説明

細胞融合装置及び細胞融合方法

【課題】
化学的に細胞融合を行う細胞を融合容器内の微細孔に固定したまま細胞融合液の置換を行い、簡便かつ迅速に融合再生確率を高めるような細胞の処理を可能にする細胞融合装置及び、細胞融合方法を提供する。
【解決の手段】
細胞融合液導入口及び細胞融合液排出口を備え、細胞融合領域に対向して配置される導電部材からなる一対の電極と、前記一対の電極間に平板状のスペーサーを介して配置され、かつ前記対向して配置された電極の方向に貫通した複数の微細孔を有した平板状の絶縁体からなり、前記絶縁体が前記電極の内いずれか一方の電極の細胞融合領域側の電極面上に配置されている細胞融合容器と、前記一対の電極に交流電圧を印加する交流電源及び、3以上の細胞融合液を切替えて導入する細胞融合液導入切替え機構を有することを特徴とする細胞融合装置及びそれを用いた細胞融合方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞融合を効率的に行うための細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる細胞同士を融合させ1つの交雑細胞とする細胞融合技術として、主にポリエチレングリコール(PEG)を用いる化学的細胞融合法(PEG法)が用いられているが、この方法では(i)PEGは細胞に対して強い毒性を持っている、(ii)融合するにあたりPEGの重合度、添加量などの最適な諸条件を見出すのに手間がかかる、(iii)融合に際して高度な技術が要求され、特定の技術に習熟した人にしか使えない、(iv)2細胞の接触は偶発的であり、2細胞一対での細胞融合の制御が困難なため融合再生確率が極めて低い、等の解決すべき課題があった。
【0003】
上記課題を解決するために、PEGを用いる化学的細胞融合法と、電圧を印加することで細胞を数珠状に整列させて融合させる電気的細胞融合法を組み合わせた方法が報告されている(例えば、特許文献1、非特許文献4参照)。電気的細胞融合法は、高度な技術が不要で、簡単に効率よく融合させることができ、細胞に与える毒性がなく、高活性をもったままの状態で細胞を融合させることができるという利点がある。
【0004】
電気的細胞融合法は、1981年西ドイツのZimmermannが確立したものであり、その原理は次の通りである。すなわち、平行電極間に交流電圧を印加し、そこに細胞を導入すると、細胞は電流密度の高い方へ引き寄せられ数珠状にならぶ。なお、細胞が数珠状にならんだ状態を一般にパールチェーンと呼ぶ。この状態で数μsec〜数十μsec単位の直流パルス電圧を電極間に印加することにより細胞膜の電気伝導度が瞬間的に低下し、脂質二重層により構成される細胞膜の可逆的乱れとその再構成が行われ、その結果、細胞融合が起こる。
【0005】
上記の電気的細胞融合法には、主に微小電極法と平行電極法が用いられている。このうち微小電極法は、2細胞一対の細胞融合を顕微鏡で見ながらマイクロマニュピレーターで細胞を拾い集めては直流パルス電圧を印加する方法であり、極めて融合再生確率が高く、微小電極法に用いる電極の例も報告されている(例えば、特許文献2、非特許文献5参照)。しかしながらこの方法は手間のかかる方法であり、その操作は熟練を要す上、大量の細胞を扱う上では実用的とはいえなかった。また平行電極法は、誘電泳動により複数の細胞を数珠状に配列形成させた後、直流パルス電圧を印加することによって細胞融合させる方法であり、その取り扱いは簡単であるが、数珠状になった複数の細胞が細胞融合するためPEG法と同様に2細胞の接触は偶発的であり、2細胞一対での細胞融合の確実な制御が難しいという課題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載された方法では、細胞を入れたPEGの溶媒を電極間に導入し、電極間に交流電圧を印加し細胞を数珠状にならべることで、細胞を秩序よく配列させることを試みている。しかしながら、細胞は数珠状に連なるものの、その順番を制御することができないため、化学的細胞融合法を単独で用いた場合よりは改善されるものの、依然として2細胞の接触は偶発的であり、2細胞1対での細胞融合の確実な制御が難しいという課題があり、さらなる改善が望まれていた。
【0007】
また、本質的に細胞に対して強い毒性をもつPEGに細胞が10分程度(細胞融合時に約5分、遠心分離時に約5分)の時間接するため、細胞の死滅や活性の低下が著しく、融合再生確率が低い(一般に、0.02%程度)という課題があった。
【0008】
また、上記化学的細胞融合法、電気的細胞融合法、及び化学的細胞融合法と電気的細胞融合法を組み合わせた方法とも、2種類の細胞を同一成分の細胞融合液内で非特異的に混合して細胞融合を行うため、融合操作中に細胞融合液の成分を目的に応じてコントロールすることは不可能であった。従って、融合再生確率を高めるための幾つかの試みは、常に細胞融合とは別の細胞前処理操作を必要とし、また、細胞融合後の煩雑な洗浄操作を伴いうため、操作が煩雑な上、必要以上に細胞の処理時間が長くなり細胞の活性が低下したり、細胞を損失したりするという課題があった。
【0009】
例えば、融合再生確率を高める方法として、電気的細胞融合法に用いる細胞融合液中のCa濃度を高める事で融合再生確率を向上させた事例が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。一般的に、Caには細胞膜修復作用があるといわれており、Ca濃度を高めて細胞融合する事で融合再生確率が向上する可能性がある。しかしながら、従来の化学的細胞融合法では2種類の細胞を同一の成分の溶液の中で混合状態として細胞融合を行うため、融合再生確率を高めるのに効果的なCa濃度のコントロールが難しく、Ca濃度を高めた場合、Caの細胞膜修復作用により融合再生確率が向上する効果もあるが、細胞融合前に細胞同士が凝集を起こし、細胞融合に関与できない細胞が増大するため、結果として融合再生確率が低下してしまうという課題があった。
【0010】
また別の融合再生確率を高める方法として、細胞融合前にシアル酸分解酵素で細胞を処理することで細胞膜上のシアル酸を分解し、細胞を正の電荷に帯電させることによって細胞融合させる細胞同士の密着度を高め、融合再生確率を向上させた事例が報告されている(例えば、非特許文献2参照)。しかしこの場合、シアル酸分解反応中に細胞の死滅が起きる他、シアル酸分解処理を行った細胞同士が凝集することで、細胞融合に寄与する細胞数が減少し、結果として融合再生確率が低下してしまうという課題があった。
【0011】
また別の融合再生確率を高める方法として、細胞融合前にプロテアーゼなどの酵素で細胞を処理することで細胞膜上のタンパクを分解し、融合再生確率を向上させた事例が報告されている(例えば、非特許文献3参照)。しかしこの場合も、酵素処理の過程において細胞の凝集や死滅、あるいは細胞の容器への付着が発生し、細胞融合時に処理可能な細胞数が著しく減少するため、結果として融合再生確率が低下してしまうという課題があった。また、細胞融合前または細胞融合後にこれらの酵素成分を除去する煩雑な細胞洗浄操作が必要であった。
【0012】
以上のように従来の化学的細胞融合法、電気的細胞融合法、及び化学的細胞融合法と電気的細胞融合法を組み合わせた方法とも、融合再生確率を高めるための細胞の前処理や細胞融合後の融合促進剤の除去操作自体がそれぞれ細胞の死滅を引き起こし、結果として得られる融合細胞が少なくなり、よって融合再生確率がむしろ悪くなるという課題があった。
【0013】
【特許文献1】特開昭60−9490号公報
【特許文献2】特公平7−40914号公報
【非特許文献1】Ohnishi, K., Chiba, J., Goto, Y., Tokunaga, T., 「Improvement in the basic technology of electrofusion for generation of antibody−producing hybridomas.」 J. Immunol. Methods., 100巻, p.181−189, 1987年
【非特許文献2】Igarashi, M., Bando, Y., 「Enhanced efficiency of cell hybridization by neuraminidase treatment.」 J. Immunol. Methods., 135巻, p.91−93, 1990年
【非特許文献3】Ohno−Shosaku, T., Okada, Y., 「Facilitation of electrofusion of mouse lymphoma cells by the proteolytic action of proteases.」 Biochem. Biophys. Res. Commun., 120巻, p.138−143, 1984年
【非特許文献4】Stoicheva, NG., Hui, SW., 「Electrically induced fusion of mammalian cells in the presence of polyethylene glycol.」 J. Membr. Biol., 141巻, p.177−182, 1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、かかる従来の実状に鑑みて提案されたものであり、化学的に細胞融合を行う細胞を融合容器内の微細孔に固定したまま細胞融合液の置換を行い、簡便かつ迅速に融合再生確率を高めるような細胞の処理を可能にする細胞融合装置及び、細胞融合方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決する手段として、細胞融合液導入口及び細胞融合液排出口を備え、細胞融合領域に対向して配置される導電部材からなる一対の電極と、前記一対の電極間に平板状のスペーサーを介して配置され、かつ前記対向して配置された電極の方向に貫通した複数の微細孔を有した平板状の絶縁体からなり、前記絶縁体が前記電極の内いずれか一方の電極の細胞融合領域側の電極面上に配置されている細胞融合容器と、前記一対の電極に交流電圧を印加する交流電源及び、3以上の細胞融合液を切替えて導入する細胞融合液導入切替え機構を有する細胞融合装置を用い、前記細胞融合装置を用いて第1の細胞と第2の細胞とを細胞融合領域において融合する際、前記細胞融合領域に前記第1の細胞が入った細胞融合液を導入し、前記交流電圧を印加して前記微細孔内に前記第1の細胞を固定した後、前記細胞融合領域に前記第2の細胞が入った細胞融合液を導入し、前記交流電圧を印加して前記第1の細胞に前記第2の細胞を前記微細孔の位置において接触させ、前記第1の細胞と前記第2の細胞とを化学的に細胞を融合する細胞融合方法であって、前記細胞融合液導入切替え手段を用いて細胞融合処理液が入った細胞融合液を導入する時期を、前記第2の細胞の導入前、前記細胞融合の前および前記細胞融合の後、の少なくとも一の時期とする、細胞融合方法を用い、これらにより、上記の従来技術の課題を解決することができることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の細胞融合装置は、細胞融合液導入口及び細胞融合液排出口を備え、細胞融合領域に対向して配置される導電部材からなる一対の電極と、前記一対の電極間に平板状のスペーサーを介して配置され、かつ前記対向して配置された電極の方向に貫通した複数の微細孔を有した平板状の絶縁体からなり、前記絶縁体が前記電極の内いずれか一方の電極の細胞融合領域側の電極面上に配置されている細胞融合容器と、前記一対の電極に交流電圧を印加する交流電源及び、3以上の細胞融合液を切替えて導入する細胞融合液導入切替え機構を有する。
【0017】
また本発明の細胞融合方法は、上記細胞融合装置を用いて第1の細胞と第2の細胞とを細胞融合領域において融合する際、前記細胞融合領域に前記第1の細胞が入った細胞融合液を導入し、前記交流電圧を印加して前記微細孔内に前記第1の細胞を固定した後、前記細胞融合領域に前記第2の細胞が入った細胞融合液を導入し、前記交流電圧を印加して前記第1の細胞に前記第2の細胞を前記微細孔の位置において接触させ、前記第1の細胞と前記第2の細胞とを化学的に細胞を融合する細胞融合方法であって、前記細胞融合液導入切替え手段を用いて細胞融合処理液が入った細胞融合液を導入する時期を、前記第2の細胞の導入前、前記細胞融合の前および前記細胞融合の後、の少なくとも一の時期とする、細胞融合方法である。
【0018】
また、前記細胞融合処理液が入った細胞融合液が2以上であって、前記2以上の細胞融合処理液が入った細胞融合液が全て同じまたは一部異なるまたは全て異なる、のいずれかの細胞融合処理液が入った細胞融合液である、細胞融合方法である。
【0019】
ここで、化学的に細胞を融合するとは、ポリエチレングリコールのような細胞膜の流動性を高める化学物質を加えた懸濁液に細胞を入れて融合させることを意味し、一般に、細胞膜の流動性が高まった状態で細胞が接触すると膜融合が容易に生じることを利用した細胞融合の一つである。よって、本発明の細胞融合方法は、細胞を、細胞膜の流動性を高める物質を加えた細胞融合液に入れて化学的に細胞融合を行う細胞融合方法であって、上記の細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールである、細胞融合方法である。
【0020】
また本発明の細胞融合方法は、上記の細胞融合処理液が入った細胞融合液が特定の成分を含む溶液であり、細胞融合処理液が入った細胞融合液の導入により、細胞融合領域の細胞融合液中に特定の成分を導入する、細胞融合方法である。
【0021】
また本発明の細胞融合方法は、上記の細胞融合処理液が入った細胞融合液により、細胞融合領域の細胞融合液中の特定の成分を除去する、細胞融合方法である。
【0022】
また本発明の細胞融合方法は、上記の特定の成分が、細胞膜の流動性を高める物質であり、また、細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールである、細胞融合方法である。
【0023】
また本発明の細胞融合方法は、上記の特定の成分が酵素であり、当該酵素が、シアル酸分解酵素またはプロテアーゼである、細胞融合方法である。
【0024】
また本発明の細胞融合方法は、上記の前記特定の成分がカルシウムイオンである、細胞融合方法である。
【0025】
また本発明の細胞融合方法は、上記の添加剤が融合再生確率を高める添加剤であり、前記添加剤が、カルシウム塩、マグネシウム塩、アミノ酸、ウシ血清アルブミン(BSA)、糖、フィコール、カルモジュリン、セリシン、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、サイトカイン、リポポリサッカライド、コレステロール、カテキン、血清、ホルモン、動物細胞培養用培地由来の成分の内、少なくともいずれか一つを含む添加剤であることを特徴とする細胞融合方法である。
【0026】
以下に、図を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
本発明の細胞融合装置は、細胞融合液導入口及び細胞融合液排出口を備え、細胞融合領域に対向して配置される導電部材からなる一対の電極と、前記一対の電極間に平板状のスペーサーを介して配置され、かつ前記対向して配置された電極の方向に貫通した複数の微細孔を有した平板状の絶縁体からなり、前記絶縁体が前記電極の内いずれか一方の電極の細胞融合領域側の電極面上に配置されている細胞融合容器と、前記一対の電極に交流電圧を印加する交流電源及び、3以上の細胞融合液を切替えて導入する細胞融合液導入切替え機構を有する。
【0028】
ここで、本発明の特徴を説明するために、本発明の細胞融合装置を用いた基本的な細胞融合方法の概略、すなわち2つの細胞を細胞融合領域に導入して細胞融合する方法を図1〜図3を用いて説明する。なおここでの説明は、本発明の基本動作を簡単に説明するために、細胞融合処理液が入った細胞融合液を導入する工程は省略しており、本発明特有の細胞融合方法である、前記細胞融合液導入切替え機構を用いて、細胞融合処理液が入った細胞融合液を導入する時期を、第2の細胞の導入前、細胞融合の前および細胞融合の後、の少なくとも一の時期とする方法についても後述する。
【0029】
本発明の細胞融合方法の手順を図1、図2、図3の順に示す。
【0030】
図1に示すように、最初に第1の細胞(18)の入った細胞融合液を細胞融合領域(1)に入れ交流電源(5)に接続する。このとき第1の細胞は、絶縁体(8)に形成された微細孔(9)に向かって移動し固定される。この第1の細胞が微細孔に向かって動くときに作用する力を誘電泳動力(10)という。図1に示すように誘電泳動力とは、電極間に特定の周波数の交流電圧を印加したとき、上部電極(14)と微細孔(9)で覆われた下部電極(15)のように、電気力線(12)の集中部位があると、その電気力線の集中部位(12)の方向(すなわち、微細孔の方向)に向かって細胞等の誘電体粒子を動かす力である。一般に誘電泳動力は、誘電体粒子の体積、誘電体粒子の誘電率と溶液の誘電率の差、印加電圧の2乗に比例する。次に、交流電圧を印加したまま誘電泳動力を作用させ続けて微細孔に第1の細胞を固定したまま、第2の細胞(22)の入った細胞融合液を細胞融合領域に入れる。このとき、図2に示すように第2の細胞は誘電泳動力により第1の細胞の上に固定される。このとき、細胞融合液にポリエチレングリコールのような細胞膜の流動性を高める成分を入れておくと、図3に示すように、第1の細胞及び第2の細胞の接触点で細胞膜が接触し細胞融合が起こり、第1の細胞と第2の細胞との細胞融合が生じて融合細胞(32)が生成される。このようにすることで、微細孔の位置で第1の細胞と第2の細胞を接触させ、従来の化学的細胞融合法より高い融合再生確率で細胞融合させることができる。この場合、理想的には、1つの第1の細胞に対し1つの第2の細胞が接触して融合した方が高い融合再生確率を得られる。すなわち、1つの微細孔に1つの第1の細胞が固定され、更にその上に1つの第2の細胞が固定された方が高い融合再生確率を得ることができる。
【0031】
次に、本発明の細胞融合装置の構成について、図を用いて詳しく説明する。
【0032】
図4は本発明の細胞融合装置の概念図を示した図である。本発明の細胞融合装置は、細胞融合容器(13)と交流電源(5)、細胞融合液導入切替え手段(17)で構成されている。
【0033】
細胞融合容器は、図4に示すように上部電極(14)と下部電極(15)の間に、スペーサー(16)を配置することで細胞融合領域(1)を確保し、微細孔(9)を形成した絶縁体(8)を下部電極の細胞融合領域側に配置した構造を有する。
【0034】
上部電極と下部電極の材質は導電部材であって化学的に安定な部材であれば特に制限はなく、白金、金、銅などの金属やステンレスなどの合金及び、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)等の透明導電性材料を成膜したガラス基板などでもよいが、細胞融合を観察するには、ITOなどの透明導電性材料を成膜したガラス基板を電極として用いることが好ましい。上部電極と下部電極の面積等の寸法には特に制限はないが、取り扱いやすいサイズとして、例えば、縦70mm×横40mm×厚さ1mm程度のサイズが好ましい。細胞融合容器の上部電極と下部電極には導電線(3)を介して交流電源(5)が接続されている。
【0035】
スペーサーは、上部電極と下部電極が直接接触しないように設けられ、かつ細胞融合容器に細胞融合液を入れておくスペースを確保するための細胞融合領域を形成する貫通孔を有しているものであり、その材質は絶縁材料であればよく、例えばガラス、セラミック、樹脂等が挙げられる。またスペーサーには、細胞融合容器に細胞を導入、排出するため、細胞を導入する導入流路(29)及びそれに連通する導入口(19)と、細胞を排出する排出流路(30)及びそれに連通する排出口(20)が設けられている。
【0036】
また、図4に示す細胞融合容器の導入口には、細胞融合液導入流路(2)を介して細胞融合液導入切替え手段(17)が接続され、細胞融合液導入切替え手段に、シリンジA(4)、シリンジB(6)、シリンジC(7)、シリンジD(34)が接続されている。ここで、細胞融合液導入切替え手段は、シリンジA、シリンジB、シリンジC、シリンジDのうちどれか一つのシリンジを選んで、シリンジを細胞融合液導入流路に接続することができればよく、一般的なバルブ(21)で構成されている。ここで、バルブは図4に示すようにそれぞれのシリンジ毎に取り付けても良い。図4に示す例では、例えばシリンジAに第1の細胞が入った細胞融合液、シリンジBに第2の細胞が入った細胞融合液、シリンジCに第1細胞融合処理液(例えば、ポリエチレングリコール50%水溶液)が入った細胞融合液、シリンジDに第2細胞融合処理液(例えば、300mMマンニトール水溶液)が入った細胞融合液を入れる事ができる。このような構成にすることで、3以上の細胞融合液を切替えて導入することが可能となり、細胞融合液導入切替え手段を用いて細胞融合処理液の入った細胞融合液を導入する時期を、第2の細胞の導入前、細胞融合の前および細胞融合の後、の少なくとも一の時期とすることが可能となる。なお、どれか一つのシリンジを選んでシリンジを細胞融合液導入流路に接続することができればシリンジの数に特に制限はなく、使用する細胞の数、細胞融合処理液が入った細胞融合液の数に応じて適宜設置すればよい。なお後述するが、本発明の効果をえるための最も最良な態様は、細胞融合液切替え機構により切替えられるシリンジのうち少なくとも1つは第1の細胞が入った細胞融合液を入れたシリンジであり、また少なくとも1つは第2の細胞が入った細胞融合液を入れたシリンジであり、また少なくとも1つは、化学的細胞融合を生じさせる成分であるポリエチレングリコールのような細胞膜の流動性を高める成分を含んだ細胞融合液を入れたシリンジであり、また少なくとも1つは、ポリエチレングリコールのような細胞膜の流動性を高める成分を除去することが可能な、細胞の入っていない細胞融合液を入れたシリンジであることが最も好ましい。
【0037】
なお、細胞融合させる2種の細胞としては、例えばモノクローナル抗体を製造するために用いられる抗体産生細胞とミエローマ細胞との組合せなどであれば良い。
【0038】
絶縁体(8)には微細孔(9)が形成されている。絶縁体(8)の材質は、例えばガラス、セラミック、樹脂等の絶縁材料であれば特に制限はないが、貫通した微細孔を形成させる必要があることから、樹脂等の比較的加工が容易な材料が好ましい。樹脂に貫通した微細孔を形成する手段としては、形成する微細孔の位置にレーザーを照射する方法や、微細孔の位置に貫通孔を形成するためのピンを有する金型を用いて成形する方法などの既知の方法を用いればよい。また、絶縁体にUV硬化性樹脂などを用いる場合は、微細孔に相当するパターンを描画した露光用フォトマスクを用いて一般的なフォトリソグラフィー(露光)とエッチング(現像)により貫通した微細孔を形成することができる。絶縁体に複数の微細孔を形成する場合は、絶縁体にUV硬化性樹脂を用いて、一般的なフォトリソグラフィーとエッチングによる方法で微細孔を形成することが好ましい。
【0039】
微細孔の形状や大きさには特に制限はないが、本発明の細胞融合装置を用いた場合、1つの微細孔に1つの細胞を固定した方がより高い融合再生確率を得ることが可能となることから、微細孔の平面形状に内接する最大円の直径が、微細孔に固定する細胞の直径(細胞により異なるが、1μm〜数十μm程度)より小さいか、もしくは、細胞の直径の1〜2倍程度の範囲でありかつ微細孔の深さが微細孔に固定する細胞の直径の以下であることが好ましい。
【0040】
図6に示すように、微細孔の平面形状に内接する最大円の直径が、微細孔に固定する2つの細胞の直径より大きい場合は、微細孔に第1の細胞及び第2の細胞が複数入ってしまい、第1の細胞と第2の細胞の1対1での細胞融合ができなくなり、融合再生確率が低くなってしまう。しかしながら、図7に示すように、微細孔の平面形状に内接する最大円の直径が、微細孔に固定する2つの細胞の直径より小さい場合は、第1の細胞と第2の細胞の1対1での細胞融合が可能であり、融合再生確率が高くなる。また、図8に示すように、微細孔の平面形状に内接する最大円の直径が第1の細胞より1〜2倍程度大きくかつ微細孔の深さが微細孔に固定した第1の細胞の直径より大きい場合は第2の細胞が微細孔に固定された第1の細胞と接触することができずに細胞融合させることができない。しかしながら、図9に示すように、微細孔の平面形状に内接する最大円の直径が第1の細胞より1〜2倍程度大きくかつ微細孔の深さが微細孔に固定した第1の細胞の直径の以下である場合は1つの第2の細胞と微細孔に固定された1つの第1の細胞が確実に接触するので高い融合再生確率を得ることができる。
【0041】
また本発明の細胞融合装置は、1つの微細孔に1つの細胞を固定した方がより高い融合再生確率を得ることが可能となることから、前記した絶縁体に形成される複数の微細孔が、絶縁体の面において、いずれの微細孔からも隣合う微細孔の位置が同じ位置に形成されていること、すなわち図4に示すように、複数の微細孔が絶縁体の面においてアレイ状に形成されていることが好ましい。ここでアレイ状とは、微細孔の縦と横の間隔がほぼ等間隔に配置されていることを意味する。微細孔をアレイ状に配置することで、電極間に印加した電圧によって生じる電界がすべての微細孔にほぼ均等に生じるため、微細孔に細胞が固定される確率も各微細孔で等しくなり、1つの微細孔に1つの細胞を固定できる確率が高くなる。また、1つの微細孔に1つの細胞を固定するためには、アレイ状に形成した微細孔の間隔が狭すぎても広すぎても不適当となることがある。微細孔の間隔が狭すぎる場合は、1つの微細孔に複数の細胞が固定される確率が高くなり結果として細胞の入らない微細孔が生じる確率が高くなることがある。また、微細孔の間隔が広すぎる場合には、微細孔と微細孔の間に細胞が残されてしまい、細胞の入らない微細孔が生じる確率が高くなることがある。従ってより具体的には、微細孔の隣合う間隔が、微細孔に固定する細胞の直径の0.5〜6倍の範囲であることが好ましく、さらには微細孔の間隔が固定する細胞の直径の1〜2倍程度であることがより好ましい。
【0042】
また、本発明における微細孔の形状は、円状に限定されるものではなく、三角状や四角状などの多角状であっても良い。三角状や四角状などの多角状の場合は角の部分で電気力線の集中の度合いが強められるため、誘電泳動力は円状の微細孔より強くなり細胞が微細孔に固定される確率が高くなるというメリットがある。ただし、微細孔をアレイ状に配置した場合は、前後左右の微細孔からの誘電泳動力が等しく作用する方が、1つに微細孔に1つの細胞を固定できる確率が高くなるので、微細孔の形状は点対称であることが好ましく、さらには正方形であることがより好ましい。
【0043】
なお図5は、図4の細胞融合容器のXX’断面図を示した概略図である。上部電極(14)、スペーサー(16)、絶縁体(8)、下部電極(15)を図5のように貼り合わせる手段としては、それぞれを接着剤で張り合わせたり、加圧した状態で過熱して融着させる方法や、スペーサーを表面粘着性のあるPDMS(poly−dimethylsiloxane)やシリコンシートのような樹脂を用いて作製することで圧着することにより貼り合わせる方法など、既知の方法を用いればよい。このようにすることで図5に示した細胞融合領域(1)を形成することができる。
【0044】
第2の細胞を入れるときは、微細孔に入った第1の細胞よりも微細孔に固定されにくくなるので、第1の細胞の数よりも第2の細胞の数を多く入れることで、第1の細胞と第2の細胞を確実に接触させることができる。ここで、第1の細胞の数が微細孔の数より多いと微細孔に固定されない細胞が存在し結果として細胞融合に関与する細胞の割合が少なくなるので、第1の細胞の数は微細孔の数と同数かそれ以下が好ましい。また、第2の細胞の数が第1の細胞の数より少ないと、第2の細胞と接触できない第1の細胞が存在し結果として細胞融合する2細胞1組の組み合わせが少なくなることがある。一方、第2の細胞の数があまり多すぎると、現実的に細胞を導入できなくなることがあることから、第2の細胞の数は第1の細胞数と同数〜4倍程度の数が好ましい。
【0045】
次に、本発明の細胞融合装置に用いる交流電源は、例えば、ピーク電圧が1V〜20V程度、周波数100kHz〜3MHz程度の正弦波、矩形波、三角波、台形波等の交流電圧を出力できる交流電源であれば特に制限はない。また、本発明の細胞融合装置を用いた場合、1つの微細孔に1つの細胞を固定した方がより高い融合再生確率を得ることが可能となるが、1つの微細孔につき1つの細胞を固定するための交流電圧の波形としては、矩形波であることが好ましい。その理由として、図11〜図14に示すように、交流電圧の波形が正弦波(図11)、三角波(図12)、台形波(図13)に比べて、矩形波(図14)は瞬時に設定したピーク電圧(31)に到達するため、細胞が微細孔に速やかに動くため、細胞が重なって微細孔に入る確率が低くなり、従って、1つの微細孔につき1つの細胞を固定する確率が高くなる。また、細胞は電気的にコンデンサーと見なすことができ、矩形波のピーク電圧が変化しない間は、微細孔に入った細胞には電流が流れにくくなるため、電気力線が生じにくく、細胞の入った微細孔には誘電泳動力が発生しにくくなるため、一度微細孔に細胞が入ると、別の細胞がその微細孔に入る確率が低くなり、電気力線が生じ誘電泳動力が発生している空の微細孔に、順次、細胞が入っていくためである。
【0046】
なお、本発明の細胞融合装置に用いる交流電圧の波形は、直流成分を有しないことが好ましい。これは、直流成分により発生した静電気力により細胞が特定の方向に偏った力を受けて移動するため誘電泳動力により細胞を微細孔に固定することが困難になること、また細胞を含有する懸濁液に含まれるイオンが電極表面で電気反応を生じて発熱が起こり、それにより細胞が熱運動を起こすため、誘電泳動力により細胞の動きを制御することができなくなり細胞を微細孔に引き寄せることが困難となるためである。
【0047】
次に、本発明の細胞融合方法について説明する。
【0048】
本発明の細胞融合方法は、前記細胞融合装置を用いた細胞融合方法であって、前記細胞融合液導入切替え機構を用いて、前記細胞融合領域に第1の細胞が入った細胞融合液を導入し、前記交流電圧を印加することで前記微細孔内に前記第1の細胞を固定した後、前記細胞融合領域に第2の細胞が入った細胞融合液を導入して、前記交流電圧を印加することで前記第1の細胞に前記第2の細胞を前記微細孔の位置において接触させ、化学的に細胞を融合する細胞融合方法であって、前記細胞融合液導入切替え手段を用いて、細胞融合処理液の入った細胞融合液を導入する時期を、第2の細胞の導入前、細胞融合の前および細胞融合の後、の少なくとも一の時期とする細胞融合方法である。また、本発明の細胞融合方法は、前記細胞融合処理液が入った細胞融合液が2以上であって、前記2以上の細胞融合処理液が入った細胞融合液が全て同じまたは一部異なるまたは全て異なる、のいずれかの細胞融合処理液が入った細胞融合液であっても良い。
【0049】
また本発明の細胞融合方法は、細胞を、細胞膜の流動性を高める物質を加えた細胞融合液に入れて化学的に細胞融合を行うことを特徴とする細胞融合方法であって、前記細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールである事を特徴とする細胞融合方法である。細胞膜の流動性が高まった状態で細胞が接触すると膜融合が容易に生じるので、前述したように微細孔において2細胞一対が接触すれば、2細胞一対での細胞融合が生じる。ここで、細胞膜の流動性を高める物質は、接触した細胞同士に膜融合を起こさせる物質であれば特に制限はないが、例えばポリエチレングリコールやリゾチウムなどがあり、特に、ポリエチレングリコールであることが好ましい。またさらに、平均分子量1000〜6000程度のポリエチレングリコールが好ましい。
【0050】
このような細胞融合方法により、細胞融合させるべきそれぞれの細胞を目的に応じた成分の溶液に懸濁した状態で順次導入し2細胞一対の細胞融合を行い、さらには、それぞれの細胞を導入する前後あるいは細胞融合の前後で、細胞融合に必要な成分を導入したり、細胞融合に不要な成分を除去するための細胞融合処理液の入った細胞融合液を導入することはじめて可能となる。またそれぞれの細胞は、交流電圧により微細孔部に固定されるため、細胞融合液の置換を行うことが可能であり、また細胞融合液の置換に伴う細胞の損失も極めて低く抑えることが、はじめて可能になる。
【0051】
本発明の発明者らが、特願2007−010810として出願した細胞融合方法は、以下の(1)のプロセスである。また、本発明を実施する際の、具体的な細胞融合液や細胞融合液の導入および融合電圧印加の順序については、例えば以下の(2)から(8)のプロセスが挙げられる。本発明では、(2)〜(8)のプロセスの例にのみ限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能である。また、第1の細胞融合液と第2の細胞融合液の成分は同じ成分であってもよいし異なる成分であってもよい。
【0052】
プロセス(1):第1の細胞融合液に懸濁した第1の細胞を細胞融合領域に導入し、続いて第2の細胞融合液に懸濁した第2の細胞を細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させ細胞融合する。
【0053】
プロセス(2):第1の細胞融合液に懸濁した第1の細胞を細胞融合領域に導入し、続いて第2の細胞融合液に懸濁した第2の細胞を細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させた後、特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換し、細胞融合する。
【0054】
プロセス(3):第1の細胞融合液に懸濁した第1の細胞を細胞融合領域に導入し、特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換してから、続いて第2の細胞融合液に懸濁した第2の細胞を細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させ細胞融合する。
【0055】
プロセス(4):第1の細胞融合液に懸濁した第1の細胞を細胞融合領域に導入し、特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換し、続いて第2の細胞融合液に懸濁した第2の細胞を細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させた後、再び特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換し、細胞融合する。
【0056】
プロセス(5):第1の細胞融合液に懸濁した第1の細胞を細胞融合領域に導入し、続いて第2の細胞融合液に懸濁した第2の細胞を細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させて細胞融合した後、特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換する。
【0057】
プロセス(6):第1の細胞融合液に懸濁した第1の細胞を細胞融合領域に導入し、続いて第2の細胞融合液に懸濁した第2の細胞を細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させた後、特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換して細胞融合し、その後、特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換する。
【0058】
プロセス(7):第1の細胞融合液に懸濁した第1の細胞を細胞融合領域に導入し、特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換してから、続いて第2の細胞融合液に懸濁した第2の細胞を細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させた後細胞融合し、その後、特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換する。
【0059】
プロセス(8):第1の細胞融合液に懸濁した第1の細胞を細胞融合領域に導入し、特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換してから、続いて第2の細胞融合液に懸濁した第2の細胞を細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させた後、再び特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換してから細胞融合し、再び特定の成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を細胞融合領域に導入することで細胞融合液を置換する。
【0060】
上記プロセス(1)は既に説明したように、本発明の発明者らが、特願2007−010810で既に出願した細胞融合方法の最も基本的なプロセスであるあり、2細胞一対での細胞融合をより効率的により確実に実施できる標準の形態である。
【0061】
上記プロセス(2)〜(8)は、プロセス(1)に任意に細胞融合領域の細胞融合液の置換工程を加えたものである。具体的には、プロセス(2)は2種類の細胞を導入後に、プロセス(3)は第1の細胞を導入後に、プロセス(4)は第1の細胞の導入後および第2の細胞の導入後に、それぞれ細胞融合液の置換工程を加えたものである。さらに、プロセス(5)はプロセス(1)の細胞融合後に、プロセス(6)はプロセス(2)の細胞融合後に、プロセス(7)はプロセス(3)の細胞融合後に、プロセス(8)はプロセス(4)の細胞融合後に、細胞融合液の置換工程をそれぞれ加えたものである。ここで、細胞融合液の置換回数は目的に応じて何回でも繰り返すことができ、複数回置換を繰り返す場合は、その都度異なる成分を含む細胞融合処理液の入った細胞融合液を用いることも可能である。また、特定の細胞融合液で置換を行う際には、細胞を交流電圧により微細孔部に固定しておくことが望ましいが、交流電圧を印加しない状態でも細胞融合液の送液をゆっくりと行うことで、微細孔から細胞を脱離させずに、細胞融合領域の細胞融合液の置換が可能である。
【0062】
また、上記のような細胞融合液の置換を行う事で、本発明の細胞融合方法は、本発明の細胞融合方法は、細胞融合処理液が入った細胞融合液を特定の成分を含ませた細胞融合液とし、細胞融合液を置換することで、細胞融合領域の細胞融合液中に前記特定の成分を導入してもよいし、逆に、細胞融合処理液が入った細胞融合液により、細胞融合領域の細胞融合液中の特定の成分を除去してもよい。ここで、前記導入する特定の成分及び、除去する特定の成分が、細胞膜の流動性を高める物質であることが好ましく、さらには、細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールである事がより好ましい。
【0063】
以下では、本発明の化学的細胞融合方法を適用した第1の例〜第3の例とその効果についてさらに詳細に説明する。
【0064】
第1の例は、前述したプロセス(1)またはプロセス(2)またはプロセス(5)を用いて、ポリエチレングリコールのような、細胞融合をすみやかに生じさせるためには必要だが、細胞に対して強い毒性を有する物質と接触させる時間を、細胞融合に必要な最低限の時間にすることで、細胞のダメージを抑制し融合再生確率を向上させた例である。
【0065】
以下に第1の例においてプロセス(1)を適用した具体例を示す。プロセス(1)においては、まず細胞融合液A(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.1mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)に第1の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、交流電圧を印加して第1の細胞を微細孔に固定する。続いて交流電圧を印加したまま、ポリエチレングリコール50%水溶液に第2の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させる。その後、1〜3分程度静置し、細胞膜を流動化させて化学的に細胞融合する。このようにする事で、第1の細胞は、ポリエチレングリコールのような細胞融合をすみやかに生じさせるためには必要だが細胞に対して強い毒性を有する物質、接触する時間が短くなるので、第1の細胞の活性低下を抑える事が可能となり融合再生確率を向上させることが可能となる。
【0066】
また、以下に第1の例においてプロセス(2)を適用した具体例を示す。プロセス(2)においては、まず細胞融合液A(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.1mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)に第1の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、交流電圧を印加して第1の細胞を微細孔に固定する。続いて交流電圧を印加したまま、同様に細胞融合液Aに第2の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させる。その後、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合液としてポリエチレングリコール50%水溶液を細胞融合領域に導入する。次に、1〜3分程度静置し、細胞膜を流動化させて化学的に細胞融合する。このようにする事で、第1の細胞及び第2の細胞は、ポリエチレングリコールのような細胞融合をすみやかに生じさせるためには必要だが細胞に対して強い毒性を有する物質と接触する時間は、第1の細胞と第2の細胞が接触した後の細胞融合をする数分程度と短くなるので、第1の細胞及び第2の細胞の活性低下を抑えることが可能となり融合再生確率をさらに向上させることが可能となる。
【0067】
また、以下に第1の例においてプロセス(5)を適用した具体例を示す。プロセス(5)においては、まず細胞融合液A(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.1mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)に第1の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、交流電圧を印加して第1の細胞を微細孔に固定する。続いて交流電圧を印加したまま、ポリエチレングリコール50%水溶液に第2の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させる。次に、1〜3分程度静置し、細胞膜を流動化させて化学的に細胞融合する。細胞融合後、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合液Aを細胞融合領域に導入し、細胞融合領域からポリエチレングリコール50%水溶液を除去する。このようにする事で、第1の細胞は、ポリエチレングリコールのような細胞融合をすみやかに生じさせるためには必要だが細胞に対して強い毒性を有する物質、接触する時間が短くなるので、第1の細胞の活性低下を抑える事が可能となり、かつ、融合後に細胞に対して強い毒性を有する物質であるポリエチレングリコールを速やかに排除し、融合細胞の活性低下を抑えることができ、さらに融合再生確率を向上させることが可能となる。
【0068】
すなわち、本発明の細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法により、ポリエチレングリコールのような、細胞融合をすみやかに生じさせるためには必要だが、細胞に対して強い毒性を有する物質と接触させる時間をできるだけ短時間に制御することが初めて可能となる。
【0069】
また本発明の細胞融合方法は、任意のタイミングで、任意の回数、特定の成分を含ませた細胞融合液を導入することが可能であり、特定の成分としては上記のポリエチレングリコールのような細胞膜の流動性を高める物質以外であってもよく、ポリエチレングリコールのような細胞膜の流動性を高める物質を導入したり除去したりすることに加えて、別の特定の成分を導入したり除去したりしてもよく、例えば細胞表面を改質するシアル酸分解酵素またはプロテアーゼのような酵素や細胞膜修復作用があるカルシウムイオン等であってもよいし、細胞融合を行う細胞の種類に応じて、融合再生確率を高める添加剤であってもよい。ここで一般に、融合再生確率を高める添加剤としては、カルシウム塩やマグネシウム塩などの無機塩、アミノ酸、ウシ血清アルブミン(BSA)、糖、フィコール、カルモジュリン、セリシン、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、サイトカイン、その他のタンパク質、リポポリサッカライド、ポリエチレングリコール、コレステロール、カテキン、血清、ホルモン、動物細胞培養用培地由来の成分などがある。これらの成分をどのような組み合わせで、どのような濃度で用いても上記の本発明プロセスが適用可能である。
【0070】
次に第2の例を説明する。従来の化学的細胞融合法では2種類の細胞を同一の成分の溶液の中で混合状態で細胞融合を行うため、融合再生確率を高めるのに効果的なCa濃度のコントロールは困難であった(例えば、上述した非特許文献1参照)。つまり、Ca濃度を高めた場合、Caの細胞膜修復作用により融合再生確率を向上させる効果はあるが、細胞融合前に細胞同士が凝集を起こし、細胞融合に関与できない細胞が増大するため、結果として融合再生確率が低下するという課題があった。しかし、本発明の細胞融合方法においては、前述したプロセス(6)を用いて、細胞融合させるそれぞれの細胞を別々の成分の細胞融合液に懸濁して、個々に細胞融合領域に導入できるため、このような問題を回避することがはじめて可能となる。
【0071】
以下に第2の例においてプロセス(6)を適用した具体例を示す。プロセス(6)においては、最初に細胞融合領域に導入する第1の細胞は、細胞の凝集を防ぐために低いCa濃度の細胞融合液A(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.1mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)に懸濁させ、細胞の凝集を防ぎ、交流電圧を印加することで1つの微細孔に1つの細胞を固定することができる。次に第2の細胞も、細胞の凝集を防ぐために低いCa濃度の細胞融合液A(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.1mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)に懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、交流電圧を印加して微細孔に固定した第1の細胞に対して2細胞一対を効率よく形成させる。その後、細胞融合液導入切替え機構を用いてポリエチレングリコール50%水溶液を細胞融合領域に導入し、1〜3分静置し細胞膜を流動化させて化学的に細胞融合させる。引き続き、高いCa濃度の細胞融合液B(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.5mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)を細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入することで、細胞融合領域に高いCa濃度の成分の細胞融合液を入れるとともに細胞融合領域からポリエチレングリコールを除去する。このようにする事で、Caの細胞膜修復作用を効果的に利用し、かつ、融合後に細胞に対して強い毒性を有する物質であるポリエチレングリコールを速やかに排除し、融合細胞の活性低下を抑えることができ、融合再生確率を向上させることが可能となる。
【0072】
次に第3の例を説明する。細胞融合前にシアル酸分解酵素で細胞を処理することで細胞膜上のシアル酸を分解し、細胞を正の電荷に帯電させることによって細胞融合させる細胞同士の密着度を高め、融合再生確率を向上させた事例が報告されている(例えば、上述した非特許文献2参照)。しかしながら一般に、従来の化学的細胞融合法では細胞融合領域に細胞を導入する前にシアル酸分解酵素で酵素処理を行う必要があり、酵素処理を行っている間に細胞が死滅したり、細胞の活性が低下したり、細胞の損失が生じるほか、シアル酸分解処理を行った細胞同士が凝集することで、細胞融合に寄与する細胞数が減少し、結果として融合再生確率が低下するという課題があった。しかし本発明の細胞融合方法では、前述したプロセス(3)またはプロセス(4)またはプロセス(7)またはプロセス(8)を用いて、細胞融合液の置換が逐次可能であることから、細胞融合領域内で細胞融合前に細胞のシアル酸分解処理を簡便に行い、そのまま続けて細胞融合を行うことが可能である。
【0073】
以下に第3の例においてプロセス(3)を適用した具体例を示す。プロセス(3)においては、まず第1の細胞を細胞融合液A(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.1mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)に懸濁させ、細胞融合領域に導入し、交流電圧を用いて第1の細胞を微細孔に固定した後、交流電圧を印加した状態で細胞融合液導入切替え機構を用いてシアル酸分解酵素を含む細胞融合液Aを細胞融合領域に導入し、第1の細胞のシアル酸分解処理を行う。次に、ポリエチレングリコール50%水溶液に第2の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、交流電圧を印加して微細孔にて2細胞一対で接触させる。その後、1〜3分静置し細胞膜を流動化させて化学的に細胞融合させる。このようにすることで第1の細胞のシアル酸分解酵素による凝集をおさえ、高い融合再生効率を得られる。
【0074】
以下に第3の例においてプロセス(4)を適用した具体例を示す。プロセス(4)においては、まず第1の細胞を細胞融合液A(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.1mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)に懸濁させ、細胞融合領域に導入し、交流電圧を用いて第1の細胞を微細孔に固定した後、交流電圧を印加した状態で細胞融合液導入切替え機構を用いてシアル酸分解酵素を含む細胞融合液Aを細胞融合領域に導入し、第1の細胞のシアル酸分解処理を行う。次に、細胞融合液Aに第2の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、交流電圧を印加して微細孔にて2細胞一対で接触させる。引き続き、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合液としてポリエチレングリコール50%水溶液を細胞融合領域に導入し、1〜3分程度静置し、細胞膜を流動化させて化学的に細胞融合する。このようにすることで第1の細胞のシアル酸分解酵素による凝集を抑え、かつ、第1の細胞及び第2の細胞は、ポリエチレングリコールのような細胞融合をすみやかに生じさせるためには必要だが細胞に対して強い毒性を有する物質と接触する時間は、第1の細胞と第2の細胞が接触した後の細胞融合をする数分程度と短くなるので、第1の細胞及び第2の細胞の活性低下を抑える事が可能となり融合再生確率をさらに向上させることが可能となる。
【0075】
以下に第3の例においてプロセス(7)を適用した具体例を示す。プロセス(7)においては、まず第1の細胞を細胞融合液A(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.1mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)に懸濁させ、細胞融合領域に導入し、交流電圧を用いて第1の細胞を微細孔に固定した後、交流電圧を印加した状態で細胞融合液導入切替え機構を用いてシアル酸分解酵素を含む細胞融合液Aを細胞融合領域に導入し、第1の細胞のシアル酸分解処理を行う。次にポリエチレングリコール50%水溶液に第2の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させる。その後、1〜3分程度静置し、細胞膜を流動化させて化学的に細胞融合する。細胞融合後、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合液Aを細胞融合領域に導入し、細胞融合領域からポリエチレングリコール50%水溶液を除去する。このようにする事で、第1の細胞のシアル酸分解酵素による凝集を抑え、かつ、融合後に細胞に対して強い毒性を有する物質であるポリエチレングリコールを速やかに排除し、融合細胞の活性低下を抑えることができ、融合再生確率をさらに向上させることが可能となる。
【0076】
また、以下に第3の例においてプロセス(8)を適用した具体例を示す。プロセス(8)においては、まず第1の細胞を細胞融合液A(例えば、300mMのマンニトール水溶液に、0.1mMのCaCl、0.2mMのMgCl、1mg/mLのBSAを添加した細胞融合液など)に懸濁させ、細胞融合領域に導入し、交流電圧を用いて第1の細胞を微細孔に固定した後、交流電圧を印加した状態で細胞融合液導入切替え機構を用いてシアル酸分解酵素を含む細胞融合液Aを細胞融合領域に導入し、第1の細胞のシアル酸分解処理を行う。次に細胞融合液Aに第2の細胞を懸濁させ、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合領域に導入し、微細孔にて2細胞一対で接触させる。引き続き、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合液としてポリエチレングリコール50%水溶液を細胞融合領域に導入する。次に1〜3分程度静置し、細胞膜を流動化させて化学的に細胞融合する。細胞融合後、細胞融合液導入切替え機構を用いて細胞融合液Aを細胞融合領域に導入し、細胞融合領域からポリエチレングリコール50%水溶液を除去する。このようにする事で、第1の細胞のシアル酸分解酵素による凝集を抑えることがで、また、第1の細胞及び第2の細胞は、ポリエチレングリコールのような細胞融合をすみやかに生じさせるためには必要だが細胞に対して強い毒性を有する物質と接触する時間は、第1の細胞と第2の細胞が接触した後の細胞融合をする数分程度と短くなるので、第1の細胞及び第2の細胞の活性低下を抑える事が可能となる。さらに、融合後に細胞に対して強い毒性を有する物質であるポリエチレングリコールを速やかに排除し、融合細胞の活性低下を抑えることがでる。これにより、さらに融合再生確率を向上させることが可能となる。
【0077】
なお、第3の例ではシアル酸分解酵素を用いる例を示したが、その他の酵素として、プロテアーゼなどの酵素を用いてもよい。この場合、細胞融合前にプロテアーゼなどの酵素で細胞を処理することで細胞膜上のタンパクを分解し、融合再生確率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0078】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明の細胞オ融合装置によれば、微細孔にて2細胞一対での細胞融合を確実に行うことができるうえ、2種類の細胞の入った細胞融合液以外に、細胞融合処理液の入った細胞融合液を少なくとも1種類以上、導入することが可能となり、細胞を細胞融合領域にいれ、微細孔に固定したままの状態、細胞融合領域内の細胞融合液の成分を変え、より高い融合再生確率を得られる細胞融合条件に変更することが可能となる。
(2)本発明の細胞融合方法によれば、細胞融合の工程の任意のタイミングで、任意の回数、細胞融合液の成分を変更することが可能となり、より高い融合再生確率を得られる細胞融合条件に変更する事が可能となる。
(3)本発明の細胞融合方法によれば、融合再生確率を高める効果はあるものの、長時間細胞に接していると、細胞が死滅したり、細胞の活性が落ちたり、細胞が凝集したりするような成分を簡便かつ迅速に導入し除去することが可能となり、細胞の損失を防止し、より高い融合再生確率を得ることができる。特に、ポリエチレングリコールのような、化学的細胞融合には必要だが、細胞に対して強い毒性を有する成分を、細胞融合に必要なタイミングで必要十分な時間だけ細胞融合領域に導入したあと速やかに除去することで、より高い融合再生確率を得ることができる。
(4)本発明の細胞融合方法によれば、細胞融合の工程の任意のタイミングで、融合再生確率を高める効果のある成分を簡便かつ迅速に導入することが可能となり、より高い融合再生確率を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
【0080】
(実施例1)
図4に実施例1に用いた細胞融合装置の概念図を示す。細胞融合装置は大きく分けて、細胞融合容器(13)と電源(4)から構成される。細胞融合容器は、図4に示すように上部電極(14)と下部電極(15)の間に、スペーサー(16)を配置し、複数の微細孔をアレイ状に形成した絶縁体(8)をスペーサーと下部電極で挟んだ構造を有する。なお後述するように、微細孔は、下部電極(15)上に配置した絶縁膜に一般的なフォトリソグラフィーとエッチングにより形成した。
【0081】
上部電極と下部電極は、縦70mm×横40mm×厚さ1mmのパイレックス(登録商標)基板に、ITOを成膜(膜厚150nm)したものを用いた。スペーサーは、縦40mm×横40mm×厚さ1.5mmのシリコンシートの中央を縦20mm×横20mmにくりぬいた形状にして用いた。また図4に示すように、スペーサーには、細胞融合容器に細胞を導入、排出するため、細胞を導入する導入流路(29)及びそれに連通する導入口(19)と、細胞を排出する排出流路(30)及びそれに連通する排出口(20)を設けた。さらに図4に示すように、導入口には、細胞融合液導入流路(2)を介して容量1mLのシリンジA(4)、容量1mLのシリンジB(6)、容量1mLのシリンジC(7)、容量10mLのシリンジD(34)を、細胞融合液導入切替え機構としてのバルブ(21)をそれぞれ介して接続した。
【0082】
また、複数の微細孔を有する絶縁体(8)は、図10に示すフォトリソグラフィーとエッチングによる方法により下部電極に一体形成することで作製した。
【0083】
まずはじめにITO(23)を成膜したパイレックス(登録商標)ガラス(24)のITO成膜面にレジスト(25)を2.5μmの膜厚になるようスピンコーターを用いて塗布し、45分自然乾燥後、ホットプレートを用いてプリベーク(80℃、15分)を行った。レジストにはキシレン系のネガタイプレジストを用いた。次に、縦30mm×横30mmのエリアに、微細孔と微細孔の縦と横の間隔が30μmで、縦1000個×横1000個のアレイ状に並べた直径φ7μmの微細孔パターンを描いた露光用フォトマスク(26)を用いて、UV露光機にてレジストを露光(27)し、現像液(33)で現像した。露光時間と現像時間は、微細孔の深さがレジストの膜厚と等しい2.5μmになるように調整し、微細孔の底面にITOが露出するようにした。現像後、ホットプレートを用いてポストベーク(115℃、30分)を行いレジストを固めた。
【0084】
このようにして作製した上部電極(14)、スペーサー(16)、微細孔付き絶縁体一体型下部電極(28)を図5のように積層し圧着した。図5は、図4に示した細胞融合容器のXX’断面図である。スペーサーであるシリコンシートの表面は粘着性があり、圧着することで各部品は密着し、細胞を含有した細胞融合液を漏れなく細胞融合容器の中に入れることができた。スペーサーをくりぬいた面積が縦20mm×横20mmであることから、この空間に存在する微細孔の数は約40万個である。
【0085】
電極間に電圧を印加する電源は、交流電源(5)として信号発生器(エヌエフ回路設計ブロック製、WF1966)、直流パルス電源(6)として細胞融合用電源(ネッパジーン製、LF101)を導電線(3)を介して接続し、交流電源と直流パルス電源は電源切替え機構(7)により電極への接続を切替えられるようにした。
【0086】
前述した細胞融合装置を用いて、マウスの脾臓細胞(直径約6μm)とマウスのミエローマ細胞(直径約10μm)を用いて細胞融合を行った。ミエローマ細胞は細胞融合する前にシアル酸分解酵素で処理したものを用い、マウスの脾臓細胞は、細胞融合領域に導入し微細孔に固定した後、細胞融合領域でシアル酸分解酵素処理した後、細胞融合し融合再生確率を確認した。
【0087】
まず、マウスから脾臓細胞を取り出した。密閉瓶中にキムタオルを入れ、セボフルラン(丸石製薬製)を用いてマウスを安楽死させた。70%消毒用エタノールをマウスに十分散布した後、クリーンベンチ内の解剖台に注射針で固定した。次にピンセットで外皮を摘み上げ解剖用ハサミで切り込みを入れ、まず外皮を切り取った。次に新しい別のハサミを用いて内皮を切り開き、脾臓を露出させ、ピンセットを用いて脾臓を体外に引き出しながら、ハサミで脾臓をマウスの体から切断した。50mL遠心チューブに10mLの10%FBS(ウシ血清)を含む動物細胞培養用の培地(以下、培地Aと称する)を入れておき、その中に脾臓を移して揺り動かし、表面を洗った。次に脾臓をφ9cmスミロン製シャーレの蓋の上に移し、2本のピンセットを用いて、摘出した脾臓の周りに付着した脂肪を除いた。φ9cmスミロン製シャーレ中に10mLの培地Aを入れ、40mLメッシュのセルストレーナ(Falcon製)中で脾臓を4〜5の小片になるように新しいハサミで切断し、5mLテルモシリンジの尾部の平坦部を用いて脾臓を十分すり潰した。セルストレーナとテルモシリンジの尾部に付着した脾臓細胞は培地Aで洗い流した。シャーレ中の脾臓細胞の入った懸濁液は50mL遠心チューブに移し、シャーレを培地Aで2回洗浄し、洗浄液も遠心チューブ内で混合した。脾臓細胞の入った懸濁液を1500rpm、室温で5分間遠心分離後、上清をアスピレータで吸引し、脾臓細胞のペレットを解きほぐした。次に1mLのFBS中に解きほぐした脾臓細胞を懸濁した後、赤血球破砕液(SIGMA製)を9mL加えてよく混合し、室温で3分間静置し、赤血球の破砕を行った。再び脾臓細胞の入った懸濁液を1500rpm、室温で5分間遠心分離後、上清をアスピレータで吸引し、細胞ペレットを解きほぐした後、20mLの培地Aに懸濁した。セルストレーナを用いて、50mL遠心チューブ中に脾臓細胞の入った懸濁液をろ過し、この脾臓細胞が入った懸濁液の内、10mLを1500rpm、室温で5分間遠心分離後、上清をアスピレータで吸引し、脾臓細胞のペレットを解きほぐした。すぐに10mLの無血清動物細胞培養用の培地(以下、培地Bと称する)に解きほぐした脾臓細胞を懸濁させた後、1500rpm、室温で5分間遠心分離し、上清をアスピレータで吸引した後、脾臓細胞のペレットを解きほぐした。
【0088】
次に300mMのマンニトール、0.1mMのCaCl、0.1mMのMgCl、0.1mg/mLのBSAの入った20mLの細胞融合液(以下、細胞融合液Aと称する)に脾臓細胞を懸濁させた後、1500rpm、室温で5分間遠心分離し、上清をアスピレータで吸引した後、脾臓細胞のペレットを解きほぐした。再び少量の細胞融合液Aに脾臓細胞を懸濁し、セルストレーナを用いて50mLファルコンチューブ内にろ過を行い、細胞融合液Aで希釈して、脾臓細胞の最終濃度を0.9×10個/mLに調整した脾臓細胞の入った細胞融合液を準備した。なお、300mMのマンニトールを主成分とする細胞融合液は、細胞の浸透圧とほぼ等張である。
【0089】
また、ミエローマ細胞は常に1×10個/mL以下の濃度になるように、φ15cm浮遊培養用シャーレ中培地Aに懸濁し、37℃、5%のCOインキュベーター内で継代したものを用いた。細胞融合の前日、ミエローマ細胞の濃度が2.0×10個/mLとなるように培地Aにミエローマ細胞を懸濁し、φ15cm浮遊培養用シャーレ中、培地Aの液量40mLをミエローマ培養液とし、3枚培養を行った。ミエローマ培養液をシャーレから遠心チューブに移し、1000rpmで5分間遠心分離後、上清をアスピレータで吸引し、ミエローマの細胞ペレットを解きほぐした。すぐに40mLの培地Bを各チューブに分散するように加えてミエローマ細胞を懸濁させ、1本のチューブにまとめた後、再び1000rpm、室温で5分間遠心分離し、上清をアスピレータで吸引してミエローマ細胞のペレットを解きほぐした。すぐに50mLの培地Bを各チューブに分散するように加えてミエローマ細胞を懸濁させ、1本のチューブにまとめた後、再び1000rpm、室温で5分間遠心分離し、上清をアスピレータで吸引してミエローマ細胞のペレットを解きほぐした。20mLの培地Bにミエローマ細胞を再懸濁し、1000rpm、室温で5分間遠心分離後、上清をアスピレータで吸引し、ミエローマ細胞のペレットを解きほぐした。
【0090】
次に、40mLの細胞融合液Aにミエローマ細胞を再懸濁し、1000rpm、室温で5分間遠心分離し、上清をアスピレータで吸引し、ミエローマ細胞のペレットを解きほぐした。再び少量の細胞融合液Aにミエローマ細胞を懸濁し、セルストレーナを用いて50mLファルコンチューブ内にろ過を行い、細胞融合液Aで希釈して、最終濃度を0.8×10個/mLに調整したミエローマ細胞の入った細胞融合液を準備した。
【0091】
上記、脾臓細胞の入った細胞融合液を細胞融合装置のシリンジAに、シアル酸分解酵素で処理したミエローマ細胞の入った細胞融合液をシリンジBに入れた。また、分子量4000のポリエチレングリコール50%水溶液をシリンジCに、細胞の入っていない細胞融合液AをシリンジDに入れた。
【0092】
まずはじめに、上記脾臓細胞の入った細胞融合液を600μL(損失分も考慮すると脾臓細胞数は約40万個)をシリンジAを用いて細胞融合領域に導入し、細胞融合領域内で脾臓細胞を十分に沈降させた。次に、交流電源によりピーク電圧5V、周波数3MHzの矩形波交流電圧を電極間に印加し、約40万個の微細孔に、ほぼ1つの微細孔に1つずつ、脾臓細胞をアレイ状に固定した。次に、交流電圧を印加したまま、上記ミエローマ細胞の入った細胞融合液を600μL(細胞の損失分も考慮すると、ミエローマ細胞数は約40万個)をシリンジBを用いて細胞融合領域に導入した。この場合、脾臓細胞の数と同数のミエローマ細胞を細胞融合領域に導入したので、微細孔に固定された脾臓細胞の上に、ほぼ1つのミエローマ細胞が接触した状態になっているものと推定される。次に、交流電圧を印加したまま、分子量4000のポリエチレングリコール50%水溶液をシリンジCを用いて細胞融合領域に導入し1分間静置し、化学的に細胞融合した。なおこの間、交流電圧が印加されているので、脾臓細胞とミエローマ細胞は誘電泳動力により押し付けられるので、融合容器をタッピングする必要は無い。次に、交流電圧を印加したまま、細胞の入っていない細胞融合液AをシリンジDを用いて2〜3回、細胞融合領域に導入し、細胞融合領域のポリエチレングリコール水溶液を置換した。そのまま10分静置したあと細胞融合容器内の細胞懸濁液をHAT培地(H:ヒポキサンチン(hypoxanthine)、A:アミノプテリン(aminopterine)、T:チミジン(thymidine)を成分とする培地)に入れ、融合細胞の培養を行った。なお、HAT培地は、融合細胞のみを選択的に増殖させる培地である。
【0093】
細胞懸濁液を入れたHAT培地をCOインキュベータに入れて細胞培養を行い6日後に融合細胞をカウントした結果、44個の融合細胞を確認することができ、融合容器に導入したマウスの脾臓細胞数約40万個に対して1.1/10000の融合再生確率を得られた。これは、比較例1に示した通常の化学的細胞融合における融合再生確率0.12/10000の約9倍であり、非常に高い融合再生確率を得ることができた。
【0094】
(比較例1)
比較例1として、ポリエチレングリコールを用いた通常の化学的細胞融合を行った。細胞は、実施例1に用いたマウスの脾臓細胞とマウスのミエローマ細胞を用いた。細胞は、マウス抗体産生細胞(φ5μm)とマウスミエローマ細胞(φ10μm)を用いた。マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞を10:1で混合し、両方の細胞を培地から取り出し、遠心分離で細胞と培地を分離し、取り出した細胞をそれぞれ分子量4000のポリエチレングリコール50%水溶液に懸濁させ、1.7×10個/mLの密度になるように細胞懸濁液を調整した。
【0095】
上記細胞懸濁液40μL(マウス抗体産生細胞数:約60万個、マウスミエローマ細胞数:6万個)を試験管に入れ、1分間かけて試験管の底を軽くたたいた。その後、約5分静置したあと試験管内の細胞懸濁液を5噴火遠心分離し、HAT培地に入れた。細胞懸濁液を入れたHAT培地をCOインキュベータに入れて細胞培養を行い6日後に融合細胞をカウントした結果、7個の融合細胞を確認することができ、全マウス抗体産生細胞60万個に対して0.12/10000の融合再生確率を得られた。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明における基本的な細胞融合方法の概念を示す第1の図である。
【図2】本発明における基本的な細胞融合方法の概念を示す第2の図である。
【図3】本発明における基本的な細胞融合方法の概念を示す第3の図である。
【図4】本発明における細胞融合装置の概念図及び、実施例1に用いた細胞融合装置の概念図である。
【図5】図4に示したXX’断面図である。
【図6】微細孔の平面形状に内接する最大円の直径が、微細孔に固定する2つの細胞の直径より大きい場合を示す概念図である。
【図7】微細孔の平面形状に内接する最大円の直径が、微細孔に固定する2つの細胞の直径より小さい場合を示す概念図である。
【図8】微細孔の平面形状に内接する最大円の直径が第1の細胞より1〜2倍程度大きくかつ微細孔の深さが微細孔に固定した第1の細胞の直径より大きい場合を示す概念図である。
【図9】微細孔の平面形状に内接する最大円の直径が第1の細胞より1〜2倍程度大きくかつ微細孔の深さが微細孔に固定した第1の細胞の直径の以下である場合を示す概念図である。
【図10】一般的なフォトリソグラフィーとエッチング方法の概略図である。
【図11】本発明に用いる交流電圧の波形の一例として、正弦波の代表的な波形を示した図であり、横軸(X軸)は時間を示し、縦軸(Y軸)は電圧を示す。
【図12】本発明に用いる交流電圧の波形の一例として、三角波の代表的な波形を示した図であり、横軸(X軸)は時間を示し、縦軸(Y軸)は電圧を示す。
【図13】本発明に用いる交流電圧の波形の一例として、台形波の代表的な波形を示した図であり、横軸(X軸)は時間を示し、縦軸(Y軸)は電圧を示す。
【図14】本発明に用いる交流電圧の波形の一例として、矩形波の代表的な波形を示した図であり、横軸(X軸)は時間を示し、縦軸(Y軸)は電圧を示す。
【符号の説明】
【0097】
1:細胞融合領域
2:細胞融合液導入流路
3:導電線
4:シリンジA
5:交流電源
6:シリンジB
7:シリンジC
8:絶縁体
9:微細孔
10:誘電泳動力
11:電気力線の集中部位
12:電気力線
13:細胞融合容器
14:上部電極
15:下部電極
16:スペーサー
17:細胞融合液導入切替え機構
18:第1の細胞
19:導入口
20:排出口
21:バルブ
22:第2の細胞
23:ITO
24:パイレックス(登録商標)ガラス
25:レジスト
26:露光用フォトマスク
27:露光
28:現像液
29:導入流路
30:排出流路
31:ピーク電圧
32:融合細胞
33:現像液
34:シリンジD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞融合液導入口及び細胞融合液排出口を備え、細胞融合領域に対向して配置される導電部材からなる一対の電極と、前記一対の電極間に平板状のスペーサーを介して配置され、かつ前記対向して配置された電極の方向に貫通した複数の微細孔を有した平板状の絶縁体からなり、前記絶縁体が前記電極の内いずれか一方の電極の細胞融合領域側の電極面上に配置されている細胞融合容器と、前記一対の電極に交流電圧を印加する交流電源及び、3以上の細胞融合液を切替えて導入する細胞融合液導入切替え機構を有することを特徴とする細胞融合装置。
【請求項2】
前記細胞融合装置を用いて第1の細胞と第2の細胞とを細胞融合領域において融合する際、前記細胞融合領域に前記第1の細胞が入った細胞融合液を導入し、前記交流電圧を印加して前記微細孔内に前記第1の細胞を固定した後、前記細胞融合領域に前記第2の細胞が入った細胞融合液を導入し、前記交流電圧を印加して前記第1の細胞に前記第2の細胞を前記微細孔の位置において接触させ、前記第1の細胞と前記第2の細胞とを化学的に細胞を融合する細胞融合方法であって、前記細胞融合液導入切替え手段を用いて細胞融合処理液が入った細胞融合液を導入する時期を、前記第2の細胞の導入前、前記細胞融合の前および前記細胞融合の後、の少なくとも一の時期とする、細胞融合方法。
【請求項3】
前記細胞融合処理液が入った細胞融合液が2以上であって、前記2以上の細胞融合処理液が入った細胞融合液が全て同じまたは一部異なるまたは全て異なる、のいずれかの細胞融合処理液が入った細胞融合液である、請求項2に記載の細胞融合方法。
【請求項4】
細胞を、細胞膜の流動性を高める物質を加えた細胞融合液に入れて化学的に細胞融合を行うことを特徴とする請求項2〜3のいずれかに記載の細胞融合方法。
【請求項5】
前記細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールである、請求項4に記載の細胞融合方法。
【請求項6】
前記細胞融合処理液が入った細胞融合液が特定の成分を含む溶液であり、前記細胞融合処理液が入った細胞融合液の導入により、前記細胞融合領域の細胞融合液中に前記特定の成分を導入する、請求項2〜5のいずれかに記載の細胞融合方法。
【請求項7】
前記細胞融合処理液が入った細胞融合液により、前記細胞融合領域の細胞融合液中の特定の成分を除去する、請求項2〜6のいずれかに記載の細胞融合方法。
【請求項8】
前記特定の成分が、細胞膜の流動性を高める物質である、請求項6または7のいずれかに記載の細胞融合方法。
【請求項9】
前記細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールである、請求項8に記載の細胞融合方法。
【請求項10】
前記特定の成分が酵素である、請求項6〜9のいずれかに記載の細胞融合方法。
【請求項11】
前記酵素が、シアル酸分解酵素またはプロテアーゼである、請求項10に記載の細胞融合方法。
【請求項12】
前記特定の成分がカルシウムイオンである、請求項6〜11のいずれかに記載の細胞融合方法。
【請求項13】
前記特定の成分が融合再生確率を高める添加剤である、請求項6〜12のいずれかに記載の細胞融合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−254292(P2009−254292A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107577(P2008−107577)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】