細菌によるカロテノイドの製造
本発明は、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバチルスの胞子及び栄養細胞に基づく。バチルスは、よって、検出方法及びバイオセンサに用いてよい。バチルスは、着色料及び色素、並びに食品、栄養補助食品、プロバイオティック組成物、色素、化粧品、医薬及びワクチンにおいて用いてもよい。バチルスは、カロテノイド、その前駆体及び下流の誘導体の製造のために用いてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非病原性胞子形成バチルスに関する。特に、本発明は、食品、栄養補助食品、プロバイオティクス、着色料、色素、バイオセンサ、カロテノイド及びイソプレノイド由来代謝物の供給源における、又はこれらとしてのバチルスの使用、並びにバチルス自体に関する。本発明は、刺激の検出方法においてバチルスを用いることにも関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドは、自然に見出される天然の色素の最も広い群である。これらの黄色、橙色、及び赤色に着色した分子は、真核生物及び原核生物において見出される。少なくとも600種の構造が異なる化合物が現在知られており、1年当たり1億トンの推定生産量がある(Britton et al.,2003)。細胞内でのカロテノイドの主な機能の1つは、細胞が照射されたときに形成される一重項酸素及び他の有害なラジカルを消滅させることによる光酸化損傷に対する防御を提供することである。光合成生物において、これらは、光回収色素として重要な役割を演じるが、哺乳動物においてはいくつかのカロテノイド(例えばβ−カロテン)の開裂は、栄養(ビタミンA)、視力(レチナール)及び発達(レチノイン酸)において重要な役割を演じる。さらに、カロテノイドに固有の有力な抗酸化特性が細胞を極限環境から防御し、哺乳動物においては慢性疾患状態の発症を妨げ得る。これらの健康増進特性は、特に、哺乳動物(最も顕著にはヒト)はカロテノイドを新たに合成できず、食餌から獲得しなければならないので、栄養補助物質としてのカロテノイドに対する実質的な興味を導いている。
【0003】
商業的には、カロテノイドは、製薬、化粧品、並びに食品及び飼料業界において、特に前駆体、着色料及び補助物質として用いられている。世界的な市場は拡大しており、2005年には9億3500万ドルと推定される。合計の化学合成は、工業的なカロテノイド製造の現在での選択の方法である。このアプローチの問題点は、天然生成物には見出されない立体異性体の生成、反応中間体/生成物の混入、及び生物学的混合物中に存在する潜在的相乗効果を有する栄養素の欠落を含む。つまり、天然供給源からのカロテノイド製造の必要性が存在する。
【0004】
商業的に現在用いられているカロテノイドの微生物供給源は、単細胞藻類であるドゥナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)、スピルリナ(Spirulina)及びヘマトコッカス(Haematococcus)、酵母であるファフィア・ルドジマ(Phaffia rhdozyma)、並びに糸状菌であるブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)及びフィコミセス・ブラケサヌス(Phycomyces blakesanus)を含む。しかし、単細胞藻類は、成長が遅く、汚染されやすく、高い酸素供給速度及び強い光を必要とする。これらの条件により、製造場所がハワイ及びオーストラリアのある領域に限定される。ファフィア・ルドジマ及びフィコミセス・ブラケサヌスはともに、細菌に比較して成長がかなり遅く、重要な経費の影響を有する冷却発酵条件を必要とする。ブラケスレア・トリスポラも、可能性のある細菌の供給源に比較して成長速度が遅く、高生産量のためにはトリスポリック酸による有性刺激を必要とする。現在のところ、カロテノイドが商業的に製造されている高等植物供給源は1つしかない(マンジュギク(Tagetes)の花)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、バチルス又はバチルスからの抽出物の、着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品としての、又は化粧品における使用であって、バチルスが、配列番号1〜6のいずれかの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有し、又はその抽出物が、前記配列同一性を有するバチルスから得られる使用を提供する。
【0006】
本発明は、(i)本発明のバチルスを栄養成長させ、及び/又はバチルスの胞子を生成させること、及び(ii)バチルスからカロテノイド、その代謝前駆体又はその誘導体を抽出することを含む、カロテノイド、その代謝前駆体又はその誘導体を製造する方法も提供する。
【0007】
本発明は、
(i)刺激が存在するときに誘発され、発芽して栄養細胞を生じるバチルスの胞子であって、バチルスの胞子及び栄養細胞が、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子を提供すること、
(ii)刺激の存否を決定するのに望ましい試験条件下で胞子を曝露すること、及び
(iii)胞子の発芽に起因する色の変化の存否を検出して、刺激の存否を決定すること
を含む、刺激を検出する方法を提供する。
【0008】
本発明は、バチルス又はバチルスからの抽出物の、着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品としての、又は化粧品における使用であって、バチルス又はその抽出物はバチルスから得られ、バチルスの胞子及び栄養細胞が、少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である使用も提供する。
【0009】
本発明は、バチルスの成長、発芽又は胞子形成を調節可能な作用物質を検出する方法であって、試験作用物質を、本発明のバチルスと接触させること、及び色の変化又は色の強度の変化をモニタリングすることを含み、バチルスの胞子及び栄養細胞が、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である方法も提供する。
【0010】
本発明は、配列番号1〜6のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有するバチルスから選択されるバチルスであって、バチルスの胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバチルスを提供する。
【0011】
本発明は、さらに、バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)、HU33(NCIMB41342)及びHU36(NCIMB41361)、又はそれらのいずれかの派生株、変異株若しくは突然変異体から選択されるバチルスであって、
− 派生株、変異株又は突然変異株のバチルスの胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であり、
− 派生株及び突然変異体の16S rRNA遺伝子が、HU19、HU28、HU33、及びHU36のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する
バチルスを提供する。
【0012】
また、
− 本発明のバチルスと支持体とを含むバイオセンサであって、バチルスの胞子及び栄養細胞が、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバイオセンサ;
− 本発明のバチルス又は本発明のバチルスからの抽出物を含む食品材料、食品添加物、色素、着色料、化粧品、栄養補給食品又はプロバイオティック組成物;
− 本発明のバチルス又は本発明のバチルスからの抽出物と、医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬;
− ヒト又は動物の体の治療方法において用いるための本発明のバチルス又はそのようなバチルスからのカロテノイド抽出物
も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、種々のバチルス及びそれらの使用を提供する。特に、該バチルスは、カロテノイドの製造のためにそれらを有用にするカロテノイドを製造する。該バチルス及びその抽出物は、例えば着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品として、及び化粧品において用いることができる。
【0014】
本発明は、典型的には、それらの胞子及び栄養細胞の形で異なる量で存在する少なくとも1種のカロテノイドを含むバチルスを含む。特に、本発明は、
(i)胞子が、バチルスの栄養細胞の形で存在しない少なくとも1種のカロテノイドを含み、及び/又は
(ii)栄養細胞が、バチルスの胞子の形で存在しない少なくとも1種のカロテノイドを含む
バチルスの使用を含むことができる。
【0015】
ある特に重要な実施形態において、バチルス又はその抽出物は、水産養殖において用いてよく、特に甲殻類、特に貝類に与えてよい。このような使用は、生産量の上昇をもたらし得る。
【0016】
バチルスは、広く多様な用途に用いてよい。カロテノイドは着色しているので、例えば、バチルスからの胞子及び栄養細胞の形は異なる色であり得、2つの形の色の違いは、種々の刺激を検出する方法及びこのような刺激を検出するバイオセンサにおいて用い得る。カロテノイドの色は、バチルス、及びカロテノイドを含むそれらからの抽出物を着色料及び色素として用い得ることを意味する。これらは、色を与えるため、並びにそれらのプロバイオティック及び抗酸化機能の両方のために食品及び食品添加物において用いてもよい。ある実施形態において、バチルスは、胞子及び栄養細胞の状態の間で色の変化を示さなくてよい。
【0017】
バチルス及びそれらからの抽出物は、陸上動物及び海洋動物の両方の飼育動物に供給して、特に該生物の1つ又は複数の組織に色を与えてよい。別の場合では、これらは、さらに又は代わりに供給して、生産量を上昇させ得る。バチルス及びそれらから得られる物質は、化粧品、医薬組成物において、プロバイオティックとして及び競争排除剤として用いてもよい。
【0018】
カロテノイド並びにそれらの種々の代謝前駆体及び誘導体は、商業的に価値がある物質であり、よって、該バチルスは、このような物質を製造し、次いでバチルスから所望の化合物を抽出する細胞工場として用いてよい。
【0019】
バチルス
本発明は、バチルスの栄養細胞及び胞子の形で異なる量で存在する少なくとも1種のカロテノイドを典型的に有するバチルスの使用に基づく。該バチルスは、その胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので、該2つの形で典型的には色が異なる。つまり、特定のカロテノイドが、バチルスの栄養細胞の形よりも高い量で胞子に存在してよいか、及び/又はあるカロテノイドが、バチルスの栄養細胞の形に、胞子の形よりも高い量で存在してよい。別の実施形態において、バチルスは、胞子と栄養細胞の状態の間でこのような色の変化を示さなくてよい。
【0020】
ある場合において、バチルスは、配列番号1〜6のいずれかと少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する。ある好ましい実施形態において、用いられるバチルスは、バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)、HU33(NCIMB41342)及びHU36(NCIMB41361)、又はそれらのいずれの派生株、変異株若しくは突然変異体から選択される1種であってよく、該派生株、変異株又は突然変異体の16S rRNA遺伝子は、HU19、HU28、HU33及びHU36のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する。
【0021】
ある場合において、1又は複数種のカロテノイドが、栄養細胞の形よりも胞子の形で高い量で存在してよく、バチルスの胞子の形に比較して栄養細胞の形により高い量で存在する1又は複数種の異なるカロテノイドが存在してもよい。
【0022】
カロテノイドの量の違いは、他方の形で存在する量の例えば2倍、好ましくは少なくとも3倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも25倍、より好ましくは少なくとも50倍、さらにより好ましくは少なくとも100倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍であってよい。ある実施形態において、このような倍数は、増加の上限を表し得る。
【0023】
特に好ましい場合において、バチルスの他方の形で存在する特定のカロテノイドがバチルスの一方の形で実質的に全く存在せず、好ましくは、1又は複数種のカロテノイドが胞子又は栄養細胞の形で存在するが、他方の形では全く存在しない。
【0024】
任意の適切な方法を用いてカロテノイドのレベルを測定でき、よって、バチルスの胞子及び栄養細胞中のレベルを比較できる。好ましい方法において、等しい重量の凍結乾燥した胞子と栄養細胞を、例えば乳棒と乳鉢で粉砕し、次いでクロロホルム抽出する。典型的には、粉砕した物質を1容量のメタノール及び2容量のクロロホルム中に溶解し、氷上で10〜30分間、好ましくは約20分間インキュベートし、メタノールの容量に等しい容量の水を加え、試料をボルテックスし、静置した後に、水相の除去により有機画分を回収する。次いで、典型的には、試料は、さらに2回抽出し、次いで、有機相を、窒素流の下で完全に乾燥するまで減量させてよい。次いで、カロテノイドの相対量を分析してよく、例えば、好ましくはHPLC分離と組み合わせた分光分析法を用いてよい。
【0025】
ある場合において、カロテノイドの量は、HPLCを用いて450nm及び/又は286nm、特に450nmで測定してレベルを比較してよい。本明細書に記載される方法は、例えば、カロテノイドの単離及びHPLC分析に用いてよい。分析は、典型的には、等しい重量の凍結乾燥した胞子及び栄養細胞からの抽出物についての結果の比較により行われる。ある場合において、胞子及び栄養細胞の色は、示差的なカロテノイドの存在の指標として、例えば肉眼により比較してよい。胞子形成を誘導して、色の変化をモニタリングしてよい。コロニーの色を調べてよい。
【0026】
バチルスは、栄養細胞におけるよりも胞子の形で高い量で存在するか又はその逆の1種、好ましくは少なくとも2種、より好ましくは少なくとも4種、より好ましくは少なくとも6種、より好ましくは少なくとも8種、さらにより好ましくは少なくとも10種、さらにより好ましくは11種以上のカロテノイドを製造してよい。
【0027】
好ましい場合において、用いられるバチルスは、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリキファシエンス(Bacillus amyloliquifaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ジェオトガーリ(Bacillus jeotgali)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・シュードフィルムス(Bacillus pseudofirmus)、バチルス・オクヒデンシス(Bacillus okuhidensis)、バチルス・クラルキア(Bacillus clarkia)、バチルス・ベッデリ(Bacillus vedderi)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・フレクサス(Bacillus flexus)、バチルス・コーニー(Bacillus cohnii)、バチルス・インディカス(Bacillus indicus)、バチルス・シビ(Bacillus cibi)及びバチルス・カテヌラトゥス(Bacillus catenulatus)から選択される1種であってよい。これは、特に、バチルスが、その胞子及び栄養細胞の色が異なるものの場合であり得る。
【0028】
ある実施形態において、バチルスは、図1に示すもののいずれか、特に胞子と栄養細胞の形の間で色の変化を示すものであってよい。ある好ましい場合において、バチルスは、バチルス・シビ、バチルス・インディカス、バチルス・カテヌラトゥス及び本明細書に記載する寄託された株並びに16S rRNAレベルで少なくとも95%の配列同一性を有するそれらの変異株又は突然変異体から選択される1種であってよい。別の場合において、提供されるバチルスは、バチルス・シビ、バチルス・インディカス及びバチルス・カテヌラトゥスを除外してよい。ある特に好ましい場合において、バチルスは、胞子と栄養細胞の形の間で色の変化を示す。他の場合はそうでなくてよい。
【0029】
特に好ましい場合において、用いられるバチルスは、16S rRNA配列同一性を参照にして定義され得るバチルスの近縁群の1種であってよい。例えば、バチルスは、配列番号1〜6の16S rRNA配列のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を示すものであり得る。
【0030】
ある好ましい場合において、バチルスは、(i)バチルスの栄養細胞又は胞子の形で、バチルスの他方の形と比較して、異なる量で存在する少なくとも1種のカロテノイドを有し、(ii)その16S rRNAが配列番号1〜6のポリヌクレオチド配列のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するものであり得る。
【0031】
好ましい場合において、バチルスの16S rRNAは、配列番号1〜6のいずれか1つのポリヌクレオチド配列と少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、さらにより好ましくは少なくとも94%の配列同一性を有してよい。特に好ましい場合において、バチルスの16S rRNA配列は、配列番号1〜6のいずれか1つと少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有してよい。特に、バチルスの16S rRNAは、配列番号1〜6のいずれか1つと少なくとも99.25%、好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.75%、さらにより好ましくは99.9%の配列同一性を有してよい。特に好ましい場合において、配列同一性のレベルは、配列番号3〜6のいずれか1つに対してである。ある好ましい場合において、配列同一性のレベルは、配列番号3、4及び6のいずれか1つに対して、別の場合において配列番号5に対してであってよい。
【0032】
種々のプログラムを用いて、百分率の相同性を計算してよい。UWGCGパッケージは、相同性を計算するために用い得るBESTFITプログラム(例えばそのデフォルト設定で用いられる)を提供する(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research 12,p387−395)。例えばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290−300; Altschul,S,F et al(1990)J Mol Biol 215:403−10に記載されるようにして、PILEUP及びBLASTアルゴリズムを用いて相同性を計算又は配列を整列させ得る(典型的にはそれらのデフォルト設定で)。
【0033】
BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Centre for Biotechnology Information)により公的に利用可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さの文字列と整列させたときにある正の値の閾値スコアTに調和するか又は満足するかのいずれかの検索配列中の長さWの短い文字列を同定することにより高評点配列対(HSP)を同定する。Tは、近傍文字列スコア閾値とよばれる(Altschul et al、上記)。これらの初期近傍文字列ヒットは、それらを含むHSPを見出すための検索を開始するための種として作用する。文字列のヒットは、累積アラインメントスコアが増加できる限りは、それぞれの配列に沿って両方向に伸長される。各方向への文字列ヒットの伸長は、累積アラインメントスコアが、それが達成した最大の値からXの量だけ低下したときに停止する。累積スコアは、1つ又は複数の負に評点される残基のアラインメントの蓄積により、ゼロ又はそれ未満になるか、或いはいずれかの配列の末端に到達する。BLASTアルゴリズムのパラメータであるW、T及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、文字列長さ(W)11、BLOSUM62評点マトリクス(Henikoff and Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919を参照されたい)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4及び両方の鎖の比較を用いている。
【0034】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計学的分析を行う。例えばKarlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムにより提供されるある類似性の測定は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の調和が偶然により発生する確率の指標を与える最小合計確率(P(N))である。例えば、第1配列と第2配列との比較における最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、ある配列は別の配列と類似であるとみなされる。
【0035】
ある場合において、配列の同一性のレベルは、16S rRNA遺伝子の長さの少なくとも10%を超えて、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも95%を超えてよい。特に好ましい場合において、配列同一性は、16S rRNA遺伝子の全長、又はほぼ全長にわたって測定してよい。配列同一性は、ある場合において、少なくとも50にわたって、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも250ヌクレオチドにわたって、より好ましくは少なくとも500ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも1000ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも1400ヌクレオチドにわたって測定してよい。
【0036】
ある好ましい場合において、系統発生分析を用いて、本発明で用いるための好ましいバチルス株を定義してよく、特に、16S rRNA遺伝子のこのような分析を用いてよい。系統発生樹は、CLUSALWプログラム(http://align.genome.jpで利用可能)を用いて描くことができる。Ash et al(1991)により用いられた方法論を、系統発生分析において用いてよい。ある好ましい場合において、バチルスは、本明細書に記載される方法論により定義されるバチルスの16S rRNAの系統発生分析により定義される第1群のバチルスである。別の特に好ましい実施形態において、バチルスは、系統発生分析において、バチルス・サーキュランス、好ましくはバチルス・スフェリカス(Bacilus sphaericus)、特にバチルス・フィルムスに対してよりも、配列番号1〜6、バチルス・カテヌラトゥス、バチルス・シビ及びバチルス・インディカスのいずれか1つの16S rRNA配列に、より近縁である。ある場合において、バチルスは、バチルス・カテヌラトゥス、バチルス・シビ及びバチルス・インディカス並びに配列番号1〜6と同じ系統発生群に入るだろう。
【0037】
ある好ましい場合において、系統発生分析は、CLUSTALW、特にバージョン1.83を用いて行われる(http://align.genome.jp/)。バーは、部位当たり0.01ヌクレオチド置換に設定されるのが好ましい。百分率類似性は、好ましくは、配列のCLUSTALWマルチプルアラインメント[http://npsa−pbil.ibcp.fr/]プログラムにより決定され得る。
【0038】
本発明のある好ましい実施形態において、本発明による細菌は、好ましくはバチルスspp.HU33(NCIMB41342)である。NCIMB41342は、2005年9月19日に寄託された。特に好ましい場合において、本発明による細菌は、バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)及びHU36(NCIMB41361)の1つである。NCIMB41359、41360及び41361は、2005年12月1日に寄託された。特に好ましい場合において、バチルスは、HU36又はその変異株、派生株若しくは突然変異体であってよい。NCIMB−国立工業海洋食品細菌コレクション(National Collections of Industrial,Marine and Food Bacteria)、Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn,Aberdeen,AB21 9YA,UK。
【0039】
ある場合において、バチルスは、
(i)それぞれアクセッション番号NCIMB41342、41359、41360及び41361のバチルスspp.HU19、HU28、HU33又はHU36の1種、及び/又は
(ii)上記の4株のいずれか1つの16S rRNA配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの変異株又は突然変異株
である。
【0040】
好ましい場合において、配列同一性のレベルは、少なくとも95%である。
【0041】
本発明による細菌は、典型的には色を有する。胞子の状態の本発明による細菌の色は、栄養細胞の状態の本発明による細菌の色とは典型的に異なる。本発明による細菌の色は、好ましくは赤、橙又は黄、特に橙、又は黄色である。特に、細菌は、栄養成長している間は黄色であり、その胞子の状態では橙色であるのが好ましい。カロテノイド合成に関係する遺伝子に改変を加えて、異なる色のバチルスを製造してよい。
【0042】
典型的には、用いられるバチルスは、その栄養細胞及び胞子の状態の間で色の切り替えを示し、よって、胞子形成又は発芽は、色の変化を導く。特に好ましい場合において、色の変化は、橙色から黄色又はその逆である。ある場合において、色は肉眼で測定でき、別の場合には色の変化は、例えば、分光光度法又は他の類似の方法により測定できる。ある場合において、バチルスは、胞子と栄養細胞の状態の間で色の変化を示さなくてよい。
【0043】
本発明において用いられるバチルスは、以下の特徴の1つ又は複数をさらに又は代わりに示してよい。
− 膨潤胞子嚢内の楕円体胞子;
− 非運動性である;
− デンプンを加水分解可能である;
− 塩化ナトリウムの存在下、例えば少なくとも2%のNaCl、好ましくは少なくとも4%のNaCl、さらにより好ましくは少なくとも6%のNaCl、さらにより好ましくは8%までのNaCl溶液中で成長可能である;
− ヒ酸塩に対する耐性を示し、例えば2mMヒ酸塩、好ましくは5mMのヒ酸塩、より好ましくは少なくとも10mMのヒ酸塩、さらにより好ましくは少なくとも15mMのヒ酸塩、より好ましくは20mMまでのヒ酸塩中であっても成長可能である;
− 特に富栄養寒天上で画線培養したときに、嫌気的に成長できない;及び/又は
− 50℃以上の温度で成長できない。
【0044】
ある場合において、バチルスは、上記の特徴の全てを示してよい。別の場合において、バチルスは、これらの特徴の少なくとも2、3、4、5又はそれより多くを示してよい。バチルスは、液体培養で成長させたときに嫌気的に成長可能であり、次いでDSMプレート上で画線培養されるものであってよい場合がある。バチルスは、嫌気条件下で胞子形成できないものであってよい。ある実施形態において、バチルスは、水生生物又は対象、特に海産食物を消費したヒト対象からの糞便から単離されたか、又はこれらから元来単離されたものであってよい。
【0045】
ある好ましい場合において、本発明のバチルスは、以下の遺伝子の1つ又は複数を含む。
− ggppシンターゼ(crtE様)遺伝子;
− フィトエンシンターゼ(crtB様)遺伝子;
− 3又は4ステップフィトエンデサチュラーゼ(crtI様)遺伝子;
− シクラーゼ(おそらくモノシクラーゼ)(crtY様)遺伝子;
− β環3,3’ヒドロキシラーゼ(crtZ様)遺伝子;及び/又は
− β環4,4’オキシゲナーゼ(ケトラーゼ)、(crtW及びcrtO/bkt様)遺伝子。
【0046】
ある場合において、バチルスは、上記の遺伝子の全て、又はこれらの遺伝子の少なくとも2、3、4又は5つを含んでよい。好ましくは、本発明によるバチルスは、上記の遺伝子の全てを有する。
【0047】
本発明のバチルスは、寄託された株の天然に存在する変異株であってよいか、又は代わりに、寄託された株から派生した株若しくはこのような株の突然変異体であってよい。このような天然の変異株及び派生株は、本明細書に記載される任意の特徴を保持してよい。好ましい場合において、変異株の16S rRNAは、NCIMB41359、41360、41361及び41362のアクセッション番号をそれぞれ有するバチルスspp.HU19、HU28、HU33及びHU36に対して、本明細書に示す配列同一性の百分率レベルの1つ又は少なくとも1つを有する。別の場合において、変異株、突然変異体又は派生株は、配列番号1〜6のいずれか1つに対して、本明細書に記載する配列同一性のレベルのいずれかを有してよい。
【0048】
ある場合において、本発明のバチルスは、硝酸塩及び/又は亜硝酸塩を用いて成長し得る。ある場合において、バチルスは、抗生物質耐性を与える任意のエピソームを欠損してよい。ある場合において、バチルスは、表9及び/又は10に示す抗生物質耐性、特に、厳密なレベルよりもむしろプロファイルを示してよい。バチルスは、クリンダマイシンに対する耐性を示してよいが、別の実施形態においては示さなくてよい。株は、Caco−2細胞に対する接着性のレベルが低くてよい。
【0049】
ある場合において、実施例に記載される任意のアッセイ又は方法は、特定のパラメータを測定するために用いてよい。バチルスは、エンテロトキシンを欠損してよく、特に、セレウス菌(B.cereus)のエンテロトキシン遺伝子を有さなくてよい。バチルスは、糞便を分析することにより測定されるように、GIT(胃腸管)内で2週間持続し得る。
【0050】
バチルスは、典型的には、胞子若しくは栄養細胞の形、又はこれらの混合の形である。特に好ましい場合において、バチルスは、胞子の形である。バチルスが胞子の形である場合に、バチルスを、発芽できないように処理してよい。例えば、胞子は熱により処理でき、例えば、オートクレーブに供して発芽を妨げてよい。多くの場合、バチルスは、発芽可能な胞子の形で提供されてよい。胞子又は栄養細胞は、ある実施形態において、単離された形で提供され得る。
【0051】
改変されたバチルス
ある場合において、バチルスは、遺伝子改変されたもの、特に、本明細書に記載される使用の1つに対するその適性を増加させるように遺伝子改変されたものであってよい。遺伝子改変の方法は、例えば、Sambrook,J.and Russel DW.(Editors)Molecular Cloning,A laboratory Manual vol.1,2,and 3.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Sring Harbor,New York.2001.third Editionに記載されている。
【0052】
バチルスは、例えば、無作為又は定方向の突然変異誘発に供してよく、特に、選択を行って、所望の特徴を有する突然変異体を単離してよい。本発明は、異種遺伝子を含むように遺伝子改変されたバチルスも提供する。ある場合において、バチルスは、1つ又は複数の外来核酸配列、特に1つ又は複数の遺伝子の導入により改変されてよい。例えば、1、2、3、4、5又はそれより多くの外来遺伝子を導入してよい。このような遺伝子改変は、バチルスが所望の化合物又は所望の化合物以上のものを製造するように行われてよい。ある場合において、バチルスは、このような数の遺伝子を突然変異させて、例えばそれらを不活性化するか又は特定のポリペプチドを突然変異させるように改変されてよい。
【0053】
バチルスは、無作為突然変異誘発に供してよい。例えば、細菌を、X線照射及びUV照射のような物理的突然変異誘発法に供してよいか、又はこれらを、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、及びエチルメタンスルホネート(EMS)のような化学的突然変異誘発剤に供してよい。
【0054】
ある場合において、遺伝子改変は、バチルスが以前に製造しなかった特定のカロテノイドを製造するか、又は代わりに、以前に製造していたよりも高い若しくは低い量で、好ましくは高い量で特定のカロテノイドを製造することを意味してよい。別の実施形態において、改変は、以前に製造されなかった所望のカロテノイドの前駆体若しくは誘導体又は別の代謝物が製造されるか、或いは以前に製造されていたよりも多い又は少ない量で、好ましくはより多い量で製造されることを意味してよい。よって、バチルスは、ある場合において、カロテノイド合成に関係する遺伝子に突然変異を有するか、又はカロテノイド合成に関係するさらなる異種遺伝子が導入されていてよい。
【0055】
ある場合において、改変又は変異は、バチルスが胞子と栄養細胞の形の間で色の変化を示さないことを意味してよい。別の場合において、このような色の変化は保持されてよい。
【0056】
導入された遺伝子は、プロモーター及び/又は調節要素の制御下にあって、所望の発現を与えてよい。例えば、遺伝子の発現は、遺伝子産物が所望のときにのみ製造されるように誘導性であってよい。代わりに、タンパク質を標的にする他の調節配列が存在してよい。例えば、外来タンパク質は、胞子殻を標的にしてよく、ある好ましい場合において、胞子の殻タンパク質又は胞子の殻タンパク質の一部分との融合タンパク質を含んでよい。特に好ましい場合において、タンパク質は、特にタンパク質が抗原である場合は、バチルスのCotB又はCotC殻タンパク質との融合タンパク質として発現されてよい。バチルスで発現される外来タンパク質は、酵素、抗原、ホルモン及び構造タンパク質を含んでよい。
【0057】
バチルスの遺伝子でない遺伝子がバチルスに導入される場合、遺伝子は、バチルスでの発現のために最適化されたコドンであってよい。
【0058】
別の場合において、バチルスは、以下の外来遺伝子の1つ又は複数を含む。
二環式ベータシクラーゼ(crtY及び/又はcrtL−b遺伝子の産物である);
イプシロンシクラーゼ(crtL−e遺伝子の産物である);
デヒドロスクアレンシンターゼ(crtM遺伝子の産物である);
デヒドロスクアレンデサチュラーゼ(crtN遺伝子の産物である);
フィトエンデサチュラーゼ(crtI遺伝子の産物である);
フィトエンデサチュラーゼ(Pds遺伝子の産物である);
ζ−カロテンデサチュラーゼ(crtQ遺伝子の産物である);
ζ−カロテンデサチュラーゼ(Zds遺伝子の産物である);
リコペンエロンガーゼ(crtEb;C50カロテノイド生合成の産物である);
ゼアキサンチングルコシラーゼ(crtX遺伝子の産物である);
C3カロテンヒドロキシラーゼ(crtZ様遺伝子の産物である);
C2カロテンヒドロキシラーゼ(BcrtG遺伝子の産物である);
C4オキシゲナーゼ(crtW様遺伝子の産物である);
C4オキシゲナーゼ(bkt様遺伝子の産物である);
ゼアキサンチンエポキシダーゼ(zep1遺伝子の産物である);
ビオラキサンチンデエポキシダーゼ(vde遺伝子の産物である);
カプサンチン/カプソルビンシンターゼ(ccs遺伝子の産物である);
β−カロテンデサチュラーゼ(crtU遺伝子の産物である);
デカプレノキサンチンシンターゼ(crtYe/Yf遺伝子の産物である);及び/又は
香気、風味及び/又は医薬関連化合物(例えばレチノール)を生産するカロテノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD’s)。
【0059】
種々のバチルスの間の相同性が近いことにより、改善された酵素活性及び新しいカロテノイドの組合せを作製可能な変更された活性の生成のための定向進化、セクシャルPCR及び遺伝子シャッフリングの使用が促進される(Schmidt−Dannert,C.2000,Directed evolution of single proteins,metabolic pathways and viruses.Biochemistry 40,13125−13136.)。
【0060】
このような改変は、本明細書に記載される任意のバチルスに対して、ある好ましい場合において、配列番号1〜6のいずれかと少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有するバチルスに対して行ってよい。本明細書に記載される任意の改変は、ある場合において、HU19、HU28、HU33又はHU36株に対して行ってよい。本発明は、これらの株の改変されたバージョンを提供する。
【0061】
ワクチン
バチルスを改変して、抗原を発現させ、よって、ワクチンとして用いてよい。つまり、本発明は、バチルスと医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含むワクチンを提供する。特に好ましい場合において、ワクチンは、経口投与に適し、特に胞子の形である。ある好ましい場合において、抗原は、ワクチンの表面上で発現される。別の場合において、これは細胞内で発現されることがある。胞子の安定性は、ワクチンを保存するための温度制御が容易に可能でないか又は高価すぎる発展途上国におけるワクチンの製造のために、それらが特に有用であることを意味する。胞子の色は、ワクチンが子供達の興味を引くことを意味する。
【0062】
つまり、バチルスは、抗原、その免疫原性断片又はいずれかの免疫原性変異形をコードしてよい。抗原は、特に、ウイルス、細菌、寄生体若しくは真菌の病原体抗原又は腫瘍抗原であってよい。ある好ましい場合において、抗原は、ウイルス抗原、その免疫原性断片又はいずれかの免疫原性変異形であってよい。
【0063】
バチルスは、抗原をコードしてよく、よって、限定されないが、真菌、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、HIV、HSV2/HSV1、インフルエンザウイルス(A、B及びC型)、ポリオウイルス、RSVウイルス、ライノウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス群、エンテロウイルス、アストロウイルス、麻疹ウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、ポックスウイルス、マルブルグウイルス及びエボラを含むウイルス;結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、クラミジア(Chlamydia)、淋菌(N.gonorrhoeae)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、コレラ菌(Vibrio Cholera)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidua)、シュードモナス(Pseudomonas)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ブルセラ(Brucella)、野兎病菌(Franciscella tulorensis)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospria interrogaus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pnumophila)、ペスト菌(Yersinia pestis)、連鎖球菌(Streptococcus)(A及びB型)、肺炎球菌(Pneumococcus)、髄膜炎菌(Meningococcus)、ヘモフィラス・インフルエンザ(Hemophilus influenza)(b型)、トキソプラズマ原虫(Toxoplama gondii)、コンプリバクテリオシス(Complybacteriosis)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、鼠径リンパ肉芽腫症(Donovanosis)及びアクチノミセス症(Actinomycosis)を含む細菌;カンジダ症及びアスペルギルス症を含む病原性真菌;サナダムシ、吸虫類、回虫、アメーバ症、ラングル鞭毛虫症、クリプトスポリジウム、住血吸虫、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、トリコモナス症及び旋毛虫症を含む病原性寄生体のような病原体による癌、アレルギー、毒性及び感染を含むがこれらに限定されないいくつかの状態の治療又は予防のためのワクチンとして用いてよい。ある好ましい場合において、ワクチンは、炭疽菌(Bacillus anthracis)に対するものであってよく、特に、炭疽菌に対する防御抗原をコードしてよい。
【0064】
バチルスは、口蹄病、コロナウイルス、動物パスツレラ症病原菌(Pasteurella multocida)、ヘリコバクター(Helicobacter)、普通円虫(Strongylus vulgaris)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumonia)、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌(E.coli)、百日咳菌、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)及び気管支敗血症菌(Bordetella brochiseptica)のような多数の獣医学的疾患に対する適切な免疫応答を提供するために用いることもできる。
【0065】
バチルスは、癌を治療又は予防するためのポリペプチドをコードしてよい。特に好ましい実施形態において、本発明の構築物は、腫瘍抗原をコードしてよい。腫瘍関連抗原の例は、限定されないが、MAGEファミリー(MAGE1、2、3など)のメンバー、NY−ESO−1及びSSX−2のような精巣癌抗原、チロシナーゼ、gp100、PSA、Her−2及びCEAのような分化抗原、突然変異自己抗原並びに腫瘍発生HPV型からのE6及び/又はE7のようなウイルス性腫瘍抗原を含む。特定の腫瘍抗原のさらなる例は、MART−1、Melan−A、p97、ベータ−HCG、GaINAc、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−4、MAGE−12、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC18、CEA、DDC、P1A、EpCam、黒色腫抗原gp75、Hker 8、高分子量黒色腫抗原、K19、Tyrl、Tyr2、pMel 17遺伝子ファミリーのメンバー、c−Met、PSM(前立腺ムチン抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、前立腺分泌タンパク質、アルファ−フェトプロテイン、CA125、CA19.9、TAG−72、BRCA−1及びBRCA−2抗原を含む。抗原が由来し得る具体的な癌の例は、肺癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、精巣癌、腸癌、黒色腫、リンパ腫及び白血病からのものを含む。
【0066】
抗原は、自己免疫障害に関係する抗原であり得る。つまり、抗原は、自己抗原であってよい。
【0067】
刺激の検出
本発明のバチルスは、バチルスの胞子及び栄養細胞の形の色が異なってよいので、胞子形成又は発芽のときに色の変化を示してよい。このことは、このようなバチルスを、特定の刺激を検出するために用いてよいことを意味する。つまり、本発明のある好ましい場合において、用いられるバチルスは、このような色の変化を示す。
【0068】
発芽を用いて刺激を検出することは、検出可能な色の変化が数分で生じ得るので、典型的には非常に迅速である。さらに、胞子は、比較的安価で製造でき、非常に持続性があるので、長い貯蔵寿命を有する結果をもたらし、刺激の検出におけるそれらの使用のさらなる利点を示す。
【0069】
よって、ある場合において、本発明は、
(i)刺激が存在するときに誘発され、発芽して栄養細胞を生じるバチルスの胞子であって、胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子を提供すること、
(ii)刺激の存否を決定するのに望ましい試験条件下で該胞子を曝露すること、及び
(iii)胞子の発芽に起因する色の変化の存否を検出して、刺激の存否を決定すること
を含む、刺激を検出する方法を提供する。
【0070】
それらの栄養細胞及び胞子の形の間で色が変化する本明細書に記載される任意のバチルスを、このような方法に用いてよい。
【0071】
ある場合において、刺激自体が、胞子の発芽を誘発する発芽物質である。例えば、刺激は、光、湿気、pH(特に低pH)及び/又は温度変化(特に温度ショック)のような環境刺激であってよい。代わりに、刺激は、胞子の発芽を誘発する発芽物質の生成をもたらす。
【0072】
発芽物質の例は、アミノ酸、ヌクレオシド(例えばアデノシン又はイノシン)、糖(例えばグルコース)及び/又は種々の細菌、特に病原菌からの代謝物を含む。発芽物質として作用し得るアミノ酸の例は、L−アラニン、L−プロリン、L−ロイシン及び/又はL−バリンを含む。特に好ましい場合において、発芽物質はアミノ酸である。このような発芽物質は、発芽の誘発が望まれる本明細書に記載される種々の方法において用いてもよい。方法を行う条件は、刺激が存在するならば発芽を可能にするのに適するであろう。
【0073】
ある好ましい場合において、上記の方法は、刺激の存在下で修飾されて、胞子の発芽を誘発する発芽物質を生産する基質を含む。つまり、刺激は、胞子に影響を及ぼさない基質の、胞子の発芽を誘発する発芽物質への変換を引き起こし、よって刺激の検出を可能にする特定の作用物質の存在であってよい。例えば、刺激は、基質の開裂をもたらして、発芽物質を生産してよい。ある場合において、刺激は、発芽物質の発生を導く一連の事象を誘発してよい。
【0074】
ある好ましい場合において、刺激は、基質を修飾して発芽物質を生産し得る酵素、特に基質を開裂して発芽物質を生産し得るプロテアーゼ又はアミノペプチダーゼの存在であってよい。ある好ましい場合において、基質は、開裂されて発芽物質として作用し得るアミノ酸を増加させ得るジペプチドであってよい。ある場合において、ジペプチドは、本明細書に記載される任意のアミノ酸、特に、同じアミノ酸のジペプチドを含んでよい。特に好ましい場合において、ペプチドは、Ala−Alaであってよく、この開裂は、発芽物質として作用できるアラニンを生産する。
【0075】
ある好ましい場合において、刺激は、特定の生物、特に微生物、好ましくは病原菌の存在であってよい。生物は、例えば、基質を開裂でき、よって発芽を誘発できる酵素を放出してよい。細菌は、基質の修飾、よって胞子の発芽を導く上記の任意の酵素を放出してよい。微生物を検出する能力を用いて、試料が微生物を含むかを決定してよい。
【0076】
上記の方法は、無菌性及び/又は汚染の試験のために用いてよい。上記の方法を用いて、望ましくない作用物質を検出し、ある好ましい場合においては、戦争又はテロ行為において用いられ得る生物学的作用物質を検出してよい。このような方法を用いて、例えば血液、血漿、血清及び組織試料のような生物学的材料の中の微生物の存在を検出してよい。本発明は、組織バンク及び血液バンクでの汚染の試験のために用いてよい。上記の方法は、医薬及び薬剤のような包装された商品中の微生物汚染のための試験に用いてよい。ある好ましい場合において、本発明は、医薬製品及び組織培養のような液体試料中の汚染のための試験に用いてよい。組織培養中のマイコプラズマ汚染について試験してよい。
【0077】
本発明を用いて、血清、生理食塩水点滴剤、細胞培養培地、緩衝液、水及び一般的な液体の無菌性又は汚染を確認してもよい。上記の方法を用いて、薬剤又は食品の製造のような製造中の無菌性をモニタリングしてよい。
【0078】
上記の方法を用いて、滅菌された物質の汚染を検出してよい。上記の方法を用いて、病院、学校、政府及び軍の施設での生物を検出してよい。
【0079】
検出され得る微生物の例は、本明細書に記載される任意のもの、好ましくは炭疽菌及びセレウス菌のような病原性バチルス株、特に炭疽菌を含む。MRSAを検出し得る。検出され得る病原菌は、ETEC(毒素原性大腸菌)、コレラ菌、マイコプラズマ(Mycoplasmas)、緑膿菌(Pseudomonas aeuroginosa)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)、チフス菌(salmonella typhi)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、化膿性ブドウ球菌(Streptococcus pyogenes)及び髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、赤痢アメーバ(Entameoba histolytica)、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium paruum)、ランブル鞭毛虫(Giardie lamblia)、フィエステリア(pfiesteria)、トキソプラズマ原虫及びカンピロバクター(Campylobacter)を含む。
【0080】
ある好ましい場合において、発芽している胞子又はそれにより得られる栄養細胞は、それら自体で、存在する他の胞子の発芽を誘発する刺激を増加させ得るものであってよい。このことにより、本方法を非常に高感度にする初期の誘因の増幅を導き得る。よって、非常に少量の刺激が、検出可能な色の変化を誘発し得る。例えば、1000以下、好ましくは100以下、より好ましくは25以下、さらにより好ましくは10以下、さらにより好ましくは単一のような少数の微生物の存在が、検出可能な色の変化を誘発し得る。別の場合において、胞子の発芽は、他の発芽を誘発しないであろう。このことにより、本方法が、色の変化の強度の検出による定量的又は半定量的になることが可能であり得る。
【0081】
上記の方法における色の変化は、任意の適切な手段を用いて検出してよい。例えば、色の変化は、肉眼により、分光光度法を用いることにより、デジタルカメラ又は色の変化を検出するために使用できる任意の他の検出手段の使用により、検出してよい。色の変化の検出は、自動化してよい。ある場合において、上記の方法は、定性的、半定量的又は定量的であってよい。多くの実施形態において、刺激のレベルが高いと、より多くの胞子が発芽し、色の変化がより大きくなり、よって、上記の方法が定量的又は半定量的になり得る。特定の刺激の種々の量/レベルである標準物質を、対照として用いてよい。ある場合において、試験試料を胞子に加え、色の変化の存否を検出してよい。別の場合において、バイオセンサがin situで存在してよい。バイオセンサは、刺激に曝露されたときに、1時間、好ましくは30分間、さらにより好ましくは15分間で結果を与え得ることが好ましい。
【0082】
本発明は、バチルスを含み、発芽に起因する上記の色の変化に基づくバイオセンサも提供する。特に好ましい場合において、バイオセンサは、刺激により修飾されて上記の発芽物質を提供し得る基質も含む。さらに好ましい場合において、バイオセンサは、支持体上に備えられたバチルスを含む。本発明によるバイオセンサに用いられる支持体は、好ましくは、胞子を支持し得る不活性表面を提供し、胞子又は胞子から発芽するであろう栄養細胞の色とは異なる色を有してよい。支持体の色は、バチルスの胞子と対照的な色であることが好ましい。例えば、支持体は、珪素(例えばシリコンウエハ)、紙(例えばろ紙)、マイカ、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート又は脂質フィルム(例えばリン脂質二重層又は単層)を含んでよい。本発明によるバイオセンサは、所望により小型化されてよく、本発明によるバイオセンサを複数含むアレイ上に備えられてよい。ある場合において、バイオセンサは、陽性又は陰性の試験結果を与えるように設計された対照領域を含んでよい。
【0083】
ある場合において、バイオセンサは、複数の試料を分析するように適合されてよい。例えば、バイオセンサは、自動化読み取りを促進するフォーマットであってよく、マルチウェルフォーマットであってよい。ある場合において、刺激の存否について試験するために、試料をバイオセンサに加えなければならないだろう。別の場合において、バイオセンサは、そこに試料を加えなくても刺激を感知し得る。例えば、バイオセンサを、in situに放置してよく、任意の色の変化は、例えば病原菌の存在のような刺激の存在を示す。
【0084】
本発明は、刺激を検出するためのキットであって、
(i)誘発されて刺激が存在するときに発芽して栄養細胞を与えるバチルスの胞子であって、胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子と、
(ii)バチルスをどのように用いて刺激の存在を検出するかについての指示書と
を含むキットも提供する。
【0085】
本発明は、
(i)誘発されて刺激が存在するときに発芽して栄養細胞を与えるバチルスの胞子であって、胞子及び栄養細胞が、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子と、
(ii)刺激の存在下で修飾されて、少なくとも1つの胞子の発芽を誘発する発芽物質を増加させる基質と
を含むキットも提供する。
【0086】
本発明は、
(i)バチルスの胞子であって、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するのでバチルスの栄養細胞とは異なる色である胞子を、試験条件又は作用物質に曝露すること、及び
(ii)バチルスの胞子を発芽物質と接触させ、胞子が死滅されたか又は不活性化されたかを決定するために、胞子の発芽に起因する色の変化の存否を検出すること
を含む、胞子を死滅又は不活性化させる方法の評価に用いてもよい。
【0087】
このような方法は、特に、滅菌効率を決定し、特にオートクレーブの効率を評価するために用いてよい。このような方法は、炭疽菌の胞子又は生物兵器若しくはバイオテロリズムとして用い得る他の胞子形成病原菌を死滅させる方法の効率を決定するために用いてよい。
【0088】
本発明は、
(i)バチルスの胞子であって、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので栄養細胞とは異なる色である胞子を提供すること、
(ii)胞子を、胞子の発芽に適する条件下で試験物質と接触させること、及び
(iii)試験作用物質がバチルスの成長を妨げるかを決定するために、色又は色の強度の変化を検出すること
を含む、抗生物質を同定する方法も提供する。
【0089】
確かめる色の変化は、ある場合においてバチルスの発芽及びその後の成長、別の場合では栄養細胞の数の増加に起因する色の変化であってよい。このような色の変化の防止は、試験作用物質が抗生特性を有することを示し、これを次いでより詳細に調べることができる。適切な対照を、抗生活性を有することが知られている化合物及び/又はそのような活性が欠如していることが知られている化合物を用いて行ってよい。
【0090】
上記のアッセイにおいて試験され得る適切な試験物質は、コンビナトリアルライブラリー、定義された化学物質及び化合物、ペプチド及びペプチド模倣物質並びに天然生成物ライブラリーを含む。典型的には、有機分子、好ましくは50〜2500ダルトンの分子量を有する小有機分子をスクリーニングする。候補生成物は、糖類、脂質、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体を含む生体分子又はそれらの組合せであり得る。候補作用物質は、合成又は天然の化合物のライブラリーを含む非常に多様な供給源から得られる。既知の薬物は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの支配された又は無作為の化学修飾に供して、構造類似体を生成し得る。試験物質は、例えば反応当たり10の物質の初期スクリーニングに用いて、活性を示すこれらのバッチの物質を個別に試験してよい。
【0091】
カロテノイド、カロテノイド前駆体及び所望の誘導体の製造
本明細書に記載するバチルスは、所望の化合物の製造に用いてよい。特に好ましい場合において、バチルスは、カロテノイド並びにカロテノイド前駆体及びカロテノイドの誘導体を製造するために用いてよい。本発明による具体的な細菌の利点は、少なくとも1種のカロテノイドの示差的存在のために異なる色を有するカロテノイドの天然の供給源としてそれらを用いてよいことを含む。異なるクラスのカロテノイドが、細菌の発達の異なる段階で製造される。これらの化合物の異なる物理的及び化学的特性が、異なる色を与える。
【0092】
よって、本発明は、本明細書に記載されるバチルスを栄養成長させ、及び/又はバチルスの胞子を生成させることを含む、カロテノイド、カロテノイド前駆体又はカロテノイドの誘導体を製造する方法を提供する。上記の方法は、典型的には、バチルスから所望の化合物を回収することを含む。ある場合において、胞子又は栄養細胞を破壊して、所望の化合物を含む抽出物を得る。所望の化合物は、胞子及び/又は栄養細胞の他の成分からさらに単離され得る。
【0093】
カロテノイドは、バチルスから単離してよい。カロテノイドは、本明細書に記載する任意の態様においてバチルスの代わりに用いてよい。種々の方法を用いて、バチルスからカロテノイドを得てよい。カロテノイドを、培養物から単離して精製してよい。特に、カロテノイドは、有機溶媒を用いて抽出できる。バチルスを、まず、遠心分離又はろ過のような通常の方法により培養物から分離し、次いで、カロテノイドを抽出してよい。抽出溶媒としては、所望の化合物が溶解可能な任意の物質を用い得る。例えば、ジクロロメタン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、ヘキサン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、二硫化炭素、ジエチルエーテル、アセトンのような有機溶媒を用いてよい。特に好ましい溶媒の例は、クロロホルム、アセトン、ヘキサン及びジエチルエーテルを含む。精製は、吸収、溶出、溶解などの従来のクロマトグラフィー手順の単独又は好ましくは組合せにより行うことができる。
【0094】
よって、ある場合において、本発明は、カロテノイド、カロテノイド前駆体又はカロテノイド誘導体を製造する方法であって、
− 本発明のバチルスを提供すること;
− バチルスの成長及び/又は胞子形成、よってカロテノイドの製造を引き起こすか又は可能にすること;及び
− バチルスからカロテノイドを抽出すること
を含む方法を提供する。
【0095】
ある場合において、上記の方法は、バチルスの栄養細胞の形の胞子形成を誘導し、胞子からカロテノイドを抽出することを含んでよい。別の場合において、カロテノイド又はその他の化合物は、バチルスの栄養細胞から抽出される。
【0096】
本発明による細菌により製造されるカロテノイドは、栄養細胞内のケト/ヒドロキシル−カロテン誘導体(例えばヒドロキシル−スフェロイデン、1−HO−デメチルスフェロイデン、3,4−ジヒドロスフェロイデン及び/又は15−シスフィトエン)が好ましい。本発明による細菌は、ケト及びヒドロキシル部分を有する環状カロテノイドを製造するので、これは、アスタキサンチン、4−ケトゼアキサンチン、エキネノン、ヒドロキシル−エキネノン誘導体、フェニコアキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、β−カロテン、γ−カロテン及び/又は単環式カロテノイドのケト/ヒドロキシ誘導体を製造する能力を有し、バチルスは、このような目的のために用いてよい。さらに、脂肪酸エステル及び/又はグルコシド誘導体も製造してよい。
【0097】
本発明のある特定の利点は、バチルス及びそれらから抽出されるカロテノイドはともに、耐酸性、特に胃酸耐性であり得ることである。このことは、バチルス又はカロテノイドを受容した生物が、吸収又は摂取されたカロテノイドの量の点で、それらからより大きい利益を導き得るという利点を有する。ある場合において、バチルス又はカロテノイドは、擬似胃条件でカロテノイドの分解に対する耐性を示し得る。例えば、擬似胃液(SGF)を用いてよい。SGFの例は、37℃にて1時間のインキュベーションでの0.9% NaCL(pH2)に溶解された1mglmlペプシンである。SGF及びアッセイは、本明細書に記載される任意の生物での条件を模倣するように調節してよい。ある場合において、1時間のインキュベーションの後に、カロテノイドの少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%が残存し得る。本明細書に記載される任意のアッセイを用いて、カロテノイドのレベルを測定してよい。
【0098】
本発明のバチルスは、特定の所望のカロテノイド及び/又はその他の所望の代謝物を製造するように改変したものであってよい。カロテノイド、タキサン及びアルテミシニンは、貴重な精製化学薬品の例である。これらの化合物は全てイソプレノイドであり、よって、C5前駆体イソペンテニル二リン酸(IPP)により生合成的に関連する。ユビキノンのようなイソプレノイドは、微生物の成長に必須であり、よって、生物は、イソプレノイド生合成経路を有する必要がある。しかし、この経路により形成されるイソプレノイドのクラスは、広範な代謝生物多様性を示す。例えば、ほとんどの細菌は、C20プレニル前駆体ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)を作製する能力を有さない。このイソプレノイドは、カロテノイド及び抗癌化合物タキサンの前駆体である。ファルネシル二リン酸(C15;FPP)は、抗マラリア薬アルテミシニンの前駆体である。つまり、本発明によるバチルスは、カロテノイド及びタキサンの両方の形成のためのイソプレノイド前駆体の重要な役に立ち得る供給源である。
【0099】
本明細書に記載されるバチルスは、このような化合物、特にイソプレノイドの製造に用いてよい。これらは、このような化合物を天然に発現し、このような化合物を製造するように遺伝子改変され、及び/又はこのような化合物を過剰発現するように改変されてよい。バチルスは、GGPP及び/又はファルネシル二リン酸を製造するために用いてよく、これらは次いでバチルスから回収され得る。回収された化合物は、次いで、タキサン又はアルテミシニンを合成するために用いてよい。或いは、バチルスは、このような化合物を直接合成可能であってよく、これは次いで回収できる。
【0100】
活性内因性GGPP形成経路の存在は、他の生物については必要であると以前に見出されている前駆体経路をバチルス内に工学的に作製する必要性を緩和する。さらに、本発明のバチルス内での高度に活性なステロール経路の不在は、これらの必須の膜成分への炭素の転換を防げる。例えば、酵母でのカロテノイド製造を最適化するために、スクアレンシンターゼを下方制御して、FPPをステロール経路からGGPPに、次いでカロテノイドに転換する必要であることが見出されている。さらに、バチルスは、IPPを、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸(DXP)経路により、例えばピルビン酸及びグリセルアルデヒド−3−リン酸から形成する。
【0101】
バチルスは、1又は複数種の上記の生成物を発現するので、生成物の代謝多様性は、かなり広がる。これらの生成物に加えて、これらのエステル化及びグルコシド誘導体も発現され得る。例えば、バチルスは、図4及び5に示す任意の化合物の製造のために用いてよい。
【0102】
ある好ましい場合において、メバロン酸経路の遺伝子を、バチルスに導入してよい。例えば、1つ又は複数の、好ましい場合においては全てのatoB、HMGS、tHMGR、ERG12、ERG8、MVD1、idi及びispA遺伝子又はそれらの機能的等価物を、バチルスに導入してよい。特に好ましい場合において、特にMVA遺伝子に加えて、アモルファ−4,11,ジエンシンターゼ(ADS)遺伝子を導入して、抗マラリア薬アルテミシニンの重要な前駆体アモルファ−4,11,ジエンの合成を可能にしてよい。つまり、アモルファ−4,11,ジエンを、本発明のバチルスを用いて合成してよい。好ましい態様において、Martin et al(2003)に記載されるMVA経路を工学的に改変して導入する経路を用いてよい。
【0103】
好ましい場合において、
− atoB遺伝子を導入して、アセチル−CoA(AA−CoA)の合成を可能にしてよい;
− HMGS遺伝子も導入して、ヒドロキシメチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)の合成を可能にしてよい;
− tHMGR遺伝子も導入して、メバロン酸の製造を可能にしてよい;
− ERG12遺伝子を導入して、メバロン酸5−リン酸(Mev−P)の合成を可能にしてよい;
− ERG8遺伝子を導入して、メバロン酸ピロリン酸(Mev−PP)の合成を可能にしてよい;
− MVD1遺伝子を導入して、ピロリン酸イソペンチル(IPP)の合成を可能にしてよい;
− idi遺伝子を導入して、ピロリン酸ジメチルアリル(DMAPP)の合成を可能にしてよい;
− ispA遺伝子を導入して、OPPの合成を可能にしてよい;そして
− アモルファ−4,11,ジエンシンターゼ(ADS)遺伝子を導入して、アモルファ−4,11,ジエンの合成を可能にしてよい。
【0104】
上記の化合物の1つを製造するために必要な遺伝子が導入されたバチルスが提供される。つまり、経路の一部分を導入することのみによって、経路の中間体が製造され得る。本明細書に記載される任意のバチルス、特に配列番号1〜6のいずれかと少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有するものをそのように改変できる。ある場合において、HU19、28、33及び36のいずれの株は、それらに導入されたそのような改変を有してよい。
【0105】
導入されたメバロン酸経路は、単純な前駆体から放射性標識又は安定同位体標識されたカロテノイドを作製する機会も促進し、本発明は、本明細書に記載されるバチルスを用いて、放射性標識及び安定同位体標識されたカロテノイドの製造を提供する。用い得る前駆体の例は、培地に加えられたメバロン酸及び/又は酢酸を含む。このような化合物は現在、市販されていないので、それらに対する必要性がある。本発明は、このような化合物を含むバチルス及びバチルスから得られる化合物を提供する。
【0106】
本発明は、バチルスからの抽出物も提供する。特に、カロテノイドを含む抽出物、及び所望により、本明細書に記載される任意の他の化合物を含む抽出物が提供される。抽出物は、細胞全体又は胞子抽出物であってよいか、又は所望の化合物の相対量を増大させるためにさらに精製されてよい。ある場合において、特定の細胞又は胞子中に存在する全てのカロテノイドの抽出物が提供される。別の場合において、抽出物は、バチルスからのある特定のカロテノイドを含む。ある場合において、胃酸耐性カロテノイド抽出物が提供される。
【0107】
食品、食品添加物及びその他の組成物
記載されるバチルスは、カロテノイドを含み、よって、栄養価を有し、そして、経口摂取されて、特に次に食品として用いられる動物の組織に色を与えることもできる。つまり、本明細書に記載されるバチルス、及びそれらから得られる物質は、特に食品及び栄養補助食品において、経口摂取作用物質として用いてよい。好ましい場合において、バチルスの胞子は、経口摂取される。別の場合において、そのままのバチルスよりもむしろ、バチルスから得られる物質が経口摂取され、特にカロテノイドがそのように摂取される。つまり、バチルスからの抽出物が摂取されてよく、単離カロテノイド又はカロテノイド濃縮画分が摂取されてよい。バチルスのこのような使用は、例えば飼育生物のような生物からの生産量の増加をもたらし得る。
【0108】
本発明は、よって、本明細書に記載される任意のバチルス又はこのような株からの抽出物を含む食品材料又は栄養補助食品を提供する。食品材料又は補助食品は、ヒトの摂取用であってよい。別の場合において、これらは非ヒト用、例えば商業的に養殖/飼育される生物用の食品中に又はそのような食品としてあってよい。ある場合において、本明細書に記載される任意のバチルス又はそれらからの抽出物は、食品着色料として用いてよく、よって、本発明は、本明細書に記載されるバチルス又はこのようなバチルスからの抽出物を含む食品着色料を提供する。
【0109】
食品は、典型的には、1又は複数種の多量養素タンパク質、炭水化物及び脂質から主になる食用可能な物質であり、生物の体に用いられて成長を維持し、損傷を修復し、生命維持活動を助け、又はエネルギーを供給する。食品は、ビタミン若しくはミネラルのような1又は複数種の微量栄養素又は香料及び着色料のような付加的な食品成分も含んでよい。本明細書において用いる場合、食品の用語は、飲料も含む。バチルスが含まれ得る食品の例は、スナックバー、シリアル、焙焼品、ディップ及びスプレッド、菓子類、ヨーグルトを含むプロバイオティック配合物、並びに冷凍菓子を含む。好ましい食品は、ヨーグルト、チーズ及びその他の乳製品を含む。菓子及びキャンデー、特にソフトゼリータイプの菓子は、カロテノイドを含んでよい。飲料の例は、清涼飲料、スカッシュ(例えばオレンジ及びレモン)、乾燥飲料ミックス、栄養飲料及び茶を含む。飲料は、アルコール飲料であってよく、例えば、バチルス又はそれらから得られる抽出物を炭酸入りアルコールに用いて色を加えてよい。ある場合において、食品は、水生動物又はその肉を含むものであってよく、別の場合において、食品は、水生動物も該動物からの肉も他の物質も含まないものであってよい。ある場合において、これは、発酵食品であってよい。別の場合において、これは、非発酵食品であってよい。ある場合において、食品は、チョッカル(Jeotgal)でない。
【0110】
本発明のある好ましい実施形態において、バチルス又はそれらから得られる物質は、非ヒト動物、特にそれから食品又は他の物質が回収される動物に供給してよく、特に、食品に用いられる動物に供給される。つまり、このような動物のための食品、栄養補助食品及び食品添加物は、本明細書に記載されるバチルス、このようなバチルスからの抽出物を含んでよいか、又はこのような抽出物若しくはバチルスをある時点で供給されてよい。
【0111】
ある好ましい場合において、動物は、水生動物であってよい。魚類及び他の水生動物の例は、例えば、サメ、エイ、チョウザメ、ウナギ、カタクチイワシ、ニシン、コイ、キュウリウオ、サケ、マス、メルルーサ、タラ、ロックフィッシュ、バス、ドラム、サバ、マグロ、バターフィッシュ、ナマズ、カレイ及びタイを含む。ある好ましい場合において、魚類は、サケ又はマスであってよく、特にサケであってよい。ある好ましい場合において、魚類は、サケ科(Salmonidae)のメンバーである。動物は、例えばイガイ、クラム、カキ、イタヤガイ、マキガイ、ホラガイ、アワビ、イカ及びコウイカのような二枚貝、腹足類動物、頭足動物及びヒザラガイを含む軟体動物であってよい。これらは、甲殻類に供給してよい。甲殻類の例は、シバエビ、テナガエビ、ロブスター、レッドクロウ、ザリガニ、カニ、ウチワエビモドキ及びマロンを含む。好ましい甲殻類の例は、シバエビ、特にウシエビ(Penaeus monodon)(ブラックタイガーエビ)及び他のペナエウスの種を含む。ある場合において、動物は、非水生生物であってよく、特に家禽、ウシ、ブタ及びヒツジ、特にこのような飼育動物に供給してよい。ニワトリ及び七面鳥に、特にバチルス又はそれらから得られる物質を供給してよい。このような生物から製造される加工食品も提供される。
【0112】
ある好ましい場合において、食品又は栄養補助食品は、飼育動物、特に商業的に飼育される水生動物に供給してよい。例えば、このような補助食品は、飼育されるマス、サケ又は貝類、好ましい場合において、飼育されるシバエビ又はテナガエビ、特に本明細書に記載される任意のタイプのものを含む飼育されるシバエビに供給してよい。動物は、非水生飼育動物であってよい。
【0113】
バチルス及びそれらからの抽出物は、着色料の存在のために典型的には着色される。これらは、よって、食品色素として用いてよい。これらは、動物の1つ又は複数の組織が本明細書に記載される任意のものを含む特定の色になるように動物に供給してもよい。好ましくは、胞子又はそれらから得られる抽出物をこのような目的で供給してよい。好ましい場合において、バチルス及び抽出物は、バチルス又は抽出物を動物に供給することを含む、非ヒト動物の1つ又は複数の組織に色を与える方法を提供する。特に、このような技術は、飼育魚並びにシバエビ及びテナガエビにも色を与えるために用いてよい。ある場合において、バチルスは、色の目的のためでなく、単純に生産量を増大させるために与えられるか、又はその両方のために与えられる。
【0114】
バチルスの胞子が経口摂取される場合において、それらは発芽できないように処理されていてよい。このことは、胞子が不活性であり、よって好ましくは色が安定するように行われることを意味し得る。ある場合において、熱処理、特にオートクレーブ処理を用いて、胞子の発芽を防止してよい。別の場合において、胞子は発芽可能であってよい。ある場合において、バチルスを生物に供給する目的は、代わりに又は付加的に、生産量を増大させるためであってよい。つまり、例えば平均重量及び/又は重量増加が、バチルス又は抽出物を供給した生物で、供給していない対照に比較してより大きくなり得る。
【0115】
本発明は、本明細書に記載されるバチルスを含むプロバイオティックも提供する。プロバイオティックは、典型的には、腸内細菌叢を増大させ得る生菌補助物質である。ある場合において、プロバイオティックは、例えば、病気又は抗生物質治療の後に与えて、動物の正常なミクロフローラを維持することを補助してよい。このようなプロバイオティックは、本明細書に記載される任意の動物、特にヒト、そして飼育動物及び家畜並びに水生動物にも与えてよい。好ましい場合において、バチルスは、このようなプロバイオティックのために、胞子の形で用いられる。プロバイオティックは、1又は複数種の賦形剤をさらに含んでよい。許容される賦形剤は、動物、特にヒトに摂取されるに適する賦形剤である。プロバイオティックは、種々の香料を有してよく、経口摂取のために適する形であってもよい。
【0116】
本発明のバチルス及びそれらからの抽出物、特にそれらから得られるカロテノイドは、医薬組成物の製造において用いてよい。つまり、本発明は、本発明のバチルス又はそのようなバチルスからのカロテノイド抽出物と、薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物を提供する。カロテノイドは、抗酸化剤として作用でき、よって、該組成物は、多様な症状を治療又は予防するために用いてよい。
【0117】
バチルス及びバチルスからの抽出物は、医薬品の製造に用いて、癌、心臓疾患、アテローム性硬化症、白内障、眼の黄斑変性、卒中、痴呆、アルツハイマー病、骨粗鬆症、慢性疲労症候群及び男性不妊症を治療又は予防してよい。これらは、皮膚のしわ及び加齢のその他の特徴を治療するための医薬品の製造に用いてよい。これらは、糖尿病の危険性を低減し、その発症を遅延させ、又はそれを治療するために用いてよい。ある場合において、これらを用いて、化学療法の効果を増大させてよい。
【0118】
ある好ましい場合において、本発明を通じて提供される抗酸化剤は、特に、心臓疾患を予防し、その危険性を低減し、又はその発症を遅延させるために用い得るベータカロテンである。別の好ましい場合において、本発明は、ベータカロテン、ビタミンE及び/又はビタミンCを提供するために、特にLDL(低密度リポタンパク質)の酸化されやすさを低減するために用いてよい。本発明の組成物は、よって、卒中及び心筋梗塞を予防し、その危険性を低減し、又はその発症を遅延させるために用いてよい。特に好ましい実施形態において、バチルス及びそれらから得られる抽出物は、癌、心臓疾患及び白内障の予防又は治療に用いてよい。本発明を適用してよい癌のタイプの例は、肺癌、乳癌、前立腺癌及び結腸直腸癌、特に肺癌及び前立腺癌を含む。
【0119】
本発明は、本発明のバチルス又はこのようなバチルスからの抽出物の、本明細書に記載される任意の状態を改善するための医薬品、食品、栄養補助食品、プロバイオティック、栄養補給食品又は健康補助食品の製造における使用も提供する。
【0120】
ある好ましい実施形態において、バチルス及びそれらから抽出されるカロテノイドは胃耐性であり得るので、同じ効果を与えるために通常よりも低い用量、例えば半分以下、又は四分の一以下で用いてよい。
【0121】
本発明は、さらに、食用可能な担体と、本発明のバチルス又はそのようなバチルスからの抽出物とを、組成物を摂取する対象、特にヒト対象での本明細書に記載される任意の状態を改善又は緩和するための有効量で含む食用可能な組成物を提供する。組成物は、好ましくは、食品、栄養補助食品、健康補助食品、プロバイオティック、栄養補給食品又は食品添加物である。
【0122】
栄養補給食品は、疾患の予防及び治療を含む医薬的又は健康上の利益を与えると考えられる食品材料、栄養補助食品又は食品である。通常、栄養補給食品は、消費者に特定の健康上の利益を与えるように特に適合される。機能食品は、消費者に、純粋な栄養素を供給するものを超えて健康上の利益を与えるとして典型的に販売される食品である。機能食品は、典型的には、栄養上の効果の他に特定の医薬的又は生理的な利益を与える成分を含む。機能食品は、典型的には、健康に関する主張が包装に記載されている。
【0123】
バチルス又はそれらからの抽出物は、着色料又は色素として用いてもよい。ある場合において、これらは化粧品に用いてよい。つまり、本発明は、バチルス又はそれらからの抽出物を含む化粧品を提供する。化粧品の例は、口紅、マスカラ、アイライナー、ファンデーション及び日焼け組成物を含む。バチルス又はそれらからの抽出物は、日光に対する防御を助けるために用いてもよい。よって、本発明は、それらを含む日焼け用ローション又は日焼け止め、及び日焼けを予防、低減又は緩和するための経口摂取用の組成物を提供する。バチルスからの抽出物は、繊維及び他の材料用の色素及び食品色素として用いてよい。
【0124】
製剤
本発明の種々の組成物は、種々の形であってよい。該組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤又は粉剤の形であってよい。組成物が粉剤の形である場合、これは、好ましくは、サシェ又は瓶のような気密容器で提供されてよい。
【0125】
本発明の種々の組成物に存在してよい賦形剤の例は、希釈剤(例えばデンプン又はセルロース誘導体、スクロース、ラクトース又はデキストロースのような糖誘導体)、安定化剤(例えばシリカ又は麦芽デキストリンのような吸湿性成分)、結合剤、緩衝剤(例えばリン酸緩衝剤)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)、被覆剤、防腐剤、乳化剤、色素、香料、及び/又は懸濁化剤を含む。適切な賦形剤は、当業者に公知である。
【0126】
本発明の種々の生成物は、溶媒、分散媒、被覆、等張又は吸収遅延剤、甘味料などであってよい担体又は賦形剤を含んでよい。これらは、任意の全ての溶媒、分散媒、被覆、等張及び吸収遅延剤、甘味料などを含む。適切な担体は、限定されないが、希釈剤、結合剤及び接着剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、充填剤、香料、甘味料、並びに特定の剤形を調製するために必要になり得る緩衝剤及び吸着剤のような多岐にわたる物質を含む広範な物質から調製してよい。
【0127】
例えば、固体の経口の形は、活性成分とともに、ラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、トウモロコシデンプン又はバレイショデンプンのような希釈剤;シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム若しくはカルシウム、及び/又はポリエチレングリコールのような滑沢剤;デンプン、アラビアガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドンのような結合剤;デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩又はデンプングリコール酸ナトリウムのような崩壊剤;沸騰剤;色素、甘味料;レシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩のような湿潤剤を含んでよい。このような製剤は、例えば混合、造粒、打錠、糖被覆、又はフィルム被覆の工程による既知の手法で製造してよい。
【0128】
経口投与用の液体分散剤は、シロップ剤、エマルジョン及び懸濁剤であってよい。シロップ剤は、担体として、例えば、サッカロース、或いはサッカロースとグリセロール及び/又はマンニトール及び/又はソルビトールを含有してよい。特に、糖尿病患者用のシロップ剤は、担体として、グルコースに代謝されないか又は少量しかグルコースに代謝されない例えばソルビトールのような物質のみを含有し得る。懸濁剤及びエマルジョンは、担体として、例えば天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコールを含有してよい。カロテノイドは脂溶性であるので、そのことを考慮して適切な製剤を用いる。
【0129】
製剤の適切なタイプは、その開示の全体が参照により本明細書に含まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Eastern Pennsylvania,17th Ed.1985に十分に記載されている。
【0130】
ある場合において、本発明の組成物は、本発明によるバチルスの約104〜約1014コロニー形成単位(CFU)の1日当たりの摂取を達成するように投与される。ある場合において、上記の組成物は、バチルスの約106〜1012CFUの1日当たりの摂取を達成するように投与される。
【0131】
本発明を、ここで、請求される本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0132】
(実施例1)
栄養細胞成長はLB寒天上、胞子形成はDSM(Difco培地)寒天上で行った(Nicholson and Setlow,1990)。栄養細胞なしの胞子を大量に調製するため、別報(Nicholson and Setlow,1990)が概観する飢餓法を用いてDSM液体培地中で胞子形成を行った。この方法では、胞子形成を37℃で24時間進行させた後で、ライソザイム処理により汚染栄養細胞を除去した。栄養細胞は、培養液のOD600nmが約2.0に達するまで、LB培地(37℃)中の細菌成長により調製した。
【0133】
排便直後のヒト糞便(着色を保持)中に存在する耐熱胞子を単離した。平均すると、糞便中に見られる胞子数は、104cfu/gの範囲内にあった。この方法を用いると、胞子形成寒天プレート上で、6つの黄〜橙色の有色素コロニーを容易に識別することができた。これらの単離株を、バチルスA〜バチルスFと表示した。基本特性を表1に示す。
【0134】
(Suresh et al.,2004)が述べる手順で、ヒ酸塩及び亜ヒ酸塩への耐性を測定した。NaClを含有するLB寒天上で、NaCl耐性を形成させた。DSM寒天上における成長及び胞子形成により胞子形成効率を測定(37℃で3日間)した後で、非耐熱cfu/mlとの対比で耐熱(65℃で1時間)cfu/mlを測定した。無色素の胞子形成株である、枯草菌(Bacillus subtilis)株PY79(Youngman et al.,1984)を対照として用いた。密栓容器及びOxoid Gas Pakシステムを用いて、嫌気性成長を測定した。
【0135】
表1
【表1】
【0136】
表1の凡例:
aバチルス種
1.バチルスA、バチルスB、バチルスC
2.バチルスD
3.バチルスE、バチルスF
4.バチルス・インディカス(Bacillus indicus)sp.nov.Sd/3T(Suresh et al.,2004)
【0137】
凡例:ND、データなし;W、不十分;Cr、クリーム;O、橙色;W、白色;Y、黄色;C、中央;S、末端付近;T、末端
b37℃3日後のDSM寒天プレート上における胞子形成の測定
【0138】
6つの有色素コロニー全てが、膨潤胞子嚢内に球形の胞子を産生した。非運動性であること、デンプンを加水分解できること(アミラーゼ陽性)、及び嫌気性成長できないことにより、これら単離株をさらに識別した。少なくとも1種類ある黄色の有色素バチルス種であるバチルス・インディカスの菌株は、ヒ素耐性である(Suresh et al.,2004)ため、ヒ酸塩及び亜ヒ酸塩のいずれに対する耐性についても単離株を調べた。6種類の単離株全てが、最高20mMのヒ酸塩に耐性があるが、亜ヒ酸塩には耐性がないことがわかった。6種類の単離株全てが、最高8%のNaCl中で成長することができた。DSM培地中における胞子形成用の飢餓法を用いたところ、バチルスD、バチルスE、及びバチルスFの3種類の単離株は、胞子形成が不十分であった。
【0139】
(実施例2)
単離した胞子形成株の着色を調べた。有色素コロニーの産生能に基づいて、コロニーを単離した。菌株HU13、HU28、HU33、及び対照株PY79を比較した。37℃オーバーナイトのインキュベーション後、LB寒天上で成長させたところ、HU菌株コロニーは当初黄色であった。インキュベーションを続けると、HU株コロニーは、徐々に橙色の色調を帯びた。対照株は、バチルスコロニー通例のクリーム〜グレーの外観を示した。
【0140】
これに対し、DSM寒天プレート上の胞子形成は、橙色のコロニーを産生した。橙色が胞子形成にとって特異的なものであるかどうかを判定するため、本発明者らは、胞子培養液をDSM培地中の栄養枯渇状態により成長させ、確立済みのライソザイム投与プロトコールを用いて栄養細胞が残存しないことを確認した後、十分に洗浄した。同様に、LB培地でのインキュベーションを用いて、培養液のOD600nmが2.0に達するまで栄養細胞の培養液を作製した。このようにして調製した培養液は、無胞子になると思われる。いずれの場合ともに、胞子及び栄養細胞を凍結乾燥させ、HU株において栄養細胞が黄色で胞子が橙色となる乾燥後に、色素差を明瞭に識別した。
【0141】
(実施例3)
実施例1で単離した菌株の系統発生分析を実施した。菌株を細菌種に割り当てるため、本発明者らは、既報(Hoa et al.,2000)で述べた方法により、各種コロニーから採取した細胞の全16S rRNA遺伝子(rrnE)配列を決定した。各単離株の16S rRNA遺伝子配列ID番号を表2に示す:
表2
【表2】
【0142】
次いで、1,400bpアンプリコンの配列を決定し、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて解析し、最もよく一致する配列を見出した。次いで、ClustalWプログラム(http://align.genome.jp/)により配列を整列し、相同百分率を記録した。
【0143】
近隣結合系統樹を図1に示す。全ての系統が、バチルス・カテヌラトゥス(Bacillus catenulatus)、バチルス・インディカス、バチルス・ジェオトガーリ(B.jeogtgali)、及びバチルスチビー(B.cibi)と密接に関連した。
【0144】
(実施例4)
実施例1で単離した菌株から、カロテノイドを抽出した。対照として、PY79株を用いた。PY79株は、168株に由来するとされる枯草菌実験室株の1つである。168株は、野生型の非変異株である標準株又は参照株の1つである(Youngman et al.,1984)。
【0145】
細菌バイオマスを完全な乾燥状態まで凍結乾燥させた(3日間)。凍結乾燥物は、乳鉢及び乳棒を用いて一様な粉末にすり潰した。典型的な手順で、クロロホルムを用い、すり潰した材料30mgからカロテノイド及びその他のイソプレノイドを抽出した。略述すれば、乾燥粉末にメタノール(250μl)を添加し混合した後、500μlのクロロホルム(Anlar;500μl)を添加した。懸濁液を氷上で20分間インキュベートした。懸濁液に水(250μl)を添加し、ボルテックスミキサーにかけた。分画を形成するため、懸濁液を12,000×gで3分間遠心分離した。有機物を含む下層を除去し、含水の上層を二度再抽出した。有機物を含む抽出物をプールし、窒素ガス流下で完全な乾燥状態まで減量した。この段階で、乾燥させた抽出物を窒素下−20℃で保管することができる。
【0146】
(実施例5)
実施例4で抽出したカロテノイドを分析した。次いで、(Fraser et al.,2000)が述べる手順に従い、オンラインPDA検出法によるWaters Alliance 2600S HPLCを用いて、カロテノイド成分を分離及び分析した。酢酸エチル(HiperSolv)50μl中に乾燥させた抽出物を再溶解した後、12,000×gで3分間遠心分離し、粒状物質があれば除去した。25℃の一定温度で作動する20×4.6mm C30ガードカラム(米国ノースカロライナ州、ウィルミントン、YMC社製)に、RP C30 5mカラム(250×4.6mm)を連結して用い、イソプレノイドの分離を実施した。95%(A)メタノール、0.2%(w/v)酢酸アンモニウムを含む5%(B)〜20%含水メタノールによる12分間のグラジエント法を第一段階とし、12分後の80%(A)、5%(B)、及び15%(C)tert−ブチルメチルエーテルから30分後までに30%(A)、5%(B)、及び65%(C)へと至る直線グラジエント法により、カラムからカロテノイドを溶出させた。カラムを初期条件に戻し、30分間かけて平衡化した。流速を1mL/分とし、200〜600nmのダイオードアレイ検出器により、溶出物を継続的にモニタリングした。同時クロマトグラフィーに基づき同定を行い、スペクトル比較は認証標準物質により行った。認証標準物質が得られない場合は、参照スペクトル特性との相関を実行し、クロマトグラフィー挙動から相対的極性を推定した。定量のために、β−カロテン(標準的な有色カロテノイド)の用量反応曲線を作成した。ユビキノンも同時クロマトグラフィーにより同定し、スペクトル比較は認証標準物質により行い、定量のために用量反応曲線を作成した。英国、プールのVWR社から全ての溶媒を購入した。
【0147】
結果
6種類の黄色〜橙色の有色単離株全てをLB培地で成長させてスクリーニングし、有色カロテノイド色素の存在を明らかにした。クロロホルムを添加すると、凍結乾燥細胞が脱色されたが、メタノールの添加では脱色されなかった。したがって、該色素は、カロテノイドの物理的特性に近い疎水性であった。無極性HPLC分離法を用いることで極性及び非極性カロテノイドいずれの分離及び同定をも容易にする、プレ分画なしのHPLC−PDA法により、生の有機抽出物をスクリーニングした。250〜600nmで記録した全単離株のプロファイルは、同様であることが判明した(データは示さない)。450nmにおける主要ピークは、カロテノイドに特徴的なシグニチャースペクトルを示した。
【0148】
表3:黄色〜橙色の有色素単離株の予備スクリーニング
【表3】
aODMS、ヒドロキシ−デメチルスフェロイデン
【0149】
高レベルの色素を含むこれらの単離株(例えば、C及びF;表3)には、さらに詳細な分析を加えた。こうして、上述した栄養細胞又は胞子いずれかの純粋培養液を、無色素の対照バチルス種として用いる枯草菌株PY79とともに調製した。
【0150】
図2は、単離株F(胞子及び栄養細胞、それぞれ図2B及び2C)に見られるカロテノイドのHPLCプロファイルを、対照PY79(図3A)と比較して示す。450nmにおける有色カロテノイドの存在を記録する(図2A〜C)一方、無色カロテノイド及びユビキノンを図2D〜Fに示す。以上のプロファイルは、分析対象となる全ての単離株に特徴的である。PY79株の栄養細胞又は胞子においては、有色又は色素カロテノイドの存在を示すクロマトグラフィー成分が観察されなかった。これに対し、胞子から調製した抽出物は、特徴的な有色カロテノイドを示す、少なくとも11種類のクロマトグラフィー成分の存在を表示した(図2B)。栄養細胞から調製した抽出物は、3種類の主要な有色カロテノイドを含有した(図2C)。栄養細胞中の主要カロテノイドは、スペクトルの最大値を453.6nmに有し、スペクトルの持続性は、カロテノイドが非環状の性質であることを示した。(Badenhop et al.,2003)が述べる認証標準物質を用いて、HPLCピーク8〜11を1−HOデメチルスフェロイデン(ODMS)と同定した(表4)。同一のスペクトル及び同等の保持時間を有する複数のクロマトグラフィーピークの分離は、異なる幾何異性体によると考えられる。カロテノイド異性体の分離は、C30分離固定相に周知の特徴である。参照スペクトルとの比較に適切な認証標準物質は容易には入手できなかった(Britton et al.,2003)ものの、相対値による保持時間は、HPLCピーク12が3,4−ジヒドロスフェロイデン(DHS)であることを示唆する(表4)。検出した異性体から、該カロテノイドは、主にall−trans型立体配置及びS,S’ステレオ異性体型立体配置であると考えられる。
【0151】
表4
認証標準物質及び参照データによる同時クロマトグラフィー及び比較スペクトル特性に基づくカロテノイドの同定
【表4−1】
【表4−2】
a図2中の番号を付したピークに対応、
NA:データなし
【0152】
ODMSの存在は、栄養細胞中にも見られた。一方、胞子抽出物中には、その他の有色カロテノイドが観察された。これらカロテノイドは、ODMSよりもその性質上、比較的極性が強かった。HPLCピーク1及び3〜7(図2B)は、いずれも同様のクロマトグラフィー及びスペクトル特性を示したので、構造的な関連を有した(表4)。該カロテノイドの最大波長(λ)は、465.7〜468.4nmの範囲であった。こうして、胞子から単離されたカロテノイドについて、λmaxのシフトが観察された。これらシフトの結果、栄養細胞中で測定されるカロテノイドからの色の変化が生じる。こうした色の変化(例えば、黄色から橙色へ)は、栄養細胞由来組織及び胞子由来組織を比較することで、はっきりと可視化できた。最大値の増大の他に、胞子由来カロテノイドの他の特徴として、より釣鐘型の顕著なスペクトルによるスペクトル持続性の消滅があった。ただし、スペクトル内の変曲点は依然として観察できた。まとめると、以上の特徴は、非環状末端基の他、ケト部分及び/又はおそらくヒドロキシ部分の存在をも、構造的に示すものと考えられる。参照スペクトルとの比較も、カロテノイドがγカロテンのケト/ヒドロキシ誘導体であること(表4)と符合した(Britton et al.,2003)。
【0153】
オンラインによる280〜600nmのスペクトルを記録することで、ζカロテン、フィトフルエン、フィトエンなど他の必須経路カロテノイドの探索が可能となった。ζカロテン又はフィトフルエンの存在は、測定されなかった。286nmにおいて、基準フィトエンが示す典型的スペクトルに合致するクロマトグラム成分が観察された(図2E及び2F)。早期の保持時間は、栄養細胞抽出物及び胞子抽出物中で測定されるフィトエンの立体配置が、おそらく15−cis又はall−transではないことを示唆した(表4)。イソプレノイドのユビキノンが、全ての試料中で見られた。
【0154】
栄養細胞及び胞子中における各種カロテノイドの存在の他、定量的分析は、胞子におけるカロテノイド含量の方が、ユビキノン含量と同様多量であること明らかにした(図3)。単離株Fも、Cと比べてより高レベルを示した。
【0155】
結果の考察
HPLC分析及びUV/VISスペクトルデータを併用することで、本発明者らは、以上のバチルス単離株における着色が、カロテノイドの存在によることを確認した。本試験において測定されるカロテノイドの物理的特性、及び既存の利用可能なデータ源に基づき、本発明者らは、栄養細胞中の主要なカロテノイド種を1−HO−デメチルスフェロイデン、胞子中の該種をケト及び/又はヒドロキシ−β−カロテン誘導体であると定めた。こうして、異なる成長段階において形成される終末産物カロテノイドには、定性的及び定量的な差異が存在する。終末産物及び中間体カロテノイドの同定から、栄養細胞及び胞子中に存在すると推定される生合成経路を予測することができる(図4)。栄養細胞及び胞子ともに、ニューロスポレン形成能を有すると考えられる。その結果、2つのGGPP分子が凝縮してフィトエンを形成する。次いで、3つの共役二重結合からなるクロモフォアを伴うこのC40炭化水素骨格は、11,12、12’,13’、及び7,8位における3度の相次ぐ不飽和化を経て、9つの共役二重結合を有するニューロスポレンを産生する。栄養細胞においては、この非環状カロテンがさらにメチル化、ヒドロキシル化、及び不飽和化することがある。胞子形成中において、非環状前駆体の非環状化が生じ、これにケト部分及びヒドロキシ部分が取り込まれると考えられる。
【0156】
(実施例6)
本発明に基づくプロバイオティック粉末配合剤を以下の手順で調製した後、これを用いて1000個のゼラチンカプセルを充填した。
【0157】
以下の成分を乾燥混合し、該プロバイオティック粉末配合剤を調製した:実施例1に従って調製する500×103CFUの胞子、200gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、16gのステアリン酸、及び16gのシリカ。
【0158】
(実施例7)
本発明に基づくプロバイオティック粉末配合剤を以下の手順で調製した後、これとロータリー式打錠機を用いて1000錠の錠剤を作製した。
【0159】
以下の成分を乾燥混合し、該プロバイオティック粉末配合剤を調製した:実施例1に従って調製する500×103CFUの胞子、200gのマルトデキストリン、16gのステアリン酸、及び16gのシリカ。
【0160】
(実施例8)
有効性試験:バナメイ種(Penaeus vannamei)に対するHU36効果に関する二重盲検試験
プロトコール
各々2m3ずつの水が入った4つの養殖タンクを用いて、バナメイ種を養殖した。タンクごとに35匹のエビを養殖した。2つのタンクを符号化し、45日齢(5〜6g/匹)のエビに市販のエビ用飼料「Tomboy(商標)」を1週間与えた後、試験を開始した。次いで、30日間にわたり、2つのタンクに対照飼料又は被験飼料を与えた。給餌は1日3回で、1日当たり計20gであった。毎日エビをモニタリングした。−1及び31日目にエビの体重を測定した。
【0161】
材料と方法
エビタンクは、2m3の水(pH8〜8.5)、2〜35% NaClによる塩分を擁した。毎日水温をモニタリングして26〜33℃の範囲にあるようにし、砂、すり潰したサンゴ、及び活性炭を含むフィルターを用いて水を清浄化した。
【0162】
対照飼料は、「Tomboy(商標)」であった。被験飼料は、対飼料比1×107個/gのHU36胞子を含む「Tomboy(商標)」であった。「Tomboy(商標)」飼料は、ホーチミン市から購入した。
【0163】
結果
表5
【表5】
【0164】
結論
HU36を含むプロバイオティック投与標本におけるエビの平均体重増加(SWG)は、対照よりも162%大きかった。こうして、本発明によるバチルスの使用は、水産養殖における生産高を著明に上昇させることができる。
【0165】
(実施例9)
カロテノイドと胞子カロテノイドの胃内安定性の対比
試験の根拠は、カロテノイドサプリメントが、胃内に見られる胃液に対してきわめて変化しやすいと考えられることである。したがって、栄養補助食品での使用には、耐酸カロテノイド製剤が必要である。
【0166】
前出の実施例でHU36について既に述べた手順で、抽出法及びHPLC定量法を用い、HU36胞子に見られる全カロテノイドの安定性を測定した。
C:HU36を模擬胃液(SGF)で60分間インキュベートし、カロテノイド含量を測定した(SGF=1mg/mlペプシンを0.9% NaCl(pH2)中に溶解し、37℃でインキュベーション)。
EC:まず、HU36胞子からカロテノイドを抽出し、次いで、SGF中で60分間インキュベートした。
CS:ベータカロテノイド標準物質を、SGF中で60分間インキュベートした。
【0167】
ヒト胃中の最小通過時間は約20分間であるが、最大時間は、食物摂取及び生理状態等に応じて45〜50分間に達することもある。
【0168】
得られた結果を図7に示す。各場合において、グラフは、カロテノイド含量と0分時における測定値を対比して示す。カロテノイド標準物質は、20分後までに残量1%未満でほぼ全量分解された。これに対し、胞子上に存在するカロテノイド又は胞子から抽出されたカロテノイドは、最大20%の分解で、基本的に安定であった。
【0169】
したがって、胞子カロテノイドは、胃酸耐性カロテノイド源、及び現在使用できるカロテノイドサプリメントよりも優れた耐酸カロテノイドを供給する。
【0170】
(実施例10)
緒言
細菌を機能食品として使用することへの関心の高まりは、多数の公的機関に、プロバイオティック細菌の安全性及びその使用のためのガイドラインについて考慮するよう促している(FAO/WHO,2002;Sanders,2003)。米国では、食品医薬品局が、ヒトによる摂取に関して安全だと考えられる細菌にGRAS認証(「一般に安全と認める」)を与えている。EUでは、QPS(「適格な安全性の推定」)と称し、食物連鎖全体における微生物安全性評価の調和を目的とする同様のシステムを現在考慮中である(SCAN,2003a)。最もよく知られた種類のプロバイオティックで、広範な種類の発酵乳産品において及びプロバイオティックサプリメントとして用いられる、乳酸菌及びビフィズス菌が典型例である。こうした使用法にもかかわらず、これら細菌は、多数の感染症に関与している(Borrielo et al.,2003;FAO/WHO,2002)。
【0171】
バチルス属の細菌を含むプロバイオティックは、乳酸菌及びビフィズス菌ほど知られてはいない(Hong et al.,2005;Sanders et al.,2003)。バチルス・クラウジー(Bacillus clausii)、枯草菌、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)の他、セレウス菌(Bacillus cereus)を含む多数の菌種が現在使用されている。細菌を形成する胞子を用いる利点は、使用する胞子が、製品の室温での保存の他、胃液への優れた耐性をも可能にすることである。バチルス属の細菌は、容易に土壌中で見出されるので、当然、一般に土壌生物であると考えられる。一方、該細菌は、多くの動物及び昆虫の消化管(GIT)中にも見られる(Hong et al.,2005;Nicholson,2002)。近年の証拠は、枯草菌の実験室株の胞子が、マウスGIT内で発芽し、増殖した後、胞子形成を反復できることを示した(Casula and Cutting,2002;Hoa et al.,2001;Tam et al,2006)。バチルス属の2つの病原菌である、炭疽菌(B.anthracis)及びセレウス菌は、当然によく知られた腸内病原菌であり、GIT内で発芽した後成長する(Jensen et al.,2002;Jensen et al.,2003;Mock and Fouet,2001)ので、バチルス属の、全てではないにせよ大半の細菌は、胞子として経口摂取すると、発芽した後、GIT内で成長し得る可能性がきわめて高い。これら生細胞も、枯草菌について生じることが示された(Tam et al.,2006)のと同様に胞子形成を反復し得るとすれば、多年にわたり動物及び昆虫が糞便により胞子を排出すれば、土壌中にはきわめて多数の胞子が存在することになると考えられる。
【0172】
多くの報告が、バチルス種が感染症に関連することに言及している。発症率は低く、多くの場合は誤診である(de Boer and Diderichsen,1991;Logan,2004;Osipova et al.,1998;Salminen et al.,1998;Sanders et al.,2003)。欧州の多数の規制当局が、ヒトに対する使用の他、動物飼料での使用に関してもバチルスの安全性について述べており(anon.,2004;SCAN,2000)、セレウス菌に力点を置いている。
【0173】
国連食糧農業機関(FAO)及びWHOが、食品におけるプロバイオティックの評価ガイドラインを提示(FAO/WHO,2002)し、EU内でも同様のガイドラインを検討中である(SCAN,2003a)。安全性に関して最も重要なFAO/WHOガイドラインは、抗生剤耐性プロファイルの解明、病原性因子の特徴付け、並びにin vitro及びin vivoの安全性試験を項目に含む。
【0174】
本実施例では、本発明によるバチルス株の安全性の例示として、バチルスの有色素株であるHU36の安全性を評価した。HU36は、カロテノイド高含有胞子を産生し、ヒト食料又は動物飼料に天然資源又はカロテノイドを提供し得る。得られた結果は、これら細菌の栄養補助食品としての使用可能性を示す。
【0175】
材料と方法
細菌株
HU36は、バチルス中、黄色〜橙色の有色素胞子形成種である。今回用いた参照株は、168株由来の枯草菌原栄養菌株であるPY79(Youngman et al.,1984)、セレウス菌の毒素産生株であるSC2329(Hoa et al.,2000)、及び日本の主食である納豆の標本から採取した納豆菌(B.subtilis var Natto)の実験室株(SC2404)である納豆菌株であった。
【0176】
全般的方法と胞子の調製
DSM(Difco胞子形成)培地(Duc et al.,2003)を用いる飢餓法(Nicholson and Setlow,1990)により、胞子の精製済み懸濁液を作製した。胞子懸濁液をライソザイム処理した後、熱処理(68℃で1時間)により残存する栄養細胞を除去し、使用前に分注液を−20℃で保管した。
【0177】
エンテロトキシンと病原性形質の分析
染色体DNAからのPCR増幅法により、バチルス種からセレウス菌の推定エンテロトキシン遺伝子を検出する方法は、別報に詳述されている(Duc et al.,2004)。プライマーセットは、Guinebretiere et al.が記述したもの(Guinebretiere et al.,2002)を用いた。Hbl及びNheエンテロトキシンは、市販のキットを用いて検出及び測定した:Hblエンテロトキシンの検出にはBCET−RPLAキット(Oxoid社製)、Nheエンテロトキシンの検出にはTecra BDEキット(Tecra Diagnostics社製)であった。溶血はヒツジ血液寒天プレート上の画線法によって検出し、レシチナーゼは卵黄を含むセレウス菌選択性寒天培地上でのコロニーの画線、及び37℃、48時間のインキュベーションにより検出した。
【0178】
接着及び侵襲試験
英国の欧州細胞培養コレクション(ECCAC)から入手した、Caco−2(ヒト結腸癌細胞)、Hep−2細胞、及びムチン産生HT29(ヒト白人結腸腺癌)細胞の3つの異なる細胞系を用いて、胞子又は栄養細胞の接着を測定した。どの場合も、24ウェルチャンバースライド(Nunc(商標))内の、10%(v/v)ウシ胎仔血清、1%(v/v)L−グルタミン、及び1%(v/v)非必須アミノ酸を添加したMEME(Sigma社製、イーグル最小必須培地)中に、5%CO2中37℃で2日間ウェル当たり2×105個で細胞を播種した。接着及び侵襲法は、Rowan et al.が詳細に述べる手順(Rowan et al.,2001)で行った。
【0179】
細胞毒性アッセイ
ウェル当たり5×104個で播種したHep−2又はCaco−2細胞単層を用いる本アッセイは、Rowan et al.が述べる手順(Rowan et al.,2001)で行った。被験細菌のオーバーナイト培養液からのろ過滅菌(0.2mm)済み上清を、細胞に接種した。トリプシン処理(0.1%トリプシン、5分間)後、又は熱処理(95℃、10分間)後ただちに、トリプリケートで上清試料(0.1ml)を培養細胞に添加した。5%CO2雰囲気中37℃、オーバーナイトで細菌上清を含む単層をインキュベートした。0.5% MTT(Sigma社製、臭化3−(5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム)を含むリン酸バッファーによるオーバーナイトのインキュベーション後、さらに4時間インキュベーションを続けた。次いで、各ウェルから上清を除去し、産生され各ウェル中に含まれるフォルマザンを、ジメチルスルホキシドによる0.04M HCl 100mlの添加により溶解し、マイクロプレートリーダーによる540nmの分光光度法により測定した。以下の式により毒性を測定した:
(1−被験試料の光学レベル/陰性対照の光学レベル)×100。
【0180】
嫌気性成長
嫌気性条件下におけるバチルス株の成長能及び胞子形成能を評価するための手順は、別報(Tam et al.,2006)に述べてある。
【0181】
残存性試験
マウスを、食糞症防止のため床面に格子の付いたケージで飼育した。1×109個の胞子を単回(0.2ml)で、マウスに経口強制投与した。試料採取のため各マウスを外に出し、1回分脱糞直後の糞便ペレットを採取するまで留置し、重量差を測定し、−20℃で保管した後、Duc et al.が述べる手順(Duc et al.,2004)で耐熱cfu/g分析を行った。
【0182】
擬似腸内条件
Barbosa et al.が述べる方法(Barbosa et al.,2005)を用いて、胞子及び栄養細胞を評価した。擬似胆汁(SIF)用には、0.2%胆汁塩を含む等張バッファー(ボット−ウィルソン塩)に胞子又は栄養細胞を再懸濁(密度1×108cfu/mlで)させ、擬胃液(SGF)用には、1mg/mlペプシンを含む0.85% NaCl(pH2)に再懸濁させた。懸濁液は37℃で2時間インキュベートし、LB寒天プレート上における段階希釈及びプレート測定により、一定時間おきにcfu/ml単位で試料採取した。
【0183】
バイオフィルム形成
CMKアガロース上又はCMK液体培地中における、各場合37℃で2〜3日間の成長を用いるFallの方法(Fall et al.,2004)により、バイオフィルム形成を測定した。
【0184】
抗生剤試験
米国立臨床検査標準委員会(NCCLS)の推奨(Standards,1997)に従い、ディスク拡散法により、菌株のアンチバイオグラムを取得した。37℃でのLB培養液中での成長後、スワブ接種法により、被験菌株のオーバーナイト培養液をミュラー−ヒントンプレート上に播種した。播種済みプレート上に抗生剤含浸済みディスク(Oxoid社製、6mm)を置き、37℃で18時間後に阻害領域を測定した。
【0185】
亜慢性毒性試験
ベトナム、ナートラングのワクチン及び生体物質研究所(IVAC)において、本試験(連続曝露試験としても知られる)を実施した。試験は、ニュージーランドシロウサギ(雄、3ヶ月齢)を、6匹ずつの3群に分けて行った。精製済み胞子懸濁液(1×109個/ml)1mlを、2群に経口投与した。一群にはHU36胞子を投与し、他群には納豆菌株胞子を投与した。ナイーブ群には、1ml生理食塩水を投与した。本レジメンを用い、30日間にわたり毎日ウサギに投与した。31日目に、血液学的分析のために血液を採取した後、ウサギを人道的に安楽死させ、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、及び腸間膜リンパ節など、各器官及び組織の試料を組織学的分析用に採取した。
【0186】
急性毒性試験
本試験で用いた動物は、モルモット(Harley Dunkin、雄、5週齢)であり、試験は、ベトナム、ナートラングのIVACにおいて実施した。HU36又は納豆菌株いずれかの胞子1×1012個の1ml単回投与を、6匹ずつの群に経口で実施した。ナイーブ群には、1ml生理食塩水を投与した。モルモットは7日間にわたり毎日観察し、行動、外見、活動性、及び糞便について記録した。1日目及び7日目に体重を記録した。8日目に血液学的分析用に血液を採取した後、モルモットを人道的に安楽死させ、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、及び腸間膜リンパ節など、各器官及び組織の試料を組織学的分析用に採取した。
【0187】
組織学
10%ホルマリンで器官及び組織試料を固定し、エタノール溶液の濃度を上昇させながらこれに移し、パラフィンろう中に包埋した。6mmで組織切片を作製し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
【0188】
血液学
心穿刺によりウサギ及びモルモットから血液試料を採取し、全赤血球(RBC)、白血球、ヘモグロビン濃度、及び白血球分類を測定した。
【0189】
プラスミド分析
(Voskuil and Chambliss,1993)の方法を用いて、バチルス株からプラスミドDNAを抽出した。(0.25mg/ml)臭化エチジウムを含む1.0%アガロースゲル(1倍濃度TBEバッファー:89mMトリス、89mMホウ酸、2mM EDTA)中、10V/cmで試料を泳動させ、UV光下で撮影した。
【0190】
統計学
データは、スチューデントのt検定及びフィッシャーの直接確率検定で解析した。0.05未満のP値を、有意と考えた。
【0191】
結果
HU36を本発明のバチルスに関する範例的実施例として評価するため、HU36について行った、カロテノイド高含有で有色素のバチルス種評価を、枯草菌の以下の2つの単離菌についても並行して行った:168株由来の実験室株であるPY79(Youngman et al.,1984)、及び「納豆」として知られる日本の発酵食品中で用いられる枯草菌株である納豆菌株(Hosoi and Kiuchi,2004)。
【0192】
胞子形成特性
HU36の成長能及び胞子形成能を詳細に検討した(表6)。先行の試験で、養分高含有の寒天上に画線すると、HU36は嫌気性で成長できないことがわかった。一方、培養液内で成長させた後でDSM寒天プレート上に接種すると、HU36は、かつて枯草菌について示された(Tam et al.,2006)ように、嫌気性で成長することができた。亜硝酸塩又は硝酸塩が最終電子受容体として存在すると、成長が10倍増大した。ただし、無酸素条件下では、PY79の場合と同様、HU36細胞も著明なレベルでは胞子を形成できなかった。一方、納豆菌株は、これらの条件下でも比較的効率良く胞子形成が可能で、亜硝酸塩又は硝酸塩の存在下ではより高レベルであった。
【0193】
擬似腸液への曝露に対する、HU36、納豆菌株、及びPY79の各胞子の耐性も測定した(表7)。PY79又は納豆菌株のいずれも、擬似胃液(SGF)又は擬似腸液(SIF)に対して、測定可能な感受性を示さなかった。一方、HU36は、SGF及びSIFに対して一定の感受性を示しはしたが、やはり生存百分率は高かった。
【0194】
表6では、バチルス株を液体DSM中において成長させ、DSM寒天プレート上に接種した。嫌気性成長のために、硝酸カリウム又は亜硝酸カリウムを、電子受容体として培地に添加した。プレートを30℃で72時間、嫌気性又は好気性でインキュベートした後、各プレートから全細菌ローンを回収した。次いで、懸濁液を段階希釈してCFU測定のためにプレートアウトするか、又は熱処理(68℃、45分間)後に段階希釈して胞子数を測定した。
【0195】
表6:好気性及び嫌気性条件下における胞子形成効率a
【表6】
【0196】
表7:擬似GIT液中における栄養細胞の耐性
【表7】
a初期cfuに対するcfu生存百分率。表示時間(分)時における生存。
b胞子又は栄養細胞の細菌懸濁液cfuを括弧内に示す。
【0197】
表8:潜在的な病原性特性
【表8】
aヒツジ血液寒天上の溶血:β、コロニー周囲の明確な領域を伴う完全な溶血;γ、変化なし。
bレシチナーゼ産生:+、ピーコックブルー色のコロニー周囲における加水分化したレシチンの青色沈殿(セレウス菌を示す);−、変化なし;±、不十分な着色。
cHbl又はNheエンテロトキシン、或いは他のセレウス菌エンテロトキシンの成分をコードする遺伝子を、PCR法により検出した:+、予測したサイズのPCR産物が増幅された;−、PCR産物を検出しなかった。
d成長細胞におけるHblエンテロトキシンの産生を、BCET−RPLA毒素キット(Oxoid社製)を用いて測定し、製造元の取扱説明書に従い、値0を陰性とする指標により表した。試験の感度を2ng/mlとする。
e「バチルス下痢原性エンテロトキシンビジュアルイムノアッセイキット」(Tecra Diagnostics社製)を用いて、成長細胞中におけるNheエンテロトキシンの産生を測定した。製造元の取扱説明書に従い、指標<3の菌株を陰性と考え、試験の感度を1ng/mlとする。
【0198】
抗生剤耐性
動物栄養に関する科学委員会(SCAN)及び欧州食品安全局(EFSA)が重視(EFSA,2005;SCAN,2003b)する抗生剤を含む抗生剤パネルに対する耐性について、HU36を評価した。抗菌耐性は以下の2つの方法、1つは寒天ディスク拡散法(表9)、今1つはMICの確立(表10)により測定した。HU36は、クリンダマイシンに対してのみ、該化合物に対して公表済みのMICブレイクポイントを超える著明な耐性を有することが判明した(EFSA,2005)。この耐性が獲得性であるのか否かを判定しようとする試みにおいて、本発明者らは、HU36、PY79、及び納豆菌株からのプラスミドDNAの単離を試みたが、エピソーマルDNAに対応すると考えられるDNAを単離することはできなかった。
【0199】
表9:バチルス株の抗生剤耐性プロファイル
【表9】
a含浸量を括弧内にμg単位で示す、抗生剤含浸済みディスク(6mm)。
b3つの個別試験からの阻害領域(直径)。
【0200】
表10:MIC
【表10】
aMICの等しいか又は高度の菌株を、耐性と考える。b(SCAN,2002)。c(EFSA,2005)。d生得的に耐性である種もある。eブレイクポイント不要。
【0201】
接着アッセイ
HU36、PY79、納豆菌株、及びSC2329のCaco−2、Hep−2、及びHT29細胞への接着を、in vitro法により評価した。HT29細胞は、成熟腸内細胞に特徴的な分化特性を示すため、Caco−2細胞よりも有用である(Devine et al.,1992)。各場合ごとに、各菌種につき胞子1×108個ずつの懸濁液を、発芽した胞子又は生栄養細胞が死滅する条件下において、培養細胞系とともに2時間インキュベートした。得られた結果を、表8に示す。SC2329が、最高度の接着を示した後に納豆菌株及びPY79が続き、きわめて低レベルの接着を示したHU36が最下位であった。ただし、どの場合も、ムチン産生HT29細胞系に対する接着が常に最大であった。
【0202】
マウスGITにおける胞子の残存性
胞子を単回で経口投与したマウス糞便中への、HU36、PY79、及びSC2329胞子の排出量を測定した。得られた結果は、PY79及びHU36の胞子数が、12日後には検出可能なレベルの範囲内に収まらないのに対し、SC2329は、3週間にわたり残存した。
【0203】
潜在的な病原性因子
PCR法を用いて、HU36、PY79、納豆菌株、及び対照としてSC2329の染色体における周知のセレウス菌エンテロトキシン遺伝子の存在を評価した。この方法は、以前に、食中毒を起こすと推定されるバチルス菌株のプロファイル化に用いられている(Duc et al.,2004;Guinebretiere et al.,2002;Phelps and McKillip,2002)。セレウス菌対照であるSC2329を例外として、周知のセレウス菌エンテロトキシン遺伝子は、全く検出されなかった。Hbl及びNheセレウス菌エンテロトキシンについて行ったin vivoでの分析も、陰性であった。HU36、PY79、及び納豆菌株は、ヒツジ血液寒天上の溶血も産生しなかった。HU36及びPY79ではレシチナーゼ(ホスホリパーゼの1つ)の産生も陰性であったが、納豆菌株では微弱な反応が観察された。
【0204】
細胞毒性アッセイ
HU36、PY79、納豆菌株、及びSC2329の成長培養液上清の毒性を、分光光度法を用いて、Caco−2又はHep−2細胞の曝露後における細胞死を測定することにより評価した。表11に示す結果は、HU36上清が、熱及びトリプシン処理で安定な、一定の毒素産生可能性を含有していたことを示す。これは、セレウス菌対照菌株であるSC2329よりも著明に低度であった。これに対し、実験室株であるPY79が、ほとんど〜全く毒素産生可能性を示さない一方、納豆菌株は、その上清中に一定のトリプシン感受性毒性物質を伴った。
【0205】
表11:Hep−2上皮細胞上における無細胞上清の細胞毒性に対する熱又はトリプシン処理の効果
【表11】
a上清液には、非処理(正常)、熱処理(HT)、又はトリプシン処理(TT)を施した。
【0206】
in vivoにおける毒性アッセイ
動物におけるHU36の安全性について、2種類の評価を行った。第一の亜慢性毒性試験では、ウサギに胞子1×109個のHU36又は納豆菌株を経口投与した。次いで、同じ連日投与を30日間維持した。第二の急性毒性試験では、モルモットに胞子1×1012個の単回大量投与を経口により実施した後、7日間観察した。
【0207】
いずれの試験でも、疾病又は行動上の変化の徴候は観察されなかった。急性毒性試験においては、HU36を投与するモルモットが平均の体重増加60%を示すのに対し、納豆菌株を投与するモルモットは20%であった(表12)。一方、亜慢性毒性試験では、ウサギの体重が非投与ウサギと比べ変化しなかった。肝臓、脾臓、及び腎臓重量は、胞子を投与しないウサギと同等であった(表12)。炎症、分解、又は壊死を含むウサギの器官及び組織における病理学的徴候は見られなかった(データは示さない)。両試験からの血液に対する血液学的分析を全項目にわたって行ったところ(表13)、群間差は見られなかった。
【0208】
表12:in vivo試験による体重
【表12−1】
【表12−2】
a胞子1×109個のPY79、納豆菌株、又はHU36を30日間にわたり毎日経口投与するウサギ6例の群、或いはナイーブ群(対照)。
b胞子1×1012個の単回経口投与を実施するモルモット6例の群。
c平均体重増加。
d対照群と比べた平均体重増加。
【0209】
表13:血液学的分析
【表13】
aナイーブ群には胞子を投与しない。
【0210】
考察
本実施例の主要目的は、体内摂取したHU36胞子に何が起こり得るかを評価することであった。枯草菌胞子に関する試験は、該胞子がマウスGIT中で発芽し、増殖し、胞子形成することを示した(Casula and Cutting,2002;Hoa et al.,2001;Tam et al.,2006)。実際、同試験は、胞子が、消化器の通過に好適であるらしいことを示す。嫌気性条件下でのバチルス種の成長は、ごく最近になって報告されるに過ぎない特性であり、全ての種で生じる現象ではない。(Nakano et al.,1997;Nakano and Zuber,1998)。168株由来で、多くの研究所で用いられる枯草菌株PY79は、嫌気性で成長するが、無酸素条件下では胞子形成できない(Tam et al.,2006)。一方、同じ試験で、枯草菌のヒト単離株(HU58及びHU78)は、無酸素条件下でも十分に胞子形成が可能なことがわかった。これに反し、PY79胞子を投与したマウスが、糞便中に投与量よりも多くの胞子を排出するので、PY79の胞子形成がマウスのGIT中でも確かに生じるということ(Hoa et al.,2001)は、GITが完全に嫌気性ではないことを示唆する。本試験では、HU36もPY79と同様、嫌気性条件下で効率良く成長できるが、胞子形成はできない。第二の対照菌株である納豆菌は、はるかに高レベルで胞子形成できた。
【0211】
HU36の胞子は、擬似胃液及び擬似胆汁への曝露により、基本的に影響を受けなかった。全てのバチルス胞子が、胃液に耐性というわけではなく、とりわけ注目すべきは、セレウス菌のいくつかの菌株が、胃酸にきわめて感受性であり、この場合、胃酸中での胞子の発芽及び栄養細胞の放出及び早発死を刺激する(Faille et al.,2002;Keynan and Evenchik,1969)。
【0212】
セレウス菌の多くの菌株は、よく知られた4つのエンテロトキシン(Hbl、Nhe、CytK、及びBceT)のうちの1つ又は複数をコードする遺伝子を擁するが、これら遺伝子の1つ又は複数が他のバチルス種のゲノム上に存在し得ると十分に考えられる(Guinebretiere et al.,2002;Rowan et al.,2001)。栄養補助食品として用いる菌株に毒素の産生能がないことを確証することは、明らかに重要であり、枯草菌株及びHU36のいずれもが、周知の毒素遺伝子を持たなかった。溶血、バイオフィルム形成能、及びホスホリパーゼであるレシチナーゼの産生を含む、他の病原性可能因子も観察した。これらのうち最後の因子は、枯草菌の対照食品菌株である納豆菌株と微弱ながら反応を示した。
【0213】
HU36は、わずかに1種類の抗生剤クリンダマイシンに対してのみ、耐性を示すことがわかった。MICは、本化合物に関するEU推奨のブレイクポイントを超える値であった。ただし、HU36、納豆菌株、又はPY79のいずれからもプラスミドを回収できず、この耐性決定因子が獲得性であることはありにくいと考えられるため、細菌性栄養補助食品の公表QPS要件の1つを満たす(EFSA,2005)。
【0214】
無細胞上清の細胞毒性効果に関するアッセイは、実験室株PY79が、培養細胞に対して基本的に毒性効果を及ぼさず、セレウス菌株SC2329が著明に毒性であるのに対し、菌株HU36は、細胞単層に対して中程度の効果を及ぼすことを明らかにした。この効果は、部分的には、トリプシン感受性であると考えられた。他の研究では、培養細胞に対する細胞毒性効果が、決定因子として疑わしく、エンテロトキシン産生とは相関しないと考えられることが示されている(From et al.,2005;Rowan et al.,2001)。実際、プロテアーゼ又はリポペプチドであるサーファクチンなどの抗菌剤さえも、その過量の産生の結果、in vitroにおいて毒性効果を観察する可能性がある(Nagal et al.,1996)。このことから、EUは、細胞毒性の測定が、培養液上清中の低分子量物質の影響で損なわれる可能性がある、と結論付けている(SCAN,2001)。したがって、こうしたin vitroにおける低レベルの毒性は、問題を生じない。
【0215】
HU36胞子の経口摂取が何らかの毒性を産生したかどうかを判定するため、本発明者らは、動物を用いた2種類の安全性試験を実施した。亜慢性毒性試験で、ウサギにおける30日間のHU36及び納豆菌株胞子による連日の経口投与(1×109個)の影響を測定したところ、病的影響は全く観察されなかった。急性毒性試験では、モルモットにおける胞子1×1012個のHU36及び納豆菌株の単回経口投与の影響を測定した。亜慢性毒性試験と同様に、モルモットへの有害効果は示されず、全般的健康、行動、或いは器官及び組織の組織学的変化も見られなかった。次いで、急性毒性試験は、モルモットにおける経口LD50が、納豆菌株及びHU36のいずれについても1×1012個よりも大きいはずであることを示した。
【0216】
in vitroの接着アッセイは、HU36胞子が、被験上皮細胞系のいずれに対しても、限定的な結合能しか有さないことを明らかにした。PY79の結合はより高度であり、納豆菌株はさらに高度であった。これは、バチルス種のCaco−2及びHep−2細胞への接着に関してなされた試験と符合し、枯草菌が上皮細胞系にはほとんど接着しないという結論を導く(Rowan et al.,2001)。以上の試験で対照として用いたセレウス菌は、さらに良好に結合し、ほぼ10倍高度に結合した。ただしいずれの場合も、ムチン産生HT29細胞系への結合が最高度であった。
【0217】
in vivoにおける試験でも、マウスに単回投与した胞子の転帰を検証した。これらの残存性試験は、HU36が、14日後にGITから排出され、マウス体内にもはや検出可能なレベルでは存在しないことを示した。これは、枯草菌の実験室株であるPY79の残存性を検証し本実施例が確認する、同様の試験と相関する。他方、本実施例で用いたセレウス菌株は、消化管内にさらに7日間長く残存した。枯草菌の2種類のヒト単離株である、HU58及びHU78についても同様の現象が観察されており(Tam et al.,2006)、天然枯草菌単離株、又はGIT中に棲息することが知られるセレウス菌の方が、消化管環境により良好に適応することを示唆する。
【0218】
以上のアッセイの結果は、HU36が、消化管環境にとりわけ良好に適応するわけではないということである。該株は、上皮細胞にほとんど結合せず、無酸素条件下で胞子形成しない。これらの点で、該株は、枯草菌の実験室株であるPY79と同等である。他方、該株は、動物モデルにおいて、病原性特性も毒素産生性も示さない。したがって、該株は、潜在的な栄養補助食品として、ヒトに対する病原性又は有害性の徴候を示さない。
【0219】
HU36は、ベトナムのボランティア被験者から採取したヒト糞便に由来した。実のところ、有色素バチルスが、甲殻類、とりわけエビにおいてよく見られるので、この細菌は、海産物を多く含む食糧に由来したと考えられる。これが正しければ、この耐塩性の胞子形成株が、ヒトGIT中での生存に適さない可能性もある。
【0220】
以上より、実施した試験は以下のことを示す:
1.in vitro試験は、本発明の範例的菌株としてのHU36が、ウサギ又はモルモットにおける経口投与時に、毒性を示さないことを裏付ける。経口LD50は、1×1012cfuよりも大きいはずである。
2.毒素遺伝子、毒素産生、溶血、などの病原性特性が見られない。
3.わずかに1種類の抗生剤、クリンダマイシンのみに対する耐性が見られたが、これが獲得性である証拠はなく、これはプラスミド由来ではない。
4.HU36は、上皮細胞にほとんど接着せず、GIT内に長く残存しない。
まとめると、HU36など本発明のバチルスについては、毒性又は病原性であるという証拠が見られない。したがって、本発明のバチルスは、ヒトへの使用について無害かつ好適であると考えられる。
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】16S rRNA遺伝子(rrnE)解析に基づく、バチルスクローンHU19、HU28、HU36、及びHU33の近隣結合系統樹を示す図である。同一塩基率の値を括弧内に示す。その他の関連菌株も、菌株表示とともに示す。点線より上の菌株は全て、相互に少なくとも99%のrRNA同一塩基率を示す。
【図2A】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UV/Visスペクトルを450nmにおいて記録する:PY79野生型。
【図2B】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UV/Visスペクトルを450nmにおいて記録する:HU36胞子。番号を付した各ピークは、カロテノイドに特徴的なシグニチャースペクトルを示す。
【図2C】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UV/Visスペクトルを450nmにおいて記録する:HU36栄養細胞物質。番号を付した各ピークは、カロテノイドに特徴的なシグニチャースペクトルを示す。
【図2D】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UVスペクトルを286nmにおいて記録する:PY79野生型。ピーク13はフィトエンを表す。
【図2E】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UVスペクトルを286nmにおいて記録する:HU36胞子。ピーク13はフィトエン、ピーク14はユビキノンを表す。
【図2F】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UVスペクトルを286nmにおいて記録する:HU36栄養細胞物質。ピーク13はフィトエン、ピーク14はユビキノンを表す。
【図3】バチルスクローンであるHU19及びHU36の他、対照株であるPY79においても見られるカロテノイドの定量を示す図である:UBQ、ユビキノン;HDMS、ヒドロキシ−デメチルスフェロイデン;KHGC、ケトヒドロキシβ−カロテン;DMS、デメチルスフェロイデン;及びOS−3,4−ジヒドロスフェロイデン。
【図4】栄養細胞成長及び胞子形成中における、カロテノイド形成に関わる推定経路を示す図である。胞子におけるカロテン生成に特異であると思われる反応を、点線矢印で示す。
【図5】本発明のバチルスを用いて産生可能な化合物を示す図である。
【図6】本発明のバイオセンサとして可能な形式の例を示す図である。バイオセンサ(10)は、シリコン基板(20)の上に、本発明に従い、実施例6に述べる手順で調製した細菌胞子500×106CFU(30)を置く。
【図7】擬似胃液(SGF)による0、20、60分間のインキュベーション後におけるカロテノイド残存率を示す図で、柱状グラフは左から右に、HU36胞子(C)、HU36胞子からのカロテノイド抽出物(EC)、及びベータカロテン標準物質(CS)を表す。
【図8】バチルス株の、Caco−2、HEp−2、及びHT29細胞系への接着を示す図である。表示株の胞子(1×108個)を、細胞系とともにゲンタマイシン(100mg/ml)の存在下37℃でインキュベートした。インキュベーションの2時間後、異なる細胞系への胞子の接着率を測定した。
【0222】
配列番号1〜6は、HU13、16、19、28、33及び36単離株の16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非病原性胞子形成バチルスに関する。特に、本発明は、食品、栄養補助食品、プロバイオティクス、着色料、色素、バイオセンサ、カロテノイド及びイソプレノイド由来代謝物の供給源における、又はこれらとしてのバチルスの使用、並びにバチルス自体に関する。本発明は、刺激の検出方法においてバチルスを用いることにも関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドは、自然に見出される天然の色素の最も広い群である。これらの黄色、橙色、及び赤色に着色した分子は、真核生物及び原核生物において見出される。少なくとも600種の構造が異なる化合物が現在知られており、1年当たり1億トンの推定生産量がある(Britton et al.,2003)。細胞内でのカロテノイドの主な機能の1つは、細胞が照射されたときに形成される一重項酸素及び他の有害なラジカルを消滅させることによる光酸化損傷に対する防御を提供することである。光合成生物において、これらは、光回収色素として重要な役割を演じるが、哺乳動物においてはいくつかのカロテノイド(例えばβ−カロテン)の開裂は、栄養(ビタミンA)、視力(レチナール)及び発達(レチノイン酸)において重要な役割を演じる。さらに、カロテノイドに固有の有力な抗酸化特性が細胞を極限環境から防御し、哺乳動物においては慢性疾患状態の発症を妨げ得る。これらの健康増進特性は、特に、哺乳動物(最も顕著にはヒト)はカロテノイドを新たに合成できず、食餌から獲得しなければならないので、栄養補助物質としてのカロテノイドに対する実質的な興味を導いている。
【0003】
商業的には、カロテノイドは、製薬、化粧品、並びに食品及び飼料業界において、特に前駆体、着色料及び補助物質として用いられている。世界的な市場は拡大しており、2005年には9億3500万ドルと推定される。合計の化学合成は、工業的なカロテノイド製造の現在での選択の方法である。このアプローチの問題点は、天然生成物には見出されない立体異性体の生成、反応中間体/生成物の混入、及び生物学的混合物中に存在する潜在的相乗効果を有する栄養素の欠落を含む。つまり、天然供給源からのカロテノイド製造の必要性が存在する。
【0004】
商業的に現在用いられているカロテノイドの微生物供給源は、単細胞藻類であるドゥナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)、スピルリナ(Spirulina)及びヘマトコッカス(Haematococcus)、酵母であるファフィア・ルドジマ(Phaffia rhdozyma)、並びに糸状菌であるブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)及びフィコミセス・ブラケサヌス(Phycomyces blakesanus)を含む。しかし、単細胞藻類は、成長が遅く、汚染されやすく、高い酸素供給速度及び強い光を必要とする。これらの条件により、製造場所がハワイ及びオーストラリアのある領域に限定される。ファフィア・ルドジマ及びフィコミセス・ブラケサヌスはともに、細菌に比較して成長がかなり遅く、重要な経費の影響を有する冷却発酵条件を必要とする。ブラケスレア・トリスポラも、可能性のある細菌の供給源に比較して成長速度が遅く、高生産量のためにはトリスポリック酸による有性刺激を必要とする。現在のところ、カロテノイドが商業的に製造されている高等植物供給源は1つしかない(マンジュギク(Tagetes)の花)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、バチルス又はバチルスからの抽出物の、着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品としての、又は化粧品における使用であって、バチルスが、配列番号1〜6のいずれかの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有し、又はその抽出物が、前記配列同一性を有するバチルスから得られる使用を提供する。
【0006】
本発明は、(i)本発明のバチルスを栄養成長させ、及び/又はバチルスの胞子を生成させること、及び(ii)バチルスからカロテノイド、その代謝前駆体又はその誘導体を抽出することを含む、カロテノイド、その代謝前駆体又はその誘導体を製造する方法も提供する。
【0007】
本発明は、
(i)刺激が存在するときに誘発され、発芽して栄養細胞を生じるバチルスの胞子であって、バチルスの胞子及び栄養細胞が、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子を提供すること、
(ii)刺激の存否を決定するのに望ましい試験条件下で胞子を曝露すること、及び
(iii)胞子の発芽に起因する色の変化の存否を検出して、刺激の存否を決定すること
を含む、刺激を検出する方法を提供する。
【0008】
本発明は、バチルス又はバチルスからの抽出物の、着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品としての、又は化粧品における使用であって、バチルス又はその抽出物はバチルスから得られ、バチルスの胞子及び栄養細胞が、少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である使用も提供する。
【0009】
本発明は、バチルスの成長、発芽又は胞子形成を調節可能な作用物質を検出する方法であって、試験作用物質を、本発明のバチルスと接触させること、及び色の変化又は色の強度の変化をモニタリングすることを含み、バチルスの胞子及び栄養細胞が、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である方法も提供する。
【0010】
本発明は、配列番号1〜6のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有するバチルスから選択されるバチルスであって、バチルスの胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバチルスを提供する。
【0011】
本発明は、さらに、バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)、HU33(NCIMB41342)及びHU36(NCIMB41361)、又はそれらのいずれかの派生株、変異株若しくは突然変異体から選択されるバチルスであって、
− 派生株、変異株又は突然変異株のバチルスの胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であり、
− 派生株及び突然変異体の16S rRNA遺伝子が、HU19、HU28、HU33、及びHU36のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する
バチルスを提供する。
【0012】
また、
− 本発明のバチルスと支持体とを含むバイオセンサであって、バチルスの胞子及び栄養細胞が、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバイオセンサ;
− 本発明のバチルス又は本発明のバチルスからの抽出物を含む食品材料、食品添加物、色素、着色料、化粧品、栄養補給食品又はプロバイオティック組成物;
− 本発明のバチルス又は本発明のバチルスからの抽出物と、医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬;
− ヒト又は動物の体の治療方法において用いるための本発明のバチルス又はそのようなバチルスからのカロテノイド抽出物
も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、種々のバチルス及びそれらの使用を提供する。特に、該バチルスは、カロテノイドの製造のためにそれらを有用にするカロテノイドを製造する。該バチルス及びその抽出物は、例えば着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品として、及び化粧品において用いることができる。
【0014】
本発明は、典型的には、それらの胞子及び栄養細胞の形で異なる量で存在する少なくとも1種のカロテノイドを含むバチルスを含む。特に、本発明は、
(i)胞子が、バチルスの栄養細胞の形で存在しない少なくとも1種のカロテノイドを含み、及び/又は
(ii)栄養細胞が、バチルスの胞子の形で存在しない少なくとも1種のカロテノイドを含む
バチルスの使用を含むことができる。
【0015】
ある特に重要な実施形態において、バチルス又はその抽出物は、水産養殖において用いてよく、特に甲殻類、特に貝類に与えてよい。このような使用は、生産量の上昇をもたらし得る。
【0016】
バチルスは、広く多様な用途に用いてよい。カロテノイドは着色しているので、例えば、バチルスからの胞子及び栄養細胞の形は異なる色であり得、2つの形の色の違いは、種々の刺激を検出する方法及びこのような刺激を検出するバイオセンサにおいて用い得る。カロテノイドの色は、バチルス、及びカロテノイドを含むそれらからの抽出物を着色料及び色素として用い得ることを意味する。これらは、色を与えるため、並びにそれらのプロバイオティック及び抗酸化機能の両方のために食品及び食品添加物において用いてもよい。ある実施形態において、バチルスは、胞子及び栄養細胞の状態の間で色の変化を示さなくてよい。
【0017】
バチルス及びそれらからの抽出物は、陸上動物及び海洋動物の両方の飼育動物に供給して、特に該生物の1つ又は複数の組織に色を与えてよい。別の場合では、これらは、さらに又は代わりに供給して、生産量を上昇させ得る。バチルス及びそれらから得られる物質は、化粧品、医薬組成物において、プロバイオティックとして及び競争排除剤として用いてもよい。
【0018】
カロテノイド並びにそれらの種々の代謝前駆体及び誘導体は、商業的に価値がある物質であり、よって、該バチルスは、このような物質を製造し、次いでバチルスから所望の化合物を抽出する細胞工場として用いてよい。
【0019】
バチルス
本発明は、バチルスの栄養細胞及び胞子の形で異なる量で存在する少なくとも1種のカロテノイドを典型的に有するバチルスの使用に基づく。該バチルスは、その胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので、該2つの形で典型的には色が異なる。つまり、特定のカロテノイドが、バチルスの栄養細胞の形よりも高い量で胞子に存在してよいか、及び/又はあるカロテノイドが、バチルスの栄養細胞の形に、胞子の形よりも高い量で存在してよい。別の実施形態において、バチルスは、胞子と栄養細胞の状態の間でこのような色の変化を示さなくてよい。
【0020】
ある場合において、バチルスは、配列番号1〜6のいずれかと少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する。ある好ましい実施形態において、用いられるバチルスは、バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)、HU33(NCIMB41342)及びHU36(NCIMB41361)、又はそれらのいずれの派生株、変異株若しくは突然変異体から選択される1種であってよく、該派生株、変異株又は突然変異体の16S rRNA遺伝子は、HU19、HU28、HU33及びHU36のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する。
【0021】
ある場合において、1又は複数種のカロテノイドが、栄養細胞の形よりも胞子の形で高い量で存在してよく、バチルスの胞子の形に比較して栄養細胞の形により高い量で存在する1又は複数種の異なるカロテノイドが存在してもよい。
【0022】
カロテノイドの量の違いは、他方の形で存在する量の例えば2倍、好ましくは少なくとも3倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも25倍、より好ましくは少なくとも50倍、さらにより好ましくは少なくとも100倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍であってよい。ある実施形態において、このような倍数は、増加の上限を表し得る。
【0023】
特に好ましい場合において、バチルスの他方の形で存在する特定のカロテノイドがバチルスの一方の形で実質的に全く存在せず、好ましくは、1又は複数種のカロテノイドが胞子又は栄養細胞の形で存在するが、他方の形では全く存在しない。
【0024】
任意の適切な方法を用いてカロテノイドのレベルを測定でき、よって、バチルスの胞子及び栄養細胞中のレベルを比較できる。好ましい方法において、等しい重量の凍結乾燥した胞子と栄養細胞を、例えば乳棒と乳鉢で粉砕し、次いでクロロホルム抽出する。典型的には、粉砕した物質を1容量のメタノール及び2容量のクロロホルム中に溶解し、氷上で10〜30分間、好ましくは約20分間インキュベートし、メタノールの容量に等しい容量の水を加え、試料をボルテックスし、静置した後に、水相の除去により有機画分を回収する。次いで、典型的には、試料は、さらに2回抽出し、次いで、有機相を、窒素流の下で完全に乾燥するまで減量させてよい。次いで、カロテノイドの相対量を分析してよく、例えば、好ましくはHPLC分離と組み合わせた分光分析法を用いてよい。
【0025】
ある場合において、カロテノイドの量は、HPLCを用いて450nm及び/又は286nm、特に450nmで測定してレベルを比較してよい。本明細書に記載される方法は、例えば、カロテノイドの単離及びHPLC分析に用いてよい。分析は、典型的には、等しい重量の凍結乾燥した胞子及び栄養細胞からの抽出物についての結果の比較により行われる。ある場合において、胞子及び栄養細胞の色は、示差的なカロテノイドの存在の指標として、例えば肉眼により比較してよい。胞子形成を誘導して、色の変化をモニタリングしてよい。コロニーの色を調べてよい。
【0026】
バチルスは、栄養細胞におけるよりも胞子の形で高い量で存在するか又はその逆の1種、好ましくは少なくとも2種、より好ましくは少なくとも4種、より好ましくは少なくとも6種、より好ましくは少なくとも8種、さらにより好ましくは少なくとも10種、さらにより好ましくは11種以上のカロテノイドを製造してよい。
【0027】
好ましい場合において、用いられるバチルスは、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリキファシエンス(Bacillus amyloliquifaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ジェオトガーリ(Bacillus jeotgali)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・シュードフィルムス(Bacillus pseudofirmus)、バチルス・オクヒデンシス(Bacillus okuhidensis)、バチルス・クラルキア(Bacillus clarkia)、バチルス・ベッデリ(Bacillus vedderi)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・フレクサス(Bacillus flexus)、バチルス・コーニー(Bacillus cohnii)、バチルス・インディカス(Bacillus indicus)、バチルス・シビ(Bacillus cibi)及びバチルス・カテヌラトゥス(Bacillus catenulatus)から選択される1種であってよい。これは、特に、バチルスが、その胞子及び栄養細胞の色が異なるものの場合であり得る。
【0028】
ある実施形態において、バチルスは、図1に示すもののいずれか、特に胞子と栄養細胞の形の間で色の変化を示すものであってよい。ある好ましい場合において、バチルスは、バチルス・シビ、バチルス・インディカス、バチルス・カテヌラトゥス及び本明細書に記載する寄託された株並びに16S rRNAレベルで少なくとも95%の配列同一性を有するそれらの変異株又は突然変異体から選択される1種であってよい。別の場合において、提供されるバチルスは、バチルス・シビ、バチルス・インディカス及びバチルス・カテヌラトゥスを除外してよい。ある特に好ましい場合において、バチルスは、胞子と栄養細胞の形の間で色の変化を示す。他の場合はそうでなくてよい。
【0029】
特に好ましい場合において、用いられるバチルスは、16S rRNA配列同一性を参照にして定義され得るバチルスの近縁群の1種であってよい。例えば、バチルスは、配列番号1〜6の16S rRNA配列のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性を示すものであり得る。
【0030】
ある好ましい場合において、バチルスは、(i)バチルスの栄養細胞又は胞子の形で、バチルスの他方の形と比較して、異なる量で存在する少なくとも1種のカロテノイドを有し、(ii)その16S rRNAが配列番号1〜6のポリヌクレオチド配列のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するものであり得る。
【0031】
好ましい場合において、バチルスの16S rRNAは、配列番号1〜6のいずれか1つのポリヌクレオチド配列と少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、さらにより好ましくは少なくとも94%の配列同一性を有してよい。特に好ましい場合において、バチルスの16S rRNA配列は、配列番号1〜6のいずれか1つと少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有してよい。特に、バチルスの16S rRNAは、配列番号1〜6のいずれか1つと少なくとも99.25%、好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.75%、さらにより好ましくは99.9%の配列同一性を有してよい。特に好ましい場合において、配列同一性のレベルは、配列番号3〜6のいずれか1つに対してである。ある好ましい場合において、配列同一性のレベルは、配列番号3、4及び6のいずれか1つに対して、別の場合において配列番号5に対してであってよい。
【0032】
種々のプログラムを用いて、百分率の相同性を計算してよい。UWGCGパッケージは、相同性を計算するために用い得るBESTFITプログラム(例えばそのデフォルト設定で用いられる)を提供する(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research 12,p387−395)。例えばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290−300; Altschul,S,F et al(1990)J Mol Biol 215:403−10に記載されるようにして、PILEUP及びBLASTアルゴリズムを用いて相同性を計算又は配列を整列させ得る(典型的にはそれらのデフォルト設定で)。
【0033】
BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Centre for Biotechnology Information)により公的に利用可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さの文字列と整列させたときにある正の値の閾値スコアTに調和するか又は満足するかのいずれかの検索配列中の長さWの短い文字列を同定することにより高評点配列対(HSP)を同定する。Tは、近傍文字列スコア閾値とよばれる(Altschul et al、上記)。これらの初期近傍文字列ヒットは、それらを含むHSPを見出すための検索を開始するための種として作用する。文字列のヒットは、累積アラインメントスコアが増加できる限りは、それぞれの配列に沿って両方向に伸長される。各方向への文字列ヒットの伸長は、累積アラインメントスコアが、それが達成した最大の値からXの量だけ低下したときに停止する。累積スコアは、1つ又は複数の負に評点される残基のアラインメントの蓄積により、ゼロ又はそれ未満になるか、或いはいずれかの配列の末端に到達する。BLASTアルゴリズムのパラメータであるW、T及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、文字列長さ(W)11、BLOSUM62評点マトリクス(Henikoff and Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919を参照されたい)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4及び両方の鎖の比較を用いている。
【0034】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計学的分析を行う。例えばKarlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムにより提供されるある類似性の測定は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の調和が偶然により発生する確率の指標を与える最小合計確率(P(N))である。例えば、第1配列と第2配列との比較における最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、ある配列は別の配列と類似であるとみなされる。
【0035】
ある場合において、配列の同一性のレベルは、16S rRNA遺伝子の長さの少なくとも10%を超えて、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも95%を超えてよい。特に好ましい場合において、配列同一性は、16S rRNA遺伝子の全長、又はほぼ全長にわたって測定してよい。配列同一性は、ある場合において、少なくとも50にわたって、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも250ヌクレオチドにわたって、より好ましくは少なくとも500ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも1000ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも1400ヌクレオチドにわたって測定してよい。
【0036】
ある好ましい場合において、系統発生分析を用いて、本発明で用いるための好ましいバチルス株を定義してよく、特に、16S rRNA遺伝子のこのような分析を用いてよい。系統発生樹は、CLUSALWプログラム(http://align.genome.jpで利用可能)を用いて描くことができる。Ash et al(1991)により用いられた方法論を、系統発生分析において用いてよい。ある好ましい場合において、バチルスは、本明細書に記載される方法論により定義されるバチルスの16S rRNAの系統発生分析により定義される第1群のバチルスである。別の特に好ましい実施形態において、バチルスは、系統発生分析において、バチルス・サーキュランス、好ましくはバチルス・スフェリカス(Bacilus sphaericus)、特にバチルス・フィルムスに対してよりも、配列番号1〜6、バチルス・カテヌラトゥス、バチルス・シビ及びバチルス・インディカスのいずれか1つの16S rRNA配列に、より近縁である。ある場合において、バチルスは、バチルス・カテヌラトゥス、バチルス・シビ及びバチルス・インディカス並びに配列番号1〜6と同じ系統発生群に入るだろう。
【0037】
ある好ましい場合において、系統発生分析は、CLUSTALW、特にバージョン1.83を用いて行われる(http://align.genome.jp/)。バーは、部位当たり0.01ヌクレオチド置換に設定されるのが好ましい。百分率類似性は、好ましくは、配列のCLUSTALWマルチプルアラインメント[http://npsa−pbil.ibcp.fr/]プログラムにより決定され得る。
【0038】
本発明のある好ましい実施形態において、本発明による細菌は、好ましくはバチルスspp.HU33(NCIMB41342)である。NCIMB41342は、2005年9月19日に寄託された。特に好ましい場合において、本発明による細菌は、バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)及びHU36(NCIMB41361)の1つである。NCIMB41359、41360及び41361は、2005年12月1日に寄託された。特に好ましい場合において、バチルスは、HU36又はその変異株、派生株若しくは突然変異体であってよい。NCIMB−国立工業海洋食品細菌コレクション(National Collections of Industrial,Marine and Food Bacteria)、Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn,Aberdeen,AB21 9YA,UK。
【0039】
ある場合において、バチルスは、
(i)それぞれアクセッション番号NCIMB41342、41359、41360及び41361のバチルスspp.HU19、HU28、HU33又はHU36の1種、及び/又は
(ii)上記の4株のいずれか1つの16S rRNA配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれらの変異株又は突然変異株
である。
【0040】
好ましい場合において、配列同一性のレベルは、少なくとも95%である。
【0041】
本発明による細菌は、典型的には色を有する。胞子の状態の本発明による細菌の色は、栄養細胞の状態の本発明による細菌の色とは典型的に異なる。本発明による細菌の色は、好ましくは赤、橙又は黄、特に橙、又は黄色である。特に、細菌は、栄養成長している間は黄色であり、その胞子の状態では橙色であるのが好ましい。カロテノイド合成に関係する遺伝子に改変を加えて、異なる色のバチルスを製造してよい。
【0042】
典型的には、用いられるバチルスは、その栄養細胞及び胞子の状態の間で色の切り替えを示し、よって、胞子形成又は発芽は、色の変化を導く。特に好ましい場合において、色の変化は、橙色から黄色又はその逆である。ある場合において、色は肉眼で測定でき、別の場合には色の変化は、例えば、分光光度法又は他の類似の方法により測定できる。ある場合において、バチルスは、胞子と栄養細胞の状態の間で色の変化を示さなくてよい。
【0043】
本発明において用いられるバチルスは、以下の特徴の1つ又は複数をさらに又は代わりに示してよい。
− 膨潤胞子嚢内の楕円体胞子;
− 非運動性である;
− デンプンを加水分解可能である;
− 塩化ナトリウムの存在下、例えば少なくとも2%のNaCl、好ましくは少なくとも4%のNaCl、さらにより好ましくは少なくとも6%のNaCl、さらにより好ましくは8%までのNaCl溶液中で成長可能である;
− ヒ酸塩に対する耐性を示し、例えば2mMヒ酸塩、好ましくは5mMのヒ酸塩、より好ましくは少なくとも10mMのヒ酸塩、さらにより好ましくは少なくとも15mMのヒ酸塩、より好ましくは20mMまでのヒ酸塩中であっても成長可能である;
− 特に富栄養寒天上で画線培養したときに、嫌気的に成長できない;及び/又は
− 50℃以上の温度で成長できない。
【0044】
ある場合において、バチルスは、上記の特徴の全てを示してよい。別の場合において、バチルスは、これらの特徴の少なくとも2、3、4、5又はそれより多くを示してよい。バチルスは、液体培養で成長させたときに嫌気的に成長可能であり、次いでDSMプレート上で画線培養されるものであってよい場合がある。バチルスは、嫌気条件下で胞子形成できないものであってよい。ある実施形態において、バチルスは、水生生物又は対象、特に海産食物を消費したヒト対象からの糞便から単離されたか、又はこれらから元来単離されたものであってよい。
【0045】
ある好ましい場合において、本発明のバチルスは、以下の遺伝子の1つ又は複数を含む。
− ggppシンターゼ(crtE様)遺伝子;
− フィトエンシンターゼ(crtB様)遺伝子;
− 3又は4ステップフィトエンデサチュラーゼ(crtI様)遺伝子;
− シクラーゼ(おそらくモノシクラーゼ)(crtY様)遺伝子;
− β環3,3’ヒドロキシラーゼ(crtZ様)遺伝子;及び/又は
− β環4,4’オキシゲナーゼ(ケトラーゼ)、(crtW及びcrtO/bkt様)遺伝子。
【0046】
ある場合において、バチルスは、上記の遺伝子の全て、又はこれらの遺伝子の少なくとも2、3、4又は5つを含んでよい。好ましくは、本発明によるバチルスは、上記の遺伝子の全てを有する。
【0047】
本発明のバチルスは、寄託された株の天然に存在する変異株であってよいか、又は代わりに、寄託された株から派生した株若しくはこのような株の突然変異体であってよい。このような天然の変異株及び派生株は、本明細書に記載される任意の特徴を保持してよい。好ましい場合において、変異株の16S rRNAは、NCIMB41359、41360、41361及び41362のアクセッション番号をそれぞれ有するバチルスspp.HU19、HU28、HU33及びHU36に対して、本明細書に示す配列同一性の百分率レベルの1つ又は少なくとも1つを有する。別の場合において、変異株、突然変異体又は派生株は、配列番号1〜6のいずれか1つに対して、本明細書に記載する配列同一性のレベルのいずれかを有してよい。
【0048】
ある場合において、本発明のバチルスは、硝酸塩及び/又は亜硝酸塩を用いて成長し得る。ある場合において、バチルスは、抗生物質耐性を与える任意のエピソームを欠損してよい。ある場合において、バチルスは、表9及び/又は10に示す抗生物質耐性、特に、厳密なレベルよりもむしろプロファイルを示してよい。バチルスは、クリンダマイシンに対する耐性を示してよいが、別の実施形態においては示さなくてよい。株は、Caco−2細胞に対する接着性のレベルが低くてよい。
【0049】
ある場合において、実施例に記載される任意のアッセイ又は方法は、特定のパラメータを測定するために用いてよい。バチルスは、エンテロトキシンを欠損してよく、特に、セレウス菌(B.cereus)のエンテロトキシン遺伝子を有さなくてよい。バチルスは、糞便を分析することにより測定されるように、GIT(胃腸管)内で2週間持続し得る。
【0050】
バチルスは、典型的には、胞子若しくは栄養細胞の形、又はこれらの混合の形である。特に好ましい場合において、バチルスは、胞子の形である。バチルスが胞子の形である場合に、バチルスを、発芽できないように処理してよい。例えば、胞子は熱により処理でき、例えば、オートクレーブに供して発芽を妨げてよい。多くの場合、バチルスは、発芽可能な胞子の形で提供されてよい。胞子又は栄養細胞は、ある実施形態において、単離された形で提供され得る。
【0051】
改変されたバチルス
ある場合において、バチルスは、遺伝子改変されたもの、特に、本明細書に記載される使用の1つに対するその適性を増加させるように遺伝子改変されたものであってよい。遺伝子改変の方法は、例えば、Sambrook,J.and Russel DW.(Editors)Molecular Cloning,A laboratory Manual vol.1,2,and 3.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Sring Harbor,New York.2001.third Editionに記載されている。
【0052】
バチルスは、例えば、無作為又は定方向の突然変異誘発に供してよく、特に、選択を行って、所望の特徴を有する突然変異体を単離してよい。本発明は、異種遺伝子を含むように遺伝子改変されたバチルスも提供する。ある場合において、バチルスは、1つ又は複数の外来核酸配列、特に1つ又は複数の遺伝子の導入により改変されてよい。例えば、1、2、3、4、5又はそれより多くの外来遺伝子を導入してよい。このような遺伝子改変は、バチルスが所望の化合物又は所望の化合物以上のものを製造するように行われてよい。ある場合において、バチルスは、このような数の遺伝子を突然変異させて、例えばそれらを不活性化するか又は特定のポリペプチドを突然変異させるように改変されてよい。
【0053】
バチルスは、無作為突然変異誘発に供してよい。例えば、細菌を、X線照射及びUV照射のような物理的突然変異誘発法に供してよいか、又はこれらを、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、及びエチルメタンスルホネート(EMS)のような化学的突然変異誘発剤に供してよい。
【0054】
ある場合において、遺伝子改変は、バチルスが以前に製造しなかった特定のカロテノイドを製造するか、又は代わりに、以前に製造していたよりも高い若しくは低い量で、好ましくは高い量で特定のカロテノイドを製造することを意味してよい。別の実施形態において、改変は、以前に製造されなかった所望のカロテノイドの前駆体若しくは誘導体又は別の代謝物が製造されるか、或いは以前に製造されていたよりも多い又は少ない量で、好ましくはより多い量で製造されることを意味してよい。よって、バチルスは、ある場合において、カロテノイド合成に関係する遺伝子に突然変異を有するか、又はカロテノイド合成に関係するさらなる異種遺伝子が導入されていてよい。
【0055】
ある場合において、改変又は変異は、バチルスが胞子と栄養細胞の形の間で色の変化を示さないことを意味してよい。別の場合において、このような色の変化は保持されてよい。
【0056】
導入された遺伝子は、プロモーター及び/又は調節要素の制御下にあって、所望の発現を与えてよい。例えば、遺伝子の発現は、遺伝子産物が所望のときにのみ製造されるように誘導性であってよい。代わりに、タンパク質を標的にする他の調節配列が存在してよい。例えば、外来タンパク質は、胞子殻を標的にしてよく、ある好ましい場合において、胞子の殻タンパク質又は胞子の殻タンパク質の一部分との融合タンパク質を含んでよい。特に好ましい場合において、タンパク質は、特にタンパク質が抗原である場合は、バチルスのCotB又はCotC殻タンパク質との融合タンパク質として発現されてよい。バチルスで発現される外来タンパク質は、酵素、抗原、ホルモン及び構造タンパク質を含んでよい。
【0057】
バチルスの遺伝子でない遺伝子がバチルスに導入される場合、遺伝子は、バチルスでの発現のために最適化されたコドンであってよい。
【0058】
別の場合において、バチルスは、以下の外来遺伝子の1つ又は複数を含む。
二環式ベータシクラーゼ(crtY及び/又はcrtL−b遺伝子の産物である);
イプシロンシクラーゼ(crtL−e遺伝子の産物である);
デヒドロスクアレンシンターゼ(crtM遺伝子の産物である);
デヒドロスクアレンデサチュラーゼ(crtN遺伝子の産物である);
フィトエンデサチュラーゼ(crtI遺伝子の産物である);
フィトエンデサチュラーゼ(Pds遺伝子の産物である);
ζ−カロテンデサチュラーゼ(crtQ遺伝子の産物である);
ζ−カロテンデサチュラーゼ(Zds遺伝子の産物である);
リコペンエロンガーゼ(crtEb;C50カロテノイド生合成の産物である);
ゼアキサンチングルコシラーゼ(crtX遺伝子の産物である);
C3カロテンヒドロキシラーゼ(crtZ様遺伝子の産物である);
C2カロテンヒドロキシラーゼ(BcrtG遺伝子の産物である);
C4オキシゲナーゼ(crtW様遺伝子の産物である);
C4オキシゲナーゼ(bkt様遺伝子の産物である);
ゼアキサンチンエポキシダーゼ(zep1遺伝子の産物である);
ビオラキサンチンデエポキシダーゼ(vde遺伝子の産物である);
カプサンチン/カプソルビンシンターゼ(ccs遺伝子の産物である);
β−カロテンデサチュラーゼ(crtU遺伝子の産物である);
デカプレノキサンチンシンターゼ(crtYe/Yf遺伝子の産物である);及び/又は
香気、風味及び/又は医薬関連化合物(例えばレチノール)を生産するカロテノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD’s)。
【0059】
種々のバチルスの間の相同性が近いことにより、改善された酵素活性及び新しいカロテノイドの組合せを作製可能な変更された活性の生成のための定向進化、セクシャルPCR及び遺伝子シャッフリングの使用が促進される(Schmidt−Dannert,C.2000,Directed evolution of single proteins,metabolic pathways and viruses.Biochemistry 40,13125−13136.)。
【0060】
このような改変は、本明細書に記載される任意のバチルスに対して、ある好ましい場合において、配列番号1〜6のいずれかと少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有するバチルスに対して行ってよい。本明細書に記載される任意の改変は、ある場合において、HU19、HU28、HU33又はHU36株に対して行ってよい。本発明は、これらの株の改変されたバージョンを提供する。
【0061】
ワクチン
バチルスを改変して、抗原を発現させ、よって、ワクチンとして用いてよい。つまり、本発明は、バチルスと医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含むワクチンを提供する。特に好ましい場合において、ワクチンは、経口投与に適し、特に胞子の形である。ある好ましい場合において、抗原は、ワクチンの表面上で発現される。別の場合において、これは細胞内で発現されることがある。胞子の安定性は、ワクチンを保存するための温度制御が容易に可能でないか又は高価すぎる発展途上国におけるワクチンの製造のために、それらが特に有用であることを意味する。胞子の色は、ワクチンが子供達の興味を引くことを意味する。
【0062】
つまり、バチルスは、抗原、その免疫原性断片又はいずれかの免疫原性変異形をコードしてよい。抗原は、特に、ウイルス、細菌、寄生体若しくは真菌の病原体抗原又は腫瘍抗原であってよい。ある好ましい場合において、抗原は、ウイルス抗原、その免疫原性断片又はいずれかの免疫原性変異形であってよい。
【0063】
バチルスは、抗原をコードしてよく、よって、限定されないが、真菌、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、HIV、HSV2/HSV1、インフルエンザウイルス(A、B及びC型)、ポリオウイルス、RSVウイルス、ライノウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス群、エンテロウイルス、アストロウイルス、麻疹ウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、ポックスウイルス、マルブルグウイルス及びエボラを含むウイルス;結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、クラミジア(Chlamydia)、淋菌(N.gonorrhoeae)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、コレラ菌(Vibrio Cholera)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidua)、シュードモナス(Pseudomonas)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ブルセラ(Brucella)、野兎病菌(Franciscella tulorensis)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospria interrogaus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pnumophila)、ペスト菌(Yersinia pestis)、連鎖球菌(Streptococcus)(A及びB型)、肺炎球菌(Pneumococcus)、髄膜炎菌(Meningococcus)、ヘモフィラス・インフルエンザ(Hemophilus influenza)(b型)、トキソプラズマ原虫(Toxoplama gondii)、コンプリバクテリオシス(Complybacteriosis)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、鼠径リンパ肉芽腫症(Donovanosis)及びアクチノミセス症(Actinomycosis)を含む細菌;カンジダ症及びアスペルギルス症を含む病原性真菌;サナダムシ、吸虫類、回虫、アメーバ症、ラングル鞭毛虫症、クリプトスポリジウム、住血吸虫、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、トリコモナス症及び旋毛虫症を含む病原性寄生体のような病原体による癌、アレルギー、毒性及び感染を含むがこれらに限定されないいくつかの状態の治療又は予防のためのワクチンとして用いてよい。ある好ましい場合において、ワクチンは、炭疽菌(Bacillus anthracis)に対するものであってよく、特に、炭疽菌に対する防御抗原をコードしてよい。
【0064】
バチルスは、口蹄病、コロナウイルス、動物パスツレラ症病原菌(Pasteurella multocida)、ヘリコバクター(Helicobacter)、普通円虫(Strongylus vulgaris)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumonia)、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌(E.coli)、百日咳菌、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)及び気管支敗血症菌(Bordetella brochiseptica)のような多数の獣医学的疾患に対する適切な免疫応答を提供するために用いることもできる。
【0065】
バチルスは、癌を治療又は予防するためのポリペプチドをコードしてよい。特に好ましい実施形態において、本発明の構築物は、腫瘍抗原をコードしてよい。腫瘍関連抗原の例は、限定されないが、MAGEファミリー(MAGE1、2、3など)のメンバー、NY−ESO−1及びSSX−2のような精巣癌抗原、チロシナーゼ、gp100、PSA、Her−2及びCEAのような分化抗原、突然変異自己抗原並びに腫瘍発生HPV型からのE6及び/又はE7のようなウイルス性腫瘍抗原を含む。特定の腫瘍抗原のさらなる例は、MART−1、Melan−A、p97、ベータ−HCG、GaINAc、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−4、MAGE−12、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC18、CEA、DDC、P1A、EpCam、黒色腫抗原gp75、Hker 8、高分子量黒色腫抗原、K19、Tyrl、Tyr2、pMel 17遺伝子ファミリーのメンバー、c−Met、PSM(前立腺ムチン抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、前立腺分泌タンパク質、アルファ−フェトプロテイン、CA125、CA19.9、TAG−72、BRCA−1及びBRCA−2抗原を含む。抗原が由来し得る具体的な癌の例は、肺癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、精巣癌、腸癌、黒色腫、リンパ腫及び白血病からのものを含む。
【0066】
抗原は、自己免疫障害に関係する抗原であり得る。つまり、抗原は、自己抗原であってよい。
【0067】
刺激の検出
本発明のバチルスは、バチルスの胞子及び栄養細胞の形の色が異なってよいので、胞子形成又は発芽のときに色の変化を示してよい。このことは、このようなバチルスを、特定の刺激を検出するために用いてよいことを意味する。つまり、本発明のある好ましい場合において、用いられるバチルスは、このような色の変化を示す。
【0068】
発芽を用いて刺激を検出することは、検出可能な色の変化が数分で生じ得るので、典型的には非常に迅速である。さらに、胞子は、比較的安価で製造でき、非常に持続性があるので、長い貯蔵寿命を有する結果をもたらし、刺激の検出におけるそれらの使用のさらなる利点を示す。
【0069】
よって、ある場合において、本発明は、
(i)刺激が存在するときに誘発され、発芽して栄養細胞を生じるバチルスの胞子であって、胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子を提供すること、
(ii)刺激の存否を決定するのに望ましい試験条件下で該胞子を曝露すること、及び
(iii)胞子の発芽に起因する色の変化の存否を検出して、刺激の存否を決定すること
を含む、刺激を検出する方法を提供する。
【0070】
それらの栄養細胞及び胞子の形の間で色が変化する本明細書に記載される任意のバチルスを、このような方法に用いてよい。
【0071】
ある場合において、刺激自体が、胞子の発芽を誘発する発芽物質である。例えば、刺激は、光、湿気、pH(特に低pH)及び/又は温度変化(特に温度ショック)のような環境刺激であってよい。代わりに、刺激は、胞子の発芽を誘発する発芽物質の生成をもたらす。
【0072】
発芽物質の例は、アミノ酸、ヌクレオシド(例えばアデノシン又はイノシン)、糖(例えばグルコース)及び/又は種々の細菌、特に病原菌からの代謝物を含む。発芽物質として作用し得るアミノ酸の例は、L−アラニン、L−プロリン、L−ロイシン及び/又はL−バリンを含む。特に好ましい場合において、発芽物質はアミノ酸である。このような発芽物質は、発芽の誘発が望まれる本明細書に記載される種々の方法において用いてもよい。方法を行う条件は、刺激が存在するならば発芽を可能にするのに適するであろう。
【0073】
ある好ましい場合において、上記の方法は、刺激の存在下で修飾されて、胞子の発芽を誘発する発芽物質を生産する基質を含む。つまり、刺激は、胞子に影響を及ぼさない基質の、胞子の発芽を誘発する発芽物質への変換を引き起こし、よって刺激の検出を可能にする特定の作用物質の存在であってよい。例えば、刺激は、基質の開裂をもたらして、発芽物質を生産してよい。ある場合において、刺激は、発芽物質の発生を導く一連の事象を誘発してよい。
【0074】
ある好ましい場合において、刺激は、基質を修飾して発芽物質を生産し得る酵素、特に基質を開裂して発芽物質を生産し得るプロテアーゼ又はアミノペプチダーゼの存在であってよい。ある好ましい場合において、基質は、開裂されて発芽物質として作用し得るアミノ酸を増加させ得るジペプチドであってよい。ある場合において、ジペプチドは、本明細書に記載される任意のアミノ酸、特に、同じアミノ酸のジペプチドを含んでよい。特に好ましい場合において、ペプチドは、Ala−Alaであってよく、この開裂は、発芽物質として作用できるアラニンを生産する。
【0075】
ある好ましい場合において、刺激は、特定の生物、特に微生物、好ましくは病原菌の存在であってよい。生物は、例えば、基質を開裂でき、よって発芽を誘発できる酵素を放出してよい。細菌は、基質の修飾、よって胞子の発芽を導く上記の任意の酵素を放出してよい。微生物を検出する能力を用いて、試料が微生物を含むかを決定してよい。
【0076】
上記の方法は、無菌性及び/又は汚染の試験のために用いてよい。上記の方法を用いて、望ましくない作用物質を検出し、ある好ましい場合においては、戦争又はテロ行為において用いられ得る生物学的作用物質を検出してよい。このような方法を用いて、例えば血液、血漿、血清及び組織試料のような生物学的材料の中の微生物の存在を検出してよい。本発明は、組織バンク及び血液バンクでの汚染の試験のために用いてよい。上記の方法は、医薬及び薬剤のような包装された商品中の微生物汚染のための試験に用いてよい。ある好ましい場合において、本発明は、医薬製品及び組織培養のような液体試料中の汚染のための試験に用いてよい。組織培養中のマイコプラズマ汚染について試験してよい。
【0077】
本発明を用いて、血清、生理食塩水点滴剤、細胞培養培地、緩衝液、水及び一般的な液体の無菌性又は汚染を確認してもよい。上記の方法を用いて、薬剤又は食品の製造のような製造中の無菌性をモニタリングしてよい。
【0078】
上記の方法を用いて、滅菌された物質の汚染を検出してよい。上記の方法を用いて、病院、学校、政府及び軍の施設での生物を検出してよい。
【0079】
検出され得る微生物の例は、本明細書に記載される任意のもの、好ましくは炭疽菌及びセレウス菌のような病原性バチルス株、特に炭疽菌を含む。MRSAを検出し得る。検出され得る病原菌は、ETEC(毒素原性大腸菌)、コレラ菌、マイコプラズマ(Mycoplasmas)、緑膿菌(Pseudomonas aeuroginosa)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)、チフス菌(salmonella typhi)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、化膿性ブドウ球菌(Streptococcus pyogenes)及び髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、赤痢アメーバ(Entameoba histolytica)、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium paruum)、ランブル鞭毛虫(Giardie lamblia)、フィエステリア(pfiesteria)、トキソプラズマ原虫及びカンピロバクター(Campylobacter)を含む。
【0080】
ある好ましい場合において、発芽している胞子又はそれにより得られる栄養細胞は、それら自体で、存在する他の胞子の発芽を誘発する刺激を増加させ得るものであってよい。このことにより、本方法を非常に高感度にする初期の誘因の増幅を導き得る。よって、非常に少量の刺激が、検出可能な色の変化を誘発し得る。例えば、1000以下、好ましくは100以下、より好ましくは25以下、さらにより好ましくは10以下、さらにより好ましくは単一のような少数の微生物の存在が、検出可能な色の変化を誘発し得る。別の場合において、胞子の発芽は、他の発芽を誘発しないであろう。このことにより、本方法が、色の変化の強度の検出による定量的又は半定量的になることが可能であり得る。
【0081】
上記の方法における色の変化は、任意の適切な手段を用いて検出してよい。例えば、色の変化は、肉眼により、分光光度法を用いることにより、デジタルカメラ又は色の変化を検出するために使用できる任意の他の検出手段の使用により、検出してよい。色の変化の検出は、自動化してよい。ある場合において、上記の方法は、定性的、半定量的又は定量的であってよい。多くの実施形態において、刺激のレベルが高いと、より多くの胞子が発芽し、色の変化がより大きくなり、よって、上記の方法が定量的又は半定量的になり得る。特定の刺激の種々の量/レベルである標準物質を、対照として用いてよい。ある場合において、試験試料を胞子に加え、色の変化の存否を検出してよい。別の場合において、バイオセンサがin situで存在してよい。バイオセンサは、刺激に曝露されたときに、1時間、好ましくは30分間、さらにより好ましくは15分間で結果を与え得ることが好ましい。
【0082】
本発明は、バチルスを含み、発芽に起因する上記の色の変化に基づくバイオセンサも提供する。特に好ましい場合において、バイオセンサは、刺激により修飾されて上記の発芽物質を提供し得る基質も含む。さらに好ましい場合において、バイオセンサは、支持体上に備えられたバチルスを含む。本発明によるバイオセンサに用いられる支持体は、好ましくは、胞子を支持し得る不活性表面を提供し、胞子又は胞子から発芽するであろう栄養細胞の色とは異なる色を有してよい。支持体の色は、バチルスの胞子と対照的な色であることが好ましい。例えば、支持体は、珪素(例えばシリコンウエハ)、紙(例えばろ紙)、マイカ、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート又は脂質フィルム(例えばリン脂質二重層又は単層)を含んでよい。本発明によるバイオセンサは、所望により小型化されてよく、本発明によるバイオセンサを複数含むアレイ上に備えられてよい。ある場合において、バイオセンサは、陽性又は陰性の試験結果を与えるように設計された対照領域を含んでよい。
【0083】
ある場合において、バイオセンサは、複数の試料を分析するように適合されてよい。例えば、バイオセンサは、自動化読み取りを促進するフォーマットであってよく、マルチウェルフォーマットであってよい。ある場合において、刺激の存否について試験するために、試料をバイオセンサに加えなければならないだろう。別の場合において、バイオセンサは、そこに試料を加えなくても刺激を感知し得る。例えば、バイオセンサを、in situに放置してよく、任意の色の変化は、例えば病原菌の存在のような刺激の存在を示す。
【0084】
本発明は、刺激を検出するためのキットであって、
(i)誘発されて刺激が存在するときに発芽して栄養細胞を与えるバチルスの胞子であって、胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子と、
(ii)バチルスをどのように用いて刺激の存在を検出するかについての指示書と
を含むキットも提供する。
【0085】
本発明は、
(i)誘発されて刺激が存在するときに発芽して栄養細胞を与えるバチルスの胞子であって、胞子及び栄養細胞が、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子と、
(ii)刺激の存在下で修飾されて、少なくとも1つの胞子の発芽を誘発する発芽物質を増加させる基質と
を含むキットも提供する。
【0086】
本発明は、
(i)バチルスの胞子であって、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するのでバチルスの栄養細胞とは異なる色である胞子を、試験条件又は作用物質に曝露すること、及び
(ii)バチルスの胞子を発芽物質と接触させ、胞子が死滅されたか又は不活性化されたかを決定するために、胞子の発芽に起因する色の変化の存否を検出すること
を含む、胞子を死滅又は不活性化させる方法の評価に用いてもよい。
【0087】
このような方法は、特に、滅菌効率を決定し、特にオートクレーブの効率を評価するために用いてよい。このような方法は、炭疽菌の胞子又は生物兵器若しくはバイオテロリズムとして用い得る他の胞子形成病原菌を死滅させる方法の効率を決定するために用いてよい。
【0088】
本発明は、
(i)バチルスの胞子であって、バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので栄養細胞とは異なる色である胞子を提供すること、
(ii)胞子を、胞子の発芽に適する条件下で試験物質と接触させること、及び
(iii)試験作用物質がバチルスの成長を妨げるかを決定するために、色又は色の強度の変化を検出すること
を含む、抗生物質を同定する方法も提供する。
【0089】
確かめる色の変化は、ある場合においてバチルスの発芽及びその後の成長、別の場合では栄養細胞の数の増加に起因する色の変化であってよい。このような色の変化の防止は、試験作用物質が抗生特性を有することを示し、これを次いでより詳細に調べることができる。適切な対照を、抗生活性を有することが知られている化合物及び/又はそのような活性が欠如していることが知られている化合物を用いて行ってよい。
【0090】
上記のアッセイにおいて試験され得る適切な試験物質は、コンビナトリアルライブラリー、定義された化学物質及び化合物、ペプチド及びペプチド模倣物質並びに天然生成物ライブラリーを含む。典型的には、有機分子、好ましくは50〜2500ダルトンの分子量を有する小有機分子をスクリーニングする。候補生成物は、糖類、脂質、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体を含む生体分子又はそれらの組合せであり得る。候補作用物質は、合成又は天然の化合物のライブラリーを含む非常に多様な供給源から得られる。既知の薬物は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの支配された又は無作為の化学修飾に供して、構造類似体を生成し得る。試験物質は、例えば反応当たり10の物質の初期スクリーニングに用いて、活性を示すこれらのバッチの物質を個別に試験してよい。
【0091】
カロテノイド、カロテノイド前駆体及び所望の誘導体の製造
本明細書に記載するバチルスは、所望の化合物の製造に用いてよい。特に好ましい場合において、バチルスは、カロテノイド並びにカロテノイド前駆体及びカロテノイドの誘導体を製造するために用いてよい。本発明による具体的な細菌の利点は、少なくとも1種のカロテノイドの示差的存在のために異なる色を有するカロテノイドの天然の供給源としてそれらを用いてよいことを含む。異なるクラスのカロテノイドが、細菌の発達の異なる段階で製造される。これらの化合物の異なる物理的及び化学的特性が、異なる色を与える。
【0092】
よって、本発明は、本明細書に記載されるバチルスを栄養成長させ、及び/又はバチルスの胞子を生成させることを含む、カロテノイド、カロテノイド前駆体又はカロテノイドの誘導体を製造する方法を提供する。上記の方法は、典型的には、バチルスから所望の化合物を回収することを含む。ある場合において、胞子又は栄養細胞を破壊して、所望の化合物を含む抽出物を得る。所望の化合物は、胞子及び/又は栄養細胞の他の成分からさらに単離され得る。
【0093】
カロテノイドは、バチルスから単離してよい。カロテノイドは、本明細書に記載する任意の態様においてバチルスの代わりに用いてよい。種々の方法を用いて、バチルスからカロテノイドを得てよい。カロテノイドを、培養物から単離して精製してよい。特に、カロテノイドは、有機溶媒を用いて抽出できる。バチルスを、まず、遠心分離又はろ過のような通常の方法により培養物から分離し、次いで、カロテノイドを抽出してよい。抽出溶媒としては、所望の化合物が溶解可能な任意の物質を用い得る。例えば、ジクロロメタン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、ヘキサン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、二硫化炭素、ジエチルエーテル、アセトンのような有機溶媒を用いてよい。特に好ましい溶媒の例は、クロロホルム、アセトン、ヘキサン及びジエチルエーテルを含む。精製は、吸収、溶出、溶解などの従来のクロマトグラフィー手順の単独又は好ましくは組合せにより行うことができる。
【0094】
よって、ある場合において、本発明は、カロテノイド、カロテノイド前駆体又はカロテノイド誘導体を製造する方法であって、
− 本発明のバチルスを提供すること;
− バチルスの成長及び/又は胞子形成、よってカロテノイドの製造を引き起こすか又は可能にすること;及び
− バチルスからカロテノイドを抽出すること
を含む方法を提供する。
【0095】
ある場合において、上記の方法は、バチルスの栄養細胞の形の胞子形成を誘導し、胞子からカロテノイドを抽出することを含んでよい。別の場合において、カロテノイド又はその他の化合物は、バチルスの栄養細胞から抽出される。
【0096】
本発明による細菌により製造されるカロテノイドは、栄養細胞内のケト/ヒドロキシル−カロテン誘導体(例えばヒドロキシル−スフェロイデン、1−HO−デメチルスフェロイデン、3,4−ジヒドロスフェロイデン及び/又は15−シスフィトエン)が好ましい。本発明による細菌は、ケト及びヒドロキシル部分を有する環状カロテノイドを製造するので、これは、アスタキサンチン、4−ケトゼアキサンチン、エキネノン、ヒドロキシル−エキネノン誘導体、フェニコアキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、β−カロテン、γ−カロテン及び/又は単環式カロテノイドのケト/ヒドロキシ誘導体を製造する能力を有し、バチルスは、このような目的のために用いてよい。さらに、脂肪酸エステル及び/又はグルコシド誘導体も製造してよい。
【0097】
本発明のある特定の利点は、バチルス及びそれらから抽出されるカロテノイドはともに、耐酸性、特に胃酸耐性であり得ることである。このことは、バチルス又はカロテノイドを受容した生物が、吸収又は摂取されたカロテノイドの量の点で、それらからより大きい利益を導き得るという利点を有する。ある場合において、バチルス又はカロテノイドは、擬似胃条件でカロテノイドの分解に対する耐性を示し得る。例えば、擬似胃液(SGF)を用いてよい。SGFの例は、37℃にて1時間のインキュベーションでの0.9% NaCL(pH2)に溶解された1mglmlペプシンである。SGF及びアッセイは、本明細書に記載される任意の生物での条件を模倣するように調節してよい。ある場合において、1時間のインキュベーションの後に、カロテノイドの少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%が残存し得る。本明細書に記載される任意のアッセイを用いて、カロテノイドのレベルを測定してよい。
【0098】
本発明のバチルスは、特定の所望のカロテノイド及び/又はその他の所望の代謝物を製造するように改変したものであってよい。カロテノイド、タキサン及びアルテミシニンは、貴重な精製化学薬品の例である。これらの化合物は全てイソプレノイドであり、よって、C5前駆体イソペンテニル二リン酸(IPP)により生合成的に関連する。ユビキノンのようなイソプレノイドは、微生物の成長に必須であり、よって、生物は、イソプレノイド生合成経路を有する必要がある。しかし、この経路により形成されるイソプレノイドのクラスは、広範な代謝生物多様性を示す。例えば、ほとんどの細菌は、C20プレニル前駆体ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)を作製する能力を有さない。このイソプレノイドは、カロテノイド及び抗癌化合物タキサンの前駆体である。ファルネシル二リン酸(C15;FPP)は、抗マラリア薬アルテミシニンの前駆体である。つまり、本発明によるバチルスは、カロテノイド及びタキサンの両方の形成のためのイソプレノイド前駆体の重要な役に立ち得る供給源である。
【0099】
本明細書に記載されるバチルスは、このような化合物、特にイソプレノイドの製造に用いてよい。これらは、このような化合物を天然に発現し、このような化合物を製造するように遺伝子改変され、及び/又はこのような化合物を過剰発現するように改変されてよい。バチルスは、GGPP及び/又はファルネシル二リン酸を製造するために用いてよく、これらは次いでバチルスから回収され得る。回収された化合物は、次いで、タキサン又はアルテミシニンを合成するために用いてよい。或いは、バチルスは、このような化合物を直接合成可能であってよく、これは次いで回収できる。
【0100】
活性内因性GGPP形成経路の存在は、他の生物については必要であると以前に見出されている前駆体経路をバチルス内に工学的に作製する必要性を緩和する。さらに、本発明のバチルス内での高度に活性なステロール経路の不在は、これらの必須の膜成分への炭素の転換を防げる。例えば、酵母でのカロテノイド製造を最適化するために、スクアレンシンターゼを下方制御して、FPPをステロール経路からGGPPに、次いでカロテノイドに転換する必要であることが見出されている。さらに、バチルスは、IPPを、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸(DXP)経路により、例えばピルビン酸及びグリセルアルデヒド−3−リン酸から形成する。
【0101】
バチルスは、1又は複数種の上記の生成物を発現するので、生成物の代謝多様性は、かなり広がる。これらの生成物に加えて、これらのエステル化及びグルコシド誘導体も発現され得る。例えば、バチルスは、図4及び5に示す任意の化合物の製造のために用いてよい。
【0102】
ある好ましい場合において、メバロン酸経路の遺伝子を、バチルスに導入してよい。例えば、1つ又は複数の、好ましい場合においては全てのatoB、HMGS、tHMGR、ERG12、ERG8、MVD1、idi及びispA遺伝子又はそれらの機能的等価物を、バチルスに導入してよい。特に好ましい場合において、特にMVA遺伝子に加えて、アモルファ−4,11,ジエンシンターゼ(ADS)遺伝子を導入して、抗マラリア薬アルテミシニンの重要な前駆体アモルファ−4,11,ジエンの合成を可能にしてよい。つまり、アモルファ−4,11,ジエンを、本発明のバチルスを用いて合成してよい。好ましい態様において、Martin et al(2003)に記載されるMVA経路を工学的に改変して導入する経路を用いてよい。
【0103】
好ましい場合において、
− atoB遺伝子を導入して、アセチル−CoA(AA−CoA)の合成を可能にしてよい;
− HMGS遺伝子も導入して、ヒドロキシメチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)の合成を可能にしてよい;
− tHMGR遺伝子も導入して、メバロン酸の製造を可能にしてよい;
− ERG12遺伝子を導入して、メバロン酸5−リン酸(Mev−P)の合成を可能にしてよい;
− ERG8遺伝子を導入して、メバロン酸ピロリン酸(Mev−PP)の合成を可能にしてよい;
− MVD1遺伝子を導入して、ピロリン酸イソペンチル(IPP)の合成を可能にしてよい;
− idi遺伝子を導入して、ピロリン酸ジメチルアリル(DMAPP)の合成を可能にしてよい;
− ispA遺伝子を導入して、OPPの合成を可能にしてよい;そして
− アモルファ−4,11,ジエンシンターゼ(ADS)遺伝子を導入して、アモルファ−4,11,ジエンの合成を可能にしてよい。
【0104】
上記の化合物の1つを製造するために必要な遺伝子が導入されたバチルスが提供される。つまり、経路の一部分を導入することのみによって、経路の中間体が製造され得る。本明細書に記載される任意のバチルス、特に配列番号1〜6のいずれかと少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有するものをそのように改変できる。ある場合において、HU19、28、33及び36のいずれの株は、それらに導入されたそのような改変を有してよい。
【0105】
導入されたメバロン酸経路は、単純な前駆体から放射性標識又は安定同位体標識されたカロテノイドを作製する機会も促進し、本発明は、本明細書に記載されるバチルスを用いて、放射性標識及び安定同位体標識されたカロテノイドの製造を提供する。用い得る前駆体の例は、培地に加えられたメバロン酸及び/又は酢酸を含む。このような化合物は現在、市販されていないので、それらに対する必要性がある。本発明は、このような化合物を含むバチルス及びバチルスから得られる化合物を提供する。
【0106】
本発明は、バチルスからの抽出物も提供する。特に、カロテノイドを含む抽出物、及び所望により、本明細書に記載される任意の他の化合物を含む抽出物が提供される。抽出物は、細胞全体又は胞子抽出物であってよいか、又は所望の化合物の相対量を増大させるためにさらに精製されてよい。ある場合において、特定の細胞又は胞子中に存在する全てのカロテノイドの抽出物が提供される。別の場合において、抽出物は、バチルスからのある特定のカロテノイドを含む。ある場合において、胃酸耐性カロテノイド抽出物が提供される。
【0107】
食品、食品添加物及びその他の組成物
記載されるバチルスは、カロテノイドを含み、よって、栄養価を有し、そして、経口摂取されて、特に次に食品として用いられる動物の組織に色を与えることもできる。つまり、本明細書に記載されるバチルス、及びそれらから得られる物質は、特に食品及び栄養補助食品において、経口摂取作用物質として用いてよい。好ましい場合において、バチルスの胞子は、経口摂取される。別の場合において、そのままのバチルスよりもむしろ、バチルスから得られる物質が経口摂取され、特にカロテノイドがそのように摂取される。つまり、バチルスからの抽出物が摂取されてよく、単離カロテノイド又はカロテノイド濃縮画分が摂取されてよい。バチルスのこのような使用は、例えば飼育生物のような生物からの生産量の増加をもたらし得る。
【0108】
本発明は、よって、本明細書に記載される任意のバチルス又はこのような株からの抽出物を含む食品材料又は栄養補助食品を提供する。食品材料又は補助食品は、ヒトの摂取用であってよい。別の場合において、これらは非ヒト用、例えば商業的に養殖/飼育される生物用の食品中に又はそのような食品としてあってよい。ある場合において、本明細書に記載される任意のバチルス又はそれらからの抽出物は、食品着色料として用いてよく、よって、本発明は、本明細書に記載されるバチルス又はこのようなバチルスからの抽出物を含む食品着色料を提供する。
【0109】
食品は、典型的には、1又は複数種の多量養素タンパク質、炭水化物及び脂質から主になる食用可能な物質であり、生物の体に用いられて成長を維持し、損傷を修復し、生命維持活動を助け、又はエネルギーを供給する。食品は、ビタミン若しくはミネラルのような1又は複数種の微量栄養素又は香料及び着色料のような付加的な食品成分も含んでよい。本明細書において用いる場合、食品の用語は、飲料も含む。バチルスが含まれ得る食品の例は、スナックバー、シリアル、焙焼品、ディップ及びスプレッド、菓子類、ヨーグルトを含むプロバイオティック配合物、並びに冷凍菓子を含む。好ましい食品は、ヨーグルト、チーズ及びその他の乳製品を含む。菓子及びキャンデー、特にソフトゼリータイプの菓子は、カロテノイドを含んでよい。飲料の例は、清涼飲料、スカッシュ(例えばオレンジ及びレモン)、乾燥飲料ミックス、栄養飲料及び茶を含む。飲料は、アルコール飲料であってよく、例えば、バチルス又はそれらから得られる抽出物を炭酸入りアルコールに用いて色を加えてよい。ある場合において、食品は、水生動物又はその肉を含むものであってよく、別の場合において、食品は、水生動物も該動物からの肉も他の物質も含まないものであってよい。ある場合において、これは、発酵食品であってよい。別の場合において、これは、非発酵食品であってよい。ある場合において、食品は、チョッカル(Jeotgal)でない。
【0110】
本発明のある好ましい実施形態において、バチルス又はそれらから得られる物質は、非ヒト動物、特にそれから食品又は他の物質が回収される動物に供給してよく、特に、食品に用いられる動物に供給される。つまり、このような動物のための食品、栄養補助食品及び食品添加物は、本明細書に記載されるバチルス、このようなバチルスからの抽出物を含んでよいか、又はこのような抽出物若しくはバチルスをある時点で供給されてよい。
【0111】
ある好ましい場合において、動物は、水生動物であってよい。魚類及び他の水生動物の例は、例えば、サメ、エイ、チョウザメ、ウナギ、カタクチイワシ、ニシン、コイ、キュウリウオ、サケ、マス、メルルーサ、タラ、ロックフィッシュ、バス、ドラム、サバ、マグロ、バターフィッシュ、ナマズ、カレイ及びタイを含む。ある好ましい場合において、魚類は、サケ又はマスであってよく、特にサケであってよい。ある好ましい場合において、魚類は、サケ科(Salmonidae)のメンバーである。動物は、例えばイガイ、クラム、カキ、イタヤガイ、マキガイ、ホラガイ、アワビ、イカ及びコウイカのような二枚貝、腹足類動物、頭足動物及びヒザラガイを含む軟体動物であってよい。これらは、甲殻類に供給してよい。甲殻類の例は、シバエビ、テナガエビ、ロブスター、レッドクロウ、ザリガニ、カニ、ウチワエビモドキ及びマロンを含む。好ましい甲殻類の例は、シバエビ、特にウシエビ(Penaeus monodon)(ブラックタイガーエビ)及び他のペナエウスの種を含む。ある場合において、動物は、非水生生物であってよく、特に家禽、ウシ、ブタ及びヒツジ、特にこのような飼育動物に供給してよい。ニワトリ及び七面鳥に、特にバチルス又はそれらから得られる物質を供給してよい。このような生物から製造される加工食品も提供される。
【0112】
ある好ましい場合において、食品又は栄養補助食品は、飼育動物、特に商業的に飼育される水生動物に供給してよい。例えば、このような補助食品は、飼育されるマス、サケ又は貝類、好ましい場合において、飼育されるシバエビ又はテナガエビ、特に本明細書に記載される任意のタイプのものを含む飼育されるシバエビに供給してよい。動物は、非水生飼育動物であってよい。
【0113】
バチルス及びそれらからの抽出物は、着色料の存在のために典型的には着色される。これらは、よって、食品色素として用いてよい。これらは、動物の1つ又は複数の組織が本明細書に記載される任意のものを含む特定の色になるように動物に供給してもよい。好ましくは、胞子又はそれらから得られる抽出物をこのような目的で供給してよい。好ましい場合において、バチルス及び抽出物は、バチルス又は抽出物を動物に供給することを含む、非ヒト動物の1つ又は複数の組織に色を与える方法を提供する。特に、このような技術は、飼育魚並びにシバエビ及びテナガエビにも色を与えるために用いてよい。ある場合において、バチルスは、色の目的のためでなく、単純に生産量を増大させるために与えられるか、又はその両方のために与えられる。
【0114】
バチルスの胞子が経口摂取される場合において、それらは発芽できないように処理されていてよい。このことは、胞子が不活性であり、よって好ましくは色が安定するように行われることを意味し得る。ある場合において、熱処理、特にオートクレーブ処理を用いて、胞子の発芽を防止してよい。別の場合において、胞子は発芽可能であってよい。ある場合において、バチルスを生物に供給する目的は、代わりに又は付加的に、生産量を増大させるためであってよい。つまり、例えば平均重量及び/又は重量増加が、バチルス又は抽出物を供給した生物で、供給していない対照に比較してより大きくなり得る。
【0115】
本発明は、本明細書に記載されるバチルスを含むプロバイオティックも提供する。プロバイオティックは、典型的には、腸内細菌叢を増大させ得る生菌補助物質である。ある場合において、プロバイオティックは、例えば、病気又は抗生物質治療の後に与えて、動物の正常なミクロフローラを維持することを補助してよい。このようなプロバイオティックは、本明細書に記載される任意の動物、特にヒト、そして飼育動物及び家畜並びに水生動物にも与えてよい。好ましい場合において、バチルスは、このようなプロバイオティックのために、胞子の形で用いられる。プロバイオティックは、1又は複数種の賦形剤をさらに含んでよい。許容される賦形剤は、動物、特にヒトに摂取されるに適する賦形剤である。プロバイオティックは、種々の香料を有してよく、経口摂取のために適する形であってもよい。
【0116】
本発明のバチルス及びそれらからの抽出物、特にそれらから得られるカロテノイドは、医薬組成物の製造において用いてよい。つまり、本発明は、本発明のバチルス又はそのようなバチルスからのカロテノイド抽出物と、薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物を提供する。カロテノイドは、抗酸化剤として作用でき、よって、該組成物は、多様な症状を治療又は予防するために用いてよい。
【0117】
バチルス及びバチルスからの抽出物は、医薬品の製造に用いて、癌、心臓疾患、アテローム性硬化症、白内障、眼の黄斑変性、卒中、痴呆、アルツハイマー病、骨粗鬆症、慢性疲労症候群及び男性不妊症を治療又は予防してよい。これらは、皮膚のしわ及び加齢のその他の特徴を治療するための医薬品の製造に用いてよい。これらは、糖尿病の危険性を低減し、その発症を遅延させ、又はそれを治療するために用いてよい。ある場合において、これらを用いて、化学療法の効果を増大させてよい。
【0118】
ある好ましい場合において、本発明を通じて提供される抗酸化剤は、特に、心臓疾患を予防し、その危険性を低減し、又はその発症を遅延させるために用い得るベータカロテンである。別の好ましい場合において、本発明は、ベータカロテン、ビタミンE及び/又はビタミンCを提供するために、特にLDL(低密度リポタンパク質)の酸化されやすさを低減するために用いてよい。本発明の組成物は、よって、卒中及び心筋梗塞を予防し、その危険性を低減し、又はその発症を遅延させるために用いてよい。特に好ましい実施形態において、バチルス及びそれらから得られる抽出物は、癌、心臓疾患及び白内障の予防又は治療に用いてよい。本発明を適用してよい癌のタイプの例は、肺癌、乳癌、前立腺癌及び結腸直腸癌、特に肺癌及び前立腺癌を含む。
【0119】
本発明は、本発明のバチルス又はこのようなバチルスからの抽出物の、本明細書に記載される任意の状態を改善するための医薬品、食品、栄養補助食品、プロバイオティック、栄養補給食品又は健康補助食品の製造における使用も提供する。
【0120】
ある好ましい実施形態において、バチルス及びそれらから抽出されるカロテノイドは胃耐性であり得るので、同じ効果を与えるために通常よりも低い用量、例えば半分以下、又は四分の一以下で用いてよい。
【0121】
本発明は、さらに、食用可能な担体と、本発明のバチルス又はそのようなバチルスからの抽出物とを、組成物を摂取する対象、特にヒト対象での本明細書に記載される任意の状態を改善又は緩和するための有効量で含む食用可能な組成物を提供する。組成物は、好ましくは、食品、栄養補助食品、健康補助食品、プロバイオティック、栄養補給食品又は食品添加物である。
【0122】
栄養補給食品は、疾患の予防及び治療を含む医薬的又は健康上の利益を与えると考えられる食品材料、栄養補助食品又は食品である。通常、栄養補給食品は、消費者に特定の健康上の利益を与えるように特に適合される。機能食品は、消費者に、純粋な栄養素を供給するものを超えて健康上の利益を与えるとして典型的に販売される食品である。機能食品は、典型的には、栄養上の効果の他に特定の医薬的又は生理的な利益を与える成分を含む。機能食品は、典型的には、健康に関する主張が包装に記載されている。
【0123】
バチルス又はそれらからの抽出物は、着色料又は色素として用いてもよい。ある場合において、これらは化粧品に用いてよい。つまり、本発明は、バチルス又はそれらからの抽出物を含む化粧品を提供する。化粧品の例は、口紅、マスカラ、アイライナー、ファンデーション及び日焼け組成物を含む。バチルス又はそれらからの抽出物は、日光に対する防御を助けるために用いてもよい。よって、本発明は、それらを含む日焼け用ローション又は日焼け止め、及び日焼けを予防、低減又は緩和するための経口摂取用の組成物を提供する。バチルスからの抽出物は、繊維及び他の材料用の色素及び食品色素として用いてよい。
【0124】
製剤
本発明の種々の組成物は、種々の形であってよい。該組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤又は粉剤の形であってよい。組成物が粉剤の形である場合、これは、好ましくは、サシェ又は瓶のような気密容器で提供されてよい。
【0125】
本発明の種々の組成物に存在してよい賦形剤の例は、希釈剤(例えばデンプン又はセルロース誘導体、スクロース、ラクトース又はデキストロースのような糖誘導体)、安定化剤(例えばシリカ又は麦芽デキストリンのような吸湿性成分)、結合剤、緩衝剤(例えばリン酸緩衝剤)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)、被覆剤、防腐剤、乳化剤、色素、香料、及び/又は懸濁化剤を含む。適切な賦形剤は、当業者に公知である。
【0126】
本発明の種々の生成物は、溶媒、分散媒、被覆、等張又は吸収遅延剤、甘味料などであってよい担体又は賦形剤を含んでよい。これらは、任意の全ての溶媒、分散媒、被覆、等張及び吸収遅延剤、甘味料などを含む。適切な担体は、限定されないが、希釈剤、結合剤及び接着剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、充填剤、香料、甘味料、並びに特定の剤形を調製するために必要になり得る緩衝剤及び吸着剤のような多岐にわたる物質を含む広範な物質から調製してよい。
【0127】
例えば、固体の経口の形は、活性成分とともに、ラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、トウモロコシデンプン又はバレイショデンプンのような希釈剤;シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム若しくはカルシウム、及び/又はポリエチレングリコールのような滑沢剤;デンプン、アラビアガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドンのような結合剤;デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩又はデンプングリコール酸ナトリウムのような崩壊剤;沸騰剤;色素、甘味料;レシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩のような湿潤剤を含んでよい。このような製剤は、例えば混合、造粒、打錠、糖被覆、又はフィルム被覆の工程による既知の手法で製造してよい。
【0128】
経口投与用の液体分散剤は、シロップ剤、エマルジョン及び懸濁剤であってよい。シロップ剤は、担体として、例えば、サッカロース、或いはサッカロースとグリセロール及び/又はマンニトール及び/又はソルビトールを含有してよい。特に、糖尿病患者用のシロップ剤は、担体として、グルコースに代謝されないか又は少量しかグルコースに代謝されない例えばソルビトールのような物質のみを含有し得る。懸濁剤及びエマルジョンは、担体として、例えば天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコールを含有してよい。カロテノイドは脂溶性であるので、そのことを考慮して適切な製剤を用いる。
【0129】
製剤の適切なタイプは、その開示の全体が参照により本明細書に含まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Eastern Pennsylvania,17th Ed.1985に十分に記載されている。
【0130】
ある場合において、本発明の組成物は、本発明によるバチルスの約104〜約1014コロニー形成単位(CFU)の1日当たりの摂取を達成するように投与される。ある場合において、上記の組成物は、バチルスの約106〜1012CFUの1日当たりの摂取を達成するように投与される。
【0131】
本発明を、ここで、請求される本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0132】
(実施例1)
栄養細胞成長はLB寒天上、胞子形成はDSM(Difco培地)寒天上で行った(Nicholson and Setlow,1990)。栄養細胞なしの胞子を大量に調製するため、別報(Nicholson and Setlow,1990)が概観する飢餓法を用いてDSM液体培地中で胞子形成を行った。この方法では、胞子形成を37℃で24時間進行させた後で、ライソザイム処理により汚染栄養細胞を除去した。栄養細胞は、培養液のOD600nmが約2.0に達するまで、LB培地(37℃)中の細菌成長により調製した。
【0133】
排便直後のヒト糞便(着色を保持)中に存在する耐熱胞子を単離した。平均すると、糞便中に見られる胞子数は、104cfu/gの範囲内にあった。この方法を用いると、胞子形成寒天プレート上で、6つの黄〜橙色の有色素コロニーを容易に識別することができた。これらの単離株を、バチルスA〜バチルスFと表示した。基本特性を表1に示す。
【0134】
(Suresh et al.,2004)が述べる手順で、ヒ酸塩及び亜ヒ酸塩への耐性を測定した。NaClを含有するLB寒天上で、NaCl耐性を形成させた。DSM寒天上における成長及び胞子形成により胞子形成効率を測定(37℃で3日間)した後で、非耐熱cfu/mlとの対比で耐熱(65℃で1時間)cfu/mlを測定した。無色素の胞子形成株である、枯草菌(Bacillus subtilis)株PY79(Youngman et al.,1984)を対照として用いた。密栓容器及びOxoid Gas Pakシステムを用いて、嫌気性成長を測定した。
【0135】
表1
【表1】
【0136】
表1の凡例:
aバチルス種
1.バチルスA、バチルスB、バチルスC
2.バチルスD
3.バチルスE、バチルスF
4.バチルス・インディカス(Bacillus indicus)sp.nov.Sd/3T(Suresh et al.,2004)
【0137】
凡例:ND、データなし;W、不十分;Cr、クリーム;O、橙色;W、白色;Y、黄色;C、中央;S、末端付近;T、末端
b37℃3日後のDSM寒天プレート上における胞子形成の測定
【0138】
6つの有色素コロニー全てが、膨潤胞子嚢内に球形の胞子を産生した。非運動性であること、デンプンを加水分解できること(アミラーゼ陽性)、及び嫌気性成長できないことにより、これら単離株をさらに識別した。少なくとも1種類ある黄色の有色素バチルス種であるバチルス・インディカスの菌株は、ヒ素耐性である(Suresh et al.,2004)ため、ヒ酸塩及び亜ヒ酸塩のいずれに対する耐性についても単離株を調べた。6種類の単離株全てが、最高20mMのヒ酸塩に耐性があるが、亜ヒ酸塩には耐性がないことがわかった。6種類の単離株全てが、最高8%のNaCl中で成長することができた。DSM培地中における胞子形成用の飢餓法を用いたところ、バチルスD、バチルスE、及びバチルスFの3種類の単離株は、胞子形成が不十分であった。
【0139】
(実施例2)
単離した胞子形成株の着色を調べた。有色素コロニーの産生能に基づいて、コロニーを単離した。菌株HU13、HU28、HU33、及び対照株PY79を比較した。37℃オーバーナイトのインキュベーション後、LB寒天上で成長させたところ、HU菌株コロニーは当初黄色であった。インキュベーションを続けると、HU株コロニーは、徐々に橙色の色調を帯びた。対照株は、バチルスコロニー通例のクリーム〜グレーの外観を示した。
【0140】
これに対し、DSM寒天プレート上の胞子形成は、橙色のコロニーを産生した。橙色が胞子形成にとって特異的なものであるかどうかを判定するため、本発明者らは、胞子培養液をDSM培地中の栄養枯渇状態により成長させ、確立済みのライソザイム投与プロトコールを用いて栄養細胞が残存しないことを確認した後、十分に洗浄した。同様に、LB培地でのインキュベーションを用いて、培養液のOD600nmが2.0に達するまで栄養細胞の培養液を作製した。このようにして調製した培養液は、無胞子になると思われる。いずれの場合ともに、胞子及び栄養細胞を凍結乾燥させ、HU株において栄養細胞が黄色で胞子が橙色となる乾燥後に、色素差を明瞭に識別した。
【0141】
(実施例3)
実施例1で単離した菌株の系統発生分析を実施した。菌株を細菌種に割り当てるため、本発明者らは、既報(Hoa et al.,2000)で述べた方法により、各種コロニーから採取した細胞の全16S rRNA遺伝子(rrnE)配列を決定した。各単離株の16S rRNA遺伝子配列ID番号を表2に示す:
表2
【表2】
【0142】
次いで、1,400bpアンプリコンの配列を決定し、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて解析し、最もよく一致する配列を見出した。次いで、ClustalWプログラム(http://align.genome.jp/)により配列を整列し、相同百分率を記録した。
【0143】
近隣結合系統樹を図1に示す。全ての系統が、バチルス・カテヌラトゥス(Bacillus catenulatus)、バチルス・インディカス、バチルス・ジェオトガーリ(B.jeogtgali)、及びバチルスチビー(B.cibi)と密接に関連した。
【0144】
(実施例4)
実施例1で単離した菌株から、カロテノイドを抽出した。対照として、PY79株を用いた。PY79株は、168株に由来するとされる枯草菌実験室株の1つである。168株は、野生型の非変異株である標準株又は参照株の1つである(Youngman et al.,1984)。
【0145】
細菌バイオマスを完全な乾燥状態まで凍結乾燥させた(3日間)。凍結乾燥物は、乳鉢及び乳棒を用いて一様な粉末にすり潰した。典型的な手順で、クロロホルムを用い、すり潰した材料30mgからカロテノイド及びその他のイソプレノイドを抽出した。略述すれば、乾燥粉末にメタノール(250μl)を添加し混合した後、500μlのクロロホルム(Anlar;500μl)を添加した。懸濁液を氷上で20分間インキュベートした。懸濁液に水(250μl)を添加し、ボルテックスミキサーにかけた。分画を形成するため、懸濁液を12,000×gで3分間遠心分離した。有機物を含む下層を除去し、含水の上層を二度再抽出した。有機物を含む抽出物をプールし、窒素ガス流下で完全な乾燥状態まで減量した。この段階で、乾燥させた抽出物を窒素下−20℃で保管することができる。
【0146】
(実施例5)
実施例4で抽出したカロテノイドを分析した。次いで、(Fraser et al.,2000)が述べる手順に従い、オンラインPDA検出法によるWaters Alliance 2600S HPLCを用いて、カロテノイド成分を分離及び分析した。酢酸エチル(HiperSolv)50μl中に乾燥させた抽出物を再溶解した後、12,000×gで3分間遠心分離し、粒状物質があれば除去した。25℃の一定温度で作動する20×4.6mm C30ガードカラム(米国ノースカロライナ州、ウィルミントン、YMC社製)に、RP C30 5mカラム(250×4.6mm)を連結して用い、イソプレノイドの分離を実施した。95%(A)メタノール、0.2%(w/v)酢酸アンモニウムを含む5%(B)〜20%含水メタノールによる12分間のグラジエント法を第一段階とし、12分後の80%(A)、5%(B)、及び15%(C)tert−ブチルメチルエーテルから30分後までに30%(A)、5%(B)、及び65%(C)へと至る直線グラジエント法により、カラムからカロテノイドを溶出させた。カラムを初期条件に戻し、30分間かけて平衡化した。流速を1mL/分とし、200〜600nmのダイオードアレイ検出器により、溶出物を継続的にモニタリングした。同時クロマトグラフィーに基づき同定を行い、スペクトル比較は認証標準物質により行った。認証標準物質が得られない場合は、参照スペクトル特性との相関を実行し、クロマトグラフィー挙動から相対的極性を推定した。定量のために、β−カロテン(標準的な有色カロテノイド)の用量反応曲線を作成した。ユビキノンも同時クロマトグラフィーにより同定し、スペクトル比較は認証標準物質により行い、定量のために用量反応曲線を作成した。英国、プールのVWR社から全ての溶媒を購入した。
【0147】
結果
6種類の黄色〜橙色の有色単離株全てをLB培地で成長させてスクリーニングし、有色カロテノイド色素の存在を明らかにした。クロロホルムを添加すると、凍結乾燥細胞が脱色されたが、メタノールの添加では脱色されなかった。したがって、該色素は、カロテノイドの物理的特性に近い疎水性であった。無極性HPLC分離法を用いることで極性及び非極性カロテノイドいずれの分離及び同定をも容易にする、プレ分画なしのHPLC−PDA法により、生の有機抽出物をスクリーニングした。250〜600nmで記録した全単離株のプロファイルは、同様であることが判明した(データは示さない)。450nmにおける主要ピークは、カロテノイドに特徴的なシグニチャースペクトルを示した。
【0148】
表3:黄色〜橙色の有色素単離株の予備スクリーニング
【表3】
aODMS、ヒドロキシ−デメチルスフェロイデン
【0149】
高レベルの色素を含むこれらの単離株(例えば、C及びF;表3)には、さらに詳細な分析を加えた。こうして、上述した栄養細胞又は胞子いずれかの純粋培養液を、無色素の対照バチルス種として用いる枯草菌株PY79とともに調製した。
【0150】
図2は、単離株F(胞子及び栄養細胞、それぞれ図2B及び2C)に見られるカロテノイドのHPLCプロファイルを、対照PY79(図3A)と比較して示す。450nmにおける有色カロテノイドの存在を記録する(図2A〜C)一方、無色カロテノイド及びユビキノンを図2D〜Fに示す。以上のプロファイルは、分析対象となる全ての単離株に特徴的である。PY79株の栄養細胞又は胞子においては、有色又は色素カロテノイドの存在を示すクロマトグラフィー成分が観察されなかった。これに対し、胞子から調製した抽出物は、特徴的な有色カロテノイドを示す、少なくとも11種類のクロマトグラフィー成分の存在を表示した(図2B)。栄養細胞から調製した抽出物は、3種類の主要な有色カロテノイドを含有した(図2C)。栄養細胞中の主要カロテノイドは、スペクトルの最大値を453.6nmに有し、スペクトルの持続性は、カロテノイドが非環状の性質であることを示した。(Badenhop et al.,2003)が述べる認証標準物質を用いて、HPLCピーク8〜11を1−HOデメチルスフェロイデン(ODMS)と同定した(表4)。同一のスペクトル及び同等の保持時間を有する複数のクロマトグラフィーピークの分離は、異なる幾何異性体によると考えられる。カロテノイド異性体の分離は、C30分離固定相に周知の特徴である。参照スペクトルとの比較に適切な認証標準物質は容易には入手できなかった(Britton et al.,2003)ものの、相対値による保持時間は、HPLCピーク12が3,4−ジヒドロスフェロイデン(DHS)であることを示唆する(表4)。検出した異性体から、該カロテノイドは、主にall−trans型立体配置及びS,S’ステレオ異性体型立体配置であると考えられる。
【0151】
表4
認証標準物質及び参照データによる同時クロマトグラフィー及び比較スペクトル特性に基づくカロテノイドの同定
【表4−1】
【表4−2】
a図2中の番号を付したピークに対応、
NA:データなし
【0152】
ODMSの存在は、栄養細胞中にも見られた。一方、胞子抽出物中には、その他の有色カロテノイドが観察された。これらカロテノイドは、ODMSよりもその性質上、比較的極性が強かった。HPLCピーク1及び3〜7(図2B)は、いずれも同様のクロマトグラフィー及びスペクトル特性を示したので、構造的な関連を有した(表4)。該カロテノイドの最大波長(λ)は、465.7〜468.4nmの範囲であった。こうして、胞子から単離されたカロテノイドについて、λmaxのシフトが観察された。これらシフトの結果、栄養細胞中で測定されるカロテノイドからの色の変化が生じる。こうした色の変化(例えば、黄色から橙色へ)は、栄養細胞由来組織及び胞子由来組織を比較することで、はっきりと可視化できた。最大値の増大の他に、胞子由来カロテノイドの他の特徴として、より釣鐘型の顕著なスペクトルによるスペクトル持続性の消滅があった。ただし、スペクトル内の変曲点は依然として観察できた。まとめると、以上の特徴は、非環状末端基の他、ケト部分及び/又はおそらくヒドロキシ部分の存在をも、構造的に示すものと考えられる。参照スペクトルとの比較も、カロテノイドがγカロテンのケト/ヒドロキシ誘導体であること(表4)と符合した(Britton et al.,2003)。
【0153】
オンラインによる280〜600nmのスペクトルを記録することで、ζカロテン、フィトフルエン、フィトエンなど他の必須経路カロテノイドの探索が可能となった。ζカロテン又はフィトフルエンの存在は、測定されなかった。286nmにおいて、基準フィトエンが示す典型的スペクトルに合致するクロマトグラム成分が観察された(図2E及び2F)。早期の保持時間は、栄養細胞抽出物及び胞子抽出物中で測定されるフィトエンの立体配置が、おそらく15−cis又はall−transではないことを示唆した(表4)。イソプレノイドのユビキノンが、全ての試料中で見られた。
【0154】
栄養細胞及び胞子中における各種カロテノイドの存在の他、定量的分析は、胞子におけるカロテノイド含量の方が、ユビキノン含量と同様多量であること明らかにした(図3)。単離株Fも、Cと比べてより高レベルを示した。
【0155】
結果の考察
HPLC分析及びUV/VISスペクトルデータを併用することで、本発明者らは、以上のバチルス単離株における着色が、カロテノイドの存在によることを確認した。本試験において測定されるカロテノイドの物理的特性、及び既存の利用可能なデータ源に基づき、本発明者らは、栄養細胞中の主要なカロテノイド種を1−HO−デメチルスフェロイデン、胞子中の該種をケト及び/又はヒドロキシ−β−カロテン誘導体であると定めた。こうして、異なる成長段階において形成される終末産物カロテノイドには、定性的及び定量的な差異が存在する。終末産物及び中間体カロテノイドの同定から、栄養細胞及び胞子中に存在すると推定される生合成経路を予測することができる(図4)。栄養細胞及び胞子ともに、ニューロスポレン形成能を有すると考えられる。その結果、2つのGGPP分子が凝縮してフィトエンを形成する。次いで、3つの共役二重結合からなるクロモフォアを伴うこのC40炭化水素骨格は、11,12、12’,13’、及び7,8位における3度の相次ぐ不飽和化を経て、9つの共役二重結合を有するニューロスポレンを産生する。栄養細胞においては、この非環状カロテンがさらにメチル化、ヒドロキシル化、及び不飽和化することがある。胞子形成中において、非環状前駆体の非環状化が生じ、これにケト部分及びヒドロキシ部分が取り込まれると考えられる。
【0156】
(実施例6)
本発明に基づくプロバイオティック粉末配合剤を以下の手順で調製した後、これを用いて1000個のゼラチンカプセルを充填した。
【0157】
以下の成分を乾燥混合し、該プロバイオティック粉末配合剤を調製した:実施例1に従って調製する500×103CFUの胞子、200gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、16gのステアリン酸、及び16gのシリカ。
【0158】
(実施例7)
本発明に基づくプロバイオティック粉末配合剤を以下の手順で調製した後、これとロータリー式打錠機を用いて1000錠の錠剤を作製した。
【0159】
以下の成分を乾燥混合し、該プロバイオティック粉末配合剤を調製した:実施例1に従って調製する500×103CFUの胞子、200gのマルトデキストリン、16gのステアリン酸、及び16gのシリカ。
【0160】
(実施例8)
有効性試験:バナメイ種(Penaeus vannamei)に対するHU36効果に関する二重盲検試験
プロトコール
各々2m3ずつの水が入った4つの養殖タンクを用いて、バナメイ種を養殖した。タンクごとに35匹のエビを養殖した。2つのタンクを符号化し、45日齢(5〜6g/匹)のエビに市販のエビ用飼料「Tomboy(商標)」を1週間与えた後、試験を開始した。次いで、30日間にわたり、2つのタンクに対照飼料又は被験飼料を与えた。給餌は1日3回で、1日当たり計20gであった。毎日エビをモニタリングした。−1及び31日目にエビの体重を測定した。
【0161】
材料と方法
エビタンクは、2m3の水(pH8〜8.5)、2〜35% NaClによる塩分を擁した。毎日水温をモニタリングして26〜33℃の範囲にあるようにし、砂、すり潰したサンゴ、及び活性炭を含むフィルターを用いて水を清浄化した。
【0162】
対照飼料は、「Tomboy(商標)」であった。被験飼料は、対飼料比1×107個/gのHU36胞子を含む「Tomboy(商標)」であった。「Tomboy(商標)」飼料は、ホーチミン市から購入した。
【0163】
結果
表5
【表5】
【0164】
結論
HU36を含むプロバイオティック投与標本におけるエビの平均体重増加(SWG)は、対照よりも162%大きかった。こうして、本発明によるバチルスの使用は、水産養殖における生産高を著明に上昇させることができる。
【0165】
(実施例9)
カロテノイドと胞子カロテノイドの胃内安定性の対比
試験の根拠は、カロテノイドサプリメントが、胃内に見られる胃液に対してきわめて変化しやすいと考えられることである。したがって、栄養補助食品での使用には、耐酸カロテノイド製剤が必要である。
【0166】
前出の実施例でHU36について既に述べた手順で、抽出法及びHPLC定量法を用い、HU36胞子に見られる全カロテノイドの安定性を測定した。
C:HU36を模擬胃液(SGF)で60分間インキュベートし、カロテノイド含量を測定した(SGF=1mg/mlペプシンを0.9% NaCl(pH2)中に溶解し、37℃でインキュベーション)。
EC:まず、HU36胞子からカロテノイドを抽出し、次いで、SGF中で60分間インキュベートした。
CS:ベータカロテノイド標準物質を、SGF中で60分間インキュベートした。
【0167】
ヒト胃中の最小通過時間は約20分間であるが、最大時間は、食物摂取及び生理状態等に応じて45〜50分間に達することもある。
【0168】
得られた結果を図7に示す。各場合において、グラフは、カロテノイド含量と0分時における測定値を対比して示す。カロテノイド標準物質は、20分後までに残量1%未満でほぼ全量分解された。これに対し、胞子上に存在するカロテノイド又は胞子から抽出されたカロテノイドは、最大20%の分解で、基本的に安定であった。
【0169】
したがって、胞子カロテノイドは、胃酸耐性カロテノイド源、及び現在使用できるカロテノイドサプリメントよりも優れた耐酸カロテノイドを供給する。
【0170】
(実施例10)
緒言
細菌を機能食品として使用することへの関心の高まりは、多数の公的機関に、プロバイオティック細菌の安全性及びその使用のためのガイドラインについて考慮するよう促している(FAO/WHO,2002;Sanders,2003)。米国では、食品医薬品局が、ヒトによる摂取に関して安全だと考えられる細菌にGRAS認証(「一般に安全と認める」)を与えている。EUでは、QPS(「適格な安全性の推定」)と称し、食物連鎖全体における微生物安全性評価の調和を目的とする同様のシステムを現在考慮中である(SCAN,2003a)。最もよく知られた種類のプロバイオティックで、広範な種類の発酵乳産品において及びプロバイオティックサプリメントとして用いられる、乳酸菌及びビフィズス菌が典型例である。こうした使用法にもかかわらず、これら細菌は、多数の感染症に関与している(Borrielo et al.,2003;FAO/WHO,2002)。
【0171】
バチルス属の細菌を含むプロバイオティックは、乳酸菌及びビフィズス菌ほど知られてはいない(Hong et al.,2005;Sanders et al.,2003)。バチルス・クラウジー(Bacillus clausii)、枯草菌、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)の他、セレウス菌(Bacillus cereus)を含む多数の菌種が現在使用されている。細菌を形成する胞子を用いる利点は、使用する胞子が、製品の室温での保存の他、胃液への優れた耐性をも可能にすることである。バチルス属の細菌は、容易に土壌中で見出されるので、当然、一般に土壌生物であると考えられる。一方、該細菌は、多くの動物及び昆虫の消化管(GIT)中にも見られる(Hong et al.,2005;Nicholson,2002)。近年の証拠は、枯草菌の実験室株の胞子が、マウスGIT内で発芽し、増殖した後、胞子形成を反復できることを示した(Casula and Cutting,2002;Hoa et al.,2001;Tam et al,2006)。バチルス属の2つの病原菌である、炭疽菌(B.anthracis)及びセレウス菌は、当然によく知られた腸内病原菌であり、GIT内で発芽した後成長する(Jensen et al.,2002;Jensen et al.,2003;Mock and Fouet,2001)ので、バチルス属の、全てではないにせよ大半の細菌は、胞子として経口摂取すると、発芽した後、GIT内で成長し得る可能性がきわめて高い。これら生細胞も、枯草菌について生じることが示された(Tam et al.,2006)のと同様に胞子形成を反復し得るとすれば、多年にわたり動物及び昆虫が糞便により胞子を排出すれば、土壌中にはきわめて多数の胞子が存在することになると考えられる。
【0172】
多くの報告が、バチルス種が感染症に関連することに言及している。発症率は低く、多くの場合は誤診である(de Boer and Diderichsen,1991;Logan,2004;Osipova et al.,1998;Salminen et al.,1998;Sanders et al.,2003)。欧州の多数の規制当局が、ヒトに対する使用の他、動物飼料での使用に関してもバチルスの安全性について述べており(anon.,2004;SCAN,2000)、セレウス菌に力点を置いている。
【0173】
国連食糧農業機関(FAO)及びWHOが、食品におけるプロバイオティックの評価ガイドラインを提示(FAO/WHO,2002)し、EU内でも同様のガイドラインを検討中である(SCAN,2003a)。安全性に関して最も重要なFAO/WHOガイドラインは、抗生剤耐性プロファイルの解明、病原性因子の特徴付け、並びにin vitro及びin vivoの安全性試験を項目に含む。
【0174】
本実施例では、本発明によるバチルス株の安全性の例示として、バチルスの有色素株であるHU36の安全性を評価した。HU36は、カロテノイド高含有胞子を産生し、ヒト食料又は動物飼料に天然資源又はカロテノイドを提供し得る。得られた結果は、これら細菌の栄養補助食品としての使用可能性を示す。
【0175】
材料と方法
細菌株
HU36は、バチルス中、黄色〜橙色の有色素胞子形成種である。今回用いた参照株は、168株由来の枯草菌原栄養菌株であるPY79(Youngman et al.,1984)、セレウス菌の毒素産生株であるSC2329(Hoa et al.,2000)、及び日本の主食である納豆の標本から採取した納豆菌(B.subtilis var Natto)の実験室株(SC2404)である納豆菌株であった。
【0176】
全般的方法と胞子の調製
DSM(Difco胞子形成)培地(Duc et al.,2003)を用いる飢餓法(Nicholson and Setlow,1990)により、胞子の精製済み懸濁液を作製した。胞子懸濁液をライソザイム処理した後、熱処理(68℃で1時間)により残存する栄養細胞を除去し、使用前に分注液を−20℃で保管した。
【0177】
エンテロトキシンと病原性形質の分析
染色体DNAからのPCR増幅法により、バチルス種からセレウス菌の推定エンテロトキシン遺伝子を検出する方法は、別報に詳述されている(Duc et al.,2004)。プライマーセットは、Guinebretiere et al.が記述したもの(Guinebretiere et al.,2002)を用いた。Hbl及びNheエンテロトキシンは、市販のキットを用いて検出及び測定した:Hblエンテロトキシンの検出にはBCET−RPLAキット(Oxoid社製)、Nheエンテロトキシンの検出にはTecra BDEキット(Tecra Diagnostics社製)であった。溶血はヒツジ血液寒天プレート上の画線法によって検出し、レシチナーゼは卵黄を含むセレウス菌選択性寒天培地上でのコロニーの画線、及び37℃、48時間のインキュベーションにより検出した。
【0178】
接着及び侵襲試験
英国の欧州細胞培養コレクション(ECCAC)から入手した、Caco−2(ヒト結腸癌細胞)、Hep−2細胞、及びムチン産生HT29(ヒト白人結腸腺癌)細胞の3つの異なる細胞系を用いて、胞子又は栄養細胞の接着を測定した。どの場合も、24ウェルチャンバースライド(Nunc(商標))内の、10%(v/v)ウシ胎仔血清、1%(v/v)L−グルタミン、及び1%(v/v)非必須アミノ酸を添加したMEME(Sigma社製、イーグル最小必須培地)中に、5%CO2中37℃で2日間ウェル当たり2×105個で細胞を播種した。接着及び侵襲法は、Rowan et al.が詳細に述べる手順(Rowan et al.,2001)で行った。
【0179】
細胞毒性アッセイ
ウェル当たり5×104個で播種したHep−2又はCaco−2細胞単層を用いる本アッセイは、Rowan et al.が述べる手順(Rowan et al.,2001)で行った。被験細菌のオーバーナイト培養液からのろ過滅菌(0.2mm)済み上清を、細胞に接種した。トリプシン処理(0.1%トリプシン、5分間)後、又は熱処理(95℃、10分間)後ただちに、トリプリケートで上清試料(0.1ml)を培養細胞に添加した。5%CO2雰囲気中37℃、オーバーナイトで細菌上清を含む単層をインキュベートした。0.5% MTT(Sigma社製、臭化3−(5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム)を含むリン酸バッファーによるオーバーナイトのインキュベーション後、さらに4時間インキュベーションを続けた。次いで、各ウェルから上清を除去し、産生され各ウェル中に含まれるフォルマザンを、ジメチルスルホキシドによる0.04M HCl 100mlの添加により溶解し、マイクロプレートリーダーによる540nmの分光光度法により測定した。以下の式により毒性を測定した:
(1−被験試料の光学レベル/陰性対照の光学レベル)×100。
【0180】
嫌気性成長
嫌気性条件下におけるバチルス株の成長能及び胞子形成能を評価するための手順は、別報(Tam et al.,2006)に述べてある。
【0181】
残存性試験
マウスを、食糞症防止のため床面に格子の付いたケージで飼育した。1×109個の胞子を単回(0.2ml)で、マウスに経口強制投与した。試料採取のため各マウスを外に出し、1回分脱糞直後の糞便ペレットを採取するまで留置し、重量差を測定し、−20℃で保管した後、Duc et al.が述べる手順(Duc et al.,2004)で耐熱cfu/g分析を行った。
【0182】
擬似腸内条件
Barbosa et al.が述べる方法(Barbosa et al.,2005)を用いて、胞子及び栄養細胞を評価した。擬似胆汁(SIF)用には、0.2%胆汁塩を含む等張バッファー(ボット−ウィルソン塩)に胞子又は栄養細胞を再懸濁(密度1×108cfu/mlで)させ、擬胃液(SGF)用には、1mg/mlペプシンを含む0.85% NaCl(pH2)に再懸濁させた。懸濁液は37℃で2時間インキュベートし、LB寒天プレート上における段階希釈及びプレート測定により、一定時間おきにcfu/ml単位で試料採取した。
【0183】
バイオフィルム形成
CMKアガロース上又はCMK液体培地中における、各場合37℃で2〜3日間の成長を用いるFallの方法(Fall et al.,2004)により、バイオフィルム形成を測定した。
【0184】
抗生剤試験
米国立臨床検査標準委員会(NCCLS)の推奨(Standards,1997)に従い、ディスク拡散法により、菌株のアンチバイオグラムを取得した。37℃でのLB培養液中での成長後、スワブ接種法により、被験菌株のオーバーナイト培養液をミュラー−ヒントンプレート上に播種した。播種済みプレート上に抗生剤含浸済みディスク(Oxoid社製、6mm)を置き、37℃で18時間後に阻害領域を測定した。
【0185】
亜慢性毒性試験
ベトナム、ナートラングのワクチン及び生体物質研究所(IVAC)において、本試験(連続曝露試験としても知られる)を実施した。試験は、ニュージーランドシロウサギ(雄、3ヶ月齢)を、6匹ずつの3群に分けて行った。精製済み胞子懸濁液(1×109個/ml)1mlを、2群に経口投与した。一群にはHU36胞子を投与し、他群には納豆菌株胞子を投与した。ナイーブ群には、1ml生理食塩水を投与した。本レジメンを用い、30日間にわたり毎日ウサギに投与した。31日目に、血液学的分析のために血液を採取した後、ウサギを人道的に安楽死させ、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、及び腸間膜リンパ節など、各器官及び組織の試料を組織学的分析用に採取した。
【0186】
急性毒性試験
本試験で用いた動物は、モルモット(Harley Dunkin、雄、5週齢)であり、試験は、ベトナム、ナートラングのIVACにおいて実施した。HU36又は納豆菌株いずれかの胞子1×1012個の1ml単回投与を、6匹ずつの群に経口で実施した。ナイーブ群には、1ml生理食塩水を投与した。モルモットは7日間にわたり毎日観察し、行動、外見、活動性、及び糞便について記録した。1日目及び7日目に体重を記録した。8日目に血液学的分析用に血液を採取した後、モルモットを人道的に安楽死させ、肝臓、腎臓、脾臓、小腸、及び腸間膜リンパ節など、各器官及び組織の試料を組織学的分析用に採取した。
【0187】
組織学
10%ホルマリンで器官及び組織試料を固定し、エタノール溶液の濃度を上昇させながらこれに移し、パラフィンろう中に包埋した。6mmで組織切片を作製し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
【0188】
血液学
心穿刺によりウサギ及びモルモットから血液試料を採取し、全赤血球(RBC)、白血球、ヘモグロビン濃度、及び白血球分類を測定した。
【0189】
プラスミド分析
(Voskuil and Chambliss,1993)の方法を用いて、バチルス株からプラスミドDNAを抽出した。(0.25mg/ml)臭化エチジウムを含む1.0%アガロースゲル(1倍濃度TBEバッファー:89mMトリス、89mMホウ酸、2mM EDTA)中、10V/cmで試料を泳動させ、UV光下で撮影した。
【0190】
統計学
データは、スチューデントのt検定及びフィッシャーの直接確率検定で解析した。0.05未満のP値を、有意と考えた。
【0191】
結果
HU36を本発明のバチルスに関する範例的実施例として評価するため、HU36について行った、カロテノイド高含有で有色素のバチルス種評価を、枯草菌の以下の2つの単離菌についても並行して行った:168株由来の実験室株であるPY79(Youngman et al.,1984)、及び「納豆」として知られる日本の発酵食品中で用いられる枯草菌株である納豆菌株(Hosoi and Kiuchi,2004)。
【0192】
胞子形成特性
HU36の成長能及び胞子形成能を詳細に検討した(表6)。先行の試験で、養分高含有の寒天上に画線すると、HU36は嫌気性で成長できないことがわかった。一方、培養液内で成長させた後でDSM寒天プレート上に接種すると、HU36は、かつて枯草菌について示された(Tam et al.,2006)ように、嫌気性で成長することができた。亜硝酸塩又は硝酸塩が最終電子受容体として存在すると、成長が10倍増大した。ただし、無酸素条件下では、PY79の場合と同様、HU36細胞も著明なレベルでは胞子を形成できなかった。一方、納豆菌株は、これらの条件下でも比較的効率良く胞子形成が可能で、亜硝酸塩又は硝酸塩の存在下ではより高レベルであった。
【0193】
擬似腸液への曝露に対する、HU36、納豆菌株、及びPY79の各胞子の耐性も測定した(表7)。PY79又は納豆菌株のいずれも、擬似胃液(SGF)又は擬似腸液(SIF)に対して、測定可能な感受性を示さなかった。一方、HU36は、SGF及びSIFに対して一定の感受性を示しはしたが、やはり生存百分率は高かった。
【0194】
表6では、バチルス株を液体DSM中において成長させ、DSM寒天プレート上に接種した。嫌気性成長のために、硝酸カリウム又は亜硝酸カリウムを、電子受容体として培地に添加した。プレートを30℃で72時間、嫌気性又は好気性でインキュベートした後、各プレートから全細菌ローンを回収した。次いで、懸濁液を段階希釈してCFU測定のためにプレートアウトするか、又は熱処理(68℃、45分間)後に段階希釈して胞子数を測定した。
【0195】
表6:好気性及び嫌気性条件下における胞子形成効率a
【表6】
【0196】
表7:擬似GIT液中における栄養細胞の耐性
【表7】
a初期cfuに対するcfu生存百分率。表示時間(分)時における生存。
b胞子又は栄養細胞の細菌懸濁液cfuを括弧内に示す。
【0197】
表8:潜在的な病原性特性
【表8】
aヒツジ血液寒天上の溶血:β、コロニー周囲の明確な領域を伴う完全な溶血;γ、変化なし。
bレシチナーゼ産生:+、ピーコックブルー色のコロニー周囲における加水分化したレシチンの青色沈殿(セレウス菌を示す);−、変化なし;±、不十分な着色。
cHbl又はNheエンテロトキシン、或いは他のセレウス菌エンテロトキシンの成分をコードする遺伝子を、PCR法により検出した:+、予測したサイズのPCR産物が増幅された;−、PCR産物を検出しなかった。
d成長細胞におけるHblエンテロトキシンの産生を、BCET−RPLA毒素キット(Oxoid社製)を用いて測定し、製造元の取扱説明書に従い、値0を陰性とする指標により表した。試験の感度を2ng/mlとする。
e「バチルス下痢原性エンテロトキシンビジュアルイムノアッセイキット」(Tecra Diagnostics社製)を用いて、成長細胞中におけるNheエンテロトキシンの産生を測定した。製造元の取扱説明書に従い、指標<3の菌株を陰性と考え、試験の感度を1ng/mlとする。
【0198】
抗生剤耐性
動物栄養に関する科学委員会(SCAN)及び欧州食品安全局(EFSA)が重視(EFSA,2005;SCAN,2003b)する抗生剤を含む抗生剤パネルに対する耐性について、HU36を評価した。抗菌耐性は以下の2つの方法、1つは寒天ディスク拡散法(表9)、今1つはMICの確立(表10)により測定した。HU36は、クリンダマイシンに対してのみ、該化合物に対して公表済みのMICブレイクポイントを超える著明な耐性を有することが判明した(EFSA,2005)。この耐性が獲得性であるのか否かを判定しようとする試みにおいて、本発明者らは、HU36、PY79、及び納豆菌株からのプラスミドDNAの単離を試みたが、エピソーマルDNAに対応すると考えられるDNAを単離することはできなかった。
【0199】
表9:バチルス株の抗生剤耐性プロファイル
【表9】
a含浸量を括弧内にμg単位で示す、抗生剤含浸済みディスク(6mm)。
b3つの個別試験からの阻害領域(直径)。
【0200】
表10:MIC
【表10】
aMICの等しいか又は高度の菌株を、耐性と考える。b(SCAN,2002)。c(EFSA,2005)。d生得的に耐性である種もある。eブレイクポイント不要。
【0201】
接着アッセイ
HU36、PY79、納豆菌株、及びSC2329のCaco−2、Hep−2、及びHT29細胞への接着を、in vitro法により評価した。HT29細胞は、成熟腸内細胞に特徴的な分化特性を示すため、Caco−2細胞よりも有用である(Devine et al.,1992)。各場合ごとに、各菌種につき胞子1×108個ずつの懸濁液を、発芽した胞子又は生栄養細胞が死滅する条件下において、培養細胞系とともに2時間インキュベートした。得られた結果を、表8に示す。SC2329が、最高度の接着を示した後に納豆菌株及びPY79が続き、きわめて低レベルの接着を示したHU36が最下位であった。ただし、どの場合も、ムチン産生HT29細胞系に対する接着が常に最大であった。
【0202】
マウスGITにおける胞子の残存性
胞子を単回で経口投与したマウス糞便中への、HU36、PY79、及びSC2329胞子の排出量を測定した。得られた結果は、PY79及びHU36の胞子数が、12日後には検出可能なレベルの範囲内に収まらないのに対し、SC2329は、3週間にわたり残存した。
【0203】
潜在的な病原性因子
PCR法を用いて、HU36、PY79、納豆菌株、及び対照としてSC2329の染色体における周知のセレウス菌エンテロトキシン遺伝子の存在を評価した。この方法は、以前に、食中毒を起こすと推定されるバチルス菌株のプロファイル化に用いられている(Duc et al.,2004;Guinebretiere et al.,2002;Phelps and McKillip,2002)。セレウス菌対照であるSC2329を例外として、周知のセレウス菌エンテロトキシン遺伝子は、全く検出されなかった。Hbl及びNheセレウス菌エンテロトキシンについて行ったin vivoでの分析も、陰性であった。HU36、PY79、及び納豆菌株は、ヒツジ血液寒天上の溶血も産生しなかった。HU36及びPY79ではレシチナーゼ(ホスホリパーゼの1つ)の産生も陰性であったが、納豆菌株では微弱な反応が観察された。
【0204】
細胞毒性アッセイ
HU36、PY79、納豆菌株、及びSC2329の成長培養液上清の毒性を、分光光度法を用いて、Caco−2又はHep−2細胞の曝露後における細胞死を測定することにより評価した。表11に示す結果は、HU36上清が、熱及びトリプシン処理で安定な、一定の毒素産生可能性を含有していたことを示す。これは、セレウス菌対照菌株であるSC2329よりも著明に低度であった。これに対し、実験室株であるPY79が、ほとんど〜全く毒素産生可能性を示さない一方、納豆菌株は、その上清中に一定のトリプシン感受性毒性物質を伴った。
【0205】
表11:Hep−2上皮細胞上における無細胞上清の細胞毒性に対する熱又はトリプシン処理の効果
【表11】
a上清液には、非処理(正常)、熱処理(HT)、又はトリプシン処理(TT)を施した。
【0206】
in vivoにおける毒性アッセイ
動物におけるHU36の安全性について、2種類の評価を行った。第一の亜慢性毒性試験では、ウサギに胞子1×109個のHU36又は納豆菌株を経口投与した。次いで、同じ連日投与を30日間維持した。第二の急性毒性試験では、モルモットに胞子1×1012個の単回大量投与を経口により実施した後、7日間観察した。
【0207】
いずれの試験でも、疾病又は行動上の変化の徴候は観察されなかった。急性毒性試験においては、HU36を投与するモルモットが平均の体重増加60%を示すのに対し、納豆菌株を投与するモルモットは20%であった(表12)。一方、亜慢性毒性試験では、ウサギの体重が非投与ウサギと比べ変化しなかった。肝臓、脾臓、及び腎臓重量は、胞子を投与しないウサギと同等であった(表12)。炎症、分解、又は壊死を含むウサギの器官及び組織における病理学的徴候は見られなかった(データは示さない)。両試験からの血液に対する血液学的分析を全項目にわたって行ったところ(表13)、群間差は見られなかった。
【0208】
表12:in vivo試験による体重
【表12−1】
【表12−2】
a胞子1×109個のPY79、納豆菌株、又はHU36を30日間にわたり毎日経口投与するウサギ6例の群、或いはナイーブ群(対照)。
b胞子1×1012個の単回経口投与を実施するモルモット6例の群。
c平均体重増加。
d対照群と比べた平均体重増加。
【0209】
表13:血液学的分析
【表13】
aナイーブ群には胞子を投与しない。
【0210】
考察
本実施例の主要目的は、体内摂取したHU36胞子に何が起こり得るかを評価することであった。枯草菌胞子に関する試験は、該胞子がマウスGIT中で発芽し、増殖し、胞子形成することを示した(Casula and Cutting,2002;Hoa et al.,2001;Tam et al.,2006)。実際、同試験は、胞子が、消化器の通過に好適であるらしいことを示す。嫌気性条件下でのバチルス種の成長は、ごく最近になって報告されるに過ぎない特性であり、全ての種で生じる現象ではない。(Nakano et al.,1997;Nakano and Zuber,1998)。168株由来で、多くの研究所で用いられる枯草菌株PY79は、嫌気性で成長するが、無酸素条件下では胞子形成できない(Tam et al.,2006)。一方、同じ試験で、枯草菌のヒト単離株(HU58及びHU78)は、無酸素条件下でも十分に胞子形成が可能なことがわかった。これに反し、PY79胞子を投与したマウスが、糞便中に投与量よりも多くの胞子を排出するので、PY79の胞子形成がマウスのGIT中でも確かに生じるということ(Hoa et al.,2001)は、GITが完全に嫌気性ではないことを示唆する。本試験では、HU36もPY79と同様、嫌気性条件下で効率良く成長できるが、胞子形成はできない。第二の対照菌株である納豆菌は、はるかに高レベルで胞子形成できた。
【0211】
HU36の胞子は、擬似胃液及び擬似胆汁への曝露により、基本的に影響を受けなかった。全てのバチルス胞子が、胃液に耐性というわけではなく、とりわけ注目すべきは、セレウス菌のいくつかの菌株が、胃酸にきわめて感受性であり、この場合、胃酸中での胞子の発芽及び栄養細胞の放出及び早発死を刺激する(Faille et al.,2002;Keynan and Evenchik,1969)。
【0212】
セレウス菌の多くの菌株は、よく知られた4つのエンテロトキシン(Hbl、Nhe、CytK、及びBceT)のうちの1つ又は複数をコードする遺伝子を擁するが、これら遺伝子の1つ又は複数が他のバチルス種のゲノム上に存在し得ると十分に考えられる(Guinebretiere et al.,2002;Rowan et al.,2001)。栄養補助食品として用いる菌株に毒素の産生能がないことを確証することは、明らかに重要であり、枯草菌株及びHU36のいずれもが、周知の毒素遺伝子を持たなかった。溶血、バイオフィルム形成能、及びホスホリパーゼであるレシチナーゼの産生を含む、他の病原性可能因子も観察した。これらのうち最後の因子は、枯草菌の対照食品菌株である納豆菌株と微弱ながら反応を示した。
【0213】
HU36は、わずかに1種類の抗生剤クリンダマイシンに対してのみ、耐性を示すことがわかった。MICは、本化合物に関するEU推奨のブレイクポイントを超える値であった。ただし、HU36、納豆菌株、又はPY79のいずれからもプラスミドを回収できず、この耐性決定因子が獲得性であることはありにくいと考えられるため、細菌性栄養補助食品の公表QPS要件の1つを満たす(EFSA,2005)。
【0214】
無細胞上清の細胞毒性効果に関するアッセイは、実験室株PY79が、培養細胞に対して基本的に毒性効果を及ぼさず、セレウス菌株SC2329が著明に毒性であるのに対し、菌株HU36は、細胞単層に対して中程度の効果を及ぼすことを明らかにした。この効果は、部分的には、トリプシン感受性であると考えられた。他の研究では、培養細胞に対する細胞毒性効果が、決定因子として疑わしく、エンテロトキシン産生とは相関しないと考えられることが示されている(From et al.,2005;Rowan et al.,2001)。実際、プロテアーゼ又はリポペプチドであるサーファクチンなどの抗菌剤さえも、その過量の産生の結果、in vitroにおいて毒性効果を観察する可能性がある(Nagal et al.,1996)。このことから、EUは、細胞毒性の測定が、培養液上清中の低分子量物質の影響で損なわれる可能性がある、と結論付けている(SCAN,2001)。したがって、こうしたin vitroにおける低レベルの毒性は、問題を生じない。
【0215】
HU36胞子の経口摂取が何らかの毒性を産生したかどうかを判定するため、本発明者らは、動物を用いた2種類の安全性試験を実施した。亜慢性毒性試験で、ウサギにおける30日間のHU36及び納豆菌株胞子による連日の経口投与(1×109個)の影響を測定したところ、病的影響は全く観察されなかった。急性毒性試験では、モルモットにおける胞子1×1012個のHU36及び納豆菌株の単回経口投与の影響を測定した。亜慢性毒性試験と同様に、モルモットへの有害効果は示されず、全般的健康、行動、或いは器官及び組織の組織学的変化も見られなかった。次いで、急性毒性試験は、モルモットにおける経口LD50が、納豆菌株及びHU36のいずれについても1×1012個よりも大きいはずであることを示した。
【0216】
in vitroの接着アッセイは、HU36胞子が、被験上皮細胞系のいずれに対しても、限定的な結合能しか有さないことを明らかにした。PY79の結合はより高度であり、納豆菌株はさらに高度であった。これは、バチルス種のCaco−2及びHep−2細胞への接着に関してなされた試験と符合し、枯草菌が上皮細胞系にはほとんど接着しないという結論を導く(Rowan et al.,2001)。以上の試験で対照として用いたセレウス菌は、さらに良好に結合し、ほぼ10倍高度に結合した。ただしいずれの場合も、ムチン産生HT29細胞系への結合が最高度であった。
【0217】
in vivoにおける試験でも、マウスに単回投与した胞子の転帰を検証した。これらの残存性試験は、HU36が、14日後にGITから排出され、マウス体内にもはや検出可能なレベルでは存在しないことを示した。これは、枯草菌の実験室株であるPY79の残存性を検証し本実施例が確認する、同様の試験と相関する。他方、本実施例で用いたセレウス菌株は、消化管内にさらに7日間長く残存した。枯草菌の2種類のヒト単離株である、HU58及びHU78についても同様の現象が観察されており(Tam et al.,2006)、天然枯草菌単離株、又はGIT中に棲息することが知られるセレウス菌の方が、消化管環境により良好に適応することを示唆する。
【0218】
以上のアッセイの結果は、HU36が、消化管環境にとりわけ良好に適応するわけではないということである。該株は、上皮細胞にほとんど結合せず、無酸素条件下で胞子形成しない。これらの点で、該株は、枯草菌の実験室株であるPY79と同等である。他方、該株は、動物モデルにおいて、病原性特性も毒素産生性も示さない。したがって、該株は、潜在的な栄養補助食品として、ヒトに対する病原性又は有害性の徴候を示さない。
【0219】
HU36は、ベトナムのボランティア被験者から採取したヒト糞便に由来した。実のところ、有色素バチルスが、甲殻類、とりわけエビにおいてよく見られるので、この細菌は、海産物を多く含む食糧に由来したと考えられる。これが正しければ、この耐塩性の胞子形成株が、ヒトGIT中での生存に適さない可能性もある。
【0220】
以上より、実施した試験は以下のことを示す:
1.in vitro試験は、本発明の範例的菌株としてのHU36が、ウサギ又はモルモットにおける経口投与時に、毒性を示さないことを裏付ける。経口LD50は、1×1012cfuよりも大きいはずである。
2.毒素遺伝子、毒素産生、溶血、などの病原性特性が見られない。
3.わずかに1種類の抗生剤、クリンダマイシンのみに対する耐性が見られたが、これが獲得性である証拠はなく、これはプラスミド由来ではない。
4.HU36は、上皮細胞にほとんど接着せず、GIT内に長く残存しない。
まとめると、HU36など本発明のバチルスについては、毒性又は病原性であるという証拠が見られない。したがって、本発明のバチルスは、ヒトへの使用について無害かつ好適であると考えられる。
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】16S rRNA遺伝子(rrnE)解析に基づく、バチルスクローンHU19、HU28、HU36、及びHU33の近隣結合系統樹を示す図である。同一塩基率の値を括弧内に示す。その他の関連菌株も、菌株表示とともに示す。点線より上の菌株は全て、相互に少なくとも99%のrRNA同一塩基率を示す。
【図2A】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UV/Visスペクトルを450nmにおいて記録する:PY79野生型。
【図2B】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UV/Visスペクトルを450nmにおいて記録する:HU36胞子。番号を付した各ピークは、カロテノイドに特徴的なシグニチャースペクトルを示す。
【図2C】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UV/Visスペクトルを450nmにおいて記録する:HU36栄養細胞物質。番号を付した各ピークは、カロテノイドに特徴的なシグニチャースペクトルを示す。
【図2D】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UVスペクトルを286nmにおいて記録する:PY79野生型。ピーク13はフィトエンを表す。
【図2E】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UVスペクトルを286nmにおいて記録する:HU36胞子。ピーク13はフィトエン、ピーク14はユビキノンを表す。
【図2F】各種抽出物のスペクトルを示す図である。UVスペクトルを286nmにおいて記録する:HU36栄養細胞物質。ピーク13はフィトエン、ピーク14はユビキノンを表す。
【図3】バチルスクローンであるHU19及びHU36の他、対照株であるPY79においても見られるカロテノイドの定量を示す図である:UBQ、ユビキノン;HDMS、ヒドロキシ−デメチルスフェロイデン;KHGC、ケトヒドロキシβ−カロテン;DMS、デメチルスフェロイデン;及びOS−3,4−ジヒドロスフェロイデン。
【図4】栄養細胞成長及び胞子形成中における、カロテノイド形成に関わる推定経路を示す図である。胞子におけるカロテン生成に特異であると思われる反応を、点線矢印で示す。
【図5】本発明のバチルスを用いて産生可能な化合物を示す図である。
【図6】本発明のバイオセンサとして可能な形式の例を示す図である。バイオセンサ(10)は、シリコン基板(20)の上に、本発明に従い、実施例6に述べる手順で調製した細菌胞子500×106CFU(30)を置く。
【図7】擬似胃液(SGF)による0、20、60分間のインキュベーション後におけるカロテノイド残存率を示す図で、柱状グラフは左から右に、HU36胞子(C)、HU36胞子からのカロテノイド抽出物(EC)、及びベータカロテン標準物質(CS)を表す。
【図8】バチルス株の、Caco−2、HEp−2、及びHT29細胞系への接着を示す図である。表示株の胞子(1×108個)を、細胞系とともにゲンタマイシン(100mg/ml)の存在下37℃でインキュベートした。インキュベーションの2時間後、異なる細胞系への胞子の接着率を測定した。
【0222】
配列番号1〜6は、HU13、16、19、28、33及び36単離株の16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス又はバチルスからの抽出物の、着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品としての、又は化粧品における使用であって、前記バチルスが、配列番号1〜6のいずれかの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有し、又はその抽出物が、前記配列同一性を有するバチルスから得られる使用。
【請求項2】
バチルスが、バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)、HU33(NCIMB41342)及びHU36(NCIMB41361)又はそれらのいずれかの派生株、変異株若しくは突然変異体から選択される1種であり、前記派生株、変異株若しくは突然変異株の16S rRNA遺伝子が、HU19、HU28、HU33及びHU36のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
バチルス又はバチルスからの抽出物が、
(i)ヒト;
(ii)非ヒト飼育陸上動物;又は
(iii)水生動物
用の食品又は栄養補助食品として用いられる請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
水生動物が魚類又は貝類である請求項2に記載の使用。
【請求項5】
食品又は栄養補助食品の消費が、動物の1つ又は複数の組織への着色をもたらす請求項2又は3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
バチルスの胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である請求項1から5までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
(i)少なくとも1種のカロテノイドが胞子の形で存在し、栄養細胞の形で存在しない、及び/又は
(ii)少なくとも1種のカロテノイドが栄養細胞の形で存在し、胞子の形で存在しない
請求項1から6までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
カロテノイドが、ケト/ヒドロキシル−カロテン誘導体、アスタキサンチン、4−ケトゼアキサンチン、エキネノン、ヒドロキシル−エキネノン誘導体、フェニコアキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、及び/又はβ−カロテンである請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
バチルスが、遺伝子を発現し、及び/又は遺伝子を不活性化するように遺伝子操作されている請求項1から8までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
バチルスが、
− crtY及び/又はcrtL−b遺伝子の産物である二環式ベータシクラーゼ;
− crtL−e遺伝子の産物であるイプシロンシクラーゼ;
− crtM遺伝子の産物であるデヒドロスクアレンシンターゼ;
− crtN遺伝子の産物であるデヒドロスクアレンデサチュラーゼ;
− crtI遺伝子の産物であるフィトエンデサチュラーゼ;
− Pds遺伝子の産物であるフィトエンデサチュラーゼ;
− crtQ遺伝子の産物であるζ−カロテンデサチュラーゼ;
− Zds遺伝子の産物であるζ−カロテンデサチュラーゼ;
− crtEb;C50カロテノイド生合成の産物であるリコペンエロンガーゼ;
− crtX遺伝子の産物であるゼアキサンチングルコシラーゼ;
− C3カロテンヒドロキシラーゼ(crtZ様遺伝子の産物である);
− C2カロテンヒドロキシラーゼ(BcrtG遺伝子の産物である);
− C4オキシゲナーゼ(crtW様遺伝子の産物である);
− C4オキシゲナーゼ(bkt様遺伝子の産物である);
− zep1遺伝子の産物であるゼアキサンチンエポキシダーゼ;
− vde遺伝子の産物であるビオラキサンチンデエポキシダーゼ;
− ccs遺伝子の産物であるカプサンチン/カプソルビンシンターゼ、
− crtU遺伝子の産物であるβ−カロテンデサチュラーゼ;
− crtYe/Yf遺伝子の産物であるデカプレノキサンチンシンターゼ;
− 香気、風味及び/又は医薬関連化合物を生産するカロテノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD’s)
の存在するカロテノイド遺伝子産物の1つ又は複数を異種発現する請求項9に記載の使用。
【請求項11】
バチルスが、メバロン酸(MVA)経路の遺伝子の1つ又は複数を導入するように遺伝子改変されている請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
バチルスが、
− ggppシンターゼ(crtE様)遺伝子;
− フィトエンシンターゼ(crtB様)遺伝子;
− 3又は4ステップフィトエンデサチュラーゼ(crtI様)遺伝子;
− シクラーゼ(おそらくモノシクラーゼ)(crtY様)遺伝子;
− β環3,3’ヒドロキシラーゼ(crtZ様)遺伝子;及び/又は
− β環4,4’オキシゲナーゼ(ケトラーゼ)、(crtW及びcrtO/bkt様)遺伝子
の遺伝子の1つ又は複数を有する請求項1から11までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
(i)請求項1、2及び6から12までのいずれか一項に記載のバチルスを栄養成長させ、及び/又はバチルスの胞子を生成させること、及び
(ii)前記バチルスからカロテノイド、その代謝前駆体又はその誘導体を抽出すること
を含む、カロテノイド、その代謝前駆体又はその誘導体を製造する方法。
【請求項14】
カロテノイドが、擬似胃液との1時間のインキュベーション後にカロテノイドの少なくとも50%が残存するように胃耐性である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配列番号1〜6のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有するバチルスから選択されるバチルスであって、前記バチルスの胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバチルス。
【請求項16】
バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)、HU33(NCIMB41342)及びHU36(NCIMB41361)、又はそれらのいずれかの派生株、変異株若しくは突然変異体から選択されるバチルスであって、前記派生株、変異株又は突然変異体が、HU19、HU28、HU33及びHU36のいずれか1種の配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する請求項15に記載のバチルス。
【請求項17】
異種抗原を発現する、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルスを含むワクチン。
【請求項18】
バチルス又はバチルスからの抽出物を含む食品材料、食品添加物、色素、着色料、化粧品、栄養補給食品又はプロバイオティック組成物であって、前記バチルスが、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルスである食品材料、食品添加物、色素、着色料、化粧品、栄養補給食品又はプロバイオティック組成物。
【請求項19】
請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルス又はそのようなバチルスからの抽出物と、医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬。
【請求項20】
ヒト又は動物の体の治療方法に用いるための、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルス又はそのようなバチルスからのカロテノイド抽出物。
【請求項21】
バチルス又はバチルスからの抽出物の、着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品としての、又は化粧品における使用であって、前記バチルスが、その胞子及び栄養細胞が少なくとも1種のカロテノイドを異なる量で含有するバチルスである使用。
【請求項22】
(i)刺激が存在するときに誘発され、発芽して栄養細胞を生じるバチルスの胞子であって、前記バチルスの胞子及び栄養細胞が、前記バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子を提供すること、
(ii)刺激の存否を決定するのに望ましい試験条件下で前記胞子を曝露すること、及び
(iii)胞子の発芽に起因する色の変化の存否を検出して、刺激の存否を決定すること
を含む、刺激を検出する方法。
【請求項23】
バチルスが、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルスである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(i)刺激が、胞子の発芽を誘発する発芽物質であるか、又は
(ii)刺激が存在すると、胞子の発芽を誘発する発芽物質の生成がもたらされる
請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
胞子が、刺激の存在下で胞子の発芽を誘発する発芽物質を生産するように修飾された基質とともに提供される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
刺激が、微生物の存在下で検出される請求項22から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
微生物が病原菌である請求項26に記載の方法。
【請求項27】
バチルスの成長、発芽又は胞子形成を調節可能な作用物質を検出する方法であって、
(i)試験作用物質を、バチルスの胞子及び栄養細胞が、前記バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバチルスと接触させること、及び
(ii)色の変化又は色の強度の変化をモニタリングすること
を含む方法。
【請求項28】
バチルスが、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のとおりである請求項26に記載の方法。
【請求項29】
バチルスと支持体とを含むバイオセンサであって、前記バチルスの胞子及び栄養細胞が、前記バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバイオセンサ。
【請求項30】
バチルスが、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のとおりである請求項28に記載のバイオセンサ。
【請求項1】
バチルス又はバチルスからの抽出物の、着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品としての、又は化粧品における使用であって、前記バチルスが、配列番号1〜6のいずれかの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有し、又はその抽出物が、前記配列同一性を有するバチルスから得られる使用。
【請求項2】
バチルスが、バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)、HU33(NCIMB41342)及びHU36(NCIMB41361)又はそれらのいずれかの派生株、変異株若しくは突然変異体から選択される1種であり、前記派生株、変異株若しくは突然変異株の16S rRNA遺伝子が、HU19、HU28、HU33及びHU36のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
バチルス又はバチルスからの抽出物が、
(i)ヒト;
(ii)非ヒト飼育陸上動物;又は
(iii)水生動物
用の食品又は栄養補助食品として用いられる請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
水生動物が魚類又は貝類である請求項2に記載の使用。
【請求項5】
食品又は栄養補助食品の消費が、動物の1つ又は複数の組織への着色をもたらす請求項2又は3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
バチルスの胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である請求項1から5までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
(i)少なくとも1種のカロテノイドが胞子の形で存在し、栄養細胞の形で存在しない、及び/又は
(ii)少なくとも1種のカロテノイドが栄養細胞の形で存在し、胞子の形で存在しない
請求項1から6までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
カロテノイドが、ケト/ヒドロキシル−カロテン誘導体、アスタキサンチン、4−ケトゼアキサンチン、エキネノン、ヒドロキシル−エキネノン誘導体、フェニコアキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、及び/又はβ−カロテンである請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
バチルスが、遺伝子を発現し、及び/又は遺伝子を不活性化するように遺伝子操作されている請求項1から8までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
バチルスが、
− crtY及び/又はcrtL−b遺伝子の産物である二環式ベータシクラーゼ;
− crtL−e遺伝子の産物であるイプシロンシクラーゼ;
− crtM遺伝子の産物であるデヒドロスクアレンシンターゼ;
− crtN遺伝子の産物であるデヒドロスクアレンデサチュラーゼ;
− crtI遺伝子の産物であるフィトエンデサチュラーゼ;
− Pds遺伝子の産物であるフィトエンデサチュラーゼ;
− crtQ遺伝子の産物であるζ−カロテンデサチュラーゼ;
− Zds遺伝子の産物であるζ−カロテンデサチュラーゼ;
− crtEb;C50カロテノイド生合成の産物であるリコペンエロンガーゼ;
− crtX遺伝子の産物であるゼアキサンチングルコシラーゼ;
− C3カロテンヒドロキシラーゼ(crtZ様遺伝子の産物である);
− C2カロテンヒドロキシラーゼ(BcrtG遺伝子の産物である);
− C4オキシゲナーゼ(crtW様遺伝子の産物である);
− C4オキシゲナーゼ(bkt様遺伝子の産物である);
− zep1遺伝子の産物であるゼアキサンチンエポキシダーゼ;
− vde遺伝子の産物であるビオラキサンチンデエポキシダーゼ;
− ccs遺伝子の産物であるカプサンチン/カプソルビンシンターゼ、
− crtU遺伝子の産物であるβ−カロテンデサチュラーゼ;
− crtYe/Yf遺伝子の産物であるデカプレノキサンチンシンターゼ;
− 香気、風味及び/又は医薬関連化合物を生産するカロテノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD’s)
の存在するカロテノイド遺伝子産物の1つ又は複数を異種発現する請求項9に記載の使用。
【請求項11】
バチルスが、メバロン酸(MVA)経路の遺伝子の1つ又は複数を導入するように遺伝子改変されている請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
バチルスが、
− ggppシンターゼ(crtE様)遺伝子;
− フィトエンシンターゼ(crtB様)遺伝子;
− 3又は4ステップフィトエンデサチュラーゼ(crtI様)遺伝子;
− シクラーゼ(おそらくモノシクラーゼ)(crtY様)遺伝子;
− β環3,3’ヒドロキシラーゼ(crtZ様)遺伝子;及び/又は
− β環4,4’オキシゲナーゼ(ケトラーゼ)、(crtW及びcrtO/bkt様)遺伝子
の遺伝子の1つ又は複数を有する請求項1から11までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
(i)請求項1、2及び6から12までのいずれか一項に記載のバチルスを栄養成長させ、及び/又はバチルスの胞子を生成させること、及び
(ii)前記バチルスからカロテノイド、その代謝前駆体又はその誘導体を抽出すること
を含む、カロテノイド、その代謝前駆体又はその誘導体を製造する方法。
【請求項14】
カロテノイドが、擬似胃液との1時間のインキュベーション後にカロテノイドの少なくとも50%が残存するように胃耐性である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配列番号1〜6のいずれか1つの配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有するバチルスから選択されるバチルスであって、前記バチルスの胞子及び栄養細胞が、胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバチルス。
【請求項16】
バチルスspp.HU19(NCIMB41359)、HU28(NCIMB41360)、HU33(NCIMB41342)及びHU36(NCIMB41361)、又はそれらのいずれかの派生株、変異株若しくは突然変異体から選択されるバチルスであって、前記派生株、変異株又は突然変異体が、HU19、HU28、HU33及びHU36のいずれか1種の配列と少なくとも95%の16S rRNA配列同一性を有する請求項15に記載のバチルス。
【請求項17】
異種抗原を発現する、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルスを含むワクチン。
【請求項18】
バチルス又はバチルスからの抽出物を含む食品材料、食品添加物、色素、着色料、化粧品、栄養補給食品又はプロバイオティック組成物であって、前記バチルスが、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルスである食品材料、食品添加物、色素、着色料、化粧品、栄養補給食品又はプロバイオティック組成物。
【請求項19】
請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルス又はそのようなバチルスからの抽出物と、医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬。
【請求項20】
ヒト又は動物の体の治療方法に用いるための、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルス又はそのようなバチルスからのカロテノイド抽出物。
【請求項21】
バチルス又はバチルスからの抽出物の、着色料、色素、食品添加物、栄養補助食品としての、又は化粧品における使用であって、前記バチルスが、その胞子及び栄養細胞が少なくとも1種のカロテノイドを異なる量で含有するバチルスである使用。
【請求項22】
(i)刺激が存在するときに誘発され、発芽して栄養細胞を生じるバチルスの胞子であって、前記バチルスの胞子及び栄養細胞が、前記バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色である胞子を提供すること、
(ii)刺激の存否を決定するのに望ましい試験条件下で前記胞子を曝露すること、及び
(iii)胞子の発芽に起因する色の変化の存否を検出して、刺激の存否を決定すること
を含む、刺激を検出する方法。
【請求項23】
バチルスが、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のバチルスである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(i)刺激が、胞子の発芽を誘発する発芽物質であるか、又は
(ii)刺激が存在すると、胞子の発芽を誘発する発芽物質の生成がもたらされる
請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
胞子が、刺激の存在下で胞子の発芽を誘発する発芽物質を生産するように修飾された基質とともに提供される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
刺激が、微生物の存在下で検出される請求項22から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
微生物が病原菌である請求項26に記載の方法。
【請求項27】
バチルスの成長、発芽又は胞子形成を調節可能な作用物質を検出する方法であって、
(i)試験作用物質を、バチルスの胞子及び栄養細胞が、前記バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバチルスと接触させること、及び
(ii)色の変化又は色の強度の変化をモニタリングすること
を含む方法。
【請求項28】
バチルスが、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のとおりである請求項26に記載の方法。
【請求項29】
バチルスと支持体とを含むバイオセンサであって、前記バチルスの胞子及び栄養細胞が、前記バチルスの胞子及び栄養細胞の形で少なくとも1種のカロテノイドが示差的に存在するので異なる色であるバイオセンサ。
【請求項30】
バチルスが、請求項1、2、6から12、15及び16のいずれか一項に記載のとおりである請求項28に記載のバイオセンサ。
【図2D】
【図6】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図6】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2009−521212(P2009−521212A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543893(P2008−543893)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004562
【国際公開番号】WO2007/066108
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(504339387)ロイヤル ホロウェイ アンド ベッドフォード ニュー カレッジ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004562
【国際公開番号】WO2007/066108
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(504339387)ロイヤル ホロウェイ アンド ベッドフォード ニュー カレッジ (1)
【Fターム(参考)】
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