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細胞評価方法、細胞評価装置、及び細胞評価プログラム
説明

細胞評価方法、細胞評価装置、及び細胞評価プログラム

【課題】心筋細胞の拍出力を精度良く評価すること。
【解決手段】この細胞測定方法は、心筋細胞Cの拍出力を評価する細胞評価方法であって、透明な試料ケース上に付着した心筋細胞Cの光学画像データ60を取得する画像取得ステップS1と、光学画像データ60の画素が有する輝度値に基づいて、心筋細胞Cが占める領域を示す解析領域RCを設定する領域設定ステップS2と、解析領域RCの画素に基づいて、心筋細胞Cの厚みの経時変化を示す厚みデータ、及び心筋細胞Cが占める領域の面積の経時変化を示す面積データの少なくとも一方を取得するデータ取得ステップS3と、データ取得ステップS3において取得された面積データ及び厚みデータの少なくとも一方に基づいて、心筋細胞Cの拍出力を評価する評価ステップS6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心筋細胞の拍出力を評価するための細胞評価方法、細胞評価装置、及び細胞評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の機能を評価するとき、血液を排出する力である拍出力を評価パラメータとして用いることがある。このような評価方法に関して、特許文献1には、光学的手法を用いて心筋細胞の拍動を検出する方法が記載されている。この方法では、心筋細胞の拍動に伴う体積の変化を光学的に計測して、心筋細胞の体積の経時変化を示す波形を取得する。そして、この波形を時間微分して、時間微分値を示す波形を求める。さらに、この微分波形の傾きに基づいて、心筋細胞の収縮速度を算出する。このような収縮速度を算出する手法を用いて、薬物を含む培養液に配置した心筋細胞の収縮速度、及び薬物を含まない培養液に載置した心筋細胞の収縮速度を取得する。最終的に、それぞれの収縮速度、即ち拍出量を比較して心筋細胞に対する薬物の毒性を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010―130966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
拍動する心筋細胞では、例えば種々のイオン成分の流入出があるが、イオン成分の流入出量は心筋細胞の体積に比べてわずかである。そのため、拍動する心筋細胞における体積の変化は微小であるので、上記特許文献1に記載の評価方法では心筋細胞の拍出力を精度良く検出することは困難である。
【0005】
上述した問題点に鑑みて、本発明は、心筋細胞の拍出力を精度良く評価することができる細胞評価方法、細胞評価装置及び細胞評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本発明の細胞評価方法は、心筋細胞の拍出力を評価する細胞評価方法であって、透明な試料ケース上に付着した心筋細胞の光学画像データを取得する画像取得ステップと、光学画像データの画素が有する輝度値に基づいて、心筋細胞が占める領域を示す解析領域を設定する領域設定ステップと、解析領域の画素に基づいて、心筋細胞の厚みの経時変化を示す厚みデータ、及び心筋細胞が占める領域の面積の経時変化を示す面積データの少なくとも一方を取得するデータ取得ステップと、データ取得ステップにおいて取得された面積データ及び厚みデータの少なくとも一方に基づいて、心筋細胞の拍出力を評価する評価ステップと、を備える。
【0007】
或いは、本発明の細胞評価装置は、心筋細胞の拍出力を評価する細胞評価装置であって、透明な試料ケース上に付着した心筋細胞の光学画像データを取得する画像取得手段と、光学画像データの画素が有する輝度値に基づいて、心筋細胞が占める領域を示す解析領域を設定する領域設定手段と、解析領域の画素に基づいて、心筋細胞の厚みの経時変化を示す厚みデータ、及び心筋細胞が占める領域の面積の経時変化を示す面積データの少なくとも一方を取得するデータ取得手段と、データ取得手段において取得された面積データ及び厚みデータの少なくとも一方に基づいて、心筋細胞の拍出力を評価する評価手段と、を備える。
【0008】
或いは、本発明の細胞評価プログラムは、心筋細胞の拍出力を評価する細胞評価プログラムであって、コンピュータを、画像取得手段によって取得された、透明な試料ケース上に付着した心筋細胞の光学画像データを構成する画素が有する輝度値に基づいて、心筋細胞が占める領域を示す解析領域を設定する領域設定手段、解析領域の画素に基づいて、心筋細胞の厚みの経時変化を示す厚みデータ、及び心筋細胞が占める領域の面積の経時変化を示す面積データの少なくとも一方を取得するデータ取得手段、及びデータ取得手段において取得された面積データ及び厚みデータの少なくとも一方に基づいて、心筋細胞の拍出力を評価する評価手段、として機能させる。
【0009】
このような、細胞評価方法、細胞評価装置、或いは細胞評価プログラムによれば、光学画像データを構成する画素が有する輝度値に基づいて、心筋細胞の領域を示す解析領域を設定する。従って、光学画像データを構成する画素に解析対象であることを示すラベルを付すことなく、心筋細胞の拍出力を評価することができる。さらに、心筋細胞の領域を示す解析領域が有する面積の経時変化、及び心筋細胞の厚みの経時変化を示す厚みデータの少なくとも一方に基づいて心筋細胞の拍出力を評価する。試料ケース上に付着した心筋細胞の拍動に伴う心筋細胞の面積及び厚みの変化は、心筋細胞の体積の変化よりも大きいので、心筋細胞の拍出力を精度良く評価することができる。
【0010】
本発明の細胞評価方法では、光学画像データが、心筋細胞からの後方散乱光による光学画像からなっていてもよい。これによれば、光学画像データにおける画素毎の輝度値に基づいて心筋細胞の厚みを精度良く取得することができる。さらに、光学画像データにおける解析領域の画素数に基づいて心筋細胞の面積を精度良く取得することができる。
【0011】
本発明の細胞評価方法は、心筋細胞の厚みが、解析領域の画素毎における輝度値の平均値に基づいて算出されてもよい。これによれば、心筋細胞の厚みを容易且つ精度良く取得することができる。
【0012】
本発明の細胞評価方法では、心筋細胞が占める領域の面積が、解析領域に含まれた画素の数に基づいて算出されてもよい。これによれば、光学画像データにおいて心筋細胞が占める領域の面積を容易且つ精度良く取得することができる。
【0013】
本発明の細胞評価方法は、心筋細胞の厚みの極値に基づいて、心筋細胞の厚みの値を正規化する厚み正規化ステップをさらに有していてもよい。心筋細胞の形状や大きさにより、光学画像データにおいて心筋細胞が存在する領域の輝度値の絶対値が異なることがある。このような構成によれば、輝度値の絶対値が異なる心筋細胞の間において、心筋細胞の拍出力を比較して評価することができる。
【0014】
本発明の細胞評価方法は、心筋細胞が占める領域の面積の極値に基づいて、心筋細胞が占める領域の面積の値を正規化する面積正規化ステップをさらに有していてもよい。心筋細胞の形状や大きさにより、光学画像データにおいて心筋細胞が占める画素数の絶対値が異なることがある。このような構成によれば、画素数の絶対値が異なる心筋細胞の間において、心筋細胞の拍出力を比較して評価することができる。
【0015】
本発明の細胞評価方法の評価ステップでは、面積データから算出された、心筋細胞が占める領域の面積が変化するときの速度、及び、厚みデータから算出された、心筋細胞の厚みが変化するときの速度の少なくとも何れか一方に基づいて心筋細胞の拍出力を評価してもよい。また、本発明の細胞評価方法の評価ステップでは、面積データから算出された、心筋細胞が占める領域の面積が変化するときの加速度、及び厚みデータから算出された、心筋細胞の厚みが変化するときの加速度の少なくとも何れか一方に基づいて心筋細胞の拍出力を評価してもよい。このような構成によれば、心筋細胞の拍出力を好適に評価することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による細胞評価方法、細胞評価装置及び細胞評価プログラムによれば、光学画像データに基づいて心筋細胞の拍出力を精度良く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】細胞評価装置の一実施形態を模式的に示す構成図である。
【図2】データ処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】細胞評価方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図4】細胞評価方法の一工程を説明するための図である。
【図5】細胞評価方法の一工程を説明するための図である。
【図6】細胞評価方法の一工程を説明するための図である。
【図7】細胞評価方法におけるパラメータを説明するための図である。
【図8】細胞評価方法におけるパラメータを説明するための図である。
【図9】細胞評価方法におけるパラメータを説明するための図である。
【図10】細胞評価方法の一工程を説明するための図である。
【図11】記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【図12】記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータの斜視図である。
【図13】細胞評価方法の効果を説明するための図である。
【図14】細胞評価装置の変形例を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明による細胞評価装置、細胞評価方法、及び細胞評価プログラムの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明による細胞評価装置1Aの一実施形態を模式的に示す構成図である。細胞評価装置1Aは、後方散乱光画像取得装置2A、及びデータ処理装置40を備える。後方散乱光画像取得装置2は、試料保持部10A、光照射装置20A及び画像取得装置30を備える。
【0020】
試料保持部10Aは、透明な試料ケースであるシャーレ11を含む。シャーレ11は、例えば石英ガラスからなり、光照射装置20Aから照射される照射光L1を透過すると共に、心筋細胞Cからの散乱光L2を透過する。シャーレ11の内部には溶液12が収容されている。溶液12の中には心筋細胞Cが配置されている。心筋細胞Cの一部はシャーレ11の底面11bに付着している。心筋細胞Cは、コラーゲンなどのコーティング剤によりコーティングされていてもよいし、コーティングされていなくてもよい。
【0021】
光照射装置20Aは、導光部材21、光源装置22を備える。光照射装置20Aは、心筋細胞Cを収容したシャーレ11に対して照射光L1を照射する。導光部材21は、主面21s、主面21sの反対側にある裏面21r、及び主面21sと略直交する側面21fを有する板状部材である。導光部材21は、例えば石英ガラス等の透光性部材により構成されている。主面21s上には水13を介してシャーレ11が載置されている。導光部材21の近傍には、側面21fに近接するように光源装置22が配置されている。
【0022】
光源装置22は、光源部23及びフィルタ部24を備える。光源部23は、フレーム部材に複数のLEDが配置された構造を有する。これら複数のLEDは、導光部材21の側面21fから導光部材21に指向性を有する照射光L1を入射する。フィルタ部24は、特定の波長帯域の光のみを透過するショートパスフィルタ或いはバンドパスフィルタ等である。このフィルタ部24はLEDから照射される光から、測定に適した波長の照射光L1のみを透過する。このように、光源部23及びフィルタ部24とを組み合わせることにより、測定に適した波長の光を導光部材21へ入射させることができるので、測定精度を高めることができる。
【0023】
なお、光源部23の光源は、上記したLEDに限定されることはない。例えば、キセノンランプ等の白色光源を用いてもよい。この場合、LEDでは実現できない波長の光を照射光として心筋細胞Cに照射することができる。
【0024】
光照射装置20Aは、導光部材21に対して導光部材21の側面21fから照射光L1を入射する。導光部材21に入射した照射光L1は、導光部材21の主面21s及び裏面21rにおいて全反射される。この照射光L1の一部は、主面21sとシャーレ11との間の水13が配置された領域からシャーレ11内に入射する。この照射光L1は、導光部材21と水13との屈折率差から、主面21sと平行な方向に向けて屈折して、シャーレ11内に照射される。これにより、シャーレ11に入射する照射光L1はシャーレ11の深さ方向に対して傾きをもつ。従って、溶液12に照射される照射光L1が比較的少なくなるので、溶液12に照射光L1が照射されることにより生じる背景光ノイズを低減できる。
【0025】
光照射装置20Aでは、導光部材21の主面21s上に水13を配置して、導光部材21の屈折率と水13の屈折率とに基づく臨界角を所定の値に設定することにより、シャーレ11内に照射光L1を照射している。シャーレ11内に照射光L1を照射する手段はこれに限られることはなく、例えば、主面21sに溝などの所望の形状を形成して主面21sに対する照射光L1の入射角を所定の値に設定することにより、シャーレ11内に照射光L1を照射してもよい。
【0026】
画像取得装置30は、撮像装置31及びレンズ32を備える。画像取得装置30は、導光部材21上においてシャーレ11が載置された位置の下方に設けられ、シャーレ11内の心筋細胞Cからの散乱光L2を検出する。詳細には、この画像取得装置30は、シャーレ11内に保持された心筋細胞Cからの散乱光L2を含む二次元光像を検出して、光学画像データを取得する画像取得手段である。画像取得装置30は、複数の画素が二次元に配列された二次元画素構造を有する撮像装置31を備える。この撮像装置31は、心筋細胞Cからの散乱光L2による二次元の光検出画像である後方散乱光画像を取得可能に構成されている。撮像装置31としては、例えば高感度のCCDカメラやCMOSイメージカメラを用いることができる。また、必要があれば、カメラの前段にイメージ増倍管、リレーレンズ等を配置して画像取得装置30を構成してもよい。
【0027】
また、導光部材21と撮像装置31との間には、レンズ32が配置されている。レンズ32は、散乱光L2を撮像装置31に結像する。なお、必要であれば導光部材21とレンズ32との間、或いはレンズ32と撮像装置31との間に光学フィルタ等の光学部材を配置してもよい。
【0028】
データ処理装置40は、画像取得装置30に接続されている。このデータ処理装置40は、画像取得装置30によって取得された光学画像データに対して解析処理を行う解析処理手段である。また、光照射装置20Aの動作がデータ処理装置40により制御されることにより、照射光L1の照射が制御されても良い。また、データ処理装置40は、解析処理結果等を表示する表示装置51、及び細胞評価に必要な指示の入力やデータの入力等に用いられる入力装置52と接続されている。
【0029】
以上の構成において、シャーレ11内に付着した心筋細胞Cに対し、導光部材21を介して光源部23から供給された照射光L1が照射される。そして、心筋細胞Cからの散乱光L2を含む二次元光像は、レンズ32を介して撮像装置31へと導かれ、撮像装置31によって光学画像データが取得される。画像取得装置30によって取得された光学画像データは、データ処理装置40へと送られる。そして、データ処理装置40は、入力された光学画像データに基づいて心筋細胞Cの拍出力の評価に必要な処理を行う。
【0030】
図2は、細胞評価装置1Aが備えるデータ処理装置40の概略構成を示す機能ブロック図である。データ処理装置40は、光学画像データにおいて心筋細胞の領域を示す解析領域を設定し、その解析領域が占める面積の経時変化を示す面積データ、及び心筋細胞の厚みの経時変化を示す厚みデータの少なくとも一方を取得することにより、心筋細胞Cの拍出力を評価する情報処理装置である。この光学画像データは、上述したシャーレ11内に保持された心筋細胞Cからの散乱光L2を含むシャーレ11を撮影した動画像を、デジタルデータに変換したものである。なお、光学画像データは、通信ネットワークやCD−ROM、DVD、半導体メモリ等の記録媒体を介してデータ処理装置40に入力されてもよい。
【0031】
データ処理装置40は、機能的構成要素として、解析領域設定部(領域設定手段)41、データ取得部(データ取得手段)42、正規化部(正規化手段)43、パラメータ取得部(パラメータ取得手段)44、及び評価部(評価手段)45を備える。データ処理装置40は、画像取得装置30、表示装置51及び入力装置52と接続されている。
【0032】
解析領域設定部41は、画像取得装置(画像取得手段)30から入力された光学画像データに対して解析領域を設定する。解析領域は、画像取得装置30によって取得された光学画像データにおいて心筋細胞Cが占める領域である。解析領域は、光学画像データを構成する画素が有する輝度値に基づいて解析領域設定部41により設定される。解析領域設定部41はデータ取得部42と接続されており、解析領域の設定情報が解析領域設定部41からデータ取得部42に出力される。
【0033】
データ取得部42は、光学画像データから心筋細胞Cの拍出力の評価に必要なデータを取得する。データ取得部42は解析領域設定部41と接続されており、解析領域設定部41から解析領域の設定情報が入力される。データ取得部42では、心筋細胞Cの厚みの経時変化を示す厚みデータ、及び心筋細胞Cが占める領域の面積の経時変化を示す面積データの少なくとも一方が取得される。データ取得部42は、解析領域の設定情報に基づいて面積データ及び厚みデータを取得する。心筋細胞Cの厚みは、光学画像データにおける解析領域の輝度値と相関がある。このため、心筋細胞Cの厚みは解析領域の画素毎における輝度値の平均値、或いは画素毎の輝度値を全て足し合わせた総輝度値に基づいて算出される。心筋細胞Cの面積は解析領域に含まれた画素の数に基づいて算出される。データ取得部42は正規化部43と接続されており、厚みデータ及び面積データがデータ取得部42から正規化部43に出力される。
【0034】
正規化部43は、厚みデータ及び面積データを正規化する。正規化部43は、データ取得部42と接続されており、データ取得部42から厚みデータ及び面積データが入力される。正規化部43では、厚みデータから心筋細胞Cの厚みの極値であるピーク値(極大値)及びボトム値が取得される。このピーク値及びボトム値に基づいて、例えば、ピークの値が100であり、ボトムの値が0になるように厚みデータを正規化する。また、正規化部43は、面積データから心筋細胞Cの面積の極値であるピーク値(極小値)及びベース値を取得する。このピーク値及びベース値に基づいて、例えば、ピークの値が100であり、ベースの値が0になるように面積データを正規化する。このように、厚みデータおよび面積データの正規化は、ピーク値及びボトム値に基づく相対値にすることで行われる。正規化部43はパラメータ取得部44と接続されており、正規化された厚みデータ及び正規化された面積データが正規化部43からパラメータ取得部44に出力される。なお、正規化部43は、例えば互いに異なる大きさを有する心筋細胞同士を比較するときのように、必要に応じて設けることができる。なお、データ取得部42から入力されるデータは、厚みデータもしくは面積データであればよい。
【0035】
パラメータ取得部44は、正規化された厚みデータ及び正規化された面積データから、心筋細胞Cの拍出力を評価するための所望のパラメータを取得する。パラメータ取得部44は正規化部43と接続されており、正規化部43から正規化された厚みデータ及び正規化された面積データが入力される。なお、パラメータ取得部44には、データ取得部42から正規化されていない厚みデータ及び正規化されていない面積データが入力されてもよい。パラメータ取得部44は評価部45と接続されており、取得された所望のパラメータがパラメータ取得部44から評価部45に出力される。所望のパラメータの詳細は後述する。
【0036】
評価部45は、パラメータ取得部44において取得された所望のパラメータに基づいて、心筋細胞Cの拍出力を評価する。評価部45はパラメータ取得部44と接続されており、パラメータ取得部44から取得されたパラメータが入力される。評価部45では、取得されたパラメータに基づいて心筋細胞Cの拍出力が評価される。例えば、事前に取得された心筋細胞の基準となるパラメータと、パラメータ取得部44において取得されたパラメータとを比較して、個々の心筋細胞Cの状態を評価する。また、所定の心筋細胞Cに薬剤を分注した後に、薬剤分注の前後におけるパラメータ変動の有無を確認することにより、薬剤分注による経時変化を評価する。評価部45は表示装置51と接続されており、評価結果が評価部45から表示装置51に出力される。
【0037】
次に、細胞評価装置1Aによって実行される細胞評価方法を説明すると共に、本実施形態の細胞評価方法について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る細胞評価方法の主要なステップを説明するための図である。
【0038】
工程S1では、画像取得装置30が、シャーレ11の内部に保持された心筋細胞Cからの散乱光L2を含むシャーレ11の二次元光像を検出して、二次元光像の光学画像データを取得する(画像取得ステップ)。ここで、図4(a)に示されるように、光学画像データ60とは、所定の時間間隔Δtで検出された二次元画像61を経時的に並べた二次元画像61の集まりである。これにより、各画素の輝度値の時間変化及び解析領域を構成する画素数の時間変化を取得することが可能となる。なお、光学画像データ60は、心筋細胞Cからの後方散乱光の二次元画像61の集まりであるが、これ以外の種類の二次元画像61の集まりであってもよい。例えば、二次元画像61は、透過照明画像、定量位相差画像、微分干渉画像、或いは自家蛍光画像等であってもよい。
【0039】
心筋細胞Cが保持されたシャーレ11の二次元光像が画像取得装置30の撮像装置31で検出されて、光学画像データ60が取得される。光学画像データ60は、予め設定された時間の間だけ取得される。光学画像データ60の取得を開始するタイミングは、心筋細胞Cに投薬により刺激を与える前であってもよいし、心筋細胞Cに刺激を与えた後であってもよい。また、光学画像データ60の取得中に投薬により刺激を与えてもよい。設定される時間は、例えば輝度値の変化においてボトム値からピーク値へ変化し、その後ボトム値まで戻るまで、即ち、少なくとも心筋細胞Cにおける拍動の一周期分の波形が確認できる時間であればよい。また、一周期分の波形が確認される時間よりも長く設定され、複数の波形が確認できる時間であってもよい。取得された光学画像データ60は、画像取得装置30からデータ処理装置40へ入力される。
【0040】
工程S2では、データ処理装置40の解析領域設定部41が、工程S1で取得された光学画像データ60を構成する二次元画像61の各画素における輝度値に基づいて、二次元画像61毎に解析領域を設定する(領域設定ステップ)。図4(b)部を参照すると、工程S2では、まず測定領域R1を手動で設定する。次に、測定領域R1内において、心筋細胞Cが占める領域を構成する画素であるか否かの判定が自動的に行われる。この判定では、測定領域R1内において所定の閾値以上の輝度値を有する画素を、心筋細胞Cが占める領域を構成する画素として特定する。この所定の閾値は、背景画素の輝度値と心筋細胞Cの領域の輝度値との間の値に設定される。また、解析領域RCは、光学画像データ60を構成する複数の二次元画像61毎に設定される。これにより、測定領域R1内において、心筋細胞Cが占める領域である解析領域RCが設定される。
【0041】
なお、工程S2は、上述した工程に限定されるものではない。例えば、測定領域R1を設定することなく、光学画像データ60の全領域を測定領域R1として、所定の閾値以上の輝度値を有する画素を心筋細胞Cが占める領域を構成する画素として特定してもよい。これによれば、手動で測定領域R1を設定する工程を省略することができるので、工程S2の処理を自動化して、効率よく処理を実行することができる。また、二次元画像61の画素毎における輝度値の時間変化に基づいて、心筋細胞Cが占める領域を構成する画素であるか否かの判定を行ってもよい。これによれば、心筋細胞Cが占める領域の境界を精度良く判定できるので、解析領域RCを精度良く設定することができる。
【0042】
また、光学画像データ60において最も高い輝度値を有する画素のみ、或いは最も高い輝度値を有する画素に近接する複数の画素からなる領域を解析領域RCとしてもよい。この方法では、輝度値に基づいた心筋細胞Cの厚みデータを取得することができる。また、光学画像データ60の全領域を解析領域RCとして設定してもよい。例えば、高倍率で心筋細胞Cを観察することにより、画像取得装置30で観察される領域が心筋細胞Cの占める領域よりも狭くなっていてもよい。この方法では、輝度値に基づいた心筋細胞Cの厚みデータを取得することができる。
【0043】
工程S3は、データ処理装置40のデータ取得部42により実行され、工程S2で設定された解析領域RCから面積データ及び厚みデータを取得する(データ取得ステップ)。厚みデータを取得する場合には、光学画像データ60を構成する複数の二次元画像61毎に、解析領域RC内の画素が有する輝度値を取得し、これらの輝度値の平均値、又は輝度値を全て足し合わせた総輝度値を算出する。図5(a)は算出した平均輝度値の経時変化を示す。心筋細胞Cの拍動により、心筋細胞Cの厚みが変動する。そのため、解析領域RC内の画素の平均輝度値が変化する。面積データを取得する場合には、光学画像データ60を構成する複数の二次元画像61毎に、解析領域RC内の画素数をカウントする。図5(b)はカウントした画素数の経時変化を示す。心筋細胞Cの拍動により、光学画像データ60において心筋細胞Cが占める領域の面積が変動する。そのため、心筋細胞Cが占める領域を構成する画素数が変化する。
【0044】
なお、工程S2において光学画像データ60を構成する全ての二次元画像61に解析領域RCを設定した後に、工程S3において解析領域RCから面積データ及び厚みデータを取得してもよい。また、一の二次元画像61について工程S2において解析領域RCを設定し、続いて工程S3において面積値及び輝度値を取得してもよい。即ち、一の二次元画像61について工程S2及び工程S3を連続して実施してもよい。
【0045】
図6(a)のグラフG1は心筋細胞C1が占める領域を構成する画素の平均輝度値の経時変化、グラフG2は心筋細胞C2が占める領域を構成する画素の平均輝度値の経時変化を、及びグラフG3は心筋細胞C3が占める領域を構成する画素の平均輝度値の経時変化を示す。図6(a)を参照すると、心筋細胞C1〜C3は細胞の形状や大きさが互いに異なるので、平均輝度値の経時変化は互いに異なっている。このような場合には、心筋細胞C1〜C3の拍出力を比較して精度良く評価することが困難であるので、工程S4において面積データ及び厚みデータが正規化される。
【0046】
工程S4は、データ処理装置40の正規化部43により実行され、工程S3で取得された面積データ及び厚みデータを正規化する(面積正規化ステップ、厚み正規化ステップ)。ここでは、輝度値に基づく厚みデータを正規化する工程を例に説明する。図6(a)に示されるグラフG1〜G3から、まず平均輝度値の経時変化におけるそれぞれのピーク値(極大値)P1〜P3を取得する。次に、グラフG1〜G3から、平均輝度値の経時変化におけるボトム値B1〜B3を取得する。そして、下記式(1)により、輝度値に基づく厚みデータを正規化する。
正規化された輝度値=(輝度値−ボトム値)/ピーク値×100 …(1)
上述した工程により、図6(b)に示されるように、グラフG1〜G3は、ボトム値を0としピーク値を100とした相対値に変換される。
【0047】
工程S5は、データ処理装置40のパラメータ取得部44により実行され、工程S4で正規化された面積データ及び正規化された厚みデータから所望のパラメータを取得する。所望のパラメータには、拍動速度、拍動加速度、積分値、ピーク振幅、ピーク変化率、ピーク周波数及び拍動時間がある。
【0048】
心筋細胞Cに薬剤を分注する前後では、厚さデータ及び面積データのピーク立ち上がり時間に変化が生じる場合がある。ベースからピークまでの立ち上がり速度(拍動速度)及び立ち上がり加速度(拍動加速度)と、ピークからベースまでの下がり速度(拍動速度)及び下がり加速度(拍動加速度)とは、心筋細胞Cの拍出力と相関がある。従って、この拍動速度及び拍動加速度により心筋細胞Cの拍出力を評価できる。
【0049】
図7(a)は、図6(a)に示した心筋細胞C1〜C3の拍動速度を示す。グラフG7は心筋細胞C1の拍動速度を示し、グラフG8は心筋細胞C2の拍動速度を示し、グラフG9は心筋細胞C3の拍動速度を示す。拍動速度は、心筋細胞Cの面積が変化する速度、或いは心筋細胞Cの厚みが変化する速度である。この拍動速度は、面積データ或いは厚みデータを時間で微分することにより得られる。
【0050】
図7(b)は、図6(a)に示した心筋細胞C1〜C3の拍動加速度を示す。グラフG10は心筋細胞C1の拍動加速度を示し、グラフG11は心筋細胞C2の拍動加速度を示し、グラフG12は心筋細胞C3の拍動加速度を示す。拍動加速度は、心筋細胞Cの面積が変化する加速度、或いは心筋細胞Cの厚みが変化する加速度である。この拍動加速度は、面積データ或いは厚みデータを時間で2回微分することにより得られる。
【0051】
図8(a)は輝度値に基づく厚みデータG13における積分値を説明するための図であり、図8(b)は画素数に基づく面積データG14における積分値を説明するための図である。積分値は、ピーク波形における厚み値、或いは面積値を時間により積分した値である。厚みデータG13における積分値A1、A2は、ボトム値を示す線M1とピーク波形W1とにより囲まれた領域の面積、或いはボトム値を示す線M1とピーク波形W2とにより囲まれた領域の面積として計算される。面積データG14における積分値A3、A4は、ベース値を示す線M2とピーク波形W3とにより囲まれた領域の面積、或いはベース値を示す線M2とピーク波形W4とにより囲まれた領域の面積として計算される。
【0052】
図8(c)は厚みデータG15におけるピーク振幅及びピーク変化率を説明するための図であり、図8(d)は面積データG16におけるピーク振幅及びピーク変化率を説明するための図である。ピーク振幅は、厚みデータ或いは面積データにおけるボトム値からピーク値までの差分である。図8(c)を参照すると、厚みデータG15のピーク振幅A5、A6は、厚みデータG15のボトム値B4と、厚みデータG15のそれぞれのピークが有する極大値P4、P5と、を取得した後に、それぞれの極大値P4、P5からボトム値B4を引くことにより得られる(A5=P4−B4、A6=P5−B4)。図8(d)を参照すると、面積データG16のピーク振幅A7、A8は、面積データG16のベース値B5と、面積データG16のそれぞれのピークが有する極小値P6、P7と、を取得した後に、それぞれの極小値P6、P7からベース値B5を引いた値の絶対値をとることにより得られる(A7=|P6−B5|、A8=|P7−B5|)。
【0053】
ピーク変化率は、厚みデータ或いは面積データにおけるボトム値に対するピーク値の比率である。図8(c)を参照すると、厚みデータG15のピーク変化率は、厚みデータG15のボトム値B4と、厚みデータG15のそれぞれのピークが有する極大値P4、P5と、を取得した後に、それぞれの極大値P4、P5をボトム値B4で除することにより得られる(P4/B4、P5/B4)。図8(d)を参照すると、面積データG16のピーク変化率は、面積データG16のベース値B5と、面積データG16のそれぞれのピークが有する極小値P6、P7と、を取得した後に、それぞれの極小値P6、P7をベース値B5で除することにより得られる(P6/B5、P7/B5)。
【0054】
図9(a)は厚みデータG17におけるピーク周波数F1、F2を説明するための図であり、図9(b)は面積データG18におけるピーク周波数F3、F4を説明するための図である。ピーク周波数は、厚みデータにおける隣接するピークの時間差(周波数)、及び面積データにおける隣接するピークの時間差(周波数)である。図9(a)を参照すると、厚みデータG17のピーク周波数F1、F2は、それぞれのピークの時間t1〜t4を取得した後に、一のピークから該一のピークに隣り合う次のピークまでの時間差を算出することにより得られる(F1=t2−t1、F2=t4−t3)。図9(b)を参照すると、面積データG18のピーク周波数F3、F4は、それぞれのピークの時間t5〜t8を取得した後に、一のピークから該一のピークに隣り合う次のピークまでの時間差を算出することにより得られる(F3=t6−t5、F4=t8−t7)。
【0055】
図9(c)は厚みデータG19における拍動時間J1、J2を説明するための図であり、図9(d)は面積データG20における拍動時間J3、J4を説明するための図である。拍動時間は、厚みデータにおいてボトム値からピーク値への変化が始まる起点からボトム値に戻るまでの時間である。或いは、面積データにおいてベース値からピーク値への変化が始まる起点からベース値に戻るまでの時間である。図9(c)を参照すると、厚みデータG19の拍動時間J1、J2は、ボトム値からピーク値への変化が始まる起点の時間t9、t11、及びピーク値からボトム値に戻った時間t10、t12を取得した後に、起点の時間からボトム値に戻った時間までの時間差を算出することにより得られる(J1=t10−t9、J2=t12−t11)。図9(d)を参照すると、厚みデータG20の拍動時間J3、J4は、ベース値からピーク値への変化が始まる起点の時間t13、t15、及びピーク値からベース値に戻った時間t14、t16を取得した後に、起点の時間からベース値に戻った時間までの時間差を算出することにより得られる(J3=t14−t13、J4=t16−t15)。
【0056】
なお、心筋細胞Cの拍出力を評価するパラメータとしては、拍動加速度及び拍動速度が最も好適であり、次に積分値が好適である。ピーク振幅、ピーク変化率、ピーク周波数及び拍動時間でも心筋細胞Cの拍出力を評価することが可能である。
【0057】
工程S6は、データ処理装置40の評価部45により実行される(評価ステップ)。工程S6では、工程S5で取得されたパラメータに基づいて心筋細胞Cの拍出力を評価する。例えば、事前に取得された心筋細胞Cの基準となるパラメータと、工程S5において取得されたパラメータとを比較して、心筋細胞Cの状態を評価する。また、所定の心筋細胞Cに薬剤を分注した後に、薬剤分注の前後におけるパラメータ変動の有無を確認することにより、薬剤の分注による心筋細胞Cの拍出力の変化を評価する。図10(a)及び図10(b)は、心筋細胞Cに薬剤を分注する前後における、厚みデータG21と面積データG22とを示す。図10(a)を参照すると、薬剤を分注したタイミングYの前後において、分注前の積分値A9と分注後の積分値A11、分注前のピーク振幅A10と分注後のピーク振幅A12、分注前のピーク周波数F5と分注後のピーク周波数F6、分注前の拍動時間J5と分注後の拍動時間J6において、変化が生じていることがわかる。図10(b)を参照すると、薬剤を分注したタイミングYの前後において、分注前の積分値A13と分注後の積分値A15、分注前のピーク振幅A14と分注後のピーク振幅A16、分注前のピーク周波数F7と分注後のピーク周波数F8、分注前の拍動時間J7と分注後の拍動時間J8において、変化が生じていることがわかる。これらの変化に基づいて、薬剤が心筋細胞Cの拍出力に与える影響を評価する。
【0058】
以下、コンピュータをデータ処理装置40として動作させる細胞評価プログラムについて説明する。本実施形態に係る細胞評価プログラムは、記録媒体に格納されて提供される。記録媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD、或いはROM等の記録媒体、或いは半導体メモリ等が例示される。
【0059】
図11は、記録媒体に記録された細胞評価プログラムを実行するためのコンピュータ70のハードウェア構成を示す図である。図12は、記録媒体に記憶された細胞評価プログラムを実行するためのコンピュータ70の斜視図である。コンピュータ70には、CPUを具備しソフトウエアによる処理や制御を行うサーバ装置、パーソナルコンピュータ等の各種データ処理装置が含まれる。
【0060】
図11に示すように、コンピュータ70は、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ装置、CD−ROMドライブ装置、DVDドライブ装置等の読取装置72と、オペレーティングシステムを常駐させた作業用メモリ(RAM)73と、記録媒体71に記憶されたプログラムを記憶するメモリ74と、ディスプレイといった表示装置75と、入力装置であるマウス76及びキーボード77と、データ等の送受を行うための通信装置78と、プログラムの実行を制御するCPU79とを備えている。コンピュータ70は、記録媒体71が読取装置72に挿入されると、読取装置72から記録媒体71に格納された細胞評価プログラムにアクセス可能になり、当該細胞評価プログラムによって、細胞評価装置1Aとして動作することが可能になる。
【0061】
図12に示すように、細胞評価プログラムは、搬送波に重畳されたコンピュータデータ信号79としてネットワークを介して提供されるものであってもよい。この場合、コンピュータ70は、通信装置78によって受信した細胞評価プログラムをメモリ74に格納し、当該細胞評価プログラムを実行することができる。
【0062】
以上説明した細胞評価方法、細胞評価装置1A、或いは細胞評価プログラムによれば、光学画像データ60を構成する画素が有する輝度値に基づいて、心筋細胞Cの領域を示す解析領域RCを設定する。従って、光学画像データ60を構成する画素に解析対象であることを示すラベルを付すことなく、心筋細胞Cの拍出力を評価できる。さらに、心筋細胞Cが占める領域を示す面積の経時変化を示す面積データ、及び解析領域RCにおける心筋細胞の厚みの経時変化を示す厚みデータの少なくとも一方に基づいて心筋細胞Cの拍出力を評価する。シャーレ11に付着した心筋細胞Cの拍動に伴う心筋細胞Cの面積及び厚みの変化は、心筋細胞Cの拍動に伴う体積の変化よりも大きいので、心筋細胞Cの拍出力を精度良く評価することができる。
【0063】
図13を参照して、本発明の奏する効果についてさらに説明する。図13(a)は、心筋細胞Cが有する体積の変化率の経時変化を示す図である。図13(b)は、心筋細胞Cが有する厚みの変化率の経時変化を示す図である。図13(c)は、心筋細胞Cが有する面積の変化率の経時変化を示す図である。図13(b)、図13(c)は、同一の心筋細胞Cにおける心筋細胞Cの厚みの変化率及び面積の変化率を測定した結果を示している。図13(a)は、図13(b)及び図13(c)に示された心筋細胞Cの厚み及び面積から算出された体積の変化率を示している。図13(a)〜図13(c)において、図中の目盛りY1は5%の変化率を示す。図13(a)を参照すると、拍動による心筋細胞Cの体積の変化率Y2は1%程度であることがわかる。一方、図13(b)を参照すると、拍動による心筋細胞Cの厚みの変化率Y3は3〜4%程度であることがわかる。また、図13(c)を参照すると、拍動による心筋細胞Cの面積の変化率Y4は3〜4%程度であることがわかる。即ち、拍動による変化率は、体積の変化率よりも、厚みの変化率或いは面積の変化率の方が大きい。本発明による細胞評価方法、細胞評価装置1A、或いは細胞評価プログラムによれば、面積の経時変化を示す面積データ及び厚みの経時変化を示す厚みデータの少なくとも一方に基づいて心筋細胞Cの拍出力を評価しているので、体積の経時変化に基づく拍出力の評価よりも心筋細胞Cの拍出力を精度良く評価することができる。
【0064】
また細胞評価方法では、光学画像データ60が、心筋細胞Cからの後方散乱光による光学画像からなる。これによれば、光学画像データ60における画素毎の輝度値に基づいて心筋細胞Cの厚みを精度良く取得することができる。さらに、光学画像データ60における解析領域RCの画素数に基づいて心筋細胞Cの面積を精度良く取得できる。また、後方散乱光による測定では背景光のレベルが低いので、S/B比を高くすることが可能である。従って、高精度な測定が可能になるので好適に厚みデータ及び面積データを取得できる。また、培養液12内に配置した状態の心筋細胞Cを観察することが可能であるので、心筋細胞Cの細胞状態が好適に維持された形態で、厚みデータ及び面積データを取得できる。また、後方散乱光による光学画像によれば、心筋細胞Cの厚みと相関のある輝度値のデータを取得できる。
【0065】
また細胞評価方法は、心筋細胞Cの厚みが解析領域RCに含まれた画素毎における輝度値を平均した値により定義され、心筋細胞Cの面積が解析領域RCに含まれた画素の数により定義されている。これによれば、心筋細胞Cの厚み及び心筋細胞Cが占める面積を好適に取得できる。
【0066】
また細胞評価方法は、心筋細胞Cの厚みのピーク値に基づいて、心筋細胞Cの厚みの値を正規化する正規化ステップS4と、心筋細胞Cが占める領域の面積のピーク値に基づいて、心筋細胞Cが占める領域の面積の値を正規化する正規化ステップS4とを有している。心筋細胞Cの形状や大きさにより、光学画像データ60における心筋細胞Cが占める面積の絶対値、及び光学画像データ60において心筋細胞Cが存在する領域の輝度値の絶対値が異なることがある。面積の値及び輝度値の値を正規化することにより、面積の絶対値、及び輝度値の絶対値が異なる複数の心筋細胞Cの間において、心筋細胞Cの拍出力を比較して評価することができる。
【0067】
また、細胞評価方法の評価ステップS6では、面積データから算出された、心筋細胞Cが占める領域の面積が変化するときの速度、及び厚みデータから算出された、心筋細胞Cの厚みが変化するときの速度の少なくとも何れか一方に基づいて心筋細胞Cの拍出力を評価する。また、細胞評価方法の評価ステップS6では、面積データから算出された、心筋細胞Cが占める領域の面積が変化するときの加速度、及び厚みデータから算出された、心筋細胞Cの厚みが変化するときの加速度の少なくとも何れか一方に基づいて心筋細胞Cの拍出力を評価する。このような構成によれば、心筋細胞Cの拍出力を好適に評価することができる。
【0068】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、他に様々な変形が可能である。図14に示すように、透明な試料ケースは心筋細胞が付着した複数の保持部15を備えたマイクロプレート16であってもよい。マイクロプレート16は、複数のウェル(保持部)15が二次元アレイ状に並設された板状部材であり、その複数のウェル15のそれぞれにおいて、心筋細胞Cを保持可能に構成されている。また、このマイクロプレート16の底面17は、心筋細胞Cに照射される照射光L1、及び心筋細胞Cからの散乱光L2を透過可能な材質からなる。導光部材21Bは、本体部21c及び支持部21dを有する。本体部21cの主面21sの上に本体部21cと一体化された支持部21dが設けられている。導光部材21Bとマイクロプレート16との間には、水13又はオイルなどの屈折率が1.3以上である物質が配置されている。水13又はオイルなどを介して導光部材21Bとマイクロプレート16とは光学的に接続されている。
【0069】
導光部材21と撮像装置31との間には、導光光学系34が設置されている。導光光学系34は、複数のウェル15のそれぞれに心筋細胞Cが保持されたマイクロプレート16を底面17側からみた二次元光像を撮像装置31へと導く光学系である。導光光学系34の具体的な構成については、マイクロプレート16及び撮像装置31の構成等に応じ、必要な機能(例えば集光機能、光像縮小機能等)を実現可能な光学素子によって適宜構成すればよい。そのような光学素子としては、例えばテーパファイバがある(特開2001−188044号公報参照)。
【0070】
また、光照射装置20Aでは、光源装置22が導光部材21の一の側面21fに配置されているが、図2に示すように、光照射装置20Bは、一の側面21fに光源装置22が配置され、さらに一の側面21fの反対側にある他の側面21gに光源装置22が配置されたものであってもよい。また、光照射装置20Aでは、光源装置22のフィルタ部24と導光部材21の側面21fとの間には空隙が設けられているが、フィルタ部24が側面21fに接触していてもよい。
【0071】
また、細胞評価装置は、後方散乱光画像取得装置に代えて、暗視野画像取得装置、明視野画像取得装置、位相差画像取得装置、或いは微分干渉画像取得装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1A…細胞評価装置、2A…後方散乱光画像取得装置、10A…試料保持部、11…シャーレ、13…水、20A…光照射装置、21…導光部材、22…光源装置、30…画像取得装置、40…データ処理装置、41…解析領域設定部、42…データ取得部、43…正規化部、44…パラメータ取得部、45…評価部、51…表示装置、52…入力装置、60…光学画像データ、61…二次元画像、C…心筋細胞、L1…照射光、L2…散乱光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心筋細胞の拍出力を評価する細胞評価方法であって、
透明な試料ケース上に付着した前記心筋細胞の光学画像データを取得する画像取得ステップと、
前記光学画像データの画素が有する輝度値に基づいて、前記心筋細胞が占める領域を示す解析領域を設定する領域設定ステップと、
前記解析領域の前記画素に基づいて、前記心筋細胞の厚みの経時変化を示す厚みデータ、及び前記心筋細胞が占める領域の面積の経時変化を示す面積データの少なくとも一方を取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにおいて取得された前記面積データ及び前記厚みデータの少なくとも一方に基づいて、前記心筋細胞の拍出力を評価する評価ステップと、
を備えることを特徴とする、細胞評価方法。
【請求項2】
前記光学画像データは、前記心筋細胞からの後方散乱光による光学画像からなることを特徴とする、請求項1に記載の細胞評価方法。
【請求項3】
前記心筋細胞の厚みは、前記解析領域の画素毎における輝度値の平均値に基づいて算出されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の細胞評価方法。
【請求項4】
前記心筋細胞が占める領域の面積は、前記解析領域に含まれた前記画素の数に基づいて算出されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の細胞評価方法。
【請求項5】
前記心筋細胞の厚みの極値に基づいて、前記心筋細胞の厚みの値を正規化する厚み正規化ステップをさらに有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の細胞評価方法。
【請求項6】
前記心筋細胞が占める領域の面積の極値に基づいて、前記心筋細胞が占める領域の面積の値を正規化する面積正規化ステップをさらに有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の細胞評価方法。
【請求項7】
前記評価ステップは、前記面積データから算出された、前記心筋細胞が占める領域の面積が変化するときの速度、及び、前記厚みデータから算出された、前記心筋細胞の厚みが変化するときの速度の少なくとも何れか一方に基づいて前記心筋細胞の拍出力を評価することを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の細胞評価方法。
【請求項8】
前記評価ステップは、前記面積データから算出された、前記心筋細胞が占める領域の面積が変化するときの加速度、及び、前記厚みデータから算出された、前記心筋細胞の厚みが変化するときの加速度の少なくとも何れか一方に基づいて前記心筋細胞の拍出力を評価することを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の細胞評価方法。
【請求項9】
心筋細胞の拍出力を評価する細胞評価装置であって、
透明な試料ケースに付着した前記心筋細胞の光学画像データを取得する画像取得手段と、
前記光学画像データの画素が有する輝度値に基づいて、前記心筋細胞が占める領域を示す解析領域を設定する領域設定手段と、
前記解析領域の前記画素に基づいて、前記心筋細胞の厚みの経時変化を示す厚みデータ、及び前記心筋細胞が占める領域の面積の経時変化を示す面積データの少なくとも一方を取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段において取得された前記面積データ及び前記厚みデータの少なくとも一方に基づいて、前記心筋細胞の拍出力を評価する評価手段と、
を備えることを特徴とする、細胞評価装置。
【請求項10】
心筋細胞の拍出力を評価する細胞評価プログラムであって、
コンピュータを、
画像取得手段によって取得された、透明な試料ケースに付着した前記心筋細胞の光学画像データを構成する画素が有する輝度値に基づいて、前記心筋細胞が占める領域を示す解析領域を設定する領域設定手段、
前記解析領域の前記画素に基づいて、前記心筋細胞の厚みの経時変化を示す厚みデータ、及び前記心筋細胞が占める領域の面積の経時変化を示す面積データの少なくとも一方を取得するデータ取得手段、及び、
前記データ取得手段において取得された前記面積データ及び前記厚みデータの少なくとも一方に基づいて、前記心筋細胞の拍出力を評価する評価手段、
として機能させることを特徴とする細胞評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−21961(P2013−21961A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159028(P2011−159028)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】