説明

細菌検出器具、細菌検出方法および細菌検出キット

本発明は被検試料中に混入している細菌を簡便な操作で迅速かつ正確に判定することができる細菌検出器具、細菌検出方法および細菌検出キットを提供する。 本発明に係る細菌検出器具は、対象となる細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されたマイクロアレイ型の器具である。被検試料から調製したプローブと上記基板表面に固定化されたオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの成立の有無により、被検試料中の細菌を簡便、迅速かつ正確に検出・同定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌検出器具、細菌検出方法および細菌検出キットに関するものであり、具体的には、細菌に特異的なオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化された細菌検出器具と、これを用いた極めて正確かつ操作性の高い細菌検出方法および細菌検出キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、麦芽アルコール飲料中に有害な微生物が混入した場合、濁りや風味劣化などが生じ、品質劣化の原因となる。より具体的には、例えばビールにおいては、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ペクチネータス属(Pectinatus)等が代表的な有害細菌である。中でもラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)はビール汚染菌として有名である。これらの有害細菌を検出する方法として、現在最も一般的なものは、対象となるビールをメンブランフィルターでろ過後、適当な培地中で培養し、生育するコロニーを検出する方法である。
【0003】
さらに、このコロニーが上記有害細菌であるかどうかを判定する方法としては、コロニーから抽出したDNAを鋳型として、上記有害細菌に特異的なプライマーを用いてPCRを行い、PCR産物が得られるかどうかを電気泳動で判定する方法(例えば、特開平7−289295号公報(公開日:平成7年11月7日)参照)が用いられている。しかしながら、この方法では、菌種ごとに多数のプライマーを用いてPCRを複数回行う必要があるため、操作が極めて煩雑であり、迅速性に問題がある。また、要する時間を短縮するために多数のプライマーを混合して1つのチューブで増幅反応を行うことは可能であるが、使用できるプライマーの数には限界があり、微量な検体に基づいて正確な判定を行う事は困難である。
【0004】
上記問題点を解決するために、それぞれの菌種に普遍的に存在している遺伝子の種特異的な配列を含む部分が増幅されるようにプライマーを設計し、増幅後に種特異的な配列を認識する制限酵素で増幅産物を切断し、電気泳動で得られるバンドサイズからどの菌種の遺伝子であるかを特定する方法が用いられている。しかしながら、必ずしも対象となる全ての菌種について判別可能な制限酵素が存在するとは限らず、また、得られた増幅産物を数種類の制限酵素で各々切断し、電気泳動に供するという極めて煩雑な操作が必要であり、迅速性、簡便性という面では問題がある。
【0005】
さらに、上記のような問題点を解決するために、種特異的な配列をプローブとして用い、被検体中のDNAまたはRNAにその配列と相補的な配列が存在するかどうかをハイブリダイゼーションによって判定する方法も行われている。
【0006】
しかしながら、上記ハイブリダイゼーションによって判定する方法でも、非常に近縁でDNAの相同性が高い菌種では、別の種と誤ってハイブリダイズしてしまうクロスハイブリダイゼーションが頻繁に生じるという問題があり、正確に菌種を同定することが困難となる場合も生じる。
【0007】
特に、上述の代表的なビール汚染菌であるラクトバチルス属に属する種には非常に近縁なものが多いため、クロスハイブリダイゼーションが頻繁に生じる方法を用いたのでは、有害細菌を検出・同定するという目的を達成することができない。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定の細菌の存在の有無を正確に判定するために用いることができるオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化された細菌検出器具と、当該細菌検出器具を用いて簡便な操作で迅速かつ正確に判定することができる細菌検出方法および細菌検出キットを提供することにある。
【発明の開示】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、麦芽アルコール飲料の代表的な汚染細菌の16SリボゾームRNA遺伝子に対応する塩基配列において、特定の属または特定の種に特異的な配列を見出し、この塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを基板表面に固定化した器具を用いて、被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより、迅速かつ正確に目的の細菌を検出・同定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明に係る細菌検出器具は、被検試料中の細菌を検出・同定するための器具であって、対象となる細菌は(1)ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)に属する細菌、(2)ラクトバチルス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)に属する細菌、(3)ペディオコッカス属(Pediococcus)に属する細菌、(4)メガスフェラ属(Megasphaera)に属する細菌、(5)ペクチネータス属(Pectinatus)に属する細菌から選ばれる少なくとも2種類以上の細菌であり、対象となる細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されており、当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより被検試料中の細菌を検出・同定することを特徴としている。
【0011】
本発明の(1)〜(5)の細菌は、例えば、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)は配列番号7〜9、および71に示される塩基配列の全てを16SリボソームRNA遺伝子中に含む細菌である。ラクトバチルス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)は配列番号22〜24に示される塩基配列の全てを16SリボソームRNA遺伝子中に含む細菌である。ペディオコッカス属(Pediococcus)に属する細菌は配列番号36〜45に示される塩基配列のうち少なくとも2つの塩基配列を16SリボソームRNA遺伝子中に含む細菌である。メガスフェラ属(Megasphaera)に属する細菌は配列番号50〜55に示される塩基配列のうち少なくとも2つの塩基配列を16SリボソームRNA遺伝子中に含む細菌である。ペクチネータス属(Pectinatus)に属する細菌は配列番号56〜58に示される塩基配列のうち少なくとも2つの塩基配列を16SリボソームRNA遺伝子中に含む細菌である。
【0012】
さらに、本発明に係る細菌検出器具の検出対象細菌としては、(6)ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する細菌、(7)ストレプトコッカス属(Streptococcus)に属する細菌、(8)ロイコノストック属(Leuconostoc)に属する細菌、(9)ザイモモナス属(Zymomonas)に属する細菌、(10)ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)に属する細菌、(11)ラクトバチルス・カルバトス(Lactobacillus curvatus)に属する細菌、(12)ラクトバチルス・デルブリュッキィ(Lactobacillus delbrueckii)に属する細菌、(13)ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)に属する細菌、(14)ラクトバチルス・マレファーメンタンス(Lactobacillus malefermentans)に属する細菌、(15)ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)グループ(Lactobacillus casei、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus zeae)に属する細菌、(16)ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)に属する細菌、(17)ラクトバチルス・ブヒネリ(Lactobacillus buchneri)に属する細菌、(18)エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)に属する細菌および(19)ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)に属する細菌が含まれることが好ましい。
【0013】
基板表面に固定化されるオリゴヌクレオチドとしては、以下に示すオリゴヌクレオチドであることが好ましく、本発明に係る細菌検出器具は、これらのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が基板表面に固定化されていることを特徴としている。
【0014】
(A)ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号1に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号2に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号3に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号4に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号5に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号6に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0015】
(B)ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)の16Sリボソー厶RNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号7に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号8に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号9に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号71に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0016】
(C)ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号10に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号11に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号12に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0017】
(D)ラクトバチルス・カルバトス(Lactobacillus curvatus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号13に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号14に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0018】
(E)ラクトバチルス・デルブリュッキィ(Lactobacillus delbrueckii)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号16に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号17に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号18に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0019】
(F)ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号19に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号20に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号21に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0020】
(G)ラクトバチルス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号22に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号23に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号24に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0021】
(H)ラクトバチルス・マレファーメンタンス(Lactobacillus malefermentans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号25に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号26に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号27に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0022】
(I)ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)グループ(Lactobacillus casei、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus zeae)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei、Lactobacillus paracasei)に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号28に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号29に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、並びにラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae、ただし、ラクトバチルス・カゼイの基準株を含む)に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号30に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号31に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0023】
(J)ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号32に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号33に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0024】
(K)ラクトバチルス・ブヒネリ(Lactobacillus buchneri)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号34に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号35に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0025】
(L)ペディオコッカス属(Pediococcus)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号36に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号37に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号38に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号39に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号40に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号41に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号42に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号43に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号44に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号45に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0026】
(M)ストレプトコッカス属(Streptococcus)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号46に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号47に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0027】
(N)ロイコノストック属(Leuconostoc)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号48に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号49に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0028】
(O)メガスフェラ属(Megasphaera)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号50に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号51に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号52に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号53に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号54に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号55に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0029】
(P)ペクチネータス属(Pectinatus)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号56に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号57に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号58に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0030】
(Q)ザイモモナス属(Zymomonas)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号59に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0031】
(R)エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号61に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号62に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0032】
(S)ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号63に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号64に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0033】
(T)ロイコノストック属(Leuconostoc)の一部に属する細菌およびラクトバチルス属(Lactobacillus)の一部に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列に共通する塩基配列のうち、配列番号72に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0034】
上記(A)〜(T)に記載のオリゴヌクレオチドを基板表面に固定化した細菌検出器具を用いることにより、食品中の汚染菌、特に麦芽アルコール飲料中の汚染菌を網羅的に検出・同定することが可能となる。
【0035】
また、本発明に係る細菌検出器具は、上記基板表面にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有し、当該カルボジイミド基またはイソシアネート基と上記オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド末端に付加されたリンカーとの反応により共有結合が形成されることが好ましい。
【0036】
本発明に係る細菌検出方法は、被検試料中の細菌を検出・同定するための方法であって、被検試料中の細菌の核酸を調製する核酸調製工程と、当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、上記プローブを、上記本発明に係る細菌検出器具の基板表面に固定化されたオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせるハイブリダイゼーション工程と、ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含むことを特徴としている。
【0037】
本発明に係る細菌検出方法の被検試料としては、食品が好適であり、なかでも麦芽アルコール飲料が最も適している。
【0038】
本発明に係る細菌検出キットは、上記本発明に係る細菌検出方法を実施するためのキットであり、上記本発明に係る細菌検出器具が含まれる。さらに、ハイブリダイゼーション工程、シグナル検出工程、プローブ調製工程、核酸調製工程で用いる試薬を含むことが好ましい。
【0039】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1(a)】実施例において使用した、本発明に係る細菌検出器具の基板上に固定化されているオリゴヌクレオチドの配置を示した図である。
【図1(b)】図1(a)に示された配置にオリゴヌクレオチドが固定化された細菌検出器具を用いてLactobacillus brevisを検出した結果を示す画像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
【0042】
(1)本発明に係る細菌検出器具
本発明に係る細菌検出器具は、被検試料中の細菌を検出・同定するための器具であって、対象となる細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されており、当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより被検試料中の細菌を検出・同定するものである。
【0043】
〔基板〕
本発明に係る細菌検出器具に用いる基板の材質としては、オリゴヌクレオチドを安定して固定化することができるものであればよい。例えば、ポリカーボネートやプラスティックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。基板の形態も特に限定されるものではないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。
【0044】
〔基板表面に固定化されるオリゴヌクレオチド〕
本発明に係る細菌検出器具の基板表面に固定化されるオリゴヌクレオチドは、検出対象細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドであればよい。当該オリゴヌクレオチドと被検試料由来の核酸との間にハイブリダイゼーションが成立することにより、被検試料中に含まれている目的の種または属に属する細菌を検出することが可能となる。なお、上記検出対象細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを、以下適宜「キャプチャーオリゴ」と称する。
【0045】
上記特異的な塩基配列は、検出対象細菌のゲノムの塩基配列から属または種特異的な塩基配列を見出せばよいが、検出対象細菌のリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列から見出すことが好ましい。なかでも細菌の16SリボソームRNA遺伝子は属または種特異的な塩基配列を多く有していることが知られており、16SリボソームRNA遺伝子に対応するDNA配列中から属または種特異的な塩基配列を見出すことが特に好ましい。リボソームRNA遺伝子の塩基配列は、GenBank、EMBL、DDBJ等のデータベース等から入手することができる。
【0046】
キャプチャーオリゴは上記属または種特異的な塩基配列に基づいて設計すればよい。したがって、上記属または種特異的な塩基配列そのものであってもよいし、検出対象細菌から調製した核酸と特異的なハイブリダイゼーションが成立する限りにおいて、変異が含まれていてもよい。変異の位置は特に限定されるものではない。
【0047】
キャプチャーオリゴの長さ(塩基数)は特に限定されるものではないが、短すぎるとハイブリダイゼーションの検出が困難になり、長すぎると非特異的ハイブリダイゼーションを許容してしまう。発明者らは、キャプチャーオリゴの長さの最適化について検討を重ね、標準的な長さを12〜24塩基とした。より好ましくは13〜22塩基である。ただし、これに限定されるものではない。塩基長は主として配列特性(特定の塩基の含有率,同一塩基のリピート)に依存するものであり、結合性の良いものは短鎖でも特異的ハイブリダイゼーションが可能であることが、発明者らにより確認されている。
【0048】
キャプチャーオリゴが、被検試料由来の核酸とのハイブリダイゼーションを妨害するヘアピン構造、ループ構造、またはそれ以外の立体構造を持つ場合、キャプチャーオリゴを構成する1またはそれ以上のヌクレオチドをイノシンまたはいずれのヌクレオチドとも対合しない核酸に置換することにより、その立体構造を解除することができる。
【0049】
キャプチャーオリゴの合成法は特に限定されるものではなく、公知の方法(例えば、Maniatis,T.et al.,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載の方法等)により合成すればよい。一般的には、市販のDNA合成機を用いて化学合成することができる。
【0050】
本発明に係る細菌検出器具において、上記検出対象細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドのみではなく、それらに加えて、いわゆるコントロール・キャプチャーオリゴを基板表面に固定化することが好ましい。コントロール・キャプチャーオリゴには、陽性コントロール・キャプチャーオリゴおよび陰性コントロール・キャプチャーオリゴが含まれる。陽性コントロール・キャプチャーオリゴは、後述するプローブ調製工程において増幅反応がうまくいっているかどうかを判定するために用いるものである。陰性コントロール・キャプチャーオリゴは、非特異的ハイブリダイゼーションが生じていないこと、すなわち擬陽性のハイブリダイゼーションシグナルが生じていないことを確認するために用いるものである。これらの陽性コントロール・キャプチャーオリゴおよび陰性コントロール・キャプチャーオリゴが基板表面に固定化された細菌検出器具も本発明に含まれる。
【0051】
陽性コントロール・キャプチャーオリゴは検出対象細菌から調製するプローブに含まれる塩基配列に基づいて設計されるものであればよい。また、複数の検出対象細菌を同時に同一の細菌検出器具を用いて検出する場合には、各検出対象細菌について陽性コントロール・キャプチャーオリゴを設計してもよいが、複数の検出対象細菌から調製するプローブに共通する塩基配列に基づいて設計してもよい。すべての検出対象細菌から調製するプローブに共通する塩基配列がない場合は、いくつかのグループごとに陽性コントロール・キャプチャーオリゴを設計してもよい。あるいは、プライマー配列部分が同じで、対象となる細菌の配列とは異なる人工的な配列を設計し、この配列の一部を陽性コントロール・キャプチャーオリゴとすることもできる。上記人工的な配列を鋳型としてプローブを調製し(本明細書では、このようなプローブをコントロールプローブと称する。)、被検試料から調製したプローブに添加することにより、ハイブリダイゼーションの特異性を検証することが可能となる。なお、上記プローブについては後述する。
【0052】
陰性コントロール・キャプチャーオリゴは、陽性コントロール・キャプチャーオリゴの塩基配列において、1塩基以上であり、かつ、当該配列の有する塩基数の20%未満の範囲内で人為的な塩基の置換を含む塩基配列を有するように設計することが好ましい。塩基置換を行う塩基数は、ハイブリダイゼーションの条件との関係で決定され、検出対象細菌由来のプローブがハイブリダイゼーションを生じないような塩基数を選択すればよい。
【0053】
検出対象細菌は特に限定されるものではなく、目的とする被検試料中から検出しようとする細菌を適宜選択すればよい。例えば、食品中に混入し当該食品を汚染する可能性のある細菌を挙げることができる。なかでも麦芽アルコール飲料に混入・汚染する可能性のある細菌を検出対象細菌とすることが好ましい。食品中に有害な細菌が混入することは、公衆衛生上非常に大きな問題となる。また、ビールや発泡酒に代表される麦芽アルコール飲料においては、有害な細菌が混入した場合、濁りや風味劣化などの品質劣化の原因となるため、これらの有害細菌を迅速かつ正確に検出・同定する方法の開発が特に強く望まれている。
【0054】
麦芽アルコール飲料を汚染する細菌としては、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、メガスフェラ属(Megasphaera)およびペクチネータス属(Pectinatus)に属する細菌を挙げることができる。また、ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する細菌種としては、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)、ラクトバチルス・カルバトス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブリュッキィ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)、ラクトバチルス・マレファーメンタンス(Lactobacillus malefermentans)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei、Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ブヒネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae、Lactobacillus caseiの基準株を含む)を挙げることができる。また、食品を汚染する細菌として、上記の他にロイコノストック属(Leuconostoc)およびザイモモナス属(Zymomonas)に属する細菌、並びにエンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)およびラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)を挙げることができる。ただし、検出対象細菌はこれらに限定されるものではない。
【0055】
上記例示した細菌を検出・同定するためのキャプチャーオリゴとしては、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、メガスフェラ属(Megasphaera)、ペクチネータス属(Pectinatus)およびザイモモナス属(Zymomonas)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、各属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチド、およびラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)、ラクトバチルス・カルバトス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブリュッキィ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)、ラクトバチルス・マレファーメンタンス(Lactobacillus malefermentans)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei、Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ブヒネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae、Lactobacillus caseiの基準株を含む)、エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)およびラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、各細菌種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドを挙げることができる。具体的には、配列番号1〜64、71および72に示されたいずれかの塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
ラクトバチルス属(Lactobacillus)に特異的な塩基配列に基づくキャプチャーオリゴ(配列番号1〜6)、およびラクトバチルス属(Lactobacillus)の一部とロイコノストック属(Leuconostoc)の一部とに対応する塩基配列に基づくキャプチャーオリゴ(配列番号72)により検出可能なラクトバチルス属細菌を表1に例示した。ただし、配列番号1〜6および72に示されたいずれかの塩基配列を有するキャプチャーオリゴにより検出可能な細菌は、これらに限定されるものではない。
【0057】
【表1】

【0058】
ペディオコッカス属(Pediococcus)に特異的な塩基配列に基づくキャプチャーオリゴ(配列番号36〜45)により検出可能な細菌を表2に例示した。ただし、配列番号36〜45に示されたいずれかの塩基配列を有するキャプチャーオリゴにより検出可能な細菌は、これらに限定されるものではない。
【0059】
【表2】

【0060】
ストレプトコッカス属(Streptococcus)に特異的な塩基配列に基づくキャプチャーオリゴ(配列番号46、47)により検出可能な細菌を表3に例示した。ただし、配列番号46または47に示された塩基配列を有するキャプチャーオリゴにより検出可能な細菌は、これらに限定されるものではない。
【0061】
【表3】

【0062】
ロイコノストック属(Leuconostoc)に特異的な塩基配列に基づくキャプチャーオリゴ(配列番号48、49)、およびラクトバチルス属(Lactobacillus)の一部とロイコノストック属(Leuconostoc)の一部とに対応する塩基配列に基づくキャプチャーオリゴ(配列番号72)により検出可能なロイコノストック属細菌を表4に例示した。ただし、配列番号48、49および72に示されたいずれかの塩基配列を有するキャプチャーオリゴにより検出可能な細菌は、これらに限定されるものではない。
【0063】
【表4】

【0064】
メガスフェラ属(Megasphaera)に特異的な塩基配列に基づくキャプチャーオリゴ(配列番号50〜55)により検出可能な細菌としては、Megasphaera cerevisiae、Megasphaera elsdenii、Megasphaera micronuciformisを挙げることができる。ただし、配列番号50〜55に示されたいずれかの塩基配列を有するキャプチャーオリゴにより検出可能な細菌は、これらに限定されるものではない。
【0065】
ペクチネータス属(Pectinatus)に特異的な塩基配列に基づくキャプチャーオリゴ(配列番号56〜58)により検出可能な細菌としては、Pectinatus cerevisiiphilus、Pectinatus frisingensisを挙げることができる。ただし、配列番号56〜58に示されたいずれかの塩基配列を有するキャプチャーオリゴにより検出可能な細菌は、これらに限定されるものではない。
【0066】
ザイモモナス属(Zymomonas)に特異的な塩基配列に基づくキャプチャーオリゴ(配列番号59、60)により検出可能な細菌としては、Zymomonas mobilis、Zymomonas pomaceaeを挙げることができる。ただし、配列番号59または60に示された塩基配列を有するキャプチャーオリゴにより検出可能な細菌は、これらに限定されるものではない。
【0067】
本発明に係る細菌検出器具の基板表面に固定化されるキャプチャーオリゴは、対象とする細菌から調製されたプローブとハイブリダイゼーションが成立するものであれば特に限定されるものではない。したがって、上記配列番号1〜64、71および72に示されたいずれかの塩基配列を含むオリゴヌクレオチドとしては、配列番号1〜64、71および72に示されたいずれかの塩基配列のみからなるものであってもよく、配列番号1〜64、71および72に示されたいずれかの塩基配列以外の配列を含むものであってもよい。配列番号1〜64、71および72に示されたいずれかの塩基配列以外の配列を含むキャプチャーオリゴとしては、配列番号1〜64、71および72に示された各塩基配列の5’側もしくは3’側またはその両方に対して、各々の16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列に基づいて伸長させた塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを挙げることができ、このようなオリゴヌクレオチドを基板表面に固定化された細菌検出器具も本発明に含まれる。
【0068】
1つの基板上に固定化するキャプチャーオリゴは、少なくとも1種類以上であればよく、特に上限はない。一般に、試料中に混入した細菌を検出する場合は、被検試料中から検出可能な細菌を1つの基板で網羅的に検出できることが、操作の簡便性および検査の迅速性の観点から好ましいといえる。したがって、本発明に係る細菌検出器具も、1つの基板上に目的の細菌種または属に対応するキャプチャーオリゴを複数固定化した、いわゆるマイクロアレイ型の器具とすることが最も好ましい。例えば、麦芽アルコール飲料を被検試料とする場合には、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、メガスフェラ属(Megasphaera)、ペクチネータス属(Pectinatus)、ザイモモナス属(Zymomonas)等に属する細菌に対応したキャプチャーオリゴを基板表面に固定化することが好ましい。
【0069】
〔オリゴヌクレオチド(キャプチャーオリゴ)の固定化〕
オリゴヌクレオチドの基板表面への固定化法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して用いればよい。例えば、物理的吸着、電気的結合または分子共有結合などの一般的なハイブリダイゼーション法に用いられる手法が利用可能である。本発明に係る細菌検出器具においては、表面にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有する基材を使用し(米国特許:US5,908,746、特開平8−23975号)、固定化することが好ましい。
【0070】
オリゴヌクレオチドをスポッティングする際に、オリゴヌクレオチドのスポット量が少なすぎると、オリゴヌクレオチドとプローブとの間の反応性を十分に確保することができず、判定が困難になることがある。また、高集積度のスポッティングは技術的な問題と同時にコストがかかり、さらにプローブの蛍光標識や化学発色などを用いたハイブリダイゼーションシグナルの検出にもより精密で高額な検出装置(例えば、スキャナー)が必要となる。したがって、オリゴヌクレオチドは、基板の表面に径10〜1,000μmのサイズに固定することが好ましい。オリゴヌクレオチドの基板上へのスポッティング方法は特に限定されるものではない。例えば、スポッティングマシンを使用して基板上にオリゴヌクレオチド溶液をスポッティングすることにより行うことができる。これによりオリゴヌクレオチド溶液は、通常ほぼ円形にスポッティングされる。
【0071】
(2)本発明に係る細菌検出方法
本発明に係る細菌検出方法は、被検試料中の細菌の核酸を調製する核酸調製工程と、当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、対象となる細菌が属する種または属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含む、被検試料中の細菌を検出・同定するための方法である。本検出方法のハイブリダイゼーション工程においては、上記本発明に係る細菌検出器具を用いることが好ましい。当該細菌検出器具を用いることにより、簡便、迅速かつ正確に網羅的な検出・同定を行うことが可能となる。また、本検出方法の被検試料としては、食品であることが好ましく、麦芽アルコール飲料であることが特に好ましい。以下各工程に分けて詳細に説明する。
【0072】
〔核酸調製工程〕
被検試料中の細菌の核酸を調製する工程である。被検試料からの核酸の調製法は、公知の核酸の調製法を適宜選択して用いることができる。例えば、DNAの調製は、R−F.Wangが紹介する方法に従って抽出することができる(Molecular and Cellular Probes(2000)14,1−5)。この方法は標準的な調製法であるが、多くの代替法があり、いずれを採用してもよいことはいうまでもない。また、市販のキットを使用してもよい。
【0073】
〔プローブ調製工程〕
上記核酸調製工程で調製した核酸を鋳型として標識プローブを調製する工程である。プローブは、例えば、キャプチャーオリゴおよび陽性コントロール・キャプチャーオリゴの塩基配列を含むよう設計されたプライマーを使用して核酸増幅により作製することができる。核酸増幅の方法としては、例えば、PCRによりDNAとして増幅する方法、あるいはインビトロ・トランスクリプション(in vitro transcription)法によりRNAとして増幅する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
例えば、PCRにより標識プローブを調製する場合には、PCRに用いるプライマーは、プローブがキャプチャーオリゴおよび陽性コントロール・キャプチャーオリゴと相補的な塩基配列を含むように設計される。なお、ハイブリダイゼーションが可能である限りにおいて、プローブはキャプチャーオリゴまたは陽性コントロール・キャプチャーオリゴよりも長くても短くてもよい。標識プローブを得るために、PCRに用いるプライマーを予め標識しておくことが可能である。また、PCRの基質(デオキシヌクレオシド三リン酸)を標識しておくことにより標識プローブを得ることもできる。あるいはPCR終了後にプローブを標識してもよい。標識物質は特に限定されるものではなく、例えば、蛍光物質、ハプテン、放射性物質等、通常のハイブリダイゼーションに用いるプローブと同様の標識物質を使用することができる。具体的には、蛍光物質としてはフルオレセイン(FITC)、ローダミン(Rodamine)、フィコエリスリン(PE)、テキサスレッド(Texas Red)、シアニン系蛍光色素等が、ハプテンとしてはビオチン(BIOTIN)、ジゴキシゲニン(Dig)、ジニトロフェニル(DNP)、フルオレセイン等を挙げることができる。
【0075】
〔ハイブリダイゼーション工程〕
ハイブリダイゼーション工程は、対象となる細菌が属する種または属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行う工程である。ハイブリダイゼーションは上記オリゴヌクレオチドを固定化したメンブレン上等で行うことができるが、本発明に係る細菌検出器具を用いることが好ましい。当該細菌検出器具を用いることにより、簡便、迅速かつ正確に網羅的な検出・同定を行うことが可能となる。ハイブリダイゼーション工程に用いる方法は特に限定されるものではなく、公知の核酸ハイブリダイゼーション方法を適宜選択して用いることができる。以下に、具体的なハイブリダイゼーション方法の一例を示す。
【0076】
SSC(Standard Saline Citrate)などの塩溶液、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)などの界面活性剤、ウシ血清アルブミン(BSA)などのブロッキング溶液、および融合反応促進のための添加剤からなる融合液に、標識プローブを加える。プローブが2本鎖の場合は熱等による変性を行う。基板上に標識プローブ液を数μL添加した後、数時間加熱操作(通常37〜50℃)を行い、基板上に固定化されているオリゴヌクレオチドと標識プローブ間でハイブリッドを形成させる。その後、基板上に5×SSCまたは3Mテトラメチルアンモニウムクロライドを加えて加熱し(通常37〜50℃)、特異的なハイブリッドを形成していない標識プローブを基板から剥離させ、特異的なハイブリッドのみを選択的に基板上に残す。
【0077】
〔シグナル検出工程〕
シグナル検出工程は、上記ハイブリダイゼーション工程においてハイブリダイゼーションの成立の有無を判定する工程であり、通常上記ハイブリダイゼーション工程と連続的に行われる。
【0078】
ハイブリッド検出工程で用いる方法は、上記プローブ調製工程で調製したプローブに導入された標識物質に依存する。すなわち、ハイブリッドの検出には、プローブに導入されている蛍光物質、ハプテン等の標識物質を使用する。したがって、用いたプローブに導入した標識物質を検出するための公知の方法を適宜選択して使用すればよい。
【0079】
例えば、ハプテンを使用する場合は、ハプテンを認識するタンパクまたはそれに結合するタンパクと、アルカリフォスファターゼまたはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ等の結合体(酵素コンジュゲート)を含む溶液を基板上に加え、室温で数10分間反応させる。なお、このハプテンと酵素コンジュゲートの結合反応を行う前に、オリゴヌクレオチドを固定した領域以外の基板の領域をカゼインなどのタンパクを用いて完全に被覆することによって、酵素コンジュゲートと基板の非特異的吸着反応を阻止することができる。これは、オリゴヌクレオチドを固定した後に基板上にカゼインなどのタンパクの溶液を加え、室温で数10分間放置することによって行うことができる。酵素コンジュゲートとプローブ中のハプテンとの結合反応終了後、ハプテンと結合しなかった酵素コンジュゲートを、界面活性剤を含む適当な緩衝液で洗浄し排除する。これによって、基板上にはプローブ中のハプテンと結合した酵素コンジュゲートのみが残ることになる。
【0080】
ハイブリッドの視覚化には、ハプテンと酵素コンジュゲート結合体のみが存在する場合にのみ不溶化合物が形成されるような化合物を添加する。その不溶性化合物の生成は、酵素反応によって増幅され可視化される。添加される化合物として、酵素コンジュゲート中の酵素がアルカリフォスファターゼの場合には、ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(NBT)とBCIP(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸−pトルイジン塩)が用いられ、酵素がホースラディッシ・ペルオキシダーゼの場合には、TMB(3,3’,5,5’テトラメチルベンチジン)などが用いられる。
【0081】
キャプチャーオリゴを固定化した位置におけるハイブリッドの色素沈着または蛍光発色等のハイブリダイゼーションシグナルを見ることによって、被検試料中に含まれる細菌種の判定を行う。すなわち、ハイブリダイゼーションシグナルが検出された場合には、当該シグナルがある位置にスポットされたオリゴヌクレオチドに対応する細菌が、被検試料中に含まれていることを意味する。なお、陽性コントロール・キャプチャーオリゴの位置にシグナルが認められれば、本試験が正常に機能していることが確認でき、陰性コントロール・キャプチャーオリゴの位置にシグナルが認められなければ、ハイブリダイゼーションが適当な条件で行われたことが確認できる。
【0082】
(3)本発明に係る細菌検出キット
本発明に係る細菌検出キットは、上述の本発明に係る細菌検出方法を実施するためのキットである。したがって、本発明に係る細菌検出方法を実施できるものであれば、キットに含まれる構成は特に限定されるものではない。
【0083】
本細菌検出キットは、本発明に係る細菌検出器具を含むものであることが好ましい。当該細菌検出器具を含むキットとすることにより、簡便、迅速かつ正確に網羅的な検出・同定を行うことが可能となる。また、本細菌検出キットには、上記ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程で使用する試薬を含むことが好ましい。ハイブリダイゼーション工程で用いる試薬としては、例えば、SSC(Standard Saline Citrate)などの塩溶液、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)などの界面活性剤、ウシ血清アルブミン(BSA)などのブロッキング溶液、融合反応促進のための添加剤等を挙げることができ、シグナル検出工程で使用する試薬としては、例えば、ハプテンを認識するタンパクと酵素との結合体(酵素コンジュゲート)や、NBT、BCIP、TMB等の発色基質等を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、目的に適合するように適宜適切な試薬を選択してキットの構成とすればよい。
【0084】
本細菌検出キットには、上記プローブ調製工程で使用する試薬を含むことが好ましく、さらに、上記核酸調製工程で使用する試薬を含むことが好ましい。プローブ調製工程で使用する試薬としては、例えば、PCR用緩衝液、耐熱性DNA合成酵素、デオキシヌクレオシド三リン酸混合液等を挙げることができ、核酸調製工程で使用する試薬としては、溶菌用緩衝液、DNA回収用カラム、DNA抽出用緩衝液等を挙げることができる。ただしこれに限定されるものではなく、目的に適合するように適宜適切な試薬を選択してキットの構成とすればよい。
【0085】
本発明に係るキット(本発明に係る細菌検出器具および各工程に使用する試薬を含むもの)を用いることにより、被検試料受領後約6時間で被検試料中に含まれる細菌の検出・同定を実施することができる。
【0086】
(4)本発明の用途
本発明に係る細菌検出器具、細菌検出方法および細菌検出キットの用途は特に限定されるものではなく、細菌の判定が必要な用途全てに用いることができる。具体的には、例えば、細菌による汚染が品質に大きな影響を及ぼす各種工業製品の製造工程で、同工業製品やその製造環境等から分離された細菌を迅速かつ正確に検出・同定する必要がある場合に好適に用いられる。
【0087】
判定の対象となる被判定細菌の由来となる上記工業製品としては、代表的なものとして、食品、飲料、医薬品・試薬・医薬部外品、使い捨ての医療用器具等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。本発明は上記例示した工業製品のなかでの食品に応用することが好ましい。食品としては、より具体的には、パン、和洋菓子(冷菓等も含む)、惣菜食品、乳製品、シリアル食品、豆腐・油揚げ類、麺類、弁当類、調味料、小麦粉や食肉等の農産加工品、栄養補助食品(サプリメント等)、長期保存食品(缶詰、冷凍食品、レトルト食品等)等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0088】
本発明は、上記例示した食品のなかでも、特に麦芽アルコール飲料に好適に応用することができる。麦芽アルコール飲料としては、ビール、発泡酒等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0089】
〔オリゴヌクレオチドの合成〕
定法に従い、オリゴヌクレオチド合成機(Perkin−elmer Applied biosystems社製)を用いてオリゴヌクレオチドを合成し、脱保護を施した後乾燥させた。このオリゴヌクレオチド乾燥体を、10mM Tris−HCl(pH7.5)・1mM EDTA緩衝液を用いて溶解し、100pmol/μLのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。本実施例に使用したすべてのオリゴヌクレオチドはこの方法で合成した。合成したオリゴヌクレオチドの塩基配列を配列番号1〜72に示した。これらのうち、配列番号1〜64、71および72がキャプチャーオリゴであり、配列番号65が検出対象細菌に対する陽性コントロール・キャプチャーオリゴであり、配列番号66が陰性コントロール・キャプチャーオリゴであり、配列番号67〜68がプライマーであり、配列番号69がコントロールプローブであり、配列番号70がコントロールプローブに対する陽性コントロール・キャプチャーオリゴある。キャプチャーオリゴヌクレオチドについては上記合成機を用いて5’末端にアミノ基を結合させ、プライマーは5’末端にビオチンを結合させた。
【0090】
〔基板へのキャプチャーオリゴヌクレオチドのスポッティング〕
5’末端にアミノ基を有するオリゴヌクレオチド溶液10μLに対してマイクロスポッティング溶液(TeleChem International Inc.製)を10μL混合し、マイクロタイタープレート(Greiner Laboratory Inc.製)上に分注した。スポッティングマシンの所定の位置にカルボジイミド樹脂処理スライドグラスCarbostation(日清紡績株式会社製)を配置し、スポッティングマシンを作動させた。スポッティング終了後、スライドグラスに熱水からの蒸気を数秒間あて、その後紫外線を600mJ照射した。再度蒸気に数秒間曝露した後、ホットプレート上にスライドグラスを置いて水分を除去した。スライドグラスを3%BSA(ウシ血清アルブミン)を含む100mM Tris−HCl(pH7.5)・100mM NaCl・0.1% Triton X−100に室温で30分間浸し、ブロッキングした。その後、10mM Tris−HCl(pH7.5)・1mM EDTA緩衝液で洗浄した。スライドグラスを室温で乾燥させ、使用まで乾燥状態で冷暗所にて保存した。図1(a)に、本実施例で実際に使用した細菌検出器具の基板上に固定化されているオリゴヌクレオチドの配置を示した。
【0091】
〔核酸調製工程〕
検体として用いた細菌はラクトバチルス属14種、ペディオコッカス属5種、ストレプトコッカス属1種、ロイコノストック属1種、メガスフェラ属3種、ペクチネータス属2種、ザイモモナス属2種、エンテロコッカス属1種、ラクトコッカス属1種の合計30種類の細菌である。検体として用いた細菌を表5に示した。
【0092】
【表5】

【0093】
これらの各細菌に最適な培養条件で培養した菌液から、Genomic DNA Purif. Kit(EdgeBioSystems製、Cat.No.#85171)を用いて各細菌のゲノムDNAをそれぞれ調製した。
【0094】
〔プローブ調製工程〕
得られた各細菌のDNAを鋳型としてPCRによりプローブ核酸を調製した。PCR反応液の組成は、Taqポリメラーゼ:1unit、ビオチン化プライマー(配列番号68および69):各10pmol、反応用緩衝液(10×):5μL、dNTP:各10nmol、鋳型DNA:100ngに滅菌蒸留水を加えて総量50μLとした。サーマルサイクラーを用いて、95℃で3分間保持した後、95℃:30秒間、55℃:15秒間、72℃:1分間の反応を30サイクル行い、72℃で5分間保持して反応を終了した。
【0095】
また、プライマー配列部分が同じで対象となる細菌の配列とは異なる人工的な配列を設計し、これをコントロールプローブとした。これを鋳型としてPCRを行い、ビオチン化コントロールプローブを調製した。PCR反応液の組成は、鋳型DNAを1ngとした点を除いて上記と同様である。また、反応温度およびサイクル数は上記と同一である。プローブの精製は行わず、PCR反応液をそのままプローブ溶液として、以下のハイブリダイゼーション工程で使用した。
【0096】
〔ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程〕
上記プローブ核酸溶液3μLと、ビオチン化コントロールプローブ溶液1μLと、Arraylt Unihyb Hybridization Solution(TeleChem International Inc.製)16μLとを加えて混合し、100℃で1分間加熱処理を行った後、氷中に5分間浸した。このプローブ核酸溶液を全量とり、キャプチャーオリゴヌクレオチドを固定化した基板に載せ、その上にカバーグラスを載せた。これを保湿箱に入れ、37℃に設定した恒温器中に120分間静置した。基板を取り出し、すばやく室温下で2×SSC溶液(2×SSC:0.033MNaCl、0.033Mクエン酸ナトリウム)に浸してカバーグラスを除去し、37℃に保温した2×SSC中に5分間浸した。
【0097】
基板を2×SSCから取り出し、遠心機(Beckman社製)にセットして、2,000rpmで1分間遠心した。次にVECTASTAIN Elite ABC kit(VECTOR社製)を用いてアビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体を作製し基板上に1.4mL滴下し、室温で30分間静置した。その後、PBS(10mMリン酸ナトリウム(pH7.5)、0.9%塩化ナトリウム)中で洗浄した。TMB substrate kit for peroxidase(VECTOR社)を用いて発色溶液を作製し、基板上に1.4mL滴下して室温で30分間静置した。基盤を蒸留水で洗浄して発色反応を止めた。
【0098】
〔判定〕
EPSON社製スキャナーGT−8700Fおよびその透過型ユニットを用いてハイブリダイゼーションを行った領域を600dpiにてスキャンし、スキャン画像を目視により発色の有無を確認した。図1(b)にスキャン画像の一例として、Lactobacillus brevisのスキャン画像を示した。なお、図1(a)は基板上のオリゴヌクレオチドの配置を示している。
【0099】
〔結果〕
検体として用いた30種類の各細菌についての結果を表6〜35に示した。各表とも○印が発色の確認されたスポットを表し、−印が発色の確認されなかったスポットを表す。表6〜35から明らかなように全ての場合、コントロールプローブではそれに対する陽性コントロール・キャプチャーオリゴ(配列番号70)に発色が見られ、また、陰性コントロール・キャプチャーオリゴでは発色が認められず、増幅およびハイブリダイゼーションの工程が共に正常に機能していることが確認された。また、全ての細菌に対して陽性コントロール・キャプチャーオリゴ(配列番号65)で発色が確認された。このことより細菌より調整した核酸が増幅されていることも確認された。なお、以下の結果の説明においては陽性コントロール・キャプチャーオリゴ(配列番号65および70)の発色は含めないものとする。
【0100】
表6にはLactobacillus brevisの結果を示した。Lactobacillus brevisは1個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号1)と、4個所のLactobacillus brevis検出用キャプチャーオリゴ(配列番号7、8、9、71)との合計5箇所のみで発色が確認された(図1参照)。Lactobacillus curvatus(表8)は、1個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号5)と、2個所のLactobacillus curvatus検出用キャプチャーオリゴ(配列番号13、14)との合計3箇所のみで発色が確認された。
Lactobacillus coryniformis(表7)、Lactobacillus delbrueckii(表9)、Lactobacillus lindneri(表11)およびLactobacillus malefermentans(表12)は、6個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号1〜6)のうちいずれか1個所と、各細菌に対応する3個所の種特異的キャプチャーオリゴとの合計4個所のみに発色が認められた。
【0101】
Lactobacillus fermentum(表10)は、1個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号6)と、1個所のLeuconostoc属の一部およびLactobacillus属の一部検出用キャプチャーオリゴ(配列番号72)と、3個所のLactobacillus fermentum検出用キャプチャーオリゴ(配列番号19〜21)との合計5個所のみに発色が認められた。
Lactobacillus casei(表13)は、2個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号3、4)と、2個所のLactobacillus casei検出用キャプチャーオリゴ(配列番号28、29)との合計4個所のみに発色が認められた。Lactobacillus rhamnosus(表14)は、2個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号3、4)と、2個所のLactobacillus rhamnosus検出用キャプチャーオリゴ(配列番号32、33)との合計4個所のみに発色が認められた。Lactobacillus buchneri(表15)は、1個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号1)と、2個所のLactobacillus buchneri検出用キャプチャーオリゴ(配列番号34、35)との合計3個所のみに発色が認められた。Lactobacillus zeae(表19)は、2個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号3、4)と、2個所のLactobacillus zeae検出用キャプチャーオリゴ(配列番号30、31)との合計4個所のみに発色が認められた。
【0102】
また、種特異的キャプチャーオリゴが設計されていないLactobacillus plantarum(表16)およびLactobacillus sakei(表18)は、6個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号1〜6)のうちいずれか1個所のみに発色が認められた。
Lactobacillus psittaci(表17)は、1個所のLactobacillus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号6)とLeuconostoc属の一部およびLactobacillus属の一部検出用キャプチャーオリゴ(配列番号72)の合計2個所のみに発色が認められた。
【0103】
Pediococcus damnosus(表20)、Pediococcus acidilactici(表21)、Pediococcus claussenii(表22)、Pediococcus dextrinicus(表23)およびPediococcus urinaeequi(表24)は10個所のPediococcus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号36〜45)のうちいずれか2個所のみに発色が認められた。
【0104】
Streptococcus alactolyticus(表25)は2個所のStreptococcus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号46、47)のみに発色が認められた。
【0105】
Leuconostoc mesenteroides(表26)は2個所のLeuconostoc属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号48、49)と、1個所のLeuconostoc属の一部およびLactobacillus属の一部検出用キャプチャーオリゴ(配列番号72)の合計3箇所のみに発色が認められた。
【0106】
Megasphaera cerecisiae(表27)、Megasphaera elsdenii(表28)およびMegasphaera micronuciformis(表29)は6個所のMegasphaera属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号50〜55)のうちいずれか2個所のみに発色が認められた。
【0107】
Pectinatus cerevisiiphils(表30)およびPectinatus frisingensis(表31)は3個所のPectinatus属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号56〜58)のうちいずれか2個所のみに発色が認められた。
【0108】
Zymomonas mobilis(表32)およびZymomonas pomaceae(表33)は2個所のZymomonas属検出用キャプチャーオリゴ(配列番号59、60)にのみ発色が認められた。
【0109】
Enterococcus durans(表34)は2個所のEnterococcus durans検出用キャプチャーオリゴ(配列番号61、62)のみに発色が認められた。
【0110】
Lactococcus lactis(表35)は2個所のLactococcus lactis検出用キャプチャーオリゴ(配列番号63、64)のみに発色が認められた。
【0111】
以上の結果は、検体として用いた各細菌において、各細菌に特異的なキャプチャーオリゴを固定化したスポットのみで発色が認められ、非特異的な発色は全く認められなかったことを示すものである。したがって、本実施例において作製した細菌検出器具は、Lactobacillus属、Pediococcus属、Streptococcus属、Leuconostoc属、Megasphaera属、Pectinatus属、Zymomonas属を特異的に検出でき、かつ、Lactobacillus brevis、Lactobacillus coryniformis、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus lindneri、Lactobacillus malefermentans、Lactobacillus casei(Lactobacillus paracaseiを含む)、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus zeae(Lactobacillus caseiの基準株を含む)、Enterococcus duransおよびLactococcus lactisを種特異的に検出できる細菌検出器具であることが確認された。
【0112】
【表6】

【0113】
【表7】

【0114】
【表8】

【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

【0117】
【表11】

【0118】
【表12】

【0119】
【表13】

【0120】
【表14】

【0121】
【表15】

【0122】
【表16】

【0123】
【表17】

【0124】
【表18】

【0125】
【表19】

【0126】
【表20】

【0127】
【表21】

【0128】
【表22】

【0129】
【表23】

【0130】
【表24】

【0131】
【表25】

【0132】
【表26】

【0133】
【表27】

【0134】
【表28】

【0135】
【表29】

【0136】
【表30】

【0137】
【表31】

【0138】
【表32】

【0139】
【表33】

【0140】
【表34】

【0141】
【表35】

【0142】
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明に係る細菌検出器具は、対象となる細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されており、当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより、被検試料中の細菌を検出・同定することが可能となる。それゆえ、本発明によれば、正確かつ簡便に細菌の検出・同定を行うことができるという効果を奏する。
【0144】
また、基板表面に複数の細菌種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを固定化しておけば、網羅的な検査を行うことができるという効果を奏する。
【0145】
さらに、本発明に係る細菌検出キットは、上記細菌検査器具および必要な試薬を含むものであるため、操作性が向上し、一層簡便に細菌の検出・同定を行うことができるという効果を奏する。
【0146】
本発明は、食品製造業、飲食産業、薬品産業等における衛生管理、工程管理、品質管理に利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料中の細菌を検出・同定するための器具であって、
対象となる細菌は以下の(1)〜(5)に記載の細菌から選ばれる少なくとも2種類以上の細菌であり、
対象となる細菌が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されており、
当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより被検試料中の細菌を検出・同定することを特徴とする細菌検出器具。
(1)ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)に属する細菌
(2)ラクトバチルス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)に属する細菌
(3)ペディオコッカス属(Pediococcus)に属する細菌
(4)メガスフェラ属(Megasphaera)に属する細菌
(5)ペクチネータス属(Pectinatus)に属する細菌
【請求項2】
上記対象となる細菌には、さらに以下の(6)〜(19)に記載の細菌が含まれることを特徴とする請求項1に記載の細菌検出器具。
(6)ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する細菌
(7)ストレプトコッカス属(Streptococcus)に属する細菌
(8)ロイコノストック属(Leuconostoc)に属する細菌
(9)ザイモモナス属(Zymomonas)に属する細菌
(10)ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)に属する細菌
(11)ラクトバチルス・カルバトス(Lactobacillus curvatus)に属する細菌
(12)ラクトバチルス・デルブリュッキィ(Lactobacillus delbrueckii)に属する細菌
(13)ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)に属する細菌
(14)ラクトバチルス・マレファーメンタンス(Lactobacillus malefermentans)に属する細菌
(15)ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)グループに属する細菌
(16)ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)に属する細菌
(17)ラクトバチルス・ブヒネリ(Lactobacillus buchneri)に属する細菌
(18)エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)に属する細菌
(19)ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)に属する細菌
【請求項3】
ラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号1に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号2に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号3に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号4に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号5に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号6に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項4】
ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号7に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号8に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号9に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号71に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項1または2に記載の細菌検出器具。
【請求項5】
ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lactobacillus coryniformis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号10に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号11に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号12に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項6】
ラクトバチルス・カルバトス(Lactobacillus curvatus)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号13に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号14に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項7】
ラクトバチルス・デルブリュッキィ(Lactobacillus delbrueckii)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号16に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号17に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号18に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項8】
ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号19に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号20に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号21に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項9】
ラクトバチルス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号22に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号23に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号24に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項1または2に記載の細菌検出器具。
【請求項10】
ラクトバチルス・マレファーメンタンス(Lactobacillus malefermentans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号25に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号26に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号27に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項11】
ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)グループの16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号28に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号29に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号30に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号31に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項12】
ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)の16Sリボソー厶RNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号32に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号33に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項13】
ラクトバチルス・ブヒネリ(Lactobacillus buchneri)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号34に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号35に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項14】
ペディオコッカス属(Pediococcus)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号36に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号37に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号38に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号39に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号40に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号41に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号42に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号43に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号44に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号45に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項1または2に記載の細菌検出器具。
【請求項15】
ストレプトコッカス属(Streptococcus)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号46に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号47に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項16】
ロイコノストック属(Leuconostoc)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号48に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号49に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項17】
メガスフェラ属(Megasphaera)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号50に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号51に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号52に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号53に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号54に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号55に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項1または2に記載の細菌検出器具。
【請求項18】
ペクチネータス属(Pectinatus)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号56に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、配列番号57に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号58に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項1または2に記載の細菌検出器具。
【請求項19】
ザイモモナス属(Zymomonas)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号59に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号60に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項20】
エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号61に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号62に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項21】
ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されている細菌検出器具であって、
当該オリゴヌクレオチドが、配列番号63に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドおよび配列番号64に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上のオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の細菌検出器具。
【請求項22】
上記基板表面にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有し、当該カルボジイミド基またはイソシアネート基と上記オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド末端に付加されたリンカーとの反応により共有結合が形成されることを特徴とする請求項1ないし21のいずれか1項に記載の細菌検出器具。
【請求項23】
被検試料中の細菌を検出・同定するための器具であって、ロイコノストック属(Leuconostoc)に属する細菌および/またはラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する細菌の16SリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列のうち、配列番号72に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されており、当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより被検試料中の細菌を検出・同定することを特徴とする細菌検出器具。
【請求項24】
被検試料中の細菌を検出・同定するための方法であって、
被検試料中の細菌の核酸を調製する核酸調製工程と、
当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、
上記プローブを、請求項1ないし23のいずれか1項に記載の細菌検出器具の基板表面に固定化されたオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせるハイブリダイゼーション工程と、
ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含むことを特徴とする細菌検出方法。
【請求項25】
上記被検試料が食品であることを特徴とする、請求項24に記載の細菌検出方法。
【請求項26】
上記食品が麦芽アルコール飲料であることを特徴とする、請求項25に記載の細菌検出方法。
【請求項27】
請求項24ないし26のいずれか1項に記載の細菌検出方法を実施するための細菌検出キット。
【請求項28】
請求項24ないし26のいずれか1項に記載の細菌検出方法を実施するためのキットであって、上記ハイブリダイゼーション工程および/またはシグナル検出工程で用いる試薬を含むことを特徴とする細菌検出キット。
【請求項29】
さらに、上記プローブ調製工程および/または上記核酸調製工程で用いる試薬を含む請求項28に記載の細菌検出キット。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【国際公開番号】WO2005/080599
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510323(P2006−510323)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003152
【国際出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】