用し遺伝的に加工された酵素の製造に関する方法は、本文中に引用の分野に記される如く数多く知られている。
【0074】
DNAポリメラーゼ補助因子は、酵素がその活性のために依存する非蛋白質性成分を意味する。数多くのこの様な物質が補助因子として知られており、マンガン及びマグネシウム塩が含まれる。有用な補助因子には、塩化マンガン及びマグネシウム、硫酸塩、酢酸塩及び脂肪酸塩(例えば酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸塩)が含まれるが、これらに限定されない。より小さな塩、即ち塩化物、硫酸塩及び酢酸塩が好ましい。
【0075】
また2またはそれ以上のdATP、dCTP、dGTP、dUTP又はdTTPの様なデオキシリボヌクレオチド-5’-3リン酸もまたPCRに必要である。一般に、dATP、dCTP、dGTP及びdTTP全てがPCRに使用される。dITP及び7-デアザ-dCTPの様な類似体も有用である。
【0076】
発明の実施には、DNAポリメラーゼに特異的な抗体にあって、約50℃より低い温度にて酵素活性を阻害するが高温では不活性化される抗体も有用である。この様な特性を有する代表的モノクローナル抗体は参照されここに取り込まれている米国特許第5,338,671号(Scaliceら)に記載されている。それらが等価の特性を有する場合には、全体分子に替わって抗体断片も使用できる。
【0077】
ここに記載のPCR試薬は目標核酸の増幅を与える好適濃度でPCRに提供され、用いられる。DNAポリメラーゼの最小量は一般には少なくとも約1単位/溶液100μlであり、約4ないし約25単位/100μlが好適である。“単位”は、ここでは74℃、30分間に延長中の核酸鎖に全ヌクレオチド(dNTP’s)の10nmoleを取り込ませるのに必要な酵素活性量として規定されている。各プライマーの濃度は少なくとも約0.075μモルであり、約0.2ないし約1μモルが好ましい。全てのプライマーは約同量存在している(各10%の偏差にて)。補助因子は一般に反応混合液中に約1ないし約15ミリモル量存在するが、各dNTPは一般には約0.1ないし約3.5ミリモル存在している。本文に使用される場合、修飾語“約”は記載値の+/-10%の偏差を表す。
【0078】
PCR試薬は個別に、又は好適緩衝液にて約7ないし約9の範囲のpHを持つ緩衝化溶液として供給できる。
【0079】
増幅および検出される標的核酸は通常2本鎖形状にあることから、プライミングが起こる前に2本鎖を分離(即ち変性)しなければならない。これは抽出工程中におこなうことができるが、その後別段階で実施されることが好ましい。好適温度まで加熱すること(ここでは“第1温度”またはT1として特定される)が変性に好適な方法である。一般にこの第1温度は約85℃ないし約100℃の範囲に好適時間、例えば1ないし約240秒(好ましくは1ないし約40秒)である。この初期変性段階は第1増幅サイクル中に含ませることができる。この場合、第1サイクル中の変性はより長く(例えば240秒まで)なるが、その後のサイクルはより短い(例えば30秒まで)変性段階を持つことができる。
【0080】
変性された鎖は次に、反応混合液を一般には約55℃ないし約70℃の範囲にある第2温度、T2まで冷却することで、適当なプライマーセットによりプライムされる。冷却は可能な限り迅速に実施されることが望ましいが、現在既知の装置を使用する場合には冷却には一般に約5ないし約40秒間かかり、より好ましくは約5ないし約20秒間である。
【0081】
変性鎖が冷却された後、PCR試薬を含む反応混合液は第3温度T3に、一般に1ないし約120秒、好ましくは1ないし約80秒間インキュベーションされ、プライマー延長産物の形成がおこなわれる。一般に、第3温度は約55°ないし約74℃の範囲にある。好ましくは第3温度は約62°ないし約70℃の範囲である。
【0082】
最適実施態様では、第2及び第3温度は同一であり、約62°ないし約70℃の範囲内にある。即ちプライミング及びプライマー延長は好ましくは同一段階で実施される。
【0083】
即ち、増幅サイクルは上記の変性、プライミング(又はアニーリング)及びプライマー延長段階を含む。一般に、具体的使用者の自由裁量の範囲にて、最大サイクル数による本発明の実施では、この様な増幅サイクルは少なくとも15回実施される。多くの場合、方法では15ないし50増幅サイクルが用いられ、15ないし40サイクルが好適である。各増幅サイクルは一般には約20ないし約360秒であり、約30ないし約120秒のサイクル時間が好適であり、約30ないし約90秒のサイクル時間が更に好ましい。しかし、必要に応じより長い又は短いサイクル時間が利用できる。
【0084】
増幅法の特定段階に関する時間表示に使用される場合、用語“約”はその時間値の+/-10%を表す。更に、温度を表す場合に使用される場合には、用語“約”は+/-0.5℃を表す。
【0085】
増幅産物の検出は、米国特許第4,965,188号(上記)に記載の様なサザンブロッティング法を含む既知方法、または当分野既知である様な標識化プローブ又はプライマーを使用することで実施できる。
【0086】
あるいは上記実施態様に替わって、増幅産物はプライマー延長産物の一方に相補的である標識化オリゴヌクレオチドを利用し検出できる。
【0087】
TaqManアッセイ実施に必要な全ての試薬はカリフォルニア州、フォスター市、パーキンエルマー社(Perkin-Elmer Co.,)の一部門であるアプライドバイオシステムス社より販売されており、次のものが含まれる;β-アクチン検出試薬(カタログ番号、401846)、DNA鋳型試薬(カタログ番号401970)及びTaqMan PCR コアリージェントキット(Core Reagent Kit)(カタログ番号N808-0228)。アッセイはメーカー提供のPCRマスターミックス及びβ-アクチンTaqManアッセイに関するプロファイルを用いて実施された。1マイクロリットルのDNA鋳型試薬をABIプリズム7700シークエンス検出システム(Sequence Detection System)(アプライドバイオシステムス)内の49μLのPCRβ-アクチンマスターミックスに加え、40PCRサイクル中に蛍光を測定した。
【0088】
図1は閾値サイクルカウントに対する各種開始DNAレベルのキャリブレーション曲線を示しており、その値は装置により決定され、事前に選択された蛍光シグナルが得られた時点の推定PCRサイクル数を表している。即ち、βアクチン遺伝子断片に関するTaqManアッセイは、試料中に存在するDNA濃度を測定するための良好な分析手段を提供する。
【0089】
実施例では続いて1コピー(細胞当たり)のβ-アクチン遺伝子からのDNAが発明の方法を使い、又は細胞溶解試薬を利用する指示従来法を利用し指示サンプルから抽出された。こうして抽出されたβ-アクチンDNAはPCRマスターミックス及びメーカー推奨の温度サイクルプロフィールと方法によるTaqMan検出を利用し増幅された。
【0090】
本発明の不均一検出システムでは、増幅産物は幾種類かの水不溶性基質上に捕捉され、反応混合液中のその他物質は濾過、遠心分離、洗浄またはその他装置技術の様な好適手段により取り除かれる。
【0091】
捕捉プローブは既知結合技術(吸着及び共有反応を含む)を利用し水不溶性支持体に結合することができる。これら技術の一つはEP-A-0 439 222号(1991年9月18日公開)に記載されている。その他技術は、例えば米国特許第4,713,326号(Dattaguptaら)、米国特許第4,914,210号(Ievensonら)及びEP-B-0 070 687号(1983念、1月26日公開)に記載されている。有用な分離手段は、ポール(Pall)コーポレーションより販売されているポリアミドミクロ細孔膜の様な膜による濾過を含む。
【0092】
しかし、有用固相支持体は捕捉プローブ及び時にハイブリダイゼーション産物の固定に使用でき、マイクロタイタープレート、試験管、ビーカー、磁性またはポリマー粒子、金属、セラミックス及びガラスウール等を包含する。特に有用な材料は捕捉プローブを共有結合にて固定するのに有用な反応基を持つ磁性又はポリマー粒子である。この様な粒子は一般には約0.001ないし約10μメートルである。これら物質の例に関する更なる詳細は米国特許第4,997,772号(Suttonら)、米虚空特許第5,147,777号(Suttonら)、米国特許第5,155,166号(Danielsonら)及び米国特許第4,795,698号(Owenら)に提供されており、これらは全て参照されここに取り込まれている。
【0093】
捕捉プローブはポリマーフィルム、膜、濾紙、又は樹脂コーティング又は非コーティングペーパーの様な平坦支持体に固定できる。ポリマー粒子に固定された捕捉プローブもまた好適手段、例えば乾燥沈着、熱融合または接着剤による接着によりこれら平坦支持体に固定化できる。捕捉プローブは、例えば本発明の自己充足型試験装置内の平坦支持体に固定できる。これら物質のその他詳細はEP-A-0 408 738号(1991年1月23日公開)、WO92/16659号(1992年10月1日公開)及び米国特許第5,173,260号(Suttonら)に提供されている。
【0094】
捕捉プローブは好適支持体にいかなる配置、例えば円形列またはストライプ状に沈着、配置することができる。
【0095】
本発明はまた、標的核酸を捕捉試薬を必要することなく検出する“均一型”増幅法として知られる方法にも利用できる。この様なアッセイの詳細はEP-A-0 487 218号(1992年5月27日公開)及びEP-A-0 512 334(1992年11月11日公開)の如く当分野既知である。
【0096】
増幅反応組成体は各種増幅アッセイに関し有用である試験キットの個別包装成分の一つとして含めることができる。キットは本発明の方法に有用であるその他試薬、溶液、装置、及び指示書を含むことができ、水不溶性基質上に固定された捕捉試薬、洗浄液、検出試薬及び当業者に容易に明白なるその他材料が含まれる。更に、試験キットは上記の様な個別包装された弱塩基性ポリマー、緩衝液、弱又は強塩基、及び増幅と検体試料調整のいずれか、又は両方に必要なその他試薬を含むことができる。試験キットはまた1またはそれ以上の他キット成分を含む試験器具を含むこともできる。試験器具は好ましくは“自己充足型”であり、この用語は当分野で理解される如くの意味である。その他キットはここに記載の弱塩基性ポリマー及びハイブリダイゼーションアッセイに使用される1またはそれ以上の試薬(検出又は捕捉プローブの様な)。
【0097】
以下の実施例は本発明の実際を例示するために加えられており、いかなる形の限定も意味しない。いずれのパーセンテージも特記無い限り重量%である。
実施例に関する材料と方法
N-(3-イミダゾリルプロピル)-メタクリレートの調製
本法は上記の構造(I)の新規モノマーの調製を示すが、本調製は本発明の範囲にあるその他モノマーが容易に調製できることを示す例示である。
【0098】
溶媒混合液は、水酸化ナトリウム(12,8g、0.32モル)を含む水(100ml)及び1-(3-アミノプロピル)イミダゾール(37.5g、0.3モル)を含むジクロロメタン(200ml)を混合し、次に氷槽中に冷却して調整された。この冷却された混合液に、窒素雰囲気下に強く攪拌しながらメタクリロイル(34.8g、0.3モル)のジクロロメタン(100ml)液を一度に全量加えた。発熱が起こり、混合液温度は約60℃まで上昇し、更に10分間混合液を激しく攪拌してから有機層を分離した。水層をジクロロメタン(各100ml)にて2回抽出した。合わせた有機溶液(有機溶媒層及び抽出物)を飽和塩化名という無(100ml)液にて洗浄し、無水硫酸ナトリウム上にて簡素、濾過して有機溶媒を取り除いた。残査をクロロホルム(50ml)に溶解し、更にエチルエーテル(50ml)をくもり点まで加えた。
【0099】
得られた反応産物は約0℃にて結晶化し、濾過されて45°−46℃の融点を持つ白色固体を得た。収率は70%であった。
【0100】
分析データは次の通りである:m/e(M-103)
1NMR(DMSO d6) 1.8(m,2H, C- -CH2 -C, CH3), 3.02 (m, 2H, N- CH2), 3.95 (t, 2H, im-CH2), 5.25及び5.6(AB, 2H,ビニル-CH2), 6.82及び7.15( AB, 2H, 4, 5-Hのim), 7.6(s, 1H, 2-Hのim)、7.95(m、1 H, NH)。
ホモポリマーの調製
ここに記載の新規モノマーより調製された好適ホモポリマーは、窒素雰囲気下に維持しながら2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(300mg)をN-(3-イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド(12.5g、0.065モル)の水(90ml)及びイソプロパノール(10ml)液に加えることで調整された。得られた溶液は水層中にて攪拌しながら65°−70℃に3時間加熱された。開始後約1.5時間目に濃HCl(3ml)を加え、残り時間を窒素下に攪拌を継続した。次に溶液をロータリーエバポレーターにて約25mlまで濃縮し、得られたポリマー産物をアセトン(4リットル以上)中に沈殿させ、濾過し、脱イオン水(80ml)に溶解した。溶液は12%の固形物を含んだ。
【0101】
第1コポリマーの調製
ポリ[N-(3-イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド塩酸塩-コ-アクリルアミド](90:10重量比)は、窒素雰囲気下に維持されながら2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(400mg)をN-(3-イミダゾリルプロピル)メタクリルアミド(18g、0.09モル)及びアクリルアミド(2g、0.028モル)の脱イオン水(120ml)及びイソプロパノール(15ml)の溶液に加えることで調整された。溶液は攪拌しながら4時間、65°-70℃に加熱され、続いて希釈HClを加えpHを約2まで下げてから一晩室温になるまで放置された。
【0102】
溶液はロータリーエバポレーターにて約75mlまで濃縮され、得られたポリマーはアセトン(約4リットル)中に沈殿され、濾過され、脱イオン水(150ml)に溶解された。更に約125mlまで濃縮され、残存アセトンを除いた。ポリマーは15.5%の固形物を含んだ。
【0103】
第2コポリマーの調製
ポリ[2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート](20:80重量比)は、窒素雰囲気下に維持されながら2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(400mg)を2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩(4g、0.02モル)及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート(16g、0.12モル)の脱イオン水(180ml)及びエタノール(20ml)溶液に加えることで調整された。溶液は攪拌しながら4時間、65°-70℃に加熱された。更に1時間、攪拌及び加熱し続けてから溶液を一晩室温になるまで放置した。
【0104】
溶液はアセトン(約4リットル)中に沈殿され、濾過され、脱イオン水(150ml)に溶解された。更に約125mlまで濃縮され、残存アセトンを除いた。ポリマーは5.6%の固形物を含んだ。
【0105】
第3コポリマーの調製
ポリ[1-ビニルイミダゾール-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート](50:50重量比)は、窒素雰囲気下に維持されながら2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(350mg)を1-ビニルイミダゾール(10g、0.1モル)及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート(10g、0.077モル)のN,N-ジメチルホルムアミド(160ml)溶液に加えることで調整された。溶液は攪拌しながら7時間、65°-70℃に加熱された。
【0106】
室温にて一晩攪拌した後、ポリマーはアセトン(約4リットル)中に沈殿され、濾過され、濃HCl(8.5ml)を含む脱イオン水(200ml)に溶解された。更に濃縮され、残存アセトンを除いた。ポリマーは12.4%の固形物を含んだ。
【0107】
第4コポリマーの調製
ポリ(1-ビニルイミダゾール-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート](25:75重量比)は、“第3コポリマー”と同様にして調整された。得られた溶液は13.7%の固形物を含んだ。
【0108】
デオキシリボヌクレオチド(dNTP’s)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液及び凍結乾燥ウシ胸腺DNAはシグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)より得た。
【0109】
ゲル電気泳動は、増幅産物混合体(6.75μl)をエチジウムブロマイド(0.4mg/ml最終濃度)にて前染色しておいたアガロースゲル(2.5%)に加えて実施された。ゲルはエチジウムブロマイド(0.4mg/ml最終濃度)を含む電気泳動緩衝液(600ml)を利用し、約8ボルト/cmにて約1時間電気泳動された。緩衝液はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ホウ酸及びエチレンジアミン4酢酸の混合体であった。得られたバンドは通常の分子量マーカーと比較され、産物バンドの強度を0が検出シグナル無しを表し、5が最大シグナルを表す0ないし5のスケールで記録された(HIV1については115-mer及びM.tuberculosisに関しては383-mer)。
【0110】
その他試薬及び材料は、市販品から入手するか、又は容易に入手できる材料及び通常の方法を利用し調整した。
【0111】
発明はその好適実施態様を具体的に参照しながら詳細記載されるが、発明の精神及び範囲内にて変型及び改良できることが理解されるだろう。
【0112】
実施例1−弱塩基性ホモポリマーを利用したDNAの捕捉及び解離
本実施例はポリ(1-ビニルイミダゾール)を用い核酸を捕捉し及び解離する、本発明の実際を例示する。
【0113】
各種容積のポリ(1-ビニルイミダゾール)[2.4%保存液(pH2.3)の1:10希釈液の]をウシ胸腺DNA(100μl、0.5μg/μl)と混合し、かき混ぜて核酸及びポリマーの沈殿を形成した。次に1分間遠心分離をおこなった。ポリマーの追加量(2.4%保存液10μl)を各上清に加え、得られた混合液をかきまぜ、遠心して第1沈殿が定量的であるか決定した。下表Iは各資料について使用したポリマーの量及び観察された沈殿のタイプを示す。
【0114】
表I
────────────────────────────────────
ポリマー容積 第1沈殿 第2沈殿
(μl) ペレット ペレット
────────────────────────────────────
5 殆ど見えない 大
10 小から中 小
25 大 見えない
50 非常に大きい 見えない
────────────────────────────────────
沈殿は酸性条件(pH2.3)にて起こること、及びポリマー保存液の1:10希釈液50μlを使用するとほぼ定量的様式にウシ胸腺DNA液(0.5μg/μl)シグマケミカル社、セントルイス、ミズリーを沈殿できることが観察された。この観察結果は更に通常のゲル電気泳動法を使用し確認された。
【0115】
実験は、以後の利用を目的として核酸を解離するための沈殿溶解方法を決定するために実施された。下表IIは試みた各種ペレット可溶化条件と得られたペレットの大きさを示している。最も有効な技術は、塩基性pHと組合せ熱を利用することであった(ペレット無し)。通常のゲル電気泳動は、塩基性pHではポリマー及び核酸が遊離物質として存在していることを明瞭に示した。即ち、核酸はPCRの様なその後の利用に使用可能であった。
【0116】
表II
────────────────────────────────────
可溶化条件 ペレットの大きさ
────────────────────────────────────
50μl NaCl (4モル) なし
50μl NaCl (50モル)と55℃、5分間の加熱 小
50μl NaCl (100モル)と55℃、5分間の加熱 なし
50μl NaCl (50モル)と100℃、10分間の加熱 なし
50μl NaCl (25モル)と100℃、10分間の加熱 なし
50μl “TE”緩衝液と100℃、10分間の加熱 大
50μl 水と100℃、10分間の加熱 大
────────────────────────────────────
*”TE”緩衝液はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩緩衝液(10ミリモル、pH8)中にエチレンジアミン4酢酸(1モル)を含む。
【0117】
下表IIIはポリマー(保存液の1:10希釈体50μl)及びウシ胸腺DNA(0.5μg/μl液100μl)間の沈殿形成に及ぼすpHの作用を示す。沈殿形成による核酸の効果的捕捉には酸性pHが明瞭に求められた。
表III
────────────────────────────────────
pH ペレットの大きさ
────────────────────────────────────
2.3 大
3 大
4 大
7 透明な厚い塊
12 殆ど見えない
────────────────────────────────────
実施例2−溶解試薬有り無しでのDNAのポリマー捕捉の比較
溶解試薬に接触させた白血球から解離されたDNA量(コントロール)と、溶解試薬と接触させていない(発明の方法)以外は同一に処理された細胞から解離された量とを比較した。
【0118】
本実施例では、血液10mLをVACUTAINER CPT細胞調整用チューブ(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson, Co.,), フランクリンレークス、ニュージャージー(Franklin Lakes, NJ))に採取し、白血球(WBC)をメーカー推奨法に従って遠心分離法にて分離した。最終WBC濃度は顕微鏡より3.5×105/mLと決定された。
【0119】
200マイクロリットルのWBC懸濁液を8本の1.5mL微量遠心分離チューブ(エッペンドルフノースアメリカ社、マジソン、ウイスコンシン(Eppendorf North America, Inc., Madison, WI))それぞれに加えた。白血球は遠心分離され、リン酸緩衝化食塩水(PBS、-.15M NaCl及び0.05Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.5)にて3回洗浄された。
コントロール−溶解試薬の使用
溶解試薬と接触させる試料に関しては、4本別々のチューブ内にあるペレットに次の様な処理を加えた:80マイクロリットルの溶解緩衝液(10mM Tris HCl, pH8.0及び0.5% TWEEN 20)を加え、続いて10μLの熱安定性プロテアーゼPre-Taq、(1U/μL、ベーリンガーマンハイムバイオケミカルス、インディアナポリス、インディアナ(Boehringer Mannheim Biochemicals, Indianapolis, IN)を加え、チューブを100℃に5分間加熱した。加熱処理後、10μLの250mM NaOHを加え、チューブを再度105℃にて10分間加熱し、その後14,000rpmにて2分間遠心分離した。
発明の方法−溶解試薬不使用
溶解試薬に接触させない試料は、次の様に処理された;4本別々のチューブから得たペレットは100μLのPBSに懸濁された。
【0120】
上記方法を用い調製された試料はその後同一に処理された:チューブは14,000rpmにて2分間遠心分離され、各チューブの上清液が注意深く新規チューブにデカンテーションされ、分析にかけるまで室温にて保管された。各チューブのDNA含有量は上記のTaqManβ-アクチンアッセイ及びABI Prism 7700シークエンスディテクターを使い、パーキンエルマー社販売のDNA標準物質に基づくキャリブレーションを利用し分析された。結果は表IVにまとめられている。
表IV
溶解試薬処理有り無しで白血球から解離されたDNAの比較
【0121】
【表1】

【0122】
これらデータは溶解試薬存在状態では、約300倍の量のDNAが白血球から解離されることを示している。白血球から解離されたDNAは原発性腫瘍からの血液中に循環している変異体、欠失またはその他ガンマーカーを有しているとは考えられないことから、これら非標的関連DNAが非特異的バックグランドを上昇させ、その結果癌に伴うDNAの特異的変化の検出に基づく体液中の遊離型循環DNAに関するアッセイに有害な影響を及ぼす。
実施例3−血清からのDNA抽出に関するキアゲン社キットと発明との比較
以下実施例は、同一血清プールからのDNA抽出に関する市販のキアゲン社キットと本発明の方法の比較を示す。
【0123】
発明の方法に基づく血清又は血漿からのDNA単離に関して、全ての初期段階は血清ヌクレアーゼによるDNAの分解の可能性を最小限にするため、氷上にて実施された。シグマケミカル社、セントルイス、ミズリーより得たACES緩衝液(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)は250mM保存液、pH6.8より調整された。DNA捕捉ポリマー、モノマー重量比76:24、個体成分率2.4%のポリ(1-ビニルイミダゾール塩酸塩-コ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート)は米国特許大5,582,988号記載の方法により合成された。これはアゾ開始体を用いたN,N-ジメチルホルムアミド中での通常の溶液共重合を利用し作製されたランダムリニアービニル付加ポリマーである。このコポリマー(または単純ポリマー)は過剰の水と混合され、さらに透明な液体が得られるまで濃HClが加えられた。次に溶液は透析濾過された。
【0124】
200マイクロリットルの血清又は血漿が1.5mLの微量遠心チューブに加えられ、続いて100μLのACES保存緩衝液が加えられた。ボルテックスミキサーにて混合した後15μLの水性捕捉ポリマー液がチューブに加えられ、ボルテックスミキサーにて試料は5秒間再度混合された。チューブはエッペンドルフマイクロセントリフュージモデル541S(ブリンクマンインスツルメント、ウエストバリー、ニューヨーク(Brinkman Instruments, Westbury, N.Y.)を用い、最大速度、2分間で遠心分離され、上清液がデカンテーションされた。100マイクロリットルの20mMNaOHがペレットを含むチューブに加えられ、このチューブをボルテックスミキサーにて混合した後100℃にて5分間加熱した。試料は4℃に維持されるか抽出直後にアッセイされ、又は使用前まで凍結保存された。
【0125】
比較のためDNAは同時にキアゲン社、チャットワース、カリフォルニア(Qiagen Corp,., Chatsworth, CA)製のQIAmp血液キットをメーカー推奨法に従い使用し、血清または血漿より抽出された。緩衝液AL、AW及びAEはキット内に提供された。200マイクロリットルの血清をキット内に提供される200μLの緩衝液AL及び25μLのプロテナーゼK液(溶解試薬)と組合せ、内容物を直ぐに15秒間ボルテックスミキサーを用い混合した。70℃にて10分間インキュベーションした後、210μLのエタノールが加えられ、試料は再度ボルテックスミキサーを用い混合された。DNAはQIAampスピンカラムにより2mLの採取用チューブに抽出された。試料を加えた後、チューブは6,000×gにて1分間遠心分離された。路液を含むチューブは廃棄された。500マイクロリットルの緩衝液AWが加えられ、再度カラムは1分間遠心分離され、路液を含むチューブは廃棄された。カラムは更に緩衝液AWにて1回洗浄され、続いてカラムは70℃に予熱された200μLの緩衝液AE又は蒸留水にて溶出された。緩衝液又は水を加えた後、チューブは室温にて1分間インキュベーションされ、続いて6,000×gで1分間遠心分離された。
【0126】
キアゲンキット法及び発明の方法の段階比較を表Vに示す。発明の方法は3段階を必要とするのに対し、キアゲンキットは少なくとも8段階を必要とする。
表V
発明の方法とキアゲン法を使用したDNA抽出に含まれる段階の比較
IzMn(76/24)
ポリマー捕捉 キアゲンキット
1 ACES緩衝液付加 1 PBS緩衝液付加
2 ポリマー付加 2 キアゲンプロテアーゼ処理
3 NaOHによるDNA解離 3 70℃10分間インキュベーション
4 エタノール付加
5 QIAampスピンカラムに付加しスピン
6 カラムの緩衝液洗浄、1分間スピン
7 カラムの緩衝液洗浄、3分間スピン
8 カラムの緩衝液溶出
TaqMan β-アクチン法(8重測定)にて測定された増幅β-アクチンDNAの比較は表VIに示されており、キアゲン法(25.3ng/mL血清)に比較し発明の方法(60.6ng/mL)を用いた場合に回収可能な増幅DNAが58%改善されることを示している。
【0127】
表VI
本発明の方法とQiagen法を使ったβ−アクチンDNA抽出の比較
【0128】
【表2】

【0129】
実施例4−本発明の方法を使った、膵癌と診断された個体および対照個体の血清からのβ−アクチンDNAの回収
本実施例は、本明細書中の実施例8の材料と手順を使った、正常患者と膵癌患者の血清から回収されるβ−アクチンDNAの量の定量方法を提供する実験の結果を示す。こうして各試料から回収されたβ−アクチンDNAを、前述のTaqMan β−アクチンプロトコルを使って定量した。
【0130】
表VIIに示す通り、同一ヒト血清プールからの計8個の反復試験試料は血清1mLあたり平均12 ng(12 ng/mL)のβ−アクチンDNAを与えたのに対し、本発明の方法を使って回収された10人の異なる膵癌患者の血清中のβ−アクチンDNAは大きく増加した(平均=146 ng/mL)。正常血清のものに比較して膵癌を有する個体の血清中でβ−アクチンDNAが増加するという観察結果は、文献中の幾つかの報告(4,9)により裏付けられる。
【0131】
表VII
本発明の方法を使った、正常血清プールおよび膵癌を有する個体の血清からのβ−アクチンDNAの抽出
【0132】
【表3】

【0133】
実施例5−膵癌と診断された個体の血清からのβ−アクチンDNAの回収に関する本発明の方法とQiagen法との比較
本実施例では、膵癌と確認された6人の患者からのβ−アクチンDNAの回収を、本明細書中の実施例3の材料と手順に従って、本発明の方法とQiagen法を使って比較した。一般に、表VIIIに示す通り、TaqMan β−アクチンアッセイによりアッセイすると本発明の方法は同等もしくはより高レベルのβ−アクチンDNAを提供した。試料によって異なるが、測定可能なDNA濃度は31〜310 ng/mLの範囲であった。
【0134】
表VIII
本発明の方法とQiagen法を使った、膵癌を有する個体の血清からのβ−アクチンDNA抽出の比較
【0135】
【表4】

【0136】
上記結果は、6反復測定の平均である試料1と試料2を除いて、各試料あたり4反復測定の平均である。Qiagenプロトコルを使って評価した試料2の結果は2反復測定の平均である。
【0137】
実施例6−本発明の方法を使った、正常個体と癌患者の血清からの循環DNAの単離
本実施例は、20人の正常個体と30人の癌診断された個体の血清からの循環DNAの単離に本発明の方法が利用できることを示す。癌患者血清は10人の確定膵癌患者試料と20人の結腸癌患者試料(8人がDukes B、5人がDukes Cおよび7人がDukes D)を含んだ。本明細書中の実施例2に記載の手順と同様に本発明の方法に従ってDNAを単離した。TaqMan β−アクチンアッセイを使ってDNAを定量した。溶解試薬を使用しないポリマー捕捉は、望ましくない細胞溶解からくるDNA汚染が最小または皆無であることそして血清中に存在し得るPCR干渉物が除去されることにより、循環DNAを濃縮させることが可能であった。各血清中のDNAは図1に示される標準曲線を使ってβ−アクチン遺伝子についてのTaqManアッセイを用いて定量した。
【0138】
各試料中の遊離形循環DNAについての分析結果を表IX AとIX Bに示す。この結果は、正常個体からの血清に比べて癌患者からの血清においてDNAレベルが上昇することを示す。
【0139】
表IX A
癌患者の血清中のDNA含量
【0140】
【表5】

【0141】
表IX B
正常個体の血清中のDNA含量
【0142】
【表6】

【0143】
実施例7−膵癌患者の血清中のK-ras変異の検出
本実施例では、膵癌患者の血清からのDNAのポリマー捕捉を含む本発明の一態様を使用する。制限エンドヌクレアーゼ媒介選択的PCR(REMS-PCR)を実施し〔Roberts, N.J.他, 1999, BioTechniques 27(3): 418-422, Ward, R.他, 1998, Am. J. Pathol. 153 (2): 373-379およびWO 96/32500〕、続いてゲル分析を使ってコドン12のところのK-ras変異(K12-ras)の存在を検出した。
【0144】
3人の膵癌患者の各々からの血清または血漿(300μL)を別々の遠心管に入れ、次いで100μLの250 mM ACES〔N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸〕緩衝液(23℃でpH 6.8)を添加した。15μLのポリ(1−ビニルイミダゾール−コ−2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(重量比77/23)ポリマーを添加し(米国特許第5,434,270号;同第5,523,368号および同第5,582,988号参照)、そしてMini Vortexer(VMR Scientific, Rochester, N.Y.)を使って遠心管を10秒間混合した。次いでその遠心管をエッペンドルフ超遠心機5415型中で最高速度において2分間遠心分離した。上澄み液(上清)をデカンテーションし、各管に100μLの20 mM水酸化ナトリウムを加え、混合してペレットを再懸濁させ、そして100℃に10分間加熱した。
【0145】
各PCR混合物は3組のプライマーを含んだ。診断プライマーは野生型ras中にBstn1制限部位を誘導するがコドン12のras変異には該制限部位を誘導しない。よって、PCR熱循環の間にras野生型DNAが選択的に開裂され、コドン12のrasの変異配列が濃縮される。PCR対照プライマー対はPCR増幅可能DNAが抽出されたことを確かめるために用いられ、そして酵素対照プライマー対は熱循環中に制限酵素が機能したことを確かめるために用いられる。反応混合物は12単位/100μLの組換えTaqポリメラーゼ、前記ポリメラーゼに対して重量で5倍過剰(0.842μL)のTaq阻害抗体TP4-9.2(米国特許第5,338,671号と同第5,587,287号参照)、1mM HT50緩衝剤〔100 mM塩化ナトリウム、50 mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)〕pH 8.3、0.3μMの診断プライマー(下記参照)5K15S(配列番号1)と5K37(配列番号2)、0.05μMのPCR対照プライマー対3K42(配列番号3)と5BK5(配列番号4)、0.1μMの酵素対照プライマー対5N12A(配列番号5)と3N13A(配列番号6)、0.2 mMの全ジヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、0.3単位/μLのBslI(New England BioLabs, Bevery, MA)、1 mMジチオスレイトール(DTT)、5 mM塩化マグネシウム、試料(典型的には3μL)、および最終容量100μLまでの脱イオン水を含んだ。Taqポリメラーゼと抗Taq抗体を混合し、そして10〜15分間インキュベートした後、その他のPCR成分を添加した。熱循環パラメーターは次の通りであった:94℃で100秒を1サイクル、そして92℃で15秒と60℃で60秒を36サイクル。プライマー配列は下記の通りである:
【0146】
【化3】

【0147】
4%(w/v)NUSieveアガロースゲル(FMC Bioproducts, Rockland, ME)上での電気泳動により試料を分析し、Stratagene Eagle Eye IIビデオシステム(La Jolla, CA)により画像診断した。
【0148】
図2は、REMS-PCR後にゲル電気泳動により測定した時のK-12 ras変異についての分析結果を示す。レーン1は、rasが野生型であるK-562についての結果を示す。レーン2は、コドン12のK-ras変異がヘテロ接合であるCalu1 DNA(Capon, D.J.他, 1983, Nature 403: 507-513)と10倍過剰のK-562野生型DNAについての結果を示す。この試料は167 bpのところに強いPCR対照バンドと68 bpのところに強い診断バンドを示した。患者1からの血清と血漿は両方とも、68 bpの診断バンドを欠いており、K-ras陰性である。PCR増幅可能DNAの存在は167 bpのところのPCR対照バンドにより示される。患者2からの血漿および血清試料は167 bpのPCR対照バンドを欠いており、このことは、この試料中に増幅可能な循環DNAが検出可能なレベルで全く存在しないことを示唆する。膵癌患者3からの血清と血漿は共に、68 bpのところのバンドと167 bpのところの強いPCR対照バンドにより示されるように、K-12 ras変異について陽性であった。126 bpのところの酵素対照バンドは図2の全ての試料において存在せず、このことは、制限酵素がPCR循環中に活性であったことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞溶解剤を使用せずに試料から核酸を得る方法であって、
A)pH7未満において、核酸を含むと思われる試料に、
(1)アミノアルキル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピペリジル、ピペラジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、キノリニル及びキナゾリニルからなる群より選択された酸性pHにおいてプロトン化され得る基を少なくとも一つ有する水溶性で弱塩基性のエチレン系不飽和重合性モノマー15〜100質量%と、
(2)非イオン性で親水性のエチレン系不飽和重合性モノマー0〜35質量%と、
(3)非イオン性で疎水性のエチレン系不飽和重合性モノマー0〜85質量%との付加重合により誘導された反復単位を含む水溶性の弱塩基性ポリマーを、溶菌液中に存在する全核酸による該弱塩基性ポリマーの水不溶性沈殿物を形成させるのに十分な量で接触させ、
B)該水不溶性沈殿物を該試料から分離させ、そして
C)該沈殿物に塩基を接触させて溶液pHを7より高くすることにより、該核酸を該弱塩基性ポリマーから解離させる
という工程を含み、
前記弱塩基性ポリマーは、酸性pHにおいてプロトン化され得るアミン基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーの一種又は二種以上の付加重合により誘導された反復単位を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
D)前記解離された核酸を含む溶液のpHを6〜9の範囲内に調整する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記塩基が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、第三アミン又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記弱塩基性ポリマーの工程Aにおける使用量が0.01質量%〜0.5質量%の範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程Cにおいて、前記水不溶性沈殿物を50℃〜125℃の範囲内に加熱すると共に、弱塩基を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程Cにおいて、前記水不溶性沈殿物を加熱することなく、強塩基を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
細胞溶解剤を使用せずに標的核酸を増幅して検出する方法であって、
I)標的核酸を含むと思われる試料を用意し、
II)該標的核酸を含む試料に、
A)pH7未満において、該標的核酸に、
(1)アミノアルキル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピペリジル、ピペラジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、キノリニル及びキナゾリニルからなる群より選択された酸性pHにおいてプロトン化され得る基を少なくとも一つ有する水溶性で弱塩基性のエチレン系不飽和重合性モノマー15〜100質量%と、
(2)非イオン性で親水性のエチレン系不飽和重合性モノマー0〜35質量%と、
(3)非イオン性で疎水性のエチレン系不飽和重合性モノマー0〜85質量%との付加重合により誘導された反復単位を含む水溶性の弱塩基性ポリマーを、該標的核酸を含む該試料中に存在する全核酸による該弱塩基性ポリマーの水不溶性沈殿物を形成させるのに十分な量で接触させ、
B)該水不溶性沈殿物を該試料から分離させ、そして
C)該沈殿物に塩基を接触させて溶液pHを7より高くすることにより、該標的核酸を含む核酸を該弱塩基性ポリマーから解離させる
という工程を含み、
前記弱塩基性ポリマーは、酸性pHにおいてプロトン化され得るアミン基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーの一種又は二種以上の付加重合により誘導された反復単位を含む
という処理を施し、
III)pHをさらに調整することなく、該解離された標的核酸を増幅し、そして
IV)該増幅された標的核酸を検出する
という工程を含む方法。
【請求項8】
前記弱塩基性ポリマーが塩基性pHにおいて水不溶性であり、かつ、前記水不溶性ポリマーから前記標的核酸を解離させた後それを増幅する前に前記水不溶性ポリマーを除去する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記標的核酸がK-ras配列である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
生物学的試料におけるK-ras変異を検出するためのキットであって、
【化1】

(g)上記配列の任意の組合せ
からなる群より選択された診断用K-rasプライマーを含んで成るキット。
【請求項11】
オリゴヌクレオチドTGAATATAAA CTTGTGGTAC CTGGAGC T(配列番号1)。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドATATAAACTT GTGGTAGTTC CAGCTGGT(配列番号2)。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドGAATTAGCTG TATCGTCAAG GCACTC(配列番号3)。
【請求項14】
オリゴヌクレオチドTCAGCAAAGA CAAGACAGGT A(配列番号4)。
【請求項15】
オリゴヌクレオチドTATAGATGGT GAAACCTGTT TGTTGG(配列番号5)。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドCTTGCTATTA TTGATGGCAA CCACACAGA(配列番号6)。
【請求項17】
オリゴヌクレオチドTGAATATAAA CTTGTGGTAC CTGGAGC T(配列番号1)を含んで成るK-ras診断用プライマー。
【請求項18】
オリゴヌクレオチドATATAAACTT GTGGTAGTTC CAGCTGGT(配列番号2)を含んで成るK-ras診断用プライマー。
【請求項19】
オリゴヌクレオチドGAATTAGCTG TATCGTCAAG GCACTC(配列番号3)を含んで成るK-ras診断用プライマー。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドTCAGCAAAGA CAAGACAGGT A(配列番号4)を含んで成るK-ras診断用プライマー。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドTATAGATGGT GAAACCTGTT TGTTGG(配列番号5)を含んで成るK-ras診断用プライマー。
【請求項22】
オリゴヌクレオチドCTTGCTATTA TTGATGGCAA CCACACAGA(配列番号6)を含んで成るK-ras診断用プライマー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−15691(P2011−15691A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−186439(P2010−186439)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【分割の表示】特願2000−615405(P2000−615405)の分割
【原出願日】平成12年5月1日(2000.5.1)
【出願人】(594199337)オルソ−クリニカル ダイアグノスティクス,インコーポレイティド (14)
【Fターム(参考)】