説明

細菌検出器具、細菌検出方法および細菌検出キット

【課題】被検試料中に混入している細菌、特に有胞子好気性細菌を、簡便な操作で、迅速かつ正確に判定することができる細菌検出器具、細菌検出方法および細菌検出キットを提供する。
【解決手段】本発明にかかる細菌検出器具は、対象となる有胞子好気性細菌が属する属または種に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが、基板に固定されたマイクロアレイ型の器具である。被検試料から調製したプローブと、上記基板に固定されたオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの成立の有無により、被検試料中の有胞子好気性細菌を簡便、迅速かつ正確に検出・同定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌検出器具、細菌検出方法および細菌検出キットに関するものであり、具体的には、有胞子好気性細菌に特異的なオリゴヌクレオチドが基板に固定された細菌検出器具と、これを用いた極めて正確かつ操作性の高い細菌検出方法および細菌検出キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品産業では、製造される食品の安全性を高める点から、衛生管理に関してさまざまな技術が研究開発されてきている。特に近年では、食品の安全性が厳しく問われることもあり、技術の向上について関心が高まっている。
【0003】
食品の製造現場で衛生管理を行うためには、微生物管理が必須である。そのためには、微生物の検査・同定が必要となる。微生物の検査・同定は専門的な知識と技術とを必要とするため、通常、それを専門とする各種機関や部門に依頼される。依頼を受けた機関等では、生理生化学的性質および遺伝子解析による分類から微生物の検査・同定を行うことになる。
【0004】
食品の微生物管理において最も重要なことは、正確な検査結果を出来るだけ早く現場に提供することにある。ところが、現在一般的に用いられている検査法や分類同定法では、微生物種の同定に日数がかかり、例えば、微生物の同定は数日〜1週間程度の期間を要する場合がほとんどである。そのため、食品製造現場で行える迅速で正確な微生物検査法の開発が強く望まれている。
【0005】
中でも、バチルス(Bacillus)属をはじめとする有胞子好気性細菌は、土壌や水、空気中など広く自然界に分布しており、有害性のものが多く知られている。例えば、バチルス属の中で、ヒトに病原性を示すものとしては、炭疽病菌(Bacillus anthracis)や、食中毒の起因菌となるセレウス菌(Bacillus cereus)などが知られている。
【0006】
ここで、細菌を分類同定する方法としては、生理生化学的性状に基づく方法、キノン組成、菌体脂肪酸組成、細胞壁成分等に基づく方法、DNAのG+C含量に基づく方法、DNA相同性に基づく方法、DNAプローブを用いる方法、および16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列の解析を行う方法等が知られている。特に、近年では、16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列に基づく系統分類により得られるグループ(クラスター)を指標として、細菌の分類・識別を行うことが一般的になっている。
【0007】
さらに、有胞子好気性細菌に属する細菌を同定する技術としては、例えば、特開平9−94100号公報(公開日:平成9(1997)年4月8日:特許文献1)およびShida, O et al., Proposal for Two New Genera, Brevibacillus gen. nov. and Aneurinibacillus gen. nov., International Journal of Systematic Bacteriology, 939-946 (1996)(非特許文献1)に開示されている方法が知られている。この技術では、ブレビバチルス(Brevibacillus)属、アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)属、パエニバチルス(Paenibacillus)属等の有胞子好気性細菌に属する細菌の16SリボゾームRNA遺伝子に存在する特異的な塩基配列を有するDNAをプライマーとし、被同定細菌から得た染色体DNAを鋳型としてPCR法を適用し、特定のDNAの増幅を指標として被同定細菌の属レベルでの同定を行う。
【0008】
また、16SリボゾームRNA遺伝子を利用したバチルス属細菌の分類技術としては、Goto, K et al., Application of the partial 16S rDNA sequence as an index for rapid identification of species in the genus Bacillus, The Journal of General and Applied Microbiology, 46, 1-8 (2000)(非特許文献2)に開示されている方法が知られている。16SリボゾームRNA遺伝子のhypervariant region(HV region)と呼ばれる5'側の約275bpは種特異的な領域であるため、この技術では、この領域の塩基配列解析を行うことによりバチルス属細菌の分類が可能であるとしている。
【0009】
【特許文献1】特開平9−94100号公報
【非特許文献1】Shida, O et al., Proposal for Two New Genera, Brevibacillus gen. nov. and Aneurinibacillus gen. nov., International Journal of Systematic Bacteriology, 939-946 (1996)
【非特許文献2】Goto, K et al., Application of the partial 16S rDNA sequence as an index for rapid identification of species in the genus Bacillus, The Journal of General and Applied Microbiology, 46, 1-8 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した各技術でも、食品の製造現場で迅速かつ簡便に微生物を同定することは困難となっている。そのため、特に迅速性を要する食品産業の出荷前の検査等に用いることが可能な技術の開発が望まれている。
【0011】
具体的には、まず、上記特許文献1および非特許文献1に開示されている方法は、そもそも食品産業の出荷前の検査等に用いるための技術ではなく、細菌の同定そのものに重点がおかれた技術である。そのため、この方法では、PCR法によって検出するために迅速性は担保できるものの、属特異的な方法であるため、プライマーをそれぞれの属に応じて採用する必要があり操作が煩雑となる。
また、非特許文献2に記載の方法は、迅速性および簡便性については未だ不十分なものとなっている。
迅速かつ簡便な微生物同定法は、食品の製造現場だけでなく、医薬品等の製造や病院、あるいは研究機関等でも利用可能となるため、このような技術の開発が望まれている。しかしながら、このような技術は知られていなかった。
【0012】
上記問題を解決するため、本発明者らは、清涼飲料水をはじめとする食品の代表的な汚染細菌を含む有胞子好気性細菌を迅速かつ簡便に同定する技術として、WO2006/014022に開示されている方法を発明した。この技術では、有胞子好気性細菌を属だけでなく種レベルまで同定することが可能である。しかしながら、この技術では、ゲオバチルス(Geobacillus)属を検出するプローブの発色が弱く、本属の検出・同定の感度がやや低い場合があることが確認された。ゲオバチルス(Geobacillus)属には耐熱性・耐薬剤性の高い菌種が含まれている。また、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)はコーヒー缶飲料の変敗菌として知られており、本属の検出・同定は重要である。また、バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)の一部の菌株で、バチルス・リチェニフォルミスを検出するプローブの発色が弱い場合があることが確認されていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ゲオバチルス(Geobacillus)属、バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)及びその近縁種であるバチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)の16SリボゾームRNA遺伝子に対応する塩基配列において、特定の属または特定の種に特異的な配列を見出し、この塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを基板に固定した器具を用いて、被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより、迅速かつ正確に目的の細菌を感度よく検出・同定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の好ましい態様によれば、WO2006/014022に記載された方法に本発明での配列番号58〜60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを組み合わせる。これにより、清涼飲料水をはじめとする食品の代表的な汚染細菌を更に感度よく、網羅的に検出・同定することが可能となる。
【0014】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1)検出対象となる細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号58〜60(58、59または60)に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの群から選択される1以上のオリゴヌクレオチドが、基板に固定されており、当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより被検試料中の細菌を検出・同定することを特徴とする細菌検出器具。
(2)ゲオバチルス(Geobacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号58または59に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(1)に記載の細菌検出器具。
(3)バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)またはバチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(1)に記載の細菌検出器具。
(4)検出対象となる細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号1〜40、43〜56または57(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56または57)に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの群から選択される1以上のオリゴヌクレオチドが、さらに基板に固定されている上記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の細菌検出器具。
(4−1)バチルス(Bacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号1、2または3に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−2)ブレビバチルス(Brevibacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号4に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−3)アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号5に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−4)アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号6に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−5)ゲオバチルス(Geobacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号7に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−6)パエニバチルス(Paenibacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号3または8に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−7)バチルス・セレウス(Bacillus cereus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号9、10または11に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−8)バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号12、13または14に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−9)バチルス・スポロサーモデュランス(Bacillus sporothermodurans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号15、43または44に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−10)バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号16、17または18に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−11)バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号19に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−12)バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号20または55に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−13)バチルス・レンタス(Bacillus lentus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号21ないし25のいずれかに示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−14)バチルス・ファルマス(Bacillus firmus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号26に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−15)バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号27に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−16)バチルス・ベンゾエヴォランス(Bacillus benzoevorans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号29または30に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−17)バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号31に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−18)バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号32または33に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−19)アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号34、35または36に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−20)アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号28または37に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−21)パエニバチルス・バリダス(Paenibacillus validus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号38、39または40に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−22)バチルス・スミシー(Bacillus smithii)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号45または46に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−23)アリシクロバチルス・アシディフィラス(Alicyclobacillus acidiphilus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号47、48または49に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−24)アリシクロバチルス・ヘスペリダム(Alicyclobacillus hesperidum)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号50または51に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドのうち少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−25)バチルス・フマリオリ(Bacillus fumarioli)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号52または53に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−26)バチルス・アシドジェネシス(Bacillus acidogenesis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号54に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(4−27)バチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号56または57に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(5)配列番号1〜40、43〜59または60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの全部が、基板に固定されている上記(4)に記載の細菌検出器具。
(6)上記被験試料中の細菌が、以下の(a)ないし(f)のいずれかに記載の細菌から選ばれる少なくとも1種類以上の細菌であることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の細菌検出器具。
(a)バチルス(Bacillus)属に属する細菌。
(b)ブレビバチルス(Brevibacillus)属に属する細菌。
(c)アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属に属する細菌。
(d)アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)属に属する細菌。
(e)ゲオバチルス(Geobacillus)属に属する細菌。
(f)パエニバチルス(Paenibacillus)属に属する細菌。
(7)上記基板にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有し、当該カルボジイミド基またはイソシアネート基と上記オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド末端に付加されたリンカーとの反応により共有結合が形成されることを特徴とする上記(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の細菌検出器具。
(8)被検試料中の細菌を検出・同定するための方法であって、
被検試料中の細菌の核酸を調製する核酸調製工程と、
当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、
上記(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の細菌検出器具を用いて、基板に固定されたオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、
ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含むことを特徴とする細菌検出方法。
(9)被検試料中の細菌を検出・同定するための方法であって、
被検試料中の細菌の核酸を調製する核酸調製工程と、
当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、
配列番号58〜60のいずれかに示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを用いて、当該オリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、
ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含むことを特徴とする細菌検出方法。
(10)上記ハイブリダイゼーション工程で、さらに配列番号1ないし40及び43〜57のいずれかに示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする、(9)に記載の細菌検出方法。
(11)上記被検試料が食品であることを特徴とする、上記(8)ないし(10)のいずれか1項に記載の細菌検出方法。
(12)上記食品が飲料であることを特徴とする、上記(11)に記載の細菌検出方法。
(13)上記飲料が清涼飲料水であることを特徴とする、上記(12)に記載の細菌検出方法。
(14)上記(8)ないし(13)のいずれか1項に記載の細菌検出方法を実施するための細菌検出キット。
(15)上記(8)ないし(14)のいずれか1項に記載の細菌検出方法を実施するためのキットであって、上記ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程で用いる試薬を含むことを特徴とする細菌検出キット。
(16)さらに、上記プローブ調製工程および/または上記核酸調製工程で用いる試薬を含む上記(15)に記載の細菌検出キット。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる細菌検出器具は、対象となる細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板に固定されており、当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより、被検試料中の細菌を検出・同定することが可能となる。それゆえ、本発明によれば、正確かつ簡便に細菌の検出・同定を行うことができるという効果を奏する。
また、基板に複数の細菌種、または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを固定しておけば、網羅的な検査を行うことができるという効果を奏する。
さらに、本発明にかかる細菌検出キットは、上記細菌検査器具および必要な試薬を含むものであるため、操作性が向上し、一層簡便に細菌の検出・同定を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
【0017】
(1)本発明にかかる細菌検出器具
本発明にかかる細菌検出器具は、被検試料中の細菌を検出・同定するための器具であって、対象となる細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板に固定されており、当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより被検試料中の細菌を検出・同定するものである。
【0018】
〔基板〕
本発明にかかる細菌検出器具に用いる基板の材質としては、オリゴヌクレオチドを安定して固定することができるものであればよい。例えば、ポリカーボネートやプラスティックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。基板の形態も特に限定されるものではないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。
【0019】
〔基板に固定されるオリゴヌクレオチド〕
本発明にかかる細菌検出器具の基板に固定されるオリゴヌクレオチドは、検出対象細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドであればよい。当該オリゴヌクレオチドと被検試料由来の核酸との間にハイブリダイゼーションが成立することにより、被検試料中に含まれている目的の種または属に属する細菌を検出することが可能となる。なお、上記検出対象細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを、以下適宜「キャプチャーオリゴ」と称する。
【0020】
上記特異的な塩基配列は、検出対象細菌のゲノムの塩基配列から属または種特異的な塩基配列を見出せばよいが、検出対象細菌のリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列から見出すことが好ましい。なかでも細菌の16SリボソームRNA遺伝子は属または種特異的な塩基配列を多く有していることが知られており、16SリボソームRNA遺伝子に対応するDNA配列中から属または種特異的な塩基配列を見出すことが特に好ましい。リボソームRNA遺伝子の塩基配列は、GenBank、EMBL、DDBJ等のデータベース等から入手することができる。
【0021】
キャプチャーオリゴは上記属または種特異的な塩基配列に基づいて設計すればよい。したがって、上記属または種特異的な塩基配列そのものであってもよいし、検出対象細菌から調製した核酸と特異的なハイブリダイゼーションが成立する限りにおいて、変異が含まれていてもよい。変異の位置は特に限定されるものではない。
【0022】
キャプチャーオリゴの長さ(塩基数)は特に限定されるものではないが、短すぎるとハイブリダイゼーションの検出が困難になり、長すぎると非特異的ハイブリダイゼーションを許容してしまう。発明者らは、キャプチャーオリゴの長さの最適化について検討を重ね、標準的な長さを12〜24塩基とした。より好ましくは13〜22塩基である。ただし、これに限定されるものではない。塩基長は主として配列特性(特定の塩基の含有率,同一塩基のリピート)に依存するものであり、結合性の良いものは短鎖でも特異的ハイブリダイゼーションが可能であることが、発明者らにより確認されている。
【0023】
キャプチャーオリゴが、被検試料由来の核酸とのハイブリダイゼーションを妨害するヘアピン構造、ループ構造、またはそれ以外の立体構造を持つ場合、キャプチャーオリゴを構成する1またはそれ以上のヌクレオチドをイノシンまたはいずれのヌクレオチドとも対合しない核酸に置換することにより、その立体構造を解除することができる。
【0024】
キャプチャーオリゴの合成法は特に限定されるものではなく、公知の方法(例えば、Maniatis, T. et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載の方法等)により合成すればよい。一般的には、市販のDNA合成機を用いて化学合成することができる。
【0025】
本発明にかかる細菌検出器具において、上記検出対象細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドのみではなく、それらに加えて、いわゆるコントロール・キャプチャーオリゴを基板に固定することが好ましい。コントロール・キャプチャーオリゴには、陽性コントロール・キャプチャーオリゴおよび陰性コントロール・キャプチャーオリゴが含まれる。陽性コントロール・キャプチャーオリゴは、後述するプローブ調製工程において増幅反応がうまくいっており、かつハイブリダイゼーションがうまくいっているかどうかを判定するために用いるものである。陰性コントロール・キャプチャーオリゴは、非特異的ハイブリダイゼーションが生じていないこと、すなわち擬陽性のハイブリダイゼーションシグナルが生じていないことを確認するために用いるものである。これらの陽性コントロール・キャプチャーオリゴおよび陰性コントロール・キャプチャーオリゴが基板に固定された細菌検出器具も本発明に含まれる。
【0026】
陽性コントロール・キャプチャーオリゴは検出対象細菌から調製するプローブに含まれる塩基配列に基づいて設計されるものであればよい。また、複数の検出対象細菌を同時に同一の細菌検出器具を用いて検出する場合には、各検出対象細菌について陽性コントロール・キャプチャーオリゴを設計してもよいが、複数の検出対象細菌から調製するプローブに共通する塩基配列に基づいて設計してもよい。すべての検出対象細菌から調製するプローブに共通する塩基配列がない場合は、いくつかのグループごとに陽性コントロール・キャプチャーオリゴを設計してもよい。
【0027】
あるいは、プライマー配列部分が同じで、対象となる細菌の配列とは異なる人工的な配列を設計し、この配列の一部を陽性コントロール・キャプチャーオリゴとすることもできる。上記人工的な配列を鋳型としてプローブを調製し(本明細書では、このようなプローブをコントロールプローブと称する。)、被検試料から調製したプローブに添加することにより、後述するプローブ調製工程において、増幅反応がうまくいっており、かつハイブリダイゼーションがうまくいっているかどうかを検証することが可能となる。
【0028】
陰性コントロール・キャプチャーオリゴは、陽性コントロール・キャプチャーオリゴの塩基配列において、1塩基以上であり、かつ、当該配列の有する塩基数の20%未満の範囲内で人為的な塩基の置換を含む塩基配列を有するように設計することが好ましい。塩基置換を行う塩基数は、ハイブリダイゼーションの条件との関係で決定され、検出対象細菌由来のプローブがハイブリダイゼーションを生じないような塩基数を選択すればよい。
【0029】
検出対象細菌は特に限定されるものではなく、目的とする被検試料中から検出しようとする細菌を適宜選択すればよい。例えば、食品中に混入し当該食品を汚染する可能性のある細菌を挙げることができる。なかでも飲料、特に清涼飲料水に混入・汚染する可能性のある細菌を検出対象細菌とすることが好ましい。食品中に有害な細菌が混入することは、食中毒等の公衆衛生上非常に大きな問題となる。また、食品の濁りや異臭発生や風味劣化などの品質劣化の原因となるため、これらの有害細菌を迅速かつ正確に検出・同定する方法の開発が特に強く望まれている。
【0030】
上記検出対象菌としては、例えば、バチルス(Bacillus)属に属する細菌、より具体的には、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・スポロサーモデュランス(Bacillus sporothermodurans)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・ファルマス(Bacillus firmus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・ベンゾエヴォランス(Bacillus benzoevorans)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)、バチルス・フマリオリ(Bacillus fumarioli)、バチルス・アシドジェネシス(Bacillus acidogenesis)、バチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)等を挙げることができる。
【0031】
また上記の他、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属に属する細菌、より具体的には、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、アリシクロバチルス・ヘスペリダム(Alicyclobacillus hesperidum)、アリシクロバチルス・シクロヘプタニカス(Alicyclobacillus cycloheptanicus)、アリシクロバチルス・ハーバリウス(Alicyclobacillus herbarius)、アリシクロバチルス・アシディフィラス(Alicyclobacillus acidiphilus)等を挙げることができる。
【0032】
また上記の他、パエニバチルス(Paenibacillus)属に属する細菌、より具体的には、パエニバチルス・バリダス(Paenibacillus validus)、パエニバチルス・イリノイセンシス(Paenibacillus illinoisensis)、パエニバチルス・アルベイ(Paenibacillus alvei)、パエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)等を挙げることができる。
【0033】
また上記の他、アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)属に属する細菌、より具体的にはアネウリニバチルス・アネウリノリティカス(Aneurinibacillus aneurinolyticus)等を挙げることができる。
【0034】
また上記の他、ゲオバチルス(Geobacillus)属に属する細菌、より具体的にはゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)等を挙げることができる。
【0035】
また上記の他、ブレビバチルス(Brevibacillus)属に属する細菌、より具体的にはブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis)、ブレビバチルス・アグリ(Brevibacillus agri)、ブレビバチルス・ラテロスポーラス(Brevibacillus laterosporus)、等を挙げることができる。ただし、検出対象細菌は、上記に限定されるものではない。
【0036】
上記例示した細菌を検出・同定するためのキャプチャーオリゴとしては、バチルス(Bacillus)属、ブレビバチルス(Brevibacillus)属、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属、アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)属、ゲオバチルス(Geobacillus)属、パエニバチルス(Paenibacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、各属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドを挙げることができる。
【0037】
上記バチルス(Bacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号1、2または3に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
AGATGGGCCCGCGGCGCATT(配列番号1)。
GACCCGCGGCGCATT(配列番号2)。
GGGCAACCTGCCTGTAAGAC(配列番号3)。
【0038】
上記ブレビバチルス(Brevibacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号4に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
ACATAGGGAAACTTATGCTAA(配列番号4)。
【0039】
上記アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号5に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GAGGAGCCCGCGGCGCATT(配列番号5)。
【0040】
上記アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号6に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GAAGAACCGCCGGGA(配列番号6)。
【0041】
ゲオバチルス(Geobacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号7、58または59に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
ACACCGAAGACCGCATGGTC(配列番号7)。
AGCTCTGTTGTGAGGGAC(配列番号58)。
TTGTGAGGGACGAAGG(配列番号59)。
【0042】
パエニバチルス(Paenibacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号3または8に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GGGCAACCTGCCTGTAAGAC(配列番号3)。
GACGGTACCTGAGAAGAA(配列番号8)。
【0043】
また、上記の他のキャプチャーオリゴとしては、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・スポロサーモデュランス(Bacillus sporothermodurans)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・ファルマス(Bacillus firmus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・ベンゾエヴォランス(Bacillus benzoevorans)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)、バチルス・フマリオリ(Bacillus fumarioli)、バチルス・アシドジェネシス(Bacillus acidogenesis)、バチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、アリシクロバチルス・ヘスペリダム(Alicyclobacillus hesperidum)、アリシクロバチルス・アシディフィラス(Alicyclobacillus acidiphilus)、パエニバチルス・バリダス(Paenibacillus validus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、各細菌種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドを挙げることができる。
【0044】
上記バチルス・セレウス(Bacillus cereus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号9、10または11に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GATTAAGAGCTTGCTCTTATGAA(配列番号9)。
CCGCATGGTTCGAAAT(配列番号10)。
GCTAGTTGAATAAGCTGGC(配列番号11)。
【0045】
上記バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号12、13または14に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
TCGTGCGGACCTTTTAAAAG(配列番号12)。
CCGCATGGAGGAAAAAG(配列番号13)。
GCCGGGGAAGAACAAG(配列番号14)。
【0046】
上記バチルス・スポロサーモデュランス(Bacillus sporothermodurans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号15、43または44に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
CTCCGCATGGAGAGAGATT(配列番号15)。
AAGAGCTTGCTTTTGATCAG(配列番号43)。
CTTCGCATGAAGGAGAATTG(配列番号44)。
【0047】
上記バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号16、17または18に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GCATGGTTCAAACATAAAAG(配列番号16)。
GGCTACCACTTACA(配列番号17)。
GAGCTTGCTCCCTGATGTTA(配列番号18)。
【0048】
上記バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号19または60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
TGCTCCCTTAGGTCAGCGGC(配列番号19)。
CGGATGCTTGATTGAAC(配列番号60)。
【0049】
上記バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号20または55に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GGATGAAAGACGGTTT(配列番号20)。
CCGGATAGTTCCTTGAACCG(配列番号55)。
【0050】
上記バチルス・レンタス(Bacillus lentus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号21ないし25のいずれかに示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GAATGGATGGGAGCTTG(配列番号21)。
AGCTTGCTCCCAGAAG(配列番号22)。
TTCTCCTGGAGAAAGGTT(配列番号23)。
AGCTTGCTCCCAGAAGTT(配列番号24)。
CTGGAGAAAGGTTGAAAGAC(配列番号25)。
【0051】
上記バチルス・ファルマス(Bacillus firmus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号26に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GAGGAAAAGCTGAAAGATGG(配列番号26)。
【0052】
上記バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号27に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GAGCGGACTTTAAAAGCTTG(配列番号27)。
【0053】
上記バチルス・ベンゾエヴォランス(Bacillus benzoevorans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号29または30に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GAGCGGACTTAAAAAGCTTG(配列番号29)。
GAGCGGACTTTTGGGAG(配列番号30)。
【0054】
上記バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号31に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
TAGGATCTTCTCCTTCATGGG(配列番号31)。
【0055】
上記バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号32または33に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
TCGGCTGTCGCTATAGGATG(配列番号32)。
AAGTACAGTAGTAACTGGCT(配列番号33)。
【0056】
上記アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号34、35または36に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
TTTCAGACTGGAATAACACT(配列番号34)。
AATACACGGGTAGGCATCTA(配列番号35)。
GGAAAGCTCCTTGTGA(配列番号36)。
【0057】
上記アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号28または37に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
TTGGGCCGCTGAGAGAG(配列番号28)。
CGCCCGCGAGGAGGCATCTT(配列番号37)。
【0058】
上記パエニバチルス・バリダス(Paenibacillus validus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号38、39または40に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GGGGCAACCTGTGGCTTAC(配列番号38)。
GCTAAGACCGGATAGCTGGT(配列番号39)。
CGCCTCGGAGAGTAA(配列番号40)。
【0059】
上記バチルス・スミシー(Bacillus smithii)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号45または46に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
AGCTTGCTTTTTGAAAGTTA(配列番号45)。
GATAATATCTTCCTTCGC(配列番号46)。
【0060】
上記アリシクロバチルス・アシディフィラス(Alicyclobacillus acidiphilus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号47、48または49に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GTTCAAGGGAAGGCA(配列番号47)。
CCGTTGAGGAAAGTTGC(配列番号48)。
ATGCAACACTGATAGAG(配列番号49)。
【0061】
上記アリシクロバチルス・ヘスペリダム(Alicyclobacillus hesperidum)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号50または51に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
GGTCACGAGGAGGCA(配列番号50)。
GCATCTTCTTGTGAGGA(配列番号51)
【0062】
上記バチルス・フマリオリ(Bacillus fumarioli)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号52または53に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
TTGCCCCTTGAGATTAG(配列番号52)。
TCATCCTTTCCTTCGC(配列番号53)。
【0063】
上記バチルス・アシドジェネシス(Bacillus acidogenesis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号54に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
CTTCTTCCTCCGCATGG(配列番号54)。
【0064】
上記バチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドの具体例としては、以下の配列番号56、57または60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。
AGCGAACCGACGGGA(配列番号56)。
TCCCTTAGGTTAGCGGC(配列番号57)。
CGGATGCTTGATTGAAC(配列番号60)。
【0065】
なお上記キャプチャーオリゴは、上記配列番号1〜40及び43〜60に示された、いずれかの塩基配列を含むオリゴヌクレオチドに限定されるものではない。
【0066】
本発明にかかる細菌検出器具の基板に固定されるキャプチャーオリゴは、対象とする細菌から調製されたプローブとハイブリダイゼーションが成立するものであれば特に限定されるものではない。したがって、上記配列番号1〜40及び43〜60に示されたいずれかの塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとしては、配列番号1〜40及び43〜60に示されたいずれかの塩基配列のみからなるものであってもよく、配列番号1〜40及び43〜60に示されたいずれかの塩基配列以外の配列を含むものであってもよい。配列番号1〜40及び43〜60に示されたいずれかの塩基配列以外の配列を含むキャプチャーオリゴとしては、配列番号1〜40及び43〜60に示された各塩基配列の5’側もしくは3’側またはその両方に対して、各々の16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列に基づいて伸長させた塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを挙げることができ、このようなオリゴヌクレオチドを基板に固定された細菌検出器具も本発明に含まれる。
【0067】
本発明の好ましい態様のおける細菌検出器具は、配列番号58〜60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの群から選択される1以上のオリゴヌクレオチドが、基板に固定されたものである。
1つの基板上に固定するキャプチャーオリゴは、少なくとも1種類以上であればよく、特に上限はない。一般に、試料中に混入した細菌を検出する場合は、被検試料中から検出可能な細菌を1つの基板で網羅的に検出できることが、操作の簡便性および検査の迅速性の観点から好ましいといえる。したがって、本発明にかかる細菌検出器具も、1つの基板上に目的の細菌種または属に対応するキャプチャーオリゴを複数固定した、いわゆるマイクロアレイ型の器具とすることが最も好ましい。
【0068】
〔オリゴヌクレオチド(キャプチャーオリゴ)の固定〕
オリゴヌクレオチドの基板への固定法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して用いればよい。例えば、物理的吸着、電気的結合または分子共有結合などの一般的なハイブリダイゼーション法に用いられる手法が利用可能である。本発明にかかる細菌検出器具においては、表面にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有する基材を使用し(米国特許:US5,908,746、特開平8−23975号)、固定することが好ましい。
【0069】
オリゴヌクレオチドをスポッティングする際に、オリゴヌクレオチドのスポット量が少なすぎると、オリゴヌクレオチドとプローブとの間の反応性を十分に確保することができず、判定が困難になることがある。また、高集積度のスポッティングは技術的な問題と同時にコストがかかり、さらにプローブの蛍光標識や化学発色などを用いたハイブリダイゼーションシグナルの検出にもより精密で高額な検出装置(例えば、スキャナー)が必要となる。したがって、オリゴヌクレオチドは、基板の表面に径10〜1,000μmのサイズに固定することが好ましい。オリゴヌクレオチドの基板上へのスポッティング方法は特に限定されるものではない。例えば、スポッティングマシンを使用して基板上にオリゴヌクレオチド溶液をスポッティングすることにより行うことができる。これによりオリゴヌクレオチド溶液は、通常ほぼ円形にスポッティングされる。
【0070】
(2)本発明にかかる細菌検出方法
本発明にかかる細菌検出方法は、被検試料中の細菌の核酸を調製する核酸調製工程と、当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、対象となる細菌が属する種または属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含む、被検試料中の細菌を検出・同定するための方法である。本検出方法のハイブリダイゼーション工程においては、上記本発明にかかる細菌検出器具を用いることが好ましい。当該細菌検出器具を用いることにより、簡便、迅速かつ正確に網羅的な検出・同定を行うことが可能となる。また、本検出方法の被検試料としては、食品であることが好ましく、飲料であることがさらに好ましく、清涼飲料水であることが最も好ましい。以下各工程に分けて詳細に説明する。
【0071】
〔核酸調製工程〕
被検試料中の細菌の核酸を調製する工程である。被検試料からの核酸の調製法は、公知の核酸の調製法を適宜選択して用いることができる。例えば、DNAの調製は、R-F.Wangが紹介する方法に従って抽出することができる(Molecular and Cellular Probes(2000) 14, 1-5)。この方法は標準的な調製法であるが、多くの代替法があり、いずれを採用してもよいことは言うまでもない。また、市販のキットを使用してもよい。
【0072】
〔プローブ調製工程〕
上記核酸調製工程で調製した核酸を鋳型として標識プローブを調製する工程である。プローブは、例えば、キャプチャーオリゴおよび陽性コントロール・キャプチャーオリゴの塩基配列を含む領域を増幅するよう設計されたプライマーを使用して核酸増幅により作製することができる。核酸増幅の方法としては、例えば、PCRによりDNAとして増幅する方法、あるいはインビトロ・トランスクリプション(in vitro transcription)法によりRNAとして増幅する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
例えば、PCRにより標識プローブを調製する場合には、PCRに用いるプライマーは、プローブがキャプチャーオリゴおよび陽性コントロール・キャプチャーオリゴと相補的な塩基配列を含む領域を増幅するように設計される。なお、ハイブリダイゼーションが可能である限りにおいて、プローブはキャプチャーオリゴまたは陽性コントロール・キャプチャーオリゴよりも長くても短くてもよい。標識プローブを得るために、PCRに用いるプライマーを予め標識しておくことが可能である。また、PCRの基質(デオキシヌクレオシド三リン酸)を標識しておくことにより標識プローブを得ることもできる。あるいはPCR終了後にプローブを標識してもよい。標識物質は特に限定されるものではなく、例えば、蛍光物質、ハプテン、放射性物質等、通常のハイブリダイゼーションに用いるプローブと同様の標識物質を使用することができる。具体的には、蛍光物質としてはフルオレセイン(FITC)、ローダミン(Rodamine)、フィコエリスリン(PE)、テキサスレッド(Texas Red)、シアニン系蛍光色素等が、ハプテンとしてはビオチン(BIOTIN)、ジゴキシゲニン(Dig)、ジニトロフェニル(DNP)、フルオレセイン等を挙げることができる。
【0074】
〔ハイブリダイゼーション工程〕
ハイブリダイゼーション工程は、対象となる細菌が属する種または属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行う工程である。ハイブリダイゼーションは上記オリゴヌクレオチドを固定したメンブレン上等で行うことができるが、本発明にかかる細菌検出器具を用いることが好ましい。当該細菌検出器具を用いることにより、簡便、迅速かつ正確に網羅的な検出・同定を行うことが可能となる。ハイブリダイゼーション工程に用いる方法は特に限定されるものではなく、公知の核酸ハイブリダイゼーション方法を適宜選択して用いることができる。以下に、具体的なハイブリダイゼーション方法の一例を示す。
【0075】
SSC(Standard Saline Citrate)などの塩溶液、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ウシ血清アルブミン(BSA)などのブロッキング溶液、および融合反応促進のための添加剤からなる融合液に、標識プローブを加える。プローブが2本鎖の場合は熱等による変性を行う。基板上に標識プローブ液を数μL添加した後、数時間加熱操作(通常37〜50℃)を行い、基板上に固定されているオリゴヌクレオチドと標識プローブ間でハイブリッドを形成させる。その後、基板上に5×SSCまたは3Mテトラメチルアンモニウムクロライドを加えて加熱し(通常37〜50℃)、特異的なハイブリッドを形成していない標識プローブを基板から剥離させ、特異的なハイブリッドのみを選択的に基板上に残す。
【0076】
〔シグナル検出工程〕
シグナル検出工程は、上記ハイブリダイゼーション工程においてハイブリダイゼーションの成立の有無を判定する工程であり、通常上記ハイブリダイゼーション工程と連続的に行われる。
【0077】
シグナル検出工程で用いる方法は、上記プローブ調製工程で調製したプローブに導入された標識物質に依存する。すなわち、ハイブリッドの検出には、プローブに導入されている蛍光物質、ハプテン等の標識物質を使用する。したがって、用いたプローブに導入した標識物質を検出するための公知の方法を適宜選択して使用すればよい。
【0078】
例えば、ハプテンを使用する場合は、ハプテンを認識するタンパクまたはそれに結合するタンパクと、アルカリフォスファターゼまたはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ等の結合体(酵素コンジュゲート)を含む溶液を基板上に加え、室温で数10分間反応させる。
【0079】
ハイブリッドの視覚化には、ハプテンと酵素コンジュゲート結合体のみが存在する場合にのみ不溶化合物が形成されるような化合物を添加する。その不溶性化合物の生成は、酵素反応によって増幅され可視化される。添加される化合物として、酵素コンジュゲート中の酵素がアルカリフォスファターゼの場合には、ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(NBT)とBCIP(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸−pトルイジン塩)が用いられ、酵素がホースラディッシ・ペルオキシダーゼの場合には、TMB(3,3',5,5'テトラメチルベンチジン)などが用いられる。
【0080】
キャプチャーオリゴを固定した位置におけるハイブリッドの色素沈着または蛍光発色等のハイブリダイゼーションシグナルを見ることによって、被検試料中に含まれる細菌種の判定を行う。すなわち、ハイブリダイゼーションシグナルが検出された場合には、当該シグナルがある位置にスポットされたオリゴヌクレオチドに対応する細菌が、被検試料中に含まれていることを意味する。なお、陽性コントロール・キャプチャーオリゴの位置にシグナルが認められれば、本試験が正常に機能していることが確認でき、陰性コントロール・キャプチャーオリゴの位置にシグナルが認められなければ、ハイブリダイゼーションが適当な条件で行われたことが確認できる。
【0081】
(3)本発明にかかる細菌検出キット
本発明にかかる細菌検出キットは、上述の本発明にかかる細菌検出方法を実施するためのキットである。したがって、本発明にかかる細菌検出方法を実施できるものであれば、キットに含まれる構成は特に限定されるものではない。
【0082】
本細菌検出キットは、本発明にかかる細菌検出器具を含むものであることが好ましい。当該細菌検出器具を含むキットとすることにより、簡便、迅速かつ正確に網羅的な検出・同定を行うことが可能となる。また、本細菌検出キットには、上記ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程で使用する試薬を含むことが好ましい。ハイブリダイゼーション工程で用いる試薬としては、例えば、SSC(Standard Saline Citrate)などの塩溶液、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ウシ血清アルブミン(BSA)などのブロッキング溶液、融合反応促進のための添加剤等を挙げることができる。
【0083】
また、シグナル検出工程で使用する試薬としては、例えば、ハプテンを認識するタンパクと酵素との結合体(酵素コンジュゲート)や、NBT、BCIP、TMB等の発色基質等を挙げることができる。
【0084】
なお、例示したハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程で使用する試薬は、これらに限定されるものではなく、目的に適合するように適宜適切な試薬を選択してキットの構成とすればよい。
【0085】
本細菌検出キットには、上記プローブ調製工程で使用する試薬を含むことが好ましく、さらに、上記核酸調製工程で使用する試薬を含むことが好ましい。プローブ調製工程で使用する試薬としては、例えば、PCR用緩衝液、耐熱性DNA合成酵素、デオキシヌクレオシド三リン酸混合液等を挙げることができ、核酸調製工程で使用する試薬としては、溶菌用緩衝液、DNA回収用カラム、DNA抽出用緩衝液等を挙げることができる。ただしこれらに限定されるものではなく、目的に適合するように適宜適切な試薬を選択してキットの構成とすればよい。
【0086】
本発明にかかるキット(本発明にかかる細菌検出器具および各工程に使用する試薬を含むもの)を用いることにより、被検試料受領後約6時間で被検試料中に含まれる細菌の検出・同定を実施することができる。
【0087】
(4)本発明の用途
本発明にかかる細菌検出器具、細菌検出方法および細菌検出キットの用途は特に限定されるものではなく、細菌の判定が必要な用途全てに用いることができる。具体的には、例えば、細菌による汚染が品質に大きな影響を及ぼす各種工業製品の製造工程で、同工業製品やその製造環境等から分離された細菌を迅速かつ正確に検出・同定する必要がある場合に好適に用いられる。
【0088】
判定の対象となる被判定細菌の由来となる上記工業製品としては、代表的なものとして、食品、医薬品・試薬・医薬部外品、使い捨ての医療用器具等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。本発明は上記例示した工業製品のなかでの食品に応用することが好ましい。食品としては、より具体的には、飲料(清涼飲料水、アルコール飲料、濃縮還元果汁、天然果汁、果汁飲料、コーヒー飲料)、パン、和洋菓子(冷菓等も含む)、惣菜食品、乳製品、シリアル食品、豆腐・油揚げ類、麺類、弁当類、調味料、小麦粉や食肉等の農産加工品、栄養補助食品(サプリメント等)、長期保存食品(缶詰、冷凍食品、レトルト食品等)等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0089】
本発明は、上記例示した食品のなかでも、特に清涼飲料水に好適に応用することができる。清涼飲料水としては、麦茶・ウーロン茶・緑茶・ほうじ茶等のお茶類等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0090】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0091】
〔オリゴヌクレオチドの合成〕
定法に従い、オリゴヌクレオチド合成機(Perkin-elmer Applied biosystems 社製)を用いてオリゴヌクレオチドを合成し、脱保護を施した後、乾燥させた。このオリゴヌクレオチド乾燥体を、10mM Tris-HCl(pH7.5)・1mM EDTA緩衝液を用いて溶解し、100pmol/μlのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。本実施例に使用したすべてのオリゴヌクレオチドはこの方法で合成した。
【0092】
合成したオリゴヌクレオチドの塩基配列を配列番号1〜60に示した。これらのうち、配列番号1〜40及び43〜60がキャプチャーオリゴであり、配列番号41,42がプライマーである。キャプチャーオリゴヌクレオチドについては上記合成機を用いて5’末端にアミノ基を結合させ、プライマーは5’末端にビオチンを結合させた。
【0093】
〔基板へのキャプチャーオリゴヌクレオチドのスポッティング〕
5’末端にアミノ基を有するオリゴヌクレオチド溶液10μlに対してマイクロスポッティング溶液(TeleChem International Inc.製)を10μl混合し、マイクロタイタープレート(Greiner Laboratory Inc.製)上に分注した。スポッティングマシンの所定の位置にカルボジイミド樹脂処理スライドグラス Carbostation(日清紡績株式会社製、登録商標)を配置し、スポッティングマシンを作動させた。
【0094】
スポッティング終了後、スライドグラスに熱水からの蒸気を数秒間あて、その後紫外線を600mJ照射した。再度蒸気に数秒間曝露した後、ホットプレート上にスライドグラスを置いて水分を除去した。
【0095】
スライドグラスを3% BSA(ウシ血清アルブミン)を含む100mM Tris-HCl(pH7.5)・100mM NaCl・0.1% Triton X-100に室温で30分間浸し、ブロッキングした。その後、10mM Tris-HCl(pH7.5)・1mM EDTA緩衝液で洗浄した。
スライドグラスを室温で乾燥させ、使用まで乾燥状態で冷暗所にて保存した。
【0096】
〔核酸調製工程〕
検体として用いた細菌は、バチルス(Bacillus)属に属するバチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・スポロサーモデュランス(Bacillus sporothermodurans)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・ファルマス(Bacillus firmus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・ベンゾエヴォランス(Bacillus benzoevorans)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)、バチルス・フマリオリ(Bacillus fumarioli)、バチルス・アシドジェネシス(Bacillus acidogenesis)及びバチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)を用いた。
【0097】
上記に加え、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属に属するアリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、アリシクロバチルス・アシディフィラス(Alicyclobacillus acidiphilus)及びアリシクロバチルス・ヘスペリダム(Alicyclobacillus hesperidum)を検体として用いた。
【0098】
また上記に加え、パエニバチルス(Paenibacillus)属に属するパエニバチルス・バリダス(Paenibacillus validus)、パエニバチルス・イリノイセンシス(Paenibacillus illinoisensis)、パエニバチルス・アルベイ(Paenibacillus alvei)、パエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)を検体として用いた。
【0099】
また上記に加え、アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)属に属するアネウリニバチルス・アネウリノリティカス(Aneurinibacillus aneurinolyticus)を検体として用いた。
【0100】
また上記に加え、ゲオバチルス(Geobacillus)属に属するゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)を検体として用いた。
【0101】
また上記に加え、ブレビバチルス(Brevibacillus)属に属するブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis)を検体として用いた。
【0102】
一方、対照検体として、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、ラクトバチルス・デルブルッキ(Lactobacillus delbrueckii)を用いた。
【0103】
上記各細菌を最適な培養条件で培養した菌液から、Genomic DNA Purif. Kit(EdgeBioSystems製、Cat. No. ♯85171)を用いて各細菌のゲノムDNAをそれぞれ調製した。
【0104】
〔プローブ調製工程〕
得られた各細菌のDNAを鋳型としてPCRによりプローブ核酸を調製した。PCR反応液の組成は、Taqポリメラーゼ:2.5unit、ビオチン化プライマー(配列番号41および42):各50 pmol、10×反応用緩衝液:5μl、dNTP:各10 nmol、鋳型DNA:100ngに滅菌蒸留水を加えて総量50μlとした。サーマルサイクラーを用いて、95℃で3分間保持した後、95℃:30秒間、57℃:30秒間、72℃:1分間の反応を40サイクル行い、72℃で5分間保持して反応を終了した。
【0105】
〔ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程〕
上記プローブ核酸溶液4μlと、ArrayIt Unihyb Hybridization Solution(TeleChem International Inc.製、登録商標)16μlとを加えて混合し、95℃で1分間加熱処理を行った後、氷中に1分間浸した。このプローブ核酸溶液を全量とり、キャプチャーオリゴヌクレオチドを固定した基板に載せ、その上にカバーグラスを載せた。これを保湿箱に入れ、37℃に設定した恒温器中に120分間静置した。基板を取り出し、すばやく室温下で2×SSC溶液(2×SSC:0.033M NaCl、0.033Mクエン酸ナトリウム)に浸してカバーグラスを除去し、37℃に保温した2×SSC中に5分間浸した。
【0106】
基板を2×SSCから取り出し、遠心機(Beckman社製)にセットして、2,000rpmで1分間遠心した。次にVECTASTAIN Elite ABC kit(VECTOR社製)を用いてアビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体を作製し、基板上に1.4ml滴下して室温で30分間静置した。
【0107】
その後、PBS(10mMリン酸ナトリウム(pH7.5)、0.9%塩化ナトリウム)中で洗浄した。TMB substrate kit for peroxidase (VECTOR社製)を用いて発色溶液を作製し、基板上に1.4ml滴下して室温で30分間静置した。基板を蒸留水で洗浄して発色反応を止めた。
【0108】
〔判定〕
EPSON社製スキャナーGT-8700F、およびその透過型ユニットを用いてハイブリダイゼーションを行った領域を600dpiにてスキャンし、スキャン画像を目視により発色の有無を確認した。
【0109】
〔結果〕
検体として用いた27種類の各細菌についての結果を表1〜27に示した。
なお各表とも「+」が発色の確認されたスポットを表し、「−」が発色の確認されなかったスポットを表す。
【0110】
表1にバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の結果を示す。
【0111】
【表1】

【0112】
表1によれば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号2,3)と、Bacillus subtilis検出用キャプチャー(配列番号16,17,18)の合計5箇所に発色が確認された。
【0113】
表2にバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)の結果を示す。
【0114】
【表2】

【0115】
表2によれば、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1,3)と、Bacillus coagulans検出用キャプチャー(配列番号12,13,14)の合計5箇所に発色が確認された。
【0116】
表3にバチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)の結果を示す。
【0117】
【表3】

【0118】
表3によれば、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1)と、Bacillus sphaericus検出用キャプチャー(配列番号32,33)の合計3箇所に発色が確認された。
【0119】
表4にバチルス・プミラス(Bacillus pumilus)の結果を示す。
【0120】
【表4】

【0121】
表4によれば、バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号3)と、Bacillus pumilus検出用キャプチャー(配列番号20,55)の合計3箇所に発色が確認された。
【0122】
表5にバチルス・スポロサーモデュランス(Bacillus sporothermodurans)の結果を示す。
【0123】
【表5】

【0124】
表5によれば、バチルス・スポロサーモデュランス(Bacillus sporothermodurans)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号3)と、Bacillus sporothermodurans検出用キャプチャー(配列番号15及び43)の合計3箇所に発色が確認された。
【0125】
表6にバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)の結果を示す。
【0126】
【表6】

【0127】
表6によれば、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1,3)と、Bacillus megaterium検出用キャプチャー(配列番号31)の合計3箇所に発色が確認された。
【0128】
表7にバチルス・レンタス(Bacillus lentus)の結果を示す。
【表7】

【0129】
表7によれば、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1,3)と、Bacillus lentus検出用キャプチャー(配列番号21、22,23,24,25)の合計7箇所に発色が確認された。
【0130】
表8にバチルス・ファルマス(Bacillus firmus)の結果を示す。
【0131】
【表8】

【0132】
表8によれば、バチルス・ファルマス(Bacillus firmus)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1,3)と、Bacillus firmus検出用キャプチャー(配列番号26)の合計3箇所に発色が確認された。
【0133】
表9にバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)の結果を示す。
【0134】
【表9】

【0135】
表9によれば、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1,3)と、Bacillus circulans検出用キャプチャー(配列番号27)の合計3箇所に発色が確認された。
【0136】
表10にバチルス・ベンゾエヴォランス(Bacillus benzoevorans)の結果を示す。
【0137】
【表10】

【0138】
表10によれば、バチルス・ベンゾエヴォランス(Bacillus benzoevorans)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1,3)と、Bacillus benzoevorans検出用キャプチャー(配列番号30)の合計3箇所に発色が確認された。
【0139】
表11にバチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)の結果を示す。
【表11】

【0140】
表11によれば、バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号2,3)と、Bacillus licheniformis検出用キャプチャー(配列番号19,60)の合計4箇所に発色が確認された。
【0141】
表12にアリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)の結果を示す。
【0142】
【表12】

【0143】
表12によれば、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)は、Alicyclobacillus属検出用キャプチャー(配列番号5)と、Alicyclobacillus acidoterrestris検出用キャプチャー(配列番号34,35,36)の合計4箇所に発色が確認された。
【0144】
表13にアリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)の結果を示す。
【0145】
【表13】

【0146】
表13によれば、アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)は、Alicyclobacillus属検出用キャプチャー(配列番号5)と、Alicyclobacillus acidocaldarius検出用キャプチャー(配列番号28,37)の合計3箇所に発色が確認された。
【0147】
表14にアネウリニバチルス・アネウリノリティカス(Aneurinibacillus aneurinolyticus)の結果を示す。
【0148】
【表14】

【0149】
表14によれば、アネウリニバチルス・アネウリノリティカス(Aneurinibacillus aneurinolyticus)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号3)と、Aneurinibacillus属検出用キャプチャー(配列番号6)の合計2箇所に発色が確認された。
【0150】
表15にゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)の結果を示す。
【0151】
【表15】

【0152】
表15によれば、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1)とGeobacillus属検出用キャプチャー(配列番号7,58,59)の合計4箇所に発色が確認された。
【0153】
表16にパエニバチルス・バリダス(Paenibacillus validus)の結果を示す。
【0154】
【表16】

【0155】
表16によれば、パエニバチルス・バリダス(Paenibacillus validus)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号3)と、Paenibacillus属検出用キャプチャー(配列番号8)と、Paenibacillus validus検出用キャプチャー(配列番号38,39,40)の合計5箇所に発色が確認された。
【0156】
表17にバチルス・セレウス(Bacillus cereus)の結果を示す。
【0157】
【表17】

【0158】
表17によれば、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)は、Bacillus cereus検出用キャプチャー(配列番号9,10,11)の合計3箇所に発色が確認された。
【0159】
表18にパエニバチルス・イリノイセンシス(Paenibacillus illinoisensis)の結果を示す。
【0160】
【表18】

【0161】
表18によれば、パエニバチルス・イリノイセンシス(Paenibacillus illinoisensis)は、Paenibacillus属検出用キャプチャー(配列番号8)の1箇所に発色が確認された。
【0162】
表19にパエニバチルス・アルベイ(Paenibacillus alvei)の結果を示す。
【0163】
【表19】

【0164】
表19によれば、パエニバチルス・アルベイ(Paenibacillus alvei)は、Paenibacillus属検出用キャプチャー(配列番号8)の1箇所に発色が確認された。
【0165】
表20にパエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)の結果を示す。
【0166】
【表20】

【0167】
表20によれば、パエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)は、Paenibacillus属検出用キャプチャー(配列番号8)の1箇所に発色が確認された。
【0168】
表21にブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis)の結果を示す。
【表21】

【0169】
表21によれば、ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis)は、Brevibacillus属検出用キャプチャー(配列番号4)の1箇所に発色が確認された。
【0170】
表22にバチルス・スミシー(Bacillus smithii)の結果を示す。
【0171】
【表22】

【0172】
表22によれば、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1及び3)とBacillus smithii検出用キャプチャー(配列番号45及び46)の合計4箇所に発色が確認された。
【0173】
表23にアリシクロバチルス・アシディフィラス(Alicyclobacillus acidiphilus)の結果を示す。
【0174】
【表23】

【0175】
表23によれば、アリシクロバチルス・アシディフィラス(Alicyclobacillus acidiphilus)は、Alicyclobacillus属検出用キャプチャー(配列番号5)とAlicyclobacillus acidiphilus検出用キャプチャー(配列番号47〜49)の合計4箇所に発色が確認された。
【0176】
表24にアリシクロバチルス・ヘスペリダム(Alicyclobacillus hesperidum)の結果を示す。
【0177】
【表24】

【0178】
表24によれば、アリシクロバチルス・ヘスペリダム(Alicyclobacillus hesperidum)は、Alicyclobacillus属検出用キャプチャー(配列番号5)とAlicyclobacillus hesperidum検出用キャプチャー(配列番号50及び51)の合計3箇所に発色が確認された。
【0179】
表25にバチルス・フマリオリ(Bacillus fumarioli)の結果を示す。
【0180】
【表25】

【0181】
表25によれば、 バチルス・フマリオリ(Bacillus fumarioli)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1及び3)とBacillus fumarioli検出用キャプチャー(配列番号52及び53)の合計4箇所に発色が確認された。
【0182】
表26にバチルス・アシドジェネシス(Bacillus acidogenesis)の結果を示す。
【0183】
【表26】

【0184】
表26によれば、バチルス・アシドジェネシス(Bacillus acidogenesis)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1〜3)とBacillus acidogenesis検出用キャプチャー(配列番号54)の合計4箇所に発色が確認された。
【0185】
表27にバチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)の結果を示す。
【0186】
【表27】

【0187】
表27によれば、バチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)は、Bacillus属検出用キャプチャー(配列番号1〜3)とBacillus licheniformis検出用キャプチャー(配列番号60)とBacillus sonorensis検出用キャプチャー(配列番号56及び57)の合計6箇所に発色が確認された。
【0188】
また、対照菌種としてエシェリシア・コリ(Escherichia coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、ラクトバチルス・デルブルッキ(Lactobacillus delbrueckii)からは全てのキャプチャーに対して発色が得られなかった(データ省略)。
【0189】
これらの結果より、本実施例にかかる細菌検出器具(基板)は、バチルス(Bacillus)属、ブレビバチルス(Brevibacillus)属、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属、アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)属、ゲオバチルス(Geobacillus)属、パエニバチルス(Paenibacillus)属を特異的に検出し、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、パエニバチルス・バリダス(Paenibacillus validus)、バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterestris)、アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocardarius)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・ファルマス(Bacillus firms)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・ベンゾエヴォランス(Bacillus benzoevorans)、バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)、バチルス・フマリオリ(Bacillus fumarioli)、バチルス・アシドジェネシス(Bacillus acidogenesis)、バチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)、アリシクロバチルス・アシディフィラス(Alicyclobacillus acidiphilus)、アリシクロバチルス・ヘスペリダム(Alicyclobacillus hesperidum)などを種特異的に分けることが出来る基板であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明は、被検試料中に混入している細菌を簡便な操作で迅速かつ正確に判定することができる細菌検出器具、細菌検出方法および細菌検出キットを提供するものである。したがって、本発明は、食品製造業、飲食産業、薬品産業等における衛生管理、工程管理、品質管理に利用することが可能である。
【配列表フリーテキスト】
【0191】
配列番号41:合成DNA
配列番号42:合成DNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象となる細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号58〜60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの群から選択される1以上のオリゴヌクレオチドが、基板に固定されており、当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより被検試料中の細菌を検出・同定することを特徴とする細菌検出器具。
【請求項2】
ゲオバチルス(Geobacillus)属に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号58または59に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が、基板に固定されている請求項1に記載の細菌検出器具。
【請求項3】
バチルス・リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)またはバチルス・ソノレンシス(Bacillus sonorensis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが、基板に固定されている請求項1に記載の細菌検出器具。
【請求項4】
検出対象となる細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号1〜40、43〜56または57に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの群から選択される1以上のオリゴヌクレオチドが、さらに基板に固定されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の細菌検出器具。
【請求項5】
配列番号1〜40、43〜59または60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドの全部が、基板に固定されている請求項4に記載の細菌検出器具。
【請求項6】
上記被験試料中の細菌が、以下の(a)ないし(f)のいずれかに記載の細菌から選ばれる少なくとも1種類以上の細菌であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の細菌検出器具。
(a)バチルス(Bacillus)属に属する細菌。
(b)ブレビバチルス(Brevibacillus)属に属する細菌。
(c)アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属に属する細菌。
(d)アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)属に属する細菌。
(e)ゲオバチルス(Geobacillus)属に属する細菌。
(f)パエニバチルス(Paenibacillus)属に属する細菌。
【請求項7】
上記基板にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有し、当該カルボジイミド基またはイソシアネート基と上記オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド末端に付加されたリンカーとの反応により共有結合が形成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の細菌検出器具。
【請求項8】
被検試料中の細菌を検出・同定するための方法であって、
被検試料中の細菌の核酸を調製する核酸調製工程と、
当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の細菌検出器具を用いて、基板に固定されたオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、
ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含むことを特徴とする細菌検出方法。
【請求項9】
被検試料中の細菌を検出・同定するための方法であって、
被検試料中の細菌の核酸を調製する核酸調製工程と、
当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、
配列番号58〜60のいずれかに示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを用いて、当該オリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、
ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含むことを特徴とする細菌検出方法。
【請求項10】
上記ハイブリダイゼーション工程で、さらに配列番号1ないし40及び43〜57のいずれかに示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする、請求項9に記載の細菌検出方法。
【請求項11】
上記被検試料が食品であることを特徴とする、請求項8ないし10のいずれか1項に記載の細菌検出方法。
【請求項12】
上記食品が飲料であることを特徴とする、請求項11に記載の細菌検出方法。
【請求項13】
上記飲料が清涼飲料水であることを特徴とする、請求項12に記載の細菌検出方法。
【請求項14】
請求項8ないし13のいずれか1項に記載の細菌検出方法を実施するための細菌検出キット。
【請求項15】
請求項8ないし14のいずれか1項に記載の細菌検出方法を実施するためのキットであって、上記ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程で用いる試薬を含むことを特徴とする細菌検出キット。
【請求項16】
さらに、上記プローブ調製工程および/または上記核酸調製工程で用いる試薬を含む請求項15に記載の細菌検出キット。

【公開番号】特開2008−295431(P2008−295431A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148315(P2007−148315)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】