説明

終末糖化産物吸着剤

【課題】本発明は熱帯果実に由来する成分を用いた終末糖化産物吸着剤を提供することを解決課題とする。
【解決手段】本発明は、アセロラ、マラクジャまたはマンゴーの果実の水不溶性成分を含有する、終末糖化産物吸着剤に関する。本発明はまた、アセロラ、マラクジャまたはマンゴーの果実のピューレから果汁を除去して得られた果汁除去残渣を水洗浄して得られる水不溶性残渣に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱帯果実に由来する成分を有効成分とする終末糖化産物の吸着剤に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
AGEs (advanced glycation end-products: 終末糖化産物)はグルコースなどの還元糖とタンパク質との非酵素的糖化反応の後期段階で生成する構造体の総称であり、加熱や調理などの過程で生じ、古くは食品化学の領域で味や風味に関わる現象として研究されてきた(非特許文献1)。
【0003】
しかし最近の研究により、飲食品由来AGEsが腸管から吸収され、一定期間残存すること(非特許文献2)、また生体内においてもAGEsが形成されることが明らかとなっており、さらにこれらAGEsが循環血液中や組織中で「glycotoxin」として作用し、糖尿病血管合併症の発症・進展(非特許文献3)、アルツハイマー病などの神経変性疾患(非特許文献4-6)や悪性腫瘍の増殖・転移・浸潤(非特許文献7)などに関与することが報告されている。
【0004】
生体内に存在するAGEs の中でも特にグリセルアルデヒド、グリコールアルデヒド、アセトアルデヒド由来の AGEs(toxic AGEs=TAGE)がRAGE(receptor for AGEs)を介して種々の疾病の発症・進展に強く関わっていることが解明され、TAGE-RAGE相互作用を抑えることが生活習慣病の予防・治療戦略上、重要な理論の一つであることが提唱されている(非特許文献8)。
【0005】
実際、高AGEs含有飲料を正常ラットへ投与することにより、TAGE-RAGEシステムの相互作用等が増強されることが示唆されており、また保存期腎不全患者へのウレミックトキシン吸着除去剤クレメジンの投与により、血中TAGE 量の低下とRAGE 遺伝子の発現が抑制されることが明らかとなっている(非特許文献9-11)。すなわち、食事性AGEsの摂取制限や吸着除去と言う概念が、生活習慣病の予防を考える上で、重要な理論の一つであることを裏付けていると考えられる。
【0006】
特許文献1には親水性メタクリレート含有共重合体樹脂が終末糖化産物吸着剤として開示されている。しかしながらこの樹脂は食用には適さないという問題があった。
【0007】
一方、アセロラ、マラクジャまたはマンゴーなどの熱帯果実から果汁を搾汁する際に生じる搾汁残渣は十分に利用されていない。搾汁残渣の有効利用が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開 WO 2007/037554
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】加藤 博通, 倉田 忠男. 非酵素的褐変現象の化学, (1995) 食品変色の化学. (株)光琳, 東京, 291-383
【非特許文献2】Koschinsky T, He CJ, Mitsuhashi T, et al: Orally absorbed reactive glycation products (glycotoxins): an environmental risk factor in diabetic nephropathy. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94, 6474-6479
【非特許文献3】Vlassara H, Bucala R, Striker L: Pathogenic effects of advanced glycosylation: biochemical, biologic, and clinicalimplications for diabetes and aging. (1994) Lab. Invest. 70, 138-151
【非特許文献4】Sasaki N, Toki S, Choei H, Saito T, Nakano N, Hayashi Y, Takeuchi M, and Makita Z. (2001) Brain. Res. Res. 888, 256-262
【非特許文献5】Sasaki N, Takeuchi M, Choei H, Kikuchi S, Hayashi Y, Nakano N, Ikeda H, Yamagishi S, Kitamoto T, Saito T, and Makita Z. (2002) Neurosci. Lett. 326, 117-120
【非特許文献6】Kikuchi S, Shinpo K, Ogata A, Tsuji S, Takeuchi M, Makita Z, and Tashiro K. (2002) Camyotroph. Lateral Scler. Other Motor Neuron Disord. 3, 63-68
【非特許文献7】Abe R, Shimizu T, Sugawara H, Watanabe H, Nakamura H, Choei H, Sasaki N, Yamagishi S, Takeuchi M, and Shimizu H. J. Invest. Dermatol. (2004) 122, 461-467
【非特許文献8】Takeuchi M, and Yamagishi S. (2004) Med. Hypotheses. 63, 449-452
【非特許文献9】Sato T, Wu X, Shimogaito N, Takino J, Yamagishi S, Takeuchi M. (2009) Eur. J. Nutr. 48, 6-11
【非特許文献10】佐藤 隆, 呉 雪剛, 下垣内 徳子, 竹内 正義. (2007) 日本薬学会年会要旨集, 127, 29P2-pm112, 234
【非特許文献11】竹内 正義, 佐藤 隆, 滝野 純一, 下垣内 徳子, 呉 雪剛, 小林 由佳, 古野 理美,上田 誠二, 山岸 昌一. (2007) 日本薬学会年会要旨集, 127, 29P2-pm115, 234
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は熱帯果実に由来する成分を用いた終末糖化産物吸着剤を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために熱帯果実の水不溶性成分の終末糖化産物の吸着剤としての活性を検討した。その結果、驚くべきことに、アセロラ、マラクジャまたはマンゴーの果実の水不溶性成分が終末糖化産物を吸着する能力が高いことを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の発明を包含する。
(1) アセロラ、マラクジャ又はマンゴーの果実の水不溶性成分を含有する、終末糖化産物吸着剤。
(2) 前記水不溶性成分が、前記果実のピューレから果汁を除去して得られた果汁除去残渣を水洗浄して得られる水不溶性残渣の形態で含有される、(1)の終末糖化産物吸着剤。
(3) アセロラ、マラクジャまたはマンゴーの果実のピューレから果汁を除去して得られた果汁除去残渣を水洗浄して得られる水不溶性残渣。
(4) (3)の水不溶性残渣と、食品として許容される成分とを組み合わせる工程を含む、前記水不溶性残渣を含有する食品組成物の製造方法。
(5) (3)の水不溶性残渣と、製剤化のための成分とを組み合わせる工程を含む、前記水不溶性残渣を含有する製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明より、熱帯果実に由来する成分を含む終末糖化産物吸着剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、アセロラの水不溶性残渣のAGE-1吸着率を示す図である。
【図2】図2は、マラクジャの水不溶性残渣のAGE-1吸着率を示す図である。
【図3】図3は、マンゴーの水不溶性残渣のAGE-1吸着率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
終末糖化産物(AGEs)
本発明の吸着剤により吸着される終末糖化産物(以下、「AGEs」または「AGE」という場合がある)は、グルコースなどの還元糖とタンパク質との非酵素的糖化反応の後期段階で生成する構造体であれば特に限定されない。AGEsとしてはグルコース由来のAGE-1、グリセルアルデヒド由来のAGE-2、グリコールアルデヒド由来のAGE-3、メチルグリオキサール由来のAGE-4、グリオキサール由来のAGE-5、3-デオキシグルコソン由来のAGE-6が挙げられる(竹内、北陸大学紀要、第28号、2004、pp.38-48)。他のAGEsとしては、ペントシジン、クロストリン、X1(フルオロリンク)、ピロピリジン、ピラリン、カルボキシメチルリジン、イミダゾロン化合物、カルボキシエチルリジン、メチルグリオキサールダイマー、グリオキサールダイマー、イミダゾリジン、アルグピリミジン等が挙げられる。吸着されるAGEsは飲食品の調理や保存中に生成するものであってもよいし、生体内で生成するものであってもよい。
【0015】
有効成分
アセロラ(学名:Malpighia emarginata DC.)はミカン目キントラノオ科ヒイラギトラノオ属に属する。
マラクジャ(学名:Passiflora edulis Sims)はスミレ目トケイソウ科トケイソウ属に属する。
マンゴー(学名:Mangifera indica Linn.)はムクロジ目ウルシ科マンゴー属に属する。
アセロラ、マラクジャ及びマンゴーの生産地や品種は特に限定されない。
【0016】
本発明において「アセロラ、マラクジャ又はマンゴーの果実の水不溶性成分」とは、好ましくは、これらの果実の可食部を主体とする部分に由来する水不溶性成分を指す。可食部とは果肉を主体とする部分である。
【0017】
果実の水不溶性成分の主成分は食物繊維である。食物繊維はセルロース、水不溶性のペクチン等の水不溶性物質により構成される。
【0018】
前記果実から濃縮又は実質的に単離された水不溶性成分を終末糖化産物吸着剤の有効成分として用いることができる。「濃縮又は実質的に単離された水不溶性成分」とは、乾燥質量基準で全量に対して水不溶性成分を好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上含有する組成物を指す。このような組成物としては、前記果実のピューレから果汁を除去して得られた果汁除去残渣、ならびに、果汁除去残渣を水洗浄して、果汁除去残渣中の水可溶性成分を除去することにより得られる水不溶性残渣が挙げられる。
【0019】
「果実のピューレ」とは果実を破砕し、種子、核、皮、ヘタ等の粗大部分を除去し、裏ごしした半液体状物を指す。ピューレは、果実の破砕物をパルパー・フィニッシャーにより処理して得ることができる。ピューレは調製後、適宜加熱殺菌処理される。果実はピューレ調製のための前処理として加熱処理されてもよい。
【0020】
果実のピューレから果汁を除去して果汁除去残渣を得る手順は特に限定されない。好ましくは、果実のピューレを遠心分離処理して、沈殿物を果汁除去残渣として得る。
【0021】
果汁除去残渣を水洗浄して不溶性残渣を得る手順は特に限定されない。好ましくは、果汁除去残渣を十分量の水中に分散させ、遠心分離処理により沈殿させる操作を複数回行うことにより、水洗浄された不溶性残渣を得ることができる。
【0022】
用途
本発明の終末糖化産物吸着剤は、in vivo 及びin vitroにおけるAGEs吸着剤として用いることができる。本発明の終末糖化産物吸着剤は果実由来であるため経口摂取に適している。
【0023】
本発明の終末糖化産物吸着剤は、常法により、必要に応じて食品として許容される成分または製剤化のための成分と組み合わされ、食品組成物または製剤に調製され得る。本発明の終末糖化産物吸着剤を含む食品組成物又は製剤は、糖尿病合併症、アテローム性動脈硬化、アルツハイマー病、慢性関節リウマチ等のAGEsが関与する疾患を治療又は予防する作用を有する食品組成物、医薬部外品、又は医薬品として有用である。
【0024】
食品組成物としては、飲料、固形食品、半固形食品等が挙げられる。飲料としては、具体的には、果汁飲料、清涼飲料、アルコール飲料等が挙げられる。また、摂取時に水等を用いて希釈して摂取される形態であってもよい。固形食品としては、例えば、飴、トローチ等を含む錠剤(タブレット)や糖衣錠の形態、顆粒の形態、粉末の形態、ビスケット等のブロック菓子類の形態、カプセル、ゼリー等の形態等、種々の形態の食品が挙げられる。半固形食品としては、例えばジャムのようなペーストの形態、チューイングガムのようなガムの形態が挙げられる。
【0025】
食品組成物中における本発明の終末糖化産物吸着剤の含有量は、食品の種類および該食品に含有される他の成分の種類や量、形態等に応じて適宜選択され得るが、通常、食品全量に対して果実の水不溶性成分の乾燥物換算で0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%である。食品には、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で、通常、食品として許容される種々の成分を配合することができる。食品として許容される成分としては例えば水、アルコール類、糖類、甘味料、酸味料、着色料、保存剤、香料、賦形剤、安定化剤、pH調整剤、各種ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、可溶化剤、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、湿潤剤、皮膜形成物質、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤、流動性促進剤等が挙げられる。これらの成分は慣用されているものから適宜選択される。これらの成分は単独で、または組み合わされて使用され得る。
【0026】
本発明の終末糖化産物吸着剤及び食品組成物は食品添加物として用いることができる。本発明の終末糖化産物吸着剤を調理前の食品に配合することにより、食品の調理において生成するAGEsを吸着することが可能である。また、調理後の食品に配合することにより、食品中に含まれるAGEs及び生体内において生成するAGEsを吸着することが可能である。
【0027】
本発明の終末糖化産物吸着剤を含有する製剤としては、例えば、経口投与用製剤または非経口投与用製剤が挙げられる。経口投与用製剤としては例えば散剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、液剤、カプセル剤、丸剤、トローチ、内用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等の形態とすることができる。非経口投与用製剤としては例えば経鼻、経腸、経皮投与用製剤が挙げられ、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤、軟膏剤等の形態とすることができる。またこれらの製剤形態が症状に応じて単独で、または組み合わされて使用され得る。
【0028】
各種形態への調製は、常法により行われる。その際使用される、製剤化のための成分としては担体、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、矯臭剤、希釈剤、安定化剤、pH調整剤、糖類、甘味料、香料、各種ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、可溶化剤、結合剤、懸濁剤、湿潤剤、皮膜形成物質、着色料、保存剤、界面活性剤、流動性促進剤等が挙げられる。これらの成分は慣用されているものから適宜選択される。これらの成分は単独で、または組み合わされて使用され得る。
【0029】
以上のように本発明の終末糖化産物吸着剤は種々の形態に調製され得るものである。
本発明の終末糖化産物吸着剤は更に、血液透析カラム、AGEs単離精製用カラム、食品脱AGEsカラム、食品脱色カラム、化粧品等として利用することができる。
【実施例】
【0030】
<水不溶性残渣の回収>
1. アセロラ、マラクジャ、マンゴーのピューレ(株式会社ニチレイフーズ)を約100g秤取し、10,000rpm(約10,000×g)で10分遠心後、上清を除去した。
2. 得られた沈殿物の重量を測定し、重量に対して10倍量以上の水を添加し、室温で1時間転倒混和した。
3. 6,000rpm(約6,000×g)で10分遠心後、上清を除去した。
4. 得られた沈殿物の重量を測定し、重量に対して約10倍量の水を添加し、室温で1時間転倒混和した。
5. 6,000rpm(約6,000×g)で10分遠心後、上清を除去した。
6. 得られた沈殿物の重量を測定し、重量に対して約10倍量の水を添加し、室温で1時間転倒混和した。
7. 6,000rpm(約6,000×g)で10分遠心後、上清を除去した。
8. 得られた沈殿物を凍結乾燥した。
【0031】
<AGE1-BSAの作製>
Takeuchi らの方法(Mol med. 1999 Jun;5(6):393-405)を参考にして以下の手順によりAGE1-BSAを作製した。
1. 無菌下において、5 mM DTPAを含む0.2 Mリン酸緩衝液(pH7.4)中で、BSA (ウシ血清アルブミン)(SIGMA)25mg/mlを0.5 M グルコース(和光純薬工業株式会社)の存在下で、37℃にて8週間インキュベートした。
2. インキュベート後のAGE1-BSA含有生成物から、PBSを用いたPD-10カラム(GEヘルスケアジャパン株式会社)クロマトグラフィーと透析により、低分子反応物と未反応のグルコースを除き、これをAGE1-BSAとした。
3. 作製したAGE1-BSA試料はLowry法によりタンパク質の定量を行い、適宜、濃度を調整して吸着試験と定量用標準液の作製に用いた。
【0032】
<AGE1-BSA吸着試験>
1. 水不溶性残渣の濃度が5、10、15、20 mg/mlとなるよう、タンパク質量換算で400μg/mlのAGE1-BSA試料を加えたもの(水不溶性残渣・AGE)、AGE1-BSA試料の代わりに50mMリン酸バッファー(pH 7.4)を加えたもの(Control(-))、水不溶性残渣を添加しないタンパク質量換算で400μg/mlのAGE1-BSA試料(Control(+))を、それぞれの果実について用意した。
比較のために、キチン(和光純薬工業株式会社)の濃度が5、10mg/mlとなるよう、タンパク質量換算で400μg/mlのAGE1-BSA試料を加えたものも用意し、同様に以下の処理を行った。キチンはAGE-1吸着能を有することが確認されている(古野理美、河上美穂子、廣正 瑛、藤村浩司、鈴木翔輝、竹内正義. (2008)日本薬学年会要旨集, 128, 28PW-am243, 197)。
2. 各吸着試験液を37℃で3時間転倒混和した。
3. 混和後の吸着試験液を10,000rpm(約10,000×g)で10分遠心後、液層を回収し、さらにその液層を15,000rpm(約16,000×g)で10分遠心後、液層を回収してAGE1-BSAの定量に用いた。
【0033】
<AGE1-BSAの定量と吸着率の算出>
前記操作によって得られたAGE1-BSA吸着試験サンプルは競合ELISAによってAGE1-BSA量を求め、これによりAGE1-BSA吸着率を算出した。具体的には、以下の通りである。
1. タンパク質量換算で1.3 μg/mLのAGE1-BSA 100μLをELISA用96穴プレートに4℃で一晩吸着させ固相化した。
ただし、ブランク箇所にはAGE1-BSA試料は添加しない。
2. 0.05 % Tween20含有PBS(洗浄液)で3回洗浄した後に、PBSに溶解した1%BSA 200μLを添加し、室温で1時間インキュベートし、ブロッキングした。
3. 洗浄液で3回洗浄した後、適宜、0.1 %グリセロール、0.05 %アジ化ナトリウム及び0.1% Tween20を含む50 mMトリス塩酸希釈緩衝液(pH 7.4、希釈用緩衝液)で希釈したAGE1-BSA吸着試験サンプル(50 μL)と、希釈用緩衝液に0.1 %BSAを添加した抗体希釈液にて1:1000で希釈した抗体(Anti AGE-1 monoclonal antibody: TransGenic社、50 μL)を各穴に添加し、30℃、振とう条件下で2時間インキュベートした。また、AGE1-BSA吸着試験サンプルの代わりにタンパク質量換算で既知の濃度区(AGE1-BSA無添加区を含む)のAGE1-BSA標準液を添加し同様に操作した。
【0034】
4. 洗浄液で3回洗浄した後、希釈用緩衝液で希釈したAP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Santa Cruz Biotechnology)溶液 100μLを添加し、37℃、1時間インキュベートした。
5. 洗浄液で3回洗浄した後、AP基質溶液 100μLを添加し、37℃でインキュベートした。マイクロプレートリーダーにて405nmでの吸光度測定を行い、AGE1-BSA標準液のAGE1-BSA無添加区の吸光度が1.0となった時点でインキュベートを終了して、各サンプルの吸光度を読み取った。
6. AGE1-BSA標準液の吸光度から標準曲線を作成し、これに基づいてAGE1-BSA量を換算した。
7. 算出されたAGE1-BSA量を用いて、以下の算出式によりAGE1-BSA吸着率を求めた。
〔Control(+)−(水不溶性残渣・AGE−Control(-))〕/ Control(+)×100
(式中、Control(+)、水不溶性残渣・AGE、Control(-)はそれぞれ各サンプルについて算出されたAGE1-BSA量を示す)
【0035】
<結果>
アセロラ、マラクジャ、マンゴーの水不溶性残渣のAGE-1吸着率の測定結果(横軸は水不溶性残渣添加量、縦軸はAGE-1吸着率)をそれぞれ図1、図2、図3に示す。
キチンのAGE-1吸着率は、5 mg/ml添加時に16.3%、10 mg/ml添加時に45.2%であった。
【0036】
アセロラ、マラクジャ、マンゴーの水不溶性残渣はいずれもキチンと同等またはそれ以上のAGE-1吸着性能を有していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセロラ、マラクジャ又はマンゴーの果実の水不溶性成分を含有する、終末糖化産物吸着剤。
【請求項2】
前記水不溶性成分が、前記果実のピューレから果汁を除去して得られた果汁除去残渣を水洗浄して得られる水不溶性残渣の形態で含有される、請求項1の終末糖化産物吸着剤。
【請求項3】
アセロラ、マラクジャまたはマンゴーの果実のピューレから果汁を除去して得られた果汁除去残渣を水洗浄して得られる水不溶性残渣。
【請求項4】
請求項3の水不溶性残渣と、食品として許容される成分とを組み合わせる工程を含む、前記水不溶性残渣を含有する食品組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項3の水不溶性残渣と、製剤化のための成分とを組み合わせる工程を含む、前記水不溶性残渣を含有する製剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31069(P2012−31069A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169529(P2010−169529)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 電気通信回線にて発表 電気通信回線掲載日:2010年2月1日 掲載アドレス:http://nenkai.pharm.or.jp/130/pc/ipdfview.asp?i=432 公開のタイトル:社団法人日本薬学会 第130年会(岡山)要旨集「各種食品におけるAGEs含有量の測定及び食事性AGEs吸着活性の比較検討
【出願人】(505126610)株式会社ニチレイフーズ (71)
【Fターム(参考)】