説明

細胞集団から腫瘍細胞を除去する標的装置

【課題】細胞集団から混ざっている腫瘍細胞を取り除く方法の提供。
【解決手段】集団中の個々の腫瘍細胞をラベルし、細胞集団の映像を捕らえ、捕らえた映像及び前記ラベルを参照して細胞集団における腫瘍細胞の少なくとも2次元座標を決定し、前記腫瘍細胞が表面上の実質的に静止した位置にある間に、制御したエネルギー源からのパルスを前記腫瘍細胞の座標へ適用することによって、腫瘍細胞を高いエネルギーレーザビームで殺すことからなる、非腫瘍細胞を含む細胞集団内から腫瘍細胞を除去する試験管内方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、非腫瘍細胞の集団から腫瘍細胞を特異的に単離する方法及び装置に関する。特に、本発明は、特異的にラベルし、その後、レーザビームなどの集束高エネルギービームで腫瘍細胞を個別に殺す方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
造血幹細胞移植は、世界中にわたり急速に成長している治療法である。造血幹細胞は、骨髄に存在し、身体の血液細胞すべての生産を誘導する細胞である。1995年に、2万例を超える造血幹細胞移植が合衆国で行なわれた。特に自己造血幹細胞移植を用いた乳癌の治療法は、広く用いられる癌治療法となった。
【0003】
腫瘍転移は、腫瘍細胞がそれらの最初の部位から離れて、体のほかの部分に広がる良く知られたプロセスである。一度新しい部位に転移すると、腫瘍細胞は成長し始め、新しい部位に居住し、それゆえ、新しい腫瘍を作る。腫瘍が転移した患者の治療法の1つとしては、患者の造血幹細胞の採取し、その後患者を高量の放射線療法又は化学療法での治療を行なう。この治療は、患者の全腫瘍細胞を破壊するためことを意図したものであるが、患者の造血細胞も破壊してしまうという副作用を有する。それゆえ、一度患者が治療されると、自己幹細胞は患者の体へ戻される。
【0004】
しかしながら、もし腫瘍細胞が腫瘍の最初の部位から離れて転移したなら、若干の腫瘍細胞は、採取した造血細胞集団を汚染する可能性が高い。そのような場合、採取した造血幹細胞は汚染した腫瘍細胞も含む。幹細胞を患者へ再び導入する前に、転移した全腫瘍細胞を殺す機構を見出すことは重要である。もし生存している発腫瘍性の細胞が患者へ再度導入されたら、発腫瘍性の細胞は再発を引き起こす可能性がある。
【0005】
造血細胞から腫瘍細胞を除去する問題は、従来の骨髄採取手法で報告された(Campana, D. et al. Detection of minimal redidual disease inacute leukemia: methodologic advances and clinical significance, Blood, 1995 Mar 15, 85(6): 1416-34)。他の者等が、集結させた末梢性血液細胞の白血球を漏出させるより新しい方法を用いて腫瘍細胞を除去しようとしたときにも、同様の問題が発見された(Brugger, W. et al. Mobilization of tumor cells and hematopoietic progenitor cells into peripheral blood of patients with solid tumors Blood, 83(3): 636-40, 1994)。
【0006】
これらの各手法において、汚染している腫瘍細胞の数は、集結化に使用する化学療法の薬の処方に依存するが、採取した400万個の単核細胞あたり約10〜5000個の中に既にある。単核細胞は、採取した全造血細胞を不連続密度勾配遠心分離することによって得る。一人の患者から採取した単核細胞の総数は、通常およそ100億個である。それゆえ、採取物中の全腫瘍数は、低い境界の約25000個から高い境界の約1200万個へと変化する。
【0007】
これらの混在する腫瘍細胞は、腫瘍再発の一因となることが遺伝子マーカー法によって示された(Rill、ER et al., Direct Demonstration That Autologous Bone Marrow Transplantation for Solid Tumors Can Return a Multiplicity of Tumorigenic Cells, Blood, 84(2): 380-383, 1994)。それゆえ、移植する造血細胞から全ての腫瘍細胞を取り除くための効率的な方法に対して高い必要性が存在する(Gulati, SC et al. Rationale for purging in autologous stem cell transplantation. Journal of Hematotherapy, 2(4):467-71, 1993) 。汚染している全ての腫瘍細胞を除去するための迅速で、かつ、信頼できる方法によって、数が増えつつある患者に対する造血幹細胞移植の有効性が向上するであろう。
【0008】
他の者等は、採取した造血幹細胞から汚染する腫瘍細胞を除去することを試みたが、限られた成果を得られただけであった。採取した幹細胞から分離して腫瘍細胞集団を除去するいくつかの方法が提案され、試験された(A. Gee, Editor Bone Marrow Processing and Purging, Part 5, CRC Press, Boca Raton, Florida, 1991)。それゆえ、これらすべての除去方法の根底にある考えは、移植患者における造血再構成に必要である造血細胞を保護しつつ、悪性の細胞を分離し又は破壊することにある。
【0009】
いくつかの会社や医師らは、免疫親和性ビーズによる選択法を使用して非腫瘍細胞の集団から分離させて悪性細胞を除去することを試みた。この手法では、全細胞集団を、免疫親和性ビーズと接触させる。例えば、造血細胞から腫瘍細胞を分離するために、第一(陽性)のCD34を選択することによっては、腫瘍細胞から造血細胞を分離する。造血細胞に特異性の抗CD34抗体を免疫親和性ビーズに結合させることによって、医者は、非造血細胞集団からこれらの細胞を特異的に取り除くことができる。ある例においては、ビーズへ腫瘍特異的抗体を結合させることによって腫瘍細胞又は上皮細胞マーカーに陰性の免疫親和性ビーズによる選択も行われる。
【0010】
非腫瘍細胞集団から腫瘍細胞を除去するために試験された別の方法は、腫瘍細胞だけに特異性を有する抗体へ毒素試薬を免疫結合することが含まれる。このシステムでは、抗体は化学毒素試薬、毒素又は放射性核種へ結合し、それから採取した細胞集団へ接触する。不幸にも、この治療によってすべての腫瘍細胞が殺されたわけではなかった。
【0011】
非腫瘍細胞集団から腫瘍細胞を単離する他のシステムでは、分離の基礎として造血細胞の非特異的結合性を用いた。例えば、Dooley等は、これらの粘着特性を用い、深床式濾過法を用いて造血細胞を分離した(Dooley DC et al, A novel inexpensive technique for the removal of breast cancer cells from mobilized perifheral bloodstem cell products, Blood, 88(10)suppl 1:252a, 1916)。しかしながら、腫瘍細胞のいくつかが、造血細胞と共に単離することが発見され、それゆえ、患者は再発する可能性があった。
【0012】
加えて、4−ヒドロキシ−ぺルオキシ−シクロ−ホスホアミド(4HC)等の細胞毒性の試薬を使用して、造血幹細胞を害することなく腫瘍細胞を選択的に殺したが、不幸にも、細胞毒性の試薬は、いくつかの非腫瘍細胞を弱らせ又は破壊したので、このシステムでも造血細胞の採取量は低くなった。
【0013】
他の方法では、メロシナニン等の感光性試薬を細胞集団と混合しその後光照射をして、腫瘍細胞を特異的に殺した(Lydaki et al. Merocyanine 540 mediated photoirradiation of leukemic cells Journal of photochemistry and photobiology 32(1-2):27-32., 1996)。また、Gazitt等は、腫瘍細胞から造血幹細胞を選別するために蛍光活性化細胞選別法(FACS)を使用した(Gazitt et al. Purified CD34+ Lin- Thr+ stem cells do not contain clonal myeloma cells Blood, 86(1): 381-389, 1995)。知られているように、フローサイトメトリー法では一度に1つずつ細胞を選別し、1組の標識した細胞を別の2の組の細胞から物理的に分離する。しかしながら、フローサイトメトリー法において使用する吸着染料をニューロンを与えた後、個々のニューロンが、死殺する可能性があることが示された(Miller, JP and Selverston Al., Rapoid killing of Single Neurons by irradiation of Intracellularly injected dye Science, 206 :702-704, 1979) 。それゆえ、細胞集団を分離するためにFACSを使用することは、細胞収率が非常に低くなり得るので、得策ではない。
【0014】
別の実験記録において、Clarke等は、腫瘍細胞を選択的に殺すために自殺遺伝子をアデノウイルス媒介により転移する方法を使用することを開示している(Clarke et al. A recombinant bcl-z a adenovirus selectively induses apopatosis in cancer cells but not in normal bone marrow cells but not in normal bone marrow cells Proc. Nat. Acad. Sci. 92(24):11024-8, 1995)。
【0015】
しかしながら、上述した方法の大部分は、全細胞集団の腫瘍細胞を分離することあるいは殺傷することに基づいている。不幸にも、上述した全集団の腫瘍を除去する方法は、採取した幹細胞集団から汚染した腫瘍細胞を全て殺したり、除去しない。最も良い場合、残存腫瘍細胞量は、最初の採取において存在する100,000細胞毎に1〜10個残存していた(Lazarous et al. Does in vitro bone marrow purging improve the outocome after autologous bone marrow transplantation? Journal of hematotherapy, 2(4):457-66, 1993)。
【0016】
それゆえ、最も有効な技術を用いたときでさえ、自己幹細胞の移植間に患者に再導入される残存腫瘍細胞の数は、およそ10〜2000個のオーダである。腫瘍細胞が急激に増加すると、移植においてかかる残存腫瘍細胞によって、患者の再発を急速に引き起こす可能性がある。
【0017】
さらにレーザ技術を利用した別の方法が、Shapiroの米国特許番号第4,395,397号に記載されている。Shapiro方法では、ラベルした細胞は、ラベルした腫瘍細胞を同定する蛍光検出器を有するフローサイトメーター装置に設置する。レーザビームを使用し、ラベルした細胞が検出器の通過するときに該細胞を死殺させる。この方法は、多くの欠点がある。第一に、一担非所望細胞が検出器/レーザ領域を通過すると、破壊が完全に行われたかどうかをチェックする方法がない。もし、腫瘍細胞が巧みに破壊を逃れると、該腫瘍細胞は、必然的に患者に再導入されるであろう。第二に、レーザビームの焦点直径は、液体流断面より大きい必要がある。したがって、非所望細胞領域における多くの細胞が、健全な細胞を含めて、レーザビームにより破壊されるであろう。
【0018】
レーザ技術を用いた他の方法が、Kratzerの米国特許番号第5,035,693号に記載されている。この方法では、ラベルした細胞集団は、移動ベルトの上に設置する。その後、ラベルした細胞を、検出器によって同定し、レーザによって破壊する。しかしながら、この装置は、Shapiro方法と同様な多くの欠点を有する。例えば、細胞はベルト上を移動して検出器を1方向に通過するので、この方法は、逆行できない。それゆえ、もし単一の腫瘍細胞でも検出を逃れると、該腫瘍細胞が、患者へ再導入されるであろう。
【0019】
それゆえ、広範囲に渡る努力や、多くの革新的な取り組みにもかかわらず、採取細胞集団からすべての腫瘍細胞を事実上死滅させる方法及び装置への重大で増大する必要性がある。ここで述べる装置と方法とはこの必要性を満足する。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、細胞集団における汚染腫瘍細胞を個別に同定し破壊する標的装置と標的方法を提供する。本発明の装置を使用して、事実上すべての腫瘍細胞を同定し、個別に破壊することができる。それゆえ、自己造血細胞移植及び同様の医療技術を、どんな汚染腫瘍細胞も再導入することなく行なうことができる。
【0021】
腫瘍細胞を幾つかの手法を使用して開示した本発明を用いて同定することができる。一つの実施態様は非破壊的なラベル方法を含むので、生存能力のある腫瘍細胞すべてを非腫瘍細胞から顕微鏡下に区別することができる。この実施態様において、腫瘍特異的蛍光色素結合抗体を使用して、造血細胞には全く印をつけることなく、個々の腫瘍細胞を特異的にマーキングすることができる。それから、ラベルした腫瘍細胞は、非腫瘍細胞集団内で顕微鏡によって同定する。その後、狭く高力レーザビームを同定した腫瘍細胞それぞれに焦点を集め、短く致命的な光パルスを送る。それから、次の腫瘍細胞を同定し殺傷し、すべてのマークした腫瘍細胞が破壊されるまで行なう。
【0022】
別の実施態様において、腫瘍細胞ではなく、造血細胞と選択的に結合した抗体を使用し、造血幹細胞の同定に使用する。腫瘍細胞(例えば、ラベルされなかった細胞)のすべてを同定し、その後、狭い範囲の高力レーザビームによって殺傷する。
【0023】
また別の実施態様は、非腫瘍細胞を含む細胞集団内から腫瘍細胞を除去する方法であって、a)非腫瘍細胞を非腫瘍細胞と区別できるように細胞集団をラベルする工程、b)ラベルを参照することによって一つの腫瘍細胞の位置を確定する工程、c)位置を確定した腫瘍細胞へ制御したエネルギー源からパルスを適用する工程によって腫瘍細胞を殺傷する工程、を含む。
【0024】
別の一つの実施態様は、造血細胞集団における幹細胞の数を増加させる方法であって、a)幹細胞に特異的なラベルで造血細胞集団をラベルする工程、b) 該集団中の少なくとも1つの非ラベル細胞へ高エネルギーレーザ光パルスを適用する工程とを含む。
【0025】
また別の実施態様は、患者へ再導入用の単離造血細胞を調製する方法であって、a)単離した造血細胞内の腫瘍細胞を腫瘍細胞に特異的なラベルでラベルする工程、b) 集団において少なくとも1つのラベルした細胞へ高エネルギーレーザ光パルスを適用する工程、とを含む。
【0026】
本発明の別の実施態様は、第一の細胞集団を第二の細胞集団から除去することを確実にする試験管内での方法である。該方法は、第一の細胞集団を第二の細胞集団から区別できるように第一の細胞集団をラベルする工程、第一の細胞集団及び第二の細胞集団を表面上の静止した位置に置くこと、ラベルを参照することによって第一の細胞集団における1つの細胞の位置を確定すること、該1つの細胞へ制御したエネルギー源からの第一のパルスを適用すること、該1つの細胞が第一のパルスによって殺されたかどうかを決定すること、もし該1つの細胞が殺されなかったなら、制御したエネルギー源から第二のパルスを適用することからなる。
【0027】
さらに本発明の実施態様は、非腫瘍細胞を含む細胞集団内から腫瘍細胞を除去する方法である。この方法は、非腫瘍細胞を腫瘍細胞から区別できるように非腫瘍細胞をラベルする工程、細胞集団において非ラベル細胞を同定することによって1つの腫瘍細胞の位置を確定すること、前記腫瘍細胞が表面上の実質的に静止した位置にある間に、制御したエネルギー源からパルスを、前記位置を確定した腫瘍細胞へ適用することによって前記腫瘍細胞を殺すこと、からなる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、ラベルした細胞を特異的に標的とする自動装置の1実施例を示す図である。この装置は、コンピューター、カメラ、広帯域の光源及びレーザを含む。
【図2】図2は、ラベルした細胞を特異的に標的とし殺傷する自動装置の1実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(詳細な説明)
目的とする方法は、非腫瘍細胞の集団から汚染腫瘍細胞を除去することを付与する。上述したように、この方法は、細胞集団を取り出しそれから治療行為の一部として患者へ再導入する医療手法に関する。一般に、目的とする方法は、まず顕微鏡下に同定し及び汚染する腫瘍細胞の位置を確定するためのマーカーとしてふるまうラベルを使用する。
【0030】
選択した細胞マーカーは、非腫瘍細胞集団内に居住する汚染腫瘍細胞を同定し、識別するものであればいずれのものもラベルとすることができる。例えば、蛍光色素に結合する抗腫瘍抗体を特異的ラベルとして使用することができる(See Chapter 10 in A. Gee, Editor, Bone Marro Processign and Purging, Part 5, CRC Press, Boca Raton, Florida, 1991)。多数の腫瘍特異的マーカーが広範な種類の発腫瘍性の細胞に見出された。例えば、上皮細胞に特異的である多くの表面マーカーは、採取した造血細胞集団において汚染する乳癌細胞に基づいていた。そのような抗体は、造血細胞集団内において乳癌細胞を同定するのに使用することができ、それゆえ該乳癌細胞は、致命的エネルギーパルスを送るための標的となる。同様に、他の腫瘍に特異的な蛍光色素結合抗体を他のタイプの汚染する腫瘍細胞を同定するのに使用することができる。
【0031】
もし特異的マーカーが腫瘍細胞集団へ利用できないなら、この方法は、反対の方法で実施することができることにも留意すべきである。非腫瘍細胞に対して特異的なマーカーを、発腫瘍性でない細胞を同定するのに使用することができる。例えば、造血細胞集団において、CD34細胞マーカーを、非造血腫瘍細胞ではなく、造血細胞だけ着色するために使用することができる。マーカーを持たない細胞であれば、その後焦点を絞ったエネルギーパルスの送出によって殺傷される。残存する生存細胞集団は、細胞マーカー(例えば、CD34)を所有する細胞を含むだけである。
【0032】
腫瘍細胞を同定した後、レーザ、平行化又は集束化した非レーザ光、RFエネルギー、加速粒子、集束超音波エネルギー、電子ビーム又は他の放射ビームなどの制御したエネルギー源を使用し、各腫瘍細胞を個別に殺す標的化した殺傷エネルギーパルスを送出する。腫瘍細胞を非腫瘍細胞集団内で特異的にかつ独自に同定することができるので、この方法は、まさに汚染する腫瘍細胞を完全に絶滅するのに使用することができる。
【0033】
目的の方法の1つの実施態様において、腫瘍細胞は、同時に蛍光及びレーザ照射することによって殺傷する。第一段階において、細胞集団は、腫瘍細胞に特異的である蛍光染料で染色される。例えば、腫瘍細胞に特異的で、蛍光分子に結合する抗体をこの実施態様で使用することができる。その後、細胞集団を適当な光(例えば、紫外線光)によって照射するので、蛍光腫瘍細胞を非腫瘍細胞の集団内で同定することができる。
【0034】
それから、ラベルした細胞をぺトリ皿に置き、装置内に設置する。もし、装置が自動モードであれば、蛍光を照射し、CCDカメラが、皿内の細胞のビデオ撮影し始める。付属のコンピューター上で作動するコンピュータープログラムが撮像を分析し、蛍光細胞を一つずつ同定し始める。各細胞は標的にされ、レーザビームで破壊される。コンピューターは、各細胞がレーザの作動前後で蛍光の変化を注目することによって殺傷されたかどうかを確認する。
【0035】
別の実施態様において、生体組織検査において汚染する細胞を癌患者から除去する。多くの腫瘍タイプからの主要なヒト腫瘍細胞株を試験管内で確立することは、腫瘍細胞中に渡って優れた試験管内成長特性を有する汚染主要ヒト細胞集団の存在によって複雑化する。例えば、混在する繊維芽細胞は、多くの癌細胞種を確立する際に主要な攻撃を示す。開示した装置は、生体組織検査した腫瘍細胞歯そのままにして、特に混在する細胞をラベルし、破壊するのに使用する。したがって、より攻撃的な主要細胞は、癌細胞株に追いつかず、破壊しないであろう。
【0036】
関連した用途において、本装置は、組織工学技術の接種材料及び細胞治療用途において、混在する細胞を除去するのに使用することができる。細胞が混在する問題は、組織工学技術用途用の主要細胞培養を確立する際及び細胞の治療を実行する際に存在する。特に、軟骨生体組織検査用の軟骨細胞治療は、軟骨生体組織検査から派生した細胞集団における不純物によって妨害を受ける。したがって、本装置は、接種材料由来のこれらの細胞型を特異的に除去するのに使用することができる。例えば、従来の条件下軟骨生体組織検査を行なって、で生育サンプルを採用することができる。それから生育培地を混在細胞用の特異的ラベルで染色する。それから全細胞集団を以下に述べる本装置内に設置し、ラベルし、混在細胞を破壊する。
【0037】
別の実施態様において、異質遺伝子型のヒト幹細胞(HSC)の移植設定における移植片に対する宿主疾患(GVHD)の重大な危険性と重篤度に戦うことができる。ここで述べる装置を使用することによって、患者のT細胞の含有量を決定し制御することが可能である。T細胞が枯渇し過ぎると、異質遺伝子型の移植において観察される白血病効果に対する既知の有益な移植の損失を生じるので、このタイプの制御は、既存の技術では特に困難である。それゆえ、あるレベルのT細胞は、例えば、白血病細胞を攻撃するために患者にとって有益である。しかしながら、T細胞のレベルが高過ぎると受容者の組織の全般的な免疫系を攻撃されることになる。本装置及び方法は、異質遺伝子型の移植であればT細胞の数を正確に制御することができる。
【0038】
自動標的装置10の1つの実施態様を、図1に示す。コンピューターシステム12は、ケーブル14を通じてカメラ16に連結する。コンピューターシステムは、ビデオデータを受信しかつ分析できる、市販の入手可能なあらゆるコンピューターであってよい。このようなコンピューターシステムの1実施例は、マイクロソフト ウインドウズ 95ソフトウェアで起動するインテル ペンティアム プロコンピューターである。
【0039】
図1に開示される実施態様においてビデオカメラを説明するが、カメラ16は、当該技術で知られる映像を集める装置のタイプであれば可能である。カメラ16を支持材20の上に備え付けるので、該カメラ16は、一般に地面に対して垂直方向に維持される。
【0040】
カメラ16のレンズ22は、接眼レンズ26を通して顕微鏡24と結合するように設計する。それゆえ、顕微鏡24の中に移った映像であれば、接眼レンズ26を通してカメラ16のレンズ22へ送られる。
【0041】
カメラ16は、該カメラが捕らえた映像をケーブル14を通してコンピューター12へ移送する。このようにして、コンピューター12は、顕微鏡に現れた映像であれば捕捉し、分析する。例えば、顕微鏡24は皿30の細胞に集束することができる。細胞の映像は、顕微鏡24からカメラ16へ移され、ついにはコンピューター12に送られるであろう。それから、コンピューター12は、ソフトウェアを起動し、捕らえた映像を分析することができる。
【0042】
またコンピューター12は、第二のケーブル32を通じてレーザ34と連結する。レーザは、電気的に制御した回転軸36に備え付けるので、支持材20に対して相対的なレーザの位置を、コンピューター12からの信号を受信することによって変えることができる。図示したように、標的細胞が実質的に静止している間に、レーザ34は、顕微鏡24の光学器を通して光ビームの狙いを調節することができる。加えて、レーザ34は、回転し、光ビームを直接的に皿30へ送ることができる。
【0043】
本発明の内容において、「皿」の語は、広い意味を有する。皿は、細胞の培地などの流動体の薄い層を保持することができる表面であれば含むことを意味する。皿は、ここで述べた方法の実施中に周囲の温度以下に皿内の流動体の温度を維持するために冷却装置を組み入れ又は連結させてもよい。流動体の表面を窒素ガス又はアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中でシールドするのが、不可欠でないが望ましい。
【0044】
図1に説明した実施態様は、レーザの狙いをつける電気的に制御した回転軸36を含むが、他の方法も見込まれる。例えば、電気的に制御したミラーをレーザとその標的の間に設置し、ミラーの回転によりレーザの狙いを定めるのに使用する。当該技術で知られているビーム分裂、ミラー又はプラズマなどのレーザの狙いをつける他の機構は、本発明の範囲内に含むことを意味する。
【0045】
広帯域の光源40もアダプター42を通じて顕微鏡24と連結する。アダプター42は、広帯域の光源からの光放射が、皿30に置かれた細胞を照らすことを可能とする。広帯域の光源は当該技術で良く知られており、多くの異なるタイプを自動標的装置10内に設置することができ、皿30上に置かれたラベルした細胞を照射する。
【0046】
皿30を支える下側は、コンピューターで制御した可動トレイ48である。コンピューター12は、トレイ48から引き出した連結ケーブル49にそってシグナルを送ることができ、レーザ34及び顕微鏡24に相対的な位置を変える。それゆえ、細胞を特異的に標的とするため、コンピューター12は、ケーブル49にそってトレイ48へ信号を送り、皿30を特定の位置に転がらせることができる。現在の位置を計算することによって、レーザは、選択した位置に皿を動かすことで、特定の細胞に向かって狙いをつける。選択した位置の座標は、カメラ16から収集した細胞の映像を分析することからコンピューター12によって決定することができる。
【0047】
コンピューター12上で起動するソフトウェアはカメラ16からケーブル14を通して移送された映像を捕らえる。もし、ラベルした細胞の1セットを皿30中に設置したなら、その後カメラ16はラベルした細胞の写真を記録するだろう。上述したように、細胞を広帯域の光源40で照らすことができる。コンピューターによって収集した写真の上に2次元格子をかぶせることによって、ソフトウェアは、直径において1つの細胞幅である暗い点を探すことでラベルした細胞のX/Y座標を決定することができる。それから、ソフトウェアは、ラベルした細胞のカーテシアン(Cartesian)座標を計算し、それらの座標へレーザ34を特異的に狙いをつける。短い高エネルギーパルスを放射することによって、レーザは、選択的に各ラベル細胞を殺すことができ、どの非ラベル細胞も害を与えない。
【0048】
コンピューター12は、染色した腫瘍細胞由来の蛍光信号を検出するセンサーも有し、それから破壊すべき最初の腫瘍細胞の座標位置を計算することができる。それからコンピューターシステムは、最初の腫瘍細胞の計算した位置でレーザ、電子ビームなどの集束エネルギー源に向けられる。これによって、標的腫瘍細胞は、非腫瘍細胞集団内で特異的に破壊される。これは、本手順の間、標的細胞が実質的に静止していることで促進される。
【0049】
別の好ましい装置では、細胞を、CCDデジタルカメラとつながった顕微鏡のもとでコンピューター制御したX-Yテーブル上を動くように備え付ける。レーザを顕微鏡に備え付けるので、該レーザは、見える領域内で特異的に固定した位置で狙いをつける。それからコンピューターは、染色した腫瘍細胞が見えるまで、X軸方向において細胞の最初の列を連続的に横切って走査する。
【0050】
それからコンピューターは、腫瘍細胞がレーザの標的領域に入るまでX-Yテーブルを動かし、レーザは、パルスを発し、細胞を破壊する。それからX-Yテーブルを以前の位置に戻し、最初の列を走査し、かつその列内の全腫瘍細胞が破壊されるまで、X軸方向に沿って移動する。
【0051】
それから第二の列が見え、2,3の細胞によって最初の列に重なり合うまでX-Yテーブルは、Y軸方向へ移動する。それから座標は、X軸方向へ移動し、腫瘍細胞を上述のように破壊し、全細胞集団を走査するまで手順を繰り返す。好ましくは、コンピューターソフトウェアは、細胞を、自動的に同定し、かつ、標的とする。しかしながら、操作制御点装置(例えば、トラックボール、ジョイスティック、又はマウス)を使用することができ、ディスプレイ画面上で腫瘍細胞の位置を確定し、印をつけ、及び/又はX-Y座標の移動を制御する。もちろん、多くの種類のコンピューター制御システムが可能で、細胞や顕微鏡(例えば、Y軸方向だけ又は領域内のどこか)に相対的なレーザの動きを走査する方法を含む。皿/座標は、実質的に静止したままで、顕微鏡/レーザ の組み合わせをラベル細胞を標的とするため移動することができることも考えられる。
【0052】
例えば、顕微鏡ヘッド及びレーザ標的装置を、細胞を保持しているフラスコ又はぺトリ皿が表面で静止した状態にある間に、移動することができる。加えて、レーザシステムを細胞集団から又は細胞集団上のどちらかから発射することができる。レーザ標的装置は、顕微鏡を通して集束することができるので、レーザビームは異なる焦点の平面へ向けることができる。それゆえ、異なる鉛直の高さに位置する細胞を、レーザビームを変化する焦点平面へ標的とすることによって特異的に殺すことができる。例えば、一度コンピューターが検出器を通して、特定のX及びY座標で細胞を同定すると、レーザは、それらの座標でいくつかの焦点平面へ発射することができる。これは、細胞が、垂直平面に位置する場所に関係なく、レーザによって殺されるであろうことを確実にする。
【0053】
腫瘍細胞の全集団を、集団中のすべての腫瘍細胞に対してこの標的手順を繰り返すことによって自動的に破壊することができる。各腫瘍細胞をラベルし、同定し、殺す手順も手動で実行することができ、各ラベル腫瘍細胞を微視的にオペレーターによって同定し、その後レーザビームを、照らされた腫瘍細胞上に、オペレーターによって集束する。細胞の手動での目標設定を可能とするレーザ/顕微鏡との組み合わせ装置は、Photonic Instruments(Arlington Heights, IL)から利用することができる。
【0054】
例えば、連続的な調整領域の視覚化を可能とするNikon7Diaphot 300顕微鏡は、適度な時間で全細胞集団を検討するのに利用することができる。集合状態の1.5×10の例示の細胞集団は、300cmの領域を占める。4×の倍率で、2×1.5mmの視界を1つの領域と仮定すると、顕微鏡は、全部で100×100行列、又は10,000領域の走査を必要とするであろう。手動オペレーターは、おそらく1時間に500〜1000領域を走査することができるので、全手動手順は、およそ10〜20時間かかるであろう。自動手順はもっと早いであろう。
【0055】
一度全細胞集団を同定試薬、例えば蛍光ラベル抗体などで処理し、それからエネルギーパルスで殺すと、細胞集団を、患者の個別の臨床治療の必要性にしたがって洗浄する。その後、処理した細胞集団を調整し、選択した患者へ移植する。上述したように、患者は通常、細胞集団の最初の提供者と同じ者である。
【0056】
標的方法用の好ましい集束エネルギー源は、375〜900ナノメータの範囲にある光波長を発するレーザである。そのような1つのレーザは、Photonic Instruments(Arlington Heights, IL)によって作られる。知られるように、レーザは、高度に特異的な方向性で単色光源を提供し、たった0.5ミクロンの直径を有する微視的に集束したエネルギービームの狙いをつけることを可能とする。
【0057】
空間的かつ時間的な両者の分解能によって、光エネルギーの放出において高い精密性を予定の波長で達成することができる。特定の腫瘍細胞を殺す最も有効な波長は、実験的に決定することができ、最も有効な結果を使用することができる。加えて、およそ10−100ナノセカンドのパルス波長を使用し、集団中の1つの細胞だけを特異的に殺すことができる。
【0058】
代わりに、広帯域の光源(例えば、キセノンランプから得られるような)は、制御したエネルギー源を付与するために自動化したアイリスを用いて狭く集束することができる。高力の広いバンドの光源を1辺が1ミクロンの四角形と同じくらい小さい領域に集束し、これによって選択的に使用し、非腫瘍細胞の集団内で単一の腫瘍細胞を殺すことができる。
【0059】
光源のパワー、光パルスの持続時間を調整することができ、特定の腫瘍細胞を特定的に殺傷するという望ましい結果を達成する。レーザパルス波長は、2〜6ナノセカンドと同じくらい短くすることができ、光源を50マイクロジュール以上まで放射することができる。しかしながら、指定の標的細胞へ提供する全光エネルギーの量は好ましくは、標的細胞の物質や周りの培地が実質的に沸騰を生じないように選択する。
【0060】
沸点まで局所的に細胞培地を熱すると、視界を曇らせ、それゆえ自動標的装置を混乱させる。加えて、標的細胞の次に位置する非腫瘍細胞が害されることとなるであろうという危険がある。一つの実施例において、放出した全光力は、細胞の膜に最小の破壊をし、そこで細胞成分の損失を通じて最終的に細胞死となる。あるいは、全光力を選択し、細胞の成分に撤回不可能な損害を与え、それゆえ、細胞の膜を破壊することなく、細胞死を導くことができる。
【0061】
腫瘍細胞を微視的に観察するために、全細胞集団を名目上平らな表面上に有利に置くことができるので、多くの細胞を単一の焦点面に出現させる。この表面上の細胞密度を、原則としてあらゆる値とすることができる。しかしながら、細胞密度は、その手法で要求する全表面領域を最小にすることが可能な程高くすべきである。混在する細胞が明確に同定できるなら、全細胞集団は、集団(1cm2あたり約500,000細胞)で表面に置くことができる。
【0062】
採取した細胞の集団が、骨髄移植の一部として除去された造血細胞であるなら、所望の幹細胞だけの数を高めることは、集団をより小さい全面積内で観察することを可能とする。例えば、3憶5000万個(70キログラムの患者において1kgあたり500万個)の造血細胞のCD34に富んだ集団を観察するために、必要とする全表面積はおよそ700平方センチメートルである。しかしながら、もし造血幹細胞の増加方法が複数の幹細胞特異的マーカーへのスクリーニングを含むなら、標的細胞の全数は減少し、これによって、より小さい全面積の標的手順を必要とする。知られるように、造血集団は、幹細胞マーカーThy-1、CD38、CD15、CD11b、Gly-A、CD3又はCD19の発現に基づく幹細胞を増加させることができる。加えて、深床式濾過又は、逆流抽出の良く知られた技術によって細胞を増加させることができる。
【0063】
もし腫瘍細胞の検出が細胞の集合で抑制されないなら、その後は、近傍の細胞への付随的な損害を最小化するように、サブ集合での標的細胞集合を保持することが望ましいかもしれない。しかしながら、細胞の全数が腫瘍細胞の数と比較して大きいので、細胞を囲んでいるある近傍の損害は許容できる。共焦点顕微鏡法を使用した3次元でのラベルした腫瘍細胞の検出及び位置は、平らな表面の必要性を排除し、致死を招く光源の同定と集束は、細胞を置く容積部分を通して生じさせることが可能である。
【0064】
腫瘍細胞が特異的に破壊された後、細胞の破片を、低い温度で細胞を洗うことによって除去することができる。計画した手順の長さに依存して、標的細胞集団は4℃に冷却されるので、汚染物除去工程は、非腫瘍細胞集団の生理学上の性質における最小限の分解だけで行なうことができる。造血細胞は室温で分解されるので、これは、非腫瘍細胞が該造血細胞である場合特に重要であることができる。この手順の間、熱電気冷却装置を使用し、細胞集団を冷却する。
【0065】
知られているように、4℃へ細胞集団を冷却すると、すべての細胞の動きは無くなる。設置した細胞の表面もポリl-リシンなどのポリ陽イオン化合物でおおうことができるので、細胞はきつく吸着する。
【実施例】
【0066】
次の例は、造血細胞の集団から腫瘍細胞を除去するための標的方法の1実施例を説明する。
【0067】
(実施例1)
造血幹細胞移植
転移腫瘍を持ち、かつ、自己骨髄移植の必要性を有する患者を医師によって同定する。治療の第1段階として、患者は、骨髄採取手順を受ける。この手順において、患者は、手術室で一般的な麻酔を受ける。それから、患者の後部の腸骨動脈の頂点を外科医によって数時間、穿刺し、骨髄を吸引する。
【0068】
採取方法は、およそ1×10造血細胞の得る。採取した細胞は、CD34造血細胞特異的な表面抗原を有する細胞を選択する免疫親和性カラムにまずかけることによって造血細胞を増加する。採取した細胞集団の幹細胞を更に増加させるため、第二の選別を、抗幹細胞抗体Thy-1と結合した免疫親和性カラムに採取細胞をかけることによって行なう。
【0069】
カラムからの従来の抽出後、増加した造血細胞集団を、蛍光色素に結合したCD34抗体と接触させる。ラベルした抗体は特異的に造血細胞と結合するが、腫瘍細胞とは結合しない。それから、細胞集団を、集密状態で通常平らな表面上に設置する。細胞密度は、1センチ平方メートル当たりおよそ500,000個の細胞の単層である。蛍光色素結合CD34抗体を照明する紫外線光を点灯し、造血細胞を同定する。
【0070】
それから、オペレーターは、窒素レーザからのレーザ光の狙いを定める。375nmの波長を有し、かつ、5ナノセカンドのパルス長のレーザビームを使用し、腫瘍細胞は蛍光を発していないので、同定したそれぞれの該腫瘍細胞を手動的にねらいを定め殺傷する。
【0071】
一度非蛍光腫瘍細胞を破壊すると、残存集団を低温保存する。細胞を再導入する前に、患者は、化学療法を受け、患者の身体を通じて転移した腫瘍細胞を破壊する。この治療に続いて、単離した細胞を37℃の急速冷却により再導入のために調整する。腫瘍細胞のない造血幹細胞をそれから患者に移植する。患者は、はその後、最初の癌の緩解なく回復する。骨髄採取及び再導入手順は、通常医者が実行するけれども、本発明の方法のオペレータは、医療の訓練を必要としない。
【0072】
(実施例2)
プロピジウム イオダイド(PI)を細胞集団中の、レーザによって殺される標的細胞を確認するのに使用することができるかどうかを決定するために実験を行なった。当該技術で知られるように、プロピジウム イオダイドは、二本鎖核酸に特異的である。PIは、死んだ細胞の核に分散することができるが、生存能のある細胞の膜には浸透できないので、発明者らは、標的細胞の生存性を細胞の核におけるPI色彩発色によって確認することができるかどうか試験した。
【0073】
加えて、PIは493nmに吸収ピークを有し、そのピークは、ラベルしたフィコエリトリン(PE)の吸収ピークの480nmに近い。それゆえ、PI及びPEは同じ波長光で活性化することができる。加えて、PIは617nmの放射ピークを有し、この放射ピークは、PEの放射ピーク578nmと区別できるほど十分に離れている。それゆえ、陽性のPEは、PEラベルした抗体が細胞に結合しているときでさえ、容易に区別することができる。
【0074】
細胞株
ヒト造血細胞株KG1aをアメリカン タイプ カルチャー コレクション(Rockville,MD)から得た。細胞を取り低温保存しそれから急速に解かし、4mML-グルタミン、3.024g/lの重炭酸ナトリウム、及び20%牛胎児血清を含むIMDM(Life Technologies, Grand Island, NY)中に懸濁した。細胞株を3,4日毎に放置し、湿度95%及び二酸化炭素5%、37℃でインキュベーションした(ATCC説明書に推奨されたように)。
【0075】
細胞染色
KG1a細胞を、製造業者の説明書に推奨されたように(Becton Dickinson Immunocytometry System, San Jose, CA)、ヒトCD34膜抗原に対するフィコエリトリン(PE)結合モノクローナル抗体を使用して細胞表面抗原の直接免疫蛍光染色によって染色した。ラベルしたKG1a細胞(標的)を、非染色KG1a細胞(コントロール集団)とを1:100の割合で混合した。
【0076】
プロビジウム イオダイド(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)を加え、1×10細胞/mLの細胞懸濁において、5μg/mLの最終濃度とした。1.0×10細胞/mLの混合した細胞懸濁の各20μL分画を、384ウエルプレートのウエルの中に加え(Nalge Nunc International, Naperville, IL)、細胞を安定するために30分後、映像の記録及びレーザの除去を行った。
【0077】
細胞映像収集
図2は、レーザ除去システム75の1つの実施例の概略図を説明する。このシステムは、パーソナルコンピューター80に連結した荷電結合素子(CCD)カメラ77を含む。パーソナルコンピューター80は、SGI O2 ワークショップであった(Silicon Graphics, Mountain View、CA)。デジタル化した細胞の映像は、20×の対物レンズを有する反転ダイアフォト300蛍光顕微鏡(Nikon Inc., Melville, NY)をインストールした冷却したCCDカメラ77(Photometrics Inc., Tucson, AZ) によって捕捉する。
【0078】
選択的蛍光フィルター86(Set B2A; Chroma TechnologyCorp., Brattleboro, VT)を使用し、明るいPE放射映像を得た。捕らえた映像を展示し、コンピューター80上を起動するIseeTMソフトウエア(Inovision Corp.、Durham, NC)によって処理した。
【0079】
ソフトウエアは、台上の部品の操作、Z軸の集束、所望の領域(例えば、標的)の調整、レーザ制御を含むシステムの完全な自動化を提供する。384ウエルプレートの各ウエルにおいて63の視覚映像領域があり、領域間の階段風の動きをIsee内で規則的な台部品のソフトウエアによって正確に制御する。視覚領域内のそれぞれの標的細胞90は、明度、大きさ及び形などの与えられたパラメータのもとに同定し、標的細胞の位置は、IseeTMソフトウエアにおいて特徴のある抜粋機能によって調整され、印をつけられる。手順の間、標的細胞は、実質的にフラスコの表面92に残存する。
【0080】
レーザアブレーション
認証したクラスIIIb窒素レーザ94、ビームスピリッター96を備えたモデルVSL-337(The Laser Science Inc.、Newton, MA)、クマリン440染色細胞98ユニット(Pheotonic Instruments, Arlington Heights, IL) を使用し、個々の細胞を殺傷する。ビームスピリッター96は、レーザ94からの光を通すが、マーキュリ アーク ランプ99から放射した青い光を屈折する。それゆえ、マーキュリーアーク ランプ99からの光とレーザ94は、標的細胞90に向かって同じ経路に沿って送られる。
【0081】
マーキュリー アーク ランプは、450nmから490nmまでの波長範囲を有する光を伝達する。しかしながら、図2に示したように、マーキュリー アーク ランプ99からの青い光は、D470/40励起フィルター100(Chroma Technology Corp., Brattleboro, VT) を通して、KG1a細胞のCD34表面抗原に取り付けたPE結合を活性化する。したがって、同様の経路を励起光及びレーザ光が通過する。
【0082】
レーザ光及び励起マーキュリー アーク ランプ光との組み合わせは、それから第二ビームスピリッター102を通過する。ビームスピリッター102は、光を、レーザ94及びマーキュリー アーク ランプ99から顕微鏡対物レンズ84を通じて標的細胞90へ屈折した。ビームスピリッター102は、ラベル標的細胞によって照明された光を、フィルター104とおして、CCDカメラ77の中へと伝達する。
【0083】
通常の手順ではレーザ光は、短い段階だけ伝達することは注目に値すべきである。対照的に、マーキュリー アーク ランプ光は通常絶えず伝達するので、ラベルした細胞のそれぞれがビームスピリッター102、フィルター104を通してCCDカメラ77の中へと光を屈性するであろう。
【0084】
パルス発生装置105はレーザ94と連結し、標的細胞90を殺すのに必要な最も短いレーザ光の破壊を付与する。周囲の細胞が細胞培地の局所的な熱を通じて害される機会が低いので、より短いパルス長はさらに望ましい。
【0085】
染色した標的細胞の領域のデジタル映像を捕らえ、該細胞の位置をIseeソフトウエアシステムによって調整し、印をつける。アークランプ99は、皿上ですべてのラベルした細胞を蛍光する広帯域の光を提供するので、コンピューターシステムは、一度に全視界を集め、処理することができる。
【0086】
細胞をレーザからの光の短いパルス上で焼くので、垂直に移動可能なZモータ110は、皿の異なる焦点平面に特異的にレーザ光を集束する機構を提供する。Zモータ110は、対物レンズ84に取り付けた電気的に制御したモータである。対物レンズ84を垂直方向に上昇させたり下降させたりして、様々な焦点平面にレーザを微細に集束させるように、Zモータ110は、接続される。加えて、Zモータは、コンピュータシステム80によって制御し、標的細胞90の下から上までレーザ光パルスを集束することができる。Zモータを用いてレーザパルスを集束し、垂直方向における細胞位置の多様性を補償し、該補償は、組織培養プレート表面の完全な平面によって引き起こされる。
【0087】
完全な細胞破壊の測定
各細胞をレーザでパルス照射した後、コンピューターは、PI放射ピーク617nmでのスペクトルを分析した。もし細胞がレーザによって殺されたなら、617nmでのピーク放射が、細胞の最初の位置で発見されるであろう。もし、PI放射ピークが発見されないなら、レーザは、細胞の場所へ別の光エネルギーパルスを送るであろう。このようにして、集団中の各腫瘍細胞は、殺されたことを確認した。
【0088】
結論
この発明は、癌細胞の再導入のための再発の危険なく、医師が造血細胞移植の必要な患者を効果的に治療することを可能とする。ここで述べた標的方法は、造血幹細胞又は他の細胞集団から混在腫瘍細胞を完全に又はほとんど完全に除去する方法を提供する。
【0089】
本発明は、本発明の精神又は、本質的な特徴を逸脱することなく他の特定の方法で具体化することができる。記述した実施態様は、実例としてだけの観点で考慮されるべきで、制限されるものではない。それゆえ、本発明の範囲は、前述の実施態様によるよりむしろ添付クレームによって指示される。クレームの意義及び範囲内から生ずるすべての変更は、クレームの範囲内に包含されるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非腫瘍細胞を含む細胞集団内から腫瘍細胞を除去する試験管内方法であ
って、
a)前記腫瘍細胞を前記非腫瘍細胞から区別できるように、前記細胞の集団をラベルする工程、
b)全細胞集団を照明する工程、
c)照明した細胞集団の映像を捕らえる工程、
d)捕らえた映像及び前記ラベルを参照して細胞集団における腫瘍細胞の少なくとも2次元座標を決定する工程、及び、
e)前記腫瘍細胞が表面上の実質的に静止した位置にある間に、制御したエネルギー源からのパルスを前記腫瘍細胞の座標へ適用することによって前記腫瘍細胞を殺す工程、からなる工程を含む方法。
【請求項2】
工程d)及びe)を前記非腫瘍細胞集団中のすべての腫瘍細胞に対して繰り返す請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記非腫瘍細胞集団が、造血細胞集団である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記造血細胞集団が、造血幹細胞を増加させた造血細胞集団からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記造血幹細胞集団をCD34表面タンパク質の発現に基づき増加させる請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記造血幹細胞集団をThr-1、CD38、CD15、CD11b、Gly-A、CD3及びCD19からなる群から選択される細胞マーカーの発現に基づき増加させる請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記増加させた細胞集団を深床式濾過法や、向流溶出法を使用することによって作る請求項4記載の方法。
【請求項8】
工程d)及びe)をコンピューター制御のもとで行なう請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記制御エネルギー源がレーザである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザから放射した光の波長が375nm〜900nmの間である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ラベルが、前記腫瘍細胞に特異的である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ラベルが、前記非腫瘍細胞に特異的である請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
造血細胞集団において幹細胞の数を増加させるための試験管内方法であって、
a)前記造血細胞集団を幹細胞に特異的なラベルでラベルする工程、
b)全造血細胞集団を照明する工程、
c)照明した造血細胞集団の映像を捕らえる工程、
d)映像上の該細胞の位置を決定することによって造血細胞集団におけるいずれかの非ラベル細胞の少なくとも2次元座標を計算する工程、及び、
e)前記幹細胞が表面上の実質的に静止した位置にある間に、前記集団の非ラベル細胞の少なくとも1つの座標に高エネルギーレーザ光パルスを適用すること、からなる方法。
【請求項14】
前記適用工程が、前記集団の実質的にすべての非ラベル細胞へ前記高エネルギーレーザ光パルスを適用することからなる請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記幹細胞特異的ラベルがCD34である請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記レーザから照射された光の波長が、375nmと900nmの間である請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記適用工程をコンピューターの制御下で行なう請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
患者に再導入するために単離した造血細胞を調製する試験管内方法であって、
a)前記単離した造血細胞内の腫瘍細胞を腫瘍細胞に特異的なラベルでラベルすること、
b)単離した造血細胞を照明すること、
c)単離した造血細胞の映像を捕らえること、
d)前記映像及び前記ラベルを参照することによって、単離した造血細胞内の前記腫瘍細胞の少なくとも2次元座標を決定すること、
e)前記腫瘍細胞が実質的に表面の静止した位置にある間に、決定した座標でのラベルした腫瘍細胞の少なくとも1つに高エネルギーレーザ光パルスを適用することからなる方法。
【請求項19】
前記適用工程が、前記高エネルギーレーザ光パルスを前記集団中のすべてのラベルした細胞へ適用することなる請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記レーザから放射した光の波長が375nmと900nmとの間である請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
前記適用工程が、コンピューターの補助で自動的に行なう請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
第2細胞集団から第1細胞集団を除去する試験管内方法であって、
a)前記第1の細胞集団を前記第2細胞集団から識別できるように前記第1の細胞集団をラベルすること、
b)前記第1の細胞集団及び前記第2の細胞集団を表面の静止した位置に置くこと、
c)前記ラベルを参照することによって前記第1の細胞集団の中の1つの細胞の位置を確定すること、
d)制御したエネルギー源から第1のパルスを前記1つの細胞へ適用すること、
e)前記1つの細胞が前記第1のパルスによって殺されたかどうか決定すること、及び、
f)前記1つの細胞が殺されなかったなら、制御したエネルギー源からの第2のパルスを適用すること、からなる方法。
【請求項23】
前記第1の細胞集団をラベルする方法が、腫瘍細胞をラベルすることからなる請求項22記載の方法。
【請求項24】
第2の細胞集団から第1の細胞集団を除去する方法が、第2の非腫瘍細胞集団から第1の腫瘍細胞集団を除去することからなる請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
第1のパルスを適用する方法が、レーザパルスを適用することからなる請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
第2のパルスを適用する方法が、レーザパルスを適用することからなる請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
非腫瘍細胞を含む細胞集団内から腫瘍細胞を除去する方法であって、
a)非腫瘍細胞を前記腫瘍細胞から識別できるように非腫瘍細胞をラベルする工程、
b)前記細胞集団中の非ラベル細胞を同定することによって、前記腫瘍細胞の1つの位置を確定する工程、及び、
c)前記腫瘍細胞が表面上の実質的に静止した位置にある間に、制御したエネルギー源からのパルスを、前記位置を確定した腫瘍細胞へ適用することによって前記腫瘍細胞を殺す工程、からなる方法。
【請求項28】
前記腫瘍細胞を殺す工程が、レーザパルスを適用することからなる請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記腫瘍細胞を殺す工程が、前記腫瘍細胞が名目上平らな表面の静止した位置にある間、制御したエネルギー源を前記位置を確定した腫瘍細胞へ適用することからなる請求項27又は28記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍細胞を殺す工程が、前記細胞集団が集合している間に制御したエネルギー源を位置を確定した腫瘍細胞へ適用することからなる請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−29193(P2010−29193A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−209779(P2009−209779)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【分割の表示】特願平10−543286の分割
【原出願日】平成10年3月27日(1998.3.27)
【出願人】(509252069)
【Fターム(参考)】