説明

細菌感染の治療

【課題】本発明は、抗菌活性を示す、アポリポタンパク質由来ペプチドの繰返しを含むポリペプチド、及び前記をコードする核酸を提供する。本発明はさらに、そのようなポリペプチド、誘導体、類似体又は核酸の医薬としての使用を提供し、さらに細菌感染又は物体及び表面の細菌汚染の予防若しくは処理方法におけるそれらの使用も提供する
【解決手段】細菌感染を治療する医薬の製造のための、アポリポタンパク質の硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来するペプチドの反復を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌活性を有するポリペプチド、その誘導体又は類似体、及び前記をコードする核酸に関する。本発明はさらに、前記のようなポリペプチド、誘導体、類似体又は核酸の医薬としての使用、及び治療方法における使用を提供する。本発明はさらに前記ポリペプチドで被覆した物体に及ぶ。
【背景技術】
【0002】
抗菌ペプチドは先天的な免疫系の重要な成分であり、一般的には20−40アミノ酸を含み、正味の正電荷を有し、さらにこれまでのところ大半が非哺乳動物種で同定されている。非哺乳動物種で同定されたものは、そのような大型ペプチドの産業的製造の困難さのため、及び非ヒト起源のこれらペプチドの副作用のおそれのために、ヒト又は哺乳動物での治療薬としての有用性に限界がある。2003年までにトリエステ(Trieste)国際抗菌ペプチドデータベース(http://www.bbcm.units.it/~tossi/amsdb.html)に挙げられたほぼ800の配列のうち、わずかに33がヒト起源であり、これらのうち3つだけが長さが20未満のアミノ酸である。短い合成抗菌ペプチドもいくつか開発されたが、しかしながら、非ヒト起源であるために抗原性又は毒性作用のおそれが付随するという欠点を有する。
そのようなペプチドは、6つのグループに性状が分類され(J.P. Bradshaw, Biodrugs, 2003, 17:235-240)、以下の3つのクラスがもっとも研究されている(H.G. Bowman, J. Int. Med., 2003, 254:197-215):
(i)システインを欠き、しばしば溶液中でα-ヘリックス両親媒性構造をもつ直鎖状ペプチド、例えばヒトLL-37(配列番号:19):-LLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES; (ii)平面的なダイマーβ-シートをペプチドに付与する、3つのジスルフィド結合を有するペプチド、例えばヒトα-ディフェンシン:-HNP-1(配列番号:20)
【0003】
【化1】

【0004】
(iii)ある種のアミノ酸(例えばプロリン、アルギニン、トリプトファン又はヒスチジン)に異常な偏りをもつペプチド、例えばブタPR-39(配列番号:21):-RRRPRPPYLPRPRPPPFFPP RLPPRIPPGF PPRFPPRFP;又はウシのインドリシジン(配列番号:22):-ILPWKWPWWP WRR。
多くの抗菌ペプチドは細菌を溶解する能力を有する。しかしながら、細胞溶解がそのような抗菌作用に必要なメカニズムであるか否かは明らかではない(Bowman上掲書)。さらにまた、多くの抗菌ペプチドが正味の正電荷を有し、さらにペプチドが細菌膜に飛び込むために役立つヒンジをもつ両親媒性の要素を有する。しかしながらこれらの両特徴は多くのペプチド(例えばポリペプチドホルモンを含む)にとって一般的である(Bowman上掲書)。したがって、現時点では、抗菌ペプチドがその抗菌機能を授けられるメカニズムは完全には理解されていない。いくつかは抗ウイルス作用もまた示すけれども、このことは、これらペプチドのいずれかの膜破壊作用の軽微な副作用であると考えられる(Bowman上掲書)。
【0005】
学術文献に記載されている多数の抗菌ペプチドは、強力な陽イオン的特徴を有し、しばしばアルギニン及びリジン残基から成る。しかしながら、アルギニン及びリジンを含むペプチドが全て抗菌活性を有するというわけではない。例えばAzumaら(Peptides, 2000, 21:327-330)は、アポE133-162(LRVRLASHLRKLRKRLLRDADDLQKRLAVY;配列番号:47)から成る、30mer(長さが30アミノ酸残基)のモノマーペプチドは抗菌活性を有すると報告した(前記は抗生物質ゲンタマイシンの抗菌活性と共通点を有する)。しかしながら、著者らは、前記ペプチドの136、142、147及び150位の個々のアルギニンを置換することによって抗菌活性が低下し、142及び147位の残基がもっとも決定的であるらしいということを見出した。さらにまた、Azumaがこの領域に類似するさらに短いペプチドを設計したとき、その抗菌活性は低下した。例えば、Azumaのペプチド、アポE134-151(長さが18アミノ酸)は、142及び147位の両アルギニンを含んでいるにもかかわらず、全く活性はなかった。同様に、Azumaは、ペプチドアポE134-155(長さが22アミノ酸)は非常に低い抗菌活性を有し、ペプチドアポE134-159(長さが26アミノ酸)は極めて低い抗菌活性を有することを示した。したがって、Azumaは、30アミノ酸からそれぞれ26アミノ酸へ、さらに22アミノ酸へペプチドの長さを減少させることによって、ペプチドの抗菌性能の顕著な低下をもたらすことを示した。彼らはまた、ペプチドの長さをさらに18アミノ酸に減少させることによって抗菌性能の完全な消失がもたらされることを見出した。最終的には、Azumaらは、アポE由来ペプチドの抗菌活性を精査しただけで、他の抗微生物作用は全く調べなかった。
したがって、Azumaらは、彼らのアポE133-162ペプチドの潜在的な抗菌活性を利用する手段を持たなかったようであり、及び、陽イオン性であるペプチドを単に構築するだけでは、それらが抗菌性能を示すことを必ずしも担保できないことを示した。したがって、Azumaのペプチドがその抗菌性を付与するメカニズムは全く明らかではない。
【0006】
本発明の発明者の1人は、以前にある種のポリペプチドが抗ウイルス活性を有することを明らかにした。前記発明者の研究の結果はPCT/GB2004/005438及びPCT/GB2004/005360に記載されている。これらの抗ウイルスポリペプチドは、ペプチド:アポE141-149(LRKLRKRLL-配列番号:1)及びアポB3359-3367(RLTRKRGLK-配列番号:2)の直列反復及びそれらの変種の他に、配列番号:1又は配列番号:2の近縁の改変物の直列反復を含む。これらのペプチドは、これらアポリポタンパク質E及びBのLDLレセプター/HSPGレセプター結合領域に由来するか、又はそれらを含んでいる。発明者らはいずれの仮説にも拘束されないが、これらの抗ウイルスポリペプチドはおそらく多数のメカニズムによってそれらの抗ウイルス作用を示し、ウイルスの付着に影響を与えるメカニズムが特に重要と考えている。発明者らは、これらアポリポタンパク質のLDLレセプター/HSPGレセプター結合領域に由来するペプチドのダイマー化(直列反復又はその変種として)は抗ウイルス作用に重要であると提唱している。
ウイルス及び細菌に対するその作用態様が異なるために、抗ウイルス剤は抗菌剤とは無関係であるという事実にもかかわらず、発明者らは、上記で考察した抗ウイルスペプチドを基にしたペプチドが何らかの抗菌特性を有するか否かを調べることにした。この目的のために、発明者らは、そのようなペプチドによって示される溶解作用又は他の作用が、たとえこれら作用がウイルスを調べたときには生じるようには思われなかったとしても、細菌に関して可能であるか否かを吟味した。特に、発明者らは、これらアポリポタンパク質のLDLレセプター/HSPGレセプター結合領域に由来するペプチドの反復(例えば直列反復)構築物が抗菌作用を有するかもしれないと考えた。特に発明者らは、予想に反してアポE141-149領域の反復が、はるかに短いポリペプチド内にアポE133-162の抗菌特性(Azumaら(上掲書)で開示されたもの)を取り戻させるかもしれないと考えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、抗菌活性を有するポリペプチド、その誘導体又は類似体、及び前記をコードする核酸を提供する。本発明はさらに、前記のようなポリペプチド、誘導体、類似体又は核酸の医薬としての使用、及び治療方法における使用を提供する。本発明はさらに前記ポリペプチドで被覆した物体に及ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、細菌感染を治療する医薬の製造のための、アポリポタンパク質の硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来するペプチドの反復を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体の使用である。
また本発明は、ペプチドが、アポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来する、上記使用である。
特に本発明は、ペプチドが、アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターB又はアポリポタンパク質E LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来する、上記使用である。
また、本発明は、ポリペプチドが少なくとも2つのRKRモチーフを含む、上記使用でもある。
本発明は、ポリペプチドが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:96又はその誘導体の直列ダイマー反復を含み、前記配列において、RKRモチーフ以外の少なくとも1つのアミノ酸残基が、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、又はその誘導体によって置換されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用でもある。
特に具体的には、本発明は、ポリペプチドが下記式をもつ、上記使用である:
{abcRKRxyz}+{a'b'c'RKRx'y'z'} (式I)
式中、
a及びa'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてあり;
b及びb'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)から選択されるか、又は欠失されてあり;
c及びc'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)又はスレオニン(T)から選択されるか、又は欠失されてあり;x及びx'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン又は(H)グリシン(G)から選択されるか、又は欠失されてあり;
y及びy'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてあり;
z及びz'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてある。
【0009】
また、本発明は、 ペプチドアポE141-149(配列番号:1)又はその短縮型の反復を含み、少なくとも1つのロイシン(L)残基が、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)によって置換されていることを特徴とする、ポリペプチドである。
特に本発明は、配列番号:3(GIN2)、配列番号:4(GIN11)、配列番号:67(MU81)、配列番号:68(MU82)、配列番号:80(MU24)、配列番号:94(MU73)又は配列番号:95(MU74)のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、その誘導体又は類似体でもある。
本発明は、上記ポリペプチド等をコードする核酸でもある。
本発明は、物体又は表面を、殺菌のため又は細菌の増殖を予防するために有効な量の、上記ポリペプチドで被覆することを含む、細菌汚染の予防及び/又は処置方法でもある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】細菌接種物を本発明のペプチドGIN1pの種々の濃度の希釈物又はPBSAダミー稀釈物に対して暴露した後の緑濃菌(Pseudomonas aeruginosa)の増殖レベルを示す。
【図2】ペプチドGIN1pによる前処理後又はコントロール処理後の、ジョンソンアンドジョンソンのアキュビュー(Acuvue)コンタクトレンズ上での緑濃菌の一晩の増殖を示す棒グラフである。
【図3】24ウェルプレートの4つのウェルに置かれた、2枚のGIN1p処理コンタクトレンズ及び2枚のコントロール処理コンタクトレンズの外観を示す写真である。
【図4】一晩インキュベートした後の(i)コントロール処理コンタクトレンズ、又は(ii)GIN1p処理コンタクトレンズの表面の外観を示す光学顕微鏡写真である。
【図5】種々のレベルのGINペプチドで48時間処理した細胞のMTT低下を示す。
【図6A】図6Aは、酵母の遺伝子毒性アッセイによって示される、ペプチドGIN1pの遺伝子毒性作用の欠如を示す。
【図6B】図6Bは、酵母の遺伝子毒性アッセイによって示される、ペプチドGIN33の遺伝子毒性作用の欠如を示す。
【図6C】図6Cは、酵母の遺伝子毒性アッセイによって示される、ペプチドGIN34の遺伝子毒性作用の欠如を示す。
【図7】オートクレーブされた、又はされていない本発明のペプチドGIN1pの種々の濃度に対して緑濃菌接種物を暴露した後の緑濃菌の増殖レベルを未処理細菌の増殖に対する百分率として表した図である。
【図8】40μMのGIN1p(蛍光タグをもつシステイン残基の付加により合成された)で15分処理し、続いて4回の洗浄(25mLのPBSへの一晩浸漬を含む)を実施した、ジョンソンアンドジョンソンのアキュビューコンタクトレンズを示す。
【図9】40μMのGIN1p(蛍光タグを用いて合成された)で15分処理し、続いて4回洗浄した(25mLのPBSへの一晩浸漬を含む)、ガラスのカバースリップ(BG)又は前もってラクチド-グリコリド共重合体(PLGA)バイオマテリアルで被覆されたカバースリップを示す。
【図10】GIN1pについての典型的な質量分析データであり、GIN1pが95%を超える純度であることを示している。
【図11】GIN1pについての典型的なHPLCデータであり、GIN1pが95%を超える純度であることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第一の特徴にしたがえば、細菌感染または汚染の処置のための医薬の製造を目的とする、アポリポタンパク質の硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域の反復を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体の使用が提供される。
“その誘導体又は類似体”という用語は、ポリペプチド内のアミノ酸残基が、類似の側鎖又はペプチド骨格特性を持つ残基(天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸又はアミノ酸模倣体にかかわりなく)によって置換されているポリペプチドを意味する。さらにまた、そのようなペプチドの一方の末端又は両端は、アセチル又はアミド基と類似の特性を有するN及びC末端保護基によって保護されてあってもよい。いったん最終的なポリペプチドが形成されても、又は反復ペプチド(例えば9mer)の開発中にも、アミノ酸配列が変更され、短縮され又は改変されえることは理解されよう。
本発明のポリペプチドは、アポリポタンパク質のHSPGレセプター結合領域に由来するペプチドの少なくとも2つの反復を含む。前記ポリペプチドは同じペプチドの反復を含むことができる(すなわちホモダイマー又は同じペプチドのポリマー)ことは理解されよう。
また別には、前記ポリペプチドは2つ又は3つ以上の関連するペプチドの反復を含むことができる(すなわちペプチドモノマーの2つ又は3つ以上のペプチドタイプを含むヘテロダイマー又はポリマー)。前記ポリペプチドが異なるペプチドを含む場合、そのようなペプチドは、それらはアポリポタンパク質のHSPGレセプター結合領域であるか、又はそれらに由来するという特徴を共有するであろうということは理解されよう。本発明のポリペプチドは、当業者には直列反復として知られる態様でN-末端がC-末端に連結されたペプチドのダイマー又はポリマーを含むはずである。したがって、本明細書で“直列反復”と称されるときは、文脈が他の態様を指示しないかぎり、アポリポタンパク質のHSPGレセプター結合領域であるか、又は前記に由来するペプチドの反復を意味する。そのような直列反復は、上記で考察されたように、ホモダイマー(又は単一ペプチドのポリマー)でも、又はヘテロダイマー(又は関連ペプチドのポリマー)でもよい。
【0012】
本明細書で用いられる“〜に由来するペプチド”という用語は、改変されたアポリポタンパク質のHSPGレセプター結合領域由来のペプチドを指すか又は前記を含むことが意図される。適切な改変には、アミノ酸の置換、付加又は欠失が含まれえる。誘導体ペプチド又は改変ペプチドは、本発明の第一の特徴にしたがって直列反復として編成される。驚くべきことに、本発明の第一の特徴のポリペプチド、その誘導体又は類似体は抗菌活性を提示することが示された。
“その短縮型”という用語が本明細書で用いられるときは、本発明のポリペプチドまたは構成ペプチドのサイズが、アミノ酸の除去又は欠失により縮小されていることを意味する。アミノ酸の減少は、前記ペプチドのC又はN末端から残基が除去される場合でも、又は構成ペプチド内から1つ又は2つ以上のアミノ酸が欠失する場合でもよい。
発明者らは、上記に定義したポリペプチドは抗菌活性を有することを見出した。発明者らが驚いたことには、第一の特徴のポリペプチドを細菌について検査したとき、実施例で示したように、抗菌性能もまた示された。したがって、発明者らはこれらポリペプチドについて新規な医学的適用を示したと考えている。
細菌感染を治療するために前記ポリペプチドを用いるときは、前記を対象者に投与することができる。前記対象者がヒトであるときは、前記ポリペプチドはヒトのアポリポタンパク質に由来する反復に基づくのが好ましい。
【0013】
前記医薬は、以下を含む多様な細菌感染の治療に用いることができる:細菌性角膜炎;結膜炎;気管支肺感染、例えば肺炎;尿道感染、例えば膀胱炎、腎盂腎炎;耳、鼻及び喉の感染、例えば中耳炎、副鼻腔炎、喉頭炎、ジフテリア;蜂巣炎、膿痂疹、創傷感染、ボツリヌス症、淋病を含む皮膚感染;敗血症;消化性及び十二指腸潰瘍;胃炎;カンピロバクター(Campylobacter)感染;プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)感染;髄膜炎;骨髄炎;及びサルモネラ症。
一般的に、抗ウイルス剤、例えばアシクロビル、リバビリン又はエンフビルチド(T-20)は、それらの作用態様が完全に異なるので細菌感染に対して有効であることは稀である。同様に、抗菌剤、例えば抗生物質はウイルス感染に対して有効であることは滅多にない。したがって、本発明者らには、本発明の第一の特徴のポリペプチドが抗ウイルス性能と抗菌性能の両方を示したことは、それが完全に予想に反したので、非常に驚くべきことであった。
本発明者らは、本明細書に記載した特定のポリペプチドのいくつかは抗菌活性のみを有することを見出した。しかしながら、本発明の大半のポリペプチドは、驚くべきことに抗菌剤としても抗ウイルス剤としても活性を有していた。したがって、第一の特徴のポリペプチドは抗菌活性の他に抗ウイルス活性も示すことがもっとも好ましい。本発明のポリペプチドによって示されるこの二重活性は、それらが、ウイルス及び細菌感染の両方を(好ましくは同時に)阻止又は治療するために用いることができるので非常に有益であることは明白であろう。したがって、前記ポリペプチドは、例えば病院、手術教室での使用及び住居における家庭的使用で非常に有用である。
【0014】
本発明の第一の特徴のポリペプチドは、アポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域由来のペプチドの反復を含むことができる。本発明の第一の特徴のポリペプチドは、Law & Scott(J. Lipid Res., 1990, 31:1109-20)が定義した、アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来するペプチド、又は、アポリポタンパク質E LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来するペプチド(J. Lipid Res., 1995, 36:1905-1918)の直列反復(上記に定義したとおり)を含むのが好ましい。アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターBはアポリポタンパク質BのHSPGレセプター結合領域内に位置し、アポリポタンパク質Eのアポリポタンパク質E LDLレセプター結合ドメインクラスターBはアポリポタンパク質EのHSPG結合ドメイン内に位置するであろう。
本発明者らは網羅的な実験を実施して、アポリポタンパク質のペプチド及びその誘導体の抗菌活性を判定した。アポE及びアポB由来のペプチド及び誘導体が特に注目された。本発明者らは、アポE141-149モノマー配列(配列番号:1)及びアポB3359-3367(配列番号:2)及び改変アポB3359-3367(配列番号:96)は検出可能な抗菌活性を持たないことを見出した。さらに、発明者らが驚いたことには、多数の他の関連ペプチドがほとんど又は全く抗菌作用を持たないことが見出された(実施例1、表5及び6を参照されたい)。しかしながら、驚いたことには、本発明者らは、そのようなペプチドの繰返し(すなわち本発明の第一の特徴のポリペプチド)は、抗菌活性を確かに示すことを見出した。実施例1は、アポE141-149及びアポB3359-3367(すなわち直列反復ではない)及びアポリポタンパク質由来の他のペプチドと比較して、本発明のポリペプチドの有効性を実証する。
【0015】
発明者らはいずれの仮説にも拘束されないが、アポE141-149ペプチド(配列番号:1に基づく)及びアポB3359-3367ペプチド(配列番号:96に基づく)中の陽イオン性アミノ酸残基は、直列反復の形態にあるときは、大型のAzumaのペプチド(アポE133-162:上記参照)について報告された抗菌活性に匹敵する抗菌活性を可能にする。本発明者らはまた、これらペプチドのある種の誘導体(前記ペプチド配列の改変型および短縮型を含む)もまた抗菌活性を有することを確認した。
発明者らは、抗菌活性をもつポリペプチド、特にアポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域由来のペプチドの繰返しをベースにしたポリペプチドについていくつかの詳細な分析を実施した。発明者らは、アポE141-149(すなわち配列番号:1の9-mer)、アポB3359-3367のアミノ酸(すなわち配列番号:2の9-mer)及び改変アポB3359-3367(すなわち配列番号:96の9-mer)間での配列アラインメントを実施した。前記配列アラインメントは表1に示されている。これら3種の9-mer又はその誘導体は、本発明のポリペプチドでは反復されて少なくとも18-merを形成し、前記は場合によって短縮されていることは理解されよう。
【0016】
表1:抗菌特性を示す有効なペプチド配列の分析

下線が付与された残基は、アポB3359-3367及びアポE141-149で同じ残基であることを示している。
【0017】
このアラインメントのデータから、発明者らは、アポリポタンパク質B(アポB3359-3367(配列番号:2))又は改変アポリポタンパク質B(アポB3359-3367(配列番号:96))又はアポリポタンパク質E(アポE141-149(配列番号:1))の硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来するペプチドの直列反復、又はその短縮型を含む抗菌ポリペプチドの各々で繰り返される(保存された)アミノ酸モチーフが存在することに気付いた。このモチーフはトリペプチド、アルギニン-リジン-アルギニン(RKR)に一致し、配列番号:1及び配列番号:96及び配列番号:2のアミノ酸4、5、6位に見出される。発明者らは、抗菌活性を示す本発明のポリペプチドは全てこれらRKRモチーフを含むことに気付いた。
したがって、本発明のポリペプチドは少なくとも2つのRKRモチーフを含むことが特に好ましい(すなわち前記ポリペプチドはRKRモチーフを含むペプチドの直列反復を含む)。
【0018】
本発明のポリペプチドは少なくとも2つ又は3つ以上のRKRモチーフ(すなわち各反復に付き1つのRKRモチーフ)を含むことは理解されよう。前記ポリペプチドが、トライマー(3x)反復、テトラマー(4x)反復、又はさらに大きな数の反復を含む状況では、前記ポリペプチドは好ましくは、それぞれ少なくとも3つ又は少なくとも4つのRKRモチーフを含む。
本発明のある実施態様では、第一の特徴のポリペプチドは下記式Iを有する:
{abcRKRxyz}+{a'b'c'RKRx'y'z'}
式中、a、b、c、a'、b'、c'、x、y、z、x'、y'、z'はアミノ酸残基であり、さらに、前記ポリペプチドは、配列番号:1、配列番号:2または配列番号:96及びその誘導体の反復であるペプチドabcRKRxyz及びペプチドa'b'c'RKRx'y'z'を含む。そのような誘導体は、配列番号:1、配列番号:2、又は配列番号:96を含み、ここで、RKRモチーフ以外で前記ペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基は、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)又はその誘導体によって置換されえる。前記ペプチドはまたヒスチジン(H)置換を含むことができ、好ましくはただ1つのH置換から成る。
【0019】
適切には1つ又は2つ以上、より適切には2つ又は3つ以上、さらに適切には3つ又は4つ以上のアミノ酸残基が、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)又はその誘導体によって置換される。好ましくは4つ又は5つ以上、より好ましくは5つ又は6つ以上、さらに好ましくは6つ又は7つ以上アミノ酸残基がこれらアミノ酸又はその誘導体によって置換される。好ましくは、置換又は代用される残基は、式Iによって定義されるペプチドの第1、第2、第3、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第16、第17又は第18番残基である。もっとも好ましいアミノ酸置換は、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)又はその誘導体を用いるものである。
本発明のポリペプチドは18アミノ酸(又はその誘導体)を含んでよく、それによって上記で述べた置換を含む又は含まない、式Iによって定義される配列と一致することができる。この事例では、アミノ酸の1位はaに対応し;2位はbに対応し;3位はcに対応し;4位は(RKRモチーフの)アミノ酸Rに対応し;以下もこのように続く。
しかしながら、発明者らは、驚くべきことに、式Iを基にした短縮ペプチドもまた抗菌剤として有効性を有することを見出した。したがって、好ましいペプチド又はその誘導体は18未満のアミノ酸を有することができる。例えば、本発明の第一の特徴のいくつかのペプチドは、長さが17、16、15、14、13、12、11、10又はそれ未満のアミノ酸でもよい。欠失は好ましくは式Iによって定義されるペプチドの1、2、8、9、10、11、17及び/又は18位で生じる。
【0020】
本発明者らはまた驚くべきことに、式Iを基にしたポリペプチドであるが付加されたアミノ酸残基を有するポリペプチドもまた抗菌剤として有効性を有することを見出した。したがって、好ましいポリペプチド又はその誘導体は18よりも多いアミノ酸を有することができる。例えば本発明の第一の特徴にしたがえば、いくつかのポリペプチドは、長さが19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又はそれより多いアミノ酸でありえる。付加は、N-若しくはC-末端で、又はポリペプチドのコア内で実施することができる。付加は、式Iで定義された残基“a”の前(すなわちポリペプチドのN-末端)、又は“a’”の前(すなわちポリペプチドのコア内)のどちらかで実施することができる。付加は、式Iで定義された残基“z”の後(すなわちポリペプチドのコア内)、又は“z’”の後(すなわちポリペプチドのc-末端)のどちらかで実施することができる。
しかしながら、付加は好ましくは式Iによって定義されるペプチドの0、1、2、8、9、10、11、17及び/又は18位で生じる。もっとも好ましくは、付加は前記ペプチドの0位の前で実施される。すなわち、アミノ酸は、式Iによって定義された残基“a”の第一のアミノ酸の前のN-末端に付加される。
【0021】
式Iのポリペプチドは好ましくは以下のアミノ酸を含む:
a及びa'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてあり;
b及びb'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)から選択されるか、又は欠失されてあり;
c及びc'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)又はスレオニン(T)から選択されるか、又は欠失されてあり;x及びx'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン又は(H)グリシン(G)から選択されるか、又は欠失されてあり;
y及びy'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてあり;
z及びz'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてある。
式Iのポリペプチドは少なくとも1つの付加されたアミノ酸を含むことができる。前記付加されるアミノ酸は、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択することができる。好ましくは、付加アミノ酸は、式Iのペプチドの“a”位のアミノ酸の前、すなわちN-末端に付加される。
【0022】
したがって、本発明のポリペプチドは、{abcRKRxyz}及び{a'b'c'RKRx'y'z'}の18mer(式中abc、a'b'c'、xyz、及びx'y'z'は上記のように定義される)又はその短縮型を含むことができることは理解されよう。例えば、aはa’と異なっていてもよく、さらにbはb’と異なっていてもよく、さらにcはc’と異なっていてもよく、以下同様である。
本発明の第一の特徴のポリペプチドはまた好ましくは下記式IIを有することができる: {abcRKRxyz}+{abcRKRxyz}
式中、
aは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてあり;
bは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)から選択されるか、又は欠失されてあり;
cは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)又はスレオニン(T)から選択されるか、又は欠失されてあり;
xは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン又は(H)グリシン(G)から選択されるか、又は欠失されてあり;
yは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてあり;
zは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてある。
【0023】
式Iのポリペプチドの場合のように、式IIのポリペプチドは、少なくとも1つの付加されたアミノ酸を含むことができる。前記付加されるアミノ酸は、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択することができる。好ましくは、付加アミノ酸は、式IIのペプチドの“a”位のアミノ酸の前、すなわちN-末端に付加される。
したがって、本発明のポリペプチドは、{abcRKRxyz}及び{abcRKRxyz}の18mer(式中abc及びxyzは上記のように定義される)又はその短縮型を含むことは理解されよう。
式IIによって定義されるポリペプチドは好ましくは以下のアミノ酸を含む:
aは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
bは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
cは、それぞれ独立に、フェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
xは、それぞれ独立に、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
yは、それぞれ独立に、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
zは、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてある。
これらの好ましいポリペプチドは、少なくとも1つの付加されたアミノ酸を含むことができる。前記付加されるアミノ酸は、フェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)又はロイシン(L)でありえる。好ましくは、付加アミノ酸は、式IIのペプチドの“a”位のアミノ酸の前、すなわちN-末端に付加される。
【0024】
本発明者らはまた、アポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域由来ペプチドの単なる直列ダイマー(2x)反復より大きなもの又はその短縮型を含むポリペプチドを本発明にしたがって利用することが可能であることも理解していた。例えば、アポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域由来ペプチドのトライマー(3x)反復、又はテトラマー(4x)反復、又は前記よりも大きい数の反復を含むポリペプチドを有用な抗菌剤として用いることができる。
したがって、好ましくは、前記ポリペプチドは下記式IIIを有することができる:
{abcRKRxyz}n
式中、a、b、c、x、y及びzは、式I又はIIに関して上記で定義したとおりであり、nは2、3、4又は5に等しいか、又はそれより大きい。
他の好ましいペプチドは、式Iに定義した18merペプチドの繰返し(又はその短縮型)を含むことができる(例えば、式Iのペプチドを含む9merのヘテロダイマーの繰返し)。
【0025】
本発明のペプチド及びその誘導体は、好ましくはそれらのIC50値が約40μM又はそれ未満であるような、細菌増殖を阻害の有効性を有する。IC50値は30μM又はそれ未満、より好ましくは、約20μM又はそれ未満、もっとも好ましくは約10μM又はそれ未満であることが好ましい。当業者はIC50値の算出の仕方を理解していよう。
第一の特徴のポリペプチドは、アポE141-149(配列番号:1)の繰り返し又はその誘導体及び短縮型を含み得るのがもっとも好ましい。
したがって、第二の特徴では、ペプチドアポE141-149(配列番号:1)及びその短縮型の繰返し、又はペプチドアポE141-149(配列番号:1)の変種(前記変種では、少なくとも1つのロイシ(L)残基が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)によって置換される)の繰返しを含むポリペプチド、その誘導体又は類似体の、細菌感染の治療用医薬の製造のための使用が提供される。
“ペプチドアポE141-149の繰返し”とは、ペプチド配列、LRKLRKRLL(配列番号:1)(すなわち9mer)の繰返しを含むポリペプチドを指す。前記ポリペプチドは好ましくは、アミノ酸配列、LRKLRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:6)(すなわち18mer、前記は配列番号:1の直列反復ダイマーである)を含む。配列番号:6はまた本明細書ではGIN1又はGIN1pと称される(pは(例えばアセチル基による)N-末端の保護及び(例えばアミド基による)C-末端の保護を示す)。GIN1pはまた本明細書ではMU10とも称される。
【0026】
“その短縮型”とは、前記繰返しがアミノ酸の除去によりそのサイズが縮小されていることを意味する。アミノ酸の減少は、C-及び/又はN-末端から残基が除去されることによって減少しても、又はペプチドのコア内から1つ又は2つ以上のアミノ酸が欠失することによって減少してもよい(例えば配列番号:6のアミノ酸2−17)。
本発明者らは、アポE141-149直列反復中でトリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)でロイシンを置き換えることができること、及びそのようなポリペプチドは驚くべき抗菌活性を有することを確認した。
本発明の第二の特徴のポリペプチドは、アポE141-149又はその短縮型のダイマー反復を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体を含み、前記ダイマー(配列番号:6)の少なくとも1つのロイシンがトリプトファン(W)又はフェニルアラニン(F)残基によって置換されていることを特徴とすることがもっとも好ましい。
下記でさらに詳細に考察されるように、配列番号:6は、多数の別個の置換及び欠失を用いて操作して抗菌活性を有するポリペプチドを生成することができる。本発明の第二の特徴のポリペプチドは、トリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)置換からそれぞれ独立に選択される少なくとも2つの置換を有することが好ましく、より好ましくは3つ又は4つ以上のトリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)置換を有する。
K、R、Y、F又はWによる1つ又は2つ以上のLの置換に加えて、少なくとも1つの更なるアミノ酸(好ましくは少なくとももう1つのロイシン残基)がアルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)で置換されることが好ましい。そのような更なる置換はF又はWが特に好ましい。
【0027】
本発明者らはまた、アポE141-149又はその短縮型若しくは変種のダイマー直列反復より多い直列反復を含むポリペプチドを本発明にしたがって用いることができることを認識している。例えばトライマー、テトラマー又はそれより多い反復を抗菌剤として用いることができる。
第二の特徴のポリペプチドは、更なるアミノ酸が前記に付加されるように合成することができる。例えば、1つ、2つ、3つ又は4つ以上のアミノ酸を、配列番号:6由来のペプチドのC-又はN-末端に付加することができる。また別には、前記ポリペプチドは、配列番号:1の9アミノ酸より大きいペプチドの直列反復を含むことができる。そのようなペプチドは、配列番号:6のN-末端、C-末端及び/又は9番目と10番目の間にアミノ酸を付加させることができる。アミノ酸は、配列番号:6のC-末端、又は9番目と10番目のアミノ酸の間に付加されることが好ましい。続いてそのようなペプチドを配列番号:6由来のポリペプチドのために上記に記載したように改変することができることは理解されよう。
置換されたポリペプチドは18アミノ酸(又はその誘導体)を含み、それによって配列番号:6の完全長と対応させることができる。しかしながら驚くべきことに、本発明者らは、配列番号:6に基づく幾つかの選択されたポリペプチドもまた抗菌剤として有効性をもつことを見出した。したがって、好ましいポリペプチド又はその誘導体は、18未満のアミノ酸を有することができる。例えば、本発明の第二の特徴のいくつかのポリペプチドは、長さが17、16、15、14、13、12、11、10又は10未満のアミノ酸でありえる。
【0028】
当業者に既知でありえる多数のアミノ酸変種を含むアポE141-149の直列反復にW又はY又はR又はK又はFの改変型置換を導入することができることは理解されよう。そのようなポリペプチドもまた、前記改変がその化学的特徴を顕著には変化させないことを条件として抗菌活性を有するであろう。例えば、R又はKの側鎖アミン上の水素はメチレン基で置換することができる(-NH2 −> -NH(Me) −> -N(Me)2)。
本発明の第二の特徴の他の好ましいポリペプチド(アポE141-149に由来するペプチドの直列反復を含む)は、以下のアミノ酸配列の1つを含むことができる:
(a)WRKWRKRWWWRKWRKRWW(配列番号:7)。このポリペプチドは、全てのロイシンがトリプトファン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:6)に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN7又はMU4と称される。
(b)WRKWRKRWRKWRKR(配列番号:8)。このポリペプチドは、全てのロイシンがトリプトファン残基で置換され、さらにアミノ酸9、10、17及び18の切り出しにより短縮されているアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:6)に対応する(すなわち14merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN32と称される。
(c)WRKWRKRWWLRKLRKRLL(配列番号:9)。このポリペプチドは、ロイシンセットの一部がトリプトファン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:6)に対応する(すなわち18merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN34と称される。
(d)YRKYRKRYYYRKYRKRYY(配列番号:10)。このポリペプチドは、全てのロイシンがチロシン残基で置換されたアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:6)に対応する(すなわち18merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN41と称される。
(e)LRKLRKRLRKLRKR(配列番号:11)。このポリペプチドは、アミノ酸9、10、17及び18の切り出しにより短縮されているアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:6)に対応(すなわち14merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN8と称される。
(f)LRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:3)。このポリペプチドは、アミノ酸1、2及び3の切り出しにより短縮されているアポE141-149の完全長直列ダイマー反復(配列番号:6)に対応する(すなわち15merである)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはGIN2と称される。
(g)FRKFRKRFFFRKFRKRFF(配列番号:48)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU7と称される。
(h)WRKWRKRWWRKWRKRWW(配列番号:63)。このポリペプチドは、9位のW残基が欠失した配列番号:7に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU58と称される。
(i)WRKWRKRWRKWRKRW(配列番号:64)。このポリペプチドは、9、10及び18位のW残基が欠失した配列番号:7に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU59と称される。
(j)WRKWRKRWWFRKWRKRWW(配列番号:65)。このポリペプチドは、10位のW残基がFで置換されている配列番号:7に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU60と称される。
(k)WRKWRKRFFWRKWRKRFF(配列番号:66)。このポリペプチドは、9、10、17及び18位のW残基がF残基で置換されている配列番号:7に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU61と称される。
(l)WRKRWWRWRKRWWR(配列番号:67)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU81と称される。
(m)LRKLRKRLLRLRKLRKRLLR(配列番号:68)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU82と称される。
(n)WRKWRKRWWRWRKWRKRWWR(配列番号:69)。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU83と称される。
(o)LRKLRKRLLWRKWRKRWW(配列番号:70)。このポリペプチドは、10、13、17及び18位のL残基がW残基で置換されている配列番号:6に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU111と称される。
(p)LRKLRKRLLLRKLRKRWW(配列番号:71)。このポリペプチドは、17及び18位のL残基がW残基で置換されている配列番号:6に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU112と称される。
(q)LRKLRKRLLWRKWRKRLL(配列番号:72)。このポリペプチドは、10及び13位のL残基がW残基で置換されている配列番号:6に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU113と称される。
(r)WRKWRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:73)。このポリペプチドは、1及び4位のL残基がW残基で置換されている配列番号:6に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU114と称される。
(s)WRKLRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:74)。このポリペプチドは、1位のL残基がW残基で置換されている配列番号:6に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU115と称される。
(t)WRKWRKFFFRKWRKRWW(配列番号:75)。このポリペプチドは、8、9及び10位のW残基がF残基で置換され、7位のR残基が欠失している、配列番号:7に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU116と称される。
(u)WRKWRKRWWFRKFRKRFF(配列番号:76)。このポリペプチドは、10、13、17及び18位のW残基がF残基で置換されている、配列番号:7に対応する。このポリペプチドは、本明細書で言及されるときはMU117と称される。
【0029】
本発明の第一の特徴のもっとも好ましいポリペプチドのいくつかは、アポリポタンパク質BのHSPGレセプター結合領域由来のペプチドの繰返し又はその変種若しくは短縮型を含む。
したがって、第三の特徴では、細菌感染又は汚染の処置のための医薬の製造のための、アポリポタンパク質BのHSPGレセプター結合領域由来のペプチドの繰返しを含むポリペプチド、又はその誘導体若しくは類似体の使用が提供される。
好ましくは、前記ポリペプチド、その誘導体又は類似体は、アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来する繰返しを含む。好ましくは、前記ポリペプチド、その誘導体又は類似体は、ペプチドアポB3359-3367(配列番号:2)の繰返し又はその短縮型若しくは変種を含む。
本発明の第三の特徴のポリペプチドは、アミノ酸配列:RLTRKRGLKRLTRKRGLKを有する、アポB3359-3367(配列番号:2)の直列ダイマー反復(すなわち18mer)(配列番号:12)でありえる。
本発明の第三の特徴のペプチドはまた本明細書に定義したように短縮されてあってもよい。アミノ酸の減少は、C-及び/又はN-末端の残基の除去によるものでも、又はペプチドのコア内の1つ又は2つ以上のアミノ酸(すなわち配列番号:12のアミノ酸2−17)の欠失によるものでもよい。
第三の特徴のポリペプチドは少なくとも2つのRKRモチーフを含み、前記ポリペプチドがトライマー、又はテトラマーなどであればそれより多くのRKRモチーフを含むのが好ましい。
第三の特徴の好ましいポリペプチドは、ペプチドアポB3359-3367の直列ダイマー反復(すなわち配列番号:12のポリペプチド)又はその短縮型を含み、前記は、RKRモチーフ以外の少なくとも1つのアミノ酸残基が、グリシン(G)、スレオニン(T)、ヒスチジン(H)、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられていることを特徴とする。
【0030】
適切には1つ又は2つ以上、より適切には2つ又は3つ以上、さらに適切には3つ又は4つ以上のアミノ酸残基が、グリシン(G)、スレオニン(T)、ヒスチジン(H)、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられえる。好ましくは4つ又は5つ以上、より好ましくは5つ又は6つ以上、さらに好ましくは6つ又は7つ以上のアミノ酸残基がこれらアミノ酸又はその誘導体によって入れ替えられえる。好ましくは置換又は入れ替えられる残基は、配列番号:12の第1番目、第2番目、第3番目、第7番目、第8番目、第9番目、第10番目、第11番目、第12番目、第16番目、第17番目又は第18番目の残基である。
好ましくは、第三の特徴のポリペプチドは、配列番号:12のポリペプチド又はその短縮型を含み、前記は、少なくとも1つのアミノ酸残基がトリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられていることを特徴とする。
適切には1つ又は2つ以上、より適切には2つ又は3つ以上、さらに適切には3つ又は4つ以上のアミノ酸残基が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられえる。好ましくは4つ又は5つ以上、より好ましくは5つ又は6つ以上、さらに好ましくは6つ又は7つ以上のアミノ酸残基が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置き換えられえる。好ましくは置換又は置き換えられる残基は、アポB3359-3367の繰り返されるアミノ酸配列の第1番目、第2番目、第3番目、第7番目、第8番目及び/又は第9番目の残基、又はそれらの組合せである。
【0031】
本発明のポリペプチドは18のアミノ酸(又はその誘導体)を含み、それによって上記で述べた置換を含む又は含まない完全長の配列番号:12に対応させることができる。しかしながら、発明者らは、驚くべきことに、配列番号:12をベースにした短縮ポリペプチドもまた抗菌剤として有効性を有することを見出した。したがって、好ましいポリペプチド又はその誘導体は18未満のアミノ酸を有することもある。例えば、本発明の第三の特徴のいくつかのペプチドは、長さが17、16、15、14、13、12、11、10又はそれ未満のアミノ酸でもよい。欠失は好ましくは、配列番号:12の1、2、8、9、10、11、17及び/又は18位で生じる。
好ましい実施態様では、第三の特徴のポリペプチドは好ましくは下記式IVをもつことができる:
{abcRKRxyz}+{a'b'c'RKRx'y'z'}
式中、
a及びa'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)のいずれかから選択することができる正に荷電した残基;ロイシン(L);トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
b及びb'は、それぞれ独立にロイシン(L);アルギニン(R);リジン(K)から選択されるか、又は欠失されてあり;
c及びc'は、それぞれ独立に、スレオニン(T);トリプトファン(W);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
x及びx'は、それぞれ独立に、グリシン(G);トリプトファン(W);ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
y及びy'は、それぞれ独立に、ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択されるか、又は欠失されてあり;
z及びz'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基;又はロイシンから選択されるか、又は欠失されてある。
【0032】
第三の特徴のポリペプチドは好ましくは下記式Vを有することができる:
{abcRKRxyz}+{abcRKRxyz}
式中、
aは、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)のいずれかから選択することができる正に荷電した残基;ロイシン(L);トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
bは、それぞれ独立にロイシン(L);アルギニン(R);リジン(K)から選択されるか、又は欠失されてあり;
cは、それぞれ独立に、スレオニン(T);トリプトファン(W);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
xは、それぞれ独立に、グリシン(G);トリプトファン(W);ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
yは、それぞれ独立に、ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択されるか、又は欠失されてあり;
zは、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基;又はロイシン(L)から選択されるか、又は欠失されてある。
【0033】
式Vのポリペプチドはより好ましくは以下のアミノ酸を含むことができる:
aは、それぞれ独立に、トリプトファン(W);アルギニン(R);ロイシン(L);から選択されるか、又は欠失されてあり;
bは、それぞれ独立にロイシン(L);アルギニン(R)又はリジン(K);から選択されるか、又は欠失されてあり;
cは、それぞれ独立に、トリプトファン(W);スレオニン(T);リジン(K)から選択され;
xは、それぞれ独立に、トリプトファン(W);グリシン(G);ロイシン(L);アルギニン(R)から選択され;
yは、それぞれ独立に、ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択されるか、又はここで短縮されてあり;
zは、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基;又はロイシン(L)から選択されるか、又はここで短縮されている。
発明者はまた、アポB3359-3367(配列番号:2)の単なるダイマー直列反復より大きいもの又はその変種若しくは短縮型を含むポリペプチドも本発明にしたがって利用することができることも知った。例えば、配列番号:2のトライマー、又はテトラマー、又はそれより大きい数の繰返しを含むポリペプチドを、有用な抗菌剤として用いることができる。
したがって、本ポリペプチドは好ましくは下記式VIを有することができる:
{abcRKRxyz}n
式中、a、b、c、x、y及びzは、式IV又はVについて上記で定義したとおりであり、nは2、3、4又は5に等しいか、又はそれより大きい。各モノマーペプチド{abcRKRxyz}は、上記で定義したように同一でも異なっていてもよいことは理解されよう。
他の好ましいポリペプチドは、式IV又はVに定義した18merペプチド(又はその短縮型)の繰返しを含むことができる(例えば、式IVによって定義した9merペプチドのヘテロダイマーの繰返し)。
【0034】
本発明の第三の特徴の好ましい他のポリは以下のアミノ酸配列の1つを含むことができる:
(a)RTRKRGRRTRKRGR(配列番号:13)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、GIN36と称される;
(b)LRKRKRLLRKRKRL(配列番号:14)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、GIN37と称される;
(c)LRKRKRLRKLRKRKRLRK(配列番号:15)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、GIN38と称される;
(d)WRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:16)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、GIN33と称される;
(e)LLRKRLKRLLLRKRLKRL(配列番号:80)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU24と称される;
(f)RRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:83)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU28と称される;
(g)KRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:84)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU29と称される;
(h)LRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:85)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU30と称される;
(i)HRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:86)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU31と称される;
(j)RWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:87)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU32と称される;
(k)RRWRKRWRKRRWRKRWRK(配列番号:88)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU33と称される;
(l)LRWRKRWRKLRWRKRWRK(配列番号:89)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU35と称される;
(m)HRWRKRWRKHRWRKRWRK(配列番号:90)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU36と称される;
(n)RWRKRWRKRWRKRWRK(配列番号:91)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU37と称される;
(o)RWRKRGRKRWRKRGRK(配列番号:92)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU69と称される;
(p)RWRKRWRKRWRKRWRK(配列番号:93)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU71と称される;
(q)RKRGWKWRKRGWKW(配列番号:94)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU73と称される;
(r)RLTRKRGRLTRKRG(配列番号:95)、このポリペプチドは本明細書で引用されるときは、MU74と称される。
【0035】
これらの開発実験中に(それらのいくつかは以前に同定された抗ウイルスポリペプチドを土台にしていた)、本発明者らは、第一、第二及び第三の特徴に従ってポリペプチドをさらに操作して、以前には知られていなかったポリペプチドおよびそのクラスを作出し、それらはまた抗菌活性を示した。
したがって、第四の特徴に従えば、ペプチドアポE141-149(配列番号:1)又はその変種若しくは短縮型の繰返しを含み、配列番号:1の少なくとも1つのロイシン(L)残基がチロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)によって置換されていることを特徴とするポリペプチド、その誘導体又は類似体が提供される。
本発明者らはまた、本明細書に記載した研究のために合成した他の多くのポリペプチドの抗菌性能を調べた。発明者らは、これらのポリペプチドは新規であると考え、更なる特徴にしたがって、配列番号:3(GIN2);配列番号:4(GIN11);配列番号:67(MU81);配列番号:68(MU82);配列番号:80(MU24);配列番号:94(MU73)又は配列番号:95(MU74)のアミノ酸配列を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体が提供される。
これらのポリペプチドは実施例でさらに詳細に記述される。例示として、GIN2(配列番号:3)は、アミノ酸1、2及び3の切り出しによって短縮された、ペプチドアポE141-149の完全長の直列ダイマー反復に対応するポリペプチド(配列番号:12)である。すなわち前記は、アミノ酸配列LRKRLLLRKLRKRLLを有する15merである。GIN11(配列番号:4)は、QSTEELRVRLASHLRKLRKRLLを有するアポE128-149を含むペプチドである。
本発明のさらに別の特徴にしたがえば、医薬として使用するための、配列番号:3(GIN2);配列番号:4(GIN11);配列番号:67(MU81);配列番号:68(MU82);配列番号:80(MU24);配列番号:94(MU73)又は配列番号:95(MU74)のアミノ酸配列を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体が提供される。
【0036】
さらにまた、本発明のまた別の特徴にしたがえば、細菌感染の治療用の医薬の製造のための、配列番号:3(GIN2);配列番号:4(GIN11);配列番号:67(MU81);配列番号:68(MU82);配列番号:80(MU24);配列番号:94(MU73)又は配列番号:95(MU74)のアミノ酸配列、又はその短縮型を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体が提供される。
更なる実施態様にしたがえば、本発明のポリペプチドは、アポE133-162の直列反復又はその短縮型を含むことができる。“アポE133-162の直列反復”とは、:LRVRLASHLRKLRKRLLRDADDLQKRLAVY(配列番号:5)のアミノ酸配列を有するペプチドのダイマーを意味する(すなわち60merポリペプチド、LRVRLASHLRKLRKRLLRDADDLQKRLAVYLRVRLASHLRKLRKRLLRDADDLQKRLAVY(配列番号:97))。Azumaらが開示したアポE133-162ペプチド(30mer)は、ある程度の抗菌活性を有することが示された。しかしながら驚くべきことに、本発明の発明者らは、Azumaのペプチドの直列反復は改善された抗菌性能を有することを示し、このことは全く予想に反していた。
更なる特徴では、医薬として使用される、先行するいずれかの特徴のポリペプチドが提供される。
更なる特徴では、細菌感染の治療用の医薬の製造のための、先行するいずれかの特徴のポリペプチドが提供される。
【0037】
それらの生物学的活性の強化のために、本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体は抗菌剤として有用である。
本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体は、いずれの細菌又は細菌感染に対する治療でも用いることができる。前記細菌はグラム陽性でもグラム陰性でもよい。
例えば、本発明のポリペプチドが有効である細菌にはフィルミクテス(Firmicutes)(前記はバチルス属又はクロストリジウム属、例えばボツリヌス菌(Clostridium botulinum)であろう)が含まれよう。
好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドが有効な細菌には、バチルス目、好ましくはスタフィロコッカス、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が含まれよう。本発明のペプチドが有効であるさらに別のバチルス目には、連鎖球菌(ストレプトコッカス:Streptococci)、例えば化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)又は肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)が含まれよう。
本発明のポリペプチドが有効な更なる細菌の例には、シュードモナス目、好ましくは緑濃菌(Pseudomonas aeruginosa)が含まれよう。本発明のポリペプチドが有効な更なる細菌の例には、ガンマプロテオバクテリアが含まれよう。前記はそれぞれ独立に、腸内細菌目(プロテウス、セラチア)、パスツレラ目、ビブリオ目から成る群から選択されよう。
腸内細菌目には、エシェリキア(Escherichia)が含まれる。好ましいプロテウスには、プロテウス・ミラビリス(P. mirabilis)が含まれる。好ましいセラチアには霊菌(Serratia marcescens)が含まれる。好ましいパスツレラ目にはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が含まれる。好ましいビブリオ目にはコレラ菌(Vibrio cholerae)が含まれる。
【0038】
本発明のポリペプチドが有効な更なる細菌の例には、ベータプロテオバクテリア(ナイセリア目、例えば淋菌(Neisseria gonorrhoeae)を含む)が含まれよう。本発明のポリペプチドが有効な更なる細菌の例には、デルタ/イプシロンにさらに細分類されるプロテオバクテリア(カンピロバクター目、例えばピロリ菌(Helicobacter pylori)を含む)が含まれよう。本発明のポリペプチドが有効な更なる細菌の例には、放線細菌(アクチノバクテリア)、例えばヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)及びノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)が含まれよう。
発明者らは、本明細書に開示したどのポリペプチドが試験細菌(黄色ブドウ球菌、緑濃菌及び肺炎連鎖球菌)に対して抗菌活性を示すかを決定するための実験を実施した。本発明のポリペプチドの活性は、表5、6、7及び8で見出すことができる。好ましくは、本発明のポリペプチドは、黄色ブドウ球菌、緑濃菌及び肺炎連鎖球菌の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、さらに好ましくは全てに対して抗菌活性を示す。好ましくは、本発明のポリペプチドは、黄色ブドウ球菌及び緑濃菌の両方に対して抗菌活性を示す。しかしながら、本発明者らは、GIN7、MU58、MU114、MU61、MU60及びGIN41(配列番号:10)は特にスタフィロコッカスに対して活性を有し、特に黄色ブドウ球菌に対して活性を有することを見出した。さらにまた、発明者らは、GIN1p、MU61、MU82、MU113、MU114、MU115、GIN34、GIN8(配列番号:11)、GIN2(配列番号:3)及びGIN11(配列番号:4)は、特にシュードモナス目、特に緑濃菌に対して有効であることを見出した。さらにまた、発明者らは、GIN7(MU4−配列番号:7)、GIN34(配列番号:9)、GIN(配列番号:3)及びMU37(配列番号:91)は、特にストレプトコッカス、特に肺炎連鎖球菌に対して有効であることを見出した(IC50値は30μM未満)。
【0039】
本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体を単一療法として(すなわちポリペプチド又は核酸のみの使用)、又は抗菌療法で用いられる他の化合物又は治療と組み合わせて用いて細菌感染を治療することができる。例えば、一般的な抗生物質にはアミカシン、アモキシシリン、アズトレオナム、セファゾリン、セフェピム、セフタジジム、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、イミペネム、リネゾリド、ナフシリン、ピペラシリン、キノプリスチン-ダルホプリシン、チカルシリン、トブラマイシン及びバンコマイシンが含まれる。
発明者らはいずれの仮説にも拘束されることを欲しないが、本発明のポリペプチドによる抗菌作用メカニズムは、細菌に対する直接的傷害作用(細菌膜を媒介として又は細菌内部位を媒介として)が中心的に関与しているであろうことを示唆した。驚くほどに少数のペプチド配列のみが細菌に対して有効であることが判明したのはおそらくこの理由によるのであろう。
本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体の治療効果は、前記ポリペプチド、誘導体又は類似体の活性を高める薬剤によって“間接的に”媒介されえることは理解されよう。
したがって、本発明のさらに別の特徴にしたがえば、医薬として使用される、又は細菌感染治療用医薬の製造のために使用される、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチド、誘導体又は類似体の生物学的活性を高めることができる薬剤が提供される。
【0040】
本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体の生物学的活性を高めることができる薬剤は、多数の手段によってその作用を発揮することができる。例えば、そのような薬剤は本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体の発現を高めることができる。また別には(又は前記に加えて)、そのような薬剤は、本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体の生物学的な系における半減期を、例えば前記ポリペプチド、誘導体又は類似体のターンオーバーを低下させることによって延長させることができる。
本発明のポリペプチドの誘導体は細菌感染治療に用いることができる。そのような誘導体は、前記ポリペプチドの半減期をin vivoで延長又は短縮させることができる。本発明のポリペプチドの半減期を延長させることができる誘導体の例には、前記ポリペプチドのペプトイド誘導体、前記ポリペプチドのD-アミノ酸誘導体、及びペプチド-ペプトイドハイブリッドが含まれる。
本発明のポリペプチドは、多数の手段(例えば生物学的な系におけるプロテアーゼ活性)によって分解されえる。そのような分解は、前記ポリペプチドの生体利用性を制限し、したがって前記ポリペプチドがその生物学的機能を発揮する能力を制限しえよう。生物学的環境において強化された安定性を有する誘導体を設計し、製造する確立された多様な技術が存在する。そのようなポリペプチド誘導体は、プロテアーゼ媒介分解に対する耐性の増加の結果として生体利用性が改善されえる。好ましくは、本発明の使用に適した誘導体又は類似体は、それが誘導されたペプチドよりもプロテアーゼに対してより耐性である。
【0041】
好ましくは、前記ポリペプチドはN-及びC-末端を保護することによってよりプロテアーゼ耐性にすることができる。例えば、N-末端はアセチル基によって、又はアルキル若しくはアリール基によって、又はアルキル-CO-若しくはアリール-CO-基によって保護することができ、前記の基の各々は場合によって置換されえる。C-末端はアミド基又は置換アミド基によって保護することができる。
ポリペプチド誘導体及び前記誘導体が由来したポリペプチドのプロテアーゼ耐性は、周知のタンパク質分解アッセイの手段によって評価することができる。続いて前記ポリペプチド誘導体及び前記ポリペプチドのプロテアーゼ耐性の相対値を比較することができる。
本発明のポリペプチドのペプトイド誘導体は、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチドの構造に関する情報から容易に設計することができる。市販のソフトを用いて確立されたプロトコルにしたがってペプトイド誘導体を開発することができる。
レトロペプトイド(全てのアミノ酸が逆の順序でペプトイド残基によって置き換えられている)はまた、アポリポタンパク質から誘導される抗菌ポリペプチドを模倣することができる。レトロペプトイドは、ペプチド又は1つのペプトイド残基を含むペプトイド-ペプチドハイブリッドと比べたとき、リガンド結合溝において反対の向きで結合すると予想される。結果として、前記ペプトイド残基の側鎖は本来のペプチドの側鎖と同じ方向に向くことができる。
本発明のポリペプチドの改変形のまた別の実施態様はポリペプチドのD-アミノ酸型を含む。L-アミノ酸ではなくD-アミノ酸を用いるペプチドの調製物は、正常な代謝プロセスによる前記作用因子の望ましくない分解を大きく低下させ、投与されねばならない作用因子の量を減少させるとともにその投与頻度も減少させる。
本発明のポリペプチド、類似体又は誘導体は、生物学的細胞により都合よく発現させることができる生成物である。
【0042】
本発明はまた更なる特徴において、本発明のポリペプチド、誘導体又は類似体をコードする核酸配列を提供する。
本発明の更なる特徴の好ましい核酸には以下が含まれる:配列番号:23(cttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:24(cgtcttactc gtaaacgtggtcttaaa)、配列番号:25(cttcgtaaacgtcttcttcttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:26(caatctactgaagaacttcgtgttcgtcttgctagtcatcttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:27(cttcgtgttcgtcttgctagtcatcttcgtaaacttcgtaaacgtcttcttcgtgatgctgatgatcttcaaaaacgtct tgctgtttatcttcgtgttcgtcttgctagtcatcttcgtaaacttcgtaaacgtcttcttcgtgatgctgatgatcttcaaaaacgtcttgctgtttat)、配列番号:28(cttcgtaaacttcgtaaacgtcttcttcttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:29(tggcgtaaatggcgtaaacgttggtggtggcgtaaatggcgtaaacgttggtgg)、配列番号:30(tggcgtaaatggcgtaaacgttggtggcgtaaatggcgtaaacgttgg)、配列番号:31(tggcgtaaat ggcgtaaacgttggtggcttcgtaaacttcgtaaacgtcttctt)、配列番号:32(tatcgtaaatatcgtaaacg ttattattatcgtaaatatcgtaaacgttattat)、配列番号:33(cttcgtaaacttcgtaaacgtcttcgtaaacttcgtaaacgt)、配列番号:34(cgtcttactcgtaaacgtgg tcttaaacgtcttactcgtaaacgtggtcttaaa)、配列番号:35(cgtactcgtaaacgtggtcgtcgtactcgt aaacgtggtcgt)、配列番号:36(cttcgtaaacgtaaacgtcttcttcgtaaacgtaaacgtctt)、配列番号:37(cttcgtaaacgtaaacgtcttcgtaaacttcgtaaacgtaaacgtcttcgtaaa)、及び配列番号:38(tggcgttggcgtaaacgttggcgtaaatggcgttggcgtaaacgttggcgtaaa)。
【0043】
好ましい核酸にはさらに、本発明の好ましいポリペプチドのいずれかをコードする、対応するDNA分子が含まれる。
遺伝暗号の縮退のために、本発明の核酸配列は、天然に存在する配列(例えばアポB又はアポE遺伝子)からは変化しえることは理解されよう(ただし、コドンが、本発明の第一、第二又は第三の特徴にしたがってそのポリペプチド、誘導体又は類似体をコードすることを条件とする)。
ポリペプチド配列における他の改変もまた意図され、本発明の範囲内に包含される。すなわち、前記は、翻訳時又は翻訳後に、例えばアセチル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、タンパク質分解切断又はリガンドとの結合によって生じる。
本発明のポリペプチド、誘導体及び類似体は、そのような分子をコードする核酸配列の細胞による発現を含む技術によって投与することが有利な薬剤であることは理解されよう。そのような細胞による発現方法は、前記ポリペプチド、誘導体及び類似体の治療効果が長期にわたって要求される医薬的利用に特に適している。
したがって、本発明の更なる特徴にしたがえば、医薬として使用される、本発明の前述の特徴の核酸配列が提供される。
更なる特徴にしたがえば、細菌感染治療用医薬の製造のための、前記核酸の使用が提供される。
前記核酸は好ましくは単離又は精製された核酸配列であろう。前記核酸配列は好ましくはDNA配列であろう。
前記核酸配列はさらに、その発現を制御及び/又は強化することができるエレメントを含むことができる。前記核酸分子は適切なベクターに含ませて、組換えベクターを形成することができる。前記ベクターは、例えばプラスミド、コスミド又はファージでもよい。
そのような組換えベクターは、前記核酸で細胞を形質転換するためのデリバリー系として非常に有用である。
【0044】
組換えベクターはまた他の機能的エレメントを含むことができる。例えば、組換えベクターは、それが細胞内で自律的に複製するように設計することができる。この事例では、核酸の複製を誘導するエレメントが組換えベクターに必要とされるであろう。また別には、組換えベクターは、前記ベクター及び組換え核酸分子が細胞のゲノムに組み込まれるように設計することができる。この事例では、標的とされる組み込みに有利な(例えば相同組換えによる)核酸配列が所望される。組換えベクターは又、クローニング過程で選別可能マーカーとして用いることができる遺伝子をコードするDNAを含むことができる。
さらに前記組換えベクターはまた、遺伝子の発現を必要なように制御するためにプロモーター又は調節因子を含むことができる。
前記核酸分子は、治療される対象者の細胞のDNAに組み込まれる核酸であってよい(必ずしもというわけではないが)。未分化細胞が安定的に形質転換され、遺伝的に改変された娘細胞の産生をもたらす(この場合には、例えば特別な転写因子又は遺伝子活性化因子により対象者における発現の調節が要求されるであろう)。また別には、治療される対象者の分化細胞の不安定性又は一過性形質転換に有利なように、デリバリー系を設計することができる。この場合には、形質転換細胞が死んだとき又は前記タンパク質の発現を停止したときに(理想的には必要な治療効果が達成されたときに)DNA分子の発現が停止するので、発現の調節は前述の事例ほど重要ではない。
【0045】
前記デリバリー系は、前記核酸分子をベクター内に取り込むことなく対象者に前記分子を提供することができる。例えば、前記核酸分子はリポソーム又はウイルス粒子内に取り込むことができる。また別には、“裸の”核酸分子を対象者の細胞に適切な手段(例えば直接的エンドサイトーシスによる取り込み)によって挿入してもよい。
核酸分子は、トランスフェクション、感染、マイクロインジェクション、細胞融合、プロトプラスト融合又は弾道ボンバードメント(ballistic bombardment)によって、治療されるべき対象者の細胞に導入することができる。例えば、導入は、被覆金粒子による弾道トランスフェクション、核酸分子を含むリポソーム、ウイルスベクター(例えばアデノウイルス)、及び核酸分子を直接適用することによって直接的な核酸の取り込みを提供する手段(例えばエンドサイトーシス)によることができる。
本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を単独療法(すなわち本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体のみを使用して細菌感染を予防及び/又は治療する)で用いることができることは理解されよう。また別には、本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を、付属物として、又は既知の療法と併用して用いてもよい。
本発明の更なる特徴にしたがえば、細菌感染を予防及び/又は治療する方法が提供される。前記方法は、そのような治療を必要とする対象者に本発明のポリペプチド、誘導体若しくは類似体、又は核酸の有効量を投与することを含む。
【0046】
本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を、種々の多くの形態を有する組成物中で、特に前記組成物が用いられる態様に応じて組み合わせることができる。したがって、例えば、前記組成物は散剤、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エーロゾル、スプレー、ミセル、経皮パッチ、リポソームの形態であるか、又は人間又は動物に投与することができる任意の他の適切な形態でありえる。本発明の組成物の賦形剤は、前記組成物が投与される対象者が十分に耐性を有し、さらに前記ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の脳へのデリバリーを可能にするように好ましくは順化されてあるものでなければならないことは理解されよう。本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体は、それらの血液脳関門の通過が許容されるような態様で製剤化されるのが好ましい。
本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を含む組成物は多数の方法で用いることができる。例えば経口投与は、錠剤、カプセル又は液体の形態で例えば経口的に摂取できる組成物中に前記化合物を収納することができる場合に要求することができる。また別には、前記組成物は血流中に注射によって全身的に投与することができる。注射は、静脈内(ボラス投与又は輸液)又は皮下注射(ボラス投与又は輸液)であろう。前記化合物は吸入によって(例えば鼻腔内から)投与してもよい。
【0047】
本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を含む組成物は、経口的に又は全身的に投与してもよい。さらにまた、組成物は、エーロゾルによって、例えば噴霧装置を用いて(経鼻的投与できる)、又は吸入装置によって肺を介して投与してもよい。あるいは、前記組成物は局所的に、例えばクリーム又はゲルとして適用してもよい。局所投与は、治療されるべき対象者が皮膚の細菌感染を発しているときに有用である。前記組成物は膣内に適用してもよい(例えば、性交伝達疾患から対象者を保護することが必要な場合)。
ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体はまた徐放性又は遅放性装置内に取り込ませることができる。そのような装置は、例えば皮膚上に又は皮下に挿入し、数週間又は数ヶ月にさえわたって前記化合物を放出することができる。そのような装置は、本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体による長期治療が必要とされるとき、さらに通常頻繁な投与(例えば少なくとも毎日の注射)が必要とされるときに特に有利であろう。
必要とされるポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の量は、その生物学的活性及び生体利用性(用いられるポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の投与態様、及び前記ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体が単独療法として又は併用療法として用いられるか否かに依存する)によって決定されることは理解されよう。投与頻度はまた、上述の要因及び特に治療される対象者の体内での前記ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の半減期によって影響されるであろう。
【0048】
投与されるべき最適用量を当業者は決定することができ、さらに前記最適用量は、使用される個々のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体、調製物の濃度、投与の態様、及び症状の進行状況にしたがって変動するであろう。治療される個々の対象者に左右されるさらに別の要因が用量調節の必要をもたらすであろう。前記には対象者の年齢、体重、性別、食生活及び投与時期が含まれる。
公知の方法、例えば製薬工業において(例えばin vivo実験、臨床試験などで)通常的に用いられるような方法を用いて、本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の具体的な製剤及び正確な治療計画(例えばポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の1日の用量及び投与頻度)を確立することができる。
一般的には、1日の用量として本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の0.01μg/kg体重から0.5g/kg体重が、ウイルス感染の予防及び/又は治療のために用いられ得るが、前記は使用される具体的なポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体に左右される。より好ましくは1日の用量は0.01mg/kg体重から200mg/kg体重、もっとも好ましくはおよそ1mg/kgから100mg/kgである。
【0049】
1日の用量は1回の投与として与えることができる(例えば毎日1回の注射)。あるいは、使用されるポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体は1日に2回または3回以上の投与を必要とするかもしれない。一例として、本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体は、毎日2回(又は症状の重篤度に応じて3回以上)、1日25mgから7000mg(すなわち体重70kgと仮定して)の間の用量で投与することができる。治療を受ける患者は、最初の投与を起床時に続いて夕方に第二回目の投与を(2回投与計画の場合)、又はその後3若しくは4時間間隔で投与を受けることができる。また別には、徐放性装置を用いて、反復投薬の必要なく患者に最適用量を用いることができる。
本発明は、治療的に有効な量の本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体及び場合によって医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。ある実施態様では、ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の量は約0.01mgから約800mgの量である。別の実施態様では、ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の量は約0.01mgから約500mgの量である。
また別の実施態様では、ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の量は約0.01mgから約250mgの量である。また別の実施態様では、ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の量は約0.1mgから約60mgの量である。また別の実施態様では、ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の量は約0.1mgから約20mgの量である。
【0050】
本発明は、治療的に有効な量の本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体及び医薬的に許容できる賦形剤を一緒に含む医薬組成物を製造する方法を提供する。“治療的に有効な量”とは、本発明の第一の特徴のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の任意の量であって、対象者に投与されたときにウイルス感染の予防および/または治療を提供する量である。“対象者”は、脊椎動物、哺乳動物、家畜又はヒトである。
本明細書で用いられる“医薬的に許容できる賦形剤”は、医薬組成物の製剤化で有用な、当業者に公知の任意の生理学的賦形剤である。
好ましい実施態様では、前記医薬賦形剤は液体であり、医薬組成物は溶液の形態である。別の実施態様では、医薬的に許容できる賦形剤は固体であり、医薬組成物は散剤又は錠剤の形態である。さらに別の実施態様では、医薬賦形剤はゲルであり、組成物はクリームなどの形態である。
固体の賦形剤は1つ又は2つ以上の物質を含むことができ、前記物質はまた、香料、滑沢剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、研磨剤、圧縮補助剤、結合剤又は錠剤崩壊剤として機能してもよい。前記はまた被包化物質であってもよい。散剤では、前記賦形剤は微細に分割された固体であって、微細に分割された活性なポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体と混合されている。錠剤では、活性なポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体は、必要な圧縮特性を有する賦形剤と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。前記散剤及び錠剤は、好ましくは99%までの活性なポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を含む。適切な固体の賦形剤には、例えばリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ロウ及びイオン交換樹脂が含まれる。
【0051】
液体賦形剤は、溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、エリキシル及び加圧組成物の製造で用いられる。活性なポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体は、医薬的に許容できる液体賦形剤、例えば水、有機溶媒、両者の混合物又は医薬的に許容できる油若しくは脂肪に溶解又は懸濁することができる。液体賦形剤は他の適切な医薬的添加物、例えば可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存料、甘味剤、香料、懸濁剤、膨張剤、着色剤、粘度調節剤、安定化剤、又は浸透圧調節剤を含むことができる。経口及び非経口投与を目的とする適切な液体賦形剤の例には、水(上記のような添加物、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロース溶液を部分的に含む)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール(例えばグリコール)を含む)及びそれらの誘導体、並びに油(例えば分別化ココナッツ油及び落花生油)が含まれる。非経口投与のためには、賦形剤はまた油状エステル、例えばオレイン酸エチル及びイソプロピルミリステートであろう。滅菌液体賦形剤は、非経口投与を目的とした滅菌液体組成物で有用である。加圧組成物のための液体賦形剤は、ハロゲン化炭化水素又は他の医薬的に許容できる高圧ガスであろう。
【0052】
滅菌溶液又は懸濁液の液体医薬組成物は、例えば筋肉内、硬膜下腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内及び特に皮下、脳内又は脳室内注射で利用することができる。ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体は滅菌固体組成物として製造することができ、前記を投与時に滅菌水、生理食塩水又は他の適切な無菌的注射用媒体を用いて溶解又は懸濁させることができる。賦形剤は必要な不活性結合剤、懸濁剤、滑沢剤、香料、甘味剤、保存料、色素及びコーティングを含むことが意図される。
本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体は、無菌的溶液又は懸濁液の形態で経口的に投与することができる。前記は、他の溶質又は懸濁剤(例えば溶液を等張にするために十分な生理食塩水又はグルコース)、胆汁塩、アラビアゴム、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(エチレンオキシドと共重合させたソルビトールとその無水物のオレイン酸エステル)などを含む。
本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体はまた、液体又は固体組成物形態のどちらかで経口的に投与することができる。経口投与に適した組成物には、固体形(例えばピル、カプセル、顆粒、錠剤及び散剤)及び液体形(例えば溶液、シロップ、エリキシル及び懸濁液)が含まれる。非経口投与に有用な形態には無菌的溶液、乳濁液及び懸濁液が含まれる。
本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を用いて、任意の哺乳動物(例えばヒト、家畜、ペット)を治療することができる。さらに他の獣医的利用で用いてもよい。
【0053】
発明者らは、本発明のポリペプチドは医薬として用いることもできるが、また(臨床的であれ他の環境であれ)多数の他の抗菌的使用に利用できることを知った。例えば、本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体の患者への投与に加えて、前記は、細菌の汚染の予防又は処置のために、表面及び物体を被覆するために使用することができる。
したがって、更なる特徴において、細菌の汚染を予防及び/又は処置する方法が提供される。前記方法は、その必要がある物体又は表面を、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチドのある量(前記は殺菌又は細菌の増殖を予防するために有効な量である)で被覆することを含む。
前記ポリペプチドは、無菌的であることが要求される表面又は物体を被覆するために特に有用でありえることは理解されよう。上記で考察したように、前記ポリペプチドの多くが抗ウイルス性及び抗菌性の両方を有するという利点をもつ。したがって、前記ポリペプチドは広域の抗微生物作用を有するであろう。さらにまた、下記でより詳細に考察するように、前記ポリペプチドは表面に付着することができ、したがってより長期間有効である。
前記ポリペプチドを用いて、生物学的又は医学的状況で使用されるか(例えば医療装置)、又は患者に何らかの感染をもたらす可能性がある細菌汚染を防止することが重要な任意の物体又は装置を被覆することができる。本発明にしたがって被覆することができる医療装置の例には、レンズ、コンタクトレンズ、カテーテル、ステント、創傷治療包帯、避妊具、外科用インプラント及び代用関節が含まれる。
【0054】
前記ポリペプチドは、バイオマテリアル並びにそれらから製造された物体及び装置の被覆に特に有用である。バイオマテリアルの細菌汚染/感染は、細菌がそのような物質上で増殖するための基質として用いることができるので特に問題となりえる。バイオマテリアル(例えばコラーゲン及び他の生物学的ポリマー)は、そのようなバイオマテリアルを構成しえる。
前記ポリペプチドを用いて、無菌的であることを要する環境内の表面を被覆することができる。例えば、前記ポリペプチドを医療環境で用いることができる。前記ポリペプチドを用いて、病室を清潔に保つことができる。前記ポリペプチドを用いて、手術教室の装置(例えば手術台)の他に壁及び床の表面を清浄にすることができる。発明者らは、前記ポリペプチドは、概して無菌性の改善及び特にMRSAの拡散対策に有用であろうと考える(発明者らは、本発明のポリペプチドはMRSAを殺すことができると考える)。
前記ポリペプチドは物体及び表面の洗浄溶液として製剤化することができる。例えば、前記は、生理学的溶液の日常的構成成分でありえる(例えば生理学的食塩水の成分として)。
実施例3は、本発明のポリペプチドがいかに良好にコンタクトレンズに付着するかを示している。さらにまた、実施例2は、前記ペプチドがオートクレーブの後でさえもその抗菌活性を驚くほど維持しえることを示している。このことは、使用に際して高温及び高圧に暴露される物体の被覆に前記ペプチドを用いるときにもっとも有利である。さらにまた、多くの医療装置(例えば手術器具)は使用と次の使用の間に(通常はオートクレーブによって)滅菌する必要があることは理解されよう。したがって、本発明のペプチドは、それらが(i)表面に付着し、さらに(ii)滅菌後もその抗菌活性を維持するので非常に有用である。
【0055】
本発明のポリペプチドを適用することができる物体及び表面の上記リストは網羅的なものではないことは理解されよう。したがって、前記ポリペプチドは、細菌に汚染されやすいいずれの表面(例えば台所及び浴室の表面)及び製品(例えば便座又は便器そのもの)にも適用することができる。
好ましい実施態様では、前記ポリペプチドは、コンタクトレンズの保存に用いられる食塩水溶液に含有させることができる。
本発明の好ましいポリペプチドは強く正に荷電されている。このことにより、前記ポリペプチドは、広範囲の細菌の増殖を防止する目的で表面及び物体を被覆するために特に適切となる。実施例3並びに図8及び9は、本発明のポリペプチドが、いかに良好に種々の表面、すなわちガラス(カバースリップ)(ガラスは予めラクチド-グリコリド共重合体(PLGA)バイオマテリアルで被覆されている)及びコンタクトレンズに付着するかをはっきりと示している。
好ましくは、物体又は表面の被覆は、本発明のポリペプチドにとって適切なpH及び温度の水溶液を調製することによって実施できる。物体又は表面は、適切な量のポリペプチドを前記表面に固定又は吸収させるために十分な時間、又は細菌を死滅させるために十分な時間、前記水溶液に暴露される。
好ましい実施態様では、本発明のポリペプチドの十分に濃縮された溶液を調製し、被覆されるべき物体と適切な時間接触させる。当業者は、必要な濃度のポリペプチド溶液の作製の仕方を認識していよう。なぜならば、使用されるべきポリペプチド及び処理されるべき細菌及び被覆されるべき表面のそれぞれに左右されるからである。例えば、物体を前記溶液(例えば40μMのポリペプチドを含む)に挿入し、約20℃で約15分静置することができる。前記ポリペプチドに暴露した後、前記物体を、例えば適切な緩衝液(例えばPBS)中で洗浄することができる。物体を洗浄緩衝液に一晩静置することが要求されるであろう。洗浄後、ポリペプチドは物体に付着されてあり、前記防御ポリペプチドで被覆された物体は直ちに使用することができる。
さらにまた、発明者らは、本発明のポリペプチドでプレインキュベートしたとき、コンタクトレンズは、図2、3及び4に示されているように細菌感染に耐性を示すことを見出した。
【0056】
本発明の更なる特徴にしたがえば、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチドで少なくとも部分的に被覆されたコンタクトレンズが提供される。
コンタクトレンズの表面に適用されたポリペプチドは、使用者の眼に細菌感染を生じさせ得る細菌汚染を防止する。
ある実施態様では、レンズは使い捨て1日レンズ(すなわち1日装着されその後廃棄される)でありえる。この事例では、レンズの使用前及びパッケージから取り出すときに細菌汚染が回避される。したがって、レンズはポリペプチドで前処置されるか、及び/又はポリペプチド含有溶液中に梱包することができる。前記ポリペプチド被覆レンズは、前記コンタクトレンズが装着されている間に使用者に起こりえる細菌感染の可能性を少なくする。
また別には、レンズは数ヶ月又は数年間毎日繰返し装着することができるが、取り出して洗浄し一晩溶液に保存される。このようにするときは、レンズ上へのポリペプチドの被覆(第一回目の使用の前)及び/又は好ましくはレンズ洗浄溶液でのポリペプチドの使用によって、レンズが装着されている間に生じる使用者の細菌感染の可能性、又はレンズ保存中及び一晩の洗浄中のレンズの汚染の可能性は顕著に低下するであろう。
【0057】
また別の実施態様では、レンズは長期間装着レンズであってもよい。前記は長期間にわたって、例えば1日、数日、1週間、若しくは1ヶ月より長く、又はそれより長い期間、定常的に眼に装着される。そのようなコンタクトレンズの使用者は細菌感染を起こす危険性が高い。したがって、この場合には、最初に使用される前にレンズを被覆するためにポリペプチドを用いることができる。そのような被覆レンズを使用することによって、そのような長期間にわたってレンズを装着している間に、細菌感染が発生する可能性は大きく低下するであろう。
好ましい実施態様では、コンタクトレンズは本発明のポリペプチドで被覆され、さらに適切な場合には、レンズは前記ポリペプチドを含む溶液で保存及び/又は洗浄される。
発明者らは、本発明のいくつかのポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を組み合わせて、広域の細菌感染/汚染を(ウイルス感染/汚染も同様)予防又は治療することができることを確立させた。好ましくは、例えば、本発明の第一、第二又は第三の特徴のいずれかのポリペプチド(例えばGIN1p、GIN7、GIN32、GIN33及びGIN34から成る群からそれぞれ独立して選択されるポリペプチド)を組み合わせて細菌感染/汚染を処置することができる。
しかしながら、種々のポリペプチド組合せを用いて種々の細菌感染を治療することができることは理解されよう。
【0058】
さらにまた、本発明のポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体は、保存料として使用することによって又は保存料と併用して、細菌による汚染又は細菌の増殖を最小限にするか、予防又は処置することができる。したがって、前記ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を食品で保存料として用いることができる。さらにまた、前記ポリペプチド、薬剤、核酸又は誘導体を、培養(例えば組織培養)で抗生物質を補完又は代用するために用いて、細菌の増殖を最小限にするか又は予防することができる。さらにまた、前記ポリペプチドを診断薬として、例えば培養液での細菌増殖の選別薬剤として用いることができる。例えば、第一のポリペプチドを培養液に添加し(第一のポリペプチドは第一の細菌に対して特に活性を有する)、さらに第二のポリペプチドを前記培養液に添加することができる(第二のポリペプチドは第二の細菌に対して特に活性を有する)。
本明細書(付随する特許請求の範囲、要約及び図面を全て含む)に記載した特徴のいずれも、及び/又はそのような開示方法又はプロセスのいずれの工程も、任意の組合せで、上記の特徴のいずれとも組み合わせることができる(ただし、そのような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが相互に排除される組合せは排除される)。
本発明の実施態様をこれから以下の実施例及び図面を参考にして例示により説明する。
【0059】
発明者らは多数の実験を実施し、本発明のポリペプチドの抗菌活性を調べた。黄色ブドウ球菌、緑濃菌及び肺炎連鎖球菌に対する前記ポリペプチドの活性を、コンタクトレンズ上での前記ポリペプチドの抗菌活性と併せて調べた。さらにまた、発明者らは、毒性試験及び遺伝子毒性試験を実施し、さらに、前記ポリペプチドが、高温に暴露された後(すなわちオートクレーブの後)でその抗菌活性を維持しているか否かもまた調べた。その他に、発明者らは、種々の表面(例えばコンタクトレンズ、ガラス及びバイオマテリアル“PLGA”で被覆した表面)への前記ポリペプチドの付着能力を調べた。
【実施例1】
【0060】
実施例1
抗菌性能判定
細菌ストック:ATCC由来ストック細菌をオキソイド社(Oxoid Ltd.)から入手した。緑濃菌(Pseudomonas aeruginosa;ATCC9027株)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus;ATCC6538P株)は“カルチループ(Cultiloop)”フォーマットで入手した。ストックは、20mLのLBブロスに1カルチループを接種し、一晩37℃でインキュベートして調製した。遠心(3000g、10分)で大きな凝集塊を除去し、16mLの上清を取り出すことによって、一晩のインキュベーション後に存在する細胞を採集した(これは主として浮遊細菌を含むと考えられる)。これに4mLの滅菌グリセロールを加えた(グリセロールはオートクレーブにより滅菌した)。得られた懸濁物を1mLずつ15本の凍結用バイアルに分注した後、-85℃で凍結した。
抗菌アッセイ
予備実験を実施して、25μLの稀釈ストックを100μLの新鮮なLBブロスに添加したとき、37℃で一晩インキュベートした後に対数増殖期の細菌を生じる細菌ストックの稀釈量を評価した。前記の量は、接種時にウェル当たりほぼ40,000cfuに一致することが判明した。
【0061】
ペプチド
ペプチド(本発明のペプチドを含む)を業者(AltaBioscience、University of Birmingham)から凍結乾燥形態で入手し、5マイクロモル規模で作製した。ペプチドのアミノ酸配列が与えられたならば、ペプチド合成のために利用することができる標準的技術を当業者は熟知していよう。N-末端はアセチル基の付加によって保護し、C-末端はアミド基の付加によって保護した。少量のペプチドを無菌的エッペンドルフ管に秤量し、その後十分なPBSAを添加して0.4mMのストック溶液を作製し、これを小分けして-85℃で凍結した。
ペプチドの分子量は、フィンニガン(Finnigan)のLASERMAT 2000MALDI-飛行時間型質量分析装置、又はサイエンティフィックアナリシスグループ(Scientific Analysis Group)のMALDI-TOF質量分析計を用いてレーザー脱離質量分析によって確認した。ペプチドのHPLC精製は、バイダック(Vydac)の分析用C-4逆相カラムを用い、溶媒として0.1%TFA及び0.1%TFA/80%アセトニトリルを用いて実施するか、又はいくつかのペプチドについては、ACE C18逆相カラムを用い溶媒として0.05%TFA及び60%アセトニトリルを用いて実施した。GIN1pペプチドについての典型的な質量分析データ及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)トレース(純度>95%)は、図10及び11に示されている。
【0062】
(a)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する抗菌性能
黄色ブドウ球菌に対するペプチドの抗菌性能を調べた。結果は表5に示されている。ペプチドの有効性を調べるために、テストペプチド又はPBS(コントロールとして使用する)の稀釈をLBブロスで調製し、これら稀釈の100μLアリコットを96ウェルプレートに加えた。浮遊細菌ストックのバイアルを37℃インキュベーターで融解し、前もって決定したレベル(一晩インキュベートした後対数増殖を生じる)に稀釈した(上記参照)。続いてこの細菌稀釈物の25μLをテストウェルに加えた(ペプチドが存在しないLBブロスを含むいくつかのウェルは細菌を全く接種せずに残し、これらはブランクとして使用した)。一晩増殖させた後、マイクロプレート分光光度計により620nmでの吸収を測定することによって個々のウェルの細菌の濃度を判定した。個々のペプチド濃度についてウェルの平均吸収を計算し、前記から百分率阻害(未処理ウェルと比較して)もまた算出し(パーセント阻害に対する推定誤差と併せて)、濃度に対してプロットした。最後に、細菌の増殖を50%阻害するペプチドのおよその濃度を前記のグラフから概算してIC50値を算出した。
被検ペプチドの有効性は表5に示されている。約40μM以下のIC50値をもついずれのペプチドも有効であると考えた。
【0063】
表5:アポE由来ペプチドの黄色ブドウ球菌に対する活性

【0064】
表5は、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチドは優れた抗菌性能をもつが、本発明の範囲内に含まれないペプチド(例えばGIN6、22又は39)は有効ではないことを示している。
【0065】
(b)緑濃菌(Pseudomonas aeruginosa)に対する抗菌性能
上記に記載した技術と同じ技術を用いて、本発明のペプチドを緑濃菌に対する抗菌性能についてもまた調べ、IC50値を算出した。検査した本発明のペプチドは表6に示されている。
【0066】
表6:アポE由来ペプチドの緑濃菌に対する活性

【0067】
表6はさらに、本発明の第一、第二又は第三の特徴のポリペプチドは優れた抗菌性能をもつが、本発明の範囲内に含まれないペプチド(例えばGIN6、10、12、22、28、39又は43)は有効ではないことを示している。
図1を参照すれば、GIN1p(本発明のポリペプチド)の種々の濃度又はPBSAの偽の稀釈に細菌接種物を暴露した後の緑濃菌の増殖レベルが示されている。図中の点は、6つの処理ウェルの平均を6つの未処理ウェルの平均で割ることによって得られ、棒線は、これら算出された値の推定誤差を示している。図1は、GIN1p(配列番号:6)の約4μMの濃度での抗菌性能を明瞭に示し、さらにGIN1pは約3μMのIC50濃度を有することを示している。
要約すれば、本発明のポリペプチドは黄色ブドウ球菌及び緑濃菌の両菌に対して抗菌活性を示す。
【0068】
(c)抗菌ポリペプチドによる被覆
本発明のポリペプチドを用いて、細菌によって汚染されやすい医療装置を被覆することができる。そのような医療装置の例には、レンズ、カテーテル、ステント、創傷治療包帯及び避妊具が含まれる。前記ポリペプチドはまた、医療環境での表面(手術教室で使用される装置の表面を含む)にも適用することができる。
表面の被覆は、個々のポリペプチドについて適切なpH(例えばpH7.4)で、ポリペプチドの濃縮水溶液(例えば200μM)を調製することによって実施することができる。続いて表面は、適切な量のポリペプチドがその表面に固定又は吸収されるように十分な時間(例えば2時間)、適切な温度(例えば37℃)で前記水溶液に暴露される。
(d)コンタクトレンズ上での抗菌性能を試験する実験
発明者らは、コンタクトレンズは、これを本発明のポリペプチドの溶液で予備インキュベートすると細菌感染に対して耐性をもつことを見出した。図2を参照すれば、ポリペプチドGIN1pによる前処理又はコントロール処理後のジョンソンアンドジョンソンのアキュビュー(Acuvue)コンタクトレンズ上での緑濃菌の増殖を示す棒グラフが提示されている。増殖は、光学顕微鏡による試験によって、及び存在する全細菌の代謝活性をMTT低下を用いて判定することによって測定した。データは、コンタクトレンズに適用したときの本発明のペプチドの抗菌特性の有効性を示している。抗菌活性はMTT低下を測定することによって評価した。
PBS(pH7.4)中250μMのGIN1p(75μL)、又はPBS(75μL)で処理する前にレンズを24ウェルプレートに置き、37℃で2時間インキュベートし、その後、これらの溶液を吸引によってレンズから除去した。続いてウェルにPBSを1mLさらに添加してゆるく付着したペプチドを洗い流し、その後この洗浄溶液を吸引した。最後に、PBS中の20%(v/v)LBブロスの1mLを各ウェルに添加した。後者は104個の攻撃菌(これは眼にとっておそらく妥当な攻撃レベルに近い量である)を含んでいた。計算の結果、最初のポリペプチド溶液又は洗浄溶液の吸引が完全ではなくても、該当濃度のポリペプチドが持ち越され、なお前記の溶液系に存在(すなわち最初のペプチドストックの単なる稀釈物として)するが、前記の量は200nM未満で、それ自体では細菌感染を阻害するには低すぎることが示唆された。
【0069】
前記プレートを37℃のインキュベーターに戻した。約15時間のインキュベーション後に、レンズのいくつかを2mg/mLのMTT溶液に暴露し、さらに1時間37℃でインキュベートした。残りのレンズは光学顕微鏡(Olympus IX70)を用いて調べ、さらに拡大せずに調べた。
MTT処理レンズを前記の追加インキュベーション後にMTT溶液から取り出し、1mLのDMSO中に静置して、存在する全ての細菌の代謝活性によって精製される一切の青色フォルマザン結晶を可溶化させた。フォルマザン生成の程度をこれら溶液のアリコットについて540nmでの吸収の測定によって判定した。これらの値は図2に示されている。図2は4枚のレンズの平均を表し、棒線は標準偏差を示している。
図3を参照すれば、一晩インキュベーション後の、24ウェルプレートの4つのウェルに置かれた2枚のGIN1p処理コンタクトレンズ(図3の右側)及び2枚のコントロール処理コンタクトレンズ(図3の左側)の外観を示す写真が提示されている。この図は、2枚のGIN1p処理コンタクトレンズは細菌感染がより発生しにくいことを明瞭に示している。2枚のコントロールレンズ(本発明のポリペプチドで前処理されていない)を含む反応溶液は混濁しており、細菌がそこで増殖していることを示している。しかしながら、2枚のGIN1p前処理コンタクトレンズを含む溶液は無色で、ほとんどの細菌の増殖が最小限であることを示している。
図4を参照すれば、一晩インキュベーション後の(i)コントロール処理コンタクトレンズ、及び(ii)GIN1p処理コンタクトレンズの表面の外観を示す光学顕微鏡写真を示している。図4は、コントロール処理レンズは細菌の増殖で覆われているが、GIN1p処理レンズは最小限の細菌増殖を示すことをはっきりと示している。したがって、本発明のGIN1pポリペプチドは明瞭な抗菌活性を示す。
したがって、発明者らは、抗菌活性を示す形態でこれらポリペプチドをレンズに固定するいずれの方法も、コンタクトレンズの装着者における微生物関連副反応(例えば角膜炎)のリスクを低下させるであろうと提唱する。
【0070】
(e)毒性アッセイ
図5を参照すれば、種々のレベルのGIN1p及びGIN16で48時間処理した細胞のMTT低下が示されている。
アフリカミドリザル腎(Vero)細胞を、アールの塩類(Earle's salt)を含むイーグル(Eagle's)最小必須培地(EMEM)に10%ウシ胎児血清(熱不活化)、4mMのL-グルタミン及び1%(v/v)非必須アミノ酸並びにペニシリン及びストレプトマイシン(それぞれ100IU/mg及び100mg/mL)を補充したもの(10%EMEMと称される維持培養液)で維持した。5%CO2を含む湿潤空気中で37℃で細胞をインキュベートした。採集するときは、単層培養物をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、PBS中のトリプシンとともに30分インキュベートして剥がし、その後、等容積の10%EMEMを添加してトリプシンを不活化し、500g(5分、4℃)で遠心した。
100μLの10%EMEMに30,000細胞/ウェルでVero細胞を96ウェルプレートに播種した。一晩増殖させた後、培養液を穏やかに吸引し、種々の濃度のペプチドを含む10%EMEM、又はいくつかの事例では単に10%EMEMのみで置き換えた。細胞を48時間インキュベーターに戻し、その後、25μLのMTT溶液(1.5mg/mL)(0.5% EMEMで調製してから、無菌的0.22μMフィルターでろ過した)を添加した。続いてこのプレートをインキュベーターに1時間戻した。最後に、培養液をウェルから取り出し、100μLのジメチルスルホキシド(DMSO)を添加することによって全ての青色のフォルマザン結晶を可溶化した。続いて、得られた溶液の吸収を570nmで測定し、各ペプチド濃度について毒性作用をコントロールの値の百分率として表した。可能な場合には、ペプチド濃度に対する毒性作用の図表からEC50を算出した。幸いなことに、40μMで2日間ペプチドを細胞に暴露した場合は、被検細胞株について毒性作用の証拠は見出されなかった。
【0071】
(f)遺伝子毒性
さらにまた、発明者らは、図6A−6Cに要約されているように、これらペプチドの多数の正電荷にもかかわらず、前記ペプチドがほとんど又は全く遺伝子傷害活性をもたないことを見出した。このことはジェントロニクスグリーンスクリーン(Gentronix GreenScreen)GC遺伝子毒性アッセイ(Gentronix Ltd., 72 Sackville St. Manchester, M60 1QD, UK)によって明らかにされ、前記を用いてペプチドGIN1p、GIN33及びGIN34を試験した。
液体操作ロボットを用いて、光学的に透明な底をもつ96ウェルの黒色マイクロプレート中に各テスト化合物の一連の連続稀釈物を作製した。テスト化合物の各稀釈物をサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)酵母細胞(GenT01株、この改変株の特性の詳細については以下の文献を参照されたい:Mutation Research, 2000, 464:297-308)を含む特殊な増殖培養液の等容積と一緒にして、一定の最終容積及び細胞濃度を提供した。さらにまた、内部品質コントロールを提供するため、一連の遺伝子毒性及び細胞毒性標準物並びに非毒性コントロールを使用した。プレートを呼吸可能膜で覆い、振盪せずに25℃で一晩インキュベートした。
【0072】
インキュベーション後に、前記マイクロプレートの覆いを外し、テカンウルトラ(Tecan Ultra)384マイクロプレートリーダーでデータを採集した。この装置はマイクロプレートの光の吸収及び蛍光の測定を提供する。標準的蛍光フィルターセット(励起485/25及び放射535/25)を用いた。吸収は620nmで読み取ったが、この吸収は細胞増殖と比例する(吸収は毒性分析物によって低下する)。蛍光はDNA修復系の活性と比例する(遺伝子毒性分析物によって増加する)。使用した酵母培養物は遺伝的に改変された株で、細胞がDNA損傷修復を行う場合は常に緑色蛍光タンパク質を発現する。テスト化合物の酵母細胞に対する何らかの細胞溶解活性によって惹起される細胞収量の変動を修正するために、蛍光は吸収シグナルに対して正規化されている。これによって、“輝度”と称される“細胞当りの蛍光”の測定が提供される。ジェントロニクスアッセイ酵母株(GenT01)の他に、コントロールのサッカロミセス・セレビシエ株(GenC01)も使用したが、この株は緑色蛍光タンパク質の産生能力が無い点を除き前者の株と同一である。この株は、それ自身が自家蛍光を発するか又は酵母細胞において自家蛍光を誘導する物質について修正ができるようなコントロールを提供するために用いられる。収集データを単純にエクセルテンプレートに移し、そこで結果の評価シートが自動的に作成される。前記のシートはグラフ形式と表形式の両方に加工された結果を含み、前記の結果は自動的に評価され(すなわち+又は−)、遺伝子毒性及び細胞毒性の両方について最低有効濃度(LEC)が計算される。
図6A−6Cを参照すれば、それぞれポリペプチドGIN1p、GIN33及びGIN34について得られた酵母の遺伝子毒性アッセイが示されている。コントロール株(GenC01)は、予想された態様を示し、ポリペプチドの存在下においてこの株では自家蛍光はほとんど認められないが、それにもかかわらず、テスト株(GenT01)を用いて得られたデータはこの最小限のバックグラウンドを考慮して修正されている。図6A−6Cは、3つのポリペプチドは全てこのテスト酵母株(GenT01)で全く遺伝子毒性反応を生じないことを示し、100μMを含むポリペプチド濃度での値は遺伝子毒性を示すために必要な閾値に達していないことを示している。
結論すれば、前記結果は本発明のポリペプチドの抗菌性能を示している。特に、ポリペプチドGIN34(配列番号:12)、GIN33(配列番号:16)、GIN32(配列番号:8)、GIN1p(配列番号:11)及びGIN11(配列番号:4)は、遺伝子毒性の副作用を全く示さないで抗菌活性を示した。
【実施例2】
【0073】
実施例2:ポリペプチドはオートクレーブ後も有効性を維持する
本発明のポリペプチドのオートクレーブによる処理の影響を調べるために、GIN1pの400μMのストック溶液をPBSで調製し、420μLのアリコットを4本のエッペンドルフ管(ねじ蓋付き)に入れた。蓋をしっかりと閉めた後、前記管の2本をパイレックス(登録商標)ビーカー内に保持された金属ラックに載せ、プレスティージュ・メディカル・クリニカルオートクレーブに入れた。残りの2本の管はコントロールとして処理せずに残した。続いてオートクレーブを起動して、その各々がペプチド溶液の126℃で11分の暴露を含む、2回のオートクレーブを実施した。最後に、2本のオートクレーブしたペプチドサンプル及び2本のコントロールペプチドサンプルの緑濃菌に対する有効性を以前に記載したように試験した。
図7を参照すれば、オートクレーブ実施又は未実施の種々の濃度のGIN1p(本発明のポリペプチド)に細菌接種物を暴露した後での緑濃菌の増殖レベルが、未処理細菌の増殖に対する%として表されている。図からわかるように、4つのサンプルのいずれのIC50値も同一であった(図7に示されているようにほぼ2μM)。したがって、本発明のポリペプチドは、製造工程時で通常滅菌される生成物での使用に適している。
【実施例3】
【0074】
実施例3:ポリペプチドはコンタクトレンズ、ガラス及びバイオマテリアル“PLGA”被覆表面に付着する
本発明のペプチドがバイオマテリアル又は他の表面に固定されえるか否かを調べるために、発明者らは、GIN1pの蛍光標識型(Advanced Biomedical, Oldham, UK)を入手した。
この標識ポリペプチドの40μMストック溶液をPBSで調製し、250μLアリコットを24ウェルマイクロプレートのウェルに加えた。続いて発明者らはいくつかの材料をこれらのペプチド溶液に挿入した。材料は、(i)ジョンソンアンドジョンソンのアキュビューコンタクトレンズ、(ii)むきだしのガラスのカバースリップ、又は(iii)予めラクチド-グリコリド共重合体バイオマテリアルで被覆されたカバースリップ(PLGA:Jian Lu教授(Dept. of Physics, Univ. of Manchester)から提供された被覆スライド)とした。
ペプチド溶液中で20℃で15分インキュベートした後、前記材料を取り出し、続いて1mLのPBS中に入れて洗浄した。続いて前記材料を蛍光顕微鏡で調べ(クロマ(Chroma)35002v2フィルターセットを設置したOlympus IX70倒立顕微鏡を使用)、写真撮影して結果を記録した。続いて前記材料をさらに2回1mLのPBSで洗浄し、さらに25mLのPBSに37℃で一晩浸漬した。上記に記載したように、各洗浄後に、繰返し蛍光顕微鏡の観察によって蛍光レベルを観察し、写真撮影によって記録した。
【0075】
図8を参照すれば、40μMのGIN1p(蛍光タグ付きで合成された)で15分処理され、続いて4回洗浄された(前記洗浄には25mLのPBS中での一晩の浸漬が含まれている)、ジョンソンアンドジョンソンのアキュビューコンタクトレンズが示されている。図8(a)は、オリンパスIX70顕微鏡を用い、白色光又はGFP蛍光で照射された未処理レンズ及びGIN1p処理レンズ(4回洗浄後)を示している。したがって、繰り返して洗浄した後でさえも、レンズは顕著な量のペプチドを保持し、その結果、図8(b)に示されているように蛍光を眼で見ることができる。画像は、キヤノンEOS300Dデジタルカメラを用いて捕捉され、ISO1600フィルム設定で蛍光画像のために0.3秒の露出時間を用いた。
図9を参照すれば、40μMのGIN1p(蛍光タグを用いて合成された)で15分処理され、続いて4回洗浄された(前記洗浄には25mLのPBS中での一晩の浸漬が含まれている)、ガラスのカバースリップ(BG)又は予めラクチド-グリコリド共重合体バイオマテリアルで被覆されたカバースリップ(PLGA)が示されている。オリンパスIX70顕微鏡を用い、各洗浄後のサンプルについて蛍光レベルを観察した(W1、W2、W3及びW4)。蛍光レベルはいずれの洗浄後にも顕著には低下しないことが観察でき、ポリペプチドは表面領域にしっかりと付着することが示唆される。画像は、キヤノンEOS300Dデジタルカメラを用いて捕捉され、ISO1600フィルム設定で5秒の露出時間を用いた。
したがって、図8及び9は、3つのタイプの材料はいずれも、徹底的な洗浄にもかかわらず同様なレベルのGIN1pを保持しているようであることを示しており、(図8a及び図9に示されるように)前記ポリペプチドは種々の表面の被覆に適切であることが示唆される。特に、コンタクトレンズは顕著な量のポリペプチドを吸収することが判明し(おそらくそれらの大きな表面積のために)、そのために、図8bに示されているように、4回目の一晩の洗浄後でさえも蛍光は肉眼ではっきりと見ることができた。
【実施例4】
【0076】
実施例4:緑濃菌、黄色ブドウ球菌及び肺炎連鎖球菌に対する抗菌性能
発明者らはアポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eから誘導した拡張ペプチドライブラリーを構築し、本発明のポリペプチドをさらに評価した。続いて更なる実験を実施し、緑濃菌、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌に対する前記ペプチドライブラリーの抗菌活性を調べた。各ペプチドのIC50値を決定するために用いた方法は実施例1に記載したとおりである。実施例1で測定されたIC50値とは対照的に、実施例4で測定された値は約60μM以下であった。
表7はアポE由来のペプチドのデータを提供する。
【0077】
表7:アポE由来ペプチド



【0078】
表7から、本発明のポリペプチドは、調べた3つの別個の細菌株のうち、3つ全てでないにしても2つ、2つでないにしても少なくとも1つに対して抗菌活性を示すことがわかるであろう。特に、MU4、MU7、MU10、MU43、MU58、MU59、MU60、MU61、MU82、MU83、MU112、MU115及びGIN34が有効である。本発明のポリペプチドの定義から外れる一連のペプチドは無効であることが認められる。
ポリペプチドMU10(直列反復)の抗菌性はMU43(モノマー)よりもはるかに強く、本発明の直列反復は効果的な抗菌剤であることを示している。抗菌活性を示さないペプチドは、本発明の範囲から外れており、例えばMU3、MU12、MU19、GIN5である。
表8はアポB由来のペプチドのデータを示す。
【0079】
表8:アポリポタンパク質B由来ペプチド

【0080】
表8から、本発明のポリペプチドは、調べた3つの別個の細菌株のうち、3つ全てでないにしても2つ、2つでなければ少なくとも1つに対して抗菌活性を示すことがわかるであろう。特に、MU24、MU28、MU37、MU73、MU30及びMU32は全て有効である。
抗菌活性を示さないペプチドは、(i)直列反復でないか、(ii)少なくとも2つのRKRモチーフを含まないか、又は(iii)本明細書に提供した式では可能でないか、又は前記式によって提供されないアミノ酸置換から成っているかのいずれかである。
MU84は、トライマー(すなわち3つのモノマーを含む直列反復)の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌感染を治療する医薬の製造のための、アポリポタンパク質の硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来するペプチドの反復を含むポリペプチド、その誘導体又は類似体の使用。
【請求項2】
ペプチドが、アポリポタンパク質B又はアポリポタンパク質Eの硫酸ヘパランプロテオグリカン(HSPG)レセプター結合領域に由来する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ペプチドが、アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターB又はアポリポタンパク質E LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ポリペプチドが少なくとも2つのRKRモチーフを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ポリペプチドが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:96又はその誘導体の直列ダイマー反復を含み、前記配列において、RKRモチーフ以外の少なくとも1つのアミノ酸残基が、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、又はその誘導体によって置換されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
置換される残基が、前記ポリペプチドの第1番目、第2番目、第3番目、第7番目、第8番目、第9番目、第10番目、第11番目、第12番目、第16番目、第17番目又は第18番目の残基である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1つのアミノ酸置換がフェニルアラニン(F)残基又はトリプトファン(W)残基又はその誘導体によるものである、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
ポリペプチドが下記式をもつ、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の使用:
{abcRKRxyz}+{a'b'c'RKRx'y'z'} (式I)
式中、
a及びa'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてあり;
b及びb'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)から選択されるか、又は欠失されてあり;
c及びc'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)又はスレオニン(T)から選択されるか、又は欠失されてあり;
x及びx'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン又は(H)グリシン(G)から選択されるか、又は欠失されてあり;
y及びy'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてあり;
z及びz'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択されるか、又は欠失されてある。
【請求項9】
ポリペプチドが少なくとも1つの追加アミノ酸を含み、前記追加アミノ酸はそれぞれ独立に、アルギニン(R)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ロイシン(L)、リジン(K)、ヒスチジン(H)から選択することができ、さらに前記追加アミノ酸が、式Iのペプチドの‘a’位のアミノ酸の前のN-末端に付加される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ポリペプチドが、ペプチドアポE141-149(配列番号:1)若しくはその短縮型の反復を含む、又はペプチドアポE141-149の変種の反復を含み、前記変種中少なくとも一つのロイシン(L)残基がトリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)またはフェニルアラニン(F)で置換されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
ペプチドアポE141-149(配列番号:1)若しくはその短縮型の反復を含むポリペプチド、又はペプチドアポE141-149の変種の反復を含むポリペプチドであって前記変種中少なくとも1つのロイシン(L)残基が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)によって置換されている前記ポリペプチドの、細菌感染治療用医薬の製造のための使用。
【請求項12】
ポリペプチドが、ペプチドアポE141-149(配列番号:1)又はその短縮型の反復を含み、少なくとも1つのロイシン(L)残基が、トリプトファン(W)又はフェニルアラニン(F)残基によって置換されていることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
直列反復が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)、リジン(K)、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)置換からそれぞれ独立に選択される少なくとも2つの置換を含む、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
ポリペプチドが以下のアミノ酸配列を含む、請求項1から13に記載の使用:LRKLRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:6);WRKWRKRWWWRKWRKRWW(配列番号:7);WRKWRKRWRKWRKR(配列番号:8);WRKWRKRWWLRKLRKRLL(配列番号:9);YRKYRKRYYYRKYRKRYY(配列番号:10);LRKLRKRLRKLRKR(配列番号:11);LRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:3);FRKFRKRFFFRKFRKRFF(配列番号:48);WRKWRKRWWRKWRKRWW(配列番号:63);WRKWRKRWRKWRKRW(配列番号:64);WRKWRKRWWFRKWRKRWW(配列番号:65);WRKWRKRFFWRKWRKRFF(配列番号:66);WRKRWWRWRKRWWR(配列番号:67);LRKLRKRLLRLRKLRKRLLR(配列番号:68);WRKWRKRWWRWRKWRKRWWR(配列番号:69);LRKLRKRLLWRKWRKRWW(配列番号:70);LRKLRKRLLLRKLRKRWW(配列番号:71);LRKLRKRLLWRKWRKRLL(配列番号:72);WRKWRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:73);WRKLRKRLLLRKLRKRLL(配列番号:74);WRKWRKFFFRKWRKRWW(配列番号:75);又はWRKWRKRWWFRKFRKRFF(配列番号:76)。
【請求項15】
ポリペプチドが、アポBのHSPGレセプター結合領域由来のペプチドの反復を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
アポリポタンパク質BのHSPGレセプター結合領域由来のペプチドの反復を含むポリペプチド又はその誘導体若しくは類似体の、細菌感染治療用医薬の製造のための使用。
【請求項17】
ペプチドが、アポリポタンパク質B LDLレセプター結合ドメインクラスターBに由来する、請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
ポリペプチドが、アポB3359-3367(配列番号:2)又はその短縮型若しくは変種の反復を含む、請求項16又は17に記載の使用。
【請求項19】
ポリペプチドが、少なくとも2つのRKRモチーフを含む、請求項16から17のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
ポリペプチドが、RLTRKRGLKRLTRKRGLK(配列番号:12)の配列又はその短縮型配列を有し、前記配列において、RKRモチーフ以外の少なくとも1つのアミノ酸残基が、グリシン(G)、スレオニン(T)、ヒスチジン(H)、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基、又はその誘導体によって置換されている、請求項16から19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
少なくとも1つのアミノ酸残基が、トリプトファン(W)、アルギニン(R)若しくはロイシン(L)残基又はその誘導体によって置換されている、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
ポリペプチドが下記式をもつ、請求項16から請求項21のいずれか1項に記載の使用:
{abcRKRxyz}+{a'b'c'RKRx'y'z'} (式IV)
式中、
a及びa'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)のいずれかから選択することができる正に荷電した残基;ロイシン(L);トリプトファン(W)から選択されるか、又は欠失されてあり;
b及びb'は、それぞれ独立にロイシン(L);アルギニン(R);リジン(K)から選択されるか、又は欠失されてあり;
c及びc'は、それぞれ独立に、スレオニン(T);トリプトファン(W);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
x及びx'は、それぞれ独立に、グリシン(G);トリプトファン(W);ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択され;
y及びy'は、それぞれ独立に、ロイシン(L);又はアルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基から選択されるか、又は欠失されてあり;
z及びz'は、それぞれ独立に、アルギニン(R)若しくはリジン(K)若しくはヒスチジン(H)から選択することができる正に荷電した残基;又はロイシンから選択されるか、又は欠失されてある。
【請求項23】
前記ポリペプチドが以下の配列である、請求項16から22のいずれかに記載の使用:RTRKRGRRTRKRGR(配列番号:13);LRKRKRLLRKRKRL(配列番号:14);LRKRKRLRKLRKRKRLRK(配列番号:15);WRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:16);LLRKRLKRLLLRKRLKRL(配列番号:80);RRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:83);KRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:84);LRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:85);HRWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:86);RWRKRWRKWRWRKRWRK(配列番号:87);RRWRKRWRKRRWRKRWRK(配列番号:88);LRWRKRWRKLRWRKRWRK(配列番号:89);HRWRKRWRKHRWRKRWRK(配列番号:90);RWRKRWRKRWRKRWRK(配列番号:91);RWRKRGRKRWRKRGRK(配列番号:92);RWRKRWRKRWRKRWRK(配列番号:93);RKRGWKWRKRGWKW(配列番号:94);又はRLTRKRGRLTRKRG(配列番号:95)。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、RLTRKRGLKRLTRKRGLK(配列番号:12)の配列を有する、請求項16から19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
ペプチドアポE141-149(配列番号:1)又はその短縮型の反復を含み、少なくとも1つのロイシン(L)残基が、チロシン(Y)又はフェニルアラニン(F)によって置換されていることを特徴とする、ポリペプチド。
【請求項26】
配列番号:3(GIN2)、配列番号:4(GIN11)、配列番号:67(MU81)、配列番号:68(MU82)、配列番号:80(MU24)、配列番号:94(MU73)又は配列番号:95(MU74)のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、その誘導体又は類似体。
【請求項27】
医薬として使用される、請求項25又は26に記載のポリペプチド。
【請求項28】
細菌感染を治療する医薬の製造のための、請求項27に記載のポリペプチドの使用。
【請求項29】
スタフィロコッカス、シュードモナス目、又はストレプトコッカスによる感染の治療のための、請求項1から28のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項30】
請求項1から29のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項31】
物体又は表面を、殺菌のため又は細菌の増殖を予防するために有効な量の、請求項1から30のいずれか1項に記載のポリペプチドで被覆することを含む、細菌汚染の予防及び/又は処置方法。
【請求項32】
医療装置、レンズ、コンタクトレンズ、カテーテル、ステント、創傷治療包帯、避妊具、外科用インプラント及び代用関節から選択される物体が被覆される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
病院の病室表面、手術教室、台所の表面及び公衆便所の表面から選択される表面が被覆される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか1項に記載のペプチド、その誘導体又は類似体で少なくとも部分的に被覆されたコンタクトレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−51965(P2013−51965A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237647(P2012−237647)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2007−500301(P2007−500301)の分割
【原出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(506203626)エイアイ2 リミテッド (6)
【Fターム(参考)】