説明

細菌株、この細菌株を含む組成物およびそのプロバイオティック使用

本発明によって、ナリジクス酸耐性を示すE.coli M17細菌株の生物学的に純粋な培養物が提供される。また、本発明の細菌株の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与し、それにより、胃腸障害を治療することを含む、胃腸障害を治療する方法、および本発明の細菌株を有効成分として含み、かつ、キャリアまたは希釈剤を含むプロバイオティック組成物も提供される。記載された好ましい実施形態によれば、組成物はさらに抗真菌剤、抗生物質を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な細菌株、この細菌株を含む組成物、および、胃腸障害のプロバイオティック治療におけるそのような菌株を使用する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティックは、宿主の胃腸(GI)系に対する好ましい効果を及ぼす生きた生物として定義される。最も一般的に使用されているプロバイオティックは乳酸菌(LAB)の菌株であり、特に、ラクトバチルス属、ラクトコックス属およびエンテロコックス属に分類される菌株である。
【0003】
抵抗力が低い期間(例えば、ストレスもしくは疾患のとき、出生時または抗生物質処置後)に、望ましくない微生物が胃腸管で増殖し得ることが広く知られている。従って、正常かつ健康な微生物叢を胃腸(GI)管において維持することはストレスの多い期間のときには重要である。
【0004】
プロバイオティック治療の目標は、健康を増進させる微生物の数および活性を、正常なGI叢が再び確立されるまで増大させることである。
【0005】
プロバイオティックの保護的作用を担う機構がいくつか提案されている。これらには、(i)細胞の生存能力を低下させ、細菌の代謝に影響を及ぼし、また、トキシンの産生を低下させることができる阻害性物質(例えば、抗生物質、有機酸、過酸化水素およびバクテリオシン)の産生;(ii)腸上皮表面における細菌接着部位の競合的阻害による接着部位の阻止[Conaway(1987)、J.Dairy Sci.、70:1〜12;Goldin(1992)、Dig.Dis.Sci.、37:121〜128;KleemanおよびKlaenhammer(1982)、J.Dairy Sci.、1982:65:2063〜2069];(iii)栄養分についての競合;(iv)トキシン受容体の分解、これは、S.boulardiiが腸粘膜上のトキシン受容体の分解によってC.difficileの腸疾患から保護する仮定された機構である[Castagliuolo(1996)、Infect.Immun.、64:5225〜5232;Castagliuolo、Infect.Immun.(1999)、67:302〜307;Pothoulakis(1993)、Gastroenterology、104:1108〜1115];および(v)非特異的免疫性の刺激[Fukushima、Int.J.Food Microbiol.(1998)、42:39〜44;Link−Amster、FEMS Immunol.Med.Microbiol.(1994)、10:55〜63;Malin、Ann.Nutr.Metab.(1996)、40:137〜145]が含まれる。
【0006】
プロバイオティック治療の有効性が数多くの研究によって明らかにされており、従って、今では、数多くの障害に対する好適な治療として受け入れられているが、プロバイオティック治療は、全身感染、有害な代謝活性、感受性個体における過度な免疫刺激、および遺伝子移入をはじめとする数多くの副作用をもたらし得る[Marteau(2001)、プロバイオティック製造物の安全性局面、Scand.J.Nutr.、45、1、22〜24]。例えば、L.rhamnosusの2つの事例が、可能なプロバイオティックの摂取にさかのぼって調べられた[Rautio(1999)、Clin.Infect.Dis.、28:1159〜60;Mackay(1999)、Clin.Microbiol.Infect.、5:290〜292]。13例のサッカロミセス真菌血症が血管カテーテル汚染によって引き起こされ[Hennequin(2000)、Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.、19:16〜20]、また、バチルス感染症が、根本的な疾患を有する患者においてすべて、プロバイオティック摂取に関連づけられた[Spinosa(2000)、Microb.Ecol.Health Dis.、12:90〜101;Oggioni(1998)、J.Clin.Microbiol.、36:325〜326]。あるいは、エンテロコックス属が院内感染症の重要な原因として出現しつつあり、単離体がますますバンコマイシン耐性になっている。
【0007】
非病原性のラクトース陽性E.coliは、微生物学的バランスを提供し、また、栄養および免疫における重要な役割を果たす、ヒトおよび動物の腸における健全な好気性ミクロフローラの主要な群を構成する。
【0008】
本発明者らは以前に、様々な哺乳動物および鳥類の正常なGIフローラを回復することができる、E.coli BU−230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))として示される非病原性プロバイオティック微生物の単一種(E.coli M17)を見出している。配合物に懸濁されたこのプロバイオティック生物を含むプロバイオティック組成物は、様々な胃腸障害の治療および予防において効果的であることが見出された。このプロバイオティック配合物はそれ自体で、哺乳動物および鳥類において、体重増加強化剤として、また、免疫刺激剤として効果的であることが同様にまた見出された(米国特許第6500423号(本特許権はThe Bio Balance Corp.に譲渡されている)および関連出願を参照。それらのそれぞれが参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0009】
E.coli BU−230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))のプロバイオティック活性は、この菌株を、数多くの胃腸障害および胃腸関連障害を治療するための好ましい治療ツールにする。このことは、この細菌種のアッセイ可能な抗生物質耐性菌株が調節において重要であり得ること、また、抗生物質治療との併用で使用され得ることを示唆する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の1つの局面によれば、ナリジクス酸耐性を示すE.coli M17細菌株の生物学的に純粋な培養物が提供される。
【0011】
本発明の別の局面によれば、本発明の細菌株を有効成分として含み、かつ、キャリアまたは希釈剤を含むプロバイオティック組成物が提供される。
【0012】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、組成物は、1グラムの組成物あたり、本発明の細菌株の10個〜1010個の細菌細胞を含む。
【0013】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、キャリアは、本発明の細菌株の生存能を維持するための配合物を含む。
【0014】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、配合物は植物抽出物の揮発性分画物を含む。
【0015】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、組成物はさらに抗真菌剤を含む。
【0016】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、組成物はさらに抗生物質を含む。
【0017】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、組成物はさらに、酵母細胞、カビおよび細菌細胞からなる群から選択されるプロバイオティック微生物を含む。
【0018】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、キャリアはコロニー形成キャリアである。
【0019】
本発明のさらに別の局面によれば、本発明の細菌株を有効成分として含み、かつ、ヒトが消費するために好適なキャリアを含む食品添加物が提供される。
【0020】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、コロニー形成キャリアは、多糖、修飾多糖およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0021】
本発明のなおさらに別の局面によれば、本発明の細菌株を有効成分として含み、かつ、動物が消費するために好適なキャリアを含む飼料添加物が提供される。
【0022】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、キャリアは、石灰石、多糖およびあらびき小麦粉(wheat midds)からなる群から選択される。
【0023】
本発明のさらなる局面によれば、本発明の細菌株を含む食料品が提供される。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、食料品は乳製品である。
【0025】
本発明のさらにさらなる局面によれば、本発明の細菌株の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与し、それにより、胃腸障害を治療することを含む、胃腸障害を治療する方法が提供される。
【0026】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、胃腸障害は、回腸嚢炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、セリアック病、小腸細菌過剰増殖、胃食道逆流性疾患、下痢、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)大腸炎および/または抗生物質関連下痢、過敏性腸症候群、過敏性嚢症候群、急性下痢、旅行者下痢、乳糖不耐症、HIV関連下痢、スクロースイソマルターゼ欠損症、発癌、経腸栄養法関連下痢、ならびに、腸病原体に関連する障害、非びらん性食道逆流性疾患(NERD)および関連した小腸細菌過剰増殖、機能性消化不良、壊死性腸炎、糖尿病性胃疾患および便秘からなる群から選択される。
【0027】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本発明の細菌株はATCC寄託番号PTA−7295の同定特徴のすべてを含む。
【0028】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、E.coli M17はATCC寄託番号202226(DSM12799)である。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、E.coli M17は、BU−239、BU−230−98、BU230−01およびATCC寄託番号202226(DSM12799)からなる群から選択される。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本発明の細菌株は、配列番号1〜9からなる群から選択されるゲノム核酸配列を含む。
【0031】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本発明の細菌株は、哺乳動物の胃腸管において増殖およびコロニー形成することができる。
【0032】
本発明のなおさらにさらなる局面によれば、ナリジクス酸の存在下における細菌の成長を検出し、それにより、便サンプルにおける本発明の細菌株の存在を検出することを含む、便サンプルにおける本発明の細菌株の存在を検出する方法が提供される。
【0033】
本発明のさらなる局面によれば、ATCC寄託番号PTA−7295の同定特徴のすべてを有するE.coliの生物学的に純粋な培養物が提供される。
【0034】
本発明は、新規な細菌株、新規な細菌株を含む組成物、およびそのプロバイオティック使用を提供することによって、現在知られている形態の欠点を対処することに成功している。
【0035】
本明細書で使用される技術用語と科学用語はすべて、特に断らない限り、本発明の属する技術分野の当業者が共通して理解しているのと同じ意味を持っている。本明細書に記載されているのと類似の又は均等の方法と材料は本発明を実施又は試験するのに使用できるが、適切な方法と材料は以下に述べる。争いが生じた場合、定義を含めて本特許明細書が基準である。さらに、本明細書の材料、方法及び実施例は例示することだけを目的とし本発明を限定するものではない。
【0036】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】M17親菌株、および、本発明の教示に従って作製されたナリジクス酸耐性(M17SNAR)誘導体のパルスフィールドゲル電気泳動を示す。それぞれの菌株をXbaIにより消化した。マーカーはラムダコンカテマーからなる。MC1061(これはE.coliのK−12誘導体であり、M17とは遺伝子的に無関係である)を陰性コントロールとして泳動した。これらの菌株が画像の関連したレーンの上部に示される。
【図2】M17親菌株およびM17SNAR菌株の増幅断片長多型(AFLP)分析を示す。M17菌株、M17SNAR菌株およびECOR菌株から得られるDNAを、EcoRI−A+MseI GAのプライマー組合せを使用するAFLP分析に供した。反応生成物をLi−Cor/NEN4200グローバルアナライザーでの変性ゲルポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。菌株が、分離された反応生成物を含有する適切なレーンの上方に示される。
【図3a】M17SNARが与えられたイヌ(イヌ3028、オス)の便サンプルにおける総大腸菌群およびM17SNARの流出(shedding)を示すグラフである。動物には、1X1013コロニー形成ユニットのM17SNARが、0日目以降、14日連続して与えられた(Ricerca研究における高用量摂取)。便サンプルを集め、総大腸菌群をVRBA培地において二連で計数し、一方、M17SNARをVRBA+25μl/mlナリジクス酸において計数した。ナリジクス酸耐性コロニーをコンティグ127PCRアッセイにより確認した。結果がそれぞれの動物について別々に示される。
【図3b】M17SNARが与えられたイヌ(イヌ3029、オス)の便サンプルにおける総大腸菌群およびM17SNARの流出(shedding)を示すグラフである。動物には、1X1013コロニー形成ユニットのM17SNARが、0日目以降、14日連続して与えられた(Ricerca研究における高用量摂取)。便サンプルを集め、総大腸菌群をVRBA培地において二連で計数し、一方、M17SNARをVRBA+25μl/mlナリジクス酸において計数した。ナリジクス酸耐性コロニーをコンティグ127PCRアッセイにより確認した。結果がそれぞれの動物について別々に示される。
【図3c】M17SNARが与えられたイヌ(イヌ3032、メス)の便サンプルにおける総大腸菌群およびM17SNARの流出(shedding)を示すグラフである。動物には、1X1013コロニー形成ユニットのM17SNARが、0日目以降、14日連続して与えられた(Ricerca研究における高用量摂取)。便サンプルを集め、総大腸菌群をVRBA培地において二連で計数し、一方、M17SNARをVRBA+25μl/mlナリジクス酸において計数した。ナリジクス酸耐性コロニーをコンティグ127PCRアッセイにより確認した。結果がそれぞれの動物について別々に示される。
【図3d】M17SNARが与えられたイヌ(イヌ3033、メス)の便サンプルにおける総大腸菌群およびM17SNARの流出(shedding)を示すグラフである。動物には、1X1013コロニー形成ユニットのM17SNARが、0日目以降、14日連続して与えられた(Ricerca研究における高用量摂取)。便サンプルを集め、総大腸菌群をVRBA培地において二連で計数し、一方、M17SNARをVRBA+25μl/mlナリジクス酸において計数した。ナリジクス酸耐性コロニーをコンティグ127PCRアッセイにより確認した。結果がそれぞれの動物について別々に示される。
【図4】E.coli M17SNARについての全ゲノムショットガン配列決定アプローチを示すスキームである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、胃腸障害および免疫関連障害の治療に使用されることができる細菌株の発明である。
【0039】
本発明の原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0040】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部または実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0041】
本発明者らは、様々な哺乳動物および鳥類の正常なGIフローラを回復することができる非病原性プロバイオティック微生物の1つの種(E.coli BU230−98、ATCC寄託番号202226(DSM12799))を以前に見出している。このプロバイオティック生物を含むプロバイオティック組成物は、様々な胃腸障害の治療および予防において効果的であることが見出された。このプロバイオティック組成物はまた、哺乳動物および鳥類において、体重増加強化剤として、また、免疫刺激剤として効果的であることが見出された(米国特許第65600423号(本特許権はThe Bio Balance Corp.に譲渡されている)および関連出願を参照。それらのそれぞれが参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0042】
E.coli BU230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))(M17)のプロバイオティック活性は、この菌株を、数多くの胃腸障害および胃腸関連障害(例えば、免疫関連障害)を治療するための好ましい治療ツールにする。このことは、この細菌種の抗生物質耐性菌株が調節において重要であり得ること、また、抗生物質治療との併用で使用され得ることを示している。
【0043】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、労力を要する実験により、E.coli BU230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))の自然発生するナリジクス酸耐性変異誘導体(これはM17SNARと呼ばれる)を単離し、また、便サンプルにおけるこの菌株の特異的な計数および確認のための方法を開発している。
【0044】
本明細書中下記において、また、下記の実施例の節において例示されるように、本発明者らは、自然発生する様々なナリジクス酸耐性変異体を、E.coli BU230−98(ATCC寄託番号202226(DSM12799))の親菌株ストックから濃縮および選択している。M17SNARと呼ばれるナリジクス酸耐性菌株(ATCC寄託番号7295)は、PFGE分析およびAFLP分析によってその親菌株から区別不可能である。その後、M17SNARゲノムの特有な核酸配列が、全ゲノム配列決定およびコンピューターによる分析、その後の、E.coli菌株のパネルに対するPCR分析によって特定された。M17SNARを混成便サンプルに導入し、その後、VRBAにおける選択的平板培養、および、核酸分析による確認を行うことにより、M17SNARが、添加された便サンプルにおいて特異的に定量され得ることが示された。アッセイの検出限界が、便サンプルにおいて33CFU/mlのM17SNARであることが推定された。VRBA+ナリジクス酸における選択的平板培養と、核酸分析による確認との組合せを考えると、このアッセイは、E.coli M17SNARを便サンプルにおいて検出および定量することについて非常に特異的であるようである。
【0045】
従って、本発明の1つの局面によれば、ナリジクス酸耐性を示すE.coli M17細菌株の生物学的に純粋な培養物が提供される(下記の実施例の節の実施例1を参照)。
【0046】
本明細書中で使用される「E.coli M17細菌株」は、この菌株それ自体、ならびに、下記の表1〜3に示されるようなプロバイオティック活性および生化学的特徴を維持する非病原性の誘導された菌株を示す。
【0047】
本明細書中で使用される「プロバイオティック活性」は、少なくとも1つの病原体の成長を阻害する性質を示す。病原体成長阻害の試験を固体培地において行うことができ、この場合、候補の単離された細菌の培養上清が、その培養上清が固体培地の表面に適用されたときに病原体の成長を阻害するその性質について観測される。典型的には、候補プロバイオティック菌株の培養上清を含浸させたペーパーディスクが、病原体が播種された寒天平板の表面に置かれる。プロバイオティック性の細菌上清は、ディスクの近傍における病原体の阻害を示す透明な寒天の輪または低下した成長密度の輪を生じさせる。利用可能であるか、または、考案され得る、阻害についての他の様々な試験が存在し、これらには、本明細書中に記載されるパネルに類似するプロバイオティク細菌のパネルをもたらし得る直接的な成長競合試験(インビトロまたはインビボ)が含まれる。任意のそのような試験によって同定される細菌株は、この用語が本明細書中で使用されるように、プロバイオティック細菌の範疇内である。
【0048】
そのような菌株の例およびそのような菌株のインビトロ特性が下記の表1〜3に示される。本発明のこの局面の好ましい実施形態によれば、E.coli M17細菌株は、BU239、BU230−98、BU−230−01およびATCC寄託番号202226(DSM12799)である。



【0049】
述べられたように、本発明のE.coli BU−239細菌株はナリジクス酸耐性を示す。
【0050】
本明細書中で使用される表現「ナリジクス酸耐性」は、本発明のこの局面の培養物がキノロン系抗生物質のナリジクス酸(NegGram)の存在下においてさえ増殖することができることを示す。本発明の培養物は、好ましくは、少なくとも5μg/mlのナリジクス酸に対して耐性であり、より好ましくは、少なくとも15μg/mlのナリジクス酸に対して耐性であり、一層より好ましくは、25μg/mlのナリジクス酸に対して耐性であり、一層より好ましくは、50μg/mlのナリジクス酸に対して耐性であり、一層より好ましくは、100μg/mlのナリジクス酸に対して耐性である。
【0051】
本発明の細菌株(すなわち、ナリジクス酸耐性BU−239菌株)の単離、同定および培養を、標準的な微生物学的技術を使用して行うことができる。そのような技術の様々な例が、Gerhardt,P.(編)、Methods for General and Molecular Microbiology(American Society for Microbiology、Washington,D.C.(1994))、および、Lennette,E.H.(編)、Manual of Clinical Microbiology(第3版)(American Society for Microbiology、Washington,D.C.(1980))に見出され得る。
【0052】
本発明の細菌株の単離は好ましくは、本明細書中上記で記載される表現型形質(例えば、グラム陰性、ラクトース発酵が可能であること、ナリジクス酸耐性)を特徴とする単一コロニーを得るために、また、汚染されている培養物、および/または、蓄積した変異を有する培養物を用いて作業することの可能性を軽減するために、試料(例えば、E.coli BU−230−98)を固体培地(例えば、栄養寒天平板)に画線培養することによって行われる。
【0053】
本発明の細菌株は、実施例の節に記載される条件のもと、液体培地において増殖することができる。
【0054】
本発明の細菌株を成長させるための培地は、炭素源、窒素源および無機塩、ならびに、特別に要求される物質(例えば、ビタミン、アミノ酸および核酸など)を含む(下記の実施例の節の実施例1には、本発明に従って使用することができる培地組成の様々な実施形態が記載される)。
【0055】
本発明の細菌株を成長させるため使用することができる好適な炭素源の例には、デンプン、ペプトン、酵母抽出物、アミノ酸、糖(例えば、グルコース、アラビノース、マンノース、グルコサミンおよびマルトースなど)、有機酸(例えば、酢酸、フマル酸、アジピン酸、プロピオン酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、ピルビン酸およびマロン酸など)の塩、アルコール(例えば、エタノールおよびグリセロールなど)、オイルまたは脂肪(例えば、ダイズ油、米ぬか油、オリーブ油、トウモロコシ油、ゴマ油など)が含まれるが、これらに限定されない。加えられる炭素源の量は炭素源の種類に従って変化し、典型的には、培地1リットルあたり1〜100グラムの間である。好ましくは、グルコース、デンプンおよび/またはペプトンが、0.1%〜5%(w/v)の濃度で、主要な炭素源として培地に含有される。
【0056】
本発明の細菌株を成長させるため使用することができる好適な窒素源の例には、アミノ酸、酵母抽出物、トリプトン、牛肉抽出物、ペプトン、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニアまたはそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。窒素源の量は窒素源に従って変化し、典型的には、培地1リットルあたり0.1〜30グラムの間である。
【0057】
無機塩として、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸第二銅、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムを単独または組合せで使用することができる。無機塩の量は無機塩の種類に従って変化し、典型的には、培地1リットルあたり0.001〜10グラムの間である。
【0058】
特別に要求される物質の例には、ビタミン、核酸、酵母抽出物、ペプトン、肉抽出物、麦芽抽出物、乾燥酵母およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
培養が、本発明のプロバイオティック細菌株の成長を可能にする温度において行われ、典型的には、28℃〜46℃の間の温度で行われる。好ましい温度範囲が30℃〜37℃である。
【0060】
最適な成長のために、培地は好ましくは、pH7.0〜pH7.4に調節される。
【0061】
市販されている培地もまた、本発明の細菌株を培養するために使用され得ることが理解される(例えば、Difco(Detroit、MI)から入手可能なL培地など)。
【0062】
このようにして得られる細菌細胞は、この分野では広く知られている方法を使用して単離される。例には、膜ろ過および遠心分離による分離が含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
pHを、水酸化ナトリウムなどを使用して調節することができ、また、培養物を、水分含有量が4%以下になるように、風乾することができ、または、凍結乾燥機を使用して乾燥することができる。
【0064】
1ロット分の本発明の細菌株が得られると、このロットは好ましくは品質検定される。そのような検定には、ナリジクス酸に対する耐性、ラクトース発酵、胃の酸性度に対する抵抗性、胃腸管でのコロニー形成、胆汁酸に対する抵抗性(これは、インビボにおける胃生存性と相関する)、粘膜および/またはヒト上皮細胞およびヒト上皮細胞株に対する接着性、潜在的に病原性の細菌に対する抗菌活性、表面への病原体接着を低下させる能力、ならびに、胆汁酸塩ヒドロラーゼ活性を試験することが含まれ得る[Conway(1987)、J.Dairy Sci.、70:1〜12]。
【0065】
新しく単離された菌株は好ましくは、ナリジクス酸耐性を依然として示す一方で、親菌株から分子的に区別可能であることをさらに特徴とする。これは、例えば、配列番号1〜9に示されるゲノム配列、または、相同的な配列(例えば、約80%を越える同一性、90%を越える同一性、または、95%を越える同一性の相同的な配列)の存在に起因すると考えられ得る。
【0066】
上記の方法論を使用して、本発明者らは、下記の表7に列挙されるような様々なレベルの抗生物質耐性を呈する本発明の菌株を単離することができた。
【0067】
本発明のこの局面の好ましい実施形態によれば、本発明の菌株は、ブタペスト条約に従ってAmerican Type Culture Collection(ATCC)に2005年12月22日に菌株PTA−7295(これは本明細書中ではM17SNARとして示される)として寄託された菌株の同定特徴のすべてを有する。
【0068】
本発明のプロバイオティック細菌株は抗生物質耐性を示しており、また、そのようなものとして、様々な胃腸障害を治療するために調節的観点から都合よく使用することができる。これは単に、この細菌株を便サンプルにおいて追跡することが今回、可能になるからである。加えて、今回、ナリジクス酸と併用した本発明の菌株による同時治療が可能になり、従って、これにより、生存可能な胃腸フローラが、尿路感染などのための抗生物質治療を実施しながら維持される。
【0069】
従って、本発明のさらに別の局面によれば、胃腸障害を対象において治療または予防する方法が提供される。
【0070】
この方法は、その必要性のある対象に本発明のプロバイオティック細菌株の治療効果的な量を投与することによって行われる。
【0071】
本明細書中で使用される用語「治療する」は、障害に関連する症状を緩和または軽減することを示す。好ましくは、治療することにより、障害に関連する症状が治療され、例えば、障害に関連する症状が実質的に除かれる。
【0072】
本発明の細菌培養物により治療され得る対象には、ヒト、および、プロバイオティック治療から利益を受けることができる動物が含まれる。例には、哺乳動物、ハ虫類、鳥類および魚類などが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明のプロバイオティック菌株を使用して治療することができる胃腸障害の例には、回腸嚢炎(例えば、潰瘍性大腸炎後の回腸嚢肛門吻合術に関連する回腸嚢炎)、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、セリアック病および関連した小腸細菌過剰増殖、胃食道逆流性疾患および関連した小腸細菌過剰増殖、小腸細菌過剰増殖、回腸造瘻術の患者における下痢および高排便量、抗生物質関連下痢、クロストリジウム・ディフィシレ大腸炎および/または抗生物質関連下痢、過敏性腸症候群、過敏性嚢症候群、急性下痢、旅行者下痢、乳糖不耐症、HIV関連下痢、スクロースイソマルターゼ欠損症、発癌、経腸栄養法関連下痢、ならびに、様々な腸病原体に関連する障害(例えば、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobactor cloacae)、シトロバクター・フロインディイ(Citrobacter freundii)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびシュードモナス・マルトフィリア(Pseudomonas maltophilia)、サルモネラ種(Salmonella sp.)、ウイルス(例えば、ロタウイルスなど)および真菌(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigattus)、ならびに、これらの組合せに関連する障害など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
本発明の菌株を使用して治療することができるさらなる障害には、非びらん性食道逆流性疾患(NERD)および関連する小腸細菌過剰増殖、機能性消化不良、壊死性腸炎、糖尿病性胃疾患、便秘(胃腸の微生物叢における変化に関連する便秘)、泌尿生殖路関連疾患、膀胱感染症(子宮感染症、ならびに、子宮頸部、膣および外陰部の感染症が、特に出生後において、ヒトおよび飼育動物で一般に発生する)が含まれるが、これらに限定されない。子宮内膜(すなわち、子宮粘膜)、および、下部生殖管における隣接する粘膜表面の典型的な感染性生物には、例えば、β溶血性連鎖球菌、カンジダ・アルビカンス、肺炎桿菌、大腸菌を含む大腸菌群細菌、コリネバクテリウム・ピオゲネス(Corynebacterium pyogenes)およびC.vaginale、ならびに、様々なカンピロバクター種またはトリコモナス(Trichomonas)種(例えば、T.vaginalisなど)などが含まれる(米国特許第5667817号を参照のこと)。他の泌尿生殖器病原体には、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、単純ヘルペスウイルス、HIV、パピローマウイルスおよび梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)が含まれるが、これらに限定されない。黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、β溶血性連鎖球菌およびインフルエンザ菌(これらに限定されない)をはじめとする病原性細菌に関連する呼吸器疾患;関節リウマチ[Malin(1996)、Br J Rheumatol、35:689〜94]、西洋社会の生活様式(すなわち、衛生状態の改善および家族構成の縮小)に伴う微生物刺激の低下に関連するアレルギー。アトピー性疾患、例えば、より多くのクロストリジウム種(Clostridium ssp)と組み合わせたラクトバチルス(Lactobacillus)属およびユーバクテリウム(Eubacterium)属の減少に関連するアトピー性疾患[Biorksten et al.,、Clin.Exp.Allergy(1999)、29:342〜346]など。
【0075】
当然のことながら、本発明の細菌株は、プロバイオティック物によって治療され得る他の疾患または障害(すなわち、腸外の疾患または障害)を治療するために使用され得る。
【0076】
本発明の細菌株が、他の器官における細菌感染症、真菌感染症またはウイルス感染症を治療することができることは、潜在的な病原体の転位を阻害し、従って、血流および他の組織または器官の感染を予防することができる非免疫学的な腸防御バリアを促進させることを含めて、多数の防御機構[これは、Isolauri(2001)、Am.J.Clin.Nut.、73:444S〜450Sによって総説される]を刺激することの結果である。別の防御機構が、特に、腸の安定化作用をもたらす腸内の免疫グロブリンA応答および腸内炎症応答の緩和を介した腸の免疫学的バリアの改善であり、同様にまた、前炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインのバランス制御を介した免疫調節によるものである。
【0077】
本発明のプロバイオティック培養物により治療され得る腸外疾患の例には、虫垂炎、自己免疫障害、多発性硬化症、関節リウマチ、セリアック病、糖尿病性胃疾患に関連する小腸または胃の過剰増殖、臓器移植、歯周疾患、泌尿生殖器疾患(膣、尿道および会陰部)、手術関連外傷、手術誘発転移性疾患、敗血症、体重減少、食欲不振、発熱抑制、悪液質、創傷治癒、潰瘍、腸バリア機能、アレルギー、喘息、呼吸器障害、ライノウイルス関連疾患(例えば、中耳炎、副鼻腔炎、喘息および肺疾患)、肝疾患(例えば、肝性脳症)、便秘、栄養障害、表皮障害、乾癬、炭疽および/または尋常性ざ瘡が含まれるが、これらに限定されない[米国特許出願公開第20030113306号の実施例5〜8;Rolfe(2000)、Journal of Nutrition、130:396S〜402S;および背景の節を参照]。
【0078】
投与されるプロバイオティック微生物の典型的な濃度範囲は、本発明のこの局面によれば、1日あたり10個〜1013個の細胞である。好ましくは、1日あたり少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約1010個の細胞が、プロバイオティック物の投与において使用される(米国特許第6221350号および同第6410305号を参照)。しかしながら、当然、投与される細菌の数は、対象の大きさ、障害のタイプおよび症状の重症度をはじめとする数多くの要因に従って変化する。
【0079】
本発明の細菌培養物は栄養学的組成物(例えば、食料品、食品添加物または飼料添加物)に配合することができる。例えば、本発明の細菌株は発酵乳製品(すなわち、栄養補助食品)(例えば、米国特許第6156320号に記載される発酵乳製品など)に含ませることができる。
【0080】
代替として、本発明の細菌株は医薬組成物に配合することができ、この場合、本発明の細菌株は、意図された使用に従って選択される、好ましくは経口または経腸投与経路のための医薬的に許容され得るキャリアと混合される。
【0081】
本明細書中において、用語「有効成分」は、生物学的効果を説明することができる細菌調製物を示す。
【0082】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0083】
以降、表現「生理学的に許容され得るキャリア」および表現「医薬的に許容され得るキャリア」は交換可能に使用することができ、生物に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的活性および生物学的性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。佐剤がこれらの表現に含まれる。医薬的に許容され得るキャリアに含まれる成分の1つが、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、すなわち、有機媒体および水性媒体の両方において広範囲の溶解性を有する生体適合性ポリマーであり得る。
【0084】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0085】
薬物の配合および投与のための技術が“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
【0086】
キャリアに加えて、本発明の医薬組成物または栄養学的組成物はまた、コロニー形成キャリア、細菌株の生存能を維持するための配合物(例えば、植物抽出物の揮発性分画物、米国特許第6500423号を参照のこと)、栄養物、抗生物質、抗真菌剤、抗酸化剤、植物抽出物、緩衝剤、着色剤、矯味矯臭剤、ビタミンおよびミネラルを含むことができ、これらは、意図された使用および用いられる投与経路に従って選択される。
【0087】
コロニー形成キャリア:本発明の組成物は、プロバイオティック微生物を大腸または胃腸管の他の領域に輸送するコロニー形成キャリアを含むことができる。典型的には、このようなキャリアは、アミロース、イヌリン、ペプチン、グアールガム、キトサン、デキストラン、シクロデキストリン、アルギン酸塩およびコンドロイチン硫酸などの糖類である[ChourasiaおよびJain(2003)、J.Pharm.Pharmaceut.Sci.、6:33〜66]。
【0088】
好ましくは、修飾型および/または非修飾型の抵抗性デンプンがコロニー形成キャリアとして使用される(米国特許第6221350号を参照のこと)。
【0089】
表現「抵抗性デンプン」は、Brown、McNaughtおよびMoloney(1995)、Food Australia、47:272〜275において定義されるような、RS1、RS2、RS3およびRS4として定義されるデンプンの形態である。典型的には、抵抗性デンプンは大腸に達するまでは本質的には分解されないので、抵抗性デンプンがプロバイオティック組成物において使用される。従って、抵抗性デンプンは、プロバイオティック微生物が大腸に達すると、プロバイオティック微生物による発酵のための直ちに利用可能な基質を提供する。好ましくは、抵抗性デンプンは高アミロースデンプンであり、これには、限定されないが、アミロース含有量が50%w/w以上(特に80%w/w以上)であるトウモロコシデンプン、アミロース含有量が27%w/w以上であるコメデンプンおよびコムギデンプンが含まれ、また、50%以上のアミロース含有量および強化された抵抗性デンプン含有量を有する特定の粒状サイズ範囲のデンプンが含まれる。これらのデンプンには、トウモロコシ、オオムギ、コムギおよびマメ科植物が含まれる。バナナまたは他の果実タイプ(すなわち、ジャガイモなどの塊茎)などの供給源に由来する他の形態の抵抗性デンプン、およびその混合物または組合せもまた本発明に従って使用することができる。
【0090】
そのようなデンプンを、微生物と抵抗性デンプンとの間での結合適合性を強化するために、顆粒および/または顆粒表面の荷電、密度または疎水性を変更することなどによって化学的に修飾することが好都合であり得ることが理解される。エーテル化、エステル化および酸性化などの化学的修飾がこの分野では広く知られており、これらは、デンプンを修飾するために利用することができる。あるいは、様々な修飾を、米国特許第6221350号などに記載されるように物理的または酵素的に誘導することができる。
【0091】
コロニー形成キャリアはまた、オリゴ糖であり得る。オリゴ糖は、胃腸管におけるプロバイオティック微生物の数を増大させることが知られている。コロニー形成キャリアとして使用することができる市販のオリゴ糖の例には、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、ダイズオリゴ糖(ラフィノースおよびスタキオースを含む)、キトオリゴ糖、アガロオリゴ糖、ネオアガロオリゴ糖、α−グルコオリゴ糖、β−グルコオリゴ糖、シクロイヌロオリゴ糖、グリコシルスクロース、ラクツロース、ラクトスクロースおよびキシルスクロースが含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
オリゴ糖は約0.01%(w/w)〜10%(w/w)の濃度で組成物において使用することができる。好ましくは、オリゴ糖の濃度は約0.05%〜5%である。
【0093】
好ましくは、デンプンおよびオリゴ糖の組合せが本発明のこの局面の定着用因子として使用することができる。
【0094】
抗生物質:本発明の組成物は、好ましくは0.1μg/mL〜10μg/mLから選択される範囲でナリジクス酸を含むことができる。
【0095】
抗真菌剤:本発明の組成物は治療効果的な量の抗真菌剤を含むことができる。利用することができる典型的な抗真菌剤には、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、テルコナゾールおよびチオコナゾールなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
抗酸化剤、緩衝剤、植物抽出物、着色剤、矯味矯臭剤、ビタミンおよびミネラル:本発明の組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、植物抽出物および他の薬剤(例えば、着色剤、矯味矯臭剤、ビタミンまたはミネラルなど)を含むことができる。例えば、本発明の組成物は下記ミネラルの1つまたは複数を含むことができる:クエン酸カルシウム(15mg〜350mg);グルコン酸カリウム(5mg〜150mg);クエン酸マグネシウム(5mg〜15mg);およびピコリン酸クロム(5μg〜200μg)。加えて、様々な塩を利用することができ、これらには、クエン酸カルシウム、グルコン酸カリウム、クエン酸マグネシウムおよびピコリン酸クロムが含まれる。様々な化学物質が、Spectrum Quality Products,Inc.(Gardena、Calif.)、Sigma Chemicals(St.Louis、Mo.)、Seltzer Chemicals,Inc.(Carlsbad、Calif.)およびJarchem Industries,Inc.(Newark、N.J.)から市販されている。本発明に従って使用することができる植物抽出物の例には、FDAにより承認されているカモミル、センダングサ、オトギリソウ、ジンジャー、および他の承認された植物抽出物が含まれるが、これらに限定されない[総説については、O’Hara M、Kiefer D、Farrell K、Kemper K、Arch Fam Med.(1998)11月−12月、7(6):523〜36;Modesto A、Lima KC、de Uzeda M、ASDC J Dent Child.(2000)9月−10月、67(5):338〜44、302;Lee KG、Shibamoto T、J Agric Food Chem.(2002)8月14日、50(17):4947〜52を参照のこと]。
【0097】
増粘剤:増粘剤を組成物に加えることができる(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールまたはカルボキシメチルセルロースなど)。
【0098】
キャリア:本発明の組成物の活性な薬剤(例えば、細菌細胞)は、組成物が投与される生物種の組織と生理学的に適合し得る(すなわち、ヒトの摂取または動物の摂取のために好適である)キャリアと組み合わされる。本発明のこの局面によるキャリアは、錠剤形態、カプセル形態または粉末化形態に配合するための固体に基づく乾燥物であり得る。あるいは、キャリアは、液体形態またはゲル形態への配合のための液体またはゲル型物質であり得る。キャリアの具体的なタイプ、ならびに最終的な配合は、部分的には、選択された投与経路に依存する。
【0099】
乾燥配合物のための典型的なキャリアには、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸カルシウム)、トレハロース、マルトデキストリン、コメ粉、微結晶セルロース(MCC)、ステアリン酸マグネシウム、イノシトール、フルクトオリゴ糖(FOS)、グルコオリゴ糖(GOS)、デキストロースおよびスクロースなどが含まれるが、これらに限定されない。組成物が乾燥状態であり、組成物を固まらせることができる(すなわち、成分の胞子、塩、粉末およびオイルの接着を引き起こし得る)蒸発油を含む場合、成分を分配し、かつ固化を妨げる乾燥フィラーを含むことが好まれる。例示的な固化防止剤には、MCC、タルク、珪藻土、非晶質シリカ、ゼラチン、サッカロース、脱脂粉乳およびデンプンなどが含まれ、これらは典型的には重量比で約1%〜95%の量で加えられる。乾燥配合物はその後に再水和される(例えば、液体配合物)か、または乾燥状態(例えば、咀嚼オブラート、ペレットまたは錠剤)で与えられるので、乾燥配合物が、最初に水和された配合物よりも好まれることが理解される。乾燥配合物(例えば、粉末)は、市販の食品(例えば、液体の処方物、裏ごし食品または飲料水供給物)を補うために加えることができる。
【0100】
好適な液体キャリアまたはゲル系キャリアには、水および生理学的な塩溶液;尿素;アルコールおよび誘導体(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール);グリコール(例えば、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、水系キャリアは中性のpH値(すなわち、pH7.0)を有する。
【0101】
保存剤もまた、キャリアに含められることがあり、保存剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよびエチレンジアミン四酢酸塩が含まれる。本発明の組成物はまた、グリセロールまたはポリエチレングリコール(好ましい分子量はMW=800〜20000である)などの可塑剤を含むことができる。キャリアの組成は、有効成分の薬理学的活性または本発明の細菌株の生存能力を著しく妨害しない限り変化させることができる。本発明のこの局面に従って使用することができる他のタイプのキャリアが本明細書中下記に記載される。
【0102】
栄養補助物:本発明の組成物の栄養補助物成分には、ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸および非必須アミノ酸、炭水化物、脂質、食品および食事補助物などをはじめとするこの分野で広く知られている様々な栄養学的因子のいずれかが含まれ得る。従って、本発明の組成物は、繊維、酵素および他の栄養素を含むことができる。好ましい繊維には、オオバコ種子、米ぬか、オートブラン、トウモロコシブラン、ふすまおよび果実繊維などが含まれるが、これらに限定されない。食事性酵素および補助的酵素(例えば、ラクターゼ、アミラーゼ、グルカナーゼおよびカタラーゼなど)もまた含めることができる。本発明の組成物において使用されるビタミンには、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、葉酸、ビタミンKおよびナイアシンなどが含まれる。典型的なビタミンは、毎日の摂取のために、かつ、1日あたりの推奨量(RDA)で勧められるビタミンである。
【0103】
本発明の医薬組成物は、意図される用途に応じて配合されることができる。伝統的な配合技術の総説は、例えば「The Theory and Practice of Industrial Pharmacy」(Lachman L.ら編、1986)またはLaulund(1994)に見出すことができる。
【0104】
好ましくは、本発明の組成物は経腸投与のために配合される。
【0105】
本明細書中で使用される表現「経腸投与」は、胃腸管の任意の部分を介する薬学的作用因の投与(例えば、直腸投与、結腸投与、腸管投与(近位または遠位)および胃投与など)を示す。
【0106】
経口投与の場合、化合物は、活性な化合物を、この分野で十分に知られている薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせることによって容易に配合することができる。そのようなキャリアにより、本発明の化合物は、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される薬学的調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸カルシウム)、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に受容可能なポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0107】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、活性な化合物の量を明らかにするために、または活性な化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0108】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された有効成分を含有し得る。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
【0109】
本発明の組成物は腸溶性被覆された徐放性のカプセルまたは錠剤中に包入されることができることは理解されるであろう。腸溶性被覆は、カプセル/錠剤が胃腸管を通過して小腸に到達するまでの間、無傷で(即ち溶解せずに)あることを可能にする。
【0110】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0111】
生きた細菌細胞の非経口投与の多数の例がこの分野で公知である(例えば、Tjuvajev(2001)J.Control Release 74(1−3):313−5.Rosenberg(2002)J.Immunother.25:218−25;Sheil(2004)Gut 53(5):694−700;およびMatsuzaki(2000)Immunol.Cell Biol.78(1):67−73参照)。本発明の細菌細胞は、免疫応答を調節するために弱毒化された形態で投与されることもできることは理解されるであろう(Matsuzaki(2000)Immunol.Cell Biol.78(1):67−73)。
【0112】
本発明の調製物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0113】
生殖器適用のための好適な配合は、溶液を含む。
【0114】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0115】
膣投与のために好適な配合物は、適切であることがこの分野では知られているような膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、ゼリー、フォームまたはスプレー剤、あるいは水性または油性の懸濁物、溶液またはエマルジョン(すなわち、液体配合物)、あるいは、キャリアを含有するフィルムとして提供され得る(詳しくは米国特許第5756681号に記載される)。
【0116】
膣への適用のために好適な組成物が、米国特許第2149240号、同第2330846号、同第2436184号、同第2467884号、同第2541103号、同第2623839号、同第2623841号、同第3062715号、同第3067743号、同第3108043号、同第3174900号、同第3244589号、同第4093730号、同第4187286号、同第4283325号、同第4321277号、同第4368186号、同第4371518号、同第4389330号、同第4415585号、同第4551148号、同第4999342号、同第5013544号、同第5227160号、同第5229423号、同第5314917号、同第5380523号および同第5387611号に開示される。
【0117】
経尿道投与のために、組成物は、1つまたは複数の選択されたキャリア、賦形剤(例えば、水、シリコーン、ワックス、ワセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、リポソーム、糖(例えば、マンニトールおよびラクトースなど)および/または様々な他の物質など)をポリエチレングリコールおよびその誘導体とともに含有する。医薬組成物は1つまたは複数の経尿道浸透促進剤(すなわち、選択された薬物が尿道膜を通り抜ける速度を増大させるように作用する化合物)を含有することが好まれる。好適な浸透促進剤の例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、デシルメチルスルホキシド、ポリエチレングリコールモノラウラート(PEGML)、グリセロールモノラウラート、レシチン、1−置換アザシクロヘプタン−2−オン(特に、1−n−ドデシルシクラザ−シクロヘプタン−2−オン[これはAzoneRTMの商標でNelson Research & Development Co.(Irvine、Calif.)から入手可能である]、SEPARTM[これはMacrochem Co.(Lexington、Mass.)から入手可能である])、アルコール(例えば、エタノール)、界面活性剤(これには、例えば、TergitolRTM、Nonoxynol−9RTMおよびTWEEN−80RTMが含まれる)、および低級アルカノール(例えば、エタノールなど)が含まれる。WO91/16021に開示されるように、薬剤の経尿道投与は多数の異なる方法で行うことができる。例えば、薬剤を、柔軟なチューブ、スクイーズボトル、ポンプまたはエアロゾルスプレーから尿道内に導入することができる。薬剤はまた、尿道内で吸収、融解または生体侵食される被覆物、ペレットまたは坐薬に含有させることができる。特定の実施形態において、薬剤は陰茎挿入体の外側表面における被覆物に含まれる。
【0118】
本発明の配合物は、細菌の生存能を維持するように選択される。しかしながら、弱毒化された細菌が望まれる場合、本発明の配合物はより広い範囲から選択されることができる。
【0119】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、治療されている対象の疾患の症状を防止、軽減または改善するために、あるいは、治療されている対象の生存を延ばすために効果的な有効成分の量を意味する。
【0120】
治療効果的な量の決定は十分に当業者の範囲内である。
【0121】
典型的には、本発明の細菌種(すなわち、有効成分)は、最終組成物の1重量%〜90重量%(より好ましくは5重量%〜90重量%、さらにより好ましくは10重量%〜90重量%)を構成し、なおさらに好ましくは、投与に好適な配合物に含有される重量比で15%〜88%を構成する。あるいは、本発明の組成物は組成物の1回の服用について少なくとも10個(より好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも1010個)の生細菌を含有することができる。
【0122】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、インビトロ、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって明らかにすることができる(下記の実施例の節の実施例1〜実施例4を参照のこと)。これらのインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイならびに動物研究から得られたデータは、ヒトへの使用のための投薬量範囲を定める際に使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”(第1章、1頁)を参照のこと)。
【0123】
治療される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は単回投与または多回投与が可能であり、処置の経過が、数日から数週間まで、あるいは、治癒が達成されるまで、または、疾患状態の縮小が達成されるまで続く。
【0124】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、治療されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存する。
【0125】
適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の調製物を含む組成物はまた、適応状態の治療のために調製し、適切な容器に入れ、表示することができる。
【0126】
本発明の組成物は、所望される場合には、活性成分を含有する一つ以上の単位投薬形態物を含有し得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴い得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物についての米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。
【0127】
本発明の細菌が、製品製造の条件(例えば、食品産業の有害な条件)、製品(医薬組成物、食品添加物、飼料のいずれか)の貯蔵寿命、および、胃腸管の通過に耐えることができることを確実にするために、細菌細胞は好ましくはカプセル化される。
【0128】
生きている細菌細胞をカプセル化する様々な方法がこの分野では広く知られている(例えば、General Mills Inc.の特許、例えば、米国特許第6723358号などを参照)。例えば、アルギン酸塩およびHi−Maize(商標)デンプンによるマイクロカプセル化、その後の凍結乾燥が、乳製品における細菌細胞の貯蔵寿命を延ばすことにおいて成功していることが判明している[例えば、Kailasapathy他、Curr Issues Intest Microbiol.、2002(Sep)、3(2):39〜49を参照]。代替として、生存可能なプロバイオティック物をゴマ油エマルションへの封入もまた使用することができる[例えば、Hou et al.,J.Dairy Sci.、86:424〜428を参照]。
【0129】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のプロバイオティック組成物は、この分野では広く知られている方法を使用して動物に与えることができる。
【0130】
典型的には、プロバイオティック組成物は、飼料食に加えられる飼料添加物を介して動物の胃腸管に導入される。代替となる投与方法には、液体摂取、ペーストまたはゲルの摂取、ボール(bole)、粉末を動物の体表面に散布することなどがある。
【0131】
プロバイオティック細菌細胞に加えて、飼料添加物は、例えば、キャリア物質(例えば、石灰石およびあらびき小麦粉など)を含むことができる(米国特許第6410305号を参照のこと)。飼料添加物は、動物飼料1トンあたり0.01〜10ポンド(好ましくは約0.5〜2.5ポンド)の添加物の割合で動物の通常の規定食に加えることができる。
【0132】
飼料添加物は約0.3重量%〜約20重量%のプロバイオティック細菌細胞を含有することができる。好ましくは、飼料添加物は約7重量%〜15重量%のプロバイオティックプレミックスを含有し、最も好ましくは約10重量%〜13重量%のプロバイオティックプレミックスを含有する。
【0133】
さらに当然のことながら、本発明のプロバイオティック微生物は腸の上皮に接着しなくてもよい。従って、反復投薬が行われない場合、細菌は、およそ3〜5日の最大期間にわたって胃腸管に留まったままであり、一時的なフローラであると見なされる(図3a〜3dを参照)。本発明の菌株は、胃腸クリアランス時間が比較的速く、胃腸上皮に接着することができないために、例えば、免疫低下個体における菌血症のその後の発生を予防するという利点を有する。実施例の節の実施例6において示されるような便流出(shedding)アッセイを、処置された対象からの細菌の排除を評価するために使用することができる。
【0134】
本発明の細菌株および/または組成物は、特定の障害(例えば、上記のような障害など)を処置するために特定された製造物に含めることができる。典型的には、製造物は、細菌細胞または細菌細胞を含む組成物の形態であるか、または、包装材料との組合せでの包装物の形態である。包装材料は、細菌の生存能力を保持するように選択され、また、例えば、包装物の成分の使用のための標識または説明書を含む。説明書により、本発明の方法または組成物について本明細書中に記載されるような包装されている成分の意図された使用、内容物(例えば、属、種、菌株表示)、保存期限終了時における生細菌の最少数、適正な貯蔵条件、および、消費者情報に対する企業の契約詳細が示される。標識はまた、製造物の鮮度に関連する情報を提供し得る。この情報には、製造日、「販売」期限または「有効期限」が含まれる。「販売」期限は、そのような日時までに製造物が消費者に販売されていなければならないことを指定する。「有効」期限は、そのときまでに製造物が供給業者または消費者によって処理されなければならないことを指定する。あるいは、または、さらに、「積極的な標識表示」を使用することができる。例えば、米国特許第4292916号、同第5053339号、同第5446705号および同第5633835号には、傷みやすい製造物の保存期限をモニターするための色変化デバイスが記載される。このようなデバイスは、反応が開始するように反応層を物理的に接触させることによって起動させられ、この作用は好都合には包装時に行うことができるだけである。この方法は、流通網全体を通して鮮度を失う食品の劣化をモニターするために好適である。米国特許第5555223号には、製造したまさにそのときにタイマークロックを設定する工程を含む、包装に対する計時インジケーターを取り付けるためのプロセスが記載される。
【0135】
意図された使用に依存して、製造物は、必要に応じて、下記成分の1つまたは複数を、一体として、または別個の包装で含有することができる:コロニー形成キャリア、矯味矯臭剤、キャリア、および同様な成分。例えば、製造物は、プロバイオティックを治療的方法における使用のために処方物と組み合わせるための説明書と一緒に、従来の液体製造物との組合せで使用するための胞子を含むことができる。
【0136】
本発明の細菌株はまた、医薬送達システムとして使用することができる。そのような送達システムは本質的には、乳児、高齢者、および、免疫機能が損なわれている個体を含むヒトにおける弱毒化病原体の使用よりも安全である[Grangette(2001)、Infect.Immun.、69:1547〜1553]。
【0137】
本発明の細菌株はまた、この分野では広く知られている発現システムを使用して異種の発現産物を発現させるために改変することができる。この方法は、IL−10を分泌するL.lactis株を胃内に投与されたマウスにおいて大腸炎を軽減させるために使用された[Steidler(2000)、Science、289:1352〜1355]。
【0138】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0139】
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なお、これら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0140】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0141】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学及び組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている[例えば以下の諸文献を参照されたい。「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら1989年;Ausubel, R.M.編1994年「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻;Ausubelら著1989年「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons,米国メリーランド州バルチモア;Perbal著「A Practical Guide to Molecular Cloning」John Wiley & Sons,米国ニューヨーク1988年;Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク1998年;米国特許の4666828号、4683202号、4801531号、5192659号及び5272057号に記載される方法;Cellis, J.E.編「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻1994年;Coligan, J.E.編「Current Protocols in Immunology」I〜III巻1994年;Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク1994年;MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク1980年;また利用可能な免疫検定法は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている。米国特許の3791932号、3839153号、3850752号、3850578号、3853987号、3867517号、3879262号、3901654号、3935074号、3984533号、3996345号、4034074号、4098876号、4879219号、5011771号及び5281521号;Gait,M.J.編「Oligonucleotide Synthesis」1984年;Hames, B.D.及びHiggins S.J.編「Nucleic Acid Hybridization」1985年;Hames,B.D.及びHiggins S.J.編「Transcription and Translation」1984年;Freshney, R.I.編「Animal Cell Culture」1986年;「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press 1986年;Perbal, B.著「A Practical Guide to Molecular Cloning」1984年及び「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ1990年;Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press、1996年;なお、これらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである]。その外の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。本明細書に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。これらの文献中に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0142】
背景
本研究の全体的目的は、大腸菌のM17菌株(M17)を哺乳動物供給源から集められた便サンプルにおいて検出するためのアッセイを開発することである。用いられたアプローチは、最初に、M17の自然発生したナリジクス酸耐性変異誘導体を単離することであり、次いで、便サンプルからのこの菌株の特異的な計数および確認のための方法を開発することであった。
【0143】
材料
材料−化学物質の製造供給元が下記の表4に示される。

【0144】
生物学的材料の製造供給元の詳細が下記の表5に示される。

【0145】
使い捨て材料−使い捨て材料の製造供給元の詳細が下記の表6に示される。

【0146】
装置−実験装置の製造供給元の詳細が下記に列記される。
【0147】
自動化DNAシーケンサー:Li−Cor/NENモデル4200Global IR自動化DNAシーケンサー(品番9942−155)。Netwinderサーバー(80Gb記憶、サーバーソフトウエア、操作システム)を備えたデュアルレーザー/検出器(シリコンアバランシェフォトダイオード検出器を備えた、685nmおよび785nmのダイオードレーザー)。操作ソフトウエア:e−Seqバージョン(品番9942−154)。
【0148】
パルスフィールドゲル電気泳動:Bio−Rad CHEF DRIIパルスフィールドゲル電気泳動システム+冷却装置システム(品番170−3725)。駆動モジュールを備えた100/120V電気泳動セル、制御モジュール、可変速度ポンプ、フレームおよびプラットホームを伴う14x13cmの採型用スタンド、コームホルダー、15ウエルの1.5mm厚のコーム、遮蔽キャップ、使い捨てプラグ鋳型、ならびに、12ftのTygon管。
【0149】
水平アガロースゲル電気泳動:Owl Scientific、Model A1 Gator(商標)Large Gel Electrophoresis System
ゲルサイズ:13cm(W)x25cm
【0150】
Owl Scientific、Model B1A EasyCast(商標)Mini Gel Electrophoresis System
ゲルサイズ:7cm(W)x8cm
【0151】
ポリメラーゼ連鎖反応サーモサイクラー(製造者、所在地):Whatman−Biometra T1、96ウエルのプログラム可能なサーモサイクラー(品番050−91)。
【0152】
Whatman−Biometra T Gradient、96ウエルのプログラム可能な温度勾配サーモサイクラー(品番050−801)
【0153】
画像化システム:Syngene Ingenious画像化システム、768x582ピクセルの解像度を有する8ビットモノクロム画像化カメラ、マニュアルズームレンズ、暗室+20×30cmのVU2(302nm/365nmの波長)トランスイルミネーター、GeneSnap画像捕獲ソフトウエアおよびGeneTools画像分析ソフトウエア。
【0154】
実施例1
M17大腸菌株のナリジクス酸耐性変異体の単離
実験手順
大腸菌のM17菌株は、抗生物質のナリジクス酸に対して感受性であることが知られている。ヒトの臨床サンプルから単離されたほんの少数のE.coli菌株が、ナリジクス酸および他のキノロン系抗生物質に対して耐性であることが知られている(4、8、9)。ナリジクス酸耐性(これはgyrAまたはparCにおける変異に関連する)がインビトロにおいて自然発生し、臨床サンプルでは低い頻度で観測されるだけであるので、ナリジクス酸耐性は、M17菌株を特徴づけるための簡便な手段として十分に適する。
【0155】
M17のナリジクス酸耐性変異誘導体を単離するために、M17のE.coli培養物をL培地において37℃で16時間成長させ、その後、培養物の0.1mLずつを、15μg/mLのナリジクス酸が補充されたL寒天の表面に広げた。その後、寒天平板37℃で16時間インキュベートした。その後、2個のコロニー(M17 15−1およびM17 15−2)を選択し、15μg/mLのナリジクス酸が補充されたL寒天に画線し、また、15μg/mLのナリジクス酸を含む5mLのL培地に接種し、37℃で16時間インキュベートした。その後、L培地培養物の0.1mLずつを、50μg/mLのナリジクス酸が補充されたL寒天の表面に広げた。合計で4個のコロニーをそれぞれの元の親菌(M17 15−1またはM17 15−2)から選び、これらのコロニーを、M17 50−1〜M17 50−4(これらはM17 15−1親菌に由来する)、および、M17 50−5〜M17 50−8(これらはM17 15−2親菌に由来する)とラベルを付けた。その後、M17 50−1〜M17 50−8の各コロニーを、50μg/mLのナリジクス酸を含むL寒天に画線し、また、50μg/mLのナリジクス酸が補充されたL培地に接種し、37℃で16時間インキュベートした。その後、それぞれのL培地培養物の一部(0.1mL)を、100μg/mLのナリジクス酸が補充されたL寒天平板の表面に広げた。平板を37℃で一晩インキュベートした。それぞれの親菌株(M17 50−1〜M17 50−8)に由来する、100μg/mLのナリジクス酸を含むL寒天からの1個のコロニーを選び、M17 100−1〜M17 100−8とラベルを付け、100μg/mLのナリジクス酸が補充されたL寒天に画線し、37℃で16時間成長させた。
【0156】
ナリジクス酸耐性M17誘導体の冷凍庫ストック物の調製。M17 15−1、M17 15−2、M17 50−1〜M17 50−8、および、M17 100−1〜M17 100−8に由来する単一コロニーを、適量のナリジクス酸(15μ/mL、50μ/mLまたは100μ/mL)が補充されたL培地において成長させ、0.5の光学濃度(600nm)に成長させた。それぞれの培養物から、0.7mLを無菌の極低温保存用チューブに取り出し、0.3mLの無菌の50%グリセロールと混合し、室温で45分間ゆすった。その後、グリセロール処理された細胞を−80℃で貯蔵した。
【0157】
結果
親のナリジクス酸感受性M17菌株から、15μg/mLのナリジクス酸に対して耐性である2個の単一コロニーを選んだ。その後、50μg/mLのナリジクス酸に対して耐性である一連の4個の誘導体(それぞれがM17 15−1親菌株およびM17 15−2親菌株に由来する)を単離した。その後、100μg/mLのナリジクス酸に対して耐性である1個の誘導体をM17 50−1菌株〜M17 50−8菌株のそれぞれから得た。その後、下記の表7に示されるそれぞれのM17ナリジクス酸耐性誘導体の1mLアリコートを長期保存のために−80℃で凍結した。

【0158】
実施例2
本発明のM17SNAR菌株の特徴づけ
一連の分子遺伝学および生化学的アッセイを、本発明の菌株を特徴づけるために行った。
【0159】
実験手順
ナリジクス酸耐性M17誘導体のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)確認:PFGEを、M17のナリジクス酸耐性誘導体が実際にM17誘導体であることを確認するために行った。PFGEを、CDCプロトコルの「パルスフィールドゲル電気泳動による大腸菌O157:H7の分子的亜型決定のための実験プロトコル」を使用して行った。www.cdc.gov/pulsenet/protocols.html、疾病対策予防センター、パルスフィールドゲル電気泳動による食品媒介細菌病原体の標準化された分子的亜型決定:マニュアル(Atlanta:国立感染病センター;1996年(2000年更新))を参照のこと。簡単に記載すると、L寒天平板がM17親菌株の凍結されたストック培養物から画線され、M17 100−1〜M17 100−8のナリジクス酸耐性誘導体を、L寒天、または、10μg/mLのナリジクス酸が補充されたL寒天に画線し、37℃で16時間成長させた。無菌の微生物学用ループを使用して、約20μLの細胞をそれぞれの平板から1mLの懸濁緩衝液(100mM Tris、100mM EDTA、pH8.0)を含有するチューブに移した。懸濁物を、さらなる細胞または懸濁緩衝液を必要に応じて使用して、1.35の610nmでの吸光度値に調節した。その後、それぞれの菌株からの細胞懸濁物(0.4mL)を20μLのプロテイナーゼK(ストック濃度、20mg/mL)と混合し、数回反転させた。その後、0.4mLの融解されたアガロースを細胞と混合し、直ちに、CHEF II−DR PFGE装置のプラグ鋳型に分注した。固化後、その後、プラグを、へらおよび5mLの細胞溶解緩衝液[50mM tris、50mM EDTA、1%サルコシル(ラウリル硫酸ナトリウム)、pH8.0]を使用して50mLのスクリューキャップチューブに取り出した。その後、25マイクロリットル(25μl)のプロテイナーゼK(20mg/mLのストック濃度)を加え、プラグを54℃で2時間インキュベートした。溶解緩衝液をデカンテーションによって除き、プラグを、10mLの無菌水において旋回させることによって簡単に洗浄した。その後、水をデカンテーションし、プラグを、10mLのTE緩衝液で、それぞれ15分間、4回洗浄した。10mM Tris/1mM EDTA(pH8.0)(TE)での最後の洗浄の後、プラグを無菌のTE緩衝液において4℃で保存した。
【0160】
プラグの2mmのスライス片を無菌の1.5mL微量遠心分離チューブに入れ、0.1mLの制限緩衝液を加えることによって制限消化を行った。XbaI制限酵素のための制限緩衝液は、10mM Tris、10mM MgCl2、50mM NaCl、1mMジチオスレイトールを含んでいた(pH7.9)。37℃での15分のインキュベートの後、制限緩衝液をデカンテーションし、0.1mLの制限緩衝液+30ユニットのXbaI制限酵素を加えた。その後、サンプルを37℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、サンプルをデカンテーションし、0.2mLの0.5XTBE緩衝液を加えた。
【0161】
分析用アガロースゲルを、0.5XTBEにおける1%SKGアガロースのスラリーを混合し、アガロースを融解することによって注入成形した。60℃の湯浴において冷却した後、その後、アガロースをCHEF II−DRゲルフォームに注ぎ、コームを融解ゲルの中に慎重に入れた。室温での1時間の固化の後、コームを除き、制限消化されたプラグを適切なウエルに入れ、ゲルスライス片をウエルの前方に確実に押しつけ、気泡を除いた。その後、少量の融解アガロースを加えて、ウエルにおける残余領域を満たした。その後、ゲルをCHEF DRII PFGEタンクに入れ、ゲルをチャンバーのゲルフレームの中に確実に入れた。その後、チャンバーを0.5XTBE(電気泳動用の水により0.5X濃度に希釈された、1M Tris、1Mホウ酸、20mM EDTA、pH8.3)で満たし、下記の条件のもとで電気泳動した。
初期A時間:2.2s
最終A時間:54.2s
開始比:1.0
電圧:200V(6V/Cm)
泳動時間:22hr
【0162】
電気泳動後、ゲルを0.02μg/mlの臭化エチジウムの溶液において15分間染色し、水において30分間脱染色した。染色されたDNAを、ゲルを302nmのUVライトボックスに置くことによって可視化し、CCDカメラで画像取得した。
【0163】
増幅断片長多型(AFLP):AFLP反応をLi−Cor,Inc.の文献#988−07304(Rev.1)に従って行った。テンプレートDNAを標準的な方法によって調製し、10mM Tris/1mM EDTA(pH7.5)に再溶解した。ゲノムDNAを標準的な方法(5)によって細菌株から抽出した。DNAサンプルを10mM Tris−0.1mM EDTA(pH8.0)に溶解した。それぞれのサンプルからの合計で100ngのDNAをEcoRIおよびMseIにより消化した。その後、二本鎖の合成DNAアダプター(これは、EcoRIおよびMseIの突出部に相補的な短い一本鎖配列を含有する)を消化されたDNAフラグメントに連結した。その後、連結されたアダプターを有するフラグメントを希釈し、アダプターについて特異的なPCRプライマーを使用する前増幅反応においてPCRによって増幅した。その後、この増幅されたフラグメントは、蛍光標識されたプライマーが未標識プライマーとともに使用される選択的増幅のためのテンプレートとして役立った。選択的増幅では、さらに2つの塩基を3’末端に有するアダプター配列に対して相補的であるプライマーが使用される。これにより、元のEcoRI部位またはMseI部位にすぐに隣接する2つの塩基がプライマーの3’塩基に対して相補的であるDNAフラグメントが選択的に増幅された(標識される)。最後に、標識された選択的増幅生成物をLi−Cor/NEN4200グローバルアナライザー(自動化DNAシーケンサー)での変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。
【0164】
結果
元のM17親菌株に対するM17 100−1〜M17 100−8の各菌株の遺伝学的関係を確認するために、PFGE分析をそれぞれの菌株および親のM17菌株に対して行った。図に示されるように、M17 100−1〜M17 100−8の各誘導体はすべてが、M17親菌株と区別不可能である。
【0165】
PFGE確認に基づいて、すべてのナリジクス酸耐性誘導体がM17親菌株と遺伝学的に区別不可能である。その後、M17親菌株およびM17 100−1〜M17 100−8の各誘導体菌株をバイオレットレッド胆汁寒天に画線し、ラクトース発酵について試験した。すべての菌株がラクトース陽性であった。従って、M17 100−8菌株を、すべてのさらなる研究のためのナリジクス酸耐性M17誘導体として選んだ。この菌株をM17SNAR(スクロース陽性、ナリジクス酸耐性)と称した。
【0166】
M17およびM17SNAR誘導体の遺伝学的関連性のさらなる分析をAFLP分析によって行った。M17親菌株、M17SNAR菌株、14の種々のECOR菌株(6)および2つの遺伝学的に無関係な血清型O2の菌株(AOS1およびAOS19)からの総DNAを、蛍光標識されたEcoRI−Aプライマーおよび未標識のMseI−GAプライマーを使用するAFLPに供した。反応生成物をゲル電気泳動によって分離し、得られた画像を使用して、バンド形成パターンを比較した。図2に示されるように、M17およびM17SNARに由来する溶解可能な蛍光標識されたAFLP生成物のすべてがサイズにおいて同一であり、これに対して、種々のECOR菌株およびAOS菌株から生じたフラグメントパターンは、M17およびM17SNARと比較して、いくつかの違いを示す。従って、M17親菌株およびM17SNAR誘導体はPFGEおよびAFLPの両方によって区別可能である。
【0167】
実施例3
M17SNARゲノムの特有な遺伝子形跡を特定するためのDNA配列分析
実験手順
DNA配列分析のためのゲノムDNAの調製:DNA配列決定のために、M17 100−8SNAR単離体からの総ゲノムDNAを調製した。このクローンを、100μg/mLのナリジクス酸を含むL寒天において一晩成長させた。37℃での16時間の成長の後、ループ1つ分の細胞を、100μg/mLのナリジクス酸が補充された500mLのL培地に移し、200rpmで振とうしながら37℃で18時間成長させた。その後、細胞を、JA10ローターにおいて250mLボトルを使用し6000rpmでの10分間のBeckman J2高速遠心分離機における遠心分離によって集めた。その後、細胞を、2mg/mLのリゾチームを含む25mLの10mL Tris−1mM EDTA(pH7.5)に再懸濁した。室温での10分のインキュベーションの後、5mg/mLのプロテイナーゼKが補充された2.5mLの1%ドデシル硫酸ナトリウムを加え、50℃で90分間インキュベートした。その後、(10mM tris−1mM EDTA(pH8.0)を飽和させた)25mLのフェノールを加え、ボトルを高速度で3時間ゆすった。その後、相を、JA10ローターを用いてBeckman J2高速遠心分離機8000rpmでの15分間の遠心分離によって分離した。その後、水相(20mL)をビーカーに取り出し、2mLの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)を加え、かき混ぜながら混合した。その後、DNAを、40mLのエタノールを加えることによって沈殿させた。沈殿したDNAを界面からガラス棒に巻き取り、巻き取ったDNAを、70%エタノールに数回沈めることによって洗浄した。最後に、DNAを1mLの10mM Tris−1mM EDTAに溶解した。その後、溶解したDNAを、水を3回連続して交換しながら滅菌水(1リットル)に対して2時間透析した。その後、DNAを配列分析のためにVivek Kapur博士(The Biomedical Genomics Center、ミネソタ大学)に送った。
【0168】
ゲノム配列からのM17SNAR特有的配列の特定:M17SNARライブラリーに由来するショットガン読取りのアラインメントから得られる集められたDNA配列(コンティグ)のすべてを含有する1つのファイルをVivek Kapur博士から得た(A.Bensonコンピューター、D:/Midland Genomics/BioBalance/M17 Genome data¥0812_0003.contigs.fasta.txt)。200を越える配列ラン(run)のアラインメントから生じる個々のコンティグがファイルから得られ、これらを使用して、fastA形式でのテキストファイルを作製した。その後、fastAファイルを、NCBIのウエブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/wblast2.cgi)において入手可能なBLAST2アルゴリズム(7)を使用してE.coli CFT073のゲノム配列(GenBankアクセッション番号NC004431)に対してBLAST検索した。その後、アラインメントからの座標をMicrosoft Excelのスプレッドシートに入力し、非アラインメントのセグメントを、BLASTアラインメントをもたらさない配列セグメントの座標を特定することによって求めた。1000塩基を越える非アラインメントのセグメントのみをさらなる分析のために検討した。
【0169】
アラインメントされない領域に対応するそれぞれのM17SNARコンティグに由来するセグメントを、ミネソタ大学のPathogenomics Sequence Analysis施設から入手可能なExtract DNAプログラム(www.pathogenomics.ahc.umn.edu/ExtractDna.html)を使用してコンティグファイルから得た。その後、アラインメントされないセグメントのそれぞれを、fastA形式での.tExtファイルを作製するために使用し、最後に、BLASTnアルゴリズム(1、2)を使用してNCBIにおけるGenBankデータベース全体を検索するために使用した。その後、有意なアライメントをもたらさないセグメントを、M17SNARに特有なゲノム配列の領域についての候補と見なした。
【0170】
M17SNARに特有なゲノム領域を増幅するためのPCRプライマーの設計:M17SNARの特有なセグメントを含有するテキストファイルから、PCRプライマーを、Wisconsin Package(Genetics Computer Groupパッケージ、www.accelrys.com/products/gcg/)から得られるPRIMEプログラムを使用して設計した。プライマーを設計する際に用いたパラメーターは下記の通りである:
【0171】
PCRプライマーは、生成物を、長さが500塩基〜3キロ塩基の間でもたらさなければならない。
【0172】
PCRプライマーは特有な配列の領域の内部に位置しなければならない。
【0173】
PCRプライマー対は、互いに2℃の範囲内である融点を有しなければならない。
【0174】
それぞれの特有な領域に由来するPCRプライマーは、生成物が多重化され得るように、サイズが異なる生成物を与えなければならない。可能性のあるプライマー組合せが下記の表11に示される。
【0175】
PCRによるM17SNAR特有ゲノム領域の最適化およびバリデーション:
M17SNARに特異的なゲノムセグメント(M17SSGS)を検出するためのPCR反応を最適化するために、候補物のリスト(下記の表11を参照のこと)からの1つのPCRプライマー組合せを、予想サイズの特異的な生成物が生じたかを明らかにするために、M17SNAR染色体DNAに対して試験した。反応を、TGradientサーモサイクラー(Biometra)を使用して異なる融解温度で行った。勾配は、59℃に中心があり、15℃の変動が低温側および高温側にあった。反応を、1ngのM17SNAR DNAを使用して、1XPCR緩衝液(2.5mMのMgCl最終濃度を含有する)、250μMのdNTPs、1ユニットのTaq DNAポリメラーゼ、および、1μMの各プライマーを伴う20μLの反応体積において行った。反応体積を、滅菌水を使用してそれぞれの反応について20μLにした。反応液を95℃に2.5分間加熱し、その後、95℃で30秒間、融解温度(プライマー組に依存して56℃または63℃)で45秒間、72℃で45秒間の30サイクルに供した。30サイクル後、反応を72℃で5分間伸長させ、ゲル電気泳動について準備が整うまで4℃で保った。
【0176】
終結すると、PCR反応液には、2μLの負荷用色素(0.21%ブロムフェノールブルー、0.21%キシレンシアノール、50%グリセロール)が補充された。その後、合計で15μLの反応液を、1ng/mLの臭化エチジウムを含有する1X TAEにおいて調製された0.8%アガロースゲルに負荷した。その後、ゲルを100ボルト/Cmで1.5時間電気泳動した。その後、電気泳動されたPCR生成物を、ゲルを302nmのUVライトボックスに置くことによって可視化し、CCDカメラで画像取得した。
【0177】
結果
異なるAFLPプライマー組合せに由来するフラグメントパターンにより、M17SNARが種々のE.coli菌株と区別され得るが、M17SNARを他のE.coli菌株と区別するためのより単純なアプローチは、ナリジクス酸耐性(この場合、ナリジクス酸耐性の形質は、耐性の細菌を選択的に成長させるために(すなわち、ナリジクス酸の存在下において成長することができる便中のそのような細菌のみを特定するために)、次いで、それらの正体を、特異的な遺伝子試験を使用してM17SNARとして確認するために使用される)と、ナリジクス酸耐性細菌を便サンプルから選択的に成長させ、それらの正体を、M17親菌株およびM17SNAR誘導体に対して特有であるDNAセグメントについての遺伝子試験を使用してM17SNARとして確認することとの組合せを使用することである。M17およびM17SNARに特有なDNAのセグメントを特定するために、M17SNARのゲノムを全ゲノムDNA配列分析に供した。ゲノムDNAをM17SNARから抽出した。DNAを続いて、異なるサイズのフラグメント長さに物理的に剪断し、3つの異なるクローンライブラリーを作製した(それぞれが異なる平均インサートサイズ(4キロ塩基、10キロ塩基および40キロ塩基)を有した)。その後、これらのライブラリーのそれぞれをハイスループットショットガンDNA配列分析に供し、配列の読取りを、それらの重なりに基づいて、大きい連続するDNA配列を集めた。一般的な実施であるように、ショットガンDNA配列決定の段階では、ゲノム全体のそれぞれのセグメントが、独立した重複するクローンで多数回、配列決定されるように、十分なクローンのDNA配列分析が含まれた。
【0178】
下記の表8に例示されるように[Ewing,B.、L.Hillier、M.WendlおよびP.Green、1998、Base−calling of automated sequence traces using Phred.I.Accuracy assessment、Genome Res、第8巻(3)、175〜185]、E.coli M17SNARゲノムのハイスループットショットガン配列決定段階は、良好な品質スコアを有する36265538個の塩基を表す57408個の異なった高品質の「読取り」をもたらした(これはゲノムのおよそ8倍の配列重複率をもたらす)。Phred20塩基の総数に基づいて、4Kbゲノムライブラリーから得られる、末端が対形成する配列読取りにより、ゲノム配列のほとんどの範囲がもたらされた。10kbライブラリーおよびフォスミドライブラリーは、末端が対形成する「読取り」からのより大きい物理的連結をもたらし、連続する配列「ブロック」を集合プロセスにおいて整列および配向させることを容易にした。

【0179】
集合作業中に、配列データ、ベクター配列が除かれ、配列がPhred品質スコア情報に基づいて品質スクリーニングされた[Ewing B、Green P、phredを使用する自動化シーケンサー記録の塩基呼出し.II.エラー確率、Genome Research、8:186〜194(1998);Ewing B、Hillier L、Wendl M、Green P、Base−calling of automated sequence traces using Phred.I.Accuracy assessment、Genome Research、8:175〜185(1998)を参照のこと]。
【0180】
ライブラリーから得られる配列「読取り」のすべてが最初に、相互に比較された。異なる「読取り」の配列の間におけるいくつかの一致が認められ、次いで、これらを使用して、配列を、コンティグと呼ばれる連続する配列区域にアラインメントした。独立した読取りからの配列の品質における小さい変動のために、DNAの同じセグメントの2つの異なる「読取り」が同一にならない場合がある。従って、異なるライブラリーからの十分なクローンが、それぞれの塩基の多数の重複する読取りをもたらし、その結果、それぞれの塩基が独立して確認されるようにするために配列決定される。
【0181】
コンティグ構築ソフトウエア(これにより、コンティグが「読取り」におけるそれぞれの塩基の「品質」に基づいて構築される)を使用して、DNA配列を大きい連続する配列区域に最終的に構築した。配列における何らかのギャップ、不一致または曖昧な部分もまた特定された。その後、異なるコンティグに存在する対形成した「読取り」を使用することによって、コンティグを整列し、連結して、より大きいスーパーコンティグにまとめた。このアプローチを使用して、合計で464個のコンティグが集められた。その詳細が下記の表9に示される。全ゲノムの集合を、AgencourtのLIMSシステムと組み合わせてParacel Genome Assembler(商標)(バージョン2.6.2)を使用して行い、一方で、Paracelの足場ビューアーおよびConsed(バージョン13.0)を使用して、集合を完成させた。

【0182】
特有的配列をM17SNAR菌株において特定するための戦略:並列アプローチを、可能性のある特有的配列を特定するために使用した。
【0183】
464個の全コンティグのすべてがFASTA形式(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/html/search.html)での個々のコンティグ配列の*.txtファイルとして電子的に提供された。コンティグ全体の対毎のBLAST分析が結果的には、E.coli CFT073のゲノム配列に対して行われ、続いて、アラインメントされない領域がM17のコンティグから特定された。その後、これらのアラインメントされない配列を対毎のBLASTにおいて使用して、E.coli MG1655(K−12)、E.coli EDL933(O157:H7)およびE.coli Sakai(O157:H7)のゲノム配列に対する何らかの配列相同性を特定した。その後、E.coli CFT073、K−12またはO157:H7のいずれかのゲノムに対する有意なアラインメント(配列相同性)を示さないセグメントを、nrNCBIデータベース全体(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)に対するBLAST検索において使用した。
【0184】
並行したアプローチにおいて、BLAST分析を、200bp(塩基対)のフラグメントに最初に分割された464個のコンティグのそれぞれに関して行い、その後、2つの特化したデータベースに対して個々にblast分析した。構築された第1のデータベースは「E.coli」データベースであり、この場合、E.coliの4つの菌株(www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/lproks.cgi)が、NCBIrefseq_ecoli.dnaと呼ばれるデータベースを作製するために含まれた(含まれる大腸菌株は、CFT073、K12、O157:H7 SakaiおよびO157:H7 EDL933であった)。第2のデータベースについては、NCBIデータベースに存在するすべての細菌ゲノムが、「Bacterial」データベースを作製するために統合され、NCBIrefseq_bacteria.dnaと呼ばれた。次に、200bpフラグメントのそれぞれを、上記のE.coliおよび細菌の両方の統合されたNCBIデータベースに対するblastn分析に供した。「ヒットなし」の配列を特有な配列であると特定した。
【0185】
アラインメントの結果:M17SNARに特有なゲノムセグメントの特定。大きいフラグメントの対毎のアライメントアプローチを使用して、M17SNARのゲノム配列の異なるコンティグに由来する数個のセグメントが特定され、これらは、NCBIのnrデータベースにおけるすべての公開されている配列に由来するどの配列に対しても有意なアライメントをもたらさなかった。これらの候補の特有セグメントが下記の表10に示される。その後、これらのセグメントは候補のM17SNAR特有配列と呼ばれた。

【0186】
M17SNAR特有セグメントについてのPCR分析の最適化およびバリデーションからの結果:試験の特異性、候補のM17SNAR特有配列の特異性を実験的に調べるために、PCRプライマーを、いくつかの特有な領域内においてセグメントを増幅するために設計した。その後、PCRプライマーを、PCR反応を最初に最適化するために、M17菌株およびM17SNAR菌株に対して行われるPCR反応において使用した。最適化を、59℃に中心を有し、この温度の高温側および低温側において+/−7.5℃での温度勾配を使用して行った。それぞれの反応からのPCR生成物を分析用アガロースゲルにおいて互いに並べて泳動し、臭化エチジウムにより染色し、CCDカメラを使用して302nmのUVライトボックスで画像取得した。染色されたDNAバンドからの蛍光の相対的強度を、GeneToolsソフトウエア(Syngene)ソフトウエアを使用して定量化した。下記の表11に示されるように、最適なPCR条件が、特有な領域を、コンティグ10、コンティグ11、コンティグ13、コンティグ36、コンティグ41、コンティグ127およびコンティグ291において検出するPCRプライマーについて開発された。続いて、コンティグ127のPCRプライマー(これは最も高い平均融解温度を有し、最適なPCR反応を最適化曲線の上端側でもたらした)を、天然に存在するE.coli集団の遺伝的多様性を表すE.coli菌株に対するさらなるバリデーションのために選んだ。

【0187】
実施例4
本発明のM17SNAR菌株は他のE.coli菌株とは分子的に異なる
実験手順
反応がそれぞれのPCRプライマー組合せについて最適化されると、これらの組合せを、それらを、E.coli集団全体の遺伝的多様性を表すために設計されたE.coli菌株のパネル(ECORコレクション)、および、共通する血清型O2の菌株を表すために設計されたE.coli菌株のパネルに対するPCR反応において試験することによって確認した。このコレクションは72のECOR菌株からなり、これはOchmanおよびSelanderによって1984年に最初に記載され(6)、これまで広範囲に研究されており、また、一般には、種の集団構造を表すと見なされる。O2血清型を有する5つの異なる菌株からなる1組もまた、O2血清型をM17SNARとともに有する、遺伝的に関連性がないE.coli菌株におけるM17SNARセグメントの特有さについて試験するために使用した。77菌株の1組のそれぞれの菌株をL培地において37℃で16時間成長させ、細胞をJA10ローターでの遠心分離によって集めた。その後、DNAを標準的な方法(5)に従ってそれぞれの菌株から抽出した。DNAサンプルを10mM Tris−1mM EDTA(pH8.0)に溶解し、4℃で保存した。それぞれのPCR反応のために、DNAサンプルを滅菌水において1:100で希釈し、希釈されたDNAの2μLの体積を反応液に加えた。反応混合物はそれぞれが、2μLの希釈DNA、それぞれ1μLの関連するプライマー(1uMの最終濃度)、2μLの10X PCR緩衝液(Takara)、2μLの250mM dNTP混合物(Takara)、1ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Takara)および11μLの滅菌水を含有した。その後、反応を、下記のサイクル処理条件を使用してBiometraサーマルサイクラーにおいてサイクル処理した:95℃で2.5分、続いて、95℃で30秒、53℃(プライマー組合せ、C127)または56℃(プライマー組合せ、C291)で45秒、72℃で45秒の30サイクル。72℃で5分の最後の伸長を30サイクルの後で行い、反応液を、ゲル電気泳動について準備が整うまで4℃で保った。
【0188】
完了したPCR反応液に、2μLの負荷用色素(0.21%ブロムフェノールブルー、0.21%キシレンシアノール、50%グリセロール)を加えた。その後、反応液の合計で15μLを、1ng/mLの臭化エチジウムを含有する1xTAEにおいて調製された0.8%アガロースゲルに負荷した。その後、ゲルを100ボルト/Cmで1.5時間電気泳動した。その後、電気泳動されたPCR生成物を、ゲルを302nmのUVライトボックスに置くことによって可視化し、CCDカメラで画像取得した。
【0189】
候補のM17SNAR特有配列を実験的に調べるために、PCRプライマーを、いくつかの特有な領域内においてセグメントを増幅するために設計した。その後、PCRプライマーを、PCR反応を最初に最適化するために、M17菌株およびM17SNAR菌株に対して行われるPCR反応において使用した。最適化を、59℃に中心を有し、この温度の高温側および低温側において+/−7.5℃での温度勾配を使用して行った。それぞれの反応からのPCR生成物を分析用アガロースゲルにおいて互いに並べて泳動し、臭化エチジウムにより染色し、CCDカメラを使用して302nmのUVライトボックスで画像取得した。染色されたDNAバンドからの蛍光の相対的強度を、GeneToolsソフトウエア(Syngene)ソフトウエアを使用して定量化した。表5に示されるように、最適なPCR条件が、特有な領域を、コンティグ10、コンティグ11、コンティグ13、コンティグ36、コンティグ41、コンティグ127およびコンティグ291において検出するPCRプライマーについて開発された。続いて、コンティグ127のPCRプライマー(これは最も高い平均融解温度を有し、最適なPCR反応を最適化曲線の上端側でもたらした)を、天然に存在するE.coli集団の遺伝的多様性を表すE.coli菌株に対するさらなるバリデーションのために選んだ。
【0190】
コンティグ127のPCRアッセイの特異性を確認するために、最適化されたコンティグ127のPCR反応を次に、天然に存在するE.coli集団の遺伝的多様性を表すE.coli菌株のパネル(ECORコレクション)、ならびに、血清型O2のM17SNAR菌株と遺伝的に関連性がないさらなる血清型O2菌株(AOS菌株)から得られるゲノムDNAに対して試験した。72のECOR菌株のそれぞれ、それぞれのAOS菌株、M17SNAR菌株およびM17親菌株からの精製されたゲノムDNAを、下記の条件を使用して、コンティグ127プライマーを伴う個々の反応におけるPCRに供した:
テンプレートDNA 100ng
C127FOR 1pmol/uL
C127REV 1pmol/uL
1XPCR緩衝液
dNTPs 250uM
Taqポリメラーゼ 1ユニット
水 20μLにする
【0191】
PCR反応液を95℃で2.5分間加熱し、続いて、95℃で30秒間、63℃で45秒間、72℃で45秒間の30サイクルに供した。反応を72℃で5分間伸長させ、最後に、反応液を電気泳動による分離まで4℃で保った。アガロースゲル電気泳動のために、負荷用色素を加え、反応液を0.8%アガロースゲルに負荷した。電気泳動後、ゲルを、CCDカメラを使用してUVライトボックスで画像取得した。表12に示されるように、M17およびM17SNARのみが、予想された1155塩基のPCR生成物をコンティグ127のPCRアッセイからもたらした。すべての他の菌株はPCR生成物をこの反応から何らもたらさなかった。このバリデーションにおいて試験された菌株に基づいて、本発明者らの結果は、コンティグ127のPCRアッセイがM17SNARについて非常に選択的であることを示している。
【0192】
結果
下記の表12は、本発明の菌株および試験された他のE.coli菌株におけるコンティグ127分析の結果の要約である。


【0193】
実施例5
添加された便サンプルにおけるM17SNARの計数および確認
実験手順
バイオレットレッド胆汁寒天(VRBA)における選択的平板培養と、PCR確認との組合せを、M17SNARが添加便サンプルにおいて選択的に計数され得るかを明らかにするために使用した。これらの実験のために、混成便サンプルを、100個の独立したヒト便サンプルに由来する10グラムのサンプルを1つの混成物に混合することによって調製した。この混成物をワーリングブレンダーにおいて3回の1分間のパルスのために混合し、得られたスラリーをおよそ25mLのアリコートで無菌の50mLの円錐チューブに分配した。本明細書中では、これらのサンプルは便混成物サンプルとして示される。混成物サンプルのアリコートを−80℃で保存した。
【0194】
試験のために、便サンプルのアリコートを解凍し、連続10倍希釈によって無菌の0.1%ペプトンに三連で希釈した。その後、それぞれの希釈物の0.1mLサンプルを、L寒天、L寒天+75μg/mLナリジクス酸、VRBA、VRBA+25μg/mLナリジクス酸の表面に二連で置床した。M17SNAR細胞を2つの独立した便混成物アリコートの10−1希釈物に加えた。添加実験のために、M17SNAR細胞の懸濁物を、M17SNAR細胞の単一コロニーを、L寒天+75μg/mLナリジクス酸に画線培養されている培養物からかき取ることによって調製した。このコロニーを、ボルテックスミキサーを使用して30秒間のボルテックス混合によって5mlの無菌の0.1%ペプトンに再懸濁した。M17SNAR懸濁物に存在するM17SNAR細胞を、無菌の0.1%ペプトンへの懸濁物の連続10倍希釈を行い、それぞれの希釈物の0.1mL部分を、L寒天、L寒天+75μg/mLナリジクス酸、VRBA、VRBA+25μg/mLナリジクス酸に置床することによって計数した。このM17SNAR細胞懸濁物を使用して、便混成物サンプルの10−1希釈物を、M17SNAR懸濁物の10倍希釈物または1000倍希釈物の0.1mLを独立した便混成物アリコートの10−1希釈物に加えることによって2つの異なる濃度で添加した。その後、添加された10−1希釈物を連続10倍希釈によって0.1%ペプトンに希釈した。その後、それぞれの希釈物の0.1mLアリコートを、L寒天、L寒天+75μg/mLナリジクス酸、VRBA、VRBA+25μg/mLナリジクス酸の表面に二連で置床した。
【0195】
細胞を成長培地の表面に展開した後、平板を37℃で36時間インキュベートした。コロニーを、関連する希釈物からの平板のそれぞれの二連セットについて計数し、平均化した。M17SNARを確認するために、関連する希釈物の、VRBA+25μg/mLナリジクス酸の平板のそれぞれのセットからの10個のコロニーをつま楊枝で採取し、96ウエル培養プレートにおいて100μLのL培地に接種した。プレートを37℃で16時間インキュベートした。その後、それぞれの培養物から、50μLの細胞を96ウエルPCRプレートに取り出し、50μLの20mM Tris−0.2mMEDTAと混合した。その後、細胞をサーモサイクラーにおいて95℃に10分間加熱した。加熱された細胞懸濁物から、2μLを取り出し、新鮮な96ウエルPCRプレートに分配し、18μLのPCRミックスを加えた。PCRミックスは、1XPCR緩衝液(Takara)、250mMのdNTPs(Takara)、1.4ユニットのTaq DNAポリメラーゼ、1uMの各プライマー(コンティグ127プライマー、上記)からなる。その後、プレートを96ウエルのふたで覆い、サーモサイクラーに入れた。反応液を95℃に2.5分間加熱し、続いて、95℃で30秒間、63℃で45秒間、72℃で45秒間の40サイクルに供した。その後、72℃で5分間の最後のサイクルを行い、サンプルを、ゲル電気泳動の準備が整うまで4℃で保った。
【0196】
完了したPCR反応液に、2μLの負荷用色素(0.21%ブロムフェノールブルー、0.21%キシレンシアノール、50%グリセロール)を加えた。その後、反応液の合計で15μLを、1ng/mLの臭化エチジウムを含有する1X TAEにおいて調製された0.8%アガロースゲルに負荷した。その後、ゲルを100ボルト/Cmで1.5時間電気泳動した。その後、電気泳動されたPCR生成物を、ゲルを302nmのUVライトボックスに置くことによって可視化し、CCDカメラで画像取得した。
【0197】
結果
組み合わされたナリジクス酸耐性選択およびコンティグ127PCR確認の感受性および選択性を計測するために、実験を、ヒト便サンプルを用いて行った。混成便サンプルを100個のヒト便サンプルの10グラムサンプルから調製した。その後、混成物のサンプルをM17SNAR細胞の調整された量と混合し、連続希釈に供し、続いて、それぞれの希釈物の一部を、VRBA+25μg/mLナリジクス酸、ならびに、コントロール培地(VRBA、L寒天、および、75μg/mLのナリジクス酸を含むL寒天)に置床した。インキュベーション後、コロニーの数をそれぞれの希釈物の二連の平板から平均化した。表13に示されるように、75μg/mLのナリジクス酸がL寒天に配合された場合、この培地は、L寒天単独とほぼ同じくらい多くのコロニーをもたらしたので、便サンプルからのM17SNARについて選択的ではなかった。従って、ナリジクス酸選択は単独では、M17SNAR検出のための十分な選択性を提供しない。L寒天とは対照的に、VRBA+ナリジクス酸はM17SNARについて完全に選択的であった。これは、(M17SNARが加えられていない)便混成物サンプルだけが、10CFU/mlの検出限界より少ないラクトース発酵性のナリジクス酸耐性コロニーをもたらしたからである。便混成物サンプルがVRBAにおいて1X10のラクトース発酵性CFU/mlを含有したことを考えると、これらの結果は、10000個の大腸菌群細菌において1個未満がVRBA+ナリジクス酸において成長およびラクトース発酵を行うことができることを示す。しかしながら、M17SNAR細胞が導入されているサンプルは、ナリジクス酸耐性のラクトース発酵性コロニーを、予想された希釈度で、VRBA+25μg/mLナリジクス酸の培地においてもたらした。投入されたM17SNAR細胞の数に基づいて、VRBA+25μg/mLナリジクス酸は23%(1.3X10の投入量のサンプルについて)〜42%(1.3X10の投入量のサンプルについて)の間での検出効率を与えた。従って、VRBA+25μg/mLナリジクス酸におけるM17SNAR菌株の平板培養効率は32.5%で見積もられる。希釈されていない便サンプルからの10CFU/mL未満の検出限界を、VRBA+25μg/mLナリジクス酸におけるM17SNARの32.5%の平板培養効率と組み合わせると、便サンプルにおけるM17SNARの33CFU/ml未満の検出限界が求められた。結果が下記の表13にまとめられる。
【0198】
VRBA+ナリジクス酸において成長するコロニーがM17SNARのみであることを確認するために、コンティグ127PCRアッセイを、M17SNARを含有するサンプルの希釈物に由来する、VRBA+ナリジクス酸の平板からの合計で84個の無作為に選ばれたコロニーに対して行った。平板培養の選択性を明らかにするために、抗生物質を含まないVRBA平板からの132個のコロニーもまた無作為に選び、コンティグ127PCRアッセイにより試験した。VRBA平板から選ばれたコロニーのうち、48個を、M17SNARがサンプルに加えられていなかった平板から採取し、また、84個を、M17SNARが導入されていたサンプルに由来する希釈物の計数可能な平板から選んだ。下記の表13に示されるように、コンティグ127PCR陽性コロニーが、予期されたように、非添加サンプルに由来するVRBA平板から試験されたコロニーからは得られなかった。そのうえ、予想されたように、コンティグ127陽性コロニーおよびコンティグ127陰性コロニーの両方が、抗生物質を含まないVRBA平板において検出され、陰性のコンティグ127PCRコロニーに対する陽性のコンティグ127PCRコロニーのより大きい比率が、より大きい数の添加M17SNARを含有するサンプルから得られた。VRBA+25μg/mLナリジクス酸からのコロニーが試験されたときには、予期されたように、コンティグ127陽性コロニーのみが得られた。従って、VRBA+ナリジクス酸における選択的平板培養と、コンティグ127PCR確認との組合せは、M17SNARを便サンプルから計数するための非常に高感度で、非常に選択的な方法を提供する。

【0199】
実施例6
プロバイオティク物の投与前、投与期間中および投与後のイヌから得られた便サンプルにおけるM17SNARの検出
本研究の全体的目的は、ヒト便サンプルにおけるE.coli M17SNARの定量化のためのツール、ならびに、便サンプルにおけるプロバイオティックE.coli M17SNAR菌株の流出の程度および持続期間を測定する方法を開発することであった。14日間の毒性学研究(これはRicerca Biosciences LLC(Concord、OH)によって行われた)の過程の期間中にM17SNAR培養物が与えられたイヌから集められた便サンプルを、この方法をモデル化するために使用した。使用されたアプローチは、総大腸菌群数およびM17SNARを、(上記の実施例5において、添加されたヒト便サンプルについて示されるように)バイオレットレッド胆汁寒天(VRBA)、および、25μg/mLのナリジクス酸が補充されたVRBAにおける選択的平板培養を使用して計数することであった。M17SNARの確認を、M17SNARに特異的なコンティグ127PCRアッセイを使用して、VRBA+25μg/mLナリジクス酸において成長するコロニーに対して行った。
【0200】
実験手順
便サンプルの示差的平板培養:便サンプルを、Ricerca Biosciences LLC(Concord、OH)によって行われたGLPでのイヌ毒性学研究の過程の期間中に集めた。それぞれのサンプルの10グラムを無菌の50mLの円錐チューブにおいて10mLの無菌の生理的食塩水+15%グリセロールと混合した。その後、スラリーを−80℃で凍結し、ドライアイスにおいて輸送した。それぞれのサンプルをマスター集計表に記録し、続いて、処理まで−80℃で保存した。処理のために、サンプルを室温で1時間にわたって解凍し、さらに10mLの無菌の0.1%ペプトンと30秒間振とうすることによって激しく混合した。この得られたスラリーは非希釈サンプルと呼ばれる。
【0201】
非希釈サンプルの0.5mL部分をP−1000マイクロピペッターにより取り出し、4.5mLの無菌の0.1%ペプトンに分注した。その後、希釈サンプルを10−6の最終希釈度に連続希釈した。平板培養のために、非希釈サンプルおよび10−1希釈物〜10−6希釈物の0.1mL部分をVRBAおよびVRBA+25μg/mLナリジクス酸に二連で置床した。平板を、コロニーを計数する前に37℃で36時間インキュベートした。推定総大腸菌群を、[VRBAにおけるラクトース陽性コロニーの数]X[希釈度の逆数]としてスコア化した。推定M17SNARを、[VRBA+25μg/mLナリジクス酸におけるラクトース陽性コロニーの数]×[希釈度の逆数]としてスコア化した。
【0202】
PCR確認:M17SNARの存在を確認するために、コロニーをVRBAまたはVRBA+25μg/mLナリジクス酸から採取し、コンティグ127PCRアッセイを使用して試験した。試験されるコロニーを、無菌のつま楊枝を使用して採取し、無菌の96ウエルアッセイプレートにおいてL培地の200μLの培養液に接種した。M17SNARおよびDH5αを含むコントロールもまた、適切なウエルに接種した。その後、プレートを無菌のプラスチックふたで覆い、37℃で15時間インキュベートした。インキュベート後、それぞれのウエルからの50μLの細胞を、その後、96ウエルPCRプレートの対応するウエルに移し、50μLの20mM Tris−0.2mM EDTAと混合した。その後、細胞をサーモサイクラーにおいて95℃に10分間加熱した。加熱された細胞懸濁物から、2μLを取り出し、新鮮な96ウエルPCRプレートに分配し、18μLのPCRミックスを加えた。PCRミックスは、1X PCR緩衝液(Takara)、250mMのdNTPs(Takara)、1.4ユニットのTaq DNAポリメラーゼ、1uMの各プライマーからなる。その後、プレートを96ウエルのふたで覆い、サーモサイクラーに入れた。反応液を95℃で2.5分間加熱し、続いて、95℃で30秒間、63℃で45秒間、72℃で45秒間の40サイクルに供した。その後、72℃で5分間の最後のサイクルを行い、サンプルを、ゲル電気泳動の準備が整うまで4℃で保った。
【0203】
完了したPCR反応液に、2μLの負荷用色素(0.21%ブロムフェノールブルー、0.21%キシレンシアノール、50%グリセロール)を加えた。その後、反応液の合計で15μLを、1ng/mLの臭化エチジウムを含有する1X TAEにおいて調製された0.8%アガロースゲルに負荷した。その後、ゲルを100ボルト/Cmで1.5時間電気泳動した。その後、電気泳動されたPCR生成物を、ゲルを302nmのUVライトボックスに置くことによって可視化し、CCDカメラで画像取得した。
【0204】
結果
イヌ便サンプルにおけるM17SNARの推定検出および確認検出。個々の動物に、M17SNARを胃への胃管栄養法によって14日間毎日与えた。動物には、餌が、M17SNAR服用後2時間以内に与えられた。便サンプルが、0日目に開始して、また、研究群に依存して、14日目または28日目の終わりまで継続して毎日集められた。服用が2つの異なる用量レベル(1日あたり5X10cfu/服用および1X1013CFU/服用)で行われた。高用量群におけるいくつかの動物については、服用が14日目以降は中止され、便サンプルがさらに14日間にわたって集め続けられた。高用量群からの選択された動物の便におけるM17SNARの計数のために、0日目、ならびに、服用期間の1日目、4日目、7日目、10日目および13日目、ならびに、投与期間後の16日目、18日目、20日目、22日目、25日目および28日目からの便サンプルを、VRBAおよびVRBA+25μg/mLナリジクス酸における示差的平板培養によって試験した。
【0205】
その後、計数可能なコロニー(30個〜300個のコロニー)を生じさせるVRBA+25μg/mLナリジクス酸の平板の最大希釈度からの10個のコロニーを、M17SNARの存在を確認するために、コンティグ127PCR分析に供した。サンプルが、非希釈サンプルでさえ、ナリジクス酸耐性コロニーを何らもたらさなかったときには、10個のコロニーがまた、VRBA平板から試験された。表14は、推定総大腸菌群のカウント数、推定M17SNAR、および、コンティグ127PCRアッセイの結果を示す。それぞれの場合において、コンティグ127陽性コロニーのみがVRBA+ナリジクス酸の平板から回収され、一方、コンティグ127陽性コロニーが、VRBA+ナリジクス酸においてコロニーをもたらさなかったサンプルの中に1つも見出されなかった。従って、推定M17SNAR(VRBA+ナリジクス酸におけるコロニーの成長)との間での相関は1.0であった。

【0206】
M17SNARの検出可能な流出。4匹の動物についての総大腸菌群カウント数および総M17SNARカウント数が図3a〜図3dにプロットされる。動物あたりの総大腸菌群カウント数は10CFU/g便〜10CFU/g便の間に及んだ。M17SNARの流出が、13日目の終わりまで4匹すべての動物において検出可能であった。2匹の動物が、検出可能なレベルのM17SNARを16日目まで流出し続けた(図3c〜図3d)。16日目を越えると、M17SNARを便サンプルにおいてもはや検出することができなかった。従って、服用を中止した後(14日目以降)、M17SNAR集団はアッセイの検出限界(101.48または30CFU/g)よりも低いレベルに急速に排除された。
【0207】
服用期間の期間中に、変動が総大腸菌群カウント数およびM17SNARカウント数の両方で認められた。これが統計学的なサンプリング誤差または他の要因を反映するかどうかは不明である。流出が検出可能であった期間の後、総大腸菌群のレベルは一般に、レベルが服用後においておよそ4対数単位より大きかった動物3033を除いて、投与前のレベルに達した。
【0208】
本研究は、M17SNARが、M17SNARが与えられたイヌの便において特異的に検出され得ることを示している。M17SNARは、これらの動物のフローラの一部として腸に安定にコロニー形成しないようであり、また、服用期間後の2日〜4日のうちに検出不能なレベルに低下する。総大腸菌群集団に対するM17SNARの影響は、絶対数に関して、ほとんど認められなかった。だが、データは、フローラの多様性に対する影響を何ら評価することができなかった。それにもかかわらず、服用期間後の4日〜6日のうちに、総大腸菌群レベルは投与前のレベルとほぼ同じくらい大きいか、または、投与前のレベルよりも大きい。
【0209】
注目すべきことに、服用期間の最初の数日の期間中に認められ得るいくらかの用量応答関係が存在する。これらのより大きい用量では、M17SNARによって占められ得る腸内の隙間が迅速に飽和することが考えられる。本研究において記載されるアッセイ方法は高感度であり、便におけるM17SNARの出現、持続期間および消失を検出することができる。従って、これは、ヒトでの臨床試験の期間中にE.coli M17SNARのコロニー形成および排除をモニターするために使用することができる効果的なアッセイ形式である。
【0210】
実施例7
M17SNARのゲノム配列決定
大腸菌M17SNARの完全なゲノム配列を、E.coli M17SNARに特有なゲノム配列を特定するために得た。これを達成するために、ゲノムDNAが、配列「読取り」が重なり、集められたとき、ゲノムの完全な配列をもたらすように、十分な配列「読取り」を伴って「ばらばらにされる」全ゲノムショットガン配列決定戦略を使用した。大腸菌M17SNARゲノムの8倍の配列重複率が、包括的な数の配列「読取り」を得るために成し遂げられ、ショットガン集合がこれらの配列「読取り」からもたらされた。この作業を完了させるために、下記の段階が順次取られた。
1.ゲノムDNAの物理的剪断;
2.3つの別個のライブラリーの構築:1つの高力価の小インサートライブラリー、1つの10kbインサートライブラリーおよび1つの40kbインサートライブラリー;
3.ゲノムのおよそ8倍の配列重複率を得るためのランダムショットガン配列決定;および
4.非常に特殊化されたゲノム配列集合コンピュータープログラムを使用するショットガン配列データの集合。
【0211】
実験手順
DNAの物理的剪断:
E.coli M17SNARのゲノムDNAを分子量について調べた。パルスフィールゲル電気泳動(PFGE)を、サンプルの分子量を求めるための高分子量マーカー(BioRad ChefMapper、Hercules、CA)とともに行った。その後、高分子量のゲノムDNAを、Hydroshear(商標)デバイス(Genemachines、San Carlos、CA)により、およそ4.0kb、10.0kbおよび40.0kbの所望されるサイズに機械的に剪断した。Hydroshear(商標)装置は、ランダムなDNAフラグメントを生じさせるために利用することができる、制御された、再現性のある方法を提供する。このソフトウエア駆動デバイス(Hydroshearソフトウエアv.1.0.6a)では、流体力学的剪断力が、DNA鎖を指定のサイズにフラグメント化するために使用される。
【0212】
ライブラリー構築
経験により、小さいサイズのDNAインサートおよび大きいサイズのDNAインサートの両方を含む数個のライブラリーを構築する必要性があることが明らかにされている。小さいインサートのライブラリーは、ゲノムの適切な解読範囲を得るために使用され、大きいインサートのライブラリーは、配列決定プロジェクトの終了段階の期間中に使用されるゲノムの「足場」を得るために使用される。すなわち、小さいインサートのライブラリーからの「読取り」は配列情報の「塊」を提供し、一方、大きいインサートのライブラリーからの「読取り」は、配列情報を正しい順序で集合ことにおいて役立つ。
【0213】
E.coli M17SNARの全ゲノムショットガン配列決定のために、4kb、10kbおよび40kbのDNAインサートを含有する3つの別個のライブラリーを、剪断された大腸菌M17SNARDNAを使用して構築した(図4)。3kb〜4kbおよび10.0kbのフラグメントを単離および配列決定のためのpAGENベクターシステム(Agencourt Bioscience Corp.、Beverly、MA)にクローン化した。集合を改善し、また、確認するために、大きいインサートのフォスミドライブラリーを、CopyControl(商標)pCC1FOS(商標)ベクターシステム(Epicentre Technologies、Madison、WI)を使用して40kbのフラグメントを用いて作製した。フォスミドはプラスミド(環状DNA)と類似しているが、プラスミドにおける約10kbと比較して、50kbまでのはるかにより大きいサイズのDNAインサートを含有することができる。フォスミドライブラリーの大きいインサートサイズ(40kb)は、フォスミドライブラリーを特に魅力的なものにする。これは、フォスミドクローンは、小さい物理的ギャップを、小さいインサートのライブラリーとの比較において、より少ないウォーキング工程によりふさぐことができ、従って、余分な配列決定を減らすことができるからである。
【0214】
ライブラリーを構築している間、それぞれの組換えクローンが1つだけのゲノムDNAインサートを含有することが不可欠である。多数のインサートが1つのクローンに存在すると、間違った結果がゲノム集合時に生じる。このことを確実にするために、ランダムに剪断されたDNAを、アダプターに基づくクローニング方法を使用してプラスミドライブラリーの構築において使用した。本明細書中では、クローニングベクターをBstX1部位の対称的な対において切断して、ベクターフラグメントがその結果として再び環状化できない非相補的な4塩基の突出端を作製した。機械的に剪断されたインサートDNAを末端修復し、ベクター末端に対して相補的な突出端を有するが、自身に対しては相補的でないアダプターに連結(または「結合」)した。その後、調製されたインサートをベクターに連結または挿入した。自己非相補性アダプターの使用はバックグランドを小さくし、また、クローン同胞物の発生を実質的に低下させた。
【0215】
続いてハイスループット配列決定を行う前に、形質転換されたライブラリーの完全性を確認した。合計で768個のクローンを採取し、両方向での配列決定に供した。BLAST2.2.10(Basic Local Alignment Search Tool)分析を1536個の配列決定「読取り」に対して行った(www.ncbi.nlm.nih/gov/blast/)。BLASTプログラムは配列間における局所的類似性の領域を見つける。BLASTプログラムはヌクレオチド配列またはタンパク質配列を配列データベースに対して比較し、一致部分の統計学的有意性を計算し、それにより、「質問」配列の、可能性のある同一性および完全性に関する有益な情報を提供する。
【0216】
ランダムショットガン配列決定
配列決定用テンプレートの調製:ゲノムDNAを含有するプラスミドを、固相可逆的固定化技術(SPRI(登録商標))を使用してライブラリー培養物から単離した[Hawkins,TL.、K.J.McKernan、L.B.Jacotot、J.B.MacKenzie、P.M.RichardsonおよびE.S.Lander、1997、A magnetic attraction to high−throughput genomics. Science、276(5320)、1887〜1189]。高コピープラスミドのテンプレート(3kb〜4kbおよび10kbのインサートのプラスミド)を、SprintPrep(商標)SPRIプロトコルを使用して精製し、一方、低コピー(40kbのフォスミド)のテンプレートを、SPRI(登録商標)プロトコルを使用して精製した(Agencourt Bioscience Corp.、Beverly、MA)。SPRI(登録商標)(固相可逆的固定化)技術では、カルボキシラートにより覆われた、鉄コアの常磁性粒子が、同調させた緩衝化条件に基づいて、所望されるフラグメント長さのDNAを捕捉するために使用される。所望のDNAが粒子に捕捉されると、粒子は磁石により濃縮および分離することができ、その結果、混入物を洗浄により除くことができる。この手順では、プラスミドDNAおよびゲノムDNAの両方を官能基化ビーズ粒子に捕まえ、プラスミドDNAのみを選択的に溶出することによって、プラスミドDNAが、溶解された細菌培養物から直接に集められる。
【0217】
ショットガン配列決定:DNAテンプレートを、BigDye(登録商標)バージョン3.1の反応を使用する384ウエル形式で、ABI3730装置(Applied Biosystems、Foster City、CA)において配列決定した。BigDye(登録商標)バージョン3.1は、新規な高感度色素により標識された色素ターミネーターを含有する。このBigDyeターミネーター化学は、dRhodamineアクセプター色素に連結されたフルオレセインドナー色素を伴い、標準的な色素ターミネーターよりも2倍〜3倍明るく、また、より少ないバックグラウンドノイズを与える、より狭い放射スペクトルを有する。このことは、キャピラリー分析手順の感度における4倍〜5倍の全体的な改善をもたらす。配列決定のためのサンプル調製の期間中に、DNAフラグメントは、DNAの検出および特定を容易にするこれらの蛍光性色素により化学的に標識される。
【0218】
この手順では、標識されたDNAサンプルが96ウエルプレートまたは384ウエルプレートにおいて調製され、ABI3730Genetic Analyzer装置に置かれ、この装置において、キャピラリー電気泳動が、DNAフラグメントの混合物をそれらの長さに従って分離し、これにより、分離のプロフィルを提供すること、および、4つのデオキシリボヌクレオチド塩基の順序を決定することにおいて使用される。サンプルからのDNA分子が、ポリマーで満たされている薄い溶融シリカキャピラリーに注入される。DNAフラグメントがキャピラーの反対側の端に向かって移動し、このとき、より短いフラグメントは、より長いフラグメントよりも速く移動する。フラグメントが検出セルに入るにつれ、フラグメントは、フラグメント上の色素に蛍光を放射させるレーザービームの光路の中を移動する。この蛍光が電荷結合デバイス(CCD)カメラによって捕捉される。CCDカメラはこの蛍光情報を電子的情報に変換し、その後、この電子的情報は、相対的な色素濃度を、DNAフラグメントを標識するために使用された色素のそれぞれについて時間に対してプロットするエレクトロフェログラムを生じさせるための3700データ収集ソフトウエアによる処理のためにコンピューターワークステーションに転送される。エレクトロフェログラムの位置および形状が、DNAフラグメントの塩基配列を決定するために使用される。配列決定反応のための熱サイクル処理を、384ウエルのThermocyclers(ABI、MJ Research、Hercules、CA)を使用して行った。配列決定反応液を、Agencourt Bioscienceから得られるCleanSeq(登録商標)色素ターミネーター除去キットを使用して精製した。
【0219】
集合
ショットガン配列決定段階が完了すると、ランダムなサブクローンからもたらされる配列決定「読取り」がコンティグ(連続した配列)に集められ、その後、その集合が、正しさについて、また、様々な種類のデータ異常(例えば、混入する「読取り」、除かれなかったベクター配列、および、キメラな「読取り」または欠失した「読取り」など)について調べられる、管理された、すなわち、仕上げの段階が続き、さらなるデータが、ギャップをふさぐために、また、低品質の領域を解消するために集められ、編集が、集合または塩基呼出しの誤りを正すために行われる。
【0220】
配列「読取り」のバリデーション:ハイスループット配列決定から得られるすべての「読取り」は、Phred塩基呼出しソフトウエア(バージョン0.020425c)を使用して処理され、PhredQ20(ワシントン大学)を使用して品質行列に対して絶えずモニターされた。Phredは、DNA配列のクロマトグラムファイルを読み込み、塩基を呼び出すためにピークを分析し、品質スコアをそれぞれのヌクレオチドに割り当てる、ワシントン大学ゲノムセンターで開発された塩基呼出しソフトウエアである(2)。PhredQ20は、Phred品質値が20以上である塩基を呼び出す。20のPhredスコアは、100塩基において1つの誤りが存在することを示す。それぞれの泳動についての品質スコアが、Galaxy LIMSシステム(Oracleに基づく最先端の研究室情報管理システム(LIMS)(Agencourt Bioscience Corp.、Beverly、MA))によってモニターされ、正常な範囲からの何らかの実質的なずれが直ちに調査された。
【0221】
集合工程:数個のコンティグ(連続する配列)にされる非常に多数の配列データの集合では、検討する必要がある3つの大きな事項によってさらに複雑化される複雑なコンピューター計算プロセスが要求される。
1.それぞれの配列の品質スコア、
2.得られた配列そのものまたはその相補体の使用、および
3.その誤った集合が回避される必要がある反復した配列の存在。
【0222】
複雑なアルゴリズムを有する様々なコンピューターソフトウエアプログラムが今や、完全なゲノムを集めることを達成するために利用可能である。重なり合う配列のクラスターが構築され、コンセンサス配列がこれらのクラスターから推定される。LIMSシステム(Agencourt Bioscience Corp.、Beverly、MA)と一緒になったParacel Genome Assembler(商標)バージョン2.6.2(Paracel、Pasadena、CA)が、このプロジェクトのために、配列データを集めるために使用された。Paracelの足場ビューアーおよびConsed(バージョン13.0)(配列集合物を調べ、編集するためのグラフィックツール(ワシントン大学))を使用して、集合を完成させた[Gordon,D.、C.AbajianおよびP.Green、1998、Consed:a graphical tool for sequence finishing.、Genome Res、第8巻(3)、195〜202]。
【0223】
結果
E.coli M17SNARの全ゲノム配列決定を、ショットガン配列決定法を使用して達成した。集合時における反復エレメントおよび他の人為的誤りの存在を改善するために役立ったマルチライブラリー戦略を利用した。大きいインサートのライブラリーはクローン重複率およびゲノム集合の足場形成を増大させる。3kb〜4kbのインサートの高コピー数プラスミドのライブラリーに加えて、10kbインサートのプラスミドライブラリーおよび40kbインサートのフォスミドライブラリーもまた構築した。これら3つのライブラリーのショットガン配列決定を行い、合計で36265538個のPhred20塩基を得て、ゲノムのおよそ8倍の配列重複率を得た。配列「読取り」を連続配列のブロックに集合、E.coli M17SNARに特有な配列を特定するためのBLAST分析に供した。
【0224】
E.coli M17SNARゲノムDNAのパルスフィールドゲル電気泳動
全ゲノムショットガン戦略では、DNAを様々なサイズのセグメントに無作為に分断すること、および、これらのフラグメントをベクターに配列決定のためにクローン化することを伴う。この戦略の成功は、出発材料として使用されるゲノムDNAの品質および完全性に非常に依存する。パルスフィールドゲル電気泳動を、ゲノムDNAの品質を調べるために、また、DNAが高分子量であったかを明らかにするために行った。
【0225】
連続場電気泳動のとき、30kb〜50kbを越えるDNAは、サイズにかかわらず、同じ移動度により移動し、1つの大きいぼやけたバンドとしてゲルにおいて認められる。パルス場の方法では、DNAは、向きが電気泳動期間中に変化させられ、このぼやけたバンドに含まれる異なるサイズのフラグメントが互いに分離し始める。ゲルに対する電場のそれぞれの再配向により、より小さいサイズのDNAは、より大きいDNAよりも迅速に新しい方向で動き始める。従って、より大きいDNAは遅れて移動し、これにより、より小さいDNAからの分離がもたらされる。従って、任意の低分子量DNAまたはプラスミドDNAを特定することができる。
【0226】
ハイスループット配列決定
E.coli M17SNARのハイスループットショットガン配列決定は、良好な品質スコアを有する36265538個の塩基を表し、これにより、ゲノムのおよそ8倍の配列重複率をもたらす57408個の明瞭な高品質「読取り」をもたらした。構築された3つの異なるライブラリーにまたがるこれらの配列の分布が下記の表15に示される。高コピーの標準的な3kb〜4kbのゲノムライブラリーは、ゲノムの、末端が対形成する配列解読範囲をもたらすための最も費用効率的な方法を提供し、一方、10kbライブラリーおよびフォスミドライブラリーは、連続配列「ブロック」を集合プロセスにおいて整列し、配向させることにおいて有用である、末端が対形成する「読取り」からのより大きい物理的連結を提供した。

【0227】
集合
集合段階では、配列データが、Phred品質スコア情報に基づいて、ベクターおよび品質についてスクリーニングされた。ライブラリーからのすべての配列「読取り」が最初に相互に比較された。異なる「読取り」の配列の間における同一部分が認められ、その後、これらを使用して、配列を、コンティグと呼ばれる連続する配列区域にアラインメントした。DNAの同じセグメントの2つの異なる「読取り」の配列は、配列決定反応分析の品質のために同一でない場合がある。従って、コンティグにおけるそれぞれの塩基について、それぞれの塩基が両方向からの多数の重複する「読取り」から独立して確認されることを必要とすることが通常である。
【0228】
「読取り」におけるそれぞれの塩基の「品質」を考慮に入れるために設計されたコンティグ構築ソフトウエア(この場合、品質は、塩基が正しく呼び出されているという、Phredソフトウエアが有する信頼度の尺度である)が使用された。配列における何らかのギャップ、不一致または曖昧な部分もまた特定された。その後、異なるコンティグに存在する対形成した「読取り」を使用することによって、コンティグを整列し、連結して、より大きいスーパーコンティグにまとめた。合計で464個のコンティグが集められた。その詳細が下記の表16に示される。全ゲノムの集合を、AgencourtのLIMSシステムと一緒になったParacel Genome Assembler(商標)(バージョン2.6.2)を使用してこのように行い、一方で、Paracelの足場ビューアーおよびConsed(バージョン13.0)を使用して、集合を完成させた。

【0229】
M17SNARに特有な配列の特定
可能性のある特有な配列を特定するために、BLAST分析を、E.coli M17SNARに特有な配列を明らかにすることを助けるために行った。BLASTは、「Basic Local Alignment Search Tool」の略であり(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)、配列間における局所的類似性の領域(アラインメント)を見つけるプログラムである。このプログラムはヌクレオチド配列またはタンパク質配列を配列データベースに対して比較し、一致部分の統計学的有意性を計算する。BLASTを使用して、配列間における機能的関係および進化論的関係を推測することができ、同様にまた、遺伝子ファミリーのメンバーを特定することを助けることができる。BLAST分析は、5つの異なったblast比較を行うことを可能にする。本研究のために、blastn分析が使用された。これは、与えられたヌクレオチド配列を、データベースに存在する他のヌクレオチド配列と比較する。
【0230】
BLASTプログラムが、「質問(query)」配列に対するアラインメントを見出すとき、BLASTプログラムはそのアラインメントを「ヒット(hit)」と呼び、その場合、そのアライメントを、異なる統計学的パラメーターを使用して、2つの配列の間における類似性に基づいてスコア化する。これらの1つがExpect値(E)であり、これは、特定サイズのデータベースを検索したとき、単に偶然に認めることが「予想」され得るヒットの数を表すパラメーターとして定義される。E値は、2つの配列の間における一致に割り当てられるScore(S)に関して指数的に低下する。本質的には、E値は、配列間の様々な一致について存在するランダムなバックグラウンドノイズを表す。例えば、ヒットに割り当てられる1のE値は、現在のサイズのデータベースにおいて、類似するスコアを有する1つの一致が単に偶然に認められることが予想され得ることを意味するとして解釈することができる。このことは、E値が低いほど、または、E値が「0」に近いほど、一致がより「有意」であることを意味する。
【0231】
配列類似性が、特定のデータベースに対する「質問」配列のBLAST分析において何ら見出されないとき、それは、「ヒットが見出されない」として記録される。このことは、質問配列がデータベースにおいてどこにも見出されないことを意味し、このことはその質問配列を特有な配列にする。
【0232】
特有な配列を特定するために考案された戦略:
464個の全コンティグのすべてが、FASTA形式(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/html/search.html)での個々のコンティグ配列の*.txtファイルとして電子的に提供された。これらのファイルを、E.coli CFT073のゲノム配列に対するコンティグ全体の対毎のBLAST分析において使用し、続いて、アラインメントされない領域をM17コンティグから特定するために使用した。その後、これらのアラインメントされない配列を、E.coli MG1655(K−12)、E.coli EDL933(O157:H7)およびE.coli Sakai(O157:H7)のゲノム配列に対する何らかの配列相同性を特定するために対毎のBLASTにおいて使用した。その後、E.coli CFT073、K−12またはO157:H7のいずれかのゲノムに対する有意なアラインメント(配列相同性)を示さないセグメントを、nrNCBIデータベース全体(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)に対するBLAST検索において使用した。
並行したアプローチにおいて、BLAST分析を、200bp(塩基対)のフラグメントに最初に分割された464個のコンティグのそれぞれに関して行い、その後、2つの特化したデータベースに対して個々にblast分析した。構築された第1のデータベースは「E.coli」データベースであり、この場合、E.coliの4つの菌株(www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/lproks.cgi)が、NCBIrefseq_ecoli.dnaと呼ばれるデータベースを作製するために含まれた(含まれる大腸菌株は、CFT073、K12、O157:H7およびO157:H7 EDL933であった)。第2のデータベースについては、NCBIデータベースに2005年8月19日において存在するすべての細菌ゲノムが、「Bacterial」データベースを作製するために統合され、NCBIrefseq_bacteria.dnaと呼ばれた。次に、200bpフラグメントのそれぞれを、上記で記載される、E.coliおよび細菌の両方の統合されたNCBIデータベースに対するblastn分析に供した。「ヒットなし」の配列を特有な配列であると特定した。
【0233】
9個の特有な200bpの配列フラグメントがこのようにして特定された。9個の配列のすべてが、「E.coli」データベースに対するヒットを何ら有さず、しかし、「ヒット」が「Bacteria」データベースに対して見出されたが、ほとんどが不良なスコアを有していた。
【0234】
結論
E.coli M17SNARの全ゲノムショットガン配列決定が首尾よく完了し、ゲノムのおよそ8倍の配列重複率に至った。この生物に特有な配列を、BLAST分析を使用して特定した。E.coli M17SNARのゲノムに見出される特有な配列の記録される存在位置が下記の表17に示される。9個の特有な配列のそれぞれについて、下記の詳細が実施例8に示される。
配列、長さが200塩基対。
BLAST2.2.10の結果
E.coliデータベースのNCBIrefseq_ecoli.dnaに対して:ヒットが9個の配列のいずれについても記録されなかった。
BacterialデータベースのNCBIrefseq_bacteria.dnaに対して:上位10個の最高スコア化ヒットがそれぞれの「E値」と一緒に表にされる。
【0235】
「blastn」分析に基づいて、9個の200塩基対の特有な配列フラグメントはどれも、統合されたE.coliデータベースに対する何らかの相同性を示さなかった。これらの同じ配列フラグメントが、統合されたBacterialデータベースに対して比較されたとき、たとえ、配列相同性がほとんどの場合において不良であったとしても、相同性が見出された。9個の配列のうちの8個について、E.coli以外の細菌に対する配列相同性は7%の塩基対一致から14.5%の塩基対一致にまで変化した(それぞれの配列に対する最高の「blastn」ヒットについてのパーセント相同性が下記の表17に示される)。

【0236】
特有な配列の081205.asm.C250_3001_3200について、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella ennterica)亜種に対する90%の塩基対一致が見出された。
【0237】
まとめると、大腸菌M17SNARの全ゲノム配列決定が完了した。E.coli M17SNARに特有な配列が首尾よく特定されている。
【0238】
実施例8
配列情報
実施例8.1
BLAST分析を用いて特定された特有的配列

【0239】
実施例8.2

【0240】
実施例8.3

【0241】
実施例8.4

【0242】
実施例8.5

【0243】
実施例8.6

【0244】
実施例8.7

【0245】
実施例8.8

【0246】
実施例8.9

【0247】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0248】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願ならびにGenBankアクセッション番号はすべて、個々の刊行物、特許もしくは特許願またはGenBankアクセッション番号が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【0249】

【配列表フリーテキスト】
【0250】
配列番号10〜23は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナリジクス酸耐性を示すE.coli M17細菌株の生物学的に純粋な培養物。
【請求項2】
請求項1に記載の細菌株を有効成分として含み、かつ、キャリアまたは希釈剤を含むプロバイオティック組成物。
【請求項3】
1グラムの組成物あたり、前記細菌株の10個〜1010個の細菌細胞を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記キャリアは、前記細菌株の生存能を維持するための配合物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記配合物は植物抽出物の揮発性分画物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
さらに抗真菌剤を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
さらに抗生物質を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、酵母細胞、カビおよび細菌細胞からなる群から選択されるプロバイオティック微生物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記キャリアはコロニー形成キャリアである、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の細菌株を有効成分として含み、かつ、ヒトが消費するために好適なキャリアを含む食品添加物。
【請求項11】
前記キャリアは、多糖、修飾多糖およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の食品添加物。
【請求項12】
請求項1に記載の細菌株を有効成分として含み、かつ、動物が消費するために好適なキャリアを含む飼料添加物。
【請求項13】
前記キャリアは、石灰石、多糖およびあらびき小麦粉からなる群から選択される、請求項12に記載の飼料添加物。
【請求項14】
請求項1に記載の細菌株を含む食料品。
【請求項15】
乳製品である、請求項14に記載の食料品。
【請求項16】
胃腸障害を治療する方法であって、請求項1に記載の細菌株の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与し、それにより、胃腸障害を治療することを含む方法。
【請求項17】
胃腸障害は、回腸嚢炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、セリアック病、小腸細菌過剰増殖、胃食道逆流性疾患、下痢、クロストリジウム・ディフィシル大腸炎および/または抗生物質関連下痢、過敏性腸症候群、過敏性嚢症候群、急性下痢、旅行者下痢、乳糖不耐症、HIV関連下痢、スクロースイソマルターゼ欠損症、発癌、経腸栄養法関連下痢、ならびに、腸病原体に関連する障害、非びらん性食道逆流性疾患(NERD)および関連した小腸細菌過剰増殖、機能性消化不良、壊死性腸炎、糖尿病性胃疾患および便秘からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細菌株はATCC寄託番号PTA−7295の同定特徴のすべてを含む、請求項1、2、10、12、15および16に記載の生物学的に純粋な培養物、組成物、食品添加物、飼料添加物、食料品および方法。
【請求項19】
前記E.coli M17はATCC寄託番号202226(DSM12799)である、請求項1、2、10、12、15および16に記載の生物学的に純粋な培養物、組成物、食品添加物、飼料添加物、食料品および方法。
【請求項20】
前記E.coli M17は、BU−239、BU−230−98、BU230−01およびATCC寄託番号202226(DSM12799)からなる群から選択される、請求項1、2、10、12、15および16に記載の生物学的に純粋な培養物、組成物、食品添加物、飼料添加物、食料品および方法。
【請求項21】
前記細菌株は、配列番号1〜9からなる群から選択されるゲノム核酸配列を含む、請求項1、2、10、12、15および16に記載の生物学的に純粋な培養物、組成物、食品添加物、飼料添加物、食料品および方法。
【請求項22】
前記細菌株は、哺乳動物の胃腸管において増殖およびコロニー形成することができる、請求項1、2、10、12、15および16に記載の生物学的に純粋な培養物、組成物、食品添加物、飼料添加物、食料品および方法。
【請求項23】
ナリジクス酸の存在下における細菌の成長を検出し、それにより、便サンプルにおける請求項1に記載の細菌株の存在を検出することを含む、便サンプルにおける請求項1に記載の細菌株の存在を検出する方法。
【請求項24】
ATCC寄託番号PTA−7295の同定特徴のすべてを有するE.coliの生物学的に純粋な培養物。

【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−537138(P2009−537138A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510981(P2009−510981)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/011200
【国際公開番号】WO2007/136553
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508342275)バイオバランス エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】