説明

細菌のバイオフィルム形成の阻害剤

細菌のバイオフィルムの形成を阻害又は予防するのに使用の有機化合物について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国仮出願番号61/128,093(2008年5月19日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
米国連邦政府支援研究に関する陳述
本明細書に記載される発明は、米国立衛生研究所からのSBIR基金番号:1 R43 AI074161−01によって支援された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、細菌のバイオフィルムの分野にある。特に、本発明は、細菌のバイオフィルムの形成を阻害又は予防する有機化合物を提供する。
【背景技術】
【0004】
バイオフィルムは、タンパク質、多糖類、核酸、又はこれら分子の組合せからなり得る水和した細胞外マトリックスに囲まれた細菌の集合体である(Branda et al., Trends Microbiol, 13: 20-26 (2005))。表面での生物及び無生物のバイオフィルムの発達は、重大な医療問題を提示する。バイオフィルムの成長形式にある細菌は、抗生物質での治療と宿主の免疫系による排除にきわめて抵抗する。故に、一度これらの細菌集合体が形成されると、それらを慣用の治療薬で一掃することはきわめて困難である。従って、バイオフィルムは、慢性の全身感染症をもたらす可能性がある。例えば、尿路感染症、中耳感染症、歯垢、歯肉炎、心内膜炎が含まれる多様な疾患に関連したヒト患者と、嚢胞性線維症患者の気道では、細菌のバイオフィルムが見出されてきた。病原性の細菌は、留置カテーテル、人工心臓弁、及びペースメーカーのような、多様な医療用インプラント上でもバイオフィルムを形成する場合がある(Ada et al., Nutrition, 12: 208-213 (1996))。現在利用可能な唯一の信頼し得る救済策は、汚染したインプラントを除去することであるが、それは患者の医療コストだけでなく、患者の罹病及び死亡のリスクをさらに高めてしまう。
【0005】
Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)の病原体としての出現は、留置医療用デバイスの広範な使用と関連付けられてきた。S. epidermidis と Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)は、大多数のデバイス関連感染症の原因である。これらの細菌は、カテーテル関連感染症の50%〜70%、人工心臓弁感染症の40%〜50%、関節置換感染症の20%〜50%、及び中枢神経シャント感染症の48%〜67%程の多さで原因生物となっている(例えば、O'Gara et al., J. Med. Microbiol., 50: 582-587 (2001) とその参考文献を参照のこと)。S. epidermidis がバイオフィルム病原体としてのその役割に独自に適しているのは、それが試験したほとんどすべての合成ポリマー材料の表面でコロニー形成することができるからである(「留置医療用デバイスに関連した感染症(Infections Associated with Indwelling Medical Devices)」第3版(Walvogel & Bisno 監修)(ASMプレス、ワシントンD.C.,2000)中 55-88頁、Gotz et al.「コアグラーゼ陰性ブドウ球菌による医療用デバイスのコロニー形成(Colonization of Medical Devices by Coagulase-Negative Staphylococci)」)。従って、このバイオフィルム表現型は、ブドウ球菌の病原因子であるとみなされている。
【0006】
幾筋もの証拠が、医療用デバイスの病原体による細菌コロニー形成にバイオフィルムの成長形式が関与することを示している(Costerton et al., Science, 284: 1318-1322 (1999))。種々の臨床試験は、バイオフィルムの成長形式を採る S. epidermidis 臨床株の能力と病原性の間に相関性があることを立証してきた(Ziebuhr et al., Infect. Immun., 65: 890-896 (1997); Galdbart et al., J. Infect. Dis., 182: 351-355 (2000))。
【0007】
ブドウ球菌のバイオフィルムの形成及び維持は、いくつかの遺伝子産物の協奏的な活性を必要とする複雑な発達プロセスを構成する(Gotz, MoI. Microbiol, 43: 1367-1378 (2002) に概説されている)。転写プロファイリング実験は、S. aureus(Beenken et al., J. Bacteriol, 186: 4665-4684 (2004); Resch et al., Appl. Environ. Microbiol, 71: 2663-2676 (2005))及び S. epidermidis(Yao et al., J. Infect. Dis., 191: 289-298 (2005))のバイオフィルムの細胞では、自由浮遊性の(即ち、「プランクトンの」)細菌細胞と比較して、多数の遺伝子の発現が改変していることを明らかにした。バイオフィルム細菌の最も臨床的に意義のある特徴は、それらが抗生物質や殺生物剤に対してプランクトン細菌より1000倍まで抵抗性があることである(Stewart, Int. J. Microbiol, 292: 107-113 (2002))。さらに、ブドウ球菌のバイオフィルム細菌は、免疫系の免疫監視白血球による食細胞作用に抵抗する(Leid et al., Infect. Immun., 70: 6339-6345 (2002))。従って、バイオフィルム細菌が慣用の抗生物質処置を生き抜き、宿主の免疫系に侵入して、再発性の慢性感染症を引き起こし得る感染菌のレザバーを提供することができることは明らかである。
【0008】
バイオフィルム細菌固有の抗生物質抵抗性の機序は、現在知られていないし、排出ポンプのアップレギュレーション、酵素修飾、及び標的の突然変異といった、プランクトン細菌によって利用される抗生物質抵抗性の機序のタイプではないらしい(Costerton et al., Sci. Am., 285: 74-81 (2001))。抗生物質に対する増加したバイオフィルム抵抗性について、いくつかのあり得る機序が提唱されてきたが、これには、抗生物質のバイオフィルムへの浸透が遅いこと、減少した増殖速度、生理学的な不均質性、「保護化表現型状態」又は「存続体」への分化、バイオフィルム成長によって誘導される一般的なストレス応答、及びバイオフィルム特異的な抵抗性遺伝子の発現が含まれる(Mah et al., Trends Microbiol, 9: 34-39 (2001); Briandet et al., Colloids Surf. B. Biointerfaces, 21: 299-310 (2001); Bollinger et al., J. Bacteriol, 183: 1990-1996 (2001) に概説されている)。
【0009】
現在、バイオフィルム関連感染症は、プランクトン細菌によって引き起こされる感染症を治療するように最適化された抗生物質又は抗生物質の組合せで治療されている。疑わしいブドウ球菌のバイオフィルム感染症を経験的に治療するために使用される第一線の抗生物質には、(メチシリン感受性株に対して)静脈内投与されるバンコマイシン又はオキサシリンが含まれる。被感染患者が安定状態にあって、感染病原体とその抗生物質感受性が同定されたときは、シプロフロキサシン、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、リネゾリド、又はキヌプリスチン−ダルフォプリスチンを経口投与することができる(Mermel et al., J. Intraven. Nurs., 24: 180-205 (2001))。これらの治療薬は、通常、バイオフィルムより放出されるプランクトン細菌を殺すことによって、感染の症状を解消する。しかしながら、抗生物質が治療の血中濃度に達しているという事実にもかかわらず、抗生物質療法によって救済され得るのは、被感染カテーテルの約32%にすぎない(Saxena et al., Swiss Med. WkIy., 135: 127-138 (2005))。大多数の場合、バイオフィルム感染症は、被感染表面が取り除かれるまで存続する。被感染表面が静脈へ直接挿入された中心静脈カテーテル(CVC)である場合は、そのデバイスの除去によって引き起こされる外傷は軽微である。しかしながら、トンネル型CVC、人工心臓弁、及び心臓ペースメーカーのような、外科的に移植されたカテーテル及び医療用デバイスでは、このデバイスの除去が患者にとって極度に外傷性であり得る。
【0010】
米国疾病予防管理センター(ジョージア州アトランタ)により発行されたような、血管内デバイス関連感染症の予防用ガイドライン(O'Grady et al., Am. J. Infect. Control, 30: 476-489 (2002))を遵守することは、数多くの研究において、デバイス関連感染症の発生を減少させることが示されたが、これらの手段を実施する試みにもかかわらず、デバイス関連感染症は、依然として重大な問題である。バイオフィルム感染症のリスクを抑えるために、殺生物剤(クロルヘキシジン−スルファジアジン銀)及び抗生物質(リファンピシン−ミノサイクリン)で含浸したカテーテルが市場へ導入された(Potera, Science, 283: 1837, 1839 (1999))。これらのデバイスは、臨床試験において有効であることが示されたが、クロルヘキシジン−スルファジアジン銀含浸カテーテルの日本での使用は、重篤なアナフィラキシー反応と関連付けられている(Oda et al., Anesthesiology, 87(5): 1242-1244 (1997); Terazawa et al., Anesthesiology, 89(5): 1296-1298 (1998))。ミノサイクリン及びリファンピシンで含浸したカテーテルは、リファンピシン抵抗性の S. epidermidis 株でチャレンジされるとき、スルファジアジン銀及びクロルヘキシジンで含浸したカテーテルよりコロニー形成を受けやすいことが示された(Sampath et al., Infect. Control Hosp. Epidemiol, 22: 640-646 (2001))。ある事例では、カテーテルのバイオフィルム感染症を治療するために、カテーテルの内腔を高濃度の抗生物質溶液で満たしてそのデバイスを滅菌する、抗生物質ロック療法(antibiotic lock therapy)を使用することができる(Carratala, J. Clin. Microbiol. Infect., 8: 282-289 (2002))。この手技は、カテーテル内腔中のバイオフィルムに対して有効であることが示されている。
【0011】
バイオフィルム形成への予防療法を開発する最新の研究の焦点となってきたのは、特に2種の化合物である。第一の化合物は、オーストラリアの緑色大型藻類である Delisea pulchra の二次代謝産物の誘導体である、ハロゲン化フラノン(3−(1−ブロモヘキシル)−5−(ジブロモメチレン)フラン−2(5H)−オン;(5Z)−4−ブロモ−5−(ブロモメチレン)−3−ブチル−2(5H)−フラノン)である。この化合物は、いくつかのグラム陰性菌種においてAI−2クオラムセンシング(quorum sensing)に干渉して、バイオフィルムの形成を予防する(Hentzer et al., Microbiol., 148: 87-102 (2002))。さらに、ハロゲン化フラノンは、S. epidermidis(Baveja et al., Biomaterials, 25: 5013-5021 (2004); Baveja et al., Biomaterials, 25: 5003-5012 (2004); Hume et al., Biomaterials, 25: 5023-5030 (2004))及び枯草菌(Ren et al., Appl. Environ. Microbiol, 70: 4941-4949 (2004))のようなグラム陽性菌種のバイオフィルム形成を阻害することが報告されてきた。このハロゲン化フラノンには、広い活性スペクトルのあるバイオフィルム阻害剤を提供するポテンシャルがあるように見える。しかしながら、グラム陽性菌に対して観測されるバイオフィルム阻害活性は、抗菌活性による(Ren et al., Appl Environ. Microbiol, 70: 4941-4949 (2004))のであって、バイオフィルム形成の特異的な阻害によるのではない可能性がある。事実、S. epidermidis(Xu et al., Infect. Immun., 74: 488-496 (2006))及び S. aureus(Doherty et al., J. Bacteriol, 188: 2885-2897 (2006))においてAI−2を合成するのに必要とされる遺伝子(luxS)の欠失は、バイオフィルム形成に悪影響を及ぼさず、AI−2シグナル伝達経路がこれらの細菌種におけるバイオフィルム形成に必要でないことを示した。研究下にある別の化合物は、カチオン性ペプチドのRIPである(Balaban et al., J. Infect. Dis., 187: 625-630 (2003); Balaban et al., Clin. Orthop. Relat. Res., 437: 48-54 (2005))。RIPは、ブドウ球菌においてクオラムセンシングを阻害して、バイオフィルム形成と病原因子の発現に干渉する(Balaban et al. (2003), op. cit.; Balaban et al. (2005), op. cit.)。
【0012】
バイオフィルムベースの感染症を治療するために現在利用可能である、承認された少数の治療化合物及び手技は、このような疾患の増加する発生率を逆転させていない。米国疾病予防管理センターは、先進世界において医師が治療する感染症の65%はバイオフィルム中で増殖する生物が原因であると推定している(Costerton et al., Science, 284: 1318-1322 (1999))。さらに、米国において毎年配置される500万本のCVC及び肺動脈カテーテル(Swan-Ganz)のほぼ10%が汚染されて、約200,000〜400,000件のエピソードのカテーテル関連血流感染症をもたらしている。
【0013】
細菌のバイオフィルム形成を予防又は処置するのに現在利用されている化合物が少数であること、埋込み式カテーテルと他のデバイスが継続的に使用されること、そして上記化合物に対して抵抗性であるバイオフィルム形成菌病原体の株がやがては出現する可能性に照らせば、細菌のバイオフィルム形成を阻害するための新しい手段及び方法へのニーズが明らかに存続している。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、細菌のバイオフィルムの形成を阻害又は予防する有機化合物であるバイオフィルム阻害化合物を提供することによって、上記の問題に対処する。このような化合物は、限定されないが、広く使用されている留置医療用デバイスにおける細菌のバイオフィルム汚染と関連付けられてきた、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus aureus、Enterococcus faecalis(エンテロコッカス・フェカーリス)、及び Enterococcus faecium(エンテロコッカス・フェシウム)が含まれるグラム陽性バイオフィルム形成菌による細菌バイオフィルムの形成を阻害又は予防するのに有用である。本明細書に記載されるバイオフィルム阻害化合物は、バイオフィルムを形成し得る細菌細胞に感受性があるか又はそれとすでに接触している表面でのバイオフィルム形成を阻害又は予防するのに特に有用である。
【0015】
1つの態様において、本発明は、本明細書に記載の組成物及び方法において有用なバイオフィルム阻害化合物を提供し、該化合物は、式1:
【0016】
【化1】

【0017】
[式中、
Xは、S又はOであり:
Yは、S又はNであり;
は:
a)置換フェニル基{ここで該フェニル基は、3、4、及び5位の1以上で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);シアノ(−CN);カルボキシル(−COOH);カルボン酸エステル基、−COOR(ここでRは、アルキルである);−CF(トリフルオロメチル);ニトロ(−NO);スルホニル基、−SO(ここでRは、アルキルである);スルファモイル、−SONH;アルデヒド(−CHO);及び、ケトン基−C(O)R(ここでRは、アルキルである)からなる群より選択される残基で置換され;
そしてここで前記フェニル基は、2位でも6位でも置換されない};又は
b)置換ヘテロアリール基{ここで該ヘテロアリール基は、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、又はピリダジニルであり、そしてここで前記ヘテロアリール基は、1以上の環炭素で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);シアノ(−CN);カルボキシル(−COOH);カルボン酸エステル基、−COOR(ここでRは、アルキルである);−CF(トリフルオロメチル);ニトロ(−NO);スルホニル基、−SO(ここでRは、アルキルである);スルファモイル、−SONH;アルデヒド(−CHO);及び、ケトン基−C(O)R(ここでRは、アルキルである)からなる群のいずれでも置換される}であり;そして
は、置換フェニル基であり、ここで該フェニル基は:
a)4位で、ヒドロキシル(−OH)又はアミノ(−NH)での置換;
b)3位で、ヒドロキシル;アルコキシ、アルキレンオキシ、又はアルキリデンオキシ基、−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);及び、アミノ及び置換アミノ基、−NR10(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである)からなる群より選択される残基での置換;及び
c)5位で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシル;アルコキシ、アルキレンオキシ、又はアルキリデンオキシ残基、−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);シアノ;アミノ及び置換アミノ基、−NR10基(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);カルボキシル及びカルボン酸エステル基、−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基、−SO(ここでRは、アルキルである);−SONH(スルファモイル);アルデヒド(−CHO);及びケトン基、−C(O)R(ここでRは、アルキルである)からなる群より選択される残基での置換;
からなる群より選択される1以上の位置で、ある残基で置換され、
そしてここで該フェニル基は、2位にも6位にも置換を有さない]の構造を有して、
そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0018】
好ましい態様において、上記の式1のバイオフィルム阻害化合物は、式2:
【0019】
【化2】

【0020】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するローダニン化合物であり、
そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0021】
好ましくは、式2のローダニンバイオフィルム阻害化合物は、3−(3−クロロフェニル)−5−(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−メトキシ−ベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表2中のMSL−049731)、3−(4−ブロモフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表2中のMSL−049293)、3−(4−クロロフェニル)−5−(3−クロロ−5−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表2中のMSL−6519056)、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物4)、(Z)−3−(3−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物8)、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−アリルオキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物29)、(Z)−3−(3−シアノフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物34)、(Z)−3−(ピリジン−3−イル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物36)、(Z)−3−(6−フルオロピリジン−3−イル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物40)、及び(Z)−3−(4−メトキシカルボニルフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物49)からなる群より選択される。
【0022】
別の好ましい態様において、式1のバイオフィルム阻害化合物は、式3:
【0023】
【化3】

【0024】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するチアゾリジンジオン化合物であり、
そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0025】
好ましくは、式3のチアゾリジンジオンバイオフィルム阻害化合物は、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物60)又は(Z)−3−(4−クロロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物61)である。
【0026】
なお別の好ましい態様において、式1のバイオフィルム阻害化合物は、式4:
【0027】
【化4】

【0028】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するヒダントイン化合物であり、
そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0029】
好ましくは、式4のヒダントインバイオフィルム化合物は、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物58)又は(Z)−3−(4−クロロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物59)である。
【0030】
なお別の態様において、式1のバイオフィルム阻害化合物は、式5:
【0031】
【化5】

【0032】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するチオヒダントイン化合物であり、
そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0033】
式5の好ましいチオヒダントインバイオフィルム阻害化合物は、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソイミダゾリジン−4−オン(表3中の化合物62)である。
【0034】
本発明の1つの態様において、バイオフィルム阻害化合物は、式6:
【0035】
【化6】

【0036】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するフラノン化合物であり、
そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0037】
式6の好ましいフラノンバイオフィルム阻害化合物は、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジリデン)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)フラン−2(3H)−オン(表2中のMSL−051097)である。
【0038】
別の好ましい態様において、本明細書に記載のバイオフィルム阻害化合物は、本明細書に記載のバイオフィルム阻害アッセイにおいて、1以上のグラム陽性菌株によるバイオフィルム形成を少なくとも80%(≧80%)を阻害する。
【0039】
なお別の好ましい態様において、本明細書に記載のバイオフィルム阻害化合物は、本明細書に定義される、25μM以下(MBIC≦25μM)、より好ましくは12.5μM以下(MBIC≦12.5μM)、及びなおより好ましくは10μM未満(MBIC<10μM)の最小バイオフィルム阻止濃度(MBIC)によって示される抗バイオフィルム活性を有する。
【0040】
本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤は、バイオフィルム形成性のグラム陽性菌に曝露されるか又はそれで汚染される場合がある表面での細菌のバイオフィルム形成を予防又は阻害するのに特に有用である。このような表面には、限定されないが、埋込み式医療用デバイス(限定されないが、中心静脈カテーテル(CVC)、埋込み式ポンプ、人工心臓弁、及び心臓ペースメーカーが含まれる);心肺バイパス(CPB)ポンプ(心臓−肺機械);透析機器;人工呼吸器;呼吸装置(酸素及び空気の供給装置);水パイプ;配管設備;及び、空気ダクトの表面が含まれる。このように、本発明はまた、前記表面を式1の化合物、特に、式2、3、4、5又は6のいずれもの化合物で処置することを含んでなる、表面での細菌バイオフィルム形成を阻害するための方法を提供する。バイオフィルム阻害化合物は、その表面へ、バイオフィルム形成細菌でのその曝露又は感染に先立って、バイオフィルム形成細菌がその表面に接触した後で、又は細菌のバイオフィルムがすでに表面上に形成された後で適用してよい。このように、本明細書に開示する抗バイオフィルム化合物は、有利にも、表面でのバイオフィルム形成を予防するために、又は表面でのバイオフィルム形成を阻止するために利用してよい。好ましくは、表面での細菌バイオフィルム形成に先立って、本明細書に記載のバイオフィルム阻害化合物を該表面へ適用する。より好ましくは、バイオフィルム形成細菌が表面に接触する前に、本明細書に記載のバイオフィルム阻害化合物を該表面へ適用するか又はその上に提供する。例えば、図1を参照のこと。
【0041】
本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤は、所望の表面へ、限定されないが、コーティング、含浸、及び共有コンジュゲーションが含まれる、多様な方法のいずれによっても適用してよい。本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤はまた、カテーテル又は他の医療用デバイスの内腔を満たすためにロック溶液剤(溶液又は懸濁液)において使用前に利用してよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、実施例5に記載の(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物4)で処置した、黄色ブドウ球菌 ATCC 35556 の培養物によるバイオフィルム形成(バイオフィルム成長)の阻害を示す。細菌培養物へ化合物4を4xMBIC(12μM)の濃度で、22時間のインキュベーション時間にわたり様々な時点(0、1、2、4、6、8、10、12、及び21時間)で加えた。化合物4の非存在時の並行培養物(未処置対照)においてもバイオフィルム成長を追跡した。クリスタルバイオレットで染色してOD600を測定することによって、試料中のバイオフィルム成長を定量した。第一(左側)y軸は、化合物4で処置した培養物における経時的な(x軸)バイオフィルム成長の阻害パーセント(バイオフィルム阻害%)を示す。第二(右側)y軸は、並行の未処置対照培養物におけるバイオフィルム成長を示す。詳細については、実施例5を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明がより明瞭に理解され得るために、以下の略語及び用語を以下に定義されるように使用する。
【0044】
他に示さなければ、「約」及び「ほぼ」という用語が量、数字、又は数値と組み合わせて使用されるとき、その組合せは、引用される量、数字、又は数値だけでなく、その量、数字、又は数値の±10%の量、数字、又は数値を記載する。例を挙げると、「約40%」及び「ほぼ40%」という句は、「40%」と「36%〜44%を含めて」をともに開示する。
【0045】
有機分子のある位置へ付いた置換基(残基)の略語は、有機化学において通常使用される略語のいずれでもある。そのような略語には、そのような置換基の「簡略」形が含まれる場合がある。例えば、「Ac」は、アセチル基の略語であり、「Ar」は、「アリール」基の略語である。「Bn」は、ベンジルを示す。「ハロ」又は「ハロゲン」は、ハロゲン残基(F、Cl、Br、I)を示す。「Me」、「Et」、及び「Pr」は、それぞれメチル(CH−)、エチル(CHCH−)、及びプロピル(CHCHCH−)基を示すために使用される略語であり;そして「OMe」(又は「MeO」)と「OEt」(又は「EtO」)は、それぞれメトキシ(CHO−)とエトキシ(CHCHO−)を示す。「iPr」は、イソプロピルを示す。「NCO」はイソシアネートの略語であり、「NCS」はイソチオシアネートの略語である。水素及び炭素の原子は、本明細書に記載の有機分子の構造式における水素及び炭素の原子の存在及び位置が当業者に知られて理解されているので、本明細書に記載される有機分子の構造式に必ずしも示されないか、又はある構造においてのみ選択的に示される場合がある。
【0046】
「アシル」という用語は、当該技術分野で知られた通常の意味を有する。好ましくは、「アシル」は、「−C(O)R」残基であり、ここで「−C(O)」はカルボニル基を示して、Rは脂肪族基又はアリール基であるか、又は本明細書において他に特定される通りである。
【0047】
「アルキル」という用語は、当該技術分野で知られる通常の意味を有して、直鎖又は分岐鎖の炭化水素残基であり得る飽和した炭化水素鎖を意味する。好ましくは、アルキル基は、C−C18飽和炭化水素鎖であり、より好ましくはC−C10飽和炭化水素鎖、なおより好ましくはC−C飽和炭化水素鎖、そしてさらにより好ましくはC−C飽和炭化水素鎖である。アルキル残基には、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、アミル、及びt−ペンチルが含まれる。他に特定されなければ、「置換アルキル」基は、アミノ、アルキルアミノ(C2n+1−NH−)、アルコキシ、アルキルチオ、オキソ、ハロ、アシル、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、アリール、アルキルアリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミノ(ArNH−)、カルボシクリル、カルボシクリルオキシ、カルボシクリルチオ、カルボシクリルアミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルチオ、等のような、慣用的に使用される1以上の置換基で置換されたアルキル基である。他に特定されなければ、「アルキル」という用語を「カルボシクリルアルキル」又は「アリールアルキル」のような複合語において一緒に使用するとき、そのような複合語に関連して使用される炭素原子の番号又は環番号には、その成分(moiety)のアルキル部分(portion)の原子を含めない(その成分の他の部分がどの炭素原子も含有しないのでなければ)。そのような場合、アルキル部分は、典型的には、他のアルキル成分についての上記の定義で示した鎖の長さを有する。
【0048】
「ヘテロアルキル」という用語は、アルキル部分中の炭素原子が酸素(O)、イオウ(S)、又は窒素(N)に置き換わっている、上記に定義されるようなアルキル残基を意味する。
【0049】
「アルキルアミノ」という用語は、1又は2のアルキル基(即ち、ジアルキルアミノ残基が含まれる)で置換されたアミノ残基を意味して、ここでアルキル基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0050】
「アラルキル」という用語は、1以上のアルキル置換基で置換されたアリール残基を意味する。
【0051】
「アルケニル」という用語は、1以上の炭素−炭素二重結合を有する、脂肪族の直鎖又は分岐鎖の炭化水素残基を意味する。3以上の炭素原子を含有するアルケニル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。好ましくは、アルケニル基は、C−C18炭化水素鎖、より好ましくはC−C10炭化水素鎖、なおより好ましくはC−C炭化水素鎖、そしてさらにより好ましくはC−C不飽和炭化水素鎖である。好適なアルケニル残基には、限定されないが、ビニル、アリル(2−プロペニル)、イソプロペニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニル、1,3−ペンタジエニル、等が含まれる。
【0052】
「アルキニル」という用語は、1以上の炭素−炭素三重結合を有する、脂肪族の炭化水素残基を意味する。3以上の炭素原子を含有するアルキニル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。好ましくは、アルキニル基は、C−C18炭化水素鎖、より好ましくはC−C10炭化水素鎖、なおより好ましくはC−C炭化水素鎖、そしてさらにより好ましくはC−C炭化水素鎖である。
【0053】
「アリール」という用語は、5〜8員の単環系芳香族環を有する一価の環式炭化水素残基、又は5〜8の環員をその各環に有する多環系芳香族環系を意味する。アリール残基は、未置換であっても、限定されないが、アルキル(例、「低級」又はC−Cアルキル)、ヒドロキシ、アルコキシ(例、低級アルコキシ)、アルキルチオ、シアノ、ハロ、アミノ、及びニトロより選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。アリール基の例には、限定されないが、フェニル、メチルフェニル(トリル)、ジメチルフェニル、アミノフェニル、ニトロフェニル、ヒドロキシフェニル、及びナフチル(例、1−ナフチル、2−ナフチル)が含まれる。
【0054】
「ヘテロアリール」は、1以上の環炭素原子が窒素(N)、酸素(O)、又はイオウ(S)に置き換わっている、上記に記載されるようなアリール残基を意味する。好ましいヘテロアリール残基には、1又は2の環炭素が窒素(N)に置き換わっているフェニル基が含まれる。より好ましくは、本明細書に記載の化合物に有用なヘテロアリール残基は、ピロリル、ピリジル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チアゾリル、及びオキサゾリルである。
【0055】
「ヘテロシクリル」は、飽和、不飽和、又は芳香族(即ち、ヘテロアリール)であり得る1以上の環を含有する複素環式基を意味し、ここでこの残基の少なくとも1つの環は、窒素(N)、酸素(O)、及びイオウ(S)より選択される1以上のヘテロ原子を含有する。さらに、ヘテロシクリル残基は、ヘテロシクリル残基の環員原子へ付いた1以上の置換基、即ち、環置換基(例えば、ハロ残基、アルキル残基、アリール残基)を含有してよい。この定義では、ヘテロシクリル基のすべての安定した異性体が考慮される。
【0056】
「低級」は、有機化学の文脈において線状分子の基(残基)へ適用されるように使用されるとき、それが適用される基が1〜6の原子、即ち、6員以下の原子を有することを意味する。但し、環(シクロアルキルのような)の場合、その場合「低級」は、3〜6員の原子を有する環を意味する。非限定的な例によれば、「低級」アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はヘキシルのようなC−C鎖である。より好ましい低級アルキルは、C−C鎖である。また、非限定的な例によれば、二重結合の存在により、「低級」アルケニルは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、又はヘキセニルのようなC−C基である。より好ましい低級アルケニルは、C−C鎖である。また、非限定的な例によれば、三重結合の存在により、「低級」アルキニルは、アセチレニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、又はヘキシニルのようなC−C基である。より好ましい低級アルキニルは、C−C鎖である。
【0057】
1以上の列挙される要素又は工程を「含んでなる」と本明細書に記載される組成物又は方法は無制限(open-ended)であり、列挙される要素又は工程は必須であるが、他の要素又は工程もその組成物又は方法の範囲内に加えてよいことを意味する。冗長さを避けるために、1以上の列挙される要素又は工程「を含んでなる」(又は「を含む」)と記載されるどの組成物又は方法も、列挙される同じ要素又は工程「から本質的になっている」(又は「から本質的になる」)、対応する、より限定された組成物又は方法を記載するとも理解され、その組成物又は方法には、列挙される本質的な要素又は工程が含まれて、その組成物又は方法の基本的で新規の特徴(複数)に実質的には影響を及ぼさない追加の要素又は工程も含めてよいことを意味する。また、1以上の列挙される要素又は工程「を含んでなる」又は「から本質的になる」と本明細書に記載されるどの組成物又は方法も、列挙される要素又は工程「からなっている」(又は「からなる」)、列挙されない他のどの要素又は工程も含まれない、対応する、より限定されて有限な(closed-ended)組成物又は方法も記載すると理解される。本明細書に開示されるどの組成物又は方法も、列挙されるどの本質的な要素又は工程でも、知られているか又は開示される同等物がその要素又は工程の代用になってよい。
【0058】
また、要素又は工程のリスト「からなる群より選択される」か又は他のやり方で引用される要素又は工程は、他に述べなければ、収載される要素又は工程のどの2以上の組合せを含めて、以下に続くリスト中の要素又は工程の1以上を意味すると理解される。
【0059】
他の用語の意味は、有機化学、薬理学、製剤学、及び微生物学の分野が含まれる、当該技術分野の当業者によって理解されるように、文脈によって理解されよう。
【0060】
本発明は、ある種のヘテロシクリル化合物が、広く使用されている留置医療用デバイスにおける細菌のバイオフィルム汚染と関連付けられてきた、Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)、S. aureus(黄色ブドウ球菌)、Enterococcus faecalis(エンテロコッカス・フェカーリス)、及び Enterococcus faecium(エンテロコッカス・フェシウム)の1以上の株が含まれるグラム陽性菌による細菌のバイオフィルム形成を阻害するという発見に基づく。このような化合物を「バイオフィルム阻害化合物」、「バイオフィルム阻害剤」、又は「抗バイオフィルム化合物」と呼ぶ。
【0061】
本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤は、Staphylococcus epidermidis によるバイオフィルム形成を阻害するが、プランクトン増殖にはわずかな効果しか及ぼさない化合物(「ヒット」)を同定するために、87,000種を超す有機分子を提供する多数のライブラリーの細胞ベースのハイスループットスクリーニング(以下の表1、実施例1を参照のこと)を実行することより初めて発見された(以下の表2、実施例2を参照のこと)。本明細書に使用する最小バイオフィルム阻害濃度(MBIC)は、バイオフィルム形成を80%以上(≧80%)阻害する化合物の最低濃度を意味する。最小阻止濃度(MIC)は、本明細書に使用されるように、細菌の増殖を80%以上(≧80%)阻害する化合物の最低濃度を意味する。細胞傷害性について、「CC50」は、哺乳動物細胞系(例、ヒーラ細胞)の生存能を50%低下させる化合物の濃度を意味する。最初のライブラリースクリーニングプロトコールより、以下の判定基準:MBIC≦12.5μM及びMIC≧100μMに合致する、145個の確定(cofirmed)ヒット(0.16%)を同定した。これらの化合物を、抗バイオフィルム(バイオフィルム形成の阻害)及び抗菌活性のデータに基づいて、確証(validated)ヒットと命名した。ヒーラヒト細胞系を使用する細胞傷害性データ(CC50)を使用して、確証ヒットを優先化した。CC50/MBIC>8である確証ヒットに最高の優先度を与えた。
【0062】
ライブラリースクリーニングより確証したバイオフィルム阻害剤について、S. epidermidis、S. aureus、及びEnterococcus faecalis に対するその抗バイオフィルム活性、並びにヒト(ヒーラ)細胞系に対する細胞傷害性を評価する一連の二次アッセイにおいて査定して、グラム陽性菌種の1以上の株によるバイオフィルム産生を阻害する化合物を入手した。
【0063】
このライブラリースクリーニングより確認したバイオフィルム阻害剤の最初の発見は、1以上のグラム陽性菌株による細菌のバイオフィルム形成を阻害する追加の化合物の発見をもたらした。本明細書に記載の好ましいバイオフィルム阻害剤は、S. epidermidis、S. aureus、E. faecalis、E. faecium、及び Enterococcus gallinarum(エンテロコッカス・ガリナルム)の1以上の株について25μM以下のMBICを有する。
【0064】
表面での細菌バイオフィルム形成を阻害又は予防するための本明細書に記載の組成物及び方法に有用なバイオフィルム阻害剤は、式1:
【0065】
【化7】

【0066】
[式中、
Xは、S又はOであり:
Yは、S又はNであり;
は:
a)置換フェニル基{ここで該フェニル基は、3、4、及び5位の1以上で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);シアノ(−CN);カルボキシル(−COOH);カルボン酸エステル基、−COOR(ここでRは、アルキルである);−CF(トリフルオロメチル);ニトロ(−NO);スルホニル基、−SO(ここでRは、アルキルである);スルファモイル、−SONH;アルデヒド(−CHO);及び、ケトン基−C(O)R(ここでRは、アルキルである)からなる群より選択される残基で置換され;
そしてここで前記フェニル基は、2位でも6位でも置換されない};又は
b)置換ヘテロアリール基{ここで該ヘテロアリール基は、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、又はピリダジニルであり、そしてここで前記ヘテロアリール基は、1以上の環炭素で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);シアノ(−CN);カルボキシル(−COOH);カルボン酸エステル基、−COOR(ここでRは、アルキルである);−CF(トリフルオロメチル);ニトロ(−NO);スルホニル基、−SO(ここでRは、アルキルである);スルファモイル、−SONH;アルデヒド(−CHO);及び、ケトン基−C(O)R(ここでRは、アルキルである)からなる群のいずれでも置換される}であり;そして
は、置換フェニル基であり、ここで該フェニル基は:
a)4位で、ヒドロキシル(−OH)又はアミノ(−NH)での置換;
b)3位で、ヒドロキシル;アルコキシ、アルキレンオキシ、又はアルキリデンオキシ基、−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);及び、アミノ及び置換アミノ基、−NR10(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである)からなる群より選択される残基での置換;及び
c)5位で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシル;アルコキシ、アルキレンオキシ、又はアルキリデンオキシ残基、−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);シアノ;アミノ及び置換アミノ基、−NR10基(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);カルボキシル及びカルボン酸エステル基、−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基、−SO(ここでRは、アルキルである);−SONH(スルファモイル);アルデヒド(−CHO);及びケトン基、−C(O)R(ここでRは、アルキルである)からなる群より選択される残基での置換;
からなる群より選択される1以上の位置で、ある残基で置換され、
そしてここで該フェニル基は、2位にも6位にも置換を有さない]の構造を有する化合物であり;そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0067】
上記の式1のバイオフィルム阻害剤は、式2:
【0068】
【化8】

【0069】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するローダニン化合物であってよく;そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0070】
本明細書に記載の組成物及び方法に有用な式2の好ましいローダニンバイオフィルム阻害化合物は、3−(3−クロロフェニル)−5−(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−メトキシ−ベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表2中のMSL−049731)、3−(4−ブロモフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表2中のMSL−049293)、3−(4−クロロフェニル)−5−(3−クロロ−5−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表2中のMSL−6519056)、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物4)、(Z)−3−(3−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物8)、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−アリルオキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物29)、(Z)−3−(3−シアノフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物34)、(Z)−3−(ピリジン−3−イル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物36)、(Z)−3−(6−フルオロピリジン−3−イル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物40)、及び(Z)−3−(4−メトキシカルボニルフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物49)からなる群より選択される。
【0071】
別の好ましい態様において、式1のバイオフィルム阻害剤は、式3:
【0072】
【化9】

【0073】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するチアゾリジンジオン化合物であり;そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0074】
本明細書に記載の組成物及び方法に有用な式3の好ましいチアゾリジンジオンバイオフィルム阻害化合物は、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物60)又は(Z)−3−(4−クロロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物61)である。
【0075】
式1のバイオフィルム阻害剤は、式4:
【0076】
【化10】

【0077】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するヒダントイン化合物であってよく;そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0078】
本明細書に記載の組成物及び方法に有用な式4の好ましいヒダントインバイオフィルム阻害化合物は、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物58)又は(Z)−3−(4−クロロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物59)である。
【0079】
式1のバイオフィルム阻害剤は、式5:
【0080】
【化11】

【0081】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するチオヒダントイン化合物であってよく;そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0082】
本明細書に記載の組成物及び方法に有用な式5の好ましいチオヒダントインバイオフィルム阻害化合物は、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソイミダゾリジン−4−オン(表3中の化合物62)である。
【0083】
細菌のバイオフィルム形成を阻害するための本明細書に記載の組成物及び方法に有用な別のバイオフィルム阻害剤は、式6:
【0084】
【化12】

【0085】
[式中、RとRは、式1について上記に記載される通りである]の構造を有するフラノン化合物であり;そしてここで該化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する。
【0086】
本明細書に記載の組成物及び方法に有用な式6の好ましいフラノンバイオフィルム阻害剤は、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジリデン)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)フラン−2(3H)−オン(表2中のMSL−051097)である。
【0087】
細菌のバイオフィルム阻害剤の合成
本明細書に記載の細菌バイオフィルム阻害化合物は、当該技術分野で知られた方法を使用して合成することができる。以下に示すように、上記の図2〜6のバイオフィルム阻害剤に好ましい2工程合成スキームは、所望されるバイオフィルム阻害剤の生成物を生成するために、3位置換されたコア環構造のアルデヒドとの一般的な第二工程の縮合を伴う。所望の生成物を入手するための、コア環構造のアルデヒドとの縮合は、よく知られた反応であり、本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤の合成へ容易に適用される。例えば、Whitesitt et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 6: 2157- 2162 (1996); Grant et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10: 2179-2182 (2000) (ローダニン); Mustafa et al., J. Am. Chem. Soc, 82: 2597-2602 (1960); Tanaka et al., J. Antibiotics, 47: 297-300 (1994) を参照のこと。
【0088】
A.ローダニンバイオフィルム阻害剤の合成。
【0089】
ローダニン化合物のイソチオシアネートからの合成については、すでに記載されている。例えば、Cutshall et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 15: 3374-3379 (2005); Sing et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 11 : 91-94 (2001) を参照のこと。このような方法を適用して、以下の合成スキームに従って、本明細書に記載のローダニンバイオフィルム阻害剤(上記の式2)を合成することができる:
【0090】
【化13】

【0091】
適切なイソチオシアネート及びアルデヒドからの2工程手順において、3位と5位に置換基(それぞれ、RとR)があるローダニンバイオフィルム阻害剤を構築する。第一工程では、塩化メチレン中のトリエチルアミンの存在下にイソチオシアネート(R−NCS)をチオグリコール酸エチルで処理して、3−置換ローダニンを生成する。得られる3−置換ローダニンを精製してから、酢酸ナトリウム及び酢酸の存在下にアルデヒド(R−CHO)と縮合して、所望される3,5−二置換ローダニンを生成する。
【0092】
におけるバリエーションは、対応するイソチオシアネートの選択によって達成される。イソチオシアネートは、市販供給源より入手しても、当該技術分野で知られた手順を使用する、対応するアミンからの合成によって入手してもよい。例えば、Pascal et al., Eur. J. Med. Chem., 25: 81-85 (1990); Goodyer et al., Bioorg. Med. Chem., 11 : 4189-4206 (2003) を参照のこと。Rにおけるバリエーションは、対応するアルデヒドの取込みによって達成される。アルデヒドは、市販供給源より購入しても、当該技術分野で知られた手順を使用して合成してもよい。置換基は、構造中へ取り込んだならば概して修飾されないし、最終の構造が生成されたならば、追加の置換基が付加又は除去されることも概してない。すべてのバリエーションは、イソチオシアネート及びアルデヒドのレベルで概して達成される。
【0093】
B.チオヒダントインバイオフィルム阻害剤の合成。
【0094】
チオヒダントインのイソチオシアネートからの合成については、すでに記載されている。例えば、El-Barbary et al., J. Med. Chem., 37: 73-77 (1994); Khodair, J. Carbohydr. Res., 331 : 445-454 (2001) を参照のこと。このような方法を適用して、以下の合成スキームに従って、本明細書に記載のチオヒダントインバイオフィルム阻害剤(上記の式5)を合成することができる:
【0095】
【化14】

【0096】
適切なイソチオシアネート及びアルデヒドからの2工程手順で、3位と5位に置換基(それぞれ、RとR)があるチオヒダントインを構築する。第一工程では、塩化メチレン中のトリエチルアミンの存在下にイソチオシアネート(R−NCS)をグリシンで処理してから、酸性条件で環化させて、3−置換チオヒダントインを生成する。得られる3−置換チオヒダントインを精製してから、酢酸アンモニウム及び酢酸の存在下にアルデヒド(R−CHO)と縮合して、所望される3,5−二置換チオヒダントインを生成する。
【0097】
におけるバリエーションは、対応するイソチオシアネートの選択によって達成される。イソチオシアネートは、市販供給源より入手しても、当該技術分野で知られた手順を使用する、対応するアミンからの合成によって入手してもよい。例えば、Pascal et al., Eur. J. Med. Chem., 25: 81-85 (1990); Goodyer et al., Bioorg. Med. Chem., 11 : 4189-4206 (2003) を参照のこと。Rにおけるバリエーションは、対応するアルデヒドの取込みによって達成される。アルデヒドは、市販供給源より購入しても、当該技術分野で知られた手順を使用して合成してもよい。置換基は、構造中へ取り込んだならば概して修飾されないし、最終の構造が生成されたならば、追加の置換基が付加又は除去されることも概してない。すべてのバリエーションは、イソチオシアネート及びアルデヒドのレベルで概して達成される。
【0098】
C.ヒダントインバイオフィルム阻害剤の合成。
【0099】
ヒダントイン化合物のイソシアネートからの合成については、すでに記載されている。例えば、Boeijen et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 8: 2375-2380 (1998) を参照のこと。このような方法を適用して、以下の合成スキームに従って、本明細書に記載のヒダントインバイオフィルム阻害剤(上記の式4)を合成することができる:
【0100】
【化15】

【0101】
適切なイソシアネート及びアルデヒドからの2工程手順で、3位と5位に置換基(それぞれ、RとR)があるヒダントインを構築する。第一工程では、塩化メチレン中のトリエチルアミンの存在下にイソシアネート(R−NCO)をグリシンで処理してから、酸性条件で環化させて、3−置換ヒダントインを生成する。得られる3−置換ヒダントインを精製してから、酢酸アンモニウム及び酢酸の存在下にアルデヒドと縮合して、所望される3,5−二置換ヒダントインを生成する。
【0102】
におけるバリエーションは、イソシアネートの選択によって達成される。イソシアネートは、市販供給源より誘導しても、当該技術分野で知られた手順を使用する、対応するアミンからの合成によって誘導してもよい。Rにおけるバリエーションは、対応するアルデヒドの取込みによって達成される。アルデヒドは、市販供給源より購入しても、当該技術分野で知られた手順を使用して合成してもよい。置換基は、構造中へ取り込んだならば概して修飾されないし、最終の構造が生成されたならば、追加の置換基が付加又は除去されることも概してない。すべてのバリエーションは、イソチオシアネート及びアルデヒドのレベルで概して達成される。
【0103】
D.チアゾリジンジオンバイオフィルム阻害剤の合成。
【0104】
コア構造のアルデヒドとの縮合によるチアゾリジンジオンの合成については、すでに記載されている。例えば、Mustafa et al., J. Am. Chem. Soc, 82: 2597-2602 (1960) を参照のこと。このような方法を適用して、以下の合成スキームに従って、本明細書に記載のようなチアゾリジンジオンバイオフィルム阻害剤(上記の式3)を合成することができる:
【0105】
【化16】

【0106】
適切なイソシアネート及びアルデヒドからの2工程手順で、3位と5位に置換基(それぞれ、RとR)があるチアゾリジンジオンを構築する。第一工程では、塩化メチレン中のトリエチルアミンの存在下にイソシアネート(R−NCO)をチオグリコール酸エチルで処理してから、酸性条件で環化させて、3−置換チアゾリジンジオンを生成する。得られる3−置換チアゾリジンジオンを精製してから、酢酸アンモニウム及び酢酸の存在下にアルデヒドと縮合して、所望される3,5−二置換チアゾリジンジオンを生成する。
【0107】
におけるバリエーションは、イソシアネートの選択によって達成される。イソシアネートは、市販供給源より誘導しても、当該技術分野で知られた手順を使用する、対応するアミンからの合成によって誘導してもよい。Rにおけるバリエーションは、対応するアルデヒドの取込みによって達成される。アルデヒドは、市販供給源より購入しても、当該技術分野で知られた手順を使用して合成してもよい。置換基は、構造中へ取り込んだならば概して修飾されないし、最終の構造が生成されたならば、追加の置換基が付加又は除去されることも概してない。すべてのバリエーションは、イソチオシアネート及びアルデヒドのレベルで概して達成される。
【0108】
E.フラノンバイオフィルム阻害剤の合成。
【0109】
フラノンを合成する方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、Agnihotri et al., J Indian Chem. Soc, 59: 869-876 (1982) を参照のこと。本明細書に記載のフラノンバイオフィルム阻害剤(上記の図6)は、以下の合成スキームに従って合成することができる:
【0110】
【化17】

【0111】
適切な4−R’,4−オキソブタン酸及びアルデヒド(R−CHO)からの2工程手順で、3位と5位に置換基(それぞれ、RとR)があるフラノンを構築する。第一工程では、4−オキソブタン酸を無水酢酸及びピリジンで処理して、5−置換フラノンを生成する。得られる5−置換フラノンを精製してから、無水酢酸及びピリジンの存在下にアルデヒドと縮合して、所望される3,5−二置換フラノンを生成する。あるいは、3,5−二置換フラノンは、4−オキソブタン酸とアルデヒドを無水酢酸及びピリジンの存在下に一緒にすることによって、中間体のモノ置換フラノンを単離することのないワンポット手順で生成してよい。
【0112】
におけるバリエーションは、4−オキソブタン酸の選択によって達成される。4−オキソブタン酸は、市販供給源より入手しても、当該技術分野で知られた手順を使用する、対応する置換ベンゼンと無水コハク酸からの合成によるか又は他の経路を介して入手してもよい。Rにおけるバリエーションは、対応するアルデヒドの取込みによって達成される。アルデヒドは、市販供給源より購入しても、当該技術分野で知られた手順を使用して合成してもよい。置換基は、構造中へ取り込んだならば概して修飾されないし、最終の構造が生成されたならば、追加の置換基が付加又は除去されることも概してない。すべてのバリエーションは、イソチオシアネート及びアルデヒドのレベルで概して達成される。
【0113】
バイオフィルム形成の阻害(抗バイオフィルム活性)のアッセイ
当該技術分野では、細菌のバイオフィルム形成を検出して測定するためのアッセイが知られている。バイオフィルム阻害化合物を検出して特性決定するときに有用なバイオフィルム形成アッセイの例を以下の実施例1に記載する。簡潔に言えば、化合物(既知のバイオフィルム阻害剤又は試験化合物)の存在又は非存在下に、96ウェルアッセイプレートの個別ウェル中の増殖培地へ細菌細胞を接種する。特定時間のインキュベーションの後で、このウェルのそれぞれより、増殖培地と非バイオフィルム細菌細胞を除去する。ウェルの表面へ付着したあらゆるバイオフィルム中の細菌細胞をエタノールの添加によって固定する。エタノールを除去し、固定したバイオフィルム細菌細胞をクリスタルバイオレット(CV)で染色する。CV染色の強度は、細菌のバイオフィルム形成と正に相関していて、600nmでの光学密度(OD600)を読み取ることによってウェル中で測定する。未処置対照と処置培養物の間のバイオフィルム形成の差は、相対的なバイオフィルム阻害活性(抗バイオフィルム活性)の指標を提供する。多数の培養物と、あるいは同一2検体の培養物における異なる濃度の阻害剤の使用により、未処置対照培養物と比較して、バイオフィルム形成を少なくとも80%(即ち、≧80%)阻害する化合物の最低濃度として本明細書に定義される、化合物の最小バイオフィルム阻止濃度(MBIC)の定量が可能になる。
【0114】
細菌のバイオフィルム阻害剤の使用及び組成物
本明細書に記載の化合物は、バイオフィルムを形成することが可能であるグラム陽性菌の1以上の種又は株によるバイオフィルム形成を阻害又は予防する活性(「抗バイオフィルム活性」とも呼ばれる)をこれらの化合物が保有するという事実のために、「バイオフィルム阻害化合物」、「バイオフィルム阻害剤」、又は「抗バイオフィルム化合物」と呼ばれる。このような細菌には、限定されないが、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus aureus、及び Enterococcus faecalis が含まれる。このようなバイオフィルム形成性グラム陽性菌の1以上の株は、埋込み式医療用デバイスの表面にバイオフィルムを形成することが報告されてきた。
【0115】
本発明による方法において、表面でのバイオフィルム形成の阻害又は予防は、本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤を表面でバイオフィルムを形成することが可能である細菌細胞と接触させることを含む。好ましくは、本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤は、バイオフィルム形成性細菌との接触に先立って表面と接触しているが、バイオフィルムを形成しているか又はそれを形成することが可能である細菌細胞とすでに接触している表面とバイオフィルム阻害剤を接触させてもよい。バイオフィルム阻害化合物は、表面でのバイオフィルム形成を阻害するときに、表面がバイオフィルム形成性細菌細胞と接触するのに先立つか又は表面とすでに接触した細胞によるバイオフィルムの定着に先立って該化合物を表面と接触させたならば、概してより有効である。
【0116】
本明細書に記載のバイオフィルム阻害化合物は、細菌のバイオフィルム形成を支援する多様な材料のいずれからも構成されるか又はそれを含んでなる固体表面と接触させることができる。このような材料には、限定されないが、プラスチック、ガラス、シリコン、金属、ナイロン、セルロース、ナイロン、ポリマー樹脂、及びこれらの組合せが含まれる。
【0117】
理論上、本明細書に記載のバイオフィルム阻害化合物は、単離された化合物単独(原化合物)として固体表面へ適用し得るが、該化合物は、少なくとも1つの他の化合物との組成物において利用される可能性がより高い。本発明の組成物は、バイオフィルム阻害化合物を固体表面へ適用するという意図された形式に特に適している多様な形態のいずれであってもよい。担体は、バイオフィルム阻害化合物を使用するための媒体を提供するあらゆる化合物である。担体は、液体、固体、又は半固体であってよい。本明細書に記載の組成物における使用のための担体には、限定されないが、水、水性緩衝液、有機溶媒、及び固体分散剤が含まれる。固体組成物では、慣用の無毒の固体担体が好ましくて、限定されないが、マンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウム、等が含まれる。液体組成物は、例えば、本明細書に記載のようなバイオフィルム阻害化合物を液体担体に溶解又は分散させて溶液剤又は懸濁液剤を生成することによって製造してよい。
【0118】
上記のように、組成物には、選択されるバイオフィルム阻害化合物の有効量が許容される担体との組合せにおいて含まれて、1以上の他の薬剤、希釈剤、充填剤、及び賦形剤が含まれてもよい。賦形剤は、バイオフィルム形成の阻害以外の望まれる特性を組成物へ提供する化合物である。本明細書に記載の組成物に有用な賦形剤には、限定されないが、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤、分散剤、共溶媒、界面活性剤、ゲル化剤、及び乾燥剤が含まれる。
【0119】
本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤は、細菌バイオフィルム阻害の利益を特別な組成物へ、又は組成物が適用され得る表面へ提供するために、多様な組成物のいずれへも取り込んでよい。本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤を含んでなる組成物には、限定されないが、溶液剤、懸濁液剤、乾燥混合物、ゲル剤、石油製品、有孔膜、有孔フィルター、リポソーム剤、樹脂粒子剤、プラスチック剤、塗料剤、接着剤、ペースト剤、セルロース製品、織物剤(繊維、撚糸、又は布)、及びナノ粒子剤が含まれる。バイオフィルム阻害剤は、標準法によって、微細な固体粒子又は液滴をガスと混合したエアゾール剤での表面への送達用に製剤化してもよい。本明細書に記載の組成物は、抗菌増殖剤(例、クエン酸塩、EDTA、抗生物質、又は他の微生物の殺生物剤)を、組成物と接触し得る潜在的に汚染性の細菌の1以上の株の増殖を阻害するか又はそれを殺すのに有効な濃度で含んでもよい。
【0120】
本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤は、バイオフィルムを形成するグラム陽性菌との接触を受け易い表面へ塗布、被覆、含浸させるか又は他のやり方で取り込ませることができる。このような表面は、限定されないが、埋込み式医療用デバイス(中心静脈カテーテル(CVC)、埋込み式ポンプ、人工心臓弁、及び心臓ペースメーカーのような);心肺バイパス(CPB)ポンプ(心臓−肺機械);透析機器;人工呼吸器;呼吸装置(酸素及び空気の供給装置);水パイプ;空気ダクト、空気濾過器、水濾過器、及び配管設備が含まれる多様な工業製品に見出される。特別な組成物と特別な表面の特性により、本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤を含有するように表面が処置される好ましい方法が決定される。
【0121】
本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤で処置され得る表面を有する埋込み式医療用デバイスには、限定されないが、中心静脈カテーテル(CVC)、埋込み式ポンプ、人工心臓弁、及び心臓ペースメーカーが含まれる。医療用デバイスの表面は、バイオフィルム阻害化合物の特定の化学構造と、そのデバイスが構築される材料の種類に依存したやり方で、バイオフィルム阻害剤で被覆することができる(Zilberman and Eisner, Journal of Controlled Release, 130: 202-215 (2008) に概説されている)。デバイスのプラスチック表面を処置するには、本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤を重合化に先立って樹脂へ取り込んでも、デバイス又はそのプラスチック成分を、好ましくはバイオフィルム阻害剤をプラスチック表面へ吸着又は吸収させる1以上の膨張剤の存在下に、バイオフィルム阻害剤の溶液剤又は懸濁液剤に浸漬してもよい(例えば、Schierholz et al., Biomaterials, 18: 839-844 (1997); Schierholz and Pulverer, Biomaterials, 19: 2065-2074 (1998); Schierholz et al., J. Antimicrob. Chemother., 46: 45-50 (2000) を参照のこと)。バイオフィルム阻害剤はまた、適正な架橋連結剤を使用して、プラスチックへ共有結合させてよい。あるいは、バイオフィルム阻害剤をヒドロゲル又はポリマーのような材料の中へ含浸させてから、これを使用して医療用デバイスを被覆してよい。抗菌デバイスコーティング剤を生成する、抗菌剤と組み合わせたポリ(D,L−乳酸)及びポリ(D,L−乳酸):コグリコリドのような生分解性プラスチック樹脂の使用については、すでに記載されている(Gollwitzer et al., J. Antimicrob Chemother., 51, 585-591 (2003))。このような技術は、本明細書に記載のバイオフィルム阻害化合物を含んでなる抗バイオフィルムコーティング剤を製造することへ容易に適用することができる。
【0122】
本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤はまた、「ロック溶液剤」(溶液剤又は懸濁液剤)において中心静脈カテーテル(CVC)との使用に利用してよい。標準的な医療用デバイスのロック療法では、デバイスの細菌汚染を防ぐための抗菌剤(例、消毒薬、抗生物質)を含んでなるロック溶液剤で医療用デバイスの内腔(複数)を満たす。ロック溶液剤は、デバイスが使用中でないときにデバイスの内腔(複数)へ導入してから、使用直前に排出させる。本発明によるロック溶液剤は、本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤を潜在的に汚染性の細菌による細菌のバイオフィルム形成を阻害するのに十分な濃度で含んでなる溶液剤又は懸濁液剤である。本明細書に記載のバイオフィルム阻害剤を含んでなるロック溶液剤は、医療用デバイスにおける細菌の汚染及び感染の予防を強化する他の多様な化合物のいずれもさらに含んでよい。本発明のロック溶液剤を調製するときに使用し得る、このような追加の化合物には、限定されないが、潜在的に汚染性の細菌の1以上の株の増殖を阻害する(又は殺す)のに有効な濃度での1以上の抗菌増殖剤(例、クエン酸塩、EDTA、抗生物質、微生物の殺生物剤)と、細菌増殖の阻害とバイオフィルム形成の予防以外の追加の望まれる特性をロック溶液剤へ提供する1以上の賦形剤が含まれる。例えば、賦形剤は、デバイスが使用されるか又は埋め込まれるときにデバイス内腔を満たす体液(例、血液)に類似している密度、浸透性、又は粘度をロック溶液剤へ提供することができる。ロック溶液剤の賦形剤はまた、血液凝固及び/又はフィブリン鞘の形成によって引き起こされるカテーテル内腔の閉塞を防ぐ場合がある。
【0123】
バイオフィルム形成を阻害又は予防するための方法又は組成物において表面へ適用されるか又は他のやり方で利用されるのに有効なバイオフィルム阻害剤の量は、規制当局の諸基準に一致するか又はそれを超える、抗生物質、消毒薬(殺生物剤)、又は既報のバイオフィルム阻害剤の表面での有効量を評価する方法に知悉している当業者によって決定され得る。例えば、米国疾病予防管理センター(ジョージア州アトランタ)により発行されたような、血管内デバイス関連感染症の予防用ガイドライン(O'Grady et al., Am. J. Infect. Control, 30: 476-489 (2002));殺生物剤及び抗生物質含浸カテーテルの例(Potera, Science, 283: 1837, 1839 (1999));殺生物剤及び抗生物質含浸カテーテルによる、細菌チャレンジに対する有効性の評価(Sampath et al., Infect. Control Hosp. Epidemiol, 22: 640-646 (2001))を参照のこと。このようなガイドライン及び手順は、特別な適用(例、表面、デバイス、組成物、又は方法)において細菌のバイオフィルム形成を阻害又は予防するのに本明細書に記載の特別なバイオフィルム阻害剤を使用するための量及び条件を評価して最適化するのに容易に適応される。
【0124】
本発明の追加の態様及び特徴は、以下の非限定的な実施例より明らかになろう。
【実施例】
【0125】
実施例1.ブドウ球菌バイオフィルム形成の阻害剤のスクリーニング
ブドウ球菌のバイオフィルム形成を特異的に阻害する低分子化合物を同定するために、以下のスクリーニングアッセイを開発した。平底96ウェルアッセイプレート(Costar 3590アッセイプレート、Corning Life Sciences,マサチューセッツ州ローウェル)における使用のためにアッセイをフォーマット化することによって、より高いスループットを達成した。バイオフィルム培養物は、表面付着形式において、各ウェルの底面で増殖した。各アッセイプレートにおいて、カラム1及び12は、陰性対照(0%バイオフィルム阻害)として役立つ未処置培養物を含有した。カラム2〜11のアッセイウェルのそれぞれは、Microbiotix Screening Library(MSL)由来のユニークな低分子を100μMの最終濃度で含有した。グルコースの濃度を0.25%(w/v)へ調整した0.5Xトリプチックソイブロス(Tryptic Soy Broth)(TSB;ベクトンディキンソン、ニュージャージー州フランクリンレイクス)中の Staphylococcus epidermidis 18972 培養物の200μl/ウェルでアッセイプレートに接種した。この細菌接種材料は、TSBにおいて一晩増殖させた培養物の、スクリーニングに使用する培地での1000倍希釈液を作製することによって調製した。接種後、アッセイプレートをフォイルテープで密封して、37℃で18〜20時間インキュベートした。VICTOR2VTMマルチプレートリーダー(パーキンエルマー、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して各ウェルについて600nmでの光学密度(OD600)を測定して、全細菌増殖を定量した。細菌増殖培地と非バイオフィルム細胞を各アッセイウェルの底より除去するようにアッセイプレートを処理した。このことは、BioTek ELx405TMプレート洗浄器(BioTek Instruments 社、バーモント州ウィノースキー)を使用することによって達成した。50μlの95%エタノールの30分間の添加によって、バイオフィルム細菌を固定した。エタノールを除去して、固定したバイオフィルム培養物を50μlの0.06%クリスタルバイオレット(CV)で60分間染色した。BioTek ELx405TMプレート洗浄器を使用する反復洗浄によって、過剰のCVを除去した。VICTOR2VTMプレートリーダー(パーキンエルマー)を使用してOD600を測定することによって、各アッセイウェルへ結合したCVの量を定量した。
【0126】
以下の式を使用して、各化合物によって引き起こされる全増殖の阻害パーセント(%INH−増殖)を計算した:
(1−(OD600(化合物)/平均OD600(陰性対照)))x100。
【0127】
以下の式を使用して、各化合物によってもたらされるバイオフィルム成長の阻害パーセントを計算した:
(1−(CV OD600(化合物)/平均CV OD600(陰性対照)))x100。
【0128】
≧80%のバイオフィルム阻害と≦40%の全増殖阻害をもたらす化合物を一次(陽性)ヒットとして記録した。上記のアッセイを使用して、一次ヒットについて同一3検体で再試験した。≧80%の平均バイオフィルム阻害と≧40%の全増殖阻害をもたらす一次ヒットを確定ヒットとして記録した。
【0129】
上記のアッセイを使用して、Microbiotix Screening Library(MSL)全体についてバイオフィルム阻害剤をスクリーニングした。MSLは、87,250種のユニークな化合物を含有して、いくつかの信頼できるベンダーより購入した市販のスクリーニングコレクションより構成される。表1に、MSLを含むスクリーニングコレクションの名称、各コレクション中の化合物の数、及びベンダー名称を、それぞれのスクリーニングコレクションについて入手した、一次ヒット、確定ヒット、及び確証ヒットの数の点からのバイオフィルム形成の阻害剤のスクリーニングの結果とともに要約する。
【0130】
表1.Microbiotix Screening Library(MSL)のブドウ球菌バイオフィルム形成の阻害剤についての一次スクリーニング結果
【0131】
【表1】

【0132】
実施例2.一次スクリーニングより確定したバイオフィルム阻害剤の特性決定
実施例1に記載のMSLスクリーニングからの確定ヒットについて、抗バイオフィルム(形成の阻害)活性、抗菌(増殖の阻害)活性、及び下記に記載のようなヒト細胞系に対する細胞傷害性を用量応答アッセイにおいて評価した。これらのアッセイより入手したデータを使用して、さらなる開発と、構造活性相関(SAR)を分析することのために化合物を優先化した。
【0133】
最小バイオフィルム阻止濃度(MBIC)及び最小阻止濃度(MIC)の二次アッセイ
二次アッセイにより、最小バイオフィルム阻止濃度(MBIC)と最小阻止濃度(MIC)の点から、それぞれ抗バイオフィルム活性と抗菌活性の両方の定量的な測定値を得た。MBICとMICは、それぞれバイオフィルム形成と細菌増殖を少なくとも80%(即ち、≧80%)阻害する最低の化合物濃度として定義される。MBIC/MICアッセイは、臨床検査標準研究所(CLSI;旧名NCCLS)によるプロトコールM7−A7に記載のミクロブロス(Microbroth)希釈アッセイに類似したやり方でフォーマット化する。得られるCV染色が検出の直線範囲内にあるように、96ウェルアッセイプレート中でのバイオフィルム成長について増殖条件を最適化した。故に、MBIC/MICアッセイは、抗バイオフィルム活性の厳密な測定法を提供した。
【0134】
このアッセイを、S. epidermidis、S. aureus、Enterococcus faecalis、及び Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)のいくつかのバイオフィルム形成性株に適用した。簡潔に言えば、96ウェルアッセイプレートは、8種までの化合物(1種の化合物/列)の2倍希釈系列と未処置対照(0.2μM〜100μMの濃度範囲)を含有した。このアッセイプレートに試験菌種、例えば、S. epidermidis 18972(0.5X TSB,0.25%グルコース)又は S. aureus ATCC 35556(0.5X TSB,1%グルコース)を接種した。この接種材料は、一晩培養物を新鮮培地で100倍希釈することによって調製したが、これはほぼ5x10個の細胞/ウェルに相当する。接種後、アッセイプレートをフォイルテープで密封して、37℃で18〜20時間インキュベートした。アッセイプレートを処理して、増殖の阻害パーセント(%INH−増殖)とバイオフィルム形成の阻害パーセント(%INH−バイオフィルム)を上記の記載のように算出した。これらのデータを使用して、それぞれ≧80%のバイオフィルム形成と≧80%の全増殖を阻害する最低の化合物濃度として定義される、MBICとMICを決定した。S. epidermidis 又は S. aureus のいずれか一方についてMBICが≦10μMであり、MIC/MBIC比が≧8である化合物を確証ヒットと命名した。
【0135】
抗バイオフィルム活性のスペクトル
最も蔓延しているブドウ球菌のバイオフィルム病原体に対して化合物が抗バイオフィルム活性を示すかどうかを判定するために、S. epidermidis 18972 と S. aureus ATCC 35556 を使用して、各化合物のMBIC/MIC比を決定した。これらの試験したブドウ球菌株の両方に対して有効である化合物により高い優先度を付与した。
【0136】
in vitro 細胞傷害性アッセイ(CC50
確証ヒットについて、哺乳動物細胞系に対する一般細胞傷害性を試験した。このアッセイでは、アッセイプレートに不死化ヒト細胞系(ヒーラ)を播いて、10%胎仔ウシ血清を含有する標準培地において、各試験化合物の2倍希釈液の系列へ72時間曝露した。化合物への曝露後、細胞媒介性の細胞傷害性を定量的に評価するのに有用である酸化−還元指示薬のAlamar BlueTM(AccuMed International 社)を使用して、細胞の生存能力を評価した。蛍光測定値を使用してAlamar Blue還元を定量して、2変数曲線適合プログラム(Assay Explorer,エルセヴィエMDL,カリフォルニア州サンラファエル)を使用してこのデータを解析して、CC50値(即ち、細胞の生存能力を50%減少させる化合物濃度)を決定した。CC50/MBIC≧50である化合物に最高の優先度を付与した。高い優先度の判定基準を満たす確証ヒットを元のベンダーより再注文して、再試験した。
【0137】
まとめると、ハイスループットスクリーニングの結果は、プランクトン増殖に影響を及ぼさない(MIC≧100μM)、ブドウ球菌のバイオフィルム形成の相対的に強力な阻害剤である(6μM〜25μMのMBIC範囲)アリールローダニン化合物の多数の例を明らかにした。これらの化合物は、初期のバイオフィルム発達を特異的に阻害して、付着、PIA/PNAG合成、又は自己溶菌には影響を及ぼさなかった。
【0138】
表2は、ライブラリースクリーニング作業(campaign)において同定、特性決定、及び確証した代表的なバイオフィルム阻害剤を示す。表2のバイオフィルム阻害剤のうち3種は、ローダニン化合物、即ち、3−(3−クロロフェニル)−5−(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(MSL−049731と命名)、3−(4−ブロモフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(MSL−049293)、及び3−(4−クロロフェニル)−5−(3−クロロ−5−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(MSL−6519056と命名)であり、1つはフラノンのバイオフィルム阻害剤、即ち、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジリデン)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)フラン−2(3H)−オン(MSL−051097)である。
【0139】
表2.ライブラリースクリーニングからのバイオフィルム阻害剤の二次アッセイ結果
【0140】
【表2】

【0141】
実施例3.追加のバイオフィルム阻害剤の合成
上記のライブラリースクリーニングの結果は、追加のバイオフィルム阻害剤の設計、合成、及び特性決定をもたらした。
【0142】
実施例3.1.3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物4)の合成
【0143】
【化18】

【0144】
3−(4−フルオロフェニル)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン
4−フルオロフェニルイソチオシアネート(3.0g,19.6ミリモル)及びチオグリコール酸メチル(1.78mL,17.5ミリモル、1.0当量)のジクロロメタン(15mL)溶液へトリエチルアミン(0.59g,5.9ミリモル、0.3当量)を室温で10分にわたり滴下した。この反応物を室温でさらに10分間撹拌してから、得られる固形物を濾過し、50%エーテル/ヘキサンで洗浄し、EtOAc/Hex/MeOHtより再結晶させて、3.23g(73%)の生成物を白い薄片として得た。
【0145】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 7.41-7.33 (m, 4H), 4.3 (s, 2H)。
【0146】
【化19】

【0147】
3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物4)
4−フルオロフェニルローダニン(100mg,0.44ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(73mg,0.44ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(10mL)溶液へ酢酸ナトリウム(108mg,1.3ミリモル、3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液を130℃で2.5日間還流させてから、室温へ冷やして、水(30mL)へ注いだ。この混合物を15分間撹拌してから、固形物を濾過し、水(2x20mL)で洗浄して乾燥させて、黄色い固形物を得た。この固形物をCHCNより再結晶させて、85mg(51%)の生成物を黄色いふわふわした固形物として得た。
【0148】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 10.13 (b, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.51-7.4 (m, 4H), 7.23 (d, 1H), 7.17 (dd, 1H), 6.9 (d, 1H), 4.11 (q, 2H), 1.38 (t, 3H)。
【0149】
実施例3.2.3−(3−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物8)の合成
【0150】
【化20】

【0151】
3−(3−フルオロフェニル)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン
3−フルオロフェニルイソチオシアネート(3.0g,19.6ミリモル)及びチオグリコール酸メチル(1.78mL,17.5ミリモル、1.0当量)のジクロロメタン(15mL)溶液へトリエチルアミン(0.59g,5.9ミリモル、0.3当量)を室温で10分にわたり滴下した。この反応物を室温でさらに10分間撹拌してから、得られる固形物を濾過し、50%エーテル/ヘキサンで洗浄し、CHCNより再結晶させて、3.0g(67%)の生成物をピンク色の結晶性固形物として得た。
【0152】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 7.46-7.39 (q, 1H), 7.16-7.1 (t, 1H), 6.98-6.9 (m, 2H), 2.38 (s, 2H)。
【0153】
【化21】

【0154】
3−(3−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物8)
3−フルオロフェニルローダニン(100mg,0.44ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(73mg,0.44ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(10mL)溶液へ酢酸アンモニウム(102mg,1.3ミリモル、3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液を130℃で2日間還流させてから、室温へ冷やして、水(30mL)へ注いだ。この混合物を15分間撹拌してから、固形物を濾過し、水(2x20mL)で洗浄して乾燥させて、黄色い固形物を得た。この固形物をCHCNより再結晶させて、37mg(22%)の生成物を黄色い粒状の固形物として得た。
【0155】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 10.20 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.62-7.58 (m, 1H), 7.43-7.37 (m, 2H), 7.20 (dd, 1H), 7.24 (s, 1H), 7.18 (dd, 1H), 6.99 (d, 1H), 4.11 (q, 2H), 1.38 (t, 3H)。
【0156】
実施例3.3.3−(ピリジン−3−イル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物36)の合成
【0157】
【化22】

【0158】
3−(3−ピリジル)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン
3−ピリジルイソチオシアネート(1.0g,7.3ミリモル)及びチオグリコール酸メチル(0.67mL,7.3ミリモル、1.0当量)のジクロロメタン(15mL)溶液を氷浴において0℃へ冷やした。トリエチルアミン(0.31mL,2.2ミリモル、0.3当量)をその温度で10分にわたり滴下した。この反応物をさらに30分間撹拌し、室温へ温めてから、追加のDCM(50mL)で希釈し、水(2x30mL)で洗浄してからMgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて、黒ずんだ残渣を得た。この残渣をシリカゲル濾過へ処して、20% EtOAc/ヘキサンで溶出させた。濾液を蒸発させて、0.50g(32%)の生成物をクリーム色の粉末として得た。
【0159】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 8.67 (d, 1H), 8.49 (d, 1H), 7.78 (dd, 1H), 7.60 (dd, 1H J), 4.41 (s, 2H)。
【0160】
【化23】

【0161】
3−(ピリジン−3−イル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物36)
3−(3−ピリジル)−ローダニン(100mg,0.48ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(79mg,0.48ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(10mL)溶液へ酢酸アンモニウム(110mg,1.4ミリモル、3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液を130℃で3日間還流させてから、室温へ冷やして、水(50mL)へ注いだ。この混合物を10分間撹拌してから、固形物を濾過し、水(2x20mL)で洗浄して乾燥させて、黄色い固形物を得た。この固形物をCHCNより再結晶させて、99mg(58%)の生成物を黄色い結晶性固形物として得た。
【0162】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 8.71 (d, 1H), 8.69-8.64 (m, 1H), 7.95-7.93 (m, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.65-7.61 (m, 1H), 7.25 (s, 1H), 7.19 (dd, 1H), 7.0 (d, 1H), 4.12 (q, 2H), 1.38 (t, 3H)。
【0163】
実施例3.4.3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−アリルオキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物29)の合成
【0164】
【化24】

【0165】
4−ヒドロキシ−3−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メトキシ)ベンズアルデヒド
3,4−ジメトキシベンズアルデヒド(5.0g,36.2ミリモル)及びクロロメチルトリメチルシリルエチルエーテル(6.03g,36.2ミリモル、1.0当量)のDCM(50mL)溶液へジイソプロピルエチルアミン(7.9mL,45ミリモル、1.25当量)を加えた。得られる澄明な溶液を室温で2時間撹拌した。溶媒を真空で除去して、残渣をHOとEtOAcの間で分配した。有機層を蒸発させて、残渣を7% EtOAc/ヘキサンでのシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーへ処した。生成物を含有する画分をプールして蒸発させて、4.66g(51%)の生成物を黄褐色のオイルとして得た。
【0166】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 9.82 (s, 1H), 9.66 (s, 1H), 7.41-7.34 (m, 2H), 7.24 (d, 1H), 5.36 (s, 2H), 3.78 (t, 2H), 0.93 (t, 2H), 0.0 (s, 9H)。
【0167】
【化25】

【0168】
4−アリルオキシ−3−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メトキシ)ベンズアルデヒド
アセトン(4mL)中の4−ヒドロキシ−3−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メトキシ)ベンズアルデヒド(200mg,0.75ミリモル)、臭化アリル(135mg,1.1ミリモル、1.5当量)、及びKCO(309mg,2.2ミリモル、3.0当量)の混合物をマイクロ波(60℃)によって1時間加熱した。この混合物を濾過して、残留固形物をアセトン(10mL)で洗浄した。濾液を蒸発させて、残渣を最少量のEtOAcに溶かしてから、シリカゲルのパッドに通して濾過して、5% EtOAc/ヘキサンで溶出させた。濾液を蒸発させて、177mg(77%)の生成物を白い固形物として得た。
【0169】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 9.85 (s, 1H), 7.45-7.42 (m, 2H), 7.31 (m, 1H), 6.11-6.03 (m, 1H), 5.47-5.29 (m, 4H), 4.70-4.67 (m, 2H), 3.84-3.78 (m, 2H), 0.99-0.93(m, 2H), 0.00 (s, 9H)。
【0170】
【化26】

【0171】
4−アリルオキシ−3−ヒドロキシベンズアルデヒド
フッ化テトラブチルアンモニウムのTHF溶液(1.0M,3.0mL,3.0ミリモル)へ4−アリルオキシ−3−((2−(トリメチルシリル)エトキシ)メトキシ)ベンズアルデヒドを加えた。この澄明な溶液を60℃まで3日間加熱した。次いで、溶媒を蒸発させて、残渣を7% EtOAc/ヘキサンでのシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーへ処した。生成物含有画分をプールして蒸発させて、66mg(65%)の生成物を白い固形物として得た。
【0172】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 9.82 (s, 1H), 7.45-7.42 (dd, 2H), 7.056 (d, 1H) 6.22 (s, 1H), 6.12-6.02 (m, 1H), 5.47-5.34 (m, 2H), 4.699-4.68 (dt, 2H)。
【0173】
【化27】

【0174】
3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−アリルオキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物29)
4−フルオロフェニルローダニン(84mg,0.37ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(66mg,0.37ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(10mL)溶液へ酢酸アンモニウム(86mg,1.1ミリモル、3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液をマイクロ波により130℃まで15分間加熱してから、室温へ冷やして、水(30mL)へ注いだ。この混合物を15分間撹拌してから、固形物を濾過し、水(2x20mL)で洗浄して乾燥させて、黄色い固形物を得た。この固形物をCHCNより再結晶させて、85mg(51%)の生成物を黄色いふわふわした固形物として得た。
【0175】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 10.22 (b, 1H), 7.74 (s, 1H), 7.51-7.37 (m, 4H), 7.25 (d, 1H), 7.19 (dd, 1H), 7.00 (d,lH), 6.13-6.02 (m,lH), 5.49 (dd, 1H), 5.30 (dd, 1H), 4.67 (d, 2H)。
【0176】
実施例3.5.3−(6−フルオロピリジン−3−イル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物40)の合成
【0177】
【化28】

【0178】
3−(6−フルオロ−3−ピリジル)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン
6−フルオロ−3−ピリジルイソチオシアネート(2.5g,16ミリモル)及びチオグリコール酸メチル(1.57mL,16ミリモル、1.0当量)のジクロロメタン(15mL)溶液へトリエチルアミン(0.31mL,2.2ミリモル、0.3当量)を20分にわたり滴下した。この反応物をその温度でさらに20分間撹拌し、溶媒を除去して、50% EtOAc/ヘキサンでのシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーへ処した。生成物を含有する画分をプールして蒸発させてオフホワイトの固形物を得て、これを10% EtOAc/ヘキサンより再結晶させて、1.16g(31%)の生成物を淡褐色の結晶性固形物として得た。
【0179】
1H-NMR (DMSO-cfe): δ 8.22 (t, 1H), 8.03-8.97 (m, 1H), 7.43-7.41 (dd, 1H), 4.40 (s, 2H)。
【0180】
【化29】

【0181】
3−(6−フルオロピリジン−3−イル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物40)
6−フルオロ−3−ピリジルローダニン(100mg,0.44ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(66mg,0.44ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(10mL)溶液へ酢酸アンモニウム(102mg,1.3ミリモル、3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液をマイクロ波により130℃まで15分間加熱してから、室温へ冷やして、水(30mL)へ注いだ。この混合物を15分間撹拌してから、固形物を濾過し、水(2x20mL)で洗浄して乾燥させて、黄色い固形物を得た。この固形物をCHCNより再結晶させて、85mg(51%)の生成物を黄色いふわふわした固形物として得た。
【0182】
1H-NMR (DMSCW6): δ 10.12 (s, 1H), 8.37 (d, 1H), 8.15 (td, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.50 (dd, 1H), 7.25 (d, 1H), 7.19 (d, 1H ), 6.99 (d, 1H), 4.12 (q, 2H), 1.38 (t, 3H)。
【0183】
実施例3.6.3−(3−シアノフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物34)の合成
【0184】
【化30】

【0185】
3−(3−シアノフェニル)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン
3−シアノフェニルイソチオシアネート(1.0g,6.2ミリモル)及びチオグリコール酸メチル(1.14mL,6.2ミリモル、1.0当量)のジクロロメタン(15mL)溶液を氷浴において0℃へ冷やした。トリエチルアミン(0.26mL,1.9ミリモル、0.3当量)をその温度で10分にわたり滴下した。この反応物をさらに1時間撹拌し、室温へ温めてから、追加のDCM(50mL)で希釈し、水(2x30mL)で洗浄してから、MgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて、黒ずんだ残渣を得た。この残渣をシリカゲル濾過へ処して、40% EtOAc/ヘキサンで溶出させた。濾液を蒸発させて、1.14g(78%)の生成物を粒状の黄色い固形物として得た。
【0186】
1H-NMR (OMSO-d6): δ 7.99 (dt, 1H), 7.86 (t, 1H), 7.72 (t, 1H), 7.68 (dt, 1H), 4.40 (s, 2H)。
【0187】
【化31】

【0188】
3−(3−シアノフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物34)
3−シアノフェニルローダニン(100mg,0.62ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(103mg,0.62ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(3mL)溶液へ酢酸アンモニウム(143mg,1.8ミリモル、3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液をマイクロ波により130℃まで15分間加熱してから、室温へ冷やして、水(30mL)へ注いだ。この混合物を15分間撹拌してから、固形物を濾過し、水(2x20mL)で洗浄して乾燥させて、黄色い固形物を得た。この固形物をCHCNより再結晶させて、125mg(53%)の生成物を黄色い粉末として得た。
【0189】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 10.12 (s, 1H), 8.02 (d, 2H), 7.80 (d, 3H), 7.25 (s, 1H), 7.19 (d, 1H), 6.99 (d, 1H), 4.12 (q, 2H), 1.38 (t, 3H)。
【0190】
実施例3.7.3−(3−メトキシカルボニルフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物49)の合成
【0191】
【化32】

【0192】
4−メトキシカルボニルフェニルイソチオシアネート
4−アミノ安息香酸メチル(5.0g,33ミリモル)及びCaCO(8.61g,86ミリモル、2.6当量)の水(25mL)及びジクロロメタン(25mL)懸濁液へチオホスゲン(3.55mL,46ミリモル)を5分にわたり滴下した。この混合物を16時間激しく撹拌してから、セライトに通して濾過して、分離させた。水層をジクロロメタン(50mL)で抽出して、合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて、やや茶褐色の残渣を得た。この残渣を最少量のジクロロメタンより再結晶させて、4.0g(80%)の生成物をオフホワイトの結晶性の針状物として得た。
【0193】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 7.9-7.87 (m, 2H), 7.42-7.39 (m, 2H), 3.77 (s, 3H)。
【0194】
【化33】

【0195】
3−(3−メトキシカルボニルフェニル)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン
3−メトキシカルボニルフェニルイソチオシアネート(3.4g,23ミリモル)及びチオグリコール酸メチル(2.08mL,23ミリモル、1.0当量)のジクロロメタン(20mL)溶液を氷浴において0℃へ冷やした。トリエチルアミン(0.68mL,6.8ミリモル、0.3当量)をその温度で30分にわたり滴下した。次いで、この反応物を追加のDCM(50mL)で希釈し、水(2x30mL)で洗浄してからMgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて、黒ずんだ残渣を得た。この残渣を、10% EtOAc/ヘキサンでのシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーへ処した。生成物を含有する画分をプールして蒸発させて、2.92g(48%)の生成物を淡黄色の固形物として得た。
【0196】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 8.11 (d, 2H), 7.46 (d, 2H), 4.4 (s, 2H)。
【0197】
【化34】

【0198】
3−(3−メトキシカルボニルフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(化合物49)
3−メトキシカルボニルフェニルローダニン(100mg,0.37ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(61mg,0.37ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(10mL)溶液へ酢酸アンモニウム(108mg,1.1ミリモル、3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液をマイクロ波により130℃まで15分間加熱してから、室温へ冷やして、水(30mL)へ注いだ。この混合物を15分間撹拌してから、固形物を濾過し、水(2x20mL)で洗浄して乾燥させて、黄色い固形物を得た。この固形物をCHCNより再結晶させて、85mg(51%)の生成物をふわふわした黄色い固形物として得た。
【0199】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 10.10 (b, 1H), 8.13 (d, 2H), 7.77 (s, 1H), 7.6 (d, 2H), 7.24 (d, 1H), 7.18 (dd, 1H), 6.99 (d, 1H), 4.12 (q, 2H), 3.90 (s, 3H), 1.38 (t, 3H)。
【0200】
実施例3.8.3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(化合物58)の合成
【0201】
【化35】

【0202】
3−(4−フルオロフェニル)イミダゾリジン−2,4−ジオン
グリシン(548mg,7.3ミリモル)のジクロロメタン(10mL)懸濁液へトリエチルアミン(1.0mL,7.3ミリモル、1.0当量)と4−フルオロフェニルイソシアネート(1.0g,7.3ミリモル、1.0当量)の溶液を加えた。得られる混合物を室温で1時間撹拌してから、濾過した。濾液を蒸発させて、残渣を6.5N HCl水溶液(4mL)とアセトン(1mL)に溶かした。この混合物を密封管において100℃で2日間加熱してから、室温へ冷やして、濾過した。得られる固形物を30% EtOAc/ヘキサン(10mL)で洗浄して乾燥させて、90mg(6%)の生成物を薄白色の固形物として得た。
【0203】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 8.31 (s, 1H), 7.42-7.28 (m, 4H), 4.05 (s, 2H)。
【0204】
【化36】

【0205】
3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(化合物58)
4−フルオロフェニルヒダントイン(82mg,0.42ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(70mg,0.42ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(3mL)溶液へ酢酸アンモニウム(97mg,1.3ミリモル、3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液をマイクロ波により130℃まで30分間加熱してから、室温へ冷やして、水(30mL)へ注いだ。この混合物をHO(20mL)とEtOAc(50mL)へ分配した。有機層を分離させ、MgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて黄色い固形物を得て、これをCHCNより再結晶させて、22mg(27%)の生成物を白色の薄片状の固形物として得た。
【0206】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 10.89 (b, 1H), 9.44 (b, 1H), 7.51-7.48 (m, 2H), 7.38-732 (m, 2H), 7.19-7.14 (m, 2H), 6.85 (d, 1H), 6.57 (s, 1H), 4.13 (q, 2H), 1.35 (t, 3H)。
【0207】
実施例3.9.3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(化合物60)の合成
【0208】
【化37】

【0209】
3−(4−フルオロフェニル)チアゾリジン−2,4−ジオン
4−フルオロフェニルイソシアネート(1.0g,7.3ミリモル)及びチオグリコール酸メチル(0.64mL,7.3ミリモル、1.0当量)のジクロロメタン(15mL)溶液へトリエチルアミン(0.31mL,2.2ミリモル、0.3当量)を室温で10分にわたり滴下した。得られる混合物を室温で30分間撹拌してから、EtOAc(25mL)とHO(25mL)の間で分配した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて残渣を得て、これを6.5N HCl水溶液(16mL)とアセトン(4mL)に溶かした。この混合物を密封管において100℃で60分間加熱してから、室温へ冷やして、濾過した。得られる固形物を50%エチルエーテル/ヘキサン(100mL)で洗浄し、乾燥させて、880mg(57%)の生成物をふわふわとした白い固形物として得た。
【0210】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 7.38-7.35 (m, 4H), 4.29 (s, 2H)。
【0211】
【化38】

【0212】
3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(化合物60)
4−フルオロフェニルチアゾリジン−2,4−ジオン(100mg,0.47ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(79mg,0.47ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(3mL)溶液へ酢酸アンモニウム(109mg,1.4ミリモル,3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液をマイクロ波により130℃まで15分間加熱してから、室温へ冷やして、水(30mL)へ注いだ。この混合物を15分間撹拌してから、固形物を濾過し、水(2x20mL)で洗浄して乾燥させて、黄色い固形物を得た。この固形物をCHCNより再結晶させて、84mg(50%)の生成物を白い粉末として得た。
【0213】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 9.95 (s, 1H), 7.90 (s, 1H), 7.54-7.49 (m, 2H), 7.41-7.35 (m, 2H), 7.24 (s, 1H), 7.16-7.13 (m, 1H), 6.97 (d, 1H), 4.09 (q, 2H), 1.37 (t, 3H)。
【0214】
実施例3.10.3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソイミダゾリジン−4−オン(化合物62)の合成
【0215】
【化39】

【0216】
3−(4−フルオロフェニル)−2−チオキソイミダゾリジン−4−オン
グリシン(490mg,6.5ミリモル)のジクロロメタン(10mL)懸濁液へトリエチルアミン(0.91mL,6.5ミリモル、1.0当量)と4−フルオロフェニルイソチオシアネート(1.0g,6.5ミリモル,1.0当量)の溶液を加えた。得られる混合物をマイクロ波により100℃まで90分間加熱してから、室温へ冷やして、EtOAc(50mL)とHO(50mL)へ分配した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて残渣を得て、これを6.5N HCl水溶液(16mL)とアセトン(4mL)に溶かした。この混合物をマイクロ波により100℃まで60分間加熱してから、室温へ冷やして、EtOAc(50mL)とHO(50mL)へ分配した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過して蒸発させて、残渣を得た。この粗生成物を、35% EtOAc/ヘキサンでのシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーへ処した。生成物を含有する画分をプールして蒸発させて、270mg(20%)の生成物を黄褐色の固形物として得た。
【0217】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 10.41 (s, 1H), 7.34-7.32 (m, 4H), 4.3 (s, 2H)。
【0218】
【化40】

【0219】
3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソイミダゾリジン−4−オン(化合物62)
4−フルオロフェニルチオヒダントイン(100mg,0.47ミリモル)及び3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(79mg,0.47ミリモル、1.0当量)の氷酢酸(3mL)溶液へ酢酸アンモニウム(109mg,1.4ミリモル、3.0当量)を加えた。得られる澄明な溶液をマイクロ波により130℃まで20分間加熱してから、室温へ冷やして、水(30mL)へ注いだ。この混合物を15分間撹拌してから、固形物を濾過し、水(2x20mL)で洗浄して乾燥させて、黄色い固形物を得た。この固形物をCHCNより再結晶させて、44mg(26%)の生成物を黄色い粉末として得た。
【0220】
1H-NMR (DMSO-d6): δ 12.52 (br, 1H), 9.64 (b, 1H), 7.44-7.36 (m, 6H), 6.87 (d, 1H), 6.63 (s, 1H), 4.15 (q, 2H), 1.37 (t, 3H)。
【0221】
追加のバイオフィルム阻害剤も合成して特性決定した。これらの化合物と上記に記載の化合物のリストを以下の表3に提供する。
【0222】
表3.合成したバイオフィルム阻害剤
【0223】
【表3−1】

【0224】
【表3−2】

【0225】
【表3−3】

【0226】
【表3−4】

【0227】
実施例4.合成した化合物の抗バイオフィルム活性の特性決定
表3中の化合物の最小バイオフィルム阻止濃度(MBIC)及び最小阻止濃度(MIC)をバイオフィルム形成性細菌の様々な株に対して決定した。
【0228】
表3からの7種のローダニン化合物についての、S. epidermidis 株の選択されるバイオフィルム形成株に対する抗バイオフィルム活性データを表4に示す。
【0229】
表4.Staphylococcus epidermidis の選択される株に対する抗バイオフィルム活性
【0230】
【表4】

【0231】
以下の表5は、表3からの同じ7種のローダニン化合物についての、メチシリン感受性 S. aureus(MSSA)の株が含まれる、S. aureus の選択されるバイオフィルム形成株に対する抗バイオフィルム活性データを示す。
【0232】
表5.Staphylococcus aureus の選択される株に対する抗バイオフィルム活性
【0233】
【表5】

【0234】
バイオフィルム形成性、バンコマイシン抵抗性Enterococcus faecalis 株(ATCC 51299)、グラム陰性、バイオフィルム形成性の日和見病原体、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)PAO1(ATCC 35556)、及びグラム陰性、バイオフィルム形成性 Escherichia coli(大腸菌)株(ATCC 25922)の株に対する抗バイオフィルム活性についても、化合物を試験した。以下の表6は、表3からの7種のローダニン化合物についての、これらの他の細菌株に対する抗バイオフィルム活性データを示す。これらの化合物のいずれも、このアッセイ条件では、この P. aeruginosa 及び E. coli の株のバイオフィルム形成とプランクトン増殖に対して活性を示さなかった。
【0235】
表6.グラム陽性及びグラム陰性の菌株に対する抗バイオフィルム活性
【0236】
【表6】

【0237】
表4〜6の化合物はまた、バイオフィルム形成性のグラム陽性病原体である Enterococcus faecium 及び Enterococcus gallinarum の少なくとも1つの株に対する抗バイオフィルム活性(25μM以下のMBIC)を示した(データ示さず)。さらに、表3の他の化合物は、表4〜6に収載したバイオフィルム形成性グラム陽性菌の株の少なくとも1つに対して25μM以下のMBICを示した(データ示さず)。
【0238】
実施例5.抗バイオフィルムローダニンは、バイオフィルム発達の初期段階を阻害する。
【0239】
ローダニン抗バイオフィルム化合物がバイオフィルム形成(バイオフィルム成長)を特異的に阻害することを検証するために、化合物4(MBIC=3.125μM)のバイオフィルム成長に対する阻害効果をバイオフィルム発達の様々な段階で定量した。この実験では、増殖培地(0.5X TSB,0.25%(w/v)グルコース)を含有する96ウェルアッセイプレートのウェルに S. aureus ATCC 35556 を接種して、37℃でインキュベートした。このインキュベーション時間の間の選択した時点(0、1、2、4、6、8、10、12、21時間)で、化合物4を4X MBICの濃度で個々のウェルへ加えた。アッセイプレート全体(全培養物)を全部で22時間インキュベートした後で、バイオフィルムを洗浄し、クリスタルバイオレット(CV)で染色して、バイオフィルム成長を測定した。並行した培養物(未処置対照培養物)において、化合物4の非存在下でのバイオフィルム成長を追跡した。化合物4を阻害培養物へ加えるのと同時に未処置培養物より試料を取って、バイオフィルム成長のレベルをCV染色法によって定量した。この実験の結果を図1のグラフに示すが、ここでは、化合物4で処置した培養物中のバイオフィルム成長と未処置対照培養物中のバイオフィルム成長の阻害パーセントが時間の関数としてプロットされている。図1中の各時点は、8つの培養物の平均である。
【0240】
このデータは、化合物4がバイオフィルム形成の初期段階(2時間まで)を阻害した一方で、成熟中のバイオフィルム(8〜16時間)は抵抗性であったことを示す。これらの結果は、ローダニン化合物がバイオフィルム発達の初期段階を阻害するのに特に有効であることを示す。
【0241】
実施例6.抗バイオフィルムのローダニンは、バイオフィルム成長を特異的に阻害する。
【0242】
MICアッセイの結果は、大多数のローダニンがプランクトン性の細菌細胞増殖を阻害しないことを明瞭に示した。しかしながら、バイオフィルム成長を阻害することについての上記化合物の特異性は、代わりの増殖曲線アッセイを使用して証明された。様々な濃度の化合物4(MBIC=3.125μM)の存在下に S. aureus ATCC 35556 のプランクトン培養物を嫌気的に増殖させた。OD600を測定することによって、細菌細胞の増殖を経時的にモニタリングした。この結果(データ示さず)は、化合物4がプランクトン性の細菌細胞増殖に8X MBICまでの濃度で影響を及ぼさなかったことを示す。
【0243】
まとめると、上記試験のデータは、ライブラリースクリーニング由来の化合物と表3中の合成化合物が S. epidermidis 及び S.aureus のバイオフィルム形成の強力な阻害剤として有用であることを示す。このような化合物は、医療用デバイスの表面でのバイオフィルム発達を阻害するための組成物及び方法に、並びに細菌のバイオフィルム形成がヒト又は動物の健康の脅威となる場合の他の応用に使用し得る。
【0244】
本明細書に引用されるすべての出版物、特許出願、特許、及び他の文献は、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。抵触の場合、諸定義を含めて、本明細書が基準となる。さらに、本明細書の材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、限定的であることを企図しない。
【0245】
当業者には、本発明の範囲と以下の特許請求項の精神より逸脱することなく、本明細書に記載の本発明の他の変形形態及び態様が明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌細胞による固体表面でのバイオフィルム形成を阻害する方法であって、式1:
【化1】

[式中、
Xは、イオウ(S)又は酸素(O)であり:
Yは、イオウ(S)又は窒素(NH)であり;
は:
a)置換フェニル基{ここで該フェニル基は、3、4、及び5位の1以上で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);シアノ(−CN);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);ニトロ基(−NO);スルホニル基−SO(ここでRは、アルキルである);スルホンアミジル基−SONH;及び、ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群より選択される残基で置換され;
そしてここで前記フェニル基は、2位でも6位でも置換されない};又は
b)置換ヘテロアリール基{ここで該ヘテロアリール基は、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、又はピリダジニルであり、そしてここで前記ヘテロアリール基は、1以上の環炭素で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);シアノ(−CN);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SO(ここでRは、アルキルである);スルホンアミジル基−SONH;及び、ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群のいずれでも置換される}であり;そして
は、置換フェニル基であり、ここで該フェニル基は:
a)4位で、ヒドロキシル(−OH)又はアミノ(−NH)での置換;
b)3位で、ヒドロキシル;アルコキシ残基−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);及び、アミノ基−NR10(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである)からなる群より選択される残基での置換;及び
c)5位で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシル;アルコキシ残基−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);シアノ;−NR10基(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SO(ここでRは、アルキルである);−SONH(スルホンアミジル);ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群より選択される残基での置換;
からなる群より選択される1以上の位置で、ある残基で置換され、
そしてここで該フェニル基は、2位にも6位にも置換を有さない]の構造を有する化合物と該表面を接触させる工程を含んでなり、ここで前記化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、前記方法。
【請求項2】
前記化合物が、式2:
【化2】

[式中、RとRは、請求項1に記載の通りである]の構造を有するローダニン化合物であり、そしてここで前記化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ローダニン化合物が、3−(3−クロロフェニル)−5−(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−メトキシ−ベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表2中のMSL−049731)、3−(4−ブロモフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表2中のMSL−049293)、3−(4−クロロフェニル)−5−(3−クロロ−5−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表2中のMSL−6519056)、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物4)、(Z)−3−(3−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物8)、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−アリルオキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物29)、(Z)−3−(3−シアノフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物34)、(Z)−3−(ピリジン−3−イル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物36)、(Z)−3−(6−フルオロピリジン−3−イル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物40)、及び(Z)−3−(4−メトキシカルボニルフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物49)からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が式3:
【化3】

[式中、RとRは、請求項1に記載の通りである]の構造を有するチアゾリジンジオン化合物であり、そしてここで前記化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
チアゾリジンジオン化合物が(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物60)又は(Z)−3−(4−クロロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物61)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が式4:
【化4】

[式中、RとRは、請求項1に記載の通りである]の構造を有するヒダントイン化合物であり、そしてここで前記化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒダントイン化合物が(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物58)又は(Z)−3−(4−クロロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物59)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が式5:
【化5】

[式中、RとRは、請求項1に記載の通りである]の構造を有するチオヒダントイン化合物であり、そしてここで前記化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記チオヒダントイン化合物が(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソイミダゾリジン−4−オン(表3中の化合物62)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細菌細胞による表面でのバイオフィルム形成を阻害する方法であって、式6:
【化6】

[式中、
は:
a)置換フェニル基{ここで該フェニル基は、3、4、及び5位の1以上で、ハロ;シアノ(−CN);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SOOR(ここでRは、アルキルである);スルホンアミジル基−SOONH;及び、ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群より選択される残基で置換され;
そしてここで前記フェニル基は、2位でも6位でも置換されない};又は
b)置換ヘテロアリール基{ここで該ヘテロアリール基は、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、又はピリダジニルであり、そしてここで前記ヘテロアリール基は、1以上の環炭素で、ハロ;シアノ(−CN);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SOOR(ここでRは、アルキルである);スルホンアミジル基−SOONH;及び、ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群のいずれでも置換される}であり;そして
は、置換フェニル基であり、ここで該フェニル基は:
a)4位で、ヒドロキシル(−OH)又はアミノ(−NH)での置換;
b)3位で、ヒドロキシル;アルコキシ残基−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);及び、アミノ基−NR10(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである)からなる群より選択される残基での置換;及び
c)5位で、ハロ;アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシル;アルコキシ残基−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);シアノ;−NR10基(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SOOR(ここでRは、アルキルである);−SOONH(スルホンアミジル);ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群より選択される残基での置換;
からなる群より選択される1以上の位置で、ある残基で置換され、
そしてここで該フェニル基は、2位にも6位にも置換を有さない]の構造を有するフラノン化合物と該表面を接触させる工程を含んでなり、ここで該化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、前記方法。
【請求項11】
フラノン化合物が3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジリデン)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)フラン−2(3H)−オン(表2中のMSL−051097)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式1:
【化7】

[式中、
Xは、イオウ(S)又は酸素(O)であり:
Yは、イオウ(S)又は窒素(NH)であり;
は:
a)置換フェニル基{ここで該フェニル基は、3、4、及び5位の1以上で、ハロ;シアノ(−CN);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SOOR(ここでRは、アルキルである);スルホンアミジル基−SOONH;及び、ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群より選択される残基で置換され;
そしてここで前記フェニル基は、2位でも6位でも置換されない};又は
b)置換ヘテロアリール基{ここで該ヘテロアリール基は、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、又はピリダジニルであり、そしてここで前記ヘテロアリール基は、1以上の環炭素で、ハロ;シアノ(−CN);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SOOR(ここでRは、アルキルである);スルホンアミジル基−SOONH;及び、ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群のいずれでも置換される}であり;そして
は、置換フェニル基であり、ここで該フェニル基は:
a)4位で、ヒドロキシル(−OH)又はアミノ(−NH)での置換;
b)3位で、ヒドロキシル;アルコキシ残基−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);及び、アミノ基−NR10(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである)からなる群より選択される残基での置換;及び
c)5位で、ハロ;アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシル;アルコキシ残基−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);シアノ;−NR10基(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SOOR(ここでRは、アルキルである);−SOONH(スルホンアミジル);ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群より選択される残基での置換;
からなる群より選択される1以上の位置で、ある残基で置換され、
そしてここで該フェニル基は、2位にも6位にも置換を有さない]の構造を有する化合物(ここで前記化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する);
担体;
任意選択的に、抗菌増殖剤;及び
任意選択的に、賦形剤を含んでなる組成物。
【請求項13】
前記バイオフィルム阻害化合物が式2:
【化8】

[式中、RとRは、請求項12に記載の通りである]の構造を有するローダニン化合物であり、ここで前記化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、請求項12に記載のバイオフィルム阻害組成物。
【請求項14】
前記ローダニン化合物が:3−(3−クロロフェニル)−5−(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−メトキシ−ベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表2中のMSL−049731)、3−(4−ブロモフェニル)−5−(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表2中のMSL−049293)、3−(4−クロロフェニル)−5−(3−クロロ−5−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオン(表2中のMSL−6519056)、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物4)、(Z)−3−(3−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物8)、(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−アリルオキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物29)、(Z)−3−(3−シアノフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物34)、(Z)−3−(ピリジン−3−イル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物36)、(Z)−3−(6−フルオロピリジン−3−イル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物40)、及び(Z)−3−(4−メトキシカルボニルフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)−2−チオキソチアゾリジン−4−オン(表3中の化合物49)からなる群より選択される、請求項13に記載のバイオフィルム阻害組成物。
【請求項15】
前記バイオフィルム阻害化合物が式3:
【化9】

[式中、RとRは、請求項12に記載の通りである]の構造を有するチアゾリジンジオン化合物であり、ここで前記化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、請求項12に記載のバイオフィルム阻害組成物。
【請求項16】
前記チアゾリジンジオン化合物がMSL−6519056と呼称される3−(4−クロロフェニル)−5−(3−クロロ−5−エトキシ−4−ヒドロキシベンジリデン)チアゾリジン−2,4−ジオンである、請求項15に記載のバイオフィルム阻害組成物。
【請求項17】
前記バイオフィルム阻害化合物が式4:
【化10】

[式中、RとRは、請求項12に記載の通りである]の構造を有するヒダントイン化合物であり、ここで前記化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、請求項12に記載のバイオフィルム阻害組成物。
【請求項18】
前記ヒダントイン化合物が(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物58)又は(Z)−3−(4−クロロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)イミダゾリジン−2,4−ジオン(表3中の化合物59)である、請求項17に記載のバイオフィルム阻害組成物。
【請求項19】
前記バイオフィルム阻害化合物が式5:
【化11】

[式中、RとRは、請求項12に記載の通りである]の構造を有するチオヒダントイン化合物であり、ここで前記化合物は細菌のバイオフィルム形成を阻害する、請求項12に記載のバイオフィルム阻害組成物。
【請求項20】
前記チオヒダントイン化合物が(Z)−3−(4−フルオロフェニル)−5−(3−ヒドロキシ−4−エトキシベンジリデン)−2−チオキソイミダゾリジン−4−オン(表3中の化合物62)である、請求項19に記載のバイオフィルム阻害組成物。
【請求項21】
式6:
【化12】

[式中、
は:
a)置換フェニル基{ここで該フェニル基は、3、4、及び5位の1以上で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);シアノ(−CN);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);ニトロ基(−NO);スルホニル基−SO(ここでRは、アルキルである);スルホンアミジル基−SONH;及び、ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群より選択される残基で置換され;
そしてここで前記フェニル基は、2位でも6位でも置換されない};又は
b)置換ヘテロアリール基{ここで該ヘテロアリール基は、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、又はピリダジニルであり、そしてここで前記ヘテロアリール基は、1以上の環炭素で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);シアノ(−CN);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SO(ここでRは、アルキルである);スルホンアミジル基−SONH;及び、ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群のいずれでも置換される}であり;そして
は、置換フェニル基であり、ここで該フェニル基は:
a)4位で、ヒドロキシル(−OH)又はアミノ(−NH)での置換;
b)3位で、ヒドロキシル;アルコキシ残基−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);及び、アミノ基−NR10(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである)からなる群より選択される残基での置換;及び
c)5位で、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード);アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシル;アルコキシ残基−OR(ここでRは、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);シアノ;−NR10基(ここでRとR10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、又はアルキニルである);カルボキシ基−COOR(ここでRは、H又はアルキルである);−CF(トリフルオロメチル);スルホニル基−SO(ここでRは、アルキルである);−SONH(スルホンアミジル);ケト基−C(O)R(ここでC(O)はカルボニル基であり、Rは水素又はアルキルである)からなる群より選択される残基での置換;
からなる群より選択される1以上の位置で、ある残基で置換され、
そしてここで該フェニル基は、2位にも6位にも置換を有さない]の構造を有するフラノン化合物であるバイオフィルム阻害化合物(ここで前記化合物は、細菌のバイオフィルム形成を阻害する);
担体;
任意選択的に、抗菌増殖剤;及び
任意選択的に、賦形剤を含んでなるバイオフィルム阻害組成物。
【請求項22】
前記フラノン化合物がMSL−051097と呼称される3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジリデン)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)フラン−2(3H)−オンである、請求項21に記載のバイオフィルム阻害組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2011−520958(P2011−520958A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510503(P2011−510503)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/003086
【国際公開番号】WO2009/142720
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(503459578)マイクロバイオティックス・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】