説明

細胞特異性を有する三区画ポリマーナノ粒子を使用した多モード撮像法概要

本発明は、細胞または細胞成分に対して特異性を有する、多モード撮像法用の三区画構造ポリマーナノ粒子(コア‐シェル‐コロナ)に関しており、それゆえに生物学的に活性な物質を添加せずに、細胞段階でのさらに進歩した診断方法および標的療法が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像向上特性および細胞特異性を有する特別に設計されたポリマーナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子技術は急速に発展している分野であり、この数年、臨床応用で進歩している[1〜3]。より効果的で個別化された療法のための新規な高解像度診断および薬物ナノ担体の開発に大きな期待が寄せられている[4]。分子レベルにおける疾患の理解が深まったことにより、およびナノ構造の生体適合材料の生成を可能にする材料科学の近年の進歩により、科学的根拠が確立された。
【0003】
ナノ粒子を使用する際の1つの明らかな利点は、送達された物質の局所濃度を比較的高めにする担体系の質量に対する表面比が高くなることである[5]。コロイドも薬物動態およびインビボでの区画化に影響を及ぼす特定の物理化学的特性を有する[6]。一般的に注入部位から散在し、腎臓系により即時に浄化される可溶物質とは異なり、ナノ粒子は通常特定の区画に長期にわたり集中する。また、適用した材料の動向を制御するため、化学的機能付与は生物学的障害を克服し、あるいは特異的輸送および変性プロセスを活用するのに役立つであろう[7、8]。
【0004】
この数年で、静脈内投与でのナノ粒子毒性および免疫原性、ならびにコロイド安定性および血液半減期に関する研究に多大な尽力が注がれた。他の重要な問題には、ナノ粒子の特定の組織への送達を制御することが挙げられる。近年、動物モデルで、非修飾ナノ粒子との比較に等張無水物修飾ナノ粒子を使用して特異的腫瘍ターゲティングが明らかになった[9]。この試験で特筆すべきは、注入された物質の80〜90%が腫瘍に届く以前に肝臓でろ過されたことである。このことから単核食細胞系(MPS)による実効的な浄化を回避することが困難であることが示され、同様の結果が他の研究でも示された[10、11]。標的組織にナノ粒子を排他的に蓄積させることは現在、多岐にわたる臨床応用を制限する大きな課題であり、細胞毒性または発癌性物質が送達される場合に特に重要である。
【0005】
インビボでのナノ粒子の挙動に関して理解を深めることによって著しい進歩が可能となり得る。適用した材料の局在化および検出がより正確なものであることが重要な課題である。これは、各特定の方法を活用する多様な撮像技術と検出技術との同時使用によって実現し得る。複数のトレーサーの結合は概して、多機能ナノ粒子の製作を必要とし、1つの障害としては、異なる成分間の明らかな化学的または物理化学的不適合性を克服することである。68Gaは陽電子放出断撮像法(PET)用に広く使用されているトレーサーであるが、標識化を効率的にするため、塩酸溶液および熱供給を必要とする[12]。このことにより、ナノ粒子の生理的統合性およびコロイド安定性に関して多数の要件が提起される。さらに64Cuおよび74Asなどの核種も試験されているが、これまであまり市販されていない[13、14]。磁気共鳴撮像法にはGdがコントラスト促進物質として広く使用されており、これはキレート剤複合体としてラテックスナノ粒子の表面に付着させることに成功している[15]。しかし、ナノ分子表面で達成した比較的低いGd負荷量はインビボでの追跡調査を困難なものにする。Gd標識化したナノ粒子で事前に負荷した移植細胞を使用して、MRIはインビボで実現されている[16]。合成樹状ポリマーは生物医学的応用に広く使用されており[43]、Gdまたはヨウ素を負荷した樹状ナノ粒子はそれぞれ、MRI[44]またはコンピュータ断層撮影法(CT)[45]に使用されている。
【0006】
他の種類の合成ポリマー材料を開発中であり、この中ではポリ‐メタクリル酸グリシジル(ポリ‐2,3‐エポキシプロピルメタクリレート=EPMA)が人工器官または移植分野で周知である[40]。EPMAによる格子の表面修飾は初期の研究で報告されており[41]、一方、EPMAホモポリマー格子はごく最近になって開発された[17]。カルボキシル化EPMAラテックス粒子の生体適合性および低毒性は研究で明らかになり、その研究では、直径25nm未満のナノ粒子がインビボで神経突起により取り込まれ、次いで逆行輸送後に神経核に留まることが分かった[17〜19]。現在、ポリマーコロイド(またはラテックス粒子)は、所与のホモまたはコポリマーを非常に異なる粒子型にする万能の構成要素系と見なされている。サイズや表面電荷密度などの物理化学的特性は容易に制御可能で、さらに例えば生物機能付与の目的で、化学基を重合プロセスに導入することが可能である。いくつかの研究ではEPMAナノ粒子の製作について記述しており、これは隆起した直鎖ポリメタクリル酸鎖から成る水溶性コロナを有する小型のラテックスコアに存在する[20]。
【0007】
驚くべきことに、生体適合性コロナを有し、平均径が20nm〜900nmである三区画ポリマー粒子は相乗効果があり、したがって該粒子は前記欠点を特徴とせず、よって磁気共鳴画像法、X線画像法ならびに陽電子放出断層撮影法またはガンマシンチグラフィーに適している。
【非特許文献1】de Vries I J M et a/. C G 2005 Nat Biotechnol. 23, 1407-13
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【非特許文献7】Zheng G, Chen J1 U H and Glickson J D 2005 Proc. NaU. Acad. Sc/. USA 102, 17757-62
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【非特許文献40】Yamamuro T , Nakamura T, lida H, Kawanabe K1 Matsuda Y1 ldo K, Tamura J and Senaha Y 1998 Biomaterials 19, 1479-82
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【非特許文献42】White J G 2005 Platelets 16, 121-31
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【非特許文献45】Yordanov A T1 Ladder A L, Woller E K, Cloninger M J, Patronas N1 Milenic D, Brechbiel M W 2002 Nano Letters 2, 595-599
【非特許文献46】Ishizu K 1998 Progress in Polymer Science, Vol.23, pp. 1383-1408
【非特許文献47】Reynolds C H etal.2000 J. Am. Chem. Soc. 122, 8940-8945;
【特許文献1】[47] EP 1 031 354
【特許文献2】[48] 1987EP240424
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
単純な球状、またはそれ以上に精巧なコア‐シェルポリマーナノ粒子の合成がポリマー化学において周知である。前記の例としては、単分散で多様なサイズに作成することが可能なラテックスビーズが挙げられる。コア‐シェルポリマー粒子の合成および構造についてはK. Ishizuが記載している[46]。パラメーターの数は動物およびヒトに使用するポリマーに依存している。最も重要なパラメーターは、ポリマーは生体適合性で、最終コア‐シェル粒子は血液または組織などの生理環境で安定しているコロイド状でなければならないことである。さらに、体内の粒子の半減期は、診断および/または治療目的を満たすのに十分長いが毒物学的負荷を低く維持するのにできるだけ短い必要がある。
【0009】
重合体コアを有する画像促進剤、例えばそれに結合するガドリニウムなどの画像促進化合物、およびこのコア画像中心を囲む重合体シェルは、Reynoldsらが記載している[47]。LevergeおよびRollandは、撮像目的の単純な球状の単分散ナノ粒子を調製するために乳化重合を利用しており、ここでは画像促進化合物が粒子の表面に結合する[48]。両ケースで、記述した粒子は付加的な生体反応性または免疫反応性分子が細胞特異的であることを必要とし、構造機能性能に限りがあることから多モード撮像用に設計することは不可能であった。
【0010】
生物医学的応用のためのラテックスポリマーおよび進歩的な機能特性を有するコア‐シェルポリマーを記述している科学文献があり、多くの特許が開示している。ナノ粒子を使用した撮像化および標的療法のほとんどの概念は、適切な特異性を生じさせるモノクローナル抗体などの生物学的に活性な物質を利用し、このような目標を達成することである。しかし先行技術は、生物学的に活性な物質を添加せずに細胞または細胞成分に特異的な多モード撮像用のポリマー粒子の合成を伝えることに失敗している。外来抗体などの生物学的活性物質を回避することは難しく、また、生物学的活性物質を患者に使用することは危険を伴うことから、この点では最も重要でもある。また、多様な撮像系(多モード撮像)用のコントラスト促進画像処理を可能にすることは、1つの化合物だけで多様な系の特別な利点:磁気共鳴撮像法(MRI)を使用した空間解像度、陽電子放出断層撮像法(PET)を使用した感受性および特異性、X線を使用した時間解像度およびコンピュータ断層撮影法(CT)から利益を得ることとなる。
【0011】
ここでは、本発明者らはポリマーナノ粒子を使用した多モードインビボ撮像化および検出の実行可能性を説明している。111In、68Ga、ポリヨウ化分子およびGdなどの陽イオン性トレーサーは、キレート接合体を必要とせずに、ポリマーナノ粒子の毛状シェル中間層内に直接結合した。68Ga‐PETは全動物をスキャンする高速で非侵襲的な撮像法として使用し、主に心臓および肝臓、狭い範囲では脾臓におけるトレーサーであることが分かった。血液および抽出した器官の111In‐ガンマシンチグラフィーから、この効果が血液区画における局在化に起因していることが明らかになった。Gdラベルを利用したT1強調MRIを確立し、循環系をディスプレイに表示した。最終的に、ローダミンBなどのフルオロフォアの粒子コアへの組み込み、フローサイトメトリーの使用および共焦点顕微鏡法により、ポリマーナノ粒子と血小板、特定の白血球および単球との急速な会合が明らかになった。よって、新たな三区画ポリマーナノ粒子により、生物学的に活性な物質を添加せずに、細胞段階でのさらに進歩した診断方法および標的療法が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、細胞または細胞成分に対する特異性を有する、多モード画像法のための三区画構造ポリマーナノ粒子(コア‐シェル‐コロナ)に関しており、それゆえに生物学的に活性な物質を添加せずに、細胞段階でのさらに進歩した診断方法および標的療法が可能となる。
本発明は、画像向上特性および細胞特異性を有する特別に設計されたポリマーナノ粒子に関する。ポリマー粒子のこれら2つの基本的な機能的特性は、ポリマー粒子が成長して三区画(コア‐シェル‐コロナ)構造を構築しているときにモノマー付加が制御されることにより、可能となる。粒子の外層であるコロナは例えば、CD42a陽性細胞(血小板)あるいはCD14陽性細胞(単球)に結合するように設計されている。中間にある毛状シェルおよび内層の硬質コアは、以下の示差異的局在化を示す適切な画像促進化合物を含み、多モード撮像手段を可能にする:フルオロフォアおよび酸化鉄結晶は硬質コアに位置し;ガドリニウム誘導体、ヨウ素塩および放射性同位体は毛状シェルに位置する。したがって得られたポリマーナノ粒子は、磁気共鳴撮像法(MRI)または磁性粒子撮像法、X線撮像法、陽電子放出断層撮影法(PET)、ガンマシンチグラフィー、光学的撮像技術、蛍光活性化細胞同定および/または分類手段などの撮像手段に、もしくは撮像技術の組み合わせを使用する多モード手段に、使用してよい。新たな三区画ポリマーナノ粒子により、生物学的に活性な物質を添加せずに、細胞段階でのさらに進歩した診断方法および標的療法が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい一実施態様では、前記ポリマー粒子は、水溶性ポリマーのみから成るコロナを特徴とし、結果的に生理環境下でコロイドが安定する。
【0014】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、側鎖が化学活性化を介して架橋し得るコロナを特徴とする。
【0015】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、細胞または細胞成分、特に末梢血液細胞の表面に対して特異的親和性を持つ構造を集合させる前記コロナを特徴とする。
【0016】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、磁気共鳴画像法に適したガドリニウムなどの常磁性金属イオンに、ポリヨウ化または臭素化分子またはポリマー鎖などの不透明物質に、またはX線撮像法に適した硫酸バリウムまたは他の物質などの無機物質に、あるいは陽電子放出断層撮像法またはガンマシンチグラフィーに適した68ガリウム(68Ga)または111インジウム(111In)などの重金属同位体に、結合する高イオン交換能を有するシェルを特徴とする。
【0017】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、シェルを形成する要素のモノマーがカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含むことを特徴とする。
【0018】
別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、高密度カルボキシル基が以下に結合する毛状構造を有するシェルを特徴とする:
(i) ガドリニウムなどの常磁性金属イオン、
(ii) ポリヨウ化または臭素化分子またはポリマー鎖などの不透明物質、または硫酸バリウムまたは他の金属などの無機物質および/または
(iii)68ガリウムまたは111インジウムなどの重金属同位体。
【0019】
本発明のさらにより好ましい実施態様では、前記シェルは、ガドリニウムなどの常磁性金属イオンに、ポリヨウ化または臭素化分子またはポリマー鎖などの不透明物質、または硫酸バリウムまたは他の金属などの無機物質に、および68ガリウムまたは111インジウムなどの重金属同位体に、結合する高密度カルボキシル基を有する毛状構造を持つ。
【0020】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、以下のみから成る群より選択される少なくとも1つの化合物を有するホモポリマーまたはコポリマーから形成されたポリマーを含むコアを特徴とする:アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、2,3‐エポキシプロピルメタクリレート、スチレン、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2‐エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸tert‐ブチルアミノエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルおよび酢酸ビニル。
【0021】
本発明の別の好ましい実施態様では、前記ポリマー粒子は、以下のみから成る群より選択される化合物を使用して架橋している、前記ホモまたはコポリマーを特徴としている:メタクリル酸アリル(ALMA)、ジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン(TMPTMA)、ジビニルベンゼン(DVB)、メタクリル酸グリシジル、2,2‐ジメチルプロパン1,3ジアクリレート、1,3‐ブチレングリコールジアクリレート、1,3‐ブチレングリコールジメタクリレート、1,4‐ブタンジオールジアクリレート、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジメタクリレート、ジアクリル酸トリプロピレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジアクリル酸テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAメタクリレート、ポリエチレングリコール600ジメタクリレート、ジアクリル酸ポリ(ブタンジオール)、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、トリアクリル酸ペンタエリスリトール、トリエトキシトリアクリル酸トリメチロールプロパン、プロポキシトリアクリル酸グリセリル、テトラアクリル酸ペンタエリスリトール、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトールおよびモノヒドロキシペンタアクリル酸ジペンタエリスリトール。
【0022】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、アクリル酸またはメタクリル酸単独、またはそれらの組み合わせのモノマー単位、またはアクリル酸ヒドロキシエチルまたはメタクリル酸ヒドロキシエチルまたはモノメタクリル酸ポリエチレングリコール(PEG)のモノマーとの組み合わせから優先的に作られるシェル‐コロナを特徴とする。
【0023】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、全直径が900nm未満、好ましくは250nm未満、最も好ましくは150nm未満であることを特徴とする。
【0024】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、コロナの厚さが1nm〜150nmであることを特徴とする。
【0025】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は、コアの割合が全直径に対して0.1〜0.995であることを特徴とする。
【0026】
本発明はまた、本発明に記載の画像促進薬を被験体に投与し、前記被験体を画像形成手段に供することを含む画像形成法に関する。
【0027】
本発明の好ましい一実施態様では、前記画像形成手段は、磁気共鳴撮像手段および/または磁性粒子撮像手段、X線撮像手段、陽電子放出断層撮影手段、ガンマシンチグラフィー手段、光学的撮像手段、蛍光活性化細胞同定および/または分類手段、またはこれらの撮像法の組み合わせを使用する手段である。
【0028】
本発明はまた、心臓、循環器系、脳および脊髄、骨および関節および軟骨、肺;肝臓、脾臓、胃および腸を含む消化管、膵臓、腎臓、尿管、膀胱および生殖器の疾患を同定するための医療診断が目的である本発明に記載のポリマー粒子の使用に関する。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、本発明に記載のポリマー粒子は神経筋疾患、免疫疾患、腫瘍性疾患、血液病、神経変性疾患および炎症性疾患を同定およびモニターするための医療診断を目的として使用される。
【0030】
本発明は以下の観点を特徴として教示する:
‐一般的考えからの脱却
‐問題の新たな認知
‐長年にわたる必要性および要求に対する満足感
‐これまで専門家の努力すべてが無駄になっていること
‐特に、より複雑な学説と置き換わることから発明の作用を証明する解決策の簡易性
‐科学的技術の開発が別の指示に従ったこと
‐成果は開発を進歩させること
‐一致した問題(損害)の解決に関する専門家らの誤認
‐改善、高性能化、価格の低減、得がたい時間、材料、工程、費用または資源の節約、信頼性の回復、欠陥の修正、品質の改善、整備の不要、高効率化、収率の改善、技術的可能性の拡大、他の生成物の提供、予備策の開設、新たな分野の開設、作業の第一解決策、予備生成物、代替物、合理化の可能性、自動化あるいは小型化、または医療基金の充実などの技術的向上
‐特定の選択;多数の可能性の中から、結果が予測不能なある可能性が選択されたことから、その選択は特許性としては幸運な選択であること
‐引用文献の誤り
‐技術分野の未熟さ
‐複合的発明;多数の既知の要素と驚くべき効果との組み合わせ
‐ライセンス供与
‐専門家の賛同
‐商業的成功、および
‐相乗効果。
【0031】
前記利点の少なくとも1つは、特に本発明の優先的実施態様に示している。
【0032】
実に驚くべきことに、三区画ポリマー粒子(コア‐シェル‐コロナ)は当技術分野の現況で述べられている欠点を有さず、医薬品としても、多様な撮像法に対しても使用可能である。本発明に記載のポリマー粒子をそれ自体で医薬品として使用しなければ、本発明の好ましい実施態様では、医薬品を本発明に記載のポリマー粒子に結合させることが可能である。
【0033】
ポリマーナノ粒子合成:全化学物質を入手形態のまま使用した。例えば、Millipore unit製のultra-pure waterを全調製工程で使用した。ポリマーナノ粒子を、250mLの二重壁ガラス反応器(HWS Mainz、ドイツ)中、セミバッチ乳化共重合により合成した。この反応器にはガラス製アンカースターラー、窒素注入口、還流冷却器および滴下漏斗が備えられていた。0.2gのドデシル硫酸ナトリウム(SDS、Serva)を156mLの水に溶解した。0.108gのペルオキソ二硫酸カリウム(Sigma Aldrich, Seelze、ドイツ)を20mLの水に溶解した。1.6gのメタクリル酸(Fluka/Sigma Aldrich, Seelze、ドイツ)を最小限量の水に溶解し、その後体積を最終的に20mLにし、注入ポンプ(型610 B.S., Medipan Warszawa、ポーランド)に接続されたプラスチックシリンジ(B.Braun)に入れた。SDS溶液[3.54mmol/L]を直接に単独で、あるいは、ナノ粒子(CL2と称する)の蛍光標識の場合は20mgのローダミンB(Sigma Aldrich, Seelze、ドイツ)を補ってガラス製反応器に入れた。その後18gの2,3‐エポキシプロピルメタクリレート(Fluka/Sigma Aldrich, Seelze、ドイツ)[0.65mol/L]を添加した。エマルジョンを、外気温度で20分間、連続攪拌(350/分)して窒素浄化し、その後、窒素浄化しながら加熱して60℃の重合温度にし、攪拌を継続した。10分後60℃で、滴下漏斗を介してペルオキソ二硫酸カリウム溶液を反応器[2.04mmol/L]内のモノマーエマルジョンへ素早く添加して重合を開始した。同時に注入ポンプを始動し、一定の流速0.15mL*分−1で、メタクリル酸溶液を一定に重合ラテックスに添加しながら、2.2時間、カルボキシル化を行った[0.095mol/L]。6時間後に重合を終了し、窒素気流を停止し、格子を外気温まで冷却した。ポリマー分散度は固体内容物の約10%であった。さらに精製を以下のとおりに行った:ナノ粒子は最初に、VISKING(登録商標)チューブ(排除限界は14,000ダルトン)内で3日間、脱イオン水(5Lに対してラテックス100mL)に対して透析し、水は1日に2回交換した。次いで、超純粋(Millipore)を使用して、照射‐エッチング膜(Nuclepore/Whatman;孔径は粒子径;25nm、50nm、100nmに調整)を備えたBERGHOFF(登録商標)細胞400mL中で、ろ液の電気伝導率が1μS/cm未満になるまで限外ろ過を行った。所与のモル濃度に関するデータはすべて、反応器内での最終的な総体積196mLに関連している。
【0034】
小型のローダミンB標識ポリマーナノ粒子(52nm、CL6と称する)を、0.7gのSDSおよび5mgのローダミンBを添加し、20mLシリンジ(20mLのモノマー水溶液を充填した)中の1.2gのメタクリル酸を使用して合成した。また、小型のナノ粒子ならびに、等モノマーモル濃度のメタクリル酸およびポリエチレングリコールの両方を含有するコロナも、CL6のものと同様のプロトコールにしたがって生成した(CL13と称する)が、例外として、シリンジには0.6gのメタクリル酸および1.99gのPEG200‐モノ‐メタクリレートの混合物を含有していた。
【0035】
ポリマーナノ粒子標識化および物理化学的特徴評価:ポリマーナノ粒子を、例えば1.5mLの脱イオン水中、6.5MBqの111InCl(Tyco Healthcare、ドイツ)を有するナノ粒子28mgをインキュベートすることによって、111Inで標識化した。30分後、標識ナノ粒子をディスポーサブルのPD10脱塩カラム(Sigma Aldrich, Seelze、ドイツ)を使用してゲルろ過で精製した。カラム平衡および溶出にはリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Biochrom, Berlin、ドイツ)を使用した。溶出したナノ粒子を含む画分にのみ、検出可能放射活性が見られ、このことは111Inが完全にナノ粒子で吸収されたことを示唆している。溶出後、負荷したナノ粒子が1.5mL中に95%回収され、結果として希釈効果は最小限であった。
【0036】
TiOをベースにした20mCiの68Ger/68Ga発生装置(Cyclotron Co. Obninsk、ロシア)から68Gaを得た。発生した68Gaを、Bio-Rad AG 50W-X8カラム(Bio-Rad, Munich、ドイツ)で陽イオン交換クロマトグラフィーを使用して、事前に濃縮した。結合後、カラムを、0.15MのHClを含有する80%アセトンで3回洗浄し、68Gaを0.05MのHClを含有する97.56%アセトン400μLを使用して溶出した。発生装置は一定量の0.3GBqの68Gaを産生した。溶出の直後、N気流により5分間、アセトンを蒸発させた。標識化反応では、1mLの脱イオン水中で25mgのポリマーナノ粒子を事前に加熱して82℃にし、68Ga溶液と混合した。インキュベーションを15分まで延長し、その間、温度は60℃まで下げた。その後、PD10カラムを使用して標識化ナノ粒子を上記のとおりに精製した。それらには、1mgの格子当たり一定量の0.2MBqの68Gaが含有されていた。
【0037】
Gd標識化のために、0.2mMの原液として調製した指定量のGdClを、37mgのポリマーナノ粒子に添加し、最終的に体積を1.5mLにし、室温で30分間インキュベートした。ナノ粒子に結合したGdの量を、非結合画分から計算し:ナノ粒子を20,000gで5分間かけて沈降させ、上清中、arsenazo III(Sigma Aldrich, Seelze、ドイツ)に基づいた比色アッセイによりGdを定量した[22]。MRI研究では、ナノ粒子に
対する量が1%(w/w)未満であるGdを使用し、これに対して遊離Gdを検出しなかった。よって標識化反応にしたがって精製工程を省略した。
【0038】
ナノ粒子のサイズを動的光散乱(DLS)により判定し、ζ電位をNano-ZS Zetaziser(Malvern Instruments, Herrenberg、ドイツ)を使用し、メーカー説明書にしたがって、電気泳動移動度により測定した。各試料で測定を3回行い、平均を求めた。示した結果は3つの個々の標本の平均を表す。コロイド安定性は、水、1mMのMgCl、1mMのCaClおよび1g/lのグルコースを含有するpH7.4のハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、ならびに4%のウシ血清アルブミン(BSA)が補われたHBSSなどの多様な条件におけるナノ粒子の凝集傾向と定義した。即時に、1mgのナノ粒子を1mLの指定の培地に希釈し、室温で30分間インキュベートし、DLSで測定した。ζ電位を1mMのNaCl中で測定した。顕微鏡(Axiovert 200, Zeiss Jena、ドイツ)を備えたNanoWizard AFM装置(JPK Instruments AG, Berlin、ドイツ)を使用して原子間力顕微法(AFM)を行った。即時に、希釈したナノ粒子を新しい滅菌済雲母シート上でインキュベートし、脱イオン水ですすぎ、5分間風乾した。力定数7.5N/mのカンチレバーチップを使用して、間欠接触モードで画像を得た。
【0039】
インビボ研究:動物実験に際して、雄ウィスターラット(体重320〜350g)をイソフルラン吸引で麻酔し、その後動物実験処理に関する国立機関(LaGetSi, Berlin、ドイツ)の標準動物処置ガイドラインにしたがって、90mg/体重kgの塩酸ケタミン(Serumwerk, Bemburg、ドイツ)および10mg/体重kgの塩酸キシラジン2%(Bayer, Brunsbuttel、ドイツ)を腹腔内注射した。別段の指示がなければ、500μLのPBS中標識化ナノ粒子を、尾静脈に静脈内注射した。
【0040】
陽電子放出断層撮影法(PET):PETを、画像取得および再構成用のSUN Microsystemsコンピューターワークステーション(Philips Medical Systems, Hamburg、ドイツ)を2つ備えたMOSAIC Animal PET Imagingシステムを使用して行った。1mmの解像度を有する128x128ピクセルの断面230枚を作成する放射限定捕捉モードでステップアンドシュート法全身スキャンを介してデータを得た。減衰補正をせずに3D‐RAMLAアルゴリズムを使用して生データを反復的に再構成した。得られたPET画像をDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)フォーマットに輸送し、Amira(商標)ソフトウエアパッケージ(Mercury Computer Systems, Dusseldorf、ドイツ)を使用しさらに処理した。このソフトウエアはPET画像の3D視覚化ならびに異なる実験から得られたデータセットの重層および整列を可能にした。
【0041】
68Ga‐PETでは、2.2MBqの68Gaを含むポリマーナノ粒子を注入し、15分後に動物をスキャンした。スキャンの時間は5分であり、その間、7.4メガ数(Mcts)を記録した。18フッ素‐フッ化物(18F‐フッ化物)および[18F]フルオロ‐2‐デオキシグルコース(18FDG)をClinic for Nuclear Medicine at the Berlin University Medical School(Charite, Berlin、ドイツ)から厚意で譲渡された。骨格を画像化するため、ラットの尾静脈に253MBqの18F‐フッ化物溶液を注射し、5時間後に、106Mctsを集積する5分間のスキャンにてPET画像を得た。眼、心臓および腎臓を可視化するために18FDGを代謝トレーサーとして使用した。62MBqの18FDGを尾静脈に注射し、25分後に動物をスキャンした。3分間に55Mctsが集積された。
【0042】
磁気共鳴画像法(MRI):40mT/mの勾配システムおよび四肢コイルを供えた3T‐MRスキャナー(Signa Excite 3.0T, General Electric Healthcare, Milwaukee、USA)を使用してMRIを行った。ファントム撮像法のため、指定量のGd標識ポリマーナノ粒子または対照の造影剤としてのMagnevist(商標)(Schering, Berlin、ドイツ)を1mLのPBSに希釈し、Nunc 24マイクロウェルプレート(Sigma Aldrich, Seelze、ドイツ)に懸濁した。T1強調スピンエコー(SE)パルス系列(TR/TE=540ms/18ms、空間解像度0.37x0.43x1.0mm、NEX=4)でMRスキャンを行った。インビボ撮像法では、21.5μgのGdを持つナノ粒子25mgを含む1mLをラットに静脈注射した。注入の直後から、コントラスト動態の時間分解画像分析法(TRICKS)[23]を利用して、30秒以内の脂肪抑制腹部MRスキャンを6回連続した。
【0043】
ガンマシンチグラフィー:ガンマシンチグラフィーを利用して、111In標識ポリマーナノ粒子の生体内分布を定量的に研究した。ナノ粒子投与の15分後または1時間後に、200mg/体重kgの塩酸ケタミンを静脈注射して動物を屠殺した。即時に1mLの血液試料を心臓穿刺により採取し、次いで器官を取り出し、PBS中ですすいだ。1480 Wallac WIZARD(商標)Gamma Counter(PerkinElmer, Rodgau-Jugesheim、ドイツ)で放射活性を測定した。体重kg当たりラット血液量を60mLと仮定し、血液内総活性を算出した。示された値は、4つの個々の実験から得た平均データである。
【0044】
フローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡:ローダミンB標識ポリマーナノ粒子と血液成分との相関を分析するため、健常ヒトドナーから得た200μLの全血を5μLのナノ粒子(120μg)と混合した。このナノ粒子対血液比は、動物実験における平均的ナノ粒子希釈比と一致していた。混合物を37℃でインキュベートし、試料を指定の時点でPBS中に100倍希釈した。いくつかの実験では、事前冷却血液を使用して室温(RT)または4℃でインキュベーションを行った。競合実験では、全血を第一のナノ粒子型とともに、指定の温度およびインキュベーション時間でインキュベートした。その後、結合競合体として第二のナノ粒子型を添加し、さらに混合物を指示どおりにインキュベートした。即時に、希釈細胞を、488nmのアルゴンレーザー(Becton-Dickinson, Heidelberg、ドイツ)を備えたFACスキャンフローサイトメトリーに90秒供し、CellQuest Softwareを使用しデータを分析した。対数散布図を設定し、2つの集団に区分けした。一方は血小板および細胞残屑、他方は赤血球および白血球を含有する集団である。両集団をゲート制御し、FL‐2チャネルで蛍光測定を行った。ラット血液が1mL当たり5x10の赤血球を含むこと、および稼動中に510,000個の赤血球が計数されたことを考慮し、総分析血液量は0.1μLと見積もった。さらに細胞残屑から血小板を区分けするために、FITC標識抗CD42a抗体(BD PharMingen, Heidelberg、ドイツ)を使用して直接免疫蛍光染色法を行った。上記と同様の実験プロトコールを使用したが、例外として、ナノ粒子添加から5分後に4μLの抗体を混合物に添加し、遮光して室温で10分間インキュベートした。PBSで希釈した後、血小板/細胞残屑集団を上述のようにゲート制御し、ローダミンB蛍光およびFITC蛍光をそれぞれFL‐2およびFL‐1チャネルで測定した。
【0045】
同様に、ローダミンB標識ナノ粒子と白血球との相互作用を、白血球共通抗原CD45または単球表面抗原CD14の免疫染色により分析した。これらの実験において、2.5μLのナノ粒子を100μLの全血とともに室温で5分間インキュベートし、2μLのFITC標識抗CD45(BD PharMingen, Heidelberg、ドイツ)またはFITC標識抗CD14抗体(Beckman Coulter, Krefeld、ドイツ)を添加した。10分後、500μLのOptiLyseC溶液(Beckman Coulter, Krefeld、ドイツ)を添加し、混合物をさらに10分間インキュベートし、赤血球を溶解し、白血球を固定させた。最後に500μLのPBSを試料に添加し、5分経過直後にフローサイトメトリーを行った。記述どおりに蛍光を測定した。白血球と血小板との会合を測定する場合、上記のように全血をFITC標識抗CD42a抗体とともにインキュベートし、細胞をゲート制御し、血小板を区別し、白血球のみを選択した。
【0046】
細胞培養実験では、J774‐A1細胞(マウス単球マクロファージACC170;German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)およびヒト単球THP‐1細胞を、10%ウシ胎仔アルブミン(Boehringer、ドイツ)含有Dulbecco's MEM培地中、37℃、5%CO雰囲気下で培養した。細胞取り込み試験では、2x10個の細胞を、500μLの培地中、300μgナノ粒子とともに、37℃で15分間インキュベートした。細胞をPBSバッファーで2回洗浄し、Axiovision 3.1ソフトウエアを備えた倒立蛍光顕微鏡(Axiovert 200M, Zeiss、ドイツ)を使用して観察した。血小板の顕微鏡観察では、全血をナノ粒子とともにインキュベートし、その後血小板を抗CD42a‐抗体を使用して染色し、上述した白血球フローサイトメトリー実験では血液を溶解した。実験すべてで、3つの個々の実験から代表的データを示した。
【0047】
ポリマーナノ粒子の合成および放射性標識化:ポリマーナノ粒子を乳化共重合により容易に合成し、サイズ、ポリマー親水性および官能基での表面被覆率が異なる様々な型が生成された。蛍光分子および/または酸化鉄結晶は包接重合により添加可能であり、得られた格子のコロイド特性は、適切なポリマーを使用して表面を拡張することで多様である。また、それらの生体適合性はいくつかの動物実験で明らかになった[17〜21]。
【0048】
ポリマーナノ粒子の体内分布を研究するための高感受性かつ非侵襲的検出法として本発明者らは68Ga‐PETの使用を希望し、酸性処理および加熱に耐性であるとされている粒子型を選択した。得られたナノ粒子はポリメタクリル酸コロナを有し、pH1、80℃で物理的安定性およびコロイド安定性を示す。ポリマーナノ粒子の特徴評価を表1にまとめる。流体力学直径は144nmであり、多分散指数は0.012と狭い。乾燥ナノ粒子を原子間力顕微鏡観察し、サイズがおよそ120nmの球が単分散した集団となっていることが分かった。ナノ粒子は、カルボキシル基の高い表面密度に起因し得る強い負ζ電位(−42.1mV、3(b))を有する。二価陽イオン(HBSS)のpH、イオン強度および含有量に関して、インビボ条件に近い緩衝化食塩水中でコロイド安定性を確認した。さらに、動的光散乱実験で評価されたとおり、血清アルブミンの吸着は検出されなかった(表1)。そのサイズ、ζ電位およびコロイド安定性から、ポリマーナノ粒子は静脈内送達のための基本的な物理化学要件を満たすことが結論づけられた。
【表1】

【0049】
PETトレーサーである68Gaは、テトラアザシクロドデカン‐四酢酸(DOTA)などのキレート剤と通常キレート化合物をつくる三価金属陽イオンである[24]。本発明者らは、ナノ粒子表面に存在する高密度のカルボキシル基は金属イオンとの強い配位結合の形成を可能にするという仮説を立てた。したがって、ナノ粒子を、68Ga‐DOTA複合体形成に一般的に使用される条件下で、68Gaで直接標識化した(実験の項を参照)。非結合68Gaをサイズ排除クロマトグラフィー(図2(b))により分離し、標識化率はナノ粒子1mg当たり0.2Mbq68Gaとなった。
【0050】
これらの結果は、111Inが、68Gaに類似して金属キレート剤と併用したガンマシンチグラフィーに使用するさらなる放射性トレーサーであるという考えを奨励するものであった。図2(b)のクロマトグラムで分かるとおり、ポリマーナノ粒子との簡単な共インキュベーションでも効果的に標識化できた。
PETおよびガンマシンチグラフィーによる体内分布:最初に、静脈内注射したウィスターラットで、68Ga標識およびPET撮像法により標識化ポリマーナノ粒子の体内分布を調査した。解剖学的局在化をより正確にするため、骨格および代謝活性的な器官も、特異性PETトレーサーとしてそれぞれ18F‐フッ化物および18FDGを使用した個々の実験で画像化した。これらの実験では、18FDGを使用し、眼、心臓および腎臓を視覚化した。Amira(商標)ソフトウエアを使用して異なるイメージデータの同時視覚化を可能にした。図2(a)から分かるように、68Gaは心臓に局在化し、また、肝臓に割り当てられ得る大きい区画にも局在化する。脾臓に代表されるように、小さい構造も確認可能である。興味深いことに、腎臓ではシグナルは検出されず、これはトレーサーの腎排泄を検出できなかったことを示唆する。可溶トレーサーのかなりの部分は、腎臓系を経て即時に血流から排泄されるため[31、32]、本発明者らは、腎臓および膀胱におけるシグナル非検出から、1時間という観察時間の間にトレーサーがナノ粒子と強く会合するという仮説を立てた。注射から1時間後に、68Gaの半減期が短いことから(t1/2=68分、図示せず)、PETでは全体的に弱いシグナルを有する明確な類似の器官分布パターンが見られた。
【0051】
心臓および肝臓で血液含有量が特に高いことから、ナノ粒子がこれらの器官に取り込まれているのか、あるいは実際にはこれら器官の血液画分に存在しているのかは不明瞭なままであった。おそらく血液区画の希釈効果により、また、この技術の解像度が比較的低いため血管は可視化されなかった。メーカーに指定された手持ちの装置からボクセルのサイズは1mm3と予測する。したがって、大部分の血管などの小構造から発生する強いシグナルがかなり弱まる。血液区画をさらに分析するため、111In標識ナノ粒子の静脈注射後にガンマシンチグラフィーを行った。15分後に、注入による活性の75%が血液で見られ、21%が肝臓で見られたことを、図2(c)に示す。総血液量の10〜15%は肝臓に含まれていることを考慮し、15分後、注入物質の10〜13.5%が肝臓に蓄積していると結論づけた。1時間後に45%が血液に残留し、40%が肝臓に存在し、肝臓によるクリアランスが経時的に増加していることが示唆された。腎臓および膀胱では放射性活性は比較的弱いままであり、68Gaで見られたように111Inはポリマーナノ粒子に強く結合することが示唆された。
【0052】
Gd標識およびMRI:Gdは、T1強調MRI[15]の際に、物理学的条件では三価陽イオンとして使用される超常磁性の造影剤である。臨床用途はGd‐DTPA(Magnevist(商標))などの安定的Gd‐キレート剤複合体に限定され、比較的高用量のGdを、典型的にはGd40mg/体重kgの範囲で、静脈内注射することが望まれる[25、26]。図3(a)から、ポリマーナノ粒子が簡単な共インキュベーション工程を介して1mgの格子当たりおよそ1%のGdを完全に吸収していることが分かる。10分の1のGdを使用した場合、コロイド安定性をHBSS中で維持した(図3(c))。この場合、ζ電位は変化せず(図3(b))、ポリマーナノ粒子の物理化学的特性およびコロイド特性がわずかにしか変わらないことが示された。また、標識ナノ粒子は、MRのコントラスト促進が強く、この促進はGdを10倍多く含むMagnevist(登録商標)に匹敵していた(図3(d))。ナノ粒子のコントラスト促進のこの明らかな増加は、負に帯電したポリメタクリル酸ネットワーク内のGd3+イオンの局所濃度が比較的高いためと考えられた。別の理由としてはGd原子周辺の内部水和層が増加してプロトン交換率が高まったためであり得る[27]。
【0053】
次に、その後のコントラスト促進スキャンを造影剤の投与前のスキャンから減算する時間分解高速TRICKS系列を使用し、インビボMR血管造影を行った。ラットに、総量21.5μgのGdを含有する0.086%Gdを負荷したポリマーナノ粒子を静脈内注射した。注射直後、連続的な30秒間のスキャンを行い、最初のスキャンでは腹部大動脈の鮮明な描写が得られ、標識ナノ粒子の移行が示された(図3(e、f))。留意すべきは本実験では、Gdは60μg/kgしか投与されず、これはMR血管造影に使用されたMagnevist(登録商標)に含まれるGdの標準量より約3桁分少ないということである。
【0054】
例えば血液細胞との相互作用:得られた結果から、注射から最初の15分後以内にポリマーナノ粒子の大部分は血液区画中、効果的に循環することが示された。このことから、循環が可溶性相中で生じるのか、あるいは血液細胞などの特定の血液成分と関連して生じるのかという疑問が提起された。そのため、ローダミンB標識ナノ粒子とともにインキュベートした全血を使用したフローサイトメトリーにより、血液細胞との相互作用の可能性を調査した。予備実験では、ローダミンB標識化はナノ粒子の物理化学的特性を改変しないことが確認された。図4(a)から、5分後に血小板および細胞残屑(G2、下段)に割り当てられ得る亜集団の約10パーセントがナノ粒子に標識化されるようになることが分かる。このプロセスは実験条件下で1時間にわたり安定し続けた。また、さらに高用量のナノ粒子を使用した場合、標識画分はさらに増加し、本実験で吸着プロセスが飽和しなかったことが示された。対照的に、赤血球では蛍光は増加することはなかった(G1、上段)。これらの観察に基づいて、動物実験で約4億4千万個の血小板または残屑構成要素は実際ナノ粒子に標識化されることが予想し得た。さらに、実験は正確な相互作用機序を同定することに役立つとされている。しかしながら、血液、細胞内小体成分との強い会合は、ナノ粒子の動向に影響を及ぼし、1時間後の肝臓に見られるろ過プロセスにおける役割を担うことが予測された。次に、CD42a発現の分析を介して分析した集団の細胞残屑から、血小板を識別した。図4(b)から、5分後にCD42a陽性細胞がナノ粒子に標識化されるようになることが分かる。対照的に、細胞残屑を含むCD42a陰性集団に、ローダミンB蛍光の増加は見られなかった。最終的に、一般的白血球抗原CD45および単球表面抗原CD14の発現に基づいて、白血球との相互作用の可能性も調査した(図4(c))。フローサイトメトリー分析により、2組のCD45陽性亜集団の発現レベルが異なることが示された。最低発現レベルのものは、ローダミンB標識ナノ粒子で標識化されるようになった。さらに、CD14発現細胞はナノ粒子にほぼ完全に標識化された。これらのデータから、細胞への相互作用が選択的プロセスであることが分かる。
【0055】
培養したマウスマクロファージおよびヒト単球を使用し、細胞相互作用を蛍光顕微鏡でさらに分析した。図5(a)には、37℃のインキュベーション後、ローダミンB標識ナノ粒子(ここではCL2と称する)がマクロファージおよび単球に取り込まれたことが示されている(上の2段)。しかし、4℃で細胞周辺に環状分布が見られ、細胞膜で局在していることが示唆された。このことは、エンドサイトーシスのように、活性プロセスを経た物理条件下で細胞がポリマーナノ粒子を取り込んだことを明らかにしている。ナノ粒子と血小板との相互作用を、全血中でナノ粒子をインキュベートしてさらに分析した。本実験では、次に血小板を固定し、赤血球を溶解バッファーで溶解した。図5(b)(CL2、下段)では、2つの血小板がフローサイトメトリー(FITC)に用いられる抗CD42a抗体により免疫細胞化学を経て同定されたことが示されている(明視野)。両血小板のうち1つをローダミンB標識ナノ粒子で明確に標識化した。さらに、顆粒染色パターンから、二酸化ナトリウムまたはラテックスナノ粒子を使用する他の試験に見られるように、顆粒中にナノ粒子が局在化することが分かる[42]。
【0056】
ナノ粒子のサイズおよびそのコロナの化学的性質は生細胞との相互作用に影響を及ぼす重要な特性である。本発明の系においてこれらのパラメーターの効果を調査するため、流体力学直径が小さく(52nm)、高度にカルボキシル化されたコロナが類似しているローダミンB標識ポリマーナノ粒子(CL6と称する)を合成し、また、流体力学直径が62nmであり、ポリメタクリル酸およびポリエチレングリコール(PEG)の両方を等モルで含むコロナを有する類似のナノ粒子(CL13と称する)も同様に合成した。両型のナノ粒子をマクロファージおよび単球に取り込ませた(図5(a))。対照的に、血小板はCL6のみ取り込み(図5(b))、これらの細胞による細胞摂取がPEGの存在により妨げられたことを明らかにした。
【0057】
ナノ粒子‐血小板相互作用の特徴評価:この相互作用の性質をさらに明らかにするため、全血液およびフローサイトメトリー分析を使用した実験を追加した。量を増加して非標識ナノ粒子(EPS4、2〜5倍過剰量)をプレインキュベートすると、ローダミンB標識ナノ粒子(CL2)の血小板への会合は阻害され(図6(a))、相互作用は飽和性プロセスであることを示した。対照的に、非標識ナノ粒子をポストインキュベートしても標識ナノ粒子は細胞から転移することはなく、細胞会合が不可逆的であることが明らかとなった(図6(b))。さらに、4℃でインキュベーションすると、明らかに細胞会合は阻止された(図6(c))。このことから、インキュベーションを4℃で行えば、フローサイトメトリー分析に先立つ希釈工程によりナノ粒子は細胞から離れることが明らかである。対照実験では、インキュベーションを最初に4℃で行い、その後室温で継続した。室温だけでのインキュベーションと比較して同じ細胞会合が見られ(図6(d))、4℃での阻害は可逆的であることが分かった。次に、4℃でインキュベートした場合、血小板およびナノ粒子で競合結合実験が実行可能であるかを確認する必要があった。フローサイトメトリーのヒストグラムを図6(e、f)に示す。表2には3つの個々の実験に基づく定量分析がまとめてある。最初に全血をローダミンB標識ナノ粒子(CL2)とともにインキュベートし、非標識ナノ粒子(EPS4)とともに、その量を増加してポストインキュベートした。競合実験を4℃で行った場合、ローダミンB陽性細胞は、非標識ナノ粒子の非存在下での39.60%から、2および5倍の過剰重量の非標識ナノ粒子を使用したポストインキュベーション後にはそれぞれ27.60%および17.53%へと減少した。対照的に、室温で実験を行ったところ、ポストインキュベーション工程は標識細胞の数に影響を及ぼさないことが分かった。これは図6(b)に示す前述の置換実験と一致している。本発明者らは、ナノ粒子は適切な競合体を使用して4℃で血小板表面から転移させることが可能であると結論付ける。このことは内部移行に関与する的確な相互作用パートナーを決定するのを促進するものとなろう。
【0058】
顕微鏡観察とともにこれらのデータは、ナノ粒子と血小板との2段階の会合、すなわちポリメタクリル酸コロナと血小板表面との受動的かつ可逆的相互作用、およびその後の細胞内部顆粒局在化を生じさせる活性プロセスを介する内部移行を示唆している。
【0059】
最終的に、本出願者らは、ナノ粒子で標識化した血小板が血液中の白血球により、ますます認識されるかどうか知りたいと考えた。このことにより、血液区画からのこれら血小板を高速に除去することになり得る。全血をローダミンB標識ナノ粒子とともにインキュベートし、その後FITC標識抗CD42a抗体で染色し、血小板を検出した。その後溶解血液でフローサイトメトリー分析を行い、血小板を区別するために血球計数器を白血球に対してゲート制御した。これらの条件下で、CD42a陽性白血球は、白血球‐血小板共凝集体あるいは貪食された血小板を含有する白血球に選別することが可能である。ナノ粒子を使用しない対照実験を図7(a)に示す。この場合、細胞の9.69%がCD42a陽性であり、血小板と会合した白血球に一致していた。ローダミンB標識ナノ粒子をインキュベートしたところ、この数はあまり変化しなかった(計8.99%、図7(b))。さらに、細胞の1.18%がローダミンB陽性かつCD42a陽性であった。これは全CD42a陽性細胞の15.11%であり、本実験条件下での血小板負荷率にほぼ相当している。したがって本発明者らは、ナノ粒子は血小板の血液内白血球への会合を増加させることはないと結論づける。
【0060】
インビボ送達でのナノ粒子の挙動を理解することは、診断および治療応用のための多機能ナノ担体の開発において重要な課題であり、適切かつ高感度の検出法を必要とする[28]。本研究では、PET、ガンマシンチグラフィー、MRIおよび蛍光検出を活用し、静脈内投与後のポリマーナノ粒子の動向を調査する可能性を明らかにしている。あるモデルが誘導可能である場合、ナノ粒子の画分は即時に特定の細胞と会合し、それにより血液区画内で循環する。次いで肝臓内への転移が起こり、このことは単核食細胞系によるコロイド担体の効果的な排除を示す他の研究と一致する[10、29、30]。このプロセスは一般的に、可溶血液因子が粒子表面へ吸着し、マクロファージまたは他の食作用細胞による除去を誘発するためと考えられる[30]。対照的に、本結果から、この報告の三区画ポリマーナノ粒子のクリアランスは可溶性相中のみでは起こらないが、血液細胞と会合していれば起こることが示唆される。細胞残屑と赤血球との会合は検出されなかった。しかしながら、血小板ならびにCD45陽性白血球亜集団およびCD14陽性単球への強い会合が見られた(図7および8)。ポリマー粒子とのこれらの血液細胞の相互作用は選択的であることが分かった。本発明者らの知る限りでは、この現象は以前他の報告に記述されており、したがって標的薬物送達および細胞療法に対して新しい機会を広げるものである。
【0061】
三区画ポリマーナノ粒子の特徴は、撮像法および検出の異なる様式に使用し得る異なるトレーサーに結合する可能性である。知る限りでは、標識ナノ粒子を使用するPETは、供給源が依然として制限されている64Cuを使用する場合のみ報告されている[6、13]。対照的に、ポリマーナノ粒子は、臨床的に良好に確立された放射性トレーサー68GaによりPETを可能にする。PETは高速の全身スキャンを可能にする高感度で非侵襲的な方法である。他方、MRIの利点は時空間解像度が高く、より的確な解剖学的情報を得られることである[33]。
【0062】
ナノ粒子の体内分布は、コントラスト促進用の酸化鉄コアを有するナノ粒子のためのT1強調MRIを使用して多数の研究で調査されてきた[34〜36]。他のナノ粒子型には、例えばポリマーをベースにした系、Gd標識化が試験されておりT1強調MRIを可能にしている。効果的な標識化が報告されてはいるが、この本方法の感受性が低いために、インビボ画像処理の研究ではほんのわずかしか成果を得られていなかった[15、27、37]。この報告に記述された三区画ポリマーナノ粒子は〜0.1% Gd/mgの格子を、それらの物理化学的特性の改変を検出することなく吸着し得ることが示された。インビボ撮像法が実現し、注射直後に血液区画における注入後ボーラスの可視化が可能になった(図3(e))。
【0063】
異なる陽イオン性トレーサーへの結合能は、所与のポリマーナノ粒子の濃縮されたポリメタクリル酸シェル‐コロナ構造のカルボキシル基によりもたらされる。したがって、他の類似した金属イオンおよび特に多様な半減期を有する同位体を使用し、よって現在利用可能な主要な生化学撮像技術に対してポリマーナノ粒子が適応可能になることが期待される。これらには単一光子コンピュータ断層撮影法(SPECT)またはPET用の60、61、64Cuに使用される99mTc、67Gaおよび123Iが挙げられる。
【0064】
また、記述した標識化の概念を他の型のナノ粒子にも移入可能であり、十分に高密度のポリメタクリル酸層を組み入れることを可能にした。ナノ粒子の体内分布に影響を及ぼす重要なパラメーターは、そのサイズ、表面電荷密度、親水性、ならびにコアおよび外表層の化学組成である[6、38]。ポリマーナノ粒子は重合プロセス中に容易に修飾できる。通常の物理化学的特性は広範囲内で多様であり、本研究で使用のローダミンBで例示されるように、付加的な化学物質を含ませることが可能である。他の成分を導入して生分解を容易にし、あるいは医薬物質を組み込むことができた[39]。外層を適切なモノマーの連続付加によりさらに拡大し、標的送達および療法のための血液成分または特異性細胞に対する相互作用を調節することが可能である。
【0065】
表2:非標識粒子(EPS4)とのインキュベーション後のローダミンB標識ポリマーナノ粒子(CL2)の血小板からの解離
【表2】

【0066】
これらのデータには図6(e、f)に示されている実験がまとめられている(n=3)。上段の3つの実験では、最初に全血をCL2とともに4℃で5分間インキュベートし、細胞表面と相互作用することを可能にした。次いで、EPS4を添加しない(Ox)か、あるいは2または5倍の過剰重量で混合物に添加して、さらに4℃で15分間インキュベートした。室温でのさらなる30分間のインキュベーション後に、混合物をフローサイトメトリー分析用に処理した。陽性細胞は、ローダミンB標識ナノ粒子に標識化された血小板である。下段の3つの実験は、室温(RT)で行った対照である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ポリマーナノ粒子のサイズの測定とコロイド安定性を示す。風乾したナノ粒子の原子間力顕微鏡法(AFM)およびナノ粒子水溶液の光子相関分光法(PCS)を利用し、それぞれナノ粒子の形態および流体力学直径を測定した(n=3)。PCSによりコロイド安定性を評価し、生理食塩条件下、およびpH(ハンクスバッファー食塩水、HBSS)下、ならびに血中アルブミン量に対応する4%BSAを加えたHBSS存在下でナノ粒子の凝集傾向としてそのコロイド安定性を定義した。
【0068】
【図2】ポリマーナノ粒子の放射性標識および静脈注射後のインビボ体内分布である。(a)ウィスターラットに68Ga標識ナノ粒子を静脈内注射し、15分後に動物PET装置を使用してスキャンした(黄色および赤色シグナル)。おおまかに解剖学的選別を行うために、ラットを個々の実験において、骨格および軟骨撮像には18F‐フッ化物で(灰色シグナル)、また眼、心臓および腎臓の可視化には18F‐デオキシグルコースで(青色シグナル)処置した。得られたデータセットを3D再構築し、重層し、Amira(商標)を使用して整列させた。異なる角度から得た2つの像を示す。(b)68Gaまたは111Inによる直接的な標識化後のナノ粒子溶液の溶出プロファイルである。負荷したナノ粒子の95%が画分6〜8に集中した(網掛け部)。(c)111In標識ナノ粒子を用い、抽出した器官および血液試料中、規定の時点で放射活性を測定した。
【0069】
【図3】Gdによるポリマーナノ粒子の標識化およびT1強調MRIを使用したインビボ撮像である。(a)ナノ粒子をGdClとともにインキュベートし、Gdで直接標識化した。Gd結合能を、37mgのナノ粒子を使用して評価した。Gd添加量が360μgになるまで、遊離のGdは検出され得なかった。(b)ナノ粒子のζ電位をGd含有量で測定し、HBSSでは有意な凝集は見られなかった。(c)表1と同様に、Gd標識ナノ粒子のコロイド安定性を、水およびHBSS中でDLS測定することで評価した。(d)異なるGd量を使用した「b」におけるものと同じGd標識ナノ粒子を含むファントムのT1強調MRIである。Magnevist(登録商標)を比較に使用した。(e)および(f)インビボMRIでは、図2と同様に0・086%Gdを含むGd標識ナノ粒子を添加し、ラットを即時に、コントラスト動態(TRICKS)の時間分解画像分析法を使用して、30秒間(e)ならびにその後1分間(f)、スキャンした。
【0070】
【図4】フローサイトメトリーを利用した、ローダミンB標識ポリマーナノ粒子と血液成分との相互作用である。ローダミンB標識ナノ粒子を前記インビボ実験に対応する全血とともにインキュベートした。3つの個々の実験から得た代表的なデータを示す。最初に、希釈した全血を散布図により分析し、赤血球(G1)と細胞残屑を加えた血小板(G2)とを区別した。その後ローダミンB標識ナノ粒子の、ゲート制御した細胞成分への会合を規定の時点で評価した。t=0(ヒストグラムの網掛け部)を対照とする(a)。モノクローナルFITC標識抗体を使用したCD42a発現分析によりG2において細胞残屑から血小板をさらに区別した。t=0を対照とする(b)。同様に、CD45またはCD14の表面発現により白血球との相互作用を分析した(c)。これらの実験では、フローサイトメトリーに先だって赤血球を溶解した。非処理細胞を対照とする。
【0071】
【図5】培養細胞(a)および全血由来血小板(b)による細胞取り込みに対する、ローダミンB標識ポリマーナノ粒子のサイズおよびコロナの影響である。ナノ粒子のサイズは144nm(CL2)、52nm(CL6)および62nm(CL13)であった。CL2およびCL6のコロナはメタクリル酸から構成されていた。CL13のコロナはメタクリル酸とポリエチレングリコールとの混合物から構成されていた。マクロファージおよび単球との20分間のインキュベーション後に明視野および蛍光像を得た。指示がなければインキュベーション温度は37℃とした。全血をナノ粒子とともに室温で10分間インキュベートし、FITC標識抗CD42a抗体を添加し、さらに10分間かけて、血小板を染色した。CL13の場合は染色を省略した。溶解血液で顕微鏡観察を行い、赤血球を除去し、血小板を固定した。スケールバーは、上のパネルでは20μmに相当し(a)、下のパネルでは5μmに相当する(b)。
【0072】
【図6】血小板とのポリマーナノ粒子の相互作用を特徴評価するためのフローサイトメトリー分析である。全血をナノ粒子とともに指示どおりにインキュベートし、ゲート制御した血小板でサイトメトリー分析を行った。指示があれば、競合実験でローダミンB標識化したナノ粒子(CL2)および非標識ナノ粒子(EPSA4)とともに連続的にインキュベートした。インキュベーション温度の細胞会合への影響を、図の説明にあるとおり室温(RT)または4℃で連続的にインキュベートして評価した。4℃で行った競合実験、ならびに対応する室温での対照実験(e、f)の定量分析を表2にまとめる。
【0073】
【図7】血小板と血液白血球との会合に対するローダミンB標識ポリマーナノ粒子の影響である。ローダミンB標識ナノ粒子との全血のインキュベーション後に、血小板をFITC標識抗CD42a抗体で染色し、溶解バッファーで赤血球を除去した後、ゲート制御した白血球でフローサイトメトリーを行った。よってCD42a陽性細胞は、血小板と会合した白血球である。これらから、白血球は対照実験では9.69%で(a)、ナノ粒子とのインキュベーション後には8.99%(b)になることが分かる。
【0074】
【図8】末梢血単球と相互作用するポリマーナノ粒子の共焦点顕微鏡写真である。ローダミン標識ポリマーナノ粒子は末梢血単球の外膜に即時に結合する(上パネル)。末梢血単球はカルセインAMで標識することができた(中央パネル)。カルセインAMは広く使用されている緑色蛍光細胞マーカーである。カルセインAMは膜透過性であり、よってインキュベーションにより細胞に導入され得るが蛍光性は生体細胞機構に依存している。左側:正常な透過光下の体内細胞;中央:蛍光下の細胞;右側:単細胞における色分布‐緑色(内側)および赤色(外側)ローダミン標識ポリマーナノ粒子を有する単一の単球である(下パネル)。左:三次元的視界;右:断面図
【0075】
【図9】ポリマーナノ粒子はCD14受容体を介して末梢血単球に結合する。末梢血単球はCD14FITC(緑色シグナル)およびローダミン標識化ポリマー粒子(赤色シグナル)で同時に標識化した。外部細胞膜で両方のフルオロフォアが現れ、部分的に共局在化する(黄色シグナル)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性コロナを有し、平均径が20nm〜900nmである三区画(コア‐シェル‐コロナ)ポリマー粒子。
【請求項2】
前記コロナが水溶性ポリマーから成り、結果的に生理環境下でコロイドが安定する請求項1に記載のポリマー粒子。
【請求項3】
該コロナの側鎖が化学活性化を介して架橋し得る請求項1〜2に記載のポリマー粒子。
【請求項4】
前記コロナが細胞または細胞成分、特に末梢血液細胞の表面に対して特異的親和性を持つ構造を集合させる請求項1〜3に記載のポリマー粒子。
【請求項5】
前記シェルが、以下に結合する高密度カルボキシル基を持つ毛状構造を有する請求項1〜4記載のポリマー粒子:
(i) ガドリニウムなどの常磁性金属イオン、
(ii) ポリヨウ化または臭素化分子またはポリマー鎖などの不透明物質、または硫酸バリウムまたは他の金属などの無機物質および/または
(iii)68ガリウムまたは111インジウムなどの重金属同位体。
【請求項6】
該シェルを形成するモノマーまたは要素がカルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含む請求項1〜5に記載のポリマー粒子。
【請求項7】
前記コアが物理的封入または化学結合または染料、蛍光染料両方の使用、または多結晶性磁性酸化鉄を介して標識可能であり、これらのポリマー粒子を光学撮像法、蛍光活性化細胞同定および/または分類、磁気共鳴ならびに/もしくは粒子画像化に適合させる、請求項1〜6に記載のポリマー粒子。
【請求項8】
前記コアが、以下のみから成る群より選択される少なくとも1つの化合物を有するホモポリマーまたはコポリマーから形成されたポリマーを含む請求項1〜7に記載のポリマー粒子:アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、2,3‐エポキシプロピルメタクリレート、スチレン、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2‐エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸tert‐ブチルアミノエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルおよび/または酢酸ビニル。
【請求項9】
前記ホモまたはコポリマーが、以下のみから成る群より選択される化合物を使用して架橋している請求項8のポリマー粒子:メタクリル酸アリル(ALMA)、ジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン(TMPTMA)、ジビニルベンゼン(DVB)、メタクリル酸グリシジル、2,2‐ジメチルプロパン1,3ジアクリレート、1,3‐ブチレングリコールジアクリレート、1,3‐ブチレングリコールジメタクリレート、1,4‐ブタンジオールジアクリレート、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジメタクリレート、ジアクリル酸トリプロピレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジアクリル酸テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAメタクリレート、ポリエチレングリコール600ジメタクリレート、ジアクリル酸ポリ(ブタンジオール)、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、トリアクリル酸ペンタエリスリトール、トリエトキシトリアクリル酸トリメチロールプロパン、プロポキシトリアクリル酸グリセリル、テトラアクリル酸ペンタエリスリトール、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトールおよび/またはモノヒドロキシペンタアクリル酸ジペンタエリスリトール。
【請求項10】
前記シェル‐コロナがアクリル酸またはメタクリル酸単独、またはそれらの組み合わせのモノマー単位、またはアクリル酸ヒドロキシエチルまたはメタクリル酸ヒドロキシエチルまたはモノメタクリル酸ポリエチレングリコール(PEG)のモノマーとの組み合わせから優先的に作られる請求項1〜9に記載のポリマー粒子。
【請求項11】
全直径が900nm未満、好ましくは250nm未満、最も好ましくは150nm未満である請求項1〜10に記載のポリマー粒子。
【請求項12】
該コロナの厚さが1nm〜150nmである請求項1〜11に記載のポリマー粒子。
【請求項13】
該コアの割合が全直径に対して0.1〜0.995である請求項1〜12に記載のポリマー粒子。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の画像促進薬を被験体に投与し、前記被験体を画像形成手段に供することを含む画像形成法。
【請求項15】
前記画像形成手段が、磁気共鳴撮像手段および/または磁性粒子撮像手段、X線撮像手段、陽電子放出断層撮影手段、ガンマシンチグラフィー手段、光学的撮像手段、蛍光活性化細胞同定および/または分類手段、またはこれらの画像法の組み合わせを使用する手段である請求項14の方法。
【請求項16】
心臓、循環器系、脳および脊髄、骨および関節および軟骨、肺;肝臓、脾臓、胃および腸を含む消化管、膵臓、腎臓、尿管、膀胱および生殖器の疾患を同定するための医療診断が目的である請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリマー粒子の使用。
【請求項17】
神経筋疾患、免疫疾患、腫瘍性疾患、血液病、神経変性疾患および炎症性疾患を同定およびモニターするための医療診断を目的とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリマー粒子の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−527472(P2009−527472A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554703(P2008−554703)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001567
【国際公開番号】WO2007/093451
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508248841)トパス ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】