説明

組み合わせ髄膜炎ワクチン

【課題】Hibおよび髄膜炎菌組み合わせワクチンを提供することである。これは、細菌性髄膜炎の予防において使用され得、髄膜炎の有力な原因に対して、経済的で、安全で、かつ好都合なワクチン接種を可能にすること。
【解決手段】細菌性髄膜炎の処置のための組み合わせワクチン、特に、1つの実施形態において、Haemophilus influenzae B型(Hib)ならびにNeisseria meningitidis(髄膜炎菌)B血清型およびC血清型(MenB、MenC)による感染から効果的に保護する、組み合わせワクチンなど。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、細菌性髄膜炎の処置のための組み合わせワクチンに関する。特に、組み合わせワクチンは、Haemophilus influenzae B型(Hib)ならびにNeisseria meningitidis(髄膜炎菌)B血清型およびC血清型(MenB、MenC)による感染から効果的に保護する。
【0002】
Hib、MenB、および/またはMenCでの感染により引き起こされる細菌性髄膜炎は、世界的な問題の一例である。これらの生物による感染は、幼児に永続する疾病および死をもたらし得る。しかし、近年、結合Hibワクチンが一般に利用可能となり、そしてHib感染の効果的な制御をもたらしている。同様のワクチンが、MenC感染およびさらにMenB感染についてまもなく利用可能になる(Costantinoら、1992 Vaccine, 10, 691-698を参照のこと)。
【0003】
Hibおよび髄膜炎菌ワクチンは、問題となる細菌に特異的なエピトープを規定する細菌表面由来のオリゴサッカライド間の結合物を基部とし、ジフテリア毒素の非毒性変異体(例えば、CRM197)のようなキャリアータンパク質に結合されている。
【0004】
組み合わせワクチンは、現在、先進国において広範な支持を得ている。組み合わせワクチン(2つ以上の抗原を含み、そして多くの疾患に対してレシピエントを免疫するに効果的である)を使用する根本的な理由は、ワクチンの投与費用が、多数の個々のワクチンの費用と比較して劇的に減少され得るためである。投与費用がワクチンの費用を数十倍超過し得るので、多くのワクチン接種プログラムが考慮される場合、組み合わせワクチンが有利であることは明らかである。組み合わせワクチンは、世界保健機関により活発に推進されている(例えば、CVI Forum, 第5号, 1993年11月, 2〜12頁;CVI Report of the First Meeting of the Consultative Group, Geneva, 1991年12月16〜17日, 29〜32頁)。
【0005】
これらの利点は以前から認識されているが、このような組み合わせワクチンの3つのみが近年において広範に利用可能である。1950年代に最初に導入されたのは、ジフテリア、破傷風、および百日咳に対する死菌ワクチンであるDTPであった。このトリプルワクチンの処方は組み合わせの成分が相互に適合性であり、そしてそれぞれ別々のワクチンで用いられる防腐剤(メチオレート)およびアジュバント(アラム)が同一であったので主要な問題を示さなかった。さらに、全細胞百日咳成分が、ジフテリアおよび破傷風毒素に対する免疫応答を増大することが見出された。
【0006】
1960年代において、1型、2型、および3型ポリオウイルスを含む経口生ポリオワクチン(OPV)が開発された。OPVの処方により直面した問題は、DTPでは生じなかった問題であるワクチン成分間での干渉が存在したことであった。この問題は種々の成分の濃度を最適化することにより最小化されている。
【0007】
さらに最近になって、第3の組み合わせワクチンである、はしか、耳下腺炎、および風疹(MMR)生ワクチンが、ほとんどの先進国に導入されている。さらにまた、個々の独立成分の濃度は、このワクチン中に含まれる成分間の干渉現象を最小化するように調整される必要がある。
【0008】
最近では、DTPワクチンに基づく多数の抗原を含むスーパーワクチンの開発に向かう傾向がある。
【0009】
しかし、DTPに基づくスーパーワクチンの処方には不都合が存在する。Hib結合ワクチンをDTPと一緒に投与すると、DTPおよびHibワクチンを分離投与する場合と比較してHib結合物の効果が減少されることを最近の証拠は示している(ICAAC2 第33号の要約300を参照のこと)。
【0010】
結合ワクチンのハプテンまたはオリゴサッカライド成分に対する抗体応答に影響するキャリアータンパク質の免疫の役割において矛盾するデータが存在する。このような影響はHib-MenB/Cワクチンの処方に致命的である。なぜなら用いられるキャリアータンパク質は、乳児に早期の年齢で投与されるDTPワクチンに含まれる抗原と常に類似であるかまたは同一であるからである。いくつかの研究によると、結合物に対する応答はキャリアーへの事前の曝露により増大され、一方、他の研究によると、それは抑制される(Barington, T.ら、Infection and Immunity 62:9-14 (1994);Schneerson, R.ら、J. Exp. Med 152:361-376 (1980);Barington T.ら、Infect. Immun. 61:432-438 (1993);Peeters, C.C.A.M.ら、Infect. Immun. 59:3504-3510)。
【0011】
現在、キャリアータンパク質への事前の曝露は、Hib結合ワクチンに対する応答を著しく増大することが決定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、Hibおよび髄膜炎菌組み合わせワクチンを提供することである。これは、細菌性髄膜炎の予防において使用され得、髄膜炎の有力な原因に対して、経済的で、安全で、かつ好都合なワクチン接種を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によって以下が提供される:
(1)HibおよびMenCオリゴサッカライド結合物を含有する、組み合わせ髄膜炎ワクチン。
(2)MenBオリゴサッカライド結合物をさらに含有する、項目1に記載のワクチン。
(3)前記オリゴサッカライドが、4より少ない重合度を有する短鎖オリゴマーを排除するためにサイズ選択されている、項目1または2に記載のワクチン。
(4)医薬に使用するための項目1〜3のいずれかに記載のワクチン。
(5)同時の分離投与または連続投与のためのHibオリゴサッカライド結合物およびMenCオリゴサッカライド結合物。
(6)同時の分離投与または連続投与のためのHibオリゴサッカライド結合物、MenCオリゴサッカライド、およびMenBオリゴサッカライド結合物。
(7)項目1〜4のいずれかに記載のワクチンの薬学的に効果的な量を患者に投与する工程を包含する、髄膜炎の予防または治療のための方法。
(8)前記ワクチンの投与が、キャリアー初回免疫工程によって先行される、項目7に記載の方法。
(9)前記キャリアー初回免疫がDTPワクチンの投与によって達成される、項目8に記載の方法。
【0014】
本発明は、それゆえ、HibおよびMenC結合オリゴサッカライドを含む髄膜炎ワクチンを提供する。
【0015】
本発明の組み合わせワクチンは、Haemophilus influenzaeおよびNeisseria meningitidis C血清型による感染を予防するに効果的であることが見出されており、そしてこれは最初の用量後に投与されたカプセル状結合オリゴサッカライドに対する抗体を生じる。さらに、組み合わせワクチンは、使用される抗原間で干渉が存在しないことが示されている。
【0016】
有利なことに、キャリアー初回免疫(priming)は、ワクチンに対する応答を最大にするために利用され得る。キャリアー初回免疫は、DTPワクチンの投与により実施され得る。
【0017】
MenC成分は、3つの異なる好適な形態で処方され得る:緩衝化液体形態;適切な賦形剤を含有する凍結乾燥形態;および適切なアジュバントを含有する調製済み製品形態。Hibワクチンは、適切な賦形剤とともに凍結乾燥した後および緩衝化液体形態で安定である。さらに、MenCおよびHibの2つのワクチンは、適切な賦形剤とともに一緒に凍結乾燥され得、続いて使用前に適切なアジュバントとともに再懸濁され得る。安定な処方物の任意の組み合わせ物が、使用前に混合され得る。
【0018】
本発明のワクチンは、Neisseria Meningitidis B血清型由来のカプセル状結合オリゴサッカライドをさらに含有し得る。
【0019】
本発明のワクチンのオリゴサッカライド成分が結合されるキャリアータンパク質は、このような目的についての当該分野で公知の任意のタンパク質であり得る。例えば、このキャリアータンパク質は、破傷風毒素、ジフテリア毒素、Neisseria meningitidisの外膜タンパク質、またはそれらの変異体もしくは変種であり得る。
【0020】
オリゴサッカライドは、好ましくは、サイズ選択されており、そして好都合には、4以上の重合度を有する。
【0021】
本発明はさらに髄膜炎の予防または処置のための方法を提供し、これは、本発明の組み合わせワクチンの薬学的に有効な量を被験体に投与することを包含する。好適な投与レジメは、2、4、および6ヶ月齢における筋肉内への投与である。
【0022】
本発明のさらなる局面では、本発明の組み合わせワクチンが医薬品における使用のために提供される。
【0023】
さらに、本発明は、同時の分離投与または連続投与のためのHibオリゴサッカライド結合物およびNeisseria meningitidis C血清型オリゴサッカライド結合物のを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、初回免疫を行った患者および初回免疫を行わなかった患者における、追加免疫の接種直前および接種の1カ月後に得られた血清中の、それぞれの幾何平均抗体濃度±2SE(95%信頼区間)を示す;事前の結合物ワクチン接種およびDT初回免疫に関する、12カ月齢でのPRPワクチン接種に対する抗体応答;
【図2】図2は、酸で加水分解した後のH. influenzaeb型オリゴサッカライドの、分析プロフィールを示す;
【図3】図3は、サイズによる分離前および分離後のオリゴサッカライド調製物の、FACEオリゴサッカライドグリコスキャンによる未処理イメージを示す;
【図4】図4は、サイズによる分離後の、H. influenzaeb型のポリサッカライドに由来する低分子量オリゴマーの分析クロマトグラフィーのプロフィールを示す;3つの主要な種が、表4に示すように質量分析において特徴付けられる;
【図5】図5は、サイズによる分離後の、H. influenzaeb型のポリサッカライドに由来する高分子量オリゴマーの分析クロマトグラフィーのプロフィールを示す;そして
【図6】図6は、種々の長さのMenCオリゴサッカライドの血清反応性を示す;競合的なElisa、異なる鎖長のMenCオリゴサッカライドにより阻害されるMenA+Cポリサッカライドワクチンをワクチン接種された成人由来のプールしたヒト血清。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
HibおよびMecC結合物は、当該分野で公知のオリゴサッカライドおよびキャリアータンパク質を用いる確立された結合技術に従って調製され得る。しかし好ましくは結合は、短鎖のオリゴマーを除くためのオリゴサッカライドをサイズにより分離することを包含する方法に従って調製される。
Hibワクチンの場合、短鎖オリゴマーは、免疫原が乏しいことが示されている(Peetersら、J. Infect. Immun. 60, 1826-1833)。さらに、本発明者らは、低分子量MenCオリゴマーが同様に免疫原が乏しいことを示した。4未満の重合度を有するオリゴサッカライドは、ELISA試験におけるヒト抗体と天然のポリサッカライドとの間の反応を阻害することにおいて非効果的である。
【0026】
本発明のワクチンは、予防薬(感染を妨止するための)または治療薬(感染後の疾患を処置するための)のいずれかであり得る。
【0027】
このようなワクチンは、単数または複数の抗原を含み、通常は「薬学的に受容可能なキャリアー」と組み合わされる。この「薬学的に適用可能なキャリアー」は、それ自身では、組成物を受容する個体に対して有害な抗体の産生を誘導しない。適切なキャリアーは、代表的には大きく、緩除に代謝される高分子(例えば、タンパク質、ポリサッカライド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸重合体、アミノ酸共重合体、脂質凝集体(例えば、オイル液滴またはリポソーム)、および不活性ウイルス粒子)である。このようなキャリアーは当業者に周知である。さらに、これらのキャリアーは、さらに免疫刺激因子(「アジュバント」)として機能し得る。さらに、抗原は、細菌トキソイド(例えば、ジフテリア、破傷風、コレラ、H. pylori、などの病原体に由来する毒素)に結合され得る。
【0028】
この免疫原性組成物(例えば、抗原、薬学的に受容可能なキャリアー、およびアジュバント)は、代表的には、希釈剤(例えば、水、生理食塩液、グリセロール、エタノールなど)を含有する。さらに、補助的な物質(例えば、湿潤剤または乳化剤)、pH緩衝剤などが、このようなビヒクルには存在し得る。
【0029】
ワクチンとして用いられる免疫原組成物は、免疫学的に有効な量のアジュバントおよび抗原、ならびに必要に応じていくつかの他の上記の成分を含有するワクチンとして用いられる。「免疫学的有効量」(これは、単一用量でまたはシリーズの一部としてのいずれかで個体にその量を投与することを意味する)は、治療または予防に効果的である。この量は、処置される個体の健康状態、理学的状態、処置される個体の分類学的グループ(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系の抗体を合成する能力、所望される保護の程度、ワクチンの処方、医学的状態の処置医による評価、および他の関連因子に依存して変化する。この量は、日常的な試験により決定され得る比較的広い範囲内になることが予想される。好ましい範囲は1用量あたり2μgと10μgとの間である。
【0030】
用量処置は、単一用量スケジュールであり得るが、複数用量スケジュールBが好ましい。
【実施例】
【0031】
実施例1
Hib結合ワクチンでのキャリアー初回免疫の効果の決定
ワクチンおよび被験体
臨床試験をSt.Louis(N=83)およびMinneapolis(N=20)における研究敷地で行った。103人の健康な乳児を約1ヶ月齢で無作為化し、ジフテリアおよび破傷風トキソイドワクチン(DT-初回免疫された群)の単独の接種を与えるか、またはワクチン接種をしないかのいずれかにした。DTワクチン(lot 1L21121,Connaught Laboratories,Inc,Swiftwater,PA)を0.5mlの用量を用いて筋肉内に与えた。DTを与えられた52人の乳児の年齢の平均値±SDは、1.1±0.1ヶ月(範囲:0.8〜1.3ヶ月)であった。2ヶ月齢で、各群の乳児をさらに無作為化し、3用量のHbOC(lot M695HK)または3用量のPRP-T(lot S2440)のいずれかを与え、2、4および6ヶ月齢で筋肉内に投与した。HbOCの用量は、0.5mlにおいて10μgのサッカライドおよび25μgのCRMタンパク質であり、そしてPRP-Tの用量は、同様に投与された0.5mlにおいて10μgのサッカライドおよび20μgのタンパク質であった。DTPワクチン(0.5ml、筋肉内、lot 2G31010 、Connaught Laboratories)の分離した接種をHib結合ワクチン接種の各時間で反対側の脚に与えた。12ヶ月齢で、0.1ml中に5μgの非結合PRPワクチンを皮下に与えた。PRPワクチンは、NIAID、NIHによって提供され、そして以前に記載されている(Granoffら、J.INf.Dis.1993;168:663-671)。血清サンプルを、Hib結合/DTP用量の各々の直前、第3の用量の約4週間後、ならびにPRPワクチン接種の直前およびワクチン接種の1ヶ月後に得た。103人の乳児のうち94人(91%)が、結合ワクチンプロトコルを完了し、そして彼らが本明細書で報告される分析に含まれる被験体である。残った9人の幼児を次の理由で除外した。:血液サンプルを得ることが困難である(1);両親が町から引越した(1);もはや参加することを望まない(2);追跡し損なった(1);研究外の不正のワクチンを偶然に与えられた(2);根元的な免疫不全の診断(1);およびワクチン接種に関連しない発熱性の発作(1)。この分析に用いられた4つの処置群の人口統計学的特徴を表1に要約する。群は、結合ワクチン接種の最初の用量において、性別、人種、および年齢に関して類似していた。
【0032】
【表1】

【0033】
+Hb0C(Haemophilus influenzae b オリゴサッカライド−CRM結合ワクチン);PRP-T(Haemophilus influenzae b ポリサッカライド−破傷風トキソイド結合);DT(ジフテリアおよび破傷風トキソイド)
*示されたデータは、共役ワクチン接種を完了した94人の乳児に由来し、評価について望ましかった(方法を参照のこと)。
**一回目の結合ワクチン用量の時
有害反応
簡単な質問表を完成するために両親に尋ね、接種部位の局所反応、日々の体温、および各用量のDTP/結合ワクチン接種の後72時間内に起こり得る他の全身的な反応を書き留めた。これらの観察を、研究看護士によって行われた電話問診および各々の定期的な診療所往診時の起こり得る有害反応の再調査によって補った。有害反応の活発な監視を、1ヶ月齢でのDTワクチン接種の後に行わなかった;しかし、このワクチン接種に対して起こり得る重篤な反応の情報を、結合/DTPワクチン接種を始める前に、2ヶ月の往診で得た。
【0034】
研究所
凍結血清の複製したコードのバイアルを、総抗PRP抗体濃度の測定のためにSt.LouisのWashington大学に送付し、そしてジフテリアおよび破傷風トキソイドに対する抗体濃度の測定のためにConnaught Laboratories,Inc,Swiftater,PAに送付した。全てのアッセイを、抗原DT初回免疫状態または結合ワクチンの割り当ての知識なしで行った。
【0035】
総抗PRP抗体濃度を放射性抗原結合アッセイRABA(Granoffら、J.Inf.Dis.1986;154:257-264)によって測定した。PABAの標準曲線は、Center for Biologic Evaluation and Research(CBER),U.S. Food and Drug Administration,Bethesda,MD.から得られたHib参照血清プールの希釈物からなった。このプールの総抗PRP抗体濃度を80μg/mlであると見積もった。個々のアッセイは、広範な範囲の抗体濃度を代表するコントロール血清プールを含んだ(Granoffら、J.Pediatr.1992;121:187-194;Holmesら、J.Pediatr.1991;118:364-371)
抗破傷風トキソイド抗体および抗ジフテリアトキソイド抗体濃度を、1993年4月前にPRP追加免疫プロトコルの完了およびアッセイに対する十分量の血清の入手可能性に基づいて選択された被験者の約90%サンプル由来の血清サンプルにおいて測定した。
【0036】
抗破傷風トキソイド抗体力価をELISAによって測定した。簡単に述べると、マイクロタイタープレートを、炭酸塩緩衝液(pH9.6)中の精製した破傷風トキソイドとともに一晩、室温でインキュベートした。プレートを洗浄し、そして試験血清およびコントロール血清の系列2倍希釈溶物の50μlサンプルをコートされたプレートに移した。3時間、室温でインキュベートした後、プレートを洗浄し、そして結合抗体を、アルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgG、IgAおよびIgM(Kirkegaard and Perry Laboratory,Gaithersburg MD)を使用して検出した。抗破傷風トキソイド抗体の濃度を、破傷風トキソイドでワクチン接種した成人由来の血清からConnaught Laboratoryで調製された参照血清プールの抗原結合力価曲線との比較により、単位/mlで試験血清に割り当てた。この血清プールを独断的に1単位/ml抗毒素血清濃度として割り当てた。
【0037】
抗ジフテリア中和抗体を微小代謝阻害試験(Miyamuraら、J.Biol.Stand.1974;2:203-209;Keeftenbergら、J.Biol.Stand.1985;13:229-234)によって測定した。簡単に述べると、50μlの試験血清の系列2倍希釈物を96ウェル平底組織培養プレート(カタログ番号25861、Corning Laboratory Science,Corning NY)のウェルに添加した。ジフテリア毒素(最小細胞障害用量の4倍過剰濃度の25μl)を全てのサンプルウェルに添加した。VERO細胞(アフリカミドリザル腎臓)を添加し(150,000細胞/mlの25μl)、そしてpH指示薬を細胞培養培地に含ませた。細胞を7日間、37℃でインキュベートした。この間、代謝する細胞はpH<7.20の滴(drop)を示す。ところが、ジフテリア中毒細胞の代謝活性は阻害され、pHの減少は生じない。抗体力価を、7日間のインキュベーション後、pH<7.20を有する最も高い血清希釈物によって測定した。試験血清の抗ジフテリア抗体濃度を、試験サンプルと並行してアッセイした既知のU.S.標準血清(LotA52、CBER,U.S. Food and Drug Administration,Bethesda,MD提供)希釈液の抗毒素血清活性と比較して単位/mlで割り当てた。抗ジフテリアトキソイド抗体のユニットおよび抗破傷風トキソイド抗体のユニットは、重量または活性基礎において等価ではないことに注意されたい。従って、それぞれの抗体濃度の大きさは直接比較し得ない。
【0038】
統計分析
Chi平方検定、または小さく予想される頻度(small expected frequency)によって要求される場合Fisherの精密検定を用いて、頻度データを比較した。抗体濃度を対数に変換し、そして幾何平均の抗体濃度を分散分析により比較した。これらの計算のために、このアッセイで検出された最小値より少ない抗体濃度を最小値の50%値に割り当てた(例えば、抗PRP抗体濃度<0.07μg/ml、抗破傷風抗体濃度<0.01units/ml、および抗ジフテリア抗体濃度<0.01units/mlを,それぞれ0.35μg/ml、0.005units/ml、および0.005units/mlに割り当てた)。MinneapolisおよびSt.Louisにおける乳児の結合およびDT/DTPワクチン接種に対する抗体応答を組み合わせた。なぜなら、この2つの研究敷地間の結果に統計的に有意な差異がなかったからである。
【0039】
結果
有害反応
ワクチン接種養生は良好に許容された。いずれの乳児においても、低血圧/低敏感反応(hypotensive-hyporesponsive reaction)、てんかん発作、長期にわたって叫び声をあげる発作、>39.9℃の体温を含む重篤な反応は無かった。4つのグループにおいて、>37.8℃の体温は、DTP/結合用量1の後では20〜33%の幼児で、用量2の後では23〜29%の乳児に、そして用量3の後では21〜35%の乳児に存在した。ワクチン群間のそれぞれの差異は、有意なものではなかった(p>0.10)。
【0040】
免疫原性
結合ワクチン接種に対する抗PRP抗体反応。
【0041】
表2に、2、4、および6ヶ月齢で与えられたHib結合ワクチンに対する抗PRP抗体応答における1ヶ月齢でのDTワクチンを用いた初回免疫の効果を要約する。結合ワクチンの初回用量の前に、4つの群の幾何平均抗PRP抗体濃度において有意な差異はなかった。PRPを与えられた乳児について、1ヶ月齢でのDTワクチン接種は、DTで初回免疫されていないPRP-Tワクチン接種された乳児の各々の幾何平均抗体応答と比較すると、各々の3回用量の結合ワクチンの後、幾何平均抗PRP抗体応答を2〜3倍増加させた。HbOCを与えられた乳児について、抗PRP抗体応答における2〜3倍の増加がまた、初回免疫されていない群と比較してDT初回免疫グループに存在していたが、結合物用量1および2の後だけであった(表2)。
【0042】
両方の結合ワクチン群について、>1μg/mlの抗PRP抗体での2回目の結合ワクチン用量に応答した乳児の割合は、初回免疫されていない乳児よりDT初回免疫された乳児で高かった(HbOC:38%対4%、p<0.01;PRP-T:88%対67%、p=0.10)。対応する差異は、結合ワクチンの1回目の用量の後(HbOC:0%対0%;PRP-T:20%対4%、p>0.10)、または3回目の用量の後(HbOC:86%対88%;PRP-T:96%対96%、p>0.90)には有意な差ではない。
【0043】
【表2】

【0044】
PRP追加免疫ワクチン接種に対する記憶抗体応答
非結合PRP抗体を、結合ワクチン接種を完了した94人の幼児のうち74人(79%)に12ヶ月齢で与えた。図1に、追加免疫接種直前および追加免疫接種の1ヶ月後に得られた血清におけるそれぞれの幾何平均抗体濃度±2SE(95%信頼区間)を要約する。PRP-Tワクチン接種された幼児間で、DT初回免疫された群の幾何平均抗PRP抗体濃度は、PRP追加免疫の直前では2.6μg/mlであり、それに対してDTを受けていない対応する乳児においては1.6μg/mlであった(p=0.11)。PRP追加免疫の1ヶ月後では、幾何平均抗体濃度は、DT初回免疫された群では26.4μg/mlであり、それに対してDTを受けていない対応する乳児においては8.6μg/mlであった(p=0.01)。HbOCを与えられた乳児において、PRP追加免疫(1.2対1.1μg/ml)の前またはPRPの後1ヶ月(6.0対8.8μg/ml,p=0.34)、DT初回免疫された乳児とDT初回免疫されていない乳児との間には、それぞれの幾何平均抗PRP抗体濃度において有意な差異はなかった。
【0045】
抗ジフテリア抗体および抗破傷風抗体応答
1例を除いて、1ヶ月齢でDTによりワクチン接種された乳児および1ヶ月齢でDTによりワクチン接種されていない乳児およびDTによりワクチン接種されていない乳児のそれぞれの抗D抗体濃度または抗T抗体濃度において2ヶ月齢では有意な差異はなかった(表3および表4)。例外は、DT初回免疫された群において無作為化して、PRP-Tを受けた乳児が、対応する初回免疫されていない群より2倍以上高い抗T抗体濃度を有したことであった(0.06対0.03units/ml,p<0.02)。この結果は、偶然に生じ得た。なぜなら、正反対の傾向が無作為化してHbOCを受けた対応する群で観察されたからである(0.05対0.07units/ml,p>0.10,表3)
1ヶ月でのDT初回免疫は、2、4、および6ヶ月に与えられたDTPおよび結合の引き続く接種に対する抗D抗体応答を強化した。DTP/結合での最初のワクチン接種の後、初回免疫された乳児は、初回免疫されていない乳児のそれぞれの幾何平均値より、1.5〜2倍高い幾何平均抗Dおよび抗T抗体濃度を有した(P<0.60);2回目のワクチン接種の後、初回免疫された乳児のそれぞれの幾何平均値は、初回免疫されていない乳児の幾何平均値より約3〜5倍高かった(P<0.001)。3回目のDTP/結合ワクチン接種の後、用いた特定の結合ワクチンとそれぞれの抗D抗体または抗T抗体応答との間に相互作用があるらしい。PRP-T/DTPでワクチン接種されたDT初回免疫された乳児は、初回免疫されていない乳児より2倍高い抗T抗体濃度を有していたが(P<0.001)、それぞれの抗D抗体応答は有意な差異がなかった(P>0.20)。対照的に、HbOC/DTPでワクチン接種された初回免疫された乳児は、初回免疫されていない乳児より約2倍高い抗D抗体濃度を有していたが(P<0.01)、それぞれの抗T抗体応答は有意な差異がなかった(P>0.24)。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
実施例2
免疫原性オリゴマーのサイズ選択
例としてここではHaemophilus influenzaeB型由来の免疫原性オリゴマー選択を記載する。上昇した温度での制御された酸加水分解の後、得られたオリゴサッカライド調製物は単一から比較的長鎖のオリゴマーまでの種々の鎖長のオリゴマーを含有する。図2および3(レーンB)は、このような加水分解物の不均一性を示している。示されている場合では、モル比においてオリゴマー種の約半分が、5糖残基より少ない糖鎖を含有すると計算される。このような加水分解物がキャリアタンパク質(例えばCRM-197)に結合する場合、それらは、免疫性が乏しいと思われるワクチン産物を産生する。
【0049】
不必要な短鎖種を除去するために、本発明者らは、単鎖種からの長鎖オリゴマーの分離を正確に可能とするクロマトグラフィー法を開発した。開発された方法は、特定のクロマトグラフィーマトリックス、Q-Sepharose Fast Flowの使用、ならびに規定された塩および水素イオン濃度に依存する。低分子量種の除去のための添加塩濃度は0.05Mと0.150Mとの間であり得る。好ましくは塩化ナトリウムを使用する。水素イオン濃度は10−5Mと10−8Mとの間であるべきであり、そしてアセテート塩が好適に使用される。図4および5(レーンF)は低分子量種のプロフィールを示し、これらはわずかに免疫原性である。
【0050】
ワクチン調製に用いられるオリゴサッカライドは、0.25Mと1.0Mとの間の塩濃度(好ましくは塩化ナトリウム)で溶出される。ワクチンの調製に用いられるこれら高分子量種のクロマトグラフィーのプロフィールを図5に示す。本発明者らのクロマトグラフィー法が完全に規定されたワクチン産物を提供し得ることををさらに強化するために、本発明者らは3つの異なる調製物を分析した。それらを図3、レーンC、D、およびEに示す。
【0051】
質量分析を用いて、本発明者らは、本発明者らの方法が、表5の質量分析の報告によって示されるように、実際により短かい分子量種を除去し、そしてこれらが予想される鎖長を有することを確立した。この分画方法は、マトリックス支持体により、1〜60mg/mlのオリゴサッカライドの分画および特異的選択を可能にする。
【0052】
【表5】

【0053】
選択されたオリゴサッカライド種は、以下に列挙される化学を用いてキャリアタンパク質CRM-197に結合され得る(Costantinoら、Vaccine 10:691-698)。
a)還元末端に一級アミノ基を導入する、選択されたオリゴサッカライドの還元性アミノ化。
b)アジピン酸のN-ヒドロキシサクシンイミドジエステルとの反応による、活性エステルへのアミノ−オリゴサッカライドの変換。
c)活性オリゴサッカライドのCRM-197へのカップリング;およびワクチン製造のための結合物の最終的な精製。
【0054】
本明細書中に記載される方法は、髄膜炎菌Cオリゴサッカライドに首尾よく適用さており、そして髄膜炎菌AおよびBならびに他のもののように、負電荷部分を含有する全ての糖ポリマーに対して明らかに適用され得る。図6は、4より少ない重合度を有するMenCオリゴサッカライドの乏しいな免疫原性特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−16850(P2011−16850A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236921(P2010−236921)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【分割の表示】特願2007−83117(P2007−83117)の分割
【原出願日】平成7年11月2日(1995.11.2)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】