細胞状態判定装置、および細胞状態判定方法


【課題】浮遊細胞の活性状態を判定すること。
【解決手段】カメラ104は、細胞培養容器A内で培養されている浮遊細胞を観察するための位相差顕微鏡を用いて観察した細胞培養容器A内の画像(位相差画像)を撮像して取得する。制御装置105は、取得した位相差画像に対して二次微分フィルタを適用してエッジを抽出し、抽出したエッジが構成する円の面積が最大のもの、またはエッジが構成する円の輪郭が最長のものを浮遊細胞の形状として抽出する。そして、抽出した浮遊細胞の形状に基づいて、浮遊細胞の活性状態を判定する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊細胞の状態を判定するための細胞状態判定装置、および細胞状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次のような細胞画像解析方法が知られている。この細胞画像解析方法は、培養した細胞を染色などの前処理を行って可視化し、細胞の画像を取得する。そして、取得した画像に対して画像処理を行なって、画像内に含まれる個々の細胞を認識するものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−79196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の細胞画像解析方法では、画像を取得するための前準備として細胞を染色する必要があり、一旦染色した細胞は、再利用して培養することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、細胞培養容器内で培養されている浮遊細胞を観察するための位相差顕微鏡を用いて観察した前記細胞培養容器内の画像(位相差画像)を撮像して取得し、取得した位相差画像に対して二次微分フィルタを適用してエッジを抽出し、抽出したエッジが構成する図形の面積が最大のもの、またはエッジが構成する図形の輪郭が最長のものを浮遊細胞の形状として抽出し、浮遊細胞の形状に基づいて、浮遊細胞の活性状態を判定することを特徴とする。
本発明では、浮遊細胞の形状の円形度合いに基づいて、浮遊細胞の活性状態を判定することが好ましい。このとき、(1)エッジの持つ共分散行列の固有値を用いて算出される浮遊細胞の形状の楕円度、(2)浮遊細胞の形状の重心からエッジまでの距離の最大値−最小値、または当該距離の分散により算出される浮遊細胞の形状の真円度、(3)浮遊細胞の形状の周囲長の2乗/面積により算出される浮遊細胞の形状の複雑度、および(4)4π×浮遊細胞の形状の面積/浮遊細胞の形状の周囲長の2乗により算出される浮遊細胞の形状の円形度の少なくとも1つを浮遊細胞の形状の円形度合いを表す指標として用い、これらの指標に基づいて浮遊細胞の活性状態を判定するようにしてもよい。
また、活性状態の判定結果を所定時間間隔で取得し、浮遊細胞の活性状態の時系列変化を観察するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、細胞の状態を観察した後も再利用して培養することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本実施の形態における細胞状態判定装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。細胞状態判定装置100は、インキュベータ101と、ステージ102と、対物レンズ103と、カメラ104と、制御装置105と、照明装置106と、操作スイッチ107と、モニタ108と、環境制御装置109とを備えている。なお、ステージ102と、対物レンズ103と、カメラ104と、制御装置105と、照明装置106は顕微鏡(位相差顕微鏡)を構成する。
【0008】
インキュベータ101内は密閉されており、その内部環境は、環境制御装置109によって細胞の培養に適した環境に維持されている。例えば、インキュベータ101内のCO濃度はCO混合機109aによって5%に維持され、湿度は湿度調整機109bによって95%以上に維持され、温度は温度調整機109cによって37℃に維持されている。また、インキュベータ101内には、ステージ102と、対物レンズ103と、カメラ104と、照明装置106とが設置されている。
【0009】
ステージ101には、後述するように状態を観察する対象となる浮遊細胞が培養されている細胞培養容器Aが載せられる。ここで細胞培養容器Aは、例えば35mmディッシュが使用される。照明装置106は、光源として例えばLEDを備えており、このLEDを発光させて細胞培養容器Aに上部から照明光(透過光)を照射する。
【0010】
顕微鏡は、対物レンズ103を介して、照明装置106から照明されている細胞培養容器Aの透過光により、ステージ101上にセットされた細胞培養容器A内の浮遊細胞を位相差観察法によって観察することができる。カメラ104は、CCDなどの撮像素子を備えており、対物レンズ103を通して入力される像、すなわち細胞培養容器Aを透過する光の像を撮像して顕微鏡像を取得する。これによって細胞培養容器A内を撮影した位相差画像を取得することができる。
【0011】
制御装置105は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路で構成され、細胞状態判定装置100全体を制御する。この細胞状態判定装置100においては、使用者は操作スイッチ107を操作することによって制御装置105に対する種々の指示を出すことができ、制御装置105は、使用者からの指示に応じて種々の処理を実行する。
【0012】
制御装置105は、カメラ104で撮影された位相差画像を画像処理して、画像内に含まれる浮遊細胞の活性状態を判定する。浮遊細胞の活性状態は、浮遊細胞の形状に基づいて判定できる。すなわち、浮遊細胞の形状は、細胞の状態がよいほど円に近く、状態が悪くなるにつれて楕円度合いが強くなっていったり、いびつな形状になったりする。このため、浮遊細胞の活性状態を判定するに当たっては、位相差画像内から浮遊細胞の輪郭を抽出し、抽出した浮遊細胞の輪郭がどれだけ円形に近いかを判定する必要がある。
【0013】
具体的には、まず、制御装置105は、位相差画像に対してハロを細胞の境界とみなしてラフなセグメンテーションを行う。図2は、位相差画像の具体例を示す図である。この図2に示すように、位相差画像内では、細胞の形状を司るエッジは暗部として現れ、ハロは、細胞の周りの明るい部分(明部)として現れる。制御装置105は、この位相差画像内からハロを抽出することで、ラフなセグメンテーションを行う。
【0014】
位相差画像内におけるハロの抽出方法としては、様々な公知の手法が知られている。例えば、位相差画像内では、楕円も含めた円形状の浮遊細胞の周囲に円形状のハロが含まれていることから、円形状抽出手法などの手法を用いて位相差画像内から円形状のハロを抽出する。なお、円形状抽出手法については、特願2004−200890号(本願発明者と同一発明者による出願)に記載されているため、詳細な説明は省略する。
【0015】
以上の処理によって抽出したハロを細胞の境界とみなし、位相差画像上にハロを含む領域を細胞存在領域として設定することによって、位相差画像内における浮遊細胞の大まかな位置と大きさを把握することができる。例えば、制御装置105は、図3に示すように、位相差画像内にハロを含む細胞存在領域3aを設定する。しかしながら、円形状抽出手法によって抽出されるのは、浮遊細胞のラフなセグメンテーションおよび外形でしかないため、浮遊細胞の活性状態を精度高く判定するためには、さらに詳細な細胞形状の抽出を行う必要がある。よって、本実施の形態では、制御装置105は、さらに以下の処理を行う。
【0016】
制御装置105は、位相差画像に対して図4に示す3×3の二次微分フィルタを適用して、位相差画像内から浮遊細胞の形状を含むエッジを抽出する。なお、図4に示す二次微分フィルタは、対象となるエッジが1〜2ピクセル程度の勾配を持ち、十分にフォーカスがあった場合に有効となるフィルタである。二次微分フィルタは、画像のエッジの変化が大きい位置で反応するため、図5に示すように、ハロを境界とするエッジを抽出することができる。
【0017】
この図5に示すように、抽出したハロを境界とするエッジのうち、その内側のエッジのみが浮遊細胞の輪郭を形成している。すなわち、円形の浮遊細胞の周囲に円形のハロがある場合、ハロを境界とするエッジを抽出すると、ハロの外周と内周とがエッジとして抽出されるが、このうち内周から抽出されたエッジが浮遊細胞の輪郭を司るエッジとなる。この浮遊細胞の形状を司るエッジは、二次微分フィルタに最も強く反応することから、十分に明るいエッジとして抽出されている。
【0018】
よって、制御装置105は、二次微分フィルタを適用した後の画像を所定の閾値を用いて二値化し、十分に明るいエッジのみを抽出することで、図6に示すように、浮遊細胞の形状を司るエッジの候補を抽出することができる。なお、ここで抽出したエッジには、浮遊細胞の形状を司るエッジを含むが、それ以外にもノイズや細胞内の核などのエッジも含まれる可能性がある。このため、ここで抽出したエッジを、浮遊細胞の形状を司るエッジと区別するために、「エッジ群」と呼ぶ。
【0019】
次に、制御装置105は、抽出したエッジ群の中から浮遊細胞の形状を司るエッジ、すなわち細胞の内側のエッジのみを選択する。浮遊細胞の形状を司るエッジは、上述したように、二次微分フィルタに最も強く反応して十分に明るいエッジとして抽出されるが、さらに、十分に面積が大きな図形として抽出されているか、あるいは輪郭が十分に長い図形として抽出されているはずである。
【0020】
このため、制御装置105は、上述した円形状抽出手法によって位相差画像から抽出した細胞存在領域3aと、二次微分フィルタを用いて抽出したエッジ群とを位相差画像内における位置に基づいて対応付ける。そして抽出したエッジ群に対して公知のラベリング処理を行って、各細胞存在領域3a内のエッジ群の中からエッジが構成する図形の面積が最大のもの、またはエッジが構成する図形の輪郭の長さが最大のもののみを選択する。
【0021】
このとき、選択したエッジの中に、細胞の輪郭を司るエッジと共に、その内部に核などの細胞内部の構造から抽出されたエッジが含まれている場合には、制御装置105は、最も外側の輪郭のみを選択する。以上の処理によって、図7に示すように、位相差画像内から細胞の内側のエッジのみを選択することができる。
【0022】
制御装置105は、このようにして選択した細胞の内側のエッジを細胞本来の形状と定義し、このエッジの形状に基づいて、浮遊細胞の活性状態を判定する。上述したように、浮遊細胞は、状態が良い場合はほぼ円形状となるが、状態が悪くなった場合には、この円形状が崩れ、楕円やいびつな形状となる。このため、制御装置105は、上述した処理で選択した細胞の内側のエッジの形状が、円に近いか否かを判定することによって、浮遊細胞の活性状態を判定する。すなわち、浮遊細胞の形状の円形度合いに基づいて浮遊細胞の活性状態を判定する。
【0023】
具体的には、制御装置105は、エッジのもつ共分散行列の固有値に基づいて、エッジの楕円度を算出し、エッジの形状が円形状か楕円形状かを区別する。なお、楕円度とは、エッジの形状がどれだけ楕円に近いかを表す指標であり、算出された楕円度が1に近いほどエッジの形状は円に近く、楕円度が小さいほど円から離れた楕円形状になっていくことを表す。
【0024】
まず、制御装置105は、画像の位置に対する輝度I(x,y)上のエッジの持つ共分散行列Σを、モーメント<>を使って次式(1)により算出する。なお、モーメント<>は、次式(2)で計算される。
【数1】

【数2】

【0025】
オブジェクトモデルとなる楕円の方程式は、次式(3)で表され、式(1)の共分散行列の逆数Σ−1の持つ2つの固有値λおよびλを求めることになる。Σ−1は、次式(4)により算出される。
【数3】

【数4】

【0026】
式(4)において、その行列部分にのみ着目し、2つの固有値λおよびλを次式(5)で表されるλ´とすると、行列部分の方程式は次式(6)に示すようになる。
【数5】

【数6】

よって、式(6)より固有値λ´は次式(7)のようになる。すなわち、式(4)に示したΣ−1の2つの固有値λ(=λ´)およびλ(=λ´)は、それぞれ次式(8)および(9)に示すようになる。
【数7】

【数8】

【数9】

【0027】
楕円の持つ2つの固有値λおよびλの違いが楕円度合いとなるので、円と楕円、すなわち状態の良い細胞とそうでない細胞との判定基準としての楕円度は、次式(10)に示すように、式(8)および(9)に示した2つの固有値の比として算出される。この式(10)によって算出される楕円度は、上述したように、その値が1に近いほどエッジの形状は円に近いことを表し、その値が小さいほど円から離れた楕円形状になっていくことを表す指標である。
【数10】

【0028】
よって、制御装置105は、算出した楕円度が所定の閾値より大きければ、エッジの形状が円に近いと判定して、そのエッジに対応する浮遊細胞の状態は良いと判定する。これに対して、算出した楕円度が所定の閾値以下であれば、エッジの形状が楕円に近いと判定して、そのエッジに対応する浮遊細胞の状態は悪いと判定する。なお、細胞の活性状態を判定するにあたっての閾値は、使用者があらかじめ経験的に算出した値を使用する。
【0029】
そして、制御装置105は、上述した処理による判断結果をモニタ108に出力する。例えば、図8に示すように、位相差画像内から選択した細胞の内側のエッジを、状態が良いと判定された浮遊細胞は白線で明示し、状態が悪いと判定された浮遊細胞は黒線で明示する。これによって、使用者は、モニタ108に表示される画像上で、細胞の活性状態を容易に識別することができる。
【0030】
また、制御装置105は、浮遊細胞の活性状態の判定結果を所定時間間隔で取得し、浮遊細胞の活性状態の時系列変化を観察するようにしてもよい。浮遊細胞においては、その形状が観察者にとって重要な特徴であるので、制御装置105は、画像(視野)内における全細胞に対して本手法を適用し、所定時間間隔、例えば数分おきに浮遊細胞の形状を観察し、その形状を表す特徴量の時系列データをモニタ108に自動的に表示するようにしてもよい。例えば、図9に示すように、全細胞に対する円形細胞の占有率の時系列データをグラフ表示してもよい。これによって、使用者は、浮遊細胞の状態の時系列変化を容易に捉えることができるようになる。
【0031】
そして、この円形細胞の占有率があらかじめ設定された所定の閾値9aを下回った場合、言い換えれば非円形細胞の占有率が多くなった場合には、培養する上で異常が発生したものとして、アラートを出し、使用者に対して適切な処置を促すようにしてもよい。また、時系列予測を行って、異常が起こる前に使用者に処置を促すことも有効である。なお、閾値9aは、培養の研究目的に応じて異なるため、使用者によって研究目的に応じた経験的な値が設定される。
【0032】
図10は、本実施の形態における細胞状態判定装置100の処理を示すフローチャートである。図10に示す処理は、使用者によって操作スイッチ107が操作され、ステージ101上にセットされた細胞培養容器A内の細胞の活性状態を判定するように指示された場合に起動するプログラムとして制御装置105によって実行される。なお、制御装置105は、この処理を所定時間間隔、例えば数分おきに実行して、浮遊細胞の活性状態を時系列で判定していく。
【0033】
ステップS10において、制御装置105は、カメラ104から細胞培養容器A内の浮遊細胞を撮影した位相差画像が入力されたか否かを判断する。肯定判断した場合には、ステップS20へ進む。ステップS20では、上述したように円形状抽出手法などの手法を用いて位相差画像内から円形状のハロを抽出し、これを細胞の境界とみなすことで、位相差画像内から浮遊細胞が存在する領域、すなわち細胞存在領域3aを抽出する。その後、ステップS30へ進む。
【0034】
ステップS30では、位相差画像に対して図4に示した二次微分フィルタを適用し、浮遊細胞の位相差画像内から浮遊細胞の形状を含むエッジを抽出する。その後、ステップS40へ進み、制御装置105は、二次微分フィルタを適用した後の画像を所定の閾値を用いて二値化し、十分に明るいエッジのみを抽出することで、位相差画像内から上述したエッジ郡を抽出する。その後、ステップS50へ進む。
【0035】
ステップS50では、上述したように、円形状抽出手法によって位相差画像から抽出した細胞存在領域3aと、二次微分フィルタを用いて抽出したエッジ群とを位相差画像内における位置に基づいて対応付ける。そして、抽出したエッジ群に対して公知のラベリング処理を行って、各細胞存在領域3a内のエッジ群の中からエッジが構成する図形の面積が最大のもの、またはエッジが構成する図形の輪郭が最長のものを選択する。さらに、選択したエッジの中に核などの細胞内部の構造から抽出されたエッジが含まれている場合には、最も外側の輪郭のみを選択する。これによって、位相差画像内から細胞の内側のエッジのみを選択する。その後、ステップS60へ進む。
【0036】
ステップS60では、制御装置105は、選択した細胞の内側のエッジを細胞本来の形状と定義し、このエッジの形状について上述した楕円度を算出する。その後、ステップS70へ進み、算出した楕円度に基づいて浮遊細胞の活性状態を判定する。すなわち、式(10)によって算出された楕円度が所定の閾値より大きければ、そのエッジに対応する浮遊細胞の状態は良いと判定する。これに対して、算出した楕円度が所定の閾値以下であれば、そのエッジに対応する浮遊細胞の状態は悪いと判定する。その後、ステップS80へ進み、制御装置105は、例えば図9に示したように、浮遊細胞の活性状態の判定結果をモニタ108上に出力して、処理を終了する。
【0037】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)位相差画像に対して二次微分フィルタを適用してエッジを抽出し、抽出したエッジが構成する図形の面積が最大のもの、またはエッジが構成する図形の輪郭が最長のものを浮遊細胞の形状として抽出し、この浮遊細胞の形状に基づいて、浮遊細胞の活性状態を判定するようにした。これによって、位相差画像内から浮遊細胞の形状を正確に抽出し、精度高く活性状態を判定することができる。
【0038】
(2)浮遊細胞の形状の円形度合いに基づいて浮遊細胞の活性状態を判定するようにした。これによって、浮遊細胞は、状態が良い場合はほぼ円形状となるが、状態が悪くなった場合には、この円形状が崩れ、楕円やいびつな形状となることを加味して、精度の高い判定を行うことができる。
【0039】
(3)浮遊細胞の形状の円形度合いは、エッジの持つ共分散行列の固有値を用いて算出される浮遊細胞の形状の楕円度を指標として用いて判定するようにした。これによって、算出された楕円度は、1に近いほどエッジの形状は円に近く、楕円度が小さいほど円から離れた楕円形状になっていくことを表すことから、当該指標を用いることにより、簡易に浮遊細胞の活性状態を判定することができる。
【0040】
(4)浮遊細胞の活性状態の判定結果を所定時間間隔で取得し、浮遊細胞の活性状態の時系列変化を観察するようにした。これによって、浮遊細胞の状態の時系列変化を把握することが可能となる。
【0041】
―変形例―
なお、上述した実施の形態の細胞状態判定装置は、以下のように変形することもできる。
(1)上述した実施の形態では、浮遊細胞の形状の円形度合いは、エッジの持つ共分散行列の固有値を用いて算出される浮遊細胞の形状の楕円度を指標として用いて判定する例について説明した。しかしながら、(a)浮遊細胞の形状の重心からエッジまでの距離の最大値−最小値、または距離の分散により算出される浮遊細胞の形状の真円度、(b)浮遊細胞の形状の周囲長の2乗/面積により算出される浮遊細胞の形状の複雑度、または(c)4π×浮遊細胞の形状の面積/浮遊細胞の形状の周囲長の2乗により算出される浮遊細胞の形状の円形度を浮遊細胞の形状の円形度合いを表す指標として用いるようにしてもよい。なお、これらは、浮遊細胞の形状が円形に近づけば、真円度=0,複雑度=4π,円形度=1に近づき、形状がいびつになるなど円から外れると真円度と複雑度は大きくなり、円形度は小さくなる。
【0042】
(2)上述した実施の形態では、所定時間間隔、例えば数分おきに浮遊細胞の形状を観察し、その形状を表す特徴量の時系列データをモニタ108に自動的に表示するようにした。しかしながら、これに限定されず、浮遊細胞の活性状態の判定結果を所定時間間隔で取得し、その時系列データを制御装置105が備えるメモリ内に記憶するようにしてもよい。そして、使用者から時系列データの表示が指示された場合に、図9に示すグラフをモニタ108に表示するようにしてもよい。これによって、使用者は、好みのタイミングで浮遊細胞の状態の時系列変化を把握することができる。
【0043】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】細胞状態判定装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】位相差画像の具体例を示す図である。
【図3】位相差画像内から抽出された細胞存在領域の具体例を示す図である。
【図4】二次微分フィルタの具体例を示す図である。
【図5】二次微分フィルタ適用後の位相差画像の具体例を示す図である。
【図6】位相差画像からのエッジ群の抽出例を示す図である。
【図7】位相差画像内から細胞の内側のエッジのみを選択した場合の具体例を示す図である。
【図8】位相差画像上に細胞の活性状態を明示した場合の具体例を示す図である。
【図9】全細胞に対する円形細胞の占有率を時系列データとして表したグラフの具体例を示す図である。
【図10】細胞状態判定装置100の処理を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0045】
100 細胞観察装置、101 インキュベータ、102 ステージ、103 対物レンズ、104 カメラ、105 制御装置、106 照明装置、107 操作スイッチ、108 モニタ、109 環境制御装置、109a CO混合機、109b 湿度調整機、109c 温度調整機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養容器内で培養されている浮遊細胞を観察するための位相差顕微鏡と、
前記位相差顕微鏡を用いて観察した前記細胞培養容器内の画像(位相差画像)を撮像して取得する撮像手段と、
前記撮像手段で取得した前記位相差画像に対して二次微分フィルタを適用してエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
前記エッジ抽出手段で抽出したエッジが構成する図形の面積が最大のもの、またはエッジが構成する図形の輪郭が最長のものを前記浮遊細胞の形状として抽出する形状抽出手段と、
前記形状抽出手段で抽出した前記浮遊細胞の形状に基づいて、前記浮遊細胞の活性状態を判定する判定手段とを備えることを特徴とする細胞状態判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞状態判定装置において、
前記判定手段は、前記浮遊細胞の形状の円形度合いに基づいて、前記浮遊細胞の活性状態を判定する判定手段とを備えることを特徴とする細胞状態判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の細胞状態判定装置において、
前記判定手段は、(1)前記エッジの持つ共分散行列の固有値を用いて算出される前記浮遊細胞の形状の楕円度、(2)前記浮遊細胞の形状の重心からエッジまでの距離の最大値−最小値、または前記距離の分散により算出される前記浮遊細胞の形状の真円度、(3)前記浮遊細胞の形状の周囲長の2乗/面積により算出される前記浮遊細胞の形状の複雑度、および(4)4π×前記浮遊細胞の形状の面積/前記浮遊細胞の形状の周囲長の2乗により算出される前記浮遊細胞の形状の円形度の少なくとも1つを前記浮遊細胞の形状の円形度合いを表す指標として用い、これらの指標に基づいて、前記浮遊細胞の活性状態を判定することを特徴とする細胞状態判定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞状態判定装置において、
前記判定手段による判定結果を所定時間間隔で取得し、前記浮遊細胞の活性状態の時系列変化を観察する観察手段をさらに備えることを特徴とする細胞状態判定装置。
【請求項5】
細胞培養容器内で培養されている浮遊細胞を観察するための位相差顕微鏡を用いて観察した前記細胞培養容器内の画像(位相差画像)を撮像して取得し、
取得した前記位相差画像に対して二次微分フィルタを適用してエッジを抽出し、
抽出したエッジが構成する図形の面積が最大のもの、またはエッジが構成する図形の輪郭が最長のものを前記浮遊細胞の形状として抽出し、
前記浮遊細胞の形状に基づいて、前記浮遊細胞の活性状態を判定することを特徴とする細胞状態判定方法。


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【公開番号】特開2008−212017(P2008−212017A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
化学;冶金 | 生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学 | 酵素学または微生物学のための装置 | 酵素学または微生物学のための装置 | 状態の測定または検出手段をもって測定または試験を行なうもの,例.コロニー計数器
化学;冶金 | 生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学 | 酵素または微生物を含む測定または試験方法そのための組成物または試験紙;その組成物を調製する方法;微生物学的または酵素学的方法における状態応答制御 | 酵素または微生物を含む測定または試験方法;そのための組成物;そのような組成物の製造方法 | 生きた微生物を含むもの
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | グループ1/00から31/00に包含されない,特有な方法による材料の調査または分析 | 生物学的材料,例.血液,尿
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | グループ1/00から31/00に包含されない,特有な方法による材料の調査または分析 | 生物学的材料,例.血液,尿 | 生物学的材料の物理的分析
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 光学的手段,すなわち.赤外線,可視光線または紫外線を使用することによる材料の調査または分析 | 調査される材料の特性に応じて入射光が変調されるシステム
【出願番号】特願2007−51150(P2007−51150)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン
【Fターム(参考)】
生物学的材料の調査、分析 | 対象試料(血液以外) | 細胞、組織
生物学的材料の調査、分析 | 測定の操作、検知手段(物理的) | 光学的なもの
生物学的材料の調査、分析 | 測定の操作、検知手段(物理的) | 光学的なもの | 顕微鏡を用いるもの
生物学的材料の調査、分析 | 試料の測定量 | その他
光学的手段による材料の調査、分析 | 測定目的 | 検査;検出;状態の観察
光学的手段による材料の調査、分析 | 測定対象 | 生体試料 | 細胞
光学的手段による材料の調査、分析 | 試料の調整及び取扱い | 試料の取扱い | 試料の保持、設定、位置決定
光学的手段による材料の調査、分析 | 試料の調整及び取扱い | 試料の環境又は雰囲気の制御 | 温度制御
光学的手段による材料の調査、分析 | 分析法(原理) | 光透過、光吸収
光学的手段による材料の調査、分析 | 分析法(形態) | 空間分布の測定;走査又は撮像するもの
光学的手段による材料の調査、分析 | 分析法(形態) | 顕微鏡的微小領域の測定
光学的手段による材料の調査、分析 | 光源 | 半導体光源(例;LED,EL)
光学的手段による材料の調査、分析 | 使用波長 | 可視光
光学的手段による材料の調査、分析 | 光学要素 | レンズ
光学的手段による材料の調査、分析 | 検出手段 | 光電検出器 | 複数の検出器を用いるもの | 検出器アレイ、TVカメラ、CCD
光学的手段による材料の調査、分析 | 信号処理、検出回路 | 演算を行うもの(和、積、微分、対数など)
光学的手段による材料の調査、分析 | 信号処理、検出回路 | 基準値や閾値と比較するもの
光学的手段による材料の調査、分析 | 信号処理、検出回路 | デジタル処理、2値化
光学的手段による材料の調査、分析 | 信号処理、検出回路 | メモリ手段を用いるもの
微生物・酵素関連装置 | 装置、器具の種類 | 検出、測定装置
微生物・酵素関連装置 | 生物材料 | 微生物 | 動物細胞
微生物・酵素関連装置 | 生物材料の存在状態 | 浮遊
微生物・酵素関連装置 | 検出・測定装置、器具 | 微生物の検出・同定装置、器具
酵素、微生物を含む測定、試験 | 測定,試験の目的 | 性質,機能の解析
酵素、微生物を含む測定、試験 | 測定,試験の目的 | 物質の同定,微生物の同定
酵素、微生物を含む測定、試験 | 検体,検出物 | 生物体,生物体材料(例;組織) | 微生物 | 動物の細胞,未分化細胞集団
酵素、微生物を含む測定、試験 | 試薬 | 試薬(反応剤,応答体等)としての生物体 | 微生物 | 動物の細胞,未分化細胞集団
酵素、微生物を含む測定、試験 | 処理,操作 | 検出処理 | 成分、標識の可視化、信号発生処理
酵素、微生物を含む測定、試験 | 処理,操作 | 特に工夫された器具,装置を利用するもの
酵素、微生物を含む測定、試験 | センサー(五官を含む)で検出する物理量 | 視覚的,光学的なもの(←発色,吸光度)