説明

組み合わせ化粧料の製法およびそれによって得られる組み合わせ化粧料

【課題】透明もしくは半透明の第1の化粧料と、比較的軟らかい粒状の第2の化粧料とが、互いに混じり合うことなく一容器中に充填されて視覚的にも興趣に富む組み合わせ化粧料の製法と、それによって得られる組み合わせ化粧料を提供する。
【解決手段】透明もしくは半透明の、流動性を有するリップグロス2が充填された化粧皿1を準備し、液化されたリップカラー3(3a、3b)を、上記化粧皿1内のリップグロス2に向かって、その上方から滴下することにより略粒状に落とし入れて立体模様を形成する。その際、上記リップグロス2の30℃における硬度を0.5〜8.0Nとし、上記略粒状体となるリップカラー3の硬度を0.05〜25.0Nとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、興趣に富む立体模様が形成された組み合わせ化粧料を製造する方法と、それによって得られる組み合わせ化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リップカラーやアイカラー、ファンデーション等のメイクアップ化粧料として、粉状固形物である顔料等と、パラフィンやワックス等の基剤とを混練した油性固形化粧料が用いられており、このものは、コンパクト容器の化粧皿に充填された形態や、棒状に成形され繰り出し容器内に装着された形態等、さまざまな形態で市販されている。
【0003】
そして、上記メイクアップ化粧料には、豊富な色のバリエーションが用意されており、顧客が、その時々の化粧のイメージに合わせてメイクアップを行うことができるように、例えば一つの化粧皿の中に、何ら仕切りを介することなく直接、色の異なる複数の化粧料を充填した多色固形化粧料が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、リップグロスや乳液、ジェルのように流動性を有する化粧料の場合は、色の異なるものを、単一容器内に互いに混じり合うことなく充填することは容易でないため、化粧料の物性や充填方法を工夫したものがいくつか提案されているにすぎない。
【0005】
例えば、特許文献2には、化粧料同士の混合を防止するために、一定のチキソトロピー性を有する化粧料を複数用い、その各化粧料に特定の色調を付与して充填するようにした多色状化粧料が提案されており、特許文献3には、透明ゲル化剤を容器内に充填する際に、同時に色材を充填して色材によって立体模様を形成する方法が提案されている。また、特許文献4には、水溶性高分子からなる透明ゲル化剤の内側に、圧縮成形されたらせん状の顆粒を配置した立体模様入り化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−201809号公報
【特許文献2】特開2002−255740号公報
【特許文献3】特許第2836744号公報
【特許文献4】特開2006−206450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の多色状化粧料は、異なる色調の化粧料を単一容器内に混在させるため、色の異なる化粧料ごとに、そのチキソトロピーを調整しなければならず、多大な手間を要するという問題や、それぞれが流動性ある液体であるため、容器内で撹拌すると混じり合って見栄えが悪くなりやすいという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献3の方法も、用いる透明ゲル化剤と色材がともに流動性を有しているため、液の移動によって模様が崩れて混じり合いやすいという問題がある。しかも、色材を充填ノズルによって線状に押し出すため、充填ノズルの先端が、先に充填された透明ゲル化剤の液面から離れると、色材の模様が乱れて意図するような図形を描くことができないという問題がある。そして、上記特許文献4の立体模様入り化粧料は、立体模様を構成するらせん状の顆粒が、化粧料の液中で崩壊しにくいよう強固に圧縮成形されているため、通常のメイクアップ化粧料のように化粧筆で崩しながら使用する用途には向かないという問題がある。
【0009】
一方、本願出願人は、予め粒状に成形された固形化粧料を、透明もしくは半透明の液状化粧料に分散含有させることにより、視覚的に興趣に富む組み合わせ化粧料を得る方法を開発し、すでに出願している(特開2009−274975公報参照)。
【0010】
上記組み合わせ化粧料は、美麗な外観を有し、その外観が長期にわたって持続するという利点を有するが、実際に使用してみると、粒状の固形化粧料が、成形後一旦空気中に取り出されたものであることから、これを化粧筆等で潰しながら肌や唇に塗布する作業がしにくいことが判明した。そこで、上記粒状の固形化粧料を潰しやすくしてより使い勝手をよくする技術の開発が強く求められている。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、容器に充填された透明もしくは半透明の第1の化粧料中に、略粒状の第2の化粧料による立体模様が形成されて視覚的に興趣に富み、しかも使い勝手のよい組み合わせ化粧料の製法と、それによって得られる組み合わせ化粧料の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、流動性を有し透明もしくは半透明の第1の化粧料を充填してなる深さ3〜30mmの有底筒状容器を準備する工程と、液化された第2の化粧料を、上記容器内の第1の化粧料に向かって、その上方から滴下することにより略粒状に落とし入れ、上記第1の化粧料中に上記略粒状体を配置させて立体模様を形成する工程とを備え、上記第1の化粧料の30℃における硬度が0.5〜8.0N、上記第2の化粧料の30℃における硬度が0.05〜25.0Nである組み合わせ化粧料の製法を第1の要旨とする。
【0013】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記略粒状体を、上記第1の化粧料中の中間部ないし深い位置に配置させるには、上記第1の化粧料の比重D1 を1として、上記略粒状体となる第2の化粧料の比重D2 が0.98以上1.2以下となるよう調整し、上記略粒状体を、上記第1の化粧料中の中間部より上の浅い位置に配置させるには、同じく上記D1 を1として、上記D2 が0.9以上0.98未満となるよう調整することにより、上記第1の化粧料中における上記略粒状体の配置を所望の深さに位置決めするようにした組み合わせ化粧料の製法を第2の要旨とする。
【0014】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記第2の化粧料によって得られる略粒状体が、粒径1〜10mmの略球状体および粒径2〜10mmの上下方向に扁平な略円板状体の少なくとも一方である組み合わせ化粧料の製法を第3の要旨とする。
【0015】
そして、本発明は、上記第1の要旨である製法によって得られる組み合わせ化粧料であって、深さ3〜30mmの有底筒状の容器内に、透明もしくは半透明の、30℃における硬度が0.5〜8.0Nである第1の化粧料が充填され、その中に、略粒状に賦形された、30℃における硬度が0.05〜25.0Nの第2の化粧料が配置されて立体模様を形成している組み合わせ化粧料を第4の要旨とする。
【0016】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記略粒状体が、粒径1〜10mmの略球状体および粒径2〜10mmの上下方向に扁平な略円板状体の少なくとも一方である組み合わせ化粧料を第5の要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
すなわち、本発明は、透明もしくは半透明の第1の化粧料として、30℃における硬度が特定の範囲内である特殊な物性の第1の化粧料を用いるとともに、上記第1の化粧料中に略粒状で配置させる第2の化粧料として、30℃における硬度が特定の範囲内である特殊な物性の第2化粧料を用いるようにしたものである。この組み合わせによれば、上記第1の化粧料中に、直接、液化された第2の化粧料を上方から滴下し、その表面張力によって略粒状にして落とし入れることにより、上記第1の化粧料中に、上記第2の化粧料からなる略粒状体を配置させて立体模様を形成することができる。したがって、上記第2の化粧料からなる略粒状体を剥き出しで取り扱う必要がなく、潰しやすい状態のまま第1の化粧料中に配置させることができる。そして、上記第1の化粧料中の略粒状体を潰したり第1の化粧料と混ぜ合わせたりした後、これを取り出して肌や唇に塗布する作業がしやすく、使い勝手のよいものとなる。
【0018】
しかも、本発明の製法によれば、上記立体模様を、第1の化粧料の内部にノズルを差し込むことなく、その上方から、液化した第2の化粧料を滴下するだけで形成することができるため、模様形成後にその配置がずれたり液化した第2の化粧料の略粒状体が変形したりすることがなく、思い通りの立体模様をそのまま実現することができるという利点を有する。
【0019】
なお、本発明において、「硬度」とは、試料を、内容積が幅23mm×奥行き23mm×深さ4mmの浅皿状容器に充填して充分に固化させ、その表面を、レオメータ(サン科学社製、COMPAC−100II)の円柱状押圧治具(直径10mm)で下向きに押圧して試料を塑性変形させるのに要した力を測定し、その10回測定後の平均値をいう。
【0020】
そして、本発明の製法のなかでも、特に、上記略粒状体を、上記第1の化粧料中の中間部ないし深い位置に配置させるには、上記第1の化粧料の比重D1 を1として、上記略粒状体となる第2の化粧料の比重D2 が0.98以上1.2以下となるよう調整し、上記略粒状体を、上記第1の化粧料中の中間部より上の浅い位置に配置させるには、同じく上記D1 を1として、上記D2 が0.9以上0.98未満となるよう調整することにより、上記第1の化粧料中における上記略粒状体の配置を所望の深さに位置決めするようにしたものは、第1化粧料内での略粒状体の配置(すなわち表面からの深さ)を所望の深さに設定することができるため、上記第2の化粧料からなる略粒状体を、上記第1の化粧料の表面のごく近傍の浅い位置や中間部に浮かせたり、底部側に深く沈めたりすることができ、変化に富んだ奥行きのある立体模様を形成させることができる。そして、その状態は、上記浅皿状容器の上面開口から、第1の化粧料を透かしてみることができるため、化粧の都度、その模様を楽しむことができる。
【0021】
また、本発明の製法のなかでも、特に、上記第2の化粧料によって得られる略粒状体が、粒径1〜10mmの略球状体および粒径2〜10mmの上下方向に扁平な略円板状体の少なくとも一方である場合は、得られる組み合わせ化粧料の見栄えと使い勝手がとりわけ優れたものとなる。
【0022】
そして、本発明の製法によって得られる組み合わせ化粧料は、透明もしくは半透明の第1の化粧料を透かして、その内側に、第2の化粧料からなる略粒状体の立体模様が見えるため、非常に興趣に富むものとなる。しかも、上記第2の化粧料からなる略粒状体が第1の化粧料中で潰れやすいため、化粧筆等で容易に潰したり第1の化粧料と混ぜ合わしたりして、簡単に肌や唇に塗布することができ、使い勝手がよいという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例を示す外観斜視図である。
【図2】図1のA−A′断面図である。
【図3】上記実施例における製法の説明図である。
【図4】第2の化粧料からなる略粒状体の配置の説明図である。
【図5】(a)、(b)は、ともに本発明の他の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明を、リップカラーに適用した一実施の形態の外観斜視図を示している。すなわち、この組み合わせ化粧料は、浅皿状容器である金属製の化粧皿1内に、第1の化粧料として、ごく淡いピンクに着色された透明の、わずかに流動性を有するリップグロス2が充填されている。そして、上記リップグロス2の内側に、図1のA−A′断面図である図2に示すように、略球状のリップカラー(直径1.6mm)3が15個、リップグロス2の深さ方向の中央よりやや上の位置に浮かんだ状態で、列状に配列されており、その点在するリップカラー3によって構成される立体模様が、リップグロス2を透かして上から見えるようになっている。
【0026】
なお、上記15個のリップカラー3のうち、上からみて横一列に並ぶ7個のリップカラー3aは濃いピンク色に着色されており、相対する2つの角部近傍においてそれぞれ円弧状に並ぶ各4個、計8個のリップカラー3bは黄色に着色されている。したがって、上記リップカラー3からなる立体模様が、濃いピンク色と黄色の2色の色模様となって、より華やかな印象が得られるようになっている。
【0027】
この組み合わせ化粧料は、上記化粧皿1ごと、いわゆるコンパクト容器等のケースに収容され、化粧に供せられるのであり、化粧の際には、化粧筆の先で上記リップカラー3を潰してリップグロス2と混ぜながら唇に塗布するようになっている。したがって、この組み合わせ化粧料によれば、化粧する人の肌の色や他のメイクアップ化粧料との色のバランスや着るものの雰囲気等に合わせて、上記2種類の色のリップカラー3a、3bの一方をを選択することができ、またリップグロス2とリップカラー3との混ぜる割合を変えることができるため、その都度、そのときの雰囲気に合った化粧を楽しむことができる。
【0028】
そして、上記リップカラー3は、化粧皿1内において、その表面がリップグロス2に守られた状態で提供されるため、略球状に成形されているにもかかわらず、全体が軟らかくてしっとりしており、リップグロス2と容易に混ざり、唇に塗布したときも、スムーズに薄く塗り延ばすことができる。
【0029】
上記組み合わせ化粧料は、例えばつぎのようにして得ることができる。すなわち、まず、リップカラー3の材料として、流動パラフィン、ワセリン、ワックス等の基剤と、着色顔料、パール顔料等の粉体成分とを充分に混練して固形化粧料を調製する。なお、濃いピンク色のリップカラー3aとなる組成のものと、黄色のリップカラー3bとなる組成のものの2種類を準備する。
【0030】
また、リップグロス2の材料として、流動パラフィン、ワセリン等の基剤と、着色料、香料等を充分に混練して透明で高粘度のリップグロス材2′を調整し、加熱してその流動性を高めた状態で、化粧皿1に充填する。
【0031】
そして、上記濃いピンク色のリップカラー3aの材料である固形化粧料を、上記固形化粧料の融点(固形化粧料が溶け出してその形状を保てなくなる温度であって、顔料粉末等の成分が全て溶融する必要はない。例えば65℃)より高い温度に加熱して液状にした状態で供給タンクに供給し、図3に示すように、供給タンクの底部に設けられた滴下ノズル10を、上記リップグロス材2′が充填された化粧皿1の上に位置決めし、上記液状のリップカラー用化粧料(以下「化粧料液」という)3a′を所定間隔で一滴ずつ滴下する。このとき、化粧皿1の位置を水平方向に少しずつずらして、目的とする位置に上記化粧料液3a′を落とし入れるようにする。もちろん、化粧皿1の位置を固定し、滴下ノズル10の位置を水平方向に少しずつずらしながら化粧料液3a′を滴下するようにしてもよい。
【0032】
上記滴下ノズル10から落下する化粧料液3a′は、空中で、それ自身の表面張力によって球形の形となり、上記化粧皿1内のリップグロス材2′中に触れた後は、リップグロス材2′との界面張力によって、その球形を維持したまま、リップグロス材2′の内側に浮かんだ状態でとどまる。したがって、化粧皿1の位置と滴下ノズル10の位置を相対的にずらしながら、上記滴下を繰り返すことにより、目的とする配列で、リップグロス材2′中に、図1に示すような形態で、球状の化粧料液3a′を並べることができる。
【0033】
また、同様にして、前記黄色のリップカラー3bの材料である固形化粧料を液化し、上記濃いピンク色のリップカラー3aの場合と同様にして、上記化粧皿1内のリップグロス材2′内に滴下することにより、目的とする配置で、図1に示すような形成で、球状の化粧料液3b′を並べることができる(図示を省略)。
【0034】
そして、全体を常温まで放冷すると、リップグロス材2′の流動性が低減されてリップグロス2となり、液状であった化粧料液3a′、3b′が固形化して球形のリップカラー3(3a、3b)となる。なお、上記固形化を迅速に行う場合は、積極的に冷却して、その固形化を確実に行うことができる。ただし、「固形化」の程度は、全体が完全な固体となる必要はなく、上記リップカラー3の球形が保たれる程度に全体の流動性が低減されていればよい。
【0035】
このようにして得られた組み合わせ化粧料は、透明なリップグロス2中に、濃いピンク色と黄色のカラフルな粒状のリップカラー3が所定の配列で並んだ状態で化粧皿1の内側に浮いているため、これを、上から見ると、これらが奥行きのある立体模様として強い印象を与えることができる。しかも、リップカラー3が、滴下ノズル10の先端を、リップグロス2内に差し込むことなく、上からの滴下によって落とし入れられているため、リップカラー3の配置に乱れがなく、全体として非常に端正で美麗な立体模様となっている。
【0036】
そして、上記組み合わせ化粧料は、コンパクト容器等の本体凹部内に収容され、顧客の使用に供されるようになっており、上記リップカラー3が、リップグロス2中で成形され、空気に触れることなくそのままの状態で球形になっている。したがって、この組み合わせ化粧料を使用する際には、上記リップグロス2中でリップカラー3を潰したりリップグロス2と混ぜ合わせたりした後、これを取り出して肌や唇に塗布する作業がしやすく、使い勝手がよいという利点を有する。
【0037】
なお、上記の例では、コンパクト容器等に収容する金属製の化粧皿1を用いたが、本発明において、第1の化粧料(上記の例ではリップグロス2)を充填する容器としては、上記の例に限らず、各種の容器を用いることができる。ただし、その内部に形成される第2の化粧料(上記の例ではリップカラー3)からなる立体模様を、その上部開口から見ることができるものでなければならず、上面に開口を有していること、すなわち有底筒状であることが必要である。
【0038】
また、上記容器が深すぎると、その立体的な印象が弱くなり、また液化して落とし込む第2の化粧料の沈降に時間がかかったり、その深さのコントロールが容易でない。また、容器が浅すぎると、立体模様の形成が限られる。したがって、本発明で用いられる容器の深さは、通常、3〜30mmに設定される。
【0039】
また、上記容器は、不透明であっても透明であってもよく、その材質は、主としてプラスチックが用いられるが、金属やガラスであっても差し支えない。ただし、容器の側面方向からも、その内側の立体模様を見せようとすれば、側面部分も透明でなければならず、その場合は、プラスチックやガラスが用いられる。また、上記の例のような、コンパクト容器等に収容する化粧皿において、その側面方向からも内側の立体模様を見せるには、透明な化粧皿を用い、かつ、これを収容するコンパクト容器等の外側容器も透明にすれば、コンパクト容器外側から、内部の立体模様を透かしてみることができ、興趣に富むものとなる。
【0040】
さらに、本発明において、上記容器に充填する第1の化粧料としては、透明もしくは半透明で、第2の化粧料の材料を液化したもの(上記の例における化粧料液3a′、3b′)を滴下して落とし込む際に、その滴下された化粧料液を適宜の深さに配置させることができる程度に流動性を有していることが必要である。ただし、常温で一定の流動性を備えているものに限らず、常温では流動性がないか流動性が小さくても、加熱によって一定の流動性を発現するか流動性が増大するものであれば好適に用いることができる。なお、上記「半透明」とは、透明ではないが、その内側に配置される第2の化粧料による立体模様が透けて見える程度に透明であることをいう。そして、透けていれば、無色である必要はなく、何らかの色に着色されているものであっても差し支えない。
【0041】
そして、上記第1の化粧料は、30℃における硬度(前述の測定方法に従う、以下同じ)が、0.5〜8.0Nであることが必要である。すなわち、30℃における硬度が0.5N未満では、その中に第2の化粧料からなる略粒状体を安定的に保持することが困難となり、逆に、8.0Nを超えると、第1の化粧料が硬すぎて使い勝手が悪いものとなるからである。
【0042】
このような第1の化粧料としては、リップグロス2の他、各種メイクアップ化粧料のつや出しや仕上げに用いられる、透明もしくは半透明の油性化粧料を用いることができる。また、油性のものに限らず、親水性の乳化組成物等やゲル状組成物からなるものを用いることもできる。したがって、本発明において「化粧料」とは、一般に「化粧料」といわれているものに限定するものではなく、これに類するものを広く含めることができる。
【0043】
一方、加熱によって液化後、上記第1の化粧料中に落とし入れて略粒状(上記の例では球状)に成形させる第2の化粧料としては、加熱によって液化し、常温で、上記第1の化粧料中において一定の保形性を有する化粧料が用いられる。
【0044】
このような第2の化粧料としては、リップカラー3の他、アイカラー、フェイスカラー、ファンデーション等、各種のメイクアップ化粧料となる油性の固形粧料を用いることができる。また、第1の化粧料と同様、油性のものに限らず、親水性の乳化組成物等やゲル状組成物からなるものを用いることもできる。したがって、上記第1の化粧料の場合と同様、一般に「化粧料」といわれているものに限定するものではなく、これに類するものを広く含めることができる。
【0045】
ただし、これら第2の化粧料は、すでに述べたとおり、第1の化粧料中に配置された状態で、常温で球状等の一定の形状を保持していることが必要であり、その30℃における硬度(前述の測定方法に従う、以下同じ)が、0.05〜25.0Nであることが必要である。すなわち、30℃における硬度が0.05N未満では、容器が衝撃が受けたとき等に、その形状を保ちにくく、逆に25.0Nを超えると、硬すぎて、これを潰したり第1の化粧料と混ぜたりしながら化粧等を行う際の使い勝手が悪くなる。
【0046】
また、上記第2の化粧料による立体模様を、より立体的かつ美麗に見せるために、第2の化粧料の材料には、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のワックス類を含有させることが好適である。上記ワックス類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
なお、上記第2の化粧料を滴下して、第1の化粧料中において、どれくらいの深さに配置させるかについては、第1の化粧料の比重D1 と、第2の化粧料の比重D2 をコントロールすることによって、意図的に調整することができる。すなわち、上記第1の化粧料の比重D1 を1として、上記略粒状体となる第2の化粧料の比重D2 が0.98以上1.2以下となるよう調整することにより、上記略粒状体(第2の化粧料)を、上記第1の化粧料中の中間部ないし深い位置に配置させることができる。この状態を、図4において模式的にPで示す。また、同じく上記第1の化粧料の比重D1 を1として、上記略粒状体となる第2の化粧料の比重D2 を0.9以上0.98未満となるよう調整することにより、上記略粒状体(第2の化粧料)を、上記第1の化粧料中の中間部より上の浅い位置に配置させることができる。この状態を、図4において模式的にQで示す。
【0048】
ただし、上記比重D1 、D2 は、第1の化粧料、第2の化粧料を、実際に、容器内に充填する際の温度における比重を、その都度計測して求めるものとする。そして、上記比重差の調整は、各種化粧料の材料のうち、比重の大きいものと比重の小さいものの割合を適宜変えることによって行われる。
【0049】
上記第1の化粧料の比重D1 を1として、第2の化粧料の比重D2 が1.2を超えると、第1の化粧料の中で第2の化粧料が略粒状になろうとする界面張力エネルギーに比べて比重による重力エネルギーが大きくなりすぎて、第2の化粧料が第1の化粧料の底に層状に沈殿しようとする傾向が高くなり、好ましくない。また、上記第1の化粧料の比重D1 を1として、第2の化粧料の比重D2 が0.9より小さいと、第2の化粧料が、第1の化粧料の表面に載る形になってその内側に入らず、表面が凸凹になりやすい傾向がみられ、やはり好ましくない。
【0050】
そして、本発明において、上記第2の化粧料からなる略粒状体の形状は、上記の例のように球状である必要はないが、滴下時の表面張力によって、球状もしくはそれが多少変形した略球状、あるいは略円板状として得られることが多い。もちろん、第2の化粧料を滴下する時点や、第1の化粧料の中に落とし入れた時点で、振動や撹拌、衝撃等の何らかの力をかけることによって、上記略粒状体を、略楕円球状、略円柱状、略多角柱状等、各種の形状にすることも考えられる。
【0051】
なお、略粒状体が略円板状になる場合を、より詳しく説明すると、滴下される第2の化粧料が、第1の化粧料よりも比重が大きく、第1の化粧料中の底に沈んだ場合、略球状で滴下された略粒状体が、容器底面に沿って広がり、最終的に上下方向に扁平な略円板状になりやすい。この状態を、図4において模式的にRで示す。また、逆に、第2の化粧料が、第1の化粧料よりも比重が小さく、第1の化粧料中の上面に浮かんだ場合、第1の化粧料の表面張力を受けて広がり、最終的に上下方向に扁平な略円板形状になりやすい。この状態を、図4において模式的にSで示す。
【0052】
したがって、このような性質を利用して、立体模様のデザインを、意図的につくることができる。例えば、図5(a)に示すように、化粧皿1に充填された第1の化粧料の上から、第1の化粧料よりも比重の大きな、液化された第2の化粧料3Xを5滴、環状に滴下し、5個の略粒状体を略円板状に沈ませることによって、5枚の花びらを有する花のように見せることができる。また、図5(b)に示すように、化粧皿1に充填された第1の化粧料の上から、第1の化粧料と比重が同じぐらいの第2の化粧料3Yを複数滴、略環状に滴下して、第1の化粧料の中位の深さに浮かせ、さらにその上から、上記第2の化粧料3Yと色が異なり、比重が軽い第2の化粧料3Zを滴下して、化粧皿1の相対する角部に、略円板状に浮かせることによって、奥行きのある立体模様を得ることができる。
【0053】
これら第2の化粧料による略粒状体の大きさは、第1の化粧料の中に球状や略球状等(略楕円球状、略円柱状、略多角柱状を含む)の形状で配置させる場合、それによって得られる立体模様の見栄えの点から、その粒径が、1〜10mmであることが好適である。すなわち、略粒状体の粒径が1mmより小さいと、第1の化粧料中に形成される、上記略粒状体からなる立体模様が一目で視認しにくく、印象が弱いものとなる。また、これを潰して使用する際の使い勝手もよくない。逆に、上記略粒状体の粒径が10mmより大きいと、第1の化粧料、第2の化粧料の材質にもよるが、略粒状体が不揃いになりやすいため、好ましくない。
【0054】
また、上記第2の化粧料による略粒状体が、図5(a)、(b)において3Xや3Zで示すような、扁平な略円板状になる場合、その粒径は、2〜10mmであることが好適である。すなわち、略円板状体の粒径が2mmより小さいと、そのボリュームが小さすぎて、化粧に供する際に使い勝手か悪くなり、視覚的にも、もの足りないものとなる。逆に、上記略円板状体の粒径が10mmより大きいと、第1の化粧料、第2の化粧料の材質にもよるが、略円板状の形状が不揃いになりやすいため、好ましくない。
【0055】
なお、上記「粒径」とは、略粒状体の外形のうち、最も間隔の広い2点間の距離をいう。
【0056】
上記略粒状体の粒径の大小は、第2の化粧料を滴下する際に用いる滴下ノズル10(図3参照)の口径を調整することによって、コントロールすることができる。
【0057】
また、上記第2の化粧料を、ノズルを経由して滴下する際、そのノズル先端は、浅皿状容器に充填された第1の化粧料の表面に接することなく、その上方に位置決めされていなければならない。すなわち、滴下した第2の化粧料が、空中で、それ自身の表面張力で丸くなることが必要だからである。上記ノズル先端の、第1の化粧料表面からの高さ(図3においてHで示す)は、第1の化粧料、第2の化粧料の材質や、第2の化粧料の1滴、1滴のボリュームにもよるが、通常、2〜100mmに設定することが好適であり、より好ましくは5〜30mmである。
【0058】
なお、前記の例では、第2の化粧料として、濃いピンク色と黄色の2色のリップカラー3a、3bを用いたが、第2の化粧料3の色や形状、組成は、単一のものを用いても、2種以上の異なるものを組み合わせて用いてもよい。ただし、前記の例のように、色の異なるものを組み合わせて用いると、使用の都度、化粧筆等で潰して用いる第2の化粧料3の色を選択することにより、化粧の印象を変えることができ、好適である。視覚的にも、容器の上面開口から透かして見える中身がカラフルで、好ましい印象となる。
【0059】
ちなみに、第2の化粧料がリップカラー3等の油性の固形化粧料である場合、これと組み合わせる第1の化粧料としては、リップグロス2等のゲル状油性化粧料が好適である。また、第2の化粧料が水性の固形化粧料である場合には、オイルベースの乳液やオイルエッセンス等を用いることができる。
【実施例】
【0060】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
まず、下記の表1に示す組成の5種類の第1の化粧料a〜eと、下記の表2に示す組成の6種類の第2の化粧料(1)〜(6)とを作製した。なお、これらの硬度と比重とを、下記の表1、表2に併せて示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
〔実施例1〜12、比較例1〜18〕
そして、内容積が幅23mm×奥行き23mm×深さ4mmの金属製の化粧皿に、上記第1の化粧料a〜eのうちの一つを充填して満たし、その充填表面から15mmの高さから、充填ノズル(ノズル口径1.5mm)を経由して、第2の化粧料(1)〜(6)のうちの一つを液状にして滴下することにより、図1に準じた構成の組み合わせ化粧料を得た。
【0065】
第1の化粧料と第2の化粧料の組み合わせの種類については、後記の表3〜表7に示すとおりである。また、この組み合わせにおいて、第1の化粧料の比重を1とした場合の第2の化粧料の比重の値と、第1の化粧料中の第2の化粧料(略粒状体)の形と粒径、その大体の位置を、後記の表3〜表7に併せて示す。
【0066】
そして、得られた各組み合わせ化粧料を、専門モニター10名が化粧皿の上面から観察し、全体の印象、第2の化粧料からなる略粒状体の状態、実際に使用したときの使い勝手、の各項目について、下記のとおり評価し、最も人数の多い評価を、その評価とした。また、化粧皿に対し、前後および左右に約3cmのストロークで1分間に60往復の振動を与えた場合の略粒状体の安定性を目視によって観察し、後記のとおり評価した。これらの結果を、後記の表3〜表7に併せて示す。
【0067】
〔全体の印象〕
◎…非常に立体的で美しく、強い印象を受ける。
○…立体的で美しく、ふつうよりは強い印象を受ける。
△…ふつう。
×…よい印象を受けない。
【0068】
〔略粒状体の状態〕
◎…どの略粒状体も形状が揃っている。
○…どの略粒状体も大体形状が揃っている。
△…やや不揃いな印象を受ける。
×…不揃いであるか、形状が定まっていない。
【0069】
〔使い勝手〕
◎…非常に使い勝手がよい。
○…使い勝手がよい。
△…ふつう。
×…使い勝手が悪い。
【0070】
〔安定性〕
◎…全く変化なし。
○…概ね変化なし。
△…全体の半分より少ない数の略粒状体において、位置のずれや変形が生じる。
×…全体の半分以上の略粒状体において、位置のずれや変形が生じる。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
上記の結果から、第1の化粧料と第2の化粧料の各硬度が、本発明の範囲内にあるものは、概ね良好な評価が得られることがわかる。また、第1の化粧料と第2の化粧料の各硬度が本発明の範囲から外れるものは、良好な立体模様が得られないか、使い勝手が悪いか、安定性に欠けることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、第1の化粧料と第2の化粧料とが、互いに混じり合うことなく所定の容器中に充填され、上記第2の化粧料が、奥行きのある略粒状体の立体模様を形成している組み合わせ化粧料に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 化粧皿
2 リップグロス
3、3a、3b リップカラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有し透明もしくは半透明の第1の化粧料を充填してなる深さ3〜30mmの有底筒状容器を準備する工程と、液化された第2の化粧料を、上記容器内の第1の化粧料に向かって、その上方から滴下することにより略粒状に落とし入れ、上記第1の化粧料中に上記略粒状体を配置させて立体模様を形成する工程とを備え、上記第1の化粧料の30℃における硬度が0.5〜8.0N、上記第2の化粧料の30℃における硬度が0.05〜25.0Nであることを特徴とする組み合わせ化粧料の製法。
【請求項2】
上記略粒状体を、上記第1の化粧料中の中間部ないし深い位置に配置させるには、上記第1の化粧料の比重D1 を1として、上記略粒状体となる第2の化粧料の比重D2 が0.98以上1.2以下となるよう調整し、上記略粒状体を、上記第1の化粧料中の中間部より上の浅い位置に配置させるには、同じく上記D1 を1として、上記D2 が0.9以上0.98未満となるよう調整することにより、上記第1の化粧料中における上記略粒状体の配置を所望の深さに位置決めするようにした請求項1記載の組み合わせ化粧料の製法。
【請求項3】
上記第2の化粧料によって得られる略粒状体が、粒径1〜10mmの略球状体および粒径2〜10mmの上下方向に扁平な略円板状体の少なくとも一方である請求項1または2記載の組み合わせ化粧料の製法。
【請求項4】
請求項1記載の製法によって得られる組み合わせ化粧料であって、深さ3〜30mmの有底筒状の容器内に、透明もしくは半透明の、30℃における硬度が0.5〜8.0Nである第1の化粧料が充填され、その中に、略粒状に賦形された、30℃における硬度が0.05〜25.0Nの第2の化粧料が配置されて立体模様を形成していることを特徴とする組み合わせ化粧料。
【請求項5】
上記略粒状体が、粒径1〜10mmの略球状体および粒径2〜10mmの上下方向に扁平な略円板状体の少なくとも一方である請求項4記載の組み合わせ化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−148990(P2012−148990A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7420(P2011−7420)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】