説明

細胞観察用試料台キット、細胞観察用試料台および細胞観察用試料台の製造方法

【課題】液漏れ耐性、密閉性などの特性に優れる細胞観察用試料台を提供する。
【解決手段】複数の貫通孔が形成された試料液保持部10と、前記試料液保持部10の貫通孔50が形成された面に貼付されてなり、前記貫通孔50に対応する部位に貫通孔が形成された両面テープ20と、前記両面テープ20を介して前記試料液保持部10に接合された試料台の土台30と、前記試料液保持部10上に載置された、前記試料液保持部10を密閉する蓋50とを含む、細胞観察用試料台1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の検査に使用する試料台に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡を用いて細胞の病理検査を行うための器具として、複数の隔室を有する細胞観察用試料台が知られている。観察用容器には互いに隔絶された複数の孔が形成されており、観察対象の細胞を含む液が孔中に滴下される。顕微鏡を用いた観察においては、蛍光抗体法、酵素抗体法などを用いた抗体の検査や、感染症の検査、ガンの組織診断などが行われる。
【0003】
このような用途に用いられる細胞観察用試料台として、特許文献1には、効率的な検査を目的として、顕微鏡で観察するスライドプレートと、該スライドプレート上に着脱可能な上方部材とを有し、該上方部材には複数個の通孔が設けられるとともに上方部材の下面には該通孔の周辺にシール材による突条が形成され、上方部材をスライドプレート上に取り付けた際に上方部材に設けられた通孔がそれぞれ独立した区画を形成することを特徴とする試料台が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、やはり作業効率の向上を目的として、細胞を少なくとも五つ以下の細胞群に分離した状態で培養を行う培養容器において、細胞非接着性物質によって形成された培養容器底面の上面に形成され、細胞群と接着する複数の細胞接着性領域を具備し、複数の細胞接着性領域は、細胞群のうちの1つのみ接着するために十分な大きさを持ち、各細胞接着性領域が接することのない所定の間隔を持って配列している試料台が開示されている。
【0005】
ところで、細胞観察用試料台には、液漏れ耐性、密閉性、生産性、製造コストなど、種々の特性が要求される。
液漏れ耐性とは、孔中に滴下された液が隣接する孔に漏洩して試料同士が混じりあうことを防止する性能を意味する。液漏れが生じると分析の信頼性を揺るがすことに繋がるため、重要な特性である。液漏れを防止するためには、孔が形成されている部材と、該部材を支える土台部とが強固に接着していることが望ましい。予め孔が形成されている部材と土台とを一体成形することによって、液漏れを防止することができる。しかし、一体成形するには金型が必要となるため、小ロットの生産や、使用用途に応じた孔径や孔の位置のカスタマイズには適していない。また、孔が形成されている部材と土台とを別々に準備して接着剤で接合した場合、接着性は確保できたとしても、接着剤が孔中にはみ出して接着剤成分と細胞とが混じりあうと、検査・診断精度が低下する原因となる。
【0006】
密閉性とは、孔が形成されている部材の上部に配置される蓋に関連する特性である。細胞の経過観察をする場合には試料を静置する必要があるが、分析の信頼性を確保するためには、試料の保持液が揮発しないように密閉していることが望まれる。その一方で、試料の観察の手間という観点からは、密閉が容易であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3627360号
【特許文献2】特許第2965151号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、液漏れ耐性、密閉性などの特性に優れる細胞観察用試料台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、試料液保持部と土台とを両面テープで接合することにより、液漏れ耐性、密閉性などの特性に優れる細胞観察用試料台を低コストで製造できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)複数の貫通孔が形成された試料液保持部と、ここで、前記試料液保持部には前記貫通孔に対応する部位に貫通孔が形成された両面テープが貼付されており、
前記両面テープを介して前記試料液保持部に接合される試料台の土台と、
前記試料液保持部上に載置される、前記試料液保持部を密閉する蓋と、
を含む、細胞観察用試料台キット。
(2)前記試料液保持部はゴム製である、(1)に記載の細胞観察用試料台キット。
(3)前記試料液保持部は、前記蓋と接する部位の硬度が、前記試料液保持部の平均硬度よりも低い、(1)または(2)に記載の細胞観察用試料台キット。
(4)前記両面テープは、支持層と前記支持層の両面に配置された接着層を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞観察用試料台キット。
(5)前記貫通孔は、同心円状に配置されている、(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞観察用試料台キット。
(6)前記土台および前記蓋はガラス製である、(1)〜(5)のいずれかに記載の細胞観察用試料台キット。
(7)複数の貫通孔が形成された試料液保持部と、
前記試料液保持部の貫通孔が形成された面に貼付されてなり、前記貫通孔に対応する部位に貫通孔が形成された両面テープと、
前記両面テープを介して前記試料液保持部に接合された試料台の土台と、
前記試料液保持部上に載置された、前記試料液保持部を密閉する蓋と、
を含む、細胞観察用試料台。
(8)前記試料液保持部はゴム製であり、前記蓋はガラス製であり、前記蓋は自重により前記試料液保持部と密着している、(7)に記載の細胞観察用試料台。
(9)試料液保持部の一面に両面テープを貼付する段階と、
前記試料液保持部および前記両面テープを貫通する複数の貫通孔を形成する段階と、
前記両面テープを介して前記試料液保持部に試料台の土台を接合する段階と、
前記試料液保持部上に前記試料液保持部を密閉する蓋を載置する段階と、
を含む、細胞観察用試料台の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の細胞観察用試料台は、両面テープを用いて試料液保持部と土台とを接合するため、接着剤を用いる場合と比較して、試料が滴下される部位への接着成分の染み出しが非常に少ない。このため、試料液の漏洩による検査・診断の信頼性低下が防止される。また、接着成分の染み出しが生じると、貫通孔の底面積が変化してしまうため、分析精度の低下をもたらすが、これも防止できる。
【0011】
試料液保持部と土台とを別々に形成し、両面テープにより接合する形態であるため、試料液保持部と土台とを一体成形する場合に必要とされる特別な金型を準備する必要がない。このため、小ロットの生産に対応可能で、また、顧客ニーズに応じた試料台のカスタマイズが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の細胞観察用試料台の一実施形態の模式断面図である。細胞観察用試料台1は、試料液保持部10、両面テープ20、試料台の土台30、蓋40を有する。
【図2】図2は、貫通孔が点Aを中心として同心円状に配置された態様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明について説明する。
図1は、本発明の細胞観察用試料台の一実施形態の模式断面図である。試料液保持部10には、複数の貫通孔50が形成されている。貫通孔50は試料台が完成した際に、分析試料が滴下される部位となる。試料液保持部10と土台30とは、両面テープ20で接合されている。両面テープ20には、試料液保持部に形成されている貫通孔50に対応する部位に貫通孔が形成されている。このように、両面テープ20にも貫通孔が形成されていると、接着成分と試料との接触面積が非常に小さくなる。接着成分が貫通孔に滴下された試料と混じりあうと、観察される細胞への悪影響が及び、検査・診断精度が低下する可能性があるところ、接着成分と試料との接触面積を小さくすることにより、この弊害が抑制される。理論的には、貫通孔の外周長さと両面テープの厚みとの積に相当する接触部位が生じるが、両面テープは通常非常に薄いため、接触部位は極めて小さいものとなる。
【0014】
土台30は、試料液保持部を下支えする部材である。両面テープ20によって、試料液保持部10と土台30とが密着されているため、貫通孔に滴下された試料の隣接する試料への染み出しが抑制される。試料液保持部10が接着成分を用いずに土台30に自重で密着しているだけだと、振動により試料液保持部が横ずれする虞や、僅かな隙間を通じて試料が染み出る虞がある。
【0015】
蓋40は、試料液保持部10に形成された貫通孔50を密閉する。蓋40をしない場合、例えば、空気を介したコンタミネーションや、試料の揮発が生じうる。これらは、試料の検査・診断精度の低下を招く。貫通孔50に試料が滴下された後、蓋40で貫通孔50を密閉することによって、これらの問題が防止される。蓋40は、接着剤やテープなどの接着成分を用いて試料液保持部10に接合されてもよいが、好ましくは蓋40の自重により試料液保持部10に密着する。接着成分を用いる場合、蓋の開け閉めに手間が掛かるが、自重を用いる場合には、蓋の開閉が容易である。このため、一定時間をおいて複数回試料を観察する場合や、観察途中で細胞染色液などの試薬を添加する場合には、蓋の自重を利用して蓋と試料液保持部とを密着させる手法が好ましい。
【0016】
続いて、細胞観察用試料台を構成する各部材について説明する。
試料液保持部の材質としては、プラスチック、ゴム、厚紙などの有機物、金属、ガラスなどの無機物等、穴あけ加工可能なものであればいずれでもよいが、好ましくはゴムである。試料液保持部には試料が滴下される貫通孔が形成されるところ、ゴム製の部材は穴あけ加工がしやすい。また、土台には、細胞観察用試料台の確固とした保持の観点からはガラスなどの変形しない材料が好ましいところ、ゴムはガラスとの密着性にも優れる。ゴムの種類としては、天然ゴム、合成ゴム(シリコーンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリイソブチレン)が挙げられる。これらの中では、耐薬品性に優れるシリコーンゴムが好ましい。厚紙としては、ユポ紙や撥水紙が用いられうる。
【0017】
試料液保持部のサイズは特に限定されないが、試料台としての使い勝手を考えると、好ましくは、高さ(T)、幅(L)、奥行き(W)が、それぞれ0.1〜100mm、1〜500mm、0.1〜500mmである。特に好ましくは、それぞれ1.0〜10mm、10〜50mm、1.0〜50mmである。なお、幅および奥行きについては、他の積層される部材のサイズは、試料液保持部の大きさを基準として決定される。例えば、両面テープのサイズは、試料液保持部と同等にして、土台および蓋のサイズは、試料液保持部よりやや大きくする。
【0018】
試料液保持部は、単一の材質から形成されてもよいが、複数の材料からなる複合材であってもよい。例えば、蓋の自重によって、蓋と試料液保持部とを密着させる場合には、蓋と試料液保持部との相性が重要である。具体的には、接する部材の形状に追随して変形することが好ましい。一方で、試料液保持部の穴あけ加工を考慮すると、試料液保持部はある程度の硬さを有していることが好ましい。これら両者の要求を満たすために、蓋と接する部位の硬度が、前記試料液保持部の平均硬度よりも低い試料液保持部が考えられる。つまり、蓋と接する部位にやわらかい素材を用いる。例えば、低分子量シロキサンの含有量が多いシリコーンフィルムを蓋と接する部位に貼り合わせることによって、試料液保持部と蓋との密着性を確保できる。
【0019】
具体的には、蓋と接する部位の硬度が45°以下であることが好ましい。硬度は、例えば、JIS K6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―硬さの求め方)によって求めることができる。試料液保持部の平均硬度は、試料液保持部を構成する各部材の体積%および硬度から求めることができる。例えば、硬度がa度である厚さ5mmのゴムと、硬度がb度である厚さ10mmのゴムとを積層させて試料液保持部を形成した場合には、平均硬度は、(a×5+b×10)/15として求めることができる。
【0020】
両面テープの材質は、試料液保持部と土台とを接着可能な材料であれば特に限定されない。試料液保持部の材質と土台の材質とを考慮して、好ましい材料を選択するとよい。また、僅かではあるが両面テープと試料とが接触する可能性があるため、試料への溶出が少なく、また、細胞毒性の低い材料を用いることが好ましい。接着成分の具体例としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シロキサン、ゴムなどが挙げられる。試料液保持部がゴムであるときは、試料液保持部を接着する側の接着成分もゴムであることが好ましい。
【0021】
両面テープは、単層タイプであっても、積層タイプであってもいずれでもよい。単層タイプの場合には、接着層の表面に離型紙が配置された積層構造の両面テープを、使用に際して離型紙を剥がして用いることとなる。試料台における構成は、試料液保持部/接着層/土台となる。
【0022】
積層タイプは、接着層が二層積層された両面テープである。試料液保持部および土台の双方に接着力を有する材料が入手困難な場合に、試料液保持部との接合面には、試料液保持部の素材との接着性に優れる接着成分を配置し、土台との接合面には土台との接着性に優れる接着成分を配置する。2つの接着層の間には、それぞれの接着成分との接着性に優れる支持層を配置する。試料台における構成は、試料液保持部/第1接着層/支持層/第2接着層/土台となる。このような支持層がある場合の他の利点として、両面テープの構造が保持されやすく、打ち抜きにより貫通孔を形成する場合に、貫通孔の形状が歪みにくいという点が挙げられる。支持層の素材としては、ガラスメッシュ、フィルムなどが挙げられる。
【0023】
両面テープの厚みは、好ましくは、0.01〜5.0mmである。薄すぎると十分な接着力が確保できない一方、厚過ぎると接着成分の貫通孔内への染み出しによって、観察される細胞に悪影響が及ぶ可能性が高まる。
【0024】
試料液保持部および両面テープに形成される貫通孔の形状および配置は特に限定されない。貫通孔の形状は、滴下される試料の量に応じて設計されることが好ましい。本発明において試料液保持部の貫通孔は、細胞を含む試料液が保持されることになるので、貫通孔の形状は、好ましくは観察する細胞の種類や量、ならびに観察手段に応じて決定される。具体的には、試料の滴下量が少ないのであれば孔径を小さくし、試料の滴下量が多いのであれば孔径を大きくする。本発明は、試料液保持部と土台とを別々に形成し、両面テープにより接合する形態であるため、試料液保持部と土台とを一体成形する場合に必要とされる特別な金型を準備する必要がない。このため、使用用途に応じたカスタマイズが容易である。例えば、土台は共通化し、孔径や貫通孔の配置の異なる試料液保持部を複数準備し、顧客の要望に応じて適切な組み合わせを提供するという供給体制の採用が可能である。
【0025】
貫通孔の形成の容易さを考慮すると、貫通孔の形状は円柱形であることが好ましい。貫通孔のサイズは、通常は、直径0.1〜499mm程度である。
【0026】
MRI分析などの電磁波による分析を行う場合には、貫通孔は、ある1点を中心とした同心円状に配置されていることが好ましい。図2は、貫通孔が点Aを中心として同心円状に配置された態様の模式図である。このように点Aを中心として貫通孔50を同心円状に配置し、加えられる磁場が点Aを中心とした点対称となるように分析を行うことによって、計測時の磁場の影響の偏在を防止して、サンプルへの変動ファクターを減らすことができる。また、同心円状に貫通孔を配置した場合、顕微鏡観察時に、同一視野内に全貫通孔を入れることが可能となり、サンプル観察の利便性が高まる。
【0027】
貫通孔は、ある1点を中心として、二重以上に配置されてもよい。このとき、内側の同心円上に配置された貫通孔に加わる磁場と、外側の同心円上に配置された貫通孔に加わる磁場とは異なるものとなりうる。しかしながら、あるサンプル群を内側の同心円上に配置し、他のサンプル群を外側の同心円上に配置することによって、一度のMRIで複数のサンプル群の同時分析が可能となる。
【0028】
試料台の土台の材質としては、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。スライドガラスやカバーガラスなどの既存の実験器具を用いることも可能である。金属を用いたものは、SRR/表面プラズモン共鳴やエリプソメータ等表面反射を観察する場合に適している。好ましくは、土台はガラス製である。土台として実質的に変形しないガラスを用いることによって、土台が安定する。
【0029】
土台の厚みは、好ましくは、0.01〜50mmである。薄すぎると土台としての強度が不足して、割れてしまう虞がある。一方、厚過ぎると、顕微鏡観察の障害となる虞がある。
【0030】
土台は、機能性コート層によってコーティングされていてもよい。例えば、撥水性インキ、細胞接着性インキ、細胞非接着性インキ、組織培養用コートなどの機能性コート層を形成することによって、試料台の価値を高めることができる。
【0031】
蓋の材質としては、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。スライドガラスやカバーガラスなどの既存の実験器具を用いることも可能である。好ましくは、蓋はガラス製である。試料保持部は、貫通孔を形成する必要上、ガラスや金属といった加工しづらい材料よりも、ゴムのような加工しやすい材料が用いられることが望ましい。したがって、ゴムとの密着性に優れるガラスを用いることによって、空気を介したコンタミネーションや、試料の揮発が防止される。
【0032】
蓋の厚みは、好ましくは、0.01〜50mmである。薄すぎると、蓋の自重により蓋と試料保持部との密着性を確保する場合に、自重不足で密着性が不足する虞がある。一方、厚過ぎると、試料保持部への荷重により、試料保持部が損傷・変形してしまう虞がある。
【0033】
蓋は、機能性コート層によってコーティングされていてもよい。例えば、撥水性インキ、細胞非接着性インキなどの機能性コート層を形成することによって、試料台の価値を高めることができる。
【0034】
本発明の細胞観察用試料台は、細胞培養にも使用することができ、細胞の培養と細胞の観察とを並行して行う場合にも有利に使用できる。従って、本発明において細胞観察には、細胞の培養を行うこと、細胞のアッセイを行うことが包含される。
【0035】
続いて、試料台の製造方法の一実施形態について説明する。なお、各部材の形状、構成および組成については、既に説明したので、以下の製造方法の説明においては説明を省略する。
【0036】
まず、試料液保持部を準備する。この段階においては、まだ貫通孔は形成されておらず、好ましくは試料液保持部の高さに相当する一定の厚みを有するシート状のものを使用できる。両面テープを準備し、一方の接着面を用いて試料液保持部に両面テープを貼付する。この段階では、両面テープにおける試料液保持部と接する側と反対面には、離型紙が貼り付けられていることが好ましい。
【0037】
両面テープが貼付された試料液保持部に、貫通孔を形成する。貫通孔は、両面テープが貼付された面と、その面に対向する面とを貫通するようにする。刃型で試料液保持部と両面テープとを同時に打ち抜く手法を用いることによって、作業効率を高めることができる。試料液保持部と両面テープとに別々に貫通孔を形成して、その後、両者を貼り合わせてもよいが、貫通孔のアラインメントをとるのに手間を要する。
【0038】
貫通孔は、形成される複数の貫通孔を一度に打ち抜いても、1つずつ打ち抜いてもいずれでもよい。一度に複数の貫通孔を打ち抜く場合、生産性が高いが、刃型の刃の位置を変更できない場合には、貫通孔の部位のカスタマイズに対応しづらくなる。一方、1つずつ貫通孔を打ち抜く場合、生産性は落ちるが、貫通孔の場所の微調整が容易である。
【0039】
両面テープの離型紙を剥がし、試料液保持部と試料台の土台とを接合する。特段の事情がなければ、試料台の中央部付近に試料液保持部が接合される。両面テープによる接着力が十分なものとなるように、土台と両面テープとの間にある程度の圧力を加えるとよい。
【0040】
その後、試料液保持部の土台が配置された側と反対面に試料液保持部を密閉する蓋が載置される。これにより、細胞観察用試料台が完成する。なお、各構成材料は試料台の製造に先立ち、滅菌しておくことが好ましい。
【0041】
本発明は、試料液保持部、試料台の土台および蓋を含む細胞観察用試料台キットとして販売されうる。この場合には、試料台を構成する部材を、組み立て方法などの説明書と共に梱包することが好ましい。試料台キットは、試料台の使用に先立ち、説明書に従って使用者によって組み立てられる。組み立てた細胞観察用試料台を販売してもよく、いずれの実施態様も本発明の範疇に含まれうる。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
5mm(T)×30mm(L)×26mm(W)のシリコーンゴムを準備した。両面テープ(寺岡製作所製/No.765H)の一方の離型紙を剥がし、両面テープをシリコーンゴムに貼付した。シリコーンゴムと両面テープとの複合体に直径6mmの貫通孔を形成し、複数の貫通孔が形成された試料液保持部を形成した。貫通孔の配置は同心円状とした。
【0043】
両面テープのもう1つの剥離紙を剥がし、試料台の土台となるスライドガラスに、両面テープを介して試料液保持部とスライドガラスとを接合し、細胞観察用試料台を完成させた。試料液保持部の貫通孔に、MRIにより検出可能な金属を取り込んだ細胞の懸濁液を100μl滴下した。その後、蓋としてスライドガラスを載置することにより、試料液保持部を密閉した。なお、シリコーンゴム、土台となるスライドガラス、蓋となるスライドガラスは使用に先出し、滅菌しておいた。
【0044】
試料台を計測用ステージに固定して、MRI計測を実施した。MRI計測後、スライドガラスの蓋を慎重に取り外し、細胞染色液を添加し、静置した。細胞懸濁液を洗浄後、試料を顕微鏡で観察した。MRI計測で確認された位置と同じ位置に、細胞が検出されることを確認した。
【0045】
(実施例2)
5mm(T)×30mm(L)×26mm(W)のシリコーンゴムを準備した。両面テープ(寺岡製作所製/No.765H)の一方の離型紙を剥がし、両面テープをシリコーンゴムに貼付した。シリコーンゴムと両面テープとの複合体に直径5mmの貫通孔を形成し、複数の貫通孔が形成された試料液保持部を形成した。貫通孔の配置は同心円状とした。
【0046】
両面テープのもう1つの剥離紙を剥がし、試料台の土台となるスライドガラスに、両面テープを介して試料液保持部とスライドガラスとを接合し、細胞観察用試料台を完成させた。試料液保持部の貫通孔に細胞懸濁液を60μl滴下した。その後、蓋としてスライドガラスを載置することにより、試料液保持部を密閉した。なお、シリコーンゴム、土台となるスライドガラス、蓋となるスライドガラスは使用に先出し、滅菌しておいた。
【0047】
試料台を、37℃、5%濃度のCO環境下で7日間静置した。顕微鏡を用いて、細胞画像を取得した。その後、スライドガラスの蓋を慎重に取り外し、細胞染色液を添加し、静置した。細胞懸濁液を洗浄後、試料を生物学的アッセイに使用した。
【0048】
(比較例1)
5mm(T)×30mm(L)×26mm(W)のシリコーンゴムを準備した。シリコーンゴムに直径6mmの貫通孔を形成し、複数の貫通孔が形成された試料液保持部を形成した。貫通孔の配置は同心円状とした。
【0049】
試料台の土台となるスライドガラスに、試料液保持部を載置し、自重により自着させ、細胞観察用試料台を完成させた。試料液保持部の貫通孔に細胞懸濁液を60μl滴下した。その後、蓋としてスライドガラスを載置することにより、試料液保持部を密閉した。なお、シリコーンゴム、土台となるスライドガラス、蓋となるスライドガラスは使用に先出し、滅菌しておいた。
【0050】
試料台を、37℃、5%濃度のCO環境下で7日間静置した。顕微鏡を用いて、細胞画像を取得した。シリコーンゴムと土台となるスライドガラスとは、自着により固定されているだけであるため、隣接する孔への細胞懸濁液の漏れ出しが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が形成された試料液保持部と、ここで、前記試料液保持部には前記貫通孔に対応する部位に貫通孔が形成された両面テープが貼付されており、
前記両面テープを介して前記試料液保持部に接合される試料台の土台と、
前記試料液保持部上に載置される、前記試料液保持部を密閉する蓋と、
を含む、細胞観察用試料台キット。
【請求項2】
前記試料液保持部はゴム製である、請求項1に記載の細胞観察用試料台キット。
【請求項3】
前記試料液保持部は、前記蓋と接する部位の硬度が、前記試料液保持部の平均硬度よりも低い、請求項1または2に記載の細胞観察用試料台キット。
【請求項4】
前記両面テープは、支持層と前記支持層の両面に配置された接着層を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞観察用試料台キット。
【請求項5】
前記貫通孔は、同心円状に配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞観察用試料台キット。
【請求項6】
前記土台および前記蓋はガラス製である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞観察用試料台キット。
【請求項7】
複数の貫通孔が形成された試料液保持部と、
前記試料液保持部の貫通孔が形成された面に貼付されてなり、前記貫通孔に対応する部位に貫通孔が形成された両面テープと、
前記両面テープを介して前記試料液保持部に接合された試料台の土台と、
前記試料液保持部上に載置された、前記試料液保持部を密閉する蓋と、
を含む、細胞観察用試料台。
【請求項8】
前記試料液保持部はゴム製であり、前記蓋はガラス製であり、前記蓋は自重により前記試料液保持部と密着している、請求項7に記載の細胞観察用試料台。
【請求項9】
試料液保持部の一面に両面テープを貼付する段階と、
前記試料液保持部および前記両面テープを貫通する複数の貫通孔を形成する段階と、
前記両面テープを介して前記試料液保持部に試料台の土台を接合する段階と、
前記試料液保持部上に前記試料液保持部を密閉する蓋を載置する段階と、
を含む、細胞観察用試料台の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−4661(P2011−4661A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151371(P2009−151371)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】