細胞遊走を調整するための組成物、及び方法
ペプチドは、配列番号:3、CD44を活性化する能力を維持しているその置換、及び付加変異体を含む。複合体は、このペプチド、又はÅ6ポリペプチドをCD44ポリペプチドと共に含む。単離されたポリペプチドは、ヒトCD44のリンク領域配列、その機能的に活性な断片、置換変異体、及び付加変異体を含む。異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法は、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドと結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、シグナル伝達活性を調整することを含む。その他の方法は、治療に反応する対象の亜集団を診断し、同定するために、及びCD44ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングするために、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドを使用することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年3月6日に出願された米国仮出願番号第61/158,321号、及び2009年10月6日に出願された米国仮出願番号第61/249,234号に対する優先権の利益を主張し、それぞれの内容の全てが本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明は、一般的には細胞浸潤、及び遊走を調整する小分子に関し、より具体的にはCD44に対する結合によって細胞浸潤、及び遊走を調整するペプチドに関する。CD44は、ヒアルロナート/ヒアルロン酸(HA)、並びにコラーゲン、及びフィブロネクチンのための主な細胞表面受容体である。これは、細胞-細胞、及び細胞-細胞外マトリックス相互作用、細胞遊走、ホーミングリンパ球、白血球活性化、造血、ケモカイン、及び成長因子の提示、並びに転移性伝播を含む生理的、並びに病理学的プロセスの多様な範囲での役割を担っている。CD44は、細胞生存の促進において基本的な役割を果たすことが報告されており、またCD44発現の喪失は、死滅プログラムにおける重要な要素であることが報告されている。
【0003】
CD44細胞表面受容体は、複数のアイソフォームを発現し、それらのいくつかは、腫瘍成長、及び転移に関与している。転移性CD44変異体の発現は、ヒト乳房、及び結腸の腫瘍に見ることができ、また癌進行中には早期に生じ得る。
【0004】
癌転移、及びその他の炎症性のプロセスにおけるCD44の役割を考慮すれば、CD44活性化に基づいたこれらの状態の治療、診断、及びイメージングを可能にする化合物を開発することは、有益であろう。本発明は、これらの需要を満たし、かつその上関連する利益を提供する。
【発明の概要】
【0005】
(発明の要旨)
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、配列番号:3のペプチド、CD44を活性化する能力を維持しているその置換、及び付加変異体に関する。
【0006】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、CD44ポリペプチドと配列番号:3のペプチドを含む複合体に関する。
【0007】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、CD44ポリペプチドとÅ6ポリペプチドを含む複合体に関する。
【0008】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、ヒトCD44のリンク領域配列を有する単離されたポリペプチド、その機能的に活性な断片、置換変異体、及び付加変異体に関する。
【0009】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間シグナル伝達活性を調整することを含む、前記方法に関する。
【0010】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドにおけるCD44ポリペプチドに対する結合の測定であって、結合がCD44ポリペプチドのシグナル伝達活性を調整する、前記測定;及びシグナル伝達活性の変化を測定することを含む、前記方法に関する。活性の変化は、異常な細胞遊走、又は浸潤を示す。
【0011】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドの存在下においてCD44ポリペプチドの結合、又は下流のシグナル伝達活性をイメージングすることを含む、前記方法に関する。
【0012】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、ペプチド治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法であって、ペプチドは、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドである、前記方法に関する。本方法は、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、ペプチド治療指標に特異的な薬剤と接触させること;試料中のペプチド治療指標に対する薬剤の結合であって、指標の存在を指し示している結合を決定すること、及び試料中に存在するペプチド治療指標を有する集団から対象を選択して、ペプチド治療的処置に反応する亜集団を同定することを含む。ペプチド治療指標は、CD44ポリペプチドを含む。
【0013】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、CD44ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法であって、試験化合物、及び配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドを加えること、及び前記試験化合物とペプチドとの競合的結合を測定することを含む、前記方法に関する。
【0014】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間CD44の分断を調整することを含む、前記方法に関する。
【0015】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、結合によってCD44ポリペプチド活性の減感作を生じさせることを含む、前記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HRP-SAブロッティングを使用するÅ6CbioXLポリペプチドの免疫沈降を示す。
【図2】ターゲットとしてのCD44を確認するための、HRP-SAブロッティングを使用するÅ6CbioXLポリペプチドの免疫沈降を示す。
【図3】HRP-SAブロッティングを使用するÅ6CbioXLポリペプチドのさらなる免疫沈降を示す。
【図4】図4a、及び図4bは、配列番号:1のペプチドの存在下におけるSKOV3細胞に結合する抗CD44(DF1485)のFACs解析を示す。
【図5】FACs解析を使用する卵巣癌株におけるCD44発現を示す。
【図6】卵巣癌株におけるCD44発現についてのFACs MnI値の概要を示す。
【図7】Å6CbioXLポリペプチド、及びÅ6-BSAにおける抗CD44(DF1485)イムノブロット解析を示す。
【図8】図8a、及び図8bは、抗CD44(DF1485)の能力である配列番号:1のペプチドに結合する能力、又はRb抗-Å6-KLH結合を阻害する能力を評価するÅ6ELISAを示す。
【図9】イムノブロット解析を使用する卵巣癌株におけるCD44発現を示す。
【図10】A2780(10A)細胞、及びSKOV3(10B)細胞の化学走性に対する配列番号:1のペプチドの効果を示す。
【図11】配列番号:1のペプチドの存在下、及び非存在下における、ヒアルロン酸に対するSKOV3細胞の接着を示す。
【図12】配列番号:1のペプチドの存在下、及び非存在下における、ヒアルロン酸に対するA2780細胞の接着を示す。
【図13】配列番号:1のペプチドの存在下における、CD44二量体化を示すより高分子量バンドの形成を示すイムノブロット解析を示す。
【図14】図14a、及び図14bは、配列番号:1のペプチドの存在下、及び非存在下においてSKOV3細胞に結合するIM7を示す。
【図15】Å6の存在下において、又は媒体のみでの、メラノーマ肺転移モデルにおける転移の阻害を示す。
【図16】Å6(配列番号:1)と本発明の配列番号:3のペプチドとの間の相同性を示す。
【図17】CD44のHA結合ドメインを示す。結合ドメイン内のCD44リンクモジュールは、下線を引いたアミノ酸によって示される。
【図18】配列番号:3のペプチドの存在下におけるのSKOV3遊走の阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本開示は、部分的には、ペプチド、並びに細胞遊走、及び浸潤の調整におけるこれらの使用に向けられる。一つの実施態様において、本発明は、
【化1】
、及びキャップされた変異体を提供する。
【化2】
の相同性ペプチド、並びに関連するペプチド(Å6ペプチド)、及びペプチド擬態は、化学走性を阻害する能力を示す。本明細書に開示される実施態様は、配列番号:1が、CD44ポリペプチドを発現する細胞のヒアルロン酸(HA)に対する結合を強化するという発見に基づいた、種々の治療、診断、イメージング、及び薬物発見方法に関する。いくつかの実施態様において、本発明は、また、CD44のHAに対する結合を強化するための、配列番号:3、及びキャップされた変異体の使用に向けられる。細胞運動に関する種々のシグナル伝達経路にCD44が関与するため、これは、例えば癌、特に転移性癌、並びに関節炎などの多数の異常な炎症性のプロセスを治療するための療法の開発のための有益なターゲットである。
【0018】
また、さらなる実施態様において、本発明は、Å6、Å6ペプチド、若しくはペプチド擬態、又は配列番号:3、若しくはそのキャップされた変異体とCD44ポリペプチドとの間の種々の複合体に向けられる。下記の実施例において示されるように、配列番号:1のターゲットはCD44である。更にまた、下記の実施例Xは、配列番号:1のCD44に対する結合により、このような複合体が、その後二量体、及びその他のより高分子量の凝集体を含むCD44クラスターを形成することを示す。Å6ペプチドと同様に、配列番号:3が遊走を阻害する能力を下記の実施例XIIIに示した。
【0019】
本明細書に使用される、「CD44」、又は「CD4ポリペプチド」は、野生型CD44、又はCD44標準(CD44s)、並びにスプライス変異体をいい、そのいずれもが発現の分布、及び程度に依存する腫瘍転移、及び/又は癌と関連する生物マーカーであることができる。CD44は、膜結合形態、並びに膜結合形態のタンパク質分解によって細胞外に放出される「分断された」可溶性形態のsCD44の両方を含む。この用語は、また、CD44s、及びCD44変異体の種々のグリコシル化された誘導体を包含する。CD44は、また、サイトゾルにおいてそれ自体を分布させる細胞内切断産物を形成することができる。これらのサイトゾル切断産物は、CD44ポリペプチドの転写を更に刺激することができる。
【0020】
本明細書に使用される、「異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態」は、限定されないが、腫瘍転移、炎症性のプロセス、及び免疫不全などのプロセスを含む。異常な細胞遊走、及び/又は浸潤と関連する状態は、また、血管疾患、精神遅滞、線維形成、及び腫瘍形成を含む。
【0021】
本明細書に使用される、「結合」という用語は、例えば水素結合、塩橋、ファンデルワールス引力その他同様のものを含む非共有結合性の相互作用を介した、標的と化合物の会合をいう。本発明の方法において、配列番号:1、及び配列番号:3、又はキャップされた変異体は、CD44ポリペプチドに結合する。
【0022】
本明細書に使用される、「Å6」、又は「Å6ポリペプチド」という用語は、実質的にアミノ酸配列
【化3】
(また、一文字アミノ酸コードにおいて
【化4】
としても略記される)を有するポリペプチド、若しくは置換変異体、付加変異体、又はペプチド擬態を含むその化学的誘導体を意味することが意図される。Å6ポリペプチドは、米国特許番号第5,994,309号;第6,696,416号;及び第6,963,587号の主題である。本発明のÅ6ポリペプチドは、以下の活性の1つ以上を示す:(a)以下のインビトロバイオアッセイの1つ以上における、下記のような配列番号:1、又はキャップされた変異体の生物学的活性の少なくとも約20%:(i)Matrigel(登録商標)アッセイにおける浸潤;(ii)Matrigel(登録商標)上での内皮チューブ形成、若しくは(iii)塩基性線維芽細胞成長因子、及び血管内皮成長因子の存在下におけるフィブリンマトリックス上での内皮チューブ形成;又は(b)配列番号:1の結合部位を有する細胞、又は分子に対する結合について、標識された配列番号:1、又はキャップされた変異体と競合するような結合活性。本発明のÅ6ポリペプチドのキャップされた変異体は、そのアミノ末端、若しくはカルボキシル末端のいずれか、又は両方に化学的部分を有するÅ6をいう。この部分は、例えば、アセチル(Ac)、及びアミド(Am)基などの化学基を含むことができる。特に有用なキャップされたÅ6ポリペプチドは、アミノ末端にて窒素原子に結合したアセチル基、及びC末端のカルボキシル基に結合したアミド基を含む。このキャップされたポリペプチドは、
【化5】
のように書くことができる。具体的実施態様において、本発明は、また、配列番号:3の相同的Å6ポリペプチドを提供する。
【0023】
本明細書に使用される、「ペプチド擬態」という用語は、構造的に基づいてペプチド活性を有するペプチド様分子を意味する。このようなペプチド擬態は、化学修飾ペプチド、天然に存在しないアミノ酸を含むペプチド様分子、及びペプトイドを含み、またペプチド擬態が由来するペプチドの選択的なホーミング活性などの活性を有する(例えば、GoodmanおよびRoの文献、"Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery" Vol. 1の薬物設計のためのペプチド擬態(Peptidomimetics for Drug Design)(M.E. Wolff編; John Wiley & Sons(1995)、803-861ページを参照されたい)。
【0024】
本明細書に使用される、「シグナル伝達経路」という用語は、細胞がある種類のシグナル、又は刺激を別のものに変換する任意のプロセスをいう。典型的なシグナル伝達は、二次メッセンジャーによって活性化された酵素によって実行される細胞の内部(及び外部)の生化学的な反応の秩序ある順序を含み、結果としてシグナル伝達経路を生じる。例えば、CD44は、細胞外でヒアルロン酸(HA)に結合し、次にMAPK(ERK1/ERK2)、又はPI3Kを含むシグナル伝達経路に関与することができる膜貫通ポリペプチドである。その他のシグナル伝達経路は、限定されないが、FAK、BMP-7、例えばLck、Fyn、Lyn、及びHckなどのSrc-ファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼ(PTKs)、カルシウム/カルモジュリン経路、Ras、並びにRhoファミリーGTPaseを含む。
【0025】
本明細書に使用される、「有効な量」は、癌を治療することに関して使用されるときに、癌の治療、及び/又は癌転移に対する予防において使用されるペプチドの量を適格とすることが意図される。この量は、癌転移を予防し、減少させ、又は除去する目的を達成するであろう。有効な量は、一つの実施態様において約1mg/kg〜約1000mg/kg、及び別の実施態様において約5mg/kg〜約500mg/kgを含む。炎症性状態を治療することに関して使用されるときには、「有効な量」は、炎症性状態の治療において使用されるペプチドの量を適格とすることが意図される。この量は、炎症を予防し、減少させ、又は除去する目的を達成するであろう。有効な量は、一つの実施態様において約1mg/kg〜約1000mg/kg、及び別の実施態様において約5mg/kg〜約500mg/kgを含む。
【0026】
「プロドラッグ」という用語は、前駆体薬剤の代謝を介してインビボでより活性にされる化合物をいう。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、薬物の加水分解およびプロドラッグ代謝:化学、生化学、及び酵素学(Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism: Chemistry, Biochemistry and Enzymology)(Testa, Bernard and Mayer, Joachim M. Wiley- VHCA, Zurich, Switzerland 2003)に記載されているように、プロドラッグとして存在することができる。本明細書に記載されるペプチドのプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学的変化を受けて活性なペプチドを提供する、ペプチドの構造的に修飾された形態である。加えて、プロドラッグは、生体外の環境において化学的、又は生化学的方法によって活性なペプチドに変換させることができる。例えば、プロドラッグは、適切な酵素、又は化学的試薬と共に経皮貼付リザーバー内に置いたときには、化合物にゆっくり変換させることができる。プロドラッグは、たいてい、いくつかの状況において、親ペプチドより容易に投与することができるので有用である。例として、これらは、親ペプチドがそうではないのに対して、経口投与によって生物が利用可能であろう。プロドラッグは、また、医薬組成物における溶解性を、親ペプチドを超えて改善させることができる。プロドラッグの加水分解開裂、又は酸化的活性化によるものなどの、多種多様なプロドラッグ誘導体が、当該技術分野において公知である。プロドラッグの例は、限定されないが、C末端エステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後、活性な実体であるC末端カルボン酸に代謝的に加水分解されるペプチドであろう。
【0027】
本明細書に使用される、「治療的に許容し得る塩」という用語は、水溶性、若しくは油溶性、又は分散性かつ治療的に許容し得る本発明のペプチドの塩、又は双性イオン形態を表す。塩は、ペプチドの最終的な単離、及び精製の間に、又は別途、適切な酸、若しくは塩基で適切なペプチド製剤のpHを調整することによって製造することができる。
【0028】
本明細書に使用される、癌の治療のための「十分な期間」は、対象のその他の部分に癌が転移する機会を減少させるために十分な術前、又は術後の時間を意味する。このような時間の量は、例えば、癌の根絶、及び/又は緩解を調べることによって評価することができる。炎症の治療のための「十分な期間」は、対象がその衰弱効果をもはや受けないレベルにまで炎症性プロセスを低減させるのに十分な時間を意味する。特定の障害については、頻度、投薬量、及び時間の長さは、医師の診察において決定することができる。
【0029】
いくつかの実施態様において、本発明は、配列番号:3のペプチド、CD44を活性化する能力を維持する置換、及び付加変異体を提供する。CD44を活性化する能力を測定することは、実施例において、特に実施例Xにおいて以下に記述される方法によって達成することができる。置換変異体は、更に以下に記述するように同類置換を含む。付加変異体は、一つの実施態様において50アミノ酸以下、別の実施態様において40アミノ酸以下、又はその他の実施態様において30、20、15、14、13、12、11、10、又は9アミノ酸以下であるペプチドを含み、これらの間の全ての値を含む。
【0030】
いくつかの実施態様において、本発明は、配列
【化6】
から本質的になるペプチドを提供する。CD44のアミノ酸120〜127に対応する配列番号:3の配列番号:1との配列比較を図17に示してある。配列番号:1と配列番号:3との間の高い相同性は、このような構造が類似の反応性を提示することができることを示す。実際に、下記の実施例XIIIにおいて示されるように、配列番号:3はSKOV3細胞の遊走を阻害することが可能である。そのうえ、より大きなCD44ポリペプチドという状況における配列番号:3の存在は、CD44のこの領域がCD44の凝集、及び活性化に関係する部位として役に立つことができることを示す。
【0031】
配列番号:3に対する修飾は、いくつかの実施態様においてキャップされた変異体を含む。Å6ポリペプチドのキャップされた変異体のように、配列番号:3のキャップされた変異体は、そのアミノ末端、若しくはカルボキシル末端のいずれか、又は両方において化学的部分を有するペプチドをいう。本部分は、例えば、アセチル(Ac)、及びアミド(Am)基などの化学基を含むことができる。一つの実施態様において、配列番号:3のキャップされたペプチド変異体は、アミノ末端にて窒素原子に結合したアセチル基、及びC末端のカルボキシル基に結合したアミド基を含む。このキャップされたポリペプチドは、
【化7】
のように書くことができる。当業者は、ペプチドのキャッピングがペプチドに代謝的安定性を与えることができると認識するであろう。
【0032】
本発明は、また、CD44ポリペプチドに結合された複合体としてのÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を提供する。ペプチド-CD44複合体は、いくつかの実施態様において2つのCD44ポリペプチドを含む。その他の実施態様において、ペプチド-CD44複合体は、例えば三量体、四量体を含む、2つを超えるCD44ポリペプチドを含む。いくつかの実施態様において、ペプチド-CD44複合体は、HAの結合を調整し、及び従って、下流の細胞シグナリングイベントも調整する。
【0033】
いくつかの実施態様において、CD44ポリペプチドとの複合体は、細胞表面上にあることができる。これは例えば、膜結合型のCD44の場合である。その他の実施態様において、複合体は、可溶性CD44(sCD44)などの非結合型CD44と共に生じることができる。いくつかの実施態様において、種々の複合体のいずれかを単離することができる。
【0034】
いくつかの実施態様において、本発明は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、医薬として許容し得る媒体中の、配列番号:1のペプチド、その付加変異体、その置換変異体、その塩(総称してÅ6ポリペプチド)、及びこれらの組み合わせの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、シグナル伝達経路を調整することを含む、方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施態様において、本発明は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、医薬として許容し得る媒体中の、配列番号:3のペプチド、及びキャップされた変異体の有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、シグナル伝達経路を調整することを含む、方法を提供する。
【0036】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体を利用する治療方法は、望ましくない細胞遊走、細胞浸潤、遊走で誘導される増殖、脈管形成、若しくは転移と関連する疾患、又は状態を有する対象において、細胞遊走、及び浸潤、又は遊走で誘導された細胞増殖を阻害するために有用である。細胞遊走プロセスは、例えば、生物中のある位置から別の位置までの細胞の移動運動を含む。細胞遊走は、当該技術分野において周知であり、一般的に、先導端における細胞骨格重合、ECMからの局所的な分離、続く移動、再付着、及び解重合を含む(Parsonsらの文献、Science 302:1704-9,(2003))。例示的な細胞遊走プロセスは、例えば、正常な発生の間に、組織成長、及びホメオスタシスの全体にわたって、並びに転移などの異常な増殖状態の間に生じる。例えば、胚発生の間の組織形成、創傷癒合、及び免疫反応は、全て特異的位置への特定の方向への細胞の移動を必要とする。同様に、このプロセスの間のエラーは、血管疾患、慢性関節リウマチ、腫瘍形成、転移、及び精神遅滞を含む有害な結果を有し得る。細胞浸潤プロセスは、組織内への、又は組織を通り抜ける、細胞の付着、及び浸透を含む。細胞浸潤は、細胞の移動運動を含むため、細胞遊走に関連し得る。しかし、浸潤性プロセスは、単に遊走性であるだけの細胞プロセスと比較して、細胞接着受容体、及び/又はECMポリペプチドの異なる特性を含み得る。細胞浸潤は、また、タンパク質分解、及びマトリックス再構成などのその他の細胞プロセスを含み得る。例示的な細胞浸潤プロセスは、血管、又は基底層の中への、又はそれを通り抜ける、転移性細胞への付着、浸透のタンパク質分解である。例えば、血管、又は基底層の中への、又はそれを通り抜ける細胞の移動運動は、細胞遊走によって生じ得る。その他の様々な細胞浸潤プロセスもまた、当該技術分野において周知である。
【0037】
細胞転移は、第一の部位から体の他の場所にある1つ以上の第二の部位への新生細胞、又は癌細胞の移動であり、二次癌腫を生じる。移動は、例えば、血管、又はリンパ管を介して生じ得る。従って、転移は、第一の部位から1つ以上の第二の部位までの癌、又はその他の新生細胞の伝播をいい、また細胞遊走、及び浸潤プロセスを含む。転移によって生成される腫瘍は、癌によって引き起こされる死の90%の原因となる。
【0038】
脈管形成は、既存の血管からの新たな血管の成長を含む細胞プロセスである。脈管形成は、成長、及び発達の間の、並びに創傷癒合における、正常なプロセスである。しかし、脈管形成は、休眠状態から悪性状態への腫瘍の移行にも関与する。腫瘍は、血管成長を誘導するため、成長因子分泌、及び毛細血管成長の腫瘍への誘導を介して、脈管形成は、細胞成長を増大させるために必要な栄養を腫瘍に供給する。脈管形成は、また、確立された固形腫瘍から離脱し、血管に入り、そして遠い第二の部位に移動することができる手段を単一の癌細胞に提供する。例示的なタイプの脈管形成は、内皮細胞による基底膜を分解するためのプロテアーゼ放出、親血管壁からの遊走、及び最後に血管内腔を形成する構造になることを含む、急速に成長する脈管形成である。
【0039】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体によって治療することができる疾患、又は状態は、原発性腫瘍、若しくは固形腫瘍、又は白血病、及びリンパ腫、転移性腫瘍の転移、浸潤、及び/又は成長、アテローム硬化症、心筋脈管形成、ポストバルーン血管形成術血管再狭窄、血管外傷後の新内膜形成、血管移植再狭窄、冠状動脈の副次的な形成、深部静脈血栓症、虚血性肢脈管形成、毛細管拡張症、化膿性肉芽腫、角膜疾患、ルベオーシス、血管新生緑内障、糖尿病性、及びその他の網膜症、後水晶体線維増殖症、糖尿病性新血管形成、黄斑変性症、子宮内膜症、関節炎、乾癬強皮症を含む慢性炎症性の状態と関連する線維形成、肺線維症、化学療法で誘導される線維形成、瘢痕を伴う創傷癒合、並びに線維形成;消化性潰瘍、挫傷、ケロイド、及び脈管形成、造血、排卵、月経、妊娠、及び胎盤形成の障害、又は浸潤、若しくは脈管形成が病原性である任意のその他の疾患、又は状態を含む。
【0040】
広範な異なるタイプの癌は、異常な細胞移動性プロセスを阻害するために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体で治療することができる。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体で治療することができる癌のカテゴリーは、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、及び中枢神経系癌を含む。癌腫は、副腎皮質性癌腫、基底細胞癌腫、肺癌腫を含む皮膚において、又は内臓に並んでいるか、若しくは覆っている組織において始まる癌をいう。肉腫は、骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性線維性組織球腫、及び軟骨肉腫を含む骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、又はその他の結合的、若しくは支持的な組織において始まる癌をいう。白血病は、骨髄などの血液を形成する組織において始まり、多数の異常な血球を生じて血液に入るようにする癌をいう。リンパ腫、及び骨髄腫は、免疫系細胞において始まる癌である。中枢神経系癌は、脳、及び脊髄の組織において始まる癌である。癌の由来となる体の部分に応じて、異なるタイプの癌は、例えば、卵巣癌、肺癌、肝癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、大腸癌、前立腺癌、メラノーマ、膵臓癌、神経芽細胞腫、胃癌、又は皮膚癌を含む。全ての癌患者、特に転移癌患者は、抗遊走、抗浸潤、及び抗転移活性を示すÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療からの利益を得ることができる。
【0041】
理論によって拘束されることなく、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、下記の実施例Xにおいて証明されるように、CD44のクラスター形成、二量体化、オリゴマー形成、脂質ラフト再構成、及び/又は活性化を変化させ得る高次構造変化を誘導することができる。下記の実施例に示したように、配列番号:1の結合ターゲットはCD44である。従って、本発明の複合体は、その後、配列番号:1、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体がCD44ポリペプチドに対して結合することによって誘導される二量体、及びオリゴマーを含むCD44ポリペプチドのクラスターを形成することができる。可溶性CD44(sCD44)活性は、いくつかの癌において抗転移性であり得るため、このような活性化は、CD44分断が行われたときには、ポジティブであり得る。例えば、sCD44は、細胞表面CD44のHAに対する結合を遮断することによってメラノーマ腫瘍成長を阻害することが証明されている(Ahrensらの文献、Oncogene 20:3399-3408(2001))。活性化は、また、このような活性化がHAに対する細胞表面CD44の結合を遮断するときに、分断の非存在下においてもポジティブであり得る。
【0042】
上述したように、Å6ポリペプチドは、CD44において見いだされる共通のモチーフを共有する。構造、
【化8】
配列番号:1を有するÅ6ポリペプチドは、配列番号:3に関連があり、これは、図17に示されるようにCD44においてアミノ酸120-127として現れる。従って、CD44ポリペプチドは、Å6に対して有意な相同性がありかつ配列番号:3のペプチドと同一の、ネスト状の配列を有する。当業者は、配列番号:1のアセチル-リジンが、より大きなCD44ポリペプチドの中の配列番号:3のアスパラギン(例えば、第一、又は第二のアミドに結合したカルボニル)と構造的な類似性を共有することを認識するであろう。これらのアミド部分は、同様に高次構造的な制約を与えることができ、及び/又は同様に分子内、又は分子間相互作用を助長することができる。同様の構造的な特徴は、アセチル、又は同様にキャップされたアスパラギンを有する配列番号:3のペプチドにおいて見いだされる。CD44ポリペプチドの中のÅ6様配列は、配列番号:3と同一であり、標準的なエキソン3、及び4のスプライス部位にまたがっている。更に、CD44の中の配列番号:3におけるアスパラギンは、N-連結されたグリコシル化のための潜在的部位である。CD44ポリペプチドにおけるこの配列は、HA結合ドメインに近接しており、またこの配列のN末端側の2残基目に、ジスルフィド結合に含まれるシステイン残基がある。配列番号:1は、CD44に対する結合リガンドであり、かつ配列番号:1は、配列番号:3とこの構造的なモチーフを共有するため、及び配列番号:3がCD44の中に含有されているため、これらのペプチドは、例えば、二量体化部位、又はCD44のHAとの相互作用を可能にするその他の相互作用部位として役に立つことができる。
【0043】
これらの二量体化イベント、又はCD44とÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の相互作用をÅ6、若しくはÅ6ポリペプチドアゴニスト、又は配列番号:3、又はキャップされた変異体アゴニストで直接調整して、異常な細胞遊走、及び浸潤によって特徴づけられる状態を治療することができる。
【0044】
CD44ポリペプチドは、細胞間相互作用、細胞接着、及び遊走に関係する細胞表面糖タンパク質である。これは、ヒアルロン酸に対する受容体であり、またオステオポンチン(Yohkoらの文献、Cancer Res. 59:219-226(1999))、コラーゲン1、フィブロネクチン、フィブリン、ラミニン、及びコンドロイチン硫酸を含むコラーゲン(Naorらの文献、Adv. Cancer Res. 71:241-319(1997))、HB-EGF、及びb-FGFを含む成長因子(Bennettらの文献、J. Cell Biol. 128:687-698(1995))、マトリックスメタロプロテイナーゼ(Yuらの文献、Genes & Dev. 13:35- 48(1999))、及びサイトカイン(以下に概説される:Borlandらの文献、Immunology, 93: 139-148(1998)及びPontaらの文献、Nature Rev. MoI. Cell Biol. 4:33-45(2003))などのその他のリガンドとも相互作用することができる。HCELLと呼ばれるCD44の分化したシアルフコシル化された糖型は、ヒト造血幹細胞上で天然に見いだされ、また極めて強力なE-セレクチン、及びL-セレクチンリガンドである。HCELLは、「骨ホーミング受容体」として機能し、ヒト造血幹細胞、及び間充織幹細胞の骨髄への遊走を導く(Sacksteinらの文献、Nature Medicine 14:181-187(2008))。
【0045】
CD44は、リンパ球活性化、再循環、及びホーミング、造血、及び腫瘍転移を含む広範な細胞機能に関与する。CD44遺伝子の転写産物は、多くの機能的に異なるアイソフォームを生じる複雑な選択的スプライシングを受けるが、これらの変異体のいくつかにおける全長の性質は、決定されていない。選択的スプライシングは、このポリペプチドの構造的、及び機能的な多様性の基礎となり、また以下に示すように腫瘍転移に関連があることが報告されている。大腸癌細胞上のCD44のスプライス変異体は、HCELL糖型を示し、これは、腸癌転移における重要な工程である血行力学的流動状態下において血管のEセレクチンに大対する結合を媒介する。CD44遺伝子転写は、少なくとも部分的に、βカテニン、及びWntシグナリング(腫瘍発生にも関連する)によって活性化される。
【0046】
また、理論によって拘束されないが、CD44の活性化が転移を含む遊走を阻害することができる、いくつかのメカニズムがある:1)Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、CD44活性の減感作を導くことができる長期の活性化/二量体化を生じさせることができる(Å6によって誘導される二量体化については、図13を参照されたい);2)活性化は、可溶性CD44の分断を誘導することができる;sCD44は、上述したようにいくつかの腫瘍株化細胞において転移を阻害することが示された;及び3)CD44活性化は、リガンド結合の有無にかかわらず、:a)遊走に阻害性であるマイクロフィラメント再構成を誘導する(例えば、ストレスファイバー上の皮質アクチンの増強);b)インテグリン活性を調整する;c)遊走依存的なシグナリングを調整する;及び/又はd)MMPの発現、活性、及び/又は隔離することを変化させることができる二次シグナル/細胞内会合を誘導することができる。
【0047】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、CD44活性の減感作を導くことができる長期の活性化-二量体化を生じさせることができる。CD44に対して結合したÅ6、配列番号:3、又はキャップされた変異体は、活性化の効率を減少させることができる。或いは、CD44に対して結合したÅ6、配列番号:3、又はキャップされた変異体は、リサイクルを減少させることができる。CD44に対して結合したÅ6、配列番号:3、又はキャップされた変異体は、受容体のエフェクター分子を分離させることもまたでき、又は受容体発現のダウンレギュレーションを生じさせ得る。
【0048】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、CD44を活性化し、次に可溶性CD44(sCD44)の分断を誘導することができる。CD44は、細胞外、及び細胞内の両方で、経時的なタンパク質分解性切断を受け得る。CD44細胞内ドメイン(ICD)断片CD44ICDは、シグナル伝達分子として作用し、これは、核に転位し、そして12-O-テトラデカノイルホルボール13-アセテート反応性のエレメントによって媒介される転写を活性化する。CD44ICDを発現する細胞はCD44メッセンジャーRNAを高レベルに生成し、これはCD44遺伝子がCD44ICDによる転写活性化の潜在的なターゲットの1つであることを示す(Okamotoらの文献、J. Cell Biol. 155(5):755-762(2001))。
【0049】
細胞外sCD44は、いくつかの腫瘍株化細胞の転移を阻害することが示されている。(一般的な総説については:Plattらの文献、MoI Pharm. 4:474-86(2008)を参照されたい)。より具体的には、sCD44がメラノーマ株化細胞に対してHAによる細胞増殖-促進効果を消滅させることができることが証明されている(Andereggらの文献、J Invest Dermatol, e-pub ahead of print(2008))。一つの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、sCD44を産生させる膜結合型CD44の切断を担う酵素であるプロテアーゼADAM1Oの調整を経て、分断を増強することができる(上記Andergregg)。sCD44におけるグリコシル化パターンが悪性マーカーとしての機能を果たすことができることが更に証明して、分断を制御する際のグリコシル化パターンの役割を更に示す(Limらの文献、Proteomics 16:3263-3273(2008))。いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、分断プロセスにおいて作用するCD44のグリコシル化された部分の相互作用を調整することによってsCD44の分断を調整することができる。
【0050】
種々のサイトカイン因子は、CD44の分断、その後のsCD44のHAとの相互作用の両方を調節し、最終的に生理的、及び病理学的プロセスにおけるCD44の影響を決定することができる。例えば、オンコスタチンM、及びトランスフォーミング成長因子β1(TGF-β1)は、両方ともCD44の分断を調整することができる(Cichyらの文献、FEBS Lett. 556(1 -3):69-74(2004))。従って、いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、オンコスタチンMの調整を経て分断を増強することができ、一方ではその他の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、TGF-β1の調整を経て分断を増強することができる。
【0051】
CD44活性化は、リガンド結合の有無にかかわらず、(a)例えばストレスファイバー上の皮質アクチンの増強によって、遊走に阻害性であるマイクロフィラメント再構成を誘導する(Yonemuraらの文献、J. Cell Biol. 145(7): 1497-509(1999));(b)インテグリン活性を調整する(Caseyらの文献、Clin. Exp. Med. 18:67-75(2000); Lessonらの文献、Am. J. Path. 154(5): 1525-1537(1999));(c)遊走依存的なシグナリングを調整する(Bourquiqnon, Seminar Cancer Biol. 8(4):251-9(2008); Vitettiらの文献、J. Biol. Chem. 283(7):4448-58(2008); Bourquiqnon, J. Neurochem. 101(4): 1002-17(2007); Thomeらの文献、J. Cell ScL 117, 373-380(2004))ことができる二次シグナル/細胞内会合を誘導することができる。例えば、CD44は、受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーのための、及びc-Met受容体のための補助受容体として作用することができ、受容体キナーゼ活性の活性化、並びに細胞生存、増殖、及び分化を含む多様な細胞プロセスの制御を生じ、及び/又は(d)MMPの発現、活性、及び/又は隔離することを変化させる(Spessotto らの文献、J. Cell Biology 158(6):1133-1144(2002); Pengらの文献、Int. J. Oncol. 31(5):1119-26(2007); Ohno et.al., J. Biol. Chem. 281(26): 17952-60(2006))。
【0052】
CD44は、多数の異なる環境において細胞シグナリング、及び/又は細胞機能を促進、又は阻害のいずれかをするように機能することができるため、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、同様に、異常な遊走、及び浸潤の阻害をもたらすために細胞機能を促進、又は阻害することができる。
【0053】
従って、いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、CD44活性化に対するアゴニストとして作用することができる。CD44活性化は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。いくつかの実施態様において、CD44活性化は、化学走性の阻害を導く特定の細胞シグナリングイベントを遮断することができる。その他の実施態様において、活性化されたCD44は、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。
【0054】
或いは、CD44に対して結合したÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体に関連する高次構造的な変化は、HAなどの天然のリガンドに対するCD44結合を変化させることができる。いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、HAに対するCD44結合を阻害することができ、一方ではその他の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、HAに対するCD44結合を増強することができる。例えば、本発明のペプチドは、sCD44に対するHA結合を増強すること、及び/又は細胞表面CD44に対するHAの結合を阻害することができる。細胞表面CD44-HA結合の阻害は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。その他の実施態様において、細胞表面CD44-HA結合の阻害は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを遮断することができる。またさらなる実施態様において、CD44-HA結合の阻害は、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。CD44の細胞表面プロセシングは、遊走プロセスと同等である(Cichyらの文献、J. Cell Biol. 161 :839-843(2003))。
【0055】
いくつかの実施態様において、CD44-HA結合を増強することにより、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。その他の実施態様において、CD44-HA結合を増強することにより、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを遮断することができる。またさらなる実施態様において、sCD44-HA結合などのCD44-HA結合を増強することにより、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。
【0056】
或いは、CD44に対して結合したÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体と関連する高次構造的な変化は、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を変化させることができる。いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を阻害することができ、一方ではその他の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を増強することができる。その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用の阻害は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。その他の実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用の阻害は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを遮断することができる。またさらなる実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用の阻害は、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。
【0057】
いくつかの実施態様において、本発明は、図17において下線を引いたアミノ酸によって示されるように、ヒトCD44のリンク領域配列を有する単離されたポリペプチド、及び図17に示したとおりのヒトCD44のリンク領域から本質的になる単離されたポリペプチドを含むヒアルロン酸に対して結合する能力、及び/又はCD44を活性化する能力を維持しているその機能的に活性な断片を提供する。いくつかの実施態様において、リンクモジュールのアミノ酸は、本明細書において記述されたような保存的アミノ酸置換によって置換することができる。なおさらなる実施態様において、単離されたポリペプチドは、付加変異体を含むことができ、これは、40、30、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、及び1つまでの付加アミノ酸を含む50までの付加アミノ酸を含み、これらの間の全ての値を含む。なおさらなる実施態様において、本発明は、図17に示したとおりのCD44の単離されたヒアルロナン結合ドメインからなる単離されたポリペプチドを提供する。
【0058】
CD44は、図17に示すように、約160アミノ酸のヒアルロナン結合ドメインを有し、また下線を引いたアミノ酸として示される、単一のリンクモジュールを含む。リンクモジュールは、CD44のN末端の近くの細胞外に位置し、これはHAと相互作用することができ。HA結合に影響を及ぼす残基は、イタリックで示され、部位特異的変異実験を通じて同定されている。配列番号:3は、Å6と相同的であり、図17で示すようにリンクモジュールから離れた伸長部分として現れる。リンクモジュールは、ヒアルロナン結合タンパク質においてユビキタスなポリペプチドのスーパーファミリーであり、ヒアルロナン結合タンパク質は、例えばCD44、アグリカン、ベルシカン、ニューロカン、ブレビカン、LYVE-I、TSG-6、KIA0527、CAB61358、及びスタビリン-1を含む。CD44リンクモジュールは、特に、およそ100アミノ酸のドメインであり、そしてジスルフィド結合で結合される4つのシステインを含む。
【0059】
ヒト腫瘍壊死因子誘導遺伝子6(TSG-6)からのリンクモジュールの三次元構造は、溶液中の核磁気共鳴分光法によって決定されている(Kohdaらの文献、Cell 86:767-775,(1996))。リンクモジュール配列比較は、4つのシステイン残基を含む、リンクモジュールスーパーファミリー全体にわたって高度に保存された配列を示す。これは、リンクモジュールスーパーファミリーのための「コンセンサスフォールド」を導いた。
【0060】
細胞遊走プロセスの特徴である、ローリングにおいて係合することができないものに置換されたリンクモジュールを有するCD44キメラが証明されている(Lesleyらの文献、J. Biol. Chem. 27:(29):26600-26608(2002))。更にまた、個々のCD44のHAに対する低い結合活性は、細胞遊走における初期の工程を媒介する役割を果たす。対照的に、TSG-6のリンクモジュールは、白血球のローリングに適合しない鎖として作用する。従って、遊走と関連するローリングプロセスは、CD44-HA相互作用の可逆的かつ多効果の性質を生じる。TSG-6は、CD44-HA相互作用のモジュレーターとして示されている。
【0061】
従って、いくつかの実施態様において、本発明は、CD44のリンクモジュールを含む単離されたリンクポリペプチドを提供する。単離されたリンクポリペプチドは、例えば、転移と関連するローリング、及びその後の血管外遊走を防止するために、HA結合に対する阻害剤として作用することができる。いくつかの実施態様において、本発明は、CD44のリンクモジュールからなる単離されたポリペプチドを提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、CD44のリンクモジュールから本質的になる単離されたリンクポリペプチドを提供する。当業者は、HAに結合する能力を維持させながら、リンクモジュールにおける同保存的ミノ酸置換を含む軽微な変異をさせることができることを認識するであろう。
【0062】
更にまた、生物学的状況におけるCD44-HA相互作用の多効果の性質を考慮すれば、本発明は、また、多量体形態におけるリンクポリペプチドを提供する。このようなÅ6ポリペプチド、又は配列番号:3の多量体は、完全なリンクモジュールに類似の様式で機能することができる。
【0063】
いくつかの実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を増強することにより、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。その他の実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を増強することにより、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを遮断することができる。またさらなる実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を増強することにより、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。
【0064】
なおまたさらなる実施態様において、CD44の活性化、リガンド結合、又はその他の膜結合したタンパク質との相互作用の阻害、若しくは増強の任意の組合せにより、化学走性を阻害するために1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。その他の実施態様において、CD44の結合は、特定のシグナル伝達経路に対して何ら効果がなくても疾患を治療するために十分であり得る。
【0065】
CD44のヒアルロン酸(HA)との細胞外結合は、例えば、例えばMAPK(ERK1/ERK2)、FAK、及びPI3Kを含む多数のシグナル伝達経路をトリガーすることができる。CD44が媒介することができるその他のシグナル伝達経路は、限定されないが、骨形態形成タンパク質7(BMP-7)、Lck、Fyn、Lyn、及びHckなどのSrcファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼ(PTKs)、カルシウム/カルモジュリン経路、Ras、並びにRhoファミリーGTPaseを含む。シグナル伝達経路は、また、RTK、例えばGタンパク質結合イオンチャネル経路、及びその他のイオンチャネル経路を含む多数のGPCR経路、インテグリン経路、例えばFAK、インテグリン関連キナーゼ(ILK)、特に興味深い新たなシステイン-ヒスチジンリッチなタンパク質(PINCH)、及びチロシンキナーゼアダプタータンパク質2の非触媒性領域(Nck2)によって媒介されるインテグリン経路、並びに種々のサイトカイン、及び成長因子によって媒介されるJak-STAT経路を含む。従って、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の存在下におけるCD44に対するHAの結合を変化させることにより、これらの例示した経路のいずれかを調整することができる。
【0066】
マウスNIH3T3細胞などのいくつかの細胞は、可溶性HAに結合することができる(Underhillの文献、J. Cell Science 56:177(1982))。しかし、多くの細胞は、固定されたHAのみに結合する(Lesley, Adv. Immun. 54:271-335(1993))。下記の実施例において使用したSKOV3は、FITC-HAに結合できなかったが、固定されたHAに接着した。CD44に対するHA結合について少なくとも3つの状態がある:1)非活性;2)例えば、ホルボールエステルによる二量体形成と関連する(Lesleyらの文献、Exp. Cell Research 187:224-233(1990); Liao らの文献、J. Immun. 151:6490- 6499(1993));抗CD44架橋(Zhengらの文献、J. Cell Bio. 130: 485-495(1995));脱グリコシル化と関連する、例えば、N-グリコシル化/グリコシダーゼ処理の阻害(Lesleyらの文献、J. Exp. Med. 182: 431-437(1995))ものなどの誘導性;及び3)恒常的に活性。例えば、HAに対するCD44結合は、受容体数、グリコシル化/脱グリコシル化、並びに二量体、及びその他の分子会合体を形成する能力に依存して恒常的に活性であり得る。SKOV3のCD44は、可溶性HAと相互作用する可能性が高いが、会合の親和性、及び/又は結合活性が低すぎるため維持されず、また下記の実施例において提示されるFACsアッセイによって検出されない。
【0067】
接着アッセイは、CD44分子の補充を可能にして複数のリガンド分子に結合し、相互作用のための十分な結合活性を接着アッセイにおいて維持して、検出することを可能にする。これは、接着性の糖タンパク質(例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン)のインテグリン受容体に対する結合について観察されるものに類似する。その他の細胞タイプについては、CD44受容体数、グリコシル化状態、及びオリゴマー形成する能力は、可溶性HAを検出することができる十分な結合活性を可能にする。
【0068】
下記の実施例に示したように、DF1485(抗CD44)は、Å6Cbio標識されたポリペプチドを適切な分子重量にて免疫沈降させる。更にまた、Å6は、SKOV3細胞に結合する抗CD44であるDF1485を阻害する。しかし、DF1485は、Å6架橋されたポリペプチドをブロットせず、またDF1485は、ELISAにおいてÅ6に結合しないし、DF1484は、ELISAにおいてRb抗Å6-KLHを阻害しない。
【0069】
CD44の上流、及び下流の多様なシグナリング経路は、異常な遊走、及び浸潤に影響を及ぼし得る。MAPキナーゼ経路、及びカルシトニンが前立腺癌におけるCD44オルタネートアイソフォーム発現に影響することが報告されている(Robbinsらの文献、BMC Cancer 8:260(2008))。BMP-7シグナル伝達は、細胞内Smadタンパク質の活性化を介して生じる。Smad1は、CD44の細胞質ドメインと相互作用することが見いだされた。ストレプトマイセス属(Streptomyces)のヒアルロニダーゼでの軟骨細胞の前処置は、BMP-7を媒介したSmad1リン酸化、Smad1、又はSmad4の核転位、及びSBE4ルシフェラーゼレポーター活性化を阻害した(Petersonらの文献、J Cell Biol. 166(7):1081-1091(2004))。CD44を介したシグナリングは、特にTリンパ球におけるp56/ciと共に、チロシンキナーゼによって媒介されることが示されている(Taherらの文献、J. Biol. Chem. 271(5):2863-2867(1996))。側鎖ヘパリンサルフェートを有する癌に関連するスプライス変異体CD44v3(CD44-HS)は、受容体チロシンキナーゼc-Metを介した肝細胞成長因子/散乱因子(HGF/SF)で誘導されるシグナル伝達を促進することもまた示されている(van der Voortらの文献、J. Biol. Chem. 274(10):6499-6506(1999))。更にまた、CD44-HS、及びc-Metの過剰発現は、腫瘍成長、及び転移のマーカーであることが示されている。オルタナティブスプライス変異体CD44v6は、Rasを活性化する成長因子のための補助受容体としての機能を果たすことができる(Chengらの文献、Genes Dev. 20:1715-1720の(2006))。Chengらは、Ras活性化が更にCD44v6スプライシングを促進するポジティブフィードバックループを同定した。
【0070】
シグナリング経路との関係に加えて、CD44アイソフォーム発現の変化は、癌状態のマーカーであることが示されている。CD44アイソフォームは、いくつかの乳癌、及び前立腺癌幹細胞のための細胞表面マーカーとして報告され、また上皮卵巣癌患者における生存時間の増加の指標と関係づけられている。(Liらの文献、Cell Research 17:3- 14(2007); Sillanpaらの文献、Clin Cancer Res. 9(14):5318-24(2003))。CD44のスプライス変異体は、転移と関連することが報告され、また早期発見の可能性を有することが報告されている(Matsumuraらの文献、Lancet 340:1053-1058(1992))。CD44の発現は、正常な胃粘膜においては見いだされず、原発性腫瘍の49%のみにおいて見いだされ、診断時における遠位への転移、及び腫瘍再発と関連し、また胃癌による死亡率を増大させることが見いだされた。血清CD44は、リンパ腫を患う一部の患者において上昇する(Mayerらの文献、Lancet 342:1019-1022(1993))。
【0071】
いくつかのCD44アイソフォームが通常生じる一方で、CD44変異体(CD44v)といわれるその他のものが腫瘍において発現される。アイソフォームCD44v7-10は、前立腺癌において過剰発現されることが示された。特異的アイソフォームCD44v3-10、及びCD44sは、正常なケラチノサイトに存在する。しかし、アイソフォームCD44v3は、腫瘍組織において同定されている。CD44v5、及びCD44v6サイトゾル濃度は、線維腺腫、及び正常な胸部組織と比較して乳癌においてより高いことが見いだされた(Heflerらの文献、Int. J. Cancer 79(5):541-545(1998))。CD44s、並びにCD446v、及びCD449vを含むいくつかの変異体アイソフォームの発現の増加は、明細胞癌腫における腫瘍分化の過程において観察されている(Terpeらの文献、Am J. Pathol. 148(2):453^63(1996))。当業者は、異なる腫瘍タイプと関連する、CD44s、及びCD44変異体、並びにその種々のグリコシル化された形態の異常な発現におけるその他の例が多く存在すること、またその発現レベルは、癌タイプ、及び進行の段階に従って変化し得ることを認識するであろう。
【0072】
ヒトmiR373、及びmiR520Cは、インビトロ、及びインビボにおける細胞遊走、及び浸潤を刺激した(Huangらの文献、Nature Cell Biol. 10:202-210(2008))。発現アレイ解析を使用して、Huangらは、miR373、及びmiR520Cを発現する細胞の遊走表現型がCD44の抑制に依存することを見いだした。miR373のアップレギュレーションは、乳癌転移試料におけるCD44発現と反対に相関した。最も一般的なCD44アイソフォームの発現の増加が、乳癌患者の全体的な生存率と相関することもまた注目された。同様に、CD44がヒト前立腺癌における転移抑制因子であることが証明されている(Louらの文献、Cancer Res. 59:2329-2331(1999))。NMRによって決定されるリガンドで誘導されるCD44の変化の研究は、なぜCD44の細胞外ドメインのタンパク質分解が、腫瘍細胞遊走、及び浸潤を増強させることができるのかについての理論的説明を提供した(Takedaらの文献、J. Biol. Chem. 281(52):40089-40095(2006))。
【0073】
異常な遊走、及び浸潤と関連するその他の状態は、種々の炎症性反応を含む。炎症性滑膜炎を患う患者からの髄液は、正常なレベルよりも高い可溶性CD44を有する(Mouldsらの文献、Immunology of Transfusion Medicine, New York, 273-297(1994))。
【0074】
前述のCD44ポリペプチドのいずれも、異常な遊走、及び浸潤によって特徴づけられる状態を治療するために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体によってターゲットすることができる。このような治療は、例えば、投薬量、及び疾患を治療するために十分な期間の決定の両方に関する治療処方計画を決定するために、有資格の医師がモニターすることができる。
【0075】
インビトロでの状況において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体のシグナリングイベントに対する効果は、組織試料を使用して市販のキットの使用によって評価することができる。例えば、キナーゼアッセイキットの大きなアレイは、biocompare.com/ProductCategories/1397/Kinase-Assays-Kits.html?sap=trueにてワールドワイドウェブ上で見いだすことができる。いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体のCD44に対する結合を介した1つ以上のこれらのシグナル伝達経路を調整する効果は、対象における細胞の浸潤、及び遊走の阻害である。更に、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体と関連するシグナリング効果を評価することにより、1つ以上のシグナル伝達経路の阻害剤の使用を介した多岐にわたる治療的アプローチの開発が可能になる。
【0076】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の投与経路は、全身的であるが、医薬組成物は、局所的、又は経皮的に、例えば軟膏、クリーム、又はゲルとして;経口的に;直腸に;例えば、坐薬として、非経口的に、注射により、又は連続的に注入により;膣内に;鼻腔内に;内部経気管支的に;頭蓋内に、耳内に;又は眼球内にも投与することができる。
【0077】
局所的な適用については、化合物は、膏薬、又は軟膏などの局所的に適用される媒体に組み込まれてもよい。活性成分のための担体は、スプレー可能な、又はスプレー可能でない形態のいずれであってもよい。スプレー可能でない形態は、局所的な適用に固有の担体を含み、かつ水の動的粘度より高い動的粘度を有する半固体、又は固体の形態であることができる。適切な剤形は、限定されないが、溶液、懸濁液、乳剤、クリーム、軟膏、粉末、塗布剤、膏薬、及び同様のものを含む。必要に応じて、これらは、滅菌してもよく、又は浸透圧、及び同様のものに影響させるために、補助薬剤、例えば、保存剤、安定剤、湿潤薬剤、緩衝液、若しくは塩と混合してもよい。いくつかの実施態様において、スプレー可能でない局所的な製剤のための媒体は、軟膏基剤、例えば、ポリエチレングリコール-1OOO(PEG-1000);HEBクリームなどの従来のクリーム;ゲル;並びにワセリン、及び同様のものを含む。
【0078】
局所的な適用のために適切なものは、また、化合物が任意に固体、又は液体の不活性な担体材料と組み合わせて、スクイーズボトル内に、又は加圧された揮発性の、通常のガス状噴霧剤との混合物においてパッケージされるスプレー可能なエアロゾル製剤である。エアロゾル製剤は、本発明の化合物に加えて、溶媒、緩衝液、表面活性物質、香水、及び/又は抗酸化剤を含むことができる。
【0079】
特にヒトに対する局所的な適用については、感染した領域、例えば、皮膚表面、粘膜、目、その他に化合物の有効な量を投与することができる。この量は、治療される領域、症候の重症度、及び使用した局所的な媒体の性質に依存して、一般的に一回の適用につき約0.001mg〜約1gの範囲であるであろう。
【0080】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の有効な量が、癌転移に対して癌の治療、及び/又は予防に使用される。この量は、癌転移を予防し、減少させ、又は排除する目的を達成するであろう。有効な量は、一つの実施態様において約1mg/kg〜約1,000mg/kg、及び別の実施態様において約5mg/kg〜約500mg/kgを含む。有効な量は、また、更に別の実施態様において約10mg/kg〜約250mg/kgであることができる。有効な量は、医師によって決定することができ、対象の年齢、体重、性別、及び以前の病歴などの変動を含むことができる。当業者は、限定されないが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、及び1,000mg/kg、並びに1mg/kgの分数を含む中間の任意の量を含む1mg/kg〜約1000mg/kgの間の任意の量を投与することができることを認識するであろう。
【0081】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の有効な量が、炎症性状態の治療に使用される。この量は、炎症を予防し、減少させ、又は排除する目的を達成するであろう。有効な量は、一つの実施態様において約1mg/kg〜約1000mg/kg、及び別の実施態様において約5mg/kg〜約500mg/kgを含む。有効な量は、また、更に別の実施態様において約10mg/kg〜約250mg/kgであることができる。有効な量は、医師によって決定することができ、対象の年齢、体重、性別、及び以前の病歴などのような変動を含むことができる。当業者は、限定されないが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、及び1,000mg/kg、並びに1mg/kgの分数を含む中間の任意の量を含む1mg/kg〜約1000mg/kgの間の任意の量を投与することができることを認識するであろう。
【0082】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体の投薬量は、ペプチドの有効な量を含む薬学的な投薬量単位を含む。有効な量は、インビボで定常状態濃度を達成するために十分な量を意味し、これは疾患の関連する任意のパラメーターの測定可能な減少を生じ、また原発性腫瘍、又は転移性腫瘍の成長、炎症反応性における任意の認められたインデックス、又は無病間隔の、若しくは生存の適度な延長を含み得る。例えば、患者の20%における腫瘍成長の減少は、効果的であるとみなされる(Frei IIIの文献、E., The Cancer Journal 3: 127-136(1997))。しかし、この規模の効果は、本発明に従った有効である投薬量についての最小限の要求であるとみなされない。
【0083】
いくつかの実施態様において、有効な投薬量は、インビボアッセイにおける化合物の50%抑制濃度(IC50)よりも10倍、及び100倍高いものと少なくとも同等である。投与される活性化合物の量は、選択される正確なペプチド、又は誘導体、疾患、又は状態、投与経路、レシピエントの健康、及び体重、もしあればその他の同時的な治療の存在、治療の頻度、所望の効果の性質、例えば腫瘍転移の阻害、及び当業者の判断に依存する。腫瘍を患うヒトなどの哺乳動物対象を含む対象を治療するための例示的な投薬量は、体重1kg当り最大約1,000ミリグラムの活性化合物の量、又は上で詳述した量のいずれかである。
【0084】
ペプチドの典型的な一回の投薬量は、約1μg〜約1,000mg/kg体重である。局所的な投与については、一つの実施態様において化合物約0.01〜20%の濃度の範囲での投薬量、及びその他の実施態様において1〜5%である。約10ミリグラム〜約7グラムの範囲での1日の総投薬量は、経口投与について可能である。前述した範囲は単に示唆的であり、個々の治療体制に対して考慮される変数の数が多いほど、これらの推奨される値からのかなりの変動が予想される。インビトロでの浸潤を阻害するためのペプチドの有効な量、又は投薬量は、細胞あたり約1ピコグラム〜約0.5ナノグラムの範囲である。有効な投薬量、及び投薬量範囲は、本明細書に記述される方法を使用して、インビトロで決定することができる。
【0085】
治療方法は、分裂抑制剤、例えば、ビンブラスチン;アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド;葉酸阻害剤、例えば、メトトレキセート、ピリトレキシム、又はトリメトレキサート;抗代謝剤、例えば、5-フルオロウラシル、及びシトシンアラビノシド;挿入抗生物質、例えば、アドリアマイシン、及びブレオマイシン;酵素、又は酵素阻害剤、例えば、アスパラギナーゼ;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、エトポシド;又は生体反応調節剤、例えばインターフェロンなどの抗腫瘍薬である1つ以上のさらなる化合物を更に利用することができる。事実、本明細書において開示されるペプチドと組み合わせて任意の公知の癌治療薬を含む医薬組成物は、本発明の範囲内である。
【0086】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を有する剤形は、また、1つ以上のその他の医薬、好ましくは抗菌剤、抗真菌剤、駆虫剤、抗ウイルス剤、及び抗カタカイガラムシ剤などの抗感染薬を含むことができる。例示的な抗菌剤は、例えば、スルファメトキサゾール、スルファジアジン、又はスルファドキシンなどのスルホンアミド;トリメトプリム、ブロモジアプリム(bromodiaprim)、又はトリメトレキサートなどのDHFR阻害剤;ペニシリン;セファロスポリン;アミノグリコシド;タンパク質合成の静菌性阻害剤;キノロンカルボン酸、及びこれらの融合イソチアゾール類似体;及び同様のものを含む。
【0087】
別の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、腫瘍転移の部位、又は感染/炎症の病巣などの、化合物が帰巣しかつ結合する部位に治療薬を送達するために、治療的に抱合し、かつ使用される。治療的に抱合されるとは、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体が、治療的薬剤に抱合されることを意味する。この様式の作用に使用される治療薬は、根底にある原因、又は腫瘍浸潤、脈管形成、若しくは炎症のプロセスの構成要素のいずれかに向けられる。炎症を治療するために使用される薬剤の例は、ステロイド性、及び非ステロイド性抗炎症剤であり、これらの多くがプロスタグランジン合成を阻害する。
【0088】
本発明の方法に従って化合物にカップリングすることができるその他の治療薬は、薬物、放射性同位元素、レクチン、及びその他の毒素である。投与される治療的投薬量は、治療的に有効な、当業者には周知であろう量である。投薬量は、また、レシピエントの年齢、健康、及び体重、もしあれば同時的な治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質、例えば抗炎症効果、又は抗バクテリア効果に依存的である。
【0089】
レクチンは、炭水化物に結合するポリペプチドであり、一般に植物に由来する。その他の活性の中で、いくつかのレクチンは、毒性である。公知の最も細胞毒性の物質のいくつかは、細菌、及び植物由来のポリペプチド毒素である(Frankelらの文献、Ann. Rev. Med. 37:125-142(1986))。これらの分子は、細胞表面に結合し、細胞のタンパク質合成を阻害する。最も一般的に使用される植物毒素は、リシン、及びアブリンである;最も一般的に使用される細菌毒素は、ジフテリア毒素、及びシュードモナス属(Pseudomonas)のエキソトキシンAである。リシン、及びアブリンにおいて、結合、及び毒性の機能は、2つの別々のタンパク質サブユニットであるA鎖、及びB鎖に含有される。リシンB鎖は、細胞表面の炭水化物に結合し、A鎖の細胞内への取り込みを促進する。一旦細胞内に入ると、リシンA鎖は、真核生物リボソームの60Sサブユニットを不活性化することによって、タンパク質合成を阻害する(Endoらの文献、J. Biol. Chem. 262:5908-5912(1987))。その他の植物由来毒素は、単鎖のリボソーム阻害性タンパク質であり、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、コムギ胚タンパク質、ゲロニン、ジアンチン(dianthin)、モモルカリン(momorcharins)、トリコサンチン、及び多くのその他を含む(Stripらの文献、FEBS Lett. 195:1-8(1986))。ジフテリア毒素、及びシュードモナス属エキソトキシンAは、また、単鎖タンパク質であり、これらの結合、及び毒性機能は、同じタンパク質鎖の別々のドメインに存在し、完全な毒性活性は、2つのドメインの間のタンパク質分解性の切断を必要とする。シュードモナス属エキソトキシンAは、ジフテリア毒素と同一の触媒活性を有する。リシンは、毒性効果の部位特異的な送達を可能にするために、抗体などのターゲティング分子に対してその毒性のα鎖を結合させることによって、治療的に使用されてきた。細菌毒素は、また、抗腫瘍抱合体としても使用されている。本明細書において意図されるように、毒性のペプチド鎖、又はドメインは、本発明の化合物に結合され、部位特異的な様式で、転移巣などの毒性活性が望まれるターゲット部位に送達される。抗体、又はその他のリガンドなどに対する毒素の抱合は、当該技術分野において公知である(Olsnesらの文献、Immunol. Today 10:291-295(1989); Vitettaらの文献、Ann. Rev. Immunol. 3:197-212(1985))。
【0090】
本発明の方法に従った使用のために化合物に結合することができる治療的放射性同位元素の例は、125I、131I、90Y、67Cu、217Bi、211At、212Pb、47Sc、及び109Pdである。
【0091】
DNA、RNA、及びタンパク質合成を含む重要な細胞プロセスを妨げる細胞毒性薬物は、抗体に抱合され、その後にインビボ療法に使用される。限定されないが、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキセート、及びマイトマイシンCを含むこのような薬物は、また本発明の化合物にカップリングされ、この形態で治療的に使用する。
【0092】
本発明の方法において使用されるÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、細胞遊走、及び浸潤に対する、脈管形成に対する、腫瘍転移に対する、又は炎症性反応に対する阻害効果を生じるものとして更に特徴づけてもよい。本化合物は、腫瘍を有するヒトを含む哺乳動物宿主における抗腫瘍効果を生じるのに特に有用である。
【0093】
細胞遊走、及び浸潤を評価するためのアッセイは、当該分野において周知であり、本明細書において以下に述べたBoydenチャンバーアッセイを含む。その他の有用な方法は、「転移研究プロトコル:第II巻:インビトロ及びインビボにおける細胞行動の解析("Metastasis Research Protocols: Volume II: Analysis of Cell Behavior In Vitro and In Vivo,") Methods in Molecular Medicine, Vol. 58,(2001)において見いだされるものを含む。
【0094】
本発明は、また、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の結合におけるシグナル伝達活性に対する効果を決定することを含む、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法を提供する。シグナル伝達活性を決定することによって、異常な状態を診断することができる。例えば、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体のCD44に対する結合、及びその後のc-Metに連結されるシグナルの決定は、上述したように転移性状態の診断マーカーである。実際、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、細胞培養に添加することができ、また多様なアッセイキットを、シグナル伝達イベントに対するその効果を決定するために使用することができる。
【0095】
いくつかの実施態様において、転移性癌は、それが膜結合型アイソフォームか分断型形態かを含むCD44の発現、及びシグナル伝達経路の活性化によって特徴づけられる。このような場合、CD44に結合したÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体アンタゴニストは、例えば、この経路を遮断するために使用することができる。診断において、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体アンタゴニストは、転移性状態を診断するために、経路を遮断することを測定するために使用することができる。従って、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体アンタゴニストの添加に対する経路の不活性化のインビトロでの測定は、転移性癌の症候としてもまた使用することができる。
【0096】
その他の実施態様において、転移性癌は、膜結合型、又は分断型のCD44によって特徴づけられ、特定のシグナル伝達経路を不活性にさせる。このような場合には、CD44に結合したÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、例えば、この経路をオンにするために使用することができる。診断において、このような化合物は、転移性状態を診断するため、経路をオンにすることを測定するために使用することができる。従って、インビトロでのÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の添加に対するこのような経路の活性化の測定は、転移性癌を示すであろう。それゆえに、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、多くの、又は全ての癌における転移を含む、異常な遊走を治療、又は診断するために使用することができる。
【0097】
本発明は、シグナル伝達経路を介してÅ6結合ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の活性を測定することを含む、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法を提供する。CD44ポリペプチドを含む方法において、例えばシグナル伝達経路は、MAPK経路を含むことができる。従って、このような診断方法は、CD44の調整を示すために、MAPK経路における下流のシグナルを利用する。CD44に関係するその他の経路は、例えば、PI3K経路、BMP-7、Lck、Fyn、Lyn、及びHckなどのSrc-ファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼ(PTKs)、カルシウム/カルモジュリン経路、Ras、並びにRhoファミリーGTPaseを含む。
【0098】
本発明は、また、最初に無制御の細胞移動性によって媒介される疾患、若しくは状態に罹患した対象、又は対象の亜集団におけるÅ6治療指標の量、又は活性の非存在、又は存在を決定すること、若しくは変化を測定すること、及び次いで、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に対する反応が、同じ疾患、又は状態に罹患している第2の対象、又は対象の亜集団の(同じ治療に対する)反応と異なっている対象、又は対象の亜集団に投与することによって、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性を増加させる方法を提供する。
【0099】
集団は、複数の2つ以上のメンバーで構成される。集団は、小さなものから、中間、及び大きなものまでのサイズの範囲であり得る。小さな集団のサイズは、例えば、少数のメンバーから何十ものメンバーまでの範囲であり得る。中間の集団は、例えば、何十ものメンバーから約100のメンバー、又は何百ものメンバーまでの範囲であり得る。大きな集団は、例えば、何百ものメンバーから数千、数100万、及び更により多くの数のメンバーまでの範囲であり得る。「亜集団」という用語は、参照された集団の一部のサブグループを意味することが意図される。従って、「集団」という用語の定義は、1より大きい全ての整数値を含むことが意図される。参照された集団の亜集団は、参照された集団よりも少ない少なくとも1つのメンバーを含み、例えば亜集団は、少なくとも集団の10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又はこれらの間の任意の割合である。
【0100】
Å6治療指標は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体に結合する、本明細書において開示したような多様なCD44アイソフォームのいずれか、特に異常な細胞遊走、若しくは浸潤と関連する疾患、又は障害を示すアイソフォームを含む。Å6治療指標は、例えば特定のCD44アイソフォームのシグナル伝達経路における任意のシグナル伝達分子を更に含む。例えば、CD44アイソフォームの活性の増大、又は特定のCD44アイソフォーム経路内のシグナル伝達状態の変化は、Å6治療指標として使用することができる。
【0101】
種々の実施態様において、アイソフォームCD44s、CD44v1、CD44v2、CD44v3、CD44v4、CD44v5、CD44v5、CD44v6、CD44v7、CD44v8、CD44v9、CD44v1O、CD44-HS、及びシアリルLewisxに共有結合で連結されたものなどのその他のグリコシル化されたCD44誘導体は、Å6治療指標であり、これに基づいて、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する対象、又は対象の亜集団を同定することができる。処置を始める前に対象がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応するかどうかを知ることにより、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患に罹患している対象の亜集団における治療の有効性が増加するであろう。本発明の例示的な実施態様において、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性は、同様の疾患を患う処置に反応しない対象と比較したときに、又は正常な対象と比較したときに、CD44v3を、例えば量、又は活性に関して異なるように発現することが同定される、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患に罹患している対象の亜集団において増加する。
【0102】
従って、ある実施態様において、本発明は、Å6治療指標に特異的な薬剤を用いて、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体に反応性の対象の亜集団を同定する方法を提供する。1つ以上のÅ6治療指標の検出を、Å6、配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に反応する対象を同定するために使用することができる。1つの治療指標に依存する診断、又は予後の方法は、多くの理由のために失敗し得る。例えば、選択された指標は、対象において選択された指標が存在せず、しかしその他の指標が存在するため、ポジティブな反応者を同定することに失敗し得る。選択された指標は、また、指標を認識する薬剤が十分に感受性でないため、ポジティブな反応者を同定することに失敗し得る。指標は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置から利益を得ることができる対象における指標を検出するための正しいタイミングではないため、ポジティブなÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の反応者を同定することに失敗し得る可能性もまたある。異なるシグナル伝達経路において、又は同じシグナル伝達経路の異なる段階において存在し、又は活性化されている治療指標のセットを使用することで、上述した1つの治療指標を使用することの落とし穴を最小化することができる。例えば、セットにおける治療指標の選択は、対象の疾患のタイプ、及び/又は遺伝的なバックグラウンドに依存するであろう。例えば、アイソフォームCD44v7-10は前立腺癌において過剰発現することが示されており、セットにおいてこれらのアイソフォームの任意の組合せを選択することは、前立腺癌患者について適切である。多数の治療指標、例えば10個より多い指標を使用することは、対象について細胞移動性シグナル経路における分子の分子プロファイルを提供し、よりよく疾患段階を決定し、かつより優れた治療ストラテジーを決めることができるようにするために有利であり得る。
【0103】
セットにおける指標の数は、少なくとも2、3、4、5、6、7、又は10、11、それ以上であることができる。いくつかの実施態様において、セットにおける少なくとも1つの指標はCD4変異体から選択され、またセットにおける少なくとも1つの指標はシグナル伝達経路から選択される。いずれの指標の存在も、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の反応性の指標を提供し、2つの指標の存在は、予測されるÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の反応性においてより高い信頼性を提供する。従って、2つ以上のÅ6治療指標のセットを用いた方法は、より正確かつ信頼し得る予測を提供することができる。
【0104】
1つ以上の特定のÅ6治療指標が対象において同定されると、対象は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に同様に反応する亜集団における同様の指標プロファイルを有するものに分類することができる。例えば、対象の亜集団は、対象における特定のÅ6治療指標の活性、又は量の存在/非存在に基づいて分類することができる。無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる対象において、対象の亜集団がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法に反応するかどうかを前もって知ることにより、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性が増加するであろう。
【0105】
Å6治療指標に基づいた亜集団の同一性を知ることにより、無制御の細胞移動性によって媒介される特定の疾患に罹患している対象について、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療処方計画の選択が更に可能になるであろう。例示的な実施態様において、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置は、癌患者、免疫系障害、及び、関節炎などの異常な炎症性状態などの、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法に反応する対象の亜集団のために選択することができる。別の例示的な実施態様において、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法に反応する対象の亜集団であって、その疾患が特定の段階にある亜集団、例えば転移性癌である対象のために選択することができる。
【0106】
別の実施態様において、本発明は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法を提供する。本方法は、以下の工程を含む。最初に、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、Å6治療指標に特異的な薬剤と接触させる。第2に、試料中のÅ6治療指標に対する薬剤の結合であって、指標の存在を示す結合を決定する。第3に、試料中に存在するÅ6治療指標を有する集団から対象を選択して、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する亜集団を同定する。
【0107】
Å6治療指標は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に反応する対象を同定するために、本発明において使用される。Å6治療指標は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に対するポジティブな反応と関連するポリペプチド、及びこれらの活性体などの巨大分子を含む。Å6治療指標は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置にポジティブに反応することができる対象を選択するための識別子として使用される。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、細胞遊走、及び浸潤などの移動性プロセスを阻害する活性を示す。本発明のÅ6治療指標は、細胞移動性プロセスに関する巨大分子であり、CD44ポリペプチド、及びこれらの関連するシグナル伝達経路のメンバーのポリペプチドに分類されている。
【0108】
特定のÅ6治療指標の検出は、患者からの試料を、特異的に指標を認識する薬剤と接触させること、及び薬剤の特異的結合を検出することによって決定される。特異的に指標を認識する薬剤は、抗体、リガンド、相互作用するポリペプチド、指標の基質、又は指標をコードする核酸に相補的な核酸であることができる。特異的な薬剤は、指標、又は指標をコードする核酸については十分な結合親和性にて、好ましくは指標以外の分子に対してはより低い親和性で、結合すべきである。タンパク質、又は核酸のいずれかの形態である指標を検出するための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、抗体を使用してタンパク質を検出する方法は、イムノブロット、ELISAアッセイ、免疫細胞化学、免疫組織化学、免疫沈降、FACsS解析を含む(Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press(1999))。種々のイムノアッセイは、当業者に周知であり、必要に応じて修正することができる。これらの全ての方法は、指標分子を特異的に認識し、かつ十分な親和性で結合する抗体を使用することを含む。例えば、抗体は、検出可能な部分を組み込むことにより、又は検出可能な部分に対し抱合されることにより、又はそれ自体で検出可能な、若しくは検出可能に標識されている二次分子に結合することにより、検出可能にすることができる。異なる抗体をアレイに付着させることができ、これにより複数の試料、又は複数の指標を同時に検出することができるようになる。別の例において、認識薬剤は、また、酵素的指標の基質、又は指標に結合する検出可能なリガンドであることができる。酵素反応の産物、及び標識されたリガンドの検出は、指標の量、及び活性の存在、又は変化を決定するために使用することができる。別の例において、認識薬剤は、所定の指標に特異的に結合するポリペプチドであることができる。認識ポリペプチドは、試料から指標を分離して、及び/又は濃縮して使用することができる。単離された指標は、更に抗体によって検出することができる。或いは指標、及び認識ポリペプチドのパートナーの結合は、誘導された認識ポリペプチドの構造変化によって直接検出することができ、例えば結合は、非蛍光性の認識ポリペプチドを蛍光性にすることができる。
【0109】
例えば、試料、好ましくは組織試料は、組織化学的解析のために固体表面上に載置される。検出可能かつアクセス可能なÅ6治療指標の存在は、Å6治療指標が特定の量にて、又は特定の活性を持って存在することを示す。これは、有利な診断、又は予後を導き、すなわち、対象は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する。他方、抗体が組織切片におけるÅ6治療指標と反応しない場合、Å6治療指標が存在しないことが予想される。これは、有利でない診断、又は予後を導き、すなわち、対象は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応しない。
【0110】
抗体を産生するための方法は、当該技術分野において周知である。本発明のポリペプチドに特異的な抗体は、ポリペプチドの免疫原性量で動物を免疫化することによって、容易に得ることができる。従って、本発明のポリペプチドを認識する抗体は、動物を免疫化することによって得られるポリクローナル抗体、及び抗血清を包含し、またウェスタンブロッティング、ELISA、免疫染色、又は当該技術分野において公知のその他のルーチンの手順によって、本発明のポリペプチドを特異的に認識することを確認することができる。
【0111】
ポリクローナル抗体を感作によって得ることができる場合、ハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体を感作動物のリンパ球から得ることができることは周知である(第6章、抗体実験質マニュアル(Chapter 6, Antibodies A Laboratory Manual)、 Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1988))。従って、本発明のポリペプチドを認識するモノクローナル抗体もまた提供される。ポリクローナル、及びモノクローナル抗体を産生する方法は、当業者に知られており、また科学的文献、及び特許文献において記述されており、例えば以下を参照されたい:Harlow and Laneの文献、抗体:実験室マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)、 Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989); Hammerlingらの文献、: モノクローナル抗体及びT細胞ハイブリドーマ(Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas) 563-681, Elsevier, New York(1981); Harlowらの文献、抗体の使用:実験室マニュアル(Using Antibodies: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999);及び抗体工学:実用ガイド(Antibody Engineering: A Practical Guide)、Borrebaeck編、W.H. Freeman and Co., Publishers, New York, pp. 103-120(1991); Coligan, Current Protocols in Immunology, Wiley/Green, New York(1991); Stites編、 Basic and Clinical Immunology(第7版)Lange Medical Publications, Los Altos, California及びその中で引用された文献(Stites); Godingの文献、モノクローナル抗体:原理、及び実践(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice)(第2版)Academic Press, New York, New York(1986);及びKohler, Nature 256:495(1975))。このような技術は、ファージにおいて、又は同様に細胞上に提示される組み換え抗体のライブラリーからの抗体の選択を含む。Huseの文献、Science 246: 1275(1989)and Ward, Nature 341 :544(1989)を参照されたい。組み換え抗体は、Norderhaugの文献、 J. Immunol. Methods 204:77-87(1997)と同様に、哺乳動物細胞における一過性、又は安定な発現ベクターによって発現させることができる。
【0112】
本発明において、抗体は、また、これらの活性な断片を包含する。活性な断片は、抗原抗体反応の活性を有する抗体の断片を意味する。具体的に命名されている、F(ab')2、Fab'、Fab、及びFvなどのこれらの活性な断片がある。例えば、本発明の抗体がペプシンで消化された場合には、F(ab')2が結果として生じ、またパパインで消化される場合には、Fabが結果として生じる。F(ab')2が2-メルカプトエタノールなどの試薬で還元され、かつモノヨード酢酸でアルキル化された場合には、Fab'が結果として生じる。Fvは、重鎖の可変性の領域、及び軽鎖の可変性の領域がリンカーでつながれたモノ活性な断片である。キメラ抗体は、これらの活性な断片を保存し、そしてこれらの活性な断片以外の断片を別の動物における断片と置換することによって得られる。特に、ヒト化抗体が想定される。
【0113】
指標の存在の検出は、また、指標のmRNAを検出することによってすることができる。核酸を検出するための種々の方法が当業者に周知であり(Ausubelらの文献、Current Protocols in Molecular Biology , John Wiley and Sons, Inc.(2007))、例えば、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、インサイチューハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)、マイクロアレイ解析を含む。指標のmRNAは、RNA単離についての標準的なプロトコルを使用して単離することができ、また試料においてインサイチューにて直接検出することができる。所定のmRNAの量に依存して、PCRで増幅することにより、又は増幅せずに、検出することができる。QPCRは、異なる試料におけるmRNA量の変化を定量化するために使用する有効な方法である。
【0114】
Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に対するポジティブな反応と関連する治療指標を対象の試料において使用することによって、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に反応性である対象の亜集団が選択される。選択される亜集団は、例えば、試験される集団の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は100%までを有することができ、これらの間の任意の割合を含む。本発明の方法は、医師がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法を反応性の患者に対して適合させ、治療有効性を増加させ、そして副作用を最小化することを可能にする。対象の亜集団は、試料中に存在するÅ6治療指標に依存して、例えばCD44変異体に結合したÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を有するサブグループ、及び任意の下流の(又は上流の)シグナル伝達経路ポリペプチドを有するサブグループに、更に分類することができる。或いは、亜集団は、低い、中間の、及び高いなどのÅ6治療指標の発現レベルに依存して、更に分類することができる。Å6治療指標のレベルの範囲は、臨床的適用において有意義なものにするため、広く十分な患者のデータの集団、例えばそれぞれのグループにおいて少なくとも6〜10の試料を用いて決定される必要がある。サブグループが患者のデータから一旦決定されると、この情報は、個々の患者に合わせた投薬スケジュールを決めさせるように医師をさらに導くことができる。
【0115】
また別の実施態様において、本発明は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む。最初に、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、Å6治療指標に特異的な薬剤と接触させる。第2に、正常な個体からの量、又は活性と比較して、試料中のÅ6治療指標の量、又は活性の変化を測定する。第3に、試料中のÅ6治療指標の量、又は活性の変化を有する集団から対象を選択して、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する亜集団を同定する。
【0116】
本発明の方法は、正常な個体からの量、又は活性と比較して、対象の試料中のÅ6治療指標の量、又は活性の変化を測定することにより、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に反応する対象の亜集団を選択する方法を提供する。Å6治療指標の量、又は活性の変化は、Å6治療指標の量、又は活性の増大、又は減少であることができる。変化は、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが供される対象の試料、及び正常な個体からの試料の間で測定される。彼(彼女)の正常状態における同じ対象の試料が入手できる場合、これらの試料は、比較することが好ましい試料である。彼(彼女)の疾患の初期、及び後期の段階における同じ対象の試料の間の比較は、また、予後の目的のために行うことができる。Å6治療指標の量、又は活性の変化が異常な細胞移動性活性を示すとき、変化は、また、Å6治療に対するポジティブな反応を示すものとして使用することができる。
【0117】
対象におけるÅ6治療指標の増大がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に対するポジティブな反応を示すÅ6治療指標は、CD44ポリペプチド、及びシグナル伝達経路ポリペプチドから選択することができる。無制御の移動性を有する細胞において増加するCD44ポリペプチドは、Å6治療指標として使用することができる。いくつかのシグナル伝達経路ポリペプチド、例えばc-Met(上述を参照されたい)は、一定の癌においてアップレギュレーションされる。
【0118】
対象におけるÅ6治療指標の活性の変化がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に対するポジティブな反応を示すÅ6治療指標は、CD44ポリペプチド、及びシグナル伝達経路ポリペプチドから選択することができる。
【0119】
試料中のÅ6治療指標の量、及び/又は活性は、当該技術分野において公知の方法を使用してÅ6治療指標タンパク質を検出することによって決定することができる。本発明において、Å6治療指標の量、及び/又は活性を測定するために使用されるアッセイのタイプは限定されない。例えば、Å6治療指標は、Å6治療指標に特異的な抗体を使用してイムノアッセイによって検出することができる。抗体は、例えば、タンパク質が酵素結合イムノアッセイによって同定される二次元ゲルのウェスタンブロットにおいて、又は細胞の全タンパク質、若しくは部分的に精製されたタンパク質のドットブロット(Antibody Sandwich)アッセイにおいて使用することができる。
【0120】
試料の濃縮、及びタンパク質精製のための方法は、文献において記述されており、また当業者に公知である。例えば、必要に応じて、試料中に存在するÅ6治療指標は、硫酸アンモニウムで沈殿させることによって、又は抽出物を市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon、若しくはMillipore、限外濾過ユニットを通過させることによって、濃縮することができる。抽出物は、陰イオン、若しくは陽イオン交換樹脂などの適切な精製マトリックス、又はゲル濾過マトリックスに適用し、又は分取ゲル電気泳動に供することができる。このような場合において、それぞれの精製工程後のタンパク質収率は、試料中のÅ6治療指標の量の決定において考慮される必要がある。Å6治療指標は、Å6治療指標に特異的な抗体を使用して検出することができ、また対照アッセイは、別の分子に特異的な抗体を使用して行うことができる。任意に、本方法は、健康な組織に関して、試料中のÅ6治療指標における増大、又は減少が相関することを更に含むことができる。例えば、腫瘍組織におけるÅ6治療指標に対する抗体の結合を検出すること、およびそれを健康な組織において発現した任意のÅ6治療指標に結合する抗体(又は非特異的反応)と比較することができる。
【0121】
本発明に従って、Å6治療指標における生物学的活性などの活性を測定するための方法が提供される。このような生物学的活性は、化学的反応性、触媒能力、特定構造、及び受容体に対する結合、受容体としての作用、又はただ細胞膜内に存在し、従って、抗体、又はその他の薬剤のためのターゲット部位として利用できるなどの任意の測定可能な活性を含むことができる。従って、このような指標ポリペプチドは、Å6治療指標に特異的な薬剤のためのターゲットを提供することができる。
【0122】
ある実施態様において、Å6治療指標の生物学的活性における変化は、生物学的活性の減少である。別の実施態様において、Å6治療指標の生物学的活性における変化は、生物学的活性の増大である。これらの実施態様において、生物学的活性は、酵素活性であることができ、酵素は、キナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ホスホジエステラーゼ、ホスファターゼ、デヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、カルボキシラーゼ、トランスフェラーゼ、デアセチラーゼ、及びポリメラーゼからなる群から選択されるものなどである。
【0123】
これらの酵素のためのアッセイとして、ホスホジエステラーゼ(最も薬理学的に適切なホスホジエステラーゼは、環状ヌクレオチドを加水分解するものである)のためのものなどが利用可能である。例えば、Perkin-Elmer(登録商標)から入手可能なcAMP、及びcGMPアッセイを参照されたい。タンパク質ホスファターゼは、タンパク質からホスフェート残基を除去する。例えば、非放射性ホスファターゼアッセイ系は、Promega(登録商標)Biotechから入手可能である。デヒドロゲナーゼは、低分子量代謝産物、例えばステロイドホルモンを酸化、若しくは還元させ、又はこれらは一般的にNAD、若しくはNADPを使用し、若しくは発生させる。デヒドロゲナーゼ活性を試験する市販のアッセイは、Cayman Chemical(登録商標)から入手可能である。
【0124】
特定の実施態様において、Å6治療指標は、キナーゼ、プロテインキナーゼ、セリン、若しくはスレオニンキナーゼ、又は受容体チロシンプロテインキナーゼである。指標が、プロテインキナーゼ、特にチロシンキナーゼに関係する場合、活性のための種々のアッセイを利用できる。プロテインキナーゼは、タンパク質上のセリン、スレオニン、又はチロシン残基にホスフェート基を付加する。プロテインキナーゼの活性は、一般にホスホセリン、スレオニン、又はチロシン特異性抗体;放射性標識された基質の生成;ATP消費;(合成の)小さなペプチドのリン酸化;又は下流の酵素活性、及び遺伝子転写の測定によって測定される。このようなアッセイは、市販されている。(例えば、Roche Molecular Biochemicals(登録商標)からのチロシンキナーゼアッセイを参照されたい)。セリン/スレオニンキネシスのためのアッセイは、また、Upstate Biotechnology(登録商標), Inc.にて、及びApplied BioSystems(登録商標)から、入手可能である。その他の実施態様において、Å6治療指標は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、又はアスパラギン酸プロテアーゼである。Å6治療指標は、また、メチルトランスフェラーゼ、シトシンメチルトランスフェラーゼ、又はアデニンメチルトランスフェラーゼであることができる。Å6治療指標は、デアセチラーゼ、例えばヒストンデアセチラーゼ;カルボキシラーゼ、例えばy-カルボキシラーゼ;ペプチダーゼ、例えば亜鉛ペプチダーゼ;又はポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼ、若しくはRNAポリメラーゼであることができる。上述した酵素の活性は、合成の基質の切断後の切断生成物、又は(蛍光性の)光の生成を直接測定することによって測定することができる。
【0125】
一つの実施態様において、Å6治療指標の生物学的活性は、受容体活性であり、受容体は、Gタンパク質結合受容体(GPCR)である。GPCRsは、細胞の原形質膜を通じて前後に7回巻き付いている膜貫通タンパク質であり、リガンド結合部位は、細胞の膜表面の外側に位置し、及びエフェクター部位は、細胞内部に存在する。これらの受容体は、GDP、及びGTPに結合する。リガンド結合に反応して、GPCRsは、多数のアッセイ可能な生理的変化、例えば、本発明の遺伝子によってコードされるポリペプチドがGPCRであるときに、GPCR活性化を測定するために利用可能であるその他の転位置アッセイと共に、細胞内カルシウムレベル、環状AMP、イノシトールリン酸代謝回転、及び下流の遺伝子転写(直接、又はレポーターアッセイを介して)の増大を誘導するシグナル伝達経路を活性化する。従って、このようなタンパク質は、二次メッセンジャーを通じて働く。結果は、CREB、遺伝子産物の生産を刺激する転写因子の活性化である。1つの有用なアッセイは、GPCRsと相互作用する化合物のスクリーニングにおいて有用な、いわゆるBRET2/アレスチンアッセイである。(Bertrandらの文献、J. Recept. Signal TransductRes., 22:533-541(Feb.-Nov. 2002)を参照されたい)。加えて、Norak Biosciences(登録商標), Inc.から入手可能なTransfluor Assay(商標)などの、多数のアッセイが市販されている。
【0126】
別の実施態様において、本発明は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の組成物の治療的レベルを用いて、上述したÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の反応者の亜集団を更に治療する方法を提供する。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、望ましくない細胞移動性を阻害するのに有効であるため、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患、病理学的状態、又は異常な形質を寛解させることができる。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、また、このような疾患、病理学的状態、若しくは異常な形質の発生を予防し、又はその発症を減少させるために使用することができる。いくつかの場合において、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の方法、すなわち治療処方計画の選択は、特異的なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法単独、又は無制御の細胞移動性によって媒介される疾患に対して利用可能な1つ以上の医学療法と併用した選択を組み込むことができる。同様に、選択は、対象におけるその他の特定の治療方法より安全である治療処方計画の選択であることができる。
【0127】
多くの治療方法、例えば特定の化合物、又は化合物の組合せの投与は、患者において副作用、又はその他の有害な作用を生じ得ることが認識される。このような効果は、特定の患者における治療方法の使用を限定し、若しくは妨げることさえあり得るし、又は不可逆的傷害、機能不全、若しくは患者の死をもたらすことさえあり得る。従って、特定の実施態様において、Å6治療指標の情報は、一般的な毒性を減少させ、又は副作用を減少させて有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置を選択するために使用される。
【0128】
関連する態様において、本発明は、Å6治療指標を有する対象とÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性との関係の相関、又はその他の統計的検定を提供する方法に関する。一つの実施態様において、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療処方計画は、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患に罹患した対象における特定のÅ6治療指標の存在/非存在、量、又は活性を決定すること、及び疾患、又は状態の治療の予想される有効性を示す結果を提供することによって評価することができる。結果は、対象の亜集団を、治療、例えば本明細書に記載されるÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の投与の有効性を示すÅ6治療指標のリストと比較することによって打ち立てることができる。決定は、本明細書に記載される方法、又はその他の当業者に知られた方法によることができる。
【0129】
従って、本発明は、また、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患、又は状態に罹患している対象に対する投与のための、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療処方計画を選択することに向けられる。ある実施態様において、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療処方計画の選択は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体の投薬量レベル、又は投与の頻度、又は投与経路、これらのパラメーターの組み合わせを選択することを含む。その他の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、組成物中の1つ以上のその他の化合物と共に投与され、また選択は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体を、1つの、2つの、又は3つ以上のその他の化合物と、一緒に、同時に、又は別々に投与する方法を選択することを含む。当業者によって理解されるように、このような複数の化合物は、併用療法において使用することができ、従って、単一の薬物に製剤化することができ、又は同時に、連続的に、又は別々に投与される別々の薬物であることができる。
【0130】
種々の実施態様において、Å6治療指標を有する集団を選択すること、及びÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する亜集団を同定することと同時に、本発明は、対象の亜集団におけるÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性を決定するための以下の方法を提供する。米国特許番号第6,936,587号をも参照されたい。
【0131】
本発明の化合物は、Albiniらの文献、Cancer Res., 47:3239-3245(1987)、及びParishらの文献、Int. J. Cancer, 52:378-383(1992)に詳細に記載されたMatrigel(商標)浸潤アッセイ系においてその抗浸潤性の能力について試験され、これらの参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。アッセイは、株化細胞、より好ましくは腫瘍株化細胞、最も好ましくはラット乳癌(Mat Bill)株、又はヒト前立腺癌(PC-3)株で行われる(Xingらの文献、Int. J. Cancer, 67(3):423-429(1996); Hooseinらの文献、Cancer Commun. 8:255-64(1991))。
【0132】
Matrigel(商標)は、タイプIVコラーゲン、ラミニン、bFGFに結合し、かつ局在化させるペルレカンなどのヘパラン硫酸プロテオグリカン、ビトロネクチン、並びにトランスフォーミング成長因子-β(TGFβ)、ウロキナーゼタイプのプラスミノーゲン活性化因子(uPA)、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)、及びプラスミノーゲン活性化因子阻害剤タイプI(PAI-1)として知られるセルピン(Chambersらの文献、Cancer 75(7):1627-33(1995))を含む再構成された基底膜である。細胞外受容体、又は酵素をターゲットにする化合物についてこのアッセイにおいて得られた結果は、インビボでのこれらの化合物の有効性を予測することが、当該技術において受け入れられる(Rabbaniらの文献、Int. J. Cancer, 63:840-845(1995))。
【0133】
本発明のペプチドは、インビトロにおける2つの異なるアッセイ系の1つにおいて、その抗脈管形成活性について試験される。内皮細胞、例えば製造することができ、若しくは市販で得ることができるヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、又はヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)は、フィブリノゲン(1:1(v/v)比のリン酸緩衝食塩水(PBS)中に5mg/mL)と2×105細胞/mLの濃度にて混合させる。トロンビンを添加して(5ユニット/mL終濃度)、混合物を24ウェルプレートに即時に移す(ウェル当たり0.5mL)。フィブリンゲルを形成されて、次いでVEGF、及びbFGF(それぞれ5ng/mL終濃度にて)を試験化合物(例えば、Å6ポリペプチド化合物、又は組成物)と共にウェルに添加する。細胞を37℃にて5%CO2において4日間インキュベートして、その時点でそれぞれのウェルにおける細胞を計数し、そして丸い、枝分れなしで伸長、1つの枝分れと共に伸長、又は2、又はそれ以上の枝分れと共に伸長のいずれかに分類する。結果は、化合物のそれぞれの濃度についての5つの異なるウェルの平均として表す。典型的には、脈管形成の阻害剤の存在下において、細胞は、丸いか、又は未分化チューブ(例えば、0、又は1つの枝分れ)を形成するかのいずれかのままである。このアッセイは、インビボでの脈管形成(又は抗脈管形成)の有効性を予測することが当該技術において認識される(Minらの文献、Cancer Res. 56(10):2428-33(1996))。
【0134】
代わりのアッセイにおいて、内皮細胞をMatrigel(商標)上で培養するときに内皮細胞チューブ形成が観察される(Schnaperらの文献、J. Cell. Physiol. 165(1):107-118(1995))。内皮細胞(1×104細胞/ウェル)をMatrigel(商標)の被覆されている24ウェルプレート上に移して、48時間後にチューブ形成を定量化する。阻害剤(すなわち、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の組成物)を内皮細胞と同時に、又はその後の種々の時点のいずれかにて、これらを添加することによって試験される。このアッセイは、特定のタイプの基底膜、遊走し、かつ分化する内皮細胞が最初に遭遇すると期待され得るいわゆるマトリックス層を内皮細胞に提示することによる脈管形成をモデル化する。結合された成長因子に加えて、Matrigel(商標)において(またインサイチューで基底膜において)見いだされるマトリックス成分、又はそのタンパク質分解産物は、また、このモデルを前述したフィブリンゲル脈管形成モデル補完となる内皮細胞チューブ形成に対して刺激性であり得る(Blood及びZetterの文献、Biochim. Biophys. Acta. 1032(1):89-118(1990); Odedraらの文献、Pharmacol. Ther. 49(1-2):111-124(1991))。本発明の化合物(すなわち、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の組成物)は、両方のアッセイにおける内皮細胞チューブ形成を阻害し、これは、化合物が抗脈管形成活性も有するであろうことを示唆する。
【0135】
ペプチド、ペプチド擬態、及び抱合体を、広範囲のヒト腫瘍を高度に代表すると考えられるいくつかの十分に確立された齧歯類モデルにおける治療され、そして有効性について試験する。本アプローチは、Geranらの文献、Cane. Chemother. Reports, Pt 3, 3 :1-112において詳細に記載され、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。平均生存時間、生存時間の中央値、ノギスを用いた腫瘍直径の測定値からのおおよその腫瘍重量の算出;腫瘍直径の算出;個々の切除した腫瘍からの平均腫瘍重量の算出;及び任意の測定についての処理された群と対照群との間の比(T/C比)を含む全ての一般的な試験評価手順、測定、及び算出は、この参照文献に従って行われる。
【0136】
化合物の効果を乳癌のラット同系モデルにおける腫瘍進行に対して試験する(上記のXing及びRabbaniの文献、(1996))。Mat Billラット乳房腫瘍細胞(ラット当たりPBS 0.1mL中に1×106細胞)を雌のFisherラットの乳房脂肪パッドに接種する。試験化合物をPBS(200mMストック)に溶解し、滅菌濾過して、接種時に腹膜内に挿入した14日のAlza浸透圧ミニポンプを使用して、最大約100mg/kg/日の投薬量にてインビボで投与する。対照動物は、媒体(PBS)のみを受ける。動物を14日目に安楽死させて、脾臓、肺、肝臓、腎臓、及びリンパ節における転移について調べる。加えて、原発性腫瘍を切除し、定量化して、免疫組織化学のために準備する。
【0137】
3LL Lewis Lung Carcinomaは、C57BL/6マウスにおける肺の癌腫として、1951年に自発的に生じた(Kanematsuらの文献、Cancer Res 15:38-51(1955))。また、Malaveらの文献、J. Natl Cane. Inst. 62:83-88(1979)を参照されたい。これを皮下(sc)接種によってC57BL/6マウスにおける継代により増殖し、また半異質遺伝子型C57BL/6x DBA/2 F1マウスにおいて、又は異質遺伝子型C3Hマウスにおいて試験する。典型的には、皮下(sc)移植については群当たり6匹の動物、又は筋肉内(im)移植については10匹が使用される。腫瘍は、2〜4mmの断片としてscに、又は約0.5〜2×106細胞の懸濁細胞の接種材料としてim、若しくはscに移植することができる。治療は、移植の24時間後に開始し、又は特定のサイズ(通常およそ400mg)の腫瘍が触診され得るまで遅らせる。試験化合物は、11日間毎日腹腔内(ip)に投与する。
【0138】
続いて動物は、計量、触診、及び腫瘍サイズの測定を行う。接種の12日後の未処置の対照レシピエントにおける典型的な腫瘍重量は、500〜2500mgである。典型的な生存期間の中央値は、18〜28日である。ポジティブ対照化合物、例えば1〜11日目において1日当たり20mg/kg/注射でのシクロホスファミドを使用する。計算される結果は、確立された治療活性について平均の動物重量、腫瘍サイズ、腫瘍重量、生存時間を含み、試験組成物は、2回の複数投薬アッセイにおいて試験されるべきである。
【0139】
以下の肺癌モデルは、多くの研究者によって利用されている。例えば、Gorelikらの文献、J. Natl Cane. Inst. 65:1257-1264(1980); Gorelikらの文献、Rec. Results Cane. Res. 75:20-28(1980); Isakovらの文献、Invasion Metas. 2:12-32(1982);Talmadgeらの文献、J. Natl Cane. Inst. 69:975-980(1982);Hilgardらの文献、Br. J. Cancer 35:78-86(1977)を参照されたい。試験マウスは、雄のC57BL/6マウス、月齢2〜3ヵ月である。sc、im、又は肉趾内移植の後、この腫瘍は、優先して肺に転移を生じる。いくつかの腫瘍株で、原発性腫瘍は、抗転移性効果を発揮し、そして最初に転移性段階の研究の前に切除しなければならない(また、米国特許第5,639,725号を参照されたい)。
【0140】
単細胞懸濁液は、0.3%のトリプシン溶液で細かく切り刻まれた腫瘍組織を処理することによって、固形腫瘍から調製する。細胞をPBS(pH7.4)で3回洗浄して、PBS中に懸濁する。この方法において調製される3LL細胞の生存度は、一般的に約95〜99%である(トリパンブルー色素排除による)。0.05mlのPBSに懸濁した生存可能な腫瘍細胞(3×104〜5×106)を、C57BL/6マウスの背面領域、又は一方の後足パッド内のいずれかに皮下に注射する。目に見える腫瘍は、106細胞の背面sc注射後の3〜4日後に現れる。腫瘍が現れた日、及び確立された腫瘍の直径を2日毎にノギスによって測定する。治療は、週当たり、ペプチド、若しくは誘導体の1回、又は2回の投薬として与えられる。別の実施態様において、ペプチドは、浸透圧ミニポンプによって送達される。
【0141】
背面の腫瘍の腫瘍切除を含む実験において、腫瘍が約1500mm3のサイズに達したときに、マウスを2つの群にランダム化する:(1)原発性腫瘍が完全に切除される;又は(2)偽外科手術を行い、腫瘍を無処置のままにする。500〜3000mm3の腫瘍は、転移の成長を阻害するが、1500mm3は、高生存であり、かつ局所的な再成長なしで安全に切除することができる最も大きなサイズの原発性腫瘍である。21日後に、全てのマウスが屠殺して、解剖する。
【0142】
肺を取り出して計量する。肺をブワン溶液中で固定して、目に見える転移の数を記録する。転移の直径もまた、8×倍率下でマイクロメーターを含む接眼レンズを備えた双眼立体鏡を使用して測定する。記録した直径に基づいて、それぞれの転移の容積を算出することが可能である。肺当たりの転移の総容積を決定するために、目に見える転移数の平均を転移の平均容積に乗じる。転移性成長を更に決定するために、肺細胞に対する125IdUrd(ヨウ化デオキシウリジン)の組み込みを測定することが可能である(Thakurらの文献、J. Lab. Clin. Med. 89:217-228(1977))。腫瘍切断して10日後、25μgのフルオロデオキシウリジンを、腫瘍を有する腹膜(また、使用する場合、腫瘍切除されたマウス)に接種する。30分後、マウスには、1μCiの125IdUrdを与える。1日後、肺、及び脾臓を取り出して計量して、125IdUrdを取り込むの程度をγカウンターを使用して測定する。
【0143】
肉趾腫瘍を有するマウスにおいて、腫瘍の直径が約8〜10mmに達するときに、マウスを2つの群にランダム化する:(1)腫瘍を有する脚を膝関節より上で結紮の後切断する;又は(2)マウスを、切断されない腫瘍を持つ対照として無処置のままにする。(腫瘍を持つマウスにおける腫瘍がない脚の切断は、麻酔、ストレス、又は外科手術の可能性ある効果を除外して、その後の転移に対して公知の効果を有さない)。マウスを切断の10〜14日後に屠殺する。転移を上述したように調べる。
【0144】
統計:転移の発生率を表す値、及び腫瘍を持つマウスの肺におけるこれらの成長は、正規分布しない。従って、Mann-Whitney U検定などのノンパラメトリック統計を、解析のために使用することができる。
【0145】
上述したGorelikらによるこのモデルの研究は、腫瘍細胞の接種材料のサイズが転移性成長の程度を決定することを示した。操作したマウスの肺における転移の割合は、原発性腫瘍を持つマウスとは異なった。従って、原発性腫瘍が3LL細胞(1〜5×106)より多い投薬量の接種によって誘導されて、続いて外科的に除去されたマウスの肺において、転移の容積は、操作されない対照より高かったにもかかわらず、転移の数は、操作されない腫瘍を持つマウスにおける数より低かった。肺転移の測定としての125IdUrdの取り込みを使用して、腫瘍を切除されたマウスの肺と最初に1×106の3LL細胞を接種された腫瘍を持つマウスとの間に有意な相違は見いだされなかった。1×105の腫瘍細胞の接種の後に生じた腫瘍の切断は、転移性成長を劇的に促進した。これらの結果は、局所的な腫瘍の切除の後のマウスの生存と一致した。局所的な腫瘍の切除後の転移性成長の加速の現象は、繰り返し観察されてきた(例えば、米国特許第5,639,725号を参照されたい)。これらの観察は、癌外科手術を受ける患者の予後に対して意味を有する。
【0146】
本発明の化合物を、また、実験的な転移モデルを使用して、後期転移の阻害について試験する(Crowleyらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 90(11):5021- 5025(1993))。後期転移は、腫瘍細胞の付着、及び管外遊出、局所的浸潤、接種、増殖、及び脈管形成の工程を含む。
【0147】
ヒト前立腺癌細胞(PC-3)には、レポーター遺伝子、好ましくは緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をトランスフェクトしたが、別の方法としてクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、又はLacZの酵素をコードする遺伝子がある。これにより、その後のこれらの細胞の運命について、これらのマーカーのどれかの利用(GFPの蛍光検出、又は酵素活性の組織化学的比色検出)が可能になる。細胞を、好ましくはivで注射して、約14日後に、特に肺において、しかしまた局所のリンパ節、大腿骨、及び脳においても、転移を同定する。これは、天然に生じる前立腺癌の転移の器官屈性を模倣する。例えば、GFPを発現するPC-3細胞(マウス当たり1×106の細胞)をヌード(nu/nu)マウスの尾静脈にiv注射する。動物には、また、試験化合物(少なくとも約100mg/kg/日)、又は媒体のいずれかを投与するミニポンプで(背面の皮下に)移植する。動物を14日後に安楽死させて、その臓器を組織学的検査のために調製する。単一の転移性細胞、及び病巣を視覚化して、蛍光顕微鏡検査法、又は光顕微鏡的組織化学によって、又は組織の粉砕、及び検出可能な標識の定量的比色アッセイによって定量化する。
【0148】
本発明に従った有用な化合物について、上記のモデルにおいて抗腫瘍活性、例えば腫瘍進行、脈管形成、及び/又は転移の遮断が証明されるはずである。
【0149】
脈管形成は、CD31(血小板内皮細胞接着分子、又はPECAMとしても知られる)に対する免疫染色を使用して微小血管密度を決定することによって測定される。結果は、それぞれ5つの異なる切片からの5つの領域の平均微小血管密度として報告される(Penfoldらの文献、1996)。典型的には、全腫瘍を切除し、切断して、その切片を適切な染色法、又はその他のマーカーのための標識を使用して微小血管密度について組織学的に調査する。
【0150】
本発明は、また、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の結合、又は下流の活性をイメージングすることを含む、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法を提供する。イメージングは、造影剤と共有結合したÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を提供することによって達成することができる。
【0151】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、本発明の方法における検出、及び/又は定量化のために標識して、例えば細胞の表面上、又は内部におけるペプチドの結合部位を検出することができる。従って、ペプチドの運命を、インビトロ、又はインビボにおいて標識を検出するための適切な方法を使用することによって追跡することができる。標識されたペプチドは、また、診断、及び予後のために、例えば潜在的な転移性病巣をイメージングするために、又はその他のタイプのインサイチュー調査のためにインビボで利用することができる。
【0152】
適切な検出可能な標識の例は、放射性、蛍光発生性、色素産生性、又はその他の化学的標識である。有用な放射性標識は、γカウンター、若しくはシンチレーションカウンターによって、又は3H、125I、1311、35S、及び14Cなどの同位体標識を含むオートラジオグラフィによって検出される。加えて、131Iは、また、治療的同位元素として有用である。
【0153】
一般の蛍光標識は、蛍光イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド、及びフルオレサミンを含む。
【0154】
ダンシル基などの蛍光団は、蛍光を発するための特定の波長の光によって励起させることができる。(例えば、Hauglandの文献、蛍光プローブ及び研究化学物質のハンドブック( Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals)、第6版、Molecular Probes, Eugene, Oreg., 1996を参照されたい)。一般的に、蛍光試薬は、アミノ官能基と容易に反応するその能力に基づいて選択される。このような蛍光プローブの例は、可視スペクトルにまたがるBodipy(4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-5-インダセン)蛍光団を含む(米国特許第4,774,339号;米国特許第5,187,288号;米国特許第5,248,782号;米国特許第5,274,113号;米国特許第5,433,896号;米国特許第5,451,663号)。この群における特に有用なメンバーの一つは、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸である。
【0155】
OREGON GREEN(商標)、並びにその誘導体、RHODAMINE GREEN(商標)、及びRHODOL GREEN(商標)などの、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、及びフルオレセイン様分子は、イソシアネート、スクシンイミジルエステル、又はジクロロチアジアジニル反応性の基を使用してアミン基にカップリングされる。長波長ローダミンは、基本的に窒素原子上に置換基を有するRHODAMINE GREEN(商標)の誘導体であり、公知の最も光安定性の蛍光標識化試薬の一つである。これらのスペクトルは、4〜10の間のpHの変化による影響を受けず、多くの生物学的適用のためのフルオレセインに対し重要な利点である:この群は、テトラメチルローダミン、Xローダミン、及びテキサスレッドの誘導体を含む。本発明に従ったペプチドを誘導体化するためのその他の好ましい蛍光団は、紫外線によって励起されるものである。例には、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン(その中でダンシルクロリドはメンバーである)、ピレン、及びピリジルオキサゾール誘導体を含む。
【0156】
また別のアプローチにおいて、1つ以上のアミノ基を蛍光生成物を生じる試薬、例えばフルオレサミン、o-フタルジアルデヒドなどに対するジアルデヒド、ナフタレン-2,3-ジカルボキシラート、及びアントラセン-2,3-ジカルボキシラートと反応させる。7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)誘導体であるクロライド、及びフルオライドの両方は、アミンを修飾して蛍光生成物を生じるために有用である。
【0157】
当業者は、公知の蛍光試薬がアミン、チオールなど、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、及びアミド以外の基を修飾することを認識するであろう。それ故、蛍光基質は、これらのその他の反応性の基を使用して容易に設計し、かつ合成することができる。
【0158】
ペプチドは、また、152Euなどの蛍光を発する金属、又はランタニド系列における他のものを使用して、検出のために標識することができる。これらの金属は、金属をキレート化するジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの群を使用して、ペプチドに付着することができる。ペプチドは、化学発光化合物とカップリングすることによって検出可能にさせることができる。次いで、化学発光タグ化されたペプチドの存在は、化学反応中に起こる発光の存在を検出することによって、決定される。特に有用な化学発光物質の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、及びシュウ酸エステルである。同様に、生物発光化合物は、ペプチドに標識するために使用することができる。生物発光は、生物学的系において見いだされるタイプの化学発光であり、触媒ポリペプチドが化学発光反応の効率を増大させる。生物発光ポリペプチドの存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識する目的において重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、及びエクオリンである。
【0159】
また別の実施態様において、高い吸光係数を持つ色素産生化合物(発色団)に基づいて、比色検出法が使用される。
【0160】
標識されたペプチドのインサイチュー検出は、対象から組織学的検体を除去すること、及び標識を検出するために適切な状態下で顕微鏡検査法によってそれを調べることによって達成することができる。当業者は、広範な組織学的方法(染色法など)のいずれをも、このようなインサイチュー検出を達成するために修正することができることを容易に認識するであろう。
【0161】
標識化における多くの異なる標識、及び方法が、当業者に公知である。本発明において使用することができる標識のタイプの例は、放射性同位体、常磁性同位元素、及びポジトロン放射形断層撮影(PET)によって撮像することができる化合物を含む。当業者は、本発明において使用されるペプチドに結合させるためのその他の適切な標識を知るであろうし、またルーチン試験によってそれを確認することができるであろう。更にまた、これらの標識をペプチド、又は誘導体に結合することは、当業者に公知の標準的な技術を使用して行うことができる。
【0162】
インビボのラジオイメージングにおける診断については、利用可能な検出機器のタイプは、所与の放射性核種を選択する際の主要な要素である。選択される放射性核種は、所与のタイプの機器によって検出可能である減衰のタイプを有するべきである。一般に、診断イメージングを視覚化するための任意の従来法を本発明に従って利用することができる。インビボでの診断のための放射性核種を選択する際の別の要素は、放射性核種の半減期が、ターゲット組織による最大の取り込み時にまだ検出可能であるように十分に長いが、宿主における有害な放射線を最小化するように十分に短いことである。一つの実施態様において、インビボのイメージングのために使用される放射性核種は、粒子を放射しないが、140〜200keVの範囲における多数の光子を生じ、これを従来のγカメラによって容易に検出することができる。
【0163】
インビボの診断について、放射性核種は、直接的、又は中間の官能基を使用することにより間接的のいずれかによって、ペプチドに結合することができる。金属イオンとして存在する放射性同位元素をペプチドに結合させるためにたいてい使用される中間の官能基は、キレート化剤、DTPA、及びEDTAである。ペプチドに結合することができる金属イオンの例は、49Tc、123I、111In、131I、97Ru、67Cu、67Ga、1251、68Ga、72As、89Zr、及び201T1である。一般的に、診断的な使用についての検出のために標識されるペプチドの投薬量は、患者の年齢、状態、性別、及び疾患の程度、もしあれば反指標(counterindication)、並びに個々の医師によって調整されるその他の変数などの考慮事項に依存して変化するであろう。投薬量は、0.01mg/kg〜100mg/kgにおいて変化させることができる。
【0164】
別の実施態様において、本発明のペプチドは、アッセイ、分取アフィニティークロマトグラフィー、又は固相分離においてペプチドの受容体を結合させるためのアフィニティーリガンドとして使用される。このような組成物は、また、好ましくは特異的受容体-リガンド相互作用を介して、ペプチド、若しくは誘導体が結合する細胞を濃縮、精製、又は単離するために使用することができる。ペプチド、又は誘導体は、当該技術分野において公知の一般の方法を使用して固定され、例えばCNBr活性化されたSEPHAROSE(登録商標)、又はAGAROSE(登録商標)、NHS-AGAROSE(登録商標)、又はSEPHAROSE(登録商標)、エポキシ活性化されたSEPHAROSE(登録商標)、又はAGAROSE(登録商標)、EAH-SEPHAROSE(登録商標)、又はAGAROSE(登録商標)、ストレプトアビジン-SEPHAROSE(登録商標)、又はAGAROSE(登録商標)に対する結合を、ビオチン化されたペプチド、又は誘導体と組み合わせる。一般的に、本発明のペプチド、又は誘導体は、示された目的のために、これらの化合物を固相に対して固定することができる任意のその他の方法によって固定することができる。例えば、アフィニティークロマトグラフィー:原理及び方法(Affinity Chromatography: Principles and Methods)(Pharmacia LKB Biotechnology)を参照されたい。従って、一つの実施態様は、固体支持体、若しくは樹脂に結合された本明細書に記載されるペプチド、誘導体、又はペプチド擬態のいずれかを含む組成物である。化合物は、直接的に、又は約2〜12炭素原子を有する脂肪族鎖などのスペーサーを介して、結合することができる。
【0165】
いくつかの実施態様において、本発明は、試験化合物、及び配列番号:1、又は配列番号:3、又はキャップされた変異体ペプチドをÅ6結合ポリペプチドに加えること、並びに試験化合物と配列番号:1の競合的結合を測定することを含む、Å6結合ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。Å6結合ポリペプチドは、上述したようにCD44の任意の変異体を含むことができる。
【0166】
好ましい候補として同定された試験化合物は、Boydenチャンバーアッセイなどのインビトロアッセイ系において、その抗脈管形成活性についてスクリーニングすることができる。Boydenは、白血球化学走性の解析のためにこのアッセイを導入した。本アッセイは、微細孔膜によって分離された2つの培地が満たされたコンパートメントのチャンバーに基づく。細胞を上側のコンパートメント内に置いて、1つ以上の化学走性薬剤が存在する下側のコンパートメントへと膜の孔を通じて遊走させる。適切なインキュベーション時間の後、2つのコンパートメント間の膜を固定して、染色して、膜の下側に遊走した細胞の数を決定する。多数の異なるBoydenチャンバー装置を商業的に入手可能である。
【0167】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチドは、配列番号:1に加えられた任意の数の付加的なアミノ酸を含み、かつCD44のヒアルロン酸との結合性相互作用のモジュレーターとしての生物学的活性をなおも少なくとも20%維持することができる付加変異体として存在することができる。付加変異体は、1つまでの付加的アミノ酸、及び2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、及び200までの付加的なアミノ酸を含むことができ、これらの値の間にある任意の整数を含む。付加変異体は、N末端、C末端、又は両方において付加的なアミノ酸を含むことができる。
【0168】
いくつかの実施態様において、配列番号:1に基づいたペプチドを使用する本発明の方法は、ペプチドがCD44のヒアルロン酸との結合性相互作用のモジュレーターとしての生物学的活性をなおも少なくとも20%維持する限り、1つ以上のアミノ酸残基が置換される。タンパク質の化学、及び構造の詳細な説明については、Schulzらの文献、タンパク質構造の原理(Principles of Protein Structure)、Springer- Verlag, New York, New York(1979);および Creightonの文献、タンパク質:構造及び分子原理(Proteins: Structure and Molecular Principles)、W. H. Freeman & Co., San Francisco, California,(1984)を参照され、またこれらは参照により本明細書に組み込まれる。本発明のペプチド分子において行うことができる置換のタイプは、保存的置換であることができ、また以下の群の1つ内の交換として本明細書において定義される:1.小さな脂肪族の、無極性、又はわずかに極性の残基:例えば、Ala、Ser、Thr、Gly;2.極性の、負に荷電した残基、及びこれらのアミド:例えば、Asp、Asn、Glu、Gin;3.極性の、正に荷電した残基:例えば、His、Arg、Lys。
【0169】
Proは、その変わった形状のため、ペプチド鎖をきつく束縛する。官能特性の実質的な変化は、例えば上述した群(又は上に示されていない2つのその他のアミノ酸群)内よりむしろ群間などで、保存性があまりない置換を選択することによってなされ、これにより、(a)置換の領域におけるペプチドバックボーンの構造、(b)ターゲット部位における分子の電荷、若しくは疎水性、又は(c)大半の側鎖を維持するこれらの効果がより有意に異なるであろう。本発明に従った置換の大部分は、ペプチド分子の特徴においてラジカル変化を生じないものである。あらかじめ置換の正確な効果を予測することが困難なときでも、当業者は、ルーチンのスクリーニングアッセイ、好ましくは後述する生物学的アッセイによって効果を調べることができることを認識するであろう。酸化還元的、若しくは熱的な安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、又は担体と共に、若しくはマルチマーへと凝集する傾向を含む、ペプチド特性の変更は、当業者に周知の方法によってアッセイされる。加えて、配列番号:1に関するペプチドのいずれも、医薬として許容し得る塩の形態を含む任意の塩の形態で使用することができる。このような塩の形態は、例えば任意のインビボの診断において有用であろう。配列番号:1、及びその同種のものは、また、上述したようにプロドラッグ形態で使用してもよい。
【0170】
いくつかの実施態様において、誘導体は、アミノ末端、及びカルボキシル末端がそれぞれアセチル(アミノ末端のNに結合される、Ac--;「Ac」としてもまた略記される)、及びアミド(C末端のカルボキシル基に結合される--NH2;「Am」としてもまた略記される)でブロックする、又は「キャップする」ことができるペプチドを含む。このようなブロックされたペプチドは、また、Ac、及びAmのようなブロッキング基を示す一文字ペプチドコードの一部、例えば、
【化9】
として参照される。
【0171】
より一般的には、N末端のキャッピング機能は、末端のアミノ基に対する任意の結合であることができ、例えば以下を含む:全て上で定義したとおりの、ホルミル、1〜10炭素原子を有するアルカノイル、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、1〜10炭素原子を有するアルケノイル、例えばヘキシ-3-エノイル、1〜10炭素原子を有するアルキノイル、例えばヘキシ-5-イノイル、アロイル、例えばベンゾイル、又は1-ナフトイル、ヘテロアロイル、例えば3-ピロイル、若しくは4-キノロイル、アルキルスルホニル、例えばメタンスルホニル、アリールスルホニル、例えばベンゼンスルホニル、若しくはスルファニリル、ヘテロアリールスルホニル、例えばピリジン-4-スルホニル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルカノイル、例えば4-アミノブチリル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルケノイル、例えば6-ヒドロキシ-ヘキシ-3-エノイル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルキノイル、例えば3-ヒドロキシ-ヘキシ-5-イノイル、置換されたアロイル、例えば4-クロロベンゾイル、若しくは8-ヒドロキシ-ナフト-2-オイル、置換されたヘテロアロイル、例えば2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-キナゾリン-6-オイル、置換されたアルキルスルホニル、例えば2-アミノエタンスルホニル、置換されたアリールスルホニル、例えば5-ジメチルアミノ-1-ナフタレンスルホニル、置換されたヘテロアリールスルホニル、例えば1-メトキシ-6-イソキノリンスルホニル、カルバモイル基、若しくはチオカルバモイル、置換されたカルバモイル基(R'--NH--CO)、又は置換されたチオカルバモイル(R'--NH--CS)、式中R'は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアルケニル、置換されたアルキニル、置換されたアリール、若しくは置換されたヘテロアリール、置換されたカルバモイル基(R'--NH--CO)、及び置換されたチオカルバモイル(R'--NH--CS)、式中R'は、アルカノイル、アルケノイル、アルキノイル、アロイル、ヘテロアロイル、置換されたアルカノイル、置換されたアルケノイル、置換されたアルキノイル、置換されたアロイル、若しくは置換されたヘテロアロイル。
【0172】
C末端のキャッピング機能は、末端のカルボキシル基とのアミド結合の、又は末端のカルボキシル基とのエステル結合のいずれかのものであることができる。アミド結合のために提供するキャッピング機能は、NR1R2として表され、式中R1、及びR2は、以下の基から独立して由来してもよい:水素原子、好ましくは1〜10炭素原子を有するアルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、好ましくは1〜10炭素原子を有するアルケニル、例えばプロプ-2-エニル、好ましくは1〜10炭素原子を有するアルキニル、例えばプロプ-2-イニル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルキル、例えばヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、メルカプトアルキル、アルキルチオアルキル、ハロゲンアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルカノイルアルキル、カルボキシアルキル、カルバモイルアルキル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルケニル、例えばヒドロキシアルケニル、アルコキシアルケニル、メルカプトアルケニル、アルキルチオアルケニル、ハロゲノアルケニル、シアノアルケニル、アミノアルケニル、アルキルアミノアルケニル、ジアルキルアミノアルケニル、アルカノイルアルケニル、カルボキシアルケニル、カルバモイルアルケニル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルキニル、例えばヒドロキシアルキニル、アルコキシアルキニル、メルカプトアルキニル、アルキルチオアルキニル、ハロゲノアルキニル、シアノアルキニル、アミノアルキニル、アルキルアミノアルキニル、ジアルキルアミノアルキニル、アルカノイルアルキニル、カルボキシアルキニル、カルバモイルアルキニル、10炭素原子までを有するアロイルアルキル、例えばフェナシル、又は2-ベンゾイルエチル、アリール、例えばフェニル、又は1-ナフチル、ヘテロアリール、例えば4-キノリル、1〜10炭素原子を有するアルカノイル、例えばアセチル、又はブチリル、アロイル、例えばベンゾイル、ヘテロアロイル、例えば3-キノロイル、OR'、若しくはNR'R''、式中R'、及びR''は、独立して水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アロイル、スルホニル、スルフィニルであり、又はSO2--R'''、若しくはSO--R'''、式中R'''は、置換され、または置換されていないアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、又はアルキニル。
【0173】
エステル結合を提供するキャッピング機能は、ORとして表され、式中Rは、アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アラルキルオキシ;ヘテロアラルキルオキシ;置換されたアルコキシ;置換されたアリールオキシ;置換されたヘテロアリールオキシ;置換されたアラルキルオキシ;又は置換されたヘテロアラルキルオキシであってもよい。
【0174】
N末端、若しくはC末端のキャッピング機能のいずれか、又は両方は、キャップされた分子が、活性な薬物を放出するために体内で自発的、又は酵素的な変換を受ける、及び親薬物分子を上回る改善された送達特性を有するプロドラッグ(薬理学的に不活性誘導体である親薬物分子)として機能するような構造であってもよい(Bundgaardの文献、(1985))。
【0175】
キャッピング群の賢明な選択によって、ペプチドに対するその他の活性の付加が可能になる。例えば、N末端、又はC末端のキャップに連結されたスルフヒドリル基の存在によって、その他の分子に対する誘導体化されたペプチドの抱合が可能になるであろう。
【0176】
ペプチドのキャッピングは、多くのペプチドについて証明されているように、主に血漿内半減期の増大が意図される(例えば、Powellらの文献、Ann Repts Med. Chem. 28:285-294(1993))。この機能に役に立つ任意のキャッピング基が意図される。しかし、キャップされていない形態は、ペプチド擬態の設計(下記を参照されたい)のための鋳型としてなおも有用であり、またインビトロにおける活性を同程度に有し得る。
【0177】
本発明の方法において使用されるÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、治療上許容し得る塩として存在することができる。適切な塩は、有機、及び無機の両方の酸と共に形成されたものを含む。このような酸付加塩は、通常医薬として許容し得るであろう。しかし、医薬として許容されない塩の塩は、問題となっている化合物の製造、及び精製に有用であり得る。塩基付加塩もまた形成することができ、かつ医薬として許容することができる。塩の製造、及び選択のより完全な考察については、塩、医薬塩:特性、選択、及び使用(Stal, Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, Wiley- VCHA, Zurich, Switzerland(2002)を参照されたい。
【0178】
代表的な酸付加塩は、アセテート、アジパート、アルギナート、L-アスコルベート、アスパルテート、ベンゾアート、ベンゼンスルホナート(ベシレート)、ビサルフェート、ブチラート、カンフォラート、カンファースルホナート、シトラート、ジグルコナート、ホルマート、フマラート、ゲンチサート、グルタラート、グリセロホスフェート、グリコラート、ヘミサルフェート、ヘプタノアート、ヘキサノアート、ヒップレート、ハイドロクロライド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、2-ヒドロキシエタンスルホナート(イセチオナート)、ラクテート、マレアート、マロナート、DL-マンデラート、メシチレンスルホナート、メタンスルホナート、ナフチレンスルホナート、ニコチナート、2-ナフタレンスルホナート、オキサラート、パモアート、ペクチナート、パーサルフェート、3-フェニルプロプリオナート、ホスホナート、ピクラート、ピバラート、プロピオナート、ピログルタマート、スクシナート、スルホナート、タータラート、L-タータラート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、ホスフェート、グルタマート、ビカルボナート、パラ-トルエンスルホナート(p-トシラート)、及びウンデカノアートを含む。本発明のペプチドに存在する塩基性基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルクロライド、ブロミド、並びにヨージド;ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミルサルフェート;デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステリルクロライド、ブロミド、並びにヨージド;並びにベンジル、及びフェネチルブロミドで四級化することができる。治療上許容し得る付加塩を形成するために使用することができる酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸などの有機酸を含む。
【0179】
塩は、また、化合物のアルカリ金属、又はアルカリ土類イオンとの配位によって形成することができる。それ故、本発明は、本発明の化合物の化合物のナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウム塩、及び同様のものを想定する。
【0180】
塩基付加塩は、カルボン酸基を、金属カチオンのヒドロキシド、カルボナート、又はビカルボナートなどの適切な塩基と、或いはアンモニア、又は有機の一級、二級、若しくは三級アミンと反応させることによって、ペプチドの最終的な単離、及び精製中に製造することができる。治療上許容し得る塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、エチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ピリジン、N,N-ジメチルアニリニウム、N-メチルピペリジンイウム、N-メチルモルホリニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、プロカイン、ジベンジルアンモニウム、N,N'-ジベンジルフェネチルアンモニウム、1-エフェンアンモニウム、及びNN-ジベンジルエチレンジアンモニウムなどの無毒の四級アミンカチオンを含む。塩基付加塩の形成のために有用なその他の代表的な有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、及びピペラジンを含む。
【0181】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、そのままの化学物質として投与することができる一方で、これらは、また、医薬品製剤としても投与することができる。医薬品製剤は、化合物、又はその医薬として許容し得る塩、エステル、プロドラッグ、若しくは溶媒和化合物を、1つ以上のより医薬として許容し得る担体、及び任意に1つ以上のその他の治療成分と共に含む。担体(類)は、製剤のその他の成分と適合し、かつそのレシピエントに有害であってはならないするという意味において「許容される」べきである。適当な製剤は、選択される投与経路に依存する。任意の周知技術、担体、及び賦形剤を適切であるように、また当該技術において理解されるように使用うぃてもよい;例えばレミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)を参照されたい。本発明の医薬組成物は、それ自体が公知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、微粒子化、乳化、カプセル化、封入、又は圧縮プロセスの手段によって製造してもよい。
【0182】
製剤は、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、及び局所的(真皮、頬、舌下、及び眼内を含む)投与に適したものを含むが、最も適切な経路は、例えばレシピエントの状態、及び障害に依存し得る。製剤は、好都合に単位剤形において提示されてもよく、また薬学分野において周知の方法のいずれによって製造されてもよく、製剤は、活性成分を、液体担体、若しくは微粉固体担体、又は両方と一様かつ親密に結合させて、次いで、必要な場合に、生成物を所望の製剤に成形することによって製造することができる。
【0183】
経口投与のために適した製剤は、活性成分の予め定められた量をそれぞれ含むカプセル、カシェ剤、若しくは錠剤などの別個の単位として;粉末、若しくは顆粒として;水性液体、若しくは非水性液体中の溶液、若しくは懸濁液として;又は水中油型液体の乳剤、若しくは油中水型液体の乳剤として提示することができる。活性成分は、また、ボーラス、舐剤、又はペーストとして提示することができる。
【0184】
経口的に使用することができる医薬品製剤は、錠剤、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセル、並びにゼラチンとグリセロール、又はソルビトールなどの可塑剤とで作られた柔らかい、封をしたカプセルを含む。錠剤は、任意に1つ以上の補助成分と共に、圧縮、又は成形することによって作製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械において、任意に結合剤、不活性な希釈剤、又は潤滑剤、界面活性剤、若しくは分断剤と混合した粉末、又は顆粒などの自由自在に動く形態の活性成分を圧縮することによって製造することができる。成形錠剤は、粉末状化合物を不活性な液状の希釈剤で湿らせた混合物を、適切な機械において成形することによって作製することができる。錠剤は、任意に被覆し、又は分割することができ、またその中の活性成分の放出が遅くなるように、又は制御されるように製剤化してもよい。経口投与のための全ての製剤は、このような投与のために適した投薬量であるべきである。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの賦形剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク、若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに任意に安定剤と混合して、活性成分を含むことができる。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解し、又は懸濁することができる。加えて、安定剤を添加してもよい。糖衣錠のコアは、適切なコーティングと共に提供される。この目的のために、濃縮した糖溶液を使用することができ、これは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒、又は溶媒混合物を任意に含んでいてもよい。染料、又は色素は、同定のため、又は活性化合物の投薬量の異なる組合せを特徴づけるために、錠剤、又は糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0185】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、注射によって、例えばボーラス注射、又は連続注入によって非経口投与するために、製剤化することができる。注射のための製剤は、例えばアンプルに、又は複数用量容器において、添加保存剤と共に、単位剤形で提示してもよい。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、油性、若しくは水性媒体中の懸濁液、溶液、又は乳剤などの形態をとっていてもよく、また懸濁剤、安定化剤、及び/又は分断剤などの製剤化用薬剤を含んでいてもよい。製剤は、単位用量、又は複数用量容器、例えば封をしたアンプル、及びバイアルに提示されてもよく、使用前に即時に無菌の液体担体、例えば生理食塩水、若しくは無菌の発熱物質を含まない水の添加のみを必要とするまた、粉末形態で、又はフリーズドライさせた(凍結乾燥した)状態で貯蔵してもよい。即時注射溶液、及び懸濁液は、前述した種類の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から製造することができる。
【0186】
非経口投与のための製剤は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体の水性、及び非水性(油性)の無菌の注射溶液を含むことができ、これは、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、及び製剤に意図されるレシピエントの血液との等張性を与える溶質;並びに、懸濁剤、及び濃化剤を含むことができる水性、及び非水性の無菌の懸濁液を含むことができる。適切な親油性の溶媒、又は担体は、ゴマ油などの脂肪油、エチルオレアート、若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームを含む。水性の注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘性を増大させる物質を含むことができる。任意に、懸濁液は、また、適切な安定剤、又は高度に濃縮された溶液の製造を可能にするために化合物の溶解性を増大させる薬剤を含むことができる。
【0187】
上述した製剤に加えて、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、また、デポー製剤として製剤化することができる。このような長時間作用する製剤は、移植によって(例えば、皮下、又は筋肉内に)、又は筋肉内注射によって投与することができる。従って、例えば、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、適切な高分子、若しくは疎水性材料(例えば、許容し得る油中の乳剤として)、又はイオン交換樹脂と共に、或いは、やや溶解しにくい誘導体として、例えばやや溶解しにくい塩として製剤化することができる。
【0188】
頬、又は舌下投与のために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、従来の様式で製剤化された錠剤、ロゼンジ、パステル、又はゲルの形態をとることができる。このような組成物は、スクロース、及びアカシア、又はトラガカンタなどの風味をつけられた基剤中に活性成分を含むことができる。
【0189】
化合物は、また、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、又はその他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を含む、坐薬、又は保持浣腸剤などの直腸組成物に製剤化することができる。
【0190】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、局所的に、すなわち非全身投与によって投与することができる。これは、外部からの表皮、又は頬のくぼみに対する本発明の化合物の適用、並びに耳、目、及び鼻に対するこのような化合物の点滴注入を含み、その結果、化合物は、有意に血流に入らない。対照的に、全身投与は、経口、静脈内、腹腔内、及び筋肉内投与をいう。
【0191】
局所的投与に適した製剤は、炎症の部位に対して皮膚を介して透過させるために適したゲル、塗布剤、ローション、クリーム、軟膏、又はペーストなどの液体、又は半液体の製剤、及び目、耳、又は鼻に対する投与に適した液滴を含む。活性成分は、局所的投与のために0.001%〜10%w/w、例として製剤の重量の1%〜2%含むことができる。しかし、10%w/wまでとして含むことができる。その他の実施態様において、製剤の5%w/w未満、又は0.1%〜1%w/wを含むことができる。
【0192】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体における局所的、又は経皮投与のためのゲルは、揮発性溶媒、不揮発性溶媒、及び水の混合物を含むことができる。緩衝された溶媒系の揮発性溶媒成分は、低級(C1-C6)アルキルアルコール、低級アルキルグリコール、及び低級グリコールポリマーを含むことができる。特定の実施態様において、揮発性溶媒は、エタノールである。揮発性溶媒成分は、透過エンハンサーとして作用することができ、その一方で、これは、蒸発するため、皮膚に対する冷却効果も生じる。緩衝された溶媒系の不揮発性溶媒部分は、低級アルキレングリコール、及び低級グリコールポリマーから選択される。特定の実施態様において、プロピレングリコールが使用される。不揮発性溶媒は、揮発性溶媒の蒸発を遅らせ、また緩衝された溶媒系の蒸気圧を減少させる。この不揮発性溶媒成分の量は、揮発性溶媒と共に、使用される特定のÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体によって決定することができる。緩衝された溶媒系の緩衝成分は、当該技術において一般に使用される任意の緩衝液から選択することができる;好ましくは、水が使用される。いくつかの実施態様において、成分の割合は、約20%の不揮発性溶媒、約40%の揮発性溶媒、及び約40%の水である。局所的組成物に加えることができるいくつかの任意の成分がある。これらは、キレート剤、及びゲル化剤を含むが、限定されない。適切なゲル化剤は、半合成セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、及び合成重合体、並びに美容薬を含むことができるが、限定されない。
【0193】
ローションは、皮膚、又は目に対する適用に適したものを含む。目のローションは、殺菌剤を任意に含む無菌の水性溶液を含むことができ、また液滴の製造のためのものと類似の方法によって製造することができる。皮膚に対する適用のためのローション、又は塗布剤は、また、アルコール、若しくはアセトン、及び/又はグリセロールなどのモイスチャライザー、又はヒマシ油、若しくは落花生油などの油などの、乾燥を早めるための、及び皮膚を冷却するための薬剤を含むことができる。
【0194】
クリーム、軟膏、又はペーストは、外部からの適用のための活性成分の半固体製剤である。これらは、脂肪性、又は非脂肪性基剤と共に、適切な機械の助けを借りて、単独で、又は水性、若しくは非水性の流体における溶液、又は懸濁液において、微細に分割された形態、又は粉末状の形態で活性成分を混合することによって作製することができる。基剤は、硬、柔、又は液体のパラフィン、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸などの炭化水素;粘質物;アーモンド、トウモロコシ、ナンキンマメ、キャスター、又はオリーブ油などの天然起源の油;羊毛脂、若しくはその誘導体、又はステアリン酸、若しくはオレイン酸などの脂肪酸を、プロピレングリコール、又はマクロゲルなどのアルコールと共に含むことができる。製剤は、ソルビタンエステル、又はそのポリオキシエチレン誘導体などのアニオン性、カチオン性、又は非イオン性の界面活性物質などの任意の適切な界面活性剤を組み込むことができる。天然ガム、セルロース誘導体などの懸濁剤、又はケイ質ケイ砂などの無機物質、及びラノリンなどのその他の成分も含まれてもよい。
【0195】
液滴は、無菌の水性、若しくは油性の溶液、又は懸濁液を含むことができ、また殺菌剤、及び/又は殺真菌剤、及び/又は任意のその他の適切な保存剤の適切な水性溶液に活性成分を溶解することによって製造することができ、任意に界面活性剤(界面活性物質)を含む。次いで、生じる溶液を濾過によって浄化して、適切な容器に移して、次いで封をして、オートクレーブすることによって、又は半時間98〜100℃にて維持することによって滅菌することができる。或いは、溶液は、濾過によって滅菌して、無菌技術によって容器に移すことができる。液滴への封入に適した殺菌剤、及び殺真菌剤の例は、硝酸フェニル水銀、又は酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)、及びクロルヘキシジンアセテート(0.01%)である。油性溶液の製造に適した溶媒は、グリセロール、希釈されたアルコール、及びプロピレングリコールを含む。口、例えば頬、又は舌下への局所的な投与のための製剤は、スクロース、及びアカシア、又はトラガカンタなどの風味をつけた基剤中に活性成分を含むロゼンジ、並びにゼラチン、及びグリセリン、又はスクロース、及びアカシアなどの基剤中に活性成分を含むパステルを含む。
【0196】
吸入による投与のために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、通気器、ネブライザー加圧パック、又はその他のエアロゾルスプレーを送達する簡便な手段から、簡便に送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の適切な気体などの適切な噴霧剤を含むことができる。加圧エアロゾルの場合、一定量を送るバルブを備えることによって投与量単位を決めることができる。或いは、吸入、又はガス注入による投与のために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、乾燥粉末組成物、例えば化合物、及びラクトース、又はデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末混合物の形態をとることができる。粉末組成物は、例えばカプセル、カートリッジ、ゼラチン、又はブリスターパック中に単位剤形として提示することができ、これから粉末が吸入器、又は通気器の助けを借りて投与され得る。
【0197】
いくつかの実施態様において、単位投与製剤は、活性成分における、上述したような有効な投薬量、又はその適切な画分を含むものである。
【0198】
特に上で言及した成分に加えて、本発明の製剤は、問題となる製剤のタイプに対して関連がある技術における従来のその他の薬剤を含むことができることを理解するであろうし、例えば、経口投与に適したものは、風味をつける薬剤を含んでいてもよい。
【0199】
本発明の方法において使用されるÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、組換えDNA技術を使用して製造してもよい。しかし、これらの長さを考慮すれば、これらは、好ましくは、一般的にMerrifieldの文献、 J. Amer. Chem. Soc, 85:2149-2154(1963)に記載されるものなどの固相合成を使用して製造されるが、当該技術分野において公知のその他の同等の化学的合成もまた有用である。固相ペプチド合成は、保護されたαアミノ酸を適切な樹脂にカップリングすることによって、ペプチドのC末端から開始してもよい。このような出発材料は、クロロメチル化された樹脂に対する、若しくはヒドロキシメチル樹脂に対するエステル結合によって、又はBHA樹脂、若しくはMBHA樹脂に対するアミド結合によって、α-アミノ基が保護されたアミノ酸を付着させることにより製造することができる。
【0200】
ヒドロキシメチル樹脂の製造は、Bodanskyらの文献(1966)によって記載される。クロロメチル化樹脂は、BioRad Laboratories, Richmond, Calif、及びLab. Systems, Incから商業的に入手可能である。このような樹脂の製造は、Stewartらの文献、(1969)によって記載される。BHA、及びMBHA樹脂支持体は、商業的に入手可能であり、また合成される所望のポリペプチドがC-末端にて非置換のアミド基を有するときにのみ、一般的に使用される。
【0201】
アミノ酸は、ペプチド結合の形成のための当該技術分野において周知の技術を使用して、ペプチド鎖を成長するようにカップリングすることができる。例えば、1つの方法は、成長するペプチド鎖におけるフリーのN末端アミノ基との反応に対するより高い感受性をアミノ酸のカルボキシル基に付与するであろう誘導体に、アミノ酸を変換することを含む。具体的には、保護されたアミノ酸のC末端は、C末端と、エチルクロロホルマート、フェニルクロロホルマート、sec-ブチルクロロホルマート、イソブチルクロロホルマート、若しくはピバロイルクロライド、又は同様の酸塩化物との反応によって、混成無水物に変換することができる。或いは、アミノ酸のC末端は、2,4,5-トリクロロフェニルエステル、ペンタクロロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、p-ニトロフェニルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、又は1-ヒドロキシベンゾトリアゾールから形成したエステルなどの活性なエステルに変換することができる。別のカップリング法は、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、又はN,N'-ジイソプロピルカルボジイミドなどの適切なカップリング剤の使用を含む。当業者にとって明らかな、その他の適切なカップリング剤は、Grossらの文献、(1979)において開示され、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0202】
ペプチド合成において使用されるそれぞれのアミノ酸のα-アミノ基は、これらの活性なα-アミノ官能基を含む副反応を防止するために、カップリング反応の間、保護することができる。特定のアミノ酸は、反応性の側鎖官能基(例えば、スルフヒドリル、アミノ、カルボキシル、及びヒドロキシル)を含み、またこのような官能基は、また、初期、及びその後の両方のカップリング工程の両方の間に(1)α-アミノ基部位、又は(2)反応性の側鎖部位が生じる化学反応を防止するために、適切な保護基で保護することができる。
【0203】
ペプチドの合成に使用される特定の保護基の選択では、典型的には以下の一般的な規則に従う。具体的には、α-アミノ保護基は、(1)カップリング反応に使用される条件下で、α-アミノ官能基を不活性にすべきであり、(2)側鎖保護基を取り除かず、かつペプチド断片の構造を変化させないであろう条件下で、カップリング反応の後に容易に除去可能であるべきであり、及び(3)カップリングの直前に、活性化によるラセミ化の可能性を実質的に減少させるべきである。
【0204】
他方では、側鎖保護基は、(1)カップリング反応において使用される条件下で、側鎖官能基を不活性にすべきであり、(2)α-アミノ保護基を取り除くのに使用される条件下で安定であるべきであり、及び(3)ペプチド鎖の構造を変化させないであろう反応条件下で、所望の完全に構築されたペプチドから容易に除去可能であるべきである。
【0205】
ペプチド合成に有用であることが知られている保護基は、これらの除去のために使用される薬剤との反応性が変化することは、当業者にとって明らかであろう。例えば、トリフェニルメチル、及び2-(p-ビフェニル)イソプロピル-オキシカルボニルなどの特定の保護基は、非常に変化しやすく、かつ緩酸条件下で切断され得る。t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、t-アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、及びp-メトキシベンジルオキシカルボニルなどのその他の保護基は、より変化しにくく、かつこれらの除去のために、酢酸中の塩酸、トリフルオロ酢酸、又は三フッ化ホウ素などの適度に強力な酸を必要とする。ベンジルオキシカルボニル(CBZ、又はZ)、ハロベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニルシクロアルキルオキシカルボニル、及びイソプロピルオキシカルボニルなどの更に他の保護基は、更により変化しにくく、かつこれらの除去のために、トリフルオロ酢酸中のフッ化水素、臭化水素、又はホウ素トリフルオロアセタートなどの更に強力な酸を必要とする。当該技術分野において公知の適切な保護基は、Grossらの文献、(1981)に記載されている。
【0206】
α-アミノ基を保護するために、又は側鎖の基を保護するために有用なアミノ酸保護基のクラスの中には、以下が含まれる。(1)α-アミノ基については、3つの典型的な保護基の種類は、(a)フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、CBZ、及びp-クロロベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニルなどの置換されたCBZ、並びにp-メトキシベンジルオキシカルボニル、o-クロロベンジルオキシカルボニル、2,4-ジクロロベンジルオキシカルボニル、2,6-ジクロロベンジルオキシカルボニル、及び同様のものなどの芳香族ウレタン-タイプ保護基;(b)BOC、t-アミルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、2-(p-ビフェニル)イソプロピルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及び同様のものなどの脂肪族ウレタン-タイプ保護基;並びに(c)シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、及びシクロヘキシルオキシカルボニルなどのシクロアルキルウレタン-タイプ保護基。
【0207】
いくつかの実施態様において、α-アミノ保護基は、BOC、及びFMOCである。(2)Lysに存在する側鎖アミノ基については、保護は、BOC、2-クロロベンジルオキシカルボニル、及び同様のものなどの(1)において上述した基のいずれによってもよい。(3)Argのグアニジノ基については、保護は、ニトロ、トシル、CBZ、アダマンチルオキシカルボニル、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル、2,3,6-トリメチル-4-メトキシフェニルスルホニル、又はBOC基によって提供されてもよい。(4)Ser、又はThrのヒドロキシル基については、保護は、例えばt-ブチル;ベンジル(BZL);又はp-メトキシベンジル、p-ニトロベンジル、p-クロロベンジル、o-クロロベンジル、及び2,6-ジクロロベンジルなどの置換されたBZLによってなされてもよい。(5)Asp、又はGluのカルボキシル基については、保護は、例えば、BZL、t-ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、及び同様のものなどの基を使用してエステル化によってなされてもよい。(6)Hisのイミダゾール窒素については、ベンジルオキシメチル(BOM)、又はトシル部分が保護基として適切に使用される。(7)Tyrのフェノール性ヒドロキシル基については、テトラヒドロピラニル、tert-ブチル、トリチル、BZL、クロロベンジル、4-ブロモベンジル、及び2,6-ジクロロベンジルなどの保護基が適切に使用される。好ましい保護基は、ブロモベンジルオキシカルボニルである。(8)Asn、又はGlnの側鎖アミノ基については、好ましくはキサンチル(Xan)が使用される。(9)Metについては、アミノ酸は好ましくは保護されないままである。(10)Cysのチオ基については、p-メトキシベンジルが典型的に使用される。
【0208】
成長するペプチド鎖の第1のC末端アミノ酸、例えばGluは、典型的にはBOCなどの適切に選択された保護基によってα-アミノ位置にて保護されている。BOC-Glu-(y-シクロヘキシル)-OHは、最初にイソプロピルカルボジイミドを使用して約25℃にて2時間撹拌することでベンジルヒドリルアミン樹脂に、又はHorikiらの文献、(1978)に記載された手順に従ってクロロメチル化樹脂にカップリングすることができる。樹脂担体に対するBOC保護されたアミノ酸のカップリングに続いて、α-アミノ保護基を通常、典型的にはジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸(TFA)、又はTFA単独を使用することによって取り除く。α-アミノ基脱保護反応は、広範囲の温度において生じさせることができるが、通常約0℃〜室温の温度にて行われる。
【0209】
ジオキサン中のHClなどの、その他の標準的なα-アミノ基脱保護試薬、及び具体的なα-アミノ保護基の除去のための条件は、参照により本明細書に組み込まれるLubkeらの文献、(1975)に記載されたものなどの当該技術分野において行われている技術の範囲内である。α-アミノ保護基の除去に続いて、保護されていないα-アミノ基は、一般的に側鎖がまだ保護されており、意図された順序で段階的様式でカップリングすることができる。
【0210】
段階的アプローチの代替例は、それぞれ所望の配列の一部を表す予め形成された短い長さのペプチドを固相支持体に結合したアミノ酸の成長しつつある鎖にカップリングさせる、断片縮合法である。この段階的アプローチのために、特に適したカップリング試薬は、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、又はジイソプロピルカルボジイミドである。また、断片アプローチについては、所望の性質、及びサイズの断片をカップリングするために必要とされるカップリング試薬の選択、並びに断片化パターンの選択が成功させるために重要であり、かつ当業者に公知である。
【0211】
それぞれの保護されたアミノ酸、又はアミノ酸配列は、通常、化学量論的な量を超える量において固相反応器に導入して、カップリングは、ジメチルホルムアミド(DMF)、CH2CI2、又はその混合物などの有機溶媒において適切に行われる。不完全なカップリングが生じる場合、次のアミノ酸にカップリングするための製造においてN-アミノ保護基の除去の前に、通常カップリング手順を繰り返す。α-アミノ保護基の除去に続いて、残りのαアミノ、及び側鎖が保護されたアミノ酸は、意図された順序で段階的様式でカップリングすることができる。合成のそれぞれの段階にてカップリング反応の成功をモニターしてもよい。合成をモニターする1つの方法は、Kaiserらの文献、(1970)により記載されるようなニンヒドリン反応によるものである。カップリング反応は、また、周知の市販の方法、及び装置、例えば、Beckman 990 Peptide Synthesizerを使用して自動で実行することができる。
【0212】
所望のペプチド配列の完了後、保護されたペプチドを樹脂支持体から切断することができ、そして全ての保護基を取り除くことができる。保護基の切断反応、及び除去は、適切には、脱保護反応によって同時に、又は連続的に達成される。樹脂にペプチドを固定する結合がエステル結合であるとき、エステル連鎖を壊すこと、及び樹脂マトリックスを貫通することが可能な任意の試薬によってそれを切断することができる。1つの特に有用な方法は、液体のフッ化水素無水の^物の処理によるものである。この試薬は、通常、樹脂からペプチドを切断するだけでなく、酸に不安定な全ての保護基も除去して、従って、完全に脱保護されたペプチドを直接提供するであろう。酸に不安定でないさらなる保護基が存在するときには、さらなる脱保護工程を行うことができる。これらの工程は、具体的な必要性、及び環境に従って、上述したフッ化水素処理の前か後のいずれかに行うことができる。
【0213】
クロロメチル化樹脂を使用するとき、フッ化水素切断/脱保護処理は、一般的に遊離型のペプチド酸の形成をもたらす。ベンズヒドリルアミン樹脂を使用するとき、フッ化水素処理は、一般的に遊離型のペプチドアミドをもたらす。アニソール、及びジメチルスルフィドの存在下におけるフッ化水素との0℃における1時間の反応は、典型的には側鎖保護基を除去し、かつ同時に、樹脂からペプチドを放出させるであろう。
【0214】
保護基を除去することなくペプチドを切断することが望まれるとき、保護されたペプチド-樹脂をメタノリシスに供することができ、これによりC末端のカルボキシル基がメチル化されている、保護されたペプチドを得る。このメチルエステルは、その後穏やかなアルカリ条件下で加水分解して、遊離型のC末端カルボキシル基を与えることができる。次いで、ペプチド鎖上の保護基を液体のフッ化水素などの強力な酸を用いた処理によって除去することができる。メタノリシスのための特に有用な技術は、保護されたペプチド-樹脂をクラウンエーテルの存在下においてメタノール、及び青酸カリを用いて処理するMooreらの文献、(1977)のものである。
【0215】
クロロメチル化樹脂が使用されるとき、樹脂から保護されたペプチドを切断するためのその他の方法は、(1)アンモノリシス、及び(2)ヒドラジノリシスを含む。必要な場合、生じるC末端アミド、又はヒドラジドは、遊離のC末端カルボキシル部分に加水分解することができ、また保護基は、従来法で除去することができる。N-末端α-アミノ基上に存在する保護基は、保護されたペプチドが支持体から切断される前、又は後のいずれで除去してもよい。本発明のペプチドの精製は、典型的には、分取HPLC(逆相HPLCを含む)、ゲル浸透、イオン交換、分配クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー(モノクローナル抗体カラムを含む)、及び同様のものなどのクロマトグラフィー技術、又は向流分配法、若しくは同様のものなどのその他の従来の技術を使用して達成される。
【0216】
いくつかの実施態様において、本発明は、配列番号:1に基づくペプチドであって、1つ、若しくは複数のアミノ酸残基が除去され、かつその位置に異なる残基が挿入されているペプチド、例えば配列番号:3、又はキャップされた変異体を提供する。タンパク質化学、及び構造の詳細な説明については、Schulzらの文献、タンパク質構造の原理(Principles of Protein Structure)、Springer- Verlag, New York, New York(1979)、及びCreightonの文献、タンパク質:構造及び分子原理(Proteins: Structure and Molecular Principles)、W. H. Freeman & Co., San Francisco, California(1984)を参照され、またこれらは参照により本明細書に組み込まれる。本発明のペプチド分子において行ってもよい置換のタイプは、保存的置換であることができ、また以下の群の1つ内の交換として本明細書において定義される:1.小さな脂肪族の、無極性、又はわずかに極性の残基:例えば、Ala、Ser、Thr、Gly;2.極性の、負に荷電した残基、及びこれらのアミド:例えば、Asp、Asn、Glu、Gin;3.極性の、正に荷電した残基:例えば、His、Arg、Lys。
【0217】
Proは、その変わった形状のため、ペプチド鎖をきつく束縛する。官能特性の実質的な変化は、例えば上述した群(又は上に示されていない2つのその他のアミノ酸群)内よりむしろ群間などで、保存性があまりない置換を選択することによってなされ、これにより、(a)置換の領域におけるペプチドバックボーンの構造、(b)ターゲット部位における分子の電荷、若しくは疎水性、又は(c)大半の側鎖を維持するこれらの効果がより有意に異なるであろう。本発明に従った置換の大部分は、ペプチド分子の特徴においてラジカル変化を生じないものである。あらかじめ置換の正確な効果を予測することが困難なときでも、当業者は、ルーチンのスクリーニングアッセイ、好ましくは後述する生物学的アッセイによって効果を調べることができることを認識するであろう。酸化還元的、若しくは熱的な安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、又は担体と共に、若しくはマルチマーへと凝集する傾向を含む、ペプチド特性の変更は、当業者に周知の方法によってアッセイされる。
【0218】
いくつかの実施態様において、配列番号:1、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、限定されないが、束縛されたアミノ酸、ペプチド二次構造を模倣する非ペプチド成分、又はアミド結合アイソスターを含むペプチド様分子を含む当該技術分野において公知のようなペプチド擬態として製剤化することができる。束縛された、天然に存在しないアミノを含むペプチド擬態は、限定されないが、αメチル化アミノ酸;α,α-ジアルキルグリシン、若しくはα-アミノシクロアルカンカルボン酸;Nα-Cα環化アミノ酸;Nα-メチル化アミノ酸;β-、若しくはγ-アミノシクロアルカンカルボン酸;α,β-不飽和アミノ酸;β,β-ジメチル、若しくはβ-メチルアミノ酸;β-置換-2,3-メタノアミノ酸;N-Cδ、若しくはCα-Cδ環化アミノ酸;置換されたプロリン、又は別のアミノ酸擬態を含むことができる。ペプチド二次構造を模倣するペプチド擬態は、限定されないが、非ペプチド性β-ターン擬態;γ-ターン擬態;β-シート構造の擬態;又はヘリカル構造の擬態を含むことができ、これらのそれぞれは、当該技術分野において周知である。非限定的な例として、ペプチド擬態は、また、レトロインベルソ修飾;還元されたアミド結合;メチレンチオエーテル、又はメチレン-スルホキシド結合;メチレンエーテル結合;エチレン結合;チオアミド結合;トランスオレフィン、若しくはフルオロオレフィン結合;1,5-二基置換テトラゾール環;ケトメチレン、若しくはフルオロケトメチレン結合などのアミド結合アイソスター、又は別のアミドアイソスターを含むペプチド様分子であることができる。当業者は、これら、及びその他のペプチド擬態が、本明細書において使用される「ペプチド擬態」という用語の意味の範囲内に包含されることを理解する。
【0219】
ペプチド擬態を同定する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、潜在性ペプチド擬態のライブラリーを含むデータベースのスクリーニングを含む。例えば、Cambridge Structural Databaseは、公知の結晶構造を有する300,000個の化合物を超えるコレクションを含む(Allenらの文献、Acta Crystallogr. 35:2331(1979))。この構造の保管所は、新たな結晶構造が決定されるたびに絶えず更新され、適切な形状、例えば本発明のペプチドと同じ形状、並びにターゲット分子に対する潜在的な幾何学的、及び化学的相補性を有する化合物をスクリーニングすることができる。本発明のペプチドの結晶構造が入手可能でない場合には、例えば、プログラムCONCORDを使用して構造を生成させることができる(Rusinkoらの文献、J. Chem. Inf. Comput. ScL 29:251(1989))。別のデータベースであるAvailable Chemicals Directory(Molecular Design Limited, Informations Systems; San Leandro, CA)は、市販されている約100,000個の化合物を含み、また本発明のペプチドの潜在的なペプチド擬態を同定するために検索することができる。
【0220】
本発明の種々の実施態様の活性に実質的に影響を及ぼさない変更もまた、本明細書にて提供される本発明の定義中に含まれるものと理解される。従って、以下の実施例は、本発明を例証するためであって、限定するためではないことが意図される。
【0221】
(実施例I:Å6CbioXLポリペプチドIの免疫沈降)
この実施例は、抗CD44を用いたイムノブロットを含むÅ6CbioXLポリペプチドの免疫沈降を示す。
【0222】
図1、及び図2において、SKOV3細胞は、4℃にて30分間、100μMのÅ6Cbiotinの有無において(それぞれÅ6CbioXL、及びConXL)インキュベートした。次いで、細胞を4℃にて30分間、5mMビス(スルホスクシンイミジル)スベラート(スルホ-DSS、又はBS3)で架橋して、Triton X-100溶解物を産生した。溶解物を室温にて2時間プロテインA-アガロースと共にインキュベートすることによって前処理した。次いで、100μgの浄化した溶解物を表す一定分量を、2μgの抗Tenascin R(TnR; E-18, Santa Cruz Biotech.)、抗Tenascin C(TnC; 300-3, Santa Cruz Biotech.)、抗CD44(DF1485, Santa Cruz Biotech.)、抗-Plexin-A1(P1 A1; H-60, Santa Cruz Biotech.)、又はマウスIgG1(Sigma Chem. Co.)を添加した20μLプロテインA-アガロースと共に、室温にて一晩インキュベートした。溶解バッファーで5回洗浄した後に、免疫沈降したポリペプチドを、SDS-PAGE試料緩衝液中で沸騰させることによって、プロテインA-アガロースから溶出させた。次いで、溶出した材料、及び出発材料の2μgの一定分量をSDS-PAGEに供し、PVDF膜に転写して、化学発光西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合ストレプトアビジン(HRP-SA)でブロッティングした。図1の結果は、CD44の下に「A」レーンにおいて観察されたバンドによって示されるように、配列番号:1のÅ6ペプチドがCD44をターゲッティングすることを示す。図2は、間にあったTnR、TnC、及びP1A1レーンを、出発材料(「St.Mat.」とラベルした)、及び分子重量指標との比較を容易にするために切り取った同じゲルを示す。
【0223】
(実施例II:Å6CbioXLポリペプチドIIの免疫沈降)
この実施例は、CD44がÅ6のターゲットであることを確認するさらなるイムノブロット実験を示す。
【0224】
図3において、SKOV3細胞は、4℃にて30分間、100μM Å6Cbiotinの有無において(それぞれÅ6CbioXL、及び対照)インキュベートした。次いで、細胞を4℃にて30分間、5mM BS3で架橋した。Triton X-IOO溶解物を産生して、室温にて2時間プロテインA-アガロースと共にインキュベートすることによって前処理した。次いで、100μgの浄化した溶解物を表す一定分量を2μgの抗CD44(DF1485、Santa Cruz Biotech)、又はマウスIgGl(Sigma Chem. Co.)を添加した20μLプロテインA-アガロースと共に、室温にて一晩インキュベートした。溶解バッファーで5回洗浄した後に、免疫沈降したポリペプチドを、SDS-PAGE試料緩衝液中で沸騰させることによって、プロテインA-アガロースから溶出させた。次いで、溶出した材料、及び出発材料の5μgの一定分量をSDS-PAGEに供し、PVDF膜に転写して、HRP-SAでブロッティングした。図3の左のパネルは、抗SAによる調査を示し、その一方で、右のパネルは、抗CD44による調査を示す。この実験は、CD44がÅ6ペプチドのターゲットであることを確認するのに役立つ。
【0225】
(実施例III:Å6は、SKOV3細胞に対する抗CD44であるDF1485の結合を阻害する)
この実施例は、Å6の存在下におけるSKOV3細胞に対する抗CD44(DF1485)結合のFACs解析を示す。
【0226】
図4において、SKOV3細胞は、簡単なトリプシン処理によってこれらの培養フラスコから剥離し、DPBSで2回洗浄して、10分間(exp.1)、又は30分間(exp.2)、示された濃度のÅ6と共に氷上でインキュベートした。次いで、抗CD44(DF1485;Santa Cruz Biotech.)、又はそのアイソタイプ対照を、1μg/ml(exp.1)、又は1、及び0.5μg/ml(exp.2)の終濃度で添加して、細胞を氷上で1時間インキュベートした。細胞を1回洗浄し、氷上で30分間FITC抱合ロバ抗マウスIgG(H+L)と共にインキュベートして、次いで、Beckman Coulter Epics XL-MCL細胞蛍光光度計を用いたFACS解析に供した。データ解析は、Coulter Epicsソフトウェアを使用して実行した。注:データは、データ収集の間にそれぞれの実験におけるネガティブ対照のMnIを<0.5に調整して得られた平均蛍光強度(MnI)として示してある。結果は、Å6が、SKOV3細胞に対するDF1485抗CD44の結合を阻害することを示す。異なる抗CD44抗体を使用する卵巣癌株における類似のCD44発現を図5において評価して、それについてのMnI値を図6において要約してある。その他の抗体でのこれらの結は、SKOV3細胞において見られた結果を示す。
【0227】
抗CD44抗体の1つの結合は、Å6とのプレインキュベーションによって阻害される。この抗体は、Å6を認識しないため、この結果は、Å6結合が立体障害を引き起こしているか、又は抗体エピトープがより長く認識されるようにÅ6結合がCD44のコンフォメーションを変化させていることを示す。CD44コンフォメーションの変化は、CD44のタンパク質分解に対する感受性を変更させることができる。
【0228】
(実施例IV:Å6CbioXLポリペプチド、及びÅ6-BSAにおける抗CD44(DF1485)イムノブロット解析)
この実施例は、DF1485抗CD44が、SKOV3ポリペプチドに架橋した、又はBSAにカップリングしたÅ6CbioのいずれのÅ6も認識しないことを示す。
【0229】
図7において、Å6CbioXL、及び対照(ConXL)SKOV3溶解物の30μgの一定分量、並びにÅ6架橋されたBSA(Å6-BSA)、及びBSAの2μgの一定分量を、抗CD44抗体であるDF1485(Santa Cruz Biotech)を使用するイムノブロット解析に供した。DF1485ブロットは、HRP抱合ヒツジ抗マウスIgG;重鎖、及び軽鎖特異的(GE Health Sciences)で染色した。ウサギ抗Å6ブロットは、HRP抱合ロバ抗ウサギIgG;重鎖、及び軽鎖特異的(Jackson Immunoresearch)で染色した。染色したバンドは、ECLプラス化学ルミネセンス試薬(GE Health Sciences)によって視覚化して、Hyperfilm ECLフィルム(GE)に曝露した。パネル1では、抗CD44は、Å6CbioXL(Aレーン)、及び対照(C)レーンにおいてバンドを生じた。バンド強度低減によって示されるように、Å6CbioXLは、CD44に対する抗CD44の結合を低減させる。交差反応性は、パネル1のレーン3、及び4に示されるように、Å6-BSA抱合体、又はBSAでは観察されない。加えて、Å6CbioXL、及びConXL溶解物の2μgの一定分量を、Å6Cbioで標識されたポリペプチドを同定するためにHRP-ストレプトアビジンで同時にブロットして、パネル2に示した。図7の第3パネルに示すように、2μgのÅ6-BSA、及びBSAも、Å6-BSA上のÅ6の存在を確認するために、Rb抗Å6でブロットした。Å6-BSA抱合体は、抱合体上のÅ6の存在を示すバンドを示す。BSAを有する対照レーンは、このバンドを示さない。
【0230】
(実施例V:抗CD44(DF1485)における、Å6に結合する能力、又はRb抗Å6KLH結合を阻害する能力を評価するÅ6 ELISA)
この実施例は、Å6ELISAにおいて、抗CD44であるDF1485が、Å6に直接結合せず、またRb抗Å6KLHの結合を阻害しないことを示す。
【0231】
図8aにおいて、Å6ペプチド(PBS中に10μg/ml;100μL/ウェル)を、4℃で一晩マイクロタイターウェル上に吸収させた。室温にて1時間1%BSAでブロッキングした後、Rb抗Å6KLH、そのプレブリード対照、抗CD44(DF1485)、又はそのアイソタイプ対照の示された希釈を二連のウェルに添加して、室温にて1時間インキュベートした。抗体結合は、HRP抱合ロバ抗RbIgG(H+L;Jackson Imm. Research)、又はヤギ抗マウスIgG(H+L;GE Health Sciences)の1/7,500希釈で検出し、続いてTMB安定化基質(Invitrogen、Carlsbad、CA)で発色させた。図8aは、抗CD44、及びそのアイソタイプ対照がÅ6ペプチドに結合しないことを示す。対照的に、抗Å6-KLHは、450nm(OD450)にて希釈依存的な光学濃度を示し、Å6ペプチドに対するその結合を証明している。プレブリードでの対照は、また、Å6ペプチドを認識する既存の抗体が無いことを示す。図8bにおいて、DF1485抗CD44、又はそのアイソタイプ対照の示された濃度の存在下におけるRb抗Å6-KLH(1/1600希釈)の結合を上述したように評価した。有意に、Rb抗Å6-KLHの結合は、DF1485抗CD44、又はそのアイソタイプによって競合的的に阻害されなかった。
【0232】
(実施例VI:卵巣癌株におけるCD44発現)
この実施例は、イムノブロット解析を使用した卵巣癌株におけるCD44発現を示す。
【0233】
図9において、SKOV3、A2780、Ovcar4、及びOvcar5細胞のコンフルエント培養のTriton X-100溶解物は、5%β-メルカプトエタノール還元剤の非存在下(左パネル)、又は存在下(中央、及び右パネル)において、SDS-PAGE試料緩衝液内で更に可溶化した。30μgの一定分量を、SDS-PAGE、並びに抗CD44モノクローナル抗体DF1485(左、及び中央パネル)、及びB-F24(右パネル)でのイムノブロット解析に供した。なお、SKOV3レーンにおけるバンドは、還元条件下においてさえ残り続ける。これらの結果は、SKOV3細胞がその他の卵巣株化細胞より有意に高いCD44発現を示すことを示す。
【0234】
(実施例VII:A2780、及びSKOV3細胞の化学走性に対するÅ6の効果)
この実施例は、2つの異なる卵巣癌株化細胞における化学走性に対するÅ6の効果を示す。
【0235】
A2780(図10a)、及びSKOV3(図10b)細胞を37℃にて30分間、示した濃度のÅ6ペプチドと共にインキュベートした。6,000細胞を示す一定分量を、Boydenチャンバーにおける四連のCnI被覆フィルター(8μm孔)の上に置き、及び細胞を、示された濃度のÅ6を含むNIH3T3調整培地中の10ng/mlVEGFに反応して一晩遊走させた。遊走完了時に、膜の先端面を拭き取ってきれいにし、基底面上の遊走性細胞をギムザ染色法で染色して、膜の代表的な領域に存在する細胞を計数した。データは、複製したフィルターから得られた平均+/-標準偏差で表す。図10aは、A2780の遊走がÅ6ペプチドの存在によって本質的に影響を受けないことを示す。対照的に、図10bは、Å6ペプチドの存在下におけるSKOV3遊走の強力な阻害を示す。これは、CD44がÅ6ペプチドのターゲットであることのさらなる確認を提供する。
【0236】
(実施例VIII:ヒアルロン酸に対するSKOV3細胞の接着)
この実施例は、卵巣癌株化細胞SKOV3のヒアルロン酸との接着を示す。
【0237】
図11において、SKOV3細胞を10μMのÅ6、又は100ng/mlのPMAの有無において一晩培養した。次いで、細胞を剥離し、洗浄して、37℃にて30分間、20μg/mlのCFDA-SEと共に添加した。洗浄後、細胞を、10%FCSを含むPBS中に再懸濁して、100,000細胞を示す3組の一定分量を、添加物なし、1、若しくは10μMのÅ6と共に、又は20ng/mlのIM7、ブロッキング抗CD44ラットモノクローナル抗体と共に、室温にて30分間インキュベートした。次いで、細胞を50μLの1mg/mLのHAで一晩被覆したマイクロタイターウェル内に置き、10%FCSで30分間ブロッキングした。細胞を室温にて30分間接着させた後、ウェルをデカントして、3回洗浄した。それぞれのウェルにおける蛍光を評価し(励起/発光:460/536nm)、3組の決定における平均蛍光値(+/標準偏差)を算出した。これらの結果は、HAに結合するSKOV3がÅ6ペプチドによって増強されるが、Å6ペプチドの濃度の10倍の増大ではほとんど効果がないことを示す(グラフの中央の2つのセット)。IM7での対照実験(一番右のグラフ)は、この抗CD44の存在下においてHAに結合するSKOV3の阻害を示し、これは、HAに結合するCD44の役割を示す。これらの結果は、Å6ペプチドがCD44とHAとの間の相互作用を調整する役割を有することを示す。
【0238】
(実施例IX: A2780細胞のヒアルロン酸に対する接着)
この実施例は、卵巣癌株化細胞A2780のヒアルロン酸との接着を示す。
【0239】
図12において、A2780細胞を10μMのÅ6、又は100ng/mlのPMAの有無において一晩培養した。次いで、細胞を剥離し、洗浄して、37℃にて30分間、20μg/mlのCFDA-SEと共に添加した。洗浄後、細胞を、10%FCSを含むPBS中に再懸濁して、100,000細胞を示す3組の一定分量を、添加物なし、1、若しくは10μMのÅ6と共に、又は20ng/mlのIM7、ブロッキング抗CD44ラットモノクローナル抗体と共に、室温にて30分間インキュベートした。次いで、細胞を50μlの1mg/mlのHAで一晩被覆したマイクロタイターウェル内に置き、10%FCSで30分間ブロッキングした。細胞を室温にて30分間接着させた後、ウェルをデカントして、3回洗浄した。それぞれのウェルにおける蛍光を評価し(励起/発光:460/536nm)、3組の決定における平均蛍光値(+/標準偏差)を算出した。結果は、A2780細胞がCD44を欠き、HAに結合しないことを示す。更にまた、Å6ペプチドは、HAに対するこの株化細胞の結合を実質的に調整しない。
【0240】
(実施例X:Å6を有する培養に反応したCD44の二量体化)
この実施例は、より高分子量のバンドがÅ6の存在下において培養されたSKOV3細胞において形成されることを示す。
【0241】
図13において、SKOV3細胞を、添加物なし、1、若しくは10μMのÅ6、又は100ng/mlのPMAと共に20時間培養した。Triton X-100溶解物を産生して、非還元条件下でSDS-PAGE試料緩衝液中で更に可溶化した。7.5μgの細胞タンパク質を示す一定分量を、SDS-PAGE、続く抗CD44ネズミモノクローナルB-F24でのイムノブロット解析に供した。染色されたより高分子量バンドの存在は、CD44の二量体、及び/又はオリゴマーを示し得る。
【0242】
(実施例XI:SKOV3細胞に対するIM7結合)
この実施例は、Å6の存在下、及び非存在下におけるSKOV3細胞に結合するIM7を示す。
【0243】
図14a、及び図14bにおいて、SK0V3細胞を、4℃にて30分間、示された濃度のÅ6と共にインキュベートした。次いで、IM7(1μg/ml)を添加し、4℃にて30分間結合させ、その後細胞を洗浄して、4℃にて30分間FITC-ロバ抗ラットIgGと共にインキュベートした。細胞を一度洗浄し、次いでFACs解析に供した。結果は、Å6ペプチドの濃度が増大すると共に抗体結合が増大することを示す。これは、Å6ペプチドがCD44特異的な抗体に対する結合を媒介することを証明する。
【0244】
(実施例XII:転移の阻害)
この実施例は、メラノーマ肺転移モデルにおける転移の阻害を示す。
【0245】
B16メラノーマ転移は、当該技術分野において周知である。転移に対する化合物の阻害効果を評価するための典型的なプロトコルは後述する。このようなプロトコルは、転移に対するÅ6の効果を評価するために行った。
【0246】
簡潔には、B16メラノーマ細胞を、95%空気、及び5%CO2の雰囲気下で37℃にて、10%ウシ胎児血清と共にRPMI-1640中で培養することができる。6〜8週のC57BL/6Jマウスは、市販の供給元から購入することができる。肺転移モデルのために、100μl生理食塩水中に懸濁された約1×1O5メラノーマ細胞を、Å6の存在下において又は非存在下における尾静脈に注射した。結果を図15に示してある。Å6ペプチドの投与は、50%、又はそれ以上まで肺転移を阻害した。
【0247】
(実施例XIII:NASAPPEEペプチドは、SKOV3遊走を阻害する)
この実施例は、NASAPPEEペプチド(配列番号:3)がNIH3T3-CM/VEGFで誘導されるSKOV3遊走を阻害したことを示す。阻害範囲は、69〜83%であった。
【0248】
SKOV3細胞をトリプシン処理によって収集して、RPMI-0.5%BSAで一度洗浄する。次に、細胞をRPMI+0.5%BSA中に6E4/mL(6000細胞/1OOμL)に再懸濁する。ペプチドを500μLのペプチドNASAPPEE(2×濃度、最終濃度100、10、1、0.1、0.01、0.001μMにて)に添加した500μLの細胞で前処理して、混合物を5%CO2下で、37℃にて30分間インキュベートした。Boydenチャンバーは、下部チャンバーに:220μLの血清/BSAを含まないDMEM、又はNIH3T3CM+10ng/mlのVEGF、又はNIH3T3CM+1Ong/mlのVEGF+ペプチドを置く以下によって構築する。下部チャンバーの上端上に8μmのフィルターを置く。8μmフィルターは、使用前に、4℃にて一晩1mg/mlコラーゲンIで被覆し、PBSで2回洗浄し、空気乾燥させる。Boydenチャンバーの上部に、ペプチド前処置をした細胞、又はしない200μLの細胞を添加する。ペプチドは、上部、及び下部のチャンバーの両方にあることに注意する。細胞をインキュベーターにおいて5%CO2下、37℃にて一晩遊走する。次に、Boydenチャンバーを分解して、フィルターを回収する。回収後のフィルター上の細胞を室温にて3分間、-20℃メタノールで処理して、室温にて7分間、30%ギムザで染色して、水で2回洗浄する。フィルターをスライド上に乗せて、空気乾燥させ、細胞を計数する。
【0249】
細胞数は、4OXの対物レンズを使用してフィルターの4つの領域において細胞を計数することによって得た。下部チャンバー内に遊走する細胞は、また、以下のように計数した:a)下部チャンバーにおける200μLの流体を、96ウェルプレートのウェルに移した;b)プレートを、5分間1200rpmにて遠心分離した;c)180μLの上清を除去した;d)細胞ペレットを残りの20μL流体で再懸濁して、血球計算板を使用して細胞を計数した。結果を図18に示してある。細胞遊走阻害は、100μM〜1nMの間の濃度の比較できる有効性で達成される。これは、5pM〜100nMの間で有効であるÅ6ペプチドに有利に匹敵する。
【0250】
この出願の全体にわたって、種々の刊行物を括弧内に参照した。これらの刊行物の開示は、これらの全体において、本発明が属する技術水準をより完全に記述するために、この出願において参照により本明細書に組み込まれる。
【0251】
本発明は、開示した実施態様を参照して説明したが、当業者は、上に詳述された具体的な実施例、及び研究が、本発明の単なる例証であることを容易に理解するであろう。本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更がなされ得ることを理解すべきである。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年3月6日に出願された米国仮出願番号第61/158,321号、及び2009年10月6日に出願された米国仮出願番号第61/249,234号に対する優先権の利益を主張し、それぞれの内容の全てが本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明は、一般的には細胞浸潤、及び遊走を調整する小分子に関し、より具体的にはCD44に対する結合によって細胞浸潤、及び遊走を調整するペプチドに関する。CD44は、ヒアルロナート/ヒアルロン酸(HA)、並びにコラーゲン、及びフィブロネクチンのための主な細胞表面受容体である。これは、細胞-細胞、及び細胞-細胞外マトリックス相互作用、細胞遊走、ホーミングリンパ球、白血球活性化、造血、ケモカイン、及び成長因子の提示、並びに転移性伝播を含む生理的、並びに病理学的プロセスの多様な範囲での役割を担っている。CD44は、細胞生存の促進において基本的な役割を果たすことが報告されており、またCD44発現の喪失は、死滅プログラムにおける重要な要素であることが報告されている。
【0003】
CD44細胞表面受容体は、複数のアイソフォームを発現し、それらのいくつかは、腫瘍成長、及び転移に関与している。転移性CD44変異体の発現は、ヒト乳房、及び結腸の腫瘍に見ることができ、また癌進行中には早期に生じ得る。
【0004】
癌転移、及びその他の炎症性のプロセスにおけるCD44の役割を考慮すれば、CD44活性化に基づいたこれらの状態の治療、診断、及びイメージングを可能にする化合物を開発することは、有益であろう。本発明は、これらの需要を満たし、かつその上関連する利益を提供する。
【発明の概要】
【0005】
(発明の要旨)
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、配列番号:3のペプチド、CD44を活性化する能力を維持しているその置換、及び付加変異体に関する。
【0006】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、CD44ポリペプチドと配列番号:3のペプチドを含む複合体に関する。
【0007】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、CD44ポリペプチドとÅ6ポリペプチドを含む複合体に関する。
【0008】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、ヒトCD44のリンク領域配列を有する単離されたポリペプチド、その機能的に活性な断片、置換変異体、及び付加変異体に関する。
【0009】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間シグナル伝達活性を調整することを含む、前記方法に関する。
【0010】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドにおけるCD44ポリペプチドに対する結合の測定であって、結合がCD44ポリペプチドのシグナル伝達活性を調整する、前記測定;及びシグナル伝達活性の変化を測定することを含む、前記方法に関する。活性の変化は、異常な細胞遊走、又は浸潤を示す。
【0011】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドの存在下においてCD44ポリペプチドの結合、又は下流のシグナル伝達活性をイメージングすることを含む、前記方法に関する。
【0012】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、ペプチド治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法であって、ペプチドは、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドである、前記方法に関する。本方法は、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、ペプチド治療指標に特異的な薬剤と接触させること;試料中のペプチド治療指標に対する薬剤の結合であって、指標の存在を指し示している結合を決定すること、及び試料中に存在するペプチド治療指標を有する集団から対象を選択して、ペプチド治療的処置に反応する亜集団を同定することを含む。ペプチド治療指標は、CD44ポリペプチドを含む。
【0013】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、CD44ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法であって、試験化合物、及び配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドを加えること、及び前記試験化合物とペプチドとの競合的結合を測定することを含む、前記方法に関する。
【0014】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間CD44の分断を調整することを含む、前記方法に関する。
【0015】
いくつかの態様において、本明細書に開示される実施態様は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、配列番号:3のペプチド、又はÅ6ポリペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、結合によってCD44ポリペプチド活性の減感作を生じさせることを含む、前記方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HRP-SAブロッティングを使用するÅ6CbioXLポリペプチドの免疫沈降を示す。
【図2】ターゲットとしてのCD44を確認するための、HRP-SAブロッティングを使用するÅ6CbioXLポリペプチドの免疫沈降を示す。
【図3】HRP-SAブロッティングを使用するÅ6CbioXLポリペプチドのさらなる免疫沈降を示す。
【図4】図4a、及び図4bは、配列番号:1のペプチドの存在下におけるSKOV3細胞に結合する抗CD44(DF1485)のFACs解析を示す。
【図5】FACs解析を使用する卵巣癌株におけるCD44発現を示す。
【図6】卵巣癌株におけるCD44発現についてのFACs MnI値の概要を示す。
【図7】Å6CbioXLポリペプチド、及びÅ6-BSAにおける抗CD44(DF1485)イムノブロット解析を示す。
【図8】図8a、及び図8bは、抗CD44(DF1485)の能力である配列番号:1のペプチドに結合する能力、又はRb抗-Å6-KLH結合を阻害する能力を評価するÅ6ELISAを示す。
【図9】イムノブロット解析を使用する卵巣癌株におけるCD44発現を示す。
【図10】A2780(10A)細胞、及びSKOV3(10B)細胞の化学走性に対する配列番号:1のペプチドの効果を示す。
【図11】配列番号:1のペプチドの存在下、及び非存在下における、ヒアルロン酸に対するSKOV3細胞の接着を示す。
【図12】配列番号:1のペプチドの存在下、及び非存在下における、ヒアルロン酸に対するA2780細胞の接着を示す。
【図13】配列番号:1のペプチドの存在下における、CD44二量体化を示すより高分子量バンドの形成を示すイムノブロット解析を示す。
【図14】図14a、及び図14bは、配列番号:1のペプチドの存在下、及び非存在下においてSKOV3細胞に結合するIM7を示す。
【図15】Å6の存在下において、又は媒体のみでの、メラノーマ肺転移モデルにおける転移の阻害を示す。
【図16】Å6(配列番号:1)と本発明の配列番号:3のペプチドとの間の相同性を示す。
【図17】CD44のHA結合ドメインを示す。結合ドメイン内のCD44リンクモジュールは、下線を引いたアミノ酸によって示される。
【図18】配列番号:3のペプチドの存在下におけるのSKOV3遊走の阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本開示は、部分的には、ペプチド、並びに細胞遊走、及び浸潤の調整におけるこれらの使用に向けられる。一つの実施態様において、本発明は、
【化1】
、及びキャップされた変異体を提供する。
【化2】
の相同性ペプチド、並びに関連するペプチド(Å6ペプチド)、及びペプチド擬態は、化学走性を阻害する能力を示す。本明細書に開示される実施態様は、配列番号:1が、CD44ポリペプチドを発現する細胞のヒアルロン酸(HA)に対する結合を強化するという発見に基づいた、種々の治療、診断、イメージング、及び薬物発見方法に関する。いくつかの実施態様において、本発明は、また、CD44のHAに対する結合を強化するための、配列番号:3、及びキャップされた変異体の使用に向けられる。細胞運動に関する種々のシグナル伝達経路にCD44が関与するため、これは、例えば癌、特に転移性癌、並びに関節炎などの多数の異常な炎症性のプロセスを治療するための療法の開発のための有益なターゲットである。
【0018】
また、さらなる実施態様において、本発明は、Å6、Å6ペプチド、若しくはペプチド擬態、又は配列番号:3、若しくはそのキャップされた変異体とCD44ポリペプチドとの間の種々の複合体に向けられる。下記の実施例において示されるように、配列番号:1のターゲットはCD44である。更にまた、下記の実施例Xは、配列番号:1のCD44に対する結合により、このような複合体が、その後二量体、及びその他のより高分子量の凝集体を含むCD44クラスターを形成することを示す。Å6ペプチドと同様に、配列番号:3が遊走を阻害する能力を下記の実施例XIIIに示した。
【0019】
本明細書に使用される、「CD44」、又は「CD4ポリペプチド」は、野生型CD44、又はCD44標準(CD44s)、並びにスプライス変異体をいい、そのいずれもが発現の分布、及び程度に依存する腫瘍転移、及び/又は癌と関連する生物マーカーであることができる。CD44は、膜結合形態、並びに膜結合形態のタンパク質分解によって細胞外に放出される「分断された」可溶性形態のsCD44の両方を含む。この用語は、また、CD44s、及びCD44変異体の種々のグリコシル化された誘導体を包含する。CD44は、また、サイトゾルにおいてそれ自体を分布させる細胞内切断産物を形成することができる。これらのサイトゾル切断産物は、CD44ポリペプチドの転写を更に刺激することができる。
【0020】
本明細書に使用される、「異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態」は、限定されないが、腫瘍転移、炎症性のプロセス、及び免疫不全などのプロセスを含む。異常な細胞遊走、及び/又は浸潤と関連する状態は、また、血管疾患、精神遅滞、線維形成、及び腫瘍形成を含む。
【0021】
本明細書に使用される、「結合」という用語は、例えば水素結合、塩橋、ファンデルワールス引力その他同様のものを含む非共有結合性の相互作用を介した、標的と化合物の会合をいう。本発明の方法において、配列番号:1、及び配列番号:3、又はキャップされた変異体は、CD44ポリペプチドに結合する。
【0022】
本明細書に使用される、「Å6」、又は「Å6ポリペプチド」という用語は、実質的にアミノ酸配列
【化3】
(また、一文字アミノ酸コードにおいて
【化4】
としても略記される)を有するポリペプチド、若しくは置換変異体、付加変異体、又はペプチド擬態を含むその化学的誘導体を意味することが意図される。Å6ポリペプチドは、米国特許番号第5,994,309号;第6,696,416号;及び第6,963,587号の主題である。本発明のÅ6ポリペプチドは、以下の活性の1つ以上を示す:(a)以下のインビトロバイオアッセイの1つ以上における、下記のような配列番号:1、又はキャップされた変異体の生物学的活性の少なくとも約20%:(i)Matrigel(登録商標)アッセイにおける浸潤;(ii)Matrigel(登録商標)上での内皮チューブ形成、若しくは(iii)塩基性線維芽細胞成長因子、及び血管内皮成長因子の存在下におけるフィブリンマトリックス上での内皮チューブ形成;又は(b)配列番号:1の結合部位を有する細胞、又は分子に対する結合について、標識された配列番号:1、又はキャップされた変異体と競合するような結合活性。本発明のÅ6ポリペプチドのキャップされた変異体は、そのアミノ末端、若しくはカルボキシル末端のいずれか、又は両方に化学的部分を有するÅ6をいう。この部分は、例えば、アセチル(Ac)、及びアミド(Am)基などの化学基を含むことができる。特に有用なキャップされたÅ6ポリペプチドは、アミノ末端にて窒素原子に結合したアセチル基、及びC末端のカルボキシル基に結合したアミド基を含む。このキャップされたポリペプチドは、
【化5】
のように書くことができる。具体的実施態様において、本発明は、また、配列番号:3の相同的Å6ポリペプチドを提供する。
【0023】
本明細書に使用される、「ペプチド擬態」という用語は、構造的に基づいてペプチド活性を有するペプチド様分子を意味する。このようなペプチド擬態は、化学修飾ペプチド、天然に存在しないアミノ酸を含むペプチド様分子、及びペプトイドを含み、またペプチド擬態が由来するペプチドの選択的なホーミング活性などの活性を有する(例えば、GoodmanおよびRoの文献、"Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery" Vol. 1の薬物設計のためのペプチド擬態(Peptidomimetics for Drug Design)(M.E. Wolff編; John Wiley & Sons(1995)、803-861ページを参照されたい)。
【0024】
本明細書に使用される、「シグナル伝達経路」という用語は、細胞がある種類のシグナル、又は刺激を別のものに変換する任意のプロセスをいう。典型的なシグナル伝達は、二次メッセンジャーによって活性化された酵素によって実行される細胞の内部(及び外部)の生化学的な反応の秩序ある順序を含み、結果としてシグナル伝達経路を生じる。例えば、CD44は、細胞外でヒアルロン酸(HA)に結合し、次にMAPK(ERK1/ERK2)、又はPI3Kを含むシグナル伝達経路に関与することができる膜貫通ポリペプチドである。その他のシグナル伝達経路は、限定されないが、FAK、BMP-7、例えばLck、Fyn、Lyn、及びHckなどのSrc-ファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼ(PTKs)、カルシウム/カルモジュリン経路、Ras、並びにRhoファミリーGTPaseを含む。
【0025】
本明細書に使用される、「有効な量」は、癌を治療することに関して使用されるときに、癌の治療、及び/又は癌転移に対する予防において使用されるペプチドの量を適格とすることが意図される。この量は、癌転移を予防し、減少させ、又は除去する目的を達成するであろう。有効な量は、一つの実施態様において約1mg/kg〜約1000mg/kg、及び別の実施態様において約5mg/kg〜約500mg/kgを含む。炎症性状態を治療することに関して使用されるときには、「有効な量」は、炎症性状態の治療において使用されるペプチドの量を適格とすることが意図される。この量は、炎症を予防し、減少させ、又は除去する目的を達成するであろう。有効な量は、一つの実施態様において約1mg/kg〜約1000mg/kg、及び別の実施態様において約5mg/kg〜約500mg/kgを含む。
【0026】
「プロドラッグ」という用語は、前駆体薬剤の代謝を介してインビボでより活性にされる化合物をいう。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、薬物の加水分解およびプロドラッグ代謝:化学、生化学、及び酵素学(Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism: Chemistry, Biochemistry and Enzymology)(Testa, Bernard and Mayer, Joachim M. Wiley- VHCA, Zurich, Switzerland 2003)に記載されているように、プロドラッグとして存在することができる。本明細書に記載されるペプチドのプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学的変化を受けて活性なペプチドを提供する、ペプチドの構造的に修飾された形態である。加えて、プロドラッグは、生体外の環境において化学的、又は生化学的方法によって活性なペプチドに変換させることができる。例えば、プロドラッグは、適切な酵素、又は化学的試薬と共に経皮貼付リザーバー内に置いたときには、化合物にゆっくり変換させることができる。プロドラッグは、たいてい、いくつかの状況において、親ペプチドより容易に投与することができるので有用である。例として、これらは、親ペプチドがそうではないのに対して、経口投与によって生物が利用可能であろう。プロドラッグは、また、医薬組成物における溶解性を、親ペプチドを超えて改善させることができる。プロドラッグの加水分解開裂、又は酸化的活性化によるものなどの、多種多様なプロドラッグ誘導体が、当該技術分野において公知である。プロドラッグの例は、限定されないが、C末端エステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後、活性な実体であるC末端カルボン酸に代謝的に加水分解されるペプチドであろう。
【0027】
本明細書に使用される、「治療的に許容し得る塩」という用語は、水溶性、若しくは油溶性、又は分散性かつ治療的に許容し得る本発明のペプチドの塩、又は双性イオン形態を表す。塩は、ペプチドの最終的な単離、及び精製の間に、又は別途、適切な酸、若しくは塩基で適切なペプチド製剤のpHを調整することによって製造することができる。
【0028】
本明細書に使用される、癌の治療のための「十分な期間」は、対象のその他の部分に癌が転移する機会を減少させるために十分な術前、又は術後の時間を意味する。このような時間の量は、例えば、癌の根絶、及び/又は緩解を調べることによって評価することができる。炎症の治療のための「十分な期間」は、対象がその衰弱効果をもはや受けないレベルにまで炎症性プロセスを低減させるのに十分な時間を意味する。特定の障害については、頻度、投薬量、及び時間の長さは、医師の診察において決定することができる。
【0029】
いくつかの実施態様において、本発明は、配列番号:3のペプチド、CD44を活性化する能力を維持する置換、及び付加変異体を提供する。CD44を活性化する能力を測定することは、実施例において、特に実施例Xにおいて以下に記述される方法によって達成することができる。置換変異体は、更に以下に記述するように同類置換を含む。付加変異体は、一つの実施態様において50アミノ酸以下、別の実施態様において40アミノ酸以下、又はその他の実施態様において30、20、15、14、13、12、11、10、又は9アミノ酸以下であるペプチドを含み、これらの間の全ての値を含む。
【0030】
いくつかの実施態様において、本発明は、配列
【化6】
から本質的になるペプチドを提供する。CD44のアミノ酸120〜127に対応する配列番号:3の配列番号:1との配列比較を図17に示してある。配列番号:1と配列番号:3との間の高い相同性は、このような構造が類似の反応性を提示することができることを示す。実際に、下記の実施例XIIIにおいて示されるように、配列番号:3はSKOV3細胞の遊走を阻害することが可能である。そのうえ、より大きなCD44ポリペプチドという状況における配列番号:3の存在は、CD44のこの領域がCD44の凝集、及び活性化に関係する部位として役に立つことができることを示す。
【0031】
配列番号:3に対する修飾は、いくつかの実施態様においてキャップされた変異体を含む。Å6ポリペプチドのキャップされた変異体のように、配列番号:3のキャップされた変異体は、そのアミノ末端、若しくはカルボキシル末端のいずれか、又は両方において化学的部分を有するペプチドをいう。本部分は、例えば、アセチル(Ac)、及びアミド(Am)基などの化学基を含むことができる。一つの実施態様において、配列番号:3のキャップされたペプチド変異体は、アミノ末端にて窒素原子に結合したアセチル基、及びC末端のカルボキシル基に結合したアミド基を含む。このキャップされたポリペプチドは、
【化7】
のように書くことができる。当業者は、ペプチドのキャッピングがペプチドに代謝的安定性を与えることができると認識するであろう。
【0032】
本発明は、また、CD44ポリペプチドに結合された複合体としてのÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を提供する。ペプチド-CD44複合体は、いくつかの実施態様において2つのCD44ポリペプチドを含む。その他の実施態様において、ペプチド-CD44複合体は、例えば三量体、四量体を含む、2つを超えるCD44ポリペプチドを含む。いくつかの実施態様において、ペプチド-CD44複合体は、HAの結合を調整し、及び従って、下流の細胞シグナリングイベントも調整する。
【0033】
いくつかの実施態様において、CD44ポリペプチドとの複合体は、細胞表面上にあることができる。これは例えば、膜結合型のCD44の場合である。その他の実施態様において、複合体は、可溶性CD44(sCD44)などの非結合型CD44と共に生じることができる。いくつかの実施態様において、種々の複合体のいずれかを単離することができる。
【0034】
いくつかの実施態様において、本発明は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、医薬として許容し得る媒体中の、配列番号:1のペプチド、その付加変異体、その置換変異体、その塩(総称してÅ6ポリペプチド)、及びこれらの組み合わせの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、シグナル伝達経路を調整することを含む、方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施態様において、本発明は、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、医薬として許容し得る媒体中の、配列番号:3のペプチド、及びキャップされた変異体の有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、シグナル伝達経路を調整することを含む、方法を提供する。
【0036】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体を利用する治療方法は、望ましくない細胞遊走、細胞浸潤、遊走で誘導される増殖、脈管形成、若しくは転移と関連する疾患、又は状態を有する対象において、細胞遊走、及び浸潤、又は遊走で誘導された細胞増殖を阻害するために有用である。細胞遊走プロセスは、例えば、生物中のある位置から別の位置までの細胞の移動運動を含む。細胞遊走は、当該技術分野において周知であり、一般的に、先導端における細胞骨格重合、ECMからの局所的な分離、続く移動、再付着、及び解重合を含む(Parsonsらの文献、Science 302:1704-9,(2003))。例示的な細胞遊走プロセスは、例えば、正常な発生の間に、組織成長、及びホメオスタシスの全体にわたって、並びに転移などの異常な増殖状態の間に生じる。例えば、胚発生の間の組織形成、創傷癒合、及び免疫反応は、全て特異的位置への特定の方向への細胞の移動を必要とする。同様に、このプロセスの間のエラーは、血管疾患、慢性関節リウマチ、腫瘍形成、転移、及び精神遅滞を含む有害な結果を有し得る。細胞浸潤プロセスは、組織内への、又は組織を通り抜ける、細胞の付着、及び浸透を含む。細胞浸潤は、細胞の移動運動を含むため、細胞遊走に関連し得る。しかし、浸潤性プロセスは、単に遊走性であるだけの細胞プロセスと比較して、細胞接着受容体、及び/又はECMポリペプチドの異なる特性を含み得る。細胞浸潤は、また、タンパク質分解、及びマトリックス再構成などのその他の細胞プロセスを含み得る。例示的な細胞浸潤プロセスは、血管、又は基底層の中への、又はそれを通り抜ける、転移性細胞への付着、浸透のタンパク質分解である。例えば、血管、又は基底層の中への、又はそれを通り抜ける細胞の移動運動は、細胞遊走によって生じ得る。その他の様々な細胞浸潤プロセスもまた、当該技術分野において周知である。
【0037】
細胞転移は、第一の部位から体の他の場所にある1つ以上の第二の部位への新生細胞、又は癌細胞の移動であり、二次癌腫を生じる。移動は、例えば、血管、又はリンパ管を介して生じ得る。従って、転移は、第一の部位から1つ以上の第二の部位までの癌、又はその他の新生細胞の伝播をいい、また細胞遊走、及び浸潤プロセスを含む。転移によって生成される腫瘍は、癌によって引き起こされる死の90%の原因となる。
【0038】
脈管形成は、既存の血管からの新たな血管の成長を含む細胞プロセスである。脈管形成は、成長、及び発達の間の、並びに創傷癒合における、正常なプロセスである。しかし、脈管形成は、休眠状態から悪性状態への腫瘍の移行にも関与する。腫瘍は、血管成長を誘導するため、成長因子分泌、及び毛細血管成長の腫瘍への誘導を介して、脈管形成は、細胞成長を増大させるために必要な栄養を腫瘍に供給する。脈管形成は、また、確立された固形腫瘍から離脱し、血管に入り、そして遠い第二の部位に移動することができる手段を単一の癌細胞に提供する。例示的なタイプの脈管形成は、内皮細胞による基底膜を分解するためのプロテアーゼ放出、親血管壁からの遊走、及び最後に血管内腔を形成する構造になることを含む、急速に成長する脈管形成である。
【0039】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体によって治療することができる疾患、又は状態は、原発性腫瘍、若しくは固形腫瘍、又は白血病、及びリンパ腫、転移性腫瘍の転移、浸潤、及び/又は成長、アテローム硬化症、心筋脈管形成、ポストバルーン血管形成術血管再狭窄、血管外傷後の新内膜形成、血管移植再狭窄、冠状動脈の副次的な形成、深部静脈血栓症、虚血性肢脈管形成、毛細管拡張症、化膿性肉芽腫、角膜疾患、ルベオーシス、血管新生緑内障、糖尿病性、及びその他の網膜症、後水晶体線維増殖症、糖尿病性新血管形成、黄斑変性症、子宮内膜症、関節炎、乾癬強皮症を含む慢性炎症性の状態と関連する線維形成、肺線維症、化学療法で誘導される線維形成、瘢痕を伴う創傷癒合、並びに線維形成;消化性潰瘍、挫傷、ケロイド、及び脈管形成、造血、排卵、月経、妊娠、及び胎盤形成の障害、又は浸潤、若しくは脈管形成が病原性である任意のその他の疾患、又は状態を含む。
【0040】
広範な異なるタイプの癌は、異常な細胞移動性プロセスを阻害するために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体で治療することができる。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体で治療することができる癌のカテゴリーは、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、及び中枢神経系癌を含む。癌腫は、副腎皮質性癌腫、基底細胞癌腫、肺癌腫を含む皮膚において、又は内臓に並んでいるか、若しくは覆っている組織において始まる癌をいう。肉腫は、骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性線維性組織球腫、及び軟骨肉腫を含む骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、又はその他の結合的、若しくは支持的な組織において始まる癌をいう。白血病は、骨髄などの血液を形成する組織において始まり、多数の異常な血球を生じて血液に入るようにする癌をいう。リンパ腫、及び骨髄腫は、免疫系細胞において始まる癌である。中枢神経系癌は、脳、及び脊髄の組織において始まる癌である。癌の由来となる体の部分に応じて、異なるタイプの癌は、例えば、卵巣癌、肺癌、肝癌、乳癌、脳腫瘍、子宮頸癌、大腸癌、前立腺癌、メラノーマ、膵臓癌、神経芽細胞腫、胃癌、又は皮膚癌を含む。全ての癌患者、特に転移癌患者は、抗遊走、抗浸潤、及び抗転移活性を示すÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療からの利益を得ることができる。
【0041】
理論によって拘束されることなく、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、下記の実施例Xにおいて証明されるように、CD44のクラスター形成、二量体化、オリゴマー形成、脂質ラフト再構成、及び/又は活性化を変化させ得る高次構造変化を誘導することができる。下記の実施例に示したように、配列番号:1の結合ターゲットはCD44である。従って、本発明の複合体は、その後、配列番号:1、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体がCD44ポリペプチドに対して結合することによって誘導される二量体、及びオリゴマーを含むCD44ポリペプチドのクラスターを形成することができる。可溶性CD44(sCD44)活性は、いくつかの癌において抗転移性であり得るため、このような活性化は、CD44分断が行われたときには、ポジティブであり得る。例えば、sCD44は、細胞表面CD44のHAに対する結合を遮断することによってメラノーマ腫瘍成長を阻害することが証明されている(Ahrensらの文献、Oncogene 20:3399-3408(2001))。活性化は、また、このような活性化がHAに対する細胞表面CD44の結合を遮断するときに、分断の非存在下においてもポジティブであり得る。
【0042】
上述したように、Å6ポリペプチドは、CD44において見いだされる共通のモチーフを共有する。構造、
【化8】
配列番号:1を有するÅ6ポリペプチドは、配列番号:3に関連があり、これは、図17に示されるようにCD44においてアミノ酸120-127として現れる。従って、CD44ポリペプチドは、Å6に対して有意な相同性がありかつ配列番号:3のペプチドと同一の、ネスト状の配列を有する。当業者は、配列番号:1のアセチル-リジンが、より大きなCD44ポリペプチドの中の配列番号:3のアスパラギン(例えば、第一、又は第二のアミドに結合したカルボニル)と構造的な類似性を共有することを認識するであろう。これらのアミド部分は、同様に高次構造的な制約を与えることができ、及び/又は同様に分子内、又は分子間相互作用を助長することができる。同様の構造的な特徴は、アセチル、又は同様にキャップされたアスパラギンを有する配列番号:3のペプチドにおいて見いだされる。CD44ポリペプチドの中のÅ6様配列は、配列番号:3と同一であり、標準的なエキソン3、及び4のスプライス部位にまたがっている。更に、CD44の中の配列番号:3におけるアスパラギンは、N-連結されたグリコシル化のための潜在的部位である。CD44ポリペプチドにおけるこの配列は、HA結合ドメインに近接しており、またこの配列のN末端側の2残基目に、ジスルフィド結合に含まれるシステイン残基がある。配列番号:1は、CD44に対する結合リガンドであり、かつ配列番号:1は、配列番号:3とこの構造的なモチーフを共有するため、及び配列番号:3がCD44の中に含有されているため、これらのペプチドは、例えば、二量体化部位、又はCD44のHAとの相互作用を可能にするその他の相互作用部位として役に立つことができる。
【0043】
これらの二量体化イベント、又はCD44とÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の相互作用をÅ6、若しくはÅ6ポリペプチドアゴニスト、又は配列番号:3、又はキャップされた変異体アゴニストで直接調整して、異常な細胞遊走、及び浸潤によって特徴づけられる状態を治療することができる。
【0044】
CD44ポリペプチドは、細胞間相互作用、細胞接着、及び遊走に関係する細胞表面糖タンパク質である。これは、ヒアルロン酸に対する受容体であり、またオステオポンチン(Yohkoらの文献、Cancer Res. 59:219-226(1999))、コラーゲン1、フィブロネクチン、フィブリン、ラミニン、及びコンドロイチン硫酸を含むコラーゲン(Naorらの文献、Adv. Cancer Res. 71:241-319(1997))、HB-EGF、及びb-FGFを含む成長因子(Bennettらの文献、J. Cell Biol. 128:687-698(1995))、マトリックスメタロプロテイナーゼ(Yuらの文献、Genes & Dev. 13:35- 48(1999))、及びサイトカイン(以下に概説される:Borlandらの文献、Immunology, 93: 139-148(1998)及びPontaらの文献、Nature Rev. MoI. Cell Biol. 4:33-45(2003))などのその他のリガンドとも相互作用することができる。HCELLと呼ばれるCD44の分化したシアルフコシル化された糖型は、ヒト造血幹細胞上で天然に見いだされ、また極めて強力なE-セレクチン、及びL-セレクチンリガンドである。HCELLは、「骨ホーミング受容体」として機能し、ヒト造血幹細胞、及び間充織幹細胞の骨髄への遊走を導く(Sacksteinらの文献、Nature Medicine 14:181-187(2008))。
【0045】
CD44は、リンパ球活性化、再循環、及びホーミング、造血、及び腫瘍転移を含む広範な細胞機能に関与する。CD44遺伝子の転写産物は、多くの機能的に異なるアイソフォームを生じる複雑な選択的スプライシングを受けるが、これらの変異体のいくつかにおける全長の性質は、決定されていない。選択的スプライシングは、このポリペプチドの構造的、及び機能的な多様性の基礎となり、また以下に示すように腫瘍転移に関連があることが報告されている。大腸癌細胞上のCD44のスプライス変異体は、HCELL糖型を示し、これは、腸癌転移における重要な工程である血行力学的流動状態下において血管のEセレクチンに大対する結合を媒介する。CD44遺伝子転写は、少なくとも部分的に、βカテニン、及びWntシグナリング(腫瘍発生にも関連する)によって活性化される。
【0046】
また、理論によって拘束されないが、CD44の活性化が転移を含む遊走を阻害することができる、いくつかのメカニズムがある:1)Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、CD44活性の減感作を導くことができる長期の活性化/二量体化を生じさせることができる(Å6によって誘導される二量体化については、図13を参照されたい);2)活性化は、可溶性CD44の分断を誘導することができる;sCD44は、上述したようにいくつかの腫瘍株化細胞において転移を阻害することが示された;及び3)CD44活性化は、リガンド結合の有無にかかわらず、:a)遊走に阻害性であるマイクロフィラメント再構成を誘導する(例えば、ストレスファイバー上の皮質アクチンの増強);b)インテグリン活性を調整する;c)遊走依存的なシグナリングを調整する;及び/又はd)MMPの発現、活性、及び/又は隔離することを変化させることができる二次シグナル/細胞内会合を誘導することができる。
【0047】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、CD44活性の減感作を導くことができる長期の活性化-二量体化を生じさせることができる。CD44に対して結合したÅ6、配列番号:3、又はキャップされた変異体は、活性化の効率を減少させることができる。或いは、CD44に対して結合したÅ6、配列番号:3、又はキャップされた変異体は、リサイクルを減少させることができる。CD44に対して結合したÅ6、配列番号:3、又はキャップされた変異体は、受容体のエフェクター分子を分離させることもまたでき、又は受容体発現のダウンレギュレーションを生じさせ得る。
【0048】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、CD44を活性化し、次に可溶性CD44(sCD44)の分断を誘導することができる。CD44は、細胞外、及び細胞内の両方で、経時的なタンパク質分解性切断を受け得る。CD44細胞内ドメイン(ICD)断片CD44ICDは、シグナル伝達分子として作用し、これは、核に転位し、そして12-O-テトラデカノイルホルボール13-アセテート反応性のエレメントによって媒介される転写を活性化する。CD44ICDを発現する細胞はCD44メッセンジャーRNAを高レベルに生成し、これはCD44遺伝子がCD44ICDによる転写活性化の潜在的なターゲットの1つであることを示す(Okamotoらの文献、J. Cell Biol. 155(5):755-762(2001))。
【0049】
細胞外sCD44は、いくつかの腫瘍株化細胞の転移を阻害することが示されている。(一般的な総説については:Plattらの文献、MoI Pharm. 4:474-86(2008)を参照されたい)。より具体的には、sCD44がメラノーマ株化細胞に対してHAによる細胞増殖-促進効果を消滅させることができることが証明されている(Andereggらの文献、J Invest Dermatol, e-pub ahead of print(2008))。一つの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、sCD44を産生させる膜結合型CD44の切断を担う酵素であるプロテアーゼADAM1Oの調整を経て、分断を増強することができる(上記Andergregg)。sCD44におけるグリコシル化パターンが悪性マーカーとしての機能を果たすことができることが更に証明して、分断を制御する際のグリコシル化パターンの役割を更に示す(Limらの文献、Proteomics 16:3263-3273(2008))。いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、分断プロセスにおいて作用するCD44のグリコシル化された部分の相互作用を調整することによってsCD44の分断を調整することができる。
【0050】
種々のサイトカイン因子は、CD44の分断、その後のsCD44のHAとの相互作用の両方を調節し、最終的に生理的、及び病理学的プロセスにおけるCD44の影響を決定することができる。例えば、オンコスタチンM、及びトランスフォーミング成長因子β1(TGF-β1)は、両方ともCD44の分断を調整することができる(Cichyらの文献、FEBS Lett. 556(1 -3):69-74(2004))。従って、いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、オンコスタチンMの調整を経て分断を増強することができ、一方ではその他の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、TGF-β1の調整を経て分断を増強することができる。
【0051】
CD44活性化は、リガンド結合の有無にかかわらず、(a)例えばストレスファイバー上の皮質アクチンの増強によって、遊走に阻害性であるマイクロフィラメント再構成を誘導する(Yonemuraらの文献、J. Cell Biol. 145(7): 1497-509(1999));(b)インテグリン活性を調整する(Caseyらの文献、Clin. Exp. Med. 18:67-75(2000); Lessonらの文献、Am. J. Path. 154(5): 1525-1537(1999));(c)遊走依存的なシグナリングを調整する(Bourquiqnon, Seminar Cancer Biol. 8(4):251-9(2008); Vitettiらの文献、J. Biol. Chem. 283(7):4448-58(2008); Bourquiqnon, J. Neurochem. 101(4): 1002-17(2007); Thomeらの文献、J. Cell ScL 117, 373-380(2004))ことができる二次シグナル/細胞内会合を誘導することができる。例えば、CD44は、受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーのための、及びc-Met受容体のための補助受容体として作用することができ、受容体キナーゼ活性の活性化、並びに細胞生存、増殖、及び分化を含む多様な細胞プロセスの制御を生じ、及び/又は(d)MMPの発現、活性、及び/又は隔離することを変化させる(Spessotto らの文献、J. Cell Biology 158(6):1133-1144(2002); Pengらの文献、Int. J. Oncol. 31(5):1119-26(2007); Ohno et.al., J. Biol. Chem. 281(26): 17952-60(2006))。
【0052】
CD44は、多数の異なる環境において細胞シグナリング、及び/又は細胞機能を促進、又は阻害のいずれかをするように機能することができるため、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、同様に、異常な遊走、及び浸潤の阻害をもたらすために細胞機能を促進、又は阻害することができる。
【0053】
従って、いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、CD44活性化に対するアゴニストとして作用することができる。CD44活性化は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。いくつかの実施態様において、CD44活性化は、化学走性の阻害を導く特定の細胞シグナリングイベントを遮断することができる。その他の実施態様において、活性化されたCD44は、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。
【0054】
或いは、CD44に対して結合したÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体に関連する高次構造的な変化は、HAなどの天然のリガンドに対するCD44結合を変化させることができる。いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、HAに対するCD44結合を阻害することができ、一方ではその他の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、HAに対するCD44結合を増強することができる。例えば、本発明のペプチドは、sCD44に対するHA結合を増強すること、及び/又は細胞表面CD44に対するHAの結合を阻害することができる。細胞表面CD44-HA結合の阻害は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。その他の実施態様において、細胞表面CD44-HA結合の阻害は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを遮断することができる。またさらなる実施態様において、CD44-HA結合の阻害は、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。CD44の細胞表面プロセシングは、遊走プロセスと同等である(Cichyらの文献、J. Cell Biol. 161 :839-843(2003))。
【0055】
いくつかの実施態様において、CD44-HA結合を増強することにより、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。その他の実施態様において、CD44-HA結合を増強することにより、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを遮断することができる。またさらなる実施態様において、sCD44-HA結合などのCD44-HA結合を増強することにより、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。
【0056】
或いは、CD44に対して結合したÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体と関連する高次構造的な変化は、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を変化させることができる。いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を阻害することができ、一方ではその他の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を増強することができる。その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用の阻害は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。その他の実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用の阻害は、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを遮断することができる。またさらなる実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用の阻害は、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。
【0057】
いくつかの実施態様において、本発明は、図17において下線を引いたアミノ酸によって示されるように、ヒトCD44のリンク領域配列を有する単離されたポリペプチド、及び図17に示したとおりのヒトCD44のリンク領域から本質的になる単離されたポリペプチドを含むヒアルロン酸に対して結合する能力、及び/又はCD44を活性化する能力を維持しているその機能的に活性な断片を提供する。いくつかの実施態様において、リンクモジュールのアミノ酸は、本明細書において記述されたような保存的アミノ酸置換によって置換することができる。なおさらなる実施態様において、単離されたポリペプチドは、付加変異体を含むことができ、これは、40、30、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、及び1つまでの付加アミノ酸を含む50までの付加アミノ酸を含み、これらの間の全ての値を含む。なおさらなる実施態様において、本発明は、図17に示したとおりのCD44の単離されたヒアルロナン結合ドメインからなる単離されたポリペプチドを提供する。
【0058】
CD44は、図17に示すように、約160アミノ酸のヒアルロナン結合ドメインを有し、また下線を引いたアミノ酸として示される、単一のリンクモジュールを含む。リンクモジュールは、CD44のN末端の近くの細胞外に位置し、これはHAと相互作用することができ。HA結合に影響を及ぼす残基は、イタリックで示され、部位特異的変異実験を通じて同定されている。配列番号:3は、Å6と相同的であり、図17で示すようにリンクモジュールから離れた伸長部分として現れる。リンクモジュールは、ヒアルロナン結合タンパク質においてユビキタスなポリペプチドのスーパーファミリーであり、ヒアルロナン結合タンパク質は、例えばCD44、アグリカン、ベルシカン、ニューロカン、ブレビカン、LYVE-I、TSG-6、KIA0527、CAB61358、及びスタビリン-1を含む。CD44リンクモジュールは、特に、およそ100アミノ酸のドメインであり、そしてジスルフィド結合で結合される4つのシステインを含む。
【0059】
ヒト腫瘍壊死因子誘導遺伝子6(TSG-6)からのリンクモジュールの三次元構造は、溶液中の核磁気共鳴分光法によって決定されている(Kohdaらの文献、Cell 86:767-775,(1996))。リンクモジュール配列比較は、4つのシステイン残基を含む、リンクモジュールスーパーファミリー全体にわたって高度に保存された配列を示す。これは、リンクモジュールスーパーファミリーのための「コンセンサスフォールド」を導いた。
【0060】
細胞遊走プロセスの特徴である、ローリングにおいて係合することができないものに置換されたリンクモジュールを有するCD44キメラが証明されている(Lesleyらの文献、J. Biol. Chem. 27:(29):26600-26608(2002))。更にまた、個々のCD44のHAに対する低い結合活性は、細胞遊走における初期の工程を媒介する役割を果たす。対照的に、TSG-6のリンクモジュールは、白血球のローリングに適合しない鎖として作用する。従って、遊走と関連するローリングプロセスは、CD44-HA相互作用の可逆的かつ多効果の性質を生じる。TSG-6は、CD44-HA相互作用のモジュレーターとして示されている。
【0061】
従って、いくつかの実施態様において、本発明は、CD44のリンクモジュールを含む単離されたリンクポリペプチドを提供する。単離されたリンクポリペプチドは、例えば、転移と関連するローリング、及びその後の血管外遊走を防止するために、HA結合に対する阻害剤として作用することができる。いくつかの実施態様において、本発明は、CD44のリンクモジュールからなる単離されたポリペプチドを提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、CD44のリンクモジュールから本質的になる単離されたリンクポリペプチドを提供する。当業者は、HAに結合する能力を維持させながら、リンクモジュールにおける同保存的ミノ酸置換を含む軽微な変異をさせることができることを認識するであろう。
【0062】
更にまた、生物学的状況におけるCD44-HA相互作用の多効果の性質を考慮すれば、本発明は、また、多量体形態におけるリンクポリペプチドを提供する。このようなÅ6ポリペプチド、又は配列番号:3の多量体は、完全なリンクモジュールに類似の様式で機能することができる。
【0063】
いくつかの実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を増強することにより、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを引き起こすことができる。その他の実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を増強することにより、化学走性の阻害を導く細胞シグナリングイベントを遮断することができる。またさらなる実施態様において、その他の膜結合したタンパク質とのCD44相互作用を増強することにより、化学走性を阻害するために、1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。
【0064】
なおまたさらなる実施態様において、CD44の活性化、リガンド結合、又はその他の膜結合したタンパク質との相互作用の阻害、若しくは増強の任意の組合せにより、化学走性を阻害するために1つ以上のシグナル伝達経路を調整することができる。その他の実施態様において、CD44の結合は、特定のシグナル伝達経路に対して何ら効果がなくても疾患を治療するために十分であり得る。
【0065】
CD44のヒアルロン酸(HA)との細胞外結合は、例えば、例えばMAPK(ERK1/ERK2)、FAK、及びPI3Kを含む多数のシグナル伝達経路をトリガーすることができる。CD44が媒介することができるその他のシグナル伝達経路は、限定されないが、骨形態形成タンパク質7(BMP-7)、Lck、Fyn、Lyn、及びHckなどのSrcファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼ(PTKs)、カルシウム/カルモジュリン経路、Ras、並びにRhoファミリーGTPaseを含む。シグナル伝達経路は、また、RTK、例えばGタンパク質結合イオンチャネル経路、及びその他のイオンチャネル経路を含む多数のGPCR経路、インテグリン経路、例えばFAK、インテグリン関連キナーゼ(ILK)、特に興味深い新たなシステイン-ヒスチジンリッチなタンパク質(PINCH)、及びチロシンキナーゼアダプタータンパク質2の非触媒性領域(Nck2)によって媒介されるインテグリン経路、並びに種々のサイトカイン、及び成長因子によって媒介されるJak-STAT経路を含む。従って、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の存在下におけるCD44に対するHAの結合を変化させることにより、これらの例示した経路のいずれかを調整することができる。
【0066】
マウスNIH3T3細胞などのいくつかの細胞は、可溶性HAに結合することができる(Underhillの文献、J. Cell Science 56:177(1982))。しかし、多くの細胞は、固定されたHAのみに結合する(Lesley, Adv. Immun. 54:271-335(1993))。下記の実施例において使用したSKOV3は、FITC-HAに結合できなかったが、固定されたHAに接着した。CD44に対するHA結合について少なくとも3つの状態がある:1)非活性;2)例えば、ホルボールエステルによる二量体形成と関連する(Lesleyらの文献、Exp. Cell Research 187:224-233(1990); Liao らの文献、J. Immun. 151:6490- 6499(1993));抗CD44架橋(Zhengらの文献、J. Cell Bio. 130: 485-495(1995));脱グリコシル化と関連する、例えば、N-グリコシル化/グリコシダーゼ処理の阻害(Lesleyらの文献、J. Exp. Med. 182: 431-437(1995))ものなどの誘導性;及び3)恒常的に活性。例えば、HAに対するCD44結合は、受容体数、グリコシル化/脱グリコシル化、並びに二量体、及びその他の分子会合体を形成する能力に依存して恒常的に活性であり得る。SKOV3のCD44は、可溶性HAと相互作用する可能性が高いが、会合の親和性、及び/又は結合活性が低すぎるため維持されず、また下記の実施例において提示されるFACsアッセイによって検出されない。
【0067】
接着アッセイは、CD44分子の補充を可能にして複数のリガンド分子に結合し、相互作用のための十分な結合活性を接着アッセイにおいて維持して、検出することを可能にする。これは、接着性の糖タンパク質(例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン)のインテグリン受容体に対する結合について観察されるものに類似する。その他の細胞タイプについては、CD44受容体数、グリコシル化状態、及びオリゴマー形成する能力は、可溶性HAを検出することができる十分な結合活性を可能にする。
【0068】
下記の実施例に示したように、DF1485(抗CD44)は、Å6Cbio標識されたポリペプチドを適切な分子重量にて免疫沈降させる。更にまた、Å6は、SKOV3細胞に結合する抗CD44であるDF1485を阻害する。しかし、DF1485は、Å6架橋されたポリペプチドをブロットせず、またDF1485は、ELISAにおいてÅ6に結合しないし、DF1484は、ELISAにおいてRb抗Å6-KLHを阻害しない。
【0069】
CD44の上流、及び下流の多様なシグナリング経路は、異常な遊走、及び浸潤に影響を及ぼし得る。MAPキナーゼ経路、及びカルシトニンが前立腺癌におけるCD44オルタネートアイソフォーム発現に影響することが報告されている(Robbinsらの文献、BMC Cancer 8:260(2008))。BMP-7シグナル伝達は、細胞内Smadタンパク質の活性化を介して生じる。Smad1は、CD44の細胞質ドメインと相互作用することが見いだされた。ストレプトマイセス属(Streptomyces)のヒアルロニダーゼでの軟骨細胞の前処置は、BMP-7を媒介したSmad1リン酸化、Smad1、又はSmad4の核転位、及びSBE4ルシフェラーゼレポーター活性化を阻害した(Petersonらの文献、J Cell Biol. 166(7):1081-1091(2004))。CD44を介したシグナリングは、特にTリンパ球におけるp56/ciと共に、チロシンキナーゼによって媒介されることが示されている(Taherらの文献、J. Biol. Chem. 271(5):2863-2867(1996))。側鎖ヘパリンサルフェートを有する癌に関連するスプライス変異体CD44v3(CD44-HS)は、受容体チロシンキナーゼc-Metを介した肝細胞成長因子/散乱因子(HGF/SF)で誘導されるシグナル伝達を促進することもまた示されている(van der Voortらの文献、J. Biol. Chem. 274(10):6499-6506(1999))。更にまた、CD44-HS、及びc-Metの過剰発現は、腫瘍成長、及び転移のマーカーであることが示されている。オルタナティブスプライス変異体CD44v6は、Rasを活性化する成長因子のための補助受容体としての機能を果たすことができる(Chengらの文献、Genes Dev. 20:1715-1720の(2006))。Chengらは、Ras活性化が更にCD44v6スプライシングを促進するポジティブフィードバックループを同定した。
【0070】
シグナリング経路との関係に加えて、CD44アイソフォーム発現の変化は、癌状態のマーカーであることが示されている。CD44アイソフォームは、いくつかの乳癌、及び前立腺癌幹細胞のための細胞表面マーカーとして報告され、また上皮卵巣癌患者における生存時間の増加の指標と関係づけられている。(Liらの文献、Cell Research 17:3- 14(2007); Sillanpaらの文献、Clin Cancer Res. 9(14):5318-24(2003))。CD44のスプライス変異体は、転移と関連することが報告され、また早期発見の可能性を有することが報告されている(Matsumuraらの文献、Lancet 340:1053-1058(1992))。CD44の発現は、正常な胃粘膜においては見いだされず、原発性腫瘍の49%のみにおいて見いだされ、診断時における遠位への転移、及び腫瘍再発と関連し、また胃癌による死亡率を増大させることが見いだされた。血清CD44は、リンパ腫を患う一部の患者において上昇する(Mayerらの文献、Lancet 342:1019-1022(1993))。
【0071】
いくつかのCD44アイソフォームが通常生じる一方で、CD44変異体(CD44v)といわれるその他のものが腫瘍において発現される。アイソフォームCD44v7-10は、前立腺癌において過剰発現されることが示された。特異的アイソフォームCD44v3-10、及びCD44sは、正常なケラチノサイトに存在する。しかし、アイソフォームCD44v3は、腫瘍組織において同定されている。CD44v5、及びCD44v6サイトゾル濃度は、線維腺腫、及び正常な胸部組織と比較して乳癌においてより高いことが見いだされた(Heflerらの文献、Int. J. Cancer 79(5):541-545(1998))。CD44s、並びにCD446v、及びCD449vを含むいくつかの変異体アイソフォームの発現の増加は、明細胞癌腫における腫瘍分化の過程において観察されている(Terpeらの文献、Am J. Pathol. 148(2):453^63(1996))。当業者は、異なる腫瘍タイプと関連する、CD44s、及びCD44変異体、並びにその種々のグリコシル化された形態の異常な発現におけるその他の例が多く存在すること、またその発現レベルは、癌タイプ、及び進行の段階に従って変化し得ることを認識するであろう。
【0072】
ヒトmiR373、及びmiR520Cは、インビトロ、及びインビボにおける細胞遊走、及び浸潤を刺激した(Huangらの文献、Nature Cell Biol. 10:202-210(2008))。発現アレイ解析を使用して、Huangらは、miR373、及びmiR520Cを発現する細胞の遊走表現型がCD44の抑制に依存することを見いだした。miR373のアップレギュレーションは、乳癌転移試料におけるCD44発現と反対に相関した。最も一般的なCD44アイソフォームの発現の増加が、乳癌患者の全体的な生存率と相関することもまた注目された。同様に、CD44がヒト前立腺癌における転移抑制因子であることが証明されている(Louらの文献、Cancer Res. 59:2329-2331(1999))。NMRによって決定されるリガンドで誘導されるCD44の変化の研究は、なぜCD44の細胞外ドメインのタンパク質分解が、腫瘍細胞遊走、及び浸潤を増強させることができるのかについての理論的説明を提供した(Takedaらの文献、J. Biol. Chem. 281(52):40089-40095(2006))。
【0073】
異常な遊走、及び浸潤と関連するその他の状態は、種々の炎症性反応を含む。炎症性滑膜炎を患う患者からの髄液は、正常なレベルよりも高い可溶性CD44を有する(Mouldsらの文献、Immunology of Transfusion Medicine, New York, 273-297(1994))。
【0074】
前述のCD44ポリペプチドのいずれも、異常な遊走、及び浸潤によって特徴づけられる状態を治療するために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体によってターゲットすることができる。このような治療は、例えば、投薬量、及び疾患を治療するために十分な期間の決定の両方に関する治療処方計画を決定するために、有資格の医師がモニターすることができる。
【0075】
インビトロでの状況において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体のシグナリングイベントに対する効果は、組織試料を使用して市販のキットの使用によって評価することができる。例えば、キナーゼアッセイキットの大きなアレイは、biocompare.com/ProductCategories/1397/Kinase-Assays-Kits.html?sap=trueにてワールドワイドウェブ上で見いだすことができる。いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体のCD44に対する結合を介した1つ以上のこれらのシグナル伝達経路を調整する効果は、対象における細胞の浸潤、及び遊走の阻害である。更に、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体と関連するシグナリング効果を評価することにより、1つ以上のシグナル伝達経路の阻害剤の使用を介した多岐にわたる治療的アプローチの開発が可能になる。
【0076】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の投与経路は、全身的であるが、医薬組成物は、局所的、又は経皮的に、例えば軟膏、クリーム、又はゲルとして;経口的に;直腸に;例えば、坐薬として、非経口的に、注射により、又は連続的に注入により;膣内に;鼻腔内に;内部経気管支的に;頭蓋内に、耳内に;又は眼球内にも投与することができる。
【0077】
局所的な適用については、化合物は、膏薬、又は軟膏などの局所的に適用される媒体に組み込まれてもよい。活性成分のための担体は、スプレー可能な、又はスプレー可能でない形態のいずれであってもよい。スプレー可能でない形態は、局所的な適用に固有の担体を含み、かつ水の動的粘度より高い動的粘度を有する半固体、又は固体の形態であることができる。適切な剤形は、限定されないが、溶液、懸濁液、乳剤、クリーム、軟膏、粉末、塗布剤、膏薬、及び同様のものを含む。必要に応じて、これらは、滅菌してもよく、又は浸透圧、及び同様のものに影響させるために、補助薬剤、例えば、保存剤、安定剤、湿潤薬剤、緩衝液、若しくは塩と混合してもよい。いくつかの実施態様において、スプレー可能でない局所的な製剤のための媒体は、軟膏基剤、例えば、ポリエチレングリコール-1OOO(PEG-1000);HEBクリームなどの従来のクリーム;ゲル;並びにワセリン、及び同様のものを含む。
【0078】
局所的な適用のために適切なものは、また、化合物が任意に固体、又は液体の不活性な担体材料と組み合わせて、スクイーズボトル内に、又は加圧された揮発性の、通常のガス状噴霧剤との混合物においてパッケージされるスプレー可能なエアロゾル製剤である。エアロゾル製剤は、本発明の化合物に加えて、溶媒、緩衝液、表面活性物質、香水、及び/又は抗酸化剤を含むことができる。
【0079】
特にヒトに対する局所的な適用については、感染した領域、例えば、皮膚表面、粘膜、目、その他に化合物の有効な量を投与することができる。この量は、治療される領域、症候の重症度、及び使用した局所的な媒体の性質に依存して、一般的に一回の適用につき約0.001mg〜約1gの範囲であるであろう。
【0080】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の有効な量が、癌転移に対して癌の治療、及び/又は予防に使用される。この量は、癌転移を予防し、減少させ、又は排除する目的を達成するであろう。有効な量は、一つの実施態様において約1mg/kg〜約1,000mg/kg、及び別の実施態様において約5mg/kg〜約500mg/kgを含む。有効な量は、また、更に別の実施態様において約10mg/kg〜約250mg/kgであることができる。有効な量は、医師によって決定することができ、対象の年齢、体重、性別、及び以前の病歴などの変動を含むことができる。当業者は、限定されないが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、及び1,000mg/kg、並びに1mg/kgの分数を含む中間の任意の量を含む1mg/kg〜約1000mg/kgの間の任意の量を投与することができることを認識するであろう。
【0081】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の有効な量が、炎症性状態の治療に使用される。この量は、炎症を予防し、減少させ、又は排除する目的を達成するであろう。有効な量は、一つの実施態様において約1mg/kg〜約1000mg/kg、及び別の実施態様において約5mg/kg〜約500mg/kgを含む。有効な量は、また、更に別の実施態様において約10mg/kg〜約250mg/kgであることができる。有効な量は、医師によって決定することができ、対象の年齢、体重、性別、及び以前の病歴などのような変動を含むことができる。当業者は、限定されないが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、及び1,000mg/kg、並びに1mg/kgの分数を含む中間の任意の量を含む1mg/kg〜約1000mg/kgの間の任意の量を投与することができることを認識するであろう。
【0082】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体の投薬量は、ペプチドの有効な量を含む薬学的な投薬量単位を含む。有効な量は、インビボで定常状態濃度を達成するために十分な量を意味し、これは疾患の関連する任意のパラメーターの測定可能な減少を生じ、また原発性腫瘍、又は転移性腫瘍の成長、炎症反応性における任意の認められたインデックス、又は無病間隔の、若しくは生存の適度な延長を含み得る。例えば、患者の20%における腫瘍成長の減少は、効果的であるとみなされる(Frei IIIの文献、E., The Cancer Journal 3: 127-136(1997))。しかし、この規模の効果は、本発明に従った有効である投薬量についての最小限の要求であるとみなされない。
【0083】
いくつかの実施態様において、有効な投薬量は、インビボアッセイにおける化合物の50%抑制濃度(IC50)よりも10倍、及び100倍高いものと少なくとも同等である。投与される活性化合物の量は、選択される正確なペプチド、又は誘導体、疾患、又は状態、投与経路、レシピエントの健康、及び体重、もしあればその他の同時的な治療の存在、治療の頻度、所望の効果の性質、例えば腫瘍転移の阻害、及び当業者の判断に依存する。腫瘍を患うヒトなどの哺乳動物対象を含む対象を治療するための例示的な投薬量は、体重1kg当り最大約1,000ミリグラムの活性化合物の量、又は上で詳述した量のいずれかである。
【0084】
ペプチドの典型的な一回の投薬量は、約1μg〜約1,000mg/kg体重である。局所的な投与については、一つの実施態様において化合物約0.01〜20%の濃度の範囲での投薬量、及びその他の実施態様において1〜5%である。約10ミリグラム〜約7グラムの範囲での1日の総投薬量は、経口投与について可能である。前述した範囲は単に示唆的であり、個々の治療体制に対して考慮される変数の数が多いほど、これらの推奨される値からのかなりの変動が予想される。インビトロでの浸潤を阻害するためのペプチドの有効な量、又は投薬量は、細胞あたり約1ピコグラム〜約0.5ナノグラムの範囲である。有効な投薬量、及び投薬量範囲は、本明細書に記述される方法を使用して、インビトロで決定することができる。
【0085】
治療方法は、分裂抑制剤、例えば、ビンブラスチン;アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド;葉酸阻害剤、例えば、メトトレキセート、ピリトレキシム、又はトリメトレキサート;抗代謝剤、例えば、5-フルオロウラシル、及びシトシンアラビノシド;挿入抗生物質、例えば、アドリアマイシン、及びブレオマイシン;酵素、又は酵素阻害剤、例えば、アスパラギナーゼ;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、エトポシド;又は生体反応調節剤、例えばインターフェロンなどの抗腫瘍薬である1つ以上のさらなる化合物を更に利用することができる。事実、本明細書において開示されるペプチドと組み合わせて任意の公知の癌治療薬を含む医薬組成物は、本発明の範囲内である。
【0086】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を有する剤形は、また、1つ以上のその他の医薬、好ましくは抗菌剤、抗真菌剤、駆虫剤、抗ウイルス剤、及び抗カタカイガラムシ剤などの抗感染薬を含むことができる。例示的な抗菌剤は、例えば、スルファメトキサゾール、スルファジアジン、又はスルファドキシンなどのスルホンアミド;トリメトプリム、ブロモジアプリム(bromodiaprim)、又はトリメトレキサートなどのDHFR阻害剤;ペニシリン;セファロスポリン;アミノグリコシド;タンパク質合成の静菌性阻害剤;キノロンカルボン酸、及びこれらの融合イソチアゾール類似体;及び同様のものを含む。
【0087】
別の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、腫瘍転移の部位、又は感染/炎症の病巣などの、化合物が帰巣しかつ結合する部位に治療薬を送達するために、治療的に抱合し、かつ使用される。治療的に抱合されるとは、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体が、治療的薬剤に抱合されることを意味する。この様式の作用に使用される治療薬は、根底にある原因、又は腫瘍浸潤、脈管形成、若しくは炎症のプロセスの構成要素のいずれかに向けられる。炎症を治療するために使用される薬剤の例は、ステロイド性、及び非ステロイド性抗炎症剤であり、これらの多くがプロスタグランジン合成を阻害する。
【0088】
本発明の方法に従って化合物にカップリングすることができるその他の治療薬は、薬物、放射性同位元素、レクチン、及びその他の毒素である。投与される治療的投薬量は、治療的に有効な、当業者には周知であろう量である。投薬量は、また、レシピエントの年齢、健康、及び体重、もしあれば同時的な治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質、例えば抗炎症効果、又は抗バクテリア効果に依存的である。
【0089】
レクチンは、炭水化物に結合するポリペプチドであり、一般に植物に由来する。その他の活性の中で、いくつかのレクチンは、毒性である。公知の最も細胞毒性の物質のいくつかは、細菌、及び植物由来のポリペプチド毒素である(Frankelらの文献、Ann. Rev. Med. 37:125-142(1986))。これらの分子は、細胞表面に結合し、細胞のタンパク質合成を阻害する。最も一般的に使用される植物毒素は、リシン、及びアブリンである;最も一般的に使用される細菌毒素は、ジフテリア毒素、及びシュードモナス属(Pseudomonas)のエキソトキシンAである。リシン、及びアブリンにおいて、結合、及び毒性の機能は、2つの別々のタンパク質サブユニットであるA鎖、及びB鎖に含有される。リシンB鎖は、細胞表面の炭水化物に結合し、A鎖の細胞内への取り込みを促進する。一旦細胞内に入ると、リシンA鎖は、真核生物リボソームの60Sサブユニットを不活性化することによって、タンパク質合成を阻害する(Endoらの文献、J. Biol. Chem. 262:5908-5912(1987))。その他の植物由来毒素は、単鎖のリボソーム阻害性タンパク質であり、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、コムギ胚タンパク質、ゲロニン、ジアンチン(dianthin)、モモルカリン(momorcharins)、トリコサンチン、及び多くのその他を含む(Stripらの文献、FEBS Lett. 195:1-8(1986))。ジフテリア毒素、及びシュードモナス属エキソトキシンAは、また、単鎖タンパク質であり、これらの結合、及び毒性機能は、同じタンパク質鎖の別々のドメインに存在し、完全な毒性活性は、2つのドメインの間のタンパク質分解性の切断を必要とする。シュードモナス属エキソトキシンAは、ジフテリア毒素と同一の触媒活性を有する。リシンは、毒性効果の部位特異的な送達を可能にするために、抗体などのターゲティング分子に対してその毒性のα鎖を結合させることによって、治療的に使用されてきた。細菌毒素は、また、抗腫瘍抱合体としても使用されている。本明細書において意図されるように、毒性のペプチド鎖、又はドメインは、本発明の化合物に結合され、部位特異的な様式で、転移巣などの毒性活性が望まれるターゲット部位に送達される。抗体、又はその他のリガンドなどに対する毒素の抱合は、当該技術分野において公知である(Olsnesらの文献、Immunol. Today 10:291-295(1989); Vitettaらの文献、Ann. Rev. Immunol. 3:197-212(1985))。
【0090】
本発明の方法に従った使用のために化合物に結合することができる治療的放射性同位元素の例は、125I、131I、90Y、67Cu、217Bi、211At、212Pb、47Sc、及び109Pdである。
【0091】
DNA、RNA、及びタンパク質合成を含む重要な細胞プロセスを妨げる細胞毒性薬物は、抗体に抱合され、その後にインビボ療法に使用される。限定されないが、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキセート、及びマイトマイシンCを含むこのような薬物は、また本発明の化合物にカップリングされ、この形態で治療的に使用する。
【0092】
本発明の方法において使用されるÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、細胞遊走、及び浸潤に対する、脈管形成に対する、腫瘍転移に対する、又は炎症性反応に対する阻害効果を生じるものとして更に特徴づけてもよい。本化合物は、腫瘍を有するヒトを含む哺乳動物宿主における抗腫瘍効果を生じるのに特に有用である。
【0093】
細胞遊走、及び浸潤を評価するためのアッセイは、当該分野において周知であり、本明細書において以下に述べたBoydenチャンバーアッセイを含む。その他の有用な方法は、「転移研究プロトコル:第II巻:インビトロ及びインビボにおける細胞行動の解析("Metastasis Research Protocols: Volume II: Analysis of Cell Behavior In Vitro and In Vivo,") Methods in Molecular Medicine, Vol. 58,(2001)において見いだされるものを含む。
【0094】
本発明は、また、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の結合におけるシグナル伝達活性に対する効果を決定することを含む、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法を提供する。シグナル伝達活性を決定することによって、異常な状態を診断することができる。例えば、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体のCD44に対する結合、及びその後のc-Metに連結されるシグナルの決定は、上述したように転移性状態の診断マーカーである。実際、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、細胞培養に添加することができ、また多様なアッセイキットを、シグナル伝達イベントに対するその効果を決定するために使用することができる。
【0095】
いくつかの実施態様において、転移性癌は、それが膜結合型アイソフォームか分断型形態かを含むCD44の発現、及びシグナル伝達経路の活性化によって特徴づけられる。このような場合、CD44に結合したÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体アンタゴニストは、例えば、この経路を遮断するために使用することができる。診断において、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体アンタゴニストは、転移性状態を診断するために、経路を遮断することを測定するために使用することができる。従って、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体アンタゴニストの添加に対する経路の不活性化のインビトロでの測定は、転移性癌の症候としてもまた使用することができる。
【0096】
その他の実施態様において、転移性癌は、膜結合型、又は分断型のCD44によって特徴づけられ、特定のシグナル伝達経路を不活性にさせる。このような場合には、CD44に結合したÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、例えば、この経路をオンにするために使用することができる。診断において、このような化合物は、転移性状態を診断するため、経路をオンにすることを測定するために使用することができる。従って、インビトロでのÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の添加に対するこのような経路の活性化の測定は、転移性癌を示すであろう。それゆえに、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、多くの、又は全ての癌における転移を含む、異常な遊走を治療、又は診断するために使用することができる。
【0097】
本発明は、シグナル伝達経路を介してÅ6結合ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の活性を測定することを含む、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法を提供する。CD44ポリペプチドを含む方法において、例えばシグナル伝達経路は、MAPK経路を含むことができる。従って、このような診断方法は、CD44の調整を示すために、MAPK経路における下流のシグナルを利用する。CD44に関係するその他の経路は、例えば、PI3K経路、BMP-7、Lck、Fyn、Lyn、及びHckなどのSrc-ファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼ(PTKs)、カルシウム/カルモジュリン経路、Ras、並びにRhoファミリーGTPaseを含む。
【0098】
本発明は、また、最初に無制御の細胞移動性によって媒介される疾患、若しくは状態に罹患した対象、又は対象の亜集団におけるÅ6治療指標の量、又は活性の非存在、又は存在を決定すること、若しくは変化を測定すること、及び次いで、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に対する反応が、同じ疾患、又は状態に罹患している第2の対象、又は対象の亜集団の(同じ治療に対する)反応と異なっている対象、又は対象の亜集団に投与することによって、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性を増加させる方法を提供する。
【0099】
集団は、複数の2つ以上のメンバーで構成される。集団は、小さなものから、中間、及び大きなものまでのサイズの範囲であり得る。小さな集団のサイズは、例えば、少数のメンバーから何十ものメンバーまでの範囲であり得る。中間の集団は、例えば、何十ものメンバーから約100のメンバー、又は何百ものメンバーまでの範囲であり得る。大きな集団は、例えば、何百ものメンバーから数千、数100万、及び更により多くの数のメンバーまでの範囲であり得る。「亜集団」という用語は、参照された集団の一部のサブグループを意味することが意図される。従って、「集団」という用語の定義は、1より大きい全ての整数値を含むことが意図される。参照された集団の亜集団は、参照された集団よりも少ない少なくとも1つのメンバーを含み、例えば亜集団は、少なくとも集団の10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又はこれらの間の任意の割合である。
【0100】
Å6治療指標は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体に結合する、本明細書において開示したような多様なCD44アイソフォームのいずれか、特に異常な細胞遊走、若しくは浸潤と関連する疾患、又は障害を示すアイソフォームを含む。Å6治療指標は、例えば特定のCD44アイソフォームのシグナル伝達経路における任意のシグナル伝達分子を更に含む。例えば、CD44アイソフォームの活性の増大、又は特定のCD44アイソフォーム経路内のシグナル伝達状態の変化は、Å6治療指標として使用することができる。
【0101】
種々の実施態様において、アイソフォームCD44s、CD44v1、CD44v2、CD44v3、CD44v4、CD44v5、CD44v5、CD44v6、CD44v7、CD44v8、CD44v9、CD44v1O、CD44-HS、及びシアリルLewisxに共有結合で連結されたものなどのその他のグリコシル化されたCD44誘導体は、Å6治療指標であり、これに基づいて、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する対象、又は対象の亜集団を同定することができる。処置を始める前に対象がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応するかどうかを知ることにより、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患に罹患している対象の亜集団における治療の有効性が増加するであろう。本発明の例示的な実施態様において、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性は、同様の疾患を患う処置に反応しない対象と比較したときに、又は正常な対象と比較したときに、CD44v3を、例えば量、又は活性に関して異なるように発現することが同定される、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患に罹患している対象の亜集団において増加する。
【0102】
従って、ある実施態様において、本発明は、Å6治療指標に特異的な薬剤を用いて、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体に反応性の対象の亜集団を同定する方法を提供する。1つ以上のÅ6治療指標の検出を、Å6、配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に反応する対象を同定するために使用することができる。1つの治療指標に依存する診断、又は予後の方法は、多くの理由のために失敗し得る。例えば、選択された指標は、対象において選択された指標が存在せず、しかしその他の指標が存在するため、ポジティブな反応者を同定することに失敗し得る。選択された指標は、また、指標を認識する薬剤が十分に感受性でないため、ポジティブな反応者を同定することに失敗し得る。指標は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置から利益を得ることができる対象における指標を検出するための正しいタイミングではないため、ポジティブなÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の反応者を同定することに失敗し得る可能性もまたある。異なるシグナル伝達経路において、又は同じシグナル伝達経路の異なる段階において存在し、又は活性化されている治療指標のセットを使用することで、上述した1つの治療指標を使用することの落とし穴を最小化することができる。例えば、セットにおける治療指標の選択は、対象の疾患のタイプ、及び/又は遺伝的なバックグラウンドに依存するであろう。例えば、アイソフォームCD44v7-10は前立腺癌において過剰発現することが示されており、セットにおいてこれらのアイソフォームの任意の組合せを選択することは、前立腺癌患者について適切である。多数の治療指標、例えば10個より多い指標を使用することは、対象について細胞移動性シグナル経路における分子の分子プロファイルを提供し、よりよく疾患段階を決定し、かつより優れた治療ストラテジーを決めることができるようにするために有利であり得る。
【0103】
セットにおける指標の数は、少なくとも2、3、4、5、6、7、又は10、11、それ以上であることができる。いくつかの実施態様において、セットにおける少なくとも1つの指標はCD4変異体から選択され、またセットにおける少なくとも1つの指標はシグナル伝達経路から選択される。いずれの指標の存在も、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の反応性の指標を提供し、2つの指標の存在は、予測されるÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の反応性においてより高い信頼性を提供する。従って、2つ以上のÅ6治療指標のセットを用いた方法は、より正確かつ信頼し得る予測を提供することができる。
【0104】
1つ以上の特定のÅ6治療指標が対象において同定されると、対象は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に同様に反応する亜集団における同様の指標プロファイルを有するものに分類することができる。例えば、対象の亜集団は、対象における特定のÅ6治療指標の活性、又は量の存在/非存在に基づいて分類することができる。無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる対象において、対象の亜集団がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法に反応するかどうかを前もって知ることにより、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性が増加するであろう。
【0105】
Å6治療指標に基づいた亜集団の同一性を知ることにより、無制御の細胞移動性によって媒介される特定の疾患に罹患している対象について、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療処方計画の選択が更に可能になるであろう。例示的な実施態様において、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置は、癌患者、免疫系障害、及び、関節炎などの異常な炎症性状態などの、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法に反応する対象の亜集団のために選択することができる。別の例示的な実施態様において、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法に反応する対象の亜集団であって、その疾患が特定の段階にある亜集団、例えば転移性癌である対象のために選択することができる。
【0106】
別の実施態様において、本発明は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法を提供する。本方法は、以下の工程を含む。最初に、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、Å6治療指標に特異的な薬剤と接触させる。第2に、試料中のÅ6治療指標に対する薬剤の結合であって、指標の存在を示す結合を決定する。第3に、試料中に存在するÅ6治療指標を有する集団から対象を選択して、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する亜集団を同定する。
【0107】
Å6治療指標は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に反応する対象を同定するために、本発明において使用される。Å6治療指標は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に対するポジティブな反応と関連するポリペプチド、及びこれらの活性体などの巨大分子を含む。Å6治療指標は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置にポジティブに反応することができる対象を選択するための識別子として使用される。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、細胞遊走、及び浸潤などの移動性プロセスを阻害する活性を示す。本発明のÅ6治療指標は、細胞移動性プロセスに関する巨大分子であり、CD44ポリペプチド、及びこれらの関連するシグナル伝達経路のメンバーのポリペプチドに分類されている。
【0108】
特定のÅ6治療指標の検出は、患者からの試料を、特異的に指標を認識する薬剤と接触させること、及び薬剤の特異的結合を検出することによって決定される。特異的に指標を認識する薬剤は、抗体、リガンド、相互作用するポリペプチド、指標の基質、又は指標をコードする核酸に相補的な核酸であることができる。特異的な薬剤は、指標、又は指標をコードする核酸については十分な結合親和性にて、好ましくは指標以外の分子に対してはより低い親和性で、結合すべきである。タンパク質、又は核酸のいずれかの形態である指標を検出するための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、抗体を使用してタンパク質を検出する方法は、イムノブロット、ELISAアッセイ、免疫細胞化学、免疫組織化学、免疫沈降、FACsS解析を含む(Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press(1999))。種々のイムノアッセイは、当業者に周知であり、必要に応じて修正することができる。これらの全ての方法は、指標分子を特異的に認識し、かつ十分な親和性で結合する抗体を使用することを含む。例えば、抗体は、検出可能な部分を組み込むことにより、又は検出可能な部分に対し抱合されることにより、又はそれ自体で検出可能な、若しくは検出可能に標識されている二次分子に結合することにより、検出可能にすることができる。異なる抗体をアレイに付着させることができ、これにより複数の試料、又は複数の指標を同時に検出することができるようになる。別の例において、認識薬剤は、また、酵素的指標の基質、又は指標に結合する検出可能なリガンドであることができる。酵素反応の産物、及び標識されたリガンドの検出は、指標の量、及び活性の存在、又は変化を決定するために使用することができる。別の例において、認識薬剤は、所定の指標に特異的に結合するポリペプチドであることができる。認識ポリペプチドは、試料から指標を分離して、及び/又は濃縮して使用することができる。単離された指標は、更に抗体によって検出することができる。或いは指標、及び認識ポリペプチドのパートナーの結合は、誘導された認識ポリペプチドの構造変化によって直接検出することができ、例えば結合は、非蛍光性の認識ポリペプチドを蛍光性にすることができる。
【0109】
例えば、試料、好ましくは組織試料は、組織化学的解析のために固体表面上に載置される。検出可能かつアクセス可能なÅ6治療指標の存在は、Å6治療指標が特定の量にて、又は特定の活性を持って存在することを示す。これは、有利な診断、又は予後を導き、すなわち、対象は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する。他方、抗体が組織切片におけるÅ6治療指標と反応しない場合、Å6治療指標が存在しないことが予想される。これは、有利でない診断、又は予後を導き、すなわち、対象は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応しない。
【0110】
抗体を産生するための方法は、当該技術分野において周知である。本発明のポリペプチドに特異的な抗体は、ポリペプチドの免疫原性量で動物を免疫化することによって、容易に得ることができる。従って、本発明のポリペプチドを認識する抗体は、動物を免疫化することによって得られるポリクローナル抗体、及び抗血清を包含し、またウェスタンブロッティング、ELISA、免疫染色、又は当該技術分野において公知のその他のルーチンの手順によって、本発明のポリペプチドを特異的に認識することを確認することができる。
【0111】
ポリクローナル抗体を感作によって得ることができる場合、ハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体を感作動物のリンパ球から得ることができることは周知である(第6章、抗体実験質マニュアル(Chapter 6, Antibodies A Laboratory Manual)、 Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1988))。従って、本発明のポリペプチドを認識するモノクローナル抗体もまた提供される。ポリクローナル、及びモノクローナル抗体を産生する方法は、当業者に知られており、また科学的文献、及び特許文献において記述されており、例えば以下を参照されたい:Harlow and Laneの文献、抗体:実験室マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)、 Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989); Hammerlingらの文献、: モノクローナル抗体及びT細胞ハイブリドーマ(Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas) 563-681, Elsevier, New York(1981); Harlowらの文献、抗体の使用:実験室マニュアル(Using Antibodies: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999);及び抗体工学:実用ガイド(Antibody Engineering: A Practical Guide)、Borrebaeck編、W.H. Freeman and Co., Publishers, New York, pp. 103-120(1991); Coligan, Current Protocols in Immunology, Wiley/Green, New York(1991); Stites編、 Basic and Clinical Immunology(第7版)Lange Medical Publications, Los Altos, California及びその中で引用された文献(Stites); Godingの文献、モノクローナル抗体:原理、及び実践(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice)(第2版)Academic Press, New York, New York(1986);及びKohler, Nature 256:495(1975))。このような技術は、ファージにおいて、又は同様に細胞上に提示される組み換え抗体のライブラリーからの抗体の選択を含む。Huseの文献、Science 246: 1275(1989)and Ward, Nature 341 :544(1989)を参照されたい。組み換え抗体は、Norderhaugの文献、 J. Immunol. Methods 204:77-87(1997)と同様に、哺乳動物細胞における一過性、又は安定な発現ベクターによって発現させることができる。
【0112】
本発明において、抗体は、また、これらの活性な断片を包含する。活性な断片は、抗原抗体反応の活性を有する抗体の断片を意味する。具体的に命名されている、F(ab')2、Fab'、Fab、及びFvなどのこれらの活性な断片がある。例えば、本発明の抗体がペプシンで消化された場合には、F(ab')2が結果として生じ、またパパインで消化される場合には、Fabが結果として生じる。F(ab')2が2-メルカプトエタノールなどの試薬で還元され、かつモノヨード酢酸でアルキル化された場合には、Fab'が結果として生じる。Fvは、重鎖の可変性の領域、及び軽鎖の可変性の領域がリンカーでつながれたモノ活性な断片である。キメラ抗体は、これらの活性な断片を保存し、そしてこれらの活性な断片以外の断片を別の動物における断片と置換することによって得られる。特に、ヒト化抗体が想定される。
【0113】
指標の存在の検出は、また、指標のmRNAを検出することによってすることができる。核酸を検出するための種々の方法が当業者に周知であり(Ausubelらの文献、Current Protocols in Molecular Biology , John Wiley and Sons, Inc.(2007))、例えば、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、インサイチューハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)、マイクロアレイ解析を含む。指標のmRNAは、RNA単離についての標準的なプロトコルを使用して単離することができ、また試料においてインサイチューにて直接検出することができる。所定のmRNAの量に依存して、PCRで増幅することにより、又は増幅せずに、検出することができる。QPCRは、異なる試料におけるmRNA量の変化を定量化するために使用する有効な方法である。
【0114】
Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に対するポジティブな反応と関連する治療指標を対象の試料において使用することによって、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に反応性である対象の亜集団が選択される。選択される亜集団は、例えば、試験される集団の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は100%までを有することができ、これらの間の任意の割合を含む。本発明の方法は、医師がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法を反応性の患者に対して適合させ、治療有効性を増加させ、そして副作用を最小化することを可能にする。対象の亜集団は、試料中に存在するÅ6治療指標に依存して、例えばCD44変異体に結合したÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を有するサブグループ、及び任意の下流の(又は上流の)シグナル伝達経路ポリペプチドを有するサブグループに、更に分類することができる。或いは、亜集団は、低い、中間の、及び高いなどのÅ6治療指標の発現レベルに依存して、更に分類することができる。Å6治療指標のレベルの範囲は、臨床的適用において有意義なものにするため、広く十分な患者のデータの集団、例えばそれぞれのグループにおいて少なくとも6〜10の試料を用いて決定される必要がある。サブグループが患者のデータから一旦決定されると、この情報は、個々の患者に合わせた投薬スケジュールを決めさせるように医師をさらに導くことができる。
【0115】
また別の実施態様において、本発明は、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む。最初に、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、Å6治療指標に特異的な薬剤と接触させる。第2に、正常な個体からの量、又は活性と比較して、試料中のÅ6治療指標の量、又は活性の変化を測定する。第3に、試料中のÅ6治療指標の量、又は活性の変化を有する集団から対象を選択して、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する亜集団を同定する。
【0116】
本発明の方法は、正常な個体からの量、又は活性と比較して、対象の試料中のÅ6治療指標の量、又は活性の変化を測定することにより、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に反応する対象の亜集団を選択する方法を提供する。Å6治療指標の量、又は活性の変化は、Å6治療指標の量、又は活性の増大、又は減少であることができる。変化は、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが供される対象の試料、及び正常な個体からの試料の間で測定される。彼(彼女)の正常状態における同じ対象の試料が入手できる場合、これらの試料は、比較することが好ましい試料である。彼(彼女)の疾患の初期、及び後期の段階における同じ対象の試料の間の比較は、また、予後の目的のために行うことができる。Å6治療指標の量、又は活性の変化が異常な細胞移動性活性を示すとき、変化は、また、Å6治療に対するポジティブな反応を示すものとして使用することができる。
【0117】
対象におけるÅ6治療指標の増大がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に対するポジティブな反応を示すÅ6治療指標は、CD44ポリペプチド、及びシグナル伝達経路ポリペプチドから選択することができる。無制御の移動性を有する細胞において増加するCD44ポリペプチドは、Å6治療指標として使用することができる。いくつかのシグナル伝達経路ポリペプチド、例えばc-Met(上述を参照されたい)は、一定の癌においてアップレギュレーションされる。
【0118】
対象におけるÅ6治療指標の活性の変化がÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の処置に対するポジティブな反応を示すÅ6治療指標は、CD44ポリペプチド、及びシグナル伝達経路ポリペプチドから選択することができる。
【0119】
試料中のÅ6治療指標の量、及び/又は活性は、当該技術分野において公知の方法を使用してÅ6治療指標タンパク質を検出することによって決定することができる。本発明において、Å6治療指標の量、及び/又は活性を測定するために使用されるアッセイのタイプは限定されない。例えば、Å6治療指標は、Å6治療指標に特異的な抗体を使用してイムノアッセイによって検出することができる。抗体は、例えば、タンパク質が酵素結合イムノアッセイによって同定される二次元ゲルのウェスタンブロットにおいて、又は細胞の全タンパク質、若しくは部分的に精製されたタンパク質のドットブロット(Antibody Sandwich)アッセイにおいて使用することができる。
【0120】
試料の濃縮、及びタンパク質精製のための方法は、文献において記述されており、また当業者に公知である。例えば、必要に応じて、試料中に存在するÅ6治療指標は、硫酸アンモニウムで沈殿させることによって、又は抽出物を市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon、若しくはMillipore、限外濾過ユニットを通過させることによって、濃縮することができる。抽出物は、陰イオン、若しくは陽イオン交換樹脂などの適切な精製マトリックス、又はゲル濾過マトリックスに適用し、又は分取ゲル電気泳動に供することができる。このような場合において、それぞれの精製工程後のタンパク質収率は、試料中のÅ6治療指標の量の決定において考慮される必要がある。Å6治療指標は、Å6治療指標に特異的な抗体を使用して検出することができ、また対照アッセイは、別の分子に特異的な抗体を使用して行うことができる。任意に、本方法は、健康な組織に関して、試料中のÅ6治療指標における増大、又は減少が相関することを更に含むことができる。例えば、腫瘍組織におけるÅ6治療指標に対する抗体の結合を検出すること、およびそれを健康な組織において発現した任意のÅ6治療指標に結合する抗体(又は非特異的反応)と比較することができる。
【0121】
本発明に従って、Å6治療指標における生物学的活性などの活性を測定するための方法が提供される。このような生物学的活性は、化学的反応性、触媒能力、特定構造、及び受容体に対する結合、受容体としての作用、又はただ細胞膜内に存在し、従って、抗体、又はその他の薬剤のためのターゲット部位として利用できるなどの任意の測定可能な活性を含むことができる。従って、このような指標ポリペプチドは、Å6治療指標に特異的な薬剤のためのターゲットを提供することができる。
【0122】
ある実施態様において、Å6治療指標の生物学的活性における変化は、生物学的活性の減少である。別の実施態様において、Å6治療指標の生物学的活性における変化は、生物学的活性の増大である。これらの実施態様において、生物学的活性は、酵素活性であることができ、酵素は、キナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、ホスホジエステラーゼ、ホスファターゼ、デヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、カルボキシラーゼ、トランスフェラーゼ、デアセチラーゼ、及びポリメラーゼからなる群から選択されるものなどである。
【0123】
これらの酵素のためのアッセイとして、ホスホジエステラーゼ(最も薬理学的に適切なホスホジエステラーゼは、環状ヌクレオチドを加水分解するものである)のためのものなどが利用可能である。例えば、Perkin-Elmer(登録商標)から入手可能なcAMP、及びcGMPアッセイを参照されたい。タンパク質ホスファターゼは、タンパク質からホスフェート残基を除去する。例えば、非放射性ホスファターゼアッセイ系は、Promega(登録商標)Biotechから入手可能である。デヒドロゲナーゼは、低分子量代謝産物、例えばステロイドホルモンを酸化、若しくは還元させ、又はこれらは一般的にNAD、若しくはNADPを使用し、若しくは発生させる。デヒドロゲナーゼ活性を試験する市販のアッセイは、Cayman Chemical(登録商標)から入手可能である。
【0124】
特定の実施態様において、Å6治療指標は、キナーゼ、プロテインキナーゼ、セリン、若しくはスレオニンキナーゼ、又は受容体チロシンプロテインキナーゼである。指標が、プロテインキナーゼ、特にチロシンキナーゼに関係する場合、活性のための種々のアッセイを利用できる。プロテインキナーゼは、タンパク質上のセリン、スレオニン、又はチロシン残基にホスフェート基を付加する。プロテインキナーゼの活性は、一般にホスホセリン、スレオニン、又はチロシン特異性抗体;放射性標識された基質の生成;ATP消費;(合成の)小さなペプチドのリン酸化;又は下流の酵素活性、及び遺伝子転写の測定によって測定される。このようなアッセイは、市販されている。(例えば、Roche Molecular Biochemicals(登録商標)からのチロシンキナーゼアッセイを参照されたい)。セリン/スレオニンキネシスのためのアッセイは、また、Upstate Biotechnology(登録商標), Inc.にて、及びApplied BioSystems(登録商標)から、入手可能である。その他の実施態様において、Å6治療指標は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、又はアスパラギン酸プロテアーゼである。Å6治療指標は、また、メチルトランスフェラーゼ、シトシンメチルトランスフェラーゼ、又はアデニンメチルトランスフェラーゼであることができる。Å6治療指標は、デアセチラーゼ、例えばヒストンデアセチラーゼ;カルボキシラーゼ、例えばy-カルボキシラーゼ;ペプチダーゼ、例えば亜鉛ペプチダーゼ;又はポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼ、若しくはRNAポリメラーゼであることができる。上述した酵素の活性は、合成の基質の切断後の切断生成物、又は(蛍光性の)光の生成を直接測定することによって測定することができる。
【0125】
一つの実施態様において、Å6治療指標の生物学的活性は、受容体活性であり、受容体は、Gタンパク質結合受容体(GPCR)である。GPCRsは、細胞の原形質膜を通じて前後に7回巻き付いている膜貫通タンパク質であり、リガンド結合部位は、細胞の膜表面の外側に位置し、及びエフェクター部位は、細胞内部に存在する。これらの受容体は、GDP、及びGTPに結合する。リガンド結合に反応して、GPCRsは、多数のアッセイ可能な生理的変化、例えば、本発明の遺伝子によってコードされるポリペプチドがGPCRであるときに、GPCR活性化を測定するために利用可能であるその他の転位置アッセイと共に、細胞内カルシウムレベル、環状AMP、イノシトールリン酸代謝回転、及び下流の遺伝子転写(直接、又はレポーターアッセイを介して)の増大を誘導するシグナル伝達経路を活性化する。従って、このようなタンパク質は、二次メッセンジャーを通じて働く。結果は、CREB、遺伝子産物の生産を刺激する転写因子の活性化である。1つの有用なアッセイは、GPCRsと相互作用する化合物のスクリーニングにおいて有用な、いわゆるBRET2/アレスチンアッセイである。(Bertrandらの文献、J. Recept. Signal TransductRes., 22:533-541(Feb.-Nov. 2002)を参照されたい)。加えて、Norak Biosciences(登録商標), Inc.から入手可能なTransfluor Assay(商標)などの、多数のアッセイが市販されている。
【0126】
別の実施態様において、本発明は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の組成物の治療的レベルを用いて、上述したÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の反応者の亜集団を更に治療する方法を提供する。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、望ましくない細胞移動性を阻害するのに有効であるため、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患、病理学的状態、又は異常な形質を寛解させることができる。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、また、このような疾患、病理学的状態、若しくは異常な形質の発生を予防し、又はその発症を減少させるために使用することができる。いくつかの場合において、Å6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の方法、すなわち治療処方計画の選択は、特異的なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の療法単独、又は無制御の細胞移動性によって媒介される疾患に対して利用可能な1つ以上の医学療法と併用した選択を組み込むことができる。同様に、選択は、対象におけるその他の特定の治療方法より安全である治療処方計画の選択であることができる。
【0127】
多くの治療方法、例えば特定の化合物、又は化合物の組合せの投与は、患者において副作用、又はその他の有害な作用を生じ得ることが認識される。このような効果は、特定の患者における治療方法の使用を限定し、若しくは妨げることさえあり得るし、又は不可逆的傷害、機能不全、若しくは患者の死をもたらすことさえあり得る。従って、特定の実施態様において、Å6治療指標の情報は、一般的な毒性を減少させ、又は副作用を減少させて有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置を選択するために使用される。
【0128】
関連する態様において、本発明は、Å6治療指標を有する対象とÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性との関係の相関、又はその他の統計的検定を提供する方法に関する。一つの実施態様において、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療処方計画は、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患に罹患した対象における特定のÅ6治療指標の存在/非存在、量、又は活性を決定すること、及び疾患、又は状態の治療の予想される有効性を示す結果を提供することによって評価することができる。結果は、対象の亜集団を、治療、例えば本明細書に記載されるÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の投与の有効性を示すÅ6治療指標のリストと比較することによって打ち立てることができる。決定は、本明細書に記載される方法、又はその他の当業者に知られた方法によることができる。
【0129】
従って、本発明は、また、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患、又は状態に罹患している対象に対する投与のための、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療処方計画を選択することに向けられる。ある実施態様において、有効なÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療処方計画の選択は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体の投薬量レベル、又は投与の頻度、又は投与経路、これらのパラメーターの組み合わせを選択することを含む。その他の実施態様において、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、組成物中の1つ以上のその他の化合物と共に投与され、また選択は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体を、1つの、2つの、又は3つ以上のその他の化合物と、一緒に、同時に、又は別々に投与する方法を選択することを含む。当業者によって理解されるように、このような複数の化合物は、併用療法において使用することができ、従って、単一の薬物に製剤化することができ、又は同時に、連続的に、又は別々に投与される別々の薬物であることができる。
【0130】
種々の実施態様において、Å6治療指標を有する集団を選択すること、及びÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置に反応する亜集団を同定することと同時に、本発明は、対象の亜集団におけるÅ6、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の治療的処置の有効性を決定するための以下の方法を提供する。米国特許番号第6,936,587号をも参照されたい。
【0131】
本発明の化合物は、Albiniらの文献、Cancer Res., 47:3239-3245(1987)、及びParishらの文献、Int. J. Cancer, 52:378-383(1992)に詳細に記載されたMatrigel(商標)浸潤アッセイ系においてその抗浸潤性の能力について試験され、これらの参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。アッセイは、株化細胞、より好ましくは腫瘍株化細胞、最も好ましくはラット乳癌(Mat Bill)株、又はヒト前立腺癌(PC-3)株で行われる(Xingらの文献、Int. J. Cancer, 67(3):423-429(1996); Hooseinらの文献、Cancer Commun. 8:255-64(1991))。
【0132】
Matrigel(商標)は、タイプIVコラーゲン、ラミニン、bFGFに結合し、かつ局在化させるペルレカンなどのヘパラン硫酸プロテオグリカン、ビトロネクチン、並びにトランスフォーミング成長因子-β(TGFβ)、ウロキナーゼタイプのプラスミノーゲン活性化因子(uPA)、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)、及びプラスミノーゲン活性化因子阻害剤タイプI(PAI-1)として知られるセルピン(Chambersらの文献、Cancer 75(7):1627-33(1995))を含む再構成された基底膜である。細胞外受容体、又は酵素をターゲットにする化合物についてこのアッセイにおいて得られた結果は、インビボでのこれらの化合物の有効性を予測することが、当該技術において受け入れられる(Rabbaniらの文献、Int. J. Cancer, 63:840-845(1995))。
【0133】
本発明のペプチドは、インビトロにおける2つの異なるアッセイ系の1つにおいて、その抗脈管形成活性について試験される。内皮細胞、例えば製造することができ、若しくは市販で得ることができるヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)、又はヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)は、フィブリノゲン(1:1(v/v)比のリン酸緩衝食塩水(PBS)中に5mg/mL)と2×105細胞/mLの濃度にて混合させる。トロンビンを添加して(5ユニット/mL終濃度)、混合物を24ウェルプレートに即時に移す(ウェル当たり0.5mL)。フィブリンゲルを形成されて、次いでVEGF、及びbFGF(それぞれ5ng/mL終濃度にて)を試験化合物(例えば、Å6ポリペプチド化合物、又は組成物)と共にウェルに添加する。細胞を37℃にて5%CO2において4日間インキュベートして、その時点でそれぞれのウェルにおける細胞を計数し、そして丸い、枝分れなしで伸長、1つの枝分れと共に伸長、又は2、又はそれ以上の枝分れと共に伸長のいずれかに分類する。結果は、化合物のそれぞれの濃度についての5つの異なるウェルの平均として表す。典型的には、脈管形成の阻害剤の存在下において、細胞は、丸いか、又は未分化チューブ(例えば、0、又は1つの枝分れ)を形成するかのいずれかのままである。このアッセイは、インビボでの脈管形成(又は抗脈管形成)の有効性を予測することが当該技術において認識される(Minらの文献、Cancer Res. 56(10):2428-33(1996))。
【0134】
代わりのアッセイにおいて、内皮細胞をMatrigel(商標)上で培養するときに内皮細胞チューブ形成が観察される(Schnaperらの文献、J. Cell. Physiol. 165(1):107-118(1995))。内皮細胞(1×104細胞/ウェル)をMatrigel(商標)の被覆されている24ウェルプレート上に移して、48時間後にチューブ形成を定量化する。阻害剤(すなわち、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の組成物)を内皮細胞と同時に、又はその後の種々の時点のいずれかにて、これらを添加することによって試験される。このアッセイは、特定のタイプの基底膜、遊走し、かつ分化する内皮細胞が最初に遭遇すると期待され得るいわゆるマトリックス層を内皮細胞に提示することによる脈管形成をモデル化する。結合された成長因子に加えて、Matrigel(商標)において(またインサイチューで基底膜において)見いだされるマトリックス成分、又はそのタンパク質分解産物は、また、このモデルを前述したフィブリンゲル脈管形成モデル補完となる内皮細胞チューブ形成に対して刺激性であり得る(Blood及びZetterの文献、Biochim. Biophys. Acta. 1032(1):89-118(1990); Odedraらの文献、Pharmacol. Ther. 49(1-2):111-124(1991))。本発明の化合物(すなわち、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の組成物)は、両方のアッセイにおける内皮細胞チューブ形成を阻害し、これは、化合物が抗脈管形成活性も有するであろうことを示唆する。
【0135】
ペプチド、ペプチド擬態、及び抱合体を、広範囲のヒト腫瘍を高度に代表すると考えられるいくつかの十分に確立された齧歯類モデルにおける治療され、そして有効性について試験する。本アプローチは、Geranらの文献、Cane. Chemother. Reports, Pt 3, 3 :1-112において詳細に記載され、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。平均生存時間、生存時間の中央値、ノギスを用いた腫瘍直径の測定値からのおおよその腫瘍重量の算出;腫瘍直径の算出;個々の切除した腫瘍からの平均腫瘍重量の算出;及び任意の測定についての処理された群と対照群との間の比(T/C比)を含む全ての一般的な試験評価手順、測定、及び算出は、この参照文献に従って行われる。
【0136】
化合物の効果を乳癌のラット同系モデルにおける腫瘍進行に対して試験する(上記のXing及びRabbaniの文献、(1996))。Mat Billラット乳房腫瘍細胞(ラット当たりPBS 0.1mL中に1×106細胞)を雌のFisherラットの乳房脂肪パッドに接種する。試験化合物をPBS(200mMストック)に溶解し、滅菌濾過して、接種時に腹膜内に挿入した14日のAlza浸透圧ミニポンプを使用して、最大約100mg/kg/日の投薬量にてインビボで投与する。対照動物は、媒体(PBS)のみを受ける。動物を14日目に安楽死させて、脾臓、肺、肝臓、腎臓、及びリンパ節における転移について調べる。加えて、原発性腫瘍を切除し、定量化して、免疫組織化学のために準備する。
【0137】
3LL Lewis Lung Carcinomaは、C57BL/6マウスにおける肺の癌腫として、1951年に自発的に生じた(Kanematsuらの文献、Cancer Res 15:38-51(1955))。また、Malaveらの文献、J. Natl Cane. Inst. 62:83-88(1979)を参照されたい。これを皮下(sc)接種によってC57BL/6マウスにおける継代により増殖し、また半異質遺伝子型C57BL/6x DBA/2 F1マウスにおいて、又は異質遺伝子型C3Hマウスにおいて試験する。典型的には、皮下(sc)移植については群当たり6匹の動物、又は筋肉内(im)移植については10匹が使用される。腫瘍は、2〜4mmの断片としてscに、又は約0.5〜2×106細胞の懸濁細胞の接種材料としてim、若しくはscに移植することができる。治療は、移植の24時間後に開始し、又は特定のサイズ(通常およそ400mg)の腫瘍が触診され得るまで遅らせる。試験化合物は、11日間毎日腹腔内(ip)に投与する。
【0138】
続いて動物は、計量、触診、及び腫瘍サイズの測定を行う。接種の12日後の未処置の対照レシピエントにおける典型的な腫瘍重量は、500〜2500mgである。典型的な生存期間の中央値は、18〜28日である。ポジティブ対照化合物、例えば1〜11日目において1日当たり20mg/kg/注射でのシクロホスファミドを使用する。計算される結果は、確立された治療活性について平均の動物重量、腫瘍サイズ、腫瘍重量、生存時間を含み、試験組成物は、2回の複数投薬アッセイにおいて試験されるべきである。
【0139】
以下の肺癌モデルは、多くの研究者によって利用されている。例えば、Gorelikらの文献、J. Natl Cane. Inst. 65:1257-1264(1980); Gorelikらの文献、Rec. Results Cane. Res. 75:20-28(1980); Isakovらの文献、Invasion Metas. 2:12-32(1982);Talmadgeらの文献、J. Natl Cane. Inst. 69:975-980(1982);Hilgardらの文献、Br. J. Cancer 35:78-86(1977)を参照されたい。試験マウスは、雄のC57BL/6マウス、月齢2〜3ヵ月である。sc、im、又は肉趾内移植の後、この腫瘍は、優先して肺に転移を生じる。いくつかの腫瘍株で、原発性腫瘍は、抗転移性効果を発揮し、そして最初に転移性段階の研究の前に切除しなければならない(また、米国特許第5,639,725号を参照されたい)。
【0140】
単細胞懸濁液は、0.3%のトリプシン溶液で細かく切り刻まれた腫瘍組織を処理することによって、固形腫瘍から調製する。細胞をPBS(pH7.4)で3回洗浄して、PBS中に懸濁する。この方法において調製される3LL細胞の生存度は、一般的に約95〜99%である(トリパンブルー色素排除による)。0.05mlのPBSに懸濁した生存可能な腫瘍細胞(3×104〜5×106)を、C57BL/6マウスの背面領域、又は一方の後足パッド内のいずれかに皮下に注射する。目に見える腫瘍は、106細胞の背面sc注射後の3〜4日後に現れる。腫瘍が現れた日、及び確立された腫瘍の直径を2日毎にノギスによって測定する。治療は、週当たり、ペプチド、若しくは誘導体の1回、又は2回の投薬として与えられる。別の実施態様において、ペプチドは、浸透圧ミニポンプによって送達される。
【0141】
背面の腫瘍の腫瘍切除を含む実験において、腫瘍が約1500mm3のサイズに達したときに、マウスを2つの群にランダム化する:(1)原発性腫瘍が完全に切除される;又は(2)偽外科手術を行い、腫瘍を無処置のままにする。500〜3000mm3の腫瘍は、転移の成長を阻害するが、1500mm3は、高生存であり、かつ局所的な再成長なしで安全に切除することができる最も大きなサイズの原発性腫瘍である。21日後に、全てのマウスが屠殺して、解剖する。
【0142】
肺を取り出して計量する。肺をブワン溶液中で固定して、目に見える転移の数を記録する。転移の直径もまた、8×倍率下でマイクロメーターを含む接眼レンズを備えた双眼立体鏡を使用して測定する。記録した直径に基づいて、それぞれの転移の容積を算出することが可能である。肺当たりの転移の総容積を決定するために、目に見える転移数の平均を転移の平均容積に乗じる。転移性成長を更に決定するために、肺細胞に対する125IdUrd(ヨウ化デオキシウリジン)の組み込みを測定することが可能である(Thakurらの文献、J. Lab. Clin. Med. 89:217-228(1977))。腫瘍切断して10日後、25μgのフルオロデオキシウリジンを、腫瘍を有する腹膜(また、使用する場合、腫瘍切除されたマウス)に接種する。30分後、マウスには、1μCiの125IdUrdを与える。1日後、肺、及び脾臓を取り出して計量して、125IdUrdを取り込むの程度をγカウンターを使用して測定する。
【0143】
肉趾腫瘍を有するマウスにおいて、腫瘍の直径が約8〜10mmに達するときに、マウスを2つの群にランダム化する:(1)腫瘍を有する脚を膝関節より上で結紮の後切断する;又は(2)マウスを、切断されない腫瘍を持つ対照として無処置のままにする。(腫瘍を持つマウスにおける腫瘍がない脚の切断は、麻酔、ストレス、又は外科手術の可能性ある効果を除外して、その後の転移に対して公知の効果を有さない)。マウスを切断の10〜14日後に屠殺する。転移を上述したように調べる。
【0144】
統計:転移の発生率を表す値、及び腫瘍を持つマウスの肺におけるこれらの成長は、正規分布しない。従って、Mann-Whitney U検定などのノンパラメトリック統計を、解析のために使用することができる。
【0145】
上述したGorelikらによるこのモデルの研究は、腫瘍細胞の接種材料のサイズが転移性成長の程度を決定することを示した。操作したマウスの肺における転移の割合は、原発性腫瘍を持つマウスとは異なった。従って、原発性腫瘍が3LL細胞(1〜5×106)より多い投薬量の接種によって誘導されて、続いて外科的に除去されたマウスの肺において、転移の容積は、操作されない対照より高かったにもかかわらず、転移の数は、操作されない腫瘍を持つマウスにおける数より低かった。肺転移の測定としての125IdUrdの取り込みを使用して、腫瘍を切除されたマウスの肺と最初に1×106の3LL細胞を接種された腫瘍を持つマウスとの間に有意な相違は見いだされなかった。1×105の腫瘍細胞の接種の後に生じた腫瘍の切断は、転移性成長を劇的に促進した。これらの結果は、局所的な腫瘍の切除の後のマウスの生存と一致した。局所的な腫瘍の切除後の転移性成長の加速の現象は、繰り返し観察されてきた(例えば、米国特許第5,639,725号を参照されたい)。これらの観察は、癌外科手術を受ける患者の予後に対して意味を有する。
【0146】
本発明の化合物を、また、実験的な転移モデルを使用して、後期転移の阻害について試験する(Crowleyらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 90(11):5021- 5025(1993))。後期転移は、腫瘍細胞の付着、及び管外遊出、局所的浸潤、接種、増殖、及び脈管形成の工程を含む。
【0147】
ヒト前立腺癌細胞(PC-3)には、レポーター遺伝子、好ましくは緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をトランスフェクトしたが、別の方法としてクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、又はLacZの酵素をコードする遺伝子がある。これにより、その後のこれらの細胞の運命について、これらのマーカーのどれかの利用(GFPの蛍光検出、又は酵素活性の組織化学的比色検出)が可能になる。細胞を、好ましくはivで注射して、約14日後に、特に肺において、しかしまた局所のリンパ節、大腿骨、及び脳においても、転移を同定する。これは、天然に生じる前立腺癌の転移の器官屈性を模倣する。例えば、GFPを発現するPC-3細胞(マウス当たり1×106の細胞)をヌード(nu/nu)マウスの尾静脈にiv注射する。動物には、また、試験化合物(少なくとも約100mg/kg/日)、又は媒体のいずれかを投与するミニポンプで(背面の皮下に)移植する。動物を14日後に安楽死させて、その臓器を組織学的検査のために調製する。単一の転移性細胞、及び病巣を視覚化して、蛍光顕微鏡検査法、又は光顕微鏡的組織化学によって、又は組織の粉砕、及び検出可能な標識の定量的比色アッセイによって定量化する。
【0148】
本発明に従った有用な化合物について、上記のモデルにおいて抗腫瘍活性、例えば腫瘍進行、脈管形成、及び/又は転移の遮断が証明されるはずである。
【0149】
脈管形成は、CD31(血小板内皮細胞接着分子、又はPECAMとしても知られる)に対する免疫染色を使用して微小血管密度を決定することによって測定される。結果は、それぞれ5つの異なる切片からの5つの領域の平均微小血管密度として報告される(Penfoldらの文献、1996)。典型的には、全腫瘍を切除し、切断して、その切片を適切な染色法、又はその他のマーカーのための標識を使用して微小血管密度について組織学的に調査する。
【0150】
本発明は、また、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体の結合、又は下流の活性をイメージングすることを含む、異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法を提供する。イメージングは、造影剤と共有結合したÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体を提供することによって達成することができる。
【0151】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、本発明の方法における検出、及び/又は定量化のために標識して、例えば細胞の表面上、又は内部におけるペプチドの結合部位を検出することができる。従って、ペプチドの運命を、インビトロ、又はインビボにおいて標識を検出するための適切な方法を使用することによって追跡することができる。標識されたペプチドは、また、診断、及び予後のために、例えば潜在的な転移性病巣をイメージングするために、又はその他のタイプのインサイチュー調査のためにインビボで利用することができる。
【0152】
適切な検出可能な標識の例は、放射性、蛍光発生性、色素産生性、又はその他の化学的標識である。有用な放射性標識は、γカウンター、若しくはシンチレーションカウンターによって、又は3H、125I、1311、35S、及び14Cなどの同位体標識を含むオートラジオグラフィによって検出される。加えて、131Iは、また、治療的同位元素として有用である。
【0153】
一般の蛍光標識は、蛍光イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド、及びフルオレサミンを含む。
【0154】
ダンシル基などの蛍光団は、蛍光を発するための特定の波長の光によって励起させることができる。(例えば、Hauglandの文献、蛍光プローブ及び研究化学物質のハンドブック( Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals)、第6版、Molecular Probes, Eugene, Oreg., 1996を参照されたい)。一般的に、蛍光試薬は、アミノ官能基と容易に反応するその能力に基づいて選択される。このような蛍光プローブの例は、可視スペクトルにまたがるBodipy(4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-5-インダセン)蛍光団を含む(米国特許第4,774,339号;米国特許第5,187,288号;米国特許第5,248,782号;米国特許第5,274,113号;米国特許第5,433,896号;米国特許第5,451,663号)。この群における特に有用なメンバーの一つは、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸である。
【0155】
OREGON GREEN(商標)、並びにその誘導体、RHODAMINE GREEN(商標)、及びRHODOL GREEN(商標)などの、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、及びフルオレセイン様分子は、イソシアネート、スクシンイミジルエステル、又はジクロロチアジアジニル反応性の基を使用してアミン基にカップリングされる。長波長ローダミンは、基本的に窒素原子上に置換基を有するRHODAMINE GREEN(商標)の誘導体であり、公知の最も光安定性の蛍光標識化試薬の一つである。これらのスペクトルは、4〜10の間のpHの変化による影響を受けず、多くの生物学的適用のためのフルオレセインに対し重要な利点である:この群は、テトラメチルローダミン、Xローダミン、及びテキサスレッドの誘導体を含む。本発明に従ったペプチドを誘導体化するためのその他の好ましい蛍光団は、紫外線によって励起されるものである。例には、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン(その中でダンシルクロリドはメンバーである)、ピレン、及びピリジルオキサゾール誘導体を含む。
【0156】
また別のアプローチにおいて、1つ以上のアミノ基を蛍光生成物を生じる試薬、例えばフルオレサミン、o-フタルジアルデヒドなどに対するジアルデヒド、ナフタレン-2,3-ジカルボキシラート、及びアントラセン-2,3-ジカルボキシラートと反応させる。7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)誘導体であるクロライド、及びフルオライドの両方は、アミンを修飾して蛍光生成物を生じるために有用である。
【0157】
当業者は、公知の蛍光試薬がアミン、チオールなど、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、及びアミド以外の基を修飾することを認識するであろう。それ故、蛍光基質は、これらのその他の反応性の基を使用して容易に設計し、かつ合成することができる。
【0158】
ペプチドは、また、152Euなどの蛍光を発する金属、又はランタニド系列における他のものを使用して、検出のために標識することができる。これらの金属は、金属をキレート化するジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの群を使用して、ペプチドに付着することができる。ペプチドは、化学発光化合物とカップリングすることによって検出可能にさせることができる。次いで、化学発光タグ化されたペプチドの存在は、化学反応中に起こる発光の存在を検出することによって、決定される。特に有用な化学発光物質の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、及びシュウ酸エステルである。同様に、生物発光化合物は、ペプチドに標識するために使用することができる。生物発光は、生物学的系において見いだされるタイプの化学発光であり、触媒ポリペプチドが化学発光反応の効率を増大させる。生物発光ポリペプチドの存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識する目的において重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、及びエクオリンである。
【0159】
また別の実施態様において、高い吸光係数を持つ色素産生化合物(発色団)に基づいて、比色検出法が使用される。
【0160】
標識されたペプチドのインサイチュー検出は、対象から組織学的検体を除去すること、及び標識を検出するために適切な状態下で顕微鏡検査法によってそれを調べることによって達成することができる。当業者は、広範な組織学的方法(染色法など)のいずれをも、このようなインサイチュー検出を達成するために修正することができることを容易に認識するであろう。
【0161】
標識化における多くの異なる標識、及び方法が、当業者に公知である。本発明において使用することができる標識のタイプの例は、放射性同位体、常磁性同位元素、及びポジトロン放射形断層撮影(PET)によって撮像することができる化合物を含む。当業者は、本発明において使用されるペプチドに結合させるためのその他の適切な標識を知るであろうし、またルーチン試験によってそれを確認することができるであろう。更にまた、これらの標識をペプチド、又は誘導体に結合することは、当業者に公知の標準的な技術を使用して行うことができる。
【0162】
インビボのラジオイメージングにおける診断については、利用可能な検出機器のタイプは、所与の放射性核種を選択する際の主要な要素である。選択される放射性核種は、所与のタイプの機器によって検出可能である減衰のタイプを有するべきである。一般に、診断イメージングを視覚化するための任意の従来法を本発明に従って利用することができる。インビボでの診断のための放射性核種を選択する際の別の要素は、放射性核種の半減期が、ターゲット組織による最大の取り込み時にまだ検出可能であるように十分に長いが、宿主における有害な放射線を最小化するように十分に短いことである。一つの実施態様において、インビボのイメージングのために使用される放射性核種は、粒子を放射しないが、140〜200keVの範囲における多数の光子を生じ、これを従来のγカメラによって容易に検出することができる。
【0163】
インビボの診断について、放射性核種は、直接的、又は中間の官能基を使用することにより間接的のいずれかによって、ペプチドに結合することができる。金属イオンとして存在する放射性同位元素をペプチドに結合させるためにたいてい使用される中間の官能基は、キレート化剤、DTPA、及びEDTAである。ペプチドに結合することができる金属イオンの例は、49Tc、123I、111In、131I、97Ru、67Cu、67Ga、1251、68Ga、72As、89Zr、及び201T1である。一般的に、診断的な使用についての検出のために標識されるペプチドの投薬量は、患者の年齢、状態、性別、及び疾患の程度、もしあれば反指標(counterindication)、並びに個々の医師によって調整されるその他の変数などの考慮事項に依存して変化するであろう。投薬量は、0.01mg/kg〜100mg/kgにおいて変化させることができる。
【0164】
別の実施態様において、本発明のペプチドは、アッセイ、分取アフィニティークロマトグラフィー、又は固相分離においてペプチドの受容体を結合させるためのアフィニティーリガンドとして使用される。このような組成物は、また、好ましくは特異的受容体-リガンド相互作用を介して、ペプチド、若しくは誘導体が結合する細胞を濃縮、精製、又は単離するために使用することができる。ペプチド、又は誘導体は、当該技術分野において公知の一般の方法を使用して固定され、例えばCNBr活性化されたSEPHAROSE(登録商標)、又はAGAROSE(登録商標)、NHS-AGAROSE(登録商標)、又はSEPHAROSE(登録商標)、エポキシ活性化されたSEPHAROSE(登録商標)、又はAGAROSE(登録商標)、EAH-SEPHAROSE(登録商標)、又はAGAROSE(登録商標)、ストレプトアビジン-SEPHAROSE(登録商標)、又はAGAROSE(登録商標)に対する結合を、ビオチン化されたペプチド、又は誘導体と組み合わせる。一般的に、本発明のペプチド、又は誘導体は、示された目的のために、これらの化合物を固相に対して固定することができる任意のその他の方法によって固定することができる。例えば、アフィニティークロマトグラフィー:原理及び方法(Affinity Chromatography: Principles and Methods)(Pharmacia LKB Biotechnology)を参照されたい。従って、一つの実施態様は、固体支持体、若しくは樹脂に結合された本明細書に記載されるペプチド、誘導体、又はペプチド擬態のいずれかを含む組成物である。化合物は、直接的に、又は約2〜12炭素原子を有する脂肪族鎖などのスペーサーを介して、結合することができる。
【0165】
いくつかの実施態様において、本発明は、試験化合物、及び配列番号:1、又は配列番号:3、又はキャップされた変異体ペプチドをÅ6結合ポリペプチドに加えること、並びに試験化合物と配列番号:1の競合的結合を測定することを含む、Å6結合ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。Å6結合ポリペプチドは、上述したようにCD44の任意の変異体を含むことができる。
【0166】
好ましい候補として同定された試験化合物は、Boydenチャンバーアッセイなどのインビトロアッセイ系において、その抗脈管形成活性についてスクリーニングすることができる。Boydenは、白血球化学走性の解析のためにこのアッセイを導入した。本アッセイは、微細孔膜によって分離された2つの培地が満たされたコンパートメントのチャンバーに基づく。細胞を上側のコンパートメント内に置いて、1つ以上の化学走性薬剤が存在する下側のコンパートメントへと膜の孔を通じて遊走させる。適切なインキュベーション時間の後、2つのコンパートメント間の膜を固定して、染色して、膜の下側に遊走した細胞の数を決定する。多数の異なるBoydenチャンバー装置を商業的に入手可能である。
【0167】
いくつかの実施態様において、Å6ポリペプチドは、配列番号:1に加えられた任意の数の付加的なアミノ酸を含み、かつCD44のヒアルロン酸との結合性相互作用のモジュレーターとしての生物学的活性をなおも少なくとも20%維持することができる付加変異体として存在することができる。付加変異体は、1つまでの付加的アミノ酸、及び2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、及び200までの付加的なアミノ酸を含むことができ、これらの値の間にある任意の整数を含む。付加変異体は、N末端、C末端、又は両方において付加的なアミノ酸を含むことができる。
【0168】
いくつかの実施態様において、配列番号:1に基づいたペプチドを使用する本発明の方法は、ペプチドがCD44のヒアルロン酸との結合性相互作用のモジュレーターとしての生物学的活性をなおも少なくとも20%維持する限り、1つ以上のアミノ酸残基が置換される。タンパク質の化学、及び構造の詳細な説明については、Schulzらの文献、タンパク質構造の原理(Principles of Protein Structure)、Springer- Verlag, New York, New York(1979);および Creightonの文献、タンパク質:構造及び分子原理(Proteins: Structure and Molecular Principles)、W. H. Freeman & Co., San Francisco, California,(1984)を参照され、またこれらは参照により本明細書に組み込まれる。本発明のペプチド分子において行うことができる置換のタイプは、保存的置換であることができ、また以下の群の1つ内の交換として本明細書において定義される:1.小さな脂肪族の、無極性、又はわずかに極性の残基:例えば、Ala、Ser、Thr、Gly;2.極性の、負に荷電した残基、及びこれらのアミド:例えば、Asp、Asn、Glu、Gin;3.極性の、正に荷電した残基:例えば、His、Arg、Lys。
【0169】
Proは、その変わった形状のため、ペプチド鎖をきつく束縛する。官能特性の実質的な変化は、例えば上述した群(又は上に示されていない2つのその他のアミノ酸群)内よりむしろ群間などで、保存性があまりない置換を選択することによってなされ、これにより、(a)置換の領域におけるペプチドバックボーンの構造、(b)ターゲット部位における分子の電荷、若しくは疎水性、又は(c)大半の側鎖を維持するこれらの効果がより有意に異なるであろう。本発明に従った置換の大部分は、ペプチド分子の特徴においてラジカル変化を生じないものである。あらかじめ置換の正確な効果を予測することが困難なときでも、当業者は、ルーチンのスクリーニングアッセイ、好ましくは後述する生物学的アッセイによって効果を調べることができることを認識するであろう。酸化還元的、若しくは熱的な安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、又は担体と共に、若しくはマルチマーへと凝集する傾向を含む、ペプチド特性の変更は、当業者に周知の方法によってアッセイされる。加えて、配列番号:1に関するペプチドのいずれも、医薬として許容し得る塩の形態を含む任意の塩の形態で使用することができる。このような塩の形態は、例えば任意のインビボの診断において有用であろう。配列番号:1、及びその同種のものは、また、上述したようにプロドラッグ形態で使用してもよい。
【0170】
いくつかの実施態様において、誘導体は、アミノ末端、及びカルボキシル末端がそれぞれアセチル(アミノ末端のNに結合される、Ac--;「Ac」としてもまた略記される)、及びアミド(C末端のカルボキシル基に結合される--NH2;「Am」としてもまた略記される)でブロックする、又は「キャップする」ことができるペプチドを含む。このようなブロックされたペプチドは、また、Ac、及びAmのようなブロッキング基を示す一文字ペプチドコードの一部、例えば、
【化9】
として参照される。
【0171】
より一般的には、N末端のキャッピング機能は、末端のアミノ基に対する任意の結合であることができ、例えば以下を含む:全て上で定義したとおりの、ホルミル、1〜10炭素原子を有するアルカノイル、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、1〜10炭素原子を有するアルケノイル、例えばヘキシ-3-エノイル、1〜10炭素原子を有するアルキノイル、例えばヘキシ-5-イノイル、アロイル、例えばベンゾイル、又は1-ナフトイル、ヘテロアロイル、例えば3-ピロイル、若しくは4-キノロイル、アルキルスルホニル、例えばメタンスルホニル、アリールスルホニル、例えばベンゼンスルホニル、若しくはスルファニリル、ヘテロアリールスルホニル、例えばピリジン-4-スルホニル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルカノイル、例えば4-アミノブチリル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルケノイル、例えば6-ヒドロキシ-ヘキシ-3-エノイル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルキノイル、例えば3-ヒドロキシ-ヘキシ-5-イノイル、置換されたアロイル、例えば4-クロロベンゾイル、若しくは8-ヒドロキシ-ナフト-2-オイル、置換されたヘテロアロイル、例えば2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-キナゾリン-6-オイル、置換されたアルキルスルホニル、例えば2-アミノエタンスルホニル、置換されたアリールスルホニル、例えば5-ジメチルアミノ-1-ナフタレンスルホニル、置換されたヘテロアリールスルホニル、例えば1-メトキシ-6-イソキノリンスルホニル、カルバモイル基、若しくはチオカルバモイル、置換されたカルバモイル基(R'--NH--CO)、又は置換されたチオカルバモイル(R'--NH--CS)、式中R'は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアルケニル、置換されたアルキニル、置換されたアリール、若しくは置換されたヘテロアリール、置換されたカルバモイル基(R'--NH--CO)、及び置換されたチオカルバモイル(R'--NH--CS)、式中R'は、アルカノイル、アルケノイル、アルキノイル、アロイル、ヘテロアロイル、置換されたアルカノイル、置換されたアルケノイル、置換されたアルキノイル、置換されたアロイル、若しくは置換されたヘテロアロイル。
【0172】
C末端のキャッピング機能は、末端のカルボキシル基とのアミド結合の、又は末端のカルボキシル基とのエステル結合のいずれかのものであることができる。アミド結合のために提供するキャッピング機能は、NR1R2として表され、式中R1、及びR2は、以下の基から独立して由来してもよい:水素原子、好ましくは1〜10炭素原子を有するアルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、好ましくは1〜10炭素原子を有するアルケニル、例えばプロプ-2-エニル、好ましくは1〜10炭素原子を有するアルキニル、例えばプロプ-2-イニル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルキル、例えばヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、メルカプトアルキル、アルキルチオアルキル、ハロゲンアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルカノイルアルキル、カルボキシアルキル、カルバモイルアルキル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルケニル、例えばヒドロキシアルケニル、アルコキシアルケニル、メルカプトアルケニル、アルキルチオアルケニル、ハロゲノアルケニル、シアノアルケニル、アミノアルケニル、アルキルアミノアルケニル、ジアルキルアミノアルケニル、アルカノイルアルケニル、カルボキシアルケニル、カルバモイルアルケニル、1〜10炭素原子を有する置換されたアルキニル、例えばヒドロキシアルキニル、アルコキシアルキニル、メルカプトアルキニル、アルキルチオアルキニル、ハロゲノアルキニル、シアノアルキニル、アミノアルキニル、アルキルアミノアルキニル、ジアルキルアミノアルキニル、アルカノイルアルキニル、カルボキシアルキニル、カルバモイルアルキニル、10炭素原子までを有するアロイルアルキル、例えばフェナシル、又は2-ベンゾイルエチル、アリール、例えばフェニル、又は1-ナフチル、ヘテロアリール、例えば4-キノリル、1〜10炭素原子を有するアルカノイル、例えばアセチル、又はブチリル、アロイル、例えばベンゾイル、ヘテロアロイル、例えば3-キノロイル、OR'、若しくはNR'R''、式中R'、及びR''は、独立して水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アロイル、スルホニル、スルフィニルであり、又はSO2--R'''、若しくはSO--R'''、式中R'''は、置換され、または置換されていないアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、又はアルキニル。
【0173】
エステル結合を提供するキャッピング機能は、ORとして表され、式中Rは、アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アラルキルオキシ;ヘテロアラルキルオキシ;置換されたアルコキシ;置換されたアリールオキシ;置換されたヘテロアリールオキシ;置換されたアラルキルオキシ;又は置換されたヘテロアラルキルオキシであってもよい。
【0174】
N末端、若しくはC末端のキャッピング機能のいずれか、又は両方は、キャップされた分子が、活性な薬物を放出するために体内で自発的、又は酵素的な変換を受ける、及び親薬物分子を上回る改善された送達特性を有するプロドラッグ(薬理学的に不活性誘導体である親薬物分子)として機能するような構造であってもよい(Bundgaardの文献、(1985))。
【0175】
キャッピング群の賢明な選択によって、ペプチドに対するその他の活性の付加が可能になる。例えば、N末端、又はC末端のキャップに連結されたスルフヒドリル基の存在によって、その他の分子に対する誘導体化されたペプチドの抱合が可能になるであろう。
【0176】
ペプチドのキャッピングは、多くのペプチドについて証明されているように、主に血漿内半減期の増大が意図される(例えば、Powellらの文献、Ann Repts Med. Chem. 28:285-294(1993))。この機能に役に立つ任意のキャッピング基が意図される。しかし、キャップされていない形態は、ペプチド擬態の設計(下記を参照されたい)のための鋳型としてなおも有用であり、またインビトロにおける活性を同程度に有し得る。
【0177】
本発明の方法において使用されるÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、治療上許容し得る塩として存在することができる。適切な塩は、有機、及び無機の両方の酸と共に形成されたものを含む。このような酸付加塩は、通常医薬として許容し得るであろう。しかし、医薬として許容されない塩の塩は、問題となっている化合物の製造、及び精製に有用であり得る。塩基付加塩もまた形成することができ、かつ医薬として許容することができる。塩の製造、及び選択のより完全な考察については、塩、医薬塩:特性、選択、及び使用(Stal, Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, Wiley- VCHA, Zurich, Switzerland(2002)を参照されたい。
【0178】
代表的な酸付加塩は、アセテート、アジパート、アルギナート、L-アスコルベート、アスパルテート、ベンゾアート、ベンゼンスルホナート(ベシレート)、ビサルフェート、ブチラート、カンフォラート、カンファースルホナート、シトラート、ジグルコナート、ホルマート、フマラート、ゲンチサート、グルタラート、グリセロホスフェート、グリコラート、ヘミサルフェート、ヘプタノアート、ヘキサノアート、ヒップレート、ハイドロクロライド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、2-ヒドロキシエタンスルホナート(イセチオナート)、ラクテート、マレアート、マロナート、DL-マンデラート、メシチレンスルホナート、メタンスルホナート、ナフチレンスルホナート、ニコチナート、2-ナフタレンスルホナート、オキサラート、パモアート、ペクチナート、パーサルフェート、3-フェニルプロプリオナート、ホスホナート、ピクラート、ピバラート、プロピオナート、ピログルタマート、スクシナート、スルホナート、タータラート、L-タータラート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、ホスフェート、グルタマート、ビカルボナート、パラ-トルエンスルホナート(p-トシラート)、及びウンデカノアートを含む。本発明のペプチドに存在する塩基性基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルクロライド、ブロミド、並びにヨージド;ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミルサルフェート;デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステリルクロライド、ブロミド、並びにヨージド;並びにベンジル、及びフェネチルブロミドで四級化することができる。治療上許容し得る付加塩を形成するために使用することができる酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸などの有機酸を含む。
【0179】
塩は、また、化合物のアルカリ金属、又はアルカリ土類イオンとの配位によって形成することができる。それ故、本発明は、本発明の化合物の化合物のナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウム塩、及び同様のものを想定する。
【0180】
塩基付加塩は、カルボン酸基を、金属カチオンのヒドロキシド、カルボナート、又はビカルボナートなどの適切な塩基と、或いはアンモニア、又は有機の一級、二級、若しくは三級アミンと反応させることによって、ペプチドの最終的な単離、及び精製中に製造することができる。治療上許容し得る塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、エチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ピリジン、N,N-ジメチルアニリニウム、N-メチルピペリジンイウム、N-メチルモルホリニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、プロカイン、ジベンジルアンモニウム、N,N'-ジベンジルフェネチルアンモニウム、1-エフェンアンモニウム、及びNN-ジベンジルエチレンジアンモニウムなどの無毒の四級アミンカチオンを含む。塩基付加塩の形成のために有用なその他の代表的な有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、及びピペラジンを含む。
【0181】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、そのままの化学物質として投与することができる一方で、これらは、また、医薬品製剤としても投与することができる。医薬品製剤は、化合物、又はその医薬として許容し得る塩、エステル、プロドラッグ、若しくは溶媒和化合物を、1つ以上のより医薬として許容し得る担体、及び任意に1つ以上のその他の治療成分と共に含む。担体(類)は、製剤のその他の成分と適合し、かつそのレシピエントに有害であってはならないするという意味において「許容される」べきである。適当な製剤は、選択される投与経路に依存する。任意の周知技術、担体、及び賦形剤を適切であるように、また当該技術において理解されるように使用うぃてもよい;例えばレミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)を参照されたい。本発明の医薬組成物は、それ自体が公知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、微粒子化、乳化、カプセル化、封入、又は圧縮プロセスの手段によって製造してもよい。
【0182】
製剤は、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、及び局所的(真皮、頬、舌下、及び眼内を含む)投与に適したものを含むが、最も適切な経路は、例えばレシピエントの状態、及び障害に依存し得る。製剤は、好都合に単位剤形において提示されてもよく、また薬学分野において周知の方法のいずれによって製造されてもよく、製剤は、活性成分を、液体担体、若しくは微粉固体担体、又は両方と一様かつ親密に結合させて、次いで、必要な場合に、生成物を所望の製剤に成形することによって製造することができる。
【0183】
経口投与のために適した製剤は、活性成分の予め定められた量をそれぞれ含むカプセル、カシェ剤、若しくは錠剤などの別個の単位として;粉末、若しくは顆粒として;水性液体、若しくは非水性液体中の溶液、若しくは懸濁液として;又は水中油型液体の乳剤、若しくは油中水型液体の乳剤として提示することができる。活性成分は、また、ボーラス、舐剤、又はペーストとして提示することができる。
【0184】
経口的に使用することができる医薬品製剤は、錠剤、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセル、並びにゼラチンとグリセロール、又はソルビトールなどの可塑剤とで作られた柔らかい、封をしたカプセルを含む。錠剤は、任意に1つ以上の補助成分と共に、圧縮、又は成形することによって作製することができる。圧縮錠剤は、適切な機械において、任意に結合剤、不活性な希釈剤、又は潤滑剤、界面活性剤、若しくは分断剤と混合した粉末、又は顆粒などの自由自在に動く形態の活性成分を圧縮することによって製造することができる。成形錠剤は、粉末状化合物を不活性な液状の希釈剤で湿らせた混合物を、適切な機械において成形することによって作製することができる。錠剤は、任意に被覆し、又は分割することができ、またその中の活性成分の放出が遅くなるように、又は制御されるように製剤化してもよい。経口投与のための全ての製剤は、このような投与のために適した投薬量であるべきである。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの賦形剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク、若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに任意に安定剤と混合して、活性成分を含むことができる。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解し、又は懸濁することができる。加えて、安定剤を添加してもよい。糖衣錠のコアは、適切なコーティングと共に提供される。この目的のために、濃縮した糖溶液を使用することができ、これは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒、又は溶媒混合物を任意に含んでいてもよい。染料、又は色素は、同定のため、又は活性化合物の投薬量の異なる組合せを特徴づけるために、錠剤、又は糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0185】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、注射によって、例えばボーラス注射、又は連続注入によって非経口投与するために、製剤化することができる。注射のための製剤は、例えばアンプルに、又は複数用量容器において、添加保存剤と共に、単位剤形で提示してもよい。Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、油性、若しくは水性媒体中の懸濁液、溶液、又は乳剤などの形態をとっていてもよく、また懸濁剤、安定化剤、及び/又は分断剤などの製剤化用薬剤を含んでいてもよい。製剤は、単位用量、又は複数用量容器、例えば封をしたアンプル、及びバイアルに提示されてもよく、使用前に即時に無菌の液体担体、例えば生理食塩水、若しくは無菌の発熱物質を含まない水の添加のみを必要とするまた、粉末形態で、又はフリーズドライさせた(凍結乾燥した)状態で貯蔵してもよい。即時注射溶液、及び懸濁液は、前述した種類の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から製造することができる。
【0186】
非経口投与のための製剤は、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体の水性、及び非水性(油性)の無菌の注射溶液を含むことができ、これは、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、及び製剤に意図されるレシピエントの血液との等張性を与える溶質;並びに、懸濁剤、及び濃化剤を含むことができる水性、及び非水性の無菌の懸濁液を含むことができる。適切な親油性の溶媒、又は担体は、ゴマ油などの脂肪油、エチルオレアート、若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームを含む。水性の注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘性を増大させる物質を含むことができる。任意に、懸濁液は、また、適切な安定剤、又は高度に濃縮された溶液の製造を可能にするために化合物の溶解性を増大させる薬剤を含むことができる。
【0187】
上述した製剤に加えて、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、また、デポー製剤として製剤化することができる。このような長時間作用する製剤は、移植によって(例えば、皮下、又は筋肉内に)、又は筋肉内注射によって投与することができる。従って、例えば、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、適切な高分子、若しくは疎水性材料(例えば、許容し得る油中の乳剤として)、又はイオン交換樹脂と共に、或いは、やや溶解しにくい誘導体として、例えばやや溶解しにくい塩として製剤化することができる。
【0188】
頬、又は舌下投与のために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、従来の様式で製剤化された錠剤、ロゼンジ、パステル、又はゲルの形態をとることができる。このような組成物は、スクロース、及びアカシア、又はトラガカンタなどの風味をつけられた基剤中に活性成分を含むことができる。
【0189】
化合物は、また、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、又はその他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を含む、坐薬、又は保持浣腸剤などの直腸組成物に製剤化することができる。
【0190】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、局所的に、すなわち非全身投与によって投与することができる。これは、外部からの表皮、又は頬のくぼみに対する本発明の化合物の適用、並びに耳、目、及び鼻に対するこのような化合物の点滴注入を含み、その結果、化合物は、有意に血流に入らない。対照的に、全身投与は、経口、静脈内、腹腔内、及び筋肉内投与をいう。
【0191】
局所的投与に適した製剤は、炎症の部位に対して皮膚を介して透過させるために適したゲル、塗布剤、ローション、クリーム、軟膏、又はペーストなどの液体、又は半液体の製剤、及び目、耳、又は鼻に対する投与に適した液滴を含む。活性成分は、局所的投与のために0.001%〜10%w/w、例として製剤の重量の1%〜2%含むことができる。しかし、10%w/wまでとして含むことができる。その他の実施態様において、製剤の5%w/w未満、又は0.1%〜1%w/wを含むことができる。
【0192】
Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体における局所的、又は経皮投与のためのゲルは、揮発性溶媒、不揮発性溶媒、及び水の混合物を含むことができる。緩衝された溶媒系の揮発性溶媒成分は、低級(C1-C6)アルキルアルコール、低級アルキルグリコール、及び低級グリコールポリマーを含むことができる。特定の実施態様において、揮発性溶媒は、エタノールである。揮発性溶媒成分は、透過エンハンサーとして作用することができ、その一方で、これは、蒸発するため、皮膚に対する冷却効果も生じる。緩衝された溶媒系の不揮発性溶媒部分は、低級アルキレングリコール、及び低級グリコールポリマーから選択される。特定の実施態様において、プロピレングリコールが使用される。不揮発性溶媒は、揮発性溶媒の蒸発を遅らせ、また緩衝された溶媒系の蒸気圧を減少させる。この不揮発性溶媒成分の量は、揮発性溶媒と共に、使用される特定のÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体によって決定することができる。緩衝された溶媒系の緩衝成分は、当該技術において一般に使用される任意の緩衝液から選択することができる;好ましくは、水が使用される。いくつかの実施態様において、成分の割合は、約20%の不揮発性溶媒、約40%の揮発性溶媒、及び約40%の水である。局所的組成物に加えることができるいくつかの任意の成分がある。これらは、キレート剤、及びゲル化剤を含むが、限定されない。適切なゲル化剤は、半合成セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、及び合成重合体、並びに美容薬を含むことができるが、限定されない。
【0193】
ローションは、皮膚、又は目に対する適用に適したものを含む。目のローションは、殺菌剤を任意に含む無菌の水性溶液を含むことができ、また液滴の製造のためのものと類似の方法によって製造することができる。皮膚に対する適用のためのローション、又は塗布剤は、また、アルコール、若しくはアセトン、及び/又はグリセロールなどのモイスチャライザー、又はヒマシ油、若しくは落花生油などの油などの、乾燥を早めるための、及び皮膚を冷却するための薬剤を含むことができる。
【0194】
クリーム、軟膏、又はペーストは、外部からの適用のための活性成分の半固体製剤である。これらは、脂肪性、又は非脂肪性基剤と共に、適切な機械の助けを借りて、単独で、又は水性、若しくは非水性の流体における溶液、又は懸濁液において、微細に分割された形態、又は粉末状の形態で活性成分を混合することによって作製することができる。基剤は、硬、柔、又は液体のパラフィン、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸などの炭化水素;粘質物;アーモンド、トウモロコシ、ナンキンマメ、キャスター、又はオリーブ油などの天然起源の油;羊毛脂、若しくはその誘導体、又はステアリン酸、若しくはオレイン酸などの脂肪酸を、プロピレングリコール、又はマクロゲルなどのアルコールと共に含むことができる。製剤は、ソルビタンエステル、又はそのポリオキシエチレン誘導体などのアニオン性、カチオン性、又は非イオン性の界面活性物質などの任意の適切な界面活性剤を組み込むことができる。天然ガム、セルロース誘導体などの懸濁剤、又はケイ質ケイ砂などの無機物質、及びラノリンなどのその他の成分も含まれてもよい。
【0195】
液滴は、無菌の水性、若しくは油性の溶液、又は懸濁液を含むことができ、また殺菌剤、及び/又は殺真菌剤、及び/又は任意のその他の適切な保存剤の適切な水性溶液に活性成分を溶解することによって製造することができ、任意に界面活性剤(界面活性物質)を含む。次いで、生じる溶液を濾過によって浄化して、適切な容器に移して、次いで封をして、オートクレーブすることによって、又は半時間98〜100℃にて維持することによって滅菌することができる。或いは、溶液は、濾過によって滅菌して、無菌技術によって容器に移すことができる。液滴への封入に適した殺菌剤、及び殺真菌剤の例は、硝酸フェニル水銀、又は酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)、及びクロルヘキシジンアセテート(0.01%)である。油性溶液の製造に適した溶媒は、グリセロール、希釈されたアルコール、及びプロピレングリコールを含む。口、例えば頬、又は舌下への局所的な投与のための製剤は、スクロース、及びアカシア、又はトラガカンタなどの風味をつけた基剤中に活性成分を含むロゼンジ、並びにゼラチン、及びグリセリン、又はスクロース、及びアカシアなどの基剤中に活性成分を含むパステルを含む。
【0196】
吸入による投与のために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、通気器、ネブライザー加圧パック、又はその他のエアロゾルスプレーを送達する簡便な手段から、簡便に送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の適切な気体などの適切な噴霧剤を含むことができる。加圧エアロゾルの場合、一定量を送るバルブを備えることによって投与量単位を決めることができる。或いは、吸入、又はガス注入による投与のために、Å6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、乾燥粉末組成物、例えば化合物、及びラクトース、又はデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末混合物の形態をとることができる。粉末組成物は、例えばカプセル、カートリッジ、ゼラチン、又はブリスターパック中に単位剤形として提示することができ、これから粉末が吸入器、又は通気器の助けを借りて投与され得る。
【0197】
いくつかの実施態様において、単位投与製剤は、活性成分における、上述したような有効な投薬量、又はその適切な画分を含むものである。
【0198】
特に上で言及した成分に加えて、本発明の製剤は、問題となる製剤のタイプに対して関連がある技術における従来のその他の薬剤を含むことができることを理解するであろうし、例えば、経口投与に適したものは、風味をつける薬剤を含んでいてもよい。
【0199】
本発明の方法において使用されるÅ6ポリペプチド、若しくは配列番号:3のペプチド、又はキャップされた変異体は、組換えDNA技術を使用して製造してもよい。しかし、これらの長さを考慮すれば、これらは、好ましくは、一般的にMerrifieldの文献、 J. Amer. Chem. Soc, 85:2149-2154(1963)に記載されるものなどの固相合成を使用して製造されるが、当該技術分野において公知のその他の同等の化学的合成もまた有用である。固相ペプチド合成は、保護されたαアミノ酸を適切な樹脂にカップリングすることによって、ペプチドのC末端から開始してもよい。このような出発材料は、クロロメチル化された樹脂に対する、若しくはヒドロキシメチル樹脂に対するエステル結合によって、又はBHA樹脂、若しくはMBHA樹脂に対するアミド結合によって、α-アミノ基が保護されたアミノ酸を付着させることにより製造することができる。
【0200】
ヒドロキシメチル樹脂の製造は、Bodanskyらの文献(1966)によって記載される。クロロメチル化樹脂は、BioRad Laboratories, Richmond, Calif、及びLab. Systems, Incから商業的に入手可能である。このような樹脂の製造は、Stewartらの文献、(1969)によって記載される。BHA、及びMBHA樹脂支持体は、商業的に入手可能であり、また合成される所望のポリペプチドがC-末端にて非置換のアミド基を有するときにのみ、一般的に使用される。
【0201】
アミノ酸は、ペプチド結合の形成のための当該技術分野において周知の技術を使用して、ペプチド鎖を成長するようにカップリングすることができる。例えば、1つの方法は、成長するペプチド鎖におけるフリーのN末端アミノ基との反応に対するより高い感受性をアミノ酸のカルボキシル基に付与するであろう誘導体に、アミノ酸を変換することを含む。具体的には、保護されたアミノ酸のC末端は、C末端と、エチルクロロホルマート、フェニルクロロホルマート、sec-ブチルクロロホルマート、イソブチルクロロホルマート、若しくはピバロイルクロライド、又は同様の酸塩化物との反応によって、混成無水物に変換することができる。或いは、アミノ酸のC末端は、2,4,5-トリクロロフェニルエステル、ペンタクロロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、p-ニトロフェニルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、又は1-ヒドロキシベンゾトリアゾールから形成したエステルなどの活性なエステルに変換することができる。別のカップリング法は、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、又はN,N'-ジイソプロピルカルボジイミドなどの適切なカップリング剤の使用を含む。当業者にとって明らかな、その他の適切なカップリング剤は、Grossらの文献、(1979)において開示され、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0202】
ペプチド合成において使用されるそれぞれのアミノ酸のα-アミノ基は、これらの活性なα-アミノ官能基を含む副反応を防止するために、カップリング反応の間、保護することができる。特定のアミノ酸は、反応性の側鎖官能基(例えば、スルフヒドリル、アミノ、カルボキシル、及びヒドロキシル)を含み、またこのような官能基は、また、初期、及びその後の両方のカップリング工程の両方の間に(1)α-アミノ基部位、又は(2)反応性の側鎖部位が生じる化学反応を防止するために、適切な保護基で保護することができる。
【0203】
ペプチドの合成に使用される特定の保護基の選択では、典型的には以下の一般的な規則に従う。具体的には、α-アミノ保護基は、(1)カップリング反応に使用される条件下で、α-アミノ官能基を不活性にすべきであり、(2)側鎖保護基を取り除かず、かつペプチド断片の構造を変化させないであろう条件下で、カップリング反応の後に容易に除去可能であるべきであり、及び(3)カップリングの直前に、活性化によるラセミ化の可能性を実質的に減少させるべきである。
【0204】
他方では、側鎖保護基は、(1)カップリング反応において使用される条件下で、側鎖官能基を不活性にすべきであり、(2)α-アミノ保護基を取り除くのに使用される条件下で安定であるべきであり、及び(3)ペプチド鎖の構造を変化させないであろう反応条件下で、所望の完全に構築されたペプチドから容易に除去可能であるべきである。
【0205】
ペプチド合成に有用であることが知られている保護基は、これらの除去のために使用される薬剤との反応性が変化することは、当業者にとって明らかであろう。例えば、トリフェニルメチル、及び2-(p-ビフェニル)イソプロピル-オキシカルボニルなどの特定の保護基は、非常に変化しやすく、かつ緩酸条件下で切断され得る。t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、t-アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、及びp-メトキシベンジルオキシカルボニルなどのその他の保護基は、より変化しにくく、かつこれらの除去のために、酢酸中の塩酸、トリフルオロ酢酸、又は三フッ化ホウ素などの適度に強力な酸を必要とする。ベンジルオキシカルボニル(CBZ、又はZ)、ハロベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニルシクロアルキルオキシカルボニル、及びイソプロピルオキシカルボニルなどの更に他の保護基は、更により変化しにくく、かつこれらの除去のために、トリフルオロ酢酸中のフッ化水素、臭化水素、又はホウ素トリフルオロアセタートなどの更に強力な酸を必要とする。当該技術分野において公知の適切な保護基は、Grossらの文献、(1981)に記載されている。
【0206】
α-アミノ基を保護するために、又は側鎖の基を保護するために有用なアミノ酸保護基のクラスの中には、以下が含まれる。(1)α-アミノ基については、3つの典型的な保護基の種類は、(a)フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、CBZ、及びp-クロロベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニルなどの置換されたCBZ、並びにp-メトキシベンジルオキシカルボニル、o-クロロベンジルオキシカルボニル、2,4-ジクロロベンジルオキシカルボニル、2,6-ジクロロベンジルオキシカルボニル、及び同様のものなどの芳香族ウレタン-タイプ保護基;(b)BOC、t-アミルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、2-(p-ビフェニル)イソプロピルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、及び同様のものなどの脂肪族ウレタン-タイプ保護基;並びに(c)シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、及びシクロヘキシルオキシカルボニルなどのシクロアルキルウレタン-タイプ保護基。
【0207】
いくつかの実施態様において、α-アミノ保護基は、BOC、及びFMOCである。(2)Lysに存在する側鎖アミノ基については、保護は、BOC、2-クロロベンジルオキシカルボニル、及び同様のものなどの(1)において上述した基のいずれによってもよい。(3)Argのグアニジノ基については、保護は、ニトロ、トシル、CBZ、アダマンチルオキシカルボニル、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル、2,3,6-トリメチル-4-メトキシフェニルスルホニル、又はBOC基によって提供されてもよい。(4)Ser、又はThrのヒドロキシル基については、保護は、例えばt-ブチル;ベンジル(BZL);又はp-メトキシベンジル、p-ニトロベンジル、p-クロロベンジル、o-クロロベンジル、及び2,6-ジクロロベンジルなどの置換されたBZLによってなされてもよい。(5)Asp、又はGluのカルボキシル基については、保護は、例えば、BZL、t-ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、及び同様のものなどの基を使用してエステル化によってなされてもよい。(6)Hisのイミダゾール窒素については、ベンジルオキシメチル(BOM)、又はトシル部分が保護基として適切に使用される。(7)Tyrのフェノール性ヒドロキシル基については、テトラヒドロピラニル、tert-ブチル、トリチル、BZL、クロロベンジル、4-ブロモベンジル、及び2,6-ジクロロベンジルなどの保護基が適切に使用される。好ましい保護基は、ブロモベンジルオキシカルボニルである。(8)Asn、又はGlnの側鎖アミノ基については、好ましくはキサンチル(Xan)が使用される。(9)Metについては、アミノ酸は好ましくは保護されないままである。(10)Cysのチオ基については、p-メトキシベンジルが典型的に使用される。
【0208】
成長するペプチド鎖の第1のC末端アミノ酸、例えばGluは、典型的にはBOCなどの適切に選択された保護基によってα-アミノ位置にて保護されている。BOC-Glu-(y-シクロヘキシル)-OHは、最初にイソプロピルカルボジイミドを使用して約25℃にて2時間撹拌することでベンジルヒドリルアミン樹脂に、又はHorikiらの文献、(1978)に記載された手順に従ってクロロメチル化樹脂にカップリングすることができる。樹脂担体に対するBOC保護されたアミノ酸のカップリングに続いて、α-アミノ保護基を通常、典型的にはジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸(TFA)、又はTFA単独を使用することによって取り除く。α-アミノ基脱保護反応は、広範囲の温度において生じさせることができるが、通常約0℃〜室温の温度にて行われる。
【0209】
ジオキサン中のHClなどの、その他の標準的なα-アミノ基脱保護試薬、及び具体的なα-アミノ保護基の除去のための条件は、参照により本明細書に組み込まれるLubkeらの文献、(1975)に記載されたものなどの当該技術分野において行われている技術の範囲内である。α-アミノ保護基の除去に続いて、保護されていないα-アミノ基は、一般的に側鎖がまだ保護されており、意図された順序で段階的様式でカップリングすることができる。
【0210】
段階的アプローチの代替例は、それぞれ所望の配列の一部を表す予め形成された短い長さのペプチドを固相支持体に結合したアミノ酸の成長しつつある鎖にカップリングさせる、断片縮合法である。この段階的アプローチのために、特に適したカップリング試薬は、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、又はジイソプロピルカルボジイミドである。また、断片アプローチについては、所望の性質、及びサイズの断片をカップリングするために必要とされるカップリング試薬の選択、並びに断片化パターンの選択が成功させるために重要であり、かつ当業者に公知である。
【0211】
それぞれの保護されたアミノ酸、又はアミノ酸配列は、通常、化学量論的な量を超える量において固相反応器に導入して、カップリングは、ジメチルホルムアミド(DMF)、CH2CI2、又はその混合物などの有機溶媒において適切に行われる。不完全なカップリングが生じる場合、次のアミノ酸にカップリングするための製造においてN-アミノ保護基の除去の前に、通常カップリング手順を繰り返す。α-アミノ保護基の除去に続いて、残りのαアミノ、及び側鎖が保護されたアミノ酸は、意図された順序で段階的様式でカップリングすることができる。合成のそれぞれの段階にてカップリング反応の成功をモニターしてもよい。合成をモニターする1つの方法は、Kaiserらの文献、(1970)により記載されるようなニンヒドリン反応によるものである。カップリング反応は、また、周知の市販の方法、及び装置、例えば、Beckman 990 Peptide Synthesizerを使用して自動で実行することができる。
【0212】
所望のペプチド配列の完了後、保護されたペプチドを樹脂支持体から切断することができ、そして全ての保護基を取り除くことができる。保護基の切断反応、及び除去は、適切には、脱保護反応によって同時に、又は連続的に達成される。樹脂にペプチドを固定する結合がエステル結合であるとき、エステル連鎖を壊すこと、及び樹脂マトリックスを貫通することが可能な任意の試薬によってそれを切断することができる。1つの特に有用な方法は、液体のフッ化水素無水の^物の処理によるものである。この試薬は、通常、樹脂からペプチドを切断するだけでなく、酸に不安定な全ての保護基も除去して、従って、完全に脱保護されたペプチドを直接提供するであろう。酸に不安定でないさらなる保護基が存在するときには、さらなる脱保護工程を行うことができる。これらの工程は、具体的な必要性、及び環境に従って、上述したフッ化水素処理の前か後のいずれかに行うことができる。
【0213】
クロロメチル化樹脂を使用するとき、フッ化水素切断/脱保護処理は、一般的に遊離型のペプチド酸の形成をもたらす。ベンズヒドリルアミン樹脂を使用するとき、フッ化水素処理は、一般的に遊離型のペプチドアミドをもたらす。アニソール、及びジメチルスルフィドの存在下におけるフッ化水素との0℃における1時間の反応は、典型的には側鎖保護基を除去し、かつ同時に、樹脂からペプチドを放出させるであろう。
【0214】
保護基を除去することなくペプチドを切断することが望まれるとき、保護されたペプチド-樹脂をメタノリシスに供することができ、これによりC末端のカルボキシル基がメチル化されている、保護されたペプチドを得る。このメチルエステルは、その後穏やかなアルカリ条件下で加水分解して、遊離型のC末端カルボキシル基を与えることができる。次いで、ペプチド鎖上の保護基を液体のフッ化水素などの強力な酸を用いた処理によって除去することができる。メタノリシスのための特に有用な技術は、保護されたペプチド-樹脂をクラウンエーテルの存在下においてメタノール、及び青酸カリを用いて処理するMooreらの文献、(1977)のものである。
【0215】
クロロメチル化樹脂が使用されるとき、樹脂から保護されたペプチドを切断するためのその他の方法は、(1)アンモノリシス、及び(2)ヒドラジノリシスを含む。必要な場合、生じるC末端アミド、又はヒドラジドは、遊離のC末端カルボキシル部分に加水分解することができ、また保護基は、従来法で除去することができる。N-末端α-アミノ基上に存在する保護基は、保護されたペプチドが支持体から切断される前、又は後のいずれで除去してもよい。本発明のペプチドの精製は、典型的には、分取HPLC(逆相HPLCを含む)、ゲル浸透、イオン交換、分配クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー(モノクローナル抗体カラムを含む)、及び同様のものなどのクロマトグラフィー技術、又は向流分配法、若しくは同様のものなどのその他の従来の技術を使用して達成される。
【0216】
いくつかの実施態様において、本発明は、配列番号:1に基づくペプチドであって、1つ、若しくは複数のアミノ酸残基が除去され、かつその位置に異なる残基が挿入されているペプチド、例えば配列番号:3、又はキャップされた変異体を提供する。タンパク質化学、及び構造の詳細な説明については、Schulzらの文献、タンパク質構造の原理(Principles of Protein Structure)、Springer- Verlag, New York, New York(1979)、及びCreightonの文献、タンパク質:構造及び分子原理(Proteins: Structure and Molecular Principles)、W. H. Freeman & Co., San Francisco, California(1984)を参照され、またこれらは参照により本明細書に組み込まれる。本発明のペプチド分子において行ってもよい置換のタイプは、保存的置換であることができ、また以下の群の1つ内の交換として本明細書において定義される:1.小さな脂肪族の、無極性、又はわずかに極性の残基:例えば、Ala、Ser、Thr、Gly;2.極性の、負に荷電した残基、及びこれらのアミド:例えば、Asp、Asn、Glu、Gin;3.極性の、正に荷電した残基:例えば、His、Arg、Lys。
【0217】
Proは、その変わった形状のため、ペプチド鎖をきつく束縛する。官能特性の実質的な変化は、例えば上述した群(又は上に示されていない2つのその他のアミノ酸群)内よりむしろ群間などで、保存性があまりない置換を選択することによってなされ、これにより、(a)置換の領域におけるペプチドバックボーンの構造、(b)ターゲット部位における分子の電荷、若しくは疎水性、又は(c)大半の側鎖を維持するこれらの効果がより有意に異なるであろう。本発明に従った置換の大部分は、ペプチド分子の特徴においてラジカル変化を生じないものである。あらかじめ置換の正確な効果を予測することが困難なときでも、当業者は、ルーチンのスクリーニングアッセイ、好ましくは後述する生物学的アッセイによって効果を調べることができることを認識するであろう。酸化還元的、若しくは熱的な安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、又は担体と共に、若しくはマルチマーへと凝集する傾向を含む、ペプチド特性の変更は、当業者に周知の方法によってアッセイされる。
【0218】
いくつかの実施態様において、配列番号:1、若しくは配列番号:3、又はキャップされた変異体は、限定されないが、束縛されたアミノ酸、ペプチド二次構造を模倣する非ペプチド成分、又はアミド結合アイソスターを含むペプチド様分子を含む当該技術分野において公知のようなペプチド擬態として製剤化することができる。束縛された、天然に存在しないアミノを含むペプチド擬態は、限定されないが、αメチル化アミノ酸;α,α-ジアルキルグリシン、若しくはα-アミノシクロアルカンカルボン酸;Nα-Cα環化アミノ酸;Nα-メチル化アミノ酸;β-、若しくはγ-アミノシクロアルカンカルボン酸;α,β-不飽和アミノ酸;β,β-ジメチル、若しくはβ-メチルアミノ酸;β-置換-2,3-メタノアミノ酸;N-Cδ、若しくはCα-Cδ環化アミノ酸;置換されたプロリン、又は別のアミノ酸擬態を含むことができる。ペプチド二次構造を模倣するペプチド擬態は、限定されないが、非ペプチド性β-ターン擬態;γ-ターン擬態;β-シート構造の擬態;又はヘリカル構造の擬態を含むことができ、これらのそれぞれは、当該技術分野において周知である。非限定的な例として、ペプチド擬態は、また、レトロインベルソ修飾;還元されたアミド結合;メチレンチオエーテル、又はメチレン-スルホキシド結合;メチレンエーテル結合;エチレン結合;チオアミド結合;トランスオレフィン、若しくはフルオロオレフィン結合;1,5-二基置換テトラゾール環;ケトメチレン、若しくはフルオロケトメチレン結合などのアミド結合アイソスター、又は別のアミドアイソスターを含むペプチド様分子であることができる。当業者は、これら、及びその他のペプチド擬態が、本明細書において使用される「ペプチド擬態」という用語の意味の範囲内に包含されることを理解する。
【0219】
ペプチド擬態を同定する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、潜在性ペプチド擬態のライブラリーを含むデータベースのスクリーニングを含む。例えば、Cambridge Structural Databaseは、公知の結晶構造を有する300,000個の化合物を超えるコレクションを含む(Allenらの文献、Acta Crystallogr. 35:2331(1979))。この構造の保管所は、新たな結晶構造が決定されるたびに絶えず更新され、適切な形状、例えば本発明のペプチドと同じ形状、並びにターゲット分子に対する潜在的な幾何学的、及び化学的相補性を有する化合物をスクリーニングすることができる。本発明のペプチドの結晶構造が入手可能でない場合には、例えば、プログラムCONCORDを使用して構造を生成させることができる(Rusinkoらの文献、J. Chem. Inf. Comput. ScL 29:251(1989))。別のデータベースであるAvailable Chemicals Directory(Molecular Design Limited, Informations Systems; San Leandro, CA)は、市販されている約100,000個の化合物を含み、また本発明のペプチドの潜在的なペプチド擬態を同定するために検索することができる。
【0220】
本発明の種々の実施態様の活性に実質的に影響を及ぼさない変更もまた、本明細書にて提供される本発明の定義中に含まれるものと理解される。従って、以下の実施例は、本発明を例証するためであって、限定するためではないことが意図される。
【0221】
(実施例I:Å6CbioXLポリペプチドIの免疫沈降)
この実施例は、抗CD44を用いたイムノブロットを含むÅ6CbioXLポリペプチドの免疫沈降を示す。
【0222】
図1、及び図2において、SKOV3細胞は、4℃にて30分間、100μMのÅ6Cbiotinの有無において(それぞれÅ6CbioXL、及びConXL)インキュベートした。次いで、細胞を4℃にて30分間、5mMビス(スルホスクシンイミジル)スベラート(スルホ-DSS、又はBS3)で架橋して、Triton X-100溶解物を産生した。溶解物を室温にて2時間プロテインA-アガロースと共にインキュベートすることによって前処理した。次いで、100μgの浄化した溶解物を表す一定分量を、2μgの抗Tenascin R(TnR; E-18, Santa Cruz Biotech.)、抗Tenascin C(TnC; 300-3, Santa Cruz Biotech.)、抗CD44(DF1485, Santa Cruz Biotech.)、抗-Plexin-A1(P1 A1; H-60, Santa Cruz Biotech.)、又はマウスIgG1(Sigma Chem. Co.)を添加した20μLプロテインA-アガロースと共に、室温にて一晩インキュベートした。溶解バッファーで5回洗浄した後に、免疫沈降したポリペプチドを、SDS-PAGE試料緩衝液中で沸騰させることによって、プロテインA-アガロースから溶出させた。次いで、溶出した材料、及び出発材料の2μgの一定分量をSDS-PAGEに供し、PVDF膜に転写して、化学発光西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合ストレプトアビジン(HRP-SA)でブロッティングした。図1の結果は、CD44の下に「A」レーンにおいて観察されたバンドによって示されるように、配列番号:1のÅ6ペプチドがCD44をターゲッティングすることを示す。図2は、間にあったTnR、TnC、及びP1A1レーンを、出発材料(「St.Mat.」とラベルした)、及び分子重量指標との比較を容易にするために切り取った同じゲルを示す。
【0223】
(実施例II:Å6CbioXLポリペプチドIIの免疫沈降)
この実施例は、CD44がÅ6のターゲットであることを確認するさらなるイムノブロット実験を示す。
【0224】
図3において、SKOV3細胞は、4℃にて30分間、100μM Å6Cbiotinの有無において(それぞれÅ6CbioXL、及び対照)インキュベートした。次いで、細胞を4℃にて30分間、5mM BS3で架橋した。Triton X-IOO溶解物を産生して、室温にて2時間プロテインA-アガロースと共にインキュベートすることによって前処理した。次いで、100μgの浄化した溶解物を表す一定分量を2μgの抗CD44(DF1485、Santa Cruz Biotech)、又はマウスIgGl(Sigma Chem. Co.)を添加した20μLプロテインA-アガロースと共に、室温にて一晩インキュベートした。溶解バッファーで5回洗浄した後に、免疫沈降したポリペプチドを、SDS-PAGE試料緩衝液中で沸騰させることによって、プロテインA-アガロースから溶出させた。次いで、溶出した材料、及び出発材料の5μgの一定分量をSDS-PAGEに供し、PVDF膜に転写して、HRP-SAでブロッティングした。図3の左のパネルは、抗SAによる調査を示し、その一方で、右のパネルは、抗CD44による調査を示す。この実験は、CD44がÅ6ペプチドのターゲットであることを確認するのに役立つ。
【0225】
(実施例III:Å6は、SKOV3細胞に対する抗CD44であるDF1485の結合を阻害する)
この実施例は、Å6の存在下におけるSKOV3細胞に対する抗CD44(DF1485)結合のFACs解析を示す。
【0226】
図4において、SKOV3細胞は、簡単なトリプシン処理によってこれらの培養フラスコから剥離し、DPBSで2回洗浄して、10分間(exp.1)、又は30分間(exp.2)、示された濃度のÅ6と共に氷上でインキュベートした。次いで、抗CD44(DF1485;Santa Cruz Biotech.)、又はそのアイソタイプ対照を、1μg/ml(exp.1)、又は1、及び0.5μg/ml(exp.2)の終濃度で添加して、細胞を氷上で1時間インキュベートした。細胞を1回洗浄し、氷上で30分間FITC抱合ロバ抗マウスIgG(H+L)と共にインキュベートして、次いで、Beckman Coulter Epics XL-MCL細胞蛍光光度計を用いたFACS解析に供した。データ解析は、Coulter Epicsソフトウェアを使用して実行した。注:データは、データ収集の間にそれぞれの実験におけるネガティブ対照のMnIを<0.5に調整して得られた平均蛍光強度(MnI)として示してある。結果は、Å6が、SKOV3細胞に対するDF1485抗CD44の結合を阻害することを示す。異なる抗CD44抗体を使用する卵巣癌株における類似のCD44発現を図5において評価して、それについてのMnI値を図6において要約してある。その他の抗体でのこれらの結は、SKOV3細胞において見られた結果を示す。
【0227】
抗CD44抗体の1つの結合は、Å6とのプレインキュベーションによって阻害される。この抗体は、Å6を認識しないため、この結果は、Å6結合が立体障害を引き起こしているか、又は抗体エピトープがより長く認識されるようにÅ6結合がCD44のコンフォメーションを変化させていることを示す。CD44コンフォメーションの変化は、CD44のタンパク質分解に対する感受性を変更させることができる。
【0228】
(実施例IV:Å6CbioXLポリペプチド、及びÅ6-BSAにおける抗CD44(DF1485)イムノブロット解析)
この実施例は、DF1485抗CD44が、SKOV3ポリペプチドに架橋した、又はBSAにカップリングしたÅ6CbioのいずれのÅ6も認識しないことを示す。
【0229】
図7において、Å6CbioXL、及び対照(ConXL)SKOV3溶解物の30μgの一定分量、並びにÅ6架橋されたBSA(Å6-BSA)、及びBSAの2μgの一定分量を、抗CD44抗体であるDF1485(Santa Cruz Biotech)を使用するイムノブロット解析に供した。DF1485ブロットは、HRP抱合ヒツジ抗マウスIgG;重鎖、及び軽鎖特異的(GE Health Sciences)で染色した。ウサギ抗Å6ブロットは、HRP抱合ロバ抗ウサギIgG;重鎖、及び軽鎖特異的(Jackson Immunoresearch)で染色した。染色したバンドは、ECLプラス化学ルミネセンス試薬(GE Health Sciences)によって視覚化して、Hyperfilm ECLフィルム(GE)に曝露した。パネル1では、抗CD44は、Å6CbioXL(Aレーン)、及び対照(C)レーンにおいてバンドを生じた。バンド強度低減によって示されるように、Å6CbioXLは、CD44に対する抗CD44の結合を低減させる。交差反応性は、パネル1のレーン3、及び4に示されるように、Å6-BSA抱合体、又はBSAでは観察されない。加えて、Å6CbioXL、及びConXL溶解物の2μgの一定分量を、Å6Cbioで標識されたポリペプチドを同定するためにHRP-ストレプトアビジンで同時にブロットして、パネル2に示した。図7の第3パネルに示すように、2μgのÅ6-BSA、及びBSAも、Å6-BSA上のÅ6の存在を確認するために、Rb抗Å6でブロットした。Å6-BSA抱合体は、抱合体上のÅ6の存在を示すバンドを示す。BSAを有する対照レーンは、このバンドを示さない。
【0230】
(実施例V:抗CD44(DF1485)における、Å6に結合する能力、又はRb抗Å6KLH結合を阻害する能力を評価するÅ6 ELISA)
この実施例は、Å6ELISAにおいて、抗CD44であるDF1485が、Å6に直接結合せず、またRb抗Å6KLHの結合を阻害しないことを示す。
【0231】
図8aにおいて、Å6ペプチド(PBS中に10μg/ml;100μL/ウェル)を、4℃で一晩マイクロタイターウェル上に吸収させた。室温にて1時間1%BSAでブロッキングした後、Rb抗Å6KLH、そのプレブリード対照、抗CD44(DF1485)、又はそのアイソタイプ対照の示された希釈を二連のウェルに添加して、室温にて1時間インキュベートした。抗体結合は、HRP抱合ロバ抗RbIgG(H+L;Jackson Imm. Research)、又はヤギ抗マウスIgG(H+L;GE Health Sciences)の1/7,500希釈で検出し、続いてTMB安定化基質(Invitrogen、Carlsbad、CA)で発色させた。図8aは、抗CD44、及びそのアイソタイプ対照がÅ6ペプチドに結合しないことを示す。対照的に、抗Å6-KLHは、450nm(OD450)にて希釈依存的な光学濃度を示し、Å6ペプチドに対するその結合を証明している。プレブリードでの対照は、また、Å6ペプチドを認識する既存の抗体が無いことを示す。図8bにおいて、DF1485抗CD44、又はそのアイソタイプ対照の示された濃度の存在下におけるRb抗Å6-KLH(1/1600希釈)の結合を上述したように評価した。有意に、Rb抗Å6-KLHの結合は、DF1485抗CD44、又はそのアイソタイプによって競合的的に阻害されなかった。
【0232】
(実施例VI:卵巣癌株におけるCD44発現)
この実施例は、イムノブロット解析を使用した卵巣癌株におけるCD44発現を示す。
【0233】
図9において、SKOV3、A2780、Ovcar4、及びOvcar5細胞のコンフルエント培養のTriton X-100溶解物は、5%β-メルカプトエタノール還元剤の非存在下(左パネル)、又は存在下(中央、及び右パネル)において、SDS-PAGE試料緩衝液内で更に可溶化した。30μgの一定分量を、SDS-PAGE、並びに抗CD44モノクローナル抗体DF1485(左、及び中央パネル)、及びB-F24(右パネル)でのイムノブロット解析に供した。なお、SKOV3レーンにおけるバンドは、還元条件下においてさえ残り続ける。これらの結果は、SKOV3細胞がその他の卵巣株化細胞より有意に高いCD44発現を示すことを示す。
【0234】
(実施例VII:A2780、及びSKOV3細胞の化学走性に対するÅ6の効果)
この実施例は、2つの異なる卵巣癌株化細胞における化学走性に対するÅ6の効果を示す。
【0235】
A2780(図10a)、及びSKOV3(図10b)細胞を37℃にて30分間、示した濃度のÅ6ペプチドと共にインキュベートした。6,000細胞を示す一定分量を、Boydenチャンバーにおける四連のCnI被覆フィルター(8μm孔)の上に置き、及び細胞を、示された濃度のÅ6を含むNIH3T3調整培地中の10ng/mlVEGFに反応して一晩遊走させた。遊走完了時に、膜の先端面を拭き取ってきれいにし、基底面上の遊走性細胞をギムザ染色法で染色して、膜の代表的な領域に存在する細胞を計数した。データは、複製したフィルターから得られた平均+/-標準偏差で表す。図10aは、A2780の遊走がÅ6ペプチドの存在によって本質的に影響を受けないことを示す。対照的に、図10bは、Å6ペプチドの存在下におけるSKOV3遊走の強力な阻害を示す。これは、CD44がÅ6ペプチドのターゲットであることのさらなる確認を提供する。
【0236】
(実施例VIII:ヒアルロン酸に対するSKOV3細胞の接着)
この実施例は、卵巣癌株化細胞SKOV3のヒアルロン酸との接着を示す。
【0237】
図11において、SKOV3細胞を10μMのÅ6、又は100ng/mlのPMAの有無において一晩培養した。次いで、細胞を剥離し、洗浄して、37℃にて30分間、20μg/mlのCFDA-SEと共に添加した。洗浄後、細胞を、10%FCSを含むPBS中に再懸濁して、100,000細胞を示す3組の一定分量を、添加物なし、1、若しくは10μMのÅ6と共に、又は20ng/mlのIM7、ブロッキング抗CD44ラットモノクローナル抗体と共に、室温にて30分間インキュベートした。次いで、細胞を50μLの1mg/mLのHAで一晩被覆したマイクロタイターウェル内に置き、10%FCSで30分間ブロッキングした。細胞を室温にて30分間接着させた後、ウェルをデカントして、3回洗浄した。それぞれのウェルにおける蛍光を評価し(励起/発光:460/536nm)、3組の決定における平均蛍光値(+/標準偏差)を算出した。これらの結果は、HAに結合するSKOV3がÅ6ペプチドによって増強されるが、Å6ペプチドの濃度の10倍の増大ではほとんど効果がないことを示す(グラフの中央の2つのセット)。IM7での対照実験(一番右のグラフ)は、この抗CD44の存在下においてHAに結合するSKOV3の阻害を示し、これは、HAに結合するCD44の役割を示す。これらの結果は、Å6ペプチドがCD44とHAとの間の相互作用を調整する役割を有することを示す。
【0238】
(実施例IX: A2780細胞のヒアルロン酸に対する接着)
この実施例は、卵巣癌株化細胞A2780のヒアルロン酸との接着を示す。
【0239】
図12において、A2780細胞を10μMのÅ6、又は100ng/mlのPMAの有無において一晩培養した。次いで、細胞を剥離し、洗浄して、37℃にて30分間、20μg/mlのCFDA-SEと共に添加した。洗浄後、細胞を、10%FCSを含むPBS中に再懸濁して、100,000細胞を示す3組の一定分量を、添加物なし、1、若しくは10μMのÅ6と共に、又は20ng/mlのIM7、ブロッキング抗CD44ラットモノクローナル抗体と共に、室温にて30分間インキュベートした。次いで、細胞を50μlの1mg/mlのHAで一晩被覆したマイクロタイターウェル内に置き、10%FCSで30分間ブロッキングした。細胞を室温にて30分間接着させた後、ウェルをデカントして、3回洗浄した。それぞれのウェルにおける蛍光を評価し(励起/発光:460/536nm)、3組の決定における平均蛍光値(+/標準偏差)を算出した。結果は、A2780細胞がCD44を欠き、HAに結合しないことを示す。更にまた、Å6ペプチドは、HAに対するこの株化細胞の結合を実質的に調整しない。
【0240】
(実施例X:Å6を有する培養に反応したCD44の二量体化)
この実施例は、より高分子量のバンドがÅ6の存在下において培養されたSKOV3細胞において形成されることを示す。
【0241】
図13において、SKOV3細胞を、添加物なし、1、若しくは10μMのÅ6、又は100ng/mlのPMAと共に20時間培養した。Triton X-100溶解物を産生して、非還元条件下でSDS-PAGE試料緩衝液中で更に可溶化した。7.5μgの細胞タンパク質を示す一定分量を、SDS-PAGE、続く抗CD44ネズミモノクローナルB-F24でのイムノブロット解析に供した。染色されたより高分子量バンドの存在は、CD44の二量体、及び/又はオリゴマーを示し得る。
【0242】
(実施例XI:SKOV3細胞に対するIM7結合)
この実施例は、Å6の存在下、及び非存在下におけるSKOV3細胞に結合するIM7を示す。
【0243】
図14a、及び図14bにおいて、SK0V3細胞を、4℃にて30分間、示された濃度のÅ6と共にインキュベートした。次いで、IM7(1μg/ml)を添加し、4℃にて30分間結合させ、その後細胞を洗浄して、4℃にて30分間FITC-ロバ抗ラットIgGと共にインキュベートした。細胞を一度洗浄し、次いでFACs解析に供した。結果は、Å6ペプチドの濃度が増大すると共に抗体結合が増大することを示す。これは、Å6ペプチドがCD44特異的な抗体に対する結合を媒介することを証明する。
【0244】
(実施例XII:転移の阻害)
この実施例は、メラノーマ肺転移モデルにおける転移の阻害を示す。
【0245】
B16メラノーマ転移は、当該技術分野において周知である。転移に対する化合物の阻害効果を評価するための典型的なプロトコルは後述する。このようなプロトコルは、転移に対するÅ6の効果を評価するために行った。
【0246】
簡潔には、B16メラノーマ細胞を、95%空気、及び5%CO2の雰囲気下で37℃にて、10%ウシ胎児血清と共にRPMI-1640中で培養することができる。6〜8週のC57BL/6Jマウスは、市販の供給元から購入することができる。肺転移モデルのために、100μl生理食塩水中に懸濁された約1×1O5メラノーマ細胞を、Å6の存在下において又は非存在下における尾静脈に注射した。結果を図15に示してある。Å6ペプチドの投与は、50%、又はそれ以上まで肺転移を阻害した。
【0247】
(実施例XIII:NASAPPEEペプチドは、SKOV3遊走を阻害する)
この実施例は、NASAPPEEペプチド(配列番号:3)がNIH3T3-CM/VEGFで誘導されるSKOV3遊走を阻害したことを示す。阻害範囲は、69〜83%であった。
【0248】
SKOV3細胞をトリプシン処理によって収集して、RPMI-0.5%BSAで一度洗浄する。次に、細胞をRPMI+0.5%BSA中に6E4/mL(6000細胞/1OOμL)に再懸濁する。ペプチドを500μLのペプチドNASAPPEE(2×濃度、最終濃度100、10、1、0.1、0.01、0.001μMにて)に添加した500μLの細胞で前処理して、混合物を5%CO2下で、37℃にて30分間インキュベートした。Boydenチャンバーは、下部チャンバーに:220μLの血清/BSAを含まないDMEM、又はNIH3T3CM+10ng/mlのVEGF、又はNIH3T3CM+1Ong/mlのVEGF+ペプチドを置く以下によって構築する。下部チャンバーの上端上に8μmのフィルターを置く。8μmフィルターは、使用前に、4℃にて一晩1mg/mlコラーゲンIで被覆し、PBSで2回洗浄し、空気乾燥させる。Boydenチャンバーの上部に、ペプチド前処置をした細胞、又はしない200μLの細胞を添加する。ペプチドは、上部、及び下部のチャンバーの両方にあることに注意する。細胞をインキュベーターにおいて5%CO2下、37℃にて一晩遊走する。次に、Boydenチャンバーを分解して、フィルターを回収する。回収後のフィルター上の細胞を室温にて3分間、-20℃メタノールで処理して、室温にて7分間、30%ギムザで染色して、水で2回洗浄する。フィルターをスライド上に乗せて、空気乾燥させ、細胞を計数する。
【0249】
細胞数は、4OXの対物レンズを使用してフィルターの4つの領域において細胞を計数することによって得た。下部チャンバー内に遊走する細胞は、また、以下のように計数した:a)下部チャンバーにおける200μLの流体を、96ウェルプレートのウェルに移した;b)プレートを、5分間1200rpmにて遠心分離した;c)180μLの上清を除去した;d)細胞ペレットを残りの20μL流体で再懸濁して、血球計算板を使用して細胞を計数した。結果を図18に示してある。細胞遊走阻害は、100μM〜1nMの間の濃度の比較できる有効性で達成される。これは、5pM〜100nMの間で有効であるÅ6ペプチドに有利に匹敵する。
【0250】
この出願の全体にわたって、種々の刊行物を括弧内に参照した。これらの刊行物の開示は、これらの全体において、本発明が属する技術水準をより完全に記述するために、この出願において参照により本明細書に組み込まれる。
【0251】
本発明は、開示した実施態様を参照して説明したが、当業者は、上に詳述された具体的な実施例、及び研究が、本発明の単なる例証であることを容易に理解するであろう。本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更がなされ得ることを理解すべきである。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:3のペプチド、CD44を活性化する能力を維持しているその置換、及び付加変異体。
【請求項2】
50アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
40アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
30アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
20アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
15アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
14アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
13アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
12アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項10】
11アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項11】
10アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項12】
9アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項13】
配列番号:3から本質的になる、ペプチド。
【請求項14】
前記ペプチドがキャップされている、請求項2に記載のペプチド。
【請求項15】
前記キャップされているペプチドが配列
【化1】
を有する、請求項3に記載のペプチド。
【請求項16】
請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドと共にCD44ポリペプチドを含む、複合体。
【請求項17】
前記CD44ポリペプチドが細胞表面上にある、請求項16に記載の複合体。
【請求項18】
CD44ポリペプチドと共にÅ6ポリペプチドを含む、複合体。
【請求項19】
前記CD44ポリペプチドが細胞表面上にある、請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
図17に示したとおりのヒトCD44のリンク領域配列を有する単離されたポリペプチド、その機能的に活性な断片、置換変異体、及び付加変異体。
【請求項21】
図17に示したとおりのヒトCD44のリンク領域から本質的になる、単離されたポリペプチド。
【請求項22】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドの有効な量を対象に投与してCD44ポリペプチドに結合して、疾患を治療するために十分な期間の間シグナル伝達活性を調整することを含む、前記方法。
【請求項23】
前記シグナル伝達活性が阻害される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記シグナル伝達活性がRas、Raf、PI3K、IP3-Akt、TOR、eIF4E、rhoA、ROK、及びGab-1からなる群から選択されるHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードのポリペプチドによって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記シグナル伝達活性がc-Metによって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記シグナル伝達活性がLck、Fyn、Lyn、及びHckからなる群から選択されるSrc-ファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼポリペプチドによって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記シグナル伝達活性がMAPK経路のポリペプチドによって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記シグナル伝達活性がRTK、GPCR、イオンチャネル、インテグリン、及びJak-STATからなる群から選択される経路によって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記インテグリンの経路が接着斑キナーゼ(FAK)、インテグリン関連キナーゼ(ILK)、特に興味深い新たなシステイン-ヒスチジンリッチなタンパク質(PINCH)、及びチロシンキナーゼアダプタータンパク質2の非触媒性領域(Nck2)からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記シグナル伝達経路が増強される、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記CD44ポリペプチドが腫瘍転移に関連する、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記CD44ポリペプチドが転移性前立腺癌に関連する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記CD44ポリペプチドが転移性乳癌に関連する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記CD44ポリペプチドが転移性大腸癌に関連する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記CD44ポリペプチドが卵巣、卵管、腹膜、及び固形腫瘍からなる群から選択される癌に関連し;前記固形腫瘍が肺、前立腺、神経膠腫、及び乳房腫瘍からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記CD44ポリペプチドが炎症性プロセスに関連する、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチドのCD44ポリペプチドに対する結合の測定であって、前記結合は、CD44ポリペプチドのシグナル伝達活性を調整する、前記測定;及び、シグナル伝達活性の変化を測定することを含み、前記変化は、前記異常な細胞遊走、又は浸潤を示す、前記方法。
【請求項38】
前記活性の変化がHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードにおける変化を検出することによって測定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記活性の変化がMAPK経路ポリペプチドの活性における変化を検出することによって測定される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
異常な細胞移動、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドの存在下においてCD44ポリペプチドの結合、又は下流のシグナル伝達活性をイメージングすることを含む、前記方法。
【請求項41】
前記イメージングの工程が造影剤と共有結合したÅ6ポリペプチドを含むペプチドを提供することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記イメージングの工程がMAPK経路のシグナル伝達経路ポリペプチドをイメージングすることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記イメージングの工程がHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードのシグナル伝達経路ポリペプチドをイメージングすることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
ペプチド治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法であって、前記ペプチドは、請求項1、13、又は15に記載のペプチドのいずれか1つであり、前記方法は、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、ペプチド治療指標に特異的な薬剤と接触させること;試料中のペプチド治療指標に対する薬剤の結合であって、指標の存在を示す結合を決定すること、及び試料に存在するペプチド治療指標を有する集団から対象を選択してペプチド治療的処置に反応する亜集団を同定すること;を含み、前記ペプチド治療指標は、CD44ポリペプチドを含む、前記方法。
【請求項45】
CD44ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法であって、試験化合物、及び請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドを加えること、並びに前記試験化合物と前記ペプチドとの競合的結合を測定することを含む、前記方法。
【請求項46】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、CD44の分断を調整することを含む、前記方法。
【請求項47】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、前記結合によってCD44ポリペプチド活性の減感作を生じさせることを含む、前記方法。
【請求項48】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、Å6ポリペプチドのペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、シグナル伝達活性を調整することを含む、前記方法。
【請求項49】
前記シグナル伝達活性が阻害される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記シグナル伝達活性がRas、Raf、PI3K、IP3-Akt、TOR、eIF4E、rhoA、ROK、及びGab-1からなる群から選択されるHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードのポリペプチドによって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記シグナル伝達活性がc-Metによって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記シグナル伝達活性がLck、Fyn、Lyn、及びHckからなる群から選択されるSrc-ファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼポリペプチドによって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記シグナル伝達活性がMAPK経路のポリペプチドによって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記シグナル伝達活性がRTK、GPCR、イオンチャネル、インテグリン、及びJak-STATからなる群から選択される経路によって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記インテグリンの経路が接着斑キナーゼ(FAK)、インテグリン関連キナーゼ(ILK)、特に興味深い新たなシステイン-ヒスチジンリッチなタンパク質(PINCH)、及びチロシンキナーゼアダプタータンパク質2の非触媒性領域(Nck2)からなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記シグナル伝達経路が増強される、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記CD44ポリペプチドが腫瘍転移に関連する、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記CD44ポリペプチドが転移性前立腺癌に関連する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記CD44ポリペプチドが転移性乳癌に関連する、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記CD44ポリペプチドが転移性大腸癌に関連する、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記CD44ポリペプチドが卵巣、卵管、腹膜、及び固形腫瘍からなる群から選択される癌に関連し;前記固形腫瘍が肺、前立腺、神経膠腫、及び乳房の腫瘍からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記CD44ポリペプチドが炎症性プロセスに関連する、請求項48に記載の方法。
【請求項63】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、Å6ポリペプチドのCD44ポリペプチドに対する結合の測定であって、前記結合は、CD44ポリペプチドのシグナル伝達活性を調整する、前記測定;及びシグナル伝達活性の変化を測定することを含み、前記変化は、前記異常な細胞遊走、又は浸潤を示す、前記方法。
【請求項64】
前記活性の変化がHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードにおける変化を検出することによって測定される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記活性の変化がMAPK経路ポリペプチドの活性における変化を検出することによって測定される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、Å6ポリペプチドの存在下においてCD44ポリペプチドの結合、又は下流のシグナル伝達活性をイメージングすることを含む、前記方法。
【請求項67】
前記イメージングの工程が造影剤と共有結合したÅ6ポリペプチドを含むペプチドを提供することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記イメージングの工程がMAPK経路のシグナル伝達経路ポリペプチドをイメージングすることを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記イメージングの工程がHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードのシグナル伝達経路ポリペプチドをイメージングすることを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
Å6治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法であって、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、Å6治療指標に特異的な薬剤と接触させること;試料中のÅ6治療指標に対する薬剤の結合であって、指標の存在を示す結合を決定すること、及び試料に存在するÅ6治療指標を有する集団から対象を選択してÅ6治療的処置に反応する亜集団を同定すること;を含み、前記Å6治療指標は、CD44ポリペプチドを含む、前記方法。
【請求項71】
CD44ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法であって、試験化合物、及びÅ6ポリペプチドを加えること、及び前記試験化合物と前記Å6ポリペプチドとの競合的結合を測定することを含む、前記方法。
【請求項72】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、Å6ポリペプチドのペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、CD44の分断を調整することを含む、前記方法。
【請求項73】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、Å6ポリペプチドのペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、前記結合によってCD44ポリペプチド活性の減感作を生じさせることを含む、前記方法。
【請求項1】
配列番号:3のペプチド、CD44を活性化する能力を維持しているその置換、及び付加変異体。
【請求項2】
50アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
40アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
30アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
20アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
15アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
14アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
13アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
12アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項10】
11アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項11】
10アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項12】
9アミノ酸以下を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項13】
配列番号:3から本質的になる、ペプチド。
【請求項14】
前記ペプチドがキャップされている、請求項2に記載のペプチド。
【請求項15】
前記キャップされているペプチドが配列
【化1】
を有する、請求項3に記載のペプチド。
【請求項16】
請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドと共にCD44ポリペプチドを含む、複合体。
【請求項17】
前記CD44ポリペプチドが細胞表面上にある、請求項16に記載の複合体。
【請求項18】
CD44ポリペプチドと共にÅ6ポリペプチドを含む、複合体。
【請求項19】
前記CD44ポリペプチドが細胞表面上にある、請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
図17に示したとおりのヒトCD44のリンク領域配列を有する単離されたポリペプチド、その機能的に活性な断片、置換変異体、及び付加変異体。
【請求項21】
図17に示したとおりのヒトCD44のリンク領域から本質的になる、単離されたポリペプチド。
【請求項22】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドの有効な量を対象に投与してCD44ポリペプチドに結合して、疾患を治療するために十分な期間の間シグナル伝達活性を調整することを含む、前記方法。
【請求項23】
前記シグナル伝達活性が阻害される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記シグナル伝達活性がRas、Raf、PI3K、IP3-Akt、TOR、eIF4E、rhoA、ROK、及びGab-1からなる群から選択されるHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードのポリペプチドによって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記シグナル伝達活性がc-Metによって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記シグナル伝達活性がLck、Fyn、Lyn、及びHckからなる群から選択されるSrc-ファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼポリペプチドによって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記シグナル伝達活性がMAPK経路のポリペプチドによって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記シグナル伝達活性がRTK、GPCR、イオンチャネル、インテグリン、及びJak-STATからなる群から選択される経路によって媒介される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記インテグリンの経路が接着斑キナーゼ(FAK)、インテグリン関連キナーゼ(ILK)、特に興味深い新たなシステイン-ヒスチジンリッチなタンパク質(PINCH)、及びチロシンキナーゼアダプタータンパク質2の非触媒性領域(Nck2)からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記シグナル伝達経路が増強される、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記CD44ポリペプチドが腫瘍転移に関連する、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記CD44ポリペプチドが転移性前立腺癌に関連する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記CD44ポリペプチドが転移性乳癌に関連する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記CD44ポリペプチドが転移性大腸癌に関連する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記CD44ポリペプチドが卵巣、卵管、腹膜、及び固形腫瘍からなる群から選択される癌に関連し;前記固形腫瘍が肺、前立腺、神経膠腫、及び乳房腫瘍からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記CD44ポリペプチドが炎症性プロセスに関連する、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチドのCD44ポリペプチドに対する結合の測定であって、前記結合は、CD44ポリペプチドのシグナル伝達活性を調整する、前記測定;及び、シグナル伝達活性の変化を測定することを含み、前記変化は、前記異常な細胞遊走、又は浸潤を示す、前記方法。
【請求項38】
前記活性の変化がHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードにおける変化を検出することによって測定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記活性の変化がMAPK経路ポリペプチドの活性における変化を検出することによって測定される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
異常な細胞移動、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドの存在下においてCD44ポリペプチドの結合、又は下流のシグナル伝達活性をイメージングすることを含む、前記方法。
【請求項41】
前記イメージングの工程が造影剤と共有結合したÅ6ポリペプチドを含むペプチドを提供することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記イメージングの工程がMAPK経路のシグナル伝達経路ポリペプチドをイメージングすることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記イメージングの工程がHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードのシグナル伝達経路ポリペプチドをイメージングすることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
ペプチド治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法であって、前記ペプチドは、請求項1、13、又は15に記載のペプチドのいずれか1つであり、前記方法は、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、ペプチド治療指標に特異的な薬剤と接触させること;試料中のペプチド治療指標に対する薬剤の結合であって、指標の存在を示す結合を決定すること、及び試料に存在するペプチド治療指標を有する集団から対象を選択してペプチド治療的処置に反応する亜集団を同定すること;を含み、前記ペプチド治療指標は、CD44ポリペプチドを含む、前記方法。
【請求項45】
CD44ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法であって、試験化合物、及び請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドを加えること、並びに前記試験化合物と前記ペプチドとの競合的結合を測定することを含む、前記方法。
【請求項46】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、CD44の分断を調整することを含む、前記方法。
【請求項47】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、請求項1、13、又は15のいずれか1項に記載のペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、前記結合によってCD44ポリペプチド活性の減感作を生じさせることを含む、前記方法。
【請求項48】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、Å6ポリペプチドのペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、シグナル伝達活性を調整することを含む、前記方法。
【請求項49】
前記シグナル伝達活性が阻害される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記シグナル伝達活性がRas、Raf、PI3K、IP3-Akt、TOR、eIF4E、rhoA、ROK、及びGab-1からなる群から選択されるHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードのポリペプチドによって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記シグナル伝達活性がc-Metによって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記シグナル伝達活性がLck、Fyn、Lyn、及びHckからなる群から選択されるSrc-ファミリー非受容体タンパク質チロシンキナーゼポリペプチドによって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記シグナル伝達活性がMAPK経路のポリペプチドによって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記シグナル伝達活性がRTK、GPCR、イオンチャネル、インテグリン、及びJak-STATからなる群から選択される経路によって媒介される、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記インテグリンの経路が接着斑キナーゼ(FAK)、インテグリン関連キナーゼ(ILK)、特に興味深い新たなシステイン-ヒスチジンリッチなタンパク質(PINCH)、及びチロシンキナーゼアダプタータンパク質2の非触媒性領域(Nck2)からなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記シグナル伝達経路が増強される、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記CD44ポリペプチドが腫瘍転移に関連する、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記CD44ポリペプチドが転移性前立腺癌に関連する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記CD44ポリペプチドが転移性乳癌に関連する、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記CD44ポリペプチドが転移性大腸癌に関連する、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記CD44ポリペプチドが卵巣、卵管、腹膜、及び固形腫瘍からなる群から選択される癌に関連し;前記固形腫瘍が肺、前立腺、神経膠腫、及び乳房の腫瘍からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記CD44ポリペプチドが炎症性プロセスに関連する、請求項48に記載の方法。
【請求項63】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、Å6ポリペプチドのCD44ポリペプチドに対する結合の測定であって、前記結合は、CD44ポリペプチドのシグナル伝達活性を調整する、前記測定;及びシグナル伝達活性の変化を測定することを含み、前記変化は、前記異常な細胞遊走、又は浸潤を示す、前記方法。
【請求項64】
前記活性の変化がHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードにおける変化を検出することによって測定される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記活性の変化がMAPK経路ポリペプチドの活性における変化を検出することによって測定される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる状態を診断する方法であって、Å6ポリペプチドの存在下においてCD44ポリペプチドの結合、又は下流のシグナル伝達活性をイメージングすることを含む、前記方法。
【請求項67】
前記イメージングの工程が造影剤と共有結合したÅ6ポリペプチドを含むペプチドを提供することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記イメージングの工程がMAPK経路のシグナル伝達経路ポリペプチドをイメージングすることを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記イメージングの工程がHA-ROK-PI3K-Aktシグナルカスケードのシグナル伝達経路ポリペプチドをイメージングすることを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
Å6治療的処置に反応する対象の亜集団を同定する方法であって、無制御の細胞移動性によって媒介される疾患を有する、又は有することが疑われる集団の異なる対象からの複数の試料を、Å6治療指標に特異的な薬剤と接触させること;試料中のÅ6治療指標に対する薬剤の結合であって、指標の存在を示す結合を決定すること、及び試料に存在するÅ6治療指標を有する集団から対象を選択してÅ6治療的処置に反応する亜集団を同定すること;を含み、前記Å6治療指標は、CD44ポリペプチドを含む、前記方法。
【請求項71】
CD44ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法であって、試験化合物、及びÅ6ポリペプチドを加えること、及び前記試験化合物と前記Å6ポリペプチドとの競合的結合を測定することを含む、前記方法。
【請求項72】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、Å6ポリペプチドのペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、CD44の分断を調整することを含む、前記方法。
【請求項73】
異常な細胞遊走、及び/又は浸潤によって特徴づけられる疾患を治療する方法であって、Å6ポリペプチドのペプチドの有効な量を対象に投与して、CD44ポリペプチドに結合させて、疾患を治療するために十分な期間の間、前記結合によってCD44ポリペプチド活性の減感作を生じさせることを含む、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−519710(P2012−519710A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553152(P2011−553152)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/026428
【国際公開番号】WO2010/102253
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511216477)アングストロム プハルマセウトイカルス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/026428
【国際公開番号】WO2010/102253
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511216477)アングストロム プハルマセウトイカルス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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