説明

細胞移植のための血管形成環境を創出する組成物および方法

【課題】疾患や損傷のために患者自身の臓器機能が失われた、または、障害を受けた場合、細胞、類臓器、臓器または組織を移植し、人工臓器を創出する用具の開発が求められている。
【解決手段】本発明は、一般に、第一位置から第二位置への細胞移動、および、第二位置での細胞の保持を促進するのに適した生体適合性用具に関する。特に、本発明は、第一位置から第二位置への細胞移動および第二部位での当該細胞の保持を促進できる少なくとも1種類の医薬品が装填された生体適合性支持体を含むインプラントに関する。当該の少なくとも1種類の医薬品が、インプラント部位での、またはインプラント部位近くでの血管形成を促進する。植え込まれた支持体の血管形成は、当該支持体内部に任意に組み入れられた細胞の生存を増強する。本発明の支持体の植え込みによる疾患または損傷の治療法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、一般に、細胞の支持および哺乳動物への植え込みに適した生体適合用具であって、当該用具が当該用具に少なくとも1種類の医薬品を組み入れた生体適合用具に関する。特に、当該医薬品は、細胞に対する化学誘引物質である。化学誘引物質は、植え込み部位への細胞の走化性、および植え込み部位での細胞の保持、を促進する。
【0002】
〔発明の背景〕
疾患や損傷のために患者自身の臓器機能が失われた、または、障害を受けた場合、細胞、類臓器、臓器または組織を移植(transplanting)し、人工臓器を創出する用具の開発が求められている。当該用具は、レシピエント内の特定部位に移植細胞(transplanted cells)を送達することができる。移植細胞の治療応用は、例えば、肝不全治療のための肝細胞、慢性疼痛のためのクロマフィン細胞、血友病に対して凝血因子を産生する細胞、糖尿病治療のための膵島またはインスリン産生細胞、パーキンソン病、または、アルツハイマー病などの神経変性疾患に対して神経増殖因子を産生する細胞、および、心臓血管疾患治療に対する心臓血管細胞を含むことができる。
【0003】
大勢が、インビトロで細胞が付着できる三次元マトリックスまたは支持体を形成することによって、細胞移植(transplantation)の限界を克服する試みを行った。しかし、当該支持体の物理的性質は、酸素および栄養素の細胞への拡散を制限する。それは、当該栄養素を運搬し、老廃物を除去するのに十分な脈管構造が欠如しており、それによって、移植細胞への虚血環境を生じるからである。その結果、細胞は、いったんレシピエントに埋め込まれると、急速に死滅するか、機能停止する。
【0004】
これまでの試みは、前記支持体への増殖因子の組み入れに焦点を合わせていた。これらの因子は、血管形成反応を促進し、インプラントの生存を増強する。この手法は、血小板由来増殖因子(PDGF-BB)のような増殖因子と血管内皮細胞増殖因子(VEGF)または塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)との組み合わせが、三次元構成体から送達される場合のみ、限界有効性を示している。組織工学における主な難題は、新規血管の形成に必要とされる正常な血管形成反応の再現が非常に達成困難である点であり、それは、安定な血管形成に必要な増殖因子の正確な性質、用量および配列が、それほど明確でないからである。
【0005】
幹細胞は、新規血管組織の発生を引き起こすことができる。そのメカニズムは明らかでないが、幹細胞は、内皮細胞に分化し、血管形成因子を分泌することができる、という仮説が立てられている。この幹細胞介在新生血管形成は、損傷に反応して組織が正常に修復するメカニズムであると考えられる。例えば組織酸素レベルの低下といった組織に対するダメージは、支質細胞由来因子-1(SDF-1)の発現を増加させる。このタンパク質は、幹細胞への強力な化学誘引物質であり、ケモカインレセプターCXCR4への結合によって組織中での当該幹細胞の保持を仲介する(アスカリ(Askari)らによる(2003年), Lancet 363: 697-703、ジャクソン(Jackson)らによる(2001年), J. Clin Invest. 107: 1395-1402、クアイニ(Quaini)らによる(2002年), N. Engl. J. Med. 346: 5-15)。いったん正常な組織酸素レベルが回復すると、SDF-1の発現は、基礎レベルまで減少し、当該タンパク質(proitein)は、生体から除去される。いったんこれが起こると、新生血管形成部位に存在する幹細胞は、もはや保持されない。その結果、このメカニズムは、追加処置なしでは、レシピエント哺乳動物の身体に導入されるインプラントの血管形成を促進するには不十分であろう。
【0006】
本明細書に記述される研究結果は、インプラント部位または周囲の血管形成が、細胞の当該インプラントへの走化性と当該インプラント中の細胞保持を促進することによって増強されることを指摘している。本発明の構成体は、当該構成体周辺の脈管構造を増加させ、当該構成体の機能を高めるようにデザインされた所望の薬品または複数の薬品(agent(s))を装填された生物分解性支持体を提供する。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明は、治療細胞の生存可能性を向上させる、哺乳動物内部に血管形成移植部位を創出する用具を使用することによって、過去に研究者らによって経験された問題を回避する。本発明は、疾患または損傷の有効治療のための細胞、組織、類臓器または臓器の移植用インプラントを提供する。本インプラントは、好ましくは、本インプラント周囲および内部に血管形成床を創出するようにデザインされた医薬品または複数の医薬品を含有する多孔質支持体を含む。当該血管形成床は、任意に、および、好ましくは、本インプラント内に含有される移植細胞、組織、類臓器または臓器の生存率を有意に増強できる。好ましい医薬品は、幹細胞またはプロジェニター細胞への化学誘引物質である因子を含む。典型的な実施態様は、ケモカインレセプターCXCR4への配位子である、化学誘引物質の類を用いる。最も好ましい実施態様は、CXCR4配位子支質細胞由来因子-1(SDF-1)を用いる。ヒトSDF-1のアミノ酸配列は、受入れ番号P48061, gi:1352728でNCBIデータベースから入手できる。ウェブサイトncbi.nlm.nih.gov.を参照されたい。このヒトSDF-1の配列は、以下にSEQ ID NO:1として提供されている。
SEQ ID1:
1 MNAKVVVVLV LVLTALCLSD GKPVSLSYRC PCRFFESHVA 41
RANVKHLKIL NTPNCALQIV ARLKNNNRQV CIDPKLKWIQ 81
EYLEKALNKR FKM
【0008】
代替実施態様では、本発明のインプラントは、さらに、炎症を軽減し、線維症を軽減し、および/または、血管形成を増強する医薬化合物を組み入れられることができる。
【0009】
本発明は、容易に到達できる部位における高度血管形成環境の確立によって、好ましくは最小侵襲性技術によって、移植細胞または組織の異所性機能的生存可能性を保持するために確立されることが必要な特異な環境を考慮している。さらに、脈管構造を移植細胞または組織に近づけ、長期間に亘る機能的生存可能性の維持に要求される酸素および栄養素への至適取り入れを提供する。
【0010】
本発明のインプラントの支持体は、フォーム、またはフォームに封入され、フォーム内に配置された繊維状マットから構築される。代替実施態様では、当該支持体は、支持体壁内に相互連結する複数の空隙を含有する。これらの空隙は、治療細胞が配置され、当該支持体内に脈管構造の内部増殖を可能にする容積を形成する。当該支持体は、好ましくは、生物分解性である。生物分解性ポリマーは、生体内で経時的に容易に分解し、生物分解された断片は、慢性異物反応を誘発しない。
【0011】
本発明のインプラントは、血管形成を促進し、当該インプラント中に任意に組み入れられる所望の数の治療細胞を組み入れるのに十分なサイズである限り、どのような形状であることもできる。本発明のインプラントの支持体は、例えば成形、押出し、製織など、当業者に周知のいずれかの方法によって製造されることができる。
【0012】
前記インプラント中で治療細胞が望ましい場合、前記支持体は、移植前に、細胞または組織を接種されることができる。別法として、当該支持体は、移植され、移植後、細胞または組織を接種されることができる。
【0013】
本発明のインプラントに組み入れられる少なくとも1種類の化学誘引物質は、レシピエント哺乳動物内で遠隔部位からインプラント部位に自己細胞の走化性を促進する。「走化性」は、化学薬品に対して、最高濃度の化学薬品の方向に向かう、細胞の移動である。別法として、好ましくは、インプラント部位に向かって移動する細胞が、レシピエント哺乳動物内に導入される。これらの細胞は、発生源が同種異系、異種または自己であることができる。
【0014】
本発明は、本明細書に開示されたインプラントを使って哺乳動物内部位の血管形成を促進する方法を提供する。好ましい実施態様では、CXCR4陽性細胞への化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品が、本インプラントの構築に使用される支持体に組み入れられる。組み入れは、少なくとも1種類の有効量の医薬品を前記支持体原料に添加し、その後、支持体を作製することによって達成される。代替実施態様では、当該支持体は、作製された後に、少なくとも1種類の有効量の医薬品をコートされる。
【0015】
なおも別の態様では、本発明は、疾患または損傷を治療する方法であって、本発明のインプラントを哺乳動物に植え込む段階と、CXCR4陽性細胞の化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れる段階と、任意に治療細胞または組織を組み入れる段階と、有効量のCXCR4陽性幹細胞を哺乳動物に投与する段階とを含む治療法を提供する。
【0016】
なおも別の態様では、本発明は、疾患または損傷を治療する方法であって、本発明の多孔質で生体適合性のインプラントを哺乳動物に植え込む段階と、CXCR4陽性細胞の化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れる段階と、任意に治療細胞または組織を組み入れる段階とを含む治療法を提供する。
【0017】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、支持体および少なくとも1種類の医薬品を含む生体適合性インプラントに向けられたものである。当該インプラント中の少なくとも1種類の医薬品は、インプラント部位への細胞の走化性、および、当該インプラント部位での当該細胞の保持を促進することができる。好ましくは、本発明のインプラントは、治療細胞を組み込まれ、当該医薬品が、当該インプラント部位または周囲の血管形成刺激能を介して、哺乳動物細胞の生存率を促進する。
【0018】
本発明のある態様では、当該インプラントの血管形成を促進し、支持体内に任意に組み入れられた細胞、類臓器または臓器の生存を促進する有効量の少なくとも1種類の医薬品が装填された多孔質支持体から成る生体適合性インプラントが提供される。
【0019】
「支持体」という用語は、本明細書で使用される場合、三次元構造であって、当該構造の表面上または内部で細胞を支持することができる三次元構造を指す。
【0020】
「多孔質」という用語は、本明細書で使用される場合、前記支持体内部の複数の相互連結空隙であって、当該支持体内部で栄養素および細胞の分布を可能にする複数の相互連結空隙を指す。
【0021】
「生体適合性」という用語は、前記支持体の哺乳動物内部滞留能であって、その哺乳動物に有毒な、または、望ましくない作用を誘発しないための支持体滞留能を指す。
【0022】
「生物分解性」または「吸収性」は、対象用具が哺乳動物内部の問題部位に送達された後、対象用具が自然の生物学的プロセスによって徐々に分解または吸収されることを意味する。
【0023】
「植え込み可能」という用語は、本明細書で使用される場合、デザイン、物質および使用が適切であり、それによって、哺乳動物中で安全に配置されることができるインプラントを指す。本発明のインプラントは、哺乳動物の様々な部位、特に、血管形成の改善もしくは増加、または新規血管形成が望まれる部位に植え込まれることができる。
【0024】
「マトリックス」という用語は、本明細書で使用される場合、支持体の固体成分を含む材料を指す。
【0025】
「治療細胞」という用語は、疾患または損傷の有効治療法として用いられるいずれかの細胞、類臓器もしくは組織を指す。
【0026】
「化学誘引物質」という用語は、化学薬品(chemical agent)であって、当該薬品の最高濃度の方向への細胞の移動を誘発する化学薬品を指す。
【0027】
好ましい実施態様では、少なくとも1種類の医薬品は、本発明の支持体の壁内に組み入れられる、CXCR陽性細胞に対する化学誘引物質である。最も好ましい実施態様では、当該化学誘引物質は、タンパク支質細胞由来因子-1(ミネソタ州、ミネアポリス所在、R&Dシステムズ(R&D systems)カタログNo.350NS010)である。代替実施態様では、当該化学誘引物質は、ポリペプチドSEQ ID 1のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0028】
支持体
当業者は、本発明の支持体の形成に適した材料の選択が、いくつかの要因に依存することを認識することになる。適切な材料の選択において関連性がより高い要因は、生体吸収(または生物分解)反応速度、インビボでの機械的性能、細胞付着、増殖、遊走および分化に関する当該材料への細胞反応、および、生体適合性を含む。生体外および生体内での材料の反応をある程度決定する他の関連要因は、化学組成、成分の空間的分布、分子量、結晶度、および、ポリマー材料の場合にはモノマー含量を含む。当該材料の表面の性状も、所望の親水性の達成に至適化されることができる。本発明の支持体の構築に用いられる合成および天然材料は、米国特許第5,770,417号、第6,022,743号、第5,567,612号、第5,759,830号、第6,626,950号、第6,534,084号、第6,306,424号、第6,365,149号、第6,599,323号、第6,656,488号および第6,333,029号に開示されている。本発明の用具に使用されるポリマーを構築する典型的方法は、米国特許出願第20040062753 A1号および米国特許第4,557,264号に開示されている。
【0029】
本発明のある実施態様では、前記支持体は、多孔質であり、任意に少なくとも1種類の医薬品を含有する。別法として、当該支持体は、多孔質、生体適合性のポリマーマトリックス(フォーム成分)で封入され、ポリマーマトリックス内部に配置された生体適合性繊維(繊維成分)から成る。当該支持体もまた、少なくとも1種類の医薬品も含む。当該支持体の多孔度は、用途および植え込み部位に応じて変動することができる。多孔度は、不織成分中の繊維密度またはフォーム成分形成に使用されるポリマー溶液の濃度または量などの様々な手段によって制御することができる。細胞は、当該繊維、および、当該繊維を封入するマトリックス壁の両方に付着できる。当該マトリックス壁は、埋め込まれた用具の血管形成を促進し、組み入れられた細胞の生存を促進するのに有効な量で、植え込み部位で局所的に放出される1種類以上の医薬品を組み入れる。
【0030】
本発明の支持体は、生物分解性であることも、非生物分解性であることもできる。非生物分解性複合支持体の場合、繊維と当該繊維を封入するマトリックスの一方または両方は、非生物分解性材料、例えばポリエチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シリコーン、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリウレタンを含む非生物分解性材料から形成できるが、それらに制約されない。
【0031】
しかし、好ましくは、本発明の支持体は、生物分解性である。適切な生物分解性材料の例は、脂肪族ポリエステル、シュウ酸ポリアルキレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオルソエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、ポリ無水物およびポリフォスファゼンなどの生物分解性合成ポリマーを含む。
【0032】
脂肪族ポリエステルは、本発明による支持体形成での使用に好ましい生物分解ポリマーの1つである。脂肪族ポリエステルは、線状、枝分かれまたは星形構造を有するホモポリマーまたはコポリマー(ランダム、ブロック、セグメント、テーパーブロック(tapered blocks)、グラフト(graft)、トリブロック(triblock)など)であることができる。脂肪族ホモポリマーおよびコポリマーの形成に適したモノマーは、乳酸、ラクチド(L-、D-、メソ、および、L、D混合物を含む)、グリコール酸、グリコリド、ε-カプロラクトン、p-ジオキサノン、炭酸トリメチレン、ポリオキサエステル、δ-バレロラクトン、β-ブチロラクトン、ε-デカラクトン、2,5-ジケトモルフォリン、ピバロラクトン、α,α-ジエチルプロピオラクトン、炭酸エチレン、シュウ酸エチレン、3-メチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン、3,3-ジエチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン、γ-ブチロラクトン、1,4-ジオキセパン-2-オン、1,5-ジオキセパン-2-オン、6,6-ジメチル-ジオキセパン-2-オンおよび6,8-ジオキサビシクロクタン-7-オンを含むが、それらに制約されない。これらのポリマーは、技術の熟練者によって容易に合成されることができ、または、Birmingham Polymers, Inc(Birmingham, Al)などの様々な供給業者から市販されている。
【0033】
本発明の支持体の形成において、エラストマーコポリマーも特に有用である。エラストマー支持体は、剛性非エラストマー支持体に比較して、植え込み部位への磨耗性が低く、手術部位でより扱い易い。このようなポリマーは、米国特許第6,365,149号で説明されており、当該特許文献は、参照することによって本明細書に組み入れられている。皮下嚢、網などの部位に支持体を配置する場合、または、膵臓などの臓器周囲で当該支持体を包む場合、これは特に有利である。適切なエラストマーポリマーは、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中でポリマー溶液1デシリットル当り0.1グラムが25℃で測定された場合、ほぼ1.2 dL/g−ほぼ4 dL/g、さらに好ましくはほぼ1.2 dL/g−ほぼ2 dL/g、最も好ましくはほぼ1.4 dL/g−ほぼ2 dL/gの範囲の固有粘度を有するものを含む。さらに、適切なエラストマーは、高い伸び百分率および低い弾性率を発揮するが、良好な引張強度および良好な回復特性を有する。
【0034】
エラストマーコポリマーが使用される好ましい実施態様では、前記支持体が形成されるエラストマーは、好ましくは、ほぼ200パーセントよりも大きい、さらに好ましくはほぼ500パーセントよりも大きい伸び百分率を示す。適切なエラストマーは、これらの伸びおよび弾性率特性に加えて、ほぼ3,448,000Pa(500ポンド/平方インチ)よりも大きい、好ましくはほぼ6,895,000Pa(1,000ポンド/平方インチ)よりも大きい引張強度、および、ほぼ8,929g/cm(50ポンド/インチ)よりも大きい、好ましくはほぼ14,290g/cm(80ポンド/インチ)よりも大きい引裂強度も有する必要がある。
【0035】
典型的な生物分解性、生体適合性エラストマーは、ε-カプロラクトン対グリコリドのモル比がほぼ35/65〜ほぼ65/35、さらに好ましくは35/65〜45/55であるε-カプロラクトンとグリコリドのエラストマーコポリマー、ε-カプロラクトン対ラクチドのモル比がほぼ35/65〜ほぼ65/35、さらに好ましくは35/65〜45/55であるε-カプロラクトンとラクチドのエラストマーコポリマー、ラクチド対グリコリドのモル比がほぼ95/5〜ほぼ85/15のラクチドとグリコリドのエラストマーコポリマー、p-ジオキサノン対ラクチドのモル比がほぼ40/60〜ほぼ60/40であるp-ジオキサノンとラクチドのエラストマーコポリマー、ε-カプロラクトン対p-ジオキサノンのモル比がほぼ30/70〜ほぼ70/30であるε-カプロラクトンとp-ジオキサノンのエラストマーコポリマー、p-ジオキサノン対炭酸トリメチレンのモル比がほぼ30/70〜ほぼ70/30であるp-ジオキサノンと炭酸トリメチレンのエラストマーコポリマー、炭酸トリメチレン対グリコリドのモル比がほぼ30/70〜ほぼ70/30である炭酸トリメチレンとグリコリドのエラストマーコポリマー、炭酸トリメチレン対ラクチドのモル比がほぼ30/70〜ほぼ70/30である炭酸トリメチレンとラクチドのエラストマーコポリマー、または、それらの混合物を含むが、それらに制約されない。典型的なエラストマーコポリマー、および、エラストマーコポリマーからの支持体の形成法は、米国特許第6,534,084号、米国特許第6,365,149号、米国特許第6 423,252号および米国特許第6,355,699号に開示されている。
【0036】
別の実施態様では、ポリマー混合物を使って、グラジェント様構造(gradient-like architecture)である組成から別の組成に遷移する構造を形成するのが望ましい。このグラジェント様構造を有する複合支持体は、天然に産する組織の構造を修復または再生するための組織工学応用において特に有利である。例えば、ε-カプロラクトンとグリコリドのエラストマーコポリマーを、ε-カプロラクトンおよびラクチドの弾性コポリマーと混合する(例、ε-カプロラクトンとラクチドの弾性コポリマーを、グリコリドと混合する(例、モル比ほぼ5/95で))ことによって、より柔軟なスポンジ状材料からより硬質の、より剛性の高い材料に遷移する支持体が形成されることができる。明らかに、本開示を利用できる当業者は、同様のグラジェント効果を得るために、あるいは、異なるグラジェント、例えば異なる分解プロファイル(degradation profiles)、応力プロファイル(stress response profiles)、または異なる弾力度を提供するために、他のポリマー混合物が使用することができる。このような構造は、国際公開番号WO02051463に開示されており、参照することによって本明細書に組み入れられている。
【0037】
複合支持体によって、多孔質マトリックスに封入された繊維は、スレッド、ヤーン、ネット、レース、フェルトおよび不織マットから選択される形態で構成されることができる。好ましくは、当該繊維は、不織繊維マットの形態である。本発明の複合支持体の繊維不織マットの作製に、既知の湿式または乾式加工技術が使用されることができる(1967年、イギリス、マンチェスター所在のテクスタイルトレードプレス(Textile Trade Press)、ラドコ・クルクマ(Radko Krema)による「不織繊維(Non-woven textiles)」)。
【0038】
好ましくは、複合支持体の不織繊維マットを形成する繊維は、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ε-カプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、または、それらのコポリマーおよび混合物などの生物分解性ポリマーから形成される。
【0039】
本明細書に記述される支持体の多孔質マトリックスは、好ましくは、ポリマーフォーム(polymeric foam)の形態である。複合支持体のフォーム支持体、または複合支持体のフォームマトリックスは、当業者に周知の様々な技術によって形成されることができる。例えば、ポリマー出発材料は、凍結乾燥法、超臨界溶媒発泡法(supercritical solvent foaming)、ガス射出押出法、ガス射出成形法、または、抽出可能材料(例、塩、糖または類似の適切な材料)を使用する鋳造によって形成されることができる。
【0040】
ある実施態様では、本発明の支持体は、凍結乾燥法などのポリマー−溶媒相分離技術によって形成される。これらのフォームの調製に関与する段階は、ポリマー凍結乾燥に適した溶媒の選択、および当該溶媒中のポリマーの均質溶液の調製を含む。次に、当該ポリマー溶液は、凍結および真空乾燥サイクルにかけられる。凍結段階は、当該ポリマー溶液を相分離し、真空乾燥段階は、昇華および/または乾燥によって溶媒を除去し、よって、多孔質ポリマーマトリックス、または相互連結された開放気泡多孔質フォーム(open-cell,porous foam)が得られる。
【0041】
ある実施態様では、本発明の複合支持体は、凍結乾燥法などのポリマー−溶媒相分離技術によって形成される。これらのフォームの調製に関与する段階は、ポリマー凍結乾燥に適した溶媒の選択および当該溶媒中のポリマーの均質溶液の調製を含む。次に、当該ポリマー溶液は、凍結および真空乾燥サイクルにかけられる。凍結段階は、当該ポリマー溶液を相分離し、真空乾燥段階は、昇華および/または乾燥によって溶媒を除去し、よって、多孔質ポリマーマトリックス、または相互連結された開放気泡多孔質フォーム(open-cell,porous foam)が得られる。
【0042】
適切な溶媒は、フォームマトリックス形成用に生物分解性ポリマーを溶解し、前記複合支持体の繊維(例、不織マット)を維持する。適切なポリマーに適合する典型的溶媒は、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、環式エーテル(例、テトラヒドロフラン(THF)、およびフッ化ジメチレン(DMF))、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、1,4-ジオキサン、ジメチルカーボネート、ベンゼン、トルエン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムおよびそれらの混合物を含むが、それらに制約されない。当業者は、適当な組み合わせを行うことができる。これらの溶媒の中でも、好ましい溶媒は、1,4-ジオキサンである。当該溶媒中の当該ポリマーの均質溶液は、標準技術を使って調製される。
【0043】
適用可能なポリマー濃度、または使用溶媒量は、使用されるポリマー、および溶媒に応じて、変動することができる。一般に、溶液中のポリマー量は、所定溶媒中のポリマーの溶解度、および添加される医薬品の放出プロファイル(release profile)を含むフォーム支持体において所望の最終特性などの要因に応じて、ほぼ0.01重量%−ほぼ90重量%の範囲であり、好ましくはほぼ0.1重量%−ほぼ30重量%の範囲である。
【0044】
本発明のなおも別の実施態様では、支持体のフォーム成分、または繊維成分は、ポリエチレングリコール、およびポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)などのヒドロゲルと化学的に架橋または化合されることができる。
【0045】
なおも別の実施態様では、本発明の支持体は、ヒアルロン酸、コラーゲン、組換えコラーゲン、セルロース、エラスチン、アルギネート、硫酸コンドロイチン、キトサン、および、小腸粘膜下組織(SIS)から成る群から選択される生体ポリマーと化合されることができる。
【0046】
本発明の支持体は、好ましくは、相互連結する細孔または空隙を含み、これらが、当該支持体への細胞の取り込み、ならびに、栄養素の運搬および/または当該支持体内の細胞の膨張を促進する。相互連結細孔は、好ましくは、ほぼ50−1000ミクロン、好ましくは50−400ミクロンのサイズの範囲であり、好ましくは、支持体全容積のほぼ70−95%である。支持体中の細孔サイズ範囲は、当該支持体調製中にプロセス段階を変更して操作されることができる。
【0047】
支持体材料は、組織の修復に有用な組織テンプレート、導管、バリアおよびリザーバーとして、広範囲に検討されている。特に、フォーム、スポンジ、ゲル、ヒドロゲル、生地、および不織構造の形態の合成および天然材料が、米国特許第5,770,417号、米国特許第 6,022,743号、米国特許第 5,567,612, 米国特許第 5,759,830, 米国特許第 6,626,950, 米国特許第6,534,084号、米国特許第6,306,424号、米国特許第6,365,149号、米国特許第 6,599,323号、米国特許第6,656,488号、米国特許第6,333,029号に開示されている方法などで、インビトロおよびインビボで使用され、生体組織を再建または再生し、ならびに、組織増殖の誘発用化学誘引物質を送達している。本発明の用具に使用される典型的ポリマーは、米国特許出願第20040062753 A1号および米国特許第4,557,264号に開示されている。
【0048】
医薬品を組み入れられた支持体を形成するには、当該医薬品は、当該支持体を形成する前に、ポリマー溶液と混合されることができる。別法として、医薬品は、作製された支持体上に、好ましくは医薬品用担体の存在下でコートされることができる。当該医薬品は、液体、微粉化固体、または、いずれかの適切な物理的形態として存在することができる。別法として、当該支持体に賦形剤が添加され、当該医薬品の放出速度を変化させることができる。代替実施態様では、CXCR4陽性細胞の化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れられた支持体は、例えば米国特許第6,509,369号に開示されている化合物など、抗炎症化合物である少なくとも1種類の医薬化合物をさらに、組み入れられる。
【0049】
さらなる実施態様では、CXCR4陽性細胞の化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れられた支持体は、例えば米国特許第6,793,945号に開示されている化合物など、抗アポトーシス化合物である少なくとも1種類の医薬化合物をさらに、組み入れられる。
【0050】
さらなる実施態様では、CXCR4陽性細胞の化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れられた支持体は、例えば米国特許第6,331,298号に開示されている化合物などの線維症抑制剤である少なくとも1種類の医薬化合物をさらに、組み入れられる。
【0051】
さらなる実施態様では、CXCR4陽性細胞の化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れられた支持体は、例えば米国特許出願第20040220393号および第20040209901号に開示されている化合物など、血管形成を増強できる少なくとも1種類の医薬化合物をさらに、組み入れられる。
【0052】
さらなる実施態様では、CXCR4陽性細胞の化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れられた支持体は、例えば米国特許出願第20040171623号に開示されている化合物など、免疫抑制化合物である少なくとも1種類の医薬化合物をさらに、組み入れられる。
【0053】
さらなる実施態様では、CXCR4陽性細胞の化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れられた支持体は、例えばTGF-β1、2および3を含むTGF-β科の構成物質、骨形成タンパク質(BMP-2、-3、-4、-5、-6、-7、-11、-12および-13)、線維芽細胞増殖因子-1および-2、血小板由来増殖因子-AAおよび-BB、多血小板血漿、インスリン増殖因子(IGF-IおよびII)、増殖分化因子(GDF-5、-6、-8、-10および-15)、血管内皮細胞由来増殖因子(VEGF)、プレイオトロフィン、エンドセリンなど、増殖因子である少なくとも1種類の医薬化合物をさらに、組み入れられる。他の医薬化合物は、例えばニコチンアミド、低酸素誘発因子1-α、グルカゴン様ペプチド-I(GLP-I)およびII、エキセンディン-4、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、テネイシン-C、トロポエラスチン、トロンビン由来ペプチド、カテリシジン、デフェンシン、ラミニン、フィブロネクチンおよびビトロネクチンなどの付着性細胞外マトリックス、タンパク質の細胞-およびヘパリン-結合ドメインを含有する生体ペプチド、例えば米国特許出願第20040209901号および第20040132729号に開示されている化合物などのMAPK阻害剤を含むことができる。
【0054】
好ましい実施態様では、少なくとも1種類の医薬品は、細胞への化学誘引物質で、本発明の支持体壁に組み入れられる。最も好ましい実施態様では、当該化学誘引物質は、タンパク質支質細胞由来因子-1(ミネソタ州、ミネアポリス所在、R&Dシステムズ(R&D systems)カタログNo.350NS010)である。
【0055】
細胞走化性を促進するのに有効な化学誘引物質の量は、使用される支持体および阻害剤の性質に応じて変動することができ、当業者によって容易に決定されることができる。一般的に言えば、化学誘引物質の有効量は、当該支持体1 cm2当りほぼ1ピコグラム−ほぼ1 mg、さらに典型的には当該支持体1 cm2当り1ピコグラム−ほぼ10μgである。
【0056】
本発明の生物分解性支持体は、緩徐な分解(主に、加水分解によって)を受け、同時に、インプラントの、または、その周辺領域の血管形成を促進するのに十分な持続期間または長期間の間、分散された医薬品を放出する。好ましくは、当該インプラントは、少なくとも1種類の医薬品の有効量、例えば当該医薬品0.0001 mg/kg/時−10 mg/kg/時の、例えば1−5,000時間、好ましくは2−800時間に亘る長期送達を促進する。この剤型は、治療対象者、疾病の重症度、処方医の判断などに応じて、必要に応じて投与されることができる。この処置または同様の処置後、当業者は、様々な調合剤を調製することができるようになる。
【0057】
インプラントの治療使用
本発明は、血管形成を促進することができる少なくとも1種類の医薬品を内部に組み入れた支持体を含むインプラントを提供する。本発明のインプラントは、幹細胞またはプロジェニター細胞の植え込み部位への走化性および植え込み部位でのそれらの保持を促進することによって血管形成を促進する。本発明のある実施態様では、幹細胞は、Askariらによる (2003), Lancet 363: 697-703に公表されているものなど、レシピエント動物内の各部位からのCXCR4陽性骨髄由来幹細胞である。代替実施態様では、幹細胞またはプロジェニター細胞は、植え込み中に哺乳動物内に導入される。しかし、幹細胞またはプロジェニター細胞は、当該支持体の植え込み後いつでも導入されることができる。これらの幹細胞またはプロジェニター細胞は、発生源が自己、同種異系または異種であることができる。投与される細胞の量および型は、治療対象者、疾病の重症度、処方医の判断などに応じて変動することになる。当業者は、様々な調合剤を調製することができるようになる。
【0058】
さらなる実施態様では、レシピエントは、各因子で治療され、例えば米国特許第6,261,546号に開示されている間葉幹細胞などの幹細胞サブタイプの増殖を増加させる。当該細胞は、本発明のインプラントの調製前に、患者から精製されることができる。次に、これらの細胞は、当該インプラントとともに投与される。
【0059】
本発明の支持体は、動物に植え込まれることができる。別法として、好ましくは、前記インプラントは、治療細胞または組織を含有し、植え込み前、または、植え込み時に当該支持体に組み入れられる。当該細胞は、当業者に既知の標準条件下で培養され、支持体への接種前に細胞数を増加させ、所望の表現型への分化を誘発することができる。別法として、治療細胞は、当該支持体に直接注入され、その後、植え込み前に、適当な生体マトリックスの増殖および沈着を促進する条件下でインビトロ培養される。当該条件を当業者は、容易に知ることができる。
【0060】
別法として、本発明のインプラントの調製後、治療細胞を含まないインプラントが患者体内部位に植え込まれることができる。当該インプラントは、当該インプラントが血管組織の浸潤を得るまで患者体内で維持されることができる。この時、治療細胞は、例えば注射などの適当な手段で当該インプラントに導入されることができる。
【0061】
前記治療細胞を支持体内に導入するには、当該支持体は、当該細胞または細胞クラスターを含有する浮遊液と接触し、インキュベートされる。インキュベーションは、植え込み直前に短期間(<1日)、あるいは、長期間(>1日)実施され、植え込み前に接種される支持体内での細胞付着、細胞増殖および細胞外マトリックス合成の増強を可能にすることができる。
【0062】
本発明は、任意に治療有効量の幹細胞またはプロジェニター細胞を有する本発明のインプラントを患者の部位に挿入することによって、疾病または損傷を治療する方法を提供する。別法として、好ましくは、当該インプラントは、治療細胞、組織または臓器を接種される。別の代替実施態様では、治療細胞を含まないインプラントが、患者内で、埋め込まれ、血管組織の浸潤が起こるまで維持される。この時、細胞は、例えば注射などの適当な手段によって当該インプラントに導入される。当該用具を埋め込まれることができる部位は、例えば肝臓、膵臓本体、腎被膜下腔、腸間膜、網、皮下嚢または腹膜などのいずれかの臨床関連部位であることができる。当該部位は、本来存在する、あるいは、例えばSertoli細胞を使って創出される免疫学的寛容部位(immunologically privileged site)である。
【0063】
本発明での投与に有用な治療細胞は、自己細胞、同種異系細胞または異種細胞を含む。本発明が糖尿病の治療を意図される場合、当該細胞は、幹細胞、膵臓前駆/プロジェニター細胞、遺伝子操作インスリン産生細胞、初代または膨張状態の部分分化もしくは完全分化膵島またはインスリン産生細胞であることができる。
【0064】
このような治療法は、他種の細胞治療法にも使用でき、例えば、肝不全治療用肝細胞、慢性疼痛用クロマフィン細胞、血友病用凝固因子を産生する細胞、パーキンソン病、またはアルツハイマー病などの神経変性疾患用の神経増殖因子を産生する細胞、ならびに、線維芽細胞、筋繊維芽細胞、心臓血管細胞、神経細胞および神経前駆細胞を含む。
【0065】
各種用途に対して治療が有効であることができる他の細胞は、プロジェニター細胞、前駆細胞、幹細胞、骨髄細胞、臍帯血細胞、血管芽細胞、内皮細胞、骨芽細胞、平滑筋細胞、腎臓細胞、線維芽細胞、筋繊維芽細胞、心臓血管細胞、神経細胞、神経前駆細胞、羊膜細胞および分娩後胎盤細胞を含むが、それらに制約されない。本発明のさらなる実施態様では、当該細胞は、遺伝子操作を受けて、治療タンパク質を産生する、または、レシピエントの免疫応答を下方調節することができる。
【0066】
本発明のインプラントに導入される細胞は、ただ1個の細胞型に限定される必要はない。本発明のインプラントは、「人工臓器」の構築を可能にし、例えば肝臓、膵臓、腎臓などの正常な臓器に認められる細胞型が、当該インプラント支持体に組み入れられる。代替実施態様では、米国特許第6,328,960号、米国特許第6,281,012号および米国特許第6,685,936号に記述されているように、細胞、例えば間葉幹細胞およびサプレッサーT細胞(suppressor T cells)などの細胞が、レシピエントの免疫応答を調節することができる。
【0067】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、それらに制約されない。
【0068】
実施例では、ポリマーおよびモノマーは、化学組成および純度(NMR、FTIR)、従来の分析技術による熱分析(DSC)および分子量によって特徴付けられた。
【0069】
ポリマーおよびコポリマーの固有粘度(I.V., dL/g)は、0.1 g/dLの濃度で、溶媒としてクロロホルムまたはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を利用して、30℃のサーモスタット制御水浴中に浸漬された50 口径(50 bore) Cannon-Ubbelhode希釈粘度計(Labovisco, Zoetermeer, Netherlands)を使って測定された。
【0070】
これらの実施例では、特定の略語が使用される。これらは、重合ε-カプロラクトンを表すPCL、重合グリコリドを表すPGAを含む。さらに、コポリマー同定前の比率は、各成分のそれぞれのモルパーセンテージを表す。
【0071】
〔実施例1〕
CXCR4+細胞のFACS分析
培養物中10日間後に、CXCR4+の蛍光励起細胞分取法(Fluorescence-activate cell sorting detection)が実施された。細胞合計2−3 x 105個が10%FBSおよび0.01%NaN3含有のDulbecco's PBS(Invitrogen, Rockville, MD) 200μLに再浮遊され、CXCR4+に対するフィコエリスリン-共役モノクロナール抗体(phycoerythrin-conjugated monoclonal antibody against CXCR4)(BD Biosciences, San Diego, CA)とともに、4℃で20分間インキュベートされた。染色後、当該細胞は、2%パラホルムアルデヒド中に固定された。FACStarフローサイトメーター(BD Biosciences, San Diego, CA)上で定量的FACSが実施された。全群が、3回繰り返しで検討された。結果は、蛍光ヒストグラムとして示される(黒、CXCR-4発現;赤、それぞれの1gG対照)。エクスビボ(ex vivo)膨張細胞は、CXCR4に対して34.8%陽性であった(図1)。
【0072】
〔実施例2〕
化学誘引分析
48-トランスウェルアッセイ変法(modified 48-trans-well assay)を使って、遊走が検討された。SDF-1は0.1%BSA補充内皮細胞基礎培地-2(Cambrex, Walkersville, MD)中で適当な濃度まで希釈され、最終希釈液700 μLが下位ウェル中に入れられた。CXCR4+細胞が、過塩素酸ジオクタデシル-テトラメチルインド-カーボシアニン(Dil)(dioctadecyl-tetramethylindo-carbocyanine perchlorate)(Molecular Probes, Inc. Eugene,OR)で染色され、当該細胞5 x 104個が300μLの0.1%BSA補充EBM-2 中に浮遊され、HTS FluoroBlokインサート(3.0μm細孔、BD Biosciences, San Diego, CA)に再接種された。37℃で5時間のインキュベーション後、フィルターが取り出され、遊走した細胞に相当する当該フィルター下面に付着した細胞数が、527 nmのフローサイトメトリーによって測定された。SDF-1は、ヒト内皮細胞(A)、骨髄由来CXCR+4細胞(B)、および、骨髄由来間葉細胞(C)の遊走を誘発した。異なる用量のSDF-1の方への当該細胞の遊走応答が、トランスウェル遊走アッセイ(transwell migration assay)によって測定された。エクスビボ膨張CXCR4+細胞は、内皮細胞または間葉細胞に比較してSDF-1への強力な用量依存性遊走を示した(図2)。
【0073】
〔実施例3〕
SDF-1含有支持体の作製
フォーム成分の製造に使用されるポリマーは、Birmingham Polymers Inc.(Birmingham, AL)製の1.45 dL/gのI.V.を有する35/65PCL/PGAコポリマーである。5/95重量比の1,4-ジオキサン溶媒中35/65PCL/PGAが計り分けられる。当該ポリマーおよび溶媒は、フラスコ中に静置され、順に、当該フラスコは、水浴に入れられ、70℃で5時間攪拌され、溶液を形成する。次に、当該溶液が、抽出用シンブル(エクストラコース多孔性(extra coarse porosity)、ASTM 170-220型(EC)を使って濾過され、フラスコ中で保存される。次に、SDF-1が、100 ng−10μg/mlの範囲で当該ポリマー溶液に添加される。
【0074】
別法として、所望濃度のSDF-1を含有する溶液中に当該支持体を浸すことによって、SDF-1が前記支持体上にコートされる。
【0075】
フォーム支持体の形成には、実験室規模の凍結乾燥機(Model Duradry, FTS Kinetics, Stone Ridge, NY)が使用される。4インチ(10.16 cm) x 4 インチ(10.16 cm)のアルミニウム鋳型に2 mmの高さまで前記ポリマー溶液が添加され、次の凍結乾燥プロトコルにかけられる:1)−17℃で60分間、2)減圧100 mT下、−5℃で60分間、3)減圧20 mT下、5℃で60分間、4) )減圧20 mT下、20℃で60分間。
【0076】
上記サイクル完了後、鋳型アセンブリが凍結乾燥機から取り出され、真空フード内で2−3時間脱気される。フォーム支持体は、窒素下で保存される。この複合支持体の孔径は、水銀ポロシオメトリー分析を使って決定される。孔径範囲は、1−300μmで、孔径中央値45μmとする。当該支持体の厚さは、ほぼ1.5μmとする。
【0077】
〔実施例4〕
膵島単離
マウス膵島単離改良法に従って、Balb/c By/J(Balb)マウスからマウス膵島が単離される(Transplantation 40:437-438, 1985)。手短に言うと、1 mg/mLのコラゲナーゼV型(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)溶液3 mLが、十二指腸隣接遠端の閉鎖後、総胆管にゆっくりと導入される。膨満膵臓が切除され、37℃の水浴中で消化が10−15分間実施される。Ficoll(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)の二段階不連続密度グラジェントを使って、膵島の精製が達成される。1.096/1.037 g/mL層間の接面から膵島が収集される。調製物の100%純度を確保するために、膵島は、用手にて選別され、倒立顕微鏡(Nikon TE200-S)下でカウントされた。膵島は、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、L-グルタミンおよび25 mM HEPES緩衝液(Invitrogen, Rockville, MD)を含むCMRL培地中で一晩培養される。典型的収率は、膵臓1個当り膵島180−270個である。膵島は、10%FBS含有CMRL培地(Invitrogen, Rockville, MD)中で培養される。移植前日、膵島は、200 ng/mLの組換えヒトSDF-1(R&D Systems, Minneapolis, MN)で処理される。
【0078】
〔実施例5〕
CXCR4+陽性細胞の単離および精製
ヒトCXCR4+細胞は、次の方法を使ってヒト骨髄(Cambrex, Walkersville, MDから購入)から入手される。Histopaque-1077(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)での密度グラジェント遠心分離によって、全骨髄単核細胞がヒト骨髄から精製され、ヒトフィブロネクチン(Invitrogen, Rockville, MD)でコートされた培養皿に注入される。細胞は、低酸素条件(3%O2、95%N2および5%CO2)下、5 %FBS、ヒト血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)、ヒト線維芽細胞増殖因子-2、ヒト表皮増殖因子、インスリン様増殖因子-1(R&D Systems, Minneapolis, MN)、アスコルビン酸および抗生物質(Invitrogen, Rockville, MD)補充の内皮細胞基礎培地-2(EBM-2, Cambrex, Walkersville, MD)中で7日間培養される。初回注入から4日後、培養培地の交換によって非付着細胞が除去される。細胞は、PBSでの洗浄によって除去され、新鮮培地が加えられ、7日目まで培養が維持される。
【0079】
〔実施例6〕
アポトーシス細胞死の検出
組換えインターロイキン-1β(IL-1β;50 U/mL)、組換えインターフェロン-γ(IFN-γ;1 x 103 U/mL)、および、組換え腫瘍壊死因子-α(TNF-α;103 U/mL)は、R&D Systems Inc.(Minneapolis, MN)から購入され、ヒトまたはマウス由来であることができる。タンパク質が併用される。細胞に対するSDF-1の抗アポトーシス作用を検討するため、膵島またはPANC-1細胞(ATCC, Manassas, VA)は、SDF-1で24時間前処理された後、収集される前に、これらの細胞は、さらに48時間サイトカインカクテルにかけられる。対照膵島は、同様の時間の間未処理のままである。
【0080】
膵島等価物(IEQ)マウス膵島300個またはPANC-1細胞8 x 104個のサンプルは、アッセイ用培養培地2 mL中に注入される。ELISA(Roche Diagnostics, Indianapolis, IN)による分析のため、3日間の培養後、サンプルは取り出される。ELISAは、サンドイッチ−酵素イムノアッセイの原理(sandwich-enzyme immunoassay principle)に基づき、アポトーシスプロセスに特徴的な細胞質中のヒストン-結合(histone-associated)DNA断片を検出する。結果は、405 nmの吸光度として表される。
【0081】
〔実施例7〕
インビボにおける本発明のインプラントへのCXCR4陽性細胞のSDF-1介在遊走
800個のマウス膵島が、SDF-1を含有する5-mm支持体に移植前に24時間接種される。当該支持体は、NOD/SCIDマウスの脂肪パッドに移植される。術後、当該マウスは、過塩素酸ジオクタデシル-テトラメチルインド-カルボシアニン(dioctadecyl-tetramethylindo-carbocyanine perchlorate)(Molecular Probes, Eugene, OR)で標識された骨髄由来CXCR4陽性細胞5 x 105個の静脈内注射を受ける。当該マウスは、術後2日目もしくは14日目に屠殺され、DI-標識細胞数がフローサイトメトリーまたはPCR分析によって測定される。
【0082】
本明細書全体で引用されている出版物は、参照することによって、そのまま本明細書に組み入れられている。以上、本発明の各種態様が実施例および好ましい実施態様を参照して説明されているが、本発明の範囲が上記の説明によってではなく、特許法の原則に従って適正に解釈される以下の請求の範囲によって制約されることは、認識されるところとなる。
【0083】
〔実施の態様〕
(1) 生体適合性インプラントにおいて、
支持体と、
化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品と、
を含む、インプラント。
(2) 実施態様1に記載のインプラントにおいて、
前記支持体は、生物分解性である、
インプラント。
(3) 実施態様1および2に記載のインプラントにおいて、
化学誘引物質である前記少なくとも1種類の医薬品は、ケモカインである、
インプラント。
(4) 実施態様3に記載のインプラントにおいて、
前記少なくとも1種類の薬品(agent)は、CXCR4レセプターに結合できる、
インプラント。
(5) 実施態様3に記載のインプラントにおいて、
前記ケモカインは、支質細胞由来因子-1(stromal cell-derived factor-1)である、
インプラント。
(6) 実施態様3に記載のインプラントにおいて、
前記ケモカインは、SDF-1のアミノ酸配列から本質的に成るアミノ酸配列を有するポリペプチドである、
インプラント。
(7) 実施態様1および2に記載のインプラントにおいて、
化学誘引物質である前記少なくとも1種類の医薬品は、前記支持体形成前に、前記支持体の形成用ポリマー溶液中に前記少なくとも1種類の医薬品を添加することによって前記支持体に組み入れられる、
インプラント。
(8) 実施態様1および2に記載のインプラントにおいて、
化学誘引物質である前記少なくとも1種類の医薬品は、前記支持体の形成後に、前記支持体を前記少なくとも1種類の医薬品でコーティングすることによって前記支持体に組み入れられる、
インプラント。
(9) 実施態様1および2に記載のインプラントにおいて、
前記支持体に付着されるか、または、前記支持体内部に組み入れられる、治療組織、
さらにを含む、インプラント。
(10) 実施態様9に記載のインプラントにおいて、
前記治療組織は、細胞、臓器から単離された組織、または、単離臓器である、
インプラント。
(11) 細胞の走化性を促進できる生体適合性インプラントの形成法において、
a.支持体を作製するステップと、
b.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
を含む、生体適合性インプラントの形成法。
(12) 細胞の走化性を促進できる生体適合性インプラントの形成法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
c.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
を含む、生体適合性インプラントの形成法。
(13) 動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.動物体内の部位に前記支持体を植え込むステップと、
を含む、方法。
(14) 動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
c.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
d.動物体内の部位に治療組織を含有する前記支持体を植え込むステップと、
を含む、方法。
(15) 動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.動物体内の部位に前記支持体を植え込むステップと、
c.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
d.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
を含む、方法。
(16) 動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.動物体内の部位に前記支持体を植え込むステップと、
c.幹細胞またはプロジェニター細胞を単離し、調製するステップと、
d.前記動物に前記幹細胞またはプロジェニター細胞を導入するステップと、
を含む、方法。
(17) 動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
c.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
d.前記治療組織を含有する前記支持体を動物体内の部位に植え込むステップと、
e.幹細胞またはプロジェニター細胞を単離し、調製するステップと、
f.前記動物に前記幹細胞またはプロジェニター細胞を導入するステップと、
を含む、方法。
(18) 動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.動物体内の部位に前記支持体を植え込むステップと、
c.幹細胞またはプロジェニター細胞を単離し、調製するステップと、
d.前記動物に前記幹細胞またはプロジェニター細胞を導入するステップと、
e.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
f.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
を含む、方法。
(19) 実施態様13〜18のいずれかに記載の方法において、
前記部位は、肝臓、膵臓本体、腎被膜下腔、腸間膜、網、皮下嚢、または腹膜から選択される、
方法。
(20) 実施態様11〜19のいずれかに記載の方法において、
前記少なくとも1種類の薬品は、ケモカインである、
方法。
(21) 実施態様11〜19のいずれかに記載の方法において、
前記少なくとも1種類の薬品は、CXCR4レセプターに結合できる、
方法。
(22) 実施態様21に記載の方法において、
前記ケモカインは、支質細胞由来因子-1(stromal cell-derived factor-1)である、
方法。
(23) 実施態様21に記載の方法において、
前記ケモカインは、SDF-1のアミノ酸配列から本質的に成るアミノ酸配列を有するポリペプチドである、
方法。
(24) 実施態様11〜19のいずれかに記載の方法において、
前記支持体は、増殖因子、抗拒絶反応剤、鎮痛剤、抗酸化剤、抗アポトーシス剤、抗炎症剤、および免疫抑制剤から成る群から選択される少なくとも1種類の医薬化合物でさらに処理される、
方法。
(25) 実施態様1および2に記載のインプラントにおいて、
前記支持体は、フォーム、または、フォームで封入されてフォーム内に配置された繊維マット、から成る群から選択される、
インプラント。
(26) 実施態様2に記載のインプラントにおいて、
前記支持体は、1種類以上の生物分解性ポリマーから形成される、
インプラント。
(27) 実施態様26に記載のインプラントにおいて、
前記ポリマーは、ヒアルロン酸、コラーゲン、組換えコラーゲン、セルロース、エラスチン、アルギネート、硫酸コンドロイチン、キトサン、キチン、ケラチン、絹、小腸粘膜下組織(SIS)、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される、
インプラント。
(28) 実施態様2に記載のインプラントにおいて、
前記支持体は、1種類以上の合成ポリマーから形成される、
インプラント。
(29) 実施態様28に記載のインプラントにおいて、
前記ポリマーは、脂肪族ポリエステル(aliphatic polyesters)、シュウ酸ポリアルキレン(polyalkylene oxalates)、ポリアミド(polyamides)、ポリカーボネート(polycarbonates)、ポリオルソエステル(polyorthoesters)、ポリオキサエステル(polyoxaesters)、ポリアミドエステル(polyamidoesters)、ポリ無水物(polyanhydrides)、および、ポリフォスファゼン(polyphosphazenes)から成る群から選択される、
インプラント。
(30) 実施態様29に記載のインプラントにおいて、
前記ポリマーは、乳酸(lactic acid)、ラクチド(lactide)、グリコール酸(glycolic acid)、グリコリド(glycolide)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)、p-ジオキサノン(p-dioxanone)、炭酸トリメチレン(trimethylene carbonate)、ポリオキサエステル(polyoxaesters)、δ-バレロラクトン(δ-valerolactone)、β-ブチロラクトン(β-butyrolactone)、ε-デカラクトン(ε-decalactone)、2,5-ジケトモルフォリン(2,5-diketomorpholine)、ピバロラクトン(pivalolactone)、α,α-ジエチルプロピオラクトン(α,α-diethylpropiolactone)、炭酸エチレン(ethylene carbonate)、シュウ酸エチレン(ethylene oxalate)、3-メチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(3-methyl-1,4-dioxane-2,5-dione)、3,3-ジエチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(3,3-diethyl-1,4-dioxan-2,5-dione)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、1,4-ジオキセパン-2-オン(1,4-dioxepan-2-one)、1,5-ジオキセパン-2-オン(1,5-dioxepan-2-one)、6,6-ジメチル-ジオキセパン-2-オン(6,6-dimethyl-dioxepan-2-one)、および、6,8-ジオキサビシクロクタン-7-オン(6,8-dioxabicycloctane-7-one)から成る群から選択されるモノマーのホモポリマーまたはコポリマーである脂肪族ポリエステルである、
インプラント。
(31) 実施態様28に記載のインプラントにおいて、
前記ポリマーは、エラストマーである、
インプラント。
(32) 実施態様31に記載のインプラントにおいて、
前記エラストマーは、ε-カプロラクトンとグリコリド、ε-カプロラクトンとラクチド、ラクチドとグリコリド、p-ジオキサノンとラクチド、ε-カプロラクトンとp-ジオキサノン、p-ジオキサノンと炭酸トリメチレン、炭酸トリメチレンとグリコリド、炭酸トリメチレンとラクチド、または、それらの組み合わせ、から成るコポリマー群から選択される、
インプラント。
(33) 実施態様28に記載のインプラントにおいて、
前記支持体を構成する材料は、第一生物分解性ポリマー組成から第二生物分解性ポリマー組成への連続遷移により特徴付けられる、グラジェント構造(gradient structure)、を有する、
インプラント。
(34) 実施態様25に記載のインプラントにおいて、
前記支持体の繊維マットは、湿式法、または乾式法によって形成される、
インプラント。
(35) 実施態様25に記載のインプラントにおいて、
前記支持体のフォームは、ポリマー溶媒相分離技術(polymer-solvent phase separation technique)、超臨界溶媒発泡法(supercritical solvent foaming)、ガス射出押出法(gas injection extrusion)、ガス射出成形法(gas injection molding)、または、抽出可能材料での鋳造法(casting with an extractable material)によって形成される、
インプラント。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】フローサイトメトリーによる細胞CXCR4の分析。CXCR-4発現レベルが黒色の線で示され、灰色の線は、対応する1gG対照である。
【図2】SDF-1介在走化性。SDF-1は、トランスウェル平板の各ウェル、および、ヒト内皮細胞(A)、骨髄由来CXCR4+細胞(B)および骨髄由来間葉細胞(C)の遊走に添加された。各種用量のSDF-1への前記細胞の遊走応答が、トランスウェル遊走アッセイによって測定された。図示されたデータは、未処理ウェル(黒色バー)、10 ng/mLSDF-1(白色バー)および100 ng/mL SDF-1(灰色バー)を含有するウェルにおける基礎遊走に対する増加率である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性インプラントにおいて、
支持体と、
化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品と、
を含む、インプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のインプラントにおいて、
前記支持体は、生物分解性である、
インプラント。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインプラントにおいて、
化学誘引物質である前記少なくとも1種類の医薬品は、ケモカインである、
インプラント。
【請求項4】
請求項3に記載のインプラントにおいて、
前記少なくとも1種類の薬品は、CXCR4レセプターに結合できる、
インプラント。
【請求項5】
請求項3に記載のインプラントにおいて、
前記ケモカインは、支質細胞由来因子-1(stromal cell-derived factor-1)である、
インプラント。
【請求項6】
請求項3に記載のインプラントにおいて、
前記ケモカインは、SDF-1のアミノ酸配列から本質的に成るアミノ酸配列を有するポリペプチドである、
インプラント。
【請求項7】
請求項1または2に記載のインプラントにおいて、
化学誘引物質である前記少なくとも1種類の医薬品は、前記支持体形成前に、前記支持体の形成用ポリマー溶液中に前記少なくとも1種類の医薬品を添加することによって前記支持体に組み入れられる、
インプラント。
【請求項8】
請求項1または2に記載のインプラントにおいて、
化学誘引物質である前記少なくとも1種類の医薬品は、前記支持体の形成後に、前記支持体を前記少なくとも1種類の医薬品でコーティングすることによって前記支持体に組み入れられる、
インプラント。
【請求項9】
請求項1または2に記載のインプラントにおいて、
前記支持体に付着されるか、または、前記支持体内部に組み入れられる、治療組織、
をさらに含む、インプラント。
【請求項10】
請求項9に記載のインプラントにおいて、
前記治療組織は、細胞、臓器から単離された組織、または、単離臓器である、
インプラント。
【請求項11】
細胞の走化性を促進できる生体適合性インプラントの形成法において、
a.支持体を作製するステップと、
b.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
を含む、生体適合性インプラントの形成法。
【請求項12】
細胞の走化性を促進できる生体適合性インプラントの形成法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
c.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
を含む、生体適合性インプラントの形成法。
【請求項13】
動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.動物体内の部位に前記支持体を植え込むステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと
b.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
c.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
d.動物体内の部位に治療組織を含有する前記支持体を植え込むステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.動物体内の部位に前記支持体を植え込むステップと、
c.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
d.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.動物体内の部位に前記支持体を植え込むステップと、
c.幹細胞またはプロジェニター細胞を単離し、調製するステップと、
d.前記動物に前記幹細胞またはプロジェニター細胞を導入するステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
c.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
d.前記治療組織を含有する前記支持体を動物体内の部位に植え込むステップと、
e.幹細胞またはプロジェニター細胞を単離し、調製するステップと、
f.前記動物に前記幹細胞またはプロジェニター細胞を導入するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
動物において血管形成を促進する方法において、
a.化学誘引物質である少なくとも1種類の医薬品を組み入れるステップと、
b.動物体内の部位に前記支持体を植え込むステップと、
c.幹細胞またはプロジェニター細胞を単離し、調製するステップと、
d.前記動物に前記幹細胞またはプロジェニター細胞を導入するステップと、
e.前記支持体への導入のために、治療組織を単離し、調製するステップと、
f.前記治療組織を前記支持体に導入するステップと、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項13ないし18のいずれかに記載の方法において、
前記部位は、肝臓、膵臓本体、腎被膜下腔、腸間膜、網、皮下嚢、または腹膜から選択される、
方法。
【請求項20】
請求項11ないし19のいずれかに記載の方法において、
前記少なくとも1種類の薬品は、ケモカインである、
方法。
【請求項21】
請求項11ないし19のいずれかに記載の方法において、
前記少なくとも1種類の薬品は、CXCR4レセプターに結合できる、
方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、
前記ケモカインは、支質細胞由来因子-1(stromal cell-derived factor-1)である、
方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、
前記ケモカインは、SDF-1のアミノ酸配列から本質的に成るアミノ酸配列を有するポリペプチドである、
方法。
【請求項24】
請求項11ないし19のいずれかに記載の方法において、
前記支持体は、増殖因子、抗拒絶反応剤、鎮痛剤、抗酸化剤、抗アポトーシス剤、抗炎症剤、および免疫抑制剤から成る群から選択される少なくとも1種類の医薬化合物でさらに処理される、
方法。
【請求項25】
請求項1または2に記載のインプラントにおいて、
前記支持体は、フォーム、または、フォームで封入されてフォーム内に配置された繊維マット、から成る群から選択される、
インプラント。
【請求項26】
請求項2に記載のインプラントにおいて、
前記支持体は、1種類以上の生物分解性ポリマーから形成される、
インプラント。
【請求項27】
請求項26に記載のインプラントにおいて、
前記ポリマーは、ヒアルロン酸、コラーゲン、組換えコラーゲン、セルロース、エラスチン、アルギネート、硫酸コンドロイチン、キトサン、キチン、ケラチン、絹、小腸粘膜下組織(SIS)、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される、
インプラント。
【請求項28】
請求項2に記載のインプラントにおいて、
前記支持体は、1種類以上の合成ポリマーから形成される、
インプラント。
【請求項29】
請求項28に記載のインプラントにおいて、
前記ポリマーは、脂肪族ポリエステル(aliphatic polyesters)、シュウ酸ポリアルキレン(polyalkylene oxalates)、ポリアミド(polyamides)、ポリカーボネート(polycarbonates)、ポリオルソエステル(polyorthoesters)、ポリオキサエステル(polyoxaesters)、ポリアミドエステル(polyamidoesters)、ポリ無水物(polyanhydrides)、および、ポリフォスファゼン(polyphosphazenes)から成る群から選択される、
インプラント。
【請求項30】
請求項29に記載のインプラントにおいて、
前記ポリマーは、乳酸(lactic acid)、ラクチド(lactide)、グリコール酸(glycolic acid)、グリコリド(glycolide)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)、p-ジオキサノン(p-dioxanone)、炭酸トリメチレン(trimethylene carbonate)、ポリオキサエステル(polyoxaesters)、δ-バレロラクトン(δ-valerolactone)、β-ブチロラクトン(β-butyrolactone)、ε-デカラクトン(ε-decalactone)、2,5-ジケトモルフォリン(2,5-diketomorpholine)、ピバロラクトン(pivalolactone)、α,α-ジエチルプロピオラクトン(α,α-diethylpropiolactone)、炭酸エチレン(ethylene carbonate)、シュウ酸エチレン(ethylene oxalate)、3-メチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(3-methyl-1,4-dioxane-2,5-dione)、3,3-ジエチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(3,3-diethyl-1,4-dioxan-2,5-dione)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、1,4-ジオキセパン-2-オン(1,4-dioxepan-2-one)、1,5-ジオキセパン-2-オン(1,5-dioxepan-2-one)、6,6-ジメチル-ジオキセパン-2-オン(6,6-dimethyl-dioxepan-2-one)、および、6,8-ジオキサビシクロクタン-7-オン(6,8-dioxabicycloctane-7-one)から成る群から選択されるモノマーのホモポリマーまたはコポリマーである脂肪族ポリエステルである、
インプラント。
【請求項31】
請求項28に記載のインプラントにおいて、
前記ポリマーは、エラストマーである、
インプラント。
【請求項32】
請求項31に記載のインプラントにおいて、
前記エラストマーは、ε-カプロラクトンとグリコリド、ε-カプロラクトンとラクチド、ラクチドとグリコリド、p-ジオキサノンとラクチド、ε-カプロラクトンとp-ジオキサノン、p-ジオキサノンと炭酸トリメチレン、炭酸トリメチレンとグリコリド、炭酸トリメチレンとラクチド、または、それらの組み合わせ、から成るコポリマー群から選択される、
インプラント。
【請求項33】
請求項28に記載のインプラントにおいて、
前記支持体を構成する材料は、第一生物分解性ポリマー組成から第二生物分解性ポリマー組成への連続遷移により特徴付けられる、グラジェント構造(gradient structure)、を有する、
インプラント。
【請求項34】
請求項25に記載のインプラントにおいて、
前記支持体の繊維マットは、湿式法、または乾式法によって形成される、
インプラント。
【請求項35】
請求項25に記載のインプラントにおいて、
前記支持体のフォームは、ポリマー溶媒相分離技術(polymer-solvent phase separation technique)、超臨界溶媒発泡法(supercritical solvent foaming)、ガス射出押出法(gas injection extrusion)、ガス射出成形法(gas injection molding)、または、抽出可能材料での鋳造法(casting with an extractable material)によって形成される、
インプラント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−145844(P2007−145844A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−318775(P2006−318775)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】