説明

細胞送達のための微粒子

【課題】細胞送達のための微粒子を提供する。
【解決手段】本発明は、体内の病気の治療のために、その体内の特定の領域に生存可能な細胞を送達することに使用するための微粒子と、その微粒子を含有している組成物と、に関連しており、さらに、それらの病気の治療の方法にも関連しており、この場合に、上記の微粒子は、コアであって、そのコアの中に分布されている有効量の生物学的に活性な物質を含有しているコアと、このコアの表面に付着させた細胞と、を含んでおり、上記の組成物は上記の微粒子と、これらの微粒子のための媒体と、を含有している。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、病気、特に、生物学的な因子が欠けていることにより生じる病気、の治療のために、哺乳類動物の体の確認されている領域に、細胞を送達することにおいて有用な、微粒子、装置および組成物、に関連している。
【0002】
〔背景〕
多くの病気、特に、神経疾患、は、標的の細胞または体の領域への、重要な生物学的な因子の有効性が欠けているか限られていること、に、全体的に、または部分的に、基いていると思われる。調整された速度での、脳および他の組織への、薬剤またはその他の因子の継続的な供給を行なう試みにおいて、小型の浸透圧ポンプが用いられている。しかしながら、特定の薬物の限られた溶解度および安定性、ならびに、貯留の制約は、この技術の有用性を制限してきた。
【0003】
また、細胞を含まない生体分解性で高分子のマイクロカプセルの中に包まれている因子を移植することによる、体の中における、生物学的な因子の、調整されて、持続された放出が試みられている。しかしながら、このポリマーの有限の充填能力および任意の細胞のフィードバックの調整が欠けていることは、生物学的な因子の標的とされている領域への送達を制限している。
【0004】
多くの研究者は、分泌産物を生成するか代謝機能に影響する、全体の器官、器官組織または細胞、を移植することにより、器官または組織を再構成すること、を試みてきた。さらに、移植は、めざましい有益な効果を与えることができるが、その適用性において、移植のために適していて利用可能である、比較的に少数の器官に、限られている。しかしながら、患者は、一般に、移植片の免疫学的な拒絶を避けるために、免疫抑制される必要があり、このことは、移植片の機能の損失およびその結果として起こる移植された組織または細胞の壊死、を生じる。多くの場合において、上記の移植片は、長期間の時間にわたり、例えば、患者の寿命の残りの部分にわたり、機能的な状態を維持する必要がある。また、相当な時間の期間にわたって、患者を免疫抑制された状態に維持することは、望ましくなく且つ費用がかかる。
【0005】
パーキンソン病、アルツハイマー、発作、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(amytrophic lateral sclerosis)、外傷性脳傷害、および脊髄傷害のような、神経変性性の病気を含む、神経疾患の場合に、神経学的に活性な因子を本質的に生成して分泌することのできる細胞の移植が試みられている。最近において、免疫反応を誘発させないために、患者の固有の組織を用いる、神経伝達物質分泌性組織の治療のための移植が完成されている。例えば、パーキンソン病に罹っている患者の副腎髄質からのドパミン分泌性組織が、いくらかの成功を伴って、彼らの線条体の中に移植されている。しかしながら、この処置は、高齢者の患者の副腎が十分なドパミン分泌性の細胞を含まない可能性があるので、60才よりも低年齢の患者においてのみ用いられている。このような制限は、上記の病気が高齢者に最も多く影響しているので、治療としての処置の有用性を限定している。
【0006】
多数の研究者は、治療の移植の目的および生物学的な製品の大規模な製造、の両方のために、細胞の溶液の微視的な液滴を包んでいる、マイクロカプセル、または小球体、の使用、を提案している。しかしながら、このようなマイクロカプセルの方法には、多数の欠点が存在している。例えば、マイクロカプセルは、移植後に回収することが困難であることを含み、取り扱いが極めて困難になる可能性がある。使用可能である、このようなカプセル化用の材料の種類は、その形成処理により、生体適合性の溶媒の中に溶解できるポリマーに、制限されている。さらに、比較的に大きな球の単位容積当たりの限られた拡散の表面積により、限られた量の組織しか、単一のマイクロカプセルの中に、充填できない。
【0007】
上記のマイクロカプセル化の代替的な方法は、中空のファイバーの中に細胞を充填してからその先端を封じる処理、を含む、マクロカプセル化(macroencapsulation)であった。上記のマイクロカプセルとは対照的に、これらのマクロカプセルは、治療用の移植片、特に、神経移植片、において重要な特徴である、容易な回収の可能性という利点を与えている。しかしながら、このような、これまでのマクロカプセルの構成は、時間がかかり、労力がかかる場合が多い。さらに、信頼性の低い閉鎖性により、これらのマクロカプセル化の従来の方法は、一貫性の無い結果を与えてきた。また、この方法は、細胞の送達が、上記のような装置の中における配置の後に、過剰に増殖して、壊死を生じることが示されているので、分裂しない細胞型を利用することに、さらに、限られている。
【0008】
それゆえ、一般に、神経学的な、およびその他の障害の治療のための、改善された装置、組成物および方法、に対する要望が存在している。特に、過度の傷害を引き起こすことなく、脳またはその他の器官の機能障害の領域の機能を補うか換えることのできる、治療装置および/または組成物、に対する要望が存在している。したがって、被験者の神経系の局在領域に、神経活性因子を供給するための、装置および方法、に対して要望が存在しており、その適正な投薬量が、発生期の再構成細胞の母集団に、経時的に、構成的に送達される必要がある。
【0009】
本明細書において主張されている発明は、標的領域への、重要な生物学的因子の生成および送達のための細胞を収容し、細胞の生存、増殖、および分化した形態における細胞の維持を向上させる、生物学的に活性な物質も送達する、微粒子、を利用している、装置、組成物および方法、を提供している。これらの装置は容易に、再現性よく製造することができ、細胞を伴う移植のために適している形態である。
【0010】
〔概要〕
本発明は、体内の病気の治療のために、その体内の特定の領域に、生存可能な細胞を送達することに使用するための微粒子を含有している、微粒子および組成物と、それらの病気の治療の方法と、に関連しており、上記の微粒子は、内部に分配されている有効な量の生物学的に活性な物質を収容しているコアと、そのコアの表面に付着させた細胞と、を含み、上記の組成物は、上記の微粒子と、その微粒子の送達のための媒体と、を含有している。
【0011】
〔発明の詳細な説明〕
微粒子、ならびに、その微粒子を含有している、組成物および装置、が提供されており、この場合に、これらの微粒子は、本明細書において詳細に説明されているように、内部に分配されている有効な量の生物学的に活性な物質を収容しているコアと、そのコアの表面に付着させた細胞と、を含んでいる。このコアの存在とそのコアの特定の成分の選択は、上記の生物学的に活性な物質の、調整されていて、持続されているか、または、延長されている、放出、を与えるとともに、その放出の前における、生物学的に活性な物質および/または細胞の、時期尚早の放出または劣化、を回避する。
【0012】
生物学的に活性な物質の有効な量とは、その生物学的に活性な物質が、移植された細胞および/または体内に既に存在している細胞の生存、ならびに、上記コアからの放出時における移植された細胞の統合および/または分化、を向上させるために有効な量で、そのコアの中に存在すること、を意味する。また、本明細書において用いられる場合に、「向上された生存(enhanced survival)」とは、24時間よりも長く3ヶ月までの、または、細胞の統合に充分な時間にわたる、細胞の生存、を意味する。また、十分な量の生物学的に活性な物質は、観察される宿主組織の変性の程度に応じて、その宿主組織中に生存するか統合されることを可能にするための時間にわたり、放出される。
【0013】
また、本明細書において用いられる場合に、「微粒子(microparticle)」とは、たいていの適用において、約1μm〜約500μm、好ましくは約10〜約200μm、の直径を有する粒子、を意味する。特別に述べられていない限り、「微粒子」は、微小粒子(microparticulates)および微小球体(microspheres)の両方を含むように、用いられている。微小粒子は、不規則または非球状の形状の粒子を表現するように、本明細書において用いられている。また、微小球体は、実質的に球状の粒子を表現するように、本明細書において用いられている。また、本明細書において用いられる場合に、生物学的に活性な物質の「持続された(持続性の)(sustained)」または「延長された(extended)」放出とは、経時的に連続または不連続な放出、を含むことができる。この放出プロファイルは、経時的に、線形または非線形にすることができる。また、必要とされる放出プロファイルは、治療される特定の障害に応じて、選択できる。
【0014】
適当な放出プロファイルを決定して選択する場合に、体内に入った後の溶解または分解性について、微粒子の構造ならびにコアの組成、を考慮できる。例えば、上記のコアは、同一か異なっているかに関わらず、キャリアとしての材料の混合物および/または層、および/または、所望の放出プロファイルを作り出すために、微粒子を調製する場合に使用する被膜、を含むことができる。加えて、上記の生物学的に活性な物質自体を含有することは、その生物学的に活性な物質および/またはコアの中の混入の手段により、その放出プロファイルに寄与する可能性がある。上記のような調整された放出を必要とする治療を提供する当業者は、この開示の恩恵を受けた後に、適当な放出プロファイルを確かめられるであろう。
【0015】
上記のコアは、このコアの形成および維持、および/または、体への上記微粒子および/または生物学的に活性な物質の投与または放出、を補助するために、生体適合性で、薬剤として適当なキャリアおよび/または処理用の賦形剤等のような、別の成分または材料との組み合わせにおいて、生物学的に活性な物質を含有できる。本発明の特定の実施形態において、上記コアは、生物学的に活性な物質により、実質的に構成できる。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、上記コアは、その中に分散されている、有効量の生物学的に活性な物質を有する、生体適合性で、生体分解性の、連続的な高分子の相、を含有している。この生体分解性とは、上記のポリマーが、その分解生成物が排出されるかまたは体により吸収できるように、体内の生理学的な条件下において、分解または破壊されること、を意味する。この高分子の相は、生物学的に活性な物質のためのキャリアまたは貯留部として、役立つ。このキャリアとして用いられるポリマーは、生理学的な流体に対する上記コアの曝露時に、調整された、例えば、持続または延長された様式で生物学的に活性な物質が放出可能になるように、体内に投与された後に、その生理学的な流体により溶解または分解される。
【0017】
上記の生物学的に活性な物質は、上記コアのキャリア相を調製するために用いられるポリマーの中において、不溶性であってもよい。このような実施形態において、上記ポリマーは溶融させることができ、そのポリマーの溶融温度において安定であれば、その生物学的な物質の粒子は、溶けたポリマーの中への固体の生物学的に活性な物質の粒子の実質的に均質な分散を行なうように、本明細書において開示されている手段により、その溶けたポリマーの中に分散される。その後、その分散された生物学的に活性な物質を含有している溶けたポリマーが冷却すると、その中に分散されているその生物学的に活性な物質を含有している固体の連続的な高分子の相が得られる。
【0018】
また、別の実施形態において、上記の生物学的に活性な物質は、上記のキャリア相を作成するために用いられるポリマーの中において可溶性であってもよい。このような実施形態においては、その生物学的に活性な物質がその治療の効果に有害に影響しないことを条件に、上記のポリマーは溶融可能であり、この物質はその溶けたポリマーの中に溶解して、これらの2種類の物質は、溶けたポリマーの中におけるその生物学的に活性な物質の均質な分布を得るように、混合される。冷却すると、上記のコアは、上記ポリマーのキャリア相の中に均質に混合されている物質を有して、得られる。
【0019】
本発明の微粒子は、この微粒子のコアの表面に付着させた細胞、をさらに含む。体内に移植されると、上記の生物学的に活性な物質は、上記微粒子に付着させた細胞に投与されるとともに、本明細書において記載されているような、調整された様式で、体内に放出される。上記の生物学的に活性な物質は、神経学的な損傷の部位等のような、その標的とされた部位に送達される細胞、ならびに、その標的とされた部位に既に存在している細胞、の生存能力を改善するために選択され、これによって宿主細胞の保存/保護ならびに送達される細胞の保護を与える。このように改善された生存能力は、体内に置かれた後の、細胞の生存、統合および分化の、確率を最終的に高める。
【0020】
本発明の微粒子の概略的な断面が図1および図2に示されている。図1は、薬剤として適当な高分子のキャリア相24の全体にわたり実質的に均質に分散されている生物学的に活性な物質の粒子22を含有しているコア20と、このコア20に付着させた細胞30と、を含んでいる微粒子10、を示している。図2は、コア20が、当該コア20への細胞30の接着を補助するために、細胞接着物質40により被覆されている場合の、別の実施形態、を示している。なお、これらのコア20および生物学的に活性な物質22は、球状の粒子として示されているが、当業者は、形状において球状でないコア20および/または生物学的に活性な物質22も想像できるであろう。
【0021】
図3はコア50に付着させた分娩後細胞52を示している写真である。このコア50は、以下の例において説明されているように、ポリ−(D,L乳酸−コ−グリコール)酸(poly-(D,L-lactic-co-glycolic) acid)の90:10のコポリマーを含有している高分子のキャリア相の中に分散されている生物学的に活性な物質GDNF、を含有している。
【0022】
上記微粒子のコアは、約0.01重量%〜約30重量%の生物学的に活性な物質を含有することができ、好ましくは約5〜約10重量%である。この微粒子は、少なくとも24時間から2年までの期間にわたり、上記コアからの生物学的に活性な物質の、持続されていて、調整されている放出、を行なう。一般に、上記の微粒子は、その生物学的に活性な物質が約1ヶ月から1年までの期間にわたって放出されるように、製造できる。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、上記微粒子の直径は、体に治療用の薬剤を投与するために一般的に用いられている注射針を通過するように十分に小さく、例えば、約200μmよりも小さい。さらに、骨原性の障害の治療等のような特定の適用においては、上記微粒子の直径は、約500μmまでの範囲の直径にしてもよい。また、神経疾患の場合には、上記の微粒子は、約100μmよりも小さいか、または、約80μmよりも小さい、直径、を有していてもよく、マイクロカテーテルによる頭蓋内の注射による投与に適している。例えば、27ゲージの針による注射は、上記の微粒子が100μmの直径よりも小さいこと、を必要とする。
【0024】
上記のように、天然または合成のポリマーが、生物学的に活性な物質のための、薬剤として適当なキャリア相として、好ましいが、合成のポリマーは、製造および調整された放出速度の両方に関する再現性により、好ましい。上記微粒子のコアを形成するために使用できる合成ポリマーは、ポリ(ラクチド)(poly (lactide))(PLA)、ポリ(グリコリド)(poly (glycolide))(PGA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(poly (lactide-co-glycolide))(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(poly (caprolactone))(PCL)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物(polyanhydrides)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリアミノ酸、ポリオルソ・エステル(polyortho ester)、ポリアセタール、ポリシアノアクリレートおよび生体分解性のポリウレタン等のような、生体分解性のポリマーと、ポリアクリレート、エチレン−ビニル・アセテート・ポリマー(ethylene-vinyl acetate polymers)および他のアクリル置換セルロースおよびこれらの誘導体等のような、非生体分解性のポリマーと、ポリウレタン、ポリスチレン、塩化ポリビニル、フッ化ポリビニル、ポリ(ビニル・イミダゾール)(poly(vinyl imidazole))、クロロスルホン化ポリオレフィン、およびポリエチレン・オキシド(polyethylene oxide)、を含む。また、生体分解性の天然のポリマーの例は、アルブミン、コラーゲン、合成のポリアミノ酸およびプロラミン等のような蛋白質と、アルギネート等のような多糖類と、ヘパリン、およびその他の天然に存在している、糖単位の生体分解性のポリマー、を含む。あるいは、前述のこれらのポリマーの組み合わせも使用可能である。
【0025】
PLA、PGAおよびPLA/PGAのコポリマーは、本発明の微粒子の中において使用するコアを形成するために、特に有用である。PLAポリマーは、通常において、乳酸の環状エステルから調製される。乳酸のL(+)およびD(−)の両方の形態が、上記PLAポリマー、ならびに、D(−)およびL(+)の乳酸の光学的に不活性なDL−乳酸の混合物を調製するために、使用できる。この場合に、ポリ(ラクチド)を調製する方法は、特許文献において、十分に伝えられている。
【0026】
上記の生物学的に活性な物質の放出と上記ポリマーの生体分解性の両方が、例えば、PLA、PGAまたはPLA/PGA等の、ポリマーの分子量に関連している。例えば、約90,000以上の重量平均分子量等の、比較的に高い分子量ほど、長期間の時間にわたり構造的な完全性を維持し、したがって、生物学的に活性な物質のさらに長期の放出を行なうポリマー基材を結果として生じるが、例えば、約30,000以下の重量平均分子量等のように、比較的に低い分子量は、生物学的に活性な物質の比較的に速い放出を結果として生じる。
【0027】
上記高分子のキャリアを含有している微粒子のコアからの生物学的に活性な物質の放出は、2種類の異なるメカニズムにより、発生し得る。すなわち、この薬剤は、上記の微粒子が体内にはいった後の、その薬剤の溶解によるか、または、その薬剤のマイクロカプセル化によるコアの元々の形成中におけるポリマーの溶媒の除去により形成されるコアの中の空間により、発生される水性物質により充填された通路を通る拡散により、適当な投薬形態で、放出できる。この第2のメカニズムは、上記ポリマーの分解による放出を行なう。
【0028】
特定のポリマーの分解は、その主鎖におけるエステル結合の自発的な加水分解により、発生する。したがって、この生物学的に活性な物質の放出の速度は、水の取り込みに影響するポリマーの特性を適当に選択することにより、調整できる。これらは、モノマーの比率(ラクチド対グリコリド)、D/Lラクチドに対するL−ラクチドの使用、およびポリマーの分子量、を含むが、これらに限定されない。また、これらの変数は、水の浸透の速度を最終的に支配する、親和性および結晶度、を決定する。塩、炭水化物および界面活性剤等のような、親水性の賦形剤は、微粒子の中への水の浸透を増加し、したがって、ポリマーの生体分解を加速するために、コアの中に組み込むこと、も可能である。
【0029】
ポリマーの特性と、生物学的に活性な物質の特性と、を適当に選択することにより、これらの放出機構のそれぞれの寄与を制御し、したがって、必要に応じて、その生物学的に活性な物質の放出速度を変えることができる。ポリ(L−ラクチド)または低いグリコリドの含有量を有する高分子量のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)のコポリマー等のような、ゆっくりと分解するポリマーは、拡散によりさらに調整される生物学的に活性な物質の放出を生じる。また、グリコリドの含有量を増加して分子量を減少させることは、ともに、水の取り込みと、そのポリマーの加水分解を増して、放出速度に対するポリマーの分解係数を高める。
【0030】
上記の放出速度は、微粒子のコアの中における生物学的に活性な物質の濃度を変えることにより、変更することも可能である。この生物学的に活性な物質の濃度の増加は、微粒子が体内に入って、そのコアからの物質の放出が増すと、その物質の溶解時に形成される相互連結している通路の網状構造を増加する。
【0031】
上記のポリマーおよび生物学的に活性な物質の、選択および濃度、に起因するファクターに加えて、添加物が、上記の放出速度および生物学的に活性な物質の治療の安定性を変更するために、使用できる。ポリマーの加水分解は、酸性または塩基性のpH値において加速され、したがって、酸性または塩基性の賦形剤の含有が、そのポリマーの分解の速度を調整するために、使用できる。これらの賦形剤は、粒子として上記コアに添加でき、そのコアの中への生物学的に活性な物質の混入の前に、その物質と、固体または液体として、混合することが可能であり、または、そのコアの形成の前に、溶けたポリマーの中に溶解させることもできる。
【0032】
上記のような賦形剤の一例の種類は、体内における微粒子の配置時の、ポリマー相の分解を向上させる。このような添加される材料の量は、上記ポリマー相の重量に基いて、約0.1〜約30重量%の範囲にすることができる。このような材料の種類は、硫酸アンモニウムおよび塩化アンモニウム等のような、無機酸と、クエン酸、安息香酸、ヘパリンおよび安息香酸等のような、有機酸と、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、および水酸化亜鉛等のような、無機塩基と、硫酸プロタミン、スペルミン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のような、有機塩基と、プルロニック(PLURONIC)(ビー・エー・エス・エフ(BASF)、マウント・オリーブ、ニュージャージー州(Mount Olive, NJ))の商品名として、販売されているポリオキシアルキレン・エーテル(polyoxyalkylene ether)、および、トゥイーン(TWEEN)(アイ・シー・アイ・アメリカズ・インコーポレイテッド(ICI Americas Inc.)、ブリッジウォーター、ニュージャージー州(Bridgewater, NJ))を商品名として、販売されている置換ソルビタン誘導体(substituted sorbitan derivative)の界面活性剤等のような、界面活性剤、を含むが、これらに限定されない。
【0033】
生物学的に活性な物質の溶解度を変更する賦形剤は塩を含む。例えば、アルブミンまたはプロタミン等の、錯化剤は、蛋白質を基材とする生物学的に活性な物質の放出速度を調整するために、使用できる。また、蛋白質を基材とする生物学的に活性な物質のための安定化剤は、スクロース、ラクトース、マンニトール、デキストランおよびヘパリン等のような、炭化水素と、アルブミンおよびプロタミン等のような、蛋白質と、アルギニン、グリシンおよびトレオニン等のようなアミノ酸と、トゥイーン(TWEEN)およびプルロニック(PLURONIC)等のような、界面活性剤と、塩化カルシウムおよびリン酸ナトリウム等のような、塩と、脂肪酸およびリン脂質等のような、脂質と、胆汁酸塩(bile salt)と、を含むが、これらに限定されない。
【0034】
上記の蛋白質を基材とする生物学的に活性な物質に対する賦形剤の重量比率は、一般に、蛋白質に対する炭化水素、蛋白質に対するアミノ酸、蛋白質に対する蛋白質安定化剤、および蛋白質に対する塩、の場合において、1:10〜4:1であり、蛋白質に対する界面活性剤の場合において、1:1000〜1:20であり、蛋白質に対する脂質の場合において、1:20〜4:1である。
【0035】
多様な生物学的に活性な物質を、本発明の微粒子のコアの中に、混入できる。一例の実施形態において、微粒子は、骨原性、心血管性、血管性、糖尿病および創傷治癒の障害、を治療するために、用いられる。これらの場合に、有用な生物学的に活性な物質22は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、α線維芽細胞増殖因子(FGF)、ヘパリン結合性増殖因子(hbgf)、トランスフォーミング増殖因子αまたはβ(TGFβ)、上皮増殖因子(EGF)、インスリン誘導増殖因子(insulin derived growth factor)(IGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、グリア増殖因子(glial growth factor)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、を含むが、これらに限定されない。
【0036】
神経疾患の場合に、生物学的に活性な物質は神経保護薬であり、グリア由来神経栄養因子(glial-derived neurotrophic factor)(GDNF)、グリア増殖因子、cAMP、神経増殖因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、増殖分化因子5(growth differentiation factor 5)(GDF5)、形態発生タンパク質52、骨形態発生タンパク質7(BMP7)、骨形態発生タンパク質14(BMP14)、EPOまたはEPO擬似体、シクロスポリンおよびスルファメート置換単糖類等、を含むが、これらに限定されない。
【0037】
多様な細胞30を、本発明の微粒子を用いて、体内に移植できる。これらの細胞は自己であってよく、同種異系に誘導されていてもよい。なお、自己の細胞を使用する場合には、体による免疫学的な応答の考慮を最小限にできるか無くすことができるが、同種異系の細胞は体による免疫学的な応答のさらなる考慮を必要とする可能性がある。また、このような治療の方策は、シクロスポリン、FK−506またはその他の上記のような免疫治療剤を伴う補助の免疫治療、を必要とする。特定の実施形態において、本発明に従って利用される細胞は、生体内において器官または組織から細胞を解離させるための従来の方法を利用して、無菌の条件下に、生体外において誘導されている。例えば、軟骨細胞、血管芽細胞、筋芽細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、ケラチノサイト、β細胞、セルトリ細胞、マクロファージ、小グリア細胞(microglia)、および内皮細胞は、特定の病気の治療のために利用できる。あるいは、これらの細胞は、治療のある段階を通して、入手してもよい。
【0038】
神経疾患の場合に、本発明に従って利用される細胞は、未分化または分化前の幹細胞または前駆細胞、神経幹細胞または神経前駆細胞、神経細胞、樹状細胞、および遺伝的に形質転換した細胞、を含むが、これらに限定されない。この場合に、幹細胞は、造血、間葉、分娩後、膵臓、肝臓、網膜上皮、嗅球、内皮、筋肉、脂肪由来、回腸稜(ileac crest)、骨髄、卵子および皮膚幹細胞等の、細胞を、限定を伴わずに、含む。
【0039】
本発明の微粒子のコア20の中に上記の生物学的に活性な物質を混入させるために、多様な技法を使用することが可能である。これらの例を以下に説明する。
【0040】
噴霧乾燥において、生体適合性で生体分解性のポリマーを含有しているキャリア相および生物学的に活性な物質は、上記ポリマーのための溶媒中に、一緒に混合される。上記の溶媒は、その後、その溶液を噴霧することにより気化されて、生物学的に活性な物質を含有している高分子の液滴が残る。なお、このような噴霧乾燥技法は、「噴霧乾燥ハンドブック(Spray Drying Handbook)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク、1984年)において、K.マスターズ(K. Masters)により、および「マイクロカプセル化と関連する薬剤精製(Microencapsulation and Related Drug Processes)」(マーセル・デッカー・インコーポレイテッド(Marcel Dekker, Inc.)、ニューヨーク、1984年)において、パトリック・B.ディージー(Patrick B. Deasy)により、詳細に調査されている。なお、噴霧乾燥は、その処理において発生される熱による上記の物質の活性のいくらかの損失、または、チャンバーに対するポリマーの付着による材料の損失、を生じる可能性があるので、少量のみ利用可能である不安定な材料を用いる場合の使用には好ましくない。
【0041】
別の実施形態において、上記微粒子のコアを形成するために、溶媒の気化技法が使用できる。これらの技法は、溶解または分散した固体の生物学的に活性な物質のいずれかを含有している有機溶媒の中に、生体適合性で生体分解性のポリマーを含有しているキャリアを溶解させる処理、を含む。上記のポリマー/物質の溶液は、その後、水中油型のエマルジョンを形成するために、通常において水性である攪拌されている連続的な相、に添加される。乳化剤が、水中油型のエマルジョンを安定化させるために、水性の相の中に含有されている。上記の有機溶媒は、その後、数時間またはそれ以上の期間にわたり気化され、これにより、ポリマーを薬剤の周りに付着させる。溶媒は、減圧下に、または、熱の適用により、単一の工程において、微粒子のコアから除去できる。また、凍結乾燥を、微粒子のコアから溶媒を除去するために、用いてもよい。
【0042】
さらに別の実施形態において、相分離技法を、上記微粒子のコアを形成するために使用することも可能である。これらの技法は、油中水型のエマルジョンまたは水中油型のエマルジョンの形成、を含む。生体適合性で生体分解性のポリマーを含有しているキャリアは、温度の変化、pH値、イオン強度、または沈殿剤の添加により、上記生物学的に活性な物質の上に、エマルジョンの連続的な相から、沈殿する。例えば、米国特許第4,675,800号は、活性な蛋白質を含有しているポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(poly (lactic-co-glycolic) acid)の微小球の形成、を記載している。この場合に、蛋白質は、油中水型のエマルジョンの水性の相の中にまず溶解されるか、ポリマー相の中に固体として分散される。このポリマーは、その後、シリコーンオイル等のような、ポリマーのための非溶媒の添加により、水性の液滴または薬物の粒子の周りに沈殿する。この最終的な製品は、たいていの相分離技法と同様に、マイクロカプセルの形態である。これらのマイクロカプセルは、ポリマー膜のカプセルにより囲まれているコア材料を含有している。
【0043】
所望の特性を有する生物学的に活性な薬剤を含有している微粒子のコアを作成するための方法は、ゴムボツ(Gombotz)他に発行されている米国特許第5,019,400号において、記載されており、この特許文献の開示は、その全体において記載されているように、本明細書に組み込まれている。本明細書において開示されている方法は、速やかな凍結と、その後の溶媒の抽出と、を含んでいる。
【0044】
コアを作成するためのシステムの、2種類の主な実施形態がある。この第1のものは、液化ガスと凍結した非溶媒のシステムとの組み合わせを利用している。また、第2のものは、凍結した非溶媒のシステム、を利用している。
【0045】
第1の例において、生体適合性で生体分解性のポリマーを含有しているキャリアと、溶液の中にカプセル化される生物学的に活性な物質と、が、例えば、液体窒素等の、液化ガスを形成するために、超音波装置を用いて、霧状にされる。この霧状にされたコアは、これらが液化ガスに接触すると、凍結して、凍結した球体を形成する。さらに、これらの球体は、凍結した非溶媒、例えば、エタノール、の表面下に沈む。その後、液化ガスが気化して、上記の非溶媒が溶けると、上記の球体がその非溶媒の中に沈み込む。この結果、これらの球体の中の溶媒は、その非溶媒の中に抽出されて、カプセル化された物質を含有している微小球のコアが形成される。さらに、例えば、上記の球体がポリラクチド−コ−グリコリド(polylactide-co-glycolide)のポリマーにより形成されている場合等のように、適当であれば、特定のポリマーからの溶媒の抽出の速度を高めるために、ヘキサン等のような別の非溶媒も、上記の非溶媒に添加することも可能である。
【0046】
あるいは、上記の非溶媒の温度が上記のポリマー/物質の溶液の凍結温度よりも低ければ、上記のポリマーのための冷温の非溶媒を、上記の液化ガスと凍結した非溶媒のシステムとの組み合わせ、に換えることができる。また、上記の非溶媒が最初に溶けて、凍結した微小球のコアが、後で溶ける液体の中に沈み込むことを可能にするように、上記のポリマーのための非溶媒よりも、高い融点を有する上記のポリマーのための溶媒を選択することが重要である。上記の高分子の微小球のコアを作成するための冷温の液体の非溶媒のシステムを用いると、これらのコアはその非溶媒の中に速やかに沈み込むようになる。その後、これらのコアの中の溶媒が溶けると、その溶媒は非溶媒の中に抽出される。これらのポリマーのための溶媒およびポリマーのための非溶媒は、微小球からの溶媒の抽出を可能にするために、混和性であることが必要である。
【0047】
細胞は、放出不可能または放出可能な状態のいずれにおいても、コアに付着できる。放出不可能な状態においては、上記の細胞は、体の生理学的な流体により、コアが実質的に生体において分解される時まで、そのコアに付着した状態を維持するが、その時になると、細胞はそのコアから放出可能になる。一方、放出可能な状態においては、細胞は、体の生理液によってコアが実質的に生体分解する前に、そのコアから放出されることが可能であり、したがって、細胞の移動性と、治療される領域内の体組織および細胞に対するさらなる相互作用と、を与える。上記のコアに対する細胞の付着は、コアを含有している高分子のキャリアまたは生物学的に活性な物質の親水性または疎水性に関連している。
【0048】
一方、上記のコアの表面に対する細胞の付着は、細胞により作られる細胞外基質(ECM)の微粒子のコアの表面上への堆積により、達成または向上できる。このように、コアに対する細胞の付着を行なうために、微小球の前処理は必要とされない。したがって、細胞により作られるECMは、プロテオグリカン、神経細胞接着分子等のような細胞接着分子、インテグリン、サイトケラチン、ケラチン、グリコスアミノグリカンおよび固定蛋白質、を含むが、これらに限定されない。上記の種類の細胞のECM因子の合成は、FGFまたはEGFを含むがこれらに限定されない種々の増殖因子を伴う、インキュベーションにより、誘導できる。
【0049】
上記のコアに対する細胞の付着は、そのコアの表面上への細胞接着物質の堆積により、向上させることも可能である。この細胞接着物質とは、その材料がコアの表面に対する細胞の向上された付着を行なうこと、を意味する。この細胞接着物質は、上述のECM、ならびに、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ゼラチンおよびアリルアミン、を含む、生体適合性の、合成のまたは天然に存在する物質、を含むことができる。完全なシーケンスの蛋白質の代わりに、それらの蛋白質から誘導されるオリゴペプチドシーケンス(oligopeptide sequences)も、上記微粒子の外表面に対する細胞の付着/分化を刺激するために、使用することも可能である。このようなシーケンスは十分に確立されており、その完全なシーケンスの天然蛋白質と同様の様式で機能することが示されている。これらのシーケンスは、例えば、ラミニンのB1鎖からのYIGSRシーケンス、A鎖からのIKVAV、またはフィブロネクチンからのRGDシーケンス、を含むと考えられる。
【0050】
上記の細胞接着物質は、上記コアへの細胞の付着の前に、上記微粒子に供給できる。一例において、これらの微粒子は、上記コアの表面上にその物質の被膜を与えるために、24時間までにわたり、無菌の条件下で、その細胞接着物質の溶液の中に、浸漬される。あるいは、アリルアミンを含むが、これに限定されない、カチオン性ポリマー等のような、ECMを微粒子の上に噴霧するか、ラミニン等のような、ECMを、外側のコアの上において、粒子に加水分解させることも可能である。加えて、自己集合性ペプチドに基くナノ繊維を上記コアの上に被覆してもよい。
【0051】
本発明の微粒子は、当該微粒子と、影響を受けた領域内への、上記微粒子のための、生体適合性で薬剤として許容可能な媒体と、を含む、組成物、の直接的な注入を介して、または、カテーテルの中を通すことにより、生体内に移植できる。したがって、本発明による微粒子の送達のために、侵襲性および非侵襲性の両方の方法が使用できる。この場合において使用する生物学的に活性な物質の濃度は、移植時のその目的とされる治療の用途、ならびに、使用する投薬の様式、のために必要とされる、有効な用量により決まる。この使用する用量は、求められている治療の効果を与えることにおいて有効である活性な成分の、局所的な標的組織の濃度、を達成するために有効である必要がある。この有効な用量は、細胞の添加の前に、生体外または動物モデルの試験システムから導出した投薬量−応答の曲線により、外挿できる。
【0052】
投薬において、複数の微粒子が、一般に、例えば、通常の塩水またはリン酸緩衝生理食塩水等のような、水溶液等の、無毒性の、薬剤として許容可能な媒体の物質とともに、投与の前に、混合され、例えば、静脈内または動脈内の投与、鞘内の注入(intrathecal injection)、または脳室内等への、任意の医療に適当な処置を用いて、投与できる。加えて、上記の微粒子が免疫系またはリンパ系の要素により消化または排除できない様式で、影響を受けた組織に対する注射針および皮下針を介する腔内または直接の投与が利用可能である。この一例は、パーキンソン病の症状を改善するために、脳の尾状−被殻または黒質緻密部の領域、の中への、上記の微粒子とリン酸緩衝生理食塩水との混合物の直接的な注入であると考えられる。
【0053】
中枢神経系(CNS)の中の特定的な送達において、鞘内送達が、例えば、既知の方法に従って、オマヤレザバー(Ommaya reservoir)とともに、使用可能である。例えば、F・バリス(F. Balis)およびD・ポプラック(D. Poplack),アメリカン・ジャーナル・オブ・ペディアトリック・ヘマトロジー・アンド・オンコロジー(Am. J. Pediatric. Hematol. Onchol),11巻(1)号,p.74−86,(1989年)を参照されたい。さらに、この記載されている送達処置は、本発明の微粒子を、他の内科的疾患を治療するために、体の他の領域に、送達するように使用することも可能である。
【0054】
あるいは、上記微粒子は、半固体の状態で、投与することも可能である。この場合に、その微粒子は、上述と同様に、薬剤として許容可能な媒体とともに、混合される。この結果として得られる溶液は、その後、微粒子の半固体のペレットを形成するために、例えば、150×gにおいて、5分間にわたり、遠心分離される。これらの微粒子の半固体のペレットは、内側のスタイレットを収容している挿入用のカニューレ装置に添加される。その後、この装置は、適当な深さまで、生体内の、関連の場所の中に、挿入される。この挿入用のカニューレは、その後、停止位置まで、摺動して戻され、微粒子の半固体状のペレットがその組織の中に置かれる。その後、このカニューレ装置は、微粒子の半固体状のペレットを残して、組織から取り出される。
【0055】
本発明の種々の変更例が、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく行なえることは、当然に、明らかである。例えば、本発明は、以下において記載されている例示または例証として説明されている、特定の材料、物質または細胞系を必要としている、または、これらに限定されている、と読まれるべきではない。
【0056】
実施例1:微小球のコアの調製および特徴づけ
PDGF−BB(シロン・コーポレイション(Chiron Corporation)、エメリービル、カリフォルニア州(Emeryville, CA))を含有している微小球のコアを、二重エマルジョン技法により、調製した。要するに、0.4dL/gmの固有粘度を有する、50mgの、ポリ−(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)の90:10のコポリマー(アルケルメス・インコーポレイテッド(Alkermes, Inc.)、ウイルミントン、オハイオ州(Wilmington, OH)より、メディソーブ(MEDISORB)を商品名として販売されている)を、1.5mLの塩化メチレンと0.5mLのアセトンの中に溶解した。また、60μgのPDGF−BBを、0.1%(重量/容量)のHASまたはヒト血清アルブミン(シグマ(Sigma)、セント・ルイス、ミズーリ州(St, Louis, MO))を含有している0.15mLの16mMクエン酸塩緩衝液(pH6.0)の中に溶解した。さらに、PDGF−BBを微小球の中に混入させる前に、上記の蛋白質を安定化させるために、賦形剤とともに、再構成した。しかし、他の実験においては、HSAは含まれていない。上記のポリマー/PDGF−BBの水溶液を、10秒間にわたり律動させることにより、ブランソン・ソニファイア450(Branson Sonifier 450)(ブランソン・ウルトラソニック(Branson Ultrasonic)、ダンベリー、コネチカット州(Danbury, CT))を用いて、継続的に超音波処理して、単一のエマルジョンを得た。次に、この単一のエマルジョンを、5%(重量/容量)のポリビニル・アルコール(分子量:31,000〜50,000、87〜89%、加水分解処理済、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州(Milwaukee, WI))と、5%(重量/重量)のNaClと、を含有している、30mlの水性溶液の中に、添加した。この結果として得られた溶液を、1分間にわたり磁石により攪拌することにより、二重のエマルジョンを得た。次に、この二重のエマルジョン(水/油/水)を、10%(重量/重量)のNaClを含有している脱イオン水(400mL)に加えて、25分間にわたり磁石により攪拌した。その後、この微小球のコアを、40μmのナイロン・セル・ストレイナー(nylon cell strainer)(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州)を通して濾過して、脱イオン水(400mL)により洗浄した。次に、これらのコアを、−80℃において、2時間にわたり、凍結した。その後、微小球を、ビルティス・フリーズモービル(Virtis Freezemobile)(ビルティス・カンパニー(Virtis Company)、ガーディニア、ニューヨーク市(Gardinier, NYC))を用いて、凍結乾燥処理により、凍結乾燥した。これらの微小球を、−40℃の周囲温度を維持しながら、凍結乾燥処理した。これらの凍結乾燥処理した微小球のコアを、その後に使用するまで、4℃において、無菌のマイクロバイアルの中に保管した。
【0057】
さらに、生物学的に活性な物質を全く含有していない対照のコアを、上記の単一のエマルジョンの形成中にその物質を全く添加しなかったことを除いて、その物質を含有しているコアを形成するために用いたのと同じ処置を用いて、調整した。この場合に、薬物を充填および充填しない微小球の場合のコアの大きさは、20〜100μmの大きさにするように、決定されている。
【0058】
また、微小球からのPDGFの放出をELISAにより決定した。この場合に、1mgの微小球を、24時間と168時間にわたり、24ウェル型の細胞培養プレートの中の0.5mLの増殖培地の中に入れた。それぞれの時点において、5μLの増殖培地を集めて、ELISA試験まで、−20℃において保管した。この結果、微小球からのPDGFの放出は、24時間と168時間において、それぞれ、31%と72%であることが決定された。この場合に、1mgの微小球は3.1μgのPDGFを含有していると推定されている。これにより、24時間と168時間において、0.96μgと2.23μgのPDGFが、それぞれ、放出されていることが立証された。成人の分娩後または神経前駆細胞がこれらの粒子に付着すると、細胞増殖における、めざましい増加が観察され、PDGFが安定で活性であることを示している。対照(薬物を伴わない微小球)に対して比べると、細胞増殖における4〜6倍の増加が、PDGFを充填した微小球に付着した細胞において、見られた。
【0059】
加えて、PDGFの放出を、エマルジョン法および分散法の両方により形成された微小球から、HPLCにより、測定した。要するに、10gのポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)の85:15のコポリマー(アルケルメス・インコーポレイテッド(Alkermes, Inc.)、ウイルミントン、オハイオ州(Wilmington, OH)より、メディソーブ(MEDISORB)を商品名として販売されている)を、240gの塩化メチレンの中に溶解した。次に、賦形剤を伴うPDGFの2種類のエマルジョンを、5gの16ミリモルのクエン酸緩衝液(pH6)の中において、それぞれ、9.2mgおよび18.74mgの、2種類の異なる充填物を伴って、調製した。その後、それぞれのエマルジョンを、PLGAのポリマー溶液とともに混合して、超音波処理した。さらに、この溶液を、ディスク温度が周囲温度である、7.62cm(3in)の直径の回転型ディスクの中に、3000rpmで、注いだ。この溶液の供給速度は191g/分と174g/分であった。この場合に、上部の円錐体と下部の円錐体の温度は、それぞれ、61℃と46℃であった。
【0060】
分散法により形成した微粒子の場合には、10gのポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸)の85:15のコポリマー(アルケルメス・インコーポレイテッド(Alkermes, Inc.)、ウイルミントン、オハイオ州(Wilmington, OH)より、メディソーブ(MEDISORB)を商品名として販売されている)を、240gの塩化メチレンの中に溶解した。次に、賦形剤を伴うPDGFをPLGAのポリマー溶液の中に分散して、超音波処理した。この場合に、9.2mgおよび18.74mgの、2種類の異なる充填物を、それぞれ、用いた。さらに、この溶液を、ディスク温度が周囲温度である、7.62cm(3in)の直径の回転型ディスクの中に、3500rpmと3000rpmにおいて、注いだ。この溶液の供給速度は188g/分と167g/分であった。この場合に、上部の円錐体と下部の円錐体の温度は、それぞれ、61℃と46℃であった。
【0061】
微小球からのPDGFの回収を測定するために、HPLCを用いた。この場合に、100mgの微小球を、0.5mLの70%アセトニトリルと0.1%のTFAの中に入れた。この溶液を、室温で、一晩にわたり、混合した。次に、これらのサンプルを、HPLCに注入する前に、移動相A(mobile phase A)により、1:10に希釈した。この結果、PDGFの回収は両方のエマルジョン配合物において66%よりも高かったが、分散法は、95%よりも高い、優れた回収率を与えた。
【0062】
実施例2:GDNF充填した微小球に対する成人の分娩後細胞の付着
分娩後幹細胞を分娩後の組織の外植片から単離した。これらの組織は、分娩または通常の外科的な出産の時に、妊婦から入手した。以下の細胞単離プロトコルを、層流中において、無菌の条件下に、行なった。これらの分娩後組織を、抗真菌性物質および抗生物質(AA)(100mL当たりに1mL(1mL当たりに10,000単位))の存在下の、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)(PBS−AA)の中において、洗浄した。この洗浄工程は、穏やかな攪拌を用いてPBS−AAにより組織をすすぐ処理により、構成されている。この処理は、血液や破片を除去するために、数回にわたり、行なった。その後、この洗浄した組織を、50mLのDMEM低グルコース(DMEM:Lg)またはDMEM高グルコース(DMEM:Hg)の培地の存在下の、150cmの組織培養プレートの中において、機械的に解離した。これらの組織を小片に切り刻んだ後に、これらを、一つの管当たりにおよそ5gの組織を伴って、50mLの円錐管の中に移した。その後、この組織を、10mLの、DMEM中に溶解したコラゲナーゼ:ディスパーゼ(C:D)または、DMEM中に溶解したコラゲナーゼ:ディスパーゼ:ヒアルロニダーゼ(C:D:H)とともに、AAを含有している40mLの、DMEM:LgまたはDMEM:Hgの中において、消化した。この場合に、C:Dは、50mLのDMEM中に希釈されている、500mgのディスパーゼ(1mg当たり0.4単位)を伴う、750mgのコラゲナーゼII型(1mg当たり125単位より大きい(1mg当たり0.5〜3FALGA単位))であった。したがって、C:D:Hは、50mLのDMEM中に希釈されている、500mgのディスパーゼ(1mg当たり0.4単位)と200mgのヒアルロニダーゼ(1mg当たり300単位)とを伴う、750mgのコラゲナーゼII型(1mg当たり125単位より大きい(1mg当たり0.5〜3FALGA単位))であった。あるいは、コラゲナーゼIV型(1mgあたり125単位より大きい(1mg当たり0.5〜3FALGA単位))における750mg)も、このプロトコルにおいて、利用されている。次に、上記の組織、培地および消化酵素を入れた円錐管を、24時間以内で、37℃において、オービタルシェーカー(orbital shaker)(中程度の振動)の中において、インキュベーションした。この消化の後に、上記の組織を40μmのナイロン・セル・ストレイナーにより濾過した。次に、これらの濾過した細胞の懸濁液を、10分間にわたり、1000×gにおいて、遠心分離した。その後、この上澄み液を吸引して、細胞のペレットを、50mLの新しい培地の中において、再懸濁した。この処理を2回完了することにより、それぞれの細胞の母集団から、残留している酵素の活性を除去した。その後、上澄み液を除去して、細胞のペレットを、2mLの増殖培地(DMEM:LgまたはDMEM:Hg、15%のFBS(ハイクローン・ディファインド・ウシ血清(Hyclone Defined bovine serum)、ロット番号:AND18475)、2−メルカプトエタノール(100mL当たりに1μL)、抗生物質および抗真菌性物質(100mL当たりに1mL(1mL当たりに10,000単位))の中において、再懸濁した。次に、単離した細胞の数当たりの細胞の生存能力を、トリパンブルー色素排除法の手動の計数により、決定した。
【0063】
上記の細胞を、週ごとに継代させながら、3週間にわたり培養して増殖した。実施例1において調製した、凍結乾燥した微小球のコアを、破片を除くために、組織培養培地の中において、数回にわたり洗浄した。その後、20〜50個のコアを、10〜30分間にわたり、1mlの培地の中において、無菌のエッペンドルフ(eppendorf)(アンビオン(Ambion)、オースチン、テキサス州(Austin, TX))の中で、500,000個の分娩後細胞とともに、混合した。この一連の実験において、一部のコアは、分娩後細胞とともにそれらを混合する前に、ラミニン(ECM)により被覆されていた。その後、このコア/細胞の懸濁液を、24ウェル型の超低クラスター組織培養プレート(ultra low cluster tissue culture plate)(コーニング(Corning)、ニューヨーク州)の内の2個のウェル(500μL/ウェル)の中に接種した。次に、100μLの新しい培地を、追加の5日間にわたり、それぞれのウェルの中に補充した。図3は、GDNF充填したコア50に付着した分娩後細胞52、を示している。
【0064】
別の実施形態において、細胞の生存能力/表現型を評価するために、微小球のコアを上記の培養プレートから除去して、800rpmにおいて、3分間にわたり遠心分離した。この上澄み液を除去して、ペレットを、室温において、20分の期間にわたり、新しい4%のパラホルムアルデヒドの中に再懸濁した。この後、付着した細胞を伴うコアを再び遠心分離して、新しい1倍のリン酸緩衝生理食塩水(PBS、ギブコ・ビー・アール・エル(GibcoBRL))の中に再懸濁した。その後、固定したサンプルを小皿の中に入れて、低温槽切断のための調製において、ドライアイス上の、OCT包埋配合物(ポリサイエンス(Polysciences)、ウオーリントン、ペンシルバニア州(Wariington, PA))の中で急速冷凍した。この場合に、10μmの厚さの断片を切断するために、標準的な低温槽を用いた。その後、連続した断片をガラス顕微鏡スライド(VWR)の上において、細胞核を標識するための対比染色剤として、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール塩酸塩(4',6-diamidino-2-phenylindole,dihydrochloride)(DAPI、モレキュラー・プローブズ(Molecular Probes))を用いて、さらに処理した。このDAPIは、10mMの濃度で、10分間にわたり、供給し、その供給後に、PBSにより洗浄した。
【0065】
細胞は24時間以内に付着し、微小球コアへの付着の後の数日間にわたり、生存可能な状態を維持することが示されている。さらに、コアへの付着の24時間後における細胞の生存能力を決定するために、トリプシン−EDTA(インビトロゲン(Invitrogen)、カリフォルニア州)によるトリプシン処理により、細胞を上記コアから放出させた。その後、これらのトリプシン処理された細胞を、40μmのナイロン・セル・ストレイナー(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州)を通すことにより、コアから分離した。次に、トリパンブルー色素排除法を用いて、細胞の生存能力を決定した。この結果、24時間後に、付着した細胞の100%が生存可能であることが示された。さらに、付着の40日後において、細胞が上記のGDNF微小球からトリプシン処理されて、生存可能であることも示されている。つまり、これらの細胞を再び平板培養すると、これらは集密まで増殖することが示されており、薬物を充填した微小球に対する付着の後における、これらの生存能力および増殖の可能性が確認できた。
【0066】
実施例3:線条体の中への微小球の移植
50:50および85:15のPLGAの微小球を、塩化メチレンの中にこれらのポリマーを溶解することにより、調製した。この場合に、上記の溶液の攪拌中に、相分離剤を添加した。さらに、攪拌後に、この分散液を硬化剤とともに混合して、最終的な微小球の組成物を作成した。その後、これらの微小球を、数日間にわたり真空乾燥してから、20〜80μmの大きさの分布を確立するためにふるい分けして、げっ歯類動物の体内に移植される前に、ガンマ線照射により滅菌した。SEMの分析により、50:50の微粒子の平均の大きさは36μmであったが、85:15の微粒子は55μmであった。なお、残留している塩化メチレンは、好ましくない炎症反応、を刺激する可能性があるので、その量を、ガスクロマトグラフィを用いて、測定した。この結果、上記の両方の配合物において、残留の塩化メチレンは5ppmよりも少なかった。さらに、これらの微小球を初めに秤量(5mg)して、L15培地(ギブコ・ビー・アール・エル(GibcoBRL)、グランド・アイランド、ニューヨーク州(Grand Island, NY))の中で3回洗浄した。その後、これらの微小球を、ペレット状にして、L15培地の100個の微小球/マイクロリットル(μL)の送達物を作るために、適当な容量に再懸濁した。次に、この微小球/L15の懸濁液を、移植の前に、27ゲージの針を用いて、分散させた。全ての動物体の処置を、IACUC(Institutional Animal Care and Use Committee)により認可されたプロトコルに従って行なった。成体(220〜300グラム)のオスのフィッシャー344ラット(Fisher 344 rat)にケタミン(65mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)の混合物により麻酔をかけて、定位フレーム(ストエルティング(Stoelting)、ウッド・デール、イリノイ州(Wood Dale, IL))の中に入れた。ノーズ・バーを耳内線(intra-aural line)の2.7mm下方に設定した。正中切開を、メスを用いて行ない、歯科用ドリルに取り付けたステンレス鋼のドリル先端部を用いて、頭蓋骨の中に、500μmの穴を形成した。その後、27ゲージの針を、+0.2mmだけブレグマ(Bregma)の方向に、+3.0mmだけ側方に、5.0mmだけ深く(硬膜に対して)、配置されている脳の線条体領域の中に、降下させて挿入した。およそ4μLの、100個の微粒子/μL、を含有している、L15培地を、ポリエチレンチューブと10μLのハミルトンシリンジ(Hamilton Syringe)(レノ、ニューヨーク州(Reno, NY))を介して、調整送達用注射器ポンプシステム(PhD・シリーズ・ポンプ、ハーバード・アパレイタス(Harvard Apparatus)、ホリストン、マサチューセッツ州(Holliston, MA))に接続されている27ゲージの針を通して注入した。次に、微粒子を、1μL/分で、注入した。この注入に続いて、上記の針をゆっくり抜き出して、覆っている頭皮を5/0シルク縫合糸により閉じた。この場合に、全ての動物体は、術前および術後に、自由に、食物および水を与えられた。その後、微小球の生体における効果を調べるために、移植後の1日目、2週間目、4週間目、および8週間目において、動物体が経心灌流(transcardial perfusion)により供された。
【0067】
連続的な20μmの凍結した組織の断片を切断して、ラットの脳の3種類の異なる領域を、注入路の全長(皮質、上線条体/脳梁、腹側線条体)に沿って分析した。それぞれの領域からの水平方向の断片を、TuJ1(未成熟および成熟した神経細胞)、GFAP(星状細胞/グリア瘢痕)、OX−42(休止および活性化された小グリア細胞)、ED−1(マクロファージ)、およびDAPI(核)(メッシナ(Messina)他、(2003年)、「実験神経学(Experimental Neurology)」、184巻、p.816〜829、を参照されたい)に対応して、免疫組織化学的に処理した。
【0068】
50:50の微小球は、移植後の1ヶ月目および2ヶ月目の両方において、十分に耐性があった。瘢痕応答(GAFP)は、皮質および線条体の両方において、注入の部位に局在化したが、GFAPの染色は2ヶ月目において減少した。最小限の神経細胞の損失が明らかになり、初期の時点(ED−1)において引き起こされていた比較的に少ない炎症反応は、移植後の2ヶ月目において、事実上、消滅した。また、移植部位の周囲における過度の細胞性(cellularity)(DAPI)は2ヶ月目において見当たらず、これにより、最小限の組織反応がさらに示唆されている。
【0069】
一方、85:15の微小球のGFAP発現は注入路の周囲においてアップレギュレーションしており、移植後の1ヶ月目において、比較的に大きな炎症反応が生じていることを示している。さらに、神経細胞の損失も、最大のGFAPの反応性の領域と、一致していた。これらの結果によれば、ED−1(マクロファージ)の反応は、注入路に沿って存在しているマクロファージの増加した数により明らかにされているように、増大していた。また、目に見えて、炎症反応は、50:50の微小球を移植した動物体において見られるレベルまで、移植後の2ヶ月目において、かなり減少しており、これらの長期の生体適合性が適正で適切であることを示している。
【0070】
実施例4:線条体の中への細胞被覆した微小球の移植
実施例3と同様に、50:50の微粒子(同じ粒度分布)を発生させて、ガンマ線照射により滅菌した。これらの微小球を秤量(5mg)して、L15培地の中で、3回洗浄した。その後、これらの微小球を、ペレット状にして、15%の胎児ウシ血清、ペニシリン−ストレプトマイシン(500mLの培地当たりに5mL)、およびβ−メルカプトエタノール(0.001%、シグマ(Sigma)、セント・ルイス、ミズーリ州)を、補給されているDMEM(低グルコース、ギブコ・ビー・アール・エル(GibcoBRL))からなる増殖培地の中において、再懸濁した。次に、この微小球/増殖培地の懸濁液を、プレート表面に対する細胞の付着がないことを確実にするために、ヒドロゲル被覆した組織培養プレート(コーニング(Corning))の中に、27ゲージの針を用いて、分散させた。また、臍帯組織から由来した分娩後細胞(単離処置については実施例2を参照されたい)を、微粒子を含有しているウェルの中に平板培養して、37℃において低速度(5rpm)で回転している振盪装置の上で、付着させた。6時間後に、培養物を細胞の付着について調べた。この結果、付着は微粒子にだけ限られていた。その後、細胞と微粒子を含有しているプレートを、インキュベータに移して、次の日(24時間後)の移植のための準備に、37℃において一晩置いた。
【0071】
実施例3と同様に、成体(220〜300グラム)のオスのフィッシャー344ラット(Fisher 344 rats)にケタミン(65mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)の混合物により麻酔をかけて、定位フレームの中に入れた。ノーズ・バーを耳内線(intra-aural line)の2.7mm下方に設定した。正中切開を、メスを用いて行ない、歯科用ドリルに取り付けたスチール鋼のドリル先端部を用いて、頭蓋骨の中に、500μmの穴を開けた。その後、27ゲージの針を、+0.2mmだけブレグマ(Bregma)の方向に、+3.0mmだけ側方に、5.0mmだけ深く(硬膜に対して)、脳の線条体領域の中に、降下させて挿入した。
【0072】
移植の前に、表面に分娩後細胞を含んでいる微粒子を、15の円錐形の管に、無菌で移して、800rpmにおいて3分間にわたり遠心分離した。その後、培地の上澄み液を除去して、細胞を含んでいる微粒子を、100個の微粒子/μLの密度で、L15培地の中に再懸濁した。次に、およそ4μLを、ポリエチレンチューブと10μLのハミルトンシリンジ(Hamilton syringe)を介して、調整送達用注射器ポンプシステムに接続されている27ゲージの針を通して注入した。次に、微粒子を、1μL/分で、注入した。この注入に続いて、上記の針をゆっくり抜き出して、覆っている頭皮を5/0シルク縫合糸により閉じた。この場合に、全ての動物体は、術前および術後に、自由に、食物および水を与えられた。その後、免疫組織化学を利用して、微小球の生体における効果を調べるために、移植後の1週間目において、動物体が供された。この場合に、表面に分娩後細胞を含んでいる微粒子の移植の結果として、目に見える行動の欠陥は全く検出されなかった。
【0073】
〔実施の態様〕
(1)哺乳類動物の体内の病気の治療における使用に適している微粒子において、
コアであって、このコアの中に分布されている有効量の生物学的に活性な物質を含有している、コアと、
前記コアの表面に付着させた細胞と、
を含む、微粒子。
(2)実施態様1に記載の微粒子において、
前記コアは、生体適合性で生体分解性のポリマーを含む、微粒子。
(3)実施態様2に記載の微粒子において、
前記ポリマーは、ポリ(ラクチド)(poly (lactide))、ポリ(グリコリド)(poly (glycolide))、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(poly (lactide-co-glycolide))、ポリ(カプロラクトン)(poly (caprolactone))、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物(polyanhydride)、ポリアミノ酸、ポリオルソ・エステル(polyortho ester)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、蛋白質、コラーゲン、合成ポリアミノ酸、プロラミン、多糖類、および、ヘパリン、からなる群から選択される、微粒子。
(4)実施態様1に記載の微粒子において、
前記生物学的に活性な物質は、塩基性線維芽細胞増殖因子、α線維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性増殖因子、トランスフォーミング増殖因子αまたはβ、上皮増殖因子、インスリン誘導増殖因子(insulin derived growth factor)、血管内皮増殖因子、血小板由来増殖因子、グリア増殖因子、心房性ナトリウム利尿ペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド、グリア由来神経栄養因子、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、血小板由来増殖因子、増殖分化因子5(growth differentiation factor five)、形態発生タンパク質52、骨形態発生タンパク質7、骨形態発生タンパク質14、EPO、EPO擬似体、シクロスポリン、および、スルファメート置換単糖類、からなる群から選択される、微粒子。
(5)実施態様1に記載の微粒子において、
前記細胞は、軟骨細胞、血管芽細胞、筋芽細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、β細胞、セルトリ細胞、マクロファージ、小グリア細胞、内皮細胞、幹細胞、未分化の前駆細胞、分化前の前駆細胞、前駆細胞、神経幹細胞、神経前駆細胞、神経細胞、樹状細胞、および、遺伝的に形質転換した細胞、からなる群から選択される、微粒子。
【0074】
(6)実施態様1に記載の微粒子において、
前記コアの表面上における細胞接着物質、
をさらに含む、微粒子。
(7)実施態様6に記載の微粒子において、
前記細胞接着物質は、前記細胞から由来している、微粒子。
(8)実施態様6に記載の微粒子において、
前記細胞接着物質の被膜、を含む、微粒子。
(9)実施態様8に記載の微粒子において、
前記細胞接着物質は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ゼラチン、アリルアミン、自己集合性ペプチド、および、ペプチドの誘導体、からなる群から選択される、微粒子。
(10)実施態様1に記載の微粒子において、
前記コアは、0.1〜30重量%の前記生物学的に活性な物質を含有している、微粒子。
【0075】
(11)実施態様1に記載の微粒子において、
80μm未満から500μmまでの平均直径を有している、微粒子。
(12)実施態様1に記載の微粒子において、
200μm未満の平均直径を有している、微粒子。
(13)実施態様1に記載の微粒子において、
前記生物学的に活性な物質は、調整された持続性の放出プロファイルで、前記コアから放出される、微粒子。
(14)実施態様1に記載の微粒子において、
前記生物学的に活性な物質は、少なくとも24時間から2年までの期間にわたり、前記コアから放出される、微粒子。
(15)実施態様1に記載の微粒子において、
前記細胞は、前記体内における前記微粒子の配置の後の少なくとも24時間にわたり、前記体内において生存可能である、微粒子。
【0076】
(16)哺乳類動物の体のある領域の中の病気の治療における使用に適している組成物において、
前記哺乳類動物の前記体の前記領域の中の前記病気の治療における使用に適している複数の微粒子であって、
コアであって、このコアの中に分布されている有効量の生物学的に活性な物質を含有している、コア、および、
前記コアの表面に付着させた細胞、
を含む、微粒子と、
前記微粒子のための、生体適合性で薬剤として許容可能な媒体と、
を含有している、組成物。
(17)実施態様16に記載の組成物において、
前記微粒子のための媒体は、水溶液を含む、組成物。
(18)哺乳類動物の体のある領域の中の病気の治療のための方法において、
前記病気の治療における使用に適している微粒子を、前記哺乳類動物の前記領域へ送達する処理、
を含み、
前記微粒子は、
有効量の生物学的に活性な物質を含有しているコア、および、
前記コアの表面に付着させた細胞、
を含む、
方法。
(19)実施態様18に記載の方法において、
前記微粒子は、侵襲的にまたは非侵襲的に、送達される、方法。
(20)実施態様18に記載の方法において、
前記微粒子は、この微粒子と、この微粒子のための生体適合性で薬剤として許容可能な媒体と、を含有している組成物の中に、送達される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の微粒子の概略的な断面図である。
【図2】本発明の微粒子の概略的な断面図である。
【図3】細胞を付着させた状態の、GDNFを充填したコアを含む微粒子の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類動物の体内の病気の治療における使用に適している微粒子において、
コアであって、このコアの中に分布されている有効量の生物学的に活性な物質を含有している、コアと、
前記コアの表面に付着させた細胞と、
を含む、微粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子において、
前記コアは、生体適合性で生体分解性のポリマーを含む、微粒子。
【請求項3】
請求項2に記載の微粒子において、
前記ポリマーは、ポリ(ラクチド)(poly (lactide))、ポリ(グリコリド)(poly (glycolide))、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(poly (lactide-co-glycolide))、ポリ(カプロラクトン)(poly (caprolactone))、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ無水物(polyanhydride)、ポリアミノ酸、ポリオルソ・エステル(polyortho ester)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、蛋白質、コラーゲン、合成ポリアミノ酸、プロラミン、多糖類、および、ヘパリン、からなる群から選択される、微粒子。
【請求項4】
請求項1に記載の微粒子において、
前記生物学的に活性な物質は、塩基性線維芽細胞増殖因子、α線維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性増殖因子、トランスフォーミング増殖因子αまたはβ、上皮増殖因子、インスリン誘導増殖因子(insulin derived growth factor)、血管内皮増殖因子、血小板由来増殖因子、グリア増殖因子、心房性ナトリウム利尿ペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド、グリア由来神経栄養因子、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、血小板由来増殖因子、増殖分化因子5(growth differentiation factor five)、形態発生タンパク質52、骨形態発生タンパク質7、骨形態発生タンパク質14、EPO、EPO擬似体、シクロスポリン、および、スルファメート置換単糖類、からなる群から選択される、微粒子。
【請求項5】
請求項1に記載の微粒子において、
前記細胞は、軟骨細胞、血管芽細胞、筋芽細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、β細胞、セルトリ細胞、マクロファージ、小グリア細胞、内皮細胞、幹細胞、未分化の前駆細胞、分化前の前駆細胞、前駆細胞、神経幹細胞、神経前駆細胞、神経細胞、樹状細胞、および、遺伝的に形質転換した細胞、からなる群から選択される、微粒子。
【請求項6】
請求項1に記載の微粒子において、
前記コアの表面上における細胞接着物質、
をさらに含む、微粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の微粒子において、
前記細胞接着物質は、前記細胞から由来している、微粒子。
【請求項8】
請求項6に記載の微粒子において、
前記細胞接着物質の被膜、
を含む、微粒子。
【請求項9】
請求項8に記載の微粒子において、
前記細胞接着物質は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ゼラチン、アリルアミン、自己集合性ペプチド、および、ペプチドの誘導体、からなる群から選択される、微粒子。
【請求項10】
請求項1に記載の微粒子において、
前記コアは、0.1〜30重量%の前記生物学的に活性な物質を含有している、微粒子。
【請求項11】
請求項1に記載の微粒子において、
80μm未満から500μmまでの平均直径を有している、微粒子。
【請求項12】
請求項1に記載の微粒子において、
200μm未満の平均直径を有している、微粒子。
【請求項13】
請求項1に記載の微粒子において、
前記生物学的に活性な物質は、調整された持続性の放出プロファイルで、前記コアから放出される、微粒子。
【請求項14】
請求項1に記載の微粒子において、
前記生物学的に活性な物質は、少なくとも24時間から2年までの期間にわたり、前記コアから放出される、微粒子。
【請求項15】
請求項1に記載の微粒子において、
前記細胞は、前記体内における前記微粒子の配置の後の少なくとも24時間にわたり、前記体内において生存可能である、微粒子。
【請求項16】
哺乳類動物の体のある領域の中の病気の治療における使用に適している組成物において、
前記哺乳類動物の前記体の前記領域の中の前記病気の治療における使用に適している複数の微粒子であって、
コアであって、このコアの中に分布されている有効量の生物学的に活性な物質を含有している、コア、および、
前記コアの表面に付着させた細胞、
を含む、微粒子と、
前記微粒子のための、生体適合性で薬剤として許容可能な媒体と、
を含有している、組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の組成物において、
前記微粒子のための媒体は、水溶液を含む、組成物。
【請求項18】
哺乳類動物の体のある領域の中の病気の治療のための方法において、
前記病気の治療における使用に適している微粒子を、前記哺乳類動物の前記領域へ送達する処理、
を含み、
前記微粒子は、
有効量の生物学的に活性な物質を含有しているコア、および、
前記コアの表面に付着させた細胞、
を含む、
方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、
前記微粒子は、侵襲的にまたは非侵襲的に、送達される、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法において、
前記微粒子は、この微粒子と、この微粒子のための生体適合性で薬剤として許容可能な媒体と、を含有している組成物の中に、送達される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−530558(P2007−530558A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505073(P2007−505073)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009382
【国際公開番号】WO2005/097074
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】