組体用鍵槍型エレメントの成形治具および成形方法
【課題】未加硫ゴム紐を支持ピンにわたり張り込み架け渡すセット作業の簡易化、迅速化を図り、しかも、安定させた形状固定(クセ付け)を可能にした鍵槍型編組体用エレメントの成形治具および成形方法を提供する。
【解決手段】補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐bを、連続ジグザグ状に張り込み架け渡す各支持ピン2に、未加硫ゴム紐bを張り込み掛け渡し方向に誘導する紐架渡し案内部材3を回転可能にそれぞれ備えている。そして、紐架渡し案内部材3が、各支持ピン2の軸方向に多段状で回転可能に備えられて、未加硫ゴム紐bが、各支持ピン2の紐架渡し案内部材3にわたり連続ジグザグ状で、なおかつ、各支持ピン2の軸方向の多段状に取り付けられている各段の紐架渡し案内部材3にわたり折り返し多段状に張り込み架け渡されるように構成されている。
【解決手段】補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐bを、連続ジグザグ状に張り込み架け渡す各支持ピン2に、未加硫ゴム紐bを張り込み掛け渡し方向に誘導する紐架渡し案内部材3を回転可能にそれぞれ備えている。そして、紐架渡し案内部材3が、各支持ピン2の軸方向に多段状で回転可能に備えられて、未加硫ゴム紐bが、各支持ピン2の紐架渡し案内部材3にわたり連続ジグザグ状で、なおかつ、各支持ピン2の軸方向の多段状に取り付けられている各段の紐架渡し案内部材3にわたり折り返し多段状に張り込み架け渡されるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菱目網に編み組みされて形成される編組体用鍵槍型エレメントの成形治具および成形方法に係り、詳しくは、補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐を、可撓性を有する編組体用鍵槍型エレメントに加硫成形する際に、未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に張り込み掛け渡してセットする成形治具と、その成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
菱目網に編み組みされて形成される編組体として、フェンスネット、法面落石・崩落防止用ネット、あるいは河川工事用のじゃかごなどが一般的に知られている。これらは主に、ポリエチレン被覆鉄線、ビニル被覆鉄線、亜鉛メッキ鉄線、あるいはステンレス鋼線などから形成されている。
【0003】
また、消波などの用途(目的)で海岸などに設置されるテトラポットなどのコンクリート二次成形品は、海岸の原風景である白砂青松を破壊するなどの景観的にも自然環境にマッチしないことから、コンクリート二次成形品に代わるものとして、自然石を詰め込んだ金網からなる石詰め枠などを引き詰める、あるいは、引き詰めた自然石群に金網を被せてアンカー止めするなどによって、自然石ブロックを海岸に設置する施工法などが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−27151号公報(段落番号0022、0030〜0031、および図1参照)
【特許文献2】特開2001−336156号公報(段落番号0016、0019〜0021、および図1、図3参照)
【特許文献3】特開2005−171687号公報(段落番号0014〜0016、および図1〜図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の護岸施工法では、いずれも金網を使用しているために、短期間で錆び易く、錆び付いた金網が護岸表面に現れる。また、腐食が進行して切断などの破損(崩壊)を引き起こすなどの問題点があった。
【0006】
そこで、本出願人は、補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐を、加硫処理するための成形治具に連続ジグザグ状に張り込み掛け渡し、加硫成形することで、可撓性を有する連続ジグザグ状に形状固定(クセ付け)された編組体用鍵槍型エレメントを開発し、この編組体用鍵槍型エレメントを菱目編に編み組みして形成されるフェンスネット、法面落石・崩落防止用ネット、そして自然石ブロックを海岸や法面に設置するための自然石を詰め込む護岸形成用網袋や法面形成用網袋などの網容器を作るなどの用途として使用することができる編組体を先に提案している。
この編組体は、耐摩耗性、高抗張力、耐海水性、耐候性、可撓性を有し、しかも、菱形網目であるために網目が崩れ難く、切れたときには切れた部分のみの取替えが可能で、さらには、菱形網目の編部(絡み部)が無結節であるために加硫ゴム紐がジグザグ方向に伸びるなどからコンパクトな運搬が可能であるなどの利点があり、高い評価が得られている。
【0007】
ところが、この編組体用鍵槍型エレメントを製作する従来の成形治具は、多数本の支持ピンを、略矩形形状の治具ベースの長さ方向に略千鳥配列状に突設している構成であっために、各支持ピンにわたり未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に張り込み架け渡すときのセット作業性が悪く、非常に時間が掛かるものとなっていた。これは、支持ピンに対する未加硫生ゴムの摺動性の悪さが原因となっていた。
また、生産性を上げるために、1本の未加硫ゴム紐を軸方向に多段状に張り込み架け渡すことができる長さ(高さ)の支持ピンを治具ベースに略千鳥配列状に突設してなる成形治具が用いられる。
つまり、治具ベースの長さ方向一側の支持ピンから長さ方向他側の支持ピンへとわたり未加硫ゴム紐を張り込み掛け渡して一段目の張り込みを行った後に、当該他側の支持ピン側にて未加硫ゴム紐を折り返してこの支持ピンから一側の支持ピンへと張り込み架け渡す二段目の張り込みを行い、さらに、当該一側の支持ピン側にて未加硫ゴム紐を折り返して他側の支持ピンにわたり張り込み架け渡すセット作業が順次に繰り返されることで、1台の成形治具(支持ピン)に未加硫ゴムが多段状に張り込み掛け渡されて、加硫処理による形状固定(クセ付け)が行われるものであるが、従来の成形治具の支持ピンには多段状に張り込まれている未加硫ゴム紐を軸方向に分離(分断)する構造(機能)を備えていない。
そのために、従来では、各支持ピンにわたり未加硫ゴム紐を張り込み架け渡すときに、未加硫ゴム紐同士が接触しないように、1本1本を軸方向に離しながら未加硫ゴム紐を多段状に張り込み架け渡すセット作業を行わなければならないために、この点も作業性を悪くして時間が掛かる大きな原因になっていた。
【0008】
また、従来の成形治具の支持ピンに対し、前記したように、未加硫ゴム紐の摺動性が悪いために、加硫処理時に収縮する未加硫ゴム紐の軸方向(紐方向)の動きに対応させることができない。そのために、未加硫ゴム紐の形状固定(クセ付け)が安定しないものとなっていた。
換言すれば、各支持ピンにわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡される未加硫ゴム紐の支持ピン間における張り込み状態(架橋状態)に収縮に見合った余裕を持たせることが、未加硫ゴム紐を収縮にバラツキがない状態で安定的に形状固定することができる。
しかし、伸縮に見合った余裕を持たせながら、各支持ピンにわたり未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に張り込み掛け渡すには長年の経験と技術が要求されるために、誰でもできるわけではなく、また、手間が掛かるなどの困難な作業となっている。
【0009】
本発明は、従来の成形治具が抱えていた前記課題を解消するために創案されたものであり、未加硫ゴム紐を支持ピンにわたり張り込み架け渡すセット作業の簡易化、迅速化を図り、しかも、安定させた形状固定(クセ付け)を可能にしたネットフェンス、法面落石・崩落防止ネット、そして、海岸において引き詰められた自然石群に被せるようにアンカー止めされるネットや自然石を詰め込む護岸形成用網袋などとして好適な編組体用鍵槍型エレメントの成形治具および成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具は、補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐を、連続ジグザグ状に張り込み架け渡す多数本の支持ピンを、略矩形形状の治具ベースの長さ方向に略千鳥配列状に突設している編組体用鍵槍型エレメントの成形治具であって、
前記各支持ピンに、前記未加硫ゴム紐を張り込み掛け渡し方向に誘導する紐架渡し案内部材を回転可能にそれぞれ備えていることを特徴とする。
ここで、前記紐架渡し案内部材が、前記各支持ピンの軸方向に多段状に備えられて、前記未加硫ゴム紐が、前記各支持ピンに連続ジグザグ状で、軸方向に折り返し多段状に張り込み架け渡されるように構成されていることが好適なものとなる。
また、前記紐架渡し案内部材は、前記未加硫ゴム紐が収まる程度の深さと開口の紐受け凹部を周面に有する略太鼓型形状に形成されていることがさらに好適なものとなる。
【0011】
また、本発明の編組体用鍵槍型エレメントの成形方法は、前記の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具を用いた編組体用鍵槍型エレメントの成形方法であって、
前記治具ベースの長さ方向一側に突設されている前記支持ピンの前記紐架渡し案内部材から前記未加硫ゴム紐の紐端を引き込み、前記治具ベースの長さ方向他側に突設されている前記支持ピンの前記紐架渡し案内部材に向けて、前記未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に順次に張り込み架け渡すようにしたことを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、未加硫ゴム紐を、各支持ピンにわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡すときに、未加硫ゴム紐の紐端を、治具ベースの長さ方向一側の支持ピンの紐架渡し案内部材から次の支持ピンの紐架渡し案内部材へと引き込んで、未加硫ゴム紐を他側の支持ピンに向けて張り込み架け渡すように、未加硫ゴム紐を治具ベース内に引き込む。
このとき、各支持ピンの紐架渡し案内部材は、未加硫ゴム紐の治具ベース内への引き込みによって未加硫ゴム紐との接触により回転する。また、各支持ピンの紐架渡し案内部材が、周面に紐受け凹部を有する略太鼓型形状に形成されていることで、回転に加えて、未加硫ゴム紐を紐受け凹部で受け止めることができるために、未加硫ゴム紐が、支持ピンの軸方向に多段状に張り込み架渡されるとき、未加硫ゴム紐同士の接触を防ぎ、未加硫ゴム紐を支持ピンの軸方向に等間隔にて分離保持することができる。
これにより、未加硫ゴム紐を各支持ピンにわたり連続ジグザグ状に張り込み掛け渡すためのセット作業の迅速化を期待することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具および成形方法によれば、未加硫ゴム紐を各支持ピンに張り込み架け渡すときのセット作業の簡易化、迅速化を図ることができる。
これにより、生産性の向上と、生産コストの削減を期待することができる。加えて、手作業による細かなセット作業がなくなることで、作業者に対する労力の軽減なども図ることができる。ひいては、未加硫ゴム紐をその紐端から治具ベースの長さ方向に引き込むことで、各支持ピンにわたり未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に張り込み架け渡すことができるために、ロボットなどによるセットをも可能とすることができる。
【0014】
また、加硫処理されるとき、多段状に張り込み架け渡されている未加硫ゴム紐同士が接触された状態で処理されるおそれがないことから、接着による不良品の発生を抑制することができる。しかも、未加硫ゴム紐の収縮を回転可能な紐架渡し案内部材によって対応させることができるために、未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に形状固定(クセ付け)することを安定的に行うことができる。つまり、品質を安定させた連続ジグザグ状の鍵槍型エレメントを成形することが可能となる。
【0015】
このように、本発明によれば、未加硫ゴム紐を支持ピンにわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡すセット作業の簡易化、迅速化を図り、しかも、安定させた形状固定(クセ付け)を可能にしたネットフェンス、法面落石・崩落防止ネット、そして、海岸において引き詰められた自然石群に被せるようにアンカー止めされるネットなどとして好適な編組体用の鍵槍型エレメントの成形治具および成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る編組体用鍵槍型エレメントの成形治具を示す平面図である。
【図2】図1のII―II線拡大縦断面図である。
【図3】図1のIII―III線拡大縦断面図である。
【図4】同成形治具の紐引き込み側を部分的に拡大して示す側面図である。
【図5】治具ベース上に幅方向二列に並設させた各支持ピンの紐架渡し案内部材にわたり連続ジグザグ状で、各段の紐架渡し部材に段階的に1本の未加硫ゴム紐を張り込み架け渡すときの各状態をそれぞれ示す平面図であり、(a)は、1本の未加硫ゴム紐を治具ベース内に引き込むときの最初の状態を示し、(b)は、一列目の各支持ピンの一段目の紐架渡し案内部材にわたり張り込み架け渡した後に、二列目の各支持ピンの一段目の紐架渡し案内部材に連続して張り込み掛け渡すために未加硫ゴム紐の紐端を一列目側から二列目方向に折り返した状態を示す。
【図6】図5の続きを示す平面図であり、(c)は、二列目の各支持ピンの紐架渡し案内部材にわたり未加硫ゴム紐を張り込み架け渡した後に、一列目の各支持ピンの二段目の紐架渡し案内部材に連続して張り込み掛け渡すために未加硫ゴム紐の紐端を先頭に折返し誘導部にわたして折り返した状態を示し、(d)は、並設する一列目と二列目の各支持ピンの一段目から五段目の全ての紐架渡し案内部材にわたり未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状で、軸方向に段階的に1本の未加硫ゴム紐を張り込み架け渡して張り込み作業が終了した状態を示す。
【図7】加硫処理により連続ジグザグ状に形状固定(クセ付け)されて成形治具から外された鍵槍型エレメントの形状図である。
【図8】図7に示す編組体用鍵槍型エレメントを、菱目が一列になるように編み絡めた状態を示す説明図である。
【図9】図7に示す2つの編組体用鍵槍型エレメントで二列目の菱目ができるように編み組み込んだ状態を示す同説明図である。
【図10】図7に示す編組体用鍵槍型エレメントを複数用いて所望の大きさを有するネット状に編み組み込んだ状態で、さらに端部の絡みが解けないようにループ状に閉じてなる編組体の正面図である。
【図11】図10に示す編組体を円筒状に丸め、さらに1つの鍵槍型エレメントを用いて網容器となるように編み組み込まれる途中の状態を示す説明図である。
【図12】円筒状に編み組みされた状態からさらに底部を編み組してなる網容器の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る編組体用鍵槍型エレメントの成形治具を示す平面図であり、図2は、同拡大縦断面図であり、図3は、同成形治具の紐引き込み側を部分的に拡大して示す側面図である。
【0018】
≪成形治具の構成≫
成形治具Aは、補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐bを後記の各支持ピン2にわたり連続ジグザグ状に張り込みセットさせた状態で、加硫缶で所定の圧力と温度を保って所定時間加熱・加圧する加硫処理を行うことにより、未加硫ゴム紐bを連続ジグザグ状に形状固定(クセ付け)する。つまり、未加硫ゴム紐bから可撓性を有する連続ジグザグ状の鍵槍型エレメントBを成形するための治具である。
この成形治具Aは、図1に示すように、治具ベース1と、この治具ベース1上に千鳥配列状に突設される多数本の支持ピン2とを備えて構成されている。
治具ベース1および支持ピン2は、金属その他の耐熱性・耐腐蝕性材料などによってそれぞれ形成されている。
【0019】
治具ベース1は、図1に示すように、多数本の支持ピン2が、長さ方向に略千鳥配列状で、同配列形態が対称的配置にて幅方向二列に並設されるように、所定の長さと幅を有する平面視で略矩形形状に形成されている。
【0020】
支持ピン2は、未加硫ゴム紐bを軸方向に多段状に、例えば、図2に示すように、軸方向に5段にて張り込み掛け渡すことができる程度の長さ(高さ)に形成されている。
この支持ピン2は、下端側が治具ベース1に植設や溶接されるなどによって、治具ベース1の長さ方向に所定の間隔をおいて略千鳥配列状で、同配列形態が対称的配置にて治具ベース1の幅方向二列に並設されるように突設される。
なお、この支持ピン2の治具ベース1に対する略千鳥配列は、後記の図7に示すように、略二等辺三角形状の波型屈曲部5を有する編組体用鍵槍型エレメント(以後、「鍵槍型エレメント」と称する)Bが得られる間隔とすることが好適となる。
【0021】
そして、このようにして治具ベース1の長さ方向に略千鳥配列状で、同配列形態が対称的配置にて幅方向二列に並設される各支持ピン2には、図1および図2に示すように、紐架渡し案内部材3が回転可能にそれぞれ備えられる。
これにより、後記の図5から図6に示すように、治具ベース1の長さ方向一側の紐引き込みM側(図1において紙面右側)から紐端b−1を先行させて治具ベース1内に引き込まれる未加硫ゴム紐bが、当該紐引き込みM側の支持ピン2から治具ベース1の長さ方向他側の紐折返しN側(図1において紙面左側)の支持ピン2に向け、さらに、当該紐折返しN側の支持ピン2から折り返されて引き込み側の支持ピン2に向けて順次に張り込み架け渡されるようにしている。
【0022】
≪紐架渡し案内部の構成≫
紐架渡し案内部材3は、治具ベース1の紐引き込みM側から紐端b−1を先行させて治具ベース1内に引き込まれる未加硫ゴム紐bが、当該紐引き込みM側の支持ピン2から紐折返しN側の支持ピン2に向けて張り込み架け渡されるときに、回転によって未加硫ゴム紐bを滑らかに張り込み掛け渡し方向に案内する役目、また、未加硫ゴム紐bが加硫処理されるときの収縮する動きを、隣り合う支持ピン2の間だけではなく、連続ジグザグ状に張り込み架け渡されている全ての支持ピン2相互間に均等に伝播(吸収)させる役目、さらに、支持ピン2の軸方向における未加硫ゴム紐b同士の接触を防ぐなどの役目を果たす。
この紐架渡し案内部材3は、各支持ピン2の軸方向に、その起立基端から所定の間隔をおいて多段状、例えば、図2に示すように、軸方向に5段にて回転可能に取り付けられるものである。
【0023】
紐架渡し案内部材3は、金属材料、合成樹脂材料その他の耐熱性・耐腐蝕性材料によって未加硫ゴム紐bの太さよりも厚く、所望の外径を有する略円盤形状に形成されて、支持ピン2に回転可能で、軸方向に移動不動に取り付けられる。
なお、図示を省略しているが、材質によっては紐架渡し案内部材3を支持ピン2に対し、ベアリングなどの回転支持体を介して回転可能で、軸方向に移動不動に取り付けることができる。
【0024】
そして、紐架渡し案内部材3は、図2に示すように、所望の太さにて輪切り断面で略円形状を呈する未加硫ゴム紐bが係合する紐受け凹部4を周面に有する略太鼓型形状に形成されている。
【0025】
紐受け凹部4は、図2に示すように、未加硫ゴム紐bの太さ(輪切り断面形状)の略半分程度の深さと開口を有する略半円形状にて紐架渡し案内部材3の周面全周に形成されている。
これにより、未加硫ゴム紐bが治具ベース1の長さ方向の各支持ピン2にわたり張り込み架け渡されるときに、例えば、Vプーリーに対してVベルトが係合されるように、未加硫ゴム紐bが紐受け凹部4に係合されて張り込み方向に引き込まれるその移動に伴い紐架渡し案内部材3が回転することで、未加硫ゴム紐bが、張り込み方向に接触抵抗などを受けることなく、紐架渡し案内部材3によって滑らかに移動可能で、かつ、支持ピン2の軸方向に移動不能に支持されて張り込み架け渡されるようにしている。
【0026】
また、本実施形態における成形治具Aは、図1、図3および図4に示すように、治具ベース1の紐引き込みM側(未加硫ゴム紐bが各支持ピン2にわたり張り込み架け渡されるときの始端側および終端側)に、未加硫ゴム紐bを各支持ピン2の軸方向(高さ方向)に段階的に誘導するための折返し誘導部材6が、誘導ピン7に回転可能に支持されて備えられている。
この折返し誘導部材6は、例えば、各支持ピン1における一段目(最下段)の全ての紐架渡し案内部材3に連続ジグザグ状に張り込み架け渡されてきた未加硫ゴム紐bが、治具ベース1の長さ方向一側に戻されて、当該一側の二段目の紐架渡し案内部材3に折り返し連続して引き込まれるときに(後記図6の(c)参照)、その折り返しと二段目の紐架渡し案内部材3への未加硫ゴム紐bの移行をスムーズに誘導する役目を果たす。
【0027】
折返し誘導部材6は、図3および図4に示すように、未加硫ゴム紐bの太さ(輪切り断面外形形状)の1.5〜2倍程度の厚さで紐架渡し案内部材3と略同じ程度の外径を有する略円盤形状で、周面全周にわたり紐折返し凹部8を有する略太鼓型形状に形成されている。
【0028】
紐折返し凹部8は、図3に示すように、未加硫ゴム紐bの太さの略半分程度の深さで、同太さの1.5倍程度の開口幅を有する略縦長半円形状にて折返し誘導部材6の周面全周に形成されている。
【0029】
そして、このように形成されている折返し誘導部材6は、治具ベース1の紐引き込みM側において幅方向中心部位に並列状に突設されている2本の誘導ピン7の軸方向に対し、図3および図4に示すように、各支持ピン2の一段目(最下段)と二段目、二段目と三段目、三段目と四段目、四段目と五段目(最上段)、それぞれの紐架渡し案内部材3の間にそれぞれ位置するように回転可能で、軸方向に移動不動に取り付けられる。
これにより、各支持ピン2の一段目(最下段)の紐架渡し案内部材3側から段階的に五段目(最上段)の紐架渡し案内部材3へと張り込み架け渡される未加硫ゴム紐bが、各段の折返し誘導部材6によって連続して折り返されて二段目以降の各紐架渡し案内部材3へとスムーズに誘導されるようにしている。
【0030】
ちなみに、未加硫ゴム紐bは、高抗張力を有する補強繊維芯材(合成繊維芯材)を生ゴム(被覆ゴム)で被覆してなるものである。
補強繊維芯材の一例を挙げるならば、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいはポリエステル繊維などの単線または撚線から選択することができる。そして、この補強繊維芯材の種類、太さなどは、用途目的などに応じて選ばれる。
一方、生ゴムの一例を挙げるならば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)などから選択することができる。
【0031】
[成形方法の説明]
つぎに、以上のように構成されている成形治具Aを用いた本実施形態に係る鍵槍型エレメントBの成形方法について説明する。
図5および図6は、成形治具の各支持ピンに多段状に備えられている各段の紐架渡し案内部材にわたり1本の未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状で、かつ、段階的に張り込み架け渡すときの張り込み手順をそれぞれ示す平面図である。
【0032】
まず、図5の(a)に示すように、未加硫ゴム紐bの紐端b−1を先頭にして、折返し誘導部材6が配設されている治具ベース1の紐引き込みM側における幅方向一列目側の各支持ピン2の一段目の紐架渡し案内部材3から未加硫ゴム紐bを治具ベース1内に引き込む。そして、未加硫ゴム紐bを、各支持ピン2の一段目の各紐架渡し案内部材3にわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡していく。このとき、各紐架渡し案内部材3は、紐受け凹部4に係合されて張り込み架け渡し方向に引き込まれる未加硫ゴム紐bの引き込み移動によって回転する。
これにより、未加硫ゴム紐bを、治具ベース1の紐引き込みM側から紐折返しN側へと速やかに張り込み架け渡すことができる。
【0033】
そして、図5の(b)に示すように、紐端b−1を先頭にして未加硫ゴム紐bを治具ベース1の紐折返しN側へと張り込み架け渡してきたところで、幅方向二列目側の各支持ピン2の一段目の核紐架渡し案内部材3へと張り込みを移行させるように、紐端b−1を先頭に未加硫ゴム紐bを折り返し、治具ベース1の紐引き込みM側に向けて二列目側の各支持ピン2の一段目の各紐架渡し案内部材3にわたり未加硫ゴム紐bを連続ジグザグ状に張り込み架け渡す。
【0034】
このようにして、一列目と二列目の各支持ピン2の一段目の各紐架渡し案内部材3にわたり未加硫ゴム紐bを張り込み架け渡して一段目の各紐架渡し案内部材3への張り込み架け渡しセットを行って紐端b−1を先頭にして未加硫ゴム紐bが、治具ベース1の紐引き込みM側に戻されてきたところで、図6の(c)に示すように、当該紐引き込みM側に配設されている2本の誘導ピン7の一段目の折返し誘導部材6に未加硫ゴム紐bを架け渡しながら、紐端b−1を一列目の支持ピン2の二段目の紐架渡し案内部材3へ向けて引き込むように、未加硫ゴム紐bを折り返す。
このとき、折返し誘導部材6は、未加硫ゴム紐bの太さよりも幅広く開口する紐折返し凹部8を周面に備えていることで、未加硫ゴム紐bは、折返し誘導部材6の回転と紐折返し凹部8によって二列目側の一段目の紐架渡し案内部材3から一列目側の二段目の紐架渡し案内部材3へと速やかに折り返し移行されて行く。
【0035】
一段目の折返し誘導部材6によって一列目側の支持ピン2の二段目の紐架渡し案内部材3へと紐端b−1を先頭にして折り返し移行されてきた未加硫ゴム紐bを、前記一段目と同じく二段目の各紐架渡し案内部材3にわたり張り込み架け渡し、そして、同じく三段目、四段目、五段目の各紐架渡し案内部材3にわたり未加硫ゴム紐bを折り返し、折り返し移行させながら張り込み架け渡すセット作業が順次に繰り返されることで、図6の(d)、そして図3および図4に二点鎖線で示すように、成形治具Aへの未加硫ゴム紐bの張り込みセットが終了する。
そして、図6の(d)に示すように、二列目の五段目の各紐架渡し案内部材3に張り込み架け渡されて治具ベース1の一側に戻されてきた未加硫ゴム紐bは、先頭で治具ベース1に引き込まれた未加硫ゴム紐bの紐端b−1側と同じ長さを残して切断される。未加硫ゴム紐bの切断された紐端b−2および先頭で引き込まれた紐端b−1は、本出願人が先に提案している特願2008−26343号の明細書の段落番号0016、0031に記載され、同特願2008−26343号の図2および図11に示されている固定手段などを用いて治具ベース1に固定される。
【0036】
図7は、加硫処理されて形状固定(クセ付け)された鍵槍型エレメントを示す形状図である。
このようにして、成形治具Aの各支持ピン2の各段の紐架渡し案内部材3に連続張り込み架け渡されてセットされた未加硫ゴム紐bは、加硫缶にて加硫処理される。例えば、約2026hPa〜5066hPaの圧力で、100℃〜160℃の温度で、30分〜90分加熱する加硫処理が行われることで、形状固定(クセ付け)される。そして、形状固定された加硫ゴム紐は、成形治具Aの折返し誘導部材6においてループ部が切断されることで、それぞれ分離された鍵槍型エレメントBとして成形治具Aから外される。
【0037】
つぎに、このようにして成形治具Aを用いて形状固定された複数の鍵槍型エレメントBが編み組みされて得られる編組体Cについて簡単に説明する。
図8は、図7に示す編組体用鍵槍型エレメントを、菱目が一列になるように編み絡めた状態を示す説明図であり、図9は、図7に示す2つの編組体用鍵槍型エレメントで二列目の菱目ができるように編み組み込んだ状態を示す同説明図であり、図10は、図7に示す編組体用鍵槍型エレメントを複数用いて所望の大きさを有するネット状に編み組み込んだ状態で、さらに端部の絡みが解けないようにループ状に閉じてなる編組体の正面図である。
成形治具Aから外された連続ジグザグ状の鍵槍型エレメントBは、本出願人が先に提案している特願2008−26343号の明細書の段落番号0033に記載され、同特願2008−26343号の図12〜図17に示されているように、波型屈曲部5の屈曲部5aを絡めて複数の鍵槍型エレメントBを次々に編み組み込まれる。そして、最後に、各鍵槍型エレメントBの端部B−1,B−2の交差部を平行なすれ違い状態に並べ直してカシメ連結具9などを用いてループ状にカシメ連結することで、図10に示すような所望の大きさを有するネット状の編組体Cが形成される。
このネット状の網組体Cは、海岸において引き詰められた自然石群に被せるようにアンカー止めされるネットや法面落石・崩落防止用ネットなどとして利用される。
【0038】
図11は、図10に示す編組体を円筒状に丸め、さらに1つの編組体用鍵槍型エレメントを用いて網容器となるように編み組み込まれる途中の状態を示す説明図であり、図12は、円筒状に編み組み込まれた状態からさらに底部を編み組してなる網容器の一例を示す概略斜視図である。
そして、このようにして得られるネット状の網組体Cは、特願2008−26343号の明細書の段落番号0034に記載され、図11および図12に示されているように、エンドレスな円筒状になるように丸め、1つ鍵槍型エレメントBを用いて絡ませた後に、さらに紐状体10を用いて筒方向一端の底部を絡みつけ絞り込むことで、有底円筒状の網容器Dが形成されるものである。そして、網容器Dは、他端開口部側の開口部を閉じるための紐状体11を備えている。
この網容器Dは、自然石などを詰め込む護岸形成用網袋や法面形成用網袋などとして利用される。つまり、自然石などを網容器D内に詰め込んだ後に、網容器Dの他端開口部を紐状体11によって絞り込んで閉じる。
【0039】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した実施形態に限られるものではなく、請求項1から請求項4に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれるものである。
例えば、成形治具Aの各支持ピン2に備えられる紐架渡し案内部材3は、周面に紐受け凹部4を設けずに、未加硫ゴム紐bの太さに相当する厚さの単純な円盤型形状に形成して支持ピン2の軸方向に回転多段状に備えることができる。この場合、円盤周面が未加硫ゴム紐bを張り込み架け渡し方向に案内する紐案内面として作用する。
【0040】
また、紐架渡し案内部材3は、各支持ピン2の軸方向に未加硫ゴム紐bを分離する平板リング形状(板状)に形成して、未加硫ゴム紐bの太さに相当する間隔をおいて各支持ピン2の軸方向に回転多段状に備えることができる。この場合、未加硫ゴム紐bは、各支持ピン2にわたり張り込み架け渡されるときに、平板リング形状の紐架渡し案内部材の上に乗って、該紐架渡し案内部材の回転によって各支持ピン2にわたり張り込み架け渡されることとなる。
【0041】
さらに、紐架渡し案内部材3は、未加硫ゴム紐bの太さに相当する高さ(長さ)を有して各支持ピン2に回転可能に備えられる回転体と、この回転体の下端縁に備えられる紐載承リング部とから形成することができる。
【0042】
また、未加硫ゴム紐bを、成形治具Aの各支持ピン2の各段の紐架渡し案内部材3に段階的に張り込み架け渡すときの手順としては、各支持ピン2の最上段の紐架け渡し案内部材3側から開始して最下段の紐架渡し案内部材3側へと未加硫ゴム紐bを順次に張り込み架け渡すことができる。
【0043】
さらに、未加硫ゴム紐bを、成形治具Aの各支持ピン2の各段の紐架渡し案内部材3に張り込み架け渡すときに、各段の紐架渡し案内部材3毎に行うことができる。つまり、未加硫ゴム紐bを、各段の紐架渡し案内部材3にわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡すことができる程度の長さとして、各段の紐架渡し案内部材3毎に、1本ずつ未加硫ゴム紐bを張り込み架け渡すことができる。
【0044】
また、治具ベース1の紐引き込みM側に配置される折返し誘導部材6は、治具ベース1の幅方向に並設させた2ヶ所に限らず、2ヶ所以上の複数ヶ所または1ヶ所でもよく、任意である。
【符号の説明】
【0045】
A 成形治具
1 治具ベース
2 支持ピン
3 紐架渡し案内部材
4 紐受け凹部
6 紐折返し誘導部材
7 誘導ピン
8 紐折返し凹部
B 鍵槍型エレメント
b 未加硫ゴム紐
b−1 紐端(先頭)
b−2 紐端(切断)
C 編組体
D 網容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、菱目網に編み組みされて形成される編組体用鍵槍型エレメントの成形治具および成形方法に係り、詳しくは、補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐を、可撓性を有する編組体用鍵槍型エレメントに加硫成形する際に、未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に張り込み掛け渡してセットする成形治具と、その成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
菱目網に編み組みされて形成される編組体として、フェンスネット、法面落石・崩落防止用ネット、あるいは河川工事用のじゃかごなどが一般的に知られている。これらは主に、ポリエチレン被覆鉄線、ビニル被覆鉄線、亜鉛メッキ鉄線、あるいはステンレス鋼線などから形成されている。
【0003】
また、消波などの用途(目的)で海岸などに設置されるテトラポットなどのコンクリート二次成形品は、海岸の原風景である白砂青松を破壊するなどの景観的にも自然環境にマッチしないことから、コンクリート二次成形品に代わるものとして、自然石を詰め込んだ金網からなる石詰め枠などを引き詰める、あるいは、引き詰めた自然石群に金網を被せてアンカー止めするなどによって、自然石ブロックを海岸に設置する施工法などが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−27151号公報(段落番号0022、0030〜0031、および図1参照)
【特許文献2】特開2001−336156号公報(段落番号0016、0019〜0021、および図1、図3参照)
【特許文献3】特開2005−171687号公報(段落番号0014〜0016、および図1〜図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の護岸施工法では、いずれも金網を使用しているために、短期間で錆び易く、錆び付いた金網が護岸表面に現れる。また、腐食が進行して切断などの破損(崩壊)を引き起こすなどの問題点があった。
【0006】
そこで、本出願人は、補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐を、加硫処理するための成形治具に連続ジグザグ状に張り込み掛け渡し、加硫成形することで、可撓性を有する連続ジグザグ状に形状固定(クセ付け)された編組体用鍵槍型エレメントを開発し、この編組体用鍵槍型エレメントを菱目編に編み組みして形成されるフェンスネット、法面落石・崩落防止用ネット、そして自然石ブロックを海岸や法面に設置するための自然石を詰め込む護岸形成用網袋や法面形成用網袋などの網容器を作るなどの用途として使用することができる編組体を先に提案している。
この編組体は、耐摩耗性、高抗張力、耐海水性、耐候性、可撓性を有し、しかも、菱形網目であるために網目が崩れ難く、切れたときには切れた部分のみの取替えが可能で、さらには、菱形網目の編部(絡み部)が無結節であるために加硫ゴム紐がジグザグ方向に伸びるなどからコンパクトな運搬が可能であるなどの利点があり、高い評価が得られている。
【0007】
ところが、この編組体用鍵槍型エレメントを製作する従来の成形治具は、多数本の支持ピンを、略矩形形状の治具ベースの長さ方向に略千鳥配列状に突設している構成であっために、各支持ピンにわたり未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に張り込み架け渡すときのセット作業性が悪く、非常に時間が掛かるものとなっていた。これは、支持ピンに対する未加硫生ゴムの摺動性の悪さが原因となっていた。
また、生産性を上げるために、1本の未加硫ゴム紐を軸方向に多段状に張り込み架け渡すことができる長さ(高さ)の支持ピンを治具ベースに略千鳥配列状に突設してなる成形治具が用いられる。
つまり、治具ベースの長さ方向一側の支持ピンから長さ方向他側の支持ピンへとわたり未加硫ゴム紐を張り込み掛け渡して一段目の張り込みを行った後に、当該他側の支持ピン側にて未加硫ゴム紐を折り返してこの支持ピンから一側の支持ピンへと張り込み架け渡す二段目の張り込みを行い、さらに、当該一側の支持ピン側にて未加硫ゴム紐を折り返して他側の支持ピンにわたり張り込み架け渡すセット作業が順次に繰り返されることで、1台の成形治具(支持ピン)に未加硫ゴムが多段状に張り込み掛け渡されて、加硫処理による形状固定(クセ付け)が行われるものであるが、従来の成形治具の支持ピンには多段状に張り込まれている未加硫ゴム紐を軸方向に分離(分断)する構造(機能)を備えていない。
そのために、従来では、各支持ピンにわたり未加硫ゴム紐を張り込み架け渡すときに、未加硫ゴム紐同士が接触しないように、1本1本を軸方向に離しながら未加硫ゴム紐を多段状に張り込み架け渡すセット作業を行わなければならないために、この点も作業性を悪くして時間が掛かる大きな原因になっていた。
【0008】
また、従来の成形治具の支持ピンに対し、前記したように、未加硫ゴム紐の摺動性が悪いために、加硫処理時に収縮する未加硫ゴム紐の軸方向(紐方向)の動きに対応させることができない。そのために、未加硫ゴム紐の形状固定(クセ付け)が安定しないものとなっていた。
換言すれば、各支持ピンにわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡される未加硫ゴム紐の支持ピン間における張り込み状態(架橋状態)に収縮に見合った余裕を持たせることが、未加硫ゴム紐を収縮にバラツキがない状態で安定的に形状固定することができる。
しかし、伸縮に見合った余裕を持たせながら、各支持ピンにわたり未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に張り込み掛け渡すには長年の経験と技術が要求されるために、誰でもできるわけではなく、また、手間が掛かるなどの困難な作業となっている。
【0009】
本発明は、従来の成形治具が抱えていた前記課題を解消するために創案されたものであり、未加硫ゴム紐を支持ピンにわたり張り込み架け渡すセット作業の簡易化、迅速化を図り、しかも、安定させた形状固定(クセ付け)を可能にしたネットフェンス、法面落石・崩落防止ネット、そして、海岸において引き詰められた自然石群に被せるようにアンカー止めされるネットや自然石を詰め込む護岸形成用網袋などとして好適な編組体用鍵槍型エレメントの成形治具および成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具は、補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐を、連続ジグザグ状に張り込み架け渡す多数本の支持ピンを、略矩形形状の治具ベースの長さ方向に略千鳥配列状に突設している編組体用鍵槍型エレメントの成形治具であって、
前記各支持ピンに、前記未加硫ゴム紐を張り込み掛け渡し方向に誘導する紐架渡し案内部材を回転可能にそれぞれ備えていることを特徴とする。
ここで、前記紐架渡し案内部材が、前記各支持ピンの軸方向に多段状に備えられて、前記未加硫ゴム紐が、前記各支持ピンに連続ジグザグ状で、軸方向に折り返し多段状に張り込み架け渡されるように構成されていることが好適なものとなる。
また、前記紐架渡し案内部材は、前記未加硫ゴム紐が収まる程度の深さと開口の紐受け凹部を周面に有する略太鼓型形状に形成されていることがさらに好適なものとなる。
【0011】
また、本発明の編組体用鍵槍型エレメントの成形方法は、前記の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具を用いた編組体用鍵槍型エレメントの成形方法であって、
前記治具ベースの長さ方向一側に突設されている前記支持ピンの前記紐架渡し案内部材から前記未加硫ゴム紐の紐端を引き込み、前記治具ベースの長さ方向他側に突設されている前記支持ピンの前記紐架渡し案内部材に向けて、前記未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に順次に張り込み架け渡すようにしたことを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、未加硫ゴム紐を、各支持ピンにわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡すときに、未加硫ゴム紐の紐端を、治具ベースの長さ方向一側の支持ピンの紐架渡し案内部材から次の支持ピンの紐架渡し案内部材へと引き込んで、未加硫ゴム紐を他側の支持ピンに向けて張り込み架け渡すように、未加硫ゴム紐を治具ベース内に引き込む。
このとき、各支持ピンの紐架渡し案内部材は、未加硫ゴム紐の治具ベース内への引き込みによって未加硫ゴム紐との接触により回転する。また、各支持ピンの紐架渡し案内部材が、周面に紐受け凹部を有する略太鼓型形状に形成されていることで、回転に加えて、未加硫ゴム紐を紐受け凹部で受け止めることができるために、未加硫ゴム紐が、支持ピンの軸方向に多段状に張り込み架渡されるとき、未加硫ゴム紐同士の接触を防ぎ、未加硫ゴム紐を支持ピンの軸方向に等間隔にて分離保持することができる。
これにより、未加硫ゴム紐を各支持ピンにわたり連続ジグザグ状に張り込み掛け渡すためのセット作業の迅速化を期待することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具および成形方法によれば、未加硫ゴム紐を各支持ピンに張り込み架け渡すときのセット作業の簡易化、迅速化を図ることができる。
これにより、生産性の向上と、生産コストの削減を期待することができる。加えて、手作業による細かなセット作業がなくなることで、作業者に対する労力の軽減なども図ることができる。ひいては、未加硫ゴム紐をその紐端から治具ベースの長さ方向に引き込むことで、各支持ピンにわたり未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に張り込み架け渡すことができるために、ロボットなどによるセットをも可能とすることができる。
【0014】
また、加硫処理されるとき、多段状に張り込み架け渡されている未加硫ゴム紐同士が接触された状態で処理されるおそれがないことから、接着による不良品の発生を抑制することができる。しかも、未加硫ゴム紐の収縮を回転可能な紐架渡し案内部材によって対応させることができるために、未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状に形状固定(クセ付け)することを安定的に行うことができる。つまり、品質を安定させた連続ジグザグ状の鍵槍型エレメントを成形することが可能となる。
【0015】
このように、本発明によれば、未加硫ゴム紐を支持ピンにわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡すセット作業の簡易化、迅速化を図り、しかも、安定させた形状固定(クセ付け)を可能にしたネットフェンス、法面落石・崩落防止ネット、そして、海岸において引き詰められた自然石群に被せるようにアンカー止めされるネットなどとして好適な編組体用の鍵槍型エレメントの成形治具および成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る編組体用鍵槍型エレメントの成形治具を示す平面図である。
【図2】図1のII―II線拡大縦断面図である。
【図3】図1のIII―III線拡大縦断面図である。
【図4】同成形治具の紐引き込み側を部分的に拡大して示す側面図である。
【図5】治具ベース上に幅方向二列に並設させた各支持ピンの紐架渡し案内部材にわたり連続ジグザグ状で、各段の紐架渡し部材に段階的に1本の未加硫ゴム紐を張り込み架け渡すときの各状態をそれぞれ示す平面図であり、(a)は、1本の未加硫ゴム紐を治具ベース内に引き込むときの最初の状態を示し、(b)は、一列目の各支持ピンの一段目の紐架渡し案内部材にわたり張り込み架け渡した後に、二列目の各支持ピンの一段目の紐架渡し案内部材に連続して張り込み掛け渡すために未加硫ゴム紐の紐端を一列目側から二列目方向に折り返した状態を示す。
【図6】図5の続きを示す平面図であり、(c)は、二列目の各支持ピンの紐架渡し案内部材にわたり未加硫ゴム紐を張り込み架け渡した後に、一列目の各支持ピンの二段目の紐架渡し案内部材に連続して張り込み掛け渡すために未加硫ゴム紐の紐端を先頭に折返し誘導部にわたして折り返した状態を示し、(d)は、並設する一列目と二列目の各支持ピンの一段目から五段目の全ての紐架渡し案内部材にわたり未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状で、軸方向に段階的に1本の未加硫ゴム紐を張り込み架け渡して張り込み作業が終了した状態を示す。
【図7】加硫処理により連続ジグザグ状に形状固定(クセ付け)されて成形治具から外された鍵槍型エレメントの形状図である。
【図8】図7に示す編組体用鍵槍型エレメントを、菱目が一列になるように編み絡めた状態を示す説明図である。
【図9】図7に示す2つの編組体用鍵槍型エレメントで二列目の菱目ができるように編み組み込んだ状態を示す同説明図である。
【図10】図7に示す編組体用鍵槍型エレメントを複数用いて所望の大きさを有するネット状に編み組み込んだ状態で、さらに端部の絡みが解けないようにループ状に閉じてなる編組体の正面図である。
【図11】図10に示す編組体を円筒状に丸め、さらに1つの鍵槍型エレメントを用いて網容器となるように編み組み込まれる途中の状態を示す説明図である。
【図12】円筒状に編み組みされた状態からさらに底部を編み組してなる網容器の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る編組体用鍵槍型エレメントの成形治具を示す平面図であり、図2は、同拡大縦断面図であり、図3は、同成形治具の紐引き込み側を部分的に拡大して示す側面図である。
【0018】
≪成形治具の構成≫
成形治具Aは、補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐bを後記の各支持ピン2にわたり連続ジグザグ状に張り込みセットさせた状態で、加硫缶で所定の圧力と温度を保って所定時間加熱・加圧する加硫処理を行うことにより、未加硫ゴム紐bを連続ジグザグ状に形状固定(クセ付け)する。つまり、未加硫ゴム紐bから可撓性を有する連続ジグザグ状の鍵槍型エレメントBを成形するための治具である。
この成形治具Aは、図1に示すように、治具ベース1と、この治具ベース1上に千鳥配列状に突設される多数本の支持ピン2とを備えて構成されている。
治具ベース1および支持ピン2は、金属その他の耐熱性・耐腐蝕性材料などによってそれぞれ形成されている。
【0019】
治具ベース1は、図1に示すように、多数本の支持ピン2が、長さ方向に略千鳥配列状で、同配列形態が対称的配置にて幅方向二列に並設されるように、所定の長さと幅を有する平面視で略矩形形状に形成されている。
【0020】
支持ピン2は、未加硫ゴム紐bを軸方向に多段状に、例えば、図2に示すように、軸方向に5段にて張り込み掛け渡すことができる程度の長さ(高さ)に形成されている。
この支持ピン2は、下端側が治具ベース1に植設や溶接されるなどによって、治具ベース1の長さ方向に所定の間隔をおいて略千鳥配列状で、同配列形態が対称的配置にて治具ベース1の幅方向二列に並設されるように突設される。
なお、この支持ピン2の治具ベース1に対する略千鳥配列は、後記の図7に示すように、略二等辺三角形状の波型屈曲部5を有する編組体用鍵槍型エレメント(以後、「鍵槍型エレメント」と称する)Bが得られる間隔とすることが好適となる。
【0021】
そして、このようにして治具ベース1の長さ方向に略千鳥配列状で、同配列形態が対称的配置にて幅方向二列に並設される各支持ピン2には、図1および図2に示すように、紐架渡し案内部材3が回転可能にそれぞれ備えられる。
これにより、後記の図5から図6に示すように、治具ベース1の長さ方向一側の紐引き込みM側(図1において紙面右側)から紐端b−1を先行させて治具ベース1内に引き込まれる未加硫ゴム紐bが、当該紐引き込みM側の支持ピン2から治具ベース1の長さ方向他側の紐折返しN側(図1において紙面左側)の支持ピン2に向け、さらに、当該紐折返しN側の支持ピン2から折り返されて引き込み側の支持ピン2に向けて順次に張り込み架け渡されるようにしている。
【0022】
≪紐架渡し案内部の構成≫
紐架渡し案内部材3は、治具ベース1の紐引き込みM側から紐端b−1を先行させて治具ベース1内に引き込まれる未加硫ゴム紐bが、当該紐引き込みM側の支持ピン2から紐折返しN側の支持ピン2に向けて張り込み架け渡されるときに、回転によって未加硫ゴム紐bを滑らかに張り込み掛け渡し方向に案内する役目、また、未加硫ゴム紐bが加硫処理されるときの収縮する動きを、隣り合う支持ピン2の間だけではなく、連続ジグザグ状に張り込み架け渡されている全ての支持ピン2相互間に均等に伝播(吸収)させる役目、さらに、支持ピン2の軸方向における未加硫ゴム紐b同士の接触を防ぐなどの役目を果たす。
この紐架渡し案内部材3は、各支持ピン2の軸方向に、その起立基端から所定の間隔をおいて多段状、例えば、図2に示すように、軸方向に5段にて回転可能に取り付けられるものである。
【0023】
紐架渡し案内部材3は、金属材料、合成樹脂材料その他の耐熱性・耐腐蝕性材料によって未加硫ゴム紐bの太さよりも厚く、所望の外径を有する略円盤形状に形成されて、支持ピン2に回転可能で、軸方向に移動不動に取り付けられる。
なお、図示を省略しているが、材質によっては紐架渡し案内部材3を支持ピン2に対し、ベアリングなどの回転支持体を介して回転可能で、軸方向に移動不動に取り付けることができる。
【0024】
そして、紐架渡し案内部材3は、図2に示すように、所望の太さにて輪切り断面で略円形状を呈する未加硫ゴム紐bが係合する紐受け凹部4を周面に有する略太鼓型形状に形成されている。
【0025】
紐受け凹部4は、図2に示すように、未加硫ゴム紐bの太さ(輪切り断面形状)の略半分程度の深さと開口を有する略半円形状にて紐架渡し案内部材3の周面全周に形成されている。
これにより、未加硫ゴム紐bが治具ベース1の長さ方向の各支持ピン2にわたり張り込み架け渡されるときに、例えば、Vプーリーに対してVベルトが係合されるように、未加硫ゴム紐bが紐受け凹部4に係合されて張り込み方向に引き込まれるその移動に伴い紐架渡し案内部材3が回転することで、未加硫ゴム紐bが、張り込み方向に接触抵抗などを受けることなく、紐架渡し案内部材3によって滑らかに移動可能で、かつ、支持ピン2の軸方向に移動不能に支持されて張り込み架け渡されるようにしている。
【0026】
また、本実施形態における成形治具Aは、図1、図3および図4に示すように、治具ベース1の紐引き込みM側(未加硫ゴム紐bが各支持ピン2にわたり張り込み架け渡されるときの始端側および終端側)に、未加硫ゴム紐bを各支持ピン2の軸方向(高さ方向)に段階的に誘導するための折返し誘導部材6が、誘導ピン7に回転可能に支持されて備えられている。
この折返し誘導部材6は、例えば、各支持ピン1における一段目(最下段)の全ての紐架渡し案内部材3に連続ジグザグ状に張り込み架け渡されてきた未加硫ゴム紐bが、治具ベース1の長さ方向一側に戻されて、当該一側の二段目の紐架渡し案内部材3に折り返し連続して引き込まれるときに(後記図6の(c)参照)、その折り返しと二段目の紐架渡し案内部材3への未加硫ゴム紐bの移行をスムーズに誘導する役目を果たす。
【0027】
折返し誘導部材6は、図3および図4に示すように、未加硫ゴム紐bの太さ(輪切り断面外形形状)の1.5〜2倍程度の厚さで紐架渡し案内部材3と略同じ程度の外径を有する略円盤形状で、周面全周にわたり紐折返し凹部8を有する略太鼓型形状に形成されている。
【0028】
紐折返し凹部8は、図3に示すように、未加硫ゴム紐bの太さの略半分程度の深さで、同太さの1.5倍程度の開口幅を有する略縦長半円形状にて折返し誘導部材6の周面全周に形成されている。
【0029】
そして、このように形成されている折返し誘導部材6は、治具ベース1の紐引き込みM側において幅方向中心部位に並列状に突設されている2本の誘導ピン7の軸方向に対し、図3および図4に示すように、各支持ピン2の一段目(最下段)と二段目、二段目と三段目、三段目と四段目、四段目と五段目(最上段)、それぞれの紐架渡し案内部材3の間にそれぞれ位置するように回転可能で、軸方向に移動不動に取り付けられる。
これにより、各支持ピン2の一段目(最下段)の紐架渡し案内部材3側から段階的に五段目(最上段)の紐架渡し案内部材3へと張り込み架け渡される未加硫ゴム紐bが、各段の折返し誘導部材6によって連続して折り返されて二段目以降の各紐架渡し案内部材3へとスムーズに誘導されるようにしている。
【0030】
ちなみに、未加硫ゴム紐bは、高抗張力を有する補強繊維芯材(合成繊維芯材)を生ゴム(被覆ゴム)で被覆してなるものである。
補強繊維芯材の一例を挙げるならば、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいはポリエステル繊維などの単線または撚線から選択することができる。そして、この補強繊維芯材の種類、太さなどは、用途目的などに応じて選ばれる。
一方、生ゴムの一例を挙げるならば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)などから選択することができる。
【0031】
[成形方法の説明]
つぎに、以上のように構成されている成形治具Aを用いた本実施形態に係る鍵槍型エレメントBの成形方法について説明する。
図5および図6は、成形治具の各支持ピンに多段状に備えられている各段の紐架渡し案内部材にわたり1本の未加硫ゴム紐を連続ジグザグ状で、かつ、段階的に張り込み架け渡すときの張り込み手順をそれぞれ示す平面図である。
【0032】
まず、図5の(a)に示すように、未加硫ゴム紐bの紐端b−1を先頭にして、折返し誘導部材6が配設されている治具ベース1の紐引き込みM側における幅方向一列目側の各支持ピン2の一段目の紐架渡し案内部材3から未加硫ゴム紐bを治具ベース1内に引き込む。そして、未加硫ゴム紐bを、各支持ピン2の一段目の各紐架渡し案内部材3にわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡していく。このとき、各紐架渡し案内部材3は、紐受け凹部4に係合されて張り込み架け渡し方向に引き込まれる未加硫ゴム紐bの引き込み移動によって回転する。
これにより、未加硫ゴム紐bを、治具ベース1の紐引き込みM側から紐折返しN側へと速やかに張り込み架け渡すことができる。
【0033】
そして、図5の(b)に示すように、紐端b−1を先頭にして未加硫ゴム紐bを治具ベース1の紐折返しN側へと張り込み架け渡してきたところで、幅方向二列目側の各支持ピン2の一段目の核紐架渡し案内部材3へと張り込みを移行させるように、紐端b−1を先頭に未加硫ゴム紐bを折り返し、治具ベース1の紐引き込みM側に向けて二列目側の各支持ピン2の一段目の各紐架渡し案内部材3にわたり未加硫ゴム紐bを連続ジグザグ状に張り込み架け渡す。
【0034】
このようにして、一列目と二列目の各支持ピン2の一段目の各紐架渡し案内部材3にわたり未加硫ゴム紐bを張り込み架け渡して一段目の各紐架渡し案内部材3への張り込み架け渡しセットを行って紐端b−1を先頭にして未加硫ゴム紐bが、治具ベース1の紐引き込みM側に戻されてきたところで、図6の(c)に示すように、当該紐引き込みM側に配設されている2本の誘導ピン7の一段目の折返し誘導部材6に未加硫ゴム紐bを架け渡しながら、紐端b−1を一列目の支持ピン2の二段目の紐架渡し案内部材3へ向けて引き込むように、未加硫ゴム紐bを折り返す。
このとき、折返し誘導部材6は、未加硫ゴム紐bの太さよりも幅広く開口する紐折返し凹部8を周面に備えていることで、未加硫ゴム紐bは、折返し誘導部材6の回転と紐折返し凹部8によって二列目側の一段目の紐架渡し案内部材3から一列目側の二段目の紐架渡し案内部材3へと速やかに折り返し移行されて行く。
【0035】
一段目の折返し誘導部材6によって一列目側の支持ピン2の二段目の紐架渡し案内部材3へと紐端b−1を先頭にして折り返し移行されてきた未加硫ゴム紐bを、前記一段目と同じく二段目の各紐架渡し案内部材3にわたり張り込み架け渡し、そして、同じく三段目、四段目、五段目の各紐架渡し案内部材3にわたり未加硫ゴム紐bを折り返し、折り返し移行させながら張り込み架け渡すセット作業が順次に繰り返されることで、図6の(d)、そして図3および図4に二点鎖線で示すように、成形治具Aへの未加硫ゴム紐bの張り込みセットが終了する。
そして、図6の(d)に示すように、二列目の五段目の各紐架渡し案内部材3に張り込み架け渡されて治具ベース1の一側に戻されてきた未加硫ゴム紐bは、先頭で治具ベース1に引き込まれた未加硫ゴム紐bの紐端b−1側と同じ長さを残して切断される。未加硫ゴム紐bの切断された紐端b−2および先頭で引き込まれた紐端b−1は、本出願人が先に提案している特願2008−26343号の明細書の段落番号0016、0031に記載され、同特願2008−26343号の図2および図11に示されている固定手段などを用いて治具ベース1に固定される。
【0036】
図7は、加硫処理されて形状固定(クセ付け)された鍵槍型エレメントを示す形状図である。
このようにして、成形治具Aの各支持ピン2の各段の紐架渡し案内部材3に連続張り込み架け渡されてセットされた未加硫ゴム紐bは、加硫缶にて加硫処理される。例えば、約2026hPa〜5066hPaの圧力で、100℃〜160℃の温度で、30分〜90分加熱する加硫処理が行われることで、形状固定(クセ付け)される。そして、形状固定された加硫ゴム紐は、成形治具Aの折返し誘導部材6においてループ部が切断されることで、それぞれ分離された鍵槍型エレメントBとして成形治具Aから外される。
【0037】
つぎに、このようにして成形治具Aを用いて形状固定された複数の鍵槍型エレメントBが編み組みされて得られる編組体Cについて簡単に説明する。
図8は、図7に示す編組体用鍵槍型エレメントを、菱目が一列になるように編み絡めた状態を示す説明図であり、図9は、図7に示す2つの編組体用鍵槍型エレメントで二列目の菱目ができるように編み組み込んだ状態を示す同説明図であり、図10は、図7に示す編組体用鍵槍型エレメントを複数用いて所望の大きさを有するネット状に編み組み込んだ状態で、さらに端部の絡みが解けないようにループ状に閉じてなる編組体の正面図である。
成形治具Aから外された連続ジグザグ状の鍵槍型エレメントBは、本出願人が先に提案している特願2008−26343号の明細書の段落番号0033に記載され、同特願2008−26343号の図12〜図17に示されているように、波型屈曲部5の屈曲部5aを絡めて複数の鍵槍型エレメントBを次々に編み組み込まれる。そして、最後に、各鍵槍型エレメントBの端部B−1,B−2の交差部を平行なすれ違い状態に並べ直してカシメ連結具9などを用いてループ状にカシメ連結することで、図10に示すような所望の大きさを有するネット状の編組体Cが形成される。
このネット状の網組体Cは、海岸において引き詰められた自然石群に被せるようにアンカー止めされるネットや法面落石・崩落防止用ネットなどとして利用される。
【0038】
図11は、図10に示す編組体を円筒状に丸め、さらに1つの編組体用鍵槍型エレメントを用いて網容器となるように編み組み込まれる途中の状態を示す説明図であり、図12は、円筒状に編み組み込まれた状態からさらに底部を編み組してなる網容器の一例を示す概略斜視図である。
そして、このようにして得られるネット状の網組体Cは、特願2008−26343号の明細書の段落番号0034に記載され、図11および図12に示されているように、エンドレスな円筒状になるように丸め、1つ鍵槍型エレメントBを用いて絡ませた後に、さらに紐状体10を用いて筒方向一端の底部を絡みつけ絞り込むことで、有底円筒状の網容器Dが形成されるものである。そして、網容器Dは、他端開口部側の開口部を閉じるための紐状体11を備えている。
この網容器Dは、自然石などを詰め込む護岸形成用網袋や法面形成用網袋などとして利用される。つまり、自然石などを網容器D内に詰め込んだ後に、網容器Dの他端開口部を紐状体11によって絞り込んで閉じる。
【0039】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した実施形態に限られるものではなく、請求項1から請求項4に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれるものである。
例えば、成形治具Aの各支持ピン2に備えられる紐架渡し案内部材3は、周面に紐受け凹部4を設けずに、未加硫ゴム紐bの太さに相当する厚さの単純な円盤型形状に形成して支持ピン2の軸方向に回転多段状に備えることができる。この場合、円盤周面が未加硫ゴム紐bを張り込み架け渡し方向に案内する紐案内面として作用する。
【0040】
また、紐架渡し案内部材3は、各支持ピン2の軸方向に未加硫ゴム紐bを分離する平板リング形状(板状)に形成して、未加硫ゴム紐bの太さに相当する間隔をおいて各支持ピン2の軸方向に回転多段状に備えることができる。この場合、未加硫ゴム紐bは、各支持ピン2にわたり張り込み架け渡されるときに、平板リング形状の紐架渡し案内部材の上に乗って、該紐架渡し案内部材の回転によって各支持ピン2にわたり張り込み架け渡されることとなる。
【0041】
さらに、紐架渡し案内部材3は、未加硫ゴム紐bの太さに相当する高さ(長さ)を有して各支持ピン2に回転可能に備えられる回転体と、この回転体の下端縁に備えられる紐載承リング部とから形成することができる。
【0042】
また、未加硫ゴム紐bを、成形治具Aの各支持ピン2の各段の紐架渡し案内部材3に段階的に張り込み架け渡すときの手順としては、各支持ピン2の最上段の紐架け渡し案内部材3側から開始して最下段の紐架渡し案内部材3側へと未加硫ゴム紐bを順次に張り込み架け渡すことができる。
【0043】
さらに、未加硫ゴム紐bを、成形治具Aの各支持ピン2の各段の紐架渡し案内部材3に張り込み架け渡すときに、各段の紐架渡し案内部材3毎に行うことができる。つまり、未加硫ゴム紐bを、各段の紐架渡し案内部材3にわたり連続ジグザグ状に張り込み架け渡すことができる程度の長さとして、各段の紐架渡し案内部材3毎に、1本ずつ未加硫ゴム紐bを張り込み架け渡すことができる。
【0044】
また、治具ベース1の紐引き込みM側に配置される折返し誘導部材6は、治具ベース1の幅方向に並設させた2ヶ所に限らず、2ヶ所以上の複数ヶ所または1ヶ所でもよく、任意である。
【符号の説明】
【0045】
A 成形治具
1 治具ベース
2 支持ピン
3 紐架渡し案内部材
4 紐受け凹部
6 紐折返し誘導部材
7 誘導ピン
8 紐折返し凹部
B 鍵槍型エレメント
b 未加硫ゴム紐
b−1 紐端(先頭)
b−2 紐端(切断)
C 編組体
D 網容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐を、連続ジグザグ状に張り込み架け渡す多数本の支持ピンを、略矩形形状の治具ベースの長さ方向に略千鳥配列状に突設している編組体用鍵槍型エレメントの成形治具であって、
前記各支持ピンに、前記未加硫ゴム紐を張り込み架け渡し方向に案内する紐架渡し案内部材を回転可能に備えていることを特徴とする編組体用鍵槍型エレメントの成形治具。
【請求項2】
前記紐架渡し案内部材が、前記各支持ピンの軸方向に多段状に備えられて、前記未加硫ゴム紐が、前記各支持ピンの軸方向に段階的に張り込み架け渡されるようにしていることを特徴とする請求項1に記載の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具。
【請求項3】
前記紐架渡し案内部材は、前記未加硫ゴム紐が係合する紐受け凹部を周面に有する略太鼓型形状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具を用いた編組体用鍵槍型エレメントの成形方法であって、
前記治具ベースの長さ方向一側に突設されている前記支持ピンの前記紐架渡し案内部材から前記未加硫ゴム紐の紐端を引き込み、前記治具ベースの長さ方向他側に突設されている前記支持ピンの前記紐架渡し案内部材に向けて、前記未加硫ゴム紐を順次に張り込み架け渡すことを特徴とする編組体用鍵槍型エレメントの成形方法。
【請求項1】
補強繊維芯材入りの未加硫ゴム紐を、連続ジグザグ状に張り込み架け渡す多数本の支持ピンを、略矩形形状の治具ベースの長さ方向に略千鳥配列状に突設している編組体用鍵槍型エレメントの成形治具であって、
前記各支持ピンに、前記未加硫ゴム紐を張り込み架け渡し方向に案内する紐架渡し案内部材を回転可能に備えていることを特徴とする編組体用鍵槍型エレメントの成形治具。
【請求項2】
前記紐架渡し案内部材が、前記各支持ピンの軸方向に多段状に備えられて、前記未加硫ゴム紐が、前記各支持ピンの軸方向に段階的に張り込み架け渡されるようにしていることを特徴とする請求項1に記載の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具。
【請求項3】
前記紐架渡し案内部材は、前記未加硫ゴム紐が係合する紐受け凹部を周面に有する略太鼓型形状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の編組体用鍵槍型エレメントの成形治具を用いた編組体用鍵槍型エレメントの成形方法であって、
前記治具ベースの長さ方向一側に突設されている前記支持ピンの前記紐架渡し案内部材から前記未加硫ゴム紐の紐端を引き込み、前記治具ベースの長さ方向他側に突設されている前記支持ピンの前記紐架渡し案内部材に向けて、前記未加硫ゴム紐を順次に張り込み架け渡すことを特徴とする編組体用鍵槍型エレメントの成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−188579(P2010−188579A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34268(P2009−34268)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】
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