説明

細菌測定具

【課題】本発明は、細菌測定具に関するもので、測定の信頼性を高めることを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、上面が開口した有底筒状のケース1と、このケース1内を、下方の測定空間5と上方の液体収納空間4に仕切る薄膜6と、このケース1の前記液体収納空間4上を覆った薄膜8とを備え、前記測定空間5には測定電極9を設け、前記液体収納空間4には測定用の液体7を設け、前記薄膜6の下面側には、保持体10を設け、この保持体10の上面と前記薄膜6の下面とで回転子11を保持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば口腔内の細菌を測定するための細菌測定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種、細菌測定具の構造は、以下のようになっていた。
【0003】
すなわち、上面が開口した有底筒状のケースと、このケース内に設けた測定電極と、前記ケース内の下方に設けた回転子とを備え、回転子をケースの下方に設けた磁石で回転させる構造となっていた(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−24350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例における課題は、測定の信頼性が低くなる場合があるということであった。
【0006】
すなわち、回転子は容器内において回転し、これによって容器内の液体を攪拌させ、測定電極による測定を安定させるためにある。しかしながら、この細菌測定具を搬送時には容器内で回転子が大きく揺動し、その結果として、測定電極を損傷させ、これによって測定の信頼性が低くなってしまうのであった。
【0007】
そこで本発明は、測定の信頼性を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために本発明は、上面が開口した有底筒状のケースと、このケース内を、下方の測定空間と上方の液体収納空間に仕切る第1の薄膜と、このケースの前記液体収納空間上を覆った第2の薄膜とを備え、前記測定空間には測定電極を設け、前記液体収納空間には測定用の液体を設け、前記第1の薄膜の下面側には、保持体を設け、この保持体の上面と前記第1の薄膜の下面とで回転子を保持した構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、上面が開口した有底筒状のケースと、このケース内を、下方の測定空間と上方の液体収納空間に仕切る第1の薄膜と、このケースの前記液体収納空間上を覆った第2の薄膜とを備え、前記測定空間には測定電極を設け、前記液体収納空間には測定用の液体を設け、前記第1の薄膜の下面側には、保持体を設け、この保持体の上面と前記第1の薄膜の下面とで回転子を保持したものであるので、測定に対する信頼性を高くすることができる。
【0010】
すなわち、本発明においては、ケース内を上方の液体収納空間と下方の測定空間に仕切る第1の薄膜を設けるとともに、この第1の薄膜の下面側には、保持体を設け、この保持体の上面と前記第1の薄膜の下面とで回転子を保持したものであるので、搬送時に回転子が大きく揺動することはなく、したがって、この回転子で測定電極が損傷されることもなく、この結果として測定に対する信頼性を高くすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)本発明の一実施形態に係る検査用器具の縦断面図(b)その平面図
【図2】(a)その製造方法を示す縦断面図(b)その平面図(c)その製造方法を示す縦断面図(d)その平面図(e)その製造方法を示す縦断面図(f)その平面図(g)その製造方法を示す縦断面図(h)その製造方法を示す縦断面図
【図3】(a)〜(d)その使用時の操作状態を示す斜視図
【図4】(a)〜(d)その使用時の操作状態を示す断面図
【図5】その使用時の操作状態を示す拡大断面図
【図6】(a)〜(d)その使用時の操作状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を添付図面を用いて説明する。
【0013】
図1において、1は、たとえばポリカーボネートなどの合成樹脂により形成したケースで、有底筒状をしており、上面には開口部2が設けられている。前記ケース1は、この図1に示すように、上下方向の中位に段差部3を形成し、この段差部3の上方を液体収納空間4、下方を測定空間5としており、これらの液体収納空間4、測定空間5を仕切るためにアルミニウム製の薄膜6を設けている。
【0014】
また、液体収納空間4には、測定用の液体(たとえば純水7)が収納され、その状態で開口部2にはアルミニウム製の薄膜8が設けられている。さらに、測定空間5の上下方向の中位には、測定電極9を設けている。
【0015】
この測定電極9は、上記特許文献1と同じように、櫛歯状の一対の電極を所定間隔をおいて、対向配置した構成となっており、その引き出し電極は、図示していないがケース1の外面側に、水密状態で引き出されている。
【0016】
また、薄膜6の下面側には、同じくアルミニウム製で薄膜状態の保持体10を設け、この保持体10の上面と薄膜6の下面とで回転子11を保持した構成となっている。
【0017】
なお、薄膜6、薄膜8および、保持体10の下面側には、PET(樹脂)がコーティングされており、また、これらの薄膜6、薄膜8および、保持体10の上面側にはニトリルセルロース(樹脂)がコーティングされている。このため、図1の状態において、液体収納空間4内の液体7によって、これらの薄膜6の上面側および、薄膜8の下面側が腐蝕することはない。
【0018】
また、回転子11は、たとえばステンレスで構成されているが、この回転子11に接する薄膜6の下面側および保持体10の上面側には、樹脂がコーティングされているので、異種金属による電蝕は発生しない。
【0019】
この図1は、使用前の状態を示し、ケース1は、密閉容器(図示していないが樹脂製の袋)内に封入され、この状態で搬送されることになる。この時、回転子11は、上述したごとく測定電極9の上方で薄膜6と保持体10で挟持することで保持しているので、たとえ搬送時の振動が加わったとしても、回転子11で測定電極9を損傷させてしまうことはなく、これによって測定時の信頼性を高めることが出来る。
【0020】
なお、ケース1をこのような密閉容器に封入すれば、測定電極9からケース1外に引き出した引き出し電極(図示せず)も密閉容器内に封入されていることから、その酸化などが抑制されることとなる。
【0021】
図2は、図1の細菌測定具の製造方法を示すものである。
【0022】
まず、図2(a)、(b)に示すごとく、測定電極9が一体化されたケース1を用意する。この状態で、段差部3に帯状の保持体10を取りつける。すなわち、保持体10は図1(b)、図2(b)に示すごとく帯状となっており、その両端(外周部)を段差部3に設けた凹部3aに収納させ、その状態で、この保持体10の上方より、この保持体10の上面を、この凹部3aに加熱押しつけ具(図示せず)で押しつけることで、この保持体10の下面側にコーティングしていたPET(樹脂)を溶融させ、段差部3に一体化する。
【0023】
この保持体10は、図2(b)からも理解されるように、ケース1の中心線を通る部分に、複数の破断孔10aを直線上に設けている。そして、この破断孔10a部分に、図2(c)、(d)に示すごとく、棒状の回転子11を水平方向に配置する。
【0024】
つぎに、図2(e)、(f)に示すごとく、段差部3に円板状の薄膜6を配置し、その状態で、この薄膜6の上方より、この薄膜6の外周上面を、この段差部3に加熱押しつけ具(図示せず)で押しつけることで、この薄膜6の下面側にコーティングしていたPET(樹脂)を溶融させ、段差部3に一体化する。
【0025】
この状態で、上述したごとく、回転子11は、測定電極9の上方で、薄膜6と保持体10で挟持、保持されている。なお、保持体10の破断孔10a部分は、上記加熱押しつけ具により下方に押しつけた状態とすることで、図2(a)のごとく、あらかじめ下方に若干窪んだ状態となっているので、この窪んだ部分と薄膜6で回転子11を挟持、保持した状態となる。
【0026】
つぎに、図2(g)に示すごとく、ケース1の開口部2から、液体7を液体収納空間4に注ぎ、図2(h)のごとく、開口部2を薄膜8で覆い、加熱押しつけ具で、この薄膜8の下面側にコーティングしていたPET(樹脂)をケース1の開口縁に溶着させる。
【0027】
図3から図6は、この細菌測定具を使用する状態を示しており、まずは、上述した密閉容器からケース1を取り出す。そして次に、図3(a)、図4(a)に示すごとく、操作体12を薄膜8の上方より下方に押し込むこととなる。この操作体12は、逆円錐筒状態となっており、しかも、その先端側は、その一端側から他端側に向けて傾斜状態で開口12aを設けている。
【0028】
また、この操作体12の押し下げは、図示していない押し下げ装置によって行われるようになっており、その時、この操作体12とケース1の位置関係が予め設定された状態となっている。
【0029】
すなわち、図4(b)からも理解されるように、操作体12の最下端は、保持体10の破断孔10a部分に、これに直交する状態で図3(a)、(b)、(c)、(d)と押し下げられることになる。これに従い、まずは、薄膜8には、貫通孔8a(図6)が形成されることになるが、上述したごとく、この操作体12は、逆円錐筒状態となっており、しかも、その先端側は、その一端側から他端側に向けて傾斜状態で開口12aを設けているので、薄膜8の貫通孔8aが形成されることによる破断片8b(図6)は、ケース1の一方側に寄せられることになる。
【0030】
なお、この破断片8bが押し寄せられた側は、測定電極9とは反対側の面となっている。続いて、図4(b)のごとく、さらに操作体12を押し下げると薄膜6が破られて、貫通孔6a(図6)が形成され、つぎに、保持体10の破断孔10aが破られ、この結果、図4(c)に示すごとく、回転子11がケース1の内底面に落下することになる。
【0031】
この時、薄膜6の貫通孔6aを形成するときに出来た破断片6b(図6)も、測定電極9とは反対側に形成される。また、保持体10は、図6(c)に示すごとく、測定電極9に直交する左右に破断片10bが押し広げられた状態となる。
【0032】
つまり、本実施形態においては、操作体12を押し下げることによって形成される破断片8b、破断片6bは測定電極9とは反対側に押し広げられ、また、破断片10bは測定電極9とは直交する左右に押し広げられた状態となる。そして、この状態において、薄膜8、薄膜6、保持体10の破断片8b、破断片6b、破断片10bが、小さな小片となって測定空間5内(図1)の液体7(図4(d))の測定電極9部分に落下することはなく、この結果として、測定電極9による測定の信頼性を低下させることはない。
【0033】
再び図4(b)に戻って説明を続けると、薄膜6に貫通孔6aが操作体12によって形成された瞬間から、液体収納空間4内の液体が測定空間5内に流れ落ちることになるのであるが、本実施形態で用いた操作体12は、上述したごとく逆円錐筒状態となっているので、測定空間5内の空気は、この操作体12内を通ってケース1外へと排出され、これによって液体収納空間4内の液体が測定空間5内にスムーズに流れ落ちることとなる。
【0034】
なお、この操作体12の最下端には、図5に示すごとく、フラット部12bを設けているので、この操作体12を押し下げる時に、薄膜8や薄膜6や保持体10の上面で左右に滑ることはなく、この図5に示すごとく、回転子11を確実に落下させることができる。
【0035】
この回転子11がケース1の内底面上に落下した状態で、ケース1から操作体12を引き抜き、その状態で、細菌の採取具(図示せず)を薄膜8の貫通孔8a、薄膜6の貫通孔6aを貫通させて、測定空間5内の液体7に挿入し、この液体7内に細菌を流出させる。そして、この状態で回転子11を図示していない磁石で回転させながら、測定電極9による細菌の測定を行う。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように本発明は、上面が開口した有底筒状のケースと、このケース内を、下方の測定空間と上方の液体収納空間に仕切る第1の薄膜と、このケースの前記液体収納空間上を覆った第2の薄膜とを備え、前記測定空間には測定電極を設け、前記液体収納空間には測定用の液体を設け、前記第1の薄膜の下面側には、保持体を設け、この保持体の上面と前記第1の薄膜の下面とで回転子を保持したものであるので、測定に対する信頼性を高くすることができる。
【0037】
すなわち、本発明においては、ケース内を上方の液体収納空間と下方の測定空間に仕切る第1の薄膜を設けるとともに、この第1の薄膜の下面側には、保持体を設け、この保持体の上面と前記第1の薄膜の下面とで回転子を保持したものであるので、搬送時に回転子が大きく揺動することはなく、したがって、この回転子で測定電極が損傷されることもなく、この結果として測定に対する信頼性を高くすることができるのである。
【0038】
したがって、たとえば口腔内の細菌測定具などとして、広く活用が期待されるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 ケース
2 開口部
3 段差部
4 液体収納空間
5 測定空間
6 薄膜
6a 貫通孔
6b 破断片
7 純水
8 薄膜
8a 貫通孔
8b 破断片
9 測定電極
10 保持体
10a 破断孔
10b 破断片
11 回転子
12 操作体
12a 開口
12b フラット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した有底筒状のケースと、このケース内を、下方の測定空間と上方の液体収納空間に仕切る第1の薄膜と、このケースの前記液体収納空間上を覆った第2の薄膜とを備え、前記測定空間には測定電極を設け、前記液体収納空間には測定用の液体を設け、前記第1の薄膜の下面側には、保持体を設け、この保持体の上面と前記第1の薄膜の下面とで回転子を保持した細菌測定具。
【請求項2】
保持体は、第3の薄膜により構成した請求項1に記載の細菌測定具。
【請求項3】
第1の薄膜の下面と第3の薄膜の上面で、回転子を挟持した請求項2に記載の細菌測定具。
【請求項4】
ケースの中位部分に段差を設け、この段差を境に上方の液体収納空間を下方の測定空間よりも開口面積を大きくし、この段差部に第3の薄膜と第1の薄膜を、第3の薄膜を第1の薄膜よりも下方にして固定した請求項3に記載の細菌測定具。
【請求項5】
段差部には、第3の薄膜の外周部を固定する凹部を設けた請求項4に記載の細菌測定具。
【請求項6】
段差部には、第1の薄膜の外周部を固定した請求項5に記載の細菌測定具。
【請求項7】
ケースを合成樹脂により形成し、第1から第3の薄膜はアルミニウムで形成するとともに、少なくとも、その下面側には樹脂層をコーティングした請求項1から6のいずれか一つに記載の細菌測定具。
【請求項8】
第1、第3の薄膜の上面には、樹脂層をコーティングした請求項7に記載の細菌測定具。
【請求項9】
回転子を金属体により形成した請求項8に記載の細菌測定具。
【請求項10】
第3の薄膜の中心線部分には、破断孔を設けた請求項1から9のいずれか一つに記載の細菌測定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−30525(P2011−30525A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181407(P2009−181407)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】