説明

組み換え技術によって製造された第VIII因子のための新規な保護組成物

高純度の第VIII因子(r-第VIII因子);アルギニンおよび/またはスクロース;第VIII因子の表面吸着を阻害するか、または少なくとも阻害するための界面活性剤;第VIII因子を特異的に安定化するための量の塩化カルシウム;を含むヒスチジンフリー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み換え技術によって製造された高純度の第VIII因子(r-第VIII因子)を保護する能力を有する、凍結乾燥製剤に関する。また、本発明は、凍結乾燥前、および、凍結乾燥固体製剤を注射可能な液体に再構成した後の、r-第VIII因子の液体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
第VIII因子は、血液凝固過程に関係する、必須の血漿タンパク質である。この凝固因子の欠乏により致命的疾病である血友病Aになり、この疾病は第VIII因子補充療法で治療しなければならない。従来、補充療法には、精製した血漿由来の第VIII因子(p-第VIII因子)の濃縮物が使用されてきた。より最近では、組み換え技術によって製造された第VIII因子(r-第VIII因子)が市販されるようになったが、このことにより、血漿輸血が独立して供給され、ウイルス感染による疾病のリスクが減じられる。
【0003】
第VIII因子は複合体分子であり、経時的な活性の喪失を伴う、非常に敏感なタンパク質である。血液中では、ヒト血清アルブミン(HSA)やフォン・ヴィレブランド因子(vWF)等の他の血液タンパク質が、第VIII因子の凝固活性の維持を支援する。しかし、r-第VIII因子の医薬製剤においては、ウイルス感染のリスクのため、血漿精製によって得られるタンパク質の存在を避けることが望ましい。従って、活性喪失を引き起こす物理的および化学的分解および凝集に対してr-第VIII因子を保護する、他の薬学的に許容される賦形剤の組成物を提供することが不可欠である。長期保管の間、タンパク質活性の喪失を防ぐ、通常使用されている技術では、凍結乾燥(フリーズドライ)によって乾燥固体医薬製剤を調製する。薬学的賦形剤は、製薬プロセスの間、長期保管の間、および投与のためにフリーズドライ製剤を溶液に再構成した後も、第VIII因子を保護しなければならない。
【0004】
第VIII因子のDNA配列は、3つのAドメイン、2つのCドメインおよび1つのBドメインの、6つのドメインに分割され、タンパク質は、他の凝固因子、vWF、リン脂質および金属イオンに対する相互作用部位を含む。第VIII因子タンパク質の最小の活性形態はBドメインを欠き、90 kDaの重鎖を伴う80 kDaの軽鎖から成る(ワン(Wang) W.ら、2003年)。現在、両全長(Kogenate(登録商標)、バイエル(Bayer)、Helixate(登録商標)、CSLベーリング(Behring)、Recombinate(登録商標)、バクスター(Baxter)、および、Advate(登録商標)、バクスター)およびBドメイン欠失(ReFacto(登録商標)、ワイエス(Wyeth)およびXyntha(登録商標)、ワイエス)のr-第VIII因子薬物製品が市販されている。
【0005】
第VIII因子の医薬製剤では、全ての成分は慎重に選択する必要がある。各賦形剤は、保護機能を与えて、製薬プロセス、長期保管、および最終的に再構成および患者への投与までの、全体にわたる第VIII因子の高収率を維持する。加えて、全賦形剤の臨床的安全性が考慮される。
【0006】
凍結乾燥の目的(マンニング(Manning), M.C.ら、1989年、タン(Tang), X.ら、2004年、シュベックマン(Schwegman), J.J.ら、2005年)は、製剤から水を除去することであり、これは水相において、不利な物理的および化学的反応がしばしば起こるからである。
【0007】
凍結乾燥プロセスおよび保管の間、タンパク質の周囲にアモルファスマトリクスを形成することによりタンパク質を保護するため、凍結/凍結乾燥防止剤(Cryo-/lyoprotectants)が求められている。
【0008】
凍結乾燥の間に機械的支持を与えるためのケーキ形成剤として機能し、薬物製品の乾燥重量を増すために、増量剤(bulking agent)が含まれる。その結果、増量剤は、均一な品質および外観の凍結乾燥製品を提供する一助となる。
【0009】
タンパク質および製品の治療用途に好適なpH値を維持するため、緩衝剤を添加し得る。
【0010】
第VIII因子は力価が高いため、治療用溶液中の第VIII因子の濃度は低い。加えて、第VIII因子は、容易に表面に吸着するため、表面吸着は、製造中および製品の再構成後の活性喪失の主な原因となる。現在市販されている第VIII因子製品については、通常、界面活性剤をその臨界ミセル濃度(cmc)を超えて使用することが求められており、この濃度は界面活性剤がミセル凝集体を形成する溶液濃度である。ポリオキシエチレン含有非イオン性洗浄剤のcmc値は温度依存性があり、cmc値はより低い温度でより高くなる(アレキサンドリジス(Alexandridis), P.ら、1994年、ニルッソン(Nilsson), M.ら、2007年)。ポロキサマー(Poloxamer)188のcmcは、37℃で少なくとも20〜30 mg/mlであり(カバノフ(Kabanov), A.V.ら、1995年、アレキサンドリジス, P.ら、1994年、モギミ(Moghimi), S.M.ら、2004年)、20℃で100 mg/mlに上昇する(ナカシマ(Nakashima), K.ら、1994年)。従って、これらの報告では、ポロキサマー188のcmcは、25℃で20〜100 mg/mlの間隔内である。
【0011】
金属イオンは、第VIII因子の軽鎖および重鎖の会合に関与することが示されており(ワン(Wang) Wら、2003年)、従って、カルシウムイオン(Ca2+)は通常、第VIII因子製剤中に存在して、80および90 kDa鎖の複合体の会合を維持する。
【0012】
第VIII因子の好適な製剤を見出すために、相当の努力がなされてきた。例えば:
【0013】
エスターベルグ(Oesterberg)らの発表(1997年)には、増量剤として塩化ナトリウムを含み、界面活性剤、安定剤として塩化カルシウムおよびスクロース、ならびに緩衝剤としてヒスチジンと組み合わせた製剤が記載されている。
【0014】
US-B-7247707号(ベスマン(Besman)ら)には、300〜500 mMの塩化ナトリウム、スクロース、トレハロース、ラフィノースおよびアルギニンからなる群から選択される1〜4%の安定剤、1〜5 mMのCaCl2、ならびに緩衝剤、好ましくはヒスチジンを含む、アルブミンフリーの製剤が開示されている。界面活性剤も組成物中、0.1%以下の濃度で含まれる。
【0015】
US-A-5874408号(ナイヤル(Nayar))には、組み換え第VIII因子の製剤が記載されており、これは、グリシン、ヒスチジン、スクロース、CaCl2および少量の塩化ナトリウムを含む。ナイヤルは、今日市販されているr-第VIII因子製剤全てに緩衝剤として含まれるヒスチジンが、凍結乾燥した第VIII因子製剤において不安定化効果を有することを発見した。しかし、この効果は、塩、グリシンおよびスクロースの添加によって克服された。
【0016】
US-A-4877608号(リー(Lee)ら)には、水溶液中の高度に精製した第VIII因子タンパク質製剤の使用が記載されており、この製剤は実質的に、少なくとも130 IU/mgの活性を有する治療的に活性な第VIII因子;0.4〜1.2 Mの塩化ナトリウム、塩化カリウムまたはそれらの混合物;1.5〜40 mMの塩化カルシウムおよび1〜50 mMのヒスチジン、および任意に、マンニトール、スクロースおよびマルトースからなる群から選択される10%以下の糖からなる。
【0017】
US-A-2005/0256038号(ホワイト(White)ら)には、界面活性剤、塩化カルシウム、スクロース、塩化ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、およびアミノ酸を除く緩衝剤を含む、凍結乾燥した第VIII因子組成物が教示されている。
【0018】
WO-A-99/10011号(カネロス(Kanellos)ら)には、高純度の血漿第VIII因子の熱処理製剤が開示されている。この製剤は、安定化有効量のスクロース、トレハロースおよび少なくとも一つのアミノ酸を含む。好ましいアミノ酸はリシンであるが、使用し得る他のものは、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、セリンおよびグリシンである。
【0019】
EP-A-1016673号(エスターベルグ(Oesterberg)ら)には、安定剤として非イオン性界面活性剤と、5000 IU/mgを超える比活性度を有する第VIII因子を含む、製剤の使用が教示されている。さらに、界面活性剤濃度は臨界ミセル濃度を超えるべきであり、少なくとも0.01 mg/mlの量であることが述べられている。
【0020】
US-B-6887852号(パイク(Paik)ら)には、安定剤として、L-アルギニン、L-イソロイシンおよびL-グルタミン酸の混合物を含む、凍結乾燥した第VIII因子製剤が記載されている。基本的な製剤は、少量の塩化ナトリウム、塩化カルシウムおよびヒスチジンを含む。界面活性剤は組成物に添加せず、これは、開示された製剤が、界面活性剤を含む製剤よりも良好な安定性を示すためである。
【0021】
US-A-5565427号(フロイデンベルグ(Freudenberg))には、洗浄剤およびアミノ酸またはその塩の一つを含む第VIII因子の安定な溶液の使用が教示されている。タンパク質の比活性度は少なくとも2000 IU/mgである。
【0022】
US-A-5328694号(シュヴィン(Schwinn))には、血漿から精製された第VIII因子と、二糖類と1以上のアミノ酸の組み合わせとを含む、安定な注射溶液が開示されている。好ましくは、アミノ酸はリシンまたはグリシンである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、組み換え技術によって製造された高純度の第VIII因子(r-第VIII因子)の組成物に関する。この組成物はヒスチジンフリーである。最大の保護効果を発揮するため、本発明の組成物は、凍結/凍結乾燥防止剤、増量剤および界面活性剤等の賦形剤の、目的を定めた選択に基づく。それぞれの添加された賦形剤は、全ての段階、即ち、製薬プロセスの間、長期保存および、再構成および投与の間の全てでは、その保護効果を発揮しないかもしれない。
【0024】
本発明の凍結乾燥製剤は、同一の充填容量および再構成容量を有することに限定されない。当業者には、製剤製品もまた、より希釈した形態に再構成され得ることが明らかであろう。
【0025】
本発明は、組み換え技術によって製造された第VIII因子を保護する能力を有する、請求項1に記載の組成物に関する。
【0026】
本発明による、ヒスチジンフリーのr-第VIII因子の組成物は、一般に、アルギニンまたはスクロース、またはアルギニンとスクロースの組み合わせである、凍結/凍結乾燥防止剤;塩化ナトリウムまたはアルギニンである、増量剤;界面活性剤;および任意にpH緩衝剤を含む。本明細書の文脈に現れる場合の「ヒスチジンフリー」という用語は、「ヒスチジンを含まない」組成物を意味するものではなく、これはより少量が、その前の製造工程からの増量剤物質に付随する可能性があるからであり、むしろ、製剤過程の間にヒスチジンを添加していないことを意味する。ヒスチジンは、第VIII因子組成物中、緩衝剤として頻繁に使用されており、一方で、いくつかの出典では、第VIII因子に対する安定化効果が報告され(EP-A-1016673号、エスターベルグ(Oesterberg)ら)、他の出典では、第VIII因子の製剤における不安定化効果が報告されている(US-A-5874408号、ナイヤル(Nayar))。本発明は、適切な場合、pH緩衝剤として、クエン酸ナトリウム、マレイン酸またはトリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)を具体的に使用する。緩衝剤は、例えばクエン酸ナトリウムであり、pHを6.5〜7.5の範囲に維持する量が存在する。クエン酸ナトリウムの好適な形態は、二水和物塩である。一般に、本発明による組成物は凍結乾燥形態であり得るが、凍結乾燥される溶液および凍結乾燥組成物から再構成された溶液等の溶液でもある。
【0027】
組成物は、さらに、約0.5〜10 mMの量の塩化カルシウムを含んで、第VIII因子分子の特異的安定化を促進する場合がある。組成物は、さらに、グルタチオンまたはメチオニン等の酸化防止剤のような、他の化合物を含み得る。
【0028】
増量剤は、製剤中に存在して凍結乾燥ケーキに機械的支持を与え、乾燥重量を増す、賦形剤と見なされる。増量剤は、塩化ナトリウム等の結晶状態またはアルギニン等の非晶質状態のいずれかであり得る。
【0029】
pH緩衝剤は、約pH 5〜9の間のpH範囲で緩衝能力を有する化合物と見なされる。緩衝能力は、前記のpH間隔内での緩衝剤のpKa値に関連する。
【0030】
イオン強度プロバイダーは、製剤中に存在してイオン強度を高める、イオン性化合物と見なされる。
【0031】
凍結防止剤および凍結乾燥防止剤(凍結/凍結乾燥防止剤)は、製剤中に存在して、凍結乾燥プロセスの凍結および乾燥工程の間、ならびに、その後の凍結乾燥製品の保管の間、タンパク質活性の喪失を減じ、またはさらに防止する化合物である。
【0032】
界面活性剤は、表面に吸着して相互作用し、それによって吸着による第VIII因子の活性喪失に対抗する化合物を意味するものとする。このタイプの活性喪失は、患者への投与の前および投与の間に再構成した製品を扱う間と同様に、全体の製剤過程の間に起こり得る。いくつかの界面活性剤は、溶液中でミセル凝集体を形成する。界面活性剤の臨界ミセル濃度は、それを超えるとミセルが形成される濃度である。
【0033】
第VIII因子の保護化合物とは、選択された賦形剤からなる製剤を意味し、それぞれの賦形剤は、製剤過程、長期保管、および最終的に再構成および患者への投与の間中、第VIII因子の高収率を保つ保護機能を提供する。製剤過程とは、特に、製造からの増量剤物質の到着に始まり、製剤化された薬物製品の凍結乾燥の終了までの製造プロセスの最終段階と見なされる。製剤過程の工程は、一般に、タンパク質製剤の当業者によく知られており、製剤、除菌、バイアルへの充填および凍結乾燥等の工程を含むことを理解すべきである。
【0034】
活性第VIII因子の喪失は、表面吸着、凝集、タンパク質構造の物理的および/または化学的変化、または不満足に見える凍結乾燥物の廃棄による損失を含む、広範な意味を持つが、これらに限定されない。
【0035】
r-第VIII因子は、特に、B-ドメインを完全にまたは部分的に欠失する欠失誘導体であり、その結果、製剤前に5000 IU/mgを大きく超え得る比活性度を与える。B-ドメインを完全にまたは部分的に欠失するこのような欠失誘導体の例は、EP-A-1136553号(ハウザー(Hauser)ら)およびEP-A-1739179号(シュレーダー(Schroeder)ら)に開示され、ヒト細胞株から調製される。本発明の組成物は、以下のセクションに記載されている通り、このような第VIII因子の欠失誘導体の保護に特によく適していることが高く評価される。
【0036】
本発明によれば、凍結/凍結乾燥防止剤はアルギニンまたはスクロース、またはアルギニンとスクロースとの組み合わせである。アルギニンは、典型的には、アルギニン塩酸塩等の、アルギニンの塩または誘導体であり得る。
【0037】
本発明による増量剤は、イオン強度プロバイダーであるというさらなる機能も有し、これは、適当な臨床製品に必要な成分数を最小にする。本発明による増量剤は、塩化ナトリウムまたはアルギニンであり得る。アルギニンは塩の形態であり得るが、特に塩酸塩の形態であり得る。
【0038】
本発明の一つの態様では、凍結/凍結乾燥防止剤は、アルギニンとスクロースの組み合わせである。増量剤およびイオン強度プロバイダーは、特に、塩化ナトリウムである。塩化ナトリウムが増量剤として働く場合、本発明の組成物は、特に、少なくとも6 mg/mlの凍結/凍結乾燥防止剤が存在するという条件で、凍結/凍結乾燥防止剤として約3〜15 mg/mlのスクロースおよび約3〜15 mg/mlのアルギニンを、および増量剤として約10 mg/ml〜約40 mg/mlの塩化ナトリウムを含んでいる。組成物は特に、約3 mg/ml〜約10 mg/ml、特に約4.5 mg/ml〜約9 mg/mlのスクロース、約3 mg/ml〜約8 mg/ml、特に約4.5 mg/ml〜約6.8 mg/mlのアルギニン、および特に約15 mg/ml〜約23 mg/mlの塩化ナトリウムを含み得る。他の好適な濃度範囲は、特に、約4.5〜約6.8 mg/mlのスクロース、約4.5 mg/ml〜約6.8 mg/mlのアルギニン、および約15 mg/ml〜約23 mg/mlの塩化ナトリウムを含む。好ましくは、アルギニンおよびスクロースは同量で存在する。その結果、組成物は、約9 mg/ml以下のアルギニンおよび約9 mg/mlのスクロースを含む。さらに、組成物は、塩化カルシウム、界面活性剤、および任意にpH緩衝剤としてクエン酸ナトリウムを含み得る。別の態様において、本発明の組成物は、約10 mg/ml〜約25 mg/mlの量のスクロース、および、10 mg/ml〜40 mg/mlの量の塩化ナトリウムを含む。
【0039】
別の態様では、組成物は、代替として、実質的に塩化ナトリウムフリーであり、凍結/凍結乾燥防止剤はスクロースであり、増量剤およびイオン強度プロバイダーはアルギニンである。特に、組成物は、約5〜約25 mg/mlのスクロースおよび約20〜約70 mg/mlのアルギニンを含む。さらに、この組成物は、塩化カルシウム、界面活性剤、および任意に緩衝剤としてクエン酸ナトリウムを含み得る。本明細書の文脈において現れる場合の「実質的に塩化ナトリウムフリーである」という用語は、「あらゆる塩化ナトリウムを含まない」組成物を意味するべきではなく、むしろ、例えば<1%である微量のNaClを含有し、これはより少量の塩化ナトリウムがより前の製造工程からの増量剤物質に付随する可能性があるからであり、むしろ、製剤過程の間に塩化ナトリウムを添加していないことを意味する。
【0040】
典型的には、組成物は凍結乾燥形態で提供される。本発明のさらに別の態様では、組成物は凍結乾燥する液体の形態、または、凍結乾燥した組成物および希釈剤から調製した、再構成した溶液の形態で提供される。
【0041】
さらなる態様では、本発明の組成物中、界面活性剤はタンパク質であり、特に組み換えタンパク質である。タンパク質は特に、組み換え技術で製造されたアルブミンであり、例えば約0.5 mg/ml〜約5 mg/mlの量である。この量は、アルブミンが唯一の凍結/凍結乾燥防止剤として機能する場合に、血漿由来の第VIII因子の従来の製剤において通常使用される量よりもかなり少なく、異なる。驚くべきことに、アルブミン、特に組み換えアルブミンは、室温で保管される組み換え第VIII因子の製剤中の界面活性剤として、非常に好適に使用される。
【0042】
本発明の別の態様では、界面活性剤は、例えばポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等の非イオン性界面活性剤である。本発明によれば、界面活性剤は臨界ミセル濃度以下(below)の濃度で存在し、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体では約5 mg/ml未満である。
【0043】
本発明の態様では、組成物は、>500 IU/mgタンパク質の比活性度を有するr-第VIII因子を含む。
【0044】
なおさらなる態様によれば、組成物は凍結/凍結乾燥防止剤およびアルギニンである増量剤を含むが、これはイオン強度プロバイダーとしても働く。特に、アルギニンは、約20 mg/ml〜約70 mg/mlの量で存在する。さらに、この組成物は、塩化カルシウム、界面活性剤、および任意に、緩衝剤としてクエン酸ナトリウムを含み得る。
【0045】
種々の具体的な組成物は全て界面活性剤を含むが、界面活性剤は一つの態様において非イオン性洗浄剤であり、特に、例えばポロキサマー(Poloxamer) 188であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体または例えばポリソルベート(Polysorbate) 20もしくはポリソルベート80であるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤等の、ブロックコポリマー型のポリマー非イオン性界面活性剤である。好適な非イオン性界面活性剤はポロキサマー188であり、これは、その臨界ミセル濃度(cmc)以下の濃度、好ましくは特に約5 mg/ml以下の濃度で使用し得る。ポロキサマー188のcmcは、25℃で20〜100 mg/mlの範囲内であると報告されている(カバノフ(Kabanov), A.V.ら、1995年、アレキサンドリジス(Alexandridis), P.ら、1994年、モギミ(Moghimi), S.M.ら、2004年、ナカシマ(Nakashima), K.ら、1994年)。
【0046】
別の態様において、界面活性剤は、組み換え技術で製造された、第VIII因子タンパク質以外のタンパク質、特に組み換えヒトアルブミンであり、特に、このような組成物は、約0.5 mg/ml〜約5 mg/mlの量の組み換え技術で製造されたアルブミンを含む。
【0047】
以下の実施例において、種々の態様をさらに詳細に記載するが、実施例は本発明を説明するものであって、本発明の範囲を制限または限定すると考えるべきではない。
【実施例】
【0048】
実験で使用した第VIII因子は、組み換えヒトB-ドメイン欠失第VIII因子タンパク質であり、EP1739179号(シュレーダー(Schroeder)ら)に記載された方法に従って、ヒト細胞株HEK293Fにおいて製造されたものである。精製プロセスは、5つのクロマトグラフィー工程からなり、ヒトグリコシル化様パターンを有する(サンドバーグ(Sandberg)ら、欧州特許出願08 162 765.5号)高純度の第VIII因子タンパク質製剤が得られる(ウィンゲ(Winge)ら、欧州特許出願08 158 893.1号)。
【0049】
タンパク質活性は、発色アッセイまたは一段階アッセイで測定した。
【0050】
発色アッセイは、第VIII因子の生物学的活性を補因子として測定する、二段階の測光法である。第VIII因子は、第X因子を活性化して第Xa因子とし、これは順に酵素的に分解されて、分光光度法で定量し得る生成物となる。
【0051】
一段階アッセイは、第VIII因子含有サンプルの能力に基づいて、リン脂質、接触活性化剤およびカルシウムイオンの存在下で、第VIII因子欠損血漿の凝固時間を修正する。フィブリン塊の出現時間を一工程で測定する。
【0052】
実施例1
上記の実験の項の記載に従って、組み換え第VIII因子を調製した。この実験では、アルギニンとスクロースの組み合わせである凍結/凍結乾燥防止剤を有する製剤を、凍結/凍結乾燥防止剤としてスクロースまたはアルギニンのいずれかを有する製剤と比較する。塩化ナトリウムは、増量剤およびイオン強度プロバイダーとして機能する。
【0053】
凍結乾燥製剤中の第VIII因子の回収率について、初期濃度150 IU/mlで製剤を調査した。調査した組成を表Iに示す。
【0054】
【表1】

【0055】
溶液の分割量1.5 mlを、実験室スケールの凍結乾燥機で凍結乾燥した。凍結乾燥したサンプルを、+5℃、+25℃および+40℃で12ヶ月まで保管して、タンパク質活性を経時的に評価した。サンプルを1.5 mlの注射用水で再構成し、上記の実験の項に記載した発色アッセイで分析した。結果を表IIに要約する。
【0056】
【表2】

n.a. 分析されず
【0057】
実施例1の結果から、驚くべきことに、製剤1Aは製剤1Bおよび1Cと比較して、経時的により良い活性回収率を示すことから、スクロースとアルギニンの間に相加相乗的な凍結/凍結乾燥防止剤の効果があることが示される。
【0058】
実施例2
上記の実験の項の記載に従って、組み換え第VIII因子を調製した。この実験では、凍結/凍結乾燥防止剤としてスクロース、ならびに、増量剤およびイオン強度プロバイダーとしてアルギニンを有する製剤を調査する。凍結乾燥製剤中の第VIII因子の回収率について、初期濃度150 IU/mlで製剤を調査した。調査した組成を表IIIに示す。
【0059】
【表3】

【0060】
溶液の分割量1.5 mlを、実験室スケールの凍結乾燥機で凍結乾燥した。凍結乾燥したサンプルを、+5℃、+25℃および+40℃で12ヶ月まで保管して、タンパク質活性を経時的に評価した。サンプルを1.5 mlの注射用水で再構成し、上述の実験の項に記載した発色アッセイで分析した。結果を初期値の%として表IVに要約する。
【0061】
【表4】

n.a. 分析されず
【0062】
実施例2の結果から、凍結/凍結乾燥防止剤としてのスクロースとの組み合わせにおいて、アルギニンは、増量剤およびイオン強度プロバイダーとして満足に機能することが示される。
【0063】
実施例3
上記の実験の項の記載に従って、組み換え第VIII因子を調製した。この実験では、界面活性剤としてポロキサマー(Poloxamer)188またはポリソルベート(Polysorbate)80を有する製剤を、界面活性剤を含まない製剤と比較する。凍結/凍結乾燥防止剤は、アルギニンとスクロースの組み合わせであり、塩化ナトリウムは、増量剤およびイオン強度プロバイダーとして使用する。表Vに示す製剤について、凍結乾燥工程にわたる第VIII因子の回収率を、第VIII因子の初期濃度150 IU/mlで調査した。
【0064】
【表5】

【0065】
溶液の分割量1.5 mlを、実験室スケールの凍結乾燥機で凍結乾燥した。凍結乾燥の前にサンプルを取り、冷凍した。分析の前に、凍結乾燥したサンプルを1.5 mlの注射用水で再構成した。第VIII因子活性を、上記の実験の項に記載した発色アッセイで分析した。解凍したサンプルの活性回収率および凍結乾燥工程にわたる活性回収率の結果を表VIに示す。
【0066】
【表6】

【0067】
実施例3の結果から、おそらく解凍工程中および凍結乾燥プロセス中の両者での表面吸着によって起こるタンパク質の喪失に対抗する製剤には、界面活性剤が必要であることが示される。さらに、この実験により、非イオン性ポリマー界面活性剤であるポロキサマー(Poloxamer)188が、臨界ミセル濃度(cmc)以下の濃度で使用される場合に、第VIII因子を凍結乾燥の間、効果的に保護することが示される。保護効果は、非イオン性界面活性剤であるポリソルベート(Polysorbate)80をそのcmc値を超えて使用した場合と同様に高い。
【0068】
実施例4
実施例3では、表面吸着によって起こる第VIII因の活性喪失を避けるための製剤において、界面活性剤が必要であることが示されたが、この実施例では、組み換えアルブミンがこの目的に使用し得るかどうかを調査する。
【0069】
上記の実験の項の記載に従って、組み換え第VIII因子を調製した。表VIIに示す製剤について、溶液中の第VIII因子の活性回収率を、第VIII因子の初期濃度140 IU/mlで調査した。タンパク質製剤は、+25℃で保管し、0、3、7および10日目に上記の実験の項に記載した発色アッセイで分析した。結果を初期値のパーセントとして表VIIIに示す。
【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
実施例4の結果から、組み換えアルブミンが、おそらく表面吸着によって起こる活性喪失に対して、r-第VIII因子活性を保護し得ることが示される。
【0073】
実施例5
実施例3では、おそらく表面吸着によって起こる第VIII因子の活性喪失を避けるための製剤において、界面活性剤が必要であることが示され、実施例4では、溶液中のタンパク質の活性喪失を防ぐために、組み換えアルブミンを使用し得ることが示された。この実施例では、凍結乾燥工程においても、おそらく表面吸着によるタンパク質の活性喪失を、組み換えアルブミンが保護するかどうかを調査する。
【0074】
上記の実験の項の記載に従って、組み換え第VIII因子を調製した。ここでの製剤は非イオン性洗浄剤を含まないが、活性喪失を防ぐために組み換えアルブミンが添加されている。凍結/凍結乾燥防止剤は、アルギニンとスクロースの組み合わせであり、増量剤およびイオン強度プロバイダーとして塩化ナトリウムを使用する。表VIIに示す製剤について、凍結乾燥製剤中の第VIII因子の回収率を、第VIII因子の初期濃度150 IU/mlで調査した。
【0075】
溶液の分割量1.5 mlを、実験室スケールの凍結乾燥機で凍結乾燥した。凍結乾燥したサンプルを、+5℃、+25℃および+40℃で12ヶ月まで保管して、タンパク質活性を経時的に評価する。サンプルを1.5 mlの注射用水で再構成し、上記の実験の項に記載した発色アッセイで分析する。結果を表IXに要約する。
【0076】
【表9】

n.a. 分析されず
【0077】
実施例5の結果から、凍結乾燥工程において、おそらく表面吸着によって起こる活性喪失を避けるために、組み換えアルブミンはr-第VIII因子製剤(製剤4B〜4D)中の非イオン性洗浄剤を代用し得ることが示される。また、組み換えアルブミンは、室温で保管される組み換え第VIII因子の製剤中、界面活性剤として非常に好適に使用されることも示される。
【0078】
実施例6
上記の実験の項の記載に従って、組み換え第VIII因子を調製した。ここでの製剤は、非イオン性洗浄剤を含まないが、おそらく表面吸着による活性喪失を防ぐために、組み換えアルブミンが添加されている。凍結/凍結乾燥防止剤はスクロースであり、増量剤およびイオン強度プロバイダーとして塩化ナトリウムを使用する。表Xに示す製剤について、凍結乾燥製剤中の第VIII因子の回収率を、第VIII因子の初期濃度160 IU/mlで調査した。
【0079】
【表10】

【0080】
溶液の分割量1.5 mlを、実験室スケールの凍結乾燥機で凍結乾燥した。凍結乾燥したサンプルを、+5℃、+25℃および+40℃で6ヶ月まで保管して、タンパク質活性を経時的に評価する。サンプルを1.5 mlの注射用水で再構成し、上記の実験の項に記載した発色アッセイで分析する。結果を表XIに示す。
【0081】
【表11】

n.a. 分析されず
【0082】
実施例6の結果から、凍結乾燥工程において、おそらく表面吸着によって起こる活性喪失を避けるために、組み換えアルブミンは、r-第VIII因子製剤中の非イオン性洗浄剤を代用し得ることが示される。また、組み換えアルブミンは、室温で保管される組み換え第VIII因子の製剤中、界面活性剤として非常に好適に使用されることも示される。
【0083】
実施例7
この実施例では、pH緩衝剤を含まない溶液と比較した、pH緩衝剤としてヒスチジンを含有する溶液中の第VIII因子活性回収率を調査する。
【0084】
上記の実験の項の記載に従って、組み換え第VIII因子を調製した。表XIIに示す溶液について、溶液中の第VIII因子活性の回収率を、第VIII因子の初期濃度100 IU/mlで調査した。
【0085】
【表12】

【0086】
タンパク質製剤を+25℃で保管し、0日および3および7日後に上記の実験の項に記載した発色アッセイにより分析した。結果を初期値のパーセントとして表XIVに示す。
【0087】
【表13】

【0088】
実施例7の結果から、ヒスチジンフリーの製剤は、ヒスチジン含有製剤より良好に第VIII因子を保護することが示される。
【0089】
実施例8
上記の実験の項の記載に従って、組み換え第VIII因子を調製した。この実験では、凍結/凍結乾燥防止剤、増量剤およびイオン強度プロバイダーとしてアルギニンを有する製剤を調査する。製剤について、凍結乾燥製剤中の第VIII因子の回収率を、第VIII因子の初期濃度160 IU/mlで調査した。調査した組成を表XVに示す。
【0090】
【表14】

【0091】
溶液の分割量1.5 mlを、実験室スケールの凍結乾燥機で凍結乾燥した。凍結乾燥したサンプルを、+5℃、+25℃および+40℃で9ヶ月まで保管して、タンパク質活性を経時的に評価した。サンプルを1.5 mlの注射用水で再構成し、上記の実験の項に記載した発色アッセイで分析した。結果を初期値のパーセントとして表XVIに示す。
【0092】
【表15】

n.a. 分析されず
【0093】
実施例8の結果から、アルギニンは、凍結/凍結乾燥防止剤に加えて、増量剤およびイオン強度プロバイダーとしても満足に機能することから、多機能賦形剤であり得ることが示される。
【0094】
参考文献一覧
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度の第VIII因子(r-第VIII因子);
アルギニンおよび/またはスクロース;
第VIII因子の表面吸着を阻害するか、または少なくとも阻害するための界面活性剤;
第VIII因子を特異的に安定化するための量の塩化カルシウム;
を含むヒスチジンフリー組成物。
【請求項2】
アルギニンおよび/またはスクロースが凍結/凍結乾燥防止剤(cryo/lyoprotectant)として働き増量剤としては働かない場合に塩化ナトリウムが増量剤として存在する、請求項1のヒスチジンフリー組成物。
【請求項3】
特にアルギニンが凍結/凍結乾燥防止剤および増量剤として使用される場合には、塩化ナトリウムが実質的に存在しない、請求項1のヒスチジンフリー組成物。
【請求項4】
r-第VIII因子は内因性第VIII因子の欠失誘導体であり、内因性第VIII因子のB-ドメインを部分的に、または完全に失欠している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
凍結乾燥された形態である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
凍結乾燥される溶液の形態、または凍結乾燥組成物および希釈剤から調製された再構成溶液の形態である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
増量剤として約10 mg/ml〜約40 mg/mlの塩化ナトリウムを含み、かつ凍結/凍結乾燥防止剤として約3〜15 mg/mlのスクロースおよび約3〜15 mg/mlのアルギニンを含む、ただし少なくとも6 mg/mlの凍結/凍結乾燥防止剤が存在する、請求項2、および4〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
凍結/凍結乾燥防止剤はアルギニンとスクロースの両方を含み、特に、約3 mg/ml〜約10 mg/mlの、特に約4.5 mg/ml〜約9 mg/mlのスクロース、約3 mg/ml〜約8 mg/mlの、特に約4.5 mg/ml〜約6.8 mg/mlのアルギニン、および約10〜約40 mg/mlのNaCl、特に約15 mg/ml〜約23 mg/mlの塩化ナトリウムを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
スクロースが約10 mg/ml〜約25 mg/mlの量で存在し、かつ塩化ナトリウムが約10 mg/ml〜約40mg/mlの量で存在する、請求項1または2の組成物。
【請求項10】
スクロースを凍結/凍結乾燥防止剤として、かつアルギニンを増量剤として含み、特に約5 mg/ml〜約25 mg/mlのスクロースおよび約20 mg/ml〜約70 mg/mlのアルギニンを含む、請求項3〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
アルギニンが増量剤と凍結/凍結乾燥防止剤の両方として機能する、請求項3〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
アルギニンが約20 mg/ml〜約70 mg/mlの量で存在する、請求項3〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
界面活性剤がタンパク質であり、特に組み換えタンパク質である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
タンパク質は組み換え技術によって製造されたアルブミンであり、特に、その量は約0.5 mg/ml〜約5 mg/mlである、請求項13の組成物。
【請求項15】
界面活性剤は非イオン性界面活性剤である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
界面活性剤は臨界ミセル濃度以下(below)の濃度で存在する、請求項15の組成物。
【請求項17】
非イオン性界面活性剤はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体である、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体の濃度は約0.1 mg/ml〜約5 mg/mlである、請求項17の組成物。
【請求項19】
r-第VIII因子の比活性度は1mgタンパクあたり5000IU以上である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。

【公表番号】特表2012−502004(P2012−502004A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525549(P2011−525549)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061402
【国際公開番号】WO2010/026186
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(500050402)オクタファルマ アクチェン ゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】