細胞由来の細胞外基質膜の製造方法
【課題】細胞由来の細胞外基質膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は細胞由来の細胞外基質膜の製造方法に係り、さらに詳しくは、動物の軟骨由来軟骨細胞を高濃度にて体外において培養して適切な厚さの軟骨細胞/細胞外基質膜を形成した後に乾燥することを特徴とする、軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造方法に関する。本発明による細胞由来細胞外基質膜支持体は、軟骨細胞が分泌した細胞外基質により構成されて生体適合性に優れているだけではなく、軟骨に特異的な免疫拒否を免除する効果があり、移植に適した引張り強度を有していることから、軟骨再生に使用される骨膜や人工的に製作したコラーゲン膜を代替することができるだけではなく、骨硬膜の移植材及び皮膚欠損を修復するための天然的な細胞外基質膜、細胞移植材及び成長因子の伝達体として使用可能である。
【解決手段】本発明は細胞由来の細胞外基質膜の製造方法に係り、さらに詳しくは、動物の軟骨由来軟骨細胞を高濃度にて体外において培養して適切な厚さの軟骨細胞/細胞外基質膜を形成した後に乾燥することを特徴とする、軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造方法に関する。本発明による細胞由来細胞外基質膜支持体は、軟骨細胞が分泌した細胞外基質により構成されて生体適合性に優れているだけではなく、軟骨に特異的な免疫拒否を免除する効果があり、移植に適した引張り強度を有していることから、軟骨再生に使用される骨膜や人工的に製作したコラーゲン膜を代替することができるだけではなく、骨硬膜の移植材及び皮膚欠損を修復するための天然的な細胞外基質膜、細胞移植材及び成長因子の伝達体として使用可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞由来細胞外基質膜(extra cellular matrix membrane:ECM membrane)の製造方法に係り、さらに詳しくは、動物の軟骨由来軟骨細胞を高濃度にて体外において培養して適切な厚さの軟骨細胞/細胞外基質膜を形成した後に乾燥することを特徴とする、軟骨細胞由来の細胞外基質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節軟骨細胞は軟骨においてしか発見されない特化された中胚葉由来細胞である。軟骨は軟骨細胞により生成された細胞外基質に依存する特徴的な物理的特性を持った無血管性組織であって、一旦損傷を受けると自己治癒が極く制限的であるため、究極的に骨関節炎を来たして患者の生活の質に大きな影響を及ぼす。
【0003】
損傷された軟骨を治療するための代表的な方法としては、骨髄由来幹細胞を利用する骨髄刺激法(骨穿孔術、微細骨折術、磨耗成形術)及び自家軟骨細胞移植術がある。骨髄刺激法は関節鏡を用いて最小限の侵入により短時間に施術をすることができることから多用されているが、施術過程中に骨髄由来の凝血(blood clots、幹細胞を含む。)を維持することができないため、再生された軟骨が正常な軟骨よりも繊維性軟骨となる結果、治癒の成功は期待し難い。本発明の細胞外基質膜を利用する場合、骨髄由来の凝血を物理的に維持することができることから、正常軟骨として再生する可能性が高くなる。
【0004】
自家軟骨細胞移植術(ACI:autologous chondrocytes implantation)は、臨床的に承認された細胞移植治療方法(Brittberg, M. et al., New Eng. J. Med., 331:889, 1994)である。しかしながら、骨膜を採取して軟骨欠損部位を緻密に縫合して覆う必要があり、また、このような骨膜は過多増殖して手術後に患部の疼痛を招く恐れがある。さらに、関節鏡施術下で自家軟骨を採取して体外において軟骨細胞を分離して長期間培養した後、さらに細胞混濁液を欠損部位に移植する2段階の手術過程を経なければならないという煩雑さがある。この理由から、上記の種々の問題点を解消するために手術技法及び骨膜代替などの側面から改善の余地がある。
【0005】
本発明者らは構造的に複雑ではあるものの、天然タンパク質と種々の高分子がうまく整列した混合物である細胞外基質膜を骨膜代替物として使用したり、軟骨細胞を細胞外基質膜に付着させた状態で移植すれば、結果として、硝子軟骨組織の再生のための治療の成功を増進することができると判断した。
【0006】
従来、同種または異種細胞外基質膜は、生存組織から直接採取して細胞を除去した後、膜状の支持体として使用されていた。代表的には、小腸の粘膜下層(SIS)と膀胱(UBS)、ヒト羊膜(HAM)などがある。HAMは角膜再生に有用であり、SISは尿路、硬膜、及び血管再建に利用されている。なお、第1型及び第3型の二重膠原質膜を軟骨再生に使用する研究もなされている。
【0007】
軟骨細胞由来の細胞外基質(ECM)支持体は、基本的に、軟骨組織細胞外基質(ECM)の主成分であるグリコサアミノグリカン(GAG)及び膠原質により構成されており、軟骨細胞物質代謝に重要とされる微量元素を含んでいる。細胞外基質(ECM)支持体は軟骨細胞の細胞分化のための天然構造物を提供するため、このような細胞外基質(ECM)によって組織工学分野に応用可能な高品質の支持体を製造する必要がある。
【0008】
近年、細胞培養に対する基質または基底膜として羊膜の利用と、これを用いた細胞治療剤としての製造方法(大韓民国特許公開10−2004−0064004)について報告がされている。天然の支持体として使用される羊膜は、その主成分は第1型コラーゲンであるため、細胞外基質に比べて軟骨細胞との生体適合性に劣るという欠点がある。また、生分解性の側面から調節が不可であるため、移植の目的を達成した後に生体内に残留する可能性があり、別途の操作により除去しなければならないという不都合がありうる。なお、供与者の同意を受けなければ、組織を採取できないという不都合もある。
【0009】
そこで、本発明者らは、体外において製造することができ、適切な厚さと引張り強度を有し、移植時に炎症反応がなく、臨床に適用可能な、生体適合性が卓越した膜状の支持体を開発するために鋭意努力した結果、体外において軟骨細胞を高密度にて単層培養して軟骨細胞/細胞外基質膜を製造した後、細胞を除去して自然乾燥する方法により適切な厚さと引張り強度を併せ持つ細胞外基質膜支持体を製造し、これを骨髄刺激術後に凝血維持あるいは骨膜代替用に移植した場合、軟骨細胞分化を長期間維持することができるということを見い出し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国特許公開10−2004−0064004公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
要するに、本発明の主な目的は、体外における高密度培養により組織工学的に細胞外基質膜を製造する方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記細胞外基質膜から細胞を除去することによって脱細胞化された細胞外基質膜を製造する方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、軟骨細胞、皮膚細胞、神経細胞、筋肉細胞、膵臟細胞、肝細胞、幹細胞などの細胞が接種された細胞外基質膜を含む細胞治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後、その軟骨細胞を培養するステップと、(b)前記培養された軟骨細胞から軟骨細胞/細胞外基質膜を得るステップと、(c)前記得られた軟骨細胞/細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥して細胞外基質膜を得るステップと、を含むことを特徴とする軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された細胞外基質膜を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記細胞外基質膜から細胞を除去することを特徴とする、脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された、脱細胞化された細胞外基質膜を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後に培養して軟骨細胞/細胞外基質膜を生成するステップと、(b)前記生成された軟骨細胞/細胞外基質膜から軟骨細胞を除去することによって脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を得るステップと、(c)前記得られた脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥して脱細胞化された細胞外基質膜を得るステップと、を含む脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された脱細胞化された細胞外基質膜を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を多重に重ね合わせて膜厚を増大させることを特徴とする、強化細胞外基質膜の製造方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を加工することを特徴とする、種々の形状の細胞外基質膜を製造する方法を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を軟骨細胞培養皿において乾燥させた後、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜の表面に細胞を接種することを特徴とする、細胞が付着された細胞外基質膜を製造する方法及び前記方法により製造された細胞が接種された細胞外基質膜を含む細胞治療剤を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜に成長因子を付着させることを特徴とする、成長因子が付着された細胞外基質膜の製造方法を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、前記方法により製造された成長因子が付着された細胞外基質膜を重ね合わせることを特徴とする成長因子放出用の強化細胞外基質膜を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、前記成長因子が付着された細胞外基質膜を含む成長因子放出用の薬物伝達体及び前記成長因子放出用の強化細胞外基質膜を含む成長因子放出用の薬物伝達体を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、軟骨細胞から自家生産された細胞外基質を含有する膜状の支持体を製造する方法及び前記方法により製造された細胞由来細胞外基質膜を提供することができる。
また、本発明による細胞由来細胞外基質膜支持体は、軟骨細胞が分泌した細胞外基質により構成されて生体適合性に優れているだけではなく、軟骨に特異的な免疫拒否を免除する効果があり、移植に適した引張り強度を有していることから、軟骨再生に使用される骨膜や人工的に製作したコラーゲン膜を代替できるだけではなく、骨硬膜の移植材及び皮膚欠損を修復するための天然的な細胞外基質膜、細胞移植材及び成長因子の伝達体として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に従って製造された細胞外基質膜の写真である。
【図2】本発明による細胞外基質膜の表面(A、x50)及び断面(B、x1500)の走査電子顕微鏡(SEM)イメージ写真である。
【図3】本発明による細胞外基質膜をヘマトキシリン・エオシンにより染色した組織イメージ写真である。A:x200、B:x400
【図4】本発明による細胞外基質膜と天然の豚軟骨組織に対する赤外線スペクトル分析を通じて2次的な化学構造を比較・分析した結果である。
【図5】本発明による細胞外基質膜(B)と商用化された細胞培養容器(A)にウサギ軟骨細胞を培養した後、MTT分析を通じて細胞の増殖能を調べた結果を示すグラフである。
【図6】本発明による細胞外基質膜にウサギ軟骨細胞を培養した後、7日目及び14日目にヘマトキシリン・エオシン染色(A)とサフラニン染色(B)を通じて組織学的変化と糖タンパクの発現を調査した結果を示す写真である。
【図7】本発明による細胞外基質膜を脱細胞化過程を経て細胞を除去した後における全体的な形状(A)、電子顕微鏡イメージ(B)及び組織学的分析(ヘマトキシリン・エオシン染色)(C)の結果を示す写真である。
【図8】本発明によって細胞外基質膜を脱細胞化した後、残存するDNAの量をDAPI染色(A)及び定量的方法(B)により分析した結果を示す写真である。
【図9】本発明による細胞外基質膜を脱細胞化した後、試料のコラーゲン含量(A)、糖タンパク(プロテオグリカン)含量(B)及びタンパク質含量(C)を脱細胞前の試料と比較調査した結果を示すグラフである。
【図10】本発明よって細胞外基質膜を脱細胞化した後、赤外線スペクトル分析を通じて試料の化学的2次構造を脱細胞前の試料と比較分析した結果を示すグラフである。
【図11】本発明による細胞外基質膜を脱細胞化した後、二重及び三重に重ね合わせて厚さを強化させた後、引張り強度と伸び率を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の他の特徴及び具現例は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲からなお一層明らかになる。
【0026】
一の観点において、本発明は、高密度培養を通じて組織工学的に細胞外基質膜を製造する方法及び前記方法により製造された細胞外基質膜に関する。より具体的には、本発明は、(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後にその軟骨細胞を培養するステップと、(b)前記培養された軟骨細胞から軟骨細胞/細胞外基質膜を得るステップと、(c)前記得られた軟骨細胞/細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥して細胞外基質膜を得るステップと、を含む軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された細胞外基質膜に関する。
【0027】
本発明において、(d)前記得られた細胞外基質膜に軟骨細胞を再接種した後、再培養してより高い引張り強度を有する厚い細胞外基質膜を得るステップをさらに含むことを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様においては、軟骨細胞を用いて適切な厚さを調節することにより移植に適した引張り強度を有し、生体適合性があり、細胞親和的であり、免疫適合性がある細胞外基質膜を製造した。前記細胞外基質膜は軟骨再生に使用される骨膜や人工的に製作したコラーゲン膜を代替可能であるだけではなく、軟骨細胞の増殖を促進して分化を長期的に維持できることから、細胞移植支持体として使用可能であり、骨髄膜欠損を覆うための移植材、皮膚欠損、神経組織損傷などを補完するための移植材として使用可能である。
【0029】
本発明において、前記動物は豚又は人間であることを特徴とし、前記培養ステップにおいて生体活性因子をさらに添加することを特徴とする。
【0030】
本発明において、前記培養ステップにおいて培養液を超音波で処理したり、培養液に物理的な圧力を加えることを特徴とし、前記ステップ(c)における乾燥は、軟骨細胞/細胞外基質(ECM)膜構造物を−15〜−25℃の温度条件下で冷凍及び解凍する手続きを3〜5回繰り返し行った後、自然乾燥若しくは凍結乾燥することを特徴とする。
【0031】
本発明による細胞外基質膜を製造するための一態様として、豚軟骨から分離された軟骨細胞を高密度にて3〜4週間に亘って単層培養した後、得られた軟骨細胞/細胞外基質膜を4℃の温度条件下で乾燥して軟骨−特異的な細胞外基質(ECM)を含有する細胞外基質膜を製造することができる。
【0032】
本発明の一態様に従い製造された細胞外基質膜は厚さが10〜20μm程度の生体膜であり、膠原質とタンパク糖(プロテオグリカン:Proteoglycan)を主な構成成分として有しており、しかも、約25N/mm2の引張り強度と10%の伸び率を有する。
【0033】
本発明による細胞外基質膜に軟骨細胞を培養する場合、通常の動物細胞培養容器に培養した場合と同様の細胞増殖能を示し、タンパク糖などの軟骨細胞特異タンパク質の発現能が高い。
【0034】
本発明において、軟骨細胞を培養するステップにおいては、筋源細胞、筋肉細胞、心筋細胞、神経細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、骨細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の細胞と一緒に培養することを特徴とする。
【0035】
他の観点において、本発明は、前記細胞外基質膜から細胞を除去することを特徴とする脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された、脱細胞化された細胞外基質膜に関する。
【0036】
本発明において、前記脱細胞化は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性剤、低張性溶液、DNase、RNase及び超音波よりなる群から選ばれるいずれか1種以上により処理することを特徴とし、前記脱細胞化は0〜50℃の温度範囲において行うことを特徴とする。
【0037】
さらに他の観点において、本発明は、(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後に、その軟骨細胞を培養して軟骨細胞/細胞外基質膜を生成するステップと、(b)前記生成された軟骨細胞/細胞外基質膜から軟骨細胞を除去して脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を得るステップと、(c)前記得られた脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥することによって脱細胞化された細胞外基質膜を得るステップと、を含む脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された脱細胞化された細胞外基質膜に関する。
【0038】
本発明において、前記ステップ(b)における軟骨細胞の除去は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性剤、低張性溶液、DNase、RNase及び超音波よりなる群から選ばれるいずれか1種以上により処理することを特徴とし、前記脱細胞化は0〜50℃の温度範囲において行うことを特徴とする。
【0039】
本発明による細胞外基質膜または脱細胞化された細胞外基質膜を多重に重ね合わせる場合、膜厚が増大された細胞外基質膜を製造することができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を多重に重ね合わせて膜厚を増加することを特徴とする強化細胞外基質膜の製造方法に関する。
【0040】
さらに、本発明による細胞外基質膜または脱細胞化された細胞外基質膜を加工する場合、種々の形状を有する細胞外基質膜を得ることができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を加工することを特徴とする種々の形状の細胞外基質膜を製造する方法に関する。
【0041】
一方、本発明による細胞外基質膜または脱細胞化された細胞外基質膜は体外における細胞増殖及び表現型維持能に優れていることから、その表面に治療対象細胞を付着する場合、臨床的に適用可能な細胞治療剤を製造することができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を軟骨細胞培養皿において乾燥させた後、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜の表面に細胞を接種することによって細胞が付着された細胞外基質膜を製造する方法及び前記方法により製造された細胞が接種された細胞外基質膜を含む細胞治療剤に関する。
【0042】
本発明において、前記細胞は、軟骨細胞、皮膚細胞、神経細胞、筋肉細胞、膵臟細胞、肝細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれることを特徴とする。
【0043】
本発明において、前記細胞治療剤は、脳硬膜欠損補完用または再生用、皮膚再生用、軟骨再生用、内部臓器止血用及び内部臓器組織再生用であることを特徴とする。
【0044】
また、本発明による細胞外基質膜または脱細胞化された細胞外基質膜に細胞増殖に必要とされる成長因子を付着させる場合、体内において生長因子を放出する薬物伝達体としても活用することができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜に成長因子を付着させることを特徴とする成長因子が付着した細胞外基質膜の製造方法及び前記成長因子が付着した細胞外基質膜を含む成長因子放出用の薬物伝達体に関する。
【0045】
本発明の一態様として、前記細胞外基質膜に付着される成長因子としては、インシュリン類似成長因子(IGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)、形質転換成長因子−α(TGF−α)、形質転換成長因子(TGF−β)、骨形成タンパク質(BMP)、血小板由来成長因子(PDGF)、角質細胞成長因子(KGF)、表皮細胞成長因子(EGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、造血促進因子(EPO)、顆粒大食細胞成長因子(GM−CSF)、顆粒細胞成長因子(G−CSF)、神経細胞成長因子(NGF)、ヘパリン結合(EGF)などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0046】
本発明の一態様においては、細胞外基質膜に物理的な圧力を加えることによって、細胞外基質膜を重ね合わせて引張り強度の高い強化細胞外基質膜を製作している。強化された細胞外基質膜は前記成長因子が付着した細胞外基質膜を重ね合わせて製作されるので、成長因子が徐々に放出される徐放型薬物伝達体としても活用することができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記成長因子が付着された細胞外基質膜を重ね合わせることを特徴とする成長因子放出用の強化細胞外基質膜の製造方法及び前記成長因子放出用の強化細胞外基質膜を含む成長因子放出用の薬物伝達体に関する。
【0047】
実施例
以下、本発明を実施例により詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0048】
特に、下記の実施例においては、本発明による方法により豚関節軟骨を用いて細胞外基質膜を製造する方法についてのみ記述しているが、他の動物の軟骨を用いて細胞外基質膜を製造することは当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0049】
また、下記の実施例においては、本発明の具体例による細胞外基質膜の製造方法及び脱細胞化された細胞外基質膜についてのみ例示しているが、具現例により得られた軟骨細胞/ECM膜にさらに軟骨細胞を多数回接種培養してより高い引張り強度を有する厚くて細胞外基質膜を製造することは当業者にとって自明である。
【0050】
さらに、本発明による方法を用いて軟骨の他に細胞外基質を生産する他の体細胞を用いて細胞外基質膜を製造することは、当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0051】
実施例1:豚軟骨細胞の分離
豚コレラ及びその他のウィルスや伝染病のない生後2週間経過の小豚を動物倫理法に従い過量麻酔させて致死させた。無菌環境下で豚の膝関節から軟骨のみを採取した。採取した軟骨を無菌作業台に載せて細断した後、0.1%のコラゲナーゼにより12時間処理し、0.4μmフィルターを用いて細胞のみをろ過した後、遠心分離により軟骨細胞を分離した。
【0052】
実施例2:軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造
実施例1において分離した軟骨細胞を6ウェル(6−well)培養容器に0.7×105cells/cm2の濃度にて接種した後、培養培地(DMEM+20%FBS+1%ペニシリン−ストレプトマイシン+5μg/mLアスコルビン酸)を入れて3週間培養した。培養培地は3日置きに1回ずつ交換した。3週間後にECMフィルムをPBSにて3回洗浄した後、6ウェル培養容器から引き剥がした。製造された細胞外基質膜は半透明の薄膜状を呈していた(図1)。
【0053】
実施例3:細胞外基質膜の物理化学的特性の分析
3−1:細胞外基質膜の微細構造分析
走査電子顕微鏡を用いて細胞外基質膜の微細構造を分析した。2.5%グルタルアルデヒドにより実施例2に従って製造された細胞外基質膜を1時間かけて固定した後、リン酸塩緩衝溶液により洗浄した。試料をエタノールにより脱水させた後に乾燥して電子顕微鏡(JEOL、JSM−6380、日本;20KV)により表面と断面を撮影した。その結果、表面は細胞と見られる構造体により粗く見られ、断面は約10〜20μmの厚さを示していた(図2)。
【0054】
3−2:細胞外基質膜の組織学的観察
実施例2に従って製造された細胞外基質膜を4%ホルマリン溶液により24時間かけて固定し、パラフィン浸透を行った後、包埋して切片を製作した。製作された切片をヘマトキシリン・エオシンにより染色して組織を観察した結果、細胞外基質と見られる構造体の内部に核を持った細胞が散在している形態を観察することができた(図3)。
【0055】
3−3:細胞外基質膜の引張り強度測定
万能物性測定器(Universal Testing Machine、H5K−J、HTE、Salfords、England)を用いて細胞外基質膜の引張り強度を測定した。実施例2に従って製造された細胞外基質膜を30x5mmのサイズに切断した試料を50Nロッドのセルに垂直に固定し、10mm/分の速度にて引っ張って引裂するときの力を測定した。なお、各種の試料に対して測定を行うことで平均値を求めた後、単位面積当たりの引張り強度を計算した結果、引張り強度は約25N/mm2であり、伸び率は約10%であった。
【0056】
3−4:細胞外基質膜と軟骨組織の2次構造の比較
実施例2に従って製造された細胞外基質膜の2次的な構造を豚軟骨組織と比較するために、赤外線スペクトル構造分析を行った。解像度が8cm−1のFT−IR分析機(Bomem、MB104モデル)を用いてタンパク質の主成分であるアミドを分析した結果、製造された細胞外基質膜と天然の豚軟骨組織がほとんど同様の化学的な2次構造を有することが分かった(図4)。
【0057】
実施例4:細胞外基質膜を用いた軟骨細胞培養
実施例1の方法と同様にして、約3〜4kg程度のニュージランド産の白いウサギの軟骨から軟骨細胞を分離した。分離されたウサギ軟骨細胞を1x105細胞/30mm2の濃度にて実施例2に従って製造された細胞外基質膜に接種した後、細胞の増殖能と組織の変化及び糖タンパクの発現を調査した。
【0058】
4−1:細胞の経時的な増殖能の調査
通常の動物細胞培養容器(対照群、6ウェル培養プレート、BD Falcon、USA)及び細胞外基質膜に上記のようにしてウサギの軟骨細胞をそれぞれ培養した後、1、2、4、6、8、12、14日目にMTT分析(Roche、Germany)を通じて細胞の増殖能を調査した。その結果、細胞外基質膜と商用化された培養容器の両方とも5〜6日でプラトー(plateau)に到達し、このとき、OD値は両方とも約4.0程度とほとんど同様であった(図5)。前記結果から、細胞外基質膜は、既存の培養容器と同様、軟骨細胞の増殖に適した環境を提供するということが分かる。
【0059】
4−2:組織学的変化及び糖タンパクの発現調査
上記のようにして細胞外基質膜に軟骨細胞を培養した後、それぞれ7日、14日目に試料を回収して実施例3−2の方法と同様にして組織切片を製作した。製作された切片を用いてヘマトキシリン・エオシン染色を行った結果、経時的に細胞外基質膜の表面に厚い細胞層が形成されることが分かる(図6のA)。また、糖タンパクに対して特異的なサフラニンO染色を行った結果、試料の全体に亘って糖タンパクの発現がはっきりと現れることを確認した(図6のB)。
【0060】
実施例5:脱細胞化された細胞外基質膜の製造及び特性分析
5−1:細胞外基質膜の脱細胞化
細胞外基質膜に存在する軟骨細胞を除去し、純粋な細胞外基質膜を得るために下記のようにして脱細胞化過程を行った。実施例2に従って製造された細胞外基質膜を0.1%のSDS溶液に入れ、37℃及び150rpmの条件下で24時間かけて攪拌した。次に、超音波洗浄器において1分間、0.05%のトリプシン−EDTA溶液において30分間、さらに超音波洗浄器において1分間、0.07mg/mLDNase溶液において24時間、さらに超音波洗浄器において1分間処理する過程を経た後、PBSにより少なくとも5回以上洗浄した。脱細胞化処理を経た細胞外基質膜はフードにおいて12時間乾燥後に電子式デシケーターに保管した。
【0061】
5−2:脱細胞化された細胞外基質膜の形態学的及び組織学的分析
脱細胞化された細胞外基質膜は脱細胞化前に比べて1/3程度に厚さが薄くなったが、全体的な形状、色合い及び触感は大差なかった(図7のA)。しかしながら、実施例3−1の方法と同様にして走査電子顕微鏡を用いて表面の微細構造を調査した結果、脱細胞化前の試料(図2のA)に見られる白色の細胞状構造体がなく、全体的に滑らかな形状を示していた(図7のB)。なお、前記実施例3−2の方法と同様にしてヘマトキシリン・エオシン染色を通じて組織学的観察を行った結果、脱細胞化前の試料に見られる小さくて濃い核状構造体が現れないことが分かる(図7のC)。
【0062】
5−3:脱細胞化された細胞外基質膜のDNA含量分析
実施例3−2の方法と同様にして、脱細胞前の細胞外基質膜及び脱細胞化された細胞外基質膜の試料切片を作成した後、200ng/mlのDAPI[2−(4−アミジノフェニル)−6−インドールカルバミジンドジヒドロクロライド]溶液により染色し、蛍光顕微鏡により観察した。その結果、脱細胞前の試料においては核構造体内にDNA成分がはっきり観察されたが、脱細胞化された試料においては蛍光染色されたDNA成分が全く現れなかった(図8のA)。脱細胞化された細胞外基質膜におけるDNA除去効果はHoechest 332582染色試料を用いてDNAを定量的に分析した結果においても現れた(図8のB)。
【0063】
5−4:脱細胞化された細胞外基質膜の成分分析
脱細胞化前の細胞外基質膜試料と脱細胞化後の細胞外基質膜試料に対して軟骨組織の主なECM成分であるコラーゲンと糖タンパクの含量及び合計のタンパク質含量を比較分析した。その結果、脱細胞化された細胞外基質膜の場合、脱細胞前に比べて単位重量当たりのコラーゲン及び糖タンパクの含量がかなり低減されていたが、タンパク質含量には大差ないことが分かる(図9)。
【0064】
コラーゲン含量の測定は、下記のようにして行われた。乾燥した細胞外基質膜試料を1N塩酸1mLに添加して60℃の温度条件下で一日中(24時間)放置した後、最終濃度2Nの水酸化ナトリウム(NaOH)溶液に入れて120℃の温度条件下で20分間高圧滅菌して加水分解させた。ここに450μLのクロロアミンT試薬を添加し、室温において25分間放置し、発色のためにエンリッヒ試薬(Endlich’s reagent)(1M)500μLを添加して、60℃の温度条件下で20分間放置した後、550nmの波長における吸光度を測定した。コラーゲンの最終濃度はヒドロキシプロリン標準曲線を用いて計算した。
【0065】
糖タンパク含量の測定は、下記のようにして行われた。乾燥された細胞外基質膜をパパイン溶液1mLに入れ、60℃の温度条件下で24時間かけて溶解させた後、10、000rpmにおいて3分間遠心分離して上澄液を試料として使用した。96ウェル培養皿に前記試料を50μLずつ分注し、200μLのDMB発色溶液(3次数1LにDMB16mg、95%エタノール5mL、ギ酸3mL及び1M水酸化ナトリウム25.6mLを添加した溶液;pH3.5)を添加した後、室温において30分間反応させ、530nmの波長における吸光度を測定した。コンドロイチンサルフェートCを用いて標準曲線にした後、試料の濃度を算出した。
【0066】
試料の合計のタンパク質含量を、下記のようにして測定した。前記糖タンパク含量測定時と同様に、パパイン溶液から溶出された細胞外基質膜抽出物を96ウェル培養板に1/10、1/20及び1/40の濃度に希釈して20μLずつ入れ、BCA反応溶液(Pierce、USA)を200μLずつ入れた後、常温下で30分間反応させた。試料の吸光度を562nmにおいて測定した後、牛血清アルブミン(BSA、2mg/mL)により製作した標準曲線を用いて最終濃度を算出した。
【0067】
5−5:脱細胞化された細胞外基質膜の2次的構造分析
前記実施例3及び4の方法と同様にしてFT−IR分析を通じて脱細胞前と脱細胞後の細胞外基質膜の2次的な構造を分析した。その結果、両試料における全体的な吸光度は同様であり、アミドに対する分析においても同様な構造を有することが分かる(図10)。
【0068】
実施例6:重なり合う強化細胞外基質膜の製造
実施例5の方法のように脱細胞化された細胞外基質膜をプレス圧着方法により二重、三重に重ね合わせて厚さと強度が強化された細胞外基質膜を製造した。多重に強化された細胞外基質膜の形状は以前と大差なく、厚さはそれぞれ3.3μm(一重)、6.6μm(二重)、10μm(三重)と測定されて、3重の試料の場合、脱細胞化前の細胞外基質膜と同様な値を示した。これらの細胞外基質膜の引張り強度と伸び率を実施例3−3の方法と同様にして測定した。
【0069】
その結果、脱細胞化された細胞外基質膜(一重)の引張り強度測定値は脱細胞化前の細胞外基質膜に比べて低くなったが、単位面積当たりの引張り強度には大差なかった(図11)。また、脱細胞化された細胞外基質膜を二重、三重に強化した場合、全体的な引張り強度と単位面積当たりの引張り強度が両方とも増大した。脱細胞前の試料と同様な厚さを有する三重の試料の場合、約3.5倍の引張り強度を示した。伸び率も脱細胞化後に僅かに減少したが、多重に強化することによりそれが増大する結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上詳述したように、本発明は、軟骨細胞から自家生産された細胞外基質を含有する膜状の支持体を製造する方法及び前記方法により製造された細胞由来細胞外基質膜を提供することができる。本発明による細胞由来細胞外基質膜支持体は、軟骨細胞が分泌した細胞外基質により構成されて生体適合性に優れているだけではなく、軟骨に特異的な免疫拒否を免除する効果があり、移植に適した引張り強度を有していることから、軟骨再生に使用される骨膜や人工的に製作したコラーゲン膜を代替できるだけではなく、骨硬膜の移植材及び皮膚欠損を修復するための天然的な細胞外基質膜、細胞移植材及び成長因子の伝達体として使用可能である。
【0071】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されないことは明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらに等価の記載により定義されると言える。
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞由来細胞外基質膜(extra cellular matrix membrane:ECM membrane)の製造方法に係り、さらに詳しくは、動物の軟骨由来軟骨細胞を高濃度にて体外において培養して適切な厚さの軟骨細胞/細胞外基質膜を形成した後に乾燥することを特徴とする、軟骨細胞由来の細胞外基質膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節軟骨細胞は軟骨においてしか発見されない特化された中胚葉由来細胞である。軟骨は軟骨細胞により生成された細胞外基質に依存する特徴的な物理的特性を持った無血管性組織であって、一旦損傷を受けると自己治癒が極く制限的であるため、究極的に骨関節炎を来たして患者の生活の質に大きな影響を及ぼす。
【0003】
損傷された軟骨を治療するための代表的な方法としては、骨髄由来幹細胞を利用する骨髄刺激法(骨穿孔術、微細骨折術、磨耗成形術)及び自家軟骨細胞移植術がある。骨髄刺激法は関節鏡を用いて最小限の侵入により短時間に施術をすることができることから多用されているが、施術過程中に骨髄由来の凝血(blood clots、幹細胞を含む。)を維持することができないため、再生された軟骨が正常な軟骨よりも繊維性軟骨となる結果、治癒の成功は期待し難い。本発明の細胞外基質膜を利用する場合、骨髄由来の凝血を物理的に維持することができることから、正常軟骨として再生する可能性が高くなる。
【0004】
自家軟骨細胞移植術(ACI:autologous chondrocytes implantation)は、臨床的に承認された細胞移植治療方法(Brittberg, M. et al., New Eng. J. Med., 331:889, 1994)である。しかしながら、骨膜を採取して軟骨欠損部位を緻密に縫合して覆う必要があり、また、このような骨膜は過多増殖して手術後に患部の疼痛を招く恐れがある。さらに、関節鏡施術下で自家軟骨を採取して体外において軟骨細胞を分離して長期間培養した後、さらに細胞混濁液を欠損部位に移植する2段階の手術過程を経なければならないという煩雑さがある。この理由から、上記の種々の問題点を解消するために手術技法及び骨膜代替などの側面から改善の余地がある。
【0005】
本発明者らは構造的に複雑ではあるものの、天然タンパク質と種々の高分子がうまく整列した混合物である細胞外基質膜を骨膜代替物として使用したり、軟骨細胞を細胞外基質膜に付着させた状態で移植すれば、結果として、硝子軟骨組織の再生のための治療の成功を増進することができると判断した。
【0006】
従来、同種または異種細胞外基質膜は、生存組織から直接採取して細胞を除去した後、膜状の支持体として使用されていた。代表的には、小腸の粘膜下層(SIS)と膀胱(UBS)、ヒト羊膜(HAM)などがある。HAMは角膜再生に有用であり、SISは尿路、硬膜、及び血管再建に利用されている。なお、第1型及び第3型の二重膠原質膜を軟骨再生に使用する研究もなされている。
【0007】
軟骨細胞由来の細胞外基質(ECM)支持体は、基本的に、軟骨組織細胞外基質(ECM)の主成分であるグリコサアミノグリカン(GAG)及び膠原質により構成されており、軟骨細胞物質代謝に重要とされる微量元素を含んでいる。細胞外基質(ECM)支持体は軟骨細胞の細胞分化のための天然構造物を提供するため、このような細胞外基質(ECM)によって組織工学分野に応用可能な高品質の支持体を製造する必要がある。
【0008】
近年、細胞培養に対する基質または基底膜として羊膜の利用と、これを用いた細胞治療剤としての製造方法(大韓民国特許公開10−2004−0064004)について報告がされている。天然の支持体として使用される羊膜は、その主成分は第1型コラーゲンであるため、細胞外基質に比べて軟骨細胞との生体適合性に劣るという欠点がある。また、生分解性の側面から調節が不可であるため、移植の目的を達成した後に生体内に残留する可能性があり、別途の操作により除去しなければならないという不都合がありうる。なお、供与者の同意を受けなければ、組織を採取できないという不都合もある。
【0009】
そこで、本発明者らは、体外において製造することができ、適切な厚さと引張り強度を有し、移植時に炎症反応がなく、臨床に適用可能な、生体適合性が卓越した膜状の支持体を開発するために鋭意努力した結果、体外において軟骨細胞を高密度にて単層培養して軟骨細胞/細胞外基質膜を製造した後、細胞を除去して自然乾燥する方法により適切な厚さと引張り強度を併せ持つ細胞外基質膜支持体を製造し、これを骨髄刺激術後に凝血維持あるいは骨膜代替用に移植した場合、軟骨細胞分化を長期間維持することができるということを見い出し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国特許公開10−2004−0064004公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
要するに、本発明の主な目的は、体外における高密度培養により組織工学的に細胞外基質膜を製造する方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記細胞外基質膜から細胞を除去することによって脱細胞化された細胞外基質膜を製造する方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、軟骨細胞、皮膚細胞、神経細胞、筋肉細胞、膵臟細胞、肝細胞、幹細胞などの細胞が接種された細胞外基質膜を含む細胞治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後、その軟骨細胞を培養するステップと、(b)前記培養された軟骨細胞から軟骨細胞/細胞外基質膜を得るステップと、(c)前記得られた軟骨細胞/細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥して細胞外基質膜を得るステップと、を含むことを特徴とする軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された細胞外基質膜を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記細胞外基質膜から細胞を除去することを特徴とする、脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された、脱細胞化された細胞外基質膜を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後に培養して軟骨細胞/細胞外基質膜を生成するステップと、(b)前記生成された軟骨細胞/細胞外基質膜から軟骨細胞を除去することによって脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を得るステップと、(c)前記得られた脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥して脱細胞化された細胞外基質膜を得るステップと、を含む脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された脱細胞化された細胞外基質膜を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を多重に重ね合わせて膜厚を増大させることを特徴とする、強化細胞外基質膜の製造方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を加工することを特徴とする、種々の形状の細胞外基質膜を製造する方法を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を軟骨細胞培養皿において乾燥させた後、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜の表面に細胞を接種することを特徴とする、細胞が付着された細胞外基質膜を製造する方法及び前記方法により製造された細胞が接種された細胞外基質膜を含む細胞治療剤を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜に成長因子を付着させることを特徴とする、成長因子が付着された細胞外基質膜の製造方法を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、前記方法により製造された成長因子が付着された細胞外基質膜を重ね合わせることを特徴とする成長因子放出用の強化細胞外基質膜を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、前記成長因子が付着された細胞外基質膜を含む成長因子放出用の薬物伝達体及び前記成長因子放出用の強化細胞外基質膜を含む成長因子放出用の薬物伝達体を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、軟骨細胞から自家生産された細胞外基質を含有する膜状の支持体を製造する方法及び前記方法により製造された細胞由来細胞外基質膜を提供することができる。
また、本発明による細胞由来細胞外基質膜支持体は、軟骨細胞が分泌した細胞外基質により構成されて生体適合性に優れているだけではなく、軟骨に特異的な免疫拒否を免除する効果があり、移植に適した引張り強度を有していることから、軟骨再生に使用される骨膜や人工的に製作したコラーゲン膜を代替できるだけではなく、骨硬膜の移植材及び皮膚欠損を修復するための天然的な細胞外基質膜、細胞移植材及び成長因子の伝達体として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に従って製造された細胞外基質膜の写真である。
【図2】本発明による細胞外基質膜の表面(A、x50)及び断面(B、x1500)の走査電子顕微鏡(SEM)イメージ写真である。
【図3】本発明による細胞外基質膜をヘマトキシリン・エオシンにより染色した組織イメージ写真である。A:x200、B:x400
【図4】本発明による細胞外基質膜と天然の豚軟骨組織に対する赤外線スペクトル分析を通じて2次的な化学構造を比較・分析した結果である。
【図5】本発明による細胞外基質膜(B)と商用化された細胞培養容器(A)にウサギ軟骨細胞を培養した後、MTT分析を通じて細胞の増殖能を調べた結果を示すグラフである。
【図6】本発明による細胞外基質膜にウサギ軟骨細胞を培養した後、7日目及び14日目にヘマトキシリン・エオシン染色(A)とサフラニン染色(B)を通じて組織学的変化と糖タンパクの発現を調査した結果を示す写真である。
【図7】本発明による細胞外基質膜を脱細胞化過程を経て細胞を除去した後における全体的な形状(A)、電子顕微鏡イメージ(B)及び組織学的分析(ヘマトキシリン・エオシン染色)(C)の結果を示す写真である。
【図8】本発明によって細胞外基質膜を脱細胞化した後、残存するDNAの量をDAPI染色(A)及び定量的方法(B)により分析した結果を示す写真である。
【図9】本発明による細胞外基質膜を脱細胞化した後、試料のコラーゲン含量(A)、糖タンパク(プロテオグリカン)含量(B)及びタンパク質含量(C)を脱細胞前の試料と比較調査した結果を示すグラフである。
【図10】本発明よって細胞外基質膜を脱細胞化した後、赤外線スペクトル分析を通じて試料の化学的2次構造を脱細胞前の試料と比較分析した結果を示すグラフである。
【図11】本発明による細胞外基質膜を脱細胞化した後、二重及び三重に重ね合わせて厚さを強化させた後、引張り強度と伸び率を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の他の特徴及び具現例は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲からなお一層明らかになる。
【0026】
一の観点において、本発明は、高密度培養を通じて組織工学的に細胞外基質膜を製造する方法及び前記方法により製造された細胞外基質膜に関する。より具体的には、本発明は、(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後にその軟骨細胞を培養するステップと、(b)前記培養された軟骨細胞から軟骨細胞/細胞外基質膜を得るステップと、(c)前記得られた軟骨細胞/細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥して細胞外基質膜を得るステップと、を含む軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された細胞外基質膜に関する。
【0027】
本発明において、(d)前記得られた細胞外基質膜に軟骨細胞を再接種した後、再培養してより高い引張り強度を有する厚い細胞外基質膜を得るステップをさらに含むことを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様においては、軟骨細胞を用いて適切な厚さを調節することにより移植に適した引張り強度を有し、生体適合性があり、細胞親和的であり、免疫適合性がある細胞外基質膜を製造した。前記細胞外基質膜は軟骨再生に使用される骨膜や人工的に製作したコラーゲン膜を代替可能であるだけではなく、軟骨細胞の増殖を促進して分化を長期的に維持できることから、細胞移植支持体として使用可能であり、骨髄膜欠損を覆うための移植材、皮膚欠損、神経組織損傷などを補完するための移植材として使用可能である。
【0029】
本発明において、前記動物は豚又は人間であることを特徴とし、前記培養ステップにおいて生体活性因子をさらに添加することを特徴とする。
【0030】
本発明において、前記培養ステップにおいて培養液を超音波で処理したり、培養液に物理的な圧力を加えることを特徴とし、前記ステップ(c)における乾燥は、軟骨細胞/細胞外基質(ECM)膜構造物を−15〜−25℃の温度条件下で冷凍及び解凍する手続きを3〜5回繰り返し行った後、自然乾燥若しくは凍結乾燥することを特徴とする。
【0031】
本発明による細胞外基質膜を製造するための一態様として、豚軟骨から分離された軟骨細胞を高密度にて3〜4週間に亘って単層培養した後、得られた軟骨細胞/細胞外基質膜を4℃の温度条件下で乾燥して軟骨−特異的な細胞外基質(ECM)を含有する細胞外基質膜を製造することができる。
【0032】
本発明の一態様に従い製造された細胞外基質膜は厚さが10〜20μm程度の生体膜であり、膠原質とタンパク糖(プロテオグリカン:Proteoglycan)を主な構成成分として有しており、しかも、約25N/mm2の引張り強度と10%の伸び率を有する。
【0033】
本発明による細胞外基質膜に軟骨細胞を培養する場合、通常の動物細胞培養容器に培養した場合と同様の細胞増殖能を示し、タンパク糖などの軟骨細胞特異タンパク質の発現能が高い。
【0034】
本発明において、軟骨細胞を培養するステップにおいては、筋源細胞、筋肉細胞、心筋細胞、神経細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、骨細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の細胞と一緒に培養することを特徴とする。
【0035】
他の観点において、本発明は、前記細胞外基質膜から細胞を除去することを特徴とする脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された、脱細胞化された細胞外基質膜に関する。
【0036】
本発明において、前記脱細胞化は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性剤、低張性溶液、DNase、RNase及び超音波よりなる群から選ばれるいずれか1種以上により処理することを特徴とし、前記脱細胞化は0〜50℃の温度範囲において行うことを特徴とする。
【0037】
さらに他の観点において、本発明は、(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後に、その軟骨細胞を培養して軟骨細胞/細胞外基質膜を生成するステップと、(b)前記生成された軟骨細胞/細胞外基質膜から軟骨細胞を除去して脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を得るステップと、(c)前記得られた脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥することによって脱細胞化された細胞外基質膜を得るステップと、を含む脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法及び前記方法により製造された脱細胞化された細胞外基質膜に関する。
【0038】
本発明において、前記ステップ(b)における軟骨細胞の除去は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性剤、低張性溶液、DNase、RNase及び超音波よりなる群から選ばれるいずれか1種以上により処理することを特徴とし、前記脱細胞化は0〜50℃の温度範囲において行うことを特徴とする。
【0039】
本発明による細胞外基質膜または脱細胞化された細胞外基質膜を多重に重ね合わせる場合、膜厚が増大された細胞外基質膜を製造することができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を多重に重ね合わせて膜厚を増加することを特徴とする強化細胞外基質膜の製造方法に関する。
【0040】
さらに、本発明による細胞外基質膜または脱細胞化された細胞外基質膜を加工する場合、種々の形状を有する細胞外基質膜を得ることができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を加工することを特徴とする種々の形状の細胞外基質膜を製造する方法に関する。
【0041】
一方、本発明による細胞外基質膜または脱細胞化された細胞外基質膜は体外における細胞増殖及び表現型維持能に優れていることから、その表面に治療対象細胞を付着する場合、臨床的に適用可能な細胞治療剤を製造することができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜を軟骨細胞培養皿において乾燥させた後、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜の表面に細胞を接種することによって細胞が付着された細胞外基質膜を製造する方法及び前記方法により製造された細胞が接種された細胞外基質膜を含む細胞治療剤に関する。
【0042】
本発明において、前記細胞は、軟骨細胞、皮膚細胞、神経細胞、筋肉細胞、膵臟細胞、肝細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれることを特徴とする。
【0043】
本発明において、前記細胞治療剤は、脳硬膜欠損補完用または再生用、皮膚再生用、軟骨再生用、内部臓器止血用及び内部臓器組織再生用であることを特徴とする。
【0044】
また、本発明による細胞外基質膜または脱細胞化された細胞外基質膜に細胞増殖に必要とされる成長因子を付着させる場合、体内において生長因子を放出する薬物伝達体としても活用することができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜に成長因子を付着させることを特徴とする成長因子が付着した細胞外基質膜の製造方法及び前記成長因子が付着した細胞外基質膜を含む成長因子放出用の薬物伝達体に関する。
【0045】
本発明の一態様として、前記細胞外基質膜に付着される成長因子としては、インシュリン類似成長因子(IGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)、形質転換成長因子−α(TGF−α)、形質転換成長因子(TGF−β)、骨形成タンパク質(BMP)、血小板由来成長因子(PDGF)、角質細胞成長因子(KGF)、表皮細胞成長因子(EGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、造血促進因子(EPO)、顆粒大食細胞成長因子(GM−CSF)、顆粒細胞成長因子(G−CSF)、神経細胞成長因子(NGF)、ヘパリン結合(EGF)などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0046】
本発明の一態様においては、細胞外基質膜に物理的な圧力を加えることによって、細胞外基質膜を重ね合わせて引張り強度の高い強化細胞外基質膜を製作している。強化された細胞外基質膜は前記成長因子が付着した細胞外基質膜を重ね合わせて製作されるので、成長因子が徐々に放出される徐放型薬物伝達体としても活用することができる。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記成長因子が付着された細胞外基質膜を重ね合わせることを特徴とする成長因子放出用の強化細胞外基質膜の製造方法及び前記成長因子放出用の強化細胞外基質膜を含む成長因子放出用の薬物伝達体に関する。
【0047】
実施例
以下、本発明を実施例により詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0048】
特に、下記の実施例においては、本発明による方法により豚関節軟骨を用いて細胞外基質膜を製造する方法についてのみ記述しているが、他の動物の軟骨を用いて細胞外基質膜を製造することは当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0049】
また、下記の実施例においては、本発明の具体例による細胞外基質膜の製造方法及び脱細胞化された細胞外基質膜についてのみ例示しているが、具現例により得られた軟骨細胞/ECM膜にさらに軟骨細胞を多数回接種培養してより高い引張り強度を有する厚くて細胞外基質膜を製造することは当業者にとって自明である。
【0050】
さらに、本発明による方法を用いて軟骨の他に細胞外基質を生産する他の体細胞を用いて細胞外基質膜を製造することは、当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0051】
実施例1:豚軟骨細胞の分離
豚コレラ及びその他のウィルスや伝染病のない生後2週間経過の小豚を動物倫理法に従い過量麻酔させて致死させた。無菌環境下で豚の膝関節から軟骨のみを採取した。採取した軟骨を無菌作業台に載せて細断した後、0.1%のコラゲナーゼにより12時間処理し、0.4μmフィルターを用いて細胞のみをろ過した後、遠心分離により軟骨細胞を分離した。
【0052】
実施例2:軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造
実施例1において分離した軟骨細胞を6ウェル(6−well)培養容器に0.7×105cells/cm2の濃度にて接種した後、培養培地(DMEM+20%FBS+1%ペニシリン−ストレプトマイシン+5μg/mLアスコルビン酸)を入れて3週間培養した。培養培地は3日置きに1回ずつ交換した。3週間後にECMフィルムをPBSにて3回洗浄した後、6ウェル培養容器から引き剥がした。製造された細胞外基質膜は半透明の薄膜状を呈していた(図1)。
【0053】
実施例3:細胞外基質膜の物理化学的特性の分析
3−1:細胞外基質膜の微細構造分析
走査電子顕微鏡を用いて細胞外基質膜の微細構造を分析した。2.5%グルタルアルデヒドにより実施例2に従って製造された細胞外基質膜を1時間かけて固定した後、リン酸塩緩衝溶液により洗浄した。試料をエタノールにより脱水させた後に乾燥して電子顕微鏡(JEOL、JSM−6380、日本;20KV)により表面と断面を撮影した。その結果、表面は細胞と見られる構造体により粗く見られ、断面は約10〜20μmの厚さを示していた(図2)。
【0054】
3−2:細胞外基質膜の組織学的観察
実施例2に従って製造された細胞外基質膜を4%ホルマリン溶液により24時間かけて固定し、パラフィン浸透を行った後、包埋して切片を製作した。製作された切片をヘマトキシリン・エオシンにより染色して組織を観察した結果、細胞外基質と見られる構造体の内部に核を持った細胞が散在している形態を観察することができた(図3)。
【0055】
3−3:細胞外基質膜の引張り強度測定
万能物性測定器(Universal Testing Machine、H5K−J、HTE、Salfords、England)を用いて細胞外基質膜の引張り強度を測定した。実施例2に従って製造された細胞外基質膜を30x5mmのサイズに切断した試料を50Nロッドのセルに垂直に固定し、10mm/分の速度にて引っ張って引裂するときの力を測定した。なお、各種の試料に対して測定を行うことで平均値を求めた後、単位面積当たりの引張り強度を計算した結果、引張り強度は約25N/mm2であり、伸び率は約10%であった。
【0056】
3−4:細胞外基質膜と軟骨組織の2次構造の比較
実施例2に従って製造された細胞外基質膜の2次的な構造を豚軟骨組織と比較するために、赤外線スペクトル構造分析を行った。解像度が8cm−1のFT−IR分析機(Bomem、MB104モデル)を用いてタンパク質の主成分であるアミドを分析した結果、製造された細胞外基質膜と天然の豚軟骨組織がほとんど同様の化学的な2次構造を有することが分かった(図4)。
【0057】
実施例4:細胞外基質膜を用いた軟骨細胞培養
実施例1の方法と同様にして、約3〜4kg程度のニュージランド産の白いウサギの軟骨から軟骨細胞を分離した。分離されたウサギ軟骨細胞を1x105細胞/30mm2の濃度にて実施例2に従って製造された細胞外基質膜に接種した後、細胞の増殖能と組織の変化及び糖タンパクの発現を調査した。
【0058】
4−1:細胞の経時的な増殖能の調査
通常の動物細胞培養容器(対照群、6ウェル培養プレート、BD Falcon、USA)及び細胞外基質膜に上記のようにしてウサギの軟骨細胞をそれぞれ培養した後、1、2、4、6、8、12、14日目にMTT分析(Roche、Germany)を通じて細胞の増殖能を調査した。その結果、細胞外基質膜と商用化された培養容器の両方とも5〜6日でプラトー(plateau)に到達し、このとき、OD値は両方とも約4.0程度とほとんど同様であった(図5)。前記結果から、細胞外基質膜は、既存の培養容器と同様、軟骨細胞の増殖に適した環境を提供するということが分かる。
【0059】
4−2:組織学的変化及び糖タンパクの発現調査
上記のようにして細胞外基質膜に軟骨細胞を培養した後、それぞれ7日、14日目に試料を回収して実施例3−2の方法と同様にして組織切片を製作した。製作された切片を用いてヘマトキシリン・エオシン染色を行った結果、経時的に細胞外基質膜の表面に厚い細胞層が形成されることが分かる(図6のA)。また、糖タンパクに対して特異的なサフラニンO染色を行った結果、試料の全体に亘って糖タンパクの発現がはっきりと現れることを確認した(図6のB)。
【0060】
実施例5:脱細胞化された細胞外基質膜の製造及び特性分析
5−1:細胞外基質膜の脱細胞化
細胞外基質膜に存在する軟骨細胞を除去し、純粋な細胞外基質膜を得るために下記のようにして脱細胞化過程を行った。実施例2に従って製造された細胞外基質膜を0.1%のSDS溶液に入れ、37℃及び150rpmの条件下で24時間かけて攪拌した。次に、超音波洗浄器において1分間、0.05%のトリプシン−EDTA溶液において30分間、さらに超音波洗浄器において1分間、0.07mg/mLDNase溶液において24時間、さらに超音波洗浄器において1分間処理する過程を経た後、PBSにより少なくとも5回以上洗浄した。脱細胞化処理を経た細胞外基質膜はフードにおいて12時間乾燥後に電子式デシケーターに保管した。
【0061】
5−2:脱細胞化された細胞外基質膜の形態学的及び組織学的分析
脱細胞化された細胞外基質膜は脱細胞化前に比べて1/3程度に厚さが薄くなったが、全体的な形状、色合い及び触感は大差なかった(図7のA)。しかしながら、実施例3−1の方法と同様にして走査電子顕微鏡を用いて表面の微細構造を調査した結果、脱細胞化前の試料(図2のA)に見られる白色の細胞状構造体がなく、全体的に滑らかな形状を示していた(図7のB)。なお、前記実施例3−2の方法と同様にしてヘマトキシリン・エオシン染色を通じて組織学的観察を行った結果、脱細胞化前の試料に見られる小さくて濃い核状構造体が現れないことが分かる(図7のC)。
【0062】
5−3:脱細胞化された細胞外基質膜のDNA含量分析
実施例3−2の方法と同様にして、脱細胞前の細胞外基質膜及び脱細胞化された細胞外基質膜の試料切片を作成した後、200ng/mlのDAPI[2−(4−アミジノフェニル)−6−インドールカルバミジンドジヒドロクロライド]溶液により染色し、蛍光顕微鏡により観察した。その結果、脱細胞前の試料においては核構造体内にDNA成分がはっきり観察されたが、脱細胞化された試料においては蛍光染色されたDNA成分が全く現れなかった(図8のA)。脱細胞化された細胞外基質膜におけるDNA除去効果はHoechest 332582染色試料を用いてDNAを定量的に分析した結果においても現れた(図8のB)。
【0063】
5−4:脱細胞化された細胞外基質膜の成分分析
脱細胞化前の細胞外基質膜試料と脱細胞化後の細胞外基質膜試料に対して軟骨組織の主なECM成分であるコラーゲンと糖タンパクの含量及び合計のタンパク質含量を比較分析した。その結果、脱細胞化された細胞外基質膜の場合、脱細胞前に比べて単位重量当たりのコラーゲン及び糖タンパクの含量がかなり低減されていたが、タンパク質含量には大差ないことが分かる(図9)。
【0064】
コラーゲン含量の測定は、下記のようにして行われた。乾燥した細胞外基質膜試料を1N塩酸1mLに添加して60℃の温度条件下で一日中(24時間)放置した後、最終濃度2Nの水酸化ナトリウム(NaOH)溶液に入れて120℃の温度条件下で20分間高圧滅菌して加水分解させた。ここに450μLのクロロアミンT試薬を添加し、室温において25分間放置し、発色のためにエンリッヒ試薬(Endlich’s reagent)(1M)500μLを添加して、60℃の温度条件下で20分間放置した後、550nmの波長における吸光度を測定した。コラーゲンの最終濃度はヒドロキシプロリン標準曲線を用いて計算した。
【0065】
糖タンパク含量の測定は、下記のようにして行われた。乾燥された細胞外基質膜をパパイン溶液1mLに入れ、60℃の温度条件下で24時間かけて溶解させた後、10、000rpmにおいて3分間遠心分離して上澄液を試料として使用した。96ウェル培養皿に前記試料を50μLずつ分注し、200μLのDMB発色溶液(3次数1LにDMB16mg、95%エタノール5mL、ギ酸3mL及び1M水酸化ナトリウム25.6mLを添加した溶液;pH3.5)を添加した後、室温において30分間反応させ、530nmの波長における吸光度を測定した。コンドロイチンサルフェートCを用いて標準曲線にした後、試料の濃度を算出した。
【0066】
試料の合計のタンパク質含量を、下記のようにして測定した。前記糖タンパク含量測定時と同様に、パパイン溶液から溶出された細胞外基質膜抽出物を96ウェル培養板に1/10、1/20及び1/40の濃度に希釈して20μLずつ入れ、BCA反応溶液(Pierce、USA)を200μLずつ入れた後、常温下で30分間反応させた。試料の吸光度を562nmにおいて測定した後、牛血清アルブミン(BSA、2mg/mL)により製作した標準曲線を用いて最終濃度を算出した。
【0067】
5−5:脱細胞化された細胞外基質膜の2次的構造分析
前記実施例3及び4の方法と同様にしてFT−IR分析を通じて脱細胞前と脱細胞後の細胞外基質膜の2次的な構造を分析した。その結果、両試料における全体的な吸光度は同様であり、アミドに対する分析においても同様な構造を有することが分かる(図10)。
【0068】
実施例6:重なり合う強化細胞外基質膜の製造
実施例5の方法のように脱細胞化された細胞外基質膜をプレス圧着方法により二重、三重に重ね合わせて厚さと強度が強化された細胞外基質膜を製造した。多重に強化された細胞外基質膜の形状は以前と大差なく、厚さはそれぞれ3.3μm(一重)、6.6μm(二重)、10μm(三重)と測定されて、3重の試料の場合、脱細胞化前の細胞外基質膜と同様な値を示した。これらの細胞外基質膜の引張り強度と伸び率を実施例3−3の方法と同様にして測定した。
【0069】
その結果、脱細胞化された細胞外基質膜(一重)の引張り強度測定値は脱細胞化前の細胞外基質膜に比べて低くなったが、単位面積当たりの引張り強度には大差なかった(図11)。また、脱細胞化された細胞外基質膜を二重、三重に強化した場合、全体的な引張り強度と単位面積当たりの引張り強度が両方とも増大した。脱細胞前の試料と同様な厚さを有する三重の試料の場合、約3.5倍の引張り強度を示した。伸び率も脱細胞化後に僅かに減少したが、多重に強化することによりそれが増大する結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上詳述したように、本発明は、軟骨細胞から自家生産された細胞外基質を含有する膜状の支持体を製造する方法及び前記方法により製造された細胞由来細胞外基質膜を提供することができる。本発明による細胞由来細胞外基質膜支持体は、軟骨細胞が分泌した細胞外基質により構成されて生体適合性に優れているだけではなく、軟骨に特異的な免疫拒否を免除する効果があり、移植に適した引張り強度を有していることから、軟骨再生に使用される骨膜や人工的に製作したコラーゲン膜を代替できるだけではなく、骨硬膜の移植材及び皮膚欠損を修復するための天然的な細胞外基質膜、細胞移植材及び成長因子の伝達体として使用可能である。
【0071】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されないことは明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらに等価の記載により定義されると言える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のステップを含むことを特徴とする、軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造方法:
(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後、その軟骨細胞を培養するステップと、
(b)前記培養された軟骨細胞から軟骨細胞/細胞外基質膜を得るステップと、
(c)前記得られた軟骨細胞/細胞外基質膜(ECM)構造物を乾燥して細胞外基質膜を得るステップ。
【請求項2】
(d)前記得られた細胞外基質膜に軟骨細胞を再接種した後、再培養してより高い引張り強度を有する厚い細胞外基質膜を得るステップをさらに含むこと特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物が豚であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動物が人間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培養ステップにおいて生体活性因子をさらに添加することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記生体活性因子が、インシュリン類似成長因子(IGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)、形質転換成長因子−α(TGF−α)、形質転換成長因子−β(TGF−β)、骨形成タンパク質(BMP)、血小板由来成長因子(PDGF)、角質細胞成長因子(KGF)、表皮細胞成長因子(EGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、造血促進因子(EPO)、顆粒大食細胞成長因子(GM−CSF)、顆粒細胞成長因子(G−CSF)、神経細胞成長因子(NGF)、ヘパリン結合(EGF)、インターフェロン、組織活性化ペプチド、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)及びインターロイキン−8(IL−8)より成る群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記培養ステップにおいて培養液を超音波で処理するか、または培養液に物理的な圧力を加えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(c)における乾燥が、軟骨細胞/細胞外基質(ECM)膜構造物を−15〜−25℃の温度条件下で冷凍及び解凍する手続きを3〜5回繰り返し行った後、自然乾燥若しくは凍結乾燥することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記軟骨細胞を培養するステップにおいて、筋源細胞、筋肉細胞、心筋細胞、神経細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、骨細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の細胞と一緒に培養することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の方法によって製造された細胞外基質膜(ECM)。
【請求項11】
請求項10に記載の細胞外基質膜から細胞を除去することを特徴とする脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法。
【請求項12】
前記脱細胞化が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性剤、低張性溶液、DNase、RNase及び超音波よりなる群から選ばれるいずれか1種以上によって処理することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法によって製造された、細胞化された細胞外基質膜。
【請求項14】
下記のステップを含む、脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法:
(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後に培養することによって、軟骨細胞/細胞外基質膜を生成するステップと、
(b)前記生成された軟骨細胞/細胞外基質膜から軟骨細胞を除去して脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を得るステップと、
(c)前記の脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥して脱細胞化された細胞外基質膜を得るステップ。
【請求項15】
(b)ステップの 軟骨細胞の除去が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性剤、低張性溶液、DNase、RNase及び超音波よりなる群から選ばれるいずれか1種以上によって処理することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法により製造された、脱細胞化された細胞外基質膜。
【請求項17】
請求項10に記載の細胞外基質膜(ECM)、請求項13及び請求項16に記載の脱細胞化された細胞外基質膜よりなる群から選ばれるいずれか1種以上を多重に重ね合わせて膜厚を増加させることを特徴とする、強化細胞外基質膜の製造方法。
【請求項18】
請求項10に記載の細胞外基質膜(ECM)、請求項13及び請求項16に記載の脱細胞化された細胞外基質膜の中よりなる群から選ばれるいずれか1種以上を加工することを特徴とする、種々の形状の細胞外基質膜の製造方法。
【請求項19】
請求項10に記載の細胞外基質膜(ECM)、請求項13及び請求項16に記載の脱細胞化された細胞外基質膜の中いずれか1種以上を軟骨細胞培養皿において乾燥させた後、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜の表面に細胞を接種することを特徴とする、細胞が付着された細胞外基質膜の製造方法。
【請求項20】
前記細胞が軟骨細胞、皮膚細胞、神経細胞、筋肉細胞、膵臟細胞、肝細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法によって、製造された細胞が接種された細胞外基質膜を含む細胞治療剤。
【請求項22】
脳硬膜欠損補完用または再生用、皮膚再生用、軟骨再生用、内部臓器止血用及び内部臓器組織再生用であることを特徴とする、請求項21に記載の細胞治療剤。
【請求項23】
請求項10に記載の細胞外基質膜(ECM)、請求項13及び請求項16に記載の脱細胞化された細胞外基質膜よりなる群から選ばれるいずれか1種以上に成長因子を付着することを特徴とする、成長因子が付着された細胞外基質膜の製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法によって製造された成長因子が付着された細胞外基質膜を重ね合わせることを特徴とする、成長因子放出用の強化細胞外基質膜。
【請求項25】
請求項23に記載の方法により製造された成長因子が付着された細胞外基質膜を含む、成長因子放出用の薬物伝達体。
【請求項26】
請求項24に記載の成長因子放出用の強化細胞外基質膜を含む、成長因子放出用の薬物伝達体。
【請求項1】
下記のステップを含むことを特徴とする、軟骨細胞由来細胞外基質膜の製造方法:
(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後、その軟骨細胞を培養するステップと、
(b)前記培養された軟骨細胞から軟骨細胞/細胞外基質膜を得るステップと、
(c)前記得られた軟骨細胞/細胞外基質膜(ECM)構造物を乾燥して細胞外基質膜を得るステップ。
【請求項2】
(d)前記得られた細胞外基質膜に軟骨細胞を再接種した後、再培養してより高い引張り強度を有する厚い細胞外基質膜を得るステップをさらに含むこと特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物が豚であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動物が人間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培養ステップにおいて生体活性因子をさらに添加することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記生体活性因子が、インシュリン類似成長因子(IGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)、形質転換成長因子−α(TGF−α)、形質転換成長因子−β(TGF−β)、骨形成タンパク質(BMP)、血小板由来成長因子(PDGF)、角質細胞成長因子(KGF)、表皮細胞成長因子(EGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、造血促進因子(EPO)、顆粒大食細胞成長因子(GM−CSF)、顆粒細胞成長因子(G−CSF)、神経細胞成長因子(NGF)、ヘパリン結合(EGF)、インターフェロン、組織活性化ペプチド、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)及びインターロイキン−8(IL−8)より成る群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記培養ステップにおいて培養液を超音波で処理するか、または培養液に物理的な圧力を加えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(c)における乾燥が、軟骨細胞/細胞外基質(ECM)膜構造物を−15〜−25℃の温度条件下で冷凍及び解凍する手続きを3〜5回繰り返し行った後、自然乾燥若しくは凍結乾燥することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記軟骨細胞を培養するステップにおいて、筋源細胞、筋肉細胞、心筋細胞、神経細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、骨細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の細胞と一緒に培養することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の方法によって製造された細胞外基質膜(ECM)。
【請求項11】
請求項10に記載の細胞外基質膜から細胞を除去することを特徴とする脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法。
【請求項12】
前記脱細胞化が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性剤、低張性溶液、DNase、RNase及び超音波よりなる群から選ばれるいずれか1種以上によって処理することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法によって製造された、細胞化された細胞外基質膜。
【請求項14】
下記のステップを含む、脱細胞化された細胞外基質膜の製造方法:
(a)動物由来軟骨から軟骨細胞を分離した後に培養することによって、軟骨細胞/細胞外基質膜を生成するステップと、
(b)前記生成された軟骨細胞/細胞外基質膜から軟骨細胞を除去して脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を得るステップと、
(c)前記の脱細胞化された細胞外基質(ECM)膜構造物を乾燥して脱細胞化された細胞外基質膜を得るステップ。
【請求項15】
(b)ステップの 軟骨細胞の除去が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、変性剤、低張性溶液、DNase、RNase及び超音波よりなる群から選ばれるいずれか1種以上によって処理することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法により製造された、脱細胞化された細胞外基質膜。
【請求項17】
請求項10に記載の細胞外基質膜(ECM)、請求項13及び請求項16に記載の脱細胞化された細胞外基質膜よりなる群から選ばれるいずれか1種以上を多重に重ね合わせて膜厚を増加させることを特徴とする、強化細胞外基質膜の製造方法。
【請求項18】
請求項10に記載の細胞外基質膜(ECM)、請求項13及び請求項16に記載の脱細胞化された細胞外基質膜の中よりなる群から選ばれるいずれか1種以上を加工することを特徴とする、種々の形状の細胞外基質膜の製造方法。
【請求項19】
請求項10に記載の細胞外基質膜(ECM)、請求項13及び請求項16に記載の脱細胞化された細胞外基質膜の中いずれか1種以上を軟骨細胞培養皿において乾燥させた後、前記細胞外基質膜または前記脱細胞化された細胞外基質膜の表面に細胞を接種することを特徴とする、細胞が付着された細胞外基質膜の製造方法。
【請求項20】
前記細胞が軟骨細胞、皮膚細胞、神経細胞、筋肉細胞、膵臟細胞、肝細胞及び幹細胞よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法によって、製造された細胞が接種された細胞外基質膜を含む細胞治療剤。
【請求項22】
脳硬膜欠損補完用または再生用、皮膚再生用、軟骨再生用、内部臓器止血用及び内部臓器組織再生用であることを特徴とする、請求項21に記載の細胞治療剤。
【請求項23】
請求項10に記載の細胞外基質膜(ECM)、請求項13及び請求項16に記載の脱細胞化された細胞外基質膜よりなる群から選ばれるいずれか1種以上に成長因子を付着することを特徴とする、成長因子が付着された細胞外基質膜の製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法によって製造された成長因子が付着された細胞外基質膜を重ね合わせることを特徴とする、成長因子放出用の強化細胞外基質膜。
【請求項25】
請求項23に記載の方法により製造された成長因子が付着された細胞外基質膜を含む、成長因子放出用の薬物伝達体。
【請求項26】
請求項24に記載の成長因子放出用の強化細胞外基質膜を含む、成長因子放出用の薬物伝達体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−504093(P2010−504093A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529093(P2009−529093)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002033
【国際公開番号】WO2008/035843
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509081768)リージェンプライム カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】REGENPRIME CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】204 Trebo Officetel,26−25,Uman−dong,Paldal−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,442−816,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002033
【国際公開番号】WO2008/035843
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509081768)リージェンプライム カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】REGENPRIME CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】204 Trebo Officetel,26−25,Uman−dong,Paldal−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,442−816,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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