説明

組み込まれた熱交換器を有する、人工衛星用の構造用パネル

【課題】組み込まれた熱交換器を有する、人工衛星用の構造用パネルを提供する。
【解決手段】人工衛星の外側にあるように意図された外板(PE)と、前記外板(PE)と固定接触して取り付けられる、少なくとも1つの組み込まれたヒートパイプ(CAL)を含むコア(AM)と、衛星の内側にあるように意図された内板(PI)とを備える、人工衛星用の構造用パネル(PS)であって、冷却液の循環を用いる熱制御回路と組み合わされるのに適合した、一般的な熱交換器が前記構造用パネル(PS)に装備され、前記回路はパネルの外側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人口衛星用、とりわけ通信衛星用の構造用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
人口衛星、とりわけ通信衛星は、特に従来ヒートパイプのネットワークにより形成される、それらの熱制御システムの設計のために、高価な構造を有する。
【0003】
特に各人工衛星の制御システムが独自であるため、衛星構造の製作もまた高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、人工衛星の製作費用を低減し、その熱制御システムを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、外板、及び衛星の内側にあるように意図される内板と固定接触して取り付けられる、少なくとも1つの組み込まれたヒートパイプを備える、衛星用の一般的構造用パネルが提案される。その構造用パネルには、冷却液の循環を用いる熱制御回路と組み合わされるのに適合した、一般的な熱交換器が装備され、前記回路はパネルの外側に位置する。
【0006】
また、そのようなパネルは一般的なもので、衛星の製作費用を低減し、衛星の熱制御システムの生産を容易にできる。これは、より大きなモジュール性を持つこと及び低減された費用を可能にする。
【0007】
前記熱制御回路は、例えば、機械的にポンプで送り込まれる二相の熱回路である。
【0008】
1つの実施形態において、前記熱交換器は少なくとも1つの蒸発器及び1つの凝縮器を備える。
【0009】
従って、機械的にポンプで送り込まれる制御回路又はループ、例えば二相の機械的にポンプで送り込まれるループすなわちMPL、あるいはヒートポンプシステムすなわちHPSを備える、熱制御システムを容易に製作することが可能である。
【0010】
1つの実施形態において、前記凝縮器はパネルのコアの少なくとも1つのヒートパイプに対向している、パネルの外板と接して配置される。
【0011】
代替として、前記凝縮器はパネルのコアの少なくとも1つのヒートパイプと接して配置される。
【0012】
従ってそのような構成は、熱がヒートパイプによりパネル内に分配されるため、凝縮熱交換器の寸法制限を可能にする。このコンパクトな設計により、凝縮器が微小隕石によって衝突される危険性を最小化できる。
【0013】
前記蒸発器は、パネルの内板と接するパネルのコア内に配置されることが有利である。
【0014】
従って散逸装置を構造用パネル上に配置することが相当に容易化される。
【0015】
1つの実施形態において、構造用パネルは、パネル外側の前記熱制御回路の部分として適合するダクトにより、直列及び/又は並列に接続される、少なくとも1組の凝縮器を備える。
【0016】
各パネルは従って、容易に熱制御回路内へ取り付けられ得る。
【0017】
前記複数の凝縮器及びそれらを接続するダクトは、有利には硬化された外壁を備える。
【0018】
コンパクトな凝縮器は、したがって、とりわけ微小隕石による、衝撃から保護される。
【0019】
構造用パネルのコアは、熱的に絶縁性の、又は熱伝導性の材料を含む構造を備え得る。
【0020】
同一の構造用パネル内に組み込まれる交換器、蒸発器、及び凝縮器の熱的分離又は結合が、従ってMPLのループ又はHPSの要求及びタイプに応じて構想され得る。
【0021】
さらに、熱交換器が装備された構造用パネルは、1つ以上の別のパネルと直列及び/又は並列に、液圧で接続されるのに適合している。
【0022】
本発明の別の態様によれば、前述の要求事項の1つに記載の、少なくとも1つの構造用パネルを備えることを特徴とする、人口衛星もまた提案されている。
【0023】
本発明は制限されない例によって記述され、添付図により例証される幾つかの実施形態を調べることによって、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の1つの態様による構造用パネルの、第一軸に沿った断面図を概略的に例証する。
【図2】本発明の1つの態様による構造用パネルの、第一軸に直角な、第二軸に沿った断面図を概略的に例証する。
【図3】本発明の1つの態様による構造用パネルの、内板の正面図を概略的に例証する。
【図4】本発明の1つの態様による構造用パネルの、外板の正面図を概略的に例証する。
【図5a】MPLである二相ループ・タイプの熱制御システムの構成要素としての、本発明の1つの態様による構造用パネルを例証する。
【図5b】HPSであるヒートポンプ・タイプの熱制御システムの構成要素としての、本発明の1つの態様による構造用パネルを例証する。
【0025】
全ての図において、同じ参照記号を有する要素は同様である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、人工衛星の外側にあるように意図されている外板又は壁PEと、外板PEの近くに配置された少なくとも1つのヒートパイプCALを備える、この例ではハニカム構造を有するコアAMと、衛星の内側にあるように意図されている内板又は壁PIとを含む、衛星のための構造用パネルPSの、第一軸に沿った断面図を示す。そのような構造用パネルPSはまた、サンドイッチ・タイプのパネルとも称され得る。この場合、2つの取付け金具PF1及びPF2を備える装置EQPTは、2つのねじ穴付きのインサートINS1とINS2及び、それぞれがねじ穴付きのインサートINS1とINS2内、及び取付け金具PF1及びPF2内へと、ねじ止めされる2つのねじV1とV2を用いて、構造用パネルPSに固定されている。この場合、内板PIの付近にあるコアAM内に配置された蒸発器EVAPと、パネルPSの外部における外板PE上、又は直接ヒートパイプCAL上に配置された凝縮器CONDである、パネルPS内へ組み込まれた熱交換器が示されている。
【0027】
図2は第一軸に直角な、第二軸に沿った断面図を示す。コアAMは例えば厚さ0.1mm〜0.2mmの中間の壁又は板Pintを含むことができ、コアはアルミニウムか、ガラス繊維のような絶縁材料から作られるハニカム構造であり得る。
【0028】
図3は、衛星の内側に相当する、パネルPSの外側から見た、すなわちパネルPSの外側にある内板PIの面の側から見た、パネルPSの内板PIの正面図を示し、そこには例えば、幾つかの構造用パネルPSを一緒に取り付けることを容易にする、入口及び出口を有するコイルタイプの蒸発器EVAPが見られる。例えば、コイルタイプの蒸発器EVAPは、例として2つの異なる温度レベルT1及びT2に規定される、第一の装置EQ1及び第二の装置EQ2から熱を取り出すことができ、T1は約65℃でT2は約85℃である。代替として、その他の直列及び/又は並列の構成が想定され得る。
【0029】
図4は、衛星の外側に相当する、パネルPSの外側から見た、すなわちパネルPSの外側にある外板PEの面の側から見た、パネルPSの外板PEの正面図を示し、そこには例えば2つの整列した一連の凝縮器CONDとして配置された、一組の凝縮器CONDが見られる。各々の一連において、複数の凝縮器CONDはダクトCDTにより接続されている。パネルは任意の組数の凝縮器CONDを含み得る。図4は、冷却液を循環している、パネルの外側の熱制御回路と組み合わされ得る構造用パネルPSを示す。
【0030】
内板PIの内面と接触する(すなわち構造用パネルPSの内板PIと接触する)、これらの構造用パネルPS内に組み込まれた蒸発熱交換器EVAPは、この場合(この例に示される)コイル状である、任意の構成において、一定の間隔で通るパイプを備え得る。それらの配置及びそれらの寸法は、衛星の積載荷重の装置EQPTの取付けの応力に適合する。装置EQPTからの熱は、これらのパイプに伝達され、その内部で循環する冷却液が蒸発する。対流のみの、すなわち二相ではない熱制御システムの幾つかの動作モードにおいて、熱交換が想定され得る。例えば円形、長方形、又は正方形の断面を有するこれらのパイプの内側は、例えば溝又は小さな流路を用いて、熱交換を改善するように構成され得る。この蒸発領域は等温(二相の交換)であり、そしてパイプがパネルPS内へ組み込まれているため、積載荷重の装置EQPTの配置から生じる応力は、2つの温度領域(例えば、65℃に規定される装置の領域と85℃に規定される装置の領域)へと分離された、ヒートパイプを用いる従来の熱制御システムと比較して、大幅に低減される。この配置の柔軟な形態により、積載荷重の装置EQPT用に必要とされる配線長さが短縮され、そして全体的に衛星の積載荷重に対してより良好な無線周波数の性能を持つことが可能になる。
【0031】
蒸発熱交換器EVAPを微小隕石による衝撃の危険性から保護するために、薄い中間の板又は壁Pintが、コアAM内でサンドイッチ・タイプの構造用パネルPSの、内板PIと外板PEの間に設置され得る。このタイプの遮蔽板は、パネルPSを打つ宇宙ごみの衝撃を拡散し、従って蒸発器の導管に穴が開く危険性を最小化出来るようにする。
【0032】
これらの蒸発熱交換器EVAPを組み込んでいる複数のそのようなパネルPSは、パイプ内の全体圧力損失を制限するために、任意の直列及び/又は並列の配置で一緒に接続され得る。
【0033】
使用される凝縮熱交換器CONDは、出来る限り小型である。それらは外側における(すなわち外板PEと接触する)これらのパネルPS内へ組み込まれた、並列ネットワークを形成するヒートパイプCALに固定される。接触から生じる温度勾配を最小化するため、凝縮熱交換器COND及びヒートパイプCALは、また単一体を形成し得る。熱交換器は、その内部が例えば溝又は小さな流路を用いて熱交換を改善するように構成され得る、一般的に円形、長方形、又は正方形の断面を有するパイプであり得る。凝縮熱交換器CONDは、ダクトCDTを形成する導管により、任意の直列及び/又は並列の構成で接続され、この場合は直列に接続された、整列している組により接続されている。そのような凝縮器CONDの配置は、最良の熱流力の妥協を提供し、ヒートパイプCAL上の凝縮器CONDの配置は、ヒートパイプ用の必要な直径の制限を可能にし、それゆえそれらの長さを制限し、それは製作費用を制限する(質量効果の最小化)。直径8〜10mm、すなわち単位長さ当りで小さい質量を持つヒートパイプCALの使用が可能である。熱交換器からの熱は、高い赤外線放射能力を持つコーティングのような適切なコーティング及び、光学的太陽反射鏡(OSR=optical solar reflector)又は裏面ミラー(SSM=second surface mirror)のような、太陽束の低い吸収率の助けにより、熱を効果的に排出する放熱器として機能する、パネルPSの外表面PEにヒートパイプCALを介して伝達される。放熱コーティングとして白色塗料の使用もまた想定され得る。
【0034】
凝縮熱交換器CONDを微小隕石の衝撃の危険性から保護するため、壁は硬化される必要があるが、選ばれる凝縮熱交換器は小型(最小化された露出表面積)であるため、硬化は比較的薄い壁を伴う。複数の凝縮熱交換器CONDを接続するダクトCDTの壁もまた、微小隕石による衝撃に耐えるように硬くされる。構造用パネルの質量に対する、この硬化の影響を制限するため、熱流力応力が尊重され得る限り、小さい断面を有するダクトCDTが好ましい。
【0035】
これらの凝縮熱交換器CONDを組み込んだ、構造用パネルPSの組は、例えば放射の排出条件に関して最適で自然な熱的結合を実現するため、一緒に並列接続され得る。
【0036】
熱交換器を有するこのタイプのパネルは、MPLの二相ループ・タイプあるいはHPSのヒートポンプ・タイプの、2つの機械的にポンプで送り込まれる制御回路又はループ用に使用され得る、一般的な寸法を有することができる。
【0037】
図5aに例証されるように、MPL回路が使用される場合、ポンプPp及び熱流力のアキュムレータ又はタンクRは、冷却液がループ内を循環する方向に見て、蒸発熱交換器EVAPの上流にある熱交換器に接続される。さらに、過冷却器SRが凝縮器CONDとポンプPpとの間に配置され、ポンプ入口において流体に対する十分なレベルの過冷却を確実にする(それはキャビテーションを防止する)。パネルPSのコアAMは、ループが等温で機能するようアルミニウムを含むことができ、それによりパネルPSの内板PIと外板PE間の熱放散の問題が最小限になる。
【0038】
図5bに例証されるように、HPS回路が使用される場合、冷却液がループ内を循環する方向に見て、圧縮機COMPが蒸発熱交換器EVAPの下流に配置され、減圧弁DETが凝縮熱交換器CONDの下流及び蒸発熱交換器EVAPの上流に配置される。さらに、冷凍サイクルの効率を高めるため、過冷却器SRが凝縮器CONDと減圧弁DETとの間に配置され得る。パネルPSの表面積が、MPL回路を有する積載荷重の装置EQPTにより放出される、熱エネルギー全体の散逸を排出するのに十分ではないとき、HPS回路は特に有利である(放熱器の温度上昇の結果としての排出容量の増加)。HPS回路が使用されるとき、衛星のパネルPSの外板PEの温度は、内板PIの温度よりも高くなり得る。パネルPSのコアAMは、それゆえ、絶縁効果を伴って設計され、そして例えば、パネルPSの2つの板又は壁PI、PEの間の熱放散を最小化するため、ガラス繊維の設計を有する。
【0039】
冷却液を形成するアンモニアが、MPLシステム及びHPSシステムの双方に対して想定され得るため、パネルPS内へ組み込まれる熱交換器の設計は、これら2つのタイプの熱制御に関して同一であり得る。
【符号の説明】
【0040】
V1 ねじ
V2 ねじ
EQPT 装置
PF1 取付け金具
PF2 取付け金具
INS1 ねじ穴付きのインサート
INS2 ねじ穴付きのインサート
AM コア
PI 内板
PE 外板
PS 構造用パネル
CAL ヒートパイプ
COND 凝縮器
EVAP 蒸発器
Pint 中間の板又は壁
CDT ダクト
EQ1 第一の装置
EQ2 第二の装置
SR 過冷却器
R 熱流力のアキュムレータ又はタンク
Pp ポンプ
DET 減圧弁
COMP 圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星の外側にあるように意図された外板(PE)と、前記外板(PE)と固定接触して取り付けられる、少なくとも1つの組み込まれたヒートパイプ(CAL)を含むコア(AM)と、前記衛星の内側にあるように意図された内板(PI)とを備える、人工衛星用の一般的な構造用パネル(PS)であって、冷却液の循環を用いる熱制御回路と組み合わされるのに適合した、一般的な熱交換器が装備され、前記回路が前記パネル(PS)の外側に位置することを特徴とする構造用パネル(PS)。
【請求項2】
前記熱制御回路が機械的にポンプで送り込まれる二相の熱回路である、請求項1に記載の構造用パネル(PS)。
【請求項3】
前記熱交換器が、少なくとも1つの蒸発器(EVAP)及び1つの凝縮器(COND)を備える、請求項1又は2に記載の構造用パネル(PS)。
【請求項4】
前記凝縮器(COND)が、前記パネル(PS)の前記コア(AM)の少なくとも1つのヒートパイプ(CAL)に対向している、前記パネルの前記外板(PE)と接して配置される、請求項3に記載の構造用パネル(PS)。
【請求項5】
前記凝縮器(COND)が、前記パネルの前記コア(AM)の少なくとも1つのヒートパイプ(CAL)と接して配置される、請求項3に記載の構造用パネル(PS)。
【請求項6】
前記蒸発器(EVAP)が、前記パネル(PS)の前記内板(PI)と接して、前記パネルの前記コア(AM)内に配置される、請求項3〜5のいずれか一項に記載の構造用パネル(PS)。
【請求項7】
前記パネルの外側の、前記熱制御回路の部分として適合するダクト(CDT)により、直列及び/又は並列に接続される、少なくとも1組の凝縮器(COND)を備える、請求項3〜6のいずれか一項に記載の構造用パネル(PS)。
【請求項8】
前記凝縮器(COND)及びそれらを接続する前記ダクト(CDT)が、硬化された外壁を備える、請求項7に記載の構造用パネル(PS)。
【請求項9】
前記構造用パネルの前記コア(AM)が、熱的に絶縁性の、又は熱伝導性の材料を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の構造用パネル(PS)。
【請求項10】
1つ以上の別のパネルと直列及び/又は並列に、液圧で接続されるのに適合した、請求項1〜9のいずれか一項に記載の構造用パネル(PS)。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の、少なくとも1つの構造用パネル(PS)を備えることを特徴とする人工衛星。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公開番号】特開2012−192916(P2012−192916A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−57378(P2012−57378)
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】