説明

細菌のクオラムセンシングの共有結合阻害

クオラムセンシングなどの細菌伝達の阻害剤、及びその使用方法と製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌の伝達の阻害剤、及びその使用方法若しくは製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌密度機能として細菌間の遺伝子発現の化学的調整は、「クオラムセンシング」(QS)として知られるメカニズムにより調節される。細胞間伝達は、単細胞生物が挙動を調整できるようにし、変化する環境に適応させ、多細胞生物と競争並びに共存させる。QSに制御された挙動の例は、バイオフィルム形成、毒性因子発現、抗生物質産生、及び生物発光誘導を含む。これらのプロセスは、同時に実行されるときにのみ細菌密度に有益である。例えば、海洋細菌Vibrio fischeriによりもたらされる生物発光は、十分な数の細菌が、それらの発光を同期させる場合に限り、この種に寄生する多くの生物に有益である。さまざまなQSシグナルシステムが発見されたが、QSに関与するより大きいタンパク質及び小さい分子は、いまだ説明されていない(1−4)。
【0003】
成人における総微生物菌体数が、少なくとも10の因数の差で哺乳類細胞の数を上回っていることを考えると特に、細菌内のQSの重要性とそれのヒトの健康への影響は重大である。消化管だけで、多大な遺伝的多様性を示す500−1000の異なる種を含んでいるが、これらの種の大部分は、いまだインビトロで培養されたことがないので、この菌体数もほとんど明らかになっていない。種内QS及び種間QSは、細菌数の維持及び病原性細菌のコロニー形成の補助又は防止といった重要なプロセスを調和させて、この片利共生菌体数をかなり増加させることがある(5、6)。
【0004】
QSは、共有分子構造に応じていくつかのクラスに分類される、自己誘導物質により調節される(図1a、2−4)。このクラス内にはアシル側鎖の長さや酸化状態で生じるQSシグナルに違いがあるので、70種を超えるグラム陰性細菌が、N−アシルホモセリンラクトン(AHLs)を自己誘導物質として使用する。種を異にするさまざまなAHLsが、細菌感染において、重要な役割を担うことが示されてきた。重要な例は、グラム陰性細菌、緑膿菌である。この一般的な環境微生物は、日和見性のヒト病原体であり、例えば、一般的な及び致命的な遺伝性疾患である嚢胞性線維症(CF)を患う患者において広く知られており、多くの場合肺防御機能障害により死亡する。緑膿菌の病因及び抗生物質耐性をもたらす大きな要因は、バイオフィルムを形成するその能力にある。これは、細胞の微生物由来の付着群生であり、接合部分に付着あるいは互いに付着して、細胞外ポリママトリクスに生息し、成長、遺伝子発現、及びタンパク質産生に関して浮遊細胞と異なる表現型を示す。バイオフィルムの形成及び特定の構造は、多様なQSシステム(7)並びにサイクリックジ−GMPなどその他の因子により調節されるが、QSの調節遺伝子を一つでも阻害すると、バイオフィルム形成全体を著しく減少に導くことができることが示されてきた。
【0005】
緑膿菌の主要なQSシステムは、3−オキソ−C12−HSLの合成及び分泌を介して調節され、3−オキソ−C12−HSLは、閾値濃度に達すると転写活性化因子LasRに結合する。この相互作用は、フォールディングを修正し、続いて二量化、LasR二量体の標的DNAへの結合がおこり、その結果遺伝子発現することを示している。3−オキソ−C12−HSLが認識することから始まるシグナル伝達事象は、QS階層の最上位にあるように見えるが、更に、いくつかのその他の小分子が、遺伝子発現(例えば、C4−HSL,PQS)の調節において役割を果たすことが見出されてきた(8−10)。その医学的重要性により、緑膿菌におけるQSが広く研究されてきた。この分野におけるある飛躍的な進歩は、その天然リガンド(3−オキソ−C12−HSL)に結合するLasRの結晶構造の決定とともにあると、最近、Bottomleyらにより報告された(11)。
【0006】
QSシグナル伝達の阻害は、病原と闘う新しいアプローチとして、ここ数年研究されてきた。このような成果がもたらす強力な阻害剤の数はまだ少ないが、いくつかのグループが、緑膿菌におけるQSの重要な阻害を示す化合物を同定した。適当な阻害剤の例を、IC50(50%抑制濃度)の値とともに、図1bに示す。
【発明の概要】
【0007】
背景技術は、細菌伝達の有効な阻害剤、及びその使用方法若しくは製造方法を十分に教示又は示唆していない。
【0008】
本発明は、少なくともいくつかの実施例では、細菌伝達の共有結合阻害剤、及びその使用方法若しくは製造方法を提供することにより、技術背景のこれらの欠点を克服する。阻害剤は、直接的に又は間接的に選択的に作用して細菌伝達を阻害し、細菌伝達のいかなる段階おいても選択的に作用することがある。
【0009】
少なくともいくつかの実施形態によると、これらの阻害剤は、抑制化合物(小分子)であり、この抑制化合物は、反応基、好ましくはその標的タンパク質の活性部位内の求核剤と共有結合を形成することができる求電子剤を含み、求電子剤は、他のタンパク質と非特異的に相互作用しない。反応基を求核剤と相互作用させて、その後共有結合を形成することを可能にする方法で、標的タンパク質と相互作用することができる部分に、反応基を結合するのが好ましい。このような阻害剤は、化学式A−Bを有するのが好ましく、ここで、Aは求電子的官能基であり、Bは標的タンパク質の天然リガンド又はそれらの部分であり、A官能基が標的タンパク質に共有的に結合して、その後天然リガンドの結合を阻害できる方法で、阻害剤が標的タンパク質と相互作用する。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、天然リガンドが、クオラムセンシングにおいて作用するホモセリンラクトンであるタンパク質に共有的に結合するように設計された一連の求電子的プローブ(阻害剤)が提供される。ホモセリンラクトン類は、グラム陰性細菌のクオラムセンシングのリガンドとして作用することが知られている。クオラムセンシングの細菌の非限定的な例は、アシネトバクター、アクチノバチルス、ボルデテラ、ブルセラ、カンピロバクター、シアノバクテリア、エンテロバクター、エルウィニア、大腸菌、フランシセラ、ヘリコバクター、ヘモフィルス、クレブシエラ、レジオネラ、モラクセラ、ナイセリア、パスツレラ、プロテウス、緑膿菌、サルモネラ菌、セランシア、赤痢菌、トレポネーマ、コレラ菌、及びペスト菌の一又はそれ以上を含む本発明の一又はそれ以上の化合物により選択的に阻害されることがある。
【0011】
非限定的な例として、タンパク質は、選択的に、緑膿菌用のLasR結合ポケットとして機能することがあるが、タンパク質の活性の阻害が、QSで調節された遺伝子発現の特定の阻害及び毒性因子の分泌とバイオフィルム形成を同時に減縮するならば、このタンパク質は、選択的に、天然リガンドがホモセリンラクトンである任意のタンパク質でよい。従って、Bは、選択的に任意のホモセリンラクトン部分である。
【0012】
一つの仮説又は一つの例に制限されることを望むものではないが、これらの化合物が、LasRの結合ポケットのCys79に共有的に結合すると考えられる。この非限定的な例に関して、Bは、3−オキソ−C(n+2)−N−アシルホモセリンラクトン部分であり、この中で、nは少なくとも2であり、選択的に最大14で、Aは適切な求電子的官能基である。別段の明記がない限り、全ての分子をSエナンチオマーと仮定する。
【0013】
少なくともいくつかの実施形態によると、化学式Iの化合物が提供され:

式中、nは、炭素の数(多くの実施形態では、この範囲は変化することがあるが、選択的にnは1乃至18であり;以下に更に詳しく述べるが、用語「n=a−b」は、nが、a、a+1・・・bからなる群より選択される任意の数であることを意味し;本明細書で使用する用語「m」は、提供された数の範囲に類似する意味を与える)を表し、Rは、任意の適切な反応性求電子官能基である。選択的に、Rは、チオール、イソシアネート、イソチオシアネート、イソセレノシアナート、置換又は非置換の反応性アミド官能基、NHC(=0)C=N−NH2、反応性置換環状部分、(選択的に少なくとも一の不飽和結合を有する)反応性置換又は非置換複素環、アルキルスルホナート(アルキルスルホナートは、B部分と組み合わせてアルキルスルホン酸エステルを形成する)、置換アルケン、反応性アミン、及びRからなる基より選択される。本明細書では、用語「環状」は、芳香族及び非芳香族の両方を包含する。
【0014】
チオールが存在する場合、nは5乃至12である。本発明の少なくともいくつかの実施形態に従って、チオールを特徴付ける構造の非限定的な例を構造−Dに示した。
【0015】
イソシアネートは、選択的に置換され又は非置換である。イソシアネートは、非置換であるのが好ましい。特定の非限定的な例として、(以下の構造−Qに示すように)nは9である。
【0016】
イソチオシアネートは、選択的に置換され又は非置換であり、ここで置換イソチオシアネートは、選択的に構造RN=C=Sを有し、Rは、置換アルキル、置換イソアルキル、置換アルケン、及び置換イソアルケンからなる基より選択され、これら各々は、選択的に及び好ましくは、ハロゲン、複素環アミン、及びアルキルアミンからなる基より選択される部分を有する。置換が、複素環アミンのときは、ピリジル、ピロリル、ピロリジン、アリールアミン、イミダリル、及びピペリジンからなる群より選択されることが好ましい。
【0017】
少なくともいくつかの実施形態によれば、Rは、置換エチレン、置換プロピレン、置換ブテン、及び置換ペンテンからなる群より選択され、これらの任意の異性体を選択的に含み、これらは上記のように選択的に置換される;Rは、2−ペンテンで置換されることが更に好ましく、アルキルアミン、ピリジル、ピロリル、アリールアミン、又はイミダゾリルのうちの一で置換されるのが更に好ましく;(以下の構造−Yに示すように)nは1乃至5がもっとも好ましい。
【0018】
少なくともいくつかの実施形態によれば、Rは、置換エチル又はメチルからなる群より選択され、上記のように選択的に置換されるが、アルキルアミン、ピリジル、ピロリル、アリールアミン、ピペレジン、又はイミダゾリルのうちの一で置換されるのが好ましく;ピペリジンで置換されるのが更に好ましい。ピペリジンで置換され、(以下の構造−Z1、構造−Z2、及び構造Z−3に示すように)nは1乃至5であるのが、もっとも好ましい。
【0019】
少なくともいくつかの実施形態に従ってハロゲンで置換する場合は、このハロゲンは、臭素又は塩素が好ましい。Rが、ブロモアルキル又はクロロアルキル、及びnが7乃至9であるのがもっとも好ましく;nが8(構造−3に相当)であるのがもっとも好ましい。イソチオシアネートが非置換である場合は、nが8乃至10(構造itc−11、itc−12、及びitc−13に相当)が好ましい。
【0020】
反応性アミド官能基は、選択的にハロカルボキサミドであり、ブロモカルボキサミドとクロロカルボキサミドからなる群より選択されるハロカルボキサミドが好ましく、ここで、アミド官能基の炭素鎖は、1乃至16炭素の長さ;好ましくはnが5乃至16である。ハロカルボキサミドが、ハロアセトアミドであるのが、より好ましく、ハロアセトアミドが、ブロモアセトアミド及びクロロアセトアミドからなる群より選択されるのが更に好ましく、ここで、nは5乃至16(構造hal−11−Br、hal−12−Br、hal−13−Br、hal−11−Cl、hal−12−Cl、及びhal−13−Clに相当)が好ましい。
【0021】
が、NHC(=0)C=N−NHの場合は、(例えば、構造−4に示すように)nは5乃至16が好ましい。
【0022】
反応性置換環状部分は、置換アルキレンシクロブタン、アルキレンシクロペンタン、及びアルキレンシクロヘキサンからなる群より選択されるのが好ましく、これらが、アルキレンシクロブタンジオン、アルキレンシクロペンタンジオン、及びアルキレンシクロヘキサンジオンからなる群より選択されるのがより好ましく、これらが、アルキレンシクロブタン−2,4−ジオン、アルキレンシクロペンタン−2,4−ジオン、及びアルキレンシクロヘキサン−2,4−ジオンからなる群より選択されるのがもっとも好ましく;このアルキレン部分は、選択的にメチレン、エチレン、ブテン、又はペンテンであり、メチレンが好ましい。反応性置換環状部分が、メチレンシクロペンタン−2,4−ジオンであることがより好ましく、選択的にnは5乃至16であるが、(構造−8に示すように)nは8乃至10が更により好ましい。
【0023】
非置換の場合は、反応性複素環は、エチレンオキシド、nは5乃至16であるのが好ましく;nは8乃至12がより好ましく;(構造−12に示すように)nは9乃至11がもっとも好ましい。
【0024】
置換の場合は、反応性複素環は、少なくとも一の不飽和炭素結合を有することが好ましく、2−フラノン、及び(選択的に、2−ピロン又は4−ピロンである)ピラノンからなる群より選択される。反応性複素環が、2−フラノンである場合は、選択的にnは5乃至16であり、nは8乃至12が好ましく;(構造−13に示すように)nは9乃至11がより好ましい。反応性複素環が、2−ピロンである場合は、選択的にnは5乃至16であり、nは8乃至12が好ましく;(構造−14に示すように)nは9乃至11がより好ましい。
【0025】
アルキルスルホナートが、置換及び非置換アルキルスルホナートからなる群より選択され;アルキルスルホナートが、メチルスルホナート、エチルスルホナート、プロピルスルホナート、及びブチルスルホナートからなる群より選択されるものが好ましく;アルキルスルホナートが、プロピルスルホナートで、nは1乃至14であるのがより好ましく、更に好ましくは、nは5乃至9であり;アルキルスルホナートが、プロピルスルホナートで、(構造−9に示すように)nは6乃至8であるのがもっとも好ましい。置換の場合は、アルキルスルホナートが、ハロアルキルスルホナートであるのが好ましく、ブロモアルキルスルホナート、フルオロアルキルスルホナート、及びクロロアルキルスルホナートからなる群より選択されるものがより好ましく;ブロモメチルスルホナート、クロロメチルスルホナート、及びフルオロメチルスルホナートからなる群より選択されるものがもっとも好ましく、ここで、nは1乃至14が好ましく、nは5乃至9がより好ましく;(構造−Xに示すように、これは非置換アルキルスルホナートをも示す)nは6乃至8がもっとも好ましく;又は代替として、3−ブロモプロピルスルホナート、2−ブロモプロピルスルホナート、3−クロロプロピルスルホナート、及び2−クロロプロピルスルホナートからなる群より選択されるものがもっとも好ましく、ここで、nは1乃至14が好ましく、nは5乃至9がより好ましく;(構造−7に示すように)nは6乃至8がもっとも好ましい。
【0026】
置換アルケンは、置換エチレンからなる群より選択されるものが好ましく、ハロゲンで置換されたものが更に好ましく、臭素で置換されたものがより好ましく;C=C=CH、ここでRは、ハロゲンであり臭素が好ましい。置換アルケンが、C=C=CHである場合は、Rは、臭素が好ましく、nは1乃至14が好ましく、nは5乃至9がよりこのましく;(下記構造−10に示すように)nは8乃至10がもっとも好ましい。
【0027】
いくつかの実施形態では、反応性アミンは、アルキルアミン又はジアルキルアミンであり、ここで、アルキル部分が置換されたものが好ましく、ハロゲンで置換されたものがより好ましい。アルキル部分が、メチル、エチル、プロピル、及びブチルからなる群より選択されるものが好ましく;反応性アミンが、ハロゲン置換ジエチルアミンであるのがより好ましい。反応性アミンが、塩素置換ジエチルアミンであるのがもっとも好ましく、nは1乃至14が好ましく、nは5乃至9がより好ましく;(構造−16に示すように)nは8乃至11がもっとも好ましい。
【0028】
は、選択的に;



式中、mは1乃至6;mは1が好ましく;及び

からなる群より選択される。
【0029】
が、

の場合は、nは選択的に1乃至14であり、nは7乃至11がより好ましく、(構造−5に示すように)nは8乃至10がもっとも好ましい。
【0030】
が、

の場合は、nは3乃至7が好ましく、nは4乃至6がより好ましく;(構造−6に示すように)nは4乃至6及びmは1がもっとも好ましい。
【0031】


の場合は、(構造−15に示すように)nは9乃至11が好ましい。
【0032】
本発明の他の実施形態に従って化学式II:

の化合物を提供する。ここでRは、選択的に上記の任意の群であり、Rは、アルキルアミン、ピリジル、ピロリル、アリールアミン、イミダゾリル、又はピペリジン;nは0乃至8;nは0乃至8(nとnは独立的に選択される)であってもよい。典型的な構造を、構造−P1、構造−P2、構造−P3、構造−P4、及び構造−P5として示す。
【0033】
例えば、構造−Cに示すように、上記の化合物はいずれも、骨格の炭素鎖中にジスルフィド結合を選択的に具えることがある。
【0034】
上記化合物の任意の一又はそれ以上が、クオラムセンシングの阻害が要求される本発明のさまざまな実施形態にしたがって、多様な適用で選択的に用いられることがあり、植物又は動物(ここで、動物は選択的に任意の哺乳類、爬虫類、又は魚を含み;動物は哺乳類であることが好ましく、選択的に動物はヒトである)の疾患の治療を含むがこれらに限定されるものではなく、医療機器は、植え込み型の医療機器、並びに体の外側にあり、又は体及び外部環境に連動する医療機器;液体を運ぶ及び/又は液体に配置される任意のタイプの構造;膜、繊維、包装材料、又はいかなるタイプのバイオフィルムの阻止又は縮小するものを含む。
【0035】
ここで使用するように、用語「バイオフィルム」は、構造の表面に付着する微生物の薄層を意味し、この薄層は微生物が分泌するポリマを有する有機的又は無機的なものである。
【0036】
医療機器の非限定的な例は、自然組織(歯を含む)へのコーティング、カテーテル、ペースメーカー、コンタクトレンズ、ステント、心臓弁置換若しくは促進装置、植え込み型自動徐細動器、人工心臓補助装置、植え込み型輸液ポンプ、ドレナージ装置、人工関節、骨ピン、スクリュー、及びその他の整形外科に関する装置、歯冠、歯牙充填、人工歯根、その他の歯又は整形外科に関する装置、歯内器具、外科縫合、クリップ及びステープル若しくはその他の締結具、手術用メッシュ、眼内レンズ、バットレス、ラップバンド、包帯、グラフト、ステント/グラフト、無結節創縫合、シーリング材、接着剤、組織スキャフォールド、柔組織代替若しくは増強インプラント(胸、頬、及び臀部のインプラントを含むがこれらに限定されるものではない)などを含む。
【0037】
本明細書で使用する用語「カテーテル」は、カテーテル、カテーテルライン、ポート、シャント、補給チューブ、気管内チューブ、抹消から中心静脈まで挿入したカテーテル(PICC)ラインを含むがこれらに限定されるものではない。
【0038】
液体を運ぶ構造の非限定的な例は、チューブ、ウォーターフィルター、及びその他の浄化装置、このような流体用の容器、液体と接する表面を特徴付ける製造施設(パイプ、チューブ、容器、機械を含むがこれらに限定するものではない)、クリーンルームの表面、ヒトが存在するビル内のいかなるタイプのパイプ、チューブ、容器及び機械などを含む。
【0039】
液体に配置された構造の非限定的な例は、フィルター、機械、水中構造物、船舶、及び海洋環境に配置された任意の構造(特に海洋環境に没するものに限定するものではない)を含む。
【0040】
少なくともいくつかの実施態様では、上記いずれかの主張に従って適切な担体中に化合物を含む組成物が提供される。選択的に組成物は、染料、抗菌剤、成長因子、又は抗炎症薬を更に含む。また選択的に、組成物は、更に追加的な賦形剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明は、以下の詳細な説明からより完全に理解及び認識され、以下の図面と併せて解釈される:
【図1】図1は、a)構造的に異なるクラスに属する細菌の自己誘導物質の例;b)緑膿菌(I1−I5)における合成QS阻害剤の例を示す。おおよそのIC50値(異なるレポーターアッセイより)を、化合物の下に表示する。
【図2】図2は、緑膿菌の天然自己誘導物質である、3−オキソ−C12−N−アシルホモセリンラクトン(3−オキソ−C12−HSL)の構造と、イソチオシアネート(1)、ブロモアセトアミド(2)、又はクロロアセトアミド(3)に分類される九つの合成類似化合物の非限定的な例の構造を示す。求電子性炭素を反応基ごとにマーク(灰色の円)した。
【図3】図3は、いくつかの阻害化合物の非限定的で典型的な合成図表を示す。DMF、ジメチルホルムアミド;DCC(N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド);DMAP(4−ジメチルアミノピリジン);DCM(ジクロロメタン);TFA(トリフルオロ酢酸)。
【図4】図4は、itc−11及びitc−12のLasR−LBDへの共有結合を示しており;a)3−オキソ−C12−HSLと九つの反応性プローブで表される精製されたLasR−LBDのSDS−PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動);b)3−オキソ−C12−HSLで表されるLasR−LBDのデコンボリューション処理された質量スペクトル;c)itc−11で表されるLasR−LBDのデコンボリューション処理されたMS(質量分析);d)itc−12で表されるLasR−LBDのデコンボリューション処理されたMSである。差し込み図は、デコンボリューション処理前のスペクトルデータである。
【図5】図5は、リポーター遺伝子分析を示したものである。イソチオシアネート(a)及びハロアセトアミド(b)によるPAO1QS阻害;イソチオシアネート(c)及びハロアセトアミド(d)による大腸菌(このリポーター株は、3−オキソ−C12−HSLを生成しない)中の50nMの3−オキソ−C12−HSLによるLasR活性剤の拮抗作用。各点は、3回の実験の平均±SD(標準偏差)を表したものである。
【図6】図6は、PAO−JP2をベースとするアンタゴニスト(aとb)、アゴニスト(c)、及び半アゴニスト(d)分析である。更に捕捉情報で記載するように、半アゴニスト分析中の曲線は、itc−12の共有結合モードに起因する場合がある。各点は、3回の実験の平均±SDを表す。
【図7】図7は、野生型緑膿菌株PAO1を50μMの4−Br−PHL、itc−12、又はDMSOとインキュベーしたときの(a)24時間後のバイオフィルム形成の阻害と、(b)36時間後のピオシアニン生成を示す。各点は、3回の実験の平均±SDを表す。
【図8】図8は、構造−Dの化合物(本明細書では「チオール−11」ともいう)を含む、チオール含有化合物の合成法を示す。
【図9】図9は、チオール−11とitc−12双方の緑膿菌の毒性阻害を用量依存的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
少なくともいくつかの実施形態では、本発明は、細菌の伝達の共有結合阻害剤、及びその使用方法若しくは製造方法を提供する。記され及び主張された本発明の範囲又は一般概念を損なうことを望むものではなく、以下の記述は、化学式IとIIの化合物、これらの使用、及びこれらの合成方法に関連するこれらの実施態様に焦点を合わせる。
【0043】
上記のように、これらの阻害剤は、クオラムセンシングを含む細菌伝達を阻害する。ここで、細菌は緑膿菌を含むが、これに制限されるものではない。一の仮説に限定されることを望むものではなく、少なくともこれらの阻害化合物のいくつかは、LasR又は等価タンパク質を活性化させる、緑膿菌の3−オキソ−C12−HSLなどの天然ホモセリンラクトン化合物に十分に類似する構造物を有することが可能であり、これにより3−オキソ−C12−HSLの構造のわずかな変化が、親和性の大きな減少をもたらすというこれまでの見解を排除する。これらの阻害剤の化合物は、親自己誘導物質からの偏差がほんのわずかであり、LasRの結合ポケット又は等価タンパク質中の残渣に共有結合することができる小さな反応性部分を含むと信じられている。この共有結合プローブは、LasR又は等価タンパク質に結合する天然化合物と効果的に競合すると期待され、結合における結合ポケットのわずかに変化した占有が(占有のわずかな変化が)、標的DNAに対する転写活性因子の効果的な結合に適した構造変化をもたらす。このタイプのプローブの使用は、LasR若しくは等価タンパク質及び3−オキソ−C12−HSLなどの天然リガンド双方の調節及び再利用に重大な影響を与えることもある。
【0044】
異なる官能基と異なるアルキル鎖長を有するこれらの求電子剤のいくつかの非限定的な例(イソチオシアネート1、ブロモアセトアミド2、クロロアセトアミド3)を図2に示し、天然リガンドと比較した。多くの課題のうちの一つは、求核システインと反応するための十分な反応性はあるが、プローブが結合ポケットに到達する前に望ましくない反応が他の残渣とともに起こるような過度には反応しないプローブを設計することである。
【0045】
化学式I及びIIの化合物の特定の非限定的な例を以下に示す。
【0046】


【0047】
上記の構造−Y及び構造−Z1乃至Z3について、構造−Yのnはn−1、構造−Z1及び構造Z−3のnはn−3、及び構造−Z2のnはn−5のようにnは選択され;ここでは、nを上記のように設定する。

【0048】
上記の構造−P1乃至P5について、構造−P1及び構造P3乃至P5のnはn−5、及び構造−P2のnはn−3のようにnは選択され;ここでは、nを上記のように設定する。
【0049】

【0050】
[実施例]
本発明による組成物及び方法の原理及び作用は、添付の詳細な説明を参照するとより良く理解できるであろう。
【0051】
本発明の少なくとも一の実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、以下の説明で述べられる又は実施例により例示される細部へのその適用に限定されるものではないものことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、さまざまな方法で実施又は実行することができる。また、本明細書で用いる表現及び専門用語は、説明を目的とするものであり、制限するものと見なすべきではない。
【0052】
本発明のさまざまな実施形態、利点及び新規な特徴は、以下の実施例を検討する際に、通常の当業者に明らかになるであろうし、これらは、限定されることを意図するものではない。更に、本明細書で上記したように及び以下の特許請求の範囲で主張するように、本発明のさまざまな実施形態及び態様の各々は、以下の実施例で実験的に裏付けがなされる。
【実施例1】
【0053】
[化学式Iのイソチオシアネート化合物及びハロアセトアミド化合物の合成]
この非限定的な実施例は、イソチオシアネートitc−11、12、13、ハロアセトアミドhal−11、12、13−Br、及びハロアセトアミドhal−11、12、13−Clに関する。この合成の概略図を図3Aに示す;図3bは、化学式Iのイソチオシアネート化合物に関する更に詳しい合成を示す(DCMはジクロロメタン、DMFはジメチルホルムアミド、DCCはN,N’ジシクロヘキシルカルボジイミド、DMAPは4−ジメチルアミノピリジン);図3cは、化学式Iのハロアセトアミド化合物についての更に詳しい合成を示す(DCMはジクロロメタン、DMFはジメチルホルムアミド、DCCはN,N’ジシクロヘキシルカルボジイミド、DMAPは4−ジメチルアミノピリジン、TCAはトリフルオロ酢酸)。
【0054】
通常、全ての化学試薬をAldrich社又はAcros社から購入し、更なる精製をせずに使用した。トリプシンをPromega工業(V5280)から購入した。TLCアルミシートのF254インジケータ配合のシリカゲル60(Merck社)上で薄層クロマトグラフィーを行った。フラッシュクロマトグラフィーをMerck社40−63μmのシリカゲル上で行った。フラッシュクロマトグラフィーによる化合物の精製についての抽剤比を、容量パーセント(容量/容量)として記録した。SDS pageをInvitron社(NP0342)より購入したNuPAGE Surelock Xcellを用いてNuPAGE Novex Bis−Tris Pre−Cast gel上で行った。Ni−NTAスピンカラム1314(QIAGEN社)を用いて小規模に又はAKTAprime plus精製システム(GE Healthcare社)に適した予め包装されたカートリッジNi2+(Bio−Scale、Mini Profinity ACカートリッジ、732−4612、BIO−RAD)を用いて大規模に発現させた。NMR(核磁気共鳴)分析を、Bruker Avance DPX200を用いて又は、代替として、Bruker Avance DMX500を用いて実行した。スペクトルを残留溶媒のシグナルで観測した。分析用HPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析を、Surveyor Plus HPLCシステム(Thermo Scientific社)上で、Luna C18、μm(150×4.6mm)カラムを用いて、1mL/分の流速で行った。分取HPLCを、定期的にSapphire600機器(ECOM社)上で、Luna C18カラム、10μm(250×21.20m)、20mL/分の流速で行った。全ての流出入は、0.1%TFA(溶媒B)を含有する0.1%含水TFA(溶媒A)−90%アセトニトリルの直線的勾配を使用した。化合物を二波長UV検出(230nm、260nm)により同定した。全てのMSをESI(エレクトロスプレーイオン化)源とともに、LCQ Fleet質量分析計(Thermo Scientific社)で行った。スペクトルを陽イオンモードで回収し、Xcaliburソフトウェア(Thermo Scientific社)により分析した。バイオアッセイを基準として用いるマイクロタイタープレートをスペクトルMax M2分光光度計(Molecular Devices社)を用いて評価した。Chhabraら1及びGeskeら2により記載された方法を変更(4−ブロモフェニル酢酸をEDC/NHS媒介結合を介して、ホモセリンラクトンヒドロブロミドと反応させた)し、化合物3−オキソ−C12−SL及び4−Br−PHLを合成した。
【0055】
[詳細な合成方法]

[9−Bromanoic acid(4a)−]
濃硝酸溶液(10mL、258mmol)に9−ブロモノナナール(bromononanol)(1gr、4.48mmol)を30分にわたって、25乃至30℃の温度を維持して添加した。この溶液を4時間室温で撹拌し、次いで80℃に加熱して、更に1時間撹拌した。次いで、反応混合物を室温に冷却して、100mLの蒸留水で慎重に希釈した。生成物をジエチルエーテル(4×25mL)で抽出し、有機相と結合させて硫酸マグネシウム上で乾燥させた。混合物を濾過して、真空で濃縮させ、生成物4aを定量的に生成させた。H−NMR(プロトン核磁気共鳴)(200MHz、CDCl):1.3−1.5(m;8H)、1.59−1.71(m;2H)、1.78−1.92(m;2H)、2.36(t;J=7.4Hz;2H)、3.40(t;J=6.8Hz;2H)、9.8(m、1H)
【0056】

[9−アジドノナン酸(5a)−]
9−ブロモノナン酸(4a)(1.062gr、4.48mmol)を15mLの乾燥ジクロロメタンに溶解させた。次いで、アジ化ナトリウム(914mg、14mmol)を添加して、混合物を60℃で6時間撹拌した。この溶液を冷却して、50mLのジクロロメタンで希釈し、その後1MのHCl(5×50mL)、ブライン(2×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。次いで、混合物を濾過し、真空で濃縮させて、白色固体として90%の生成物5aを得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.3−1.5(m;8H)、1.5−1.7(m;4H)、2.33(t;J=7.4Hz;2H)、3.25(t;J=6.86Hz;2H)
【0057】

[10−アジドデカン酸(5b)−]
10−ブロモデカン酸(1.125gr、4.48mmol)を、生成物5aについて説明したように反応させて、91%の生成物5bを得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.2−1.5(m;10H)、1.5−1.7(m;4H)、2.35(t;J=7.41Hz;2H)、3.24(t;J=6.81Hz;2H)
【0058】

[11−アジドウンデカン酸(5c)−]
アジ化ナトリウム(2.38gr、44.3mmol)を7.5mLの水に溶解させて、15mLのジクロロメタンを含む丸底フラスコに添加した。フラスコを0℃に冷却して、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.5mL、8.9mmol)を液滴で添加した。得られた溶液を室温まで温めて、2時間撹拌した。水層をジクロロメタン(3×8mL)で抽出して、結合有機相を炭酸ナトリウムの飽和溶液で洗浄した。次いで、得られた溶液を11−アミノウンデカン酸(892mg、4.43mmol)と、KCO(915mg、6.62mmol)と、及び15mLの水及び22.5mLのエタノール中のCuSO・5HO(11mg、0.0044mmol)との懸濁液にゆっくりと添加した。混合物を一晩撹拌し、真空で濃縮させた。この溶液を1MのHCl溶液で酸性化して、ジクロロメタン(4×50mL)で抽出した。結合させて、硫酸マグネシウムで乾燥させた有機相を濾過し、真空で濃縮させて、92%の5cを得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.25−1.4(m;12H)、1.5−1.7(m;4H)、2.35(t;J=7.43Hz;2H)、3.25(t;J=6.88Hz;2H)
【0059】
[アミンのBoc保護の一般的方法]
水(9mL)、NaOH(800mg、19.5mmol)、tertブタノール(9mL)、及びBoc無水物(4.3gr、19.5mmol)を含む丸底フラスコに、所望のアミン(18.55mmol)を添加した。次いで、混合物を室温で16時間撹拌し、その後、水(20mL)及び1MのHCL(10mL)で希釈した。得られた溶液を、酢酸エチル(1×60mL+2×20mL)で抽出し、ブラインで洗浄して、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。粗混合物を濾過して、真空で濃縮させた。
【0060】

[9−アミノノナン酸(8a)−]
9−ブロモデカン酸(2.0052gr、8.46mmol)を、80mLの含水水酸化アンモニウム(25%のNH)を含む丸底フラスコに添加した。得られた混合物を室温で24時間撹拌し、その後、水溶液を減圧下で蒸発させて、定量的収率で白色固体として生成物8aを得た。H−NMR(200MHz、CDOD):1.25−1.4(m;8H)、1.5−1.7(m;4H)、2.23(t;J=7.31 Hz;2H)、2.87(t;J=7.45Hz;2H)
【0061】

[10−アミノデカン酸(8b)−]
10−ブロモデカン酸(2.51gr、10mmol)を、80mLの含水水酸化アンモニウム(25%のNH)を含む丸底フラスコに添加した。得られた混合物を室温で24時間撹拌し、その後、水溶液を減圧下で蒸発させて、定量的収率で白色固体として生成物8bを得た。H−NMR(200MHz、CDOD):1.25−1.4(m;10H)、1.5−1.7(m;4H)、2.15(t;J=7.38Hz;2H)、2.89(t;J=7.48Hz;2H)
【0062】

[9−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ノナン酸(9a)−]
9−アミノノナン酸(8.46mmol)は、上記のようにBocで保護され、86%の収率で7.26mmolの無菌の生成物を得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.25−1.7(m;21H)、2.30(t;J=7.4Hz、2H)、3.05(t;J=6.8Hz、2H)、4.53(s、1H)
【0063】

[10−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)デカン酸(9b)−]
10−アミノデカン酸(5.57mmol)は、上記のようにBocで保護され、77%の収率で4.27mmolの無菌の生成物を得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.25−1.7(m;23H)、2.34(t;J=7.33Hz、2H)、3.07(t;J=6.25Hz、2H)、4.53(s、1H)
【0064】

[11−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ウンデカン酸(9c)−]
11−アミノウンデカン酸(18.55mmol)は、上記のようにBocで保護され、98%の収率で17.4mmolの無菌の生成物を得た。H−NHR(200MHz、CDCl):1.25−1.7(m;25H)、2.34(t;J=7.35Hz、2H)、3.1(t;J=6.2Hz、2H)、4.52(s、1H)
【0065】
[メルドラム酸を用いたホモセリンラクトンの結合に関する一般的な方法]
N−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(0.257gr、2.1mmol)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(0.454gr、2.2mmol)、所望のアルキルカルボン酸(2mmol)、及びメルドラム酸(0.288gr、2mmol)を20mLのジクロロメタンに溶解させた。得られた溶液を一晩攪拌し、それから濾過して反応で形成されたN,N−ジシクロヘキシル尿素を除去した。濾液を真空で濃縮させた。得られた残渣をDMF(15mL)に溶解し、α−アミノ−γ−ブチロラクトンヒドロブロミド(0.364gr、2mmol)を添加した。混合物を室温で1時間攪拌し、60℃で更に4時間攪拌した。得られた溶液を酢酸エチル50mLで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム、1M硫酸水素ナトリウム溶液、及びブラインで洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過して真空で濃縮させた。更に、フラッシュクロマトグラフィーにより精製した。
【0066】

[11−アジド−3−オキソ−N−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)ウンデカンアミド(6a)]:
生成物5aを上記のメルドラム酸で反応させ、得られた粗混合物をカラムクロマトグラフィーで精製し、収率66%で生成物6aを得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.2−1.4(m;8H)、1.5−1.7(m;4H)、2.1−2.3(m;1H)、2.51(t;J=7.3;2H)、2.6−2.75(m;1H)、3.21(t;J=6.85Hz;2H)、3.44(s;2H)、4.2−4.3(m;1H)、4.4(dt;J=9Hz、J=1.4Hz;1H)、4.5−4.65(m;1H)、7.7(d;J=6.6Hz;1H)
【0067】

[12−アジド−3−オキソ−N−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)ドデカンアミド(6b)]:
生成物5bを、上記のメルドラム酸で反応させ、得られた粗混合物をカラムクロマトグラフィーで精製し、収率38%で生成物6bを得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.2−1.4(m;10H)、1.5−1.7(m;4H)、2.1−2.3(m;1H)、2.50(t;J=7.2Hz;2H)、2.6−2.75(m;1H)、3.20(t;J=6.85Hz;2H)、3.44(s;2H)、4.2−4.3(m;1H)、4.4(dt;J=9Hz、J=1.4Hz;1H)、4.5−4.7(m;1H)、7.75(d;J=6.7;1H)
【0068】

[13−アジド−3−オキシ−N−(2−オキシテトラヒドロフラン−3−イル)トリデカンアミド(6c)]:
生成物5cを上記のメルドラム酸で反応させ、得られた粗混合物をカラムクロマトグラフィーで精製し、収率66%で生成物6cを得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.2−1.4(m;12H)、1.5−1.7(m;4H)、2.1−2.3(m;1H)、2,52(t;J=7.3Hz;2H)、2.6−2.8(m;1H)、3.24(t;J=6.8Hz;2H)、3.46(s;2H)、4.2−4.3(m;1H)、4.4.(dt;J=9Hz、J=1.4Hz;1H)、4.5−4.65(m;1H)、7.85(d;J=6.9;1H)
【0069】

[11−イソチオシアネート−3−オキソ−N−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)ウンデカンアミド(7a、itc−11)]:
トルエン(10mL)中の6aの溶液(0.24mmol)に、トリフェニルホスフィン(69mg、0.26mmol)の一部を室温で添加した。溶液を50℃に加熱して、1時間攪拌した。溶液を室温に冷却した後、二硫化炭素(30μL、0.48mmol)を液滴で添加した。次いで、溶液を50℃に加熱し戻して、更に2時間攪拌した。粗混合物を真空で濃縮させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して93%で7aを得た。H−NMR(500MHz、CDCl):1.22−1.31(m;6H)、1.32−1.4(m;2H)、1.52−1.57(m;2H)、1.62−1.68(m;2H)、2.3−2.3(m;1H)、2.52(t;J=7.3Hz;2H)、2.66−2.72(m;1H)、3.45(s;2H)、3.48(t;J=6.82Hz;2H)、4.22−4.28(m;1H)、4.45(t;J=8.9Hz;1H)、4.52−4.61(m;1H)、7.7(d;J=6.3;1H)。13C−NMR(カーボンサーティーン核磁気共鳴)(500MHz、CDCl):23.2、26.4、28.5、28.7、29.1、29.5、29.8、43.7、45.0、48.4、49.0、66.0、129.3、166.6、175.1、206.4。MS(ESI)m/z:計算値:[M]341.2、測定値:[M]341.06。
【0070】

[12−イソチオシアネート−3−オキソ−N−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)ドデカンアミド(7b、itc−12)]:
トルエン10mL中の6bの溶液(0.24mmol)に、トリフェニルホスフィン(69mg、0.26mmol)の一部を室温で添加した。溶液を50℃に加熱して、1時間攪拌した。溶液を室温に冷却した後、二硫化炭素(30μL、0.48mmol)を液滴で添加した。次いで、溶液を50℃に加熱し戻して、更に2時間攪拌した。粗混合物を真空で濃縮ささせ、カラムクロマトグラフィーにより精製して66%で7bを得た。H−NMR(500MHz、CDCl):1.25−1.32(m;8H)、1.33−1.41(m;2H)、1.53−1.59(m;2H)、1.64−1.7(m;2H)、2.2−2.28(m;1H)、2.52(t;J=7.3Hz;2H)、2.7−2.76(m;1H)、3.46(s;2H)、3.49(t;J=6.82Hz;2H)、4.24−4.3(m;1H)、4.46(t;J=8.9Hz;1H)、4.55−4.61(m;1H)、7.6(d;J=6.3Hz;1H)。13C−NMR(500MHz、CDCl):23.2、26.4、28.6、28.8、29.1、29.7、29.8、43.8、45.0、48.2、49.0、65.9、129.3、166.4、174.9、206.5。MS(ESI)m/z:計算値:[M]355.1、測定値:[M]355.05。
【0071】

[13−イソチオシアネート−3−オキソ−N−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)トリデカンアミド(7c、itc−13)]:
トルエン10mL中の6c(0.24mmol)の溶液に、トリフェニルホスフィン(69mg、0.26mmol)の一部を、室温で添加した。溶液を50℃に加熱して、1時間攪拌した。溶液を室温に冷却した後、二硫化炭素(30μL、0.48mmol)を液滴で添加した。次いで、溶液を50℃に加熱し戻して、更に2時間攪拌した。粗混合物を真空で濃縮させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して57%で7cを得た。H−NMR(500MHz、CDCl):1.22−1.30(m;10H)、1.34−1.40(m;2H)、1.51−1.58(m;2H)、1.63−1.7(m;2H)、2.2−2.28(m;1H)、2,51(t;J=7.35Hz;2H)、2.67−2.73(m;1H)、3.45(s;2H)、3.48(t;J=6.66Hz;2H)、4.22−4.28(m;1H)、4.45(t;J=8.97Hz;1H)、4.55−4.61(m;1H)、7.7(d;J=6.3Hz;1H)。13C−NMR(500MHz、CDCl):23.2、26.5、28.7、28.9、29.2、29.5、29.8、43.7、45.0、48.3、49.0、65.9、129.3、166.5、175.0、206.5。MS(ESI)m/z:計算値:[M]367.2、測定値:[M]369.06。
【0072】

[tert−ブチル−9,11−ジオキソ−11−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルアミノ)−ウンデシルカルバマート(10a)]:
生成物9aを上記のメルドラム酸で反応させて、得られた粗混合物をカラムクロマトグラフィーで精製し、36%で生成物10aを得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.24−1.32(m;10H)、1.27(s;9H)、1.58−1.7(m;2H)、2.10−2.29(br s;1H)、2.52(t;J=7.31;2H)、2.62−2.80(br s;1H)、3.07(t;J=6.90Hz;2H)、3.46(s;2H)、4.23−4.34(m;1H)、4.46(dt;J=9.15、J=0.9;1H)、4.54−4.64(m;1H)、7.7(d;J=4.81;1H)
【0073】

[tert−ブチル−10,12−ジオキソ−12−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルアミノ)−ドデシルカルバマート(10b)]:
生成物9bを上記のメルドラム酸で反応させて、得られた粗混合物をカラムクロマトグラフィーで精製し、32%で生成物10bを得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.24−1.32(m;12H)、1.43(s;9H)、1.5−1.62(m;2H)、2.10−2.30(br s;1H)、2.52(t;J=7.27Hz;2H)、2.66−2.82(br s;1H)、3.07(t;J=6.91Hz;2H)、3.46(s;2H)、4.22−4.34(m;1H)、4.47(dt;J=9.15Hz、J=1.4Hz;1H)、4.54−4.64(m;1H)、7.6(d;J=4.84Hz;1H)
【0074】

[tert−ブチル−11,13−ジオキソ−13−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルアミノ)−トリデシルカルバマート(10c)]:
生成物9cを上記のメルドラム酸で反応させて、得られた粗混合物をカラムクロマトグラフィーで精製し、59%で生成物10cを得た。H−NMR(200MHz、CDCl):1.22−1.32(m;14H)、1.43(s;9H)、1.53−1.62(m;2H)、2.10−2.30(br s;1H)、2.51(t;J=7.27Hz;2H)、2.66−2.8(br;1H)、3.08(t;J=6.91Hz;2H)、3.45(s;2H)、4.22−4.33(m;1H)、4.46(dt;J=9.16Hz、J=0.56Hz;1H)、4.54−4.64(m;1H)、7.7(d;J=4.93;1H)
【0075】
[生成物11a−gの一般的手法]:
化合物10a−c(0.705mmol)をジクロロメタン4mLに溶解させる。トリフルオロ酢酸(4mL)を一部分添加して、得られた溶液を室温で20分間撹拌し、その後Boc部分を完全に除去した(NMRによって確認した)。溶媒を蒸発させて、ジクロロメタン(5mL)を得られた残渣に添加した。トリエチルアミンを添加することによってpHを7までに調整して、ピリジン(62μL、0.785mmol)を添加した。反応混合物を、氷浴上で0℃に冷却して、ジクロロメタン(4.5mL)中のブロモアセチルブロミド溶液(64μL、0.74mmol)(生成物11d−g用に塩化クロロアセチルを使用した)を5分間にわたり液滴で添加した。反応混合物を、1時間氷上に置いたままにし、その後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)で希釈してクロロホルム(3×30mL)で抽出した。結合した有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過して真空で濃縮させた。最終生成物(11a−g)をRP−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)で精製した。
【0076】
[11a(hal−11−Br)−]H−NMR(500MHz、CDCl):
1.22−1.32(br;8H)、1.51(t;J=6.81Hz;2H)、1.56(t;J=6.78Hz;2H)、2.18−2.28(m;1H)、2.51(t;J=7.25 Hz;2H)、2.7−2.76(m;1H)、3.25(q;J=6.71Hz;2H)、3.45(s;2H)、3.86(s;2H)、4.22−4.29(m;1H)、4.46(t;J=8.93Hz;1H)、4.55−4.61(m;1H)、6.49(br、1H)、7.67(br;1H)。13C−NMR(500MHz、CDCl):23.20、26.56、28.74、28.85、29.04、29.16、29.34、29.86、40.20、43.81、48.14、49.08、65.91、165.38、166.39、174.78、206.51。MS(ESI)m/z:計算値:[M]419.3、測定値:[M]419.04。
【0077】
[11b(hal−12−Br)−]H−NMR(500MHz、CDCl):
1.23−1.31(br;10H)、1.51(t;J=7.13Hz;2H)、1.55(t;J=7.31Hz;2H)、2.18−2.28(m;1H)、2.51(t;J=7.33Hz;2H)、2.69−2.75(m;1H)、3.25(q;J=6.75Hz;2H)、3.45(s;2H)、3.86(s;2H)、4.23−4.29(m;1H)、4.45(dt、J=9.08Hz、J=1.44Hz;1H)、4.55−4.61(m;1H)、6.54(br、1H)、7.73(d;J=6.47Hz;1H)。13C−NMR(500MHz、CDCl):23.24,26.67、28.83、29.02、29.13、29.39、29.70、40.21、43.77、48.30、49.04、65.93、165.39、166.48、174.92、206.47。MS(ESI)m/z:計算値:[M]433.3、測定値:[M]435.03。
【0078】
[11c(hal−13−Br)−]H−NMR(500MHz、CDCl):
1.22−1.32(br;12H)、1.52(t;J=7.02Hz;2H)、1.57(t;J=7.03Hz;2H)、2.18−2.28(m;1H)、2.52(t;J=7.34Hz;2H)、2.71−2.78(m、1H)、3.27(q;J=6.75Hz:2H)、3.46(s;2H)、3.87(s;2H)、4.23−4.30(m;1H)、4.47(dt、J=9.07Hz、J=1.27Hz;1H)、4.55−4.61(m;1H)、6.51(br、1H)、7.70(d;J=5.76Hz;1H)。13C−NMR(500MHz、CDCl):23.29、26.73、28.88、29.11、29.21、29.30、29.40、29.82、40.26、43.87、48.12、49.06、65.89、165.30、166.39、174.79、206.54。MS(ESI)m/z:計算値:[M]447.1、測定値:[M]447.17。
【0079】
[11d(hal−11−Cl)−]H−NMR(500MHz、CDCl):
1.25−1.33(br;10H)、1.5−1.59(br;4H)、2.19−2.29(m;1H)、2.52(t;J=7.29Hz;2H)、2.70−2.76(m、1H)、3.28(q;J=6.75Hz:2H)、3.46(s;2H)、4.04(s;2H)、4.24−4.30(m;1H)、4.47(t、J=9.00Hz;1H)、4.56−4.62(m;1H)、6.61(br、1H)、7.72(br;1H)。13C−NMR(500MHz、CDCl):23.17、26.59、28.72、28.84、29.03、29.19、29.69、39.80、42.67、43.69、48.25、49.02、65.88、165.83、166.42、174.85、206.37。MS(ESI)m/z:計算値:[M]375.8、測定値:[M]375.07。
【0080】
[11e(hal−12−Cl)−]H−NMR(500MHz、CDCl):
1.22−1.30(br;12H)、1.48−1.58(br;4H)、2.17−2.27(m;1H)、2.50(t;J=7.35Hz;2H)、2.68−2.75(m、1H)、3.26(q;J=6.78Hz:2H)、3.44(s;2H)、4.02(s;2H)、4.22−4.29(m;1H)、4.45(dt、J=9.06Hz、J=1.30Hz;1H)、4.54−4.61(m;1H)、6.58(br、1H)、7.71(d;J=6.20Hz;1H)。13C−NMR(500MHz、CDCl):23.25、26.71、28.86、29.08、29.19、29.70、39.85、42.67、43.78、48.22、48.99、65.87、165.77、166.40、174.85、206.46。MS(ESI)m/z:計算値:[M]388.9、測定値:[M]389.1。
【0081】
[11g(hal−13−Cl)−]H−NMR(500MHz、CDCl):
1.22−1.30(br;12H)、1.48−1.58(br;4H)、2.17−2.27(m;1H)、2.50(t;J=7.35Hz;2H)、2.68−2.75(m;1H)、3.26(q;J=6.78Hz:2H)、3.44(s;2H)、4.02(s;2H)、4.22−4.29(m;1H)、4.45(dt、J=9.06、J=1.30;1H)、4.54−4.61(m;1H)、6.58(br、1H)、7.71(d;J=6.20;1H)。13C−NMR(500MHz、CDCl):23.25、26.71、28.86、29.08、29.19、29.70、39.85、42.67、43.78、48.22、48.99、65.87、165.77、166.40、174.85、206.46。MS(ESI)m/z:計算値:[M]402.9、測定値:[M]403.08。
【0082】
図3Dは、(上記)化合物7aの1H−NMR及び13C−NMR分析結果を示す。
【0083】
図3Eは、(上記)化合物7bの1H−NMR及び13C−NMR分析結果を示す。
【0084】
図3Fは、(上記)化合物7cの1H−NMR及び13C−NMR分析結果を示す。
【0085】
図3Gは、(上記)化合物7cの13C−DEPT−NMR及び2D COSY NMR分析結果を示す。
【0086】
これらの結果は、上記化合物の分析から得られたデータのいくつかを非限定的な例として示したにすぎない。
【実施例2】
【0087】
[実施例1の化合物による細菌伝達の阻害]
[材料と方法]
[化学合成]
イソチオシアネートitc−11、12、13、ハロアセトアミドhal−11、12、13−Br及びハロアセトアミドhal−11、12、13−Clの合成を上記のように行った。
【0088】
[質量分析]
全てのMS分析を、ESI源を具えるLCQ Fleet質量分析(Thermo Scientific社)上で実行した。陽イオンモードでスペクトルを回収して、Xcalibur及びPromassソフトウェア(Thermo Scientific社)により分析した。LC/MS(液体クロマトグラフィー質量分析)の分析に関して、0.1%の含水ギ酸(溶媒A)及び0.1%のギ酸(溶媒B)を含有するCHCNの移動相の直線的な傾きを用いて、流速0.5mL/分の5μm(150×4.6mm)カラムであるLuna C18を具えるSurveyor Plus HPLCシステム(Thermo Scientific社)を使用した。
【0089】
[LasR−LBDの発現]
全長LasRの発現が、天然リガンドである3−オキソ−C12−HSLの有無にかかわらず、ほとんど不溶性であるタンパク質を生じさせることは、以前から知られていた(Bottomley,M.J.,Muraglia,E.,Bazzo,R.& Carfi,A.。その自己誘導物質に結合した毒性調節遺伝子LasRの構造由来のヒト病原緑膿菌クオラムセンシングへの分子的洞察。J Biol Chem 282,13592−600(2007))。従って、発現は、短縮型で、Hisで標識されたLasR構造体、LasR−LBD(リガンド結合ドメイン)をコードするpETM−11ベクターを用いて形質転換された株を使用して行われ、これは残基Met−1からLys−173に及んだ。プラスミドを大腸菌BL21株に導入して、細胞を1mLの栄養分豊富なLB培地中で1時間インキュベートした。次いで、細胞をカナマイシン(50マイクログラム/mL)を含有する、LB寒天培地上で培養した。発現用に、単一のコロニーを選択して、カナマイシンを含有する栄養豊富なLB培地5mLに導入し、一晩培養した。タンパク質を、上記の通り、天然3−オキソ−C12−HSL又はさまざまな阻害剤の存在下で発現させ、Ni+アフィニティークロマトグラフィーで精製し(Bottomley,M.J.,Muraglia,E.,Bazzo,R.& Carfi,A.。その自己誘導物質に結合した毒性調節遺伝子LasRの構造由来のヒト病原緑膿菌クオラムセンシングへの分子的洞察。J Biol Chem 282、13592−600(2007))、大量発現条件を用いてLB培地1リットルあたり70mgまでの精製タンパク質を生成し、少量発現条件を用いて50mLのLB培地から0.5未満乃至1mgの精製タンパク質を生成した。精製プロセスをSDS−PAGE電気泳動により観察して、精製タンパク質の分子量を質量分析法により確定した。
【0090】
[大量発現]
カナマイシン(50マイクログラム/mL)、10乃至100マイクロMの3−オキソ−C12−HSL又は阻害剤7a−c若しくは11a−gを含有する栄養豊富なLB培地1リットルあたりつき、一晩培養した細胞培養物1mLを接種した。細胞を、光学密度(OD600nm)が0.4になるまで培養し、その後、0.2mMのイソプロピル1−チオ−ベータ−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を添加することにより21℃で発現が誘導されたら、追加的にリガンド/阻害剤を培地に添加した。OD600nmが1.4に達した(だいたい6−8時間)ら、細胞は、1分間あたり6000rpmで遠心分離し、5mMのイミダゾール、300mMのNaCl、50mMのTris−HClを含有するpH8の溶解バッファで洗浄し、再懸濁した。細胞は、70%の振幅で2分間超音波処理を2回繰り返した。溶解物を、1分間あたり12,000rpmで30分間遠心分離し、上澄みをNi+アフィニティークロマトグラフィーで精製した。
【0091】
少量発現を、従前の手順に従い、50mL容量で行った。細胞は、溶解バッファ(5mMのイミダゾール、300mMのNaCl、0.2%(容量/容量)のTritonX−100、0.75μg/mLのDNase−I、0.05mMのMgCl、0.01mMのCaCl、50mMのpH8のTris−HCl、及び0.01%(容量/容量)のタンパク質阻害剤混合物)を添加する化学的溶解によって生成され、37℃で60分間インキュベートされた。細胞の破片を、1分間あたり4,000rpmで15分間遠心分離して除去した。上澄みを、Ni−NTAスピンカラム(QIAGEN社)を用いて精製した。
【0092】
[緑膿菌野生型(PA01)株のQS阻害試験]
発光系luxCDABE(Duan,K.& Surette,M.G.Environmental緑膿菌PA01のLas及びRh1クオラムセンシングシステムの調節遺伝子。J Bacteriol 189,4827−36(2007))に結合したLasIレポータを含有するプラスミドpKD201を内包する緑膿菌野生型PA01株を、トリメトプリムを300マイクログラム/ml含有するLB培地で一晩インキュベートした。96ウェルのブラックマイクロタイタープレート(Greiner社)を阻害剤の望ましい濃度(成長阻害が観察される1mM超まで)で処理し、最終吸光度(OD600nm)が0.015に達するまで細菌を添加した。次いで、このプレートを37℃で12時間インキュベートした。その間に、発光測定を10分間隔で行なった。それから相対的な発光を、追加した阻害剤の濃度に対してプロットした;IC50値をGrafit6.0(Erithacus Software社)を用いて計算した。
【0093】
[緑膿菌PAO−JP2QSアゴニスト/アンタゴニスト分析]
luxCDABE発光系(上記を参照されたい)に結合するLasIレポータ含有のプラスミドpKD201を内包するlasI/rhlI欠損株であるPAO−JP2を、トリメトプリムを300マイクログラム/ml含有するLB培地で一晩インキュベートした。96ウェルのブラックマイクロタイタープレート(Greiner社)を、PA01阻害試験用に上記のように準備した。それから相対的な発光を、追加された阻害剤の濃度に対してプロットした;IC50値をGrafit6.0(Erithacus Software社)を用いて計算した。アンタゴニスト実験では、最終濃度50nMの3−オキソ−C12−HSLを使用した。
【0094】
[大腸菌DH5−アルファLasRアゴニスト/アンタゴニスト分析]
LasR発現ベクター、pJN105L及びプラスミド媒介PlasI−lacZ融合(pSCII)を内包する大腸菌DH5α(Lee,J.H.,Lequette,Y.& Greenberg,E.P.精製QscRの活性、緑膿菌オーファンクオラムセンシング転写因子。Mol Microbiol 59,602−9(2006))を用いて、β−ガラクトシダーゼの発現レベルを測定することにより、クオラムセンシング阻害を定量化した。アンピシリン100マイクログラム/mL及びゲンタマイシン15マイクログラム/mL含有するLB培地で、細菌を一晩インキュベートした。新鮮培地を用いて容量1:10の比率で培養物を希釈し、更にOD600nmが0.3に達するまでインキュベートした。96ウェルのマイクロタイタープレート(Greiner社)を望ましい濃度の阻害剤で準備して、最終吸光度(OD600nm)が0.3に達するまで細菌を添加した。発現は、L−(+)−アラビノース(4mg/mL)のエディションにて誘導され、プレートを37℃で4時間インキュベートした(0.45−0.5のOD600nm)。次いで、Miller検定方法46により培養物をβ−ガラクトシダーゼ活性測定した:200mL分量を清潔な96ウェルのマイクロタイタープレートに移してOD600nmを記録した。次いで、各ウェルの100mLを、200mLのZ−バッファ、10mLのクロロホルム、及び5mLの0.1%のSDS(重量/容量)を含むポリプロピレンベースの96ウェルのマイクロタイタープレートに添加した。ウェルを、ピペット操作してよくすすぎ、その後クロロホルムを定着させた。水性上層の100mLを96ウェルのマイクロタイタープレートに移し、20mLのオルト−ニトフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(pH7のリン酸バッファ中の4mg/mLのONPG)を添加した。プレートを28℃で35分間インキュベートした。1Mの炭酸ナトリウム溶液を添加して反応を停止させ、二つの波長(550nm、429nm)における吸収を記録した。Millerユニットを、標準方法(Miller、J.H.分子遺伝学における実験、352−355(Cold Spring Harbor Laboratories、1972)を用いて計算した。アンタゴニスト実験では、最終濃度50nMの3−オキソ−C12−HSLを使用した。
【0095】
[LasR−LBD及びLasR−LBD−itc−11/12−のトリプシン消化]
LasR質量比1:100の酵素中で、トリプシン(Promega工業)を、0.1%のSDS、3mMのβ−メルカプトエタノール、及び10%のアセトニトリル含有の50mMのTrisバッファ(pH=8)に溶解させた。LasRを所望の量を添加し、溶液を37℃で2時間インキュベートした。混合物を−20℃で保管して、トリプシンを失活させた。サンプルをLC−MSにより分析して、所望のピークは、以下のように配列ごとにMSを受けた。

【0096】
[QS阻害剤との相互作用の構造分析及びモデリング]
タンパク質−リガンドの画像をPyMOLで処理した。LasR−LBD−QSIの相互作用のモデリングでは、水素原子をLasRに添加して、pH7.4をシミュレーションした。マイクロモデルバージョン9.0(Schrodinger LLC software社)に実装されるメルク分子力場(MMFF−S)を用いて、最初にタンパク質の骨格を、次にAHL構造を硬化させて、これらの水素とタンパク質の側鎖の位置を、エネルギーを最小化(5000最急降下ステップ)させることにより最適化した。
【0097】
[結果]
化学式I(特に、例えば、図2で示すような化学式Iのハロアセトアミド化合物)の化合物のいくつかの非限定的な例とともにLasRを発現する細菌をインキュベートしたところ、可溶性LasR−LBDを得ることができた(図4a)。重要なことには、ハロアセトアミドの大部分が存在する場合は、LasRが過剰発現して、可溶性LasR−LBDがほんの少量の発生したのに対し、プローブ又は3−オキソ−C12−HSLがない場合には、可溶性LasR−LBDが観察されなかった。同様に、細胞を4−Br−PHLでインキュベートしたときは、Bottomleyらの以前の結果(上記参照)を裏付けるように、可溶性LasRは全く観察されなかった(データは示さず)。
【0098】
LC−MS測定は、計算された質量が、測定された質量と一致(それぞれ22,770Da 対22,770Da及び22,784Da対22,783Da)して、精製LasR−LBD(分子量22,430Da、図4b)が、itc−11(分子量340Da)及びitc−12(分子量itc−12 354Da)に従って共有結合的に修正され得ることを明らかにした(図4c、d)。重要なことは、化学式Iの典型的な化合物が過剰に使用されたとしても(0.5乃至3.5マイクロ−MのLasR−LBDの発現を導く、細菌成長培養における10乃至100マイクロ−M)、共有結合している化合物の一のユニットしか観察することができなかったことであり、このことは、使用される濃度において、反応が十分に特異的であることを示している。任意のハロアセトアミドでインキュベートした細胞からLasR−LBDを精製しても、このような共有結合的修飾は、観察されなかった。これらの結果より、一の仮説に限定されることを望むものではないが、それらの阻害効果が、その他の強力な非共有結合阻害剤(例えば、誤ったフォールディングや沈殿が続く、結合初期LasR)に類似の方法で媒介されることを意味する共有結合反応が、ハロアセトアミドとLasRの間で行われるか、若しくは生成物を観察することはできないもののタンパク質の不溶性により共有結合反応を生じさせることができる。
【0099】
[化学式Iの共有結合抑制化合物のLasR結合ポケットにおけるCys79との特異的な反応]
LasR−LBDを、3−オキソ−C12−HSL又はitc−12(若しくはitc−11)の存在下で発現させ、続いてタンパク質の精製とトリプシンの消化をした。システイン含有のフラグメント(72−VDPTVSHCTQSVLPIFWEPSIYQTR−96)を、単一のピーク(2903.4Da)としてLC−MSによって確認したと同時に、増加した保持時間とともに修飾されたペプチドとitc−12(又はitc−11)に対応する質量増加も確認した(データ示さず)。修飾された又は修飾されないLasR−LBD上のタンデムMS/MS測定は正しくCys79が、共有結合プローブと反応したことを裏付けた(データは示さず)。
【0100】
更に、二点突然変異(Cys→Ala又はCys→Ser)を、天然タンパク質に導入し、その結合ポケット中の反応チオール部分を欠いてもまだLasR−LBDが共有結合的に修飾されるかを検査した。予想通りに、itc−12でインキュベーされた細菌中でLasR−LBDのCys79Ala突然変異体が過剰発現すると、共有結合修飾は検出されなかった(データ示さず)。しかし、可溶性タンパク質を得た。このことは、突然変異体LasRが、正しいフォールディングを誘導する基質として、イソチオシアネートを認識することができることを示している。同様に、共有修飾が観察されないにもかかわらず、itc−12の存在下でCys79Ser突然変体は、可溶性タンパク質を発現させる。
【0101】
特に、天然LasR−LBDが、itc−11とitc−12の存在下で発現したときは、共有結合標識は大抵不完全に見え、可溶性の、標識されないLasR−LBDをかなりの量(25乃至40%、状況に応じて)もたらした。これは、イソチオシアネート用の代替の結合モードが、反応を防止するためにCys79から十分遠く配置された反応性炭素原子に存在することを示している。
【0102】
[LasR−イソチオシアネートの相互作用のコンピュータ分析]
上記実験データを補足するべく、コンピュータ構造分析及びLasRへのイソチオシアネートの結合をシミュレーションするドッキング計算を行った。ドッキング手法を確認する対照群として、天然3−オキソ−C12−HSLリガンドをその結合部位から取り除き、首尾よく再度ドッキングした。すなわち、結晶構造中のリガンドに対応する構造は、全ての非水素原子が平均二乗偏差<0.2Åで、出力ポーズの相当上位に位置していた。次いで、三つのイソチオシアネート化合物をLasR−結合部位へドッキングした。一リガンドごとの最も高いポーズが、剛体と考えられているタンパク質との関係において、詳細な配座解析に提示された。この分析により、最長のイソチオシアネート、すなわちitc−13を、タンパク質を伴う極性頭部基の相互作用を崩壊させずに、結合部位で適合させることはできないことが明らかなった。それに対し、より短い化合物、すなわちitc−11及びitc−12は、全ての有益なタンパク質を伴う極性相互作用を維持しながら、適合され得る。興味深いことに、エネルギーを最小化した配座異性体は、二つのグループに分けられたitc−11及びitc−12の双方で観察され、それらのイシチオシアネート基の配向においてのみ大幅に異なるものである(図5)。他の配向が、この反応にとって不十分であるのに対し、ある配向は、Cys79の硫黄原子による求核攻撃にとって理想的な事前構築を提示する。itc−12では、個体群のおおよそ66%が、反応に適した配座を選ぶのに対し、itc−11では、配座異性体の個体群は均等に分割(50/50)された。itc化合物へのCys79側鎖の再度の配向により、求核攻撃を強化し;LasRの結晶構造は、この回転異性体が容認されるのを示唆する。
【0103】
[緑膿菌中のQSを阻害する反応性プローブ]
共有結合プローブの活性を、いくつかのレポータ株、すなわち、発光PA01−luxABCDE野生型株及びPA01 lasI−rhlIの二つの突然変異体(PAO−JP−luxABCDE)、並びに大腸菌β−ガラクトシダーゼ−LasR−ベースのレポータ株を用いて評価した。プローブのいくつかが、PAO−JP2−及び大腸菌株とともに行なった分析中で、アゴニスト及びアンタゴニスト活性の双方を示した(図6c、d)のに対し、いくつかのイソチオシアネート及びブロモアセトアミドは、野生型株中の発光(luminescense)を強く阻害した(図6a、b)。このデータを、既知の強力なQS阻害剤と報告されるそれらと比較するために、Blackwell及び共同研究者により、最も活性のある緑膿菌QSアンタゴニストの一つとして同定された(Geske,G.D.,O’Neill,J.C.,Miller,D.M.,Mattmann,M.E.& Blackwell,H.E.合成リガンドでの細菌のクオラムセンシングの調節:多重種におけるN−アシル化ホモセリンラクトン統計的評価とそれらの活性のメカニズムに対する洞察。J Am Chem Soc129,13613−25(2007))対照群のアンタゴニストである、2−(4−ブロモフェニル)−N−(2−オキソ−テトラヒドロフラン−3−イル)−アセトアミド(4−Br−PHL)を合成した。
【0104】
大腸菌ベースのLasRアンタゴニスト試験(図6c、d)において、Gaskeらにより報告された(3.9マイクロ−M;上記参照されたい)ものと似ている、4−Br−PHL(4.8±0.5マイクロM)のIC50を得た。これらの分析でスクリーニングされた九つのプローブは、クロロアセトアミド、最適なアンタゴニストと思われる(IC50:1.1±0.1マイクロ−M)hal−12−Cl、続いてhal−11−Cl並びにhal−11−Br(IC50:それぞれ3.1±0.1マイクロM及び26.8±1.3マイクロ−M)、及び三つのイソチオシアネート、itc−11−13(IC50:それぞれ39.1±9.4、29.8±0.5、19.2±3.9マイクロ−M)であった。驚くべきことに、より短い類似物が、強力な阻害剤として機能するのに対し、ブロモアセトアミドのうちの一つ(すなわち、hal−13−Br)は、この分析中でより高い濃度において、LasR活性を非常に強めることを示した;一の仮説に限定されることを望むものではないが、hal−13Brの効果は、この分析に特異的であり、別の状況ではこの分子は、阻害性であると考えられている。
【0105】
野生型PA01レポータ株に依存する阻害分析では、試験された類似物によって全く異なる挙動を観察した。発光の最も強力な阻害剤は、itc−13及びhal−12−Brであり、続いてitc−12、itc−11、及びA−Br−PHL(図6a、b;IC50s:itc−13:45.2±0.7マイクロ−M、hal−12−Br:100±7マイクロ−M、itc−12、113±19マイクロ−M;itc−11:最大300マイクロ−M)と思われる。驚くべきことに、4−Br−PHLは、野生型PA01レポータ株中では、大腸菌レポータよりはるかに弱いLasR拮抗作用(IC50:最大250マイクロ−M)を示した。
【0106】
大腸菌レポータ株に依存する試験に加え、3−オキソ−C12−HSL(すなわち、株PAO−JP2)を生成しないPA01変異体を用いて実験を行い、さまざまな阻害剤が、特異的な3−オキソ−C12−HSLアンタゴニスト活性を示したか否かを確認した(図7a、b)。検討された九つのプローブのうちの、itc−13(IC50:30±7マイクロ−M)、hal−12−Cl(70±27マイクロ−M)、hal−12−Br(85±1マイクロ−M)、itc−12(134±6マイクロ−M)、及び4−Br−PHL(最大200マイクロ−M)は、かなりの拮抗作用を示した。活性阻害のモードが、非共有結合であるときは、Cys79と反応することができない、アジド同配体類似物であるitc−12(アジド−C12)を用いてに実験を行った。この類似物の阻害活性は、itc−12の阻害活性よりもかなり低く(データは示さず)、非共有的に標識された生成物を、アジド−C12の存在下で発現された精製LasR−LBDのMS測定において観察した。
【0107】
天然自己誘導物質と比べて著しくレベルは低下するものの、阻害剤のいくつか(特に、イソチオシアネート)がPAO−JP2ベースのレポータを用いるアゴニズムを示したので(図7c)、共有結合QS阻害剤の阻害効果が、部分アゴニズムに起因するかどうかてもにつ検討した。このプローブは、全ての分析において一貫して強い活性を示したので、次の実験では、itc−12を使用した。他の阻害剤と比べて、itc−12は、可溶性LasR−LBDをより多量に発現誘導するように見えた。近年、Blackwellと共同研究者は、それらの阻害剤のいくつかが、特徴的な部分アゴニズムパターンを示したことを明らかにした27。私どものデータも、部分アゴニズムパターンを提示し(図7d)、itc−12が高濃度であっても、これらの他の阻害剤とitc−12により誘発された効果の顕著な相違に注目した。ただ一つの仮説に限定されるのを望むものではなく、反応性itc−12プローブの共有結合モードによって観察された相違を説明することができる。
【0108】
[QSで調節された活性を阻害するイソチオシアネートベースのプローブ]
この反応性プローブが、バイオフィルム形成やピオシアニン生成といったQSで調節された活性を阻害するかを評価するべく、野生型緑膿菌PA01株を、itc−12及び4−Br−PHLの存在下(両方50マイクロ−M)で、又はコントロールとしてDMSO存在下でインキュベートした。マイクロタイタープレート中24時間でバイオフィルム形成の分析、バイアル中36時間でピオシアニン生成の測定をした。図8a、bに示すように、両活性は、イソチアネート存在下で、並びにQS阻害剤として知られる4−Br−PHL存在下で著しく阻害された。いずれの表現型の完全阻害は、めったに見られず、これは、QS関連のメカニズムによる調節が部分的なものであることを示している。しかし、バイオフィルム形成が、部分的な減縮であっても、QSの崩壊の影響を受ける総バイオフィルムの質量だけでなく、その構造、多孔性の度合い、及びその柔軟性及び堅牢性の程度のように細菌が宿主反応を受けやすい状態にするのに十分である。
【0109】
[考察]
本発明の少なくともいくつかの実施形態による一連の化合物を、緑膿菌のQSの調節遺伝子、LasRを標的にすること、及びQSがこのタンパク質の共有結合を介して阻害され得るかどうかを試験することもできる。イソチオシアネートベースのプローブが、LasR結合ポケットに見られるCys79に共有的に及び選択的に結合したと結論付けられた。更に、いくつかのよく特徴付けられたレポータ株を用いることで、遺伝子発現に関連する緑膿菌のクオラムセンシングにおける九つの合成阻害剤の影響を評価することができる。レポータアッセイ間で測定した活性に相違が認められたが、QSの強力な阻害は、イソチオシアネート類似体で観察した。
【0110】
不明瞭な効果は、強力な活性を示すブロモアセトアミドを有する、ハロアセトアミドに見られた。しかし、ハロアセトアミドとLasRのあらゆる非共有結合的な相互作用を観察した。これらの結果から、非共有結合反応は、ハロアセトアミドとLasR間で起こり、これは、それらの阻害効果が、他の強力な阻害剤に類似する方法、すなわち、結合新生LasRで媒介されること、タンパク質の誤ったフォールディング及び沈降が続くことを意味した。4−Br−PHLと比較すると、イソチオシアネートは、全体的に同様の活性を示した。この活性は、大腸菌レポータ株を用いた分析においてitc−12及びitc−13で測定した低いマイクロモルIC50値を有する。おそらく最も顕著なのは、PAO−JP2ベースのアンタゴニスト分析におけるitc−13及び4−Br−PHL間の活性における大きな相違である。しかし、膜組成、発現の二次調節、競合するリガンド等の相違が、観察された阻害に大きな影響を及ぼすので、さまざまな株及びレポータアッセイを用いて得られたさまざまな化合物のIC50値の比較は、問題があることに留意すべきである。従って、所定の化合物による特異的なQSシステムの阻害の範囲に関して絶対的な結論を出すことは困難である。しかし、レポータアッセイで十分な及び特異的な阻害、並びに野生型株で表現型阻害を示す化合物は、更なるQS阻害及び機構研究の優れた候補と見なすことができる。イソチオシアネート類は、全ての分析で低い濃度において大きなQS阻害を示した。このように、化合物のうちの一つ、更に詳しくはitc−12の作用の有効性及びモードを研究することを決定した。野生型PA01株を用いた分析では、itc−12が、QSで制御された毒性因子発現、並びにバイオフィルム形成を著しく阻害することを示した。
【0111】
新規な抗生物質に対する菌耐性が増大するため、細菌毒性の阻害が、実現可能な新たな治療標的として提案されてきた。このような戦略は、細菌の成長を標的とする薬剤と対照的に、毒性を標的とする薬物への耐性を含むことなく望ましい結果をもたらす。更に、LasRを標的とする共有結合性プローブ(又は別の細菌におけるその相同体、並びにQS分子の他のクラスの構造的に特徴付けられるレポータ)を、分子ツールとして用い、細菌のクオラムセンシングの活性化及び失活のメカニズムへの新規の洞察を提供する。
【実施例3】
【0112】
[化合物を含有するジスルフィド結合の合成]
この非限定的な実施例は、本発明の少なくともいくつかの実施態様によるジスルフィド結合を含有する化合物の合成に関し、構造−Cの化合物を含む。一般的な合成は、上記実施例1のとおりである。合成手順の非限定的な特定の実施例を以下に示す。
【0113】
[10−メルカプトデカン酸]
チオ尿素(282mg,3.54mmol、1.5等量)と10−ブロモデカン酸(641mg、2.4mmol)の混合物をEtOH(5mL)中で20時間還流させた。溶媒を真空で取り除いて、7.5MのNaOH(水溶液)(5mL、1.4g、3.54mmol、1.5等量)を添加した。この混合物をさらに16時間90℃で、窒素下で撹拌した。次いで、氷浴上で冷却し、2MのHSOを撹拌しながらゆっくり添加した。有機生成物をCHCl(2×50mL)で抽出し、MgSOで乾燥させ、真空で蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(CHCl:PrOH=99:1)を介して原油を精製し、白色固体としてチオール中間体を得た(398mg、81%の収率:H NMR(CDCl、200MHz)δ1.29−1.40(m、10H)、1.53−1.66(m、4H)、2.34(t、7.6Hz、2H)、2.51(q、7.4Hz、2H)。
【0114】
[10,10’−ジスルファンジイルビス(デカン酸)]
10−メルカプトデカン酸(122mg、0.56mmol)を、NaOH(24mg、0.6mmol)と4mLのHO:DMF(1:1)中のKI(29.8mg、0.18mmol)の溶液に滴下した。I(75.8mg、0.29mmol)を黄色が持続するまで添加し、次いで溶液が完全に脱色するまでNaSOを添加した。得られた懸濁液をHCl(1N)で酸性化して、水相をCHCl(4×20mL)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させて溶媒を真空で蒸発させた。定量的収率で、白色固体の中間体ジスルフィド化合物を得た。H NMR(CDC1、400MHz)δ1.25−1.40(m、10H)、1.55−1.70(m、4H)、2.33(t、6.4Hz、2H)2.66(t、7.4Hz、2H)。
【0115】
[12,12’−ジスルファンジイルビス(3−オキソ−N−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)ドデカンアミド]
N−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(77mg、0.62mmol)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(136mg、0.65mmol)、ジカルボン酸(121mg、0.3mmol)、及びメルドラム酸(85mg、0.6mmol)を6mLのジクロロメタンに溶解させた。得られた溶液を一晩攪拌して、次いで濾過して、反応で形成されるN,N−ジシクロヘキシル尿素を除去した。ろ液を真空で濃縮させた。得られた残渣をDMF(5mL)に溶解させて、α−アミノ−γ−ブチロラクトンヒドロブロミド(109mg、0.6mmol)を添加した。混合物を室温で1時間攪拌し、更に60℃で4時間攪拌した。得られた溶液を酢酸エチル30mLで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、1Mの硫酸水素ナトリウム溶液、ブラインで洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過して真空で濃縮させた。更に、フラッシュクロマトグラフィーで精製した(収率33%)。MS(ESI)m/z:計算値:[M+H]657.32、測定値:[M+H]657.22。
【実施例4】
【0116】
[チオール含有の化合物の合成]
この非限定的な実施例は、構造−D(本明細書では「チオール−11」ともいう)の化合物などのチオール含有化合物の化合物に関する。
【0117】
一般的な合成は、上記の実施例1に示したとおりである。合成手順を図8に示す。実施例3の最終化合物(例えば、構造−C)に始まる、合成手順の非限定的な特定な実施例を以下に示す。
【0118】
[12−メルカプト−3−オキソ−N−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)ドデカンアミド]
12−メルカプト−3−オキソ−N−(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)ドデカンアミド(29mg、0.04mmol)の二量体を0.5mLのTHFに溶解させ、水中(0.5mL)のトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(50mg、0.17mmol)を添加した。混合物を窒素化で一晩攪拌し、5mLの水で希釈してEtO(2×5mL)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させて濾過して濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーで精製して所望の化合物を、白色固体として生じさせた(収率70%)。MS(ESI)m/z:計算値:[M+H]330.17、測定値:[M+H]330.06。
【0119】
同様の手順で、続いて、炭素鎖が一炭素短い及び一炭素長い分子を生成したが、これは、出発物質が10−ブロモデカン酸(実施例3に記載されている)ではなく、それぞれ9−ブロモデカン酸若しくは11−ブロモデカン酸であるだけの違いである、
【実施例5】
【0120】
[チオール−11及びitc−12による細菌伝達の阻害]
実施例4のチオール-11化合物を、PAO−luxCDABE中のlasI発現の阻害を検査する上記のシステムにおいて、化学式Iの化合物(上に示した)であるitc−12で検査した。図9に示すように、チオール−11及びitc−12の両方が、緑膿菌の毒性を用量依存的に阻害し、これによって、これらの化合物の特異性を示した。
【実施例6】
【0121】
[抗バイオフィルム組成物用の化合物の使用]
少なくともいくつかの実施形態では、本発明の少なくともいくつかの実施形態による化合物を、選択的にバイオフィルム形成を阻害又は減少させるための抗バイオフィルム組成物において使用した。
【0122】
このような組成物は、適切な担体中に本発明の少なくともいくつかの実施形態による化合物を選択的に含むことがある。この開示の組成物は、例えば、染料、抗菌剤、成長因子、抗炎症薬(閉鎖的なリストを提供することを望むものではない)などの更なる成分を選択的に含む。この開示にて用いられた用語「抗菌剤」は、抗生物質、防腐剤、消毒剤、及びこれらの組み合わせを含む。実施形態では、抗菌剤は、トリクロサンなどの防腐剤でもよい。
【0123】
この組成物で用いられることがある抗生物質のクラスは、ミノサイクリンなどのテトラサイクリン;リファピンなどのリファマイシン;エリスロマイシンなどのマクロライド;ナフシリンなどのペニシリン;セファゾリンなどのセファロスポリン;イミペネム及びアズトレオナムなどのβラクタム;ゲンタマイシン及びトブラマイシン.RTM.などのアミノグリコシド;クロラムフェニコール;スルファメトキサゾールなどのスルホンアミド;バンコマイシンなどのグリコペプチド;シプロフロキサシンなどのキノロン;フシジン酸;トリメトプリム;メトロニダゾール;クリンダマイシン;ムピロシン;アムホテリシンBなどのポリエン;フルコナゾールなどのアゾール;及びスルバクタムなどのβラクタム阻害剤を含む。
【0124】
その他の実施形態では、イオンフラノンの銀塩などの銀塩を、抗菌性を出すために添加する場合がある。
【0125】
この組成物で利用されることがある防腐剤及び消毒剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ヘキサロロフェン;クロルヘキシジン及びシクロヘキサジエン(cyclohexidine)などのカチオンピグアニド;ポビドンヨードなどのヨウ素及びヨ−ドフォア;PCMX(すなわち、p−クロロ−m−キシレノール)及びトリクロサン(すなわち、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)などのハロ置換フェノール化合物;ニトロフラントイン及びニトロフラゾンなどのフラン医薬製剤;メテナミン;グルタルアルデヒド及びホルムアルデヒドなどのアルデヒド;及びアルコールを含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤の少なくとも一つは、トリクロサンなどの防腐剤でよい。
【0126】
本開示の抗菌組成物は、安定剤、増粘剤、顔料などのさまざまな選択的な成分を含む。選択的な成分を、抗菌組成物の総重量の最大約10%の量で含む場合がある。
【実施例7】
【0127】
[医療機器用の化合物の使用]
少なくともいくつかの実施形態では、本発明の少なくともいくつかの実施形態による化合物を、選択的に用いてバイオフィルム形成阻害用の医療機器を扱う。医療機器は、選択的に吸収性物質、非吸収性物質、及びそれらの組み合わせから形成されることがある。医療機器を形成するのに利用される適切な吸収性物質は、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、ジオキサノン、グリコール酸、乳酸、グリコリド、ラクチド、これらのホモポリマ、及びこれらの組み合わせを含み、化合物は、選択的にこの物質へ吸収され、又はこの物質とともに形成される。医療機器を形成するのに利用する適切な非吸収性物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリプロピレンのコポリマ、及びポリエチレン及びポリプロピレンのブレンドポリオレフィンを含み、化合物を、選択的にこの機器にコーティングする。もちろん任意の他の適切なポリマも医療機器用に選択して利用してもよい。
【0128】
本発明の化合物を医療機器のコーティングに適用する場合に、コーティングでの使用に適した任意のポリマを本開示にしたがって利用してもよい。ポリマは、生体吸収性又は生体非吸収性であってもよい。少なくともいくつかの実施形態では、生体吸収性フィルム形成ポリマを、本開示の装置及び/又はコーティングに利用してもよい。コーティングに利用されるフィルム形成ポリマは、当業者にとって公知であり、例えば、グリコリド、ラクチド、グリコール酸、乳酸、カプロラクトン、トリメチレンカーボレート、ジオキサノン、ジオキセパノンなど、ホモポリマ、コポリマ、及びこれらの組み合わせなどモノマから得られるそれらの結合を含む。
【0129】
[参考文献]
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2. Winzer,K.,Hardie,K.R.& Williams,P.Bacterial cell−to−cell communication:sorry,can’t talk now − gone to lunch! Curr Opin Microbiol 5,216−22 (2002)
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9.Pesci,E.C.,Pearson,J.P.,Seed,P.C.& Iglewski,B.H.Regulation of las and rhl quorum sensing in Pseudomonas aeruginosa.J Bacteriol 179,3127−32 (1997)
10.Lequette,Y.,Lee,J.H.,Ledgham,F.,Lazdunski,A.& Greenberg,E.P.A distinct QscR regulon in the Pseudomonas aeruginosa quorum−sensing circuit. J Bacteriol 188,3365−70(2006)
11.Bottomley,MJ.,Muraglia,E.,Bazzo,R.& Carfi,A.Molecular insights into quorum sensing in the human pathogen Pseudomonas aeruginosa from the structure of the virulence regulator LasR bound to its autoinducer.J Biol Chem 282,13592−600(2007)
【0130】
別の実施態様の文脈で、明確にするために記載された発明のさまざまな機能が、単一の実施形態で組み合わせて提供される提供されることが理解されるであろう。反対に、簡潔するために単一の実施形態の文脈で記載される本発明のさまざまな機能も個別に、又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されることがある。また、本発明は、本明細書に特に示され、記載されているものに限定されるものではないことは、当業者によって理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Iの化合物であって:

式中、nは炭素の数を示し、nは1乃至18であり、Rは反応性求電子官能基であることを特徴とする化合物。
【請求項2】
化学式Iの化合物であって:式中、Rが、チオール、イソシアネート、イソチオシアネート、イソセレノシアナート、置換又は非置換反応性アミド官能基、NHC(=O)C=N−NH、反応性置換環状部分(芳香族、非芳香族のいずれも)、反応性置換又は反応性非置換複素環(選択的に少なくとも一の不飽和結合を有する、芳香族、非芳香族のいずれも)、スルホン酸アルキル、置換アルケン、反応性アミン、及びRからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物において、Rが、前記イソシアネートであり、当該イソシアネートが、置換され又は非置換であることを特徴とする化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物において、Rが、前記イソシアネートであり、当該イソシアネートが、非置換であることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項2に記載の化合物において、前記イソチオシアネートが、置換され又は非置換であることを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項5に記載の化合物において、前記イソチオシアネートが、置換され、当該置換されたイソチオシアネートが、構造RN=C=Sを有し、式中、Rが、置換アルキル、置換イソアルキル、置換アルケン、及び置換イソアルケンからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物において、前記置換アルキル、置換イソアルキル、置換アルケン、又は置換イソアルケンが、ハロゲン、複素環アミン、及びアルキルアミンからなる群より選択される部分で置換されることを特徴とする化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物において、前記置換が、ピリジル、ピロリル、ピロリジン、アリールアミン、イミダゾリル、及びピペリジンからなる群より選択される複素環アミンであることを特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項6乃至8に記載の化合物において、Rが、置換エチレン、置換プロピレン、置換ブテン、及び置換ペンテン、又はそれらのいずれかの異性体であることを特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物において、Rが、置換2−ペンテンであることを特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項10に記載の化合物において、前記置換2−ペンテンが、アルキルアミン、ピリジル、ピロリル、アリールアミン、又はイミダゾリルのうちの一で置換されることを特徴とする化合物。
【請求項12】
請求項11に記載の化合物において、nが、1乃至5であることを特徴する化合物。
【請求項13】
請求項6乃至8のいずれかに記載の化合物において、Rが、置換エチル又はメチルの群より選択されること特徴とする化合物。
【請求項14】
請求項13に記載の化合物において、前記置換エチル又はメチルが、アルキルアミン、ピリジル、ピロリル、アリールアミン、ピペリジン、又はイミダゾリルのうちの一で置換されることを特徴とする化合物。
【請求項15】
請求項14に記載の化合物において、前記エチル又はメチルが、ピペリジンで置換されることを特徴とする化合物。
【請求項16】
請求項15に記載の化合物において、nが、1乃至5であることを特徴とする化合物。
【請求項17】
請求項7乃至16のいずれかに記載の化合物において、Rが、臭素又は塩素であることを特徴とする化合物。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物において、Rが、ブロモアルキル又はクロロアルキルであることを特徴とする化合物。
【請求項19】
請求項18に記載の化合物において、nが、7乃至9であることを特徴とする化合物。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の化合物において、Rが、前記反応性アミド官能基であり、当該反応性アミド官能基が、ハロカルボキサミドであることを特徴とする化合物。
【請求項21】
請求項20に記載の化合物において、前記ハロカルボキサミドが、ブロモカルボキサミド及びクロロカルボキサミドからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の化合物において、前記反応性アミド官能基の該炭素鎖が、1乃至16炭素の長さであることを特徴とする化合物。
【請求項23】
請求項22に記載の化合物において、nが、5乃至16であることを特徴とする化合物。
【請求項24】
請求項20乃至23のいずれかに記載の化合物において、前記ハロカルボキサミドが、ハロアセトアミドであることを特徴とする化合物。
【請求項25】
請求項24に記載の化合物において、前記ハロアセトアミドが、ブロモアセトアミド及びクロロアセトアミドからなる群より選択され、nが5乃至16であることを特徴とする化合物。
【請求項26】
請求項2に記載の化合物において、Rが、NHC(=O)C=N−NHであることを特徴とする化合物。
【請求項27】
請求項2に記載の化合物において、Rが、置換アルキレンシクロブタン、アルキレンシクロペンタン、及びアルキレンシクロヘキサンからなる群より選択される前記反応性置換環状部分であることを特徴とする化合物。
【請求項28】
請求項27に記載の化合物において、前記反応性置換環状部分が、アルキレンシクロブタンジオン、アルキレンシクロペンタンジオン、及びアルキレンシクロヘキサンジオンからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項29】
請求項28に記載の化合物において、前記反応性置換環状部分が、アルキレンシクロブタン−2,4−ジオン、アルキレンシクロペンタン−2,4−ジオン、及びアルキレンシクロヘキサン−2,4−ジオンからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項30】
請求項29に記載の化合物において、前記反応性置換環状部分の該アルキレン部分が、メチレン、エチレン、ブテン、及びペンテンからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項31】
請求項30に記載の化合物において、前記反応性置換環状部分の前記アルキレン部分が、メチレンであることを特徴とする化合物。
【請求項32】
請求項31に記載の化合物において、前記反応性置換環状部分が、メチレンシクロペンタン−2,4−ジオンであることを特徴とする化合物。
【請求項33】
請求項32に記載の化合物において、nが、5乃至16であることを特徴とする化合物。
【請求項34】
請求項33に記載の化合物において、nが、8乃至10であることを特徴とする化合物。
【請求項35】
請求項2に記載の化合物において、Rが、前記反応性非置換複素環及びエチレンオキシドであることを特徴とする化合物。
【請求項36】
請求項35に記載の化合物において、nが、5乃至16であることを特徴とする化合物。
【請求項37】
請求項36に記載の化合物において、nが、8乃至12であることを特徴とする化合物。
【請求項38】
請求項37に記載の化合物において、nが、9乃至11であることを特徴とする化合物。
【請求項39】
請求項2に記載の化合物において、Rが、少なくとも一の非置換炭素結合を有する前記反応性置換複素環であることを特徴とする化合物。
【請求項40】
請求項39に記載の化合物において、該複素環が、2−フラノン、及びピラノンからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項41】
請求項40に記載の化合物において、前記ピラノンが、2−ピロン又は4−ピロンであることを特徴とする化合物。
【請求項42】
請求項40に記載の化合物において、前記反応性複素環が、2−フラノンで、nが、5乃至16であることを特徴とする化合物。
【請求項43】
請求項42に記載の化合物において、nが、8乃至12であることを特徴とする化合物。
【請求項44】
請求項2に記載の化合物において、Rが、前記アルキルスルホナートであり、置換及び非置換アルキルスルホナートからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項45】
請求項44に記載の化合物において、前記アルキルスルホナートが、メチルスルホナート、エチルスルホナート、プロピルスルホナート、及びブチルスルホナートからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項46】
請求項45に記載の化合物において、前記アルキルスルホナートが、プロピルスルホナートであり、nが、1乃至14であることを特徴とする化合物。
【請求項47】
請求項46に記載の化合物において、nが、5乃至9であることを特徴とする化合物。
【請求項48】
請求項47に記載の化合物において、nが、6乃至8であることを特徴とする化合物。
【請求項49】
請求項44乃至48に記載の化合物において、前記アルキルスルホナートが、ハロアルキルスルホナートであることを特徴とする化合物。
【請求項50】
請求項49に記載の化合物において、前記ハロアルキルスルホナートが、ブロモアルキルスルホナアート、フルオロアルキルスルホナート、及びクロロアルキルスルホナートからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項51】
請求項50に記載の化合物において、前記ハロアルキルスルホナートが、ブロモメチルスルホナート、クロロメチルスルホナート、及びフルオロメチルスルホナートからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項52】
請求項50に記載の化合物において、前記ハロアルキルスルホナートが、3−ブロモプロピルスルホナート、2−ブロモプロピルスルホナート、3−クロロプロピルスルホナート、及び2−クロロプロピルスルホナートからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項53】
請求項2に記載の化合物において、Rが、前記置換アルケンであり、置換エチレン及びC=C=CHからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項54】
請求項53に記載の化合物において、前記置換エチレンが、ハロゲンで置換されることを特徴とする化合物。
【請求項55】
請求項54に記載の化合物において、前記ハロゲンが、臭素であることを特徴とする化合物。
【請求項56】
請求項53に記載の化合物において、前記置換アルケンが、C=C=CHであり、Rが、ハロゲンであることを特徴とする化合物。
【請求項57】
請求項56に記載の化合物において、前記ハロゲンは、臭素であることを特徴とする化合物。
【請求項58】
請求項2に記載の化合物において、Rが、前記反応性アミンであり、アルキルアミンおよびジアルキルアミンからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項59】
請求項58に記載の化合物において、一の前記アルキル部分又は複数の前記アルキル部分が、好ましく置換されることを特徴とする化合物。
【請求項60】
請求項59に記載の化合物において、前記置換が、ハロゲンでなされることを特徴とする化合物。
【請求項61】
請求項58乃至60に記載の化合物において、前記アルキル部分が、メチル、エチル、プロピル、及びブチルからなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項62】
請求項61に記載の化合物において、前記反応性アミンが、ハロゲン置換ジエチルアミンであることを特徴とする化合物。
【請求項63】
請求項62に記載の化合物において、前記反応性アミンが、塩素置換ジエチルアミンであることを特徴とする化合物。
【請求項64】
請求項62又は63に記載の化合物において、nが、1乃至14であることを特徴とする化合物。
【請求項65】
請求項65に記載の化合物において、nが、5乃至9であることを特徴とする化合物。
【請求項66】
請求項65に記載の化合物において、nが、8乃至11であることを特徴とする化合物。
【請求項67】
請求項2に記載の化合物において、Rが、前記Rであり、
が、



式中、mが、1乃至6であり、好ましくはmが、1であり;及び

からなる群より選択されることを特徴とする化合物。
【請求項68】
請求項67に記載の化合物において、Rが、

であり、nが、1乃至14であることを特徴とする化合物。
【請求項69】
請求項68に記載の化合物において、nが、7乃至11であることを特徴とする化合物。
【請求項70】
請求項69に記載の化合物において、nが8乃至10であることを特徴とする化合物。
【請求項71】
請求項67に記載の化合物において、Rが、

であり、nが、3乃至7であることを特徴とする化合物。
【請求項72】
請求項71に記載の化合物において、nが、4乃至6であることを特徴とする化合物。
【請求項73】
請求項67に記載の化合物において、Rが、

であり、nが、9乃至11であることを特徴とする化合物。
【請求項74】
請求項2に記載の化合物において、Rが、前記チオールであり、nが5乃至12であることを特徴とする化合物。
【請求項75】
化学式IIの化合物において:

式中、Rが、選択的に上記のいずれかの基であり、Rが、アルキルアミン、ピリジル、ピロリル、アリールアミン、イミダゾリル、又はピペリジンとすることができ;nが、0乃至8;及びnが、0乃至8(n及びnは、互いに独立して選択される)であることを特徴とする化合物。
【請求項76】
骨格の前記炭素鎖中にジスルフィド結合を含むことを特徴とする請求項1乃至75のいずれかに記載の化合物。
【請求項77】
請求項1乃至76のいずれかに記載の化合物のSエナンチオマー。
【請求項78】
化学式A−Bを有する化合物であって、Aが、求電子官能基であり、Bが、クオラムセンシングに関与する標的タンパク質の天然リガンド、若しくは天然リガンドの部分、又はそれらの誘導体であり、結合する際にA官能基が、標的タンパク質に共有結合してクオラムセンシングを阻害することを特徴とする化合物。
【請求項79】
請求項78に記載の化合物において、Bが、Sエナンチオマーとして、ホモセリンラクトン部分を具えることを特徴とする化合物。
【請求項80】
グラム陰性細菌のクオラムセンシングを阻害することを特徴とする請求項1乃至79のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項81】
請求項80に記載の使用において、前記細菌が、アシネトバクター、アクチノバチルス、アグロバクター、ボルデテラ、ブルセラ、カンピロバクター、シアノバクテリア、エンテロバクター、エルウィニア、大腸菌、フランシセラ、ヘリコバクター、ヘモフィルス菌、クレブシエラ菌、レジオネラ菌、モラクセラ、ナイセリア、パスツレラ菌、プロテウス、シュードモナス菌、サルモネラ菌、セラチア菌、赤痢菌、トレポネーマ、ビブリオ、及びエルシニアの一又はそれ以上を含むことを特徴とする使用。
【請求項82】
バイオフィルム形成を阻害する及び/又は毒性因子分泌を減少させることを特徴とする請求項80又は81に記載の使用。
【請求項83】
請求項80乃至82のいずれかに記載の使用において、 医療機器;液体を運ぶ及び/又は液体に配置されるいかなるタイプの構造の;膜、繊維、包装材料が、植物又は動物の疾患を治療する又はいかなるタイプのバイオフィルムの形成の防止又は減少させることを特徴とする使用。
【請求項84】
請求項83に記載の使用において、前記動物が、哺乳類、魚類、爬虫類、又は鳥類のいずれも含むことを特徴とする使用。
【請求項85】
請求項84に記載の使用において、前記動物が、ヒトではない哺乳類を含むことを特徴とする使用。
【請求項86】
請求項84に記載の使用において、前記動物が、ヒトを含むことを特徴とする使用。
【請求項87】
請求項83に記載の使用において、前記医療機器が、植え込み型医療機器並びに体の外側にあるもの、又は体及び外部環境と連動する医療機器の一又はそれ以上を含むことを特徴とする使用。
【請求項88】
請求項87に記載の使用において、前記医療機器が、自然組織(歯など)上のコーティング、カテーテル、ペースメーカー、コンタクトレンズ、ステント、心臓弁置換又は増強機器、植え込み型自動除細動器、人工心臓補助機器、植え込み型輸液ポンプ、ドレナージ機器、人工関節、骨ピン、スクリュー及びその他の整形外科的機器、歯冠、歯牙充填、人工歯根、その他の歯の又は整形外科的、歯内器具、外科縫合、クリップ及びステープル若しくはその他の締結具、手術用メッシュ、眼内レンズ、バットレス、ラップバンド、包帯、グラフト、ステント/グラフト、無結節創縫合、シーリング材、接着剤、組織スキャフォールド、柔組織代替若しくは増強インプラントなどを含むことを特徴とする使用。
【請求項89】
請求項88に記載の使用において、前記カテーテルが、カテーテル、カテーテルライン、ポート、シャント、補給チューブ、気管内チューブ、及び抹消から中心静脈まで挿入したカテーテル(PICC)ラインを含むことを特徴とする使用。
【請求項90】
請求項83に記載の使用において、液体を運ぶ前記構造が、チューブ、ウォーターフィルター及びその他の浄水装置、このような液体用の容器、液体と接触する表面を特徴付ける製造施設(パイプ、チューブ、容器、機械を含むがこれらに限定されるものではない)、クリーンルームの表面、ヒトが存在するビル内のいかなるタイプのパイプ、チューブ、容器及び機械などを含むことを特徴とする使用。
【請求項91】
請求項83に記載の使用において、液体内に配置された前記構造が、フィルター、機械、水中構造物、船舶、及び海洋環境内に配置された(及び選択的に海洋環境に没している)いかなる構造物を含むことを特徴とする使用。
【請求項92】
上記に主張したいずれかの化合物を、適切な担体中に含むことを特徴とする組成物。
【請求項93】
請求項92に記載の組成物において、染料、抗菌剤、成長因子、又は抗炎症薬の一又はそれ以上を更に含むことを特徴とする組成物。
【請求項94】
請求項92又は93に記載の組成物において、追加的な賦形剤を更に含むことを特徴とする組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−532095(P2012−532095A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516972(P2012−516972)
【出願日】平成22年7月4日(2010.7.4)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053061
【国際公開番号】WO2011/001419
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(512000156)ザ ナショナル インスティテュート フォー バイオテクノロジー イン ザ ネゲヴ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】THE NATIONAL INSTITUTE FOR BIOTECHNOLOGY IN THE NEGEV LTD.
【Fターム(参考)】